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  • 特表-肉類似食品及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】肉類似食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23J 3/00 20060101AFI20240403BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20240403BHJP
   C12P 1/04 20060101ALI20240403BHJP
   C12P 21/00 20060101ALI20240403BHJP
   A23L 13/00 20160101ALI20240403BHJP
【FI】
A23J3/00 502
C12N1/20 A
C12P1/04 Z
C12P21/00 A
A23L13/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560848
(86)(22)【出願日】2022-04-07
(85)【翻訳文提出日】2023-11-13
(86)【国際出願番号】 FI2022050226
(87)【国際公開番号】W WO2022229501
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】20215483
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522120255
【氏名又は名称】ソーラー フーズ オサケユイチア
(74)【代理人】
【識別番号】100145849
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 眞樹子
(72)【発明者】
【氏名】アンナ ハカミエス
【テーマコード(参考)】
4B042
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B042AC09
4B042AD36
4B042AK01
4B042AK07
4B042AK10
4B042AP02
4B042AP06
4B042AP14
4B042AP21
4B042AP27
4B064AG01
4B064CA02
4B064CA21
4B064CC30
4B064CD01
4B064CD02
4B064CD19
4B064CE20
4B064DA10
4B065AA01X
4B065AC20
4B065BC01
4B065BC03
4B065BD08
4B065BD14
4B065BD22
4B065BD38
4B065BD44
4B065CA24
4B065CA41
(57)【要約】
肉類似食品の製造方法の開示である。この方法は、タンパク質混合物を得るために、微生物バイオマスタンパク質スラリーをトランスグルタミナーゼ酵素を含む調製物と混合することと、前記タンパク質混合物を、第1の時間、混合しながら28℃から40℃までの範囲の温度でインキュベートすることと、MgCl水溶液又はCaCl水溶液から選択される少なくとも1つを前記タンパク質混合物に添加することと、前記タンパク質混合物を28℃から40℃までの範囲の温度で第2の時間、インキュベートすることと、前記タンパク質混合物を40℃から60℃までの範囲の温度の水浴中で第3の時間、インキュベートすることと、前記タンパク質混合物を60℃から85℃までの範囲の温度で加熱することと、及び、密閉された型の中で前記タンパク質混合物を固めることと、を含む。
【選択図】
図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肉類似食品を製造する方法であって、該方法は、
- タンパク質混合物を得るために、微生物バイオマスタンパク質スラリーをトランスグルタミナーゼ酵素を含む調製物と混合することと、
- 前記タンパク質混合物を、第1の時間、混合しながら28℃から40℃までの範囲の温度でインキュベートすることと、
- MgCl水溶液又はCaCl水溶液から選択される少なくとも1つを前記タンパク質混合物に添加することと、
- 前記タンパク質混合物を28℃から40℃までの範囲の温度で第2の時間、インキュベートすることと、
- 前記タンパク質混合物を40℃から60℃までの範囲の温度の水浴中で第3の時間、インキュベートすることと、
- 前記タンパク質混合物を60℃から85℃までの範囲の温度で加熱することと、及び、
- 密閉された型の中で前記タンパク質混合物を固めることと、を含む方法。
【請求項2】
前記調製物がマルトデキストリンを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
5℃から7℃までの範囲の温度で前記タンパク質混合物をプレスすることを更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記微生物バイオマスタンパク質スラリーのpHが5~8の範囲に調整される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
第2の時間でインキュベートする前の前記タンパク質混合物の総重量は、
- 3%から5%までのトランスグルタミナーゼを含む調製物、及び、
- 1.5%から2.5%までの水性MgCl又は水性CaClから選択される少なくとも1つ、を含み、
ここで水性MgCl又は水性CaClのモル濃度は2.5M~3.5Mの範囲内である、請求項1~4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記タンパク質混合物が、高速ミキサー中で10000rpmから20000rpmまでの範囲の速度で少なくとも1分間混合される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記微生物バイオマスタンパク質スラリーが、
