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特表2024-515564結合組織増殖因子(CTGF)に特異的な新規リポカリンムテイン
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】結合組織増殖因子(CTGF)に特異的な新規リポカリンムテイン
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20240403BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20240403BHJP
   C07K 16/22 20060101ALI20240403BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240403BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240403BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240403BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240403BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240403BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240403BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240403BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240403BHJP
   C07K 1/22 20060101ALI20240403BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20240403BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240403BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240403BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240403BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240403BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240403BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240403BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240403BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240403BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240403BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240403BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K14/47 ZNA
C07K16/22
C07K19/00
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C07K1/22
C12Q1/02
A61K38/02
A61K38/16
A61P35/00
A61P37/06
A61P31/00
A61P11/00
A61P21/00
A61P1/16
A61P13/12
A61P27/02
A61P43/00 105
A61P31/14
G01N33/53 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561666
(86)(22)【出願日】2022-04-08
(85)【翻訳文提出日】2023-12-01
(86)【国際出願番号】 EP2022059406
(87)【国際公開番号】W WO2022214649
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】21167385.0
(32)【優先日】2021-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21192311.5
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】509029645
【氏名又は名称】ピエリス ファーマシューティカルズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】パブリドゥ マリーナ
(72)【発明者】
【氏名】ナイエンス ヴァネッサ
(72)【発明者】
【氏名】ハンスバウアー エヴァ-マリア
(72)【発明者】
【氏名】ヴルツェンベルガー クラウディア
(72)【発明者】
【氏名】ジャキン トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン ターニャ
(72)【発明者】
【氏名】グリューナー シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】マッシナー ガブリエレ
【テーマコード(参考)】
4B063
4B064
4B065
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QQ08
4B063QR48
4B063QR66
4B063QR77
4B064AG27
4B064CA02
4B064CA05
4B064CA06
4B064CA08
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4B064DA13
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA57Y
4B065AA72X
4B065AA72Y
4B065AA83X
4B065AA83Y
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA41
4C084CA53
4C084CA56
4C084NA14
4C084ZA33
4C084ZA36
4C084ZA59
4C084ZA75
4C084ZA81
4C084ZA94
4C084ZB08
4C084ZB21
4C084ZB26
4C084ZB31
4C084ZB33
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、例えば線維性疾患、がん、自己免疫疾患、または感染性疾患の処置における分析、診断または治療の目的において有用な、CTGFに結合することができるリポカリンムテインならびに該ムテインを含む融合タンパク質を提供する。本開示は、本明細書に記載のリポカリンムテインまたは融合タンパク質を作製する方法にも関する。本開示はさらに、そのようなリポカリンムテインまたは融合タンパク質をコードする核酸分子に関する。加えて、本開示は、そのようなリポカリンムテインまたは融合タンパク質、ならびにそのようなリポカリンムテインまたは融合タンパク質の1つまたは複数を含む組成物の治療的使用および/または診断的使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出可能なアフィニティでCTGFに結合することができる、リポカリンムテイン。
【請求項2】
約500nM以下、約400nM以下、約300nM以下、約200nM以下、約150nM以下、約100nM以下、約50nM以下、または約30nM以下のKDによって測定されるアフィニティでCTGFに結合することができる、請求項1記載のリポカリンムテイン。
【請求項3】
約250nM以下、約200nM以下、約150nM以下、約100nM以下、または約50nM以下のEC50値でCTGFに結合する、請求項1または2記載のリポカリンムテイン。
【請求項4】
カニクイザルCTGFと交差反応する、請求項1~3のいずれか一項記載のリポカリンムテイン。
【請求項5】
マウスCTGFと交差反応する、請求項1~4のいずれか一項記載のリポカリンムテイン。
【請求項6】
ラットCTGFと交差反応する、請求項1~5のいずれか一項記載のリポカリンムテイン。
【請求項7】
CTGFの結合に関して、SEQ ID NO:60およびSEQ ID NO:61の重鎖配列および軽鎖配列を有する抗体と競合する、請求項1~6のいずれか一項記載のリポカリンムテイン。
【請求項8】
CTGFの結合に関して、SEQ ID NO:60およびSEQ ID NO:61の重鎖配列および軽鎖配列を有する抗体と競合しない、請求項1~6のいずれか一項記載のリポカリンムテイン。
【請求項9】
CYR61(CCN1)、NOV(CCN3)、WISP-1(CCN4)、WISP-2(CCN5)およびWISP-3(CCN6)からなる群より選択されるCCNタンパク質ファミリーの1つまたは複数のメンバーと交差反応しない、請求項1~8のいずれか一項記載のリポカリンムテイン。
【請求項10】
インビボで抗線維化効果をもたらすことができる、請求項1~9のいずれか一項記載のリポカリンムテイン。
【請求項11】
成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の位置28、36、40、41、44、47、49、52、65、68、70、72、73、74、75、77、79、80、81、87、94、95、96、97、98、99、100、102、103、104、106、110、123、125、127、128、129、130、132、134および136に対応する1つまたは複数の位置に、以下の変異アミノ酸残基のうちの10個またはそれ以上を含む、請求項1~10のいずれか一項記載のリポカリンムテイン:
Gln28→His;Leu36→Arg、Lys、Ile、Val、MetまたはTrp;Ala40→Asn、Tyr、Lys、Phe、IleまたはVal;Ile41→Arg、Ile41の欠失、Gln、GlyまたはLys;Glu44→Thr、Ile、Asp、ValまたはPro;Asp47→Glu、Ser、Arg、GlnまたはTyr;Gln49→Pro、Ser、Ala、Phe、LeuまたはAla;Tyr52→Trp、Phe、GlyまたはSer;Asn65→Asp;Ser68→His、GlnまたはGlu;Leu70→His、Arg、GlnまたはVal;Arg72→Met、Leu、Ser、GluまたはAsp;Lys73→Thr、Gln、Ala、AsnまたはAsp;Lys74→GluまたはArg;Lys75→ArgまたはSer;Asp77→Arg、Lys、His、Ser、Val、IleまたはLeu;Trp79→Ile、Leu、ThrまたはVal;Ile80→Ser;Arg81→Asp、LysまたはGlu;Cys87→Ser;Leu94→Ile、Ala、Thr、Ser、Arg、HisまたはGlu;Gly95→Ser;Asn96→Ala、Ser、Tyr、Gln、AspまたはPro;Ile97→Tyr;Lys98→GlyまたはSer;Ser99→Asn、ValまたはArg;Tyr100→Gly、Arg、Ala、His、Phe、ProまたはSer;Gly102→ThrまたはArg;Leu103→Met、Gln、Ser、Phe、GluまたはTyr;Thr104→Tyr、Glu、ValまたはTrp;Tyr106→Pro、Ser、Thr、Gln、HisまたはAsp;Val110→Ile;Phe123→Trp、His、Ala、LeuまたはVal;Lys125→Trp、Ser、HisまたはAla;Ser127→Asn、Thr、Ile、Ala、Gln、Arg、Tyr、Trp、Phe、HisまたはGly;Gln128→Gly、LeuまたはPro;Asn129→Thr、AlaまたはSer;Arg130→GluまたはLeu;Tyr132→Trp、Thr、Ser、Phe、Ile、HisまたはVal;Lys134→Thr、Ala、Val、Asn、Phe、Trp、HisまたはGln;およびThr136→AlaまたはVal。
【請求項12】
成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)との比較で、以下の変異アミノ酸残基セットのうちの1つを含む、請求項1~11のいずれか一項記載のリポカリンムテイン:
【請求項13】
SEQ ID NO:60およびSEQ ID NO:61の重鎖配列および軽鎖配列を有する抗体のエピトープとオーバーラップするCTGF上のエピトープに結合する、請求項1~12のいずれか一項記載のリポカリンムテイン。
【請求項14】
SEQ ID NO:3~36からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する、請求項1~13のいずれか一項記載のリポカリンムテイン。
【請求項15】
SEQ ID NO:3~36からなる群より選択されるアミノ酸配列またはそのフラグメントもしくはバリアントを含む、請求項1~14のいずれか一項記載のリポカリンムテイン。
【請求項16】
有機分子、酵素ラベル、放射性ラベル、着色ラベル、蛍光ラベル、発色性ラベル、発光ラベル、ハプテン、ジゴキシゲニン、ビオチン、細胞分裂阻害剤、毒素、金属錯体、金属および金コロイドからなる群より選択される化合物にコンジュゲートされている、請求項1~15のいずれか一項記載のリポカリンムテイン。
【請求項17】
ムテインが、そのN末および/またはそのC末において、タンパク質、タンパク質ドメイン、ペプチドまたはリポカリンムテインである融合パートナーに融合されている、請求項1~16のいずれか一項記載のリポカリンムテイン。
【請求項18】
ムテインが、そのN末および/またはそのC末において、抗体または抗体フラグメントである融合パートナーに融合されている、請求項1~17のいずれか一項記載のリポカリンムテイン。
【請求項19】
ムテインの血清中半減期を延長する化合物にコンジュゲートされている、請求項1~18のいずれか一項記載のリポカリンムテイン。
【請求項20】
血清中半減期を延長する化合物が、ポリエチレングリコール(PEG)分子、ヒドロキシエチルデンプン、免疫グロブリンのFc部分、免疫グロブリンのCH3ドメイン、免疫グロブリンのCH4ドメイン、アルブミン結合ペプチドおよびアルブミン結合タンパク質からなる群より選択される、請求項19記載のリポカリンムテイン。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項記載のリポカリンムテインを2つ含む、融合タンパク質。
【請求項22】
成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)との比較で、以下の変異アミノ酸残基セットをそれぞれが含む2つのリポカリンムテインを含む、請求項21記載の融合タンパク質:
【請求項23】
以下のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列をそれぞれが含む、2つのリポカリンムテイン、または
以下のアミノ酸配列をそれぞれが含む、2つのリポカリンムテイン
を含む、請求項21または22記載の融合タンパク質:
(a)SEQ ID NO:6およびSEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列;
(b)SEQ ID NO:6およびSEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列;
(c)SEQ ID NO:28およびSEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列;
(d)SEQ ID NO:4およびSEQ ID NO:9に示すアミノ酸配列;
(e)SEQ ID NO:9およびSEQ ID NO:4に示すアミノ酸配列;
(f)SEQ ID NO:9およびSEQ ID NO:30に示すアミノ酸配列;
(g)SEQ ID NO:11およびSEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列;
(h)SEQ ID NO:11およびSEQ ID NO:28に示すアミノ酸配列;
(i)SEQ ID NO:31およびSEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列;
(j)SEQ ID NO:12およびSEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列;
(k)SEQ ID NO:12およびSEQ ID NO:28に示すアミノ酸配列;
(l)SEQ ID NO:13およびSEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列;
(m)SEQ ID NO:15およびSEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列;
(n)SEQ ID NO:15およびSEQ ID NO:28に示すアミノ酸配列;または
(o)SEQ ID NO:15およびSEQ ID NO:35に示すアミノ酸配列。
【請求項24】
SEQ ID NO:62~76からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%の同一性を有する、請求項21~23のいずれか一項記載の融合タンパク質。
【請求項25】
SEQ ID NO:62~76からなる群より選択されるアミノ酸配列またはそのフラグメントもしくはバリアントを含む、請求項21~24のいずれか一項記載の融合タンパク質。
【請求項26】
請求項1~20のいずれか一項記載のリポカリンムテインまたは請求項21~25のいずれか一項記載の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
【請求項27】
請求項26記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項28】
請求項26記載の核酸分子または請求項27記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項29】
請求項1~20のいずれか一項記載のリポカリンムテインまたは請求項21~25のいずれか一項記載の融合タンパク質を生産する方法であって、該ムテインまたは該融合タンパク質が、該ムテインまたは該融合タンパク質をコードする核酸から出発して生産される、前記方法。
【請求項30】
対象におけるCTGFを結合および/または検出する方法であって、請求項1~20のいずれか一項記載のリポカリンムテイン、請求項21~25のいずれか一項記載の融合タンパク質、または該ムテインもしくは該融合タンパク質を含む組成物を適用する工程を含む、前記方法。
【請求項31】
対象において抗線維化効果を提供する方法であって、請求項1~20のいずれか一項記載のリポカリンムテイン、請求項21~25のいずれか一項記載の融合タンパク質、または該ムテインもしくは該融合タンパク質を含む組成物を適用する工程を含む、前記方法。
【請求項32】
CTGFの下流シグナル伝達経路を調節する方法であって、請求項1~20のいずれか一項記載のリポカリンムテイン、請求項21~25のいずれか一項記載の融合タンパク質、または該ムテインもしくは該融合タンパク質を含む組成物を適用する工程を含む、前記方法。
【請求項33】
肺におけるコラーゲン沈着を低減する方法であって、請求項1~20のいずれか一項記載のリポカリンムテイン、請求項21~25のいずれか一項記載の融合タンパク質、または該ムテインもしくは該融合タンパク質を含む組成物を適用する工程を含む、前記方法。
【請求項34】
請求項1~20のいずれか一項記載のリポカリンムテインまたは請求項21~25のいずれか一項記載の融合タンパク質を含む、薬学的組成物。
【請求項35】
治療において使用するための、請求項1~20のいずれか一項記載のリポカリンムテイン、請求項21~25のいずれか一項記載の融合タンパク質、または請求項34記載の薬学的組成物。
【請求項36】
使用が線維性疾患、がん、自己免疫疾患、または感染性疾患の処置における使用である、請求項35記載の使用のためのリポカリンムテイン、融合タンパク質、または薬学的組成物。
【請求項37】
使用が肺疾患、筋疾患、心疾患、肝疾患、腎疾患、または眼疾患の処置における使用である、請求項35または36記載の使用のためのリポカリンムテイン、融合タンパク質、または薬学的組成物。
【請求項38】
使用が線維性疾患の処置における使用である、請求項35~37のいずれか一項記載の使用のためのリポカリンムテイン、融合タンパク質、または薬学的組成物。
【請求項39】
使用が特発性肺線維症(IPF)の処置における使用である、請求項35~38のいずれか一項記載の使用のためのリポカリンムテイン、融合タンパク質、または薬学的組成物。
【請求項40】
使用がCOVID-19の処置における使用である、請求項35~38のいずれか一項記載の使用のためのリポカリンムテイン、融合タンパク質、または薬学的組成物。
【請求項41】
医薬の製造のための、請求項1~20のいずれか一項記載のリポカリンムテインまたは請求項21~25のいずれか一項記載の融合タンパク質の使用。
【請求項42】
医薬が線維性疾患、がん、肺疾患、および/またはCOVID-19の処置のための医薬である、請求項41記載の使用。
【請求項43】
医薬がIPFの処置のための医薬である、請求項41または42記載の使用。
【請求項44】
疾患を処置する方法であって、その必要がある対象に、有効量の、請求項1~20のいずれか一項記載のリポカリンムテイン、請求項21~25のいずれか一項記載の融合タンパク質、または請求項34記載の薬学的組成物を投与する工程を含む、前記方法。
【請求項45】
疾患が線維性疾患、がん、肺疾患、および/またはCOVID-19である、請求項44記載の方法。
【請求項46】
疾患がIPFである、請求項44または45記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
I. 背景
CTGF(UniProt P29279)は、結合組織増殖因子またはCCN2としても公知であり、細胞間シグナル伝達に関与する細胞外マトリックス(ECM)に関連するマトリックス細胞タンパク質のファミリー、CCNタンパク質ファミリーのメンバーである(Ramazani et al.,Matrix Biol.68-69,44-66(2018)(非特許文献1)、Holbourn et al.,Trends Biochem.Sci.33,461-473(2008)(非特許文献2))。CTGFの構造はCCNファミリーのメンバーに特有の構造であり、機能的に異なる4つのドメイン、すなわちインスリン様成長因子結合タンパク質様ドメイン(IGFBP)、ヴォン・ヴィレブランド因子C型リピートドメイン(VWFC)、トロンボスポンジン1型リピート(TSP1型)およびシステインノット含有ドメイン(CTCK)を含んでいる(Holbourn et al.,Trends Biochem.Sci.33,461-473(2008))。インスリン様成長因子結合タンパク質様ドメインおよびヴォン・ヴィレブランド因子C型リピートはCTGFのN末フラグメントを形成し、トロンボスポンジン1型リピートおよびシステインノット含有ドメインはCTGFのC末フラグメントを形成する。N末フラグメントとC末フラグメントの間のヒンジ領域はメタロプロテアーゼによるタンパク質分解的切断を受ける。CTGF遺伝子(6q23.2)は5つのエクソンを含み、349アミノ酸タンパク質をコードする。CTGFは脊椎動物間で高度に保存されており、ヒトCTGFとマウスCTGFとでは、遺伝子レベルで91%同一、タンパク質レベルで95%同一である(Ramazani et al.,Matrix Biol.68-69,44-66(2018))。
【0002】
CTGFは胎生期に高発現して骨格、心血管または腎臓の発生過程を媒介する。成人期におけるCTGF発現はかなり低いが、ある一定の刺激、例えばサイトカイン刺激または増殖因子刺激および機械的ストレスを受けると、強く誘導される(Kubota et al.,Clin.Sci.128,181-196(2014)(非特許文献3)、Leask,J.Cell Commun.Signal.7(3):203-205(2013)(非特許文献4))。CTGF発現は、平滑筋、甲状腺、脾臓、腎臓、前立腺、子宮内膜、大脳皮質、リンパ節、肺、肝臓 消化管および皮膚を含む数多くの組織において、mRNAレベルで、またはタンパク質レベルで、さらに記載されている。(Uhlen et al.,Science 347(6220):1260419(2015)(非特許文献5))。当初、CTGFは、内皮細胞および線維芽細胞において発現し、そこで組織再生 創傷治癒および血管新生に関連すると記載された(Bradham et al.,J.Cell Biol.114,1285-1294(1991)(非特許文献6)、Igarashi et al.,Mol.Biol.Cell 4,637-645(1993)(非特許文献7))。CTGFは、細胞接着、細胞外マトリックスリモデリング、骨格発生、軟骨形成、血管新生、創傷治癒および増殖など、いくつかの生物学的過程において重要な役割を果たす。シグナル伝達経路の活性化、マトリックスターンオーバーの調節、サイトカインおよび増殖因子調節などといったCTGFの機能は、それぞれの細胞の状況および相互作用タンパク質に依存する。
【0003】
受容体、サイトカインおよびECMタンパク質など、さまざまなタンパク質がCTGFと相互作用すると記載されている。CTGFと相互作用する細胞表面受容体は、インテグリン(例えばα5β3、α1β3、α5β1)、ヘパラン硫酸プロテオグリカン(例えばシンデカン4)、リポタンパク質受容体関連タンパク質(例えばLRP1、LRP6)およびチロシンキナーゼ受容体(例えばTK受容体A)である(Lau,J.Cell Commun.Signal.10,121-127(2016)(非特許文献8))。CTGFと相互作用するさまざまなサイトカインおよび増殖因子のうち、トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)は、後述するように、線維性疾患の発生において決定的な役割を果たす(Abreu et al.,Nat.Cell Biol.4,599-604(2002)(非特許文献9))。さらにCTGFは、他のサイトカインおよび増殖因子、例えば血管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子2(FGF-2)、骨形態形成タンパク質4(BMP4)、血小板由来増殖因子B(PDGFB)その他にも結合する(Chen et al.,Front.Cell Dev.Biol.8,1-17(2020)(非特許文献10))。細胞接着、運動および組織リモデリングにおける機能を媒介するために、CTGFは、フィブロネクチン、アグリカンおよびヘパラン硫酸プロテオグリカンなどのECMの構成要素と相互作用する。細胞接着との関連では、CTGFは、ECMの構成要素にとって、内在性細胞表面タンパク質への橋かけ分子であると見られ、インビトロでのCTGFの遮断は、表面での細胞付着の阻害につながる。
【0004】
線維症の病理発生は、肺または腎臓などのさまざまな器官において繰り返される微小傷害に対する応答としての創傷治癒過程の調節不全とみなされる(Wynn,J.Exp.Med.208,1339-1350(2011)(非特許文献11))。CTGFは、細胞の増殖、分化、運動、接着およびマトリックスターンオーバーをもたらすいくつかの因子とのその相互作用によって、創傷治癒から線維症までの幅広い過程を調節する主要構成要素である。傷害が起こると、損傷された上皮または内皮から放出された炎症性メディエーターによって、抗線維素溶解性凝固カスケードと循環血小板が活性化される。これらの活性化血小板は、炎症応答と筋線維芽細胞の活性化、増殖および遊走とを増強するTGF-βその他のサイトカインを分泌する免疫細胞、例えばマクロファージ、好中球およびT細胞の動員を誘導する。筋線維芽細胞はその収縮機能による創傷閉鎖を誘導し、再上皮化および組織再建を媒介するECM構成要素を分泌する。正常状態では、この過程は、エフェクター細胞およびECM構成要素の排除によって止まる。しかし繰り返し傷害を受けると、修復過程が、ECMの過剰な沈着と組織の不可逆的線維性リモデリングにつながる調節不全を起こす。特発性肺線維症(IPF)における筋線維芽細胞はアポトーシス過程に対して抵抗性であるらしく、これらの細胞は死ぬのではなく存続してさらなる線維形成を助長し、ECMの過剰な沈着の一因となる(Shimbori et al.,Curr.Opin.Pulm.Med.19,446-452(2013)(非特許文献12))。TGF-βおよびCTGFは線維形成の普遍的媒介因子であると広く考えられているが、それらの協奏的効果の基礎をなす正確な機序は今も不明である(A.Leask et al.,J.Biol.Chem.278,13008-13015(2003)(非特許文献13))。
【0005】
CTGFは、特発性肺線維症(IPF)、心臓線維症、肝臓線維症および腎臓線維症を患う患者の線維性組織において過剰発現することが見いだされている(Pan et al.,Eur.Respir.J.17,1220-1227(2001)(非特許文献14)、Chen et al.,Front.Cell Dev.Biol.8,1-17(2020))。ブレオマイシン誘導性肺線維症のマウスモデルおよびラットにおける放射線誘導性肺線維症でも、CTGF発現の役割が記載されている(Ponticos et al.,Arthritis Rheum.60,2142-2155(2009)(非特許文献15)、Wang et al.,Fibrogenesis Tissue Repair 4,4(2011)(非特許文献16)、Bickelhaupt,JNCI J.Natl.Cancer Inst.109,1-11(2017)(非特許文献17))。ここでは、モノクローナル抗体によるCTGFの遮断が、ラットにおける放射線誘導性肺リモデリングの過程を反転させた(Bickelhaupt,JNCI J.Natl.Cancer Inst.109,1-11(2017))。
【0006】
第2相臨床試験において、抗CTGFモノクローナル抗体FG-3019/パムレブルマブは、IPFを患う患者における疾患進行を減弱したことから、CTGFを標的にすることはIPFの治療選択肢になる可能性があることが証明された(Richeldi et al.,Lancet Respir.Med.8,25-33(2020)(非特許文献18))。IPFは、原因不明の深刻な致命的疾患であり、生存期間中央値は診断後3~5年である(Lederer et al.,N.Engl.J.Med.378,1811-1823(2018)(非特許文献19))。患者は、肺構造の線維性リモデリングおよびECMの過剰な沈着を起こし、それらが肺弾性の喪失、ガス交換の障害および最終的には臓器不全につながる。処置選択肢は限られ、2つしかないIPFのためのFDA承認薬、ニンテダニブおよびピルフェニドンは、肺機能の減退を減速することができるが、胃腸問題および他の薬物関連耐性問題ゆえに患者による忍容性が低く、それが多くの症例において処置の中断につながる(Galli et al.,Respirology 22,1171-1178(2017)(非特許文献20))。したがって、現行の標準医療処置で観察される副作用が少ない改良された安全性プロファイルを有しつつ肺機能の減退を効率よく減弱するIPFのための代替的処置選択肢には、高い医療ニーズがある。
【0007】
IPFだけでなく、CTGFは発がんにも役割を果たし、他のCCNタンパク質および腫瘍微小環境中の分子との相互作用に依存して、腫瘍の発生および転移と正または負に相関する(Shen et al.,Trends in Cancer,doi:10.1016/j.trecan.2020.12.001(2020)(非特許文献21))。CTGFは、乳がん、軟骨肉腫、内軟骨腫、神経膠腫、膵がん、甲状腺がん、肝内胆管癌、神経内分泌腫瘍および舌扁平上皮癌など数タイプのがんでは、発現が増加していく。CTGFを欠く黒色腫細胞株はマウスに注入されても肺における転移を形成できないことを示すことにより(Hutchenreuther et al.,J.Invest.Dermatol.135,2805-2813(2015)(非特許文献22))、また抗CTGFモノクローナル抗体FG-3019はヒト黒色腫細胞株の遊走の阻害をもたらすことから(Finger et al.,Oncogene 33,1093-1100(2014)(非特許文献23))、転移の形成におけるCTGFの明確な役割が証明されている。
【0008】
CTGFは糖尿病性網膜症および緑内障などの眼疾患の病理にも関与している。デュシェンヌ型筋ジストロフィー、および自己免疫疾患の一つ、全身性硬化症でも、CTGFの役割が記載されている(Chen et al.,Front.Cell Dev.Biol.8,1-17(2020))。
【0009】
CTGFは、急性COVID-19疾患の肺病理においても役割を果たしているかもしれない。重症COVID-19疾患の肺組織変化は、びまん性肺胞損傷(DAD)、ならびに既存の肺内皮への甚だしい損傷、ならびに肺組織における線維性変化と関連することが研究によって示されている(Wang et al.,JAMA-J Am Med Assoc.323(11):1061-1069(2020)(非特許文献24)、Mo et al,Eur Respir J.2020.doi:10.1183/13993003.01217-2020)(非特許文献25)。CTGFは、その明確な線維化促進機能だけでなく、内皮細胞機能および血管新生の調節におけるその関与にも基づいて、これらの過程のいくつかに直接関与するのかもしれない(Brigstock,Angiogenesis 5,153-165(2002)(非特許文献26))。さらにまた、急性COVID-19疾患を処置するための再生抗線維化剤(regenerative,antifibrotic agent)の使用は、重要な役割を果たすかもしれない。なぜなら、重度の疾患を持つ患者は、線維症の前兆として線維症関連器質化肺炎から急性肺損傷まで、線維性組織変化のさまざまな徴候を示したからである(Shi et al.,Lancet Infect Dis.20(4):425-434(2020)(非特許文献27))。
【0010】
抗CTGF抗体パムレブルマブは、現在、2つの臨床試験において、急性COVID-19患者で試験されている。第2相試験では、入院患者における機械的換気の必要に対する、この抗体の全身性投与の効果が調べられる(NCT04432298)。さらなる第3相試験では、血液酸素化に対する効果および入院患者の侵襲的機械換気の必要に対する効果も調べられる(EudraCT番号:2020-001472-14)。加えて、肺組織損傷からのさらなる回復に対する長期効果を調べるために、急性COVID-19疾患に続いて間質性肺疾患の徴候を示す患者におけるさらなる第2相臨床試験が計画される。
【0011】
細胞外マトリックスの構成要素としてのCTGFの役割ゆえに、ヒトCTGFに結合してCTGFが媒介する応答を遮断し、線維性疾患およびがんを含むさまざまな疾患の治療薬になる可能性がある化合物には、長く望まれながらも充足されていないニーズがある。さらにまた、肺線維症などの間質性肺疾患の処置に使用される吸入可能な化合物にも、充足されていないニーズがある。線維化した肺ではCTGFの高発現が認められるので、吸入投与経路による肺送達に適した、CTGFを標的とする化合物が望まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Ramazani et al.,Matrix Biol.68-69,44-66(2018)
【非特許文献2】Holbourn et al.,Trends Biochem.Sci.33,461-473(2008)
【非特許文献3】Kubota et al.,Clin.Sci.128,181-196(2014)
【非特許文献4】Leask,J.Cell Commun.Signal.7(3):203-205(2013)
【非特許文献5】Uhlen et al.,Science 347(6220):1260419(2015)
【非特許文献6】Bradham et al.,J.Cell Biol.114,1285-1294(1991)
【非特許文献7】Igarashi et al.,Mol.Biol.Cell 4,637-645(1993)
【非特許文献8】Lau,J.Cell Commun.Signal.10,121-127(2016)
【非特許文献9】Abreu et al.,Nat.Cell Biol.4,599-604(2002)
【非特許文献10】Chen et al.,Front.Cell Dev.Biol.8,1-17(2020)
【非特許文献11】Wynn,J.Exp.Med.208,1339-1350(2011)
【非特許文献12】Shimbori et al.,Curr.Opin.Pulm.Med.19,446-452(2013)
