(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】組織灌流センサ及び配置器具
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
A61B5/00 N
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562261
(86)(22)【出願日】2021-04-14
(85)【翻訳文提出日】2023-10-06
(86)【国際出願番号】 US2021027261
(87)【国際公開番号】W WO2022220823
(87)【国際公開日】2022-10-20
(32)【優先日】2021-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523381963
【氏名又は名称】エクソスタット メディカル,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ピエルスカラ、アーヴィン,ティ
(72)【発明者】
【氏名】ウィンガー,ケント,アール
【テーマコード(参考)】
4C117
【Fターム(参考)】
4C117XA01
4C117XB01
4C117XD08
4C117XE07
(57)【要約】
二酸化炭素の分圧を測定するためのセンサシステムが提供される。センサシステムは、生体センサと、センサ配置器具を含む。センサは、その下側に開口部を画定する断面が概してC字形のセンサカバーと、開口部内に収容され、非晶質フッ素樹脂を含み、第1の端と第2の端を有し、内部にチャンバを画定する膜体と、膜をセンサカバーに結合するためのセンサ体と、膜のチャンバ内に配置された2つ以上の電極と、膜のチャンバ内に収容され、2つ以上の電極と接触する実質的に電解質を含有しない液体とを含む。センサ配置器具は、膜体の少なくとも40~50%が頬組織と接触するように膜体を被検者の頬組織に対して配置するように構成される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織内の二酸化炭素の分圧(pCO
2)を測定するためのセンサシステムであって、
センサとセンサ配置器具を含み、
前記センサは、
センサカバーの下側によって頂部が境界付けられ、リップによって遠位端が境界付けられる開口部を画定する、断面が概してC字形のセンサカバーと、
前記開口部内に収容され、第1の非晶質フッ素樹脂を含み、第1の端と、リップに対して位置する第2の閉鎖端とを有し、密閉チャンバを形成する、膜体と、
前記第1の端を前記センサカバーに結合するために前記第1の端に配置されたセンサ体と、
前記第1の端から延び、前記密閉チャンバ内に配置される、2つ以上の電極と、
前記密閉チャンバ内に収容され、前記2つ以上の電極と接触する、実質的に電解質を含有しない液体と、
を含み、
前記センサ配置器具は、前記膜体の少なくとも40~50%が頬組織と接触するように前記膜体を被検者の頬組織に対して配置するように構成される、
センサシステム。
【請求項2】
センサ配置器具であって、
第1の平面上にある第1の端でセンサと結合するように構成されたセンサアームと、
前記第1の平面から少なくとも5mmオフセットされている第2の平面上にある、偏向面を備える第2のアームと、
前記センサアームの第2の端を前記第2のアームに結合するためのビームと、
を備え、前記第1の平面と前記第2の平面との間のオフセットは、前記膜体を頬組織に対して配置するべく被検者の頬組織を受け入れるように構成される、
請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項3】
前記膜体は、円筒形又は球形である、請求項2に記載のセンサシステム。
【請求項4】
前記偏向面は、前記センサアームの第1の端に結合されたセンサから等距離にある2つのアームによって形成されるU字形部分を含む、請求項2に記載のセンサシステム。
【請求項5】
前記センサ配置器具は、前記U字形部分の2つのアームを介して頬組織を前記膜体上に折り曲げることによって、空隙なく、且つ25mmHgを超える圧力を加えることなく、前記センサを頬組織に対して配置するように構成される、請求項4に記載のセンサシステム。
【請求項6】
前記ビームは、前記第2の平面と前記第1の平面との間のオフセットを変化させるように構成されたラチェット要素を含む、請求項2に記載のセンサシステム。
【請求項7】
前記センサは、交流電位に応答して、実質的に電解質を含有しない液体のインピーダンスを測定する、請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項8】
