(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】セリアック病を診断するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61B 1/045 20060101AFI20240403BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20240403BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
A61B1/045 618
G01N21/17 630
A61B1/00 C
A61B1/045 616
A61B1/00 526
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553612
(86)(22)【出願日】2022-03-07
(85)【翻訳文提出日】2023-10-30
(86)【国際出願番号】 US2022019108
(87)【国際公開番号】W WO2022187731
(87)【国際公開日】2022-09-09
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】592017633
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】ティアニー ギレルモ ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ギリシュ グドゥダパナヴァル ナガラジャパ
(72)【発明者】
【氏名】オトゥヤ デイヴィッド オデケ
【テーマコード(参考)】
2G059
4C161
【Fターム(参考)】
2G059BB08
2G059BB12
2G059EE09
2G059FF01
2G059GG09
2G059JJ17
2G059JJ22
2G059MM01
2G059MM03
2G059MM05
4C161AA03
4C161BB08
4C161CC07
4C161DD04
4C161DD07
4C161FF36
4C161FF40
4C161FF46
4C161MM10
4C161NN01
4C161QQ09
4C161RR01
4C161RR18
4C161TT15
4C161WW02
(57)【要約】
被検体の小腸区域の画像を取得するステップと、前記画像における絨毛構造を特定するステップと、一つの基準を取得するように特定された前記絨毛構造に基づいて少なくとも一つの特徴量を測定するステップと、前記基準に基づいて前記腸疾患を特定するステップとを含み、被検体の腸疾患を特定する方法。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の腸疾患を特定する方法であって、前記方法は、
前記被検体の小腸区域の画像を取得するステップと、
前記画像における絨毛構造を特定するステップと、
一つの基準を取得するように特定された前記絨毛構造に基づいて少なくとも一つの特徴量を測定するステップと、
前記基準に基づいて前記腸疾患を特定するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記基準に基づいて前記腸疾患を特定するステップは、前記基準に基づいてセリアック病を特定するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基準に基づいて前記セリアック病を特定するステップは、前記基準に基づいて、活動性のセリアック病あるいは非活動性のセリアック病の少なくとも一方を特定するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記被検体の小腸区域の画像を取得するステップは、テザー付きカプセル内視鏡検査(TCE)デバイスまたは経鼻イメージングチューブ(TNIT)デバイスの少なくとも一方を用いて前記被検体の小腸区域の画像を取得するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記テザー付きカプセル内視鏡検査(TCE)デバイスまたは経鼻イメージングチューブ(TNIT)デバイスの少なくとも一方を用いて前記被検体の小腸区域の前記画像を取得するステップは、前記テザー付きカプセル内視鏡検査(TCE)デバイスまたは前記経鼻イメージングチューブ(TNIT)デバイスの少なくとも一方を用いて、前記被検体の小腸区域の干渉画像データを取得するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記一つの基準を取得するように特定された前記絨毛構造に基づいて少なくとも一つの特徴量を測定するステップは、形態計測的特徴またはテクスチャ基準の少なくとも一方を取得するように、前記特定された絨毛構造に基づいて少なくとも一つの特徴量を測定するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記形態計測的特徴またはテクスチャ基準の少なくとも一方を取得するように、前記特定された絨毛構造に基づいて少なくとも一つの特徴量を測定するステップは、前記絨毛構造の高さまたは前記絨毛構造の幅の少なくとも一方を含む前記形態計測的特徴を取得するように、前記特定された絨毛構造に基づいて少なくとも一つの特徴量を測定するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記形態計測的特徴またはテクスチャ基準の少なくとも一方を取得するように、前記特定された絨毛構造に基づいて少なくとも一つの特徴量を測定するステップは、前記テクスチャ基準を取得するように前記特定された絨毛構造のピクセルグレースケール値に基づいて前記少なくとも一つの特徴量を測定するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記テクスチャ基準を取得するように前記特定された絨毛構造のピクセルグレースケール値に基づいて前記少なくとも一つの特徴量を測定するステップは、平均強度、コントラスト、相関、エネルギー、エントロピー、分散、および均質性の少なくとも一つを含む前記テクスチャ基準を取得するように前記特定された絨毛構造のピクセルグレースケール値に基づいて前記少なくとも一つの特徴量を測定するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記基準に基づいて前記腸疾患を特定するステップは、前記基準を、既知の疾患状態を有する被検体より取得された基準に基づいて決められたリファレンス値と比較し、前記基準と前記リファレンス値との比較に基づいて腸疾患を特定するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記画像における絨毛構造を特定するステップは、前記画像を区分することにより前記絨毛構造を特定するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記画像を区分することにより前記絨毛構造を特定するステップは、前記画像を手動で区分することにより前記絨毛構造を特定するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記画像における絨毛構造を特定するステップは、前記画像における複数の絨毛構造を特定するステップをさらに含み、
