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特表2024-515517金属材料または金属担持材料からの金属の回収
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】金属材料または金属担持材料からの金属の回収
(51)【国際特許分類】
   C01G 49/06 20060101AFI20240403BHJP
   C22B 3/04 20060101ALI20240403BHJP
   C22B 47/00 20060101ALI20240403BHJP
   C22B 34/30 20060101ALI20240403BHJP
   C22B 34/22 20060101ALI20240403BHJP
   C22B 34/12 20060101ALI20240403BHJP
   C22B 23/00 20060101ALI20240403BHJP
   C22B 19/20 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
C01G49/06 Z
C22B3/04
C22B47/00
C22B34/30
C22B34/22
C22B34/12
C22B23/00 102
C22B19/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560821
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(85)【翻訳文提出日】2023-11-21
(86)【国際出願番号】 IB2022053009
(87)【国際公開番号】W WO2022208428
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】2027874
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523372400
【氏名又は名称】アフリカン レインボー ミネラルズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】AFRICAN RAINBOW MINERALS LIMITED
【住所又は居所原語表記】ARM House, 29 Impala Road, Chislehurston, 2196 Sandton, South Africa
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170184
【弁理士】
【氏名又は名称】北脇 大
(72)【発明者】
【氏名】プレトリウス、ジェラルド
【テーマコード(参考)】
4G002
4K001
【Fターム(参考)】
4G002AA03
4G002AB02
4G002AE05
4K001AA07
4K001AA08
4K001AA09
4K001AA10
4K001AA16
4K001AA19
4K001AA27
4K001AA28
4K001AA30
4K001BA05
4K001BA06
4K001BA23
4K001DB01
(57)【要約】
金属材料または金属担持材料を処理する方法は、酸化的または還元的消化ステップにおいて、金属材料または金属担持材料を塩化第二鉄(FeCl)、塩酸(HCl)、および、それらの組み合わせから選択される試薬と接触させて、このようにして塩化第一鉄(FeCl)溶液を生産することを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属形態もしくは化合物形態の1つ以上の金属を有する固体金属材料または固体金属担持材料を処理して、前記金属材料または前記金属担持材料から前記金属のうちの1つ以上を金属形態または化合物形態で回収する方法であって、当該方法は、
酸化的または還元的消化ステップにおいて、前記金属材料または前記金属担持材料を消化試薬と接触させることによって水性塩化第一鉄(FeCl)溶液を生産することを含み、該消化試薬は、
ガス状の塩酸(HCl)、
水溶液中のHCl、および、
水性媒体中で酸化鉄(III)(Fe)をHClと反応させることによって生産される塩化第二鉄(FeCl)の水溶液から選択され、
かつ、前記金属材料または前記金属担持材料の前記消化試薬との接触から生産される溶液中のあらゆるFeClを溶液中のFeClへと還元することを含み;
結晶化ステップにおいて、前記FeCl溶液から固体塩化第一鉄水和物(FeCl・xHO、ここで、x>1)を結晶化することを含み;
脱水ステップにおいて、70℃~150℃の温度にて非酸化環境で前記FeCl・xHOを温度処理に供して、脱水された固体塩化第一鉄水和物(FeCl・yHO、ここで、x>y>0)を生産することを含み;かつ、
熱分解ステップにおいて、200℃より高いが600℃より高くない温度にて酸化環境で前記FeCl・yHOを温度処理に供して、したがって、前記FeCl・yHOを分解して、固体酸化第二鉄(Fe)および無水であるガス状のHClを生産するステップを含む、
前記方法。
【請求項2】
前記消化試薬が、
前記熱分解ステップにおいて生産される、ガス状のHCl;
前記熱分解ステップにおいて生産されるガス状のHClを水でスクラブすることによって生産される、HClの水溶液;
前記熱分解ステップにおいて生産されるガス状のHClを前記固体金属材料もしくは前記固体金属担持材料の水性懸濁液またはスラリーでスクラブすることによって生産される、HClの水溶液;
前記熱分解ステップにおいて生産される固体Feを、前記熱分解ステップにおいて生産されるガス状のHClを水でスクラブすることによって生産されるHClの水溶液と接触させることによって生産される、FeClの水溶液;または、
前記熱分解ステップにおいて生産されるガス状のHClを前記熱分解ステップにおいて生産される固体Feの水性懸濁液でスクラブすることによって生産される、FeClの水溶液である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記FeCl溶液から前記FeCl・xHOを結晶化することが、前記FeCl溶液を、前記熱分解ステップにおいて生産されるガス状のHClと接触させ、かつ、前記熱分解ステップにおいて生産されるガス状のHClで飽和させることによる変位結晶化によって実行され、したがって、HClの水溶液中に固体FeCl.xHOが生産される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
固体FeCl.xHOおよび前記結晶化ステップにおいて前記FeCl.HOとともに結晶化した任意のその他の固体金属塩化物水和物を、このように生産される前記のHClの水溶液から分離することを含み;かつ、
前記のHClの水溶液を、前記消化ステップにおける前記消化試薬として使用すること、または、前記消化ステップにおける前記消化試薬の生産に使用することを含む、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記金属材料または前記金属担持材料の前記金属が、鉄(Fe)と、クロム(Cr)、銅(Cu)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)から選択される1つ以上のその他の金属(M)を、金属形態または金属酸化物形態および金属硫化物形態から選択される化合物形態で含み;
