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特表2024-515439部品の部品開口部用カバー、特に洋上構造物の部品開口部用カバー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】部品の部品開口部用カバー、特に洋上構造物の部品開口部用カバー
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/52 20060101AFI20240403BHJP
   F03D 13/25 20160101ALI20240403BHJP
【FI】
E02D27/52 A
F03D13/25
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023555712
(86)(22)【出願日】2022-03-10
(85)【翻訳文提出日】2023-11-10
(86)【国際出願番号】 EP2022056125
(87)【国際公開番号】W WO2022189544
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】102021105973.9
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523345758
【氏名又は名称】エルヴェーエー オフショア ウィンド ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルク シェデルガルン
(72)【発明者】
【氏名】ミリアム フォクト
【テーマコード(参考)】
2D046
3H178
【Fターム(参考)】
2D046DA62
3H178AA03
3H178AA25
3H178AA43
3H178BB77
3H178BB90
3H178CC23
3H178DD67Z
3H178DD70X
(57)【要約】
機構(1)は、部品開口部(3)を有する中空部品(2)と、前記部品開口部(3)を閉じるカバー(4)と、前記部品(2)の内部空間(6)を換気するためのものであり且つ前記カバー(4)に枢動可能に締結されているファン(5)とを備える。部品(2)の部品開口部(3)は、カバー(4)によって閉じることができ、これにより、部品(2)の内部空間(6)は、外部からの影響から保護される。部品(2)の内部空間(6)におけるかびの発生をファン(5)によって防止できる。部品(2)の内部空間(6)は、ファン(5)がカバー(4)に枢動可能に保持されていることにより、特に十分にアクセス可能となっている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機構(1)であって、
部品開口部(3)を有する中空部品(2)と、
カバー(4)であって、
これによって前記部品開口部(3)を閉じる、カバー(4)と、
ファン(5)であって、
前記カバー(4)における換気開口部(17)を介して前記部品(2)の内部空間(6)を換気するためのものであり、
前記カバー(4)に枢動可能に締結されている、ファン(5)と
を備える、
機構(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の機構(1)であって、
前記部品(1)は、洋上建造物(7)用の、海底(13)に固定される基礎構造物である、
機構(1)。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の機構(1)であって、
前記部品(2)は、パイル(8)であり、
前記部品開口部(3)は、前記パイル(8)の端部側(9)に配置されている、
機構(1)。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の機構(1)であって、
前記ファン(5)は、前記部品開口部(3)の軸(A)上の動作位置に配置されている、
機構(1)。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の機構(1)であって、
前記カバー(4)は、リングプレート(10)を有し、
前記ファン(5)は、前記リングプレート(10)上に保持されている、
機構(1)。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の機構(1)であって、
前記カバー(4)は、防水布(11)でカバーされたロッド組立体(12)を有する、
機構(1)。
【請求項7】
洋上建造物(7)を組み立てる方法であって、
