(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】ブレージングシート、ブレージングシートから形成された物品、および物品を形成する方法
(51)【国際特許分類】
C23F 13/00 20060101AFI20240403BHJP
B23K 35/28 20060101ALI20240403BHJP
B23K 35/22 20060101ALI20240403BHJP
C22C 21/00 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
C23F13/00 R
B23K35/28 310B
B23K35/22 310E
C22C21/00 E
C22C21/00 D
C22C21/00 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562659
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(85)【翻訳文提出日】2023-11-10
(86)【国際出願番号】 US2022071402
(87)【国際公開番号】W WO2022221812
(87)【国際公開日】2022-10-20
(32)【優先日】2021-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520119242
【氏名又は名称】アーコニック テクノロジーズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】ARCONIC TECHNOLOGIES LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クロビッツ,アンドレアス ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】ゾンカー,ハリー アール.
【テーマコード(参考)】
4K060
【Fターム(参考)】
4K060AA06
4K060BA10
4K060BA15
4K060BA35
4K060DA03
4K060EA04
4K060EB05
4K060FA01
(57)【要約】
ブレージングシート、ブレージングシートから形成された物品、および物品を形成する方法が提供されている。特定の実施形態において、ブレージングシートは、アルミニウム合金を含むコアと、4XXXシリーズのアルミニウム合金を含むろう付け層とを含む。ろう付け層はコア上に配置されている。コアは犠牲陽極として働き、ろう付け層はブレージングシート内の第一のガルバニック回路の陰極として働く。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレージングシートであって、
アルミニウム合金を含むコアと、
前記コア上に配置された、かつ4XXXシリーズのアルミニウム合金を含む、ろう付け層と、を備え、
前記コアが、犠牲陽極として働き、前記ろう付け層が、前記ブレージングシート内の第一のガルバニック回路の陰極として働く、ブレージングシート。
【請求項2】
前記コアと前記ろう付け層の中間にあるインターライナー層と、
前記インターライナー層が、前記コアに対して前記ガルバニック回路の陰極として働き、前記インターライナー層が、前記ろう付け層に対して前記ガルバニック回路の陽極として働く、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項3】
前記コアが、第一の陰極材料の第一の濃度を含み、
前記ろう付け層が、第二の陰極材料の第二の濃度を含み、
前記インターライナー層が、第三の陰極材料の第三の濃度を含み、
前記第二の濃度が、前記第一の濃度よりも大きく、
前記第三の濃度が、前記第一の濃度よりも大きく、前記第二の濃度よりも小さい、請求項2に記載のブレージングシート。
【請求項4】
前記第一の陰極材料、前記第二の陰極材料、および前記第三の陰極材料がそれぞれ、Cu、Zn、Mg、Mn、Si、Fe、Cr、Ti、Zr、V、Li、およびそれらの組み合わせから成る群から個別に選択される、請求項3に記載のブレージングシート。
【請求項5】
前記第一の陰極材料、前記第二の陰極材料、および前記第三の陰極材料がCuである、請求項4に記載のブレージングシート。
【請求項6】
前記第三の濃度が、前記第一の濃度よりも少なくとも0.05重量パーセントだけ大きく、
前記第二の濃度が、前記第三の濃度よりも少なくとも0.05重量パーセントだけ大きい、請求項3に記載のブレージングシート。
【請求項7】
前記コアが、少なくとも0.01重量パーセントの前記第一の陰極材料を含む、請求項3に記載のブレージングシート。
【請求項8】
前記コアが、重量パーセントで0.05~0.6のCuを含み、
前記ろう付け層が、重量パーセントで0.25~1のCuを含み、
前記インターライナー層が、重量パーセントで0.25~0.95のCuを含む、請求項2に記載のブレージングシート。
【請求項9】
前記コア、前記インターライナー層、および前記ろう付け層がまとめて結合されている、請求項2に記載のブレージングシート。
【請求項10】
前記インターライナー層が、重量パーセントで、
0.05~1.5のSiと、
最大2のCuと、
最大0.5のZrと、
最大0.8のFeと、
最大2のMnと、
最大3のZnと、
最大2のMgと、
最大0.3のTiと、
最大1のCrと、
最大0.5のBiと、
アルミニウムと、
不純物と、を含むアルミニウム合金である、請求項2に記載のブレージングシート。
【請求項11】
前記ろう付け層が、前記コアの第一の側面に配置された第一のろう付け層であり、
前記インターライナー層が、第一のインターライナー層であり、
前記ガルバニック回路が、第一のガルバニック回路であり、
第二のろう付け層が、前記コアの前記第一の側面の反対側の前記コアの第二の側面に配置されていて、4XXXシリーズのアルミニウム合金を含み、
第二のインターライナー層が、前記コアと前記第二のろう付け層の中間に配置されていて、
前記コアが、犠牲陽極として働き、前記第二のろう付け層が、前記ブレージングシート内の第二のガルバニック回路の陰極として働く、請求項2に記載のブレージングシート。
【請求項12】
