(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】アミジンの調製方法
(51)【国際特許分類】
C07D 487/04 20060101AFI20240403BHJP
C07D 223/10 20060101ALI20240403BHJP
B01J 23/04 20060101ALI20240403BHJP
B01J 31/02 20060101ALI20240403BHJP
B01J 23/75 20060101ALI20240403BHJP
B01J 23/755 20060101ALI20240403BHJP
B01J 21/04 20060101ALI20240403BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240403BHJP
【FI】
C07D487/04 150
C07D223/10
B01J23/04 Z
B01J31/02 103Z
B01J23/75 Z
B01J23/755 Z
B01J21/04 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553619
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(85)【翻訳文提出日】2023-10-17
(86)【国際出願番号】 IB2022051869
(87)【国際公開番号】W WO2022189911
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】102021000005321
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】508128303
【氏名又は名称】ベルサリス、ソシエタ、ペル、アチオニ
【氏名又は名称原語表記】VERSALIS S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100228120
【氏名又は名称】市川 蓮太朗
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ ヴェッキニ
(72)【発明者】
【氏名】フェデリコ モンディーニ
【テーマコード(参考)】
4C050
4G169
4H039
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050BB08
4C050CC10
4C050EE02
4C050FF01
4C050GG01
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4G169BE37A
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4G169EB14Y
4G169EC22X
4G169FB44
4G169FB77
4H039CA10
4H039CA42
4H039CA71
4H039CB30
4H039CF10
4H039CG10
4H039CH20
(57)【要約】
アミジン又はその誘導体の調製方法であって、ラクタムとα-β不飽和ニトリルと反応によりニトリルラクタムを合成するステップと、前記ニトリルラクタムを還元することによりN-(アミノアルキル)ラクタムを合成するステップと、前記N-(アミノアルキル)ラクタムを脱水することによりアミジンを合成するステップとを備える、アミジン又はその誘導体の調製方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(V)のアミジン又はその誘導体の調製プロセスであって、
【化1】
下記式(I)を有するラクタム、及び
【化2】
下記式(II)を有するα,β不飽和ニトリルから開始し、
【化3】
式中、
R1は、H、又は随意的に置換された、1~5個、好ましくは1~2個の炭素原子数を有する脂肪族炭化水素基であり、またより好ましくはHであり、
R2は、H、又は随意的に置換された、1~5個、好ましくは1~2個の炭素原子数を有する脂肪族炭化水素基であり、またより好ましくはHであり、
R3は、H、又は随意的に置換された、1~5個、好ましくは1~2個の炭素原子数を有する脂肪族炭化水素基であり、またより好ましくはHであり、
R4は、H、又は随意的に置換された、1~5個、好ましくは1~2個の炭素原子数を有する脂肪族炭化水素基であり、またより好ましくはHであり、
R5は、H、又は随意的に置換された、1~5個、好ましくは1~2個の炭素原子数を有する脂肪族炭化水素基であり、またより好ましくはHであり、
mが3~7、好ましくは3~6の整数であり、
前記プロセスは順次に以下のステップ、すなわち、
(A)有機若しくは無機の塩基触媒の存在における、又は溶媒の存在における、又は溶媒の非存在における、添加条件下で、前記式(I)の化合物と前記式(II)の化合物を反応させて、式(III)の化合物を得る、すなわち、
【化4】
該式(III)の化合物を得るステップと、
(B)ステップ(A)で得られた前記式(III)の化合物を、好ましくは他の反応生成物からの化合物の中間体の精製ステップなしで、周期表の8、9及び10族の金属又は貴金属に由来し、ラネー型又はスポンジ型ではない触媒の存在下での水素との反応により還元して、対応する式(IV)、すなわち、
【化5】
該式(IV)のアミンを得る、また随意的に、該アミンを反応溶媒から分離するステップと、
(C)酸触媒の存在下で前記アミンを脱水し、対応する式(V)のアミジンを得るステップと、
を備える、アミジン又はその誘導体の調製プロセス。
【請求項2】
請求項1に記載のプロセスにおいて、前記触媒は、鉄系触媒、コバルト系触媒、ニッケル系触媒、ルテニウム系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒、オスミウム系触媒、イリジウム系触媒又は白金系触媒から選択される触媒である、プロセス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプロセスにおいて、(I)はε-カプロラクタムであり、(II)はアクリロニトリルであり、(V)は1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エン(DBU)である、プロセス。
【請求項4】
ステップ(A)において、モル比(II)/(I)が1.4~0.7、又は0.8~1.3、又は約1.1である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセスにおいて、ステップ(A)を、温度20~140℃、又は40~110℃、又は60~80℃、圧力10~600kPa(0.1~6barA)、又は10~400kPa(0.1~4barA)、又は大気圧にして、反応物(I)及び(II)のタイプ、温度及び圧力に応じて、0.5~10時間、又は0.5~8時間、又は0.8~4時間の範囲にわたり行う、プロセス。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセスにおいて、ステップ(A)を溶媒の存在下で行うときに、前記溶媒は、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)及びテトラヒドロフラン(THF)から選択される直鎖エーテル、分岐エーテル若しくは環状エーテルのような極性溶媒、又はメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール及びtert-ブチルアルコールから選択される炭素原子数1~6のアルコール、又はベンゼン、トルエン、キシレン及びエチルベンゼンから選択される芳香族溶媒、又はヘプタン若しくはシクロヘキサンから選択される脂肪族炭化水素、から選択され、
前記溶媒の量は、反応混合物の総量に対して、好ましくは5~70重量%、又は5~50重量%、又は15~40重量%である、プロセス。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセスにおいて、ステップ(A)で、前記触媒は、KOH、NaOH、LiOH、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、DBU、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン又は他の有機水酸化物から選択される、プロセス。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセスにおいて、ステップ(B)で、ステップ(A)からの式(III)の中間体は、アンモニアの非存在下、及びモル比H
2O/(III)が0.01~1又は反応混合物に対して0.1~11重量%の割合の水の存在下で、起こり得る溶媒の部分蒸発を除いて反応混合物から分離しないで還元反応させる、プロセス。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセスにおいて、前記触媒は、好ましくはAl
2O及びSiO
