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▶ エレメント シックス (ユーケイ) リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】回転研磨加工
(51)【国際特許分類】
   B24D 5/06 20060101AFI20240403BHJP
   B24D 5/00 20060101ALI20240403BHJP
   B24D 3/00 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
B24D5/06
B24D5/00 P
B24D3/00 320B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562551
(86)(22)【出願日】2022-06-15
(85)【翻訳文提出日】2023-10-11
(86)【国際出願番号】 EP2022066378
(87)【国際公開番号】W WO2022268614
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】2109030.3
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517007574
【氏名又は名称】エレメント シックス (ユーケイ) リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】ラプトン グレゴリー トレヴァー
(72)【発明者】
【氏名】ペンナ フランカ ルイス フェルナンド
(72)【発明者】
【氏名】レイ マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ギルロイ ブライアン
【テーマコード(参考)】
3C063
【Fターム(参考)】
3C063AA02
3C063AB03
3C063BA10
3C063BA25
3C063BB02
(57)【要約】
本開示は、外周に軸方向に延びる複数の半径方向スロットを有するハブと、半径方向スロット内に配置された複数の研磨セグメント(典型的には多結晶ダイヤモンド)とを備える回転研磨加工工具に関する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転研磨加工工具であって、
外周に軸方向に延びる複数の半径方向スロットを有するハブと、
前記半径方向スロット内に配置された複数の研磨セグメントと、
を備え、
前記研磨セグメントの各々は、前記研磨セグメントを前記ハブ内に取り付けるための本体を有し、研磨エッジをさらに備え、
前記研磨セグメントの各々は、前記研磨セグメントを少なくとも部分的に貫通して延びる及び/又は前記研磨セグメントに隣接する前記ハブを少なくとも部分的に貫通して延びるピン要素を用いて前記ハブに個別に固定されていることを特徴とする回転研磨加工工具。
【請求項2】
前記研磨セグメントは、第1の部分開口部を備え、前記ハブは、第2の部分開口部を備え、前記研磨セグメントは、前記スロット内にあり且つ前記第1及び第2の部分開口部が整列している場合に、前記第1及び第2の部分開口部は、一緒になって完全な開口部を形成する、請求項1に記載の回転研磨加工工具。
【請求項3】
前記研磨セグメントはL字形であり、第2の脚部から延びる第1の脚部を備える、請求項1又は2に記載の回転研磨加工工具。
【請求項4】
前記第2の脚部は、前記第1の脚部に対して角度Xで延び、角度Xは、前記第1及び第2の脚部の外面の間で測定され、角度Xは、75度から100度の範囲である、請求項3に記載の回転研磨加工工具。
【請求項5】
前記研磨セグメントは、前記第1及び第2の脚部の外面の中間の入れ子面をさらに備える、請求項3又は4に記載の回転研磨加工工具。
【請求項6】
前記入れ子面は、前記第2の脚部の外面に対して30度から50度の範囲の角度で延びている、請求項5に記載の回転研磨加工工具。
【請求項7】
前記ハブは、第1の側から第2の側に向かってテーパ付けされている、請求項1から6のいずれかに記載の回転研磨加工工具。
【請求項8】
前記ハブは、L字形の支持部を備える、請求項1から7のいずれかに記載の回転研磨加工工具。
【請求項9】
前記ハブは、フランジ上の対応するパターン化軸面と嵌合構成で結合するためのパターン化軸面を備える、請求項1から8のいずれかに記載の回転研磨加工工具。
【請求項10】
フランジをさらに備える、請求項1から9のいずれかに記載の回転研磨加工工具。
