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▶ アグフア−ゲヴエルト,ナームローゼ・フエンノートシヤツプの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】ポリ(アミノ酸)系カプセル
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/34 20170101AFI20240403BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 9/58 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240403BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 8/11 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 8/88 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20240403BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20240403BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20240403BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20240403BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20240403BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20240403BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20240403BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20240403BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240403BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20240403BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20240403BHJP
   A61Q 1/06 20060101ALI20240403BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20240403BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20240403BHJP
   B01J 13/16 20060101ALI20240403BHJP
   C08G 69/10 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
A61K47/34
A61K9/48
A61K9/58
A61K47/18
A61K47/22
A61K8/11
A61K8/88
A61K8/41
A61Q5/02
A61Q5/12
A61Q5/06
A61Q5/00
A61Q1/14
A61Q11/00
A61Q19/10
A61Q19/00
A61Q17/04
A61Q1/12
A61Q1/06
A61Q1/10
A61Q15/00
B01J13/16
C08G69/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023556967
(86)(22)【出願日】2022-03-14
(85)【翻訳文提出日】2023-09-15
(86)【国際出願番号】 EP2022056500
(87)【国際公開番号】W WO2022194759
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】21163396.1
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】593194476
【氏名又は名称】アグフア-ゲヴエルト,ナームローゼ・フエンノートシヤツプ
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロキュフィエ,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】ロウウェット,ジョス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4G005
4J001
【Fターム(参考)】
4C076AA53
4C076AA62
4C076AA64
4C076CC06
4C076CC27
4C076DD01
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4C076EE47
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4C076GG08
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4C076GG41
4C083AC521
4C083AC522
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4C083CC14
4C083CC17
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4C083CC38
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4C083EE12
4C083EE13
4C083EE17
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4C083FF05
4G005AA01
4G005AB14
4G005BA02
4G005BB03
4G005BB30
4G005DB05X
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4J001DA01
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4J001EE67A
4J001JA17
4J001JA18
4J001JA20
4J001JB12
4J001JB21
4J001JB31
4J001JB50
(57)【要約】
コアを取り囲むポリマーシェルからなるカプセルであって、コアは、有機化合物を含み、ポリマーシェルは、ポリ(アミノ酸)を含み、及び一般構造(I)に従うN-カルボキシ-無水物単量体の界面重合により得ることができる、カプセル。有機化合物は、水産油、植物油、精油、香料、香味料、防虫剤、難燃剤、活性医薬成分、又は農薬である。
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアを取り囲むポリマーシェルからなるカプセルであって、前記コアは、有機化合物を含み、前記ポリマーシェルは、ポリ(アミノ酸)を含み、及び一般構造Iに従うN-カルボキシ-無水物単量体の界面重合により得ることができ、
【化1】
式中、
nは、0又は1を表し
、R、及びRは、水素、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルケニル基、置換又は無置換のアルキニル基、置換又は無置換のアラルキル基、置換又は無置換のアルカリール基、及び置換又は無置換のアリール若しくはヘテロアリール基からなる群より選択され、
