(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】抗ネクチン-4抗体エキサテカンコンジュゲート
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240403BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240403BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240403BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20240403BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240403BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240403BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240403BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240403BHJP
A61K 47/65 20170101ALI20240403BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20240403BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C07K16/30
A61P43/00 111
A61K47/68
A61K39/395 L
A61K39/395 M
A61K39/395 T
A61K39/395 Y
A61K39/395 N
A61P35/00
A61K47/65
A61K47/60
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561116
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(85)【翻訳文提出日】2023-09-29
(86)【国際出願番号】 EP2022058629
(87)【国際公開番号】W WO2022207825
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523374873
【氏名又は名称】エマージェンス セラピューティクス アーゲー
(71)【出願人】
【識別番号】316011983
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ デクス-マルセイユ
(71)【出願人】
【識別番号】507002516
【氏名又は名称】アンセルム(アンスティチュート・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル)
(71)【出願人】
【識別番号】503196857
【氏名又は名称】アンスティテュ・ジャン・パオリ・エ・イレーヌ・カルメッテス
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT JEAN PAOLI & IRENE CALMETTES
【住所又は居所原語表記】232 Boulevard Sainte-Marguerite,F-13009 Marseille,France
(71)【出願人】
【識別番号】505179971
【氏名又は名称】サントル・ナシオナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シアンティフィーク(セーエヌエールエス)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE(CNRS)
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】エラン、ジャック
(72)【発明者】
【氏名】ロスピス、フロランス
(72)【発明者】
【氏名】プレヴィユ、グザヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】オリーヴ、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ロペス、マルク
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB21
4C076CC27
4C076CC41
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4C076EE41
4C076EE59
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4C085AA14
4C085BB33
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4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4H045AA11
4H045BA72
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片を含む抗体-薬物コンジュゲートであって、該モノクローナル抗体またはその抗原結合断片がネクチン-4に結合し、該薬物がトポイソメラーゼI阻害剤、特にエキサテカンである、抗体-薬物コンジュゲートに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノクローナル抗体またはその抗原結合断片および薬物を含む抗体-薬物コンジュゲートであって、該モノクローナル抗体またはその抗原結合断片がネクチン-4に結合し、該薬物がトポイソメラーゼI阻害剤である、抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項2】
キメラ抗体、多重特異性抗体、特に二重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはそれらの抗原結合断片から選択される抗体を含む、請求項1の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項3】
クラスIgG、例えば、サブクラスIgG1、IgG2、IgG3若しくはIgG4、クラスIgM、クラスIgAの抗体から選択される抗体、またはその抗原結合断片、または一本鎖抗体、または抗体Fv断片を含む請求項1または2の抗体-薬物コンジュゲートであって、該抗体が任意に、低下したエフェクター機能を有する、例えば、Fc受容体への低下した結合を有する、重鎖定常ドメインを有する、抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項4】
ヒト分化ケラチノサイトが発現するネクチン-4と比較して、腫瘍が発現するネクチン-4に対してより高い親和性で特異的に結合する抗体、またはその抗原結合断片を含む、請求項1~3のいずれか一項の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項5】
(a)相補性決定領域(CDR)CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む可変重鎖(VH)領域であって、
(i)該CDR-H1が、配列番号1若しくは7、88、96若しくは104に係るアミノ酸配列、
または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含み、
(ii)該CDR-H2が、配列番号2若しくは8、89、97若しくは105に係るアミノ酸配列、
または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含み、
(iii)該CDR-H3が、配列番号3若しくは9、90、98若しくは106に係るアミノ酸配列、
または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含む、VH領域、
並びに任意に
(b)可変軽鎖(VL)領域、特に相補性決定領域(CDR)CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含むVL領域であって、
(i)該CDR-L1が、配列番号4若しくは10、92、100若しくは108に係るアミノ酸配列、
または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含み、
(ii)該CDR-L2が、配列番号5若しくは11、93、101若しくは109に係るアミノ酸配列、または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含み、
(iii)該CDR-L3が、配列番号6若しくは12、94、102若しくは110に係るアミノ酸配列、または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含む、VL領域
を含む、抗体またはその抗原結合断片を含む、請求項1~4のいずれか一項の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項6】
(a)(i)配列番号1のCDR-H1、配列番号2のCDR-H2、および配列番号3のCDR-H3を含むVH領域、並びに任意に
(ii)配列番号4のCDR-L1、配列番号5のCDR-L2、および配列番号6のCDR-L3を含むVL領域、
または
(b)(i)配列番号7のCDR-H1、配列番号8のCDR-H2、および配列番号9のCDR-H3を含むVH領域、並びに任意に
(ii)配列番号10のCDR-L1、配列番号11のCDR-L2、および配列番号12のCDR-L3を含むVL領域、
または
(c)(i)配列番号88のCDR-H1、配列番号89のCDR-H2、および配列番号90のCDR-H3を含むVH領域、並びに任意に
(ii)配列番号92のCDR-L1、配列番号93のCDR-L2、および配列番号94のCDR-L3を含むVL領域、
または
(d)(i)配列番号96のCDR-H1、配列番号97のCDR-H2、および配列番号98のCDR-H3を含むVH領域、並びに任意に
(ii)配列番号100のCDR-L1、配列番号101のCDR-L2、および配列番号102のCDR-L3を含むVL領域、
または
(e)(i)配列番号104のCDR-H1、配列番号105のCDR-H2、および配列番号106のCDR-H3を含むVH領域、並びに任意に
(ii)配列番号108のCDR-L1、配列番号109のCDR-L2、および配列番号110のCDR-L3を含むVL領域
を含む、抗体またはその抗原結合断片を含む、請求項1~5のいずれか一項の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項7】
(a)配列番号13、91、99若しくは107に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(b)VL領域、特に配列番号14、95、103若しくは111に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域
を含む、抗体またはその抗原結合断片を含む、請求項1~6のいずれか一項の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項8】
(a)(i)配列番号13に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号14に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、
あるいは
(b)(i)配列番号91に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号95に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、
あるいは
(c)(i)配列番号99に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号103に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、
あるいは
(d)(i)配列番号107に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号111に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域
を含む、抗体またはその抗原結合断片を含む、請求項1~7のいずれか一項の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項9】
(a)相補性決定領域(CDR)CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む可変重鎖(VH)領域であって、
(i)該CDR-H1が、配列番号21、35、49若しくは63に係るアミノ酸配列、
または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含み、
(ii)該CDR-H2が、配列番号22、36、50若しくは64に係るアミノ酸配列、
または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含み、
(iii)該CDR-H3が、配列番号23、37、51若しくは65に係るアミノ酸配列、
または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含む、VH領域、
並びに任意に
(b)可変軽鎖(VL)領域、特に相補性決定領域(CDR)CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含むVL領域であって、
(i)該CDR-L1が、配列番号24、38、52若しくは66に係るアミノ酸配列、
または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含み、
(ii)該CDR-L2が、配列番号25、39、53若しくは67に係るアミノ酸配列、
または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含み、
