(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】噴射特性を測定するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
B29C 64/393 20170101AFI20240403BHJP
B29C 64/112 20170101ALI20240403BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20240403BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20240403BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20240403BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20240403BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
B29C64/393
B29C64/112
B05C5/00 101
B05C11/10
B05D1/26 Z
B05D3/00 D
B41J2/01 401
B41J2/01 207
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558826
(86)(22)【出願日】2022-03-24
(85)【翻訳文提出日】2023-11-01
(86)【国際出願番号】 IL2022050325
(87)【国際公開番号】W WO2022201159
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513131464
【氏名又は名称】ストラタシス リミテッド
【住所又は居所原語表記】1 Holtzman Street, Science Park, P.O. Box 2496, 7612401 Rehovot, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シンワニ、オマー
(72)【発明者】
【氏名】オットレンギ、ガイ
【テーマコード(参考)】
2C056
4D075
4F041
4F042
4F213
【Fターム(参考)】
2C056EB15
2C056EB34
2C056EB40
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2C056EC40
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2C056EC72
4D075AA84
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(57)【要約】
印刷システムは、複数のノズルを有するインクジェット印刷ヘッドと、液体材料を収容し且つヘッドに液体材料を供給するための導管によってヘッドと流体連通する容器とを備える。印刷システムはまた、導管の出口における圧力を示す信号を生成するように構成された圧力センサと、導管を介して受け取った液体材料をノズルを通して吐出するようにヘッドを制御し、圧力に基づいて1又は複数の噴射特性を計算するように構成されたコントローラとを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルを有するインクジェット印刷ヘッドと、
液体材料を収容し、前記ヘッドに前記液体材料を供給するための導管によって前記ヘッドと流体連通する容器と、
前記導管の出口における圧力を示す信号を生成するように構成された圧力センサと、
前記導管を介して受け取った液体材料を前記ノズルを介して吐出するように前記ヘッドを制御し、前記圧力に基づいて少なくとも1つの噴射特性を計算するように構成されたコントローラと、
を備える印刷システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの噴射特性は、前記ヘッドから吐出される平均液滴質量を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コントローラは、計算された前記平均液滴質量に基づいて前記ヘッドに印加される電圧を調整するように構成される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの噴射特性は、前記ノズルからの吐出イベントの数当たりの質量変化を含む、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの噴射特性は、前記ヘッド内の動作可能なノズルの数を含む、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記コントローラは、前記動作可能なノズルの数に基づいて、前記複数のノズルの中から、少なくとも1つのノズルが不良であるノズルのサブセットを識別するように構成される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記コントローラは、前記動作可能なノズルの数に基づいて、前記複数のノズルの中から不良ノズルを個別に識別するように構成される、請求項5及び請求項6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの噴射特性は、前記ノズルを通る質量流量を含む、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記コントローラは、外部ソースからコンピュータ印刷データを受信し、前記コンピュータ印刷データに従って印刷パターンを形成しながら前記少なくとも1つの噴射特性を計算するように構成される、請求項1~請求項8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記コントローラは、ノイズ低減手順を実行するように構成される、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記ヘッドは前記容器よりも高いレベルにある、請求項1~請求項10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記ヘッドは、前記容器よりも低いレベルにあり、前記容器は、大気への開口部を有し、前記導管によって前記ヘッドに接続されているサブタンクを介して前記ヘッドに供給する、請求項1~請求項10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
2次元印刷システムである、請求項1~請求項10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
3次元印刷システムである、請求項1~請求項10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
印刷ヘッドに液体材料を供給する導管の出口における圧力を示す信号を圧力センサから受信することと、
前記圧力に基づいて少なくとも1つの噴射特性を計算することと、
を含む、印刷システムの噴射特性を計算する方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの噴射特性は、前記ヘッドから吐出される平均液滴質量を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
計算された前記平均液滴質量に基づいて前記ヘッドに印加される電圧を調整することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの噴射特性は、前記ノズルからの吐出イベントの数当たりの質量変化を含む、請求項15~請求項17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの噴射特性は、前記ヘッド内の動作可能なノズルの数を含む、請求項15~請求項18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記動作可能なノズルの数に基づいて、前記複数のノズルの中から、少なくとも1つのノズルが不良であるノズルのサブセットを識別することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記動作可能なノズルの数に基づいて、前記複数のノズルの中から不良ノズルを個別に識別することを含む、請求項19及び請求項20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1つの噴射特性は、前記ノズルを通る質量流量を含む、請求項15~請求項21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
外部ソースからコンピュータ印刷データを受信することと、前記コンピュータ印刷データに従って印刷パターンを形成しながら前記少なくとも1つの噴射特性を計算することと、を含む、請求項15~請求項22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
ノイズ低減手順を実行することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記印刷システムは2次元印刷システムである、請求項15~請求項24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記印刷システムは3次元印刷システムである、請求項15~請求項24のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年3月25日に出願された米国仮特許出願第63/165,804号の優先権の利益を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、そのいくつかの実施形態では、印刷に関し、より具体的には、限定はしないが、1又は複数の噴射特性、例えば、限定はしないが、液滴サイズ及びノズル機能性などを測定するための方法及びシステムに関する。
【0003】
付加製造(AM)は、付加形成工程を介してコンピュータデータから成形構造を直接製造することを可能にする技術である。任意のAMシステムの基本的な動作は、3次元コンピュータモデルを薄い断面にスライスすることと、結果を2次元位置データに変換することと、層ごとに3次元構造を製造する制御機器にデータを供給することとからなる。
【0004】
付加製造は、3Dインクジェット印刷、電子ビーム溶融、ステレオリソグラフィ、選択的レーザ焼結、積層物体製造、溶融堆積モデリングなどの3次元(3D)印刷を含む、製造方法に対する多くの異なるアプローチを伴う。
【0005】
いくつかの3D印刷プロセス、例えば3Dインクジェット印刷は、構築材料の層ごとのインクジェット堆積によって実行されている。したがって、構築材料は、支持構造上に層を堆積させるために一組のノズルを有する吐出ヘッドから吐出される。次いで、構築材料に応じて、適切なデバイスを使用して層は硬化又は固化され得る。
【0006】
