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特表2024-515505非常に高温の物質を冷却し及び熱を回収する方法
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  • 特表-非常に高温の物質を冷却し及び熱を回収する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】非常に高温の物質を冷却し及び熱を回収する方法
(51)【国際特許分類】
   F27D 17/00 20060101AFI20240403BHJP
   F22B 1/04 20060101ALI20240403BHJP
   C21C 5/28 20060101ALI20240403BHJP
   F27D 15/02 20060101ALI20240403BHJP
   C04B 5/00 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
F27D17/00 101A
F22B1/04
C21C5/28 D
F27D17/00 102
F27D17/00 103
F27D15/02 A
C04B5/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560500
(86)(22)【出願日】2022-03-25
(85)【翻訳文提出日】2023-11-24
(86)【国際出願番号】 IB2022052751
(87)【国際公開番号】W WO2022208260
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】102021000007661
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523371425
【氏名又は名称】チクサ ソチエタ レスポンサビリタ リミタータ
【氏名又は名称原語表記】CICSA S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110003292
【氏名又は名称】弁理士法人三栄国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ステーファノ カンパナーリ
(72)【発明者】
【氏名】マルコ カンパナーリ
【テーマコード(参考)】
4G112
4K056
4K063
4K070
【Fターム(参考)】
4G112JA03
4K056AA01
4K056AA02
4K056AA05
4K056AA12
4K056AA19
4K056CA02
4K056CA08
4K056CA20
4K056DA05
4K056DA09
4K056DA22
4K063AA02
4K063AA03
4K063AA04
4K063AA06
4K063BA02
4K063BA07
4K063BA13
4K063CA01
4K063HA22
4K063HA52
4K063HA66
4K070AB11
4K070BC17
4K070BC20
4K070DA10
(57)【要約】
非常に高温の物質を冷却し及び前記物質から熱を回収する方法であって、少なくとも次の工程:非常に高温の物質を混合システム(20)に運ぶ工程;混合システム(20)から出る物質を連続流動チャネル(30)内に移送する工程;移送された物質からの熱回収を行う工程;連続流動チャネル(30)から低温で出る物質の流れを流れ分割システム(60)に供給する工程;流れ分割システム(60)から出る低い温度の物質の一部を回収する工程;回収した低い温度の物質の一部を、移動及び再循環システム(70)によって移動する工程;及び混合システム(20)において、非常に高温の物質と混合するために低い温度の物質を運ぶ工程を含んでなる方法。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非常に高温の物質を冷却し及び前記物質から熱を回収する方法であって、少なくとも下記の工程:
非常に高温の物質を混合システム(20)に運ぶ工程;
前記混合システム(20)から出る前記物質を連続流動チャネル(30)内へ移送する工程;
移送された物質からの熱回収を行う工程;
前記連続流動チャネル(30)から低い温度で出る物質の流れを流れ分割システム(60)に供給する工程;
前記流れ分割システム60)から出る低い温度の物質の一部を回収する工程;
回収した低い温度の物質の一部を移動及び再循環システム(70)によって移動する工程;及び
前記混合システム(20)において非常に高温の物質と混合するために、回収した低い温度の物質を運ぶ工程
を含んでなる方法。
【請求項2】
