(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】次世代二酸化炭素回収のための電気化学的に強化されたプロセス
(51)【国際特許分類】
B01D 53/62 20060101AFI20240403BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20240403BHJP
B01D 53/96 20060101ALI20240403BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20240403BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20240403BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240403BHJP
C07C 271/02 20060101ALN20240403BHJP
【FI】
B01D53/62 ZAB
B01D53/78
B01D53/96
B01D53/14 220
C25B1/04
C25B9/00 A
C07C271/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562893
(86)(22)【出願日】2022-04-15
(85)【翻訳文提出日】2023-10-19
(86)【国際出願番号】 US2022025028
(87)【国際公開番号】W WO2022221665
(87)【国際公開日】2022-10-20
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】シモネッティ, ダンテ
(72)【発明者】
【氏名】ジャスビー, デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】サント, ガウラブ
(72)【発明者】
【氏名】ツェン, イェンウェン
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4H006
4K021
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC01
4D002AC05
4D002AC07
4D002AC10
4D002CA07
4D002DA31
4D002DA32
4D002EA07
4D002GA01
4D002GA02
4D002GA03
4D002GB08
4D002GB09
4D002GB11
4D020AA03
4D020BA16
4D020BA19
4D020BB03
4D020BC03
4D020CB08
4D020DA01
4D020DA02
4D020DA03
4D020DB06
4D020DB07
4D020DB08
4H006AA05
4H006AC56
4H006BE41
4K021AA01
4K021BA02
4K021BB05
4K021CA15
(57)【要約】
本明細書には、電気化学的に強化されたアミンベースのCO
2回収の方法、及びアミンベースのCO
2回収の方法を実行するためのシステムが開示される。本方法及びシステムは、有利には周囲温度で実施することができ、複数のサイクルを通じてアミンを再利用することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CO
2を回収する方法であって、
i)CO
2原料ガスを水溶液中で化学量論的過剰のアミンと反応させてアミン-CO
2錯体を形成し、それによって前記アミン-CO
2錯体を含む溶液を形成すること、
ii)前記アミン-CO
2錯体を含む前記溶液のpHを電気化学的に7未満に調整し、それによって前記アミン-CO
2錯体からCO
2を放出すること、及び
iii)前記放出されたCO
2を濃縮蒸気として収集すること、
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記アミン-CO
2錯体がカルバメートイオンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記pHを調整することが水電解を介して実行される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
調整後の前記溶液の前記pHが約0.5~約6である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
調整後の前記溶液の前記pHが約0.5~約5である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
調整後の前記溶液の前記pHが約0.5~約4である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
調整後の前記溶液の前記pHが約0.5~約3である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
調整後の前記溶液の前記pHが約0.5~約2である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
調整後の前記溶液の前記pHが約0.5~約1.5である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
調整後の前記溶液の前記pHが約5~約6である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記アミンが、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、またはそれらの混合物である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記アミンが第一級アミンまたは第二級アミンである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記アミンが、式Iの構造を有し、
R
xNH
3-x、(I)
式中、Rは、任意に置換されるアルキル、エーテル、及びヒドロキシアルキルから選択され、
xは、1、2、または3であり、