前記FeCl溶液がしたがって、FeClに加えて、1つ以上の追加の金属塩化物(M2+Cl、ここで、Mは、クロム(Cr)、銅(Cu)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)およびマンガン(Mn)から選択される)を溶液中に含有し;かつ、
前記結晶化ステップがしたがって、FeCl・xHOに加えて、1つ以上のその他の固体金属塩化物水和物(M2+Cl・zHO、ここで、Mは、クロム(Cr)、銅(Cu)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)およびマンガン(Mn)のうちの1つ以上から選択され、かつ、z>0である)を形成する、
請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記消化ステップの後で実行される第1の分離ステップにおいて、固液分離によって前記FeCl溶液から固体を分離し、したがって、実質的に固体のない前記FeCl溶液を回収することを含み;かつ、
前記結晶化ステップの後であって前記脱水および分化ステップの前に実行される第2の分離ステップにおいて、固体FeCl・xHOと、前記結晶化ステップにおいて前記FeCl.xHOと結晶化した任意の固体M2+Cl・zHOを回収することを含む、
請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記脱水ステップにおいて、回収された固体M2+Cl・zHOもまた、回収されたFeCl・xHOとともに脱水に供され、そのことによって、FeCl・yHOに加えて、脱水されたその他の金属塩化物水和物または無水金属塩化物(M2+Cl・aHO、ここで、z>a≧0)が生産される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記脱水ステップから回収された固体M2+Cl・aHOが、前記FeCl・yHOとともに前記熱分解ステップにおいて温度処理に供され;かつ、
FeCl・yHOの熱分解が、固体M2+Cl・aHOであって、その水和物が前記熱分解ステップにおいて完全に脱水された前記固体M2+Cl・aHOを除外して起こり、したがって、固体Feと固体であるその他の無水金属塩化物(M2+Cl)の混合物が生産される、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記熱分解ステップが、200℃より高いが600℃より高くない温度で実行される、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
x=4であり、かつ、y=1である、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、固体金属材料または固体金属担持材料からの金属の回収に関する。本発明は、固体金属材料または固体金属担持材料を処理して、塩化物媒体を介して該金属材料または金属担持材料から1つ以上の金属を回収する方法を提供する。この意味で、「金属」は、元素金属形態の金属および金属化合物の両方を含む広範な意味を有する。本発明は、該方法を実行するための工程に及ぶ。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
多くのミネラル濃縮物、ならびに、その他の金属材料および金属担持材料において、鉄は主たる汚染物質である。鉄を取り扱うことは概して、かかる材料が湿式精錬工程を用いて選鉱されるときに高い酸消費量および廃棄物生成をもたらす。本発明は、いっそう効率的かつ費用効果のあるアプローチを提供することを求めるが、それ自体を選鉱により鉄で汚染された金属材料および金属担持材料に限定しない。
【0003】
発明の目的
金属材料または金属担持材料であって、鉄以外の金属を含有し、かつ、任意選択的には鉄も含有し、鉄はそのときには典型的にはその他の金属材料を含有するマトリックスに含まれる、前記金属材料または金属担持材料の処理であって、かかるマトリックスからかかる鉄以外の金属を遊離させるための前記処理を提供することが、本発明の目的である。この意味で、繰り返すが、「金属」は、元素金属形態の金属および金属化合物の両方を含む広範な意味を有する。金属化合物に関しては、かかる化合物は、かかる金属が金属材料または金属担持材料において現れる元々の形態よりもいっそう容易に選鉱されるであろう形態であることが想像される。
【発明の概要】
【0004】
本明細書において、括弧での特徴の提供は、本明細書の実質的な内容に寄与し、したがって本発明の特徴付けに寄与する。とりわけ、一般的な化学式、および、かかる一般式の記号についての数値が括弧で提供される場合、このことは発明の特徴付けに実質的に寄与すると解釈されるべきである。
【0005】
本発明の第1の態様によれば、金属形態もしくは化合物形態である1つ以上の金属を有する固体金属材料または固体金属担持材料を処理して、金属材料または金属担持材料から金属のうちの1つ以上を金属形態または化合物形態で回収する方法が提供され、当該方法は、酸化的または還元的消化ステップにおいて、金属材料または金属担持材料を消化試薬と接触させることによって塩化第一鉄(FeCl)溶液を生産することを含み、該消化試薬は、
典型的には水溶液中の、塩化第二鉄(FeCl)、
ガス状の塩酸(HCl)、
水溶液中の、HCl、および、
任意選択的には、それらの任意の2つ以上の組み合わせから選択され、かつ、
当該方法は、金属材料または金属担持材料の消化試薬との接触によって生産される溶液中のあらゆるFeClを溶液中のFeClへと還元することを含む。
【0006】
金属材料または金属担持材料の消化試薬との接触は、水性媒体中で実行されてもよい。したがって、FeCl溶液は水性FeCl溶液であってもよい。
【0007】
消化試薬がHClであるとき、金属材料または金属担持材料を消化試薬と接触させることは、
金属材料または金属担持材料をガス状のHCl(すなわち、水性HCl溶液の形態ではない)と直接接触させることを含んでもよく;
金属材料または金属担持材料を、好ましくは30% v/vより上の、例えば30%~36% v/vの、例えば33% v/vの濃度の水溶液中のHClと接触させることを含んでもよい。
【0008】
金属材料または金属担持材料をガス状のHClと接触させるとき、金属材料または金属担持材料は、とりわけ、典型的には約5重量%~70重量%の範囲であり、例えば金属水和物および/または金属水酸化物の形態である、化学的に結合した水(「遊離水」、すなわち、化学的に結合していない水とは反対の意味)を有する鉱石材料であってもよい、水和した鉱石材料であってもよい。任意選択的には、かかる水和した鉱石材料は、消化ステップにおいて消化に供される前に、例えば水和した鉱石の質量の約5質量%まで遊離水でわずかに濡れていてもよい。
【0009】
ガス状のHClは、好ましくは、例えば本発明の第3の態様にしたがって生産される、無水のガス状のHClであってもよい。
【0010】
金属材料または金属担持材料を水性HCl溶液と接触させるとき、当該方法は、
ガス状のHClを水でスクラブすることによって水性HCl溶液を調製すること、および、金属材料または金属担持材料をこのようにして調製された水性HCl溶液と接触させることを含んでいてもよく;
金属材料もしくは金属担持材料の水性懸濁液またはスラリーを調製すること、および、ガス状のHClを金属材料もしくは金属担持材料の懸濁液またはスラリーでスクラブすることを含んでいてもよい。
【0011】
ガス状のHClは、とりわけ、ガス状のHClであってもよく、かつ、いっそう具体的には本発明の第3の態様にしたがって生産される無水のガス状のHClであってもよい。
【0012】
