(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】合成皮革
(51)【国際特許分類】
D06N 3/04 20060101AFI20240403BHJP
C08L 23/10 20060101ALI20240403BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20240403BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20240403BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
D06N3/04
C08L23/10
C08L23/08
B32B27/12
B32B27/32 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560855
(86)(22)【出願日】2021-04-09
(85)【翻訳文提出日】2023-10-02
(86)【国際出願番号】 CN2021086151
(87)【国際公開番号】W WO2022213360
(87)【国際公開日】2022-10-13
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ユンフォン
(72)【発明者】
【氏名】リュー、シュエジュン
(72)【発明者】
【氏名】マデンジャン、リサ エス.
(72)【発明者】
【氏名】ペセク、ステイシー エル.
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ジンリャン
(72)【発明者】
【氏名】マンロ、ジェフリー シー.
【テーマコード(参考)】
4F055
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F055AA01
4F055BA12
4F055CA05
4F055EA22
4F055FA05
4F055GA26
4F100AK07A
4F100AK07J
4F100AK62A
4F100AK62J
4F100AK64A
4F100AK64J
4F100AL02A
4F100AL02J
4F100AL05A
4F100AL05J
4F100AT00
4F100BA02
4F100BA03
4F100DG12C
4F100DJ01B
4F100GB71
4F100GB72
4F100GB74
4F100JA04A
4F100JA06
4F100JK13
4F100JK17
4F100YY00
4J002BB052
4J002BB111
4J002BP032
4J002GC00
4J002GN00
(57)【要約】
本開示は、物品を提供する。一実施形態では、物品は、(A)(i)51重量%~90重量%のプロピレン系ポリマーと、(ii)ハードセグメント及びソフトセグメントを有する10重量%~49重量%のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーと、から構成される組成物から構成される、最上層を含む。エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーは、2℃未満のソフトセグメント溶融温度(SS-Tm)を有する。物品はまた、(B)織物から構成される最下層を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品であって、
A.最上層であって、
(i)51重量%~90重量%のプロピレン系ポリマーと、
(ii)ハードセグメントとソフトセグメントと、を有する、10重量%~49重量%のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーであって、前記エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーが、2℃未満のソフトセグメント溶融温度(SS-Tm)を有する、エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーと、を含む組成物から構成される、最上層と、
B.織物を含む最下層と、を含む、物品。
【請求項2】
前記エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーが、前記ソフトセグメント中に21モル%~35モル%のオクテンを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記最上層の前記組成物が、
(i)60,000超のベーリー屈曲耐性値、及び
(ii)80未満のショアA硬度を有する、請求項2に記載の物品。
【請求項4】
前記プロピレン系ポリマーが、
0.85g/cc~0.87g/ccの密度と、
5g/10分~30g/10分のメルトフローレートと、を有する、プロピレン/エチレンコポリマーである、請求項1~3のいずれか一項に記載の物品。
【請求項5】
前記最上層の前記組成物が、
ハードセグメントとソフトセグメントと、を有する、10重量%~49重量%の
第1のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーであって、前記第1のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーが、2℃未満のソフトセグメント溶融温度(SS-Tm)を有する、第1のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーと、
前記第1のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーとは異なる、第2のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーであって、前記第2のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーが、ハードセグメント及びソフトセグメントを有し、前記第2のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーが、2℃未満のソフトセグメント溶融温度(SS-Tm)を有する、第2のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーと、を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の物品。
【請求項6】
C.中間発泡体層であって、
(i)51重量%~90重量%のプロピレン系ポリマーと、
(ii)ハードセグメントとソフトセグメントと、を有する、10重量%~49重量%のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーであって、前記エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーが、2℃未満のソフトセグメント溶融温度(SS-Tm)を有する、エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーと、を含む組成物から構成される、中間発泡体層を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の物品。
【請求項7】
前記中間発泡体層中の前記エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーが、前記ソフトセグメント中に21モル%~35モル%のオクテンを含む、請求項6に記載の物品。
【請求項8】
前記中間発泡体層中の前記プロピレン系ポリマーが、
0.85g/cc~0.87g/ccの密度と、
5g/10分~30g/10分のメルトフローレートと、を有する、プロピレン/エチレンコポリマーである、請求項7に記載の物品。
【請求項9】
前記中間発泡体層の前記組成物が、
ハードセグメントとソフトセグメントと、を有する、10重量%~49重量%の
第1のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーであって、前記第1のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーが、2℃未満のソフトセグメント溶融温度(SS-Tm)を有する、第1のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーと、
