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  • 特表-含水鉱石材料の処理 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】含水鉱石材料の処理
(51)【国際特許分類】
   C22B 3/10 20060101AFI20240403BHJP
   C22B 15/00 20060101ALI20240403BHJP
   C22B 23/00 20060101ALI20240403BHJP
   C01G 49/06 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
C22B3/10
C22B15/00
C22B23/00 102
C01G49/06 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560822
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(85)【翻訳文提出日】2023-11-21
(86)【国際出願番号】 IB2022053011
(87)【国際公開番号】W WO2022208429
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】2027874
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523372400
【氏名又は名称】アフリカン レインボー ミネラルズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】AFRICAN RAINBOW MINERALS LIMITED
【住所又は居所原語表記】ARM House, 29 Impala Road, Chislehurston, 2196 Sandton, South Africa
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170184
【弁理士】
【氏名又は名称】北脇 大
(72)【発明者】
【氏名】プレトリウス、ジェラルド
【テーマコード(参考)】
4G002
4K001
【Fターム(参考)】
4G002AA03
4G002AB02
4K001AA07
4K001AA09
4K001AA10
4K001AA19
4K001BA01
4K001BA23
4K001DB04
(57)【要約】
含水鉱石材料金属有価物を処理する方法は、含水鉱石材料をガス状の塩酸と接触させることによって塩化第一鉄(FeCl)および少なくとも1つのその他の金属の二価塩化物(M2+Cl)が生産される消化ステップを含む。結晶化ステップでは、溶液由来の固体塩化第一鉄水和物(FeCl・xHO、ここで、x>1)および少なくとも1つのその他の金属の固体二価塩化物水和物(M2+Cl・zHO、ここで、z≧1)の結晶化。脱水ステップでは、FeCl・xHOおよびM2+Cl・zHOが温度処理に供され、FeCl・yHO、ここで、x>y>0およびM2+Cl・aHO、ここで、z>a≧0が生産される。熱分解ステップでは、FeCl・yHOが分解されて、消化ステップにおいて消化試薬として用いられる無水でありガス状の塩酸(HCl)が生産される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄(Fe)を金属形態または化合物形態で有し、かつ、少なくとも1つのその他の金属(M)を金属形態または化合物形態で有する含水鉱石材料を処理して、前記含水鉱石材料から前記鉄および前記の少なくとも1つのその他の金属を互いに別々に金属形態または化合物形態で回収する方法であって、当該方法は、
消化ステップにおいて、前記含水鉱石材料をガス状の塩酸(HCl)の形態の消化試薬と接触させること、および、FeClとして存在する溶液中のあらゆる第二鉄(Fe3+)を溶液中の塩化第一鉄(FeCl)として存在する第一鉄(Fe2+)へと還元することによって、FeClおよび前記の少なくとも1つのその他の金属の二価塩化物(M2+Cl)の溶液(FeCl-M2+Cl溶液)を生産することを含み;
結晶化ステップにおいて、前記FeCl-M2+Cl溶液から固体塩化第一鉄水和物(FeCl・xHO、ここで、x>1)および前記の少なくとも1つのその他の金属の固体二価塩化物水和物(M2+Cl・zHO、ここで、z≧1)を結晶化することを含み;