1つ以上のRは、各Nと一緒になって、任意に窒素含有複素環を形成する、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記アミンが、モノエタノールアミン、2-エチルアミノエタノール、2-メチルアミノエタノール、エチレンジアミン、ベンジルアミン、ジエタノールアミン、ピロリジン、モルホリン、2,6-ジメチルモルホリン、モノイソプロパノールアミン、ピペラジン、2-(ジメチルアミノ)エタノール、N-tert-ブチルジエタノールアミン、3-ジメチルアミノ-1-プロパノール、3-(ジメチルアミノ)-1,2-プロパンジオール、2-ジエチルアミノエタノール、3-ジエチルアミノ-1,2-プロパンジオール、3-ジエチルアミノ-1-プロパノール、トリエタノールアミン、1-ジメチルアミノ-2-プロパノール、1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジン、1-ジエチルアミノ-2-プロパノール、3-ピロリジノ-1,2-プロパンジオール、2-(ジイソプロピルアミノ)エタノール、1-(2-ヒドロキシエチル)ピペリジン、2-(ジメチルアミノ)-2-メチル-1-プロパノール、3-ピペリジノ-1,2-プロパンジオール、3-ジメチルアミノ-2,2-ジメチル-1-プロパノール、3-ヒドロキシ-1-メチルピペリジン、N-エチルジエタノールアミン、1-エチル-3-ヒドロキシピペリジン、及びそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記アミンが、
【化1】
またはそれらの混合物である、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記アミンが、
【化2】
である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記アミンが、
【化3】
である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記アミン水溶液中の前記アミンの濃度が約10%~約50%v/vである、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記アミンの前記濃度が約15%~約40%v/vである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記アミンの前記濃度が約20%~約30%v/vである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記CO
2原料ガスが工業源からの流出物である、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記工業源からの前記ガスが、約1~約12%v/vのCO
2を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記CO
2原料ガスが大気源からのものである、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記pHを調整することが100℃未満の温度で行われる、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記アミン水溶液を再生及び収集し、前記再生されたアミンを前記方法の工程(i)で使用することをさらに含む、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記濃縮蒸気が約2%~約99%のCO
2を含む、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
CO
2原料ガスからCO
2を回収するためのシステムであって、
アミン水溶液を収容するように構成されたCO
2吸収チャンバであって、CO
2原料ガス入口及び濃縮CO
2蒸気出口を有する、前記CO
2吸収チャンバと、
前記CO
2吸収チャンバと流体連通し、前記CO
2吸収チャンバからCO
2が豊富なアミン水溶液を受け取るように構成された電気化学セルと、を備え、前記電気化学セルは、
アノードチャンバに配置されたアノードと、
カソードチャンバに配置されたカソードと、
前記アノードチャンバとCO
2が豊富なアミン水溶液を受け入れるように構成された第1のリザーバーとの間に配置された第1のカチオン交換膜であって、それによりプロトンが前記アノードチャンバから前記第1のリザーバーに流れることができる、前記第1のカチオン交換膜と、
前記第1のリザーバーと塩リザーバーとの間に配置されたアニオン交換膜であって、それによりアニオンが前記塩リザーバーから前記アノードチャンバに向かって流れることができる、前記アニオン交換膜と、
前記塩リザーバーと前記カソードチャンバとの間に配置された第2のカチオン交換膜であって、それによりカチオンが前記塩リザーバーから前記カソードチャンバに向かって流れることができる、前記第2のカチオン交換膜と、
前記電気化学セルと流体連通し、前記第1のリザーバーからCO
2が希薄なアミン水溶液を受け取り、再生されたアミン水溶液を前記CO
2吸収チャンバに送達し、前記カソードチャンバからカソライトを受け取るように構成されたアニオン交換カラムと、
を含む、前記システム。
【請求項28】
濃縮CO
2蒸気出口をさらに備える、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記カソードチャンバと流体連通するH
2出口をさらに含む、請求項27または28に記載のシステム。
【請求項30】
前記アノードチャンバと流体連通するO
2出口をさらに含む、請求項27~29のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項31】
前記電気化学セルが水電解を実行するように構成されている、請求項27~30のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年4月16日に出願された米国仮特許出願第63/175,761号の優先権の利益を主張するものであり、この内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
