(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】水電解装置
(51)【国際特許分類】
C25B 9/00 20210101AFI20240403BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20240403BHJP
C25B 13/08 20060101ALI20240403BHJP
C25B 9/19 20210101ALI20240403BHJP
C25B 13/02 20060101ALI20240403BHJP
C25B 15/08 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
C25B9/00 A
C25B1/04
C25B13/08 301
C25B9/19
C25B13/02 301
C25B15/08 302
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546257
(86)(22)【出願日】2021-11-25
(85)【翻訳文提出日】2023-07-28
(86)【国際出願番号】 KR2021017447
(87)【国際公開番号】W WO2022163987
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】10-2021-0013043
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516357351
【氏名又は名称】テックウィン カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TECHWIN Co., LTD
【住所又は居所原語表記】(Songjeong-dong) 60, Jikji-daero 474beon-gil, Heungdeok-gu, Cheongju-si, Chungcheongbuk-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】ジュン シク キム
(72)【発明者】
【氏名】ヒュン ス シン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン テク ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】サン テク ヒュン
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021CA08
4K021CA10
4K021CA11
4K021CA13
4K021DB36
4K021DC01
4K021DC03
(57)【要約】
本発明は電解液内の溶存ガスを除去するための隔膜を含む水電解装置に関し、気液分離器または電解液循環ラインに備えられた隔膜を通じて電解液内に存在する溶存ガスを分離することによって、水電解装置の気相領域中のガス組成が爆発限界に到達することを防止するとともに、電解液中の溶存ガスの生産効率を増加させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔壁で区分された正極室および負極室を含む電解槽;
前記正極室と連通する正極側気液分離器;
前記負極室と連通する負極側気液分離器;
前記正極室から排出される電解液を正極側気液分離器に供給し、正極側気液分離器から排出される電解液を正極室に供給する正極側循環ライン;
前記負極室から排出される電解液を負極側気液分離器に供給し、負極側気液分離器から排出される電解液を負極室に供給する負極側循環ライン;および
前記正極側気液分離器、前記負極側気液分離器、前記正極側循環ラインおよび前記負極側循環ラインのうち少なくとも一つに備えられ、内部流路を有する隔膜を含む、水電解装置。
【請求項2】
隔膜は内部流路が向かう方向に沿って気体透過度が液体透過度より大きい、請求項1に記載の水電解装置。
【請求項3】
隔膜は疎水性であり、電解槽から排出される電解液内の溶存ガスを内部流路に透過させるように設けられた、請求項1に記載の水電解装置。
【請求項4】
隔膜は多孔性である、請求項1に記載の水電解装置。
【請求項5】
隔膜はポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene)、ポリフッ化ビニリデン(Polyvinylidenefluoride)、ポリエチレン(Polyethylene)、ポリプロピレン(Polypropylene)、ポリスルホン(Polysulfon)、ポリイミド(Polyimide)、ポリアクリロニトリル(Polyacrylonitrile)、ポリアミド(Polyamide)、ポリフェニレンサルファイド(Polyphenylenesulfide)、ポリエーテルスルホン(Polyehtersulfone)およびポリエステル(Polyester)からなるグループから選択された少なくとも一つの物質を含む、請求項1に記載の水電解装置。
