(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】フェアリング付き風力タービンブレード
(51)【国際特許分類】
B29C 70/44 20060101AFI20240403BHJP
F03D 80/50 20160101ALI20240403BHJP
F03D 1/06 20060101ALI20240403BHJP
C08J 5/12 20060101ALI20240403BHJP
B29C 70/68 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
B29C70/44
F03D80/50
F03D1/06 A
C08J5/12 CER
C08J5/12 CEZ
B29C70/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561627
(86)(22)【出願日】2022-04-04
(85)【翻訳文提出日】2023-11-20
(86)【国際出願番号】 EP2022058865
(87)【国際公開番号】W WO2022214428
(87)【国際公開日】2022-10-13
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521176558
【氏名又は名称】エルエム・ウインド・パワー・アクスイェ・セルスカプ
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【氏名又は名称】黒川 俊久
(72)【発明者】
【氏名】セルンティ,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ハーグ,マイケル・ドラクマン
(72)【発明者】
【氏名】ベーマー,ハロルド
(72)【発明者】
【氏名】セナ,トーマ・ムチェニク
(72)【発明者】
【氏名】ムケルジー,マニッシュ
【テーマコード(参考)】
3H178
4F071
4F205
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA40
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(57)【要約】
【課題】風力タービンブレード(10)用の繊維強化部品(50)の製造方法を提供する。
【解決手段】方法は、第1の層は熱可塑性エラストマーを含む第1の層(57)を提供するステップと、第1の層(57)の上に繊維材料を含む第2の層(56)を配置するステップと、第1の層(57)および第2の層(56)を35~90℃の温度に加熱するステップとを含む。次に、加熱された第1の層および第2の層を、液状のエポキシ樹脂またはエポキシ樹脂の液状混合物と接触させる。その後、エポキシ樹脂を硬化させて第1の層(57)を第2の層(56)に接着させ、繊維強化部品を得る。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力タービンブレード(10)用の繊維強化部品(50)を製造する方法であって、
熱可塑性エラストマーを含む第1の層(57)を提供するステップと、
第1の層(57)の上に繊維材料を含む第2の層(56)を配置するステップと、
第1の層(57)と第2の層(56)を35~90℃の温度に加熱するステップと、
加熱された第1および第2の層を液体エポキシ樹脂またはエポキシ樹脂の液体混合物と接触させるステップと、
エポキシ樹脂またはエポキシ樹脂の混合物を硬化させて、第1の層(57)を第2の層(56)に接着させ、繊維強化部品を得る、方法。
【請求項2】
加熱ステップが、第1の層(57)および第2の層(56)を40~80℃、好ましくは50~70℃の温度に加熱するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
エポキシ樹脂が150~200のエポキシ当量を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
エポキシ樹脂またはエポキシ樹脂の混合物を硬化させるステップの前に、加熱された第1および第2の層を硬化剤、好ましくはアミン硬化剤と接触させるステップをさらに含む、1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
硬化剤が400~600mgKOH/gのアミン価を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
硬化させるステップが、エポキシ樹脂またはエポキシ樹脂の混合物と第1の層との間に複数のクロスリンクを形成するステップを含む、請求項1乃至5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
第1の層が熱可塑性エラストマーからなる、請求項1乃至6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
熱可塑性エラストマーが熱可塑性ポリウレタンである、請求項1乃至7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
第1の層が0.3~3mm、好ましくは0.75~1.5mmの厚さを有する、請求項1乃至8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
エポキシ樹脂またはエポキシ樹脂の混合物を 硬化させるステップが、少なくとも60℃、好ましくは少なくとも70℃、より好ましくは少なくとも80℃ の温度で実施される、請求項1乃至9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
加熱された第1および第2の層を液体エポキシ樹脂またはエポキシ樹脂の液体混合物と接触させるステップが、真空アシスト樹脂トランスファー成形によって実施される、請求項1乃至10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
繊維強化部品が、風力タービンブレードの前縁のためのフェアリングまたは浸食シールドである、請求項1乃至11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
加熱するステップが、第1の層(57)および第2の層(56)を40~59℃、好ましくは40~55℃の温度に加熱するステップを含む、請求項1乃至12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
エポキシ樹脂が、25℃の温度および1気圧の圧力で液体である、請求項1乃至12のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
根元(16)から先端(14)まで長手方向軸線(L)に沿って延びる風力タービンブレード(10)であって、風力タービンブレード(10)は、根元領域(30)と、先端(14)を有する翼形領域(34)とを含み、風力タービンブレード(10)は、風力タービンブレード(10)の前縁(18)と後縁(20)との間に延びるコードラインを含み、風力タービンブレード(10)は、圧力側と負圧側とを含む空気力学的外翼面(22)を含み、風力タービンブレードは、請求項1乃至14のいずれかに記載の方法によって得られる繊維強化部品を含む、風力タービンブレード。
【請求項16】
繊維強化部品がフェアリング(50)または浸食シールドであり、
フェアリング(50)または浸食シールドが、長手方向軸(L)に沿って、フェアリング(50)または浸食シールドの第1のフェアリングリップ(52)およびフェアリング(50)または浸食シールドの第2のフェアリングリップ(53)で終端するフェアリングプロファイル(51)に沿って延び、
フェアリング(50)または浸食シールドは、フェアリングプロファイル(51)に対して外側に配置された外側フェアリング表面(54)と、フェアリングプロファイル(51)に対して内側に配置された内側フェアリング表面(55)と、第1のフェアリングリップ(52)から第2のフェアリングリップ(53)まで、かつ長手方向軸(L)に沿って延びる1つまたは複数の繊維強化層(56)とを含み、
1つまたは複数の繊維強化層(56)が、外側フェアリング表面(54)の少なくとも一部を形成し、かつ風力タービンブレード(10)の前縁(18)の少なくとも一部を画定するように構成された外面耐侵食性エラストマー層(57)をさらに含む複数の層の一部を形成し、
外面耐侵食性エラストマー層(57)は、好ましくはポリウレタン製であり、
フェアリング(50)または侵食シールドは、耐侵食性エラストマー層と1つまたは複数の繊維強化層(56)とを一緒に結合する硬化した第1の樹脂(58)をさらに含む、請求項15に記載の風力タービンブレード。
【請求項17】
繊維強化部品を有する風力タービンブレード(10)の製造方法であって、
請求項1乃至14のいずれかに記載の方法に従って繊維強化部品を提供するステップと、
構造ブレード本体(40)を別個に設けるステップと、
好ましくは、繊維強化部分が風力タービンブレード(10)の前縁(18)または後縁(20)の少なくとも一部を画定するように、繊維強化部分を構造ブレード本体(40)に接着することによって、風力タービンブレード(10)を製造するステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、風力タービンブレード用の予め作成されたフェアリング(prefabricated fairing)、そのようなフェアリングを備えた風力タービンブレードを組み立てる方法、そのようなフェアリングを製造する方法、および風力タービンブレードを組み立てるための部品キットに関する。
【背景技術】
【0002】
風力は、大気汚染や水質汚染のないクリーンな再生可能エネルギーとして、ますます人気が高まっている。風が吹くと風力タービンのブレードが時計回りに回転し、ギヤボックスと発電機に接続されたメインシャフトを通してエネルギーを取り込み、電気を生産する。最新の風力タービンのブレードは、効率を最大化するために慎重に設計されている。現代の風力タービンのブレードは、長さ80メートル、幅4メートルを超えることもある。
【0003】
風力タービンブレードは通常、繊維強化ポリマー材料から作られ、ブレードハーフとも呼ばれる圧力側シェルハーフと負圧側シェルハーフから構成される。典型的な風力タービンブレードの断面形状は、両側の間に圧力差をもたらす気流を発生させるための翼型を含んでいる。その結果、揚力によって発電用のトルクが発生する。
【0004】
風力タービンのサイズが大きくなるにつれて、風力タービンのブレードの長さも長くなり、その結果、3枚羽根の風力タービンでは通常、毎秒75~100メートルの範囲の先端速度となる。2枚羽根タービンの場合、ブレードの先端速度は毎秒130メートルにも達するものもある。このため、ブレードの先端部や前縁(リーディングエッジ:leading edge)の外側3分の1に沿って非常に激しい浸食(severe erosion conditions)が発生し、風、雨、ひょう、砂、空気中の粒子などの継続的な衝撃により、これらの領域でブレードが損傷する。このような浸食作用によりブレードの最大回転速度が制限されるため、風力タービンの出力が低下する可能性がある。このような影響は、風力タービンが遠隔地の沖合、山岳地帯、厳しい気候などの厳しい環境条件にさらされることが多くなっているため、さらに深刻化している。
【0005】
風力タービンのブレードは通常20年はもつと予想されているが、前縁の侵食による損傷でブレードの修理が必要になるため、そうならないことも多い。そのため、風力タービンの耐用年数中は、タービンの性能を最適に保つための継続的なメンテナンス作業に多大な資源が費やされる。しかし、前縁の修理は、通常、ブレードをタービンに取り付けたまま行うため、容易ではない。特に風力タービンが沖合に設置されている場合、これはコストと安全性に大きな影響を及ぼす。そのため、前縁の侵食は、年間エネルギー生産量の減少や、保守や修理の必要性の増大につながる可能性がある。
【0006】
今日、ほとんどの風力タービンブレードは、最も空気力学的に重要な部分(aerodynamically sensitive area)である前縁、特に風力タービンブレードの外側3分の1に、製造中に接合されている。このような接合部は、性能を低下させる形状の不規則性(shape irregularities)と、耐浸食性(erosion resistance)を低下させる材料境界(material boundaries)の両方をもたらす。
