(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-09
(54)【発明の名称】基準マーカ設計、基準マーカ、走査型プローブ顕微鏡装置、及びプローブチップの位置を較正する方法
(51)【国際特許分類】
G01Q 40/02 20100101AFI20240402BHJP
【FI】
G01Q40/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566731
(86)(22)【出願日】2022-04-28
(85)【翻訳文提出日】2023-12-20
(86)【国際出願番号】 NL2022050229
(87)【国際公開番号】W WO2022231427
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523299750
【氏名又は名称】ニアフィールド インスツルメンツ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【氏名又は名称】加藤 由加里
(72)【発明者】
【氏名】サデギアン マルナニ,ハメド
(72)【発明者】
【氏名】カリーニン,アーセニー
(57)【要約】
本発明は、基準マーカ設計、基準マーカ、走査型プローブ顕微鏡装置、及びプローブチップの位置を較正する方法に向けられている。該基準マーカ設計は、位置決め基準を提供する為の基準マーカとして使用され得、及び、第1のセンサに対する該基準マーカの相対位置の決定を可能にする為の少なくとも1つの第1の基準要素を含む少なくとも1つの第1の基準パターンを備えている。該第1のセンサは、第1の寸法スケールで動作するように構成されている。該基準マーカは、第2の基準パターンを更に備えており、それは、複数のマーキングの規則的配置を含み、該マーキングは、表面座標情報をその中に符号化するように構造化又は形状決めされている。このことにより、第2のセンサに対する各マーキングの相対位置の決定を可能にし、該第2のセンサは、第1の寸法スケールよりも小さい第2の寸法スケールで動作するように構成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置決め基準を提供する為の基準マーカとして使用する為の基準マーカ設計であって、前記基準マーカは、第1のセンサに対する前記基準マーカの相対位置の決定を可能にする為の少なくとも1つの第1の基準要素を含む少なくとも1つの第1の基準パターンを備えており、ここで、第1のセンサは、第1の寸法スケールで動作するように構成されており、
ここで、前記基準マーカは、第2の基準パターンを更に備えており、ここで、前記第2の基準パターンは複数のマーキングの規則的配置を含み、前記マーキングは、第2のセンサに対する各マーキングの相対位置の決定を可能にする為に、表面座標情報をその中に符号化するように可変の寸法を有し、前記第2のセンサは、第2の寸法スケールで動作するように構成されており、前記第2の寸法スケールは前記第1の寸法スケールよりも小さい、
前記基準マーカ設計。
【請求項2】
前記第2の基準パターンは、マーキングの第1の規則的配置とマーキングの第2の規則的配置とを含み、
ここで、マーキングの前記第1の規則的配置は、前記基準マーカの前記表面に対して平行な第1の方向に関連付けられた第1の表面座標の表面座標情報をその中に符号化するように構造化又は形状決めされており、及び、
ここで、マーキングの前記第2の規則的配置は、前記基準マーカの前記表面に対して平行な第2の方向に関連付けられた第2の表面座標の表面座標情報をその中に符号化するように構造化又は形状決めされている、
請求項1に記載の基準マーカ設計。
【請求項3】
デカルト座標系を提供する為に、前記第1の方向は前記第2の方向に対して横断し;又は、
極座標系を提供するように、前記第1の方向は、中心点から外側に延在する半径方向であり、及び前記第2の方向は、前記中心点の周りに円形に延在する角度方向である、
のうちの少なくとも1つを有する、請求項2に記載の基準マーカ設計。
【請求項4】
複数のマーキングの前記第1の規則的配置又は第2の規則的配置のうち少なくとも一方について、前記複数のマーキングの各々は、2進値の並びをその中に符号化する為の所定の太さを有するバーに従って提供され、ここで、前記複数のバーは、延在方向に延在し、及び配置方向において互いに並べて配置されている、請求項2又は3に記載の基準マーカ設計。
【請求項5】
前記延在方向と前記配置方向とは、互いに対してある角度にあり、ここで、前記角度は0ラジアンよりも大きく、及び前記角度は、π/2ラジアンよりも小さいか又はそれに等しく、例えばπ/2ラジアンの角度又は傾斜角、である、請求項4に記載の基準マーカ設計。
【請求項6】
前記延在方向及び前記配置方向のうちの少なくとも一方は、前記第1の方向に対して平行であり、並びに前記延在方向及び前記配置方向のうちの他方は前記第2の方向に対して平行である、請求項4又は5に記載の基準マーカ設計。
【請求項7】
マーキングの前記第1の規則的配置については、前記延在方向が前記第1の方向に対して平行であり、及び前記配置方向が前記第2の方向に対して平行であり、並びに、
マーキングの前記第2の規則的配置については、前記配置方向が前記第1の方向に対して平行であり、及び前記延在方向が、前記第1の方向に対して傾斜角にある、
請求項4又は5に記載の基準マーカ設計。
【請求項8】
前記マーキングは、前記基準マーカが作成されるところの基準表面の溝又は隆起として設計され、ここで、各溝又は隆起は、前記表面から一段高くなっている又は一段低くなっている1以上の側壁を備えており、ここで、前記1以上の側壁の少なくとも一部は、前記側壁又は各側壁の上部部分が、前記側壁又は各側壁の下部部分に対して張り出すように前方に傾く形状である、
請求項1~7のいずれか1項に記載の基準マーカ設計。
【請求項9】
一方向又は二方向に可変寸法を有する前記マーキングが提供され、ここで、前記座標情報はこれらの寸法の変化で符号化される;又は、
前記マーキングは長方形の規則的なパターンを形成し、ここで、前記座標情報をデカルト座標として符号化する為に、幅は1つの直交する方向に徐々に増加し、及び高さは更に直交する方向に徐々に増加する;
前記マーキングは水平線と垂直線とのグリッドを形成し、ここで、座標情報を符号化する為に、線の太さが徐々に増加する、
のうちの少なくとも1つを有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の基準マーカ設計。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の基準マーカ設計を備えている基準マーカ。
【請求項11】
前記少なくとも1つの第1の基準パターンは、光学センサを使用して感知されるように構成されており、及びここで、前記少なくとも1つの第2の基準パターンは、走査型プローブ顕微鏡装置のプローブチップを使用して前記基準マーカを備えている表面の端から端まで前記プローブチップを走査することに従って感知されるように構成されている、請求項10に記載の基準マーカ。
【請求項12】
前記マーキングは、前記基準マーカが作成されるところの基準表面の溝又は隆起に従って提供され、ここで、各溝又は隆起は、前記表面から一段高くなっている又は一段低くなっている1以上の側壁を備えており、ここで、前記1以上の側壁の少なくとも一部は、前記側壁又は各側壁の上部部分が、前記側壁又は各側壁の下部部分に対して張り出すように前方に傾く形状である、請求項10又は11に記載の基準マーカ。
【請求項13】
測定フレームと、少なくとも1つのプローブヘッドと、基体キャリアとを備えている走査型プローブ顕微鏡装置であって、前記基体キャリアは、基体表面を有する基体を中に支持するように構成されており、ここで、前記少なくとも1つのプローブヘッドは、カンチレバーとプローブチップとを備えているプローブを備えており、前記走査型プローブ顕微鏡装置は、前記プローブチップを前記基体表面と接触させるように、及び前記プローブヘッド又は前記基体キャリアのうちの少なくとも一方に作用するアクチュエータを使用して、前記プローブヘッドと前記基体キャリアとを互いに対して移動させるように構成されており、
