(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】フットウェアを選択するためのシステム
(51)【国際特許分類】
A43D 1/02 20060101AFI20240403BHJP
G06Q 30/0601 20230101ALI20240403BHJP
【FI】
A43D1/02
G06Q30/0601 322
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023556926
(86)(22)【出願日】2022-03-21
(85)【翻訳文提出日】2023-10-13
(86)【国際出願番号】 IB2022052524
(87)【国際公開番号】W WO2022200973
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】102021000007205
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523348737
【氏名又は名称】クイニ,エンリコ
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】クイニ,エンリコ
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050NA86
(57)【要約】
フットウェア製品を選択するためのシステム(100)では、基準となる足裏又は構造を得るために足裏の画像(Im)を撮像し、等化及び計算定数値を適用するために足の長さ(Lp)を測定し、12個の正方形(Q)を含む画像上にグリッド(Gr)を構築し、グリッドの12個の正方形の占有/非占有比率(R)を計算してその値をユーザテーブル(T)に格納し、足の長さ(Lp)及びデータベースのルックアップテーブル(7)におけるユーザテーブル(T)を使用して、ユーザの足に最も適したフットウェア製品のサイズ(S*)とフィット感(C*)を見つける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フットウェア製品を選択するためのシステム(100)であって、
-ユーザの足裏の画像(Im)を撮像するように好適に構成された撮像手段(1)と、
-踵の後端から母趾の前端までのユーザの足の長さ(Lp)を測定するように好適に構成された長さ測定手段(2)と、
-前記撮像手段(1)により撮像された前記足の画像(Im)上にグリッド(Gr)を構築するように好適に構成されたグリッド構築手段(3)であって、該グリッド(Gr)は、長方形の形状を有し、2行及び6列に配置された12個の同一の正方形(Q)を含み、6つの正方形は前記足裏の画像の縦軸(X)の上側に配置され、残りの6つの正方形は縦軸(X)の下側に配置され、前記グリッド(Gr)は、前記足裏の画像(Im)の踵の後端から始まり、前記足の長さ(Lp)に一定の値(k)を加えた全長に等しく、各正方形は、グリッドの全長(Lt)を6で割った長さ(La)に等しい辺を有する、ことを特徴とするグリッド構築手段(3)と、
-前記グリッド(Gr)の各正方形(Q)の占有/非占有比率(R)を計算するように好適に構成された占有/非占有比率計算手段(4)であって、該占有/非占有比率(R)は、前記足裏の画像に占有される正方形の占有面(Sp)の面積と、前記足裏の画像に占有されない正方形の非占有面(Sv)の面積との比である、ことを特徴とする占有/非占有比率計算手段(4)と、
-前記グリッド(Gr)の12個の正方形について、12個の占有/非占有比率(R)を含むユーザテーブル(T)を作成するように好適に構成されたテーブル作成手段(5)と、
-ルックアップテーブル(7)を含むデータベース(DB)であって、該ルックアップテーブル(7)が、
・複数のフットウェアサイズ(S1,・・・Sm)を含むサイズベクトル(Vs)と、
・各フットウェアサイズに応じた複数のフィット感(C1,・・・Cn)を含むフィット感ベクトル(Vc)と、
