(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-09
(54)【発明の名称】塩素を調製するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
C01B 7/04 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
C01B7/04 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564603
(86)(22)【出願日】2022-03-14
(85)【翻訳文提出日】2023-10-20
(86)【国際出願番号】 EP2022056535
(87)【国際公開番号】W WO2022223202
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521037411
【氏名又は名称】ベーアーエスエフ・エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【氏名又は名称】黒田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】ゲルハルト・オルバート
(72)【発明者】
【氏名】ハンス・シュイテン
(72)【発明者】
【氏名】トルステン・マトケ
(57)【要約】
本発明は、塩素を調製するための連続プロセスおよび前記プロセスを実施するための生産ユニットに関する。本発明はさらに、塩素の連続生産のための前記生産ユニットの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素を調製するための連続プロセスであって、
(i)酸素(O
2)および塩化水素(HCl)を含むガス流G1を提供するステップと、
(ii)前記ガス流G1を反応ゾーンZに流し、前記ガス流G1を前記反応ゾーンZに含まれる触媒と接触させ、塩素(Cl
2)ならびにO
2、H
2OおよびHClのうちの1つ以上を含むガス流GPを得て、前記ガス流GPを前記反応ゾーンZから除去するステップと、
(iii)前記ガス流GPを分割して、GPと同じ化学組成を有するガス流G2ならびにガス流GRを含む少なくとも2つのガス流を得るステップであって、前記ガス流G2の質量流量f(G2)に対する前記ガス流GRの質量流量f(GR)の比、f(GR):f(G2)が、0.1:1から20:1の範囲である、ステップと、を含み、
前記連続プロセスの標準運用モード中に、(i)に従って前記ガス流G1を提供するステップは、
少なくとも2つのガス流を含む混合物としてG1を調製するステップであって、前記少なくとも2つのガス流が、前記ガス流GRおよびk=1、...jであるj個のガス流G0(k)を含み、前記j個のガス流G0(k)が全体で酸素(O
2)および塩化水素(HCl)を含み、jが1から3の範囲である、ステップを含む、プロセス。
【請求項2】
jは1または2、好ましくは2である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記反応ゾーンZは断熱反応ゾーンである、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
f(GR):f(G2)が、1:1から10:1の範囲、好ましくは2:1から8:1の範囲、より好ましくは2.5:1から6:1の範囲、より好ましくは3:1から5:1の範囲である、請求項1から3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
f(GR):f(G2)が、3.2:1から5:1の範囲、好ましくは3.4:1から5:1の範囲である、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記連続プロセスの標準運用モード中、(i)に従って前記ガス流G1を提供するステップは、
3つのガス流GR、G0(1)およびG0(2)を含む、好ましくはこれらからなる混合物としてG1を調製するステップを含み、G0(1)は酸素(O
2)を含み、G0(2)は塩化水素(HCl)を含み、このステップは、
-前記ガス流G0(1)を前記ガス流G0(2)と、好ましくは静的ミキサ内で混合するステップと、
-前記ガス流GRを、前記混合ガス流G0(1)およびG0(2)と混合するステップと、を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
(i)に従って前記ガス流GRを前記混合された2つのガス流G0(1)およびG0(2)と混合するステップは、混合装置内で行われ、前記混合装置は、エジェクタ、静的ミキサまたは動的ミキサ、より好ましくはエジェクタであり、前記エジェクタは、より好ましくは前記混合ガス流G0(1)およびG0(2)によって駆動される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記混合ガス流G0(1)およびG0(2)は圧力P0を有し、前記ガス流GRは圧力PRを有し、P0>PRであり、好ましくは前記ガス流G1は圧力P1を有し、P0≧P1>PRであり、より好ましくは、前記圧力P0は、2から50バール(abs)、好ましくは4から20バール(abs)の範囲である、請求項6または7に記載のプロセス。
【請求項9】
リサイクル比は、前記ガス流GPの前記質量流量f(GP)に対する前記ガス流GRの前記質量流量f(GR)の比f(GR):f(GP)であり、0.2:1から0.95:1の範囲、好ましくは0.5:1から0.9:1の範囲、より好ましくは0.7:1から0.85:1の範囲であり、
前記ガス流GPは、最大450℃、好ましくは最大400℃の温度T(GP)を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
(ii)は、
前記反応ゾーンZから除去された前記ガス流GPを熱交換器に流し、好ましくは200から350℃の範囲、より好ましくは250から300℃の範囲の温度を有する冷却ガス流GPを得るステップをさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
f(GR):f(G2)が、3.2:1から5:1の範囲、好ましくは3.4:1から5:1の範囲である、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記連続プロセスの標準運用モード中、(i)に従って前記ガス流G1を提供するステップは、
液体流Lと、3つのガス流GR、G0(1)およびG0(2)とを含む、好ましくはこれらからなる混合物として、G1を調製するステップであって、G0(1)は酸素(O
2)を含み、G0(2)は塩化水素(HCl)を含み、前記液体流Lは塩化水素(HCl)および水を含み、このステップは、
-前記ガス流G0(1)を前記ガス流G0(2)と、好ましくは静的ミキサ内で混合するステップと、
-前記ガス流GRを、前記混合ガス流G0(1)およびG0(2)ならびに前記液体流Lと混合するステップと、を含む、ステップを含む、または、
前記連続プロセスの標準運用モード中、(i)に従って前記ガス流G1を提供するステップは、
液体流Lと、3つのガス流GR、G0(1)およびG0(2)とを含む、好ましくはこれらからなる混合物として、G1を調製するステップであって、G0(1)は酸素(O
2)を含み、G0(2)は塩化水素(HCl)を含み、前記液体流Lは塩化水素(HCl)および水を含み、このステップは、
-前記ガス流G0(1)を前記ガス流G0(2)と、好ましくは静的ミキサ内で混合するステップと、
-前記ガス流GRを、前記混合ガス流G0(1)およびG0(2)と混合するステップと、
-続いて、前記液体流Lを前記混合ガス流に添加するステップと、を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記液体流Lは、10から60℃の範囲、好ましくは15から30℃の範囲の温度T(L)を有し、前記液体流Lは、好ましくはHClおよび水からなる、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記連続プロセスの標準運用モード中に、(iii)の後に、エジェクタ内で、(i)に従ってG1を調製するステップの前に、前記ガス流GRを戻り手段Rに流すステップ
