(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】挟み込み事象の検出及び回避
(51)【国際特許分類】
E05F 15/46 20150101AFI20240403BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20240403BHJP
B60J 10/76 20160101ALI20240403BHJP
E05F 15/689 20150101ALI20240403BHJP
【FI】
E05F15/46
B60J1/00 C
B60J10/76
E05F15/689
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560300
(86)(22)【出願日】2022-02-08
(85)【翻訳文提出日】2023-11-20
(86)【国際出願番号】 EP2022052949
(87)【国際公開番号】W WO2022214229
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】102021001774.9
(32)【優先日】2021-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【氏名又は名称】田中 清
(74)【代理人】
【識別番号】100098110
【氏名又は名称】村山 みどり
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・ヴォルフ
(72)【発明者】
【氏名】ジョアキン・ロドリゴ パストール
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング・シェルホルン
【テーマコード(参考)】
2E052
3D127
3D201
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052BA07
2E052CA06
2E052DA02
2E052DB02
2E052EA14
2E052EB01
2E052GA07
2E052GA08
2E052GA09
2E052GB13
2E052GB20
2E052GC01
2E052HA01
3D127AA02
3D127CB05
3D127CC05
3D127DE12
3D127DF04
3D201AA36
3D201CA23
(57)【要約】
本発明は、車両(2)のモーター作動式閉鎖システムの挟み込み事象を検出するための装置(1)に関し、少なくとも1つの閉鎖要素(4)によって閉鎖可能な車両(2)の開口部(O)をその縁部において少なくとも部分的に取り囲むセンサー電極(3)と基準センサー電極(15)を備える。制御装置(5)が設けられており、この制御装置(5)は、
-帯電プロセスでは電位を、放電プロセスでは接地電位(GND)をそれぞれセンサー電極(3)と基準センサー電極(15)に加え、
-センサー電極(3)と基準センサー電極(15)の電位が接地電位(GND)による電荷の逆流によって生じる最小閾値に到達するまでの所要時間をそれぞれ検知し、
-センサー電極(3)について検知された所要時間と、基準センサー電極(15)について検知された所要時間との差分を算出し、
-この差分が、規定された閾値を超えており、センサー電極(3)について検知された所要時間が規定された標準所要時間から、又は挟み込み事象が差し迫っていないと検知された状態で検知される標準所要時間から逸脱している場合、挟み込み事象が差し迫っていると結論づけるように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(2)のモーター作動式閉鎖システムの挟み込み事象を検出するための装置(1)であって、
-少なくとも1つの閉鎖要素(4)によって閉鎖可能な前記車両(2)の開口部(O)をその縁部において少なくとも部分的に取り囲むセンサー電極(3)を備え、
-前記センサー電極(3)は、前記開口部(O)を少なくとも部分的に取り囲むシール要素(10)に配置されている、
前記装置(1)において、
-前記車両(2)の前記開口部(O)をその縁部において少なくとも部分的に取り囲む基準センサー電極(15)が設けられており、
-前記基準センサー電極(15)は、前記センサー電極(3)に対して距離を置いて前記シール要素(10)に配置されており、かつ前記センサー電極(3)よりも前記開口部(O)に対して大きな距離を有しており、
-制御装置(5)が設けられており、前記制御装置(5)は、
-帯電プロセスでは電位を、放電プロセスでは接地電位(GND)をそれぞれ前記センサー電極(3)と前記基準センサー電極(15)に加え、
-前記センサー電極(3)と前記基準センサー電極(15)の前記電位が前記接地電位(GND)による電荷の逆流によって生じる最小閾値に到達するまでの所要時間をそれぞれ検知し、
-前記センサー電極(3)について検知された前記所要時間と、前記基準センサー電極(15)について検知された前記所要時間との差分を算出し、
-前記差分が、規定された閾値を超えており、前記センサー電極(3)について検知された前記所要時間が規定された標準所要時間から、又は挟み込み事象が差し迫っていないと検知された状態で検知される標準所要時間から逸脱している場合、挟み込み事象が差し迫っていると結論づけるように構成されている、
ことを特徴とする、前記装置(1)。
【請求項2】