・各サイズ及び各フィット感に対応する、複数の参照テーブル(T11,Tnm)を含むテーブルマトリクス(M)であって、前記テーブルマトリクス(M)の各参照テーブルは、実験的な方法で作成されており、所与のフットウェアサイズ及び所与のフットウェアのフィット感に対応する12個の占有/非占有比率を含む、ことを特徴とするテーブルマトリクス(M)と、
を備えることを特徴とする、データベース(DB)と、
-前記長さ測定手段(1)によって測定された前記ユーザの足の長さ(Lp)を、前記ユーザの足の長さに対応するフットウェアサイズ(S*)に変換するように好適に構成された変換手段(6)と、
を備え、
前記変換手段(6)及び前記テーブル作成手段(5)は、前記データベース(DB)の前記ルックアップテーブル(7)を参照して、前記ルックアップテーブルの前記サイズベクトル(Vs)における前記ユーザのサイズを識別し、前記テーブル作成手段(5)によって作成された前記ユーザテーブル(T)に対して最も近い位置にある前記テーブルマトリクス(M)における前記参照テーブルを識別し、
前記ルックアップテーブル(7)は、前記ユーザの足の長さに対応する前記フットウェアサイズ(S*)と、前記サイズに対応し、前記ルックアップテーブルで識別される前記参照テーブルに対応するフィット感(C*)と、を出力するように構成される、
ことを特徴とする、システム(100)。
【請求項2】
前記データベース(DB)は、複数のルックアップテーブル(7)を含み、
各ルックアップテーブルは、フットウェアモデルに対応付けられ得るフィット感モデル及び足の構造を参照し、
前記システムは、ユーザがフットウェアモデルを選択することができるように好適に構成された、モデル選択手段(9)を備え、
前記モデル選択手段(9)は、ユーザが選択したフットウェアモデルに従って前記ルックアップテーブルを選択するため、前記データベース(DB)に接続されている、
ことを特徴とする、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項3】
フットウェア製品を選択するための方法であって、
-ユーザの足裏の画像(Im)を撮像する工程と、
-踵の後端から母趾の前端までのユーザの足の長さ(Lp)を測定する工程と、
-前記足の画像(Im)上にグリッド(Gr)を構築する工程であって、該グリッド(Gr)は、長方形の形状を有し、2行及び6列に配置された12個の同一の正方形(Q)を含み、6つの正方形は前記足裏の画像の縦軸(X)の上側に配置され、残りの6つの正方形は縦軸(X)の下側に配置され、前記グリッド(Gr)は、前記足裏の画像(Im)の踵の後端から始まり、前記足の長さ(Lp)に一定の値(k)を加えた全長に等しく、各正方形は、グリッドの全長(Lt)を6で割った長さ(La)に等しい辺を有する、ことを特徴とする工程と、
-前記グリッド(Gr)の各正方形(Q)の占有/非占有比率(R)を計算する工程であって、該占有/非占有比率(R)は、前記足裏の画像に占有される正方形の占有面(Sp)の面積と、前記足裏の画像に占有されない正方形の非占有面(Sv)の面積との比である、ことを特徴とする工程と、
-前記グリッド(Gr)の12個の正方形について、12個の占有/非占有比率(R)を含むユーザテーブル(T)を作成する工程と、
-ルックアップテーブル(7)を含むデータベース(DB)を作成する工程であって、該ルックアップテーブル(7)が、
・複数のフットウェアサイズ(S1,・・・Sm)を含むサイズベクトル(Vs)と、
・各フットウェアサイズに応じた複数のフィット感(C1,・・・Cn)を含むフィット感ベクトル(Vc)と、
・各サイズ及び各フィット感に対応する、複数の参照テーブル(T11,・・・Tnm)を含むテーブルマトリクス(M)であって、前記テーブルマトリクス(M)の各参照テーブルは、実験的な方法で作成されており、所与のフットウェアサイズ及び所与のフットウェアのフィット感に対応する12個の占有/非占有比率を含む、ことを特徴とするテーブルマトリクス(M)と、
を備えることを特徴とする、工程と、
-前記ユーザの足の長さ(Lp)を、前記ユーザの足の長さに対応するフットウェアサイズ(S*)に変換する工程と、
を備え、
前記ユーザの足の長さ(Lp)及び前記ルックアップテーブル(7)における前記ユーザテーブル(T)を使用して、前記ユーザの足の長さ(Lp)に対応する前記フットウェアサイズ(S*)と、前記サイズに対応し、前記ルックアップテーブル(7)で識別される前記参照テーブルに対応するフィット感(C*)と、を出力する、
