(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】セメント系タイル接着剤ドライミックス組成物の作製に使用するためのケイ素含有エマルジョン粉末
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20240403BHJP
C04B 22/08 20060101ALI20240403BHJP
C04B 24/26 20060101ALI20240403BHJP
C04B 24/42 20060101ALI20240403BHJP
C04B 24/38 20060101ALI20240403BHJP
C09J 11/02 20060101ALI20240403BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20240403BHJP
C09J 1/00 20060101ALN20240403BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B22/08 A
C04B24/26 C
C04B24/42 A
C04B24/38 C
C09J11/02
C09J11/08
C09J1/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562258
(86)(22)【出願日】2022-04-13
(85)【翻訳文提出日】2023-10-10
(86)【国際出願番号】 US2022024528
(87)【国際公開番号】W WO2022221357
(87)【国際公開日】2022-10-20
(32)【優先日】2021-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ハブロット、エロディ
(72)【発明者】
【氏名】ペレーロ、マルガリータ
(72)【発明者】
【氏名】ルコント、ジャン-ポール
【テーマコード(参考)】
4G112
4J040
【Fターム(参考)】
4G112PA03
4G112PB06
4G112PB30
4G112PB40
4G112PB41
4J040AA011
4J040EK022
4J040EK032
4J040JA07
4J040JB05
4J040KA43
4J040MA05
4J040MB05
4J040MB09
(57)【要約】
本発明は、セメント系タイル接着剤として好適なセメント及び充填剤を含有するドライミックス組成物において使用するのに好適な貯蔵安定性ケイ素含有粉末組成物であって、(i)水再分散性ポリマー粉末(RDP)と、(ii)(a)シリケート担体、(b)ポリジオルガノシロキサン、(c)C4~C12アルキル基を含有する加水分解性シラン又はそのオリゴマー、並びに(d)加水分解性シラン及びポリジオルガノシロキサンのためのポリマー封入剤、の顆粒状組成物と、を含み、全RDPの顆粒状組成物の総重量に対する重量比が90:10~98:2の範囲である、貯蔵安定性粉末組成物を提供する。本発明は、セメント系タイル接着剤としてドライミックスを使用する方法であって、粉末組成物が、特に熱老化後に良好なオープンタイム及び優れた引張接着を可能にする方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライミックス組成物の作製において使用するための貯蔵安定性粉末組成物であって、
(i)水再分散性ポリマー粉末(RDP)と、
(ii)(a)シリケート担体、(b)ポリジオルガノシロキサン、(c)C
4~C
12アルキル基を含有する加水分解性シラン又はそのオリゴマー、並びに(d)前記加水分解性シラン及び前記ポリジオルガノシロキサンのためのポリマー封入剤、の顆粒状組成物と、を含み、前記総(i)RDPの前記総(ii)顆粒状組成物に対する重量比が90:10~98:2の範囲である、貯蔵安定性粉末組成物。
【請求項2】
前記(ii)顆粒状組成物が、(a)54~89重量%の前記シリケート担体と、(b)4~15重量%の前記ポリジオルガノシロキサンと、(c)6.5~25重量%の前記加水分解性シランと、(d)0.5~6重量%の前記加水分解性シラン及び前記ポリジオルガノシロキサンのための前記ポリマー封入剤と、を含み、前記顆粒状組成物中の全ての重量割合が前記顆粒状組成物の総重量に基づき、合計100%になる、請求項1に記載の貯蔵安定性粉末組成物。
【請求項3】
前記(i)RDPが、C
4以上のアルキル基を含有するモノマーを共重合形態では含有しないエチレン-酢酸ビニル(VaE)コポリマーである、請求項1に記載の貯蔵安定性粉末組成物。
【請求項4】
前記(ii)顆粒状組成物の前記(a)シリケート担体が、0.2~8μmの範囲の平均直径(X50)を有する、請求項1に記載の貯蔵安定性粉末組成物。
【請求項5】
前記(ii)顆粒状組成物の前記(b)ポリジオルガノシロキサンが、40~500MPa・sの未希釈形態での室温粘度を有する、請求項1に記載の貯蔵安定性粉末組成物。
【請求項6】
前記(ii)顆粒状組成物の前記(b)ポリジオルガノシロキサンが、ヒドロキシル末端ポリジ(C
1~C
2アルキル)シロキサンである、請求項1に記載の貯蔵安定性粉末組成物。
【請求項7】
前記(ii)顆粒状組成物の前記(c)加水分解性シランが、オクチルトリアルコキシシラン又はそのオリゴマーを含む、請求項1に記載の貯蔵安定性粉末組成物。
【請求項8】
セメント及び充填剤を更に含み、前記貯蔵安定性粉末組成物が、前記粉末組成物の総重量に基づいて0.5~5.5重量%の前記(i)RDP及び前記(ii)顆粒状組成物を含む、請求項1に記載の貯蔵安定性粉末組成物。
【請求項9】
セメント系タイル接着剤を作製するためのドライミックス組成物として使用するのに好適な請求項1に記載の貯蔵安定性粉末組成物であって、
前記(i)RDP及び前記(ii)顆粒状組成物を0.5~5.5重量%の量で含み、更に、
(b)15~35重量%のセメント、及び
前記ドライミックス組成物の残部として、砂、1つ以上の充填剤、又はそれらの組み合わせを含み、
前記ドライミックス組成物中の全ての重量割合は、前記ドライミックス組成物の総重量に基づき、合計100%になる、貯蔵安定性粉末組成物。
【請求項10】
セルロースエーテルを更に含む、請求項9に記載の貯蔵安定性組成物。
【請求項11】
a)前記組成物が、EN 12004:2(2017)に従って25℃で400~650Pa・sの粘度になるように水と混合した場合、(i)23℃±2℃及び標準(101.3kPa)圧力で28日間の老化、(ii)23℃±2℃及び標準(101.3kPa)圧力で7日間+7時間の老化、及び23℃±2℃及び標準(101.3kPa)圧力で20日間+17時間の水浸漬、並びに(iii)23℃±2℃及び標準(101.3kPa)圧力で14日間の老化、次いで70℃で14日間の熱老化、の各々1つの後に、EN 1348に従って求めたときに、少なくとも1N/mm
2の引張強度を示し、
b)前記組成物が、EN 12004:2(2017)に従って25℃で400~650Pa・sの粘度になるように水と混合した場合、前記タイル接着剤を基材に埋め込んだ20分後にEN 1346に従って求めたときに少なくとも0.5N/mm
2のオープンタイムを示す、請求項9に記載の貯蔵安定性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水再分散性ポリマー粉末と、シリケート担体、ポリジオルガノシロキサン、オクチルトリエトキシシラン等のC4~C12アルキル基を含有する加水分解性シラン、及びポリマー封入剤の顆粒状組成物とを含む、セメント系タイル接着剤を作製するためのセメント質ドライミックス組成物において使用するための貯蔵安定性粉末組成物、並びにそれを含有するセメント質ドライミックス組成物、それから作製されるモルタル又はタイル接着剤、並びに当該組成物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメント系タイル接着剤は、一般にセルロースエーテル、セメント、及び砂又は微粉化充填剤が処方されるドライミックス組成物を含む。ドライミックス組成物を水と混合し、25℃で400~650Pa・Sの適切な稠度を構築するまで放置し、次いで、タイルが置かれる基材に塗布する。このような接着剤は、より要求の厳しい用途に使用することができるが、そのような用途に必要な可撓性及び耐水又は耐熱性を提供することができない。セメント系タイル接着剤等の様々な建築用途におけるモルタルに使用される水再分散性ポリマー粉末(RDP)は、様々な程度の可撓性及び耐水性を付与する。しかしながら、比較的安価なエチレン-酢酸ビニルポリマーRDPは、水浸漬及び熱老化後に許容可能な引張接着強度を付与することができない。RDPを含有するセメント系タイル接着剤の耐水性を改善するより最近の試みには、ケイ素含有有機添加剤が含まれている。それにもかかわらず、そのような材料は概して貯蔵安定性を欠き、許容可能なオープンタイム、及び水浸漬又は熱老化のうちの少なくとも1つの後の引張接着力の改善の両方を提供するわけではない。
