(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】診断及び治療のための表面上の細胞及び粒子の界面播種
(51)【国際特許分類】
A61L 27/28 20060101AFI20240403BHJP
A61L 27/38 20060101ALI20240403BHJP
A61L 27/52 20060101ALI20240403BHJP
A61L 27/36 20060101ALI20240403BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20240403BHJP
【FI】
A61L27/28 ZNA
A61L27/38
A61L27/52
A61L27/36 400
C12N5/071
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561663
(86)(22)【出願日】2022-04-08
(85)【翻訳文提出日】2023-11-10
(86)【国際出願番号】 US2022023971
(87)【国際公開番号】W WO2022217024
(87)【国際公開日】2022-10-13
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】510166102
【氏名又は名称】ウィリアム マーシュ ライス ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】WILLIAM MARSH RICE UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】6100 Main Street,Houston,TX 77005, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ミラー ジョーダン
(72)【発明者】
【氏名】キンストリンガー イアン
(72)【発明者】
【氏名】グリゴリアン バグラト
(72)【発明者】
【氏名】ポールセン サマンサ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C081
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB10
4B065AC20
4B065BA30
4B065BC41
4B065BC50
4B065BD50
4B065CA44
4C081AB11
4C081AB32
4C081CA082
4C081CA182
4C081CD042
4C081CD062
4C081CD072
4C081CD082
4C081CD092
4C081CD112
4C081CD122
4C081CD152
4C081CD18
4C081CD23
4C081CD34
4C081EA06
(57)【要約】
本開示の一部の実施形態は、細胞、ビーズ、又は粒子を材料の表面に接着するためのプロセスを開示する。表面は、平坦であっても湾曲していてもよく、パターン化された又は3Dプリントされた中空チャネルの状況で用いられることができ、それにより、生理学的システムの特定の態様の再現を容易にする。様々な実施形態では、界面細胞播種は、界面重合の前に標的材料に組み込まれた架橋分子と、細胞の懸濁物を含有する担体を、表面に沿って局所的に重合することによって達成される。担体の重合は、表面に沿った、制御された立体構造へと、細胞を閉じ込める。本明細書に開示される技術は、生体に移植するのに好適な操作された臓器/デバイスを構築するために、組織工学に利用することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を有する標的材料を提供することと、
重合性材料ならびに、(i)架橋剤、及び(ii)細胞、ビーズ、又は粒子を含む担体組成物、あるいは、架橋剤ならびに、(i)重合性材料、及び(ii)細胞、ビーズ、又は粒子を含む担体組成物
と共に、前記表面をインキュベートすることと、
過剰な担体組成物を除去するために前記表面を洗浄することであって、前記細胞、前記ビーズ、又は前記粒子が、前記表面上に重合された前記材料の界面層上又はその中に固定化される、ことと
を含む、標的材料をコーティングする方法。
【請求項2】
前記表面が、前記架橋剤、又は前記架橋剤を含む前記担体組成物と共にインキュベートされた後に、非結合架橋剤を除去するために前記表面を洗浄することを更に含む、請求項1に記載のマニホールド。
【請求項3】
前記担体組成物が、液体又は気体である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記界面層の厚さを制御するために、前記インキュベートすることの持続時間が調節される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記界面層が、前記表面に対して直交しているか又は共形である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞が、線維芽細胞、周皮細胞、内皮細胞、上皮細胞、又は平滑筋細胞を含む管腔細胞である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ビーズ又は前記粒子が、検出可能な標識、センサ、又は治療剤を含むか又はそれに連結される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ビーズが、磁気ビーズ、高分子ビーズ、PEGミクロスフェア、又はゼラチンミクロスフェアである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記粒子が、ナノ粒子又はリポソームである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞が、同じ細胞型のものである複数の細胞を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記細胞が、異なる細胞型のものである複数の細胞を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記異なる細胞型が、内皮細胞及び間質細胞を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記間質細胞が、間葉系幹細胞又は周皮細胞を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記表面が、平滑筋細胞と内皮細胞との同心円層のうちの前記平滑筋細胞又は前記内皮細胞のいずれかに隣接して位置する、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記表面が、前記平滑筋細胞と内皮細胞との同心円層の間に位置する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞が、固定化を促進又は阻害する因子を産生又は分泌する、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記標的材料が、ヒドロゲル、生体材料、又は脱細胞化組織若しくは臓器である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記生体材料が、フィブリン、ゼラチン、ヒアルロン酸、アガロース、アルギネート、コラーゲン、又は脱細胞化細胞外マトリックスを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記脱細胞化組織又は臓器が、動脈、静脈、リンパ管、気管、食道、肺、肝臓、腎臓、膵臓、尿管、膀胱、腸、又は尿道を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記ヒドロゲルが、3Dプリントされたヒドロゲルである、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記ヒドロゲルが、光造形法によって3Dプリントされる、請求項17~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ヒドロゲルが、血管テンプレートを含む犠牲テンプレートの周りに成形することによって形成される、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記犠牲テンプレートが、押出又は選択的レーザ焼結によって形成された炭水化物ベースの材料で作製される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記表面が、1つ以上の開口部を有するチューブの外側である、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記表面が、1つ以上の開口部を含む、円筒形チャネル、半円筒形、開口ボイド、又は空隙である、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
(i)前記架橋剤が、トロンビンであり、前記重合性材料が、フィブリノーゲンであるか、(ii)前記架橋剤が、トランスグルタミナーゼであり、前記重合性材料が、ゼラチン若しくはゼラチンメタクリレートであるか、(iii)前記架橋剤が、Ca
2+であり、前記重合性材料が、アルギネートであるか、(iv)前記架橋剤が、過硫酸アンモニウム/TEMEDであり、前記重合性材料が、ゼラチンメタクリレート、PEG-ジアクリレート、コラーゲンメタクリレート、シルクメタシレート、ヒアルロン酸メタクリレート、コンドロイチン硫酸メタクリレート、エラスチンメタクリレート、セルロースアクリレート、デキストランメタクリレート、ヘパリンメタクリレート、NIPAAmメタクリレート、キトサンメタクリレート、メタクリル化脱細胞化ECM、PEGベースのペプチドコンジュゲート、若しくはそれらの組み合わせであるか、(v)前記架橋剤が、システイン末端ペプチドであり、前記重合性材料が、PEG-ジアクリレートであるか、(vi)前記架橋剤が、リチウムアシルホスフィネート/光であり、前記重合性材料が、ゼラチンメタクリレート、PEG-ジアクリレート、コラーゲンメタクリレート、シルクメタシレート、ヒアルロン酸メタクリレート、コンドロイチン硫酸メタクリレート、エラスチンメタクリレート、セルロースアクリレート、デキストランメタクリレート、ヘパリンメタクリレート、NIPAAmメタクリレート、キトサンメタクリレート、メタクリル化脱細胞化ECM、PEGベースのペプチドコンジュゲート、若しくはそれらの組み合わせであるか、又は(vii)前記架橋剤が、ペルオキシダーゼであり、前記重合性材料が、シルクフィブロインである、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記架橋剤及び前記重合性材料が、クリックケミストリーペアである、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記クリックケミストリーペアが、PEG-ジチオール、PEG8-ノルボルネン、チオール化ゼラチン、チオール化キトサン、チオール化シルク、チオール化脱細胞化ECM、又はそれらの組み合わせを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記架橋剤が、光によって活性化される、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記担体組成物が、前記標的材料よりも大きい屈折率を呈する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
光活性化への前記架橋剤の曝露を制限するために導波路を用いることを更に含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記重合性材料が、共有結合又は非共有結合の形成を介して、前記架橋剤によって重合される、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記インキュベートすること及び前記洗浄することが、1時間未満、45分未満、30分未満、25分未満、20分未満、15分未満、12分未満、11分未満、10分未満、9分未満、8分未満、7分未満、6分未満、5分未満、4分未満、3分未満、又は2分未満で起こるが、少なくとも1分間起こる、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記表面をインキュベートすることが、前記重合性材料又は前記架橋剤との前記表面の第1のインキュベーション、及び前記担体組成物との前記表面の第2のインキュベーションを含み、
前記表面が、前記第1のインキュベーション及び前記表面の前記洗浄中に固定化される、
請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記表面が、前記第2のインキュベーション中に固定化される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
細胞増殖及び/又は細胞遊走を補助する条件下で前記固定化された細胞をインキュベートすることを更に含む、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記細胞をインキュベートすることが、1~12週間、1~10週間、1~8週間、1~6週間、1~4週間、1~3週間、1~2週間、1~14日間、1~10日間、1~5日間、2~10日間、2~6日間、2~4日間、5~12日間、5~10日間、又は12~24時間にわたって起こる、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記表面の厚さ対前記界面層の厚さの比が、約100:1~約10,000:1である、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記界面層の厚さが、約10~1000ミクロンである、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記表面をインキュベートすることが、前記重合性材料又は前記架橋剤との前記表面の第1のインキュベーション、及び前記担体組成物との前記表面の第2のインキュベーションを含み、
前記第2のインキュベーションが、約5秒間~約10分間、約5秒間~約30秒間、約5秒間~約1分間、約1分間~約3分間、約1分間~約5分間、又は約1分間~約10分間続く、
請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
請求項1~40に記載の方法に従って細胞でコーティングされた表面。
【請求項42】
前記表面が、平坦な又は平面の表面である、請求項41に記載の細胞コーティングされた表面。
【請求項43】
前記表面が、非平坦な又は非平面の表面である、請求項41に記載の細胞コーティングされた表面。
【請求項44】
前記表面が、スポンジ、織られた材料、発泡体、直線格子、三角格子、ジャイロイド、ハニカム、又はオクテットを含む、マクロポーラス構造である、請求項41に記載の細胞コーティングされた表面。
【請求項45】
前記表面が、移植可能デバイス、人工的に操作されたか若しくは脱細胞化された組織、人工的に操作されたか若しくは脱細胞化された組織臓器、人工操作された導管ネットワーク、又は細胞培養デバイス中に位置する、請求項41に記載の細胞コーティングされた表面。
【請求項46】
前記人工的に操作された導管ネットワークが、膵臓、腎臓、又は肺を含む、請求項45に記載の細胞コーティングされた表面。
【請求項47】
前記人工的に操作されたか又は脱細胞化された組織臓器が、血管ネットワーク又はリンパ管ネットワークを含む、請求項45に記載の細胞コーティングされた表面。
【請求項48】
管腔表面と、