- 5%から25%までの細菌バイオマス、及び、
- 75%から95%までの水分を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記微生物バイオマスタンパク質スラリーが20%~25%の細菌バイオマスを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記微生物バイオマスタンパク質スラリーが、VTT-E-193585として寄託された単離細菌株又はその誘導体を含む細菌バイオマスを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記微生物バイオマスタンパク質スラリーが上流処理及び下流処理を介して製造され、前記下流処理は、
- バイオマスを得るためにガス発酵により細菌細胞を培養することと、
- 前記バイオマスを55℃から75℃までの範囲の温度で15分間から40分間までの間熱処理してインキュベートすることと、
- バイオマスの液相と固相を分離し、液相を除去することによってバイオマスを濃縮することと、及び、
- 微生物バイオマスタンパク質スラリーを得るために、前記バイオマスの細菌細胞を均質化することと、を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記均質化が、少なくとも1回の実行において800バールから2000バールまでの範囲の圧力で行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記均質化が、700バールから1000バールまでの範囲の圧力で行われる、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
ガス発酵により培養するための供給物は、CO、CH、H、O、NHから選択される少なくとも1つ、少なくとも1つのミネラルを含む請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~12のいずれかに記載の方法により得られた肉類似食品であって、木綿豆腐様の構造を有する肉類似食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に肉類似物に関する。より具体的には、豆腐のような構造を有する肉類似食品の製造方法に関する。更に、本開示は、前述の方法によって得られる肉類似食品にも関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質、炭水化物、脂肪、ビタミン、ミネラルが適切な割合で含まれていることは、人間(ヒト)のバランスの取れた食事の重要な構成要素を形成する。その結果、ヒトは植物から動物に至るまで、様々な食料源に依存している。動物性食品は前述の栄養素のほとんどを提供するが、例えば、ベジタリアン、特にヴィーガンを自認する消費者や高コレステロールに苦しむ患者など、すべての人間が摂取するのには適していない。
【0003】
現在、高タンパク質の植物ベースの食事には、豆腐、チアシード、麻の実、キヌア、レンズ豆などが含まれている。特に、豆腐100gmには約8グラムのタンパク質が含まれており、植物ベースの高タンパク質源として最も人気がある。また、豆腐は大豆から容易に作れ、家庭でも簡単に作ることができる。すなわち、酵素トランスグルタミナーゼを大豆に添加し、混合物をインキュベートして、大豆中のタンパク質を結合することによって構造を形成する。
豆腐のような構造を有する高タンパク質の肉類似食品を調製する従来の方法には、植物ベースの食品源を押出プロセスにかけることが含まれる。しかし、植物ベースの肉類似物は、標準的な豆腐のような構造を十分に模倣することはできていない。更に、植物ベースの肉類似物は典型的には豆の異臭(bean-off flavour)を有しており、スパイスの風味をつけることが難しい。
【0004】
更に、植物ベースの肉類似物の製造は非常に労働集約的であり、作物の栽培及び/又は植物ベースの食料源の開発のために広大な土地、水資源、鉱物を必要とする。また、植物ベースの肉類似物には、鉄やビタミンなどの他の栄養素が不足している。
【0005】
最近の食品技術の進歩により、酵母、藻類、細菌などの微生物を使用した肉類似物の製造が拡大している。これに関して、細胞培養とその後の押出プロセス、3D印刷技術などの技術が、微生物ベースの肉類似物の生産に使用されてきた。しかし、植物ベースの肉類似物と同様、微生物ベースの肉類似物には豆腐のような構造やその他の栄養学的特徴がない。
【0006】
従って、前述の議論を考慮すると、豆腐様の構造を有する肉類似食品を製造する従来の技術に関連する欠点を克服する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、肉類似食品の製造方法を提供することを目的とする。本開示はまた、前記の方法から得られる肉類似食品を提供することを目的とする。本開示は、木綿豆腐様の構造を模倣した肉類似食品を製造するという既存の問題に対する解決策を提供することを目指す。本開示の目的は、従来技術で遭遇する問題を少なくとも部分的に克服する解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、本開示の実施形態は、肉類似食品を製造する方法を提供し、この方法は、
- タンパク質混合物を得るために、微生物バイオマスタンパク質スラリーをトランスグルタミナーゼ酵素を含む調製物と混合することと、
- タンパク質混合物を、第1の時間、混合しながら28℃から40℃までの範囲の温度でインキュベートすることと、