a)中空のパイル(8)を海底(13)に固定するステップであって、
この固定により、
前記パイル(8)の端部側(9)にある部品開口部(3)は、水線(14)よりも上にあり、且つ、
前記部品開口部(3)は、カバー(4)によって閉じられており、且つ、
前記カバー(4)における換気開口部(17)を通して前記パイル(8)の内部空間(6)を換気するファン(5)が、前記カバー(4)に枢動可能に締結されるように、
固定することと、
b)前記カバー(4)を取り外すことと、
c)前記パイル(6)に、建設構造物(15)を設置することと
を含む、
方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、
前記カバー(4)は、前記ステップb)において分割され、その後廃棄される、
方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の方法であって、
前記ステップa)とb)との間において、前記パイル(8)の前記部品開口部(3)の縁部上において、前記カバー(4)の外側に、ウィンチ装置(16)が設置され、
前記ファン(5)は、動作位置から離れるように枢動するものであり、
これにより、前記パイル(8)の前記内部空間(6)には、前記カバー(4)の前記換気開口部(17)を通して、前記ウィンチ装置(16)がアクセス可能になる、
方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、
前記ウィンチ装置(16)は、前記ステップa)とb)との間において、ケーブルを引き込むために使用される、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋上建造物を組み立てる方法に関し、特に洋上風力発電所を組み立てる方法に関する。さらに、本発明は、部品開口部を有する中空部品を有する機構に関し、特に上部が開いたパイル(Pfahl)を有する機構に関する。部品開口部は、各組み立て段階の間における外部からの影響から部品を保護するために、カバーによって閉じられている。
【背景技術】
【0002】
洋上風力発電所は、基礎構造物として、中空のパイルを通常有する。洋上風力発電所を組み立てるために、パイルはまず海底に固定される。その後、パイル上にタワー構造物が設けられる。実際には、これらの2つの段階の間に数か月が経過することがある。したがって、タワー構造物が設けられるまでは、上部が開いたパイルはカバーによって閉じられることが慣例になっている。このように、パイルの内部空間は、外部からの影響から保護されている。カバーは、タワー構造物が設けられる直前に取り外される。
【0003】
上述の目的を果たすカバーとして、テンションストラップによってパイルに締結される簡易な防水布(Plane)が知られている。しかし、このタイプのカバーは、特に強風の場合に、設置するのが難しい場合が多い。さらに、それらのカバーは、パイルを完全に閉じてしまう。その結果、パイルの内部空間にかびが生える恐れがある。さらに、パイルの内部空間へのアクセスは、公知のカバーではさらに困難になってしまい、例えば内部での組み立て作業が困難になる。特に、いわゆるケーブルの引き込み作業が、このようなタイプのカバーではより困難になる。
【0004】
他の分野の用途においても、中空部品の部品開口部を閉じることが必要になる場合がある。かびの発生やアクセスの悪さが、ここでも公知の課題である。
【0005】
本発明の目的は、上記の先行技術を進展させて、かびの発生を防止し且つアクセスを容易にする、中空部品の部品開口部用のカバーを提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの目的は、独立請求項による機構及び方法によって達成される。さらに有利な改良は、従属請求項において既定される。特許請求の範囲及び明細書に記載された特徴は、技術的に有意であり且つ任意の望ましい態様で互いに組み合わせることができる。
【0007】
本発明によれば、
部品開口部を有する中空部品と、
カバーであって、これによって部品開口部を閉じる、カバーと、
ファンであって、カバーにおける換気開口部を介して部品の内部空間を換気するためのものであり且つカバーに枢動可能に締結されているファンと
を備える機構が提案される。
【0008】
本機構は中間生成物であってもよく、この中間生成物から建造物を得ることができる。その場合、カバーは、部品の部品開口部を一時的に閉じることができる。部品の部品開口部が何らかの他の手法で長期にわたって閉じられているとき、例えばその部品に取り付け部が締結されることによって閉じられているときに、カバーを取り外すことができる。したがって、カバーは、建設工程中に、部品の部品開口部を閉じ、これにより外部からの影響から内部空間を保護するように機能することができる。これは、特に内部空間に電気デバイスが設置されているときに有利である。