前記第1のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーとは異なる、第2のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーであって、前記第2のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーが、ハードセグメント及びソフトセグメントを有し、前記第2のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーが、2℃未満のソフトセグメント溶融温度(SS-Tm)を有する、第2のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーと、を含む、請求項6~8のいずれか一項に記載の物品。
【請求項10】
前記中間発泡体層中の前記第1のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーが、前記ソフトセグメント中に21モル%~35モル%のオクテンを含み、
前記中間発泡体層中の前記第2のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーが、前記ソフトセグメント中に21モル%~35モル%のオクテンを含む、請求項9に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
合成皮革の用途は増え続けている。合成皮革は、衣類、履物、バッグ及び手荷物、家庭用室内装飾材料、並びに自動車シートを製造するために使用される。合成皮革は、天然皮革と比較した場合に、同様の性能及び手触りを示す。合成皮革は、動物に優しく、天然皮革と比較して製造が安価であるという追加の利点を提供する。
【0002】
従来の合成皮革には欠点がある。ポリウレタン系合成皮革(polyurethane-based synthetic leather、PU皮革)の製造は、ポリウレタン合成皮革マトリックスを形成するために、有機溶媒、典型的には、ジメチルホルムアミド(dimethyl formamide、DMF)の使用を必要とする。DMFは、製造業者、加工業者、消費者、及び環境にとって有害である。
【0003】
ポリ塩化ビニル合成皮革(Polyvinyl chloride synthetic leather、PVC皮革)は、ハロゲン化ポリマー及び可塑剤、典型的には、フタレート系可塑剤を必要とする。ハロゲン化ポリマー及びフタレート系可塑剤はそれぞれ、製造業者、加工業者、消費者、及び環境にとって有害である。
【0004】
ポリオレフィンエラストマー系合成皮革(Polyolefin elastomer based synthetic leather、POE皮革)は、ハロゲンを含まず、フタル酸塩を含まず、POE皮革の製造がDMFなどの有害な溶媒の使用を必要としないので有利である。POE皮革は、その熱可塑性の性質故に、リサイクル性という追加の利点を有する。性能の観点から、POEは、優れた耐候性及び低温可撓性を有し、加水分解に対して耐性があり、黄変に耐性がある。なお、POE皮革は、PU皮革及びPVC皮革のそれぞれの密度と比較してより低い密度を有するので、POE皮革は、手荷物/バッグ、靴及び自動車内装部門において現在生じている軽量化のための推進力において好まれている。
【0005】
それ故に、当該技術分野は、POE皮革の必要性を認識している。当該技術分野では更に、PU皮革及び/又はPVC合成皮革についてのベーリー屈曲耐性(bally flex resistance performance)及び柔軟性を満たすか又はそれを上回るベーリー屈曲耐性及び柔軟性を有するPOE皮革が必要であることが、認識されている。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、物品を提供する。一実施形態では、物品は、(A)(i)51重量%~90重量%のプロピレン系ポリマーと、(ii)ハードセグメント及びソフトセグメントを有する10重量%~49重量%のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーと、から構成される組成物から構成される、最上層を含む。エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーは、2℃未満のソフトセグメント溶融温度(SS-Tm)を有する。物品はまた、(B)織物から構成される最下層を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施例7(IE7)の走査型電子顕微鏡写真(scanning electron micrograph、SEM)を左に、比較試料18(CS18)のSEM(右)を示す。
【
図2】IE1(左)及びCE6(右)のSEMを示す。
【0008】
定義
元素周期表への任意の参照は、CRC Press,Inc.,1990年~1991年によって出版されたものへの参照である。この表での元素群への参照は、群に番号を付けるための新しい表記法によるものである。
【0009】
米国特許実務を目的として、参照される特許、特許出願、又は刊行物の内容は必ず、内容全体が、特に定義の開示、及び当該技術分野における一般的な知識に関して(本開示において具体的に提供される定義に決して矛盾しない程度に)、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる(又は、刊行物の相当する米国特許出願が同じように参照により組み込まれる)。
【0010】
本明細書に開示される数値範囲は、下限値及び上限値を含む、下限値から上限値までの全ての値を含む。明示的な値(例えば、1又は2、又は3~5、又は6、又は7)を含有する範囲の場合、任意の2つの明示的な値の間のあらゆるサブ範囲が含まれる(例えば、上記の1~7の範囲には、1~2、2~6、5~7、3~7、5~6、等が含まれる)。
【0011】
特に異議を唱えない限り、文脈から暗示的でない限り、全ての部分及びパーセンテージは、重量に基づき、全ての試験方法は、本開示の出願日時点で最新のものである。
【0012】
本明細書で使用される「ブレンド」又は「ポリマーブレンド」という用語は、2つ以上のポリマーのブレンドである。このようなブレンドは、混和性(分子レベルで相分離しない)であっても、そうでなくてもよい。このようなブレンドは、相分離していても、していなくてもよい。このようなブレンドは、透過電子分光法、光散乱、X線散乱、及び当該技術分野において周知のその他の方法から判定される、1つ以上のドメイン構成を含んでいても、含んでいなくてもよい。
【0013】
「組成物」という用語は、組成物を含む材料の混合物、並びに組成物の材料から形成された反応生成物及び分解生成物を指す。
【0014】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語、及びそれらの派生語は、それが具体的に開示されているかどうかにかかわらず、任意の追加の成分、工程、又は手順の存在を除外することを意図するものではない。疑義を回避するために、「含む(comprising)」という用語の使用を通じて特許請求される全ての組成物は、特に異議を唱えない限り、ポリマーであるか又はその他であるかどうかにかかわらず、任意の追加の添加剤、補助剤又は化合物を含んでもよい。対照的に、「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、操作性に必須ではないものを除き、あらゆる続く記述の範囲からあらゆるその他の成分、工程、又は手順を除く。「からなる(consisting of)」という用語は、明確に描写又は列挙されていない任意の成分、工程、又は手順を除外する。「又は」という用語は、特に指示がない限り、列挙された構成要素を個別に、並びに任意の組み合わせで指す。
【0015】
「エチレン系ポリマー」は、(重合性モノマーの総量に基づいて)50重量パーセント(重量%)超の重合エチレンモノマーを含有し、所望により、少なくとも1つのコモノマーを含有し得るポリマーである。エチレン系ポリマーは、エチレンホモポリマー、及びエチレンコポリマー(エチレン及び1つ以上のコモノマーに由来する単位を意味する)を含む。「エチレン系ポリマー」及び「ポリエチレン」という用語は、同義的に使用されてもよい。
【0016】
「生地」は、個々の繊維又は糸から形成された、織られた、又は不織の(ニットなど)構造である。
