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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】構造的バッテリ用の電気化学セル
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20240403BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240403BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20240403BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20240403BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240403BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240403BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/58
H01M4/13
H01M10/052
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562220
(86)(22)【出願日】2022-03-28
(85)【翻訳文提出日】2023-11-30
(86)【国際出願番号】 IB2022052840
(87)【国際公開番号】W WO2022214909
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】102021000008444
(32)【優先日】2021-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523381527
【氏名又は名称】ボルタ ストラクチュラル エナジー エス.アール.エル
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コンシグリオ、ガブリエル
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ11
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AM03
5H029AM07
5H029AM10
5H029AM16
5H050AA14
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB01
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050FA07
(57)【要約】
相互に平行であり、間隔を開けて配置された2つの外部プレート(10)であって、それぞれが、展開平面(3a)に沿って延在してそれぞれの外部プレート(10)の内側表面(10a)を画定する第2の電極(3)を備える、2つの外部プレート(10)、及び外部プレート(10)の内側表面(10a)を相互に連結することができ、複数の壁(20b)によって画定される少なくとも1つのハニカム構造体(20a)を備える連結要素(20)であって、複数の壁(20b)は、第1の展開方向(2a)に平行に延在し、展開方向(2a)に平行に高いスチフネスを有し展開方向(2a)に対して垂直に変形可能である第1の電極(2)を共に作成する、連結要素(20)を備え、それぞれの第2の電極(3)が、第1の展開方向(2a)に対して横方向であり、外部プレート(10)及び連結要素(20)により、少なくとも展開方向(2a)に沿った衝突の際に機械的エネルギーを吸収し、変形なしに搭載及び取外しプロセスを行うことができるサンドイッチパネル(1a)が画定される、電気化学セル(1)が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造的バッテリ用の電気化学セルであって、
-平行であり、間隔を開けて配置された2つの外部プレート、それぞれが、展開平面に沿って延在してそれぞれの前記外部プレートの内側表面を画定する第2の電極を含む、及び
-前記外部プレートの前記内側表面を相互に連結するのに適した連結要素
を備え、
-前記連結要素が、複数の壁によって画定される少なくとも1つのハニカム構造体を有し、前記複数の壁は、第1の展開方向に平行に延在し、前記第1の展開方向に平行に高い剛性を有し前記第1の展開方向に対して垂直に変形可能である第1の電極を共に実現し、
-それぞれの前記第2の電極が、前記第1の展開方向に対して横方向であり、