前記一つの基準を取得するように特定された前記絨毛構造に基づいて少なくとも一つの特徴量を測定するステップは、
特定された前記複数の絨毛構造のそれぞれに基づいて少なくとも一つの特徴量を測定し、対応する複数の基準値を取得するステップと、
前記複数の基準値の平均値を取得するステップと、をさらに含み、
前記基準に基づいて前記腸疾患を特定するステップは、前記複数の基準値の前記平均値に基づいて前記腸疾患を特定するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記複数の基準値の前記平均値に基づいて前記腸疾患を特定するステップは、前記複数の基準値の前記平均値の統計分析をリファレンス値と比較した結果に基づいて前記腸疾患を特定するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記一つの基準を取得するように特定された前記絨毛構造に基づいて少なくとも一つの特徴量を測定するステップは、
前記絨毛構造の高さおよび前記絨毛構造の幅を含む形態計測的特徴を取得するように、特定された前記絨毛構造に基づいて少なくとも一つの特徴量を測定ステップと、
平均強度、コントラスト、相関、エネルギー、エントロピー、分散、および均質性を含むテクスチャ基準を取得するように、特定された前記絨毛構造のピクセルグレースケール値に基づいて前記少なくとも一つの特徴量を測定するステップと、をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記基準に基づいて前記腸疾患を特定するステップは、前記絨毛構造の高さおよび前記絨毛構造の幅を含む前記形態計測的特徴と、前記平均強度、前記コントラスト、前記相関、前記エネルギー、前記エントロピー、前記分散、および前記均質性を含む前記テクスチャ基準との両方に基づいて前記腸疾患を特定するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
被検体の腸疾患を特定するためのシステムであって、前記システムは、メモリに結合されるプロセッサーを備え、
前記プロセッサーは、
テザー付きカプセル内視鏡検査(TCE)を用いて前記被検体の小腸区域の画像を取得し、
前記画像における絨毛構造を特定し、
一つの基準を取得するように特定された前記絨毛構造に基づいて少なくとも一つの特徴量を測定し、
前記基準に基づいて前記腸疾患を特定するように構成されることを特徴とするシステム。
【請求項18】
前記プロセッサーは、前記基準に基づいて前記腸疾患を特定する際、さらに前記基準に基づいてセリアック病を特定するように構成されることを特徴とする、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記プロセッサーは、前記基準に基づいて前記セリアック病を特定する際、さらに前記基準に基づいて、活動性のセリアック病あるいは非活動性のセリアック病の少なくとも一方を特定するように構成されることを特徴とする、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記プロセッサーは、前記被検体の小腸区域の画像を取得する際、さらにテザー付きカプセル内視鏡検査(TCE)デバイスまたは経鼻イメージングチューブ(TNIT)デバイスの少なくとも一方を用いて前記被検体の小腸区域の画像を取得するように構成されることを特徴とする、請求項17に記載のシステム。
【請求項21】
前記プロセッサーは、前記テザー付きカプセル内視鏡検査(TCE)デバイスまたは経鼻イメージングチューブ(TNIT)デバイスの少なくとも一方を用いて前記被検体の小腸区域の前記画像を取得する際、さらに前記テザー付きカプセル内視鏡検査(TCE)デバイスまたは前記経鼻イメージングチューブ(TNIT)デバイスの少なくとも一方を用いて、前記被検体の小腸区域の干渉画像データを取得するように構成されることを特徴とする、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記プロセッサーは、前記一つの基準を取得するように特定された前記絨毛構造に基づいて少なくとも一つの特徴量を測定する際、さらに形態計測的特徴またはテクスチャ基準の少なくとも一方を取得するように、前記特定された絨毛構造に基づいて少なくとも一つの特徴量を測定するように構成されることを特徴とする、請求項17に記載のシステム。
【請求項23】
前記プロセッサーは、前記形態計測的特徴またはテクスチャ基準の少なくとも一方を取得するように、前記特定された絨毛構造に基づいて少なくとも一つの特徴量を測定する際、さらに前記絨毛構造の高さまたは前記絨毛構造の幅の少なくとも一方を含む前記形態計測的特徴を取得するように、前記特定された絨毛構造に基づいて少なくとも一つの特徴量を測定するように構成されることを特徴とする、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記プロセッサーは、前記形態計測的特徴またはテクスチャ基準の少なくとも一方を取得するように、前記特定された絨毛構造に基づいて少なくとも一つの特徴量を測定する際、さらに前記テクスチャ基準を取得するように前記特定された絨毛構造のピクセルグレースケール値に基づいて前記少なくとも一つの特徴量を測定するように構成されることを特徴とする、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記プロセッサーは、前記テクスチャ基準を取得するように前記特定された絨毛構造のピクセルグレースケール値に基づいて前記少なくとも一つの特徴量を測定する際、さらに、平均強度、コントラスト、相関、エネルギー、エントロピー、分散、および均質性の少なくとも一つを含む前記テクスチャ基準を取得するように前記特定された絨毛構造のピクセルグレースケール値に基づいて前記少なくとも一つの特徴量を測定するように構成されることを特徴とする、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記プロセッサーは、前記基準に基づいて前記腸疾患を特定する際、さらに前記基準を、既知の疾患状態を有する被検体より取得された基準に基づいて決められたリファレンス値と比較し、前記基準と前記リファレンス値との比較に基づいて腸疾患を特定するように構成されることを特徴とする、請求項17に記載のシステム。
【請求項27】
前記プロセッサーは、前記画像における絨毛構造を特定する際、さらに前記画像を区分することにより前記絨毛構造を特定するように構成されることを特徴とする、請求項17に記載のシステム。
【請求項28】
前記プロセッサーは、前記画像を区分することにより前記絨毛構造を特定する際、さらに前記画像を手動で区分することにより前記絨毛構造を特定するように構成されることを特徴とする、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記プロセッサーは、
前記画像における絨毛構造を特定する際、さらに前記画像における複数の絨毛構造を特定するように構成され、
前記一つの基準を取得するように特定された前記絨毛構造に基づいて少なくとも一つの特徴量を測定する際、さらに特定された前記複数の絨毛構造のそれぞれに基づいて少なくとも一つの特徴量を測定し、対応する複数の基準値を取得し、前記複数の基準値の平均値を取得するように構成され、