【非特許文献13】A.Leask et al.,J.Biol.Chem.278,13008-13015(2003)
【非特許文献14】Pan et al.,Eur.Respir.J.17,1220-1227(2001)
【非特許文献15】Arthritis Rheum.60,2142-2155(2009)
【非特許文献16】Wang et al.,Fibrogenesis Tissue Repair 4,4(2011)
【非特許文献17】Bickelhaupt,JNCI J.Natl.Cancer Inst.109,1-11(2017)
【非特許文献18】Richeldi et al.,Lancet Respir.Med.8,25-33(2020)
【非特許文献19】Lederer et al.,N.Engl.J.Med.378,1811-1823(2018)
【非特許文献20】Galli et al.,Respirology 22,1171-1178(2017)
【非特許文献21】Shen et al.,Trends in Cancer,doi:10.1016/j.trecan.2020.12.001(2020)
【非特許文献22】Hutchenreuther et al.,J.Invest.Dermatol.135,2805-2813(2015)
【非特許文献23】Finger et al.,Oncogene 33,1093-1100(2014)
【非特許文献24】Wang et al.,JAMA-J Am Med Assoc.323(11):1061-1069(2020)
【非特許文献25】Mo et al,Eur Respir J.2020.doi:10.1183/13993003.01217-2020)
【非特許文献26】Brigstock,Angiogenesis 5,153-165(2002)
【非特許文献27】Shi et al.,Lancet Infect Dis.20(4):425-434(2020)
【発明の概要】
【0013】
II. 定義
以下のリストでは、本明細書全体を通して使用される用語、語句および略号を定義する。本明細書において列挙され定義される用語はすべて、あらゆる文法形を包含するものとする。
【0014】
別段の指定がある場合を除き、本明細書にいう「結合組織増殖因子」または「CTGF」は、ヒトCTGF(huCTGF)を意味する。ヒトCTGFは、UniProt P29279(2021年2月10日のバージョン197)によって規定される完全長タンパク質、そのフラグメントまたはそのバリアントを意味する。ヒトCTGFはCTGF遺伝子によってコードされる。CTGFは、細胞間コミュニケーションネットワーク因子(cellular communication network factor)2(CCN2)としても公知である。いくつかの特定態様では、非ヒト種のCTGF、例えばカニクイザルCTGFおよびマウスCTGFが使用される。
【0015】
本明細書にいう「結合アフィニティ」とは、本開示の生体分子(例えばポリペプチドまたはタンパク質)(例えばリポカリンムテイン、抗体、融合タンパク質、または他の任意のペプチドもしくはタンパク質)の、選択された標的に結合する(そして複合体を形成する)能力を表す。結合アフィニティは、当業者に公知のいくつかの方法によって、例えば限定するわけではないが蛍光滴定、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)に基づくアッセイ、例えば直接ELISAおよび競合ELISA、熱量測定法、例えば等温滴定熱量測定(isothermal titration calorimetry:ITC)および表面プラズモン共鳴(SPR)などといった方法によって、測定される。これらの方法は当技術分野では確立されており、本明細書には、そのような方法のいくつかの例を、さらに記載する。それにより、結合アフィニティは、そのような方法を使って測定される解離定数(KD)、50%有効濃度(EC50)または50%阻害濃度(IC50)の値として報告される。低いKD値、EC50値またはIC50値は、良好な(高い)結合能(アフィニティ)を表す。
【0016】
本明細書において使用される「検出する」、「検出」、「検出可能な」または「検出すること」という用語は、量的レベルでも、質的レベルでも、またそれらの組合せでも理解される。したがってこれは、本開示の生体分子に対して行われる定量的、半定量的および定性的な測定を包含する。
【0017】
本明細書にいう「検出可能なアフィニティ」とは、一般に、KD値、EC50値またはIC50値によって報告される生体分子とその標的との間の結合能力を意味し、最大でも約10-5M以下である。10-5Mより高いKD値、EC50値またはIC50値によって報告される結合アフィニティは、一般的には、ELISAおよびSPRなどといった普通の方法ではもはや測定可能でなく、それゆえにその重要性は二次的でしかない。したがって「検出可能なアフィニティ」とは、ELISAまたはSPRによって、好ましくはSPRによって、決定されるKD値が、約10-5M以下であることを指しうる。
【0018】
本開示の生体分子とその標的との間の複合体形成は、それぞれの標的の濃度、競合物質の存在、使用される緩衝系のpHおよびイオン強度、結合アフィニティの決定に使用される実験方法(例えば蛍光滴定、競合的ELISA(competitive ELISA)(競合ELISA(competition ELISA)ともいう)、および表面プラズモン共鳴)、さらには実験データの評価に使用される数学的アルゴリズムなど、多種多様な因子の影響を受けることに留意されたい。
【0019】
それゆえに、KD値、EC50値またはIC50値によって報告される結合アフィニティは、方法および実験設定に依存して、ある一定の実験的範囲内で変動しうることは、当業者には明白である。これは、例えばELISA(直接ELISAまたは競合ELISAを含む)によって決定されたか、SPRによって決定されたか、または別の方法によって決定されたかに依存して、測定されたKD値、EC50値またはIC50値にはわずかな変動、すなわち許容差範囲がありうることを意味する。
【0020】
本明細書にいう「に対して特異的」、「特異的結合」、「特異的に結合する」または「結合特異性」とは、ある生体分子の、所望の標的(例えばCTGF)と1つまたは複数のリファレンス標的(例えばヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン)とを区別する能力に関する。そのような特異性は、絶対的ではなく相対的な特性であり、例えばSPR、ウェスタンブロット、ELISA、蛍光活性化細胞選別(FACS)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、電気化学ルミネセンス(ECL)、イムノラジオメトリックアッセイ(IRMA)、免疫組織化学(IHC)およびペプチドスキャンを使って決定することができると理解される。
【0021】
CTGFに結合する本開示のリポカリンムテインに関連して本明細書において使用される場合、「に特異的」、「特異的結合」、「特異的に結合する」または「結合特異性」という用語は、そのリポカリンムテインが、本明細書に記載するとおり、CTGFに結合し、それと反応し、またはそれを指向するが、他のタンパク質には本質的に結合しないことを意味する。「別のタンパク質」という用語は、CTGFではなく、CTGFと近縁または相同であるタンパク質でもない、任意のタンパク質を包含する。ただし、ヒト以外の種からのCTGF、ならびにCTGFのフラグメントおよび/またはバリアントが、「別のタンパク質」という用語によって除外されることはない。「本質的に結合しない」という用語は、本開示のリポカリンムテインが、別のタンパク質にはCTGFよりも低い結合アフィニティでしか結合しないこと、すなわち30%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、特に好ましくは9、8、7、6または5%未満の交差反応性を示すことを意味する。リポカリンムテインが上に定義したように特異的に反応するかどうかは、なかんずく本開示のリポカリンムテインとCTGFとの反応を、該リポカリンと(1種または複数種の)別のタンパク質との反応と比較することなどによって、容易に試験することができる。
【0022】
本明細書において使用される「リポカリン」という用語は、円柱状のβプリーツシート超二次構造領域を有する、重量がおよそ18~20kDaの単量体タンパク質であって、前記円柱状のβプリーツシート超二次構造領域は複数のβストランド(好ましくはA~Hと呼ばれる8本のβストランド)を含み、それらが一端において複数の(好ましくは4つの)ループによってペアワイズに接続されることでリガンド結合ポケットを構成しリガンド結合ポケットへの入口を規定しているものを指す。好ましくは、本開示において使用されるリガンド結合ポケットを構成するループは、βストランドAとB、CとD、EとF、およびGとHの開放端を接続するループであり、ループAB、CD、EFおよびGHと称される。他の部分は剛直であるリポカリンスキャフォールドにおける、該ループのこの多様性が、サイズ、形状、および化学的特徴の異なる標的を収容する能力をそれぞれが有するリポカリンファミリーメンバー間での多種多様な結合様式を生じさせることは、確立されている(例えばSkerra,Biochim Biophys Acta,1482,337-50(2000)、Flower et al.,Biochim Biophys Acta,1482,9-24(2000)、Flower,Biochem J,318(Pt 1),1-14(1996)に総説がある)。リポカリンタンパク質ファミリーは、全体的配列保存率が並外れて低レベルであるにも関わらず(配列同一性は20%未満であることが多い)高度に保存された全体的フォールディングパターンを保って、広範なリガンドに結合するように自然進化したと理解される。さまざまなリポカリンにおける位置同士の対応も、当業者には周知である(例えば米国特許第7,250,297号参照)。本明細書にいう「リポカリン」の定義に包含されるタンパク質には、涙液リポカリン、リポカリン-2または好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン、アポリポタンパク質D、およびフォン・エブネル腺タンパク質が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0023】
別段の指定がある場合を除き、本明細書にいう「リポカリン-2」または「好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン」は、ヒトリポカリン-2(hLcn2)またはヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(hNGAL)を指し、さらに、成熟ヒトリポカリン-2または成熟ヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリンを指す。タンパク質を特徴づけるために使用される場合、「成熟」という用語は、シグナルペプチドを本質的に含まないタンパク質を意味する。本開示の「成熟hNGAL」は、シグナルペプチドを含まない成熟型の好中球ゼラチナーゼ関連リポカリンを指す。成熟hNGALは、SWISS-PROTデータバンクにアクセッション番号P80188として登録されている配列の残基21~198によって記載され、そのアミノ酸配列をSEQ ID NO:1に示す。
【0024】
本明細書にいう「ネイティブ配列」は、自然に存在する配列を有するか、または野生型配列を有する、タンパク質またはポリペプチドを指し、その調製方式は問わない。そのようなネイティブ配列タンパク質またはネイティブ配列ポリペプチドは、自然から単離するか、または他の手段によって、例えば組換え法または合成法などによって生産することができる。
【0025】
「ネイティブ配列リポカリン」とは、自然由来の対応するポリペプチドと同じアミノ酸配列を有するリポカリンを指す。したがって、ネイティブ配列リポカリンは、任意の生物、特に哺乳動物からの、それぞれの天然(野生型)リポカリンのアミノ酸配列を有することができる。リポカリンに関連して使用される場合、「ネイティブ配列」という用語は、リポカリンの天然の切断型または分泌型、リポカリンの天然のバリアント型、例えば選択的スプライス型および天然のアレルバリアントを、特に包含する。用語「ネイティブ配列リポカリン」と「野生型リポカリン」は、本明細書では相互可換的に使用される。
【0026】
本明細書にいう「ムテイン」、「変異(mutated)」物(entity)(タンパク質であるか核酸であるかを問わない)または「変異体(mutant)」は、天然(野生型)のタンパク質または核酸と比較して、1つまたは複数のアミノ酸またはヌクレオチドの交換、欠失または挿入を指す。この用語には本明細書記載のムテインのフラグメントも含まれる。本開示は、円柱状のβプリーツシート超二次構造領域を有する本明細書記載のリポカリンムテインであって、前記円柱状のβプリーツシート超二次構造領域は8本のβストランドを含み、それらが一端において4つのループによってペアワイズに接続されることでリガンド結合ポケットを構成しリガンド結合ポケットへの入口を規定しており、前記4つのループのうちの少なくとも3つのループのそれぞれの少なくとも1つのアミノ酸がネイティブ配列リポカリンと比較して変異しているものを、明示的に包含する。本開示のリポカリンムテインは、好ましくは、本明細書に記載するようにCTGFに結合する機能を有する。
【0027】
本開示のリポカリンムテインに関連して本明細書において使用される「フラグメント」という用語は、完全長成熟hNGALまたはリポカリンムテインに由来するタンパク質またはポリペプチドであって、N末および/またはC末が切断されているもの、すなわちN末および/またはC末アミノ酸を少なくとも1つは欠くものを指す。そのようなフラグメントは、それが由来する成熟hNGALまたはリポカリンムテインの一次配列のうちの少なくとも10個またはそれ以上、例えば20個もしくは30個またはそれ以上の連続アミノ酸を含むことができ、通常は、成熟hNGALのイムノアッセイにおいて検出可能である。そのようなフラグメントは、最大2個、最大3個、最大4個、最大5個、最大10個、最大15個、最大20個、最大25個または最大30個(その間の数をすべて含む)のN末および/またはC末アミノ酸を欠きうる。フラグメントは、好ましくは、それが由来する成熟hNGALまたはリポカリンムテインの機能的フラグメントであると理解され、これは、そのフラグメントが、それが由来する成熟hNGALまたはリポカリンムテインの結合特異性、好ましくはCTGFに対する結合特異性を保っていることを意味する。具体的一例として、そのような機能的フラグメントは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列に対応する、少なくとも位置28~136のアミノ酸、好ましくは少なくとも位置13~157のアミノ酸を含みうる。
【0028】
本開示のリポカリンムテインの対応する標的CTGFに関して「フラグメント」とは、N末および/またはC末が切断されたCTGFを指すか、またはCTGFのタンパク質ドメインを指す。本明細書記載のCTGFのフラグメントは、本開示のリポカリンムテインによって認識されおよび/または結合されるという完全長CTGFの能力を保っている。具体的一例として、フラグメントは、CTGFの1つまたは複数のドメインを含むか、またはCTGFの1つもしくは複数のドメインから本質的になるか、またはCTGFの1つもしくは複数のドメインからなりうる。そのようなドメインは、CTGFのドメインのアミノ酸、例えばドメイン1(IGFBP、UniProtタンパク質ID P29279の残基27~98)、ドメイン2(VWFC、残基101~167)、ドメイン3(TSP1型、198~243)およびドメイン4(CTCK、残基256~330)の個々のまたは組み合わされたアミノ酸配列を含みうる。
【0029】
本明細書において使用される「バリアント」という用語は、アミノ酸配列またはヌクレオチド配列の置換、欠失、挿入および/または化学修飾などによる変異を含む、タンパク質またはポリペプチドの誘導体に関する。いくつかの態様において、そのような変異および/または化学修飾は、当該タンパク質またはペプチドの機能性を低減しない。そのような置換は保存的でありうる。すなわち、アミノ酸残基は、化学的に類似するアミノ酸残基で置き換えられる。保存的置換の例は、以下のグループのメンバー内での置き換えである:1)アラニン、セリンおよびスレオニン;2)アスパラギン酸およびグルタミン酸;3)アスパラギンおよびグルタミン;4)アルギニンおよびリジン;5)イソロイシン、ロイシン、メチオニンおよびバリン;ならびに6)フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファン。そのようなバリアントには、1つまたは複数のアミノ酸がそれぞれのD-立体異性体によって置換されているか、または20種の天然アミノ酸以外のアミノ酸、例えばオルニチン、ヒドロキシプロリン、シトルリン、ホモセリン、ヒドロキシリジン、ノルバリンなどで置換されているタンパク質またはポリペプチドが含まれる。そのようなバリアントには、例えば、N末および/またはC末において1つまたは複数のアミノ酸残基が付加または除去されたタンパク質またはポリペプチドも含まれる。一般にバリアントは、ネイティブ配列のタンパク質またはポリペプチドに対して、少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、95%または少なくとも約98%のアミノ酸配列同一性を有する。バリアントは、好ましくは、それが由来するタンパク質またはポリペプチドの生物学的活性、例えば同じターゲットへの結合を保っている。
【0030】
本開示のリポカリンムテインの対応するタンパク質リガンドCTGFに関して本明細書において使用される「バリアント」という用語は、CTGFのネイティブ配列(野生型CTGF)、例えば本明細書に記載するようにUniProt Protein ID P29279に登録されているCTGFとの比較で、1つまたは複数の、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、40、50、60、70もしくは80個またはそれ以上の、アミノ酸の置換、欠失および/または挿入をそれぞれ有する、CTGFまたはそのフラグメントに関する。CTGFバリアントは、それぞれ、野生型CTGF、例えば本明細書に記載するようにUniProt Protein ID P29279に登録されているCTGFに対して、好ましくは少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%または95%のアミノ酸配列同一性を有する。本明細書記載のCTGFバリアントは、本明細書において開示するCTGFに特異的なリポカリンムテインに結合する能力を保っている。
【0031】
リポカリンムテインに関して本明細書において使用される「バリアント」という用語は、配列が、置換、欠失および挿入を含む変異ならびに/または化学修飾を有する、本開示のリポカリンムテインまたはそのフラグメントに関する。本明細書記載のリポカリンムテインのバリアントは、それが由来するリポカリンムテインの生物学的活性、例えばCTGFへの結合を保っている。一般に、リポカリンムテインバリアントは、それが由来するリポカリンムテインに対して少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、95%、98%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0032】
本明細書において使用される「変異導入」という用語は、ポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列への変異の導入を指す。変異は、好ましくは、タンパク質またはポリペプチド配列の所与の位置に天然に存在するアミノ酸が改変されうるような、例えば少なくとも1つのアミノ酸によって置換されうるような、実験条件下で導入される。「変異導入」という用語は、1つまたは複数のアミノ酸の欠失または挿入による配列セグメントの長さの(付加的な)修飾も包含する。したがって、例えば選ばれた配列位置にある1つのアミノ酸が、一続きになった3つのアミノ酸で置き換えられて、ネイティブタンパク質またはネイティブポリペプチドのアミノ酸配列のそれぞれのセグメントの長さと比較して2つのアミノ酸残基が付加されたことになるのは、本開示の範囲内である。そのような挿入または欠失は、本開示において変異導入の対象となりうる配列セグメントのいずれにおいても、互いに独立して導入されうる。本開示の例示的一態様では、ネイティブ配列リポカリンのループABに対応するアミノ酸配列セグメントに、挿入が導入されうる(国際特許出願WO 2005/019256参照。この特許出願は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。
【0033】
本明細書において使用される「ランダム変異導入」という用語は、前もって決定された変異(アミノ酸の改変)が、ある一定の配列位置に存在するのではなく、変異導入中に所定の配列位置に少なくとも2種のアミノ酸が、ある一定の確率で組み込まれうることを意味する。
【0034】
本明細書において使用される「配列同一性」または「同一性」という用語は、配列間の類似性または関係性を測る配列の一特性を表す。本開示において使用される「配列同一性」または「同一性」という用語は、本開示のポリペプチドの配列を問題の配列と(相同)アラインメントした後の、それら2つの配列のうちの長い方の残基数を基準とした、ペアごとの同一残基のパーセンテージを意味する。配列同一性は、同一アミノ酸残基の数を残基の総数で割り、その結果に100を掛けることによって測られる。
【0035】
本明細書において使用される「配列相同性」または「相同性」という用語は、その通常の意味を有し、相同なアミノ酸には、本開示のタンパク質またはポリペプチド(例えば本開示のリポカリンムテイン)の直鎖状アミノ酸配列において等価な位置にある同一アミノ酸および保存的置換とみなされるアミノ酸が含まれる。
【0036】
標準的なパラメータを使って配列相同性または配列同一性を決定するために利用することができる、例えばBLAST(Altschul et al.,Nucleic Acids Res,1997,25,3389-402)、BLAST2(Altschul et al.,J Mol Biol,1990,215,403-10)、およびSmith-Waterman(Smith and Waterman,J Mol Biol,1981,147,195-7)などのコンピュータプログラムは、当業者にはわかるであろう。配列相同性または配列同一性のパーセンテージは、本明細書では、例えばプログラムBLASTPバージョン2.2.5,2002年11月16日(Altschul et al.,1997)を使って決定することができる。この態様において、相同性のパーセンテージは、プロペプチド配列を含む全タンパク質配列または全ポリペプチド配列のアラインメントに基づき(行列:BLOSUM 62;ギャップコスト:11.1;カットオフ値は10-3に設定)、好ましくは野生型タンパク質スキャフォールドを、ペアワイズ比較におけるリファレンスとして使用する。これは、BLASTPプログラム出力に結果として示される「ポジティブ(positive)」(相同アミノ酸)の数を、プログラムがアラインメントのために選択したアミノ酸の総数で割ったパーセンテージとして計算される。
【0037】
具体的には、リポカリン(ムテイン)のアミノ酸配列が、野生型リポカリンのアミノ酸配列中の、ある一定の位置に関して、野生型リポカリンのそれと異なるかどうかを決定するために、当業者は、例えば手作業によるアラインメント、またはBLAST2.0(これはBasic Local Alignment Search Toolの略である)もしくはClustalWなどのコンピュータプログラム、または配列アラインメントを作成するのに適した他の任意の適切なプログラムを使ったアラインメントなど、当技術分野において周知の手段および方法を使用することができる。したがって、リポカリンの野生型配列が「対象配列」または「リファレンス配列」として役立ちうるのに対し、本明細書記載の野生型リポカリンとは異なるリポカリン(ムテイン)のアミノ酸配列は「クエリー配列」として役立つ。「野生型配列」、「リファレンス配列」および「対象配列」という用語は、本明細書では相互可換的に使用される。リポカリンの好ましい野生型配列は、SEQ ID NO:1に示すhNGALの配列である。
【0038】
「ギャップ」とは、アミノ酸の付加または欠失の結果であるアラインメント中の空白をいう。したがって、厳密に同じ配列である2つのコピーは100%の同一性を有するが、それほど高度には保存されていなくて、欠失、付加、または置き換えを有する配列は、それより程度の低い配列同一性を有しうる。
【0039】
本開示において使用される「位置」という用語は、本明細書において開示するアミノ酸配列内でのアミノ酸の位置、または本明細書において開示する核酸配列内でのヌクレオチドの位置を意味する。「対応する」または「対応」という用語が1つまたは複数のリポカリンムテインのアミノ酸配列位置との関連で本明細書において使用される場合、対応する位置は、先行するヌクレオチドまたはアミノ酸の数だけでは決定されないことを理解すべきである。したがって本開示によれば、所与のアミノ酸の絶対的位置は、(変異体または野生型)リポカリン中の他のどこかにあるアミノ酸の欠失または付加ゆえに、対応する位置から変動しうる。同様に本開示によれば、所与のヌクレオチドの絶対的位置も、ムテインまたは野生型リポカリンの5'-非翻訳領域(UTR)中の、例えばプロモーターおよび/もしくは他の任意の調節配列中の、または遺伝子領域(エクソンおよびイントロンを含む)中の、他のどこかにある欠失または追加ヌクレオチドゆえに、対応する位置から変動しうる。
【0040】
したがって、本開示による「対応する位置」に関して、ヌクレオチドまたはアミノ酸の絶対的位置は、隣接ヌクレオチドまたは隣接アミノ酸とは異なる場合もありうるが、交換、除去または付加されている場合もあるそれら隣接ヌクレオチドまたは隣接アミノ酸が、同じ1つまたは複数の「対応する位置」に含まれる場合もありうると理解することが好ましい。
【0041】
加えて、本開示によるリファレンス配列に基づくリポカリンムテイン中の対応する位置については、リポカリン間で高度に保存された全体的フォールディングパターンに照らして当業者には理解されるとおり、リポカリンムテインのヌクレオチドまたはアミノ酸の位置は、たとえそれらの絶対的位置番号が異なりうるとしても、リファレンスリポカリン(野生型リポカリン)または別のリポカリンムテイン中の他のどこかにある位置と、構造的に対応することができると理解することが好ましい。
【0042】
本明細書では相互可換的に使用される「コンジュゲートする」、「コンジュゲーション」、「融合する」、「融合」または「連結された」という用語は、例えば限定するわけではないが遺伝子融合、化学的コンジュゲーション、リンカーまたは架橋剤によるカップリング、および非共有結合的会合などの手段による、あらゆる形態の共有結合または非共有結合を介した、2つ以上のサブユニットの互いの接合を指す。
【0043】
本明細書において相互可換的に使用される「融合ポリペプチド」または「融合タンパク質」という用語は、2つ以上のサブユニットを含むポリペプチドまたはタンパク質を指す。いくつかの態様において、本明細書記載の融合ポリペプチドは2つ以上のサブユニットを含み、これらのサブユニットのうちの少なくとも1つはCTGFに結合する。いくつかの態様では、これらのサブユニットのうちの少なくとも2つがCTGFに結合する。融合ポリペプチド内では、これらのサブユニットが共有結合または非共有結合によって連結されうる。好ましくは、融合ポリペプチドは、2つ以上のサブユニット間の翻訳融合物である。翻訳融合物は、あるサブユニットのコード配列をもう1つのサブユニットのコード配列と読み枠を合わせて遺伝子操作することによって作成しうる。両サブユニットの間には、リンカーをコードするヌクレオチド配列を介在させうる。ただし、本開示の融合ポリペプチドのサブユニットは、化学的コンジュゲーションによって連結されていてもよい。融合ポリペプチドを形成するサブユニットは、典型的には、互いに、次のように連結される:あるサブユニットのC末を別のサブユニットのN末に、またはあるサブユニットのC末を別のサブユニットのC末に、またはあるサブユニットのN末を別のサブユニットのN末に、またはあるサブユニットのN末を別のサブユニットのC末に連結。融合ポリペプチドのサブユニットは任意の順序で連結することができ、構成サブユニットのいずれかを2つ以上含んでもよい。サブユニットのうちの1つまたは複数が2つ以上のポリペプチド鎖からなるタンパク質(複合体)の一部である場合、「融合ポリペプチド」という用語は、融合された配列を含むポリペプチドおよびそのタンパク質(複合体)の他のすべてのポリペプチド鎖を指すこともできる。
【0044】
本明細書において使用される場合、本明細書において開示する融合タンパク質/ポリペプチドの「サブユニット」という用語は、単独で安定した折りたたみ構造を形成することができ、かつ標的に対する結合モチーフを提供するというユニークな機能を規定する、単一のタンパク質または独立したポリペプチド鎖を指す。いくつかの態様において、好ましい本開示のサブユニットはリポカリンムテインである。
【0045】
本開示の融合タンパク質または融合ポリペプチドに含まれうる「リンカー」は、本明細書記載の融合ポリペプチドの2つ以上のサブユニットを互いに接合する。結合は共有結合または非共有結合であることができる。好ましい共有結合は、アミノ酸間のペプチド結合などのペプチド結合による。好ましいリンカーはペプチドリンカーである。したがって好ましい一態様において、リンカーは、1つまたは複数のアミノ酸、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20個またはそれ以上のアミノ酸を含む。本明細書には、グリシン-セリン(GS)リンカー、グリコシル化GSリンカー、およびプロリン-アラニン-セリンポリマー(PAS)リンカーなどといった、好ましいペプチドリンカーを記載する。いくつかの好ましい態様において、GSリンカーはSEQ ID NO:42に記載の(G4S)3であり、融合ポリペプチドのサブユニット同士を接合するために使用される。他の好ましいリンカーとして化学的リンカーが挙げられる。
【0046】
本明細書において使用される「アルブミン」という用語は、ヒト血清アルブミンまたはウシ血清アルブミンまたはラット血清アルブミンなど、あらゆる哺乳動物アルブミンを包含する。
【0047】
「試料」は、任意の対象から採取された生物学的試料と定義される。生物学的試料には、血液、血清、尿、糞便、精液、または腫瘍組織を含む組織が包含されるが、それらに限定されるわけではない。
【0048】
「対象」は脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトである。「哺乳動物」という用語は、本明細書では、哺乳動物に分類される任意の動物を指すために使用され、ヒト、家畜および農用動物、ならびに動物園動物、スポーツ動物、またはペット動物、例えばヒツジ、イヌ、ウマ、ネコ、ウシ、ラット、ブタ、サル、例えばカニクイザルなどを含むが、ここでは具体例をいくつか挙げただけで、それらに限定されるわけではない。好ましくは、本明細書にいう「哺乳動物」はヒトである。
【0049】
「有効量」とは、有益な結果または所望の結果を得るのに十分な量である。有効量は1回または複数回で投与することができる。
【0050】
本明細書にいう「抗体」には、全抗体またはその任意の抗原結合性フラグメント(すなわち「抗原結合部分」)もしくは単一の鎖が含まれる。全抗体とは、ジスルフィド結合によって相互に接続された少なくとも2つの重鎖(HC)と2つの軽鎖(LC)とを含む糖タンパク質を指す。各重鎖は、重鎖可変ドメイン(VHまたはHCVR)と重鎖定常領域(CH)とで構成される。重鎖定常領域は3つのドメインCH1、CH2およびCH3で構成される。各軽鎖は軽鎖可変ドメイン(VLまたはLCVR)と軽鎖定常領域(CL)とで構成される。軽鎖定常領域は1つのドメインCLで構成される。VH領域およびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる保存度の高い領域が間に挿入された相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域に、さらに細分することができる。各VHおよびVLは、アミノ末からカルボキシ末に向かって以下の順序で配置された3つのCDRと4つのFRとで構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は抗原(例えばCTGF)と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、任意で、宿主組織または宿主因子、例えば免疫系のさまざまな細胞(例えばエフェクター細胞)および古典的補体系の第1成分(C1q)などへの、免疫グロブリンの結合を媒介しうる。
【0051】
本明細書にいう抗体の「抗原結合性フラグメント」とは、抗原(例えばCTGF)に特異的に結合する能力を保っている、抗体の1つまたは複数のフラグメントを指す。抗体の抗原結合機能が完全長抗体のフラグメントによって履行されうることは示されている。抗体の「抗原結合性フラグメント」という用語に包含される結合性フラグメントの例としては、(i)VH、VL、CLおよびCH1ドメインからなるFabフラグメント、(ii)ヒンジ領域におけるジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含むF(ab')2フラグメント、(iii)VH、VL、CLおよびCH1ドメインならびにCH1ドメインとCH2ドメインの間の領域からなるFab'フラグメント、(iv)VHドメインとCH1ドメインとからなるFdフラグメント、(v)抗体の単一アームのVHドメインとVLドメインとからなる一本鎖Fvフラグメント、(vi)VHドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al.,Nature,1989,341,544-546)、および(vii)単離された相補性決定領域(CDR)または任意で合成リンカーによって結合されていてもよい2つ以上の単離されたCDRの組合せ、(viii)同じポリペプチド鎖中に短いリンカーを使って接続されたVHとVLとを含む「ダイアボディ」(例えば特許文書EP 404,097、WO 93/11161、およびHolliger et al.,Proc Natl Acad Sci U S A,1993,90(14)6444-6448参照)、(ix)VHまたはVLだけを含有する「ドメイン抗体フラグメント」であって、場合によっては、2つ以上のVH領域が共有結合で接合されているもの、が挙げられる。
【0052】
抗体は、ポリクローナルもしくはモノクローナル、異種、同種異系もしくは同系、またはそれらの修飾型(例えばヒト化、キメラまたは多重特異性)でありうる。また、抗体は完全にヒト抗体であってもよい。
【0053】
本明細書にいう「フレームワーク」または「FR」は、超可変領域(CDR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。
【0054】
「フラグメント結晶化可能領域(Fragment crystallizable region)」または「Fc領域」とは、免疫グロブリン重鎖のC末領域を指し、ネイティブ配列Fc領域とバリアントFc領域とを包含する。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界はさまざまでありうるが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常は、KabatのEUインデックスによるナンバリングで位置Cys226またはPro230のアミノ酸残基からそのカルボキシル末までと定義される(Johnson and Wu,Nucleic Acids Res,2000,28,214-8)。Fc領域のC末リジン(KabatのEUインデックスで残基447)は、例えば抗体の生産もしくは精製中に、または抗体の重鎖をコードする核酸を組換え操作することにより、除去されうる。したがって、インタクトな抗体の組成物は、すべてのK447が除去されている抗体集団、K447残基が一つも除去されていない抗体集団、およびK447残基を持つ抗体と持たない抗体の混合物を有する抗体集団を含みうる。本開示の抗体において使用するための適切なネイティブ配列Fc領域としては、ヒトIgG1、IgG2(IgG2A、IgG2B)、IgG3およびIgG4が挙げられる。
【0055】
「Fc受容体」または「FcR」とは抗体のFc領域に結合する受容体を指す。
【0056】
本明細書にいう「単離された抗体」とは、その自然環境を実質的に含まない抗体を指す。例えば、単離された抗体は、それが由来する細胞源または組織源からの細胞性の物質および他のタンパク質を実質的に含まない。「単離された抗体」とは、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を、さらに指す。一具体例において、CTGFに特異的に結合する単離された抗体は、CTGF以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない。ただし、CTGFに特異的に結合する単離された抗体は、他の抗原、例えば他の種からのCTGF分子との交差反応性を有しうる。
