(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】軽度認知障害と認知症治療のためのデジタル装置およびアプリケーション
(51)【国際特許分類】
G16H 20/00 20180101AFI20240403BHJP
A61B 10/00 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
G16H20/00
A61B10/00 H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561335
(86)(22)【出願日】2021-04-06
(85)【翻訳文提出日】2023-10-05
(86)【国際出願番号】 KR2021004251
(87)【国際公開番号】W WO2022215764
(87)【国際公開日】2022-10-13
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522154607
【氏名又は名称】エスアルファセラピューティクス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】チェ・スンウン
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA15
5L099AA25
(57)【要約】
本発明の一実施例による軽度認知障害および認知症治療のためのデジタル装置は、軽度認知障害と認知症に対する発病機序と治療仮説に基づいて、前記軽度認知障害と前記認知症の治療のためのデジタル治療剤モジュールを生成し、該デジタル治療剤モジュールに基づいて、具体化したデジタル課題を生成し、前記デジタル課題を第1ユーザーに提供するデジタル課題生成部、および前記デジタル課題に対する前記第1ユーザーの遂行結果を収集する結果収集部を含むことができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽度認知障害(mild cognitive impairment、MCI)および/または認知症(dementia)に対する発病機序(mechanism of action、MOA)と治療仮説(hypothesis)に基づいて、前記軽度認知障害と前記認知症の治療のためのデジタル治療剤モジュールを生成し、該デジタル治療剤モジュールに基づいて、具体化したデジタル課題を生成し、前記デジタル課題を第1ユーザーに提供するデジタル課題生成部;および
前記デジタル課題に対する前記第1ユーザーの遂行結果を収集する結果収集部を含む軽度認知障害および認知症治療のためのデジタル装置。
【請求項2】
前記デジタル課題生成部は、前記軽度認知障害および/または認知症に対する神経体液性因子に基づいて、前記デジタル治療剤モジュールを生成する、請求項1に記載の軽度認知障害および認知症治療のためのデジタル装置。
【請求項3】
前記神経体液性因子には、性ステロイドホルモン(sex steroid hormone)、IGF-2(insulin-like growth factor-2)、wnt/b-catenin、BAG1、CREB(cAMP response element-binding protein)、炎症因子(inflammation factors)、副腎皮質ステロイドホルモン(corticosteroids)、神経ホルモンのうち少なくとも一つ以上が含まれ、
前記副腎皮質ステロイドホルモンは、コルチゾール(cortisol)、グルココルチコイド(glucocorticoid)を含み、前記神経ホルモンは、ドーパミン(dopamine)、ノルアドレナリン(noradrenaline)、ソマトスタチン(somatostatin)を含む、請求項2に記載の軽度認知障害および認知症治療のためのデジタル装置。
【請求項4】
前記デジタル課題生成部は、第2ユーザーからの入力に基づいて、前記デジタル治療剤モジュールを生成する、請求項1に記載の軽度認知障害および認知症治療のためのデジタル装置。
【請求項5】
前記デジタル課題生成部は、前記第1ユーザーから受信した情報に基づいて、前記デジタル治療剤モジュールを生成する、請求項1に記載の軽度認知障害および認知症治療のためのデジタル装置。
【請求項6】
前記第1ユーザーから受信した情報は、前記第1ユーザーの基底因子、医療情報およびデジタル治療剤理解能力の少なくともいずれか一つを含み、前記基底因子は、前記第1ユーザーの活動量(activity)、心拍数、睡眠および食事(栄養と熱量)を含み、
前記医療情報は、前記第1ユーザーのEMR(electronic medical record)、家族歴、遺伝的脆弱性(genetic vulnerability)および遺伝的感受性(genetic susceptibility)を含み、
前記デジタル治療剤理解能力は、デジタル治療剤および装置に関する前記第1ユーザーの接近性と受容姿勢を含む、請求項5に記載の軽度認知障害および認知症治療のためのデジタル装置。
【請求項7】
前記デジタル課題生成部は、前記軽度認知障害と前記認知症に対する発病機序と治療仮説に対して仮想媒介変数を適用して前記デジタル治療剤モジュールを生成する、請求項1に記載の軽度認知障害および認知症治療のためのデジタル装置。
【請求項8】
前記仮想媒介変数は、前記第1ユーザーの海馬(hippocampus)における神経再生(neurogenesis)、抗炎症(anti-inflammation)、抗ストレス(anti-stress)および抗うつ病(anit-depression)の少なくとも一つに関して導き出される、請求項7に記載の軽度認知障害および認知症治療のためのデジタル装置。
【請求項9】
前記デジタル課題生成部は、遂行環境設定、ライフスタイル、学習、運動および肯定・達成の少なくとも一つに対応するデジタル治療剤モジュールと該当デジタル課題を生成する、請求項1に記載の軽度認知障害および認知症治療のためのデジタル装置。
【請求項10】
前記遂行環境設定に対するデジタル課題は、前記第1ユーザーに対する明るさ環境設定、アプリ環境設定と、場所設定を通じて親しく気楽な課題遂行環境を提供することを含む、請求項9に記載の軽度認知障害および認知症治療のためのデジタル装置。
【請求項11】
前記ライフスタイルに対するデジタル課題は、前記第1ユーザーに対する新たな経験および旅行提供、性ホルモンバランス回復の少なくとも一つを含む、請求項9に記載の軽度認知障害および認知症治療のためのデジタル装置。
【請求項12】
前記学習に対するデジタル課題は、前記第1ユーザーの連想学習、記憶認知治療の少なくとも一つを含む、請求項9に記載の軽度認知障害および認知症治療のためのデジタル装置。
【請求項13】
前記運動に対するデジタル課題は、前記第1ユーザーの予め設定された時間の間の急性運動を含む、請求項9に記載の軽度認知障害および認知症治療のためのデジタル装置。
【請求項14】
前記肯定・達成に対するデジタル課題は、前記第1ユーザーに対する課業達成課題の提供、任務付与および自発的な参加誘導の少なくとも一つを含む、請求項9に記載の軽度認知障害および認知症治療のためのデジタル装置。
【請求項15】
前記結果収集部は、前記デジタル課題に対する前記第1ユーザーの遵守度をモニタリングするか、前記デジタル課題に対して前記第1ユーザーが直接入力するようにすることで、前記デジタル課題に対する遂行結果を収集する、請求項1に記載の軽度認知障害および認知症治療のためのデジタル装置。
【請求項16】
前記デジタル課題生成部による前記デジタル課題の生成と前記結果収集部による前記第1ユーザーの前記デジタル課題遂行結果の収集は、フィードバックループによって複数回繰り返して遂行され、
前記デジタル課題生成部は、以前の回次から提供された前記第1ユーザーのデジタル課題と、前記結果収集部によって収集された前記第1ユーザーの前記デジタル課題に対する遂行結果データに基づいて、現在の回次に対する前記第1ユーザーのデジタル課題を生成する、請求項1に記載の軽度認知障害および認知症治療のためのデジタル装置。
【請求項17】
軽度認知障害と認知症に対する発病機序と治療仮説に基づいて、前記軽度認知障害と前記認知症の治療のためのデジタル治療剤モジュールを生成するステップ;
前記デジタル治療剤モジュールに基づいて、具体化したデジタル課題を生成するステップ;
前記デジタル課題を第1ユーザーに提供するステップ;および
前記デジタル課題に対する前記第1ユーザーの遂行結果を収集するステップを含む動作をコンピューティング装置で遂行するようにする、コンピュータ読み取り可能媒体に保存された軽度認知障害および認知症治療のためのデジタルアプリケーション。
【請求項18】
前記デジタル治療剤モジュールを生成するステップは、前記軽度認知障害と前記認知症に対する神経体液性因子に基づいて、前記デジタル治療剤モジュールを生成する、請求項17に記載のコンピュータ読み取り可能媒体に保存された軽度認知障害および認知症治療のためのデジタルアプリケーション。