【0007】
浸食による損傷を低減するために、風力タービンブレードの前縁に浸食シールドのような前縁保護を設けることが知られている。異なる材料から作られた複数の異なるタイプのシールドが存在する。
【0008】
いくつかの先行技術の解決策では、風力タービンブレードの前縁を保護するために、前縁を覆うブレードの長さに沿って塗布される耐侵食性材料の層、例えば塗料やコーティングを使用している。このようなコーティングは、インモールドまたはポストモールド(in-mould or post-mould)で施すことができる。層が塗布された領域では耐侵食性は向上するが、専門的な塗料コーティングによって提供される保護は時間の経過とともに低下し、メンテナンスなしで20年という予想される風力タービンブレードの設計寿命まで持続することはない。さらに、前縁に塗装され、現地で重合する(polymerize in situ)このような溶液は、厚さにばらつきがある。したがって、空力プロファイルの精度と性能が低下する。また、ポリマーフィルムはブレード表面への塗布や接着が難しく、専門家が必要な場合もある。
【0009】
また、風力タービンのブレードの前縁に、感圧接着剤(pressure-sensitive adhesive)を塗布した薄いテープ状の熱可塑性フィルムの保護層を貼ることも知られている。このようなフィルムは耐侵食性に優れているが、貼付が難しい。さらに、熱可塑性フィルムと前縁との間の接着の質(quality of the bond)は最適とは言えない。
【0010】
このような課題に対処するもう1つの既知の方法は、一般的に金属製の前縁を持つ前縁保護キャップの実装である。しかし、これらの装備の中には、ブレード先端の質量が望ましくないほど増加し、ブレードの残りの部分やタービンにかかる負荷が増加するものもある。さらに、ブレードのサイズが大きくなると、保護装置のサイズも大きくならざるを得ない。このような大型で厚い装置は、風力タービンの運転中の機械的衝撃や振動によって特に割れやすい傾向がある。そのため、既存の保護ソリューションでは、欠陥や接着不良が発生しやすく、運転コストやメンテナンスコストが大幅に上昇する可能性がある。
【0011】
さらに、このような前縁保護キャップの取り付けには、わずかな取り付けのずれが年間エネルギー生産量の低下や寿命の短縮を引き起こす危険性があるため、一般的に熟練作業者による手作業での取り付けが必要である。しかし、風力タービンブレードの長さが長くなるにつれて、ますます扱いにくくなる前縁保護キャップの長さも長くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願公開2012/034094明細書
【発明の概要】
【0013】
このような背景から、本開示の目的は、精度を高め、手作業の必要性を低減した、構造ブレード本体(structural blade body)とフェアリングとを含む風力タービンブレード部品のキットを組み立てる方法を提供することであると考えられる。
【0014】
本開示の別の目的は、より簡単に正確に取り付けられ、手作業の必要性が低減された風力タービンブレード用のフェアリングを提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、従来技術の解決策と比較して、改善された接着性および/または改善された耐浸食性を示す、風力タービンブレード用のフェアリングまたは浸食シールドを提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、効率的で、広範囲の風力タービンブレード部品に広く適用可能な、フェアリングや浸食シールドなどの風力タービンブレード部品の製造方法を提供することである。
【0017】
これらの目的の1つ以上は、以下に説明する本開示の態様によって満たされ得る。
【0018】
驚くべきことに、風力タービンブレード用の繊維強化部品の製造方法を提供することによって、上記の目的の1つ以上を達成することができる。この方法は、熱可塑性エラストマーを含む第1の層を提供するステップと、第1の層の上に第2の層は繊維材料を含む第2の層を配置するステップと、第1の層および第2の層を35~90℃の温度に加熱するステップと、加熱された第1の層および第2の層を液状エポキシ樹脂(liquid epoxy resin)またはエポキシ樹脂の液状混合物(liquid mixture of epoxy resins)と接触させるステップと、エポキシ樹脂またはエポキシ樹脂混合物を硬化させて第1の層を第2の層に接着させ、繊維強化部品を得るステップとを含む。
【0019】
本発明者らは、この材料および加工条件の組み合わせにより、例えばASTM D3330に準拠した180度剥離試験(180 degree peel test)により測定されるように、第1の層と第2の層との間の接着性が著しく改善されることを予期せず見出した。さらに、この材料と加工パラメータの組み合わせにより、熱可塑性エラストマーを含む第1層の耐侵食性が驚くほど高くなることも判明した。繊維強化部品に層間の接着性を向上させることにより、タービンの寿命、ひいてはエネルギー生産がより長期間安定した状態を維持することができる。特に、例えばTPUで作られた第1の層を感圧接着剤を使用してブレードに接着した場合、接着強度は、本発明の方法に従って得られる強度の約10%しかないことが判明した。理論に束縛されることを望むものではないが、本発明の特徴の組み合わせは、第1の層と第2の層との間の分子間力の強化につながると考えられる。
【0020】
本発明は、コーティング、テープ、シェルなどによる従来の前縁保護方法と比較して、繊維強化部品、好ましくは前縁保護部品の寿命をさらに向上させる。
【0021】
風力タービンブレード用の繊維強化部品の製造方法は、成形面を有する金型内で実施されることが好ましい。好ましくは、押出成形された層であることができる第1の層が成形面上に配置され、次いで、1つ以上の第2の層が第1の層上に配置される。
【0022】
第2の層に加えて、好ましくは第2の層の上に、1つ以上の追加の第2の層を設けてもよい。第2の層の層数は、1~11の間、例えば3~7の間、最も好ましくは4または5であってよい。1つ以上の第2の層は、ガラス繊維材料および/または炭素繊維材料を含んでもよい。加えて、または代替的に、1つまたは複数の第2の層は、一方向性、二軸性、および/または三軸性の繊維シート(unidirectional, biaxial, and/or triaxial fibre sheets)を含んでもよい。好ましい実施形態では、第2の層は、4層または5層の二軸繊維シートを含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、1以上の第2の層は、第1の層の内面全体を覆ってもよい。他の実施形態では、1以上の第2の層は、第1の層の内表面の一部のみを覆ってもよい。例えば、第1の層の第1の端部および/または第2の端部に近い領域は、1以上の第2の層によって覆われないことがある。そのような実施形態では、第1の層の内面は、これらの領域においてブレード前縁に接触するように構成されてもよい。
【0024】
好ましい実施形態では、加熱ステップは、第1の層および第2の層を40~80℃、好ましくは50~70℃の温度に加熱することを含む。一実施形態では、加熱ステップは、第1の層および第2の層を50~60℃の温度に加熱することを含む。好ましい実施形態において、加熱ステップは、第1の層および第2の層を、40℃の下限値と60℃未満の上限値との間の温度に加熱することを含む。特に好ましい実施形態では、加熱ステップは、第1の層および第2の層を40~59℃、例えば40~58℃、40~57℃または40~56℃、最も好ましくは40~55℃の温度に加熱することを含む。驚くべきことに、このような温度範囲は、より高い温度と比較して、最適な接着性を提供し、繊維強化部品の寿命を大幅に改善することが見出された。
【0025】
いくつかの実施形態では、エポキシ樹脂またはエポキシ樹脂の混合物を硬化させて第1の層を第2の層に接着させて繊維強化部品を得るステップは、第1の層および第2の層を加熱する先行ステップで使用される温度と同じ温度で実施される。
【0026】
好ましい実施形態では、エポキシ樹脂は150-200のエポキシ当量(an epoxy equivalent of 150-200)を有する。これは、特に改善された接着性と耐浸食性をもたらすことが見出された。好ましい実施形態において、エポキシ樹脂はHexion社から入手可能なEPIKOTE Resin MGS RIMR 135である。別の実施形態では、エポキシ樹脂は、Olinから入手可能なAIRSTONE 780E/782H/786Hである。別の実施形態では、エポキシ樹脂は、Guritから入手可能なPRIME 27である。好ましい実施形態では、エポキシ樹脂は温度25℃、圧力1atmで液体である。
【0027】
好ましい実施形態において、この方法は、エポキシ樹脂またはエポキシ樹脂の混合物を硬化させるステップの前に、加熱された第1および第2の層を硬化剤(hardener)、好ましくはアミン硬化剤と接触させるステップをさらに含む。これにより、特に改善された接着性と耐侵食性が得られることが見出された。好ましい実施形態では、硬化剤はEPIKURE硬化剤MGS RIMH 137である。このように、加熱された第1および第2の層を液状エポキシ樹脂またはエポキシ樹脂の液状混合物と接触させるステップは、好ましくは、エポキシ樹脂と共に硬化剤または硬化剤を使用することをさらに含み得る。
【0028】
好ましい実施形態では、硬化剤は400~600mgKOH/gのアミン価(amine value of 400-600 mg KOH/g)を有する。
【0029】
好ましい実施形態では、硬化するステップ(step of curing)は、エポキシ樹脂またはエポキシ樹脂の混合物と第1の層との間にクロスリンク(crosslinks:架橋)を形成することを含む。
【0030】
好ましい実施形態では、第1の層は熱可塑性エラストマーからなる。別の実施形態では、第1の層は2つ以上のポリマーからなり、そのうちの1つは熱可塑性エラストマー、好ましくは熱可塑性TPUである。
【0031】
好ましい実施形態では、熱可塑性エラストマーは熱可塑性ポリウレタン(TPU:thermoplastic polyurethane)である。特に好ましい実施形態では、熱可塑性エラストマーは脂肪族ポリエーテルをベースとするTPU(aliphatic polyether-based TPU)である。有利には、熱可塑性エラストマー、好ましくは熱可塑性ポリウレタンは、60~95のショアA硬度(Shore A hardness of 60-95)を有する。これらのタイプの熱可塑性エラストマーは、第1層と第2層との間の接着性を予想外に高め、耐侵食性を著しく向上させることが見出された。
【0032】
好ましい実施形態では、第1の層は0.3~3mm、好ましくは0.75~1.5mmの厚さを有する。好ましくは、TPUを0.7~0.8mmの厚さのシートに押し出して(extruded into a sheet)第1の層を提供する。押し出されたTPUのシートは、U字型の金型内に入れることができ、低弾性率(low modulus of elasticity)であるため金型表面に適合する。次に、好ましくは4層または5層の二軸繊維シートが第2の層として型内に配置される。次に、真空バッグが有利には第1層と第2層の上に配置され、層は好ましくは50~60℃の温度に加熱される。第1の層と第2の層が予め定められた温度になると、エポキシ樹脂と好ましくは硬化剤の注入が開始される。注入が完了したら、好ましくは75~85℃で4~12時間後硬化させる。
【0033】
好ましい実施形態において、エポキシ樹脂またはエポキシ樹脂の混合物を硬化させるステップは、少なくとも60℃、好ましくは少なくとも70℃、より好ましくは少なくとも80℃を超える温度で実施される。
【0034】
好ましい実施形態では、加熱された第1および第2の層を液状エポキシ樹脂またはエポキシ樹脂の液状混合物と接触させるステップは、真空アシスト樹脂トランスファー成形(vacuum assisted resin transfer moulding:VARTM)によって実施される。好ましい実施形態において、この方法は、好ましくは70~90℃で4~12時間実施される後硬化ステップ(post-curing step)を含む。