地球の平均気温の上昇を抑え、気候変動の影響を軽減するには、既存の大気中の二酸化炭素及び現在進行中の二酸化炭素の排出を管理する必要がある。これを現実的に達成するには、次世紀以内に年間10~20GtCO2を大気中から除去する必要があり、大規模に実施できる炭素管理戦略が必要である。現在の最先端のCO2回収技術では、アミンベースの吸収を利用してCO2を除去している。しかし、これらのアミンベースのプロセスでは、回収したCO21トンあたり0.8~5.0MWhの熱エネルギーを使用して、飽和アミン中のCO2が脱着されるのは50%未満である。この高い熱負荷は、(1)大規模な蒸留装置の使用、(2)アミン溶液の低い実用CO2吸収能力(例えば、モノエタノールアミン(MEA)1モルあたり0.3モル未満のCO2)、及び(3)化学分解及び蒸発による溶媒の損失をもたらす。CO2を放出してアミンを再生する既存のアプローチは、溶液を高温(>140℃)に加熱する熱プロセスである。これらの温度では、カルバメートが分解して元のアミン分子が生成され、濃縮された蒸気としてCO2
3、5~6が放出される。しかしながら、熱負荷が大きい(例えば、DAC用途の作業容量0.05モル/モルに対して>5MWh/トンのCO2)3ものでは、このような熱プロセスは経済的に魅力的ではない。さらに、アミンの再生に高温が必要なため、化学分解や蒸発によって溶媒が失われる可能性がある3。これらの要因により、設備投資(CAPEX)が最大50%増加し、運営費(OPEX)が最大25%増加する可能性があり、炭素回収コストの高騰(CO21トンあたり>$100)7~8につながり、アミンベースのプロセスの使用を、化石燃料火力発電所などの点源エミッターに制限させる。
【0003】
これらの要因は、石油化学、製鉄、セメント、直接空気回収(DAC)などの他の業界でのアミンベースのCO2回収の採用も制限しており、経済統合のために小規模及び/またはよりエネルギー効率の高いプロセスが求められている。
【0004】
銅の電気化学は、金属(すなわち、Cu2+イオン)と、カルバメートイオンを分解してCO2を放出するアミンとの間の錯体形成反応を利用して、アミンベースの回収CO2
9~16のために試みられている。11~12、14~16この錯体形成反応はアノードで電気化学的に進行し、Cu金属の酸化によりCu2+イオンが生成され、Cu-アミン錯体は再生されアミンに戻り、カソードでCu2+はCu金属に還元される。前述のシステムは、固体ポリアントラキノン上の電気化学的CO2回収に拡張された。9、13前述のシステムでは、ファラデーエレクトロスイングプロセスを使用して、キノンとのカルボキシル化反応(還元)(ポリビニルフェロセンが酸化される)を介してCO2を回収し、続いてセルの極性を反転してカルボキシルーキノン化合物を分解し(及びポリビニルフェロセンを還元し)、それによってCO2を脱着し、ポリアントラキノンを再生する。これらの以前の電気化学プロセスは、高い作業能力(12%v/vCO2ストリームの場合、アミン1モルあたり0.62モルのCO2)及び低いエネルギー要件(CO21トンあたり約0.60MWhの理論的最小要件)を示したが、高価なジアミンまたはキノンを使用した複雑な銅ベースの酸化還元化学も必要とした。さらに、電気化学はアミンに直接作用した。これらの機能により、アミンまたは電極の大幅な劣化が発生し、より高価な設備投資/運用コストが発生する可能性がある。17
【0005】
したがって、アミンベースの二酸化炭素回収プロセスのこれらの能力、エネルギー、及びリサイクル可能性の制限に対処する方法及びシステムが必要とされている。本開示は、これらの必要性に対処する。
【発明の概要】
【0006】
本明細書では、電気化学的に強化されたアミンベースの炭素回収のための方法及びシステムが提供される。いくつかの実施形態では、本開示は、CO2を回収する方法を提供し、この方法は、
i)CO2原料ガスを水溶液中で化学量論的過剰のアミンと反応させてアミン-CO2錯体を形成し、それによってアミン-CO2錯体を含む溶液を形成すること、
ii)アミン-CO2錯体を含む溶液のpHを電気化学的に7未満に調整し、それによってアミン-CO2錯体からCO2を放出すること、
iii)放出されたCO2を濃縮蒸気として収集すること、を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、アミン-CO2錯体はカルバメートイオンを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、pHを調整する工程は、水電解を使用して実行される。
【0009】
いくつかの実施形態では、調整後の溶液のpHは、約0.5~約7、約0.5~約6、約0.5~約5、約0.5~約4、約0.5~約3、約0.5~約、または好ましい。別の好ましい実施形態では、pHは、約5~約6に調整される。
【0010】
アミンは、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、またはそれらの混合物であり得る。好ましい実施形態では、アミンは第一級アミンまたは第二級アミンである。より具体的には、アミンは式Iの構造を有し、
RxNH3-x、(I)
式中、Rは、任意に置換されるアルキル、エーテル、及びヒドロキシアルキルから選択され、
xは、1、2、または3であり、
1つ以上のRは、各Nと一緒になって、任意に窒素含有複素環を形成する。
【0011】
本方法において有用なアミンとしては、いくつかの実施形態では、モノエタノールアミン、2-エチルアミノエタノール、2-メチルアミノエタノール、エチレンジアミン、ベンジルアミン、ジエタノールアミン、ピロリジン、モルホリン、2,6-ジメチルモルホリン、モノイソプロパノールアミン、ピペラジン、2-(ジメチルアミノ)エタノール、N-tert-ブチルジエタノールアミン、3-ジメチルアミノ-1-プロパノール、3-(ジメチルアミノ)-1,2-プロパンジオール、2-ジエチルアミノエタノール、3-ジエチルアミノ-1,2-プロパンジオール、3-ジエチルアミノ-1-プロパノール、トリエタノールアミン、1-ジメチルアミノ-2-プロパノール、1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジン、1-ジエチルアミノ-2-プロパノール、3-ピロリジノ-1,2-プロパンジオール、2-(ジイソプロピルアミノ)エタノール、1-(2-ヒドロキシエチル)ピペリジン、2-(ジメチルアミノ)-2-メチル-1-プロパノール、3-ピペリジノ-1,2-プロパンジオール、3-ジメチルアミノ-2,2-ジメチル-1-プロパノール、3-ヒドロキシ-1-メチルピペリジン、N-エチルジエタノールアミン、1-エチル-3-ヒドロキシピペリジン、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。好ましくは、アミンは、モノエタノールアミン、ピペラジン、またはそれらの混合物である。特定の好ましい実施形態では、アミンは、モノエタノールアミンであり、特定の特に好ましい実施形態では、アミンはピペラジンである。