【0009】
建造物は、特に洋上風力発電所とすることができる。この場合、カバーは、海底に固定され且つ上部が開いている、部品としてのパイルを、タワー構造物がパイル上に設置されるまで外部からの影響から保護するように機能することができる。タワー構造物が設置されると、パイルの上側にある部品開口部はタワー構造物によって長期にわたって閉じられ、その結果、カバーはもはや必要なくなる。カバーは、使用を1回限りと意図したものであってもよい。この場合は、カバーは、タワー構造物が設置されるときに廃棄される。しかし、カバーは全体又は一部を再使用することも考えられる。しかし、代替例として、カバーは、他の任意の建造物のための中間生成物において、建設工程中に部品開口部を一時的に閉じるために使用することもできる。
【0010】
代替例として、本機構は、完成した建造物であってもよい。この場合、カバーは、長期にわたって又は一時的に、部品開口部を閉じることができる。例えば、本機構はバイオガス用のサイロであってもよい。サイロは、筒状の構成のものとすることができ、その上部に、カバーによって長期にわたって閉じられる部品開口部を有することができる。この場合、カバーは、サイロの屋根として機能する。しかし、任意の建造物において、横方向の部品開口部を、長期にわたって又は一時的に、カバーによって閉じることも考えられる。
【0011】
本機構は中空部品を備える。部品とは、建造物の一部を意味するものと理解するべきである。中空部品は、好ましくは、断面が丸く、特に、断面が円形である。部品は、特に、管状の構成のものであってもよい。部品は筒状であることが好ましい。部品は、周方向の外殻壁を有することが好ましい。この場合、部品は、その両端部側で開いていることが好ましい。この場合、カバーによって閉じられた部品開口部は、2つの開いた端部側の一方に形成される。部品開口部は、部品の端部側全体に亘って延在していることが好ましい。部品開口部が、部品上において、特に外殻壁において、側部に配置されていることも考えられる。
【0012】
部品における開口部は、部品開口部と呼ばれる。部品開口部という用語は、本明細書に記載する他の開口部、特に換気開口部と区別する語として機能するに過ぎない。
【0013】
部品開口部は、好ましくは、断面積が1~100mの範囲にあり、特に、10~50mの範囲にある。部品開口部は、好ましくは、断面が円形であり、特に、直径が1~10mの範囲の円形である。
【0014】
さらに、本機構はカバーを有し、そのカバーによって部品開口部が閉じられる。このことは、カバーが部品開口部を覆い、そうして、外部からの影響から内部空間を保護することを意味すると理解するべきである。雨や雪などの天気の影響が、外部からの影響に該当する。さらに、鳥からの落下物も考慮する。洋上風力発電所の場合は、激しい波のうねりの場合に海水が浸入することが同様に該当する。カバーは、覆いと呼ばれることもある。
【0015】
カバーは部品開口部を気密な態様で閉じる必要はない。むしろ、該部品の内部空間におけるかびの発生を防止するために、カバーは内部空間の換気ができるようになっている。このため、本機構は、カバー上に保持されたファンを有する。ファンを介して、空気が、好ましくは、機構の周りの領域からカバーの換気開口部を通って部品の内部空間に案内される。空気が、ファンを介して、部品の内部空間からカバーの換気開口部を通って機構の周りの領域に案内されることも考えられる。以下では、ファンを用いて部品の内部空間に空気が取り込まれる場合の一例を記載する。これは、逆の場合にも適宜当てはまる。換気開口部は、好ましくは、直径が20~200cmの範囲にある。
【0016】
部品の内部空間における圧力を均等にするために、カバーは、好ましくは、1つ又は複数の圧力均等化開口部を有する。ファンによって部品の内部空間中に空気が送られるときに、この圧力均等化開口部を通して、空気が部品の内部空間から逃げることができる。圧力均等化開口部は、好ましくは、該圧力均等化開口部を介して部品の内部空間中に外部から水が入ることができないように配置されている。換気開口部の断面は、合計がカバーの表面積の10%未満であることが好ましい。
【0017】