ここで、前記基体キャリア又は前記測定フレームのうちの少なくとも一方は基準表面を備えており、前記基準表面は前記プローブチップによって走査可能であり、及び前記基準表面は、請求項1~9のいずれか1項にキサの基準マーカ設計を有する基準マーカを含んでおり、
前記プローブヘッドは、第1の寸法スケールで動作するように、及び第1のセンサに対する前記基準マーカの相対位置を決定する為に前記第1の基準パターンを感知するように構成された前記第1のセンサを更に備えており、並びに、
ここで、前記第1の寸法スケールよりも小さい第2の寸法スケールで動作するように構成された第2のセンサが、前記プローブチップによって形成されている、
前記走査型プローブ顕微鏡装置。
【請求項14】
前記装置は複数のプローブヘッドを備えており、ここで、各プローブヘッドは、前記第1のセンサと夫々の前記プローブヘッドの前記プローブチップによって形成される前記第2のセンサとを少なくとも備えており、前記走査型プローブ顕微鏡装置は、各プローブヘッドを前記基体表面に相対的に配置するように構成されており、前記走査型プローブ顕微鏡装置は、各プローブヘッドを所望の位置で前記基体に相対的に位置決めする為の座標基準を含む位置決め基準板を備えている、請求項13に記載の前記走査型プローブ顕微鏡装置。
【請求項15】
走査型プローブ顕微鏡装置内でプローブチップの位置を較正する方法であって、前記走査型プローブ顕微鏡装置は、測定フレームと、少なくとも1つのプローブヘッドと、基体キャリアとを備えており、前記基体キャリアは、基体表面を有する基体をその中に支持するように構成されており、前記少なくとも1つのプローブヘッドは、カンチレバーと前記プローブチップとを備えているプローブを備えており、ここで、前記測定フレーム又は前記基体キャリアのうちの少なくとも一方は、前記請求項1~9のいずれか1項に記載の基準マーカ設計を備えた基準マーカを表面上に含む基準表面を備えており、
ここで、前記プローブヘッドは、第1の寸法スケールで動作するように構成された第1のセンサを更に備えており、第2のセンサが前記プローブチップによって形成され、それによって、前記第2のセンサは、前記第1の寸法スケールよりも小さい第2の寸法スケールで動作するように構成されており;
ここで、前記方法は、前記第1のセンサからセンサ信号を取得すること、ここで、前記センサ信号は、第1の基準パターンの少なくとも一部を含む前記基準マーカの少なくとも一部の可視化を可能にする;
前記センサ信号に基づいて前記第1の基準パターンを分析することによって、前記第1のセンサに対する前記基準マーカの相対位置を、コントローラを使用して決定すること;並びに、
少なくとも1つの走査方向に前記プローブチップを用いて第2の基準パターンを、前記プローブヘッドを使用して走査して、第2の基準パターンに対する前記プローブチップの相対位置をそれから決定すること
の工程を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置決め基準(positioning reference)を提供する為の基準マーカとして使用する為の基準マーカ設計に向けられている。本発明は更に、上記設計に従う基準マーカと、そのような基準マーカを備えている走査型プローブ顕微鏡システムとに向けられている。
【背景技術】
【0002】
走査型プローブ顕微鏡(SPM:scanning probe microscope)、例えば原子間力顕微鏡(AFM:atomic force microscope)、は、プローブチップ(probe tip)と基体表面(substrate surface)との間に断続的に又は連続的に接触を確立しながら、該プローブチップを該表面に相対的に走査することに従って動作する。これは、該基体の該表面上のナノメートルサイズの特徴の非常に精密な可視化を可能にするが、該プローブチップと該表面との間の頻繁な又は連続的な接触が、該プローブチップを摩耗させる。それ故に、該原子間力顕微鏡の要求される精度を保証する為に、該プローブチップの頻繁な交換が必要となる。
【0003】
該プローブチップの取り替えは非常に正確に行われうるが、各チップの取り替えは典型的には、該チップの正確な位置のおよそ10μm~およそ50μmの不確定性が生じる結果となる。使用時に該プローブチップで走査されるべき基体上の関心点を正確に特定することができるように、該プローブチップの位置は、はるかに高い精度で知られなければならない。
【0004】
該プローブチップの正確な位置を求めるようにシステムを較正する為に、1つの可能性は、既知の表面特徴を持つ基準表面(reference surface)を走査するものである。基体、例えばウェーハ、は、その位置及び向きを確立する為の基準マーカを備えている。これらの基準マーカは、プローブチップの較正をも可能にしうる。該基準マーカの一部を走査し、走査されたエリアを可視化することにより、コントローラが、可視化された該基準の該一部を解像し、それにより該プローブチップの位置を該基準マーカの位置に関連付けうる。しかしながら、産業用途には、該プローブチップの較正は、チップの取り替えに貴重な時間を費やしすぎないように、正確且つ迅速に行われる必要がある。上記の較正手順は、フル2D像を測定し、得られた像を分析することを必要とし、従って実施する為に貴重な時間を犠牲にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、較正方法が正確且つ迅速に行われることを可能にする基準マーカ設計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この為に、位置決め基準を提供する為の基準マーカとして使用する為の基準マーカ設計が本明細書で提供され、該基準マーカは、第1のセンサに対する該基準マーカの相対位置の決定を可能にする為の少なくとも1つの第1の基準要素を含む少なくとも1つの第1の基準パターンを備えており、ここで、該第1のセンサは、第1の寸法スケールで動作する為に構成されており、ここで、該基準マーカは、第2の基準パターンを更に備えており、ここで、該第2の基準パターンは複数のマーキングの規則的配置を含み、該マーキングは、第2のセンサに対する各マーキングの相対位置の決定を可能にする為に、表面座標情報をその中に符号化するように構造化又は形状決めされており、該第2のセンサは、第2の寸法スケールで動作するように構成されており、該第2の寸法スケールは該第1の寸法スケールよりも小さい。
【0007】
本発明の該基準マーカ設計は、システム内のプローブチップ位置の決定に関して二重の機能性を提供する。該第1の基準パターンを使用して、上記の該第1のセンサとして適用される光学顕微鏡又はセンサにより、該システム内の該基準の正確な位置が確立されることができる。例えば、該基準が該システムの測定フレームに固定された基準表面上に位置しているとすると、SPMシステム内での該基準の正確な位置が既知となる。これは、この位置は使用中に変化せず、それ故に該SPMシステムの製造者に従って正確に決定されることができる為である。このデータは、該システムの設置時に利用可能にされ得、そのシステムに排他的に関連付けられる。該第1のセンサ、すなわちこの例の該光学センサ、を使用して、少なくとも1つの第1の基準要素が、該第1のセンサに対する該基準マーカの相対位置の決定を可能にする。該第1のセンサは、プローブヘッドにも関係付けられ、従って、その位置は、新たに設置されたプローブチップに相対的に固定されている(しかし未知である)。主要な利点が該第2の基準パターンに従って得られる。この第2の基準パターンは、例えば表面座標情報をその中に符号化するように構造化又は形状決めされたマーキングの規則的配置を備えている。該座標情報の解像度は、該マーキングが製造されることができる精度に従ってのみ制限される。これは、基体の表面上で走査される必要がある表面特徴と同じ寸法スケールで、困難なく行われることができる。従って、ナノメートル規模で座標系の座標情報を符号化しているマーキングの規則的配置がこのようにして提供され得、それにより、該基準マーカ内の基準座標系を任意の望まれる解像度で提供することを可能にする。これらのマーキングを横切って該プローブチップを走査することにより、該基準内での該プローブチップの正確な位置が確立されることができる。該基準の位置は正確に知られているので、該システムに対する及び該第1のセンサに対する該プローブチップの位置も既知となる。