(iii)該CDR-L3が、配列番号26、40、54若しくは68に係るアミノ酸配列、
または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含む、VL領域
を含む、抗体またはそれに由来する抗原結合断片を含む、先行する請求項のいずれか一項の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項10】
(a)相補性決定領域(CDR)CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む可変重鎖(VH)領域であって、
(i)該CDR-H1が、配列番号72若しくは80に係るアミノ酸配列、
または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含み、
(ii)該CDR-H2が、配列番号73若しくは81に係るアミノ酸配列、
または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含み、
(iii)該CDR-H3が、配列番号74若しくは82に係るアミノ酸配列、
または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含む、VH領域、
並びに任意に
(b)可変軽鎖(VL)領域、特に相補性決定領域(CDR)CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含むVL領域であって、
(i)該CDR-L1が、配列番号75若しくは84に係るアミノ酸配列、
または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含み、
(ii)該CDR-L2が、配列番号76若しくは85に係るアミノ酸配列、
または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含み、
(iii)該CDR-L3が、配列番号77若しくは86に係るアミノ酸配列、
または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含む、VL領域
を含む、抗体またはそれに由来する抗原結合断片を含む、請求項1~3のいずれか一項の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項11】
トポイソメラーゼI阻害剤が、カンプトテシンまたはその類似体であり、該トポイソメラーゼI阻害剤が、特にエキサテカンまたはデルクステカンである、請求項1~10のいずれか一項の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項12】
約2:1から約16:1、具体的には約4:1から約10:1およびより具体的には約6:1から約8:1の薬物-抗体/抗体断片モル比(DAR)を有する、請求項1~11のいずれか一項の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項13】
薬物が、抗体上の反応性アミノ酸残基、例えば、アミノ基、ヒドロキシ基若しくはチオール基を含む側鎖を有するアミノ酸残基、または抗体グリカン構造中の反応性基とコンジュゲートしており、該薬物が特に、該抗体またはその抗原結合断片上のシステイン残基の側鎖中の反応性チオール基とコンジュゲートしている、請求項1~12のいずれか一項の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項14】
薬物が、リンカーを介して抗体またはその抗原結合断片にコンジュゲートしており、特に、該リンカーが、特に切断可能なリンカーである、および/または該リンカーが、特に親水性ポリサルコシンリンカー、少なくとも1個のエチレングリコール単位を含む親水性リンカー、高極性スペーサーを含むリンカー、またはオリゴペプチドリンカーである、請求項1~13のいずれか一項の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項15】
リンカーが、親水性ポリサルコシンリンカーおよび少なくとも1個のエチレングリコール単位であり、ここで、該リンカーが、グリコシダーゼによる切断を受け、特にグルクロニダーゼによる切断を受ける、請求項14の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項16】
リンカーが、例えば、約8~12個のサルコシン単位、および少なくとも1個のエチレングリコール単位、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、若しくは10個またはそれ以上のエチレングリコール単位を含む親水性ポリサルコシンリンカーであり、ここで、該リンカーが、グリコシダーゼによる切断を受け、特にグルクロニダーゼによる切断を受ける、請求項14または15の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項17】
リンカーが、10個のサルコシン単位および2個のエチレングリコール単位を含む親水性ポリサルコシンリンカーである、請求項14~16のいずれか一項の抗体-薬物コンジュゲート、
【請求項18】
リンカーが、グルクロニダーゼによる切断を受ける、請求項14~17のいずれか一項の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項19】
リンカーが、チオール反応性基、特にマレイミド基を介して抗体またはその抗原結合断片上のシステイン残基に結合している、請求項14~18のいずれか一項の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項20】
モノクローナル抗体またはその抗原結合断片を含む抗体-薬物コンジュゲートであって、該モノクローナル抗体またはその抗原結合断片がネクチン-4に結合し、該薬物がトポイソメラーゼI阻害剤である、抗体-薬物コンジュゲートである活性剤、並びに薬学的に許容される担体および/または賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項21】
薬剤における、特にヒトの薬剤における、請求項1~19のいずれか一項の抗体-薬物コンジュゲートまたは請求項19の医薬組成物の使用。
【請求項22】
ネクチン-4関連障害の予防および/または治療のための、特にネクチン-4陽性がんの予防および/または治療のための、特に膀胱がん、尿路上皮がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、肝臓がん、甲状腺がん、乳がん、膵臓がん、肺がん、卵巣がん、頭頸部がんおよび/または食道がんから選択されるがんの予防および/または治療のための方法における、請求項1~19のいずれか一項の抗体-薬物コンジュゲートまたは請求項19の医薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片を含む抗体-薬物コンジュゲートであって、該モノクローナル抗体またはその抗原結合断片がネクチン-4に結合し、該薬物がトポイソメラーゼI阻害剤、特にエキサテカンまたはデルクステカンである、抗体-薬物コンジュゲートに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ネクチンは、上皮および内皮の接合部を組織化するのを助ける接着分子であり、単純ヘルペスウイルス、麻疹ウイルスおよびポリオウイルスの進入のための受容体として役立つ。
【0003】
それらは、免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、ポリオウイルス受容体(PVR/CD155)のホモログであり、このため、ポリオウイルス受容体結合タンパク質(PRR)とも呼ばれてきた。現在までに、PVR/CD155、ネクチン-1/PRR1/CD111、ネクチン-2/PRR2/CD112、ネクチン-3/PRR3およびネクチン-4/PRR4の5個のメンバーが述べられている。それらの細胞外ドメインは、それらのアミノ酸配列において30%と55%との間の同一性を共有する、3個の免疫グロブリン様(Ig)-タイプV、C、Cドメインで構成されている。
【0004】
ネクチン/PRR分子の発現は一般に、より限定された発現プロファイルを示すネクチン-3および-4を例外として、造血細胞、神経細胞、内皮細胞および上皮細胞を含む組織において広範囲に及ぶ。
【0005】
ネクチン-4は、特に興味深い標的である。それは、胎児の発育中に発現するが、その発現は、ネクチンファミリーの他のメンバーの発現と比較して、成体組織においては減少し、非常に制限されている。ネクチン-4は、膀胱がんの83%、乳がん(主にトリプルネガティブおよびERBB2+)の78%、膵臓がんの71%、肺がんの55%、卵巣がんの57%、頭頸部がんの59%、および食道がんの55%において、腫瘍関連抗原である。
【0006】
これらの病態におけるネクチン-4の発現は、おそらくは、遊走、増殖および転移の形成のより高い能力をインビトロで腫瘍細胞に付与するネクチン-4の能力の結果として、予後不良と関連している。正常組織においては、ネクチン-4は、皮膚、唾液腺、膀胱および食道において検出されるのみである。進行性尿路上皮がんの二次治療についてのエンホルツマブベドチンの保健当局による最近の承認は、がんの治療についての標的としてのネクチン-4の検証を完了した。
【発明の概要】
【0007】
本発明の第1の態様は、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片を含む抗体-薬物コンジュゲートであって、該モノクローナル抗体またはその抗原結合断片がネクチン-4に結合し、該薬物がトポイソメラーゼI阻害剤、特にエキサテカンまたはデルクステカンである、抗体-薬物コンジュゲートである。
【0008】
本発明のさらなる態様は、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片を含む抗体-薬物コンジュゲートであって、該モノクローナル抗体またはその抗原結合断片がネクチン-4に結合し、該薬物がトポイソメラーゼI阻害剤、特にエキサテカンである、抗体-薬物コンジュゲートである活性剤、並びに薬学的に許容される担体および/または賦形剤を含む医薬組成物である。
【0009】
本発明のさらなる態様は、薬剤における、特にヒトの薬剤における、上記の抗体-薬物コンジュゲートまたは医薬組成物の使用である。
【0010】
本発明のさらなる態様は、ネクチン-4関連障害の予防および/または治療のための、特にネクチン-4陽性がんの予防および/または治療のための方法における、上記の抗体-薬物コンジュゲートまたは医薬組成物の使用である。
【0011】
本発明のさらなる態様は、がんの予防および/または治療のための、特に、膀胱がん、尿路上皮がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、肝臓がん、甲状腺がん、乳がん、膵臓がん、肺がん、卵巣がん頭頸部がんおよび/または食道がんから選択されるがんの予防および/または治療のための方法における、上記の抗体-薬物コンジュゲートまたは医薬組成物の使用である。
【0012】
本発明のさらなる態様は、それを必要とする対象に治療的に有効な量の上記の抗体-薬物コンジュゲートまたは医薬組成物を投与することを含む、ネクチン-4関連障害の予防および/または治療のための、特にネクチン-4陽性がんの予防および/または治療のための方法である。
【0013】
本発明のさらなる態様は、それを必要とする対象に治療的に有効な量の上記の抗体-薬物コンジュゲートまたは医薬組成物を投与することを含む、がんの予防および/または治療のための、特に、膀胱がん、尿路上皮がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、肝臓がん、甲状腺がん、乳がん、膵臓がん、肺がん、卵巣がん頭頸部がんおよび/または食道がんから選択されるがんの予防および/または治療のための方法である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
本発明者らは、抗ネクチン-4抗体のエキサテカンなどのトポイソメラーゼ-I阻害剤とのコンジュゲートが、抗ネクチン-4抗体およびモノメチルアウリスタチンE(MMAE)のコンジュゲートである市販の抗体エンホルツマブベドチンと比較して、改善された抗がん活性を実証することを見出した。従って、本発明の抗ネクチン-4抗体コンジュゲートは、ネクチン-4陽性がんなどのネクチン-4関連障害の改善された治療を可能にする。
【0015】
特定の実施態様においては、本発明の抗体-薬物コンジュゲートは、ヒトケラチノサイト、例えば、インビトロで分化したネクチン-4発現ケラチノサイトが発現するネクチン-4と比較して、腫瘍が発現するネクチン-4に対してより高い親和性で特異的に結合する、新規な抗ネクチン-4抗体を含む。好ましい例は、モノクローナル抗体(mAb)15A7.5、9A2.7、3A1.4および/または8F06である。
【0016】
特に好ましい例は、モノクローナル抗体(mAb)15A7.5またはそれに由来する抗体である。インビトロでは、この選択性は、腫瘍細胞と比較して、および同じアッセイにおけるHA22 mAb(エンホルツマブ)の活性を参照して、mAb 15A7.5に、ケラチノサイトに対するより低い結合親和性、内部移行および/または細胞毒性活性を提供する。
【0017】
特に、本発明のコンジュゲートは、モノクローナル抗ネクチン-4抗体15A7.5 mAbに由来するヒト化抗体を含む。
【0018】
インビボでは、ケラチノサイトに対するこの低い結合能は、皮膚におけるより低い吸収率のため、mAb 15A7.5に、より長い半減期を与える。
【0019】
異種移植マウスモデルにおいては、樹立した腫瘍の、エキサテカンと結合させた4mg/kgのmAbの単回静脈内投与での治療は、迅速かつ長続きする退縮に至った。
【0020】
より具体的には、本発明者らは、そのような構成において、抗体-エキサテカンコンジュゲートが、エンホルツマブベドチンのサロゲート、すなわち、市販のエンホルツマブベドチンと区別することができない第三者によって非GMP法を使用して製造されたエンホルツマブベドチン製品よりも効率的であることを実証する。
【0021】
抗体
本発明のコンジュゲートの抗体は、特定のアミノ酸配列を特徴とするモノクローナル抗体(mAb)またはモノクローナル抗体断片である。別に示さなければ、用語「モノクローナル」は、単一種、すなわち、単一アミノ酸組成の抗体または抗体断片を指す。