【0057】
本明細書にいう「モノクローナル抗体」とは、単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、ある特定エピトープに対して単一の結合特異性およびアフィニティを呈する。
【0058】
本明細書にいう「ヒト化抗体」は、ヒト以外の哺乳動物に由来する抗体のCDRと、ヒト抗体のFR領域および定常領域とからなる抗体を指す。ヒト化抗体は、免疫原性が低減しているので、治療剤における有効成分として役立ちうる。
【0059】
本明細書にいう「ヒト抗体」には、フレームワーク領域とCDR領域がどちらもヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体が含まれる。さらにまた、抗体が定常領域を含有する場合、その定常領域もヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する。本開示のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基(例えばインビトロでのランダム変異導入もしくは部位特異的変異導入によって導入される変異またはインビボでの体細胞変異によって導入される変異)を含みうる。ただし、本明細書において使用される「ヒト抗体」という用語は、マウスなど別の哺乳動物種の生殖細胞系に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列上に移植されている抗体を包含しないものとする。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1A】インビボでのブレオマイシン負荷後、14日目に、肺への局所投与によって送達されたCTGF標的化リポカリンムテインの抗線維化活性を、静脈内送達された抗CTGFモノクローナル抗体と比較して図解している。(A)は、対象あたり10個の個別組織切片の組織病理学的解析から得られた動物あたりの中央値スコアとしてのアシュクロフト(Ashcroft)スコアを表す。グラフには各処置群についての中央値も示されている。各処置群について、それぞれの媒体対照群の平均アシュクロフトスコアへの正規化によって、アシュクロフトスコアの平均減少率を算出した。統計解析は図に記載するように行った。
図1B】インビボでのブレオマイシン負荷後、14日目に、肺への局所投与によって送達されたCTGF標的化リポカリンムテインの抗線維化活性を、静脈内送達された抗CTGFモノクローナル抗体と比較して図解している。(B)は、コラーゲン1a1(Col1a1)タンパク質沈着を、肺組織切片の免疫組織化学とそれに続く定量的解析によって決定された動物あたりのCol1a1陽性肺表面積の%として表す。グラフには、処置群ごとに、解析された全動物の中央値も示されている。処置効果は、同じ投与経路のそれぞれの媒体対象処置動物の平均と比較した場合の、Col1a1陽性表面の減少%として示されている。統計解析は図に記載するように行った。
図2】TGF-b1によるオルガノイド形成障害に対するCTGF標的化リポカリンムテインの効果を図解している。CCL-206肺線維芽細胞をTGF-b1で48時間処置してから、初代マウスEpcam+陽性前駆細胞と、14日間、共培養した。オルガノイド形成に対する効果を解析するために、共培養細胞を、全期間にわたって、陽性対照としてのニンテダニブ(100nM)、CTGFに結合しないリポカリンムテインスキャフォールド対照(100nM)、SEQ ID NO:74の融合タンパク質(10nMおよび100nM)、および抗CTGFモノクローナル抗体(SEQ ID NO:60および61)で処置した。この図は、オルガノイド形成を、媒体処置対照に正規化した%として表している。1つのデータ点は、異なるマウスから単離されたEpcam+陽性細胞で作成した生物学的レプリケートを表す(n=8、-/+SEM)。
図3-1】hNGALムテインの配列アラインメント。
図3-2】図3-1の説明を参照のこと。
図3-3】図3-1の説明を参照のこと。
図3-4】図3-1の説明を参照のこと。
図3-5】図3-1の説明を参照のこと。
図4】免疫蛍光染色によるリポカリンスキャフォールドの検出によって測定した、TGFβ活性化正常ヒト肺線維芽細胞(NHLF)への、SEQ ID NO:23の例示的リポカリンムテインおよびSEQ ID NO:74の例示的融合タンパク質の結合を表す。シグナルをそれぞれの対照(NGALまたはNGAL-NGAL融合物)のシグナルに対して正規化した。
図5A】Malvern Spraytecおよび吸入セルと組み合わせた振動メッシュネブライザーで噴霧化した時の、SEQ ID NO:23のCTGF標的化リポカリンムテイン(A)およびSEQ ID NO:74の融合タンパク質(B)の液滴サイズ分布を表す。(A)では、生成した液滴の10%が1.4μm未満(Dv(10))であり、50%が3.5μm未満(Dv(50))であり、90%が8.6μm未満(Dv(90))である。
図5B】Malvern Spraytecおよび吸入セルと組み合わせた振動メッシュネブライザーで噴霧化した時の、SEQ ID NO:23のCTGF標的化リポカリンムテイン(A)およびSEQ ID NO:74の融合タンパク質(B)の液滴サイズ分布を表す。(B)では、生成した液滴の10%が1.8μm未満(Dv(10))であり、50%が4.6μm未満(Dv(50))であり、90%が10.5μm未満(Dv(90))である。
図6A】ブレオマイシン誘導性肺線維症を持つマウスの線維性肺組織における、CTGF標的化リポカリンムテインおよびそれらを含む融合タンパク質による効果的なターゲティングを図解している。(A)は、代表的な3D概観像を表し、表示の蛍光標識化合物のシグナルがグロースケール(glow scale)で示されている(スケールバー500μm)。
図6B】ブレオマイシン誘導性肺線維症を持つマウスの線維性肺組織における、CTGF標的化リポカリンムテインおよびそれらを含む融合タンパク質による効果的なターゲティングを図解している。(B)は、3Dスキャンした肺からの拡大された2D切片を表し、表示の蛍光標識化合物のシグナルがグロースケールで示されている(スケールバー150μm)。
図6C】ブレオマイシン誘導性肺線維症を持つマウスの線維性肺組織における、CTGF標的化リポカリンムテインおよびそれらを含む融合タンパク質による効果的なターゲティングを図解している。(C)は、肺の線維化領域における表示の化合物の総化合物蛍光シグナル(シグナル強度の3D定量)を表す。
図6D】ブレオマイシン誘導性肺線維症を持つマウスの線維性肺組織における、CTGF標的化リポカリンムテインおよびそれらを含む融合タンパク質による効果的なターゲティングを図解している。(D)は、表示の化合物による標的となった線維化領域の体積分率(化合物特異的シグナルを伴う肺の線維化領域の3D定量)を表す。
図7】SEQ ID NO:23の例示的リポカリンムテインとSEQ ID NO:60および61の抗CTGFモノクローナル抗体のPKプロファイルの比較を表す。(A)は、気管支肺胞洗浄液(BALF)、肺組織および血漿におけるリポカリンムテインのPK解析を表す。リポカリンムテイン(100μg/マウス)をマウスの肺に投与し、異なる区画における曝露を、2、4、8および24時間後に、ELISAによって測定した。(B)は、BALF、肺組織および血漿における抗体のPKプロファイルを表す。100μgの抗体を静脈内注入によってマウスに投与し、1、8、24および96時間後にELISAによって曝露を測定した。
【発明を実施するための形態】
【0061】
IV. 開示の詳細な説明
一局面において、本開示は、CTGFに結合するヒトリポカリンムテインと、その有用な応用を提供する。本開示は、本明細書記載のCTGF結合タンパク質を作製する方法、ならびにそのようなタンパク質を含む組成物も提供する。本開示のCTGF結合タンパク質ならびにその組成物は、試料中のCTGFを検出する方法、および対象中でCTGFを結合する方法において使用されうる。本開示によって提供される使用に付随するこれらの特徴を有するそのようなヒトリポカリンムテインは、今までに記載されたことがなかった。
【0062】
A. 本開示のリポカリンムテイン
リポカリンは、リガンドに結合するように自然に進化したタンパク質性結合分子である。リポカリンは、脊椎動物、昆虫、植物および細菌を含む多くの生物に見いだされる。リポカリンタンパク質ファミリーのメンバー(Pervaiz and Brew,1987,FASEB J 1(3):209-14)は、典型的には、小さな分泌タンパク質であり、単一のペプチド鎖を有する。それらは一連の異なる分子認識特性、すなわち、主として疎水性のさまざまな低分子(レチノイド、脂肪酸、コレステロール、プロスタグランジン、ビリベルジン、フェロモン、味物質、および匂い物質など)へのそれらの結合、および特異的細胞表面受容体へのそれらの結合、およびそれらの高分子複合体形成によって特徴づけられる。リポカリンは、以前は主に輸送タンパク質と分類されていたが、現在では、リポカリンがさまざまな生理学的機能を果たすことが明らかになっている。それらには、レチノール輸送、嗅覚、フェロモンシグナル伝達、およびプロスタグランジンの合成における役割が含まれる。リポカリンは、免疫応答の調節および細胞ホメオスタシスの媒介にも関係づけられている(例えばFlower et al.,2000 Biochim Biophys Acta,1482,9-24、Flower,1996 Biochem J,318(Pt 1),1-14に総説がある)。
【0063】
リポカリンが共有する全体的配列保存のレベルは異常に低く、多くの場合、配列同一性は20%未満である。それとは著しく対照的に、それらの全体的フォールディングパターンは高度に保存されている。リポカリン構造の中心的部分は、一周して閉じることで途切れなく水素結合したβバレルを形成する単一の8ストランド逆平行βシートからなる。このβバレルは中心に空洞を形成する。バレルの一端は、その底を横切るN末ペプチドセグメントおよびβストランドを接続する3つのペプチドループによって、立体的にブロックされている。βバレルの他端は溶媒に向かって開いており、4つのフレキシブルなペプチドループ(AB、CD、EFおよびGH)によって形成される標的結合部位を包含する。サイズ、形状、および化学的特徴が異なるターゲットを収容する能力をそれぞれが有する多種多様な結合様式を生じさせるのは、他の部分は剛直であるリポカリンスキャフォールドにおける、ループのこの多様性である(例えばSkerra,2000 Biochim Biophys Acta,1482,337-50、Flower et al.,2000,Biochim Biophys Acta,1482,9-24、Flower,1996 Biochem J,318(Pt 1),1-14)。
【0064】
本開示によるリポカリンムテインは、任意のリポカリンのムテインであってよい。ムテインの形で使用しうる適切なリポカリン(「リファレンスリポカリン」、「野生型リポカリン」、「リファレンスタンパク質スキャフォールド」または単に「スキャフォールド」と呼ぶ場合もある)の例としては、涙液リポカリン(リポカリン-1、Tlcまたはフォン・エブネル腺タンパク質)、レチノール結合タンパク質、好中球リポカリン型プロスタグランジンDシンターゼ、β-ラクトグロブリン、ビリン結合タンパク質(BBP)、アポリポタンパク質D(APO D)、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)、α2-ミクログロブリン関連タンパク質(A2m)、24p3/ウテロカリン(24p3)、フォン・エブネル腺タンパク質1(VEGP1)、フォン・エブネル腺タンパク質2(VEGP2)、および主要アレルゲンCan f1(ALL-1)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。特定の態様において、リポカリンムテインは、ヒト涙液リポカリン(hTlc)、ヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(hNGAL)、ヒトアポリポタンパク質D(hAPOD)およびオオモンシロチョウ(Pieris brassicae)のビリン結合タンパク質からなるリポカリン群から誘導される。
【0065】
本開示によるリポカリンムテインのアミノ酸配列は、それが由来するリファレンス(または野生型)リポカリン、好ましくはhNGALに対して、他のリポカリンとの配列同一性よりも高い配列同一性を有する(上記も参照されたい)。この一般的状況において、本開示によるリポカリンムテインのアミノ酸配列は、対応するリファレンス(野生型)リポカリンのアミノ酸配列に、少なくとも実質的に類似している。ただし、アラインメントには、アミノ酸の付加または欠失の結果である(本明細書に定義する)ギャップが存在しうる。対応するリファレンス(野生型)リポカリンの配列に実質的に類似している本開示のリポカリンムテインのそれぞれの配列は、いくつかの態様において、対応するリポカリンの配列に対して少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも82%、少なくとも85%、少なくとも87%、または少なくとも90%の同一性、例えば少なくとも95%の同一性を有する。この点に関して、本開示のリポカリンムテインは、もちろん、野生型リポカリンと比較して、CTGFに結合する能力を当該リポカリンムテインに与える本明細書記載の置換を含有しうる。
【0066】
典型的には、本開示のリポカリンムテインは、野生型リポカリンまたはリファレンスリポカリン、例えばhNGALとの比較で、リガンド結合ポケットを構成しリガンド結合ポケットの入口を規定する開口端にある4つのループ(上記参照)に、1つまたは複数の変異アミノ酸残基を含有する。上で説明したとおり、これらの領域は、所望の標的に対するリポカリンムテインの結合特異性を決定するのに不可欠である。本開示のリポカリンムテインは、前記4つのループ以外の領域にも変異アミノ酸残基を含有しうる。いくつかの態様において、本開示のリポカリンムテインは、リポカリンの閉鎖端においてβストランドを接続する3つのペプチドループ(BC、DEおよびFGと呼ばれるもの)のうちの1つまたは複数に、1つまたは複数の変異アミノ酸残基を含有しうる。いくつかの特定態様において、涙液リポカリン、NGALまたはそのホモログのポリペプチドから誘導されたムテインは、N末領域中ならびに/または天然リポカリン結合ポケットとは反対側に位置するβバレル構造の端部に配された3つのペプチドループBC、DEおよびFG中の任意の配列位置に、1、2、3もしくは4個またはそれ以上の変異アミノ酸残基を有しうる。いくつかのさらなる態様において、涙液リポカリン、NGALまたはそのホモログから誘導されるムテインは、涙液リポカリン、NGALまたはそのホモログの野生型配列と比較して、βバレル構造の端部に配されたペプチドループDE中に変異アミノ酸残基を有さなくてもよい。
【0067】
本開示によるリポカリンムテインは、そのようなリポカリンムテインがCTGFに結合することができなければならないという条件の下で、対応するリファレンス(野生型)リポカリンのアミノ酸配列と比較して、1つまたは複数の、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20個またはそれ以上の、変異アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本開示のリポカリンムテインは、対応するリファレンス(野生型)リポカリンのネイティブアミノ酸残基がアルギニン残基で置換されている、少なくとも2つ、例えば2、3、4もしくは5個またはそれ以上の変異アミノ酸残基を含む。
【0068】
リポカリンムテインがCTGFに結合するというその能力を保ち、かつ/またはリファレンス(野生型)リポカリン、例えば成熟hNGALのアミノ酸配列に対して、少なくとも60%、例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%またはそれ以上の同一性である配列同一性を有する限り、置換、欠失および挿入を含む任意のタイプおよび数の変異が想定される。
【0069】
いくつかの態様において、置換は保存的置換である。他のいくつかの態様において、置換は非保存的置換、または以下の例示的置換からの1つもしくは複数である。
【0070】
具体的には、リポカリンムテインのアミノ酸配列が、リファレンス(野生型)リポカリンのアミノ酸配列中の、ある一定の位置に関して、リファレンス(野生型)リポカリンのそれと異なるかどうかを決定するために、当業者は、例えば手作業によるアラインメント、またはBLAST2.0(これはBasic Local Alignment Search Toolの略である)もしくはClustalWなどのコンピュータプログラム、または配列アラインメントを作成するのに適した他の任意の適切なプログラムを使ったアラインメントなど、当技術分野において周知の手段および方法を使用することができる。したがって、リファレンス(野生型)リポカリンのアミノ酸配列が「対象配列」または「リファレンス配列」として役立ちうるのに対し、リポカリンムテインのアミノ酸配列は「クエリー配列」として役立つ(上記も参照されたい)。
【0071】
保存的置換とは、一般的には、以下の置換である(ここでは、変異を受けるアミノ酸と、それに続いて、保存的であると解釈することができる1つまたは複数の置換が列挙されている):Ala→Gly、SerまたはVal;Arg→Lys;Asn→GlnまたはHis;Asp→Glu;Cys→Ser;Gln→Asn;Glu→Asp;Gly→Ala;His→Arg、AsnまたはGln;Ile→LeuまたはVal;Leu→IleまたはVal;Lys→Arg、GlnまたはGlu;Met→Leu、TyrまたはIle;Phe→Met、LeuまたはTyr;Ser→Thr;Thr→Ser;Trp→Tyr;Tyr→TrpまたはPhe;Val→IleまたはLeu。他の置換も許容され、それらは実験的に決定することができるか、または他の公知の保存的もしくは非保存的置換に一致しうる。さらなる指針として、以下の8つのグループは、それぞれが、互いにとっての保存的置換を規定すると典型的に解釈することができるアミノ酸を含んでいる:
a. アラニン(Ala)、グリシン(Gly);
b. アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu);
c. アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln);
d. アルギニン(Arg)、リジン(Lys);
e. イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、メチオニン(Met)、バリン(Val);
f. フェニルアラニン(Phe)、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp);
g. セリン(Ser)、スレオニン(Thr);および
h. システイン(Cys)、メチオニン(Met)。
【0072】
そのような保存的置換が生物学的活性の変化をもたらすのであれば、例えば以下のような、またはアミノ酸クラスに関してさらに後述するような、より実質的な変化を導入して、その産物を所望の特徴についてスクリーニングしてもよい。そのようなより実質的な変化の例は、Ala→LeuまたはIle;Arg→Gln;Asn→Asp、Lys、ArgまたはHis;Asp→Asn;Cys→Ala;Gln→Glu;Glu→Gln;His→Lys;Ile→Met、AlaまたはPhe;Leu→AlaまたはMet;Lys→Asn;Met→Phe;Phe→Val、IleまたはAla;Trp→Phe;Tyr→ThrまたはSer;Val→Met、PheまたはAlaである。
【0073】
いくつかの態様において、リポカリン(ムテイン)の物理的および生物学的特性の実質的改変は、(a)置換領域における例えばシートコンフォメーションまたはらせんコンフォメーションなどとしてのポリペプチド主鎖の構造の維持、(b)標的部位における分子の電荷もしくは疎水性の維持、または(c)側鎖の嵩高さの維持に及ぼすその効果が著しく異なる置換を選択することによって達成される。
【0074】
天然残基は、共通する側鎖の特性に基づいてグループ分けすることができる:(1)疎水性:メチオニン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン;(2)中性親水性:システイン、セリン、スレオニン;(3)酸性:アスパラギン酸、グルタミン酸;(4)塩基性:ヒスチジン、リジン、アルギニン;(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:グリシン、プロリン;および(6)芳香族:トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン。非保存的置換は、これらのクラスの一つのメンバーを別のクラスのメンバーと交換することを必然的に伴うだろう。
【0075】
各リポカリンの適正なコンフォメーションの維持に関与していないシステイン残基はいずれも、その分子の酸化安定性を改良し異常な架橋を防ぐために、一般的にはセリンで、置換しうる。逆に、リポカリンには、その安定性を改良するために、システイン結合を加えてもよい。
【0076】
B. 本開示のCTGF特異的リポカリンムテイン
上記のとおり、リポカリンは、その超二次構造、すなわち4つのループにより一端においてペアワイズに接続されることで結合ポケットを規定している8つのβストランドを含む円柱状のβプリーツシート超二次構造領域によって規定されるポリペプチドである。本開示は、本明細書において具体的に開示するリポカリンムテインに限定されない。この点に関して、本開示は、4つのループにより一端においてペアワイズに接続されることで結合ポケットを規定している8つのβストランドを含む円柱状のβプリーツシート超二次構造領域を有するリポカリンムテインであって、前記4つのループのうちの少なくとも3つのそれぞれの少なくとも1つのアミノ酸が変異していて、CTGFに検出可能なアフィニティで結合するのに有効であるリポカリンムテインに関する。
【0077】
特定態様の一つにおいて、本明細書において開示するリポカリンムテインは、成熟ヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(hNGAL)のムテインである。成熟hNGALのムテインを本明細書では「hNGALムテイン」と呼ぶことがある。
【0078】
一局面において、本開示は、リファレンス(野生型)リポカリンから誘導される、好ましくは成熟hNGALから誘導される、リポカリンムテインであって、CTGFに検出可能なアフィニティで結合するものを数多く包含する。関連する一局面において、本開示は、CTGFに結合することによってCTGFの下流シグナル伝達経路を調節することができるさまざまなリポカリンムテインを包含する。この意味において、CTGFは、リファレンス(野生型)リポカリンの、好ましくはhNGALの、非天然標的とみなすことができ、ここで「非天然標的」とは、生理的条件下でリファレンス(野生型)リポカリンに結合しない物質を指す。リファレンス(野生型)リポカリンを、ある一定の配列位置における1つまたは複数の変異で工学的に操作することによって、非天然標的であるCTGFに対する高いアフィニティおよび高い特異性が可能であることを、本発明者らは実証した。いくつかの態様では、CTGFに結合することができるリポカリンムテインを生成させる目的で、野生型リポカリン上の、ある一定の配列位置をコードする1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12個またはそれ以上のヌクレオチドトリプレットにおいて、ヌクレオチドトリプレットの部分集合でこれらの位置における置換を行うことによって、ランダム変異導入を実行しうる。
【0079】
本開示のリポカリンムテインは、リファレンスリポカリンの、好ましくはhNGALの、直鎖状ポリペプチド配列に対応する1つまたは複数の配列位置におけるアミノ酸残基が、置換、欠失および挿入を含む変異を起こしていてもよい。好ましくは、リファレンスリポカリンの、好ましくはhNGALの、アミノ酸配列との比較で変異している本開示のリポカリンムテインのアミノ酸残基の数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20またはそれ以上、例えば25、30、35、40、45もしくは50であり、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または11は好ましく、9、10または11はさらに好ましい。ただし本開示のリポカリンムテインは依然としてCTGFに結合できることが好ましい。
【0080】
いくつかの態様において、本開示は、例えば成熟ヒトリポカリン2(hNGAL)の直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の位置41のIleなどといった1つまたは複数のアミノ酸残基が除去されている、上に定義したhNGALムテインを包含する。さらに、本開示のリポカリンムテインは、変異アミノ酸配列位置以外では、リファレンス(野生型)リポカリンの、好ましくはhNGALの、野生型(天然)アミノ酸配列を含みうる。
【0081】
いくつかの好ましい態様において、本開示のリポカリンムテインが持つ前記1つまたは複数の変異アミノ酸残基は、指定された標的への結合活性およびムテインのフォールディングを、少なくとも本質的に、阻止または妨害しない。置換、欠失および挿入を含むそのような変異は、確立された標準的方法を使って、DNAレベルで達成することができる(Sambrook and Russell,2001,Molecular cloning:a laboratory manual,Cold Spring Harbor,N.Y.,Cold Spring Harbor Laboratory Press)。いくつかの態様において、リファレンス(野生型)リポカリンの、好ましくはhNGALの、直鎖状ポリペプチド配列に対応する1つまたは複数の配列位置における変異アミノ酸残基は、ランダム変異導入により、リファレンスリポカリンの対応する配列位置をコードするヌクレオチドトリプレットをヌクレオチドトリプレットの部分集合で置換することによって導入される。
【0082】
いくつかの態様において、CTGFに検出可能なアフィニティで結合するリポカリンムテインは、ネイティブシステイン残基の、別のアミノ酸、例えばセリン残基による、アミノ酸置換を、少なくとも1つは含みうる。他のいくつかの態様において、CTGFに検出可能なアフィニティで結合するリポカリンムテインは、リファレンス(野生型)リポカリンの、好ましくはhNGALの、1つまたは複数のアミノ酸を置換する、1つまたは複数の非ネイティブシステイン残基を含みうる。さらにもう一つの特定態様において、本開示によるリポカリンムテインは、ネイティブアミノ酸の、システイン残基によるアミノ酸置換を、少なくとも2つは含み、これにより、1つまたは複数のシステイン架橋を形成する。いくつかの態様において、該システイン架橋は少なくとも2つのループ領域を接続しうる。これらの領域の定義は、本明細書では、Flower(1996)Biochem J,318(Pt 1),1-14、Flower(2000)Biochim Biophys Acta,1482,327-36およびBreustedt et al.(2005)J Biol Chem,280,484-93に従って使用される。
【0083】
一般に、本開示のリポカリンムテインは、成熟hNGALのアミノ酸配列(SEQ ID NO:1)に対して、およそ少なくとも70%、例えば少なくとも約80%、例えば少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有しうる。
【0084】
いくつかの態様において、本開示はCTGF結合性リポカリンムテインを提供する。これに関して、本開示は、検出可能なアフィニティで、好ましくは約10-5M以下のKDによって測定されるアフィニティで、(ヒト)CTGFに結合することができる1つまたは複数のリポカリンムテインを提供する。好ましいリポカリンムテインは、約500nM以下、約400nM以下、約300nM以下、約200nM以下、または約100nM以下のKDによって測定されるアフィニティでCTGFに結合することができる。いくつかの好ましいリポカリンムテインは、約90nM以下、約80nM以下、約70nM以下、約60nM以下、約50nM以下、約40nM以下、約30nM以下、約20nM以下、約10nM以下のKDによって測定されるアフィニティでCTGFに結合することさえできる。さらに好ましいリポカリンムテインは、約9nM以下、約8nM以下、約7nM以下、約6nM以下、約5nM以下、約4nM以下、約3nM以下、約2nM以下、約1nM以下、約0.9nM以下、約0.8nM以下、約0.7nM以下、約0.6nM以下、約0.5nM以下、約0.4nM以下、約0.3nM以下、約0.2nM以下、約0.1nM以下、約0.09nM以下、約0.08nM以下、約0.07nM以下、またはさらには約0.06nM以下のKDによって測定されるアフィニティでCTGFに結合することさえできる。いくつかの態様において、リポカリンムテインは、SEQ ID NO:60および61の抗CTGFモノクローナル抗体のKDよりも低いKDによって測定されるアフィニティで、CTGFに結合することができる。いくつかの本開示のCTGF結合性リポカリンムテインはカニクイザルCTGF(cyCTGF)と交差反応しうる。そのようなリポカリンムテインは、約200nM以下、約100nM以下、約90nM以下、約80nM以下、約70nM以下、約60nM以下、約50nM以下、約40nM以下、約30nM以下、約20nM以下、約10nM以下、約9nM以下、約8nM以下、約7nM以下、約6nM以下、約5nM以下、約4nM以下、約3nM以下、約2nM以下、約1nM以下、または約0.5nM以下のKDによって測定されるアフィニティで、カニクイザルCTGFに結合しうる。いくつかの本開示のCTGF結合性リポカリンムテインはマウスCTGF(mCTGF)と交差反応しうる。そのようなリポカリンムテインは、約200nM以下、約100nM以下、約90nM以下、約80nM以下、約70nM以下、約60nM以下、約50nM以下、約40nM以下、約30nM以下、約20nM以下、約10nM以下、約9nM以下、約8nM以下、約7nM以下、約6nM以下、約5nM以下、約4nM以下、約3nM以下、約2nM以下、約1nM以下、または約0.5nM以下のKDによって測定されるアフィニティで、マウスCTGFに結合しうる。いくつかの本開示のCTGF結合性リポカリンムテインはラットCTGF(rCTGF)と交差反応しうる。そのようなリポカリンムテインは、約200nM以下、約100nM以下、約90nM以下、約80nM以下、約70nM以下、約60nM以下、約50nM以下、約40nM以下、約30nM以下、約20nM以下、約10nM以下、約9nM以下、約8nM以下、約7nM以下、約6nM以下、約5nM以下、約4nM以下、約3nM以下、約2nM以下、約1nM以下、または約0.5nM以下のKDによって測定されるアフィニティで、ラットCTGFに結合しうる。そのようなアフィニティは、例えばSPR解析により、例えば本質的に実施例5に記載するように、決定することができる。
【0085】
本開示のリポカリンムテインまたは融合タンパク質は、約200nM以下、約100nM以下、約90nM以下、約80nM以下、約70nM以下、約60nM以下、約50nM以下、約40nM以下、約30nM以下、約20nM以下、約10nM以下、約9nM以下、約8nM以下、約7nM以下、約6nM以下、約5nM以下、約4nM以下、約3nM以下、約2nM以下、約1nM以下、または約0.5nM以下のEC50値で、CTGFに結合する能力を有しうる。EC50値は、例えばELISAにより、例えば本質的に実施例6に記載するように、決定することができる。あるいは、EC50値は、例えば均一系時間分解蛍光アッセイにより、例えば本質的に実施例7に記載するように決定することもできる。
【0086】
いくつかの本開示のCTGF結合性リポカリンムテインは、重鎖CDR配列GFTFSSYG(CDR1、SEQ ID NO:53)、IGTGGGT(CDR2、SEQ ID NO:54)および
、ならびに軽鎖CDR配列QGISSW(CDR1、SEQ ID NO:56)、AAS(CDR2)およびQQYNSYPPT(CDR3、SEQ ID NO:57);SEQ ID NO:58および59のVHおよびVL配列;ならびに/またはSEQ ID NO:60およびSEQ ID NO:61の重鎖配列および軽鎖配列を有する抗体と、CTGFの結合に関して競合することができ、または競合する。他のいくつかの本開示のCTGF結合性リポカリンムテインは、重鎖CDR配列GFTFSSYG(CDR1、SEQ ID NO:53)、IGTGGGT(CDR2、SEQ ID NO:54)および
、ならびに軽鎖CDR配列QGISSW(CDR1、SEQ ID NO:56)、AAS(CDR2)およびQQYNSYPPT(CDR3、SEQ ID NO:57);SEQ ID NO:58および59のVHおよびVL配列;ならびに/またはSEQ ID NO:60およびSEQ ID NO:61の重鎖配列および軽鎖配列を有する抗体と、CTGFの結合に関して競合しない。CTGFの結合に関する競合は、例えばSPR解析により、例えば本質的に実施例8に記載するように、決定することができる。
【0087】
いくつかの本開示のCTGF結合性リポカリンムテインは、CTGFの結合に関して、重鎖CDR配列GFTFSSYG(CDR1、SEQ ID NO:53)、IGTGGGT(CDR2、SEQ ID NO:54)および
、ならびに軽鎖CDR配列QGISSW(CDR1、SEQ ID NO:56)、AAS(CDR2)およびQQYNSYPPT(CDR3、SEQ ID NO:57);SEQ ID NO:58および59のVHおよびVL配列;ならびに/またはSEQ ID NO:60およびSEQ ID NO:61の重鎖配列および軽鎖配列を有する抗体の標的エピトープとオーバーラップしないCTGF上のエピトープに結合する。他のいくつかの本開示のCTGF結合性リポカリンムテインは、CTGFの結合に関して、重鎖CDR配列GFTFSSYG(CDR1、SEQ ID NO:53)、IGTGGGT(CDR2、SEQ ID NO:54)および
、ならびに軽鎖CDR配列QGISSW(CDR1、SEQ ID NO:56)、AAS(CDR2)およびQQYNSYPPT(CDR3、SEQ ID NO:57);SEQ ID NO:58および59のVHおよびVL配列;ならびに/またはSEQ ID NO:60およびSEQ ID NO:61の重鎖配列および軽鎖配列を有する抗体の標的エピトープとオーバーラップするCTGF上のエピトープに結合する。
【0088】
いくつかの本開示のCTGF結合性リポカリンムテインは、ドメイン1および2は含むがドメイン3および4を欠くCTGFのフラグメントに結合することができる。他のいくつかの本開示のCTGF結合性リポカリンムテインは、ドメイン1および2は含むがドメイン3および4を欠くCTGFのフラグメントに結合しないが、完全長CTGFには結合することができる。さまざまなドメインへの結合は、例えば、本質的に実施例9に記載するアッセイなどのELISAアッセイによって決定することができる。
【0089】
本開示のCTGF結合性リポカリンムテインは、好ましくは、CCNタンパク質ファミリーの他のメンバーとは交差反応しない。したがって本開示のCTGF結合性リポカリンは、(ヒト)CYR61(CCN1)、(ヒト)NOV(CCN3)、(ヒト)WISP-1(CCN4)、(ヒト)WISP-2(CCN5)および(ヒト)WISP-3(CCN6)からなる群より選択されるCCNタンパク質ファミリーの1つまたは複数のメンバーと交差反応しない。本開示のCTGF結合性リポカリンは、好ましくは、上述した他のCCNタンパク質ファミリーメンバーのいずれとも交差反応しない。CCNタンパク質ファミリーの他のメンバーとの交差反応性は、例えば、本質的に実施例10に記載するアッセイなどのELISAアッセイによって決定することができる。
【0090】
本開示のCTGF結合性リポカリンムテインはインビボで抗線維化効果を提供しうる。そのような抗線維化効果はアシュクロフトスコアによって表しうる。いくつかのCTGF結合性リポカリンムテインは、SEQ ID NO:60および61のリファレンス抗体と比べて同程度に低いかまたはそれより低い、アシュクロフトスコアの減少をもたらすことができる。上記に加えて、または上記に代えて、そのような抗線維化効果は、肺におけるコラーゲン1a1(Col1a1)沈着によって表しうる。いくつかのCTGF結合性リポカリンムテインは、SEQ ID NO:60および61のリファレンス抗体と比べて同程度に低いかまたはそれより低い、Col1a1沈着の程度をもたらすことができる。リファレンス抗体は好ましくは全身性に投与されるが、リポカリンムテインは好ましくは肺に局所投与される。そのような抗線維化効果は、例えば、肺線維症のブレオマイシンマウスモデルにおいて、例えば本質的に実施例11に記載するように、測定することができる。
【0091】
