(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】フォトニック結晶印刷インク溶液の生成及び使用のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/26 20060101AFI20240403BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240403BHJP
G02B 5/28 20060101ALI20240403BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
G02B5/26
B05D7/24 301M
G02B5/28
H01L21/30 502D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549127
(86)(22)【出願日】2022-02-16
(85)【翻訳文提出日】2023-10-11
(86)【国際出願番号】 US2022016590
(87)【国際公開番号】W WO2022177987
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523309646
【氏名又は名称】キプリス マテリアルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ライアン,マシュー,ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ピアソン,ライアン,エム.
(72)【発明者】
【氏名】トゥラダール,トリ,アール.
(72)【発明者】
【氏名】ヘス,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ウィットソン,ルーク
【テーマコード(参考)】
2H148
4D075
5F146
【Fターム(参考)】
2H148AA03
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2H148BE31
4D075AC06
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4D075EC07
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5F146AA28
(57)【要約】
【課題】フォトニック結晶印刷インク溶液の生成及び使用のための新規なシステム及び方法の提供。
【解決手段】フォトニック結晶形成インク溶液の生成及び印刷のために、又はその生成及び印刷に関連付けて使用されるシステム及び方法。このシステム及び方法は、ブロックコポリマーを使用し、任意選択的に溶媒も使用する。印刷されるインク溶液の色は、単一又は複数のブロックコポリマー混合物によって設定する(すなわち予混合着色)か、又は、個別の単一又は複数のブロックコポリマー混合物の複数の層を印刷することによって設定する(すなわち印刷後着色)ことができる。システム及び方法によって用いられる1又は複数の組成物は、構造色(すなわちフォトニック結晶)前駆物質として機能する。インク溶液の配合、投入、印刷、及び任意選択的な基板上での印刷後処理は、反射着色特性を有する所望のフォトニック結晶印刷物体を提供するように機能する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
・少なくとも1つのブロックコポリマーと、
・少なくとも1つの溶媒と、
を備える、
印刷可能フォトニック結晶形成インク溶液のための組成物。
【請求項2】
少なくとも1つのコバインダーを更に備える、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの溶媒は反応性モノマー又はオリゴマーを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの溶媒は水を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つのコバインダーは架橋官能基を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つのコバインダーはイソ酪酸酢酸スクロース(SAIB-100)を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つのコバインダーは安息香酸スクロースを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項8】
膨張剤を更に備える、請求項3に記載の組成物。
【請求項9】
前記膨張剤は架橋官能基を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物は前記少なくとも1つの溶媒の追加前の結合乾燥状態を有し、前記少なくとも1つの溶媒の追加によって機能性印刷可能フォトニック結晶形成インク溶液になる、請求項3に記載の組成物。
【請求項11】
構造インクのための印刷方法であって、
・プリンタシステムにおいてフォトニック結晶形成インクの少なくとも1つの容器を受容することであって、
-前記フォトニック結晶インクは、一度基板上に印刷されたら、指定された色のフォトニック結晶膜を形成する溶液を含む、フォトニック結晶形成インクの少なくとも1つの容器を受容することと、
・前記インク溶液を投入することによって、前記フォトニック結晶形成インクを印刷のために調製することと、
・前記インク溶液を印刷することによって、第1の層のフォトニック結晶膜を堆積することと、
を含む、方法。
【請求項12】
前記インク溶液を印刷することは、複数のパスを印刷することによって複数の層のフォトニック結晶膜を堆積することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記フォトニック結晶膜を後処理することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記フォトニック結晶膜を後処理することは、前記フォトニック結晶膜上に保護用の透明コート又はオーバープリントワニスを追加することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記フォトニック結晶膜を後処理することは、前記フォトニック結晶膜をアクティブに乾燥させること又は硬化させることを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
・フォトニック結晶形成インクの少なくとも1つの容器を受容することは、フォトニック結晶形成インクの少なくとも2つの容器を受容することを含み、
・前記インク溶液を投入することは、前記少なくとも2つの容器のフォトニック結晶形成インクを混合して印刷前の所望の色のインク溶液を達成することを含み、
・前記インク溶液を印刷することは、前記印刷前の所望の色に対応する第1の層のフォトニック結晶膜を堆積することを含む、
請求項12に記載の方法。
【請求項17】
・前記少なくとも2つの容器のフォトニック結晶インクは、2つの容器のフォトニック結晶インク、すなわち第1のフォトニック結晶インク及び第2のフォトニック結晶インクを含み、
・前記2つの容器のフォトニック結晶インクを混合することは、前記第1のフォトニック結晶インク及び前記第2のフォトニック結晶インクの比によって前記印刷前の所望の色を設定することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
・前記少なくとも2つの容器のフォトニック結晶インクは、3つの容器のフォトニック結晶インク、すなわち、
-赤色インクに対応する第1のフォトニック結晶インク、
-緑色インクに対応する第2のフォトニック結晶インク、及び、青色インクに対応する第3のフォトニック結晶インクを含み、
・前記3つの容器のフォトニック結晶インクを混合することは、前記第1のフォトニック結晶インク、前記第2のフォトニック結晶インク、及び前記第3のフォトニック結晶インクの比によって、前記印刷前の所望の色を設定することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
印刷後着色モードのため、
・フォトニック結晶形成インクの少なくとも1つの容器を受容することは、フォトニック結晶形成インクの少なくとも2つの容器を受容することを含み、
・印刷後カラーを決定することであって、前記印刷後カラーを生成するために必要な各フォトニック結晶インクの量を計算することを含む、印刷後カラーを決定することと、
・一度に1つのフォトニック結晶形成インクを投入することを含む、前記インク溶液を投入することと、
・異なるフォトニックインク溶液によって基板上に複数のパスを印刷することを含む、前記インク溶液を印刷することと、
を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
加法印刷後カラーのため、基板上に複数のパスを印刷することは前記印刷されたインク溶液を混合することを含み、一度乾燥したら、前記決定された印刷後カラーの単一層膜のみが前記基板上に堆積されるようになっている、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
・前記少なくとも2つの容器のフォトニック結晶インクは、3つの容器のフォトニック結晶インク、すなわち、
-赤色インクに対応する第1のフォトニック結晶インク、
-緑色インクに対応する第2のフォトニック結晶インク、及び、青色インクに対応する第3のフォトニック結晶インクを含み、
・前記インク溶液を印刷することは、
-前記計算された量の前記第1のフォトニック結晶インクを印刷すること、
-前記計算された量の前記第2のフォトニック結晶インクを印刷すること、
-前記計算された量の前記第3のフォトニック結晶インクを印刷すること、及び
-前記フォトニック結晶インク溶液を混合することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ハイブリッド加法/減法印刷後カラーのため、複数パスに対してインク溶液によってパスを印刷することは、印刷したパスのそれぞれで、異なるフォトニック結晶インク又は異なる減法色インク溶液によってパスを印刷することを含み、前記フォトニック結晶膜を後処理することは、前記フォトニック結晶膜を乾燥させること又は前記減法色インク膜を乾燥させることを含み、一度完了したら、前記決定された印刷後カラーに対応する多層膜が前記基板上に堆積されるようになっている、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
・前記少なくとも2つの容器のフォトニック結晶インクは、4つの容器のフォトニック結晶インク溶液、すなわち、
-赤色インクに対応する第1のフォトニック結晶インク、
-緑色インクに対応する第2のフォトニック結晶インク、
-青色インクに対応する第3のフォトニック結晶インク、及び、
-第4のインク減法色インク溶液を含み、
・前記インク溶液を印刷することは、
-前記計算された量の前記第1のフォトニック結晶インクを印刷すること、
-前記計算された量の前記第2のフォトニック結晶インクを印刷すること、
-前記計算された量の前記第3のフォトニック結晶インクを印刷すること、及び
-前記計算された量の前記第4の減法色インクを印刷することを含み、
・前記フォトニック結晶膜を後処理することは、
-前記第1のフォトニック結晶インクの層を乾燥させること、
-前記第2のフォトニック結晶インクの層を乾燥させること、
-前記第3のフォトニック結晶インクの層を乾燥させること、及び
-前記減法色インク層を乾燥させること、を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
構造インクのための印刷システムであって、
・少なくとも第1のインク容器を含むインク容器システムであって、
-各インク容器は構造インク溶液を収容し、
-前記第1のインク容器は第1の構造色溶液を収容し、前記第1の構造色溶液は第1の別個のブロックコポリマー又は第1の別個のブロックコポリマー混合物を含む、インク容器システムと、
・印刷溶液を基板上に堆積することによってフォトニック結晶堆積を生成することができる堆積システムと、
・前記インク容器システム及び前記堆積システムに接続された投入機構であって、印刷注文が一度受信されたら、適切な量の適切な前記構造色溶液を前記堆積機構に投入することによって前記印刷溶液を構築する投入機構と、
を備える印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、2021年2月16日に出願された米国仮特許出願第63/149,943号の優先権を主張する。この出願は参照により全体が本願に含まれる。
【0002】
[0002] 本発明は、一般に、フォトニック結晶形成の分野に関し、より具体的には、フォトニック結晶形成インク溶液を生成及び印刷するための新規且つ有用なシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] 色形成、特に、使用する新しい色の生成は、数千年にわたって開発されている分野である。研究開発は続けられているが、色を形成し、次いで塗布/印刷するための技術は、主に、染料及び顔料の開発による新しい色の開発に焦点を当てている。
【0004】
[0004] 染料は通常、植物から抽出されるか、又は合成によって生成される(例えばインディゴ又はアリザリン)有機化合物である。染料は有用な着色料を提供し、これは有毒である場合もそうでない場合もあるが、染料は種類が限られている。更に、染料を基層(substrate)(例えば衣類)に印刷/塗布するには、有毒である可能性のある強い有機溶媒が必要となることがある。顔料は、乾燥着色物質であり、通常は溶媒と混合された不溶性粒子であり、典型的にはコールタール及び石油化学製品に由来する。顔料は染料に比べ、はるかに色のバリエーションが幅広いが、非常に毒性が高いことがある。