前記制御装置(5)は、さらに、前記センサー電極(3)と前記基準センサー電極(15)の前記帯電プロセスと前記放電プロセスを周期的にずらして実行することにより、前記センサー電極(3)の前記帯電プロセスと前記放電プロセスの開始が、前記基準センサー電極(15)の前記帯電プロセスと前記放電プロセスの終了後に、又はその逆で行われるように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
-前記センサー電極(3)は、前記シール要素(10)の内側シールリップに配置されており、
-前記基準センサー電極(15)は、前記シール要素(10)の外側シールリップに配置されている、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置(1)
【請求項4】
-前記制御装置(5)と前記センサー電極(3)は、第1の測定ピン(6)に接続されており、
-前記制御装置(5)と前記基準センサー電極(15)は、第2の測定ピン(16)に接続されており、
-前記制御装置(5)は第1の制御ピン(8)に接続されており、前記センサー電極(3)は高インピーダンス電気抵抗(7)を介して前記第1の制御ピン(8)に接続されており、
-前記制御装置(5)は第2の制御ピン(18)に接続されており、前記基準センサー電極(15)は高インピーダンス電気抵抗(17)を介して前記第2の制御ピン(18)に接続されており、
-前記制御装置(5)は、
-前記第1の制御ピン(8)と前記第2の制御ピン(18)を介してそれぞれの前記電位を前記センサー電極(3)と前記基準センサー電極(15)に加え、
-前記第1の測定ピン(6)で前記センサー電極(3)の前記電位と前記センサー電極(3)上の負電荷の分布とを同時に測定し、
-前記第2の測定ピン(16)で前記基準センサー電極(15)の前記電位と前記基準センサー電極(15)上の負電荷の分布とを同時に測定し、
-前記制御ピン(6、16)で測定した前記電位がそれぞれ規定された閾値に到達するとすぐに、前記接地電位(GND)を前記制御ピン(8、18)に加え、それによって電荷が前記センサー電極(3)と前記基準センサー電極(15)から逆流し、
-前記センサー電極(3)と前記基準センサー電極(15)の前記電位が前記閾値に達してから、それぞれ電荷の逆流によって生じる最小閾値に達するまでのそれぞれの前記所要時間を検知するように構成されている、
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記センサー電極(3)と前記基準センサー電極(15)は、それぞれ電気コンデンサ(9、19)を介して前記接地電位(GND)に接続されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項6】
前記センサー電極(3)と前記基準センサー電極(15)は、それぞれ導電体(3.1、15.1)とそれを取り囲む電気絶縁体(3.2、15.2)を持つセンサーケーブルとして構成されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項7】
発生する妨害に対して前記センサー電極(3)と前記基準センサー電極(15)を遮蔽するためのシールド電極(13)が、少なくとも部分的に前記開口部(O)を取り囲む車両のフレーム要素又は車両のルーフバーに配置されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項8】
前記制御装置(5)は、さらに、前記閉鎖要素(4)の閉動作の作動中に、追加的に、規定された危険領域(K)に前記閉鎖要素(4)があると判明した場合、挟み込み事象が差し迫っていると結論づけるように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の装置(1)を稼動するための方法であって、
-前記帯電プロセスでは前記電位が、前記放電プロセスでは前記接地電位(GND)がそれぞれ前記センサー電極(3)と前記基準センサー電極(15)に加えられ、
-前記センサー電極(3)と前記基準センサー電極(15)の前記電位が前記接地電位(GND)による電荷の逆流によって生じる最小閾値に到達するまでの所要時間がそれぞれ検知され、
-前記センサー電極(3)について検知された前記所要時間と、前記基準センサー電極(15)について検知された前記所要時間との差分が算出され、
-前記差分が、規定された閾値を超えており、前記センサー電極(3)について検知された前記所要時間が規定された標準所要時間から、又は挟み込み事象が差し迫っていないと検知された状態で検知される標準所要時間から逸脱している場合、挟み込み事象が差し迫っていると結論づけられる、
前記方法。
【請求項10】
車両(2)のモーター作動式閉鎖システムの挟み込み事象を回避するための装置であって、
-請求項1から8のいずれか一項に記載の挟み込み事象を検出するための装置(1)と、
-前記閉鎖要素(4)のモーター駆動を制御するための少なくとも1つの制御装置(5)と、
を備え、前記制御装置(5)は、挟み込み事象が差し迫っている場合に前記閉鎖要素(4)の閉動作を停止及び/又は逆転するように構成されている、前記装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に基づく、車両のモーター作動式閉鎖システムの挟み込み事象を検出するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