前記断面が概してC字形のセンサカバーのリップは、膜体を呼気終末二酸化炭素から遮蔽するように構成される、請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項9】
二酸化炭素の分圧(pCO
2)を測定するためのセンサを被検者の頬組織に対して配置するためのセンサ配置器具であって、
第1の平面上にある第1の端でセンサと結合するように構成されたセンサアームと、
前記第1の平面からオフセットされた第2の平面上にある、U字形の偏向面を備える第2のアームと、
前記第1のセンサアームの第2の端を前記第2のアームに結合するためのビームと、
を備え、前記第1の平面と前記第2の平面との間のオフセットは、前記U字形の偏向面を介して頬組織を膜体上に折り曲げることによってセンサの膜体を頬組織に対して配置するべく被検者の頬組織を受け入れるように構成される、
センサ配置器具。
【請求項10】
前記オフセットは少なくとも約5mmである、請求項9に記載のセンサ配置器具。
【請求項11】
前記ビームは、前記第2の平面と前記第1の平面との間のオフセットを変化させるように構成されたラチェット要素を含む、請求項9に記載のセンサ配置器具。
【請求項12】
前記センサ配置器具は、空隙なく、且つ25mmHgを超える圧力を加えることなく、センサを頬組織に対して配置するように構成される、請求項9に記載のセンサ配置器具。
【請求項13】
前記U字形の偏向面は、前記センサアームの第1の端に結合されたときに前記センサから等距離に位置する2つのアームを含む、請求項9に記載のセンサ配置器具。
【請求項14】
組織内の二酸化炭素の分圧(pCO
2)を求めるための方法であって、
C字形のセンサカバーによって形成される開口部内に収容され、第1の非晶質フッ素樹脂を含み、第1の端と第2の閉鎖端とを有する密閉チャンバを形成する、膜体を含む、センサを提供することと、
センサ配置器具を使用して、空隙なく、且つ25mmHgを超える圧力を加えることなく、センサを被検者の頬組織の近傍に配置することと、
センサを使用して頬組織内のpCO
2を測定することと、
を含む方法。
【請求項15】
前記センサをセンサ配置器具のセンサアームの第1の端に結合することをさらに含み、前記第1の端は、U字形の偏向部分を含むセンサ配置器具の第2のアームを含む第2の平面からオフセットされた第1の平面上にある、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の平面と第2の平面との間のオフセットを約5mmになるように制御することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記U字形の偏向部分の2つのアームが25mmHgを超える圧力を加えることなく頬組織を膜上に折り曲げるように前記第1の平面と第2の平面との間のオフセットを制御することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記オフセットを制御することは、前記センサ配置器具に含まれるラチェット要素を使用して前記第2のアームを前記第1の端に対して移動させることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
断面が概してC字形のセンサカバーにリップを設け、第2の閉鎖端を前記リップに隣接して配置することによって、膜体を呼気終末二酸化炭素から遮蔽することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2021年4月14日に出願された米国特許出願第17/230,020号への利益を主張するものである。上記の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、組織内の二酸化炭素の分圧(pCO2)を測定するためのセンサの分野に関する。より具体的には、本開示は、粘膜組織内の二酸化炭素の分圧を測定するためのセンサに関する。
【背景技術】
【0003】
低い血液容量、心臓の不適切なポンプ作用、又は血管の過度の拡張(拡大)によって、低潅流として知られている非常に低い血流が引き起こされることがある。
【0004】
身体は、他のより重要な器官への血液を温存するべく胃腸管などのそれほど重要ではない器官への血流を減らすことでそのようなストレスに応答する。したがって、心臓からの血流の減少があるとき、身体は、血流の一時的な大幅な減少によって生存が脅かされることはない、それほど重要ではない器官への血流を制約しながら、血液の連続供給なしには長くはもたない、脳などの重要な器官に血液のより多くを送る。
【0005】