【0008】
任意的に、該プローブヘッドの正確な位置は更に、該基体表面に相対的に走査ヘッドの位置決めにも使用される座標基準グリッド板を介して確立されうる。このように、該SPMシステム内での該基準の正確な位置に関係なく、該プローブチップ位置は、該第1のセンサから得られる情報を介して該座標基準グリッド板に相対的に、正確に較正されることができる。その場合の該基準は、該システム内の既知の固定された位置にあることは必要としなくなり、その可動部分、例えば基体キャリア又は更には該基体表面、にあることができる。
【0009】
幾つかの実施態様において、該第2の基準パターンは、マーキングの第1の規則的配置とマーキングの第2の規則的配置とを含み、ここで、マーキングの該第1の規則的配置は、該基準マーカの該表面に対して平行な第1の方向に関連付けられた第1の表面座標の表面座標情報をその中に符号化するように構造化又は形状決めされており、及び、ここで、マーキングの該第2の規則的配置は、該基準マーカの該表面に対して平行な第2の方向に関連付けられた第2の表面座標の表面座標情報をその中に符号化するように構造化又は形状決めされている。これらの実施態様において、2つの方向の表面座標が符号化されて、デカルト座標系、極座標系、又は任意の他の所望の座標系を提供することを可能にしうる。例えば、2つの方向に可変の寸法を有するマーキングを設けることが可能であり、その場合、該座標情報は、それら寸法の違いとして符号化される。幅が一方の直交方向に徐々に増大し、高さが他方の直交方向に徐々に増大していく、長方形の規則的パターンは、デカルト座標系のX座標及びY座標を符号化することを可能にする。同様に、長方形の代わりに、異なる形状が適用されうる。例えば、水平線及び垂直線を有し、該線の太さが上記の該長方形と同じように徐々に増していく、グリッドがまた適用されうる。更に、水平線及び垂直線からなる他の線パターンが可能であり、又は、ドットの固有の配置がまた、同様にしてこの情報を符号化しうる。
【0010】
幾つかの実施態様において、上記で言及されたように、デカルト座標系を提供する為に、該第1の方向は該第2の方向に対して横断する。他の又は更なる実施態様において、極座標系を提供するように、該第1の方向は、中心点から外側に延在する半径方向であり、及び該第2の方向は、該中心点の周りに円形に延在する角度方向である。
【0011】
幾つかの実施態様において、複数のマーキングの該第1の規則的配置又は第2の規則的配置のうち少なくとも一方について、該複数のマーキングの各々は、2進値の並びをその中に符号化する為の所定の太さを有するバーに従って提供され、ここで、該複数のバーは、延在方向に延在し、及び配置方向において互いに並べて配置されている。該延在方向と該配置方向とは、異なる方向でありうる。これの例は上記ですでに解説されており、例えば異なる太さの該水平線及び該垂直線を説明した該例である。そのような線は、該第1の方向に延在し、該第2の方向にわたって規則的配置を形成する。しかしながら、これらの実施態様において、該延在方向及び該配置方向は、上記で参照された該第1の方向及び該第2の方向に対応する必要はない。該マーキングが例えば上記の該第1の方向に規則的に配置され、及び該マーキングが該第1の方向に対して斜めに延在することがまた可能である。
【0012】
例えば、該延在方向が該配置方向とπ/4ラジアンの角度をなし、該配置方向が該第1の方向に対応するとする。このようにして、該斜めのマーキングにわたって該第2の方向に走査することにより、該第1の方向における正確な座標の座標情報が得られることができる。各2つ、3つ、4つ、又は5つの連続するマーキングが太さの一意の組み合わせを形成するように各マーキングの該太さを一意に異ならせることにより、座標情報が正確に符号化されうる。この符号化方式は、該基準マーカの該設計において、例えば、間に該斜めのマーキングを有して、該第2の方向に並んだ配置で該第1の方向に延在する貫通線に従って交互にされうる。各自の該第2の方向の位置に応じて該貫通線の太さを異ならせることにより、該第2の方向の座標がそれらの中に符号化されることができる。このようにして、単一の方向(例えば、該第2の方向)への該基準の走査が、該第1及び該第2の方向の両方の座標を提供する。ここで、小型の設計を得る為に、該斜めのマーキング又は貫通線間の間隔距離も、同様にして異ならされうる。従って、これに関して「マーキングの規則的配置」の語「規則的」は、全てが同じ方向に延在するマーキング又は線の規則的な発生を云い、これらマーキング又は貫通線の間の規則的な間隔距離を定めるという意味に限定されて解釈されてはならない。該間隔距離は必要であれば固定して選定されうるが、可変の間隔距離は、表面積当たりにより多くの情報を符号化することを可能にし、従って、有利な実施態様を提供する。そのようなパターンの例は、後に説明される下記の更なる記載、及び図面において見出だされうる。
【0013】
上記を鑑みて、幾つかの実施態様において、該延在方向と該配置方向とは、互いに対してある角度にあり、ここで、該角度は0ラジアンよりも大きく、及び該角度は、π/2ラジアンよりも小さいか又はそれに等しく、例えばπ/2ラジアンの角度又は傾斜角、である。該角度は、π/2ラジアン又はπ/4ラジアンでありうるが、上記で言及された範囲内の任意の所望の値を有しうる(例えば、π/6ラジアン、π/5ラジアン、π/3ラジアン、5π/12ラジアン、又は1,316ラジアン、望まれる任意の角度)。選択される該角度は、該配置方向における情報密度を、従って、ある程度は、例えば実現可能な解像度を、決定する。
【0014】
幾つかの実施態様において、該延在方向及び該配置方向のうちの少なくとも一方は、該第1の方向に対して平行であり、並びに該延在方向及び該配置方向のうちの他方は該第2の方向に対して平行である。水平方向及び垂直方向への線の規則的パターンが、これの一つの例である。
【0015】
幾つかの実施態様において、マーキングの該第1の規則的配置については、該延在方向が該第1の方向に対して平行であり、及び該配置方向が該第2の方向に対して平行であり、並びに、マーキングの該第2の規則的配置については、該配置方向が該第1の方向に対して平行であり、及び該延在方向が、該第1の方向に対して傾斜角にある。これは、単一の方向に走査されて2つの方向の座標を提供することができる、上記で言及されたパターンを表す。
【0016】
幾つかの実施態様に従うと、該マーキングは、該基準マーカが作成されるところの基準表面の溝又は隆起として設計され、ここで、各溝又は隆起は、該表面から一段高くなっている又は一段低くなっている1以上の側壁を備えており、ここで、該1以上の側壁の少なくとも一部は、該側壁又は各側壁の上部部分が、該側壁又は各側壁の下部部分に対して張り出すように前方に傾く形状である。原子間力顕微鏡を使用して得られる像は、該プローブチップの形状に強く依存する。AFM像を適正に再構成できるように、該システムを該チップの該形状について較正することも望ましい。上記で言及された実施態様において、溝又は隆起の該側壁を、例えば張り出す部分又は縁部を作り出すべく前方に傾くように設計することにより、該システムは、該プローブチップの該形状について較正されることができる。該張り出す縁部に起因して、縁部から滑り降りるとき、感知される隆起プロファイルは、該プローブチップの該形状に従ってのみ決定されることになる。このプロファイルは、該チップの傾斜する縁部に従うものであり、従って、該プローブチップの該形状の精密な像を提供する。
【0017】
更なる観点において、上記の第1の観点に従う基準マーカ設計を備えている基準マーカが提供される。その幾つかの実施態様において、該少なくとも1つの第1の基準パターンは、光学センサを使用して感知されるように構成されており、及びここで、該少なくとも1つの第2の基準パターンは、走査型プローブ顕微鏡装置のプローブチップを使用して該基準マーカを備えている表面の端から端まで該プローブチップを走査することに従って感知されるように構成されている。これらの基準マーカは、有利には、上記で説明されたようにSPMシステムでプローブチップの位置を較正する為に適用されうる。
【0018】