空気は、ファンを用いて、部品の内部空間全体に直接取り込むことができる。代替例として、カバーの内側において、換気開口部に換気ホースを接続することができる。換気ホースを介して、部品の内部空間内を所望の箇所まで空気を案内できる。換気ホースは、好ましくは、ワイヤースパイラルが組み込まれたプラスチック製の外殻壁を有し、このワイヤースパイラルによって外殻壁の形状が決められる。
【0018】
ファンは、カバー上に枢動可能に保持されている。これは、例えば、ファンが1つ又は複数のヒンジを介してカバー上に保持されることによって可能となる。ファンは、第1の位置と第2の位置との間で枢動することができる。第1の位置において、ファンは、カバーの換気開口部を覆い、これにより、ファンは、換気開口部を通して空気を送ることができる。これは、部品の内部空間を換気するためにファンを使用できる動作位置である。第2の位置において、ファンは、換気開口部から離れる方に枢動される。したがって、換気開口部が解放される。このように、換気開口部は、部品の内部空間へのアクセスとして使用できる。この点において、上述の機構は、部品の内部空間に、特に容易にアクセスできるようにする。特に、このための別個のアクセス開口部を、カバーに必要としない。そうではあるが、カバーは、換気開口部に加えて、1つ又は複数のアクセス開口部を有してもよい。しかし、ファンが枢動可能でなければ換気開口部の箇所でアクセスが不可能になるため、ファンが枢動可能であることで部品の内部空間へのアクセスが容易になる。換気ホースが換気開口部に取り付けられている場合は、ファンが動作位置から第2の位置に枢動されるときに、この換気ホースを取り外すことができる。これは、換気ホースがあっても、パイルの内部空間は換気開口部を介してアクセス可能であることを意味している。
【0019】
ファンをアクセス可能にするために、例えばファンが枢動可能にするために、本機構は、好ましくは、階段を有することができる。階段は、好ましくは、カバーの外に配置され、且つ、好ましくは、部品開口部の縁部とファンとの間に延在する。ファンが離れる方に枢動されるときに、換気開口部は、階段を介して、部品の内部空間へのアクセスとして使用できる。
【0020】
本機構の好ましい実施形態の1つでは、部品は、洋上建造物用の、海底に固定される基礎構造物である。
【0021】
本実施形態では、部品は、洋上建造物の基礎として、特に洋上風力発電所の基礎として機能する。このようにするために、部品は、一端が海底に固定される。他端においては、通常の水位の場合に部品が水から突出することが好ましい。ただし、激しい波のうねりがある場合などに、水が部品を完全に包み込むことがある状況を除外するものではない。
【0022】
洋上建造物は、好ましくは、部品に加えて、さらなる要素を備え、特に部品構造物を備える。洋上風力発電所の場合、例えば、タワー構造物がそのタイプの部品構造物である。タワー構造物は、直接又は中間要素を介して部品に締結することができ、特に、いわゆるつなぎ部を介して部品に締結することができる。
【0023】
本実施形態では、カバーは、好ましくは、部品の部品開口部を一時的に閉じるように機能する。したがって、カバーは、タワー構造物が設置されるまで、海底に固定された部品の内部を保護するように機能することができる。この場合、本機構は中間生成物であり、この中間生成物から洋上風力発電所などの洋上建造物を得ることができる。カバーは本機構の一部であるが、完成した洋上建造物の一部ではない。
【0024】
本機構のさらなる好ましい実施形態では、部品はパイルであり、部品開口部はパイルの端部側に配置されている。
【0025】
パイルは、好ましくは、閉じられた外殻表面を有する。パイルは、好ましくは、両端部側で開いている。この点において、カバーによって閉じられる部品開口部は、2つの端部側の一方に形成される。部品開口部は、好ましくは、パイルの断面全体に亘って延在している。部品開口部は、ここではパイル開口部と呼んでもよい。パイルにおける開口部は、パイル開口部と呼ばれる。パイル開口部という用語は、本明細書に記載する他の開口部、特に換気開口部と区別する語として機能するに過ぎない。
【0026】
パイルは、特に洋上建造物用の基礎構造物として、特に洋上風力発電所用の基礎構造物として構成することができる。洋上風力発電所である場合、パイルはモノパイルと呼ばれることもある。パイルは、例えばラミング又は振動によって、海底に押し込むことができる。パイルは底部が開いているため、海底にある物質がパイルに入ることがある。これにより、海底がパイルの内側と外側とで同じ高さになる範囲まで、パイルに物質で充填できる。パイルの換気される内部空間は、この場合、海底から、カバーによって閉じられている部品開口部まで延在している。
【0027】