をさらに含む、請求項1から13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記触媒は、Ru系触媒、Ce系触媒、Cu系触媒およびそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択され、好ましくはRu系触媒、Ce系触媒およびCu系触媒からなる群から選択され、より好ましくはRu系触媒である、請求項1から14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載のプロセスを実施するための生産ユニットであって、前記ユニットは、
-反応ゾーンZであって、
--前記ガス流G1をZに流すための入口手段と、
--触媒と、
--前記ガス流G1を前記触媒と接触させるための反応手段と、
--前記ガス流GPをZから除去するための出口手段と、を含む、反応ゾーンZと、
-前記ガス流GPを少なくとも2つの流れ、好ましくは2つの流れに分割するための流れ分割装置Sであって、ガス流GRおよびガス流G2を含む、流れ分割装置Sと、
-前記ガス流GPを前記装置S内に流すための手段と、
-GRおよびk=1、...jであるj個のガス流G0(k)を含む混合物としてG1を調製するための手段Mであって、jが1から3の範囲である、手段Mと、
-Sから出る前記ガス流GRをG1を調製するための前記手段Mに送るための戻り手段Rと、を含む、生産ユニット。
【請求項17】
ホスゲンを調製するためのプロセスであって、
請求項1から15のいずれか一項に記載のプロセスに従って塩素を調製するステップと、
得られた前記塩素と一酸化炭素とを、触媒の存在下、気相中で反応させてホスゲンを得るステップと、を含む、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素を調製するための連続プロセスおよび前記プロセスを実施するための生産ユニットに関する。本発明はさらに、塩素の連続生産のための前記生産ユニットの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
対応するアミンのホスゲン化によるイソシアネートの大規模生産では、大量のHClが副生成物として得られる。他の用途におけるその使用に加えて、HClからの塩素の回収およびホスゲン合成におけるその使用は、魅力的な経路(塩素リサイクル)である。
【0003】
電気化学プロセスは、投資と運用コストの両方の点で高価である。HClの塩素への酸化、いわゆるディーコンプロセスは、より経済的に魅力的である。次いで、生成されたCl2を使用して、他の商業的に価値のある生成物、すなわちホスゲンおよびホスゲンからのイソシアネートなどを生産することができ、同時に、廃塩酸の排出が抑制される。Deaconプロセスは、塩化水素の気相酸化に基づく。HClを、触媒、例えば国際公開第2007/134771号、国際公開第2011/111351号、国際公開第2013/004651号、国際公開第2013/060628号および米国特許第2418930号明細書に開示されているような塩化銅(CuCl2)、Ru系触媒またはCe系触媒上で酸素と反応させて、200から500℃の温度で気相中で塩素および水を形成する。これは、わずかな発熱を伴う平衡反応である。冷却反応器は、温度上昇を制御し、ホットスポットを回避するために使用される。管束反応器および流動床の両方が知られている。
【0004】
腐食損傷を回避するために、ニッケルおよびニッケル基合金だけでなく炭化ケイ素も含む、高温での腐食性物質系に耐えることができる適切な材料が必要とされる。これらの材料およびそれらの加工は比較的高価であり、それに応じて反応器のコストが高くなる。また、高温の冷却システムが必要となり、コストが増加する。冷却系としては、原則として、硝酸塩/亜硝酸塩溶融塩が用いられる。漏れの場合、これは反応ガスと反応し、反応器を損傷する可能性がある。したがって、これらの問題を回避することを可能にする塩素を調製するための新しいプロセスを提供する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/134771号
【特許文献2】国際公開第2011/111351号
【特許文献3】国際公開第2013/004651号
【特許文献4】国際公開第2013/060628号
【特許文献5】米国特許第2418930号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2004/052718号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、塩素を調製するための新しいプロセスであって、塩素の生成を改善することを可能にし、従来技術の問題、すなわちそのようなプロセスに使用される生産ユニットの劣化、冷却システムの漏れ、ならびに使用される触媒の劣化/破壊などを回避するプロセスを提供することである。
【0007】
驚くべきことに、本発明による塩素を調製するためのプロセスは、改善された転化率で塩素を提供し、反応器の劣化を回避することを可能にすることが分かった。したがって、本発明によるプロセスは、失活した触媒を交換する必要性を低減することによって、より長期間使用することができる。さらに、冷却システムの漏れも反応器内で回避される。したがって、本発明のプロセスは効果的であり、生産コストを低減することを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明は、塩素を調製するための連続プロセスに関し、プロセスは、
(i)酸素(O2)および塩化水素(HCl)を含むガス流G1を提供するステップと、
(ii)ガス流G1を反応ゾーンZに流し、ガス流G1を前記反応ゾーンZに含まれる触媒と接触させ、塩素(Cl2)ならびにO2、H2OおよびHClのうちの1つ以上を含むガス流GPを得て、ガス流GPを前記反応ゾーンZから除去するステップと、
(iii)ガス流GPを分割して、GPと同じ化学組成を有するガス流G2ならびにガス流GRを含む少なくとも2つのガス流を得るステップであって、ガス流G2の質量流量f(G2)に対するガス流GRの質量流量f(GR)の比、f(GR):f(G2)が、0.1:1から20:1の範囲である、ステップと、を含み、
連続プロセスの標準運用モード中に、(i)に従ってガス流G1を提供するステップは、
少なくとも2つのガス流を含む混合物としてG1を調製するステップであって、前記少なくとも2つのガス流が、ガス流GRおよびk=1、...jであるj個のガス流G0(k)を含み、j個のガス流G0(k)が全体で酸素(O2)および塩化水素(HCl)を含み、jが1から3の範囲である、ステップを含む。
【0009】
好ましくは、jは1または2であり、より好ましくは、jは2である。
【0010】
好ましくは、混合物は、少なくとも2つのガス流からなる。
【0011】
反応ゾーンZに関しては、断熱反応ゾーンであることが好ましい。これは、反応ゾーンが断熱的に操作されることを意味する。
【0012】
好ましくは、f(GR):f(G2)は、1:1から10:1の範囲、より好ましくは2:1から8:1の範囲、より好ましくは2.5:1から6:1の範囲、より好ましくは3:1から5:1の範囲、より好ましくは3.2:1から5:1の範囲、より好ましくは3.4:1から5:1の範囲である。
【0013】
本発明のプロセスに使用されるj個のガス流G0(k)中の酸素および塩酸の量に関しては、前記プロセスによって十分な塩素が生成される限り、特に制限はない。しかしながら、j個のガス流G0(k)中のモル単位での酸素の量のモル単位での塩化水素の量に対するモル比は、0.1:1から2:1の範囲、より好ましくは0.15:1から0.8:1の範囲、より好ましくは0.2:1から0.7:1の範囲、より好ましくは0.3:1から0.6:1の範囲であることが好ましい。
【0014】
連続プロセスの標準運用モード中、本発明の第1の態様によれば、(i)に従ってガス流G1を提供するステップは、
3つのガス流を含む、より好ましくは3つのガス流からなる混合物としてG1を調製するステップを含むことが好ましく、前記3つのガス流は、ガス流GRと、2つのガス流G0(1)およびG0(2)とを含み、2つのガス流G0(1)およびG0(2)は、全体で酸素(O2)および塩化水素(HCl)を含む。
【0015】
連続プロセスの標準運用モード中、前記第1の態様によれば、(i)に従ってガス流G1を提供するステップは、
3つのガス流GR、G0(1)およびG0(2)を含む、より好ましくはこれらからなる混合物としてG1を調製するステップを含むことが好ましく、G0(1)は酸素(O2)を含み、G0(2)は塩化水素(HCl)を含み、このステップは、
-ガス流G0(1)をガス流G0(2)と、より好ましくは静的ミキサ内で混合するステップと、