【0005】
[0005] 従って、染料及び顔料には多くの制限がある。例えば、染料及び顔料は、新しい色を生成するために新しい化学物質を発見及び生成しなければならないことによって制限される。例えば、赤及び青の染料又は顔料を別個に利用するためには、2つの異なる分子を合成しなければならない。多くの染料及び顔料は潜在的に有毒であるので、それらの生成及び/又は使用は危険を伴う可能性がある。染料又は顔料により着色された材料は、染料又は顔料が経時的にゆっくりと分散及び/又は分解するにつれて(例えば、色を発生させる発色団が分解する可能性がある)、経時的に色が褪せる傾向がある。更に、効果顔料(effect pigment)(干渉顔料とも呼ばれる)は、比較的大きい粒子を含むので、印刷における利用、特にインクジェット印刷における利用が制限される。
【0006】
[0006] 構造色、特に一部の合成フォトニック結晶は、付加価値のある光学効果を物体に与えるための染料及び顔料の代替案を提供する。フォトニック結晶によって与えられる反射着色は、従来の染料のような吸収帯でなく、材料の物理的幾何学に起因するものである。このため、合成フォトニック結晶は、材料により生成される色を化学官能基から切り離し、有毒且つ不安定な発色団の必要を回避する可能性を与える。
【発明の概要】
【0007】
[0007] 従って、色形成、反射材料形成、及び印刷の分野では、無毒で、新しい発色団の生成又は発見によって制限されず、特有の光学特性を有し、経時的に色が褪せない、より一貫性のある色形成及び印刷の方法が必要とされている。本発明は、そのような新規且つ有用なシステム及び方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】[0008] 典型的に実施される色域の図である。
【
図2】[0009] ベンチマークインクジェットインク溶液の図である。
【
図3】[0010] 最適でないインクジェットインク溶液の図である。
【
図4】[0011] 準最適な液滴形成の画像である。
【
図5】[0012] 例示的なシステムのインク溶液の配合である。
【
図6】[0013] 例示的なシステムのインク溶液の粘弾性特性の図である。
【
図7】[0014] コバインダーを含有する例示的なシステムのインク溶液の配合である。
【
図8】[0015] 例示的なシステムのインク溶液の粘弾性特性の図である。
【
図9】[0016] 例示的なシステムのインク溶液の良好な液滴形成の画像である。
【
図10】[0017] 例示的なシステムのインク溶液の良好な液滴形成の画像である。
【
図11】[0018] フォトニック結晶プリントアウトの画像である。
【
図12】[0019] 構造的に着色された印刷物体を形成する例示的なシステムのインク溶液の配合である。
【
図13】[0020] 構造的に着色された物体を形成する例示的なラジカル硬化スクリーン印刷溶液の配合である。
【
図14】[0021] 構造的に着色された物体を形成する例示的なカチオン硬化スクリーン印刷溶液の配合である。
【
図15】[0022] いくつかの含まれる例示的なシステムにおける構造的に着色された物体の光学測定である。
【
図16】[0022] いくつかの含まれる例示的なシステムにおける構造的に着色された物体の光学測定である。
【
図17】[0023] 印刷システムの概略図である。
【
図18】[0024] フォトニック結晶形成インク溶液を用いる印刷のための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[0025] 本発明の実施形態の以下の記載は、本発明をこれらの実施形態に限定することでなく、当業者による本発明の実施及び使用を可能とすることを意図している。
【0010】
1.概要
[0026] フォトニック結晶形成インク溶液の生成及び印刷のための、又はその生成及び印刷に関連付けられるシステム及び方法は、ブロックポリマー混合物及び溶媒の使用を含み得る。印刷されるインク溶液の色は、単一もしくは複数のブロックポリマー混合物によって設定する(すなわち予混合着色(premixed coloring))か、又は、個別の単一もしくは複数のブロックポリマー混合物の複数の層を印刷することによって設定する(すなわち印刷後着色(post print coloring))ことができる。システム及び方法によって用いられる1又は複数の組成物は、構造色(すなわちフォトニック結晶)前駆物質として機能する。インク溶液の配合、投入(loading)、印刷、及び任意選択的な基板上での印刷後処理は、反射特性を有する所望のフォトニック結晶印刷物体を提供するように機能する。
【0011】
[0027] システム及び方法は、反射インク及びコーティングを必要とする任意の分野又は用途で用いることができる。高級な着色を必要とする分野、例えば化粧品、印刷、スポーツ用品、梱包、セキュリティマーケティング、及び自動車では、システム及び方法が特に有用であり得る。システム及び方法は、任意の着色及び/又は印刷用途のために実施することができる。システム及び方法は、一般的にインクジェット印刷、より具体的には産業用インクジェット印刷に、特に適している。システム及び方法は更に、スクリーン印刷、感熱印刷、フレキソ印刷、及び輪転グラビア印刷を含むがこれらに限定されない、他のタイプの印刷のために実施され得る。
【0012】
[0028] システム及び方法は、多くの潜在的な利点を提供し得る。フォトニック結晶形成インクによって生成された色は、現在用いられている顔料及び染料に比べ、毒性が著しく低い可能性がある。
【0013】
[0029] 更に、フォトニック結晶形成インクでコーティングされた物体は、現在のリサイクルプロセスとの適合性が高い可能性がある。
【0014】
[0030] 更に、フォトニック結晶形成インクを用いた物体は、特有の光学特性を有し得る。
【0015】
[0031] また、システム及び方法は、少数の材料入力から複数の異なる色を発生させるための簡単な配合ワークフローという利点を提供し得る。
【0016】
[0032] 更に、フォトニック結晶形成インクは、従来の顔料及び染料に比べて色が褪せにくい、より「回復力のある(resilient)」形態の印刷を提供し得る。
【0017】
[0033] インクジェット印刷において、システム及び方法は、現在用いられているものよりも高分子量の、すなわち「大きい」ポリマー分子の印刷を可能とし得る。すなわち、ブラシブロックコポリマーは、「大きい」ポリマーのインクジェット印刷を可能とする低い溶液粘度及びせん断減粘性(shear thinning property)を提供し得る。
【0018】
[0034] システム及び方法は、現在の技術に比べて安価な反射材料印刷方法を提供し得る。コバインダーの使用により、システム及び方法は、現在の製品に比べ、著しく大量の印刷可能インク溶液を低コストで提供することができる。
【0019】
[0035] システム及び方法は、限定ではないが、200~400nm波長にわたる紫外線反射コーティングを印刷する方法を提供し得る。
【0020】
[0036] システム及び方法は、限定ではないが、400~750nm波長にわたる可視光反射コーティングを印刷する方法を提供し得る。
【0021】
[0037] システム及び方法は、限定ではないが、750~2000nm波長にわたる赤外線反射コーティングを印刷する方法を提供し得る。
【0022】
[0038] システム及び方法は、現在の技術に比べ、新しい又は拡張された色域を印刷する方法を提供し得る。加法混色を使用することにより、システム及び方法は、現在利用可能な顔料及び色素を用いて、また、減法混色理論の適用によって一般的に達成することができない色を提供し得る。
【0023】
[0039] 更に、システム及び方法は、顔料及び染料と共に用いられた場合に向上させることができる。システム及び方法は、フォトニック結晶形成インクを顔料及び染料と組み合わせて、減法及び加法混色理論を混合して色域を生成することにより、特有の色を含む幅広い範囲の色を可能とし得る。
【0024】
[0040] システム及び方法は、多数の潜在的な利点を提供することができる。システム及び方法は、常にそのような利点を提供することに限定されず、どのようにシステム及び方法を使用できるかを示す例示的な表現としてのみ提示される。利点の列挙は網羅的であることを意図しておらず、追加的に又は代替的に他の利点も存在し得る。
【0025】
2.インク溶液のための組成物(システム1)
[0041] 印刷可能フォトニック結晶形成インク溶液のための組成物は、少なくとも1つのブロックコポリマー110及び少なくとも1つの溶媒120を含む。組成物は、一度基板上に堆積されたら、反射構造(すなわち構造色)を形成する非粒子状印刷物溶液として機能する。すなわち組成物は、印刷のために最適化及び/又は強化されたブロックコポリマーベースの溶液として機能する。組成物は、一度「印刷」されたら、印刷方法及び所望の実施例によって決定される、適切に指定された表面積、厚さ、色、及び設計で、印刷表面上に「膜」として堆積される。
【0026】
[0042] 好適な変形において、フォトニック結晶構造は、堆積された膜内で比較的周期的な微細構造を有し、所望の色波長(又は所望の色波帯)に適した平均周期性を備える。システムは、実施例に応じて大きく変動し得る(例えば、実施される印刷方法のタイプ、実施されるプリンタ、ターゲット基板、及び所望の出力のため)。実施例に応じて、溶液は更に、共溶媒、コバインダー、及び膨張剤、並びに、塗料、インク、又はコーティング添加剤も含み得る。コーティング添加剤は、限定ではないが、界面活性剤、保湿剤、架橋剤、光開始剤、光増感剤、レベリング剤、接着促進剤、レオロジー改質剤、可塑剤、安定剤、及び任意の数の他の添加剤等である。
【0027】
[0043] 本明細書で用いられる場合、基板とは、組成物を塗布することができる任意の表面を指す。実施例及びインク溶液組成物に応じて、使用可能な基板は様々に変動し得る。使用可能な基板の例は、梱包材料、スポーツ用品、自動車の表面、クレジットカード、腕時計の文字盤、履物、紙、オーガニック生地、合成生地、プラスチック、金属、壁等を含み得る。
【0028】
[0044] インク溶液の「着色(coloring)」特性として、インク溶液組成物は、異なる色のインク溶液を組み合わせて異なる混合物の色を生成することを可能とする。インク溶液は、加法着色(additive coloring)(例えばモニタのRGB着色)及び減法着色(subtractive coloring)(例えばプリンタのCYMK着色)の双方を可能とし得る。加法着色の一部として、異なる色のインク溶液を混合して、フォトニック結晶形成インク溶液の波長の平均に対応する新しい色の膜を生成することができる。この混合は、組成物を基板上に印刷する前に実行するか、又は、基板上に堆積している間又は堆積した後にインク溶液を混合する印刷プロセスの一部として実行することができる。減法着色の一部として、顔料又は染料と共に、異なるインク溶液を層状にして、各インク溶液膜層が所望の色スペクトルを吸収して所望の色を残すようにすることができる。
【0029】
[0045] また、異なるインク溶液を基板上に堆積し、それぞれの堆積と堆積との間で硬化又は乾燥させることによって、色混合を実行することができる。この方法では、標準的な色のベース(例えばRGB着色)について考えると、青、緑、又は赤の構成層を順次堆積することによって、基本色以外の色を得ることができる。
【0030】
[0046] いくつかの変形において、インク組成物は、点描画的な「着色」に有用であり得る。すなわち、様々な色の小さいドットを、人の目では拡大せずには各々を区別できないように堆積することができる。
【0031】
[0047] 色値の測定は、L*a*b色空間を用いて実行することができる。L*a*b色空間又はL*a*b色モデル(すなわちCIELAB色モデル)は、当業者には既知である。L*a*b色モデルは、例えばDIN EN ISO/CIE11664-4:2020-03において標準化されている。L*a*b色空間で知覚可能な色はそれぞれ、3次元座標系の座標{L*,a*,b}内の固有の色位置によって記述される。a*軸は、色の緑又は赤の部分を記述し、負の値は緑を、正の値は赤を表す。b*軸は、色の青又は黄の部分を記述し、負の値は青を、正の値は黄を表す。従って、数が小さくなればなるほど青みがかった色を示す。L*軸は、この面に対して垂直であり、明度を表す。L*C*h色モデルは、L*a*b色モデルと同様であるが、直交座標でなく円筒座標を用いる。L*C*h色モデルでは、L*は明度を表し、C*は彩度を表し、hは色相角を表す。彩度C*の値は、明度軸(L*)からの距離である。これらの値は、Konica MinoltaのCM5分光光度計を用いて測定される。サンプルの分析は、Konica MinoltaのCM5標準操作手順に従って実行される。
【0032】
[0048] 本明細書で用いられる場合、色、印刷色、又は設計に対する言及は、基板に塗布されて乾燥させた際にフォトニック結晶(構造色)を形成するインク溶液を意味する。(例えば自己集合プロセスによる)ナノ構造又は微細構造の材料が、好ましい印刷色及び/又は設計を反射する。例えば、緑インク溶液という場合、これは、乾燥させた際に緑光を反射するフォトニック結晶を残すインク溶液を意味する。また、実施例に応じて、緑色の「純度」又は彩度も操作することができる。すなわち、実施例に応じて、緑インク溶液とは、乾燥させた場合に緑光のみを反射するフォトニック結晶を残すインク溶液を意味する(すなわち、緑として観察される波長範囲を中心とした狭い光反射波帯)か、又は、主に緑色を反射するインク溶液を意味することができる(すなわち、広帯域の光が反射され、緑を中心とするピーク反射がある)。実施例に応じて、構造色インク溶液は、所望の反射スペクトルを有するフォトニック結晶構造を残すように乾燥することができる。