本発明のさらなる好ましい実施形態では、ファンは、部品開口部の軸上の動作位置に配置されている。
【0028】
動作位置では、本実施形態におけるファンは、部品開口部の断面に対して中央に配置される。パイルとして構成された部品の端部側に部品開口部が構成される場合は、部品開口部の軸は、好ましくは、パイルの軸と一致する。この場合、ファンが動作位置にあるときはパイルの軸もファンを通って延在している。
【0029】
ファンが枢動可能であることで、換気開口部が解放可能となり、部品の内部空間へのアクセスとして使用できる。ファンを中央に配置することと、これにより換気開口部が中央に配置されることは、内部空間へのアクセスし易さに寄与する。中央に配置された換気開口部からは、内部空間のすべての点に比較的容易に到達できる。換気開口部の軸は、好ましくは、閉じられる部品開口部の軸と一致する。
【0030】
本機構のさらなる好ましい実施形態では、カバーはリングプレートを有し、ファンはリングプレート上に保持されている。
【0031】
リングプレートは、換気開口部がリングプレートの中央に設けられる程度に、環状の構成となっている。ファンは、リングプレート上に、例えば1つ又は複数のヒンジを介して、保持することができる。さらに、リングプレートは、カバーの安定性に寄与することができる。リングプレートは、好ましくは、外径が50~300cmの範囲にあり、内径が20~200cmの範囲にあり、内径はどのような場合でも外径よりも小さい。
【0032】
本機構のさらなる好ましい実施形態では、カバーは、防水布でカバーされたロッド組立体(Gestange)を有する。
【0033】
ロッド組立体は、好ましくは、複数のロッドを有する。例えば、これらのロッドは、スポークのようにして配置することができ、いずれも換気開口部の縁部から部品開口部の縁部まで延在することができる。ロッドは、好ましくは、部品開口部の縁部又は換気開口部の縁部又はその両方に、プラグイン接続によって締結されている。プラグイン接続は、好ましくは、それぞれのコッターピン(Splint)によって留められる。例えば、各ロッドのそれぞれの端部は、部品開口部の縁部にある対応する孔を通して差し込むことができ、それぞれのコッターピンによって留めることができる。プラグイン接続によって、カバーは、設置や取り外しを簡単にすることができる。換気開口部の縁部は、特に、リングプレートによって構成されてもよい。この点において、リングプレートは、ロッド組立体を保持するように機能することができる。ロッド組立体は、防水布でカバーされている。部品の内部空間は、防水布によって保護されている。防水布とロッド組立体とを有するカバーの構成によって、カバーを、特に容易に且つ簡易に、輸送したり、設置したり、取り外したりすることができる。カバーは、質量が100~300kgの範囲にあることが好ましい。
【0034】
本発明のさらなる態様として、洋上風力発電所を組み立てる方法を提案する。
【0035】
本方法は、
a)中空のパイルを海底に固定するステップであって、この固定により、パイルの端部側にある部品開口部が水線よりも上にあり、且つ、部品開口部がカバーによって閉じられており、カバーにおける換気開口部を通してパイルの内部空間を換気するファンが、カバーに枢動可能に締結されるように固定することと、
b)カバーを取り外すことと、
c)パイルに建設構造物を設置することと
を含む。
【0036】
洋上建造物のパイルは、前述の機構の意味においては、部品である。ステップa)の最後で、前述のように構成された機構となることが好ましい。本発明の前述の利点及び特徴は、この点において、本方法に適用可能及び転用可能であり、その逆も同様である。
【0037】
本方法は、洋上建造物を組み立てるために利用される。洋上建造物は、好ましくは、洋上風力発電所である。しかし、本方法は、その他様々な洋上建造物であって、基礎構造物として海底に固定される1つ又は複数のパイルを有するものを組み立てるために使用されることも考えられる。例えば、このタイプの洋上建造物は、洋上プラットフォームであってもよい。複数のパイルの場合は、ステップa)及びb)が対応する回数だけ実行される。
【0038】