-ガス流GRを、混合ガス流G0(1)およびG0(2)と混合するステップと、を含む。
【0016】
前記第1の態様によれば、(i)に従ってガス流GRを混合された2つのガス流G0(1)およびG0(2)と混合するステップは、混合装置内で行われることが好ましく、混合装置は、エジェクタ、静的ミキサまたは動的ミキサ、より好ましくはエジェクタであり、エジェクタは、より好ましくは混合ガス流G0(1)およびG0(2)によって駆動される。この点に関して、静的ミキサまたは動的ミキサがGRを混合ガス流G0(1)およびG0(2)と混合するために使用される場合、ミキサに入る前に圧縮機がGRを圧縮するために使用されることが好ましいことに留意されたい。
【0017】
前記第1の態様によれば、混合ガス流G0(1)およびG0(2)は圧力P0を有し、ガス流GRは圧力PRを有し、P0>PRであることが好ましい。ガス流G1は圧力P1を有し、P0≧P1>PRであることが好ましい。バール(abs)での圧力P0に関しては、生産ユニットにおける流れ設定に依存するため、特に制限はない。しかしながら、2から50バール(abs)、より好ましくは4から20バール(abs)の範囲であることが好ましい。
【0018】
前記第1の態様によれば、混合ガス流G0(1)およびG0(2)中のモル単位での酸素の量のモル単位での塩化水素の量に対するモル比は、0.1:1から2:1の範囲、より好ましくは0.15:1から0.8:1の範囲、より好ましくは0.2:1から0.7:1の範囲、より好ましくは0.3:1から0.6:1の範囲であることが好ましい。以下の好ましい特徴は、本発明および本発明の任意の態様によるものである。
【0019】
本発明の文脈において、リサイクル比は、ガス流GPの質量流量f(GP)に対するガス流GRの質量流量f(GR)の比f(GR):f(GP)であり、0.2:1から0.95:1の範囲、より好ましくは0.5:1から0.9:1の範囲、より好ましくは0.7:1から0.85:1の範囲であることが好ましい。
【0020】
ガス流GPは、最大450℃、より好ましくは最大400℃の温度T(GP)を有することが好ましく、前記温度T(GP)は、上記で定義されたリサイクル比を固定し、ガス流G1の温度を変化させることによって制御されることがより好ましい。実際、リサイクルガス、すなわちガス流GRの量および温度は、ガス流GPの温度に対応する反応ゾーンの出口温度を最大450℃、より好ましくは最大400℃の温度に制御するように選択されることが好ましい。
【0021】
ガス流G1は、少なくとも200℃、より好ましくは少なくとも250℃、より好ましくは250℃から300℃の範囲の温度T(G1)を有することが好ましい。
【0022】
(ii)に関しては、
反応ゾーンZから除去されたガス流GPを熱交換器に流し、より好ましくは200から350℃の範囲、より好ましくは250から300℃の範囲の温度を有する冷却ガス流GPを得るステップをさらに含むことが好ましい。好ましくは、熱交換器は、管束熱交換器である。前記熱交換器は、好ましくは、(ii)で使用される触媒などの触媒を含むことが考えられる。
【0023】
したがって、本発明は、好ましくは、塩素を調製するための連続プロセスに関し、プロセスは、
(i)酸素(O2)および塩化水素(HCl)を含むガス流G1を提供するステップと、
(ii)ガス流G1を反応ゾーンZに流し、ガス流G1を前記反応ゾーンZに含まれる触媒と接触させ、塩素(Cl2)ならびにO2、H2OおよびHClのうちの1つ以上を含むガス流GPを得て、ガス流GPを前記反応ゾーンZから除去し、反応ゾーンZから除去されたガス流GPを熱交換器に流し、より好ましくは200から350℃の範囲、より好ましくは250から300℃の範囲の温度を有する冷却ガス流GPを得るステップと、
(iii)(ii)に従って得られたガス流GPを分割して、GPと同じ化学組成を有するガス流G2ならびにガス流GRを含む少なくとも2つのガス流を得るステップであって、ガス流G2の質量流量f(G2)に対するガス流GRの質量流量f(GR)の比、f(GR):f(G2)が、0.1:1から20:1、より好ましくは1:1から10:1の範囲、より好ましくは3.2:1から5:1の範囲、より好ましくは3.4:1から5:1の範囲である、ステップと、を含み、
連続プロセスの標準運用モード中に、(i)に従ってガス流G1を提供するステップは、
少なくとも2つのガス流を含む混合物としてG1を調製するステップであって、前記少なくとも2つのガス流が、ガス流GRおよびk=1、...jであるj個のガス流G0(k)を含み、j個のガス流G0(k)が全体で酸素(O2)および塩化水素(HCl)を含み、jが1から3の範囲であり、より好ましくはjが2である、ステップを含む。
【0024】
本発明の文脈において、(iii)は、
連続プロセスの標準運用モード中に(i.2)でG0と混合する前に、ガス流GRを熱交換器に流して、より好ましくは200から350℃の範囲、より好ましくは250から300℃の範囲の温度を有する冷却ガス流GRを得るステップをさらに含むことが好ましい。好ましくは、熱交換器は、管束熱交換器である。
【0025】
(iii)は、
ガス流G2を熱交換器に流して、好ましくは200から350℃の範囲、より好ましくは250から300℃の範囲の温度を有する冷却ガス流G2を得るステップをさらに含むことが好ましい。GRを冷却するための熱交換器の好ましい使用は、ガス流GPが好ましくは(ii)で冷却された場合には必要ではないが、(ii)で使用される熱交換器に加えて使用することもできることに留意されたい。GRを冷却するための熱交換器は、上記(ii)のGPに使用される熱交換器の代わりに使用される。G2を冷却するための熱交換器についても同様である。
【0026】
ガス流G0(k)は、20から350℃の範囲、好ましくは100から340℃の範囲、より好ましくは200から350℃の範囲、より好ましくは250から300℃の範囲の温度T(G0(k))を有することが好ましい。
【0027】
本発明の第1の態様によれば、ガス流G0(1)は、200から350℃の範囲、より好ましくは250から300℃の範囲の温度T(G0(1))を有し、ガス流G0(2)は、200から350℃の範囲、より好ましくは250から300℃の範囲の温度T(G0(2))を有することが好ましい。
【0028】
本発明の第1の態様によれば、
3つのガス流GR、G0(1)およびG0(2)を含む、より好ましくはこれらからなる混合物として、G1を調製するステップであって、G0(1)は酸素(O2)を含み、G0(2)は塩化水素(HCl)を含み、
-好ましくはエジェクタ、より好ましくはガス流G0(1)またはG0(2)によって駆動されるエジェクタにおいて、ガス流G0(1)およびガス流G0(2)の一方をガス流GRと混合するステップと、
-ガス流G0(1)およびガス流G0(2)の他方を混合ガス流に添加するステップと、を含むステップも考えられる。
【0029】
連続プロセスの標準運用モード中、第2の態様によれば、(i)に従ってガス流G1を提供するステップは、
液体流Lと、ガス流GRと2つのガス流G0(1)およびG0(2)とを含む3つのガス流とを含む、より好ましくはそれらからなる混合物としてG1を調製するステップを含むことが好ましく、2つのガス流G0(1)およびG0(2)は全体で酸素(O2)および塩化水素(HCl)を含み、液体流Lは塩化水素(HCl)および水を含む。
【0030】
連続プロセスの標準運用モード中、第2の態様によれば、(i)に従ってガス流G1を提供するステップは、
液体流Lと、3つのガス流GR、G0(1)およびG0(2)とを含む、より好ましくはこれらからなる混合物として、G1を調製するステップを含むことが好ましく、G0(1)は酸素(O2)を含み、G0(2)は塩化水素(HCl)を含み、液体流Lは塩化水素(HCl)および水を含み、このステップは、
-ガス流G0(1)をガス流G0(2)と、より好ましくは静的ミキサ内で混合するステップと、
-ガス流GRを、混合ガス流G0(1)およびG0(2)ならびに液体流Lと混合するステップと、を含む。
【0031】
好ましくは、(i)に従ってガス流GRを混合された2つのガス流G0(1)およびG0(2)ならびに液体流Lと混合するステップは、混合装置内で行われ、混合装置は、エジェクタ、静的ミキサまたは動的ミキサであり、より好ましくはエジェクタである。エジェクタは、混合ガス流G0(1)およびG0(2)によって駆動されることが好ましい。
【0032】
連続プロセスの標準運用モード中、第2の態様によれば、(i)に従ってガス流G1を提供するステップは、
