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特表2024-515458画像における望まれないピクセルのマスキング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】画像における望まれないピクセルのマスキング
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
A61B5/055 380
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558173
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(85)【翻訳文提出日】2023-09-21
(86)【国際出願番号】 EP2022057432
(87)【国際公開番号】W WO2022200314
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】21164479.4
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】タユーラティル ヘマンス
(72)【発明者】
【氏名】サシクマール ジャヤント
(72)【発明者】
【氏名】ベラグルキ アナンド
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AB44
4C096AC01
4C096AD14
4C096DC18
4C096DC21
(57)【要約】
一態様によると、画像におけるテクスチャのある領域をマスキングするための装置300が提供される。装置300は、複数のピクセルを含む入力画像を受信することと、複数のピクセルうちの各ピクセルに対して第1の画像テクスチャ特徴値を特定することと、マスクを第1の画像テクスチャ特徴値に基づいて生成することと、マスクされた画像を生成するために、受信された入力画像にマスクを適用することとを実行するように構成されたプロセッサ302を備える。コンピュータにより実施される方法及びコンピュータプログラム製品が更に提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像におけるテクスチャのある領域をマスキングするための装置であって、前記装置が、
複数のピクセルを含む入力画像を受信することと、
グレーレベル同時生起行列(GLCM)統計データを演算すること、及び、前記GLCM統計データのうちの1つに基づいて第1の画像テクスチャ特徴値を特定することを有する、前記複数のピクセルうちの各前記ピクセルに対して、前記第1の画像テクスチャ特徴値を特定することと、
マスクを前記第1の画像テクスチャ特徴値に基づいて生成することと、
マスクされた画像を生成するために、受信された前記入力画像に前記マスクを適用することと、
を実行するプロセッサを備える、
装置。
【請求項2】
前記プロセッサが、ディスプレイユニットにおける表示のために、前記マスクされた画像を提供する、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
演算された前記第1の画像テクスチャ特徴値が、コントラスト、相関、エネルギー、均一性、勾配、及びエントロピーのうちの1つを含む、
請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記プロセッサが、
前記複数のピクセルのうちの各前記ピクセルに対して複数の第2の画像テクスチャ特徴値を特定することと、
前記第1の画像テクスチャ特徴値と前記第2の画像テクスチャ特徴値とを組み合わせることと、
を更に実行し、
前記マスクの生成が、前記第1の画像テクスチャ特徴値と前記複数の第2の画像テクスチャ特徴値とに基づく、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記第1の画像テクスチャ特徴値が、第1のグレーレベル同時生起行列統計データに基づいて特定され、前記複数の第2の画像テクスチャ特徴値のうちの少なくとも1つが、第2のグレーレベル同時生起行列統計データに基づいて特定される、
請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記プロセッサが、
前記第1の画像テクスチャ特徴値に第1の重みを適用することと、
前記第2の画像テクスチャ特徴値に第2の重みを適用することと、
を更に実行し、
前記マスクの前記生成が、重み付けされた前記第1の画像テクスチャ特徴値及び重み付けされた前記第2の画像テクスチャ特徴値に基づく、
請求項4又は請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記入力画像が、位相画像を含む、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記マスクを生成することが、前記複数のピクセルのうちの所与のピクセルに対する前記第1の画像テクスチャ特徴値が規定の閾値に一致したこと、又は前記規定の閾値を上回ったことを特定したことに応答して、前記所与のピクセルに関連した前記マスクを生成することを有する、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
画像におけるテクスチャのある領域をマスキングするためコンピュータが実施する方法であって、前記方法が、
複数のピクセルを含む入力画像を受信するステップと、
グレーレベル同時生起行列(GLCM)統計データを演算すること、及び、前記GLCM統計データのうちの1つに基づいて第1の画像テクスチャ特徴値を特定することを有する、前記複数のピクセルのうちの各前記ピクセルに対して前記第1の画像テクスチャ特徴値を特定するステップと、
マスクを前記第1の画像テクスチャ特徴値に基づいて生成するステップと、
マスクされた画像を生成するために、受信された前記入力画像に前記マスクを適用するステップと、
を有する、コンピュータが実施する方法。
【請求項10】
ディスプレイユニットにおける表示のために、前記マスクされた画像を提供するステップを有する、
請求項9に記載のコンピュータが実施する方法。
【請求項11】
前記複数のピクセルのうちの各前記ピクセルに対して複数の第2の画像テクスチャ特徴値を特定するステップと、
前記第1の画像テクスチャ特徴値と前記第2の画像テクスチャ特徴値とを組み合わせるステップと、
を更に有し、
前記マスクの生成が、前記第1の画像テクスチャ特徴値と前記複数の第2の画像テクスチャ特徴値とに基づく、
請求項9又は請求項10に記載のコンピュータが実施する方法。
【請求項12】