、R、及びRは、五員~八員環を形成するのに必要な原子を表す、
前記カプセル。
【請求項2】
前記有機化合物は、logKowとして表して0.3以上のオクタノール水分配係数を有する、請求項1に記載のカプセル。
【請求項3】
前記有機化合物は、水産油、植物油、精油、香料、香味料、防虫剤、難燃剤、活性医薬成分、及び農薬からなる群より選択される、先行請求項のいずれか1項に記載のカプセル。
【請求項4】
更に、平均粒径が0.07μm~5μmである、先行請求項のいずれか1項に記載のカプセル。
【請求項5】
前記ポリマーシェルは、架橋剤を含む、先行請求項のいずれか1項に記載のカプセル。
【請求項6】
前記ポリマーシェルは、カルボン酸又はその塩、スルホン酸又はその塩、リン酸エステル又はその塩、ホスホン酸又はその塩、プロトン化アミン、プロトン化窒素含有ヘテロ芳香族化合物、第四級化第三級アミン、N第四級化複素芳香族基、スルホニウム、及びホスホニウムからなる群より選択される分散基を含む、先行請求項のいずれか1項に記載のカプセル。
【請求項7】
前記ポリ(アミノ酸)は、L-アミノ酸及びD-アミノ酸を含む、先行請求項のいずれか1項に記載のカプセル。
【請求項8】
前記有機化合物は、抗癌剤、ワクチン、ペプチド、タンパク質、及び音増感剤(sonosensitizer)からなる群より選択される、請求項3に記載のカプセル。
【請求項9】
請求項8に記載のカプセルと、及び薬学的キャリア又は賦形剤と、を含む、医薬組成物。
【請求項10】
請求項1から7に定義されるとおりのカプセルを含む消費者製品であって、シャンプー、ヘアコンディショナー、ヘアリンス、ヘアリフレッシャー、ヘア固定剤若しくはスタイリング助剤、ヘアブリーチ、ヘアダイ若しくは着色料、石鹸、ボディウォッシュ、化粧品、万能クリーナー、浴室クリーナー、床用クリーナー、窓用クリーナー、トイレットペーパー、ペーパータオル、使い捨てワイプ、おむつかぶれクリーム若しくはバーム、ベビーパウダー、おむつ、胸当て、ベビーワイプ、口腔ケア製品、練り歯磨き、含嗽液、歯の漂白剤、義歯接着剤、チューインガム、ブレスフレッシュナー、口腔溶解性ストリップ、チュアブルキャンディ、ハードキャンディ、手指消毒液、抗炎症バーム、抗炎症軟膏、抗炎症スプレー、ヘルスケア器具、デンタルフロス、歯ブラシ、タンポン、女性用ナプキン、パーソナルケア製品、日焼け止めローション、日焼け止めスプレー、ワックス系デオドラント、グリコール型デオドラント、石鹸型デオドラント、フェイシャルローション、ボディローション、ハンドローション、ボディパウダー、髭剃り用クリーム、入浴剤(bath soak)、角質除去スクラブ、フットクリーム、化粧紙、クレンジングワイプ、布帛ケア製品、布帛ソフトナー、布帛リフレッシャー、アイロン水、液体洗濯洗剤、液体食器洗剤、自動食洗機用洗剤、単位用量錠剤若しくはカプセル剤、香り付け剤(scent
booster)、ドライヤーシート、高級香料、固形香料、粉末ファンデーション、液体ファンデーション、アイシャドー、口紅若しくはリップバーム、オーデトワレ製品、消臭剤、絨毯用消臭剤、蝋燭、室内用消臭剤、消毒液、制汗剤、ロールオン製品、及びエーロゾル製品からなる群より選択される、前記消費者製品。
【請求項11】
請求項1から8のいずれか1項に定義されるとおりのカプセルの調製法であって、以下の工程:
a)一般構造1に従うN-カルボキシ-無水物単量体と、及び有機化合物とを、水非混和性溶媒に溶解させる工程と、及び
b)重合開始剤を水性液体に溶解させる工程と、及び
c)工程(a)で得られた前記溶液を、前記水性液体に乳化させる工程と、及び
d)任意選択で、前記水非混和性溶媒を蒸発させる工程と、及び
e)一般構造1に従う前記N-カルボキシ-無水物単量体を重合する工程と、
を含む、前記方法。
【請求項12】
前記有機化合物は、オクタノール水分配係数が、logKowで表して、0.3以上である、請求項11に記載のカプセルの調製法。
【請求項13】
前記水性液体に、界面活性剤又は親水性ポリマーを加える、請求項11から請求項12に記載のカプセルの調製法。
【請求項14】
工程(a)において前記水非混和性溶媒に、架橋剤を加える、請求項11から13に記載のカプセルの調製法。
【請求項15】
前記重合開始剤は、二官能性又は多官能性の第一級又は第二級アミンである、請求項11から14に記載のカプセルの調製法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、ポリ(アミノ酸)系カプセルを提供することである。本発明の更なる目的は、ポリ(アミノ酸)系カプセルを調製する合成法を提供することである。
【背景技術】
【0002】
ポリマーの生分解性は、全ての用途において、特にポリマーが最終的に環境に到達するリスクを保有する用途において、高まり続ける需要となっている。そのため、ますます多くのバイオ系アプローチが、さまざまな技術分野に出現してきている。カプセル化は、水性製剤において加水分解に敏感な化合物を保護するため及び単一流体製剤において反応物を分離するため、さまざまな化学物質、例えば、生体活性製品又は香料を制御放出するのに非常に有望な技術である。とりわけ、生命科学、農薬、及び化粧品が、カプセル化の主要な応用分野であり、これらの分野では、カプセル化された化学物質が環境に放出されること又は生物学的環境と接触することが不可避である。そのため、生分解性及び生体適合性は、これらの用途の全てにおいて、絶対条件となる。
【0003】
ナノカプセル及びマイクロカプセルは、化学的方法及び物理的方法の両方を用いて調製することができる。カプセル化の方法として、複合コアセルベーション法、リポソーム形成法、スプレードライ法、並びに沈澱及び重合法が挙げられる。工学的用途の場合、界面重合が特に好適な技術である。この技術については、非特許文献1及び非特許文献2による総説がある。
【0004】
重合法は、カプセルの設計において最も高い制御が可能になるため、特に好適である。より好ましくは、界面重合、最も好ましくは界面重縮合が、工業的用途のためのカプセルの調製に使用される。界面重合では、重合は、水中油乳濁液中の油滴の界面で、又は油中水乳濁液中の水滴の界面で、起こる。界面重縮合では、2種の反応体は、乳濁液滴の界面で遭遇して、迅速に反応する。
【0005】
一般に、界面重合は、水性の連続相に親油性相が分散していること、又はその逆が要求される。古典的に、各相は、少なくとも1種の溶解した単量体(第一シェル成分)を含有し、この単量体は、他方の相に溶解した別種の単量体(第二シェル成分)と反応することができる。重合に際して、水性相及び親油性相のどちらにも不溶性であるポリマーが形成される。結果として、形成されたポリマーは、親油性と水相の界面で沈澱する傾向を有し、これにより、分散相の周囲にシェルを形成し、これが、更なる重合により成長する。
【0006】
先行技術で知られる界面重合技術は、石油系合成単量体の重合に依存することが多く、このため、シェル化学物質が、典型的には、ポリアミド、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、又はそれらの組み合わせから選択されることになる。アルデヒドと他の単量体、例えば、メラミン又は尿素等との重縮合物もまた、文献に十分に報告されている。しかしながら、一般に、このシェル化学物質は全て、ほとんど又は全く分解しないポリマーを招く。
【0007】
ポリ(アミノ酸)は、生体適合性かつ生分解性のポリマーのよく知られたクラスであり、生体適合性マイクロカプセル及びナノカプセル設計に好適なシェルポリマーのクラスであると思われる。しかしながら、上記のとおりの古典的界面重縮合は、ポリ(アミノ酸)系カプセルを調製する調製法として適してしない。
【0008】
ポリ(アミノ酸)は、不均一水溶媒系中でのN-カルボキシ-無水物単量体(NCA)