第3の観点に従うと、測定フレームと、少なくとも1つのプローブヘッドと、基体キャリアとを備えている走査型プローブ顕微鏡装置が提供され、該基体キャリアは、基体表面を有する基体を中に支持するように構成されており、ここで、該少なくとも1つのプローブヘッドは、カンチレバーとプローブチップとを備えているプローブを備えており、該走査型プローブ顕微鏡装置は、該プローブチップを該基体表面と接触させるように、及び該プローブヘッド又は該基体キャリアのうちの少なくとも一方に作用するアクチュエータを使用して、該プローブヘッドと該基体キャリアとを互いに相対的に移動させるように構成されており、ここで、該基体キャリア又は該測定フレームのうちの少なくとも一方は基準表面を備えており、該基準表面は該プローブチップによって走査可能であり、及び該基準表面は、該第1の観点に従う基準マーカ設計を有する基準マーカを含んでおり、該プローブヘッドは、第1の寸法スケールで動作するように、及び第1のセンサに対する該基準マーカの相対位置を決定する為に該第1の基準パターンを感知するように構成された該第1のセンサを更に備えており、並びに、ここで、該第1の寸法スケールよりも小さい第2の寸法スケールで動作するように構成された第2のセンサが、該プローブチップによって形成されている。
【0019】
例えば、幾つかの実施態様において、該装置は複数のプローブヘッドを備えており、ここで、各プローブヘッドは、該第1のセンサと夫々の該プローブヘッドの該プローブチップによって形成される該第2のセンサとを少なくとも備えており、該走査型プローブ顕微鏡装置は、各プローブヘッドを該基体表面に相対的に配置するように構成されており、該走査型プローブ顕微鏡装置は、各プローブヘッドを所望の位置で該基体に相対的に位置決めする為の座標基準を含む位置決め基準板を備えている。そのようなシステムにおいて、プローブの交換及びチップの取り替えは更に頻繁であり、請求される本発明の利点が更に明白になる。
【0020】
幾つかの実施態様において、該第1のセンサは、光学センサ、例えば、0.25マイクロメートルよりも大きい寸法を有する特徴を可視化する為にマイクロメートル以下の規模で動作するように構成された顕微鏡センサ、である。
【0021】
第4の観点に従うと、走査型プローブ顕微鏡装置内でプローブチップの位置を較正する方法が提供され、該走査型プローブ顕微鏡装置は、測定フレームと、少なくとも1つのプローブヘッドと、基体キャリアとを備えており、該基体キャリアは、基体表面を有する基体をその中に支持するように構成されており、該少なくとも1つのプローブヘッドは、カンチレバーと該プローブチップとを備えているプローブを備えており、ここで、該測定フレーム又は該基体キャリアのうちの少なくとも一方は、該第1の観点に従う基準マーカ設計を備えた基準マーカを表面上に含む基準表面を備えており、ここで、該プローブヘッドは、第1の寸法スケールで動作するように構成された第1のセンサを更に備えており、第2のセンサが該プローブチップによって形成され、それによって、該第2のセンサは、該第1の寸法スケールよりも小さい第2の寸法スケールで動作するように構成されており、ここで、該方法は、該第1のセンサからセンサ信号を取得すること、ここで、該センサ信号は、第1の基準パターンの少なくとも一部を含む該基準マーカの少なくとも一部の可視化を可能にする;該センサ信号に基づいて該第1の基準パターンを分析することによって、該第1のセンサに対する該基準マーカの相対位置を、コントローラを使用して決定すること;並びに、少なくとも1つの走査方向に該プローブチップを用いて第2の基準パターンを、該プローブヘッドを使用して走査して、第2の基準パターンに対する該プローブチップの相対位置をそれから決定することの工程を含む。
【0022】
本発明は、添付図面を参照して、その幾つかの具体的実施態様の説明に従って更に明らかにされる。詳細な説明は、本発明の可能な実装の例を提供するものであり、範囲下に入る実施態様のみを説明するものとみなされるべきでない。本発明の範囲は特許請求の範囲において定められ、この説明は、本発明に対して限定的なものではなく例示的なものとみなされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1A】
図1Aは、本発明の一つの実施態様に従う基準マーカ設計が適用されることができる較正方法を模式的に示す。
【
図1B】
図1Bは、本発明の一つの実施態様に従う基準マーカ設計が適用されることができる較正方法を模式的に示す。
【
図1C】
図1Cは、本発明の一つの実施態様に従う基準マーカ設計が適用されることができる較正方法を模式的に示す。
【
図2】
図2は、本発明の一つの実施態様に従う基準マーカ設計を模式的に示す。
【
図3A】
図3Aは、
図2に示されている該実施態様に従う基準マーカ設計のいくらかの細部を示す。
【
図3B】
図3Bは、
図2に示されている該実施態様に従う基準マーカ設計のいくらかの細部を示す。
【
図4】
図4は、本発明の更なる実施態様に従う基準マーカ設計を模式的に示す。
【
図5A】
図5Aは、
図4に示されている該基準マーカ設計のいくらかの詳細を模式的に示す。
【
図5B】
図5Bは、
図4に示されている該基準マーカ設計のいくらかの詳細を模式的に示す。
【
図5C】
図5Cは、
図4に示されている該基準マーカ設計のいくらかの詳細を模式的に示す。
【
図6】
図6は、本発明の一つの実施態様に従う基準マーカ設計の一部の断面を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1A~
図1Cは、走査型プローブ顕微鏡システム1を較正する為の較正方法を示す。この較正方法は、とりわけ、本発明に従うプローブチップ較正方法を含むが、
図1A~
図1Cは、いくらかの例示的なコンテクストを提供する為に該システムの幾つかの他の構成要素の較正も解説している。これは本発明に対して限定的なものと解釈されてはならず、本発明は主として、該プローブチップの較正に有利に使用されうる、基準マーカ設計及び基準マーカを対象とする。そのような方法は、プローブチップ交換の後ごとに行われるものであり、従って、より低頻度で実施される又は1回しか実施されない場合もある該システムの他の較正工程が存在しない場合に、好適に適用されうる。更に、他の構成要素の較正は、多くの異なる方法で実施されることができ、また、該SPMシステム1は、異なる構成要素を含む異なる設計を有して異なる較正方式を生じさせうる。例えば、第1のセンサは、下記で説明される光学センサである必要はなく、異なるように動作する異なる種類のセンサでありうる。
【0025】
図1Aにおいて、走査型プローブ顕微鏡システム1は、基部5及び基体キャリア3を備えている。該基部5は、測定フレームに固定されうるか又は測定フレームの一部であり得、座標基準グリッド板6を備えている。該座標基準グリッド板6は、該板6及び少なくとも1つのエンコーダ15からなるグリッドエンコーダの一部である。本発明に従う該システム1において、複数のエンコーダが該グリッド板6と協働しうる。例えば、作業空間2内で試料キャリア3と該グリッド板6との間を移動する各要素が、該グリッド板6上での該要素の位置を決定する為に該グリッド板6と協働するエンコーダ15を備えうる。該エンコーダ15、及び該座標基準グリッド板6と協働する夫々の他のエンコーダは、該グリッド6上のその現在の位置の座標データを得る為に基準グリッドを読み取る。とりわけ、座標基準グリッド板6の適用はそれ自体が任意的であるが、例えば産業環境において高スループットを実現する為に適用するのが有利である。代替的には、1以上の干渉計を使用することにより、又はそれらの出力を感知される基体の詳細な「青写真(blue-print)」に関係付けることにより、任意の構成要素の位置を正確に決定することも可能である。本発明は、座標基準グリッド板6の適用に限定されず、該基体キャリア3にわたる異なる座標基準の方法が検討されうる。
【0026】
図1Aにおいて、該エンコーダ15は、位置決めユニットモジュールのアーム12の一部である支持体13に取り付けられている。該支持体13は、光学センサ14及び該エンコーダ15を備えている。該光学センサ14は、図示されている実施態様において、そのセンサ開口17を通る視野19を有する小型カメラユニット20を含む。該光学センサ14は、開口21、集束レンズ22、及びアクチュエータ24を更に備えている。該アクチュエータ24は、基体8の表面上の像の合焦を可能にする為に該カメラ20と集束光学系22との間の距離を調節することを可能にする。更に、該作業空間2内の該グリッド板6の表面に対して平行な利用可能空間を活用する為に、