【0003】
Wacker Chemie AG(Wacker)の国際公開第2012019908(A1)号には、有機ケイ素化合物、脂肪酸及びその脂肪酸誘導体、又は炭化水素ワックスから選択される1つ以上の添加剤と、1つ以上の保護コロイドとを含有する比較的貯蔵安定性である処方物中の水性分散液から形成される水中に再分散可能な付加ポリマー(RDP)のポリマー粉末組成物を含むセメント系タイル接着剤が開示されている。添加剤は、付加重合の前若しくは間に、又はポリマー分散液の乾燥前にRDPに含めてよい。しかしながら、Wackerの組成物は、水浸漬又は熱老化後の接着性の改善及び許容可能なオープンタイムの全てを可能にするわけではない。
【0004】
本発明は、許容可能なオープンタイムを維持しながら、セメント質セメント系タイル接着剤組成物において使用された場合に耐水性及び耐熱老化性を付与する貯蔵安定性ケイ素化合物含有組成物の提供を可能にする問題を解決しようとするものである。
【発明の概要】
【0005】
本発明によれば、貯蔵安定性粉末組成物は、
(i)水再分散性ポリマー粉末(RDP)、例えば、エチレン-酢酸ビニル(VaE)コポリマー、アクリレートコポリマー、又はスチレンアクリレートコポリマー、好ましくは、C4以上のアルキル基を含有するモノマーを共重合形態では含有しないVaEコポリマー、例えば、エチレン及び酢酸ビニル以外のモノマーを共重合形態では含有しないVaEコポリマーを含有する、RDPと、
(ii)(a)ゼオライト又はケイ酸アルミニウム、例えば、ケイ酸ナトリウムアルミニウム等のシリケート担体、(b)ポリジオルガノシロキサン、(c)C4~C12アルキル基若しくはそのオリゴマー、好ましくはC6~C9アルキル基、又はより好ましくはオクチルトリアルコキシシラン若しくはそのオリゴマーを含有する加水分解性シラン、並びに(d)加水分解性シラン及びポリジオルガノシロキサンのためのポリマー封入剤、好ましくはポリビニルアルコール、の顆粒状組成物と、を含み、総RDPの総顆粒状組成物に対する重量比は90:10~98:2の範囲である。
【0006】
本発明による貯蔵安定性粉末組成物では、(ii)顆粒状組成物は、(a)54~89重量%、又は好ましくは69~85重量%のシリケート担体と、(b)4~15重量%、又は好ましくは6~12重量%のポリジオルガノシロキサンと、(c)6.5~25重量%、又は好ましくは8~15重量%の加水分解性シランと、(d)0.5~6重量%、又は好ましくは1~4重量%の、加水分解性シラン及びポリジオルガノシロキサンのためのポリマー封入剤と、を含む。顆粒状組成物中の全ての重量割合は、顆粒状組成物の総重量に基づき、合計100%になる。
【0007】
本発明による貯蔵安定性粉末組成物では、(a)シリケート担体は、0.1~5000μm、又は好ましくは0.2~1000μm、又はより好ましくは0.2~8μm、又はより好ましくは1~6μmの範囲の平均直径(X50)を有する。
【0008】
本発明による貯蔵安定性粉末組成物では、(b)ポリジオルガノシロキサンは、40~500MPa・s、又は好ましくは50~150MPa・s、又はより好ましくは60~80MPa・sの未希釈形態での室温粘度を有する。より好ましくは、(b)ポリジオルガノシロキサンの少なくとも1つは、ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン等のヒドロキシル末端ポリジ(C1~C2アルキル)シロキサンである。
【0009】
本発明による貯蔵安定性粉末組成物では、(c)加水分解性シランは、n-オクチルトリエトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、又はそれらのオリゴマーであってよい。
【0010】
本発明によれば、貯蔵安定性粉末組成物は、セメント系タイル接着剤において使用するためのドライミックス組成物として好適であり、0.5~5.5重量%、又は好ましくは1~5重量%の(i)水再分散性ポリマー粉末(RDP)及び(ii)顆粒状組成物を含み、更に、セメント及び砂、1つ以上の充填剤又はその組み合わせを含み、全ての量はドライミックス組成物中の総固形分の重量%である。
【0011】
本発明によれば、セメント系タイル接着剤中のドライミックス組成物として使用するのに好適な貯蔵安定性粉末組成物は、
粉末組成物の総重量に基づいて、15~35重量%、又は好ましくは18~30重量%の量の乾燥セメント、例えば、普通ポルトランドセメントと、
貯蔵安定性粉末組成物の総重量に基づいて、0.5~5.5重量%、又は好ましくは1~5重量%の、(i)水再分散性ポリマー粉末(RDP)及び(ii)顆粒状組成物の混合物と、
貯蔵安定性粉末組成物の残部として、砂、1つ以上の充填剤又はその組み合わせ、例えば、80マイクロメートル~0.8mm未満の篩平均粒径を有する充填剤とを含み、粉末組成物中の全ての重量割合は合計で100%になる。本発明による貯蔵安定性粉末組成物は、1つ以上のセルロースエーテルを更に含んでいてもよい。
【0012】
好ましくは、本発明による貯蔵安定性粉末組成物は、EN 12004:2(2017)に従って25℃で400~650Pa・sの粘度になるように水と混合されたセメント系タイル接着剤においてドライミックス組成物として使用された場合、(i)23℃±2℃及び標準(101.3kPa)圧力で28日間の老化、(ii)23℃±2℃及び標準(101.3kPa)圧力で7日間+7時間老化、及び23℃±2℃及び標準(101.3kPa)圧力で20日間+17時間の水浸漬、並びに(iii)23℃±2℃及び標準(101.3kPa)圧力で14日間の老化、次いで70℃で14日間の熱老化、の各々1つの後に、EN 1348に従って求めたときに、少なくとも1N/mm2、又はより好ましくは少なくとも1.3N/mm2の引張強度を示す。より好ましくは、本発明による粉末組成物は、EN 12004:2(2017)に従って25℃で400~650Pa・sの粘度になるように水と混合されたセメント系タイル接着剤ドライミックス組成物の総重量に基づいて0.5~5.5重量%の量で使用された場合、タイル接着剤を基材に埋め込んだ20分後、又は好ましくはタイル接着剤を基材に埋め込んだ30分後に、EN 1346に従って求めたときに、少なくとも0.5N/mm2、又はより好ましくは少なくとも0.9N/mm2のオープンタイムを示す。
【0013】
更により好ましくは、本発明による貯蔵安定性粉末組成物は、EN 12004:2(2017)に従って25℃で400~650Pa・sの粘度になるように水と混合されたセメント系タイル接着剤においてドライミックス組成物として使用された場合、(i)23℃±2℃及び標準(101.3kPa)圧力で28日間の老化、(ii)23℃±2℃及び標準(101.3kPa)圧力で7日間+7時間の老化、及び23℃±2℃及び標準(101.3kPa)圧力で20日間+17時間の水浸漬、並びに(iii)23℃±2℃及び標準(101.3kPa)圧力で14日間の老化、次いで70℃で14日間の熱老化、の各々1つの後に、EN 1348に従って求めたときに、少なくとも1N/mm2、又はより好ましくは少なくとも1.3N/mm2の引張強度を示す。更に、本発明による貯蔵安定性粉末組成物は、EN 12004:2(2017)に従って25℃で400~650Pa・sの粘度になるように水と混合されたセメント系タイル接着剤ドライミックス組成物の総重量に基づいて1~5重量%の量で使用された場合、タイル接着剤を基材に埋め込んだ20分後、又は好ましくはタイル接着剤を基材に埋め込んだ30分後に、EN 1346に従って求めたときに、少なくとも0.5N/mm2、又はより好ましくは少なくとも0.9N/mm2のオープンタイムを示す。
【0014】
本発明の別の態様では、本発明による貯蔵安定性粉末組成物を使用する方法は、粉末組成物を水と混合してセメント系タイル接着剤を形成することと、当該接着剤を基材に塗布して接着剤担持基材を形成することと、次いで、当該接着剤担持基材にタイルを適用することとを含む。基材は、多孔質基材、例えば、コンクリート、石膏ボード、バッカーボード、ベニヤ板、木材、繊維セメント板、セメント下塗り、硬化モルタル、又は別の未仕上げ基材を含み得る。
【0015】
別途指示がない限り、全ての温度及び圧力の単位は、室温(19~23℃)及び標準圧力(1atm)である。加えて、特に明記しない限り、全ての条件には50%の相対湿度(relative humidity、RH)が含まれる。
【0016】
文脈が明確に別段の指示をしない限り、単数形の「a」、「an」、及び「the」には、複数の指示対象が含まれる。
【0017】
特に規定しない限り、本明細書で使用する技術的及び科学的な用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0018】