の重合により調製することができる。非特許文献3は、不均一水溶媒系中でNCAをグラフト重合させる開始剤としてアシル化キトサンを出発物質に用いる、糖ペプチド微粒子の調製を記載した。開示される微粒子は、アミノ酸としてL-ロイシンを用いて調製された。粒子は、粒径が、数十ミクロンから最大で数百ミクロンであり、特定のコア材料を含有していなかった。
【0009】
Jacobsらは、不均一水溶媒系中でNCAを用いるミニ乳化重合を開示した(非特許文献4)。粒径は、200nmの範囲にあった。しかしながら、粒子は、コア材料を含有していなかった。粒子の二次構造化による粒子変形が観察された。
【0010】
多くのアプローチにおいて、ポリ(アミノ酸)ブロックを含有する両親媒性ブロックコポリマーを、別に調製し、集合させてミセル様カプセルにするか、コアセルベーション型のアプローチを用いてカプセルに移す。両親媒性ブロックコポリマーの自己集合によるミセル化は、コア材料を保持する(hold up)ことが可能である。ミセル系カプセルは、ポリマーシェルを持つカプセルよりもはるかに弱いシェルであるという弱点がある。そのため、多くの系において、ミセル系のシェルの架橋が必要とされる。
【0011】
特許文献1は、両親媒性ポリアミノ酸ブロックコポリマーの空洞形成を介した微粒子生成を開示する。安定微粒子は、ブロックコポリマーのある特定の疎水性親水性均衡についてのみ達成可能であり、したがって、適切なアミノ酸ポリマーの数が相当制限される。
【0012】
文献、例えば、非特許文献5において、異なるブロックコポリマー系ミセルが、カプセル化技術として報告されている。しかしながら、このアプローチは、両親媒性ブロックコポリマーの分離合成の第一工程を必要とし、この工程は、完全に制御されていること、及びカプセル化される必要がある化合物又は官能基に向けて調整されることが必要である。第二工程では、ミセルが、液体媒体中に形成される。このプロセスは、カプセル化される異なる官能基ごとに繰り返さなければならない。ミセルアプローチは、その性質により、異なるプロセス条件(水性媒体のpH、イオン強度等)に対して脆弱であり、産業化の自由度が制限される。
【0013】
ミセル様カプセルは、大抵、その球体構造を維持するために、例えば、ミセル内部にコア材料を保持するため等で、液体媒体を必要とする。したがって、乾燥状態でミセルを単離することは、非常に困難であるか、不可能である。ミセル様カプセルは、界面重合により得られるカプセルとは対照的に、得ることが可能な粒径の範囲が限られており、より詳細にはより小さい粒径範囲に限られている。そのうえさらに、両親媒性ブロックコポリマーによるアプローチは、ポリマー構造の良好な制御を可能にするものの、明確に定義されたポリマーの調製に徹底的な合成手順を必要とし、このため、これらのアプローチは、界面重合に基づく技術とは対照的に技術的用途にそれほど適してないものになっている。
【0014】
他のカプセル化技術、例えば、複合コアセルベーション等は、操作プロセスの枠の徹底管理を必要とするが、この枠は非常に狭いことが多く、このため、産業規模ではこの技術の柔軟性が制限される。
【0015】
したがって、多種多様な粒径を有し、機械的に強いシェルを有し、乾燥状態で単離することができ、及び一工程プロセスで得ることが可能な、ポリ(アミノ酸)系カプセルを設計するカプセル化アプローチが、依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】WO96/40279
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Zhang Y. and Rochefort D., Journal of Microencapsulation, 29(7), 636-649 (2012)
【非特許文献2】Salauen F., Encapsulation Nanotechnologies, Vikas Mittal (ed.), chapter 5, 137-173 (Scrivener Publishing LLC (2013))
【非特許文献3】Wang et al., Journal of Biomedical Research Part B : Applied Biomaterials, 89B(1), 45-54 (2009)
【非特許文献4】Jacobs et al., J. Am. Soc., 141, 12522-12526 (2019)
【非特許文献5】ianxun Ding, Nanotechnology 22 (2011) 494012
【発明の概要】
【0018】
今回、一般構造Iに従う単量体の界面開環重合により得られるポリ(アミノ酸)系コアシェル構造が、本発明の目的を実現することができることが見出された。
【0019】
本発明は、請求項1に定義されるとおりの、コアを取り囲むポリ(アミノ酸)に基づくポリマーシェルからなるカプセルを含む。
【0020】
別の態様に従って、本発明は、請求項1に記載のカプセルを調製する方法を含む。この方法は、請求項11に定義される。
【0021】
本発明の他の特長、要素、工程、特徴、及び利点は、本発明の好適な実施形態についての以下の詳細な説明からより明らかとなる。本発明の具体的実施形態は、従属項においても定義される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
A.カプセル
本発明の目的は、コアシェル構造により実現され、当該コアは、有機化合物を含み、当該シェルは、オリゴ又はポリ(アミノ酸)を含み、オリゴ又はポリ(アミノ酸)は、一般構造1に従う少なくとも1種のN-カルボキシ-無水物単量体のオリゴマー化又は重合により得られ
【化1】
式中
nは、0又は1を表し
、R、及びRは、水素、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルケ
ニル基、置換又は無置換のアルキニル基、置換又は無置換のアラルキル基、置換又は無置換のアルカリール基、及び置換又は無置換のアリール若しくはヘテロアリール基からなる群より選択され
、R、及びRのうちいずれかは、五員~八員環を形成するのに必要な原子を表すことができる。
【0023】
好ましくは、有機化合物は、実質的に低揮発性の化合物である。実質的に低揮発性とは1013mPasで少なくとも150℃の沸点を有すると定義される。
【0024】
より好ましくは、有機化合物は、疎水性化合物である。これは、オクタノール水分配係数が、logKowで表して、少なくとも0.3であることを意味する。どのような理論にも固執するわけではないが、親油性滴中の疎水性化合物は、界面重合中、形成される親水性特徴を有するポリ(アミノ酸)鎖を滴の外側に維持して、強力かつ高密度の球体ポリマーシェルをもたらすと考えられる。
【0025】
本発明のカプセルの粒径は、好ましくは0.05μm~10μm、より好ましくは0.07μm~5μm、最も好ましくは0.1μm~3μmである。粒径が1μm未満である本発明によるカプセルが、特に好適である。
【0026】
A.1.N-カルボキシ-無水物単量体
好適な実施形態において、nは、0を表す。特に好適な実施形態において、Rは、水素又はアルキル基を表し、水素が最も好適である。
【0027】
別の好適な実施形態において、R及びRは、水素、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基、置換又は無置換のアルカリール基、及び置換又は無置換のアリール基からなる群より選択される。
【0028】
更に好適な実施形態において、一般構造に従うN-カルボキシ-無水物単量体は、グリシン誘導体、アラニン誘導体、ロイシン誘導体、フェニルアラニン誘導体、フェニルグリシン誘導体、バリン誘導体、グルタミン酸誘導体、アスパラギン酸誘導体、リシン誘導体、オルニチン誘導体、ヒスチジン誘導体、メチオニン誘導体、システイン誘導体、アルギニン誘導体、トリプトファン誘導体、システイン誘導体、イソロイシン誘導体、チロシン誘導体、プロリン誘導体、及びセリン誘導体からなる群より選択される。D-及びL-アミノ酸誘導体両方及びそれらの混合物を使用することができる。