【請求項11】
前記フランジは、前記ハブ上の対応するパターン化軸面と嵌合構成で結合するためのパターン化軸面を備える、請求項1から10のいずれかに記載の回転研磨加工工具。
【請求項12】
前記ハブは、前記ハブの外周面で終端する複数の半径方向に延びるスリットを備える、請求項1に記載の回転研磨加工工具。
【請求項13】
前記スリットは、前記半径方向スロットと並行に延びている、請求項12に記載の回転研磨加工工具。
【請求項14】
前記スリットは、グラブねじを受け入れるための1又は2以上の半径方向に延びる閉じた穴をさらに備える、請求項13に記載の回転研磨加工工具。
【請求項15】
前記ハブと前記研磨セグメントとの中間にある研磨セグメントホルダーをさらに備える、請求項12、13又は14に記載の回転研磨加工工具。
【請求項16】
前記研磨セグメントは、多結晶ダイヤモンド(PCD)を含む、請求項1から15のいずれかに記載の回転研磨加工工具。
【請求項17】
前記PCDと界接面で隣接する炭化物基材をさらに含む、請求項16に記載の回転研磨加工工具。
【請求項18】
前記界接面は、前記ハブの中心線に対して中心からずれた位置にある、請求項17に記載の回転研磨加工工具。
【請求項19】
前記PCDは、1から2mmの範囲の厚さを有する層として提供される、請求項16から18のいずれかに記載の回転研磨加工工具。
【請求項20】
前記研磨セグメントの総厚さは5mm未満、好ましくは4mm未満である、請求項16から19のいずれかに記載の回転研磨加工工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転研磨加工用の装置に関する。詳細には、回転ドレッシング工具に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州公開第3 415 275号には、外周に複数の軸方向に配向された半径方向スロットを有するハブ103を備える回転研磨加工工具101が開示されている。複数の研磨セグメント201、202は、半径方向スロット701、702に配置され、共に研磨面102を形成する。各研磨セグメントは、複数の研磨セグメント405を画定する研磨エッジ402、403を備え、ハブのスロットの1つに配置するためのタブ401をさらに備える。実施形態の1つでは、タブは、その上部よりもその基部の方が幅広である。一対のフランジ104、105は、ハブ103にねじ留めされ、それにより、リム504、505がタブ401の幅広の基部と協働して研磨セグメントを所定の位置に固定する(図5及び6参照)。別の実施形態では、研磨セグメントを所定の位置に固定するためにリング1103が使用される(図11及び12参照)。
【0003】
これらの構成の問題点は、損傷又は摩耗した研磨セグメントを個別に交換することが困難であることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州公開第3 415 275号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、上述の問題を解決する、研磨セグメントをハブに取り付ける代替的方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、回転研磨加工工具が提供され、回転研磨加工工具は、外周に軸方向に延びる複数の半径方向スロットを有するハブと、半径方向スロット内に配置された複数の研磨セグメントとを備え、各研磨セグメントは、研磨セグメントをハブに取り付けるためのタブを有し、研磨エッジをさらに備え、各研磨セグメントは、研磨セグメントを少なくとも部分的に貫通して延びる及び/又は研磨セグメントに隣接するハブを少なくとも部分的に貫通して延びるピン要素を用いてハブに個別に固定される。
【0007】
この構成は、残りの研磨セグメントをその位置から妨害することなく個別のセグメントを交換することを可能にするので有利である。さらに、個別の研磨セグメント(又はそれ以上)が欠落した状態での回転研磨加工工具のさらなる使用が可能になる。さらに、個別の研磨セグメントを交換した後の研磨セグメントの再調整は、個別の研磨セグメントのみを残りの研磨セグメントに対して輪郭形成する必要があるので、より簡単である。これは、全ての研磨セグメントを輪郭形成する必要がある先行技術の解決策とは対照的である。とりわけ、この構成の最も大きな利点は、研磨セグメントを非常に少ない材料量で製造できることである。これは、原材料と製造プロセスの両方において、大幅なコスト削減につながる。
【0008】
