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特表2024-515615耐火性、耐切創性、及び弾性回復性を有する生地及び物品並びにその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】耐火性、耐切創性、及び弾性回復性を有する生地及び物品並びにその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04B 1/14 20060101AFI20240403BHJP
   D02G 3/36 20060101ALI20240403BHJP
   D02G 3/04 20060101ALI20240403BHJP
   D02G 3/28 20060101ALI20240403BHJP
   A41D 19/015 20060101ALI20240403BHJP
   A41D 19/00 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
D04B1/14
D02G3/36
D02G3/04
D02G3/28
A41D19/015 130
A41D19/015 110Z
A41D19/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562752
(86)(22)【出願日】2022-03-01
(85)【翻訳文提出日】2023-10-12
(86)【国際出願番号】 US2022018309
(87)【国際公開番号】W WO2022220937
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】63/173,697
(32)【優先日】2021-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520028531
【氏名又は名称】デュポン セイフティー アンド コンストラクション インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100202603
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 智史
(72)【発明者】
【氏名】ハンクス ジェフリー アラン
(72)【発明者】
【氏名】キー エリック
(72)【発明者】
【氏名】ノート オリヴィエ ベアト
【テーマコード(参考)】
3B033
4L002
4L036
【Fターム(参考)】
3B033AB05
4L002AA00
4L002AA02
4L002AA05
4L002AA06
4L002AA08
4L002AB01
4L002AB02
4L002AB04
4L002AC01
4L002AC03
4L002AC07
4L002BA00
4L002EA00
4L002EA05
4L002EA06
4L002FA04
4L036MA04
4L036MA06
4L036MA39
4L036PA21
4L036RA24
4L036UA06
(57)【要約】
耐火性耐切創性生地、及びこの生地を含む手袋又は他の物品であって、該生地は、
(a)少なくとも50重量%の耐熱性ポリマー繊維を含む少なくとも1本の第1の糸であって、少なくとも1本の第1の糸の中に存在するポリマー繊維の少なくとも30重量%が、ASTM F2992-15による500グラム重以上の耐切創性を有する耐切創性耐熱性ポリマー繊維である、少なくとも1本の第1の糸;及び
(b)ハロゲン化自己消火性ステープル繊維のシースと、少なくとも1本の連続エラストマーフィラメントを含むコアとを有するシース/コア構造を持つ少なくとも1本の第2の糸;
を含み、
少なくとも1本の第2の糸の60~95重量%がハロゲン化自己消火性繊維であり、ハロゲン化自己消火性繊維が少なくとも1本の連続エラストマーフィラメントと接触しており、第2の糸は無機繊維を含まないか、又は実質的に含まず;
NFPA-2112-2018に従って試験した場合に、生地の最長残炎時間は2秒以下であり、重量減少は5重量%以下である、耐火性耐切創性生地、及びこの生地を含む手袋又は他の物品。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1の糸の中のポリマー繊維の総重量を基準として少なくとも50重量%の耐熱性ポリマー繊維を含む少なくとも1本の第1の糸であって、前記少なくとも1本の第1の糸の中に存在する前記ポリマー繊維の少なくとも30重量%が、ASTM F2992-15による500グラム重以上の耐切創性を有する耐切創性耐熱性ポリマー繊維である、少なくとも1本の第1の糸;及び
(b)ハロゲン化自己消火性ステープル繊維のシースと、少なくとも1本の連続エラストマーフィラメントを含むコアとを有するシース/コア構造を持つ少なくとも1本の第2の糸;
を含む耐火性耐切創性生地であって、
前記第2の糸の総重量を基準として前記少なくとも1本の第2の糸の60~95重量%がハロゲン化自己消火性繊維であり、前記ハロゲン化自己消火性繊維が前記少なくとも1本の連続エラストマーフィラメントと接触しており、前記第2の糸は無機繊維を含まないか、又は実質的に含まず;
NFPA-2112-2018に従って試験した場合に、前記生地の最長残炎時間が2秒以下であり、重量減少が5重量%以下である、耐火性耐切創性生地。
【請求項2】
前記少なくとも1本の第1の糸が、前記耐切創性耐熱性ポリマー繊維を含むシースと、無機繊維を含むコアとを有するシース/コア構造を有する、請求項1に記載の生地。
【請求項3】
前記耐熱性ポリマー繊維又は前記耐切創性耐熱性ポリマー繊維が、アラミドコポリマー、パラアラミド、ポリベンザゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリイミド、又はそれらの混合である、請求項1又は2に記載の生地。
【請求項4】
前記耐熱性ポリマー繊維又は前記耐切創性耐熱性ポリマー繊維がパラアラミドである、請求項3に記載の生地。
【請求項5】
前記パラアラミド繊維がポリ(パラフェニレンテレフタルアミドである、請求項3に記載の生地。
【請求項6】
前記少なくとも1本の第1の糸が耐切創性ではない耐火性繊維をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の生地。
【請求項7】
前記耐火性繊維が、メタアラミド、ポリアミドイミド、難燃処理(FR)セルロース、FRコットン、FRリヨセル、又はそれらの混合である、請求項6に記載の生地。
【請求項8】
前記耐火性繊維がメタアラミドである、請求項7に記載の生地。
【請求項9】
前記メタアラミドがポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)である、請求項8に記載の生地。
【請求項10】
前記少なくとも1本の第2の糸の総重量の80~95重量%が前記ハロゲン化自己消火性繊維である、請求項1~9のいずれか一項に記載の生地。
【請求項11】
前記ハロゲン化自己消火性繊維がモダクリル繊維である、請求項1~10のいずれか一項に記載の生地。
【請求項12】
前記少なくとも1本の第2の糸の総重量の5~40重量%が、前記少なくとも1本の連続エラストマーフィラメントである、請求項1~11のいずれか一項に記載の生地。
【請求項13】
前記少なくとも1本の連続エラストマーフィラメントがスパンデックスフィラメントである、請求項1~12のいずれか一項に記載の生地。
【請求項14】
前記無機繊維が金属フィラメントである、請求項1~13のいずれか一項に記載の生地。
【請求項15】
前記無機繊維がガラスフィラメントである、請求項1~14のいずれか一項に記載の生地。
【請求項16】
前記少なくとも1本の第2の糸の前記シースが耐熱性ポリマー繊維をさらに含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の生地。
【請求項17】
前記少なくとも1本の第2の糸の前記シースが耐切創性ではない耐火性繊維をさらに含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の生地。
【請求項18】
前記耐火性繊維が、メタアラミド、ポリアミドイミド、難燃処理(FR)セルロース、FRコットン、FRリヨセル、又はそれらの混合である、請求項17に記載の生地。
【請求項19】
前記耐火性繊維がメタアラミドである、請求項18に記載の生地。
【請求項20】
前記メタアラミドがポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)である、請求項19に記載の生地。
【請求項21】
前記少なくとも1本の第2の糸の前記シースが帯電防止繊維をさらに含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の生地。
【請求項22】
