IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シージェイ チェイルジェダン コーポレーションの特許一覧

特表2024-515375味、栄養および食感の優れたインスタント食品の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-09
(54)【発明の名称】味、栄養および食感の優れたインスタント食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/10 20160101AFI20240402BHJP
   A23L 7/10 20160101ALI20240402BHJP
【FI】
A23L5/10 F
A23L7/10 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566690
(86)(22)【出願日】2022-04-28
(85)【翻訳文提出日】2023-10-27
(86)【国際出願番号】 KR2022006117
(87)【国際公開番号】W WO2022231355
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】10-2021-0056074
(32)【優先日】2021-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508139664
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】CJ CHEILJEDANG CORPORATION
【住所又は居所原語表記】CJ Cheiljedang Center,330,Dongho-ro,Jung-gu,Seoul,Republic Of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】イェ・ジン・オ
(72)【発明者】
【氏名】イル・サン・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ヘ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・ソン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ヒョ・ヨン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ヘ・ミ・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ユン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】イン・ウォン・ユン
【テーマコード(参考)】
4B023
4B035
【Fターム(参考)】
4B023LC07
4B023LE11
4B023LG01
4B023LG04
4B023LK05
4B023LK12
4B023LK15
4B023LL01
4B023LP07
4B023LP17
4B023LQ01
4B035LC16
4B035LE11
4B035LG12
4B035LG31
4B035LG34
4B035LG41
4B035LG48
4B035LK01
4B035LP01
4B035LP44
4B035LP46
(57)【要約】
本出願は、インスタント食品の製造方法およびこれにより製造されたインスタント食品に関し、微生物汚染に対して脆弱であるか、殺菌が難しい原材料および液状ソースを用いてインスタント食品を製造しても、最終のインスタント食品内の微生物が基準値より低くて十分な殺菌効果を示すことができ、厳格な殺菌によって発生し得る品質低下の問題が発生せず、優れた食感と味の品質を示すインスタント食品を提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形原材料を容器に充填するステップと、
前記容器に充填された固形原材料を、真空状態で、加圧スチーム殺菌するステップと、
液状ソースにスチームを直接噴射して、液状ソースを液殺菌するステップと、
前記殺菌された原材料に殺菌したソースを添加するステップと、
前記殺菌したソースが添加された容器をシールするステップと、
前記シールされた容器を90℃~125℃の温度で10分~25分間加熱するステップとを含む、インスタント食品の製造方法。
【請求項2】
前記固形原材料は、殺菌前の原材料内の微生物の数が10cfu/ml~10cfu/mlである、請求項1に記載のインスタント食品の製造方法。
【請求項3】
前記固形原材料は、穀類、豆類、キノコ類、芋類、球根類、山菜類、果実/種実類、肉類、魚肉および卵類からなる群から選択される少なくとも一つを含む、請求項1に記載のインスタント食品の製造方法。
【請求項4】
前記固形原材料を殺菌するステップは、120℃~140℃のスチームで、1分~10分間殺菌を行う、請求項1に記載のインスタント食品の製造方法。
【請求項5】
前記固形原材料を殺菌するステップは、140℃~155℃のスチームを固形原材料に、3秒~10秒間接触させることを5回~10回繰り返して行う、請求項1に記載のインスタント食品の製造方法。
【請求項6】
前記容器に固形原材料を充填する前に、前記固形原材料を水に浸漬するステップをさらに含む、請求項1に記載のインスタント食品の製造方法。
【請求項7】
前記液状ソースを液殺菌するステップは、液状ソースに、130℃~140℃のスチームを直接噴射して、6分~8分間殺菌する、請求項1に記載のインスタント食品の製造方法。
【請求項8】
前記液状ソースを液殺菌するステップは、DSI(Direct-Steam Injection)殺菌装置を用いて殺菌する、請求項1に記載のインスタント食品の製造方法。
【請求項9】
前記液状ソースの粘度は、0~2,000cpである、請求項1に記載のインスタント食品の製造方法。
【請求項10】
前記液状ソースの糖度は、0~60brixである、請求項1に記載のインスタント食品の製造方法。
【請求項11】
前記液状ソースは、液殺菌前の微生物の数が10cfu/ml~10cfu/mlである、請求項1に記載のインスタント食品の製造方法。
【請求項12】
前記方法は、炊飯ステップを含んでいない、請求項1に記載のインスタント食品の製造方法。
【請求項13】
前記方法は、前記固形原材料を殺菌するステップの後、シールするステップの前まで、105℃以上の熱を加えない、請求項1に記載のインスタント食品の製造方法。
【請求項14】
前記方法は、前記固形原材料を殺菌するステップの後、シールするステップの前まで、104℃以下の温度が維持される、請求項1に記載のインスタント食品の製造方法。
【請求項15】
前記加熱するステップの後に測定された固形原材料内の微生物の数は、0cfu/mlである、請求項1に記載のインスタント食品の製造方法。
【請求項16】
請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の製造方法により製造されるインスタント食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、インスタント食品の製造方法とこれにより製造されたインスタント食品に関する。
【背景技術】
【0002】
原材料を直接手入れして準備するか、レシピにしたがって正確且つ上手に調理する必要が少ないインスタント食品は、摂取まで必要な時間が短く、調理を完成するまで必要な努力が少ないことから手軽であるという利点がある。直接調理して食事を準備する家庭が次第に減っており、単身世帯が増加するに伴い、簡単に調理して摂取することができるインスタント食品に対する需要もともに増加しており、各種の食べ物がインスタント食品の形態に製造されて市場で販売されている。しかし、インスタント食品は、半調理の状態で相対的に長時間流通しなければならないため、いたみやすい欠点があり、インスタント食品の製造時に殺菌に特に注意しなければならない。特に、インスタント食品の形態で製造される食品の種類が多様化するに伴い、各種の原材料を用いるか、液状のソースを添加するようになり、微生物汚染問題の発生可能性が徐々に高まっており、これを解決し、且つ優れた品質のインスタント食品に対するニーズが増加している。