【0017】
「繊維」及び類似の用語は、絡み合ったフィラメントの細長いカラムを指す。繊維径は、様々な方法で測定及び報告され得る。一般に、繊維径は、1フィラメント当たりのデニールで測定される。デニールは、繊維の長さ9,000メートル当たりのその繊維のグラム数として定義される織物用語である。モノフィラメントは、一般に、15超、通常は30超の1フィラメント当たりのデニールを有する押出ストランドを指す。微細デニール繊維とは、一般に、15以下のデニールを有する繊維を指す。マイクロデニール(別名マイクロ繊維)とは、一般に、100マイクロメートル以下の直径を有する繊維を指す。
【0018】
「フィラメント」及び類似の用語とは、一般に、円形の断面、及び10超の長さ対直径比を有する、単一の連続した伸長材料のストランドを指す。
【0019】
本明細書で使用する場合、「発泡体」又は「発泡体物品」という用語は、ポリマーから構築された構造体であって、ポリマーによって完全に取り囲まれた複数の別個のガスポケット又は発泡体気泡を含む構造体である。本明細書で使用する場合、「発泡体気泡」又は「気泡」という用語は、発泡体組成物内の別個の空間である。発泡体気泡は、発泡体組成物のポリマーから構成される膜壁によって分離されるか、又は別様に画定される。
【0020】
「インターポリマー」は、少なくとも2つの異なるモノマーの重合によって調製されるポリマーである。この総称は、2つの異なるモノマーから調製されたポリマー、及び3つ以上の異なるモノマーから調製されたポリマー、例えばターポリマー、テトラポリマーなどを指すために通常用いられるコポリマーを含む。
【0021】
「ニット生地」は、手によって、編み針で、又は機械上で、糸又は繊維を一連の連結したループに絡み合せることから形成される。生地は、縦編み又は横編み、平編み、及び丸編みによって形成されてもよい。好適な縦編みの非限定的な例としては、トリコット、ラッセルパワーネット、及びレースが挙げられる。好適な横編みの非限定的な例としては、丸編み、平編み、及びシームレス(これは多くの場合丸編みのサブセットとみなされる)が挙げられる。
【0022】
「不織の」とは、ランダムに交錯させ合って配置されているが、ただし、ニット生地の場合のように識別可能な様式では交錯させ合って配置されていない、個々の繊維又はより糸の構造を有するウェブ又は生地である。
【0023】
「オレフィン系ポリマー」又は「ポリオレフィン」は、(重合性モノマーの総量に基づいて)50重量パーセント超の重合オレフィンモノマーを含有するポリマーであり、所望により、少なくとも1つのコモノマーを含有し得る。オレフィン系ポリマーの非限定的な例としては、エチレン系ポリマー又はプロピレン系ポリマーが挙げられる。
【0024】
「ポリマー」は、同じ種類であるか又は異なる種類であるかに関わらず、重合形態でポリマーを構成する複数の及び/若しくは繰り返しの「単位」又は「mer単位」を提供するモノマーを重合することによって調製される化合物である。したがって、一般的なポリマーという用語は、ただ1つの種類のモノマーのみから調製されるポリマーを指すために通常用いられるホモポリマーという用語と、少なくとも2つの種類のモノマーから調製されるポリマーを指すために通常用いられるコポリマーという用語と、を包含する。それはまた、例えば、ランダム、ブロックなどの全ての形態のコポリマーを包含する。「エチレン/α-オレフィンポリマー」及び「プロピレン/α-オレフィンポリマー」という用語は、それぞれ、エチレン又はプロピレンと、1つ以上の追加の重合性α-オレフィンモノマーとを重合することから調製された、上述のコポリマーを示す。ポリマーは、多くの場合、1つ以上の特定のモノマー「で作製され」、特定のモノマー又はモノマーの種類に「基づいて」、特定のモノマー含量を「含有する」などと称されるが、本文脈では、「モノマー」という用語は、特定のモノマーの重合残基を指し、非重合種を指すものではないと理解されることに留意されたい。一般に、本明細書におけるポリマーは、対応するモノマーの重合形態である「単位」に基づくものを指す。
【0025】
「プロピレン系ポリマー」は、(重合性モノマーの総量に基づいて)50重量パーセント超の重合プロピレンモノマーを含有し、所望により、少なくとも1つのコモノマーを含有し得るポリマーである。
【0026】
「スチレン」は以下の構造Aを有する。「スチレン系ポリマー」は、モノマーとして重合スチレンを含有するポリマーである。
【0027】
【0028】
「織られた」とは、識別可能な様式で、一定のパターンで交錯させ合って配置された個々の繊維又はより糸の構造を有するウェブ又は生地を指す。織られた生地の非限定的な例としては、ニット生地が挙げられる。
【0029】
試験方法
ベーリー耐屈曲性試験は、ASTM D6182に従って25℃で実施される。ベーリー屈曲試験は、試験片を繰り返し屈曲させることによって、合成皮革、皮革及び生地に適用されたコーティングの耐久性を決定する。ベーリー屈曲試験機(Bally Flexometer)は、DIN53351に準拠し、100サイクル/分の速度で動作する。終了サイクルは、プラーク表面に亀裂が生じたサイクルによって決定され、ベーリー屈曲結果として報告される。各試料について2つの試験片を試験し、平均値をベーリー屈曲耐性値として報告した。結果をサイクル数で報告する。2つの試験片について100,000サイクル後に亀裂/損傷が見出されない場合、結果は「100,000超」又は「>100k」として報告される。
【0030】
13C NMR。13C核磁気共鳴(13C nuclearmagnetic resonance、NMR)試料は、テトラクロロエタン-d2/0.025MのクロムアセチルアセトネートCr(AcAc)3を含有するオルトジクロロベンゼン(又は0.025MのCr(AcAc)3を含有するテトラクロロエタン-d2)の50/50(w:w)混合物約2.7gを、10mmNMR管中にある0.2gのポリマー試料に添加することによって、調製される。窒素で管ヘッドスペースをパージすることにより、試料から酸素を除去する。次に、加熱ブロック及びヒートガンを使用して、管及びその内容物を約135℃に加熱することにより、試料を溶融し、均質化する。各溶融試料を目視検査して均一性を確認する。
【0031】
13C NMRデータを、Bruker 400MHz又は600MHz分光計のいずれかで10mmの凍結プローブを使用して収集する。データを、120℃の試料温度で、7.3秒パルス反復遅延、90度フリップ角、及び逆ゲート付きデカップリングを使用して取得する。測定は全て、試料を回転させない、ロックモードで行う。試料を、データ取得前に7分間熱平衡化させる。13C NMR化学シフトは30.0ppmでのEEEトライアドを内部参照とする。
【0032】
コモノマー含有量を、参考文献からの割り当て(Liu,W.、Rinaldi,P.L.、McIntosh,L.H.、and Quirk,R.P.、Macromolecules、34,2001年、4757-4767)及び積分した13C NMRスペクトルを使用して決定し、ベクトル方程式s=fM(式中、Mは割り当てマトリックスであり、sはスペクトルの行ベクトル表現であり、fはモル分率の組成ベクトルである)を解く。fの要素は、エチレン(E)及びオクタン(O)の全ての順列を伴うE及びOのトライアドであるとする。割り当てマトリックスMは、fにおける各トライアドに対して1つの行と、積分されたNMR信号の各々の列とで作成される。マトリックスの要素は、割り当てを参照することによって決定された整数値である(Liu,W.、Rinaldi,P.L.、McIntosh,L.H.、and Quirk,R.P.、Macromolecules,34,2001,4757-4767)。本方程式を、sと各試料の積分された13Cデータとの間の誤差関数を最小にするために、必要により、要素の変化によって解く。これは、Solver機能を使用することによって、Microsoft Excelで実行される。
【0033】
本開示のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマー内の(i)オクテンのモルパーセント(%)(「オクテンモル%」)、及び(ii)エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーのソフトセグメント内のオクテンコモノマーのモル%(「SSオクテンモル%」)は、13C NMR分光法、及び参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第7,608,668号の第60欄~第63欄に記載される方法によって決定される。