前記第1の画像テクスチャ特徴値と前記第2の画像テクスチャ特徴値とのうちの少なくとも1つが、コントラスト、相関、エネルギー、均一性、勾配、及びエントロピーのうちの1つを有する、
請求項11に記載のコンピュータが実施する方法。
【請求項13】
前記第1の画像テクスチャ特徴値が、第1のグレーレベル同時生起行列統計データに基づいて特定され、前記複数の第2の画像テクスチャ特徴値のうちの少なくとも1つが、第2のグレーレベル同時生起行列統計データに基づいて特定され、
前記マスクの生成が、前記第1の画像テクスチャ特徴値と前記第2の画像テクスチャ特徴値との重み付けされた組み合わせに基づく、
請求項11又は請求項12に記載のコンピュータが実施する方法。
【請求項14】
ディスプレイユニットにおける表示のために、前記マスクされた画像を提供するステップを更に有する、
請求項9から請求項13のいずれか一項に記載のコンピュータが実施する方法。
【請求項15】
具現化されたコンピュータ可読コードを含む非一時的なコンピュータ可読媒体であって、前記コンピュータ可読コードが、適切なコンピュータ又はプロセッサによる実行時に、前記コンピュータ又は前記プロセッサが請求項9から請求項14のいずれか一項に記載の方法を実施する、非一時的なコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像における望まれないピクセルをマスキングすることに関し、特に、画像におけるテクスチャのある領域をマスキングすることに関する。
【背景技術】
【0002】
対象者(例えば患者)に関連して獲得された医療画像は、対象者に関連した病状の性質を評価するために、例えば放射線科医といった医療専門家により調査され、又はレビューされる。医療画像を獲得するために使用されるイメージングモダリティに依存して、医療画像は、関連性の低い又は全く関連しない領域とともに関心領域を含む。例えば、関心のある臓器(例えばヒトの頭部の組織)を囲む空気は、医療画像における信号を形成せず、医療イメージングにおいて関心の無いものである。観測者(例えば放射線科医)は、視覚分析のために、ヒトの頭部の例では脳、及び例えば頭蓋及び脂肪といった脳を囲む組織を含む関心領域に観測者の注意を集中させる。信号を含まない、又は低信号を含む画像における任意のピクセルは、更なる分析のために有用ではなく、本明細書において「望まれないピクセル」と呼ばれる。
【0003】
振幅画像は幾つかのイメージングモダリティを使用して獲得された画像の一種である。振幅画像では、望まれないピクセルは低信号領域として現れ、したがって、例えば強度ベースの閾値処理といった技術を使用することにより、望まれないピクセルは視覚分析中、又は画像処理中に除外することが簡単である。位相画像として知られる異なる分類の画像が、例えば磁気共鳴イメージング(MRI)を使用して、例えば速度、磁気的な影響されやすさ、及び温度といった特徴をキャプチャするために使用される。位相画像では、望まれないピクセルは位相の極値を示し、望まれないピクセルに隣接したピクセルと相関をもたないピクセルとしての様相を見せる。したがって、強度ベースの閾値処理は位相画像を扱うときにはあまり効果的ではない。
【0004】
画像からの望まれないピクセルの除去は、(例えば放射線科医による)可視化及び画像処理に役立ち得る。可視化の観点から、望まれないピクセルの除去は、観測者が「よりクリーンな」画像を提供されることを確実なものとする。画像処理に対して、望まれないピクセルの除去は、特に望まれないピクセル付近の組織に対する画像分析の精度を改善することが、特に流速画像といったMRI使用して獲得された位相画像の例を考慮することに役立つ。このような画像におけるユーザーにより描かれた領域において(例えばx軸、y軸、及びz軸に沿って獲得された3つの速度画像から)効果的な速度ベクトルを演算するとき、望まれないピクセルは無意味な値をもつ。演算におけるこれらの望まれないピクセルの使用は、領域に対する速度ベクトルの大きさと方向とにおける誤ったジャンプをもたらし得る。望まれないピクセルの除去は、例えばピクセル単位の演算を伴う分析といった、より少ない演算負荷に更に役立つ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、上記のとおり特定された問題のうちの少なくとも1つを軽減するために画像から望まれないピクセルを信頼性高く除去するための技術を提供することが有用である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
特定の手法で例えば医療画像といった画像を処理することにより、例えば本明細書において「望まれないピクセル」と呼ばれるピクセルを含む領域といった、分析に関連しない画像における領域を除去する、又は少なくともマスクする、又は隠すことが可能である。本開示の発明者らは、望まれないピクセルのマスキング又は除去が、これらの望まれないピクセルにより形成された位相画像における領域が非常にテクスチャを伴うという事実を使用することにより実現され得ることを認識した。画像のテクスチャ特性の分析はこれらの領域を正確に表すことに役立つ。特に、画像のテクスチャ分析を実施することにより、多量のテクスチャをもつ(例えばスペックルがある)ように見える画像の領域は、より少ないテクスチャを伴って「滑らか」に見える画像の領域から区別され得る。幾つかの種類の画像では、これらのテクスチャのある領域は、画像の分析に関連しないノイズ又は背景データとして認識される。画像のテクスチャのある領域が特定された後、それらの特定されたテクスチャのある領域をカバーするマスクが生成され得、マスクが画像に適用され得、以て、望まれないピクセルを効果的に除去する。
【0007】
第1の特定の態様によると、画像における望まれないピクセルをマスキングするための装置であって、装置が、複数のピクセルを含む入力画像を受信することと、複数のピクセルの各ピクセルに対して第1の画像テクスチャ特徴値を特定することと、マスクを第1の画像テクスチャ特徴値に基づいて生成することと、マスクされた画像を生成するために、受信された入力画像にマスクを適用することとを実行するように構成されたプロセッサを備える、装置が提供される。
【0008】
組織は滑らかに(すなわちより少ないテクスチャを伴って)見えるので、画像に現れるテクスチャ(例えば局所テクスチャ)の程度は、例えば組織といった表面に対応しない領域の信頼性の高いインジケーターである。したがって、テクスチャのある画像の領域を特定することにより、それらの領域及び画像内における望まれないピクセルのセグメント領域に対するマスクを生成することが可能である。
【0009】
プロセッサは、グレーレベル同時生起行列(GLCM)統計データを演算することと、GLCM統計データのうちの1つに基づいて第1の画像テクスチャ特徴値を特定することとにより、第1の画像テクスチャ特徴値の各々を特定するように構成される。