- MgCl水溶液又はCaCl水溶液から選択される少なくとも1つをタンパク質混合物に添加することと、
- タンパク質混合物を28℃から40℃までの範囲の温度で第2の時間、インキュベートすることと、
- タンパク質混合物を40℃から60℃までの範囲の温度の水浴中で第3の時間インキュベートすることと、
- タンパク質混合物を60℃から85℃までの範囲の温度で加熱することと、及び、
- 密閉された型の中でタンパク質混合物を固めることと、を含む方法。
【0009】
一態様では、本開示の一実施形態は、上記方法によって得られた木綿豆腐様(firm tofu-like)の構造を有する肉類似食品を提供する。
【0010】
本開示の実施形態は、従来技術における上記問題を実質的に除去するか、又は少なくとも部分的に対処し、木綿豆腐様構造を模倣し、通常豆腐には含まれていない鉄及びビタミンB12(シアノコバラミン)を含む肉類似食品を製造する効率的な方法を提供する。有益なことに、鉄とビタミンB12は酸素の分配と神経系にとって重要なものである。
【0011】
本開示の追加の態様、利点、特徴及び目的は、添付の特許請求の範囲と併せて解釈される図面及び例示的な実施形態の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0012】
本開示の特徴は、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲から逸脱することなく、様々な組み合わせで組み合わせることができることが理解されるであろう。
【0013】
(図面の概要)
上記の概要、並びに例示的な実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読めばよりよく理解される。本開示を例示する目的で、本開示の例示的な構成が図面に示されている。しかしながら、本開示は、本明細書に開示される特定の方法及び手段に限定されない。更に、当業者は、図面が縮尺通りではないことを理解しうる。可能な限り、同様の要素は同じ番号で示されている。
【0014】
以下の図を参照して、ここでは、本開示の実施形態を単なる例として説明する。
【0015】
添付図面において、下線が引かれた数字は、下線が引かれた数字が上に位置する項目、又は、下線が引かれた数字が隣接する項目を表すために用いられる。下線が引かれていない番号は、下線が引かれていない番号を項目に連結する線によって識別される項目に関する。番号に下線が引かれておらず、関連する矢印を伴う場合、下線が引かれていない番号は、矢印が指し示している一般的な項目を識別するために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本開示の一実施形態による、肉類似食品を製造する方法のステップを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の詳細な説明は、本開示の実施形態及びそれらを行うことができる方法を示す。本開示を実施するいくつかの態様が開示されているが、当業者であれば、本開示を実施又は実行するための他の実施形態も可能であることを認識しうる。
【0018】
一態様では、本開示の実施形態は、肉類似食品を製造する方法を提供し、この方法は、
- タンパク質混合物を得るために、微生物バイオマスタンパク質スラリーをトランスグルタミナーゼ酵素を含む調製物と混合することと、
- タンパク質混合物を、第1の時間、混合しながら28℃から40℃までの範囲の温度でインキュベートすることと、
- MgCl水溶液又はCaCl水溶液から選択される少なくとも1つをタンパク質混合物に添加することと、
- タンパク質混合物を28℃から40℃までの範囲の温度で第2の時間、インキュベートすることと、
- タンパク質混合物を40℃から60℃までの範囲の温度の水浴中で第3の時間インキュベートすることと、
- タンパク質混合物を60℃から85℃までの範囲の温度で加熱することと、及び、
- 密閉された型の中でタンパク質混合物を固めることと、を含む方法である。
【0019】
別の態様では、本開示の一実施形態は、前記の方法によって得られた木綿豆腐様の構造を有する肉類似食品を提供する。
【0020】
本開示は、前記の肉類似食品の製造方法を提供する。本開示の方法は、微生物バイオマスに由来する微生物バイオマスタンパク質スラリーを利用し、トランスグルタミナーゼ酵素調製物と混合し、所望の肉類似食品を製造するために得られたタンパク質混合物をインキュベート及び固めることを含む。
得られた肉類似食品は木綿豆腐様構造を模倣し、酸素の分配と神経系に重要な鉄分とビタミンB12(シアノコバラミン)(豆腐には通常含まれない)を含み、豆の異臭がない。更に、開示された方法は労働集約的ではない。
【0021】
ここで「木綿豆腐様構造(firm tofu-like structure)」とは、豆腐を持ち上げたときに崩れず、切りやすい構造のことをいう。木綿豆腐様構造は、フライパンでの調理や、炒めたり、油で揚げたり、シチューに入れたり、詰め物やスプレッドの材料として使用できる。木綿豆腐様はその構造がフェタチーズに似ている。
【0022】
前記の方法から得られる肉類似食品は、動物を屠殺して得られる標準的な動物由来の肉に代わる、より持続可能で、より健康的で、動物実験のない代替品であることが理解されうる。更に、肉類似食品は、ベジタリアン又はヴィーガンと認識される消費者、及び肉の消費量を減らそうとする一部の非ベジタリアンなどの幅広い層の消費者にアピールできる。更に、肉類似食品の製造は、環境中に大量の二酸化炭素を放出する動物由来の肉の製造と比較して、地球温暖化の影響にほとんど寄与しない。
【0023】