本発明の随意的な及び/又は好ましい特徴は、従属請求項に記載されている。
次に、本発明は、単に例示的に添付図面を参照してより具体的に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】回転研磨加工工具の第1の実施形態の斜視図である。
図2図1の工具の端面図である。
図3図1の工具の正面図である。
図4図3の線A-Aを通る断面図である。
図5図4の丸で囲んだ領域Dの拡大図であり、拡大領域は1.5:1の縮尺で描かれている。
図6図4の丸で囲んだ領域Bの拡大図であり、拡大領域は1.5:1の縮尺で描かれている。
図7図1の工具の部分斜視図である。
図8図1の工具を通る断面図である。
図9図1の工具のハブに取り付けられた研磨セグメントの詳細な部分斜視図である。
図10図1のハブの正面からの斜視図である。
図11図1のハブの背面からの斜視図である。
図12図1の個別の研磨セグメントの斜視図である。
図13図14の研磨セグメントの側面図である。
図14】研磨セグメントがブランクから機械加工される前にブランク上に重ね合わされた入れ子になった研磨セグメントの構成を示す概略的な画像である。
図15】個別の研磨セグメントの厚さ(mm)と、必要な研磨セグメント(グラフでは「ブレード」と呼ぶ)の数量との関係を示すグラフである。
図16図12の研磨セグメントの端面図である。
図17】研磨セグメントの部分的な開口部とハブの部分的な開口部とが完全に位置合わせされ、ピン要素を受け入れる準備が整った状態の詳細な概略的な画像である。
図18】スプリングピンを組み込んだ場合の図1の工具を通る断面図である。
図19】スプリングピンの隙間と研磨セグメント及びハブの表面との整列を示す詳細な概略的な画像である。
図20】回転研磨加工工具の第2の実施形態の斜視図である。
図21図20の工具の平面図である。
図22図20の工具の正面図である。
図23図22の線C-Cを通る断面図である。
図24図23の丸で囲まれた領域Dの拡大図であり、拡大領域は2:1の縮尺で描かれている。
図25図20の工具に使用されるフランジの斜視図である。
図26図20の工具に使用されるハブの斜視図である。
図27図20、30及び37の工具に使用するための中間工具ホルダーの第1の実施形態である。
図28図20、30及び37の工具で使用するための中間工具ホルダーの第2の実施形態である。
図29図20、30及び37の工具で使用するための中間工具ホルダーの第3の実施形態である。
図30】回転研磨加工工具の第3の実施形態の斜視図である。
図31図30の工具の平面図である。
図32図30の工具の正面図である・
図33図32の線A-Aを通る断面図である。
図34図33の丸で囲んだ領域Bの拡大図であり、拡大領域は2:1の縮尺で描かれている。
図35図30の工具に使用されるフランジの斜視図である。
図36図30の工具に使用されるハブの斜視図である。
図37】回転研磨加工工具の第4の実施形態の部分斜視図である。
図38図37の中間工具ホルダーに取り付けられた研磨セグメントの正面図である。
図39】従来技術と比較した研磨セグメントの実施形態における材料の使用量の削減を示す概略的な画像である。
図40】研磨セグメントの一実施形態を通る側断面図であり、炭化物基材上に取り付けられた多結晶ダイヤモンド(PCD)の層を示す。
図41a】ハブの中心線の位置に対するPCDと炭化物基材との界接面の位置を示す概略図である。
図41b】ハブの中心線の位置に対するPCDと炭化物基材との界接面の位置を示す概略図である。
図41c】ハブの中心線の位置に対するPCDと炭化物基材との界接面の位置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1から9を参照すると、回転研磨加工工具の第1の実施形態は、全体として100で示されている。回転研磨加工工具100は、その外周に軸方向に延びる複数の半径方向スロット104を有するハブ102と、半径方向スロット内に配置された複数の研磨セグメント106とを備える。各研磨セグメントは、研磨セグメントをハブに取り付けるための本体108を有し、さらに研磨エッジ110を備える。各研磨セグメントは、研磨セグメントを少なくとも部分的に貫通して及び/又は研磨セグメントに隣接するハブを少なくとも部分的に貫通して延びるピン要素112を使用して、ハブに個別に固定される。
【0011】
この第1の実施形態では、以下に詳細に説明するように、ピン要素は、軸方向に延び、一部は研磨セグメントを貫通し、一部は研磨セグメントに隣接するハブを貫通する。
【0012】