【0010】
幾つかの実施形態では、演算された第1の画像テクスチャ特徴値は、コントラスト、相関、エネルギー、均一性、勾配、及びエントロピーのうちの1つを含む。
【0011】
プロセッサは、幾つかの実施形態では、複数のピクセルのうちの各ピクセルに対して複数の第2の画像テクスチャ特徴値を特定することと、第1の画像テクスチャ特徴値と第2の画像テクスチャ特徴値とを組み合わせることとを実行するように更に構成される。マスクの生成は、第1の画像テクスチャ特徴値と複数の第2の画像テクスチャ特徴値とに基づく。
【0012】
幾つかの実施形態では、第1の画像テクスチャ特徴値は、第1のグレーレベル同時生起行列統計データに基づいて特定され、複数の第2の画像テクスチャ特徴値のうちの少なくとも1つは、第2のグレーレベル同時生起行列統計データに基づいて特定される。
【0013】
プロセッサは、第1の画像テクスチャ特徴値に第1の重みを適用することと、第2の画像テクスチャ特徴値に第2の重みを適用することとを実行するように更に構成される。マスクの生成は重み付けされた第1の画像テクスチャ特徴値と重み付けされた第2の画像テクスチャ特徴値に基づく。
【0014】
幾つかの実施形態では、入力画像は位相画像を含む。
【0015】
マスクを生成することは、幾つかの実施形態では、複数のピクセルのうちの所与のピクセルに対する第1の画像テクスチャ特徴値が規定の閾値に一致したこと、又は規定の閾値を上回ったことを特定したことに応答して、所与のピクセルに関連したマスクを生成することを有する。
【0016】
第2の特定の態様によると、画像における望まれないピクセルをマスキングするためのコンピュータが実施する方法であって、方法が、複数のピクセルを含む入力画像を受信することと、複数のピクセルうちの各ピクセルに対して第1の画像テクスチャ特徴値を特定することと、マスクを第1の画像テクスチャ特徴値に基づいて生成することと、マスクされた画像を生成するために、受信された入力画像にマスクを適用することとを有する方法が提供される。
【0017】
第1の画像テクスチャ特徴値を特定することは、幾つかの実施形態では、グレーレベル同時生起行列(GLCM)統計データを演算することと、GLCM統計データのうちの1つに基づいて第1の画像テクスチャ特徴値を特定することとを有する。
【0018】
幾つかの実施形態では、本方法は、複数のピクセルのうちの各ピクセルに対して複数の第2の画像テクスチャ特徴値を特定することと、第1の画像テクスチャ特徴値と第2の画像テクスチャ特徴値とを組み合わせることとを更に有する。マスクの生成は、第1の画像テクスチャ特徴値と複数の第2の画像テクスチャ特徴値とに基づく。
【0019】
第1の画像テクスチャ特徴値と第2の画像テクスチャ特徴値とのうちの少なくとも1つは、コントラスト、相関、エネルギー、均一性、勾配、及びエントロピーのうちの1つを含む。
【0020】
幾つかの実施形態では、第1の画像テクスチャ特徴値は、第1のグレーレベル同時生起行列統計データに基づいて特定され、複数の第2の画像テクスチャ特徴値のうちの少なくとも1つは、第2のグレーレベル同時生起行列統計データに基づいて特定される。マスクの生成は、第1の画像テクスチャ特徴値と第2の画像テクスチャ特徴値との重み付けされた組み合わせに基づく。
【0021】
本方法は、幾つかの実施形態では、記憶媒体における記憶のために、又はディスプレイユニットにおける表示のためにマスクされた画像を提供することを更に有する。
【0022】
第3の特定の態様によると、非一時的なコンピュータ可読媒体を備えるコンピュータプログラム製品であって、コンピュータ可読媒体が具現化されたコンピュータ可読コードを中に含み、コンピュータ可読コードが、適切なコンピュータ又はプロセッサによる実行時に、コンピュータ又はプロセッサが本明細書において開示されている方法のステップを実施させられるように構成された、コンピュータプログラム製品が提供される。
【0023】
これらの態様及び他の態様が、以下で説明される実施形態から明らかとなり、以下で説明される実施形態を参照しながら説明される。
【0024】
例示的な実施形態が以下の図面を参照しながら単なる例示として以下で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】対象者の頭部の位相画像の図である。
図2】画像から望まれないピクセルを除去するためのシステムの例の概略図である。
図3】画像から望まれないピクセルを除去するための装置の例の概略図である。
図4】画像から望まれないピクセルを除去する方法の例のフローチャートである。
図5】画像から望まれないピクセルを除去する方法の更なる例のフローチャートである。
図6】コンピュータ可読媒体と通信するプロセッサの例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示の実施形態はメカニズムであってそのメカニズムにより、望まれないピクセルが画像においてマスクされ得、又は画像から除去され得、関心領域(ROI)内に存在するピクセルだけを残すメカニズムを提供する。本明細書において使用されるとき、画像のROIは、観測者により観測される、及び評価される画像の部分を表すことを意図したものである。例えば、ROIは、医療画像の組織領域(例えば脳又は頭蓋)を含む。画像における望ましくないピクセルは、画像を分析することと、非常にテクスチャのある領域内に存在するピクセルを発見することとにより特定される。幾つかの医療画像(例えば位相画像)のテクスチャのある領域は、(例えば画像の背景領域に)組織が存在しない、又は、気体(例えば空気)がイメージングされる臓器における空洞内に存在するが臓器自体(すなわちROI)が視認不能な領域に対応する。これらのテクスチャのある領域は画像の観測者にとって有用性が低く又は無いので、このような領域内に存在するピクセルは「望まれないピクセル」と呼ばれる。医療画像において、例えば、望まれないピクセルは、組織に対応しないが画像に(例えばノイズとして)現れる領域内のピクセルであると考えられる。テクスチャのある領域の特定、ひいては望まれないピクセルの特定は、画像におけるピクセルに対するテクスチャ特徴値を評価することにより実現され、テクスチャ特徴値に基づいて、テクスチャのある領域内の位置である望まれないピクセルを含むマスクが生成される。元の画像にマスクを適用することにより、望まれないピクセルは画像からマスクされ、又は除去され得、1つ又は複数の関心領域のみを残す。
【0027】
