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特表2024-515634反応を行うための電気加熱を伴う化学物質の生成のためのモジュール式反応器構成
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  • 特表-反応を行うための電気加熱を伴う化学物質の生成のためのモジュール式反応器構成 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】反応を行うための電気加熱を伴う化学物質の生成のためのモジュール式反応器構成
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/24 20060101AFI20240403BHJP
   H05B 3/10 20060101ALI20240403BHJP
   C07C 11/04 20060101ALI20240403BHJP
   C07C 5/42 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
B01J19/24 Z
H05B3/10
C07C11/04
C07C5/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563010
(86)(22)【出願日】2022-04-13
(85)【翻訳文提出日】2023-10-13
(86)【国際出願番号】 EP2022059896
(87)【国際公開番号】W WO2022219053
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】63/175,384
(32)【優先日】2021-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023685
【氏名又は名称】シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(74)【代理人】
【識別番号】100220098
【弁理士】
【氏名又は名称】宮脇 薫
(72)【発明者】
【氏名】ラトナカール,ラム・ラタン
(72)【発明者】
【氏名】バラコタイア,ベムリ
(72)【発明者】
【氏名】ハービー,ザ・サード,アルバート・デストレハン
【テーマコード(参考)】
3K092
4G075
4H006
【Fターム(参考)】
3K092PP20
3K092QA03
3K092QA05
3K092QB02
3K092QB09
3K092QB26
3K092QB32
3K092QB37
3K092VV40
4G075AA02
4G075AA63
4G075BA05
4G075BB04
4G075CA02
4G075CA54
4G075DA02
4G075DA18
4G075EB09
4G075EE07
4G075EE12
4G075FA03
4G075FA16
4G075FB02
4G075FC07
4H006AA02
4H006AA04
4H006AC12
4H006BD81
(57)【要約】
抵抗加熱要素を利用する新規のモジュール式反応器構成が提供される。抵抗加熱要素は、反応器モジュールの反応ゾーンを通過し、電気を伝導し、それによって反応ゾーン内に抵抗加熱を提供して、反応物が反応ゾーン内に存在するとき、生成物への反応物の変換を促進する。抵抗加熱要素は、複数のワイヤ、複数のプレート、ワイヤメッシュ、ガーゼ、及び/又は金属モノリスとして構成されてもよい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸熱反応を行うためのモジュール式反応器システムであって、前記モジュール式反応器システムは、
a.少なくとも1つのモジュールを備え、各モジュールは、
i.流体が反応ゾーンを通って流れることを可能にするように構成されたチャネルの内側で前記反応ゾーンを取り囲むように位置付けられた複数の壁セクションと、
ii.電源と、
iii.前記壁セクションと機械的に接続され、前記電源と電気的に接続された、前記反応ゾーンを通過する少なくとも1つの抵抗加熱要素と、を更に備え、
iv.前記少なくとも1つの抵抗加熱要素が、前記壁セクションから電気的に絶縁されており、
v.前記反応器システムが、1つ以上の反応物を含有する流体の流れを可能にするように構成されており、
vi.前記反応ゾーンは、反応物が前記流体中に存在する場合に、前記反応物を生成物に変換するのに適しており、
b.各モジュールの前記抵抗加熱要素は、前記反応ゾーンの温度を必要な反応温度範囲に調節することができるように、前記反応ゾーン内で抵抗加熱を発生させるように構成されており、
c.前記少なくとも1つの抵抗加熱要素が、複数のワイヤ、複数のプレート、ワイヤメッシュ、ガーゼ、及び金属モノリスからなる群から選択される構成を含む、モジュール式反応器システム。
【請求項2】
a.前記少なくとも1つの抵抗加熱要素が、複数のワイヤを備え、
b.前記ワイヤの各々が、他のワイヤと平行であり、
c.前記ワイヤが各々、0.1m~10mの長さを有し、
d.前記ワイヤが各々、10μm~1000μmの直径を有し、
e.前記ワイヤが、10-9Ω・m~10-5Ω・mの抵抗率を有する、請求項1に記載のモジュール式反応器システム。
【請求項3】
a.前記少なくとも1つの抵抗加熱要素が、複数の金属プレートを備え、
b.前記プレートの各々が、他のプレートに対して平行であり、
c.前記プレートが、0.1m~10mの(前記流れに対して垂直方向の)長さ、及び50μm~5000μmの(前記流れに沿った)幅を有し、
d.前記プレートが、10μm~1000μmの厚さを有し、
e.前記プレートが、10-9Ω・m~10-5Ω・mの抵抗率を有する、請求項1に記載のモジュール式反応器システム。
【請求項4】
a.前記少なくとも1つの抵抗加熱要素が、ワイヤメッシュ、ガーゼ、又は金属モノリスを備え、
b.前記ワイヤメッシュ、ガーゼ、又は金属モノリスが、50μm~10000μmの水力半径を有し、
c.単一のワイヤメッシュ、ガーゼ、又は金属モノリスユニットが、50μm~5000μmの軸方向流れ長さを有する、請求項1に記載のモジュール式反応器システム。
【請求項5】
a.前記モジュールは、複数のモジュールが並列及び/又は直列構成で配置されることを可能にするように構成されており、
b.前記複数のモジュールは、前記流体が各モジュールの前記反応ゾーンを通って流れることを可能にするように構成されている、請求項1に記載のモジュール式反応器システム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの抵抗加熱要素が、前記反応ゾーン内で抵抗加熱を発生させ、少なくとも200℃の温度をもたらすように構成されている、請求項1に記載の反応器システム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの抵抗加熱要素が、FeCrAl、NiCr、SiC、MoSi、NiCu、NiCrFe、MnNiCu、CrAlSiCFe、NiCoMnSiFe、及びNiAlTiからなる群から選択される材料から構築されている、請求項1に記載の反応器システム。
【請求項8】
a.複数の抵抗加熱要素を更に備え、
b.前記抵抗加熱要素は、流体から固体への種拡散及び熱伝導時間が空間時間よりも短くなるように配置されており、
c.前記抵抗加熱要素は、横方向熱ペクレ数が1未満であるように選択される、請求項1に記載の反応器システム。
【請求項9】
前記システムが、エタンクラッキング、プロパンクラッキング、ナフサクラッキング、メタン熱分解、アンモニア分解、メタンの乾式若しくは水蒸気改質、逆水性ガスシフト、吸着-脱着プロセス、及び/又はそれらの組み合わせを促進するように構成されている、請求項1に記載のモジュール式反応器システム。
【請求項10】
前記少なくとも1つの抵抗加熱要素が、触媒を更に備える、請求項1に記載のモジュール式反応器システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの電気加熱要素を備えるモジュール式反応器構成、及び少なくとも1つのガス反応物を当該反応器構成に導入することを含む、高温でプロセスを実行する方法に関する。反応器及び方法は、多くの工業規模の高温ガス変換及び加熱技術において有用である。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化に関する問題及び世界の二酸化炭素排出量を低減する必要性は、現在、政治的な議題の上位にある。実際、地球温暖化問題を解決することは、21世紀において人類が直面している最も重要な課題とみなされている。温室効果ガス排出物を吸収する地球システムの容量は既にいっぱいになっており、パリ気候協定の下では、現在の排出物は2070年頃まで完全に止めなければならない。これらの低減を実現するために、少なくとも、COを生成する従来のエネルギーキャリアから脱却した、産業の本格的な再構築が必要とされている。エネルギーシステムのこの脱炭素化は、石油、天然ガス、及び石炭などの従来の化石燃料からのエネルギー転換を必要とする。エネルギー転換のタイムリーな実装は、並行した複数のアプローチを必要とする。例えば、エネルギー節約及びエネルギー効率の改善がその役割を果たすが、輸送及び工業プロセスを電化するための努力も役割を果たす。過渡期を経て、再生可能エネルギー生成は、世界のエネルギー生成の大部分を構成すると予想され、エネルギー生成の大部分は電気からなることになる。
【0003】
一方、様々な小さい分散したCO排出物源(例えば、かなりの累積量をもたらす車両、人間/動物など)が存在するが、その主な排出源は、発電プラント又は化学製造プラントであり、このプラントでは従来、化石燃料を燃焼炉で燃焼させて、電気を発生させるか、又は吸熱反応を行うために必要な熱を供給する。例えば、現在のエタンクラッキング技術は、生成されるエチレン1モル当たり約1.2モルのCOを大気中に放出する。言い換えれば、世界クラスのエタンクラッカーは、100万トン/年(million tons per annum、MTA)のエチレンを生成し、およそ1.800MTAのCOを大気中に放出する。同様の量のCOが、炭化水素(例えば、エタン、プロパン、又はナフサ)の、高付加価値の炭化水素生成物(エチレン、プロピレン、及び他のオレフィンなど)への熱分解又はクラッキングなどの他の吸熱プロセス、水素を使用してCOをCOに変換する逆水性ガスシフト(reverse water-gas shift、RWGS)反応、合成ガスを製造するための乾燥メタン改質(dry methane reforming、DMR)反応及び水蒸気メタン改質(steam methane reforming、SMR)反応、高品質の水素及び炭素を生成するためのメタンの熱分解、並びに様々な吸着-脱着プロセスからも排出される。