ステップa)において、パイルは海底に固定される。ステップa)の最後で、部品開口部は、カバーによって閉じられる。このようにするために、パイルはまず最初に海底に固定することができ、その後、カバーを取り付けることができる。その場合、ステップa)は、部品開口部がカバーによって閉じられることを含む。したがって、開口部を閉じることは、ステップa)の一部であり、この点において本方法の一部である。代替例として、パイルは、カバーが予め設置された状態で海底に固定することができる。この場合、ステップa)で、部品開口部がカバーによって閉じられたパイルが使用される。例えば、港で、カバーをパイルに設置することができ、それから、カバーを備えたパイルを目的地まで輸送することができる。開口部を閉じることは、ここでは本方法の一部ではないが、その代わりに本方法の開始前にあらかじめ行われる。さらに、ステップa)の最後で、カバーにファンが枢動可能に保持される。これは、カバーがパイルに既に設置されている場合は、ファンをカバーに締結することによって実現することができる。その場合、ステップa)は、ファンをカバーに締結することを含む。したがって、ファンの締結は、ステップa)の一部であり、この点において本方法の一部である。これは、パイルが海底に固定された後にカバーがパイルに締結される場合でも可能であり、また、ファンなしのカバーが予め取り付けられたパイルが用いられる場合でも可能である。代替例として、ファンが予め取り付けられたカバーを使用することができる。この場合、ステップa)は、ファンが枢動可能に締結されたカバーを用いて実行される。この点において、取り付け済みのカバーは、パイルが海底に固定された後に、パイルに取り付けることができる。代替例として、ファンが取り付け済みのカバーが既に予め取り付けられたパイルを使用することができる。
【0039】
ステップa)の後は、パイルの内部空間はカバーによって保護される。パイルは、その上に建設構造物が締結されるまで、この状態に維持することができる。このために、カバーは、ステップb)で例えばクレーンを用いて取り外される。ステップa)とステップb)との間に待ち時間があることが好ましい。待ち時間は、好ましくは、少なくとも1日、特に、少なくとも1か月である。パイルは、例えば、カバーユニットを有した状態で冬を越すことができる。
【0040】
ステップc)で、建設構造物はパイル上に設置される。建設構造物は、好ましくは、タワー構造物であり、特に洋上風力発電所の場合のものである。洋上風力発電所の場合、タワー構造物は、タワー、発電機を有するナセル、これに取り付けられたローターブレードを備えてもよい。タワーは、パイル上に直接設置することができる。代替例として、タワーは、中間要素を介して、特に、いわゆるつなぎ部を介してパイルに接続することができる。
【0041】
本方法の好ましい実施形態の1つにおいては、カバーは、ステップb)において分割され、その後廃棄される。
【0042】
カバーを分割することには、例えば、カバーの防水布を複数の箇所で切ることを含んでもよい。例えば、防水布を、ロッド組立体の2つの隣接するロッド間に延在しているいくつかの部分に切り分けてもよい。さらに、カバーを分割することは、カバーのロッド組立体を分解することを含んでもよい。
【0043】
カバーを分割することによって、カバーの表面積を小さくすることができ、これにより、カバーは風を受ける面積が小さくなる。これにより、カバーの取外しが容易になる。
【0044】
カバーの各部分を大型の袋に回収することができ、このように運び出すことができる。本実施形態では、カバーは再使用されず、廃棄される。これにより、カバーを破壊可能となるようにカバーを分割することが容易になる。さらに、カバーの使用は1回限りとすることが好適である。例えば、カバーは、使用中に損傷を受けることがあり、例えば風によってロッド組立体が変形する可能性がある。このタイプの損傷を検出し且つ修理することが煩雑であることもある。
【0045】
本方法のさらなる好ましい実施形態では、ステップa)とb)との間において、パイルの部品開口部の縁部上において、カバーの外側にウィンチ装置(Windenvorrichtung)が設置され、ファンは動作位置から離れるように枢動するものであり、これにより、パイルの内部空間には、カバーの換気開口部を通してウィンチ装置がアクセス可能になる。
【0046】
パイルの内部空間は、ファンが枢動可能であることで、特に十分にアクセス可能となっている。本実施形態では、この状況はウィンチ装置によって利用される。ウィンチ装置とは、ウィンチに加えて、ウィンチをパイルに締結することができる締結手段も有する装置を意味すると理解するべきである。ウィンチ装置は、パイルの部品開口部の縁部に、すなわちパイルの端部側のうちの水線より上にある方に設置される。通常の水位の場合は、ウィンチ装置は、水の外に配置されている。締結手段は、好ましくは、部品開口部の縁部に締結された脚を3つ以上有するフレームを備える。
【0047】