【0035】
好ましい実施形態では、繊維強化部品は、風力タービンブレードの前縁のためのフェアリングまたは浸食シールド(a fairing or an erosion shield)である。本明細書で使用する場合、フェアリングは浸食シールドとして使用することができ、そのため本明細書ではこれら2つの用語を互換的に使用することができる。
【0036】
別の態様において、本発明は、根元から先端まで長手方向軸線に沿って延びる風力タービンブレードに関し、該風力タービンブレードは、根元領域(root region)と、先端を有する翼形領域とを含み、該風力タービンブレードは、その前縁と後縁との間に延びるコードライン(chord line)を含み、該風力タービンブレードは、圧力側と負圧側とを含む空気力学的外翼面を含み、該風力タービンブレードは、本発明の方法によって得られる繊維強化部品を含む。繊維強化部品が、有利にはブレードの前縁の少なくとも一部に沿って配置されたフェアリングまたは浸食シールドであることが特に好ましい。その部品を製造するために本発明の方法を使用することにより、寿命、接着強度および耐浸食性が著しく改善された風力タービンブレードを得ることができる。これらの特性は、繊維強化部品を得るために使用される本発明の方法の直接的な結果であると考えられる。
【0037】
好ましい実施形態において、繊維強化部品は、フェアリングまたは浸食シールドであり、フェアリングまたは浸食シールドは、長手方向軸に沿って、フェアリングまたは浸食シールドの第1のフェアリングリップ(first fairing lip)およびフェアリングまたは浸食シールドの第2のフェアリングリップ(second fairing lip)で終端するフェアリングプロファイル(fairing profile)に沿って延びる。フェアリングまたは浸食シールドは、フェアリングプロファイルに対して外側に配置された外側フェアリング表面と、フェアリングプロファイルに対して内側に配置された内側フェアリング表面と、第1のフェアリングリップから第2のフェアリングリップまで、かつ長手方向軸に沿って延びる1つまたは複数の繊維強化層とを含む。1つまたは複数の繊維強化層は、外側フェアリング表面の少なくとも一部を形成し、風力タービンブレードの前縁の少なくとも一部を画定するように構成された外部耐侵食性エラストマー層をさらに含む複数の層の一部を形成する。外部耐侵食性エラストマー層は、好ましくはポリウレタン製であり、フェアリングまたは侵食シールドは、耐侵食性エラストマー層と1つまたは複数の繊維強化層とを一緒に結合する硬化した第1の樹脂をさらに含む。
【0038】
別の態様において、本発明は、フェアリングまたは浸食シールドを備えた風力タービンブレードを製造する方法に関する。この方法は、本発明による方法に従って繊維強化部品を提供するステップと、構造ブレード本体を別に提供するステップと、繊維強化部品が風力タービンブレードの前縁または後縁のいずれかの少なくとも一部を画定するように、繊維強化部品を構造ブレード本体に接着することによって風力タービンブレードを製造するステップとを含む。繊維強化部品がフェアリングまたは浸食シールドであることが特に好ましく、有利なことにブレードの前縁の少なくとも一部に沿って配置される。
【0039】
別の態様において、本発明は、風力タービンブレード用の繊維強化部品の製造方法に関する。この方法は、熱可塑性エラストマーを含む第1の層を提供するステップと、コロナ処理(Corona treatment)または1つ以上の接着促進剤(adhesion promoters)の塗布などの表面処理を第1の層に施すステップと、処理された第1の層の上に繊維材料を含む第2の層を配置するステップと、第1および第2の層を液状エポキシ樹脂またはエポキシ樹脂の液状混合物と接触させるステップと、エポキシ樹脂を硬化させるステップと、処理された第1の層の上に繊維材料を含む第2の層を配置するステップと、第1および第2の層を液状エポキシ樹脂またはエポキシ樹脂の液状混合物と接触させるステップと、エポキシ樹脂またはエポキシ樹脂混合物を硬化させて第1の層を第2の層に接着させ、繊維強化部品を得るステップとを含む。好ましい実施形態では、この態様の方法は室温、例えば15~25℃で実施される。「接着促進剤:adhesion promoter」という用語は、ウレタン系接着促進剤、アクリレート系接着促進剤および/またはシラン系接着促進剤(a urethane based adhesion promoter, an acrylate based adhesion promoter and/or a silane based adhesion promoter)のような、第1の層と第2の層との間の永久的な接触を促進する任意の化合物または化合物群を包含することを意図している。
【0040】
本開示の別の態様は、根元から先端まで長手方向軸に沿って延びる風力タービンブレードを組み立てる方法に関し、風力タービンブレードは、根元領域と、先端を有する翼形領域(airfoil region)とを含み、風力タービンブレードは、前縁と後縁との間に延びるコードラインを含み、風力タービンブレードは、圧力側と負圧側とを含む空気力学的外翼面(aerodynamic exterior blade surface)を含む。本方法は、
圧力側の一部を画定する第1の外側本体表面(first exterior body surface)と、
負圧側の一部を画定する第2の外側本体表面(second exterior body surface)と、
第1の外側本体表面に隣接して配置された第1の取付面と、
第2の外側本体表面に隣接して配置された第2の取付面と、
を備える予め作成された構造ブレード本体を提供するステップを含む。
方法は長手方向軸に沿って延びる予め作成されたフェアリングを別個に提供するステップを含み、フェアリングは、フェアリングの第1のフェアリングリップおよびフェアリングの第2のフェアリングリップで終端するフェアリングプロファイルに沿って延びる。
このフェアリングは、
フェアリングプロファイルに対して外側に配置されたフェアリング外面と、
フェアリングプロファイルに対して内側に配置されたフェアリング内面と、
第1のフェアリングリップから第2のフェアリングリップまで、長手方向軸に沿って延びる1つまたは複数の繊維強化層とを含む。
フェアリングは、第1のフェアリング状態と第2のフェアリング状態を有し、フェアリングリップは、第1のフェアリング状態に対して第2のフェアリング状態で互いに向かって付勢される(forced toward each other)。
フェアリングが第1のフェアリング状態にある間に、内側フェアリング表面がブレード本体の取付面に面し、ブレード本体の第1の取付面とフェアリングの第1のフェアリングリップとの間、およびブレード本体の第2の取付面とフェアリングの第2のフェアリングリップとの間にそれぞれ隙間が存在するように、フェアリングを配置する。
フェアリングリップ、例えばフェアリングリップの外側フェアリング表面に圧縮力を加え、フェアリングの1つ以上の繊維強化層を第1のフェアリング状態から第2のフェアリング状態に変形させ、第1のフェアリングリップおよび第1の取付面が第1の接着剤と接触し、第2のフェアリングリップおよび第2の取付面が第2の接着剤と接触するようにする。
方法は圧縮力を維持している間に、第1の接着剤および第2の接着剤を硬化させて、第2のフェアリング状態のフェアリングをブレード本体に固定し、外側フェアリング表面が、第1の外側本体表面および第2の外側本体表面と同一表面上に配置された外側ブレード表面の一部を画定し、外側フェアリング表面が、風力タービンブレードの前縁または風力タービンブレードの後縁のいずれかを画定するようにするステップと、
任意で、フェアリング外面の圧縮力を緩和するステップとを含む。
【0041】
フェアリングが第1のフェアリング状態にある間にフェアリングをブレード本体に配置することにより、フェアリングリップ間の距離がブレード本体の取付面間の距離よりも大きいので、フェアリングリップを取付面に隣接して配置する際に接着剤が削り取られることを回避することができる。従って、接着力の向上が達成され得る。
【0042】
さらに、このような方法では、フェアリングが第1のフェアリング状態にあるときに、ブレード本体に対するフェアリングの調整を行うことができる。
【0043】
本開示において、「フェアリング:fairing」という用語は、気流にさらされ、風力タービンブレードの周囲の気流を変化させる目的で、風力タービンブレードの構造ブレード本体に追加される外部構造として理解することができる。
【0044】
フェアリングは、空力フェアリングの一部、シールド、プロテクター、および/またはキャップ(a shield, a protector, and/or a cap)の形をした既製デバイス(premanufactured device:予め製造された装置)を形成することができる。
【0045】
好ましくは、フェアリングは、風力タービンブレードの前縁を規定するための前縁保護フェアリングである。
【0046】
本開示において、「構造ブレード本体:structural blade body」という用語は、風力タービンブレードの主要な荷重担持構造として理解される場合があり、また、外部空力ブレード表面の大部分を構成し、フェアリングとともに風力タービンブレードを画定する。
【0047】
フェアリングプロファイルは、長手方向軸に沿ったフェアリングの各断面の中心線を定義することができる。例えば、内側フェアリング表面と外側フェアリング表面は、フェアリングプロファイルから等距離に配置することができる。
【0048】
構造ブレード本体は、第1および第2の外側本体表面の反対側の取付面の間に延びる第3の外側本体表面を含んでいてもよい。フェアリングは、内側フェアリング表面と、構造ブレード本体の第3の外側本体表面の少なくとも一部または大部分または全体との間に間隔を空けて配置されてもよい。
【0049】
さらに、あるいは代替的に(Additionally, or alternatively)、外側フェアリング表面は、一重または二重曲面の板状(single- or double-curved plate-shaped)である。
【0050】
さらに、または代替的に、フェアリングを配置するステップは、垂直に配置されたコード(chord arranged vertically)がブレード本体の取付面を覆うまで、および/またはフェアリング内面に面するまで、ブレード本体とフェアリングの間の距離を縮めるように、ブレード本体とフェアリングの両方を配置するステップを含む場合がある。
【0051】
本開示の文脈(context)において、外側フェアリング表面から外側本体表面のいずれかへのステップダウン(step-down:下がる段差)が0.5mmを超えず、外側フェアリング表面から外側本体表面のいずれかへのステップアップ(step-up:上がる段差)が0.2mmを超えない場合、外側フェアリング表面と外側本体表面は実質的に同一表面上に配置される。エクステリアフェアリング表面から外側本体表面のステップアップまたはステップダウンは、風力タービンブレードの年間エネルギー生産量に直接的かつ大きな影響を与えるため、非常に重要であると考えられる。
【0052】
加えて、または代替的に、フェアリングは、フェアリングが弛緩した弛緩フェアリング状態(relaxed fairing state)をさらに有することができ、フェアリングリップは、弛緩フェアリング状態に対して第1のフェアリング状態および第2のフェアリング状態において互いから離れるように拡大(expanded away)される。
【0053】
第1のフェアリング状態と第2のフェアリング状態の両方でフェアリングに応力がかかるようにすることで、フェアリングによるスプリングバック力(spring back force:元に戻ろうとする弾性力)が達成され、拡張力が解除されるとフェアリングが接着剤側に偏る(the fairing is biased towards the adhesive)ようにすることができる。有利なことに、良好な接着接触が達成される。
【0054】
あるいは、第2のフェアリング状態でフェアリングを弛緩させることもできる。
【0055】
さらに、または代替的に、本方法は、
