(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-09
(54)【発明の名称】酸洗いプラントにおけるインラインシリコン堆積
(51)【国際特許分類】
C23G 3/00 20060101AFI20240402BHJP
C23G 1/08 20060101ALN20240402BHJP
【FI】
C23G3/00 B
C23G1/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564604
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(85)【翻訳文提出日】2023-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2022058240
(87)【国際公開番号】W WO2022223248
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515153152
【氏名又は名称】プライメタルズ・テクノロジーズ・オーストリア・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・コフラー
(72)【発明者】
【氏名】アロイス・シュタッドルバウアー
(72)【発明者】
【氏名】ゲルハルト・フリットゥム
【テーマコード(参考)】
4K053
【Fターム(参考)】
4K053PA02
4K053PA12
4K053QA01
4K053RA07
4K053RA15
4K053RA19
4K053SA07
4K053TA16
4K053XA24
4K053XA41
4K053YA06
4K053YA18
(57)【要約】
本発明は、酸洗いプラントにおいて酸洗い流体から不溶解材料、特に不溶解シリコン化合物を堆積するためのデバイスおよび方法に関する。酸洗いプラントの酸洗い回路は、金属ストリップを酸洗いするための酸洗いタンクと、酸洗いタンクと回路タンクとの間の戻りラインと、酸洗いタンクからの酸洗い流体の主体積流を循環させるための循環ポンプと、回路タンクと酸洗いタンクとの間の圧力ライン内に配置された加熱デバイスと、を有する。本発明によるデバイスは、少なくとも1つの凝集剤を主体積流に導入することができる凝集デバイスと、主体積流から直接不溶解材料を沈降させるための、回路タンク内に配置され、好ましくは傾斜した浄化デバイスとして設計される堆積デバイスと、を備える。たとえばシリコン含有鋼ストリップ(電気鋼ストリップ)を酸洗いするとき、2つ以上の混合ゾーン容器を使用して、少なくとも2段の凝集を実施することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの酸洗い回路(8)を有する酸洗いプラント(1)内で酸洗い流体(2)から不溶解シリコン化合物を堆積するためのデバイスであって、前記酸洗い回路(8)は、
金属ストリップ(6)を酸洗いするための前記酸洗いプラント(1)の酸洗いタンク(11、12、13)と、
前記酸洗いタンク(11、12、13)と回路タンク(20)との間の戻りライン(3)と、
前記回路タンク(20)と前記酸洗いタンク(11、12、13)との間の圧力ライン(4)と、
酸洗い流体(2)の主体積流(7)を循環させるための、毎時500立方メートル~600立方メートルの最大ポンプ容量を有する循環ポンプ(22)と、
前記主体積流(7)をプロセス温度(T
p)まで加熱するための、前記圧力ライン(4)内に配置された加熱デバイス(24)と、を備え、
前記デバイスが、
少なくとも1つの凝集助剤を前記主体積流(7)に導入するための1つまたは複数の混合ゾーン容器(32、32’、32’’)を有する凝集デバイス(31)と、
前記主体積流(7)から直接不溶解シリコン化合物を堆積するための、前記回路タンク(20)内に配置された堆積デバイス(30)と、を有する、デバイス。
【請求項2】
前記回路タンク(20)が、前記酸洗い回路(8)内の前記酸洗いタンク(11、12、13)より2倍~3倍大きい体積を有し、前記堆積デバイス(30)が、少なくとも鎮圧ゾーン(35)と、沈降ゾーン(36)と、受容ゾーン(39)と、を備え、第1のオーバーフロー(38)が、前記鎮圧ゾーン(35)と前記沈降ゾーン(36)との間に配置され、第2のオーバーフロー(38’)が、前記沈降ゾーン(36)と前記受容ゾーン(39)との間に配置される、請求項1に記載のデバイス(1)。
【請求項3】
前記凝集デバイス(31)が、少なくとも2つの異なる凝集助剤を前記主体積流(7)に追加するための少なくとも2つの混合ゾーン容器(32、32’、32’’)を有する、請求項1または2に記載のデバイス(1)。
【請求項4】
前記混合ゾーン容器すべての体積の合計が、8立方メートル~25立方メートルである、請求項1~3のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項5】
前記堆積デバイス(30)が、相互に平行な多数の流れチャネル(44)を備えるラメラ分離デバイス(37)として構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項6】
前記流れチャネル(44)が、鉛直に対して角度(α)で傾斜され、少なくとも90℃の温度に永久的に耐える耐酸性および耐熱性の材料からなる、請求項5に記載のデバイス(1)。
【請求項7】
前記角度(α)が、15°~60°である、請求項6に記載のデバイス(1)。
【請求項8】
隣り合う流れチャネル(44)間の垂直距離(d)が、少なくとも50mmである、請求項6または7に記載のデバイス(1)。
【請求項9】
酸洗いプラント(1)の少なくとも1つの酸洗い回路(8)内で酸洗い流体(2)から不溶解シリコン化合物を堆積するための方法であって、前記酸洗い回路(8)は、
金属ストリップ(6)を酸洗いするための前記酸洗いプラント(1)の酸洗いタンク(11、12、13)と、