図1Aに示されているように、ミラー25が、該カメラ20の該視野を、水平方向から垂直方向に方向転換する。該光学センサ14は、後で説明されるように、該支持体13及び該アーム12に機械的に固定されている。更に、該システム1へのデータ転送の為の電気接続が、電気接続インターフェース18を介して提供される。
【0027】
好ましくは、該カメラ20は、ウェーハ8上の位置合わせマークを認識できるのに十分な精度である。そのようなマークの大きさは、20×20マイクロメートル~最大50×50マイクロメートルの範囲内でありうるが、無論、これらのマークの該大きさは、様々に異なり得、また時間と共により小さくなりうる。位置合わせマークの像特徴の解像度は、典型的に最小で1マイクロメートルであり得、これも同様に時間と共に変化(すなわち減少)を受けうる。該カメラ20は、それに応じて、該位置合わせマークの該大きさ及び/又は解像度に依存して適合され得、そのタスクを遂行する為に必要な像特徴を区別することが可能でなければならない。例えば、対物面(例えば、該マークを備えている、読み取られるべき表面)におけるカメラ20のピクセル解像度は、2マイクロメートル以下、好ましくは1.0マイクロメートル以下、より好ましくは0.5マイクロメートル以下、でありうる。更に、該カメラの倍率は、5~100倍、好ましくは10~50倍、であり得、該カメラは、低倍率及び高倍率に対応する少なくとも2つの拡大係数で動作することが可能でありうる。該カメラは、該ウェーハの縁部からわずか1ミリメートルの近さに配置されうる、ウェーハ表面の位置合わせ特徴を検出することができなければならない。該カメラの電力消費は好ましくは、熱放散及び精度に対する好ましくない影響を低減する為に可能な限り低い。カメラ20の該視野19は、少なくとも0.5ミリメートル、好ましくは少なくとも0.9ミリメートル、でありうる。
【0028】
図1Aは、使用時に該作業空間2内のあらゆる要素が適正に操縦されることを可能にする為に、該システムの様々な構成要素を該座標基準グリッド板6に合わせて較正する方法を模式的に示す。該プローブチップを較正する為の本発明の方法は、
図1Aの該方法との組み合わせで使用され得、該方法の一部でありうる。先に言及されたように、プローブチップの較正は、例えばプローブチップ取り替えの後ごとに、
図1Aに示されている方法が存在しない場合にも実施されうる。
【0029】
図1Aにおいて、位置合わせマーク9(すなわち9-1...9-5…9-n)を有する特殊なウェーハに従って提供される較正ウェーハ8が、該試料キャリア3の上に設けられ、それにより、該システム1の較正に使用されることができる基体表面を提供する。更に、該試料キャリア3は、例えばその縁部に、本発明に従う、又は後で説明される本発明に従う設計を有する、基準マーカ4を備えている。
図1Aの該方法は、該光学センサ14を、該SPMシステム1内の該座標基準グリッド板6上の位置に関連付けることを可能にする。これらの要素のいずれか、すなわち該光学センサ14又は該グリッド板6、が交換されるべき場合、それら要素の間の正確な幾何学的関係を得る為に該システム1の新たな較正が必要とされる。しかしながら、典型的に該グリッド板6も該光学センサ14も頻繁な交換を必要としない為、較正工程は、典型的に、該システム1の最初の使用時に、及びそれらの要素のいずれかが交換された後にのみ時折、行われうる。しかし、理解されうるように、当業者は、必要とみなされるだけ又は望まれるだけ頻繁に該較正工程を自由に行うことができる。
【0030】
図1Aに図示されている最初の工程は、該光学センサ14による十分な数の較正マーカ9-nの感知、又はイメージング、である。これは、該支持体13のエンコーダ15の現在の位置の位置データを取得しながら、該グリッド6の表面の端から端まで該光学センサ14を移動させることに従って行われる。例えば、
図1Aに示されている位置9-1、9-2、9-3、9-4、及び9-5のそれぞれで、該光学センサ14は、該較正マーカ、例えば較正マーカ9-4、の像を取得し、同時に該エンコーダ15から取得される該現在の位置データを、それと関連付けて登録する。該較正ウェーハ8のレイアウトは該システム1内で正確に知られており、それ故に、該較正マーカ9-nからの像を受け取り、それを、該エンコーダ15から取得された該位置データと関連付けて登録することにより、該較正マーカ9-nの位置と、該座標基準グリッド6からの位置データとの間の関係が確立されることができる。これは、該光学センサ14と該グリッド板6との間の該幾何学的関係を提供する。理解されうるように、本明細書において、該エンコーダ15から取得される該位置データが該光学センサ14に従って得られる像に確実に関係付けられることができるように、該光学センサ14が該エンコーダ15に相対的に固定されていることが重要である。
【0031】
図1Aにおいて、該光学センサ14の相対的な位置決めと座標基準グリッド6との間の関係を得る工程は、較正ウェーハ8を使用して行われているが、当業者は、較正ウェーハ、例えばウェーハ8、を使用することは本発明にとって必須の工程でないことを理解しうる。代替的には、該システム1内の既知の固定された基準が、そのような関係を決定する為に同様に使用されうる。例えば、代替の実施態様において、該基体キャリア3は、例えば、較正ウェーハ8の搭載が必要とされないように、走査可能な較正基準をそれ自体の担持表面7の上に直接含みうる。また、該較正ウェーハ8は、必ずしも特殊なマークを備えた特殊なウェーハである必要はなく、そのレイアウトが該システム1内で正確に知られ、その表面に区別可能なマークを備えている、ウェーハでありうる。当業者は、この工程を実施する為の様々な代替法を認識しうる。
【0032】
該システム1内で行われる別の較正方法は、該プローブチップ37の相対オフセット位置の決定である。
図1B及び
図1Cは、本発明の一つの実施態様に従う方法を示す。しかしながら、
図1B及び
図1Cに示されている工程は、本発明の一つの実施態様に従う例に過ぎず、代替の実施態様において、該プローブチップ37のこの相対オフセット位置は、異なる方法で決定されうる。該オフセットは、走査ヘッド30のうち任意の他の固定された部分、例えば光学エンコーダ31、に対して決定されうる。該走査ヘッドが該光学センサ14を含む場合、該ヘッドエンコーダ15及び31は、1つの同じエンコーダでありうる。これらの場合、該プローブチップ37の該オフセットは、該光学センサ14又は該ヘッドエンコーダ31/15のいずれか1つ又は全てに関係付けられうる。
【0033】
図1Cを手短に参照すると、該ヘッドエンコーダ31に対する該プローブチップ37の該相対オフセット位置は、該ヘッドエンコーダ31に従って得られる位置データと、その瞬間の該プローブチップ37の正確な位置との間の関係を定める。この情報は、後で説明されるように、基体表面を走査するのに望まれる位置まで該プローブチップ37を適切に操縦することができるようにする為に必要とされる。走査ヘッド30は、各種の異なる要素を備えうるが、少なくとも該エンコーダ31及び小型の原子間力顕微鏡ユニット32を含み、実装に従っては該光学センサ14を含む。小型の該AFMユニット32は、カンチレバー36とプローブチップ37とを含むプローブ35を含む。該プローブチップ37は、例えば基体若しくは該プローブ35又はその両方に印加される音響信号を使用して、該基体の表面微細構成の幾何学的形状又は該基体の該表面の下にある埋め込まれた構造の正確な位置を決定する為に、例えば該基体の該表面の端から端まで走査する為に使用される。
図1Cに示されている例においては、規則的な微細構成測定が模式的に図示されている。従って、該小型AFM32は、プローブ35、レーザ41(例えば、半導体レーザ)、及び光学センサ38を備えている。該レーザ41及び該光学センサ38は、一緒に光学ビーム偏向ユニット(OBD(optical beam deflection)ユニット)を形成し、これは、該AFMに従って感知される表面構造に起因する該プローブチップ37のたわみを正確に決定することを可能にする。該レーザ41及び該光学センサ38は、コントローラ40に従って制御され、該コントローラ40はまた、光学センサ38からセンサ信号を取得し、該エンコーダ31から例えば位置データを取得する。これは、システム電子機器1に送信される。