【0003】
インスタント食品は、調理された状態で販売されており、これを購入した消費者がすぐこれを食べることができ、電子レンジなどを用いて簡単な調理過程を経ることで、手軽に優れた品質のご飯を楽しむことができる利点がある。しかし、長期間流通して常温で保管されるインスタント食品では、十分な殺菌による微生物汚染を制御する必要性が高い。仮に、インスタント食品の殺菌のために過剰な殺菌条件を適用する場合、原物の品質が損なわれて低下し得るため、原物の品質は維持しながらも殺菌効果を同時に図ることが、インスタント食品またはインスタントご飯の分野において重要な解決課題であると言える。
【0004】
上記のような課題を解決することは、インスタント食品の中でも、水分を多く含有するか、微生物汚染に対して脆弱な原材料をさらに用いるインスタント食品において、重要度がより高くなる。水分を多く含有するか、微生物汚染に対して脆弱な特徴がある原材料を使用する場合、殺菌が難しく、殺菌による品質の低下が著しく現れるため、殺菌および品質管理の必要性が特に高まる。市中に販売されているインスタントご飯形態の混ぜご飯や、原物が多数含まれたインスタント食品の場合、微生物汚染に対して脆弱な材料を使用することによって、殺菌条件は満足しても、ご飯の品質が著しく低下し、悪い食感と味を有することがほとんどである。韓国公開特許公報第10-2015-0105819号では、種実類を含む無菌包装インスタント薬食の製造方法について開示しているが、材料を混合し、先ず薬食を炊飯して調理した後、これを高温で加熱して殺菌し包装する方法を開示しており、殺菌によるご飯の品質低下の問題を全く考慮しない方法を開示しているだけである。最近、お手軽食品の市場が徐々に成長しており、既存の白米ご飯以外に、様々な形態のインスタント食品に対する需要が増加するに伴い、家庭や飲食店で直接調理したものと類似の品質のインスタント食品に対するニーズと開発の必要性もともに高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国公開特許公報第10-2015-0105819号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願は、微生物汚染に対して脆弱な固形原材料および殺菌が難しい液状ソースを用いて製造されるインスタント食品を製造するに際し、十分な殺菌により固形液状ソース内の微生物の数を基準値以下に下げ、且つ殺菌によって液状ソースの品質が損傷しないことができるように、インスタント食品を製造する方法を提供することを目的とする。
【0007】
また、本出願は、上記のように、十分な殺菌により基準値以下の微生物を含み、且つ釜飯の味、栄養、食感などが実現された優れた品質のインスタント食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願の一様態は、固形原材料を容器に充填するステップと、前記容器に充填された固形原材料を、真空状態で、加圧スチーム殺菌するステップと、液状ソースにスチームを直接噴射して、液状ソースを液殺菌するステップと、前記殺菌された原材料に殺菌したソースを添加するステップと、前記殺菌したソースが添加された容器をシールするステップと、前記シールされた容器を90℃~125℃の温度で10分~25分間加熱するステップとを含む、インスタント食品の製造方法を提供する。
【0009】
本出願の他の一様態は、前記インスタント食品の製造方法により製造されたインスタント食品を提供する。
【0010】
以下、本出願について詳細に説明する。
【0011】
1.インスタント食品の製造方法
本出願において、用語「インスタント食品」は、簡単な調理過程を経た後に摂取可能であるか、調理なしにすぐ摂取が可能な半調理または調理された状態の加工食品を意味する。前記インスタント食品は、常温、冷蔵または冷凍流通することができ、より具体的には、常温流通用であることができる。
【0012】
前記インスタント食品は、液状ソースを含むことができ、具体的には、インスタントご飯、スープ類、お粥類および一品類からなる群から選択される少なくとも一つであることができるが、これに制限されるものではない。前記スープ類は、例えば、クリームスープ、野菜スープ、トマトスープ、コーンスープ、キノコスープなどであることができるが、これに制限されるものではない。前記お粥類は、例えば、ワラビ粥、おこげ粥、五穀粥、野菜粥、キノコ粥、海産物粥、小豆粥、カボチャ粥などであることができるが、これに制限されるものではない。前記一品類は、主材料と副材料を一つの形態に盛り合わせて作る調理または食品を意味し、例えば、ご飯を主材料にし、副材料がともに盛り合わせ作られることができる。前記一品類は、例えば、魚ご飯、魚釜飯、山菜ご飯、山菜釜飯、肉丼などであることができるが、これに制限されるものではない。
【0013】
本出願のインスタント食品の製造方法により製造されるインスタントご飯は、インスタントご飯の形態であるにもかかわらず、釜飯の味、栄養、食感などが実現された優れた品質を有することができる。前記釜飯は、釜を用いて炊いたご飯を意味し、具体的には、圧力炊飯器、釜で炊いたご飯であることができ、特に、石鍋、鉄釜などの釜を用いて製造されることで、より向上した食感が実現されたご飯であることができる。
【0014】
本出願において、用語「ご飯(cooked grains、Bap)」は、穀類に水を添加して、加圧、加熱することにより製造される食品の全般を意味する。ご飯は、お粥と比較すると、穀類の粒子の形が維持されており、噛んで摂取することを特徴とし、お粥よりも水分の量が少ないことを特徴とする。前記ご飯は、韓国をはじめ、東アジア、東南アジアにおいて、通常、主食として摂取することができ、主に、米を用いて製造されるが、米の代わりに、他の穀類により製造されるか、米と異なる穀類を混合して製造されることができ、穀類以外に、他の材料をさらに用いて製造されることができる。
【0015】
本出願において、用語「インスタントご飯」は、ご飯をインスタント食品の形態に製造したものを意味する。前記インスタントご飯は、別の調理過程なしにそれ自体で摂取が可能であるか、通常のご飯の製造、調理方法に比べて、より簡単な調理過程を経て摂取が可能であり、貯蔵、保管、運搬、携帯などが便利であるように製造された加工食品である。
【0016】
本出願のインスタント食品を製造する方法は、固形原材料を容器に充填するステップと、前記容器に充填された固形原材料を、真空状態で、加圧スチーム殺菌するステップと、液状ソースにスチームを直接噴射して、液状ソースを液殺菌するステップと、前記殺菌された原材料に殺菌したソースを添加するステップと、前記殺菌したソースが添加された容器をシールするステップと、前記シールされた容器を90℃~125℃の温度で10分~25分間加熱するステップとを含む。
【0017】
具体的には、前記固形原材料は、穀類、豆類、キノコ類、芋類、球根類、山菜類、果実/種実類、肉類、魚肉および卵類からなる群から選択される少なくとも一つを含むことができる。前記穀類は、米または米以外の雑穀を含むことができ、前記米は、白米、黒米、玄米、うるち米およびもち米からなる群から選択される少なくとも一つを含むことができる。前記雑穀は、ムギ、豆、小豆、アワ、小麦、ライムギ、ヒエ、ソバ、エンバク、キビ、トウモロコシおよびモロコシからなる群から選択される少なくとも一つを含むことができる。しかし、雑穀の種類は、これに制限されず、ご飯の製造に通常用いられることができる雑穀であれば、いずれも用いられることができ、例えば、雑穀ご飯または栄養ご飯の製造に用いられる雑穀であれば、いずれも用いられることができる。本出願のインスタント食品またはインスタントご飯は、白米以外の原材料のみを用いて製造されるか、または白米と白米以外の原材料がともに用いられることができる。前記豆類は、百豆、韓国黒豆、黒豆、黄豆、薬豆、インゲンマメ、エンドウ、ダイズ、リョクトウ、レンズマメ、タチナタマメおよび小豆からなる群から選択される少なくとも一つを含むことができるが、これに制限されるものではなく、前記豆類は、マメ科に分類される食用植物をいずれも含むことができる。