前記管腔表面上に配設された重合された材料の界面層と、
前記界面層に埋め込まれた細胞と
を含む、細胞コーティングされた管腔表面。
【請求項49】
表面を有する標的材料を提供することと、
細胞、ビーズ、又は粒子、及び温度又はpH重合性材料を含む担体組成物と共に、前記表面をインキュベートすることと、
前記材料の重合を触媒する温度又はpHに前記表面を曝露することであって、前記細胞、前記ビーズ、又は前記粒子が、前記表面上に重合された前記材料の界面層上又はその中に固定化される、ことと
を含む、標的材料をコーティングする方法。
【請求項50】
非結合担体組成物を除去するために前記表面を洗浄することを更に含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
過剰な担体組成物を除去するために前記表面を洗浄することを更に含む、請求項49に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2021年4月9日に出願された米国仮出願第63/173,118号の優先権を主張するものであり、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究に関する声明
本発明は、米国国立衛生研究所によって授与された助成番号F31 HL140905及びF31 HL134295、並びに米国国立科学財団によって授与された助成番号DGE-1450681の下で政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明において、一定の権利を有する。
【0003】
開示の分野
本明細書は、一般に、生物学、医学、医療デバイス、及び移植の分野に関し、より具体的には、細胞、ビーズ、又は粒子を材料の表面に接着させて、移植可能なデバイスなどの、生理学的システムの特定の態様の再現を可能にするためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0004】
内皮細胞(EC)は、哺乳動物血管系における一次機能性細胞型を表す。構造的に、これらの細胞は、動脈及び静脈の内側(管腔)の裏打ちを形成し、毛細血管のほぼ全体を構成する。機能的には、ECは、血液と組織との間の半透過性バリアとして機能し、血流と肺、肝臓、及び腎臓などの臓器との間の代謝物及び他の分子の輸送を調節する。ECはまた、隣接する組織の必要性に血管系を適合させることにおいて重要な動的な役割を果たし、ECは、他の細胞型からのシグナルに応答して、新たな血管(例えば、胚発生又は創傷治癒)を再編成し、形成することができる。内皮細胞に類似して、上皮細胞は、肺気道ネットワーク内の内側細胞層、並びに臓器系(例えば、膵臓及び腎臓)にわたるいくつかの導管ネットワークを含む。平滑筋細胞を含む他の細胞型は、血管及びリンパ管のネットワークの管状構造の表面に沿って円周方向に配置される。上記に説明された細胞型は、全て、体内の血管又は他の流体のネットワークの管腔(すなわち、内部空間)を裏打ちするように生来存在するものであり、管腔細胞(LC)と総称される。
【発明の概要】
【0005】
本開示の様々な実施形態は、
表面を有する標的材料を提供することと、
重合性材料ならびに、(i)架橋剤、及び(ii)細胞、ビーズ、又は粒子を含む担体組成物、あるいは、架橋剤ならびに、(i)重合性材料、及び(ii)細胞、ビーズ、又は粒子を含む担体組成物
と共に、表面をインキュベートすることと、
過剰な担体組成物を除去するために表面を洗浄することと
を含む、方法を開示する。様々な実施形態では、細胞、ビーズ、又は粒子が、表面上に重合された材料の界面層上又はその中に固定化される。
【0006】
本開示の様々な実施形態は、管腔表面と、当該管腔表面上に配設された重合された材料の界面層と、当該界面層に埋め込まれた細胞と、を含む、細胞コーティングされた管腔表面を開示する。
【0007】
本開示の様々な実施形態は、表面を有する標的材料を提供することと、細胞、ビーズ、又は粒子、及び温度又はpH重合性材料を含む担体組成物と共に、表面をインキュベートすることと、当該材料の重合を触媒する温度又はpHに表面を曝露することと、を含む、標的材料をコーティングする方法を開示する。様々な実施形態では、細胞、ビーズ、又は粒子が、表面上に重合された材料の界面層上又はその中に固定化される。
【0008】
これらの及び他の態様及び実施態様が、以下に詳細に論じられる。上記の情報及び以下の発明を実施するための形態は、様々な態様及び実施態様の例示的な例を含み、特許請求の範囲の態様及び実施態様の性質及び特徴を理解するための概要又は枠組みを提供する。図面は、様々な態様及び実施態様の例示及び更なる理解を提供し、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
添付の図面は、縮尺に合わせて描画されることを意図しない。種々の図面における同様の参照番号及び指定は、同様の要素を示している。明確にするために、全ての構成要素が全ての図面にラベル付けされているわけではない。図面において、以下を参照されたい。
【0010】
【
図1】様々な実施形態による、界面ゲル重合を介した管腔細胞の播種を例示する例示的な概略フローチャート。
【
図2】様々な実施形態による、架橋剤の存在下における界面ゲル重合を介した、パターン化された血管チャネルの急速な内皮化の例示的な例示を示す。
【
図3】様々な実施形態による、架橋剤の不存在下における界面ゲル重合を介した、血管チャネルの疎播種の例示的な例示を示す。
【
図4】様々な実施形態による、界面重合による播種後の、数日間にわたる、すなわち、0日目における例示的な管腔細胞形態形成を示す。
【
図5】様々な実施形態による、界面重合による播種後の、数日間にわたる、すなわち、2日目における例示的な管腔細胞形態形成を示す。
【
図6】様々な実施形態による、界面重合による播種後の、数日間にわたる、すなわち、6日目における例示的な管腔細胞形態形成を示す。
【
図7】
図7A及びBは、様々な実施形態による、界面重合による播種後の、数日間にわたる、すなわち、11日目における例示的な管腔細胞形態形成を示す。
【
図8】様々な実施形態による、担体組成物の重合を触媒するために架橋剤を使用して標的材料をコーティングする方法に対するフローチャート。
【
図9】様々な実施形態による、担体組成物の重合を触媒するためにpH又は温度を使用して標的材料をコーティングする方法に対するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
ヒト生理学における内皮細胞(EC)の重要な役割は、それらを、組織及び臓器機能の操作されたモデルへの組み込みのための高優先度の標的にしている。操作された組織内の管腔細胞(LC)の関連性及び必要性は、特に3Dプリントを通じて軟質ヒドロゲル中の血管ネットワークを製作するための新しいテクノロジーの出現によって劇的に拡大した。これらの技術は、ヒドロゲル中でのチャネルの中空の灌流可能なネットワークの作成を可能にする。哺乳動物の血管、気道チャネル、リンパ管、又は他の導管系の機能モデルなどのそのようなチャネルを利用するために、LCは、それらが内壁に沿ってコーティングを形成するようにチャネルの内側に播種される。
【0012】
パターン化された血管チャネルの表面に沿ってLCを播種するための1つのアプローチは、LCの高密度懸濁物(細胞培養培地中の)をネットワークに注入することであった。このアプローチでは、細胞は、重力に起因して内側チャネル表面上に沈降し、表面に直接接着し得る。構築物は、播種プロセス中に物理的に回転して、表面の均一な被覆を容易にし得、良好な被覆及び特徴的な内皮細胞形態を有するパターン化された血管チャネルの正常な播種を可能にする。しかしながら、このアプローチは、非常に時間がかかり、内皮細胞を正常に接着させるために数時間のインキュベーションを必要とし、本発明者らの実験では、インキュベーション時間が4時間を超えたとき、最適な細胞接着が観察された。更に、長いインキュベーションステップは、必要に応じて構築物を回転させるための頻繁な介入、又はこのプロセスを自動化するためのカスタム機器を必要とし得る。このプロセスの時間集約的な性質は、実験の持続時間の観点のみならず、このプロセスがどの程度広範囲にスケールアップされ得るかの観点からも制限的である。したがって、この分野の研究を進めるには、改善された方法論が必要である。
【0013】
したがって、本発明者らは、ヒドロゲル又は生体材料などの材料の管腔表面などの表面に沿って、細胞、ビーズ、粒子などを接着させるための新しいアプローチを本明細書に開示する。概して、この方法は、実質的に任意のタイプの生物細胞(限定されるものではないが、内皮細胞、上皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞、周皮細胞、及び/又は同様のものを含む)、ビーズ、粒子などが、平坦な表面及び湾曲した表面の両方に沿って配設されることを可能にする。パターン化された又は3Dプリントされた中空チャネルの状況で適用されたとき、このプロセスは、血管(内皮細胞層)又は肺の気道(上皮細胞)で観察されるような、チャネルネットワークの内面に沿った細胞の急速な適用を可能にする。したがって、本技術は、生理学的システムの特定の態様を再現するために利用され得る。界面播種に関する本明細書の考察は、細胞に関するが、表面上のビーズ、粒子などの配設にも等しく適用可能である。
【0014】
様々な実施形態では、界面細胞播種は、標的材料(例えば、標的ヒドロゲル又は生体材料(すなわち、細胞がその上に播種されるべき材料))の表面に沿って、細胞の懸濁物を含有する担体組成物又は材料を局所的に重合することによって達成され得る。担体組成物は、液体又は気体であり得る。また、担体組成物がビーズ、粒子などの懸濁物を含有する同様のプロセスを使用して、ビーズ、粒子などを表面上に播種してもよい。重合反応は、界面重合の前に標的材料に組み込まれている架橋分子によって、媒介され得る。架橋剤(代替的に「クロスリンカー」と呼ばれる)を標的材料に事前に組み込むことは、重合を標的材料と担体組成物との間の界面へと制限するのに十分である。担体ゲル又は溶液の重合は、細胞、ビーズ、粒子などを、表面に沿った初期構成へと閉じ込めるか又は固定化し、その後、細胞、ビーズ、粒子などは遊走して互いに相互作用し、生物学的関心対象の構造を更にアセンブルし得る。様々な実施形態では、重合は、共有結合又は非共有結合の形成を介して起こる。重合はまた、光又はpHによって誘発され得る。様々な実施形態では、表面上で生成された界面層は、当該表面に対して直交しているか又は共形であり得る。
【0015】
界面重合の重要な利点は、幅広いトポロジーを有する表面に細胞、ビーズ、粒子などを付着させる自由度である。界面重合による細胞播種は、共形コーティングプロセスとして動作するため(すなわち、塗布されたコーティングは、下にある基質の曲率に追従する)、風変わりな又は不規則な曲率を有する標的表面上であっても使用され得る。そのような表面トポロジーは、生物学的システム、及び天然の生理学を模倣するように設計された操作された材料の両方の特質である。例えば、生体組織及び医療デバイスでは、流体(血液、胆汁、又は尿など)が円筒形チャネルを介して輸送されることが一般的である。臓器(肝臓又は腎臓など)内には、階層的なツリー様構造で配置されたそのような円筒形チャネルの複数の独立したネットワークが存在し得る。肺では、気体が、空気と血液との間で、不規則な曲面を有するバルーン様嚢(肺胞)で交換される。上記の例に提示される多様かつ複雑な表面にもかかわらず、界面播種は、材料の平坦なシート、又は溝若しくは隆起部で改変された平坦な表面などの、より基本的な表面に加えて、これらのタイプの表面のいずれかに沿って、細胞、ビーズ、粒子などを接着させるために適用され得る。したがって、血管樹の内部表面に沿った内皮細胞の接着、又は肺気道の内面に沿った上皮細胞の接着を包含する用途は、開示された界面播種技術によって同時に容易にされることが期待される。
【0016】
以下に論じられるように、界面播種の様々な実施形態は、標的材料から担体組成物に拡散する架橋剤(すなわち、クロスリンカー)を利用する。これらの実施形態では、界面重合担体組成物の厚さ又は深さは、クロスリンカーの濃度、及び重合反応の持続時間に関連する。したがって、厚さは、一桁大きな厚さにわたって広がる界面層を得るように架橋時間及び初期クロスリンカー濃度を調節することによって、制御され得る。様々な実施形態では、厚さが、接着された細胞、ビーズ、粒子などのサイズに一致するように、それに応じて界面重合層の厚さを調整することが望ましい場合がある。
【0017】
更に、拡散性クロスリンカーを用いて播種する界面細胞/ビーズ/粒子は、単一の重合ステップに限定されない。むしろ、複数の重合が連続して実行されて、多層構造(すなわち、界面重合細胞又は粒子の同心円層)を得ることができる。そのような実施形態は、平滑筋層の上に内皮層を有する血管ネットワークなどの、同心円細胞層を有する操作されたデバイスを開発するために重要であると予想される。例えば、界面播種が起こる表面は、平滑筋細胞と内皮細胞との同心円層のうちの平滑筋細胞又は内皮細胞のいずれかに隣接して位置し得る。別の例として、表面は、平滑筋細胞と内皮細胞との同心円層の間に位置する。更なる実施形態は、細胞の層と並んでセンサ粒子又は薬物送達粒子の層を含み得る。
【0018】
図1は、様々な実施形態による、界面ゲル重合を介した管腔細胞の播種を例示する例示的な概略フローチャートである。様々な実施形態では、パターン化されたチャネルの表面にECを直接播種することの代替として、空間的に制御されたヒドロゲル重合が、チャネル表面に沿ったゲルの薄い層にECを閉じ込めるか又は固定化するために用いられる。様々な実施形態では、表面を有する開口チャネル120を有する標的材料110が提供される。様々な実施形態では、表面は、1つ以上の開口部を有するチューブの外側であり得る。様々な実施形態では、表面は、円筒形チャネル、半円筒形、開口ボイド、又は1つ以上の開口部を含む空隙であり得る。様々な事例では、標的材料は、ヒドロゲルであり得る。例えば、ヒドロゲルは、3Dプリントされたヒドロゲル(例えば、光造形法による3Dプリント)であるか、又は血管テンプレートを含む犠牲テンプレートの周りに成形することによって形成され得る。例えば、犠牲テンプレートは、押出又は選択的レーザ焼結によって形成された炭水化物ベースの材料で作製され得る。様々な実施形態では、標的材料は、限定されるものではないが、フィブリン、ゼラチン、ヒアルロン酸、アガロース、アルギネート、コラーゲン、又は脱細胞化細胞外マトリックスを含む、生体材料であり得る。様々な実施形態では、標的材料は、限定されるものではないが、動脈、静脈、リンパ管、気管、食道、肺、肝臓、腎臓、膵臓、尿管、膀胱、腸、尿道、及び/又は同様のものを含む、脱細胞化組織又は臓器であり得る。
【0019】
様々な実施形態では、標的材料110は、生物学に着想を得た設計基準で3D操作組織を製作することができる3Dプリントプロセスを使用して生成され得、設計基準には、マレーの法則、直径が数十から数百マイクロメートルのマルチスケールの分岐血管、滑らかな内壁、円形断面、及び複数の入口/出口が含まれるが、これらに限定されない。実際のところ、プリント用パラメータの最適化により、製作され得るものに対する制限は、モデル化することが可能なものによって決まる。更に、フラクタル空間充填モデルを利用して、既存の血管ネットワークの周囲及びそれを介して、又は天然組織のアーキテクチャに従って、血管ネットワークを計算的に成長させることは、更により複雑で生理学的に適切な3Dモデルのコンピューター成長モデルによって達成することができる。これらの数学的フラクタル空間充填モデルは、例えば、結び目理論、ヒルベルト曲線、及びLシステムから導出することができる。理想化された血管ネットワークを予測するためのそのような数学的フラクタル空間充填モデルとしては、結び目理論、配管工の悪夢、ペアノ曲線、ヒルベルト曲線、ピタゴラスの木、及びブラウンの木モデルが挙げられるが、これらに限定されない。例として、配管工の悪夢モデルは、基本的に、真っ直ぐな垂直シリンダーによって相互に接続された2つの血管ラダーモデルを含む。複数の配管工の悪夢モデルは、それらが相互貫入するように挿入され得る。血管ラダーモデルは、1つの入口と1つの出口で構成され、2つの水平シリンダーが対角シリンダーで接続されているため、チャネル間の接合部が生じる。