長手方向軸に沿って延び、治具の第1の治具リップおよび治具の第2の治具リップで終端する治具プロファイル(jig profile)に沿って延び、フェアリングのプロファイルに対応する形状の治具を提供するステップであって、治具が、第1の治具状態と第2の治具状態を有し、第1の治具状態における治具プロファイルが、第1のフェアリング状態におけるフェアリングプロファイルに一致し、第2の治具状態における治具プロファイルが、第2のフェアリング状態におけるフェアリングプロファイルに一致し、治具プロファイルに対して内側に配置され、フェアリングの外側フェアリング表面に一致する内側治具表面をさらに含む、前記ステップとを含む。
方法は、また、フェアリングを配置するステップの前に、
治具の治具リップを拡張するために、治具リップに拡張力(expansion force)を加えるステップと、
好ましくは弛緩したフェアリング状態にあるフェアリングを、外側フェアリング表面が内側の治具表面に接触するように治具内に位置決めするステップと、
治具とフェアリングがそれぞれ第1の治具状態と第1のフェアリング状態に変形するまで、拡張力を解放するステップとをさらに含むことができる。
治具およびフェアリングがそれぞれ第2の治具状態および第2のフェアリング状態に変形するように、圧縮力はフェアリングリップにおいてフェアリング外面に加えられる。
【0056】
フェアリングの代わりに治具を扱う(Handling the jig instead of the fairing)ことで、フェアリングが損傷するリスクを低減し、ブレード本体に取り付ける前の比較的寸法が不安定な部品である可能性のあるフェアリングを安定した状態に保つことができる。
【0057】
有利なことに、弛緩した治具状態に対して第1のフェアリング状態で圧縮されたフェアリングプロファイルと、弛緩した治具状態に対して第2の治具状態で拡張された治具プロファイルを配置することにより、第1の状態においても第2の状態においても、内部治具表面と内部フェアリング表面との良好な接触が達成される。これにより、治具は両方の状態でフェアリングを摩擦などで保持することができる。
【0058】
好ましくは、フェアリングは弾力性のある材料、好ましくは繊維強化材料で作られてもよく、好ましくはブレード本体の材料よりも剛性が低い。
【0059】
加えて、又は代替的に、治具は、弛緩した治具状態を有することができ、治具リップは、弛緩した治具状態に対して第1の治具状態及び第2の治具状態で拡張することができ、圧縮力を加えるステップは、少なくとも部分的に、好ましくは全体的に、治具リップの拡張力を解放する際の治具のスプリングバック力によって達成されることができる。
【0060】
さらに、または代替的に、本方法は、1つまたは複数のクランプ工具セットを提供するステップをさらに含むことができる。
各クランプ工具セットは、
第1のクランプヘッドを有し、取付面の一方に隣接してブレード本体に固定される第1のクランプ工具と、
好ましくは、第2のクランプヘッドを有し、取付面の他方に隣接してブレード本体に固定される第2のクランプ工具とを含む。
圧縮力を加えるステップは、各クランプ工具セットのクランプ工具を作動させてクランプヘッドが、外側治具表面を介してフェアリングに圧縮力を加えるようにすることによって、少なくとも部分的に、好ましくは全体的に達成される。
【0061】
さらに、または代替的に、クランプ工具は、空気圧作動式、油圧作動式、レバー作動式、電気作動式、および/またはバネ作動式であってもよい。
さらに、あるいは代替的に、圧縮力は治具のスプリングバックと1つ以上のクランプ工具セットの両方によって加えることができる。
【0062】
さらに、または代替的に、本方法は、各クランプヘッドと各フェアリングリップとの間に荷重分配要素(force distribution element)を配置するステップを含むことができる。荷重分配要素は、長手方向軸に沿って延び、各クランプヘッドによって加えられるクランプ力を外側治具表面上に分配するように構成される。
【0063】
さらに、あるいは代替的に、複数のクランプ工具セットを長手方向軸に沿って、好ましくは1~3メートル間隔、より好ましくは2メートル間隔で配置してもよい。また、加圧ホース(pressure hose)や他の分散加圧手段(other distributed pressure means)など、フェアリングに力を加えるための他の手段を使用することも可能である。
【0064】
さらに、または代替的に、本方法は、1つまたは複数の位置合わせ工具セット(one or more alignment tool sets:アライメントツールセット)を提供するステップをさらに含むことができる。
各位置合わせ工具セットは、
フェアリングリップまたは治具リップの一方に固定された第1の治具工具部品と、対応する取付面に隣接してブレード本体または治具リップに固定された第1のブレード工具部品とを含む第1の工具対と、
好ましくは、他方のフェアリングリップまたは治具リップに固定された第2の治具工具部品と、対応する他方の取付面に隣接するブレード本体または他の固定具リップにそれぞれ固定された第2のブレード工具部品とを含む第2の工具対とを含む。
各工具対の工具部品の一方がピンを含み、各工具対の工具部品の他方がガイドを含む。ガイドは、ピンがピン進入位置からピン終端位置まで予め定められたガイドコースに沿って移動できるようにしながら、それぞれのピンを保持するように構成されている。フェアリングを配置するステップは、フェアリングを第1のフェアリング状態にするためにそれぞれのピンをそれぞれのガイドのピン進入位置まで挿入するステップを含み、それぞれのピンがそれぞれのガイドに保持される。圧縮力を加えるステップは、それぞれのピンをそれぞれのガイドのピン進入位置からピン終端位置まで移動させる。
【0065】
さらに、またはその代わりに、各位置合わせ工具セットの治具工具部品を引き離すことによって拡張力を加えることもできる。
【0066】
加えて、または代替的に、ガイドを構成する工具部品は、開位置と閉位置とを有する保持ラッチ(retention latch)をさらに含んでもよく、保持ラッチは、開位置にあるとき、ガイドにおけるピンの受容を可能にし、閉位置にあるとき、ガイドからのピンの取り外しを防止する。保持ラッチは、関連する工具部品に枢動可能に取り付けられ(pivotally attached:ピボット可能に取り付けられ)、開位置と閉位置との間でピボットするように構成されていてもよい。
【0067】
加えて、または代替的に、各工具対のガイドが、ピン進入位置と第1のピン位置との間に傾斜部(sloping section)を含んでいてもよく、各ピンを各ガイドに挿入するステップが、各ピンをピン進入位置から第1のピン位置まで各ガイドの傾斜部に沿って摺動させて、治具リップに対する拡張力を徐々に増大させることを含んでいてもよい。
【0068】
さらに、または代替的に、本方法は、
固定具(fixture)の第1の固定具リップおよび固定具の第2の固定具リップで終端する固定具プロファイルを含む固定具を提供するステップと、
第1の固定具リップおよび第2の固定具リップがそれぞれ第1の取付面および第2の取付面に隣接して位置するように、固定具をブレード本体のブレード外面に固定するステップとをさらに含むことができる。
【0069】
1つまたは複数の位置合わせ工具セットのブレード工具部品が固定具に固定され、それによってブレード工具部品がブレード本体に固定される、および/または
第1のクランプ工具および/または第2のクランプ工具が固定具に固定され、それにより1以上のクランプ工具(clamping tool)がブレード本体に固定される。
【0070】
本開示の別の態様は、風力タービンブレードを形成するために構造ブレード本体に取り付けられるための予め作成されたフェアリングに関する。風力タービンブレードは、根元から先端まで長手方向軸に沿って延在し、風力タービンブレードは、根元領域と、先端を有する翼形領域とを含み、風力タービンブレードは、その前縁と後縁との間に延在するコードライン(chord line)を含む。風力タービンブレードは、圧力側および負圧側を含む空気力学的外翼面を含み、フェアリングは、長手方向軸に沿って、フェアリングの第1のフェアリングリップおよびフェアリングの第2のフェアリングリップで終端するフェアリングプロファイルに沿って延びる。
フェアリングは、
フェアリングプロファイルに対して外側に配置されたフェアリング外面と、
フェアリングプロファイルに対して内側に配置されたフェアリング内面と、
第1のフェアリングリップから第2のフェアリングリップまで、長手方向軸に沿って延びる1つまたは複数の繊維強化層とを含む。
【0071】
フェアリングは前縁保護装置( leading-edge protection device)であってもよい。
本明細書に開示されるフェアリングは、必ずしも風力タービンブレードの全長に沿って延びるように構成されている必要はなく、先端領域のみ、および/または風力タービンブレードの全長の3分の1もしくは3分の2など、その一部に沿って延びるようにのみ構成されていてもよい。フェアリングプロファイルは通常、風力タービンブレードの先端に向かって狭くなる。さらに、またはその代わりに、第1および第2のフェアリングリップは面取りされて(chamfered)いてもよい。 いくつかの実施形態では、第1および第2のフェアリングリップがトリミング(trimmed)される。
【0072】
さらに、または代替的に、フェアリングの形状はU字型であってもよい。フェアリング形状の頂点は、風力タービンブレードの前縁または後縁と一致するように構成され、フェアリングの側面は、この頂点からフェアリングリップまで延びる。
【0073】
さらに、または代替的に、フェアリングは、フェアリングが固定される前にブレード本体に取り付けられるように適合される第1のフェアリング状態を有し、フェアリングがブレード本体に固定されるように適合される第2のフェアリング状態を有し、フェアリングのフェアリングリップは、第1のフェアリング状態に対して第2のフェアリング状態が互いに向かい合う(being towards each other)。
【0074】
フェアリングの1つまたは複数の繊維強化層は、フェアリングリップにおいてフェアリング外面に圧縮力が加えられると、フェアリングが第1のフェアリング状態から第2のフェアリング状態になるように変形するように構成されており、第1のフェアリングリップ距離と第2のフェアリングリップ距離との間の差は、5mm以上である、10mm、15mm、20mm、または好ましくは25mmであり、第1のフェアリングリップ距離は、フェアリングが第1のフェアリング状態にあるときのフェアリングリップ間の距離に対応し、第2のフェアリングリップ距離は、フェアリングが第2のフェアリング状態にあるときのフェアリングリップ間の距離(distance between the fairing lips)に対応し、第1のフェアリングリップ距離は、第2のフェアリングリップ距離よりも長い。
【0075】
これにより、フェアリングをブレード本体に取り付ける際に、フェアリングリップ上または取付面上に存在する未硬化接着剤が、取り付けプロセス中に削り取られないという利点が得られる。さらなる利点は、対応するフェアリングリップおよび取付面が、接着面に垂直な方向で未硬化接着剤に接触することであり、これにより接着面の濡れ性(wetting)が向上し得る。
さらに、あるいは代替的に、フェアリングは、風力タービンブレードの長さの1%~50%、5%~45%、10%~40%、20%~35%の間の長さを有することができる。
【0076】
さらに、または代替的に、フェアリングは1mm~5mm、好ましくは2mm~4mmの厚さを有することができる。
加えて、または代替的に、フェアリングプロファイルの円周は約500mmであってもよく、フェアリングの前縁または後縁からの両フェアリングリップの周辺距離は約250mmである。
【0077】
これらの寸法はすべて、特定の風力タービンブレードが有する特定の条件に適合させるべき事項である。
【0078】
さらに、または代替的に、フェアリングは、フェアリングプロファイルが無負荷形状をとる弛緩フェアリング状態をさらに有してもよく、弛緩フェアリング状態に対して第1のフェアリング状態では、フェアリングリップが互いに向かって(be towards each other)もよい。
【0079】
加えて、または代替的に、1つまたは複数の繊維強化層は、外側フェアリング表面の少なくとも一部を形成し、風力タービンブレードの前縁を画定するように構成された外側耐侵食層(exterior erosion-resistant layer)をさらに含む複数の層の一部を形成してもよく、外側耐侵食層は、好ましくはポリウレタンなどのエラストマー製である。
