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特表2024-515478装飾コーティングされたキャップ付き締結具アセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】装飾コーティングされたキャップ付き締結具アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   F16B 37/14 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
F16B37/14 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023559703
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(85)【翻訳文提出日】2023-11-22
(86)【国際出願番号】 US2022022811
(87)【国際公開番号】W WO2022212697
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】63/168,728
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522238941
【氏名又は名称】マクレーン-フォッグ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】MACLEAN-FOGG COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ロバーツ,ルーク マイケル
(72)【発明者】
【氏名】レイヴス,マーク アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】メイヤーズ,リー
(57)【要約】
車輪締結具および車輪締結具を形成する方法が提供される。車輪締結具は、ねじ部と、ねじ部とは反対側の上部とを備える締結具本体を有する。締結具本体の荷重支持面は、締結具座部と協働するように形作られている。キャップは、締結具本体から分離されており、装飾的な外観表面を画定するためにキャップ基材を覆うコーティングを有する。キャップは、圧着領域で上部に圧着され、キャップを締結具本体上に保持し、締め付け面を画定する。キャップは、荷重支持面を覆わない。キャップをコーティングすることは、黒色の外観表面を画定するために、ニッケルストライク層および黒色クロム不動態化層を付けることを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ部と、工具からトルクを受けるように形作られた締め付け面と、締結具座部と協働するように形作られた荷重支持面とを備えた締結具本体と、
前記締結具本体から分離され、装飾的な黒色の外観表面を画定するために、キャップ基材を覆う黒色コーティングを有するキャップと、
を備え、
前記キャップは、圧着領域で前記締結具本体に固定され、それにより、前記荷重支持面および前記ねじ部を覆うことなく前記締め付け面を覆う、車輪締結具。
【請求項2】
前記黒色コーティングは、前記装飾的な黒色の外観表面を画定するために、ニッケルストライク層および黒色クロム不動態化層を有する、請求項1に記載の車輪締結具。
【請求項3】
前記黒色クロム不動態化層は、複合三価クロム酸化物を含む、請求項2に記載の車輪締結具。
【請求項4】
前記黒色クロム不動態化層の上にわたってシーラント層をさらに含む、請求項2に記載の車輪締結具。
【請求項5】
前記黒色クロム不動態化層は、3ミクロン未満の厚さを有する、請求項2に記載の車輪締結具。
【請求項6】
前記黒色クロム不動態化層は、0.1~2.1ミクロンの範囲の厚さを有する、請求項5に記載の車輪締結具。
【請求項7】
前記ニッケルストライク層は、11ミクロン未満の厚さを有する、請求項2に記載の車輪締結具。
【請求項8】
前記黒色コーティングは、黒色の物理蒸着(PVD)を含み、前記黒色の外観表面を画定する、請求項2に記載の車輪締結具。
【請求項9】
前記黒色クロムコーティングは、ニッケルストライク層と前記黒色PVDとの間に硬質クロム層をさらに含む、請求項8に記載の車輪締結具。
【請求項10】
前記キャップの基材は、ステンレス鋼を含む、請求項1に記載の車輪締結具。
【請求項11】
前記キャップの基材は、炭素鋼を含む、請求項1に記載の車輪締結具。
【請求項12】
前記キャップは、前記キャップを前記締結具本体上に保持するための圧着領域を有する、請求項1に記載の車輪締結具。
【請求項13】
前記締結具本体は、前記締め付け面から半径方向外側に延びるフランジを有し、前記クリンプ領域は、前記フランジに隣接して配置される、請求項12に記載の車輪締結具。
【請求項14】
車輪締結具を形成する方法であって、