前記混合システム(20)は、回転及び/又は振動ドラム、シュート、サイクロン又はロート状チャンバー、タブ、又はその組み合わせを含んでなるものである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記連続流動チャネル(30)は、固定又は回転及び/又は振動タイプの冷却管装置、空気圧流動装置、振動テーブル装置、又はドラグチェーン装置から選ばれる装置を含んでなるものである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記連続流動チャネル(30)における移送された物質からの熱回収工程を、閉回路熱交換器、開回路空気ブラスト熱交換器、又は混合熱交換器によって行う請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記流れ分割システム(60)は、機械的ダイバーター、シュート、篩、分配チャンバー、又はその組み合わせを含んでなるものである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記低い温度の固体物質を移動及び再循環するための移動及び再循環システム(70)は、空気圧、オーガー又はドラグチェーン運搬システムから選ばれるシステムを含んでなるものである請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記非常に高温の物質が、好ましくは1300~1600℃の温度の製鋼溶融スラグである請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記物質がクリンカーである請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記混合システム(20)から出る物質が、好ましくは600~1000℃の温度である請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記低い温度で回収された物質が、好ましくは50から400℃の温度である請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常に高温の物質を冷却し及び当該物質から熱を回収する方法に係る。
【0002】
特に、本発明は、非常に高温の物質、例えば、セメント製造サイクルのクリンカー、製鋼サイクルのような工業プロセスから生じたスラッジ等、又は石炭、廃棄物及び他の重質燃料の燃焼から生じたスラッジ及びアッシュを冷却し及び当該物質から熱を回収する方法に係る。
【背景技術】
【0003】
いくつかのタイプの工業プロセスでは、非常に高温の物質が生成され、これらの物質は、その後の使用、貯蔵又は管理が可能となるように冷却されなければならない。
【0004】
伝統的には、セメント製造サイクルでは、回転ドラム炉内において、非常に高温(典型的には約1450℃)のクリンカーが生成される。ついで、クリンカーは炉から取り出され、冷却されねばならない。クリンカーのクーラーは、セメント製造ラインの一部であり、プラントの効率及び対費用効果に影響を及ぼし、クリンカーをセメント焼成プラントの他所へ戻すため、及びクリンカーの温度を炉の下流に配置された装置への移送及び続く使用に適するレベルに下げるために、クリンカーの冷却からの熱を回収するとの二元的な目的を有する。特に、公知の技術では、クーラーは、一般的に、物質の移動のための移動ゲートを使用し、移動ゲートを通ってクーラー内に又は直接に熱い物質内に空気を吹き込み、このようにして、熱い空気を得ることによって熱が回収され、熱い空気は、ついで、燃焼プロセス及び/又はセメント製造サイクルに入る物質を予熱するために使用される。クリンカーの冷却は、鉱物学的特性及び粉砕性を改善するために及び生成されるセメントの良好な反応性のためには迅速でなければならない。しかし、関連する高温、クリンカーの極度の摩損性、炉で生成された粒子の広範な粒径、及びいくつかの工程では、クリンカーが固体相ではなく、液体相として炉から出る可能性があることにより、クリンカーのクーラーは、頻繁に煩わしいメンテナンスサービスを受ける非常に高価な部品となっている。液体クリンカーが存在すると、機械装置を損傷する場合があり、冷却空気が通過するチャネルを閉塞する場合がある。
【0005】
さらに、空気の利用性が十分でなく、従ってクリンカーの冷却が不十分であり、過熱を生じ、物質と接触するクーラーの機械部品が損傷するとの課題が生ずる可能性がある。それ故、冷却システムは、経済的に負担が少ない及び単純な熱風生成よりも熱力学的に好ましいエネルギー回収を達成することに加えて、より迅速であり、より信頼性が高い冷却を達成するとの観点から改善の余地がある。
【0006】
一方、製鋼サイクルについては、伝統的に、炉又は容器(各種のタイプの物質(例えば、酸化ケイ素)を含有する融解スラグ(溶鋼から分離されなければならない)が分離される)内において溶鋼を形成又は変換する工程が提供される。この目的のため、スラグは伝統的に屋外で冷却される。この方法では不活性物質としてスラグを回収できるだけである
【0007】
実際、固体スラグ(好適に粉砕される)は、土木工事における充填物質、例えば、路盤として有効に使用される。