【請求項19】
前記デジタル治療剤モジュールを生成するステップは、前記軽度認知障害および/または前記認知症に対する発病機序と治療仮説に対して、前記第1ユーザーの海馬における神経再生、抗炎症、抗ストレスおよび抗うつ病の少なくとも一つに関する仮想媒介変数を適用して前記デジタル治療剤モジュールを生成する、請求項17に記載のコンピュータ読み取り可能媒体に保存された軽度認知障害および認知症治療のためのデジタルアプリケーション。
【請求項20】
前記デジタル課題を生成するステップは、遂行環境設定、ライフスタイル、学習、運動および肯定・達成の少なくとも一つに対するデジタル課題を生成する、請求項17に記載のコンピュータ読み取り可能媒体に保存された軽度認知障害および認知症治療のためのデジタルアプリケーション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記憶喪失型軽度認知障害(amnestic mild cognitive impairment、MCI)およびアルツハイマー病(Alzheimer’s disease、AD)の進行抑制および治療を目的とするデジタル治療剤(digital therapeutics、以下DTx)に関する。
【背景技術】
【0002】
認知症(dementia)は、後天的に記憶、言語、判断力などの認知機能が減少して、日常生活を十分に遂行することができない臨床症候群を称する。認知症には、退行性認知症であるアルツハイマー認知症、脳卒中(stroke)などによって生じる血管性認知症、そして外傷、薬物などの多様な原因によって発病するその他の認知症に分けられる。
【0003】
『2016年の全国認知症疫学調査』(報告書番号、NIDR-1603-0015、保健福祉部、中央認知症センター、2017.6.)によると、韓国の年寄りの認知症標準化有病率は、65歳以上の場合、男性は8.18%、女性は10.46%、全体9.50%で女性が男性より高い有病率を示している。
【0004】
65歳以上の認知症標準化有病率(9.50%)を認知症種類によって細分化してみると、アルツハイマー認知症7.07%、血管性認知症0.83%、その他の認知症1.60%で、アルツハイマー認知症が他の種類の認知症に比べて圧倒的(約3/4)な優勢を示している。
【0005】
注目すべき点は、高齢化による認知症標準化有病率の急増である。65歳以上の韓国の年寄りの標準化有病率と85歳以上の韓国の年寄りの標準化有病率とを比較すると、9.50%から38.39%に高くなる。特に、85歳以上の男性の場合、認知症標準化有病率は53.99%で上がるようになる。
【0006】
さらに重要な点は、2015年人口センサス年齢、性別、地域標準化を将来人口に適用して推算した韓国の年寄りの認知症有病率および認知症患者数推移である。2016年に9.73%であった65歳以上の認知症標準化有病率は、2020年に10.29%、2030年に10.56%、2050年に16.09%に増加するものと予想される。この推移を適用すれば、2025年には韓国認知症人口が100万を超えるようになり、2050年には300万を超えるようになる。
【0007】
軽度認知障害(疾病管理リストコードF06.7)は、正常な老化と認知症の中間段階であって、日常生活には問題がないが、同じ年齢層に比べて記憶力および認知機能が落ちた状態を言う。軽度認知障害は、記憶喪失を主に表す記憶喪失性(amnestic)軽度認知障害と記憶以外の認知機能領域に低下を見せる非記憶喪失性(non-amnestic)軽度認知障害に分類することができる。軽度認知障害の半分程度が認知症に発展すると知られているため、認知症予防の側面で軽度認知障害に対する社会的関心が高まっている。
【0008】
前記調査報告書によると、韓国の年寄りの軽度認知障害標準化有病率は、65歳以上の場合は22.25%、65歳以上の男性の場合は18.09%、65歳以上の女性の場合は25.28%で認知症のように女性が男性よりも高い有病率を示している。
【0009】
65歳以上の軽度認知障害標準化有病率(22.25%)を細分化してみると、記憶喪失性軽度認知障害が16.69%、非記憶喪失性軽度認知障害が5.56%であって、記憶喪失性軽度認知障害が3/4を占めている。特に、記憶喪失性軽度認知障害が認知症への発展危険がさらに大きいため、たとえ日常生活には問題がないとしても、さらに積極的な記憶喪失性軽度認知障害の管理が求められる。
【0010】
有病率増加と関連して、認知症患者1人当りの年間管理費用と国家の認知症管理費用に注目する必要がある。『大韓民国の認知症現況2018』(2018、認知症安心センター)によると、認知症患者1人当りの年間管理費用は2,074万ウォン、国家の認知症管理費用は14兆6,000億ウォンで国内総生産(GDP)中0.8%を占める。認知症による社会的費用推移も2020年の経常価格17.9兆ウォンから2050年経常価格87.2兆ウォンへと大きい幅の増加が予想される。
【0011】
世界的に見たときにも、地域別に、そして高齢化の進行によって多少差があるが、全体の認知症有病率の増加と国家の認知症管理費用の増加という共通の問題に直面している。
【0012】
血管性認知症患者の場合、脳出血や脳腫瘍、正常圧水頭症などによる認知症である場合には、手術を施行することで認知症を治療することができる。また、脳梗塞による血管性認知症の場合には、高血圧、糖尿、喫煙、高脂血症などのような危険要素を除去または管理することで疾病を予防するか、進行を遅延させることができる。しかし、退行性であるアルツハイマー病の場合は血管性認知症とは異なり、前記治療法で治療効果を期待し難い。
【0013】
現在、米国のFDAは、アルツハイマー病の治療のために、二種類の薬物、cholinesterase inhibitorsであるDonepezil、Rivastigmine、GalantamineとN-methyl-D-aspartate(NMDA)antagonistであるMemantineを許可している。このうち、cholinesterase inhibitorであるDonepezilは、アルツハイマーのすべてのステップに、RivastigmineとGalantamineはmild to moderateアルツハイマーステップに一般的に処方されている。Memantineは、Donepezilと併用(combination)でmoderate to severeアルツハイマーステップに処方される。しかし、アルツハイマー病に対する薬物治療効果は非常に制限的である。この薬は、疾病の進行を防ぐか治療する薬ではなく、症状を若干遅らせる薬に過ぎない。これと同時に、深刻であり、時には致命的な副作用を示し、他の薬との相互作用があまりにも多いため危険であり得るという点が指摘され、薬物に対する認知症治療の無用性が提起され続けている。実際に、フランスで2018年8月から前記認知症治療剤4種に対する保険給与が中止された。
【0014】
これとともに、多国籍製薬会社のアルツハイマー治療剤の開発失敗あるいは中断事例(ファイザーのバピネウズマブ(Bapineuzumab)、イーライリリーのソラネズマブ(Solanezumab)、メルクのβ-セクリターゼ(BACE)抑制剤であるベルベセスタット(Verubecestat)、ベーリングゴインゲルハイムの「BI 409306」、アストラゼネカのサラカチニブ(Saracatinib)、バイオジェンのアデュカヌマブ(Aducanumab)、ノバルティスとアムジェンの「CNP520(Umibecestat)」、ロシュのクレネズマブ(Crenezumab))は、アルツハイマー治療剤開発の難しさを端的に見せており、今後から短い時間以内に革新的なアルツハイマー治療剤の出現可能性は非常に低いものと見込まれる。
【0015】
このような認知症の薬物治療の限界が明確になるとともに、非薬物的且つ不安、うつ病のような精神健康問題の緩和に利用されているCBT(cognitive behavioral0 therapy)を認知症の治療に活用しようとする試みが早く増えている。韓国内では、保険給与の問題により病院よりは認知症安心センターを中心に憩い場提供認知刺激プログラムで運営されている。必須認知リハビリプログラムは、運動治療、現実認識訓練、認知訓練治療、回想治療、認知刺激治療、音楽治療で構成されている。以外に、その他の認知刺激プログラムとして、作業治療、園芸治療、音楽治療、美術治療、運動治療が選択オプションとして提供されている。
【0016】
このようなプログラムの運営のためには、積極的な仲裁者として、臨床栄養士、運動処方士、物理治療師などが患者の行動に積極的に介入して指導しなければならないが、該当仲裁者の熟練度、人件費、離職、保険適用の経済性などの問題でよって多数の患者が高い水準の仲裁者が提供するプログラムを持続的に活用することは難しい実情である。
【0017】