金属材料または金属担持材料の消化試薬との接触から生産されるFeClをFeClへと還元することは、還元剤、例えば、金属鉄(Fe)を用いて成し遂げられてもよい。
【0013】
金属材料または金属担持材料の組成に依拠して、金属材料または金属担持材料を消化試薬と接触させることは、FeClを除外したFeClの溶液またはFeClおよびFeClの両方を有する溶液(したがって、還元剤を用いて成し遂げられるFeClの還元を必要とする)を生産してもよい。
【0014】
FeClを有しない溶液が生産させることもまた可能であり、その場合、還元は必要とされない。
【0015】
還元はしたがって、金属材料または金属担持材料の消化がFeClを生産すれば必要となるだけであることが把握されるであろう。
【0016】
消化試薬はしたがって、例えば、
例えば本発明の第3の態様にしたがって生産される、ガス状のHClであってもよく;
例えば本発明の第3の態様にしたがって生産されるガス状のHClを水でスクラブすることによって生産される、HClの水溶液であってもよく;
例えば、例えば本発明の第3の態様にしたがって生産されるガス状のHClを固体金属材料もしくは固体金属担持材料の水性懸濁液またはスラリーでスクラブすることによって生産される、HClの水溶液であってもよく;
例えば、例えば本発明の第3の態様にしたがって生産される固体赤鉄鉱(Fe)を、例えば本発明の第3の態様にしたがって生産されるガス状のHClを水でスクラブすることによって生産されるHClの水溶液と接触させることによって生産される、FeClの水溶液であってもよく;または、
例えば、例えば本発明の第3の態様にしたがって生産されるガス状のHClを例えば本発明の第3の態様によって生産される固体Feの水性懸濁液でスクラブすることによって生産される、FeClの水溶液である。
【0017】
金属材料または金属担持材料が金属形態または化合物形態の鉄を有するとき、かかる鉄は、上述の通り塩化第一鉄へと変換され、したがってFeCl溶液中の塩化第一鉄として存在するであろう。金属材料または金属担持材料が金属形態または化合物形態の鉄以外の金属(M)を有するとき、その後で、少なくともいくつかのかかる鉄以外の金属はまた、有利なことに、溶解性の、例えば二価である、その塩化物(M2+Cl)へと変換されるであろう。
【0018】
本発明の第2の態様によれば、金属形態もしくは化合物形態である1つ以上の金属を有する固体金属材料または固体金属担持材料を処理して、金属材料または金属担持材料から金属のうちの1つ以上を金属形態または化合物形態で回収する方法が提供され、当該方法は、変位結晶化ステップにおいて、金属材料または金属担持材料の酸化的/還元的消化によって生産されるFeCl溶液、典型的には水性FeCl溶液を、FeCl溶液からFeClを変位させ、したがって固体塩化第一鉄水和物(FeCl・xHO、ここで、x≧1、いっそう好ましくはx>1)、典型的には固体塩化第一鉄四水和物(FeCl・4HO、すなわちx=4)を生産する変位結晶化試薬、好ましくはHCl、最も好ましくはガス状のHClと接触させることを含む。
【0019】
ガス状の形態のHClは、無水のガス状のHClであってもよい。
【0020】
変位結晶化を成し遂げるのに用いられてもよいガス状の形態のHClは、とりわけ、ガス状の形態のHClであってもよく、かつ、いっそう具体的には、本発明の第3の態様にしたがって生産される、ガス状の形態の無水HClであってもよい。
【0021】
金属材料または金属担持材料の酸化的/還元的消化によってFeCl溶液を生産することは、金属材料または金属担持材料を消化試薬と接触させることを含み、該消化試薬は、
典型的には水溶液中の、FeCl
ガス状のHCl、
水溶液中の、HCl、および、
任意選択的には、それらの任意の2つ以上の組み合わせから選択され、かつ、
金属材料または金属担持材料の消化試薬との接触によって生産される溶液中のあらゆるFeClをFeClへと還元することを含んでいたであろう。
【0022】
FeCl溶液は、例えば、本発明の第1の態様の消化ステップにしたがって生産されたFeCl溶液であってもよい。
【0023】
上記で注記されたように、FeCl・xHOは、とりわけ、FeCl・4HO、すなわちx=4であってもよい。
【0024】
変位結晶化ステップは、脱水(すなわち乾燥)ステップを含んでいてもよく、いっそう典型的には脱水(すなわち乾燥)ステップが後に続いてもよく、該脱水(すなわち乾燥)ステップは、FeCl・xHOを温度処理に供して脱水された固体塩化第一鉄水和物(FeCl・yH2O、ここで、x>y>0)を生産することを含んでいてもよい。FeCl・yHOは、とりわけ、FeCl・HO(塩化第一鉄一水和物)、すなわちy=1であってもよい。
【0025】
本明細書で用いられる意味では、脱水ステップの文脈において、用語「脱水」および「脱水された」はしたがって、無水形態を提供するために完全な脱水を必要としないが、その可能性は単語の意味の範囲内に含まれる。脱水ステップはしたがって、少なくとも塩化第一鉄の脱水における変化に関しては「部分的」脱水ステップとしていっそう正確に特徴付けされてもよい。
【0026】
FeCl.xHOが脱水ステップにおいて供される温度処理は、FeCl.xHOを70℃~200℃の範囲、いっそう好ましくは70℃~200℃未満の範囲の温度、すなわち200℃未満であるが70℃未満ではない温度に供することを含んでいてもよい。例えば、温度は70℃~150℃の範囲であってもよい。
【0027】
脱水ステップは、非酸化条件下、すなわちFeCl.xHOの酸化を回避する条件下で実行されてもよい。このことは、脱水ステップにおいて外因性の酸素の存在を回避する、または、少なくとも制限することを含んでいてもよい。このことは次に、蒸気がFeCl・xHOの脱水の結果として生産されるものである蒸気環境において正圧下で脱水ステップを実行することを含んでいてもよい。
【0028】
結晶化が変位結晶化によって成し遂げられるとき、消化試薬は典型的には、分解ステップにおいて生産されるガス状のHClではなく、分解ステップにおいて生産されるガス状のHClを用いて生産されるものでもなく、むしろ、変位結晶化ステップにおいて生産される水性HCl溶液であるか、変位結晶化ステップにおいて生産される水性HCl溶液を用いて生産されるであろう。
【0029】
金属材料または金属担持材料が金属形態または化合物形態の鉄を有するとき、かかる鉄は消化ステップにおいて塩化第一鉄へと変換され、かつ、その後で変位結晶化ステップにおいてFeCl溶液から塩化第一鉄水和物として変位する。
【0030】
金属材料または金属担持材料が金属形態または化合物形態の鉄以外の金属(M)を有するとき、その後で、少なくともいくつかのかかる鉄以外の金属はまた、有利なことに、消化ステップにおいて、溶解性の、例えば二価である、その塩化物(M2+Cl)へと変換され、かつ、その後でまた、有利なことに、変位結晶化ステップにおいてその二価金属塩化物水和物(M2+Cl.zHO、ここで、z>0)として溶液から変位するであろう。
【0031】
本発明の第3の態様によれば、金属形態もしくは化合物形態である1つ以上の金属を有する固体金属材料または固体金属担持材料を処理して、金属材料または金属担持材料から金属のうちの1つ以上を金属形態または化合物形態で回収する方法が提供され、当該方法は、熱分解段階において、金属材料もしくは金属担持材料の酸化的/還元的消化によって生産されるFeCl溶液からのその結晶化によって生産されるFeCl・xHOであって、ここで、x≧1であり、いっそう好ましくはx>1であり、xは最も好ましくは4である前記FeCl・xHO、および/または、FeCl・xHOを脱水に供することにより生産されるFeCl・yHOであって、ここで、x>y>0であり、yは好ましくは1である前記FeCl・yHOを温度処理に供して、したがって、FeCl・xHOまたはFeCl・yHOを分解して、固体酸化第二鉄(Fe)およびガス状のHClを生産することを含む。