-前記外部プレート及び前記連結要素により、少なくとも前記第1の展開方向に沿った衝突の際に機械的エネルギーを吸収し、変形なしに搭載及び取外しプロセスを行うのに適したサンドイッチパネルが画定される、
電気化学セル。
【請求項2】
前記第1の電極及び前記第2の電極が、前記第1の電極及び前記第2の電極の間に画定される接触区域に対応して位置決めされた絶縁体を用いて相互に電気的に隔てられている、請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項3】
前記第1の電極及び前記第2の電極を強固に連結する構造的接着要素を備える、請求項1または2に記載の電気化学セル。
【請求項4】
前記第1の電極及び前記第2の電極と接触するように設けられ、前記第1の電極及び前記第2の電極の間でのイオン移動を可能にするのに適した電解質を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項5】
前記電解質が前記第1の電極及び前記第2の電極と接触し、前記第1の電極及び第2の電極を覆うポリマー収納要素の内部に収められている、請求項4に記載の電気化学セル。
【請求項6】
前記複数の壁のそれぞれが、前記電気化学セルの動作に必要な特定の化学反応を可能にするように構成され、LiCoO2、LiMnO2、LiFePO4、又は他の同様のものから選択される1つ又は複数から作成された活性層を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項7】
前記外部プレートのうちの少なくとも1つが、前記第2の電極の、前記内側表面とは反対側の面に延在し、前記サンドイッチパネルを外部環境から隔離するのに適した保護層を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項8】
前記外部プレートのうちの少なくとも1つが、前記第2の電極の、前記内側表面とは反対側の面に位置決めされ、電流の流れを分配するのに適しており、前記第2の電極及び保護層の間に位置決めされた電流コレクタを有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の複数の前記電気化学セルを備える、構造的バッテリ。
【請求項10】
前記電気化学セルが、隣接するそれぞれの前記サンドイッチパネルの間に介在させられた絶縁要素を用いて互いに構造的に連結されている、請求項9に記載の構造的バッテリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに規定されているタイプの、構造的バッテリ用の電気化学セルに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、様々な構造的バッテリが開発されている。簡単に言えば、構造的バッテリは、機械的負荷を支持し、同時に電気エネルギーを蓄積することができる革新的な多機能の複合材料を含む。これらのバッテリは、同等のエネルギー効率の従来のバッテリよりもサイズ及び重量が著しく小さい。構造的バッテリは、多くの潜在的用途を有する。考えられる使用分野は、自動車セクタ、航空宇宙セクタ、建設セクタ、エネルギーセクタ、特に再生可能エネルギーセクタ、及びその他である。
【0003】
こうした構造的バッテリを採用することは、空間に関連する問題を解決するのに特に適している。
【0004】
例えば、よく知られているように、今日の電気自動車の主な問題は、それらの航続可能距離が短いことである。高い自律走行性を保証するには、大きい従来型のバッテリを車両に実装することが必要とされることになる。しかし、これらは車両の重量を著しく増加させ、したがって消費を増加させるという欠点を有する。この問題を克服するために、自動車は車体構造に一体化されたアキュムレータを用いて設計されてきた。車体構造のいくつかの部分は、エネルギーを蓄積すると同時に構造体に機械抵抗を提供するように設計された複合材料で作成される。この一体化された構築コンセプトは、上記領域のすべてに適用することができ、構造体及び電気装置の形状及び/又はサイズの著しい変化も伴う。
【0005】
近年、多機能の複合材料を実現するために最も研究されている手法は、複合積層体内に薄膜バッテリを組み込んで、多機能の構造体を作り出すことであった。例えば、リチウムイオンバッテリの特性が、炭素繊維複合材料の特性に組み込まれてもよい。炭素繊維は構造的強度を提供し、リチウムイオンバッテリの負極にもなる。これらのファイバは、高い機械的性能を確実とするためにマトリクス状に配置されなければならない。マトリクスは、負極及び正極の間でエネルギーを蓄積するために必要とされるイオン交換も可能にしなければならない。液体電解質はこれらの構成における機械的負荷に適していないので、このマトリクスは主にポリマー材料で作成される。
【0006】