2から選択されるルイス酸ルイス酸又はブレンステッド酸成分を有するルイス酸に支持/結合されたコバルト系触媒又はニッケル系触媒である、プロセス。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセスにおいて、ステップ(B)での反応温度は30~250℃、又は50~200℃であり、圧力は0.4~15MPa(4~150barA)、又は1.1~10MPa(11~100barA)、又は2~6MPa(20~60barA)であり、これは、溶媒の非存在下、又はメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、tert-ブチルアルコール、MTBE、THF、ベンゼン、トルエン、キシレン及びエチルベンゼンから選択される有機溶媒の存在下である、プロセス。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセスにおいて、ステップ(B)及びステップ(C)は、攪拌反応器CSTRにおいて連続的に行う、プロセス。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセスにおいて、ステップ(C)は、パラトルエンスルホン酸の存在下、溶媒、好ましくはキシレン及びエチルベンゼンから選択される溶媒の存在下、温度90~270℃、又は130~230℃、又は150~200℃、及び圧力8~500kPa(0.08~5barA)、好ましくは50~300kPa(0.5~3barA)、より好ましくは100~200kPa(1~2barA)で、脱水中に生成される水を連続的に除去しながら行う、プロセス。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセスにおいて、ステップ(C)は、例えば酸化アルミニウム(γ-Al
2O
3)、シリカアルミナ(SiO
2-Al
2O
3)のようなルイス酸、ブレンステッド酸成分を有するルイス酸、酸化ランタン及び酸化ジルコニウムから選択される酸性白土から選択される不均一酸性触媒、又はスルホン化樹脂、又はイオン交換樹脂等の樹脂由来の不均一触媒から選択される触媒の存在下において、前記触媒が、随意的に不活性担体、好ましくは軽石、黒鉛及びシリカから選択される不活性担体に支持されており、溶媒の非存在下、又は好ましくはキシレン及びエチルベンゼンから選択される溶媒の存在下で、90~270℃、又は130~230℃、又は150~200℃の温度、及び8~500kPa(0.08~5barA)、好ましくは50~300kPa(0.5~3barA)、より好ましくは100~200kPa(1~2barA)の圧力で、脱水中に生成される水を連続的に除去しながら行う、プロセス。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセスにおいて、ステップ(A)、(B)及び(C)は、キシレン及びエチルベンゼンから選択される溶媒の存在下で連続的に行う、プロセス。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載のプロセスにおいて、ステップ(A)から出る反応混合物を、蒸発器若しくは棚段式蒸留塔に送給し、又は充填材を有する蒸発器若しくは棚段式蒸留塔に送給し、溶媒及び可能な限りの反応物を回収し、
付加生成物及び可溶化触媒を含む蒸留器若しくは蒸留塔の底部から出る液体流を熱交換器に送給し、温度30~250℃、又は50~200℃、又は100~160℃に加熱し、
前記交換器からの前記流を、圧力0.4~15MPa(4~150barA)、1.1~10MPa(11~100barA)、2~6MPa(20~60barA)でステップ(B)の還元反応用の反応器に供給し、
前記反応器は、固定層反応器又はトリクルベッド配列から選択され、1~50h
-1、又は3~10h
-1のWHSV(入る流れの合計に対する単位時間当たりの重量空間速度)で動作する、プロセス。
【請求項16】
式(IV)の化合物、すなわち、
【化6】
(IV)
の化合物の合成プロセスであり、
式(III)の化合物から開始する、すなわち、
【化7】
(III)
式中、
R1はH、又は随意的に置換された、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基であり、好ましくは炭素数1~2の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくはHであり、
R2はH、又は随意的に置換された、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基であり、好ましくは炭素数1~2の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくはHであり、
R3はH、又は随意的に置換された、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基であり、好ましくは炭素数1~2の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくはHであり、
R4はH、又は随意的に置換された、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基であり、好ましくは炭素数1~2の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくはHであり、
R5はH、又は随意的に置換された、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基であり、好ましくは炭素数1~2の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくはHであり、
mは3~7の整数であり、より好ましくは3~6の整数である、
HH該式(III)の化合物から開始する、式(IV)の化合物の合成プロセスであって、
Al
2O
3及びSiO
2から選択される支持体に支持/結合された、ラネー型又はスポンジ型ではないコバルト系触媒又はニッケル系触媒の存在下での水素との反応による式(III)の化合物の水素化ステップを備え、
水素化は、アンモニアの非存在下、モル比H
2O/(III)0.01~1又は反応混合物に対して0.1~11重量%の割合の水の存在下で行い、
反応温度が30~250℃、又は50~200℃、圧力が0.4~15MPa(4~150barA)、又は1.1~10MPa(11~100barA)、又は2~6MPa(20~60barA)であり、
前記水素化は、溶媒の不存在下、又はメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、tert-ブチルアルコール、MTBE、THF、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンから選択される有機溶媒の存在下で行う、式(IV)の化合物の合成プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミジンの調製プロセスに関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、ε-カプロラクタム等のラクタム及びアクリロニトリル等のα,β不飽和ニトリルから例えば1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エン(以下、略称DBUと称する)等のアミジン又はそれらの誘導体を生成する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
DBUは、それ自体が数多くの用途に役立つ多用途の分子であり、実際に、DBUが関与し得る化学反応は様々であることがよく知られている。
【0004】
Jacques Muzart氏による最近の論文である非特許文献1(”DBU: A Reaction Product Component’ Chemistry Select 2020、vol. 5、11608-11620)では、塩の生成からC-C二重結合の付加、及び他にもたくさんのことに及んでDBUについての詳細な概括が記載されている。これらの態様に関して、DBUが、ポリウレタンの触媒作用、製薬産業、イオン液体、及び有機合成一般で用いられている。DBUの用途に関するさらなる詳細は、Bhaskara Nand氏らの非特許文献2(「1,8-Diazabicyclo[S.4.0]undec-7-ene (DBU): A Versatile reagent in Organic Synthesis」Current Organic Chemistry、2015、19、790-812)でも記載されている。
【0005】
先行技術では、DBUの工業的な生成は、主に3つの反応ステップで行われている。第1のステップにおいては、ε-カプロラクタムをアクリロニトリルと反応させ、N-(2-シアノエチル)-ε-カプロラクタムを得る。第2のステップにおいては、N-(2-シアノエチル)-ε-カプロラクタムを、無水アンモニア及びニッケルラネー触媒の存在下で水素化し、対応するアミンにする。第3のステップにおいては、N-(3-アミノプロピル)-ε-カプロラクタムを酸触媒により脱水し、DBUを生成する。この合成において産業的に最も複雑なステップは、アンモニアの存在下での水素化である。標準的に使用される触媒はニッケルラネーであり、これは活性化された形態において自然発火性である。無水アンモニアも毒性ガスであり、その貯蔵、使用及び輸送には特有の予防措置及び承認が必要とされる。以下は、いくつかの先行技術に関連する文献である。