括弧を含む全ての語句は、括弧内に含まれる物質及びその非存在のいずれか又は両方を示す。例えば、「加水分解性(アルコキシ)シラン」という語句は、選択的に、加水分解性アルコキシシラン及び加水分解性シラン、例えば、アセトキシ又はオキシム基等のアルコキシシラン基以外の加水分解性基を有するものを含む。
【0019】
引用された全ての範囲は包括的でありかつ組み合わせ可能である。例えば、6.5~25重量%、又は好ましくは8~15重量%の加水分解性シランの開示は、6.5~25重量%、又は好ましくは8~15重量%、又は6.5~8重量%、又は8~25重量%、又は6.5~15重量%、又は15~25重量%の加水分解性シランの全てを含む。
【0020】
本明細書で使用するとき、用語「無水グルコース単位」又は「AGU」は、(共)重合形態の単糖を指す。
【0021】
本明細書で使用するとき、用語「水性」は、連続相又は媒体が、水、及び媒体の重量に基づいて0~10重量%の水混和性化合物であることを意味する。好ましくは、「水性」は水を意味する。
【0022】
本明細書で使用するとき、語句「総固形分に基づいて」は、合成ポリマー、セルロースエーテル、酸、消泡剤、水硬セメント、充填剤、他の無機材料、及び他の不揮発性添加剤を含む、所与の組成物中の不揮発性成分の全ての重量を指す。水、アンモニア及び揮発性溶媒は固体とはみなされない。
【0023】
本明細書で使用するとき、用語「DIN EN」又は「EN」は、Beuth Verlag GmbH(Berlin,DE)によって出版されたドイツ材料規格の欧州共通規格版を指す。また、本明細書で使用するとき、用語「DIN」は、同じ材料仕様書のドイツ語版を指す。
【0024】
本明細書で使用するとき、用語「ドライミックス」は、セメント、セルロースエーテル、又は任意の他のポリマー添加剤、充填剤、及び任意の乾燥添加剤を含有する貯蔵安定性粉末を意味する。乾燥混合物中には水が存在しないので、貯蔵安定性である。
【0025】
本明細書で使用するとき、用語「DS」は、セルロースエーテル中の無水グルコース単位当たりのアルキル置換OH基の平均数であり、用語「MS」は、無水グルコース単位当たりのヒドロキシアルキル置換OH基の平均数であり、いずれもZeisel法によって求める。用語「Zeisel法」は、MS及びDSの決定のためのZeisel開裂手順を指す。G.Bartelmus and R.Ketterer,Fresenius Zeitschrift fuer Analytische Chemie,Vol.286(1977,Springer,Berlin,DE),pages 161 to 190を参照されたい。
【0026】
本明細書で使用するとき、別段の指示がない限り、ガラス転移温度(Tg)の測定値が使用される。本明細書で使用するとき、別段の指示がない限り、用語「Tg計算値」は、Fox式(T.G.Fox,Bull.Am.Physics Soc.,Volume 1,Issue No.3,page 123(1956))を使用することによって計算されたポリマーのTgを指す。本明細書で使用するとき、用語「Tg測定値」は、-100℃~200℃の範囲で実施される示差走査熱量測定つまりDSCを使用して測定されたTgを意味する(加熱速度10℃/分、Tgは変曲の中点で測定される)。
【0027】
本明細書で使用するとき、用語「低又は中粘度のセルロースエーテル」は、Haake Rotovisko(商標)RV 100レオメーター(Thermo Fisher Scientific(Karlsruhe,DE))を使用して20℃及び剪断速度2.55s-1で2重量%水溶液として測定された10,000~40,000MPa・sの粘度を有するセルロースエーテルを意味する。
【0028】
本明細書で使用するとき、用語「高粘度セルロースエーテル」は、20℃及び剪断速度2.55s-1でHaake Rotovisko(商標)RV100レオメーター(Thermo Fisher Scientific(Karlsruhe,DE))を使用して2重量%水溶液として測定された40,000mPas超の粘度を有するセルロースエーテルを意味する。
【0029】
本明細書で使用するとき、「ISO」という用語は、国際標準化機構(International Organization for Standardization(Geneva CH))の発表物を指す。
【0030】
本明細書で使用するとき、「平均直径」という用語は、光散乱によって求めたときの値(X50)又は算術平均を意味する。
【0031】
本明細書で使用するとき、「モルタル粘度」という用語は、Helipathスタンド及びスピンドル番号T-F 96を備えたBrookfield粘度計RVDV II Pro(DVII+)を5rpmで使用してカップ(h=80mm、d=100mm)内で測定し、製造業者の指示に従って較正したときの、EN 196-1、セクション4.4に従って又はEN 1348の一部として混合されたモルタルの25℃でのPs(Pa・s)単位の粘度を指す。許容可能な室温モルタル粘度は、400~650Pa・sの範囲であり得る。
【0032】
本明細書で使用するとき、用語「オープンタイム」又は「オープンタイム接着」は、EN 1346に従って求めたときの結果を指し、ベース上の所与のタイル接着剤のコーマ床(combed bed)に所与のタイルを置いたときに当該タイルの濡れている側、すなわち裏側が依然として十分に濡れており、接着することができる時間の長さを示す。試験では、5分間隔で、すなわち、5、10、15、20、25、及び30分の各々の後に所与のタイル接着剤の床にタイルを置き、30秒間3kgの重りで各タイルを押し下げる。指定の条件下で指定の貯蔵期間後、引張プレートをタイルの前側に接着させ、引張試験機を使用してタイルをベースから引き離す。タイルをベースから引き離すのに必要な力をN/mm2単位でオープンタイムとして報告する。「クイックオープンタイム」試験では、40分後に、全てのタイルをベースから取り外し、その下側を検査する。接着剤によるタイルの裏面の濡れは、濡れたままである面積をカウントし、その数を±5%被覆率に丸めることによって、又は引張接着試験と同様に、引張試験機を使用してタイルを基材から取り外すのにかかる力を求めることによって判定される。クイックオープンタイムは、タイルの裏面の濡れが≧50%残っている、分単位で測定される期間を意味する。
【0033】
本明細書で使用するとき、「ポリマー」という用語は、選択的に、コポリマー、ターポリマー、テトラポリマー、ペンタポリマー等の1つ以上の異なるモノマーから作製されるポリマーを指し、ランダム、ブロック、グラフト、連続、又は勾配ポリマーのいずれであってもよい。
【0034】
本明細書で使用するとき、「セット」という用語は、水の存在下において周囲条件下で起こり、セメント系タイル接着剤が乾燥するにつれて継続するセメント系タイル接着剤の硬化を指す。
【0035】
本明細書で使用するとき、別段の指示がない限り、「篩平均粒径」という用語は、LAVIBふるい機(Siebtechnik(Muelheim,DE))によって求められる平均粒径を意味する。用語「ふるい粒径」は、用語「ふるい平均粒径」と互換的に使用することができる。
【0036】
本明細書で使用するとき、「引張接着力」という用語は、所与の時間にわたって規定の条件セット下でISP 13006に準拠する所与のタイルを所与のベース上の所与のタイル接着剤の床上に配置し、続いて引張試験プレートをタイルの上部に糊付けし、タイルをベースから引き剥がした後にEN 1348に従って求めたときの結果を指す。ベースからタイルを取り外すのに必要な力を、引張接着力としてN/mm2単位で報告する。
【0037】
本明細書で使用するとき、用語「総固形分の重量%」は、40℃以下の温度及び大気圧での揮発性によって求めたときの、所与の組成物の全ての不揮発性成分の重量を意味する。揮発性物質としては、水、塩化メチルのような、周囲温度及び周囲圧力の条件下で蒸発する溶媒が挙げられる。
【0038】
本明細書で使用するとき、「wt.%」という用語は、重量パーセントを指す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明によれば、(i)水再分散性ポリマー粉末(RDP)と、(ii)分散性封入剤ポリマー又はコロイド安定剤ポリマー中に封入され、シリケート担体上に担持されたポリジオルガノシロキサン及び加水分解性シランの顆粒状組成物と、の貯蔵安定性粉末組成物は、使用時に非常に良好なオープンタイム及び非常に良好な引張接着性の両方を有するセメント系タイル接着剤の作製において使用するためのドライミックス及びモルタルの提供を可能にする。具体的には、本発明者らは、組み合わせて使用される水再分散性ポリマー粉末(RDP)とシランとポリジオルガノシロキサンとを含有するケイ素含有組成物であって、セメント系タイル接着剤のオープンタイムの改善を可能にすると同時に、改善された耐水及び耐熱老化性を可能にする、ケイ素含有組成物を見出した。更に、組成物は、ケイ素含有添加剤を含む貯蔵安定性ドライミックス組成物の提供を可能にする。封入剤ポリマーは、顆粒状組成物を含有するドライミックスの貯蔵安定性と、ドライミックス組成物に水を添加した際の活性ケイ素含有成分の放出とを両方可能にする。本発明によるケイ素含有(ii)顆粒状組成物は、ドライミックス組成物の0.05~0.55重量%を構成する。そして、ポリジオルガノシロキサン及び加水分解性シランの合計量は、合わせて、本発明によるドライミックス組成物の0.005~0.22重量%、又は好ましくは0.007~0.1重量%を構成する。