このようなCBT運営と経済的困難を乗り越える代案として、イギリスNHS(national health service)はデジタルCBTサービスを提供している。NHSは、App Libraryを通じて記憶力、精神健康に関するモバイルアプリケーションを勧めている。例えば、My House of Memoriesアプリは、記憶回想機能と重要な記憶を記憶-木、記憶-箱、タイムラインによって保存することができ、Talk Around It Homeアプリは、品物の名前合わせテスト、単語記憶能力向上ゲームを提供し、MyCognition Homeアプリは、計画力、意思決定能力、記憶力、集中力、速度および正確性を評価するMyCQテストを基盤に頭脳訓練ゲームを提供している。
【0018】
一方、現在、米国のDthera Sciences(OTCQB:DTHR)は、年寄りのための神経退行性疾患、特に認知症に対するDTHR-ALZというデジタル治療剤を開発中であるが、まだFDAの許可を受けていない状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病の発病機序に関する基礎科学論文と関連臨床試験論文に対する文献調査と専門家レビューを介して、記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病に対する発病機序(mechanism of action、以下MOA)を導き出し、これに基づいて記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病の進行抑制と治療のための治療仮説(therapeutic hypothesis)とデジタル治療仮説(digital therapeutic hypothesis)を確立して、軽度認知障害およびアルツハイマー病の進行抑制と治療を目的とするデジタル装置およびアプリケーションを提供することを目的とする。
【0020】
また、本発明は、前記記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病のデジタル治療仮説を臨床的に検証してデジタル治療剤で実現するための、アプリケーション(application)の合理的設計とそれに基づいた記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病の進行抑制と治療を目的とするデジタル装置およびアプリケーションを提供することを目的とする。
【0021】
また、本発明は、記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病の神経体液性因子(neuro-humoral factors)を考慮して、発病機序、治療仮説、デジタル治療仮説を導き出す。本発明は、記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病のデジタル治療仮説に基づいて、患者がデジタル課題の繰り返し遂行を通じて、記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病の進行を抑制し、改善した治療効果を提供する信頼性を確保することができるデジタル装置およびアプリケーションの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の一実施例による軽度認知障害および認知症治療のためのデジタル装置は、軽度認知障害と認知症に対する発病機序と治療仮説に基づいて、前記軽度認知障害と前記認知症の治療のためのデジタル治療剤モジュールを生成し、該デジタル治療剤モジュールに基づいて、具体化したデジタル課題を生成し、前記デジタル課題を第1ユーザーに提供するデジタル課題生成部、および前記デジタル課題に対する前記第1ユーザーの遂行結果を収集する結果収集部を含むことができる。
【0023】
本発明の一実施例による軽度認知障害および認知症治療のためのデジタルアプリケーションは、コンピュータ読み取り可能媒体に保存されたデジタルアプリケーションであって、軽度認知障害と認知症に対する発病機序と治療仮説に基づいて、前記軽度認知障害と前記認知症の治療のためのデジタル治療剤モジュールを生成するステップ、前記デジタル治療剤モジュールに基づいて、具体化したデジタル課題を生成するステップ、前記デジタル課題を第1ユーザーに提供するステップ、および前記デジタル課題に対する前記第1ユーザーの遂行結果を収集するステップを含む動作をコンピューティング装置で遂行するようにすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病の進行抑制および治療のためのデジタル装置およびアプリケーションによれば、記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病進行の神経体液性因子を考慮して、発病機序と治療仮説、デジタル治療仮説を導き出し、これに基づいて患者にデジタル課題を提示してその遂行結果を収集分析し、記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病の進行を抑制し、改善した治療効果を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1a】本発明で提案されたアルツハイマー病の発病機序を示す図である。
【
図1b】本発明で提案された記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病の進行抑制および治療仮説を示す図である。
【
図1c】本発明で提案された記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病の進行抑制および治療のデジタル治療架設を示す図である。
【
図2】本発明の一実施例による記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病の進行抑制および治療のためのデジタル装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施例による記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病の進行抑制および治療のためのデジタルアプリケーションの入力と出力ループを示す図である。
【
図4】本発明の一実施例による記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病の進行抑制および治療のためのデジタル装置およびアプリケーションによるフィードバックループを示す図である。
【
図5a】本発明の一実施例による記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病の進行抑制および治療のための装置およびアプリケーションでデジタル治療を実現するモジュール設計を示す図である。
【
図5b】本発明の一実施例による記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病の進行抑制および治療のためのデジタル装置およびアプリケーションを裏付ける背景因子を示す図である。
【
図6】本発明の一実施例による記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病の進行抑制および治療のためのデジタル装置およびアプリケーションを利用して患者に合わせたデジタル処方を指定する方法を示す図である。
【
図7a-e】本発明の一実施例による各モジュールの具体的な課題の例示および出力データ収集方式を示す。
【
図8】本発明の一実施例による記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病の進行抑制および治療のためのデジタルアプリケーションの動作を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の一実施例による記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病の進行抑制および治療のためのデジタルアプリケーションでデジタル課題を生成する方法を示すフローチャートである。
【
図10】本発明の一実施例による記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病の進行抑制および治療のためのデジタルアプリケーションでフィードバック制御によって動作を繰り返し遂行することを示すフローチャートである。
【
図11】本発明の一実施例による記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病の進行抑制および治療のためのデジタル装置のハードウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付の図面を参照して、本発明の多様な実施例について詳しく説明しようとする。本文書で図面上の同一の構成要素に対しては同一の参照符号を使用し、同一の構成要素に対して重複した説明は省略する。