様々な3次元印刷技術が存在し、例えば、すべて同じ譲受人による米国特許第6,259,979号、第6,569,373号、第6,658,314号、第6,850,334号、第6,863,859号、第7,183,335号、第7,209,797号、第7,225,045号、第7,300,619号、第7,500,846号、第9,031,680号及び第9,227,365号、米国特許出願公開第20060054039号、並びに国際公開第2016/009426号に開示されており、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0007】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、印刷システムが提供される。システムは、複数のノズルを有するインクジェット印刷ヘッドと、液体材料を収容し、ヘッドに液体材料を供給するための導管によってヘッドと流体連通する容器と、導管の出口における圧力を示す信号を生成するように構成された圧力センサと、導管を介して受け取った液体材料をノズルを介して吐出するようにヘッドを制御し、圧力に基づいて少なくとも1つの噴射特性を計算するように構成されたコントローラと、を備える。
【0008】
本発明のいくつかの実施形態によれば、コントローラは、外部ソースからコンピュータ印刷データを受信し、コンピュータ印刷データに従って印刷パターンを形成しながら噴射特性を計算するように構成される。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態によれば、コントローラは、ノイズ低減手順を実行するように構成される。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ヘッドは容器よりも高いレベルにある。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ヘッドは、容器よりも低いレベルにあり、容器は、大気への開口部を有し、導管によってヘッドに接続されているサブタンクを介してヘッドに供給する。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、印刷システムの噴射特性を計算する方法が提供される。方法は、印刷ヘッドに液体材料を供給する導管の出口における圧力を示す信号を圧力センサから受信することと、前記圧力に基づいて少なくとも1つの噴射特性を計算することと、を含む。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態によれば、方法は、外部ソースからコンピュータ印刷データを受信することと、コンピュータ印刷データに従って印刷パターンを形成しながら噴射特性を計算することと、を含む。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態によれば、方法は、ノイズ低減手順を実行することを含む。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態によれば、噴射特性は、ヘッドから吐出される平均液滴質量を含む。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態によれば、方法は、計算された平均液滴質量に基づいてヘッドに印加される電圧を調整することを含む。本発明のいくつかの実施形態によれば、コントローラは、計算された平均液滴質量に基づいてヘッドに印加される電圧を調整するように構成される。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態によれば、噴射特性は、ノズルからの吐出イベントの数当たりの質量変化を含む。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態によれば、噴射特性は、ヘッド内の動作可能なノズルの数を含む。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態によれば、方法は、動作可能なノズルの数に基づいて、複数のノズルの中から、少なくとも1つのノズルが不良であるノズルのサブセットを識別することを含む。本発明のいくつかの実施形態によれば、コントローラは、動作可能なノズルの数に基づいて、複数のノズルの中から、少なくとも1つのノズルが不良であるノズルのサブセットを識別するように構成される。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態によれば、噴射特性は、ノズルを通る質量流量を含む。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態によれば、方法は、動作可能なノズルの数に基づいて、複数のノズルの中から不良ノズルを個別に識別することを含む。本発明のいくつかの実施形態によれば、コントローラは、動作可能なノズルの数に基づいて、複数のノズルの中から不良ノズルを個別に識別するように構成される。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態によれば、システムは2次元印刷システムである。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態によれば、システムは3次元印刷システムである。
【0024】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び/又は科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載の方法及び材料と類似又は同等の方法及び材料を本発明の実施形態の実施又は試験に使用することができるが、例示的な方法及び/又は材料を以下に記載する。矛盾する場合、定義を含む特許明細書が優先する。さらに、材料、方法、及び実施例は例示にすぎず、必ずしも限定することを意図するものではない。
【0025】
本発明の実施形態の方法及び/又はシステムの実施は、選択されたタスクを手動で、自動的に、又はそれらの組合せで実行又は完了することを含むことができる。さらに、本発明の方法及び/又はシステムの実施形態の実際の計装及び機器によれば、いくつかの選択されたタスクは、オペレーティングシステムを使用してハードウェア、ソフトウェア若しくはファームウェア、又はそれらの組合せによって実施することができる。
【0026】
例えば、本発明の実施形態による選択されたタスクを実行するためのハードウェアは、チップ又は回路として実装することができる。ソフトウェアとして、本発明の実施形態による選択されたタスクは、任意の適切なオペレーティングシステムを使用してコンピュータによって実行される複数のソフトウェア命令として実装することができる。本発明の例示的な実施形態では、本明細書に記載の方法及び/又はシステムの例示的な実施形態による1又は複数のタスクは、複数の命令を実行するためのコンピューティングプラットフォームなどのデータプロセッサによって実行される。所望により、データプロセッサは、命令及び/又はデータを記憶するための揮発性メモリ、及び/又は命令及び/又はデータを記憶するための不揮発性記憶装置、例えば磁気ハードディスク及び/又はリムーバブルメディアを含む。所望により、ネットワーク接続も提供される。ディスプレイ及び/又はキーボード又はマウスなどのユーザ入力装置もまた、所望により提供される。
本発明のいくつかの実施形態は、添付の図面を参照して、単なる例として本明細書に記載されている。ここで詳細に図面を特に参照すると、示されている詳細は例としてのものであり、本発明の実施形態の例示的な説明のためのものであることが強調される。この点に関して、図面を用いてなされた説明は、本発明の実施形態がどのように実施され得るかを当業者に明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1A】本発明のいくつかの実施形態による付加製造システムの概略図である。
【
図1B】本発明のいくつかの実施形態による付加製造システムの概略図である。
【
図1C】本発明のいくつかの実施形態による付加製造システムの概略図である。
【
図1D】本発明のいくつかの実施形態による付加製造システムの概略図である。
【
図2A】本発明のいくつかの実施形態による印刷ヘッドの概略図である。
【
図2B】本発明のいくつかの実施形態による印刷ヘッドの概略図である。
【
図2C】本発明のいくつかの実施形態による印刷ヘッドの概略図である。
【
図3A】本発明のいくつかの実施形態による座標変換を示す概略図である。
【
図3B】本発明のいくつかの実施形態による座標変換を示す概略図である。
【
図4A】本発明のいくつかの実施形態による印刷システムを示す概略図である。
【
図4B】本発明のいくつかの実施形態による印刷システムを示す概略図である。
【
図5】本発明のいくつかの実施形態に従って行われた実験において得られた、印刷ヘッドからの高さの関数として測定圧力を示す図である。
【
図6】本発明のいくつかの実施形態に従って行われた実験において得られた、印刷ヘッドから噴射された質量の関数として測定圧力と導管の断面積との積を示す図である。
【
図7A】本発明のいくつかの実施形態に従って行われた実験において得られた、時間の関数として圧力センサによって測定された圧力を示す図である。
【
図8A】本発明のいくつかの実施形態に従って行われた実験において得られた、時間の関数として、圧力センサによって測定された圧力(左の縦座標)及び対応する発射イベント当たりの質量変化(右の縦座標)を示す図である。
【
図8B】本発明のいくつかの実施形態に従って行われた実験において得られた、動作可能なノズルの数(
図8B)の関数として、噴射中の圧力ジャンプ(左の縦座標)及び発射イベント当たりの対応する質量変化(右の縦座標)を示す図である。
【
図9A】本発明のいくつかの実施形態に従って行われた実験において得られた、時間の関数として、圧力センサによって測定された圧力(左の縦座標)及び対応する液滴質量(右の縦座標)を示す図である。
【
図9B】本発明のいくつかの実施形態に従って行われた実験において得られた、印刷ヘッドに印加される電圧の関数として、噴射中の圧力ジャンプ(左の縦座標)及び対応する液滴質量(右の縦座標)を示す図である。
【
図10A】本発明のいくつかの実施形態に従って行われた実験において得られた、ノズルのインデックスの関数として、噴射中に圧力センサによって測定された圧力と、噴射なしで圧力センサによって測定された圧力との間の差(左の縦座標)、及び対応する液滴質量(右の縦座標)を示す図である。
【
図10B】本発明のいくつかの実施形態に従って行われた実験において得られた、ノズルのインデックスの関数として、噴射中に圧力センサによって測定された圧力と、噴射なしで圧力センサによって測定された圧力との間の差(左の縦座標)、及び対応する液滴質量(右の縦座標)を示す図である。
【
図11】本発明のいくつかの実施形態による、時間の関数として圧力のグラフにわたる測定サンプリングを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、そのいくつかの実施形態では、印刷に関し、より具体的には、限定はしないが、1又は複数の噴射特性、例えば、限定はしないが、液滴サイズ及びノズル機能性などを測定するための方法及びシステムに関する。