【0022】
本明細書において提供する抗体は、好ましくは、ネクチン-4に対する特異的な結合を示し、ヒトネクチンファミリーの他のタンパク質、特にネクチン-1、並びに/またはラットおよび/若しくはマウスからのネクチン-4などのげっ歯類のネクチン-4に対しては本質的な反応性または交差反応性を何ら示さない。
【0023】
本発明の抗体の抗原結合部位は、重鎖可変ドメイン/領域(VH)および/若しくは抗体軽鎖可変ドメイン/領域(VL)、またはVH/VLの対を含む。
【0024】
用語「抗原結合部位」は、リガンド(例えば、抗原、すなわち、ネクチン-4、またはその抗原断片)が実際に結合する、抗体由来の抗体分子の領域(複数可)を意味する。
【0025】
可変ドメイン/領域は、抗体を抗原に結合させることに直接関与する、軽鎖および重鎖の対のそれぞれを意味する。重鎖の可変ドメインは、「VH」と略し、軽鎖の可変ドメインは、「VL」と略す。
【0026】
本発明に係る抗体の抗原結合部位は、抗原に対する結合部位の親和性にさまざまな程度で寄与する6個の相補性決定領域(CDR)を含有し得る。3個の重鎖可変ドメインCDR(CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3)および3個の軽鎖可変ドメインCDR(CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3)がある。また、より少ないCDRで構成される(すなわち、結合特異性が3個、4個または5個のCDRによって決定される)機能的抗原結合部位も本発明の範囲内に含まれる。例えば、6個のCDRの完全なセットより少なくても、結合については十分であり得る。いくつかの場合においては、VHドメインまたはVLドメインは、十分であろう。
【0027】
本発明によれば、VH領域またはそのCDRのみで、完全な抗原結合部位を構成し得る。特定の実施態様においては、抗体は、本明細書において定義するVH領域またはそのCDRのみを含む。他の実施態様においては、抗体は、VL領域またはそのCDRと、特に本明細書において定義するVL領域またはそのCDRと一緒に、本明細書において定義するVH領域またはそのCDRを含む。
【0028】
VH領域またはVL領域内のCDRの位置は、その両方が当業者に公知である、Kabat,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)またはIMGT付番システムに従って定義し得る。IMGT付番は、抗原受容体、鎖のタイプ、または種が何でも、可変ドメインを比較するために定義されてきた(Lefranc M.-P.,“Unique database numbering system for immunogenetic analysis”Immunology Today,18,509(1997);Lefranc M.-P.,“The IMGT unique numbering for Immunoglobulins,T cell receptors and Ig-like domains”The Immunologist,7,132-136(1999))。別途明記しなければ、本明細書においては、Kabatシステムを使用する。
【0029】
本明細書において使用する用語「結合」および「特異的結合」は、ネクチン-4抗原のエピトープに対する本発明の抗体またはその断片の結合を指す。抗体の結合強度の尺度を、親和性と称する。インビトロアッセイを使用してそのような結合および/または親和性を決定する方法は、当業者に公知である。本発明によれば、フローサイトメトリー、免疫組織化学および/または蛍光での検出が、本明細書において記載され、特に好ましい。
【0030】
抗原に対する抗体の結合の親和性は、用語Ka(抗体/抗原複合体からの抗体の会合速度定数)、KD(解離定数)、およびKdis(kD/ka)によって定義される。
【0031】
特定の実施態様においては、本発明のコンジュゲートの抗体は、キメラ抗体、多重特異性抗体、特に二重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはそれらの抗原結合断片であり得る。
【0032】
本発明によれば、「キメラ」抗体は、重鎖および/または軽鎖の一部は特定の起源または種に由来し、一方、重鎖および/または軽鎖の残りは異なる起源または種に由来する抗体を指す。
【0033】
「多重特異性抗体」は、2個以上の異なるエピトープに結合する。エピトープは、同じまたは異なる抗原上にあり得る。多重特異性抗体の好ましい例は、2個の異なるエピトープに結合する「二重特異性抗体」である。
【0034】
好ましい実施態様においては、本発明の抗体は、ヒト化抗体である。
【0035】
用語「ヒト化抗体」または「抗体のヒト化バージョン」は、重鎖および軽鎖の両方が抗体工学の結果としてヒト化されている抗体を指す。ヒト化鎖は典型的には、全体として分析したときに原種の生殖系列配列よりもヒト生殖系列配列に相同性においてより近いように、V領域のアミノ酸配列が変化している鎖である。例えば、マウスCDRをヒト抗体のフレームワーク領域中に移植して、「ヒト化抗体」を調製し得る。例えば、Riechmann,L.,et al.,Nature 332(1988)323-327;およびNeuberger,M.S.,et al.,Nature 314(1985)268-270を参照されたい。本発明によって包含されるヒト化抗体の他の形態は、本発明に係る特性を生じさせるために定常領域が元の抗体のものからさらに修飾または変更されたものである。ヒト化の評価は、結果として生じるアミノ酸配列に基づき、方法論自体に基づくものではない。
【0036】
別の好ましい実施態様は、ヒト抗体を含むコンジュゲートに関連する。
【0037】
本明細書において使用する用語「ヒト抗体」は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を含むことを意図する。ヒト抗体は、最先端の技術において周知である(van Dijk,M.A.,and van de Winkel,J.G.,Curr.Opin.Chem.Biol.5(2001)368-374)。ヒト抗体はまた、免疫時に、内因性免疫グロブリン産生なしにヒト抗体の全レパートリーまたは選択されたものを産生することができる、トランスジェニック動物(例えば、マウス)において産生させることができる。
【0038】
本発明のコンジュゲートの抗体は、任意の好適なクラスのものであり得る。用語「クラス」は、その重鎖が保有する定常ドメインまたは定常領域のタイプを指す。本明細書において使用する「定常ドメイン」または「定常領域」は、可変領域以外の抗体のドメインの総体を意味する。定常領域は、抗原の結合に直接は関与しないが、さまざまなエフェクター機能を示す。抗体は、抗体の5個の主要クラス、特に、ヒト抗体の5個の主要クラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM、またはそれらの任意のサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2のいずれでもあり得る。免疫グロブリンのさまざまなクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γおよびμと呼ばれる。本発明によれば、クラス、特にヒトのクラスIgG、IgA若しくはIgMの抗体またはその断片が、特に好適である。
【0039】
好ましい実施態様によれば、本発明のコンジュゲートの抗体は、クラスIgG、特にヒトIgGのクラス、例えば、サブクラスIgG1、IgG2、IgG3若しくは(of)IgG4、クラスIgM、クラスIgAまたはそれらの抗原結合断片から選択される。
【0040】
特定の実施態様においては、抗体は、同じサブクラスの野生型配列と比較して低下したエフェクター機能を有する、例えば、Fc受容体への低下した結合を有する、定常ドメイン、具体的には重鎖定常ドメイン、より具体的にはクラスIgG、特にクラスヒトIgG、例えば、サブクラスIgG1、IgG2、IgG3若しくは(of)IgG4、クラスIgM、クラスIgAの重鎖定常ドメインを含む。低下したエフェクター機能を有する重鎖定常ドメインの例は、ヒトIgG、例えば、IgG1またはIgG4配列の変異D265C、L234A、L235A、P331S、L234QおよびL235Fの少なくとも1個を含有し得る。
【0041】
抗体の「抗原結合断片」は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合する該インタクトな抗体の一部を含む分子を指す。抗体断片の例は、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;ダイアボディ;線状抗体;一本鎖抗体分子(例えば、scFv);および抗体断片から形成される多重特異性抗体を含むが、これらに限定されない。該用語はまた、融合タンパク質、例えば、非免疫グロブリンペプチドまたはポリペプチドとの融合タンパク質、および非タンパク質性構造、例えば、標識または毒素とのコンジュゲートを包含する。用語「抗体の(その)抗原結合断片」および「抗体の(その)断片は、本明細書において互換的に使用し得る。
【0042】
抗体または抗原結合断片は、一価または多価であり得、すなわち、それは、単一の抗原結合部位または複数の抗原結合部位を含み得る。例えば、Fab断片は、単一の抗原結合部位を有し、IgGクラスの抗体またはFv断片若しくはscFv断片は、2個の抗原結合部位を有し、IgMクラスの抗体は、5個の抗原結合部位を有する。用語「抗体」はまた、異なる抗原結合部位を有するヘテロ特異性抗体、例えばヘテロ二重特異性抗体、特に抗原上の2つの異なるエピトープに向けられた抗体を包含する。本明細書において使用する「エピトープ」は、抗体が結合する抗原の領域である。用語「エピトープ」は、抗体に特異的に結合することができる任意のポリペプチド決定基を含む。
【0043】
腫瘍選択的抗ネクチン-4抗体
特定の実施態様においては、コンジュゲートの抗体は、ヒトケラチノサイト、例えば、インビトロで分化したネクチン-4発現ケラチノサイトが発現するネクチン-4と比較して、腫瘍が発現するネクチン-4に対してより高い親和性で特異的に結合する腫瘍選択的抗ネクチン-4抗体、例えば、モノクローナル抗体(mAb)15A7.5、9A2.7、3A1.4および/または8F06に由来するモノクローナル抗体である。mAb 15A7.5が、特に好ましい。
【0044】
比較のために、結合親和性は、フローサイトメトリー、免疫組織化学および/または蛍光によって検出し得る。そのような特異的結合が、とりわけ、本発明の抗体に基づく治療中のより少ない副作用を可能にする。
【0045】
従って、抗体15A7.5、9A2.7、3A1.4および/または8F06、特にそれらに由来するヒト化バリアントを含む抗体-薬物コンジュゲートは、より低い関連皮膚毒性並びにより高い抗腫瘍選択性および有効性を通して、ネクチン-4陽性がん治療の治療指標を改善する新しい方法を表す。
【0046】
腫瘍選択的抗ネクチン-4抗体およびその抗原結合断片は好ましくは、少なくとも40、好ましくは少なくとも45、より好ましくは少なくとも50および最も好ましくは少なくとも55(nM)の解離定数KDを示す。
【0047】
より低い結合親和性に加えて、本発明において提供する腫瘍選択的抗体および断片はまた好ましくは、腫瘍細胞と比較して、ケラチノサイトに対してより低い内部移行および/または細胞毒性活性を示す。
【0048】
特に好ましい実施態様によれば、腫瘍選択的抗体および断片は、腫瘍細胞と比較して、ケラチノサイトに対してより低い結合親和性、より低い内部移行、およびより低い細胞毒性活性を示す。
【0049】
もちろん、腫瘍が発現するネクチン-4に対する特異的な結合が、好ましい。
【0050】
さらなる態様によれば、本発明はまた、ヒトケラチノサイトが発現するネクチン-4と比較して、腫瘍が発現するネクチン-4に対してより高い親和性で結合することを特徴とするモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を含む抗体-薬物コンジュゲートに関する。比較のために、結合親和性は、フローサイトメトリー、免疫組織化学および/または蛍光によって検出し得る。
【0051】
特定の実施態様においては、腫瘍選択的モノクローナル抗ネクチン-4抗体またはその抗原結合断片は、
(a)相補性決定領域(CDR)CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む可変重鎖(VH)領域であって、
(i)該CDR-H1が、配列番号1、7、88、96、若しくは104に係るアミノ酸配列、
または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含み、
(ii)該CDR-H2が、配列番号2、8、89、97若しくは105に係るアミノ酸配列、
または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含み、
(iii)該CDR-H3が、配列番号3、9、90、98若しくは106に係るアミノ酸配列、
または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含む、VH領域、
並びに任意に
(b)可変軽鎖(VL)領域、特に相補性決定領域(CDR)CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含むVL領域であって、
(i)該CDR-L1が、配列番号4、10、92、100若しくは108に係るアミノ酸配列、
または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含み、
(ii)該CDR-L2が、配列番号5、11、93、101若しくは109に係るアミノ酸配列、
または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含み、
(iii)該CDR-L3が、配列番号6、12、94、102若しくは110に係るアミノ酸配列、
または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含む、VL領域
を含む。
【0052】