前記酸洗いタンク(11、12、13)と回路タンク(20)との間の戻りライン(3)と、
前記回路タンク(20)と前記酸洗いタンク(11、12、13)との間の圧力ライン(4)と、
循環ポンプ(22)と、
前記圧力ライン(4)内に配置された加熱デバイス(24)と、を備え、
酸洗い流体(2)の毎時500立方メートル~600立方メートルの主体積流(7)が、前記循環ポンプ(22)によって、前記酸洗いタンク(11、12、13)から前記戻りライン(3)を通って前記回路タンク(20)内に、そして前記圧力ライン(4)を介して前記酸洗いタンク(11、12、13)内に循環されて戻され、
少なくとも1つの凝集助剤が、1つまたは複数の混合ゾーン容器(32、32’、32’’)を有する凝集デバイス(31)によって前記主体積流(7)内に導入され、
不溶解シリコン化合物が、前記回路タンク(20)内に配置された堆積デバイス(30)によって前記主体積流(7)から直接堆積され、
前記主体積流(7)が、前記加熱デバイス(24)によってプロセス温度(T
p)まで加熱される、方法。
【請求項10】
第1のタイプの金属ストリップ(6)を第1の混合ゾーン容器(32)によって酸洗いするとき、第1の擬集助剤が前記主体積流(7)に導入され、
第2のタイプの金属ストリップ(6)を第2および/または第3の混合ゾーン容器(32’、32’’)のみによって酸洗いするとき、少なくとも第2の擬集助剤が前記主体積流(7)に導入される、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸洗いプラントにおいて酸洗い回路内で不溶解シリコン化合物を堆積するためのデバイスおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸洗いプラントでは、熱間圧延プロセス中に形成されたスケールは、金属ストリップのさらなる処理を可能にするために、圧延された金属ストリップ、たとえば鋼ストリップの表面から除去される。この目的のために、スケール層は、適切な酸洗い流体、たとえば塩酸(HCL)または硫酸(H2SO4)を含有する酸洗い溶液によって浸食される。従来的には、スケール付き金属ストリップは、複数の酸洗い容器を連続的に通過する。スケール層は(主に酸化鉄からなる鋼ストリップの場合)、酸洗い流体内の溶液に入り、または不溶性成分が、いわゆる酸洗いスラッジとして沈殿する。酸洗いスラッジはまた、付随する元素(たとえば炭素)の化学化合物、およびさらには元の金属ストリップの組成による合金元素も含む。酸洗い後、依然として付着する酸洗い流体の残留物は、通常、洗浄流体で洗浄することによって、スケール除去された金属ストリップからクリーニングされ、ストリップは、その後乾燥される。
【0003】
消費された酸洗い溶液(以下では酸洗い液と称される)は、別個の再生プラントにおいて処理される。それによって得られた酸化鉄は、化学産業において価値のある化学的原材料を構成し、そのため、そのような酸化物をできる限り高純度で分離することが望ましい。
【0004】
たとえば、高いシリコン含量を有する(すなわち2重量パーセントを上回るシリコン含量を有する)鋼ストリップが、塩酸ベースの酸洗いプラントにおいて酸洗いされる場合、ゲル様のケイ酸塩スラッジ(シリカ)の形態の不溶性コロイドが、酸洗い溶液内に形成され、これは、多大な費用をかけなければ分離することはできない。高いシリコン含量を有する鋼ストリップは、特に、いわゆる電気鋼ストリップを含む。ケイ酸塩スラッジは、酸洗いプラントのチューブおよび他のサブセクション内に蓄積し、繰り返しの目詰まりまたは妨害(いわゆるファウリング)を招き、最悪の場合、プラントの構成要素全体の故障を伴う。これは、たとえば、Al、Cなどの鋼ストリップの他の合金成分にもあてはまり、再生プラントにも影響を及ぼす。
【0005】
酸洗いプラントの性能を維持するために、これらの蓄積物を定期的な時間間隔で除去する必要があり、これは、それに対応するメンテナンス費用に関連付けられる。不溶性残留物を除去するための慣習的な方法は、一方では、アルカリ液(たとえば水酸化ナトリウム-NaOH)によって関連するサブセクションを洗い流すことであり、他方では、これらの残留物を手動で機械的に除去することである。いずれの方法も、酸洗いプラントの可用性の低減を意味する。さらに、プロセスと無関係な物質とするアルカリ液によって洗い流すために、特別な高価な装置が必要とされ、またはこの洗浄溶液を処理または廃棄するための関連する概念が必要とされる。
【0006】
蓄積物を排除するためのさらなる方法は、精密ろ過による分離である。プロセス条件(酸洗い流体の高いpHまたは高温)により、これに使用される膜の耐用年数は短く、そのため、そのような方法は不経済である。さらに、このタイプのろ過は、使用されるマイクロフィルタが非常に小さい孔構造を有しているため、多量の体積流には限定的にしか適さない。たとえば、特許文献1は、望ましくない付随する元素、特にシリコン化合物(シリカ)の含量を低減させるための方法、つまり、結果として生じた酸洗い流体を沈殿容器内で下方に鎮圧し、その後10℃~55℃の温度範囲内でクロスフローマイクロフィルタを利用することによってクリーニングする方法を開示している。酸洗い流体からの望ましくないコロイドの効果的な堆積は、説明される方法において可能であるが、鋼ストリップ用の慣習的な酸洗いプラントで前述のマイクロフィルタを使用することに加えて、特許文献1の発明は、特に電気鋼ストリップが最大90℃の比較的高い温度範囲内で酸洗いされるので、クリーニングされる酸洗い流体の冷却も必要とする。
【0007】