【0032】
ガス状のHClは、とりわけ、無水であるガス状のHClであってもよい。
【0033】
熱分解ステップおよび本発明の文脈では概して、熱分解に供されるのは、FeClを除外して、FeCl.xHOまたはFeCl.yHOが好ましいことが注目される。これはなぜなら、FeClは、熱分解に供されるときには、分解してガス状のHClおよびFeを生産せず、その代わりに昇華するからである。
【0034】
金属材料または金属担持材料の酸化的/還元的消化によってFeCl溶液を生産することは、金属材料または金属担持材料を消化試薬と接触させることを含み、該消化試薬は、
典型的には水溶液中の、FeCl
ガス状のHCl、
水溶液中のHCl、および、
任意選択的には、それらの組み合わせから選択され、かつ、
金属材料または金属担持材料を消化試薬と接触させることから生産される溶液中のあらゆるFeClをFeClへと還元することを含んでいたであろう。
【0035】
FeCl溶液は例えば、本発明の第1の態様にしたがって生産されたFeCl溶液であってもよい。
【0036】
FeCl溶液からのFeCl.xHOの結晶化は、従来の方法、例えば蒸発結晶化によって達成されたであろう。
【0037】
いっそう好ましくは、しかしながら、FeCl溶液からFeCl・xHOを結晶化することは、本発明の第2の態様にしたがって、金属材料または金属担持材料の酸化的/還元的消化によって生産されるFeCl溶液を、変位結晶化試薬、好ましくは塩酸(HCl)、最も好ましくはガス状のHClと接触させることを含んでいたであろう、溶液からFeClを変位させて、したがって、FeCl・xHOを生産した、FeCl溶液からの変位結晶化によって実行されてもよい。
【0038】
ガス状のHClは、とりわけ、好ましくは本発明の熱分解ステップによって生産される無水であるガス状のHClであったであろう。
【0039】
本発明にしたがって上記で特徴付けられる変位結晶化の使用は、蒸発結晶化より好ましい。なぜなら、蒸発結晶化の場合、FeCl溶液からの水の蒸発から生じるpHシフトが、溶液中のFeClを有意にFeClへの酸化をいっそう受けやすくし、そのことは本発明の文脈では回避されるべきであり、それに照らせば、上述の通り、FeClは本明細書に記載の熱分解ステップにおいて本発明によって利用されるもののような高温に供されると昇華するからである。
【0040】
結晶化が変位結晶化によって実行されるとき、消化試薬は、典型的には分解ステップにおいて生産されるガス状のHClではなく、または、典型的には分解ステップにおいて生産されるガス状のHClを用いて生産されるものではなく、むしろ、変位結晶化ステップにおいて生産されるHCl水溶液であるか、または、変位結晶化ステップにおいて生産されるHCl水溶液を用いて生産されるであろう。
【0041】
さらに、FeCl・xHOの脱水を通してFeCl.yHOを生産すること、および、FeCl.yHOを熱分解に供することが好ましい。かかる脱水は、本発明の第2の態様を参照して説明されるように、70℃~200℃の範囲、いっそう好ましくは70℃~200℃未満の範囲の温度、すなわち200℃未満であるが70℃未満ではない温度でFeCl.xHOを温度処理に供することによって実行されてもよい。例えば、温度は70℃~150℃の範囲であってもよい。
【0042】
FeCl.yHOを熱分解に供することによって、無水であるガス状の塩酸を生産する効果が革新的に達成され、かつ、利用されることは、本発明の特に革新的な利点と見做される。
【0043】
固体FeCl・xHOまたはFeCl・yHOは例えば、本発明の第2の態様の方法にしたがって生産されたFeCl・xHOまたはFeCl・yHOであってもよい。
【0044】
金属材料または金属担持材料が金属形態または化合物形態の鉄を有するとき、その後でかかる鉄は、上述の通り、塩化第一鉄へと変換され、塩化第一鉄水和物として溶液から変位し、脱水され、かつ、分解されるであろう。
【0045】
金属材料または金属担持材料が金属形態または化合物形態の鉄以外の金属(M)を有するとき、その後でかかる鉄以外の金属の少なくともいくつかは、有利なことにまた、上述の通り、可溶性の、例えば二価の、その塩化物(M2+Cl)へと変換され、二価塩化物水和物(M2+Cl.zHO、ここで、z>0)として溶液から変位し、部分的にまたは完全に脱水され(M2+Cl.aHO、ここで、z>a≧0を生産するために)、かつ、熱分解に供される(無水M2+Clを生産するために)。
【0046】
分解に供されるときの塩化第一鉄水和物とは対照的に、かかるその他の二価金属塩化物または塩化物水和物はしたがって、分解しないであろう。それらはそのままで留まり、せいぜいそれらの無水二価塩化物形態へと完全に脱水されるだけであろう。かかる形態では、かかる金属は可溶性であり、したがって、固液分離によって固体酸化第二鉄から容易に分離されるであろう。
【0047】
本発明の第4の態様によれば、金属形態もしくは化合物形態の金属のうちの1つ以上を有する固体金属材料または固体金属担持材料を処理して、金属材料または金属担持材料から金属のうちの1つ以上を金属形態または化合物形態で回収する方法であって、当該方法は、
酸化的または還元的消化ステップにおいて、金属材料または金属担持材料を消化試薬と接触させることによって塩化第一鉄(FeCl)溶液を生産することを含み、該消化試薬は、
水溶液中の、塩化第二鉄(FeCl)、
ガス状の塩酸(HCl)、
水溶液中のHCl、および、
任意選択的にはそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせから選択され、
かつ、金属材料または金属担持材料を消化試薬と接触させることから生産される溶液中のあらゆるFeClを溶液中のFeClへと還元することを含み;
結晶化ステップにおいて、FeCl溶液から固体塩化第一鉄水和物(FeCl・xHO、ここで、x≧1、好ましくはx>1、最も好ましくは4)を結晶化することを含み;
任意選択的には、脱水ステップにおいて、FeCl・xHOを温度処理に供して、脱水された塩化第一鉄水和物(FeCl・yHO、ここで、x>y>0、好ましくは1)を生産することを含み;かつ、
熱分解ステップにおいて、FeCl・xHOおよび/またはFeCl・yHOを温度処理に供し、したがって、FeCl・xHOおよび/またはFeCl・yHOを分解して、固体酸化第二鉄(Fe)およびガス状のHClを生産することを含む。
【0048】
酸化的または還元的消化ステップは、本発明の第1の態様の方法のものであってもよい。
【0049】
FeCl溶液からのFeCl.xHOの結晶化は、従来の方法、例えば蒸発結晶化によって達成されてもよい。
【0050】
いっそう好ましくは、しかしながら、FeCl溶液からFeCl・xHOを結晶化させることは、FeCl溶液からの変位結晶化によって実行されてもよく(すなわち、結晶化ステップは変位結晶化ステップであってもよく)、該変位結晶化は、FeCl溶液を変位結晶化試薬と接触させること、および、FeCl溶液を変位結晶化試薬で飽和させることを含み、したがって溶液からFeClを変位させること、および、FeCl・xHOを生産することを含んでもよく、該変位結晶化試薬は、好ましくはHClであり、いっそう好ましくはガス状の形態のHClであり、最も好ましくは無水であるガス状の形態のHClであり、例えば熱分解ステップから回収されるガス状のHClである。