【0020】
ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA)などの光重合性ヒドロゲル材料は、UVから可視光波長範囲で吸光する、リチウムアシルホスフィネート(LAP)などの光開始剤システムを使用して架橋され得る。例えば、低濃度のカーボンブラック(全てのUV-可視光スペクトルにわたって光を吸収できる)又は低濃度のタートラジン(427nm付近に光吸収のピークがある)を追加することにより、本発明者らは光の透過の深さを制限することができる。他の材料には、光重合することができる-エン(-ene)修飾された天然材料及び合成材料(例えば、アルギネート、シルク、デキストラン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、セルロース、ヘパリン、並びにポリ(カプロラクトン)及びこれらの多成分バージョン)が含まれる。
【0021】
数センチメートルのオーダーで、パターン忠実度が高く、多層ヒドロゲルの複雑なパターン化を実現するために、プリントプロセス中の露光が制御され、ビルドプラットフォーム上に投影された光が、いずれか部分的に又は完全にゲル化を起こす層と主に相互作用するようになる。ヒドロゲルのラジカル媒介性光重合は、光開始剤である、光吸収時に分子が崩壊してヒドロゲル重合を触媒することができるフリーラジカルを放出する特定の波長範囲に感受性の分子を利用する。これには、光開始剤の波長感度を定量することが不可欠である。高濃度の光開始剤は、より多くの光を吸収し、入射光の透過度(penetration depth)を制限することによって、より高いz解像度を提供する。しかしながら、高濃度の光開始剤は、光重合反応を妨害し(フリーラジカルがより多いほど、互いに消滅する可能性がより高くなる)、高濃度の光開始剤は細胞毒性を示す。更に、プロジェクターからの高いx-y解像度では、以前にプリントされた層のz方向から光が当たり、複雑なオーバーハング構造(血管系に見られるような)を形成する能力が制限される可能性があり、閉じ込められた細胞に光毒性を引き起こし得る。
【0022】
したがって、高解像度のプリントを達成するために、本開示は、高い細胞生存率を維持しながら、バイオプリントされた組織において高いz解像度を提供する光化学的手段を初めて提供する。上で概説した懸念に対処するために、本発明者らは、生体適合性の材料又は化学物質を前重合溶液に添加して、より高いz解像度を提供する一般的な戦略を特定した。添加材料は、次の3つの基準に基づいて選択される:1)光開始剤の感光性の波長範囲を完全に包含する光波長を吸収する能力、2)光重合反応の限定された関与又は限定された阻害、及び3)所望の濃度での生体適合性。この添加材料は、本明細書では、光の透過を制御するのに好適な生体適合性の光吸収添加材料と呼ぶ。光を吸収し、すでに形成された層への光の透過度を制限する複数の分子がスクリーニングされている。好適な分子は、前重合溶液で使用される光開始剤と同じ領域で吸収する。光透過を制御することができ、したがって生体適合性の光吸収添加材料として使用するのに好適な分子の例としては、カーボンブラック、黄色の食品着色料、タートラジン、ナノ粒子、微小粒子、金ナノ粒子、リボフラビン、フェノールレッド、β-カロチン、クルクミン、サフラン、及びターメリックが挙げられる。タンパク質はまた、それらのピーク吸収が、光開始剤のピーク吸収と重なり、入射光源と一致する限り、好適な生体適合性の光吸収添加材料として機能し得る。更に、本発明者らは、シアン蛍光タンパク質(CFP)又は緑色蛍光タンパク質(GFP)などの光開始剤と同じ領域で吸収するタンパク質でトランスフェクト若しくは形質導入された細胞を、低減された添加剤とともに又は添加剤なしで、高濃度で使用することができ、細胞内に存在する光吸収分子による側方の過硬化が減少することを認識している。更に、本発明者らの方法論は、投影された光の透過を厳密に制御することにより、水平チャネルと垂直チャネルの両方を有するヒドロゲルのプリントを可能にする。
【0023】
分岐したマルチスケールの輸送システムは、全ての多細胞生物に見られる。血管ネットワークの非常に複雑な分岐構造と同様に、呼吸樹も、肺の遠位領域に十分な空気を供給するための複雑な分岐構造で構成されている。内皮細胞が肺上皮の分岐を助け得ることが示されている。しかしながら、現在の製造技術では、天然の肺組織の解剖学的な複雑さを模倣する構造は不可能である。3Dプリントを使用することによって、天然の肺組織及び血管系の解剖学的な複雑さを模倣する構造を生成することが可能になるはずである。本発明者らが提案したアプローチは、そのような構造をプリントすることを可能にし、血管及び呼吸のネットワークを模倣するために、チャネル内腔に内皮及び上皮の細胞型を埋め込むことを可能にする。達成可能である円形断面は、チャネル内腔に沿ったコンフルエントな細胞層の発達を可能にする。提案されたアプローチの下でより高いz解像度を考慮すると、チャネルは、血管及び呼吸のネットワークをより厳密に模倣することができる。開示された方法及び材料は、複数のネットワークの幾何学的形状及びアーキテクチャの微調整を容易にする。生理学的な血管ネットワークに類似したフラクタル空間充填モデルを使用することによって、このテクノロジーは、相互貫入するチャネルを有する関連する3D構築物の設計及び製作を可能にする。
【0024】
更に、提案されたアプローチは、ポロゲン浸出又は表面コーティングなどの他のスカフォールド製作技術と組み合わせて、修飾された内部マイクロアーキテクチャ又は表面特性を有する生理学的に関連する複雑な構築物をもたらすことができる。更に、提案されたアプローチは、生体機能チップ(Organ-on-a-chip又はhuman-on-a-chip)アプリケーション用のマイクロ流体デバイスの製作に使用することができる。更に、より正確な層厚のプリントを確実にするために、特定のセンサを含むようにプリンターを改変することができる。
【0025】
様々な実施形態では、標的材料110は、ヒドロゲルマトリックスであり得る。ヒドロゲルマトリックスは、第1の管状チャネル及び第2の管状チャネルを含み得る。ヒドロゲルマトリックスは、多孔性であり得る。ヒドロゲルマトリックスはまた、その中に埋め込まれた第1の細胞型及び第2の細胞型を含み得る。特定の態様では、ヒドロゲルマトリックスは、その中に埋め込まれた第1の細胞型を含み得る。ヒドロゲルマトリックスは、1つ以上の層で生成され得、特定の実施形態では、1,000層超、約10層~約2,000層、約10層~約1,000層、約10層~約500層、約10層~約100層、約100層~約2,000層、約100層~約1,000層、約100層~500層、約100層~約300層、約500層~約1,000層、約500層~約2,000層、約1,000層~約2,000層を含み得、それらの間の値及び部分範囲を含む。特定の実施形態では、層のうちの1つ以上は、約10ミクロン~約100ミクロン、約50ミクロン~約100ミクロン、約10ミクロン~約50ミクロンの範囲内の厚さを有し得、それらの間の値及び部分範囲を含む。特定の他の態様では、層のうちの1つ以上は、約50ミクロンの厚さ、約50ミクロン未満の厚さ、約25ミクロンの厚さ、約100ミクロンの厚さを有し得、それらの間の値及び部分範囲を含む。特定の態様では、ヒドロゲルマトリックスの1つ以上の層は、第1の細胞型を含むことができ、ヒドロゲルマトリックスの他の1つ以上の層は、第2の細胞型を含むが、第1の細胞型は含まない。
【0026】
様々な実施形態では、ヒドロゲルマトリックスの1つ以上の層は、その中に埋め込まれた細胞を有し得る。特定の態様では、細胞が埋め込まれたヒドロゲルマトリックスの1つ以上の層に隣接するヒドロゲルマトリックスの1つ以上の層は、細胞外マトリックスタンパク質を含む。他の実施形態では、ヒドロゲルマトリックスは、層なしで生成され得る。例えば、ヒドロゲルマトリックスは、限定されるものではないが、針成形、コンピュータアキシャルリソグラフィー、又はゾログラフィー(xolography)を含む技術を使用して、層なしで生成され得る。
【0027】
様々な実施形態では、標的材料110は、血管テンプレートを含む犠牲テンプレートの周りに成形することによって形成されるヒドロゲルマトリックスであり得る。本発明者らはまた、3Dプリントアプローチのための足場として使用され得る穿孔テンプレート構造を生成する方法も開発した。穿孔構造は、血管柄付きの操作された組織を成形するために使用され得る3D樹状炭水化物格子の形態をとり得る。更に、一部の実施形態は、上記に説明された押出プリント技術の制限によって制約されない、操作された血管ネットワークの製作を可能にし得る物質のプロセス及び組成物を対象とする。
【0028】
概して、穿孔構造を形成するための方法は、エネルギービームで焼結又は溶融することによって粉末システムを固化して、テンプレートとして使用されることになる三次元構造を形成するステップと、平滑化溶液でテンプレートを表面平滑化するステップと、表面コーティング材料でテンプレートを表面コーティングするステップと、テンプレートのボイド空間をマトリックス材料で埋め戻すステップと、マトリックス材料を架橋するステップと、テンプレートのような形状のチャネルを有する穿孔構造を形成するためにテンプレートを除去するステップと、を含み得る。この方法は、選択的レーザ焼結炭水化物犠牲テンプレート(SLS-CaST)と呼ばれている。更に、それらは、Mutual Tree Attractionと呼ばれる樹状血管ネットワークを計算的に生成する方法を企図している。本明細書に説明される炭水化物のSLSは、炭水化物構造を製作する以前の方法よりも、解像度、構造的複雑性、再現性、及びスループットにおいて有意な改善を提案する。
【0029】
SLSを介して形成される三次元構造の外観及び品質は、レーザ出力密度、レーザ走査速度、及び/又は粉末層高さを含む、様々な因子によって影響され得る。1つ以上の実施形態によると、これらの設定の適切な制御は、三次元構造を作成するための粉末の一貫した焼結を可能にし得る。これらのような因子の不適切な値(又は値の組み合わせ)は、特徴の解像度を低下させ、意図しない特徴を追加し、意図された特徴を減算し、粉末を完全に融合させず、ボーリング欠陥を生じさせ、最終的な三次元構造を歪め、空隙を追加し、かつ/又は意図された最終的な幾何学的形状への他の望ましくない変更によって、意図された三次元構造とは異なる最終的な幾何学的形状を結果的にもたらし得る。
【0030】
レーザ出力密度及びレーザ走査速度は、相互に関連し得る。例えば、非常に遅い走査速度で移動する低出力レーザは、依然として、領域に過剰な出力を付与し得る。過剰な出力は、過剰焼結、歪み、空隙、及び/又は意図された最終的な幾何学的形状への他の望ましくない変更を引き起こし得る。過剰焼結は、意図されたパターンの外側にある粒子が、意図された最終的な幾何学的形状を形成するために融合される意図されたパターン内の粒子とともに融合されるときである。過剰焼結は、z軸(すなわち、構築軸)及び/又はx軸/y軸(すなわち、平面軸)で起こり得る。一部の実施形態では、過剰焼結は、連続する粉末層間の過剰な融合を引き起こし得、これは、構築軸に沿った最終的な幾何学的形状の解像度を低下させ得、かつ/又は構築軸及び/若しくは平面軸に意図しない特徴を追加し得る。レーザ出力密度が高過ぎるとき、及び/又はレーザ走査速度が低過ぎるとき、過剰焼結のような、最終的な幾何学的形状に対する望ましくない変更が起こり得る。加えて、低いレーザ走査速度は、粉末が焼結されている間に不規則な溶融プールを引き起こし得る。不規則な溶融プールは、歪み及び/又は空隙などの、意図された最終的な幾何学的形状に対する追加の望ましくない変更につながり得る。あるいは、レーザ出力密度が低過ぎるとき、及び/又はレーザ走査速度が速過ぎるとき、粉末は、連続的に融合された最終的な三次元構造を形成することに失敗し得る。これらの状況は、一部の実施形態では、SLSで見られることがあり得るボーリング欠陥を引き起こし得、不十分に溶融されたとき、一部の粉末は、最終的な三次元構造を形成する代わりに、ばらばらの球体に丸められ得る。
【0031】
様々な実施形態では、レーザ出力密度は、約40W/mm2~約60W/mm2の範囲内、約40W/mm2~約55W/mm2の範囲内、約45W/mm2~約55W/mm2の範囲内、約40W/mm2~約50W/mm2の範囲内、約50W/mm2~約60W/mm2の範囲内の間であり得、それらの間の値及び部分範囲を含む。様々な実施形態では、レーザ走査速度は、約1000mm/分~約2000mm/分、約1250mm/分~約2000mm/分、約1250mm/分~約1750mm/分、約1000mm/分~約1750mm/分、約1250mm/分~約2000mm/分、約1500mm/分~約2000mm/分、約1000mm/分~約1500mm/分の範囲であり得、それらの間の値及び部分範囲を含む。
【0032】
様々な実施形態では、三次元構造の形態で構造材料に焼結される粉末システムは、1つ以上の炭水化物粉末を含み得る。炭水化物粉末は、例えば、フォトレジスト、アガロース、ゼラチン、炭水化物、スクロース、グルコース、フルクトース、ラクトース、イソマルト、デキストラン、セルロース、メチルセルロース、ポリ(乳酸)、及び/又はポリ(エチレングリコール)を含むか、又はそれらから構成され得る。1つ以上の実施形態では、粉末システムは、1つの炭水化物粉末又は2つ以上の炭水化物粉末の混合物を含み得る。粉末システムは、多数の粉末顆粒を含む粉末形態であり得る。人工糖代替物として頻繁に使用される糖アルコールであるイソマルトは、一部の実施形態による、血管アーキテクチャなどの三次元構造に焼結され得るSLSと適合性があることが見出される一種の炭水化物である。一部の実施形態では、粉末システムは、イソマルト粉末及びデキストラン粉末のうちの一方又は両方を含み得る。
【0033】
固化防止剤の添加は、焼結品質を維持しながら、粉末の流れを効果的に増強し得る。したがって、一部の実施形態によると、SLS用の粉末システムは、1つ以上の炭水化物粉末と1つ以上の固化防止剤との混合物であり得る。一部の実施形態では、固化防止剤は、コーンスターチ、二酸化ケイ素、若しくはキサンタンガム、又は2つ以上の固化防止剤の混合物のうちの1つ以上を含み得る。固化防止剤を含有する粉末システムから形成された三次元構造は、最終構造に固化防止剤及び炭水化物粉末の両方を含み得る。別の言い方をすると、そのような粉末システムのSLSの間に起こるエネルギービーム照射は、固化中に炭水化物粉末及び固化防止剤の両方を最終的な三次元構造に焼結及び/又は溶融させ得る。
【0034】
一部の実施形態では、構造材料から形成された三次元構造は、複数のフィラメント、三次元分岐パターン、相互貫入する幾何学的形状、及び/又は支持されていない幾何学的形状から形成され得るフィラメントネットワークの形態をとり得る。本開示の1つ以上の実施形態による材料及び/又は方法は、三次元構造、したがって、様々な自由形態構造及び/又はパターン化された流体ネットワークを含み得る最終的な幾何学的形状を製作するために適用され得る。一部の実施形態では、そのようなパターン化された流体ネットワークは、細胞及び/又は粒子の界面播種のための基質材料として機能する。すなわち、標的材料110は、これらのパターン化された流体ネットワークとして形成され得る。
【0035】