【0027】
本文書に開示されている本発明の多様な実施例に対して、特定の構造的ないし機能的説明は、単に本発明の実施例を説明するための目的として例示されたものであって、本発明の多様な実施例は、多様な形態で実施可能であり、本文書に説明された実施例に限定されるものと解析されてはならない。
【0028】
多様な実施例で使用された「第1」、「第2」、「第一」、または「第二」などの表現は、多様な構成要素を順序および/または重要度に関係なく修飾することができ、該当構成要素を限定しない。例えば、本発明の権利範囲を外れることなく、第1の構成要素は第2の構成要素と命名されてよく、同様に、第2の構成要素も第1の構成要素に変えて命名されてよい。
【0029】
本文書で使用された用語は、単に特定の実施例を説明するために使用されたものであって、他の実施例の範囲を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明らかに異なる意図がない限り、複数の表現を含むことができる。
【0030】
技術的や科学的な用語を含めて、ここで使用される全ての用語は、本発明の技術分野における通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有することができる。一般的に用いられる辞書に定義された用語は、関連技術の文脈上有する意味と同一または類似の意味を有するものと解釈されてよく、本文書で明らかに定義されない限り、理想的または過度に形式的な意味に解釈されない。場合によっては、本文書で定義された用語であっても、本発明の実施形態を排除するように解釈されてはいけない。
【0031】
従来の新薬開発は、現場での医学的必要を確認し、該当疾病に対する専門家レビューとメタ分析を活用した発病機序を提案し、これに基づいた治療仮説を導き出することから始まる。また、治療仮説に基づいて治療効果を期待した薬物のライブラリを準備した後、スクリーニングにより候補物質を発見し、該当候補物質の最適化および前臨床試験を経て、臨床以前ステップから有効性と安全性を確認して最終候補薬物を確定することになる。そして、該当候補薬物の大量生産のためにCMC(chemistry、manufacturing、and controls)を確立した後、該当候補薬物の臨床試験を進行して発病機序と治療仮説に対する検証を行い、候補薬物に対する臨床的有効性および安全性を確認することになる。
【0032】
特許の観点からは、新薬開発のアップストリーム(upstream)に該当する薬物ターゲットとシグナル伝達(drug target/signaling)は、多くの不確実性を有している。そして、多くの場合、既存に報告された結果を総合、解釈する方法論を採用しているので、発明の新規性を認められ難い場合が多い。それに反して、薬物ターゲットとシグナル伝達を調節して疾病を治療できる薬物の発明は、数多くの新薬研究開発の研究方法論の発展にもかかわらず、一部の抗体や核酸(DNA、RNA)治療剤分野を除くと、最も高い水準の創意性が求められる。結果として、薬物の分子的構造は、新薬分野において最も強力な物質特許を構成する最も核心的な要素である。
【0033】
このような物質特許により強力に保護される薬物とは異なり、デジタル治療剤は、原則的にソフトウェアで実現される。デジタル治療剤の属性上、治療剤としての臨床的検証と認許可プロセスを考慮すると、当該疾病に対するデジタル治療剤の合理的設計およびこれに基づいたソフトウェアの実現は、特許として保護されなければならない非常に創意的な発明の過程であると言える。
【0034】
すなわち、本発明のようなデジタル治療剤の核心は、当該疾病の治療に好適なデジタル治療剤の合理的設計と、これに基づいて臨床的に検証できる具体的なソフトウェアの開発にある。このような観点から実現された本発明の軽度認知障害とアルツハイマー病の治療のためのデジタル装置およびアプリケーションについて、以下で具体的に説明する。
【0035】
図1aは、本発明で提案されたアルツハイマー病の発病機序を、
図1bは、本発明で提案された軽度認知障害とアルツハイマー病の治療仮説を、
図1cは、本発明で提案された軽度認知障害とアルツハイマー病のデジタル治療架設を示す図である。
【0036】
以下で説明する本発明の軽度認知障害とアルツハイマー病進行抑制と治療のためのデジタル装置およびアプリケーションは、記憶喪失型軽度認知障害とアルツハイマー病に対する臨床試験論文の文献調査と専門家レビューを介して導き出された発病機序と治療仮説に基づいて実現された。
【0037】
一般的に言うと、疾病治療は、特定の疾病を病態生理学的機能および気質的側面で分析して、開始点、進行点および終末点を決定する。そして、該当疾病の人口学的特性および疾病統計学的分析を通じて、疾病の病状(indication)を定義する。また、確定された病状に該当する患者の生理、特に、神経体液性因子を分析し、患者の神経体液性因子を疾病に関する部分に範囲を狭めて、発病機序を導き出す。
【0038】
次に、疾病に関連した当該神経体液性因子の調節に直接的な関係がある行為と環境制御により、当該疾病を治療する治療仮説を導き出す。このような治療仮説をデジタル治療剤で実現するために、患者の「行為/環境の制御を神経体液性因子の調節」につながる繰り返したデジタル課題と遂行による治療効果の達成というデジタル治療仮説を提案する。本発明のデジタル治療仮説は、患者の行為(行動、情緒、認知領域を含む)変化、環境改善、患者参加を具体的な課題(instruction)の形態で提示し、その遂行を収集・分析するデジタル装置およびアプリケーションで実現される。
【0039】
以上で説明した臨床試験に関する文献調査は、メタ分析、データマイニングを介して行われることができ、各分析ステップにおいて、臨床専門医のフィードバックと深層レビューが適用されることができる。基本的に、本発明は、以上で説明した過程により、軽度認知障害とアルツハイマー病の発病機序と治療仮説を抽出することができ、これに基づいて、神経体液性因子を調節して、軽度認知障害とアルツハイマー病の進行抑制と治療のためのデジタル治療剤としてのデジタル装置およびアプリケーションを提供することを含む。
【0040】
しかし、本発明に係る軽度認知障害とアルツハイマー病の発病機序と治療仮説の抽出方法が、以上で説明した方法のみに制限されるものではなく、その外にも、様々な方法により疾病の発病機序と治療仮説を抽出することができる。
【0041】
図1aを参照すると、老化過程の多様な危険因子(risk factors)、例えば、年齢、遺伝/家族歴、喫煙・飲酒の可否、動脈硬化、コレステロール、血清ホモシステイン(homocysteine)、糖尿病、MCI、その他の因子が老化過程の神経体液性因子の不均衡を招くことができる。例えば、性ステロイドホルモン(sex steroid hormone)の異常、IGF-2(insulin-like growth factor-2)の減少、wnt/b-cateninの異常、BAG1、CREB(cAMP response element-binding protein)の減少、炎症因子(inflammation factors)とコルチゾール(cortisol)、グルココルチコイド(glucocorticoid)のような副腎皮質ステロイドホルモン(corticosteroids)の過多分泌、ドーパミン(dopamine)、ノルアドレナリン(noradrenaline)、ソマトスタチン(somatostatin)のような神経ホルモン分泌低下のような神経体液性因子が生理学的な側面で海馬における神経再生(neurogenesis)を抑制し、脳組織で炎症を誘発し、またストレスとうつ病を引き起こし得る。長期間にわたったこのような生理学的因子が脳組織におけるプラーク(plaque)沈着と神経細胞の死滅を誘導し、その結果、アルツハイマー病の解剖学的特徴であるプラークが沈着された萎縮した脳が作られる。結局、脳は、正常な機能ができず、私たちが観察する記憶、言語、判断力などの認知機能が減少して、日常生活が十分に遂行できない認知症と通称する臨床症候群を示すことになる。
【0042】
図1bを参照すると、本発明に係る軽度認知障害とアルツハイマー病の治療仮説は、患者の行動制御(生活、習慣、運動、栄養)と環境制御(明るくて親しく気楽な遂行環境の設定)を含む患者参加を通じた神経体液性因子のバランス回復を通じた軽度認知障害とアルツハイマー病の進行抑制と治療に関する。
【0043】
図1cを参照すると、軽度認知障害とアルツハイマー病のデジタル治療仮説は、患者の行動変化、環境改善を含む患者参加方式を具体的な課題の形態で提示し、その遂行を収集・分析するデジタル装置およびアプリケーションで実現される。本発明のデジタル治療剤を利用すれば、前記のデジタル入力(課題)と出力(遂行)を通じて、記憶喪失型軽度認知障害とアルツハイマー病患者の神経体液性因子の不均衡を矯正して軽度認知障害とアルツハイマー病の進行抑制と治療を達成することができる。
【0044】
一方、