本開示のCTGF結合性リポカリンムテインはその結合特徴によって分類することができる。CTGF結合に関してSEQ ID NO:60および61に示される抗体と競合せず、かつCTGFのドメイン1および2だけを含むフラグメントに結合することができるhNGALムテインは、「N群」に属するとみなされる。理論に束縛されることは望まないが、N群のhNGALムテインはCTGFのドメイン1および/または2に結合すると考えられる。CTGF結合に関してSEQ ID NO:60および61に示される抗体と競合し、かつCTGFのドメイン1および2だけを含むフラグメントに結合することができるhNGALムテインは、「NP群」に属するとみなされる。理論に束縛されることは望まないが、NP群のhNGALムテインはCTGFのドメイン2に結合すると考えられる。CTGF結合に関してSEQ ID NO:60および61に示される抗体と競合せず、かつCTGFのドメイン1および2だけを含むフラグメントに結合しないが完全長CTGFには結合することができるhNGALムテインは、「C群」に属するとみなされる。理論に束縛されることは望まないが、C群のhNGALムテインはCTGFのドメイン3および/または4に結合すると考えられる。
【0092】
一局面において、本開示はCTGF結合性hNGALムテインを提供する。
【0093】
いくつかの態様において、そのようなhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の位置28、36、40、41、44、47、49、52、65、68、70、72、73、74、75、77、79、80、81、87、94、95、96、97、98、99、100、102、103、104、106、110、123、125、127、128、129、130、132、134および136に対応する1つまたは複数の位置に、変異アミノ酸残基を含有しうる。
【0094】
いくつかの態様において、hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の配列位置28、36、40、41、44、47、49、52、65、68、70、72、73、74、75、77、79、80、81、87、94、95、96、97、98、99、100、102、103、104、106、110、123、125、127、128、129、130、132、134および136に対応する1つまたは複数の配列位置に、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23もしくは24個またはそれ以上の変異アミノ酸残基を含むことができ、ここでは該ポリペプチドがCTGF、特にヒトCTGFに結合する。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の上述した位置のうちの1つまたは複数に、10個以上の変異アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の上述した位置のうちの1つまたは複数に、15個以上の変異アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の上述した位置のうちの1つまたは複数に、20個以上の変異アミノ酸残基を含む。
【0095】
いくつかの態様において、そのようなhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の位置28、36、40、41、47、49、52、65、68、70、72、73、77、79、81、87、94、96、100、103、106、110、125、127、132および134に対応する1つまたは複数の位置に、変異アミノ酸残基を含みうる。
【0096】
いくつかの態様において、hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の配列位置28、36、40、41、47、49、52、65、68、70、72、73、77、79、81、87、94、96、100、103、106、110、125、127、132および134に対応する1つまたは複数の配列位置に、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23もしくは24個またはそれ以上の変異アミノ酸残基を含むことができ、ここでは該ポリペプチドがCTGF、特にヒトCTGFに結合する。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の上述した位置のうちの1つまたは複数に、10個以上の変異アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の上述した位置のうちの1つまたは複数に、15個以上の変異アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の上述した位置のうちの1つまたは複数に、20個以上の変異アミノ酸残基を含む。
【0097】
いくつかの態様において、そのようなhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の位置28、36、40、41、44、47、49、52、65、70、72、73、74、75、77、79、80、81、87、94、96、98、99、100、103、104、106、123、125、127、128、129、132、134および136に対応する1つまたは複数の位置に、変異アミノ酸残基を含みうる。
【0098】
いくつかの態様において、hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の配列位置28、36、40、41、44、47、49、52、65、70、72、73、74、75、77、79、80、81、87、94、96、98、99、100、103、104、106、123、125、127、128、129、132、134および136に対応する1つまたは複数の配列位置に、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23もしくは24個またはそれ以上の変異アミノ酸残基を含むことができ、ここでは該ポリペプチドがCTGF、特にヒトCTGFに結合する。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の上述した位置のうちの1つまたは複数に、10個以上の変異アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の上述した位置のうちの1つまたは複数に、15個以上の変異アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の上述した位置のうちの1つまたは複数に、20個以上の変異アミノ酸残基を含む。
【0099】
いくつかの態様において、そのようなhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の位置28、40、41、44、47、49、52、65、70、72、73、74、75、77、79、87、94、96、98、99、100、103、104、106、125、127および134に対応する1つまたは複数の位置に、変異アミノ酸残基を含みうる。
【0100】
いくつかの態様において、hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の配列位置28、40、41、44、47、49、52、65、70、72、73、74、75、77、79、87、94、96、98、99、100、103、104、106、125、127および134に対応する1つまたは複数の配列位置に、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23もしくは24個またはそれ以上の変異アミノ酸残基を含むことができ、ここでは該ポリペプチドがCTGF、特にヒトCTGFに結合する。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の上述した位置のうちの1つまたは複数に、10個以上の変異アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の上述した位置のうちの1つまたは複数に、15個以上の変異アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の上述した位置のうちの1つまたは複数に、20個以上の変異アミノ酸残基を含む。
【0101】
いくつかの態様において、そのようなhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の位置28、40、41、44、47、49、52、65、70、72、73、74、75、77、79、87、94、96、98、99、100、103、104、106、125、127および134に対応する1つまたは複数の位置に、変異アミノ酸残基を含みうる。
【0102】
いくつかの態様において、hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の配列位置28、40、41、44、47、49、52、65、70、72、73、74、75、77、79、87、94、96、98、99、100、103、104、106、125、127および134に対応する1つまたは複数の配列位置に、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23もしくは24個またはそれ以上の変異アミノ酸残基を含むことができ、ここでは該ポリペプチドがCTGF、特にヒトCTGFに結合する。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の上述した位置のうちの1つまたは複数に、10個以上の変異アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の上述した位置のうちの1つまたは複数に、15個以上の変異アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の上述した位置のうちの1つまたは複数に、20個以上の変異アミノ酸残基を含む。
【0103】
いくつかの態様において、そのようなhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の位置28、36、40、41、47、49、52、65、68、70、72、73、77、79、81、87、94、95、96、97、98、99、100、102、103、104、106、123、127、128、129、130、132、134および136に対応する1つまたは複数の位置に、変異アミノ酸残基を含みうる。
【0104】
いくつかの態様において、hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の配列位置28、36、40、41、47、49、52、65、68、70、72、73、77、79、81、87、94、95、96、97、98、99、100、102、103、104、106、123、127、128、129、130、132、134および136に対応する1つまたは複数の配列位置に、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23もしくは24個またはそれ以上の変異アミノ酸残基を含むことができ、ここでは該ポリペプチドがCTGF、特にヒトCTGFに結合する。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の上述した位置のうちの1つまたは複数に、10個以上の変異アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の上述した位置のうちの1つまたは複数に、15個以上の変異アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の上述した位置のうちの1つまたは複数に、20個以上の変異アミノ酸残基を含む。
【0105】
いくつかの態様において、そのようなhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の位置28、36、40、41、49、52、65、68、70、72、73、77、79、81、87、96、99、100、102、103、104、106、123、127、128、129、130、132、134および136に対応する1つまたは複数の位置に、変異アミノ酸残基を含みうる。
【0106】
いくつかの態様において、hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の配列位置28、36、40、41、49、52、65、68、70、72、73、77、79、81、87、96、99、100、102、103、104、106、123、127、128、129、130、132、134および136に対応する1つまたは複数の配列位置に、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23もしくは24個またはそれ以上の変異アミノ酸残基を含むことができ、ここでは該ポリペプチドがCTGF、特にヒトCTGFに結合する。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の上述した位置のうちの1つまたは複数に、10個以上の変異アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の上述した位置のうちの1つまたは複数に、15個以上の変異アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の上述した位置のうちの1つまたは複数に、20個以上の変異アミノ酸残基を含む。
【0107】
いくつかの態様において、そのようなhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の位置28、36、40、41、47、49、52、65、68、70、72、73、77、79、81、87、94、95、96、97、98、99、100、102、103、104、106、127、132および134に対応する1つまたは複数の位置に、変異アミノ酸残基を含みうる。
【0108】
いくつかの態様において、hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の配列位置28、36、40、41、47、49、52、65、68、70、72、73、77、79、81、87、94、95、96、97、98、99、100、102、103、104、106、127、132および134に対応する1つまたは複数の配列位置に、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23もしくは24個またはそれ以上の変異アミノ酸残基を含むことができ、ここでは該ポリペプチドがCTGF、特にヒトCTGFに結合する。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の上述した位置のうちの1つまたは複数に、10個以上の変異アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の上述した位置のうちの1つまたは複数に、15個以上の変異アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の上述した位置のうちの1つまたは複数に、20個以上の変異アミノ酸残基を含む。
【0109】
いくつかの態様において、本開示によるリポカリンムテインは、ネイティブシステイン残基の、例えばセリン残基によるアミノ酸置換を、少なくとも1つは含みうる。いくつかの態様において、本開示によるhNGALムテインは、位置76および/または175のネイティブシステイン残基の、別のアミノ酸、例えばセリン残基によるアミノ酸置換を含む。これに関連して、システイン残基76とシステイン残基175とによって形成される野生型hNGALの構造的ジスルフィド結合(Breustedt,et al.,J Biol Chem,2005,280,484-93参照)の(それぞれのナイーブ核酸ライブラリーのレベルでの)除去が、安定にフォールディングされるだけでなく、所与の非天然標的に高いアフィニティで結合することもできるhNGALムテインを与えうることが見いだされている点に注目されたい。いくつかの態様において、構造的ジスルフィド結合の排除は、本開示のムテインにおける非天然ジスルフィド結合の生成または計画的導入を可能にし、それによってムテインの安定性を増加させるという、さらなる利点を提供しうる。ただし、CTGFに結合し、Cys76とCys175の間に形成されたジスルフィド架橋を有するhNGALムテインも、本開示の一部である。いくつかの態様において、本開示によるhNGALムテインは成熟hNGALの位置Cys87に変異を含みうる。例えばこのシステイン残基を、別のアミノ酸残基、例えばセリンで置き換えることができる。
【0110】
いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の位置Gln28に変異を含みうる。そのような変異は、BstXI制限部位を導入してクローニングを容易にしうるGln28→His変異でありうる。
【0111】
いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の位置Asn65に変異を含みうる。そのような変異は、Asn65→Asp、GlnまたはGlu変異、好ましくはAsn65→Asp変異でありうる。
【0112】
いくつかの態様において、本開示によるCTGF結合性hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の位置28、36、40、41、44、47、49、52、65、70、72、73、74、75、77、79、80、81、87、94、95、96、97、98、99、100、102、103、104、106、110、123、125、127、128、129、130、132、134および136に対応する1つまたは複数の位置に、以下の変異アミノ酸残基のうちの1つまたは複数を含む:_Gln28→His;Leu36→Arg、Lys、Ile、Val、MetまたはTrp;Ala40→Asn、Tyr、Lys、Phe、IleまたはVal;Ile41→Arg、Ile41の欠失、Gln、GlyまたはLys;Glu44→Thr、Ile、Asp、ValまたはPro;Asp47→Glu、Ser、Arg、GlnまたはTyr;Gln49→Pro、Ser、Ala、Phe、LeuまたはAla;Tyr52→Trp、Phe、GlyまたはSer;Asn65→Asp;Ser68→His、GlnまたはGlu;Leu70→His、Arg、GlnまたはVal;Arg72→Met、Leu、Ser、GluまたはAsp;Lys73→Thr、Gln、Ala、AsnまたはAsp;Lys74→GluまたはArg;Lys75→ArgまたはSer;Asp77→Arg、Lys、His、Ser、Val、IleまたはLeu;Trp79→Ile、Leu、ThrまたはVal;Ile80→Ser;Arg81→Asp、LysまたはGlu;Cys87→Ser;Leu94→Ile、Ala、Thr、Ser、Arg、HisまたはGlu;Gly95→Ser;Asn96→Ala、Ser、Tyr、Gln、AspまたはPro;Ile97→Tyr;Lys98→GlyまたはSer;Ser99→Asn、ValまたはArg;Tyr100→Gly、Arg、Ala、His、Phe、ProまたはSer;Gly102→ThrまたはArg;Leu103→Met、Gln、Ser、Phe、Leu、GluまたはTyr;Thr104→Tyr、Glu、ValまたはTrp;Tyr106→Pro、Ser、Thr、Gln、HisまたはAsp;Val110→Ile;Phe123→Trp、His、Ala、LeuまたはVal;Lys125→Trp、Ser、HisまたはAla;Ser127→Asn、Thr、Ile、Ala、Gln、Arg、Tyr、Trp、Phe、HisまたはGly;Gln128→Gly、LeuまたはPro;Asn129→Thr、AlaまたはSer;Arg130→GluまたはLeu;Tyr132→Trp、Thr、Ser、Phe、Ile、HisまたはVal;Lys134→Thr、Ala、Val、Asn、Phe、Trp、HisまたはGln;およびThr136→AlaまたはVal。いくつかの態様において、本開示によるhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、2つ以上の、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23もしくは24個またはそれ以上の、変異アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの10個以上を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの15個以上を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの20個以上を含む。
【0113】
いくつかの態様において、本開示によるCTGF結合性hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の位置28、36、40、41、44、47、49、52、65、68、70、72、73、74、75、77、79、80、81、87、94、95、96、97、98、99、100、102、103、104、106、110、123、125、127、128、129、130、132、134および136に対応する1つまたは複数の位置に、以下の変異アミノ酸残基のうちの1つまたは複数を含む:_Gln28→His;Leu36→Arg、Lys、Ile、Val、MetまたはTrp;Ala40→Asn、Tyr、Lys、Phe、IleまたはVal;Ile41→Arg、Ile41の欠失、Gln、GlyまたはLys;Glu44→Thr、Ile、Asp、ValまたはPro;Asp47→Glu、Ser、Arg、GlnまたはTyr;Gln49→Pro、Ser、Ala、Phe、LeuまたはAla;Tyr52→Trp、Phe、GlyまたはSer;Asn65→Asp;Ser68→His、GlnまたはGlu;Leu70→His、Arg、GlnまたはVal;Arg72→Met、Leu、Ser、GluまたはAsp;Lys73→Thr、Gln、Ala、AsnまたはAsp;Lys74→GluまたはArg;Lys75→ArgまたはSer;Asp77→Arg、Lys、His、Ser、Val、IleまたはLeu;Trp79→Ile、Leu、ThrまたはVal;Ile80→Ser;Arg81→Asp、LysまたはGlu;Cys87→Ser;Leu94→Ile、Ala、Thr、Ser、Arg、HisまたはGlu;Gly95→Ser;Asn96→Ala、Ser、Tyr、Gln、AspまたはPro;Ile97→Tyr;Lys98→GlyまたはSer;Ser99→Asn、ValまたはArg;Tyr100→Gly、Arg、Ala、His、Phe、ProまたはSer;Gly102→ThrまたはArg;Leu103→Met、Gln、Ser、Phe、GluまたはTyr;Thr104→Tyr、Glu、ValまたはTrp;Tyr106→Pro、Ser、Thr、Gln、HisまたはAsp;Val110→Ile;Phe123→Trp、His、Ala、LeuまたはVal;Lys125→Trp、Ser、HisまたはAla;Ser127→Asn、Thr、Ile、Ala、Gln、Arg、Tyr、Trp、Phe、HisまたはGly;Gln128→Gly、LeuまたはPro;Asn129→Thr、AlaまたはSer;Arg130→GluまたはLeu;Tyr132→Trp、Thr、Ser、Phe、Ile、HisまたはVal;Lys134→Thr、Ala、Val、Asn、Phe、Trp、HisまたはGln;およびThr136→AlaまたはVal。いくつかの態様において、本開示によるhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、2つ以上の、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23もしくは24個またはそれ以上の、変異アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの10個以上を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの15個以上を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの20個以上を含む。
【0114】
いくつかの態様において、本開示によるCTGF結合性hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の位置36、40、41、44、47、49、52、70、72、73、74、75、77、79、80、81、94、95、96、97、98、99、100、102、103、104、106、110、123、125、127、128、129、130、132、134および136に対応する1つまたは複数の位置に、以下の変異アミノ酸残基のうちの1つまたは複数を含む:Leu36→Arg、Lys、Ile、Val、MetまたはTrp;Ala40→Asn、Tyr、Lys、Phe、IleまたはVal;Ile41→Arg、Ile41の欠失、Gln、GlyまたはLys;Glu44→Thr、Ile、Asp、ValまたはPro;Asp47→Glu、Ser、Arg、GlnまたはTyr;Gln49→Pro、Ser、Ala、Phe、LeuまたはAla;Tyr52→Trp、Phe、GlyまたはSer;Ser68→His、GlnまたはGlu;Leu70→His、Arg、GlnまたはVal;Arg72→Met、Leu、Ser、GluまたはAsp;Lys73→Thr、Gln、Ala、AsnまたはAsp;Lys74→GluまたはArg;Lys75→ArgまたはSer;Asp77→Arg、Lys、His、Ser、Val、IleまたはLeu;Trp79→Ile、Leu、ThrまたはVal;Ile80→Ser;Arg81→Asp、LysまたはGlu;Leu94→Ile、Ala、Thr、Ser、Arg、HisまたはGlu;Gly95→Ser;Asn96→Ala、Ser、Tyr、Gln、AspまたはPro;Ile97→Tyr;Lys98→GlyまたはSer;Ser99→Asn、ValまたはArg;Tyr100→Gly、Arg、Ala、His、Phe、ProまたはSer;Gly102→ThrまたはArg;Leu103→Met、Gln、Ser、Phe、Leu、GluまたはTyr;Thr104→Tyr、Glu、ValまたはTrp;Tyr106→Pro、Ser、Thr、Gln、HisまたはAsp;Val110→Ile;Phe123→Trp、His、Ala、LeuまたはVal;Lys125→Trp、Ser、HisまたはAla;Ser127→Asn、Thr、Ile、Ala、Gln、Arg、Tyr、Trp、Phe、HisまたはGly;Gln128→Gly、LeuまたはPro;Asn129→Thr、AlaまたはSer;Arg130→GluまたはLeu;Tyr132→Trp、Thr、Ser、Phe、Ile、HisまたはVal;Lys134→Thr、Ala、Val、Asn、Phe、Trp、HisまたはGln;およびThr136→AlaまたはVal。いくつかの態様において、本開示によるhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、2つ以上の、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23もしくは24個またはそれ以上の、変異アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの10個以上を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの15個以上を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの20個以上を含む。
【0115】
いくつかの態様において、本開示によるCTGF結合性hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の位置36、40、41、44、47、49、52、68、70、72、73、74、75、77、79、80、81、94、95、96、97、98、99、100、102、103、104、106、110、123、125、127、128、129、130、132、134および136に対応する1つまたは複数の位置に、以下の変異アミノ酸残基のうちの1つまたは複数を含む:Leu36→Arg、Lys、Ile、Val、MetまたはTrp;Ala40→Asn、Tyr、Lys、Phe、IleまたはVal;Ile41→Arg、Ile41の欠失、Gln、GlyまたはLys;Glu44→Thr、Ile、Asp、ValまたはPro;Asp47→Glu、Ser、Arg、GlnまたはTyr;Gln49→Pro、Ser、Ala、Phe、LeuまたはAla;Tyr52→Trp、Phe、GlyまたはSer;Ser68→His、GlnまたはGlu;Leu70→His、Arg、GlnまたはVal;Arg72→Met、Leu、Ser、GluまたはAsp;Lys73→Thr、Gln、Ala、AsnまたはAsp;Lys74→GluまたはArg;Lys75→ArgまたはSer;Asp77→Arg、Lys、His、Ser、Val、IleまたはLeu;Trp79→Ile、Leu、ThrまたはVal;Ile80→Ser;Arg81→Asp、LysまたはGlu;Leu94→Ile、Ala、Thr、Ser、Arg、HisまたはGlu;Gly95→Ser;Asn96→Ala、Ser、Tyr、Gln、AspまたはPro;Ile97→Tyr;Lys98→GlyまたはSer;Ser99→Asn、ValまたはArg;Tyr100→Gly、Arg、Ala、His、Phe、ProまたはSer;Gly102→ThrまたはArg;Leu103→Met、Gln、Ser、Phe、GluまたはTyr;Thr104→Tyr、Glu、ValまたはTrp;Tyr106→Pro、Ser、Thr、Gln、HisまたはAsp;Val110→Ile;Phe123→Trp、His、Ala、LeuまたはVal;Lys125→Trp、Ser、HisまたはAla;Ser127→Asn、Thr、Ile、Ala、Gln、Arg、Tyr、Trp、Phe、HisまたはGly;Gln128→Gly、LeuまたはPro;Asn129→Thr、AlaまたはSer;Arg130→GluまたはLeu;Tyr132→Trp、Thr、Ser、Phe、Ile、HisまたはVal;Lys134→Thr、Ala、Val、Asn、Phe、Trp、HisまたはGln;およびThr136→AlaまたはVal。いくつかの態様において、本開示によるhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、2つ以上の、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23もしくは24個またはそれ以上の、変異アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの10個以上を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの15個以上を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの20個以上を含む。
【0116】
いくつかの態様において、本開示によるCTGF結合性hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の位置28、36、40、41、47、49、52、65、68、70、72、73、77、79、81、87、94、96、100、103、106、110、125、127、132および134に対応する1つまたは複数の位置に、以下の変異アミノ酸残基のうちの1つまたは複数を含む:Gln28→His;Leu36→ArgまたはLys;Ala40→Asn;Ile41→Arg、Ile41の欠失またはGln;Asp47→GluまたはSer;Gln49→Pro;Tyr52→Trp;Asn65→Asp;Ser68→His;Leu70→His;Arg72→Met、LeuまたはSer;Lys73→Thr;Asp77→ArgまたはLys;Trp79→IleまたはLeu;Arg81→Asp;Cys87→Ser;Leu94→IleまたはAla;Asn96→Ala;Tyr100→Gly;Leu103→Met;Tyr106→Pro;Val110→Ile;Lys125→Trp;Ser127→AsnまたはThr;Tyr132→Trp;およびLys134→Thr。いくつかの態様において、本開示によるhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、2つ以上の、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23もしくは24個またはそれ以上の、変異アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの10個以上を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの15個以上を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの20個以上を含む。そのようなhNGALムテインは、例えばSPRアッセイにおいて、例えば本質的に実施例8に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGF結合に関して、SEQ ID NO:60および61に示される抗体と競合しない。そのようなhNGALムテインは、好ましくは、例えばELISAアッセイにおいて、例えば本質的に実施例9に記載するように決定した場合に、CTGFのドメイン1および2だけを含むフラグメントに結合せず、一方、完全長CTGFには結合することができる。
【0117】
いくつかの態様において、本開示によるCTGF結合性hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の位置36、40、41、47、49、52、68、70、72、73、77、79、81、94、96、100、103、106、110、125、127、132および134に対応する1つまたは複数の位置に、以下の変異アミノ酸残基のうちの1つまたは複数を含む:Leu36→ArgまたはLys;Ala40→Asn;Ile41→Arg、Ile41の欠失またはGln;Asp47→GluまたはSer;Gln49→Pro;Tyr52→Trp;Ser68→His;Leu70→His;Arg72→Met、LeuまたはSer;Lys73→Thr;Asp77→ArgまたはLys;Trp79→IleまたはLeu;Arg81→Asp;Leu94→IleまたはAla;Asn96→Ala;Tyr100→Gly;Leu103→Met;Tyr106→Pro;Val110→Ile;Lys125→Trp;Ser127→AsnまたはThr;Tyr132→Trp;およびLys134→Thr。いくつかの態様において、本開示によるhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、2つ以上の、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23もしくは24個またはそれ以上の、変異アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの10個以上を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの15個以上を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの20個以上を含む。そのようなhNGALムテインは、例えばSPRアッセイにおいて、例えば本質的に実施例8に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGF結合に関して、SEQ ID NO:60および61に示される抗体と競合しない。そのようなhNGALムテインは、例えばELISAアッセイにおいて、例えば本質的に実施例9に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGFのドメイン1および2だけを含むフラグメントに結合せず、一方、完全長CTGFには結合することができる。
【0118】
