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特表2024-515508金属補強要素及び接着促進樹脂を含有するエラストマー組成物を含む複合材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】金属補強要素及び接着促進樹脂を含有するエラストマー組成物を含む複合材
(51)【国際特許分類】
   B32B 25/02 20060101AFI20240403BHJP
   C08K 3/06 20060101ALI20240403BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20240403BHJP
   C08L 61/06 20060101ALI20240403BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240403BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20240403BHJP
   B32B 25/16 20060101ALI20240403BHJP
   B32B 15/06 20060101ALI20240403BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20240403BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
B32B25/02
C08K3/06
C08L9/00
C08L61/06
C08K3/22
C08K5/09
B32B25/16
B32B15/06 Z
C08J5/24 CEQ
B60C1/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560545
(86)(22)【出願日】2022-03-21
(85)【翻訳文提出日】2023-09-29
(86)【国際出願番号】 FR2022050512
(87)【国際公開番号】W WO2022207998
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】2103178
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】トゥイリエ アン-リセ
(72)【発明者】
【氏名】ガヴァール-ロンシェ オディル
(72)【発明者】
【氏名】ル クレル クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】レトシエ ジュリアン
【テーマコード(参考)】
3D131
4F072
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA13
3D131AA40
3D131BA02
3D131BA05
3D131BA12
3D131BB01
3D131BB03
3D131BB04
3D131BB05
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3D131BC36
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4F100AK32A
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4J002DE108
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4J002EF059
4J002FD147
4J002FD159
4J002GN00
4J002GN01
(57)【要約】
本発明は、銅と亜鉛の合金を含む表面を示す少なくとも1種の補強要素を含無複合材であって、前記補強要素が、少なくとも1種のジエンエラストマー、補強充填剤、硫黄架橋系、並びに少なくとも1種の芳香族ポリフェノール及び2つのアルデヒド官能基を有する少なくとも1種のジアルデヒド化合物をベースとするフェノール-アルデヒド樹脂をベースとするエラストマー性組成物に埋め込まれており、フェノール-アルデヒド樹脂の含量が、10phr未満、好ましくは6phr未満である、複合材に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅と亜鉛の合金を含む表面を示す少なくとも1種の補強要素を含む複合材であって、前記補強要素が、少なくともジエンエラストマー、補強充填剤、硫黄架橋系、並びに
- 少なくとも2つのヒドロキシル官能基を互いに対してメタ位に有し、前記ヒドロキシル官能基の少なくとも1つに対してオルトの2つの位置が非置換である少なくとも1つの芳香核を含む少なくとも1種の芳香族ポリフェノール、及び
- 2つのアルデヒド官能基を含む少なくとも1種のジアルデヒド化合物
をベースとするフェノール/アルデヒド樹脂をベースとするエラストマー性組成物に埋め込まれており、フェノール/アルデヒド樹脂の含量が、10phr未満、好ましくは6phr未満である、
複合材。
【請求項2】
前記ジアルデヒド化合物が、置換されていてもよい少なくとも1つの芳香核を含む、請求項1に記載の複合材。
【請求項3】
少なくとも1つのアルデヒド官能基に対してメタの2つの位置が非置換である、請求項2に記載の複合材。
【請求項4】
前記ジアルデヒド化合物が、6つの炭素原子を有する芳香核を含む化合物から選択され、優先的には1,4-ベンゼンジカルボキシアルデヒド及び1,3-ベンゼンジカルボキシアルデヒドから選択される、請求項2又は3に記載の複合材。
【請求項5】
前記架橋系が、金属酸化物、ステアリン酸誘導体、及び加硫促進剤を含み、硫黄含量が1~5phrであり、金属酸化物とステアリン酸誘導体の質量比が3未満である、請求項1~4のいずれか1項に記載の複合材。
【請求項6】
前記補強要素の表面が、55質量%~75質量%の銅を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の複合材。
【請求項7】
前記エラストマー性組成物が、少なくとも50phr、優先的には少なくとも70phr、好ましくは少なくとも90phrの少なくとも1種のイソプレンエラストマーを含み、非常に優先的には100phrの少なくとも1種のイソプレンエラストマーを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の複合材。
【請求項8】
前記エラストマー性組成物が1~4phrの硫黄を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の複合材。
【請求項9】