脱水ステップにおいて、前記FeCl・xHOおよび前記M2+Cl・zHOを温度処理に供して、固体であり部分的に脱水された塩化第一鉄水和物(FeCl・yHO、ここで、x>y>0)ならびに前記の少なくとも1つのその他の金属の固体であり部分的に脱水された二価塩化物水和物および固体二価塩化物のうちの少なくとも1つ(M2+Cl・aHO、式中、z>a≧0)を生産することを含み;
熱分解ステップにおいて、前記FeCl・yHOおよびM2+Cl・aHOを温度処理に供して、したがって、前記FeCl・yHOを分解して、固体酸化第二鉄(Fe)、無水でありガス状の塩酸(HCl)および前記の少なくとも1つのその他の金属の固体二価塩化物(M2+Cl、すなわち、ここで、a=0)を生産することを含み;かつ、
このように生産された前記の無水でありガス状の塩酸を前記消化ステップにおいて前記消化試薬として用いることを含む、
前記方法。
【請求項2】
前記含水鉱石材料を前記消化試薬と接触させることが、前記含水鉱石材料のサイズ減少を含むか、または、前記含水鉱石材料のサイズ減少によって先行され、該サイズ減少は、前記消化試薬によって接触されるように利用可能な前記含水鉱石材料の表面積を増大させるために実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記含水鉱石材料を前記消化試薬と接触させることが、前記含水鉱石材料のサイズ減少の実行と同時に実行される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記の少なくとも1つのその他の金属が、金属形態または化合物形態の銅(Cu)、ニッケル(Ni)およびコバルト(Co)のうちの1つ以上から選択される、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記含水鉱石材料が、ラテライト鉱石材料である、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記結晶化ステップが、蒸発結晶化ステップである、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記消化ステップの後で実行される第1の分離ステップにおいて、固液分離によって前記FeCl-M2+Cl溶液から固体を分離し、したがって、実質的に固体のない前記FeCl-M2+Cl溶液を回収することを含む、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記結晶化ステップの後であって前記脱水ステップの前に実行される第2の分離ステップにおいて、前記結晶化ステップからの前記固体FeCl・xHOおよび前記固体M2+Cl・zHOを回収することを含む、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記脱水ステップが、70℃~150℃の範囲の温度で非酸化条件下で実行される、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記熱分解ステップが、200℃~600℃の範囲の温度で酸化条件下で実行される、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、含水鉱石材料を処理して、その中に含有される金属有価物を遊離させることに関する。本発明は、含水鉱石材料を処理する方法を提供し、かつ、含水鉱石材料を処理する工程に及ぶ。
【発明の概要】
【0002】
本明細書において、括弧での特徴の提供は、本明細書の実質的な内容に、したがって、本発明の特徴付けに寄与する。とりわけ、一般化学式、および、かかる一般式の記号についての数値が括弧で提供される場合、このことは、本発明の特徴付けに実質的に寄与するものとして解釈されるべきである。
【0003】
本発明によれば、含水鉱石材料であって、鉄(Fe)を金属形態または化合物形態で有し、かつ、少なくとも1つのその他の金属(M)を金属形態または化合物形態で有する前記含水鉱石材料を処理して、鉄および少なくとも1つのその他の金属を含水鉱石材料から金属形態または化合物形態で互いに別々に回収する方法が提供され、当該方法は、
消化ステップにおいて、含水鉱石材料をガス状の塩酸(HCl)の形態の消化試薬と接触させること、および、還元剤を用いて典型的にはFeClとして存在する溶液中のあらゆる第二鉄(Fe3+)を典型的には塩化第一鉄(FeCl)として存在する溶液中の第一鉄(Fe2+)へと還元することによって、FeClおよび少なくとも1つのその他の金属の二価塩化物(M2+Cl)の溶液(FeCl-M2+Cl溶液)を生産することを含み;