前記基準に基づいて前記腸疾患を特定する際、さらに前記複数の基準値の前記平均値に基づいて前記腸疾患を特定するように構成されることを特徴とする、
請求項17に記載のシステム。
【請求項30】
前記プロセッサーは、前記複数の基準値の前記平均値に基づいて前記腸疾患を特定する際、さらに前記複数の基準値の前記平均値の統計分析をリファレンス値と比較した結果に基づいて前記腸疾患を特定するように構成されることを特徴とする、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記プロセッサーは、前記一つの基準を取得するように特定された前記絨毛構造に基づいて少なくとも一つの特徴量を測定する際、さらに
前記絨毛構造の高さおよび前記絨毛構造の幅を含む形態計測的特徴を取得するように、特定された前記絨毛構造に基づいて少なくとも一つの特徴量を測定し、
平均強度、コントラスト、相関、エネルギー、エントロピー、分散、および均質性を含むテクスチャ基準を取得するように、特定された前記絨毛構造のピクセルグレースケール値に基づいて前記少なくとも一つの特徴量を測定するように構成されることを特徴とする、請求項17に記載のシステム。
【請求項32】
前記プロセッサーは、前記基準に基づいて前記腸疾患を特定する際、さらに前記絨毛構造の高さおよび前記絨毛構造の幅を含む前記形態計測的特徴と、前記平均強度、前記コントラスト、前記相関、前記エネルギー、前記エントロピー、前記分散、および前記均質性を含む前記テクスチャ基準との両方に基づいて前記腸疾患を特定するように構成されることを特徴とする、請求項31に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年3月5日に出願された米国仮特許出願第63/157,535号に対する優先権を主張し、参照により本明細書に組み込む。
【0002】
(連邦政府による資金提供を受けた研究に関する陳述)
本発明は、国立衛生研究所によって授与されたR01DK100569に基づく政府の支援を受けてなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
セリアック病(Celiac disease,CD)は、人口の約1%が罹患している一般的な自己免疫疾患である。セリアック病は、遺伝的要因およびグルテン摂取の結果として発生する。セリアック病は、栄養素の吸収を担う絨毛に損傷を与える。セリアック病による多くの影響があり、貧血、消化不良、予想外の体重減少、吐き気および嘔吐、タンパク質およびビタミンの吸収不良、衰弱、胃痛および腹痛、慢性下痢、発育不全、疱疹状皮膚炎、肝疾患、および/または不妊症などを引き起こす可能性がある。CDの罹患率およびCD患者への様々な影響を考慮すると、CDの診断を改善するニーズがある。
【発明の概要】
【0004】
このため、CDを診断するための新しいシステム、方法、および媒体が望ましい。
【0005】
一つの実施形態によれば、被検体の腸疾患を特定する方法は、被検体の小腸区域の画像を取得するステップと、前記画像における絨毛構造を特定するステップと、一つの基準を取得するように特定された前記絨毛構造に基づいて少なくとも一つの特徴量を測定するステップと、前記基準に基づいて前記腸疾患を特定するステップと、を含む。
【0006】
その他の実施形態によれば、被検体の腸疾患を特定するためのシステムは、メモリに結合されるプロセッサーを備え、前記プロセッサーは、テザー付きカプセル内視鏡検査(TCE)を用いて前記被検体の小腸区域の画像を取得し、前記画像における絨毛構造を特定し、一つの基準を取得するように特定された前記絨毛構造に基づいて少なくとも一つの特徴量を測定し、前記基準に基づいて前記腸疾患を特定するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
開示される主題の様々な目的、特徴、および利点は、同様の符号で同様の要素を特定する以下の各図面と関連して考慮される場合、開示される主題に関する以下の詳細な説明を参照することにより、より完全に理解され得る。
【0008】
【
図1A】開示された手技を実行するために使用できるテザー付きカプセル内視鏡検査(tethered capsule endomicroscopy,TCE)デバイスの写真を示す。
【
図1B】開示された手技を実行するために使用できる光コヒーレンストモグラフィー(optical coherence tomography,OCT)ベースのデバイスの図を示し、上方は、TCEデバイスを示し、下方は、光学回転ジャンクションを介してOCTシステムに結合できるバルーンを備えた経鼻イメージングチューブ(trans-nasal imaging tube,TNIT)デバイスの一部として該デバイスを提供できるオプション構成を示す。
【
図1C】本システムと一緒に使用できる光コヒーレンストモグラフィーシステムの一例を示す。
【
図1D】本システムと一緒に使用できる光コヒーレンストモグラフィーシステムの一例を示す。
【
図2】TCEを用いて十二指腸より取得した光干渉断層撮影(OCT)のイメージデータの一例を示す。
【
図3A】TCEを用いて取得され、かつ、絨毛の輪郭を特定するために手動で区分されたOCTイメージデータの例において、活動性のCDを有する被検体における区分されたOCTイメージデータを示す。
【
図3B】TCEを用いて取得され、かつ、絨毛の輪郭を特定するために手動で区分されたOCTイメージデータの例において、非活動性のCDを有する被検体における区分されたOCTイメージデータを示す。
【
図3C】TCEを用いて取得され、かつ、絨毛の輪郭を特定するために手動で区分されたOCTイメージデータの例において、CDを有さない被検体における区分されたOCTイメージデータを示す。
【
図3D】区分された絨毛をより強調するために、
図3Aに示されたイメージの拡大図である。
【
図4】活動性のCD(ACD)を有する被検体、非活動性のCD(ICD)を有する被検体、および正常/健康な被検体(HS)に対し、区分された区域における絨毛の高さ、絨毛の幅、およびピクセルの平均強度の測定結果を比較する棒チャート(平均値±標準偏差)を示す。また、対応のないマンホイットニーのt検定を用いて、各対の棒の間における統計的有意性を括弧内の記号で示す。“・・・・”は、統計的有意性があることを示し、“ns”は、統計的有意性がないことを示す。
【
図5】ACD被検体、ICD被検体、およびHS被検体に対し、区分された区域におけるピクセルのコントラスト、相関、およびエネルギーの測定結果を比較する棒チャート(平均値±標準偏差)を示す。また、対応のないマンホイットニーのt検定を用いて、各対の棒の間における統計的有意性を括弧内の記号で示す。“・・・・”は、統計的有意性があることを示し、“ns”は、統計的有意性がないことを示す。
【
図6】ACD被検体、ICD被検体、およびHS被検体に対し、区分された区域におけるピクセルのエントロピー、分散、および均一性の測定結果を比較する棒チャート(平均値±標準偏差)を示す。また、対応のないマンホイットニーのt検定を用いて、各対の棒の間における統計的有意性を括弧内の記号で示す。“・・・・”は、統計的有意性があることを示し、“ns”は、統計的有意性がないことを示す。
【
図7】ACD被検体、ICD被検体、およびHS被検体に対し、区分された区域における絨毛の高さ、絨毛の幅、およびピクセルの平均強度の測定結果を比較する棒チャート(平均値±標準偏差)を示す。また、各対の棒の間における統計的有意性を括弧内の記号で示し、“・・・・”は、一元配置分散分析(one-way ANOVA test)を用いて、三つのサンプルのすべてが互いに統計的有意性を有することを示す。