液体流Lと、3つのガス流GR、G0(1)およびG0(2)とを含む、より好ましくはこれらからなる混合物として、G1を調製するステップを含むこともまた好ましく、G0(1)は酸素(O2)を含み、G0(2)は塩化水素(HCl)を含み、液体流Lは塩化水素(HCl)および水を含み、このステップは、
-ガス流G0(1)をガス流G0(2)と、より好ましくは静的ミキサ内で混合するステップと、
-ガス流GRを、混合ガス流G0(1)およびG0(2)と混合するステップと、
-続いて、液体流Lを混合ガス流に添加するステップと、を含む。
【0033】
好ましくは、(i)に従ってガス流GRを混合された2つのガス流G0(1)およびG0(2)と混合するステップは、混合装置内で行われ、混合装置は、エジェクタ、静的ミキサまたは動的ミキサであり、より好ましくはエジェクタである。エジェクタは、混合ガス流G0(1)およびG0(2)によって駆動されることが好ましい。
【0034】
好ましくは、液体流Lは、10から60℃の範囲、より好ましくは15から30℃の範囲の温度T(L)を有する。液体流LはHClおよび水からなることが好ましい。本発明の文脈において、液体流Lを輸送するための管は、好ましくは炭化ケイ素(SiC)で作られることが好ましい。
【0035】
好ましくは、液体流Lの10から60重量%、より好ましくは20から50重量%、より好ましくは20から40重量%はHClからなる。
【0036】
好ましくは、液体流Lの98から100重量%、より好ましくは99から100重量%、より好ましくは99.5から100重量%は水およびHClからなる。以下の好ましい特徴は、本発明および本発明の任意の態様によるものである。
【0037】
連続プロセスの標準運用モード中、
(i)に従ってG1を提供するステップは、
混合ガス流G0(1)およびG0(2)を熱交換器に流し、より好ましくは10から60℃の範囲、より好ましくは15から30℃の範囲の温度を有する冷却ガス流G0を得るステップをさらに含むことが好ましい。
【0038】
本発明の文脈において、j個のガス流G0(k)の50から100重量%、より好ましくは70から100重量%、より好ましくは90から100重量%、より好ましくは99から100重量%、より好ましくは99.5から100重量%は、HClおよびO2からなることが好ましい。換言すれば、j個のガス流G0(k)は、HClおよびO2から本質的になる、より好ましくはHClおよびO2からなることが好ましい。本発明の文脈において、ガス流GR以外のリサイクル流(複数可)は、反応ゾーンの上流のj個のガス流G0(k)に添加されることが考えられる。
【0039】
本発明の文脈において、(iii)によれば、2つのガス流、ガス流G2およびガス流GRが得られることが好ましい。したがって、本発明は、好ましくは、塩素を調製するための連続プロセスに関し、プロセスは、
(i)酸素(O2)および塩化水素(HCl)を含むガス流G1を提供するステップと、
(ii)ガス流G1を反応ゾーンZに流し、ガス流G1を前記反応ゾーンZに含まれる触媒と接触させ、塩素(Cl2)ならびにO2、H2OおよびHClのうちの1つ以上を含むガス流GPを得て、ガス流GPを前記反応ゾーンZから除去するステップと、
(iii)ガス流GPを分割して、GPと同じ化学組成を有するガス流G2ならびにガス流GRである2つのガス流を得るステップであって、ガス流G2の質量流量f(G2)に対するガス流GRの質量流量f(GR)の比、f(GR):f(G2)が、0.1:1から20:1の範囲である、ステップと、を含み、
連続プロセスの標準運用モード中に、(i)に従ってガス流G1を提供するステップは、
少なくとも2つのガス流を含む混合物としてG1を調製するステップであって、前記少なくとも2つのガス流が、ガス流GRおよびk=1、...jであるj個のガス流G0(k)を含み、j個のガス流G0(k)が全体で酸素(O2)および塩化水素(HCl)を含み、jが1から3の範囲である、ステップを含む。
【0040】
本発明の文脈において、反応ゾーンZは、触媒を含む反応器を含むことが好ましい。
【0041】
好ましくは、反応器内のガス流の温度は最大450℃、より好ましくは最大400℃であり、温度は好ましくは熱電対で測定される。このような測定には、当技術分野で周知の任意の熱電対を使用することができる。
【0042】
反応器は断熱固定床反応器であることが好ましい。好ましくは、断熱固定床反応器は、触媒を含む1つの触媒床を含む。あるいは、断熱固定床反応器は、2つ以上の触媒床を含む多段反応器であり、2つ以上の触媒床の各々は触媒を含み、それぞれの触媒床の触媒は同じまたは異なる化学組成を有することが好ましい。このような多段反応器で使用される触媒は、好ましくは異なる触媒活性も示し得る。
【0043】
プロセスは、
連続プロセスの標準運用モード中に、(iii)の後に、エジェクタ内で、(i)に従ってG1を調製するステップの前に、ガス流GRを戻り手段Rに流すステップをさらに含むことが好ましい。
【0044】
好ましくは、戻り手段Rは、連続プロセスの標準運用モード中に、GRをリサイクルし、それを(i)によるj個のガス流G0(k)と混合するためにエジェクタに送るために、反応器の外部にループを形成する。
【0045】
反応ゾーンZに含まれる触媒は、Ru系触媒、Ce系触媒、Cu系触媒およびそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択されることが好ましく、より好ましくはRu系触媒、Ce系触媒およびCu系触媒からなる群から選択され、より好ましくはRu系触媒である。このような触媒は、先行技術に十分に記載されている。特に、好ましいRu系触媒は、国際公開第2011/111351号または国際公開第2007/134771号に開示されているものであり得、好ましいCe系触媒は、国際公開第2013/004651号および国際公開第2013/060628号に開示されているものであり得、好ましいCu系触媒は、米国特許出願公開第2418930号明細書に開示されているものであり得る。
【0046】
反応ゾーンZに含まれる触媒は、好ましくは球形または円筒形またはリング形状を有する。本発明で使用される触媒には、他の任意の形状を使用することも考えられる。
【0047】
好ましくは、反応ゾーンZに含まれる触媒は、1から20 mmの範囲、より好ましくは1.5から15 mmの範囲、より好ましくは2から10 mmの範囲の平均粒径を有する。
【0048】
好ましくは、触媒はRu系触媒であり、前記触媒は、酸化物支持材料に担持されたRuを含む。
【0049】
好ましくは、ガス流GPの20から100重量%、より好ましくは30から80重量%、より好ましくは40から70重量%は塩素からなる。
【0050】
本発明は、本発明によるプロセスを実施するための生産ユニットに関し、ユニットは、
-反応ゾーンZであって、
--ガス流G1をZに流すための入口手段と、
--触媒と、
--ガス流G1を前記触媒と接触させるための反応手段と、
--ガス流GPをZから除去するための出口手段と、を含む、反応ゾーンZと、
-ガス流GPを少なくとも2つの流れ、より好ましくは2つの流れに分割するための流れ分割装置Sであって、ガス流GRおよびガス流G2を含む、流れ分割装置Sと、
-ガス流GPを前記装置S内に流すための手段と、
-k=1、...jであるGRおよびj個のガス流G0(k)を含む混合物としてG1を調製するための手段Mであって、jが1から3の範囲、より好ましくは1または2、より好ましくは2である、手段Mと、
-Sから出るガス流GRをG1を調製するための前記手段Mに送るための戻り手段Rと、を含む。
【0051】
好ましくは、反応ゾーンZの反応手段は反応器である。
【0052】
好ましくは、反応ゾーンZの反応手段は、断熱固定床反応器である。好ましくは、断熱固定床反応器は、触媒を含む1つの触媒床を含む。あるいは、断熱固定床反応器は、2つ以上の触媒床を含む多段反応器であり、2つ以上の触媒床の各々は触媒を含み、それぞれの触媒床の触媒は同じまたは異なる化学組成を有することが好ましい。このような多段反応器で使用される触媒は、好ましくは異なる触媒活性も示し得る。
【0053】
反応器は、1.0 mから10.0 mの範囲、より好ましくは2.0 mから7.0 mの範囲、より好ましくは3.0 mから6.0 mの範囲の内径を有することが好ましい。
【0054】
好ましくは、反応器は、10 mmから50 mmの範囲、より好ましくは15から35 mmの範囲の壁厚を有する。
【0055】
好ましくは、反応器は、耐食性材料、より好ましくは鉄系合金、ニッケル系合金、ニッケルまたはニッケルクラッドで作製され、より好ましくはニッケルまたはニッケルクラッドで作製される。ニッケルクラッドは、2から5 mmのニッケルからなることが好ましい。