ウィンチ装置によって、パイルの内部空間内において、荷重を移動させることができ、特に上向き又は下向きに移動させることができる。ウィンチ装置の助けを借りることで、例えば、中電圧回路をパイル内に設置することができる。ウィンチ装置は、ステップb)の前に再び取り外すことが好ましい。
【0048】
本方法のさらなる好ましい実施形態においては、ウィンチ装置は、ステップa)とb)との間において、ケーブルを引き込むために使用される。
【0049】
洋上風力発電所によって発電された電気は、海底に敷設されたケーブルを介して送出することができる。このケーブルは、洋上風力発電所の組み立て中に接続される。このために、ケーブルは、水線より下にある、パイルの外殻壁の孔を通して案内されてもよい。その後、ケーブルを上に引きあげられ、パイル内に接続することができる。その工程は、ケーブルの引き込みと呼ばれる。本実施形態では、ウィンチ装置がこの目的で使用される。この点において、先に説明した利点は、ケーブルの引き込み時に実現することができる。特に、ケーブルを引き込むためにカバーを取り外す必要がない。代わりに、ファンが離れる方に枢動させればよい。換気開口部を中央に配置することで、ケーブルを上に引き上げ、パイルの中央で接続することができる。このことは、ケーブルをパイルの外殻壁から離して維持することが可能となるため有利である。
【0050】
以下で、図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。図面は特に好適な例示的実施形態を示すが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。図面及びそれに示す比率は、模式的なものにすぎない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1図1a~図1cは、本発明における、洋上風力発電所を組み立てる方法の3つの段階を示す。
図2a図1aにおける機構の部分側面図を示す。
図2b図2aに示している部分の平面図を示す。
図3a】別の状態にある、図1aにおける機構の部分側面図を示す。
図3b図3aに示している部分の平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1は、洋上建造物7としての洋上風力発電所を組み立てる方法を示す。図1aはステップa)を示し、ステップa)においては、中空のパイル8が海底13に固定され、これにより、パイル8の端部側9にある部品開口部3(図1bに示す)が、水線14よりも上となっている。パイル8は部品2である。部品開口部3はカバー4によって閉じられ、パイル8の内部空間6を換気するためのファン5が、カバー4に枢動可能に締結されている。パイル8の内部空間6は、カバー4によって保護されている。ステップa)の最後で、機構1は図1aに示された状態になる。機構1は、パイル8と、カバー4と、ファン5とを備える。
【0053】
図1bはステップb)を示しており、ステップb)においては、カバー4が取り外される。そのようにするために、カバー4は分割可能であり、その後廃棄することができる。
【0054】
図1cはステップc)を示しており、ステップc)においては、タワー構造物が建設構造物15としてパイル8に設置される。これにより、機構1は洋上建造物7になる。以前から存在している部品開口部3は、タワー構造物によって長期にわたって閉じられる。パイル8は、洋上建造物7用の基礎構造物であり、海底13に固定されるものである。
【0055】
図2aは、図1aの部分拡大図を示す。パイル8は、部品2として示されており、その端部側9は水線14よりも上に配置されている。パイル8は、端部側9に部品開口部3(図1b及び図2bに図示)を有し、この部品開口部3はカバー4によって閉じられる。カバー4は、防水布11でカバーされたロッド組立体12を有する。例として、1つの防水布部分のみが符号11で示されており、且つ、1つのロッドのみが符号12で示されている。ファン5は、部品開口部3の軸A上に配置されている。軸Aは、同時に、部品2の軸でもある。カバー4はリングプレート10を有する。リングプレート10の中央に、換気開口部17が設けられている。パイル8の内部空間6は、カバー4の換気開口部17を通して、ファン5によって換気することができる。これは、ファン5が図2aに示す動作位置にあることから可能となっている。
【0056】
図2bは、図2aに示している部分の平面図を示す。防水布11及びロッド組立体12を有するカバー4を見ることができる。ここでも、例として、1つの防水布部分のみが符号11で示されており、且つ、1つのロッドのみが符号12で示されている。換気開口部17が、リングプレート10の中央に設けられている。さらに、部品開口部3が示されている。これは、パイル8の端部側9全体に、すなわち、図2bにおいて符号3で示されている円全体に延在している。