酸洗いプラントにおいて酸洗い流体からシリコン化合物を堆積するための方法が、特許文献2から知られている。この場合、毎時3立方メートル~15立方メートル程度の酸洗い流体の体積流が、熱交換器によって60℃まで冷却され、その後、第1の凝集助剤が追加され、混合タンク内で酸洗い流体と共に撹拌される。次いで、第2の凝集助剤が追加され、その後、酸洗い流体は、引き続いて円錐状沈殿タンク内に移送される。沈殿しているシリコン化合物は、沈殿タンクの底部から吸引され、浄化された酸洗い流体は、オーバーフロー堰を介してすくい取られ、酸洗いプラント内に搬送されて戻される。
【0008】
複数の酸洗いタンクを備える酸洗いプラントにおいて酸洗い流体からシリコン化合物を堆積することが、特許文献3から知られている。酸洗い流体の主体積流が、酸洗いタンクとそれぞれの回路タンクとの間で、または直接酸洗いタンク間でそれぞれ循環される。回路タンクは、酸洗い流体の再生のための共通のデバイスに接続される。再生された酸洗い流体は、関連する回路タンクから、それぞれの熱交換器を介して酸洗いタンク内に戻される。さらに、少なくとも1つの酸洗いタンクまたは回路タンクの後に二次回路が続き、この回路によって、酸洗い流体は、関連する酸洗いまたは回路タンクから、シリコン化合物用の堆積デバイスを介して酸洗いまたは回路タンク内に運ばれて戻される。堆積デバイス内には、二次回路内で運ばれた酸洗い流体からのシリコン化合物が、凝集デバイスおよび沈降タンクを利用することによって堆積される。
【0009】
凝集助剤を追加せずに、鉄-シリコン合金のストリップの化学的処理のための回路内で運ばれる処理溶液から無晶形の部分的に溶解したシリコンを堆積することが、特許文献4から知られている。この場合、シリコンを含有する処理溶液の一部が、引き出され、受容容器に搬送され、この中で溶液は、圧力駆動式膜ろ過にかけられる。この場合、シリコンから実質的に解放されたろ液は、処理流体まで搬送されて戻され、その一方でシリコン濃縮溶液は、受容容器内に搬送されて戻され、高シリコン濃縮溶液は、受容容器から引き出され、破棄される。
【0010】
従来技術は、さらに、複数の酸洗いタンクを有する酸洗いプラントを開示しており、酸洗いされる金属ストリップは、これらの酸洗いタンクを連続的に通過し、各酸洗いタンクには、酸洗い流体が内部で加熱および循環される、それ自体の酸洗い回路が割り当てられる。溶解および不溶解のスケール化合物の濃度は、ストリップが通過する第1の酸洗いタンク内で最大であり、その濃度は、後続の酸洗いタンク内では相対的に低下する。酸洗い回路の総循環体積流は、たとえば、毎時300立方メートル~500立方メートルであり、以下では、酸洗い回路の主体積流と称される。酸洗い回路は、少なくとも、関連する酸洗いタンクと、回路タンクと、循環ポンプと、加熱デバイスと、を備え、酸洗いタンクと回路タンクとの間を延びる配管は、関連する酸洗いタンクの戻りラインと称される。回路タンクは、割り当てられた酸洗いタンクの体積より大きい(通常は酸洗いタンクの体積の約2倍である)体積を有し、酸洗い動作中、いわゆる受容容器として使用され、この受容容器は、部分的にのみ、たとえば約30%~50%だけ酸洗い流体によって充填され、その体積は、以下では、回路タンクの受容体積とも称される。この受容体積は、たとえば、割り当てられた酸洗いタンク内の充填レベルの変動を補償することができるように、バッファとして機能する。さらに、回路タンクは、緊急排出中、すなわち、酸洗い流体が、たとえば動作中断の発生時に酸洗いタンクから迅速に放出しなければならないとき、割り当てられた酸洗いタンクからの酸洗い流体を受容するために使用される。
【0011】
酸洗い回路における酸洗い流体のクリーニングのために、いわゆるインライン動作といわゆるオフライン動作との間で、区別がさらになされる。インライン動作の場合、少なくとも1つの部分流が、酸洗い回路の主体積流から取られ、不溶解物質、たとえば不溶解シリコン化合物を分離するためのデバイスに搬送される。分離後、クリーニングされた酸洗い流体は、酸洗い回路内に搬送されて戻される。他方で、オフライン動作中、酸洗い流体の一部は、不溶解物質を分離するためのデバイスに最初に搬送され、不溶解物質がクリーニングされた酸洗い流体は、その後、溶解成分(たとえば塩化鉄化合物)を分離するための別の再生プラントに搬送される。これに対応して、インライン動作中、酸洗いプラント自体のプラント構成要素内の不溶解物質の蓄積は、少なくとも部分的に(主体積流に対する部分流の比に従って)防止され、その一方でオフライン動作中、再生プラント内の蓄積は完全に防止され、再生プラントから得られる再使用可能な材料の品質は、改善される。インラインおよびオフライン動作は、基本的に、互いに組み合わせられてもよい。
【0012】
酸洗いタンク内のプロセス条件は、循環される酸洗い流体の主体積流およびそのプロセス温度Tpによって実質的に決定される。溶解スケール成分の堆積に加えて、酸洗い流体の循環は、それぞれの酸洗いタンク内に、酸洗いプロセスに必要な酸洗い流体の流れを発生させる。さらに、それぞれの酸洗いタンク内での酸洗い流体の熱損失は、酸洗い回路の加熱デバイスによって補償される。
【0013】
特に、比較的多いシリコン含量を有する前述の鋼ストリップの酸洗いのために、酸洗い中に酸洗い流体から発生した不溶解物質(たとえば二酸化シリコン)を堆積するための対応する堆積デバイスを有する酸洗いプラントが、従来技術からさらに知られている。これらのインライン堆積デバイスは、インライン動作中に酸洗い流体から不溶性成分を分離するが、これらは、酸洗い回路内の全体循環流の部分流からのものしか堆積せず、部分流を冷却するためのデバイスも必要である。部分流のクリーニング後、かつ酸洗い回路内に戻す前に、(酸洗いプロセス中の全体的な熱損失に加えて)部分流から除去された熱量を再補給する必要があり、これにはエネルギー消費の増加を伴う。
【0014】