前記コアが、1XXXシリーズのアルミニウム合金、3XXXシリーズのアルミニウム合金、5XXXシリーズのアルミニウム合金、または6XXXシリーズのアルミニウム合金を含む、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項13】
前記ブレージングシートが、制御された雰囲気ろう付けと真空ろう付けのうちの少なくとも一つに適している、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項14】
前記ろう付け層が、重量パーセントで、
5~15のSiと、
最大2.0のMgと、
最大1.0のFeと、
最大3.0のZnと、
最大3.0のCuと、
最大1.0のMnと、
最大1.0のTiと、
最大0.01のBiと、
アルミニウムと、
不純物と、を含むアルミニウム合金である、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項15】
前記コアが、重量パーセントで、
最大2.0のSiと、
最大0.8のFeと、
最大1.0のCuと、
最大1.8のMnと、
最大1.0のMgと、
最大2.0のZnと、
最大0.25のCrと、
最大0.15のZrと、
アルミニウムと、
不純物と、を含むアルミニウム合金である、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項16】
前記コアが、前記ブレージングシートの総厚さの60%~90%の範囲の第一の厚さを備え、
前記インターライナー層が、前記ブレージングシートの前記総厚さの3%~20%の範囲の第二の厚さを備え、
前記ろう付け層が、前記ブレージングシートの前記総厚さの3%~20%の範囲の第三の厚さを備える、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項17】
請求項1に記載のブレージングシートのすべてまたは一部分を含む構造要素を備える、熱交換器。
【請求項18】
前記熱交換器が、ASTM G85付録A3(2019年)の条件下で少なくとも20日間の耐食性を有する、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項19】
前記熱交換器が、オイル冷却器、ラジエータ、または液体冷却凝縮器である、請求項17に記載の熱交換器。
【請求項20】
物品を形成するための方法であって、前記方法が、
第一の材料を含む第一の部分を、請求項1に記載の前記ブレージングシートのすべてまたは一部分を含む第二の部分と接触させることと、
制御された雰囲気ろう付けと真空ろう付けのうちの少なくとも一つを含むプロセスによって、前記第一の部分を前記第二の部分にろう付けすることと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ブレージングシートと、ブレージングシートから形成された物品、もしくはブレージングシートを含む物品と、物品を形成する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、熱交換器などの様々な装置は、積み重ねられた特別に設計された金属プレートから形成されてもよい。プレート型熱交換器は、プレートの両側で二つの流体を循環させることによって機能し、流体間の熱交換を可能にする。プレート型熱交換器が許容可能な耐食性を有することを確実にするために、装置は、プレート間の接合部に沿った、およびプレートを形成するために使用されるシート材料の厚さを通した腐食攻撃に抵抗するように設計されてもよい。プレート型熱交換器における腐食攻撃に対する耐性を高めることは、大きな課題を提示する可能性がある。
【発明の概要】
【0003】
本開示による一つの非限定的な態様は、コアおよびコア上に配置されたろう付け層を備えるブレージングシートを対象とする。様々な非限定的な実施形態において、ブレージングシートは、制御された雰囲気ろう付けと真空ろう付けのうちの少なくとも一つに適した構造を有する。ブレージングシートのコアは、例えば1XXXシリーズのアルミニウム合金、3XXXシリーズのアルミニウム合金、5XXXシリーズのアルミニウム合金、または6XXXシリーズのアルミニウム合金などのアルミニウム合金を含む。例えば、コアは、重量パーセントで最大2.0のSi、最大0.8のFe、最大1.0のCu、最大1.8のMn、最大1.0のMg、最大2.0のZn、最大0.25のCr、最大0.15のZr、アルミニウム、および不純物を含むアルミニウム合金を含むことができる。ブレージングシートのろう付け層は、例えば重量パーセントで5~15のSi、最大2.0のMg、最大1.0のFe、最大3.0のZn、最大3.0のCu、最大1.0のMn、最大1.0のTi、最大0.01のBi、アルミニウム、および不純物を含むアルミニウム合金などの4XXXシリーズのアルミニウム合金を含む。コアは犠牲陽極として働き、ろう付け層はブレージングシート内の第一のガルバニック回路の陰極として働き、ブレージングシートの耐食性を増大させる。
【0004】
本開示によるさらなる非限定的な態様において、ブレージングシートは、コアとろう付け層の中間にあるインターライナー層をさらに備え、インターライナー層は、コアに対するガルバニック回路の陰極として、およびろう付け層に対するガルバニック回路の陽極として働く。特定の非限定的な実施形態において、コア、インターライナー層、およびろう付け層は、まとめて結合されている。特定の非限定的な実施形態において、インターライナー層は、重量パーセントで0.05~1.5のSi、最大2のCu、最大0.5のZr、最大0.8のFe、最大2のMn、最大3のZn、最大2のMg、最大0.3のTi、最大1のCr、最大0.5のBi、アルミニウム、および不純物を含むアルミニウム合金を含む。様々な非限定的な実施形態において、コアは、第一の陰極材料の第一の濃度を含み、ろう付け層は、第二の陰極材料の第二の濃度を含み、インターライナー層は、第三の陰極材料の第三の濃度を含む。第三の濃度および第二の濃度はそれぞれ、例えば少なくとも0.05重量パーセントだけ、少なくとも0.1重量パーセントだけ、少なくとも0.15重量パーセントだけ、または少なくとも0.2重量パーセントだけなど、第一の濃度よりも大きい。第二の濃度は、例えば少なくとも0.05重量パーセントだけ、少なくとも0.1重量パーセントだけ、少なくとも0.15重量パーセントだけ、または少なくとも0.2重量パーセントだけなど、第三の濃度よりも大きい。特定の非限定的な実施形態において、第一の濃度は、少なくとも0.1重量パーセントである。