ことを特徴とする、方法。
【請求項4】
前記データベース(DB)は、複数のルックアップテーブル(7)を含み、
各ルックアップテーブルは、フットウェアモデルを参照し、
モデル選択工程が含まれ、
ユーザによって選択された前記フットウェアモデルに従って、前記データベースの前記ルックアップテーブル(7)を選択するよう、ユーザは、フットウェアモデルを選択できる、
ことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フットウェア製品を選択するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、フットウェアのフィット感の測定において、足の解剖学的知識を用いることはない。実際、足のダイナミクス(様々な足の傾きにおいて、負荷がかかった足の構造学的変化)に関する科学的研究は存在するものの、フットウェアを着用した足に関連付けて、こうした研究が用いられることはない。
【0003】
現在、市場では、足の長さに基づいて、様々なサイズのフットウェア製品が提供されている。同じサイズであっても、デザイナーや靴の開発者によるファッショントレンドの解釈によって、様々なフィット感がある。実際、特定の季節において、幅広のスクエアトゥがトレンドとなっている場合、そのような形状を有する靴では、つま先の尖った靴よりも快適なフィット感が得られる。したがって、エンドユーザは、購入履歴のサイズと、その時々の流行のデザインにおけるサイズとの間に生じ得るフィット感の不一致により、履き心地に問題を抱える場合がある。さらに、フットウェアが生産される各地域又は国によって、そこでの解決策が採用されることにより、共通の基準が存在しないという事実によっても、一連の問題が大きくなり、混乱が生じている要因となっている。
【0004】
ドロップシッピングが世界的に広まったことにより、オンライン注文では対応できないケースが多くなり、業者負担で返品される靴の数は、指数関数的に増加している。こうして返品された靴は、包装も不十分で、見た目にも新品同様ではなくなるため、箱に再度梱包し、大幅に値引きする必要がある。これにより、過剰生産の悪循環に陥る。
【0005】
異なる国の間で、フィット感における変換に関する適切な情報が与えられず、間違った情報さえあるという現状、さらには、様々なフィット感(靴の構造)と市場で入手可能なフィット感との間に、明確な情報がないという現状があり、どのサイズを購入してよいか分からない、という混乱状態は悪化の一途をたどる。
【0006】
大多数のフットウェアメーカーは、1種類のフィット感のみを提供している場合が多い。複数種類を提供するメーカーは、フィット感を互いに区別するために、各数値サイズに文字を追加して表示している。ここに生じる不統一の多くは、製造レベルでの解釈の違いから生じるものであり、フィット感に関する実際の要件は関係ない。
【0007】
さらに、フットウェアのサイズは国によって異なる。上記を考慮して、ユーザは必要なサイズを理解するためにサイズ変換テーブルを見つける必要がある。これらの表には、誤差がある場合がある。例えば、cmでの計測とサイズとの関係や、一部のサイズが完全に欠けているために、一部の変換ができず、誤差が生まれてしまう。
【0008】
フィット感は、無数の変数(靴底の持続時間、環境、表面、足裏の傾きと前足部と地面との接触との関係、温度、湿度、循環、腫れ、発汗、摩擦、摩擦過熱、通気性、形態、トレーニング、習慣、栄養)の影響を受ける。そのような状況は、部品の分野における技術的進歩によって悪化する。実際、かつては靴屋が顧客の足を測定した後、カスタムメイドで靴を作っていた。今日では、靴は数値制御による機械によって一様に作られている。したがって、ユーザにとって、そのモデルの靴が快適にフィットするかどうかを知る唯一の方法は、店舗又は自宅(オンライン購入の場合)で、実際に試着してみることである。しかし、違和感が生じるには、フットウェアを長時間使用した後になってからである場合が多い。実際、最初、フィット感が良さそうに思われたフットウェアであっても、時間の経過とともに、そうではないと感じる場合も往々にしてある。