【0056】
反応器のすべての要素がニッケル含有材料で作製されることが好ましい。
【0057】
生産ユニットは、反応ゾーンZの下流および流れ分割装置Sの上流に、ガス流GPが流れる熱交換器をさらに備えることが好ましい。これは、例えば
図1に示されている。
【0058】
好ましくは、戻り手段Rは、手段Mに入る前にGRを冷却するための熱交換器をさらに備える。これは、例えば
図3に示されている。
【0059】
好ましくは、本発明で使用される熱交換器は管束熱交換器であり、熱交換器は、より好ましくは耐食性材料、より好ましくはニッケルクラッドなどのニッケル系材料、またはニッケルで作製される。
【0060】
戻り手段Rは戻り管、より好ましくはZの反応器への外部戻り管またはZの反応器への内部戻り管、より好ましくは外部戻り管であることが好ましい。これは、例えば
図1から
図3に示されている。
【0061】
好ましくは、戻り管は、最大2000 mm、より好ましくは100から2000 mmの範囲、より好ましくは150から1000 mmの範囲の内径を有する。
【0062】
好ましくは、戻り管は、耐食性材料、より好ましくは鉄系合金、ニッケル系合金、ニッケルまたはニッケルクラッドで作製され、より好ましくはニッケル系合金、ニッケルまたはニッケルクラッドで作製される。
【0063】
生産ユニットは、1つまたは複数の管をさらに備え、管は、耐食性材料、より好ましくは鉄系合金、ニッケル系合金、ニッケルまたはニッケルクラッドで作製され、より好ましくはニッケル系合金、ニッケルまたはニッケルクラッドで作製されることが好ましい。管は、熱交換器の下流に配置される場合、好ましくはタンタル系材料で作製されることも考えられる。
【0064】
生産ユニットは、液体流Lのための管を備え、前記管は炭化ケイ素で作製されることが好ましい。
【0065】
手段Mは混合装置であることが好ましく、混合装置はエジェクタ、静的ミキサまたは動的ミキサであり、より好ましくはエジェクタである。
【0066】
本発明はさらに、塩素の連続生産のための本発明による生産ユニットの使用に関する。
【0067】
本発明はさらに、ホスゲンを調製するためのプロセスであって、プロセスは、
本発明のプロセスによって塩素を調製するステップと、
得られた塩素と一酸化炭素とを、触媒の存在下、気相中で反応させてホスゲンを得るステップと、を含む。
【0068】
本発明は、以下の実施形態のセットおよび示されるような従属関係および後方参照から生じる実施形態の組み合わせによってさらに説明される。特に、実施形態の範囲が言及される各例において、例えば、用語の文脈、例えば「実施形態1から4のいずれか1つのプロセス」において、この範囲内のすべての実施形態は、当業者に明示的に開示されることを意味する、すなわち、この用語の文言は、「実施形態1、2、3、および4のいずれか1つのプロセス」と同義であるとして当業者によって理解されるべきであることに留意されたい。さらに、以下の実施形態のセットは、本発明の好ましい態様に向けられた一般的な説明の適切に構造化された部分を表し、したがって、適切に支持するが、本発明の特許請求の範囲を表さないことに明示的に留意されたい。
【0069】
1.塩素を調製するための連続プロセスであって、
(i)酸素(O2)および塩化水素(HCl)を含むガス流G1を提供するステップと、
(ii)ガス流G1を反応ゾーンZに流し、ガス流G1を前記反応ゾーンZに含まれる触媒と接触させ、塩素(Cl2)ならびにO2、H2OおよびHClのうちの1つ以上を含むガス流GPを得て、ガス流GPを前記反応ゾーンZから除去するステップと、
(iii)ガス流GPを分割して、GPと同じ化学組成を有するガス流G2ならびにガス流GRを含む少なくとも2つのガス流を得るステップであって、ガス流G2の質量流量f(G2)に対するガス流GRの質量流量f(GR)の比、f(GR):f(G2)が、0.1:1から20:1の範囲である、ステップと、を含み、
連続プロセスの標準運用モード中に、(i)に従ってガス流G1を提供するステップは、
少なくとも2つのガス流を含む混合物としてG1を調製するステップであって、前記少なくとも2つのガス流が、ガス流GRおよびk=1、...jであるj個のガス流G0(k)を含み、j個のガス流G0(k)が全体で酸素(O2)および塩化水素(HCl)を含み、jが1から3の範囲である、ステップを含む。
【0070】
2.jは1または2、好ましくは2である、実施形態1に記載のプロセス。
【0071】
3.反応ゾーンZは断熱反応ゾーンである、実施形態1または2に記載のプロセス。
【0072】
4.f(GR):f(G2)は、1:1から10:1の範囲、好ましくは2:1から8:1の範囲、より好ましくは2.5:1から6:1の範囲、より好ましくは3:1から5:1の範囲、より好ましくは3.2:1から5:1の範囲、より好ましくは3.4:1から5:1の範囲である、実施形態1または2に記載のプロセス。
【0073】
5.j個のガス流G0(k)中のモル単位での酸素の量のモル単位での塩化水素の量に対するモル比は、0.1:1から2:1の範囲、好ましくは0.15:1から0.8:1の範囲、より好ましくは0.2:1から0.7:1の範囲、より好ましくは0.3:1から0.6:1の範囲であることが好ましい、実施形態1から4のいずれか1つに記載のプロセス。
【0074】
6.連続プロセスの標準運用モード中、(i)に従ってガス流G1を提供するステップは、
3つのガス流を含む、より好ましくは3つのガス流からなる混合物としてG1を調製するステップを含むことが好ましく、前記3つのガス流は、ガス流GRと、2つのガス流G0(1)およびG0(2)とを含み、2つのガス流G0(1)およびG0(2)は、全体で酸素(O2)および塩化水素(HCl)を含む、実施形態1から5のいずれか1つに記載のプロセス。
【0075】
7.連続プロセスの標準運用モード中、(i)に従ってガス流G1を提供するステップは、
3つのガス流GR、G0(1)およびG0(2)を含む、より好ましくはこれらからなる混合物としてG1を調製するステップを含み、G0(1)は酸素(O2)を含み、G0(2)は塩化水素(HCl)を含み、このステップは、
-ガス流G0(1)をガス流G0(2)と、好ましくは静的ミキサ内で混合するステップと、
-ガス流GRを、混合ガス流G0(1)およびG0(2)と混合するステップと、を含む、実施形態1から6のいずれか1つに記載のプロセス。
【0076】
8.(i)に従ってガス流GRを混合された2つのガス流G0(1)およびG0(2)と混合するステップは、混合装置内で行われ、混合装置は、エジェクタ、静的ミキサまたは動的ミキサ、より好ましくはエジェクタであり、エジェクタは、より好ましくは混合ガス流G0(1)およびG0(2)によって駆動される、実施形態7に記載のプロセス。
【0077】
9.混合ガス流G0(1)およびG0(2)は圧力P0を有し、ガス流GRは圧力PRを有し、P0>PRであり、好ましくはガス流G1は圧力P1を有し、P0≧P1>PRであり、より好ましくは、圧力P0は、2から50バール(abs)、好ましくは4から20バール(abs)の範囲である、実施形態7または8に記載のプロセス。
【0078】
10.混合ガス流G0(1)およびG0(2)中のモル単位での酸素の量のモル単位での塩化水素の量に対するモル比は、0.1:1から2:1の範囲、好ましくは0.15:1から0.8:1の範囲、好ましくは0.2:1から0.7:1の範囲、より好ましくは0.3:1から0.6:1の範囲である、実施形態6から9のいずれか1つに記載のプロセス。
【0079】
11.リサイクル比は、ガス流GPの質量流量f(GP)に対するガス流GRの質量流量f(GR)の比f(GR):f(GP)であり、0.2:1から0.95:1の範囲、好ましくは0.5:1から0.9:1の範囲、より好ましくは0.7:1から0.85:1の範囲である、実施形態1から10のいずれか1つに記載のプロセス。
【0080】
12.ガス流GPは、最大450℃、好ましくは最大400℃の温度T(GP)を有することが好ましく、前記温度T(GP)は、好ましくは実施形態11で定義されたリサイクル比を固定し、ガス流G1の温度を変化させることによって制御される、実施形態1から11のいずれか1つに記載のプロセス。
【0081】
13.ガス流G1は、少なくとも200℃、好ましくは少なくとも250℃、より好ましくは250℃から300℃の範囲の温度T(G1)を有する、実施形態1から12のいずれか1つに記載のプロセス。
【0082】
14.(ii)は、