特定の非限定的な実施形態において、第一の陰極材料、第二の陰極材料、および第三の陰極材料はそれぞれ、Cu、Zn、Mg、Mn、Si、Fe、Cr、Ti、Zr、V、Li、およびそれらの組み合わせから成る群から個別に選択される。例えば、第一の陰極材料、第二の陰極材料、および第三の陰極材料は、Cuとすることができる。様々な非限定的な実施形態において、コアは、重量パーセントで0.05~0.6のCuを含み、ろう付け層は、重量パーセントで0.25~1のCuを含み、インターライナー層は、重量パーセントで0.25~0.95のCuを含む。特定の非限定的な実施形態において、コアは、ブレージングシートの総厚さの60%~90%の範囲の第一の厚さを備え、インターライナー層は、ブレージングシートの総厚さの3%~20%の範囲の第二の厚さを備え、ろう付け層は、ブレージングシートの総厚さの3%~20%の範囲の第三の厚さを含む。様々な非限定的な実施形態において、ブレージングシートは、第二のろう付け層および第二のインターライナー層をさらに備え、コアは、犠牲陽極として働き、第二のろう付け層は、ブレージングシート内の第二のガルバニック回路の陰極として働く。
【0005】
本開示による追加の非限定的な態様は、本開示によるブレージングシートの一実施形態のすべてまたは一部分を含む構造要素を備える熱交換器を対象とする。特定の非限定的な実施形態において、熱交換器は、少なくとも20日間のASTM G85付録A3(2019年)の下で決定されるガルバニック耐食性を有する。特定の非限定的な実施形態において、熱交換器は、オイル冷却器、ラジエータ、または液体冷却凝縮器である。
【0006】
本開示によるなお別の非限定的な態様は、物品を作製する方法を対象とする。方法は、第一の材料を含む第一の部分を、本開示によるブレージングシートのすべてまたは一部分を含む第二の部分と接触させることを含む。第一の部分は、制御された雰囲気ろう付けと真空ろう付けのうちの少なくとも一つを含むプロセスによって第二の部分に連結されている。様々な非限定的な実施形態において、第一の材料はアルミニウムまたはアルミニウム合金を含む。特定の非限定的な実施形態において、物品は、例えばオイル冷却器、ラジエータ、または液体冷却凝縮器などの熱交換器である。
【0007】
当然のことながら、本明細書に開示および記載された発明は、本概要に要約される態様に限定されない。読者は、本明細書による様々な非限定的かつ非網羅的な態様の以下の詳細な説明を考慮すると、前述の詳細ならびに他の詳細を理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
実施例の特徴および利点、ならびにそれらを達成する方法は、以下の説明を添付図面とともに参照することによって、より明らかになり、実施例はよりよく理解されよう。
【0009】
【
図1】
図1は、本開示によるブレージングシートの非限定的な一実施形態の概略側面図である。
【0010】
【
図2】
図2は、本開示によるブレージングシートの非限定的な一実施形態の概略側面図である。
【0011】
【
図3】
図3は、ブレージングシートから物品を形成するための本開示による方法の非限定的な一実施形態のブロック図である。
【0012】
【
図4】
図4は、比較の熱交換器の一部分の断面側面図を示す顕微鏡写真である。
【0013】
【
図5】
図5は、本開示によるブレージングシートの非限定的な一実施形態を含む熱交換器の非限定的な一実施形態の一部分の断面側面図を示す顕微鏡写真である。
【0014】
【
図6A】
図6Aは、本開示によるブレージングシートの非限定的な一実施形態を含む熱交換器の非限定的な一実施形態のベースプレートでの継ぎ目の断面側面図を示す顕微鏡写真である。
【0015】
【
図6B】
図6Bは、ベースプレートの継ぎ目から離して位置付けられている
図6Aの熱交換器の一部分の断面側面図を示す顕微鏡写真である。
【0016】
【0017】
本明細書に記載の例示は、特定の実施形態を一つの形態で例示し、このような例示は、いかなる様態においても、添付の特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
様々な実施形態が本明細書に記載および図示されていて、開示された物品および方法の構造、機能、使用の全体的な理解を提供する。本明細書に記載および図示された様々な実施形態は、非限定的かつ非網羅的である。それ故に、本発明は、本明細書に開示の様々な非限定的かつ非網羅的な実施形態の記載によって限定されない。むしろ、本発明は特許請求の範囲によってのみ定義される。様々な実施形態に関連して例示および/または記載された特徴および特性を、他の実施形態の特徴および特性と組み合わせることができる。そのような修正および変形は、本明細書の範囲内に含まれることが意図されている。従って、特許請求の範囲は、本明細書に明示的もしくは本質的に記述される、さもなくば明示的もしくは本質的に支持される任意の特徴または特性を列挙するように修正されうる。さらに、出願人は、特許請求の範囲を補正して、先行技術に存在する可能性のある特徴または特性を肯定的に放棄する権利を留保する。本明細書に開示および記載の様々な実施形態は、本明細書に様々に記載の特徴および特性を含む、それらから成る、またはそれから本質的になることができる。
【0019】
本明細書における「様々な実施形態」、「一部の実施形態」、「一つの実施形態」、「一実施形態」、または同様の語句への言及は、実施例に関連して記載された特定の特徴、構造、または特性が少なくとも一つの実施形態に含まれることを意味する。それ故に、本明細書中の語句「様々な実施形態において」、「一部の実施形態において」、「一つの実施形態において」、「一実施形態において」、または類似の語句の出現は、必ずしも同じ実施形態を指すとは限らない。さらに、特定の記載された特徴、構造、または特性は、一つ以上の実施形態において任意の適切な様態で組み合わせられうる。それ故に、一つの実施形態に関連して図示または記載された特定の特徴、構造、または特性は、全体的にまたは部分的に、限定されることなく、一つ以上の他の実施形態の特徴、構造、または特性と組み合わされうる。そのような修正および変形は、本実施形態の範囲内に含まれることが意図されている。
【0020】