【0009】
特許文献1では、顧客に対してカスタムフットウェアを製造するシステム及び方法を開示している。カスタムフットウェアは、カスタムアッパー、カスタムインソール、カスタムソールで構成されている。
【0010】
このシステムは、一連のテーブルが格納される事前に構築されたデータベースで構成され、各テーブルは顧客が選択する靴のスタイルに対応する。各テーブルには、特定の足の構造学的特徴(長さ、前足部の幅、後足部の幅、甲の高さ、甲の外周など)を示すインデックスを持つ複数のベクトルが含まれている。このシステムは、足の3Dモデルを生成するための、顧客の足の3Dスキャン手段を備える。このシステムは、3Dモデルから特徴を抽出する特徴抽出手段を備え、さらに、顧客が選択したフットウェアスタイルテーブルを検索するように構成された自動処理及び検索手段を備える。これにより、足の3Dモデルから抽出された特徴に類似したインデックスを有する足ベクトルを見つけることがきる。したがって、カスタムフットウェアを実現するための該方法では、次の工程を実行する。
-複数のフットウェアスタイルテーブルを含むデータベースを構築する工程であって、各テーブルが、所与の足の構造学的特徴を示すインデックスを有する複数の足ベクトルを含む、ことを特徴とする工程。
-足の3Dモデルを得るために足を3Dでスキャンする工程。
-足の構造を示す足のモデルから特徴を抽出する工程。
-特徴を処理し、ユーザが選択したフットウェアスタイルテーブルから特徴に最も類似したインデックスを有する足ベクトルを選択する工程。
-選択した足ベクトルと3D足モデルの画像に従って、アッパー、ソール、インソールを作成する工程。
【0011】
特許文献1に記載されているシステムと方法は、3Dスキャンシステムと3Dモデルを作成するためのソフトウェアプログラムを必要とするため、やや複雑で高価である。さらに、非常に高度な演算レベルを有するプロセッサを使用する必要がある。さらに、システムはユーザの足を完全にスキャンするように設計されているため、顧客は物理的に店舗又は上記の3Dスキャンシステムを備えた工場に行く必要がある。したがって、スキャンシステムは非常に高価であり、すべてのユーザがアクセスできるわけではないため、顧客は自宅に快適に滞在しながら自分の足に最適な靴に関する情報を受け取ることができない。したがって、特許文献1で説明されているシステムは、ユーザが使用するのはかなり不便で複雑である。さらに、このようなシステムは、スキャンシステム全体を購入する必要があり、購入コストと保守及び管理コストがかかるため、店主や靴メーカーにとってはかなり不便である。
【0012】
特許文献2では、複数のアッセンブリ要素から構成される顧客のためのカスタム靴を提供する方法について、説明されている。靴の各要素は、同機能を有すると同時に、足のタイプ及び/又は靴を着用するユーザのタイプに基づいて、異なる構造及び異なる物理的属性を有する、要素グループから選択される。
【0013】
この方法は、測定可能な特徴(足の長さ、足の幅、足の構造、顧客の体重、顧客の身長など)及び/又は測定不可能な特徴(ユーザの年齢、ユーザの性別、通常ユーザによって実行される活動)による、足及び/又はユーザの識別を提供する。測定可能な特徴は、店舗責任者が手動で、又は特別な測定装置(スキャナー、ロードセルなど)を使用して取得できる。このような機能を取得した後、店舗責任者は自身の経験に基づいてカスタムフットウェアに最適な構成要素を選択するか、機能処理により、靴を製造するためにアッセンブリ構成要素のリストを出力するデバイスにインストールされた特別なソフトウェアを使用することができる。
【0014】
特許文献2に記載されている方法では、顧客は適切なフットウェアを見つけるために店に行く必要がある。したがって、そのような方法では、顧客にとってかなり不便である。さらに、この方法は、おびただしい量の情報及び特徴を得る必要があり、フットウェア要素の選択を非常に複雑なものにしている。さらに、足及び/又はユーザの情報及び特徴の量も多く、この方法では信頼性及び正確性に問題が生じる。
【0015】