【0051】
変位結晶化ステップでは、FeCl溶液の温度は10℃~60℃であってもよい。
【0052】
変位結晶化試薬がガス状の形態のHClであるとき、変位結晶化は例えば、ガス状のHClをFeCl溶液でスクラブすることを有していてもよい。
【0053】
変位結晶化ステップでは、したがってHClの水溶液(すなわち、希釈されたHCl)が形成されてもよい。
【0054】
変位結晶化が用いられるとき、当該方法は、
このように生産されるHClの水溶液から固体FeCl.xHO、および、結晶化ステップにおいてFeCl.HOとともに結晶化された任意のその他の金属塩化物水和物(M2+Cl.zHO、上述の通り、ここで、z≧1)を分離すること;ならびに、
消化ステップにおける消化試薬として、または、消化ステップにおける消化試薬を生産するのに、HClの水溶液を用いることを含んでいてもよい。
【0055】
当該方法はしたがって、変位結晶化ステップ後であって脱水ステップ前に実行される第2の分離ステップにおいて、固液分離によって結果として生じるHCl溶液から固体FeCl・xHO、および、存在してもよい任意のその他の固体金属塩化物水和物(本明細書に記載のM2+Cl・zHО)を回収し、したがって、FeCl・xHOおよび存在していたであろう任意の固体M2+Cl・zHOを回収することを含んでいてもよい。
【0056】
上述の通り、当該方法はまた、変位結晶化ステップにおいて生産されるHCl溶液を当該方法の消化ステップへと再循環させること、および/または、HCl溶液中のHClを本発明の熱分解ステップにおいて生産されるFeであってもよいFeと反応させることによってHCl溶液を用いて消化ステップにおける使用のためにFeCl溶液を生産することを含んでいてもよい。
【0057】
変位結晶化ステップにおいて生産されるHCl溶液の再循環は、例えば低濃度の結果として金属塩化物水和物へと変換されないいくつかの金属塩化物の再循環を含んでいてもよいことが注目される。かかる金属塩化物水和物の増加は、一旦十分な高濃度が達成されると最終的にはかかる変換をもたらすであろうことが期待される。
【0058】
変位結晶化ステップは、本発明の第2の態様の方法のものであってもよい。
【0059】
熱分解ステップは、本発明の第3の態様のものであってもよい。
【0060】
以下の言及は、本発明の上記の第1~第4の態様のすべてに適用される。
【0061】
金属材料または金属担持材料に含まれる1つ以上の金属は、クロム(Cr)、銅(Cu)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)および鉄(Fe)のうちの1つ以上を金属形態および/または化合物形態で含んでいてもよい。
【0062】
典型的には、金属材料または金属担持材料は、少なくとも鉄を金属形態または化合物形態で含み、かつ、好ましくは、鉄以外の少なくとも1つの金属(M)を金属形態または化合物形態で含むであろう。かかるその他の金属(M)は例えば、鉄以外の上記で列挙されたもののうちの1つ以上であってもよい。
【0063】
金属材料または金属担持材料が鉄を金属形態または化合物形態で含む場合、消化試薬は少なくともHClを有していてもよい。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態では、金属材料または金属担持材料は例えば、ポリオキシド材料(多数の金属酸化物を含有する)、ポリサルファイド材料(多数の金属硫化物を含有する)、合金材料、金属スラグ材料、金属微粉材料および金属材料のうちの1つ以上であってもよい。
【0065】
したがって、金属材料または金属担持材料中の金属は例えば、金属酸化物形態、金属硫化物形態および金属形態のうちの1つ以上であってもよい。
【0066】
本発明の1つの具体的な実施形態では、金属担持材料は鉱石材料であってもよい。例えば、金属担持材料はチタン磁鉄鉱鉱石材料、例えばバナジウム含有チタン磁鉄鉱鉱石材料であってもよい。概して、本発明は、任意の金属硫化物および/または金属酸化物担持鉱石材料、とりわけ鉄を金属形態または化合物形態で有するものへの適用を見出してもよいことが想定される。
【0067】
金属担持材料の組成に依拠して、FeCl溶液はしたがって、FeClに加えて、その他の金属塩化物、典型的には少なくともその他の二価金属塩化物(M2+Cl)を含有していてもよいが、溶液中の一価金属塩化物、例えばCuClまたはCuClを排除しない。
【0068】
したがって、消化ステップは、金属材料または金属材料中に金属形態または化合物形態で含有される少なくともいくつかの金属が、FeCl溶液中に含有される溶液中の金属塩化物(FeClおよび、その他の金属(M)が存在すれば、M2+Cl)へと変換されることを実行しなければならないであろう。このことが所望される。
【0069】
消化ステップは、10℃~120℃の温度で実行されてもよい。
【0070】
消化ステップにおいてFeCl消化試薬が用いられれば、それは溶液中にあってもよい。典型的には、それは5wt%~70wt%の濃度にて水溶液中にあってもよい。
【0071】
消化ステップにおいて消化試薬として使用するための溶液中のFeClを生産するために、固体FeがHClとともに用いられて、したがってFeCl溶液が消化ステップへの給送材料として別個に生産される代わりに、消化ステップにおいてそれが生産されてもよいことが注目される。
【0072】
HClは、消化ステップにおいて消化試薬として用いられるときには、溶液中にあってもよく、かつ、本発明の第1の態様にしたがって記載されるように生産されてもよい。典型的には、それは、5wt%~40wt%、いっそう好ましくは30%~36%、例えば33%の濃度にて水溶液中にあってもよい。
【0073】
代替的には、HClは、消化ステップにおいて消化試薬として用いられるときには、本発明の第1の態様にしたがって記載されるように、ガス状のHClであってもよい。
【0074】
消化試薬はしたがって、例えば、
例えば熱分解ステップにおいて生産される、ガス状のHClであってもよく;
例えば、例えば熱分解ステップにおいて生産されるガス状のHClを水でスクラブすることによって生産される、HClの水溶液であってもよく;
例えば、例えば熱分解ステップにおいて生産されるガス状のHClを固体金属材料もしくは固体金属担持材料の水性懸濁液またはスラリーでスクラブすることによって生産される、HClの水溶液であってもよく;
例えば熱分解ステップにおいて生産される固体Feを、例えば熱分解ステップにおいて生産されるガス状のHClを水でスクラブすることによって生産されるHClの水溶液と接触させることによって生産される、FeClの水溶液であってもよく;
例えば熱分解ステップにおいて生産されるガス状のHClを、例えば熱分解ステップにおいて生産される固体Feの水性懸濁液でスクラブすることによって生産される、FeClの水溶液であってもよい。
【0075】
結晶化が変位結晶化によって実行されるとき、消化試薬は典型的には、分解ステップにおいて生産されるガス状のHClではなく、分解ステップにおいて生産されるガス状のHClを用いて生産されるものでもなく、むしろ、変位結晶化ステップにおいて生産される水性HCl溶液であるか、変位結晶化ステップにおいて生産される水性HCl溶液を用いて生産されるであろう。
【0076】
還元剤として、金属鉄が用いられてもよい。
【0077】
還元剤として金属鉄を用いる際、Fe3+のFe2+への還元(すなわち、FeClからFeCl)に加えて、その他の金属が場合によっては固体金属形態へと還元され、したがって、かかる金属を固液分離によって容易に回収可能にしてもよい。