硫黄/加硫促進剤の質量比が、5以下、好ましくは4以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載の複合材。
【請求項10】
前記エラストマー性組成物がコバルト塩を含まないか、又はその1phr未満、好ましくは0.5phr未満を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の複合材。
【請求項11】
前記エラストマー性組成物の前記補強充填剤が、主にカーボンブラックを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の複合材。
【請求項12】
前記エラストマー性組成物の前記補強充填剤が、主にシリカを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の複合材。
【請求項13】
前記エラストマー性組成物が、前記シリカをカップリングするための作用物質を含み、カップリング剤の含量が、シリカの量に対して5質量%~18質量%の範囲であり、優先的にはシリカの量に対して8質量%~12質量%の範囲である、請求項12に記載の複合材。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の複合材を含む、完成品又は半完成品。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか1項に記載の複合材を含む、空気圧タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に空気圧又は非空気圧タイヤ向けの補強されたゴム製品の分野に、及びそのような補強された製品を含む物品にも関する。
【背景技術】
【0002】
空気圧タイヤ又は補強されたゴム物品の補強層は、通常、「カレンダー加工」ゴム組成物及び金属補強コードを含む。カレンダー加工組成物は、金属補強コードへの接着の良好な性質、層に転がり抵抗への低い寄与を与えるヒステリシス性、及びまた亀裂に対する良好な抵抗性などの多くの特性に対応しなくてはならず、これはタイヤの寿命全体にわたり当てはまる。
金属コードと周囲のゴムとの間の接着は、空気圧タイヤ又は補強されたゴム物品の補強層の有効性のための主要な性質の1つである。カレンダー加工組成物は、ジエンエラストマー、特に天然ゴム、補強充填剤を含むが、一般的に、特定の加硫系及び接着促進剤としてコバルト塩も含む。この特定の加硫系は、通常、高い硫黄含量、酸化亜鉛とステアリン酸の高い質量比、「緩徐」加硫促進剤、及び加硫遅延剤を含む。これらの系において、カレンダー加工組成物と金属コードとの間の接着はコードの真鍮被覆表面の硫化の現象により作られ、コバルト塩は接着の耐久性に対する効果を有する。
【0003】
カレンダー加工組成物の性能品質の1つ又は複数及びそれらの耐久性も維持しながら、硫黄、金属酸化物、及び/又はコバルト塩の含量を制限するために、多くの研究が空気圧タイヤの製造者により実施されてきた。例えば、文書WO2016/058942及びWO2016/0589431は、金属補強要素の外装を提供し、そのように外装された補強材をカレンダー加工するための組成物における硫黄及び酸化亜鉛の含量を低下させること並びにコバルトを減少させ、実際にカレンダー加工組成物からコバルトを無くすことが可能である。しかし、この手法は、補強要素の外装を必要とする。
文書EP3476624は、エラストマー性組成物及び補強要素を含む複合材であって、その表面が、真鍮並びに1質量%~10質量%のコバルト、ニッケル、スズ、インジウム、マンガン、鉄、ビスマス、及びモリブデンから選択される1種又は複数の金属を含む複合材を教示する。実施例は、接着促進樹脂(レゾルシノール/ヘキサ(メトキシメチル)メラミン系、H3Mと称される)を含み、コバルト塩を含まないエラストマー性組成物が、経時的な接着性の良好な保持を示すことを示す。
しかし、H3Mとレゾルシノールなどのフェノール性化合物の組合せは、その使用が、そのHSEインパクトのために限定されることがさらに求められており、ゴム組成物の硬化の間にホルムアルデヒドを発生させる。その結果、多くの研究は、このメチレンアクセプター/ドナー系を、環境への影響がより低い系に替えることを目標としている。文書WO2017/103404は、例えば、ゴム組成物を固めるために高含量で使用されるフロログルシノール/1,4-ベンゼンジカルボキシアルデヒド系を含む補強要素のカレンダー加工に使用できるゴム組成物の例を示す。この文書は、補強要素への接着の問題に対処していない。
【発明の概要】
【0004】
本出願会社は、その調査研究を継続して、銅と亜鉛の合金を含む表面を示す少なくとも1種の補強要素を含む複合材であって、前記補強要素が、少なくともジエンエラストマー、補強充填剤、硫黄架橋系、並びに:
- 少なくとも2つのヒドロキシル官能基を互いに対してメタ位に有し、ヒドロキシル官能基の少なくとも1つに対してオルトの2つの位置が非置換である少なくとも1つの芳香核を含む少なくとも1種の芳香族ポリフェノール、及び
- 2つのアルデヒド官能基を含む少なくとも1種のジアルデヒド化合物
をベースとするフェノール/アルデヒド樹脂をベースとするエラストマー性組成物に埋め込まれており、フェノール/アルデヒド樹脂の含量が、10phr未満、好ましくは6phr未満である複合材を発見した。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明は、以下の実施の少なくとも1つに関する:
1.銅と亜鉛の合金を含む表面を示す少なくとも1種の補強要素を含む複合材であって、前記補強要素が、少なくともジエンエラストマー、補強充填剤、硫黄架橋系、並びに:
- 少なくとも2つのヒドロキシル官能基を互いに対してメタ位に有し、ヒドロキシル官能基の少なくとも1つに対してオルトの2つの位置が非置換である少なくとも1つの芳香核を含む少なくとも1種の芳香族ポリフェノール、及び
- 2つのアルデヒド官能基を含む少なくとも1種のジアルデヒド化合物
をベースとするフェノール/アルデヒド樹脂をベースとするエラストマー性組成物に埋め込まれており、フェノール/アルデヒド樹脂の含量が、10phr未満、好ましくは6phr未満である、複合材。
2.ジアルデヒド化合物が、任意選択で置換されている少なくとも1つの芳香核を含む、前述の実施による複合材。
3.少なくとも1つのアルデヒド官能基に対してメタの2つの位置が非置換である、前述の実施による複合材。
4.ジアルデヒド化合物が、6つの炭素原子を有する芳香核を含む化合物から選択され、優先的には、1,4-ベンゼンジカルボキシアルデヒド及び1,3-ベンゼンジカルボキシアルデヒドから選択される、前述の2つの実施のいずれかによる複合材。