さらに、浄化される酸洗い流体、特に、高シリコン含量を有する電気鋼ストリップ用の塩酸酸洗いプラントからの酸洗い流体を、酸洗いプラントの酸受容容器から最初に事前浄化容器に連続的に搬送し、その内部での沈降によって懸濁物質の大部分を堆積することが、特許文献5から知られている。部分的に浄化された酸洗い流体のいくらかは、その後、事前浄化容器のオーバーフロー領域から酸再生プラントまで搬送され、その一方で酸-スラッジ混合物は、事前浄化容器の底部領域から周期的に引き出され、凝集剤を利用することによってクリーニング処理にかけられる。開示されている(毎時数立方メートル程度の)体積流は、従来の酸洗い回路の体積流よりかなり少ないため、開示されている発明は、酸洗いプラントの酸洗い回路内で主体積流を浄化するのに適していない。さらに、この発明に必要とされる追加の容器および配管は、大きなスペースの要件を伴う。
【0015】
インライン動作中に酸洗い流体からシリコン化合物を堆積するための、従来技術から知られているそのような方法およびデバイスに関わる欠点は、一方では、不溶解物質が、主体積流の一部からしかクリーニングされないことである。したがって、高いシリコン含量を有する鋼ストリップの酸洗いの場合、高いシリコン含量を有さないストリップのみが酸洗いされる動作と比較してクリーニング費用がそれに伴って増加するため、そのような酸洗いプラントの可用性は、依然として大幅に低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】オーストリア国特許第411575号明細書
【特許文献2】中国特許第1238562号明細書
【特許文献3】特開2005200697号公報
【特許文献4】独国特許第4116353号明細書
【特許文献5】独国特許第4242619号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明の目的は、前述のシステムの欠点を克服し、少しのスペース要件の追加だけで酸洗いプラントの可用性を大幅に改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本目的は、請求項1の特徴を有するデバイスおよび請求項9の特徴を有する方法によって、本発明によって達成される。
【0019】
従属請求項は、本発明の有利な構成に関する。
【0020】
少なくとも1つの酸洗い回路を有する酸洗いプラントにおいて酸洗い流体から不溶解シリコン化合物を堆積するための本発明によるデバイスは、凝集デバイスと堆積デバイスとを有する。酸洗い回路は、金属ストリップを酸洗いするための酸洗いプラントの酸洗いタンクと、酸洗いタンクと回路タンクとの間の戻りラインと、回路タンクと酸洗いタンクとの間の圧力ラインと、を備える。酸洗い回路は、酸洗い流体の主体積流を酸洗いタンクから戻りラインを通して回路タンク内に、そして圧力ラインを介して酸洗いタンク内に循環させて戻すための、毎時500立方メートル~600立方メートルの最大ポンプ容量を有する循環ポンプと、圧力ラインを通過する主体積流を、最大90℃の範囲内にある酸洗いタンク内に広がるプロセス温度Tpまで加熱するための、圧力ライン内に配置された加熱デバイスと、をさらに備える。
【0021】
「最大ポンプ容量」という表現は、循環ポンプが、最大の作動パフォーマンスで連続動作において毎時出力し、または循環させることができる酸洗い流体の量を指す。しかし、必要であれば、循環ポンプは、より低い作動パフォーマンスで動作されてもよく、それにより、それに対応した少ない量の酸洗い流体が、ポンプによって毎時出力される。最大ポンプ容量を使用することにより、酸洗い回路内に存在する酸洗い流体の総量は、毎時複数回、たとえば毎時5回~10回循環され、対応する回数だけ堆積デバイスを通過し、それによってクリーニングされてもよい。この場合に酸洗い回路内に存在する酸洗い流体の総量は、酸洗いタンク内、凝集デバイス内、堆積デバイス内、戻りライン内、および圧力ライン内の酸洗い流体からなる。
【0022】
凝集デバイスは、好ましくは、戻りライン内に配置され、少なくとも1つの凝集助剤を主体積流内に導入するための1つまたは複数の混合ゾーン容器を備える。代替的には、凝集デバイスはまた、酸洗いタンク内または圧力ライン内に配置されてもよい。導入される少なくとも1つの凝集助剤は、この場合、酸洗い流体のプロセス温度Tpに合わせられる。堆積デバイスは、酸洗い回路の回路タンク内に配置され、回路タンクを通って運ばれる主体積流から直接不溶解シリコン化合物を堆積するように構成される。
【0023】
本発明によるデバイスにより、不溶解シリコン化合物のための堆積プロセスが主体積流全体にわたって及ぶインライン動作を実施することが可能であり、それにより、酸洗いプロセスのための酸洗い流体は、結果として、一貫した品質で利用可能にされる。さらに、従来技術から知られている方法と比較して、クリーニングされる酸洗い流体の別個の冷却および再加熱が回避されるため、エネルギーを削減することができ、また、堆積デバイスの回路タンク内への一体化により、不溶解物質の堆積中、酸洗い流体のより小さい熱損失のみが起こる。
【0024】
好ましくは、回路タンクは、関連する酸洗い回路内の酸洗いタンクより複数倍、たとえば2倍~3倍大きい体積を有し、堆積デバイスは、少なくとも鎮圧ゾーンと、沈降ゾーンと、受容ゾーンと、を備える。この場合、第1のオーバーフローが、鎮圧ゾーンと沈降ゾーンとの間に配置され、第2のオーバーフローが、沈降ゾーンと受容ゾーンとの間に配置される。
【0025】
関連する酸洗い回路内の酸洗いタンクの体積より2倍~3倍の大きさである回路タンクの前述の体積により、堆積デバイスを回路タンク内に直接一体化することが可能になり、それにより、従来の回路タンクの外側に配置される堆積デバイスと比べて、追加の配管の必要性が回避される。
【0026】
たとえば、酸洗いタンクは、30立方メートル~40立方メートルの体積を有し、本発明による回路タンクは、75立方メートル~100立方メートルの体積を有する。この場合、沈降ゾーンは、酸洗いプラントの正常動作中に回路タンクを通過する酸洗い流体の主体積流全体が、これからクリーニングされる不溶解物質、特に不溶解シリコン化合物の90%超を有するほどの大きさになるように寸法設定されてもよく、それにより、酸洗いプラントに必要なメンテナンス間隔の時間は、大幅に増大され得る。