ろう付けされた継ぎ目は、ろう付け層の組成と、ろう付け層(例えば、コアまたはインターライナー層)に連結されている(例えば、動電気的に連結されている)材料の組成との間のガルバニック差に起因して、ガルバニック腐食の影響を受けやすいことがある。本明細書で使用される「ガルバニック差」とは、一つの領域(例えば、層)と別の領域との間の電気化学的電位差(例えば、腐食電位差)を意味する。領域間の電気化学的電位差は、領域の組成の差に起因することがある。特定の機構または理論に束縛されるものではないが、一部の非限定的な実施形態において、電気化学的電位差を有する二つの領域が一緒に連結されていて、電解質の存在下にある場合、一方の領域はガルバニック回路の陽極として働き、他方の領域はガルバニック回路の陰極として働く。本明細書で使用される「陽極の」または「陽極」とは、別の領域よりも電気陰性である組成物を有する領域を指す。本明細書で使用される「陰極の」または「陰極」とは、別の領域よりも電気陰性の低い組成物を有する領域を指す。
【0021】
ろう付けされた継ぎ目の耐食性を改善するために、またそれによって、ろう付けされた継ぎ目を備える物品の動作寿命を延ばすために、本開示は、コアおよびコア上に配置されたろう付け層を備えるブレージングシートを提供し、コアは犠牲陽極として働き、ろう付け層はブレージングシート内の第一のガルバニック回路の陰極として働く。このようにして、腐食攻撃はろう付け層で抑制され、ブレージングシートのコアに向けられる。様々な非限定的な実施形態において、典型的に、コアの縁部のみが露出されていて、コアへの腐食攻撃は、この縁部に局在化される可能性が高い。縁部での腐食攻撃の速度は、ろう付け継ぎ目に沿った、またはコアの壁厚を通して垂直な以前の腐食攻撃と比較して低減される。さらに、コアは典型的に、ろう付け層よりも厚く、ろう付け層およびインターライナー層(使用される場合)によって保護されていて、従って、典型的により薄いろう付け層よりも腐食に耐えることができる。それ故に、本明細書に提供されたブレージングシートの実施形態は、ブレージングシートから作製された、またはブレージングシートを組み込む物品の腐食性能の向上および動作寿命の延長を提供することができる。
【0022】
本明細書で使用される「コア」という用語は、ブレージングシートの基材層を指す。様々な非限定的な実施形態において、「コア」は、実質的にブレージングシートの中心に配置されることができる。しかしながら、本開示によるブレージングシート内のコアの位置は、ブレージングシートの中心に限定されない。コアは、その両方の面上でブレージングシートの別の層で覆われてもよく、または覆われなくてもよく、例えばコアはブレージングシートの一方の側面上に配置されることができる。従って、様々な非限定的な実施形態において、コアは、ブレージングシートの他の層によって囲まれることができ、少なくとも部分的に露出された少なくとも一つの側面を有することができ、または完全に露出された少なくとも一つの側面を有することができる。
【0023】
図1を参照すると、ブレージングシート100が提供されている。ブレージングシート100は、コア102と、コア102上に配置されたろう付け層104と、任意選択的に、コア102とろう付け層104の中間に配置されたインターライナー層106とを備える。様々な非限定的な実施形態において、コア102、インターライナー層106、およびろう付け層104は、まとめて結合されている。ブレージングシート100は、制御された雰囲気ろう付けと真空ろう付けのうちの少なくとも一つに適した組成および厚さを有することができる。
【0024】
ろう付け層104の耐食性を高めるために、コア102は犠牲陽極として働き、ろう付け層104はブレージングシート100内のガルバニック回路の陰極として働く。例えば、コア102の組成物は、ろう付け層104の組成物よりも高い陽極性であることができる。様々な非限定的な実施形態において、コア102とろう付け層104との間の電気化学的電位差は、少なくとも1mV、例えば少なくとも2mV、少なくとも5mV、少なくとも10mV、少なくとも15mV、少なくとも20mV、少なくとも30mV、少なくとも40mV、少なくとも50mV、少なくとも60mV、少なくとも70mV、少なくとも80mV、少なくとも90mV、少なくとも100mV、少なくとも120mV、少なくとも130mV、少なくとも140mV、または少なくとも150mVであることができる。様々な非限定的な実施形態において、コア102とろう付け層104との間の電気化学的電位差は、1000mV以下、例えば500mV以下、250mV以下、150mV以下、または100mV以下であることができる。例えば、コア102とろう付け層104との間の電気化学的電位差は、1mV~1000mV、例えば5mV~500mV、5mV~10mV、5mV~100mV、10mV~100mV、10mV~250mV、または50mV~500mVの範囲であることができる。
【0025】
様々な非限定的な実施形態において、インターライナー層106は、コア102に対してガルバニック回路の陰極として働く。インターライナー層106は、ろう付け層104と同じ電気陰性電位を備えることができるか、またはろう付け層104に対してガルバニック回路の陽極として働くことができる。例えば、インターライナー層106の組成は、ろう付け層104の組成よりも高い陽極性であることができ、コア102の組成よりも高い陰極性であることができる。様々な非限定的な実施形態において、ブレージングシート100内の層の数にかかわらず、ガルバニック電位の勾配は、コア102が層の最も高い陽極性であり、ろう付け層104が層の最も高い陰極性であるブレージングシート100内に構成されることができる。
【0026】
ブレージングシート100内にガルバニック回路を構成するために、コア102は第一の陰極材料の第一の濃度を含み、ろう付け層104は第二の陰極材料の第二の濃度を含み、インターライナー層106は第三の陰極材料の第三の濃度を含む。第二の濃度は、第一の濃度よりも大きいことがある。第三の濃度は、第一の濃度よりも大きく、第二の濃度よりも小さいことがある。本明細書で使用される「陰極材料」は、層内に存在する場合、それぞれの層の電気陰性度を増大させることができる要素または要素の組み合わせであってもよい。
【0027】