前記キノコ類は、エリンギ、シイタケ、ヒラタケ、ツクリタケおよびエノキタケからなる群から選択される少なくとも一つを含むことができる。しかし、キノコの種類は、これに制限されず、食用キノコであれば、制限なく用いられることができ、例えば、キノコご飯の製造に用いられるキノコであれば、いずれも用いられることができる。前記球根類は、レンコン、ゴボウ、ニンジンおよびキキョウからなる群から選択される少なくとも一つを含むことができるが、これに制限されるものではない。前記芋類は、サツマイモ、ジャガイモおよびキクイモからなる群から選択される少なくとも一つを含むことができるが、これに制限されるものではない。前記山菜類は、シラヤマギク山菜、チョウセンヤナギアザミ山菜、ワラビ、ツルマンネングサ山菜、オタカラコウ、ニラ、ヤマラッキョウ、フキ、ヤマフキ、ハナスベリヒユおよびウドからなる群から選択される少なくとも一つを含むことができるが、これに制限されるものではない。前記果実/種実類は、ナツメ、クリ、松の実、レーズンおよびかぼちゃの種からなる群から選択される少なくとも一つを含むことができるが、これに制限されるものではない。前記肉類は、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、シカおよび家禽類(ニワトリ、カモ、ガチョウ、シチメンチョウ、ダチョウ、シチメンチョウ、キジ)からなる群から選択される少なくとも一つ以上の動物から分離した赤肉、筋肉、脂肪またはこれらの混合物を含むことができるが、これに制限されるものではない。前記魚肉は、水産物から分離した肉、水産物の卵またはこれらを加工した食品を含み、例えば、水産物から分離した肉の原物、切肉、カマボコ、魚肉ソーセージなどであることができるが、これに制限されるものではない。前記水産物は、魚(タラ、スケトウダラ、シログチ、サバ、サワラ、サンマなど)、イカ、タコ、テナガダコ、エビ、カニ、貝肉などであることができ、前記水産物の卵は、明太子、たらこ、トビウオの卵、サメの卵などであることができるが、これに制限されるものではない。前記卵類は、動物から得られた卵、例えば、家禽類の卵または卵加工品を原料にする食品を含み、卵、全卵、卵黄、卵白などをいずれも含むことができる。具体的には、前記卵類は、鶏卵、アヒルの卵、うずらの卵、ガチョウの卵、ダチョウの卵またはこれらの加工品であることができるが、これに制限されるものではない。
【0018】
前記固形原材料は、白米以外の原材料(例えば、白米以外の穀類、豆類、キノコ類、芋類、山菜類、果実/種実類、肉類、魚肉、卵類など)を原材料の全体100重量部に対して、10重量部~100重量部の含量で含むことができる。具体的には、前記白米以外の原材料の含量は、10重量部、15重量部、20重量部、25重量部、30重量部、35重量部、40重量部、45重量部、50重量部、55重量部および60重量部から選択される一つの下限および/または100重量部、95重量部、90重量部、85重量部、80重量部、75重量部、70重量部および65重量部から選択される一つの上限で構成された範囲であることができる。一例として、10~100重量部、15~95重量部、20~90重量部、30~85重量部、40~80重量部、50~80重量部、60~70重量部または60~65重量部であることができるが、これに制限されるものではない。白米以外の原材料の含量が100重量部である場合、前記原材料は、白米を全く含まないこともあり、この際、前記原材料を用いて製造されるインスタントご飯またはインスタント食品にも白米が含まれていないこともある。前記白米、黒米、玄米などを含む概念である「米」は、その種類に関係なく通常ご飯の製造に用いられる米であれば、いずれも用いられることができ、例えば、ジャポニカまたはインディカ品種の米であることができるが、これに制限されるものではない。また、前記米は、うるち米、もち米またはこれらの組み合わせであることができる。前記うるち米は、そのデンプン成分がアミロース、アミロペクチンであることができ、前記もち米は、そのデンプン成分がアミロペクチンであることができる。前記もち米は、うるち米と比較して、これを炊飯した時に、ご飯の粘性がより高いことができる。なお、前記米は、その精米程度とは無関係に用いられることができ、前記白米、玄米以外にも、5分精米、7分精米および/または9分精米であることができる。前記の米の種類は、最終的に製造しようとするご飯または食品の種類、特性に応じて適宜選択されることができ、各種の米の混合比も適宜選択されて用いられることができる。
【0019】
本出願において、インスタント食品の製造に用いられる固形原材料は、これに含まれた微生物の数が他の固形原材料に含まれた微生物の数よりも多くて、微生物汚染に対して脆弱であるか、または通常の殺菌過程により十分な殺菌が行われないことがある。具体的には、前記固形原材料は、殺菌前の固形原材料内の微生物の数が10cfu/ml~10cfu/mlであることができ、例えば、前記微生物の数は10cfu/ml~10cfu/ml、1,500cfu/ml~5,000,000cfu/mlまたは1,800cfu/ml~4,500,000cfu/mlの範囲であることができる。また、前記殺菌前の固形原材料内の微生物の数は、二つ以上の固形原材料の混合物を殺菌する前に測定した微生物の数であることができる。前記殺菌前の固形原材料混合物内の微生物の数は、10cfu/ml~10cfu/mlであることができ、例えば、前記殺菌前の固形原材料混合物内の微生物の数は、500,000cfu/ml~5,000,000cfu/mlまたは550,000cfu/ml~1,200,000cfu/mlであることができる。したがって、インスタント食品またはインスタントご飯を摂取する者の健康に及ぼし得る影響や、法的なインスタント食品またはインスタントご飯内の微生物の数の許容基準値を考慮すると、前記固形原材料を用いて製造されるインスタント食品またはインスタントご飯に含まれる微生物の数を減少させて基準を満たすためには、他の固形原材料を用いる場合よりも厳格な殺菌が求められ得る。しかし、厳格な殺菌条件、殺菌方法によりインスタント食品またはインスタントご飯を製造する場合、微生物汚染は制御することができるが、殺菌工程によるインスタント食品またはインスタントご飯の品質の低下が発生し得るという問題がある。本出願は、前記固形原材料を用いてインスタント食品またはインスタントご飯を製造することによって発生する前記のような課題を解決するための発明であり、本出願のインスタント食品またはインスタントご飯の製造方法により製造されるインスタント食品またはインスタントご飯は、十分な殺菌効果を示し、且つインスタント食品またはインスタントご飯の品質が低下しないという効果がある。
【0020】
また、本出願のインスタント食品に含まれる液状ソースも、前記固形原材料と同様、微生物汚染に対して脆弱であるか、通常の殺菌過程により十分な殺菌が行われていないことがある。液状ソースは、これを含むインスタント食品の味と品質を決定するのに重要な役割をするため、液状ソースの殺菌を行っても、液状ソースの品質、例えば、粘性や糖度などの品質が低下してはならない。
【0021】
したがって、インスタント食品を摂取する者の健康に及ぼし得る影響や、法的なインスタント食品内の微生物の数の許容基準値を考慮すると、前記固形原材料および液状ソースを用いて製造されるインスタント食品に含まれる微生物の数を減少させて基準を満たすためには、通常のインスタント食品を製造する場合よりも厳格な殺菌が求められ得る。しかし、厳格な殺菌条件、殺菌方法によりインスタント食品を製造する場合、微生物汚染は制御することができるが、殺菌工程によるインスタント食品および液状ソースの品質の低下が発生し得る問題がある。本出願は、前記固形原材料および液状ソースを用いてインスタント食品を製造することによって発生する前記のような課題を解決するための発明であり、本出願のインスタント食品の製造方法により製造されるインスタント食品は、十分な殺菌効果を示し、且つインスタント食品およびこれに含まれる液状ソースの品質が低下しないという効果がある。
【0022】