【
図8】ACD被検体、ICD被検体、およびHS被検体に対し、区分された区域におけるピクセルのコントラスト、相関、およびエネルギーの測定結果を比較する棒チャート(平均値±標準偏差)を示す。また、各対の棒の間における統計的有意性を括弧内の記号で示し、“・・・・”は、一元配置分散分析を用いて、三つのサンプルのすべてが互いに統計的有意性を有することを示す。
【
図9】ACD被検体、ICD被検体、およびHS被検体に対し、区分された区域におけるピクセルのエントロピー、分散、および均一性の測定結果を比較する棒チャート(平均値±標準偏差)を示す。また、各対の棒の間における統計的有意性を括弧内の記号で示し、“・・・・”は、一元配置分散分析を用いて、三つのサンプルのすべてが互いに統計的有意性を有することを示す。
【
図10】開示される主題のある実施形態に従って、被検体の腸疾患を特定するためのシステムの一例を示す。
【
図11】開示される主題のある実施形態に従って、コンピューティングデバイスおよびサーバーを実装するために使用できるハードウェアの一例を示す。
【
図12】開示される主題のある実施形態に従って、被検体の腸疾患を特定するためのプロセスの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
開示される主題のある実施形態に従って、CDを診断するためのメカニズム(システム、方法、および媒体を包含し得る)が提供される。
【0010】
通常、セリアック病の診断は、十二指腸生検における絨毛異常の証拠と特定の血清学検査によって示されるバイオマーカーの存在との組み合わせを特定することに関係する。現在、CDを診断するための最も信頼できる方法(いわゆる「ゴールドスタンダード」)は、上部食道胃十二指腸鏡検査(upper esphagogastroduodenoscopy,EGD)によって小腸から生検サンプルを取得することを必要とする。しかし、EGD手技は、侵襲性、患者を鎮静させる必要性、処置費用、処置の実施および結果の分析にかかる時間、介護者の不便さ、およびサンプリング誤差の可能性などの要素によって制限される。
【0011】
バイオマーカーを特定することにも多くの制限がある。例えば、ほとんどの血清学的検査が単純で簡単であるが、ELISAや免疫クロマトグラフィー(immunochromatography)のようなプロセスならば、集中施設へのアクセスが必要である。一方、セリアック病のスクリーニングおよび診断のための既存のバイオマーカーの多くは信頼性あるが、十二指腸粘膜生検を行う必要がなくても絨毛異常の存在を示せる血液バイオマーカーのニーズが依然として存在する。
【0012】
このため、本開示は、セリアック病の診断のために、非鎮静状態の患者に対する非侵襲性テザー付きカプセル内視鏡検査イメージングに使用するシステム、方法、およびバイオマーカーの各実施形態を提供する。この概念は、OCT画像の各フレームから抽出された特徴量を使用し、正常な被検体をセリアック病患者から区別することを包含する。テザー付きカプセル内視鏡検査は、EGDおよび小腸生検を受ける前のセリアック病患者をスクリーニングするために使用できるため、時間および医療リソースを節約できる。
【0013】
本開示の各実施形態は、CDを診断する(
図1A、
図1B参照)ための低侵襲性(すなわち、切開または鎮静を必要としない、光に基づいたデータ収集手技)のテザー付きカプセル内視鏡検査(TCE)あるいは経鼻イメージングチューブ(TNIT)の手技を用いて分析用の画像データを取得することで従来の手技に対する改良を提供する。口から胃を経由し上部消化管(GI)にアクセスできるため、このイメージデータは、通常上部消化管(GI)、特に十二指腸より取得される。いくつかの実施形態によれば、デバイスは、被検体の口(例えば、TCEデバイスを使用する)または鼻(例えば、TNITデバイスを使用する)から挿入され、そして食道、胃を通過し、小腸の上行部、特に十二指腸に到達する。ここで、被検体は、活動性のCDを有する被検体、非活動性のCDを有する被検体、および正常/健康な被検体(HS)を含んでもよい。TCEデバイスあるいはTNITデバイスの操作者は、医師や看護師などのような臨床者、あるいはその他の医療従事者であってもよい。TCEデバイスおよびTNITデバイスは、絨毛形態に関する高度な顕微鏡情報を提供し、患者の鎮静を必要とせずにセリアック病に伴う絨毛の変化を表示する能力を有する。特定のいくつかの実施形態では、TCEおよびTNITによって得られたイメージは、セリアック病に伴う炎症のバイオマーカーとして機能し得る情報も含む。バイオマーカーが正常な生物学的プロセス、病原性プロセス、または治療介入に対する薬理学的反応の指標として客観的に測定され評価される特性である事実を考慮すると、ここで開示される診断条件のための基準(例えば、形態計測的特徴またはテクスチャ基準)は、その条件のバイオマーカーを構成する。
【0014】
図1Aは、開示される手技の実施形態を実行するために使用できるTCEデバイスの写真を示す。
図1B(上部)は、開示される手技を実行するために使用できる光干渉断層撮影(OCT)ベースのデバイスの図を示す(TCEデバイスの好適な例は、米国特許出願公開第2013/0310643号明細書およびGORA, M ET AL., “Tethered Capsule Endomicroscopy for unsedated microscopic imaging of the esophagus, stomach, and duodenum in humans”, Gastrointest Endoscopy, (米), 2018年7月19日, Vol. 88, No. 5, p. 830-840に記載され、いずれも参照により本明細書に組み込まれる)。同様、
図1B(下部)は、光学回転ジャンクションを介してOCTシステムに結合でき、バルーンを備えた経鼻イメージングチューブ(TNIT)デバイスの一部として提供できるオプション構成を示す(TNITデバイスの好適な例は、米国特許出願公開第2020/0139092号明細書に記載され、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0015】
消化管の形状が通常管状であるという事実を考慮すると、
図1Bに示されたデバイスの2つのバージョンは、そのデバイスを取り囲む組織の周方向における全視野よりOCTデータを取得するための機構を備える。
図1Bの上部に示された実施形態では、TCEデバイスは、カプセルの周りに光線を向け、かつ、組織からの反射光を収集するように回転する(例えば、カプセルの先端に設けられるモーターによって駆動される)斜めのミラーを備える。
図1Bの下部に示された実施形態では、テザーを通して伸びる光ファイバーは、先端において、TNITデバイスを囲む組織の周囲に光を向け、かつ、組織からの反射光を収集するように光ファイバーとともに回転する斜めの反射部(例えば、ミラーあるいは斜めの研磨面)を備える。後者の実施形態に記載されたファイバーは、回転デバイス(光学回転ジャンクションに関連付けられる)によって回転され、かつ、光学回転ジャンクションによってOCTシステムに結合されている。この光学回転ジャンクションは、OCTシステムおよび光ファイバーの間の光結合を維持しながら、光ファイバーが回転することを許容している。