図1Cに示されている実施態様において、該走査ヘッド30は、走査ヘッドのコントローラとして使用される内蔵プロセッサ40を備えている。当業者は、本明細書に記載されているタスクと同じタスク及び/又は追加的なタスクを行う為に、非中央コントローラが該SPMシステム1内の任意の場所に位置しうることを理解しうる。
【0034】
本発明との関係で、該光学センサ14は、該第1のセンサ又は粗センサの役割を果たす、すなわち、第1の寸法スケールで動作するのに対し、該プローブチップ37は、該第2のセンサの役割を果たし、すなわち、該第1の寸法スケールよりも小さい第2の寸法スケールで動作する。
図1Bに戻り、該プローブチップ37の相対オフセット位置を決定する工程は、まず、上記で説明された該光学センサ14を使用して、該基体キャリア3上に位置する、本発明の一つの実施態様に従う基準マーカ4の位置データを決定する工程を行うことに従って行われる。これは、該支持体13の現在の位置を該エンコーダ15に従って取得しながら、該基準マーカ4を該光学センサ14に従ってイメージングすることに従って行われる。基準マーカ4の位置を正確に特定する為に、該基準マーカ4は、下記で更に詳細に説明される第1の基準要素を含む第1の基準パターンを備えている。該第1の基準要素に基づき、ブロブ検出アルゴリズムを使用して、本発明に従う該基準マーカ4の正確な位置が決定されうる。該光学センサ14を用いて該基準マーカ4を走査する工程は、該SPMシステム1内における該基準マーカ4の位置が固定されていないので、該システム1が使用されるたびに必要とされる。この理由は、該SPMシステム1の内部及び周辺の温度差が該基準マーカ4の正確な位置の微小な差を生じさせる為である。それ故に、少なくとも該システム1が使用されるたびに、しかしより好ましくは必要とされるだけ頻繁に、この較正工程が行われうる。
【0035】
更に、例えばその後に、本発明に従って、
図1Cに示されている工程が行われることができる。ここで、該基準マーカ4の表面が該プローブチップ37で走査される。該基準マーカ4は、通常タイプの基準マーカではなく、本発明に従う基準マーカ設計を備えている。該基準マーカ4は、上記で言及された該第1の基準パターンに加えて第2の基準パターンを備えている。該第2の基準パターンは、座標情報が符号化されているマーキングの規則的配置を含み、該基準マーカ4内における位置の座標を記憶している。これは下記でより詳細に説明される。この第2の基準パターンを、該プローブチップ37で走査することにより、走査中にこれら座標を得ることが可能である。該基準マーカ4の正確な位置は既知であるので、該光学センサ14を使用してこれを決定した後、上記走査中の該プローブチップ37の正確なオフセット位置を直接導出することが可能である。これは、該プローブチップ37の位置を該システム内の既知の位置に関係付ける為の分析方法、例えば像認識、の必要をなくす。該基準マーカ4の正確な位置が該システム1に利用可能になると、該プローブチップ37の1回の線走査(幾つかの実施態様において)又は2回の線走査(他の実施態様において)でも、本発明の該プローブチップ較正方法を行うことを可能にする。ここから、該較正が行われた後で、
図1Aに示されている該較正工程中にすでに得られている座標系を使用して、該エンコーダ31及び小型AFM32を含む該走査ヘッド30が、該基体の像を得る為に該グリッド板6に相対的に任意の位置まで該作業空間2内を操縦されることができる。
【0036】
図1B及び
図1Cは、該試料キャリア3内の該較正ウェーハ8を示す。この較正ウェーハ8は、
図1B及び
図1Cに示されている該工程時には必要とされず、それら工程を行う間は完全に不在でありうる。
図1B及び
図1Cに示されている例における該プローブチップ37の該相対オフセットの決定は、完全に該基準マーカ4の位置に基づく。この実施態様において、該基準マーカ4は、該基体キャリア3上に位置する。当業者は、それが、該SPMシステム1内の他の場所、例えば該測定フレーム上の走査可能な位置、にありうることをまた理解しうる。該プローブチップ37に従って到達されることが可能な任意の基準表面が使用されうる。代替的には、該基準マーカは、ウェーハ、例えばウェーハ8、上に存在しうる。これは、例えば旧来のシステムにおいて、該システム1自体が該基準マーカ4を含まない場合に有用でありうる。その場合、該較正方法はやはり、該SPMシステム1内の固定された基準、例えば該測定フレーム又は基部5又は該座標基準グリッド板6、との関係で該基準マーカ4の位置を正確に決定しなければならない。これは、この場合も、該光学センサ14を第1のセンサとして使用して、例えば該光学センサ14を該エンコーダ31又は15を介して該グリッド板6と関係付けて、行われうる。
【0037】
図1A、
図1B及び
図1Cに示されている該工程に従って得られたデータは、該作業空間2内での操縦を可能にする為の基礎を形成する。上記で指摘されたように、該エンコーダ31に対する該プローブチップ37の相対オフセット位置を決定する該工程は、
図1B及び
図1Cに示されているのとは異なる方法で行われうる。例えば、本発明の一つの実施態様に従うと、該光学センサ14は、原子間力顕微鏡32を備えている支持アーム12に共同に取り付けられうる。両システムは、該光学センサ14の該視野19が少なくとも該プローブチップ37を含むように統合されうる。このようにすると、該光学センサ14に従って撮られる各像が、該プローブチップ37の位置を含む。該基準マーカ4が、その位置が既知である該システム1の固定された(静的な)部分に位置する場合、これは、該プローブチップ位置37を該光学センサ14の位置に直接関連付けることも可能にし、更なる確認を提供する為の検証も該エンコーダ31を介して可能となる。
【0038】
図2は、本発明に従う基準マーカ設計を使用して作成された基準マーカ4を模式的に示す。該基準マーカ4は、該第2の基準パターン54のマーキング56、57を形成する、複数の水平線又はバー56及び垂直線又はバー57を備えている。更に、該基準マーカ4の基準マーカ設計は、基準要素52-1、52-2及び52-3を備えている第1の基準パターン50を備えている。
図2に示されている該設計において、水平又は垂直マーキング56及び57の数は、特定の事例の必要性に応じて選定され得、該設計は、該図に示されているマーキングの数に限定されない。また、必ずしも垂直方向又は水平方向に延在していない追加的なマーキングが、添付の特許請求の範囲から逸脱すること無しに、本発明に従う設計に存在しうる。また、
図2の該基準マーカ4の該基準要素52-1~52-3は、任意の所望の大きさ又は形状であり得、またこの基準要素52の数は正確に3つである必要はない。これに関して、当業者は、少なくとも3つの基準要素52の適用は、デカルト座標系におけるX方向及びY方向並びに回転R
zの較正を可能にする為に、当業者に既知であるブロブ検出アルゴリズムの適用を可能にすることを理解しうる。従って、このブロブ検出アルゴリズムは、該基準マーカがシステム内で位置決め基準として使用されるのを可能にするように、該基準マーカの位置及び向きを較正する為に使用されうる。基準要素52-1~52-3の大きさは、例えば、該光学センサ14を使用して該基準要素52を検出することを可能にする為に、及び該ブロブ検出アルゴリズムが上記の較正を行うのを可能にする為に十分に大きい。この情報が利用可能になっている状態で、該プローブチップ37の該相対オフセット位置を決定する為に、該基準マーカ4の該マーキング56及び57が、該プローブチップ37を使用して走査されうる。好ましい走査方向は、例えば
図2に方向58及び59として示されているが、該方向58及び59が、
図2に示されているように該マーキング56及び57の方向と合わせられていることは重要でないと認識することが重要である。
【0039】