特許文献3では、足の少なくとも1つの特性を決定するための装置及び方法が記載され、その主な目的は、フットケア製品(インソール、パッドなど)を選択又は推奨することにある。この装置は、足が置かれるべき支持面と、足によって加えられる圧力に対する圧力データを検出する、表面下の複数の圧力センサと、を備える分析装置を備える。本装置はさらに、データを処理して、足をデータベースに格納された足のタイプに分類し、足を治療するのに適した製品を選択することができるソフトウェアプログラムを備える。足の治療に適した製品は、様々なフットケア製品を足のタイプに関連付けるソフトウェアプログラムに基づいて選択される。この場合も、自分の足を分析するためには、必ずシステム、特に圧力センサを備えた分析装置を備えた、病院や足病治療クリニックに行かなければならない。さらに、このシステムの目的は、フットケア製品や装具を推奨することであり、足に適した靴を推奨することではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開第2008/070537号
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/043582号明細書
【特許文献3】国際公開第2008/036398号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、フットウェアを購入する者にとっても、また、フットウェアを製造及び販売する業界チェーン全体にとっても、信頼性が高く理解しやすい、フットウェア製品を選択するためのシステムを提供することであり、これにより、従来技術の欠点を排除することである。
【0018】
もう一つの目的は、特別なスキルを持たないユーザでもシンプルで使いやすいフットウェアを選択するためのシステムを提供することである。
【0019】
別の目的は、注文時のエラーを減らし、現在の市場に存在する不一致を回避しながら、選択の均一性を確保できる、フットウェア製品を選択するためのシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
これらの目的は、添付の独立請求項の特徴を有する本発明に従って達成される。
【0021】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項により明らかにされる。
【0022】
本発明に係るフットウェア製品を選択するためのシステムは、独立した請求項1によって定義される。
【0023】
本発明に係るフットウェア製品を選択するための方法は、独立した請求項3によって規定される。
【0024】
独立した請求項1及び3にそれぞれ記載されている本発明に係るシステム及び方法の利点は明らかである。
【0025】
本出願者が考案したシステム及び方法は、入力データとして足の2D画像と足の長さのみを必要とする。2D画像は足裏の写真を撮るだけで取得できるが、足の長さは定規や目盛り付きの紙で測定できる。したがって、ユーザは快適に自宅にいる間にそのような情報を簡単に取得し、該情報をオンラインでオペレーションセンターに送信し、オペレーションセンターは該情報(画像と長さ)を処理して、顧客及び/又は靴ベンダーに送信されるフィット感とサイズの情報を取得して、顧客に最も適した靴の種類を特定する。
【0026】
加えて、本発明に係るシステム及び方法は、先行技術の文献に記載されたシステムよりもはるかに単純かつ迅速な方法でフィット感及びサイズ情報を得ることを可能にする。実際、本発明に係るシステムは、足の画像上に12個の正方形を有するグリッドを構築し、各正方形の占有/非占有率を計算し、12個の占有/非占有率の値を有するユーザテーブルを作成し、足の長さをサイズに変換し、最後に実験的に予め構築されたルックアップテーブルにおいて、足の長さ及びユーザテーブルを使用して、フィット感及びサイズを得ることのみを提供する。
【発明の効果】
【0027】
効率的で正確な選択システムを得るために実施された、多くの複雑な実験的研究の結果により、12個の正方形及び正方形の占有/非占有率を使用して、靴のフィット感を定義することができるようにになった。また、この方法は、先行技術の現行システムよりも簡単に実装できるよう、設計された。
【0028】