第一の陰極材料、第二の陰極材料、および第三の陰極材料は、同一であるまたは異なっていることがあり、様々な非限定的な実施形態において、それぞれCu、Zn、Mg、Mn、Si、Fe、Cr、Ti、Zr、V、Li、およびそれらの組み合わせから成る群から個別に選択される。様々な実施例において、第一の陰極材料、第二の陰極材料、および第三の陰極材料は、ろう付けサイクル中にブレージングシート内の層の間の相互拡散を制限するために同一であることができる。様々な非限定的な実施形態において、第一の陰極材料、第二の陰極材料、および第三の陰極材料は、Cu、Zn、およびMgから成る群から個別に選択される。特定の非限定的な実施形態において、第一の陰極材料、第二の陰極材料、および第三の陰極材料は、Cuである。様々な非限定的な実施形態において、第一の陰極材料、第二の陰極材料、および第三の陰極材料は、Cu、Zn、Mg、Mn、Si、Fe、Cr、Ti、Zr、V、およびLiから成る群からそれぞれ個別に選択される少なくとも二つの元素の混合物である。特定の他の非限定的な実施形態において、第一の陰極材料はZnであり、第二の陰極材料および第三の陰極材料はCuである。
【0028】
様々な非限定的な実施形態において、第三の濃度は、第一の濃度よりも少なくとも0.05重量パーセントだけ、例えば少なくとも0.1重量パーセントだけ、少なくとも0.15重量パーセントだけ、または少なくとも0.2重量パーセントだけ大きいことがある。様々な非限定的な実施形態において、第二の濃度は、第三の濃度よりも少なくとも0.05重量パーセントだけ、例えば少なくとも0.1重量パーセントだけ、少なくとも0.15重量パーセントだけ、または少なくとも0.2重量パーセントだけ大きいことがある。様々な非限定的な実施形態において、コア102は、少なくとも0.01重量パーセントの第一の陰極材料を含む。第一の陰極材料、第二の陰極材料、および第三の陰極材料がCuである様々な非限定的な実施形態において、第一の濃度は、0.05~0.2重量パーセントCuの範囲内であってもよく、第二の濃度は、0.5~1重量パーセントCuの範囲内であってもよく、第三の濃度は、0.2~0.5重量パーセントCuの範囲内であってもよい。様々な非限定的な実施形態において、コア102から始まり、ろう付け層104に向かってブレージングシート100の厚さを通して前進すると、陰極材料の濃度は、後続の各層とともに増加する。
【0029】
図1を再び参照すると、ブレージングシート100のコア102は、例えば1XXXシリーズのアルミニウム合金、3XXXシリーズのアルミニウム合金、5XXXシリーズのアルミニウム合金、または6XXXシリーズのアルミニウム合金などのアルミニウム合金を含む。様々な非限定的な実施形態において、コア102は、重量パーセントで最大2.0のSi、最大0.8のFe、最大1.0のCu、最大1.8のMn、最大1.0のMg、最大2.0のZn、最大0.25のCr、最大0.15のZr、アルミニウム、および不純物を含むアルミニウム合金を含む。
【0030】
図1を参照すると、ブレージングシート100のろう付け層104は、例えば4XXXシリーズのアルミニウム合金などのアルミニウム合金を含む。様々な非限定的な実施形態において、ろう付け層104は、重量パーセントで5~15のSi、最大2.0のMg、最大1.0のFe、最大3.0のZn、最大3.0のCu、最大1.0のMn、最大1.0のTi、最大0.01のBi、アルミニウム、および不純物を含むアルミニウム合金を含む。
【0031】
図1を参照すると、ブレージングシート100のインターライナー層106は、例えば重量パーセントで0.05~1.5のSi、最大2のCu、最大0.5のZr、最大0.8のFe、最大2のMn、最大3のZn、最大2のMg、最大0.3のTi、最大1のCr、最大0.5のBi、アルミニウム、および不純物を含むアルミニウム合金などのアルミニウム合金を含む。
【0032】
ブレージングシート100内の各層の厚さは、ブレージングシート100から製造されるか、またはブレージングシート100を組み込む物品の所望の構造特性に基づいて構成されることができる。例えば、様々な非限定的な実施形態において、コア102は、ブレージングシート100の総厚さ(すなわち、t総厚さ)の60%~90%の範囲内であることがある、第一の厚さt1を備えることができる。様々な非限定的な実施形態において、インターライナー層106は、ブレージングシート100の総厚さ(t総厚さ)の3%~20%の範囲内である、第二の厚さt2を備えることができる。様々な非限定的な実施形態において、ろう付け層104は、ブレージングシート100の総厚さ(t総厚さ)の3%~20%の範囲内である、第三の厚さt3を備えることができる。様々な非限定的な実施形態において、第一の厚さt1は、第二の厚さt2よりも大きく、また第三の厚さt3よりも大きい。特定の非限定的な実施形態において、ブレージングシート100の総厚さ(t総厚さ)は、100μm~5mmの範囲、例えば200μm~1mmの範囲などである。
【0033】
様々な非限定的な実施形態において、本開示によるブレージングシートは、コアに加えて、インターライナー層、およびろう付け層を備えうる。例えば、
図2に概略的に示された非限定的な実施形態を参照すると、ブレージングシート200は、コア102、第一のインターライナー層106、第一のろう付け層104、第二のろう付け層204、および第二のインターライナー層206を備える。様々な非限定的な実施形態において、コア102、第一のインターライナー層106、第二のインターライナー層206、第一のろう付け層104、および第二のろう付け層204は、まとめて結合されていて、ブレージングシート200を形成する。ブレージングシート200は、制御された雰囲気ろう付けと真空ろう付けのうちの少なくとも一つに適していることがある。例えば、ブレージングシート200は、ブレージングシートが、制御された雰囲気ろう付けおよび/または真空ろう付けに適しているように、組成物を有する層を備えることができる。
【0034】
図2に示す通り、第二のろう付け層204は、コア102の第二の側面102b上に配置されていて、第一のろう付け層104は、コア102の第一の側面102a上に配置されている。コア102の第二の側面102bは、コア102の第一の側面102aの反対側に配置されている。様々な実施形態において、第二のろう付け層204は、第一のろう付け層104に関して本明細書に記載の通りの組成物で構成されることができる。様々な非限定的な実施形態において、第二のろう付け層204の組成物は、第一のろう付け層104の組成物と同一であることがあり、または異なっていることがある。同様に、第二のインターライナー層206は、第一のインターライナー層106に関して本明細書に記載の通りの組成物で構成されることができる。様々な非限定的な実施形態において、第二のインターライナー層206の組成物は、第一のインターライナー層106の組成物と同じであっても、異なっていてもよい。