【0078】
還元は、溶液中に金属材料または金属担持材料を消化試薬で処理したことにより生じるFeClが存在する場合のみ必要とされるであろう。
【0079】
当該方法は、消化ステップ後に実行される第1の分離ステップにおいて、固液分離によってFeCl溶液から固体を分離し、したがって実質的に固体のないFeCl溶液(溶液中にその他の二価金属塩化物を含む)を回収することを含んでいてもよい。
【0080】
FeCl溶液が溶液中にその他の金属塩化物(M2+Cl)を含有するとき、結晶化ステップは、固体FeCl・xHOに加えて、その他の固体金属(M)塩化物水和物(M2+Cl・zHO、ここで、z>0であり、かつ、Mは例えば、クロム(Cr)、銅(Cu)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)およびマンガン(Mn)のうちの1つ以上から選択されてもよい)を形成してもよい。
【0081】
結晶化ステップを参照して上述の通り、結晶化ステップが変位結晶化を有するとき、当該方法は、結晶化ステップ後であって脱水ステップ前に実行される第2の分離ステップにおいて、固体FeCl・xHO、および、存在してもよい任意の固体M2+Cl・zHOを回収することを含んでいてもよい。
【0082】
好ましくは、脱水ステップが実行される。
【0083】
脱水ステップは、本発明の第2の態様を参照して記載されるように、FeCl.xHOおよび存在してもよい任意のM2+Cl.zHOを、70℃~200℃の範囲、いっそう好ましくは70℃~200℃未満の範囲の温度、すなわち200℃未満であるが70℃未満ではない温度で温度処理に供することによって実行されてもよい。例えば、温度は70℃~150℃の範囲であってもよい。
【0084】
したがって、FeCl.yHO、および、M2+Cl.zHOが存在すればその他の金属の固体二価塩化物水和物または無水固体二価塩化物(M2+Cl.aHO、ここで、z>a≧0)が生産されてもよい。
【0085】
当該方法はその後、脱水ステップにおいて生産されるFeCl.yHOおよび任意のM2+Cl.aHOを熱分解に供することを有していてもよい。
【0086】
脱水ステップは、非酸化条件下で実行されてもよい。このことは、乾燥ステップにおける外因性の酸素の存在を回避すること、または、少なくとも制限することを含んでいてもよい。このことは次に、蒸気環境において正圧下で脱水ステップを実行することを含んでいてもよく、該蒸気はFeCl・xHOの脱水の結果として生産されるものであってもよい。
【0087】
上記のように、FeCl・xHOに加えて、固体M2+Cl.zHOが結晶化ステップにおいて回収されるとき、かかる固体M2+Cl.zHOもまた、FeCl・xHOとともに脱水ステップにおいて脱水に供され、FeCl・yHOに加えて、その他の金属の脱水された固体二価塩化物水和物および/または無水固体二価塩化物(M2+Cl・aHO、ここで、z>a≧0、したがってa=0であるときには無水形態を含む)もまた、脱水ステップにおいて生産されるようになっているであろう。
【0088】
熱分解ステップは、200℃~600℃の温度、いっそう好ましくは200℃より高く600℃までの温度で実行されてもよい。
【0089】
熱分解ステップは、酸化条件下、すなわち例えば空気によって供給されてもよい酸素の存在下で実行されてもよい。
【0090】
熱分解ステップにおいて生産されるガス状のHClは、実質的に乾燥していてもよく、すなわち水分がなくてもよい(無水であってもよい)。
【0091】
乾燥(脱水)および熱分解ステップにおいて起こる反応は、したがって、
(i)非酸化条件下における上記の温度での乾燥(脱水)を有し、
FeCl.4HO(固体) → FeCl.HO(固体) + 3HO(ガス状)
(ii)上記の温度における空気によって供給される酸素(1/2O)の存在下での酸化条件下における熱分解を有する。
2FeCl.HO(固体) → Fe(固体) + 4HCl(ガス状)
【0092】
上述の通り、FeCl・xHOに加えて固体M2+Cl.zHOが結晶化ステップから回収され、かつ、脱水ステップが実行され、かつ、FeCl.yHOに加えて固体M2+Cl.aHOが脱水ステップにおいて生産されるとき、かかる固体M2+Cl.zHOおよび/またはM2+Cl.aHOは、FeCl・xHO/FeCl・yHOとともに熱分解ステップにおいて温度処理に供されるであろう。
【0093】
FeCl・xHO/FeCl・yHOの熱分解は、固体M2+Cl.zHOおよび/またはM2+Cl.aHOを除外して起こるが、M2+Cl.zHOおよび/またはM2+Cl.aHOは、それらが既に完全に脱水されていない限り、熱分解ステップにおいて完全に脱水され、したがって、FeCl.xHO/FeCl・yHO(好ましくは、FeCl.yHO)のFeおよびガス状のHClへの熱分解後は完全に脱水されたM2+Cl(すなわち、a=0)として留まるであろう。しかしながら、前記の説明から把握されるように、FeCl・yHOおよびM2+Cl.aHOのみが熱分解ステップに供されて、酸化第二鉄、無水HClガスおよび固体M2+Clが生産されることが好ましい。
【0094】
したがって、熱分解ステップは典型的には、その後で本明細書に記載されるように用いられるガス状のHClに加えて、固体Feおよび固体M2+Clの混合物を生産するであろう。
【0095】
当該方法はその後、第3の分離ステップにおいて、M2+Clを水に溶解させること、および、固液分離を実行して結果として生じるM2+Clの溶液から不溶性Feを回収することを含んでいてもよい。
【0096】
結果として生じるM2+Clの溶液中、元々は金属材料または金属担持材料に含有されていた鉄以外の金属(M)はしたがって、それらが金属材料または金属担持材料に保持されていたマトリックスから解放され、該マトリックスは鉄を含んでいたであろう。かかるその他の金属は、ここで結果として生じる溶液から従来の方法、例えば湿式精錬法によって回収されてもよい。
【0097】
当該方法はまた、販売可能なFe、および、先の方法ステップへの再循環に適する生産物を生産する。例えば、有意なことに、温度処理によるFeCl・xHO/FeCl・yHO(好ましくは、FeCl・yHO)の熱分解は、ガス状のHClを放出し、特にFeCl.yHOが熱分解に供されるときには、該ガス状のHClは望ましくは無水形態であることが注目される。
【0098】
当該方法は、結晶化ステップが変位結晶化として実行されるときには、このHClガスを結晶化ステップにおいて用いられるように再循環させることを含んでいてもよい。代替的には、それは、消化試薬として用いられるように、または、消化試薬の生産に用いられるように、消化ステップへと再循環してもよい。
【0099】
さらに、先に注目されたように、Feは、変位結晶化ステップからの、いっそう具体的には第2の分離ステップからのHCl溶液と反応して、消化ステップにおいて使用するためのFeCl溶液が生産されてもよい。
【0100】