図を参照すると、図1は、対象者の頭部の画像100の例である。この例では、画像100は位相画像であり、位相画像は、磁気共鳴イメージングを包含する幾つかのイメージングモダリティを使用して獲得された特定の種類の画像である。この例では、位相画像は頭部のスキャンにより獲得されたものである。しかし、他の例において、他の臓器がイメージングされてもよいことが理解される。位相画像の様々な領域はラベル付けされる。参照符号102の領域はイメージングされる臓器-この場合には頭部-の外部のエリアを表す。領域102におけるピクセルは、例えば、ノイズを含むピクセルの(実部と虚部とをもつ)ランダムな複素数の測定結果から位相値を演算した結果としての非ゼロ値(例えばグレースケール値)をもつ。これらの非ゼロ値は無意味である。参照符号104の領域は上述のようにピクセルが無意味な非ゼロ値をもつ臓器を形成する信号の外側境界内におけるエリアを表す。領域102及び104はそれらの斑点で覆われた又はスペックルのある外観の結果として「テクスチャがある」と考えられ、幾つかの例では、低い信号対ノイズ比(SNR)をもつと考えられる。比較すると、参照符号106の領域は画像において滑らかな外観をもち、これらの領域は、典型的には高いSNRをもつ対象者の頭部内における組織を表す。
【0028】
対照的なテクスチャのある領域と滑らかな領域とは、このような画像が生成される手法に起因して位相画像において特に明らかである。位相画像はI=I-φの形態の複素画像から導出されるので、位相画像は対応する振幅画像を含む。ここで、Iは獲得された複素画像であり、I及びφは複素画像から導出された振幅画像及び位相画像である。位相画像では、物理的パラメータ(又は定性的な位相コントラスト)は、範囲(-π、π)内の位相値、及び、スケール調整後の好ましい単位(例えばcm/s)で表されたピクセル値の観点で取得される。背景ピクセル又は非常に低いSNR(高ノイズ)のピクセル(例えば望まれないピクセル)のグレーレベル又はグレースケール値は、位相画像において無意味であり、典型的には-π又はπに近いランダム値をもつ。背景/低SNR領域(例えば領域102、104)における隣接したピクセルはそれらの間に一切の相関をもたないので、位相画像におけるそれらの領域は非常にテクスチャのあるものとして現れる。
【0029】
本明細書において説明されている画像処理技術を使用して、領域102、104内のピクセルが特定され得、マスクの適用を通して、それらのピクセル(すなわち望まれないピクセル)が画像からマスクされ、又は除去され得る。
【0030】
図2は、例えば画像100といった画像から望まれないピクセルを除去するためのシステム200の例の簡略化された概略図である。システム200は画像を獲得するためのイメージングデバイス202を含む。イメージングデバイス202は、例えば、(本明細書において対象者と呼ばれる)ヒト又は動物に関連した1つ又は複数の画像を獲得することが可能な医療イメージングスキャニングデバイスを備える。イメージングデバイス202は、例えばコンピュータ断層撮影(CT)、コンピュータ体軸断層撮影(CAT)、陽電子放射断層撮影(PET)、単光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)、磁気共鳴(MR)、超音波(US)、又は、イメージング技術の組み合わせを伴うハイブリッドイメージングモダリティといった医療イメージングモダリティを包含する任意の知られたイメージングモダリティを使用して画像をキャプチャする。
【0031】
イメージングデバイス202は、上述の図1に示されている画像100を含む、又は画像100と同様な画像204を生成する。幾つかの例では、画像204は位相画像を含む。しかし、本発明の実施形態が他の種類の画像にも適用されることが理解される。
【0032】
システム200内において、イメージングデバイス202は、画像204から望まれないピクセルを除去するために、例えば本明細書において開示されているものといった画像処理技術を実施するように構成された装置300と(例えば有線又は無線接続を介して)通信する。装置300は、コンピューティングデバイス(例えばワークステーション、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、装着型デバイス、又はサーバー)を備え、及び/又は、本明細書において開示されている機能を実施するように構成された1つ又は複数のプロセッサを含む。1つの装置300が図2に示されているが、他の例では、システム200が複数の装置を含んでもよい。例えば、各々がプロセッサを含む複数の装置が、1つ又は複数の処理ステップを実施するために使用される。
【0033】
装置300は、幾つかの実施形態において、イメージングデバイス202から画像204を受信するように構成される。例えば、イメージングデバイス202は、その獲得の後の処理のために装置300に画像204を直接送信する。他の例では、画像204は、装置300に提供される前に記憶のためにイメージングデバイス202からストレージデバイス(例えばメモリ)に提供される。例えば、獲得された画像204は、装置300に提供される前に記憶のために画像保管通信システム(PACS)206に提供される(例えばアップロードされる)。このような例において、装置300は、処理のためにPACS206から(又は任意の他のストレージデバイスから)画像204を取得し、又は入手する。
【0034】
例えば画像204といった画像から望まれないピクセルを除去する工程が、図3を参照して以下で詳細に説明される。しかし、概して画像204はピクセル単位の手法により分析され、各ピクセルに対して画像テクスチャ特徴値が特定される。画像テクスチャ特徴値に基づいて、画像204のテクスチャのある領域内に存在するピクセル(すなわち望まれないピクセル)が特定され得る。画像のテクスチャのある領域を含むマスクが生成され、生成されたマスクは、マスクされた領域内のピクセルをマスクする、又は除去するために画像204に適用され得る。装置300の出力は、望まれないピクセルを含まない元の画像204の1つのバージョンであるマスクされた画像208である。
【0035】
第1の態様によると、装置が提供される。図3は装置300の例の概略図である。装置300は画像における望まれないピクセルをマスキングするように構成されており、プロセッサ302を備える。プロセッサ302は、複数のピクセルを含む入力画像204を受信するように構成されている。図2を参照して既に説明されているように、入力画像204は、イメージングデバイス202から、又は、例えば画像データベース又はPACS206といった何らかの他の源から直接受信される。入力画像204は、幾つかの実施形態では、位相画像を含む。プロセッサ302は、複数のピクセルうちの各ピクセルに対して第1の画像テクスチャ特徴値を特定するように構成されている。特定のピクセルに対する第1の画像テクスチャ特徴値は、特定のピクセルが位置する領域のテクスチャの程度を示す。特に、ピクセルに対する第1の画像テクスチャ特徴値は、ピクセル及びその周辺のピクセルに基づくテクスチャを示す。プロセッサ302はマスクを第1の画像テクスチャ特徴値に基づいて生成するように、及び、マスクされた画像208を生成するために受信された入力画像204にマスクを適用するように更に構成されている。マスクの生成、及び、受信された入力画像204に対するマスクの適用は、以下で更に詳細に説明される。