【請求項6】
隔膜は管状型、中空糸型、平板型または螺巻型である、請求項1に記載の水電解装置。
【請求項7】
隔膜は所定方向に沿って巻き取られたコイル形態で配列された、請求項6に記載の水電解装置。
【請求項8】
隔膜の内部流路の圧力および隔膜の外部空間の圧力の差を調節するための圧力調節手段をさらに含む、請求項1に記載の水電解装置。
【請求項9】
圧力調節手段は圧力差を発生させるために、内部流路の圧力を減圧させるための減圧手段を含む、請求項8に記載の水電解装置。
【請求項10】
前記圧力調節手段によって隔膜の外部空間の圧力が隔膜の内部流路の圧力より高い、請求項8に記載の水電解装置。
【請求項11】
前記正極側気液分離器および前記負極側気液分離器のうち少なくとも一つの気相領域と隔膜の内部流路を連通するための流体供給ラインをさらに含み、前記流体供給ラインを通じて隔膜の内部流路に正極側気液分離器および負極側気液分離器のうち少なくとも一つの気相領域に存在するガスが供給される、請求項1に記載の水電解装置。
【請求項12】
前記隔膜の内部流路に外部空気が流入する、請求項1に記載の水電解装置。
【請求項13】
前記隔膜の内部流路と連通する気液分離手段を具備し、
前記気液分離手段の液相領域は前記正極側循環ラインおよび前記負極側循環ラインのうち少なくとも一つと連通する、請求項1に記載の水電解装置。
【請求項14】
前記隔膜の内部流路と前記正極側気液分離器および前記負極側気液分離器のうち少なくとも一つの液相領域を連通するためのガス供給ラインをさらに含み、
前記ガス供給ラインを通じて正極側気液分離器および負極側気液分離器のうち少なくとも一つの液相領域に隔膜の内部流路に存在するガスが供給される、請求項1に記載の水電解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電解液内の溶存ガスを除去するための隔膜を含む水電解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
代表的な水素生産技術である水電解技術は電気エネルギーを利用して水から水素を直接生産する技術であり、高純度の水素を環境に優しく製造することができる。前記水電解技術はアルカリ水電解、高分子電解質水電解、および固体酸化物水電解に区分される。
【0003】
前記水電解技術の中でもアルカリ水電解技術は、安価で大容量で水素の生産が可能であるという利点がある。アルカリ水電解装置は水素を生産する電解槽、電解槽から排出された気相の水素または酸素と電解液を分離する気液分離器、気液分離器から排出された液相を貯蔵し、これを再び電解槽に投入する電解液貯蔵槽および電解液を適切に供給して電力を制御および管理する運転装置(Balance of Plant)で構成される。
【0004】
また、前記電解槽は電解質、分離膜および電極である正極(アノード)と負極(カソード)からなり、前記正極および負極では下記の反応が起きる:
【0005】
正極:2OH-→1/2O2+H2O+2e-
【0006】
負極:2H2O+2e-→H2+2OH-
【0007】
前記電解槽の正極室で前記反応によって生産された溶存酸素ガスを含む電解液が正極側気液分離器を通じて酸素ガスおよび電解液に分離され、前記電解槽の負極室で前記反応によって生産された溶存水素ガスを含む電解液が負極側気液分離器を通じて水素ガスおよび電解液に分離される。
【0008】
この時、前記アルカリ水電解を利用した水素の生産において溶存ガスの問題が存在することになる。すなわち、電解槽の正極室から回収される電解液には正極反応で発生した酸素ガスの一部が溶存しており、負極室から回収される電解液には負極反応で発生した水素ガスの一部が溶存している。ここで、電解液に溶存する酸素ガスおよび溶存する水素ガスとは、電解液内に酸素ガスおよび水素ガスが溶解されている状態および酸素ガスおよび水素ガスが微細気泡の形態で残存する状態を含む概念である。正極室から回収された電解液と負極室から回収された電解液が電解液貯蔵槽内で混合されるため、電解液貯蔵槽内の電解液には酸素ガスおよび水素ガスがいずれも溶存している。電解液貯蔵槽内の電解液中に溶存している酸素ガスおよび水素ガスは徐々に気相中に放出されるので、電解液貯蔵槽の上部の気相部分には酸素ガスおよび水素ガスの濃度が徐々に上昇する。したがって、水電解装置の運転を継続する間電解液貯蔵槽の上部の気相部分でガス組成が爆発限界に到達する恐れがある。
【0009】