【0012】
いくつかの実施形態では、アミン水溶液中のアミンの濃度は、約10%~約50%v/vである。他の実施形態では、アミンの濃度は、約15%~約40%v/v、約20~約30%v/v、またはより好ましくは約22%である。
【0013】
CO2原料ガスは、いくつかの実施形態では、工業源からの流出物であり得る。他の実施形態では、CO2原料ガスは、大気源、例えば、大気からのものである。さらなる実施形態では、CO2原料ガスは、工業源からの流出物と大気の混合物である。いくつかの実施形態では、工業源からのガスは、約1~約12%v/vのCO2を含む。
【0014】
特定の実施形態では、pHを調整する工程は、100℃未満、好ましくは約-10℃~約50℃、より好ましくは約-10℃~約50℃の温度で行われる。
【0015】
いくつかの実施形態では、方法は、アミン水溶液を再生及び収集し、再生されたアミンを方法の工程(i)で使用することをさらに含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、濃縮蒸気は、約2%~約99%のCO2を含む。
【0017】
本開示はさらに、アミンベースのCO2回収のためのシステムを提供する。いくつかの実施形態では、CO2原料ガスからCO2を回収するためのシステムは、
アミン水溶液を収容するように構成されたCO2吸収チャンバであって、CO2原料ガス入口及び濃縮CO2蒸気出口を有するCO2吸収チャンバと、
CO2吸収チャンバと流体連通し、CO2吸収チャンバからCO2が豊富なアミン溶液を受け取るように構成された電気化学セルと、を備え、電気化学セルは、
アノードチャンバに配置されたアノードと、
カソードチャンバに配置されたカソードと、
アノードチャンバとCO2が豊富なアミン水溶液を受け入れるように構成された第1のリザーバーとの間に配置された第1のカチオン交換膜であって、それによりプロトンがアノードチャンバから第1のリザーバーに流れることができる、前記カチオン交換膜と、
第1のリザーバーと塩リザーバーとの間に配置されたアニオン交換膜であって、それによりアニオンが塩リザーバーからアノードチャンバに向かって流れることができる、アニオン交換膜と、
塩リザーバーとカソードチャンバとの間に配置された第2のカチオン交換膜であって、それによりカチオンが塩リザーバーからカソードチャンバに向かって流れることができる、第2のカチオン交換膜と、
電気化学セルと流体連通し、第1のリザーバーからCO2が希薄なアミン水溶液を受け取り、再生されたアミン水溶液をCO2吸収チャンバに送達し、カソードチャンバからカソライトを受け取るように構成されたアニオン交換カラムと、を含む。
【0018】
システムはさらに、濃縮CO2蒸気出口を備え得る。さらなる実施形態では、システムは、カソードチャンバと流体連通するH2出口を備える。またさらなる実施形態では、システムは、アノードチャンバと流体連通するO2出口を備える。
【0019】
いくつかの実施形態では、電気化学セルは、水電解を実行するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本開示による例示的なCO
2回収プロセスの概略図である。CO
2は、大気や工業プロセスガスなどのガス流からアミン水溶液に吸収される。次に、電気化学的に誘導された酸性化を介して、CO
2がアミンから脱着される。アミン溶液は強塩基性アニオン交換樹脂を使用して再生され、さらなるCO
2吸収に使用され得る。次いで、強塩基性アニオン交換樹脂は、電気化学的工程中に生成されるアルカリ性カソライトを使用して再生され得る。
【
図2】カソード201、アノード202、第2のカチオン交換膜203、アニオン交換膜204、第1のカチオン交換膜205、塩基溶液206、塩溶液207、アミン溶液208、及び酸溶液209を含む、アミンベースのCO
2回収に有用な例示的な電気化学セル200の概略図である。
【
図3】MEA1モルあたり0.25(灰色)及び0.5(黒色)CO
2モルのCO
2負荷を有する22体積%MEA水溶液についての、様々なプロトン対MEA比におけるpH値(丸)及びCO
2脱着の程度(三角)を示すグラフである。
【
図4】Aは、電気化学的に誘導された酸性化セルからの、様々なpH値におけるCO
2が豊富な22%v/vMEA溶液(MEA1モルあたり約0.5モルのCO
2)のIRスペクトルを示す。黒線は、酸性化前のCO
2が豊富なMEAを表す。Bは、pH約6~8に酸性化し、続いてpH>10にアルカリ化した後のMEA溶液の再生程度を示す。Bでは、*はHCl/NaOHの使用を表し、#は電気化学的酸性化とその後のNaOH添加を表し、°は電気化学的酸性化とその後のイオン交換を表す。すべての実験は、22%v/vMEA溶液を使用し、MEA1モルあたり約0.5モルのCO
2の初期負荷で実行した。
【
図5】CO
2吸収チャンバ501、電気化学セル502、及びアニオン交換カラム503を備えるプラント設計500の例示的なシステムを示す。CO
2含有原料ガスは、入口504を介してCO
2吸収チャンバ501に導入される。CO
2吸収チャンバ501は、アミン水溶液を含むように構成され、そこでCO
2がアミンによって吸収される。CO
2が豊富なアミン水溶液は電気化学セルに流入し(505)、そこでアノード(506)で生成されたプロトンが第1のカチオン交換膜(508)を通過してCO
2を脱着する。プロトン化された、CO
2が希薄なアミン溶液は、次に、アニオン交換カラム503を通過し(515)、そこで塩素対イオンが水酸化物と置換される。再生されたアミン溶液は閉ループを完了し、CO
2吸収チャンバ501に戻り(518)、追加のCO