前記少なくとも1本の第1の糸と前記少なくとも1本の第2の糸との合撚糸を含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の生地。
【請求項23】
前記生地が編み生地である、請求項1~22のいずれか1項に記載の生地。
【請求項24】
前記少なくとも1本の第1の糸と前記少なくとも1本の第2の糸との交編構造を有する、請求項1~21のいずれか一項に記載の生地。
【請求項25】
前記少なくとも1本の第1の糸と前記少なくとも1本の第2の糸が、前記交編構造において互いに平行な関係にある、請求項24に記載の生地。
【請求項26】
前記少なくとも1本の第2の糸が前記交編構造における緯糸挿入である、請求項24に記載の生地。
【請求項27】
請求項1~26のいずれか一項に記載の生地を含む手袋又は他の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火性及び形状適合性を有し、また耐切創性も有する防護衣料の物品における使用に適した糸及び生地に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明。耐切創性及び弾性回復性を有する合撚糸及び生地、それらの製造方法、及びそれらを防護衣料の物品に使用することは、米国特許第6,952,915号明細書に開示されている。
【0003】
アーク及び火炎から保護する特性を有する生地の製造に有用なモダクリル繊維、p-アラミド繊維、及びm-アラミド繊維を含む糸は、例えば米国特許第7,065,950号明細書及び第7,348,059号明細書に開示されている。これらの糸は、任意選択的な成分として、2~15重量%のナイロンなどの耐摩耗性繊維及び/又は1~5重量%の帯電防止成分をさらに含み得る。
【0004】
耐火性と弾性回復性の組み合わせを有する糸及び生地は、例えば米国特許第5,069,957号明細書、同第5,527,597号明細書;及び同第5,694,981号明細書に記載されている。これらの既存の解決策は、耐火性繊維から製造された実質的な保護繊維の外側被覆材で弾性コア糸を被覆することによって製造される糸を利用する。言い換えると、これらの参考文献は、同じ糸内にある別の繊維を使用して弾性コアを火炎から構造的に遮蔽することによって弾性コアを保護することを記載している。
【0005】
本明細書で使用される「構造的遮蔽」及び「構造的遮蔽物」という用語は、被覆材繊維が火炎にさらされたときに単純に炭化し、コア内の弾性フィラメントを被覆している糸の中に留まり、その結果火炎と弾性コアとの間に構造的障壁を提供することを意味する。これらの特許で教示されているように、これらの糸は、極端な温度や火炎にさらされたときに、弾性コア糸を劣化や又は溶融から物理的に保護する耐火性繊維から作られた実質的な保護繊維の外側被覆材を備えている。
【0006】
残念なことに、多くの場合、適切な構造的遮蔽を行う外側繊維被覆材を備える繊維は、硬い繊維である傾向もあり、そのためそのような糸で作られた生地は、望まれるほどには快適ではないことがある。これは最終的には、望まれるほどには快適でない可能性がある防護衣料につながり、十分に快適でない場合には、労働者は防護具を着用せず自らを危険にさらす傾向があることがよく知られている。
【0007】
加えて、弾性コアを保護するための解決策は、全て現行の保護衣料の規格を満たす必要がある。具体的には、最近のNFPA 2112-2018「Standard on Flame-Resistant Clothing for Protection of Industrial Personnel Against Short-Duration Thermal Exposures from Fire」は、火災による短時間の熱曝露のリスクがある場所で使用するための耐火性衣類、シュラウド、フード、目出し帽、及び手袋の最低限の設計、性能、試験、及び認証要件並びに試験方法の仕様を規定している。この規格は、衣類に使用される生地の残炎時間が2秒以下であることを要求している。残炎時間は、バーナーを炎から外した後、試験片が燃え続ける時間(秒、0.2秒単位で測定)である。
【0008】
この規格では、耐火性試験で消費される材料が試験片の元の重量の5.0パーセントを超えてはならないというさらに厳しい要件が耐火性手袋に関して定められている。言い換えると、規格の手順に従って炎を規定の12秒間試験片に当てた後、生地の重量減少が5.0パーセント以下である必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、特に弾性コア糸が組み込まれており、NFPA 2112-2018規格に適合し、且つより快適な防護衣料品を提供できる可能性がある布地のような感触を有する繊維を利用する、耐切創性と共に耐火性と弾性回復性との組み合わせを有する糸及び/又は生地が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、耐火性耐切創性生地、及びこの生地を含む手袋又は他の物品に関し、この生地は、
(a)第1の糸の総重量を基準として少なくとも50重量%の耐熱性ポリマー繊維を含む少なくとも1本の第1の糸であって、少なくとも1本の第1の糸の中に存在するポリマー繊維の少なくとも30重量%が、ASTM F2992-15による500グラム重以上の耐切創性を有する耐切創性耐熱性ポリマー繊維である、少なくとも1本の第1の糸;及び
(b)ハロゲン化自己消火性ステープル繊維のシースと、少なくとも1本の連続エラストマーフィラメントを含むコアとを有するシース/コア構造を持つ少なくとも1本の第2の糸;
を含み、
第2の糸の総重量を基準として少なくとも1本の第2の糸の60~95重量%がハロゲン化自己消火性繊維であり、ハロゲン化自己消火性繊維が少なくとも1本の連続エラストマーフィラメントと接触しており、第2の糸は無機繊維を含まないか、又は実質的に含まず;
NFPA-2112-2018に従って試験した場合に、生地の最長残炎時間は2秒以下であり、重量減少は5重量%以下である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、耐火性と形状適合性の両方を有し、さらに切創からの保護も提供する、防護衣料の物品における使用に適した糸及び生地に関する。このユニークな組み合わせは、弾性材料と、自己消火性繊維と、強力な耐熱性ポリマー繊維とを、燃焼時の生地の消耗を抑えながら糸や生地に高い耐火性をもたらすような形式で組み合わせることによって生み出される。
【0012】
具体的には、本発明は、
(a)第1の糸の総重量を基準として少なくとも50重量%の耐熱性ポリマー繊維を含む少なくとも1本の第1の糸であって、少なくとも1本の第1の糸の中に存在するポリマー繊維の少なくとも30重量%が、ASTM F2992-15による500グラム重以上の耐切創性を有する耐切創性耐熱性ポリマー繊維である、少なくとも1本の第1の糸;及び
(b)ハロゲン化自己消火性ステープル繊維のシースと、少なくとも1本の連続エラストマーフィラメントを含むコアとを有するシース/コア構造を持つ少なくとも1本の第2の糸;
を含む耐火性耐切創性生地であって、
第2の糸の総重量を基準として少なくとも1本の第2の糸の60~95重量%がハロゲン化自己消火性繊維であり、ハロゲン化自己消火性繊維が少なくとも1本の連続エラストマーフィラメントと接触しており、第2の糸は無機繊維を含まないか、又は実質的に含まず;
NFPA-2112-2018に従って試験した場合に、生地の最長残炎時間は2秒以下であり、重量減少は5重量%以下である、耐火性耐切創性生地に関する。
【0013】
「耐火性耐切創性生地」とは、「耐火性」と「耐切創性」の両方を備えた編み生地又は織り生地を意味する。生地に関しての「耐火性」という記述は、ASTM6143-15に従って試験した場合に、生地の炭化長さが4インチ(100mm)以下であることを意味する。「耐切創性生地」とは、生地が少なくとも最低レベルの耐切創性を有することを意味し、一般的には、耐切創性生地は、ASTM F2992-15による少なくとも200グラム重の耐切創性を有する。いくつかの好ましい実施形態では、本明細書に記載の繊維及び糸は、ASTM F2992-15に従って少なくとも500グラム重の耐切創性を有する耐火性耐切創性生地を提供することができる。しかしながら、他のいくつかの実施形態では、「耐火性」生地とみなされるために本明細書に記載の耐火性要件が満たされており、且つ生地がASTM F2992-15による少なくとも200グラム重の最低限の耐切創性を保持する限り、必ずしも耐切創性を提供するわけではないが生地に他の望ましい品質を提供することができる他の繊維又は糸が生地に組み込まれていてもよいことが理解される。
【0014】
耐火性生地は熱事象からの熱保護を提供し、耐切創性生地はナイフや鋭利な刃物などからの機械的保護を提供する。この生地は、耐火性に加えて、NFPA-2112-2018に従って試験した場合、残炎時間が2秒以下であり、重量減少が5重量%以下である。