【0040】
本発明によれば、貯蔵安定性粉末組成物は、
(i)水再分散性ポリマー粉末(RDP)、例えば、エチレン-酢酸ビニル(VaE)コポリマー、アクリレートコポリマー、又はスチレンアクリレートコポリマー、好ましくは、C4以上のアルキル基を含有するモノマーを共重合形態では含有しないVaEコポリマー、例えば、エチレン及び酢酸ビニル以外のモノマーを共重合形態では含有しないVaEコポリマーを含有する、RDPと、
(ii)(a)ゼオライト又はケイ酸アルミニウム、例えば、ケイ酸ナトリウムアルミニウム等のシリケート担体、(b)ポリジオルガノシロキサン、好ましくはポリ(ジメチルシロキサン)又はポリ(ジエチルシロキサン)、(c)C4~C12アルキル基若しくはそのオリゴマー、好ましくはC6~C9アルキル基、又はより好ましくはオクチルトリアルコキシシランを含有する加水分解性シラン、並びに(d)加水分解性シラン及びポリジオルガノシロキサンのためのポリマー封入剤、好ましくはポリビニルアルコール、の顆粒状組成物と、を含み、総RDPの総顆粒状組成物に対する重量比は90:10~98:2の範囲である。好適なドライミックス組成物は、0.5~5.5重量%、又は好ましくは1~5重量%の(i)RDP及び(ii)顆粒状組成物の組み合わせを含む。
【0041】
更に、本発明によれば、貯蔵安定性粉末組成物は、(ii)顆粒状組成物として、(a)54~89重量%、又は好ましくは69~85重量%のシリケート担体と、(b)4~15重量%、又は好ましくは6~12重量%のポリジオルガノシロキサンと、(c)6.5~25重量%、又は好ましくは8~15重量%の加水分解性シランと、(d)0.5~6重量%、又は好ましくは1~4重量%の加水分解性シラン及びポリジオルガノシロキサンのためのポリマー封入剤と、を含む。顆粒状組成物中の全ての重量割合は、顆粒状組成物の総重量に基づき、合計100%になる。
【0042】
更に、本発明による(ii)顆粒状組成物中の(b)ポリジオルガノシロキサンは、40~500MPa・s、又は好ましくは50~100MPa・s、又はより好ましくは60~80MPa・sの未希釈形態での室温粘度を有する。
【0043】
更に、本発明による(ii)顆粒状組成物中の少なくとも1つの(b)ポリジオルガノシロキサンは、ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン等のヒドロキシル末端ポリジ(C1~C2アルキル)シロキサンである。
【0044】
更になお、本発明による(ii)顆粒状組成物中の(c)加水分解性シランは、n-オクチルトリエトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、又はそれらのオリゴマーである。
【0045】
更になお、本発明による貯蔵安定性粉末組成物は、0.15~0.75重量%、又は好ましくは0.20~0.5重量%、又はより好ましくは0.35~0.45重量%の1つ以上のセルロースエーテルを含む。好ましくは、1つ以上のセルロースエーテルのうちの少なくとも1つは、アルキルエーテル基を含有する非混合セルロースエーテル、又はアルキルヒドロキシエチルセルロース、例えば、ヒドロキシアルキルメチルセルロースから選択されるもの等のヒドロキシアルキル基及びアルキルエーテル基を含有する混合セルロースエーテルから選択され、より好ましくは、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロース(MHEHPC)、メチルエチルヒドロキシエチルセルロース(MEHEC)、及びエチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)から選択され、又は更により好ましくは、HEMCである。
【0046】
好ましくは、本発明による貯蔵安定性粉末組成物は、セメントを含み、EN 12004:2(2017)に従って25℃で400~650Pa・sの粘度になるように水と混合した場合、(i)23℃±2℃及び標準(101.3kPa)圧力で28日間の老化、(ii)23℃±2℃及び標準(101.3kPa)圧力で7日間+7時間の老化、お及び23℃±2℃及び標準(101.3kPa)圧力で20日間+17時間の水浸漬、並びに(iii)23℃±2℃及び標準(101.3kPa)圧力で14日間の老化、次いで70℃で14日間の熱老化、の各々の後に、EN 1348に従って求めたときに、少なくとも1N/mm2、例えば少なくとも1.3N/mm2の引張強度を示すセメント系タイル接着剤を形成する。
【0047】
より好ましくは、本発明による貯蔵安定性粉末組成物は、セメント及び砂、1つ以上の充填剤又はそれらの組み合わせを含み、EN 12004:2(2017)に従って25℃で400~650Pa・sの粘度になるように水と混合した場合、タイル接着剤を基材に埋め込んだ20分後、又は好ましくはタイル接着剤を基材に埋め込んだ30分後にEN 1346に従って求めたときに、少なくとも0.5N/mm2、例えば少なくとも0.9N/mm2のオープンタイムを示すセメント系タイル接着剤を形成する。
【0048】
更により好ましくは、本発明による貯蔵安定性粉末組成物は、セメント及び砂、1つ以上の充填剤又はそれらの組み合わせを含み、EN 12004:2(2017)に従って25℃で400~650Pa・sの粘度になるように水と混合した場合、(i)23℃±2℃及び標準(101.3kPa)圧力で28日間の老化、(ii)23℃±2℃及び標準(101.3kPa)圧力で7日間+7時間の老化、及び23℃±2℃及び標準(101.3kPa)圧力で20日間+17時間の水浸漬、並びに(iii)23℃±2℃及び標準(101.3kPa)圧力で14日間の老化、次いで70℃で14日間の熱老化、の各々の後に、EN 1348に従って求めたときに、少なくとも1N/mm2又は少なくとも1.3N/mm2の引張強度を示すセメント系タイル接着剤を形成する。更に、本発明による粉末組成物は、タイル接着剤を基材に埋め込んだ20分後、又は好ましくはタイル接着剤を基材に埋め込んだ30分後にEN 1346に従って求めたときに、少なくとも0.5N/mm2又は少なくとも0.9N/mm2のオープンタイムを示すセメント系タイル接着剤の提供を可能にする。
【0049】
好適な(ii)顆粒状組成物の例は、(a)シリケート担体、(b)ポリジオルガノシロキサン、(c)加水分解性シラン、並びに(d)加水分解性シラン及びポリジオルガノシロキサンのためのポリマー封入剤、からなる3成分顆粒である。封入剤は、粉末化組成物における貯蔵安定性及び水を添加した際の活性成分の放出を提供する。
【0050】
本発明による(a)シリケート担体は、水不溶性又は水分散性であってよい。担体粒子の好適な例としては、例えば、アルミノシリケート(ゼオライト又はメタカオリン等)、粘土、又は砂が挙げられる。シリケート担体は、0.1~5000μm、又は好ましくは0.2~1000μm、又はより好ましくは0.2~50μmの平均直径(光散乱によって求めたX50)を有し得る。シリケート担体の粒径がより小さいと、顆粒状組成物中の残りの材料を完全に封入するために使用される封入剤ポリマーをより少なくすることができる。
【0051】
本発明による(b)ポリオルガノシロキサンは、貯蔵安定性を可能にし、加工を容易にする粘度を有する。ポリオルガノシロキサンは、線状ポリマーであってもよく、又は5%以下等の少ない割合の分岐の繰り返し単位を含有していてもよい。このような分岐は、後にオリゴマー化されるポリオルガノシロキサン中の加水分解性又はシラノール末端基の存在から生じ得る。
【0052】
本発明による(c)加水分解性シランは、アルコキシシラン又はC4~C12アルキル基を含有する別の加水分解性シランの部分加水分解によって形成されたオリゴマーを含み得、n-オクチルトリメトキシシラン又はn-オクチルトリエトキシシラン等の部分加水分解トリアルコキシシランの縮合生成物を含み得る。加水分解性シラン中のC4~C12アルキル基は、加工、貯蔵、又は使用中に揮発しない程度に十分に大きく、使用中又は使用後にワックス状にも軟質にもならない程度に十分に小さい。部分加水分解は、少量(シラン1モル当たり0.0001~0.05モル)の水性塩基、例えば苛性、又は酸、例えば4未満のpKaを有する有機酸、例えばギ酸を添加し、続いてクエンチしてpHを中和することによって行うことができる。
【0053】