【0027】
鎮圧ゾーン内では、酸洗い流体が回路タンクに流入したときに作りだされた外乱が流れ去ることができ、それにより、後続の沈降ゾーンへの酸洗い流体の移送は、鎮圧された流れの形態で行われ、これは、第1のオーバーフローによってさらに支援される。沈降ゾーンと受容ゾーンとの間の第2のオーバーフローは、沈降ゾーンから後続に配置された受容ゾーン内への酸洗いスラッジの移送を防止する。
【0028】
本発明によるデバイスの別の好ましい構成によれば、凝集デバイスは、少なくとも2つの異なる凝集助剤を酸洗い回路の主体積流内に追加するための少なくとも2つの混合ゾーン容器を有する。このようにして、主体積流に導入される凝集助剤のタイプおよび濃度はそれぞれ、酸洗いプラントにおいて現在酸洗いされている金属ストリップの化学的組成に適合されてもよい。この目的のために、酸洗い流体内のスケール成分の組成および濃度は、たとえば、金属ストリップおよび酸洗い流体の化学的組成を考慮する酸洗いモデルを利用して実施されてもよい。
【0029】
たとえば、主に炭素を含有する金属ストリップの酸洗い中に複数の混合ゾーン容器を利用することにより、第1の凝集助剤を第1の混合ゾーン容器内に加えるだけでよく、他の混合ゾーン容器内への追加はない。別の場合、たとえばシリコンを含有する金属ストリップが関連する酸洗いプラントにおいて酸洗いされるとき、第1の混合ゾーン容器内への第1の凝集助剤の追加は省かれてもよく、その一方で、1段または多段凝集が他の混合ゾーン容器の1つまたは複数によって実施される。
【0030】
本発明によるデバイスの1つの好ましい構成では、混合ゾーン容器すべての体積の合計は、8立方メートル~25立方メートルである。このようにして、通過する酸洗い流体の残留時間は、数分(たとえば1分~3分)であり、酸洗い流体内の不溶解シリコン化合物を互いに凝固させてより大きい、またはより重い粒子を形成することが可能になり、この粒子は、沈降ゾーン内により迅速に沈殿する。
【0031】
好ましくは、堆積デバイスは、ラメラ分離デバイスとして構成される。ラメラ分離デバイスは、酸洗い流体を通過させる相互に平行な複数の流れチャネルを備え、不溶解物質、たとえば不溶解シリコン化合物は、沈降プロセスにおける重力効果により、酸洗い流体から堆積される。このため、ラメラ分離デバイスは、可動部を備えず、その結果、比較的安価なメンテナンスコストで長い作動時間を有する。
【0032】
好ましくは、流れチャネルは、鉛直に対して角度αで傾斜され、少なくとも90℃の温度に永久的に耐える耐酸性および耐熱性の材料からなる。角度αは、好ましくは、15°~60°の範囲、好ましくは25°~35°の範囲内にある。好ましくは、隣り合う流れチャネル間の垂直距離d(これは、隣り合う流れチャネルの長手方向に対して垂直である断面内の断面積の幾何中心間の距離を意味する)は、少なくとも50mm、好ましくは少なくとも75mmである。1つの特に好ましい構成では、機械的安定性を増大させるために、ラメラ分離デバイスは、平行に延びる流れチャネルのハニカム配置として構成される。
【0033】
ラメラ分離デバイスは、従来技術から知られており、たとえば、熱可塑性物質からなり、一方では、たとえば3D印刷方法を利用して経済的に製造されてもよく、任意の幾何学的要求事項に適合されてもよい。他方では、前述の寸法を有するラメラ分離デバイスは、わずかなコストで機械的により一層頑強であり、それと同時に、たとえば従来技術で使用されているマイクロフィルタよりも、酸洗い流体からの不溶解物質による妨害を受けにくい。
【0034】
本発明による方法の利点および技術的効果は、本発明によるデバイスのものに対応する。酸洗いプラントの少なくとも1つの酸洗い回路内で酸洗い流体から不溶解シリコン化合物を堆積するための本発明による方法において、酸洗い回路は、
- 金属ストリップを酸洗いするための酸洗いプラントの酸洗いタンクと、
- 酸洗いタンクと回路タンクとの間の戻りラインと、
- 回路タンクと酸洗いタンクとの間の圧力ラインと、
- 循環ポンプと、
- 圧力ライン内に配置された加熱デバイスと、を備え、
- 酸洗い流体の毎時500立方メートル~600立方メートルの主体積流が、循環ポンプによって、酸洗いタンクから戻りラインを通って回路タンク内に、そして、圧力ラインを介して酸洗いタンク内に循環されて戻され、
- 少なくとも1つの凝集助剤が、1つまたは複数の混合ゾーン容器を有する凝集デバイスによって主体積流内に導入され、
- 不溶解シリコン化合物が、回路タンク内に配置された堆積デバイスによって主体積流から直接堆積され、
- 主体積流は、加熱デバイスによってプロセス温度Tpまで加熱される。
【0035】
酸洗い流体から不溶解シリコン化合物を堆積するための本発明による方法は、好ましくは、関連する酸洗いプラントにおいて金属ストリップの酸洗い中に実施される。しかし、これに対する代替策として、本発明による方法は、たとえば、対応する不溶解酸洗い残留物を、高いシリコン含量を有するいくつかの金属ストリップの酸洗い後に酸洗い流体から特に完全にクリーニングするために、金属ストリップが酸洗いプラントにおいて酸洗いされていない時間に使用されてもよい。この場合も同様に、酸洗い回路の主体積流は、循環ポンプを利用して循環される。
【0036】
本発明による方法の1つの構成では、
- 第1のタイプの金属ストリップを第1の混合ゾーン容器によって酸洗いするとき、第1の擬集助剤が主体積流に導入され、
- 第2のタイプの金属ストリップを第2のおよび/または第3の混合ゾーン容器のみによって酸洗いするとき、少なくとも第2の擬集助剤が主体積流に導入される。
【0037】