【0015】
加えて、そのような生地から作られる保護手袋などの物品は、快適であり、良好なフィット感及び追従性を有することがしばしば重要であり、或いは望ましい。「良好なフィット感及び追従性」とは、例えば、手袋が着用者の手の形状にぴったりとはまり、手袋を着用したまま小さい物体を掴んだり扱ったりできることを意味する。本明細書に記載の耐火性耐切創性生地は、高い耐火性と耐切創性の両方を備えていると同時に、柔らかく、柔軟性があり、形状にフィットする物品も提供する。そのような生地から作られた防護衣料は非常に快適であり、複数の脅威に対して有効である。
【0016】
耐火性耐切創性生地は、耐熱性ポリマー繊維を提供する少なくとも第1の糸と、少なくとも1本の連続エラストマーフィラメントと接触するハロゲン化自己消火性繊維で覆われた少なくとも1本の連続エラストマーフィラメントを提供する少なくとも第2の糸とから製造される。少なくとも第1の糸と少なくとも第2の糸は、その後生地を製造するために使用される。
【0017】
いくつかの実施形態では、少なくとも第1の糸と少なくとも第2の糸は、一緒に撚られて合撚糸を形成する。いくつかの実施形態では、合撚糸は、1本のみの第1の糸と1本のみの第2の糸とからなる。別の実施形態では、合撚糸は、1本のみの第1の糸と複数の第2の糸とからなり;別の実施形態では、合撚糸は、複数の第1の糸と1本のみの第2の糸とからなる。同様に、いくつかの実施形態では、合撚糸は、複数の第1の糸と複数の第2の糸とからなる。最後に、いくつかの実施形態では、合撚糸は、少なくとも1本の第1の糸と少なくとも1本の第2の糸とを含む。最終的な生地が本明細書で説明される性能基準を満たす限り、任意の数の繊維から作られた他の糸を合撚糸に含めることができる。
【0018】
いくつかの別の実施形態では、少なくとも第1の糸と少なくとも第2の糸は交編緯糸挿入構造で使用される。「緯糸挿入」とは、ニット手袋のエラストマーカフスを作る際に行われるような、少なくとも第2の糸が少なくとも第1の糸を含む編物構造に挿入される編物を意味する。
【0019】
いくつかの別の実施形態では、少なくとも第1の糸と少なくとも第2の糸は、生地中で互いに平行な関係で使用することができる。本明細書で使用される「平行」という用語は、個々の糸が通常生地内で互いに隣り合って存在し、糸が独立して互いに分離しており、それらが諸撚りされたり撚りがかけられたりしていないことを意味する。編み生地では、生地におけるこのタイプの平行配置は、交編生地の一種としても知られている。1つの交編製造プロセスでは、交編は、2本の別個の糸の経糸を合わせて、すなわち両方を単一の編み機で一緒に編むことによって形成される。この構造及びプロセスにより、2本の異なる糸が生地内で近接して維持され、それらの平行関係が維持される。このプロセスは、編んでいる最中に糸の2つの経糸を組んで、一方の経糸を主に衣類の第1の表面に配置し、他方の経糸を主に衣類の第2の表面に配置する工程を含むことが有利である。これにより、典型的にはより快適な経糸を主に衣類の内側に配置し、もう一方の経糸を主に外側に配置することができる。
【0020】
本発明は、本明細書に記載の全ての実施形態を含む、耐火性耐切創性生地を含む手袋又は他の物品にも関し、耐火性耐切創性生地は、
(a)第1の糸の総重量を基準として少なくとも50重量%の耐熱性ポリマー繊維を含む少なくとも1本の第1の糸であって、少なくとも1本の第1の糸の中に存在するポリマー繊維の少なくとも30重量%が、ASTM F2992-15による500グラム重以上の耐切創性を有する耐切創性耐熱性ポリマー繊維である、少なくとも1本の第1の糸;及び
(b)ハロゲン化自己消火性ステープル繊維のシースと、少なくとも1本の連続エラストマーフィラメントを含むコアとを有するシース/コア構造を持つ少なくとも1本の第2の糸;
を含む耐火性耐切創性生地であって、
第2の糸の総重量を基準として少なくとも1本の第2の糸の60~95重量%がハロゲン化自己消火性繊維であり、ハロゲン化自己消火性繊維が少なくとも1本の連続エラストマーフィラメントと接触しており、第2の糸は無機繊維を含まないか、又は実質的に含まず;
NFPA-2112-2018に従って試験した場合に、生地の最長残炎時間は2秒以下であり、重量減少は5重量%以下である。
【0021】
少なくとも第1の糸は、第1の糸の総重量を基準として少なくとも50重量%の耐熱性ポリマー繊維を含み、少なくとも1本の第1の糸の中に存在するポリマー繊維の少なくとも30重量%が、ASTM F2992-15による500グラム重以上の耐切創性を有する耐切創性耐熱性ポリマー繊維である。
【0022】
「耐熱性ポリマー繊維」とは、空気中で毎分20℃の速度で500℃まで加熱したときに元の繊維重量の90パーセントを保持する合成有機ポリマーから作られた繊維を意味する。好ましい耐熱性ポリマー繊維は、少なくとも3グラム/デニール(2.7グラム/dtex)の糸の強さを有する。耐熱性ポリマー繊維としては、パラアラミド繊維、アラミドコポリマー繊維、ポリベンザゾール繊維、ポリベンズイミダゾール繊維、ポリイミド繊維、及びそれらの混合が挙げられる。好ましい耐熱性ポリマー繊維はパラアラミド繊維であり、好ましいパラアラミド繊維はポリ(パラフェニレンテレフタルアミド繊維である。
【0023】
少なくとも1本の第1の糸は、第1の糸の総重量を基準として少なくとも50重量%の耐熱性ポリマー繊維を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1本の第1の糸は、第1の糸の総重量を基準として少なくとも60重量%の耐熱性ポリマー繊維を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1本の第1の糸は、第1の糸の総重量を基準として60~85重量%の耐熱性ポリマー繊維を含み、いくつかの別の実施形態では、少なくとも1本の第1の糸は、第1の糸の総重量を基準として60~80重量%の耐熱性ポリマー繊維を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1本の第1の糸は、第1の糸の総重量を基準として100重量%の耐熱性ポリマー繊維を含む。
【0024】
少なくとも1本の第1の糸の中に存在するポリマー繊維の少なくとも30重量%は、ASTM F2992-15による500グラム重以上の耐切創性を有する耐切創性耐熱性ポリマー繊維である。繊維の切断性能は、試験される繊維100%から織られた又は編まれた345グラム/平方メートル(10オンス/平方ヤード)の生地の切断性能を測定し、次いでASTM F2992-15により耐切創性(グラム重)を測定することによって決定される。
【0025】
ASTM F2992-15による500グラム重以上の耐切創性を有する耐切創性耐熱性ポリマー繊維としては、パラアラミド繊維、アラミドコポリマー繊維、ポリベンザゾール繊維、ポリベンズイミダゾール繊維、及びそれらの混合が挙げられる。好ましい耐切創性耐熱性ポリマー繊維はパラアラミド繊維であり、好ましいパラアラミド繊維はポリ(パラフェニレンテレフタルアミド繊維である。少なくとも1本の第1の糸の中の耐切創性耐熱性ポリマー繊維は、耐熱性ポリマー繊維が十分な耐切創性を有する場合には、少なくとも1本の第1の糸の中の耐熱性ポリマー繊維と同じであっても又は異なっていてもよい。
【0026】
したがって、耐切創性耐熱性ポリマー繊維は、先に定義した耐熱性ポリマー繊維と、先に定義した耐切創性繊維の両方であると理解される。さらに、少なくとも1本の第1の糸は、100%耐切創性耐熱性のポリマー繊維であってよい。すなわち、100%耐切創性耐熱性ポリマー繊維を有するそのような糸は、その結果少なくとも50重量%の耐熱性ポリマー繊維を有し、少なくとも30重量%の耐切創性耐熱性ポリマー繊維も有することが理解される。また、少なくとも1本の第1の糸は、本明細書で定義される耐熱性ポリマー繊維であるが本明細書で定義される耐切創性繊維ではない繊維を含むことができることも理解される。表1は、非耐切創性耐熱性(非CR HR)ポリマー繊維と耐切創性耐熱性(CH-HR)ポリマー繊維の可能なパーセント割合に関する、選択された例示的な組成を与える指針を示す。
【0027】
【表1】
【0028】
したがって、少なくとも1本の第1の糸の中に存在するポリマー繊維の少なくとも30重量%は、本明細書で定義される耐切創性及び耐熱性の両方のポリマー繊維であることが理解される。いくつかの実施形態では、耐切創性耐熱性ポリマー繊維は、少なくとも1本の第1の糸の中のポリマー繊維の総量を基準として50重量%~100重量%の量で少なくとも1本の第1の糸の中に存在する。いくつかの別の実施形態では、耐切創性耐熱性ポリマー繊維は、少なくとも1本の第1の糸の中のポリマー繊維の総量を基準として80重量%~100重量%の量で少なくとも1本の第1の糸の中に存在する。別の実施形態では、耐切創性耐熱性ポリマー繊維は、少なくとも1本の第1の糸の中のポリマー繊維の総量を基準として80重量%~95重量%の量で少なくとも1本の第1の糸の中に存在する。