(d)ポリマー封入剤は、例えば、カルボキシレート基を含む繰り返し単位を5重量%以下有するアクリルエマルジョンポリマー等の準安定性エマルジョンポリマー、又はポリ(ビニルアルコール)等のそれ自体が水に分散性であるコロイド安定剤であってよい。ポリマー封入剤の量は、(b)ポリジオルガノシロキサン及び(c)加水分解性シランの両方を封入するような量であるが、封入剤の量が多すぎて、得られる顆粒がシリケート担体を含む(ii)顆粒状組成物中の全ての材料を含まないということはない。
【0054】
(ii)顆粒状組成物は、(b)ポリジオルガノシロキサン及び(c)加水分解性シランが当業者に公知の方法で顆粒化されている水性分散液又はエマルジョンから形成され得る。このような方法は、例えば、Lecomteらの米国特許第8445560(B2)号、Dow Silicones UK Ltd.の欧州特許第0811584号、又はDow Silicones Belgium SPRLの欧州特許第496510号に開示されている。顆粒化プロセスでは、(b)ポリジオルガノシロキサン及び(c)加水分解性シランを、加水分解性シラン及びポリジオルガノシロキサンのための(d)ポリマー封入剤の水性媒体又はエマルジョン中に乳化又は少なくとも分散させる。このような分散は、インラインミキサー又はスタティックミキサーを用いることによって行うことができる。得られたシラン及びポリシロキサンの分散液又はエマルジョン組成物を、液体形態で、例えば噴霧によって、例えば流動床中の(a)シリケート担体上に堆積させ、こうして担体上への水の蒸発を通して混合物を固化させ、それによって自由流動性粉末を形成する。
【0055】
別の好適な顆粒化方法では、(b)ポリジオルガノシロキサン、(c)加水分解性シラン、及び(d)ポリマー封入剤のエマルジョンを、(a)シリケート担体を含有するドラムミキサー内に同時に噴霧する。噴霧液滴は、シリケート担体粒子と接触すると部分的に蒸発し、その後、得られた粒子は流動床に移動し、そこで周囲空気によって蒸発が完了する。次いで、(ii)顆粒状組成物を流動床から回収する。顆粒化に有用な典型的な装置としては、Eirich(商標)汎顆粒化機、Schugi(商標)ミキサー、Paesson-Kelly(商標)ツインコアブレンダー、Lodige(商標)プラウシェアミキサー、Lodige(商標)連続リング層ミキサー、又は多数のタイプの流動床装置のうちの1つ、例えばAeromatic(商標)流動床顆粒化機を挙げることができる。得られた顆粒をふるい分けによって更に選別して、小さ過ぎる又は大き過ぎる材料を実質的に含まない顆粒状組成物の粒子を生成することができる。
【0056】
更に別の好適な方法では、(a)シリケートを、(b)ポリジオルガノシロキサン、(c)加水分解性シラン、及び(d)ポリマー封入剤の水性分散液に撹拌下で注入し、続いて、得られた混合物を乾燥及び顆粒化する。
【0057】
本発明の貯蔵安定性粉末組成物は、少なくとも1つの(i)水再分散性ポリマー粉末(RDP)を含む。RDPは、従来の水性乳化重合によって形成されたエマルジョンポリマー結合剤を噴霧乾燥することによって従来の様式で形成され得る。水性エマルジョンポリマーは、例えば、酢酸ビニルポリマー、酢酸ビニル-アクリルコポリマー、酢酸ビニル-エチレンコポリマー、アクリルポリマー、スチレン-アクリルポリマー、スチレン-ブタジエンコポリマー、及びそれらのブレンドなどの様々な組成物分類から選択され得る。RDP組成物は、粘土などの固化防止剤及びポリ(ビニルアルコール)などのコロイド安定剤を更に含み、これらは噴霧乾燥によって微細に分割された粉末を形成することを可能にする。RDPは、スキムコートモルタルの接着性及び耐久性を改善し得る。好適なエマルジョンポリマーは、少なくとも-30℃、又は20℃以下、又は好ましくは少なくとも-15℃、又は好ましくは15℃以下、又はより好ましくは少なくとも-10℃のガラス転移温度(Tg)を有し得る。Tgが高すぎてセメント組成物で使用できない場合、最終用途特性、例えば低温での可撓性、及び亀裂架橋が損なわれる可能性がある。コポリマーのTgは、示差走査熱量測定(differential scanning calorimetry、DSC)によって既知の方法で求めることができる。本発明による好適なRDP組成物は、水不溶性フィルム形成ポリマー、コロイド安定化のためのコロイド安定剤、及び粘土、例えばカオリン等の微粉化固化防止剤の組み合わせを乾燥させた生成物を含む。ポリビニルアルコール(PVOH)等の従来のコロイド安定剤を、従来の量でコロイド安定剤として使用してよい。本明細書で使用するのに好ましいポリビニルアルコールは、部分的に加水分解されたポリビニルアルコールである。コロイド安定性を達成するために使用されるPVOH又は他の公知のコロイド安定剤の量は、水不溶性フィルム形成ポリマーの重量に基づいて、少なくとも1重量%、例えば2~30重量%、又は好ましくは5~20重量%であり得る。好適な固化防止剤は、カオリン、炭酸カルシウム、又はシリケート等であってよい。固化防止剤の量は、得られる水再分散性ポリマー粉末(RDP)の重量に基づいて40重量%以下であり得る。
【0058】
本発明によれば、水再分散性ポリマー粉末(RDP)組成物は、水性混合物の流れに固結防止剤を導入しながら、水不溶性フィルム形成ポリマーとコロイド安定剤との水性混合物を乾燥させることによって生成され得る。このような乾燥は、例えば、Perelloらの米国特許出願公開第2010/0240819(A1)号又はDombrowksiらの米国特許第9,181,130(B2)号に記載されている方法等の、公知のポリマー組成物を用いる従来の方法で行うことができる。したがって、乾燥は、ポリマー、コロイド安定剤、又は両方を一緒に、そして、固化防止剤を共供給流として噴霧乾燥することを含み得る。例えば、水不溶性フィルム形成ポリマーの水性分散液を乳化重合によって提供してよく、コロイド安定剤を重合後に水性分散液と混合してよく、次いで、固結防止剤を添加しながら水性分散液を噴霧乾燥させて、水再分散性ポリマー粉末を得てよい。一例では、噴霧乾燥される供給原料の粘度は、1000mPa S(20回転及び23℃でのBrookfield粘度)未満、好ましくは250mPa S未満の値が得られるように、固形分含量を介して調整され得る。噴霧乾燥される分散液の固形分含量は、分散液の総重量に基づいて、概ね25~75重量%、例えば35~65重量%、好ましくは40~60重量%であってよい。噴霧乾燥は、慣用の噴霧乾燥プラント内で実施することができ、その際、霧化は、一流体、二流体、若しくは多流体ノズル、又は回転ディスク霧化器を用いて実施される。概して、空気、窒素、又は窒素富化空気を乾燥ガスとして使用してよく、乾燥ガスの入口温度は、概ね200℃を超えず、又は好ましくは110℃~180℃、又はより好ましくは130℃~170℃である。出口温度は、プラント、ポリマー組成物のガラス転移温度、及び所望の乾燥度に応じて、概ね45℃~120℃、又は好ましくは60℃~90℃であってよい。
【0059】
本発明による粉末、ドライミックス、及びセメント系タイル接着剤において使用するのに好適なセルロースエーテルとしては、例えば、ヒドロキシアルキルセルロース、アルキルセルロース、又はそのようなセルロースエーテルの混合物を挙げることができる。本発明で使用するのに好適なセルロースエーテル化合物の例としては、例えば、メチルセルロース(methylcellulose、MC)、エチルセルロース、プロピルセルロース、ブチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース(hydroxyethyl methylcellulose、HEMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropyl methylcellulose、HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(「hydroxyethyl cellulose、HEC」)、エチルヒドロキシエチルセルロース(ethylhydroxyethylcellulose、EHEC)、メチルエチルヒドロキシエチルセルロース(methylethylhydroxyethylcellulose、MEHEC)、疎水性修飾エチルヒドロキシエチルセルロース(hydrophobically modified ethylhydroxyethylcellulose、HMEHEC)、疎水性修飾ヒドロキシエチルセルロース(hydrophobically modified hydroxyethylcellulose、HMHEC)、スルホエチルメチルヒドロキシエチルセルロース(sulfoethyl methylhydroxyethylcellulose、SEMHEC)、スルホエチルメチルヒドロキシプロピルセルロース(sulfoethyl methylhydroxypropylcellulose、SEMHPC)、及びスルホエチルヒドロキシエチルセルロース(sulfoethyl hydroxyethylcellulose、SEHEC)が挙げられる。好ましくは、セルロースエーテルは、ヒドロキシアルキル基及びアルキルエーテル基を含有する混合セルロースエーテル、例えばアルキルヒドロキシエチルセルロース、例えば、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、例えば、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロース(MHEHPC)、メチルヒドロキシエチルセルロース(MEHEC)、及びエチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)である。