前記固形原材料を殺菌するステップは、固形原材料を真空状態で加圧スチーム殺菌を行い、スチームを前記固形原材料に直接加えて殺菌することができる。前記殺菌は、真空、蒸気殺菌、減圧、真空冷却を順に行うことができる。より具体的には、固形原材料を真空加圧殺菌機内に残し、真空加圧殺菌機の内部を真空状態にした後、蒸気殺菌、減圧、真空冷却を順に行うことができる。前記固形原材料は密封していない状態の容器に充填された固形原材料であることができる。蒸気殺菌の前に真空加圧殺菌機の内部を真空状態にすることで、蒸気殺菌時に熱伝逹の効率性(迅速な熱伝逹)と均質性を図ることができる。真空加圧殺菌機は、例えば、株式会社日阪製作所製のRIC装置を用いることができるが、これに限定されない。
【0023】
前記固形原材料を殺菌するステップは、120℃~140℃のスチームで、1分~10分間殺菌することができる。具体的には、前記スチームの温度は、120℃、121℃、122℃、123℃、124℃、125℃、126℃、127℃、128℃、129℃および130℃から選択される一つの下限および/または140℃、139℃、138℃、137℃、136℃、135℃、134℃、133℃、132℃、131℃および130℃から選択される一つの上限で構成された範囲の温度であることができる。一例として、120℃~140℃、121℃~139℃、122℃~138℃、123℃~137℃、124℃~136℃、125℃~135℃、126℃~134℃、127℃~133℃、128℃~132℃、129℃~131℃、129℃~130℃または130℃~131℃のスチームで殺菌することができるが、これに制限されるものではない。前記殺菌時間は、1分、2分、3分、4分、4分30秒、5分、5分30秒、6分、6分30秒および7分から選択される一つの下限および/または10分、9分30秒、9分、8分30秒、8分、7分30秒、7分、6分30秒および6分から選択される一つの上限で構成された範囲の時間であることができる。一例として、1分~10分、2分~9分、3分~8分、4分~7分、5分~6分、5分30秒~6分、5分~5分30秒、6分~10分、7分~10分または7分~9分間殺菌することができるが、これに制限されるものではなく、殺菌の対象になる固形原材料の容量に応じて殺菌時間は、前記範囲の時間内で変更することができる。例えば、通常、1人の一回の食事に適切な容量のインスタントご飯を製造する場合、前記殺菌時間は、4分~6分であることができ、これよりも大容量でインスタント食品を製造しようとする場合、殺菌時間は、7分~10分の範囲まで増加することができ、容量に応じて適宜変更することができる。
【0024】
また、前記固形原材料を殺菌するステップは、140℃~155℃のスチームを固形原材料に3秒~10秒間接触させることを5回~10回繰り返すことができる。具体的には、前記スチームの温度は、140℃、142℃、145℃および147℃から選択される一つの下限および/または155℃、153℃、150℃および148℃から選択される一つの上限で構成された範囲の温度であることができる。一例として、140℃~155℃、142℃~153℃、145℃~150℃、145℃~148℃、147℃~150℃または147℃~148℃のスチームで殺菌することができるが、これに制限されるものではない。前記スチームを接触させる時間は、3秒、4秒、5秒および6秒から選択される一つの下限および/または10秒、9秒、8秒および7秒から選択される一つの上限で構成された時間であることができる。一例として、3秒~10秒、4秒~9秒、5秒~8秒、6秒~8秒、5秒~7秒または6秒~7秒の時間であることができるが、これに制限されるものではない。前記スチームを固形原材料に接触させることは、5回~10回、6回~9回、6回~8回、7回~9回または7回~8回繰り返して行うことができる。
【0025】
前記固形原材料を殺菌するステップは、F0値4以上の条件で殺菌することができる。本出願において、用語「F値」は、特定の温度で特定の微生物菌株を死滅させるために必要な時間を意味し、これは、微生物に対する加熱致死時間曲線により計算することができる。前記F値は、殺菌対象微生物の種類によるZ値と、加熱温度によって決定されることができる。「F0値」は、その中でもZ値を18゜Fまたは10℃にし、加熱温度を250゜Fまたは121.1℃にした時のF値と定義されることができる。前記Z値が10℃であるとは、標準になる微生物菌株を対象に殺菌する時の数値を基準にしたものである。前記F0値は、当業界において殺菌の水準を示す尺度として用いられることができる数値である。具体的には、前記F0値は、試料に熱処理時間の間に伝達される累積熱量をセンサの探針で測定することができる。例えば、前記F0値は、試料内のコールドポイント(cold point:試料内で最も遅く熱が伝達される地点または通常の試料の中心部)にセンサーの探針を挿入した後、熱を加える間に伝達される累積熱量を確認することにより測定することができ、121.1℃、1分に該当する熱量を「F0=1」と設定し、これを基準に換算して計算することができる。
【0026】
本出願のインスタント食品の製造方法において、容器に充填された固形原材料をF0値4以上の条件で殺菌するステップを行う。ここで、「F0値=4」の条件で殺菌することの意味を例示的に説明すると、前記F0値の定義に応じて、Z値が10℃である標準微生物を対象に、121.1℃の温度で4分間殺菌を行った時に、前記微生物を死滅させることができる水準で殺菌することを意味する。前記F0値は、下記式1により計算することができる。具体的には、前記殺菌部により行われる殺菌は、F0値4以上、4.5以上、5以上、6以上、7以上、8以上、10以上、20以上、30以上または40以上の条件で殺菌することができるが、これに制限されるものではない。
【0027】
【数1】
【0028】
前記式1中、前記t(時間)の単位は分(min)であり、T(温度)の単位は℃である。
【0029】
本出願のインスタント食品の製造方法は、前記容器に固形原材料を充填する前に、前記固形原材料を水に浸漬するステップをさらに含むことができる。前記浸漬するステップは、前記固形原材料を水で洗浄するステップを含むことができ、例えば、洗浄した固形原材料の全100重量部に対して、200重量部~300重量部の水を入れて、20分~80分間浸漬することができるが、これに制限されるものではなく、前記浸漬するステップは、通常、食品またはご飯を調理して製造する際に、穀類を水にふやかす過程と同様に行われることができる。
【0030】
前記浸漬するステップの後、容器に固形原材料を充填する前に、水を除去するステップをさらに経ることができる。水を除去するステップを経た結果、殺菌するステップの前に、前記容器には固形原材料100重量部に対して、0~10重量部の水がともに充填されることができる。
【0031】
本出願のインスタント食品の製造方法は、液状ソースにスチームを直接噴射して、液状ソースを液殺菌するステップを含む。
【0032】
前記液状ソースを液殺菌するステップは、液状ソースに、130℃~140℃のスチームを直接噴射して、6分~8分間殺菌することができる。具体的には、前記スチームの温度は、130℃、130.5℃、131℃、131.5℃、132℃および132.5℃から選択される一つの下限および/または140℃、139℃、138℃、137℃、136℃、135℃、134.5℃、134℃、133.5℃、133℃および132.5℃から選択される一つの上限で構成された範囲の温度であることができる。一例として、130℃~140℃、130.5℃~138℃、131℃~136℃、131.5℃~135℃、132℃~133℃、132.5℃~135℃または130℃~132.5℃のスチームで殺菌することができるが、これに制限されるものではない。前記水またはソースの殺菌は、前記温度のスチームを水またはソースに直接噴射して注入させ温度を上げた後、保温が維持される管を6分~8分間通過させることにより、殺菌を行うことができる。具体的には、前記スチーム噴射後の殺菌時間は、6分~8分、6分30秒~8分、6分~7分30秒、6分30秒~7分30秒、7分~8分または6分~7分であることができる。
【0033】