【0029】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の説明に記載され、及び/又は図面及び/又は実施例に示される構成要素及び/又は方法の構造及び配置の詳細に必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、又は様々な方法で実施又は実行することができる。
【0030】
本実施形態の方法及びシステムは、好ましくはインクジェット印刷に使用される。本発明のいくつかの実施形態では、方法及びシステムは、2次元物体を受け基板上に印刷する印刷システムによって使用され、本発明のいくつかの実施形態では、方法及びシステムは、物体の形状に対応する構成されたパターンで複数の層を形成することによって層ごとに3次元物体を製造する印刷システムによって使用される。以下の実施形態は、3次元印刷により重点を置いて説明されるが、2次元印刷も考えられることを理解されたい。
【0031】
印刷は、印刷データに基づく。3次元印刷が使用される場合、印刷データは、これらに限定されないが、標準テッセレーション言語(STL)又はステレオリソグラフィ輪郭(SLC)フォーマット、OBJファイルフォーマット(OBJ)、3D製造フォーマット(3MF)、仮想現実モデリング言語(VRML)、付加製造ファイル(AMF)フォーマット、図面交換フォーマット(DXF)、ポリゴンファイルフォーマット(PLY)、又はコンピュータ支援設計(CAD)に適した任意の他のフォーマットなどの任意の既知のフォーマットとすることができるコンピュータオブジェクトデータを含む。
【0032】
本明細書で使用される「物体」という用語は、物体全体(2D又は3D)又はその一部を指す。
【0033】
各層は、2次元表面を走査してそれをパターン化するAM装置によって形成することができる。走査中、装置は、2次元層又は表面上の複数の目標位置を訪問し、各目標位置又は目標位置のグループについて、目標位置又は目標位置のグループが構築材料配合物によって占められるべきかどうか、及びどのタイプの構築材料配合物がそこに送達されるべきかを決定する。決定は、表面のコンピュータ画像に従って行われる。
【0034】
本発明の好ましい実施形態では、AMは、3次元印刷、より好ましくは3次元インクジェット印刷を含む。これらの実施形態では、支持構造体上に層状に構築材料を堆積させるために、1又は複数のノズルアレイを有する印刷ヘッドから構築材料が吐出される。したがって、AM装置は、占有されるべき目標位置に構築材料を吐出し、他の目標位置を空に残す。装置は、典型的には、複数のノズルアレイを含み、その各々は、異なる構築材料を吐出するように構成することができる。これは、典型的には、互いに分離された複数の流体チャネルを印刷ヘッドに設けることによって達成され、各チャネルは、別個の入口を介して異なる構築材料を受け取り、それを異なるノズルアレイに搬送する。
【0035】
したがって、異なる目標位置は、異なる構築材料配合物によって占有され得る。構築材料配合物のタイプは、2つの主要なカテゴリー、すなわち、モデリング材料配合物及び支持材料配合物に分類することができる。支持材料配合物は、製造プロセス及び/又は他の目的、例えば、中空又は多孔性の物体を提供する間に物体又は物体部分を支持するための支持マトリックス又は支持構造として機能する。支持構造は、例えばさらなる支持強度のために、モデリング材料配合物要素をさらに含み得る。
【0036】
モデリング材料配合物は、一般に、付加製造に使用するために配合され、単独で、すなわち、任意の他の物質と混合又は組み合わせる必要なく、3次元物体を形成することができる組成物である。
【0037】
最終的な3次元物体は、モデリング材料配合物、又はモデリング材料配合物若しくはモデリング材料配合物及び支持材料配合物の組合せ、又はそれらの修正(例えば、硬化後)で作製される。これらの動作はすべて、固体自由造形の当業者に周知である。
【0038】
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、物体は、2つ以上の異なるモデリング材料配合物を吐出することによって製造され、各材料配合物は、AM装置の(同じ又は異なる印刷ヘッドに属する)異なるノズルアレイからのものである。いくつかの実施形態では、異なるモデリング材料配合物を吐出する2つ以上のそのようなノズルアレイは、いずれもAM装置の同じ印刷ヘッドに配置される。いくつかの実施形態において、異なるモデリング材料配合物を吐出するノズルアレイは、別々の印刷ヘッドに配置され、例えば、第1のモデリング材料配合物を吐出する第1のノズルアレイは、第1の印刷ヘッドに配置され、第2のモデリング材料配合物を吐出する第2のノズルアレイは、第2の印刷ヘッドに配置される。
【0039】
いくつかの実施形態において、モデリング材料配合物を吐出するノズルアレイと、支持材料配合物を吐出するノズルアレイとは、両方とも同じ印刷ヘッドに配置される。いくつかの実施形態において、モデリング材料配合物を吐出するノズルアレイと、支持材料配合物を吐出するノズルアレイとは、別々の印刷ヘッドに配置される。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態による物体112のAMに適したシステム110の代表的で非限定的な例を
図1Aに示す。システム110は、複数の印刷ヘッドを備える吐出ユニット16を有する付加製造装置114を備える。各ヘッドは、好ましくは、後述の
図2A~
図2Cに示すように、典型的にはオリフィスプレート121に取り付けられたノズル122の1又は複数のアレイを備え、それを通して液体構築材料配合物124が吐出される。
【0041】
好ましくは、必須ではないが、装置114は3次元印刷装置であり、この場合、印刷ヘッドは印刷ヘッドであり、構築材料配合物はインクジェット技術を介して吐出される。一部の用途では、付加製造装置が3次元印刷技術を使用する必要がない場合があるため、これは必ずしもそうである必要はない。本発明の様々な例示的な実施形態に従って企図される付加製造装置の代表的な例には、溶融堆積モデリング装置及び溶融材料配合物堆積装置が含まれるが、これらに限定されない。
【0042】
各印刷ヘッドには、所望により、好ましくは、温度制御ユニット(例えば、温度センサ及び/又は加熱装置)及び材料配合物レベルセンサを所望により含み得る1又は複数の構築材料配合物リザーバを介して供給される。構築材料配合物を吐出するために、例えば圧電インクジェット印刷技術におけるように、印刷ヘッドノズルを介して材料配合物の液滴を選択的に堆積させるために印刷ヘッドに電圧信号が印加される。別の例は、サーマルインクジェット印刷ヘッドを含む。これらのタイプのヘッドには、電圧信号によるヒータ要素の作動時に、構築材料配合物を加熱してその中に気泡を形成するために、構築材料配合物と熱接触するヒータ要素がある。気泡は、構築材料配合物中に圧力を発生させ、構築材料配合物の液滴をノズルから放出させる。圧電及びサーマル印刷ヘッドは、固体自由造形の当業者に知られている。任意のタイプのインクジェット印刷ヘッドについて、ヘッドの吐出速度は、ノズルの数、ノズルのタイプ、及び印加電圧信号速度(周波数)に依存する。
所望により、吐出ノズル又は吐出ノズルアレイの総数は、吐出ノズルの半数が、支持材料配合物を吐出するために指定され、吐出ノズルの半数が、モデリング材料配合物を吐出するために指定されるように選択され、すなわち、モデリング材料配合物を噴射するノズルの数は、支持材料配合物を噴射するノズルの数と同じである。
図1Aの代表例では、4つの印刷ヘッド16a、16b、16c及び16dを示している。ヘッド16a、16b、16c及び16dの各々は、ノズルアレイを有している。この実施例において、ヘッド16a及び16bは、モデリング材料配合物のために指定することができ、ヘッド16c及び16dは、支持材料配合物のために指定することができる。したがって、ヘッド16aは、あるモデリング材料配合物を吐出することができ、ヘッド16bは、別のモデリング材料配合物を吐出することができ、ヘッド16c及び16dは両方とも、支持材料配合物を吐出することができる。代替的な実施形態において、ヘッド16c及び16dは、例えば、支持材料配合物を堆積させるための2つのノズルアレイを有する単一のヘッドにおいて組み合わされてもよい。さらなる代替的な実施形態において、任意の1又は複数の印刷ヘッドは、2つ以上の材料配合物を堆積させるための2つ以上のノズルアレイ、例えば、2つの異なるモデリング材料配合物又はモデリング材料配合物及び支持材料配合物を堆積させるための2つのノズルアレイを有してもよく、各配合物は、異なるアレイ又は数のノズルを介している。
【0043】
しかし、本発明の範囲を限定するものではなく、モデリング材料配合物印刷ヘッド(モデリングヘッド)の数と、支持材料配合物印刷ヘッド(支持ヘッド)の数とは、異なっていてもよい。一般に、モデリング材料配合物を吐出するノズルアレイの数、支持材料配合物を吐出するノズルアレイの数、及び各それぞれのアレイにおけるノズルの数は、支持材料配合物の最大吐出速度とモデリング材料配合物の最大吐出速度との間の所定の比aを提供するように選択される。所定の比aの値は、好ましくは、形成された各層において、モデリング材料配合物の高さが支持材料配合物の高さに等しくなるように選択される。aの典型的な値は、約0.6~約1.5である。
【0044】
本明細書全体で使用される場合、用語「約」は±10%を指す。
【0045】
例えば、a=1の場合、支持材料配合物の全体的な吐出速度は、一般に、すべてのノズルアレイが動作するときのモデリング材料配合物の全体的な吐出速度と同じである。
装置114は、例えば、各々がp個のノズルのm個のアレイを有するM個のモデリングヘッドと、各々がq個のノズルのs個のアレイを有するS個の支持ヘッドとを、M×m×p=S×s×qとなるように備えることができる。M×m個のモデリングアレイ及びS×s個の支持アレイの各々は、アレイのグループから組立て及び分解することができる別個の物理的ユニットとして製造することができる。この実施形態では、そのような各アレイは、所望により、好ましくは、それ自体の温度制御ユニット及び材料配合物レベルセンサを備え、その動作のために個別に制御された電圧を受信する。
【0046】
装置114は、堆積された材料配合物を固め得る光、熱などを放出するように構成された任意のデバイスを含むことができる固化デバイス324をさらに備えることができる。例えば、固化デバイス324は、使用されるモデリング材料配合物に応じて、例えば紫外線若しくは可視若しくは赤外線ランプ、又は他の電磁放射源、又は電子ビーム源であり得る、1又は複数の放射源を備えることができる。本発明のいくつかの実施形態では、固化デバイス324は、モデリング材料配合物を硬化又は固化させるのに役立つ。
【0047】
固化デバイス324に加えて、装置114は、所望により、好ましくは、溶媒蒸発のための追加の放射源328を備える。放射源328は、所望により、好ましくは赤外線を発生させる。本発明の様々な例示的な実施形態では、固化デバイス324は、紫外線を発生する放射源を備え、放射源328は赤外線を発生させる。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態では、装置114は、1又は複数のファンなどの冷却システム134を備える。
【0049】