【0004】
世界の特定の地域では再生可能な電力のコストは既に低いので、電気的に加熱された反応器及び設備を使用する技術は、従来の炭化水素燃焼加熱反応器及び高負荷加熱運転に置き換えるのに魅力的なものになり得る。予測される電力価格及びCOのコストは、これらの反応器の経済的魅力を更に高めるであろう。
【0005】
電気は、利用可能なエネルギーの中で最もグレードの高いものである。電気エネルギーを化学エネルギーに変換する効率的な工業プロセスを設計する場合、いくつかの選択肢が考えられる。これらの選択肢は、電気化学、低温プラズマ、高温プラズマ、又は熱によるものである。小規模な実験室環境において、電気加熱は、化学及び材料の側面に焦点を当てた多くのタイプのプロセスに既に適用されている。しかしながら、ガス変換などの工業規模で化学(変換)技術を設計するために、これらの選択肢が考慮される場合、これらの選択肢の各々は、反応器構成及び材料要件の設計及び規模拡大に関連する特定の複雑さを伴う。このことは、必要とされる熱流束及び温度レベルが高いので、化学変換プロセスが高度に吸熱性である場合に特に当てはまる。産業において、工業規模での吸熱化学反応及び加熱技術に適した電化技術が必要とされている。
【0006】
これら及び他の吸熱反応に使用される従来技術のシステムは、典型的には、空の又は触媒を充填した管を通る反応物ガスの内部流に基づいており、必要な熱は、燃焼炉内での化石燃料の燃焼によって、又は熱交換器を通る直接熱伝達によって、管壁を通して供給される。熱流束要件が高いプロセスの場合、必要な熱は、反応器管壁への放射伝達を介して熱を提供する燃料バーナーを有する閉じた耐火空間からなる燃焼炉を通して得られる。したがって、CO排出に加えて、炉内で化石燃料を燃焼させることに基づく吸熱プロセスのための従来技術は、反応器のより低い熱効率(30~40%程度の低さ)、並びにより長い始動及び停止時間(数十時間から数日程度)などのいくつかの他の欠点を提示する。追加のプロセス統合(出口流の熱容量の利用など)は、熱効率の最終的な増加をもたらし得るが、これらの他の欠陥は依然として存在する。
【0007】
燃焼炉の資本コストは規模とともに減少するので、従来技術のシステムの商業的サイズは大きく、機器のターンダウンにおける柔軟性は犠牲になる。これらの従来技術のシステムの大きなサイズ及び特異な性質の結果として、炉ユニット全体は、連続運転に関連する運転上及び/又は安全上の問題を緩和するために、定期的な停止及び冷却を必要とする。例えば、これらの従来のシステムの標準的な運転は、炉が高温で運転されるときに一般的に生じる、内側管壁上のコークスの蓄積をもたらす。反応器壁上のコークスの蓄積は、熱流束(すなわち、固体からガスへの熱供給)の低減を引き起こし、より低い変換率及び経時的な圧力低下の増加をもたらす。この蓄積はまた、外部管壁温度を上昇させ、これは、冶金過熱及び熱応力に起因する管破損を潜在的にもたらし得る(又は破損までの時間を短くする)。更に、熱流束は、燃料バーナーの数に応じて均一でない可能性があり、このことは、より多数のバーナーの使用、及び熱流束における空間的均一性に対するそれらの位置の最適化を必要とする。
【0008】
米国特許第2016288074号は、炭化水素、好ましくはメタンを含有する給送流を水蒸気改質するための炉であって、燃焼室と、触媒を収容し、給送流を反応器管に通すために燃焼室に配置された複数の反応器管と、燃焼室内で燃焼燃料を燃焼させて反応器管を加熱するように構成された少なくとも1つのバーナーと、を有する、炉を記載している。加えて、少なくとも1つの電圧源が提供されており、この電圧源は、各場合において、給送原料を加熱するために反応器管を加熱する電流が反応器管内に発生可能であるように、複数の反応器管に接続されている。
【0009】
米国特許第2017106360号は、実際の触媒材料の外部の間接的手段によってではなく、固体触媒表面自体に直接適用される外部熱入力を用いて、吸熱反応が真に等温様式でどのように制御され得るかを記載している。この熱源は、触媒材料自体の電気抵抗加熱を使用する伝導のみによって、又は表面上に直接コーティングされた活性触媒材料を有する電気抵抗加熱要素によって、触媒活性部位に均一かつ等温的に供給することができる。触媒部位への熱伝達の方式として伝導のみを用いることによって、放射及び対流の不均一方式が回避され、均一な等温化学反応が起こることを可能にする。
【発明の概要】
【0010】
従来技術の手法は、それらの固有の課題、能力を有しており、かつ/又は燃焼加熱を線形電気加熱と組み合わせることに基づいている。したがって、例えば大規模化学プロセスに適用することができる電気加熱技術のためのより多くの選択肢及び他の選択肢が依然として必要とされている。
【0011】
本開示は、当該必要性に対する解決策を提供する。本開示は、工業規模での電化ガス変換技術に関し、高いプロセス効率を達成し、比較的単純で全体コストが低い。
【0012】
先行技術のシステムに存在する限界は、必要な熱を吸熱プロセスに供給するための燃焼炉の使用が電気加熱(好ましくは再生可能な電力を使用する)によって置き換えられる、新規な反応器構成の使用によって克服され得ることが見出された。このような新規な反応器構成は、従来技術のシステムの欠点を緩和するだけでなく、モジュールの柔軟性及び規模拡大の容易さを含む追加の利点も含む。
【0013】
したがって、本開示は、ガスへの熱供給が均一であり、ガス流量、反応エンタルピー、及び反応速度論に基づいて調節することができるように加熱要素を配置する、新規な反応器システムに関する。
【0014】
一実施形態では、吸熱反応を行うためのモジュール式反応器システムは、少なくとも1つのモジュールを備え、各モジュールは、(a)流体が加熱ゾーンを通って流れることを可能にするように構成されたチャネルの内側で加熱ゾーンを取り囲むように位置付けられた複数の壁セクションと、(b)電源と、(c)壁セクションと機械的に接続され、電源と電気的に接続された、反応ゾーンを通過する少なくとも1つの抵抗加熱要素と、を更に備える。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抵抗加熱要素は、壁セクションから電気的に絶縁されている。いくつかの実施形態では、反応器システムは、1つ以上の反応物を含有する流体の流動を可能にするように構成されている。いくつかの実施形態では、加熱ゾーンは、反応物が流体中に存在する場合の、生成物への反応物の変換に適している。いくつかの実施形態では、各モジュールの抵抗加熱要素は、反応ゾーンの温度が必要な反応温度範囲に調節され得るように、反応ゾーン内で抵抗加熱を発生させるように構成されている。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抵抗加熱要素は、複数のワイヤ、複数のプレート、ワイヤメッシュ、ガーゼ、及び金属モノリスからなる群から選択される構成を含む。
【0015】
本発明の特徴及び利点は、当業者には明らかであろう。多くの変更が当業者によってなされ得るが、そのような変更は、本発明の趣旨の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
上記で簡簡潔に要約された、本発明のより詳細な説明は、添付の図面に示され、本明細書で説明される、本発明の実施形態を参照することによって、得ることができる。しかしながら、添付の図面は、本発明のいくつかの実施形態のみを示しており、したがって、本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではなく、他の等しく有効な実施形態を承認し得ることに留意されたい。
図1】本明細書に開示される異なるタイプの加熱要素構成の等角図を示しており、(a)平行ワイヤ、(b)平行プレート、(c)金属モノリス、及び(d)ワイヤメッシュ/ガーゼ反応器構成の代表的な例を含む。
図2】(a)開示された反応器システムの単一モジュール式ユニット、(b)複数のモジュール式ユニットを備える単一モジュール、(c)複数のモジュールの大規模な並列及び直列配置の等角図を示す。
図3】断熱等温及び電化条件におけるエタンクラッキング、SMR、及びDMRについての熱力学的計算の結果を示しており、(a)エタンクラッキングの平衡変換率対入口流体温度、(b)1100K(約827℃)の給送物を用いたエタンクラッキングの変換率対空間時間、(c)SMRの平衡変換率対入口流体温度、(d)1000K(約727℃)の給送物を用いたSMRの変換率対空間時間、(e)DMRの平衡変換率対入口流体温度、(b)1100K(約827℃)の給送物を用いたDMRの変換率対空間時間を含む。
図4】エタンクラッキングの様々な流体温度における反応時間スケール対変換率を示すグラフである。
図5】本明細書に開示される特定の平行ワイヤ構成の様々なプロセス温度でのエタンクラッキングの変換率対空間時間のグラフである。
図6】単一の平行ワイヤモジュールの様々な図を示す。
図7】本明細書に開示される特定の平行ワイヤ構成を用いたエタンクラッキングの変換率、固体温度、及び流体温度のプロファイルを示すグラフであり、(a)出口での時間プロファイル、及び(b)t=10sでの空間プロファイルを含む。
【発明を実施するための形態】
【0017】