代替的な手法は、バッテリ、例えばリチウムイオンを形成するのにそれら自体が適している構造的電極、構造的セパレータ、及びさらには構造的電解質を作成することである。
【0007】
説明された知られている技法は、いくつかの主要な欠点を伴う。
【0008】
特に、これまでに研究されている解決手段は、大きいエネルギー蓄積及び高い構造的強度の満足のいく組み合わせを生み出していない。
【0009】
いくつかの技術は、充電及び放電プロセスの間の構造的変形という問題を提示する。
【0010】
加えて、損傷又は動作不良が、大きい構造的部品を高いコストで交換することにつながる場合がある。
【0011】
この状況において、本発明の根底をなす技術的課題は、前述の欠点のうちの少なくとも一部を実質的になくすことができる構造的バッテリ用の電気化学セルを考案することである。
【0012】
上記技術的課題の文脈では、高い機械抵抗を保証し、同時に高いエネルギー効率を保証する構造的バッテリ用の電気化学セルを得ることが、本発明の重要な目的である。
【0013】
さらに、こうした構造的バッテリは、充電及び放電プロセスの間に変形を受けないことが望ましい。
【0014】
本発明の別の重要な目的は、動作不良又は損傷の場合に低コストで修理することができる構造的バッテリ用の電気化学セルを実現することである。
【0015】
規定された技術的課題及び目的は、添付の請求項1で特許請求される構造的バッテリ用の電気化学セルによって実現される。
【0016】
好ましい技術的解決手段は、従属請求項において強調される。
【0017】
本発明の特徴及び利点は、添付図面を参照する本発明の好ましい実施形態の詳細な説明により、以下で明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明による構造的バッテリ用の電気化学セルのサンドイッチパネルの分解図である。
【0019】
図2a】本発明による構造的バッテリ用の電気化学セルのサンドイッチパネルの断面図である。
【0020】
図2b】ハニカム構造体の壁が活性層を備える、本発明による構造的バッテリ用の電気化学セルのサンドイッチパネルの断面図である。
【0021】
図3】構造的に互いに連結された、本発明による構造的バッテリ用の2つの電気化学セルの断面図である。
【0022】
図4】本発明による構造的に連結された1組の構造的バッテリ電気化学セルから作成された、構造的バッテリの上面図である。
【0023】
図5】本発明による電気化学セルの、溝を備えた保持要素の詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
この文書では、測定値、値、形状、及び(垂直及び平行などの)幾何学的基準は、「およそ」のような語、又は「約」又は「実質的に」などの他の同様の用語に関連付けられたとき、生産及び/又は製造エラーによる測定エラー又は不正確さを除き、何よりもまず、それが関連付けられた値、測定値、形状、又は幾何学的基準からのわずかな逸脱を除くものと考えられるべきである。例えば、これらの用語は、値と関連付けられる場合、好ましくは値の10%以下の乖離を示す。
【0025】
さらに、使用するとき、「第1」、「第2」、「高」、「低」、「主」、及び「副」などの用語は、順序、関係の優先性、又は相対的な位置を必ずしも同定しないで、単に異なる構成要素間を明らかに区別するのに使用できる。
【0026】
そうでないことが規定されていなければ、以下の議論の結果として、「処理」、「算出」、「決定」、「計算」、又は同様のものなどの用語は、コンピュータシステム及び/又はメモリのレジスタの電子的な量、コンピュータシステム、レジスタ、又は他の記憶装置、トランスミッション、又は情報表示装置内の物理的な量として同様に表されている他のデータなどの、物理的なものとして表されているデータを操作及び/又は変換する、コンピュータ又は同様の電子計算装置の動作及び/又はプロセスを指す。
【0027】
そうでないことが示されていない限り、この文章で報告されている測定値及びデータは、国際標準大気ICAO(ISO2533:1975)で実施されているものと考えられるべきである。
【0028】
図を参照すると、本発明による構造的バッテリ用の電気化学セルが全体として1と称されている。
【0029】
電気化学セル1は、以下にさらに規定されるように、構造的バッテリに含まれるか又はそれを構成することができる。
【0030】
簡単に言えば、電気化学セル1は少なくとも2つの外部プレート10及び連結要素20を備えるか、又はそれらからなる。
【0031】
プレート10は、実質的に平坦な要素であり、三次元空間において、三次元よりも優先される二次元を画定する。
【0032】
連結要素20は、実質的には外部プレート10の間に介在させられた構成要素である。したがって、連結要素20は、間隔を開けてプレート10を配置することによってそれらを連結する。