したがって、本発明は、複雑な3Dスキャンシステムやセンサを使用することなく、顧客のニーズと靴の小売業者やサプライヤーのニーズの両方を完全に満たす。実際、顧客は、店舗や専用の施設で実施される、時間のかかる複雑な測定を受けることなく、自分の足に最適な靴に関する情報を得ることができる。
【0029】
代わりに、店主や靴の生産者は、足を測定及び分析するための、複雑で高価なシステムを使用する必要がなく、顧客に適した靴を供給又は製造するための、理解しやすい正確な情報を受け取る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明のさらなる特徴は、以下の詳細な説明により、明らかとなる。以下の説明では、添付の図面に例示される、例示的かつ非限定的な実施形態を参照する。図面は、以下の通りである。
【
図1】
図1は、本発明に係るフットウェア製品を選択するためのシステムのブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明に係るシステムの撮像手段によって撮影された足裏の画像の図である。
【
図3】
図3は、
図2の足裏の画像上に構築されたグリッドの図である。
【
図4】
図4は、グリッドの正方形を示す
図3の詳細であり、正方形の占有/非占有比率が示されている。
【
図5】
図5は、本発明に係るシステムのルックアップテーブルを示す概略図である。
【
図6】
図6は、3個のマクロ領域と12個の詳細領域に分割された、理想的かつ標準的な足裏の画像の図である。
【
図7】
図7は、
図6の画像上のグリッド構築を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図面を参照しながら、本発明に係るフットウェア製品を選択するためのシステムを説明する。全体を通して、参照符号100により、システムを示す。
【0032】
以下、「足」という用語は、ユーザの右足を示すが、システムは、ユーザの左足に対しても機能することは、理解されるであろう。
【0033】
図1を参照すると、システム(100)は、
-ユーザの足裏の画像(Im)を撮像するように好適に構成された撮像手段(1)と、
-踵の後端から母趾の前端までのユーザの足の長さ(Lp)を測定するように好適に構成された長さ測定手段(2)と、
を備える。
【0034】
撮像手段(1)は、カメラ、スキャナ、又は他の種類の光学検出器であってもよい。
【0035】
測長手段(2)は、画像(Im)から足の長さ(Lp)を検出する計器や測定センサやソフトウェアプログラムであってもよい。
【0036】
例として、ユーザは目盛り付きの紙の上で自分の足の写真を撮ることができ、足裏の画像(Im)と足の長さ(Lp)を同時に取得できる。
【0037】
図2は、踵の後端から母趾の前端までを測定した足裏の画像(Im)と足の長さ(Lp)を示している。
【0038】
システム(100)は、撮像手段(1)により撮像された足の画像(Im)上にグリッド(Gr)を構築するように好適に構成されたグリッド構築手段(3)を備える。
【0039】
図3を参照すると、グリッド(Gr)は、長方形の形状を有し、2行及び6列に配置された12個の同一の正方形(Q)で構成されている。足裏の画像(Im)の縦軸(X)を考慮すると、6つの正方形は足裏の画像の縦軸の上側に配置され、残りの6つの正方形は縦軸の下側に配置される。
【0040】
グリッド(Gr)は、足裏の画像(Im)の踵の後端から始まり、足の長さ(Lp)に一定の値(k)を加えた全長に等しい。この値(k)は、サイズと、次のサイズの間の許容誤差を考慮したものである。
【0041】
したがって、各正方形は、グリッドの全長(Lt)を6で割った長さ(La)に等しい辺を有する。
La=(Lp+k)/6
【0042】
例として、足Lpの長さがヨーロッパサイズの38.5に対応する場合、定数値(k)は5~10mmの範囲、例えばk=7~8mmで選択される。
【0043】
占有/非占有比率計算手段(4)は、グリッド(Gr)の各正方形(Q)の占有/非占有比率(R)を計算する。
【0044】
図4を参照すると、占有/非占有比率は、足裏の画像に占有される正方形の占有面(Sp)の面積と、足裏の画像に占有されない正方形の非占有面(Sv)の面積との比(R)である。