様々な実施形態では、標的材料110であるヒドロゲルマトリックスの1つ以上の層は、感光性ポリマーから形成され得る。特定の態様では、ヒドロゲルマトリックスの1つ以上の層は、第2の感光性ポリマーから形成することができる。ヒドロゲルマトリックスの1つ以上の層は、各々、第1の部分及び第2の部分を含み得る。特定の態様では、第1の部分は、感光性ポリマーから形成され、第2の部分は、約2,000ダルトン超の分子量を有する第2の感光性ポリマーから形成される。特定の態様では、第1の部分は、その中に埋め込まれる第1の細胞型を含むことができ、第2の部分は、その中に埋め込まれた第2の細胞型を含むことができ、第1の細胞型は、第2の細胞型とは異なる。特定の態様では、第1の部分は、第1のフルオロフォアを含むことができ、第2の部分は、第2のフルオロフォアを含むことができ、第1のフルオロフォアは、第2のフルオロフォアとは異なる。
【0036】
様々な実施形態では、ヒドロゲル(例えば、標的材料110)は、第1の管状チャネル及び第2の管状チャネルを含み得る。特定の態様では、第1の管状チャネル及び第2の管状チャネルは、各々、複数の層のバルクヒドロゲルマトリックスと交差する水平セグメントを含むことができる。第2の管状チャネルは、第1のチャネルを相互貫入することができ、相互貫入は、2つのチャネル間の空間的関係として定義され、一方のチャネルは、他方のチャネルの2つの別個の部分間の平面を、少なくとも1回交差する。管状チャネルはまた、分岐することもできる。例えば、トーラスノットモデルで観察されるように、管状チャネルは分岐してもよく、管状チャネルは、ヒドロゲル内の別の点で再収束する。しかしながら、分岐構造はまた、第1の管状チャネル及び/又は第2の管状チャネルから延出し、ヒドロゲル内で終結するチャネルを含み得る。例えば、樹状構造は、現在のアプローチを使用して設計及び生成することができる。特定の実施形態では、管状チャネルは、300ミクロン~500ミクロン、500ミクロン以下、400ミクロン以下、300ミクロン以下の直径を有し、それらの間の値及び部分範囲を含む。管状チャネルも灌流可能であり得る。更に、管状チャネルはまた、その中の圧力の増加に応答して拡張可能であり得る。管状チャネルは、上皮細胞及び内皮細胞を含む細胞で裏打ちされ得る。特定の態様では、第1の管状チャネルは、内皮細胞で裏打ちされている。特定の態様では、第2の管状チャネルは、上皮細胞で裏打ちされている。
【0037】
様々な実施形態では、第1の管状チャネルはまた、ヒドロゲルマトリックスの表面上に第1の管状入口及び第1の管状出口を含むことができる。第2の管状チャネルはまた、ヒドロゲルマトリックスの表面上に第2の管状入口及び第2の管状出口を含むことができる。第1の管状チャネルは、弁又は他の正の特徴を含むことができる。管状チャネルはまた、そこからヒドロゲルマトリックスに延びるスパイクを含み得る。管状チャネルは、任意の適切な流体又は気体で満たすことができる。かかる流体又は気体は、例として、限定されないが、体液及び酸素を含み得る。特定の態様では、第1の管状チャネルは、流体で満たすことができる。特定の他の態様では、第1の管状チャネルは、培養培地、赤血球、血液、尿、胆汁、及び/又は気体(窒素及び/又は酸素など)で満たすことができる。特定の態様では、第2の管状チャネルは、培養培地、赤血球、血液、尿、胆汁、及び/又は気体(窒素及び/又は酸素など)で満たすことができる。管状チャネルはまた、1つ以上の異なる流体及び/又は気体で満たすことができる。
【0038】
様々な実施形態では、標的材料110のヒドロゲルは、3つ以上の管状チャネルを含み得る。例えば、標的材料110は、第3の管状チャネル及び第4の管状チャネルを含み得る。管状チャネルは、他の複数の管状チャネルを相互貫入することができる。例えば、第3の管状チャネルは第4の管状チャネルを相互貫入することができる。同様に、第2の管状チャネルは、第1の管状チャネル及び第3の管状チャネルを相互貫入することができる。複数の管状チャネルを含む管状チャネルネットワークはまた、少なくとも1つの管状チャネルネットワーク又は少なくとも1つの他の管状チャネルネットワークを相互貫入することができる。例えば、第3の管状チャネルは、第2の管状チャネルによっても相互貫入される第1の管状チャネルを相互貫入し得る。別の例として、第3の管状チャネル及び第4の管状チャネルは、第1の管状チャネルを、又は第1の管状チャネル及び第2の管状チャネルを含む相互貫入ネットワークを、相互貫入している及び相互貫入することができる。このようにして、管状チャネルと管状チャネルネットワークとの間の複雑な相互作用を可能にする複雑なモデルを構築することができる。複数の管状チャネルの前述の例は、例示的な目的のみであり、本開示を限定することを意図するものではない。
【0039】
本デバイスの様々な特徴に関するポリマー(標的材料110)のリストは、任意の所与のポリマーへの潜在的な修飾が、分解性部分又は非分解性部分にとって有用である可能性があるため、重複する場合があることに留意されたい。分解性部分は、多くの目的に役立ち、血管新生促進化合物、酸素放出化合物、免疫調節化合物、又は他の生物学的に活性な化合物、並びに細胞(内皮細胞を含む)を含むことを含む。分解性物質は、これらに限定されないが、それが移植される局所部位に影響を及ぼし(血管形成、免疫調節、及び他の化合物の制御放出を含む)、かつ/又はこれら及び他の関連手段を通してデバイスの非分解性部分に有用な利点を付与することができる。
【0040】
様々な実施形態では、標的材料110は、多層ヒドロゲルマトリックス構築物を製造するためのプロセスを使用して生成され得る。最初に、多層ヒドロゲルマトリックス構築物又は標的材料110の3Dモデルは、設計ソフトウェアを使用して作製され、多層ヒドロゲルマトリックス構築物の3Dモデルは、多層ヒドロゲルマトリックス構築物において第1の細長いボイドを生成して第1の管状チャネルを提供する第1の計算アルゴリズムと、多層ヒドロゲルマトリックス構築物において第2の細長いボイドを生成して第2の管状チャネルを提供する第2の計算アルゴリズムとを含み、第2の計算アルゴリズムは、第1の管状チャネルを相互貫入する第2の管状チャネルをもたらす。次いで、3Dモデルは、3Dプリントソフトウェアでの使用に好適な形式に変換され、フォーマットされた3Dモデルが生成される。次いで、フォーマットされた3Dモデルが、3Dプリントソフトウェアにインポートされ、3Dプリントソフトウェアは、3Dモデルを複数の2次元(2D)xy画像にスライスするようにプログラムされている。前重合溶液は、3Dプリンターのビルドプラットフォームに付随するバットに供給され、バットは透明であり、前重合溶液は、約2,000ダルトン超の分子量及びポリマーの1分子当たり少なくとも2つのビニル基を有する感光性ポリマー、光の透過を制御するための光吸収添加材料、及び光開始剤を含む。バットはまた、疎水性コーティングなどのヒドロゲルが接着しないコーティングを含み得る。例えば、コーティングはポリジメチルシロキサン(PDMS)であり得る。これにより、ヒドロゲルを、付着することなくバットから分離することができる。3Dプリンターの可動Z軸ステージは、バットから離して配置され、Z軸ステージは、ゲル化材料がそれに接着するのに十分な表面を含み、表面とバットの内側の底面との間の距離は、組織構築物の所望の層厚に相当する。次いで、パターンが、バットの内側の底面に投影される。例えば、光源は、パターンを生成するために、デジタルライトプロセッシング(DLP)システムなどの光学構成を介して投影され得る。次いで、多層ヒドロゲルマトリックス構築物の層が重合される。前重合溶液を供給するステップ、可動Z軸ステージを配置するステップ、光源を投射するステップ、及び層を重合するステップは、1回以上繰り返すことができ、可動Z軸ステージは、移動距離が後続の各層の所望の厚さに相当し、同じ又は異なるパターンが後続の各層に対して表示される。特定の態様では、少なくとも前重合溶液をバットに供給するステップ、可動Z軸ステージを配置するステップ、光学構成を通して光源を投射するステップ、及び多層組織構築物の層を重合するステップは、低温条件下で行われる。低温条件には、約4℃の温度が含まれ得る。光学構成には、コリメーター、コンデンサー、フィルター、及びDMDアレイが含まれ得る。例えば、光学構成は、デジタル光処理システムの一部であり得る。
【0041】
様々な実施形態では、供給、配置、投射、及び重合ステップは、第2の層を生成するために少なくとも1回行われ、第2の層に使用される前重合溶液は、第1の層を製作するために使用される感光性ポリマーとは異なる第2の感光性ポリマーを含む。特定の態様では、第2の感光性ポリマーは、感光性ポリマーとは異なる分子量を有し得る。様々な実施形態では、当該ステップは、第1の管状チャネル及び第2の管状チャネルを有する多層ヒドロゲルマトリックス構築物を生成するのに十分な回数行うことができる。
【0042】
特定の実施形態では、第1の計算アルゴリズムは、結び目理論から導出され得る。特定の態様では、第1の計算アルゴリズム及び/又は第2の計算アルゴリズムは、ヒルベルト曲線であり得る。第1の計算アルゴリズム及び第2の計算アルゴリズムは、マレーの法則に準拠し得る。特定の態様では、第1の計算アルゴリズムは、第1の管状チャネルの分岐をもたらし得る。第1の計算アルゴリズム及び第2の計算アルゴリズムは、数学的空間充填モデルを含むことができる。数学的空間充填モデルには、配管工の悪夢、ペアノ曲線、ヒルベルト曲線、ピタゴラスの木、及びブラウンの木のモデルが含まれ得る。
【0043】
様々な実施形態では、組み立てられた3Dプリンターは、自動化されたコンピューター支援3Dプロトタイピングデバイスであり、積層造形(additive manufacturing)を利用して、感光性生体材料を1層ずつ選択的にパターン化し、3D組織工学構築物を生成する。プリンターは、感光性ポリマー及び光開始剤を含有する前重合溶液を含むバットを収容するビルドプラットフォーム上に下げられる可動Z軸ステージを含む。Z軸ステージに取り付けられているものは、ゲル化材料が接着する表面である。加えて、プリンターのベースには45°のミラーがあり、透明なバットの内側の底面に、水平方向の投影を反射する。組み立てられたプリンターには、マイクロエレクトロニクスも搭載され、プリントプロセスが自動化される。
【0044】
構造(例えば、標的材料110)をプリントするために、3Dモデルがコンピューター支援設計(CAD)ソフトウェアで作製され、光造形(.stl)形式にエクスポートされる。.stlファイルは、プリントパラメータが入力されるソフトウェアにインポートされる。次いで、ソフトウェアは、3Dモデルを2次元(2D)xy画像へと計算的にスライシングする。これは動的フォトマスクとして機能し、入力されたプリントパラメータを使用して、制御された自動プリント用のコマンドを生成する。透明なバットが前重合混合物で満たされると、バットの表面と内側の底面との間の距離が所望の層厚になるように、Z軸ステージがバットに下げられる。次いで、光源は、コリメーター、コンデンサー、対象の特定の波長を選択するためのダイクロイック又はバンドパスなどのフィルター、及び市販のプロジェクター又はピコプロジェクターなどのデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)アレイの組み合わせを含む光学セットアップを介して光を投影し、パターン(3Dモデルの最初の層)で、バットの内側の底面に、特定の3Dパターン化された層が結果的に得られる。材料がゲル化した後、Z軸ステージは自動的に次の層の高さまで移動し、プロセスは、最終的な3D構築物が得られるまで、連続した自動投影/Z軸ステージ移動が自動的に継続する。
【0045】
更に、プロジェクターデバイスからの出力は均一でない場合がある。そのような場合、出力は、投影パターンが意図しない不均一な特性を有しないように、調和又はフラットフィールドされ得る。この目的のために、ブランク露光が、発光画像を取得するためにリン光物質のフィルム上に投射され得る。この画像には、MATLABなどの数値計算プログラムで基本的に正規化され、反転された強度値の2Dマトリックスが含まれる。反転画像は本質的にフィルターとして機能し、より均一な出力をもたらし、投影された層全体にわたって材料のゲル化が均一になるようにする。
【0046】
様々な実施形態では、このアセンブリの改変は、必要に応じて、プリントプロセス中により多くの前重合溶液を自動的に分配するために、シリンジセットアップの追加を伴い得る。異なる材料でより不均一な構築物を実現するために、アセンブリの改変は、ビルドプラットフォーム、バット、及び/又はZ軸ステージの改変が含まれ、この手法で、複数の材料を自動的にプリントすることができる。例えば、ビルドプラットフォームは、複数のバットを収容するように設計され得、バットには、複数の材料で3Dヒドロゲルをプリントするための異なる材料が含まれる。
【0047】
様々な実施形態では、標的材料110は、相互貫入気道ネットワークを有するマルチスケールの分岐血管ネットワークであり得、これは、その基本構成でバイオプリンターを使用することによって製作され得る。このモデルは、CADソフトウェアで作製され、「.stl」形式にエクスポートされる。エクスポートされたファイルがソフトウェアにアップロードされ、プリントパラメータが入力される。前重合溶液が調製されると、ビルドプラットフォームに収容されるバットに移される。次いで、Z軸ステージを下げて、所望の層厚を得る。3Dモデルの一連の自動投影及びZステージ変換により、最終的な3Dプリントされたヒドロゲルが得られる。次いで、3Dバイオプリントヒドロゲルを、Zプラットフォームから取り外すことができる。3Dプリントモデルの血管チャネルは、内皮細胞の灌流によって内皮化することができ、気道チャネルは、上皮細胞の灌流によって上皮化することができる。血管ネットワークは、血液供給として機能し、ヒドロゲルの大部分の細胞に酸素及び栄養素を送達し、気道ネットワークは、血管ネットワークに酸素を供給する手段を提供する。
【0048】
図1に戻ると、様々な実施形態では、クロスリンカー又は架橋剤130は、標的材料110の開口チャネル120に導入され、開口チャネル120を越えて標的材料110に拡散され得、その後、過剰な架橋剤は、標的材料110に拡散した、拡散架橋剤140を残して洗い流される。架橋剤130のための例示的な最適化されたが非限定的な製剤は、約20℃~約40℃又は約35℃~約37℃の温度で、約5ユニット/mL~約20ユニット/mLの濃度までリン酸緩衝生理食塩水(例えば、約7.4~約8のpH範囲)に溶解された、ウシトロンビンから構成される。
【0049】
一部の実施形態では、重合をチャネル120の界面に限定するために、担体組成物150の前に、架橋剤130が標的材料110のチャネル130内に導入され得(例えば、そして、開口チャネル120を越えて標的材料110内に拡散され得)、これにより、拡散架橋チャネル140を結果的にもたらす。架橋剤130の導入後(例えば、並びに、標的材料110内へのその拡散、これは、拡散架橋剤140と過剰な架橋剤の洗い流しとを結果的にもたらす)、担体組成物150は、拡散架橋剤140に取り囲まれた開口チャネル120内に流入され得る。様々な実施形態では、担体組成物150は、細胞(例えば、EC)、ビーズ、粒子、及び/又はそれらなどを含む、プレヒドロゲル溶液、並びに重合性材料(例えば、及び一部の事例では、架橋剤なしで)であるか、又はそれらを含み得る。
【0050】
一部の実施形態では、架橋剤130は、担体組成物150の一部として標的材料110の開口チャネル120内に導入され得、重合性材料は、開口チャネル内に別々に導入され得る。すなわち、重合性材料が標的材料110(例えば、又はその開口チャネル120)内に導入され得、次いで、架橋剤130、並びに細胞、ビーズ、及び/又は粒子を含む担体組成物が、標的材料110の開口チャネル120内に導入され得るか、又はその逆も可能である。
【0051】