さらに、本発明は、そのような装置の稼動方法及び車両のモーター作動式閉鎖システムの挟み込み事象を回避するための装置にも関する。
【0003】
特許文献1から、車両のモーター作動式閉鎖システムの挟み込み事象を回避するための装置が公知である。この装置は、閉鎖要素によって閉鎖可能な車両の開口部をその縁部において少なくとも部分的に取り囲むセンサー電極を備える。さらに、この装置は、マイクロコントローラと、このマイクロコントローラ及びセンサー電極に接続されている測定ピンと、マイクロコントローラに接続され、かつ高インピーダンス電気抵抗を介してセンサー電極に接続されている制御ピンとを備える。マイクロコントローラは、制御ピンを介して電位をセンサー電極に加え、同時にセンサー電極の電位とセンサー電極上の負電荷の分布を測定ピンで測定するように構成されている。測定ピンで測定した電位が規定された閾値に達すると、マイクロコントローラが制御ピンに接地電位を加えるので、それにより電荷はセンサー電極から逆流する。さらに、マイクロコントローラは、電位が閾値に達してから、電荷の逆流によって生じる最小閾値に達するまでの所要時間を検知し、検知された所要時間が、規定された標準所要時間から、又は挟み込み事象が差し迫っていないと検知された状態で検知される標準所要時間から逸脱している場合は、挟み込み事象が差し迫っていると結論づけるように構成されている。
【特許文献1】DE 10 2020 002 817 A1
【0004】
さらに特許文献2から、開位置と閉位置の間で移動可能な自動車の電動式ウィンドウガラスを制御及び監視するための装置が公知である。この装置にはセンサー電極を備えるセンサーが含まれており、センサー電極によって閉鎖要素の開口領域に電界が発生する。さらに、この装置では、センサー電極の静電容量の変化を検知し制御信号を提供する制御装置がセンサーに接続されており、この制御装置は、閉鎖要素上に存在する湿膜に基づいてセンサー電極の静電容量の変化を検知する。
【特許文献2】DE 10 2004 002 415 A1
【0005】
特許文献3は、感知領域において対象物の存在を検知する挟み込み防止を説明している。この挟み込み防止は、筐体部と、この筐体部に埋め込まれている接地電極と、この接地電極から距離を置いて配置され、かつ筐体部に埋め込まれているセンサー電極とを備えている。センサー電極及び接地電極は、異なる電位に帯電される。筐体部は、非導電性材料から製造されており、接地電極に対してセンサー電極を絶縁している。さらに、この挟み込み防止には、剛性を低下させたゾーンが接地電極とセンサー電極の間に設けられており、この剛性を低下させたゾーンは筐体部に配置され、筐体部と一緒に共押出しされる。また、剛性を低下させたゾーンは、筐体部の空隙の形で、又は筐体部の材料よりも高い弾性を持つ材料の形で設けられており、より高い弾性を持つ材料は発泡ゴムから製造されている。筐体部は、センサー電極を取り囲む導電性領域と、接地電極を取り囲む導電性領域とを備えている。さらに、この挟み込み防止には、センサー電極に加えられる入力信号を作成し、センサー電極から出力信号を受信する装置も含まれている。この装置は、2つの出力信号を受信することができ、感知領域に誘電体が存在する場合、センサー電極と接地電極との間の静電容量の変化に応じて出力信号が変化し、センサー電極と接地電極の相互位置の変化に基づいて非導電体が存在する場合、センサー電極と接地電極との間の静電容量の変化に応じて出力信号が変化する。
【特許文献3】EP 1 154 110 A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、先行技術に比して、車両のモーター作動式閉鎖システムの挟み込み事象を検出するための改善された装置、そのような装置の改善された稼動方法、車両のモーター作動式閉鎖システムの挟み込み事象を回避するための改善された装置を提供するという課題に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、本発明に基づき、
-車両のモーター作動式閉鎖システムの挟み込み事象を検出するための、請求項1に記載された特徴を有する装置、
-請求項9に記載された特徴を有する方法、及び
-車両のモーター作動式閉鎖システムの挟み込み事象を回避するための、請求項10に記載された特徴を有する装置、
によって解決される。
【0008】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項の対象である。
【0009】
車両のモーター作動式閉鎖システムの挟み込み事象を検出するための装置は、少なくとも1つの閉鎖要素によって閉鎖可能な車両の開口部をその縁部において少なくとも部分的に取り囲むセンサー電極を備えている。このとき、センサー電極は、開口部を少なくとも部分的に取り囲むシール要素に配置されている。
【0010】
本発明に基づき、車両の開口部をその縁部において少なくとも部分的に取り囲む基準センサー電極が設けられており、この基準センサー電極は、センサー電極に対して距離を置いてシール要素に配置されており、かつセンサー電極よりも開口部に対して大きな距離を有している。さらに、制御装置が設けられており、この制御装置は、帯電プロセスでは電位を、放電プロセスでは接地電位をそれぞれセンサー電極と基準センサー電極に加え、センサー電極と基準センサー電極の電位が接地電位による電荷の逆流によって生じる最小閾値に到達するまでの所要時間をそれぞれ検知するように構成されている。さらに、この制御装置は、センサー電極について検知された所要時間と基準センサー電極について検知された所要時間の差分を算出し、この差分が規定された閾値を超えている場合、及びセンサー電極について検知された所要時間が規定された標準所要時間から、又は挟み込み事象が差し迫っていないと検知された状態で検知される標準所要時間から逸脱している場合、挟み込み事象が差し迫っていると結論づけるように構成されている。