結晶化ステップにおいて、FeCl-M2+Cl溶液から固体塩化第一鉄水和物(FeCl・xHO、ここで、x≧1であり、いっそう好ましくはx>1であり、xは好ましくは4である)および少なくとも1つのその他の金属の固体二価塩化物水和物(M2+Cl・zHО、ここで、z≧1である)を結晶化することを含み;
脱水ステップにおいて、FeCl・xHOおよびM2+Cl・zHOを温度処理に供して、固体の部分的に脱水された塩化第一鉄水和物(FeCl・yHO、ここで、x>y>0であり、好ましくは1である)ならびに少なくとも1つのその他の金属の固体の部分的に脱水された二価塩化物水和物および固体二価塩化物(M2+Cl・aHO、式中、z>a≧0である)のうちの少なくとも1つを生産することを含み;
熱分解ステップにおいて、FeCl・yHOおよびM2+Cl・aHOを温度処理に供し、したがって、FeCl・yHOを分解して、固体酸化第二鉄(Fe)、ガス状の塩酸(HCl)および少なくとも1つのその他の金属の固体二価塩化物(M2+Cl、すなわち、ここで、a=0である)を生産することを含み;かつ、
このように生産されたガス状の塩酸を消化ステップにおける消化試薬として用いることを含む。
【0004】
本明細書において用いられる意味において、用語「含水鉱石材料」は、化学結合水(「遊離水」、すなわち、化学結合していないHOの形態の水とは反対)を、典型的には約5重量%~約70重量%の範囲で、例えば鉱石中に含有された金属水和物および/または金属水酸化物に含まれた状態で有する鉱石材料を意味する。例えば、含水鉱石材料は、具体的には例えばリモナイト、サプロナイトなどのラテライト鉱石材料のような粘土系鉱石材料であってもよい。
【0005】
有意なことに、当該方法は、含水鉱石材料が本発明の方法にしたがう処理前に乾燥または脱水操作に供されないことを条件としてもよく、かつ、好ましくは条件とする。
【0006】
含水鉱石材料は、化学結合水に加えて、幾分かの遊離水を有していてもよい。
【0007】
当該方法を実行する目的のために、含水鉱石材料は、例えば、含水鉱石材料の重量に基づいて5%まで遊離水を含んでいてもよい。
【0008】
当該方法は、したがって、当該方法において用いられる含水鉱石材料が含水鉱石材料の重量に基づいて5%までの遊離水含有量を有するように含水鉱石材料に遊離水を添加する先行ステップを含んでいてもよい。
【0009】
含水鉱石材料を消化試薬と接触させることは、含水鉱石材料のサイズ減少を含んでいてもよく、含水鉱石材料のサイズ減少が先立っていてもよい。含水鉱石材料のサイズ減少は、消化試薬によって接触されるのに利用可能である含水鉱石材料の表面積を増大させるために実行されてもよい。
【0010】
したがって、当該方法は、含水鉱石材料をサイズ減少に供すことを含み、かつ、後に続いて、かつ、別個に、含水鉱石材料を消化試薬と接触させることを含んでいてもよく、含水鉱石材料を消化試薬と接触させている間に含水鉱石材料をサイズ減少に供すことを含んでいてもよい。
【0011】
含水鉱石材料のサイズ減少は、例えばセラミック摩砕媒体を用いた摩砕を通して実行されてもよく、細断、薄切、破壊、粉砕または任意の類似のサイズ減少作用を通して実行されてもよい。
【0012】
本発明が関連するタイプの含水鉱石材料の処理において、摩砕のようなサイズ減少操作は、とりわけ、かかる鉱石材料が上述のように本発明が回避することを求める脱水に供される前にそれらに適用されてもよい限りにおいて、非典型的であることが注目される。
【0013】
溶液中の第二鉄の溶液中の第一鉄への還元は、溶液中に第二鉄が存在すれば実行されるに過ぎないであろう。ラテライト鉱石材料の場合、溶液中の第二鉄は消化ステップによって生産されるであろうことが期待される。
【0014】
結晶化ステップは、例えば、蒸発結晶化ステップとして、すなわちFeCl-M2+Cl溶液から水を蒸発させて、したがってFeCl・xHOおよびM2+Cl・zHOの結晶化を引き起こすことによって実行されてもよい。
【0015】
少なくとも1つのその他の金属は、銅(Cu)、ニッケル(Ni)およびコバルト(Co)のうちの1つ以上を金属形態または化合物形態で有していてもよい。典型的には、その他の金属は少なくともニッケルであろう。
【0016】
好ましくは、含水鉱石材料は、ラテライトニッケル鉱石資源、例えばサプロライトニッケル鉱石資源由来の鉱石であってもよい。
【0017】
含水鉱石材料の組成に依拠して、FeCl-M2+Cl溶液はしたがって、FeClに加えて、NiClを含有していてもよく、かつ、場合によってはCuClおよび/またはCoClを含有していてもよい。その他の金属もまた、含まれていてもよい。
【0018】
消化ステップは、10℃~120℃の温度で実行されてもよい。