【0006】
特許文献1(DE1545855)では、対象国のドイツ語版及び英語版において、以下の構造:
【化1】
を有し、式中、mは3~7の整数であり、nは2~4の整数であるアミジンを得るプロセス(上述した工業プロセスにおける第3のステップに限定される)であって、
式:
【化2】
のN-(アミノアルキル)ラクタムから開始する、アミジンを得るプロセスが記載されている。
このプロセスは、溶媒、例えばキシレンの存在下において、鉱酸又はスルホン酸(例えばp-トルエンスルホン酸)で触媒されるアミノラクタムの脱水によって行われる。反応混合物を沸点まで加熱し、生じた脱水された水を溶媒で凝縮して分離し、該溶媒は反応フラスコ中に逆流させる。本特許は、脱水前のステップについて述べていないが、従来技術に触れている。
【0007】
特許文献2(EP0347757 A2)には、DBU自体を塩基触媒として用いて、ラクタムとα,β不飽和ニトリルとの反応によってシアノアルキルラクタムを合成する方法(上述の工業的プロセスにおける第1のステップ)が記載されており、DBUは溶媒としても使用され得る。この特許文献2では他の反応ステップ(第2及び第3のステップ)への言及はないが、先行技術にあるようなシアノアルキルラクタムの接触水素化についてわずかに言及しており、実際、実施例2において、触媒としてNiラネー及びアンモニアの存在下での水素化が記載されている。この特許では、第1のステップから第2のステップに進められるようにまず塩基を中和する必要があるが、DBUを使用すると中和が必要ない(実施例3)ため、触媒としてDBUを使用することで、工業的プロセスの第1のステップで使用されるKOHの代替となることが証明されている。
【0008】
特許文献3(CN101279973 B)では、溶媒としてのtert-ブチルアルコール又はtert-アミルアルコール及び触媒としてのNaOHの存在下で、ε-カプロラクタム及びアクリロニトリルから開始する1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エンの調製方法が記載されている。この第1のステップの反応生成物は、触媒として無水アンモニア及びNiラネーの存在下で水素化を経る。水素化後、混合物を硫酸で中和し、特許文献4(DE1545855)に記載されているように、溶媒を回収し、反応生成物から水を除去することで脱水している。
【0009】
特許文献5(CN109796458 A)でも、ε-カプロラクタム及びアクリロニトリルから開始する1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エンの調製方法が記載されている。ここで、特許文献5にはアンモニアの存在下での水素化ステップは記載されていないが、ハイドロキノン、気体状の無水塩化水素酸、ジクロロメタン、過ホウ酸ナトリウム及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を使用する代替方法が取り入れられている。このプロセスは、上述した他の方法よりもかなり複雑であり、アンモニア及びNiラネーを排除するが、多数の化学物質に加えて極めて強力な薬品(無水HCl)を導入する。
【0010】
特許文献6(JP2003286257)では、第1及び第3のステップを上述したのと同様にして行っている(KOHを使用した塩基触媒作用によるカプロラクタムとアクリロニトリルの反応、酸触媒作用による脱水)。第2のステップは、アンモニアの不存在下で、触媒としてコバルトラネーを使用して行っている。還元物(目的の第1級アミン)が86重量%という結果になっている。
【0011】
特許文献7(EP0913388 B1)では、アンモニアを使用しないで、ニトリルを水素化することによりアミンを得る方法を記載している。新規性は、触媒をかける処理にある。触媒(コバルトラネー又はスポンジ状の触媒)を、含水水酸化リチウム溶液で処理するか、又は代わりに反応をこの溶液の存在下で行う。この処理によって、触媒は、1グラム当たり0.1~100mmolの水酸化リチウムを取り入れる。
【0012】
特許文献8(EP0662476 B1)では、ラクトンとジアミンの酸触媒反応による二環式アミジンの合成が記載されている。このプロセスは、単一の反応ステップで行われ、続いて精製が行われる。この特許は、ポリウレタン用の触媒としてのこれらのアミジンの使用法を特許請求している。DBUの合成は実施例6で記述されており、21%と非常に低い生成物の収率を示している。
【0013】
特許文献9(CN1262274 A)では、ε-カプロラクタム及びアクリロニトリルからの1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エンの調製方法が記載されており、この特別な特徴は、第1の反応ステップにおける触媒として無機塩基及び有機塩基(KOH及びDBU)の混合物を使用することである。得られるシアノ誘導体を還元する前に精製する。第2の水素化ステップは、触媒としての活性化されたNi(触媒形態は明確になっていない)の存在下で行われるが、アンモニアの存在下であるか或いは不存在下であるかは言及されていない。脱水は、酸性条件下で、p-トルエンスルホン酸を使用して溶媒の不存在下で常に行われており、この反応はかなり長い時間にわたって、すなわち、35~40時間行われ、このステップでの収率は74.61%となっている。
【0014】
上述した全てのプロセスにおいて、大部分は、主にラネー触媒(コバルト又はニッケル)を使用し、またアンモニアの存在下におけるニトリルの還元に言及している。引用した文献では、2つの文献のみアンモニアを使用していないが、ラネー触媒、即ち「スポンジ」を使用するか、又は多数の化学物質(ガス状のHClを含む)を導入するかのいずれかであり、後者の場合にはプロセスをかなり複雑にしている。
【0015】
ラネー触媒は、50/50のNi/Al合金又はCo/Al合金をNaOH溶液で処理することにより生成される。このようにして、存在するアルミニウムのほとんどが除去され、ニッケルにラネー触媒の特徴的な多孔質の「スポンジ」構造が付与される。触媒が得られたら、水又は通常エチルアルコール中で保存しなければならない。ラネー触媒は、乾燥した活性化形態では自然発火性である。このことが触媒の取り扱いを複雑にしており、触媒の投入及び除去にわたって安全性の問題がある。さらに、無水アンモニアは、ニトリルをアミンに還元する反応で常に使用される。
【0016】
アンモニアの目的は、関心対象の生成物が第1級アミンである場合に、第2級アミン及び第3級アミンが生成するのを防ぐことである。第2級アミン及び第3級アミンは、2次反応から生じ、それらの合成が関心対象でない場合、経済目的では材料の損失だけでなく、市場への再分配又は廃棄の問題を表す。無水形態のアンモニアは毒性ガスであり、そのため、その取り扱いには多大な注意が必要であり、複雑なプラントソリューションとなり、投資コスト及び操作コストの増加が避けられない。さらに、イタリア等のいくつかの国では、毒性ガス(無水アンモニアを含む)の使用、保管及び輸送を規制する固有の法律があり、有毒ガスの使用は、この法律に従って通常、技術的要件及び管理要件の両方の形式で許認可を得る必要がある。
【0017】
特許文献10(中国特許出願公報第112316949号明細書CN112316949A)では、第1級アミン及び第2級アミンの生成を減少させるために、石炭に担持され、Cr及びFeも含むニッケル合金等の触媒系を使用した、水素によるN-(2-シアノエチル)カプロラクタムの還元を記載している。Crは、非常に不安定なCr(NO3)2の塩を使用することによってCr2+の形態で触媒に挿入されており、実際に、(非特許文献3:N.N Greenwood、A. Earnshawによる「Chemistry of the Elements」Vol.II、ページ1238、Piccin Editore 1991で記述されているように)合成中に起こる内部酸化還元反応が原因でCr(NO3)2を安定な形態で得ることは不可能である。
【0018】
上記理由で、特許文献10(CN112316949A)で記述されているような方法は、イオンCr2+を得るための前駆体のように使用されるCr(NO3)2塩が不安定であるため、市販できないので、工業規模で簡単には実現できない。
【0019】
特許文献11(CN 1546492)では、溶媒としてトルエンを用い、NaOHのような触媒の存在下でのカプロラクタムとアクリロニトリルとの反応から開始し、N-(2-シアノエチル)カプロラクタムを得、スラリー形態のAl、Ni、Fe及びCr由来の触媒の存在下での水素化反応によってDBU(1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エン)を調製する方法が記述されている。N-(2-シアノエチル)カプロラクタムは、水素化反応により還元され、N-(3-アミノプロピル)カプロラクタムとなり、これが最終的に脱水されてDBUがもたらされる。反応は、1つのフェーズと別のフェーズとの間で溶媒のタイプを変えることにより起こる。