【0008】
しかし、スラグの屋外冷却は、エネルギー及び環境の観点から決して最上の方法ではない。
【0009】
実際、排出された際、液体スラグは1400℃以上の温度に達する多量の熱エネルギーを含んでいる。これに関して、スラグは、その中に、製鋼サイクルに全体として供給される熱エネルギーの6%程度を含有すると推測される。さらに、液体スラグが屋外で冷却される間に、スラグは煙霧及び蒸気を環境に放出し、熱エネルギーを消散させるだけでなく、環境を汚染する。
【0010】
それ故、スラグの処理は、製鋼工業が特に製鋼所のエネルギー効率を改善するために解決しなければならない他の課題である。
【0011】
同時に、多くの他の工業部門におけると同様に、目的は、環境問題を解消するために、できる限り汚染物の排出を制限することにある。
【0012】
概して、熱いスラグの冷却及び熱いスラグからの熱回収のための信頼できる及び効果的な解決は、実践・実装では、未だ果たされていない。
【0013】
なお、セメント製造についてのクリンカー又は鋼の製造についてのスラグの場合におけると質的に類似するコスト、維持費及び熱回収の改良の課題は、他の用途分野、例えば、石炭、廃棄物又は他の重質燃料の燃焼からのアッシュの場合にも認められることにも留意すべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、上記の技術的課題を、非常に高温の物質を冷却し及び前記物質から熱を回収する方法によって解決することにあり、前記方法は、このような物質が生成される工業的プロセスの全体のエネルギー効率を増大させる。
【0015】
本発明の他の目的は、その特性を改善するため、及びその寸法、より熱い物質と接触する機械部品のコスト及び摩耗の課題を低減するために、入って来る物質を急速かつ迅速に冷却できる、非常に高温の物質を冷却し及び前記物質から熱を回収する方法を提供することにある。
【0016】
本発明の他の目的は、環境にやさしい、非常に高温の物質を冷却し及び前記物質から熱を回収する方法を提供することにある。
【0017】
本発明のさらに他の目的は、上記課題に対する実践的かつ安価な解決策を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
これらの目的は、非常に高温の物質を冷却し及び前記物質から熱を回収する方法によって達成され、前記方法は、少なくとも下記の工程を含んでなる:
【0019】
非常に高温の物質を混合システムに運ぶ工程;
混合システムから出る前記物質を連続流動チャネル内に移送する工程;
移送された物質からの熱回収を行う工程;
前記連続流動チャネルから低温で出る物質の流れを流れ分割システムに供給する工程;
前記流れ分割システムから出る低温の物質の一部を回収する工程;
回収した低温の物質の一部を、移動及び再循環システムによって移動する工程;及び
混合システムにおいて非常に高温の物質と混合するために、回収した低温の物質を運ぶ工程。
【0020】
この方法の実行の利点としては、非常に高温のいくらかの物質を、より冷たい物質と混合することによって、1300~1600℃(セメント製造サイクルにおけるクリンカー製造又は製鋼サイクルにおけるスラグ製造の一般的な温度範囲)から、非常に迅速に、600~1000℃のかなり低い温度とすることができ、このようにして、入って来る際に存在する液体部分を迅速に固化できることが含まれる。加えて、続いて、出て行く物質の容易な移動及び管理を可能にするに十分に低い温度、50~400℃への冷却を達成することができる。さらに、冷却プロセス(閉回路である)を介して、有用な熱の生成とともにエネルギーを回収するために同時に物質のエンタルピーを使用することによって、及び何らかの熱移動流体を使用することによって(例えば、続くエネルギーの利用に適する水及び高圧スチーム発生媒体を使用することによって)、全体のエネルギー効率を増大させる。
【0021】
本発明の更なる特徴は従属請求項から推測される。
【0022】
本発明の更なる特徴及び利点は、添付の図面に描かれた図を参照して、比限定的な例として提供された下記の記載を読むことによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明による方法を実行するために設計されたプラントの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、添付図面を参照して本発明を詳述する。
特に、図1は、一般的に参照符号10によって示され、本発明による方法を実行するために設計されたプラントの概略図である。
【0025】
まず第1に、プラント10は、非常に高温の物質A及び固体であり及び低温、例えば、100~400℃の温度である再循環物質Bの両方を受け入れるように設計された混合システム20を含んでなる。
【0026】