本開示全体を通じて、本明細書で使用される「肉類似食品(meat analogue food product)」という用語は、動物を含まない製品から作られた肉様の製品を指す。典型的には、肉類似食品は、例えば植物又は微生物に由来する。一般に、肉類似食品は、典型的には、特定の良好な性質(例えば、食感、外観、風味など)又は化学的特性(例えば、タンパク質含有量、栄養カラムなど)により、特定の種類の動物由来の肉に似ている完全な食品又は食品の成分として使用され得る。
具体的には、開示された肉類似食品は木綿豆腐様の構造を模倣している。豆腐は大豆から作られる代表的なタンパク質が豊富な食品である。
豆腐は、大豆にトランスグルタミナーゼ酵素を加えてインキュベートすることで、家庭で簡単に作ることができる。特に、トランスグルタミナーゼ酵素は大豆タンパク質を結合して、豆腐様構造と呼ばれる構造を形成する。豆腐には通常、酸素の分配と神経系に重要な鉄とビタミンB12は含まれていない。また、豆腐には豆臭さがあり、味付けが難しい。
しかしながら、有利なことに、本開示の肉類似食品は、鉄及びビタミンB12が豊富であり、豆の異臭がない。
【0024】
この方法は、タンパク質混合物を得るために、微生物バイオマスタンパク質スラリーをトランスグルタミナーゼ酵素を含む調製物と混合することを含む。
本開示を通じて、本書で使用される「微生物バイオマスタンパク質スラリー(microbial biomass protein slurry)」という用語は、微生物バイオマスに由来する栄養補助食品を指し、一般に単細胞タンパク質(又はSCP)と呼ばれる。微生物バイオマスタンパク質スラリーは、通常、液相(すなわち、フィード培地)と混合された食用細菌細胞(すなわち、乾燥バイオマス)からなる固相を含むことが理解されうる。任意に、微生物バイオマスタンパク質スラリーの乾燥バイオマスには、炭水化物、脂肪、ミネラル、繊維などが含まれてもよい。
特に、細菌細胞はバイオリアクター内で、又はその他の従来のプロセスを通じて増殖させることができる。通常、微生物バイオマスタンパク質スラリーは、炭水化物、脂肪、その他の化合物をまったく含まないか、又は無視できる程度しか含まない濃縮されたタンパク質源を提供する。しかしながら、タンパク質を含む微生物バイオマスタンパク質スラリーは、その全体的な栄養カラムを強化するためにビタミンやミネラル、例えばカルシウム、鉄などの化合物で強化することができる。
【0025】
本書で使用される「トランスグルタミナーゼ酵素を含む調製物(preparation comprising transglutaminase enzyme)」という語句は、トランスグルタミナーゼ酵素を含む組成物を指す。トランスグルタミナーゼ酵素は、タンパク質を含む食品のタンパク質の凝固に不可欠である。これに関して、トランスグルタミナーゼ酵素は、グルタミン残基のγ-カルボキシアミド基からリジン残基のε-アミノ基へのアシル転移反応を触媒し、(例えば、微生物バイオマスタンパク質スラリーの)ペプチド鎖内のグルタミンとリジンアミノ酸間の共有結合を介してタンパク質を架橋し、その後のアンモニアを放出する。
トランスグルタミナーゼ酵素は、典型的には、植物、動物及び微生物(例えば、Streptomyces mobaraensis、Streptomyces cinnamoneum、Bacillus subtilisなどに属する細菌)に由来し得る。
更に、本開示は、微生物のトランスグルタミナーゼ酵素、又は植物由来のトランスグルタミナーゼ酵素に適用する。有利なことに、微生物のトランスグルタミナーゼ酵素は安価であり、製造及び精製が容易である。
特に、トランスグルタミナーゼ酵素は市販されており、例えば味の素アクティバ(登録商標)WMトランスグルタミナーゼ調製物である。トランスグルタミナーゼ酵素は、良好な親水性、高い触媒活性、及び強い熱安定性を特徴とすることが理解されうる。
しかし、トランスグルタミナーゼ酵素は、3%未満の濃度で添加するとタンパク質の凝固を引き起こし、3%を超える濃度ではタンパク質のゼラチン化を引き起こす。
有益なことに、トランスグルタミナーゼを含む調製物を添加すると、トランスグルタミナーゼがタンパク質を結合するため、構造を形成することができ、トランスグルタミナーゼがなければ木綿豆腐様の構造は形成されない。
【0026】
任意に、調製物はマルトデキストリンを更に含む。マルトデキストリンは典型的な植物ベースの食品添加物である。マルトデキストリンは主に増粘剤及び保存料として使用される。また、トランスグルタミナーゼ酵素とマルトデキストリンは同一調整剤中に含まれる。マルトデキストリンは、肉類似食品の保存期間を長くするために使用される。
【0027】
任意に、製剤はカゼインナトリウムを含む。カゼインナトリウムは、食品の乳化剤、増粘剤、又は安定剤として一般的に使用される。更に、カゼインナトリウムは食品の栄養、味、匂いなどの特性を改善する。ただし、カゼインナトリウムは牛乳に由来するため、乳糖不耐症やヴィーガンの消費者による摂取には適さない可能性がある。
【0028】
この方法は、タンパク質混合物を、28℃から40℃までの範囲の温度で混合しながら最初の時間インキュベートすることを含む。インキュベーション温度及び時間は、微生物バイオマスタンパク質スラリー中のタンパク質の部分架橋(ゲル化ではない)を達成するために反応が進行することを可能にするようなものであることが理解されうる。
典型的に、実験室スケールでは、微生物バイオマスタンパク質スラリーとトランスグルタミナーゼ酵素を含む調製物(以下、「トランスグルタミナーゼ調製物」と呼ぶ)を、例えば室温でマグネティックスターラーを用いてガラス中で混合することができる。
微生物バイオマスタンパク質スラリーとトランスグルタミナーゼ調製物を混合すると、トランスグルタミナーゼ酵素が微生物バイオマスタンパク質スラリーと適切に混合し、その中の水と相互作用することが保証される。