配列番号1~6は、IMGT付番システムに従って本発明の親抗体15A7.5の6個のCDR配列を定義する。配列番号7~12は、Kabatに従って本発明の親抗体の6個のCDR配列を定義する。
【0053】
本明細書において使用する配列番号についての具体的なアミノ酸配列は、添付の配列表に提供する。
【0054】
配列番号88~95は、mAb 9A2.7を特徴付ける。
【0055】
配列番号96~103は、mAb 3A1.4を特徴付ける。
【0056】
配列番号104~111は、mAb 8F06を特徴付ける。
【0057】
本発明によれば、これらのCDR配列における少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個または2個のアミノ酸の置換または挿入が、可能である。特定の実施態様においては、保存的アミノ酸置換、すなわち類似の生化学的特性を有する別のアミノ酸によるアミノ酸の置換、例えば、脂肪族アミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Leu若しくはIleの別の脂肪族アミノ酸についての置換、塩基性アミノ酸、例えば、His、Lys若しくはArgの別の塩基性アミノ酸に対する置換、酸性アミノ酸若しくはそのアミド、例えば、Asp、Glu、Asn若しくはGlnの別の酸性アミノ酸若しくはそのアミドに対する置換、芳香族アミノ酸、例えば、Phe、Tyr若しくはTrpの別の芳香族アミノ酸に対する置換、またはヒドロキシ若しくは硫黄含有アミノ酸、例えば、Ser、Thr、Met若しくはCysの別のヒドロキシ若しくは硫黄含有アミノ酸に対する置換が、好ましい。さらなる特定の実施態様においては、少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個または2個のヒスチジン残基を、重鎖または軽鎖の1個以上のCDR配列、例えば、CDR1、CDR2またはCDR3中に挿入する。これが、中性pH、例えば、pH7.0から7.5に対して低pH、例えば、pH5.5から6.5の間での優先的な結合をもたらし得るであろう。
【0058】
さらなる好ましい実施態様によれば、抗体またはその抗原結合断片は、IMGT付番システムに従って
(i)配列番号1のCDR-H1、配列番号2のCDR-H2、および配列番号3のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号4のCDR-L1、配列番号5のCDR-L2および配列番号6のCDR-L3を含むVL領域
を含む。
【0059】
別の好ましい実施態様によれば、抗体またはその抗原結合断片は、Kabatに従って
(i)配列番号7のCDR-H1、配列番号8のCDR-H2、および配列番号9のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号10のCDR-L1、配列番号11のCDR-L2および配列番号12のCDR-L3を含むVL領域
を含む。
【0060】
別の好ましい実施態様によれば、抗体またはその抗原結合断片は、
(i)配列番号88のCDR-H1、配列番号89のCDR-、および配列番号90のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号92のCDR-L1、配列番号93のCDR-L2および配列番号94のCDR-L3を含むVL領域
を含む。
【0061】
別の好ましい実施態様によれば、抗体またはその抗原結合断片は、
(i)配列番号96のCDR-H1、配列番号97のCDR-、および配列番号98のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号100のCDR-L1、配列番号101のCDR-L2および配列番号102のCDR-L3を含むVL領域
を含む。
【0062】
別の好ましい実施態様によれば、抗体またはその抗原結合断片は、
(i)配列番号104のCDR-H1、配列番号105のCDR-H2、および配列番号106のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号108のCDR-L1、配列番号109のCDR-L2および配列番号110のCDR-L3を含むVL領域
を含む。
【0063】
より具体的には、抗体またはその抗原結合断片は、
(a)配列番号13、91、99若しくは107に係るアミノ酸配列、または該配列の全長にわたって少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(b)VL領域、特に配列番号14、95、103若しくは111に係るアミノ酸配列、または該配列の全長にわたって少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域
を含み得る。
【0064】
好ましい実施態様によれば、抗体またはその抗原結合断片は、
(a)配列番号13に係るアミノ酸配列、または該配列の全長にわたって少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(b)VL領域、特に配列番号14に係るアミノ酸配列、または該配列の全長にわたって少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域
を含み得る。
【0065】
好ましい実施態様によれば、抗体またはその抗原結合断片は、
(a)配列番号91に係るアミノ酸配列、または該配列の全長にわたって少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(b)VL領域、特に配列番号95に係るアミノ酸配列、または該配列の全長にわたって少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域
を含み得る。
【0066】
好ましい実施態様によれば、抗体またはその抗原結合断片は、
(a)配列番号99に係るアミノ酸配列、または該配列の全長にわたって少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(b)VL領域、特に配列番号103に係るアミノ酸配列、または該配列の全長にわたって少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域
を含み得る。
【0067】
好ましい実施態様によれば、抗体またはその抗原結合断片は、
(a)配列番号107に係るアミノ酸配列、または該配列の全長にわたって少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(b)VL領域、特に配列番号111に係るアミノ酸配列、または該配列の全長にわたって少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域
を含み得る。
【0068】
ペプチドまたはポリペプチド配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、候補配列をアラインし、必要に応じてギャップを導入して最大配列同一性パーセントを達成した後の、特定のペプチドまたはポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である該配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的のためのアラインメントは、例えば、BLASTなどの公に入手可能なコンピューターソフトウェアを使用して、当業者の技能の範囲内にあるさまざまな方法で達成することができる。
【0069】
特定の実施態様においては、本発明のヒト化抗体またはヒト抗体は、少なくとも3個、好ましくは6個の相補性決定領域(CDR)の組合せによって定義される、すなわち、
(a)相補性決定領域(CDR)CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む可変重鎖(VH)領域であって、
(i)該CDR-H1が、配列番号21、35、49若しくは63に係るアミノ酸配列、
または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含み、
(ii)該CDR-H2が、配列番号22、36、50若しくは64に係るアミノ酸配列、
または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含み、
(iii)該CDR-H3が、配列番号23、37、51若しくは65に係るアミノ酸配列、
または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含む、VH領域、
並びに任意に
(b)可変軽鎖(VL)領域、特に相補性決定領域(CDR)CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含むVL領域であって、
(i)該CDR-L1が、配列番号24、38、52若しくは66に係るアミノ酸配列、
または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含み、
(ii)該CDR-L2が、配列番号25、39、53若しくは67に係るアミノ酸配列、
または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含み、
(iii)該CDR-L3が、配列番号26、40、54若しくは68に係るアミノ酸配列、
または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含む、VL領域
を含む抗体またはその抗原結合断片に関する。
【0070】
本発明に係る特定のヒト化抗体またはヒト抗体は、
(a)(i)配列番号21のCDR-H1、配列番号22のCDR-H2、および配列番号23のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号24のCDR-L1、配列番号25のCDR-L2、および配列番号26のCDR-L3を含むVL領域、
または
(b)(i)配列番号35のCDR-H1、配列番号36のCDR-H2、および配列番号37のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号38のCDR-L1、配列番号39のCDR-L2、および配列番号40のCDR-L3を含むVL領域、
または
(c)(i)配列番号49のCDR-H1、配列番号50のCDR-H2、および配列番号51のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号52のCDR-L1、配列番号53のCDR-L2、および配列番号54のCDR-L3を含むVL領域、
または
(d)(i)配列番号63のCDR-H1、配列番号64のCDR-H2、および配列番号65のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号66のCDR-L1、配列番号67のCDR-L2、および配列番号68のCDR-L3を含むVL領域、
または
(e)(i)配列番号21のCDR-H1、配列番号22のCDR-H2、および配列番号23のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号38のCDR-L1、配列番号39のCDR-L2、および配列番号40のCDR-L3を含むVL領域、
または
(f)(i)配列番号21のCDR-H1、配列番号22のCDR-H2、および配列番号23のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号52のCDR-L1、配列番号5のCDR-L2、および配列番号54のCDR-L3を含むVL領域、
または
(g)(i)配列番号21のCDR-H1、配列番号22のCDR-H2、および配列番号23のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号66のCDR-L1、配列番号67のCDR-L2、および配列番号68のCDR-L3を含むVL領域、
または
(h)(i)配列番号35のCDR-H1、配列番号36のCDR-H2、および配列番号37のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号24のCDR-L1、配列番号25のCDR-L2、および配列番号26のCDR-L3を含むVL領域、
または
(j)(i)配列番号35のCDR-H1、配列番号36のCDR-H2、および配列番号37のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号52のCDR-L1、配列番号53のCDR-L2、および配列番号54のCDR-L3を含むVL領域、
または
(k)(i)配列番号35のCDR-H1、配列番号36のCDR-H2、および配列番号37のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号66のCDR-L1、配列番号67のCDR-L2、および配列番号68のCDR-L3を含むVL領域、
または
(l)(i)配列番号49のCDR-H1、配列番号50のCDR-H2、および配列番号51のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号24のCDR-L1、配列番号25のCDR-L2、および配列番号26のCDR-L3を含むVL領域、
または
(m)(i)配列番号49のCDR-H1、配列番号50のCDR-H2、および配列番号51のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号38のCDR-L1、配列番号39のCDR-L2、および配列番号40のCDR-L3を含むVL領域、
または
(n)(i)配列番号49のCDR-H1、配列番号50のCDR-H2、および配列番号51のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号66のCDR-L1、配列番号67のCDR-L2、および配列番号68のCDR-L3を含むVL領域、
または
(o)(i)配列番号63のCDR-H1、配列番号64のCDR-H2、および配列番号65のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号24のCDR-L1、配列番号25のCDR-L2、および配列番号26のCDR-L3を含むVL領域、
または