【0035】
第二のインターライナー層206は、コア102と第二のろう付け層204の中間に配置されることができる。第二のろう付け層204の耐食性を高めるために、コア102は犠牲陽極として働くことができ、第二のろう付け層204はブレージングシート200内の第二のガルバニック回路の陰極として働くことができる。
【0036】
ブレージングシート200内の各層の厚さは、ブレージングシート200から製造される、またはブレージングシート200を組み込む物品の所望の構造特性に基づいて構成されることができる。例えば、様々な非限定的な実施形態において、コア102は、ブレージングシート200の総厚さ(t総厚さ)の60%~90%の範囲内でありことがある、第一の厚さt1を備えることができる。様々な非限定的な実施形態において、第一のインターライナー層106および第二のインターライナー層206は、ブレージングシート200の総厚さ(t総厚さ)の3%~20%の範囲内である、組み合わせた厚さt2+t4を備えることができる。様々な非限定的な実施形態において、第一のろう付け層104および第二のろう付け層204は、ブレージングシート200の総厚さ(t総厚さ)の3%~20%の範囲内である、組み合わせた厚さt3+t5を備えることができる。特定の非限定的な実施形態において、ブレージングシート200の総厚さ(t総厚さ)は、100μm~5mmの範囲、例えば200μm~1mmの範囲などである。
【0037】
様々な非限定的な実施形態において、例えば熱交換器などの物品は、ブレージングシート100のすべてもしくは一部、および/またはブレージングシート200のすべてもしくは一部を含む構造要素を備えることができる。熱交換器は、少なくとも20日間、例えば少なくとも25日間、または少なくとも30日間など、ASTM G85付録A3(2019年)の下で評価されたガルバニック耐食性を有する。熱交換器は、例えばオイル冷却器、ラジエータ、または液体冷却凝縮器とすることができる。
【0038】
図3は、例えば熱交換器などの物品を形成するための本開示による方法の非限定的な一実施形態のブロック図を提供する。方法は、第一の材料を含む第一の部分を、本開示によるブレージングシートの一実施形態のすべてまたは一部分を含む第二の部分と接触させることを含む。例えば、本開示による方法の非限定的な一実施形態は、第一の材料を含む第一の部分を、ブレージングシート100および/またはブレージングシート200のすべてまたは一部分を含む第二の部分と接触させることを含んでもよい(
図3、工程302)。様々な非限定的な実施形態において、第一の部分は、制御された雰囲気ろう付けと真空ろう付けのうちの少なくとも一つを含むプロセスによって、第二の部分にろう付けされることができる(工程304)。様々な実施形態において、工程304は、制御された雰囲気ろう付けを含み、フラックスは使用されるか、または使用されない。例えば、第一のインターライナー層106および/または第二のインターライナー層206、ならびにコア102がMgを含む場合、制御された雰囲気ろう付けを実施する時にフラックスは必要とされない場合がある。しかしながら、第一のインターライナー層106および/または第二のインターライナー層206、ならびにコア102がMgを含まない場合、制御された雰囲気ろう付けを実施する時にフラックスは必要とされる場合がある。様々な非限定的な実施形態において、第一の材料はアルミニウムまたはアルミニウム合金を含む。
【0039】
【実施例】
【0040】
図4は、ASTM G85付録A3(2019年)の手順によるガルバニック耐食性試験後の比較の熱交換器400の一部分の断面側面図の顕微鏡写真である。比較の熱交換器400は、フラックスを使用する従来の制御された雰囲気ろう付けプロセスろう付けプロセスにおいて従来のブレージングシートをまとめてろう付けすることによって作成された積層プレート熱交換器であった。各従来のブレージングシートは、4045シリーズのアルミニウム合金を含む二つの外部ろう付け層と、第一のアルミニウム合金を含む二つのインターライナー層と、第二のアルミニウム合金を含むコアとを備えていた。従来のブレージングシートにおいて、二つのろう付け層の組成は、従来のブレージングシートのコアよりも高い陽極性であった。第一のアルミニウム合金は、重量パーセントで最大0.3のSi、最大0.2のFe、最大0.10のCu、最大0.1のMn、最大0.1のMg、最大0.05のCr、2.0~2.4のZn、最大0.05のTi、アルミニウム、および不純物()を含む。第二のアルミニウム合金は、重量パーセントで最大0.25のSi、最大0.4のFe、0.5~0.6のCu、1.0~1.3のMn、最大0.05のMg、最大0.1のZn、0.1~0.2のTi、アルミニウム、および不純物を含む。
【0041】
従来のブレージングシートをまとめてろう付けして比較の熱交換器400を形成した後、比較の熱交換器400をASTM G85付録A3(2019年)条件下でガルバニック耐食性について評価し、比較の熱交換器400は、およそ15日間の曝露後に破損した。
図4は、15日間の曝露後の比較の熱交換器におけるブレージングシートの断面を示す。特に、
図4の領域416において、ブレージングシート410のろう付け層は、もはやブレージングシート412に接続されていない程度まで腐食している。すなわち、ブレージングシート410および412のろう付け層は、ブレージングシート410と412の間のろう付けされた継ぎ目が破損する程度まで腐食した。
【0042】
図5は、ASTM G85付録A3(2019年)条件下でのガルバニック耐食性試験後の熱交換器500の一部分の断面側面図の顕微鏡写真である。熱交換器500は、本開示によるブレージングシートの実施形態を含む積層プレート熱交換器であった。熱交換器500は、フラックスを有する従来の制御された雰囲気ろう付けにおいてブレージングシートの実施形態をまとめてろう付けすることによって作成された。各ブレージングシートは、0.55重量%のCuを含む4045シリーズのアルミニウム合金を含む第一および第二のろう付け層と、0.35重量%のCuを含む第三のアルミニウム合金を含む第一および第二のインターライナー層と、0.15重量%のCuを含む3003シリーズのアルミニウム合金を含むコアとを備えていた。二つのろう付け層の組成は、ブレージングシートのコアよりも高い陰極性であった。第三のアルミニウム合金は、重量パーセントで最大0.25のSi、最大0.6のFe、0.2~0.4のCu、0.8~1.3のMn、最大0.1のMg、最大0.05のZn、最大0.25のTi、最大0.25のZr、アルミニウム、および不純物を含む。