【0020】
水素化触媒は、アルカリ溶液とNi、Al、Cr、Feの合金により得られ、この操作は、Ni又はCo合金からラネー触媒又はスポンジ触媒を生産するのに使用されるのと同一方法である。このため、特許文献11(中国特許出願公開第CN1546492号)に記載されているプロセスは、ラネー触媒又はスポンジ型触媒の合成につながり、これらのタイプの触媒を使用するプロセスと同一の欠点がある
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】独国特許第1545855号明細書
【特許文献2】欧州特許第0347757号明細書
【特許文献3】中国特許第101279973号明細書
【特許文献4】独国特許第1545855号明細書
【特許文献5】中国特許出願公開第109796458号明細書
【特許文献6】特開第2003286257号公報
【特許文献7】欧州特許第0913388号明細書
【特許文献8】欧州特許0662476号明細書
【特許文献9】中国特許出願公開第1262274号明細書
【特許文献10】中国特許出願公開第112316949号明細書
【特許文献11】中国特許出願公開第CN1546492号明細書
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】“DBU: A Reaction Product Component' Chemistry Select 2020, vol. 5, 11608- 11620
【非特許文献2】“1,8-Diazabicyclo[S.4.0]undec-7-ene (DBU): A Versatile reagent in Organic Synthesis” Bhaskara Nand et al. Current Organic Chemistry, 2015, 19, 790-812
【非特許文献3】N.N Greenwood e A. Earnshaw in “Chemistry of the Elements” Vol. II page 1238 Piccin Editore 1991
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
それゆえ、本発明の目的は、工業目的のアミジンの収率としながら、自然発火性の触媒の使用、及びアンモニア等のさらなる毒性試薬の添加を避けるアミジンの革新的な合成プロセスを実現することである。
【0024】
特に、本発明の目的は、中間体精製の回数を制限し、無水アンモニア及びラネー触媒の使用を避けて、ε-カプロラクタム及びアクリロニトリルから上述の用途に使用できる1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エン(DBU)を調製することである。
【0025】
そのために、出願人は、ラクタム及びα,β不飽和ニトリルからのアミジンの生成プロセスを見出すことを試みている。
【0026】
出願人は、ラクタム及びα,β不飽和ニトリルからアミジンを調製する方法を見出しており、該方法は、順次に以下の反応ステップを備える、すなわち、α,β不飽和ニトリルをラクタムに添加するステップと、それによって得られるシアノ誘導体を、アンモニアの非存在下及びラネー型触媒の非存在下で還元するステップと、それによって生成されて得られたアミン化合物を脱水/環化してアミジンを得るステップと、を備え、該アミジンは、工業的使用に適する形態の生成物を得るための最終分離及び精製ステップを経ることができる。この方法は、回分(バッチ)式又は連続式のモードで行うことができるが、連続式モードが好ましい。
【0027】
驚くべきことに、実際に出願人は、アンモニア及びラネー型触媒を使用せずに上記一連の反応を行い、何らかの重大な問題があるプロセスを用いない、又は或いは他の反応生成物から所望の生成物の中間体を分離するステップを必要とせずに、単一の最終精製ステップを行い、所望の生成物の容認可能な最終純度、及び各中間体ステップにおける所望の生成物への高い収率及び転化率を保証できることを見出している。これにより、使用する装置の数を減らし、プロセス全体の複雑さをかなり低減している。
【0028】
高純度の半完成品及び/又は化学中間体が必要な場合には、随意的に、中間体精製ステップの活用を考慮できる。
【0029】
本発明による調製プロセスにより、驚くべきことにこれらの及び他の目的が達成される。
【発明を実施するための形態】
【0030】
したがって、本発明の目的は、式(V)のアミジン又はその誘導体を調製するプロセスを得ることであって、
【化3】
下記式(I)を有するラクタム、及び
【化4】
下記式(II)を有するα,β不飽和ニトリルから開始し、
【化5】
式中、
R1は、H、又は随意的に置換された、1~5個、好ましくは1~2個の炭素原子数を有する脂肪族炭化水素基であり、またより好ましくはHであり、
R2は、H、又は随意的に置換された、1~5個、好ましくは1~2個の炭素原子数を有する脂肪族炭化水素基であり、またより好ましくはHであり、
R3は、H、又は随意的に置換された、1~5個、好ましくは1~2個の炭素原子数を有する脂肪族炭化水素基であり、またより好ましくはHであり、
R4は、H、又は随意的に置換された、1~5個、好ましくは1~2個の炭素原子数を有する脂肪族炭化水素基であり、またより好ましくはHであり、
R5は、H、又は随意的に置換された、1~5個、好ましくは1~2個の炭素原子数を有する脂肪族炭化水素基であり、またより好ましくはHであり、
mは3~7、より好ましくは3~6の整数であり、
ここで、より一層好ましくは(I)がε-カプロラクタムであり、(II)がアクリロニトリルであり、(V)が1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エンであって、
前記プロセスは順次に以下のステップ、すなわち、
(A)当業者に既知の方法のうちの1つによる添加条件下で、前記式(I)の化合物と前記式(II)の化合物とを、適切な塩基触媒、好ましくはKOH、NaOH、LiOH及びテトラブチルアンモニウムヒドロキシドの存在下で反応させて、式(III)、すなわち、
【化6】
ここで、塩基触媒はNaOH、LiOH及びテトラブチルアンモニウムヒドロキシドが好ましいものである、該(III)の化合物を得るステップ。別のやり方では、前記塩基触媒は、DBU、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン又は他の有機水酸化物が好ましいものである、該(III)の化合物を得るステップと、
(B)ステップ(A)で得られた前記式(III)の化合物を、好ましくは他の反応生成物からの化合物の中間体精製ステップなしで、例えば鉄、コバルト、ニッケルのような周期表の第8、9及び10族の金属、又はルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム若しくは白金のような貴金属に由来する触媒の存在下での水素との反応により還元するステップであり、前記触媒が、ラネー型又はスポンジ型の触媒でなく、対応する式(IV)、すなわち、
【化7】
該式(IV) のアミン(第1級アミン)を得る、また随意的に、該アミンを反応溶媒から分離するステップと
(C)当業者に既知の方法のうちの一つにより、前記アミンを脱水し、対応する式(V)のアミジンを得るステップと、を備える。本発明に従って上記のように合成された式(V)のアミジンは、溶媒回収及び続いて精製をしてもよい。
【0031】
本発明によると、アミジンという用語は、イミド基=N-によるカルボニル基=COの酸素の置換によってアミドから誘導できる化合物を意味する。好ましくは、本発明は、式(V)で定義されるような環状アミジンを考慮する。
【0032】
本発明によると、用語「アミジン誘導体」は、カルボン酸、エポキシケトン、クロロ炭酸塩、又は炭酸ジエステルとの反応によりアミジンから得られる任意の化合物を意味する。
【0033】
本発明によると、単数の不定冠詞、1つ(one)は、他に特定されない限り、少なくとも1つの意味も含むと理解される。
【0034】
本発明の他の目的は、N-アルキル-ラクタム鎖を含むアミン誘導体の合成に使用できる中間体を調製するための、上記で定義したような式(III)の化合物から開始する式(IV)の中間体の合成にある。
【0035】
本発明による方法のステップ(A)によると、適切な塩基触媒の存在下で、式(I)のラクタム、好ましくはε-カプロラクタム、及び式(II)のα,β不飽和ニトリル、好ましくはアクリロニトリルから開始する制御された触媒付加反応を行い、高収率で式(III)の化合物を得る。
【0036】
モル比(II)/(I)は、ステップAの反応について有機化学で知られているものに従って当業者により選択され、好ましくは1.4~0.7であり、より好ましくは0.8~1.3であり、例えば約1.1である。
【0037】