反応ゾーンZから除去されたガス流GPを熱交換器に流し、好ましくは200から350℃の範囲、より好ましくは250から300℃の範囲の温度を有する冷却ガス流GPを得るステップをさらに含み、熱交換器は好ましくは管束熱交換器である、実施形態1から13のいずれか1つに記載のプロセス。
【0083】
15.(iii)は、
連続プロセスの標準運用モード中に(i.2)でG0と混合する前に、ガス流GRを熱交換器に流して、好ましくは200から350℃の範囲、より好ましくは250から300℃の範囲の温度を有する冷却ガス流GRを得るステップをさらに含み、熱交換器は、好ましくは管束熱交換器である、実施形態1から13のいずれか1つに記載のプロセス。
【0084】
16.(iii)は、
ガス流G2を熱交換器に流して、好ましくは200から350℃の範囲、より好ましくは250から300℃の範囲の温度を有する冷却ガス流G2を得るステップをさらに含み、熱交換器は、好ましくは管束熱交換器である、実施形態15に記載のプロセス。
【0085】
17.ガス流G0(k)は、200から350℃の範囲、より好ましくは250から300℃の範囲の温度T(G0(k))を有し、
好ましくは、実施形態17が実施形態7に依存する限り、ガス流G0(1)は、200から350℃の範囲、より好ましくは250から300℃の範囲の温度T(G0(1))を有し、ガス流G0(2)は、200から350℃の範囲、より好ましくは250から300℃の範囲の温度T(G0(2))を有する、実施形態14から16のいずれか1つに記載のプロセス。
【0086】
18.連続プロセスの標準運用モード中、(i)に従ってガス流G1を提供するステップは、
液体流Lと、ガス流GRと2つのガス流G0(1)およびG0(2)とを含む3つのガス流とを含む、より好ましくはそれらからなる混合物としてG1を調製するステップを含み、2つのガス流G0(1)およびG0(2)は全体で酸素(O2)および塩化水素(HCl)を含み、液体流Lは塩化水素(HCl)および水を含む、実施形態1から5のいずれか1つに記載のプロセス。
【0087】
19.連続プロセスの標準運用モード中、(i)に従ってガス流G1を提供するステップは、
液体流Lと、3つのガス流GR、G0(1)およびG0(2)とを含む、より好ましくはこれらからなる混合物として、G1を調製するステップを含むことが好ましく、G0(1)は酸素(O2)を含み、G0(2)は塩化水素(HCl)を含み、液体流Lは塩化水素(HCl)および水を含み、このステップは、
-ガス流G0(1)をガス流G0(2)と、好ましくは静的ミキサ内で混合するステップと、
-ガス流GRを、混合ガス流G0(1)およびG0(2)ならびに液体流Lと混合するステップと、を含む、実施形態1から5および18のいずれか1つに記載のプロセス。
【0088】
20.(i)に従ってガス流GRを混合された2つのガス流G0(1)およびG0(2)ならびに液体流Lと混合するステップは、混合装置内で行われ、混合装置は、エジェクタ、静的ミキサまたは動的ミキサ、より好ましくはエジェクタであり、エジェクタは、より好ましくは混合ガス流G0(1)およびG0(2)によって駆動される、実施形態19に記載のプロセス。
【0089】
21.連続プロセスの標準運用モード中、(i)に従ってガス流G1を提供するステップは、
液体流Lと、3つのガス流GR、G0(1)およびG0(2)とを含む、より好ましくはこれらからなる混合物として、G1を調製するステップを含むことが好ましく、G0(1)は酸素(O2)を含み、G0(2)は塩化水素(HCl)を含み、液体流Lは塩化水素(HCl)および水を含み、このステップは、
-ガス流G0(1)をガス流G0(2)と、好ましくは静的ミキサ内で混合するステップと、
-ガス流GRを、混合ガス流G0(1)およびG0(2)と混合するステップと、
-続いて、液体流Lを混合ガス流に添加するステップと、を含む、実施形態1から5および18のいずれか1つに記載のプロセス。
【0090】
22.(i)に従ってガス流GRを混合された2つのガス流G0(1)およびG0(2)と混合するステップは、混合装置内で行われ、混合装置は、エジェクタ、静的ミキサまたは動的ミキサ、より好ましくはエジェクタであり、エジェクタは、より好ましくは混合ガス流G0(1)およびG0(2)によって駆動される、実施形態21に記載のプロセス。
【0091】
23.液体流Lは、10から60℃の範囲、好ましくは15から30℃の範囲の温度T(L)を有し、液体流Lは、好ましくはHClおよび水からなる、実施形態18から22のいずれか1つに記載のプロセス。
【0092】
24.液体流Lの10から60重量%、好ましくは20から50重量%、より好ましくは20から40重量%はHClからなる、実施形態18から23のいずれか1つに記載のプロセス。
【0093】
25.液体流Lの98から100重量%、好ましくは99から100重量%、より好ましくは99.5から100重量%は水およびHClからなる、実施形態18から24のいずれか1つに記載のプロセス。
【0094】
26.連続プロセスの標準運用モード中、
(i)に従ってG1を提供するステップは、
混合ガス流G0(1)およびG0(2)を熱交換器に流し、好ましくは10から60℃の範囲、好ましくは15から30℃の範囲の温度を有する冷却ガス流G0を得るステップをさらに含む、実施形態18から25のいずれか1つに記載のプロセス。
【0095】
27.j個のガス流G0(k)の50から100重量%、好ましくは70から100重量%、より好ましくは90から100重量%、より好ましくは99から100重量%、より好ましくは99.5から100重量%はHClおよびO2からなる、実施形態18から26のいずれか1つに記載のプロセス。
【0096】
28.(iii)により、2つのガス流、ガス流G2およびガス流GRが得られる、実施形態1から27のいずれか1つに記載のプロセス。
【0097】
29.反応ゾーンZは触媒を含む反応器を含む、実施形態1から28のいずれか1つに記載のプロセス。
【0098】
30.反応器内のガス流は最大450℃、好ましくは最大400℃であり、温度は好ましくは熱電対で測定される、実施形態29に記載のプロセス。
【0099】
31.反応器は断熱固定床反応器である、実施形態29または30に記載のプロセス。
【0100】
32.断熱固定床反応器は、触媒を含む1つの触媒床を含むか、または
断熱固定床反応器は、2つ以上の触媒床を含む多段反応器であり、2つ以上の触媒床の各々は触媒を含み、それぞれの触媒床の触媒は同じまたは異なる化学組成を有する、
実施形態30に記載のプロセス。
【0101】
33.連続プロセスの標準運用モード中に、(iii)の後に、エジェクタ内で、(i)に従ってG1を調製するステップの前に、ガス流GRを戻り手段Rに流すステップ
をさらに含む、実施形態1から32のいずれか1つに記載のプロセス。
【0102】
34.実施形態28から30のいずれか1つに依存する限り、戻り手段Rは、連続プロセスの標準運用モード中に、GRをリサイクルし、それを(i)によるj個のガス流G0(k)と混合するためにエジェクタに送るために、反応器の外部にループを形成する、実施形態33に記載のプロセス。
【0103】
35.触媒は、Ru系触媒、Ce系触媒、Cu系触媒およびそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択されることが好ましく、好ましくはRu系触媒、Ce系触媒およびCu系触媒からなる群から選択され、より好ましくはRu系触媒である、実施形態1から34のいずれか1つに記載のプロセス。
【0104】
36.触媒はRu系触媒であり、前記触媒は、酸化物支持材料に担持されたRuを含む、実施形態35に記載のプロセス。
【0105】
37.ガス流GPの20から100重量%、好ましくは30から80重量%は塩素からなる、実施形態1から36のいずれか1つに記載のプロセス。
【0106】
38.ガス流GPの40から70重量%は塩素からなる、実施形態37に記載のプロセス。
【0107】
39.実施形態1から38のいずれか1つに記載のプロセスを実施するための生産ユニットであって、前記ユニットは、
-反応ゾーンZであって、
--ガス流G1をZに流すための入口手段と、
--触媒と、
--ガス流G1を前記触媒と接触させるための反応手段と、
--ガス流GPをZから除去するための出口手段と、を含む、反応ゾーンZと、
-ガス流GPを少なくとも2つの流れ、好ましくは2つの流れに分割するための流れ分割装置Sであって、ガス流GRおよびガス流G2を含む、流れ分割装置Sと、
-ガス流GPを前記装置S内に流すための手段と、
-k=1、...jであるGRおよびj個のガス流G0(k)を含む混合物としてG1を調製するための手段Mであって、jが1から3の範囲、好ましくは1または2、より好ましくは2である、手段Mと、