(p)(i)配列番号63のCDR-H1、配列番号64のCDR-H2、および配列番号65のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号38のCDR-L1、配列番号39のCDR-L2、および配列番号40のCDR-L3を含むVL領域、
または
(q)(i)配列番号63のCDR-H1、配列番号64のCDR-H2、および配列番号65のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号52のCDR-L1、配列番号53のCDR-L2、および配列番号54のCDR-L3を含むVL領域
を含み得る。
【0071】
特に好ましいのは、上記で定義したヒト化抗体(a)、(b)、(c)、(d)、(j)、(k)、(n)および(q)である。
【0072】
特定の実施態様においては、本発明のヒト化抗体またはヒト抗体は、少なくとも3個、好ましくは6個の相補性決定領域(CDR)の組合せによって定義される、すなわち、
(a)相補性決定領域(CDR)CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む可変重鎖(VH)領域であって、
(i)該CDR-H1が、配列番号21、35、49若しくは63に係るアミノ酸配列、
または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含み、
(ii)該CDR-H2が、配列番号22、36、50若しくは64に係るアミノ酸配列、
または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含み、
(iii)該CDR-H3が、配列番号23、37、51若しくは65に係るアミノ酸配列、
または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含む、VH領域、
並びに任意に
(b)可変軽鎖(VL)領域、特に相補性決定領域(CDR)CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含むVL領域であって、
(i)該CDR-L1が、配列番号24、38、52若しくは66に係るアミノ酸配列、
または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含み、
(ii)該CDR-L2が、配列番号25、39、53若しくは67に係るアミノ酸配列、
または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含み、
(iii)該CDR-L3が、配列番号26、40、54若しくは68に係るアミノ酸配列、
または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含む、VL領域
を含む抗体またはその抗原結合断片に関する。
【0073】
本発明に係る特定のヒト化抗体またはヒト抗体は、
(a)(i)配列番号21のCDR-H1、配列番号22のCDR-H2、および配列番号23のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号24のCDR-L1、配列番号25のCDR-L2、および配列番号26のCDR-L3を含むVL領域、
または
(b)(i)配列番号35のCDR-H1、配列番号36のCDR-H2、および配列番号37のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号38のCDR-L1、配列番号39のCDR-L2、および配列番号40のCDR-L3を含むVL領域、
または
(c)(i)配列番号49のCDR-H1、配列番号50のCDR-H2、および配列番号51のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号52のCDR-L1、配列番号53のCDR-L2、および配列番号54のCDR-L3を含むVL領域、
または
(d)(i)配列番号63のCDR-H1、配列番号64のCDR-H2、および配列番号65のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号66のCDR-L1、配列番号67のCDR-L2、および配列番号68のCDR-L3を含むVL領域、
または
(e)(i)配列番号21のCDR-H1、配列番号22のCDR-H2、および配列番号23のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号38のCDR-L1、配列番号39のCDR-L2、および配列番号40のCDR-L3を含むVL領域、
または
(f)(i)配列番号21のCDR-H1、配列番号22のCDR-H2、および配列番号23のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号52のCDR-L1、配列番号53のCDR-L2、および配列番号54のCDR-L3を含むVL領域、
または
(g)(i)配列番号21のCDR-H1、配列番号22のCDR-H2、および配列番号23のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号66のCDR-L1、配列番号67のCDR-L2、および配列番号68のCDR-L3を含むVL領域、
または
(h)(i)配列番号35のCDR-H1、配列番号36のCDR-H2、および配列番号37のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号24のCDR-L1、配列番号25のCDR-L2、および配列番号26のCDR-L3を含むVL領域、
または
(j)(i)配列番号35のCDR-H1、配列番号36のCDR-H2、および配列番号37のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号52のCDR-L1、配列番号53のCDR-L2、および配列番号54のCDR-L3を含むVL領域、
または
(k)(i)配列番号35のCDR-H1、配列番号36のCDR-H2、および配列番号37のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号66のCDR-L1、配列番号67のCDR-L2、および配列番号68のCDR-L3を含むVL領域、
または
(l)(i)配列番号49のCDR-H1、配列番号50のCDR-H2、および配列番号51のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号24のCDR-L1、配列番号25のCDR-L2、および配列番号26のCDR-L3を含むVL領域、
または
(m)(i)配列番号49のCDR-H1、配列番号50のCDR-H2、および配列番号51のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号38のCDR-L1、配列番号39のCDR-L2、および配列番号40のCDR-L3を含むVL領域、
または
(n)(i)配列番号49のCDR-H1、配列番号50のCDR-H2、および配列番号51のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号66のCDR-L1、配列番号67のCDR-L2、および配列番号68のCDR-L3を含むVL領域、
または
(o)(i)配列番号63のCDR-H1、配列番号64のCDR-H2、および配列番号65のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号24のCDR-L1、配列番号25のCDR-L2、および配列番号26のCDR-L3を含むVL領域、
または
(p)(i)配列番号63のCDR-H1、配列番号64のCDR-H2、および配列番号65のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号38のCDR-L1、配列番号39のCDR-L2、および配列番号40のCDR-L3を含むVL領域、
または
(q)(i)配列番号63のCDR-H1、配列番号64のCDR-H2、および配列番号65のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号52のCDR-L1、配列番号53のCDR-L2、および配列番号54のCDR-L3を含むVL領域
を含み得る。
【0074】
特に好ましいのは、上記で定義したヒト化抗体(a)、(b)、(c)、(d)、(j)、(k)、(n)および(q)である。
【0075】
もちろん、本発明に係るヒト化抗体またはヒト抗体はまた、それらのVH領域および/またはVL領域によって定義し得る。
【0076】
そのような抗体は、
(i)配列番号27、41、55若しくは69から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号28、42、56、70若しくは71から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域
を含み得る。
【0077】
本発明に係る特定のヒト化抗体またはヒト抗体は、それらのVH領域および/またはVL領域によって定義し得、ここで、そのような抗体は、
(a)(i)配列番号27に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号28に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、
あるいは
(b)(i)配列番号41に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号42に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、
あるいは
(c)(i)配列番号55に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号56に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、
あるいは
(d)(i)配列番号69に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号70若しくは71に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、
あるいは
(e)(i)配列番号27に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号42に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、
あるいは
(f)(i)配列番号27に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号56に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、
あるいは
(g)(i)配列番号27に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号70若しくは71に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、
あるいは
(h)(i)配列番号41に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号28に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、
あるいは
(j)(i)配列番号41に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号56に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、
あるいは
(k)(i)配列番号41に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号70若しくは71に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、
あるいは
(l)(i)配列番号55に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号28に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、
あるいは
(m)(i)配列番号55に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号42に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、
あるいは
(n)(i)配列番号55に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号70若しくは71に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、
あるいは
(o)(i)配列番号69に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号28に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、
あるいは
(p)(i)配列番号69に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号42に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、
あるいは
(q)(i)配列番号69に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号56に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域
を含む。
【0078】
特に好ましいのは、上記で定義したヒト化抗体(a)、(b)、(c)、(d)、(j)、(k)、(n)および(q)である。
【0079】
さらなる抗ネクチン-4抗体
さらなる実施態様においては、本発明のコンジュゲートの抗体は、抗体5A12.2またはその抗原結合断片である。
【0080】
配列番号80~87は、mAb 5A12.2を特徴付ける。
【0081】
好ましい実施態様によれば、5A12.2抗体またはその抗原結合断片は、