この文献において、他に示さない限り、割合は質量割合と理解されたい。
【0038】
この文献において、他に示さない限り、圧力は絶対圧力とみなされたい。
【0039】
通常、反応は、反応物(I)及び(II)、温度並びに圧力に応じて、0.5~10時間、好ましくは0.8~4時間の範囲であり得る時間で、温度20~140℃、圧力10~600kPa(0.1~6barA)で行われる。好ましい様式においては、圧力は大気圧である。他の好ましい様式においては、圧力は大気圧より高く、110~600kPa(1.1~6barA)が好ましい。
【0040】
溶媒の非存在下、又は適切な量の有機溶媒の存在下、好ましくは前記反応混合物の総量の5~70重量%の有機溶媒の存在下で、式(I)及び(II)の化合物の反応を行ってもよい。
【0041】
前記溶媒は、例えば、直鎖エーテル、分岐エーテル若しくは環状エーテル、例えばメチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)のような極性溶媒、又はメタノール若しくはエタノール、イソプロピルアルコール若しくはtert-ブチルアルコールのような炭素原子数1~6のアルコール、又はベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンのような芳香族溶媒、又はヘプタン若しくはシクロヘキサンのような脂肪族炭化水素であってもよい。
【0042】
好ましくは、溶媒は、反応環境で化合物(II)を可溶化できるように、上記化合物の種類から選ばれる。さらに、溶媒は、これらの化合物から蒸発により少なくとも部分的に分離できるように、沸点が式(I)及び(III)の化合物よりも低いことが好ましい。
【0043】
好ましい溶媒は、イソプロピルアルコール、tert-ブチルアルコール、MTBE、THF、トルエン、エチルベンゼン、キシレンである。
【0044】
このプロセスによると、文献で知られており、目的に適した全ての塩基を触媒として使用できる。
【0045】
一形式によると、前記触媒は、無機塩基、好ましくはKOH、NaOH及びLiOHであってもよく、又は有機水酸化物、好ましくはテトラブチルアンモニウムヒドロキシドであってもよい。別のやり方においては、前記触媒は有機塩基であってもよく、好ましくはDBU、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン又は他の有機水酸化物であってもよい。
【0046】
先行技術と比較すると、ステップ(A)は、反応混合組成物及び反応時間の観点から有利な操作条件で区別され、ステップ(A)は、革新的なステップ(B)と組み合わせられる場合に、目的の生成物を良い収率で得るために必要な基本操作である。
【0047】
ステップ(A)で得られる式(III)の化合物を、これを含有し、副生成物、触媒及び/又はその残留物並びに含まれ得る溶媒を含む反応混合物から分離し、精製することができる。
【0048】
しかしながら、出願人は驚くべきことに、次のステップがステップ(B)で行われるような還元の場合、そのような他の反応副生成物からの式(III)の中間体化合物の分離及び精製ステップを行わなくてもよいことを見出した。しかしながら、過度な希釈を避けるために、随意的に溶媒の部分蒸発を行うことができる。これにより、コストのかかる副生成物の分離、精製を避けられる。
【0049】
本発明によるプロセスのその後のステップ(B)において、ステップ(A)で生じた式(III)の中間体を、好ましくは溶媒の部分蒸発を除いて反応混合物からの分離をしないで還元し、式(III)の中間体を式(IV)の対応するアミノ誘導体にする。
【0050】
ニトリルの還元は、既知の文献で報告され、有機合成で広く使用されている反応である(例えばPeter Vollhardt、Organic Chemistry、p.825-826、第1版参照)。先に記載した特許においては、ラネー触媒(Ni又はCo)又は他のスポンジ形態のその他のものを使用して無水アンモニアの存在下で、上記反応を式(III)の化合物で行っている。
【0051】
既知の技術のいくつかの特許出願では、このような反応は「合金」等の触媒、例えば「ニッケル合金触媒」で行われており、ここで「合金」とは、2つ以上の金属が溶融状態で互いに解かされ、金属間で密接な結合を形成している化合物であって、本発明の触媒は、この「合金」型の触媒を排除し、それらと同一とみなされるものでもない。
【0052】
「合金」の定義については、例えば、Alan Cottrelの書籍「Introduction to Metallurgy」(14章、189ページ)、第2版、1995-ロンドン材料研究所のような著名な科学書及び/又は説明書における定義を参照することができる。
【0053】
本発明の目的に適する還元触媒は、例えば鉄、コバルト、ニッケルのような周期表の第8、9及び10族の1種以上の金属、又はルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム若しくは白金のような貴金属由来の、市販の又は合成の水素反応系である。コバルト、ニッケル、パラジウム及び白金が好ましい。コバルト及びニッケルが特に好ましい。このような触媒は、本発明の一部ではないニッケルラネー又はコバルトラネーのような金属のスポンジ形態の自然発火性の触媒及び「合金」と定義される金属触媒を除いて、分散相、コロイド相、又は固相に支持/結合された形態で、好ましくは、大きな表面積を持つ無機相における固相に支持/結合された形態、より一層好ましくはシリカ、アルミナ、又はシリカ-アルミナに支持/結合された相で使用できる。アルミナ支持体上のコバルトが特に好ましい。
【0054】
一般的に、本発明のこれらの種類の触媒は、前駆体塩の水溶液から開始する様々な技術を用いて得られるため、金属合金ではない。
【0055】
好ましい実施形態において、還元触媒は、Co-系及びNi-系触媒であり、好ましくはルイス酸又はブレンステッド酸成分を有するルイス酸に支持/結合されているCo-系及びNi-系触媒であることが好ましく、Al2O3又はSiO2に支持/結合されているCo-系及びNi-系触媒であることがより好ましく、ここで、前記触媒はラネー触媒又はスポンジ型の触媒ではない。
【0056】
本発明プロセスのステップ(B)においては、式(III)の化合物の還元は、前記還元触媒を使用し、H2を用いて、アンモニアの不存在下で、H2O/(III)のモル比が0.01~1の又は反応混合物に対して0.1~11%の重量比の水の存在下において行う。
【0057】
ステップ(B)の反応温度は、30~250℃、好ましくは50~200℃であり、圧力は、0.4~15MPa(4~150barA)、好ましくは1.1~10MPa(11~100barA)、より一層好ましくは2~6MPa(20~60barA)である。
【0058】
還元反応は、(攪拌機、加熱ジャケット、並びに気体流及び液体流の注入口を備える反応器において)0.1~12.0h、好ましくは0.8~7.0h、より好ましくは1.5~5hの反応時間にわたり回分式で行ってもよく、又は例えば単一管型反応器若しくは多段式管型反応器、又はCSTRのような攪拌反応器において連続で行ってもよい。連続形式は、生産性の点、特に産業規模での生産性の点で好ましい。
【0059】
還元反応は、有機溶媒の存在下で行うことができる。一実施形態において、前記有機溶媒は、メタノール若しくはエタノール、イソプロピルアルコール若しくはtert-ブチルアルコール、MTBE、THFから選択されることが好ましく、THFであることがより好ましい。他の実施形態において、有機溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンのような芳香族溶媒であり、キシレン(o、m、p又は異性体の混合物)及びエチルベンゼンが最も好ましい。
【0060】
式(III)の化合物がε-カプロラクタムのシアノ誘導体である好ましい場合において、還元の主な生成物は、対応するアミノ誘導体(IV)であり、主に一定量の環化生成物(V)(DBU)と共に得られる。
【0061】
対応する第2級アミン/第3級アミンの生成があってもよい。しかしながら、これらの化合物は、アンモニアを使用した場合に、文献で記載されている量と一致する量で得られ、いずれの場合も所望の第1級アミンと比較して取るに足らない量である。
【0062】
本発明プロセスのステップ(B)で得られる式(IV)のラクタムのアミノ誘導体を、対応するアミジン、好ましい場合においてはDBU(1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エン)を合成するステップ(C)によって脱水する。
【0063】
本出願人が使用しているステップ(C)に関して、ステップ(C)は先行技術ですでに記載されており、特に、特許文献1(独国特許第1545855号)で記載されている。
【0064】
脱水は、高温で、好ましくは90~270℃、より好ましくは130~230℃、より一層好ましくは150~200℃で、環化をもたらす脱水中に生じる水を連続して除去しながら行われ、還流モードで沸騰及び蒸気の部分凝縮を操作でき、水が分離され、溶媒が反応系内で還流される相分離器において凝縮物を収集することが可能である。