例えば、心臓からの血流の減少があるとき、胃及び腸に供給する内臓血管系への血流と食道及び口腔/鼻腔への血流が大幅に減少する。このため、内臓血管への血流の減少が患者の低潅流の指標となる。低潅流により腸粘膜が損なわれると、虚血及び胃での高二酸化炭素状態につながる。これらの2つの臨床状態は、細菌及び炎症性物質の内臓循環への放出をもたらし、敗血症及び多臓器不全症候群を招くことがある。
【0006】
代謝に関連する二酸化炭素の産生は、低血流状態でも組織内で継続する。二酸化炭素はすぐには運び出されないため、低血流の組織内で二酸化炭素が蓄積して濃度が上がる。この二酸化炭素の蓄積は、器官内のpCO2の増加によって表される。したがって、低潅流は、一般に、これらの部位のpCO2を測定することによって評価される。
【0007】
pCO2の増加は身体の至る所で測定され得る。とりわけ、口腔粘膜のpCO2は胃のpCO2とよく相関しており、したがって、特に、感知プローブが周囲空気から隔離されていて、且つ、患者の口に最小限の不快さで装着できる場合、口腔粘膜はpCO2を測定するのに理想的な部位をなすことが研究で示されている。舌下粘膜のpCO2レベルと頬粘膜のpCO2レベルは両方とも循環ストレスを定量的にトレースすることが多くの研究で実証されている。
【0008】
pCO2の測定は、従来から、シリコーン膜を有するセンサで行われてきた。シリコーン膜は、ポリマー鎖の自由体積が大きいため迅速なガス輸送を可能にするので有用である。しかしながら、不都合なことに、シリコーン膜は、pCO2測定に干渉することがある酢酸などのカルボン酸及び唾液に含まれる他の化合物も同様に通過させる。例えば、酢酸が膜を通ってセンサ液に入ると、pHが低下し、流体の導電率が増加する。どちらの変化も二酸化炭素の増加を誤って示す場合がある。
【0009】
さらに、組織内のガスの分圧を測定するには、センサと組織の境界が、過度の圧力を加えることなく周囲空気から隔離されている必要がある。これはいくつかの方法で試みられているが、いずれにも限界がある。第1に、外部表皮での測定には、ガス環境を隔離及び獲得するために粘着パッチ及びゲルが使用されている。この方法は、本質的に湿っている口腔粘膜組織で使用するのに実用的ではない。
【0010】
第2に、ハンドヘルドの器具が舌下に使用されており、舌が周囲への暴露を遮断するのに役立つ。この方法は、ユーザに依存する性質があるためエラーが発生しやすく、広く適用するのに実用的ではない。さらに、圧力に応じて変形する材料で器具を構成する方法がAndersonによって提案されている(米国特許第8,996,090号)。Andersonの方法は、材料の選択だけでなくアプリケータの設計にも依存する。過度の圧力を生じないがセンサを接触状態に保つのに十分な圧力は生じる適正な量の柔軟性を実現することは、成人患者で見受けられる頬組織の厚さの範囲では問題がある。正常な頬組織の厚さは約7mm~20mmの範囲であり得る。毛細血管の血流を妨げずに接触を維持するには、25mmHg以下の圧力が必要である。25mmHgを超える圧力は血流の閉塞を引き起こすことがあり、これは測定誤差及び組織の損傷を引き起こすことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、唾液に含まれる低分子量の酸の透過を防ぎながら、二酸化炭素を迅速に透過させる、新しい設計が必要とされている。また、センサを粘膜組織などの組織に対して保持及び配置するように設計された組織への配置器具も必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の問題は、本開示に係る二酸化炭素センサ及び組織への配置器具によって対処される。
【0013】
1つ又は複数のシナリオでは、組織内の二酸化炭素分圧を測定するためのセンサシステムが開示される。一態様では、センサシステムは、センサと、センサ配置器具を含み得る。センサは、その下側に開口部を画定する、断面が概してC字形のセンサカバーと、開口部内に収容され、非晶質フッ素樹脂を含み、第1の端と第2の端を有し、内部にチャンバを画定する膜体と、膜体をセンサカバーに結合するためのセンサ体と、膜体内に配置された2つ以上の電極と、膜体のチャンバ内に収容され、2つ以上の電極を取り囲む、実質的に電解質を含有しない液体とを含み得る。随意的に、センサは、交流電位に応答して、実質的に電解質を含有しない液体のインピーダンスを測定し得る。種々の実施形態において、断面が概してC字形のセンサカバーのリップは、膜体を呼気終末二酸化炭素から遮蔽するように構成され得る。センサ配置器具は、膜体の少なくとも40~50%が頬組織と接触するように膜体を被検者の頬組織に対して配置するように構成され得る。
【0014】