工業規模のガス燃焼加熱を電気加熱に置き換えるために、いくつかの加熱選択肢を考慮することができる。本明細書に記載されたものを含むこのような電気加熱炉は、電気の代替性に起因して特定の燃料源に依存することなく熱を発生させるという利点を有する。本明細書に開示される本発明は、再生可能燃料から与えられる電気を使用する選択肢を有することによって、カーボンニュートラルの目標を達成するのを助けるという更なる利点を有する。具体的な実施形態の利点を以下に更に説明する。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態によれば、様々な新規の反応器構成(図1に示される)は、必要な熱が電力を使用して供給される、付加価値化学物質を生成する吸熱反応を行うことを可能にする。本明細書に開示されるシステムは、再生可能なものを介して発生させられた電気を利用するとき、従来のシステムよりも低いCO排出、更には排出のない運転を促進する。特定の実施形態の代表的な構成が図1に示され、これは、(1)平行ワイヤ(Parallel Wire、「PW」)、(2)平行プレート(Parallel Plate、「PP」)、(3)低アスペクト比を有する短い金属モノリス(Short Metallic Monolith、「SM」)、及び(4)ワイヤメッシュ又はガーゼ反応器からなるモジュール式ユニットに基づく構成を含む。これらの構成は、エタン、ナフサ、又は他の炭化水素の熱分解又はクラッキングを含むがこれらに限定されない広範囲の均質ガス相吸熱反応に適している。いくつかの実施形態では、加熱要素(例えば、ワイヤ又はプレートなど)はまた、逆水性ガスシフト(RWGS)、乾燥メタン改質(DMR)、水蒸気メタン改質(SMR)反応などの他の吸熱反応を促進するために、触媒材料の薄層で被覆することができる。特定の構成はまた、メタン熱分解、アンモニア分解、及び様々な吸着-脱着プロセスを含む、これら及び他の同様の吸熱反応に、触媒を用いて又は用いずに使用することができる。加えて、いくつかの実施形態は、規模拡大における容易さ及び柔軟性を更に可能にするモジュール式ユニットを含んでもよい。
【0019】
本明細書で使用される反応器構成という用語は、工業規模の反応及びプロセス加熱に適した任意の工業設備を含むと理解されるべきである。
【0020】
反応器ユニットのための従来の炉ベースの加熱は、主に放射熱伝達に基づいており、放射加熱は、放射に関するシュテファン=ボルツマンの法則によって説明される。シュテファン=ボルツマンの法則に基づく第1の原理計算は、加熱要素(0.4の排出率及び1065℃の温度を有するが、950℃の反応器管に22kW/m-2の熱エネルギーを伝達できる。しかしながら、実際の熱伝達機構は、直接放射だけが適用されるのではなく、はるかに複雑である。第1の直接放射機構は、熱を加熱要素から反応器管へ放射することを含む。第2の放射体は、炉の高温面壁の形態で存在する。次に、高温面壁は、電気加熱要素によって加熱され得る。第3の熱伝達機構は、(自然)対流によって生じる。炉内のガスは、加熱要素の近くで上昇し、反応器管の近くで下降する。第4の熱伝達機構は、炉内の加熱されたガスの放射を通じて生じる。その比較的小さな寄与は、選択されたガス雰囲気に依存する。
【0021】
上述した従来の炉ベースの加熱とは対照的に、提案された構成では、熱伝達は、抵抗加熱に基づいており、熱は、伝導及び放射を介して電気加熱要素から反応物/生成物混合物に直接伝達される。
【0022】
図1(a)及び(b)は、電源102に電気的に接続された一対の壁部分100を含む本開示の新規の反応器構成のPW及びPP構成の実施形態をそれぞれ示している。図1(a)では、PW構成は、2つの壁部分100の間のゾーンにまたがる一組の平行ワイヤ104を含む。この実施形態では、平行ワイヤ104は、電源102によって提供される電気を利用する抵抗加熱を介して、加熱要素として機能する。あるいは、図1(b)では、PP構成は、電源102によって提供される電気を利用する抵抗加熱を介して、加熱要素として同様に機能する一組の平行プレート106を含む。同様に、図1(c)及び(d)は、電源102を含む本開示の新規の反応器構成のSM及びワイヤメッシュ構成をそれぞれ示している。図1(c)では、SM構成は、電源102に電気的に接続された金属モノリス108を含み、金属モノリス108が電源102によって提供される電気を利用する抵抗加熱を介して加熱要素として機能するようになっている。図1(d)では、ワイヤメッシュ構成は、電源102に電気的に接続されたワイヤメッシュ110を含み、ワイヤメッシュ110が電源102によって提供される電気を利用する抵抗加熱を介して加熱要素として機能するようになっている。
【0023】
図1に示される4つの実施形態の各々において、ガスは加熱要素を通って流れ、当該加熱要素と直接接触して、加熱要素からガスシステムに熱を伝導させる。同様に、加熱要素からガスシステムへの直接的な放射熱伝達は、加熱要素とガスシステムとの間の温度差によって生じる。温度差が大きいほど、放射を通じて伝達される熱は大きくなる。加熱要素からガスシステムへの直接的な熱伝達は、最小限の熱損失でガス変換プロセスにおいて利用され、上述の従来の炉ベースの構成と比較してより高い加熱効率をもたらす。提案された反応器構成における反応/加熱による熱伝達及び物質伝達は、種及びエネルギー収支方程式によって記述される。
【0024】
プロセスに電気熱を提供するためのいくつかの選択肢が利用可能であり、本開示に従って考慮され得る。
【0025】
多くの異なるタイプの電気抵抗加熱要素が存在し、各々、それらの特定の用途目的を有する。本開示の構成のいくつかの実施形態では、適度に高い温度が、例えば、鉱物絶縁ワイヤ技術によって達成され得る。いくつかの構成では、少なくとも1つの電気加熱要素は、NiCr、NiCu、NiCrFe、MnNiCu、CrAlSiCFe、NiCoMnSiFe、NiAlTi、SiC、MoSi、又はFeCrAl系抵抗加熱要素を含む。特定の実施形態の必要性及びパラメータに基づいて、追加の材料を使用して、本開示のシステムのための電気加熱要素を構築することができる。
【0026】
本明細書に開示される反応器構成において、ニッケル-クロム(NiCr)加熱要素が使用されてもよく、多くの工業炉及び家庭用電化製品において使用される。この材料は、頑丈で修理可能(溶接可能)であり、中程度のコストで様々なグレードで入手可能である。しかしながら、NiCrの使用は、加熱要素の寿命を考慮すると、およそ1100℃の最大運転温度に制限される。
【0027】
本開示の反応器構成及び高温用途における使用のための別の選択肢は、炭化ケイ素(SiC)加熱要素である。SiC加熱要素は、1600℃までの温度を達成することができ、55mmまでの直径で市販されている。これにより、直径が大きく、そして要素当たりの加熱負荷が高いモジュールの設計が可能になる。加えて、SiC加熱要素のコストは比較的低い。
【0028】
本開示の反応器構成及び高温用途における使用のための更に別の選択肢は、高温での酸化に耐える能力を有する、二ケイ化モリブデン(MoSi)要素である。これは、表面上に石英ガラスの薄層が形成されることに起因する。要素上に保護層を維持するためには、わずかに酸化性の雰囲気(>200ppmのO)が必要である。材料は、1200℃の温度で延性になるが、この温度未満では脆くなる。運転を行った後、この要素は低温条件で非常に脆くなり、したがって損傷しやすくなる。MoSi加熱要素は、様々なグレードで入手可能である。最も高いグレードは、1850℃で運転することができ、広範囲の高温ガス変換プロセスにおける使用を可能にする。要素の電気抵抗率は温度の関数である。しかしながら、これらの要素の抵抗は経年変化によって変化しない。最初の使用期間中に、抵抗のわずかな低減が生じるだけである。結果として、故障した要素は、直列に設置されたときに他の接続された要素に影響を与えることなく交換することができる。MoSi要素の利点は、350kW/m-2までの高い表面負荷である。
【0029】
好ましい実施形態によれば、FeCrAl(フェクラロイ)が好ましい電気加熱要素である。FeCrAl抵抗ワイヤは、その抵抗率及びコーティングの容易さから、堅牢な加熱技術である。負荷は、比較的「単純な」オン/オフ制御によって制御することができる。加熱負荷を送達するために高電圧を適用することができる。しかしながら、これは、電気スイッチに余分な負荷をかけ、十分な電気絶縁を提供するために、好適な耐火材料を必要とするので、一般的に適用されない。加えて、フェクラロイ加熱要素は、好ましい寿命及び性能特性を有する。それは、比較的高い温度(1300℃まで)で運転することが可能であり、良好な表面負荷(約50kW/m-2)を有する。フェクラロイ加熱要素は、要素上にAl保護層を維持するために酸化雰囲気(>200ppmのO)中で使用することができる。
【0030】
本開示の反応器構成において達成することができる最高温度は、主に、使用される加熱要素のタイプによって制限される。本明細書に開示される反応器システムの特定の実施形態によれば、反応器構成は、反応及び反応器システムのタイプに応じて、少なくとも200℃、好ましくは400~1400℃又は500~1200℃、更により好ましくは600~1100℃の反応器温度を有するように設計されている。例えば、エタンの均質クラッキングのための反応温度の好ましい範囲は、650~1050℃であってもよいが、均質メタン分解については、1750~2100℃であってもよい。同様に、水蒸気-メタン改質については、触媒プロセスの好ましい温度範囲は、使用する触媒のタイプに応じて、400~850℃であってもよい。一般に、触媒の使用は、より低い温度値の方へ好ましい範囲を押し上げることができ、低減量は、触媒及び反応システムのタイプによって異なる。例えば、アンモニアクラッキングのための反応温度の好ましい範囲は、Ni触媒では850~950℃であるが、Cs-Ru触媒では550~700℃である。
【0031】
本開示のシステムで使用される加熱要素は、丸形状ワイヤ、フラットワイヤ、ツイストワイヤ、ストリップ、ロッド、ロッドオーバーバンドなどのような異なる種類の外観及び形態を有し得る。当業者は、加熱要素の形態及び外観が特に限定されないことを容易に理解するであろうし、当業者は、適切な寸法の選択に精通しているであろう。
【0032】