【0065】
酸触媒は、常に必要であり、また文献で知られている酸触媒の中から当業者は選択でき、本発明の場合にはp-トルエンスルホン酸とすることができる。ステップ(C)の反応終了時において、混合物は適当な量の濃NaOH水溶液で中和する必要があり、溶媒は最終的に蒸発により回収される。主な脱水生成物は、目的のアミジンである。
【0066】
エンドユーザーは必要に応じて、技術水準で既知の方法の一つによりアミジンを精製でき、例えば蒸留によって95~98重量%の純度に精製できる。
【0067】
それゆえ、本発明によるプロセスは、第1級アミンの生成を不利にすることなく、ラネー触媒の自然発火性及びアンモニアの毒性に関する問題を排除することができるため有利であり、さらには、出願人は驚くべきことにステップ(B)ですでにアミジンが形成されていることに気が付いた。
【0068】
先行技術における上述の方法は、いずれもアンモニア及びラネー触媒の非存在下でニトリルの還元を行う可能性について言及していない。
【0069】
好ましくは、本発明のプロセスにおいて、ステップA)又はB)で得られる反応混合物の中間体の精製を行わないが、溶媒を回収し、使用するために溶媒の蒸発は行う。
【0070】
また、本出願人は、驚くべきことに全ての反応ステップで単一の溶媒を使用できる可能性も明らかにしており、これはプロセスをさらに単純化する。
【0071】
この溶媒は、非プロトン性の溶媒の種類から選択でき、特には、キシレン(純異性体又は混合物)を使用することが、この目的に特に適していることが分かっている。
【0072】
このプロセスにおいて、全ての反応ステップ及び最終精製ステップを連続で行うことができる。
【0073】
特に、全ての反応で単一の溶媒を使用することでプロセスをさらに単純化し、これによって連続構成における生産性及び操作コストの点でより一層効率的になる。
【0074】
本発明の特に好ましい実施形態においては、本出願人は、ラクタムからアミジンを生成する新規で独自のプロセスを見出している。
【0075】
そのため、本発明によるプロセスを、ε-カプロラクタム及びアクリロニトリルから開始する1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エン(DBU)の生成につき、以下でより詳細に記載するが、これは、いずれにしても、上記の式(I)及び(II)の制限内で、異なる構造を有し、異なる炭素原子数の化合物への同一の本発明プロセスの適用を限定するものとして理解される。
【0076】
溶媒(例えばキシレン)中の化合物(I)(例えばε-カプロラクタム)の混合物を、塩基触媒(例えばNaOH、LiOH又はテトラブチルアンモニウムヒドロキシド)の添加後に、CSTR又は管型再循環反応器に連続して供給し、該反応器に化合物(II)(例えばアクリロニトリル)も連続して供給する。さらに好ましい方法は、直列的に配置されたこれらの特徴を持つ2つの反応器とすることである。代わりに、回分式の反応器を使用して反応生成物をタンクに送り、該タンクから連続してステップ(B)に反応生成物を送ることができる。付加反応は、温度20~140℃、好ましくは40~110℃、より一層好ましくは60~80℃にして、滞留時間0.5~10h、好ましくは0.8~4hで行う。
【0077】
化合物(I)(例えばε-カプロラクタム等)を、溶媒の非存在下で溶融物に送給することもできるが、好ましいのは溶媒混合物である。後者の場合には、前記溶媒は、溶液全体の70重量%まで存在していてもよく、好ましくは溶液全体の5~50重量%、より好ましくは溶液全体の15~40重量%存在していてもよい。
【0078】
反応が行われる圧力は、10~600kPa(0.1~6barA)であり、好ましくは10~400kPa(0.1~4barA)である。
【0079】
反応は発熱反応であるため、反応温度は、反応器内での還流凝縮で反応混合物の部分蒸発により制御することもでき、代わりに、反応混合物を、反応器自体の外部熱交換機によって再循環させることができる。
【0080】
ステップ(A)での生産率及び転化率は、通常高い。例えば、化合物(I)がε-カプロラクタムであり、化合物(II)がアクリロニトリルである場合において、主な付加生成物であるN-(2-シアノエチル)-ε-カプロラクタムは、ε-カプロラクタムの転化率が通常85~99.9%でありながら、通常最大90~95%の収率で得られる。
【0081】
言及している全ての転化率、選択率及び収率の値は、実施例で記載される反応混合物の1H NMR及び13C NMR並びにGC-MSにより測定したそれらの値を参照している。
【0082】
反応器から出る流れは、(部分熱回収の可能性を伴って)随意的に冷却されるか、又は還元反応の第2のステップ(B)へ直接送られる。
【0083】
代わりに、液体流を可能であれば蒸発器に供給し、溶媒及び反応物、すなわち未反応の化合物(I)及び(II)を回収してもよい。先行技術で知られている任意なタイプの蒸発器を、本発明の目的で有利に使用してもよい。やかん型の蒸発器を使用することが好ましい。この目的で使用できる蒸発器の型のさらなる詳細は、例えばPerry’s Chemical Engineers’ Handbook、McGraw-Hill (7th Ed.-1997)、11章、108-118ページで見つけることができる。代わりのセットアップは、棚段式蒸留塔又は充填剤の使用に基づく。蒸留塔により、蒸発器を使用する時よりもより少ない反応生成物の量で、未反応の化合物(I)及び化合物(II)又は溶媒を再循環させることができる。
【0084】
付加生成物及び可溶化触媒を含む、蒸留器から出る液体流又は蒸留塔の底部から出る液体流は、その後交換機に送られ、温度30~250℃、好ましくは50~200℃、より好ましくは100~160℃に加熱され、前記交換機からの前記流れは還元反応用の反応器に送られ、前記反応器は、1~50h-1、好ましくは3~10h-1のWHSV(入ってくる流れの全ての総量に対する単位時間当たりの重量空間速度)で動作する、好ましくは固定層反応器、又はトリクルベッド反応器である。この反応器は、サーモスタットシステムを備えており、上述の水素化触媒を含んでいる。
【0085】
還元反応は有機溶媒の存在下で行うことができ、好ましくは、該有機溶媒はMTBE、THF、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert-ブチルアルコール、又はトルエン、キシレン(純粋な異性体又は混合異性体)、エチルベンゼンから選択される。THF、キシレン及びエチルベンゼンが好ましく、該溶媒はステップ(A)で使用される溶媒と同一であることが好ましい。前記溶媒は、反応混合物の3~70重量%であってもよく、好ましくは反応混合物の5~50重量%、より好ましくは15~40重量%である。
【0086】
還元反応は、好ましくは反応混合物の0.1~11重量%の水の存在下で行われることが好ましく、前記反応器は、0.4~15MPa(4~150barA)、好ましくは1.1~10MPa(11~100barA)、より好ましくは2~6MPa(20~60barA)の圧力までH2が供給される。反応器は、反応器の先端から反応器の底部まで圧縮器/送風機を経由して出ていく気体が再循環することによりガスで連続的に流される。回収されたH2の一部は、上記圧力の値を維持するために供給される。反応生成物及び随意的に溶媒の混合物からなる流れは、反応器の底部から流れる。この反応器の好ましい設定は、トリクルベッド反応器の上部に取り付けられる液体ジェット抽出器によって余分な気体を再循環させることであると予測される。モーター流体は、ポンプによって再循環される同一の反応混合物である。
【0087】
化合物(I)がε-カプロラクタムであり、化合物(II)がアクリロニトリルである場合に、主な還元生成物は、N-(3-アミノプロピル)-ε-カプロラクタム及び場合によっては1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エン(DBU)であり、主な副生成物は、3-アミノプロピル-ε-カプロラクタムの第2級アミン及び第3級アミンである。これらの副生成物は、7重量%を超えない。N-(2-シアノエチル)-ε-カプロラクタムの転化率は90~99%であり、N-(3-アミノプロピル)-ε-カプロラクタム及びDBUの全体の収率は92%超である。言及した全ての転化率、選択率及び収率は、実施例で記載される反応混合物の1H NMR及び13C NMR並びにGC-MSにより測定したそれらの値を参照している。
【0088】
この流れを溶媒回収システムに送ることができる。好ましい配置は、水及び溶媒を回収するための蒸発器に基づくものである。残った溶媒を含む反応混合物は、蒸発器の底部から外に出る。蒸発器からの流れは、2つの相である液体、流の分離及び接触の両方を促進させる多孔板を含む脱ガス装置に供給される。脱ガス装置から出る蒸気相は、還流冷却器内で部分的に凝縮され、該還流冷却器は20~250℃、好ましくは40~150℃、より一層好ましくは60~130℃の温度で動作し、随意的に、さらなる凝縮を行い、ステップ(A)及び(B)の反応の間に生成されるいかなる副生成物をも回収することができる。
【0089】