【0033】
[0049] システムは、極めて狭い波長帯又は広い波長帯を反射することができる反射フォトニック結晶構造の構築を可能とする。このため、印刷色と同様に、本明細書で用いられる場合、波長(又は反射波長)は一般に、電磁スペクトルの波長帯を意味する。特に明記しない限り、波長という用語(又は色という用語)の使用は、いかなる点でも、可視スペクトル内の波長及び/又は狭い波長帯もしくは広い波長帯に本発明を限定しない。
【0034】
[0050] 1つの変形において、印刷可能フォトニック結晶形成インク溶液のための組成物は、少なくとも1つのブロックポリマー及び少なくとも1つの溶媒を含み得る。
【0035】
[0051] 別の変形において、印刷可能フォトニック結晶形成インク溶液のための組成物は、少なくとも1つのブロックポリマー、少なくとも1つの溶媒、及び少なくとも1つの膨張ポリマーを含み得る。
【0036】
[0052] 別の変形において、印刷可能フォトニック結晶形成インク溶液のための組成物は、少なくとも1つのブロックポリマー、少なくとも1つの溶媒、及び少なくとも1つのコバインダーを含み得る。
【0037】
[0053] 別の変形において、印刷可能フォトニック結晶形成インク溶液のための組成物は、少なくとも1つのブロックポリマー、少なくとも1つの溶媒、少なくとも1つの膨張ポリマー、及び少なくとも1つのコバインダーを含み得る。
【0038】
[0054] 別の変形において、印刷可能フォトニック結晶形成インク溶液のための組成物は、少なくとも1つのブロックポリマー、少なくとも1つの溶媒、及び少なくとも1つのコバインダーを含み得る。少なくとも1つの溶媒は、反応性モノマー又はオリゴマーを含む。
【0039】
[0055] 別の変形において、印刷可能フォトニック結晶形成インク溶液のための組成物は、少なくとも1つのブロックポリマー、少なくとも1つの溶媒、及び少なくとも1つのコバインダーを含み得る。少なくとも1つの溶媒は水を含む。
【0040】
[0056] 別の変形において、印刷可能フォトニック結晶形成インク溶液のための組成物は、少なくとも1つのブロックポリマー、少なくとも1つの溶媒、及び少なくとも1つのコバインダーを含み得る。少なくとも1つのコバインダーは架橋官能基を含む。
【0041】
[0057] 別の変形において、印刷可能フォトニック結晶形成インク溶液のための組成物は、少なくとも1つのブロックポリマー、少なくとも1つの溶媒、及び少なくとも1つのコバインダーを含み得る。コバインダーはイソ酪酸酢酸スクロース(SAIB-100)を含む。
【0042】
[0058] 別の変形において、印刷可能フォトニック結晶形成インク溶液のための組成物は、少なくとも1つのブロックポリマー、少なくとも1つの溶媒、及び少なくとも1つのコバインダーを含み得る。コバインダーはセルロースエステル樹脂を含む。
【0043】
[0059] 別の変形において、印刷可能フォトニック結晶形成インク溶液のための組成物は、少なくとも1つのブロックポリマー、少なくとも1つの溶媒、及び少なくとも1つのコバインダーを含み得る。コバインダーは安息香酸スクロースを含む。
【0044】
[0060] 別の変形において、印刷可能フォトニック結晶形成インク溶液のための組成物は、少なくとも1つのブロックポリマー、少なくとも1つの溶媒、膨張剤、及び少なくとも1つのコバインダーを含み得る。少なくとも1つのコバインダーは架橋分子を含む。
【0045】
[0061] 別の変形において、印刷可能フォトニック結晶形成インク溶液のための組成物は、少なくとも1つのブロックポリマー、少なくとも1つの溶媒、少なくとも1つのコバインダーを含み得る。少なくとも1つのコバインダーは架橋分子を含む。組成物は更に膨張剤を含み得る。膨張剤は架橋官能基を含有する。
【0046】
[0062] 別の変形において、印刷可能フォトニック結晶形成インク溶液のための組成物は、少なくとも1つのブロックポリマー、少なくとも1つの溶媒、及び少なくとも1つのコバインダーを含み得る。少なくとも1つのコバインダーは架橋分子を含む。この変形は更に、少なくとも1つの溶媒の追加前の結合乾燥状態(combined dry state)を含み、少なくとも1つの溶媒の追加によって機能性印刷可能フォトニック結晶形成インク溶液になることができる。
【0047】
[0063] 別の変形において、印刷可能フォトニック結晶形成インク溶液のための組成物は、少なくとも1つのブロックポリマー、少なくとも1つの溶媒、及び少なくとも1つのコバインダーを含み得る。インクの粘度は、インクジェット印刷の適用性に合わせて、25℃で1~20cPに調整される。
【0048】
[0064] 別の変形において、インクの粘度は、スクリーン印刷の適用性に合わせて、25℃で1,000cP~10,000cPに調整される。
【0049】
[0065] 別の変形において、印刷可能フォトニック結晶形成インク溶液のための組成物は、少なくとも1つのブロックポリマー、少なくとも1つの溶媒、及び少なくとも1つのコバインダーを含み得る。インクの粘度は、フレキソ印刷及びグラビア印刷の適用性に合わせて、25℃で10cP~300cPに調整される。
【0050】
[0066] これらの変形、及び全ての変形において、温度を変更すると粘度が変化する。
【0051】
[0067] システムは、少なくとも1つのブロックコポリマー110を含み得る。ブロックコポリマー110は、秩序だったナノ構造又は微細構造を形成するための足場として機能し、この構造から色が生じる。すなわち、ブロックコポリマー110によって、インク溶液はフォトニック結晶すなわち構造色に自己組織化することができる。各ブロックコポリマー110は、反応性末端を介してリンクされたブロックの配列(例えば線状、ブラシ、星型)の分子を含む。各ブロックコポリマー110は、ナノスケールから微細なスケールの長さで、異なる秩序相を形成することができる。各ブロックコポリマーが特定の色に対応することができ、及び/又は、少なくとも1つのブロックコポリマーが、複数のブロックコポリマーを含むインク溶液に対応して、それらが共に1つの色に対応することができる。
【0052】
[0068] ブラシブロックコポリマー、及びブラシブロックコポリマーの対応する構成物質は、WO2020/180427号及びUS2021/0395463号A1に記載されている一般的な方法で調製することができる。追加的に又は代替的に、ブラシブロックコポリマーを調製するため他の方法を取り入れてもよい。
【0053】
[0069] 実施例に応じて、少なくとも1つのブロックコポリマー110は、重量でインク溶液の最大80%を占める。一実施例において、ブロックコポリマー110はインク溶液の約1~10%を構成する。別の実施例において、ブロックコポリマー110はインク溶液の10%~20%を構成する。別の実施例において、ブロックコポリマー110はインク溶液の20%~30%を構成する。別の実施例において、ブロックコポリマー110はインク溶液の30%~40%を構成する。別の実施例において、ブロックコポリマーはインク溶液の約40%~50%を構成する。別の実施例において、ブロックコポリマー110はインク溶液の50%~60%を構成する。別の実施例において、ブロックコポリマー110はインク溶液の60%~70%を構成する。別の実施例において、ブロックコポリマーはインク溶液の70%~80%を構成する。別の実施例において、ブロックコポリマー110はインク溶液の80%~90%を構成する。
【0054】
[0070] 少なくとも1つのブロックコポリマー110は、実施例の必要又は要求に応じて任意のタイプのブロックコポリマーを含み得る。ブロックコポリマー110のタイプの例は、ブラシブロックコポリマー、ウェッジタイプのブロックコポリマー、ハイブリッドウェッジコポリマー、線状ブロックコポリマー、又は他の任意のタイプのブロックコポリマーを含む。実施例に応じて、全てのブロックコポリマーは単一のタイプであるか又は様々なタイプであり得る。例えば一実施例において、少なくとも1つのブロックコポリマー110は2つのブラシブロックコポリマーを含み得る。別の例において、少なくとも1つのブロックコポリマー110は、2つのブラシブロックコポリマー及び1つのウェッジタイプのブロックコポリマーを含み得る。第3の例において、少なくとも1つのブロックコポリマー110は、ブラシブロック及び線状ブロックの双方を含む単一のブロックコポリマーを含む。
【0055】
[0071] いくつかの変形において、少なくとも1つのブロックコポリマー110は、ブラシブロックコポリマーを含む(ボトルブラシポリマーアーキテクチャを有するブロックポリマー、又はグラフトコポリマーとしても既知である)。いくつかの実施例において、ブラシブロックコポリマーは、(例えば、高分子マクロモノマーの共重合化及び反応性希釈剤によって)調整されたグラフト密度を有し得る。追加的に又は代替的に、少なくとも1つのブロックコポリマーは、複数のブラシブロックコポリマーを含み得る。ブラシブロックコポリマーは、せん断減粘性を提供し得る。すなわち、ブラシブロックコポリマーのポリマー鎖の絡み合いの欠如により、同様の大きさ及び/又は同様の分子量であるがブラシアーキテクチャを持たないポリマーによる「典型的な」溶液に比べ、粘度の低い溶液が生じ得る。
【0056】
[0072] US2021/0395463A1号内、T.-P.Lin等のJACS2017、139(10)、3896~3903ページのサポート情報、及び、T.-P.Lin等のACS Nano、2017、11(11)、11632~11641ページのサポート情報に記載されている一般的な方法で、多様なグラフト密度を有するブラシブロックコポリマーを調製することができる。
【0057】
[0073] いくつかのブラシブロックコポリマーの変形において、ブロックコポリマー110は高度に調整可能なブラシブロックコポリマーを利用することができる。これらのブラシブロックコポリマーは2つ以上のポリマーブロックを有することができ、それらのうち少なくとも1つは1つ以上の予め選択された特性を有する。例えば、2つのポリマーブロック(第1のポリマーブロック及び第2のポリマーブロック)を備えるグラフトコポリマーの実施例において、第1のポリマーブロックは、予め選択されたグラフト密度、予め選択されたグラフト分布、及び/又は予め選択された重合度を有し得る。第2のポリマーブロックは、予め選択されたグラフト密度、グラフト分布、及び/又は重合度を有する場合もそうでない場合もある。第2のポリマーブロックは、実施例の要求に応じて同一又は別個であり得る(より一般的な実施例で、グラフトコポリマーの追加ポリマーブロックもこれに当てはまる可能性がある)。このように、ブロックコポリマーは、高度に調整可能で決定論的な性質を有し得る。これは次いで、本発明の自己集合構造及び関連する方法の高い調整可能性と多用途性に寄与することができる。
【0058】
[0074] ブラシブロックコポリマーの任意の実施形態において、ブラシブロックコポリマーは予め選択されたグラフト密度を有し得る。予め選択されたグラフト密度は、0.01~1.00の範囲から選択された任意の値(無単位比密度)とすることができる。言い換えると、0.01~1.00の範囲内の任意の値である予め選択されたグラフト密度が得られるように、希釈剤とマクロモノマー及びこれらの構成要素の量(濃度)を予め選択すればよい。すなわち、本明細書に開示されているグラフトコポリマーを合成する方法の任意の実施形態において、グラフト密度は0.01~1.00の範囲から選択することができる。例えば、実施例に応じて、グラフト密度は、0.01~0.32、0.32~0.34、0.34~0.49、0.49~0.51、0.51~0.65、0.65~0.68、0.68~0.75、又は0.75~1.00の範囲から選択すればよい。
【0059】
[0075] 少なくとも1つのブロックコポリマーが複数のブラシブロックコポリマーを含む変形において、第1のブラシブロックコポリマーは、予め選択された第1のグラフト密度(上記ではグラフト密度とも呼ばれる)を有し得る。従って、追加のブラシブロックコポリマー、すなわち第2のブロックコポリマー、第3のブラシブロックコポリマー、...、N番目のブロックコポリマーは、対応する予め選択されたグラフト密度、すなわち、第2のグラフト密度、第3のグラフト密度、...、N番目のグラフト密度を有し得る。前述のように、各ブロックコポリマー内でもグラフト密度が変動し、別個のブロックコポリマーの別個のブロックが別個の特性(例えば別個のグラフト密度)を有する場合がある。本明細書に開示されているブラシグラフトコポリマーの方法の任意の実施形態において、いずれかのグラフト密度(すなわち、第1のグラフト密度からN番目のグラフト密度)は、0.01~1.00の範囲内から選択され得る。本明細書に開示されているグラフトコポリマーを合成する方法の任意の実施形態において、いずれかのグラフト密度(すなわち、第1のグラフト密度からN番目のグラフト密度)は、0.01~1.00の範囲から選択され得る。本明細書に開示されているブラシグラフトコポリマーを合成する方法の任意の実施形態において、いずれかのグラフト密度(すなわち、第1のグラフト密度からN番目のグラフト密度)は、0.01~0.32、0.32~0.34、0.34~0.49、0.49~0.51、0.51~0.65、0.65~0.68、0.68~0.75、又は0.75~1.00の範囲から選択され得る。
【0060】