上部と、前記上部の反対側のねじ部とを有する締結具本体を形成するステップと、
前記締結具本体の前記上部を覆うキャップを予備成形するステップと、
装飾的な外観表面を画定するために、前記キャップをコーティングするステップと、
前記キャップを前記締結具本体に固定するために、前記キャップを前記締結具本体の前記上部に圧着するステップと、
を含む、方法。
【請求項15】
前記キャップをコーティングするステップは、黒色の外観表面である前記装飾的な外観表面を画定するために、ニッケルストライク層および黒色クロム不動態化層を付けるステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記コーティングの厚さが閾値厚さ未満であることを保証するために、前記黒色クロム不動態化層およびニッケルストライク層を測定するステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ステンレス鋼の前記キャップを予備成形するステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記キャップをコーティングするステップは、黒色の外観表面である前記装飾的な外観表面を画定するために、黒色の物理蒸着(PVD)を適用するステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
ねじ部と、前記ねじ部とは反対側の上部とを備えた締結具本体と、
締結具座部と協働するように形作られた荷重支持面と、
前記締結具本体から分離され、黒色の外観表面を画定するために、キャップ基材を覆う装飾コーティングを有するキャップと、
を備え、
前記キャップは、圧着領域で前記上部に圧着され、前記キャップを前記締結具本体上に保持し、前記荷重支持面および前記ねじ部を覆うことなく締め付け面を画定する、車輪締結具。
【請求項20】
前記装飾コーティングは、黒色の外観表面を画定するために、ニッケルストライク層および黒色クロム不動態化層を有する黒色クロムコーティングを含み、前記黒色クロムコーティングは、圧着領域に沿って異常がないため、前記ニッケルストライク層またはキャップ材料は見えない、請求項19に記載の車輪締結具。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2021年3月31日に出願された米国仮出願第63/168,728号の利益を主張し、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本出願は、審美的な車輪締結具に関する。特に、本発明は、キャップを含む車輪締結具に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの場合、車両の車輪の美観は、車両の特徴的な部分である。したがって、車両の車輪ナットおよび車輪ボルトなどの車輪締結具では、美観が重要な課題となる。車輪締結具は、車両の車輪が頻繁に遭遇する湿った塩分の多い環境にもさらされ、その結果として、腐食の問題が発生しやすくなる。しかしながら、車輪締結具の目に見える表面の腐食は、車輪および車両全体の美的外観を大きく損なう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態によれば、ねじ部を備えた締結具本体と、工具からトルクを受けるように形作られた締め付け面とを有する車輪締結具が提供される。締結具本体は、締結具座部と協働するように形作られた荷重支持面を有する。キャップは、締結具本体から分離されており、外観表面を画定するために、キャップ基材を覆う装飾コーティングを有する。キャップは、荷重支持面およびねじ部を覆うことなく締め付け面を覆うように締結具本体に固定される。
【0005】
別の一実施形態では、装飾コーティングは、黒色の外観表面を画定するために、ニッケルストライク層および黒色クロム不動態化層を有する黒色クロムコーティングを有する。
【0006】
別の一実施形態では、黒色クロム不動態化層は、複合三価クロム酸化物を含む。
【0007】
別の一実施形態では、黒色クロム不動態化層の上にわたってシーラント層が存在する。
【0008】
別の一実施形態では、黒色クロム不動態化層は、最大3ミクロンの厚さを有する。
【0009】
別の一実施形態では、装飾コーティングは、黒色の物理蒸着(PVD)であり、黒色の外観表面を画定する。
【0010】
別の一実施形態では、装飾コーティングは、ニッケルストライク層と黒色のPVDとの間に硬質クロム層を有する。
【0011】
別の一実施形態では、締結具本体の装飾コーティングは、締め付け面から半径方向外側に延びるフランジを有し、キャップがフランジの周囲に圧着される。
【0012】
別の一実施形態によれば、車輪締結具を形成する方法が提供される。この方法は、工具と、ねじ部を有する締結具本体と協働するように形作られた締め付け面を有する締結具本体を形成することを含む。締結具本体の上部を覆い、締め付け面を覆う形状に、キャップは予備成形されている。予備成形されたキャップは、装飾的な外観表面を画定するように形作られる。キャップを締結具本体に固定するために、キャップは圧着される。