該プローブチップ37を使用して該マーキング56及び57を走査することにより、マーキングが該プローブチップ37に従って遭遇されるたびに、該基準マーカ4が印刷されている表面の高さが変化する。例えば、該マーキング56及び57が該表面の溝に従って形成されている場合、これは、それら溝の中に落ちることに従って該プローブチップ37に従って遭遇される。しかしながら、該マーキングが隆起した構造に従って提供される場合、それら隆起した構造は、表面高さの上昇として該プローブチップによって遭遇される。局所的な高さの変化に従って引き起こされるそのような該プローブチップのたわみの変化は、走査ヘッド上の光学ビーム偏向(OBD)機構(又はたわみの変化を検出する代替のセンサ)から得られる出力信号を監視することに従って検出される。該出力信号から、遭遇された構造の寸法及び/又は性質、例えば線の太さ、溝の深さ、表面の粗さ、が決定されることができる。
【0040】
本発明に従うと、該マーキング56及び57の各々は、該プローブチップ37に従ってそれが走査されたときに個々に一意に識別されることができる。例えば、
図2に示されている実施態様において、左から右に向かって、該マーキング57の太さが増していき、該マーキング57の各々は固有の太さを有している。それ故に、該プローブチップ37でそれを走査したときにマーキング57の該太さを検出することにより、該SPMシステム1は、どのマーキング57が現在該プローブチップ37に従って遭遇されているかを一意に決定することができる。同様に、上から下に向かって、該マーキング56の該太さは、個々の該マーキング56ごとに、同様に増していく。それ故に、該マーキング56の各々と交差することにより、該プローブチップ37に従って遭遇される表面高さを追従する該SPMシステムの光学ビーム偏向器を使用して得られるセンサ信号は、どの該マーキング56が該プローブチップによって遭遇されるかを正確に決定することを可能にする。それ故に、該基準マーカ4の該マーキング56及び57は、一緒に座標系を形成し、該プローブチップ37の位置は、該プローブチップ37が該個々のマーキング56及び57の各々に遭遇したときに正確に知られる。該マーキング56及び57の構造化は規則的であり、各2つの隣り合うマーキング57及び各2つの隣り合うマーキング56間の間隔距離は、該システムに従って正確に知られている。その結果、走査中に該走査ヘッド30から得られる信号から、該プローブチップ37の正確な位置が、任意の時間及び該基準マーカ4の表面上の任意の位置における信号から計算されることができる。
【0041】
基準マーカ4の該マーキング56及び57は、2つの直交する方向X及びYに座標系を形成する。
図3Aは、ここでもこれらのマーキング56及び57を示し、該マーキング間の正確に選定された間隔距離並びに該マーキング56及び57の該太さについての情報を提供する。その為に、
図3Aの拡大部分62及び63が参照される。更に、該基準マーカの各隅部65で、該座標系内での正確な相対位置が計算されることができる。該座標系の原点は、
図3Aにおいては左上の隅部65に従って形成され、図示されている該実施態様において、該基準マーカの大きさは、幅及び長さが747.6マイクロメートルの大きさの二乗である。
図3Bは、該マーキング56及び57各々の正確に知られている大きさ並びにそれらの既知の間隔距離がどのように、該基準マーカ4内での該プローブチップ37の正確な位置がそれを用いて計算されることができるパラメータを決定するのを可能にするかを模式的に示す。
【0042】
図3Aに戻り、該拡大部分62及び63から、各2本の線56及び各2本の線57同士の間の間隔距離が正確に39μmであることが明らかである。該基準マーカ4の該左上の隅部において、該拡大部分62から以下の通り、最初の垂直線57は0.3μmの太さを有する。各後続の垂直線57の太さは、0.3μmずつ増していく。それ故に、該拡大部分62内に見えている次の垂直線57は、0.6μmの太さを有する。同様に、該拡大部分62の一番上の最初の水平線56については、太さは同様に0.3μmである。ここでも、後続の下方の水平線56ごとに、太さは0.3μmずつ増し、次の水平線56では0.6μmの太さを有する。
図3Aの例において、該拡大部分63内の該基準マーカ4の右下の隅部まで来ると、一番右の垂直線57は5.1μmの太さを有し、これは該拡大部分63の一番下の水平線56についても同じであることが分かる。各2本の水平線56及び各2本の垂直線57同士の間の間隔距離は、39μmのままである。水平線56と垂直線57との間の各交差、例えば
図3Bの交差60、において、例えば、該プローブチップ37が、偶発的に該基準4の該水平線56又は該垂直線57をその長さにわたって(それに交差する代わりに)追従した場合に該交差の検出を可能にするように、色が反転されている。しかしながら、この特徴は必須でない(本概念はそれがなくとも機能し、該プローブが68のように溝に着地する、すなわちL字型ではなくU字型の走査となった場合に、最終的には第3の線走査を必要とする)。
【0043】
図3Bにおいて、該垂直線57の該太さはギャップ幅
x(gapWidth
x)67と表されている。同様に、各水平線56の該太さはギャップ幅
y(gapWidth
y)69と表されている。更に、該水平方向に走査方向58をたどると、2つの垂直線57の間の各区画61内で、ベクトル66はスキャン位置
x(scanPosition
x)を示し、これは、該基準マーカ4の区画61内での該プローブチップ37の現在の位置、すなわち、着地位置からギャップ幅
x(gapWidth
x)の始めまでの長さ、である。更に、方向59において、スキャン位置
y(scanPosition
y)は、区画61内での該プローブチップ37の現在の垂直位置を同様に示す。これらのパラメータを使用して、該基準マーカ内の該プローブチップの座標を得る為に、下記の式が適用されうる。
【0044】
【0045】
本明細書において、x及びyは、該プローブチップ37の現在のチップ位置であり、nは、該基準マーカ4の縁部から現在の区画61までを数える、該現在の区画61のカウント数である。該カウント数nは、下記の式を使用してギャップ幅x(gapWidthx)に基づいて計算されることができる:
【0046】
【0047】
更に、dxは、x方向への該垂直線57の増分太さ刻みである。従って、最初の線57は0.3μmの太さを有し、後続の各垂直線57の太さは、後に続く線ごとに0.3μmずつ増分される。更に、nは、該基準マーカの該縁部から該現在の区画までの該y方向における区画カウンタである。パラメータdyは、同様に、後続の水平線56ごとの該y方向における増分太さ刻みである。該y方向における該区画カウンタnを計算する為に、上記のnの計算と同様に、下記の式が適用されうる:
【0048】
【0049】
図3A及び
図3Bにおいて、値d
x及び値d
yは共に0.3μmである。一番下の水平線56では、ギャップ幅
y(gapWidth
y)は、拡大部分63に見られることができるように5.1μmに等しい。0.3μmの値を使用して、該一番下の水平線56と交差した後にnはn=18に等しいことが計算されることができる。
【0050】
図3A及び
図3B並びに上記説明から以下の通り、本設計に従う該基準マーカ4は、該基準マーカ内での該プローブチップ37の正確な位置を非常に正確に決定するのを可能にすることになる。該基準マーカ設計の中に符号化されている該座標系内の該プローブチップ37の座標は、遭遇される該マーキング56及び57から決定されうる。該基準マーカ自体の正確な位置も、基準マーカ4のこの基準マーカ設計と併せて、該基準要素52-1、52-2及び52-3と、例えばブロブ検出アルゴリズムとを使用して決定されることができるので、該プローブチップの正確な位置が決定されることができ、その情報は、あらゆる種類の較正方法に使用されることができる。
【0051】
更なる基準マーカ設計が
図4に示されている。
図4は、同じ第1の基準要素52-1、52-2及び52-3を含む、同じ第1の基準パターン50を示す。更に、
図4に示されている該基準マーカ設計は、第2の基準パターン54内にマーキング70、71の配置を含んでおり、これは、該プローブチップ37の1回の走査に従って該x方向及びy方向の座標データを得ることを可能にする。該第2の基準パターン54は
図5Aに示され、その拡大
図72が
図5Bに示されている。
図4及び