随意的に、センサ配置器具は、第1の平面上に配置される第1の端でセンサと結合するように構成されたセンサアームと、第2の平面上にある偏向面を含む第2のアームとを含み得る。第1の平面は、第1の平面から少なくとも5mmオフセットされている。センサ配置器具はまた、センサアームの第2の端を第2のアームに結合するためのビームを含み得る。第1の平面と第2の平面との間のオフセットは、膜体を頬組織に対して配置するべく被検者の頬組織を受け入れるように構成され得る。特定の実施形態では、膜体は、円筒形又は球形のいずれかであり得る。代替的に及び/又はさらに、偏向面は、センサアームの第1の端に結合されたセンサから等距離にある2つのアームによって形成されるU字形部分を含み得る。このような実施形態では、センサ配置器具は、U字形部分の2つのアームを介して頬組織を膜体上に折り曲げることによって、空隙なく、且つ25mmHgを超える圧力を加えることなく、センサを頬組織に対して配置し得る。随意的に、センサ配置器具のビームは、第2の平面と第1の平面との間のオフセットを変化させるように構成されたラチェット要素を含み得る。
【0015】
いくつかの他のシナリオでは、二酸化炭素の分圧(pCO2)を測定するためのセンサを被検者の頬組織に対して配置するためのセンサ配置器具が開示される。センサ配置器具は、第1の平面上にある第1の端でセンサと結合するように構成されたセンサアームと、U字形の偏向面を含む第2の平面上にある第2のアームと、第1のセンサアームの第2の端を第2のアームに結合するためのビームを含み得る。第1の平面は、第2の平面からオフセットされており、このオフセットは、U字形の偏向面を介して頬組織を膜体上に折り曲げることによってセンサの膜体を頬組織に対して配置するべく被検者の頬組織を受け入れるように構成され得る。随意的に、オフセットは少なくとも約5mmであり得る。さらに及び/又は代替的に、ビームは、第2の平面と第1の平面との間のオフセットを変化させるように構成されたラチェット要素を含み得る。
【0016】
種々の実施形態において、センサ配置器具は、空隙なく、且つ25mmHgを超える圧力を加えることなく、センサを頬組織に対して配置するように構成され得る。随意的に、U字形の偏向面は、センサアームの第1の端に結合されたときにセンサから等距離に位置する2つのアームを含み得る。
【0017】
或る他のシナリオでは、組織内の二酸化炭素の分圧(pCO2)を求めるための方法が開示される。この方法は、C字形のセンサカバーによって形成される開口部内に収容された膜体を含み得るセンサを提供することと、センサ配置器具を使用して、空隙なく、且つ25mmHgを超える圧力を加えることなく、センサを被検者の頬組織の近傍に配置することと、頬組織内のpCO2を測定することを含み得る。膜体は、第1の非晶質フッ素樹脂を含み、第1の端と第2の閉鎖端とを含む密閉チャンバを形成し得る。
【0018】
特定の実施形態では、この方法はまた、センサをセンサ配置器具のセンサアームの第1の端に結合することを含み得る。第1の端は、U字形の偏向部分を含むセンサ配置器具の第2のアームを含む第2の平面からオフセットされた第1の平面上にあり得る。随意的に、この方法は、第1の平面と第2の平面との間のオフセットを約5mmになるように制御することを含み得る。さらに及び/又は代替的に、この方法は、U字形の偏向部分の2つのアームが25mmHgを超える圧力を加えることなく頬組織を膜上に折り曲げるように第1の平面と第2の平面との間のオフセットを制御することを含み得る。オフセットを制御することは、センサ配置器具に含まれるラチェット要素を使用して第2のアームを第1の端に対して移動させることを含み得る。
【0019】
この方法は、随意的に、断面が概してC字形のセンサカバーにリップを設け、第2の閉鎖端をリップに隣接して配置することによって、膜体を呼気終末二酸化炭素から遮蔽することを含み得る。
【0020】
本開示のこれらの及び他の態様は、詳細な説明及び付属の特許請求の範囲で開示される。
【0021】
本開示をよりよく理解するために、また、本開示がどのように実施され得るかを示すために、ここで例として添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本開示に係る二酸化炭素センサの側面図である。
【
図2】本開示に係る二酸化炭素センサの斜視図である。
【
図3】本開示に係る二酸化炭素センサの底面図である。
【
図4】
図3の線A-Aに沿った、本開示に係る二酸化炭素センサの断面図である。
【
図5】二酸化炭素センサを口腔内面に対して配置するためのセンサ配置器具の側面図である。
【
図6】二酸化炭素センサを口腔内面に対して配置するためのセンサ配置器具の斜視図である。
【
図7】患者に使用されているセンサ配置器具の斜視図である。
【
図8】酢酸への種々の膜材料の暴露の比較を示すグラフである。
【