換言すれば、第1のタイプの金属ストリップを酸洗いするとき、第1の凝集助剤が第1の混合ゾーン容器によって主体積流に導入され、その一方で、第2および第3の混合ゾーン容器内へのさらなる凝集助剤の追加は省かれ、それにより、主体積流は、第2および第3の混合ゾーン容器を受動的に流れ抜けるだけである。第2のタイプ、すなわち第1とは異なるタイプの金属ストリップを酸洗いするとき、第1の混合ゾーン容器内への凝集助剤の追加は省かれ、その一方で、第2の凝集助剤だけが第2の混合ゾーン容器内に追加されるか、または第2および第3の凝集助剤が、第2および第3の両方の混合ゾーン容器内の主体積流内に追加される。
【0038】
第1のタイプの金属ストリップは、たとえば、特定の炭素含量を有する鋼ストリップを含んでもよく、その一方で第2のタイプは、高シリコン含量(および/または鋼ストリップの他の不溶性合金元素)を有する鋼ストリップを含んでもよい。
【0039】
本発明の上記で説明した特性、特徴、および利点、ならびにこれらが達成される方法は、図に関連してより詳細に説明する例示的な実施形態の以下の説明に関連してより明確になり、より理解しやすくなる。同じである詳細は、すべての図において同じ参照記号によってそれぞれ示される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】酸洗いプラントの、従来技術から知られている簡単な酸洗い回路を示す概略図である。
【
図2】酸洗いプラントの酸洗い回路の部分流における、従来技術から知られているシリコン堆積を示す概略図である。
【
図3】回路タンク内に堆積デバイスを備える、本発明によるデバイスを有する酸洗い回路を示す例示的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、3つの酸洗いタンク11、12、および13を備える酸洗いプラント1を概略的に示し、これらの酸洗いタンクは、酸洗い流体2によってそれぞれ充填され、酸洗いされる金属ストリップ6は、これら酸洗いタンクを連続的に(左から右に矢印によって
図1に表す)製造方向Pに通過する。各酸洗いタンク11、12、および13には、固有の酸洗い回路8が割り当てられ、第1の酸洗いタンク11の酸洗い回路8のみが、
図1に表される。以下では、2つのサブセクション間の接続矢印は、接続配管をそれぞれ表す。酸洗いタンク11それ自体に加えて、表す酸洗い回路8は、回路タンク20と、循環ポンプ22と、加熱デバイス24と、を備え、これらのサブセクションは、配管を介して直列に互いに接続される。酸洗いタンク11と回路タンク20との間を延びるラインは、この場合、戻りライン3と称され、回路タンク20と酸洗いタンク11との間を延びるラインは、圧力ライン4と称される。
【0042】
酸洗いプラント1内に使用される酸洗い流体2は、個々の酸洗いタンク11、12、および13を通って金属ストリップ6の製造方向Pとは反対に運ばれ、新たな酸洗い流体2は、最後の酸洗いタンク13内に導入され、(個々の酸洗いタンク11、12、および13間の湾曲矢印によって
図1に表すように)次々と、製造方向Pとは反対に第1の酸洗いタンク11まで運ばれる。この場合、溶解物質(たとえば鉄Fe
2+)および不溶解物質(たとえば二酸化シリコン)の濃度は、酸洗い流体2内で増大する。第1の酸洗いタンク11から、酸洗い流体2は最初に、戻りライン3を介して、いわゆる主体積流7の形態で回路タンク20内に抽出され、次いで、その大部分が、循環ポンプ22によって加熱デバイス24および圧力ライン4を介して酸洗いタンク11に搬送されて戻される。部分流5’が、圧力ライン4から分岐され、再生プラント26内の処理まで搬送される。引き出された部分流5’に対応する、クリーニングされ、酸洗いタンク11、12、または13内に広がる最大90℃の従来のプロセス温度T
pまで加熱された、再処理された酸洗い流体2の部分流5が、最後の酸洗いタンク13に搬送されて戻される。
【0043】
酸洗いタンク11、12、または13の体積はそれぞれ、たとえば、30立方メートル~40立方メートルであり、それぞれの主体積流7は、たとえば毎時最大500立方メートルであり、それぞれの酸洗い回路の配管は合計で、約10立方メートルの追加の体積を有する。再生プラント26に分岐された部分流5’は、たとえば、毎時約15立方メートルである。正常な酸洗い動作中、回路タンク20は、酸洗い流体によって約1/3充填される。緊急排出の発生時に酸洗いタンクおよび関連する配管から放出された酸洗い流体を収集することができるように、関連する回路タンクは、たとえば、約70立方メートルの体積を有する。
【0044】
図2は、(2重量パーセントを上回る)高いシリコン含量を含有する金属ストリップ6を酸洗いするための、従来技術から知られている酸洗いプラント1を示す。
図1に表す実施形態に加えて、
図2による酸洗いプラント1では、酸洗い流体2の第1の部分流5’は、インラインまたはオフライン動作中に、また、酸洗い流体2の第2の部分流5’’は、オフライン動作中に圧力ライン4から分岐され、そして、冷却デバイス27または27’を介して、不溶解シリコン化合物を分離するための堆積デバイス28または28’それぞれに、それぞれ搬送される。不溶解シリコン化合物がクリーニングされた部分流5’の酸洗い流体2は、オフライン動作中に弁29を介して再生プラント26内にさらに運ばれるか、またはインライン動作中に回路タンク20内に搬送されて戻される。
【0045】
図3は、凝集デバイス31と、酸洗い流体2から不溶解物質、好ましくはシリコン化合物を堆積するための、本発明による堆積デバイス30を備える回路タンク20と、を有する、酸洗いタンク11の酸洗い回路8を例として概略的に示す。3つの酸洗いタンク11、12、および13を備える酸洗いプラント1が例として表されているが、本発明はまた、3つより多いまたは少ない酸洗いタンクを有する酸洗いプラントに使用されてもよい。
【0046】
図3によれば、堆積デバイス30は、第1の酸洗いタンク11の回路タンク20内に配置されるが、これは、その内部の酸洗い流体2が、酸洗い中に形成された最高濃度のスケール化合物を有し、したがって、その堆積、特に不溶解シリコン化合物の堆積の必要性がこの酸洗い回路内で最大となるためである。さらに別の酸洗いタンク12および13の酸洗い回路は、その不溶解物質の濃度がこれより低いため、