【0060】
本発明によるセルロースエーテルでは、アルキル置換は、用語「DS」によってセルロースエーテル化学において記載される。DSは、無水グルコース単位当たりの置換OH基の平均数である。メチル置換は、例えば、DS(メチル)又はDS(M)として報告され得る。ヒドロキシアルキル置換は、用語「MS」によって記載される。MSは、無水グルコース単位1mol当たりのエーテルとして結合するエーテル化試薬の平均モル数である。エーテル化試薬エチレンオキシドによるエーテル化は、例えば、MS(ヒドロキシエチル)又はMS(HE)として報告される。エーテル化試薬プロピレンオキシドによるエーテル化は、MS(ヒドロキシプロピル)又はMS(HP)として対応して報告される。側基は、Zeisel法を使用して決定される(参照:G.Bartelmus and R.Ketterer,Fresenius Zeitschrift fuer Analytische Chemie 286(1977),161-190)。
【0061】
好適なセルロースエーテルは、好ましくは1.5~4.5のヒドロキシアルキル置換MS(HE)度、又はより好ましくは2.0~3.0の置換MS(HE)度を有する。好ましくは、1.2~2.1、又はより好ましくは1.3~1.7、又は更により好ましくは1.35~1.65の範囲のメチル置換DS(M)値、及び0.05~0.75、又はより好ましくは0.10~0.45、又は更により好ましくは0.15~0.40の範囲のヒドロキシアルキル置換MS(HE)値を有するHEMC等のメチルセルロースの混合エーテルが使用される。HPMCの場合、好ましくは、DS(M)値は、1.2~2.1、又はより好ましくは1.3~2.0の範囲であり、MS(HP)値は、0.1~1.5、又はより好ましくは0.15~1.2の範囲である。
【0062】
ドライミックスとしての使用に好適な本発明による貯蔵安定性粉末組成物は、水硬セメント粉末等の微粉化セメントを更に含んでいてもよい。セメントの好適な例は、普通ポルトランドセメントである。乾燥セメントは、乾燥ミックスの総重量に基づいて、15~33重量%、又は好ましくは18~30重量%の量で使用され得る。
【0063】
ドライミックスとして使用するのに好適な本発明による貯蔵安定性粉末組成物は、59.5~84.5重量%、又は好ましくは65~81重量%の砂、1つ以上の充填剤、又はその両方を更に含み得る。好適な充填剤は、アルカリ炭酸塩及びケイ酸塩、並びにそれらの焼成、焼結、又はセラミック形態、例えば、ドロマイト、カオリナイト、粉砕炭酸カルシウム等の炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、ケイ砂、白色ケイ砂、又はアルカリ金属ケイ酸塩、例えばケイ酸カルシウム、ケイ酸ナトリウム、又はそれらの混合物から選択され得る。砂又は充填剤に好適な粒径は、100%が<0.8mm以下、例えば80マイクロメートルから0.8mm未満、又は好ましくは100%が<0.5mm以下のふるい平均粒径(LAVIBふるい機(Siebtechnik,Muelheim,DE)によって測定)の範囲であってよい。
【0064】
ドライミックスとして使用するのに好適な本発明の貯蔵安定性粉末組成物は、ギ酸カルシウム等の促進剤、超可塑剤、追加の有機若しくは無機増粘剤及び/又は二次保水剤、垂れ防止剤、湿潤剤、消泡剤、分散剤、撥水剤、バイオポリマー、あるいは繊維等の、乾燥形態の任意の1つ以上の追加成分を1重量%以下含んでいてもよい。追加の成分は全て当該技術分野において既知であり、市販されている。追加の成分は全て当該技術分野において既知であり、商業的供給源から入手可能である。
【0065】
本発明によるセメント系タイル接着剤ドライミックス組成物として使用するのに適した、好適な貯蔵安定性粉末組成物は、総固形分の0.010~0.050重量%のデンプンエーテル又はポリ(メタ)アクリルアミドスリップ助剤、及び総固形分の少なくとも0.1重量%のセルロースエーテルを更に含んでいてもよい。
【0066】
貯蔵安定性粉末組成物は、本発明の材料の全てを乾燥形態で混合することによって形成される。粉末組成物は、後で使用するために貯蔵することができる。セメント質組成物は、概して、水をそれに添加し、混合してセメント系タイル接着剤を形成することによって、ドライミックス粉末として使用される。セメント質タイル接着剤組成物は、ドライミックス粉末として販売することができる。
【0067】
本発明によれば、貯蔵安定性粉末組成物を使用する方法は、それをドライミックスとして水と組み合わせてセメント系タイル接着剤モルタルを形成し、任意選択で基材を濡らし、接着剤を基材に塗布して接着剤担持基材を形成し、次いでタイルを接着剤担持基材に適用することを含む。セメント系タイル接着剤モルタルは、石膏、木材、ベニヤ板、バッカーボード、コンクリート、又はセメント下塗り等の多孔質基材上に塗布することができる。
【0068】
本発明の組成物は、セラミックタイル、特に、より強力な接着剤を必要とする重い又は大きなタイルと共に使用するためのセメント系タイル接着剤として利用される。更に、本発明の組成物は、トンネル、プール、及び屋外用途等の耐熱又は水中用途において利用される。
【0069】
本発明は、以下の特徴を提供する。
1.本発明によれば、セメント系タイル接着剤モルタルを作製するためのドライミックスとして使用するための貯蔵安定性粉末組成物は、15~33重量%、又は好ましくは18~30重量%のセメント、例えば普通ポルトランドセメントと、
65~83重量%、又は好ましくは68~80重量%の1つ以上の砂;ドロマイト、カオリナイト、炭酸カルシウム、タルク、ケイ砂、白色ケイ砂、アルカリ金属ケイ酸塩、又はこれらの混合物から選択される1つ以上の充填剤と、
0.5~5.5重量%、又は好ましくは1~5重量%の、(i)エチレン-酢酸ビニル(VaE)等の1つ以上の水再分散性ポリマー粉末(RDP)、並びに(ii)水分散性ポリマー封入ポリジオルガノシロキサン及びC4~C12アルキル基を有する加水分解性シランの顆粒状組成物、の混合物と、を含み、全ての量はドライミックス組成物中の総固形分の重量%であり、全ての割合は合計で100%になり、全(i)水再分散性ポリマー粉末(RDP)の全(ii)顆粒状組成物に対する重量比は、90:10~98:2の範囲である。
2.当該粉末組成物中の少なくとも1つのi)水再分散性ポリマー粉末(RDP)が、エチレン-酢酸ビニル(VaE)コポリマー、アクリレートコポリマー、若しくはスチレンアクリレートコポリマー、又は好ましくはC4以上のアルキル基を含有するモノマーを共重合形態では含有しないVaEコポリマーを含む、上記第1項に記載の貯蔵安定性粉末組成物。
3.当該(ii)顆粒状組成物が、(a)ゼオライト、又はケイ酸ナトリウムアルミニウム等のケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、又はケイ酸ナトリウム、及びそれらの混合物等のシリケート担体と、(b)ポリジオルガノシロキサンと、(c)C4~C12アルキル基又はそのオリゴマー、好ましくはC6~C9アルキル基を含有する加水分解性シラン、又はより好ましくはオクチルトリアルコキシシランと、(d)加水分解性シラン及びポリジオルガノシロキサンのためのポリマー封入剤、好ましくはポリビニルアルコールと、を含む、上記第1項又は第2項のいずれか1つに記載の貯蔵安定性粉末組成物。
4.当該(ii)顆粒状組成物が、(a)54~89重量%、又は好ましくは69~85重量%のシリケート担体と、(b)4~15重量%、又は好ましくは6~12重量%のポリジオルガノシロキサンと、(c)6.5~25重量%、又は好ましくは8~15重量%の加水分解性シランと、(d)0.5~6重量%、又は好ましくは1~4重量%の、加水分解性シラン及びポリジオルガノシロキサンのためのポリマー封入剤とを含み、当該顆粒組成物中の全ての重量割合が合計100%になる、上記第1項、第2項、又は第3項のいずれか1つに記載の貯蔵安定性粉末組成物。
5.0.15~0.75重量%、又は好ましくは0.20~0.5重量%、又はより好ましくは0.35~0.45重量%の1つ以上のセルロースエーテル、好ましくはヒドロキシエチルメチルセルロースを更に含む、上記第1項、第2項、第3項、又は第4項のいずれか1つに記載の貯蔵安定性粉末組成物。