2を吸収する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示は一般に、アミンベースの炭素回収のための方法及びシステムを提供する。より具体的には、本開示は、いくつかの実施形態において、CO2を回収する方法を提供し、本方法は、CO2原料ガスを化学量論的過剰のアミンを含む水溶液と反応させ、アミン-CO2錯体を形成すること、溶液のpHを電気化学的に約7未満に調整し、それによってアミン-CO2錯体からCO2を放出すること、放出されたCO2を濃縮蒸気として収集することを含む。特定の実施形態では、本開示は、周囲温度(例えば、100℃未満、好ましくは約-10~約50℃、より好ましくは約10~約40℃及び100℃)でのアミン溶液の再生を有利に可能にする。塩基性(例えば、約8超、約9超、または好ましくは約10超のpH)アミン水溶液におけるCO2の吸収は、CO2とアミンとの反応を介して起こり、安定なカルバメートイオン及びプロトン/ヒドロニウムイオンを形成する。本発明の方法は、有利なことに、電気化学的にpHシフトを誘導し、酸加水分解を介してカルバメートイオンを分解する。このpH≦7へのpHの変化は周囲温度で発生するため、(1)より単純なプロセス装置が使用され、(2)アミンの再生が可能になり、よって作業能力が最大化され、(3)溶媒の損失が減少する。いくつかの実施形態では、pHは、7未満、6未満、5未満、4未満、3未満、2未満、または1未満に調整される。いくつかの実施形態では、pHは、約0.5~約7、約0.5~約6、約0.5~約5、約0.5~約4、約0.5~約3、約0.5~約2、または約0.5~約1に調整される。いくつかの実施形態では、pHは約5~6に調整される一方で、他の実施形態では、pHは約0.5から約1.5に調整される。
【0022】
いくつかの実施形態では、本方法のエネルギー強度は、現在の最先端のアミンベースのCO
2回収プロセス(KOHの場合CO
21トンあたり4.0MWh、MEAの場合CO
21トンあたり>5.0MWh
1~3)よりも約2倍低く(例えば、CO
21トンあたり2.0MWh)、有害な化学物質の投入量が削減され、再生可能エネルギーの使用が可能になる。いくつかの実施形態では、本明細書の開示は、アミン水溶液の周囲温度再生のための電気化学セルを統合する、アミンベースのCO
2回収プロセス(
図1)を提供する。いくつかの実施形態では、本開示のアミンベースのプロセスは、CO
2を脱着するために電気化学的に生成される酸性化を含み、それによって熱及び電力の必要量を削減し、作業溶媒容量を増加させる。これらのプロセスの改善により、CO
2回収システムのサイズ、土地要件、及び環境フットプリントの削減に有利につながり得る。
【0023】
アミン溶液のエネルギー効率の高い電気化学的再生
塩基性条件下(pH>10)では、CO2の吸収は、式1~3に従って、CO2とアミン(例えば、MEA;RNH2、式中、R=CH2CH2OH)との反応を介して起こり、カルバメートアニオン(RNHCOO-、RNCOO2-)、プロトン化アミン(RNH3
+)、及びプロトン/ヒドロニウムイオン(H+/H3O+)を形成し、N2及びO2などの他のガスは流出物中に逃げる。CO2は、高いpHでも炭酸塩を形成する(式4)4。
RNH2+CO2→H++RNHCOO- (1)
RNHCOO-+RNH2→RNH3
++RNCOO2-(2)
RNHCOO-+H2O→H3O++RNCOO2- (3)
CO2+H2O→CO3
2-+2H+ (4)
【0024】
溶液のpHを電気化学的に酸性条件(例えば、pH≦7)にシフトさせると、式(1)及び(3)の逆に従って、酸加水分解によるカルバメートイオンの分解が促進される。水電解は、カルバメートイオン加水分解のためのプロトンを生成し、それによってCO2が豊富なアミン溶液をCO2が希薄な溶液に変換し、その後のCO2吸収サイクルでCO2が希薄な溶液のpHを上昇させるために使用される水酸化物イオンを生成する。
【0025】
特定の実施形態では、式5及び6に従って、電気化学セル(
図2)内のアノードで水溶液からプロトンが生成され、カソードで水酸化物イオンが生成される。
2H
2O(l)→O
2(g)+4H
+(aq)+4e
-;E
0=1.23Vvs.SHE(5)
4H
2O(l)+4e
-→2H
2(g)+4OH
-(aq);E
0=-0.83Vvs.SHE(6)
【0026】
特定の実施形態では、プロトンは、カチオン交換膜(CEM)を通ってCO
2が豊富なアミン溶液中に拡散し、pHの低下をもたらし、カルバメートイオンの分解及びCO
2の放出をもたらす。特定の実施形態では、CEMは、アノードチャンバへのカルバメートアニオンの拡散を防止し、それによってカルバメート/アミンの電気酸化を防止する。特定の実施形態では、濃縮塩溶液(例えば、NaClまたはNaNO
3)は、アミン溶液に対アニオン、カソライトにカチオンを提供して電気的中性を維持する。特定の実施形態では、アニオン交換膜(AEM)は、水性アミンチャンバへの塩溶液カチオンの拡散を防止する。特定の実施形態では、CO
2が放出された後、CO
2が希薄なアミン溶液は、強塩基性アニオン交換樹脂を使用して高いpHに戻される(
図1を参照)。特定の実施形態では、この樹脂は、アミン溶液中に蓄積した塩リザーバーからの対イオン(Cl
-またはNO
3
-)を水酸化物イオンと交換して、CO
2が希薄なアミン水溶液のpHをその元の塩基性値まで上昇させる。次に、電気化学セルのカソードチャンバからの水酸化物に富んだ溶液を使用して強塩基性アニオン交換樹脂が再生され、それによって塩溶液チャンバで使用されたアニオンが回収される。特定の実施形態では、再生プロセスにより、アミン水溶液の効率的なリサイクルが可能になり、それによって運転コストが最小限に抑えられ、廃棄物の発生が防止される。
【0027】
したがって、本電気化学的に誘導される本開示のpHスイングプロセスは、有害で高価で炭素集約的な試薬(例えば、鉱酸)を豊富で無害なプロトン源(例えば、水)で置き換えるという利点を有しながら、任意に、再生可能エネルギーを活用してプロセスを促進する。
【0028】