【0013】
別の一実施形態では、キャップは、ステンレス鋼で予備成形される。
【0014】
別の一実施形態では、キャップは、炭素鋼で予備成形される。
【0015】
一実施形態によれば、ねじ部を備えた締結具本体と、工具からトルクを受けるように形作られた締め付け面とを有する車輪締結具が提供される。締結具本体は、締結具座部と協働するように形作られた荷重支持面を有する。キャップは、締結具本体から分離されており、黒色の外観表面を画定するために、キャップ基材を覆う黒色クロムコーティングを有する。キャップは、締結具本体に圧着され、キャップを締結具本体上に保持し、締め付け面を覆う。
【0016】
別の一実施形態では、黒色クロムコーティングは、黒色の外観表面を画定するために、ニッケルストライク層および黒色クロム不動態化層を有する。
【0017】
別の一実施形態では、黒色クロムコーティングは、圧着領域に沿って異常がないため、ニッケルストライク層またはキャップ材料は見えない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、一実施形態に係る締結具アセンブリの側面/断面図を示す。
図2図2は、一実施形態に係る図1の締結具アセンブリのコーティングの拡大図である。
図3図3は、別の一実施形態に係るコーティングされた締結具を示す。
図4図4は、締結具アセンブリを形成する方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
必要に応じて、本発明の詳細な実施形態が本明細書に開示される。しかしながら、開示された実施形態は、本発明の単なる例示であり、様々な代替形態で具体化することができることを理解すべきである。図は、必ずしも正確な縮尺ではなく、特定の構成要素の詳細を示すために、一部の構成が誇張または最小化されている場合がある。したがって、本明細書に開示される特定の構造および機能の詳細は、限定として解釈されるべきではなく、本発明を様々に使用することを当業者に教示するための代表的な基礎としてのみ解釈されるべきである。
【0020】
図1は、一実施形態に係るキャップ付き車輪締結具アセンブリ10を示す。アセンブリ10は、締結具本体12および装飾キャップ14を含む。
【0021】
図1に示されるように、締結具本体12は、締結具本体12を通って軸方向に延びる内孔18に沿って形成された雌ねじ部16を有するナット本体とすることができる。
【0022】
締結具本体12は、上部22に非真円面として形成されたトルク支持面、または締め付け面20を有する。図示のように、トルク支持面20は、標準的な六角形の工具が係合する六角形の面であってもよい。異なる数の締め付け面を有する異なる多角形形状、または工具締め付け面の任意の適切な形状、構成、または規格など、他の適切なトルク支持面を使用してもよい。一例では、締結具は、Wilsonらによる米国特許出願第15/487,805号のような3点トルク支持面、またはTomaszewskiらによる米国特許出願第15/872,386号のようなハイブリッド3点トルク支持面を有してもよく、その開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。他の適切なトルク支持面もまた、締結具本体12上に形成され得る。締結具アセンブリ10は、Wilsonによる米国特許第8,491,247号に従って改良された締め付け設計およびトルク支持面を有することもでき、その開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。キャップ14は、既存の車輪締結具のサイズおよびスタイルと一致する装飾的な締め付け面を有することができるが、キャップは締結具とは別に回転し、Deedsらによる米国特許出願第63/315,434号、またはRavesらによる米国特許出願第63/296,422号などにあるように、キャップの締め付け面にトルクを加えても、締結具は取り外されないか、または接合部での張力に影響を及ぼさない可能性があり、これらの開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0023】
ナット本体16の下部24は、荷重支持面30を有する。図示のように、荷重支持面30は、円錐台形状を有するが、荷重支持面30は、球面、または車輪のリムを車両の車輪のスタッドに固定するために車輪のリム開口部に着座するための他の適切な形状であってもよい。別の一実施形態では、締結具本体12の下部24は、荷重支持面30の下方に延びる突出部に形成された雄ねじ部を有するボルト本体であってもよい。
【0024】