図9】組織でのシリコーン膜と非晶質フッ素樹脂膜との比較を示すグラフである。
【
図10】本開示に係るセンサ配置器具の側面図である。
【
図11】本開示に係るセンサ配置器具の底面図である。
【
図12】本開示に係るセンサ配置器具の斜視図である。
【
図13】離間5mmに設定された、本開示に係るセンサ配置器具の代替的なラチェット式バージョンの側面図である。
【
図14】離間5mmに設定された、本開示に係るセンサ配置器具の代替的なラチェット式バージョンの部分図である。
【
図15】離間10mmに設定された、本開示に係るセンサ配置器具の代替的なラチェット式バージョンの側面図である。
【
図16】離間10mmに設定された、本開示に係るセンサ配置器具の代替的なラチェット式バージョンの部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面において、同様の参照番号は、いくつかの図面を通して同一の又は対応する部分を示す。
【0024】
本明細書で用いられる場合の「a」、「an」などの語は、特に明記しない限り、一般に「1つ又は複数の」の意味をもつ。本明細書で用いられる場合の「複数の」という用語は、2つ又は2つ以上として定義される。本明細書で用いられる場合の「別の」という用語は、少なくとも第2の又はそれ以上のとして定義される。本明細書で用いられる場合の「備える」及び/又は「有する」という用語は、含む(すなわち、オープンランゲージ)として定義される。
【0025】
この文書の全体を通して、「一実施形態」、「特定の実施形態」、「実施形態」、「実装」、「例」、又は同様の用語の言及は、例に関連して説明した特定の特徴、構造、又は特性が本開示の少なくとも1つの例に含まれることを意味する。したがって、本明細書の全体を通して様々な場所でのそのような文言の出現は、必ずしもすべて同じ例を言及しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、又は特性は、限定することなく1つ又は複数の例において任意の適切な様態で組み合わされる場合がある。
【0026】
本明細書で用いられる場合の「又は」という用語は、包括的論理和、又はいずれか1つ又はいずれかの組み合わせを意味すると解釈されるべきである。したがって、「A、B、又はC」は、「A;B;C;A及びB;A及びC;B及びC;A、B、及びC、のいずれか」を意味する。この定義の例外は、要素、機能、ステップ、又は動作の組み合わせが何らかの様態で本質的に相互排他的であるときにのみ生じる。
【0027】
さらに、個々の図面において、示されているいくつかのコンポーネント/特徴は、特定の実装を例示するために一定の縮尺で描かれているが、他のコンポーネント及び特徴は一定の縮尺で描かれていない。
【0028】
ここで
図1を参照すると、本開示に係る二酸化炭素センサの側面図が示されている。センサ10は、センサカバー12、センサ体14、電極対16、膜体18、センサ液20、及び巻きフィラメント22を概して含む。
【0029】
センサカバーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、及びポリカーボネートなどの熱可塑性プラスチックで構成され得る。センサカバー12は、センサ体14と膜体18を概して覆って収容する。センサカバー12は、センサ体14と膜体18を収容するために、その下側に開口部26を形成する形状に設定される。1つのそのような形状は、断面が概してC字形である。センサカバー12は、使用時に膜体18を呼気終末二酸化炭素から遮蔽する下方に突き出るリップ24を含む。有利なことに、センサカバー12は、膜体18の40%~50%以上が組織と接触することを可能にする。センサカバー12は、組織と接触しない膜体18の部分を覆うように設計される。センサ配置器具58は、組織をセンサの一方の側部の周りに折り曲げるように設計されるため、円筒形の膜体18が用いられる。組織と接触しない膜体18の部分を覆うために、センサカバー12の内面は、隙間(センサの応答を遅くすることがあるシンクとして作用するデッドスペース)を最小にするべくC字形の断面を有し得る。さらに、センサカバー12の側部は、組織との接触をより良好にするためにテーパし得る。
【0030】
センサ体14はまた、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、及びポリカーボネートなどの熱可塑性プラスチックで構成され得る。センサ体14は、センサカバー12と同じ熱可塑性プラスチックで構成されていてもよく、又は異なる熱可塑性プラスチックを含んでいてもよい。好ましくは、製造コスト効率のために、センサ体14は、センサカバー12と同じ熱可塑性プラスチックで構成される。センサ体14は、電極16を膜体18内の定位置にしっかりと保持及び位置合わせするように構成される。センサ体14は、膜体18のための、及びセンサ体と膜体18との間に確実な取り付けを提供するべく巻きフィラメント22を固定するための取付点を提供する。スナップオン、粘着、接着、及び圧着などの他の取り付けが用いられてもよいことを当業者は理解するであろう。