印刷ヘッド及び放射源は、好ましくは、作業面として機能するトレイ360上を往復移動するように好ましくは動作するフレーム又はブロック128内に取り付けられる。本発明のいくつかの実施形態では、放射源は、印刷ヘッドの後に続いて、印刷ヘッドによって吐出されたばかりの材料配合物を少なくとも部分的に硬化又は固化させるように、ブロックに取り付けられる。トレイ360は水平に配置されている。一般的な慣例によれば、X-Y平面がトレイ360に平行になるように、X-Y-Zデカルト座標系が選択される。トレイ360は、好ましくは、鉛直に(Z方向に沿って)、典型的には下方に移動するように構成される。本発明の様々な例示的な実施形態では、装置114は、例えばローラ326などの1又は複数のレベリングデバイス132をさらに備える。レベリングデバイス326は、その上に連続層を形成する前に、新たに形成された層の厚さを直線化し、平坦化し、及び/又は確立するのに役立つ。レベリングデバイス326は、好ましくは、レベリング中に生成された過剰な材料配合物を収集するための廃棄物収集デバイス136を備える。廃棄物収集デバイス136は、材料配合物を廃棄物タンク又は廃棄物カートリッジに送達する任意の機構を備え得る。
【0050】
使用中、ユニット16の印刷ヘッドは、本明細書ではX方向と呼ばれる走査方向に移動し、トレイ360上を通過する過程で所定の構成で構築材料配合物を選択的に吐出する。構築材料配合物は、典型的には、1又は複数のタイプの支持材料配合物及び1又は複数のタイプのモデリング材料配合物を含む。ユニット16の印刷ヘッドの通過に続いて、放射源126によるモデリング材料配合物の硬化が続く。堆積したばかりの層の開始点に戻るヘッドの逆方向の通過において、所定の構成に従って、構築材料配合物の追加の吐出を実行することができる。印刷ヘッドの順方向及び/又は逆方向の通過において、このように形成された層は、好ましくは印刷ヘッドの順方向及び/又は逆方向の移動の経路をたどるレベリングデバイス326によって直線化されてもよい。印刷ヘッドがX方向に沿ってそれらの開始点に戻ると、それらは、本明細書ではY方向と呼ばれるインデックス方向に沿って別の位置に移動し、X方向に沿った往復移動によって同じ層を構築し続け得る。あるいは、印刷ヘッドは、順方向の移動と逆方向の移動との間で、又は2つ以上の順方向の移動の後にY方向に移動してもよい。単一の層を完成させるために印刷ヘッドによって実行される一連の走査は、本明細書では単一の走査サイクルと呼ばれる。
【0051】
層が完成すると、トレイ360は、その後に印刷される層の所望の厚さに応じて、所定のZレベルまでZ方向に下げられる。これを繰り返すことにより、3次元物体112を層状に形成する。
【0052】
別の実施形態では、トレイ360は、層内で、ユニット16の印刷ヘッドの順方向通過と逆方向通過との間でZ方向に変位されてもよい。このようなZ変位は、レベリングデバイスが表面に一方向に接触するために、及び他方向に接触することを防止するために行われる。
【0053】
本実施形態では、液体材料配合物供給システム330の使用が考えられ、これは、1又は複数の液体材料容器又はカートリッジ430を備え、液体材料を印刷ヘッドに供給する。供給システム330は、システム110などのAMシステムで使用することができ、その場合、各容器内の液体材料は構築材料であり、又は2次元印刷システムで使用することができ、その場合、各容器内の液体材料はインク又は2次元印刷に適した任意の他の配合物であり得る。
【0054】
コントローラ20は、製造装置114を制御し、所望により、好ましくは供給システム330も制御する。コントローラ20は、典型的には、制御動作を実行するように構成された電子回路を含む。コントローラ20は、好ましくは、例えば標準テッセレーション言語(STL)フォーマットなどの形態でコンピュータ可読媒体上に表されるCAD構成などのコンピュータオブジェクトデータに基づく製造命令に関するデジタルデータを送信するデータプロセッサ154と通信する。典型的には、コントローラ20は、各印刷ヘッド又は各ノズルアレイに印加される電圧及びそれぞれの印刷ヘッド又はそれぞれのノズルアレイにおける構築材料配合物の温度を制御する。
【0055】
製造データがコントローラ20にロードされると、それはユーザの介入なしに動作することができる。いくつかの実施形態では、コントローラ20は、例えばデータプロセッサ154を使用して、又はコントローラ20と通信するユーザインターフェース116を使用して、オペレータから追加の入力を受信する。ユーザインターフェース116は、これらに限定されないが、キーボード、タッチスクリーンなど、当技術分野で知られている任意の種類のものとすることができる。例えば、コントローラ20は、追加の入力として、限定はしないが、色、特性歪み及び/又は転移温度、粘度、電気的特性、磁気的特性などの、1又は複数の構築材料配合物の種類及び/又は属性を受信することができる。他の属性及び属性群も考えられる。
【0056】
【0057】
本実施形態において、システム10は、トレイ12及び複数のインクジェット印刷ヘッド16を備え、各インクジェット印刷ヘッドは、それぞれ1又は複数の分離されたノズルを有する1又は複数のノズルアレイを有する。3次元印刷に使用される材料は、さらに上述したように、1又は複数の液体材料容器又はカートリッジ430を用いて、構築材料供給システム330によってヘッド16に供給される。トレイ12は、ディスクの形状を有することができ、又は環状であることができる。鉛直軸を中心に回転させることができる限り、非円形形状も考えられる。
【0058】
トレイ12及びヘッド16は、トレイ12とヘッド16との間の相対的な回転運動を可能にするように、所望により好ましくは取り付けられる。これは、(i)ヘッド16に対して鉛直軸14を中心に回転するようにトレイ12を構成すること、(ii)トレイ12に対して鉛直軸14を中心に回転するようにヘッド16を構成すること、又は(iii)鉛直軸14を中心に異なる回転速度(例えば、反対方向の回転)で回転するようにトレイ12及びヘッド16の両方を構成することによって達成されることができる。システム10のいくつかの実施形態は、構成(i)に特に重点を置いて以下に説明されており、トレイは、ヘッド16に対して鉛直軸14を中心に回転するように構成された回転トレイであるが、本出願は、システム10の構成(ii)及び(iii)も企図していることを理解されたい。本明細書に記載のシステム10の実施形態のいずれかは、構成(ii)及び(iii)のいずれかに適用可能であるように調整することができ、本明細書に記載の詳細を提供される当業者であれば、そのような調整を行う方法を知っているであろう。
以下の説明では、トレイ12に平行で軸14から外側を向く方向を半径方向rと呼び、トレイ12に平行で半径方向rに垂直な方向を本明細書では方位角方向φと呼び、トレイ12に垂直な方向を本明細書では鉛直方向zと呼ぶ。
【0059】
システム10における半径方向rは、システム110におけるインデックス方向yを規定し、方位角方向φは、システム110における走査方向xを規定する。したがって、半径方向は、本明細書ではインデックス方向と互換的に呼ばれ、方位角方向は、本明細書では走査方向と互換的に呼ばれる。
【0060】
本明細書で使用される「半径方向位置」という用語は、軸14から特定の距離にあるトレイ12上又は上方の位置を指す。この用語が印刷ヘッドに関連して使用される場合、この用語は、軸14から特定の距離にあるヘッドの位置を指す。この用語がトレイ12上の点に関連して使用される場合、この用語は、その半径が軸14からの特定の距離であり、その中心が軸14にある円である点の軌跡に属する任意の点に対応する。
【0061】
本明細書で使用される「方位角位置」という用語は、所定の基準点に対して特定の方位角にあるトレイ12上又は上方の位置を指す。したがって、半径位置は、基準点に対して特定の方位角を形成する直線である点の軌跡に属する任意の点を指す。
【0062】
本明細書で使用される「鉛直位置」という用語は、特定の点で鉛直軸14と交差する平面上の位置を指す。
【0063】
トレイ12は、3次元印刷の構築プラットフォームとして機能する。1又は複数の物体が印刷される作業領域は、必ずしもそうである必要はないが、典型的には、トレイ12の総面積よりも小さい。本発明のいくつかの実施形態では、作業領域は環状である。作業領域は26で示されている。本発明のいくつかの実施形態では、トレイ12は、物体の形成を通して同じ方向に連続的に回転し、本発明のいくつかの実施形態では、トレイは、物体の形成中に少なくとも1回(例えば、振動的に)回転方向を逆転させる。トレイ12は、所望により、好ましくは取り外し可能である。トレイ12を取り外すことは、システム10のメンテナンスのため、又は必要に応じて、新しい物体を印刷する前にトレイを交換するためであり得る。本発明のいくつかの実施形態では、システム10には、1又は複数の異なる交換トレイ(例えば、交換トレイのキット)が設けられ、異なる種類の物体(例えば、異なる重さ)に対して2つ以上のトレイが指定され、異なる動作モード(例えば、異なる回転速度)などがある。トレイ12の交換は、必要に応じて手動又は自動で行うことができる。自動交換が使用される場合、システム10は、ヘッド16の下方のその位置からトレイ12を取り外し、それを交換トレイ(図示せず)と交換するように構成されたトレイ交換デバイス36を備える。
図1Bの代表的な図では、トレイ交換デバイス36は、トレイ12を引っ張るように構成された可動アーム40を有する駆動装置38として示されているが、他のタイプのトレイ交換デバイスも考えられる。
【0064】
印刷ヘッド16の例示的な実施形態を
図2A~
図2Cに示す。これらの実施形態は、システム110及びシステム10を含むがこれらに限定されない、上述のAMシステムのいずれかに使用することができる。
【0065】
図2A~
図2Bは、1つ(
図2A)及び2つ(
図2B)のノズルアレイ22を有する印刷ヘッド16を示す。アレイ内のノズルは、好ましくは直線に沿って線状に整列される。印刷ヘッド16は、印刷システムのコントローラによって印加される電圧信号に応答して、液体材料が供給され、ノズルアレイ22を通じてそれを吐出する。ヘッド16は、2次元又は3次元印刷に使用することができる。ヘッド16が3次元印刷に使用される場合、それには構築材料配合物である液体材料が供給され、ヘッド16が2次元印刷に使用される場合、それには好ましくはインク又は2次元印刷に適した任意の他の配合物である液体材料が供給される。
【0066】
特定の印刷ヘッドが2つ以上の線状ノズルアレイを有する実施形態では、ノズルアレイは、所望により、好ましくは互いに平行であり得る。印刷ヘッドが2つ以上のノズルアレイ(例えば、
図2B)を有する場合、ヘッドのすべてのアレイに同じ構築材料配合物を供給することができ、又は同じヘッドの少なくとも2つのアレイに異なる構築材料配合物を供給することができる。
【0067】
システム110と同様のシステムが使用される場合、すべての印刷ヘッド16は、所望により、好ましくは、走査方向に沿った位置が互いにオフセットされた状態でインデックス方向に沿って配向される。
【0068】