締結具本体12は、従来の方法で炭素鋼から形成することができる。締結具本体12は、酸化および腐食を防止するためにコーティングされてもよい。例えば、コーティングは、亜鉛とアルミニウムから構成され、クロムを含まないものであってもよい。コーティングは、締結具本体12全体にわたって施されてもよい。
【0025】
フランジ40は、六角形の表面20と荷重支持面30との間に形成される。フランジ40は、トルク支持面20および荷重支持面30から半径方向外側に延びる外筒部を画定する。フランジ40の下方で荷重支持面30の上方にはアンダーカット44がある。
【0026】
キャップ14は、上部22の上にわたって配置され、トルク支持面20およびフランジ40を覆う。キャップ14の下縁部42は、アンダーカット44に沿って内向きに圧着され、内向き圧着セグメント46を形成する。キャップ14の下端を外側フランジ40の周りに圧着することにより、キャップ14が締結具本体12上に保持され、使用中にキャップ14が締結具本体12に沿って軸方向に移動しないようになる。
【0027】
トルク支持面20と整列し、外面50を提供する壁セグメントを、キャップ14は有する。外面50は、トルク支持面または締め付け面として形作ることができる。外面50はまた、任意の装飾的な形状を有していてもよい。上部22は、トルク支持面を有さないステムを有することができ、キャップ14は、キャップ上の装飾的な締め付け面にトルクを加えても、締結具を取り外さないか、または接合部での張力に影響を及ぼし得ない装飾的な締め付け面を有し得る。キャップ14は、装飾的な締め付け面にトルクが加えられると、締結具本体12上で自由に回転することもできる。
【0028】
円筒面48がフランジ40の上にわたって延びている。締結具本体12がキャップ14内に配置された後、円筒面48の下縁部が内向きに圧着されて圧着セグメント46を形成する。圧着セグメント46は、締結具本体12のアンダーカット44と係合するように圧着され、極端な、または繰り返しの締め付け、または他の環境条件下でもキャップ14が締結具本体から外れないことを保証する。
【0029】
締結具本体12は、締りばめまたは滑りばめでキャップ14内に配置してもよい。この圧着はまた、上部22に沿った締結具本体12上のキャップ14の間への湿気の侵入を阻止する。
【0030】
キャップ14はまた、締結具アセンブリ10の遠位端を画定する端部セグメント52を有する。端部セグメント52は、図示のように、装飾目的のために尖った、平らな、または他の適切な形状のドーム形とすることができる。
【0031】
キャップ14はまた、締結具アセンブリ10に装飾的な外観を提供する。キャップ14は、締結具本体12から分離されているので、キャップ14をコーティングして、締結具本体12とは異なる所望の美的外観表面を提供することができる。例えば、キャップ14は、黒色クロムの外観表面を有するようにコーティングされてもよい。しかしながら、異なる美的外観を提供するために、他の色および/またはコーティング材料が使用されてもよい。
【0032】
車輪締結具は、所与の取り付けトルクが所望のクランプ荷重と等しくなることを保証するために、再現性のある摩擦係数を有する必要がある。車輪締結具は、腐食環境にもさらされる。これらの理由により、キャップ14を締結具本体12から分離することにより、ねじ面と荷重支持面の摩擦制御に悪影響を与えるクロムなどのコーティングを締結具本体12に施さずに、キャップ14をコーティングして耐食性ならびに美的外観を提供することができる。
【0033】
一実施形態では、キャップ12は、キャップ基材62を覆う黒色クロムコーティング60を有する。黒色クロムコーティング60は、ニッケルストライク層66および黒色クロム不動態化層68から形成され、キャップ14上に黒色の外観表面を画定する。図2は、ニッケルストライク層66と表面的に反応している黒色クロム不動態化層68の倍率25,000倍の顕微鏡写真を示している。
【0034】
ニッケルめっき上の従来の光沢クロムは、明るさと腐食保護に必要な25~30ミクロンのかなりの厚さを有するが、キャップ14の曲げまたは圧着が必要な用途に使用すると亀裂が発生する。
【0035】
図2に示されるコーティング60は、クロム酸塩の不動態化を可能にする最小限の厚さを有するニッケルストライク層66を有するため、反応は基材62とではなくニッケル層66の表面とのみ起こる。したがって、ニッケルストライク層66は、基材62を薄く覆うだけである。基材層62は、ステンレス鋼、炭素鋼、または別の適切な基材層とすることができる。
【0036】
黒色クロム不動態化層68は、ニッケルと表面的に反応する。黒色クロムの不動態化は、複雑な三価クロム酸化物の最終生成物を使用してニッケルストライク上に施される処理である。一実施形態では、黒色クロム不動態化層は、六価クロムを有するめっき浴中で形成することができ、そのプロセスを通じて六価クロムに戻ることができない三価クロムに変換する。クロム不動態化層68は、環境要件を満たしているが、微量の均質な材料は許容され得る。最終的な外観は深い黒色であるが、条件によっては、虹色、真鍮色、またはくすんだ黒色の外観を示す領域がある。クロムの不動態化は、業界では通常クロム酸塩と呼ばれている。ニッケル(Ni)は、電気めっきによって基材62上に堆積される。黒色クロム不動態化層68は、ニッケルストライク層66上に電気めっきされ得る。