ハブは、環状であり、回転ドレッシング機(図示せず)の回転軸に取り付けるための中央開口部114を有する。ハブの全体的な形状はパイプフランジに似ており、図8に最もよく示されているように、ハブの片側にはリング部116及び隆起面118がある。ハブは、対向する第1及び第2の主軸面120、122を備える(図10及び11参照)。第1及び第2の主軸面を連結する外周面124は、一般に、一方側から他方側に向かって半径方向内向きにテーパ付けされている。
【0013】
スロットは、第1及び第2の主軸面の間で軸方向に延びている。また、スロットは、半径方向にハブの中に延びており、それによってスロット間に一連の支持部126を画定する。各スロットに関して、隣接する支持部がある。各支持部は、半径方向に延びる第1の支持脚部128と軸方向に延びる第2の支持脚部130とを備えた略L字形である。第1の支持脚部は第2の支持脚部より短い。第1の支持脚部は第1の主軸面に隣接して配置され、第2の支持脚部は第2の主軸面で終端する。
【0014】
ピン要素を部分的に受け入れるための第1のピン凹部132は、各支持部の長手方向の範囲に沿って延びている。第1のピン凹部は半円形の横方向断面を有し、半円形の横方向断面を有する別のピン凹部と整列したときに完全な、すなわち完全な円形になることが意図されている。これについては以下でさらに詳しく説明する。
【0015】
第1の実施形態では、各研磨セグメントも略L字形であり、図12に最もよく示されている。このため、研磨セグメントは、第2のセグメント脚部136から延びる第1のセグメント脚部134を備える。第1のセグメント脚部は第2のセグメント脚部よりも短い。第1のセグメント脚部は、第2のセグメント脚部に対して角度Xで延びており、角度Xは75度から100度の範囲である。図13に示されるように、角度Xは、第1のセグメント脚部及び第2のセグメント脚部の各外面の間で測定される。好ましくは、角度Xは約80度である。
【0016】
L字形の構成により、得られる回転研磨加工工具は、もみの木様の輪郭の機械加工に特に適している。L字形は、機械加工作業に必要な研磨セグメントの材料量を最小限にするのに役立つ。これは、PCD又は多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)のような高価な超硬材料が最大限の耐摩耗性及び長寿命を要求される場合に特に重要である。
【0017】
各研磨材セグメントは、2つの支持部の間のスロットに挿入される。最終位置に達すると、第1のセグメント脚部はハブの第1の支持脚部と整列し、第2のセグメント脚部は第2の支持脚部と整列する。支持部のL字形構成は、ハブの質量を最小限に抑え、必要な部分のみを支持するのに役立つ。
【0018】
図12及び13に示すように、研磨セグメントは、第1及び第2のセグメント脚部の外面の中間にある入れ子面138をさらに備える。入れ子面は、製造中にブランク140から抽出できる研磨セグメントの数量を最大にするために重要である(図14参照)。通常、ブランクは、炭化物層で裏打ちされたPCDなどの研磨材のディスクである。入れ子面を組み込むことにより、適切な入れ子構成を決定する場合に、入れ子面を持たない研磨セグメントを重ねる場合に比べて、ブランクに重ねることができる研磨セグメントの数量が増える。図13に示すように、入れ子面は、第2のセグメント脚部の外面から30から50度の範囲の角度Yで延びる。好ましくは、角度Yは約45度である。
【0019】
図1から9のハブでは、スロットの数量とそれに対応する研磨セグメントの数量は80である。この数量は、工具によって機械加工されるホイールの目標数量、回転速度、送り速度などの要因を考慮して決定されている。また、研磨セグメント間の最小間隔(例えば15mm)及び/又は支持部の半径方向の厚さ(例えば0.75mm)など、考慮すべき幾何学的制約もある。
【0020】
必要な研磨セグメントの数量は、各研磨セグメントの総厚さl及びハブの直径Dに関係する。実験から、研磨セグメントの数量、研磨セグメントの厚さ、及びハブの直径の関係は実験的に取得されており、以下の2つの式で定義できる。
Max=Int(πD/(l+0.75))
Min=Int(πD/(l+15))
実際には、ハブがテーパ付けされている場合(第1の実施形態のように)、使用される直径は、実際は、輪郭形成された研磨エッジの最小高さまで測定した直径である。テーパ付けされていないハブの場合、直径寸法を特定するのは非常に簡単である。
【0021】