【0034】
密度は、ASTM D792、方法Bに従って測定される。結果を、1立方センチメートル当たりのグラム単位(g/cc)で記録する。
【0035】
示差走査熱量測定法(Differential scanning calorimetry、DSC)
示差走査熱量測定法(DSC)
示差走査熱量測定法(DSC)を使用して、広範囲の温度にわたってポリマーの溶融、結晶化、及びガラス転移挙動を測定し得る。例えば、冷蔵冷却システム(refrigerated cooling system、RCS)及びオートサンプラを備えるTA Instruments Discovery DSCを使用して、本分析を実施する。試験中、使用する窒素パージガス流量は50mL/分である。各試料を約190℃で溶融圧縮して薄膜にし、次に、溶融した試料を室温(約25℃)まで空冷する。3~10mg、直径6mmの試験片を冷却したポリマーから抽出し、秤量し、軽量アルミニウムパン(約50mg)内に置き、圧着して閉じる。次に、その熱特性を決定するために分析を実行する。
【0036】
試料の熱挙動を、試料温度を昇降させて熱流対温度のプロファイルを創出することにより決定する。まず、その熱履歴を除去するために、試料を180℃まで急速に加熱し、5分間等温で保持する。次に、試料を、10℃/分の冷却速度で-90℃まで冷却し、-90℃で5分間等温保持する。次に、試料を10℃/分の加熱速度で150℃まで加熱する(これが「第2の加熱」勾配である)。冷却曲線及び第2の加熱曲線を記録する。
【0037】
ソフトセグメント溶融温度「SS-Tm」を、DSCの第2の加熱曲線から決定する。エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーは、典型的には、2つの溶融ピークを有し、ソフトセグメント及びハードセグメントのそれぞれに関連する1つの溶融ピークを有する。SS-Tmは、より低い温度ピークに関連している。いくつかのブロックコポリマーでは、ソフトセグメントの溶融と関連しているピークは、基線上の小さなこぶ(又はバンプ)であり、ピーク最大値を割り当てるのは困難である。その困難は、通常のDSCプロファイルを、以下の方法を使用して加重DSCプロファイルに変換することによって、克服され得る。その他の場合では、ソフトセグメントは非晶質であり、測定可能な溶融エンタルピー又は溶融温度を有さない。DSCでは、熱流は、特定の温度で溶融する材料の量と、温度に左右される比熱容量に依存する。直鎖状低密度ポリエチレンの溶融レジーム(melting regime)における比熱容量の温度依存性は、融解熱(heat of fusion)の増加をもたらし、コモノマー含有量を減少させる。すなわち、融解熱の値は、コモノマー含有量の増加に伴って結晶性が低下するにつれて次第に低くなる。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWild,L.Chang,S.、Shankernarayanan、M J.Improvedmethod for compositional analysis of polyolefins by DSC.Polym.Prep1990年31:270-1を参照のこと。直鎖状コポリマーに関して予想される融解熱対温度依存性融解熱(ΔH(T))の比率をとることによる、DSC曲線における所与の点(グラム当たりのワット数で表した熱流及び摂氏で表した温度で定義される)について、DSC曲線は、重量依存性分布曲線に変換され得る。第2の加熱曲線は、-30℃及び135℃で熱流間に線形基線を引くことによって補正された基線である。次に、温度依存性融解熱曲線は、2つの連続するデータ点間の積分された熱流の合計から計算され得、次に、累積エンタルピー曲線によって全体的に表され得る。所与の温度での直鎖状エチレン/オクテンコポリマーについての融解熱間の予想される関係は、融解熱対溶融温度曲線によって示される。ランダムなエチレン/オクテンコポリマーを使用すると、直鎖状コポリマーの予想される融解熱、ΔH直鎖状コポリマー、及び溶融温度Tm(単位℃)についての以下の関係を得ることができる。
【0038】
【0039】
各積分データ点について、所与の温度で、累積エンタルピー曲線からのエンタルピー対その温度での直鎖状コポリマーの予想される融解熱の比率をとることによって、画分重量(fractional weight)をDSC曲線の各点に割り当てることができる。本方法は、エチレン/オクテンコポリマーに適用可能であるが、その他のポリマーに適合させ得る。ソフトセグメントTmは、エンタルピー画分重量対温度曲線における最大の位置として割り当てられる。
【0040】
曲げ弾性率は、ASTM D790に従って測定される。3mm厚のプラークを、試験のために小さな棒へと切断した。各試料について3つの試験片を試験し、平均値を曲げ弾性率値としてメガパスカル(MPa)で報告する。
【0041】
ガラス転移温度Tgは、Bernhard Wunderlich、The Basis of Thermal Analysis、in Thermal Characterization of Polymeric Materials 92、278~279(Edith A.Turi ed.,2d ed.1997年)に記載されているように、試料の半分が液体の熱容量を獲得したDSCの第2の加熱曲線から決定される。ガラス転移領域の下及び上から基線を引き、Tg領域を通して外挿する。試料の熱容量がこれらの基線の中間となる温度が、Tgである。
【0042】
ポリマーの融点Tmは、DSC加熱曲線における最大熱流に対応する温度として決定される。
【0043】
g/10分でのメルトフローレート(Melt flow rate、MFR)(プロピレン系ポリマーの場合)は、ASTM D1238(230℃/2.16kg)に従って測定される。
【0044】
g/10分でのメルトインデックス(Melt index、MI)(I2)(エチレン系ポリマーの場合)は、ASTM D1238(190℃/2.16kg)に従って測定される。
【0045】
ショアA硬度は、ASTM D2240に従って測定される。2枚の3mm厚のプラークを、試験のために一緒に積み重ねた。POE皮革組成物(表2A、表2B)については、荷重1kg、持続時間5秒を使用した。エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーについては、10秒の持続時間を使用した(表1Cのデータ)。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本開示は、物品を提供する。一実施形態では、物品は、(A)(i)51重量%~90重量%のプロピレン系ポリマーと、(ii)ハードセグメント及びソフトセグメントを有する10重量%~49重量%のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーであって、2℃未満のソフトセグメント溶融温度(SS-Tm)を有する、エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーと、から構成される組成物から構成される、最上層を含む。物品はまた、(B)織物から構成される最下層を含む。
【0047】
A.最上層
(i)プロピレン系ポリマー
最上層は、(i)51重量%~90重量%のプロピレン系ポリマーと、(ii)ハードセグメント及びソフトセグメントを有する10重量%~49重量%のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーであって、2℃未満のソフトセグメント溶融温度(SS-Tm)を有する、エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーと、を含む組成物から構成される。重量パーセントは、最上層の総重量に基づく。
【0048】
プロピレン系ポリマーは、(i)プロピレンの重合単位、(ii)C2コモノマー又はC4~C8α-オレフィンコモノマーの重合単位、及び(iii)任意の添加剤からなる。適切なコモノマーの非限定的な例としては、エチレン、ブテン、ヘキセン、及びオクテンが挙げられる。
【0049】
一実施形態では、プロピレン系ポリマーは、以下の特性のうちの1つ、いくつか、又は全てを有するプロピレン/エチレンコポリマー樹脂である。
(i)0.85g/cc~0.87g/ccの密度、及び/又は