[0076] ポリマー分子量:数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(MW);及び分子量分布:PDI(polydispersity index):多分散指数)は、示差屈折率(dRI:differential refractive index)及び2つの光散乱(LS:light scattering)検出器の組み合わせを用いて、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC:gel permeation chromatography)によって決定することができる。LS検出器の使用により、ポリマーサンプルの絶対分子量の分析が可能となる。全てのサンプルに用いた溶媒はテトラヒドロフラン(THF:tetrahydrofuran)であり、溶出率は1.0mL/分であった。ポリマーサンプルは、2.5~7.5mg/mLの範囲の濃度でHPLCグレードのTHFに完全に溶解させ、0.5μmのシリンジフィルタに通し、オートサンプラによって注入した。多孔性カラム固定相は2つのMalvern T600単一孔カラムから成り、排除限界はポリ(スチレン)で20,000,000Daであった。分子量及びPDIは、OMNISECソフトウェアによって決定した。
【0061】
[0077] 一般に、ブラシブロックコポリマーのサンプルは、PDIによって定量化される分子量分布を含む。PDIの変更は、ブラシブロックコポリマーを含有する堆積コーティングの1又は複数の反射波長の強度及び/又はラムダマックス(最も強い反射の波長)を増大又は低減させるように機能し得る。多くの変形において、ブラシブロックコポリマーの均一性は生成条件によって制御することができる。ブラシブロックコポリマーの一変形では、グラフトコポリマーの多分散指数は1.00~1.30の範囲から選択され得る。別の変形では、グラフトコポリマーの多分散指数は1.00~1.20の範囲から選択され得る。別の変形では、グラフトコポリマーの多分散指数は1.00~1.10の範囲から選択され得る。
【0062】
[0078] いくつかの変形において、少なくとも1つのブロックコポリマー110の各ブロックコポリマーは、フォトニック結晶に組織化する1又は複数の分子構造を含み得る。実施例に応じて、ブロックコポリマー110は、一度乾燥したら所望の色組成物を形成する(すなわち、1又は複数の所望の光波長を反射するフォトニック結晶を形成する)ような構造のための足場を提供することができる。一変形において、ブロックコポリマー110は単一ブロック分子構造を含み、単一ブロック溶液が、特定の反射波長を有するフォトニック結晶を形成する。あるいは、ブロックコポリマー110は複数ブロックを含み、複数ブロック溶液が、各ブロックに対応する特定の反射波長を有するフォトニック結晶を形成する。いくつかの変形において、組成物は、約200nm~約2000nmの範囲内の波長のフォトニックバンドギャップ(最大反射の波長)を示す。
【0063】
[0079] 他の変形において、組成物は、約200nm~400nm、400nm~750nm、750nm~1600nmの範囲内、又はこれらの範囲のうち2つ以上の任意の組み合わせ内の波長のフォトニックバンドギャップを示し得る。他の変形において、少なくとも1つのブロックコポリマー110は2つ以上のブロックコポリマーを含む。例えば、少なくとも1つのブロックコポリマー110は、2つのブロックコポリマーすなわち第1のブロックコポリマー及び第2のブロックコポリマーの混合物を含み、ブロックコポリマーの混合物溶液は、混合物溶液によって特定の色のフォトニック結晶を形成する。2つ以上のブロックコポリマー110を用いて、第2のブロックコポリマーの濃度に対する第1のブロックコポリマーの相対濃度を変動させることにより、色スペクトルを生成することができる。すなわち、第1のブロックコポリマー110のみで構成されるインク溶液は第1の色を提供し、第2のブロックコポリマーのみで構成されるインク溶液は第2の色を提供し得る。様々な比の第1のブロックコポリマー110及び第2のブロックコポリマーを含むインク溶液は、第1のブロックコポリマーの数と第2のブロックコポリマーの数との比に応じて、第1の色と第2の色との間の色スペクトルからの任意の色を有し得る。
【0064】
[0080] いくつかの変形において、少なくとも1つのブロックコポリマー110は3つ以上のブロックコポリマーを含み得る。2つのブロックコポリマーと同様に、各ブロックコポリマーの相対的な比が、インク溶液の色及び他の特性を決定することができる。複数のブロックコポリマー110の混合物を用いて、様々な反射率、色度、不透明度、及び輝度で、任意の範囲の色を発生させることができる。
【0065】
[0081] 一変形において、システムは複数のフォトニック結晶形成インク溶液を含み得る。各インク溶液は少なくとも1つのブロックコポリマー110を含む。この変形において、各インク溶液(対応するブロックコポリマー混合物に基づく)は、特定の色に対応し得る。このため、加法着色による混合又はオーバーレイによって(例えば、異なる濃度の異なるインク溶液を相互に重ねて印刷することによって)、異なる色を発生させることができる。例えばシステムは、第1の色(例えば赤)に対応する第1のインク溶液と、第2の色(例えば緑)に対応する第2のインク溶液と、第3の色(例えば青)に対応する第3のインク溶液と、を含み得る。異なる濃度の3つのインク溶液を層状にすることによって、
図1で示されているように、RGB域の色を得ることができる。同様に、任意の一般的な加法着色域を得ることができる。
【0066】
[0082] インク溶液は溶媒120を含み得る。溶媒は、他のインク溶液成分の溶解度を維持するのを支援するように機能する。多くの変形において、システムは更に、複数の溶媒120すなわち共溶媒を含み得る。溶媒/共溶媒は、インク溶液に所望の特性を更に与えることができる。実施例に応じて、多種多様な溶媒を用いることで、実施例に必要な所望の特性を提供できる。例えば溶媒120は、溶液のコーティング特性の改質を可能とし、プリンタに適合する低速又は高速の乾燥範囲を提供し、インクジェットによる印刷/噴射を最適化し、インク溶液粘度の変更を支援し、及び/又は印刷媒体上でのインク溶液乾燥速度を変更することができる。実施例に応じて、溶媒120自体は反応性成分とすることができる。すなわち、いくつかの変形において溶媒120は、アクリレート又はメタクリレートモノマーもしくはオリゴマー、又はエポキシモノマーもしくはオリゴマー、又はそれらの任意の組み合わせ等の反応性成分を含み得る。一変形において、溶媒120は反応性モノマー又はオリゴマーを含む。あるいは、溶媒は他の反応性成分を含み得る。反応性成分溶媒120は、紫外線硬化性インク組成物を使用する際に必要であり得る。溶媒120は、水又は当業者にとって一般的な任意の適切な有機溶媒を含むことができ、インク溶液配合物の有機溶媒又は共溶媒として使用できる。「有機溶媒」という用語は、特にCouncil Directive 1999/13/EC(1999年3月11日)から、当業者には既知である。このような有機溶媒の例は、複素環、脂肪族、もしくは芳香族の炭化水素、又はそれらの部分的にフッ素化された変異体、例えば、4-クロロベンゾトリフルオリド、1価又は多価アルコール、特にメタノール及び/又はエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-プロポキシ-2-プロパノール、ベンジルアルコール、乳酸ブチル、エーテル、エステル、例えば酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、ケトン、例えばアセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、及びアミド、例えばN-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、トルエン、キシレン、ブタノール、エチルグリコール及びブチルグリコール、及びそれらの酢酸塩、エチルグリコール及びブチルグリコール、及びそれらの酢酸エーテル、ブチルジグリコール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、又はそれらの混合物を含む。
【0067】
[0083] いくつかの変形において、システムは少なくとも1つの膨張剤を含む。少なくとも1つの膨張剤は、インク組成物の最大70%を占める可能性がある。少なくとも1つの膨張剤は、溶液粘度を調節する(例えば粘度を2~4桁調節する)ように、及び/又はコーティングの色を変更するように機能し得る。いくつかの変形において、膨張剤は線状ポリマーを含み得る。線状ポリマーの膨張剤の例は、任意選択的に置換された脂肪族ポリエステル、ポリ(アミノ酸)、コポリ(エーテル-エステル)、ポリアルキレンオキサレート、ポリアミド、ポリ(イミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリオキサエステル、ポリアミドエステル、アミノ基を含有するポリオキサエステル、ポリ(無水物)、ポリホスファゼン、ポリシロキサン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリカーボネート、ポリプロプレン、ポリ乳酸(PLA:poly lactic acid)、ポリグリコール酸(PGA:polyglycolic acid)、ポリカプロラクトン(PCL:polycaprolactone)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA:poly(Lactide-co-Glycolide))、ポリジオキサノン(PDO:polydioxanone))、トリメチレンカーボネート(TMC:trimethylene carbonate)、ポリエチレングリコール(PEG:polyethyleneglycol)、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリアニリン、ポリビニルカルバゾール、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルアルコール、ポリスチレン及びポリ(ビニルフェノール)、脂肪族ポリエステル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、クロロスルホン化ポリオレフィン、及びそれらのコポリマーを含み得る。追加的に又は代替的に、上記のブロック又は非線状ポリマーアーキテクチャを膨張剤として用いてもよい(例えば星型、樹木状、環状)。
【0068】
[0084] いくつかの変形において、膨張剤は、自己架橋又は他の分子もしくは化合物との架橋を可能とするように改質した上記のポリマーを含んでもよい。
【0069】
[0085] いくつかの変形において、システムは少なくとも1つのコバインダー成分(賦形剤とも呼ばれる)を含み得る。コバインダーは多数の機能を提供することができる。コバインダーの機能は、溶液粘度の低下、溶液粘度の上昇、コーティングとしてのインク溶液の機械的特性の向上、コーティング耐久性の向上、コーティングのガラス転移温度の低下、コーティングのガラス転移温度の上昇、温度サイクルが存在する場合のコーティング性能の向上、コーティングの耐水性の提供、コーティングの耐湿性の提供、基板上のインク溶液濡れの向上、基板上のコーティング付着の向上、彩度向上によるコーティングの光学特性の向上、かすみの低減によるコーティングの光学特性の向上を含み得る。一般的に言えば、コバインダーは、ブラシブロックコポリマー又は膨張ポリマーでない任意の不揮発性材料を含み得る。コバインダーは反応性又は非反応性とすることができる。反応性のコバインダーが実施される変形において、コバインダーは、架橋、接着、又は他の「結合」特性を提供し得る。実施例に応じて、コバインダーは、組成物の一部分又は大部分を構成し得る。コバインダーは、ポリスチレン(plystyrenics)、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリビニルエーテル、ポリエーテル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリウレタン、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルファイド、ポリビニルアルコール、及び/又はそれらのコポリマー、及び/又はそれらのアクリレート/メタクリレート官能化変異体、及び/又はそれらのエポキシ官能化変異体で構成された樹脂を含み得る。コバインダーは、セルロースエステル樹脂又はスクロースエステル化合物を含み得る。コバインダー140は、溶液の最大70%を占める可能性がある。いくつかの変形において、コバインダーはセルロースアセテートブチレート樹脂を含み得る。いくつかの変形において、コバインダーはイソ酪酸酢酸スクロース(SAIB-100)を含む。いくつかの変形において、コバインダーは安息香酸スクロースを含む。
【0070】