【0080】
いくつかの実施形態において、繊維強化層は、耐侵食性エラストマー層の内面全体を覆ってもよい。他の実施形態では、繊維強化層は、耐侵食性シートの内表面の一部のみを覆ってもよい。例えば、フェアリングの第1および/または第2に近い領域は、繊維強化層によって覆われていなくてもよい。このような実施形態では、耐侵食性エラストマー層の内面は、これらの領域において前縁に接触するように構成されてもよい。
【0081】
さらに、または代替的に、フェアリングは、耐侵食性エラストマー層と1つまたは複数の繊維強化層とを結合する硬化した第1の樹脂をさらに含むことができる。
【0082】
本発明者らは、フェアリングが風力タービンブレードの構造ブレード本体に接着される前に、耐侵食性エラストマー層(erosion-resistant elastomer layer)と1つまたは複数の繊維強化層とを単一の硬化樹脂(single cured resin)で結合すると、卓越した耐侵食性を有するフェアリングが得られることを見出した。これは、樹脂が架橋して硬化し、共有結合が形成される(the resin crosslinks and cures, creating covalent bonds)ときに達成される、樹脂とフェアリング材料との間のインターフェース強度の増加に起因する。フェアリングはまた、コーティング、テープ、シェルなどによる従来の浸食シールドに比べて寿命が長くなる。
【0083】
構造ブレード本体(structural blade body)に取り付ける前に、フェアリングを別の金型で作ることで、耐侵食性エラストマー層が下地の繊維強化素材に確実に密着しながら、フェアリングの外面および内面の望ましい厚みと形状を制御することができる。さらに、単一の樹脂を使用して結合することで、ブレードに対するフェアリングの結合を弱めるような、接着剤が欠落した部分の空洞がないことも保証される。従って、フェアリングが風力タービンブレードの構造ブレード本体に接着されたとき、フェアリングは長期的な耐侵食性を提供するだけでなく、風力タービンブレードの性能を低下させない正確な空気力学的プロファイルを提供する。
【0084】
また、フェアリングは、フェアリングの繊維強化層と構造ブレード本体の繊維強化材料が、先行技術の風力タービンブレードの前縁に耐侵食性エラストマー層を直接接着することによって達成できるものより強力な接着を有するので、フェアリングと構造ブレード本体との間の強力な接着を可能にする。
【0085】
さらに、または代替的に、耐侵食性エラストマー層は耐侵食性エラストマーシート(erosion-resistant elastomer sheet)であってもよい。
【0086】
さらに、または代替的に、硬化した第1の樹脂は、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、またはポリエステル樹脂、好ましくはエポキシエステル樹脂(epoxy resin, vinyl ester resin, or polyester resin, preferably epoxy ester resin)であってもよい。
【0087】
さらに、または代替的に、耐侵食性エラストマーシートは、好ましくは、第1の樹脂と化学的に適合し得る。
【0088】
さらに、または代替的に、外側の耐侵食性エラストマー層は実質的に一定の厚さを有することができる。
【0089】
さらに、または代替的に、外側の耐侵食性エラストマー層は、300ミクロンから2mmの間、例えば750ミクロンから1.5mmの間の厚さを有することができる。
【0090】
さらに、または代替的に、外側の耐侵食性エラストマー層は、熱可塑性エラストマー、好ましくは熱可塑性ポリウレタンを含むことができる。
【0091】
さらに、またはその代わりに、ポリウレタンは脂肪族ポリウレタン(aliphatic polyurethane)であってもよく、長鎖および短鎖のポリエーテル、ポリエステル、またはカプロラクトングリコール(long and short chain polyether, polyester, or caprolactone glycols)を使用して製造することができる。ポリエーテル型はより優れた加水分解安定性と低温柔軟性を有し、ポリエステル型はより優れた機械的特性(mechanical properties)を有し、カプロラクトンはポリエーテル型とポリエステル型の特性の間の良好な妥協点を提供する。熱可塑性ポリウレタンは弾性率が低く、成形面になじみやすいので好ましい。しかしながら、耐侵食性エラストマー層の他の材料も適している。このような材料を含む耐侵食性エラストマー層は、成形面に完全に馴染ませるために、加熱するか他の手段で影響を与える必要があるかもしれない。
【0092】
さらに、または代替的に、1つまたは複数の繊維強化層の層数は、1~11の間、例えば3~7の間、例えば5または6である。
【0093】
さらに、または代替的に、1つまたは複数の繊維強化層は、ガラス繊維強化材料および/または炭素繊維強化材料を含んでもよい。
【0094】
さらに、または代替的に、1つまたは複数の繊維強化層は、一方向性、二軸性、および/または三軸性の繊維シートを含み得る。
【0095】
本開示の別の態様は、風力タービンブレード用のフェアリングを製造する方法に関し、フェアリングは本発明によるものであり、本方法は、
耐侵食性エラストマー層を提供するステップと、
成形面(moulding surface)を含むフェアリングモールドを提供するステップと、
耐侵食性エラストマー層を成形面に配置するステップと、
耐侵食性エラストマー層の上に1つ以上の繊維強化層を配置するステップと、
1つまたは複数の繊維強化層を濡らすように、かつ耐侵食性エラストマー層に接触するように、フェアリングモールド内に第1の樹脂を供給するステップと、
第1の樹脂を硬化させて、耐侵食性エラストマー層と1つまたは複数の繊維強化層とを、第1の樹脂を介して一体型フェアリングとして形成し、結合させるステップとを含む。
【0096】
本発明者らは、フェアリングが構造ブレード本体に接着される前に、1つ以上の繊維強化層を湿潤(wet)させ、同時に耐侵食性エラストマー層を第1の樹脂と接触させ、次いで樹脂を硬化させて一体型フェアリングを提供することにより、卓越した耐侵食性を有するフェアリングが得られることを見出した。これは、樹脂が架橋して硬化する(crosslinks and cures)際に、樹脂とフェアリング材とのインターフェース強度(interface strength)が向上するためである。フェアリングはまた、コーティング、テープ、シェルなどによる従来の浸食シールドに比べて寿命が長くなる。
【0097】
構造ブレード本体に取り付ける前に、フェアリングを別の金型で作ることで、耐侵食性シートが下地の繊維強化素材に確実に密着しながら、フェアリングの外面および内面の所望の厚みと形状を制御することができる。これに加えて、単一の樹脂を使用して結合することにより、ブレードに対するフェアリングの結合を弱めるような、接着剤が欠落した部分の空洞がないことも保証される。このように、フェアリングが風力タービンブレードの構造ブレード本体に接着されると、フェアリングは長期的な耐侵食性を提供するだけでなく、風力タービンブレードの性能を低下させない正確な空気力学的プロファイルを提供する。
【0098】
また、フェアリングは、フェアリングの繊維強化層と構造ブレード本体の繊維強化材料が、先行技術の風力タービンブレードの前縁に耐侵食性エラストマー層を直接接着することによって達成できるものより強力な接着を有するので、フェアリングと構造ブレード本体との間の強力な接着を可能にする。
【0099】
さらに発明者らは、第1の樹脂工程を行う前後の温度がインターフェース強度に強く影響することを見出した。樹脂を供給する前にフェアリングの材料を加熱すると、フェアリング材料間の接着力が非常に高くなることが判明した。さらに、高温で短時間の硬化後工程(ポストキュアプロセス:post-cure process)または長時間の室温の硬化後工程のいずれかが、インターフェース強度およびエロージョン性能に強い影響を及ぼす。
【0100】
加えて、または代替的に、第1の樹脂は、例えば真空注入樹脂転写プロセス(vacuum-infusion resin transfer process)を介した注入によって、または1つ以上の繊維強化層をプリプレグとして提供し、プリプレグシート中の樹脂をリフローさせて耐侵食性エラストマー層に接触させることによって提供することができる。
【0101】
加えて、または代替的に、硬化させるステップは、第1の樹脂と耐侵食性エラストマー層との間に架橋を形成することを含んでいてもよい。
【0102】
さらに、または代替的に、本方法は、耐侵食性エラストマー層を成形面に適合させる工程をさらに含むことができる。
【0103】
さらに、耐侵食性エラストマー層を成形面に適合させるステップは、
耐侵食性エラストマー層を加熱するステップ、
成形表面と耐侵食性エラストマー層の間に粘着付与剤(tackifier:タッキファイヤ)を塗布するステップ、
カバーの上に力を加えるステップ、
のいずれかを含む。
力は、カバーの上に重りを配置することによって加えることができ、重りは、好ましくは、エラストマー材料に封入された流体を含むことができるが、他の手段を使用することもできる。
【0104】
さらに、または代替的に、本方法は、1つまたは複数の繊維強化層の上にカバーを配置するステップをさらに含むことができる。カバーは、樹脂の供給とその後の硬化の間、1つ以上の繊維強化層を保護する。
【0105】
さらに、または代替的に、本方法は、成形表面とカバーとの間に1つまたは複数の真空を適用するステップをさらに含むことができる。
【0106】
有利なことに、カバーは成形面に向かって引っ張られ、耐侵食性エラストマー層とその間の1つまたは複数の繊維強化層が絞られ、樹脂の硬化中に気泡が形成されるのを減少させるか、あるいは防止する。
【0107】
さらに、または代替的に、本方法は、耐侵食性エラストマー層の下面と成形面との間の第1のインターフェース(first interface)に第1の真空を印加する工程をさらに含むことができる。
【0108】
このようにして、第1の真空は耐侵食性エラストマー層を成形面に向かって引っ張り、耐侵食性エラストマー層が成形面に適合するようにし、その間に繊維強化層を上に塗布する。
【0109】
加えて、または代替的に、1つまたは複数の真空(one or more vacuums)は、1つまたは複数の繊維強化層の上面と、1つまたは複数の繊維強化層の上に配置されたカバーの下面との間の第2のインターフェースに適用される第2の真空を含むことができる。
【0110】
このようにして、第2の真空は樹脂を供給するために使用されるため、樹脂がフェアリング材と成形面の間に入り込む危険性が減少する。これは、耐侵食性エラストマー層を成形面に適合させる第1の真空と併用する場合に特に有利である。
【0111】
さらに、または代替的に、第1の真空は、耐侵食性エラストマー層の上に1つ以上の繊維強化層を配置する前に適用することができる。
【0112】
さらに、または代替的に、第1の真空は、耐侵食性エラストマー層の上に1つ以上の繊維強化層を配置した後に、好ましくは第2の真空を適用するのと同時に、またはその前に適用することができる。
【0113】
この方法では、第1の真空も樹脂の供給に使用される。しかし、この方法では、フェアリング材と成形面の間に樹脂が入り込む危険性がある。これは、ブレードの形状が変形によって大きく変化しないように、真空下でフェアリングを支えるフェアリングの端部に、変形しないシール形状と材料を注意深く選択することで軽減できる。この危険性は、真空下でシールを支持するフェアリングの端部に非変形シールの形状(non-deforming seal shape)と材料を慎重に選択し、ブレードのプロファイルが変形によって大きく変化しないようにすることで軽減できます。
【0114】
さらに、または代替的に、本方法は、第1の樹脂を供給する工程の前および工程の間に、耐侵食性エラストマー層の温度を少なくとも40℃、好ましくは40~60℃、最も好ましくは50℃に調整する工程を含むことができる。
【0115】
このようにして、卓越したインターフェース強度が達成され、耐侵食性の向上につながる。これは、フェアリング材が高エネルギー状態の未硬化樹脂(uncured resin in a high energy state)にさらされるためである。これにより、フェアリング材料が表面エネルギーの低い硬化状態にあり、分子結合が弱くなる場合よりも、分子結合が強くなる。 その結果、この方法で製造されたフェアリングの層間剥離が減少する。