水素ガスを発生させる水電解装置に対する特許文献1には、正極を収容し正極ガスを発生させる正極室、負極を収容し水素ガスを発生させる負極室、前記正極室と前記負極室を区画する隔膜および電解液を前記正極室から排出するとともに前記正極室に戻す正極側循環ラインを具備する水電解装置であって、前記正極側循環ラインは前記電解液で前記正極ガスを分離する正極側気液分離器と、前記正極室と前記正極側気液分離器を接続し、前記電解液と前記正極ガスを前記正極室から排出して前記正極側気液分離器に送給する正極側排出ラインと、前記正極室と前記正極側気液分離器を接続し、前記電解液を前記正極側気液分離器から排出して前記正極室に送給する正極側供給ラインを具備し、電解液内の溶存された水素ガスが気相として存在し、前記水素ガスと正極ガスが混合する気相領域と前記正極側気液分離器を接続する正極ガス送給ラインを有し、前記正極ガス送給ラインが前記正極ガスのうち少なくとも一部を前記気相領域に送給し、前記気相領域中の前記水素ガス濃度が爆発限界下限値未満であることを特徴とする電解装置が記載されている。特許文献1の形態を有する水電解装置は、微量の水素ガスが電解液の循環ラインに次第に蓄積されて水素の爆発限界に到達する可能性を解消できると記載されている。
【0010】
しかし、特許文献1には電解液貯蔵槽の気相領域から排出されたガスを系外に放出することが記載されており、正極ガスを利用して電解液貯蔵槽の気相領域中のガスをパージした後これを排出する場合、排出されるガスを回収したとしても純度の高いガスを得ることが難しい問題がある。
【0011】
一方、正極室から回収された電解液と負極室から回収された電解液をそれぞれ他の電解液貯蔵槽に貯蔵および循環させる場合には、正極反応と負極反応で消費するモル数の差によって正極側電解液貯蔵槽と負極側電解液貯蔵槽の濃度差が発生する問題がある。
【0012】
正極側電解液貯蔵槽と負極側電解液貯蔵槽の液面差の発生を防止するために、正極側電解液貯蔵槽の液相領域と負極側電解液貯蔵槽の液相領域に連通配管を追加に設置する場合には、連通配管を通じて流入する電解液が溶存ガスを含んでいるので連通配管を通じて電解液が流入する側の貯蔵槽で気相領域中のガス組成が爆発限界に到達する恐れがある。
【0013】
したがって、電解液貯蔵槽の気相領域中のガス組成が爆発限界に到達することを防止するとともに、電解液中の溶存ガスによってガス生産効率が低下する問題を解決できる水電解装置が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、水電解装置で気相領域中のガス組成が爆発限界に到達することを防止するとともに、電解液中の溶存ガスによってガス生産効率が低下する問題を解決できる水電解装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は隔壁で区分された正極室および負極室を含む電解槽、前記正極室と連通する正極側気液分離器、前記負極室と連通する負極側気液分離器、前記正極室から排出される電解液を正極側気液分離器に供給し、正極側気液分離器から排出される電解液を正極室に供給する正極側循環ライン、前記負極室から排出される電解液を負極側気液分離器に供給し、負極側気液分離器から排出される電解液を負極室に供給する負極側循環ライン、および前記正極側気液分離器、前記負極側気液分離器、前記正極側循環ラインおよび前記負極側循環ラインのうち少なくとも一つに備えられ、内部流路を有する隔膜を含む水電解装置を提供する。
【0017】
一実施例として、前記隔膜は内部流路が向かう方向に沿って気体透過度が液体透過度より大きくてもよい。また、前記隔膜は内部流路が延びた方向に沿って気体透過度が液体透過度より大きいように設けられ得る。
【0018】
一実施例として、隔膜は疎水性であり、電解槽から排出される電解液内の溶存ガスを内部流路に透過させるように設けられ得る。
【0019】
一実施例として、前記隔膜は多孔性であり得る。
【0020】
一実施例として、前記隔膜はポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene)、ポリフッ化ビニリデン(Polyvinylidenefluoride)、ポリエチレン(Polyethylene)、ポリプロピレン(Polypropylene)、ポリスルホン(Polysulfon)、ポリイミド(Polyimide)、ポリアクリロニトリル(Polyacrylonitrile)、ポリアミド(Polyamide)、ポリフェニレンサルファイド(Polyphenylenesulfide)、ポリエーテルスルホン(Polyehtersulfone)およびポリエステル(Polyester)からなるグループから選択された少なくとも一つの物質を含むことができる。
【0021】
一実施例として、前記隔膜は管状型、中空糸型、平板型または螺巻型であり得る。
【0022】
前記隔膜は所定方向に沿って巻き取られたコイル形態で配列され得る。
【0023】
一実施例として、前記隔膜の内部流路の圧力および隔膜の外部空間の圧力の差を調節するための圧力調節手段をさらに含むことができる。
【0024】
一実施例として、前記圧力調節手段は圧力差を発生させるために、内部流路の圧力を減圧させるための減圧手段を含むことができる。
【0025】
前記圧力調節手段によって、隔膜の外部空間の圧力が隔膜の内部流路の圧力より高いこともある。