いくつかの態様において、本開示によるCTGF結合性hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の位置28、36、40、41、44、47、49、52、65、70、72、73、74、75、77、79、80、81、87、94、96、98、99、100、103、104、106、123、125、127、128、129、132、134および136に対応する1つまたは複数の位置に、以下の変異アミノ酸残基のうちの1つまたは複数を含む:Gln28→His;Leu36→IleまたはVal;Ala40→TyrまたはLys;Ile41→Gly;Glu44→Thr、Ile、Asp、ValまたはPro;Asp47→Arg、GlnまたはTyr;Gln49→SerまたはAla;Tyr52→Phe;Asn65→Asp;Leu70→Arg;Arg72→Glu;Lys73→Gln、AlaまたはAsn;Lys74→GluまたはArg;Lys75→ArgまたはSer;Asp77→His、Lys、Ser、ValまたはIle;Trp79→Thr;Ile80→Ser;Arg81→Lys;Cys87→Ser;Leu94→Ala、Thr、Ser、ArgまたはHis;Asn96→Ser、TyrまたはGln;Lys98→Gly;Ser99→Asn;Tyr100→Arg、AlaまたはHis;Leu103→GlnまたはSer;Thr104→Tyr;Tyr106→SerまたはThr;Phe123→Trp、HisまたはAla;Lys125→Ser、HisまたはAla;Ser127→Ile、Thr、Ala、GlnまたはArg;Gln128→GlyまたはLeu;Asn129→ThrまたはAla;Tyr132→Thr、Ser、Phe、IleまたはHis;Lys134→Ala、Val、AsnまたはPhe;およびThr136→Ala。いくつかの態様において、本開示によるhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、2つ以上の、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23もしくは24個またはそれ以上の、変異アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの10個以上を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの15個以上を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの20個以上を含む。そのようなhNGALムテインは、例えばSPRアッセイにおいて、例えば本質的に実施例8に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGF結合に関して、SEQ ID NO:60および61に示される抗体と競合する。そのようなhNGALムテインは、例えばELISAアッセイにおいて、例えば本質的に実施例9に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGFのドメイン1および2だけを含むフラグメントに結合することができる。
【0119】
いくつかの態様において、本開示によるCTGF結合性hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の位置36、40、41、44、47、49、52、70、72、73、74、75、77、79、80、81、94、96、98、99、100、103、104、106、123、125、127、128、129、132、134および136に対応する1つまたは複数の位置に、以下の変異アミノ酸残基のうちの1つまたは複数を含む:Leu36→IleまたはVal;Ala40→TyrまたはLys;Ile41→Gly;Glu44→Thr、Ile、Asp、ValまたはPro;Asp47→Arg、GlnまたはTyr;Gln49→SerまたはAla;Tyr52→Phe;Leu70→Arg;Arg72→Glu;Lys73→Gln、AlaまたはAsn;Lys74→GluまたはArg;Lys75→ArgまたはSer;Asp77→His、Lys、Ser、ValまたはIle;Trp79→Thr;Ile80→Ser;Arg81→Lys;Leu94→Ala、Thr、Ser、ArgまたはHis;Asn96→Ser、TyrまたはGln;Lys98→Gly;Ser99→Asn;Tyr100→Arg、AlaまたはHis;Leu103→GlnまたはSer;Thr104→Tyr;Tyr106→SerまたはThr;Phe123→Trp、HisまたはAla;Lys125→Ser、HisまたはAla;Ser127→Ile、Thr、Ala、GlnまたはArg;Gln128→GlyまたはLeu;Asn129→ThrまたはAla;Tyr132→Thr、Ser、Phe、IleまたはHis;Lys134→Ala、Val、AsnまたはPhe;およびThr136→Ala。いくつかの態様において、本開示によるhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、2つ以上の、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23もしくは24個またはそれ以上の、変異アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの10個以上を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの15個以上を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの20個以上を含む。そのようなhNGALムテインは、例えばSPRアッセイにおいて、例えば本質的に実施例8に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGF結合に関して、SEQ ID NO:60および61に示される抗体と競合する。そのようなhNGALムテインは、例えばELISAアッセイにおいて、例えば本質的に実施例9に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGFのドメイン1および2だけを含むフラグメントに結合することができる。
【0120】
いくつかの態様において、本開示によるCTGF結合性hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の位置28、40、41、44、47、49、52、65、70、72、73、74、75、77、79、87、94、96、98、99、100、103、104、106、125、127および134に対応する1つまたは複数の位置に、以下の変異アミノ酸残基のうちの1つまたは複数を含む:Gln28→His;Ala40→Tyr;Ile41→Gly;Glu44→Thr;Asp47→Arg;Gln49→Ser;Tyr52→Phe;Asn65→Asp;Leu70→Arg;Arg72→Glu;Lys73→Gln;Lys74→Glu;Lys75→Arg;Asp77→His;Trp79→Thr;Cys87→Ser;Leu94→ThrまたはSer;Asn96→Ser;Lys98→Gly;Ser99→Asn;Tyr100→Arg;Leu103→GlnまたはSer;Thr104→Tyr;Tyr106→SerまたはThr;Lys125→Ser;Ser127→Ile;およびLys134→Ala。いくつかの態様において、本開示によるhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、2つ以上の、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23もしくは24個またはそれ以上の、変異アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの10個以上を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの15個以上を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの20個以上を含む。そのようなhNGALムテインは、例えばSPRアッセイにおいて、例えば本質的に実施例8に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGF結合に関してSEQ ID NO:60および61に示される抗体と競合する。そのようなhNGALムテインは、例えばELISAアッセイにおいて、例えば本質的に実施例9に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGFのドメイン1および2だけを含むフラグメントに結合することができる。
【0121】
いくつかの態様において、本開示によるCTGF結合性hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の位置40、41、44、47、49、52、70、72、73、74、75、77、79、94、96、98、99、100、103、104、106、125、127および134に対応する1つまたは複数の位置に、以下の変異アミノ酸残基のうちの1つまたは複数を含む:Ala40→Tyr;Ile41→Gly;Glu44→Thr;Asp47→Arg;Gln49→Ser;Tyr52→Phe;Leu70→Arg;Arg72→Glu;Lys73→Gln;Lys74→Glu;Lys75→Arg;Asp77→His;Trp79→Thr;Leu94→ThrまたはSer;Asn96→Ser;Lys98→Gly;Ser99→Asn;Tyr100→Arg;Leu103→GlnまたはSer;Thr104→Tyr;Tyr106→SerまたはThr;Lys125→Ser;Ser127→Ile;およびLys134→Ala。いくつかの態様において、本開示によるhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、2つ以上の、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23もしくは24個またはそれ以上の、変異アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの10個以上を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの15個以上を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの20個以上を含む。そのようなhNGALムテインは、例えばSPRアッセイにおいて、例えば本質的に実施例8に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGF結合に関して、SEQ ID NO:60および61に示される抗体と競合する。そのようなhNGALムテインは、例えばELISAアッセイにおいて、例えば本質的に実施例9に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGFのドメイン1および2だけを含むフラグメントに結合することができる。
【0122】
いくつかの態様において、本開示によるCTGF結合性hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の位置28、36、40、44、47、49、52、65、70、72、73、74、75、77、79、80、81、87、94、96、100、103、106、123、125、127、128、129、132、134および136に対応する1つまたは複数の位置に、以下の変異アミノ酸残基のうちの1つまたは複数を含む:Gln28→His;Leu36→IleまたはVal;Ala40→Lys;Glu44→Thr、Ile、Asp、ValまたはPro;Asp47→GlnまたはTyr;Gln49→Ala;Tyr52→Phe;Asn65→Asp;Leu70→Arg;Arg72→Glu;Lys73→AlaまたはAsn;Lys74→Arg;Lys75→Ser;Asp77→Lys、Ser、ValまたはIle;Trp79→Thr;Ile80→Ser;Arg81→Lys;Cys87→Ser;Leu94→Ala、Thr、Ser、ArgまたはHis;Asn96→TyrおよびGln;Tyr100→AlaまたはHis;Leu103→Gln;Tyr106→Thr;Phe123→Trp、HisまたはAla;Lys125→Ser、HisまたはAla;Ser127→Thr、Ala、GlnまたはArg;Gln128→GlyまたはLeu;Asn129→ThrまたはAla;Tyr132→Thr、Ser、Phe、IleまたはHis;Lys134→Val、AsnまたはPhe;およびThr136→Ala。いくつかの態様において、本開示によるhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、2つ以上の、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23もしくは24個またはそれ以上の、変異アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの10個以上を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの15個以上を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの20個以上を含む。そのようなhNGALムテインは、例えばSPRアッセイにおいて、例えば本質的に実施例8に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGF結合に関して、SEQ ID NO:60および61に示される抗体と競合する。そのようなhNGALムテインは、例えばELISAアッセイにおいて、例えば本質的に実施例9に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGFのドメイン1および2だけを含むフラグメントに結合することができる。
【0123】
いくつかの態様において、本開示によるCTGF結合性hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の位置36、40、44、47、49、52、70、72、73、74、75、77、79、80、81、94、96、100、103、106、123、125、127、128、129、132、134および136に対応する1つまたは複数の位置に、以下の変異アミノ酸残基のうちの1つまたは複数を含む:Leu36→IleまたはVal;Ala40→Lys;Glu44→Thr、Ile、Asp、ValまたはPro;Asp47→GlnまたはTyr;Gln49→Ala;Tyr52→Phe;Leu70→Arg;Arg72→Glu;Lys73→AlaまたはAsn;Lys74→Arg;Lys75→Ser;Asp77→Lys、Ser、ValまたはIle;Trp79→Thr;Ile80→Ser;Arg81→Lys;Leu94→Ala、Thr、Ser、ArgまたはHis;Asn96→TyrおよびGln;Tyr100→AlaまたはHis;Leu103→Gln;Tyr106→Thr;Phe123→Trp、HisまたはAla;Lys125→Ser、HisまたはAla;Ser127→Thr、Ala、GlnまたはArg;Gln128→GlyまたはLeu;Asn129→ThrまたはAla;Tyr132→Thr、Ser、Phe、IleまたはHis;Lys134→Val、AsnまたはPhe;およびThr136→Ala。いくつかの態様において、本開示によるhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、2つ以上の、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23もしくは24個またはそれ以上の、変異アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの10個以上を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの15個以上を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの20個以上を含む。そのようなhNGALムテインは、例えばSPRアッセイにおいて、例えば本質的に実施例8に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGF結合に関して、SEQ ID NO:60および61に示される抗体と競合する。そのようなhNGALムテインは、例えばELISAアッセイにおいて、例えば本質的に実施例9に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGFのドメイン1および2だけを含むフラグメントに結合することができる。
【0124】
いくつかの態様において、本開示によるCTGF結合性hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の位置28、36、40、41、47、49、52、65、68、70、72、73、77、79、81、87、94、95、96、97、98、99、100、102、103、104、106、123、127、128、129、130、132、134および136に対応する1つまたは複数の位置に、以下の変異アミノ酸残基のうちの1つまたは複数を含む:Gln28→His;Leu36→MetまたはTrp;Ala40→Phe、Tyr、IleまたはVal;Ile41→ArgまたはLys;Asp47→Gln;Gln49→Ser、Phe、LeuまたはAla;Tyr52→GlyまたはSer;Asn65→Asp;Ser68→GlnまたはGlu;Leu70→GlnまたはVal;Arg72→AspまたはGlu;Lys73→AspまたはGln;Asp77→LeuまたはHis;Trp79→ValまたはIle;Arg81→GluまたはLys;Cys87→Ser;Leu94→AlaまたはGlu;Gly95→Ser;Asn96→Ala、AspまたはPro;Ile97→Tyr;Lys98→Ser;Ser99→ValまたはArg;Tyr100→Phe、Arg、ProまたはSer;Gly102→ThrまたはArg;Leu103→Phe、GluまたはTyr;Thr104→Glu、ValまたはTrp;Tyr106→Gln、Ser、Thr、HisまたはAsp;Phe123→LeuまたはVal;Ser127→Tyr、Trp、Phe、HisまたはGly;Gln128→GlyまたはPro;Asn129→Ser;Arg130→GluまたはLeu;Tyr132→ValまたはPhe;Lys134→Trp、HisまたはGln;およびThr136→Val。いくつかの態様において、本開示によるhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、2つ以上の、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23もしくは24個またはそれ以上の、変異アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの10個以上を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの15個以上を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの20個以上を含む。そのようなhNGALムテインは、例えばSPRアッセイにおいて、例えば本質的に実施例8に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGF結合に関して、SEQ ID NO:60および61に示される抗体と競合する。そのようなhNGALムテインは、例えばELISAアッセイにおいて、例えば本質的に実施例9に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGFのドメイン1および2だけを含むフラグメントに結合することができる。
【0125】
いくつかの態様において、本開示によるCTGF結合性hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の位置36、40、41、47、49、52、68、70、72、73、77、79、81、94、95、96、97、98、99、100、102、103、104、106、123、127、128、129、130、132、134および136に対応する1つまたは複数の位置に、以下の変異アミノ酸残基のうちの1つまたは複数を含む:Leu36→MetまたはTrp;Ala40→Phe、Tyr、IleまたはVal;Ile41→ArgまたはLys;Asp47→Gln;Gln49→Ser、Phe、LeuまたはAla;Tyr52→GlyまたはSer;Ser68→GlnまたはGlu;Leu70→GlnまたはVal;Arg72→AspまたはGlu;Lys73→AspまたはGln;Asp77→LeuまたはHis;Trp79→ValまたはIle;Arg81→GluまたはLys;Leu94→AlaまたはGlu;Gly95→Ser;Asn96→Ala、AspまたはPro;Ile97→Tyr;Lys98→Ser;Ser99→ValまたはArg;Tyr100→Phe、Arg、ProまたはSer;Gly102→ThrまたはArg;Leu103→Phe、GluまたはTyr;Thr104→Glu、ValまたはTrp;Tyr106→Gln、Ser、Thr、HisまたはAsp;Phe123→LeuまたはVal;Ser127→Tyr、Trp、Phe、HisまたはGly;Gln128→GlyまたはPro;Asn129→Ser;Arg130→GluまたはLeu;Tyr132→ValまたはPhe;Lys134→Trp、HisまたはGln;およびThr136→Val。いくつかの態様において、本開示によるhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、2つ以上の、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23もしくは24個またはそれ以上の、変異アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの10個以上を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの15個以上を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの20個以上を含む。そのようなhNGALムテインは、例えばSPRアッセイにおいて、例えば本質的に実施例8に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGF結合に関して、SEQ ID NO:60および61に示される抗体と競合する。そのようなhNGALムテインは、例えばELISAアッセイにおいて、例えば本質的に実施例9に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGFのドメイン1および2だけを含むフラグメントに結合することができる。
【0126】
いくつかの態様において、本開示によるCTGF結合性hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の位置28、36、40、41、49、52、65、68、70、72、73、77、79、81、87、96、99、100、102、103、104、106、123、127、128、129、130、132、134および136に対応する1つまたは複数の位置に、以下の変異アミノ酸残基のうちの1つまたは複数を含む:Gln28→His;Leu36→Met;Ala40→PheまたはTyr;Ile41→Arg;Gln49→Ser;Tyr52→Gly;Asn65→Asp;Ser68→Gln;Leu70→Gln;Arg72→Asp;Lys73→Asp;Asp77→Leu;Trp79→Val;Arg81→Glu;Cys87→Ser;Asn96→Ala;Ser99→Val;Tyr100→Phe;Gly102→Thr;Leu103→Phe;Thr104→Glu;Tyr106→Gln;Phe123→LeuまたはVal;Ser127→TyrまたはTrp;Gln128→GlyまたはPro;Asn129→Ser;Arg130→GluまたはLeu;Tyr132→Val;Lys134→Trp、HisまたはGln;およびThr136→Val。いくつかの態様において、本開示によるhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、2つ以上の、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23もしくは24個またはそれ以上の、変異アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの10個以上を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの15個以上を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの20個以上を含む。そのようなhNGALムテインは、例えばSPRアッセイにおいて、例えば本質的に実施例8に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGF結合に関して、SEQ ID NO:60および61に示される抗体と競合しない。そのようなhNGALムテインは、例えばELISAアッセイにおいて、例えば本質的に実施例9に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGFのドメイン1および2だけを含むフラグメントに結合することができる。
【0127】
いくつかの態様において、本開示によるCTGF結合性hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の位置36、40、41、49、52、68、70、72、73、77、79、81、96、99、100、102、103、104、106、123、127、128、129、130、132、134および136に対応する1つまたは複数の位置に、以下の変異アミノ酸残基のうちの1つまたは複数を含む:Leu36→Met;Ala40→PheまたはTyr;Ile41→Arg;Gln49→Ser;Tyr52→Gly;Ser68→Gln;Leu70→Gln;Arg72→Asp;Lys73→Asp;Asp77→Leu;Trp79→Val;Arg81→Glu;Asn96→Ala;Ser99→Val;Tyr100→Phe;Gly102→Thr;Leu103→Phe;Thr104→Glu;Tyr106→Gln;Phe123→LeuまたはVal;Ser127→TyrまたはTrp;Gln128→GlyまたはPro;Asn129→Ser;Arg130→GluまたはLeu;Tyr132→Val;Lys134→Trp、HisまたはGln;およびThr136→Val。いくつかの態様において、本開示によるhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、2つ以上の、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23もしくは24個またはそれ以上の、変異アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの10個以上を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの15個以上を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの20個以上を含む。そのようなhNGALムテインは、例えばSPRアッセイにおいて、例えば本質的に実施例8に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGF結合に関して、SEQ ID NO:60および61に示される抗体と競合しない。そのようなhNGALムテインは、例えばELISAアッセイにおいて、例えば本質的に実施例9に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGFのドメイン1および2だけを含むフラグメントに結合することができる。
【0128】
いくつかの態様において、本開示によるCTGF結合性hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の位置28、36、40、41、47、49、52、65、68、70、72、73、77、79、81、87、94、95、96、97、98、99、100、102、103、104、106、127、132および134に対応する1つまたは複数の位置に、以下の変異アミノ酸残基のうちの1つまたは複数を含む:Gln28→His;Leu36→Trp;Ala40→IleまたはVal;Ile41→Lys;Asp47→Gln;Gln49→Phe、LeuまたはAla;Tyr52→Ser;Asn65→Asp;Ser68→Glu;Leu70→Val;Arg72→Glu;Lys73→Gln;Asp77→His;Trp79→Ile;Arg81→Lys;Cys87→Ser;Leu94→AlaまたはGlu;Gly95→Ser;Asn96→AspまたはPro;Ile97→Tyr;Lys98→Ser;Ser99→Arg;Tyr100→Arg、ProまたはSer;Gly102→Arg;Leu103→GluまたはTyr;Thr104→ValまたはTrp;Tyr106→Ser、Thr、HisまたはAsp;Ser127→Phe、HisまたはGly;Tyr132→Phe;およびLys134→Trp。いくつかの態様において、本開示によるhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、2つ以上の、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23もしくは24個またはそれ以上の、変異アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの10個以上を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの15個以上を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの20個以上を含む。そのようなhNGALムテインは、例えばSPRアッセイにおいて、例えば本質的に実施例8に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGF結合に関して、SEQ ID NO:60および61に示される抗体と競合しない。そのようなhNGALムテインは、例えばELISAアッセイにおいて、例えば本質的に実施例9に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGFのドメイン1および2だけを含むフラグメントに結合することができる。
【0129】
いくつかの態様において、本開示によるCTGF結合性hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)の位置36、40、41、47、49、52、68、70、72、73、77、79、81、94、95、96、97、98、99、100、102、103、104、106、127、132および134に対応する1つまたは複数の位置に、以下の変異アミノ酸残基のうちの1つまたは複数を含む:Leu36→Trp;Ala40→IleまたはVal;Ile41→Lys;Asp47→Gln;Gln49→Phe、LeuまたはAla;Tyr52→Ser;Ser68→Glu;Leu70→Val;Arg72→Glu;Lys73→Gln;Asp77→His;Trp79→Ile;Arg81→Lys;Leu94→AlaまたはGlu;Gly95→Ser;Asn96→AspまたはPro;Ile97→Tyr;Lys98→Ser;Ser99→Arg;Tyr100→Arg、ProまたはSer;Gly102→Arg;Leu103→GluまたはTyr;Thr104→ValまたはTrp;Tyr106→Ser、Thr、HisまたはAsp;Ser127→Phe、HisまたはGly;Tyr132→Phe;およびLys134→Trp。いくつかの態様において、本開示によるhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、2つ以上の、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23もしくは24個またはそれ以上の、変異アミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの10個以上を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの15個以上を含む。いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGAL(SEQ ID NO:1)のこれらの配列位置に、上述した変異アミノ酸残基のうちの20個以上を含む。そのようなhNGALムテインは、例えばSPRアッセイにおいて、例えば本質的に実施例8に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGF結合に関して、SEQ ID NO:60および61に示される抗体と競合しない。そのようなhNGALムテインは、例えばELISAアッセイにおいて、例えば本質的に実施例9に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGFのドメイン1および2だけを含むフラグメントに結合することができる。
【0130】
いくつかの態様において、CTGF結合性hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)との比較で、以下の変異アミノ酸残基セットのうちの1つを含む:
【0131】
いくつかの態様において、CTGF結合性hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)との比較で、上述した変異アミノ酸残基セットのうちの1セットの変異アミノ酸残基のうち、3つの変異アミノ酸残基を除く全部、2つの変異アミノ酸残基を除く全部、または1つの変異アミノ酸残基を除く全部の変異アミノ酸残基を含む。そのようなhNGALムテインは、例えばSPRアッセイにおいて、例えば本質的に実施例8に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGF結合に関して、SEQ ID NO:60および61に示される抗体と競合しない。そのようなhNGALムテインは、例えばELISAアッセイにおいて、例えば本質的に実施例9に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGFのドメイン1および2だけを含むフラグメントに結合せず、一方、完全長CTGFには結合することができる。
【0132】
いくつかの態様において、CTGF結合性hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)との比較で、以下の変異アミノ酸残基セットのうちの1つを含む:
【0133】
いくつかの態様において、CTGF結合性hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)との比較で、上述した変異アミノ酸残基セットのうちの1セットの変異アミノ酸残基のうち、3つの変異アミノ酸残基を除く全部、2つの変異アミノ酸残基を除く全部、または1つの変異アミノ酸残基を除く全部の変異アミノ酸残基を含む。そのようなhNGALムテインは、例えばSPRアッセイにおいて、例えば本質的に実施例8に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGF結合に関して、SEQ ID NO:60および61に示される抗体と競合する。そのようなhNGALムテインは、例えばELISAアッセイにおいて、例えば本質的に実施例9に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGFのドメイン1および2だけを含むフラグメントに結合することができる。
【0134】
いくつかの態様において、CTGF結合性hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)との比較で、以下の変異アミノ酸残基セットのうちの1つを含む:
【0135】
いくつかの態様において、CTGF結合性hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)との比較で、上述した変異アミノ酸残基セットのうちの1セットの変異アミノ酸残基のうち、3つの変異アミノ酸残基を除く全部、2つの変異アミノ酸残基を除く全部、または1つの変異アミノ酸残基を除く全部の変異アミノ酸残基を含む。そのようなhNGALムテインは、例えばSPRアッセイにおいて、例えば本質的に実施例8に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGF結合に関して、SEQ ID NO:60および61に示される抗体と競合する。そのようなhNGALムテインは、例えばELISAアッセイにおいて、例えば本質的に実施例9に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGFのドメイン1および2だけを含むフラグメントに結合することができる。