【0029】
典型的なN-カルボキシ-無水物単量体を、表1に提示するが、それらに限定されない。
【表1-1】
【表1-2】
【0030】
N-カルボキシ-無水物(NCA)は、さまざまな合成法を用いて調製されてきており、その始まりとなる最古の方法は、Leuchs法として知られるもので、アミノ酸のクロロギ酸アシル化から出発して、続いてその酸クロリドを介して対応するNCAへと変換する。この方法の複数の変法が、Wessely及びKatchalskiにより公表されており、それぞれ、混合無水物法及びPBrを用いた変換を使用する。おそらく、最も良く知られた方法は、Fuchs-Farting法であり、この方法は、アミノ酸から対応するNCAへの直接変換にホスゲンを使用する。安全性を理由に、ホスゲンは、その後の研究で、ジホスゲン又はトリホスゲンに置き換えられてきた。ここ数年にわたり、
複数のホスゲン不含方法が開示されてきた。そのような方法について、Seckerらによる総説がある(Macromol. Biosci., 15, 881-891 (2015))。
【0031】
A.2.カプセル化方法
本発明によるカプセルは、開環重合法、より好ましくは界面開環重合を用いて調製される。
【0032】
本発明による界面重合法は、広範囲の官能基及び粒径にわたり一工程プロセスでのカプセルの調製を可能にし、この方法を、工業的製造プロセス、より詳細には連続工業プロセスに特別に適したものにしている。単量体比をただ調整するだけで、本技術は、カプセル化される官能基に向けて容易に調整することができ、プロセス条件に大幅な変更を加えることなく、物理的特性を、さまざまな用途に向けて容易に調整することができる。このため、産業化に向けて相当な自由度を持つ堅固な技術がもたらされる。
【0033】
N-カルボキシ-無水物の開環重合については、Cheng及びDemingによる総説(Top. Curr. Chem., 310, 1-26 (2012))がある。第一級アミン及び任意選択で第二級アミンが、最も明白な開始剤であり、これらは、求核開始により開環重合を開始させるのに広く使用される。塩基性開始剤は、活性化単量体機構により開環重合を開始させることができ、NCAの脱プロトン化により開始して、続いて開環重合する。アミン開始剤が使用される場合、両機構が並行して進むことが多い。遷移金属開始剤は、重合をより良く制御できることが知られている。開始剤としてのヘキサメチルジシラザンの使用も、重合をより良く制御するために開示されている。
【0034】
更に好適な実施形態において、異なるアミノ酸に由来するN-カルボキシ-無水物の混合物が使用される。なお更なる実施形態において、異なるキラリティーの混合物が使用され、好ましくは9/1~1/9の比のD-アミノ酸とL-アミノ酸の混合物が使用される。別の好適な実施形態において、異なるキラリティー及び異なるアミノ酸の混合物が使用される。D-アミノ酸とL-アミノ酸を混合することで、ペプチドが自然界でそうするようにポリ(アミノ酸)が二次構造すなわち立体構造を形成することが防止される。したがって、得られるポリマーシェルは、高密度であり、機械的に耐性がより高い。
【0035】
本発明によるカプセルを調製するのに特に好適な界面開環重合法では、N-カルボキシ-無水物単量体及びコア材料を、実質的に水非混和性の溶媒に溶解させ、重合開始剤を含有する水溶液に乳化させる。乳化及び任意選択で当該実質的に水非混和性の溶媒を除去すると、界面で開環重合が開始される。成長するにつれ、ポリ(アミノ酸)シェルが、有機物水界面で形成され、コアシェル構造が生成していき、機能性成分又は機能性配合物をカプセル化していく。得られるポリマーシェルは、機械的に強くかつ安定であり、カプセルが調製された液体からカプセルを単離することを可能にする。
【0036】
機能性成分又は機能性製剤は、好ましくは、有機化合物である。有機化合物は、疎水性化合物である。これは、オクタノール水分配係数が、logKowで表して、少なくとも0.3であることを意味する。
【0037】
コア材料が液体である場合、実質的に水非混和性の溶媒に溶解させることは、省略可能であり、NCAを、コア材料に直接溶解させることができる。本発明によるカプセルは、液体コア材料を保持するのに特に適している。ミセル系カプセルは、液体コア材料をカプセル化して保持するのにそこまで適していない。実際、ミセル系のシェルは、本発明のカプセル化法により得られるポリマーシェルを基準にすると、多くの場合、透過性が高すぎる。
【0038】
特に好適な界面開環重合法は、以下の工程を含む
a)一般構造1に従う化合物と、有機化合物とを、水非混和性溶媒に溶解させる工程と、及び
b)重合開始剤を水性液体に溶解させる工程と、及び
c)工程(a)で得られた溶液を、水性液体に乳化させる工程と、及び
d)任意選択で、水非混和性溶媒を蒸発させる工程と、及び
e)一般構造1に従う化合物を重合する工程。
【0039】
本発明のカプセルの粒径は、乳化技術、乳化中の乳化助剤の使用並びに乳化助剤対シェル及びコアの比、乳化助剤の性質、連続相又は分散相の粘度の変更、連続相及び分散相の比、コア内容物の性質、並びにシェル単量体の性質を修飾することにより修飾される。高剪断技術及び超音波系技術は、乳化技術として特に好適である。本発明によるカプセルの粒径は、高剪断技術において剪断を調整することにより、又は超音波処理の際の出力及び振幅を変更することにより、調整することができる。
【0040】
好ましくは、有機化合物は、オクタノール水分配係数が、logKowで表して、少なくとも0.3である。
【0041】
二官能性又は多官能性の第一級又は第二級アミンあるいはそれらの混合物は、NCAの開環重合に特に好適な開始剤である。開始剤は、水溶性であり、追加の親水性官能基で官能基導入されていることが可能である。追加の親水性官能基は、好ましくは、カルボン酸又はその塩、スルホン酸又はその塩、ホスホン酸又はその塩、リン酸エステル又はその塩、硫酸エステル又はその塩、ポリヒドロキシル官能性導入基、ポリ(エチレングリコール)、アンモニウム基、スルホニウム基、及びホスホニウム基からなる群より選択される。
【0042】
ポリ(エチレングリコール)官能基の組込みは、ヒト又は動物の身体に薬物送達系として使用される場合に、本発明のカプセルにステルス特性を与えるのに特に有用である。こうしたステルス特性は、細網内皮系により取込まれることを回避し、及び薬物が要求される部位で制御された様式でのみ放出されるために必要である。
【0043】
典型的な開始剤を、表2に提示するが、それらに限定されない。
【表2-1】
【表2-2】
【0044】
更に好適な実施形態において、シェル組成物は、更に、架橋剤を含む。生体適合性及び生分解性の後に来る、カプセルの最も基本的な必要条件の1つは、カプセルが機能しなければならない又は貯蔵されなければならない媒体、例えば薬物送達系の場合のヒト身体、での安定性である。ある系がその媒体中で安定ではない場合、これは、ペイロードの事前バースト放出又は標的範囲外での放出をもたらす可能性がある。安定性の向上は、貯蔵安定性の向上をもたらし、及び薬物送達系の場合は、血液循環時間の増加及び生体利用可能性の向上をもたらす。架橋剤を用いることで、カプセルのシェルの安定性及び機械的耐性を、そのカプセルが使用される系の仕様に合うように修飾することができる。さらに、架
橋剤の使用は、本発明のカプセルを薬物送達目的で使用する際に薬物放出を正確に制御することを可能にする。
【0045】