システム10と同様のシステムが使用される場合、すべての印刷ヘッド16は、所望により、好ましくは、それらの方位角位置が互いにオフセットされた状態で半径方向に(半径方向に平行に)配向される。したがって、これらの実施形態では、異なる印刷ヘッドのノズルアレイは、互いに平行ではなく、むしろ互いにある角度であり、その角度は、それぞれのヘッド間の方位角オフセットにほぼ等しい。例えば、1つのヘッドを半径方向に配向し、方位角位置φ1に配置することができ、別のヘッドを半径方向に配向し、方位角位置φ2に配置することができる。この例では、2つのヘッド間の方位角オフセットはφ1-φ2であり、2つのヘッドの線状ノズルアレイ間の角度もφ1-φ2である。
【0069】
いくつかの実施形態では、2つ以上の印刷ヘッドを印刷ヘッドのブロックに組み立てることができ、この場合、ブロックの印刷ヘッドは、典型的には互いに平行である。いくつかのインクジェット印刷ヘッド16a、16b、16cを含むブロックが
図2Cに示されている。
【0070】
いくつかの実施形態では、システム10は、トレイ12が安定化構造体30とヘッド16との間にあるように、ヘッド16の下方に配置された安定化構造体30を備える。安定化構造体30は、インクジェット印刷ヘッド16が動作している間に発生し得るトレイ12の振動を防止又は低減するのに役立ち得る。印刷ヘッド16が軸14を中心に回転する構成では、安定化構造体30はまた、好ましくは、安定化構造体30が常にヘッド16の真下にある(ヘッド16とトレイ12との間にトレイ12がある)ように回転する。
【0071】
トレイ12及び/又は印刷ヘッド16は、トレイ12と印刷ヘッド16との間の鉛直距離を変化させるように、鉛直軸14に平行な鉛直方向zに沿って移動するように所望により好ましく構成される。トレイ12を鉛直方向に沿って移動させることによって鉛直距離を変化させる構成では、安定化構造体30もトレイ12とともに鉛直方向に移動することが好ましい。鉛直距離が鉛直方向に沿ってヘッド16によって変更される構成では、トレイ12の鉛直位置を固定したままで、安定化構造体30も固定された鉛直位置に維持される。
【0072】
鉛直運動は、鉛直駆動装置28によって確立することができる。層が完成すると、その後に印刷される層の所望の厚さに応じて、トレイ12とヘッド16との間の鉛直距離を所定の鉛直ステップだけ増加させる(例えば、トレイ12はヘッド16に対して下降される)ことができる。これを繰り返すことにより、3次元物体を層状に形成する。
【0073】
インクジェット印刷ヘッド16の動作、及び所望により好ましくはシステム10の1又は複数の他の構成要素の動作、例えばトレイ12の動きは、コントローラ20によって制御される。コントローラは、電子回路と、回路によって読み取り可能な不揮発性メモリ媒体とを有することができ、メモリ媒体は、回路によって読み取られると、以下でさらに詳細に説明するように回路に制御動作を実行させるプログラム命令を記憶する。
【0074】
コントローラ20はまた、例えば、標準テッセレーション言語(STL)若しくはステレオリソグラフィ輪郭(SLC)フォーマット、仮想現実モデリング言語(VRML)、付加製造ファイル(AMF)フォーマット、図面交換フォーマット(DXF)、ポリゴンファイルフォーマット(PLY)、又はコンピュータ支援設計(CAD)に適した任意の他のフォーマットの形態で、コンピュータオブジェクトデータに基づいて製造命令に関するデジタルデータを送信するホストコンピュータ24と通信することができる。オブジェクトデータフォーマットは、通常、デカルト座標系に従って構造化される。これらの場合、コンピュータ24は、好ましくは、コンピュータオブジェクトデータ内の各スライスの座標をデカルト座標系から極座標系に変換するための手順を実行する。コンピュータ24は、所望により、好ましくは、変換された座標系に関して製造命令を送信する。あるいは、コンピュータ24は、コンピュータオブジェクトデータによって提供される元の座標系に関して製造命令を送信することができ、その場合、座標の変換はコントローラ20の回路によって実行される。
【0075】
座標の変換は、回転トレイ上の3次元印刷を可能にする。印刷ヘッドを有する固定トレイを有する非回転システムでは、通常、直線に沿って固定トレイの上方を往復移動する。そのようなシステムでは、ヘッドの吐出速度が均一であれば、印刷解像度はトレイ上の任意の点で同じである。システム10では、非回転システムとは異なり、ヘッドポイントのすべてのノズルが同時にトレイ12上で同じ距離をカバーするわけではない。座標の変換は、異なる半径方向位置で等量の過剰な材料配合を確実にするように、所望により好ましくは実行される。本発明のいくつかの実施形態による座標変換の代表的な例を
図3A~
図3Bに示し、
図3A~
図3Bは、物体の3つのスライス(各スライスは、物体の異なる層の製造命令に対応する)を示し、
図3Aは、デカルト座標系におけるスライスを示し、
図3Bは、座標手順の変換をそれぞれのスライスに適用した後の同じスライスを示す。
【0076】
典型的には、コントローラ20は、製造命令に基づいて、及び以下に説明するように記憶されたプログラム命令に基づいて、システム10のそれぞれの構成要素に印加される電圧を制御する。
【0077】
一般に、コントローラ20は、トレイ12の回転中に、3次元物体をトレイ12上に印刷するなどのために、層状の構築材料配合物の液滴を吐出するように印刷ヘッド16を制御する。
【0078】
システム10は、所望により、好ましくは、使用されるモデリング材料配合物に応じて、例えば紫外線若しくは可視若しくは赤外線ランプ、又は他の電磁放射源、又は電子ビーム源であり得る、1又は複数の放射源18を備える。放射源は、発光ダイオード(LED)、デジタル光処理(DLP)システム、抵抗ランプなどを含むがこれらに限定されない任意の種類の放射放出デバイスを含むことができる。放射源18は、モデリング材料配合物を硬化又は固化するのに役立つ。本発明の様々な例示的な実施形態では、放射源18の動作は、放射源18を作動及び停止させてもよく、放射源18によって生成される放射の量も所望により制御してもよいコントローラ20によって制御される。
【0079】
本発明のいくつかの実施形態では、システム10は、ローラ又はブレードとして製造することができる1又は複数のレベリングデバイス32をさらに備える。レベリングデバイス32は、その上に連続層を形成する前に、新たに形成された層を直線化するのに役立つ。いくつかの実施形態では、レベリングデバイス32は、その対称軸34がトレイ12の表面に対して傾斜し、その表面がトレイの表面に平行になるように配置された円錐ローラの形状を有する。この実施形態は、システム10の側面図(
図1C)に示されている。
【0080】
円錐ローラは、円錐又は円錐台の形状を有することができる。
【0081】
円錐ローラの開口角度は、好ましくは、その軸34に沿った任意の位置における円錐の半径と、その位置と軸14との間の距離との間に一定の比が存在するように選択される。ローラが回転する間、ローラの表面上の任意の点pは、点pの真下の点におけるトレイの線速度に比例する(例えば、同じ)線速度を有するので、この実施形態は、ローラ32が層を効率的に水平にすることを可能にする。いくつかの実施形態では、ローラは、高さh、軸14からのその最も近い距離における半径R1、及び軸14からのその最も遠い距離における半径R2を有する円錐台形状を有し、パラメータh、R1及びR2は、関係R1/R2=(R-h)/hを満たし、Rは、軸14からのローラの最も遠い距離である(例えば、Rはトレイ12の半径とすることができる)。
【0082】
レベリングデバイス32の動作は、所望により好ましくは、コントローラ20によって制御され、コントローラ20は、レベリングデバイス32を作動及び停止させてもよく、鉛直方向(軸14に平行)及び/又は半径方向(トレイ12に平行であり、軸14に向かって又はそれから離れるように向いている)に沿ってその位置を所望により制御してもよい。
【0083】
本発明のいくつかの実施形態では、印刷ヘッド16は、半径方向rに沿ってトレイに対して往復移動するように構成されている。これらの実施形態は、ヘッド16のノズルアレイ22の長さがトレイ12上の作業領域26の半径方向に沿った幅よりも短い場合に有用である。半径方向に沿ったヘッド16の動きは、所望により、好ましくはコントローラ20によって制御される。
【0084】
いくつかの実施形態は、(同じ又は異なる印刷ヘッドに属する)異なるノズルアレイから異なる材料配合物を吐出することによる物体の製造を企図する。これらの実施形態は、とりわけ、所与の数の材料配合物から材料配合物を選択し、選択された材料配合物及びそれらの特性の所望の組合せを定義する能力を提供する。本実施形態によれば、層を有する各材料配合物の堆積の空間位置は、異なる材料配合物による異なる3次元空間位置の占有を達成するために、又は2つ以上の異なる材料配合物による実質的に同じ3次元位置又は隣接する3次元位置の占有を達成して、層内の材料配合物の堆積後の空間的組合せを可能にし、それによってそれぞれの位置又は複数の位置で複合材料配合物を形成するために規定される。
【0085】
モデリング材料配合物の任意の堆積後の組合せ又は混合物が企図される。例えば、特定の材料配合物が吐出されると、それはその元の特性を維持し得る。しかし、同じ又は近くの場所に吐出される別のモデリング材料配合物又は他の吐出された材料配合物と同時に吐出される場合、吐出された材料配合物とは異なる特性又は特性群を有する複合材料配合物が形成され得る。
【0086】
本発明のいくつかの実施形態では、システムは、層の少なくとも1つのためのデジタル材料配合物を吐出する。
【0087】
「デジタル材料配合物」という句は、本明細書及び当技術分野で使用される場合、異なる材料配合物のピクセル又はボクセルが領域にわたって互いに交絡するように、ピクセルレベル又はボクセルレベルでの2つ以上の材料配合物の組合せを記述する。そのようなデジタル材料配合物は、材料配合物の種類の選択並びに/又は2つ以上の材料配合物の比及び相対空間分布によって影響を受ける新しい特性を示し得る。
【0088】
本明細書で使用される場合、層の「ボクセル」は、層を記述するビットマップの単一のピクセルに対応する層内の物理的な3次元要素ボリュームを指す。ボクセルのサイズは、構築材料がそれぞれのピクセルに対応する位置に吐出され、平坦化され、固化されると、構築材料によって形成される領域のサイズにほぼ等しい。
【0089】
したがって、本実施形態は、物体の異なる部分において、物体の各部分を特徴付けるために所望される特性に従って、広範囲の材料配合物の組合せの堆積、及び材料配合物の複数の異なる組合せからなり得る物体の製造を可能にする。
【0090】
本実施形態に適したAMシステムの原理及び動作のさらなる詳細は、米国特許第9,031,680号に見出され、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0091】
インクジェット印刷の分野、特に3次元インクジェット印刷の分野においてだが、2次元インクジェット印刷の分野においても、印刷システムの噴射特性を分析することがしばしば望まれる。例えば、印刷ヘッドによって吐出される単一の液滴の平均サイズ(例えば、重量、質量、体積)を決定することが有利である。そのような決定の1つの利点は、印刷中の液滴サイズの変動を低減し、それによってヘッドによって印刷されるパターンの品質を改善するために、印刷ヘッドに印加される電圧信号に適切なレベルを設定することを可能にすることである。特定の印刷ヘッドの不良ノズルの数(又は、相補的に、適切に動作可能な数)を決定することも有利である。そのような決定の1つの利点は、ヘッド内の個々の欠陥ノズルを識別し、それらの欠陥ノズルによって引き起こされる印刷パターンの不規則性を補償する印刷補償プロトコルを実行することを可能にすることである。