前記液状ソースを液殺菌するステップは、DSI(Direct-Steam Injection)殺菌装置を用いて殺菌することができる。前記DSI殺菌装置の温度および時間条件を前記のように設定して液殺菌を行うことができる。
【0034】
前記液状ソースは、本出願のインスタント食品で実現しようとする味、形状、物性などの特徴を付与するために添加される液体形状のソースであれば、制限なく用いられることができ、具体的には、糖および/または塩を含むことができる。より具体的には、前記液状ソースは、液状原料および/または粉末原料を所定の比率で配合して混合することで製造されることができ、前記液状原料は、醤油、植物性/動物性原料濃縮液、果菜類ペースト、ハチミツ、オリゴ糖、水飴などであることができるが、これに制限されるものではなく、前記粉末原料は、塩、砂糖、コショウ、粉唐辛子などであることができるが、これに制限されるものではない。
【0035】
前記液状ソースの糖度は、0~60brixであることができる。具体的には、液状ソースの糖度は、0、5、10、15、20、25および30brixから選択される一つの下限および/または60、55、50、45、40、35および30brixから選択される一つの上限で構成された範囲の糖度であることができる。一例として、0~60brix、5~55brix、10~50brix、15~45brix、20~40brix、25~35brix、30~35brixまたは35~40brixの糖度であることができるが、これに制限されるものではない。
【0036】
前記液状ソースの粘度は、0~2,000cpであることができる。具体的には、前記液状ソースの粘度は、0、10、100、200、300、400、500、600、700、800、900および1,000cpから選択される一つの下限および/または2,000、1,900、1,800、1,700、1,600、1,500、1,400、1,300、1,200、1,100および1,000cpから選択される一つの上限で構成された範囲の粘度であることができる。一例として、0~2,000cp、100~1,900cp、200~1,800cp、300~1,700cp、400~1,600cp、500~1,500cp、600~1,400cp、700~1,300cp、800~1,200cp、900~1,100cp、1,000~1,100cpまたは900~1,000cpの粘度であることができるが、これに制限されるものではない。
【0037】
前記液状ソースが前記範囲の糖度および/または粘度を示す場合、または高粘度および/または高糖度を示す場合、殺菌過程で熱伝達が難しくて微生物の制御が難しくなり得る。しかし、本出願のインスタント食品は、液状ソースの前記糖度および/または粘度の範囲が維持され、且つ十分な殺菌効果を示すことができる。また、通常の液殺菌方法では、粘性のある液体の殺菌効果が大きくないが、本出願のインスタント食品は、前記のように粘性のあるソースの殺菌効果も十分に示されるという利点がある。
【0038】
前記液状ソースは、液殺菌前の微生物の数が10cfu/ml~10cfu/mlであることができ、例えば、前記微生物の数は、10cfu/ml~10cfu/ml、1,500cfu/ml~5,000,000cfu/mlまたは1,800cfu/ml~4,500,000cfu/mlの範囲であることができる。液状ソースは、固形原材料とは異なり、液状であるため、微生物が成長しやすく、水以外に、微生物が栄養分として用いることができる他の成分を含んでおり、微生物汚染に対してより脆弱である特徴がある。そのため、固形原材料とともに殺菌を行わず、別の液殺菌ステップにより液状ソースを殺菌することで、より微生物汚染に安全なインスタント食品を製造することができる。本出願のインスタント食品の製造方法による液殺菌ステップを経る場合、スチームを直接ソースに噴射して接触させることで、液状ソース内の微生物が十分に殺菌され、基準値以下の微生物の数値を示し、且つ前記範囲の条件で殺菌を行うことにより、ソースの品質低下は発生しないという効果がある。
【0039】
本出願のインスタント食品の製造方法は、固形原材料を殺菌するステップおよび液状ソースを液殺菌するステップを経て、殺菌された原材料に殺菌したソースを添加するステップを含み、前記固形原材料殺菌ステップおよび液状ソース殺菌するステップは、その順序は制限されず、同時にあるいは順に固形分殺菌および液状ソース殺菌をしようとする目的の下で変更可能である。
【0040】
本出願のインスタント食品の製造方法は、前記固形原材料を殺菌するステップにより殺菌された固形原材料に、前記液殺菌するステップにより殺菌された液状ソースを添加するステップをさらに行う。ここで、前記液状ソースとともに殺菌した水をさらに添加することができ、添加される液状ソースおよび水の量は、最終のインスタント食品の製品で実現される味と品質を考慮して調節されることができる。すなわち、最終のインスタント食品の製品で固形原材料が好ましい食感および味を示すことができるようにする水分の量、そして、液状ソースの濃度を考慮して、液状ソースと水の比率と量を適宜調節して添加することができる。例えば、液状ソースおよび水が添加された後、容器内の水分の量が固形原材料100重量部に対して、30重量部~120重量部の量になるように液状ソースおよび水を添加することができ、具体的には、30重量部~110重量部、40重量部~105重量部、50重量部~100重量部、60重量部~95重量部または70重量部~90重量部の量になるように添加することができる。固形原材料を水に浸漬した後、水を除去するステップを経た結果、容器内に含まれた水の量を考慮して、最終的に、容器内に前記範囲の量の水分が含まれるように、液状ソースおよび水の量を適宜調節して添加することができる。
【0041】
前記液状ソースの種類は、製造しようとするインスタント食品の種類や特徴に応じて変化し得、例えば、前記液状ソースは、醤油、ニンニク、ネギ、砂糖、塩、ごま油、ハチミツ、またはこれらの組み合わせを含むことができる。本出願の具体的な一実施形態において、前記液状ソースは、薬食を製造するためのソースであることができ、この場合、前記液状ソースは、ハチミツを含むことができる。
【0042】
本出願のインスタント食品またはインスタントご飯の製造方法は、炊飯ステップを含まなくてもよい。具体的には、前記方法は、前記殺菌するステップの後、前記シールするステップの前までのステップで炊飯ステップを含まなくてもよい。前記炊飯ステップは、通常、ご飯を製造する過程で、ご飯の原材料を加熱する過程を意味し、例えば、90℃~120℃で加熱するステップであることができる。本出願のインスタント食品またはインスタントご飯の製造方法は、炊飯ステップを含まないことにより、原材料を加熱する回数を減少させることができ、加熱によるインスタント食品またはインスタントご飯の品質の低下を防止することができるという効果がある。また、容器をシールするステップの前までは、容器の内部に微生物が流入され得るため、微生物汚染を防止するために無菌条件を遵守する必要があるが、シールステップの前に炊飯ステップを含まない場合、無菌条件を遵守する工程が短くなるか、無菌条件を維持する時間が減少することができるという利点がある。これにより、無菌条件にすることによる費用を低減することができ、微生物汚染の可能性を下げることができる効果がある。
【0043】
本出願のインスタント食品の製造方法は、前記殺菌するステップの後、シールするステップの前まで、90℃以上の熱を加えないことができる。具体的には、90℃以上、96℃以上、97℃以上、98℃以上、99℃以上、100℃以上、102℃以上、105℃以上、110℃以上、120℃以上、90℃~120℃、97℃~117℃、99℃~120℃、100℃~117℃、105℃~115℃または115℃~120℃の熱を加えないことができるが、これに制限されるものではない。本出願のインスタント食品の製造方法は、シールするステップの前に前記範囲の温度で加熱するステップを含まないことにより、原材料を加熱する回数を減少させることができ、加熱によるインスタント食品の品質の低下を防止することができるという効果がある。また、容器をシールするステップの前までは、容器の内部に微生物が流入され得るため、微生物汚染を防止するために無菌条件を遵守する必要があるが、シールステップの前に前記範囲の温度で加熱するステップを含まない場合、無菌条件を維持する時間が減少することができるという利点がある。これにより、無菌条件にすることによる費用を低減することができ、微生物汚染の可能性を下げることができる効果がある。