【0036】
本発明が複数のピクセルの各々に対する第1の画像テクスチャ特徴値を特定する1つの手法は、グレーレベル同時生起行列を使用することによるものである。したがって、幾つかの実施形態では、プロセッサ302は、グレーレベル同時生起行列(GLCM)統計データを演算することと、GLCM統計データのうちの1つに基づいて第1の画像テクスチャ特徴値を特定することとにより、第1の画像テクスチャ特徴値の各々を特定するように構成される。GLCM統計データは、所与のピクセルを分析すること、及び、それに隣接したピクセルのグレーレベル(例えば0から255の範囲のグレースケール値)が所与のピクセルと同様であるか異なるかを特徴付けることにより演算される。上述のように、幾つかの画像タイプ(例えば位相画像)では、背景領域における、又は組織領域内のキャビティにおけるピクセルは、それらに隣接したピクセルとほとんど又は全く相関をもたず、画像にテクスチャのある外観を生み出す。所与のピクセルの隣接したピクセルを評価することは、所与のピクセルを中心とした3×3行列のピクセルにおけるピクセルを分析することにより実現される。他の例では、より大きいピクセル集合が所与のピクセルに関連して分析される。例えば、3×7行列のピクセル又は7×3行列のピクセルが分析される。他の行列サイズが代替的に使用されてもよく、幾つかの実施形態では、異なる行列サイズの組み合わせが使用されてもよい。より大きい行列を評価することが、大きいスペックルサイズのテクスチャを測定するために有用である。所与のピクセルの第1の画像テクスチャ特徴値(例えばグレーレベル同時生起行列統計データを表す値)はそのピクセルに関連しており、値は複数のピクセルのうちの全てのピクセルに対してピクセル単位の手法により特定される。幾つかの例では、複数のピクセルは入力画像204における全てのピクセルを含む。複数のピクセルに対する第1の画像テクスチャ特徴値が特定された後、入力画像204に対応した「統計マップ」が取得される。
【0037】
様々なグレーレベル同時生起行列統計データが演算され、後続の分析において画像テクスチャ特徴値として使用される。幾つかの実施形態では、演算された第1の画像テクスチャ特徴値は、コントラスト、相関、エネルギー、均一性、勾配、及びエントロピーのうちの1つを含む。例えば、GLCM勾配統計データは、所与のピクセルとそれに隣接したピクセルとの間のグレーレベルの差の標示を提供し、GLCMコントラスト統計データは、マトリックスにおける局所バリエーションの標示を提供し、GLCM相関統計データは、指定されたピクセルペアの同時確率発生の標示を提供し、GLCMエネルギー統計データは、行列における二乗された要素の和(これは一様さ又は角2次モーメントとも呼ばれる)の標示を提供し、GLCM均一性統計データは、対角行列に対する行列における要素の分布の近さの標示を提供する。概して、GLCM統計データの各々は、ある意味で局所テクスチャを特徴付ける。
【0038】
領域のテクスチャに関連した有用な情報は、複数のピクセルの各々に対するただ1つのGLCM統計データを演算することにより推定されるが、更に多くの有用な情報が、複数のピクセルの各々に対する複数のGLCM統計データを演算することにより推定される。したがって、プロセッサ302は、幾つかの実施形態では、複数のピクセルのうちの各ピクセルに対して複数の第2の画像テクスチャ特徴値を特定するように更に構成される。第2の画像テクスチャ特徴値の各々は、更なるGLCM統計データを演算することにより特定される。したがって、第1の画像テクスチャ特徴値は、第1のグレーレベル同時生起行列統計データに基づいて特定され、複数の第2の画像テクスチャ特徴値のうちの少なくとも1つは、第2のグレーレベル同時生起行列統計データに基づいて特定される。
【0039】
プロセッサ302は、第1の画像テクスチャ特徴値と第2の画像テクスチャ特徴値とを組み合わせるように更に構成される。言い換えると、複数のピクセルのうちの各ピクセルに対して、第1の画像テクスチャ特徴値が第2の画像テクスチャ特徴値と組み合わされる。例えば複数のピクセルのうちの各ピクセルに関連して特定されたGLCM統計データがコントラスト、相関、エネルギー、及び均一性である場合、各ピクセルに対する4つの画像テクスチャ特徴値(すなわち4つの異なるGLCM統計データ)が組み合わされる。画像テクスチャ値の組み合わせは、各ピクセル又はピクセル群に対するに対する1つの特徴ベクトルをもたらす。幾つかの例では、クラスター化技術(例えばk-meansクラスター化)が、特徴ベクトルにより表された組み合わされたテクスチャ特性に基づいてピクセルに対して実施される。これは、ピクセルが局所テクスチャの存在の程度の規定数のクラスターにグループ化されることをもたらす。
【0040】
複数のピクセルのうちの各ピクセルに対して1つの第2の画像テクスチャ特徴値又は複数の第2の画像テクスチャ特徴値が特定される。実施形態では、マスクの生成は第1の画像テクスチャ特徴値と複数の第2の画像テクスチャ特徴値とに基づく。
【0041】
幾つかの例では、画像テクスチャ特徴値は、(例えばルールベースのアルゴリズム又は機械学習ベースのアルゴリズムを通して)自動的に、又はオペレーターにより手動で設定された重みに従って重み付けされる。このような例において、プロセッサ302は、第1の画像テクスチャ特徴値に第1の重みを適用するように、及び、第2の画像テクスチャ特徴値に第2の重みを適用するように更に構成される。したがって、第1の画像テクスチャ特徴値及び第2の画像テクスチャ特徴値の組み合わせは、各ピクセルに対する値の加重和を含む。各ピクセルに対する組み合わされた値は、幾つかの例では、例えば0から1の間で、又は0から255の間で(例えば正規化により)スケール調整される。
【0042】
マスクは、複数のピクセルに対する組み合わされた値(すなわち第1の画像テクスチャ特徴値と第2の画像テクスチャ特徴値と組み合わせ)に基づいて生成される。例えば、ピクセルに対する組み合わされた値が閾値未満である場合、マスクが適用されず、入力画像204の対応するピクセルが変化せずに留まる(すなわち、テクスチャリングの程度が低く、したがって、ピクセルは「望まれないピクセル」ではない)ように閾値が適用される。閾値は一例において、0.7×複数のピクセルにわたる平均ピクセル値(例えばグレーレベル値)を含む。他の例では、異なる閾値が使用される。したがって、マスクを生成することは、複数のピクセルのうちの所与のピクセルに対する第1の画像テクスチャ特徴値が規定の閾値に一致したこと、又は規定の閾値を上回ったことを特定したことに応答して、所与のピクセルに関連したマスクを生成することを有する。重みが第1の画像テクスチャ特徴値及び/又は第2の画像テクスチャ特徴値に適用される例では、マスクの生成は、重み付けされた第1の画像テクスチャ特徴値及び第2の画像テクスチャ特徴値に基づく。