【0011】
本装置は、例えば、閉鎖要素と、この閉鎖要素の縁部を少なくとも部分的に取り囲む車両構造との間で、挟み込み事象を検知するために車両で使用するように設けられている。例としては、これは、モーター作動式ウィンドウガラスとウィンドウ開口部の縁部を少なくとも部分的に取り囲む車両構造とであり、又はモーター作動式車両ドアと車両ドアの縁部を少なくとも部分的に取り囲む車両構造とである。
【0012】
車両でのいわゆるウィンドウレギュレータ挟み込み保護に対する安全要件は、例えば公知の電流ベースの挟み込み防止では確保できない高レベルの反応性を要求している。このことは、特に、挟み込み保護を検査するための検査対象物の剛性が、65N/mmと比較的高いことに起因している。この場合、検査対象物は、例えば子供の指の特性を表わしている。さらに、公知の挟み込み保護システムの反応性能は、ウィンドウレギュレータモーターの制御からウィンドウガラスが反応するまでの所要時間を示すシステムの時定数によって大きく制限されている。フレームレスの車両ドアでは、特に、自由に配置可能な検査対象物角度及び検査角度位置によって、上ブロックにおけるウィンドウガラスのガイドが確保できないという難点がある。このことは、ドアの挟み込み防止システムにも該当する。
【0013】
これに対して、本発明に基づく装置により、挟み込み力を発生させることなく反応を可能にする予防的挟み込み防止を実現することができる。つまり、挟み込み力が発生する前に、ウィンドウガイド又はドア開口部において、及び例えばシール近傍などの危険な挟み込み領域において、対象物及び身体部分の検出が可能である。これにより、将来の安全要件FMVSS-118を遵守することができる。この場合、装置は特に少ない材料費及び経費で実現可能である。ここでは、検知が非接触式ならびにコンタクトレスで行われ、特に堅牢に形成されている。検知範囲は、例えば0.5cm~5cmである。特に、放電時間、すなわち電位が電荷の逆流によって生じる最小閾値に到達するまでの所要時間の継続的な再校正によって、静電容量システムに比べ高い堅牢性が達成される。ここでは、湿度及びシステム変更に対する非常に高い堅牢性が得られる。また、この堅牢性は、ウィンドウガラスの位置と、その位置によって可能となる挟み込み防止の作動との同期が危険領域においてのみ可能であることによっても達成される。また、挟み込み対象物が接地電位に接続されている必要もない。
【0014】
アクティブなセンサー電極のみを使用する装置の場合、いわゆるベースラインを形成する環境特性が、同一のセンサー電極によって低速の低域通過値として特定され、そこから高速の低域通過値も形成されることで、差分値が算出される。従って、変化が挟み込み領域で局所的に生じているのか、それとも例えば外部の電界及び磁界によって広域で生じているかを区別することはできない。そのため、誤検出を回避するには、高い閾値を設定して、センサー電極によって実行される測定でその閾値を上回る必要があり、その結果、感度が低くなる。この可能な感度は、センサー電極と車両ボディの電荷分布との相互作用により追加的に低下する。なぜなら、挟み込み対象物によって引き起こされるよりも強い電界相互作用が発生する可能性があるからである。挟み込み領域に留まっている挟み込み対象物は、現に存在している実際の状態に対してベースラインが継続的に適合するため、検出されることができない。これに対して、本装置は、環境特性を算出し、そこから堅牢なベースラインを算出するために基準センサー電極を使用することにより、誤検出に対する高い堅牢性と同時に、より低い閾値の使用も可能にする。従って、より小さな差分値に反応できることから、有利には、装置の感度が向上し、挟み込み事象の検出時の緩慢さが減少し、また誤検出数も減少する。また、一方の電極に優先的に作用する挟み込み領域の局所的な相互作用と、両方の電極に作用する外部の影響(例えばセンサー電極と車両ボディの電荷分布との相互作用、外部の電界及び磁界など)による相互作用とを区別することもできる。つまり、局所的事象と広域の事象とを区別することが可能である。
【0015】
装置の可能な実施形態では、制御装置が、さらに、センサー電極および基準センサー電極の帯電プロセスと放電プロセスを周期的にずらして実行することにより、センサー電極の帯電プロセスと放電プロセスの開始が、基準センサー電極の帯電プロセスと放電プロセスの終了後に、又はその逆で行われるように構成されている。従って、両方の電極のいずれか一方は常に非アクティブであるので、測定値検知時の電極の相互干渉を、効果的かつ容易に回避することができる。
【0016】
本装置のさらなる可能な実施形態において、センサー電極は、シール要素の内側シールリップに配置されており、基準センサー電極は、シール要素の外側シールリップに配置されている。これにより、簡単に、保護された状態で、両方の電極を組み込むことが可能になり、このとき、基準センサー電極はセンサー電極の近傍に配置されているが、直接挟み込み領域には向けられていない、及び/又は挟み込み領域内には配置されていない。