5.架橋系が、金属酸化物、ステアリン酸誘導体、及び加硫促進剤を含み、硫黄含量が1~5phrであり、金属酸化物とステアリン酸誘導体の質量比が3未満である、前述の実施のいずれか1つによる複合材。
6.補強要素の表面が55質量%~75質量%の銅を含む、前述の実施のいずれか1つによる複合材。
7.エラストマー性組成物が、少なくとも50phr、優先的には少なくとも70phr、好ましくは少なくとも90phrの少なくとも1種のイソプレンエラストマーを含み、非常に優先的には100phrの少なくとも1種のイソプレンエラストマーを含む、前述の実施のいずれか1つによる複合材。
8.イソプレンエラストマーが、合成ポリイソプレン、天然ゴム、イソプレンコポリマー、及びそれらの混合物からなる群から選択され、優先的には、天然ゴム及びイソプレンエラストマーの質量に対して少なくとも90%、より優先的には少なくとも98%の質量による含量のシス-1,4-結合を含むポリイソプレン、及びそれらの混合物からなる群から選択される、前述の実施による複合材。
9.エラストマー性組成物が1~4phrの硫黄を含む、前述の実施のいずれか1つによる複合材。
10.硫黄/加硫促進剤の質量比が5以下、好ましくは4以下である、前述の実施のいずれか1つによる複合材。
11.架橋系の金属酸化物が酸化亜鉛である、前述の実施のいずれか1つによる複合材。
12.エラストマー性組成物がコバルト塩を含まないか、又はその1phr未満、好ましくは0.5phr未満を含む、前述の実施のいずれか1つによる複合材。
13.エラストマー性組成物の補強充填剤が、主にカーボンブラックを含む、前述の実施のいずれか1つによる複合材。
14.エラストマー性組成物の補強充填剤が、主にシリカを含む、実施1~12のいずれか1つによる複合材。
15.エラストマー性組成物が、シリカをカップリングするための作用物質を含み、カップリング剤の含量が、シリカの量に対して、5質量%~18質量%の範囲であり、優先的には、シリカの量に対して、8質量%~12質量%の範囲である、前述の実施による複合材。
16.前述の実施のいずれか1つによる複合材を含む、完成品又は半完成品。
17.実施1~15のいずれか1つによる複合材を含む、空気圧タイヤ。
【0006】
定義
明細書中で言及される炭素を含む化合物は、化石由来でもバイオ系由来でもあり得る。後者の場合、それらは、部分的若しくは完全にバイオマスから生じ得るか、又はバイオマスから生じた再生可能な出発物質から得ることができる。ポリマー、可塑剤、充填剤などが特に関係する。
複合材
本発明は、銅と亜鉛の合金を含む表面を示す少なくとも1種の補強要素を含み、前記補強要素がエラストマー性組成物に埋め込まれている複合材に関する。
「少なくとも1種の補強要素を含み、前記補強材がエラストマー性組成物に埋め込まれている」複合材という表現は、補強要素及び前記組成物を含む複合材であって、複合材の製造の種々の期の間に、特に組成物の架橋の間又は組成物の架橋の前の複合材の調製の間に、組成物が補強要素の表面と反応することが可能であって、前記補強要素が前記組成物により完全に覆われている複合材を意味すると理解されるべきである。
【0007】
前記補強要素は糸状要素である。それは、完全又は部分的に金属であり得る。用語「糸状要素」は、その断面の形状が何であれ:円形、楕円形、長円形、多角形、特に長方形又は正方形又は楕円形であれ、その断面の最大寸法の少なくとも10倍の長さを示す要素を意味すると理解される。長方形の断面の場合、糸状要素は条片の形状を示す。
前記補強要素は金属表面を含む。
補強要素の金属表面は、前記要素の表面の少なくとも一部、優先的には全てを構成し、エラストマー性組成物と直接接触することが意図される。好ましくは、補強要素は金属であり、すなわち、金属材料で構成されている。優先的には、補強要素は、本文書で定義される金属表面で覆われたスチール補強要素である。
スチール補強要素のスチールは、優先的には、カーボンスチール又はステンレススチールである。スチールがカーボンスチールである場合、質量%として表されるその炭素含量は、好ましくは、0.01%~1.2%又は0.05%~1.2%、又は0.2%~1.2%、特に0.4%~1.1%である。スチールがステンレスである場合、それは、好ましくは、少なくとも11質量%のクロム及び少なくとも50質量%の鉄を含む。
【0008】
補強要素は、1000MPa~5000MPaの範囲の機械的強度を示す。そのような機械的強度は、タイヤ分野で通常遭遇されるスチールのグレード、すなわち、NT(ノーマルテンシル)、HT(ハイテンシル)、ST(スーパーテンシル)、SHT(スーパーハイテンシル)、UT(ウルトラテンシル)、UHT(ウルトラハイテンシル)、及びMT(メガテンシル)グレードに相当し、高機械的強度の使用は、任意選択で、補強要素が埋め込まれているエラストマー性組成物の改善された補強及びそのように補強されたエラストマー性組成物の軽量化を可能にする。
エラストマー性組成物は、複合材の切断面を有り得る例外として、補強要素全体を被覆する。
好ましくは、補強要素の金属表面は、55質量%~75質量%の銅を含む。
特定の金属は周囲空気との接触で酸化を起こしやすいので、金属は部分的に酸化されていることがある。
【0009】
好ましい実施形態によると、複合材は、上記で定義されたいくつかの補強要素及び補強要素が埋め込まれているカレンダー加工エラストマー性組成物を含む補強された製品であり、カレンダー加工エラストマー性組成物は、本発明による複合材のエラストマー性組成物からなる。この実施形態によると、補強要素は、一般的に、主要な方向に沿って並んで配置される。空気圧タイヤに想定される用途では、複合材は、このように、空気圧タイヤのための補強を構成し得る。
本発明による複合材は、未硬化状態(エラストマー性組成物の架橋前)でも、硬化状態(エラストマー性組成物の架橋後)でもあり得る。複合材は、補強要素を本文書に記載されるエラストマー性組成物と接触させた後に硬化される。
【0010】
複合材は、以下の段階を含むプロセスにより製造できる:
- 本発明による複合材のエラストマー性組成物の2層を製造する段階、
- 補強要素を2層の間に配置することにより、補強要素を2層の中に挟み込む段階、
- 適切な場合、複合材を硬化する段階。
或いは、複合材は、補強要素を層の一部の上に配置することにより製造でき、次いで、層はそれ自体の上で折られて補強要素を覆い、そのようにしてその全長又はその長さの一部にわたって挟み込まれる。
層はカレンダー加工により製造され得る。複合材の硬化の間、エラストマー性組成物は架橋される。
複合材が空気圧タイヤ中の補強として使用されることが意図される場合、複合材の硬化は、一般的に、空気圧タイヤの硬化の間に起こる。
【0011】
ジエンエラストマー