【0016】
TCEベースのデバイスおよびTNITベースのデバイスの両方は、特に光コヒーレンストモグラフィー(OCT)に基づいて干渉データを取得する実施形態において、光に基づいたイメージングを用いてデータを収集する。
図1Cおよび
図1Dは、開示されたシステムの各実施形態とともに使用可能な光コヒーレンストモグラフィー(OCT)システム100,150の例をそれぞれ示すが、その他のOCTシステムも採用できる。いずれの場合において、コリメート光学系116-1および集束光学系118は、
図1Bに示されたTCEデバイスおよびTNITデバイスに関連付けられた光ファイバーの先端に収容できる。
【0017】
図1Cは、広く使用された、OCT用のマッハツェンダー干渉計を用いたOCTシステムの一つの構成を示す。
図1Dは、もう一つ広く使用された、OCT用のマイケルソン干渉計を用いたOCTシステムの構成を示す。様々な実施形態において、OCTシステムは、SS-OCTシステム、SD-OCTシステム、あるいはその他のOCT様式に基づいたシステムであってもよい。従来のSD-OCTシステムにおいて、広帯域光源および線形検出器は、特定の時点で利用可能なスペクトル全体を取得するために使用される。イメージング深度の範囲は、スペクトルの取得に使用される線形検出器のピクセル数およびピクセルの幅の両方によって決まる。従来のSS-OCTシステムにおいて、波長掃引光源および単一点検出器(例えば、光検出器、フォトダイオード、光電子増倍管など)は、時間の関数としてスペクトルを取得するために使用される。イメージング深度の範囲は、スペクトルを取得するために使用される光源の帯域幅および検出器のサンプリングレートによって決まる。
【0018】
図1Cに示すように、光源102は、ファイバーカプラー108を介してサンプルアームおよびリファレンスアームにそれぞれ光を提供できる。一部の光(例えば、80%)がサンプルアームに向けられ、第2の一部の光(例えば、20%)がリファレンスアームに向けられる。光サーキュレーター110-1は、ファイバーカプラー108より受け取った光をサンプル112(サンプルアーム内にある)に向け、第2の光サーキュレーター110-2は、光をリファレンス反射器114(リファレンスアーム内にある)に向ける。サンプルアーム内における光は、サンプル112の表面近くを中心とする焦点深度の光線を発射できるコリメート光学系116-1および集束光学系118(例えば、ボールレンズのようなレンズ)を介してサンプルに向けられる。この光線の一部は、サンプルの反射率の関数としてサンプルの様々な深さで反射される可能性があり、そして集束光学系118に受け取られてコリメート光学系116-1を介して光サーキュレーター110-1に向けられる。コリメート光学系116-1は、反射光をファイバーカプラー120へ向けてリファレンスアームからの光に合流させる。コリメート光学系116-2は、リファレンスアームからの光線をリファレンス反射器114へ向ける。リファレンス反射器114は、コリメート光学系116-2を介して光サーキュレーター110-2へ戻るように光を反射する。光サーキュレーター110-2は、リファレンス反射器114に反射された光を、偏波コントローラ122を介してファイバーカプラー120へ向けてサンプルアームからの光に合流させる。ファイバーカプラー120は、サンプルアームからの光およびリファレンスアームからの光の両方を結合し、結合した光を検出器124へ向ける。検出器124は、プローブに隣接するサンプルの構造を表す信号を生成する。
【0019】
図1Dに示されたシステム150は、
図1Cに示されたシステム100と同様の原理で動作する。ただし、システム150は、サンプルアームおよびリファレンスアームのそれぞれに光サーキュレーターを使用せず、ファイバーカプラー108の手前に一つのみの光サーキュレーター110-3を備える。システム100およびシステム150の両方において、サンプル112に対するゼロ遅延点の深さを設定するようにリファレンス反射器114の位置を調整することで、リファレンスアームの長さが設定され得る。
【0020】
一つの実施形態において、TCEデバイスまたはTNITデバイスは、CDに関する診断を提供するために分析される予定の十二指腸の光コヒーレンストモグラフィー(OCT)画像(
図2)を取得するために使用される。TCEベースあるいはTNITベースの手技の利点は、患者を鎮静させることなくカプセルまたはTNITプローブを飲み込ませる。通常、ここで開示される手技は、被検体からOCTイメージデータを取得する(例えば、TCEデバイスまたはTNITデバイスを用いる)ことと、絨毛のような構造を区分する(例えば、手動で区分する)ことを含む画像分析と、被検体の区分された構造より取得されたパラメータ(例えば、高さ、幅、および強度)の値を、活動性のCDを有する、非活動性のCDを有する、およびCDを有さない(健康な被検体)ことが既知の被検体から得られた代表値と比較することにより、被検体が活動性のCDあるいは非活動性のCDのいずれかを有する可能性が高いかを判断することを含む。
【0021】
図3は、活動性のCDを有する被検体(
図3Aを参照)、非活動性のCDを有する被検体(
図3Bを参照)、およびCDを有さない被検体(健康な被検体、
図3Cを参照)からの区分された絨毛を含むOCTイメージデータの例を示す。
図3Dは、区分された絨毛をより好適に強調するために、
図3Aからの拡大図を示す。いくつかの実施形態において、例えば、絨毛は、画像分析ソフトウェア(例えば、NIHのimageJ)を用いて手動で区分され得る。また、絨毛は、好適に訓練されたソフトウェア(例えば、類似のサンプルで訓練済みのマシンビジョンまたは画像/パターン認識ソフトウェアを用いる)を利用して自動的または半自動的に区分され得る。
【0022】
区分された絨毛は、その後形態計測的特徴またはテクスチャ基準を含む一つ以上の基準を用いて分析される。これらの基準は、特に限定されないが、絨毛の高さおよび絨毛の幅を含む形態計測的特徴と、平均強度、コントラスト、相関、エネルギー、エントロピー、分散、および均質性を含むグレーレベルの共起テクスチャ基準(Gray level co-occurrence texture metrics)とを含み得る。正常で健康な被検体の組織と比較してCD(活動性あるいは非活動性)を有する被検体のサンプルを特定するために、これらの基準のいずれかを使用できる範囲を決定する初期研究では、複数のサンプルが取得されて、収集された複数の基準が各基準の統計的有意性を判断する統計検定の対象として用いられる。このような分析のための統計検定は、ダゴスティーノ・ピアソンの正規性検定(D’Agostino & Pearson normality test)、対応のないマンホイットニーのt検定(unpaired Mann Whitney t-test)、および一元配置分散分析(one-way ANOVA tests)を含むが、その他の統計手法や検定なども採用され得る。
【0023】
絨毛の高さおよび絨毛の幅を含む形態計測的特徴は、手動で(例えば、NIHのimageJのような画像処理および分析プログラムにおける利用できるツールを使用する)、または自動で(例えば、画像分析ソフトウェアを使用する)決められる。絨毛の高さは、絨毛の隣における隣接溝と比較して測定できる。絨毛の幅は、その基部(例えば、絨毛が隣接溝と接していることが見える場所)で、または絨毛に沿って特定の点(例えば、溝および絨毛の頂点の間の中間点)で決められる。