【0026】
一実施例として、前記正極側気液分離器および前記負極側気液分離器のうち少なくとも一つの気相領域と隔膜の内部流路を連通するための流体供給ラインをさらに含み、前記流体供給ラインを通じて隔膜の内部流路に正極側気液分離器および負極側気液分離器のうち少なくとも一つの気相領域に存在するガスが供給され得る。
【0027】
一実施例として、前記隔膜の内部流路に外部空気が流入され得る。
【0028】
一実施例として、前記隔膜の内部流路と連通する気液分離手段を具備し、前記気液分離手段の液相領域は前記正極側循環ラインおよび前記負極側循環ラインのうち少なくとも一つと連通することができる。
【0029】
一実施例として、前記隔膜の内部流路と前記正極側気液分離器および前記負極側気液分離器のうち少なくとも一つの液相領域を連通するためのガス供給ラインをさらに含み、前記ガス供給ラインを通じて正極側気液分離器および負極側気液分離器のうち少なくとも一つの液相領域に隔膜の内部流路に存在するガスが供給され得る。
【発明の効果】
【0030】
本発明の水電解装置は気液分離器または電解液循環ラインに備えられた隔膜を通じて電解液内に存在する溶存ガスを分離することによって、水電解装置の気相領域中のガス組成が爆発限界に到達することを防止するとともに、水電解を通じてのガスの生産効率を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一実施例に係る水電解装置の構成図である。
【
図2】本発明の一実施例に係る電解液貯蔵槽を含む水電解装置の構成図である。
【
図3】本発明の一実施例に係る隔膜の断面を示す概略図である。
【
図4】本発明の一実施例に係る流体供給ラインを含む水電解装置の構成図である。
【
図5】本発明の一実施例に係る気液分離手段を含む水電解装置の構成図である。
【
図6】本発明の一実施例に係るガス供給ラインを含む水電解装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は多様な変更を加えることができ、多様な実施例を有することができるところ、特定実施例を図面に例示して詳細な説明に具体的に説明しようとする。
【0033】
しかし、これは本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されるべきである。
【0034】
本発明で、「含む」、「具備する」または「有する」等の用語は明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものなどの存在または付加の可能性を予め排除しないものと理解されるべきである。
【0035】
したがって、本明細書に記載された実施例に図示された構成は本発明の最も好ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的思想をすべて代弁するものではないので、本出願時点においてこれらを代替できる多様な均等物と変形例が存在し得る。
【0036】
図1を参照すると、本発明の一実施例に関連した水電解装置は、隔壁110で区分された正極室130および負極室150を含む電解槽100、前記正極室130と連通する正極側気液分離器200、および前記負極室150と連通する負極側気液分離器300を含む。
【0037】
また、前記正極側気液分離器200は上部に位置した気相領域201と下部に位置した液相領域202を含むことができる。また、負極側気液分離器300は上部に位置した気相領域301と下部に位置した液相領域302を含むことができる。
【0038】
また、前記水電解装置は前記正極室130から排出される電解液を正極側気液分離器200で供給し、正極側気液分離器200から排出される電解液を正極室130に供給する正極側循環ライン400、および前記負極室150から排出される電解液を負極側気液分離器300に供給し、負極側気液分離器300から排出される電解液を負極室150に供給する負極側循環ライン500を含む。
【0039】
また、前記水電解装置は前記正極側気液分離器200、負極側気液分離器300、正極側循環ライン400および負極側循環ライン500のうち少なくとも一つに備えられ、内部流路650が形成された隔膜600を含む。
【0040】
本文書で、前記水電解装置は電解液を利用して電気分解によって酸素ガスおよび水素ガスを製造する装置である。
【0041】
前記電解槽100は正極140を含み酸素ガスを発生させる正極室130および負極160を含み水素ガスを発生させる負極室150を含む。前記正極室130および負極室150は隔壁110を通じて区分される。
【0042】
前記隔壁110は正極室130と負極室150を区画し、ガス遮断性を有するものであって、その形態や素材は特に制限されない。
【0043】
前記隔壁110は所定の厚さを有する板状であり得、前記隔壁110は高い電解液透過性、高いイオン透過性および高いガス遮断性を有することが好ましい。前記隔壁の素材としては高分子樹脂繊維と無機化合物を含むことができ、例えば、多孔質高分子フィルムを利用することができる。