本発明による複合材は、少なくとも1種のジエンエラストマーをベースとするエラストマー性組成物を含む。用語「ジエンタイプのエラストマー」が、少なくとも一部分ジエンモノマー(2つの共役又は非共役炭素-炭素二重結合を有するモノマー)から生じるエラストマー(すなわち、ホモポリマー又はコポリマー)を意味すると理解されるべきであることが記憶されるべきである。
これらのジエンエラストマーは、2つの区分:「基本的に不飽和」又は「基本的に飽和」に分類され得る。用語「基本的に不飽和」は、一般的に、15%(mol%)より高いジエン由来(共役ジエン)の単位の含量を有する共役ジエンモノマーから少なくとも一部分生じるジエンエラストマーを意味すると理解される。そのため、ブチルゴム又はEPDMタイプのジエンとα-オレフィンのコポリマーなどのジエンエラストマーは、前述の定義に入らず、特に、「基本的に飽和」ジエンエラストマー(低い又は非常に低い含量、常に15%(mol%)未満のジエン由来の単位)と記載され得る。本発明による組成物に含まれるジエンエラストマーは、優先的には基本的に不飽和である。
【0012】
本発明による組成物に使用されることが可能なジエンエラストマーは、特に、下記を意味すると理解される:
a)4~18個の炭素原子を有する共役又は非共役ジエンモノマーの任意のホモポリマー;
b)4~18個の炭素原子を有する共役又は非共役ジエンと少なくとも1種の他のモノマーとの任意のコポリマー。
他のモノマーは、エチレン、オレフィン、又は共役若しくは非共役ジエンであり得る。
共役ジエンとして好適なのは、4~12個の炭素原子を有する共役ジエン、特に1,3-ジエン、特に、1,3-ブタジエン及びイソプレンなどである。
オレフィンとして好適なのは、8~20個の炭素原子を有するビニル芳香族化合物及び3~12個の炭素原子を有する脂肪族α-モノオレフィンである。
ビニル芳香族化合物として好適なのは、例えば、スチレン、オルト-、メタ-、若しくはパラ-メチルスチレン、「ビニルトルエン」市販混合物、又はパラ-(tert-ブチル)スチレンである。
脂肪族α-モノオレフィンとして好適なのは、特に、3~18個の炭素原子を有する非環式脂肪族α-モノオレフィンである。
【0013】
ジエンエラストマーは、好ましくは、高度不飽和型のジエンエラストマー、特に天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー、及びこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択されるジエンエラストマーである。そのようなコポリマーは、より優先的には、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)、イソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)、エチレン/ブタジエンコポリマー(EBR)、及びそのようなコポリマーの混合物からなる群から選択される。
【0014】
上記ジエンエラストマーは、例えば、ブロック、ランダム、シーケンシャル、又はミクロシーケンシャル(microsequential)エラストマーであり得て、分散状態又は溶解状態で調製され得る。それらは、カップリング剤及び/若しくは星型分岐剤又は官能化剤により、カップリング及び/若しくは星型分岐されていてよく、又は官能化されていてもよく、例えばエポキシ化されていてよい。
好ましくは、本発明による複合材のエラストマー性組成物は、少なくとも50phr、優先的には少なくとも70phr、好ましくは少なくとも90phrの少なくとも1種のイソプレンエラストマーを含む。非常に好ましい実施形態において、本発明による複合材のエラストマー性組成物は、100phrの少なくとも1種のイソプレンエラストマーを含む。
用語「イソプレンエラストマー」は、イソプレンホモポリマー又はコポリマー、言い換えると、可塑化又は解膠され得る天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、種々のイソプレンコポリマー、特にイソプレン/スチレン(SIR)、イソプレン/ブタジエン(BIR)、又はイソプレン/ブタジエン/スチレン(SBIR)コポリマー、及びこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択されるジエンエラストマーを意味すると理解される。
好ましくは、イソプレンエラストマーは、合成ポリイソプレン、天然ゴム、イソプレンコポリマー、及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、天然ゴム、イソプレンエラストマーの質量に対して少なくとも90%、より優先的には少なくとも98%の質量による含量のシス-1,4-結合を含むポリイソプレン、及びそれらの混合物からなる群から選択される。非常に好ましくは、イソプレンエラストマーは天然ゴムである。
【0015】
補強充填剤
本発明による複合材のエラストマー性組成物は補強充填剤を含む。空気圧タイヤの製造に使用できるエラストマー性組成物を補強するその能力で知られているあらゆる種類の補強充填剤、例えば、カーボンブラックなどの有機充填剤、シリカなどの補強無機充填剤、又はこれら2種の充填剤のブレンド、特にカーボンブラックとシリカのブレンドが利用され得る。
【0016】
全てのカーボンブラック、特に従来タイヤに使用されているHAF、ISAF、又はSAFタイプのブラック(「タイヤグレード」ブラック)がカーボンブラックとして好適である。後者の中で、より詳細には、例えば、N115、N134、N234、N326、N330、N339、N347、又はN375ブラックなどの100、200又は300シリーズ(ASTMグレード)の補強カーボンブラック、又は目的とされる用途に応じて、より高いシリーズのブラック(例えばN660、N683、又はN772)が言及されるだろう。カーボンブラックは、例えば、マスターバッチの形態でイソプレンエラストマーに既に組み込まれている可能性がある(例えば、出願WO97/36724及びWO99/16600参照)。カーボンブラックのBET比表面は、規格D6556-10[多点(最低で5点)法-ガス:窒素-相対圧力p/p0範囲:0.1~0.3]に従って測定される。
【0017】
用語「補強無機充填剤」は、本特許出願において、定義によれば、カーボンブラックとは対照的に「白色充填剤」、「透明充填剤」又はさらには実際に「非黒色充填剤」としても知られ、それ自体単独で、中間カップリング剤以外の手段無しに、空気圧タイヤの製造向けのゴム組成物を補強することが可能な、言い換えると、その補強する役割において、従来タイヤ-グレードのカーボンブラックに替わることが可能な、あらゆる無機又は鉱物充填剤(その色及びその由来、天然か合成かを問わず)を意味すると理解されるべきである。そのような充填剤は、一般的に、公知の方法で、その表面でのヒドロキシル(-OH)基の存在を特徴とする。