[0086] いくつかの変形において、インク溶液は1つ以上の安定剤を含み得る。安定剤は、インク溶液の安定性を向上させるように、すなわち、溶液の寿命及び/又は溶液の溶解度を向上させるように機能する。また、安定剤は、コーティングの安定性を向上させるように機能し得る。安定剤のタイプの例は、紫外線吸収剤(例えばベンゾトリアゾール)、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS:hindered amine light stabilizer)、抗酸化物質、及び硫黄共力剤(thiosynergist)を含む。いくつかの変形では、架橋官能基を組み込むことができる。変形に応じて、架橋官能基はコバインダー及び/又は膨張剤と共に組み込むことができる。いくつかの変形において、適切な架橋官能基は1つ以上のオレフィン二重結合を含み得る。それらは、高分子量(オリゴマー)又は低分子量(モノマー)とすることができる。1つの二重結合を有するモノマーの例は、アルキル又はヒドロキシアルキルアクリレート又はメタクリレート、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート又は2-ヒドロキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、メチルメタクリレート、又はエチルメタクリレートである。2つ以上の二重結合を有するモノマーの例は、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヘキサメチレングリコールジアクリレート、又はビスフェノールAジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリトリトール(pentaerythiritol)トリアクリレート、又はテトラアクリレート、ジビニルベンゼン、コハク酸ジビニル、フタル酸ジアリル、リン酸トリアリル、トリアリルイソシアヌレート、又はトリス(2-アクリロイルエチル)イソシアヌレートである。高分子量(オリゴマー)のポリ不飽和化合物の例は、アクリル化エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリエーテル、及びポリエステルであって、アクリル化されているか又はビニルエーテルもしくはエポキシ基を含有するものである。不飽和オリゴマーの別の例は、主にマレイン酸、フタル酸、及び1つ以上のジオールから調製され、約500Da~3,000Daの分子量を有する不飽和ポリエステル樹脂である。いくつかの変形において、適切な架橋官能基は1つ以上のエポキシ単位を含み得る。成分は好ましくは脂環式エポキシ化合物であり、及び/又はグリシジルエーテル化合物とすることができる。脂環式エポキシ化合物は、シクロアルカン含有化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られたシクロアルカン酸化物含有化合物とすることができる。シクロアルカン酸化物含有化合物のシクロアルカンは、シクロヘキセン又はシクロペンテンとすることができる。グリシジルエーテル化合物は、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキシドの付加物及びエピクロルヒドリンを反応させることによって得られたジグリシジル又はポリグリシジルエーテルとすることができる。多価アルコールの例は、アルキレングリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、及び1,6-ヘキサンジオールを含む。いくつかの変形において、適切な架橋官能基はオキセタン又はポリオールを含み得る。いくつかの変形において、適切な架橋官能基は1つ以上のビニルエーテル化合物を含み得る。その例は、ジビニル又はトリビニルエーテル化合物を含み、例えばエチレングリコールジビニルエーテルである。ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、及びトリメチロールプロパントリビニルエーテル。
【0071】
[0087] インク溶液は1つ以上の光開始剤を含み得る。エチレン性不飽和化合物の光重合では、ホスフィンオキシドがよく知られた光開始剤である。ホスフィンオキシドの市販製品の例には、IRGACURE 819(BASF SE)及びDAROCUR TPO(BASF SE)が含まれる。また、αヒドロキシケトン化合物も使用される可能性のある光開始剤である。αヒドロキシケトン化合物の市販製品の例には、ESACURE KIP 150(DKSH Management,ltd)、IRGACURE 127(BASF SE)、IRGACURE 2959(BASF SE)、及びIRGACURE 184(BASF SE)が含まれる。
【0072】
[0088] インク溶液は光増感剤も含み得る。このような光増感剤は、光源からの放射を吸収し、光開始剤へのエネルギ伝達を容易にするよう適切に構成されている。光増感剤は、アントラセン、ピレン、カルバゾール、チアジン、フェノチアジン、又はチオキサンテン部分を含み得る。
【0073】
[0089] いくつかの変形において、組成物は更に基板を含み得る。印刷可能フォトニック結晶インク溶液は基板に塗布される。すなわち、組成物は、少なくとも1つのブロックコポリマー、少なくとも1つの溶媒、及び少なくとも1つのコバインダーを含む印刷可能フォトニック結晶インク溶液と、基板と、を含み得る。印刷可能フォトニック結晶インク溶液は、基板上に構造色膜を形成する。実施例に応じて、上述のように、印刷可能フォトニック結晶インク溶液は、追加の共溶媒、膨張剤、並びに塗料、インク、及びコーティング添加剤を含み得る。基板は、任意の適切な表面又は多孔性材料を含むことができ、印刷可能フォトニック結晶インク溶液を塗布することにより、基板上で又は(多孔性材料では)基板内で、着色膜表面の形成を可能とする。実施例に応じて、基板は有機又は無機材料を含み得る。基板の例は、皮膚、有機組織、オーガニック繊維、合成繊維、木材、金属、セメント、プラスチック、石材、しっくい、壁、及び薄膜(membrane)を含む。
【0074】
[0090] 上述のように、システムはインク組成物の多くの変形を有し得る。本明細書では、インクジェット印刷用の複数の例示的なインク組成システムが提示される。上述のインク溶液成分に加えて、良好なインクジェット印刷のため、好適には、特定のレオロジー条件も達成しなければならない。
図2のベンチマークインク溶液の例で示されているように、振動周波数が増大すると、粘度は好ましくは均一であるか又は低下し(黒い曲線)、弾性及び粘性係数は周波数と共に増大する。弾性係数は常に粘度係数よりも低い(赤い曲線)。これに比べて、
図3で示されている代替的なインクジェット印刷の良好でないレオロジーでは、高い印刷周波数では弾性係数の方が粘度係数よりも優位である。更に、良好なインク溶液のため、適切なインクジェット条件(例えば温度及びインクジェット周波数)も必要である。
図4で図示されるように、いくつかの失敗したインクジェット液滴形成の試みが示されている。
【0075】
[0091]
図5で示されているように、インクジェットインク溶液の第1の変形において、溶液は、少なくとも1つのブロックコポリマー、少なくとも1つの膨張剤、及び溶媒を含む。少なくとも1つの膨張剤は、ポリ乳酸(PLA:polylactic acid)及びポリスチレン(PS:polystyerene)を含み、溶媒は4-クロロベンゾトリフルオリドを含む。少なくとも1つのブロックコポリマーは、任意のブロックコポリマー及び/又はブロックコポリマーの組み合わせ(例えば、所望の色に印刷されるブロックコポリマーの組み合わせ)とすればよい。
【0076】
[0092] 一例(A1)において、少なくとも1つのブロックコポリマーの濃度は約5%~10%であり、PLAの濃度は約1.0%~7.5%であり、PSの濃度は約1.0%~7.5%であり、4-クロロベンゾトリフルオリドは溶液の約82%~92%を構成する。
【0077】
[0093] 第2の例(A2)において、少なくとも1つのブロックコポリマーの濃度は約5%~10%であり、PLAの濃度は約2.5%~7.5%であり、PSの濃度は約2.5%~7.5%であり、4-クロロベンゾトリフルオリドは溶液の約79.5%~89.5%を構成する。
【0078】
[0094] 第3の例(A3)において、少なくとも1つのブロックコポリマーの濃度は約5%~10%であり、PLAの濃度は約2.5%~7.5%であり、PSの濃度は約2.5%~7.5%であり、4-クロロベンゾトリフルオリドは溶液の約79%~89%を構成する。
【0079】
[0095] 第4の例(A4)において、少なくとも1つのブロックコポリマーの濃度は約5%~10%であり、PLAの濃度は約1.0%~7.5%であり、PSの濃度は約1.0%~7.5%であり、4-クロロベンゾトリフルオリドは溶液の約80%~90%を構成する。
【0080】
[0096]
図6で示されているように、第1の変形のこれら4つの例(すなわちA1、A2、A3、及びA4)は、周波数の関数として粘度が均一であるか又は低下し、弾性及び粘性係数が増大するという基準を満たす。更に、粘度係数は常に弾性係数よりも大きい。
【0081】
[0097]
図7で示されているように、インクジェットインク溶液の第2の変形において、溶液は、少なくとも1つのブロックコポリマー、少なくとも1つの膨張剤、少なくとも1つのコバインダー、及び溶媒を含む。少なくとも1つの膨張剤はポリ乳酸(PLA)及びポリスチレン(PS)を含み、少なくとも1つのコバインダーはSAIB-100を含み、溶媒は4-クロロベンゾトリフルオリドを含む。少なくとも1つのブロックコポリマーは、任意のブロックコポリマー及び/又はブロックコポリマーの組み合わせ(例えば、所望の色に印刷されるブラシブロックコポリマーの組み合わせ)とすればよい。
【0082】
[0098] 第2の変形の一例(B1)において、少なくとも1つのブロックコポリマーの濃度は約5%~10%であり、PLAの濃度は約2.5%~7.5%であり、PSの濃度は約2.5%~7.5%であり、SAIB-100は約1%~5%であり、4-クロロベンゾトリフルオリドは溶液の約75%~85%を構成する。
【0083】
[0099] 第2の変形の第2の例(B2)において、溶液は更に酢酸ブチル共溶媒を含む。第2の例において、少なくとも1つのブロックコポリマーの濃度は約2.5%~7.5%であり、PLAの濃度は約1%~5%であり、PSの濃度は約1%~5%であり、SAIB-100は約1%~5%であり、酢酸ブチル共溶媒は溶液の約35%~45%であり、4-クロロベンゾトリフルオリド溶媒は溶液の約45%~55%である。
【0084】
[00100] 第2の変形の第3の例(B4)において、溶液は、酢酸ブチル共溶媒及び4-クロロベンゾトリフルオリド溶媒に加えて、エチレングリコールジアセテート共溶媒を更に含む。第3の例において、少なくとも1つのブロックコポリマーの濃度は約2.5%~7.5%であり、PLAの濃度は約1%~5%であり、PSの濃度は約1%~5%であり、SAIB-100は約1%~5%であり、酢酸ブチル共溶媒は溶液の約10%~20%であり、EDGA共溶媒は溶液の約15%~25%であり、4-クロロベンゾトリフルオリド溶媒は溶液の約45%~55%である。
【0085】
[00101] 第2の変形の第4の例(D3)において、少なくとも1つのブロックコポリマーの濃度は約2.5%~7.5%であり、PLAの濃度は約1%~5%であり、PSの濃度は約1%~5%であり、SAIB-100は約1%~5%であり、酢酸ブチル共溶媒は溶液の約2.1%~12.5%であり、EDGA共溶媒は溶液の約30.7%~40.7%であり、4-クロロベンゾトリフルオリド溶媒は溶液の約42.5%~52.5%である。
【0086】
[00102]
図8で示されているように、第2の変形の第3の例で、B4は良好なインクジェットのための基準を満たす。
図9で示されているように、B4インク溶液を用いた良好な噴射を達成することができ、噴射は2kHz噴射周波数の25C印刷で行われる。
図10で示されているように、第2の変形の第4の例で、D3インク溶液を用いた良好な噴射を達成することができ、噴射は22Vの駆動電圧及び4.1m/sの液滴速度で行われる。
図11は、適切なプリントパラメータによるD3インクを用いたサンプル印刷を示す。
【0087】
[00103]
図12で示されているように、インクジェットインク溶液の第3の変形において、溶液は、少なくとも1つのブロックコポリマー、少なくとも1つの膨張剤、少なくとも1つのコバインダー、及び少なくとも1つの溶媒を含む。少なくとも1つの膨張剤はポリ乳酸(PLA)及びポリスチレン(PS)を含み、少なくとも1つのコバインダーはSAIB-100又は安息香酸スクロースを含み、少なくとも1つの溶媒は3-エトキシプロピオン酸エチル及びエチレングリコールジアセテートを含む。
【0088】
[00104] 第3の変形の一例(E1)において、少なくとも1つのブロックコポリマー(BBCP4)の濃度は約2.5%~7.5%であり、PLAの濃度は約1%~4%であり、PSの濃度は約1%~4%であり、SAIB-100は約1%~4%であり、3-エトキシプロピオン酸エチル共溶媒は溶液の約60%~85%であり、エチレングリコールジアセテート共溶媒は溶液の約5%~10%である。
【0089】
[00105] 第3の変形の第2の例(E2)において、少なくとも1つのブロックコポリマー(BBCP5)の濃度は約2.5%~7.5%であり、PLAの濃度は約1%~4%であり、PSの濃度は約1%~4%であり、SAIB-100は約1%~4%であり、3-エトキシプロピオン酸エチル共溶媒は溶液の約60%~85%であり、エチレングリコールジアセテート共溶媒は溶液の約5%~10%である。
【0090】
[00106] 第3の変形の第3の例(E3)において、少なくとも1つのブロックコポリマー(BBCP4)の濃度は約2.5%~7.5%であり、PLAの濃度は約1%~4%であり、PSの濃度は約1%~4%であり、安息香酸スクロースは約1%~4%であり、3-エトキシプロピオン酸エチル共溶媒は溶液の約60%~85%であり、エチレングリコールジアセテート共溶媒は溶液の約5%~10%である。
【0091】
[00107] 第3の変形の第4の例(E4)において、少なくとも1つのブロックコポリマー(BBCP6)の濃度は約2.5%~7.5%であり、PLAの濃度は約1%~4%であり、PSの濃度は約1%~4%であり、安息香酸スクロースは約1%~4%であり、3-エトキシプロピオン酸エチル共溶媒は溶液の約60%~85%であり、エチレングリコールジアセテート共溶媒は溶液の約5%~10%である。
【0092】
[00108]
図13で示されているように、ラジカル硬化スクリーン印刷溶液の変形(F1)において、溶液は、少なくとも1つのブロックコポリマー、少なくとも1つの反応性コバインダー、少なくとも1つの反応性溶媒、及び少なくとも1つの光開始剤を含む。少なくとも1つのブロックコポリマーはBBCP5を含み、反応性溶媒はテトラヒドロフルフリルアクリレートを含み、反応性コバインダーは脂肪族トリアクリレートオリゴマーSartomer(サートマー)CN133を含み、光開始剤はジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドである。