いくつかの実施形態によれば、図1(a)に描かれるPW構成は、2つの側壁部分100の間の距離にわたって複数の導電性ワイヤ104を備えてもよく、ワイヤ104が実質的に平行であるように構成されてもよい。ワイヤ104は、単一のモジュール式ユニット内の全てのワイヤにわたる単一の電気回路として構成されてもよく、又は代替として、各個別のワイヤが独立型回路として動作するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、ワイヤ104は、0.1~10m、1~9m、2~8m、又は3~7mの長さを有してもよい。加えて、ワイヤ104は、10~500μm又は100~400μmの直径を有するように構成されてもよく、発電又は電圧/電流規格において3~4桁の柔軟性を提供する。例えば、一実施形態によれば、10-6Ω・mの抵抗率を有し、長さ0.5m、直径500μmの寸法を有するワイヤに1200Aの電流を適用すると、3.67MWを発生させる。10mの長さ及び50μmの直径を有する代替的な実施形態によれば、発生する電力は7.34GWであり、これは先の実施形態の電力よりも2000倍大きい。各ワイヤ104の所望の長さは、より短いワイヤを直列に接続することによっても得ることができ、柔軟性が機械的安定性及び熱的安定性を満たすことを可能にすることに留意されたい。例えば、1mの長さのワイヤは、0.1mの長さのワイヤを10本直列に接続することによって、又は0.05mの長さのワイヤを20本直列に接続することによって得ることができる。同様に、ワイヤの電気的特性における柔軟性(すなわち、抵抗率が10-9~10-5Ω・mで変化し得る金属の選択)は、追加の2桁の大きさの変化をワイヤに提供し得る。
【0033】
本発明のいくつかのPW構成によれば、システム全体は、複数のモジュール式ユニットを含んでもよく、各モジュール式ユニットは、平行なワイヤの複数の層を備え、各ワイヤは、給送ガスがワイヤ間を流れている間、同じ電位差を受ける。図2(a)は、単層モジュール式ユニットの1つの代表的な構成を描いている。図2(a)に示されるように、単一のユニットは、壁部分202と、平行なワイヤ204の層と、を備えてもよく、複数のワイヤの層はまた、有効水力半径を低減させるように千鳥状に配置されてもよい。図2(b)に示されるように、個々のモジュール式ユニット(図2(a)に開示されるものなど)206は、実装面積を最適化するために、反応ゾーン(又は加熱ゾーン)208の流れ方向に沿って置かれてもよい。そのような反応ゾーン(又は加熱ゾーン)208は、本明細書ではPWモジュールと呼ばれる。いくつかの実施形態によれば、PWモジュールにおいて、各ユニットは、調整された熱注入率を可能にし、電気的制約(すなわち、最大電圧及び/又は電流に対する制限)を満たすように、独立して固定電圧差を受けることがある。
【0034】
PW構成は、従来技術のシステムよりも特に有利であり、これは、PW構成が、(i)均一な加熱、及び(ii)設計空間における追加の柔軟性、特に、空間時間、入口条件(温度、組成)、ワイヤ間隔(又は固体対流れ体積の比)、モジュール当たりのワイヤの数などの選択を提供し、所与のシステムに対する生成目標及び電気的/機械的制約を満たすために使用することができる更なる柔軟性を提供するためである。更に、PW構成は、複数の空間方向に配置することができ、所与の生成目標のための実装面積の最適な使用を可能にする。
【0035】
上述したように、従来技術のシステムとは異なり、本明細書に開示されるPW構成は、モジュール式ユニットを通過する反応物に均一な加熱を提供する。吸熱化学反応プロセスについての先行技術は、典型的には、(それぞれ、均質反応及び触媒反応のための)管又は充填床反応器構成を通した反応物の内部流を含み、熱は、炉内で化石燃料を燃焼させることによって、放射熱伝達を介して外側管壁に供給される。したがって、これらの構成における加熱効率は、熱が流体相に提供される前の熱抵抗(外部固体表面への炉及び内部固体表面の外部)の追加のために、より低くなる。これらの従来技術のシステムとは対照的に、本開示の構成では、流体相に熱を直接供給する固体反応器構成要素材料内で熱を均一に発生させることによって、電力によって(好ましくは再生可能な電気ソースを使用して)熱が反応物に供給され、これにより追加の熱抵抗を最小限に抑え、したがって反応器の潜在的により高い全体的な熱効率をもたらす。
【0036】
特定の従来技術のシステムでは、反応器寸法(流れチャネルの水力半径など)がより大きい。例えば、従来の管反応器では、管の直径は1インチのオーダーであり、これはより大きな温度勾配(又は固体相と流体相との間の差)をもたらし、より低い加熱効率をもたらす。本明細書に開示されるシステムによれば、流れチャネル内の水力直径(例えば、PW構成におけるワイヤ間隔、PP構成におけるプレート間隔、及びSM/ワイヤメッシュ/ガーゼ反応器構成における孔の直径)は小さく、拡散及び伝導時間が先行技術設計における空間時間と比較してはるかに短くなっている。したがって、配置は、横方向質量ペクレ数(p)及び横方向熱ペクレ数pが、
【0037】
【数1】
によって定義されるようなものとなり、(1)は、1よりも小さくてもよい。式中、tDm、tDh、及びtは、それぞれ特徴拡散、伝導、及び空間時間であり、〈u〉は、給送物の平均速度であり、RΩは、水力半径である。
【0038】
【数2】
は、熱拡散率(k、ρ、及びCpfは熱拡散率流体相の熱伝導率、密度、及び比熱容量である)であり、Lは、チャネルの長さである。加えて、反応物の有意な変換率を得るために、空間時間と反応時間との比として定義されるダンケラー数Daは、
【0039】
【数3】
となり、(2)は、1よりもはるか大きくなるよう選択される。例えば、それは、5~10、又は1~100、又は100超であり得る。式中、tは反応時間であり、crefは基準濃度であり、R(cref、T)は反応速度である。線形反応速度論の場合、反応時間は
【0040】
【数4】
であり、式中、kは反応速度定数である。反応時間は、濃度(又はシステム圧力)に依存し得るが、運転温度に強く依存する。本発明者らの構成では、条件p、p<1及びDa≫1を満たすことで、高い変換率を達成しながら加熱効率を高めることができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、ワイヤ付近のガスが中心線におけるガスよりも熱くなるように、横方向の温度勾配が存在することがある。このようなシステムでは、固体表面付近ではより高い変換率が得られることがあり、中心線ではより低い変換率が見られることがある。いくつかの実施形態は、より効率的かつ均一な熱供給を更に可能にするために、ワイヤ層の千鳥状の積み重ねを実装し、それによって、(1つの層からの)より低温の給送物が次の層のワイヤ表面により近接するようにする(見かけの水力半径を効果的に低減する)ことによって、より効率的なクラッキングをもたらす。加えて、流れ方向に層又は複数のユニットを積み重ねるという柔軟性は、加えて、電気的制約内に収まりながら生成性を失うことなく各モジュールの全高を低減することを提供し得る。したがって、本明細書に開示されるモジュール式システムは、多種多様な反応器システムにおける特定の配備のための空間要件に適合するように設計することができる。
【0042】
PW及び他の構成(例えば、PP、モノリス、ワイヤメッシュ、ガーゼ)の特定の実施形態に関する触媒反応及び均質反応の両方に関する材料収支及びエネルギー収支を記述する最も単純な次数低減数学モデルは、流体相及び固体相におけるそれらの平均に対応する複数の濃度モード及び温度モード、並びに界面熱/質量流束に関して表すことができる。横方向勾配は、伝達係数概念を使用して捕捉することができ、これは、均質反応及び/又は触媒反応の場合に正確な結果をもたらす。唯一の差としては、(i)有効伝達係数を介するか又はシュテファン=ボルツマン方程式を直接介する放射項を含む界面熱流束、(ii)固体相における電気抵抗加熱を表すソース項、及び(iii)ガス変換プロセスに必要な吸熱を表すシンク項が挙げられる。
【0043】
PW構成の特定の実施形態について、本明細書に開示されるシステムのモデル化における固体相熱ソース項は、次式で表すことができる:
【0044】
【数5】
【0045】
この熱ソース項では、
【0046】
【数6】
ρ、ΔV、及びLは、それぞれ、単位固体体積当たりに発生させられる電力、ワイヤの電気抵抗率、ワイヤにわたって適用される電位差、及びワイヤの長さを表す。
【0047】
いくつかの実施形態では、モジュール式反応器セグメントは、図1(b)に示されるような平行プレート106のセットを備える。そのような実施形態では、給送ガスがプレート106の幅に沿って流れる間、長さにわたって電圧差が適用される。この構成は、プレート106の幅に関してPW構成と同様の利点を有する。同様に、PW配置において積み重ねられる層の数は、PP配置におけるプレートの厚さに対する幅の比と同様である。図2(b)に示される1つのPWモジュールの実施形態と同様に、PPモジュールの一実施形態は、直列の複数のPPユニットを備えてもよく、同様の利点を提供する。いくつかの実施形態によれば、PP配置において流れ方向により長い長さを有することは、同じ生成性に対してより高い電力を必要とする場合があり、これはユニットに対する電流-電圧制限を超える場合がある。したがって、(図2(b)に示されるようなPW構成と同様に)そのようなユニットを直列に積み重ねることは、電気的制約内に収まる柔軟性を提供する。
【0048】
PP構成のための低次数学モデルは、軸方向ペクレ数に応じて、マルチモード非等温の短いモノリス反応器モデル又は長いモノリスモデルのいずれかであり得る。この構成における熱ソース項もまた、本開示のPW構成を参照して上述した式(3)によって与えられる。
【0049】
別の構成では、短いモノリス(又は孔-短いチャネルを有する薄いプレート)108が1つのユニットとして使用され(図1(c)に示される)、一方で、1つのモジュールは、流れ方向に積み重ねられたいくつかのそのようなSMユニットからなり得る。そのような実施形態では、給送ガスは短いチャネルを通って内部に流れ、電位差は、プレートの側面のうちの1つに沿って流れに対して垂直に適用される。数学的モデルはマルチモード非等温の短いモノリス反応器モデルであり、この場合の熱ソースは次式で表すことができる:
【0050】
【数7】
式中、Lは、電圧差が適用される側部のうちの1つの長さであり、γは、流体に対する固体の体積比であり、f(γ)は、プレート内の孔の存在による無次元実効抵抗率を表す幾何学的係数である。
【0051】