重合性材料、及び当該重合性材料を架橋する架橋剤130の非限定的な例示的な組み合わせとしては、トロンビン又はアンクロッドによって酵素的に架橋されたフィブリノーゲン、FpA及びFpBの両方を切断するトロンビンとは対照的に、FpAのみを切断し、FpBを切断しないヘビ毒由来の酵素が挙げられる。当該重合性材料、ならびに、(i)当該架橋剤、及び(ii)細胞、ビーズ、粒子などを含む担体組成物は、様々な濃度、pH、及び/又は温度でインキュベートされて、重合性材料の架橋を引き起こし得る。別の例として、当該架橋剤、ならびに、(i)当該重合性材料、及び(ii)細胞、ビーズ、粒子などを含む担体組成物は、様々な濃度、pH、及び/又は温度でインキュベートされて、重合性材料の架橋を引き起こし得る。例えば、トロンビン又はアンクロッドは、約0.1ユニット/mL~約25ユニット/mL、約1ユニット/mL~約25ユニット/mL、又は約5ユニット/mL~約20ユニット/mLの濃度で使用され得る。フィブリノーゲンは、約5mg/mL~約25mg/mL、約10mg/mL~約20mg/mL、又は約10mg/mL~約15mg/mLの濃度で使用され得る。pHは、約6~8の範囲、特に約7~7.4の範囲に設定され得る。水溶液は、限定されるものではないが、細胞培養培地又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES)、1,4-ビス(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン(BHEP)、又はトリス(2-アミノ-2-ヒドロキシメチルプロパン-1,3-ジオール)(Tris)、及び重炭酸ナトリウムを含み、PBSを特定の緩衝液選択肢として含み得る。これらの緩衝液のいずれかが、約pH7.4に調整され得、インキュベーション温度、すなわち、架橋温度は、約20℃~約40℃、約30℃~約39℃、約35℃~約37℃の範囲に設定され得、それらの間の値及び部分範囲を含む。
【0052】
重合性材料と、当該重合性材料を架橋する架橋剤130との別の例示的な組み合わせとしては、トランスグルタミナーゼによって酵素的に架橋されたゼラチン又はゼラチンメタクリレートが挙げられる。当該重合性材料、ならびに、(i)トランスグルタミナーゼ、及び(ii)細胞、ビーズ、粒子などを含む担体組成物は、様々な濃度、pH、及び/又は温度でインキュベートされて、重合性材料の架橋を引き起こし得る。別の例として、トランスグルタミナーゼ、ならびに、(i)当該重合性材料、及び(ii)細胞、ビーズ、粒子などを含む担体組成物は、様々な濃度、pH、及び/又は温度でインキュベートされて、重合性材料の架橋を引き起こし得る。例えば、ゼラチン又はゼラチンメタクリレートは、約1重量%~約20重量%、約1重量%~約10重量%、約1重量%~約5重量%の濃度で使用され得、それらの間の値及び部分範囲を含む。トランスグルタミナーゼは、約1ユニット/g~約50ユニット/g、約5ユニット/g~約40ユニット/g、約10ユニット/g~約30ユニット/g、約15ユニット/g~約25ユニット/gの濃度で使用され得、それらの間の値及び部分範囲を含む。水溶液としては、上記にリスト化された細胞培養培地又は緩衝液が挙げられる。インキュベーション温度、すなわち、架橋温度は、約25℃~約70℃、約30℃~約50℃、約25℃~約35℃、約35℃~約37℃に設定され得、それらの間の値及び部分範囲を含む。
【0053】
重合性材料と、当該重合性材料を架橋する架橋剤130との別の例示的な組み合わせは、限定されるものではないが、過酸化水素及び西洋ワサビペルオキシダーゼの溶液を含む、ペルオキシダーゼによって酵素的に架橋されたシルクフィブロインを含む。当該重合性材料ならびに、(i)当該架橋剤、及び(ii)細胞、ビーズ、粒子などを含む担体組成物は、様々な濃度、pH、及び/又は温度でインキュベートされて、重合性材料の架橋を引き起こし得る。別の例として、当該架橋剤ならびに、(i)当該重合性材料、及び(ii)細胞、ビーズ、粒子などを含む担体組成物は、様々な濃度、pH、及び/又は温度でインキュベートされて、重合性材料の架橋を引き起こし得る。例えば、過酸化水素は、約0.5mM~約20mM、約1mM~約10mM、約1mM~約5mMなどで使用され得、西洋ワサビペルオキシダーゼは、約5~約50ユニット/mL、約10ユニット/mL~約25ユニット/mLなどで、pH7.4でリン酸緩衝生理食塩水中で使用され得る。シルクフィブロインの濃度は、約2重量%~約20重量%、約5重量%~約10重量%などであり得る。インキュベーション温度、すなわち、架橋温度は、約20℃~約40℃、約25℃~約70℃、約30℃~約50℃、約25℃~約35℃、約35℃~約37℃で設定され得、それらの間の値及び部分範囲を含む。
【0054】
重合性材料と、当該重合性材料を架橋する架橋剤130との別の例示的な組み合わせは、限定されるものではないがルテニウムを含む、光開始剤を用いて光によって架橋されたシルクフィブロインを含む。様々な実施形態では、導波路は、光活性化への架橋剤の曝露を制限するために使用され得る。シルクフィブロインならびに、(i)光開始剤、及び(ii)細胞、ビーズ、粒子などを含む担体組成物は、様々な濃度、pH、及び/又は温度でインキュベートされて、シルクフィブロインの架橋を引き起こし得る。別の例として、光開始剤ならびに、(i)シルクフィブロイン、及び(ii)細胞、ビーズ、粒子などを含む担体組成物は、様々な濃度、pH、及び/又は温度でインキュベートされて、シルクフィブロインの架橋を引き起こし得る。例えば、約0.1mM~約10mM若しくは約1mM~約5mMなどのルテニウム、又は約0.05mM~約20mM若しくは約0.5mM~約2.5mMなどのリボフラビンが、約1mM~約100mM又は約10mM~約25mMなどの過硫酸ナトリウムと組み合わせて使用され得る。インキュベーションのための水溶液としては、約pH7.5の緩衝液PBS又はHEPESが挙げられる。シルクフィブロインの濃度は、約2重量%~約20重量%、約5重量%~約10重量%などであり得る。インキュベーション温度、すなわち、架橋温度は、約20℃~約40℃、約25℃~約70℃、約30℃~約50℃、約25℃~約35℃、約35℃~約37℃に設定され得、それらの間の値及び部分範囲を含む。
【0055】
重合性材料と、当該重合性材料を架橋する架橋剤130との別の例示的な組み合わせは、Ca2+イオン又はBa2+イオンによってイオン的に架橋されたアルギネートを含む。当該重合性材料ならびに、(i)当該架橋剤、及び(ii)細胞、ビーズ、粒子などを含む担体組成物は、様々な濃度、pH、及び/又は温度でインキュベートされて、重合性材料の架橋を引き起こし得る。別の例として、当該架橋剤ならびに、(i)当該重合性材料、及び(ii)細胞、ビーズ、粒子などを含む担体組成物は、様々な濃度、pH、及び/又は温度でインキュベートされて、重合性材料の架橋を引き起こし得る。例えば、インキュベーション条件は、上記にリスト化された水溶液又は緩衝液中で、約0.5重量%~約2重量%、約1重量%~約1.5重量%などのアルギネート濃度を含み得る。塩化カルシウム又は塩化バリウムの濃度は、上記にリスト化された水溶液又は緩衝液中で、約50mM~約500mM、約100mM~約250mM、約100mM~150mMなどであり得る。インキュベーション温度、すなわち、架橋温度は、約20℃~約40℃、約25℃~約70℃、約30℃~約50℃、約25℃~約35℃、約35℃~約37℃に設定され得、それらの間の値及び部分範囲を含む。
【0056】
重合性材料と、当該重合性材料を架橋する架橋剤130との別の例示的な組み合わせは、過硫酸アンモニウム(APS)及びテトラメチルエチレンジアミン(TEMED)によって架橋されたアクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、又はメタクリルアミド官能化ポリマーを含む。当該重合性材料ならびに、(i)当該架橋剤、及び(ii)細胞、ビーズ、粒子などを含む担体組成物は、様々な濃度、pH、及び/又は温度でインキュベートされて、重合性材料の架橋を引き起こし得る。別の例として、当該架橋剤ならびに、(i)当該重合性材料、及び(ii)細胞、ビーズ、粒子などを含む担体組成物は、様々な濃度、pH、及び/又は温度でインキュベートされて、重合性材料の架橋を引き起こし得る。例えば、ポリマーとしては、限定されるものではないが、約1重量%~約20重量%の濃度のゼラチンメタクリロイル(GelMA)、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)、メタクリル化ヒアルロン酸、又はコラーゲンメタクリレートが挙げられる。APS濃度は、約0.1重量%~約1重量%、約0.2重量%~約0.5重量%などであり得る。TEMED濃度は、約0.05重量%~約1重量%、約0.1重量%~約0.5重量%などであり得る。インキュベーション温度、すなわち、架橋温度は、約20℃~約40℃、約25℃~約70℃、約30℃~約50℃、約25℃~約35℃、約35℃~約37℃であり得、それらの間の値及び部分範囲を含む。
【0057】
重合性材料と、当該重合性材料を架橋する架橋剤130との別の例示的な組み合わせは、PEG-ジチオール、PEG8-ノルボルネン、チオール化ゼラチン、チオール化キトサン、チオール化シルク、チオール化脱細胞化ECM、又はそれらの組み合わせを含む、クリックケミストリーペアを含む。当該重合性材料ならびに、(i)当該架橋剤、及び(ii)細胞、ビーズ、粒子などを含む担体組成物は、様々な濃度、pH、及び/又は温度でインキュベートされて、重合性材料の架橋を引き起こし得る。別の例として、当該架橋剤ならびに、(i)当該重合性材料、及び(ii)細胞、ビーズ、粒子などを含む担体組成物は、様々な濃度、pH、及び/又は温度でインキュベートされて、重合性材料の架橋を引き起こし得る。例えば、ene及びチオール成分を含む2成分クリックケミストリー反応が使用され得、ene成分としては、限定されるものではないが、約1重量%~約20重量%、約5重量%~約10重量%の濃度の4アーム又は8アームのPEGノルボルネン若しくはノルボルネン官能化ゼラチン、又はペプチド配列などが挙げられ、チオール成分としては、限定されるものではないが、約1重量%~約20重量%、約5重量%~約10重量%の濃度のPEG-ジチオール、4アームのPEG-チオール、チオール化ゼラチン、ジチオトレイトール、又はジシステイン末端ペプチド配列などが挙げられる。インキュベーションのために、限定されるものではないが、約7~約13、約7.4~約8などのpHを有するPBS又はHEPESなどの緩衝液を含む水溶液が使用され得る。別の例として、クリックケミストリーペア架橋は、限定されるものではないが、4アーム又は8アームのPEG-アダマンタン、及び4アーム又は8アームのPEG-シクロデキストリンを含む、超分子ゲスト-ホスト型架橋を含む。様々な実施形態では、成分は、上記にリスト化された水溶液又は緩衝液中で、約1重量%~約20重量%、約5重量%~約10重量%などの濃度で溶解され得る。インキュベーション温度、すなわち、架橋温度は、約20℃~約40℃、約25℃~約70℃、約30℃~約50℃、約25℃~約35℃、約35℃~約37℃であり得、それらの間の値及び部分範囲を含む。
【0058】
重合性材料と、当該重合性材料を架橋する架橋剤130との別の例示的な組み合わせは、システイン末端ペプチド配列によって架橋されたアクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、又はメタクリルアミド官能化ポリマーを含む。当該重合性材料ならびに、(i)当該架橋剤、及び(ii)細胞、ビーズ、粒子などを含む担体組成物は、様々な濃度、pH、及び/又は温度でインキュベートされて、重合性材料の架橋を引き起こし得る。別の例として、当該架橋剤ならびに、(i)当該重合性材料、及び(ii)細胞、ビーズ、粒子などを含む担体組成物は、様々な濃度、pH、及び/又は温度でインキュベートされて、重合性材料の架橋を引き起こし得る。例えば、ポリマーとしては、限定されるものではないが、約1重量%~約20重量%、約5重量%~約10重量%などの濃度のポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリルアミド、ゼラチンメタクリロイルが挙げられる。システイン末端ペプチド配列としては、約1重量%~約10重量%の濃度のCGPQGIWGQGCR(配列番号1)、CGPQGIAGQGCR(配列番号2)、又はCGPQGPAGQGCR(配列番号3)が挙げられる。インキュベーションは、約7~約13、約7.4~約8などのpHで起こり得る。インキュベーション温度、すなわち、架橋温度は、約20℃~約40℃、約25℃~約70℃、約30℃~約50℃、約25℃~約35℃、約35℃~約37℃であり得、それらの間の値及び部分範囲を含む。
【0059】
光によって架橋される光重合性材料の例としては、アクリレート、メタクリレート、又はアクリルアミド官能化ポリマーが挙げられる。標的材料の開口チャネル内に導入される、そのような重合性材料(例えば、プレヒドロゲル溶液の一部として、又は別個に)は、様々な濃度、pH、及び/又は温度でインキュベートされて、光重合性材料の架橋を引き起こし得る。例えば、限定されるものではないが、ポリエチレングリコールジアクリレート、ゼラチンメタクリロイル、コラーゲンメタクリレート、シルクメタクリレート、メタクリレート化ヒアルロン酸などを含むポリマーは、約1重量%~約20重量%、5重量%~約10重量%などの濃度を有し得る。光開始剤としては、限定されるものではないが、約0.01重量%~約1重量%、約0.05重量%~約0.1重量%などの濃度のIrgacure2959、エオシンY、又はリチウムアシルホスフィネートが挙げられ得る。インキュベーションに使用される水溶液としては、限定されるものではないが、約7.4のpHを有するPBS又はHEPESなどの細胞培養培地又は緩衝液が挙げられる。インキュベーション温度、すなわち、架橋温度は、約20℃~約40℃、約25℃~約70℃、約30℃~約50℃、約25℃~約35℃、約35℃~約37℃であり得、それらの間の値及び部分範囲を含む。一部の光開始剤は、約0.01重量%~約2重量%、又は約0.05重量%~約0.25重量%の濃度のトリエタノールアミン(TEA)などの追加の開始剤、及び約10nM~約100nM、約25nM~約50nMなどの濃度の1-ビニル-2-ピロリジノン(NVP)などの別のクロスリンカーを必要とし得る。
【0060】
重合性材料が光に起因して架橋される実施形態では、入射光は、液相導波路としてプレヒドロゲルを使用して、血管ネットワークに沿ってガイドされ得る。そのような場合、光が血管チャネルを通して完全に内部反射し、光毒性を制限しながらゲルの深部に透過し得るように、一次ヒドロゲルよりも大きい屈折率を有するプレヒドロゲル溶液が使用され得る。
【0061】
様々な実施形態では、重合性材料は、pH重合性、温度重合性などであり得、そのような場合、架橋剤130は、重合性材料を重合するために使用されない場合がある。例えば、
図1を参照すると、開口チャネル120内に流入した担体組成物150は、架橋剤なしで、細胞、ビーズ、粒子、及び/又は同様のものを含むプレヒドロゲル溶液、ならびに重合性材料、であるか、又はそれらを含み得る。一部の事例では、重合性材料と、細胞、ビーズ、粒子、及び/又は同様のものを含むプレヒドロゲル溶液とは、架橋剤なしで、開口チャネル120内に別個に流入し得る。そのような場合、開口チャネル120内のpH重合性材料、温度重合性材料などは、それぞれ、pH(例えば、pH勾配)、及び/又は温度(例えば、温度勾配)などに起因して架橋され得る。
【0062】