【0093】
[00109]
図14で示されているように、カチオン硬化スクリーン印刷溶液の変形(G1)において、溶液は、少なくとも1つのブロックコポリマー、少なくとも1つの溶媒、少なくとも1つの反応性コバインダー、少なくとも1つの添加剤、少なくとも1つの光開始剤、及び少なくとも1つの光増感剤を含む。少なくとも1つのブロックコポリマーはBBCP5であり、溶媒は酢酸ブチルであり、少なくとも1つの反応性コバインダーは二官能性脂環式エポキシドLambson UviCure S105であり、少なくとも1つの添加剤は単官能オキセタンLambson UviCure S140であり、少なくとも1つの光開始剤はヨードニウムヘキサフルオロホスファートファミリーのカチオン光開始剤Lambson SpeedCure 938であり、少なくとも1つの光増感剤はチオキサントンLambson SpeedCure CPTXである。
【0094】
[00110] 前述のように、インク溶液に含まれる少なくとも1つのブロックコポリマーは、実施例に特有のものであり、所望のように変動させることができる。本明細書では、いくつかのサンプルのブラシブロックコポリマーが提示されており、これらを個別に用いるか、一緒に用いるか、又は少なくとも1つのブロックコポリマーの別個の混合物の一部として用いることができる。例示的なブラシブロックコポリマーの数平均分子量(Mn)は、400kDa~4,000kDaの範囲内であり、より好ましくは500kDa~3,000kDaの範囲内、更に好ましくは600kDa~2,500kDaの範囲内とすることができる。第1の例のブラシブロックコポリマー(BBCP1)は、Mnは1,072kDa、重量平均分子量(Mw)は1,890kDa、多分散指数(PDI)は1.126とすることができる。第2の例のブラシブロックコポリマー(BBCP2)は、数平均分子量(Mn)は799.4kDa、重量平均分子量(Mw)は850.9kDa、多分散指数(PDI)は1.064とすることができる。第3の例のブラシブロックコポリマー(BBCP3)は、数平均分子量(Mn)は1,072kDa、重量平均分子量(Mw)は1,180kDa、多分散指数(PDI)は1.101とすることができる。第4の例のブラシブロックコポリマー(BBCP4)は、数平均分子量(Mn)は541.0kDa、重量平均分子量(Mw)は585.1kDa、多分散指数(PDI)は1.082とすることができる。第5の例のブラシブロックコポリマー(BBCP5)は、数平均分子量(Mn)は2,088kDa、重量平均分子量(Mw)は2,236kDa、多分散指数(PDI)は1.071とすることができる。第6の例のブラシブロックコポリマー(BBCP6)は、数平均分子量(Mn)は1,287kDa、重量平均分子量(Mw)は1,396kDa、多分散指数(PDI)は1.085とすることができる。BBCPを含有する配合物は、好ましくは、波長範囲200nm~1600nmの反射性コーティングを形成する。実施例ごとの要望に応じて、これらのサンプルのブラシブロックコポリマーは、前述した例示的なインク溶液の一部として組み込むことができる。サンプルのブラシブロックコポリマーは、インク溶液に単一のブラシブロックコポリマーとして組み込むか、又は2つ以上のブラシブロックコポリマーの混合物として組み込んで、これらのブラシブロックコポリマーの比がインク溶液の色を設定するようにすればよい。これらの実施例のサンプル例は、
図5、
図6、
図12、
図13、及び
図14に提示されている。例えばA1の実施例では、少なくとも1つのブロックコポリマーはBBCP1を含む。A2の実施例の一例では、少なくとも1つのブロックコポリマーはBBCP1を含む。A3の一実施例の一例では、少なくとも1つのブロックコポリマーはBBCP2を含む。A4の一実施例の一例では、少なくとも1つのブロックコポリマーは所望の比のBBCP1及びBBCP2を含む。
【0095】
[00111] B1の一実施例の一例では、少なくとも1つのブロックコポリマーはBBCP3を含む。B2の一実施例の一例では、少なくとも1つのブロックコポリマーはBBCP3を含む。B4の一実施例の一例では、少なくとも1つのブロックコポリマーはBBCP3を含む。D3の一実施例の一例では、少なくとも1つのブロックコポリマーはBBCP3を含む。E1の一実施例の一例では、少なくとも1つのブロックコポリマーはBBCP4を含む。E2の一実施例の一例では、少なくとも1つのブロックコポリマーはBBCP5を含む。E4の一実施例の一例では、少なくとも1つのブロックコポリマーはBBCP6を含む。
図15に、各配合物の光学サンプルが与えられている。各サンプルは、インクジェット印刷を用い、60パス及び1kHz周波数で、バイナリプリントモードで印刷して生成した。
【0096】
[00112] F1の一実施例の一例において、少なくとも1つのブロックコポリマーはBBCP5を含む。G1の一実施例の一例においても、少なくとも1つのブロックコポリマーはBBCP5を含む。
図16に、各配合物の光学サンプルが与えられている。各サンプルはスクリーン印刷を用いて生成した。
【0097】
3.印刷システム
[00113]
図17で示されているように、構造インクのための印刷システムは、少なくとも第1のインク容器を含むインク容器システム210であって、各インク容器は構造インク溶液を収容し、第1のインク容器は第1の構造色溶液を収容し、第1の構造色溶液は第1の別個のブロックコポリマー又は第1の別個のブロックコポリマー混合物を含む、インク容器システム210と、印刷溶液を基板上に堆積することによってフォトニック結晶堆積を生成することができる堆積システム220と、インク容器システム及び堆積システムに接続された投入機構230であって、印刷注文が一度受信されたら、適切な量の適切な構造色溶液を堆積機構に投入することによって印刷溶液を構築する投入機構230と、を含む。システムは、構造色印刷を可能とするように機能する。すなわちシステムは、構造色設計を貯蔵し、調製し、基板上に印刷する。
【0098】
[00114] 印刷システムは、任意の構造色印刷可能インク溶液、又は任意の構造色印刷可能インク溶液と別のタイプの色溶液(例えば顔料又は染料)の組み合わせと共に取り入れられるか、又はこれらを使用することができるが、特に、本明細書に記載されているインク組成物と共に使用するため適用可能であり得る。更に、システムは、現在利用できる任意の印刷システム及び/又は印刷方法の一部とすることができ、その場合、この印刷システムは、印刷用構造インクを使用するための構成要素を提供する。本文書はインクジェット印刷を取り入れたこの印刷システムに焦点を当てているが、システムは一般に、印刷用の任意の適切なシステム及び方法と共に使用され得る。このシステムと組み合わせることができる他の印刷技法/システムの例は、インクジェット印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、輪転グラビア印刷等を含む。
【0099】
[00115] 印刷システムのいくつかの変形において、含まれるプリンタ構成要素は、インクジェットプリンタ構成要素である。含まれるプリンタ構成要素の例は、インクジェットウェル(inkjet well)、インクジェットプリンタヘッド、予混合流体システム、及び/又は加熱要素である。
【0100】
[00116] 本明細書で用いられる場合、基板とは、印刷溶液を受容するのに適した任意の物体、材料、及び/又は表面を意味する。一度印刷溶液が基板上に「印刷」されたら、印刷溶液は乾燥して、周期的フォトニック結晶構造を含む膜になる。印刷のタイプ、所望の基板、及び所望の実施例に応じて、システム構成要素は、基板上での印刷を向上させるための多様性を含み得る。適切な基板は、特定の構造色溶液配合に依存し得る。使用可能な基板の例は、紙、金属、木材、生地(オーガニック又は合成)、石材、プラスチック、生物学的物質(biological)(例えば人の皮膚)を含む。
【0101】
[00117] システムは、インク容器システム210を含み得る。インク容器システム110は、構造色溶液を貯蔵し、使用の際に容易にアクセスできる状態で溶液を保持するように機能する。インク容器システム210は、少なくとも第1のインク容器(ウェルとも呼ばれる)を含み、第1のインク容器は第1の構造色溶液を貯蔵する。
【0102】
[00118] 単一色印刷のみを行う実施例では、単一インク容器システムが適切であり得る。多色印刷を用いる変形では、2つのインク容器を使用できる。システムは任意の数のインク容器を有することができ、各インク容器は別個の構造色溶液を収容する。すなわち、一般に、N容器システムでは、第1のインク容器が第1の構造色溶液を収容し、第2のインク容器が第2の構造色溶液を収容し、N番目のインク容器がN番目の構造色溶液を収容するように追加のインク溶液を含めればよい。
【0103】
[00119] 例えば、2容器システムでは、第1の容器は第1の構造色溶液(例えば赤)を収容し、第2の容器は第2の構造色溶液(例えば青)を収容することができる。3容器システムの例では、第1の容器は第1の構造色溶液(例えば赤)を収容し、第2の容器は第2の構造色溶液(例えば緑)を収容し、第3の容器は第3の構造色溶液(例えば青)を収容することができる。4容器システムの例では、第1の容器は第1の構造色溶液(例えば赤)を収容し、第2の容器は第2の構造色溶液(例えば緑)を収容し、第3の容器は第3の構造色溶液(例えば青)を収容し、第4の容器は第4の非構造色溶液(例えば黒の染料又は顔料)を収容することができる。
【0104】
[00120] いくつかのインクジェット実施例では、容器システム210はインクジェットウェルを含むことができ、この場合、インク容器はインクジェットウェルである。インクジェットウェルは、インク溶液を貯蔵するように機能し得る。いくつかの変形において、インクジェットウェルは、マルチウェル(multi-well)、すなわち複数の貯蔵チャンバを有するウェルを含むことができる。マルチウェルの各ウェルは別個のインク溶液を貯蔵できる。別個のインク溶液は、様々な色溶液を得るために混合され得る。また、マルチウェルが、別個のインク溶液の混合を可能とすることも可能である。予混合プリンタ実施例の一部としてインク溶液が用いられる変形では、プリンタ構成要素が流体システム又は他の適切なインク混合機構を含むので、プリンタ構成要素が異なる濃度の別個のインク溶液を混合して、印刷前に(例えばインクジェットプリンタヘッドから混合インクを噴射する前に)色スペクトルを生成できるようになっている。印刷後混合の実施例(例えば、別個のインク溶液色の複数の層が相互に重ねられる加法又はハイブリッド加法/減法着色の実施例)では、マルチウェルは、インク溶液の貯蔵及び(例えばインクジェットプリンタヘッドによる)最終的な分散を可能とすることができる。
【0105】
[00121] 容器システムは更に、構造色溶液の維持及び安定化に役立つ構成要素又は特性も含み得る。容器システムの一部として、又は各インク容器内に含まれ得る構成要素の例は、加熱要素(例えば粘度を向上させる加熱貯蔵のため)、及び混合要素(例えば構造色溶液の分離や沈降等を防止するため)を含む。
【0106】
[00122] システムは堆積システム220を含み得る。堆積システム220は、印刷溶液を基板上に「印刷する」ように機能する。実施例に応じて、堆積システム220は、印刷溶液が基板上に堆積される際の印刷の速度、厚さ、及び設計を設定することができる。
【0107】
[00123] 実施例に応じて、堆積システム220は、1つのパスで全設計(投影、色等)を基板上に印刷することができる。あるいは堆積システムは、基板上を複数回「通過(パス)(pass)」し、各パスが異なる色を含む異なる色パスとすることができる。
【0108】
[00124] いくつかのインクジェットの変形において、堆積システム220はインクジェットプリンタヘッドを含み得る。インクジェットプリンタヘッドは、基板上へのインク溶液の分散を可能とするように機能し得る。インクジェットプリンタヘッドは任意の所望のタイプとすればよい。インクジェットプリンタヘッドの例は、MEMSプリンタヘッド、圧電プリンタヘッド、サーマルインクジェットプリンタヘッド、連続インクジェットプリンタヘッド、及び/又は他の任意の所望のタイプのプリンタヘッドを含む。インク溶液分散の一部として、インクジェットプリンタヘッドは、特定のインクジェット発射周波数、インク溶液の液滴サイズ、及びノズル密度を可能とする。いくつかの変形において、インクジェットプリンタヘッドは更に、調節可能駆動電圧を有し得る(例えばMEMSプリンタヘッド)。堆積システムによって、印刷周波数及び印刷波形を変えることで、インク特性を変更することができる。圧電プリンタヘッドを含む変形では、電圧を変えることによって波形を変更できる。
【0109】
[00125] システムは投入機構230を含み得る。投入機構は、インク容器システム210及び堆積システム220に接続することができる。投入機構は、構造色溶液から(印刷用の)印刷溶液を調製するように機能する。単一色の実施例では、投入機構230は、第1の構造色溶液を堆積システム220へ直接移送することができる。多色の実施例では、投入機構230は、堆積システム220へ移送する各構造色の時間と量を選択することができる。これは特に、印刷前着色(preprint coloring)の実施例に当てはまり得る。いくつかの変形において、投入機構230は堆積システム220と連動して機能することができる。すなわち投入機構230は、印刷システムの機能中、連続的に堆積システム220に「投入」することができる。
【0110】