【0116】
実際には、耐侵食性エラストマー層の温度は、赤外線検出器、例えば赤外線カメラによって、および/またはフェアリング材料に埋め込まれた温度センサーによって、および/またはカバーと成形面の間に温度計を挿入することによって測定することができる。
【0117】
さらに、または代替的に、耐侵食性エラストマー層の温度を調整するステップは、カバーの下の温度を少なくとも40℃、好ましくは40~60℃、最も好ましくは50℃に上昇させることによって、および/または金型を加熱することによって行うことができる。温度は、電気的に、例えば抵抗器を流れる電流によって、または化学的に、例えば樹脂の硬化のような発熱反応(exotherm reaction)によって調整することができる。
【0118】
加えて、または代替的に、第1の樹脂を硬化させるステップは、少なくとも60℃、好ましくは少なくとも70℃、より好ましくは80℃の温度で第1の樹脂を硬化させることを含み得る。
【0119】
加えて、または代替的に、第1の樹脂を硬化させるステップは、60~130℃の間、例えば70~100℃の間、例えば80~90℃の間の温度で第1の樹脂を硬化させるステップを含み得る。
【0120】
さらに、または代替的に、第1の樹脂を硬化させるステップは、第1の樹脂を少なくとも6時間、例えば8時間、例えば12時間硬化させることを含むことができる。例えば、80℃で8時間硬化させることで、樹脂が完全に反応し、その後の取り扱いが安全になる。
【0121】
加えて、または代替的に、耐侵食性エラストマー層を提供するステップは、耐侵食性エラストマー層を押し出すことによって実施されてもよい。
【0122】
加えて、または代替的に、1つ以上の繊維強化層は予備含浸(pre-impregnated)されていてもよい。
【0123】
本開示の別の態様は、本発明の方法によって得られるフェアリングに関する。本開示の別の態様は、本発明によるフェアリングを含む風力タービンブレードに関する。
【0124】
本開示の別の態様は、フェアリングを備えた風力タービンブレードの製造方法に関し、この方法は、
本開示の方法に従ってフェアリングを提供するステップと、
構造ブレード本体を別個に設けるステップと、
フェアリングが風力タービンブレードの前縁または後縁のいずれかを規定するように、フェアリングを構造ブレード本体に接着して風力タービンブレードを製造するステップとを含む。
【0125】
さらに、フェアリングの風力タービンブレードの構造ブレード本体への接着は、溶融接着剤または構造接着剤(melt-adhesive or a structural adhesive)などの接着剤を使用するステップを含むことができる。
【0126】
本開示の別の態様は、根元から先端まで長手方向軸に沿って延びる風力タービンブレードに組み立てるための部品キットに関する。風力タービンブレードは、根元領域と、先端を有する翼形領域とを含み、風力タービンブレードは、前縁と後縁との間に延びるコードラインを含み、風力タービンブレードは、圧力側と負圧側とを含む空気力学的外翼表面を含み、部品キットは、予め作成された構造ブレード本体を含む。
予め作成された構造ブレード本体は、
圧力側の一部を画定する第1の外側本体表面と、
負圧側の一部を画定する第2の外側本体表面と、
第1の外側本体表面に隣接して配置された第1の取付面と、
第2の外側本体表面に隣接して配置された第2の取付面と、
好ましくは本発明に従って、または好ましくは本発明の方法に従って製造された予め作成されたフェアリングと、
治具とを含む。
フェアリングは、外側フェアリング表面が第1の外側本体表面と第2の外側本体表面とを接続する外側ブレード表面の一部を画定するように、かつ外側フェアリング表面が風力タービンブレードの前縁または風力タービンブレードの後縁のいずれかを画定するように、ブレード本体に固定されるように構成される。
治具は、長手方向軸に沿って、治具の第1の治具リップおよび治具の第2の治具リップで終端する治具プロファイルに沿って延びる。
治具は、治具プロファイルに対して内側に配置され、フェアリングの外側フェアリング表面と一致し、それを受けるように構成された内側の治具面を含む。
治具は、第1の治具状態と第2の治具状態を有し、第1の治具状態の治具プロファイルが第1のフェアリング状態のフェアリングプロファイルに一致し、第2の治具状態の治具プロファイルが第2のフェアリング状態のフェアリングプロファイルに一致する。
【0127】
さらに、または代替的に、部品キットは、1つ以上のクランプ工具セットをさらに含むことができる。
1つ以上のクランプ工具セットの各々は、
第1のクランプヘッドを有し、取付面の一方に隣接してブレード本体に固定されるように構成された第1のクランプ工具と、
好ましくは、第2のクランプヘッドを有し、取付面の他方に隣接してブレード本体に固定される第2のクランプ工具とを含む。
各クランプ工具セットは、各クランプ工具セットのクランプ工具を作動させて、クランプヘッドを付勢し、外側フェアリング表面に圧縮力を加えるように構成されている。
【0128】
加えて、または代替的に、部品キットは、1つまたは複数の位置合わせ工具セットをさらに含むことができる。
1つまたは複数の位置合わせ工具セットの各々は、
それぞれ対応する取付面に隣接してブレード本体および複数のフェアリングリップの1つに固定された第1の治具工具部(first jig tool part)および第1のブレード工具部(first blade tool part)を含む第1の工具対(first tool pair)と、
好ましくは、対応する他方の取付面に隣接してブレード本体および他方のフェアリングリップにそれぞれ固定された、第2の治具工具部品および第2のブレード工具部品を含む第2の工具対とを含む。
各工具対の工具部品の一方がピンを含み、各工具対の工具部品の他方が、ピンがピンの進入位置からピンの終端位置まで予め定められたガイドコースに沿って移動できるようにしながらそれぞれのピンを保持するように構成されたガイドを含む。
各工具対は、ピンが各ガイドのピン進入位置に配置されたとき、フェアリングが第1のフェアリング状態にあり、ピンが所定のガイドコースに沿ってピン進入位置からピン終端位置まで移動したとき、フェアリングが第2のフェアリング状態になるように構成される。
【0129】
本開示の別の態様は、風力タービンブレードの前縁の浸食シールドとしての本発明によるフェアリングの使用に関する。
【0130】
本明細書で使用する場合、「エポキシ当量:epoxy equivalent」という用語は、エポキシ樹脂の重量(g)が1g当量のエポキシ基を提供する、エポキシ当量あたりの重量を指す。
【0131】
当業者であれば、本開示の上記の態様およびその実施形態ならびに特徴のいずれか1つ以上を、本開示の他の態様、実施形態または特徴のいずれか1つ以上と組み合わせることができることを理解するであろう。
【0132】
本開示の実施形態を、添付の図に関して以下により詳細に説明する。図は、本発明を実施する一態様を示すものであり、添付の特許請求の範囲に属する他の可能な実施形態を限定するものとして解釈されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【
図2】
図1に示す風力タービン用フェアリングを備えた風力タービンブレードの概略透視図である。
【
図3】
図2の風力タービンブレードを形成するためにフェアリングをブレード本体に取り付けた状態を示す概略側面図である。
【
図4】
図4aは、フェアリングのフェアリングリップをブレード本体の取付面に隣接する第1のフェアリング状態に配置するステップを示す概略側面図である。弛緩したフェアリング状態と第2のフェアリング状態の輪郭を破線で示す。
図4bは、フェアリングを第2のフェアリング状態にするために、フェアリングリップを接着剤に接触させてフェアリングリップを取付面に取り付ける
図4aに続くステップの概略側面図である。弛緩したフェアリング状態と第1のフェアリング状態の輪郭が破線で示されている。
【
図5】ブレード本体に取り付けられたフェアリングを示す、
図2の風力タービンブレードの先端領域のスライスを示す概略透視図である。
【
図6】それぞれの第2の治具状態および第2のフェアリング状態において、フェアリングをブレード本体に取り付けるための治具およびフェアリング配置の概略断面図である。第1の治具及びフェアリング状態および弛緩した治具及びフェアリング状態の概要も破線で示す。
【
図7】フェアリングのフェアリングリップとブレード本体の取付面を接着剤に接触させるために圧縮力を加えるためのクランプ工具セットの概略断面図である。
【
図8】フェアリングをブレード本体に取り付けるための位置合わせ工具セットの第1の実施形態の概略断面図である。
【
図9】
図9aは、フェアリングをブレード本体に取り付けるための位置合わせ工具の第2の実施形態の概略断面図である。
図9b-9dは、
図9aの位置合わせ工具セットを使用してフェアリングをブレード本体に取り付けるステップを示す概略側面図である。
【
図10】
図10aは、耐侵食性エラストマー層を有するフェアリングの第1の実施形態を有する風力タービンブレードの概略断面図である。
図10bは、耐侵食性エラストマー層を有するフェアリングの第2の実施形態を有する風力タービンブレードの概略断面図である。
【
図11】フェアリングを製造するためにセットアップされた金型の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0134】
図1は、タワー4、ナセル6、および実質的に水平なロータシャフトを有するロータを備えた、いわゆる「デンマークコンセプト:Danish concept」による従来の最新型アップウィンド風力タービン(conventional modern upwind wind turbine)2を示している。ロータは、ハブ8と、ハブ8から半径方向に延びる3枚のブレード10とを含み、各ブレードは、ハブに最も近いブレード根元16とハブ8から最も遠いブレード先端14とを有する。
【0135】
図2は、例示的な風力タービンブレード10の概略図である。風力タービンブレード10は、根元端部(root end)17と先端端部(tip end)15との間の長手方向軸線Lに沿って延びる従来の風力タービンブレード10の形状を有し、ハブに最も近い根元領域30、ハブから最も遠いプロファイル領域または翼形領域34、および根元領域30と翼形領域34との間の移行領域32を含む空気力学的外側ブレード表面(aerodynamic exterior blade surface)22を含む。翼形領域34は、先端端部15を有する先端領域36を含む。ブレード10は、ブレードがハブ8に取り付けられたときにブレード10の回転方向を向く前縁18と、前縁18の反対方向を向く後縁20とを含む。
【0136】
翼形領域34(airfoil region、プロファイル領域(profiled region)とも呼ばれる)は、揚力を発生させることに関して理想的またはほぼ理想的なブレード形状を有するが、構造的な考慮により根元領域30は実質的に円形または楕円形の断面を有し、これは例えばブレード10のハブへの取り付けをより容易かつ安全にする。根元領域30の直径(またはコード)は、根元領域30全体に沿って一定であってもよい。移行領域32は、根元領域30の円形または楕円形から翼形領域34の翼形へと徐々に変化する移行プロファイルを有する。移行領域32のコード長(chord length)は、典型的には、ハブからの半径方向距離が増加するにつれて増加する。翼形領域34は、ブレード10の前縁18と後縁20との間に延びるコードを有する翼形プロファイルを有する。コードの幅は、ハブからの半径方向距離が増加するにつれて減少する。ブレード10の肩部(ショルダー:shoulder)38は、ブレード10が最大のコード長を有する位置として定義される。肩部38は、典型的には、遷移領域32と翼形領域34との間の境界に設けられる。
【0137】
通常、ブレードの異なるセクションのコードは、共通の平面上にないことに留意すべきである。なぜなら、ブレードは、ねじれおよび/または湾曲している(すなわち、あらかじめ曲げられている)ことがあり、その結果、コード平面(chord plane)に対応するねじれおよび/または湾曲コースが提供されるからである。
【0138】