【0092】
平均液滴サイズを決定し、欠陥ノズルを識別するためのいくつかの技術がこれまでに提案されている。そのような技術の1つは、表面上に所定のサイズ及び形状(液滴の数)を有するバルクを吐出し、正確な重量測定デバイス(例えば、ロードセルなど)を使用して得られたバルクの重量を測定することを必要とする。別のこのような技術は、表面に所定の形状を吐出し、その後光学検査システムを用いて光学検査を行うことを必要とする。ストロボ測定及びレーザブロッキングなどの光学技術も知られている。ストロボ測定では、液滴はストロボスコープによってオンザフライで照射され、照射された液滴の画像がキャプチャされる。次いで、画像処理技術を適用して液滴の平均体積を計算する。レーザブロッキングでは、液滴の飛行経路を横切るようにレーザ光を照射し、液滴によりビームが遮断される時間を計測する。次いで、液滴の直径が、測定された時間及び液滴の速度に関する情報に基づいて計算される。電気的技術がさらに知られている。これらの技術では、電気キャパシタを通して液滴が吐出され、キャパシタの静電容量の変化が測定され、液滴の体積を決定するために使用される。これらの技術のいくつかは、米国特許出願公開第20040027405号に要約されている。
【0093】
本発明者らは、噴射特性を分析するための従来の技術が高価であり、技術的に採用が困難であるか、そうでなければ実用的ではないことを見出した。例えば、所定の形状の別個の印刷は、印刷プロセスの定期的な中断、又は、印刷システムが使用から外される特定の試験時間を事前に割り当てることを必要とするために時間がかかる技術である。さらに、正確な重量測定デバイス及び光学検査システムは高価であり、印刷システム及び/又はそのメンテナンスのコストが増加する。液滴飛行中に測定が実行される技術は、高度で高価な装置を必要とするか、そうでなければ不正確な結果を提供する。これらの理由から、これらの技術は商業的にほとんど受け入れられていない。本発明者らは、印刷ヘッドの噴射特性を決定するための効率的で安価な技術の探索において、圧力測定によって多くの噴射特性を十分な精度で決定できることを実現し、実験的に検証した。
【0094】
図4A及び
図4Bは、本発明のいくつかの実施形態による印刷システム400を示す概略図である。印刷システム400は、2次元印刷又は3次元印刷を実行するためのシステムであり得る。システム400が3次元印刷を実行するとき、システム400は、システム10及び110に関して上述した追加の構成要素のうちの1又は複数を含むことができる。システム400は、複数のノズル122を有する1又は複数のインクジェット印刷ヘッド16と、液体材料432を収容し且つヘッド16に液体材料432を供給するための導管440によってヘッド16と流体連通する容器430とを備える。
【0095】
提示を明確にするために、印刷ヘッド及び液体材料を供給する容器は、
図4A及び
図4Bに示され、主に3次元印刷の文脈で上述したシステム10及び110の印刷ヘッド及び容器(それぞれ符号16及び430)と同じ参照符号を有するが、システム400の容器及び印刷ヘッドは、2次元印刷又は3次元印刷に適した液体材料を供給及び吐出するように構成され得ることが理解されるべきである。
【0096】
図4Aは、容器430がヘッド16の下方に位置し、液体材料が重力gの向きに逆らってヘッド16に供給される構成を模式的に示している。これは、ポンプ(図示せず)によってヘッド16内に負圧を生成することによって確保される。この構成では、容器430は、容器430の上部の圧力が大気圧であるように、大気への開口部434を所望により、好ましくは備える。この構成では、ヘッド16内に大気圧未満の圧力を発生させることによって、ヘッド16内への材料432の供給を確実にすることができる。
図4Bは、容器430がヘッド16の上方に位置することで、重力gの方向に沿って作用する重力によって液体材料の少なくとも一部がヘッド16に供給される構成を模式的に示している。本発明のいくつかの実施形態では、容器430は、容器430から液体材料432を受け取り、大気への開口部438を有するサブタンク436を介してヘッド16に供給する。好ましくは、制御可能な弁437が、容器430とサブタンク436との間に設けられ、サブタンク436の過剰充填及び開口部438を通じた漏れを防止する。例えば、弁437は、導管440を通る流れがない場合(例えば、ヘッド16内に圧力下がない場合)、容器430からサブタンク436への材料432の流れを遮断するように動作することができる。
【0097】
いずれにせよ、導管440は、容器430から直接、又はサブタンク436を介して、ヘッド16に液体材料432を供給する。
【0098】
システム400は、好ましくは、導管440の出口441における圧力を示す信号を生成する圧力センサ442を備える。
【0099】
圧力センサ442は、例えば、読み出しASICの上部に集積され得る容量性又はピエゾ抵抗微細加工圧力センサ、又はCMOS容量性圧力センサであり得る。本実施形態に適した圧力センサは、オランダ国アイントホーフェンのNXP Semiconductors N.V.によって市販されている。しかしながら、本出願から成熟する特許の存続期間中に、圧力を測定するための多くの関連するセンサが開発されることが予想され、圧力センサという用語の範囲は、そのようなすべての新しい技術を先験的に含むことが意図されている。
【0100】
本発明の発明者らは、所定の噴射時間dtにわたる導管440の出口441における圧力の変化に関する情報が、多くの噴射特性を決定するのに十分であることを実験的に検証した。したがって、本発明の様々な例示的な実施形態では、システム400は、上記でさらに詳述したように、ヘッド16に電圧を印加することによって、導管440を介して受け取った液体材料432をノズル122を通して吐出するようにヘッド16を制御するコントローラ420を含む。コントローラ420は、サブタンク436の過剰充填を防止するために、所望により好ましくは弁437も制御する。システム400がシステム10又は110内に具体化される場合、コントローラ420に関して本明細書で説明されるすべての動作は、コントローラ20によって実行することができる。
【0101】
コントローラ420はまた、好ましくは、所定の噴射時間dtにわたる圧力の変化に基づいて、1又は複数の噴射特性を計算するように構成される。
【0102】
コントローラ420によって計算される噴射特性の1つは、所望により、好ましくはノズルを通る質量流量である。質量流量を計算するためにコントローラ420が実行することができる数学的手順の説明を以下に提供する。限定はしないが、平均液滴質量、吐出イベントの数当たりの質量変化、動作可能なノズルの数などの他の噴射特性は、質量流量と相関し、したがって計算された質量流量に基づいて決定することができる。
【0103】
しかしながら、コントローラ420が質量流量を明示的に決定する必要はなく、質量流量を明示的に決定することなく噴射特性を決定することができることを理解されたい。例えば、質量流量が何らかの関数Fを介して圧力の変化に関連すると仮定する。さらに、質量流量に何らかの時間間隔ΔTを乗算することによって、噴出質量を計算することが破棄されると仮定する。コントローラは、関数Fの値を計算して質量流量を明示的に提供し、次いでこの値にΔTを乗算することができ、あるいは、コントローラは、Fの値を明示的に表すことなく、乗算関数FΔTの値を計算することができる。
【0104】
本発明のいくつかの実施形態では、コントローラ420は、外部ソース(例えば、コンピュータであり、
図4A及び
図4Bには図示せず、
図1A~
図1Bを参照)から受信した印刷データに従って印刷パターンを製造しながら噴射特性を計算する。これらの実施形態の利点は、それらを分析又は検査するために所定の形状を印刷する必要がないため、印刷プロセスを中断することなく、又は事前に特定の試験時間を割り当てることなく噴射特性を得ることを可能にすることである。コントローラ420が印刷パターンを製造する間に噴射特性を計算するとき、ノイズ低減手順が所望により、好ましくは実行される。本実施形態に適した好ましいノイズ低減手順は、以下の実施例セクションで提供される。
【0105】
以下は、質量流量dm/dtを推定するためにコントローラ420によって実行することができる好ましい手順の説明である。質量流量は、噴射時間dtにわたる容器内の材料の高さの変化dHに基づいて推定することができる。本発明者らは、容器内の材料の高さが、吐出ヘッドの連続する吐出イベントの間にセンサ442によって測定された圧力と相関することを見出した。導管440内に材料の流れがない場合、導管440の出口441における圧力は、重力による静圧であり、動圧の寄与はない。吐出ヘッドの吐出イベント前後の静圧の差をdPgで表すと、吐出の結果としての容器内の材料の高さの変化dHは、dPg=ρ・g・dHで与えられ、ここで、ρは容器内の液体材料の密度であり、gは重力加速度(約9.8m/s2)である。したがって、質量流量dm/dtは、dm/dt=S・dPg/dtとして計算することができ、ここで、Sは導管440の断面積である。
【0106】
本発明のいくつかの実施形態では、コントローラ420は、平均液滴質量を計算する。これは、所定の噴射時間dtにわたる導管440の出口441における動圧の変化dPfと、この噴射時間にわたる質量流量dm/dtとの間の比αを最初に推定し、次いでこの推定された比を使用して平均液滴質量を計算することによって行うことができる。好ましくは、平均液滴質量は、動圧の変化dPfを推定比α、吐出周波数、及びアレイ122内のノズルの数で割ることによって計算される。
【0107】
dPfとdm/dtとの比αは、複数の方法で求めることができる。一般に、比αは、導管440の形状及び構築材料の機械的特性(例えば、粘度)に依存する。したがって、例えば、システム400によって使用される所与の導管440について、比αは、例えば、事前に準備され、システムによって使用可能ないくつかの構築材料のそれぞれについて比αを提供するルックアップテーブルを使用して導出することができる。代替的に、又はシステム400がルックアップテーブルに列挙されていない構築材料を使用する場合、比αは、所定の流量dm/dtを適用し、動圧の対応する変化dPfを測定し、適用された所定の流量と動圧の測定された変化dPfとの間の比としてαを計算することによって測定することができる。dm/dt及びdPfの両方が測定される実施形態も企図され、その場合、αは、dm/dtの測定値とdPfの測定値との比として推定される。後者の実施形態では、dm/dtの値は、これらに限定されないが、流量計、ロードセルなどの追加のデバイス(図示せず)によって測定することができる。
【0108】
本発明者らは、同じ圧力センサ442を用いて、動圧の変化dP
fと静圧の変化dP
gとの両方を推定できることを見出した。これは、
図7A及び
図7Bを参照してよりよく理解することができる。
図7Aは、印刷ヘッドの一連の吐出イベント中の導管440の出口441における典型的な圧力プロファイルを示す。図示のように、圧力プロファイルは、徐々に減少するベースライン700と、短い急激な圧力変化702とを含む。本発明者らは、変化702の深さを動圧の変化dP