R=Sp/Sv
占有面(Sp)の面積は、BLOB(バイナリラージオブジェクト)手法を使用して計算できる。
【0045】
足裏の画像(Im)は、明るい背景に対して暗く、グリッド内の各正方形(Q)は、白黒などの2色のバイナリ画像に変換される。次に、非占有面(Sv)よりも暗い占有面(Sp)が識別される。占有面(Sp)は、通常の面に近似され、その面積は既知のタイプのバウンディングボックス手法を使用して計算できる。あるいは、占有面(Sp)と非占有面(Sv)の間の境界プロファイルを曲線に近似し、曲線の積分を使用して占有面(Sp)の面積を計算する。
【0046】
占有面(Sp)の面積が計算されると、正方形の面積から減算することによって非占有面(Sv)の面積が計算される。
【0047】
テーブル作成手段(5)は、グリッド(Gr)の12個の正方形の、12個の占有/非占有比率の値(R)を含むユーザテーブル(T)を作成する。
【0048】
システム(100)は、ルックアップテーブル(7)を含むデータベース(DB)を備える。
【0049】
図5を参照すると、ルックアップテーブル(7)は、
・複数のフットウェアサイズ(S1,・・・Sm)を含むサイズベクトル(Vs)と、
・各フットウェアサイズに応じた複数のフィット感(C1,・・・Cn)を含むフィット感ベクトル(Vc)と、
・各サイズ及び各フィット感に対応する、複数の参照テーブル(T11,・・・Tnm)を含むテーブルマトリクス(M)と、
を含む。
【0050】
テーブルマトリクス(M)の各参照テーブルは、実験的な方法で作成されており、所与のフットウェアサイズ及び所与のフットウェアのフィット感に対応する12個の占有/非占有比率を含む。
【0051】
例えば、靴のサイズが30種類あり、サイズごとに10種類のフィット感がある場合、テーブルマトリクス(M)には300個の参照テーブルが含まれる。
【0052】
本発明に係るシステムにより、フットウェアモデルのサイズ及びフィット感に基づいて、多くの参照テーブルを実装することができる。
【0053】
データベース(DB)は、複数のフットウェアモデルに基づく複数のルックアップテーブル(7)を備えてもよい。そのような場合、システムはモデル選択手段(9)を備える。モデル選択手段(9)は、要求されたモデルに対してルックアップテーブルにアクセスするために、ユーザによって選択されたフットウェアモデルを選択する。
【0054】
変換手段(6)は、ユーザの足の長さ(Lp)を、該長さに対応するフットウェアサイズ(S*)に変換する。変換手段(6)は、データベース(DB)のルックアップテーブル(7)を参照して、ルックアップテーブルのサイズベクトル(Vs)におけるユーザのサイズを特定する。
【0055】
テーブル作成手段(5)は、データベース(DB)のルックアップテーブル(7)を参照して、テーブル作成手段(5)によって作成されたユーザテーブル(T)に最も近いテーブルマトリクス(M)内の参照テーブルを特定する。サイズと参照テーブルに基づいて、ルックアップテーブル(7)は、サイズと参照テーブルに対応するフィット感(C*)を出力する。
【0056】
フットウェア選択とは、(8)ユーザの足に最も適したフットウェアが特定できるように、データベース(DB)からサイズ(S*)及びフィット感(C*)を受け取ることを意味する。
【0057】
以下に、グリッド(Gr)を構築するために発明者によって行われた研究について説明する
【0058】
便宜上、
図6を参照して、発明者は、踵の後端から母趾の前端までの長さLp=24cmを有する、ヨーロッパサイズ38.5(サイズ34とサイズ43の中間サイズ)の、理想的かつ標準的な足を検討した。
【0059】
このような標準的な足には、
-縦軸(X)と、
-縦軸(X)に対して90°を超える角度(α)だけ傾いた第1の直線(r1)で識別されるショパール関節と、
-縦軸(X)に対して90°より小さい角度(β)だけ傾いた第2の直線(r2)によって識別されるリスフラン関節と、
が含まれるものとする。
【0060】
このようにして、足は、踵骨から後足部(R1)、中足部(R2)、及び前足部(R3)の3つのマクロ領域に分けることができる。
【0061】