温度は通常、28、30、32、34、36又は38℃から最大30、32、34、36、38又は40℃の範囲であり得る。
特に、トランスグルタミナーゼ酵素は前記温度範囲内で活性である。
更に、実験室規模では、混合しながらインキュベートする第1の時間は、20分から40分までであり得る。第1の時間は、例えば、20、25、30又は35分から、25、30、35又は40分の範囲であってもよい。
最適温度と第1の時間は間接的に比例し、インキュベーション温度がより低い温度に設定される場合には、第1の時間を延長する必要があることが理解されうる。
適切なスケールアップを実行できることが理解されうる。更に、適切な架橋と木綿豆腐様構造の形成を可能にするために、インキュベーションはいくつかの段階で行われる。
【0029】
任意に、タンパク質混合物は、ウルトラタラックスホモジナイザーなどの高速ミキサー中で、10000rpmから20000rpmまでの範囲の速度で少なくとも1分間混合される。タンパク質混合物を混合することにより、その内容物を均一に混合することができる。更に、混合により、タンパク質混合物中でマルトデキストリンが塊を形成するのを防ぐ。
従って、少なくとも1分間高速で混合することにより、肉類類似食品の食感を均一にすることができる。混合速度は通常、10000、12000、14000、16000又は18000rpmから最大12000、14000、16000、18000又は20000rpmの範囲である。
【0030】
更に、この方法は、MgCl水溶液又はCaCl水溶液から選択される少なくとも1つをタンパク質混合物に添加することを含む。MgCl水溶液又はCaCl水溶液は凝固剤として機能する。水性MgCl又は水性CaClは、トランスグルタミナーゼ酵素の活性を増強する。当然のことながら、水性MgCl及び水性CaClは両方とも食品グレードのものであり、タンパク質混合物に添加すると同じ結果が得られる。更に、MgCl水溶液又はCaCl水溶液の両方を併用することはできるが、同時には使用できない。
特に、カルシウムイオンはトランスグルタミナーゼ酵素の活性化と活性において重要な役割を果たす。任意に、硫酸カルシウム(CaSO)や酸(グルコノ-δ-ラクトン(GDL))などの他の凝固剤を使用することもできる。
【0031】
任意に、最終製品の風味を高めるために、タンパク質混合物を液体(水など)、NaCl、スパイス及び保存料と混合する。タンパク質混合物、液体、NaCl、及びその他の添加剤はすべて適正製造基準に基づいて使用されることが理解されうる。
【0032】
更に、タンパク質混合物は第2の時間インキュベートされる。第2のインキュベーション時間は、典型的には、実験室スケールでは室温で5分から12分までの範囲であり、好ましくは10分である。第2の時間は、例えば、5、6、7、8、9分から8、9、10、11、12分までであってもよい。更に、タンパク質混合物を第2の時間インキュベートする場合、インキュベーション時間中にタンパク質混合物を混合する必要はない。インキュベーション時間及び温度は産業スケールでは異なるため、タンパク質混合物の異なる成分の量に応じて変化し得ることが理解されうる。
【0033】
更に、タンパク質混合物を40℃から60℃までの範囲の温度の水浴中で第3の時間インキュベートする。水浴中での第3の時間のインキュベーションは、タンパク質混合物とヒーターとの直接接触を避けながら、トランスグルタミナーゼ酵素の活性を維持することが理解されうる。第2の時間のインキュベーションと同様に、第3の時間のインキュベーション中にタンパク質混合物の混合は必要ない。
ただし、産業スケールでは、タンパク質混合物の沈殿を避けるために、すべてのインキュベーションステップがヒーター付きの混合タンク内で実行されることがある。
第3の時間は15分から最大40分の範囲であってもよい。第3の時間は、例えば、15、20、25、30分から30、35、40、45分までであってもよい。第3のインキュベーション時間の温度は、通常40、45、50、又は55℃から45、50、55、又は60℃の範囲である。トランスグルタミナーゼ酵素は60℃まで活性を示す。
トランスグルタミナーゼ酵素の活性を維持するには、ゆっくりとした加熱又は温度上昇が必要な場合があることが理解されうる。更に、有益なことに、ゆっくり加熱するとタンパク質の三次元構造が部分的に変性し、トランスグルタミナーゼ酵素がタンパク質混合物中のタンパク質を架橋するのに役立つ。
【0034】
更に、タンパク質混合物は60℃から85℃までの範囲の温度で加熱される。ウォーターバスの温度は、トランスグルタミナーゼ酵素の早期の不活性化を防ぐためにゆっくりと上昇することが理解されうる。タンパク質混合物の最終加熱により、トランスグルタミナーゼ酵素が不活性化され、タンパク質混合物に木綿豆腐様の構造が与えられる。加熱温度は通常、60、65、70、75又は80℃から65、70、75、80又は85℃までの範囲である。
更に、加熱は、例えば15分から最大45分の範囲のより長い時間行うことができる。更に、木綿豆腐様構造をより良好にするためには、タンパク質混合物からより多くの水を除去する必要がある。
【0035】
更に、タンパク質混合物を密閉型にセットする。本書で使用される「密閉型」という用語は、タンパク質混合物などの一定量の流体(半固体)を所定の期間保持できる、所定の断面のキャビティを備えた構造を指す。圧力を加えると、木綿豆腐様構造などの堅固な構造と、空洞の断面に対応する規定の形状とを有する硬化製品(すなわち、肉類似食品)が得られる。
この点に関して、密閉型は、流体(半固体)を押す(すなわち、圧力をかける)ための重い重量を有しており、流体(半固体)に所望の固い構造を与える。