例えば、図15のグラフにおいて、l=1mm、D=150mmの場合、ハブに必要な研磨セグメントの数量は、ラインLmaxで示される最大値とラインLminで示される最小値の間に位置する。この2つのラインLminとLmaxから外れた数量の研磨セグメントを使用することも可能であるが、ある時点で、耐用期間及び工具によって機械加工可能なホイールの数を有することになる。
【0022】
完璧を期すために、第1の実施形態における研磨セグメントの総厚さは約3mm、ハブの直径は約140mmである。これにより、使用可能な研磨セグメントの数量は24から117個の範囲となり、80個が選択された。好ましくは、研磨セグメントの厚さは1から4mmの範囲である。
【0023】
半円形の横方向断面を有する第2のピン凹部142は、研磨セグメントの長手方向の範囲に沿って延びており、図16に最もよく示されている。上述の最終位置では、研磨セグメントの第2のピン凹部は、隣接する支持部の第1のピン凹部と整列し、一緒に円形の横方向断面を有する穴144を形成する(図17参照)。ピン要素をこの穴に挿入すると、研磨要素がスロット内に固定される(図18参照)。研磨要素は、ピン要素を引き抜くだけでハブから取り外すことができる。
【0024】
ピン要素は、ばねピン146(スロット付きばね張力ピンとしても知られる)とすること又はグラブねじ148のようなねじ部材とすることができる。工具の第1の実施形態では、ピン要素はばねピンであり、例えば亜鉛メッキされたばね鋼から作られる。ばねピンは細長く、非圧縮状態では隙間152が開いた単一コイル150で構成される。ばねピンが整列した第1及び第2のピン凹部によって形成された穴の中に打ち込まれたときに生じるように、圧縮されると、ばねピンは直径を縮小し、その固有のばね付勢に起因して、非圧縮状態に戻ろうとする。この挙動により、ばねピンは研磨セグメントとハブとの間の締結具として機能する。圧縮状態では、ばねピンの隙間は、研磨セグメント及び支持部の各表面と整列する(図19参照)。
【0025】
後述する工具の第2及び第3の実施形態では、ピン要素は、グラブねじ又は他の同様のタイプのねじ部材である。
【0026】
再び図13を簡単に参照すると、研磨エッジは第2のセグメント脚部の一部を形成する。最終位置では、研磨エッジは、意図したとおりに機能するために、第2の支持脚部を越えて半径方向に突出する。研磨エッジは、例えばレーザー加工を用いて第2のセグメント脚部に成形される輪郭を有する。この輪郭付け加工は、英国特許第2574492号に記載されているように、研磨セグメントがそれぞれのスロット内に現場で配置された後に行われるのが好ましいので、輪郭付けの前後の研磨セグメントの典型的な外形をそれぞれP及びQで示す。外形Pは、本質的に作為的で疑似的(phantom)であり、特定の時点での外形を描いている。最終的に、外形Qは、例えばホイールに付与される所望の輪郭(1つの)である。実際には、最初の輪郭は、その後、再輪郭付け時により浅い深さで繰り返すことができるので、所望の輪郭は、ラインPとラインQとの間の何らかの深さで研磨エッジに仕上げることができる。従って、ラインPとラインQとの間の研磨材の深さは、研ぎ直し代と考えることもできる。
【0027】
バッキングプレートとしても知られるフランジ154は、第1の主軸面に対してハブに同軸に取り付けられている(図1及び4参照)。フランジは、複数のねじ156と、研磨セグメントから間隔を置いてハブに設けられたねじ穴158(図8)とを用いて所定の位置に固定される。フランジは、過酷な使用条件下での研磨セグメントの軸方向移動を防止するのに役立つ。随意的に、フランジは、パターン化表面(図示せず)を有する環状プレートである。フランジ上又はフランジ内のパターン化表面は、ハブ上の対応するパターンと嵌合構成で係合する。協働するパターンにより、ハブとフランジとの間の相対回転が最小限に抑えられる。典型的には、パターンは一連の凹部及び/又は突起である。一例を図11に示すが、このパターンは、内接する弓形凹部160のペアを含む。
【0028】
次に図20から26を参照すると、回転研磨加工工具の第2の実施形態は、全体として200で示されている。回転研磨加工工具は、その外周に軸方向に延びる複数の半径方向スロット204を有するハブ202と、半径方向スロット内に配置された複数の研磨セグメント206とを備える。各研磨セグメントは、研磨セグメントをハブに取り付けるための本体208を有し、さらに研磨エッジ210を備える。各研磨セグメントは、研磨セグメントを少なくとも部分的に貫通して及び/又は研磨セグメントに隣接するハブを少なくとも部分的に貫通して延びるピン要素148を使用して、ハブに個別に固定される。この第2の実施形態では、ピン要素は、研磨セグメントに隣接して、ハブを部分的に貫通して延びている。