【0019】
還元剤として、金属鉄が用いられてもよい。
【0020】
還元剤として金属鉄を用いる際、Fe3+のFe2+への還元に加えて、その他の金属が場合によっては固体金属形態へと還元されて、したがって、FeCl-M2+Cl溶液からの固液分離によってかかる金属を容易に回収可能にしてもよい。
【0021】
当該方法は、消化ステップの後に実行される第1の分離ステップにおいて、固液分離によってFeCl-M2+Cl溶液から固体を分離し、したがって、実質的に固体のないFeCl-M2+Cl溶液を回収することを含んでいてもよい。
【0022】
FeCl.xHOは、とりわけ、FeCl.4HO(塩化第一鉄四水和物)であってもよい。
【0023】
当該方法は、結晶化ステップの後であって脱水ステップの前に実行される第2の分離ステップにおいて、結晶化ステップからの固体FeCl・xHOおよび固体M2+Cl・zHOを回収することを含んでいてもよい。かかる分離は、存在すれば結晶化ステップにおける残液からであってもよい。
【0024】
脱水ステップは、固体FeCl・xHOおよび固体M2+Cl・zHOを温度処理に供して、固体FeCl・yH2Oおよび固体M2+Cl・aHOを生産することを含んでいてもよい。
【0025】
FeCl・yHOは、とりわけ、FeCl・HO(塩化第一鉄一水和物)、すなわち、y=1であってもよい。
【0026】
脱水ステップにおける温度処理は、FeCl.xHOおよびM2+Cl・zHOを70℃~200℃の範囲、いっそう好ましくは70℃~200℃未満の温度、すなわち、200℃未満であるが70℃未満ではない温度に供することを含んでいてもよい。例えば、温度は70℃~150℃の範囲の温度であってもよい。
【0027】
脱水ステップは、非酸化条件下で実行されてもよい。このことは、乾燥ステップにおける外因性の酸素の存在を回避することを含んでいてもよく、少なくとも制限することを含んでいてもよい。このことは、次に、蒸気環境において正圧下で脱水ステップを実行することを含んでいてもよく、蒸気は、FeCl・xHOおよびM2+Cl・zHOを脱水してFeCl・yHOおよびM2+Cl・aHOを生産することの結果として生産されるものであってもよい。
【0028】
熱分解ステップにおいて、脱水ステップで生産されたあらゆるM2+Cl・aHO(ここで、a≧1)が完全に脱水されて、すなわち、M2+Cl・aHO(ここで、a=0)を形成するであろう。したがって、分解ステップ由来の固体生産物は、酸化第二鉄に加えて、M2+Cl・aHO(ここで、a=0)、すなわち、脱水ステップにおいて生産されたM2+Cl・aHO(ここで、a=0)および熱分解ステップにおいて生産されたM2+Cl・aHO(ここで、a=0)を有するM2+Clのみを含んでいるであろう。
【0029】
熱分解ステップは、200℃~600℃の温度、いっそう好ましくは、200℃より高く600℃までの温度で実行されてもよい。
【0030】
熱分解ステップは、酸化条件下、すなわち、例えば空気によって供給されてもよい酸素の存在下で実行されてもよい。
【0031】
熱分解ステップにおいて生産されるガス状のHClは、実質的に乾燥しており、すなわち、水分がなくてもよい(すなわち、無水であってもよい)。
【0032】
乾燥(脱水)および熱分解ステップにおいて起こる反応は、したがって、
(i)非酸化条件下での、上記温度における乾燥(脱水)を有し、
FeCl.4HO(固体) → FeCl.HO(固体) + 3HO(ガス状)
(ii)上記の温度で、空気によって供給される酸素(1/2O)の存在下での、酸化条件下の熱分解を有する。
2FeCl.HO(固体) → Fe(固体) + 4HCl(ガス状)
【0033】
上記で言及されたように、熱分解ステップにおいて熱処理が実行される温度は、FeCl・yHOの熱分解が起こり、かつ、M2+Cl・aHOの熱分解が起こらないように、すなわち、FeCl・yHOの熱分解がM2+Cl・aHOを除外して起こり、一方でM2+Cl・aHO(ここで、a≧1)が完全に脱水されてあらゆる固体M2+Clが生産されるように選択されてもよい。
【0034】
したがって、かかる場合には、熱分解ステップは、HClガスに加えて、固体Feおよび固体M2+Clの混合物を生産するであろう。
【0035】
当該方法はその後、第3の分離ステップにおいて、M2+Clを水に溶解させること、および、固液分離を実行して結果として生じる溶液からFeを回収すること、したがって、少なくとも1つのその他の金属および鉄を互いに別々に回収することを含んでいてもよい。
【0036】