【0017】
本装置のさらなる可能な実施形態において、制御装置及びセンサー電極は第1の測定ピンに接続されており、制御装置及び基準センサー電極は第2の測定ピンに接続されている。さらに、制御装置は第1の制御ピンに接続されており、センサー電極は高インピーダンス電気抵抗を介して第1の制御ピンに接続されており、制御装置は第2の制御ピンに接続されており、基準センサー電極は高インピーダンス電気抵抗を介して第2の制御ピンに接続されている。制御装置は、第1の制御ピンと第2の制御ピンを介してそれぞれの電位をセンサー電極と基準センサー電極に加え、第1の測定ピンでセンサー電極の電位とセンサー電極上の負電荷の分布とを同時に測定し、第2の測定ピンで基準センサー電極の電位と基準センサー電極上の負電荷の分布とを同時に測定するように構成されている。さらに、制御装置は、制御ピンで測定した電位がそれぞれ規定された閾値に到達するとすぐに、接地電位を制御ピンに加え、それによって電荷がセンサー電極と基準センサー電極から逆流し、センサー電極と基準センサー電極の電位が閾値に達してから、それぞれ電荷の逆流によって生じる最小閾値に達するまでのそれぞれの所要時間を検知するように構成されている。この実施形態は、簡単に実現可能な構造、信頼性のある稼動、ならびに障害に対する高い堅牢性を特徴とし、少ない材料費と経費で実現可能である。
【0018】
本装置のさらなる可能な実施形態において、センサー電極と基準センサー電極は、それぞれ電気コンデンサを介して接地電位に接続されている。
【0019】
本装置のさらなる可能な実施形態において、センサー電極と基準センサー電極は、導電体とそれを取り囲む電気絶縁体を持つセンサーケーブルとして構成されている。これにより、センサー電極と基準センサー電極の構成を、特に簡単で、寿命の長い、低コストなものにすることができる。従って、さらに、両方の電極をシール要素内に組み込むことも簡単に可能である。
【0020】
本装置のさらなる可能な実施形態では、発生する妨害に対してセンサー電極と基準センサー電極を遮蔽するためのシールド電極が、少なくとも部分的に開口部を取り囲む車両のフレーム要素又は車両のルーフバーに配置されている。このとき、シールド電極は、測定領域の反対側で生じる妨害に対する遮蔽を可能にし、その結果、妨害に対する装置の不感度を達成することができる。車両のフレーム要素又は車両のルーフバー内にシールド電極を配置することにより、一方ではシールド電極の確実な機能が確保され、他方では車内への簡単な組み込みが可能になる。
【0021】
本装置のさらなる可能な実施形態において、さらに、制御装置は、閉鎖要素の閉動作の作動中に、追加的に、規定された危険領域に閉鎖要素があると判明した場合、挟み込み事象が差し迫っていると結論づけるように構成されている。従って、特に、閉鎖要素の閉動作中に、閉鎖要素とそれを取り囲む車両構造との間の領域から挟み込み対象物が移動する場合に、挟み込み防止の誤作動を回避することができる。
【0022】
すでに言及した装置を稼動するための、本発明に基づく方法では、帯電プロセスでは電位が、放電プロセスでは接地電位がそれぞれセンサー電極と基準センサー電極に加えられ、センサー電極と基準センサー電極の電位が接地電位による電荷の逆流によって生じる最小閾値に到達するまでのそれぞれの所要時間が検知される。さらに、センサー電極について検知された所要時間と基準センサー電極について検知された所要時間の差分が算出され、この差分が規定された閾値を超えている場合、及びセンサー電極について検知された所要時間が、規定された標準所要時間から、又は挟み込み事象が差し迫っていないと検知された状態で検知される標準所要時間から逸脱している場合は、挟み込み事象が差し迫っていると結論づけられる。
【0023】
本方法により、環境特性を算出し、そこから堅牢なベースラインを算出するために基準センサー電極を使用することにより、より低い閾値の使用が可能になり、同時に誤検出に対する堅牢性も高まる。従って、より小さな差分値に反応できることから、有利には、本方法の感度が向上し、挟み込み事象の検出時の緩慢さが減少し、また誤検出数も減少する。また、一方の電極に優先的に作用する挟み込み領域の局所的な相互作用と、両方の電極に作用する外部の影響(例えばセンサー電極と車両ボディの電荷分布との相互作用、外部の電界及び磁界など)による相互作用とを区別することもできる。つまり、局所的事象と広域の事象とを区別することが可能である。
【0024】
車両のモーター作動式閉鎖システムの挟み込み事象を回避するための本発明に基づく装置は、挟み込み事象を検出するためのすでに言及した装置と、閉鎖要素のモーター駆動を制御するための少なくとも1つの制御装置とを備え、この制御装置は、挟み込み事象が差し迫っている場合に閉鎖要素の閉動作を停止及び/又は逆転するように構成されている。本装置により、誤検出および誤作動を最小化すると同時に、特に信頼性の高い挟み込み事象の回避が可能になる。
【0025】
以下に、本発明の実施例を、図を用いて詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】車両のモーター作動式閉鎖システムの挟み込み事象を検出するための装置の模式的電気回路図である。
【
図3】車両構造及びシール要素の領域において、
図2による車両の一部の断面を模式的に示した斜視図である。
【
図4】シール要素の領域において、車両ドアの一部の断面を模式的に示した斜視図である。
【