【0029】
表1に示されている耐切創性耐熱性ポリマー繊維及び非耐切創性耐熱性ポリマー繊維の様々な例示的な割合に加えて、いくつかの実施形態では、少なくとも1本の第1の糸は、耐熱性ポリマー繊維ではない、すなわち本明細書で規定されている耐熱性ポリマー繊維の定義を満たさない、他の合成繊維又は有機繊維又はフィラメントをさらに含む。最終的な生地が本明細書に記載の組成及び本明細書に記載の性能基準を満たす限り、本質的にあらゆる種類の繊維を含めることができる。すなわち、少なくとも1本の第1の糸の組成は、第1の糸の中のポリマー繊維の総重量を基準として少なくとも50重量%の耐熱性ポリマー繊維を含み、ポリマー繊維の少なくとも30重量%は耐切創性耐熱性繊維であり;最終的な生地は、NFPA-2112-2018に従って試験した場合に、2秒以下の最長残炎時間と5重量%以下の重量減少を有する耐火性生地である。好ましくは、耐熱性ポリマー繊維ではない繊維又はフィラメントは有機繊維であり、いくつかの実施形態ではポリマー有機繊維である。また、いくつかの実施形態では、耐熱性ポリマー繊維ではない繊維又はフィラメントは、存在する場合、合成又は有機ステープル繊維である。
【0030】
いくつかの好ましい実施形態では、少なくとも1本の第1の糸は、耐火性繊維をさらに含むことができる。「耐火性繊維」とは、その生地のみから作られた生地が、ASTM D6143-99の垂直燃焼試験による炭化長さが4インチ以下であり、残炎時間が2秒以下であるが、その生地が本明細書において耐切創性耐熱性ポリマー繊維について前述した耐切創性基準を満たさないことを意味する。適切な耐火性繊維としてはメタアラミド繊維が挙げられ、好ましいメタアラミドはポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)である。他の潜在的に有用な耐火性繊維としては、メタアラミド類のブレンド、難燃処理(FR)セルロース、FRコットン、FRリヨセル、又はそれらの混合が挙げられる。いくつかの実施形態では、少なくとも1本の第1の糸は、第1の糸の中のポリマー繊維の総重量を基準として30~70重量%の耐火性繊維を有する。いくつかの他の好ましい実施形態では、少なくとも1本の第1の糸は、第1の糸の中のポリマー繊維の総重量を基準として50~70重量%の耐火性繊維を有する。
【0031】
少なくとも1本の第1の糸の中の耐熱性ポリマー繊維と耐切創性耐熱性ポリマー繊維は、共に、好ましくは約2~20cm、好ましくは約3.5~6cmの長さを有するステープル繊維である。少なくとも1本の第1の糸の中の耐熱性ポリマー繊維と耐切創性耐熱性ポリマー繊維は、共に、好ましくは5~25μmの直径と0.5~7dtexの線密度を有するステープル繊維である。また、いくつかの実施形態では、耐火性繊維であるか又は耐熱性ポリマー繊維ではない繊維又はフィラメントは、存在する場合、耐熱性ポリマー繊維及び耐切創性耐熱性ポリマー繊維の上記範囲と同様の寸法を有するステープル繊維である。
【0032】
いくつかの実施形態では、少なくとも1本の第1の糸は、第1の糸の総重量を基準として少なくとも50重量%の耐熱性ポリマー繊維を含み、少なくとも1本の第1の糸の中に存在するポリマー繊維の少なくとも30重量%が、ASTM F2992-15による500グラム重以上の耐切創性を有する耐切創性耐熱性ポリマー繊維であり、少なくとも1本の第1の糸は、さらに、耐切創性耐熱性ポリマー繊維を含むシースと、無機繊維を含むコアとを有するシース/コア構造を持つ。優れた耐切創性を要求するか又は必要とする用途の場合には、好ましくは少なくとも1本の無機繊維が糸に加えられる。シース/コア構造が使用される理由は、シースのステープル繊維が、被覆材を提供し、コア内の無機フィラメントを皮膚との直接の摩耗接触から保護することで、シース/コア糸を含む生地の快適性を向上させるためである。
【0033】
いくつかの実施形態では、無機繊維が少なくとも1本の第1の糸の中に存在する場合、無機繊維は、第1の糸の総重量の15~40重量%の量で存在する。同様に、無機繊維が存在する場合、これらのシース-コアの第1の糸の中の耐熱性ポリマー繊維の最大量は、第1の糸の総重量を基準として85重量%である。いくつかの好ましい実施形態では、シース/コア糸は、シース中に60~80重量%の耐熱性ポリマー繊維を有し、コア中に20~40重量%の有機繊維を有する。好ましくは、コアの無機繊維はスチール又はタングステンである。好ましくは、コア内の繊維は1本以上の連続フィラメントとして存在する。
【0034】
シース繊維は、無機フィラメントコアの周囲に巻き付けるか、又は紡績することができる。具体的には、これは、COTSON技術を利用するものなどの従来のプロセスの改良を含む従来のリング紡績;DREF紡績のようなコアスパン紡績;Murata(現Muratec)のジェット様紡績によるいわゆるコア挿入を用いたエアジェット紡績;オープンエンド紡績;などの公知の手段によって達成することができる。好ましくは、ステープル繊維は、無機フィラメントコアの周りに、コアを被覆するのに十分な密度で固められる。被覆の程度は糸の紡績のために使用されるプロセスによって異なり、例えば、DREF紡績(例えば米国特許第4,107,909号明細書、同第4,249,368号明細書、及び同第4,327,545号明細書に開示)などのコアスパン紡績では、リング紡績よりも良好な被覆率が得られる。従来のリング紡績では中心コアの部分的な被覆しか得られないが、部分的な被覆であっても十分なシース/コアの被覆を得ることができる。シースは、他の材料による耐切創性の低下を許容できる範囲で、他の材料の繊維をある程度含むこともできる。
【0035】
第1の糸のこの実施形態におけるコアとしての少なくとも1本の無機フィラメントの組み込みは、例えばその最も単純な実際の利用においては、耐熱性耐切創性繊維及び任意選択的な非耐熱性繊維の粗紡糸、スライバー、又は集合体をドラフトロールのセットに通し、単糸へとリング撚りされることになるドラフトされた繊維塊を形成することによって達成することができる。少なくとも1本の無機フィラメントは、典型的には、ボビンから一組のフィードロールを通って供給され、続いて最終セットのドラフトローラーの前にステープル繊維に供給される。無機コアフィラメントはエラストマーではないため、糸に挿入する際に過剰な張力を加える必要がなく、従来使用されているようにシース繊維とコアのいずれかに十分な張力をかけるだけでよい。
【0036】
シース/コア糸の形態の少なくとも1本の第1の糸は、通常、100~5000dtexのシース/コア糸総線密度を有する無機フィラメントを15~50重量%含む。無機繊維を含むコアは、単一のフィラメントであっても又はマルチフィラメントであってもよく、好ましくは、具体的な用途又は切創からの保護の程度の要求又は希望に応じて、単一の金属フィラメント又は複数の金属フィラメントである。金属フィラメントとは、ステンレス鋼、銅、アルミニウム、青銅、タングステンなどの延性金属、又は一般に「マイクロスチール」として知られている金属繊維構造から作られたフィラメント又はワイヤーを意味する。ステンレス鋼が好ましい金属である。金属フィラメントは、一般的には連続したワイヤーである。有用な金属フィラメントは直径1~150μmであり、好ましくは直径25~75μmである。
【0037】
いくつかの実施形態では、無機繊維はガラスフィラメントである。これは、例えば110dtex(100デニール)のガラスフィラメントなどの1本以上のガラスフィラメントであってよい。ただし、ガラスは金属よりも線密度当たりの耐切創性が低く、また糸が手袋や袖などの生地が皮膚と接触する場所で使用される場合に皮膚刺激を最小限に抑えるためにはガラスがステープル繊維シースによって十分に覆われていることの方がはるかに重要であるため、ガラスはあまり好ましくない。したがって、多くの実施形態では、無機繊維は金属フィラメントである。
【0038】
繰り返しになるが、これらのシース/コア糸について、耐切創性耐熱性ポリマー繊維は、先に定義した耐熱性ポリマー繊維と先に定義した耐切創性繊維の両方であることが理解される。また、少なくとも1本の第1の糸は、本明細書で定義される耐熱性ポリマー繊維であるが、本明細書で定義される耐切創性繊維ではない繊維を含むことができることも理解される。表2は、少なくとも1本の第1の糸の中の耐熱性(CH-HR)ポリマー繊維の合計と無機フィラメントの合計の可能なパーセント割合に関する、選択された例示的な組成を与える指針を示しており、さらに、非切耐熱性(非CR-HR)ポリマー繊維と耐切創性耐熱性(CH-HR)ポリマー繊維の可能な量を示す可能なパーセント割合を示している。
【0039】
【表2】
【0040】