【0136】
いくつかの態様において、CTGF結合性hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)との比較で、以下の変異アミノ酸残基セットのうちの1つを含む:
【0137】
いくつかの態様において、CTGF結合性hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)との比較で、上述した変異アミノ酸残基セットのうちの1セットの変異アミノ酸残基のうち、3つの変異アミノ酸残基を除く全部、2つの変異アミノ酸残基を除く全部、または1つの変異アミノ酸残基を除く全部の変異アミノ酸残基を含む。そのようなhNGALムテインは、例えばSPRアッセイにおいて、例えば本質的に実施例8に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGF結合に関して、SEQ ID NO:60および61に示される抗体と競合しない。そのようなhNGALムテインは、例えばELISAアッセイにおいて、例えば本質的に実施例9に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGFのドメイン1および2だけを含むフラグメントに結合することができる。
【0138】
いくつかの態様において、CTGF結合性hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)との比較で、以下の変異アミノ酸残基セットのうちの1つを含む:
【0139】
いくつかの態様において、CTGF結合性hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)との比較で、上述した変異アミノ酸残基セットのうちの1セットの変異アミノ酸残基のうち、3つの変異アミノ酸残基を除く全部、2つの変異アミノ酸残基を除く全部、または1つの変異アミノ酸残基を除く全部の変異アミノ酸残基を含む。そのようなhNGALムテインは、例えばSPRアッセイにおいて、例えば本質的に実施例8に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGF結合に関して、SEQ ID NO:60および61に示される抗体と競合しない。そのようなhNGALムテインは、例えばELISAアッセイにおいて、例えば本質的に実施例9に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGFのドメイン1および2だけを含むフラグメントに結合することができる。
【0140】
いくつかの態様において、CTGF結合性hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)との比較で、以下の変異アミノ酸残基セットのうちの1つを含む:
【0141】
いくつかの態様において、CTGF結合性hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)との比較で、上述した変異アミノ酸残基セットのうちの1セットの変異アミノ酸残基のうち、3つの変異アミノ酸残基を除く全部、2つの変異アミノ酸残基を除く全部、または1つの変異アミノ酸残基を除く全部の変異アミノ酸残基を含む。そのようなhNGALムテインは、例えばSPRアッセイにおいて、例えば本質的に実施例8に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGF結合に関して、SEQ ID NO:60および61に示される抗体と競合しない。そのようなhNGALムテインは、例えばELISAアッセイにおいて、例えば本質的に実施例9に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGFのドメイン1および2だけを含むフラグメントに結合せず、一方、完全長CTGFには結合することができる。
【0142】
いくつかの態様において、CTGF結合性hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)との比較で、以下の変異アミノ酸残基セットのうちの1つを含む:
【0143】
いくつかの態様において、CTGF結合性hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)との比較で、上述した変異アミノ酸残基セットのうちの1セットの変異アミノ酸残基のうち、3つの変異アミノ酸残基を除く全部、2つの変異アミノ酸残基を除く全部、または1つの変異アミノ酸残基を除く全部の変異アミノ酸残基を含む。そのようなhNGALムテインは、例えばSPRアッセイにおいて、例えば本質的に実施例8に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGF結合に関して、SEQ ID NO:60および61に示される抗体と競合する。そのようなhNGALムテインは、例えばELISAアッセイにおいて、例えば本質的に実施例9に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGFのドメイン1および2だけを含むフラグメントに結合することができる。
【0144】
いくつかの態様において、CTGF結合性hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)との比較で、以下の変異アミノ酸残基セットのうちの1つを含む:
【0145】
いくつかの態様において、CTGF結合性hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)との比較で、上述した変異アミノ酸残基セットのうちの1セットの変異アミノ酸残基のうち、3つの変異アミノ酸残基を除く全部、2つの変異アミノ酸残基を除く全部、または1つの変異アミノ酸残基を除く全部の変異アミノ酸残基を含む。そのようなhNGALムテインは、例えばSPRアッセイにおいて、例えば本質的に実施例8に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGF結合に関して、SEQ ID NO:60および61に示される抗体と競合する。そのようなhNGALムテインは、例えばELISAアッセイにおいて、例えば本質的に実施例9に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGFのドメイン1および2だけを含むフラグメントに結合することができる。
【0146】
いくつかの態様において、CTGF結合性hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)との比較で、以下の変異アミノ酸残基セットのうちの1つを含む:
【0147】
いくつかの態様において、CTGF結合性hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)との比較で、上述した変異アミノ酸残基セットのうちの1セットの変異アミノ酸残基のうち、3つの変異アミノ酸残基を除く全部、2つの変異アミノ酸残基を除く全部、または1つの変異アミノ酸残基を除く全部の変異アミノ酸残基を含む。そのようなhNGALムテインは、例えばSPRアッセイにおいて、例えば本質的に実施例8に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGF結合に関して、SEQ ID NO:60および61に示される抗体と競合しない。そのようなhNGALムテインは、例えばELISAアッセイにおいて、例えば本質的に実施例9に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGFのドメイン1および2だけを含むフラグメントに結合することができる。
【0148】
いくつかの態様において、CTGF結合性hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)との比較で、以下の変異アミノ酸残基セットのうちの1つを含む:
【0149】
いくつかの態様において、CTGF結合性hNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)との比較で、上述した変異アミノ酸残基セットのうちの1セットの変異アミノ酸残基のうち、3つの変異アミノ酸残基を除く全部、2つの変異アミノ酸残基を除く全部、または1つの変異アミノ酸残基を除く全部の変異アミノ酸残基を含む。そのようなhNGALムテインは、例えばSPRアッセイにおいて、例えば本質的に実施例8に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGF結合に関して、SEQ ID NO:60および61に示される抗体と競合しない。そのようなhNGALムテインは、例えばELISAアッセイにおいて、例えば本質的に実施例9に記載するように決定した場合に、好ましくは、CTGFのドメイン1および2だけを含むフラグメントに結合することができる。
【0150】
残りの領域、すなわち配列位置28、36、40、41、44、47、49、52、65、68、70、72、73、74、75、77、79、80、81、87、94、95、96、97、98、99、100、102、103、104、106、110、123、125、127、128、129、130、132、134および136ではない領域において、本開示のhNGALムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列のうちの変異アミノ酸配列位置以外の野生型(天然)アミノ酸配列を含みうる。
【0151】
さらなる態様において、本開示によるhNGALムテインは、成熟hNGALの配列(SEQ ID NO:1)に対して少なくとも70%の配列同一性または少なくとも70%の配列相同性を有する。
【0152】
さらなる特定態様において、本開示のhNGALムテインは、SEQ ID NO:3~36のいずれか1つに示すアミノ酸配列またはそのフラグメントもしくは変異体を含む。
【0153】
さらなる特定態様において、本開示のhNGALムテインは、SEQ ID NO:3~36からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%またはそれ以上の配列同一性を有する。
【0154】
本開示は、SEQ ID NO:3~36からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するhNGALムテインの構造ホモログであって、該hNGALムテインとの関係において約60%超、好ましくは65%超、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超、92%超、最も好ましくは95%超のアミノ酸配列相同性またはアミノ酸配列同一性を有する構造ホモログも包含する。
【0155】
いくつかの特定態様において、本開示は、約500nM以下のKDによって測定されるアフィニティでCTGFに結合するリポカリンムテインを提供し、該リポカリンムテインは、SEQ ID NO:3~36からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%の同一性を有する。
【0156】
C. 本開示のリポカリンムテインの修飾
いくつかの態様において、本開示のリポカリンムテインは、リポカリンムテインの生物学的活性(そのターゲット、例えばCTGFへの結合など)に影響を及ぼすことなく、そのN末またはC末に、好ましくはC末に、異種アミノ酸配列、例えばStrep-タグII(SEQ ID NO:41)またはある一定の制限酵素のための切断部位配列を、含むことができる。
【0157】
他のいくつかの態様では、ムテインのある一定の特徴を調整するために、例えばフォールディング安定性、血清中安定性、タンパク質の耐性もしくは水溶性を改良するために、または凝集傾向を低減するために、またはムテインに新しい特徴を導入するために、リポカリンムテインのさらなる改変を導入しうる。
【0158】
例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、ビオチン、ペプチドまたはタンパク質などの他の化合物へのコンジュゲーションのために、または非天然のジスルフィド結合を形成させるために、新しい反応性基を導入する目的で、リポカリンムテインの1つまたは複数のアミノ酸配列位置を変異させることが可能である。コンジュゲートされる化合物、例えばPEGまたはHESは、場合によっては、対応するリポカリンムテインの血清中半減期を増加させることができる。
【0159】
一態様において、リポカリンムテインの反応性基は、そのアミノ酸配列中の天然のシステイン残基など、該アミノ酸配列中に天然に存在しうる。他のいくつかの態様では、そのような反応性基を、変異導入によって導入しうる。反応性基が変異導入によって導入される場合、一つの可能性は、適当な位置にあるアミノ酸の、システイン残基による変異である。hNGALムテインのアミノ酸配列にシステイン残基を導入するためのそのような変異の例示的な可能性としては、hNGALの野生型配列(SEQ ID NO:1)の配列位置14、21、60、84、88、116、141、145、143、146または158に対応する配列位置のうちの少なくとも1つにおけるシステイン残基の導入が挙げられる。生成するチオール部分は、例えばそれぞれのリポカリンムテインの血清中半減期を増加させる目的で、ムテインをPEG化またはHES化するために使用しうる。
【0160】
別の一態様において、上記の化合物のうちの1つをリポカリンムテインにコンジュゲートするための新しい反応性基として適切なアミノ酸側鎖を提供するために、人工的アミノ酸をリポカリンムテインのアミノ酸配列に導入しうる。一般に、そのような人工的アミノ酸は、反応性が高くなることで所望の化合物へのコンジュゲーションが容易になるように、設計される。そのような人工的アミノ酸(例えばパラ-アセチル-フェニルアラニン)は、例えば人工tRNAを用いる変異導入によって導入されうる。
【0161】
本明細書において開示するリポカリンムテインのいくつかの応用には、それらを融合タンパク質の形態で使用することが有利になりうる。いくつかの態様において、本開示のリポカリンムテインは、そのN末またはそのC末において、例えば抗体、抗体フラグメントもしくは抗体バリアント、シグナル配列および/またはアフィニティタグなどのタンパク質、タンパク質ドメインまたはペプチドに融合される。他のいくつかの態様において、本開示のリポカリンムテインは、そのN末またはそのC末において、例えば抗体、抗体フラグメントもしくは抗体バリアント、シグナル配列および/またはアフィニティタグなどのタンパク質、タンパク質ドメインまたはペプチドであるパートナーにコンジュゲートされる。
【0162】
組換えタンパク質の容易な検出および/または精製を可能にする、Strep-タグもしくはStrep-タグII(Schmidt et al.,J Mol Biol,1996,255(5):753-66)、c-myc-タグ、FLAG-タグ、His-タグまたはHA-タグなどのアフィニティタグ、またはグルタチオン-S-トランスフェラーゼなどのタンパク質は、適切な融合パートナーの例である。発色性または蛍光性を持つタンパク質、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)または黄色蛍光タンパク質(YFP)も、同様に、本開示のリポカリンムテインにとって適切な融合パートナーである。
【0163】
一般に、本開示のリポカリンムテインは、化学的、物理的、光学的、または酵素的反応において検出可能な化合物またはシグナルを直接的または間接的に生成する任意の適当な化学物質または酵素で、標識することが可能である。例えば、検出可能なシグナルとして蛍光またはx線を生成するように、リポカリンムテインに蛍光ラベルまたは放射性ラベルをコンジュゲートすることができる。アルカリホスファターゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼおよびβ-ガラクトシダーゼは、発色反応生成物の形成を触媒する酵素ラベル(それと同時に光学的ラベル)の例である。一般に、抗体によく使用されるラベルは(もっぱら免疫グロブリンのFc部の糖部分と共に使用されるものを除けば)すべて、本開示のリポカリンムテインへのコンジュゲーションにも使用することができる。
【0164】
本開示のリポカリンムテインは、例えば所与の細胞、組織または器官へのそのような剤の標的送達のために、または周囲の正常細胞に影響を及ぼすことなく細胞(例えば腫瘍細胞)を選択的に標的化するために、任意の適切な治療活性剤とコンジュゲートされうる。そのような治療活性剤の例としては、放射性核種、毒素、有機低分子、および治療ペプチド(例えば細胞表面受容体のアゴニスト/アンタゴニストとして作用するペプチド、または所与の細胞標的上のタンパク質結合部位に関して競合するペプチドなど)が挙げられる。ただし、本開示のリポカリンムテインは、アンチセンス核酸分子、低分子干渉RNA、マイクロRNAまたはリボザイムなどの治療的に活性な核酸ともコンジュゲートされうる。そのようなコンジュゲートは、当技術分野において周知の方法によって生産することができる。
【0165】
いくつかの態様では、ムテインの血清中半減期を延長する部分に、本開示のリポカリンムテインを融合またはコンジュゲートしうる(これについては、国際特許公報WO 2006/056464も参照されたい。この文献では、CTLA-4に対する結合アフィニティを有するヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(hNGAL)のムテインに関連して、そのような戦略が記載されている)。血清中半減期を延長する部分は、PEG分子、HES分子、脂肪酸分子、例えばパルミチン酸(Vajo and Duckworth,Pharmacol Rev,2000,52(1):1-9)、免疫グロブリンのFc部、免疫グロブリンのCH3ドメイン、免疫グロブリンのCH4ドメイン、アルブミン結合ペプチド、アルブミン結合タンパク質、またはトランスフェリンでありうるが、これらはほんの一例にすぎない。
【0166】
コンジュゲーションパートナーとしてPEGを使用する場合、そのPEG分子は置換、無置換、線状または分枝状であることができる。それは活性化ポリエチレン誘導体であることもできる。適切な化合物の例は、インターフェロンに関して国際特許公報WO 1999/64016、米国特許第6,177,074号または米国特許第6,403,564号に記載されているPEG分子、または他のタンパク質、例えばPEG修飾アスパラギナーゼ、PEG-アデノシンデアミナーゼ(PEG-ADA)もしくはPEG-スーパーオキシドジスムターゼ(Fuertges and Abuchowski,Journal of Controlled Release,1990,11(1-3),139-148)に関して記載されているPEG分子である。そのようなポリマー、例えばポリエチレングリコールの分子量は、例えば分子量約10,000、約20,000、約30,000または約40,000ダルトンのポリエチレングリコールなど、約300~約70,000ダルトンの範囲に及びうる。さらに、例えば米国特許第6,500,930号または同第6,620,413号に記載されているように、HESなどの糖質オリゴマーおよび糖質ポリマーを、血清中半減期を延長する目的で、本開示のムテインにコンジュゲートすることができる。
【0167】
本開示のリポカリンムテインの血清中半減期を延長する目的で免疫グロブリンのFc部を使用する場合は、Syntonix Pharmaceuticals,Inc(米国マサチューセッツ州)から市販されているSynFusion(商標)技術を使用しうる。このFc融合技術の使用は、より長時間作用する生物製剤の作出を可能にし、例えば、薬物動態、溶解度、および生産効率を改良するために抗体のFc領域に連結された2コピーのムテインからなりうる。
【0168】
リポカリンムテインの血清中半減期を延長するために使用することができるアルブミン結合ペプチドの例は、米国特許出願公開第2003/0069395号またはDennis et al.(2002)J.Biol.Chem.,277(38):35035-43に記載されているように、例えばCys-Xaa1-Xaa2-Xaa3-Xaa4-Cysコンセンサス配列を有するものであり、ここで、Xaa1はAsp、Asn、Ser、ThrまたはTrpであり、Xaa2はAsn、Gln、His、Ile、LeuまたはLysであり、Xaa3はAla、Asp、Phe、TrpまたはTyrであり、Xaa4はAsp、Gly、Leu、Phe、SerまたはThrである。血清中半減期を延長するためにリポカリンムテインに融合またはコンジュゲートされるアルブミン結合タンパク質は、細菌のアルブミン結合タンパク質、抗体、ドメイン抗体(例えば米国特許第6,696,245号を参照)を含む抗体フラグメント、またはアルブミンに対する結合活性を持つリポカリンムテインでありうる。細菌のアルブミン結合タンパク質の例としては連鎖球菌プロテインGが挙げられる(Konig and Skerra,J Immunol Methods,1998,218(1-2):73-83)。
【0169】
アルブミン結合タンパク質が抗体フラグメントである場合、それはドメイン抗体でありうる。ドメイン抗体(dAb)は、生物物理学的特性およびインビボ半減期を精密に制御して製品の安全性プロファイルおよび効力プロファイルを最適化することが可能になるように、工学的に操作される。ドメイン抗体は例えばDomantis Ltd.(英国ケンブリッジおよび米国マサチューセッツ州)から市販されている。
【0170】
特に、アルブミンそのもの(Osborn et al.,J Pharmacol Exp Ther,2002,303(2):540-8)またはアルブミンの生物学的に活性なフラグメントを、血清中半減期を延長するために、本開示のリポカリンムテインのパートナーとして使用することができる。「アルブミン」という用語は、ヒト血清アルブミンまたはウシ血清アルブミンまたはラットアルブミンなど、すべての哺乳動物アルブミンを包含する。アルブミンまたはそのフラグメントは、米国特許第5,728,553号または欧州特許公報EP0330451および同EP0361991に記載されているように、組換え生産することができる。したがって、組換えヒトアルブミン(例えばNovozymes Delta Ltd.(英国ノッティンガム)のRecombumin(登録商標))を、本開示のリポカリンムテインにコンジュゲートまたは融合することができる。
【0171】
本開示のリポカリンムテインの血清中半減期を延長するためのパートナーとしてトランスフェリンを使用する場合は、ムテインを非グリコシル化トランスフェリンのN末もしくはC末またはその両方に遺伝子融合することができる。非グリコシル化トランスフェリンは14~17日の半減期を有し、トランスフェリン融合タンパク質も同様に延長された半減期を有するだろう。トランスフェリン担体は、高いバイオアベイラビリティ、体内分布および循環安定性も提供する。この技術は、BioRexis(BioRexis Pharmaceutical Corporation、米国ペンシルバニア州)から市販されている。タンパク質安定剤/半減期延長パートナーとして使用するための組換えヒトトランスフェリン(DeltaFerrin(商標))も、Novozymes Delt Ltd.(英国ノッティンガム)から市販されている。
【0172】
本開示のリポカリンムテインの半減期を延長するためのさらにもう一つの代替策は、ムテインのN末またはC末に、構造不定のフレキシブルな長いグリシンリッチ配列(例えば約20~80個の連続するグリシン残基を持つポリグリシン)を融合することである。例えば国際公報WO2007/038619に開示されているこのアプローチは、「rPEG」(組換えPEG)とも呼ばれている。
【0173】
いくつかのさらなる態様において、本明細書において開示するリポカリンムテインは、そのN末および/またはそのC末において、本開示のリポカリンムテインに新しい特徴、例えば酵素活性または他の標的に対する結合アフィニティを付与しうる部分に融合またはコンジュゲートされうる。適切な融合パートナーの例は、アルカリホスファターゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、グルタチオンS-トランスフェラーゼ、プロテインGのアルブミン結合ドメイン、プロテインA、抗体または抗体フラグメント、オリゴマー化ドメイン、他のリポカリンムテイン、または毒素である。
【0174】
特に、本明細書において開示するリポカリンムテインを別個の酵素活性部位と融合して、結果として生じる融合タンパク質の両「サブユニット」が所与の治療標的に対して一緒に作用するようにすることは可能でありうる。リポカリンムテインの結合ドメインが、疾患を引き起こす標的に結合することで、酵素ドメインが標的の生物学的機能を消失させることを可能にする。
【0175】
本明細書において開示するリポカリンムテインを、抗体、抗体活性フラグメントまたは別のリポカリンムテインである第2の「サブユニット」と融合して、結果として生じる融合タンパク質が、リポカリンムテインの標的ともう一つの所与の治療標的との両方に対して作用するようにすることも可能である。
【0176】
所与の非天然標的に結合するリポカリンムテインを、同じ非天然標的に結合する別のリポカリンムテインに融合してもよい。そのような融合は、アビディティの結果として、より強い結合に、したがって増加した力価に、つながりうる。この融合物のサイズの増加は、単一のリポカリンムテインと比べて、血漿における曝露および/または組織(例えば肺組織)における貯留を長引かせることになりうる。非天然標的、例えばCTGFを、より広くカバーし、それによって非天然標的の、より多くの潜在的相互作用パートナー、例えばCTGF相互作用パートナーを遮断することができるように、両方のリポカリンムテインが同じ標的上の異なるエピトープに結合してもよい。そのようなエピトープは、好ましくは、非オーバーラップエピトープである。2つのリポカリンムテインが異なるエピトープに結合する場合は、それら2つのリポカリンムテインが標的結合に関して互いに競合しないことも好ましい。結合の競合は、例えば、本質的に実施例8に記載するように決定することができる。したがって本開示は、同じ非天然標的(例えばCTGFなどの標的タンパク質)の異なる(例えば非オーバーラップ)エピトープに結合する2つのリポカリンムテインを含む融合タンパク質にも関係する。
【0177】
本開示のリポカリンムテインは、もう一つの本開示のリポカリンムテインに融合することができる。したがって本開示は、2つの本開示のリポカリンムテインを含む融合タンパク質にも関係する。両リポカリンムテインは同じアミノ酸配列を含みうる。ただし、それら2つのリポカリンムテインは異なるアミノ酸配列を含むことが好ましい。両リポカリンムテインはCTGF上の同じエピトープに結合しうる。ただし、両リポカリンは異なるエピトープに結合することが好ましい。したがって両リポカリンは、N群、NP群およびC群からなる群より選択される異なる群に属しうる。具体的一例として、N群に属する本開示のリポカリンムテインをNP群に属する本開示のリポカリンムテインに融合し、C群に属する本開示のリポカリンムテインをN群に属する本開示のリポカリンムテインに融合し、および/またはNP群に属する本開示のリポカリンムテインをN群に属する本開示のリポカリンムテインに融合することができ、後者は好ましい。融合タンパク質は本明細書において開示するリンカーを含みうる。リンカーは2つのリポカリンムテインを互いに接続しうる。
【0178】
いくつかの態様において、融合タンパク質に含まれる2つの本開示のリポカリンムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)との比較で、それぞれ、以下の変異アミノ酸残基セットを含みうる:
【0179】
いくつかの態様において、融合タンパク質に含まれる2つの本開示のリポカリンムテインは、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)との比較で、それぞれ、以下の変異アミノ酸残基セットを含みうる:
【0180】
いくつかの態様において、融合タンパク質に含まれる2つの本開示のリポカリンムテインは、それぞれ、以下のアミノ酸配列を含みうる:
(a)SEQ ID NO:6に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列;
(b)SEQ ID NO:6に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列;
(c)SEQ ID NO:28に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列;
(d)SEQ ID NO:4に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:9に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列;
(e)SEQ ID NO:9に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:4に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列;
(f)SEQ ID NO:9に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:30に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列;
(g)SEQ ID NO:11に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列;
(h)SEQ ID NO:11に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:28に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列;
(i)SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列;
(j)SEQ ID NO:12に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列;
(k)SEQ ID NO:12に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:28に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列;
(l)SEQ ID NO:13に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列;
(m)SEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列;
(n)SEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:28に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列;または
(o)SEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:35に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列。
【0181】
いくつかの態様において、融合タンパク質に含まれる2つの本開示のリポカリンムテインは、それぞれ、以下のアミノ酸配列を含みうる:
(a)SEQ ID NO:6に示すアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列;
(b)SEQ ID NO:6に示すアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列;
(c)SEQ ID NO:28に示すアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列;
(d)SEQ ID NO:4に示すアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:9に示すアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列;
(e)SEQ ID NO:9に示すアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:4に示すアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列;
(f)SEQ ID NO:9に示すアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:30に示すアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列;
(g)SEQ ID NO:11に示すアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列;
(h)SEQ ID NO:11に示すアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:28に示すアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列;
(i)SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列;
(j)SEQ ID NO:12に示すアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列;
(k)SEQ ID NO:12に示すアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:28に示すアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列;
(l)SEQ ID NO:13に示すアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列;
(m)SEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列;
(n)SEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:28に示すアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列;または
(o)SEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:35に示すアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列。
【0182】
いくつかの態様において、融合タンパク質に含まれる2つの本開示のリポカリンムテインは、それぞれ、以下のアミノ酸配列を含みうる:
(a)SEQ ID NO:6に示すアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列;
(b)SEQ ID NO:6に示すアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列;
(c)SEQ ID NO:28に示すアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列;
(d)SEQ ID NO:4に示すアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:9に示すアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列;
(e)SEQ ID NO:9に示すアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:4に示すアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列;
(f)SEQ ID NO:9に示すアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:30に示すアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列;
(g)SEQ ID NO:11に示すアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列;
(h)SEQ ID NO:11に示すアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:28に示すアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列;
(i)SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列;
(j)SEQ ID NO:12に示すアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列;