図5A/Bに示されている該基準マーカ4の大きさは、計700μm×700μmである。該第2の基準パターン54は、複数のマーキング70及び71からなり、
図4の該マーキング71は水平線からなり、該マーキング70は対角線からなる。各2つの後続の水平マーキング71の間の間隔は等しく、従って、マーキング71の規則的パターンが
図4の基準マーカ4に提供されている。該水平線71は、該y方向の座標を符号化する。該マーキング71の各々は、水平線の固有のパターンからなり、線の一意のパターンを提供することに従ってy位置に関する情報がその中に符号化される。各線は、該SPMシステムの出力信号から明確に区別可能である、利用可能なテクスチャ、高さ、又は性質の限られたセットから選択される、固有のテクスチャ、高さ、又は他の判別可能な性質を有する。例えば、該線は、2つの異なる高さに形成され得、第1の高さが第1のブール値(例えば「0」)を提供し、第2の高さが第2のブール値(例えば「1」)を提供する。理解されうるように、本発明は2つの対照をなす性質に限定されない。3個、4個、5個、6個...10個、20個(等)の区別可能な性質を使用して、対照をなす「色」が提供されうる(すなわち多色)。その場合の該マーキング70、71、56、又は57の線は、座標に加えてより多くの情報をその中に符号化しうる。例えば、特定の機能の線が、第3の区別可能な高さレベルにありうる。
【0052】
該対角線70は、x位置のデータを符号化する。該基準マーカ4を横切って該垂直方向に1回の走査が行われる場合、任意のしかし固定されたx位置において、該水平マーキング71の各々を越える交差は、該プローブチップの現在のy位置の情報を提供し、対して、該対角線を越える該プローブチップの交差は、現在のx位置がそこから決定されることのできる信号を提供する。それ故に、
図4の該基準マーカ4を横切る該垂直方向への1回の走査は、該基準マーカのどの点においてもx位置及びy位置のデータを正確に提供する。
【0053】
図5A及び
図5Bに移ると、特に
図5Bは、該様々なマーキング70及び71並びに該基準マーカの中でのそれらの機能の説明を提供している。該y位置データを提供する該マーキング71は、2つの末端部75及び一つのデータ部76からなる。該末端部75は、該マーキング71の各々に同一であり、例えば2本の黒色線及び1本の白色線からなる。説明されたように、本明細書における「黒」及び「白」は、明確に区別可能な、異なる高さレベル、テクスチャ、又は他の性質を云いうる。すなわち、2つの隆起した領域と1つの凹んだ領域、などである。該データ部76は、第1又は第2の値(隆起した、凹んだ、黒、白等)でありうる、4つの連続した平行線のパターンからなる。色分けは、その中に該y位置データを符号化する。例えば、黒、白、白、黒の並びは、2進数1、0、0、1を符号化しうる。
【0054】
該対角線70は、末端部78及びデータ部79を備えている。該末端部は、ここでも、交差したときに末端部が交差されたことを示す線の認識可能なパターンからなる。データ線は、表示(exposition)を示すビット情報を中に符号化している、5本の(又はそれより多い又は少ない)連続した平行線の並びからなる。更に、該マーキング78及び79を含む該線70は対角状なので、該y位置に対応する該マーキング71の末端から測定して正確なy位置を知ることにより、該マーキング70の該データ部79内で認識可能ビットパターンが遭遇されるy位置データは、該基準マーカ内の正確な表示を示す。
図5Cは、例えば、該データ部79内の線の並びの中のビットデータの符号化を示す。ここで、線80は、該基準マーカ4と交差するプローブチップ37の走査軌跡である。86に従って示されている位置で、該プローブチップは、その後(上から下に向かって)2進数1、0、0、1、0に遭遇し、これは2進数10010を示し、これは18に等しい。これが使用されて、下記の式を使用して正確なx位置を計算することができる:
【0055】
【0056】
ここで、パラメータi
x,codeは、符号化されたxデータ、例えば
図5Cの並び86からのデータ、である。パラメータd
endbit,xは、x位置データに対応する該末端78を共に構成する個々の線の該走査方向における太さである。3本の線があるので、この太さに3が乗算される。パラメータN
databit,xは、x位置データ79に符号化されているビット数に等しい。
図5Cの例において、N
databit,xは5に等しい。パラメータd
databit,xは、該走査方向における、該データ線79を構成している個々の線各々の太さである。該走査位置xは、該末端78が該マーキング71の該末端75と交わる位置から走査軌跡80の位置までの距離84である。該パラメータ走査位置
yは、該末端75の終わりから始まって、該走査線80上の該プローブチップ37の現在の走査位置までの距離82に等しい。パラメータi
y,codeは、該マーキング71のデータ部からの符号化されたデータであり、パラメータd
ydataは、該マーキング71の全体の太さである(該末端75を含む)。該パラメータd
y,spacingは、該マーキング71間の間隔距離である(ここでは30μm)。
図5A~
図5Cの例における該マーキング71の該太さは10μmに等しい。
【0057】
図4及び
図5A~
図5Cの設計の該基準マーカ4は、該基準マーカ全体の1回の走査からxデータ及びyデータを提供するという点で明らかに有利であるが、この基準マーカの不都合点は、y位置マーキング71に対する走査経路の不正確な向きに対する許容範囲が狭いことである。該走査方向は、最も精密なxデータ及びyデータを提供する為に、該y位置マーキング71の方向に対して横断しなければならない。
図2、
図3A及び
図3Bに示されている実施態様においては、該走査経路の位置ずれに対する許容範囲がはるかに優れているが、この基準では、該基準マーカ4内での該プローブチップ37のy位置及びy位置を決定する為に必要とされる全てのデータを得る為に2回の走査が行われなければならない。
【0058】
図6は、本発明の幾つかの実施態様の更なる観点を示す。この図には、溝92を含む基準マーカ4の断面が示されている。該溝92の壁93は、隆起した部分90に対して張り出す縁部94を提供する。張り出す縁部94を設けることにより、縁部94に遭遇したときの該プローブチップの走査からの高さ測定が該プローブチップ37の正確なプロファイルを提供することが保証されることができる。これが
図6に示されている。拡大部分100及び101に、該縁部94の各々に遭遇したときに得られるプローブチップ信号98が示されている。該走査方向において、これらは、該プローブチップ37のチップ形状の左部分及び右部分を提供する。これらの信号を
図6の拡大部の右側に示されているようにして合成することにより、該プローブチップ37の正確なプロファイル105が得られうる。理解されうるように、これは、縁部が設けられているどの方向でも行われることができる。例えば、
図2及び
図3の実施態様において、これは該x及びy方向で行われることができる。
【0059】
該基準マーカ設計は、走査型プローブ顕微鏡システムに、例えばその該測定フレーム又は基体キャリアに、適用され得、従って該システム自体に固定されうる。それにより、それは、粗センサ(例えば、マークセンサ、光学顕微鏡センサ要素、電荷結合素子又は他のカメラ)を使用して見られる又は感知されうる位置決め基準を提供することを可能にする。代替的には又は追加的に、それは、同じ目的の為に、すなわち、上記で言及されたように粗センサを使用して見られる又は感知されうる位置決め基準を提供する為に、基体表面、例えば該SPMシステムを使用して検査されるウェーハ、に適用されうる。両方の場合とも、該第2の基準パターンは、該SPMの該プローブチップに対する精緻な位置決め基準を提供し、これは、符号化された表面座標情報から、精密な表面座標を得ることを可能にし、そこから該プローブチップの正確な位置が得られることができる。
【0060】
本発明は、その幾つかの具体的な実施態様に関して説明された。図面において示され、本明細書において記載されている該実施態様は、例示の目的のみが意図され、決して本発明に対して限定的なものであるとは意図されていないことが理解されるであろう。本明細書において論じられている本発明の文脈は、添付の特許請求の範囲に従ってのみ限定される。
【国際調査報告】