図5】車両のモーター作動式閉鎖システムの挟み込み事象を検出するための方法の可能な実施例のフローチャートである。
【
図6】車両のモーター作動式閉鎖システムの挟み込み事象を回避するための方法の可能な実施例のフローチャートである。
【
図7】ウィンドウ開口部及びウィンドウガラスを備える車両ドアの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
互いに対応する部分は、すべての図において同じ符号が付けられている。
【0028】
図1には、
図2に詳細に図示されている車両2のモーター作動式閉鎖システムの挟み込み事象を検出するための装置1の可能な実施例の電気回路図が示されている。
【0029】
この装置1は、少なくとも1つの閉鎖要素4(
図7に図示されている)によって閉鎖可能な車両2の開口部O(
図2に表示されている)をその縁部において少なくとも部分的に取り囲むセンサー電極3を備える。センサー電極3は、例えば、0.1mよりも長く、最大5mの長さを有している。
【0030】
さらに、装置1は同様に、車両2の閉鎖可能な開口部Oをその縁部において少なくとも部分的に取り囲む基準センサー電極15を備える。このとき、基準センサー電極15は、センサー電極3よりも開口部Oに対して大きな距離を置いて配置されている。
【0031】
このとき、センサー電極3と基準センサー電極15は、一緒に開口部Oを少なくとも部分的に取り囲み、かつ
図2から
図5に詳しく図示されているシール要素10に配置されている。
【0032】
さらに、装置1は、マイクロコントローラなどの制御装置5と、制御装置5及びセンサー電極3に接続されている測定ピン6と、制御装置5に接続され、かつ高インピーダンス電気抵抗7を介してセンサー電極3に接続されている制御ピン8とを備える。
【0033】
さらに、装置1は、制御装置5及び基準センサー電極15に接続されている測定ピン16と、制御装置5に接続され、かつ高インピーダンス電気抵抗17を介して基準センサー電極15に接続されている制御ピン18とを備える。
【0034】
センサー電極3と基準センサー電極15は、それぞれ電気コンデンサ9、19を介して車両2の接地電位GNDに接続されている。詳しく図示されていない実施例では、コンデンサ9、19を省略してもよい。
【0035】
センサー電極3と基準センサー電極15は、それぞれ導電体3.1、15.1とそれを取り囲む電気絶縁体3.2、15.2を持つセンサーケーブルとして構成されている。導電体3.1、15.1は例えば銅導体として構成されており、電気絶縁体3.2、15.2は例えばプラスチックまたはゴム製の絶縁体として構成されている。センサーケーブルは、それぞれ、例えば0.5mm~2mmの直径を有している。特に、センサー電極3と基準センサー電極15は、これらによって検知される測定結果の比較可能性を向上させるために、同一に構成されている。
【0036】
制御装置5は、制御ピン8を介して電位をセンサー電極3に加え、同時にセンサー電極3の電位ならびにその結果生じるセンサー電極3上の負電荷の分布を測定ピン6で測定するように構成されている。このとき、測定ピン6で測定した電位が規定された閾値に達すると、制御装置5が制御ピン8に接地電位GNDを加えるので、それにより負電荷および正電荷はセンサー電極3から逆流する。この場合、制御装置5は、電位が閾値に到達してから、電荷の逆流によって生じる最小閾値に到達するまでの所要時間を検知する。
【0037】
さらに、制御装置5は、センサー電極3の手順と同様に、制御ピン18を介して電位を基準センサー電極15に加え、同時に基準センサー電極15の電位ならびにその結果生じる基準センサー電極15上の負電荷の分布を測定ピン16で測定するように構成されている。このとき、測定ピン16で測定した電位が規定された閾値に達すると、制御装置5が制御ピン18に接地電位GNDを加えるので、それにより負電荷および正電荷は基準センサー電極15から逆流する。この場合も、制御装置5は、電位が閾値に到達してから、電荷の逆流によって生じる最小閾値に到達するまでの所要時間を検知する。
【0038】
このとき、基準センサー電極15によって、いわゆるベースラインを形成する環境特性が算出される。このベースラインは、外部の広域の基本条件、すなわちセンサー電極3と基準センサー電極15の両方に作用する影響を表わしている。これらの影響は、例えばセンサー電極3と基準センサー電極15の車両ボディの電荷分布との相互作用、外部の電荷分布、外部の電界及び磁界などである。このとき、特に、外部の広域の変化は、使用されているサイクルタイム、例えば~50μsよりも明らかにゆっくり行われると想定される。
【0039】
センサー電極3と基準センサー電極15の帯電プロセス及び放電プロセスは、センサー電極3の帯電プロセスと放電プロセスの開始が、基準センサー電極15の帯電プロセスと放電プロセスの終了後に、又はその逆で行われるように、周期的にずらして行われる。つまり、両方の電極のいずれか一方は常に非アクティブであるので、電極の相互干渉を回避することができる。
【0040】
さらに、センサー電極3について検知された所要時間と、基準センサー電極15について検知された所要時間との差分が算出される。その差分が、規定された閾値を超えており、センサー電極3について検知された所要時間が規定された標準所要時間から、又は挟み込み事象が差し迫っていないと検知された状態で検知される標準所要時間から逸脱している場合、制御装置5は、挟み込み事象が差し迫っていると結論づける。