【0018】
ケイ酸含有タイプの鉱物充填剤、特にシリカ(SiO2)、又はアルミニウム含有タイプの鉱物充填剤、特にアルミナ(Al23)は、特に補強無機充填剤として好適である。使用されるシリカは、当業者に公知であるあらゆる補強シリカ、特に、どちらも450m2/g未満、好ましくは30~400m2/gのBET表面及びCTAB比表面を示すあらゆる沈降又はヒュームドシリカであり得る。高分散性沈降シリカ(「HDS」)として、例えば、DegussaのUltrasil 7000及びUltrasil 7005シリカ、RhodiaのZeosil 1165MP、1135MP、及び1115MPシリカ、PPGのHi-Sil EZ150Gシリカ、HuberのZeopol 8715、8745、及び8755シリカ、又は出願WO03/16837に記載される高い比表面を有するシリカが言及されるだろう。
補強無機充填剤が提供される物理的状態は、それが、粉末、マイクロビーズ、顆粒、ビーズの形態、又は他の適切な高密度化された形態であろうと重要ではない。当然ながら、用語「補強無機充填剤」は、異なる補強無機充填剤、特に高分散性ケイ酸含有及び/又はアルミニウム含有充填剤の混合物を意味するとも理解される。
使用される補強無機充填剤は、特にそれがシリカである場合、好ましくは、45~400m2/g、より優先的には60~300m2/gのBET表面を有する。
【0019】
優先的には、本発明による複合材のエラストマー性組成物は、10~100phr、より優先的には10~80phr、及び好ましくは10~60phrのカーボンブラックを含み、最適なものは、公知の方法で、目的とされる特定の用途に応じて異なる。自転車空気圧タイヤに関して期待される補強のレベルは、例えば、当然ながら、持続的に高速で走ることが可能な空気圧タイヤ、例えば、オートバイタイヤ、乗用車又は重量車などの多目的車のタイヤに関して要求されるものより低い。好ましい配置において、補強充填剤は、主にカーボンブラックを含み、好ましくはカーボンブラックからなる。
優先的には、本発明による複合材のエラストマー性組成物は、10~150phr、好ましくは10~100phrのシリカを含む。好ましい配置において、補強充填剤は、主にシリカを含み、好ましくはシリカからなる。
【0020】
補強無機充填剤をエラストマーにカップリングするために、公知の方法で、無機充填剤(その粒子の表面)とエラストマーとの間の化学的及び/又は物理的性質の満足できる接続を与えることが意図される少なくとも二官能性のカップリング剤(又は結合剤)、特に二官能性であるオルガノシラン又はポリオルガノシロキサンが任意選択で利用される。
例えば、出願WO03/002648(又はUS2005/016651)及びWO03/002649(又はUS2005/016650)に記載されるものなど、それらの特定の構造に応じて「対称」又は「非対称」と称されるシランポリスルフィドが特に使用され得る。
【0021】
より詳細には、シランポリスルフィドの例として、例えば、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)又はビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドなどの、ビス((C1-C4)アルコキシル(C1-C4)アルキルシリル(C1-C4)アルキル)ポリスルフィド(特にジスルフィド、トリスルフィド、又はテトラスルフィド)が言及されるだろう。特に、これらの化合物の中で、TESPTと略される、式[(C25O)3Si(CH2322のビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、又はTESPDと略される、式[(C25O)3Si(CH23S]2のビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドが使用される。優先的な例として、ビス(モノ(C1-C4)アルコキシルジ(C1-C4)アルキルシリルプロピル)ポリスルフィド(特に、ジスルフィド、トリスルフィド、又はテトラスルフィド)、より詳細には特許出願US2004/132880に記載されるものなどのビス(モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィドも言及されるだろう。
【0022】
特に、アルコキシシランポリスルフィド以外のカップリング剤として、特許出願WO02/30939及びWO02/31041に記載されるものなどの二官能性POS(ポリオルガノシロキサン)若しくはヒドロキシシランポリスルフィド、又は例えば、特許出願WO2006/125532、WO2006/125533、及びWO2006/125534に記載されるものなどアゾジカルボニル官能基を有するシラン若しくはPOSも言及されるだろう。
本発明によるエラストマー性組成物において、カップリング剤の含量は、優先的には、シリカの量に対して5質量%~18質量%の範囲、優先的にはシリカの量に対して8質量%~12質量%の範囲である。
当業者は、本項に記載される補強無機充填剤と同等の充填剤として、別の性質、特に有機的な性質の補強充填剤が、この補強充填剤がシリカなどの無機層により覆われるならば、或いは、その表面で、官能部位、特にヒドロキシル部位を含み、被覆剤又はカップリング剤の存在下又は非存在下で充填剤とエラストマーの間の結合を確立することが可能であるならば、使用され得ることを理解するだろう。
【0023】
架橋系
本発明による複合材のエラストマー性組成物は、金属酸化物、ステアリン酸誘導体、及び加硫促進剤を含む硫黄系架橋系を含む。その場合、これは加硫系と称される。硫黄は、あらゆる形態で、特に分子の硫黄又は硫黄供与剤の形態で提供できる。
硫黄は、優先的には1~5phr、特に1~4phrの範囲の含量で使用される。この含量は、通常のカレンダー加工組成物と比べて低いが、本発明の状況において、エラストマー性組成物の良好な架橋と金属補強要素への充分で持続する接着の両方を確実にするのに充分である。
加硫促進剤は、硫黄/加硫促進剤の質量比が、5以下、好ましくは4以下であるような優先的な含量で使用される。
【0024】