(i)配列番号80のCDR-H1、配列番号81のCDR-、および配列番号82のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号84のCDR-L1、配列番号85のCDR-L2および配列番号86のCDR-L3を含むVL領域
を含む。
【0082】
別の好ましい実施態様によれば、5A12.2抗体またはその抗原結合断片は、
(a)配列番号83に係るアミノ酸配列、または該配列の全長にわたって少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(b)VL領域、特に配列番号87に係るアミノ酸配列、または該配列の全長にわたって少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域
を含み得る。
【0083】
さらなる実施態様においては、本発明のコンジュゲートの抗体は、市販されている抗体-薬物コンジュゲートであるエンホルツマブベドチンの抗体である抗体HA22、またはHA22由来の抗体である。
【0084】
HA22は、その内容が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2012/047724号に記載されているヒトモノクローナル抗ネクチン-4抗体である。HA22抗体またはHA22由来抗体は特に、上記の低下したエフェクター機能を有する定常領域、例えば、TM変異:P331S、L234QおよびL235F、またはLALA変異:L234AおよびL235Aを任意に有する重鎖G1m17またはG1m3ハプロタイプ配列、およびカッパ軽鎖配列を含むIgG1抗体を指す。特に、HA22のVH配列およびそのヒトIgG1定常領域を国際公開第2012/047724号の
図3Aに示し、HA22のVL配列およびそのヒトカッパ定常領域を国際公開第2012/047724号の
図3Bに示す。
【0085】
特定の実施態様においては、HA22由来のモノクローナル抗ネクチン-4抗体またはその抗原結合断片は、そのCDR配列によって定義され、
(a)相補性決定領域(CDR)CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む可変重鎖(VH)領域であって、
(i)該CDR-H1が、配列番号72に係るアミノ酸配列、
または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含み、
(ii)該CDR-H2が、配列番号73に係るアミノ酸配列、
または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含み、
(iii)該CDR-H3が、配列番号74に係るアミノ酸配列、
または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含む、VH領域、
並びに任意に
(b)可変軽鎖(VL)領域、特に相補性決定領域(CDR)CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含むVL領域であって、
(i)該CDR-L1が、配列番号75に係るアミノ酸配列、
または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含み、
(ii)該CDR-L2が、配列番号76に係るアミノ酸配列、
または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含み、
(iii)該CDR-L3が、配列番号77に係るアミノ酸配列、
または置換若しくは挿入、特に少なくとも1個のアミノ酸、例えば、1個若しくは2個のアミノ酸の、保存的置換および/若しくはヒスチジン挿入を含むアミノ酸配列を含む、VL領域
を含む。
【0086】
配列番号72~77は、IMGT付番システムに従って親抗体HA22の6個のCDR配列を定義する。
【0087】
特定の実施態様においては、HA22由来抗体は、そのVH領域および/またはVL領域によって定義し得、ここで、そのような抗体は、
(a)(i)配列番号78に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号79に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域
を含む。
【0088】
さらにより特定の実施態様においては、HA22由来抗体は、
(a)(i)配列番号78に係るアミノ酸配列を含むVH領域、
および
(ii)配列番号79に係るアミノ酸配列を含むVH領域
を含む。
【0089】
トポイソメラーゼI阻害剤
本発明の抗体コンジュゲートの薬物は、トポイソメラーゼI阻害剤である。トポイソメラーゼI阻害剤は、トポイソメラーゼIおよびDNAと三元複合体を形成することができ、それによって、DNAの再ライゲーションを防ぎ、細胞ゲノムにおいてDNA鎖切断を導入する化合物である。トポイソメラーゼI阻害剤は、例えば、カンプトテシンまたはその類似体であるインデノイソキノリンおよびインドロカルバゾールから選択し得る。
【0090】
特定の実施態様においては、トポイソメラーゼ-I阻害剤は、カンプトテシンまたはその類似体、すなわちカンプトテシンの五環式基本構造、および任意にさらなる環の存在をもたらす修飾された置換基を含む化合物である。具体例は、デルクステカン、ルルトテカンまたはアチラテカンなどのそれらの誘導体を含む、カンプトテシン、トポテカン、イリノテカン、SN-38、ベロテカン、エキサテカンである。
【0091】
特定の実施態様においては、トポイソメラーゼI阻害剤は、エキサテカンである。
【0092】
【0093】
エキサテカンは典型的には、そのNH2基を介して抗体にコンジュゲートする。
【0094】
コンジュゲーション
トポイソメラーゼ-I阻害剤、特にエキサテカンは、抗体またはその抗原結合断片に共有結合的にコンジュゲートする。
【0095】
原則として、トポイソメラーゼ-I阻害剤、例えば、エキサテカンは、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片の任意の好適な位置、特に該抗体のネクチン-4への結合を廃止しない任意の位置にコンジュゲートさせ得る。例えば、トポイソメラーゼ-I阻害剤、例えば、エキサテカンは、抗体上の反応性アミノ酸残基、例えば、アミノ基、ヒドロキシ基若しくはチオール基を含む側鎖を有するアミノ酸残基、または抗体グリカン構造中の反応性基にコンジュゲートさせ得る。特定の実施態様においては、トポイソメラーゼ-I阻害剤、例えば、エキサテカンを、抗体上のアクセス可能なシステイン残基の側鎖中の反応性チオール基にコンジュゲートさせる。
【0096】
特定の実施態様においては、抗体薬物コンジュゲートは、1よりも大きい薬物-抗体/抗体断片モル比(DAR)を有する、すなわち、1個を超える薬物分子が抗体/抗体断片に結合している。典型的には、コンジュゲートは、約2:1から約16:1、具体的には約4:1から約10:1およびより具体的には約6:1から約8:1のDARを有する。DARは、公知の方法に従って統計的分布から計算し得る。
【0097】
特定の実施態様においては、トポイソメラーゼ-I阻害剤を、リンカーを介して抗体または抗原結合断片にコンジュゲートさせる。特定の実施態様においては、リンカーは、切断可能なリンカー、すなわち、生理学的条件下で、例えば、生理学的酵素によって切断可能なリンカーである。切断可能なリンカーの具体例は、プロテアーゼによる切断を受け得るペプチドベースのリンカー、またはグリコシダーゼによる切断を受け得るグリコシドベースのリンカーである。
【0098】
特定の実施態様においては、リンカーは、例えば、Conilh et at.“Exatecan antibody drug conjugates based on a hydrophilic polysarcosine drug-linker platform”(Pharmaceuticals 14(2021),247)によって記載されている、親水性ポリサルコシンリンカーである。さらに好ましいリンカーは、少なくとも1個のエチレングリコール単位、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、若しくは10個またはそれ以上のエチレングリコール単位を含むリンカー、例えば、抗体-薬物コンジュゲートMEDI7247のリンカー、Trodelvy(登録商標)からのmcc-トリアゾールスペーサー-PEG7-x-Lys-PABCグリコールリンカーを含む。さらに好ましいリンカーは、オリゴペプチド、特にジ-からデカ-ペプチド、例えば、Enhertu(登録商標)からのグリシン-グリシン-フェニルアラニン-グリシンなどのテトラペプチド配列を含む。さらに好ましいリンカーは、少なくとも少なくとも1個のエチレングリコール単位、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、若しくは10個またはそれ以上のエチレングリコール単位に付加されたアシル基、カルバモイル基および/またはスルファミド基などの高い極性のスペーサー、例えば、Hydraspace(商標)と呼ばれるリンカー技術を含む。
【0099】
特定の実施態様においては、リンカーは、例えば、15個までのサルコシン単位、および少なくとも1個のエチレングリコール単位、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、若しくは10個またはそれ以上のエチレングリコール単位を含む親水性ポリサルコシンリンカーであり、ここで、該リンカーは、グリコシダーゼによる切断を受け、特にグルクロニダーゼによる切断を受ける。
【0100】
特定の実施態様においては、リンカーは、例えば、約8~12個のサルコシン単位、および少なくとも1個のエチレングリコール単位、例えば、10個までのエチレングリコール単位を含む親水性ポリサルコシンリンカーであり、ここで、該リンカーは、グリコシダーゼによる切断を受け、特にグルクロニダーゼによる切断を受ける。
【0101】
特定の実施態様においては、リンカーは、10個のサルコシン単位、および2個のエチレングリコール単位を含む親水性ポリサルコシンリンカーであり、ここで、該リンカーは、グルクロニダーゼによる切断を受ける。
【0102】
本発明の抗体薬物コンジュゲートは、公知の方法によって調製し得る。
【0103】
抗体またはその抗原結合断片は、抗体VH領域、若しくは抗体VL領域をコードする、または完全抗体若しくは抗体断片をコードする核酸分子、例えば、DNA分子、あるいは好ましくは発現制御配列、特に異種発現制御配列と機能的に連結している前記核酸分子(複数可)を含むベクターまたはベクター系、すなわち複数のベクターを含む好適な宿主細胞中で産生させ得る。宿主細胞は、抗体または抗体断片を産生するための任意の公知の宿主細胞、例えば、大腸菌細胞などの原核細胞、酵母細胞、昆虫細胞、または哺乳類細胞、例えば、CHO細胞若しくはハイブリドーマ細胞であり得る。
【0104】
抗体またはその抗原結合断片をリンカー-薬物コンジュゲートと反応させて、抗体-薬物コンジュゲートを取得し得る。リンカー-薬物コンジュゲートは、例えば、それに結合している好適なリンカーを有する、薬物分子を含み、ここで、該リンカーは、抗体またはその抗原結合断片上の所望の結合位置と反応することができる反応性基を含む。システイン残基への結合については、リンカー-薬物コンジュゲートは、チオール反応性基、例えばマレイミド基を含む。
【0105】
本発明のさらなる態様は、
(i)例えば、約8~12個のサルコシン単位、および少なくとも1個のエチレングリコール単位、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、若しくは10個またはそれ以上のエチレングリコール単位を含む親水性ポリサルコシンリンカーであって、該リンカーが、グリコシダーゼによる切断を受け、特にグルクロニダーゼによる切断を受け、および該リンカーが、抗体またはその抗原結合断片上のシステイン残基と反応することができるチオール反応性基、例えば、マレイミド基を含む、リンカー、
並びに
(ii)該リンカーに共有結合しているトポイソメラーゼI阻害剤、特にエキサテカン
を含むリンカー-薬物コンジュゲートに関する。
【0106】
特定の実施態様においては、リンカー-薬物コンジュゲートは、
(i)10個のサルコシン単位、および2個のエチレングリコール単位を含む親水性ポリサルコシンリンカーであって、該リンカーが、グリコシダーゼによる切断を受け、特にグルクロニダーゼによる切断を受け、および該リンカーが、抗体またはその抗原結合断片上のシステイン残基と反応することができるマレイミド基を含む、リンカー、
並びに
(ii)該リンカーに共有結合しているエキサテカン
を含む。
【0107】
リンカー-薬物コンジュゲートは、本明細書において記載する抗ネクチン-4抗体への結合について特に好適である。しかしながら、リンカー-薬物コンジュゲートはまた、任意の抗体またはその抗原結合断片、例えば、腫瘍抗原に結合する抗体またはその抗原結合断片への結合についても好適であることに留意すべきである。
【0108】
医薬組成物
本発明のさらなる態様は、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片を含む抗体-薬物コンジュゲートであって、該モノクローナル抗体またはその抗原結合断片がネクチン-4に結合し、該薬物がトポイソメラーゼI阻害剤、特にエキサテカンである抗体-薬物コンジュゲートである活性剤、並びに薬学的に許容される担体および/または賦形剤を含む医薬組成物である。
【0109】
抗体薬物コンジュゲートを製剤化するのに好適な担体および賦形剤の例は、生理食塩水および水性緩衝液を含み、当技術分野において周知である。典型的には、医薬組成物は、非経口投与用、例えば、皮下、筋肉内、若しくは静脈内への注射用または注入用に適合させる。さらなる実施態様においては、医薬組成物は、局所投与用、例えば、膀胱中への膀胱内注入用に適合させる。
【0110】
障害の段階および重症度に依存して、医薬組成物は、治療的に有効な用量でそれを必要とする対象、特にヒト対象に1回または数回投与し得る。例えば、それは、例えば、少なくとも1週間、または少なくとも1ヶ月の好適な期間、1日1回若しくは数回、1日おき、週2回または週1回投与し得る。
【0111】
医療用途
本発明のさらなる態様によれば、上記の抗体-薬物コンジュゲートまたは医薬組成物は、ヒトおよび動物の薬剤を含む薬剤において、特にヒトの薬剤において使用する。
【0112】