【0031】
電極対16は、ステンレス鋼で構成され、電源から交流電位を受けるように構成される。ステンレス鋼以外の金属が用いられてもよいことを当業者は理解するであろう。電極16は、センサ体14によって定位置にしっかりと配置される。電極16は、膜体18内に収容され、センサ液20の中に配置される。2つ以上の電極が用いられてもよく、それでも本開示の範囲内であることを当業者は理解するであろう。例えば、2、3、又は4つの電極でコンダクタンスを測定することができる。
【0032】
膜体18は、センサカバー12の開口部26内に配置される。膜体18は、内部にチャンバを画定する中空のチューブを含む。膜体18は、口腔粘膜での二酸化炭素レベルの正確な読み取りを損なうことがある、サルビア(salvia)で見つかる酢酸を含む低分子量カルボン酸に対して実質的に不透過性である。膜体18は、非晶質フッ素樹脂などのフルオロポリマー樹脂で構成され得る。適切な非晶質フッ素樹脂としては、Teflon AF2400(The Chemours Companyから入手可能)が挙げられる。Teflon AF2400は、二酸化炭素に対して優れた透過性を有することが知られている。しかしながら、Teflon AF2400などの非晶質フッ素樹脂が、ポリマー鎖に大きな自由体積をもち、二酸化炭素の迅速な輸送を可能にするが、酢酸などのカルボン酸の輸送は可能にしない構造を有することはこれまで発見されていなかった。二酸化炭素の透過性が120Barrer単位であるポリテトラフルオロエチレンと比べて、Teflon AF2400は、二酸化炭素の透過性が2800Barrer単位である。代替的に、非晶質フッ素樹脂の代わりに、ポリメチルペンテン(Mitsui Chemicals Americaから入手可能)を用いてもよい。膜体18は、センサ体14に取り付ける前にセンサ液20を充填できるように第1の端28で開口しており、その後、これはシールされる。第2の端30は、AF2400よりも二酸化炭素透過率がはるかに低いTeflon AF1600でシールされる。Teflon AF1600は、膜体18に容易に融合し、漏れのない環境を提供する。チューブの第2の端はリップ24に対して位置するため、組織と接触せず、二酸化炭素透過性である必要はない。センサ液20は、医薬品グレードの精製水(USPグレードの水)などの、実質的に電解質を含有しない液体であり得る。本開示のいくつかの態様では、蒸留水も用いられ得る。
【0033】
巻きフィラメント22は、膜体18をセンサ体12に固定するために使用される。巻きフィラメント22を結合及び補強するために接着剤が用いられてもよい。
【0034】
ここで
図5~
図7を参照すると、センサ10を口腔内面に対して固定的に配置するためのセンサ配置器具50が例示されている。センサ配置器具は、近位端52、細長い中間部54、及び遠位端56を概して含む。近位端52は、pCO
2測定値を読み取り、表示するための電子装置に作動可能に結合するように適合される。遠位端56は、器具50を頬の外面に対して配置し、センサを頬の内側に対して配置するためのU字形リッジ56を含む。センサ10は、アーム58によって配置器具50に取り付けられる。
【0035】
口腔内の組織のpCO2を測定するために用いられる動作において、センサ10は、ヒトの頬にフィットするように構成されたセンサ配置器具50に搭載される。図のように、センサ10を備えたセンサ配置器具50は使い捨て器具である。細長い中間部を使用して、ユーザは、センサ10を被検者の口に挿入し、被検者の頬がセンサ10を含むアーム58と遠位端56のU字形リッジとの間に位置するように、遠位端56にあるU字形リッジを頬の外面に配置することができる。これにより、過度の圧力を加えることなく最適な接触をもたらすべく、U字形リッジの2つのアームが頬組織(すなわち、頬の内側)をセンサ10の膜(例えば、円筒形、ドーム形など)に対して折り曲げるように、センサ10が頬の口腔内面に接する状態でU字形リッジの2つのアーム間に保持される。器具50は、空隙なく、且つ、好ましくは20mmHg未満、15mmHg未満などである、25mmHgを超える圧力を加えることなく、センサ10を頬組織と直接接触する状態に保つように設計される(すなわち、センサ面とU字形リッジとの間の間隔がそのように設定される)。過剰な圧力は、血流を妨げ、pCO2レベルを変化させることがある。U字形リッジは、V字形、C字形、四角ループ形、三角ループ形、楕円ループ形などの任意の適切な形状であり得ることを当業者は理解するであろう。