(ii)5.0g/10分~30g/10分、若しくは8g/10分~25g/10分のメルトフローレート(MFR)、及び/又は
(iii)75~90若しくは80~89のショアA硬度値、及び/又は
(iv)プロピレン/エチレンコポリマーの総重量に基づいて、10重量%~15重量%のエチレン。
【0050】
好適なプロピレン/エチレンコポリマーの非限定的な例としては、Dow,Inc.から入手可能なVERSIFY3300及びVERSIFY4301が挙げられる。
【0051】
(ii)エチレン/オクテンマルチブロックコポリマー
最上層は、10重量%~49重量%のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーを含む。重量パーセントは、最上層の総重量に基づく。エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーは、ハードセグメント及びソフトセグメントを有する。エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーは、2℃未満のソフトセグメント溶融温度(SS-Tm)を有する。
【0052】
「エチレン/オクテンマルチブロックコポリマー」という用語は、重合形態にあるエチレン及びオクテンコモノマー(及び任意の添加剤)からなるコポリマーであり、そのポリマーは、化学的特性又は物理的特性が異なる2つの重合モノマー単位(すなわち、エチレン及びオクテン)の複数のブロック又はセグメントによって特徴付けられ、そのブロックは、直鎖状の様式で結合(又は共有結合)しており、すなわち、ポリマーは、重合エチレン性官能基に関して端部同士で結合している化学的に区別された単位を含む。エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーとしては、2つのブロック(ジブロック)及び3つ以上のブロック(マルチブロック)を有するブロックコポリマーが挙げられる。エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーは、スチレンを含まない、そうでなければ除外している(すなわち、スチレンフリー)、及び/又はビニル芳香族モノマー、及び/又は共役ジエンを含まない、そうでなければ除外している。コポリマー中の「エチレン」又は「オクテン」又は「コモノマー」の量を指す場合、それは、その重合単位を意味していることが理解される。エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーは、次の式(AB)nによって表され得、式中、nは、少なくとも1であり、好ましくは1超の整数、例えば、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、又はそれ以上であり、「A」は、ハードブロック又はセグメントを表し、「B」は、ソフトブロック又はセグメントを表す。A及びBは、実質的に分岐状又は実質的に星形の方式とは対照的に、実質的に直鎖状の方式で、又は直鎖状の様式で、連結又は共有結合される。その他の実施形態では、Aブロック及びBブロックは、ポリマー鎖に沿ってランダムに分布される。言い換えれば、ブロックコポリマーは、通常、次のような構造を有さない:AAA-AA-BBB-BB。一実施形態では、エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーは、異なるコモノマー(複数可)を含む第3の種類のブロックを有さない。別の実施形態では、ブロックA及びブロックBのそれぞれは、ブロック内に実質的にランダムに分布したモノマー又はコモノマーを有する。言い換えれば、ブロックAもブロックBも、残りのブロックとは実質的に異なる組成を有する先端セグメントなどの別個の組成の2つ以上のサブセグメント(又はサブブロック)を含まない。
【0053】
エチレンは、全エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーの大部分のモル分率を構成する。エチレンは、全エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーの少なくとも50モル%(mol%)を構成する。一実施形態では、エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーは、エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーの総モルに基づいて、50モル%、又は60モル%、又は65モル%~80モル%、又は85モル%、又は90モル%、又は95モル%のエチレンと、相対量のオクテン、又は5モル%、又は10モル%、又は15モル%、又は20モル%~35モル%、又は40モル%、又は50モル%未満のオクテンと、を含有する。更なる実施形態では、エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーは、5モル%~30モル%のオクテン(及び95モル%~70モル%のエチレン)、又は16モル%超~30モル%のオクテン、又は17モル%~25モル%のオクテン(及び83モル%~75モル%のエチレン)を含有する。
【0054】
エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーは、様々な量の「ハード」セグメント及び「ソフト」セグメントを含む。「ハード」セグメントは、重合単位のブロックであり、エチレンが、ポリマーの重量に基づいて、90重量%超、又は95重量%、又は95重量%超、又は98重量%超、最大100重量%の量で存在している。言い換えれば、ハードセグメント中のコモノマー含有量(エチレン以外のモノマーの含有量)は、ポリマーの重量に基づいて、10重量%未満、又は5重量%、又は5重量%未満、又は2重量%未満であり、最低でゼロであり得る。いくつかの実施形態では、ハードセグメントは、エチレンから誘導される全ての、又は実質的に全ての単位を含む。「ソフト」セグメントは、重合単位のブロックであり、コモノマー含有量(オクテンの含有量)は、ポリマーの重量に基づいて、5重量%超、又は8重量%超、又は10重量%超、又は15重量%超である。一実施形態では、ソフトセグメントのコモノマー含有量は、20重量%超、又は25重量%超、又は30重量%超、又は35重量%超、又は40重量%超、又は45重量%超、又は50重量%超、又は60重量%超であり、最大100重量%であり得る。
【0055】
ソフトセグメントは、エチレン/オクテンマルチブロックコポリマー中において、エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーの総重量の、1重量%、又は5重量%、又は10重量%、又は15重量%、又は20重量%、又は25重量%、又は30重量%、又は35重量%、又は40重量%、又は45重量%~55重量%、又は60重量%、又は65重量%、又は70重量%、又は75重量%、又は80重量%、又は85重量%、又は90重量%、又は95重量%、又は99重量%で存在し得る。逆に、ハードセグメントは、同様の範囲で存在し得る。ソフトセグメントの重量百分率及びハードセグメントの重量百分率は、DSC又はNMRから得られたデータに基づいて計算され得る。このような方法及び計算は、例えば、米国特許第7,608,668号に開示されており、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。特に、ハードセグメント及びソフトセグメントの重量パーセントは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,608,668号の第57欄~第63欄に記載されているように決定されてもよい。
【0056】
エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーは、直鎖状の様式で結合(又は共有結合)した2つ以上の化学的に異なる領域又はセグメント(「ブロック」と称される)を含み、すなわち、それはペンダント又はグラフト化された様式ではなく、重合エチレン性官能基に関して端と端で結合している化学的に区別された単位を含有する。ブロックは、組み込まれたコモノマーの量若しくは種類、密度、結晶化度の量、このような組成物のポリマーに起因し得る結晶子径、立体規則性の種類若しくは度合(アイソタクチック若しくはシンジオタクチック)、レジオ規則性若しくはレジオ不規則性、分枝の量(長鎖分枝若しくは超分枝を含む)、均質性、又は任意のその他の化学的特性若しくは物理的特性が異なる。連続的なモノマー添加、流動触媒、又はアニオン重合技術によって生成されるインターポリマーを含む、従来技術のブロックインターポリマーと比較して、本発明のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーは、一実施形態では、ポリマー多分散性(polydispersity、PDI又はMw/Mn又はMWD)、多分散ブロック長分布、及び/又はそれらの調製に使用される複数の触媒と組み合わせたシャトル剤(複数可)の効果による多分散ブロック数分布の両方の独特の分布によって、特徴付けられる。