【0033】
有利には、プレート10及び連結要素20によりサンドイッチパネル1aが本質的に画定される。当然、サンドイッチパネルにより、電気化学セル1は、連続して積み重ねられた複数の層によって画定されるパネル又はプレートの、すなわち二次元が三次元よりも優先される要素を含むということが理解される。
【0034】
連続して重なり合う層はそれぞれ、少なくとも1つの外部プレート10、連結要素20、及び別の外部プレート10であることが好ましい。
【0035】
好ましいが非排他的な実施形態では、サンドイッチパネル1aは丁度2枚の外側シート10及び連結要素20を備えることができる。
【0036】
いかなる場合でも、既に言及したように、2枚の外側シート10は相互に平行であり、間隔を開けて配置されていることが好ましい。外部プレート10のそれぞれにより、内側表面10aが画定される。
【0037】
詳細には、連結要素20は、2つの外部プレート10の内側表面10aを互いに連結するのに適している。上記連結要素20はハニカム構造体20aを含むことが好ましい。具体的には、ハニカム構造体20aは複数の壁20bによって画定される。壁20bは、平坦な薄い要素であることが好ましい。こうした壁20bは、第1の展開方向2aに平行に延在することが好ましい。具体的には、ハニカム構造体20aの内部では、壁20bにより空洞20cが画定される。空洞20cは形状が柱状であることが好ましく、形状が六角形であることがより好ましい。当然、それぞれの空洞20cの全体的な形状及び壁20bの構成は異なるタイプのものでもよい。例えば、知られているように、壁20bは波状であり、相互に拘束されてハニカム構造体20aを作成してもよい。又は、以下により良く定義されるように、空洞20cはハニカム構造体として編成された互い違いになった四角形の形状、又はより一層複雑な形状を画定してもよい。
【0038】
具体的には、実際は、知られているように、ハニカム構造体は単純な格子又は他の分離要素と混同されるべきではない特別な特性を有する。ハニカム構造体、及び特にハニカム構造体20aは、それぞれの空洞20cが少なくとも1つの壁20bによって周囲の空洞20cから隔てられているという事実によって特徴付けられる。三角形又は長方形の柱状の空洞20cの構造では、空洞20cは壁20bが交わる箇所によってのみ周囲のいくつかの空洞20cから隔てられている場合があるので、これは当てはまらない場合がある。
【0039】
言い換えれば、連結要素20により、ハニカム構造体20aが正確に画定されるので有利である。
【0040】
壁20bは、10μm及び300μmの間、より好ましくは50μm及び70μmの間である、展開方向2aに対して横方向の厚さを画定することが好ましい。
【0041】
さらに、壁20bは1mm及び1cmの間、より好ましくは3mm及び5cmの間の長さだけ、展開方向2aに平行に延在することができる。
【0042】
いずれの場合でも、壁20bにより高い機械的特性が定められることが好ましい。それらは、50GPaである弾性率の最低値を定めることが好ましい。このように、壁20bは、実際にはプレート10を隔てる要素であり、機械的負荷がそれらの間で伝達されることを可能にする。
【0043】
さらに、壁20bは穴を備えることができる。存在する場合、これらは空洞20cを流体通路に連結させて配置するように構成される。こうした穴は、生産プロセス中に電気化学セル1から空気が逃げることを可能にするように設計されることが好ましい。
【0044】
いずれの場合でも、壁20bは、第1の電極2を共に作成する。第1の電極2は、電気化学セル1のアノード部分を画定することが好ましい。
【0045】
共に、という用語により、ハニカム構造体20a全体が第1の電極2を実質的に構成することが好ましく、したがってそれぞれの壁20bが同じ第1の電極2の構成要素であることが意味される。さらに、壁20bは活性層21を備えることができる。
【0046】
さらに、第1の電極2は、展開方向2aに平行に高いスチフネスを有することが好ましい。具体的には、上で説明したように、電極2のスチフネスは、少なくとも50GPaである弾性率、又はヤング率を定める壁20bによって与えられる。第1の電極2は、展開方向2aに対して垂直に変形可能であることが好ましい。
【0047】