風力タービンブレード10は、ブレードシェルを含み、ブレードシェルは2つのブレードシェル部品またはハーフシェル(第1のブレードシェル部品24および第2のブレードシェル部品26)を含む。ブレードシェルは典型的には繊維強化ポリマー製である。風力タービンブレード10は、第3のシェル部品および/または第4のシェル部品などの追加のシェル部品を含んでもよい。第1のブレードシェル部品24は、典型的には圧力側または風上側のブレードシェル部品である。第2のブレードシェル部品26は、典型的には、負圧側または風下ブレードシェル部品である。第1のブレードシェル部品24と第2のブレードシェル部品26は、ブレード10の後縁20と前縁18に沿って延びる結合線または接着剤接合部に沿って、液体接着剤などの接着剤(adhesive, such as glue)で互いに固定され、ブレード本体40を形成する。一般に、ブレードシェル部品24、26の根元端部は、半円形または半楕円形の外側断面形状を有する。ブレードシェル部品24、26は、風力タービンブレードの空気力学的形状を規定し、長手方向軸線Lに沿って延びる複数のスパー部品(spar components、図示せず)を含む。複数のスパー部品は、ブレード10の主要な曲げ剛性を提供する。ブレード本体40は、フェアリング50が取り付けられる先端領域36に位置する部分を備える。
【0139】
フェアリング50は、前縁18の一部を規定し、ブレード本体40とは別に製造され、その後、風力タービンブレード10を形成するようにブレード本体40に取り付けられている。フェアリング50は、風力タービンブレード10の動作中に気流にさらされる風力タービンブレード10の構造ブレード本体に追加される外部構造である。フェアリング50は、ブレード本体40の周りの気流を、フェアリング50のないブレード本体40と比較して変化させ、理想的な翼形により近づけることを目的としている。ブレード本体40とフェアリング50は、風力タービンブレード10を規定する。フェアリング50は、通常、風力タービンブレードの先端部15まで延びている。これは、最高速度が先端部15で発生し、通常、根元領域30ではロータ速度が比較的低いため発生しないからである。図示の実施形態では、フェアリング50は、風力タービンブレード10の先端領域36に配置され、ブレード根元17から風力タービンブレード10の先端端部15まで、ブレード長さの約3分の2から延びている(extends from about two thirds of the blade length)。他の実施形態では、フェアリング50は、例えば、翼形領域34に配置される、及び/又は先端端部15まで延在しないなど、異なる配置とすることができる。
【0140】
フェアリング50は、
図3~9に関連して説明した方法でブレード本体に取り付けることができる。フェアリングは、
図10a~10bに関連して説明されるタイプのものであってもよい。フェアリングは、
図11に関連して説明される方法によって製造されてもよい。
【0141】
図3及び
図5に見られるように、ブレード本体40は、従来の方法で製造された、予め作成された構造ブレード本体である。ブレード本体40は、風力タービンブレード10の圧力側の一部を画定する第1の外側本体表面41と、風力タービンブレード10の負圧側の一部を画定する第2の外側本体表面44と、第1の外側本体表面41に隣接して位置する第1の取付面42と、第2の外側本体表面に隣接して位置する第2の取付面45と、第1および第2の外側本体表面41,44の反対側で取付面42、45の間に延在する第3の外側本体表面47とを備える。ブレード本体40は、正圧側シェル部24と負圧側シェル部26とが、第3の外側本体表面47の中間に位置する接合部で接合されて構成されている。第1の取付面42には第1の未硬化接着剤43が配置され、第2の取付面45には第2の未硬化接着剤46が配置されている(代替的に、接着剤43、46は、対応するフェアリングリップ52,53の内側フェアリング表面55に配置されてもよい)。
【0142】
図3および
図5に見られるように、フェアリング50は、ブレード本体40とは別に製作された二重曲線(
図5に最もよく見られる)の板状の予め作成された部品である。フェアリング50は、風力タービンブレード10の長手方向軸線L(長手方向軸線Lは、
図3の平面に対して垂直である)に沿って延び、フェアリング50の第1のフェアリングリップ52およびフェアリング50の第2のフェアリングリップ53で終端するU字形のフェアリングプロファイル51に沿って延びている。フェアリングプロファイル51は、長手方向軸線Lに沿ったフェアリング50の各断面の中心線を規定し、外側フェアリング表面54および内側フェアリング表面は、フェアリングプロファイル51から等距離に配置される。フェアリング50はさらに、フェアリングプロファイル51に対して外側に配置された外側フェアリング表面54と、フェアリングプロファイル51に対して内側に配置された内側フェアリング表面55と、第1のフェアリングリップ52から第2のフェアリングリップ53まで、長手方向軸線Lに沿ってフェアリングプロファイル51に沿って延びる1つまたは複数の繊維強化層(本実施形態では、5~6個のガラス繊維層または炭素繊維層が有利であることが見出される)とを備える。
【0143】
関連する図に示されていないが、フェアリングのプロファイル(およびそれに続く治具のプロファイルと固定具のプロファイル)が参照される場合、プロファイルは、関連する構成要素(associated element)、例えばフェアリング、治具、固定具の関連する外面と内面の間の中心線として見出される。
【0144】
本開示において、参照数字の添え字0、1、2は、それぞれの弛緩状態、第1の状態、および第2の状態にあるときの関連する量または要素を示す。例えば
図3では、フェアリング502、第2のフェアリング状態にあることが示されている。この第2のフェアリング状態では、フェアリングリップ52、53は、フェアリングリップ距離D2だけ互いに離間している。このフェアリングリップ距離D2は、フェアリング50がブレード本体40に取り付けられているときのフェアリングリップ52、53間の距離である。
図4aは、フェアリングリップ52、53がフェアリングリップ距離D1だけ互いに離間している第1のフェアリング状態501におけるフェアリングを示す。
【0145】
フェアリング50をブレード本体40に取り付ける前に、フェアリングリップ52、53に拡張力FEを適用し、フェアリングリップ52、53を互いから離すように促し、フェアリングリップ距離Dを、フェアリング50がその第1のフェアリング状態501でのフェアリングリップ距離D1(これは
図4aに最もよく示されている)になるまで増加させる。拡張力FEは、例えば、フェアリングリップ52、53を引き離すことによって加えられることもあれば、フェアリング自体によって加えられることもある。例えば、フェアリングが第2のフェアリング状態で弛緩している場合、応力が緩和されると、フェアリングはこの第2のフェアリング状態に戻ろうする。次に、フェアリング50のフェアリングリップ52、53は、ブレード本体40がフェアリングリップ52、53の間に配置され、内側フェアリング表面55がブレード本体40の取付面42、45に面するように、(フェアリング50とブレード本体40との間の矢印に沿って
図3上で上方に)移動される。この位置では、ブレード本体40の第1の取付面42とフェアリング50の第1のフェアリングリップ522(図示していないが、
図4aの鏡像(mirror image)に対応する)の間、およびブレード本体40の第2の取付面45とフェアリング50の第2のフェアリングリップ53
2の間にそれぞれ隙間が存在し、
図4aに示す配置になる。さらに、フェアリング50は、
図5、10a~10b、および9aに最もよく見られるように、内側フェアリング表面55とブレード本体40の第3外側本体表面47全体との間に間隔を空けて配置される。この位置に向かってフェアリングリップ52、53を移動させる間、第1の接着剤45を第1の取付面42から削り取らないようにし、第2の接着剤46を第2の取付面45から削り取らないようにすることが有利である。これは、このようにして、フェアリングリップの距離D2が、取付面42、45間の距離よりも十分に大きい第2のフェアリング状態をフェアリングに与えることによって達成することができる。
【0146】
フェアリングが
図4aに示す位置に移動されると、圧縮力Fcがフェアリングリップ 52の外側フェアリング表面54に加えられる、フェアリング50の繊維強化層を第1のフェアリング状態50
1から第2のフェアリング状態50
2に変形させ、第1のフェアリングリップ52および第1の取付面42を第1の接着剤43に接触させ(図示していないが、
図4bの鏡像に対応する)、
図4bに示すように、第2のフェアリングリップ53および第2の取付面45を第2の接着剤46に接触させる。本実施形態では、弛緩したフェアリング状態は第2のフェアリング状態よりも小さなフェアリングリップ距離を有するため、圧縮力Fcはフェアリング自体によって加えられる。これは、弛緩したフェアリング状態のフェアリング50
0がブレード本体40に重なる
図4a~4bに概略的に示されている。したがって、フェアリングは、圧縮力Fcを適用して、この弛緩した形状に戻ろうとする。他の実施形態では、第2のフェアリング状態50
2は、弛緩したフェアリング状態50
0と等しく、したがって、圧縮力Fcは、例えば、フェアリングリップ52、53を互いに向かって押すなど、他の手段によって適用される。
【0147】
その後、圧縮力Fcを維持したまま、第1および第2の接着剤43、46を硬化させて、第2のフェアリング状態50
2のフェアリング50をブレード本体40に固定する。したがって、外側フェアリング表面54は、風力タービンブレード10の外側ブレード表面22の一部を画定し、第1の外側本体表面41および第2の外側本体表面44と同一平面上に配置される(
図4b、
図5、および
図10a~10bに示すように)。さらに、外側フェアリング表面54は、風力タービンブレード10の前縁18を画定する。したがって、フェアリング50は、好ましくは、前縁保護フェアリングである。代替実施形態では、対応する方法を適用して、後縁フェアリングをブレード本体に取り付け、それによって風力タービンブレード10の後縁を画定することができる。
【0148】
第1および第2の接着剤43、46が硬化した後、圧縮力Fcが緩和される。外側ブレード表面22を越えて延びる余分な接着剤は除去され、
図4bおよび
図5に示すように、フェアリングリップ52、53とブレード本体40との間の外側ブレード表面22の隙間Gは、
図10a~10bに最もよく見られるように、フィラー(fillers:充填剤)48、49で充填される。
【0149】
別の実施形態では、
図6および
図9Aに示すような治具60が提供される。治具60は、長手方向軸線Lに沿って(
図6の平面から外れて)、治具60の第1の治具リップ62(
図8に最もよく見られるように)および治具の第2の治具リップ63で終端する治具プロファイル61に沿って延びる。治具は弾力性のある材料、好ましくは繊維強化複合材料で作られている。治具は、好ましくはブレード本体40よりも剛性が低い。治具プロファイル61は、フェアリングの外側に配置されるように構成されるようにわずかに大きいものの、フェアリングプロファイル51に基本的に対応する形状である。治具60はさらに、治具プロファイル61に対して内側に配置され、フェアリング50の外側フェアリング表面54と形状が一致する内側治具表面65と、治具プロファイル61に対して外側に配置される外側治具表面64とを備える。治具60は、弛緩した治具状態60
0、第1の治具状態60
1、第2の治具状態60
2を有する。第1の治具状態60
1における治具プロファイル61は、第1のフェアリング状態50
1におけるフェアリングプロファイル51と一致する。第2の治具状態60
2の治具プロファイル61は、
図6で最もよくわかるように、第2のフェアリング状態50
2のフェアリングプロファイル51と一致する。
図6に見られるように、第2の治具状態60
2における治具プロファイル61は、緩和された治具状態60
0における治具プロファイル61に対して相対的に拡張されている。さらに、
図6にも見られるように、第1のフェアリング状態50
1におけるフェアリングプロファイル51は、弛緩したフェアリング状態50
0に対して相対的に圧縮されている。
【0150】
本実施形態の治具60は、