-Sから出るガス流GRをG1を調製するための前記手段Mに送るための戻り手段Rと、を含む、生産ユニット。
【0108】
40.反応ゾーンZの反応手段は反応器である、実施形態39に記載の生産ユニット。
【0109】
41.反応ゾーンZの反応手段は断熱固定床反応器である、実施形態40に記載の生産ユニット。
【0110】
42.断熱固定床反応器は、触媒を含む1つの触媒床を含む、実施形態39から41のいずれか1つに記載の生産ユニット。
【0111】
43.断熱固定床反応器は、2つ以上の触媒床を含む多段反応器であり、2つ以上の触媒床の各々は触媒を含み、それぞれの触媒床の触媒は同じまたは異なる化学組成を有する、実施形態39から41のいずれか1つに記載の生産ユニット。
【0112】
44.反応器は、1.0 mから10.0 mの範囲、好ましくは2.0 mから7.0 mの範囲、より好ましくは3.0 mから6.0 mの範囲の内径を有する、実施形態40から43のいずれか1つに記載の生産ユニット。
【0113】
45.反応器は、10 mmから50 mmの範囲、好ましくは15から35 mmの範囲の壁厚を有する、実施形態40から44のいずれか1つに記載の生産ユニット。
【0114】
46.反応器は、耐食性材料、好ましくは鉄系合金、ニッケル系合金、ニッケルまたはニッケルクラッドで作製され、より好ましくはニッケルまたはニッケルクラッドで作製される、実施形態40から45のいずれか1つに記載の生産ユニット。
【0115】
47.反応ゾーンZの下流および流れ分割装置Sの上流に、ガス流GPが流れる熱交換器をさらに備える、実施形態39から46のいずれか1つに記載の生産ユニット。
【0116】
48.戻り手段Rは、手段Mに入る前にGRを冷却するための熱交換器をさらに備える、実施形態39から46のいずれか1つに記載の生産ユニット。
【0117】
49.熱交換器は管束熱交換器であり、熱交換器は、好ましくは耐食性材料、より好ましくはニッケル系材料またはニッケルで作製される、実施形態48に記載の生産ユニット。
【0118】
50.戻り手段Rは戻り管、好ましくはZの反応器への外部戻り管またはZの反応器への内部戻り管、より好ましくは外部戻り管である、実施形態39から49のいずれか1つに記載の生産ユニット。
【0119】
51.戻り管は、最大2000 mm、好ましくは100から2000 mmの範囲、より好ましくは150から1000 mmの範囲の内径を有する、実施形態50に記載の生産ユニット。
【0120】
52.戻り管は、耐食性材料、好ましくは鉄系合金、ニッケル系合金、ニッケルまたはニッケルクラッドで作製され、より好ましくはニッケル系合金、ニッケルまたはニッケルクラッドで作製される、実施形態50または51に記載の生産ユニット。
【0121】
53.手段Mは混合装置であり、混合装置はエジェクタ、静的ミキサまたは動的ミキサであり、好ましくはエジェクタである、実施形態39から52のいずれか1つに記載の生産ユニット。
【0122】
54.塩素の連続生産のための実施形態39から53のいずれか1つに記載の生産ユニットの使用。
【0123】
55.ホスゲンを調製するためのプロセスであって、
実施形態1から38のいずれか1つのプロセスによって塩素を調製するステップと、
得られた塩素を、触媒の存在下、気相中で一酸化炭素と反応させてホスゲンを得るステップと、を含む、プロセス。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【
図1】本発明の実施形態による生産ユニットの概略図である。生産ユニットは、ガス流G1をZに流すための管などの入口手段と、ガス流G1を触媒(図示せず)、好ましくは断熱反応器、すなわち反応が断熱的に操作される反応器と接触させるための反応手段とを含む反応ゾーンZを含む。ガス流G1の温度は280℃である。反応器は、反応器、好ましくは断熱固定床反応器である。反応器内および反応器の出口における最大ガス流温度は390℃であった。さらに、反応ゾーンZは、Zからガス流GPを除去するための出口手段、例えば管を含む。ガス流GPは、塩素と、HCl、H
2OおよびO
2のうちの1つまたは複数とを含む。生産ユニットは、ガス流GPを流れ分割装置内で2つの流れ、ガス流GRおよびガス流G2に分割する前にガス流GPを冷却するための熱交換器Hと、ガス流GPをこの図に示されていない流れ分割装置に流すための管などの手段とをさらに備える。ガス流G2およびGRは、それぞれGPと同じ化学組成を有する。G0中のHClの供給流に関連するG2中のHClの量は、約88%のHCl転化率を与える。生産ユニットは、ガス流G0をガス流GRと混合するための手段M、好ましくはG0によって駆動されるエジェクタをさらに備え、ガス流G0をMに供給するための管などの入口手段と、ガス流GRをMに供給するための手段とを備える。ガス流G0はHClおよびO
2からなる。2つのガス流G0を得るために、HClからなるG0(1)およびO
2からなるG0(2)を合わせたが、これらの流れはここには示されていない。リサイクルガス流GRは、エジェクタM内に吸引される。リサイクル比は、ガス流GPの質量流量f(GP)に対するガス流GRの質量流量f(GR)の比f(GR):f(GP)であり、約0.8:1であった。生産ユニットは、流れ分割装置から出るガス流GRを前記手段Mに送るための戻り手段R、戻り管をさらに備える。
【
図2】本発明の実施形態による生産ユニットのさらなる概略図である。生産ユニットは、ガス流G1をZに流すための管などの入口手段と、ガス流G1を触媒C、好ましくは断熱反応器、すなわち反応が断熱的に操作される反応器と接触させるための反応手段とを含む反応ゾーンZを含む。ガス流G1の温度は280℃である。反応器は断熱固定床反応器である。反応器内および反応器の出口における最大ガス流温度は390℃であった。さらに、反応ゾーンZは、Zからガス流GPを除去するための出口手段、例えば管を含む。ガス流GPは、塩素と、HCl、H
2OおよびO
2のうちの1つまたは複数とを含む。生産ユニットは、ガス流GPを2つの流れ、ガス流GRおよびガス流G2に分割する流れ分割装置と、ガス流GPをこの図に示されていない流れ分割装置に流すための管などの手段とをさらに備える。ガス流G2およびGRは、それぞれGPと同じ化学組成を有する。G0中のHClの供給流に関連するG2中のHClの量は、約86.2%のHCl転化率を与える。生産ユニットは、ガス流G0と、水およびHCl液体流Lを含む液体流Lとを混合するための手段M、好ましくはG0によって駆動されるエジェクタをさらに備え、ガス流GRは、ガス流G0および液体流LをMに供給するための管などの2つの入口手段と、ガス流GRをMに供給するための手段とを含む。ガス流G0は、HClおよびO
2からなり、20℃の温度を有する。2つのガス流G0を得るために、HClからなるG0(1)およびO
2からなるG0(2)を合わせたが、これらの流れはここには示されていない。水中塩酸(30重量%HCl)からなる液体流Lも20℃の温度を有する。リサイクルガス流GRは、エジェクタM内に吸引される。リサイクル比は、ガス流GPの質量流量f(GP)に対するガス流GRの質量流量f(GR)の比f(GR):f(GP)であり、約0.78:1であった。生産ユニットは、流れ分割装置から出るガス流GRを前記手段Mに送るための戻り手段R、戻り管をさらに備える。
【
図3】本発明の実施形態による生産ユニットのさらなる概略図である。生産ユニットは、ガス流G1をZに流すための管などの入口手段と、ガス流G1を触媒C、好ましくは断熱反応器、すなわち反応が断熱的に操作される反応器と接触させるための反応手段とを含む反応ゾーンZを含む。G1の最低温度は少なくとも200℃、好ましくは少なくとも250℃である。反応器は断熱固定床反応器である。反応器内および反応器の出口における最大ガス流温度は、最大400℃に設定した。さらに、反応ゾーンZは、Zからガス流GPを除去するための出口手段、例えば管を含む。ガス流GPは、塩素と、HCl、H
2OおよびO
2のうちの1つまたは複数とを含む。生産ユニットは、ガス流GPを2つの流れ、ガス流GRおよびガス流G2に分割するための流れ分割装置と、ガス流GPをこの図に示されていない流れ分割装置に流すための管などの手段とをさらに備える。ガス流G2およびGRは、それぞれGPと同じ化学組成を有する。G0中のHClの供給流に関連するG2中のHClの量は、好ましくは60から100%のHCl転化率を与える。生産ユニットは、ガス流G0をガス流GRと混合するための手段M、好ましくはエジェクタをさらに備え、ガス流G0をMに供給するための管などの入口手段と、ガス流GRをMに供給するための手段とを備える。ガス流G0はHClおよびO