pH重合性材料の例としては、pH勾配によって誘発されるコラーゲン自己組織化、ペプチドベースのヒドロゲル、及びペプチド両親媒性物質が挙げられる。標的材料の開口チャネル内に導入される、そのような重合性材料(例えば、プレヒドロゲル溶液の一部として、又は別個に)は、様々な濃度、pH、及び/又は温度でインキュベートされて、pH重合性材料の架橋を引き起こし得る。例えば、コラーゲンが、上記にリスト化された水性緩衝液中に、約1mg/mL~約10mg/mL、約1mg/mL~約2mg/mLなどの濃度を有し得、酸性又は中性のpH(例えば、約3~約7又は約5~約6)で維持され得る。様々な実施形態では、pH勾配は、アルカリ性溶液を架橋溶液として使用することによって確立され得、例えば、水酸化ナトリウムが添加されている上記にリスト化された緩衝溶液のうちのいずれかが、約7~約10、約8~約9などの範囲の最終的なpHを得るために使用され得る。インキュベーション温度、すなわち、架橋温度は、約20℃~約40℃、約25℃~約70℃、約30℃~約50℃、約25℃~約35℃、約35℃~約37℃であり得、それらの間の値及び部分範囲を含む。
【0063】
温度重合性材料の例としては、その温度が低下するにつれて材料が重合するアガロースが挙げられる。標的材料の開口チャネル内に導入される、そのような重合性材料(例えば、プレヒドロゲル溶液の一部として、又は別個に)は、様々な濃度、pH、及び/又は温度でインキュベートされて、温度重合性材料の架橋を引き起こし得る。例えば、アガロースは、上記にリスト化された水性緩衝液中で、約1重量%~約4重量%、約1重量%~約2重量%などの濃度を有し得る。そして、重合を引き起こす温度勾配は、アガロースに関して、標的材料を約4℃~約25℃、約4℃~約10℃などの範囲で予冷し、次いで、約25℃~約-50℃、約35℃~約37℃などの温度でアガロース溶液を注入することによって達成され得る。
【0064】
温度重合性材料の別の例としては、その温度が上昇するにつれて材料が重合するMatrigel(登録商標)が挙げられる。標的材料の開口チャネル内に導入される、そのような重合性材料(例えば、プレヒドロゲル溶液の一部として、又は別個に)は、様々な濃度、pH、及び/又は温度でインキュベートされて、温度重合性材料の架橋を引き起こし得る。例えば、Matrigel(登録商標)は、氷上で維持される水性緩衝液中で、約1重量%~約20重量%、約5重量%~約7重量%などの濃度を有し得る。そして、重合を引き起こす温度勾配は、Matrigel(登録商標)に関して、標的材料を約25℃~約50℃、約35℃~約37℃などの範囲で予熱し、次いで、約0℃~約25℃、約0℃~約4℃などの温度でMatrigel(登録商標)を注入することによって達成され得る。
【0065】
様々な実施形態では、架橋プロセス中に細胞が沈降することを防止するために、増粘剤が、細胞含有溶液の粘度を増加させるために添加される。増粘剤としては、限定されるものではないが、約0.01重量%~約2重量%、約0.05重量%~約0.1重量%などの濃度のキサンタンガム、グアーガム、又はゼランガムが挙げられる。他の増粘剤としては、約10重量%~約50重量%、約10重量%~約20重量%などの濃度のゼラチン、ポリビニルアルコール、又はポリエチレングリコール(≧10,000Da)が挙げられ得る。
【0066】
上記に論じられたように、担体組成物150は、細胞、ビーズ、粒子などを含む。様々な実施形態では、担体組成物150はまた、限定されるものではないが、センサ、標識、活性物質(例えば、タンパク質、核など)などの他の生物学的及び/又は薬学的材料を含み得る。
【0067】
様々な実施形態では、担体組成物150中の細胞は、ほぼ任意の性質であり得、化学組成を有し、約100nm~約100μmの範囲のサイズを有する。例としては、限定されるものではないが、細菌細胞、真菌細胞、植物細胞、動物細胞、及び/又は同様のものが挙げられる。例えば、動物細胞は、ヒト又は非ヒト細胞(例えば、イヌ、ネコ、ウサギ、ウマ、ウシ、マウス、ラット、非ヒト霊長類など)などの、哺乳動物細胞であり得る。特定のタイプの細胞としては、筋細胞(例えば、平滑筋細胞)、内皮細胞(例えば、血管内皮細胞)、上皮細胞、中胚葉細胞、免疫細胞、肝細胞、膵細胞、肺細胞、神経細胞、皮膚細胞、網膜細胞、角膜細胞、線維芽細胞、幹細胞、又はリンパ管内皮細胞が挙げられる。
【0068】
様々な実施形態では、細胞は、腫瘍細胞であり得る。例えば、本明細書に開示される技術は、がんの治療のための薬物の適用に関する研究のために、独自の支持血管系を有するものを含む、人工腫瘍を作製又は製造するために使用され得る。様々な実施形態では、細胞は、ドナーから直接、ドナー由来の細胞の細胞培養から、又は確立された細胞培養株から取得され得る。特定の実施形態では、細胞は、ドナーから直接取得され、洗浄され、培養なしで使用される。培養された細胞は、組織培養の分野の当業者に既知の技術を使用して、培養され得る。
【0069】
様々な実施形態では、細胞の生存率は、組織学的検査及び蛍光顕微鏡などの標準的な手法を使用して評価することができる。移植された細胞の機能は、これらの技術と機能アッセイの組み合わせを使用して決定することができる。例えば、肝細胞の場合、カニューレをレシピエントの総胆管に配置することによって、インビボの肝機能試験を行うことができる。その後、胆汁を段階的に採取することができる。胆汁色素は、誘導体化されていないテトラピロールを検出する高圧液体クロマトグラフィーによって、又はP-グルクロニダーゼの有無のいずれかで、ジアゾ化アゾジピロールのアントラニル酸エチルとの反応によってアゾジピロールに変換した後で、薄層クロマトグラフィーによって分析することができる。二抱合型及び一抱合型のビリルビンは、抱合胆汁色素のアルカリ性メタノリシス後、薄層クロマトグラフィーによっても測定することができる。一般に、機能している移植肝細胞の数が増えると、抱合型ビリルビンのレベルが上がる。簡単な肝機能検査(アルブミン産生など)は、血液試料でも行うことができる。類似の臓器機能試験は、移植後の細胞機能の程度を決定するために必要とされるように、当業者に既知の技術を使用して実施することができる。例えば、膵島細胞及び他のインスリン産生細胞を移植して、インスリンの適切な分泌によってグルコース調節を達成することができる。他の内分泌組織や細胞も移植することができる。
【0070】
様々な実施形態では、標的材料110をコーティングするための担体組成物150に含まれる細胞の量及び密度は、細胞、表面、及び意図された用途の選択に応じて変化し得る。一部の実施形態では、細胞は、担体内で、約0.1×106細胞/mL~約100×106細胞/mL、約10×106細胞/mL~約50×106細胞/mlなどの濃度である。一部の実施形態では、注入された材料は、細胞の組み合わせ(約1:1~約1:10、約1:1~1:5などの比における平滑筋細胞及び内皮細胞など)を含み得る。他の実施形態では、細胞は、単一の細胞型又は細胞型の組み合わせのいずれかを有する細胞凝集体として存在する。細胞は、細胞培養処理された基質上の培養物から採取されるか、又は細胞が解凍され、濯がれ、次いで、所望の細胞担体材料で再懸濁される凍結された弾から使用され得る。
【0071】
様々な実施形態では、担体組成物150中のビーズ及び粒子は、限定されるものではないが、リポソーム、ナノ粒子、磁気ビーズ、ポリスチレンビーズ、PEG又はゼラチンミクロスフェア、任意の高分子ミクロスフェア、及び/又は同様のものなどの、非細胞材料を含む。これらの材料は、標識、治療薬、生物学的製剤、化学薬品、センサなどを含む薬剤で誘導体化され得る。
【0072】
上述のように、担体組成物150はまた、限定されるものではないが、センサ、標識、活性物質(例えば、タンパク質、核など)などの、生物学的及び/又は薬学的材料を含み得る。例えば、生物学的及び/又は薬学的材料は、疾患、障害、状態、症状などを診断又は治療するために使用され得る任意の化合物、組成物、コンジュゲート、又は構築物であり得る。そのような材料又は薬剤の例としては、細胞、組織、細胞産物、組織産物、タンパク質、抗体、ワクチン、ワクチン成分、抗原、エピトープ、薬物、塩、栄養素、緩衝液、酸、塩基、及び/又は同様のものが挙げられる。生物学的材料の追加の例としては、限定されるものではないが、生物学的微小分子(例えば、ヌクレオチド、アミノ酸、補因子、ホルモンなど)又は生物学的巨大分子(例えば、核酸、ポリペプチド、タンパク質、多糖類など)などの、任意の生物学的物質が挙げられる。タンパク質の例としては、酵素、受容体、分泌タンパク質、構造タンパク質、シグナル伝達タンパク質、ホルモン、リガンドなどが挙げられる。任意のクラス、タイプ、形態、又は特定の生物学的材料が、他のクラス、タイプ、形態、又は特定の生物学的材料と一緒に使用され得る。
【0073】
様々な実施形態では、細胞、ビーズ、粒子などは、限定されるものではないが、酸素センサ、グルコースセンサ、pHセンサ、熱センサなどを含む、生体センサ分子又はシステムを含有し得る。一部の事例では、薬剤、例えば、酸素又はグルコースの存在下で蛍光タンパク質を産生するように遺伝子操作される細胞などの、細胞がセンサ自体であってもよい。様々な実施形態では、細胞、ビーズ、粒子などはまた、材料の検出/定量を可能にする標識を含有し得る。標識としては、ビオチン-アビジン、ハイブリダイゼーション核酸プローブペア、抗体-抗原ペアなどの、リガンド結合分子に対する親和性を有する、放射性標識、染料、蛍光分子、化学発光分子、リガンドタグなどが挙げられる。
【0074】
様々な実施形態では、界面層自体、又はその中に埋め込まれた細胞、ビーズ、粒子、生物学的及び/若しくは医薬材料などは、他の活性物質を含有し得る。例えば、上記に論じられたように、タンパク質又は核酸などの治療上有効な物質が含まれ得る。一部の実施形態では、細胞は、代謝産物を産生する。一部の実施形態では、細胞は、毒性物質を代謝する。一部の実施形態では、細胞は、皮膚、骨、軟骨、血管、又は筋肉などの構造組織を形成する。一部の実施形態では、細胞は、インスリンを自然に分泌する島細胞、又は自然に解毒する肝細胞などの天然の細胞である。一部の実施形態では、細胞は、固定化を促進又は阻害する因子を産生又は分泌する。一部の実施形態では、細胞は、異種のタンパク質若しくは核酸を発現するように、及び/又は内因性のタンパク質若しくは核酸を過剰発現するように遺伝子操作される。一部の実施形態では、細胞は、新しい産物又は異なる産物を産生するように遺伝子操作され、それらは、操作された遺伝子の発現産物又は操作された遺伝子のために産生された代謝物などの別の産物であり得る。
【0075】
界面層に含まれ得る治療剤、又は界面層に含まれる細胞へと操作され得る治療剤の例には、甲状腺刺激ホルモン、Apolなどの有益なリポタンパク質、プロスタサイクリン及び他の血管作動性物質、抗酸化剤及びフリーラジカルスカベンジャー、可溶性サイトカイン受容体(例えば、可溶性トランスフォーミング増殖因子(TGF)受容体)、又はサイトカイン受容体アンタゴニスト(例えば、IL1ra)、可溶性接着分子(例えば、ICAM-1)、ウイルスの可溶性受容体(例えば、HIVのCD4、CXCR4、CCR5)、サイトカイン、エラスターゼ阻害剤、骨形成タンパク質(BMP)及びBMP受容体1及び2、エンドグリン、セロトニン受容体、組織性メタロプロテアーゼ阻害物質、カリウムチャネル又はカリウムチャネルモジュレーター、抗炎症因子、血管新生因子(血管内皮増殖因子(VEGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、肝増殖因子、及び低酸素誘導因子(HIF))、神経栄養及び/又は抗血管新生活性を有するポリペプチド(毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア由来神経栄養因子(GDNF)、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3、nurturin、線維芽細胞増殖因子(FGF)、エンドスタチン、ATF、トロンボスポンジンの断片、それらのバリアント、及び/又は同様のもの)が含まれる。より具体的なポリペプチドは、酸性FGF(aFGF)、塩基性FGF(bFGF)、FGF-1及びFGF-2、並びにエンドスタチンなどのFGFである。
【0076】
様々な実施形態では、活性剤は、タンパク質又はペプチドであり得る。タンパク質活性剤の例としては、限定されるものではないが、サイトカイン及びそれらの受容体、並びにサイトカイン又はそれらの受容体を含むキメラタンパク質(例えば、腫瘍壊死因子α及びβ、それらの受容体及びそれらの誘導体が含まれる)、レニン、リポタンパク質、コルヒチン、プロラクチン、コルチコトロピン、バソプレシン、ソマトスタチン、リプレシン、パンクレオザイミン、ロイプロリド、α-1-アンチトリプシン、凝固因子(第VIIIC因子、第IX因子、組織因子、及びフォン・ウィルブランド因子など)、抗凝固因子(プロテインCなど)、心房性ナトリウム利尿因子;肺サーファクタント;組織型プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)以外のプラスミノーゲン活性化因子(例えば、ウロキナーゼ)、ボンベシン、トロンビン、造血成長因子、エンケファリナーゼ、RANTES(通常はT細胞が発現及び分泌する活性化で調節される)、ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP-1-α)、血清アルブミン(ヒト血清アルブミンなど)、ミュラー管抑制因子、リラキシンA鎖、リラキシンB鎖、プロレラキシン、マウスゴナドトロピン関連ペプチド、絨毛性ゴナドトロピン、微生物タンパク質(βラクタマーゼなど)、DNase、インヒビン、アクチビン、ホルモン又は増殖因子の受容体、インテグリン、プロテインA又はD、リウマトイド因子、血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮増殖因子(EGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)(TGF-α及びTGF-βなど、TGF-βI、TGF-2、TGF-3、TGF-4、又はTGF-5を含む)、インスリン様増殖因子-I及び-II(IGF-I及びIGF-II)、des(l-3)-IGF-I(脳IGF-I)、インスリン様増殖因子結合タンパク質、CDタンパク質(CD-3、CD-4、CD-8、及びCD-19など)、エリスロポエチン、骨誘導因子、免疫毒素、インターフェロン(インターフェロンα(例えば、インターフェロンα2A)、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、インターフェロン-λ、及びコンセンサスインターフェロンなど)、コロニー刺激因子(CSF)(例えば、M-CSF、GM-CSF、及びG-CSF)、インターロイキン(IL)(例えば、IL-1からIL-10)、スーパーオキシドジスムターゼ、T細胞受容体、表面膜タンパク質、崩壊促進因子、輸送タンパク質、ホーミング受容体、アドレシン、生殖能抑制因子(プロスタグランジンなど)、生殖能促進因子、調節タンパク質、抗体(そのフラグメントを含む)及びキメラタンパク質(イムノアドヘシンなど)、これらの化合物の前駆体、誘導体、プロドラッグ及び類似体、並びにこれらの化合物の薬学的に許容される塩、又はそれらの前駆体、誘導体、プロドラッグ及び類似体、が挙げられる。好適なタンパク質又はペプチドは、天然又は組換えであり得、例えば、融合タンパク質を含み得る。
【0077】