図1aおよび1bにおいては、軽度認知障害とアルツハイマー病の発病機序と治療仮説に関して説明しているが、本発明がこれに制限されるものではなく、他の種類の軽度認知障害と認知症に対しても本発明の方法論を適用することができる。
【0045】
また、
図1aおよび1bにおいては、神経体液性因子を性ステロイドホルモン、IGF2、wnt/b-catenin、BAG1、CREB、炎症因子、副腎皮質ステロイドホルモン、神経ホルモンとして説明したが、これは例示的なものであるだけであって、本発明に係る記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病の発病機序と治療仮説において神経体液性因子がこれに制限されるものではなく、軽度認知障害および認知症に影響を与えるすべての神経体液性因子が考慮されることができる。
【0046】
図2は、本発明の一実施例による記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病の進行抑制および治療のためのデジタル装置の構成を示すブロック図である。
【0047】
図2を参照すると、本発明の一実施例による軽度認知障害とアルツハイマー病治療のためのデジタルシステム000は、デジタル課題生成部010、センシングデータ収集部020、遂行入力部030、結果分析部040、データベース050およびセキュリティ部060を含むことができる。
【0048】
記憶喪失型軽度認知障害とアルツハイマー病に対する発病機序、治療仮説、およびデジタル治療仮説に基づいて、医師(第2ユーザー)は、該当患者の軽度認知障害とアルツハイマー病の治療のためのデジタル装置およびアプリケーションで実現されるデジタル治療剤を処方することができる。ここで、デジタル課題生成部010は、軽度認知障害とアルツハイマー病に対する神経体液性因子と行動/環境間の相互作用に基づいて、デジタル治療剤処方を患者が遂行できる具体的な行動課題として患者に提供する装置である。例えば、神経体液性因子は、性ステロイドホルモン、IGF2、wnt/b-catenin、BAG1、CREB、炎症因子、副腎皮質ステロイドホルモン、神経ホルモンなどを含むことができる。しかし、これに制限されるものではなく、記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病を引き起こし得るすべての神経体液性因子が考慮されることができる。
【0049】
デジタル課題生成部010は、医師からの入力に基づいて、デジタル課題を生成することができる。この場合、デジタル課題生成部010は、医師が患者(第1ユーザー)を診断して収集した情報に基づいてデジタル課題を生成することができる。また、デジタル課題生成部010は、患者から受信した情報に基づいて、デジタル課題を生成することができる。例えば、患者から受信した情報は、患者の基底因子(basal factors)、医療情報、デジタル治療剤理解能力(digital therapeutics literacy)を含むことができる。ここで、基底因子は、患者の活動量(activity)、心拍数、睡眠、食事(栄養と熱量)などを含むことができる。医療情報は、患者のEMR(electronic medical record)、家族歴、遺伝的脆弱性(genetic vulnerability)、遺伝的感受性(genetic susceptibility)などを含むことができる。デジタル治療剤理解能力は、デジタル治療課題および装置に関する患者の接近性(accessibility)と受容姿勢などを含むことができる。
【0050】
デジタル課題生成部010は、軽度認知障害とアルツハイマー病に対する発病機序と治療仮説を反映して、仮想媒介変数を活用、デジタルモジュールを生成することができる。ここで、仮想媒介変数は、患者の環境、行動、感情および認知の側面を考慮して、海馬(hippocampus)における神経再生、抗炎症、抗ストレス、抗うつ病に対して導き出されることができる。これに関しては
図5で詳細に後述する。
【0051】
デジタル課題生成部010は、患者が治療効果を得るために具体的に設計されたデジタル課題を生成し、その課題を患者に提供する。例えば、デジタル課題生成部010は、各デジタル治療剤モジュールの具体的なデジタル課題を生成することができる。
【0052】
センシングデータ収集部020と遂行入力部030は、デジタル課題生成部010により提供されたデジタル課題に対する患者の遂行結果を収集することができる。具体的に、デジタル課題に対する患者の遵守度(adherence)をセンシングするセンシングデータ収集部020とデジタル課題に対して患者が直接遂行結果を入力することができる遂行入力部030で構成され、デジタル課題に対する患者の遂行結果を出力する。
【0053】
結果分析部040は、患者の行動遵守度や参加を予め設定された周期で収集して外部に報告することができる。したがって、医師は患者が直接来院しなくても、アプリケーションを介してデジタル課題の遂行経過をモニタリングし続けることができる。
【0054】
データベース050は、軽度認知障害とアルツハイマー病に対する発病機序、治療仮説、ユーザーに提供されたデジタル課題、ユーザーの遂行結果に関するデータを保存することができる。
図2においては、データベース050が軽度認知障害とアルツハイマー病治療のためのデジタル装置000に含まれることが示されているが、データベース050は、外部のサーバーに備えられてもよい。
【0055】
一方、デジタル課題生成部010によるデジタル課題の入力とセンシングデータ収集部020/遂行入力部030による患者のデジタル課題遂行結果の出力、そして結果分析部040による評価という一連のループは、複数回繰り返して遂行されることができる。ここで、デジタル課題生成部010は、以前の回次から提供された患者のデジタル課題とその出力値および評価を反映して現在の回次に対する患者に合わせたデジタル課題を生成することができる。
【0056】
このように、本発明の記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病の進行抑制および治療のためのデジタル装置によると、記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病進行の神経体液性因子を考慮して、軽度認知障害とアルツハイマー病に対する発病機序と治療仮説、デジタル治療仮説を導き出し、これに基づいて、患者にデジタル課題を提示してその遂行結果を収集分析し、記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病の進行を抑制し、改善した治療効果を提供することができる。
【0057】
図3は、本発明の一実施例による記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病の進行抑制および治療のためのデジタルアプリケーションの入力と出力ループを示す図である。
【0058】
図3を参照すると、本発明の一実施例による軽度認知障害とアルツハイマー病治療のためのデジタルアプリケーションは、該当デジタル処方を課題の形態で患者に提供し、該当デジタル課題に対する遂行結果が出力としてアプリケーションにさらに入力されることができる。
【0059】
患者に提供されるデジタル課題は、具体的な行動課題と患者の環境を制御することを含むことができる。
図3に示されているように、デジタル課題は、遂行環境設定、ライフスタイル、学習、運動、肯定・達成モジュールを含むことができる。しかし、これは、例示であって、本発明によるデジタル課題がこれらモジュールに制限されるものではない。
【0060】
デジタル課題に対する患者の遂行結果は、1)課題-遂行ログイン/ログアウト情報、2)運動、ストレスに関する心拍数、酸素飽和度変化のような受動データ(passive data)の形態でセンシングされる遵守度情報、そして3)患者遂行結果の直接入力情報で構成される。
【0061】
図4は、本発明の一実施例による記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病の進行抑制および治療のためのデジタル装置およびアプリケーションによるフィードバックループを示す図である。
【0062】
図4を参照すると、前述した
図3の単一のフィードバックループを複数回繰り返し遂行して神経体液性因子を調節することで、軽度認知障害とアルツハイマー病の進行抑制と治療を達成することを示している。
【0063】
軽度認知障害とアルツハイマー病の場合、疾病的特性上、その治療のためには、持続的なデジタル治療と観察が求められる。このような特性のために、軽度認知障害とアルツハイマー病の進行抑制および治療効果は、該当治療過程中の単純課題-遂行繰り返しよりは、フィードバックループによる課題-遂行の漸進的な向上により、より効果的に達成されることができる。
【0064】