【0029】
具体的には、ピン要素は、隣接する研磨セグメントの間のハブの外周面212に半径方向に挿入されている。半径方向に延びる一連のスリット214と協働して、ピン要素は、研磨セグメントをスロット内の所定の位置にクランプするのを助けるために使用される。スリットは、両側のスロットと並行してハブの中に延びている。各スリットの基部には、亀裂発生のリスクを低減するための円形断面を有する軸方向に延びる開口部216がある。また、ハブは、スリットに隣接する複数の半径方向に延びる穴218を備える。随意的に、各スリットは、1つ(図20及び30)又は2つ(図37)の穴を備える。全ての研磨セグメントがそれぞれのスロットに挿入されると、ピン要素は、半径方向に延びる穴の各々に挿入され、それによってスリットが閉じ、研磨セグメントが所定の位置にクランプされる。バランスの取れた荷重伝達のために、従って最大の効果を発揮するために、スリットは、ハブの周りで1つずつ連続して(常に隣接するスリットで)閉じることが重要である。
【0030】
この実施形態では、研磨セグメントの各々は、中間研磨セグメントホルダー220を介してスロットに個別に取り付けられている。このようにして、研磨セグメントを所定の位置に保持するのに必要な圧力は、耐摩耗性の高い材料でスロット全体を満たすことなく達成される。中間ホルダーは本質的に、より高価なPCD材料の代用品として機能する。このようなことが可能なのは、研磨セグメントの下部は、研磨セグメントをホルダーに取り付けるために必要なだけであり、研削ホイールと接触することがないため、実際には特に耐摩耗性である必要がないからである。
【0031】
適切な研磨セグメントホルダーの例を図27、28、及び29に示す。通常、研磨セグメントホルダーは鋼製である。図27では、研磨セグメントホルダー220aは、座部222と、座部に対して垂直な背部224とを備える。図28では、研磨セグメントホルダー220bは、座部226と、座部に対して傾斜した背部228とを備える。使用時、図27及び28の研磨セグメントホルダーは、ハブの前方回転方向に関して規定された研磨セグメントの後方にその背部を向ける。図29では、研磨セグメントホルダー220cは、座部230と、座部に対して垂直な2つの相隔たる背部232、234とを備える。背部は三角形の縦断面を有する。2つの背部によってスロット236が画定され、そこに研磨セグメントが収容される。
【0032】
試験中、第1及び第2の実施形態の研磨セグメントツールホルダーは、予想以上に問題があることが判明した。研磨セグメントを支持する際、研磨セグメントと研磨セグメントホルダーとの間の先端面に頻繁に位置合わせ不良が生じた。公差の問題に起因して、研磨セグメントは研磨セグメントホルダーの先端面を越えて突出した、又は研磨セグメントホルダーは研磨セグメントを越えて突出した。どちらにしても、先端面にかかる荷重は研磨セグメント及びホルダーの両方に分散されなかった。そのため、その後、第3の実施形態が開発された。この実施形態では、研磨セグメントが2つの背部の間のスロット内に位置するため、荷重がホルダーから研磨セグメントに均等に伝達される。この第3の実施形態の変形例を図37に示す。
【0033】
この工具の第2の実施形態では、ハブは、第1の主軸面から第2の主軸面に向かって半径方向内向きにテーパ付けされていない。代わりに、外周面は第1及び第2の主軸面に対して概して垂直である(図23参照)。これにより、工具は多くの種類の回転研磨加工用途に適したままであるが、もみの木様の輪郭のような複雑な輪郭の研磨には適さなくなる。
【0034】
また、この実施形態では、研磨セグメントとスロットの数が大幅に少なくなっている。この回転研磨加工工具は、より小さな直径を必要とする機械加工作業に適している。また、第1の実施形態に比べて低コストであるため、操作パラメータの最適化に使用される試験治具としても理想的である。
最後に、フランジ238は、従来と同様の方法でハブに取り付けられている。
【0035】
次に図30から36を参照すると、回転研磨加工工具の第3の実施形態は、全体として300で示されている。回転研磨加工工具は、その外周に軸方向に延びる複数の半径方向スロット304を有するハブ302と、中間ホルダーを介して半径方向スロット内に配置された複数の研磨セグメント306とを備える。各研磨セグメントは、研磨セグメントをハブに取り付けるための本体308を有し、さらに研磨エッジ310を備える。各研磨セグメントは、研磨セグメントを少なくとも部分的に貫通して及び/又は研磨セグメントに隣接するハブを少なくとも部分的に貫通して延びるピン要素312を使用して、ハブに個別に固定される。第2の実施形態と同様に、第3の実施形態では、ピン要素は、研磨セグメントに隣接するハブを部分的に貫通して延びている。