fとして使用できることを見出した。
図7Bは、
図7Aの縦座標に沿った拡大図を示す。このグラフは、ベースライン700の漸進的な減少を示す。本発明者らは、連続する急激な変化の間のベースライン700のレベルの変化を静圧の変化dP
gとして使用できることを見出した。
【0109】
本発明のいくつかの実施形態では、コントローラ420は、計算された平均液滴質量に基づいてヘッド16に印加される電圧を調整する。例えば、コントローラ420は、印刷プロセス全体にわたってほぼ一定の平均液滴質量を維持するように印加電圧を調整することができる。好ましくは、このような計算及び調整は、閉ループで実行される。
【0110】
計算することができる別の噴射特性は、印刷ヘッドにおける動作可能なノズルの数である。これは、例えば、平均液滴質量にヘッド内のノズルの数を乗算することによって、又は動圧の変化を前述の比α及び吐出周波数で除算することによって行うことができる。そのような計算は、ヘッドによって実行される吐出イベントの数に対する吐出質量の導関数を効果的に提供し、これは動作可能なノズルの数と線形に相関し、その結果、前記導関数の所定の線形関数を使用して動作可能なノズルの数を抽出することができる。以下の実施例のセクションで実証されるように、本発明者らは、そのような計算が高分解能で動作可能なノズルの数に関する情報を提供することを見出した。
【0111】
動作可能なノズルの数が得られると、ヘッド内のノズルの総数と比較することができる。動作可能なノズルの数がノズルの総数よりも少ない場合、コントローラ420は、不良ノズルがあると判定することができ、所望により、好ましくは警告信号を発する。コントローラ420は、本発明のいくつかの実施形態では、少なくとも1つのノズルが不良であるノズルのサブセットを識別するために探索手順を実行することができる。例えば、コントローラ420は、ノズルのサブセットを意図的に無効にし、すべてのノズルを考慮する代わりに、サブセット内のノズルのみを考慮することを除いて、動作可能なノズルの数の計算を繰り返すことができる。動作可能なノズルの数がサブセット内のノズルの総数よりも少ない場合、コントローラ420は、サブセット内に欠陥ノズルがあると判定することができる。そうでなければ、コントローラ420は、テストされたサブセットと相補的なサブセット内に欠陥ノズルがあると判定することができる。この手順は、サイズが縮小されたサブセットを用いて1又は複数回繰り返すことができ、それによって検索を絞り込むことができる。好ましくは、この手順は、個々の欠陥ノズルが識別されるまで繰り返される。
【0112】
本明細書で使用される場合、用語「約」は±10%を指す。
【0113】
用語「を備える」、「を備え」、「を含む」、「を含み」、「有する」 及びそれらの活用形は、「含むが限定されない」を意味する。
【0114】
用語「からなる(consisting of)」は、「含み限定される(including and limited to)」を意味する。
【0115】
「から本質的になる」という用語は、組成物、方法又は構造が追加の成分、工程及び/又は部分を含み得るが、追加の成分、工程及び/又は部分が特許請求される組成物、方法又は構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合に限ることを意味する。
【0116】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の言及を含む。例えば、「化合物」又は「少なくとも1つの化合物」という用語は、それらの混合物を含む複数の化合物を含み得る。
【0117】
本出願を通して、本発明の様々な実施形態は、範囲形式で提示され得る。範囲形式での説明は、単に便宜及び簡潔さのためのものであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、すべての可能な部分範囲並びにその範囲内の個々の数値を具体的に開示したと見なされるべきである。例えば、1~6などの範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲、並びにその範囲内の個々の数、例えば1、2、3、4、5、及び6を具体的に開示していると見なされるべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0118】
本明細書において数値範囲が示されるときはいつでも、示された範囲内の任意の引用された数字(分数又は整数)を含むことを意味する。第1の指示数と第2の指示数との「間の範囲(ranging/ranges between)」及び第1の指示数「から」第2の指示数「までの範囲(ranging/ranges from~to)」という語句は、本明細書では互換的に使用され、第1及び第2の指示数並びにそれらの間のすべての分数及び整数を含むことを意味する。
【0119】
明確にするために別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で記載されている本発明の様々な特徴はまた、別個に、又は任意の適切な部分的組合せで、又は本発明の任意の他の記載された実施形態で適切であるように提供されてもよい。様々な実施形態の文脈で説明される特定の特徴は、実施形態がそれらの要素なしでは動作不能でない限り、それらの実施形態の本質的な特徴と見なされるべきではない。
【0120】
上記で描写され、以下の特許請求の範囲の項で特許請求される本発明の様々な実施形態及び態様は、以下の実施例において実験的裏付けを見出す。
【0121】
(実施例)
ここで、上記の説明とともに本発明のいくつかの実施形態を非限定的に示す以下の実施例を参照する。
【0122】
実施例1
数学的考察
図5を参照する。
図4A及び
図4Bを参照すると、本発明者らは、導管440の出口441で測定された圧力に基づいてヘッド16のいくつかの噴射特性を評価できることを見出した。本発明者らは、大気に対するヘッド16の内部の圧力が、容器430内の液体柱に作用する重力による静圧と、導管440内の液体の流れに対する抵抗による動圧との和であることを観察した。したがって、所定の噴射時間dtの間のヘッド16の内部の圧力の変化dPは、以下のように書くことができる。
dP=dP
g+dP
f(式1)
ここで、dP
gは静圧の変化、dP
fは動圧の変化である。
【0123】
静圧の変化dPgは、以下の関係によって与えられる。
dPg=ρ・g・dH(式2)
ここで、ρは液体材料432の密度であり、gは重力加速度(約9.8m/s2)であり、dHは容器430内の材料432の高さの変化である。容器430の寸法は既知であるため、容器内の液体の量は高さH、したがって静圧dPgと相関する。
【0124】
導管440内の液体の流量は、dV/dtによって与えられ、ここで、dVは、期間dtの間に導管440内を流れる液体の体積である。動圧の変化は、流量dV/dt、材料432の粘度μ、及び導管440の長さLとその半径Rの4乗との比に比例する。
dPf=μ(dV/dt)(L/R4)(式3)
【0125】
流量に現れる体積dVは、導管440の断面積をSとすると、S・dHと近似することができる。したがって、流量dV/dtは、式2を介した静圧の変化dPgに関連する。
dV/dt=(S/ρ・g)・dPg/dt(式4)
【0126】
式4の両辺にρを乗算すると、質量流量dm/dtの式が得られる。
dm/dt=(S/g)・dPg/dt(式5)
【0127】
したがって、所定の噴射時間dtの間の動圧dP
fの変化と質量流量dm/dtとの比αは、次式で与えられる。
(式6)
したがって、dP
fを示すセンサ442からの信号は、比αを推定するために使用することができる。
【0128】
ノイズ低減
以下は、本発明のいくつかの実施形態による例示的なノイズ低減技術の説明である。センサ442によって測定された圧力のノイズ成分をεで表すと、動圧dP
fは以下によって与えられる。
dP
f=P
m-P
g-ε(式7)
ここで、P
mは、センサ442によって測定された圧力であり、
dP=P(t)-P(t-dt)
dP
f(t)=P(t,流れなし)-P(t,流れあり)
dP
gravity(t)=P(t,流れなし)-P(t-dt,流れなし)
P
m(t)=P(t)+ε(t)
である。
【0129】
(所定の噴射シーケンスによる噴射試験とは対照的に)外部ソースから受信したコンピュータ印刷データによる2次元又は3次元物体の印刷プロセス中、P
f及びεの両方の値は変化する。式7を時間的に平均すると、以下が得られる。
(式8)
【0130】
ノイズ成分はランダム又は周期的であるため、その時間平均は通常0であり、したがって式8の平均は次のように近似される。
(式9)
【0131】
N個のサンプル時点にわたる測定圧力P
mの平均は
で与えられ、P
miはi番目のサンプル時点でセンサ442によって実行された測定値である。i番目のサンプル時点での静圧P
giは、典型的には、i番目のサンプルまでに噴射された液滴の数V
diに応じて線形に変化する。
P
gi=P
g0+aV
di(式10)
ここで、P
g0はi番目のサンプル時点の直前の静圧であり、aは事前に較正可能な所定の傾き定数である。例えば、傾き定数aは、以下のようにN個のサンプル時点を用いて較正手順中に測定することができる。
(式11)
ここで、P
gNは較正手順の最後のサンプル時点での静圧であり、V
dNは較正手順中に排出された液滴の総数である。本発明のいくつかの実施形態では、最初及び最後のサンプル時点での測定は、圧力が安定しており、噴射していないときにセンサ442によって実行される。これらの実施形態の利点は、それらが自己較正を可能にすることであり、勾配定数aの値は、別個の較正手順を実行することなく得ることができる。これは、これらの実施形態では、静的P
g及び測定されたP
mが最初及び最後のサンプル時点のそれぞれでほぼ同じであるため、式11は以下のように書くことができるからである。
(式12)
ここで、P
m0及びP
mNは、それぞれ最初及び最後のサンプル時点での測定圧力の値である。
【0132】
傾き定数が分かれば、平均静圧は以下のように計算することができる。
(式13)
【0133】
次いで、式9、式12及び式13を使用して平均動圧
を計算することができる。
(式14)
式14は、動圧の平均に対して実質的にノイズのない値を提供し、これは前述の噴射特性のいずれかを計算するために使用することができる。例えば、平均液滴重量は、
として計算することができ、ここでαは、所定の噴射時間dtにわたる導管440の出口441での圧力の変化と、この噴射時間にわたる質量流量dm/dtとの間の上述の比である(式6を参照)。
【0134】
本実施形態はまた、以下に説明する数学的手順を使用して、圧力センサ442の複数の独立した読み取りを実行することによってノイズ寄与が推定及び低減されるノイズ低減技術を企図する。
【0135】
ε(t)による(時間依存)ノイズ成分を考慮すると、式1は次のように書き換えられる。
dP=dPg+dPf+ε(t)(式15)
【0136】
静圧の変化dPgは、関係dPg=g・dm/Sに従って、導管440の質量変化dm及び断面積Sで表すことができ、動圧の変化dPfは、式6を用いてα・dm/dtとして表すことができる。ノイズ成分ε(t)をtの1次まで展開すると、式15は次のようになる。