少なくとも1本の第2の糸は、ハロゲン化自己消火性ステープル繊維のシースと、少なくとも1本の連続エラストマーフィラメントを含むコアとを有するシース/コア構造を有し、第2の糸の総重量を基準として、少なくとも1本の第2の糸の60~95重量%がハロゲン化自己消火性繊維であり、ハロゲン化自己消火性繊維は少なくとも1本の連続エラストマーフィラメントと接触しており、第2の糸は無機繊維を含まないか、又は実質的に含まない。
【0041】
少なくとも1本の第2の糸はシース/コア構造を有し、ハロゲン化自己消火性ステープル繊維のシースが少なくとも1本の連続エラストマーフィラメントのコアと接触してそれを被覆している。ハロゲン化自己消火性ステープル繊維は、少なくとも1本の連続エラストマーフィラメントのコアに活性な消火被覆材を提供すると考えられる。これは、コアの「構造的遮蔽」を提供するカバー繊維、すなわち炎にさらされたときに単に炭化してその場に留まり、その結果炎と弾性コアとの間に構造的な障壁を提供するカバー繊維とは異なる。その代わりに、ハロゲン化自己消火性ステープル繊維のシースは、炎のような高い熱流束の存在下で分解し、局所的な酸素にとって代わるハロゲンガスを糸から放出し、少なくとも1本の連続エラストマーフィラメントのコアの燃焼を妨げる。したがって、ハロゲン化自己消火性ステープル繊維は、コアを被覆するだけでなく、コアと直接接触して、少なくとも1本の連続エラストマーフィラメントのコアの表面から酸素を局所的に追い出す必要があると考えられる。
【0042】
ハロゲン化自己消火性ステープル繊維のシースは、少なくとも1本の連続エラストマーフィラメントの周囲に巻き付けるか、又は紡績することができる。これは、COTSON技術を利用するものなどの従来のプロセスの改良を含む従来のリング紡績;DREF紡績のようなコアスパン紡績;Murata(現Muratec)のジェット様紡績によるいわゆるコア挿入を用いたエアジェット紡績;オープンエンド紡績;などの公知の手段によって達成することができる。好ましくは、ステープル繊維は、少なくとも1本の連続エラストマーフィラメントのコアの周りに、コアを被覆するのに十分な密度で固められる。被覆の程度は糸の紡績のために使用されるプロセスによって異なり、例えば、DREF紡績(例えば米国特許第4,107,909号明細書、同第4,249,368号明細書、及び同第4,327,545号明細書に開示)などのコアスパン紡績では、リング紡績よりも良好な被覆率が得られる。従来のリング紡績では中心コアの部分的な被覆しか得られないが、本明細書では部分的な被覆であっても可能なシース/コア構造とみなされる。
【0043】
ハロゲン化自己消火性ステープル繊維の消火効果は、第2の糸の総重量を基準として少なくとも1本の第2の糸の60~95重量%がハロゲン化自己消火性繊維である場合に適切であると考えられる。いくつかの実施形態では、第2の糸の総重量を基準として少なくとも1本の第2の糸の80~95重量%がハロゲン化自己消火性繊維であることが望ましい。シースには、他の材料による消火効果の低下が許容できる程度まで、他の材料の繊維をある程度含むこともできる。
【0044】
ハロゲン化自己消火性繊維には、ハロゲン化ポリマーから製造されるものが含まれる。1つの特に好ましいハロゲン化自己消火性繊維は、モダクリルポリマーから製造された繊維である。「モダクリルポリマー」とは、好ましくはポリマーが30~70重量%のアクリロニトリルと70~30重量%のハロゲン含有ビニルモノマーとを含むコポリマーであることを意味する。ハロゲン含有ビニルモノマーは、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデンなどから選択される少なくとも1種のモノマーである。
【0045】
いくつかの実施形態では、モダクリルコポリマーは、塩化ビニリデンと組み合わされたアクリロニトリルのものである。いくつかの実施形態では、モダクリルコポリマーは、さらにアンチモン酸化物又はアンチモン酸化物類を有する。いくつかの好ましい実施形態において、モダクリルコポリマーは、1.5重量パーセント未満の酸化アンチモンを有するか、又はコポリマーは、完全にアンチモンを含まないかのどちらかである。製造中にコポリマーに添加されるあらゆるアンチモン化合物の量を制限するか又は完全に排除することによって、非常に低いアンチモン含有率のポリマー及びアンチモンを含まないポリマーを製造することができる。この形式で改質できるものを含む、モダクリルポリマーのための代表的なプロセスは、2重量%の三酸化アンチモンを含む米国特許第3,193,602号明細書;少なくとも2重量%、好ましくは8重量%を超えない量で存在する様々な酸化アンチモンを用いて製造される米国特許第3,748,302号明細書;及び8~40重量%のアンチモン化合物を含む米国特許第5,208,105号明細書及び同第5,506,042号明細書に開示されている。いくつかの実施形態において、モダクリルポリマーは、少なくとも26のLOIを有する。1つの好ましい実施形態では、モダクリルポリマーは、少なくとも26のLOIを有しながらもアンチモンを含まない。
【0046】
少なくとも1本の第2の糸の中のハロゲン化自己消火性ステープル繊維は、好ましくは約2~9cm、好ましくは約3.5~6cmの長さを有するステープル繊維である。少なくとも1本の第2の糸の中のハロゲン化自己消火性ステープル繊維は、好ましくは5~25μmの直径と0.5~7dtexの線密度とを有するステープル繊維である。
【0047】
生地は、ハロゲン化自己消火性ステープル繊維のシースと、少なくとも1本の連続エラストマーフィラメントを含むコアとを有するシース/コア構造を持つ少なくとも1本の第2の糸を含む。ハロゲン化自己消火性繊維は、少なくとも1本の連続エラストマーフィラメントと接触しており、エラストマーフィラメントの表面全体がステープル繊維シースによって実際に完全に覆われる必要性が排除される。
【0048】
いくつかの実施形態では、糸が弛緩した状態で顕微鏡で見たときに、すなわちシース-コア糸に張力がかかっていないときに見たときに、好ましくはコアの少なくとも90%がシースで被覆されている。コアの実際の被覆率は、糸に張力がかけられている程度によって異なり得る。ただし、モダクリルがエラストマーコアと接触している限り、モダクリルは遮蔽効果を発揮すると考えられる。
【0049】
いくつかの実施形態では、少なくとも1本の第2の糸の総重量の5~40重量%が、少なくとも1本の連続エラストマーフィラメントである。いくつかの実施形態では、リング紡績された第2の糸は、少なくとも1本のエラストマーフィラメントと、ハロゲン化自己消火性ステープル繊維の部分的被覆とを含むコアを有する。いくつかの好ましい実施形態では、エラストマーフィラメントのコアは、100~1500dtexの総シース/コア単糸線密度の5~25重量%を構成する。
【0050】
本明細書で使用される「少なくとも1本の連続エラストマーフィラメントを含むコア」は、エラストマーのフィラメントから形成されるか、又はエラストマーのフィラメントを含むコアを意味し、このコアは、好ましくは、その元の長さの少なくとも2倍にまでも繰り返し引き伸ばした後に、その元の長さに迅速に戻る能力を有する。好ましいエラストマーコアには、スパンデックス又はエラスタンなどのポリウレタンベースの糸が含まれるが、概して伸縮性と回復性とを有する任意の繊維を使用することができる。適切な周知のエラストマー糸には、商品名Dorlastan(登録商標)及びLycra(登録商標)として販売されている製品も含まれる。
【0051】
好ましい少なくとも1本の連続エラストマーフィラメントはスパンデックス繊維である。本明細書で使用される場合、「スパンデックス」は、その通常の定義を有する、すなわち、繊維形成性物質が少なくとも85重量%のセグメント化ポリウレタンから構成される長鎖合成ポリマーである製造された繊維である。スパンデックスタイプのセグメント化ポリウレタンの中でも、例えば米国特許第2,929,801号明細書;同第2,929,802号明細書;同第2,929,803号明細書;同第2,929,804号明細書;同第2,953,839号明細書;同第2,957,852号明細書;同第2,962,470号明細書;同第2,999,839号明細書;及び同第3,009,901号明細書に記載されているものが挙げられる。
【0052】
スパンデックスエラストマーフィラメントを作製するための一部のプロセスでは、押出し直後にスパンデックスフィラメントを固化させるために融合ジェット(coalescing jets)が使用される。乾式紡糸スパンデックスフィラメントが押出し直後に粘着性であることも周知である。このような粘着性フィラメントの群を一緒にすることと、融合ジェットを使用することとの組み合わせは、融合マルチフィラメント糸を生成し、次いでこれは典型的には巻き取り前にシリコーン又は他の仕上げ剤でコーティングされて、パッケージでのくっつきを防止する。実際にはそれらの長さに沿って互いに接着する多数のとても小さい個別のフィラメントである、このようなフィラメントの融合群化は、同じ線密度のスパンデックスの単一フィラメントに対して多くの点で優れている。