【0043】
ろう付け後、熱交換器500を、ASTM G85付録A3(2019年)の条件下で耐食性について評価した。
図5に示す通り、熱交換器500は破損せず、30日間の曝露後に動作状態のままであった。さらに、熱交換器500の腐食モードは比較の熱交換器400の腐食モードと異なっていたことが観察された。特に、
図4に示す熱交換器400によって示された継ぎ目および貫通厚さの腐食攻撃を観察する代わりに、熱交換器500の腐食は主に、
図5の領域524に示す通り、ろう付け層520の保護されていないせん断縁でコアにて発生した。熱交換器500におけるろう付け継ぎ目とブレージングシートのろう付け層との腐食は、30日後に最小限であった。熱交換器500では腐食試験中にいくらかの腐食があったものの、腐食は主に、ろう付け層の保護されていないせん断縁で発生し、ろう付け継ぎ目で著しい腐食は発生しなかった。
【0044】
図6A~Cは、ASTM G85付録A3(2019年)条件下でのガルバニック耐食性試験後の熱交換器600の様々な部分の断面側面図の顕微鏡写真である。熱交換器600は、本開示によるブレージングシートの実施形態を含む積層プレート熱交換器であった。熱交換器600は、フラックスを有する従来の制御された雰囲気ろう付けにおいてブレージングシートの実施形態をまとめてろう付けすることによって作成された。各ブレージングシートは、0.41重量%のCuを含む4045シリーズのアルミニウム合金を含む第一および第二のろう付け層と、0.29重量%のCuを含む第三のアルミニウム合金を含む第一および第二のインターライナー層と、0.2重量%のCuを含む第一のアルミニウム合金を含むコアとを備えていた。二つのろう付け層の組成は、ブレージングシートのコアよりも高い陰極性であった。ブレージングシートの各層の組成を、以下の表1に示す。
【0045】
【0046】
ろう付け後、熱交換器600を、ASTM G85付録A3(2019年)の条件下で耐食性について評価した。
図6A~Cに示す通り、熱交換器600は破損せず、30日間の曝露後に動作状態のままであった。さらに、熱交換器600の腐食モードは比較の熱交換器400の腐食モードと異なっていたことが観察された。特に、
図4に示す熱交換器400によって示された継ぎ目および貫通厚さの腐食攻撃を観察する代わりに、熱交換器600の腐食は主に、
図6Cの領域624に示す通り、ろう付け層620の保護されていないせん断縁でコアにて発生した。熱交換器600におけるろう付け継ぎ目およびブレージングシートのろう付け層の腐食は、30日後に最小限であった。熱交換器600では腐食試験中にいくらかの腐食があったものの、腐食は主に、ろう付け層の保護されていないせん断縁で発生し、ろう付け継ぎ目で著しい腐食は発生しなかった。
【0047】
以下の番号付きの条項は、本開示による様々な非限定的な実施形態および態様を対象としている。
【0048】
1. ブレージングシートであって、
アルミニウム合金を含むコアと、コア上に配置された、かつ
4XXXシリーズのアルミニウム合金を含む、ろう付け層と、を備え、
コアが、犠牲陽極として働き、ろう付け層が、ブレージングシート内の第一のガルバニック回路の陰極として働く、ブレージングシート。
【0049】
2.コアとろう付け層の中間にあるインターライナー層と、
インターライナー層が、コアに対するガルバニック回路の陰極として働き、インターライナー層が、ろう付け層に対してガルバニック回路の陽極として働く、条項1に記載のブレージングシート。
【0050】
3.コアが、第一の陰極材料の第一の濃度を含み、
ろう付け層が、第二の陰極材料の第二の濃度を含み、
インターライナー層が、第三の陰極材料の第三の濃度を含み、
第二の濃度が、第一の濃度よりも大きく、
第三の濃度が、第一の濃度よりも大きく、第二の濃度よりも小さい、条項2に記載のブレージングシート。
【0051】
4.第一の陰極材料、第二の陰極材料、および第三の陰極材料がそれぞれ、Cu、Zn、Mg、Mn、Si、Fe、Cr、Ti、Zr、V、Li、およびそれらの組み合わせから成る群から個別に選択される、条項3に記載のブレージングシート。
【0052】
5.第一の陰極材料、第二の陰極材料、および第三の陰極材料がCuである、条項4に記載のブレージングシート。
【0053】
6.第三の濃度が、第一の濃度よりも少なくとも0.05重量パーセントだけ大きく、
第二の濃度が、第三の濃度よりも少なくとも0.05重量パーセントだけ大きい、条項3~5のいずれか一項に記載のブレージングシート。
【0054】
7.コアが、少なくとも0.01重量パーセントの第一の陰極材料を含む、条項3~6のいずれかに記載のブレージングシート。
【0055】
8.コアが、重量パーセントで0.05~0.6のCuを含み、
ろう付け層が、重量パーセントで0.25~1のCuを含み、
前記インターライナー層が、重量パーセントで0.25~0.95のCuを含む、条項2~7のいずれかに記載のブレージングシート。
【0056】
9.コア、インターライナー層、およびろう付け層がまとめて結合されている、条項2~8のいずれかに記載のブレージングシート。
【0057】
10.インターライナー層が、重量パーセントで、
0.05~1.5のSiと、
最大2のCuと、
最大0.5のZrと、
最大0.8のFeと、
最大2のMnと、
最大3のZnと、
最大2のMgと、
最大0.3のTiと、
最大1のCrと、
最大0.5のBiと、
アルミニウムと、
不純物と、を含むアルミニウム合金である、条項2~9のいずれかに記載のブレージングシート。
【0058】
11.ろう付け層が、コアの第一の側面に配置された第一のろう付け層であり、
インターライナー層が、第一のインターライナー層であり、
ガルバニック回路が、第一のガルバニック回路であり、
第二のろう付け層が、コアの第一の側面の反対側のコアの第二の側面に配置されていて、4XXXシリーズのアルミニウム合金を含み、