dP=g・dm/S+α・dm/dt+ε0+ε1・t(式16)
【0137】
式16は、4つの未知のパラメータ(ε0、ε1、dm及びα)を有するので、センサ442の4つの独立した読み取り値を使用して決定することができる。例えば、以下の4つのサンプル読み取り値P(t)を考慮する:M0=P(t=t0)、M1=P(t=t0+dt)、M2=P(t=t0+2dt)、及びM3=P(t=t0+3dt)、ここで噴射時間dtはt=t0+τで開始し、τは噴射遅延パラメータである。dPf及びdPgの値は、以下の関係に従ってこれらのサンプル読み取り値を使用して計算することができる。
dPf=(M1-M0)+(M3-M0)-2(M2-M0)(式17)
dPg=3(M2-M0)-2(M3-M0)(式18)
【0138】
時間遅延パラメータτの値は、所望により、好ましくは噴射時間dt未満であり、圧力のサンプリング時間以上である。例えば、τはサンプリング時間とすることができる。
【0139】
実施例2
実験的
以下は、
図4Aに示すシステムを使用して行われたいくつかの実験の説明である。印刷ヘッド16は、イスラエル国のStratasys,Ltd.によるJ750(商標)3次元印刷システムの192ノズル印刷ヘッドであった。センサ442は、オランダ国アイントホーフェンのNXP Semiconductors N.V.によるMPXV7002DPセンサであった。導管440の断面積は、S=65.7±2.8cm
2であった。
第1の実験は、dP
g/dHの値が一定であり、液体材料の密度ρに等しいことを確実にすることを目的とした。
図5は、cm単位の印刷ヘッドからの高さの関数として、cmH
2O単位の圧力P
gを示す。曲線は測定された圧力値を表し、直線は測定された圧力値への線形フィットである。示されるように、データは直線とよく相関し、dP
g/dHがほぼ一定であることを示している。直線の傾きの当てはめ値は、95%の信頼区間で
である。この結果は、密度ρ=1.0313cmH
2O/cmと(10%未満で)一致する。
【0140】
dP
g/dH≒ρであるため、SdP
g/dmの値は絶対値で約1である。第2の実験では、噴射中に印刷ヘッドの下に配置された天秤によって噴射質量を測定した。
図6は、噴射質量の関数としてのS・P
gの測定値をグラム単位で示す。示されるように、データは直線とよく相関し、SdP
g/dmがほぼ一定であることを示している。直線の傾きの当てはめ値は、1と一致し、dP
g/dHについて得られた一致性レベルと一致するSdP
g/dm≒-0.93である。
【0141】
第3の実験は、測定された圧力を使用したα比(式6を参照)の計算を目的とした。この実験では、印刷ヘッドのN=192個のノズルを動作させて、132秒ごとに、吐出周波数f=38KHz(n
f/f=26.3158秒の噴射時間dtに対応)でn
f=100万回の発射イベントの噴射シーケンスを実行した。
図7Aは、秒単位の時間の関数として、センサ442によって測定されたcmH
2O単位の圧力P
fを示す。噴射中の圧力のジャンプは、
図7AにdP
fで示され、主に流量に関連する。
図7Bは、
図7Aの縦座標に沿った拡大図を示す。提示を明確にするために、噴射中の圧力は
図7Bには示されていない。連続する噴射イベント間の静圧の差は、
図7BにdP
gで示されている。
【0142】
図7A及び
図7Bに示す測定から得られたdP
g及びdP
fの値を以下の表1に要約する。
【表1】
【0143】
dPgの測定値に断面積Sを乗算し、噴射時間dtで除算すると、S・dPg/dt=-0.3049±0.0234g/sとなる。SdPg/dm≒1であるため、得られたS・dPg/dtの値は質量流量dm/dtの値でもあった。そして、dPgの測定値を質量流量で除することにより、α比dPf/(dm/dt)を算出した。得られた値は、dPf/(dm/dt)=9.9069±0.8718cmH2O・s/gであった。α比は、単一液滴の質量mdを計算するためにも使用した。これは、関係md=dPf/(α・f・N)に従って行われ、md=41.75±3.62ngの液滴質量をもたらした。
【0144】
第4の実験は、印刷ヘッドにおける動作ノズルの数を決定することを目的とした。この実験では、異なる数Nのノズルを使用して、吐出周波数f=38KHz(nf/f=2.63158秒の噴射時間dtに対応)でのnf=10万回の発射イベントをそれぞれ含む6つの噴射シーケンスを実行するように印刷ヘッドを動作させた。発射イベント当たりの質量変化は、Tf・dm/dtとして計算され、Tfは、Tf=1/fとして定義される発射イベントの持続時間であり、dm/dtは、関係dm/dt=dPf/αを使用して計算された質量流量であり、α比については、第3の実験のデータから得られた値が使用された。
【0145】
図8Aは、秒単位の時間の関数として、センサ442によって測定された圧力をcmH
2O単位で示し(左の縦座標)、発射イベント当たりの対応する質量変化をng単位で示す(右の縦座標)。噴射中の圧力のジャンプは、
図8AにdP
fで示されている。
図8Aには、各噴射シーケンスにおける動作可能なノズルの数Nも示されている。
図8Bは、動作可能なノズルの数の関数として、
図8Aの圧力ジャンプdP
fをcmH
2O単位で示し(左の縦座標)、対応する発射イベント当たりの質量変化をng単位で示す(右の縦座標)。図示のように、発射イベント当たりの質量は、動作可能なノズルの数とともにほぼ線形に変化する。右縦座標の6つの値への線形フィットは、38.577N±72.1575[ng]の計算された傾きを提供し、N個の欠陥ノズルのうち2個の検出分解能を実証する。
【0146】
第5の実験は、計算された平均液滴質量に基づいて印刷ヘッドに印加される電圧の調整を実証することを目的とした。この実験では、印刷ヘッドを動作させて、吐出周波数f=38KHz(nf/f=2.63158秒の吐出時間dtに対応)で13.1579秒ごとにnf=10万回の発射イベントを含む吐出シーケンスを実行し、各吐出シーケンスについて印刷ヘッドに異なる電圧を印加した。第3の実験のデータから得られたα比を用いて、関係md=dPf/(α・f・N)に従って、液滴質量を計算した。
【0147】
図9Aは、秒単位の時間の関数として、センサ442によって測定された圧力をcmH
2O単位で示し(左の縦座標)、対応する液滴質量m
dをng単位で示す(右の縦座標)。噴射中の圧力のジャンプは、
図9AにdP
fで示されている。また、
図9Aには、各噴射シーケンスについて印刷ヘッドに印加される電圧が示されている。
図9Bは、印加電圧の関数として、
図9Aの圧力ジャンプdP
fをcmH
2O単位で示し(左の縦座標)、対応する液滴質量m
dをng単位で示す(右の縦座標)。図示のように、液滴質量m
dは、印刷ヘッドに印加される電圧とともにほぼ線形に変化する。右縦座標の6つの値への線形フィットにより、m
d=-1.1956*V-7.1668±0.1[ng]が得られ、比較的少数の発射イベント(この実験では10万回)であっても高い較正精度(約0.4%)を示した。
【0148】
第6の実験は、単一ノズル検査を実証することを目的とした。この実験では、印刷ヘッドを動作させて192回の噴射シーケンスを実行し、各々が印刷ヘッドの異なる単一ノズルを使用し、吐出周波数f=38KHz(nf/f=2.63158秒の噴射時間dtに対応)でnf=10万回の噴射イベントを含む。換言すれば、印刷ヘッドの各ノズルを別々に使用した。連続するシーケンス間の時間は5秒であった。第3の実験のデータから得られたα比を用いて、関係md=dPf/(α・f・N)に従って、液滴質量を計算した。
【0149】
図10Aは、ノズルのインデックスの関数として、噴射を伴うセンサ442によって測定された圧力と、噴射が行われなかったときの圧力との間の差をcmH
2O単位で示し(左の縦座標)、対応する液滴質量m
dをng単位で示す(右の縦座標)。
図10Aのデータは、MATLAB(登録商標)ソフトウェアのコードBackground=(imopen(imclose(Data,ones(20,1))、ones(20,1)))を使用して、バックグラウンド低減手順を適用した後に提示されている。
図10Aの点線の矩形でマークされた部分の拡大図が
図10Bに示されている。(黒い楕円でマークされた)23番目及び33番目のノズルのデータは、他のノズルと比較して減少した液滴質量値を示している。したがって、これらのノズルは、より小さい質量の液滴を吐出しているので、欠陥があると識別することができる。本発明のいくつかの実施形態では、ノズルの噴射後の測定圧力及び/又は対応する液滴質量値は、1又は複数の所定の閾値又は値(例えば、印刷システムにおける印刷ヘッドの製造又は設置又は較正後の圧力又は液滴質量)と比較される。そのようにして、例えば、任意の時間tにおいて、ノズル(又はノズルのグループ)をチェックし、アクティブ、部分的に欠陥、又は非アクティブとして識別することができる。その後、コントローラ420は、この情報を使用又は送信して、印刷中に部分的に欠陥のある又は非アクティブなノズルの使用を補償又は回避することによって、又は特別なイベントをトリガすることによって、印刷品質を改善することができる。本発明のいくつかの実施形態では、そのような特別なイベントは、1又は複数の個々のノズル、ノズルアレイ全体(すなわち、チャネル)、クリーニング又はパージステーションでの印刷ヘッド又は印刷ブロックのクリーニング又はパージ、又は印刷ヘッドの交換が必要であることを知らせる警告メッセージをユーザに発行することであってもよい。
【0150】
第7の実験は、式15~式18に関連して上述した手順を使用して測定値からノイズ成分を除去する能力を実証することを目的とした。この実験では、印刷ヘッドのN=192個のノズルを動作させて、吐出周波数f=38KHz(n
f/f=26.3158秒の噴射時間dtに対応)でn
f=100万回の発射イベントの噴射シーケンスを実行した。
図11は、本発明のいくつかの実施形態による、時間の関数として圧力のグラフにわたる測定サンプリングを例示する。4つのサンプル測定値M
0...M
3を得ることができる時点が示されている。
【0151】
本発明をその特定の実施形態と併せて説明してきたが、多くの代替形態、修正形態及び変形形態が当業者には明らかであることは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の精神及び広義の範囲に含まれるすべてのそのような代替形態、修正形態及び変形形態を包含することが意図されている。
【0152】
本明細書中で言及されるすべての刊行物、特許及び特許出願は、あたかも各個々の刊行物、特許又は特許出願が参照により本明細書中に組み込まれることが言及されるときに具体的かつ個別に言及されたかのように、その全体が参照により本明細書中に組み込まれることが出願人の意図である。さらに、本出願における任意の参考文献の引用又は特定は、そのような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることの承認として解釈されるべきではない。セクションの見出しが使用される限り、それらは必ずしも限定的であると解釈されるべきではない。さらに、本出願の任意の優先権書類は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】