促進剤として、硫黄の存在下でジエンエラストマーの加硫の促進剤として作用することが可能なあらゆる化合物、特にチアゾールタイプの促進剤及びそれらの誘導体、又はスルフェンアミド、チウラム、ジチオカルバメート、ジチオホスフェート、チオウレア、及びキサンテートタイプの促進剤が使用され得る。特に、そのような促進剤の例として、以下の化合物:2-メルカプトベンゾチアジルジスルフィド(「MBTS」と略される)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(「CBS」)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(「DCBS」)、N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(「TBBS」)、N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾールスルフェンイミド(「TBSI」)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(「TBZTD」)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(「ZBEC」)、及びこれらの化合物の混合物が言及され得る。
架橋系中の金属酸化物とステアリン酸誘導体の質量比は、優先的には3未満である。金属酸化物は、優先的には酸化亜鉛である。
架橋系は、任意選択で加硫遅延剤を含む。
【0025】
フェノール/アルデヒド樹脂
本発明によると、本発明による複合材のエラストマー性組成物は、
・少なくとも2つのヒドロキシル官能基を互いに対してメタ位に有し、ヒドロキシル官能基の少なくとも1つに対してオルトの2つの位置が非置換である少なくとも1つの芳香核を含む少なくとも1種の芳香族ポリフェノール、及び
・2つのアルデヒド官能基を含む少なくとも1種のジアルデヒド化合物
をベースとするフェノール/アルデヒド樹脂をベースとする。
好ましくは、本発明による複合材のエラストマー性組成物中のフェノール/アルデヒド樹脂の含量は、10phr未満、好ましくは6phr未満である。用語「フェノール/アルデヒド樹脂の含量」は、フェノール/アルデヒド樹脂をベースとする芳香族ポリフェノールの含量とアルデヒド化合物の含量の和を意味すると理解される。これらのレベルにより、混合物の剛性を著しく変更することなく、樹脂が接着促進剤のその役割を果たすことが可能になる。
【0026】
芳香族ポリフェノール
一実施形態において、芳香族ポリフェノールは、1つ又は複数の芳香核を含む単純な分子であって、これらの芳香核の少なくとも1つ、実際に各芳香核ですら、少なくとも2つのヒドロキシル官能基を互いに対してメタ位に有し、ヒドロキシル官能基の少なくとも1つに対してオルトの2つの位置が非置換である分子であり得る。そのような単純な分子は繰り返し単位を含まない。
【0027】
別の実施形態において、芳香族ポリフェノールは、
・少なくとも2つのヒドロキシル官能基を互いに対してメタ位に有し、ヒドロキシル官能基の少なくとも1つに対してオルトの2つの位置が非置換である少なくとも1つの芳香核を含む少なくとも1種の芳香族ポリフェノール;及び
・2つのアルデヒド官能基を含む少なくとも1種のジアルデヒド化合物
をベースとする予備縮合された樹脂であり得る。
芳香族ポリフェノールをベースとするそのような予備縮合された樹脂は、本発明によるものであり、上述の単純な分子とは異なり、繰り返し単位を含む。好例において、繰り返し単位は、少なくとも2つのヒドロキシル官能基を互いに対してメタ位に有する少なくとも1つの芳香核を含む。
別の実施形態において、芳香族ポリフェノールは、単純な分子を形成する芳香族ポリフェノールと芳香族ポリフェノールをベースとする予備縮合された樹脂の混合物である。
【0028】
以下の具体的な実施形態において、芳香族ポリフェノールの芳香核又は複数の核が記載される。分かりやすさのために、「芳香族ポリフェノール」は、その中でその単純な分子形態で記載される。この芳香族ポリフェノールは、その後に縮合されることが可能であり、繰り返し単位を一部分定義するだろう。
好ましい実施形態において、芳香族ポリフェノールの芳香核は、3つの-O-H基を互いに対してメタ位に有する。
好ましくは、芳香族ポリフェノールの各-O-H基に対してオルトの2つの位置は非置換である。これは、-O-H基を有する炭素原子の両側(オルトの位置)に位置する2つの炭素原子が単純な水素原子を有することを意味すると理解される。
さらにより優先的には、芳香族ポリフェノールの芳香核の残りは非置換である。これは、芳香核の残りの他の炭素原子(-O-H基を有する炭素原子以外の炭素原子)が単純な水素原子を有することを意味すると理解される。
【0029】
一実施形態において、芳香族ポリフェノールは、いくつかの芳香核を含み、それらの少なくとも2つは、それぞれ少なくとも2つの-O-H基を互いに対してメタ位に有し、少なくとも1つの芳香核の-O-H基の少なくとも1つに対してオルトの2つの位置は非置換である。
好ましい実施形態において、芳香族ポリフェノールの芳香核の少なくとも1つは、3つの-O-H基を互いに対してメタ位に有する。
好ましくは、少なくとも1つの芳香核の各-O-H基に対してオルトの2つの位置は非置換である。
さらにより優先的には、各芳香核の各-O-H基に対してオルトの2つの位置は非置換である。
好都合には、芳香族ポリフェノールの芳香核又は各芳香核はベンゼン核である。
【0030】
1つの芳香核のみを含む芳香族ポリフェノールの例として、それぞれの式I及びIIのレゾルシノール及びフロログルシノールが特に言及され得る:
【化1】
【0031】
例としては、芳香族ポリフェノールがいくつかの芳香核を含む場合、これらの芳香核の少なくとも2つは、同一又は異なり、以下の一般式のものから選択される:
【化2】
(式中、記号Z1及びZ2は、同一又は異なり、同じ芳香核上にいくつかある場合、原子(例えば、炭素、硫黄、又は酸素)又は結合基を表し、定義により、少なくとも二価であり、少なくともこれらの2つの芳香核を芳香族ポリフェノールの残りに接続する)。
【0032】
芳香族ポリフェノールの別の例は、以下の式を有する2,2’,4,4’-テトラヒドロキシジフェニルスルフィドである:
【化3】
(IV)
【0033】
芳香族ポリフェノールの別の例は、以下の式の2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノンである:
【化4】
(V)
各化合物IV及びVが、(式III-cの)2つの芳香核を含む芳香族ポリフェノールであり、そのそれぞれが、少なくとも2つの(好例において2つ)-O-H基を互いに対してメタ位に有することが留意される。
【0034】
式III-bによる少なくとも1つの芳香核を含む芳香族ポリフェノールの場合、少なくとも1つの芳香核の各-O-H基に対してオルトの2つの位置が非置換であることが留意される。式III-bによるいくつかの芳香核を含む芳香族ポリフェノールの場合、各芳香核の各-O-H基に対してオルトの2つの位置は非置換である。
【0035】