アミン官能性導入ポリマーを架橋することが既知である任意の架橋剤を使用することができる。好適な架橋剤は、二官能性又は多官能性イソシアネート、二官能性又は多官能性β-ケトエステル、二官能性又は多官能性β-ケトアミド、二官能性又は多官能性1,3-ジケトン、二官能性又は多官能性エポキシド若しくはオキセタン、二官能性又は多官能性無水物、二官能性又は多官能性N-カルボキシ-無水物、二官能性又は多官能性マイケル反応アクセプター(例えば、アクリレート、メタクリレート、マレイミド、ビニルスルホン等)、及び二官能性又は多官能性五員環カーボネートからなる群より選択される。
【0046】
好ましくは、乳化工程中に追加の乳化助剤が使用される。典型的な乳化助剤は、ポリマー及び界面活性剤から選択される。ポリマー及び界面活性剤は、共反応性ポリマー又は界面活性剤であることが可能であり、例えば、第一級及び第二級アミンで官能性導入されていて、開始剤及び乳化助剤両方の役割を担って、いわゆる自己分散カプセルをもたらすものが可能である。界面活性剤は、アニオン性、非イオン性、カチオン性、又は双性イオン性のものが可能である。ポリマーを安定化させるので、ヒドロキシル官能性導入ポリマーが特に好適であり、好ましくは、多糖類及びポリ(ビニルアルコール)又はポリ(ビニルアルコール)コポリマーあるいはそれらの誘導体から選択される。
【0047】
B.応用分野
本発明で開示されるカプセル化技術は、パーソナルケア、医薬品、栄養、農薬、及び家庭用途の分野で、特に活性成分の放出を制御するのに又は活性成分を加水分解若しくは酸化から保護するのに、特に有用である。例として、食物成分、プロバイオティクス、香料及び香味料、農薬、難燃剤、及び末筆ながら大事なものとして、活性医薬成分のカプセル化がある。
【0048】
より一般的には、カプセルのコア中の成分は、好ましくは、オクタノール水分配係数が、logKowで表して、少なくとも0.3、より好ましくは少なくとも0.5、最も好ましくは少なくとも1である。
【0049】
オクタノール水分配係数は、以下のとおり定義され、
ow=Cop/C
式中、Cop及びCは、それぞれ、濃オクタノール相及び濃水相における25℃でのgL-1を考慮しての化合物濃度である。
【0050】
本発明によるカプセル化技術は、実質的に非反応性の疎水性成分、例えば、水産油、植物油、及び精油等カプセル化について、特に興味が持たれる。この技術は、香料、香味料、及び防虫剤のカプセル化についても、特に興味が持たれる。
【0051】
本発明によるカプセル化技術は、更に、活性医薬成分及び農薬のカプセル化について、特に興味が持たれる。
【0052】
より詳細には、カプセル化技術は、活性医薬成分、例えば、抗癌剤、ワクチン、ペプチド、タンパク質、音増感剤(sonosensitizer)、薬物担体、遺伝子、組換え骨形成タンパク質(rhBMP-2)等の成長因子、プロゲステロン、プロカイン塩酸塩、ウシ血清アルブミン、ベンゾカイン、インスリン等のカプセル化に有用である。本発明のカプセルは、癌治療用の医薬組成物に組み込むのに特に適している。
【0053】
本発明のカプセルは、癌治療、例えば、EP2891485Aに開示されるとおりの動
脈塞栓術等に使用することができる。動脈塞栓術において、これらの微粒子は、ヒト体内に挿入されるときに、液体に含まれて使用されるが、好ましくは、安定貯蔵のため固体状態で維持される。本発明の別の態様において、本発明のカプセルは、転移性疾患、微小転移性疾患の音響力学的治療、又は多発性原発腫瘍の治療に適している。
【0054】
上記の医療治療法のいずれかにおいて使用するため、本発明のカプセルは、一般に、少なくとも1種の薬学上許容されるキャリア又は賦形剤と一緒に、医薬組成物に配合される。そのような医薬組成物は、当該分野で周知である技術を用いて製剤化することができる。投与経路は、意図する用途に依存することになる。典型的には、医薬組成物は、全身投与されることになり、したがって、非経口投与に適合した形態で、例えば、皮内注射、皮下注射、腹腔内注射、又は静脈内注射により、提供することができる。
【0055】
適切な医薬組成物として、本発明のカプセルを1種又は複数の不活性キャリア若しくは賦形剤と一緒に含有する、懸濁剤及び液剤が挙げられる。適切なキャリアとして、生理食塩水、滅菌水、リン酸緩衝食塩水、及びそれらの混合物が挙げられる。組成物は、追加で、他の作用剤、例えば、乳化剤、懸濁化剤、分散化剤、可溶化剤、安定剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤等を含むことができる。医薬組成物は、従来の滅菌技法により滅菌することができる。粒子を含有する液剤は、例えば、粘度調節剤、乳化剤、可溶化剤等の作用剤を添加することにより、安定化させることができる。
【0056】
好ましくは、医薬組成物は、カプセルが水若しくは生理食塩水、例えば、リン酸緩衝食塩水に含まれている水性懸濁剤又は分散剤の形態で使用されることになる。粒子は、使用時に再構築する、例えば、水、生理食塩水、又はリン酸緩衝食塩水で再構築する、凍結乾燥粉末の形態で供給することができる。
【0057】
本発明によるカプセルは、消費者用製品に特に有用であり、そのような製品は、シャンプー、ヘアコンディショナー、ヘアリンス、ヘアリフレッシャー、ヘア固定剤若しくはスタイリング助剤、ヘアブリーチ、ヘアダイ若しくは着色料、石鹸、ボディウォッシュ、化粧品、万能クリーナー、浴室クリーナー、床用クリーナー、窓用クリーナー、トイレットペーパー、ペーパータオル、使い捨てワイプ、おむつかぶれクリーム若しくはバーム、ベビーパウダー、おむつ、胸当て、ベビーワイプ、口腔ケア製品、練り歯磨き、含嗽液、歯の漂白剤、義歯接着剤、チューインガム、ブレスフレッシュナー、口腔溶解性ストリップ、チュアブルキャンディ、ハードキャンディ、手指消毒液、抗炎症バーム、抗炎症軟膏、抗炎症スプレー、ヘルスケア器具、デンタルフロス、歯ブラシ、タンポン、女性用ナプキン、パーソナルケア製品、日焼け止めローション、日焼け止めスプレー、ワックス系デオドラント、グリコール型デオドラント、石鹸型デオドラント、フェイシャルローション、ボディローション、ハンドローション、ボディパウダー、髭剃り用クリーム、入浴剤(bath soak)、角質除去スクラブ、フットクリーム、化粧紙、クレンジングワイプ、布帛ケア製品、布帛ソフトナー、布帛リフレッシャー、アイロン水、液体洗濯洗剤、液体食器洗剤、自動食洗機用洗剤、単位用量錠剤若しくはカプセル剤、香り付け剤(scent booster)、ドライヤーシート、高級香料、固形香料、粉末ファンデーション、液体ファンデーション、アイシャドー、口紅若しくはリップバーム、オーデトワレ製品、消臭剤、絨毯用消臭剤、蝋燭、室内用消臭剤、消毒液、制汗剤、ロールオン製品、及びエーロゾル製品からなる群より選択される。
【実施例
【0058】
C.実施例
C.1.材料
全ての化合物は、特に記載がない限り、供給元がTCI Europeである。
・L-フェニルアラニンN-カルボキシ無水物、D-フェニルアラニンN-カルボキシ無
水物、及びD,L-フェニルアラニンN-カルボキシ無水物は、Gabashvill et al. (Journal of Physical Chemistry B,
111(38), 11105-11110 (2007))及びOtake et al. (Angewandte Chemie, International Edition, 57(35), 11389-11393 (2018))による開示のとおり、標準方法に従って調製可能である。
・L-ロイシンN-カルボキシ無水物、D-ロイシンN-カルボキシ無水物、及びD,L-ロイシンN-カルボキシ無水物は、Baars et al. (Organic Process Research and Development, 7(4), 509-513 (2003))による開示のとおり、標準方法に従って調製可能である。・L-メチオニンN-カルボキシ無水物及びD,L-メチオニンN-カルボキシ無水物は、Verdie at al. (Chemistry-An Asian Journal, 6(9), 2382-2389 (2011))による開示のとおり、標準方法に従って調製可能である。