還流冷却器から出る蒸気は、他の冷却器において、温度2~50℃、好ましくは10~30℃、より好ましくは20℃で凝縮される。
【0090】
冷却器の排出口で収集する液体は水を加えた溶媒であり、蒸発器の底部から出ていく混合物を脱水ステップ(C)に送りながら、水の分離後、該溶媒を再利用する。
【0091】
しかしながら、好ましい実施形態において、水素化反応器から出る流れは、脱水ステップに直接送られる。
【0092】
N-アミノラクタムの脱水/環化は、当業者が様々な方法で行うことができる文献で既知の反応である。下記方法は、出願人が採用した条件に関し、本発明の方法を限定するものとみなされるものではない。
【0093】
脱水は、脱水機と称され、部分還流冷却器及びポスト凝縮器からなる加熱システム及び凝縮システムを備える、好ましくはCSTRタイプの反応器で連続的に行い、反応器は、生成される水のほとんどを凝縮し、凝縮物を溶媒が再導入される相分離器に送る。相分離器においては、残った有機物が分離され、脱水機に再導入されるが、水は部分的に水素化反応に再循環され、余剰分は処理に送られる。反応は、反応条件において可溶性の酸触媒、好ましくはp-トルエンスルホン酸の存在下で、滞留時間0.5~12h(時間)、好ましくは2~8hで行われる。随意的に、反応を溶媒の非存在下で行うこともできる。脱水は高温で行われ、好ましくは90~270℃、より好ましくは130~230℃、より一層好ましくは混合物の沸点で行われる。反応が行われる圧力は、8~500kPa(0.08~5BarA)、好ましくは50~300kPa(0.5~3BarA)、より好ましくは100~200kPa(1~2BarA)である。反応の終了時に、混合物を適当な量の高濃度のNaOH等の強塩基水溶液で中和する必要があり、形成される塩を混合物から取り除く必要がある。脱水生成物、溶媒、任意の未反応アミン及び前のステップでの副生成物の流れは、反応器の底部から排出され、化合物(I)がε-カプロラクタムであり、化合物(II)がアクリロニトリルである場合には、主な生成物はDBU(1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エン)である。
【0094】
その後、前記流れは、溶媒の回収及びDBU等の化合物(V)の精製のための蒸留セクションに送られる。蒸留後、この化合物の純度は、通常95~98%である。
【0095】
前記化合物の純度は、ガスクロマトグラフィー分析(GC-MS)で測定する。
【0096】
随意的に、蒸留後の前記化合物を、液-液抽出等のさらなる精製にかけることができる。このような操作は、当業者に既知の技術を使用して行える。
【0097】
本発明の異なる実施形態によると、式(IV)のアミンの脱水/環化反応は、アルミナ、シリカアルミナ又はゼオライト触媒を用いて行い、対応する式(V)のアミジンを有利に得ることができる。
【0098】
本発明に従って上述のように合成された式(V)のアミジンを、当業者に既知の方法により、その後の精製にかけてもよい。この実施形態において、水素化ステップ(B)からの反応混合物を、蒸発による溶媒回収にかけ、その後脱水にかけることが好ましい。代わりに、そこまで好ましくない実施形態ではあるが、式(IV)のラクタムのアミノ誘導体を精製された形態で反応させることができる。さらなる他の実施形態においては、脱水を、前のステップと同一の溶媒、例えばキシレン中において行うことができる。
【0099】
脱水は、高温、好ましくは90~270℃、より好ましくは130~230℃、より一層好ましくは150~200℃で、環化を起こす脱水プロセス中に生じる水を連続して除去しながら行う。
【0100】
触媒は、常に必要であり、該触媒は、酸化アルミニウム(γ-Al2O3)、アルミナシリカ(SiO2-Al2O3)のようなルイス酸若しくはブレンステッド酸成分を有するルイス酸、酸化ランタン及び酸化ジルコニウムのような酸性白土から選択される不均一酸触媒、又はスルホン化樹脂若しくはイオン交換樹脂のような樹脂由来の不均一触媒から選択される。前記触媒は、軽石、グラファイト又はシリカ等の不活性担体に支持されていてもよい。酸化アルミニウム(γ-Al2O3)が好ましい。反応終了時において、主な脱水生成物は、式(V)の目的のアミジンである。エンドユーザーが必要とする場合には、アミジンを、技術水準において既に知られた方法の一つ、例えば蒸留により、95~98重量%の純度に精製することができる。
【0101】
本出願人は、驚くべきことに、さらなるプロセスの簡素化及びコストの削減をして水の除去を促進するために、溶媒を還流しないで、固体酸触媒の無溶媒脱水をもたらす可能性を見出している。
【0102】
本発明のプロセスにおいては、反応ステップ(C)及び最終精製ステップを連続的に行うことができる。
【0103】
脱水は、加熱システム及び精製される水のほとんどを凝集し、凝集物を相分離器に送るポスト凝縮器からなる凝縮システムを備える、脱水機と称される、好ましくは管型の反応器内において連続的に行われる。相分離器においては、残った有機物が分離され、脱水機に再導入されるが、水は水素化セクションに部分的に再循環され、余剰分は処理に送られる。好ましい形態では、混合物が横方向に反応器に連続的に送給されるが、流れが反応器上部から外に出て、反応生成物が底部から出る。この反応器は、水蒸気のみを逃がせるように、随意的に、上部にリング、プレート、隔壁等の充填材を具備していてもよい。他の実施形態においては、水蒸気を反応器の上部から逃がしながら、反応混合物を底部から連続的に送給し、反応生成物を反応器の側面から取り出すこともできる。反応は、不均一酸触媒、好ましくはγ-アルミナの存在下で、1~50h-1、好ましくは3~10h-1のWHSV(全反応混合物に対する単位時間当たりの重量空間速度)で行われる。脱水は高温で行われ、好ましくは90~270℃、より好ましくは130~230℃、より一層好ましくは150~200℃で行われる。反応が行われる圧力は、8~500kPa(0.08~5BarA)、好ましくは50~300kPa(0.5~3BarA)、より好ましくは100~200kPa(1~2BarA)である。脱水生成物、未反応アミン及び最終的な溶媒、及び前のステップでの副生成物からなる流れは、反応器の底部から排出され、式(IV)の化合物がN-(3-アミノプロピル)-ε-カプロラクタムの場合、主な生成物は、通常DBU(1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エン)である。
【0104】
前記生成物流は、その後、溶媒回収及びDBU等の化合物(V)の精製の蒸留セクションに送られる。蒸留後、前記化合物の純度は、通常95~98%である。
【0105】
前記化合物の純度は、ガスクロマトグラフィー分析(GC-MS)で測定する。
【実施例】
【0106】
以下の実施例においては、他に示さない限り、下記略称及び材料を使用する。
- AN:アクリロニトリル(CAS 107-13-1、純度≧99%、Sigma-Aldrich)
- CPLT:ε-カプロラクタム(CAS 105-60-2、純度99%、Sigma-Aldrich)
- NaOH:水酸化ナトリウム(CAS 1310-73-2、純度≧98%、Sigma-Aldrich)
- 最小45%NaOH水溶液(CAS 1310-73-2、タイター45-50%、Sigma-Aldrich)
- キシレン:キシレン異性体の混合物(CAS 1330-20-7、純度≧98.5%、Sigma-Aldrich)
- CTZ1:市販の触媒 HTC CO 2000 RP 1.2mm(アルミナ担持
) Johnson-Matthey(米国特許第8,293,676号明細書の第21~22欄の実施例Jの表3からのデータ)
- CTZ2:市販の触媒 HTC Ni 500 Johnson-Matthey(国際特許出願(PCT)WO2010/018405号第6ページの実施例1からのデータである、多孔質遷移アルミナ支持体におけるニッケル酸化物として21%ニッケルを含む1.2mmの三葉虫押し出し成形材料の形態での)
- H
2:水素(sapio titre5.5)
- H
2O:超純水(MilliQミリポアシステム)
- p-TSA:p-トルエンスルホン酸一水和物(CAS 6192-52-5、純度99%、Sigma-Aldrich)
【0107】
(ガス質量分析)
3つの反応ステップでの反応物及び反応生成物を測定するためのガス質量分析は、スプリット/スプリットレスインジェクターを備え、検出器として機能するMS HP 5973質量スペクトロメーターに接続されたGC HP6890クロマトグラフィーを用いて行う。クロマトグラフィーは、HP-1MS UIキャピラリーカラム(100%ポリジメチルシロキサン、Agilent J&W)、石英ガラスWCOT、30m長、0.25mmID、膜厚0.25μmであることを特徴とする。機器パラメーターは以下のとおりである。
・注入量20μl
・ヘリウムキャリアガス0.8ml/min(一定流量モード)
・分割比250:1
・インジェクター温度300℃
・プログラム式オーブンの温度40~320℃で10℃/分(28分)に加えて320℃で10分の待機時間(全体の実行時間=38分)
【0108】