(k)SEQ ID NO:12に示すアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:28に示すアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列;
(l)SEQ ID NO:13に示すアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列;
(m)SEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列;
(n)SEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:28に示すアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列;または
(o)SEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:35に示すアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列。
【0183】
いくつかの態様において、融合タンパク質に含まれる2つの本開示のリポカリンムテインは、それぞれ、以下のアミノ酸配列を含みうる:
(a)SEQ ID NO:6に示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列;
(b)SEQ ID NO:6に示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列;
(c)SEQ ID NO:28に示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列;
(d)SEQ ID NO:4に示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:9に示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列;
(e)SEQ ID NO:9に示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:4に示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列;
(f)SEQ ID NO:9に示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:30に示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列;
(g)SEQ ID NO:11に示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列;
(h)SEQ ID NO:11に示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:28に示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列;
(i)SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列;
(j)SEQ ID NO:12に示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列;
(k)SEQ ID NO:12に示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:28に示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列;
(l)SEQ ID NO:13に示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列;
(m)SEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列;
(n)SEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:28に示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列;または
(o)SEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:35に示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列。
【0184】
いくつかの態様において、融合タンパク質に含まれる2つの本開示のリポカリンムテインは、それぞれ、以下のアミノ酸配列を含みうる:
(a)SEQ ID NO:6に示すアミノ酸配列に対して少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列に対して少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列;
(b)SEQ ID NO:6に示すアミノ酸配列に対して少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列に対して少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列;
(c)SEQ ID NO:28に示すアミノ酸配列に対して少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列に対して少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列;
(d)SEQ ID NO:4に示すアミノ酸配列に対して少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:9に示すアミノ酸配列に対して少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列;
(e)SEQ ID NO:9に示すアミノ酸配列に対して少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:4に示すアミノ酸配列に対して少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列;
(f)SEQ ID NO:9に示すアミノ酸配列に対して少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:30に示すアミノ酸配列に対して少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列;
(g)SEQ ID NO:11に示すアミノ酸配列に対して少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列に対して少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列;
(h)SEQ ID NO:11に示すアミノ酸配列に対して少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:28に示すアミノ酸配列に対して少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列;
(i)SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列に対して少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列に対して少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列;
(j)SEQ ID NO:12に示すアミノ酸配列に対して少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列に対して少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列;
(k)SEQ ID NO:12に示すアミノ酸配列に対して少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:28に示すアミノ酸配列に対して少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列;
(l)SEQ ID NO:13に示すアミノ酸配列に対して少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列に対して少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列;
(m)SEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列に対して少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列に対して少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列;
(n)SEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列に対して少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:28に示すアミノ酸配列に対して少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列;または
(o)SEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列に対して少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:35に示すアミノ酸配列に対して少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列。
【0185】
いくつかの態様において、融合タンパク質に含まれる2つの本開示のリポカリンムテインは、それぞれ、以下のアミノ酸配列を含みうる:
(a)SEQ ID NO:6に示すアミノ酸配列に対して少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列に対して少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列;
(b)SEQ ID NO:6に示すアミノ酸配列に対して少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列に対して少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列;
(c)SEQ ID NO:28に示すアミノ酸配列に対して少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列に対して少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列;
(d)SEQ ID NO:4に示すアミノ酸配列に対して少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:9に示すアミノ酸配列に対して少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列;
(e)SEQ ID NO:9に示すアミノ酸配列に対して少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:4に示すアミノ酸配列に対して少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列;
(f)SEQ ID NO:9に示すアミノ酸配列に対して少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:30に示すアミノ酸配列に対して少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列;
(g)SEQ ID NO:11に示すアミノ酸配列に対して少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列に対して少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列;
(h)SEQ ID NO:11に示すアミノ酸配列に対して少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:28に示すアミノ酸配列に対して少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列;
(i)SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列に対して少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列に対して少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列;
(j)SEQ ID NO:12に示すアミノ酸配列に対して少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列に対して少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列;
(k)SEQ ID NO:12に示すアミノ酸配列に対して少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:28に示すアミノ酸配列に対して少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列;
(l)SEQ ID NO:13に示すアミノ酸配列に対して少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列に対して少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列;
(m)SEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列に対して少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列に対して少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列;
(n)SEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列に対して少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:28に示すアミノ酸配列に対して少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列;または
(o)SEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列に対して少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列およびSEQ ID NO:35に示すアミノ酸配列に対して少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列。
【0186】
いくつかの態様において、融合タンパク質に含まれる2つの本開示のリポカリンムテインは、それぞれ、以下のアミノ酸配列を含みうる:
(a)SEQ ID NO:6およびSEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列;
(b)SEQ ID NO:6およびSEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列;
(c)SEQ ID NO:28およびSEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列;
(d)SEQ ID NO:4およびSEQ ID NO:9に示すアミノ酸配列;
(e)SEQ ID NO:9およびSEQ ID NO:4に示すアミノ酸配列;
(f)SEQ ID NO:9およびSEQ ID NO:30に示すアミノ酸配列;
(g)SEQ ID NO:11およびSEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列;
(h)SEQ ID NO:11およびSEQ ID NO:28に示すアミノ酸配列;
(i)SEQ ID NO:31およびSEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列;
(j)SEQ ID NO:12およびSEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列;
(k)SEQ ID NO:12およびSEQ ID NO:28に示すアミノ酸配列;
(l)SEQ ID NO:13およびSEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列;
(m)SEQ ID NO:15およびSEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列;
(n)SEQ ID NO:15およびSEQ ID NO:28に示すアミノ酸配列;または
(o)SEQ ID NO:15およびSEQ ID NO:35に示すアミノ酸配列。
【0187】
いくつかの態様において、本開示は、SEQ ID NO:62~76からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%の同一性を有する融合タンパク質を提供する。いくつかの特定態様において、本開示の融合タンパク質は、SEQ ID NO:62~76のいずれか一つに示すアミノ酸配列またはそのフラグメントもしくはバリアントを含む。そのような融合タンパク質は、好ましくは、約250nM以下のEC50値でCTGFに結合する。
【0188】
D. 本開示のリポカリンムテインの生産
一局面において、本開示は、本明細書記載のCTGF結合タンパク質を作製する方法を提供する。本開示は、本開示のリポカリンムテインをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子(DNAおよびRNA)にも関係する。さらにもう一つの態様において、本開示は前記核酸分子を含有する宿主細胞を包含する。遺伝コードの縮重は、同じアミノ酸を指定する別のコドンによる、ある一定のコドンの置換を許すので、本開示は、本明細書記載のリポカリンムテインをコードする具体的核酸分子に限定されず、機能的ムテインをコードするヌクレオチド配列を含むすべての核酸分子を包含する。この点に関して、本開示は、SEQ ID NO:3~36に示すいくつかの本開示のリポカリンムテインをコードするヌクレオチド配列を提供する。
【0189】
本開示の一態様において、本方法は、成熟hNGALをコードする核酸分子を、配列位置28、36、40、41、44、47、49、52、65、70、72、73、74、75、77、79、80、81、87、94、95、96、97、98、99、100、102、103、104、106、110、123、125、127、128、129、130、132、134および136のうちの少なくとも1つまたはそれ以上をコードするヌクレオチドトリプレットにおける変異導入に供する工程を含む。
【0190】
本開示の一態様において、本方法は、成熟hNGALをコードする核酸分子を、配列位置36、40、41、44、47、49、52、70、72、73、74、75、77、79、80、81、94、95、96、97、98、99、100、102、103、104、106、110、123、125、127、128、129、130、132、134および136のうちの少なくとも1つまたはそれ以上をコードするヌクレオチドトリプレットにおける変異導入に供する工程を含む。
【0191】
本開示による方法のもう一つの態様では、成熟hNGALをコードする核酸分子を、まず、アミノ酸配列位置36、40、41、49、52、68、70、72、73、77、79、81、96、100、103、106、125、127、132および134をコードする1つまたは複数のヌクレオチドトリプレットにおける変異導入に供する。さらにその核酸分子を、成熟hNGALの直鎖状ポリペプチド配列のアミノ酸配列位置44、47、74、75、80、94、95、97、98、99、102、104、110、123、128、129、130および136をコードする1つまたは複数のヌクレオチドトリプレットにおける変異導入に供しうる。
【0192】
本開示は、表示した実験的変異導入の配列位置以外に追加の変異を含む、本開示のリポカリンムテインまたは融合タンパク質をコードする核酸分子も含む。そのような変異は許容されることが多く、例えばそれらがムテインのフォールディング効率、血清中安定性、熱安定性、製剤安定性またはリガンド結合アフィニティの改良に寄与するのであれば、有利であると判明する場合さえある。
【0193】
DNAなどの核酸分子は、それが、転写調節および/または翻訳調節に関する情報を含有する配列要素を含み、そのような配列がポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に「機能的に連結され」ているのであれば、「核酸分子を発現することができる」または「ヌクレオチド配列の発現を可能にする」ことができるという。機能的連結とは、調節配列要素と発現されるべき配列とが遺伝子発現を可能にするような形で接続されている連結である。遺伝子発現に必要な調節領域の正確な性質は種間で異なりうるが、一般にこれらの領域はプロモーターを含み、原核生物の場合、それは、プロモーターそのもの、すなわち転写の開始を指示するDNA要素と、RNAに転写された時に翻訳開始のシグナルを出すことになるDNA要素との両方を含有する。そのようなプロモーター領域は通常、転写および翻訳の開始に関与する5'非コード配列、例えば原核生物における-35/-10ボックスおよびシャイン・ダルガノ要素、または真核生物におけるTATAボックス、CAAT配列、および5'キャッピング要素を含む。これらの領域は、エンハンサー要素またはリプレッサー要素、ならびにネイティブポリペプチドを宿主細胞の特定区画にターゲティングするための、翻訳されるシグナル配列およびリーダー配列も含むことができる。
【0194】
加えて、3'非コード配列は、転写終結、ポリアデニル化などに関与する調節要素を含有しうる。ただし、これらの終結配列が特定の宿主細胞において十分に機能しない場合には、それらをその細胞において機能的なシグナルで置換しうる。
【0195】
それゆえに、本開示の核酸分子は、その核酸分子の発現を可能にするために、プロモーター配列などの調節配列(または複数の調節配列)に「機能的に連結」されうる。いくつかの態様において、本開示の核酸分子はプロモーター配列および転写終結配列を含む。適切な原核生物プロモーターは、例えばtetプロモーター、lacUV5プロモーターまたはT7プロモーターである。真核細胞における発現に役立つプロモーターの例は、SV40プロモーターまたはCMVプロモーターである。
【0196】
本開示の核酸分子は、ベクター、または他の任意の種類のクローニング媒体、例えばプラスミド、ファージミド、ファージ、バキュロウイルス、コスミド、もしくは人工染色体の一部であることができる。
【0197】
一態様において、核酸分子はファージミドに含まれる。ファージミドベクターとは、関心対象のcDNAに融合された、M13またはf1などの溶原性ファージの遺伝子間領域またはそれらの機能的部分をコードするベクターを表す。そのようなファージミドベクターと適当なヘルパーファージ(例えばM13K07、VCS-M13またはR408)とによる細菌宿主細胞の重感染後に、インタクトなファージ粒子が産生され、それによって、コードされている異種cDNAを、ファージ表面にディスプレイされたその対応ポリペプチドに物理的にカップリングすることが可能になる(Lowman,Annu Rev Biophys Biomol Struct,1997,26,401-24、Rodi and Makowski,Curr Opin Biotechnol,1999,10,87-93)。
【0198】
そのようなクローニング媒体は、上述の調節配列および本明細書記載のリポカリンムテインまたは融合タンパク質をコードする核酸配列の他にも、発現に使用される宿主細胞と適合する種に由来する複製配列および制御配列、ならびに形質転換細胞またはトランスフェクト細胞に選択可能な表現型を付与する選択マーカーを含むことができる。当技術分野では数多くの適切なクローニングベクターが公知であり、市販されている。
【0199】
本明細書記載のリポカリンムテインまたは融合タンパク質をコードするDNA分子、そして特に、そのようなムテインまたは融合タンパク質のコード配列を含有するクローニングベクターは、その遺伝子を発現させることができる宿主細胞に形質転換することができる。形質転換は標準的技法を使って行うことができる。したがって本開示は、本明細書に開示する核酸分子を含有する宿主細胞にも向けられる。
【0200】
形質転換された宿主細胞は、本開示の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列の発現に適した条件下で培養される。適切な宿主細胞は、原核細胞、例えば大腸菌(Escherichia coli)(E.coli)もしくは枯草菌(Bacillus subtilis)、または真核細胞、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、SF9またはHigh5昆虫細胞、不死化哺乳動物細胞株(例えばHeLa細胞またはCHO細胞)または初代哺乳動物細胞であることができる。
【0201】
本開示は、本明細書記載のリポカリンムテイン、該ムテインのフラグメント、または融合タンパク質を生産するための方法であって、ムテイン、ムテインのフラグメント、またはムテインと別のポリペプチド(例えば別のリポカリンムテインまたは抗体もしくは抗体フラグメント)との融合タンパク質が、ムテイン、フラグメントまたは融合タンパク質をコードする核酸から出発して、遺伝子工学的方法を使って生産される方法にも関係する。本方法はインビボで実行することができ、リポカリンムテイン、フラグメントまたは融合タンパク質は、例えば細菌宿主生物または真核宿主生物において産生され、次にその宿主細胞またはその培養物から単離することができる。タンパク質はインビトロで、例えばインビトロ翻訳系を使って、生産することも可能である。
【0202】
リポカリンムテイン、フラグメントまたは融合タンパク質をインビボで生産する場合、そのようなムテイン、フラグメントまたは融合タンパク質をコードする核酸は、(上に既に概説した)組換えDNA技術を使って、適切な細菌宿主生物または真核宿主生物に導入される。この目的のために、宿主細胞は、まず、確立された標準的方法を使って、本明細書記載のリポカリンムテイン、フラグメントまたは融合タンパク質をコードする核酸分子を含むクローニングベクターで、形質転換される。次に、異種DNAの発現を可能にし、したがって対応するポリペプチドの合成を可能にする条件下で、宿主細胞を培養する。次に、細胞から、または培養培地から、ポリペプチドを回収する。
【0203】
加えて、いくつかの態様において、本開示のhNGALムテインでは、Cys76とCys175の間に天然に存在するジスルフィド結合を除去しうる。したがって、そのようなムテインを、還元的な酸化還元環境を有する細胞区画において、例えばグラム陰性菌の細胞質において、生産することができる。
【0204】
本開示のリポカリンムテインが分子内ジスルフィド結合を含む場合は、適当なシグナル配列を使って、新生ポリペプチドを、酸化的な酸化還元環境を有する細胞区画に向かわせることが好ましいだろう。そのような酸化的環境は、大腸菌などのグラム陰性菌のペリプラズムによって、またはグラム陽性菌の細胞外環境において、または真核細胞の小胞体の内腔において提供されうるものであり、通常は構造的ジスルフィド結合の形成に有利である。
【0205】
ただし、宿主細胞のサイトゾル、好ましくは大腸菌のサイトゾルにおいて、本開示のムテイン、フラグメントまたは融合タンパク質を生産することも可能である。この場合、ポリペプチドは、フォールディングされた可溶性の状態で直接得られるか、または封入体の形で回収された後、インビトロで復元することができる。さらなる選択肢は、酸化的な細胞内環境を有し、それゆえに、サイトゾルにおけるジスルフィド結合の形成を許しうる、特別な宿主株の使用である(Venturi et al.,J Mol Biol,2002,315,1-8)。
【0206】
ただし、本明細書記載のリポカリンムテイン、フラグメントまたは融合タンパク質は、必ずしも遺伝子工学を使って作成または生産されるとは限らない。むしろ、そのようなムテイン、フラグメントまたは融合タンパク質は、メリフィールド固相ポリペプチド合成などの化学合成によって、またはインビトロでの転写および翻訳によって、得ることもできる。例えば、分子モデリングを使って有望な変異を同定し、そのような変異を含有するポリペプチドをインビトロ合成した後、CTGFへの結合活性および他の望ましい特性(安定性など)について調べることが可能である。ポリペプチド/タンパク質の固相合成および液相合成のための方法は当技術分野において周知である(例えばBruckdorfer et al.,Curr Pharm Biotechnol,2004,5,29-43を参照されたい)。別の一態様において、本開示のリポカリンムテイン、フラグメントまたは融合タンパク質は、当業者に公知の確立された方法を使用するインビトロ転写/翻訳によって生産されうる。
【0207】
加えて、本開示によって想定されているがそのタンパク質配列または核酸配列が本明細書において明示的には開示されていないリポカリンムテイン、フラグメントまたは融合タンパク質を調製するのに役立つ方法も、当業者には理解されるだろう。概要として、アミノ酸配列のそのような改変には、例えば、ある一定の制限酵素のための切断部位を組み入れることによって変異リポカリン遺伝子またはその一部のサブクローニングを簡単にするための、単一アミノ酸位置の指向的変異導入が含まれる。
【0208】
E. 本開示のリポカリンムテインの例示的な使用と応用
一般に、本明細書において開示するリポカリンムテインまたは融合タンパク質およびそれらの誘導体は、抗体またはそのフラグメントと同様に、数多くの分野で使用することができる。例えばリポカリンムテインまたは融合タンパク質は、酵素、抗体、放射性物質または明確な生物学的活性もしくは結合特徴を有する他の任意の基による標識化に使用することができる。そうすることにより、それぞれの標的またはそのコンジュゲートもしくは融合タンパク質を、検出し、それらと接触させることができる。
【0209】
特に本開示は、CTGF結合性リポカリンムテインまたは融合タンパク質の数多くの考えうる応用に関する。
【0210】
本開示には、CTGFとの複合体形成のための、1つまたは複数の本明細書記載のCTGF結合性リポカリンムテインまたは融合タンパク質の使用が関わる。
【0211】
さらなる一局面において、本開示は、試料中のCTGFを検出するための、ならびにそれぞれの診断方法のための、1つまたは複数の、本明細書において開示するCTGF結合性リポカリンムテインまたは融合タンパク質の使用に関する。
【0212】
したがって本開示のもう一つの局面において、開示するリポカリンムテインまたは融合タンパク質は、CTGFの検出に使用される。そのような使用は、前記ムテインまたは融合タンパク質のうちの1つまたは複数を、CTGFを含有すると疑われる試料と、適切な条件下で接触させ、それによってムテインまたは融合タンパク質とCTGFとの間の複合体の形成を可能にする工程、および適切なシグナルによって前記複合体を検出する工程を含みうる。検出可能なシグナルは、上に説明したようにラベルによって引き起こされるか、または結合そのものによる、すなわち複合体形成そのものによる、物理的特性の変化によって引き起こされうる。一例は表面プラズモン共鳴であり、その値は、結合パートナー(そのうちの一つが金箔などの表面に固定化されているもの)の結合中に変化する。
【0213】
本明細書において開示するCTGF結合性リポカリンムテインまたは融合タンパク質はCTGFの分離にも使用されうる。そのような使用は、前記ムテインまたは融合タンパク質のうちの1つまたは複数を、CTGFを含有すると思われる試料と、適切な条件下で接触させ、それによってムテインまたは融合タンパク質とCTGFとの間の複合体の形成を可能にする工程、およびその複合体を試料から分離する工程を含みうる。
【0214】
CTGFの検出およびCTGFの分離のための、開示するムテインまたは融合タンパク質の使用において、ムテイン、融合タンパク質および/もしくはCTGFまたはそのドメインもしくはフラグメントは、適切な固相上に固定化されうる。
【0215】
さらにもう一つの局面において、本開示は、本開示によるCTGF結合性リポカリンムテインまたは融合タンパク質を含む診断キットまたは分析キットを特徴とする。
【0216】
さらなる別の一局面では、診断薬におけるそれらの使用に加えて、本開示では本開示のムテインまたは融合タンパク質と薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的組成物も考えられる。
【0217】
さらにまた、本開示は、治療において使用するための、CTGFに結合するヒトリポカリンムテインおよび融合タンパク質を提供する。したがって、CTGFに結合する本開示のリポカリンムテインおよび融合タンパク質は、ヒト疾患を処置または防止する方法において使用されることが想定される。したがって、ヒト疾患の処置または防止を必要とする対象におけるヒト疾患を処置または防止する方法であって、治療有効量の、CTGFに結合する本開示のリポカリンムテインまたは融合タンパク質を該対象に投与する工程を含む方法も提供される。さらに、医薬の製造のための、CTGFに結合する本開示のリポカリンムテインまたは融合タンパク質の使用も提供される。
【0218】
本開示のリポカリンムテインまたは融合タンパク質は、線維性疾患、がん、自己免疫疾患、または感染性疾患の処置に使用されうる。
【0219】
本明細書において相互可換的に使用される「線維性疾患」または「線維症」には、肺線維症、例えば特発性肺線維症(IPF)または間質性肺疾患(ILD)(例えば進行性線維化ILD(PF-ILD)、心臓線維症、肝臓線維症および腎臓線維症が含まれるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、線維症は、放射線誘導性肺線維症などの放射線誘導性線維症(RIF)である。いくつかの態様において、本開示のリポカリンムテインまたは融合タンパク質は、IPFまたはPF-ILDを処置するために使用される。
【0220】
本開示のリポカリンムテインまたは融合タンパク質で処置されうるがんには、乳がん、軟骨肉腫、内軟骨腫、神経膠腫、膵がん、甲状腺がん、肝内胆管癌、神経内分泌腫瘍、および舌扁平上皮癌が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0221】
本開示のリポカリンムテインまたは融合タンパク質で処置されうる自己免疫疾患には、全身性硬化症が含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0222】
本開示のリポカリンムテインまたは融合タンパク質で処置されうる感染性疾患には、肺炎などの気道の感染性疾患が含まれるが、それに限定されるわけではない。感染性疾患の処置には、感染性疾患に関連する、例えば感染性疾患に付随または続発する、肺損傷の処置または防止が含まれうる。感染性疾患は、SARS、MERSまたはCOVID-19などのコロナウイルス感染でありうる。COVID-19の処置には、急性COVID-19、進行中の症候性COVID-19、COVID-19後症候群(「長期COVID」または「COVID-19の急性期後続発症(PASC)」とも呼ばれる)の処置、およびCOVID-19感染に付随または続発する肺損傷または心臓損傷などの臓器損傷の処置が含まれうる。いくつかの態様において、本開示のリポカリンムテインまたは融合タンパク質は、COVID-19後症候群、特にCOVID-19後症候群肺線維症(「PASC-PF」とも呼ばれる)を処置するために使用される。
【0223】
本開示のリポカリンムテインまたは融合タンパク質は、肺線維症などの肺疾患、筋ジストロフィー、例えばデュシェンヌ型筋ジストロフィーなどの筋疾患、心疾患、肝疾患、腎臓疾患、または(糖尿病性)網膜症もしくは緑内障などの眼疾患の処置に使用されうる。
【0224】
本開示は、線維形成を阻害するため、または細胞外マトリックスの(病的)沈着を阻害するための、CTGFに結合する本開示のリポカリンムテインまたは融合タンパク質も提供する。
【0225】
本開示は、CTGFの下流シグナル伝達経路を調節するための、本開示のCTGF結合性リポカリンムテイン、融合タンパク質、またはそのようなリポカリンムテインもしくは融合タンパク質を含む組成物の使用を包含する。そのような使用はCTGFの結合を含みうる。
【0226】