【0043】
ピクセルに対する組み合わされた値が閾値より高い場合、マスクが適用され、入力画像204の対応するピクセルがマスクされる、又は除去される(例えば、ピクセルのグレーレベルが0に変えられる)(すなわちテクスチャリングの程度が高く、したがって、ピクセルは「望まれないピクセル」である)。したがって、生成されたマスクは、入力画像204の対応するピクセルが留まるべきか削除されるべきかに応じて0と1との並びを含む。プロセッサ302は、例えば、入力画像204における複数のピクセルのうちの各々のグレーレベル値にマスクにおける対応するピクセルの値(例えば0又は1)を乗じることにより、受信された入力画像204にマスクを適用する。結果として得られるマスクされた画像208は、入力画像204のうちの「望まれている」ピクセル、すなわち関心領域(例えば組織)に対応したピクセルのみを含む。
【0044】
更なる態様によると、方法が提供される。図4は、方法400の例のフローチャートである。画像における望まれないピクセルをマスキングする方法と考えられる方法400は、コンピュータにより実施される方法を含む。方法400は、ステップ402において、複数のピクセルを含む入力画像204を受信することを有する。ステップ404において、方法400は、複数のピクセルうちの各ピクセルに対して第1の画像テクスチャ特徴値を特定することを有する。上述のように、幾つかの例では、第1の画像テクスチャ特徴値を特定することは、グレーレベル同時生起行列(GLCM)統計データを演算することと、GLCM統計データのうちの1つに基づいて第1の画像テクスチャ特徴値を特定することとを有する。方法400は、ステップ406において、マスクを第1の画像テクスチャ特徴値に基づいて生成することを有する。本明細書において開示されているように、マスクを生成するために閾値処理技術が使用される。ステップ408において、方法400は、マスクされた画像208を生成するために、受信された入力画像204にマスクを適用することを有する。
【0045】
図5は方法500の更なる例のフローチャートである。方法500はコンピュータにより実施される方法を更に有し、上述の方法400のもう1つのステップを有する。幾つかの実施形態では、方法500は、ステップ502において、複数のピクセルのうちの各ピクセルに対して複数の第2の画像テクスチャ特徴値を特定することを更に有する。他の例では、方法500は、各ピクセルに対してちょうど第1の画像テクスチャ特徴値と第2の画像テクスチャ特徴値とが特定されるように、複数のピクセルうちの各ピクセルに対して第2の画像テクスチャ特徴値を特定することを有する。幾つかの実施形態では、各ピクセルに対して2つの画像テクスチャ特徴値(例えば第1の画像テクスチャ特徴値及び第2の画像テクスチャ特徴値)が特定されるのに対し、他の実施形態では、各ピクセルに対して2つより多い画像テクスチャ特徴値が特定される。ステップ504において、方法500は、第1の画像テクスチャ特徴値と第2の画像テクスチャ特徴値とを組み合わせることを更に有する。画像テクスチャ特徴値を組み合わせることは、単純な加算、加重和、又は数値を組み合わせるための任意の他の技術を使用して達成される。各ピクセルに対して複数の画像テクスチャ特徴値が特定される実施形態では、ステップ406におけるマスクの生成は、第1の画像テクスチャ特徴値と複数の第2の画像テクスチャ特徴値とに基づく。
【0046】
画像テクスチャ特徴値は、様々なグレーレベル同時生起行列統計データに基づいて特定される。幾つかの実施形態では、第1の画像テクスチャ特徴値と第2の画像テクスチャ特徴値とのうちの少なくとも1つは、コントラスト、相関、エネルギー、均一性、勾配、及びエントロピーのうちの1つを含む。第1の画像テクスチャ特徴値は、幾つかの実施形態では、第1のグレーレベル同時生起行列統計データに基づいて特定され、複数の第2の画像テクスチャ特徴値のうちの少なくとも1つは、第2のグレーレベル同時生起行列統計データに基づいて特定される。このような実施形態では、マスクの生成(ステップ406)は、第1の画像テクスチャ特徴値と第2の画像テクスチャ特徴値との重み付けされた組み合わせに基づく。したがって、ステップ504において値が組み合わされるとき、重みが画像テクスチャ特徴値の各々に適用される(又はGLCM統計データの各々に適用される)。
【0047】
ステップ408において生成されたマスクされた画像208は元の入力画像204の代わりに、又は元の入力画像204とともに、例えば放射線科医といった観測者に対して使用のために提供される。マスクされた画像208は観測者が注目することを意図した関心領域(例えば組織の領域)に対応したピクセルを含むが、背景において、及び/又は、組織が存在しない臓器内の領域(例えば空気腔)内においてテクスチャのあるエリアとして現れる望まれないピクセルを含まない。ステップ506において、方法500は、記憶媒体における記憶のために、及び/又は、ディスプレイユニットにおける表示のために、マスクされた画像208を提供することを更に有する。幾つかの例では、マスクされた画像208はPACS206に提供され、及び記憶される。例えば、患者の電子健康記録(EHR)は、元の入力画像204とともに(例えば元の入力画像204に関連した)マスクされた画像208を含むように更新される。
【0048】
本明細書において開示されている方法400、500のステップは、1つ又は複数のコンピューティングデバイスの1つ又は複数のプロセッサを使用して実施される。幾つかの実施形態では、ステップの全てが1つのプロセッサ及び/又は1つのコンピューティングデバイスを使用して実施されるが、他の例では、方法の異なるステップが、異なるプロセッサ及び/又は異なるコンピューティングデバイスを使用して実施される。コンピューティングデバイスの例はデスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、スマートフォン、装着型デバイス、及び/又はサーバーを包含し、プロセッサ及び/又はコンピューティングデバイスのうちの1つ又は複数は、クラウドコンピューティング環境の一部を形成する。
【0049】