【0036】
pCO2を測定するためのセンサ10の応答時間は、センサの表面積(分析物の通過を可能にする)と体積との比によって影響される可能性がある。センサが粘膜表面の近隣に配置される(圧力がかからない)場合、センサの円筒形膜が組織と直接(接線方向に)接触する割合がほんの少しであるため、応答時間の増加につながる。適切な圧力を加えて円筒面を組織に押し当てる場合、膜表面がその圧力から離れる方に偏向するため、膜表面の約40~50%が組織と接触し得る。しかしながら、毛細血管の血流を妨げて測定値に誤差を生じさせないように、加える圧力を注意深く調節しなければならない。本開示のセンサ配置器具50は、過度の圧力を加えることなく、この組織とのより大きな接触を達成するべく、頬組織をセンサ10の円筒形の膜表面の周りに折り曲げるように構成される。随意的に、センサカバーはまた、より高い割合の組織との接触を可能にするべく、膜表面から離れる方にテーパしてもよい。
【0037】
センサケーブル(図示せず)が、センサを備えたセンサ配置器具を電子機器(図示せず)に取り付け、電子機器は、センサ10に交流電位を提供し、膜体18内に収容されているセンサ液20のインピーダンスを測定する。機器はセンサの応答曲線に合わせて校正され、アルゴリズムが温度により調整されたコンダクタンス信号からpCO2値を計算する。センサの応答曲線は、既知のpCO2レベルの2つの参照溶液、すなわち、低pCO2参照溶液と「標準」pCO2参照溶液でセンサ信号を測定することによって決定される。「標準」溶液は、健康な灌流が良好な組織のpCO2に近似する。このデータから、応答曲線の傾きが決定される。次いで、「標準」参照溶液からの信号差からpCO2の値が計算される。次いで、計算されたpCO2値が、一体化されたディスプレイにグラフと数値で表示される。電子デバイスは独立型の患者モニタリングデバイスとして構成されるが、マルチモーダル患者モニタリングシステムに一体化できることを当業者は理解するであろう。
【0038】
ここで
図8及び
図9を参照しながら、比較データについて説明する。
図8は、いくつかの膜材料のインビトロ研究の結果をグラフで例示している。これらの膜を8mMの酢酸溶液に曝し、口腔内への適用の適性を判断するためにコンダクタンスの変化を観察した。膜の厚さは、妥当な二酸化炭素透過率を達成する能力に基づいて選択した。結果は、Teflon AF2400の優位性を実証している。
図8は、同等の応答時間を提供するのに必要な厚さで評価した潜在的な膜材料の比較を示しており、Aは0.005インチのPDMSシリコーン、Bは0.001インチのTeflon AF2400、Cは0.0004インチのPTFE、Dは0.0005インチのFEP、及びEは0.015インチのFVMQシリコーンである。
【0039】
テストする材料でコンダクタンスプローブを覆い、次いで、8mMの酢酸(唾液の生理的範囲内)に曝した。テストした材料の中で、典型的な膜材料(AのPDMSシリコーン)が酢酸に対して最も透過性がある。60分で、酢酸がPDMSシリコーン膜を通過したことに起因してコンダクタンスが1uS/cm増加した。膜E(0.015インチのFVMQシリコーン)では、その間に0.12uS/cmの増加が認められ、一方、膜C(0.0004インチのPTFE)と膜D(0.0005インチのFEP)は、酢酸の透過に対してより良好な抵抗を示し、60分でおよそ0.05uS/cmであった。しかしながら、膜B(0.001インチのTeflon AF2400)では、同じ時間でコンダクタンスの検出可能な増加は認められなかった。
【0040】
図9は、Teflon AF2400膜で構成されたセンサと比較した、シリコーン膜で構成されたセンサのインビボ研究のオーバーレイをグラフで例示している。参照溶液を口腔粘膜組織への暴露前及び暴露後に測定した。結果は、シリコーン膜の使用によって発生し得る汚染を実証しているとともに、Teflon AF2400の適性を実証している。
図9は、PDMSシリコーン膜(A)とTeflon AF2400膜(B)で収集した組織データの比較を示している。参照値を10% CO
2(pCO
2=約70mmHg)水を用いてトノメータで測定した。次いで、センサを被検者の頬組織に配置し、約60分間データを収集した。グラフは、Teflon AF2400膜センサは約53mmHg pCO
2で安定し、一方、PDMSシリコーン膜センサは60mmHg pCO
2を超えて上昇し続け、安定することがなかったことを示している。センサをトノメータに戻した。Teflon AF2400膜センサは組織を暴露する前の値に戻り、一方、シリコーン膜センサは、酢酸汚染による信号の増加と相関する、およそ10mmHg pCO