【0044】
前記「熱を加えないこと」の意味は、前記温度範囲の熱を全く加えないことだけでなく、当業界の技術常識上、熱を加えないことと結果的に同じ水準に短時間で一時的に前記温度範囲の熱を加えることも含む概念である。例えば、一時的な加熱を行っても、有意な殺菌効果が発生しないか、ご飯の品質の変化が発生しなかった場合、本出願の範囲に含まれる。例えば、前記熱を加えないことは、前記温度範囲の熱を1秒以内、2秒以内、3秒以内、5秒以内、10秒以内または20秒以内加えることまで含むことができ、前記温度範囲の熱を短時間で2回以上加えることまで含むことができる。
【0045】
前記方法は、前記殺菌するステップの後、シールするステップの前まで、89℃以下の温度が維持されることができる。具体的には、89℃以下、88℃以下、87℃以下、85℃以下、80℃以下、75℃以下、70℃以下、10℃~89℃、15℃~88℃、20℃~85℃、25℃~80℃、20℃~70℃、20℃~60℃または20℃~50℃の温度が維持されることができるが、これに制限されるものではない。本出願のインスタント食品の製造方法は、シールするステップの前に、前記範囲の温度を維持することにより、原材料を加熱する回数を減少させることができ、加熱によるインスタント食品の品質の低下を防止することができるという効果がある。また、容器をシールするステップの前までは、容器の内部に微生物が流入され得るため、微生物汚染を防止するために無菌条件を遵守する必要があるが、シール部の前に、前記範囲の温度を維持する場合、無菌条件を維持する時間が減少することができるという利点がある。これにより、無菌条件にすることによる費用を低減することができ、微生物汚染の可能性を下げることができる効果がある。
【0046】
前記「温度が維持されること」の意味は、前記範囲の温度が時間的に中断されず維持され続けることだけでなく、短時間で一時的に前記温度範囲よりも高い温度条件が与えられること、すなわち、当業界の技術常識上、前記温度が維持され続けることと結果的に同じ場合まで含む概念である。例えば、一時的に前記温度範囲よりも高い温度条件が与えられても、有意な殺菌効果が発生しないか、インスタント食品またはご飯の品質の変化が発生しなかった場合、本出願の範囲に含まれる。例えば、前記温度範囲よりも高い温度条件が、1秒以内、2秒以内、3秒以内、5秒以内、10秒以内または20秒以内の時間の間に与えられることまで含むことができ、前記温度範囲よりも高い温度条件が短時間で2回以上与えられることまで含むことができる。
【0047】
本出願のインスタント食品の製造方法において、前記固形原材料を殺菌するステップから前記シールするステップまでは、無菌条件が維持された状態で行われることができる。殺菌された固形原材料、液状ソースなどが充填された容器は、シールされる前までは、外部からの微生物のような生体粒子およびその他の非生体粒子から汚染する可能性があり、空気中に浮遊する前記汚染粒子が制御された条件で各工程を行う必要がある。前記無菌条件を維持する方法は、当業界において食品の製造に通常適用される方法および条件であれば、制限なく適用されることができ、具体的には、加工食品、インスタント食品、レトルト食品などの製造に通常適用される無菌条件が適用されることができる。前記無菌条件は、クリーンルームまたはクリーンブースで各ステップを行うことで維持されることができ、例えば、前記殺菌するステップが完了する時点からシールするステップを開始する時点までの過程をトンネル形状のブース内で行うことができる。ここで、ブースに設置されたクリーンエア発生装置(例えば、ヘパフィルタ)から発生するクリーンエアにより微生物の流入を防ぎ、ブース内を正圧で維持することができる。
【0048】
前記シールするステップは、殺菌された蓋材、例えば、UV殺菌された蓋材を前記容器に被着することができ、シールする前に、容器内に不活性気体を注入するステップをさらに経ることができる。前記容器の被着は、熱を用いる方法、接着剤を用いる方法または圧力を用いる方法が用いられることができるが、これに制限されるものではない。シールするステップを経た後には、容器の内部に外部の異物や微生物が自然な方法では流入されることができず、微生物汚染の制御が可能であり、以降のステップでは、必ず無菌条件を維持しなくてもよい。本出願のインスタント食品の製造方法で用いられる前記容器および蓋材はインスタント食品の製造に通常用いられることができる容器、蓋材であれば、その形態、材質、大きさなどが制限されず、用いられることができ、以降行われる加熱にも、変形または損傷しない容器および蓋材であることができる。例えば、前記蓋材は、リードフィルムであることができるが、これに制限されるものではない。
【0049】
本出願のインスタント食品の製造方法は、前記シールされた容器を90℃~125℃の温度で10分~25分間加熱するステップを含む。具体的には、前記加熱温度は、90℃、91℃、92℃、93℃、94℃、95℃、96℃、97℃、98℃、99℃、100℃、105℃、107℃、110℃、112℃および115℃から選択される一つの下限および/または125℃、124℃、123℃、122℃、121℃、120℃、119℃、118℃、117℃、116℃および115℃から選択される一つの上限で構成された範囲の温度であることができる。一例として、90℃~125℃、91℃~125℃、92℃~124℃、93℃~124℃、94℃~123℃、95℃~123℃、95℃~122℃、95℃~121℃、96℃~121℃、97℃~121℃、100℃~120℃、105℃~119℃、107℃~118℃、110℃~115℃、110℃~118℃、110℃~116℃または112℃~116℃の温度で加熱することができるが、これに制限されるものではない。前記殺菌時間は、10分、11分、12分、13分、14分、15分、16分、17分、18分、19分および20分から選択される一つの下限および/または25分、24分、23分、22分、21分および20分から選択される一つの上限で構成された範囲の時間であることができる。一例として、10分~25分、11分~24分、12分~23分、15分~22分、17分~21分、19分~20分、20分~21分、12分~17分、13分~16分、18分~23分、19分~22分または19分~21分間加熱することができるが、これに制限されるものではない。前記温度範囲および前記時間範囲は、固形原材料の種類に応じて変化し得る。
【0050】
前記温度範囲および前記時間に応じて加熱を行う場合、さらなる殺菌効果を示すことができ、より完全な微生物の制御が可能である利点がある。また、前記条件の加熱過程を経ることにより、本出願のインスタント食品またはインスタントご飯は、通常のインスタント食品またはご飯の製造過程により作られる食品またはご飯と類似の水準に達し、摂取に適する食品またはご飯の品質を有することができ、過剰な加熱条件による食品またはご飯の品質の低下を防止し、優れた品質のインスタント食品またはインスタントご飯を製造することができる。
【0051】
すなわち、本出願のインスタント食品の製造方法により製造されるインスタントご飯は、インスタント食品として、調理、保管、貯蔵が容易であり、且つ家庭や飲食店で通常のご飯の調理法により製造されるご飯と類似の食感と味の品質を有することができる。特に、微生物汚染に対して脆弱か殺菌が容易でない固形原材料と液状ソースを用いても、十分な殺菌により微生物の数が制御されることができ、殺菌によるご飯の品質の低下が発生しないインスタントご飯を製造することができる。本出願の製造方法により製造されるインスタントご飯は、殺菌過程を経ても、液状ソースの粘性および糖度が減少されず、好ましい味と食感を示すことができる。
【0052】
前記加熱するステップの温度条件は、通常のレトルト殺菌時の加熱温度よりも低いことができ、具体的には、従来、インスタント食品を製造するに際し通常使用されているレトルト殺菌加熱温度よりも低いことができる。また、前記加熱するステップの温度条件は、通常のご飯の調理過程で食べ物の内部にまで熱を伝達するために行う「蒸らす」時の加熱温度よりも高いことができる。