第1の電極2は電気伝導性である。具体的には、ハニカム構造体20aは全体的に電気伝導性の材料で作成されてもよく、又はそれは非導電性材料及び導電性コーティングを備えてもよい。図2aに示されているように、第1の電極2の第1の例示的な実施形態は、アルミニウムで作成された電気伝導性のハニカム構造体20aを備える。加えて、ハニカム構造体20aはNomexなどの難燃性材料から作成されてもよい。Nomexなどの材料は電気伝導性ではなく、導電性材料のコーティングを必要とする。存在する場合、コーティングはハニカム構造体20a全体を覆うことが好ましい。より詳細には、こうしたコーティングは1μm及び10μmの間の厚さを画定することができる。それはアルミニウム、窒化チタン、又は他の導電性の金属又はセラミック材料で作成されてもよい。具体的には、導電性コーティングは、ハニカム構造体20aを構成する材料の導電率を向上させるように設計される。それは、ハニカム構造体20aの材料を、電気化学セル1に存在する特定の物質の化学的攻撃性から保護するのにも適している。
【0048】
加えて、図2bに示されているように、壁20bは活性層21を備えることができる。活性層21は、少なくとも部分的に壁20bを覆うように構成される。それは、壁20bを全体的に覆うことが好ましい。活性層21は、LiCoO2、LiMnO2、LiFePO4、又は他の同様のものなどの化合物から作成され得る。一般には、活性層21により、アノード又はカソードとして、例えばLiCoO2、LiMnO2、LiFePO4、又は他の同様のものの場合にはカソードとして電気化学的酸化還元反応に関与する材料が意味されることが好ましい。したがって、壁20bは、ハニカム構造体20aが電気伝導性であろうと又は非導電性で導電性コーティングを備えようと、活性層21を備えることができる。具体的には、活性層21の存在は、電気化学セル1において行われなければならない特定の反応に依存する。
【0049】
外部プレート10は、第2の電極3をそれぞれ備える。第2の電極3により、電気化学セル1のカソード部分が画定されることが好ましい。こうした第2の電極3は展開平面3aに沿って延在して、内側表面10aを画定する。したがって、第2の電極3はそれぞれの外部プレート10の最内層を実質的に占有し、したがってそれは内側表面10aを実現し、又は言い換えれば、その面は外部プレート10の内側表面10aに対応する。加えて、展開平面3aは第1の展開方向2aに対して少なくとも横方向であり、さらに、それは第1の展開方向2aに対して垂直であることが好ましい。したがって、第2の電極3それ自体は、第1の電極2に対して、すなわちハニカム構造体20aの壁20bに対して実質的に横方向である。
【0050】
詳細には、第2の電極3は炭素で作成されることが好ましい。それは黒鉛、グラフェン、活性炭、又は他のもので作成され得ることがより好ましい。加えて、それはポリマー材料、例えばポリプロピレンでも作成され得る。特定の実施形態は、ポリマー又は黒鉛のマトリクス内に炭素繊維を含む複合材料を必要とする。具体的には、黒鉛マトリクスはフェノール樹脂などの前駆材料からの熱分解によって、又はメタンの蒸着(CVD)によって作成され得る。さらに、こうしたマトリクスは、上述のプロセスによってそれぞれ作成された、重なり合った2つの層を備えることができる。第2の電極3の別の実施形態は、リサイクルされた炭素粉末を用いて、又はナノ構造炭素を用いて黒鉛マトリクスを機能させることを含む。例えば、ナノ構造炭素はカーボンナノチューブ(CNT)、又は他の同様のものの形をとってもよい。さらに、第2の電極3は5%及び95%の間の多孔性を有することが好ましい。上記電極3が複合材料で作成されている場合、指示された多孔性を有するのはマトリクスである。具体的には、第2の電極3の多孔性は電解質の吸収に有利であるのに、またセル1の電気化学的特性を向上させるのに適している。
【0051】
電気化学セル1の内部で、第1の電極2及び第2の電極3は互いから電気的に隔てられている。実際、電気化学セル1は2つの電極の間の接触領域に位置決めされた絶縁体4を備える。当然、絶縁体4は電極2及び3の間に介在させられており、したがって実際には第1の電極2及び第2の電極3の間の接触部、つまり機械的連結部を作成する。
【0052】
絶縁体4はプラスチック材料で作成されることが好ましい。それは樹脂、熱可塑性ポリマー、エラストマーポリマー、又はそれらの組み合わせから作成することができるのがより好ましい。第1の電極2がアルミニウムで作成されている場合、表面処理によって、好ましくは陽極酸化処理によって2つの電極2及び3の間の電気絶縁を獲得することが可能である。陽極酸化処理によりアルミニウムが酸化アルミニウムに変えられ、これは電気絶縁性である。
【0053】
明らかに、第1の電極2及び第2の電極3は、電気化学セル1の外部の電気回路を用いて互いに電気的に接続されている。この電気回路により、第1の電極2で生じた電子が第2の電極3に向かって移動することが可能になり、したがって電流が生み出される。
【0054】
いずれの場合でも、この回路、及びセル1を回路に電気的に接続する方法それ自体は現況技術において広く知られており、したがって詳細に説明されない。
【0055】