[00126] 印刷前に色が設定される変形(すなわち印刷前カラー(preprint color))では、投入機構は混合装置を含み得る。混合装置は、異なる構造色溶液を組み合わせて単一の印刷溶液にするよう機能する。すなわち、所望の印刷色及び所望の印刷量(及び、例えば粘度等、他の潜在的な印刷特性)のため、投入機構は、全ての必要な構造色溶液を正確な比で取得し、それらを混合装置内に置き、それらは充分に均質化されて単一の印刷溶液になる。
【0111】
[00127] 一例において、混合装置は機械的混合器/撹拌器を含む。別の例では、混合装置は磁気混合器を含む。混合装置によって使用され得る混合方法の例は、高せん断混合、超音波処理、遠心分離、及び遊星混合(planetary mixing)を含む。
【0112】
[00128] いくつかの変形において、混合装置は予混合流体システムを含み得る。予混合流体システムは、印刷前のインク容器要素の混合を制御するための回路を含み得る。いくつかの変形において、予混合流体システムは更に、印刷前の混合インク溶液を貯蔵するための追加のウェル/容器を含み得る。
【0113】
[00129] いくつかの変形において、混合装置は、後に使用するため印刷前カラーを生成することができる。これらの変形において、投入機構230は、インク容器から構造色インク溶液を取得し、混合装置において新しい色の構造色インクを生成し、次いで、新しい色の構造色インクを、空である場合もそうでない場合もあるインク容器へ送ることができる。例えば、印刷システムは3容器システムを含み、第1のインク容器は赤の構造色溶液を収容し、第2のインク容器は青の構造色溶液を収容し、第3のインク容器は空である場合がある。この変形において、投入機構は、赤の構造色溶液及び青の構造色溶液を適切な比率で取得して緑の構造色溶液を生成し、次いでこれを第3のインク容器内へ送り込むことができる。印刷システムの正常動作中に緑の構造色溶液を使い切った場合、投入機構は追加の緑の構造色溶液を生成して第3のインク容器を補充することができ、一方で、赤及び青の構造インク容器は外部から補給できる。
【0114】
[00130] 投入機構230は更に、印刷後色設計の生成を可能とすることができる。いくつかの変形において、印刷システムは印刷後着色モードを有し、色設計は印刷前でなく基板上で構築することができる。これらの変形において、投入機構230は構造色溶液を一度に1つずつ決定して堆積機構220へ送り込むことができる。堆積機構220が基板上で1つのパスを印刷したら、次いで投入機構230は異なる構造色溶液を堆積機構へ送り込んで、基板上で次の印刷パスを可能とすることができる。
【0115】
[00131] 実施例に応じて、マルチパス印刷後色設計は加法着色又はハイブリッド(すなわち加法/減法)着色であり、このファクタに応じてシステム構成要素は異なるように機能することができる。投入機構230は、所望の印刷輝度を達成するために「最適な」構造色溶液の順序を決定することができる。更に、堆積機構220は、パスとパスとの間で一時停止して、各印刷パスが次の印刷パスの追加前に乾燥するようにしてもよい。加法着色の変形では、堆積機構220は好ましくは一時停止を含まず、基板上で構造色溶液の混合を可能とする。
【0116】
[00132] 多くの変形において、印刷システムは、色計算を可能とするプロセッサを含むか又はプロセッサに接続することができる。すなわち印刷システムは、印刷物を生成するため及び/又は特定の色を生成するために必要な構造色溶液の適切な量を決定するプロセッサ機能を利用できる。この処理は、加法及び減法着色に必要な違いを考慮に入れることができる。
【0117】
[00133] いくつかの変形において、印刷システムは後処理のための構成要素を含み得る。一例において、印刷システムは加熱又は紫外線硬化要素を含む。加熱又は紫外線硬化要素は、印刷溶液を加熱するか又はインクの反応を開始するように機能できる。これは、インクジェット実施例には特に有用であり得る。加熱又は紫外線硬化要素は、インクジェットプリンタヘッドと併用して機能することができ、加熱要素はインク溶液分散のためインクジェット溶液を温める。加熱要素は、効率的な噴射のために有益な溶液特性を維持するように機能できる。
【0118】
4.方法
[00134]
図18で示されているように、構造色インク溶液を用いる印刷のための方法は、インク溶液を取得すること(S110)と、インク溶液を投入すること(S120)と、インク溶液によってパスを印刷すること(S130)と、を含む。インク溶液を取得することは、インク溶液を適切な印刷条件に合わせて調整することにより、インク溶液基本色を設定し、インク溶液粘度を設定し、インク溶液乾燥時間を設定することを含み得る。インク溶液を投入すること(S120)は、インク溶液を混合することを含み得る。インク溶液によってパスを印刷すること(S130)は、所望の設計を印刷すること及び乾燥時間遅延を実施することを含み得る。いくつかの変形において、方法は、(例えばプリントヘッドの)複数のパスを印刷して追加層を堆積することを含むか、又は、複数のプリントヘッドを用いて追加層を堆積することを含み得る。いくつかの変形において、方法は、後処理ステップ、すなわち印刷を後処理すること(S140)を含み得る。印刷を後処理すること(S140)は、連続する各層の後に、又は全ての層の堆積後に、実施することができる。
【0119】
[00135] 方法は、ブロックポリマーフォトニック結晶形成インク溶液を用いて、所望のターゲット物体(すなわち基板)上に構造色設計を印刷するように機能する。方法は、多色印刷の複数の実施例を可能とする。すなわち方法は、予混合色の実施及び/又は色の多層化の双方を可能とし得る。予混合色は、所望の色の印刷前に所望の色を予混合することを含む。色の多層化は、所望の色を得るためにマルチパス色層を印刷することを含み得る。方法は好ましくは、上述した構造色インク溶液システムによって実施され得るが、一般に、ターゲット波長が可視スペクトルの外側にある(紫外線及び近赤外線)任意のフォトニック結晶形成インクに基づく印刷溶液に対して実施され得る。
【0120】
[00136] 構造色に基づくインク溶液を利用することにより、方法は、加法着色ステップ及び/又はハイブリッド(加法/減法)着色ステップを提供することができる。基板を着色するため、1つのタイプの着色方法又は複数の着色方法の組み合わせを使用できる。方法は、以前に生成した着色法と共に実施することができる。例えば方法は、既存の減法着色法セット(例えば従来のCMYKインク)を用いて、加法印刷の変形(例えばフォトニック結晶形成インクを用いる)を可能とすることができる。すなわち方法は、顔料又は染料の着色法と組み合わせて構造着色法を実施できる。この方法の着色法は、顔料又は染料の着色法と同時に実施する(例えば予混合によって)か、又は、後に実施する(例えば、顔料又は染料の着色層の上方又は下方にフォトニック結晶形成インク溶液を多層化することによって)ことができる。
【0121】
[00137] 方法は、溶液を基板に塗布することができる任意の印刷デバイスと共に使用するために適用可能であり得る。方法は特に、プリンタ(例えばインクジェットプリンタ)に適用可能であり得る。例えばインクジェットプリンタ実施例では、インク溶液を投入すること(S120)はインク溶液を加熱することを更に含み得るが、一般的には、印刷方法に応じて実施ステップに小さい変更を加えながら、任意のタイプの印刷方法と共に使用され得る。インクジェット実施例の一部として、方法は、印刷周波数が最大で80~100kHzである連続インクジェット(CIJ:continuous inkjet)、及び、印刷周波数が最大で10~50kHzであると共に落下速度が最大で4~10m/sであるドロップオンデマンドのインクジェット(DOD:drop-on-demand)の双方で、実施され得る。方法は、圧電DOD、MEMS印刷、及び他の任意のタイプのインクジェット印刷で実施され得る。更に、方法は、スクリーン印刷、回転スクリーン印刷(roto-screen printing)、フレキソ印刷、輪転グラビア印刷、及びオフセット印刷等、非インクジェット形態で実施され得る。
【0122】
[00138] 任意の印刷実施例の一部として、方法は、予混合色印刷及び/又は印刷後色混合で実施することができる。予混合印刷では、溶液を基板に塗布する前に印刷の所望の色を混合して、この所望の色を単一のパスで直接印刷することができる。予混合色印刷を含む変形では、インク溶液を投入すること(S120)は、インク溶液を適切な色に予混合することを更に含み得る。予混合色印刷のいくつかの変形では、インク溶液を取得すること(S110)は複数のインク溶液を取得することを含み得る。このため、インク溶液を投入すること(S120)は複数のインク溶液を混合することを含む。
【0123】
[00139] 印刷後色混合では、基板上で色を混合する/層状にすることによって所望の色を達成できる(すなわち、印刷後に所望の色を達成する)。すなわち、固定の色セットを用いてインク溶液を印刷し、複数の印刷パスによって所望の色を達成する。このため、所望の色が達成されるまで、インク溶液の色を層状にする。印刷後色混合は、加法着色(例えばRGB)、減法着色(例えばCMYK)、加法着色と減法着色の何らかのハイブリッド組み合わせを含み得る。印刷後色混合の実施例では、1又は複数の所望の色によって所望の設計、輝度、及び色の厚さ/不透明度を達成するため、インク溶液によってパスを印刷すること(S130)は、複数回コールされる(すなわち、複数のパスを印刷する)。加法印刷後色混合では、複数のフォトニック結晶形成インクを基板上で混合して所望の色を達成することができる。ハイブリッド加法/減法印刷後色混合では、複数のフォトニック結晶形成インク及び顔料インクを基板上で混合して所望の色を達成することができる。パスとパスとの間に乾燥時間が存在し、インク溶液が相互に重なって乾燥することで所望のハイブリッド加法/減法着色を提供できるようになっている。
【0124】
[00140] 印刷実施例のタイプ及び色に応じて、インク溶液を取得すること(S110)は、複数のインク溶液(例えば異なる反射波長)を取得することを含み得る。このように、インク溶液を取得すること(S110)は更に、インク溶液の基本色を設定することを含み得る。インク溶液の基本色を設定することは、異なるタイプの着色(例えば加法及び/又はハイブリッド加法/減法印刷)を可能とし、印刷実施例のパラメータを設定するように機能し得る。例えば加法印刷の実施例では、3色すなわち赤、青、及び緑の基本色のインク溶液を取得することで、印刷色域をRGB域に限定することを設定できる。インク溶液を取得すること(S110)は、同様に、可視スペクトル外(例えば紫外線又は赤外線)の反射波長をターゲットとする基本インク溶液を設定することを含み得る。
【0125】
[00141] 予混合の例では、インク溶液を取得すること(S110)は、所望の波長範囲を反射するフォトニック結晶を形成するインク溶液を取得することを含み得る。可視スペクトル全範囲の一実施例では、インク溶液を取得すること(S110)は、約400nmの波長を反射するフォトニック結晶に対応するインク溶液と、約750nmの波長を反射するフォトニック結晶に対応する第2のインク溶液と、を取得することを含み得る。紫外線スペクトル範囲の一実施例では、インク溶液を取得すること(S110)は、約200nm~400nmの波長範囲を反射するフォトニック結晶に対応するインク溶液を取得することを含み得る。近紫外線範囲の一実施例では、インク溶液を取得すること(S110)は、約750nm~2000nmの波長範囲を反射するフォトニック結晶に対応するインク溶液を取得することを含み得る。
【0126】
[00142] いくつかのプリンタ実施例では、インク溶液を取得すること(S110)は、プリンタシステムで少なくとも1つのインク容器を受容することを含み得る。これは、プリンタシステムにインク容器を充填すること又は設置することに対応し得る。プリンタシステムに応じて、インク溶液の色、厚さ、及び一般組成は、実施例に依存し得る。
【0127】
[00143] インク溶液を投入することを含むブロックS120は、印刷のために1つのインク溶液及び/又は複数のインク溶液を調製するように機能する。インク溶液を投入すること(S120)は、印刷の実施例に応じて様々に変動し得る。例えばインクジェット印刷において、インク溶液を投入すること(S120)は、インク溶液を加熱することを含み得る。予混合色の実施例において、インク溶液を投入すること(S120)は、インク溶液を所望の色に混合することを含み得る。マルチパス実施例において、インク溶液を投入すること(S120)は、印刷パスと印刷パスとの間にコールされ得る(例えば、インク容器からプリンタヘッドに新しい色が投入される)。
【0128】
[00144] インクジェット実施例の一部として、インク溶液を投入すること(S120)は、インク溶液を加熱することを含み得る。インク溶液を加熱することは、インク溶液の特性を印刷向けに変化させるように機能し得る。インク溶液の加熱は、インクがヘッドを詰まらせないように、また、インク溶液の噴射によって放出される液滴が所望の量と速度となるように、インクジェットヘッドに固有のものとすることができる。
【0129】
[00145] 印刷前カラーの実施例の一部として、インク溶液を投入すること(S120)は、インク溶液を混合することを含み得る。すなわち、所望の印刷前カラーのため、インク溶液を投入すること(S120)は、所望の印刷色を生成するための基本色の組み合わせ及びそれぞれの比を決定し、次いで適切な比でインク溶液を組み合わせて混合することを含み得る。インク溶液を混合することは、システム実施例に応じて様々に変動し得る。多くの変形において、インク溶液を混合することは、すでに実施されている混合用のシステムの混合構成要素を使用することができる。一般的な現在のプリンタ技術は印刷前カラーを取り入れていないので、インク溶液を混合するために追加の構成要素を組み込む必要があり得る。任意の一般的な混合技法を用いることができる。インク溶液を混合するために使用できる混合技法の例は、機械的混合、磁力混合、高せん断混合、超音波処理、遠心分離混合、又は遊星混合を含む。