任意に、重量物はタンパク質混合物と直接接触するか、又は密閉型を覆うプレートの上に置かれる。有利なことに、タンパク質混合物を密閉型にセットすると、時間効率よく高品質の最終製品が得られる。
【0036】
必要に応じて、押出プロセスを使用してタンパク質混合物を硬化させることもできる。押出プロセスは機械的に衝撃を与え、圧力と温度を上昇させ、その結果タンパク質混合物のセル構造を破壊することが理解されうる。
【0037】
任意に、この方法は、タンパク質混合物を5℃から7℃までの範囲の温度でプレスすることを更に含む。タンパク質混合物をプレスすることにより、タンパク質混合物から余分な水を除去することができる。
任意に、プレスは実験室スケールでは8~12時間の範囲の時間実施される。プレスは8、9、10時間から9、10、11、12時間まで実施することができる。
必要に応じて、産業スケールでは、油圧プレスを使用してプレスを実行することもできる。プレスの温度は通常、5、5.5、6又は6.5℃から5.5、6、6.5又は7℃までの範囲である。
有利なことに、低温は最終製品、すなわち肉類似食品の保存寿命を長くする。
【0038】
任意に、微生物バイオマスタンパク質スラリーのpHは、5から8までの範囲に調整される。微生物バイオマスタンパク質スラリーのpHは、5、5.5、6、6.5、7又は7.5から5.5、6、6.5、7、7.5又は8までの範囲、好ましくは7.5であるべきである。
これに関して、従来のpH調整剤(酸又は塩基)を微生物バイオマスタンパク質スラリーに添加して、そのpHを調整することができる。
微生物バイオマスタンパク質スラリーの酸性pHは、タンパク質混合物が木綿豆腐様の構造を形成するのを助けることが理解されうる。更に、微生物バイオマスタンパク質スラリーの酸性pHによりタンパク質の沈殿が可能になり、木綿豆腐様の構造の形成が促進される。
【0039】
任意に、タンパク質混合物を第2の時間インキュベートする前のタンパク質混合物の総重量は、以下を含む。
- 3%から5%までのトランスグルタミナーゼを含む調製物、及び
- 1.5%から2.5%までの水性MgCl又は水性CaClから選択される少なくとも1つを含み、ここで水性MgCl又は水性CaClのモル濃度は2.5M~3.5Mの範囲内である。
【0040】
これに関して、タンパク質混合物は、タンパク質混合物の総重量の3、3.5、4又は4.5重量%から3.5、4、4.5又は5重量%までの範囲のトランスグルタミナーゼ酵素を含む。更に、タンパク質混合物は、タンパク質混合物の総重量の1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3又は2.4%から1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4又は2.5重量%までの範囲のMgCl水溶液又はCaCl水溶液から選択される少なくとも1つを含む。
更に、MgCl水溶液又はCaCl水溶液のモル濃度は、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3又は3.4Mから2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4又は3.5Mまでの範囲である。。
一例では、タンパク質混合物は、マルトデキストリンと組み合わせたトランスグルタミナーゼ酵素4重量%、3.15MのMgCl水溶液又は2.97MのCaCl水溶液2重量%及び微生物バイオマスタンパク質スラリー94重量%を含む。
任意に、タンパク質混合物は、1.5%から2.5%までの範囲の3MのMgClを含む。更に任意に、タンパク質混合物は、2%から30%までの範囲の3MのMgCl水溶液を含む。
本開示の方法において前記の範囲を使用すると、極く堅い、又は、超極く堅い木綿豆腐様の構造さえも得ることができる。極く堅い木綿豆腐様構造は木綿豆腐様構造よりも更に水分が少ない。
木綿豆腐様と極く堅い木綿豆腐様の構造はほとんど同様であるが、ただ、極く堅い木綿豆腐様の構造は添加物を吸収しにくい。極く堅い木綿豆腐の構造はフライパンでの調理や、炒めたり、油で揚げたりすることが簡単である。
超極く堅い木綿豆腐は、極く堅い木綿豆腐よりも更に水分が少なく、揚げやすい。タンパク質混合物中のMgClの量が多い場合、肉類似食品にとって、木綿豆腐様の構造を得るのがより困難になり、苦い味がする場合があることが理解されうる。
同様に、タンパク質混合物中のMgClの量が少ない場合、肉類似食品にとって木綿豆腐様の構造を得るのが困難であり、苦い味がする可能性がある。
【0041】
任意に、微生物バイオマスタンパク質スラリーは、5%から25%までの細菌バイオマスと、75%から95%までの水を含む。水は、典型的には、微生物バイオマスタンパク質スラリーの総重量の75、80、85又は90重量%から80、85、90又は95重量%までである。細菌バイオマス(すなわち、Solein(登録商標))は、典型的には、微生物バイオマスタンパク質スラリーの総重量の5、10、15又は20重量%から10、15、20又は25重量%までである。
一例では、微生物バイオマスタンパク質スラリーは、89重量%の水と5重量%のタンパク質に富んだ細菌バイオマスを含む。
【0042】
より任意には、微生物バイオマスタンパク質スラリーは、20%から25%までの細菌バイオマスを含む。細菌バイオマスは、典型的には、微生物バイオマスタンパク質スラリーの総重量の20、21、22、23又は24重量%から21、22、23、24又は25重量%までである。
細菌バイオマスの量は、肉類似食品に必要なタンパク質含有量に基づいて変更できることが理解されうる。
任意に、バイオマスは、約65%~70%のタンパク質、5%~8%の脂肪、10%~15%の食物繊維及び3%~5%のミネラルを含む。
【0043】