第二のインターライナー層が、コアと第二のろう付け層の中間に配置されていて、
コアが、犠牲陽極として働き、第二のろう付け層が、ブレージングシート内の第二のガルバニック回路の陰極として働く、条項2~10のいずれかに記載のブレージングシート。
【0059】
12.コアが、1XXXシリーズのアルミニウム合金、3XXXシリーズのアルミニウム合金、5XXXシリーズのアルミニウム合金、または6XXXシリーズのアルミニウム合金を含む、条項1~11のいずれかに記載のブレージングシート。
【0060】
13.ブレージングシートが、制御された雰囲気ろう付けと真空ろう付けのうちの少なくとも一つに適している、条項1~12のいずれかに記載のブレージングシート。
【0061】
14.ろう付け層が、重量パーセントで、
5~15のSiと、
最大2.0のMgと、
最大1.0のFeと、
最大3.0のZnと、
最大3.0のCuと、
最大1.0のMnと、
最大1.0のTiと、
最大0.01のBiと、
アルミニウムと、
不純物と、を含むアルミニウム合金である、条項1~13のいずれかに記載のブレージングシート。
【0062】
15.コアが、重量パーセントで、
最大2.0のSiと、
最大0.8のFeと、
最大1.0のCuと、
最大1.8のMnと、
最大1.0のMgと、
最大2.0のZnと、
最大0.25のCrと、
最大0.15のZrと、
アルミニウムと、
不純物と、を含むアルミニウム合金である、条項1~14のいずれかに記載のブレージングシート。
【0063】
16.コアが、ブレージングシートの総厚さの60%~90%の範囲の第一の厚さを備え、
インターライナー層が、ブレージングシートの総厚さの3%~20%の範囲の第二の厚さを備え、
ろう付け層が、ブレージングシートの総厚さの3%~20%の範囲の第三の厚さを備える、条項1~15のいずれかに記載のブレージングシート。
【0064】
17.条項1~16のいずれかに記載のブレージングシートのすべてまたは一部分を含む構造要素を備える、熱交換器。
【0065】
18.熱交換器が、ASTM G85付録A3(2019年)の条件下で少なくとも20日間の耐食性を有する、条項1~17のいずれかに記載の熱交換器。
【0066】
19.熱交換器が、オイル冷却器、ラジエータ、または液体冷却凝縮器である、条項17~18のいずれかに記載の熱交換器。
【0067】
20.物品を形成するための方法であって、方法が、
第一の材料を含む第一の部分を、条項1~16のいずれかに記載のブレージングシートのすべてまたは一部分を含む第二の部分と接触させることと、
制御された雰囲気ろう付けと真空ろう付けのうちの少なくとも一つを含むプロセスによって、第一の部分を第二の部分にろう付けすることと、を含む、方法。
【0068】
21.第一の材料が、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含む、条項20に記載の方法。
【0069】
22.物品が熱交換器である、条項20~21のいずれかに記載の方法。
【0070】
23.物品が、オイル冷却器、ラジエータ、または液体冷却凝縮器である、条項20~22のいずれかに記載の方法。
【0071】
本明細書において、別段の指示がない限り、すべての数値パラメータは、すべての場合において、「約」という用語で始まり、修飾されていると理解されるべきであり、これにおいて数値パラメータは、パラメータの数値を決定するために使用される基礎となる測定法の固有の変動特性を有する。少なくとも、および均等論の適用を特許請求の範囲に限定する試みとしてではなく、本明細書に記載の各数値パラメータは少なくとも、報告された有効数字の数を考慮して、および通常の丸める方法を適用することによって解釈されるべきである。
【0072】
また、本明細書に列挙された任意の数値範囲は、列挙された範囲内に包含されるすべての部分範囲を含む。例えば、「1~10」の範囲には、列挙された最小値1と列挙された最大値10との間の(およびそれらを含む)すべての部分範囲が含まれ、つまり、1以上の最小値と10以下の最大値を有する。また、本明細書に列挙されたすべての範囲は、列挙された範囲の端の数値を含む。例えば、「1~10」の範囲は、端の数値である1および10を含む。本明細書に列挙された任意の最大の数値制限は、そこに包含されたすべてのより低い数値制限を含むことが意図されていて、本明細書に列挙された任意の最小の数値制限は、そこに包含されたすべてのより高い数値制限を含むことが意図されている。従って、出願人は、明示的に列挙された範囲内に包含された部分範囲を明示的に列挙するために、特許請求の範囲を含む本明細書を修正する権利を留保する。こうしたすべての範囲は、本明細書に本質的に記述されている。
【0073】
本明細書で使用される文法の冠詞「一つ(a)」、「一つ(an)」、および「その(the)」は、別段の指示がない限り、特定の場合において「少なくとも一つ」または「一つ以上」が明示的に使用されている場合であっても、「少なくとも一つ」または「一つ以上」を含むことが意図されている。それ故に、前述の文法の冠詞は本明細書において、特定の識別された要素のうちの一つ以上(すなわち、「少なくとも一つ」)を指すために使用される。さらに、単数名詞の使用には複数形が含まれ、複数名詞の使用には単数形が含まれるが、使用の文脈によって別段の解釈が要求される場合はこの限りではない。
【0074】
当業者は、本明細書に記載の物品および方法、ならびにそれらに付随する考察が、概念的明瞭性のために実施例として使用されていて、様々な構成修正が企図されていることを認識するであろう。従って、本明細書で使用される、記載の特定の実施例/実施形態および付随する考察は、そのより一般的なクラスの代表であることが意図されている。一般的に、特定の例の使用は、そのクラスの代表であることが意図されていて、特定の構成要素、装置、操作/動作、および対象を含まないことは、限定的であると受け止められるべきではない。本開示は、本開示の様々な態様および/またはその潜在的な適用例を解説する目的で様々な特定の態様の説明を提供する一方で、当業者には変形および修正が生じることが理解されよう。従って、本明細書に記載の単独の発明または複数の発明は、それらが特許請求されるのと少なくとも同程度に広範であると理解されるべきであり、本明細書に提供された特定の例示的態様によってより狭義に定義されるものではないと理解されるべきである。
【国際調査報告】