また、タンパク質活性剤の例としては、CCL1、CCL2(MCP-1)、CCL3(ΜΙΡ-Ια)、CCL4(MIP-Ιβ)、CCL5(RANTES)、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9(CCL10)、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CCL28、CXCL1(KC)、CXCL2(SDFla)、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8(IL8)、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCL17、CX3CL1、XCL1、XCL2、TNFA、TNFB(LTA)、TNFC(LTB)、TNFSF4、TNFSF5(CD40LG)、TNFSF6、TNFSF7、TNFSF8、TNFSF9、TNFSF10、TNFSF11、TNFSF13B、EDA、IL2、IL15、IL4、IL13、IL7、IL9、IL21、IL3、IL5、IL6、IL11、IL27、IL30、IL31、OSM、LIF、CNTF、CTF1、IL12a、IL12b、IL23、IL27、IL35、IL14、IL16、IL32、IL34、IL10、IL22、IL19、IL20、IL24、IL26、IL29、IFNL1、IFNL2、IFNL3、IL28、IFNA1、IFNA2、IFNA4、IFNA5、IFNA6、IFNA7、IFNA8、IFNA10、IFNA13、IFNA14、IFNA16、IFNA17、IFNA21、IFNB1、IFNK、IFNW1、IFNG、ILIA(IL1F1)、IL1B(IL1F2)、ILIRa(IL1F3)、IL1F5(IL36RN)、IL1F6(IL36A)、IL1F7(IL37)、IL1F8(IL36B)、IL1F9(IL36G)、ILIFIO(IL38)、IL33(IL1F11)、IL18(IL1G)、IL17、KITLG、IL25(IL17E)、CSF1(M-CSF)、CSF2(GM-CSF)、CSF3(G-CSF)、SPP1、TGFB1、TGFB2、TGFB3、CCL3L1、CCL3L2、CCL3L3、CCL4L1、CCL4L2、IL17B、IL17C、IL17D、IL17F、AIMP1(SCYE1)、MIF、Areg、BC096441、Bmp1、Bmp10、Bmp15、Bmp2、Bmp3、Bmp4、Bmp5、Bmp6、Bmp7、Bmp8a、Bmp8b、Clqtnf4、Ccl21a、Ccl27a、Cd70、Cerl、Cklf、Clcf1、Cmtm2a、Cmtm2b、Cmtm3、Cmtm4、Cmtm5、Cmtm6、Cmtm7、Cmtm8、Crlf1、Ctf2、Ebi3、Edn1、Fam3b、Fas1、Fgf2、Flt31、Gdf10、Gdf11、Gdf15、Gdf2、Gdf3、Gdf5、Gdf6、Gdf7、Gdf9、Gml2597、Gml3271、Gml3275、Gml3276、Gml3280、Gml3283、Gm2564、Gpi1、Grem1、Grem2、Grn、Hmgb1、Ifnal1、Ifnal2、Ima9、Ifnab、Ifne、1117a、1123a、1125、1131、Iltifb,Inhba、Lefty1、Lefty2、Mstn、Nampt、Ndp、Nodal、Pf4、Pglyl、Prl7dl、Scg2、Scgb3al、Slurp1、Spp1、Thpo、Tnfsf1O、Tnfsf11、Tnfsf12、Tnfsf13、Tnfsf13b、Tnfsf14、Tnfsf15、Tnfsf18、Tnfsf4、Tnfsf8、Tnfsf9、Tslp、Vegfa、Wnt1、Wnt2、Wnt5a、Wnt7a、Xcl1、エピネフリン、メラトニン、トリヨードチロニン、チロキシン、プロスタグランジン、ロイコトリエン、プロスタサイクリン、トロンボキサン、膵島アミロイドポリペプチド、ミュラー管抑制因子若しくはホルモン、アディポネクチン、コルチコトロピン、アンジオテンシン、バソプレシン、アルギニンバソプレシン、アトリオペプチン、脳性ナトリウム利尿ペプチド、カルシトニン、コレシストキニン、コルチスタチン、エンケファリン、エンドセリン、エリスロポエチン、濾胞刺激ホルモン、ガラニン、胃抑制ポリペプチド、ガストリン、グレリン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド-1、ゴナドトロピン放出ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、ヘプシジン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、ヒト胎盤ラクトゲン、成長ホルモン、インヒビン、インスリン、ソマトメジン、レプチン、リポトロピン、黄体形成ホルモン、メラニン細胞刺激ホルモン、モチリン、オレキシン、オキシトシン、膵臓ポリペプチド、副甲状腺ホルモン、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド、プロラクチン、プロラクチン放出ホルモン、レラキシン、レニン、セクレチン、ソマトスタチン、トロンボポエチン、サイロトロピン、サイロトロピン放出ホルモン、血管作用性腸ペプチド、アンドロゲン、アンドロゲン、酸性マルターゼ(α-グルコシダーゼ)、グリコーゲンホスホリラーゼ、グリコーゲン脱分岐酵素、ホスホフルクトキナーゼ、ホスホグリセリン酸キナーゼ、ホスホグリセリン酸ムターゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ、カルニチン、ミオアデニル酸デアミナーゼ、及び/又は同様のものが挙げられる。
【0078】
生物学的及び/又は薬学的材料の追加の例としては、担体組成物150に含まれるか、又は担体組成物150内の細胞によって産生されるホルモンが挙げられる。そのようなホルモンの例としては、限定されるものではないが、抗利尿ホルモン(ADH)(下垂体後葉によって産生され、腎臓を標的とし、水分バランス及び血圧に影響を与えるが含まれる)、オキシトシン(下垂体後葉によって産生され、子宮、乳房を標的とし、子宮収縮及び乳汁分泌を刺激する)、成長ホルモン(GH)(下垂体前葉によって産生され、身体の細胞、骨、筋肉を標的とし、成長と発達に影響を与える)、プロラクチン(下垂体前葉によって産生され、乳房を標的とし、乳汁分泌を維持する)、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)(GHの放出ホルモンであり、視床下部の弓状核で産生される)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)(下垂体前葉によって産生され、甲状腺を標的とし、甲状腺ホルモンを調節する)、サイロトロピン放出ホルモン(TRH)(視床下部によって産生され、下垂体前葉からのTSH及びプロラクチンの放出を刺激する)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)(下垂体前葉によって産生され、副腎皮質を標的とし、副腎皮質ホルモンを調節する)、卵胞刺激ホルモン(FSH)(下垂体前葉によって産生され、卵巣/精巣を標的とし、卵子及び精子の産生を刺激する)、黄体形成ホルモン(LH)(下垂体前葉によって産生され、卵巣/精巣を標的とし、排卵と性ホルモンの放出を刺激する)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)(別名ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)は、視床下部内のGnRHニューロンで合成及びそれより放出され、FSH及びLHの放出に関与する栄養ペプチドホルモン)、チロキシン(甲状腺によって産生され、体細胞を標的とし、代謝を調節する)、カルシトニン(甲状腺によって産生され、副腎皮質を標的とし、血中カルシウムを低下させる)、副甲状腺ホルモン(副甲状腺によって生成され、骨基質を標的とし、血中カルシウムを上昇させる)、アルドステロン(副腎皮質によって産生され、腎臓を標的とし、水分バランスを調節する)、コルチゾール(副腎皮質によって産生され、体細胞を標的とし、免疫系及びストレス反応を弱める)、エピネフリン(副腎髄質によって産生され、心臓、肺、肝臓、及び体細胞を標的とし、主に「戦うか逃げるか」の反応に影響を及ぼす)、グルカゴン(膵臓によって産生され、肝臓、身体を標的とし、血糖値を上昇させる)、インスリン(膵臓によって産生され、体細胞を標的とし、血糖値を下げる)、エストロゲン(卵巣によって産生され、生殖器系を標的とし、思春期、月経、性腺の発達に影響を及ぼす)、プロゲステロン(卵巣によって産生され、生殖器系を標的とし、思春期、月経周期、及び性腺の発達に影響を及ぼす)、テストステロン(副腎、精巣によって産生され、生殖器系を標的とし、思春期、性腺の発達、及び精子に影響を与える)などの、内分泌ホルモンが挙げられる。
【0079】
様々な実施形態では、タンパク質は、成長ホルモン(ヒト成長ホルモン(hGH)、組換えヒト成長ホルモン(rhGH)、ウシ成長ホルモン、メチオン-ヒト成長ホルモン、デス-フェニルアラニンヒト成長ホルモン、及びブタ成長ホルモンなど)、インスリン、インスリンA鎖、インスリンB鎖、及びプロインスリン、若しくは増殖因子(血管内皮増殖因子(VEGF)、神経成長因子(NGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮増殖因子(EGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、並びにインスリン様増殖因子-I及びインスリン様増殖因子-II(IGF-I及びIGF-II))、かつ/又は同様のものである。
【0080】
図1に戻ると、標的材料110内に拡散した架橋剤140は、開口チャネル120の壁170に沿って担体材料150と反応し、担体材料150内の細胞(例えば、EC)、ビーズ、粒子など160を閉じ込めるか又は固定化する局所重合反応につながり得る。架橋剤140は、チャネル界面170でのみ担体材料150と接触するため、反応は、この領域に限定される。担体材料150の完全な重合(チャネル120を閉塞することになる)を防止するために、架橋反応は、タイミングを合わせることができ、過剰な担体材料は、それが重合され得る前に除去され得る。非限定的な例示的な例示として、担体材料150は、開口チャネル120を介して担体材料150を、約0.1mL/分~約10mL/分、約1mL/分~約2.5mL/分、約0.5mL/分~約5mL/分、約2.5mL/分~約7.5mL/分、約1mL/分~約5mL/分の速度で流すことによって、標的材料110に曝露され得、それらの間の値及び部分範囲を含む。更に、担体材料(例えば、重合性材料及び細胞、ビーズ、粒子などを含む)並びに架橋剤の標的材料110における注入及びインキュベーション、又は担体材料(例えば、架橋剤及び細胞、ビーズ、粒子などを含む)並びに重合性材料の標的材料110における注入及びインキュベーションは、約20℃~約40℃、約25℃~約70℃、約30℃~約50℃、約25℃~約35℃、約35℃~約37℃のインキュベーション温度で行われ得、それらの間の値及び部分範囲を含む。様々な実施形態では、インキュベートすること及び洗浄することが、1時間未満、45分未満、30分未満、25分未満、20分未満、15分未満、12分未満、11分未満、10分未満、9分未満、8分未満、7分未満、6分未満、5分未満、4分未満、3分未満、又は2分未満で起こるが、少なくとも1分間起こる。
【0081】
本明細書に開示される技術の例示的な用途
本明細書に開示される技術は、移植及び再建の両方の目的で、実験動物におけるインビトロ及びインビボの両方で、並びにヒトを含む患者における臨床研究のために利用され得る人工膜、組織、及び臓器を作成するために使用され得る細胞コーティングされた表面を製造することを含む、いくつかの特定の用途で用いられ得る。例としては、損傷した組織の再建のために、動脈、静脈、及びリンパ管を含む人工組織及び血管複合体を作成すること、並びに完全に操作された臓器を生成することが挙げられる。用途の他の例としては、対象の健康及び生理学的状態を監視するとともに、治療剤を送達し得る、対象への移植に好適なものを含むデバイスの製造が挙げられ、非限定的な例としては、グルコースを監視し、インスリンを産生/送達するように構成されたデバイスが挙げられる。用途の追加の例としては、急速かつスケーラブルな薬物スクリーニング又は血管ネットワーク及び/若しくは組織を模倣して、治療の有効性又は薬物若しくは環境汚染物質の潜在的な毒性効果を決定するために使用され得る、いわゆる「チップ上の血管」デバイスの生成が挙げられる。
【0082】
図2及び
図3は、様々な実施形態による、架橋剤の、それぞれ、存在下及び非存在下で、パターン化された血管チャネルの急速な内皮化が界面ゲル重合を介して達成される、本明細書に開示される技術の適用の例示的なそれぞれの例示200及び300を示す。様々な実施形態では、A549上皮様細胞がECの代理として使用され、すなわち、A549をフィブリノーゲンプレヒドロゲル溶液(10mg/mL)で播種し、トロンビンクロスリンカーによる細胞充填フィブリノーゲンの約5分間の架橋は、平面蛇行アーキテクチャでチャネル210、310の周囲の細胞の均一な層を閉じ込めるか又は固定化するのに十分であることが見出された。細胞充填フィブリノーゲンへのキサンタンの添加は、懸濁物の密度を増加させて、細胞の沈降及び閉じ込められた細胞の不均一な分布を防止する。概して、界面層の厚さは、約10μm~約1000μmとすることができる。重合層が内皮又は上皮細胞を含有する一部の実施形態では、重合層の最適な厚さは、約30μm~約60μmの1つの細胞長にほぼ等しくてもよい。界面層の厚さは、クロスリンカー及び担体材料の濃度、クロスリンカーインキュベーション期間及び架橋反応の持続時間、並びにシステムの温度によって調節され得る。
【0083】
図2及び
図3の比較は、チャネル210及び310の管腔表面に沿った細胞の存在が架橋剤の存在に依存し得ることを示し、チャネル210を裏打ちする細胞の大部分が重合層に閉じ込められ、下にあるチャネル210の表面上に接着されないことを暗示する。例えば、チャネル210内の架橋剤の存在(すなわち、チャネル210内のトロンビンのインキュベーション前の存在)に対応する
図2は、チャネル210の管腔表面内、及び、特に、管腔表面に沿った細胞の存在を示すが(例えば、拡大された部分220及び230に示されるように)、一方、チャネル310内の架橋剤の不存在に対応する
図3は、チャネル310の管腔表面内、及び、特に、管腔表面に沿った疎らな細胞を示す(例えば、拡大された部分320及び330に示されるように)。
【0084】
図4~
図7Bは、様々な実施形態による、界面重合による播種後の数日間の例示的な管腔細胞形態形成を示す。チャネルの表面に沿って細胞の層を確立することは、単層内皮の成熟のために必要であるが、十分ではない。界面重合ECからの単層の形成は、ECがフィブリノーゲンをリモデリングし、遊走して天然内皮に特徴的な細胞間接合部を形成することを必要とし得る。発明者らは、必要な3D遊走が、およそ1週間の時間経過にわたって内皮単層を生じさせるのに十分に急速に起こることになるという仮説を立てた。
【0085】
最初に、ヒト臍帯静脈EC(HUVEC、標識された赤色蛍光タンパク質(RFP)及び緑色蛍光タンパク質(GFP)の混合物)の集団を灌流された蛇行ネットワークで播種した後の界面重合後、HUVECは、プレヒドロゲル内のそれらの懸濁された状態を反映した丸みを帯びた形態を有する。GFP及びRFP標識HUVECの混合集団を使用して、個々の細胞の形態をより明確に視覚化した。数日間(例えば、1週間)にわたって、すなわち、0日目(
図4)、2日目(
図5)、及び6日目(
図6)、並びに11日目(
図7A及び
図7B)に、HUVECは、拡散形態を採用し、互いに向かって最初の界面播種の丸みを帯びた形態から遊走し始め、推定される単層を形成する。播種されたチャネルを通る共焦点断面は、見かけの単層におけるチャネル壁に沿って、密に充填されたHUVECを例示する。すなわち、
図7A及び
図7Bに示されるように、灌流の1週間後、すなわち、11日目の共焦点イメージングは、チャネルの周りの均一な被覆を実証し、ECが、隣接する個々の細胞の密接な交差を有するチャネル表面に沿って推定される圧縮された単層を形成したことを示した。
図4~
図7Bでは、一次ゲル(すなわち、標的材料)は、20mg/mLのフィブリンであり、界面重合ゲル(すなわち、重合性材料)は、10mg/mLのフィブリンである。
【0086】