結果として生じるM2+Cl溶液からは、かかるその他の金属がその後、従来の方法、例えば湿式精錬法によって回収されてもよい。
【0037】
当該方法はしたがって、また、販売可能なFeおよび先の方法ステップへの再循環に適した生産物を生産する。この点で最も注目すべきことに、温度処理によるFeCl・yHOの熱分解は、無水HClガスを放出することが注目される。当該方法はしたがって、このHClガスを消化試薬として消化ステップへと再循環させること、および、このHClガスを消化試薬として消化ステップで用いることを含む。
【0038】
FeCl.xHOの生産および後に続くそのFeCl.yHOへの脱水が、後に続く部分的に脱水されたFeCl.yHOの分解を通して、把握されるように濃縮しており、希釈されておらず、かつ無水のHClであるガス状の形態のHClの生産を可能にすることは、記載された発明の特別な利点および革新的な特徴と見做される。このことは、濃縮HClの生産に好ましくなく、かつ、所望の濃度の希釈HClの生産にさえ好ましくない水分バランスに起因してHClの希釈溶液を不可避的に形成する、HClを利用する従来の方法と著しく対照的である。例えば、室温におけるHClの最高濃度は約33% v/vであり、HClを利用する既存の方法は、18% v/vより高い希釈HClの再生成をめったに達成しない。本発明は、FeCl.xHOとして鉄を析出し、それを部分的に脱水してFeCl.yHOを生産し、かつ、それを分解して次に先の方法ステップでの使用のために希釈されていないガス状のHClを生産するというルートを採用することによって、このことに優雅に対処する。
【0039】
本発明は、本発明の方法の方法を実行するための工程に及び、該工程は、各方法ステップに対応し、かつ、各方法ステップを実行するための工程段階および工程操作を含む。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1は、本発明による工程のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
説明的な実施形態の詳細な説明
本発明はここで、本発明による工程を示す添付の線図を参照していっそう詳細に説明されるであろう。
【0042】
図面を参照すると、参照数字10は概して、本発明の方法を実行するための本発明による工程を示す。
【0043】
工程10は以下の工程段階を含み、該工程段階は:
- 酸化的/還元的消化段階12;
- 還元段階14;
- 第1の分離段階16;
- 結晶化段階18;
- 第2の分離段階20;
- 乾燥段階22;
- 熱分解段階24;
- 第3の分離段階26;
- 金属回収段階30である。
【0044】
工程10では、以下の給送、移送、取出および再循環ラインが特定される:
- 給送ライン32;
- 移送ライン38;
- 給送ライン40;
- 移送ライン42;
- 取出ライン44;
- 移送ライン46;
- 加熱ライン48;
- 再循環ライン50;
- 移送ライン52;
- 再循環ライン56;
- 移送ライン58;
- 移送ライン60;
- 移送ライン62;
- 移送ライン64;
- 移送ライン66;
- 再循環ライン70;
- 取出ライン72;および、
- 給送ライン74。
【0045】
工程10を用いて本発明の方法を実行する際、含水鉱石材料が給送ライン32に沿って消化段階へと給送され、かつ、消化段階18においてミルにおける摩砕に供され、かつ、そうする際に水の添加によって水分含有量が5% w/wの遊離水へと格上げされる。含水鉱石材料はその後、摩砕に供される間に、再循環ライン50に沿ってミルにおいて無水であるガス状の塩酸と接触し、かかるガス状の塩酸は以下で説明されるように生産される。
【0046】
含水鉱石材料の消化は消化段階12において進行し、FeCl-M2+Cl溶液を生産し、MはNiを有し、かつ、場合によってはCoおよび/Cuのうちの1つ以上を有する。含水鉱石材料がラテライト鉱石材料であれば、消化段階12はまず典型的には、FeClとして第二鉄を生産し、そのFeClへの還元を必要としてもよい。
【0047】
消化段階12によって生産される溶液はしたがって、移送ライン38に沿って消化段階12から還元段階14へと移送され、そこで給送ライン40に沿って還元段階14へと給送される、好ましくは元素鉄または第二鉄(例えば、Fe)の源の形態である還元剤と接触して、FeCl-M2+Cl溶液が生産される。
【0048】
FeCl-M2+Cl溶液はその後、移送ライン42に沿って還元段階14から第1の分離段階16へと移送され、そこでFeCl-M2+Cl溶液に含有される固体がFeCl-M2+Cl溶液から分離され、かつ、取出ライン44に沿って取り出される。