2の誤差を示した。
【0041】
ここで
図10を参照すると、本開示に係るセンサ配置器具50の側面図が示されている。器具50はセンサ10を組織に対して配置する。センサ配置器具50は、湾曲したセンサアーム58、角度のついたビーム113、接続するポスト114、及び偏向面115を概して含む。センサ配置器具50は、センサ10を配置する組織を圧迫しないように十分なスペースを提供する。むしろ、センサ配置器具50(例えば、U字形部分の2つのアーム)は、以下に開示するように頬組織との40~50%以上の接触を達成するべく、頬組織の柔軟性を利用して組織をセンサ10の円筒形膜の周りに折り曲げる。器具50は、1つの平面上にあるセンサアーム58と、センサアーム58から等距離にあって、別個の平面上にU字形の偏向面115を一緒に形成する2つのアームとを含み、センサ10は、
図11で最も良く見られるようにU字形の偏向面115の2つのアーム間に位置する。このようにして、器具50の材料の変形性は必要とされない。
【0042】
センサ10は、分析物又は微小循環血流を示す特徴を測定する。センサ10の膜は、好ましくは、円筒形又はドーム形である、又はそれで組織を折り曲げるのに適合した適切な形状特徴を有する。センサ10でガスを測定する場合、周囲ガス及び呼気終末ガスへの暴露からセンサを保護するために、センサ10はセンサカバー12を必要とする。センサアーム58は、エンジニアリング熱可塑性ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、及びポリカーボネートなどの熱可塑性プラスチックで構成され得る。センサアーム58は、ビーム113に取り付けられ、ビーム113は、ポスト114の頂部に取り付けられる。このようにして、センサアーム58は、センサ10をセンサ平面117上に保持するように構成される。ビーム113とポスト114はまた、エンジニアリング熱可塑性ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、及びポリカーボネートなどの熱可塑性プラスチックで構成され得る。
【0043】
エンジニアリング熱可塑性ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、及びポリカーボネートなどの熱可塑性プラスチックで同様に構成される偏向面115が、ポスト114の底部に取り付けられる。このようにして、偏向面115の底部が偏向平面118を画定する。下端での正常な頬組織の厚さ(およそ7mm)との接触を確実にするために、センサアーム平面117と偏向平面118は、加わる圧力が血流の閉塞及び測定されたpCO
2に誤差を生じる可能性がある約25mmHgを超えないように、約5mm未満、約4~6mm、約5mm、約3~5mmなどだけ離間され得る。センサ10の上の見通し線は、器具50の表面間に組織が挟まれることを防ぐために、少なくとも20mm、少なくとも約10mm、少なくとも約15mm、約15~25mmなどにわたって障害物がないことが理想的である。随意的に、より厚い頬組織に適応させるために、偏向面115の内周は、センサ10の外周(
図11に示す)から約15mm~約20mm、約16mm~約19mm、約17mm~約18mm、約15mm~約20mmなどだけオフセットされ得る。
【0044】
図13は、
図10で開示したのと同様のセンサ配置器具119を例示しているが、センサ平面117と偏向平面118との間の離間を変更及び制御するように構成されたラチェット要素120を含む。センサ平面117と偏向平面118との間の約5mmの離間に対応するラチェット要素120が、
図14の部分図に示されている。ラチェット要素120は、ポスト122上に見られる鋸歯121と、ビームヘッド124上の相補的なラチェット歯123を含み得る。ビームヘッド124はさらにビーム125に取り付けられ、位置合わせ機能部を有し、これはポスト122と嵌合する。ビームヘッドは、鋸歯121と相補的なラチェット歯123との係合を介してポスト122を上下に移動することができる。
図15及び
図16は、ラチェット特徴120を介したセンサ平面117と偏向平面118との間の離間の増加を例示している。このようにして、器具119は、広範囲の頬組織の厚さに適応可能であり得る。センサ平面117と偏向平面118との間隔を調整するための他の機構も本開示の範囲内である。
【0045】
本発明を、特定の態様及び実施形態を参照して説明してきたが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく形態及び細部に変更を加えることができることを当業者は理解するであろう。
【国際調査報告】