後足部(R1)は、踵の後端に接する原線(r0)からショパール関節に対応する第1の直線(r1)まで伸びている。原線(r0)は、縦軸(X)に直交している。
【0062】
中足部(R2)は、ショパール関節に対応する第1の直線(r1)からリスフラン関節に対応する2番目の直線(r2)まで伸びている。
【0063】
前足部(R3)は、リスフラン関節に対応する2番目の直線(r2)から、母趾の前端を通る3番目の直線(r3)まで伸びている。3番目の直線(r3)は、縦軸(X)に直交している。
【0064】
各マクロ領域(R1、R2、R3)は、縦軸(X)及びそれぞれの横軸(t1、t2、t3)に関して4つの詳細領域に分割できる。
【0065】
後足部(R1)は、踵内側部(A)、踵外側部(B)、内側アーチ始点(C)、及び外側アーチ始点(D)の詳細領域で構成されている。
【0066】
中足部(R2)は、内側中央アーチ(E)、外側中央アーチ(F)、内側アーチ終端(G)、及び外側アーチ終端(H)の詳細領域で構成されている。
【0067】
前足部(R3)は、内側横アーチ(I)、外側横アーチ(L)、第1中足部骨端(M)、第2及び第3中足部骨端(N)の詳細領域で構成されている。
【0068】
詳細領域は足ごとに異なり、フィット感のタイプに大きく影響する。したがって、本発明の目的は、足のそのような詳細領域を測定するためのシステムを見出すことであった。
【0069】
サイズ38.5(34から43の中間サイズ)の理想的かつ標準的な足の場合、後足部(R1)の長さはL1=8.19cm、中足部(R2)の長さはL2=8.59cm、前足部(R3)の長さはL3=7.22cmである。これらの長さは、縦軸(X)で測定される。結果はLp=L1+L2+L3=24cmとなる。
【0070】
理想的かつ標準的な足のこうした測定を開始するにあたり、グリッド(Gr)の構築において、発明者は、12個の等しい正方形から成るグリッドを取得するために、調整を行った。数学的には、このグリッドは、サイズの変化を規則的かつ一定の方法で決定できる(正方形の1辺の長さLaが0.55mm増減するごとにサイズが半分ずつ変化する)。各場合において、12個の等しい正方形により、足の12の詳細領域がカバーされる。
【0071】
後足部のL1の長さに一定値d1=2mmを加算した(つまり、ショパール関節の第1の直線(r1)を縦軸(X)から前方にシフトした)。
【0072】
一定値d2=2mmを中足部のL2長さから差し引いた(すなわち、リスフラン関節の第2直線(r2)を縦軸(X)から後方にシフトした)。
【0073】
一定値k=7.8mmを前足部の長さL3に加算した。
【0074】
したがって、足の3個のマクロ領域は、同じ長さ、すなわち、80mmの長さを有する。
【0075】
グリッドの構築において、前足部と中足部とを隔てる第1の直線r1と、中足部と前足部とを隔てる第2の直線r2は、縦軸(X)に直交していると考えられる。
【0076】
上記を考慮して、
図7を参照すると、12個の同一の正方形(Qa、Qb、Qc、Qd、Qe、Qf、Qg、Qh、Qi、Ql、Qm、Qn)からなるグリッド(Gr)を構築し、各正方形は、足のそれぞれの詳細領域(A、B、C、D、E、F、G、H、I、L、M、N)を含む。
【0077】
異なるタイプの足で行われた実験的研究の結果として、発明者は、足の12の領域の占有/非占有比率の変動が、フットウェアのフィット感に影響を与えることを確認した。
【0078】
したがって、発明者は、モデル、フットウェアのサイズ及びフィット感と相関する12の占有/非占有比率を含む複数のテーブルを含むデータベースを作成した。
【0079】
したがって、フットウェアモデルを選択した後、ユーザがしなければならないのは、足裏と足の長さの画像を提供することだけである。この情報から、システム(100)は、データベースのテーブルと比較される12の占有/非占有比率のテーブルを構築し、ユーザの足に最も適した靴のサイズ及びフィット感を示す。
【0080】
本発明の本実施形態に対して、同等の変形及び修正は、当業者の範囲内でなされ得るが、そうした変形及び修正もまた、添付の特許請求の範囲によって表現される本発明の範囲に含まれるとみなされる。
【国際調査報告】