図8は、様々な実施形態による、担体組成物の重合を触媒するために架橋剤を使用して標的材料をコーティングする方法に対するフローチャートである。例示されるように、方法800は、いくつかの列挙されたステップを含むが、方法800の態様は、列挙されたステップの前、後、及び間の追加のステップを含み得る。一部の実施形態では、列挙されたステップのうちの1つ以上は、省略されてもよく、又は異なる順序で実施されてもよい。
【0087】
ブロック810では、表面を有する標的材料が提供される。
【0088】
ブロック820では、表面が、重合性材料ならびに、(i)架橋剤、及び(ii)細胞、ビーズ、又は粒子を含む担体組成物、あるいは、架橋剤ならびに、(i)重合性材料、及び(ii)細胞、ビーズ、又は粒子を含む担体組成物と共に、インキュベートされる。すなわち、一部の実施形態では、表面は、重合性材料ならびに、架橋剤、及び細胞、ビーズ、又は粒子を含む担体組成物と共に、インキュベートされる。一部の実施形態では、表面は、架橋剤ならびに、重合性材料、及び細胞、ビーズ、又は粒子を含む担体組成物と共に、インキュベートされる。
【0089】
ブロック830では、表面が、過剰な担体組成物を除去するために洗浄される。様々な実施形態では、細胞、ビーズ、又は粒子が、表面上に重合された材料の界面層上又はその中に固定化される。
【0090】
図9は、様々な実施形態による、担体組成物の重合を触媒するために架橋剤を使用して標的材料をコーティングする方法に対するフローチャートである。例示されるように、方法900は、いくつかの列挙されたステップを含むが、方法900の態様は、列挙されたステップの前、後、及び間の追加のステップを含み得る。一部の実施形態では、列挙されたステップのうちの1つ以上は、省略されてもよく、又は異なる順序で実施されてもよい。
【0091】
ブロック910では、表面を有する標的材料が提供される。
【0092】
ブロック920では、表面が、細胞、ビーズ、又は粒子、及び温度又はpH重合性材料を含む、担体組成物と共にインキュベートされる。
【0093】
ブロック930では、表面が、当該材料の重合を触媒する温度又はpHに曝露される。様々な実施形態では、細胞、ビーズ、又は粒子が、表面上に重合された材料の界面層上又はその中に固定化される。
【0094】
本開示の様々な実施形態の列挙
実施形態1:表面を有する標的材料を提供することと、
重合性材料ならびに、(i)架橋剤、及び(ii)細胞、ビーズ、又は粒子を含む担体組成物、あるいは、架橋剤ならびに、(i)重合性材料、及び(ii)細胞、ビーズ、又は粒子を含む担体組成物
と共に、表面をインキュベートすることと、
過剰な担体組成物を除去するために表面を洗浄することであって、細胞、ビーズ、又は粒子が、表面上に重合された材料の界面層上又はその中に固定化される、ことと
を含む、標的材料をコーティングする方法。
【0095】
実施形態2:表面が、架橋剤、又は架橋剤を含む担体組成物と共にインキュベートされた後に、非結合架橋剤を除去するために表面を洗浄することを更に含む、実施形態1の方法。
【0096】
実施形態3:担体組成物が、液体又は気体である、実施形態1又は2の方法。
【0097】
実施形態4:界面層の厚さを制御するために、インキュベートすることの持続時間が調節される、実施形態1~3のいずれかの方法。
【0098】
実施形態5:界面層が、当該表面に対して直交しているか又は共形である、実施形態1~4のいずれかの方法。
【0099】
実施形態6:細胞が、線維芽細胞、周皮細胞、内皮細胞、上皮細胞、又は平滑筋細胞を含む管腔細胞である、実施形態1~5のいずれかの方法。
【0100】
実施形態7:ビーズ又は粒子が、検出可能な標識、センサ、又は治療剤を含むか又はそれに連結される、実施形態1~6のいずれかの方法。
【0101】
実施形態8:ビーズが、磁気ビーズ、高分子ビーズ、PEGミクロスフェア、又はゼラチンミクロスフェアである、実施形態1~7のいずれかの方法。
【0102】
実施形態9:粒子が、ナノ粒子又はリポソームである、実施形態1~8のいずれかの方法。
【0103】
実施形態10:細胞が、同じ細胞型のものである複数の細胞を含む、実施形態1~9のいずれかの方法。
【0104】
実施形態11:細胞が、異なる細胞型のものである複数の細胞を含む、実施形態1~9のいずれかの方法。
【0105】
実施形態12:異なる細胞型が、内皮細胞及び間質細胞を含む、実施形態11の方法。
【0106】
実施形態13:間質細胞が、間葉系幹細胞又は周皮細胞を含む、実施形態12の方法。
【0107】
実施形態14:表面が、平滑筋細胞と内皮細胞との同心円層のうちの平滑筋細胞又は内皮細胞のいずれかに隣接して位置する、実施形態1~13のいずれかの方法。
【0108】
実施形態15:表面が、平滑筋細胞と内皮細胞との同心円層の間に位置する、実施形態14の方法。
【0109】
実施形態16:細胞が、固定化を促進又は阻害する因子を産生又は分泌する、実施形態1~15のいずれかの方法。
【0110】
実施形態17:標的材料が、ヒドロゲル、生体材料、又は脱細胞化組織若しくは臓器である、実施形態1~16のいずれかの方法。
【0111】
実施形態18:生体材料が、フィブリン、ゼラチン、ヒアルロン酸、アガロース、アルギネート、コラーゲン、又は脱細胞化細胞外マトリックスを含む、実施形態17の方法。
【0112】
実施形態19:脱細胞化組織又は臓器が、動脈、静脈、リンパ管、気管、食道、肺、肝臓、腎臓、膵臓、尿管、膀胱、腸、又は尿道を含む、実施形態17の方法。
【0113】
実施形態20:ヒドロゲルが、3Dプリントされたヒドロゲルである、実施形態17~19のいずれかの方法。
【0114】
実施形態21:ヒドロゲルが、光造形法によって3Dプリントされる、実施形態17~20のいずれかの方法。
【0115】
実施形態22:ヒドロゲルが、血管テンプレートを含む犠牲テンプレートの周りに成形することによって形成される、実施形態17のいずれかの方法。
【0116】
実施形態23:犠牲テンプレートが、押出又は選択的レーザ焼結によって形成された炭水化物ベースの材料で作製される、実施形態22のいずれかの方法。
【0117】
実施形態24:表面が、1つ以上の開口部を有するチューブの外側である、実施形態1~23のいずれかの方法。
【0118】
実施形態25:表面が、1つ以上の開口部を含む、円筒形チャネル、半円筒形、開口ボイド、又は空隙である、実施形態1~24のいずれかの方法。
【0119】
実施形態26:(i)架橋剤が、トロンビンであり、重合性材料が、フィブリノーゲンであるか、(ii)架橋剤が、トランスグルタミナーゼであり、重合性材料が、ゼラチン若しくはゼラチンメタクリレートであるか、(iii)架橋剤が、Ca2+であり、重合性材料が、アルギネートであるか、(iv)架橋剤が、過硫酸アンモニウム/TEMEDであり、重合性材料が、ゼラチンメタクリレート、PEG-ジアクリレート、コラーゲンメタクリレート、シルクメタシレート、ヒアルロン酸メタクリレート、コンドロイチン硫酸メタクリレート、エラスチンメタクリレート、セルロースアクリレート、デキストランメタクリレート、ヘパリンメタクリレート、NIPAAmメタクリレート、キトサンメタクリレート、メタクリル化脱細胞化ECM、PEGベースのペプチドコンジュゲート、若しくはそれらの組み合わせであるか、(v)架橋剤が、システイン末端ペプチドであり、重合性材料が、PEG-ジアクリレートであるか、(vi)架橋剤が、リチウムアシルホスフィネート/光であり、重合性材料が、ゼラチンメタクリレート、PEG-ジアクリレート、コラーゲンメタクリレート、シルクメタシレート、ヒアルロン酸メタクリレート、コンドロイチン硫酸メタクリレート、エラスチンメタクリレート、セルロースアクリレート、デキストランメタクリレート、ヘパリンメタクリレート、NIPAAmメタクリレート、キトサンメタクリレート、メタクリル化脱細胞化ECM、PEGベースのペプチドコンジュゲート、若しくはそれらの組み合わせであるか、又は(vii)架橋剤が、ペルオキシダーゼであり、重合性材料が、シルクフィブロインである、実施形態1~25のいずれかの方法。
【0120】
実施形態27:架橋剤及び重合性材料が、クリックケミストリーペアである、実施形態1~25のいずれかの方法。
【0121】
実施形態28:クリックケミストリーペアが、PEG-ジチオール、PEG8-ノルボルネン、チオール化ゼラチン、チオール化キトサン、チオール化シルク、チオール化脱細胞化ECM、又はそれらの組み合わせを含む、実施形態27の方法。
【0122】
実施形態29:架橋剤が、光によって活性化される、実施形態1~25のいずれかの方法。
【0123】
実施形態30:担体組成物が、標的材料よりも大きい屈折率を呈する、実施形態29の方法。
【0124】
実施形態31:光活性化への架橋剤の曝露を制限するために導波路を用いることを更に含む、実施形態29の方法。
【0125】
実施形態32:重合性材料が、共有結合又は非共有結合の形成を介して、架橋剤によって重合される、実施形態1~31のいずれかの方法。
【0126】
実施形態33:インキュベートすること及び洗浄することが、1時間未満、45分未満、30分未満、25分未満、20分未満、15分未満、12分未満、11分未満、10分未満、9分未満、8分未満、7分未満、6分未満、5分未満、4分未満、3分未満、又は2分未満で起こるが、少なくとも1分間起こる、実施形態1~32のいずれかの方法。
【0127】
実施形態34:表面をインキュベートすることが、重合性材料又は架橋剤との表面の第1のインキュベーション、及び担体組成物との表面の第2のインキュベーションを含み、
表面が、第1のインキュベーション及び表面の洗浄中に固定化される、
実施形態1~33のいずれかの方法。
【0128】
実施形態35:表面が、第2のインキュベーション中に固定化される、実施形態34の方法。
【0129】
実施形態36:細胞増殖及び/又は細胞遊走を補助する条件下で固定化された細胞をインキュベートすることを更に含む、実施形態1~35のいずれかの方法。
【0130】
実施形態37:細胞をインキュベートすることが、1~12週間、1~10週間、1~8週間、1~6週間、1~4週間、1~3週間、1~2週間、1~14日間、1~10日間、1~5日間、2~10日間、2~6日間、2~4日間、5~12日間、5~10日間、又は12~24時間にわたって起こる、実施形態36の方法。
【0131】
実施形態38:表面の厚さ対界面層の厚さの比が、約100:1~約10,000:1である、実施形態1~37のいずれかの方法。
【0132】
実施形態39:界面層の厚さが、約10~1000ミクロンである、実施形態1~37のいずれかの方法。
【0133】
実施形態40:表面をインキュベートすることが、重合性材料又は架橋剤との表面の第1のインキュベーション、及び担体組成物との表面の第2のインキュベーションを含み、
第2のインキュベーションが、約5秒間~約10分間、約5秒間~約30秒間、約5秒間~約1分間、約1分間~約3分間、約1分間~約5分間、又は約1分間~約10分間続く、
実施形態1~39のいずれかの方法。
【0134】
実施形態41:実施形態1~40の方法に従って細胞でコーティングされた表面。
【0135】
実施形態42:表面が、平坦な又は平面の表面である、実施形態41の細胞コーティングされた表面。
【0136】
実施形態43:表面が、非平坦な又は非平面の表面である、実施形態41の細胞コーティングされた表面。
【0137】
実施形態44:表面が、スポンジ、織られた材料、発泡体、直線格子、三角格子、ジャイロイド、ハニカム、又はオクテットを含む、マクロポーラス構造である、実施形態41の細胞コーティングされた表面。
【0138】
実施形態45:表面が、移植可能デバイス、人工的に操作されたか若しくは脱細胞化された組織、人工的に操作されたか若しくは脱細胞化された組織臓器、人工操作された導管ネットワーク、又は細胞培養デバイス中に位置する、実施形態41の細胞コーティングされた表面。
【0139】
実施形態46:人工的に操作された導管ネットワークが、膵臓、腎臓、又は肺を含む、実施形態45の細胞コーティングされた表面。
【0140】
実施形態47:人工的に操作されたか又は脱細胞化された組織臓器が、血管ネットワーク又はリンパ管ネットワークを含む、実施形態45の細胞コーティングされた表面。
【0141】
実施形態48:管腔表面と、
当該管腔表面上に配設された重合された材料の界面層と、
当該界面層に埋め込まれた細胞と
を含む、細胞コーティングされた管腔表面。
【0142】
実施形態49:表面を有する標的材料を提供することと、
細胞、ビーズ、又は粒子、及び温度又はpH重合性材料を含む担体組成物と共に、表面をインキュベートすることと、
当該材料の重合を触媒する温度又はpHに表面を曝露することであって、細胞、ビーズ、又は粒子が、表面上に重合された材料の界面層上又はその中に固定化される、ことと
を含む、標的材料をコーティングする方法。
【0143】
実施形態50:非結合担体組成物を除去するために表面を洗浄することを更に含む、実施形態49の方法。
【0144】
実施形態51:過剰な担体組成物を除去するために表面を洗浄することを更に含む、実施形態49の方法。
【0145】
本明細書には多くの具体的な実施の詳細が含まれているが、これらは、任意の発明の範囲又は特許請求の範囲に対する限定として解釈されるべきではなく、むしろ特定の発明の特定の実施態様に固有の特徴の説明として解釈されるべきである。別個の実施態様の状況で本明細書に説明される特定の特徴は、単一の実施態様において組み合わせて実装され得る。逆に、単一の実施態様の状況で説明される様々な特徴はまた、複数の実施態様において別々に、又は任意の好適なサブ組み合わせで実装され得る。更に、特徴は、特定の組み合わせで作用するものとして上記で説明し、及び当初は更にそのように特許請求の範囲としたが、特許請求の範囲とした組み合わせからの1つ以上の特徴は、場合によっては組み合わせから削除できるとともに、特許請求の範囲とした組み合わせは、サブ組み合わせ又はサブ組み合わせのバリエーションに移され得る。
【0146】
同様に、図面には特定の順序で作動が描かれているが、これは、望ましい結果を得るために、そのような作動を示された特定の順序で、又は順次実行すること、あるいは図示された全ての作動を実行することを必要とすると理解すべきではない。特定の状況においては、マルチタスク及び並列処理が有利である場合がある。更に、上述した実施態様における様々なシステム構成要素の分離は、全ての実施態様においてそのような分離が必要であると理解されるべきではなく、更には、説明したプログラム構成要素及びシステムは、一般に、単一のソフトウェア製品において一緒に統合することができるか、又は複数のソフトウェア製品にパッケージ化することができると理解されるべきである。
【0147】
「又は」への言及は、「又は」を使用して記載された任意の用語が、記載された用語の単一、複数、及び全てのいずれかを示すことができるように、包括的であると解釈されてもよい。「第1の」、「第2の」、「第3の」などの標識は、必ずしも順序を示すことを意味するものではなく、一般に、類似又は類似のアイテム又は要素を区別するためにのみ使用される。
【0148】
単数形における要素への言及は、具体的に記載されない限り、「1つ及び1つのみ」を意味することを意図せず、むしろ「1つ以上」を意味することが意図される。本明細書で使用される場合、数値又は数値として表され得るパラメータ若しくは特性に関して使用される「約」という用語は、数値の10パーセント以内を意味する。例えば、「約50」は、包括的に、45~55の範囲の値を意味する。
【0149】
本開示に説明される実施態様への様々な改変は、当業者にとって明白であり、本明細書で定義されている一般原則は、本開示の概念及び範囲から逸脱することなく、他の実施態様に適用され得る。したがって、特許請求の範囲は、本明細書に示される実施態様に限定されることを意図するものではなく、本開示、本明細書に開示される原理及び新規の特徴と一致する最も広い範囲を付与されるべきである。
【配列表】
【国際調査報告】