FeCl.xHOの生産および後に続くFeCl.yHOへの脱水が、後に続く部分的に脱水されたFeCl.yHOの分解を通して、把握されるように濃縮され、かつ、希釈されていないHClであり、さらに本発明の文脈では実質的に乾燥している、すなわち水分のない(無水である)ガス状の形態のHClの生産を可能にすることは、説明された発明の特有の利点および革新的な特徴と見做される。このことは、濃縮HClの生産に不都合であり、かつ、所望の濃度の希釈HClの製造にさえ不都合な水分バランスに起因して不可避的にHClの希釈溶液を形成する固体金属担持原料の消化にHClを利用する従来の方法と著しく対照的である。例えば、室温におけるHClの最高濃度は33% v/vである一方で、HClを利用する既存の方法は、18% v/vより高い希釈HClの再生成をほぼ達成しない。本発明は、FeCl.xHOとしての鉄析出、それを部分的に脱水してFeCl.yHOを生産すること、および、それを分解して次に先の方法ステップにおける使用のための希釈されていないガス状のHClを生産することのルートを採用することによって、このことに優雅に対処する。
【0101】
本発明は、その第5の態様として、本発明の第1~第4の態様の方法を実行するための工程に及び、該工程は、各々の方法ステップに対応し、かつ、各々の方法ステップを実行するための工程段階および工程操作を含む。
【図面の簡単な説明】
【0102】
図1図1は、本発明の第5の態様による工程のブロック図である。
図2図2は、実施例1のフロー図である。
図3図3は、実施例2のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0103】
説明的な実施形態の詳細な説明
本発明はここで、本発明の第5の態様による工程を示す添付の線図を参照して、いっそう詳細に説明されるであろう。
【0104】
図面を参照すると、参照数字10は概して、本発明の第1~第4の態様の方法を実行するための本発明の第5の態様による工程を示す。
【0105】
工程10は、以下の工程段階を含む:
- 酸化的/還元的消化段階12;
- 還元段階14;
- 第1の分離段階16;
- 変位結晶化段階18;
- 第2の分離段階20;
- 乾燥段階22;
- 熱分解段階24;
- 第3の分離段階26;
- 塩化第二鉄生成段階28;および、
- 金属回収段階30。
【0106】
工程10において、以下の給送、移送、取出および再循環ラインが特定される:
- 給送ライン32;
- 給送ライン34
- 給送ライン36
- 移送ライン38;
- 給送ライン40;
- 移送ライン42;
- 取出ライン44;
- 移送ライン46;
- 給送ライン48;
- 再循環ライン50;
- 移送ライン52;
- 再循環ライン54;
- 再循環ライン56;
- 移送ライン58;
- 移送ライン60;
- 移送ライン62;
- 移送ライン64;
- 移送ライン66;
- 再循環ライン70;
- 取出ライン72;
- 給送ライン74;および、
- 再循環ライン76。
【0107】
工程10を用いて本発明の第1~第4の態様の方法を実行する際、各々給送ライン34および/もしくは再循環ライン70に沿い、かつ、給送ライン36および/もしくは再循環ライン54に沿うFeClの溶液ならびにHClの溶液の一方または組み合わせとともに、金属材料または金属担持材料が給送ライン32に沿って消化段階12へと給送される。消化段階12にHClの溶液およびFeClの溶液を提供する代替的/追加的アプローチが、再循環ライン54、70および76を参照して以下で説明される。
【0108】
金属材料または金属担持材料の酸化的/還元的消化は、消化段階12において進行し、かつ、FeCl溶液を生産し、該FeCl溶液は、場合によっては残りのFeClを含有し、かつ、場合によっては1つ以上のその他の金属(M)塩化物、例えば、銅(Cu)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)およびマンガン(Mn)の塩化物を含有する。
【0109】
FeCl溶液は、移送ライン38に沿って消化段階12から還元段階14へと移送され、そこで、給送ライン40に沿って還元段階14へと給送される還元剤と接触する。
【0110】
FeCl溶液はその後、移送ライン42に沿って還元段階14から第1の分離段階16へと移送され、そこで、FeCl溶液に含有される固体がFeCl溶液から分離され、かつ、取出ライン44に沿って取り出される。
【0111】
回収されたFeCl溶液はその後、移送ライン46に沿って第1の分離段階16から変位結晶化段階18へと通される。ここで、FeCl溶液は、給送ライン48に沿って、かつ/あるいは、再循環ライン50に沿って変位結晶化段階18へと給送されるガス状のHClと接触する。
【0112】
変位結晶化段階18においてFeCl溶液をガス状のHClと接触させることは、HClの水溶液(すなわち、希釈HCl)中に、固体FeCl・xHOを生産し、かつ、FeCl溶液中にその他の金属(M)塩化物が存在する場合には固体M2+Cl・zHOを生産する(x,z≧1)。
【0113】
典型的には、xの値は4であり、したがって、固体FeCl・xHOはFeCl・4HO(すなわち、塩化第一鉄四水和物)であろう。
【0114】
固体FeCl・xHO、もし存在すればM2+Cl・zHOおよびHClの水溶液は、移送ライン52に沿って第2の分離段階へと移送され、そこで、固体FeCl・xHO、および、もし存在すれば固体M2+Clは、HClの水溶液から分離され、かつ、移送ライン58に沿って取り出される。HClの水溶液は、再循環ライン54に沿って消化段階12へと再循環し、かつ/あるいは、ライン56に沿ってFeCl生成段階28へと再循環する。固体FeCl・xHO、および、もし存在すればM2+Cl・zHOは、移送ライン58に沿って脱水段階22へと移送される。
【0115】
HClの水溶液の再循環は、例えば低濃度の結果として金属塩化物水和物に変換されないいくつかの金属塩化物の再循環を含んでもよいことが注目される。かかる金属塩化物水和物の増加は、一旦十分な高濃度が達成されれば、最終的にはかかる変換をもたらすであろう。
【0116】
脱水段階22では、固体FeCl・xHO、および、もし存在すれば固体M2+Cl・zHOは、200℃未満であるが70℃未満ではない温度、いっそう好ましくは70℃~150℃の範囲の温度での温度処理を用いて非酸化環境において脱水に供され、したがって、存在すれば、固体FeCl・yHO、および、もし存在すれば固体M2+Cl・aHOが生産される(x>y≧0; z>a≧0)。
【0117】
いっそう具体的には、固体FeCl・xHO、および、もし存在すれば固体M2+Cl・zHOは、温度処理が実行される通気孔のない容器の中へと給送され、かつ、温度処理が実行される通気孔のない容器を通り、このようにして、温度処理および結果として生じるFeCl・xHOおよびM2+Cl・zHOの脱水に起因して容器内に形成される蒸気によって容器内に周囲圧力に対して僅かな正圧が生産され、該蒸気は、例えば空気の形態で容器中に存在しているであろう酸素を変位させ、したがって塩化第一鉄の酸化を回避するのに役立つ。
【0118】
固体FeCl・yHOおよび固体M2+Cl・aHOは、移送ライン60に沿って熱分解段階24へと移送され、そこで、固体FeCl・yHOおよび固体M2+Cl・aHOは温度処理に供され、そのまま留まり、したがって分解されないが、典型的には脱水されているであろう固体M2+Cl・aHOを除外して、固体FeCl・yHOが分解されて、固体FeおよびHClガスが生産され、M2+Cl・aHO、ここで、a≧1が分解段階において存在する任意の場合、かかるM2+Cl・aHOが無水M2+Cl(すなわち、a=0)へと変換されるようになっている。温度処理は、M2+Cl・aHOよりFeCl・yHOの熱分解に好都合な条件下で実行され、かつ、実際、FeCl.yHOの分解が実行される任意の温度においてM2+Cl・aHO(z>a≧0)の熱分解が起きないようになっている。熱分解段階24における温度処理は、酸化条件下で、すなわち、例えば空気によって供給される酸素の存在下で、200℃より高いが600℃より高くない温度で実行される。