・γ-ベンジル-L-グルタミン酸N-カルボキシ無水物は、Wang et al. (RSC Advances, 6(8), 6368-6377 (2016))による開示のとおり、標準方法に従って調製可能である。
・トリカプリン酸グリセリルは、供給元Esterchemであった。
・δ-ウンデカラクトンは、供給元SAF Bulk Chemicalsであった。
・Disflamol TKPは、リン酸のクレシルエステルとフェニルエステルとの混合物であり、供給元Albright & Wilsonである。
・Mowiol 4 88は、ポリ(ビニルアルコール)であり、供給元Kurarayである。
・Marlon A365は、アニオン性界面活性剤であり、供給元Sasol Germany GMBHである。
・トリス(2-アミノエチル)アミンは、供給元TCIであった。
・Tracer-1は、以下の構造式による蛍光マーカー(CASRN917102-92-2)であり、WO2008056506(Konica Minolta Medical & Graphic Inc.)に開示される方法に従って調製可能である。
【化2】
・架橋剤1は、以下の構造式による三官能性β-ケトエステルであり、これは、Speisschaert et al.(Polymer, 172, 239-246 (2019))による開示のとおり、調製可能である。
【化3】
・Takenate D120Nは、三官能性イソシアネートであり、供給元Mitsuiである。
・Desmodur N75BAは、三官能性イソシアネートであり、供給元Covestroである。
・CATSURF-1は、以下の構造式によるカチオン性界面活性剤であり、WO2018137993(Agfa N.V)にSurf-3として開示のとおり、調製可能である
【化4】
【0059】
C.2.方法
カプセルの粒径は、ZetasizerTM Nano-S(Malvern Instruments、Goffin Meyvis)を使用して測定した。
【0060】
C.3.実施例1
この実施例は、本発明による界面開環重合を使用した、さまざまな化学物質のカプセル化を解説する。
【0061】
INVCAP-1~INVCAP-3の合成:
トリカプリン酸グリセリルのカプセル化(INVCAP-1):
L-フェニルアラニンN-カルボキシ無水物2.5g、D-フェニルアラニンN-カルボキシ無水物0.25g、D,L-フェニルアラニンN-カルボキシ無水物0.25g、架橋剤1を0.303g、トリカプリン酸グリセリル2.8g、及びTracer-1を100mgを、酢酸エチル18mlに溶解させることにより、第一溶液を調製した。
【0062】
水30mlに、Mowiol 4 88を0.684g、Marlon A365を0.256g、及びトリス(2-アミノエチル)アミン0.115gを溶解させることにより、第二溶液を調製した。
【0063】
Ultra Turrax T25(IKA)を用いて6000rpmで5分間混合しながら、第二溶液に第一溶液を加え、この間、乳濁液の温度を20℃~30℃に維持した。水10mlを加え、続いて混合物を減圧でエバポレートして20gにした。重合を、室温で24時間、継続させた。
【0064】
平均粒径は1.01μmと測定された。
【0065】
δ-ウンデカラクトンのカプセル化(INVCAP-2):
L-フェニルアラニンN-カルボキシ無水物2.5g、D-フェニルアラニンN-カルボキシ無水物0.25g、D,L-フェニルアラニンN-カルボキシ無水物0.25g、架橋剤1を0.303g、δ-ウンデカラクトン2.8g、及びTracer-1を100mgを、酢酸エチル18mlに溶解させることにより、第一溶液を調製した。
【0066】
水30mlに、Mowiol 4 88を0.684g、Marlon A365を0.256g、及びトリス(2-アミノエチル)アミン0.115gを溶解させることにより、第二溶液を調製した。
【0067】
Ultra Turrax T25(IKA)を用いて6000rpmで5分間混合しながら、第二溶液に第一溶液を加え、この間、乳濁液の温度を20℃~30℃に維持した。水10mlを加え、続いて混合物を減圧でエバポレートして20gにした。重合を、室温で24時間、継続させた。
【0068】
平均粒径は1.95μmと測定された。
【0069】
Disflamoll TKPのカプセル化(INVCAP-3):
L-フェニルアラニンN-カルボキシ無水物2.5g、D-フェニルアラニンN-カルボキシ無水物0.25g、D,L-フェニルアラニンN-カルボキシ無水物0.25g、架橋剤1を0.303g、Disflamoll TKPを2.8g、及びTracer-1を100mgを、酢酸エチル18mlに溶解させることにより、第一溶液を調製した。
【0070】
水30mlに、Mowiol 4 88を0.684g、Marlon A365を0.256g、及びトリス(2-アミノエチル)アミン0.115gを溶解させることにより、第二溶液を調製した。
【0071】
Ultra Turrax T25(IKA)を用いて6000rpmで5分間混合しながら、第二溶液に第一溶液を加え、この間、乳濁液の温度を20℃~30℃に維持した。水10mlを加え、続いて混合物を減圧でエバポレートして20gにした。重合を、室温で24時間、継続させた。
【0072】
平均粒径は1.25μmと測定された。
【0073】
INVCAP-1~INVCAP-3の特性分析:
・蛍光撮影:
本発明カプセルであるINVCAP-1~INVCAP-3を、光学顕微鏡に波長365nmのUVを発光するUVランプを装着して倍率63倍で用いて分析した。最初に、各試料の視覚画像を撮影した。第二の画像では、カプセル分散液をUV光に露光させ、蛍光画像を撮影した。視覚画像と蛍光画像の重ね合わせを作成した。重ね合わせから、全てのカプセルについて蛍光画像が粒子の視覚画像と完璧に一致することが明らかとなった。このことは、化学物質がカプセル化されたことを明白に示す。
・遠心:
【0074】
本発明カプセルであるINVCAP-1~INVCAP-3を、Thermo Scientific SL8遠心機(centrifuge)を用いて回転速度4500RPMで1時間遠心して、単離した。カプセル及び上清の両方を単離して、カプセル化されていない化合物及び蛍光の存在について分析した。試料のいずれについても、カプセル化されていない化合物を検出することはできなかった。蛍光は、カプセル自身においてのみ検出することができた。このこともまた、化学物質がカプセル化されたことを明白に示す。
【0075】
単離したカプセルを、水に再分散させ、視覚画像及び蛍光画像両方を撮影した。またしても、INVCAP-1~INVCAP-3の視覚画像と蛍光画像は完璧に一致した。
【0076】
INVCAP-1~INVCAP-3を乾燥させて、粉末を得た。カプセル化された化学物質がカプセル外で見られることを示すものは何も見つけられなかった。粉末は、水に容易に再分散させることができた。
【0077】
C.4.実施例2
この実施例は、本発明によるカプセル化を調製するのに、界面開環重合においてある範囲のアミノ酸が使用可能であることを解説する。
【0078】
(コ)単量体としてロイシンを含むカプセルシェル(INVCAP-4~INVCAP-7)
INVCAP-4の合成
酢酸エチル18mlに、L-ロイシンN-カルボキシ無水物3gを溶解させた。溶液を、1.7ミクロンフィルターで濾過した。架橋剤1を0.303g、Tracer-1を0.1g、及びトリカプリン酸グリセリル2.28gを加えた。
【0079】
水30mlに、Mowiol 4 88を0.684g、Marlon A365を0.256g、及びトリス(2-アミノエチル)アミン0.115gを溶解させることにより、第二溶液を調製した。