本発明の一実施形態によると、芳香族ポリフェノールは、レゾルシノールI、フロログルシノールII、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシジフェニルスルフィドIV、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノンV、及びこれらの化合物の混合物からなる群から選択される。特に有利な実施形態において、芳香族ポリフェノールはフロログルシノールIIである。
【0036】
ジアルデヒド化合物
好ましくは、ジアルデヒド化合物は芳香族ジアルデヒド化合物である。そのようなアルデヒドは、従来のメチレンドナーとは異なり、ホルムアルデヒドの産出を避けることが可能であるので非常に好都合である。芳香族ジアルデヒドは、少なくとも1つの芳香核を含み、この芳香核が少なくとも2つのアルデヒド官能基を有する化合物である。
【0037】
好ましい配置において、芳香族ジアルデヒド化合物は式Aのアルデヒドである:
【化5】
(式中、Xは、N、S、又はOを含み、Rは-CHOを表す)。
好ましい実施形態によると、XはOを表す。その場合、芳香族ジアルデヒド化合物は式Bbのものである:
【化6】
この実施形態において、芳香族ジアルデヒド化合物は、優先的には2,5-フランジカルボキシアルデヒドである。
別の優先的な実施形態において、XはNを含む。この実施形態の代替形態において、XはNHを表す。その場合、芳香族ジアルデヒド化合物は式Caのものである:
【化7】
好ましくは、この代替形態において、芳香族ジアルデヒド化合物は2,5-1H-ピロールジカルボキシアルデヒドである。
【0038】
この実施形態の別の代替形態において、Xは、R1が、アルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、及びシクロアルキルラジカルからなる群から選択されるラジカルを表すNR1を表す。その場合、芳香族ジアルデヒド化合物は式Cbのものである:
【化8】
【0039】
別の優先的な実施形態において、XはSを含む。この実施形態の代替形態において、XはSを表し、その場合、芳香族ジアルデヒド化合物は式Daのものである:
【化9】
好ましくは、この代替形態において、芳香族ジアルデヒド化合物は2,5-チオフェンジカルボキシアルデヒドである。
【0040】
この実施形態の別の代替形態において、Xは、R2が、アルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、及びシクロアルキルラジカルからなる群から選択されるラジカルを表すSR2を表す。その場合、芳香族ジアルデヒド化合物は式Dbのものである:
【化10】
【0041】
この実施形態の別の代替形態において、Xは、R2及びR3が、互いに独立に、アルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、及びシクロアルキルラジカルからなる群から選択されるラジカルをそれぞれ表すR3-S-R2を表す。その場合、芳香族ジアルデヒド化合物は式Dcのものである:
【化11】
【0042】
この実施形態の別の代替形態において、XはS=Oを表す。その場合、芳香族ジアルデヒド化合物は式Ddのものである:
【化12】
この実施形態の別の代替形態において、XはO=S=Oを表す。その場合、芳香族ジアルデヒド化合物は式Deのものである:
【化13】
上述の種々の実施形態の中で、Xが、NH、S、又はOを表す実施形態及び代替形態が優先されるだろう。これらの実施形態及び代替形態において、優先的には、Rは、-CHO基を表して5位にあり、-CHO基は芳香核上の2位にあるだろう。
非常に優先的には、芳香族アルデヒドは、1,4-ベンゼンジカルボキシアルデヒド、1,3-ベンゼンジカルボキシアルデヒド、2,5-フランジカルボキシアルデヒド、及びこれらの化合物の混合物からなる群から選択され、非常に優先的には1,4-ベンゼンジカルボキシアルデヒドである。
【0043】
種々の添加剤
本発明による複合材のエラストマー性組成物は、例えば、可塑剤又は性質として芳香族か非芳香族のいずれであれエクステンダー油、顔料、保護剤、例えば、抗オゾンワックス、化学的オゾン劣化防止剤、又は酸化防止剤、又は疲労防止剤など、空気圧タイヤの製造向けのエラストマー組成物に慣習的に使用される通常の添加剤の全て又は一部も含み得る。
好ましくは、本発明による複合材のエラストマー性組成物はコバルト塩を含まないか、又はその1phr未満、好ましくは0.5phr未満を含む。
このように、本発明による複合材のエラストマー性組成物及び金属表面の具体的特性により、特に、接着、ヒステリシス損失、及び亀裂に対する抵抗性の点で優れた性能品質を達成し、維持することが可能である。
【0044】
完成品又は半完成品、及びタイヤ
本発明の別の主題は、本発明による複合材を含む完成品又は半完成品である。完成品又は半完成品は、複合材を含む任意の物品であり得る。例としては、非限定的に、コンベアベルト、空気圧タイヤ、又は非空気圧タイヤが言及され得る。
空気圧タイヤは、本発明の別の主題であり、本発明による複合材を含むという基本的な特性を有する。空気圧タイヤは、未硬化状態(エラストマー性組成物の架橋の前)でも、硬化状態(エラストマー性組成物の架橋の後)でもあり得る。一般的に、空気圧タイヤの製造の間、複合材は未硬化状態で(すなわち、エラストマー性組成物の架橋の前)空気圧タイヤの構造中に配置されてから、空気圧タイヤを硬化させる段階がある。
本発明は、特に、乗用車タイプの自動車、SUV(スポーツ用多目的車)、又は二輪車(特にオートバイ)、又は航空機、又はバン、重量車、すなわち、地下鉄、バス、重量道路輸送車(貨物自動車、トラクター、トレーラー)から選択される産業車両、又は農業用重量車若しくは地ならし機などのオフロード車などに装備することを意図される空気圧タイヤに関する。
【実施例
【0045】
試験片の調製
以下の試験を以下の方法で実施する:ジエンエラストマー、補強充填剤、並びにまた、樹脂が組成物中にある場合には加硫系及びHMT又はテレフタルアルデヒド(terephthaldehyde)を除く、種々の他の成分を、連続的に内部ミキサーに導入し(最終的な充填度:およそ70体積%)、その初期容器温度はおよそ60℃である。次いで、熱機械加工(非生産段階)を一段階で実施するが、それは、165℃の最大「降下」温度に達するまで全部でおよそ3~4分間続く。
このように得られた混合物を回収し、冷却し、次いで樹脂が組成物中に存在する場合硫黄及び促進剤(スルフェンアミド)及びHMT又はテレフタルアルデヒドを、30℃でミキサー(ホモフィニッシャー)に取り入れ、全てを適切な時間(例えば5~12分)混合する(生産段階)。
このように得られた組成物を、その後に、ゴムのプラック(2~3mmの厚さ)又は薄板の形態でカレンダー加工し、次いで、150℃で15分間硬化段階に付してからそれらの物理的若しくは機械的性質を測定するか、又は以下に記載される接着試験の測定試験片の調製に使用する。