例えば、初回のデジタル課題と遂行結果は、単一ループでは入力値と出力値として与えられるが、N回遂行時にループのフィードバックプロセスを用いて今回のループで生成された入力値と出力値を反映して次回のループの入力を調整することから、新たなデジタル課題を生成することができる。このようなフィードバックループを繰り返すことで、患者に合わせたデジタル課題を導き出すとともに、治療効果を極大化することができる。
【0065】
このように、本発明の一実施例による軽度認知障害とアルツハイマー病治療のためのデジタル装置およびアプリケーションでは、以前の回次(例えば、N-1回次)で提供された患者のデジタル課題および課題遂行結果に関するデータを用いて、現在の回次(例えば、N回次)に対する患者のデジタル課題と遂行結果を算出することができる。すなわち、前回ループで算出された患者のデジタル課題および課題遂行結果に基づいて、次のループでのデジタル課題を生成することができる。ここで、フィードバックプロセスは、必要に応じて、多様なアルゴリズムと統計的モデルが使用されることができる。
【0066】
このように、本発明の一実施例による軽度認知障害とアルツハイマー病治療のためのデジタル装置およびアプリケーションでは、迅速なフィードバックループによって患者に好適な患者に合わせたデジタル課題の最適化が可能である。
【0067】
図5aは、本発明の一実施例による記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病の進行抑制および治療のための装置およびアプリケーションでデジタル治療を実現するモジュール設計を示す図であり、
図5bは、本発明の一実施例による記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病治療のためのデジタル装置およびアプリケーションを裏付ける背景因子を示す図である。
【0068】
図5aに示されたように、軽度認知障害とアルツハイマー病に対する発病機序に基づいた治療仮説が作られると、ターゲットとなる神経体液性因子(例えば、性ステロイドホルモン、IGF2、wnt/b-catenin、BAG1、CREB、炎症因子、副腎皮質ステロイドホルモン、神経ホルモン)を導き出すことができる。このような神経体液性因子の調節に具体的な課題を対応させるために、仮想媒介変数を活用した。「神経体液性因子-仮想媒介変数-DTxモジュール」の相関関係を用いて、軽度認知障害とアルツハイマー病治療に必要なモジュールを導き出した。各モジュールは、後述する
図7でより具体的にモジュール別の課題の形で説明する。ここで、各モジュールは、実際デジタル装置またはアプリケーションとして実現されるデジタル治療剤の基本設計単位であり、具体的な課題の集合である。
【0069】
具体的に、
図5aを参照すると、軽度認知障害とアルツハイマー病に対する発病機序と治療仮説を通じて導き出された神経体液性因子は、性ステロイドホルモン、IGF2、wnt/b-catenin、BAG1、CREB、炎症因子、副腎皮質ステロイドホルモン、神経ホルモンであってよい。軽度認知障害とアルツハイマー病治療のためには、性ステロイドホルモンバランス、IGF-2分泌増加、wnt/b-cateninバランス、BAG1とCREB分泌増加、炎症因子と副腎皮質ステロイドホルモン分泌減少、神経ホルモン分泌増加を通じて軽度認知障害とアルツハイマー病の発病機序である該当神経体液性因子不均衡を解消しなければならない。
【0070】
各神経体液性因子の制御を海馬における神経再生、抗炎症、抗ストレスおよび抗うつ病のような仮想媒介変数を活用してデジタル治療剤モジュールに対応させた。そして、変換されたモジュールに基づいて、各モジュール別の具体的なデジタル課題を生成した。ここで、デジタル課題は、モニタリングを通じて出力可能な遂行環境設定とモジュール(ライフスタイル、学習、運動、肯定・達成モジュール)を含むことができる。しかし、これは、例示であって、本発明によるモジュールは、これに制限されるものではない。
【0071】
一方、
図5bを参照すると、本発明の一実施例による軽度認知障害とアルツハイマー病治療のためのデジタル装置およびアプリケーションのモジュール設計において、背景因子をともに考慮することができる。
【0072】
ここで、背景因子は、本発明に係るデジタル軽度認知障害とアルツハイマー病治療の臨床的有効性を検証する過程において、臨床実験結果の補正のために必要な要素である。具体的に、
図5bに示された背景因子中の基底因子(basal factors)は、活動量(activity)、心拍数、睡眠、食事(栄養と熱量)などを含むことができ、医療情報は、患者が来院した時に作成したEMR、家族歴、遺伝的脆弱性および感受性などを含むことができ、デジタル治療剤理解能力は、デジタル治療課題および機器に対する患者の接近性と受容姿勢を含むことができる。
【0073】
図6は、本発明の一実施例による記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病の進行抑制および治療のためのデジタル装置およびアプリケーションを用いて、患者に合わせたデジタル処方を指定する方法を示す図である。
【0074】
図6の(A)は、日常的患者-医師間の問診による処方過程を示し、
図6の(B)は、医師が複数のデジタル課題とその遂行結果の分析により患者に合わせたデジタル処方を指定する方式を示す。
【0075】
このように、本発明の一実施例による軽度認知障害とアルツハイマー病治療のためのデジタル装置およびアプリケーションを用いる際、
図6の(B)に示されているように、所定の期間の間に患者の課題と遂行結果を医師が検討して患者に合わせた軽度認知障害とアルツハイマー病治療のためのモジュールの種類と各モジュール別の課題を調整することができる。
【0076】
図7aは、本発明の一実施例による遂行環境設定を、7b~7eは、本発明の一実施例による各モジュールの具体的な課題の例示および出力データ収集方式を示す。
【0077】
軽度認知障害とアルツハイマー病のデジタル治療の場合、通常、持続的な治療が必須であるため、参加年齢層がデジタル治療に対して楽しさを感じ、自発的に参加することが何よりも重要である。このような脈絡で、各モジュールにはゲーム的要素を入れてモジュールを構成することができる。後述するように、記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病の進行抑制および治療のために実現されたデジタル装置およびアプリケーションにおいて各モジュールは、基本設計単位であり、具体的な課題の集合である。
【0078】
図7aを参照すると、遂行環境設定の具体的な課題例示および出力データ収集方式を示す。ここで、遂行環境設定は、
図2のデジタル課題生成部010の構成として含まれることができる。
図7b~7eで示す他のモジュールは、遂行環境設定7aで設定された明るくて親しく気楽な環境で遂行される。
【0079】
明るさ設定は、照度センサーやIoT照明を活用したデジタル課題遂行環境の明るさ環境を設定することを含み、明るい環境で少なくとも一日に16時間露出するように生活環境を造成することができる。
【0080】
親しさ(familiarity)の設定は、学習、肯定・達成モジュールを行うとき、患者に慣れて親しい環境で記憶と回想を遂行することができるアプリ環境(例えば、過去に患者が好んで聴いていた音楽、好きな映画の名場面、名セリフ、家族写真、記録写真などのように患者の回想に役立つコンテンツ)設定と課題遂行過程の間に患者が親しさを感じることができる場所設定を含むことができる。
【0081】
気楽さ(relaxation)の設定は、学習、肯定・達成モジュールを行うとき、患者が気楽な雰囲気で課題を遂行することができるアプリ環境(例えば、背景写真、音楽、トーンなどのように患者のストレス減少に役立つコンテンツ)設定と課題遂行過程の間に気楽さを与えることができる場所設定を含むことができる。
【0082】
図7b~7eは、本発明の一実施例による各モジュールの具体的な課題の例示および出力データ収集方式を示す。本実施例においては、モジュールとしてライフスタイル、学習、運動、肯定・達成モジュールを含むことができる。
【0083】
図7bを参照すると、ライフスタイルモジュールの具体的な課題例示および出力データ収集方式を示す。ここで、ライフスタイルモジュールは、
図2のデジタル課題生成部010の構成として含まれることができる。
【0084】
新たな経験および旅行課題は、1週間や2週に一度新たな環境を経験させる見慣れない場所への旅行を含むことができる。新たな経験および旅行(課題)は、日誌あるいは多様なデジタル媒体を利用したレコーディング(遂行)で構成されることができる。
【0085】
性ホルモンバランス課題は、老化あるいは更年期による性ステロイドホルモンの急激な不均衡の回復を目的とする。特に、急激な性ホルモン変化を経験するようになる更年期女性の場合、HRT(hormone replacement therapy)や急激な脂肪減少を起こす激しいダイエットは、なるべく避けなければならない。栄養バランスを反映した食事を通じた性ホルモンバランス回復(課題)は、献立記録および栄養評価(遂行)で構成されることができる。