【0053】
エラストマー単糸の中のエラストマーフィラメントは、好ましくは連続フィラメントであり、1本以上の個別のフィラメント又は1本以上のフィラメントの融合群化した形態で第2の糸の中に存在し得る。しかしながら、好ましいエラストマー単糸では、フィラメントの融合群を1つのみ使用することが好ましい。1本以上の個別のフィラメント又は1つ以上の融合群化フィラメントとして存在するかどうかにかかわらず、緩和状態でのエラストマーフィラメントの全体線密度は、一般に17~560dtex(15~500デニール)であり、好ましい線密度範囲は、44~220dtex(40~200デニール)である。
【0054】
少なくとも1本の連続エラストマーフィラメントを、最終的な第2の糸の速度に対して遅い搬送速度を使用することによりステープル繊維と組み合わせる前に、少なくとも1本の連続エラストマーフィラメントを延伸又は引き伸ばすことによって、張力下で第2の糸に少なくとも1本の連続エラストマーフィラメントを組み込むことが好ましい。この延伸は、連続エラストマーフィラメントの伸縮率として説明することができ、これは、最終的な第2の糸速度を連続エラストマーフィラメントの搬送速度で割ったものである。
【0055】
典型的な伸縮率は1.5~5.0であり、1.5~3.50が好ましい。伸縮率が低いと弾性回復性が低くなる一方で、伸縮率が非常に高いと単糸の加工が難しくなり、生地がきつすぎて不快になる。最適な伸縮率は、エラストマーコアの重量%含有率にも依存する。テンション装置を使用してエラストマー繊維に張力をかけたり引き伸ばすこともできるものの、張力及び伸縮の再現及び制御が難しいため、あまり好ましくない。最適な伸縮率は、最終的には、生地に望まれるフィット感や感触に基づいて、それぞれの生地について決定される。
【0056】
少なくとも1本の連続エラストマーフィラメントをハロゲン化自己消火性ステープル繊維の第2の糸に組み込むことは、例えばその最も単純な実際の利用においては、ハロゲン化自己消火性ステープル繊維の粗紡糸、スライバー、又は集合体をドラフトロールのセットに通し、単糸へとリング撚りされることになるドラフトされた繊維塊を形成することによって達成することができる。少なくとも1本の連続エラストマーフィラメントは、典型的には、ボビンから一組のフィードロールを通って供給され、続いて最終セットのドラフトローラーの前にステープル繊維に供給される。ドラフトローラーの表面速度に対するフィードローラーの相対的な表面速度の遅さは、従来技術を使用して最終的なリング撚りされた単糸の弾性伸縮と張力の量を決定するために増減される。
【0057】
いくつかの実施形態では、少なくとも1本の第2の糸のシースは、本明細書で前述したような耐熱性ポリマー繊維をさらに含むことができる。いくつかの別の実施形態では、少なくとも1本の第2の糸のシースは、本明細書で前述したような耐切創性耐熱性ポリマー繊維をさらに含むことができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、少なくとも1本の第2の糸のシースは、耐火性繊維をさらに含むことができる。「耐火」繊維とは、その生地のみから作られた生地が、ASTM D6143-99の垂直燃焼試験による炭化長さが4インチ以下であり、残炎時間が2秒以下であることを意味する。適切な耐火性繊維としてはアラミド繊維が挙げられ、メタアラミド繊維が特に好ましい。好ましいメタアラミドはポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)である。潜在的に有用な耐火性繊維としては、メタアラミド、ポリアミドイミド、難燃処理(FR)セルロース、FRコットン、FRリヨセル、又はそれらの混合が挙げられる。いくつかの実施形態では、少なくとも1本の第2の糸は、少なくとも1本の第2の糸の中のポリマー繊維の総重量を基準として好ましくは5重量%~35重量%までの耐火性繊維を有する。また、いくつかの実施形態では、少なくとも1本の第1の糸も、少なくとも1本の第1の糸の中のポリマー繊維の総重量を基準として好ましくは5重量%~35重量%までの耐火性繊維を有する。
【0059】
第2の糸及び最終生地が本明細書で説明される性能基準を満たす限り、任意の数の繊維を第2の糸に含めることができる。
【0060】
第2の糸に使用される場合、耐熱性ポリマー繊維、耐切創性耐熱性ポリマー繊維、又は耐火性繊維は、好ましくは、約2~20cm、好ましくは約3.5~6cmの長さを好ましくは有するステープル繊維である。また、第2の糸に使用される場合、耐熱性ポリマー繊維、耐切創性耐熱性ポリマー繊維、及び耐火性繊維は、好ましくは、5~25μmの直径と、0.5~7dtexの線密度とを好ましくは有するステープル繊維である。
【0061】
いくつかの実施形態では、少なくとも1本の第2の糸のシースは、帯電防止繊維として当該技術分野で知られているもの、又は糸若しくは得られる生地における電荷の蓄積を低減する能力を有する繊維をさらに含むことができる。いくつかの好ましい実施形態では、少なくとも1本の第2の糸のシースは、少なくとも1本の第2の糸の総重量を基準として少なくとも1~5重量%の帯電防止繊維を含む。好ましい帯電防止繊維は、炭素コーティング又は炭素粒子として繊維内に炭素が存在することによって機能する繊維であり;特に帯電防止繊維は、電荷の蓄積を除去するのに有用であるが、実用的な意味では導電性があるとはみなされない。いくつかの実施形態では、炭素粒子を含むアラミド繊維が好ましい。
【0062】
好ましい実施形態では、第2の糸は無機繊維を含まないか、又は実質的に含まない。無機繊維の耐切創性の利益は第1の糸によって得られるため、意図される用途の大部分では第2の糸に無機繊維を添加する必要性が排除される。
【0063】
いくつかの実施形態では、合撚糸は、少なくとも第1の糸と少なくとも第2の糸とから形成される。合撚糸は、少なくとも2本の別個の単糸を撚り合わせることによって製造される。「少なくとも2本の個別の単糸を撚り合わせる」という語句は、一方の糸が他方の糸を完全には被覆せずに、2本の単糸が一緒に撚られることを意味する。このことは、理想的には得られる被覆された糸の表面に第1の単糸のみが露出するように第1の単糸が第2の単糸の周囲に実質的又は完全に巻き付けられた被覆された又は巻きつけられた糸から、合撚糸を区別する。
【0064】
好ましい一実施形態では、合撚糸は少なくとも2本の単糸から作られ、第1の単糸は、(a)第1の糸の総重量を基準として少なくとも50重量%の耐熱性ポリマー繊維を含む少なくとも1本の第1の糸であり、少なくとも1本の第1の糸の中に存在するポリマー繊維の少なくとも30重量%は、ASTM F2992-15による500グラム重以上の耐切創性を有する耐切創性耐熱性ポリマー繊維であり、少なくとも1本の第1の糸は、シース/コア構造をさらに有し、シースは耐切創性耐熱性ポリマー繊維を含み、コアは無機繊維を含み;第2の単糸は、(b)ハロゲン化自己消火性ステープル繊維のシースと、少なくとも1本の連続エラストマーフィラメントを含むコアとを有するシース/コア構造を持つ少なくとも1本の第2の糸であり、第2の糸の総重量を基準として少なくとも1本の第2の糸の60~95重量%がハロゲン化自己消火性繊維であり、ハロゲン化自己消火性繊維が少なくとも1本の連続エラストマーフィラメントと接触しており、第2の糸は無機繊維を含まないか、又は実質的に含まない。単糸のそれぞれは多少の撚りを有していてもよい。
【0065】
いくつかの実施形態では、2本の単糸から作られた合撚糸は、200~3000dtexの総線密度を有する。単糸のいずれかの個々のステープル繊維は、0.5~7dtexの線密度を有することができ、好ましい線密度範囲は1.5~3dtexである。合撚糸、及びそれらの合撚糸を構成する単糸は、糸又はその糸から作られた生地の機能又は性能が望まれる用途に対して損なわれない限り、他の材料を含むことができる。
【0066】
合撚糸は、Prickettの米国特許第6,952,915号明細書に開示されているプロセスによって単糸から製造することができ、合撚糸はそこに開示されている広範囲の合撚を有することができる。
【0067】
その後、合撚糸を他の同じ又は異なる合撚糸と組み合わせて糸束を形成して生地を形成することができ、或いは望みの生地の要件に応じて個々の合撚糸を使用して生地を形成することができる。例えば、2本以上の記載の合撚糸を組み合わせて、撚りの有無にかかわらず編み機に供給することができる糸束を形成することができる。或いは、糸束は、最終生地に望みの特性を付与するために、1本以上の異なる単糸を用いた1本以上の上記合撚糸を用いて製造することができる。最新の編み機は複数の合撚糸を供給して生地を編むことができるため、機械に供給される合撚糸の束が撚りを有する必要はないものの、必要に応じて束に撚りを加えることができる。
【0068】