【0041】
標準所要時間からのこの逸脱は、対象物(人間の手足など)の外部影響によって、センサー電極3内に負電荷が固定され、それにより逆流が妨げられ、その結果、センサー電極3内の電荷分布に不均一性が生じることに起因している。
【0042】
センサー電極3によって検知された測定値をベースラインと比較することにより、局所的起源を持つ相違、例えば身体部分の接近を確実に検出することができる。これにより、高い堅牢性を実現し、局所の緩慢な効果(>50ms)をより安定的に検知することができる。低速の低域通過フィルタによる環境に対するセンサー電極3の校正は不要である。
【0043】
図2は、車両2の側面を部分的に示したものであり、車両2は図示されていないフレームレスの車両ドアを備えている。この種の車両ドアでは、ウィンドウガラスとして構成されている閉鎖要素4が、車両ドアが閉じた状態及びウィンドウガラスが閉じた状態において、開口部O(ここではウィンドウ開口部)をその縁部において少なくとも部分的に取り囲むシール要素10の少なくとも1つによって密閉されている。図示されている実施例では、シール要素10が、ルーフバーによって形成されている車両構造11に配置されている。
【0044】
図3には、車両構造11及びシール要素10の領域において、
図2による車両2の一部の断面を模式的に示した斜視図が示されている。このとき、シール要素10は、いわゆる気泡形状のルーフシールとして構成されている。
【0045】
図1の説明に従って、差し迫っている挟み込み事象を検知することにより、ウィンドウガラスとシール要素10との間の挟み込み事象を回避するため、センサー電極3は、シール材料10.1によって完全かつ直接的に取り囲まれてシール要素10に配置されるか、又は代替的に空洞10.2に配置される。このとき、センサー電極3は、特にシール要素10の内側シールリップに配置されている。
【0046】
さらに、基準センサー電極15は、センサー電極3よりも開口部Oに対して大きな距離を有するように、シール材料10.1によって完全かつ直接的に取り囲まれてシール要素10に配置されるか、又は代替的に空洞10.2に配置される。この場合、基準センサー電極15は、特にシール要素10の外側シールリップに配置されている。
【0047】
さらに、発生する妨害に対してセンサー電極3と基準センサー電極15を遮蔽するためのシールド電極13が、ルーフバーとして構成されている車両構造11の領域に配置されている。代替的に、シールド電極13は、導電体(例えば銅導体など)と、それを取り囲む電気絶縁体(例えばプラスチック又はゴム製絶縁体など)を持つシールドケーブルとして構成されていてもよい。
【0048】
シールド電極13を使用する場合、センサー電極3と基準センサー電極15は、例えばコンデンサ9、19を介さずに接地電位GNDに接続されている。シールド電極13は、特に、接地電位GNDに接続されており、特にセンサー電極3と開口部Oの縁部との間に配置されている。
【0049】
差し迫っている挟み込み事象の検知は、図示されている装置1の実施例の場合、説明した
図1による検知と同様に行われ、シールド電極13は、方向を持った、特に下方に方向を持った測定領域と、この測定領域の反対側に生じる妨害に対する遮蔽をもたらす。従って、妨害に対する装置1の不感度が達成される。
【0050】
図4は、シール要素10の領域において、車両ドア12の一部の断面の斜視図を示し、車両ドア12は、いわゆるフレームドアとして構成され、そのフレームは、閉じられた状態のウィンドウガラスを密閉するためのシール要素10が配置されている車両構造11を形成している。このとき、シール要素10は、車両ドア12のフレームのフレームシールとして構成されている。
【0051】
図1の説明に従って、差し迫っている挟み込み事象を検知することにより、ウィンドウガラスとシール要素10との間の挟み込み事象を検出するため、センサー電極3と基準センサー電極15は、シール材料10.1によって完全かつ直接的に取り囲まれてシール要素10に配置されるか、又は空洞10.2に配置される。この場合、基準センサー電極15は、センサー電極3よりも開口部Oに対して大きな距離を有するように配置されている。
【0052】
さらに、発生する妨害に対してセンサー電極3と基準センサー電極15を遮蔽するためのシールド電極13が、車両ドア12のフレームとして構成されている車両構造11の領域に配置されている。代替的に、シールド電極13は、導電体(例えば銅導体など)と、それを取り囲む電気絶縁体(例えばプラスチック又はゴム製絶縁体など)を持つシールドケーブルとして構成されていてもよい。
【0053】
シールド電極13を使用する場合、センサー電極3と基準センサー電極15は、例えばコンデンサ9、19を介さずに接地電位GNDに接続されている。シールド電極13は、特に、接地電位GNDに接続されており、特にセンサー電極3と開口部Oの縁部との間に配置されている。
【0054】
差し迫っている挟み込み事象の検知は、図示されている装置1の実施例の場合、説明した
図1による検知と同様に行われ、シールド電極13は、方向を持った、特に下方に方向を持った測定領域と、この測定領域の反対側に生じる妨害に対する遮蔽をもたらす。従って、妨害に対する装置1の不感度が達成される。
【0055】
図5は、車両2のモーター作動式閉鎖システムの挟み込み事象を検出するための方法の可能な実施例のフローチャートを示している。
【0056】