理論に束縛されるものではないが、本方法によるアミン再生に水電解を使用することには、少なくとも2つの重要な利点がある。第1に、分離されたアノード/カソードセルチャンバ内で水電解を実行すると、化学量論的または高価/特殊な試薬、触媒、または材料を使用せずに、アミン/電極の電気化学的劣化のリスクを軽減しながら、局所的にプロトンを生成することがでる。第2に、カソードでの水電解によりH2が生成され、発生したH2を回収して使用することで、2.0MWh/トンCO2という現実的なエネルギー要件を実現する機会が得られる。電気化学プロセスを使用する追加の利点は、必要なエネルギーの最大100%を再生可能資源から供給できることである。これらの機能は、プロセス装置とエネルギー効率の両方に影響を与える。周囲温度でのアミン分子の完全またはほぼ完全な再生は、酸媒介カルバメート分解によって達成することができる。これは、(1)使用されるアミンの量をCO2作業能力の増加に比例する量だけ削減し、(2)複雑な蒸留塔をより単純なモジュール式電気化学セルに、いくつかの実施形態では、別個のアニオン交換カラムに置き換えることによって、プロセス装置に影響を与える。プロセス装置が簡素化されると、CAPEXが削減され(例えば、アミンストリッパーカラムの投資コストが>6,000万ドル未満7)、システムの柔軟性とモジュール性が向上する可能性があり、その両方により、プロセスを、濃縮及び希薄CO2ストリーム(例えば、工業プロセスからの回収や空気からの直接回収など)を含む、幅広い用途に対応して使用することができるようになる。いくつかの実施形態では、吸収されたCO2の濃度は、300ppm~250,000ppmの範囲であり得る。特定のそのような実施形態では、吸収されたCO2の濃度は、350ppm~20,000ppmの範囲であり得る。特定の実施形態では、好ましくは、本開示の方法がCO2の直接空気回収に使用される場合、CO2の濃度は、400ppm~1,000ppmの範囲であり得る。
【0029】
電気化学的に強化されたアミンプロセスの現実的なエネルギー要件は、CO
2を脱離するために必要なプロトンの数と、約80%の効率で動作する電解槽に基づいて推定することができる(例えば、式(5)及び(6)
19に示される、化学量論的な水素発生反応及び酸素発生反応については、熱力学的需要を54.8kWh/kgと仮定すると、生成されるH
21kgあたり68kWh
18)。例えば、さまざまなCO
2負荷での22%MEA溶液の滴定(
図3;MEA1モルあたり0.25及び0.5モルCO
2)では、アミン1モルあたり約1.0モルのH
+が、pHを12から0.6に低下させるために使用されることを示し、この時点ですべてのCO
2が脱着される。この情報から、開示の特定の実施形態についてのエネルギー要件を推定することができる:(1)初期MEA負荷による直接空気回収は、MEA1モルあたり0.25モルのCO
2
20、(2)1~12%のCO
2を含有する産業流出物(初期負荷はMEA1モルあたり0.5モルのCO
2)。
【0030】
いくつかの実施形態では、直接空気回収用途における完全な脱着では、プロトン対CO2の比は約4である。いくつかのそのような実施形態では、現在利用可能な電解装置を使用すると、プロセスは6.3MWh/トンCO2を除去する必要があるであろう。特定の実施形態では、H2エネルギーの約70%が回収される場合、この値は、3.8MWh/トンCO2に減少する。セル効率が95%の場合、エネルギー要件は、H2回収なしの場合と回収ありの場合で、それぞれ5.3及び2.8MWh/トンCO2となり得る。比較すると、従来の熱スイングプロセスの場合、MEA1モルあたり0.30~0.25モルCO2の負荷からCO2を脱着するのに必要なリボイラーの負荷は、約5.0MWh/トンCO2
3であり、完全な脱着に必要な負荷は>25MWh/トンCO2
3、20となるであろう。この予備的なエネルギー分析は、特定の実施形態において、本開示の方法または装置が、現在、従来の熱スイングプロセス(6.3対25.0MWh/トンCO2)よりもはるかに低いエネルギー要件で実行できるだけでなく、5倍の高い作業能力を達成する可能性がある(0.25対0.05モルCO2/モルMEA)。
【0031】
CO2を>1%含む流出物を使用する用途では、エネルギー要件は減少する。特定の実施形態では、例えば、初期のMEA負荷がMEA1モルあたり約0.5モルのCO2であると仮定すると、完全な脱着ではプロトン対CO2の比は約2である。80%の効率では、本開示の特定の実施形態の方法は、約3.1MWh/トンのCO2を除去する必要があるであろう。H2エネルギーの約70%が回収される場合、この値は、約1.9MWh/トンのCO2除去に減少する。特定の実施形態では、95%のセル効率では、エネルギー要件は、H2回収なしの場合と回収ありの場合で、それぞれ約2.6及び約1.4MWh/トンCO2となり得る。比較すると、従来の熱スイングプロセスの場合、MEA1モルあたり0.5~0.25モルCO2の負荷からCO2を脱着するのに必要なリボイラーの負荷は、約1.3MWh/トンCO2
5である。この負荷は、MEA1モルあたり0.20モルCO2が未満になるまで脱着する場合は>2.2MWh/トンCO2に増加し、低濃度のアミン(すなわち、MEA1モルあたり0.3~0.2モルCO2)5から脱着する場合は>5MWh/トンCO2になる。これらの研究に基づくと、CO2の脱着はCO2負荷が低い場合には熱力学的に不利となるため、完全な脱着に必要な負荷は>25MWh/トンCO2となるであろう5。この予備的なエネルギー分析は、本プロセスは、現在、従来の熱スイングプロセス(1.9対1.3MWh/トンCO2)と同等のエネルギー要件で実行できるが、2倍のより高い作業能力を達成する可能性があることを示している(MEA1モルあたり0.5対0.25モルCO2)。
【0032】
本開示のいくつかの実施形態では、CO2を回収する方法を含み、本方法は、CO2をアニオン錯体を形成することができる溶媒と反応させることと、溶液のpHを電気化学的に約7未満に調整することと、pH調整工程中またはpH調整工程後に放出されるCO2を濃縮蒸気として収集することと、任意に、再生された溶媒を収集することと、を含む。いくつかの実施形態では、アニオン錯体は、カルバメートイオン及び/または水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)を含む。いくつかの実施形態では、溶媒は、アミンである。いくつかの実施形態では、アミンは、RxNH3-xであり、式中、Rは、任意に置換されたアルキル、エーテル、またはアルコールから選択される。