ワイヤメッシュ構成において、1つのユニットは、図1(d)に示されるような単一のワイヤメッシュ110又は流れ方向に積み重ねられた複数のワイヤメッシュ110からなっていてもよく、一方、1つのモジュールは、流れ方向に積み重ねられた複数のそのようなユニットからなっていてもよい。各ユニットは、SM構成におけるように、側面のうちの1つに沿って同じ電位差を受けることがある。したがって、給送ガスは、1つのワイヤメッシュ、次いで他のワイヤメッシュを通って流れ、そこで部分的な変換が各メッシュで起こり、最後のメッシュの出口で所望の変換をもたらす。各ワイヤメッシュ又はガーゼを通る流れ及び反応の数学的モデルは、短モノリスのものと同じである。熱ソース項はまた、本明細書に開示される特定のSM構成のものと同じであってもよく(式4)、式中、SMユニットのチャネル長さは、ワイヤメッシュ数×ワイヤメッシュユニットのワイヤ太さに等しい。
【0052】
結果
本明細書に開示される構成は、任意の吸熱プロセスとともに利用され得るが、性能測定基準は、エチレン生成のためのエタンクラッキングの例示的な吸熱プロセスを使用してモデル化され得る。加えて、PW構成は、流れ方向に積み重ねることができ、電気的制約の評価を容易にすることができる更なる柔軟性を提供するので、本発明者らは、実証のためのプロキシとしてPW構成を選択する。本明細書に開示される例は、本明細書に開示されるモデルを使用して計算された例である。
【0053】
エタンクラッキング及び他の吸熱反応の熱力学的及び反応速度論的側面
本明細書に開示されるシステムためのプロセス条件及び平衡制約を正確に推定するために、反応熱化学に基づく熱力学的計算に対して初期設計考慮を与えた。標準的な熱力学データに基づいて、図3(a)、(c)、及び(e)は、それぞれ、エタンクラッキング、SMR、及びDMRの運転温度の関数として、本明細書に開示される特定の反応器構成について可能な計算された最大(平衡)変換率を描いている。これらの図に示すように、運転温度が上昇すると、変換率が増加する(これは可逆的吸熱反応に典型的である)。これは、吸熱反応の平衡定数が運転温度とともに指数関数的に増加することから予想される。したがって、所望の変換率が高い場合、反応器においてより高い運転温度が必要とされ、これは、追加の材料/安全性関連の制約をもたらし得る。したがって、このような計算は、安全な運転を保証するための材料スクリーニングにおいて重要な役割を果たす。
【0054】
図3(a)、(c)、及び(e)はまた、それぞれ、エタンクラッキング、SMR、及びDMRについての断熱、等温、及び電化運転の間の差を示している。例えば、等温運転(反応器内の温度を一定に維持するために熱が供給されている)において、変換率は、等温反応経路によって示されるように平衡値に到達し得る。対照的に、断熱運転(熱が供給されない)では、反応が進行するにつれて、反応流体は、反応が流体の顕熱を消費するにつれて冷却し、温度の低下及び対応する変換率の低下をもたらす(断熱反応経路を参照)。反対に、電化運転(ジュール加熱が電源を通して供給される)では、空間時間及び供給されている電力に応じて、変換は、断熱経路に沿って開始し、次いで、平衡に向かう経路をたどり、最終的に、より高い変換率(ほぼ100%)をもたらし得る。これは、熱が連続的に供給されており、運転温度が目標等温温度を超えて上昇し、はるかに高い変換率をもたらす可能性があるためである。これらの図において、破線の曲線(3a、3b、及び3c)は、等温運転を(目標運転温度で)維持するための吸熱熱要件と比較して、供給される電熱がそれぞれ0.02:1、0.2:1、及び2:1の比である場合に対応している。例えば、1100K(約827℃)の入口流体温度を有するエタンクラッキングのために設計されたいくつかの実施形態では、平衡変換率はほぼ80%であってもよく、これは、熱供給を通して反応器温度を一定に維持することによって等温運転において達成されてもよい。しかしながら、同じ入口給送温度での断熱運転は、18%のより低い変換率をもたらし、最終温度は、883K(約610℃)に低下する。1100Kの給送物を用いた電化運転では、最初は断熱経路に従ってもよく、(供給される電力及び空間時間に応じて)より低い温度をもたらすが、給送物より高い流体温度をもたらすことがあり、これにより80%より高い変換率をもたらす。同様の傾向が、図3(c)及び(e)に示されるSMR及びDMRなどの他の吸熱プロセスについても観察される。
【0055】
平衡変換率対温度の関係は、熱力学的考察のみに基づいて得られるが、図3(a)、(c)、及び(e)によって示される結果は、閉鎖システム(空間時間が無限大に近づくか、又は流量がゼロになることに対応する)にのみ適用される。開放システムでは、任意の所与の空間時間で得られる実際の変換率は、反応速度論、運転条件(温度並びに運転モード)、及び流量分布に依存し、平衡変換率よりも低くなるであろう。定常状態変換率は、これらの吸熱プロセスについて利用可能な反応速度論モデルを使用して計算することができる。実証目的のために、エタンクラッキング、SMR、及びDMRの反応速度論は、ここでは、熱力学的計算及び変換計算を実行するための従来の方法から選択される。図3(b)、(d)、及び(f)は、それぞれ、エタンクラッキング(1100K(約827℃)の給送物を用いる)、SMR(1000K(約727℃)の給送物を用いる)、及びDMR(1100K(約827℃)の給送物を用いる)についての平衡変換率対空間時間を示している。これらの図から、平衡値に近い変換率は、等温運転ではより短い空間時間で、及び断熱運転で比較的長い空間時間で達成することができることが分かる。例えば、図3(b)に示されるように、1100K(約827℃)の給送物を用いたエタンクラッキングの場合、平衡値に近い変換率(すなわち、約80%)は、等温運転において2sの空間時間で、及び断熱運転において100sの空間時間で達成することができる。同様に、SMRについて、1000K(約727℃)の給送物を用いて、平衡値に近い変換率(すなわち、約80%)が、図3(d)に示されるように、等温運転において2msの空間時間で、及び断熱運転において10msの空間時間で達成することができる。DMRについては、図3(f)に示されるように、1100K(約827℃)での給送物を用いて、平衡値に近い変換率(すなわち、約90%)が、等温運転において1sの、及び断熱運転において10sの空間時間で達成することができる。加えて、これらの図はまた、様々な空間時間で達成される電化運転からの変換を描いている。これらの図から注目すべき2つの重要な点は、(i)空間時間及び供給される電気加熱に応じて、電化運転における変換は、等温運転よりも高い値(100%に近い)をもたらし得ること(もちろん、より高い流体温度も同様にもたらす)、及び(ii)電力供給が高いほど、同じ目標変換に必要な空間時間が短くなることである。したがって、所与の温度限界(材料制約に関連する)で、目標生成速度は、電気的及び他のプロセス制約が考慮に入れられる限り、電化運転において潜在的に達成され得る。加熱セクションに入る給送物の温度に応じて、小さな変換率が存在することがあり、これは、図3における開始点をわずかに変更し得るが、最終的な結論は変更されないことが留意されるべきである。
【0056】
空間時間要件並びにプロセス温度は、所望のレベルの変換率を達成するために考慮する必要がある重要な設計パラメータである。図3(a)、(c)、及び(e)は、部分的な情報(変換率及び温度の関係)を提供するが、それらは特定の空間時間要件を推定しない。しかしながら、それらは、所望の変換率のための暫定的な目標流体温度を提供する。同様に、図3(b)、(d)、及び(f)は、特定の目標流体温度(1100K又は1000K)に対する仮の空間時間を提供する。例えば、図3(b)は、エタンクラッキングにおいて1100K(約827℃)の目標流体温度を有する実施形態について、80%の変換率が約2sの空間時間を必要とすることを示している。同様に、1100K(約827℃)の目標流体温度で所望の変換率が50%である場合、提案される空間時間は約0.3sである。言い換えれば、より高い所望の変換は、反応物が変換のために十分な接触時間を有するように、直感的に予想され得るような、より長い空間時間を必要とする。
【0057】
空間時間及び運転温度の選択された目標値はまた、より高い加熱効率でより高い変換率を得るために、上述した2つの基準(p<1、及びDa≫1)を満たさなければならない。これは、拡散時間並びに反応時間の評価を必要とする。特徴的な反応時間は、様々な温度及び変換レベルでの反応速度式から得ることができる。図4は、エタンクラッキングについての様々な温度での反応時間及び変換率を示している。このプロットは、反応時間が流体温度に応じて、6桁も変化し得ることを示している。同様に、図5は、(図3と同じ方式であるが、様々な他の温度での)平行ワイヤ構成のエタンクラッキングについての変換率対空間時間を示している。これらのプロット(図5に示される)はまた、所与の目標温度において、空間時間がどれだけ大きいかにかかわらず達成することができる変換率に対する最大限度が存在することを示唆する。この最大限度は、図3(a)に示す平衡値に対応している。これらの図(図3図4、及び図5)は、より高い変換率を達成し、目標温度及び対応する空間時間を精緻化するために、ダンケラー数が1より大きくなるように、設計及びプロセスパラメータを選択するために使用することができる。任意の他の吸熱反応についても同様の計算を実行することができ、図3図5は定量的に変化し得るが、性質及び定性的特徴は同じままである。
【0058】
本開示のシステムのいくつかの実施形態は、固体温度と流体温度との間の差が(100~400℃)であり得る先行技術とは対照的に、そのような差が50~100℃以内に制限され得るように設計することができる。したがって、材料感受性に基づいて、最大固体温度は、安全な運転を保証するように選択されてもよく、これは、流体温度の大まかな推定につながる。目標流体温度が選択されると、(反応器構成及び各モジュールの設計に応じて)中間レベルの混合を伴う反応器モデルが、重要な設計パラメータ-空間時間のうちの1つを得るために利用されてもよい。所望の変換率のための反応器の所望の生成能力に基づいて反応器容積を決定するために、空間時間の適切な値を使用することができる。
【0059】
電力要件及び電圧/電流制約
吸熱反応を行うために必要な電力要件
【0060】
【数8】
は、流量、反応物濃度(及び/又は圧力)、給送物の顕熱及び反応熱から構成される入口/出口温度などの流れ及び反応パラメータに依存する。エタンクラッキングの例を使用して、サンプル計算を本明細書に開示する。