【0130】
[00146] インク溶液によってパスを印刷することを含むブロックS130は、ターゲット材料(基板)上に所望のパターンを印刷するように機能する。いくつかの変形(例えば、単一の色を取り入れた印刷前カラー混合の変形)において、インク溶液によってパスを印刷すること(S130)は、単一のパスのみを印刷することを含み得る。この場合、1又は複数の色によって所望のパターンが直接印刷される。他の実施例では、インク溶液によってパスを印刷することは複数回コールされる可能性がある。これは、例えば、印刷に様々な色を取り入れるため、印刷後着色用に新しい色を生成するため、及び/又は複数の印刷パスを必要とする複雑な設計を生成するためである。
【0131】
[00147] いくつかの変形(例えば印刷後色着色)では、インク溶液によってパスを印刷すること(S130)は複数回コールされ得る。これらの変形では、1つのパスで1又は複数の色を印刷することができる。実施例に応じて、追加のパスを印刷する前にインク溶液を乾燥させてもよい。
【0132】
[00148] 追加的に又は代替的に、方法は、印刷後加法着色を含み得る。加法印刷後着色では、インク溶液によってパスを印刷すること(S130)は、単一の色又は複数の色を同時に印刷できる。所望の印刷後カラー(post print color)を達成するため、追加の印刷パスによって様々な色インク溶液を堆積することができる。減法印刷後着色とは対照的に、追加のパスはインク溶液乾燥前に印刷され、これによって基板上に所望の印刷後カラーを有する単一の膜を生成する。いくつかの変形では、「混合」技法を取り入れて、基板上に堆積したインク溶液をより良く混合することができる。取り入れることができる印刷後混合技法の例は、磁場又は電気刺激による誘導混合、インク溶液の加熱、又は超音波処理を含む。
【0133】
[00149] インクジェット印刷の変形では、インク溶液によってパスを印刷すること(S130)は、印刷速度を設定することを含み得る。印刷速度を設定することは、インク溶液噴射速度を設定すること及びプリンタヘッド移動速度を設定することを含み得る。噴射速度及び移動速度は、特定のインクジェット実施例及びインク溶液混合物に依存し得る。好ましくは、噴射速度は、放出されるインク溶液液滴が適切な量と速度となるように選択される。印刷速度は更に、(例えば加法色混合の間に)複数の色を層状にするための乾燥時間を見込んでおくことを含み得る。
【0134】
[00150] いくつかの変形において、方法は、印刷を後処理すること(S140)を含み得る。印刷を後処理すること(S140)は、印刷後に印刷を変更するように機能し得る。実施例に応じて、印刷を後処理すること(S140)は、単一の印刷パスの後、各印刷パスの直後、いくつかの印刷パスの直後、もしくは全ての印刷パスの直後、全ての印刷の完了後、又はそれらの任意の変形で、実行され得る。後処理は、印刷を乾燥させること、複数の印刷パスを混合すること、印刷を安定化すること、印刷を交差結合すること、又は他の何らかの手法で印刷を強化もしくは変更することを含み得る。いくつかの変形において、印刷を後処理することは、印刷上に保護用のオーバープリントワニス、透明コーティング、又は他の何らかの表面材料を印刷することを含み得る。
【0135】
[00151] いくつかの変形において、印刷を後処理すること(S140)は、印刷を常温乾燥させること、又は(例えば赤外線/熱もしくは紫外線ランプの使用によって)アクティブに乾燥させることを含み得る。印刷をアクティブに乾燥させると、インク溶液を迅速に乾燥させて、効率的なマルチパス印刷又は他のタイプの後処理の効率的な実施を可能とすることができる。マルチパス実施例では、印刷をアクティブに乾燥させて、各パスの後にインク溶液を部分的に又は完全に乾燥させることができる。
【0136】
[00152] いくつかの変形において、印刷を後処理すること(S140)は、(例えば加法印刷後着色のため)複数の印刷パスを混合することを含み得る。この混合は、複数の印刷パスの撹拌(例えば超音波処理)又は機械的混合によって取り入れることができる。複数の印刷パスの混合は、好ましくは、パスの印刷(S130)の直後に実行して、複数のパスが単一パスに組み合わされる前に乾燥するのを防止する。
【0137】
[00153] 別の変形において、印刷を後処理すること(S140)は、印刷を安定化することを含む。印刷を安定化することは、環境及びその他の外部要因から印刷をより良く保護することに役立ち得る。印刷を安定化することは、保護用コーティングを塗布すること(例えば透明樹脂を塗布すること)を含み得る。いくつかの実施例では、印刷の安定化によって、色が混合しないようにインク溶液を層状にすることができる。いくつかの実施例において、印刷を安定化することは、印刷内で化学変化を誘発することを含み得る。
【0138】
[00154] いくつかの変形において、方法は更に、特定の動作モードを可能とするためにステップの変更を行うことができる。実施可能な動作モードの例は、印刷品質動作モード(例えば、高解像度印刷かインク節約モード)、速度動作モード(例えば、高スループット速度か低速高品質印刷)、及び色動作モード(例えば、色か黒/白印刷、又はグレースケール印刷)を含む。
【0139】
[00155] 上述のように、方法は、構造インク溶液の特性を利用して、加法又はハイブリッド加法/減法着色による色設計を構築できる。加法着色は、基板上に印刷する前又は後に組み込むことができ、ハイブリッド加法/減法着色は、色を層状にすることで印刷した後に組み込むことができる。方法は更に、印刷前加法着色、印刷後加法着色、及び印刷後ハイブリッド加法/減法着色の任意の組み合わせを取り入れることができる。
【0140】
[00156] 例えば、システムは、最初に2つのインク溶液を取得することを含み得る。印刷前加法着色により、2つのインク溶液を組み合わせて、赤、緑、及び青のためのインク溶液を形成することができる。次に、これらの色を印刷し、印刷後着色を使用して、赤、緑、及び青のインク溶液を用いたRGB域の設計を生成する。
【0141】
[00157] 方法は、実施例に対して極めて特定的であり、実施される印刷システム及び所望の着色方法に応じて多くの変形を含み得る。一変形において、構造インクのための印刷方法は、プリンタシステムにおいてフォトニック結晶形成インクの少なくとも1つの容器を受容することであって、フォトニック結晶インクは、一度基板上に印刷されたら乾燥して指定された色のフォトニック結晶膜になる溶液を含む、フォトニック結晶形成インクの少なくとも1つの容器を受容することと、インク溶液を投入することによってフォトニック結晶形成インクを印刷のために調製することと、インク溶液を印刷することによって第1の層のフォトニック結晶膜を堆積することと、を含み得る。実施例に応じて、方法は更に、フォトニック結晶膜を後処理することを含み得る。一変形において、フォトニック結晶膜を後処理することは、フォトニック結晶膜上に保護用の透明コート又はオーバープリントワニスを追加することを含む。別の変形において、フォトニック結晶膜を後処理することは、フォトニック結晶膜をアクティブに乾燥させることを含む。
【0142】
[00158] 方法は、印刷前加法色混合に特に適切であり得る。これらの変形において、構造インクのための印刷方法は、プリンタシステムにおいてフォトニック結晶形成インクの少なくとも1つの容器を受容することであって、フォトニック結晶形成インクの少なくとも1つの容器はフォトニック結晶形成インクの少なくとも2つの容器を含む、フォトニック結晶形成インクの少なくとも1つの容器を受容することと、少なくとも2つの容器のフォトニック結晶形成インクを混合して印刷前の所望の色のインク溶液を達成すること及び所望の色のインク溶液を印刷用に調製することを含む、インク溶液を投入することと、インク溶液を印刷することによって印刷前の所望の色に対応する第1の層のフォトニック結晶膜を堆積することと、フォトニック結晶膜を後処理することと、を含み得る。
【0143】
[00159] 印刷前加法色混合の実施例に応じて、方法は、最小限の2つの容器を用いた着色を取り入れることができる。印刷前加法着色の2インクの例では、フォトニック結晶インクの少なくとも2つの容器は、2つの容器、すなわち第1のフォトニック結晶インク及び第2のフォトニック結晶インクに対応し、2つの容器のフォトニック結晶インクを混合することは、第1のフォトニック結晶インク及び第2のフォトニック結晶インクの比によって印刷前の所望の色を設定することを含む。
【0144】
[00160] 方法は更に、より伝統的な3色加法着色(例えばRGB色域)を用いた印刷前着色を可能とする。例えば3容器着色では、フォトニック結晶インクの少なくとも2つの容器は、フォトニック結晶インクの3つの容器、すなわち、第1のフォトニック結晶インク(例えば赤色インクに対応する)、第2のフォトニック結晶インク(例えば緑色インクに対応する)、及び第3のフォトニック結晶インク(例えば青色インクに対応する)を含み、3つの容器のフォトニック結晶インクを混合することは、第1のフォトニック結晶インク、第2のフォトニック結晶インク、及び第3のフォトニック結晶インクの比によって、印刷前の所望の色を設定することを含む。
【0145】
[00161] また、方法は、印刷後着色のために取り入れることができる。印刷後着色の変形において、構造インクのための印刷方法は、プリンタシステムにおいてフォトニック結晶形成インクの少なくとも1つの容器を受容することであって、フォトニック結晶形成インクの少なくとも1つの容器はフォトニック結晶形成インクの少なくとも2つの容器を含む、フォトニック結晶形成インクの少なくとも1つの容器を受容することと、一度に1つのフォトニック結晶形成インクを投入することを含む、インク溶液を投入することと、異なるフォトニックインク溶液によって基板上に複数のパスを印刷することを含む、インク溶液を印刷することと、フォトニック結晶膜を後処理することと、を含み得る。
【0146】
[00162] 加法印刷後カラーの一例として、基板上に複数のパスを印刷することは、印刷されたインク溶液を混合することを含み、一度乾燥したら、決定された印刷後カラーの単一層膜のみが基板上に堆積されるようになっている。印刷後着色の「伝統的な」RGB実施例の一部として、フォトニック結晶インクの少なくとも2つの容器は、フォトニック結晶インクの3つの容器、すなわち、赤色インクに対応する第1のフォトニック結晶インク、緑色インクに対応する第2のフォトニック結晶インク、及び、青色インクに対応する第3のフォトニック結晶インクを含む。インク溶液を印刷することは、計算された量の第1のフォトニック結晶インクを印刷すること、計算された量の第2のフォトニック結晶インクを印刷すること、計算された量の第3のフォトニック結晶インクを印刷すること、及び、フォトニック結晶インク溶液を混合することを含む。
【0147】
[00163] また、方法は、ハイブリッド加法/減法印刷のために取り入れることができる。ハイブリッド加法/減法印刷後カラーでは、複数パスに対してインク溶液によってパスを印刷することは、印刷したパスのそれぞれで、異なるフォトニックインク溶液又は異なる減法色インク溶液によって印刷を行うことを含み得る。次いで、フォトニック結晶膜を後処理することは、フォトニック結晶膜を乾燥させること及び/又は減法色インク膜を乾燥させることを含むことができ、一度完了したら、決定された印刷後カラーに対応する多層膜が基板上に堆積されるようになっている。
【0148】
[00164] 更に、いくつかの変形では、少なくとも2つの容器のフォトニック結晶インクは、4つの容器のインク溶液を含み得る。すなわち、赤色インクに対応する第1のフォトニック結晶インク、緑色インクに対応する第2のフォトニック結晶インク、青色インクに対応する第3のフォトニック結晶インク、及び、第4のインク減法色インク溶液(例えば、黒/他の色の顔料又は染料)である。この変形において、インク溶液を印刷することは、計算された量の第1のフォトニック結晶インクを印刷すること、計算された量の第2のフォトニック結晶インクを印刷すること、計算された量の第3のフォトニック結晶インクを印刷すること、計算された量の第4の減法色インクを印刷することを含むことができ、フォトニック結晶インクを後処理することは、第1のフォトニック結晶インクの層を乾燥させること、第2のフォトニック結晶インクの層を乾燥させること、第3のフォトニック結晶インクの層を乾燥させること、減法色インク層を乾燥させることを含む。代替的な変形において、取り入れられた減法色インク溶液は、減法色域(例えばCMYK域)全体を含み得る。
【0149】
[00165] 本明細書で用いられる場合、様々な要素、構成要素、領域、層、及び/又は部分を特徴付けると共に区別するため、第1、第2、第3等が用いられる。これらの要素、構成要素、領域、層、及び/又は部分は、これらの用語によって限定されるべきではない。1つの要素、構成要素、領域、層、及び/又は部分を、別の要素、構成要素、領域、層、及び/又は部分と区別するため、数に関する用語を用いることができる。そのような数に関する用語の使用は、文脈上明らかに示される場合を除いて、シーケンス又は順序を暗示しない。そのような数に関する言及は、本明細書における実施形態の教示及び変形から逸脱することなく、交換可能に用いることができる。
【0150】
[00166] 前述の詳細な説明、並びに図面及び特許請求の範囲から、当業者には認められるであろうが、以下の特許請求の範囲に規定される本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の実施形態に修正及び変更を行うことができる。
【国際調査報告】