【0086】
図7cを参照すると、学習モジュールの具体的な課題例示および出力データ収集方式を示す。ここで、学習モジュールは、
図2のデジタル課題生成部010の構成で含まれることができる。
【0087】
具体的に、学習モジュールの課題は、気楽な雰囲気で見慣れるものを持続的に繰り返して記憶させ、取り出させる行動課題を含むことができる。このような学習モジュールの場合、第1ユーザーの遂行は記憶力の向上と学習のためのゲームの記録(game record)、ログブック(log book)の形態で行われることができる。また、気楽な雰囲気で連想学習ができる環境をDTxの背景、トーン、音楽設定などを通じて提供することができる。例えば、学習モジュールの課題は、気楽な音楽を聴覚的に誘導するか、患者が良い匂いを嗅ぐように誘導することができる。
【0088】
図7dを参照すると、運動モジュールの具体的な課題例示および出力データ収集方式を示す。ここで、身体運動モジュールは、
図2のデジタル課題生成部010の構成で含まれることができる。
【0089】
運動モジュールは、20分間の急性運動を定期的に(3回/週)遂行する一連の行動課題(behavioral instruction)で構成されることができる。
【0090】
具体的に、運動モジュールの行動課題は、その遂行結果をバイオフィードバック(EEG、ECG、EMG、EDGなど測定)装置や汎用センサー(activity、HRなど測定)を用いてセンシングデータ収集部020で収集するか、若しくは患者が直接遂行入力部030を用いて入力する方法を含む。ここで、本発明の運動課題は、患者の年齢と肉体的状況に合わせて医師や運動治療師が広く用いている運動治療法を準用して構成されることができる。
【0091】
このような運動モジュールの場合、第1ユーザーは運動日誌を作成するか、心拍数をチェックするか、または個人トレーニング(PT)コーチなどを通じて行動課題を遂行することができる。
【0092】
図7eを参照すると、肯定・達成モジュールの具体的な課題例示および出力データ収集方式を示す。ここで、肯定・達成モジュールは、
図2のデジタル課題生成部010の構成で含まれることができる。
【0093】
具体的に、肯定・達成モジュールは、患者の課業遂行とその完遂の達成感によるドーパミンの分泌を促進する課題を含むことができる。ここで、課業達成課題は、課業を与え、その達成により患者が達成感を感じるようにする課題であり、患者の参加期間に合わせて課業をアップデートすることができ、自発的な参加を誘導することができるゲームを含むことができる。例えば、ゲームの具体的な形式は、学習、隠し絵または異なる絵探し、クイズなどで多様に構成可能である。
【0094】
特に、肯定・達成モジュール中のクイズの形で実現される部分は、患者の健康情報理解能力とデジタル治療剤理解能力を高める付加的な効果を期待することができる。このような健康情報およびデジタル治療剤理解能力の向上は、患者の治療参加の持続と遂行度の向上のために必須な要素である。
【0095】
このような肯定・達成モジュールの場合、第1ユーザーにとって自分フィードバックまたは自分補償や患者と医師との関係を通じた補償などの方式で課題を遂行するようにすることができる。
【0096】
前述したことのように、本発明に係るデジタル治療は、長期間の持続的な患者参加が必須であり、この期間の間に上述したモジュールの課題を誠実に遂行する自体が、患者の達成感を形成できるように、肯定・達成モジュールに称賛(補償)課題を作ることができる。称賛課題で患者の積極的な治療参加は、患者-保護者、患者-医師の間の信頼と補償により、達成感としてフィードバックが可能である。
【0097】
一方、軽度認知障害と認知症の進行と老化は、密接な関係がある。特に、老齢時期には、年齢層、性別、性格、趣向によって新たなライフスタイル、学習、運動、肯定・達成について設定される基準の偏差が大きい。このような偏差をカバーするために、各患者の個別特性に合わせて各モジュール別のデジタル課題を合わせた型で提示することが好ましい。特に、アプリとの交互コミュニケーションが必要な課題は、ビッグデータ分析、人工知能分析と結合して開発可能である。
【0098】
以上において、
図7a~
図7eに示した各モジュールと該当デジタル課題は、単に例示的なものであって、本発明がこれに制限されるものではなく、患者に提供されるデジタル課題は、場合によって多様に設定されることができる。
【0099】
図8は、本発明の一実施例による記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病の進行抑制および治療のためのデジタルアプリケーションの動作を示すフローチャートである。
【0100】
図8を参照すると、本発明の一実施例による軽度認知障害(MCI)とアルツハイマー病治療のためのデジタルアプリケーションは、先ず、軽度認知障害とアルツハイマー病に対する発病機序と治療仮説に基づいて、軽度認知障害とアルツハイマー病の治療のためのデジタル治療剤モジュールを生成することができる(S810)。ここで、ステップS810においては、軽度認知障害とアルツハイマー病に対する神経体液性因子(例えば、性ステロイドホルモン、IGF2、wnt/b-catenin、BAG1、CREB、炎症因子、副腎皮質ステロイドホルモン、神経ホルモン)に基づいて、デジタル治療剤モジュールを生成するようにすることができる。
【0101】
一方、ステップS810では、医師からの入力に基づいてデジタル治療剤モジュールを生成することができる。この場合、医師が患者を診断して収集した情報とこれに基づいて作成した処方結果に基づいて、デジタル治療剤モジュールを生成することができる。また、ステップS810では、患者から受信した情報(例えば、基底因子、医療情報、デジタル治療剤理解能力など)に基づいて、デジタル治療剤モジュールを生成することができる。
【0102】
そして、ステップS820では、デジタル治療剤モジュールに基づいて具体化したデジタル課題を生成することができる。ステップS820は、軽度認知障害とアルツハイマー病に対する発病機序と治療仮説に対して、患者の環境と行動側面(例えば、海馬における神経再生、抗炎症、抗ストレス、抗うつ病など)に関する仮想媒介変数を適用してデジタル治療剤モジュールを生成することができる。これに関しては
図5で説明したため、詳細な説明は省略する。
【0103】
ここで、デジタル課題は、遂行環境設定、ライフスタイル、学習、運動および肯定・達成モジュールの少なくとも一つについて生成されることができる。遂行環境設定と各モジュール別の具体的なデジタル課題に対する説明は、
図7a~7eで説明したものと同様である。
【0104】
次に、デジタル課題を患者に提供することができる(S830)。この場合、デジタル課題は、行動、情緒、認知などと関連し、ライフスタイル、身体運動のように患者の課題遵守度を、センサーを用いてモニタリングできるデジタル課題や、患者が直接遂行結果を入力するデジタル課題の形態で提供されることができる。
【0105】
提示されたデジタル課題を患者が遂行すると、デジタル課題に対する患者の遂行結果を収集することができる(S840)。ステップS840においては、前述したように、デジタル課題に対する患者の遵守度をモニタリングするか、デジタル課題に対して患者が遂行結果を入力することにより、デジタル課題に対する遂行結果を収集することができる。
【0106】
一方、本発明の一実施例による軽度認知障害とアルツハイマー病治療のためのデジタルアプリケーションは、デジタル課題を生成するステップと、デジタル課題に対する患者の遂行結果を収集するステップがフィードバックループによって複数回繰り返して遂行されることができる。この場合、デジタル課題を生成するステップは、以前の回次から提供された患者のデジタル課題と、収集された患者のデジタル課題に対する遂行結果データに基づいて、現在の回次に対する患者のデジタル課題を生成するようにすることができる。
【0107】
このように、本発明の記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病の進行抑制および治療のためのデジタル方法によれば、記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病進行の神経体液性因子を考慮して、軽度認知障害とアルツハイマー病に対する発病機序と治療仮説、デジタル治療仮説を導き出し、これに基づいて患者にデジタル課題を提示してその遂行結果を収集分析し、記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病の進行を抑制し、改善した治療効果を提供することができる。
【0108】