【0044】
前記正極室130および負極室150はそれぞれ隔壁110と外部フレーム120によって囲まれた空間を有するように設けられ、電解液供給部から流入した電解液が前記空間を通過することになる。
【0045】
図2に示した通り、前記電解液供給部は前記正極側気液分離器200および負極側気液分離器300であり得、前記正極側気液分離器200および負極側気液分離器300の液相領域と連通する別途の電解液貯蔵槽700を含んでもよい。
【0046】
前記正極室130の正極140と、負極室150の負極160では下記の反応が起きる。
【0047】
正極:2OH-→1/2O2+H2O+2e-
【0048】
負極:2H2O+2e-→H2+2OH-
【0049】
すなわち、正極室130では水酸化イオン(OH-)が消耗して酸素ガスが発生し、負極室150では水酸化イオン(OH-)が生成されて水素ガスが発生する。
【0050】
前記正極側気液分離器200は正極回収管410を通じて正極室130に連通し、正極室130から排出された電解液および酸素ガスを気液分離する。この時、正極側気液分離器200の上部に形成された気相領域には酸素ガスが存在し、下部に形成された液相領域には溶存酸素ガスが含まれた電解液が存在する。
【0051】
前記負極側気液分離器300は負極回収管510を通じて負極室150に連通し、負極室150から排出された電解液および水素ガスを気液分離する。この時、負極側気液分離器300の上部に形成された気相領域301には水素ガスが存在し、下部に形成された液相領域302には溶存水素ガスが含まれた電解液が存在する。
【0052】
本発明で溶存酸素ガスおよび溶存水素ガスとは、電解液内に酸素ガスおよび水素ガスが溶解している状態および酸素ガスおよび水素ガスが微細気泡の形態で残存する状態を含む概念である。
【0053】
この時、前記正極回収管410および負極回収管510は前記正極側気液分離器200および負極側気液分離器300の上部に連通し得る。
【0054】
正極側気液分離器200および負極側気液分離器300の上部にそれぞれ正極回収管410および負極回収管510が連通する場合、電解槽から排出された溶存ガスを含む電解液が気液分離器内部から液面に落ちる時間が増えることによって、気液分離効率が増加し得る。
【0055】
前記正極側気液分離器200の液相領域202は前記電解槽100の正極室130と連通する正極電解液回収管420を具備し、前記電解槽100の正極室130に電解液を供給する。
【0056】
前記負極側気液分離器300の液相領域302は前記電解槽100の負極室150と連通する負極電解液回収管520を具備し、前記電解槽100の負極室150に電解液を供給する。
【0057】
したがって、前記正極側循環ライン400は前記正極室130から排出される電解液を正極側気液分離器200に供給する正極回収管410および正極側気液分離器200から排出される電解液を正極室130に供給する正極電解液回収管420を含み、前記負極側循環ライン500は前記負極室150から排出される電解液を負極側気液分離器300に供給する負極回収管510および負極側気液分離器300から排出される電解液を負極室150に供給する負極電解液回収管520を含む。
【0058】
図2を参照すると、本発明に係る水電解装置は、前記正極側気液分離器200および負極側気液分離器300の液相領域202、302とそれぞれ第2正極電解液回収管421および第2負極電解液回収管521を通じて連通し、電解槽100の正極室130および負極室150と連通する電解液貯蔵槽700をさらに含むことができる。
【0059】
電解液貯蔵槽700をさらに含む場合、前記正極側気液分離器200および負極側気液分離器300の液相領域202、302に存在する電解液を電解液貯蔵槽700で混合した後前記電解槽100の正極室130および負極室150に電解液を供給することができる。
【0060】
この時、前記電解液貯蔵槽700には前記電解槽100の正極室130および負極室150に電解液を供給するための電解液供給管430を含むことができ、前記電解液供給管430はそれぞれ正極室と連通する正極電解液供給管440および負極室と連通する負極電解液供給管540に分岐され得る。
【0061】
この時、前記電解液供給管430には電解槽に電解液を供給するための循環ポンプ800が備えられ得、前記循環ポンプ800は前記正極電解液供給管440および負極電解液供給管540のそれぞれに備えられ得る。また、前記循環ポンプ800は電解槽の後端にそれぞれ設置されても良い。
【0062】