図1による従来の酸洗い回路として構成されてもよい(これは、
図3には表さず)。しかし、酸洗いプラント1の酸洗い回路のいくつか(たとえば最初の2つまたは3つ)またはすべてを、
図3による堆積デバイス30を有して構成することも可能である。
【0047】
図3では、金属ストリップ6は、酸洗い流体2によってそれぞれ充填された3つの酸洗いタンク11、12、および13を製造方向Pに連続的に通過する。酸洗いタンク11、12、および13それぞれは、約30立方メートル~40立方メートルの体積を有し、酸洗い回路8の接続配管は、約10立方メートルの合計体積を有する。第1の酸洗いタンク11から、毎時約500立方メートルを含む酸洗い流体2の主体積流7が、戻りライン3を介して酸洗いタンク11の外に運ばれ、その後、戻りライン3内に配置された凝集デバイス31の3つの混合ゾーン容器32、32’および32’’を連続的に通過する。
【0048】
混合ゾーン容器32、32’および32’’内では、対応する凝集助剤の調製が、対応する施与デバイス33、33’および33’’を利用してそれぞれ実施される。たとえば、それぞれの凝集助剤は、対応する貯蔵容器34、34’または34’’からそれぞれの施与デバイス33、33’および33’’に固体の形態で導入され、液体(たとえば水)中に溶解され、それにより、主体積流内の不溶解物質を後続の沈降ゾーン36内に沈降させることを促進するために、割り当てられた混合ゾーン容器32、32’および32’’に必要とされる濃度で、凝集助剤を主体積流7内に提供および導入することができる。代替的に、それぞれの凝集助剤は、それぞれの貯蔵容器34、34’または34’’内に事前に濃縮液体の形態で存在し、それぞれの施与デバイス33、33’および33’’内で所望の濃度に希釈されてもよい。別の代替策として、それぞれの凝集助剤はまた、対応する貯蔵容器34、34’または34’’から、それぞれの施与デバイス33、33’または33’’によって直接それぞれの混合ゾーン容器32、32’または32’’内に固体の形態で導入されてもよく、この場合、施与デバイス33、33’または33’’は、投与デバイスとして構成される。凝集助剤が混合ゾーン容器32、32’または32’’の1つによって主体積流7内に追加されない場合、主体積流7は、対応する混合ゾーン容器32、32’または32’’を受動的に流れ抜けるのみである。
【0049】
個々の混合ゾーン容器32、32’および32’’間の酸洗い流体2の輸送は、この場合、自然勾配によって、またはポンプ(
図3には表さず)を利用して行われてもよい。
図3による例示的な実施形態では、最大3つの異なる凝集助剤が、それぞれ必要とされる濃度で酸洗い回路8の主体積流7に導入されてもよい。凝集助剤は、酸洗い流体2内の不溶解物質、たとえば不溶解シリコン化合物の凝固を促進してより大きい粒子43を形成し、この粒子は、そのサイズにより、後続の堆積デバイス30を利用してより容易に堆積することができる。
【0050】
混合ゾーン容器32、32’および32’’の後、酸洗い回路8の主体積流7は、戻りライン3から回路タンク20内に搬送され、回路タンクは、本発明により、鎮圧ゾーン35と、沈降ゾーン36と、受容ゾーン39と、を備え、75立方メートル~100立方メートルの総体積を有する。鎮圧ゾーン35は、主体積流7を鎮圧し、外乱を最小限にするために使用される。第1のオーバーフロー38により、鎮圧された酸洗い流体2は沈降ゾーン36内に流れ、沈降ゾーン内には、ラメラ分離デバイス37として構成された堆積デバイス30が、配置される。
【0051】
ラメラ分離デバイス37は、平行に延びる複数の流れチャネル44を有し、これらのチャネルは、互いの隣に少なくとも50mm~70mmの垂直距離dを離して配置され、鉛直に対して角度αで傾斜される。流れチャネル内では、粒子43を形成するように凝固された酸洗い流体2の不溶解物質は、沈降プロセスにおける重力効果により、沈降ゾーン36の底部領域の方向に沈殿する。流れチャネル44の下側端部は、回路タンク20の底部の高さから少なくとも200mmの高さhで鉛直方向に分離される。通過する酸洗い流体2の(斜め上方向を指す矢印によって
図3で表す)流れ方向を形成する流れチャネル44は、互いに平行に配置されたチューブまたは中空プリズムから形成されてもよく、これらはそれぞれ、流れ方向に対して垂直方向の平面内に閉じた境界部を有し、それにより、ラメラ分離デバイス37は、全体的にハニカム構造(
図3には見えない)を有する。
【0052】
酸洗い流体2がラメラ分離デバイス37を通って流れるときに沈降ゾーン36または回路タンク20の底部領域内に集まった酸洗いスラッジは、そこから抽出され、抽出開口部40を通ってろ過デバイス41まで搬送される。回路タンク20の底部は、好ましくは、抽出開口部40への沈降物の自動輸送が(たとえば、底部面内の対応する面取部または丸みによって)確実にされるように構成される(たとえば、回路タンク20は、丸みのある底部と、たとえば4メートル~4.5メートルの直径と、を有する横臥型シリンダとして構成されてもよい)。代替的に、沈降物は、適切な搬送デバイス(たとえば
図3には表さないポンプ)によって回路タンク20から抽出されてもよい。たとえばチャンバーフィルタプレスとして構成されたろ過デバイス41では、酸洗いスラッジの固体成分は、乾燥物質(フィルタケーキ)として分離され、その後の廃棄のために収集容器42まで搬送され、その一方で酸洗いスラッジの残りの液体部分(ろ過液)は、再生プラント26に搬送される。
【0053】
第2のオーバーフロー38’を介して、不溶解物質がクリーニングされた酸洗い流体2は、回路タンク20の受容ゾーン39内に流れ、この受容ゾーンから、主体積流7は、循環ポンプ22を利用して圧力ライン4を介して第1の酸洗いタンク11内に搬送されて戻される。圧力ライン4内には加熱デバイス24が配置され、この加熱デバイスは、通過する酸洗い流体2を通常は最大90℃のプロセス温度Tpまで加熱する。加熱デバイス24の前に、たとえば毎時12立方メートル~18立方メートルの部分流5’が、主体積流7から分岐され、再生プラント26まで搬送される。