更なる態様によると、コンピュータプログラム製品が提供される。図6は、プロセッサ602と通信するコンピュータ可読媒体604の例の概略図である。プロセッサ602は、上述のプロセッサ302を備え、又は上述のプロセッサ302と同様である。コンピュータプログラム製品は非一時的なコンピュータ可読媒体604を備え、コンピュータ可読媒体は具現化されたコンピュータ可読コードを中に含み、適切なコンピュータ又はプロセッサ602による実行時に、コンピュータ又はプロセッサが本明細書において開示されている方法400、500のステップを実施するように構成されるようにコンピュータ可読コードが構成される。例えば、一実施形態によると、コンピュータ可読媒体は、プロセッサ602による実行時に、複数のピクセルを含む入力画像を受信することと、複数のピクセルうちの各ピクセルに対して第1の画像テクスチャ特徴値を特定することと、マスクを第1の画像テクスチャ特徴値に基づいて生成することと、マスクされた画像を生成するために、受信された入力画像にマスクを適用することとを実行するようにプロセッサが構成されるように構成されたコンピュータ可読コードを含む。
【0050】
本開示の実施形態はメカニズムであってそのメカニズムにより、入力画像(例えば医療画像、例えば位相画像)が望まれないピクセルを除去するために処理され得るメカニズムを提供する。様々な例において、望まれないピクセルは、入力画像の背景領域内のピクセル、及び/又は、画像の観測者にとって関心の小さい又は無いピクセルを含む。例えば画像におけるピクセルに対するグレーレベル同時生起行列統計データの特定を含むテクスチャ分析技術を使用することにより、画像のテクスチャのある領域が特定され得、それらのテクスチャのある領域のみを含むマスクが生成され得る。元の入力画像に生成されたマスクを適用することにより、観測者のために、及び更なる画像処理の観点から多くの利点を提供するマスクされた画像が取得され得る。マスクされた画像はよりクリーンであり、無意味なデータの領域がより少なく、つまり、観測者は画像の関連部分をより効果的に見る、及び分析することができる。更に、マスクされた画像に関連して実施される任意の更なる画像分析は、特に望まれているピクセルと望まれないピクセルとの境界付近の領域において、より正確である可能性が高い。マスクを生成するためのピクセルの画像テクスチャ特徴値の使用は、特に位相画像に現れ得る画像のテクスチャのある領域を特定するために特に効果的であることが示されている。本明細書において開示されている実施形態は、例えば、例えばMR感受性位相画像といった磁気共鳴(MR)イメージングを使用して血流量又は脳脊髄液(CSF)流量を測定するために獲得された画像といった流速画像、又はMRガイド式高密度焦点式超音波(HIFU)における温度マップを処理するために特に有益である。
【0051】
プロセッサ302、602は、本明細書において説明されている手法により装置300を制御するように構成された、又はプログラムされた1つ又は複数のプロセッサ、処理ユニット、マルチコアプロセッサ、又はモジュールを備え得る。特定の実施態様において、プロセッサ302、602は、本明細書において説明されている方法の個々のステップ又は複数のステップを実施するように、又は実施するために各々が構成された複数のソフトウェア及び/又はハードウェアモジュールを含み得る。
【0052】
本明細書において使用される「モジュール」という用語は、特定の機能を実施するように構成されたプロセッサ又はプロセッサのコンポーネントといったハードウェアコンポーネント、又は、プロセッサにより実行されたときに特定の機能をもつ命令データ集合といったソフトウェアコンポーネントを包含することを意図したものである。
【0053】
以下の付記項は有益で例示なものと考えられる。実施形態はこの付記項に限定されない。
【0054】
付記項1.画像における望まれないピクセルをマスキングするための装置(300)であって、装置が、
複数のピクセルを含む入力画像(204)を受信することと、
複数のピクセルうちの各ピクセルに対して第1の画像テクスチャ特徴値を特定することと、
マスクを第1の画像テクスチャ特徴値に基づいて生成することと、
マスクされた画像(208)を生成するために、受信された入力画像にマスクを適用することと、
を実行するように構成されたプロセッサ(302)を備える、
装置(300)。
【0055】
付記項2.プロセッサ(302)が、
グレーレベル同時生起行列(GLCM)統計データを演算することと、
GLCM統計データのうちの1つに基づいて第1の画像テクスチャ特徴値を特定することと、
により、第1の画像テクスチャ特徴値の各々を特定するように構成される、
付記項1に記載の装置(300)。
【0056】
付記項3.演算された第1の画像テクスチャ特徴値が、コントラスト、相関、エネルギー、均一性、勾配、及びエントロピーのうちの1つを含む、
付記項1又は付記項2に記載の装置(300)。
【0057】
付記項4.プロセッサ(302)が、
複数のピクセルのうちの各ピクセルに対して複数の第2の画像テクスチャ特徴値を特定することと、
第1の画像テクスチャ特徴値と第2の画像テクスチャ特徴値とを組み合わせることと、
を実行するように更に構成され、
マスクの生成が、第1の画像テクスチャ特徴値と複数の第2の画像テクスチャ特徴値とに基づく、
先行する付記項のいずれか一項に記載の装置(300)。
【0058】
付記項5.第1の画像テクスチャ特徴値が、第1のグレーレベル同時生起行列統計データに基づいて特定され、複数の第2の画像テクスチャ特徴値のうちの少なくとも1つが、第2のグレーレベル同時生起行列統計データに基づいて特定される、
付記項4に記載の装置(300)。
【0059】
付記項6.プロセッサ(302)が、
第1の画像テクスチャ特徴値に第1の重みを適用することと、
第2の画像テクスチャ特徴値に第2の重みを適用することと、
を実行するように更に構成され、
マスクの生成が、重み付けされた第1の画像テクスチャ特徴値及び重み付けされた第2の画像テクスチャ特徴値に基づく、
付記項4又は付記項5に記載の装置(300)。
【0060】
付記項7.入力画像(204)が、位相画像を含む、
先行する付記項のいずれか一項に記載の装置(300)。
【0061】
付記項8.マスクを生成することが、複数のピクセルのうちの所与のピクセルに対する第1の画像テクスチャ特徴値が規定の閾値に一致したこと、又は規定の閾値を上回ったことを特定したことに応答して、所与のピクセルに関連したマスクを生成することを有する、
先行する付記項のいずれか一項に記載の装置(300)。
【0062】
付記項9.画像における望まれないピクセルをマスキングするためのコンピュータにより実施される方法(400)であって、方法が、
複数のピクセルを含む入力画像を受信すること(402)と、
複数のピクセルのうちの各ピクセルに対して第1の画像テクスチャ特徴値を特定すること(404)と、
マスクを第1の画像テクスチャ特徴値に基づいて生成すること(406)と、