【0057】
【0058】
図3bは、図2aに示している部分の平面図を示す。
【0059】
部品2の部品開口部3は、カバー4によって閉じることができ、これにより、部品2の内部空間6は、外部からの影響から保護される。部品2の内部空間6におけるかびの発生をファン5によって防止できる。部品2の内部空間6は、ファン5がカバー4に枢動可能に保持されていることにより、特に十分にアクセス可能となっている。
【符号の説明】
【0060】
1 機構
2 部品
3 部品開口部
4 カバー
5 ファン
6 内部空間
7 洋上建造物
8 パイル
9 端部側
10 リングプレート
11 防水布
12 ロッド組立体
13 海底
14 水線
15 建設構造物
16 ウィンチ装置
17 換気開口部
18 ザイル
19 フック
A 軸
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図3a
図3b
【手続補正書】
【提出日】2022-11-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機構(1)であって、
部品開口部(3)を有する中空部品(2)であって、
該部品(2)はパイル(8)であり、且つ、前記部品開口部(3)は該パイル(8)の端部側(9)に配置されている、中空部品(2)と、
カバー(4)であって、
これによって前記部品開口部(3)を閉じる、カバー(4)と、
ファン(5)であって、
前記カバー(4)における換気開口部(17)を介して前記部品(2)の内部空間(6)を換気するためのものであり、
前記カバー(4)に枢動可能に締結されている、ファン(5)と
を備える、
機構(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の機構(1)であって、
前記部品(1)は、洋上建造物(7)用の、海底(13)に固定される基礎構造物である、
機構(1)。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の機構(1)であって、
前記ファン(5)は、前記部品開口部(3)の軸(A)上の動作位置に配置されている、
機構(1)。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の機構(1)であって、
前記カバー(4)は、リングプレート(10)を有し、
前記ファン(5)は、前記リングプレート(10)上に保持されている、
機構(1)。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の機構(1)であって、
前記カバー(4)は、防水布(11)でカバーされたロッド組立体(12)を有する、
機構(1)。
【請求項6】
洋上建造物(7)を組み立てる方法であって、
a)中空のパイル(8)を海底(13)に固定するステップであって、
この固定により、
前記パイル(8)の端部側(9)にある部品開口部(3)は、水線(14)よりも上にあり、且つ、
前記部品開口部(3)は、カバー(4)によって閉じられており、且つ、
前記カバー(4)における換気開口部(17)を通して前記パイル(8)の内部空間(6)を換気するファン(5)が、前記カバー(4)に枢動可能に締結されるように、
固定することと、
b)前記カバー(4)を取り外すことと、
c)前記パイル(6)に、建設構造物(15)を設置することと
を含む、
方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、
前記カバー(4)は、前記ステップb)において分割され、その後廃棄される、
方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の方法であって、
前記ステップa)とb)との間において、前記パイル(8)の前記部品開口部(3)の縁部上において、前記カバー(4)の外側に、ウィンチ装置(16)が設置され、
前記ファン(5)は、動作位置から離れるように枢動するものであり、
これにより、前記パイル(8)の前記内部空間(6)には、前記カバー(4)の前記換気開口部(17)を通して、前記ウィンチ装置(16)がアクセス可能になる、
方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、
前記ウィンチ装置(16)は、前記ステップa)とb)との間において、ケーブルを引き込むために使用される、
方法。
【国際調査報告】