電気化学セル1は構造的接着要素5をさらに備える。接着要素5は、第2の電極3及び第1の電極2を強固に連結するのに適している。それらは第2の電極3及び第1の電極2の間の接触区域に対応して、又は絶縁体4が存在する場合は絶縁体4に対応して位置付けられることが好ましい。接着要素5は、好ましくはエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、熱可塑性材料、ポリアクリルアミド、又は他のものを含む絶縁材料で作成されることが好ましい。
【0056】
加えて、接着要素5は、それらが好ましくは適当な特性を定めるという意味で構造的である。例えば、接着要素は、少なくとも20MPa及び30MPaの間である引張り強度を定める。加えて、構造的要素5は、600MPa及び700MPaの間の弾性率、15MPa及び35MPaの間のせん断強度、及び少なくとも120度までの熱抵抗のうちの1つ又は複数を含む他の特性を定めることができる。
【0057】
電気化学セル1は、電解質6をさらに備えることが好ましい。
【0058】
電解質6は、第1の電極2及び第2の電極3と接触するように配置されている。したがって、電解質6は、ハニカム構造体20aの空洞20cの内側に向く電極2及び3の表面と接触する。上記電解質6は、第1の電極2及び第2の電極3の間のイオン移動を可能にするのに適している。電解質6は液体であることが好ましい。それはAlCl3及び尿素の溶液、又はAlCl3及び[EMIM]Clの溶液であり得ることがより好ましい。こうした溶液は、1.1:1及び2:1の間のモル比を有することが好ましい。実際、塩化アルミニウムは、反応するためにモル過剰であることが必要である。電解質6はLiPF6、KFSI、又は他の同様のものなどの塩をさらに含むことができる。こうした塩は、炭酸エチレン、炭酸エチルメチル、炭酸ジメチル、又は他のものなどの炭酸エステルを含む溶剤に溶かされることが好ましい。加えて、電解質6はゲルも含むことができる。こうしたゲルは、これまでに言及した液体及びポリマーのうちの1つを含むことが好ましい。
【0059】
電解質6が液体である場合、電気化学セル1は収納要素60を備えることができる。収納要素60はポリマーであることが好ましい。それは、空洞20cに向いた電極2及び3の表面と対応して配置される。具体的には、それは電極2及び3の表面を覆うが空洞20cを著しく占有しない厚さを有する。好ましい実施形態では、上記電解質6をその孔の内部に収容するのに適した多孔質の収納要素60が提供される。別の実施形態は、図5に示されているように電極2及び3の表面に溝を備える収納要素60を備える。こうした収納要素60は、電解質6を透過させないことが好ましい。しかし、具体的には、溝は、電解質6が毛管現象によって一方の電極から他方へと通過することを可能にするように構成される。
【0060】
したがって、空洞20cは、実質的に壁20bに電解質6を備える。構造体20aの空洞20cの内部はガスで占められていることが好ましい。ガスにより、電気化学セル1内の圧力を外部の圧力と等しく保つことが可能になり、したがって内部応力が作り出されることが避けられる。上記ガスは、乾燥空気又は不活性ガスでもよい。不活性ガスは、アルゴン、二酸化炭素、窒素、又はヘリウムであることが好ましい。電気化学セル1の動作を損なわないために、乾燥空気及び不活性ガスはどちらも100ppm未満の含水量を有することが好ましい。さらに、上記電気化学セル1の構築中、真空封止されたセル1を作り出すために、空洞20cに含まれている空気は抜き取られてもよい。
【0061】
外部プレート10は、電流コレクタ7をさらに備えることができる。具体的には、それは第2の電極3の、表面10aとは反対側の面に位置決めされる。コレクタ7はワイヤ又は薄箔を備えることができる。こうした要素は銅、アルミニウム、鋼、又は炭素繊維で作成されることが好ましい。それらは窒化チタン、又は他の導電性セラミック材料でコーティングされることも好ましい。コーティングにより、コレクタ7を電解質6から化学的に絶縁することが可能になる。代替的な実施形態は、窒化チタン又は他の不活性導電性材料を、第2の電極3の、表面10aとは反対側の面に直接堆積させることを含む。電流コレクタ7は、第2の電極3に進入し流出する電流の流れを分配するのに適している。さらに、それは第2の電極3に進入し離脱する電子が受ける電気抵抗を最小化するのに適している。具体的には、電流コレクタ7は、第2の電極3を構成する材料の導電性よりも高い導電性を有する。実際、第2の電極3は、好ましくはポリマー又は炭素質のマトリクスに浸漬された炭素繊維を含むことができる。こうした炭素繊維は高い導電性によって特徴付けられ、したがって第2の電極の活性材料及び電流コレクタの両方として機能する。
【0062】