【0036】
第2の実施形態及び第3の実施形態は非常に類似しているので、ここでは重要な相違点のみを強調する。第3の実施形態では、ハブは隆起面を有さず、ハブとフランジ314の両方が環状であり、これらは同軸上に互いに横たわっている。対照的に、第2の実施形態では、フランジはハブの隆起面に取り付けられている。
【0037】
次に図37及び38を参照すると、回転研磨加工工具の第4の実施形態は、全体として400で示されている。回転研磨加工工具は、その外周に軸方向に延びる複数の半径方向スロット404を有するハブ402と、半径方向スロット内に配置された複数の研磨セグメント406とを備える。各研磨セグメントは、研磨セグメントをハブに取り付けるための本体408を有し、さらに研磨エッジ410を備える。各研磨セグメントは、研磨セグメントを少なくとも部分的に貫通して及び/又は研磨セグメントに隣接するハブを少なくとも部分的に貫通して延びるピン要素(図示せず)を使用して、ハブに個別に固定される。第2の実施形態と同様に、第4の実施形態では、ピン要素は、研磨セグメントに隣接するハブを部分的に貫通して延びている。
【0038】
第2の実施形態及び第4の実施形態は非常に類似しているので、ここでは重要な相違点のみを強調する。第4の実施形態では、上述のように、研磨セグメントホルダー220のタイプが異なる。研磨セグメントホルダー220dは、座部412と、座部に対して垂直な2つの相隔たる背部414、416とを備える。背部は矩形の縦断面を有する。研磨セグメントはホルダー220dの所定の位置にクランプされる。同様に、ホルダーは、ハブの所定の位置にクランプされる。
【0039】
さらに、上述したように、クランプ機構の一部として使用されるピン要素は1つだけである。より小さな2つのピン要素により、研磨セグメントへのより良好な荷重伝達が可能になるが、より大きな1つのピン要素も効果的に機能する。
【0040】
上述した様々な工具の実施形態の各々について、各研磨セグメントは、好ましくはPCDを含む。好ましくは、PCDは、1から2mmの範囲の厚さを有する層500として提供される。PCBNを使用することも可能であるが、PCDは、その極めて高い硬度により耐摩耗性の点で優れている。欠点は、PCDがPCBNよりも高価であることであり、性能とコストはトレードオフの関係にある。図39を用いて、工具の第2、第3及び第4の実施形態の研磨セグメントに使用されるPCDの体積が、先行技術の研磨セグメントと比較して大幅に減少していることを示す。同じ知見は、第1の実施形態のL字形の研磨セグメントにも広く適用される。
【0041】
随意的に、研磨セグメントは、界接面504でPCDに隣接する炭化物基材502も含んでいる(図40参照)。ハブの中心線506に対するこの界接面の位置が最も重要である。図41aの例のように、界接面がハブの中心線に対して中心からずれた位置にあることが重要である。換言すれば、図41bの例のように、界接面は中心線と一致してはならない。理想的には、図41cの例のように、中心線は研磨セグメントのPCD層と一致する。
【0042】
図41aでは、刃先508の幾何形状は摩耗により早期に失われることになり、これは悪いことであるが、PCDは摩耗することになり、これは良いことである。図41bのように界接面が中心線と一致すると、界接面でクラックが発生し、研磨セグメントが早期に破損する可能性が高いことが試験で示されている。図41cでは、刃先の幾何形状は維持され、PCD層で摩耗が始まっており、いずれも良いことである。
【0043】
実際には、ハブの中心線に対する界接面の位置は、炭化物層に対するPCD層の比率を変えることで達成される。好ましくは、研磨セグメント(すなわちPCD及び、存在する場合には炭化物層)の総厚さは5mm未満であり、より好ましくは4mm未満である。好ましくは、炭化物層に対するPCD層の比率は1対3である。
【0044】
回転研磨加工工具は、研削ホイール、回転ドレッシング工具、又は何らかの他の類似形態の機械加工工具として構成することができる。上述したように、回転研磨加工工具は、もみの木様の輪郭のような複雑な形状の輪郭を有する研磨ホイールのドレッシングに特に有用である。
【0045】