【符号の説明】
【0054】
1 酸洗いプラント
2 酸洗い流体
3 戻りライン
4 圧力ライン
5、5’、5’’ 部分流
6 金属ストリップ
7 主体積流
8 酸洗い回路
11、12、13 酸洗いタンク
20 回路タンク
22 循環ポンプ
24 加熱デバイス
26 再生プラント
27、27’ 冷却デバイス
28、28’ 堆積デバイス
29 弁
30 堆積デバイス
31 凝集デバイス
32、32’、32’’ 混合ゾーン容器
33、33’、33’’ 施与デバイス
34、34’、34’’ 貯蔵容器
35 鎮圧ゾーン
36 沈降ゾーン
37 ラメラ分離デバイス
38、38’ オーバーフロー
39 受容ゾーン
40 抽出開口部
41 ろ過デバイス
42 収集容器
43 粒子
44 流れチャネル
d 垂直距離
h 高さ
P 製造方向
Tp プロセス温度
α 角度
【手続補正書】
【提出日】2024-02-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの酸洗い回路(8)を有する酸洗いプラント(1)内で酸洗い流体(2)から不溶解シリコン化合物を堆積するためのデバイスであって、前記酸洗い回路(8)は、
金属ストリップ(6)を酸洗いするための前記酸洗いプラント(1)の酸洗いタンク(11、12、13)と、
前記酸洗いタンク(11、12、13)と回路タンク(20)との間の戻りライン(3)と、
前記回路タンク(20)と前記酸洗いタンク(11、12、13)との間の圧力ライン(4)と、
酸洗い流体(2)の主体積流(7)を循環させるための、毎時500立方メートル~600立方メートルの最大ポンプ容量を有する循環ポンプ(22)と、
前記主体積流(7)をプロセス温度(T
p)まで加熱するための、前記圧力ライン(4)内に配置された加熱デバイス(24)と、を備え、
前記デバイスが、
少なくとも1つの凝集助剤を前記主体積流(7)に導入するための1つまたは複数の混合ゾーン容器(32、32’、32’’)を有する凝集デバイス(31)と、
前記主体積流(7)から直接不溶解シリコン化合物を堆積するための、前記回路タンク(20)内に配置された堆積デバイス(30)と、を有する、デバイス。
【請求項2】
前記回路タンク(20)が、前記酸洗い回路(8)内の前記酸洗いタンク(11、12、13)より2倍~3倍大きい体積を有し、前記堆積デバイス(30)が、少なくとも鎮圧ゾーン(35)と、沈降ゾーン(36)と、受容ゾーン(39)と、を備え、第1のオーバーフロー(38)が、前記鎮圧ゾーン(35)と前記沈降ゾーン(36)との間に配置され、第2のオーバーフロー(38’)が、前記沈降ゾーン(36)と前記受容ゾーン(39)との間に配置される、請求項1に記載のデバイ
ス。
【請求項3】
前記凝集デバイス(31)が、少なくとも2つの異なる凝集助剤を前記主体積流(7)に追加するための少なくとも2つの混合ゾーン容器(32、32’、32’’)を有する、請求項1または2に記載のデバイ
ス。
【請求項4】
前記混合ゾーン容器すべての体積の合計が、8立方メートル~25立方メートルである、請求項1~3のいずれか一項に記載のデバイ
ス。
【請求項5】
前記堆積デバイス(30)が、相互に平行な多数の流れチャネル(44)を備えるラメラ分離デバイス(37)として構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載のデバイ
ス。
【請求項6】
前記流れチャネル(44)が、鉛直に対して角度(α)で傾斜され、少なくとも90℃の温度に永久的に耐える耐酸性および耐熱性の材料からなる、請求項5に記載のデバイ
ス。
【請求項7】
前記角度(α)が、15°~60°である、請求項6に記載のデバイ
ス。
【請求項8】
隣り合う流れチャネル(44)間の垂直距離(d)が、少なくとも50mmである、請求項6または7に記載のデバイ
ス。
【請求項9】
酸洗いプラント(1)の少なくとも1つの酸洗い回路(8)内で酸洗い流体(2)から不溶解シリコン化合物を堆積するための方法であって、前記酸洗い回路(8)は、
金属ストリップ(6)を酸洗いするための前記酸洗いプラント(1)の酸洗いタンク(11、12、13)と、
前記酸洗いタンク(11、12、13)と回路タンク(20)との間の戻りライン(3)と、
前記回路タンク(20)と前記酸洗いタンク(11、12、13)との間の圧力ライン(4)と、
循環ポンプ(22)と、
前記圧力ライン(4)内に配置された加熱デバイス(24)と、を備え、
酸洗い流体(2)の毎時500立方メートル~600立方メートルの主体積流(7)が、前記循環ポンプ(22)によって、前記酸洗いタンク(11、12、13)から前記戻りライン(3)を通って前記回路タンク(20)内に、そして前記圧力ライン(4)を介して前記酸洗いタンク(11、12、13)内に循環されて戻され、
少なくとも1つの凝集助剤が、1つまたは複数の混合ゾーン容器(32、32’、32’’)を有する凝集デバイス(31)によって前記主体積流(7)内に導入され、
不溶解シリコン化合物が、前記回路タンク(20)内に配置された堆積デバイス(30)によって前記主体積流(7)から直接堆積され、
前記主体積流(7)が、前記加熱デバイス(24)によってプロセス温度(T
p)まで加熱される、方法。
【請求項10】
第1のタイプの金属ストリップ(6)を第1の混合ゾーン容器(32)によって酸洗いするとき、第1の擬集助剤が前記主体積流(7)に導入され、
第2のタイプの金属ストリップ(6)を第2および/または第3の混合ゾーン容器(32’、32’’)のみによって酸洗いするとき、少なくとも第2の擬集助剤が前記主体積流(7)に導入される、請求項9に記載の方法。
【国際調査報告】