外部プレート10は、保護層8を追加的に備えることができる。この保護層8は、存在する場合、電流コレクタ7と接触するように位置決めされる。こうしたコレクタが存在しない場合、層8は第2の電極3の、表面10aとは反対側の表面に直接接触する。保護層8は、電気化学セルを外部環境から隔離するのに適している。具体的には、それは電解質6がセル1から流出するのを防止するのに適している。この層8は、様々な材料で作成することができる。例えばそれはガラス繊維、又は炭素又はアラミド繊維で強化されたアクリル材料、エポキシ樹脂、ポリウレタン材料、金属箔、ポリマーで作成されてもよい。それはこれらの材料の組み合わせから作成することもできる。例えば、好ましくは1μm及び10μmの間の厚さのアルミニウム又は窒化チタンの層が、エポキシ樹脂又はポリウレタンの層の上部に堆積されてもよい。
【0063】
外側シート10は、追加的な構造的層9を備えることができる。この層は、電気化学セル1の機械的強度を増加させることを目的としている。構造的層9は、存在する場合、保護層8に関して言及されたものから選択される材料で作成されることが好ましい。
【0064】
電気化学セル1は、他の電気化学セル1と共に組み立てられるのに適している。具体的には、互いに電気的に接続された複数の電気化学セル1により、構造的バッテリ100が画定される。
【0065】
構造的バッテリ100により、負荷を支持するバッテリ、又は負荷に耐えるバッテリが意味される。より具体的には、構造的バッテリ100は高い機械的負荷に耐えることができるバッテリである。
【0066】
電気化学セル1は、直列又は並列に互いに電気的に接続され得る。
【0067】
さらに、上記セル1は、絶縁要素50を用いて互いに構造的に連結され得る。絶縁要素50は、それぞれのサンドイッチパネル1aの間に介在させられることが好ましい。上記要素50は、保護層8に関して言及された材料のうちの1つ又は複数で作成されることが好ましい。
【0068】
電気化学セル1は、隣り合わせに、又は積み重なって配置され得る。電気化学セル1の重なり合いは、様々なやり方で実現することができる。具体的には、電気化学セル1は第2の電極3を共有することができる。代替的に、それらは第2の電極3を共有しなくてもよく、したがって構造的層9によって相互に隔てられてもよい。別の実施形態は、重なり合った2つのセル1の間に材料層を追加することを含み、したがってセル1はいかなる要素も共有しない。追加的な材料は、2つのセル1の間の距離を拡大することを目的としている。こうした材料は、ポリマー層、木材層、発泡体又は他のものでもよい。具体的には、電気化学セル1の数及び配置は、構造的バッテリ100にもたらされることになる電圧に依存する。
【0069】
構造的な点で上述した電気化学セル1の動作は以下の通りである。
【0070】
電気化学セル1は、特定の化学反応、好ましくは「デュアルイオン」カテゴリに属する反応をその内部で行うのに適している。知られているように、こうした反応は可逆的である。具体的には、1つ又は複数の直接反応により充電プロセスが定められ、一方対応する逆反応により放電プロセスが定められる。
【0071】
好ましい実施形態では、電気化学セル1はアルミニウムで作成された第1の電極2、及び黒鉛で作成された第2の電極3を備える。充電プロセス中、電解質6に含まれる
イオンは第2の電極3にインターカレートし、一方電解質に含まれるLiイオンは第1の電極2に堆積してAl-Li合金を形成する。放電プロセスは充電プロセスの逆であり、電解質6中の
及びLiイオンの両方の後方散乱を伴う。電子は外部の電気回路を通って流れ、電流を生じさせる。充電プロセス中、黒鉛とのインターカレーションに際してLiイオンから放出された電子が第2の電極3から第1の電極2へと流れて、Al-Li合金の形成を可能にする。放電プロセス中、電極間の電子の流れは逆になる。
【0072】
本発明による電気化学セル1は、重要な利点を実現する。
【0073】
実際、電気化学セルは、セルそれ自体を十分に頑強にし、衝突の際には機械的エネルギーを適切に吸収することができる構造的電極を有する。
【0074】
具体的には、電気化学セル1は、電極が互いに対して垂直であるので、充電及び放電プロセス中に構造的変形の問題を生じさせない。
【0075】
加えて、構造的構成により、高いエネルギー効率及び著しく軽い重量を有するバッテリを獲得することが可能になる。
【0076】
損傷した場合、構造体全体に介入する必要なしに損傷した電気化学セルのみを交換することが可能であり、したがって修理コストが抑えられる。
【0077】
本発明は、特許請求の範囲によって定義される発明概念の範囲内での変動が可能である。
【0078】
この範囲において、すべての詳細は均等な要素によって代用可能であり、材料、形状、及び寸法はいかなるものでもよい。
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5
【国際調査報告】