図4aに示したようなフェアリングを配置するステップの前に、以下のサブステップを実行することによって使用される。第1に、治具リップ62、63に拡張力を加え、治具プロファイル61が弛緩したフェアリング状態50
0におけるフェアリングプロファイル51と一致するように治具の治具リップを拡張する。第2に、
図6および
図9aに示すように、外側フェアリング表面54が内側の治具表面65に接するように、フェアリング50を治具60内に配置する。第3に、拡張力が解放され、治具60およびフェアリング50がそれぞれ第1の治具状態50
1および第1のフェアリング状態60
1に変形される。有利なことに、弛緩した治具状態50
0をこのように配置することにより、第1の状態50
1、60
1及び第2の状態50
2、60
2の両方において、内部治具表面65と外側フェアリング表面54との間の良好な接触が達成される。これは、フェアリング50が弛緩したフェアリング状態50
0に戻ろうとする一方で、治具60が弛緩した治具状態60
0に逆方向に戻ろうとするためである。
【0151】
次に、
図4aに関連して説明したようなフェアリングを配置するステップは、フェアリングの代わりに治具を取り扱うことによって有利に実施することができ、フェアリング50を損傷する危険性を低減し、ブレード本体に取り付けられる前は比較的寸法的に不安定な部品である可能性があるフェアリング50を安定した状態に確実に保つことができる。さらに、圧縮力Fcをフェアリングリップ62、63の外側フェアリング表面64に加えることで、治具60およびフェアリング50をそれぞれ第2の治具状態60
2および第2のフェアリング状態50
2に変形させることができる。有利なことに、弛緩治具状態60
0の治具プロファイル61がこのように配置されている場合、圧縮力Fcは、その弛緩治具状態60
0に戻ろうとする治具60のスプリングバック力によって一部または全部が達成され得る。しかし、より単純な構造が望まれる場合には(図示せず)、弛緩治具状態60
0を第1の治具状態60
1と等しく、および/または弛緩フェアリング状態50
0を第2のフェアリング状態50
2と等しく配置することによって達成することができる。
【0152】
圧縮力Fcを加える1つの方法は、1つ以上のクランプ工具セット(clamping tool sets)を使用することである。このようなクランプ工具セット80は
図7に示されており、クランプヘッド82を有するクランプ工具81を含む。クランプ工具81は、取付面42、45の一方に隣接してブレード本体40に固定される。クランプ工具81は、有利には固定具70によって固定される。このような固定具70については、クランプ工具セット80の後に説明する。
【0153】
各クランプ工具セット80は、クランプ工具81を作動させることによって圧縮力Fc、それによってクランプヘッド82を外側フェアリング表面54に向けて付勢し、好ましくは外面治具面64を介して圧縮力Fcを印加する。この実施形態では、クランプ工具セットは、クランプ工具セット80のレバーアーム84を操作することによってレバー作動(lever-actuate)される。他の実施形態では、クランプ工具セット80は、空気圧式、油圧式、ばね式、または電気的に作動させることができる。クランプヘッドによって加えられる力を効率的に分配するために、荷重分配要素(load distribution element:負荷分散要素)83、ここでは長手方向軸線Lに沿って延びる棒を、有利には、クランプヘッドと外側治具表面64との間に配置することができる。有利なことに、複数のクランプ工具セットは、第1の取付面42と第2の取付面45の両方に沿って、長手方向軸線Lに沿って約2メートル離れて配置される。これにより、十分な圧縮力Fcを加えることができる。
【0154】
図9Aに最もよく見られるように、固定具70は、長手方向軸線Lに沿って、固定具70の第1の固定具リップ72および固定具70の第2の固定具リップ73で終端する固定具プロファイル71に沿って延びる。固定具70は、第1の固定具リップ72および第2の固定具リップ73がそれぞれ第1の取付面42および第2の取付面45に隣接して位置するように、ブレード本体40の外刃面22上に固定される。有利なことに、各クランプ工具セット80のクランプ工具81を固定具70に固定することにより、クランプ工具81をブレード本体40に固定することができる。
【0155】
ブレード本体40に対するフェアリング50の位置合わせを支援するために、
図8および
図9a~9dに示すように、1つまたは複数の位置合わせ工具セット(alignment tool sets)90を提供することができる。このような位置合わせ工具90の第1の実施形態が
図8に示されている。位置合わせ工具セット90は、第1の工具対と第2の工具対(a first tool pair and a second tool pair)とを含む。第1の工具対は、治具リップ62、63の一方に固定された第1の治具工具部品(first jig tool part)91と、対応する取付面42、45に隣接して対応する固定具リップ72、73に固定されたブレード工具部品(blade tool part )93とを含む。第2の工具対は第1の工具対と同じであるが、ブレード本体の反対側、すなわち他方の治具リップおよび他方の固定具リップに配置されている。各冶具工具部品91はピン92を含み、ブレード工具部品93は、ピン92が予め定められたガイドコース(predefined guide course)95に沿ってピン進入位置(pin entry position)95Eから第2のピン位置95Bを経由してピン終端位置95Tまで移動できるようにしながらピン92を保持するように構成されたガイド94を含む。フェアリング50をブレード本体40に隣接して配置するステップを開始するとき、各ピン92はピン進入位置95Eにもたらされる。各ピン92を第2のピン位置95Bに移動させると、治具60のスプリングバック力によって各ピン92がピン終端位置95Tにスナップし、
図8に示す配置になる。従って、フェアリング50はブレード本体40に対して有利に位置合わせされる。
【0156】
図9A~9Dに目を向けると、位置合わせ工具セット90の第2の実施形態が示されている。この実施形態では、ガイドコース95は、第1のピン位置95Aと、ピン進入位置95Eと第1のピン位置95Aとの間に延び、フェアリングリップ距離を徐々に増加させる傾斜部95Sとを含む。従って、各ピン92がピン進入位置95Eに位置するとき、フェアリング50及び治具60は第2の状態にあり、各ピン92を第1のピン位置95Aに移動させると、フェアリング50及び治具60は第1の状態になるので、ブレード本体40の取付面42,45から第1及び第2の接着剤43,46を削り取るおそれがなくなる。さらに、治具工具部品91は治具取付プレート97を介して外側治具表面64に取り付けられ、ブレード工具部品93は治具取付プレート98を介して固定具リップ72、73に取り付けられている。これにより、位置合わせ工具セット90のさらなる調節が可能になる。シーラー(Sealers)66は、内部治具表面65と外側フェアリング表面54との間に配置され、治具60によるフェアリング50の保持力を高める。各ピン92がピン終端位置95Tから離れないように、各ブレード工具部品93に保持ラッチ(retention latch、図示せず)を設けてもよい。
【0157】
ブレード本体40に装着されるフェアリング50の2つの実施形態が、
図10aおよび
図10bに示されている。いずれの実施形態においても、フェアリング50は、外側フェアリング表面54の一部を形成し、風力タービンブレード10の外部環境と接触するように構成されたポリウレタンの耐浸食性エラストマー層57を含む。耐侵食性エラストマー層57は、好ましくは、押出成形プロセスによって形成される。さらに、フェアリング50は、内部フェアリング表面55の一部を形成し、第3のブレード本体表面47に面する第1の繊維強化層を含む多数の繊維強化層56と、第1の繊維強化層と耐侵食性エラストマー層57との間に配置された多数の、例えば4~5個の第2の繊維強化層とを備える。硬化した第1の樹脂(図において見えない:not visible on the figures)が、耐侵食性エラストマー層57と1つ以上の繊維強化層56とを結合する。本数の繊維強化層56は、好ましくは二軸ガラス繊維シートである。
図10bに示す第2の実施形態では、耐侵食性エラストマー層57は、フェアリング50の耐侵食性を高めるために、風力タービンブレード10の前縁18において補強部分を構成する。
【0158】
図10a~10bに関連して上述した繊維強化部品、すなわち耐浸食性フェアリング50は、
図11に示すように設置された金型内で、以下のようにして製造することができる。
耐侵食性エラストマー層57の形態の第1の層57を提供する。
成形面101を含むフェアリングモールド(fairing mould)100を提供する。耐侵食性エラストマー層57を成形面101上に配置し、成形面101に適合(conform)させる。
耐侵食性エラストマー層57の下面と成形面との間の第1のインターフェース105に第1の真空103を印加する。
耐侵食性エラストマー層57の上に第2の層56、すなわち繊維強化層56を配置する。
繊維強化層56の上にカバー102を配置する。
繊維強化層56の上面と繊維強化層56の上に配置されたカバー102の下面との間の第2のインターフェース106に第2の真空104を印加し、カバー102を繊維強化層56の方へ引っ張るようにする。
耐侵食性エラストマー層57の温度を50℃に調整し、次いで、繊維強化層56を濡らすように、かつフェアリングモールド100内の耐侵食性エラストマー層57に接触するように、カバー102内の樹脂注入口108を介して第1の樹脂58を直ちに注入(immediately inject)する。
耐侵食性エラストマー層57および繊維強化層56を、第1の樹脂58を介して一体型フェアリング50として形成および結合するように、第1の樹脂を80℃の温度で8時間硬化させる。第1の樹脂の硬化は、好ましくは、第1の樹脂58と耐侵食性エラストマー層57との間に架橋(crosslinks:クロスリンク)を形成する。
【0159】
フェアリング50が硬化したら、カバー層を除去し、余分な樹脂を洗浄することができる。その後、フェアリングをフェアリングモールド100から取り外し、切断平面(cut plane)107に沿って所望の形状に切断することができる。
【符号の説明】
【0160】
2:風力タービン 4:タワー 6:ナセル 8:ハブ 10:ブレード 13:シェル 14:ブレード先端 15:先端端部 16:ブレード根元 17:根元端部 18:前縁 20:後縁 22:外側ブレード表面 24:第1のブレードシェル部品、圧力側シェル部品 26:第2のブレードシェル部品、負圧側シェル部品 30:根元領域 32:移行地域 34:翼形領域 36:先端領域 38:肩部 40:ブレード本体 41:第1の外側本体表面 42:第1の取付面 43:第1の未硬化接着剤、第1の接着剤 44:第2の外側本体表面 45:第2の取付面 46:第2の未硬化の接着剤、第2の接着剤 47:第3の外側本体表面 48:第1のフィラー 49:第2のフィラー 50:フェアリング 51:フェアリングプロファイル 52:第1のフェアリングリップ 53:第2のフェアリングリップ 54:外側フェアリング表面 55:内側フェアリング表面 56:繊維強化層 57:外部耐浸食性エラストマー層 58:第1の樹脂 60:治具 61:治具プロファイル 62:第1の治具リップ 63:第2の治具リップ 64:外側治具表面 65:内側治具表面 66:シーラー 70:固定具 71:固定具プロファイル 72:第1の固定具リップ 73:第2の固定具リップ 80:クランプ工具セット 81:クランプ工具 82:クランプヘッド 83:荷重分配要素 84:レバーアーム 90:位置合わせ工具セット 91:治具工具部品 92:ピン 93:ブレード工具部品 94:ガイド 95:ガイドコース 95E:ピン進入位置 95A:第1のピン位置 95B:第2のピン位置 95T:終端位置 95S:傾斜セクション 97:治具取付プレート 98:取付プレート 100:フェアリングモールド 101:成形面 102:カバー 103:第1の真空 104:第2の真空 105:第1のインターフェース 106:第2のインターフェイス 107:切断平面 108:樹脂注入口 L:長手方向軸線 FC:圧縮力 FE:拡張力 D:リップ距離 G:ギャップ
【国際調査報告】