任意に、微生物バイオマスタンパク質スラリーは、VTT-E-193585又はその誘導体として寄託された分離細菌株を含む。前記単離された細菌株又はその誘導体は、典型的にはグラム陰性細菌(グラム染色法で使用されるクリスタルバイオレット染色を保持しない)である。
前記単離された細菌株又はその誘導体は遺伝的に安定であり、最適条件からストレス条件に至るまでの広範囲のプロセス条件で長期にわたって増殖できることが理解されうる。
本書で使用する「遺伝的に安定」という用語は、変化に抵抗し、複数世代又は細胞分裂にわたって、理想的には数百から数千の細胞分裂にわたって、その遺伝子型を維持する種又は株/単離体の特徴を指す。
場合により、前記単離細菌株又はその誘導体は、エネルギー源として水素ガスを利用し、炭素源として二酸化炭素を利用する。有益なことに、前記細菌株又はその誘導体は、鉄及びビタミンB12を含む。
更に、前記細菌株又はその誘導体から得られる最終製品は、マメの異臭がなく、従って風味付けが容易である。おそらく、最終製品にはうま味(つまり、香ばしい、又は「肉のような」)風味をも含む。
【0044】
任意に、微生物バイオマスタンパク質スラリーは、上流処理及び下流処理を介して生成され、下流処理は、
- バイオマスを得るために、ガス発酵により細菌細胞を培養することと、
- バイオマスを55℃から75℃までの範囲の温度で15分間から最大40分間熱処理してインキュベートすることと、
- バイオマスの液相と固相を分離し、液相を除去することによってバイオマスを濃縮することと、及び、
- 微生物バイオマスタンパク質スラリーを得るために、バイオマスの細菌細胞を均質化すること、とを含む。
【0045】
この点に関して、任意に、前記上流処理は、細菌細胞が成長し、所望の細胞内タンパク質(複数可)を生成するための最適な環境を作り出すことを含む。
任意に、前記上流処理は、所望のタンパク質及び/又は抗酸化物質、鉄、ビタミンなどの他の栄養成分を高収率で生産するために細菌細胞を遺伝子操作することを含む。所望の細胞内タンパク質を生成する細菌細胞の1つ又は複数のバッチが、そのさらなる増殖のための出発材料又は接種材料として選択されることが理解されうる。
本書で使用される「下流処理」という用語は、タンパク質を高収率で生成する細菌細胞の選択に続くプロセスを指す。通常、下流処理は、消費者(ヒト又は動物)にとって有用な方法で最終製品の生産を促進する単位操作である。これに関して、下流処理には、細菌細胞を生理学的、化学的、機械的条件に付して、消費者が使用するのに適した安全な最終製品を提供することが含まれる。
【0046】
下流処理は、細菌細胞を培養することから始まる。本書で使用される「バイオマス」という用語は、サンプル中の生きている成分(すなわち、細菌)の量の尺度を指す。特に、バイオマスは固相(すなわち細菌細胞)と液相(増殖培地)を含む。
細菌細胞は、制御された条件下(たとえば、温度、湿度、pH、好気性、嫌気性、又は通性条件のいずれかなど)でバイオリアクターと呼ばれる容器内で、培地懸濁液(炭素源、窒素源、エネルギー源、ミネラル及びその他の特定の栄養素を含む)中での糖発酵によって培養(cultivatedあるいはcultured)されてもよい。
細菌細胞が増殖のためのエネルギー源及び炭素源として水素、二酸化炭素及び一酸化炭素などのガスを使用するプロセスは、「ガス発酵」と呼ばれることが理解されうる。
任意に、ガス発酵による栽培のための供給物は、CO、CH、H、O、NHから選択される少なくとも1つ、少なくとも1つのミネラルを含む。
アンモニウム、リン酸塩、カリウム、ナトリウム、バナジウム、鉄、硫酸塩、マグネシウム、カルシウム、モリブデン、マンガン、ホウ素、亜鉛、コバルト、セレン、ヨウ素、銅及び/又はニッケルを含有する鉱物などの鉱物の添加が細菌細胞の増殖を促進することは理解されうる。更に、NHの添加は細菌細胞に窒素源を提供する。
【0047】
任意に、バイオマスは細菌細胞の連続培養又はバッチ培養で製造することもできる。微生物は再生時間が短いため、急速に増殖して高い細胞密度のバイオマスを生産できることが理解されうる。有益なことに、バイオマスの高い細胞密度は、例えばヒトが消費するタンパク質の生産には十分である。
更に、有益なことに、バイオマスの大規模生産及びその収穫は、高効率のマイクロスケールの実験装置が必要であるため、単一の細菌細胞からタンパク質を収穫する場合と比較して容易であり、コスト効率が高い。
【0048】
更に、高い細胞密度を有する培養バイオマスが収穫され、更に、例えばインキュベーション、分離、均質化及び乾燥などの処理ステップを経て、所望の最終生成物が得られる。
【0049】
バイオマスは55℃から75℃までの温度で15分から40分間までの時間、熱処理してインキュベートされる。特に、バイオマスを熱処理してインキュベートすると、細菌細胞における特定の化学的及び構造的変化が促進される。
具体的には、インキュベートにより細胞壁の破壊が促進され、リポ多糖類、それらのいくつかはエンドトキシンであるが、放出され、それらが腸から血流に移行するとヒトに有害となる可能性がある
インキュベーションは、例えば、55、60、65又は70℃から60、65、70又は75℃までの範囲のインキュベーション温度で、15、20、25、30又は35分から20、25、30、35又は40分までのインキュベーション時間で、好ましくは、60、65又は70℃から65、70又は75℃までの温度で、20、25又は30分から25、30又は35分までの時間で実施され得る。
有益なことに、外膜細胞壁の分解は、バイオマスのインキュベーションの結果として、少なくとも10~1000倍低いエンドトキシン反応を有する最終生成物、すなわち肉類似食品をもたらす。更に、前述の温度範囲でのインキュベーションは、望ましくない微生物の増殖を防止し、目的の細菌のみの純粋培養をもたらす。
【0050】