最初に、第1の工程S1において、制御18ピンを介して正の電位が基準センサー電極15に加えられ、それによって負電荷が基準センサー電極15に移動する帯電段階が実行される。同時に、測定ピン16では、基準センサー電極15の電位と、その結果生じる基準センサー電極15上の負電荷の分布が測定される。
【0057】
第1の分岐V1では、測定ピン16で測定した電位が規定された閾値に達しているかどうかが点検される。このことが当てはまらない場合(「いいえ」の分岐N1で表示)、帯電段階が継続して実行される。
【0058】
測定ピン16で測定した電位が規定された閾値に達している場合(「はい」の分岐J1で表示)、制御装置5は、第2の工程S2において、制御ピン18に接地電位GNDを加えるので、それにより放電段階が始まり、負電荷および正電荷が基準センサー電極15から逆流する。この場合、制御装置5は、電位が閾値に到達してから、電荷の逆流によって生じる最小閾値に到達するまでの所要時間を検知する。放電段階の開始前に、タイマーリセットが行われる。
【0059】
このとき、放電段階は、最小閾値に到達するまで実行される。第2の分岐V2では、制御装置5によって、最小閾値に到達したかどうかが点検される。このことが当てはまらない場合(「いいえ」の分岐N2で表示)、第3の工程S3においてタイマーが増分される。
【0060】
これに対して、最小閾値に到達している場合(「はい」の分岐J2で表示)、第4の工程S4においてタイマー値、すなわち測定された所要時間が残留電荷量と等しくされる。
【0061】
続いて、第5の工程S5では、非対称低域通過フィルタによってタイマー値の非対称フィルタリングが実行され、放電時間の短縮がより強く重み付けされ、それによって、検出可能な対象物の距離との関係を確立することができる。
【0062】
次に、工程S1からS5が、センサー電極3について同様に実行され、適宜フィルタリングされたタイマー値T2、すなわち放電の所要時間が形成される。
【0063】
基準センサー電極15についてのフィルタリングされたタイマー値T1とセンサー電極3についてのタイマー値T2が揃ったらすぐに、第6の工程S6における差分形成において、両方のタイマー値T1、T2の間の差分値、すなわち電位が最小閾値に達するまでのセンサー電極3について検知された所要時間と、基準センサー電極15について検知された所要時間との間の差分値が形成される。このとき、基準センサー電極15のタイマー値T1が、センサー電極3のタイマー値T2から減じられる。
【0064】
分岐V3においては、差分値が常に負であるかどうか、すなわち基準センサー電極15のタイマー値T1は、センサー電極3のタイマー値T2よりも常に大きいかどうかが点検される。このことが当てはまる場合(「はい」の分岐J3で表示)、第7の工程S7において、オフセット計算が行われ、それを用いて基準センサー電極15の校正が行われる。
【0065】
差分値が正又は常に負である場合、すなわち基準センサー電極15のタイマー値T1がセンサー電極3のタイマー値T2よりも小さい場合(「いいえ」の分岐N3で表示)、第8の工程S8において、低域通過フィルタを用いて差分値のフィルタリングが行われる。
【0066】
引き続き、さらなる分岐V4において、差分値が、規定された閾値を超えているかどうか点検される。このことが当てはまる場合(「はい」の分岐J4で表示)、第9の工程S9において、対象物が検出され、挟み込み事象が差し迫っていると結論づけられる。このことが当てはまらない場合(「いいえ」の分岐N4で表示)、工程S10に従って、本方法が再開される。
【0067】
両方の電極の放電時間についてのタイマー値T1、T2のフィルタリングが同一であることにより、一定の環境特性においては同一の値が生じる。このことから、基準センサー電極15とセンサー電極3の放電時間が同じである場合、挟み込み領域には対象物が存在していないと結論づけることができる。
【0068】
図6には、車両2、特にウィンドウガラスのモーター作動式閉鎖システムの挟み込み事象を回避するための方法の可能な実施例のフローチャートが示されている。
【0069】
この方法は、
図5に示されている方法の第9の工程S9の直ぐ後に続き、分岐V5においてウィンドウ閉信号Fがあるかどうかが点検される。このことが当てはまらない場合(「いいえ」の分岐N5で表示)、
図5に従って本方法が新たに開始される。
【0070】
しかし、ウィンドウ閉信号Fが存在し、事前に対象物が検出されている場合(「はい」の分岐J5で表示)、さらなる分岐V6において、上部ガラスエッジのウィンドウガラス位置POSが、
図7に詳細に示されている危険領域K内にあるかどうかが点検される。このことが当てはまらない場合(「いいえ」の分岐N6で表示)、前の分岐V5に戻り、ウィンドウ閉信号Fがあるかどうかの点検に戻る。
【0071】
これに対して、ウィンドウガラス位置POSが危険領域K内にある場合(「はい」の分岐J6で表示)、第11の工程S11において、ウィンドウガラスの動作が停止又は逆行し、挟み込み事象が回避される。
【0072】
図7は、ウィンドウ開口部として構成されている開口部Oと、ウィンドウガラスとして構成されている閉鎖要素4を持つ車両ドア12を示し、車両ドア12は
図4に示されている車両ドア12に従って構成されている。開口部Oの上エッジの下部には危険領域Kが示されており、危険領域Kの下エッジは、特に、ウィンドウガラスの上エッジと開口部Oの上エッジとの間の挟み込み事象が発生しやすい領域を示している。
【国際調査報告】