したがって、本発明の一実施例に係る水電解装置が前記電解液貯蔵槽700をさらに含む場合、前記正極側循環ライン400は前記正極室130から排出される電解液を正極側気液分離器200に供給する正極回収管410、正極側気液分離器200から排出される電解液を電解液貯蔵槽700に供給する第2正極電解液回収管421および電解液貯蔵槽700から正極室130に供給する電解液供給管430および正極電解液供給管440を含む。また、前記負極側循環ライン500は前記負極室150から排出される電解液を負極側気液分離器300に供給する負極回収管510、負極側気液分離器300から排出される電解液を電解液貯蔵槽700に供給する第2負極電解液回収管521および電解液貯蔵槽700から負極室150に供給する電解液供給管430および負極電解液供給管540を含む。
【0063】
本発明の一実施例に係る水電解装置は前記正極側気液分離器200、負極側気液分離器300、正極側循環ライン400および負極側循環ライン500のうち少なくとも一つに備えられ、内部流路650を有する隔膜600を含む。
【0064】
前記隔膜600は内部流路650が延びた方向に沿って液体および気体透過度が異なるように構成され得る。例えば、前記隔膜は気孔を含み、気孔の大きさを調節することによって、液体と気体の透過度を異ならせることができる。または高分子樹脂繊維または無機粒子の大きさを調節することによって、液体と気体の透過度を異ならせることができる。
【0065】
具体的には、前記隔膜600は気体透過度が液体透過度より大きくてもよい。
【0066】
前記のような特性を有する隔膜600は気孔の直径、表面積、親水化度および気孔の形成構造を調節することによって達成することができ、例えば、高分子多孔膜、無機多孔膜、織布または不織布などを利用することができる。
【0067】
前記隔膜600は疎水性であり、電解槽から排出される電解液内の溶存ガスを内部流路650に透過させるように設けられ得る。すなわち、前記隔膜600は疎水性を有することによって電解液は透過することが難しいが。溶存ガスには親和性を有することによって、電解液内の溶存ガスのみを選択的に透過させることができる。
【0068】
図3を参照すると、電解液の種類は限定されないが、例えば、電解液がKOHである場合、KOH溶液は前記隔膜600を透過できないが、電解液内に溶存された酸素および/または水素ガスは前記隔膜600を透過することができる。
【0069】
前記隔膜600は多孔性膜であり得る。前記隔膜600は多孔性を有することによって、電解液内の溶存ガスのみを選択的に透過させることができる。前記隔膜600の気孔は1nm~10μmであり得る。
【0070】
前記隔膜600の厚さは特に限定されないが、例えば、0.1mm~10mmであり得る。前記隔膜600の気孔および厚さを調節することによって、透過量および分離能を調節することができる。具体的には、前記隔膜の透過量および分離能は隔膜外部、すなわち、電解液の圧力と気孔の大きさ、気孔の分布、気孔の厚さおよび隔膜の素材特性により変わるので、水電解装置の運転圧力、隔膜の気孔の大きさ、隔膜の厚さおよび素材の特性を調節することによって、電解液内の溶存ガスのみを隔膜の内部流路に選択的に透過させることができる。
【0071】
前記隔膜600の材質は疎水性を有し、耐熱性および耐久性が優秀な材質が好ましく、例えば、隔膜はポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene)、ポリフッ化ビニリデン(Polyvinylidenefluoride)、ポリエチレン(Polyethylene)、ポリプロピレン(Polypropylene)、ポリスルホン(Polysulfon)、ポリイミド(Polyimide)、ポリアクリロニトリル(Polyacrylonitrile)、ポリアミド(Polyamide)、ポリフェニレンサルファイド(Polyphenylenesulfide)、ポリエーテルスルホン(Polyehtersulfone)およびポリエステル(Polyester)からなるグループから選択された少なくとも一つの物質を含むことができ、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene)、ポリフッ化ビニリデン(Polyvinylidenefluoride)、ポリエチレン(Polyethylene)、ポリプロピレン(Polypropylene)、ポリフェニレンサルファイド(Polyphenylenesulfide)、ポリエーテルスルホン(Polyehtersulfone)およびポリエステル(Polyester)からなるグループから選択された少なくとも一つの物質であり得る。
【0072】
前記隔膜600の形状は管状型、中空糸型、平板型または螺巻型であり得る。
【0073】
前記管状型は一つの管を有するかまたは管の束を有することができ、外部フレームの形状は特に限定されないが、内部管の形状を考慮した充填率を考慮する時、円筒状であり得る。
【0074】
前記管状型が管の束を有する場合、前記の多数の管が一つとなった管の束は鋳型内で組み立てられ得る。隔膜が管状型である場合、隔膜の内部流路は管の内部または管と管の間の空間となり得、これは電解液の量および圧力により選択することができる。