【0033】
例示的なアミンの実施形態には、一級アミン(例えば、モノエタノールアミン(MEA)、2-エチルアミノエタノール、2-メチルアミノエタノール、エチレンジアミン、ベンジルアミン);二級アミン(例えば、ジエタノールアミン(DEA)、ピロリジン、モルホリン、2,6-ジメチルモルホリン、モノイソプロパノールアミン、ピペラジン(PZ);三級アミン(例えば、2-(ジメチルアミノ)エタノール(DMAE)、N-tert-ブチルジエタノールアミン(tBDEA)、3-ジメチルアミノ-1-プロパノール(DMA-1P)、3-(ジメチルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DMA-1,2-PD)、2-ジエチルアミノエタノール(DEAE)、3-ジエチルアミノ-1,2-プロパンジオール(DEA-1,2-PD)、3-ジエチルアミノ-1-プロパノール(DEA-1P)、トリエタノールアミン(TEA)、1-ジメチルアミノ-2-プロパノール(DMA-2P)、1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジン[1-(2HE)PRLD]、1-ジエチルアミノ-2-プロパノール(DEA-2P)、3-ピロリジノ-1,2-プロパンジオール(PRLD-1,2-PD)、2-(ジイソプロピルアミノ)エタノール(DIPAE),、1-(2-ヒドロキシエチル)ピペリジン[1-(2HE)PP]、2-(ジメチルアミノ)-2-メチル-1-プロパノール(DMA-2M-1P)、3-ピペリジノ-1,2-プロパンジオール(3PP-1,2-PD)、3-ジメチルアミノ-2,2-ジメチル-1-プロパノール(DMA-2,2-DM-1P)、3-ヒドロキシ-1-メチルピペリジン(3H-1MPP)、N-エチルジエタノールアミン、1-エチル-3-ヒドロキシピペリジン、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0034】
特定の実施形態では、pHを調整する工程は、水電解を介して実行される。特定の実施形態では、CO2原料ガスは、工業源からの流出物であり得る。いくつかの実施形態では、pH調整工程は100℃未満の温度で実行される。いくつかの実施形態では、再生されたアミンは収集され、同じプロセスに再度使用される。いくつかの実施形態では、CO2原料ガスは、大気源からのものである。さらなる実施形態では、CO2原料ガスは、工業源と大気源の混合物である。
【0035】
特定の実施形態では、本開示は
図5に示されるシステムを提供する。
図5は、CO
2吸収チャンバ501、電気化学セル502、及びアニオン交換カラム503を備えるプラント設計500の例示的なシステムを示す。CO
2含有原料ガスは、CO
2原料ガス入口504を介してCO
2吸収チャンバ501に導入される。CO
2吸収チャンバ501は、アミン水溶液を含むように構成され、そこでCO
2がアミンによって吸収され、さらにスクラブガス出口(519)を含む。CO
2が豊富なアミン水溶液は、電気化学セル(502)内の第1のリザーバー523に流入する(505)。アノード(506)で生成されたプロトンは、アノードチャンバ522内に配置され、第1のカチオン交換膜(508)を通過して第1のリザーバーに入り、CO
2を脱着し、それによってCO
2が希薄なアミン溶液を生成することができる。アノードチャンバはさらに、出口512を含む。第1のリザーバーはさらに、アニオンが第1のリザーバーに流入できるように、アニオン交換膜511を介して塩リザーバー524と流体連通している。電気化学セル502はさらに、濃縮CO
2蒸気出口514を含む。塩リザーバー524は、カチオンがカソード507に向かってカソードチャンバに流入できるように、第2のカチオン交換膜510を介してカソードチャンバ525と流体連通している。カソードチャンバ525は、H
2出口513をさらに含む。CO
2が希薄なアミン溶液は、アニオン交換カラム503を通って送達され(515)、そこで塩素対イオンが水酸化物と置換される。塩溶液は塩リザーバー524に戻り(516)、カソライトはカソードチャンバからアニオン交換カラムに流れる。再生されたアミン溶液は閉ループを完了し、CO
2吸収チャンバ501に戻り(518)、追加のCO
2を吸収する。脱着ガスの流れを助けるために、入口519を介してスイープガスがシステムに供給され得る。最後に、一方向バルブ(520)及び二方向バルブ(521)により、アニオン交換カラム503への流入及び流出を制御することができる。
【0036】
文脈に別段の指示がない限り、用語「a」、「an」、及び「the」には複数の指示対象が含まれる。したがって、例えば、文脈に別段の指示がない限り、対象物への参照には複数の対象物が含まれ得る。
【0037】
本明細書で使用する場合、用語「実質的に(substantially)」、「相当な(substantial)」、「約(approximately)」、及び「約(about)」、並びに記号「~」は、小さな変動を記述し、説明するために使用される。事象または状況と合わせて使用するとき、該用語は、事象または状況が近い近似値で発生する例だけではなく、事象または状況が正確に発生する例を指す場合もある。数値と合わせて使用する場合、該用語は、例えば±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下、または±0.05%以下などのその数値の±10%以下の変動範囲を指す場合がある。例えば、第1の数値が、第2の数値の±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下、または±0.05%以下など±10%以下の変化の範囲内である場合、第1の数値は「実質的に」同じであるか、または第2の数値と同等であると見なすことができる。
【0038】
さらに、量、比率、及び他の数値は、範囲形式で本明細書に提示されることがある。係る範囲形式が便宜上、及び簡略に使用され、範囲の制限として明示的に指定された数値を含むが、あたかも各数値及び部分的な範囲が明示的に指定されるかのように、その範囲内に包含されたすべての個々の数値または部分的な範囲を含むと柔軟に解釈されるべきであることを理解されたい。例えば、約1~約200の範囲の比率は、明示的に列挙された約1及び約200の限界を含むが、約2、約3、及び約4などの個々の比率、並びに約10~約50、約20~約100等の部分範囲も含むと理解されるべきである。