【0080】
Ultra Turrax T25(IKA)を用いて6000rpmで5分間混合しながら、第二溶液に第一溶液を加え、この間、乳濁液の温度を20℃~30℃に維持した。水10mlを加え、続いて混合物を減圧でエバポレートして20gにした。重合を、室温で24時間、継続させた。
【0081】
平均粒径は0.86μmと測定された。
【0082】
INVCAP-5の合成
酢酸エチル18mlに、L-ロイシンN-カルボキシ無水物1.5g及びD-フェニルアラニンN-カルボキシ無水物1.5gを溶解させた。溶液を、1.7ミクロンフィルターで濾過した。架橋剤1を0.336g、Tracer-1を0.1g、及びトリカプリン酸グリセリル2.59gを加えた。
【0083】
水30mlに、Mowiol 4 88を0.692g、Marlon A365を0.259g、及びトリス(2-アミノエチル)アミン0.127gを溶解させることにより、第二溶液を調製した。
【0084】
Ultra Turrax T25(IKA)を用いて6000rpmで5分間混合しながら、第二溶液に第一溶液を加え、この間、乳濁液の温度を20℃~30℃に維持した。水10mlを加え、続いて混合物を減圧でエバポレートして25gにした。重合を、室温で24時間、継続させた。
【0085】
平均粒径は0.574μmと測定された。
【0086】
INVCAP-6の合成:
酢酸エチル18mlに、L-ロイシンN-カルボキシ無水物0.75g、D-ロイシンN-カルボキシ無水物0.75g、L-フェニルアラニンN-カルボキシ無水物0.75g、及びD-フェニルアラニンN-カルボキシ無水物0.75gを溶解させた。溶液を、1.7ミクロンフィルターで濾過した。架橋剤1を0.336g、Tracer-1を0.1g、及びトリカプリン酸グリセリル2.59gを加えた。
【0087】
水30mlに、Mowiol 4 88を0.692g、Marlon A365を0.259g、及びトリス(2-アミノエチル)アミン0.127gを溶解させることにより、第二溶液を調製した。
【0088】
Ultra Turrax T25(IKA)を用いて6000rpmで5分間混合し
ながら、第二溶液に第一溶液を加え、この間、乳濁液の温度を20℃~30℃に維持した。水10mlを加え、続いて混合物を減圧でエバポレートして25gにした。重合を、室温で24時間、継続させた。
【0089】
平均粒径は0.569μmと測定された。
【0090】
INCAP-7の合成:
酢酸エチル18mlに、L-ロイシンN-カルボキシ無水物1.5g及びL-フェニルアラニンN-カルボキシ無水物1.5gを溶解させた。溶液を、1.7ミクロンフィルターで濾過した。架橋剤1を0.336g、Tracer-1を0.1g、及びトリカプリン酸グリセリル2.59gを加えた。
【0091】
水30mlに、Mowiol 4 88を0.692g、Marlon A365を0.259g、及びトリス(2-アミノエチル)アミン0.127gを溶解させることにより、第二溶液を調製した。
【0092】
Ultra Turrax T25(IKA)を用いて6000rpmで5分間混合しながら、第二溶液に第一溶液を加え、この間、乳濁液の温度を20℃~30℃に維持した。水10mlを加え、続いて混合物を減圧でエバポレートして30gにした。重合を、室温で24時間、継続させた。
【0093】
平均粒径は0.465μmと測定された。
【0094】
(コ)単量体としてメチオニンを含むカプセルシェル(INVCAP-8~INVCAP-11)
INVCAP-8の合成:
酢酸エチル18mlに、D,L-メチオニンN-カルボキシ無水物3gを溶解させた。溶液を、1.7ミクロンフィルターで濾過した。架橋剤1を0.331g、Tracer-1を0.1g、及びトリカプリン酸グリセリル2.33gを加えた。
【0095】
水30mlに、Mowiol 4 88を0.69g、Marlon A365を0.259g、及びトリス(2-アミノエチル)アミン0.125gを溶解させることにより、第二溶液を調製した。
【0096】
Ultra Turrax T25(IKA)を用いて6000rpmで5分間混合しながら、第二溶液に第一溶液を加え、この間、乳濁液の温度を20℃~30℃に維持した。水10mlを加え、続いて混合物を減圧でエバポレートして25gにした。重合を、室温で24時間、継続させた。
【0097】
INVCAP-9の合成:
酢酸エチル18mlに、D,L-メチオニンN-カルボキシ無水物1.5g、L-ロイシンN-カルボキシ無水物0.75g、及びD-ロイシンN-カルボキシ無水物0.75gを溶解させた。溶液を、1.7ミクロンフィルターで濾過した。架橋剤1を0.35g、Tracer-1を0.1g、及びトリカプリン酸グリセリル2.32gを加えた。
【0098】
水30mlに、Mowiol 4 88を0.696g、Marlon A365を0.259g、及びトリス(2-アミノエチル)アミン0.132gを溶解させることにより、第二溶液を調製した。
【0099】
Ultra Turrax T25(IKA)を用いて6000rpmで5分間混合し
ながら、第二溶液に第一溶液を加え、この間、乳濁液の温度を20℃~30℃に維持した。水10mlを加え、続いて混合物を減圧でエバポレートして25gにした。重合を、室温で24時間、継続させた。
【0100】
INVCAP-10の合成:
酢酸エチル18mlに、D,L-メチオニンN-カルボキシ無水物0.6g、L-ロイシンN-カルボキシ無水物0.6g、D-ロイシンN-カルボキシ無水物0.6g、L-フェニルアラニンN-カルボキシ無水物0.6g、及びD-フェニルアラニンN-カルボキシ無水物0.6gを溶解させた。溶液を、1.7ミクロンフィルターで濾過した。架橋剤1を0.335g、Tracer-1を0.1g、及びトリカプリン酸グリセリル2.32gを加えた。
【0101】
水30mlに、Mowiol 4 88を0.696g、Marlon A365を0.259g、及びトリス(2-アミノエチル)アミン0.132gを溶解させることにより、第二溶液を調製した。
【0102】
Ultra Turrax T25(IKA)を用いて6000rpmで5分間混合しながら、第二溶液に第一溶液を加え、この間、乳濁液の温度を20℃~30℃に維持した。水10mlを加え、続いて混合物を減圧でエバポレートして25gにした。重合を、室温で24時間、継続させた。
【0103】
INVCAP-11の合成:
酢酸エチル18mlに、L-メチオニンN-カルボキシ無水物0.6g、L-ロイシンN-カルボキシ無水物0.6g、D-ロイシンN-カルボキシ無水物0.6g、L-フェニルアラニンN-カルボキシ無水物0.6g、及びD-フェニルアラニンN-カルボキシ無水物0.6gを溶解させた。溶液を、1.7ミクロンフィルターで濾過した。架橋剤1を0.335g、Tracer-1を0.1g、及びトリカプリン酸グリセリル2.32gを加えた。
【0104】
水30mlに、Mowiol 4 88を0.696g、Marlon A365を0.259g、及びトリス(2-アミノエチル)アミン0.132gを溶解させることにより、第二溶液を調製した。
【0105】
Ultra Turrax T25(IKA)を用いて6000rpmで5分間混合しながら、第二溶液に第一溶液を加え、この間、乳濁液の温度を20℃~30℃に維持した。水10mlを加え、続いて混合物を減圧でエバポレートして25gにした。重合を、室温で24時間、継続させた。
【0106】
(コ)単量体としてγ-ベンジルグルタミン酸を含むカプセルシェル(INVCAP-12及びINVCAP-13)
INVCAP-12の合成:
酢酸エチル18mlに、L-γ-ベンジルグルタミン酸N-カルボキシ無水物1.5g、L-ロイシンN-カルボキシ無水物0.75g、及びD-ロイシンN-カルボキシ無水物0.75gを溶解させた。溶液を、1.7ミクロンフィルターで濾過した。架橋剤1を0.294g、Tracer-1を0.1g、及びトリカプリン酸グリセリル2.26gを加えた。