【0057】
一実施形態では、エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーは、連続プロセスで生成され、1.7~3.5、又は1.8~3、又は1.8~2.5、又は1.8~2.2の多分散指数(Mw/Mn)を有する。バッチ又はセミバッチプロセスで生成される場合、エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーは、1.0~3.5、又は1.3~3、又は1.4~2.5、又は1.4~2のMw/Mnを有する。
【0058】
なお、エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーは、ポアソン分布ではなく、シュルツ・フロリー分布(Schultz-Flory distribution)に適合するPDI(又はMw/Mn)を有する。本発明のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーは、多分散ブロック分布と、ブロックサイズの多分散分布と、の両方を有する。これにより、改善された識別可能な物理的特性を有するポリマー生成物が形成される。多分散ブロック分布の理論上の利点は、Potemkin,Physical Review E(1998年)57(6),pp.6902-6912、及びDobrynin,J.Chem.Phvs.(1997年)107(21),pp.9234-9238において以前にモデル化され、考察されている。
【0059】
一実施形態では、本発明のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーは、ブロック長の最確分布を有する。
【0060】
本発明の組成物において使用される本エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーは、エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーの別個のサブセットである。本発明のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーは、その他のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーのソフトセグメント中に存在するオクテンの量と比較した場合に、増加したソフトセグメントオクテンの組み込みを示す。2℃未満の本発明のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーのSS-Tmは、その中に存在する増加したソフトセグメントオクテンの組み込みの結果である。2℃未満のSS-Tmをもたらす、ソフトセグメント中の高いオクテンを有する本発明のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーは、2℃超のSS-Tmである、ソフトセグメント中のより低いオクテンを有するエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーと比較して、本発明の組成物に必要とされる柔軟性とベーリー屈曲耐性とのバランスを可能にする。本発明のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーの2℃未満のSS-Tm、又は-30℃~2℃未満のSS-Tm、又は非晶質である(Tmを伴わない)ソフトセグメントは、以後、互換的に「ソフト-OBC」と称される。
【0061】
一実施形態では、エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーは、ハードセグメント及びソフトセグメントを有し、エチレンモノマー及びオクテンコモノマー(及び任意の添加剤)のみからなり、エチレン/オクテンマルチブロックコポリマー(ソフト-OBC)は、以下の特性のうちの1つ、いくつか、又は全てを有する。
(i)2℃未満のSS-Tm、若しくは-30℃~2℃未満のSS-Tm、若しくは非晶質ソフトセグメント、及び/又は
(ii)ソフトセグメント中21モル%~35モル%、若しくは22モル%~30モル%のオクテン、及び/又は
(iii)エチレン/オクテンマルチブロックコポリマー中16モル%超~25モル%のオクテン、及び84モル%~75モル%のエチレン、及び/又は
(iv)-70℃~-60℃、若しくは-70℃~-66℃のTg、及び/又は
(v)0.855g/cc~0.880g/ccの密度、及び/又は
(vi)115℃~125℃のTm、及び/又は
(vii)0.1g/10分~6.0g/10分のメルトインデックス(I2)、及び/又は
(viii)1.7~3.5のMw/Mn、及び/又は
(ix)ブロックの多分散分布及びブロックサイズの多分散分布。
【0062】
B.織物最下層
本発明の物品は、最上層に加えて織物最下層を含む。「織物」とは、天然繊維、人工繊維、及びこれらの組み合わせのネットワークから構成された可撓性材料である。織物としては、生地及び布が挙げられる。織物は、織られたもの、不織のもの、編まれたもの、平織のもの、又はスパンボンドのものであってもよい。天然繊維の非限定的な例としては、綿、羊毛、麻、絹、及びこれらの組み合わせが挙げられる。人工繊維の非限定的な例としては、ポリエステル(polyesters、PET)、ポリアミド(ナイロン)、アクリル、ポリオレフィン、ポリウレタン(例えば、スパンデックス材料)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0063】
一実施形態では、織物は、不織織物である。
【0064】
一実施形態では、織物は、マイクロファイバー不織織物である。「マイクロファイバー」織物は、直径が100マイクロメートル以下の繊維を含有する生地である。
【0065】
一実施形態では、織物は、0.20g/cc、又は0.25g/cc~0.27g/cc、又は0.30g/cc、又は0.31g/cc、又は0.32g/cc、又は0.35g/cc、又は0.40g/cc、又は0.50g/ccの密度を有する。
【0066】
一実施形態では、織物は、0.1デニール、又は0.3デニール、又は1デニール、又は2デニール、又は3デニール~4デニール、又は5デニール、又は6デニール、又は7デニール、又は8デニール、又は9デニール、又は10デニールのサイズを有する繊維を含有する。別の実施形態では、織物は、10デニール以下のサイズを有する繊維を含有する。
【0067】
一実施形態では、織物は、0.2mm、0.5mm、又は1.0mm~1.5mm、又は2.0mmの厚さを有する。
【0068】
一実施形態では、織物は、以下の特性のうちの1つ、いくつか、又は全てを有する不織織物である。
(a)0.20g/cc、若しくは0.25g/cc~0.32g/cc、若しくは0.35g/ccの密度、及び/又は
(b)1デニール、若しくは3デニール~5デニールの繊維サイズ、及び/又は
(c)0.2mm、0.5mm、若しくは1.0mm~1.5mm、若しくは2.0mmの厚さ。
【0069】
一実施形態では、織物は、ポリエステル、ポリエチレン及び/又はポリプロピレンから構成される生地である。生地は、予備積層処理、例えば、コロナ表面処理、含浸等を受け、最上層は、最上層と最下層との間に介在層又は介在構造が存在しないように最上層が最下層に直接接触するように、生地に熱積層される。
【0070】
織物は、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含んでもよい。
【0071】