特定の実施態様においては、上記の抗体-薬物コンジュゲートまたは医薬組成物は、ネクチン-4関連障害の予防および/または治療のための、具体的にはネクチン-4陽性がんの予防および/または治療のための、より具体的にはネクチン-4過剰発現に関連するがんの予防および/または治療のための方法において使用する。
【0113】
予防および/または治療するがんは、任意の種類のがんであり得、ここで、用語「がん」は、本明細書においては増殖性疾患を指すために使用する。本発明に従って予防および/または治療するがんは好ましくは、膀胱がん、尿路上皮がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、肝臓がん、甲状腺がん、乳がん、膵臓がん、肺がん、卵巣がん頭頸部がんおよび/または食道がんからなる群から選択される。
【0114】
治療用途においては、活性剤は、それを必要とする対象、特にヒト対象に対して有効な量で投与する。用量は、剤の具体的なタイプ、例えば、抗体または抗体断片のタイプ、疾患のタイプ、および投与の様式、例えば、局所または全身に依存するであろう。
【0115】
がんの予防および/または治療においては、抗体薬物コンジュゲートの治療用量は典型的には、約0.3mg/kgから約10mg/kgである。
【0116】
抗体薬物コンジュゲートは、単独で投与し得るか、または化学療法剤、例えば、代謝拮抗剤、アルキル化剤、挿入剤、または抗有糸分裂剤)、特異的キナーゼの阻害剤、例えば、チロシンキナーゼ阻害剤、セリン/スレオニンキナーゼ阻害剤またはホスホイノシチドキナーゼ阻害剤、免疫療法化合物、例えば、免疫チェックポイント阻害剤、CAR-T細胞、治療用ワクチンまたは腫瘍溶解性ウイルスから選択し得るさらなる活性剤と一緒に投与し得る。
【0117】
さらに、本発明は、以下の表、図面および実施例によってより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0118】
図
【
図1】Ch-15A7.5およびCh-5A12.2は、ヒトネクチン-4を認識する。フローサイトメトリーによる検出。 Ch-15A7抗体またはCh-5A12.2抗体の用量範囲(0.3ng/mL~5μg/mL)を使用した、ネクチン-4のN末端Flagタグ付きエピトープをトランスフェクトしたMDA-MB231のフローサイトメトリー解析。親MDA-MB231細胞を、コントロールとして含める。細胞を次いで、フィコエリトリンコンジュゲートヤギ抗ヒトFc抗体で染色した。正規化した平均蛍光強度を示す。インレイ:抗ネクチン-1、-2および-3 mAb(5μg/mL)での親MDA-MB231細胞の染色。平均蛍光強度を表す。
【
図2】Ch-15A7.5は、ヒトネクチン-4のIgV様ドメインを認識する。ELISAによる検出。 96ウェルプレートを、示されるとおり、5μg/mLのネクチン-1細胞外ドメインFc融合組換えタンパク質(Nec1-VCC)、またはネクチン-4 IgV様ドメインFc融合組換えタンパク質(Nec4-V)、またはネクチン-4細胞外ドメインFc融合組換えタンパク質(Nec4-VCC)で、4℃で一晩コーティングした。Ch15A7.5は、ネクチン-4細胞外ドメイン、より正確にはネクチン-4 IgV様ドメインを認識し、ネクチン-1細胞外ドメインは認識しない。
【
図3】Ch-15A7.5エピトープの特性評価。競合アッセイを、ELISAによって実施した。 96ウェルプレートを、5μg/mLのネクチン-4細胞外ドメインFc融合組換えタンパク質(Nec4-VCC)で、4℃で一晩コーティングした。ペルオキシダーゼコンジュゲートCh-15A7.5 mAb(5μg/mL)の結合を、漸増濃度(2.75ng/mL~6μg/mL)のリツキシマブ、Ch-15A7 mAb、エンホルツマブ(HA22)、Ch-N41 mAbおよびCh-14A5 mAbの存在下で測定した。HA22、Ch-N41およびCH-14A5は、ネクチン-4のIgVドメインを認識する。
【
図4】ネクチン-4結合についてのCh-15A7.5 mAbおよびCh-5A12.2 mAbのネクチン-1との競合。競合を、フローサイトメトリーによって評価した。 ヒトネクチン-4 cDNAをトランスフェクトした50,000個のCHO細胞を、96ウェルプレートに播種した。細胞を、漸増濃度(8ng/mL~5μg/mL)のアイソタイプコントロール、Ch-15A7.5 mAbまたはCh-5A12.2 mAbと45分間インキュベートした。洗浄後、プレートを、20μg/mLのネクチン-1細胞外ドメインFc融合組換えタンパク質(Nec1-VCC)とインキュベートした。ネクチン-1結合が、フィコエリトリンに結合したヤギ抗ヒトFc抗体とのインキュベート後に明らかになった。
【
図5】カニクイザル、ラットおよびマウス由来のネクチン-4との交差反応性。フローサイトメトリーによる検出。 Ch-15A7(A)、Ch-3A1.4(B)、Ch-5A12.2(C)、Ch-9A2.7(D)またはエンホルツマブ(HA22、B)抗体の用量範囲(0.05ng/mL~5μg/mL)を使用した、カニクイザル、ラットまたはマウスのネクチン-4をトランスフェクトしたCHO細胞のフローサイトメトリー解析。細胞を次いで、フィコエリトリンコンジュゲートヤギ抗ヒトFc抗体で染色した。正規化した平均蛍光強度を示す。表は、非線形曲線当てはめ(4パラメータ)を使用してGraphPad Prism 9ソフトウェアによって決定した推定EC
50値を報告する。~記号は、不十分な曲線当てはめのため、報告した値があいまいであることを示す。
【
図6】腫瘍細胞株および正常分化ヒトケラチノサイトが発現したネクチン-4への異なる結合。フローサイトメトリーによる検出。 エンホルツマブ(HA22、四角)、Ch-15A7.5(丸)、Ch-3A1.4(三角)およびCh-9A2.7(菱形)の用量範囲(1.2ng/mL~5μg/mL)を使用した、TNBC細胞株(SUM190、黒色記号)および正常分化(0.1mM CaCl
2)ヒトケラチノサイト(NHEK、白抜き記号)のフローサイトメトリー解析。細胞を次いで、フィコエリトリンコンジュゲートヤギ抗ヒトFc抗体で染色した。正規化した平均蛍光強度を示す。非線形曲線当てはめ(4パラメータ)を、GraphPad Prism 9ソフトウェアを用いて行った。水平バーは、SUM190細胞上のHA22抗体で得られた最大染色強度の50%に置いている。
【
図7】腫瘍細胞株および正常分化ヒトケラチノサイトが発現したネクチン-4への異なる結合。フローサイトメトリーによる検出。 5μg/mLのHA22(エンホルツマブ)、Ch-5A12.2、Ch-15A7.5、およびCh-8F06を使用した、TNBC細胞株(SUM190、A)および正常分化(0.1mM CaCl
2)ヒトケラチノサイト(NHEK、B)のフローサイトメトリー解析。細胞を次いで、フィコエリトリンコンジュゲートヤギ抗ヒトFc抗体で染色した。正規化した平均蛍光強度を示す。
【
図8】腫瘍細胞株およびヒトケラチノサイトが発現したネクチン-4への異なる結合。免疫組織化学による検出。 高発現レベルのネクチン-4腫瘍細胞株(SUM190)、低発現レベルのネクチン-4腫瘍細胞株(SUM149)、ヒトおよびカニクイザルの皮膚の凍結保存OCT包埋ブロックを、15A7.5 mAb(A)および9A2.7 mAb(B)で染色するために加工した。各mAbについて報告されたクイックスコアを示す(A、B)。C、ヒト皮膚上のクイックスコアSUM190の比。
【
図9】腫瘍細胞株およびヒトケラチノサイトにおける異なる内部移行。蛍光による検出 エンホルツマブ(HA22)、Ch-15A7.5およびアイソタイプコントロールmAbを、4.58と5.55との間の色素抗体比に達するようにpHABチオール反応性色素に結合させた。これらの抗体色素コンジュゲートのそれぞれの用量範囲(1.6ng/mL~5μg/mL)を、SUM190PTネクチン-4発現細胞株(A)正常ヒト分化(0.1mM CaCl
2)ケラチノサイト(B)とデュープリケートでインキュベートした。細胞内蛍光を、24時間後に蛍光マイクロプレートリーダー(ClarioStar)で記録した。蛍光強度を、色素抗体コンジュゲート濃度の関数の形で報告する。
【
図10】腫瘍細胞および正常分化ヒトケラチノサイトに対する異なるインビトロ細胞毒性活性。MTTアッセイによって測定した細胞生存率。 エンホルツマブ(HA22、菱形)、Ch-15A7.5(三角形)およびCh-9A2.7(四角形)のmAbをα-アマニチンと結合させて、抗体薬物コンジュゲートを生成させ、用量範囲(7.7pg/mL~15μg/mL)のその細胞毒性活性を、SUM190PTネクチン-4発現細胞株(A、D)または正常ヒト分化(0.1mM CaCl
2)ケラチノサイト(B、E)に対して比較評価した。5日間のインキュベーション期間後の生存率(MTTアッセイ)を報告する。EC
50値は、非線形曲線当てはめ(4パラメータ)を使用して、GraphPad Prism 9ソフトウェアによって決定した。各条件について、Ch-15A7.5 ADC(C)またはCh-9A2.7 ADC(F)のEC
50のHA22-ADCのEC
50に対する比を、計算し、報告した。示すデータは、2つの異なるネクチン-4発現腫瘍細胞株(SUM190PTおよびMDA-MB468)およびヒトケラチノサイトについての3人の独立したドナーを代表する。
【
図11】SUM190を移植したNSGマウスのCh-15A7.5-MA-PS-βGlu-エキサテカンADCでの治療は、長続きする腫瘍退縮期間を誘導する。 NSGマウス(n=5/群)に、Matrigel中に包埋したSUM190PT細胞を両側に同所的に異種移植した。3個の異なるADCを試験した:アイソタイプコントロールであるICT-MA-PS-βGlu-エキサテカンおよびCh-15A7.5-MA-PS-βGlu-エキサテカン並びにエンホルツマブベドチンサロゲートであるHA22-MC-vc-PABC-MMAE。マウスの治療(単回静脈内注射)を、腫瘍が約150mm
3に達したときに開始した。Ch-15A7.5-MA-PS-βGlu-エキサテカン(Ch-15A7.5-Ex)およびCh-5A12.2-MA-PS-βGlu-エキサテカン(Ch-5A12.2-Ex)は2用量(4または8mg/kg)で評価し、ICT-MA-PS-βGlu-エキサテカン(ICT-Ex)は8mg/kgで与え、エンホルツマブベドチン(EV)サロゲートは4mg/kgで与えた。腫瘍サイズ(n=10/群)を、その後1週間に2回ノギスでモニタリングし、サイズを、以下の式(L×l×h×Pi/6)を用いて報告した。
【
図12】腫瘍細胞に対するヒト化バリアントの見かけの親和性。フローサイトメトリーによる検出。 ネクチン-4を発現するT47Dヒト腫瘍細胞を、付番し、Ch-15A7.5または示されるヒト化バリアントの用量範囲(169pg/mL~30μg/mL)とインキュベートした。HおよびLと関連する数字は、導入された逆変異の数を指す。細胞を次いで、フィコエリトリンコンジュゲートヤギ抗ヒトFc抗体で染色し、フローサイトメトリーによって分析した。平均蛍光強度を報告する。GraphPad Prism 9ソフトウェアは、非線形曲線当てはめ(4パラメータ)を使用した。
【
図13】SUM190を移植したNSGマウスのHA22-MA-PS-βGlu-EエキサテカンADCでの治療は、長続きする腫瘍退縮期間を誘導する。 NSGマウス(n=5/群)に、Matrigel中に包埋したSUM190PT細胞を両側に同所的に異種移植した。3個の異なるADCを試験した:アイソタイプコントロールであるICT-MA-PS-βGlu-エキサテカンおよびHA22-MA-PS-βGlu-エキサテカン並びにエンホルツマブベドチンサロゲートであるHA22-MC-vc-PABC-MMAE。マウスの治療(単回静脈内注射)を、腫瘍が約150mm
3に達したときに開始した。HA22MA-PS-βGlu-エキサテカン(HA22-Ex)は2用量(4または8mg/kg)で評価し、ICT-MA-PS-βGlu-エキサテカン(ICT-Ex)は8mg/kgで与え、エンホルツマブベドチン(EV)サロゲートは4mg/kgで与えた。腫瘍サイズ(n=10/群)を、その後1週間に2回ノギスでモニタリングし、サイズを、以下の式(L×l×h×Pi/6)を用いて報告した。
【
図14】SUM190を移植したNSGマウスのHA22-MA-PS-βGlu-EエキサテカンおよびHA22-MC-GGFG-DX8951 ADCでの治療は、長続きする腫瘍退縮期間を誘導する。 NSGマウス(n=5/群)に、Matrigel中に包埋したSUM190PT細胞を両側に同所的に異種移植した。5個の異なるADCを試験した:アイソタイプコントロールである、MA-PS-βGlu-エキサテカン(ICT-ExおよびHA22-Ex)またはMC-GGFG-DX8951(ICT-およびHA22-Dxd)のいずれかと結合したICT-およびHA22並びにエンホルツマブベドチンサロゲートであるHA22-MC-vc-PABC-MMAE(EV)。マウスの治療(単回静脈内注射)を、腫瘍が約150mm
3に達したときに開始した。HA22-ExおよびHA22-Dxdは2用量(4または8mg/kg)で評価し、ICT-EXおよびICT-Dxdは8mg/kgで与え、エンホルツマブベドチン(EV)サロゲートは4mg/kgで与えた。腫瘍サイズ(n=10/群)を、その後1週間に2回ノギスでモニタリングし、サイズを、以下の式(L×l×h×Pi/6)を用いて報告した。
【
図15】腫瘍細胞株および正常分化ヒトケラチノサイトが発現したネクチン-4へのCh-15A7.5およびそのヒト化バリアントの異なる結合。フローサイトメトリーによる検出。 Ch-5A12.2、Ch-15A7.5およびそのヒト化バリアント15A7.5-H1L2、-H1L3、-H2L2、-H2L3、-H3L0、-H3L2、-H3L3の用量範囲(8pM~33nM)を使用した、TNBC細胞株(SUM190、上部パネル)および正常分化(0.1mM CaCl
2)ヒトケラチノサイト(NHEK、下部パネル)のフローサイトメトリー解析。細胞を次いで、フィコエリトリンコンジュゲートヤギ抗ヒトFc抗体で染色した。正規化した平均蛍光強度を示す。非線形曲線当てはめ(4パラメータ)を、GraphPad Prism 9ソフトウェアを用いて行った。Ch-5A12.2のEC
50と比較した、Ch-15A7.5およびそのヒト化バリアントのケラチノサイトに対するはるかに低い見かけのEC
50(下部パネル)に留意されたい。
【