【0053】
前記加熱するステップは、通常のレトルト装置で、温度および時間条件を前記範囲で設定して行われることができるが、これに制限されるものではない。
【0054】
本出願のインスタント食品の製造方法は、前記加熱するステップの後、冷却および乾燥するステップをさらに含むことができ、製造されたインスタント食品に対する外観および状態を検査するステップおよび/または一つ以上のインスタント食品を包装するステップをさらに含むことができる。前記冷却するステップは、自然風による冷却であることができるが、これに制限されるものではなく、前記検査するステップは、目視検査またはサンプリング検査であることができるが、これに制限されるものではない。
【0055】
2.インスタント食品(インスタントご飯)
本出願のインスタント食品、または本出願のインスタント食品の製造方法により製造されるインスタント食品は、インスタントご飯であることができ、具体的には、ハチミツ薬食がインスタント食品の形態で製造されたことができる。
【0056】
前記ハチミツ薬食は、シールされた容器と、前記容器に含まれた、ナツメ、種実類およびレーズンからなる群から選択される少なくとも一つの原材料、米およびソースにより製造された薬食とを含む、インスタントご飯であって、前記薬食内の米以外の原材料は、前記容器内に含まれた内容物100重量部に対して5重量部~20重量部の含量で含まれ、前記種実類は、前記容器内に含まれた内容物100重量部に対して7重量部~18重量部の含量で含まれ、前記インスタントご飯内の微生物の数は、賞味期限内陰性であることができる。
【0057】
前記米は、白米、黒米、玄米、うるち米およびもち米からなる群から選択される少なくとも一つを含むことができる。
【0058】
前記種実類は、クリ、松の実、かぼちゃの種および落花生からなる群から選択される少なくとも一つであることができる。
【0059】
前記薬食内の米以外の原材料は、前記容器内に充填された内容物100重量部に対して5重量部~20重量部の含量で含まれることができる。
【0060】
前記種実類は、前記容器内に充填された内容物100重量部に対して7重量部~18重量部の含量で含まれることができる。
【0061】
前記うるち米は、本出願のインスタントご飯の製造時に、内容物100重量部に対して10重量部~20重量部の含量で添加されることができる。また、前記もち米は、本出願のインスタントご飯の製造時に、内容物100重量部に対して55重量部~65重量部の含量で添加されることができる。
【0062】
前記クリは、本出願のインスタントご飯の製造時に、内容物100重量部に対して8重量部~18重量部の含量で添加されることができる。また、前記かぼちゃの種は、本出願のインスタントご飯の製造時に、内容物100重量部に対して0.5重量部~3.5重量部の含量で添加されることができる。また、前記レーズンは、本出願のインスタントご飯の製造時に、内容物100重量部に対して1.5重量部~4.5重量部の含量で添加されることができる。また、前記松の実は、本出願のインスタントご飯の製造時に、内容物100重量部に対して0.5重量部~1.5重量部の含量で添加されることができる。
【0063】
前記ハチミツ薬食は、液状のソースをさらに含むことができ、前記ソースは、ハチミツを含むことができる。
【0064】
前記ハチミツ薬食内のご飯の色度は、L値が33.5~36、a値が5.5~6.5、b値が13.5~14.5であることができる。また、前記ハチミツ薬食を700Wの電子レンジで1分~3分、1分30秒~2分30秒または2分の時間の間に加熱した後、測定したハチミツ薬食内の原材料の色度は、L値が27~29、a値が6.5~7、b値が10~11であることができる。
【0065】
前記ハチミツ薬食は、700Wの電子レンジで1分~3分、1分30秒~2分30秒の時間の間に、より具体的には2分間加熱した後、前記容器に含まれた薬食内のご飯を物性分析装置を用いて測定した後の物性のいずれか一つ以上の物性を有することができる:(i)硬度15~35;(ii)弾力性40~60;(iii)付着性25~40;(iv)粘性65~105。
【発明の効果】
【0066】
本出願のインスタント食品の製造方法は、微生物汚染に対して脆弱であり、殺菌が難しい液状ソースを用いてインスタント食品を製造しても、十分な殺菌により、液状ソース内の微生物の数を基準値以下に下げ、且つ殺菌によって液状ソースの品質(例えば、粘性、糖度など)が損傷しないことができ、厳格な殺菌による品質低下の問題が発生せず、味、栄養、食感などが実現され、優れた品質を示すインスタント食品を製造することができるという効果がある。
【0067】
また、通常のインスタント食品の製造方法と比較すると、新たな製造原理を用いることにより、加熱回数を低減して品質の変化を最小化し、無菌条件を維持して、行わなければならない時間またはステップを簡素化することができ、費用と微生物安全の面で有利な利点がある。
【0068】
ただし、本出願の効果は、上記で言及した効果に制限されず、言及されていない他の効果は、下記の記載から当業者が明確に理解することができる。
【発明を実施するための形態】
【0069】
以下、本出願について実施例により詳細に説明する。
【0070】
ただし、下記の実施例は、本出願を具体的に例示するものであり、本出願の内容が下記の実施例によって限定されない。
【0071】
[実施例および比較例]
実施例1:ハチミツ薬食
ハチミツ、醤油、シロップなどの液状ソースと各種原材料を用いて、本出願のインスタント食品の製造方法により実施例1のハチミツ薬食を製造した。具体的には、原材料としては、うるち、もち米、栗の甘露煮、かぼちゃの種、レーズン、松の実およびごま油を用いており、水で洗浄した原材料にトウモロコシ胚芽油を添加して容器に充填した。各原材料の配合比は、下記表1に記載した。充填された容器をRIC装置(株式会社日阪製作所製)に移動させ、真空状態で、130℃の温度で5分30秒間スチーム加圧殺菌を行った。前記殺菌条件は、F0値が4以上である殺菌条件に該当する。
【0072】
【表1】
【0073】
原材料の殺菌が完了した後、桂皮濃縮液、濃口醤油、ハチミツ、シュガーシロップ、黒砂糖、オリゴ糖HFおよび精製塩を混合して製造した塩度0.9%、糖度28brixの液状ソースを殺菌し、前記容器に添加した。前記液状ソースは、直接スチーム噴射加熱器(direct steam injection heater、DSI)を用いて、温度130℃のスチームをソースに直接噴射してソース温度を130℃に上げた状態で6分間維持し、殺菌を行った。液状ソースを添加した後、容器を蓋材でシールして、容器内に外部の微生物や異物が入らないように密封した。シールされた容器は、レトルト殺菌装置に移動させ、115℃の温度、20分の条件を設定して加熱することで、実施例4のインスタントご飯を製造した。前記装置の温度および時間条件は、通常のレトルト殺菌条件と比較すると、相対的にあまり過酷ではない条件に該当する。
【0074】
比較例1および比較例2:ハチミツ薬食
前記表1による配合比で混合した原材料と液状ソースを用いて、比較例1および比較例2のハチミツ薬食を製造した。前記実施例1のハチミツ薬食の製造方法と同じ方法でインスタントご飯を製造するが、一部の条件を異ならせた。
【0075】
比較例1は容器のシールステップまでは実施例1と同じ方法を行った後、液状ソースは100℃で10分以上加熱することで、一般的な液殺菌方式により殺菌して添加した。そして、実施例1の加熱ステップの代わりに、シールされた容器をレトルト殺菌装置で、123℃の温度で18分間加熱し、通常のレトルト加熱殺菌条件で加熱し、インスタントご飯を製造した。
【0076】
比較例2の場合、液状ソースは、前記実施例1と同じ条件で、直接スチーム噴射加熱器(DSI)を用いて殺菌を行っているが、原材料は、98℃で20分間加熱して殺菌を行うことで、F04未満の条件で殺菌を行った。液状ソースの添加後、容器をシールした後は、実施例1の加熱ステップの代わりに、シールされた容器をレトルト殺菌装置で123℃の温度で18分間加熱し、通常のレトルト加熱殺菌条件で加熱してインスタントご飯を製造した。