【0107】
水30mlに、Mowiol 4 88を0.68g、Marlon A365を0.255g、及びトリス(2-アミノエチル)アミン0.111gを溶解させることにより、第二溶液を調製した。
【0108】
Ultra Turrax T25(IKA)を用いて6000rpmで5分間混合しながら、第二溶液に第一溶液を加え、この間、乳濁液の温度を20℃~30℃に維持した。水10mlを加え、続いて混合物を減圧でエバポレートして25gにした。重合を、室温で24時間、継続させた。
【0109】
INVCAP-13の合成:
酢酸エチル18mlに、L-γ-ベンジルグルタミン酸N-カルボキシ無水物0.6g、L-ロイシンN-カルボキシ無水物0.6g、D-ロイシンN-カルボキシ無水物0.6g、L-フェニルアラニンN-カルボキシ無水物0.6g、及びD-フェニルアラニンN-カルボキシ無水物0.6gを溶解させた。溶液を、1.7ミクロンフィルターで濾過した。架橋剤1を0.313g、Tracer-1を0.1g、及びトリカプリン酸グリセリル2.32gを加えた。
【0110】
水30mlに、Mowiol 4 88を0.68g、Marlon A365を0.255g、及びトリス(2-アミノエチル)アミン0.118gを溶解させることにより、第二溶液を調製した。
【0111】
Ultra Turrax T25(IKA)を用いて6000rpmで5分間混合しながら、第二溶液に第一溶液を加え、この間、乳濁液の温度を20℃~30℃に維持した。水10mlを加え、続いて混合物を減圧でエバポレートして25gにした。重合を、室温で24時間、継続させた。
【0112】
INVCAP-4~INVCAP-13の特性分析:
本発明カプセルであるINVCAP-4~INVCAP-13を、実施例1に開示されるとおり蛍光撮影及び遠心により特性分析した。この分析に基づき、トリカプリン酸グリセリルは全ての場合において完全にカプセル化されたことが証明された。
【0113】
C.5.実施例3
この実施例は、本発明によるカプセルの合成における異なる架橋剤の使用を解説する。三官能性イソシアネートを、INVCAP-14及びINVCAP-15の合成における架橋剤として選択した。
【0114】
INVCAP-14の合成:
酢酸エチル18mlに、L-ロイシンN-カルボキシ無水物0.75g、D-ロイシンN-カルボキシ無水物0.75g、L-フェニルアラニンN-カルボキシ無水物0.75g、及びD-フェニルアラニンN-カルボキシ無水物0.75gを溶解させた。溶液を、1.7ミクロンフィルターで濾過した。Takenate D120Nを0.831、Tracer-1を0.1g、及びトリカプリン酸グリセリル2.59gを加えた。
【0115】
水30mlに、Mowiol 4 88を0.692g、Marlon A365を0.259g、及びトリス(2-アミノエチル)アミン0.127gを溶解させることにより、第二溶液を調製した。
【0116】
Ultra Turrax T25(IKA)を用いて6000rpmで5分間混合しながら、第二溶液に第一溶液を加え、この間、乳濁液の温度を20℃~30℃に維持した。水10mlを加え、続いて混合物を減圧でエバポレートして30gにした。重合を、室温で24時間、継続させた。
【0117】
INVCAP-15の合成:
酢酸エチル18mlに、L-ロイシンN-カルボキシ無水物0.75g、D-ロイシンN-カルボキシ無水物0.75g、L-フェニルアラニンN-カルボキシ無水物0.75g、及びD-フェニルアラニンN-カルボキシ無水物0.75gを溶解させた。溶液を、1.7ミクロンフィルターで濾過した。Desmodur N75BAを0.555、Tracer-1を0.1g、及びトリカプリン酸グリセリル2.59gを加えた。
【0118】
水30mlに、Mowiol 4 88を0.692g、Marlon A365を0.259g、及びトリス(2-アミノエチル)アミン0.127gを溶解させることにより、第二溶液を調製した。
【0119】
Ultra Turrax T25(IKA)を用いて6000rpmで5分間混合しながら、第二溶液に第一溶液を加え、この間、乳濁液の温度を20℃~30℃に維持した。水10mlを加え、続いて混合物を減圧でエバポレートして30gにした。重合を、室温で24時間、継続させた。
【0120】
INVCAP-14及びINVCAP-15の特性分析:
本発明カプセルであるINVCAP-14~INVCAP-15を、実施例1に開示されるとおり蛍光撮影及び遠心により特性分析した。この分析に基づき、トリカプリン酸グリセリルは全ての場合において完全にカプセル化されたことが証明された。
【0121】
C.6.実施例4:
この実施例は、本発明によるカプセルの合成におけるさまざまなコロイド安定機構の応用可能性について、先行実施例で使用された非イオン性ポリマー安定剤及びアニオン性界面活性剤を、カチオン性自己分散カプセルの合成により解説されるとおり、カプセル合成においてカチオン性共反応性界面活性剤に置き換えることにより、解説する。
【0122】
INVCAP-16の合成:
酢酸エチル25mlに、L-ロイシンN-カルボキシ無水物0.75g、D-ロイシンN-カルボキシ無水物0.75g、L-フェニルアラニンN-カルボキシ無水物0.75g、及びD-フェニルアラニンN-カルボキシ無水物0.75gを溶解させた。架橋剤1を0.336g、Tracer-1を0.1g、及びトリカプリン酸グリセリル2.50gを加えた。
【0123】
水30mlに、CATSURF-1を1.01gを溶解させることにより、第二溶液を調製した。
【0124】
Ultra Turrax T25(IKA)を用いて6000rpmで5分間混合しながら、第二溶液に第一溶液を加え、この間、乳濁液の温度を20℃~30℃に維持した。水10mlを加え、続いて混合物を減圧でエバポレートして30gにした。重合を、室温で24時間、継続させた。
【0125】
INVCAP-16の特性分析:
本発明カプセルであるINVCAP-16を、実施例1に開示されるとおり蛍光撮影及び遠心により特性分析した。この分析に基づき、トリカプリン酸グリセリルはINVCAP-16に完全にカプセル化されたことが証明された。
【0126】
C.7.実施例5
この実施例は、本発明によるカプセルを凍結乾燥を用いて単離する選択肢について解説する。
【0127】
酢酸エチル18mlに、D,L-フェニルアラニンN-カルボキシ無水物1.5g、L-ロイシンN-カルボキシ無水物0.75g、及びD-ロイシンN-カルボキシ無水物0.75gを溶解させて、第一溶液を作成した。架橋剤1を0.336g、トリカプリン酸グリセリル2.309g、及び0.1gを加えた。
【0128】
水30mlに、Mowiol 4 88を0.692g、Marlon A365を0.259g、及びトリス(2-アミノエチル)アミン0.127gを溶解させることにより、第二溶液を調製した。
【0129】
Ultra Turrax T25(IKA)を用いて6000rpmで5分間混合しながら、第二溶液に第一溶液を加え、この間、乳濁液の温度を20℃~30℃に維持した。酢酸エチルを減圧除去し、分散液の重量を30gに調整した。重合を、室温で24時間、継続させた。
【0130】
凍結乾燥によりカプセルを単離した。超音波処理を用いて、単離したカプセルの試料を水に再分散させることにより、カプセルの再分散性を評価した。超音波処理には、Sona Vibra Cellを使用し、出力を19~21ワット、振幅を100で5秒間とした。光学顕微鏡を倍率63倍で使用して分散度合いを評価し、画像を、合成後に得られた元来の分散液の顕微鏡分析と比較した。両画像とも、同じ分散度合いを示した。再分散後、大きすぎるもの又はクラスターの追加を検出することはできなかった。
【国際調査報告】