したがって本開示は、インビボで抗線維化効果を提供する方法であって、本開示の1つもしくは複数のCTGF結合性リポカリンムテイン、融合タンパク質、またはそのようなリポカリンムテインもしくは融合タンパク質を含む1つもしくは複数の組成物を適用する工程を含む、方法を特徴とする。
【0227】
さらにまた、本開示には、CTGFの下流シグナル伝達経路を調節する方法であって、本開示の1つもしくは複数のCTGF結合性リポカリンムテイン、融合タンパク質、またはそのようなリポカリンムテインもしくは融合タンパク質を含む1つもしくは複数の組成物を適用する工程を含む、方法が関わる。
【0228】
本開示では、肺におけるコラーゲン1a1(COL1a1)沈着などのコラーゲン沈着を低減する方法であって、本開示の1つもしくは複数のCTGF結合性リポカリンムテイン、融合タンパク質、またはそのようなリポカリンムテインもしくは融合タンパク質を含む1つもしくは複数の組成物を適用する工程を含む、方法も考えられる。
【0229】
F. 本開示のリポカリンムテインの投与
本明細書において開示するリポカリンムテインまたは融合タンパク質は、任意の適切な投与様式によって対象に投与することができる。適切な投与様式には、経腸経路および非経口経路を含めうるが、それらに限定されるわけではない。適切な投与経路には、経口投与、鼻腔内投与、粘膜表面への投与、吸入、皮内投与、腹腔内投与、皮下投与、静脈内投与または筋肉内投与を含めうるが、それらに限定されるわけではない。
【0230】
本開示のリポカリンムテインまたは融合タンパク質は吸入によって投与されうる。物質を吸入投与するための手段およびデバイスは当業者には公知であり、例えばWO94/017784AおよびElphick et al.(2015)Expert Opin Drug Deliv,12(8):1375-87に開示されている。そのような手段およびデバイスとして、ネブライザー、定量吸入器、粉末吸入器、および鼻スプレーが挙げられる。リポカリンムテインまたは融合タンパク質の吸入投与を導くのに適した手段およびデバイスは当技術分野では他にも知られている。ネブライザーは溶液からエアロゾルを生じさせるのに役立ち、一方、定量吸入器、乾燥粉末吸入器などは、小粒子エアロゾルを生成させるのに有効である。
【0231】
ネブライザーは、肺に吸入されるミストの形態で投薬するために使用される薬物送達デバイスである。さまざまなタイプのネブライザーが当業者には公知であり、ジェットネブライザー、超音波ネブライザー、振動メッシュ技術、ソフトミスト吸入器などがある。一部のネブライザーは霧状溶液の連続流を与える。すなわち、それらは、対象がそれを吸入するかしないかにかかわらず、長期間にわたる連続噴霧をもたらすことになる。一方、他のネブライザーは呼吸作動式である。すなわち対象は、自身でそこから吸入した場合にのみ、何らかの投薬量を得る。いくつかの態様において、本開示のリポカリンムテインまたは融合タンパク質は、振動メッシュネブライザーによって投与される。
【0232】
定量吸入器(MDI)は、特定量の薬剤を、液体エアロゾル化医薬の短いバーストという形で肺に送達するデバイスである。そのような定量吸入器は一般に、投与される製剤を含むキャニスター、計量された量の製剤を作動ごとに分配することを可能にする計量バルブ、および患者によるデバイスの操作を可能にして液体エアロゾルを肺に向かわせるアクチュエータ(またはマウスピース)という3つの主要構成要素からなる。
【0233】
乾燥粉末吸入器(DPI)は、薬剤を乾燥粉末の形態で肺に送達するデバイスである。乾燥粉末吸入器は、定量吸入器などといったエアロゾルベースの吸入器に代わる選択肢である。薬剤は一般に、用手装填用のカプセルに保持されるか、または吸入器内部に配置された専用ブリスター包装に保持される。
【0234】
鼻スプレーは、薬剤が鼻から吹き込まれる経鼻投与に使用することができる。鼻スプレーは薬剤の極めて迅速な吸収をもたらしうる。
【0235】
この開示のさらなる目的、利点、および特徴は、限定を意図しない以下の実施例および添付するその図面を検討すれば、当業者には明白になるであろう。したがって、例示的態様および随意の特徴によって本開示を具体的に開示するが、当業者は、本明細書に開示する、本開示の変更態様および変形態様を採用することができ、そのような変更態様および変形態様はこの開示の範囲内にあるとみなされることを理解すべきである。
【実施例
【0236】
実施例1:CTGFに特異的なムテインの選択および最適化
本願において開示するCTGF特異的リポカリンムテインは、hNGALに基づくナイーブ変異体ライブラリーから選択した。これらのライブラリーを組換えヒトCTGF/CNN2タンパク質および組換えラットCTGFタンパク質(R&D Systems、社内でビオチン化したもの)に対してパニングした。タンパク質ベースのパニングは標準的手順を使って行った。選択後に得られたクローンを実施例2で述べるスクリーニングプロセスに供した。
【0237】
CTGF特異的ムテインの最適化のために、SEQ ID NO:3、7、9、25および29に基づき、選ばれた位置のランダム化またはエラープローンポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に基づく方法のいずれかを用いて、DNAにコードされたリポカリンムテインのライブラリーを作成した。作成されたリポカリンムテインを、本質的に記載されているとおり(Kim et al.,2009,J.Am.Chem.Soc.,131,10,3565-3576)、ファージミドベクターに高い効率でクローニングした。ファージディスプレイを使って、熱安定性および結合アフィニティが改良されている最適化されたムテインを選択した。ファージミド選択は、組換えヒトCTGF/CNN2タンパク質および組換えラットCTGFタンパク質(R&D Systems、社内でビオチン化したもの)に対して、最初のムテイン選択と比べてストリンジェンシーを増加させた条件下で行い、特に、高温でのプレインキュベーション工程および制限的標的濃度を含めた。
【0238】
実施例2:ハイスループット酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)スクリーニングを使った、CTGFに特異的に結合するムテインの同定
C末Strep-タグII(SEQ ID NO:41)に遺伝子融合されたリポカリンムテインの個々のコロニーを使って、2×酵母エキストリプトン(Yeast Extract Trypton)(2XYT)/Amp培地に接種し、定常期まで一晩成長(14~18時間)させた。次に、50μLの2×YT/Ampに定常期培養物から接種し、37℃で3.5~5.5時間インキュベートしてから、OD595が0.6~0.8に達するまで22℃に移行した。1.2μg/mLアンヒドロテトラサイクリンを補足した2×YT/Amp 10μLの添加によって、ムテインの産生を誘導した。培養物を翌日まで22℃でインキュベートした。PBS/T中の5%(w/v)BSA 40μLを添加して25℃で1時間インキュベートすることで、培養物は、スクリーニングアッセイに使用する準備が整った。
【0239】
単離されたムテインのCTGFへの結合は、PBS中、2μg/mLの組換えヒトCTGFタンパク質(SEQ ID NO:79)、組換えラットCTGFタンパク質(R&D Systems、SEQ ID NO:82)および組換えヒトCTGF-Fcタンパク質(Creative Biomart、SEQ ID NO:83)を、4℃で一晩、マイクロタイタープレートに直接コーティングすることによって試験した。5%BSAを含有するPBSTでプレートをブロッキングした後、BSAでブロッキングした20μlの培養物をマイクロタイタープレートに加え、室温で1時間インキュベートした。結合したムテインを、1時間のインキュベーション後に、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートされた抗StrepTag抗体(IBA Lifesciences)で検出した。定量のために、20μLのQuantaBlu蛍光原性ペルオキシダーゼ基質を加え、結果として生じた蛍光を、励起波長330nmおよび蛍光波長420nmで決定した。
【0240】
アフィニティと安定性が増加しているムテインを選択するために、i)抗原濃度を下げ(組換えヒトCTGF/CNN2タンパク質および組換えラットCTGFタンパク質(R&D Systems、社内でビオチン化したもの)を使用、ii)抗Strep-タグ抗体でコーティングされたマイクロタイタープレート上にStrep-タグを介してムテインを捕捉して、2.5nMのビオチン化組換えヒトCTGF/CNN2タンパク質を加え、それをExtravidin-HRP(Sigma)によって検出する逆スクリーニングフォーマットを使用し、そして一部はiii)標的プレートへの添加前にスクリーニング上清を65~75℃でインキュベートして、スクリーニングを行った。
【0241】
次に、スクリーニング結果に基づいてクローンを配列決定し、さらなる特性解析のためのムテインを選択した。
【0242】
実施例3:ムテインの発現
SAリンカーのC末配列
およびStrep-タグIIペプチド(WSHPQFEK、SEQ ID NO:41)を持つ選択されたムテインを、2XYT/Amp培地中、大腸菌において発現させ、Strep-Tactinアフィニティクロマトグラフィーと分取用サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使って精製した。SEC精製後に、単量体型タンパク質を含有するフラクションをプールし、分析用SECで再び分析した。Strep-Tactinアフィニティクロマトグラフィーおよび分取用SEC後の例示的リポカリンムテインの収量を、Strep-Tactin精製後のモノマー含量と共に、表1に示す。
【0243】
リポカリンムテインおよび融合タンパク質の一部は、最新の技法を使って、C末Hisタグ付きで、CHOにおいて発現させた(表2参照)。
【0244】
(表1)大腸菌におけるムテインの発現
【0245】
(表2)CHO細胞におけるムテインと融合タンパク質の発現
【0246】
実施例4:リポカリンムテインの熱安定性評価
フォールディング安定性の一般的指標であるリポカリンムテインの融解温度(Tm)を決定するために、PBS(Gibco)中に1mg/mLのタンパク質濃度のCTGF特異的ムテインを、キャピラリーナノDSC機器(CSC 6300、TA Instruments)を使って、1℃/分でスキャン(25~100℃)した。表示されたサーモグラムから、統合Nano Analyzeソフトウェアを使って、Tmを算出した。観察されるサーモグラムにはいくつかのアンフォールディング事象が寄与しうる。複数の転移がある場合は、主要なアンフォールディングエネルギーを持つものが全体的タンパク質フォールドを最もよく表し、それを報告する。ムテインは実施例3で述べたように生産した。SEQ ID NO:3、7、9、25および29は大腸菌を使って発現させ、他のムテインはCHO細胞を使って発現させた。
【0247】
その結果得られた最大融解温度および融解開始温度を、例示的リポカリンムテインおよび融合タンパク質について、下記表3に列挙する。
【0248】
(表3)ナノDSCで決定された、CTGF特異的リポカリンムテインのTmおよび融解開始温度
【0249】
実施例5:表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定された、ヒト、カニクイザル、ラットおよびマウスCTGFへのムテイン結合のアフィニティ
表面プラズモン共鳴(SPR)を使って、本明細書において開示する代表的リポカリンムテインの結合キネティクスおよび結合アフィニティを測定した。
【0250】
ヒト(Creative Biomart)、カニクイザル、ラット(R&D Systems)およびマウス(Abbexa)のCTGFに対する例示的リポカリンムテインの結合を、Biacore機器(Cytiva、かつてのGE Healthcare)を使ったSPRによって決定した。一部の標的はヒトIgG1 Fcタグに融合して抗ヒトIgG抗体キットで捕捉し、他の標的は直接固定化した。
【0251】
標準的アミンケミストリーを使用し、製造者の説明書に従って、抗ヒトIgG Fc抗体(GE Healthcare)をCM5センサーチップ上に固定化し、5500~14000レゾナンスユニット(RU)の固定化レベルを得た。一部の測定については、ヒトIgG1 Fcタグを持つヒトCTGFまたはタグなしのラットもしくはマウスCTGFを、CM5チップに直接固定化した。1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を使って、チップ上のカルボキシル基を活性化した。次に、10mM酢酸ナトリウム(pH)4.5中の濃度3~5μg/mLの標的を、300~1100レゾナンスユニットの固定化レベルが達成されるまで、10μL/分の流速で適用した。表面に1Mエタノールアミンの溶液を通過させることによって残存未反応NHS-エステルをブロッキングした。リファレンスチャネルを活性化/不活化した。捕捉設定の場合は、IgG Fcタグを持つ標的を、HBS-EP+緩衝液中、0.25~2.5μg/mLで、抗ヒトIgG-Fc抗体により、10μL/分の流速で180秒間、チップ表面に捕捉した。
【0252】
リポカリンムテインのアフィニティ決定のために、各ムテインの希釈液を、典型的には0.43~2000nMの範囲にわたるさまざまな濃度でHBS-EP+緩衝液中に調製し、アフィニティ測定のために調製済みチップ表面に適用した。結合アッセイは接触時間180秒、解離時間900~3600秒および流速30μL/分で実行した。すべての測定を25℃で行った。CTGFに結合しないリポカリンムテインも陰性対照として試験した。Fc捕捉チップ表面の再生は、10μL/分の流速で60~120秒間の3M MgCl2注入および60~120秒間の10mMグリシン-HCl(pH 1.7)注入の後、ランニング緩衝液(HBS-EP+緩衝液)による追加の洗浄および120秒間の安定化期間によって達成した。直接固定化された標的にも同じ再生条件を使用した。タンパク質測定に先だって、コンディショニングのために、3回のスタートアップサイクルを実施した。データはBiacore評価ソフトウェアで評価した。二重リファレンスを使用し、1:1結合モデルを使って生データの当てはめを行った。
【0253】
例示的リポカリンムテインのkon、koffおよびその結果得られる平衡解離定数(KD)について決定された値を表4に要約する。ヒトおよびカニクイザルのCTGFに対する結合アフィニティは、試験したリポカリンムテインの大半において同等であり、それは、薬物動態および/または薬物安全性研究にとって好ましい特徴である。最適化されたリポカリンムテインSEQ ID NO:4~6、8、10~24、26~28、30~36は、低ナノモル濃度領域のKD値を有し、親リポカリンムテインSEQ ID NO:3、7、9、25および29と比べて、1500分の1までのKD値を呈した。いくつかの最適化されたリポカリンムテインのKD値は、SEQ ID NO:60および61の抗CTGFモノクローナル抗体(ヒトCTGFに対してKDが約0.2nM)の場合より有意に低い。さらにまた、いくつかの最適化されたリポカリンムテインは、抗体(ヒトCTGFに対してkoffが約2.1 E-04s-1)と比較して遅い解離速度を呈し、本リポカリンムテインの持続的な標的結合(target engagement)を示した。
【0254】
(表4)表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定されたCTGF特異的ムテインの速度定数およびアフィニティ
n.t. 未試験、B 結合するが、キネティクスの決定は行っていない。
【0255】
実施例6:融合タンパク質のELISA
融合タンパク質の結合をELISAアッセイによって試験した。詳しく述べると、蛍光測定に適した384ウェルプレート(Greiner FLUOTRAC(商標)600、ブラック平底、高結合)を、PBS中、濃度1μg/mlのヒトCTGF(R&D Systems)20μlで、4℃において一晩コーティングした。0.05%Tween20を含むPBSで洗浄した後、0.1%Tween 20および2%BSAを含有するブロッキング緩衝液(PBS-T/BSA)100μlで、室温において1時間、ウェルをブロッキングした。段階希釈したムテイン20μlをPBS-T/BSA中、室温(RT)で1時間インキュベートした。
【0256】
残存上清を捨て、20μlのHRP標識抗NGALまたは抗His-タグ抗体を、PBS-T/BSA中、前もって決定しておいた最適濃度で加え、RTで1時間インキュベートした。洗浄後に、20μlの蛍光原性HRP基質(QuantaBlu,Thermo)を各ウェルに加え、反応を2~60分間進行させた。蛍光マイクロプレートリーダー(Tecan)を使ってプレート上のすべてのウェルの蛍光強度を読み取った。GraphPad Prism 7または8ソフトウェアを使ってカーブフィッティングを行った。その結果得られたEC50値を下記表5に要約する。
【0257】
(表5)ELISAアッセイにおけるEC50値
【0258】
実施例7:融合タンパク質のHTRFアッセイ
一部の融合タンパク質の結合を、均一系時間分解蛍光法(HTRFアッセイ)によって試験した。詳しく述べると、384平底ホワイトポリスチロールマイクロタイタープレート(Greiner)において、1nMのビオチン化ヒトCTGF(R&D Systems)を、いくつかのリポカリンの5nMから始まるタイトレーションと共に、1時間インキュベートした。0.1%Tween 20および2%BSAを含有するPBSに試料を希釈した。ドナーとして、ストレプトアビジン-テルビウムを0.006μg/mLの濃度で使用し、アクセプターは0.2μg/mLの抗His-d2とした(どちらもCisBio)。さらに1時間のインキュベーション後に、蛍光マイクロプレートリーダーM1000(Tecan)を使用し、CisBioが推奨する標準的設定で、プレート上のドナーとアクセプターの蛍光強度を読み取った。算出されたシグナルの比を使って、GraphPad Prism 7ソフトウェアでカーブフィッティングを行った。その結果得られたEC50値を下記表6に要約する。
【0259】
(表6)HTRFアッセイにおけるEC50値
【0260】
実施例8:リポカリンムテインのエピトープ解析
表面プラズモン共鳴(SPR)を使ってエピトープを解析し、異なるリポカリンムテインの同時結合を決定した。ヒトIgG1 Fcタグを持つヒトCTGFを、470~630レゾナンスユニットの固定化レベルが達成されるまで、CM5チップに直接固定化した(Creative Biomart、10mM酢酸ナトリウムpH4.5中、10μg/mL)。リファレンスチャネルを活性化/不活化した。2種の異なるリポカリンムテインまたはSEQ ID NO:60および61に示される抗体を混合し、30μg/mLの流速で180秒間、750nMまたは1000nMで同時に注入した。対照として、単一のリポカリンムテインを注入し、その結果生じる単一物と混合物のシグナルを注入の終了時に比較した。チップは、流速15μL/分の3M MgCl2およびグリシン-HCl pH1.5で、それぞれ60秒間、再生した。
【0261】
表7に結果を要約する。「可」は同時結合が可能であることを意味し、「不可」は同じエピトープまたはオーバーラップしたエピトープを表し、「n.t.」は未試験を表す。
【0262】
(表7)さまざまなリポカリンムテインおよび対照抗体の同時結合
SEQ ID NO:23の例示的リポカリンムテインのエピトープは、SEQ ID NO:60および61の抗CTGFモノクローナル抗体のエピトープともオーバーラップしており、このリポカリンムテインはELISAベースの競合アッセイにおいてCTGFへの結合に関して抗体と競合する(データ省略)。
【0263】
実施例9:CTGFフラグメントへの結合
ヒトおよびマウスのCTGFのフラグメントへのムテインの結合をELISAアッセイによって試験した。詳しく述べると、蛍光測定に適した384ウェルプレート(Greiner FLUOTRAC(商標)600、ブラック平底、高結合)を、PBS中、濃度1μg/mlのヒトCTGF(R&D Systems、SEQ ID NO 79)およびマウスCTGF(Biozol、SEQ ID NO:80)またはそれらのフラグメント(Evitria、ヒトFcタグを持つhuCTGFドメイン1および2(SEQ ID NO 77)、ならびにヒトFcタグを持つmuCTGFドメイン1および2(SEQ ID NO 78))20μlで、4℃において一晩コーティングした。0.05%Tween20を含むPBSで洗浄した後、0.1%Tween 20および2%BSAを含有するブロッキング緩衝液(PBS-T/BSA)100μlで、室温において1時間、ウェルをブロッキングした。1000nMから開始して段階希釈したムテイン20μlを、PBS-T/BSA中、室温で1時間インキュベートした。
【0264】
残存上清を捨て、20μlのHRP標識抗Strep-タグ抗体を、PBS-T/BSA中、前もって決定しておいた最適濃度で加え、RTで1時間インキュベートした。洗浄後に、20μlの蛍光原性HRP基質(QuantaBlu,Thermo)を各ウェルに加え、反応を5~25分間進行させた。蛍光マイクロプレートリーダー(Tecan)を使ってプレート上のすべてのウェルの蛍光強度を読み取った。GraphPad Prism 7ソフトウェアを使ってカーブフィッティングを行った。その結果得られたEC50値を下記表8に要約する。
【0265】
(表8)ELISAアッセイにおけるEC50値
【0266】
実施例10:特異性ELISA(CCNタンパク質)
CTGFの近縁タンパク質へのムテインの結合をELISAアッセイによって試験した。詳しく述べると、蛍光測定に適した384ウェルプレート(Greiner FLUOTRAC(商標)600、ブラック平底、高結合)を、PBS中、濃度1μg/mlのヒトCTGFまたはCCNタンパク質ファミリーの他のメンバー20μlで、4℃において一晩コーティングした。0.05%Tween20を含むPBSで洗浄した後、0.1%Tween 20および2%BSAを含有するブロッキング緩衝液(PBS-T/BSA)100μlで、室温において1時間、ウェルをブロッキングした。1000nMから開始して段階希釈したムテイン20μlを、PBS-T/BSA中、室温(RT)で1時間インキュベートした。
【0267】
残存上清を捨て、20μlのHRP標識抗NGALまたは抗Strep-タグ抗体を、PBS-T/BSA中、前もって決定しておいた最適濃度で加え、RTで1時間インキュベートした。洗浄後に、20μlの蛍光原性HRP基質(QuantaBlu,Thermo)を各ウェルに加え、反応を2~60分間進行させた。蛍光マイクロプレートリーダー(Tecan)を使ってプレート上のすべてのウェルの蛍光強度を読み取った。ヒトCTGFのシグナルが飽和に達した時に、他のタンパク質への交差反応性を評価した。
【0268】
(表9)ELISAアッセイの結果
【0269】
実施例11:インビボでの肺線維症のブレオマイシンマウスモデルにおけるCTGF標的化リポカリンムテインの抗線維化効果
ブレオマイシン誘導性肺線維症のマウスモデルを使って、肺に局所送達された時のリポカリンムテインの抗線維化活性をインビボで評価した。ブレオマイシンは、がん治療にも使用されるDNA損傷剤であり、齧歯類の肺に送達されると、肺上皮の重度の損傷を誘導する。この傷害は、肺に強い炎症応答を引き起こし、そしてそれが、線維化応答の引き金を引く。ブレオマイシン負荷後、通常は14日目と21日目の間に観察される線維性リモデリングのピークは、細胞外マトリックスの過剰な沈着と肺胞構造の破壊を特徴とする。ここでは、およそ9週齢の雄C57BL/6Nマウスに、用量1mg/kgのブレオマイシン、または対照としての食塩水を、鼻腔内経路で負荷した。動物を、用量5mg/kgのリポカリンムテインまたは媒体対照としてのPBSで、肺への局所送達により、ブレオマイシン負荷後0日目から13日目まで、毎日、処置した。動物を、用量10mg/kgの抗CTGFモノクローナル抗体(SEQ ID NO:60および61)でも、静脈内投与経路により、1日おきに、処置した。ブレオマイシン負荷後、14日目に動物を屠殺し、肺線維症のレベルを、ホルマリン固定パラフィン包埋肺組織で、組織病理学的評価により、アシュクロフトスコア(松瀬(Matsuse)の変法)を使って、およびIHCで検出されるコラーゲン1a1タンパク質沈着の定量的デジタル解析を使って解析した。
【0270】
アシュクロフトスコアを決定するために、Crossmanのトリクローム法に従って肺組織スライドを染色した(Gray,Peter(1954)「The Microtomist's Formulary and Guide」Blakiston,ニューヨーク,1954)。組織病理学的解析に供した肺領域全体を10個の低倍率視野で評価し、各動物についての総スコアを平均として算出した(Ashcroft et al.,Journal of clinical pathology 41.4(1988):467-470、Matsuse,T.,et al.European Respiratory Journal 13.1(1999):71-77)。図1Aに、解析した異なる群のアシュクロフトスコアを示す。食塩水を負荷した健常対照肺と比較した場合、ブレオマイシン負荷は、媒体対照動物からのスコア値の有意な上昇につながり、強い線維化促進応答を示した。マウスの肺にSEQ ID NO:24のリポカリンムテインを毎日局所送達すると、PBSを滴下注入した媒体対照肺と比較して、アシュクロフトスコアが有意に減少した。アシュクロフトスコアは、リポカリンムテイン処置肺を、同じ投与経路での媒体処置動物の平均アシュクロフトスコアと比較した場合、平均で14.1%低減した。注目すべきことに、全身送達されるCTGF標的化モノクローナル抗体(SEQ ID NO:60および61)による処置は、アシュクロフトスコアに有意な効果を有さず、線維性肺リモデリングを減弱しなかった。
【0271】
線維性肺リモデリングに関する第2の尺度として、コラーゲン1a1(Col1a1)沈着を、免疫組織化学によって解析した。肺組織切片の抗原賦活化は、抗原賦活化溶液を使って行い(PT Linkモジュール、DAKO)、次に組織スライドを、一次ウサギポリクローナル抗COL1A1抗体と共に1時間インキュベートし(1:2000、LSBio)、ImmPRESS検出キット(Vector、MP-7401)を使って検出を行った。対照として機能する、一次抗体なしの染色、およびウサギIgGアイソタイプ対照(Vector)による染色という、2つの対照を実施した。染色した組織切片を、Col1a1沈着について、形態測定プロトコール(CaloPixソフトウェア、TRIBVN)を使ったデジタル画像解析によって評価した。図1Bに、異なる処置群におけるコラーゲン沈着解析の結果を、Col1a1陽性肺表面積の百分率として示す。食塩水負荷肺と比較した場合、ブレオマイシン負荷は、肺組織におけるCol1a1沈着を強く誘導した。SEQ ID NO:24のリポカリンムテインの局所肺送達は、PBS媒体対照処置動物と比較した場合に、それぞれの対照の平均と比較すると25.2%の低減に相当する、Col1a1陽性肺表面積の有意な低減につながった。抗CTGFモノクローナル抗体(SEQ ID NO:60および61)の全身性送達も、媒体対照処置動物の平均に対して平均20.9%とわずかに低い程度に、Col1a1レベルを有意に低減した。
【0272】
要約すると、この実験は、肺に直接送達されるCTGF標的化リポカリンムテインで局所処置した時に、モノクローナル抗体を使ったこのタンパク質の全身性ターゲティングと比較して、より強い全体的抗線維化応答を示した。したがってこの研究は、全身性の経路で与えられる阻害剤と比較して、より良い標的結合および効力を達成するための、吸入CTGF標的化リポカリンムテインの開発に関する本発明者らの理論的根拠を裏付けている。
【0273】
実施例12:肺オルガノイド形成に対するCTGF標的化リポカリンムテインの効果
肺再生のオルガノイドモデルを使って、CTGF標的化リポカリンムテインの効果を解析した。このモデルでは、CCL-206肺線維芽細胞を新鮮単離初代マウスEpcam陽性上皮前駆細胞と共培養し、形成されたオルガノイドの数を14日後に解析する。CCL-206線維芽細胞のTGF-b1前処置は、オルガノイド形成障害につながり、例えばIPFなどの肺疾患において観察されるような肺再生の障害に似ている。このオルガノイド形成障害は、このモデルにおいて陽性対照として使用されるニンテダニブなどのさまざまな薬物による処置で、レスキューすることができる。この実施例では、共培養された細胞を、ニンテダニブ(100nM)、CTGFに結合しないリポカリンムテインスキャフォールド対照(100nM)、SEQ ID NO:74のCTGF標的化融合タンパク質(10nMおよび100nM)、ならびに抗CTGFモノクローナル抗体(SEQ ID NO:60および61)で、14日間処置した。結果を図2に示す。オルガノイド数の解析により、TGF-b1刺激によるオルガノイド形成の障害が確認された。この効果は、陽性対照ニンテダニブによって部分的にレスキューされた。注目すべきことに、SEQ ID NO:74のCTGF標的化融合タンパク質による100nMでの処置が、さらに強いオルガノイド形成改良傾向を示したのに対し、CTGF標的化モノクローナル抗体(SEQ ID NO:60および61)にはオルガノイド形成に対する効果がなかった。
【0274】
実施例13:活性化ヒト肺線維芽細胞への結合
CTGFを発現する、TGF-β1で刺激された、正常ヒト肺線維芽細胞(NHLF)への、本明細書において開示するCTGF標的化リポカリンムテインおよび融合タンパク質の結合を、構築物およびCTGF発現を誘導する10ng/ml TGF-β1と共にNHLFを24時間インキュベートすることによって、試験した。TGF-β1刺激なしのNHLFを陰性対照として含めた。NHLFを4%PFAで固定し5%BSAでブロッキングした後に、AlexaFluor647にカップリングされたリポカリンスキャフォールドに対する二次抗体で、構築物を検出した。画像はCytation5リーダー(Biotek)で取得した。シグナルをGene5ソフトウェアで定量し、それぞれの対照に対して正規化した。実験のために、Goodらが記載したように、疑似3D(pseudo-3D)細胞外マトリックス沈着を容易にする条件下で、細胞を成長させた(Good et al.,BMC Biomed Eng,1:14(2019))。
【0275】
代表的なデータを図4に示す。これらは、CTGFを発現する活性化ヒト肺線維芽細胞に濃度依存的に結合するという、本明細書において開示するCTGF標的化リポカリンムテインおよび融合タンパク質の能力を例証している。
【0276】
実施例14:噴霧化挙動
本明細書において開示するCTGF標的化リポカリンムテインおよび融合タンパク質の、吸入による投与への適合性を、市販の振動メッシュネブライザー(Philips InnoSpire Go(登録商標))を使って、試験した。液滴サイズ分布は、ネブライザーをMalvern Spraytecおよび吸入セルと一緒に使用することで、レーザー回折によって特徴づけた。
【0277】
SEQ ID NO:23の例示的CTGF標的化リポカリンムテイン(A)およびSEQ ID NO:74の融合タンパク質(B)に関する代表的データを図5および下記表10に示す。これらのデータは、本明細書において開示するCTGF標的化リポカリンムテインおよび融合タンパク質の生物物理的特性が、肺における効果的な沈着を達成するのに足りるほど小さな粒子を特徴とする、ヒトにおける吸入適用にとって適当なエアロゾルの生成を可能にすることを例証している。リポカリンムテインおよび融合タンパク質の噴霧化は、分子の安定性および活性に対して負の影響を及ぼさなかった(データ省略)。
【0278】
(表10)噴霧化時の液滴サイズ分布
【0279】
実施例15:マウスの線維化した肺における肺組織分布
蛍光標識したムテインおよび融合タンパク質の肺組織生体内分布を、マウスの線維化した肺で調べた。ブレオマイシン負荷(実施例11参照)後、21日目に、マウスを、Alexa-647で標識したSEQ ID NO:23の例示的リポカリンムテイン、またはAlexa-647で標識したSEQ ID NO:74の例示的融合タンパク質のどちらか一方で処置するか(どちらも肺に投与)、または静脈内注入によって全身性に送達されるAlexa-647で標識したCTGF標的化モノクローナル抗体(SEQ ID NO:60および61)で処置した。投与法の異なる化合物の肺組織生体内分布を、送達の2、8および24時間後に、左肺の光シート顕微鏡イメージングによって解析した。
【0280】
代表的な3D概観像を図6Aに示し、3Dスキャンした肺の代表的な拡大2D切片を図6Bに示す。図6Cおよび図6Dは、それぞれ、線維化領域における総化合物蛍光と、化合物の標的となった線維化領域の体積分率を表している。これらのデータは、CTGF標的化リポカリンムテインと、(それほどではないが、それでもなお実質的に)そのようなムテインを含む融合タンパク質とが、マウスの肺における線維性組織の効果的な標的化を可能にすることを、明確に示している。そのような効果的標的化は、全身性に投与される抗CTGFモノクローナル抗体では達成できなかった。
【0281】
実施例16:マウス肺PK
SEQ ID NO:23の例示的リポカリンムテインならびにSEQ ID NO:60および61の抗CTGFモノクローナル抗体の薬物動態(PK)プロファイルを、マウスの気管支肺胞洗浄液(BALF)、肺組織および血漿において解析した。リポカリンムテイン(100μg/マウス)をマウスの口咽頭に投与し、異なる区画における曝露を、2、4、8および24時間後に、ELISAによって測定した(図7A)。100μgの抗体を静脈内注入によってマウスに投与し、1、8、24および96時間後に、ELISAによって曝露を測定した(図7B)。
【0282】
図7Aに示すように、口咽頭に送達されたSEQ ID NO:23のリポカリンムテインのPK解析により、24時間にわたる肺における有意な曝露が確認され、1日1回の肺送達が支持された。リポカリンムテインが肺における高い曝露を達成すると共に、およそ1%しか血漿に到達しないのに対し、全身性に投与された抗体の肺曝露は、BALFおよび肺組織では有意に低く、およそ20%しか肺には到達しなかった(表11)。
【0283】
(表11)肺および血漿曝露
投与の区画を100%に設定
【0284】
2つのリポカリンタンパク質を含む融合タンパク質でも同様の結果が得られ、この場合、融合タンパク質は、BALFおよび肺において、単一のリポカリンタンパク質と比べて増加した滞留時間を呈した(データ省略)。
【0285】
本明細書に例示的に記載された態様は、本明細書に具体的に開示されていない1つまたは複数の要素、1つまたは複数の制限が存在しなくても、適切に実施されうる。したがって、例えば「を含む(comprising)」、「を含む(including)」、「を含む(containing)」などの用語は、限定されることなく、拡張的に読解されるものとする。加えて、本明細書で使用される用語および表現は、限定ではなく説明の用語として使用されており、そのような用語および表現の使用に、表示され説明された特徴またはその一部分のいかなる均等物も除外する意図はなく、請求項に係る発明の範囲内でさまざまな変更が可能であると認識される。したがって、例示的な態様および随意の特徴によって本態様を具体的に開示したが、当業者であれば、その変更態様および変形態様を採用することができ、そのような変更態様および変形態様が本開示の範囲内とみなされることを、理解すべきである。本明細書に記載する特許、特許出願、教科書および査読付き刊行物はいずれも、参照により、その全体が本明細書に組み入れられる。さらにまた、参照により本明細書に組み入れられる参考文献における用語の定義および使用が、本明細書において与えられるその用語の定義と一致しないか、または矛盾する場合は、本明細書において与えられるその用語の定義が適用され、参考文献におけるその用語の定義は適用されない。上位概念の開示に包含される下位概念および下位分類のそれぞれも、本開示の一部を形成する。これには、削除される事項が本明細書において具体的に言明されているか否かにかかわらず、上位概念からいずれかの対象事項を除外する但し書きまたは消極的限定を伴う、上位概念による本発明の説明が包含される。加えて、特徴がマーカッシュ群によって記載されている場合、本開示が、それにより、そのマーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたはメンバーの部分群によっても記載されていることは、当業者にはわかるだろう。さらなる態様は以下の請求項から明らかになるであろう。
【0286】
均等物:本明細書に記載する本発明の具体的態様の数多くの均等物は、当業者にはわかるか、またはせいぜい日常的な実験を使って確かめることができるだろう。そのような均等物は、添付の特許請求の範囲に包含されるものとする。この明細書において言及する刊行物、特許、および特許出願はすべて、個々の刊行物、特許、または特許出願について参照により本明細書に組み入れられることを具体的かつ個別に示した場合と同じ程度に、参照により本明細書に組み入れられる。
図1A
図1B
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4】
図3-5】
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
【配列表】
2024515564000001.app
【国際調査報告】