【0077】
[実験例1]
[1-1]ハチミツ薬食の色度色差の比較
ハチミツ、醤油などの液状ソースを添加して製造された実施例1、比較例1および比較例2のインスタントご飯(ハチミツ薬食)の蓋材を除去し、その色を測定して比較した。そして、前記実施例1、比較例1および比較例2のインスタントご飯を電子レンジ(700W)を用いて2分間加熱した後、蓋材を除去し、ご飯部分の色を測定して比較した。前記色は、Konica minolta社製の機器を用いて、L、a、b値を測定しており、それぞれ3回ずつ測定した後、これらの平均値をそれぞれ下記表2および表3に示した。
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
結果、前記表2および表3から確認することができるように、本出願の実施例1のハチミツ薬食の場合、L値が相対的に低く、b値は高く測定された。本出願の製造方法により製造される実施例1のハチミツ薬食は、比較例1および2のハチミツ薬食とは色の面で区分されることができる。
【0081】
[1-2]ハチミツ薬食の炊飯食味分析
前記実施例1、比較例1および比較例2のインスタントご飯(ハチミツ薬食)を電子レンジにより加熱したものを対象に、食味計(Tensipresser My Boy 2 system、Taketomo Electric Co.,日本)を用いて、ご飯部分の外観、硬度、粘性、バランス、食味値を測定し、各インスタントご飯の炊飯食味数値に対して下記表4に示した。
【0082】
【表4】
【0083】
結果、本出願の製造方法により製造された実施例1のインスタントご飯は、他の方法により製造された比較例のインスタントご飯と比較すると、硬度および粘度数値が最も高く測定された。
【0084】
[1-3]ハチミツ薬食の物性分析
前記実施例1、比較例1および比較例2のインスタントご飯(ハチミツ薬食)を電子レンジにより加熱したものを対象に、ご飯部分の硬度、弾力性、付着性および粘度を物性分析装置(Tensipresser Analyzer、MyBoy、TAKETOMO Electric Incorporated)を用いて前記実験例1-3と同じ方法で測定して下記表5に示す。
【0085】
【表5】
【0086】
結果、本出願の製造方法により作られた実施例1のハチミツ薬食の場合、1~5個のサンプルの測定結果値が相対的に均一で偏差が大きくなかったが、比較例1および比較例2のハチミツ薬食の場合、各サンプル別に、物性の測定値の偏差が非常に大きいことが確認された。
【0087】
特に、比較例1、2のハチミツ薬食の硬度および弾力性測定数値は、その偏差が非常に大きく示されるが、比較例1および2のハチミツ薬食の物性数値偏差がこのように大きく示されることは、強いレトルト加熱殺菌処理によって発生する組織感の偏差のためであると予想される。これは、もち米成分の含量が高い比較例1、2のような薬食で著しく現れる特性であり、実施例1による薬食は、相対的に物性の偏差が大きくなく、本出願の製造方法を用いる場合、一貫した組織感および品質を有するインスタントご飯を製造することができることを確認することができた。
【0088】
[1-4]ハチミツ薬食の官能評価
前記実施例1、比較例1および比較例2のインスタントご飯(ハチミツ薬食)を電子レンジにより加熱した後、訓練された専門パネルによる各種の官能品質の評価を実施した。官能品質は、インスタントご飯の色嗜好度、異味/異臭の強度、全般的な味嗜好度、組織感嗜好度および粘度嗜好度を評価しており、これを下記表6に示した。前記官能品質の評価基準は、以下のとおりである。
【0089】
[評価基準]
色嗜好度:1点を最小値、5点を最大値とし、色選好度が高いほど点数が高いことを意味する。
異味/異臭強度:1点を最小値、5点を最大値とし、異味/異臭が高いほど点数が高いことを意味する。
全般的味嗜好度:1点を最小値、5点を最大値とし、全般的な味をまとめて評価する項目であり、全体的に良いほど点数が高いことを意味する。
組織感嗜好度:1点を最小値、5点を最大値とし、組織感選好度が高いほど点数が高いことを意味する。
粘性嗜好度:1点を最小値、5点を最大値とし、粘性選好度が高いほど点数が高いことを意味する。
【0090】
【表6】
【0091】
結果、実施例1のハチミツ薬食は、比較例のハチミツ薬食と比較すると、色嗜好度、全般的な味嗜好度、組織感嗜好度、および粘度嗜好度がいずれも最も高い水準で測定され、他の方法により製造されたご飯と比較すると、より優れた官能品質を示すことを確認することができた。
【0092】
[実験例2]
ハチミツ薬食の微生物の数の確認
本出願のハチミツ薬食製品で完全な殺菌が行われたか否かを確認するために、各ステップ別に、原材料または製品内に含まれた微生物の数を測定した。
【0093】
実施例1によるハチミツ薬食を対象に、先ず、その原材料それぞれに対する一般細菌の数と耐熱性菌の数を測定した。うるち、もち米、アワ、かぼちゃの種、レーズンおよび松の実を対象に、各細菌の数を測定しており、これらを混合した混合固形物のサンプルで微生物の数を測定した。
【0094】
結果、殺菌するステップを経る前の原材料状態では、一般細菌が所定の水準以上存在し、インスタントご飯を製造するための原材料の混合固形物には、少なくとも550,000cfu/ml以上の一般細菌が存在することが測定された。
【0095】
前記原材料を容器に含んでから、実施例1によってハチミツ薬食を製造する過程中に、RIC装置で130℃の温度で、5分30秒間スチーム加圧殺菌を行った後、MCT(microbiology challenge test)により殺菌効果を確認した。MCTは、製品の実際工程中に目的菌の制御可否を確認するために人為的に微生物を接種して推移を観察することで、製品の工程および流通安定性の具備可否を判断する方法である。一般細菌としては、F0約4以下の条件で死滅するBacillus subtilis(ATCC 5230)が10cfu/ml水準で存在するオレンジ色のカプセル(MesaLabs SASU-302)を使用しており、耐熱性菌としては、F0約21以下で死滅するGeobacillus stearotrhermophilus(ATCC 7953)が10cfu/ml水準で存在する紫色のカプセル(MesaLabs SA-608)を使用した。前記カプセルを用いて、RIC装置で殺菌した前記原材料を対象に、それぞれオレンジ色のカプセルは35℃、紫色のカプセルは55~60℃の温度で最大48時間培養した後、色の変化を確認した。色の変化がない場合陰性と判定し、黄色に変色した時には陽性と判定した(表7)。
【0096】
結果、RIC装置を用いたスチーム加圧殺菌結果、殺菌の前まで原材料に存在していた微生物がすべて死滅し、十分な殺菌効果が示されることを確認することができた。
【0097】
【表7】
【0098】
さらに、スチーム加圧殺菌の後、加水、シールおよび追加加熱過程を経てインスタントご飯最終製品を製造し、これを対象に、細菌発育実験を行った。細菌発育実験は、前記インスタントご飯製品を35℃で10日間貯蔵した後、サンプリングして、一般細菌および耐熱性細菌の発育可否を当業界の通常の測定方法(食品医薬品安全処の一般試験法による細菌発育試験による)に準じて、培養器で各最終製品のサンプルを35~37℃の温度で10日以上貯蔵した後、サンプルから得られた試料を希釈液に均質化し、培養培地で、35~37℃で45時間~51時間培養した後、細菌増殖可否を測定した。
【0099】
結果、下記表8のように、12個のすべてのインスタントご飯のサンプルから細菌の増殖が全く観察されず、陰性であると示され、原材料に微生物が多量存在しているにもかかわらず、本出願の製造方法により製造されるインスタントご飯は、十分な殺菌により、微生物がすべて死滅したことを確認することができた。
【0100】
【表8】
【0101】
以上、本出願の代表的な実施例を例示的に説明しているが、本出願の範囲は、上記のような特定の実施例にのみ限定されず、当該分野において通常の知識を有する者であれば、本出願の請求の範囲に記載の範疇内で適宜変更が可能である。
【国際調査報告】