2からなる。2つのガス流G0を得るために、HClからなるG0(1)およびO
2からなるG0(2)を合わせたが、これらの流れはここには示されていない。リサイクルガス流GRは、エジェクタMに吸い込まれる前に熱交換器Hを通過する。リサイクル比は、ガス流GPの質量流量f(GP)に対するガス流GRの質量流量f(GR)の比f(GR):f(GP)であり、0.2:1から0.95:1の範囲、好ましくは0.5:1から0.9:1の範囲、より好ましくは0.7:1から0.85:1の範囲である。生産ユニットは、流れ分割装置から熱交換器Hに、および熱交換器Hから前記手段Mに出るガス流GRを通過させるための戻り手段R、戻り管をさらに備える。
【
図4】比較例1(本発明によるものではない)で使用される生産ユニットのさらなる概略図である。生産ユニットは、ガス流G0をZに流すための管などの入口手段と、ガス流G0を触媒(図示せず)、好ましくは断熱反応器、すなわち反応が断熱的に操作される反応器と接触させるための反応手段とを含む反応ゾーンZを含む。ガス流G0の温度は280℃である。反応器は断熱固定床反応器である。反応器内および反応器の出口における最大ガス流温度は665℃であった。さらに、反応ゾーンZは、Zからガス流GPを除去するための出口手段、例えば管を含む。ガス流GPは、塩素と、HCl、H
2OおよびO
2のうちの1つまたは複数とを含む。生産ユニットは、ガス流GPを冷却するための熱交換器Hをさらに備える。G0中のHClの供給流に関連するGP中のHClの量は、約61.5%のHCl転化率を与える。
【発明を実施するための形態】
【0125】
本発明の文脈において、Xが所与の特徴であり、A、BおよびCのそれぞれが前記特徴の具体的な実現を表す「Xは、A、BおよびCのうちの1つ以上である」という用語は、XがA、またはB、またはC、あるいはAおよびB、またはAおよびC、またはBおよびC、またはAおよびBおよびCのいずれかであることを開示するものとして理解されるべきである。この点に関して、当業者は上記の抽象的な用語を具体例に移すことができ、例えば、Xは化学元素であり、A、BおよびCはLi、Na、およびKなどの具体的な元素であるか、Xは温度であり、A、BおよびCは10℃、20℃、および30℃などの具体的な温度であることに留意されたい。これに関して、当業者は、例えば、「XはAおよびBのうちの1つまたは複数である」は、XがA、またはB、またはAおよびBのいずれかであることを開示しているというように、上記の用語を前記特徴のより具体的でない実現に拡張すること、または、例えば、「Xは、A、B、CおよびDのうちの1つまたは複数である」は、XがA、またはB、またはC、またはD、またはAおよびB、またはAおよびC、またはAおよびD、またはBおよびC、またはBおよびD、またはCおよびD、またはAおよびBおよびC、またはAおよびBおよびD、またはBおよびCおよびD、またはAおよびBおよびCおよびDのいずれかであることを開示しているというように、前記特徴のより具体的な実現に拡張することができることにさらに留意されたい。
【0126】
本発明を以下の参考例および実施例によってさらに説明する。
【0127】
実施例
実施例1:本発明による塩素の生産
4 kmol/h(146 kg/h)のHClおよび2 kmol/h(64 kg/h)のO2の供給流が、エジェクタM内で(T(G0)=280℃を有する)駆動ガス流G0として作用し、断熱反応器出口から21.5 kmol/h(880 kg/h)のリサイクル流(ガス流GR)を吸引する。リサイクル比f(GR):f(GP)は0.8:1、比f(GR):f(G2)は4.2:1であった。エジェクタ出口ガス流G1は、5.4 baraで反応器に供給される。触媒床での断熱反応によって反応ゾーンZ内で温度が390℃まで上昇し、平衡状態になる。
【0128】
反応器出口流GPは、流れをリサイクルガス流GRと出口ガス流G2とに分割する前に、熱交換器H内で390から280℃に冷却される。G0中の4 kmol/hのHClの供給流に関連するG2中のHClの量は、約88%のHCl転化率を与える。このプロセスに使用される生産ユニットを
図1に示す。
【0129】
比較例1:本発明によらない塩素の生産
リサイクルを行わなかったことを除いて、実施例1のプロセスを繰り返した。特に、4 kmol/hのHClおよび2 kmol/hのO2の供給流G0は、断熱反応器内で5.4 baraで供給される。触媒床での断熱反応によって反応ゾーンZ内で温度が665℃まで上昇して平衡状態になり、触媒床は実施例1で使用したものと同じである。触媒床の出口におけるこの高温は、生産ユニット(反応器および管)の腐食および触媒の破壊/失活をもたらす。
【0130】
4 kmol/hの供給流に関連する反応ゾーンから出るガス流GP中のHClの量は、約61.5%のHCl転化率を与える。このプロセスに使用される生産ユニットを
図4に示す。
【0131】
実施例2:本発明による塩素の生産
3.88 kmol/h(141.4 kg/h)の気体HCl、2 kmol/h(64 kg/h)の気体O2の供給流が、エジェクタM内で(T(G0)=20℃を有する)駆動ガス流G0 として作用し、14.74 kg/hのHCl水溶液(水中30重量%HCl)の液体流L(T(L)=20℃を有する)と共に、断熱反応器出口から20.26 kmol/h(780.9 kg/h)のリサイクル流(ガス流GR)を吸引する。リサイクル比f(GR):f(GP)は0.78:1、比f(GR):f(G2)は3.54:1であった。エジェクタ出口ガス流G1は、5.4 baraで反応器に供給される。触媒床での断熱反応によって反応ゾーンZ内で温度が390℃まで上昇し、平衡状態になる。
【0132】
反応器出口流GPは、リサイクルガス流GRと出口ガス流G2とに分割される。4 kmol/hの供給流に関連するG2中のHClの量は、約86.1%のHCl転化率を与える。このプロセスに使用される生産ユニットを
図2に示す。
【0133】
比較例2:本発明によらない塩素の生産
実施例1と同じ供給条件を比較例2のプロセスに適用したが、リサイクル流は、米国特許出願公開第2004/052718号明細書によって与えられたf(GR):f(G2)=3:1の上限に適合するように減少した。したがって、リサイクル流GRの質量流量は、15.4 kmol/h(629.5 kg/h)であった。反応器の圧力および入口温度は、5.4 baraおよび280℃と同じであった。触媒床での断熱反応によって反応ゾーンZ内で温度が418℃まで上昇し、平衡状態になる。4 kmol/hの供給流に関連するG2中のHClの量は、約85.5%のHCl転化率を与える(本発明のプロセスと比較して転化率が低下した)。
【0134】
したがって、実施例1と比較例2とを比較することによって、f(GR):f(G2)の比は、HCl転化率ならびに触媒床の平衡温度に影響を及ぼすことに留意されたい。実際、本発明のプロセスでは、このような平衡温度を低下させ、触媒の失活を低下させることができ、HCl転化率が増加する。
【0135】
比較例3:本発明によらない塩素の生産
4 kmol/hのHClおよび2 kmol/hのO2の供給流が、エジェクタM内で(T(G0)=280℃を有する)駆動ガス流G0として作用し、
米国特許出願公開第2004/052718号明細書に記載されているように、3:1のf(GR):f(G2)比によって断熱反応器出口から16.1 kmol/h(629.5 kg/h)のリサイクル流(ガス流GR)を吸引する。エジェクタ出口ガス流G1は、5.4 baraで反応器に供給される。触媒床での断熱反応によって反応ゾーンZ内で温度が666℃まで上昇し、平衡状態になる。反応器出口流GPは、米国特許出願公開第2004/052718号明細書に定義されているように、流れをリサイクルガス流GRと出口ガス流G2とに分割する前に、熱交換器H内で冷却されない。GRとG0を混合すると、G1の混合温度は571℃となる。G0中の4 kmol/hのHClの供給流に関連するG2中のHClの量は、約61.5%のHCl転化率を与える。
【0136】
したがって、HCl転化率は、本発明のプロセスで得られたもの(実施例1または2)よりもはるかに低い。さらに、反応器の出口温度が高いため、激しい腐食および触媒失活の問題が予想される。この例は、米国特許出願公開第2004/052718号明細書に記載されている3:1の比f(GR).f(G2)での断熱動作が、本明細書で主張されているような外部熱交換器を用いた断熱動作と比較して主な欠点をもたらすことを示している。
【国際調査報告】