マスクされた画像を生成するために、受信された入力画像にマスクを適用すること(408)と、
を有する、方法(400)。
【0063】
付記項10.第1の画像テクスチャ特徴値を特定することが、
グレーレベル同時生起行列(GLCM)統計データを演算することと、
GLCM統計データのうちの1つに基づいて第1の画像テクスチャ特徴値を特定することと、
を有する、付記項9に記載のコンピュータにより実施される方法(400)。
【0064】
付記項11.複数のピクセルのうちの各ピクセルに対して複数の第2の画像テクスチャ特徴値を特定すること(502)と、
第1の画像テクスチャ特徴値と第2の画像テクスチャ特徴値と組み合わせること(504)と、
を更に有し、
マスクの生成が、第1の画像テクスチャ特徴値と複数の第2の画像テクスチャ特徴値とに基づく、
付記項9又は付記項10に記載のコンピュータにより実施される方法(400、500)。
【0065】
付記項12.第1の画像テクスチャ特徴値と第2の画像テクスチャ特徴値とのうちの少なくとも1つが、コントラスト、相関、エネルギー、均一性、勾配、及びエントロピーのうちの1つを有する、
付記項11に記載のコンピュータにより実施される方法(400、500)。
【0066】
付記項13.第1の画像テクスチャ特徴値が、第1のグレーレベル同時生起行列統計データに基づいて特定され、複数の第2の画像テクスチャ特徴値のうちの少なくとも1つが、第2のグレーレベル同時生起行列統計データに基づいて特定され、
マスクの生成が、第1の画像テクスチャ特徴値と第2の画像テクスチャ特徴値との重み付けされた組み合わせに基づく、
付記項11又は付記項12に記載のコンピュータにより実施される方法(400、500)。
【0067】
付記項14.記憶媒体における記憶のために、又はディスプレイユニットにおける表示のためにマスクされた画像を提供すること(506)を更に有する、
付記項9から付記項13のいずれか一項に記載のコンピュータにより実施される方法(400、500)。
【0068】
付記項15.非一時的なコンピュータ可読媒体(604)を備えるコンピュータプログラム製品であって、コンピュータ可読媒体が、具現化されたコンピュータ可読コードを中に含み、コンピュータ可読コードが、適切なコンピュータ又はプロセッサ(602)による実行時に、コンピュータ又はプロセッサが付記項9から付記項14のいずれか一項に記載の方法を実施させられるように構成される、
コンピュータプログラム製品(604)。
【0069】
本発明を実施するように適応された、特に媒体上の、又は媒体内のコンピュータプログラムといったコンピュータプログラムにも本発明の実施形態が適用されることが理解される。プログラムは、ソースコード、オブジェクトコード、コード中間ソース、及び例えば部分的にコンパイルされた形態のオブジェクトコードの形態によるもの、又は、本発明の実施形態による方法の実施態様における使用に適した任意の他の形態によるものであってもよい。このようなプログラムが多くの異なるアーキテクチャ設計を採用してもよいことが更に理解される。例えば、本発明による方法又はシステムの機能を実現するプログラムコードは、1つ又は複数のサブルーチンに再分割されてもよい。これらのサブルーチン間で機能を分散する多くの異なる手法が当業者に明らかとなる。サブルーチンは、1つの実行可能ファイルに一緒に記憶されて内蔵プログラムを形成してもよい。このような実行可能ファイルは、例えば、プロセッサ命令及び/又はインタープリター命令(例えばJavaインタープリター命令)といったコンピュータ実行可能命令を含む。代替的に、サブルーチンのうちの1つ又は複数又は全てが、少なくとも1つの外部ライブラリファイルに記憶され、及び、静的に、又は動的に、例えば実行時にメインプログラムにリンクされてもよい。メインプログラムはサブルーチンのうちの少なくとも1つに対する少なくとも1つのコールを含む。サブルーチンは、互いに対する関数コールを更に含んでもよい。コンピュータプログラム製品に関連した実施形態は、本明細書に記載されている方法のうちの少なくとも1つの各処理ステージに対応したコンピュータ実行可能命令を含む。これらの命令は、サブルーチンに再分割されてもよく、及び/又は静的に、又は動的にリンクされる1つ又は複数のファイルに記憶されてもよい。コンピュータプログラム製品に関連した別の実施形態は、本明細書に記載されているシステム及び/又は製品のうちの少なくとも1つの各手段に対応したコンピュータ実行可能命令を含む。これらの命令は、サブルーチンに再分割されてもよく、及び/又は静的に、又は動的にリンクされる1つ又は複数のファイルに記憶されてもよい。
【0070】
コンピュータプログラムの媒体は、プログラムを記録することが可能な任意の実体又はデバイスであってもよい。例えば、媒体はデータストレージ、例えばROM、例えば、CD ROM又は半導体ROM、又は、磁気記憶媒体、例えば、ハードディスクを包含する。更に、媒体は電気又は光学ケーブルを介して、又は、無線又は他の手段により搬送される電気又は光信号などの伝送可能媒体であってもよい。プログラムがこのような信号において具現化される場合、媒体はこのようなケーブル、又は、他のデバイス又は手段により構成されてもよい。代替的に、媒体はプログラムが中に組み込まれた集積回路であってもよく、集積回路は関連する方法を実施するように適応され、又は関連する方法の実施に使用される。
【0071】
開示されている実施形態の変形例は、図面、本開示、及び添付の特許請求の範囲の考察により、本明細書において説明されている原理及び技術を実現するときに当業者により理解され、及び実施され得る。特許請求の範囲において、「備える(含む、有する、もつ)」という表現は、他の要素もステップも排除せず、単数形の要素は複数を排除しない。1つのプロセッサ又は他のユニットが、特許請求の範囲に記載されている幾つかの項目の機能を実現してもよい。単に特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているということが、利点を得るためにこれらの手段の組み合わせが使用不可能なことを示すわけではない。コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒に、又は他のハードウェアの一部として供給される光記憶媒体又はソリッドステート媒体などの適切な媒体に記憶されてもよく、又は、これらの適切な媒体に格納して配布されてもよいが、例えばインターネット又は他の有線又は無線遠隔通信システムを介して他の形態で配布されてもよい。特許請求の範囲における参照符号は、いずれも特許請求の範囲を限定するように解釈されてはならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】