以上では、本発明の一実施例による軽度認知障害とアルツハイマー病治療のためのデジタル装置およびアプリケーションについて軽度認知障害とアルツハイマー病治療の観点のみで説明したが、本発明がこれに制限されるのではなく、軽度認知障害とアルツハイマー病以外に他の疾患においても、前述したものと実質的に同様の方式に従ってデジタル治療を遂行することができる。
【0109】
図9は、本発明の一実施例による記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病の進行抑制および治療のためのアプリケーションでデジタル課題を生成する方法を示すフローチャートである。
【0110】
図9を参照すると、軽度認知障害とアルツハイマー病に対する発病機序と治療仮説に基づいて、軽度認知障害とアルツハイマー病治療のためのモジュールと具体化したデジタル課題を生成する過程(
図8のステップS810、S820)と
図5過程の詳述である。
【0111】
ステップS910においては、先ず、軽度認知障害とアルツハイマー病に対する発病機序と治療仮説が入力され得る。ここで、軽度認知障害とアルツハイマー病の発病機序と治療仮説は、前述したように、軽度認知障害とアルツハイマー病に対する体系的な関連臨床試験に対する文献調査と専門家レビューを介して事前導き出されたものであってよい。
【0112】
そして、入力された発病機序と治療仮説から軽度認知障害とアルツハイマー病の神経体液性因子を予測することができる(S920)。ここで、ステップS920を通じて予測された軽度認知障害とアルツハイマー病の神経体液性因子は、性ステロイドホルモン、IGF2、wnt/b-catenin、BAG1、CREB、炎症因子、副腎皮質ステロイドホルモン、神経ホルモンなどで導き出される可能性がある。このような神経体液性因子については、
図5で具体的に説明したので、詳細な説明は省略する。
【0113】
ステップS930では、予測された神経体液性因子に仮想媒介変数を対応して、デジタル治療剤モジュールを生成することができる。ここで、仮想媒介変数は、軽度認知障害とアルツハイマー病の神経体液性因子をデジタル治療剤モジュールに変換する交換器(converter)の役割をし、
図5に示されているように、神経体液因子と患者の環境、行動の間の生理学的関連関係を設定する過程である。
【0114】
次に、生成されたデジタル治療剤モジュールに基づいて具体化したデジタル課題を生成することができる(S940)。ここで、具体的なデジタル課題は、
図7a~7eで説明した遂行環境設定、ライフスタイル、学習、運動および肯定・達成モジュールによって生成されることができる。
【0115】
図10は、本発明の一実施例による記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病の進行抑制および治療のためのデジタルアプリケーションにおいてフィードバック制御に応じて動作を繰り返し行うことを示すフローチャートである。
【0116】
図10においては、軽度認知障害とアルツハイマー病治療のためのアプリケーションによるデジタル課題の生成と遂行結果収集がN回次遂行されるものと説明する。この場合、先ず、軽度認知障害とアルツハイマー病の発病機序と治療仮説を入力されることができる(S1010)。また、以前の回次から提供されたデジタル課題と遂行結果データを受信することができる(S1020)。かりに、現在遂行中の回次が初回の場合には、以前データがないため、ステップS1020は省略することができる。
【0117】
次に、入力された発病機序と治療仮説、以前の回次から提供されたデジタル課題および遂行結果データに基づいて、現在の回次に対するデジタル課題を生成することができる(S1030)。そして、生成されたデジタル課題に対するユーザーの遂行結果を収集することができる(S1040)。
【0118】
ステップS1050においては、現在の回次がN回次以上であるか否かを判断する。もし、現在の回次がN回次未満である場合(NO)、またステップS1020に戻り、ステップS1020~S1040を繰り返して遂行することができる。一方、現在の回次がN回次以上である場合(YES)、すなわち、デジタル課題の生成と遂行結果収集過程がN回遂行された場合には、フィードバック動作を終了することができる。
【0119】
図11は、本発明の一実施例による記憶喪失型軽度認知障害およびアルツハイマー病の進行抑制および治療のためのデジタル装置のハードウェア構成を示す図である。
【0120】
図11を参照すると、本発明の一実施例による軽度認知障害とアルツハイマー病治療のためのデジタル装置のハードウェア600は、CPU610、メモリー620、入出力I/F630および通信I/F640を含むことができる。
【0121】
CPU610は、メモリー620に保存されている軽度認知障害とアルツハイマー病治療のためのデジタルプログラムを遂行させ、デジタル軽度認知障害とアルツハイマー病治療のための各種データを処理し、デジタル軽度認知障害とアルツハイマー病治療に関する機能を遂行するプロセッサであってよい。すなわち、CPU610は、メモリー620に保存されている軽度認知障害とアルツハイマー病治療のためのデジタルプログラムを遂行させることにより、
図2に示された各構成の機能を遂行するようにすることができる。
【0122】
メモリー620は、軽度認知障害とアルツハイマー病治療のためのデジタルプログラムを保存することができる。また、メモリー620は、前述したデータベース050に含まれたデジタル軽度認知障害とアルツハイマー病治療のために使用されるデータ、例えば、患者のデジタル課題、課題遂行結果、患者の医療情報などを含むことができる。
【0123】
このようなメモリー620は、必要に応じて複数個設けられることもできる。メモリー620は、揮発性メモリーであってもよく、不揮発性メモリーであってよい。揮発性メモリーとしてのメモリー620は、RAM、DRAM、SRAMなどが使用されることができる。不揮発性メモリーとしてのメモリー620は、ROM、PROM、EAROM、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリーなどが使用されることができる。前記挙げられたメモリー620の例は、単に例示であって、これらの例に限定されるのではない。
【0124】
入出力I/F630は、キーボード、マウス、タッチパネルなどの入力装置(図示せず)とディスプレイ(図示せず)などの出力装置とCPU610との間を連結してデータを送受信することができるようにするインターフェースを提供することができる。
【0125】
通信I/F640は、サーバーと各種データを送受信することができる構成であって、有線または無線通信を支援し得る各種装置であってよい。例えば、通信I/F640を通じて別途に設けられた外部サーバーから、前述したデジタル行動基盤治療に関する各種データを受信することができる。
【0126】
このように、本発明の一実施例によるコンピュータープログラムは、メモリー620に記録され、CPU610により処理されることにより、例えば、
図2に示された各機能ブロックを遂行するモジュールとして実現されることもできる。
【0127】
以上において、本発明の実施例を構成する全ての構成要素が一つで結合するか、結合して動作するものと説明されたとして、本発明が必ずこのような実施例に限定されるものではない。すなわち、本発明の目的範囲内であれば、そのすべての構成要素が一つ以上として選択的に結合して動作することもできる。
【0128】
また、以上に記載された「含む」、「構成する」または「有する」などの用語は、特に反対の記載がない限り、該当構成要素が内在し得ることを意味するので、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができると解析されなければならない。技術的や科学的な用語を含む全ての用語は、特に定義されない限り、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味がある。辞書に定義された用語のように一般的に用いられる用語は、関連記述の文脈上の意味と一致すると解釈されなければならず、本発明で明らかに定義しない限り、理想的や過度に形式的な意味として解釈されない。
【0129】
以上の説明は、本発明の技術思想を例示的に説明したものに過ぎないものであって、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から外れない範囲で多様な修正および変形が可能である。したがって、本発明に開示されている実施例は、本発明の技術思想を限定するためのものではなく、説明するためのものであって、このような実施例により本発明の技術思想の範囲が限定されるのではない。本発明の保護範囲は、下記の請求の範囲により解析されなければならず、それと同等の範囲内にある全ての技術思想は、本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されなければならない。
【国際調査報告】