【0075】
前記中空糸型は複合膜または単一膜であり得、複合膜である場合には膜を支持できる中空の支持体および外部膜層を含むことができる。前記中空糸型は複合膜および単一膜が数百~数千個の中空糸が束の形態で束ねられた形態であり得る。
【0076】
隔膜が中空糸型である場合、隔膜の内部流路は内圧型なのか外圧型なのかによっての内部または中空糸と中空糸の間の空間となり得、これは電解液の量および圧力により選択することができる。
【0077】
前記平板型は液が流れるように水路の役割をする両側の支持体の間に挿入されて使うことができる。膜の配列は平たい形状であり、必要に応じて膜と支持体を積層して膜の面積を広くすることができる。
【0078】
前記螺巻型は入口が片方である封筒のような形態であって、平膜の間に電解液が流れることができる流路があり、膜と膜の間には空間があって内部流路を形成することができる。または必要に応じて平膜の間に内部流路を形成し、膜と膜の間の空間に電解液が通過するように調節することができる。
【0079】
前記隔膜600は前記のような形状を有し、内部流路650を具備しており、前記隔膜600の対抗面(外周面)は電解液と接触し、電解液内の溶存ガスは隔膜600を透過して内部流路650に収容され得る。
【0080】
例えば、前記隔膜600は所定方向に沿って巻き取られたコイル形態で配列され得る。
【0081】
前記のような構造を有する場合、電解液と接触する面積を増やして電解液内の溶存ガスの分離効率を高めることができる。
【0082】
また、前記隔膜600は複数で備えられ得、このような構造で、複数個の隔膜は所定方向に沿って積層配列され得る。
【0083】
本発明では発明の理解を助けるために、
図1、
図2、および
図4~
図6に隔膜600が所定方向に沿って巻き取られたコイル形態を図示したが、前記隔膜は管状型、中空糸型、平板型または螺巻型であり得、隔膜の外部形態はこれに限定されない。
【0084】
また、本発明の一実施例として、
図1、
図2、および
図4~
図6で隔膜600が気液分離器の内部に位置しているが、隔膜の位置はこれに限定されず、正極側気液分離器200、負極側気液分離器300、正極側循環ライン400および負極側循環ライン500のいずれにも位置することができ、該当位置に単一または複数の隔膜が設置され得る。
【0085】
図3を参照すると、前記隔膜600を通じてのガスの分離は隔膜の内部流路および隔膜の外部空間の圧力差によって発生し得る。具体的には、水電解装置を運転する場合、所定の圧力を加えた状態で運転されるので、隔膜600の外部空間の圧力Pは隔膜の内部流路の圧力P´に比べて高く維持され、これを通じて隔膜を通じてのガスの分離が起こり得る。
【0086】
また、前記外部空間の圧力と内部流路の圧力差を高めるために、水電解装置の運転圧力を高めるための手段をさらに具備することができる。前記圧力差を高めるための手段でポンプまたはバルブを利用することができる。
【0087】
また、前記水電解装置は隔膜のガス分離性能の向上および調節のために、隔膜の内部流路の圧力および隔膜の外部空間の圧力の差を調節するための圧力調節手段をさらに含むことができる。
【0088】
前記圧力調節手段は圧力差による分離性能を向上させるために、内部流路の圧力を減圧させるための減圧手段を含むことができる。具体的には、前記隔膜の透過量および分離能の効率を増加させるために隔膜の内部流路の圧力P´は隔膜の外部空間の圧力Pより低く調節されることが好ましい。前記減圧手段は真空ポンプまたはオリフィスであり得る。前記のような減圧手段は前記隔膜の内部流路の両端部のうち少なくとも一つに位置することができる。前記のような減圧手段を具備することによって、電解液と接する隔膜の外面より隔膜の内部流路の圧力を低く維持することができ、これによって電解液内の溶存ガスの分離性能および透過量を増大させることができる。
【0089】
本発明の一実施例に係る水電解装置は内部流路が形成された隔膜を含むことによって、電解液内に存在する溶存ガスを分離することができ、これによって電解液内に存在する溶存ガスが互いに混合されることによって水素ガスまたは酸素ガスの濃度が爆発範囲以上に増加して爆発できる潜在的な危険を遮断することができる。
【0090】
一方、
図4を参照すると、本発明の一実施例に係る水電解装置は、前記正極側気液分離器200および負極側気液分離器300のうち少なくとも一つの気相領域201、301と隔膜600の内部流路650を連通するための流体供給ライン220を追加に含み、前記流体供給ライン220を通じて隔膜の内部流路に正極側気液分離器200および負極側気液分離器300のうち少なくとも一つの気相領域201、301に存在するガスが供給され得る。
【0091】