一実施形態では、物品は、(A)最上層及び(B)織物を含有する最下層を含有する。最上層は、最下層に直接接触する。最上層(A)は、(i)51重量%~90重量%、又は55重量%~80重量%、又は55重量%~65重量%のプロピレン/エチレンコポリマーを含有する。プロピレン/エチレンコポリマーは、0.85g/cc~0.87g/ccの密度、及び5g/10分~30g/10分、又は8g/10分~30g/10分のメルトフローレートを有する。最上層(A)はまた、(ii)49重量%~10重量%、若しくは45重量%~20重量%、若しくは45重量%~35重量%の、2℃未満のSS-Tm、又は-30℃~2℃未満のSS-Tmを有するソフト-OBC、あるいは非晶質ソフトセグメントを含む。ソフト-OBCは、ソフトセグメント中に21モル%~35モル%のオクテン、又は22モル%~30モル%のオクテンを含む。最上層は、60,000超、又は65,000~150,000、又は75,000~150,000、又は80,000~150,000、又は87,000~150,000、又は90,000~140,000のベーリー屈曲耐性値を有する。最上層の組成物は、80未満、又は55~75のショアA硬度値を有する。
【0072】
一実施形態では、物品は、(A)最上層及び(B)織物を含有する最下層を含有する。最上層は、最下層に直接接触する。最上層(A)は、(i)51重量%~90重量%、又は55重量%~80重量%、又は55重量%~65重量%のプロピレン/エチレンコポリマーを含有する。プロピレン/エチレンコポリマーは、0.85g/cc~0.87g/ccの密度、及び5g/10分~30g/10分、又は8g/10分~30g/10分のメルトフローレートを有する。最上層(A)はまた、
(a)2℃未満のSS-Tm、又は-30℃~2℃未満のSS-Tm、又は非晶質ソフトセグメントを有する第1のソフト-OBC、及び
(b)第1のソフト-OBCとは異なる第2のソフト-OBCであって、2℃未満のSS-Tm、又は-30℃~2℃未満のSS-Tm、又は非晶質ソフトセグメントを有する第2のソフト-OBCを含む。第1ソフト-OBC及び第2ソフト-OBCはそれぞれ、ソフトセグメント上に21モル%~35モル%、又は22モル%~30モル%のオクタンを含む。構成成分(a)及び構成成分(b)を合わせた量は、最上層(A)の49重量%~10重量%、又は45重量%~20重量%、又は45重量%~35重量%の量で存在する。重量パーセントは、最上層(A)の総重量に基づく。最上層(A)は、60,000超、又は65,000~150,000、又は75,000~150,000、又は80,000~150,000、又は87,000~150,000、又は90,000~140,000のベーリー屈曲耐性値を有する。最上層の組成物は、80未満、又は55~75のショアA硬度値を有する。
【0073】
C.中間発泡体層
一実施形態では、物品は、最上層(A)及び最下層(B)に加えて、中間発泡体層(C)を含む。中間層(C)は、最上層(A)と最下層(B)との間に配置されている。中間発泡体層(C)は、最上層(A)及び/又は最下層(B)と直接接触する。一実施形態では、中間発泡体層(C)は、最上層(A)に直接接触し、最下層(B)に直接接触する。中間発泡体層(C)は、(i)51重量%~90重量%のプロピレン系ポリマーと、(ii)10重量%~49重量%の、2℃未満のSS-Tmを有するソフト-OBCと、を含む組成物から構成される。重量パーセントは、中間発泡体層(C)の総重量に基づく。
【0074】
一実施形態では、中間発泡体層(C)は、任意の従来の混合装置、例えば、バンバリーニーダ(Banbury kneader)又は任意の好適な押出成形機中で、実質的に均質な混合物を生成する条件下及び時間にわたって個々の構成成分を互いにブレンド又は配合し、従来の装置及び条件を使用して混合物をカレンダー加工してシートを形成し、次に、従来の積層装置及び条件を使用してシートを最上層及び/又は織物最下層に熱積層することによって、調製される。中間発泡体層は、典型的には、それが最上層(A)及び織物最下層(B)に積層された後まで、発泡条件にさらされない。発泡条件は、非常に微細で規則的な気泡が層全体にわたって形成されるようなものである。典型的な発泡条件としては、200℃以上のオーブン温度及び60~120秒のオーブン滞留時間が挙げられる。発泡体効率[すなわち、元の(非発泡)体積に対する発泡体積の比]は、厚さ比に基づき、典型的には、1.5~5、又は2~3である。
【0075】
一実施形態では、物品は、(A)最上層及び(B)織物を含有する最下層、並びに(C)中間発泡体層を含有する。発泡体層(C)は、最上層(A)と織物最下層(B)との間にある。最上層(A)は中間発泡体層(C)と直接接触し、中間発泡体層(C)は織物最下層(B)と直接接触する。最上層(A)及び中間発泡体層(C)はそれぞれ、(i)51重量%~90重量%、又は55重量%~80重量%、又は55重量%~65重量%のプロピレン/エチレンコポリマーを含有する。最上層(A)中のプロピレン/エチレンコポリマー及び中間発泡体層(C)中のプロピレン/エチレンコポリマーは、同じであっても異なっていてもよい。最上層(A)中のプロピレン/エチレンコポリマー及び中間発泡体層(C)中のプロピレン/エチレンコポリマーはそれぞれ、0.85g/cc~0.87g/ccの密度、及び5g/10分~30g/10分、又は8g/10分~30g/10分のメルトフローレートを有する。最上層(A)及び中間発泡体層(C)はそれぞれ、(ii)49重量%~10重量%、又は45重量%~20重量%、又は45重量%~35重量%のソフト-OBCを含有する。層(A)中のソフト-OBC及び中間発泡体層(C)中のソフト-OBCは、同じであっても異なっていてもよい。最上層(A)中のソフト-OBC及び中間発泡体層(C)中のソフト-OBCはそれぞれ、2℃未満のSS-Tm、又は-30℃~2℃未満のSS-Tm、又は非晶質ソフトセグメントを有する。最上層(A)中のソフト-OBC及び中間発泡体層(C)中のソフト-OBCはそれぞれ、ソフトセグメント中に21モル%~35モル%、又は22モル%~30モル%のオクテンを含有する。
【0076】
一実施形態では、物品は、(A)最上層、(B)織物を含有する最下層、及び(C)中間発泡体層を含有する。発泡体層(C)は、最上層(A)と織物最下層(B)との間にある。最上層(A)は中間発泡体層(C)と直接接触し、中間発泡体層(C)は最下層と直接接触する。最上層(A)及び中間発泡体層(C)はそれぞれ、(i)51重量%~90重量%、又は55重量%~80重量%、又は55重量%~65重量%のプロピレン/エチレンコポリマーを含有する。最上層(A)中のプロピレン/エチレンコポリマー及び中間発泡体層(C)中のプロピレン/エチレンコポリマーは、同じであっても異なっていてもよい。最上層(A)及び中間発泡体層(C)中のプロピレン/エチレンコポリマーはそれぞれ、0.85g/cc~0.87g/ccの密度、及び5g/10分~30g/10分のメルトフローレートを有する。最上層(A)はまた、(ii)10重量%~49重量%の、2℃未満のSS-Tm又は-30℃~2℃未満のSS-Tmを有するソフト-OBCを含む。中間発泡体層(C)はまた、
(a)2℃未満のSS-Tm、又は-30℃~2℃未満のSS-Tm、又は非晶質ソフトセグメントを有する第1のソフト-OBC、及び
(b)第1のソフト-OBCとは異なる第2のソフト-OBCであって、2℃未満のSS-Tm、又は-30℃~2℃未満のSS-Tm、又は非晶質ソフトセグメントを有する第2のソフト-OBCを含む。最上層(A)中のソフト-OBC、中間発泡体層(C)中の第1のソフト-OBC、中間発泡体層(C)中の第2のソフト-OBCはそれぞれ、ソフトセグメント中に21モル%~35モル%、又は22モル%~30モル%のオクテンを含有する。合わされた構成成分(a)及び構成成分(b)は、最上層の49重量%~10重量%、又は45重量%~20重量%、又は45重量%~35重量%の量で、中間発泡体層(C)中に存在する。重量パーセントは、中間発泡体層(C)の総重量に基づく。
【0077】
D.添加剤
最上層及び/又は中間発泡体層は、1つ以上の任意の添加剤を含んでもよい。好適な添加剤の非限定的な例としては、酸化防止剤、硬化剤、架橋助剤、増強溶剤及び抑制剤、加工助剤、紫外線吸収剤又は安定剤、帯電防止剤、核形成剤、スリップ剤、可塑剤、潤滑剤、粘度調整剤、粘着付与剤、粘着防止剤、界面活性剤、エキステンダー油、酸掃去剤、顔料及び/又は染料、並びに金属不活性化剤が挙げられる。存在する場合、添加剤(複数可)は、各それぞれの個々の層-最上層及び中間発泡体層の総重量に基づいて、0.01重量%~10重量%未満、又は0.1重量%~5重量%未満、又は0.1重量%~1.0重量%未満の量で存在する。
【0078】