【0039】
実施例
電気化学的pHスイングシステムの概念実証を、4つのチャンバを備えた改良された電気化学セルを使用して実行した(
図2)。セルの寸法は、約20cm×約14cm×約5.0cmであった。アノード(約0.5M Na
2SO
4に浸漬した約8cm
2の白金、厚さ約2.9cm)及びカソード(約0.5M NaClに浸漬した約8cm
2の316ステンレス鋼、厚さ約0.7cm)チャンバを、カチオン(約160cm
2;燃料電池ストア、FAS-PET-130)及びアニオン交換膜(約160cm
2;燃料電池ストア、FAA-3-PK-75)を使用して、飽和塩(NaNO
3)溶液(厚さ約0.7cm)及びCO
2が豊富なMEA溶液(MEA1モルあたり約0.5モルCO
2、厚さ約0.7cm)から分離した。
【0040】
次に、本開示のいくつかの実施形態の電気化学セルの有効性を実証するために、約50mLの22%v/v水性MEA溶液を、液相負荷がMEA1モルあたり約0.5モルCO
2になるまで、バブリングCO
2を介してCO
2で飽和させた。液相負荷は、気相赤外(IR)分光法を介して、バブリングチャンバからの気相流出物中のCO
2濃度を連続的に測定し、次いで、得られた濃度対時間曲線を数値的に積分することによって定量化した。CO
2が豊富なMEA溶液を、塩リザーバーチャンバ内の約1M NaNO
3とともにアミンチャンバに装填し、過電圧を印加した。CO
2の脱着を、さまざまなpH値で収集されたMEAサンプルの赤外(IR)分光法を介して確認した。
図4Aは、実験が進むにつれて(及びpHが下がるにつれて)カルバメートイオン(1568、1486、1320cm
-1に特徴的なピークを持つ)の存在が、プロトン化MEA(1517cm
-1に特徴的なピーク)の量の増加に伴って減少することを示している。さらに、1340cm
-1のピークは、電気的中性を維持するために塩リザーバーからの移動を介してアミン溶液中に蓄積する硝酸イオン(NO
3
-)の存在を示している。
【0041】
pH=約6、約7、及び約8でのCO
2脱着の程度は、これらのアミン溶液のpHを(NaOHを使用して)約10に変化させ、続いてガス状CO
2ストリームと接触させることによって定量化した。この方法では、pHの約10から約6への低下は、周囲温度(約25℃)での脱着/再生の>80%程度に相当することが示された(
図4B、青色のバー)。この再生程度は、同様のpH変化を達成するために、約5M HClのアリコートを添加し、続いて約1M NaOHを添加することによって達成されるものと同様であった(すなわち、HClを添加して約10から約6、約7、または約8に減少させ、その後NaOHを添加して約10まで再度増加させる;
図4B、*)。pHスイングプロセスを完了するためのアニオン交換樹脂の有効性を実証するために、特定の実施形態では、電気化学的に酸性化されたMEA(pH=約6、約7、及び約8)を市販のアニオン交換樹脂(約200mlのIRN78-OH)をバッチ反応器内で約5分間混合した。次いで、溶液を濾過して樹脂を回収し、MEA溶液のCO
2吸収を試験した。樹脂に暴露した後のMEA溶液のpHは約11まで上昇し、CO
2再吸収能力は前の実験の能力と同様であった(
図4B、#)。具体的には、CO
2が豊富なMEA溶液を電気化学的にpH=約6まで酸性化し、その後IRN78-OHと交換してpH=約11にすることで、初期吸収容量の>80%を回収した。これらの結果は、電気化学的イオン交換pHスイングプロセスが、周囲温度で容量損失なくMEA再生に有効であることを明確に示している。
【0042】
本開示をその具体的な実施態様を参照して説明したが、添付の特許請求項の範囲(複数可)で定義される開示の真の精神と範囲を逸脱することなくさまざまな変更がなされたり、均等物と置き換えたりすることができることは当業者によって理解されるべきである。さらに、特定の状況、物質、物質の組成、方法、操作(複数可)を本開示の目的、趣旨及び範囲に適合させるために多くの改変がなされ得る。すべてのそのような改変は、本明細書に添付の特許請求の範囲(複数可)の範囲内に入ることが意図される。特に、特定の方法は、特定の順序で実行される特定の操作を参照して説明されている場合があるが、これらの操作が、本開示の教示から逸脱することなく同等の方法を形成するために組み合わされてよい、細分化されてよい、または再順序付けされてよいことが理解される。したがって、本明細書において明確に示されない限り、操作の順序及びグループ化は本開示の制限ではない。本開示を読むと当業者には明らかであるように、本明細書に記載及び例示される個々の実施形態のそれぞれは、本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のうちのいずれかの特徴から容易に切り離されるか、または組み合わされ得る別個の成分及び特徴を有する。任意の列挙される方法は、列挙される事象の順で、または論理的に可能な任意の他の順序で行うことができる。
【0043】
本明細書で引用された全ての刊行物及び特許は、個々の刊行物または発特許が明確に及び個々に参照により組み込まれるように示され、開示の参照により本明細書に組み込まれ、開示が引用した方法及び/または材料に関連して方法及び材料を記載する。任意の刊行物の引用は、出願日前のその開示に対するものであり、本発明が先行発明のためにそのような刊行物に先行する権利がないことの承認として解釈すべきではない。さらに、提示される公開日が、実際の公開日と異なることがあり得、それは、個別に確認する必要がある場合がある。
【0044】
本発明が記載される特定の実施形態に限定されず、したがって、言うまでもなく、変化し得る。本発明の範囲が添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で使用する用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、限定することを目的とするものではないことも理解されるべきである。
【0045】
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【国際調査報告】