【0024】
平均強度、コントラスト、相関、エネルギー、エントロピー、分散、および均質性のようなグレーレベルの共起テクスチャ基準は、区分された絨毛領域内に含まれる画像データ(例えば、ピクセルグレースケール値)に適用される。テクスチャ基準は、Matlab(MathWorks社製品)のような画像分析ソフトウェアツール、あるいはカスタムソフトウェア(例えば、C++またはC#に基づく)を用いて計算できる。OCTデータは絨毛の表面および絨毛の表面下の組織から取得されるため、グレースケール情報は絨毛の表面直下の組織の状態に関する指標を提供する。
【0025】
平均強度は、区分された領域の平均ピクセル強度である。コントラストは、各ピクセルおよび隣接するピクセル間の平均強度の差である。相関関係は、画像のピクセル値が互いにどの程度で似ているかを示す尺度である。相関値は、完全な相関関係がある画像の場合に1であり、相関関係がない画像の場合に0である。エネルギーは、画像の均一性を測定する基準でもあり、同様のピクセル値を持つ画像はエネルギーレートが高く、すべてのピクセル値が同じ場合にエネルギーレートが1になる。エントロピーは、画像内のピクセル間の乱れの程度を測定する。画像テクスチャの分散は、平均ピクセル値を計算し、その平均値の周囲の分散を確認することによって取得される。均一性は、画像のグレーレベル分布の滑らかさの尺度である。
【0026】
図4~
図9は、活動性のCDを有する被検体(ACD)、非活動性のCDを有する被検体(ICD)、および通常/健康な被検体(HS)より取得した基準に基づいて、各基準間の差異に関する統計的有意性を示す表記を含む分析結果を示す。各カテゴリー(ACD、ICD、HS)において、異なる4人の被検体からのデータが使用された。各被検体につき合計10フレームの画像が取得され、かつ、各被検体につき最低50本の絨毛が分析される。本研究では、絨毛はImageJというツールを使用して手動で区分される。整合性を有し強固なデータを提供するために、データを抽出するフレームを選択する基準には、コントラストが良好で、人工的な処理が殆どまたは全くない、そして少なくとも5本の絨毛を区分できることが含まれる。一旦選択されると、すべてのフレームは分析前に無作為化され、かつ、分析は盲検法で実行される。さらに、分析用に選択された絨毛は、カプセル表面に接触しておらず、他の絨毛と重なり合っていない絨毛である。
【0027】
図4は、活動性のCD(ACD)を有する被検体、非活動性のCD(ICD)を有する被検体、および正常/健康な被検体(HS)に対し、区分された区域における絨毛の高さ、絨毛の幅、およびピクセルの平均強度の測定結果を比較する棒チャート(平均値±標準偏差)を示す。また、各対の棒の間における統計的有意性を括弧内の記号で示し、例えば、対応のないマンホイットニーのt検定に基づいて、“・・・・”は、統計的有意性があることを示し、“ns”は、統計的有意性がないことを示す。
【0028】
図5は、ACD被検体、ICD被検体、およびHS被検体に対し、区分された区域におけるピクセルのコントラスト、相関、およびエネルギーの測定結果を比較する棒チャート(平均値±標準偏差)を示す。また、各対の棒の間における統計的有意性を括弧内の記号で示し、例えば、対応のないマンホイットニーのt検定に基づいて、“・・・・”は、統計的有意性があることを示し、“ns”は、統計的有意性がないことを示す。
【0029】
図6は、ACD被検体、ICD被検体、およびHS被検体に対し、区分された区域におけるピクセルのエントロピー、分散、および均一性の測定結果を比較する棒チャート(平均値±標準偏差)を示す。また、各対の棒の間における統計的有意性を括弧内の記号で示し、例えば、対応のないマンホイットニーのt検定に基づいて、“・・・・”は、統計的有意性があることを示し、“ns”は、統計的有意性がないことを示す。
【0030】
図7は、ACD被検体、ICD被検体、およびHS被検体に対し、区分された区域における絨毛の高さ、絨毛の幅、およびピクセルの平均強度の測定結果を比較する棒チャート(平均値±標準偏差)を示す。また、各対の棒の間における統計的有意性を括弧内の記号で示し、“・・・・”は、一元配置分散分析に基づいて、三つのサンプルのすべてが互いに統計的有意性を有することを示す。
【0031】
図8は、ACD被検体、ICD被検体、およびHS被検体に対し、区分された区域におけるピクセルのコントラスト、相関、およびエネルギーの測定結果を比較する棒チャート(平均値±標準偏差)を示す。また、各対の棒の間における統計的有意性を括弧内の記号で示し、“・・・・”は、一元配置分散分析に基づいて、三つのサンプルのすべてが互いに統計的有意性を有することを示す。
【0032】
図9は、ACD被検体、ICD被検体、およびHS被検体に対し、区分された区域におけるピクセルのエントロピー、分散、および均一性の測定結果を比較する棒チャート(平均値±標準偏差)を示す。また、各対の棒の間における統計的有意性を括弧内の記号で示し、“・・・・”は、一元配置分散分析に基づいて、三つのサンプルのすべてが互いに統計的有意性を有することを示す。
【0033】
図4~
図9に示されるように、活動性のCDを有する被検体、非活動性のCDを有する被検体、および正常/健康な被検体からのサンプルについて、OCTイメージにおける区分された区域の形態計測的特徴またはテクスチャ基準は、統計的有意性を有する差異が認められる。したがって、我々は、どちらも鎮静を必要としない、テザー付きTCEデバイスまたはTNITデバイスを用いて取得されたOCT画像が形態計測またはテクスチャ基準の画像記述子に基づいたCDの組織診断を取得するために使用され得ることを示すことができる。ACDまたはICDの診断は、単一の測定基準に基づいて、またはここで開示される2つ以上の測定基準の組み合わせに基づいて行うことができる。特定の被検体または患者にとって、いくつかのOCTイメージが取得され(例えば、TCEデバイスまたはTNITデバイスを使用する)、複数の絨毛が区分され(例えば、同じフレーム内または複数フレーム内)、そして分析されることが可能である。これらの分析により取得された基準は、その後、
図4~
図9に示された既知の状態(例えば、ACD、ICD、HS)の被検体より取得されたサンプルで決められた標準的基準と比較することが可能である。統計的尺度に基づいて確認した通り、新規患者の基準と標準値との相関関係は、活動性のCDであるか非活動性のCDであるか、あるいはどちらでもない(健康な被検体、HS)の状態の診断に使用される。
【0034】