一実施形態では、最上層(A)及び織物最下層(B)を有する2層物品、並びに/又は最上層(A)、織物最下層(B)、及び中間発泡体層(C)を有する3層物品は、プライマー層及びトップコーティング層を更に含む。トップコーティング層が物品の最外層であるように、プライマー層は最上層に直接接触し、トップコーティング層はプライマー層に直接接触する。プライマー層は、最上層にプライマー(例えば、塩素化ポリプロピレン(chlorinated polypropylene、CPP)を適用することによって形成される。続いて、ポリウレタンをプライマー層に適用する。織物最下層は、物品(すなわち、合成皮革)の成形を維持し、物品に機械的特性を提供する。織物最下層はまた、中間発泡体層(存在する場合)の発泡の安定性を提供する。中間発泡体層は、存在する場合、物品の多層構造に可撓性、緩衝性、柔軟性、断熱性、軽量性、及び手触りを提供する。最上層は、紫外線、熱及びその他の風化因子に対する保護を提供する。最上層はまた、印刷、エンボス加工、色及び/又は光沢などの可視機能性を有してもよい。トップコーティング層の目的は、最上層に保護を提供すること、並びに引掻き傷、傷及び摩耗から物品を保護すること、テキスト及びデザインのための表面を提供すること、並びに物品に審美的に心地よい仕上げを与えること、である。プライマー層の目的は、トップコーティング層の最上層への付着を容易にすることである。
【0079】
本物品は、合成皮革(すなわち、POE皮革)として多くの有用な用途を見出す。したがって、本物品の非限定的な例としては、衣類(シャツ、ブラウス、スラックス、スカート、ドレス、コート、ジャケット、靴、ブーツ、帽子)、財布、手荷物、自動車内装(自動車シート、内装ドアパネル、ダッシュボード)、及び家具(椅子、ソファ)が挙げられる。
【0080】
限定するものではなく例として、本開示のいくつかの実施形態を、以下の実施例において詳述する。
【実施例】
【0081】
本発明の実施例及び比較試料で使用される材料を、下記の表1A~表1Cに示す。
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
ブラベンダ混合及び圧縮成形
設定温度180℃、ロータ速度30rpmで、POE樹脂をブラベンダミキサに供給した。2分後、ロータ速度を50rpmに上げた。混合を50rpmで更に6分間続けた。化合物を収集し、次の使用のために平らなパイ形状にプレスした。
【0086】
ブラベンダ混合からの化合物を圧縮成形して、厚さ1.1mmのプラークにした。化合物を180℃で5分間予熱し、次に、脱気し、続いて180℃で更に5分間のプレスプロセスを行った。室温まで下げた後、プラークを型から取り出した。得られたプラークを更に試験に必要な形状及びサイズに切断した。
【0087】
表2A~表2Bは、本発明の実施例(IE)及び比較試料(CS)の組成物及び性能を提供する。
【0088】
【0089】
【0090】
表2A~表2Bは、本発明の実施例1~実施例7(IE1~IE7)及び比較試料1~比較試料19(CS1~CS19)の組成及び特性を提供する。本発明の各実施例は、プロピレン/エチレンコポリマー(Versify樹脂)及びソフト-OBCを含む。比較試料は、純プロピレン/エチレンコポリマー(Versify樹脂)、プロピレン/エチレンコポリマー(Versify樹脂)とその他のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマー(INFUSE樹脂)とのブレンド、エチレン/オクテンコポリマー(ENGAGE樹脂)、及び1種のEPDM(NORDEL樹脂)、並びにプロピレン/エチレンコポリマー(Versify4301樹脂)と50重量%以上のソフト-OBCとのブレンドを含む。
【0091】
純Versify3300樹脂(CS1)及び純Versify4301樹脂(CS2)はそれぞれ、許容可能なベーリー屈曲耐性値を有する(各樹脂は、ベーリー屈曲耐性値>100kを有する)。しかしながら、純Versify3300樹脂及び純Versify4301はそれぞれ、80超のショアA硬度値を有し、これは、合成皮革用途に適したショアA硬度値の上限を超え、純Versify3300及び純Versify4301を合成皮革用途に適さないものにする。
【0092】
IE1~IE7では、3つの異なるソフト-OBCをVersify3300樹脂及びVersify4301樹脂とブレンドした。IE1~IE7中のソフト-OBC含量は、組成物の総重量に基づいて20重量%~45重量%の範囲である。表2A~表2Bは、IE1~IE7についてのベーリー屈曲耐性値が、純Versify3300樹脂(CS1)及び純Versify4301樹脂(CS2)についてのベーリー屈曲耐性値と同じであるか、又は類似していることを示す。しかしながら、表2A~表2Bは、IE1~IE7が、Versify3300樹脂(CS1)及び純Versify4301樹脂(CS2)と比較して、柔軟性の改善(80未満のショアA値、及び30MPa未満の曲げ弾性率)を提示することを示す。IE1~IE7の改善された柔軟性は、ソフト-OBCの存在に起因する。
【0093】
CS17及びCS18では、ソフト-OBC1(INFUSE9077樹脂)の含有量をそれぞれ50%及び60%に増加させたが、これは、不十分なベーリー屈曲耐性値、すなわち、60,000未満のベーリー屈曲耐性値をもたらした(CS17~19k、CS18~17k)。ソフト-OBCが50重量%未満である場合、ソフト-OBCは不連続相であり、プロピレン/エチレンコポリマーは連続相であり、それによって、プロピレン/エチレンコポリマー(Versify樹脂)は主に、ベーリー屈曲に抵抗することに関与する。特定の理論に束縛されるものではないが、転相は、組成物が50重量%以上のソフト-OBCを含有する場合に発生し、それによって、ソフト-OBCは、
図1に示すような連続相になると考えられる。
図1(左)は、IE7(40重量%のソフト-OBC1)のSEMを示し、
図1(右)は、CE18(60重量%のソフト-OBC1)を示し、各組成物は、100重量%までの補足量のVersify4301(明るい領域)樹脂を含有する。ソフト-OBCが連続相(暗い領域)である場合(CS18、
図1右)、連続相であるソフト-OBCはプロピレン/エチレンコポリマー(Versify樹脂)よりも屈曲亀裂を受けやすいので、ベーリー屈曲耐性値は低下する(CS18のベーリー屈曲耐性値17,000)。
【0094】
表2Bは、プロピレン/エチレンコポリマー(Versify3300樹脂)とブレンドされたその他のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマー(INFUSE樹脂)及びエチレン/オクテンコポリマー(ENGAGE樹脂)を示す(CS3~CS16を参照のこと)。CS3~CS16のそれぞれは、許容できないほど低いベーリー屈曲耐性値、すなわち、60,000未満のベーリー屈曲耐性値を示す。
【0095】
特定の理論に束縛されるものではないが、ソフト-OBCは、プロピレン/エチレンコポリマーにおける同じ添加量で、その他のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーのドメインサイズと比較して、より小さいドメインサイズをもたらすと考えられる。
図2は、その他のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマー(40重量%のINFUSE9107樹脂を有するCS6)のドメインサイズと比較してより小さいドメインサイズを有するソフト-OBC(40重量%のソフト-OBC1を有するIE1)を示す。
【0096】
要約すると、プロピレン/エチレンコポリマー(Versify樹脂)と10~49重量%のソフト-OBCとのブレンドが、60,000超のベーリー屈曲耐性値及び80未満のショアA硬度値を有する組成物を提供することが、予想外に見出された。逆に、プロピレン/エチレンコポリマー(Versify樹脂)とその他のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマー(INFUSE樹脂)又はエチレン/オクテンコポリマー(ENGAGE樹脂)とのブレンドは、ベーリー屈曲耐性値の低下(60,000未満)をもたらした。
【0097】
本開示は、本明細書に含まれる実施形態及び例示に限定されず、実施形態の一部、及び異なる実施形態の要素の組み合わせを含むそれらの実施形態の変更された形態を、以下の特許請求の範囲に該当する範囲で含むことが、特に意図されている。
【国際調査報告】