【0037】
黒色クロムコーティング60は、滑らかで平坦な表面を有することができ、ニッケルまたは基材は見えない。黒色クロムコーティング60は、キャップの圧着中または組み立て中の締結具の締め付け中の亀裂、剥離、または剥がれなどの視覚的異常を防止する厚さを有する。圧着工具による摩耗痕は、許容できるかもしれないが、基材層62および/またはニッケルストライク層66は、黒色クロム不動態化層68の下には見えない。黒色クロム不動態層68は除去されず、圧着および繰り返しの締め付け中に接着力を維持する。制御された厚さのコーティングを維持することで、外観表面のいずれにも、ひび割れ、剥離、または剥がれがないことが保証される。アンダーカット面44には、ニッケルまたはステンレス鋼が見えてはならない。黒色クロムは、均一な黒色を提供する。
【0038】
一実施形態では、ニッケルストライク層66は、0.1ミクロン~3.5ミクロンの範囲の厚さを有することができる。別の一実施形態では、ニッケルストライク層66は、0.1ミクロン未満の厚さを有することができる。別の一実施形態では、ニッケルストライク層66は、最大11ミクロンの厚さを有することができる。
【0039】
黒色クロム不動態化層68の厚さは、外観に影響を与える1つの要因である。一実施形態では、黒色クロム不動態化層68の厚さは、0.1ミクロン~2.1ミクロンの範囲とすることができる。別の一実施形態では、黒色クロム不動態化層68は、最大3ミクロンの厚さを有することができる。図2に示されるように、黒色クロム不動態化層68は、表面に沿ってばらつきを有する場合があり、厚さを測定することが難しい場合がある。したがって、黒色クロム不動態層68の厚さは、特定されない場合もあり、あるいは平均または平均値として測定される場合もある。浴温度、浴汚染、その他の製造パラメータを含むいくつかの要因も、色に影響を与える可能性がある。
【0040】
ニッケルストライク層66は、黒色クロム不動態化層68を受け入れるためのキャップ14の基材62を調整するために付けられる。キャップ14は、ステンレス鋼板である基材から形成することができる。別の一実施形態では、キャップ14は、炭素鋼である基材から形成することができる。
【0041】
黒色クロム処理後、その均一性、反射率を改善し、黒色のその深さを増すために、オイル、ワックス、クリアラッカーなどのシーラーを黒色クロム不動態層68上に塗布してもよい。一部のシーラーは、黒色クロムめっき系の摩耗性も改善する。
【0042】
ニッケルストライク層66および黒色クロム不動態化層68のめっき厚さは、光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡(SEM)を使用した断面分析によって測定することができる。あるいはまた、集束イオンビーム(FIB)を使用して試料をエッチングし、SEMおよびBSE(後方散乱電子)分析と組み合わせて、めっきの厚さを取得することもできる。これらの方法を介して取得される厚さ測定値は、以下「真の層厚さ」測定値と呼ばれるが、破壊的であるため、生産には適さない。
【0043】
非破壊膜厚(NDT)測定は、蛍光X線(XRF)を使用して開発され、XRFと真の層の厚さとの間に相関関係が確立された後にめっきの厚さを決定する。XRFは、通常の鋼およびプラスチックに対してはかなり正確であるが、ステンレス鋼を含むニッケル含有鋼に対しては通常は正確ではない。本出願の一実施形態によれば、ステンレス鋼部品上のクロムめっきのXRF読み取り値と後方散乱電子測定値とを関連付ける相関関係が開発され、これにより、クロムめっきステンレス鋼のめっき厚さ試験に対してXRF試験を定量化できるようになった。これは、黒色のキャップ付き車輪締結具、特にステンレス鋼のキャップを備えた締結具の製造に特に役立つ。ステンレス鋼のキャップ付き車輪締結具は、腐食せず、耐久性が高く、再現性のある車輪締め付け機能の問題を解決した。しかしながら、ステンレス鋼は、自然な光沢仕上げのみである。キャップに黒色クロムコーティングなどの装飾コーティングを追加することにより、キャップに黒色などの装飾的な外観を提供しながら、締結機能が維持される。しかしながら、XRFにはニッケルに関する問題があるため、クロムコーティングの厚さをインプロセスで測定することはできなかった。部品の品質を保証するには、インプロセスでのチェックが必要である。部品のプロセス能力を測定して保証するには、XRFと厚さを相関させる問題を解決する必要があった。黒色クロム不動態層の厚さとニッケルストライク層の厚さは、両方とも測定する必要があるため、XRFを使用して相関係数を開発し、厚さを測定し、閾値の厚さが維持されていることを確認した。