6.当該砂又は充填剤が、例えばLAVIBふるい機(Siebtechnik,Muelheim,DE)によって求めたときに、100%の粒子が80マイクロメートル~0.8mm未満のふるい平均粒径を有する、又は好ましくは100%の粒子が0.1~0.5mmのふるい平均粒径を有する、上記第1項、第2項、第3項、第4項、又は第5項のいずれか1つに記載の貯蔵安定性粉末組成物。
7.EN 12004:2(2017)に従って25℃で400~650Pa・sの粘度になるように水と混合した場合、(i)23℃±2℃及び標準(101.3kPa)圧力で28日間の老化、(ii)23℃±2℃及び標準(101.3kPa)圧力で7日間+7時間の老化、及び23℃±2℃及び標準(101.3kPa)圧力で20日間+17時間の水浸漬、並びに(iii)23℃±2℃及び標準(101.3kPa)圧力で14日間の老化、次いで70℃で14日間の熱老化の各々の後に、EN 1348に従って求めたときに、少なくとも1N/mm2、又は好ましくは少なくとも1.3N/mm2の引張強度を示す、上記第1項、第2項、第3項、第4項、第5項、又は第6項のいずれか1つに記載の貯蔵安定性粉末組成物。
8.EN 12004:2(2017)に従って25℃で400~650Pa・sの粘度になるように水と混合した場合、タイル接着剤を基材に埋め込んだ20分後、又は好ましくはタイル接着剤を基材に埋め込んだ30分後にEN 1346に従って求めたときに少なくとも0.5N/mm2のオープンタイムを示す、上記第1項、第2項、第3項、第4項、第5項、第6項、又は第7項のいずれか1つに記載の貯蔵安定性粉末組成物。
9.EN 12004:2(2017)に従って25℃で400~650Pa・sの粘度になるように水と混合した場合、タイル接着剤を基材に埋め込んだ20分後、又は好ましくはタイル接着剤を基材に埋め込んだ30分後にEN 1346に従って求めたときに少なくとも0.9N/mm2のオープンタイムを示す、上記第1項、第2項、第3項、第4項、第5項、第6項、第7項、又は第8項のいずれか1つに記載の貯蔵安定性粉末組成物。
10.EN 12004:2(2017)に従って25℃で400~650Pa・sの粘度になるように水と混合した場合、EN 1308に従って求めたときに0.5mm未満の滑り抵抗を示す、上記第1項、第2項、第3項、第4項、第5項、第6項、第7項、第8項、又は第9項のいずれか1つに記載の貯蔵安定性粉末組成物。
11.本発明の別の態様では、本発明は、上記第1項~第10項のいずれか1つに記載の貯蔵安定性粉末組成物を使用する方法であって、粉末組成物を水と混合してセメント系タイル接着剤を形成することと、接着剤を多孔質基材に塗布して接着剤担持基材を形成することと、次いで、接着剤担持基材にタイルを適用することとを含む、方法を提供する。
【実施例】
【0070】
以下の実施例により、本発明を例示する。別途指示がない限り、全ての部及び百分率は、重量によるものであり、全ての温度は℃である。別段の指示がない限り、全ての条件は、23℃±2℃、50%±5%相対湿度(relative humidity、rh)、及び0.2m/s未満の空気移動である。実施例で使用するとき、「標準条件」という用語は、室温(23℃±2℃)及び標準圧力(101.3kPa)を指す。
【0071】
以下の実施例並びに表1、2、3、4、5、及び6では、以下の略記を使用した:PDMS:ポリ(ジメチルシロキサン)、PVOH:ポリ(ビニルアルコール)、RDP:再分散性ポリマー粉末、VaE:酢酸ビニルエチレン。
【0072】
以下の実施例では、以下の材料を使用した。
RDP1:DLP2000再分散性ラテックス粉末(Dow,Midland MI(Dow))は、カオリン固化防止剤及びコロイド安定剤の存在下で水性酢酸ビニルエチレン(VaE)コポリマー分散液を噴霧乾燥することによって得られる易流動性の白色粉末である。
RDP2:VINNAPAS(商標)8118 E RDP、コロイド安定剤を含む酢酸ビニル/塩化ビニル/エチレンのポリマー、Wacker Chemie,AG(Munich,DE(Wacker))。
RDP3:VINNAPAS(商標)7220E RDP、酢酸ビニル/バーサチック酸ビニル(VeoVa)、エチレン、及びアクリル酸エステルのポリマー、並びにコロイド安定剤(Wacker)。
RDP4:40重量%のVeoVa、60重量%のVaEのポリマー、12重量%のコロイド安定剤としてのPVOH及び15重量%の固化防止剤としてのカオリンを含む粉末。
【0073】
顆粒状組成物:77重量%の粉末担体(ゼオライト);10重量%のシラノール末端ポリジメチルシロキサン(25℃での正味粘度約60MPa・s);10重量%のn-オクチルトリエトキシシラン;3重量%のPVOH。
【0074】
疎水性添加剤:ヒドロキシル官能性ポリジメチルシロキサン流体水性エマルジョン(25℃で未希釈ポリマーとして60~80MPa*s)。
耐水性シランエマルジョン:n-オクチルトリエトキシシランを含有する水性エマルジョン。
セメント:普通ポルトランドセメント(OPC CEM 42.5)。
砂:平均(X50)直径が0.09~0.5mmの微粉化砂。
細砂:Quartz sand F36(Quarzwerke Frechen、製造業者によって報告された平均粒径(X50)160μm、比表面積144cm2/g)。
中砂:Quartz sand F32(Quarzwerke Frechen、製造業者によって報告された平均粒径(X50)240μm、比表面積102cm2/g)セルロースエーテル1:ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC、DS(メチル)=1.55~1.65;MS(ヒドロキシエチル)=0.25~0.32;粘度50,000~58,000mPa・s、2重量%水溶液、Haake(商標)Viscotester(商標)VT550、剪断速度2.55s-1、20℃(Dow))。
【0075】
以下の表1、2及び3に記載されている指定の組成を有するセメント系タイル接着剤を、以下に論じる通り試験し、特性評価した。
【0076】
【0077】
上の表1に示すように、組成物中の活性シラン含量(トリエトキシ(オクチル)シラン)の量は、比較例4では実施例3よりも1.6倍高い。組成物中の活性分(PDMS)の含量は、比較例5では実施例3の半分の量である。
【0078】
【0079】
【0080】
以下に別段の指示がない限り、上記表1、2及び3中の指定の成分を個々の原料として電子はかりで注意深く秤量し、それらを粉末として乾燥ブレンドし、17~24時間静置することによって、ドライミックス組成物を形成した。次いで、ドライミックス組成物を以下に示すように試験した。
【0081】
別段の指示がない限り、EN 12004:2(2017)に従って以下の通りに湿潤セメント系タイル接着剤を形成した:1500gの量の指定のドライミックス組成物を取り、Hobart 5-Quart Mixer(Hobart,Troy,Ohio,USA)を使用して容器内において速度1で30秒間水と合わせ、混合物を1分間静置している間に容器の側面及び混合ブレードをスクレーパーで掻き取り、速度1で更に1分間混合し、混合物を10分間静置している間に容器の側面及び混合ブレードを再び掻き取り、次いで、EN 196-1、セクション4.4に従って速度1で15秒間再び混合する。
【0082】
オープンタイムは、EN 1346に従って求めた。試験では、EN 14411に準拠した14.4±3質量%の吸水能を有するグループBIII多孔質陶器質タイル(5×5cm、厚さ7~10mm、及び深さ0.25mm未満のプロファイルバックパターン、(Deutsche Steinzeug Cremer & Breuer AG,Alfter-Witterschlick,DE),)を使用した。試験基材は、40×20cmの石膏プラスターボード(Rigips VARIO(商標)12.5)であった。試験では、ストレートエッジのコテを用いて指定のタイル接着剤の薄層を試験基材に塗布し、続いてタイル接着剤の第2の層を塗布し、8mm間隔で4mm×4mmのノッチを有するノッチ付きコテを用いて、コテを基材に対して約60°の角度で保持しながら基材の側面に平行な方向に直線ですくことによって、タイル張りされた基材を調製した。ストップウォッチを0に設定し、起動した。接着剤を基材上に埋め込んだ後に5分間隔で、すなわち、5分後、10分後、15分後、20分後、25分後、及び30分後の各々で、各タイルを任意の他のタイルから少なくとも50mm離して指定のタイル接着剤の床の上に置き、3kgの重りで30秒間押し下げた。間隔期間を記録し、接着されたタイルを、以下の引張接着試験に記載の指定条件で老化させた。EN 1346に準拠するオープンタイム又はオープンタイム接着性は、指定条件下で貯蔵した後に基材から所与の間隔期間後に接着されたタイルを引き剥がすのにかかる力の量を指し、N/mm2で表す。したがって、28日の標準条件下での30分のオープンタイムとは、接着剤をベースに塗布した30分後にタイルを接着剤床に置き、引張試験の前にタイル及びベースを標準条件下で28日間老化させる試験を指す。より長い間隔後に埋め込まれたタイルを取り外すためにより大きな力が必要とされることは、間隔の終了後に接着剤が濡れたままであったことを意味する。全ての結果を、試験した10枚のタイルの平均として報告した。