開示された手技のいくつかの実施形態によれば、CDの診断に関する標準的な手技に対して、いくつかの利点を有する。例えば、セリアック病のためのバイオマーカーを取得するためのTCEベースおよびTNITベースの方法は、より安価で患者の費用負担を最小限に抑えながら定期的に利用できる。開示された手順は、絨毛の変化に関する情報を提供し、セリアック病を確認するために使用できる追加のバイオマーカーのフラグも提供する。この手技では、小腸全体に関する空間情報を提供できるため、偽陰性の可能性を低減できる。すなわち、TCEデバイスまたはTNITデバイスが小腸内における任意の箇所(例えば、CDの影響を受けた十二指腸の部位に隣接する箇所)の空間的画像情報を取得するのに使用できるため、臨床者は、状況に応じて潜在的な病変を観察でき、少量のサンプルのみを生検した場合に発生可能な偽陰性の診断を回避できる。開示された手順を使用して取得される他のデータと同様に、空間的画像は、目視検査または自動化されたソフトウェアベースの手順、あるいはこれらのアプローチの組み合わせによって評価できる。診断は、訓練を受けた病理学者に情報を中継する、またはマシンビジョンの支援によるアプローチを使用して画像を区分し、区分されたデータに基づいて1つ以上の基準を決めることによって、リアルタイムあるいはリアルタイムに近い方式で提供できる。様々な実施形態において、マシンビジョンによるアプローチは、当業者に知られて確立された画像およびパターン認識手順に基づいて社内で開発されたカスタム機械学習アプローチであってもよく、いくつかの実施形態においては、このアプローチが基準および/または診断評価を提供することができる。CD治療薬に対する被検体の反応および/または食事の変更に対する反応の進捗は、TCEまたはTNITデバイスを使用して初期治療の現場で実施できる手順で簡単にモニタリングできる。さらに、この処置は麻酔や鎮静を必要としないため、上部消化管内視鏡検査の対象とならない可能性のある乳児や妊婦にも適用できる。
【0035】
図10には、開示される主題のいくつかの実施形態に対応した、被検体の腸疾患を特定するためのシステム1000(例えば、データ収集および処理システム)の一例が示されている。
図10に示すように、コンピューティングデバイス1010は、光干渉計システム1012から干渉データを受信できる。いくつかの実施形態には、コンピューティングデバイス1010は、被検体の腸疾患を特定するためのシステム1004の少なくとも一部の機能を実行し、光干渉計システム1012より受信した干渉データに基づいて画像を生成できる。追加または代替として、いくつかの実施形態には、コンピューティングデバイス1010は、通信ネットワーク1006を介して、光干渉計システム1012から受信した干渉データに関する情報をサーバー1020に送信できる。なお、サーバー1020は、被検体の腸疾患を特定するためのシステム1004の少なくとも一部の機能を実行し、干渉データに基づいて画像を生成できる。いくつかの実施形態において、サーバー1020は、画像情報および/または画像情報を用いて取得された基準のような、被検体の腸疾患を特定するためのシステム1004(および/または他の任意の適切なコンピューティングデバイス)の出力を示す情報をコンピューティングデバイス1010にリターンすることができる。この情報は、ユーザー(例えば、研究者、オペレーター、臨床者など)に転送および/または提示され、および/または(例えば、研究データベースまたは被検体に関連する医療記録の一部として)保存される場合がある。
【0036】
いくつかの実施形態において、コンピューティングデバイス1010および/またはサーバー1020は、例えば、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータ、ウェアラブルコンピュータ、サーバーコンピュータ、および物理的コンピューティングデバイスによって実行される仮想マシンなどのような任意の適切なコンピューティングデバイスあるいはデバイスの組み合わせであってもよい。ここで説明されたように、被検体の腸疾患を特定するためのシステム1004は、干渉データ、画像情報、および/または画像情報を使用して取得された基準に関する情報をユーザ(例えば、研究者および/または医師)に提示することができる。
【0037】
いくつかの実施形態には、光干渉計システム1012は、光干渉測定に適する任意の発射源として電磁放射線源1002を備えてもよい。その他の実施形態には、電磁放射線源1002は、コンピューティングデバイス1010の近傍に位置してもよい。例えば、電磁放射線源1002は、コンピューティングデバイス1010と一体化して構成されてもよい(例えば、コンピューティングデバイス1010は、光干渉情報を取り込むおよび/または保存するためのデバイスの一部として構成され得る)。他の例として、電磁放射線源1002は、一本のケーブル、ダイレクトワイヤレスリンクなどによってコンピューティングデバイス1010に連結されてもよい。追加または代替として、いくつかの実施形態において、電磁放射線源1002は、コンピューティングデバイス1010の近傍および/または遠隔に配置することができ、通信ネットワーク(例えば、通信ネットワーク1006)を介してコンピューティングデバイス1010(および/またはサーバー1020)に情報を送信することができる。
【0038】
いくつかの実施形態には、通信ネットワーク1006は、任意の適切な通信ネットワークまたは通信ネットワークの組み合わせであってもよい。例えば、通信ネットワーク1006は、Wi-Fiネットワーク(1つ以上の無線ルータ、1つ以上のスイッチなどを含み得る)、ピアツーピアネットワーク(例えば、Bluetoothネットワーク)、セルラーネットワーク(例えば、CDMA、GSM、LTE、LTE Advanced、WiMAXなどの適切な規格に準拠した4Gネットワーク、5Gネットワークなど)、および有線ネットワークなどを含み得る。いくつかの実施形態には、通信ネットワーク1006は、ローカルエリアネットワーク、ワイドエリアネットワーク、公衆ネットワーク(例えば、インターネット)、プライベートまたは半プライベートネットワーク(例えば、企業または大学のイントラネット)、他の任意の適切なタイプのネットワーク、またはネットワークの任意の適切な組み合わせであってもよい。
図10に示された通信リンクのそれぞれは、有線リンク、光ファイバリンク、Wi-Fiリンク、Bluetoothリンク、セルラーリンクなどの任意の適切な通信リンクまたは通信リンクの組み合わせであってもよい。
【0039】
図11は、開示される主題のいくつかの実施形態に沿ったコンピューティングデバイス1010およびサーバー1020を実現するために使用できるハードウェア1100の例を示す。
図11に示すように、いくつかの実施形態には、コンピューティングデバイス1010は、プロセッサー1102、ディスプレイ1104、一つ以上の入力部1106、一つ以上の通信システム1108、および/またはメモリ1100を備えてもよい。いくつかの実施形態において、プロセッサー1102は、中央処理装置、画像処理装置などの任意の適切なハードウェアプロセッサまたはプロセッサーの組み合わせであってもよい。いくつかの実施形態には、ディスプレイ1104は、コンピュータモニタ、タッチスクリーン、およびテレビなどの任意の適切な表示装置を含んでもよい。いくつかの実施形態には、入力部1106は、キーボード、マウス、タッチスクリーン、およびマイクなどのような、ユーザー入力を受信するために使用できる任意の適切な入力デバイスおよび/またはセンサを含んでもよい。
【0040】
いくつかの実施形態には、通信システム1108は、通信ネットワーク1006および/または他の任意の適切な通信ネットワークを介して情報を通信するための任意の適切なハードウェア、ファームウェア、および/またはソフトウェアを含んでもよい。例えば、通信システム1108は、1つ以上のトランシーバ、1つ以上の通信チップおよび/またはチップセットなどを含んでもよい。より具体的な例では、通信システム1108は、Wi-Fi接続、Bluetooth接続、セルラー接続、およびイーサネット接続などを確立するために使用できるハードウェア、ファームウェア、および/またはソフトウェアを含んでもよい。