【0044】
図3は、別の一実施形態に係る、キャップ14上に装飾コーティングを有する締結具アセンブリ70を示す。図示のように、締結具アセンブリ70は、黒色の物理蒸着(PVD)層を有する。物理蒸着(PVD)は、部分的にイオン化された金属蒸気の生成、特定のガスとのその反応、およびキャップ14の基材62上に特定の組成を有する薄膜を形成することによって、金属ベースの硬質コーティングを生成する。PVDコーティングプロセスは、高真空下で実行される。PVDプロセスは、例えば、Ti、Cr、Zrの窒化物、炭化物、炭窒化物、およびAlCr、AlTi、TiSiなどの合金から作製されたコーティングを形成するために使用することができる。
【0045】
一実施形態では、PVD層は、0.2~15ミクロンの範囲の厚さを有する。別の一実施形態では、PVD層は、0.2~5ミクロンの範囲の厚さを有する。別の一実施形態では、PVD層は、0.2~2ミクロンの範囲の厚さを有する。PVDコーティングは、ニッケルストライク層66の上にわたって施すことができる。また、ニッケルストライク層と黒色PVD層との間に硬質クロム/光沢クロム層を形成してもよい。
【0046】
別の一実施形態では、締結具アセンブリは、キャップ14上に黒色の酸化物の装飾コーティングを有していてもよい。黒色の酸化物のコーティングを施すことには、第1鉄金属の表面上に黒色の酸化鉄を形成するプロセスが含まれる。黒色の酸化物のコーティングは、第1鉄金属の表面上の鉄と黒色の酸化物の溶液中に存在する酸化性塩との間の化学反応によって生成される。この化学反応により、キャップ14の基材62の表面上に黒色の酸化鉄であるマグネタイト(Fe)が形成される。耐食性を高めるために、黒色の酸化物のコーティングに後処理を施すことができる。黒色の酸化物層は、極めて薄く、厚さは、1000万分の1インチである。
【0047】
図4は、締結具アセンブリ10を形成する方法を示す。キャップ14を締結具本体12から分離することにより、荷重支持面またはねじ部をコーティングすることなく、キャップ14をコーティングして所望の美的外観を提供することができる。分離されたキャップにより、キャップ14が締結具に圧入および/または圧着された後でも、耐久性および耐食性のためにコーティングの厚さを制御することもできる。図4は、締結具アセンブリ10を形成する方法100を示す。
【0048】
ステップ110では、締結具本体12は、当業者に知られている標準的なプロセスまたは適切なプロセスに従って形成される。ステップ112では、締結具本体12は、耐食性とねじ面に適切な摩擦係数を与えるコーティングでコーティングすることができる。ステップ112では、キャップ14を除いた締結具本体12全体をコーティングすることができる。
【0049】
ステップ120では、キャップ14が形成される。キャップ14は、締結具本体12から分離されているため、キャップ14は、締結具本体12に対応するように予備成形される。キャップ14は、ステンレス鋼または炭素鋼の基材から予備成形することができる。キャップ14は、当業者に知られている標準的なプロセスまたは適切なプロセスに従って形成することができる。
【0050】
ステップ124では、装飾コーティング層がキャップ14に付けられる。黒色のクロムの装飾コーティングの例では、ニッケルストライク層66が電気めっきによって予備成形されたキャップに付けられる。次に、黒色クロム不動態化層68が、ニッケルストライク層66の上にわたって予備成形されたキャップに付けられる。一実施形態では、黒色クロム不動態化層68は、電気めっきによって付けられる。他の実施形態では、装飾コーティングは、黒色の物理蒸着(PVD)または黒色の酸化物層とすることができる。少なくとも1つの実施形態では、ニッケルストライク層66と黒色PVDとの間に硬質クロム/光沢クロム層を付けることができる。
【0051】
ステップ126では、クロムコーティングを施した予備成形されたキャップが締結具本体12上に配置される。締結具本体12は、圧入などの締りばめで予備成形されたキャップと係合することができる。最後に、ステップ128で、キャップ14が締結具本体12に圧着される。キャップ14は、溶接、接着剤、または追加の構成要素を使用せずに締結具本体12に固定される。
【0052】
例示的な実施形態を上に説明したが、これらの実施形態は、本発明の可能なすべての形態を説明することを意図したものではない。むしろ、本明細書で使用される用語は、限定ではなく説明のための用語であり、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく様々な変更を行うことができることが理解される。また、様々な実装形態の構成を組み合わせて、本発明のさらなる実施形態を形成することができる。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】