図16】親抗体クローン5A12.2の可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VK)のアミノ酸配列。IMTG命名法によるH-CDR配列およびL-CDR配列には、下線を引いている。
【
図17】9A2.7のヒト化バリアントの可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VK)のアミノ酸配列。IMTG命名法によるH-CDR配列およびL-CDR配列には、下線を引いている。
【
図18】3A1.4のヒト化バリアントの可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VK)のアミノ酸配列。IMTG命名法によるH-CDR配列およびL-CDR配列には、下線を引いている。
【
図19】8F06のヒト化バリアントの可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VK)のアミノ酸配列。IMTG命名法によるH-CDR配列およびL-CDR配列には、下線を引いている。
【
図20】15A7.5のヒト化バリアントの可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)のアミノ酸配列。IMTG命名法によるH-CDR配列およびL-CDR配列は、灰色で影付けしている。
【
図21】ヒト化15A7.5バリアントの親和性値。
【
図22】親抗体クローン15A7.5の可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VK)のアミノ酸配列。IMTG命名法によるH-CDRおよびL-CDRの配列は、灰色で影付けしている。
【
図23】抗体HA22の可変重鎖(VH)および可変軽カッパ鎖(VK)のアミノ酸配列。IMTG命名法によるH-CDRおよびL-CDRの配列は、灰色で影付けしている。
【実施例】
【0119】
材料および方法
細胞株:
ヒト乳がん細胞株MDA-MB231(ATCC、Manassas,VA)は、10%ウシ胎児血清、50IU/mLペニシリン、50μg/mLストレプトマイシンおよび2mMグルタミンを補充したDMEM中で培養した。細胞に、PVRL4 cDNAを含有する発現ベクターp3XFLR4.C1をトランスフェクトした。ヒトトリプルネガティブ乳がん細胞株SUM190PT(BioIVT、Westbury,NY)は、5%ウシ胎児血清、1%非必須アミノ酸、1%Hepes、1%インスリン、1μg/mLヒドロコルチゾン、6.8ng/mLトリヨードL-チロシン、100IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンおよび2mMグルタミンを有するHam’s F12培地中で培養した。チャイニーズハムスター卵巣CHO細胞株は、10%ウシ胎児血清、100IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンおよび2mMグルタミンを補充したDMEM中で培養した。ヒト乳がんMDA-MB-468細胞株およびT47D細胞株は、10%ウシ胎児血清、100IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンを補充したRPMI中で培養した。
【0120】
ELISA:
サンドイッチ酵素結合免疫吸着法を使用して、Ch-15A7.5抗体の特異性を制御し、異なるmAb間の競合アッセイを実施した。96ウェルプレートを、10nMのネクチン-4-VCC-Fc、ネクチン-1-VCC-Fc(細胞外部分全体)またはネクチン-4-V-Fc(IgVドメインのみを含む)で、+4℃で一晩コーティングした。洗浄およびPBS 1%BSAでの飽和後、細胞を、10nMのペルオキシダーゼコンジュゲートCh-15A7.5 mAbと25℃で2時間インキュベートした。競合の場合においては、0.5nMのペルオキシダーゼコンジュゲートCh-15A7.5 mAbの結合を、可変濃度(0.018nM~40nM)の「冷」mAbの存在下で測定した。100μLのペルオキシダーゼ基質を添加し(One Step ABST、Pierce)、ODを405nmで読み取った。
【0121】
フローサイトメトリー:
(天然のまたはトランスフェクトされた)ネクチン-4を発現する細胞または細胞株(10,000~50,000)を、示された抗体の用量範囲とインキュベートした。洗浄後、細胞を次いで、フィコエリトリンコンジュゲートヤギ抗ヒト抗体(5μg/mL)Jackson Immuno Research)で染色した。固定後、細胞を、フローサイトメトリー取得前に、生存率色素(e780、Invitrogen)で染色した。
【0122】
免疫組織化学:
-80℃で保存していた凍結サンプルを、ドライアイス上で維持し、引き続く切片の数を最大化することを可能にするであろうようにプラスチック製クライオモールド中に置き、Optimal Cutting Temperature(OCT)培地中に包埋した。OCTの凍結ブロックをOCTとディスク上に載せ、凍結切片法を、NX70クライオスタット(Thermo Scientific)上で、-20℃で実施した。凍結切片(7μm)を、スーパーフロストプラススライド(VWR)上に載せた。各一連の試験について必要とされる数のスライドだけを、準備し、使用まで-80℃で保存した。残りのブロックは、さらなる使用まで-80℃で保存した。切片を、スライド上に配置し、アセトン中-20℃で10分間固定した。Roche DABキットのプロトコルの一部として、内因性ペルオキシダーゼを、スライドを過酸化水素(H2O2)中に浸すことによって阻害した。各mAbのいくつかの希釈物を、ノイズ対シグナル比を最適化するために試験し、0.5μg/mLのマウス15A7.5 mAbおよび10μg/mLのマウス9A2.7mAbを、最適として決定した。二次抗体のマウス組織への非特異的結合を軽減するために、ウサギ抗マウスIgG(4μg/mL、Abcam)を、一次Abインキュベーション後に添加した。omni-map抗ウサギHRP(Roche)を次いで使用して、製造業者(Ventana automat)の指示書に従ってDAB染色を実施した。染色強度および染色された細胞の比率の両方の評価を、実施した。訓練を受けた2人の技術者が、同じ顕微鏡視野を独立して順次観察した。染色された細胞の比率および染色強度の両方を、各視野について評価した。各染色について、10個の視野を、組織の最善の可視化を可能にする倍率で無作為に選択した。採点手順は以下のとおりであった:(i)陽性に染色された細胞の比率を推定し、0~4のスコアを各視野について割り付けた(0=0~5%;1=5~25%;2=25~50%;3=50~75%;および4=75~100%);並びに(ii)染色強度は、陰性の、弱い、中間の、および強い褐色染色の存在に対応して、それぞれ0、1、2、または3として採点した。各視野および各観察者についての最終スコアは、2個の値の掛け算であった(0=組織中に何ら染色なし;12=組織が、強く染色された細胞を含有する)。各組織型について、各スライドセットの5枚のスライドのそれぞれに対して、10個の独立した観察野を、染色強度および標識された細胞の比率の両方について並行して採点した。技術者は同時に、所与の視野(仮想スライド、コンピューター画面上)を観察し、他の観察者の結果がわからないように独立して採点した。各スライドについて、各技術者の10個の得点を平均して、各観察者についての最終スコアを設定した。2人の観察者の最終スコアを平均し、所与のスライドの組織スコアを得た。ヒトの皮膚については、再現性の最初のセットの結果のみを提示する。
【0123】
内部移行アッセイ
1万個のSUM190PTまたはヒト分化ケラチノサイト(0.1mM CaCl2)を、96ウェルプレート中に播種し、引き続きpHABチオール反応性色素をコンジュゲートした抗ネクチン-4mAbおよびアイソタイプコントロールの用量範囲(1.6ng/mL~1μg/mL)と37℃で24時間インキュベートした。内部移行およびエンドリソソーム処理の後、酸性環境は、色素に蛍光を発せさせる。蛍光強度を、プレートリーダー上で532nmの励起波長および560nmの発光波長でモニタリングした。
【0124】
インビトロ細胞毒性アッセイ
ADCのインビトロ細胞毒性活性を分析するために、細胞生存率を、製造業者(Biosource、CA,USA)が推奨するAlamarBlue染色プロトコルを使用して評価した。該試験は、蛍光酸化還元指示薬を組み込む。蛍光強度は、細胞の代謝低下に比例する。実験は、96ウェルプレート中で0日目に3000細胞/ウェル(SUM190PTまたは分化NHEK)をADCの連続希釈液とトリプリケートでインキュベートすることによって行った。1/10体積のalamarBlue溶液を37℃で2時間インキュベートし、595nm(FLUOstar Optima、BMG Labtech)で読み取ることによって、AlamarBlueを、5日目に測定した。
【0125】
マウス実験
NOD/SCID(非肥満糖尿病/重症複合免疫不全)/gcヌルマウス(NSG)は、Charles River Laboratory(Margate,UK)から入手した。6~7週齢の雌(n=5/群)に、Matrigel中に包埋したSUM190PT(0.5×106個)細胞を両側に同所的に異種移植した。ADCでの治療を、それぞれの実験において言及するとおり実施した。腫瘍サイズ(n=10/群)を、その後1週間に2回ノギスでモニタリングし、サイズを、以下の式(L×l×h×Pi/6)を用いて報告した。
【0126】
ハイブリドーマのシーケンシング
ハイブリドーマのシーケンシングのために、RNAをまず、ハイブリドーマ細胞ペレットから抽出した。cDNAを逆転写により生成させ、VHドメインおよびVLドメインを、Prime STARMax DNA Polymerase(Takara)を使用して、ポリメラーゼ連鎖反応により増幅した。PCR産物を引き続き、専用の重鎖および軽鎖発現ベクター中にクローニングし、次いでシーケンシングした。
【0127】
キメラ抗体の生成、産生、精製、および制御
軽鎖発現ベクターは、Vカッパ鎖をコードしている。使用するペイロードに依存して、D265C(ThiomAb)L234AおよびL235Aの変異を有するFc断片をコードするもの、P331S、L234QおよびL235Fの変異を有するFc断片をコードするものの2つの異なる重鎖発現ベクターを使用した。両方のFc断片とも、「Fcサイレント」である。抗ネクチン-4エンホルツマブ(HA22)の配列もまた、同じベクター中にクローニングした。
【0128】
軽鎖ベクターおよび重鎖ベクターを、1.2/1の比で播種したHEK293中にトランスフェクトした。6日間の産生後、培養上清を清澄化し、mAbを、製造業者の指示書に従ってMabSelect PrismA樹脂(GE Healthcare)を使用して精製した。0.5Mグリシン、3M NaCl、pH8.9を結合バッファとして使用し、0.1Mクエン酸pH3を溶出について使用した。即座の中和を、10%(V/V)1M Tris-HCl pH9を用いて行った。モノクローナルキメラ抗体を次いで、PBS 1×pH7.4(Mini dialysis devices、2mL-10k、Thermo Scientific)に対して透析し、その後、0.22μmフィルタ(Milelex GV hydrophilic PVDF,Millipore)上で濾過した。濃度は、各モノクローナル抗体の比吸光係数(E1%
280nm)を考慮して、Nanodrop 2000 Spectrophotometer(Thermo Scientific)を用いて決定した。純度は、10%イソプロパノールを補充した0.2M NaPO4、0.3M NaCl pH6.9中で平衡化したProtein-BEH 200Aカラムを使用する、Acquity UPLC-HClass Bio(Waters)を使用して、UPLC-SECによって決定した。抗体の質量は、逆相カラム(PLRP-S 4000A、Agilent technologies)を使用して、Xevo G2-S Q-Tof質量分析計(Waters)において決定した。全てのサンプルを、製造業者の指示書に従って、37℃でのPNGase Fグリコシダーゼ(New England Biolabs)を用いた脱グリコシル化後、分析した。最終物質の断片化および/または凝集は、SDS-PAGEによって評価した。エンドトキシン負荷は、chromogenic LAL-kinetic assay(Charles River Endosafe)を使用して決定した。
【0129】
抗体コンジュゲーション
チオール反応性色素pHAB(Promega)を、製造業者の指示書に従ってマレイミド化学を使用して、選択した抗ネクチン-4 ThiomAb(D265C、L234A、L235A)抗体のシステインにコンジュゲートさせた。簡単に言うと、抗体を、0.1Mリン酸バッファpH7.0に対して透析した後、穏やかな攪拌下室温で1時間2.5mMで還元した。引き続き、DTTを、Zebaスピン脱塩カラム(7MWCO)上で2回洗浄/遠心分離することによって除去した。1.2LのpHdye試薬(10μg/mL DMSO)を100μgの抗体に添加し、遮光して室温で1時間インキュベートした。Zeba脱塩カラムでの過剰な色素の除去後、色素抗体比を、異なる抗体間の同等のコンジュゲーションを確認するために計算した。
【0130】
システイン反応性リンカー-エキサテカン化合物マレイミド-Gly-PSAR10-グルクロニド-エキサテカン(MabLink)を、選択した抗ネクチン-4mAb(P331S、L234QおよびL235F)のシステイン残基にコンジュゲートさせた。簡単に言うと、PBS 1×、1mM EDTA中のmAbを37℃で2時間14モル当量のTCEPで還元し、その後、バッファを100mM KPO4、1mM EDTA pH7.4に交換した(Amicon ultra 30kDa)。12モル当量のシステイン反応性リンカー-エキサテカン化合物を使用して、室温で35分間、反応性システインとコンジュゲートさせた。バッファを次いで、100mM KPO4 pH8.0に交換した後、酸素の非存在下37℃で24時間インキュベートして、マレイミドを自己加水分解させた。最後のバッファ交換を、20mM His pH6.0中で実施した後、0.22μMフィルタで濾過した。LC-MS分析による薬物-抗体比(DAR)は、コンジュゲートしたmAbあたり7.77個と7.82個との間の毒素であった。SEC-HPLCによって決定したところ、8%未満の物質が凝集していた。
【配列表】
【国際調査報告】