【0041】
いくつかの実施形態には、メモリ1110は、例えば、プロセッサー1102に実行されることにより、ディスプレイ1104を用いてコンテンツを表示したり、通信システム1108を介してサーバー1020と通信したりなどを行うことができる命令および数値などを記憶するために使用できる任意の適切な記憶装置またはその他の装置を含んでもよい。メモリ1110は、任意の適切な揮発性メモリ、不揮発性メモリ、ストレージ、またはそれらの任意の適切な組み合わせを含むことができる。例えば、メモリ1110は、RAM、ROM、EEPROM、1つ以上のフラッシュドライブ、1つ以上のハードディスク、1つ以上のソリッドステートドライブ、および1つ以上の光ドライブなどを含んでもよい。いくつかの実施形態には、コンピューティングデバイス1010の動作を制御するためのコンピュータプログラムをメモリ1110にエンコードすることができる。これらの実施形態には、プロセッサー1102は、このコンピュータプログラムの少なくとも一部を実行することにより、コンテンツ(例えば、画像、ユーザーインターフェース、およびテーブルなど)を表示したり、サーバー1020からコンテンツを受信したり、情報をサーバー1020に送信したりなどを行うことができる。
【0042】
いくつかの実施形態には、サーバー1020は、プロセッサー1112、ディスプレイ1114、一つ以上の入力部1116、一つ以上の通信システム1118、およひ/またはメモリ1120を備えてもよい。いくつかの実施形態には、プロセッサー1112は、中央処理装置、画像処理装置などの任意の適切なハードウェアプロセッサまたはプロセッサーの組み合わせであってもよい。いくつかの実施形態において、ディスプレイ1114は、コンピュータモニタ、タッチスクリーン、およびテレビなどの任意の適切な表示装置を含んでもよい。いくつかの実施形態には、入力部1116は、キーボード、マウス、タッチスクリーン、およびマイクなどのような、ユーザー入力を受信するために使用できる任意の適切な入力デバイスおよび/またはセンサを含んでもよい。
【0043】
いくつかの実施形態には、通信システム1118は、通信ネットワーク1006および/または他の任意の適切な通信ネットワークを介して情報を通信するための任意の適切なハードウェア、ファームウェア、および/またはソフトウェアを含んでもよい。例えば、通信システム1118は、1つ以上のトランシーバ、1つ以上の通信チップおよび/またはチップセットなどを含んでもよい。より具体的な例では、通信システム1118は、Wi-Fi接続、Bluetooth接続、セルラー接続、およびイーサネット接続などを確立するために使用できるハードウェア、ファームウェア、および/またはソフトウェアを含んでもよい。
【0044】
いくつかの実施形態には、メモリ1120は、例えば、プロセッサー1112に実行されることにより、ディスプレイ1114を用いてコンテンツを表示したり、一つ以上のコンピューティングデバイス1010と通信したりなどを行うことができる命令および数値などを記憶するために使用できる任意の適切な記憶装置またはその他の装置を含んでもよい。メモリ1120は、任意の適切な揮発性メモリ、不揮発性メモリ、ストレージ、またはそれらの任意の適切な組み合わせを含むことができる。例えば、メモリ1120は、RAM、ROM、EEPROM、1つ以上のフラッシュドライブ、1つ以上のハードディスク、1つ以上のソリッドステートドライブ、および1つ以上の光ドライブなどを含んでもよい。いくつかの実施形態には、サーバー1020の動作を制御するためのサーバープログラムをメモリ1120にエンコードすることができる。これらの実施形態には、プロセッサー1112は、このサーバープログラムの少なくとも一部を実行することにより、情報および/またはコンテンツ(例えば、組織特定および/または分類の結果、およびユーザーインターフェースなど)を一つ以上のコンピューティングデバイス1010に送信したり、一つ以上のコンピューティングデバイス1010より情報および/またはコンテンツを受信したり、一つ以上のデバイス(例えば、パーソナルコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、およびスマートフォンなど)より命令を受信したりなどを行うことができる。
【0045】
いくつかの実施形態には、本明細書で説明される機能および/またはプロセスを実行するための命令を格納するために、任意の適切なコンピュータ可読媒体を使用することができる。例えば、いくつかの実施形態には、コンピュータ可読媒体は一時的または非一時的であり得る。例えば、非一時的なコンピュータ可読媒体には、磁気媒体(ハードディスク、およびフロッピーディスクなど)、光学媒体(コンパクトディスク、デジタルビデオディスク、およびブルーレイディスクなど)、半導体媒体(RAM、フラッシュメモリ、電気的にプログラム可能な読み取り専用メモリ(EPROM)、および電気的に消去可能なプログラム可能な読み取り専用メモリ(EEPROM)など)、転送中に一時的または永続性を欠けることがない適切な媒体、および/または任意の適切な有形媒体を含んでもよい。別の例として、一時的なコンピュータ可読媒体は、ネットワーク上の信号、電線、導体、光ファイバー、および回路内の信号、または転送中に一時的であり、かつ永続性も欠ける任意の適切な媒体、および/または任意の適切な無形媒体を含んでもよい。
【0046】
いくつかの実施形態には、光信号はフォトダイオードによって検出される。これは、この検出機能を実行するために、光検出器、フォトダイオード、ラインスキャンおよび二次元カメラ、フォトダイオードアレイを含むがこれらに限定されない任意の光電子変換デバイスを使用できることを認識すべきである。
【0047】
本開示で使用される場合、機構という用語は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの任意の適切な組み合わせを包含し得ることに留意されたい。
【0048】
図12は、開示される主題のいくつかの実施形態に従って、被検体の腸疾患を特定するためのプロセスの一例を示す。
図12に示すように、プロセス1200のステップ1202においては、被検体の小腸の画像を取得できる。プロセス1200のステップ1204においては、上述画像における絨毛構造を特定できる。プロセス1200のステップ1206においては、特定された絨毛構造に基づいて少なくとも一つの特徴量を測定することにより一つの基準を得られる。最終的に、プロセス1200のステップ1208においては、この基準に基づいて腸疾患を特定することができる。
【0049】
図12に示されたプロセスの上述各ステップは、この図に示された順番に限定されなく、任意の順番で実行または処理されてもよいことを理解されたい。また、
図12に示されたプロセスの一部ステップは、遅延および処理時間を短縮するように、適切な場合においてあるいは並行して実質的に同時に実行または処理されてもよい。
【0050】
したがって、本発明を特定の実施形態および実施例に関連して説明してきたが、本発明は必ずしもそのように限定されるものではなく、その他の多くの実施形態、実施例、および用途と、上述の実施形態、実施例および用途からの修正および派生とも添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。
【国際調査報告】