無機コアがない場合に好ましい合撚糸に使用される少なくとも第1の糸は、好ましくは、リング精紡された420dtex(380デニール、綿番手14に相当)の単糸である。この糸は、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)(PPD-T)ステープルシースを有し、PPD-Tは、3.8cm(1.5インチ)のカット長及びフィラメント当たり1.7dtex(フィラメント当たり1.5デニール)のフィラメント密度を有する。
【0069】
好ましい合撚糸に使用される少なくとも1本の第2の糸は、リング精紡された330dtex(295デニール、綿番手18に相当)の単糸である。この糸は、エラストマーコアフィラメントを少なくとも部分的に被覆するモダクリルステープルシースを有しており、モダクリルステープルは、4.8cm(1.89インチ)のカット長及びフィラメント当たり1.7dtex(フィラメント当たり1.5デニール)のフィラメント密度を有する。エラストマーコアは、3.0倍の伸縮率(約200パーセントの伸び)を有する78dtex(70デニール)のスパンデックス融合フィラメント糸である。いくつかの好ましい実施形態では、第2の糸の約92重量%がモダクリルステープルから構成され、第2の糸の8重量%がエラストマーコアである。
【0070】
本発明は、少なくとも1本の第1の糸と1本の第2の糸とを含む糸又は糸の束から製造された耐切創性の織り生地又は編み生地にも関する。本発明は、さらに、合撚糸又は合撚糸を含む糸の束から製造された耐切創性の織り生地又は編み生地であって、合撚糸が本明細書に記載の少なくとも1本の第1の糸と1本の第2の糸とを含む、耐切創性の織り生地又は編み生地に関する。
【0071】
具体的には、本発明は、少なくとも2本の単糸から製造された合撚糸から作製された耐切創性の織り生地又は編み生地に関し、第1の単糸は、(a)第1の糸の総重量を基準として少なくとも50重量%の耐熱性ポリマー繊維を含む少なくとも1本の第1の糸であり、少なくとも1本の第1の糸の中に存在するポリマー繊維の少なくとも30重量%は、ASTM F2992-15による500グラム重以上の耐切創性を有する耐切創性耐熱性ポリマー繊維であり;第2の単糸は、(b)ハロゲン化自己消火性ステープル繊維のシースと、少なくとも1本の連続エラストマーフィラメントを含むコアとを有するシース/コア構造を持つ少なくとも1本の第2の糸であり、第2の糸の総重量を基準として少なくとも1本の第2の糸の60~95重量%がハロゲン化自己消火性繊維であり、ハロゲン化自己消火性繊維が少なくとも1本の連続エラストマーフィラメントと接触しており、第2の糸は無機繊維を含まないか、又は実質的に含まず;生地は、NFPA-2112-2018に従って試験した場合に、2秒以下の最長残炎時間と5重量%以下の重量減少を有する。
【0072】
いくつかの実施形態では、第1の単糸は、耐切創性耐熱性ポリマー繊維を含むシースと、無機繊維を含むコアとを有するシース/コア構造をさらに有する少なくとも1本の第1の糸を含む。
【0073】
少なくとも1本の第1の糸と少なくとも1本の第2の糸は、糸と生地の両方において相乗的に機能する。糸に組み込まれた少なくとも1本の連続エラストマーフィラメントは、改善された伸張性及び回復性を提供する一方で、耐熱性ステープル繊維は火の中で構造を提供し、耐熱性耐切創性有機ステープル繊維及び無機フィラメント(存在する場合)は、糸と生地に優れた耐切創性を提供する。そのような糸から作られた生地は、柔らかく、快適であり、摩耗せず、耐切創性を有する。
【0074】
第1の糸を第2の糸と合撚りすることは、弛緩したときにエラストマー単糸がループ状にならずに伸長状態を保持するのに役立つため、好ましい。しかしながら、シース/コアエラストマー単糸が他の単糸との束で(合撚りなしで)張力制御が良好な編み機又は織り機に同時に供給される場合、許容可能な生地を製造することができる。束が合撚糸から構成されている場合、編む際及び織る際の糸の張力制御はそれほど重要ではない。
【0075】
好ましい生地は編み生地であり、任意の適切なニットパターンが許容される。耐切創性及び快適性は編みのきつさに影響され、そのきつさは任意の具体的な要求を満たすように調節することができる。多くの耐切創物品における耐切創性と快適性の非常に効果的な組み合わせは、例えばシングルジャージーニットパターン及びテリーニットパターンで見出されている。生地は、約4~30oz/yd2、好ましくは6~25oz/yd2の坪量を有し、生地が坪量範囲の上限にあると、より高い防寒性及び切創からの保護を提供する。
【0076】
試験方法
残炎及び重量減少は、NFPA2112-2018「Standard on Flame-Resistant Clothing for Protection of Industrial Personnel Against Short-Duration Thermal Exposures from Fire」、具体的には同規格のセクション8.8に概説されている手順に従って決定した。
【0077】
本明細書で説明される「耐熱性ポリマー繊維」の判定は、ASTM E2105-2016-Standard Practice for General Techniques of Thermogravimetric Analysis (TGA) Coupled With Infrared Analysis(TGA/IR)を使用することによって行うことができる。合成有機ポリマーが元の繊維重量の90パーセントを保持しているかどうかの分析は、サンプルを空気中で毎分20℃の速度で500℃まで加熱することによって行われる。
【実施例
【0078】
合撚糸から製造されるニット
合撚糸及びその糸から製造されたニットを実施例1、2、3、及び比較例Aで例示し、表6にまとめた。
【0079】
実施例1
合撚エラストマー糸は、第1の糸と第2の糸を合撚りすることによって製造した。
第1の糸は、パラアラミド繊維のシースと50ミクロンのステンレス鋼ワイヤーコアとを有する14綿番手のシース-コア糸であり、リング精紡機で紡糸した。パラアラミド繊維は、2インチのポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)ステープルであった。
【0080】
第2の糸は、70デニールのスパンデックスコアの周囲に2インチのモダクリルステープルをリング紡績機でコア紡績することによって製造された18綿番手のシース-コア糸であった。スパンデックスコアは、シース-コア糸に組み込まれる(紡糸される)際に3倍に引き伸ばされた。
【0081】
第1の糸と第2の糸を合撚りすることによって製造された得られた合撚弾性糸は、総綿番手が16/2、すなわち675デニールであった。糸成分の相対量を表3に示す。
【0082】
得られた合撚弾性糸をShima-Seikiの手袋編み機で13ゲージのスリーブに編んだ。得られたスリーブは、優れた手触りと形状フィット性を有していた。得られたスリーブからの生地サンプルに対し、NFPA-2112-2018規格に詳述されている耐火手袋試験方法に従って燃焼試験を行った。得られた伸縮性のある生地は、試験中に4.8%の重量が消費され、残炎が0秒であることが判明した。これは規格で許容される2秒の最長残炎要件と5%の重量減少制限を下回っていた。
【0083】
【表3】
【0084】
実施例2
以下の点を除いて、実施例1の合撚弾性糸を繰り返した。
【0085】
第1の糸は、パラアラミド繊維シースと、35ミクロンのステンレス鋼ワイヤーコア製のステンレス鋼ワイヤーコアとを有する26綿番手の糸であった。第2の糸は、モダクリルシースと紡績中に3倍に引き伸ばされた40デニールのスパンデックスコアとを有する32綿番手の糸であった。
【0086】
実施例1と同様に、第1の糸と第2の糸を合撚りすることによって製造された得られた合撚弾性糸は、総綿番手が29/2、すなわち371デニールであった。糸成分の相対量を表4に示す。
【0087】
得られた合撚弾性糸をShima-Seikiの手袋編み機で18ゲージのスリーブに編んだ。得られたスリーブは、優れた形状フィット性を有していた。得られたスリーブからの生地サンプルを洗浄して編立油と仕上げ材を除去し、これに対してNFPA-2112-2018規格に詳述されている耐火手袋試験方法に従って燃焼試験を行った。得られた伸縮性のある生地は、試験中に3.3%の重量が消費され、残炎が0秒であることが判明した。これは規格で許容される2秒の最長残炎要件と5%の重量減少制限を下回っていた。
【0088】
【表4】
【0089】
実施例3
以下の点を除いて、実施例1の合撚弾性糸を繰り返した。
【0090】