【0083】
引張接着力は、混合後にEN 1348に従って求めた。ISO 13006(50±1mm×50±1mm、Winckelmans,Lomme,FR)に準拠し、平坦で艶消しの接着表面を有し、吸水率が0.5質量%以下であるグループB1aの完全に磁器化した素焼きの石器質タイルを用いた。矩形コンクリート試験基材(40±5mm厚)は、3質量%未満の含水率、及び室温で4時間後に0.5cm3~1.5cm3の表面吸水率を有していた。引張試験機は、曲げ力を全く及ぼさない適切な取付具を介して250±50N/sの速度でプルヘッドプレートに荷重を印加することができ、少なくとも10mm厚の正方形金属(50±1mm×50±1mm)プルヘッドプレート用のコネクタを備え、試験機に接続するための好適な取付具を有するダイレクトプル引張試験機であった。空気循環オーブンは、温度を±3℃以内に制御することができた。試験では、ストレートエッジのコテを用いて指定のタイル接着剤の薄層を試験基材に塗布し、続いてタイル接着剤の第2の層を塗布し、12mm間隔で6mm×6mmのノッチを有するノッチ付きコテを用いて、コテを基材に対して約60°の角度で保持しながら基材の側面に平行な方向に直線ですくことによって、タイル張りされた基材を調製した。塗布された接着剤を5分間静置した後、各試験につき、10個のタイプB1aタイルを接着剤上に50mmの距離だけ離して配置し、各タイルに20±0.05Nの力で荷重を30秒間かけて、タイル張りされた基材を形成した。エポキシ接着剤(Korapox(商標)558エポキシ接着剤、Koemmerling Chemische Fabrik GmbH,Pirmasens,DE)を使用して、タイル張りされた基板上のタイルにプルヘッドプレートを接着した。全ての結果を、試験した10枚のタイルの平均としてN/mm2で報告した。標準条件下での引張接着強度(28日)を試験するために、タイル張りされた基材を標準条件下で27日間保管し、次いで、プルヘッドプレートをタイルに接着した。標準条件下で更に24時間貯蔵した後、250±50N/sの一定速度で力を印加することによって、接着剤の引張接着強度を求めた。オープンタイム接着性は、指定の時間間隔後にタイルを接着剤の床の上に置いたときの28日標準条件下での同じ引張接着強度を指し、その時間間隔にわたって静置した後に接着剤が機能する性能を示す。接着剤の速硬引張接着特性を試験するために、引張接着強度を求める前に最低2時間、タイル張りされた基材におけるタイルにプルヘッドプレートを接着した。水浸漬後の引張接着強度を試験するために、タイル張りされた基材を標準条件下で7日間コンディショニングし、標準条件下で20日間水に浸漬した。20日間後、タイル張りされた基材を水から取り出し、布で拭き、プルヘッドプレートをタイルに接着した。標準条件下で更に7時間貯蔵した後、タイル張りされた基材を標準条件下で更に17時間水に浸漬した。17時間の終わりに、タイル張りされた基材を水から取り出し、250±50N/sの一定速度で力を印加することによって、接着剤の引張接着強度について直ちに試験した。熱老化後の引張接着強度を試験するために、タイル張りされた基材を標準条件下で14日間コンディショニングし、次いで70±3℃の空気循環オーブンに更に14日間入れた。次いで、タイル張りされた基材をオーブンから取り出し、プルヘッドプレートをタイルに接着した。次いで、タイル張りされた基材を標準条件下で更に24時間コンディショニングし、次いで、250±50N/sの一定速度で力を印加することによって引張接着強度を求めた。
【0084】
滑り抵抗又は滑りは、EN 1308に従って求めた。EN 12004:2(2017)に従って25℃で400~650Pa・sの粘度になるように混合した後、ストレートエッジのコテを使用して指定の新たに混合されたセメント系タイル接着剤を薄層としてコンクリートプレート基材上に塗布し、続いてタイル接着剤の第2の層を塗布し、12mm間隔で6mm×6mmのノッチを有するノッチ付きコテを用いて、コテを基材に対して約60°の角度で保持しながら基材の側面に平行な方向に直線ですいた。2分後、2枚のタイル(100×100mm)を濡れている接着剤上に載せ、50Nの荷重で30秒間硬化させた。3分後、完全なコンクリートプレートを垂直位置に持ち上げ、タイルが濡れているモルタル上で完全に安定し、更なる滑りが観察されなくなったときに、接着剤上でタイルが移動した距離を記録した。結果は、5回の試験結果の平均としてmmで報告した。
【0085】
密度は、指定の各タイル接着剤を所与の体積のシリンダーに充填し、シリンダー内の接着剤を秤量してタイル接着剤内容物の質量を求め、その質量をその体積で除することによって求めた。接着剤組成物を指定の時間間隔で静置した後、密度を報告した。
【0086】
粘度は、Helipathスタンド及びスピンドル番号T-F 96を備えたBrookfield粘度計RVDV II Pro(DVII+)を5rpmで使用してカップ(h=80mm、d=100mm)内で測定したときの、EN 196-1、セクション4.4に従って混合されたセメント系タイル接着剤の25℃におけるcPs(mPa・s)で求められたセメント系タイル接着剤又はモルタルの粘度であり、粘度計は製造業者の指示に従って較正した。接着剤組成物を指定の時間間隔で放置した後、粘度を記録した。
【0087】
作業性は、塗布の容易さ、手触り、及びレベリングを判定するための目視試験方法であり、指定のセメント系タイル接着剤から判定した。25℃でノッチ付きエッジ鋼製コテ(長さ20.48cm)を使用して、オープンタイムを求めるために使用したのと同じ石膏ボード基材上に接着剤を塗布することによって、作業性を測定した。経験のある実験技術者によって評点を決定した。評点が低いほど、作業性がより良好であることを意味する。視覚的品質も報告した。評点は以下の通りであった。
5 非常に悪い
4 悪い
3 十分良好
2 良好
1 非常に良好
【0088】
実施例で試験した様々なセルロースエーテル材料及びセメント系タイル接着剤の特徴を、以下の表4、5、及び6に示す。
【0089】
【0090】
上記の表4に示すように、実施例3におけるPDMSと加水分解性シランとのブレンドの添加は、作業性にも、密度にも、粘度にも悪影響を及ぼさない。しかし、比較例4に示すように、同じ加水分解性シランを同量添加すると、粘度及び密度が上昇し、作業性が悪化する。同様に、比較例5に示すように、PDMSを添加すると、PDMSの濃度が本発明の実施例3において使用される量のわずか1/3であるにもかかわらず、粘度及び密度が増加し、作業性が悪化する。更に、本発明の実施例3では、ブレンドPDMS及び加水分解性シランは、オープンタイムに対して有益な影響を及ぼすが、比較例4における(c)加水分解性シラン単独の使用は、オープンタイムを有意に減少させた。PDMS及び加水分解性シランの両方のブレンドは、VaEポリマーを含むRDP1と同等であるか又はそれよりも良好な作業性、密度、及びオープンタイム特性を与える。
【0091】
【表5】
*-比較例を示す。1.最大標準偏差0.1%。2.最大標準偏差0.07%。3.最大標準偏差0.11%。
【0092】
上記の表5に示すように、加水分解性シランとVaE含有RDP1(polyVaE)を有するポリオルガノシロキサンとを両方有する顆粒状組成物を導入しても、セメント系タイル接着剤の作業性は損なわれない。実施例8、9、及び10を参照されたい。これは、実施例10のように、RDPがRDPの重量に基づいて5%の負荷の顆粒状組成物を含む場合であっても当てはまる。しかしながら、実施例9及び10に示すように、好ましい発明は、セメント系タイル接着剤中のRDPの総重量に基づいて、2重量%を超える顆粒状組成物を含む。実施例9及び10は、特に実施例10において、水浸漬及び熱老化後に改善された接着性を示す。比較例6を比較。実施例8、9、及び10に示すように、比較例11の結果と比較したとき、トリエトキシ(オクチル)シランを唯一のケイ素含有添加剤として導入するとオープンタイムが減少するが、加水分解性シランとPDMSとのブレンドは、オープンタイムを改善する。
【0093】
【0094】
上記の表6に示すように、従来のポリVaE水再分散性粉末+本発明の顆粒状組成物の5重量%の負荷において、実施例19の本発明の組成物は、共重合した塩化ビニル又はバーサチック酸ビニル及びアルキルアクリレートを有する強化RDPを含有する比較例20及び21の組成物と同様に良好な標準28日及び水浸漬引張接着性を示す。しかしながら、本発明の実施例13及び19の組成物は、特にRDP+任意の顆粒状組成物の量が3重量%から5重量%に増加した場合、優れた熱老化引張接着性を示す。
【国際調査報告】