要約すると、本発明者らは、回転研磨加工用途のハブに研磨セグメントを取り付ける代替方法を考え出した。この新しい方法は、研磨セグメントに必要な耐摩耗材料の量を減らすことができるため、構造の観点からはコスト効率が高く、さらに、個別のセグメントの交換及び再形成が可能であるため、保守整備の観点からは柔軟性が高い。
【0046】
本発明は、特に実施形態を参照して示され、説明されてきたが、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細において様々な変更がなされ得ることは、当業者には理解されるであろう。
【符号の説明】
【0047】
100 回転研磨加工工具
126 支持部
128 第1の支持脚部
130 第2の支持脚部
132 第1のピン凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41a
図41b
図41c
【手続補正書】
【提出日】2023-10-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転研磨加工工具であって、
外周に軸方向に延びる複数の半径方向スロットを有するハブと、
前記半径方向スロット内に配置された複数の研磨セグメントと、
を備え、
前記研磨セグメントの各々は、前記研磨セグメントを前記ハブ内に取り付けるための本体を有し、研磨エッジをさらに備え、
前記研磨セグメントの各々は、前記研磨セグメントを少なくとも部分的に貫通して延びる及び/又は前記研磨セグメントに隣接する前記ハブを少なくとも部分的に貫通して延びるピン要素を用いて前記ハブに個別に固定されていることを特徴とする回転研磨加工工具。
【請求項2】
前記研磨セグメントは、第1の部分開口部を備え、前記ハブは、第2の部分開口部を備え、前記研磨セグメントは、前記スロット内にあり且つ前記第1及び第2の部分開口部が整列している場合に、前記第1及び第2の部分開口部は、一緒になって完全な開口部を形成する、請求項1に記載の回転研磨加工工具。
【請求項3】
前記研磨セグメントはL字形であり、第2の脚部から延びる第1の脚部を備える、請求項1又は2に記載の回転研磨加工工具。
【請求項4】
前記第2の脚部は、前記第1の脚部に対して角度Xで延び、角度Xは、前記第1及び第2の脚部の外面の間で測定され、角度Xは、75度から100度の範囲である、請求項3に記載の回転研磨加工工具。
【請求項5】
前記研磨セグメントは、前記第1及び第2の脚部の外面の中間の入れ子面をさらに備える、請求項3に記載の回転研磨加工工具。
【請求項6】
前記入れ子面は、前記第2の脚部の外面に対して30度から50度の範囲の角度で延びている、請求項5に記載の回転研磨加工工具。
【請求項7】
前記ハブは、第1の側から第2の側に向かってテーパ付けされている、請求項1に記載の回転研磨加工工具。
【請求項8】
前記ハブは、L字形の支持部を備える、請求項1に記載の回転研磨加工工具。
【請求項9】
前記ハブは、フランジ上の対応するパターン化軸面と嵌合構成で結合するためのパターン化軸面を備える、請求項1に記載の回転研磨加工工具。
【請求項10】
フランジをさらに備える、請求項1に記載の回転研磨加工工具。
【請求項11】
前記フランジは、前記ハブ上の対応するパターン化軸面と嵌合構成で結合するためのパターン化軸面を備える、請求項10に記載の回転研磨加工工具。
【請求項12】
前記ハブは、前記ハブの外周面で終端する複数の半径方向に延びるスリットを備える、請求項1に記載の回転研磨加工工具。
【請求項13】
前記スリットは、前記半径方向スロットと並行に延びている、請求項12に記載の回転研磨加工工具。
【請求項14】
前記スリットは、グラブねじを受け入れるための1又は2以上の半径方向に延びる閉じた穴をさらに備える、請求項13に記載の回転研磨加工工具。
【請求項15】
前記ハブと前記研磨セグメントとの中間にある研磨セグメントホルダーをさらに備える、請求項12に記載の回転研磨加工工具。
【請求項16】
前記研磨セグメントは、多結晶ダイヤモンド(PCD)を含む、請求項1に記載の回転研磨加工工具。
【請求項17】
前記PCDと界接面で隣接する炭化物基材をさらに含む、請求項16に記載の回転研磨加工工具。
【請求項18】
前記界接面は、前記ハブの中心線に対して中心からずれた位置にある、請求項17に記載の回転研磨加工工具。
【請求項19】
前記PCDは、1から2mmの範囲の厚さを有する層として提供される、請求項16に記載の回転研磨加工工具。
【請求項20】
前記研磨セグメントの総厚さは5mm未満、好ましくは4mm未満である、請求項16に記載の回転研磨加工工具。
【国際調査報告】