【0061】
吸熱化学及び流動条件に基づく電力要件
エタンクラッキングからのエチレン生成の例では、電力要件
【0062】
【数9】
は、以下のように表すことができる。
【0063】
【数10】
式中、Fin、Cpf、T、Tfin、ΔH、及びχは、それぞれ、入口モル流量、比熱容量、出口流体温度、入口流体温度、反応エンタルピー、及び変換率である。第1の部分は、給送物を入口温度から目標温度にするのに必要な給送物の顕熱であり、第2の部分は、反応から目標変換率を得るのに必要な熱である。
【0064】
一例として、世界規模のエタンクラッキングプラントは、1メガトン/年(MTA)のエチレン生成能力を有し得、これは、1.13kmol/sのエチレン生成量又はFin=1.25kmol/sのエタン給送量に相当する(χ=90%の変換率と仮定する)。これは、1atmの圧力、及びTfin=950K(約677℃)でのエタン100m/sの給送物の体積流量に相当する。目標反応温度T=1300K(約1027℃)と仮定すると、空間時間t)は、図3(a)又は図5を使用して選択することができ、これは、t=10msを示唆する。したがって、電力要件
【0065】
【数11】
は、式(5)から計算することができ、これは、およそ
【0066】
【数12】
である(Cpf、約140J.mol-1-1、及びΔH、約145kJ.mol-1。加えて、反応器内の総流体体積(V=qin)はおよそ1mである。
【0067】
同様に、250キロトン/年(kTA)を生成するより低い能力のエタンクラッカーの別の例において、電力要件、エタンの入口流量、及び流体体積は、(同じ空間時間及び入口/出口流体温度に対して)比例してより低くなる。具体的には、314mol/s(又は1atm及び950K(約677℃)で25m/s)の給送/入口流量でエタンから250kTAエチレンプラント(1300K(約1027℃)で283mol/sのエチレンを生成する)は、54MWの電力を必要とし得る。同じ空間時間(t=10ms)を仮定すると、この場合の総流体体積は、約0.25mとなる。式中のこれらの数は単なる例示であり、特定の反応システム及び給送条件に応じて変化し得る。
【0068】
電力発生及び加熱モジュールの設計
必要な総電力が電気加熱を通じて供給される場合、最大電流又は電圧の制限などの電気的制約内で運転することが重要である。いくつかの実施形態によれば、ΔVの電位差を受けるワイヤ(電気抵抗率ρ、長さL、及び直径d)に発生する電力(P)は、次式で与えられる:
【0069】
【数13】
【0070】
例えば、1mの長さのワイヤ(直径100μm、抵抗率1.4Ω.μm)にわたって75ボルトの電位差を適用すると、約0.42Ampの電流がもたらされ、約31.56Wの電力が発生する。したがって、(電気的制約のうちの1つとして)最大1200Ampの電流が許容される場合、図2(a)に描かれるような約2852本のワイヤからなる基本ユニットは、約90kW以上の電力を生成し得る。したがって、250kTAのプラント容量(約54MWの電力を必要とする)を達成するために、約600個のそのような基本ユニットが必要とされ、これは、約600個の基本ユニットを含有する1つのモジュール、又は約300個の基本ユニットを含有する2つのモジュール、又は約200個の基本ユニットを含有する3つのモジュールなどの、多くの組み合わせで達成することができる。図6は、約50kTAのモジュールの生成能力に対応し得る、125個の基本ユニット604からなるモジュール602の概略図を示している。そのようなモジュールのうちの5つは、250kTAの生成能力のエチレンプラントを有することを要求され得る。モジュールの数には柔軟性があり、所望の生成能力及び実装面積に対する制約に応じて選択することができる。いくつかの実施形態によれば、生成プラントは1~50個のモジュールを含み、各モジュールは10~1000個の基本ユニットを含む。これらの基本ユニットは、設置面積を最適化するとともに、電圧/電流制約を満たすように、モジュール式構成で設計及び配置することができる。例えば、(図2(a)に示されるように)単一層において垂直に積み重ねられた平行ワイヤの数及び流れ方向に積み重ねられた層の数に関して、単一基本ユニットの設計に柔軟性がある。いくつかの実施形態によれば、基本PWユニット(図2(a)に示される)は、ユニットの2つの壁部分の間の距離にわたる200~10000本の個々の平行ワイヤを備える。より好ましくは、基本PWユニットのいくつかの実施形態は、100~10000本の個々のワイヤ、更により好ましくは2000~3000本の個々のワイヤを含んでもよい。単一層内に垂直に積み重ねられたワイヤの数は、ユニット又はモジュールの高さを決定し、層の数は、ユニットの流れの長さを決定する。いくつかの実施形態によれば、平均層は、垂直に積み重ねられた10~5000本のワイヤ、又は好ましくは垂直に積み重ねられた100~500本のワイヤを備える。いくつかの実施形態によれば、単一の基本PWユニットは、2~50層、又は好ましくは5~10層を備える。流れ方向に積み重ねられたユニットの数に関して追加の柔軟性が存在し、これはモジュールの長さ及び容量を決定する。ユニットの数は、最大入口速度及び空間時間要件に関する制約に基づいて選択することができる。PW構成を利用する代表的な実施形態によれば、図6は、過渡シミュレーションのために複数のPWユニット604を組み込み、有効性を実証するワイヤの詳細な配置を有するモジュール602の概略図を示している。図6は、PWユニット604の代表的な実施形態の複数の図を描いており、モジュール式ユニットがモジュール602内にどのように位置しているかの図、及びワイヤ構成を示す断面図を含む。複数の当該モジュール式ユニット604を組み込むシステムのいくつかの実施形態では、システムは、10~2000個の個々の基本PWユニット(前述のような)を備えてもよい。
【0071】
いくつかの実施形態によると、構成は、限定ではないが、PW、PP、SM、及びワイヤメッシュ構成を含む、本明細書に開示される任意のタイプのモジュール式ユニットを含んでもよい。PWにおける基本的な個々のユニットの概略図が、図2(a)に描かれており、PP、SM、及びワイヤメッシュ構成におけるものがそれぞれ、図1(b)、1(c)、及び1(d)に描かれている。いくつかの実施形態によれば、PW構成と同様に、他の構成においても、生成プラントは、1~50個のモジュールを備えてもよく、各モジュールは、10~1000個の基本ユニットを備えてもよい。いくつかの実施形態によれば、PP構成において、基本ユニット(図1(b)に示される)は、垂直に積み重ねられた10~5000枚のプレート、又は好ましくは垂直に積み重ねられた100~500枚のプレートを含んでもよい。したがって、本明細書に開示されるシステムの重要な利点のうちの1つは、当該システムが、システム全体の再設計を必要とせずに、モジュール式ユニットを使用して広範囲のカスタマイズ及び柔軟性を提供するために達成される。
【0072】
モジュール式ユニットの過渡挙動
本明細書に開示されるシステムのいくつかの実施形態では、過渡シミュレーションは、反応器サイズ、プロセス条件、及び電気パラメータ/制約を含む柔軟な設計に基づいて、モジュールの現実的性能を保証するために実行することができる。
【0073】
プロセスパラメータ:本明細書に開示されるいくつかの実施形態のパラメータを設計するために、図3(a)を利用して、所望の変換(好ましくは80%よりも大きい)のための目標流体温度を選択することができ、その後、適切な空間時間を図4及び図5から選択することができる。一実施形態によれば、過渡シミュレーションの例示的な実証のために、1300K(約1027℃)の目標温度及び0.01s(10ms)の空間時間を選択することができる。この実証のために、エタンの入口温度は950K(約677℃)であると仮定した。
【0074】
幾何学的パラメータ:例示的な実施形態によれば、図6に示すようなPWモジュール602は、125個のPW基本ユニット604からなる。そのような実施形態では、各PW基本ユニットは、326本の平行ワイヤの8つの層からなり、ユニット当たりのワイヤの総数は2608である。各ワイヤは、1mの長さ、100μmの直径、1.4Ω・μmの抵抗率を有する。全ての層において、平行なワイヤは、1.51mmだけ離れている(すなわち、直径に対するおよそ横方向の間隔の比はおよそ15である)。各層は0.5mm離れている(すなわち、直径に対する軸方向間隔の比は5である)。得られた各ユニットの高さ(各モジュールの高さと同じ)は0.5mであり、各ユニットの流れの長さは4.3mmである。各ユニット間の間隔がユニットの長さと同じである(すなわち、長さに対する間隔の比が1である)と仮定すると、各モジュールの全長はおよそ1.1mである。したがって、各モジュールの反応器部分の寸法は、1m×0.5m×1.1m(すなわち、0.55mである。そのような実施形態では、各モジュールにおいて、流れ方向に125×8(=1000)本のワイヤがあり、したがって、流れ方向の有効固体長さは0.1mであり、0.01sの空間時間を達成するために10m/sの速度が必要となる。したがって、モジュールの全長に基づく空間時間(ワイヤ間の間隔及び各ユニット間の間隔のために有効固体長よりも約10倍大きい)は、およそ10分の1、すなわち0.1sである。
【0075】
電気パラメータ:上述した例示的な実施形態では、各ユニットは79ボルトを受け、ユニット当たり1157Amp(又はワイヤ当たり0.44Amp)の総電流をもたらし、ワイヤ当たり35.1W又はユニット当たり91.5kWの電力を発生させる。その結果、モジュールは11.44MWの電力を発生し、およそ52kTAのエチレンを生成することができる。
【0076】
反応器構成は、二相の短いモノリスモデルの直列及び並列の組み合わせとしてモデル化することができ、これは、10m/sの入口速度について図7(a)に示されるようなモジュールの出口における温度及び変換率の過渡プロファイルをもたらす。同様に、t=10sでの空間プロファイルを図7(b)に示す。
【0077】