すなわち、前記正極側気液分離器200の気相領域201には酸素ガスが存在するが、前記酸素ガスは前記隔膜600の内部流路650と連結された正極側流体供給ライン221を通じて隔膜の内部流路に供給され、前記酸素ガスが内部流路650を通過することにより隔膜600の分離効率が増大し得る。前記隔膜600の内部流路650を通過した正極側気液分離器200の気相領域201から供給された酸素ガスと隔膜600を透過した電解液内の酸素溶存ガスは、隔膜の内部流路で互いに混入されて系の外部に放出され得る。
【0092】
また、前記負極側気液分離器300の気相領域301には水素ガスが存在するが、前記水素ガスは前記隔膜600の内部流路650と連結された負極側流体供給ライン321を通じて隔膜600の内部流路650に供給され、前記水素ガスが内部流路650を通過することにより隔膜600の分離効率が増大し、これに伴い、水素ガスの生産量が増加し得る。前記隔膜600の内部流路650を通過した負極側気液分離器300の気相領域301から供給された水素ガスと隔膜を透過した電解液内の水素溶存ガスは、隔膜600の内部流路650で互いに混入されて系の外部に放出され得る。
【0093】
図4に図示された通り、前記正極側気液分離器200および負極側気液分離器300の気相領域201、301内のガスを隔膜600の内部流路650に供給すること以外にも、
図5を参照すると、前記隔膜600の内部流路650に外部空気(Air)を流入させてもよい。前記のように、外部空気を隔膜の内部流路に流入させる場合、系内の装置と付加的な連結を必要としないので装置の構成が容易であり、外部空気の流入によってガス爆発範囲以内にガス濃度の調節が可能であるので、ガス爆発に対する安全性を高めることができる。
【0094】
また、
図5を参照すると、前記隔膜600の内部流路650に存在するガスを系の外部に放出する前に、隔膜の内部流路650と連通する気液分離手段900を具備し、前記気液分離手段900の液相領域は前記正極側循環ライン400、負極側循環ライン500、正極側気液分離器200、負極側気液分離器300および電解液貯蔵槽700のうち少なくとも一つと連通するようにすることができる。
【0095】
一実施例として、前記隔膜600の内部流路650に、正極側気液分離器200または負極側気液分離器300の気相領域201、301に存在するガスおよび外部空気をそれぞれ流入させる手段を備えた場合に、内部流路650には外部空気および隔膜を透過した電解液内の溶存ガスが大部分を占めるが、隔膜600を通じて隔膜の外面に接する電解液の一部が微量存在し得る。また、前記正極側気液分離器200または負極側気液分離器300の気相領域201、301にも電解液の一部がヒュームなどで含まれている可能性がある。したがって、前記隔膜の内部流路には電解液の一部が依然として存在し得る。
【0096】
前記隔膜600の内部流路650と連通する気液分離手段900を具備する場合、隔膜600の内部流路650に存在する残存電解液成分の一部を液相に分離することができる。前記気液分離手段900を通じて分離した電解液は正極側循環ライン400および負極側循環ライン500のうち少なくとも一つに連通することで、これをリサイクルすることができる。
【0097】
図6を参照すると、本発明の一実施例に関連した水電解装置は、前記隔膜の内部流路650と前記正極側気液分離器200および負極側気液分離器300のうち少なくとも一つの液相領域202、302を連通するためのガス供給ライン230を追加に含むことができる。このような構造で、隔膜600の内部流路650に存在するガスは、前記ガス供給ライン230を通じて正極側気液分離器200および負極側気液分離器300のうち少なくとも一つの液相領域202、302に供給され得る。この時、隔膜の内部流路650と連結された前記ガス供給ライン230は分枝されて、一端部が前記正極側気液分離器200および負極側気液分離器300のうち少なくとも一つの液相領域202、302に連結され、他端部が隔膜の内部流路650に存在するガスの一部を系外に放出するように構成されてもよい。すなわち、隔膜600の内部流路650のガスを前記ガス供給ライン230を通じてそれぞれ正極側気液分離器200および負極側気液分離器300の液相領域に全体または一部を再供給することによって、気液分離器内の液相領域に微細な気泡を拡大生成することによって気液分離効率をさらに増大させることができる。
【0098】
本発明の一実施例に係る水電解装置は、前記隔膜600、流体供給ライン220、ガス供給ライン230および気液分離手段900を具備することによって、水電解装置で生産される酸素および水素ガスの純度を向上させることができ、水電解装置の酸素および水素ガスの生産効率を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の水電解装置は気液分離器または電解液循環ラインに備えられた隔膜を通じて電解液内に存在する溶存ガスを分離することによって、水電解装置の気相領域中のガス組成が爆発限界に到達することを防止するとともに、水電解を通じてのガスの生産効率を増加させることができる。
【国際調査報告】