市場で入手可能な特定の純粋な製品(εカプロラクタム及び対応するアミンのシアノ誘導体等)がないため、定量は様々なクロマトグラフィーピークの相対領域を比較する方法により行った(そのため、同一のクロマトグラフ応答であるという近似値を受け入れている)。
【0109】
しかしながら、定量1H NMR分析、13C NMR分析も同一のサンプルで行ったところ、得られた結果はガスクロマトグラフ法で示される結果と重なった。
【0110】
(NMR分析)
もたらされたサンプルの分析は、Bruker Avance 400MHzスペクトロメーターを使用して、温度300Kで、約50~70mgのサンプルを重水素化クロロホルムに溶解することにより行った。スペクトルは、下記の機器パラメーターで記録した。
【0111】
【0112】
[実施例1:キシレン中のε-カプロラクタム及びアクリロニトリルの反応]
ε-カプロラクタム123.3g及びキシレン62.5gを、窒素注入口、撹拌器、還流冷却器、熱電対、及び滴下漏斗を備える1リットルフラスコに入れた。軽い窒素の流れ下で、懸濁液をオイルバスの使用により45-50℃で攪拌しながら加熱し、完全に可溶化したら、NaOH0.1841gを加え、温度を70℃にした。水酸化ナトリウムが可溶化したら、反応が発熱反応であるため、温度を70~80℃に維持するように注意しながらアクリロニトリル(67.4g)を滴下した(添加時間は約1hと推定される)。アクリロニトリルの添加の終了時に温度を70℃に保ち、反応は2.25h継続させた。付加反応を進めると、溶液が徐々に黒ずむことが確認された。
【0113】
GC-MS分析ではカプロラクタムの転化率が98.6%、選択率が98.3%と示され、したがって、生成物の収率は96.9%と示された。基礎原料溶液は、下記のとおり、実施例2で水素化した。
【0114】
[実施例2:キシレン中の天然ニトリル溶液の水素化(触媒Co)]
機械タービン撹拌機、加熱マントル、触媒かご、気体流及び液体流の注入口を備える250mlオートクレーブにおいて、CTZ1触媒30gを室温で専用の触媒かごに導入し、水素雰囲気中で活性化させた。
【0115】
触媒の活性化は、まず大気圧において窒素で触媒を洗い流し、その後、反応器を温度勾配25-50℃/hで150℃まで加熱し、該温度まで到達したら水素を流量30ml/minで供給し、それにより温度を180℃まで上げることによって行った。
【0116】
この時点では、水素の流量は、ガスフラッシングが完全に水素に基づくものになるまで(流量200ml/min)窒素の流量を徐々に減少させて増加させた。これらの温度及び流量の条件下で、活性化を18時間続け、その後、窒素の流れを元に戻し(また、同時に水素の流れを減らした)、不活性雰囲気において触媒を維持し、徐々にシステムを室温に冷却した。
【0117】
実施例1で得られた溶液143.9gに、水2.5gを加え(全体の約3%)、その後、反応器に投入し、さらにキシレン20.1gを導入することによってラインを洗い流した。反応器の圧力を、攪拌モーター(750rpm)を駆動して2.1MPa(21barA)に上昇させ、ヒーターをつけて内部温度を130℃に設定した。その間に、反応器を水素で圧力4.1MPa(41barA)まで加圧した。ラインにおける反応器への水素流が約0.2~0.3L/hである限り、この圧力で水素化した。反応器に導入される水素の量は、計数器で示され、導入されたニトリルの量に基づいて計算される化学量論適量と比較した。最後に、生成物を冷却し、放出した。
【0118】
GC-MS分析により、ニトリル生成物の転化率が96.1%であり、選択率が99.3%であって、それゆえ、生成物N-(3-アミノプロピル)-ε-カプロラクタム及びDBU(1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エン)の収率が95.4%であることが示された。十分な量の脱水された生成物を得るために、この合成を同一の条件下で2回再現した(得られた結果はこの例で示した結果と重なる)。
【0119】
[実施例3:キシレン中の粗アミン溶液の脱水]
実施例2で記述したように得られた溶液159.4gに、p-トルエンスルホン酸一水和物1.3gを加えた。この混合物を、温度制御器に接続した乾式半球型ヒーターを使用して還流により、150-160℃まで加熱し、反応フラスコを、ディーン・スタークトラップ及び冷却器に接続し、反応環境で生成された水を除去し、生成された蒸気を、トラップの上部で凝縮し、それによって生じた水をトラップへの引力により除去した(溶媒はほぼ一定の量を維持してフラスコに戻った)。還流の開始から4h後、トラップ内で水のさらなる蓄積は観察されなかったため反応が完了したものとみなし、その後、室温まで冷却した。得られた溶液をNaOH水溶液(最小濃度45%)800mgで中和した。
【0120】
GC-MS分析により、N-(3-アミノプロピル)-ε-カプロラクタムの転化率が92.3%、選択率が99.4%、それゆえDBU収率が91.7%であることを算出された。
【0121】
[実施例4:キシレン中の粗ニトリル溶液の水素化(触媒Ni)]
上述の実施例2と同一の反応を、触媒CTZ1を触媒CTZ2に変えて実行した(活性化形態はすでに述べたものと同一である)。
【0122】
GC-MS分析では、ニトリル生成物の転化率が96.9%、選択率が78.5%、それゆえ生成物N-(3-アミノプロピル)-ε-カプロラクタム及びDBU(1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エン)の収率が76.1%であることが示された。
【0123】
[実施例5:溶媒の不存在下でのカプロラクタムとアクリロニトリルの反応]
実施例1で記述したものと同一の反応を、溶媒の不存在下で行った。
【0124】
ε-カプロラクタム123.4gを、窒素注入口、撹拌機、還流器、冷却器、熱電対及び滴下漏斗を備える500mlフラスコに入れた。軽い窒素の流れの下で、固体をオイルバス(外部温度制御)の使用により70-75℃まで加熱し、完全に融解したら、0.1230gのNaOHを加え、温度を70℃に上げた(内部温度制御)。水酸化ナトリウムが可溶化したら、温度70~80℃に保つよう注意してアクリロニトリル(67.4g)を滴下した。反応は発熱反応であった。アクリロニトリルの添加の終了時に、温度を70℃に保ち、反応を2h継続させた。付加反応を進めると、徐々に溶液が黒ずむことが観察された。
【0125】
GC-MS分析では、カプロラクタムの転化率が95.4%、選択率が98.9%、それゆえ生成物の収率が94.4%であることが示された。
【0126】
[実施例6:不均一酸触媒を用いたキシレン中の粗アミン溶液の脱水]
実施例2からの溶液(138.3g)を、バブル冷却器を装備したディーン・スターク装置に接続されたフラスコ(少量のガラス玉を含む)に導入した。その後、あらかじめオーブン内において150℃で8時間にわたり活性化させた1グラムのSASOL SPHERES 1.0/160アルミナを加えた。フラスコを170℃に加熱し、溶媒を回収しながら反応により生じた水を分離した。約4h後、水の生成がないことを確認したら、フラスコを冷却し、内容物をGC-MS分析にかけた。分析の結果は、N-(3-アミノプロピル)-ε-カプロラクタムの転化率は94.7%、選択率は99.5%であり、それゆえDBUの収率は94.2%であった。
【0127】
[実施例7:無溶媒不均一酸触媒を用いたアミンの脱水]
実施例2から得られた混合物の溶媒を回転蒸発器(T=60℃、P=30mbar)で除去し、結果としてN-(3-アミノプロピル)-ε-カプロラクタム及びDBUの混合物113.9gとなり、この溶液を反応水除去のためのリービッヒ凝縮器に接続されたフラスコ(少量のガラス玉を含む)に導入した。その後、あらかじめオーブン内において150℃で8時間にわたり活性化させた1グラムのSASOL SPHERES 1.0/160アルミナを加えた。脱水は、穏やかな窒素の流れの下で行い、水の除去を促進した。その後、フラスコを170~180℃で約5時間にわたり加熱し(凝集物の生成は観察されなかった)、フラスコを冷却して内容物をGC-MS分析にかけた。分析の結果は、N-(3-アミノプロピル)-ε-カプロラクタムの転化率が93.6%、選択率が83.1%、それゆえDBUの収率が77.8%であった。
【0128】
表1、2及び3は、先の実施例の要約データを示している。
【0129】
最後に、文中では具体的には言及していないが、ここで記述し、例示した方法のさらなる修正形態及び変形形態としてもよいことが理解され、これらは添付の特許請求の範囲の範囲内で本発明の明らかな変形とみなされるべきである。
【0130】
(転化率、選択率及び収率(GC-MS)の計算)
【数1】
式中、
mol=モル数である。
【0131】
表1:付加反応
【表2】
(1)AN投入の終了時の反応時間(全ての実施例の投入時間は1h)
【0132】
表2:還元反応
【表3】
(2)全ての所望の生成物(第1級アミンとDBU)についての収率及び選択率
【0133】
表3:脱水反応
【表4】
連続する実施例1、2及び3の結果を考慮すると、(p-TSA酸を用いた)合成の全体の収率を計算することができた。
【0134】
【国際調査報告】