少なくともこの例示的な実施形態に従って本明細書に開示されるように、流体温度と固体温度との間の差は、およそ60℃である(出口における定常状態の固体温度及び流体温度は、それぞれ、1380K(約1107℃)及び1320K(約1047℃)である)。加えて、いくつかの実施形態によれば、定常状態を達成するための時間は、図7(a)によって示されるように、1s未満、又はより好ましくは0.8s未満である。このような定常状態運転までの短い期間は、従来の先行技術における数時間から数日と比較して高速始動時間に対応する。加えて、図7(b)の空間プロファイルは、各ワイヤが漸進的な変換をもたらすことを示している。入口付近の最初のいくつかのユニットは、主に、給送流の温度を上昇させる顕熱に寄与する。実際、各ワイヤの空間時間は10μsであり、したがって、変換はより高い温度(およそ1200K(約927℃))で開始する。したがって、ガスの温度が約1200K(約927℃)に達すると、各ワイヤは部分的な変換をもたらす。いくつかの実施形態によれば、モジュールの出口において、少なくとも75%の変換率が達成され、少なくとも80%又は85%の変換率がより好ましくは達成される。
【0078】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示されるモジュールは、モジュールの断面にわたる均一な速度分布、及びワイヤセクションを出た後の高速急冷を達成する。このようなモジュールに必要な特定のパラメータに依存して、追加の反応器長さ(及び容積)が、給送物分配、生成物収集、及び急冷のために必要とされ得る。温度での追加の反応時間による生成物損失を防止又は緩和するために、給送物を収集する前に急冷することが好ましい。給送物が1m×0.5mの断面及び1.1mの流れ長さにおいて10m/sの速度で流れていると考えられる例示的な場合では、分配器及び収集器の長さは合計5mとなり得、各モジュールに必要な総設置面積は1m×0.5m×6m(約3m)となる。したがって、PW構成のいくつかの実施形態では、11.44MWの電力を発生させるか、又はおよそ50kTAのエチレンを生成する能力を有するモジュールの体積は、3mである。したがって、いくつかの実施形態によれば、そのようなモジュールのうちの5つは、およそ15~20mの設置面積を有する250kTAのエチレンを生成することができ、それによって、反応器容積が1000mのオーダーであり得る従来の先行技術と比較した場合、著しくより小さい設置面積を利用する。
【0079】
新しい反応器構成の利点
いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示される反応器構成は、特に、ユニットのモジュール性/柔軟性並びに再生可能電力との結合の可能性に起因して、先行技術を上回る多くの利点を有する。
【0080】
いくつかの実施形態によれば、本開示のシステムは、全電気ヒーターに基づいており(すなわち、従来の手法のように熱を供給するために化石燃料を燃焼させない)、したがって、これらのシステムは、付加価値化学物質を生成しながら、低減された、0の、又は正味のマイナスのCO排出を提供するという有用性を有する。したがって、再生可能な電力(太陽、風、地熱、水、原子力など)が電気を生成するために使用される場合、CO排出を低減することができ、更には完全になくすことができる。例えば、先行技術のエタンクラッキング技術は、生成されるエチレン1モル当たり約1.2モルのCOを大気中に放出する。言い換えれば、世界クラスのエタンクラッカー(1000kTAのエチレンを生成する)は、およそ1800kTAのCOを大気中に放出する。いくつかの実施形態によれば、低減された又はゼロのCO排出は、SMR(水蒸気メタン改質)プロセスで得られるが、マイナスのCO排出は、DMR(乾燥メタン改質)及びRWGS(逆水性ガスシフト)反応で得られる。
【0081】
いくつかの実施形態によれば、本開示のシステムは、均質反応及び触媒反応を含む多種多様なプロセスに適用されてもよい。本開示のシステムはまた、以下を含む多種多様な吸熱プロセスに適用可能であってもよい:(1)エタン、プロパン、ナフサ、原油などのクラッキング、(2)メタンの熱分解、(3)水蒸気又は乾燥メタン改質(SMR又はDMR)、(4)逆水性ガスシフト(RWGS)、(5)アンモニア分解、及び(6)他のそのような吸熱反応。いくつかの実施形態では、本開示のシステムは、以下を促進するために使用され得る:(1)非触媒均質反応(すなわち、流体相中の反応)、及び/又は(2)表面触媒反応(すなわち、固体表面での反応)。触媒を必要とする吸熱反応のために、いくつかの実施形態では、PW又はゲージ又はワイヤメッシュ構成のワイヤ又はPP構成のプレート又はモノリスの内部(すなわち、流体と接触する界面)は、触媒剤を含有するウォッシュコートの薄い多孔質層でコーティングされ得る(自動車からの排気ガスの処理のために使用されるモノリス触媒変換器において実施されるように)。
【0082】
本明細書で説明する従来技術は、加熱/熱効率が30~40%と低い。例えば、エタンクラッキング技術は、必要とされる熱力学的最小値(174.4kJ/モル)の約3倍のエネルギーを使用する。本明細書に開示されるいくつかの実施形態によると、管/ワイヤ/金属モノリス反応器の直接電気加熱は、エネルギー要件を有意に低減し、80%、85%、90%、95%、又は99%よりも大きい加熱効率をもたらし得る。いくつかの実施形態では、同じ効率の利点が、水蒸気メタン改質(SMR)、乾燥メタン改質(DMR)、逆水性ガスシフト(RWGS)反応、及び反応物としてCOを用いる他のものなどの吸熱反応に適用される。
【0083】
いくつかの実施形態によれば、提案された技術における過渡時間は、(図7(a)に示されるように)数秒のオーダーであり、先行技術のsystemsthatからの従来技術は、数時間から1日を要し、それによって、より低い始動及び停止時間をもたらす。これは、現在開示されているシステムで保守を実行中の生成損失の低減につながる。
【0084】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示されるシステムは、柔軟性及び規模拡大の容易さを提供するモジュール式を含む。現在開示されている反応器構成はモジュール式であり、局所的な(好ましくは再生可能な)エネルギー利用可能性及び電圧-電流制限を含むプロセス制約に基づいてシステムのサイズアップを可能にすることによって、著しい柔軟性を提供する。特に、開示されたPWシステムのいくつかの実施形態は、生成、空間、資本コスト、及び電流/電圧制限に関連する様々な制約に適合するために、プロセス、材料、及び幾何学的パラメータに関して柔軟性を提供する。例えば、PWモジュールを使用するエタンクラッキングのために特に設計された本発明のいくつかの実施形態によれば、空間時間は、0.1~1000ms(好ましくは0.1~300ms、より好ましくは1~100ms)の範囲で選択することができる。入口温度は、800K(好ましくは700Kの低さ、より好ましくは600Kの低さ)の低さから、1100K(好ましくは1200Kの高さ、より好ましくは1300Kの高さ)の高さであり得る。各ワイヤの長さは、生成目標に応じて0.25~4m(好ましくは0.5~2m)の範囲で変化し得る。ワイヤ直径は、25~750μm(好ましくは50~500μm)の間で選択することができる。ワイヤ間の間隔は、0.1~20mm(好ましくは0.1~10mm)とすることができる。各ユニットのワイヤの数は、10~10000(好ましくは50~5000、より好ましくは500~3500)の間で変化することができ、ワイヤ材料の抵抗率の範囲は、10-9~10-5Ω・mとすることができ、これは、様々な金属(本明細書に開示される材料を含むが、これらに限定されない)に及ぶ。固体体積分率は、1~30%(好ましくは1~20%)で選択することができる。
【0085】
加えて、いくつかの実施形態では、各モジュールは、独立して並列又は直列に積み重ねられ、規模拡大設計における柔軟性を提供することができる。PW配置のいくつかの実施形態では、モジュールは、流れ方向に沿って積み重ねられた平行なワイヤの複数の層(又はセット)を備えてもよい。そのような積み重ねはまた、千鳥状に配置されてもよく、これは、ワイヤ間の有効間隔を低減することができ、固体と流体との間のより良好な熱伝達をもたらす。いくつかの実施形態では、提案されたシステムは、プラント内の各モジュールの独立した配置を可能にして、上記で議論されたように、目標とする大規模生成を円滑に達成する。各モジュールは任意の方向に配置することができるので、モジュールを任意の方向に並列及び/又は直列に積み重ねることによって、目標とする大規模生成を達成することができる。そのようなモジュールの数は、(前述したように)目標生成量によって異なる。例えば、例示的な実施形態によれば、図6に示されるようなPWモジュール602、1000kTAエチレンプラントは、200個のそのようなモジュールを必要とし得、100kTAエチレンプラントは、20個のそのようなモジュールを必要とし得、400kTAエチレンプラントは、80個のモジュールを必要とし得る。加熱効率が低い場合には、それに応じてモジュール数を増やして目標生成量を達成してもよい。例えば、加熱効率が100%から80%に低減される場合、400kTAエチレンプラントにおいて必要とされるモジュールの数は、480から100に増加し得る。これらのモジュールは、空間の利用可能性に応じて、流れに沿って又は流れに垂直に積み重ねられてもよい。プロセスパラメータ及び材料/幾何学的特性の選択における柔軟性は、スペース制約を満たすために実装面積を最適化するために使用することもできる。
【0086】
本開示の構成のモジュール性に起因して、そのようなシステムは、安全性及び保守点検の容易さ、並びに無視できる余分な運転コストを伴う新しい安全性/緩和戦略の置き換え及び適応を促進する。例えば、いくつかの実施形態では、安全問題が生じた場合、又は保守/安否確認が必要とされる場合、モジュール全体が、(従来の先行技術の手法で必要とされるような)停止又は起動サイクルを経る必要はない。代わりに、モジュール式設計は、小さなセクション(又は特定のモジュール)の停止を可能にする一方で、他のセクションを運転中のままにする。同様に、故障したモジュールの交換も同じ方法で行うことができ、これは、はるかに低い生成損失及びより高い運転資本利用率につながる。新しい緩和戦略の適応が簡略化される。例えば、熱クラッキング及び同様のプロセスに起因するコークス形成を防止するために、コークス形成緩和方法(磁気若しくは電磁パルス又は高周波振動に基づく)を容易に組み込むことができる。