【0119】
熱分解段階24において生産されるHClガスは、回収され、かつ、再循環ライン50に沿って変位結晶化段階18へと再循環する。
【0120】
熱分解段階における酸化条件に都合が良いように、または、熱分解段階における酸化条件を効果的にするために、送風機が採用されて、熱分解段階へと空気を吹き込み、したがってまた、本明細書に記載の回収および使用のためにガス状の塩酸を熱分解段階から排出してもよい。
【0121】
ガス状のHClは濃縮されており、すなわち、希釈されておらず、したがって実質的に純粋なHClであり、さらに実質的に乾燥している(すなわち、水分がなく、したがって無水である)ことが把握されるであろう。したがって、説明された工程は、好適な水分バランスの達成を可能にし、次に、工程の上流での使用のために濃縮され実質的に乾燥したHClをガス状の形態で生産することを可能にする。このことは、希釈HCl溶液を生産するが濃度が18% v/vより高いことがほぼない、金属回収操作にHClを利用する既存の工程と対照的である。
【0122】
FeCl.xHOの脱水の不存在下では、熱分解段階24から生産されるガス状のHClは湿っており/希釈されており(すなわち、水蒸気を含有しており)、そのことは変位結晶化段階18で説明した様式で溶解したFeClを変位させるのに効果的でないであろう。本発明が従う革新的アプローチはしたがって、変位結晶化段階18における使用のためにガス状のHClを回収するための蒸発操作のあらゆる必要性をさらに回避する。
【0123】
固体Feおよび固体M2+Clは、移送ライン62に沿って第3の分離段階26へと移送され、そこで、固体M2+Clが水に溶解してM2+Cl溶液が生産され、かつ、固液分離が実行されてM2+Cl溶液および固体Feが回収される。
【0124】
2+Cl溶液は、その中に含有された金属の回収のために、移送ライン64に沿って金属回収段階30へと移送される。
【0125】
Feは、取出ライン72に沿って販売可能な生産物として取り出され、かつ/あるいは、移送ライン66に沿ってFeCl生成段階28へと移送され、そこでHClであって、給送ライン74に沿って生成段階28へと給送されるか、または、再循環ライン56に沿って生成段階28へと再循環する前記HClと接触し、かつ/あるいは、再循環ライン76に沿って消化段階12へと再循環し、そこでHClと接触してインサイチュでFeCl溶液が生産される。
【0126】
生成(再生成)されるFeClはその後、生成段階28から消化段階18へと再循環する。
【実施例
【0127】
実施例1-混合された酸化および硫化銅精鉱の選鉱
本実施例で選鉱される鉱石精鉱は、以下の表1に記載の組成を有する。
【0128】
1.鉱山から回収された100gの精鉱(表1を参照)(~75μmに摩砕された)が、還流ガラスビーカーにおいて105℃にて4時間、250gのFeCl(43 wt%)溶液、55gのHCl(33 wt%)溶液および100mlの水で消化された。
【0129】
【表1】
【0130】
2.上記精鉱の酸化的消化後、主たる可溶性塩化物であるFeCl、CuClおよびCuClが溶液中に生産された。濾過を介して、水溶画分が不溶画分から分離された。不溶画分は51g(30%、または16g、水分)からなり、かつ、洗浄および110℃での乾燥後、硫黄、ケイ酸塩、および、その他の不溶分を有することが見出された(表2を参照)。不溶画分の化学組成を参照すると、利用可能なCuの99.6%が抽出されたことになる。
【0131】
【表2】
【0132】
3.濾過後、ほぼ400mlの濾液(470g)が得られた。この濾液に、撹拌している間に19.8gの鉄粉末が添加された。30分後、結果として生じる還元反応が完了した。
【0133】
4.還元から生じる銅セメントが洗浄され、濾過され、かつ、乾かされ、かつ、27.4gのCuが回収された。この銅は、プレスされ、かつ、溶かされ、または、CuSO.5HO結晶を生産するのに用いられ得ることが注目される。
【0134】
5.ほぼ350ml(470g)である残りの濾液が、84gのHClガス(以下の分解ステップ8から生じる)をスクラブするためのスクラブ溶液として用いられた。HClガスをスクラブしている最中、溶液の温度は30~35℃に保持された。
【0135】
6.ステップ5において、228gのFeCl.4HO結晶が形成された。これらは、残りのHCl溶液(326g)から濾過された。
【0136】
7.これらの結晶が150℃で乾かされて、ほぼ166gのFeCl.HO(固体)が得られた。この乾燥した生産物が、インサイチュで~2mmまで摩砕された。
【0137】
8.摩砕された生産物がその後、400℃にて空気中で加熱された。この温度で、すべてのFeCl.HOが、Fe(固体)およびHCl(ガス状)へと酸化した。
【0138】
9.91.5gのFeが回収された。38.5gは販売され得、53gは326gのHCl溶液(ステップ6)、トップ試薬としての18gの新たなHCl(33 wt%)および108gの水ともに再循環する。これに、100gの給送材料が添加されて、次の消化ランが再開されてもよい。
【0139】
さらなる情報については、図2も参照されたい。
【0140】
実施例2-硫化ニッケル精鉱の選鉱
本実施例で選鉱される鉱石精鉱は、以下の表3に記載の組成を有する。
【0141】
【表3】
【0142】
【表4】
【0143】
1.100gの精鉱(~45μm)に、85gのFe(再循環)が添加された。この給送材料は、105℃で4時間の還流を介して、ほぼ33%、400mlのHCl(c)で消化された。
【0144】
2.消化の直後、溶液がまだ温かい間に、スラリー(不溶分を含む)が過剰なスクラップFeを含有するタンクを通してポンピングされた。このことは、過剰なHClを中和し、過剰なFeClをFeClおよびセメントCuへと還元するのに役立った。このステップでは、ほぼ6gのFeスクラップが用いられた。
【0145】
3.スラリーがその後で濾過および洗浄されて、62gの不溶分+5gのCuセメントおよび370mlの濾液が生産された。
【0146】
4.不溶分が銅セメントとともにHSOおよびHNOの希釈溶液で処理され、CuSO溶液が生産された。濾過および洗浄後、CuSOがCuSO.5HOへと結晶化され得、不溶分は格上げされたPGM’sを含有する。
【0147】
5.ほぼ100gのHCl(ガス状)をスクラブするために、370mlの濾液が用いられた。温度は15~20℃に保たれた。HCl(ガス状)をスクラブすることは、第一鉄、ニッケルおよびコバルト塩化物を溶液から変位させて、その固体水和結晶を形成した。結果として生じる溶液は、ほぼ30~36%のHClを含有していた。
【0148】
6.結晶の濾過後、結晶は新たな濾液溶液で洗浄されて、HCl(c)バックグラウンドから除去された。ほぼ95%の第一鉄および70%のNi/Co結晶が、この方式で得られた。残りはHCl溶液とともに消化に再循環し、かつ、濃度が増大するにつれていっそう多くが結晶化するであろうさらなるランにおいて蓄積するであろう。
【0149】
7.洗浄された結晶が150℃にて乾かされ、クリーンな蒸気が生産された。
【0150】
8.乾燥した結晶がその後400℃にて分解され、ステップ5へと再循環するFe、無水Ni(Co)ClおよびHCl(ガス状)が生産された。
【0151】
9.Feに冷水が加えられ、Ni(Co)Clが溶解した。濾過および洗浄後、過剰なFeが販売され得、Ni(Co)Clが溶液から選鉱され得る。
【0152】
さらなる情報については、図3も参照されたい。
図1
図2
図3
【国際調査報告】