具体的には、例えば、非常に高温の物質Aは1300~1600℃(この種のスラグが溶融される温度)の製鋼スラグであり、一方、再循環物質Bは固体スラグである。
【0027】
好ましい具体例では、混合システム20は水平軸又は傾斜軸を有する回転及び/又は振動ドラムを含むことができ、その中において、非常に高温の物質Aと再循環物質Bとがこのような回転ドラムに流入されると、それらの最適な混合が行われる。
【0028】
さらに、混合システム20は、上述の回転ドラムに加えて又はその代わりに、さらに、シュート、サイクロン又はロート状チャンバー、タブ、又はその組み合わせを含むことができる。
【0029】
ここでは、例えば、非常に高温の物質Aのただ1つの流入ポイント及び再循環物質Bのただ1つの流入ポイントが見られる混合システム20が示されているが、もちろん、このようは混合システム20内に、非常の高温の物質Aの1以上の流入ポイント及び再循環物質Bの1以上の流入ポイントが存在していてもよい。
【0030】
混合システム20から、混合された物質Cが中間温度、例えば、600~1000℃で排出される。
【0031】
混合物質Cは、入ってくる物質Aの特性に応じて、液体状、固体状、又は液体及び固体の混合物である。
【0032】
プラント10は、更に、混合システム20から出る中間温度の物質を移送するための連続流動チャネル30を含んでなる。
【0033】
連続流動チャネル30は、冷却管装置(固定又は回転タイプ)、空気圧流動装置、振動テーブル装置、又はドラグチェーン装置から選ばれる。当分野において公知の他のタイプの中間温度の物質の連続流動チャネルも同等に使用される。
【0034】
例として、混合物質Cを連続流動チャネル30に供給するポイントを1つ含むものとして描かれている混合システム20は、或いは、前記連続流動チャネル30に混合物質Cを供給するためのポイントを複数有することができ、又は他の同等の連続流動移送手段を有することができる。
【0035】
熱回収工程も連続流動チャネル30内で行われる。
【0036】
連続流動チャネル30における移送された物質からの熱回収工程は、閉回路熱交換器50によって、又は開回路空気ブラスト熱交換器又は混合形熱交換器によって行われる。
【0037】
従って、低い温度の物質Dの流れは連続流動チャネル30を出て、流れ分割システム60に供給される。
【0038】
流れ分割システム60は、機械的ダイバーター、シュート、篩、分配チャンバー、又はその組み合わせを含んでなることができる。
【0039】
低い温度の物質の2つの流れが流れ分割システム60から出る。
【0040】
特に、低い温度の物質の第1の部分E及び第2の部分Fが流れ分割システム60を出て、第1の部分は冷却プロセスが完了されており、一方、第2の部分は移動及び再循環装置70によって回収される。
【0041】
最後に、流れ分割システム60を出る際に回収された低い温度の物質は、高い温度の物質との混合のため、移動及び再循環装置70によって混合システム20の入口に戻される(図1では矢印B)。
【0042】
具体的には、低い温度の固体物質を移動及び再循環するための移動及び再循環システム70は、空気圧、オーガー又はドラグチェーン運搬システムから選ばれる。
【0043】
熱・エネルギーバランスの例は、製鋼スラグ(液体で流入及び固体で流出)と同様の特性を有する入来物質のケースについて示される。
【実施例1】
【0044】
液体状で混合システム20に入る非常に高温の物質Aは、質量流量(m)10t/h、温度(T)1400℃、及び比エンタルピー(h)1536 kJ/kgを有する。
混合システム20に入る再循環物質Bは、質量流量(m)11t/h、温度(T)250℃、及び比エンタルピー(h)192 kJ/kgを有する。
混合システム20を出る混合物質Cは、質量流量(m)21t/h、温度(T)950℃、及び比エンタルピー(h)836 kJ/kgを有する。
連続流動チャネル30内における移送された物質からの熱回収工程から回収される電力(P)は約3.7MWである。
連続流動チャネル30を出る低い温度の物質は、なお、質量流量(m)21t/h、温度(T)250℃、及び比エンタルピー(h)192 kJ/kgを有する。
分割システム60によって、この物質は、物質の第1の部分E(冷却プロセスを完了する)、すなわち、m=10t/h、温度T=250℃、及び比エンタルピーh=192 kJ/kgを有する物質の流れ、及び第2の物質の部分F(移動及び再循環システム70によって回収される)、すなわち、m=11t/h、温度T=250℃、及び比エンタルピーh=192 kJ/kgを有する物質の流れに分割される。
それ故、記載したシステムの総定常状態効果は、時間当たりの流量M=10t/hを有する物質Aを、温度T=1400℃から温度T=200℃に、比エンタルピーh=1536 kJ/kgから比エンタルピーh=192 kJ/kgとするものである。
【0045】
不測の又は特別の理由によっては、ここに記載する本発明の範囲を逸脱することなく、幾多の変更及び改善をなすことができる。
図1
【国際調査報告】