【0087】
いくつかの実施形態では、本開示の構成において提案される全電気ヒーター設計は、放射燃料バーナーを利用する従来技術の燃焼炉設計とは対照的に、均一な温度分布を提供する。加えて、燃焼炉設計は、反応器の壁を目標温度まで効果的に加熱するために、(約80%)より高い局所温度を必要とするが、本開示の電気加熱器構成は、制御されたジュール加熱を通して直接、目標壁温度の上昇を促進する。これは、より均一な温度分布をもたらし、それによって、より高い加熱効率及びより長いシステム寿命とともに、より一貫した均一な反応条件を提供する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-10-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸熱反応を行うためのモジュール式反応器システムであって、前記モジュール式反応器システムは、
a.少なくとも1つのモジュールを備え、各モジュールは、
i.流体が反応ゾーンを通って流れることを可能にするように構成されたチャネルの内側で前記反応ゾーンを取り囲むように位置付けられた複数の壁セクションと、
ii.電源と、
iii.前記壁セクションと機械的に接続され、前記電源と電気的に接続された、前記反応ゾーンを通過する少なくとも1つの抵抗加熱要素と、を更に備え、
iv.前記少なくとも1つの抵抗加熱要素が、前記壁セクションから電気的に絶縁されており、
v.前記反応器システムが、1つ以上の反応物を含有する流体の流れを可能にするように構成されており、
vi.前記反応ゾーンは、反応物が前記流体中に存在する場合に、前記反応物を生成物に変換するのに適しており、
b.各モジュールの前記抵抗加熱要素は、前記反応ゾーンの温度を必要な反応温度範囲に調節することができるように、前記反応ゾーン内で抵抗加熱を発生させるように構成されており、
c.前記少なくとも1つの抵抗加熱要素が、複数のワイヤ、複数のプレート、ワイヤメッシュ、ガーゼ、及び金属モノリスからなる群から選択される構成を含み、
d.前記少なくとも1つの抵抗加熱要素が、複数のワイヤを備え、
e.前記ワイヤの各々が、他のワイヤと平行であり、
f.前記ワイヤが各々、0.1m~10mの長さを有し、
g.前記ワイヤが各々、10μm~1000μmの直径を有し、かつ
h.前記ワイヤが、10-9Ω・m~10-5Ω・mの抵抗率を有する、モジュール式反応器システム。
【請求項2】
a.前記少なくとも1つの抵抗加熱要素が、複数の金属プレートを備え、
b.前記金属プレートの各々が、他の金属プレートに対して平行であり、
c.前記金属プレートが、0.1m~10mの(前記流れに対して垂直方向の)長さ、及び50μm~5000μmの(前記流れに沿った)幅を有し、
d.前記金属プレートが、10μm~1000μmの厚さを有し、かつ
e.前記金属プレートが、10-9Ω・m~10-5Ω・mの抵抗率を有する、請求項1に記載のモジュール式反応器システム。
【請求項3】
a.前記少なくとも1つの抵抗加熱要素が、ワイヤメッシュ、ガーゼ、又は金属モノリスを備え、
b.前記ワイヤメッシュ、ガーゼ、又は金属モノリスが、50μm~10000μmの水力半径を有し、かつ
c.単一のワイヤメッシュ、ガーゼ、又は金属モノリスユニットが、50μm~5000μmの軸方向流れ長さを有する、請求項1に記載のモジュール式反応器システム。
【請求項4】
a.前記少なくとも1つのモジュールは、複数のモジュールであり、前記複数のモジュールが並列及び/又は直列構成で配置されることを可能にするように構成されており、
b.前記複数のモジュールは、前記流体が各モジュールの前記反応ゾーンを通って流れることを可能にするように構成されている、請求項1に記載のモジュール式反応器システム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの抵抗加熱要素が、前記反応ゾーン内で抵抗加熱を発生させ、少なくとも200℃の温度をもたらすように構成されている、請求項1に記載の反応器システム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの抵抗加熱要素が、FeCrAl、NiCr、SiC、MoSi、NiCu、NiCrFe、MnNiCu、CrAlSiCFe、NiCoMnSiFe、及びNiAlTiからなる群から選択される材料から構築されている、請求項1に記載の反応器システム。
【請求項7】
a.複数の抵抗加熱要素を更に備え、
b.前記複数の抵抗加熱要素は、流体から固体への種拡散及び熱伝導時間が空間時間よりも短くなるように配置されており、
c.前記複数の抵抗加熱要素は、横方向熱ペクレ数が1未満であるように選択される、請求項1に記載の反応器システム。
【請求項8】
前記システムが、エタンクラッキング、プロパンクラッキング、ナフサクラッキング、メタン熱分解、アンモニア分解、メタンの乾式若しくは水蒸気改質、逆水性ガスシフト、吸着-脱着プロセス、及び/又はそれらの組み合わせを促進するように構成されている、請求項1に記載のモジュール式反応器システム。
【請求項9】
前記少なくとも1つの抵抗加熱要素が、触媒を更に備える、請求項1に記載のモジュール式反応器システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0087
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0087】
いくつかの実施形態では、本開示の構成において提案される全電気ヒーター設計は、放射燃料バーナーを利用する従来技術の燃焼炉設計とは対照的に、均一な温度分布を提供する。加えて、燃焼炉設計は、反応器の壁を目標温度まで効果的に加熱するために、(約80%)より高い局所温度を必要とするが、本開示の電気加熱器構成は、制御されたジュール加熱を通して直接、目標壁温度の上昇を促進する。これは、より均一な温度分布をもたらし、それによって、より高い加熱効率及びより長いシステム寿命とともに、より一貫した均一な反応条件を提供する。
本明細書は以下の発明の開示を包含する。
[1]
吸熱反応を行うためのモジュール式反応器システムであって、前記モジュール式反応器システムは、
a.少なくとも1つのモジュールを備え、各モジュールは、
i.流体が反応ゾーンを通って流れることを可能にするように構成されたチャネルの内側で前記反応ゾーンを取り囲むように位置付けられた複数の壁セクションと、
ii.電源と、
iii.前記壁セクションと機械的に接続され、前記電源と電気的に接続された、前記反応ゾーンを通過する少なくとも1つの抵抗加熱要素と、を更に備え、
iv.前記少なくとも1つの抵抗加熱要素が、前記壁セクションから電気的に絶縁されており、
v.前記反応器システムが、1つ以上の反応物を含有する流体の流れを可能にするように構成されており、
vi.前記反応ゾーンは、反応物が前記流体中に存在する場合に、前記反応物を生成物に変換するのに適しており、
b.各モジュールの前記抵抗加熱要素は、前記反応ゾーンの温度を必要な反応温度範囲に調節することができるように、前記反応ゾーン内で抵抗加熱を発生させるように構成されており、
c.前記少なくとも1つの抵抗加熱要素が、複数のワイヤ、複数のプレート、ワイヤメッシュ、ガーゼ、及び金属モノリスからなる群から選択される構成を含む、モジュール式反応器システム。
[2]
a.前記少なくとも1つの抵抗加熱要素が、複数のワイヤを備え、
b.前記ワイヤの各々が、他のワイヤと平行であり、
c.前記ワイヤが各々、0.1m~10mの長さを有し、
d.前記ワイヤが各々、10μm~1000μmの直径を有し、
e.前記ワイヤが、10 -9 Ω・m~10 -5 Ω・mの抵抗率を有する、[1]に記載のモジュール式反応器システム。
[3]
a.前記少なくとも1つの抵抗加熱要素が、複数の金属プレートを備え、
b.前記プレートの各々が、他のプレートに対して平行であり、
c.前記プレートが、0.1m~10mの(前記流れに対して垂直方向の)長さ、及び50μm~5000μmの(前記流れに沿った)幅を有し、
d.前記プレートが、10μm~1000μmの厚さを有し、
e.前記プレートが、10 -9 Ω・m~10 -5 Ω・mの抵抗率を有する、[1]に記載のモジュール式反応器システム。
[4]
a.前記少なくとも1つの抵抗加熱要素が、ワイヤメッシュ、ガーゼ、又は金属モノリスを備え、
b.前記ワイヤメッシュ、ガーゼ、又は金属モノリスが、50μm~10000μmの水力半径を有し、
c.単一のワイヤメッシュ、ガーゼ、又は金属モノリスユニットが、50μm~5000μmの軸方向流れ長さを有する、[1]に記載のモジュール式反応器システム。
[5]
a.前記モジュールは、複数のモジュールが並列及び/又は直列構成で配置されることを可能にするように構成されており、
b.前記複数のモジュールは、前記流体が各モジュールの前記反応ゾーンを通って流れることを可能にするように構成されている、[1]に記載のモジュール式反応器システム。
[6]
前記少なくとも1つの抵抗加熱要素が、前記反応ゾーン内で抵抗加熱を発生させ、少なくとも200℃の温度をもたらすように構成されている、[1]に記載の反応器システム。
[7]
前記少なくとも1つの抵抗加熱要素が、FeCrAl、NiCr、SiC、MoSi 、NiCu、NiCrFe、MnNiCu、CrAlSiCFe、NiCoMnSiFe、及びNiAlTiからなる群から選択される材料から構築されている、[1]に記載の反応器システム。
[8]
a.複数の抵抗加熱要素を更に備え、
b.前記抵抗加熱要素は、流体から固体への種拡散及び熱伝導時間が空間時間よりも短くなるように配置されており、
c.前記抵抗加熱要素は、横方向熱ペクレ数が1未満であるように選択される、[1]に記載の反応器システム。
[9]
前記システムが、エタンクラッキング、プロパンクラッキング、ナフサクラッキング、メタン熱分解、アンモニア分解、メタンの乾式若しくは水蒸気改質、逆水性ガスシフト、吸着-脱着プロセス、及び/又はそれらの組み合わせを促進するように構成されている、[1]に記載のモジュール式反応器システム。
[10]
前記少なくとも1つの抵抗加熱要素が、触媒を更に備える、[1]に記載のモジュール式反応器システム。
【国際調査報告】