第1の糸は、パラアラミド繊維のシースと、紡績中に3倍に引き伸ばされた45ミクロンのステンレス鋼ワイヤーコアで製造されたステンレス鋼製ワイヤーコアとを有する19.5綿番手の糸であった。第2の糸は、40デニールのスパンデックスコアを有する32綿番手のシース-コア糸であった。ただし、シースはモダクリルステープル繊維82重量%とカット長2インチのメタアラミドステープル繊維ブレンド10重量%とのブレンドであった。具体的には、メタアラミドブレンドは、93重量%のポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)ステープル繊維、5重量%のポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)ステープル、及び2重量%のカーボンコアナイロン帯電防止繊維を含んでいた。
【0091】
実施例1と同様に、第1の糸と第2の糸を合撚りすることによって製造された得られた合撚弾性糸は、総綿番手が24/2、すなわち439デニールであった。糸成分の相対量を表5に示す。
【0092】
得られた合撚弾性糸をShima-Seikiの手袋編み機で18ゲージのスリーブに編んだ。得られたスリーブは、優れた形状フィット性を有していた。
【0093】
製造したスリーブの生地サンプルを洗浄して編立油と仕上げ材を除去し、その後これに対してNFPA-2112-2018規格に詳述されている耐火手袋試験方法に従って燃焼試験を行った。得られた伸縮性のある生地は、試験中に3.9%の重量が消費され、残炎が0秒であることが判明した。これは規格で許容される2秒の最長残炎要件と5%の重量減少制限を下回っていた。
【0094】
製造したスリーブの別の生地サンプルに対し、EN407:2020規格に詳述されている耐火手袋試験方法に従って燃焼試験を行った。得られた伸縮性のある生地は、炎にさらしてから3秒及び15秒後に、残炎が0秒であり、残じんが0秒であることが判明した。これは規格に記載されている最高ランクを達成するための2秒の最長残炎要件と5秒の最長残じん要件を下回っていた。
【0095】
【表5】
【0096】
比較例A
実施例3のものと同様の比較の合撚り弾性糸を製造した。ただし、パラアラミド繊維シースとステンレス鋼ワイヤーコアとを有する第1の糸は、1.5インチのポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)ステープルと45ミクロンのステンレス鋼ワイヤーコアを用いて製造した。ここでも同様に32綿番手のシース-コア糸である第2の糸は、40デニールのスパンデックスコアの周りにコアスパンされた、カット長1.5インチのナイロンステープルのみのシースを有していた。
【0097】
得られた24/2番手の合撚糸をShima-Seikiの手袋編み機で18ゲージのスリーブに編んだ。得られたスリーブは、優れた形状フィット性を有していた。
【0098】
しかしながら、製造されたサンプルに対して、EN407:2020規格に詳述されている耐火手袋試験方法に従って燃焼試験を行った。得られた伸縮性のある生地は、炎にさらしてから3秒後に、残炎が少なくとも25秒であることが判明した。これは規格に記載されている最低ランクを達成するための最長残炎要件である20秒よりも長かった。
【0099】
わずか3秒間の火炎曝露で過度の残炎が発生したため、EN407試験の15秒曝露及びNFPA-2112試験の12秒曝露についてのその後の試験は両方行わなかった。
【0100】
【表6】
【0101】
2本の平行な経糸の交編みにより製造されるニット
個々の経糸又は個々の経糸の束を編み機に供給して糸を交編することで製造されたニットが実施例4及び比較例Bに例示されており、表4にまとめられている。
【0102】
実施例4
第1の経糸(2本撚りのパラアラミドリング紡績糸であり、各撚糸は2インチのポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)ステープル糸から製造されており、2本撚り糸のそれぞれは16綿番手である)を、実施例1の18綿番手のシース-コア糸である第2の経糸と交編した。
【0103】
次いで、この2つの経糸を13ゲージ編み機でスリーブへと交編した。得られたスリーブは、優れた手触りと形状フィット性を有していた。
【0104】
製造したスリーブの生地サンプルを洗浄して編立油と仕上げ材を除去し、これに対してNFPA-2112-2018規格に詳述されている耐火手袋試験方法に従って燃焼試験を行った。得られた伸縮性のある生地は、試験中に2.5%の重量が消費され、残炎が0秒であることが判明した。これは規格で許容される2秒の最長残炎要件と5%の重量減少制限を下回っていた。
【0105】
比較例B
2インチのモダクリルステープルから製造した12綿番手のモダクリルリング紡績糸の経糸を、実施例1の18綿番手のシース-コア糸の経糸と交編した。この2つの経糸を13ゲージ編み機でスリーブへと交編した。得られたスリーブは、優れた手触りと形状フィット性を有していた。
【0106】
製造したサンプルを洗浄して編立油と仕上げ材を除去し、これに対してNFPA-2112-2018規格に詳述されている耐火手袋試験方法に従って燃焼試験を行った。得られた伸縮性のある生地は、試験中に5.8%の重量が消費され、残炎が2.3秒であることが判明した。これは規格で許容される2秒の最長残炎要件と5%の重量減少制限を上回っていた。
【0107】
【表7】
【0108】
緯糸挿入により製造されるニット
緯糸挿入により糸を交編することによって製造したニットが実施例3並びに比較例B及びCに例示されており、表4にまとめられている。
【0109】
実施例5
第1の経糸(2本撚りのパラアラミドリング紡績糸であり、各撚糸は2インチのポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)ステープル糸から製造されており、2本撚り糸のそれぞれは16綿番手である)を、第2の経糸(1200デニールのコアスパン繊維と440デニールのスパンデックスコアをリング紡績することによって製造され、糸の紡績プロセス中に3倍に引き伸ばされた、モダクリルシース-スパンデックスコア弾性糸)と交編して、耐火糸を製造した。弾性コア糸の組成は、スパンデックス約12%、モダクリルステープル繊維約88%であった。
【0110】
モダクリルシース-スパンデックスコア弾性糸を3目ごとに挿入する緯糸挿入技術を使用して、第1の経糸と第2の経糸をShima-Seiki横編み機で13ゲージのニット袖口へと交編した。得られたスリーブは、優れた形状フィット性を有していた。
【0111】
製造したサンプルを洗浄して編立油と仕上げ材を除去し、これに対してNFPA-2112-2018規格に詳述されている耐火手袋試験方法に従って燃焼試験を行った。得られた伸縮性のある生地は、試験中に4%の重量が消費され、残炎が0秒であることが判明した。これは規格で許容される2秒の最長残炎要件と5%の重量減少制限を下回っていた。
【0112】
比較例C
実施例5の2本撚りのパラアラミドリング紡績糸の第1の経糸を、異なる第2の経糸と組み合わせた。この第2の経糸は、Supreme Elastic Corporationのポリエステル繊維で包まれ被覆されたゴム弾性コードであり、第1の経糸と第2の経糸を、Shima-Seiki横編み機で伸縮性のある袖口を製造するために交編した。エラストマーコードの組成は、ポリエステル繊維75%、ゴム25%と見積もられた。経糸は、13ゲージのニット袖口の3目ごとにポリエステル繊維で包まれ被覆されたゴム弾性コードを挿入する緯糸挿入技術を使用して交編した。得られたスリーブは、優れた形状フィット性を有していた。
【0113】
製造したスリーブの生地サンプルを洗浄して編立油と仕上げ材を除去し、これに対してNFPA-2112-2018規格に詳述されている耐火手袋試験方法に従って燃焼試験を行った。得られた伸縮性のある生地は、試験中に9%の重量が消費され、残炎が43秒であることが判明した。これは規格で許容される2秒の最長残炎と5%の重量減少の限度を超えていた。
【0114】
比較例D
2インチのモダクリルステープルから製造された、各糸が35綿番手であるリング紡績糸の4つの経糸を、モダクリルシースとスパンデックスコアとを有するシース-コア弾性糸と交編した。シース-コア弾性糸は、440デニールのスパンデックスコアを有する1200デニールのモダクリルステープル糸をリング紡糸することによって製造し、スパンデックスを紡糸中に3倍に引き伸ばすことで、約12%のスパンデックスと88%のモダクリルステープル繊維の組成を有するシース-コア弾性糸を製造した。弾性糸は、手袋編み機で編まれる13ゲージのニットスリーブの3目ごとに緯糸挿入技術を使用して交編した。得られたスリーブは、優れた形状フィット性を有していた。
【0115】
製造したスリーブの生地サンプルを洗浄して編立油と仕上げ材を除去し、これに対してNFPA-2112-2018規格に詳述されている耐火手袋試験方法に従って燃焼試験を行った。得られた伸縮性のある生地は、試験中に10%の重量が消費され、残炎が0秒であることが判明した。これは規格で許容される2秒の最長残炎要件を下回っていたが、5%の重量減少の限度を超えていた。
【0116】
【表8】
【国際調査報告】