【0046】
測定方法
接着試験
このように調製したエラストマー性組成物を使用して、以下に詳述されるプロトコルに従って、複合材を試験片の形態で作製する。
【0047】
この試験に使用される金属/ゴム複合材は、200mm×4.5mm(ミリメートル)で3.5mmの厚さの硬化前に互いにあてがわれた2つのプラックからなるエラストマー性組成物のブロックである。その場合生じたブロックの厚さは7mmである。このブロックの製造の間に、例えば、15個の補強材を、2つの未硬化プラックの間に捕捉する。補強材の所定の長さのみ、例えば4.5mmがそのままエラストマー性組成物と接触して、補強材のこの長さに硬化の間結合するだろう。残りの長さの補強材は、エラストマー性組成物から離され(例えば、プラスチック又は金属フィルムを使用して)、所定の接触領域外の接着を防ぐ。各補強材はゴムのブロックを貫通し、その自由端の少なくとも1つの充分な長さ(少なくとも5cm、例えば5~10cm)が、補強材のその後の引張試験を可能にするために保持される。
各金属補強材は、0.7%の炭素を有し、直径が30/100ミリメートルの、共により合わせた2スレッドのスチールからなる。評価されるコーティングは、63%の銅を含み残りが亜鉛でできた「真鍮」コーティングである。
次いで、15個の補強材を含むブロックを好適な型の中に配置し、次いで150℃で15分間、およそ15バールの圧力をかけて硬化させる。
ブロックの硬化後、以下の加速老化条件を適用し、熱と湿度の合わさった作用に対する試料の抵抗性を測定することを可能とする。ゴムブロックを、55℃の温度のオーブンに、14日間及び95%の相対湿度で配置する。
【0048】
引抜き力(tearing-out forces)の測定
上述の硬化及び老化のまとめとして、ブロックを、補強材をそれぞれ含む試料として作用する試験片に切り、ASTM規格D2229-02に記載の方法に従って引張試験機を使用してゴムブロックから補強材を引き抜く。引張速度は100mm/分である。接着は、このように、周囲温度で、補強材を試験片から引き抜くのに必要な力により特性化される。引抜き力は、複合材の15個の補強材に対応する15の測定の平均を表す。
力の値が高いほど、コードとエラストマー性組成物の間の接着が高い。結果は、補強充填剤としてカーボンブラックのみを含む混合物の組成物C01及びシリカを含む混合物の組成物C09の非老化対照試験片に対してベース100で表す。自由裁量により100に設定した非老化対照試験片のものよりも高い値は改善された結果を示し、すなわち、非老化対照試験片のものより大きい引抜き力を示す。
【0049】
ヒステリシス損失の評価
試験組成物により誘導される転がり抵抗を、2000年4月のDIN規格53-512に記載されるなど、初期のエネルギーがかけられた試料の6回目の跳ね返りで戻ったエネルギーの、60℃の温度でのエネルギー損失の測定により評価する。この測定は下記の通り計算する:P60(%)=100×(E0-E1)/E0、式中、E0は初期エネルギーを表し、E1は戻ったエネルギーを表す。試験片を、硬化後、並びに77℃で14日間及び21日間換気チャンバー内での加速老化の後に試験する。
結果を、補強充填剤としてカーボンブラックのみを含む混合物の組成物C01及びシリカを含む混合物の組成物C09の非老化対照試験片に対してベース100で表す。自由裁量により100に設定した非老化対照試験片のものより高い値は劣った結果を示し、すなわち、非老化対照試験片のものより高いヒステリシス損失(P60の値)を示す。
亀裂伝搬に対する抵抗性の試験
亀裂の速度を、エラストマー性組成物C01~C16の試験片で、MTSの381型のサイクル疲労装置(Elastomer Test System)を使用して、以下に説明される通り測定した。
【0050】
亀裂に対する抵抗性を、最初に順応させ(最初の引張サイクルの後)次いでノッチを入れた試験片に対する反復的引張作用を使用して測定する。引張試験片は、例えば0.5~1.5mmの厚さ、60~100mmの長さ、及び4~8mmの幅を有する平行六面体形状のゴムプラックで構成されており、2つの側端は、それぞれ長さ方向に円柱状ゴムビーズ(直径5mm)により覆われて、引張試験装置の顎部に固定することが可能である。そのように調製した試験片を、硬化後、並びに換気チャンバー内の77℃のオーブン中14日間及び21日間の加速老化の後で試験する。試験を、空気中で、60℃の温度で実施した。順応後、かみそりの刃を使用して、5~7mmの長さの4つの非常に微細なノッチを製造し、試験片の幅の中心で長さ方向に沿って整列させて、各端部で1つ、及び試験片の中心の両側に2つを配置して、試験開始前に入れる。各引張サイクルで、エネルギーリターン率(亀裂の進行の間に放出されるエネルギーの量)を、およそ1000J/m2に等しい値で一定に保つために、試験片の歪みの程度は自動的に調整される。亀裂伝搬速度を、サイクルあたりナノメートルで測定する。
【0051】
結果を、補強充填剤としてカーボンブラックのみを含む混合物の組成物C01及びシリカを含む混合物の組成物C09の非老化対照試験片に対してベース100で表す。自由裁量により100に設定した非老化試験片のものより高い値は劣った結果を示し、すなわち、非老化対照試験片のものより高い亀裂伝搬速度を示す。試験片が壊れる場合、「測定不能」のコメント「nm」を示す。このコメントは、試験片が亀裂の伝搬に対して低い抵抗性を示すことを証言する。
【0052】
引張試験
1988年9月のフランス規格NF T 46-002に従って試験を実施した。全ての引張測定は、フランス規格NF T 40-101(1979年12月)に従って、温度(23±2℃)及び湿度測定(50%±5%相対湿度)の標準条件下で実施した。
第2の伸びで(すなわち、順応後)、試験片の初期断面に換算することにより計算される公称割線係数(又はMPaで表す見かけの応力)を、150℃で15分間硬化させた試料について、MA10で示される10%伸びで測定した。
結果を、値100を対照に割り当てて、ベース100で表す。100より高い結果は、検討している実施例の組成物が対照より高い剛性を示すことを示す。
結果
混合物C01~C16に対して実施した測定の結果を以下の表に示す。混合物C01~C08は、補強充填剤としてカーボンブラックのみを含む。混合物C09~C16は、補強充填剤としてシリカのみを含む。
【0053】
これらの実施例は、本発明による混合物が、担体が本発明によるものである場合、接着性能/ヒステリシス性質/亀裂の伝搬に対する抵抗性、及び改善された接着性の優れた妥協を示すことを示す。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【国際調査報告】