任意に、分離することは、遠心分離、濾過のうちの少なくとも1つから選択される分離方法を用いて実行される。遠心分離は通常、粒子のサイズ、形状、密度、粘度、又は分離に使用されるローターの速度に応じて粒子を分離するための技術である。
これに関して、溶液は遠心分離機チューブに入れられ、次いで遠心分離機チューブはローターに入れられ、一定の速度で回転される。任意に、遠心分離は、10000×g~20000×gの間の範囲の遠心力で行われる。遠心分離は培養ブロスの固相から液相の約90~95%を分離する。
遠心分離は、液相と固相を分離する最も効率的で最も簡単な方法であることが理解されうる。
濾過技術は、典型的には、半透膜上に固相を保持しながら液相を通過させる、当該半透膜を介して液相及び固相を分離する。濾過は、液相と固相とを分離する最もエネルギー効率の良い方法を提供する。
液相とともに、リポ多糖類を含む細胞壁構造の加水分解成分が濃縮バイオマスから除去され、従って、エンドトキシンが減少した濃縮バイオマスが残ることが理解されうる。
【0051】
特に、均質化は細菌細胞の細胞壁を少なくとも部分的に分解する。本書で使用される「均質化」という用語は、細菌の細胞壁を物理的に破壊する手段を指す。細菌細胞をインキュベートするとその細胞壁が部分的に破壊され、バイオマスを均質化すると細胞壁が更に破壊されることが理解されうる。通常、均質化では流体の流れ、粒子間相互作用、圧力降下を利用して細胞の破壊を促進する。
有益なことに、均質化により細菌細胞が部分的に溶解し、バイオマスの可溶性タンパク質含有量が増加し、それによって食品成分としてのバイオマスの機能的特性が改善される。
典型的には、使用される均質化デバイスは、乳鉢と乳棒、ブレンダー、ビーズミル、超音波処理装置、ローターステーターなどを含む。更に、バイオマスを均質化すると、濃縮されたバイオマス中に残存するリポ多糖類が更に除去され、それによって均質化されたバイオマスから更に減少する。
任意に、高圧均質化(又は微細流動化)又は粉砕技術を使用して均質化を実行しうる。本書で使用される「高圧均質化」という用語は、濃縮バイオマスなどのサンプルの流れを高圧均質化装置に強制的に通過させてサンプルを均質化し、及び/又はサンプル内のすべてのコンポーネントの粒径を小さくする物理的又は機械的プロセスを指す。
典型的には、高圧均質化装置は、サンプルに、例えば高圧又は剪断力の任意の組み合わせなどの複数の力を加える。
【0052】
任意に、均質化は、少なくとも1回の実行で800バールから2000バールまでの圧力で実施される。均質化圧力は、例えば、800、1000、1200、1400、1600又は1800バールから1000、1200、1400、1600、1800又は2000バールまでであってもよい。
本書で使用される「少なくとも1回の実行」という用語は、濃縮バイオマスが細胞破壊効率を高めるために受けるサイクル又はパスの数(1回、2回又は3回など)を指す。更に任意に、均質化は700バールから1000バールまでで実行される。均質化圧力は、例えば、700、750、800、850、900又は950バールから750、800、850、900、950又は1000バールまでであってもよい。更に、より好ましくは、均質化は900バールで行われる。有益なことに、均質化圧力の前記範囲は、均質化されたバイオマス中の可溶性タンパク質含量の増加及びエンドトキシンレベルの減少という最良の結果を提供する。
【0053】
有益なことに、開示された方法を使用して得られる肉類似食品は、木綿豆腐様の構造を有し、酸素分布及び神経系にとって重要であるが、植物ベースの豆腐には通常欠如している鉄及びB12を含む。更に、有益なことに、肉類似食品は、植物ベースの豆腐に典型的な豆の異臭がなく、従って、香味料又はスパイスを使用して風味付けするのが容易である。尚、肉類似食品は黄色を呈しているが、これはバイオマスに含まれるベータカロテンによるものである。
【0054】
(図面の詳細な説明)
図1を参照すると、本開示の一実施形態による肉類似食品の製造方法のステップを示すフローチャート100が示されている。ステップ102で、微生物バイオマスタンパク質スラリーをトランスグルタミナーゼ酵素を含む調製物と混合して、タンパク質混合物を得る。ステップ104で、タンパク質混合物は、28℃から40℃までの範囲の温度で混合しながら第1の時間インキュベートされる。ステップ106で、MgCl水溶液又はCaCl水溶液から選択される少なくとも1つがタンパク質混合物に添加される。ステップ108で、タンパク質混合物を第2の時間インキュベートする。ステップ110で、タンパク質混合物は、40℃から60℃までの範囲の温度の水浴中で第3の時間インキュベートされる。ステップ112で、タンパク質混合物を60℃から85℃までの範囲の温度で加熱する。ステップ114で、タンパク質混合物を密閉型の中に入れる。
【0055】
ステップ102、104、106、108、110、112及び114は単なる例示であり、1つ又は複数のステップが追加される、1つ又は複数のステップが削除される、又は1つ又は複数のステップが異なる順序で提供される他の代替案も、本特許請求の範囲から逸脱することなく提供することができる。
【0056】
本特許請求の範囲によって規定される本開示の範囲から逸脱することなく、上記で説明された本開示の実施形態に対する修正が可能である。本開示を記載及び特許請求するために使用される「含む(including)」、「備える(comprising)」、「組み込む(incorporating)」、「有する(have)」、「である(is)」等の表現は、非排他的な方法で解釈されること、すなわち、明示的に記載されていない項目、成分又は要素も存在することを可能にすることを意図している。単数形への言及はまた、複数形に関連すると解釈されるべきである。


図1
【国際調査報告】