【0049】
回収されたFeCl-M2+Cl溶液はその後、移送ライン46に沿って第1の分離段階16から結晶化段階18へと通される。ここで、加熱ライン48によって表されるような熱の追加による蒸発結晶化を通してFeCl-M2+Cl溶液から固体FeCl・xHO(x≧1、いっそう好ましくはx>1)および固体M2+Cl・zHO(z≧1)が結晶化される。
【0050】
典型的には、xの値は4であり、したがって、固体FeCl・xHOはFeCl・4HO(すなわち、塩化第一鉄四水和物)であろう。
【0051】
水性懸濁液中の固体FeCl・xHOおよび固体M2+Cl・zHOはその後、移送ライン52に沿って第2の分離段階20へと移送され、そこで固体FeCl・xHOおよび固体M2+Cl・zHOが残液から回収され、かつ、移送ライン58に沿って取り出される。固体FeCl・xHOおよび固体M2+Cl・zHOはその後、移送ライン58に沿って脱水段階22へと移送される。もちろん、残液であって、そこから固体FeCl・xHOおよび固体M2+Cl・zHOを回収すべき前記残液が存在しなければ、そのときには第2の分離段階20は省略されてもよい。
【0052】
脱水段階22では、固体FeCl・xHOおよび固体M2+Cl・zHOは、200℃未満であるが70℃未満ではない温度、いっそう好ましくは70℃~150℃の範囲の温度での温度処理を用いて、非酸化環境において脱水に供され、したがって固体FeCl・yHOおよび固体M2+Cl・aHOが生産される(x>y≧0;z>a≧0、ここで、yは好ましくは1である)。
【0053】
いっそう具体的には、固体FeCl・xHOおよび固体M2+Cl・zHOは、温度処理が実行される通気口のない容器の中へと供給され、かつ、変換されるとすぐにそれを通り、したがって容器内に正圧を生産し、該正圧は少なくとも温度処理および結果として生じるFeCl・xHOの脱水に少なくとも起因して容器内に形成される蒸気によって生じ、該蒸気は、例えば空気の形態で容器中に存在してもよい酸素を変位させ、したがって塩化第一鉄の酸化を回避するのに役立つ。
【0054】
固体FeCl・yHOおよび固体M2+Cl・aHOは、移送ライン60に沿って熱分解段階24へと移送され、そこで固体FeCl・yHOおよび固体M2+Cl・aHOは温度処理に供されて、固体FeCl・yHOが分解され、分解されないが未だにM2+Cl(すなわち、a=0)へと完全に脱水されていない限り完全に脱水されるM2+Cl aHOを除外して、固体Feおよび無水HClガスが生産される。温度処理はしたがって、M2+Cl・aHOよりFeCl・yHOの熱分解に好都合な条件下で実行される。熱分解段階24における温度処理は、酸化条件下で、すなわち、例えば空気によって供給される酸素の存在下で200℃より高いが600℃より高くない温度で実行される。
【0055】
熱分解段階24において生産されたHClガスは回収され、かつ、消化試薬として用いられるべく再循環ライン50に沿って消化段階18へと再循環する。
【0056】
したがって、説明された工程は、好ましい水分バランスの達成を可能にし、次に工程の上流で用いるために濃縮された実質的に乾燥した(無水である)HClをガス状の形態で生産することを可能にする。このことは、18% v/vより高い濃度であることは稀である希釈HCl溶液を生産する金属回収操作においてHClを利用する既存の工程と対照的である。
【0057】
脱水の不存在下では、熱分解段階24から生産されるガス状のHClは、湿っており/希釈されており(すなわち、水蒸気を含有し)、そのことは上記の様式で消化段階12において利用されるのに効果的でないであろう。
【0058】
固体Feおよび固体M2+Cl・aHOは、移送ライン62に沿って第3の分離段階26へと移送され、そこで固体M2+Cl(すなわち、a=0)が水に溶解してM2+Cl溶液が生産され、かつ、固液分離が実行されてM2+Cl溶液および固体Feが回収される。
【0059】
2+Cl溶液は、その中に含有される金属の回収のために移送ライン64に沿って金属回収段階30へと移送される。
【0060】
Feは、取出ライン72に沿って、販売可能な生産物として取り出される。
【0061】
議論
本出願人は驚くべきことに、説明された量で含水鉱石材料に含まれる化学結合水が、場合によっては含水鉱石材料を濡らすために少量の遊離水の追加を伴って、説明されたように後で再生成されてもよいガス状の塩酸を用いてかかる鉱石材料の加工を促進し、そのことによって、含水鉱石材料から鉄およびその他の金属有価物を別々に回収するために利用されることを見い出した。
図1
【国際調査報告】