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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】包装材料
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20240403BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240403BHJP
   B32B 23/00 20060101ALI20240403BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240403BHJP
   B32B 9/02 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
B65D65/40 D BRQ
B32B27/00 H
B32B23/00
B32B27/36
B32B9/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563099
(86)(22)【出願日】2022-04-15
(85)【翻訳文提出日】2023-12-05
(86)【国際出願番号】 EP2022060176
(87)【国際公開番号】W WO2022219183
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】LU500047
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519176500
【氏名又は名称】ソルマルテック・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】SOREMARTEC S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156122
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】ロマーノ,イゴル
(72)【発明者】
【氏名】リィ,フェイ
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA14
3E086BA15
3E086BA24
3E086BA29
3E086BA33
3E086BA35
3E086BB01
3E086BB02
3E086BB05
3E086BB55
3E086BB62
3E086BB90
3E086CA01
3E086DA08
4F100AA20
4F100AA25E
4F100AB02
4F100AB17E
4F100AB24E
4F100AC03B
4F100AJ03
4F100AJ03A
4F100AJ04
4F100AJ04A
4F100AJ04B
4F100AJ06A
4F100AJ07A
4F100AK21
4F100AK25B
4F100AK41
4F100AK41A
4F100AK51
4F100AK51A
4F100AL06A
4F100AR00C
4F100AR00D
4F100AR00E
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100CA06C
4F100CA12
4F100CA12A
4F100CA23B
4F100EJ38
4F100GB15
4F100GB23
4F100HB31
4F100JC00
4F100JC00A
4F100JD02D
4F100JD03
4F100JD04
4F100JD14C
4F100YY00B
(57)【要約】
抗菌活性および/または抗真菌活性を有する活性剤の放出用の少なくとも1つの層(2、6)であって、気体または蒸気状態でのその放出を可能にする生分解性ポリマー材料中に分散または溶解した前記活性剤を含む層、およびナノセルロースを含む少なくとも1つのコーティング層(4、4a、4b)を含む多層構造を有する包装材料;包装は、好ましくはセルロース、デンプンベースの材料、ポリヒドロキシアルカノエートポリマーまたはポリブチレンサクシネートポリマーから選択される材料である構造基材を含むことができる;包装材料は、酸素掃去層およびガスバリア層をさらに含むことができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-抗菌活性および/または抗真菌活性を有する活性剤の放出用の少なくとも1つの層(2、6)であって、好ましくはキトサン、アルギネート、デンプンおよびナノセルロースならびにそれらの混合物から選択される多糖類、ポリヒドロキシアルカノエートおよびポリブチレンサクシネート並びにそれらの混合物から成る群から選択される生分解性ポリマー材料中に分散または溶解した前記活性剤を含む層、および
-少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも80重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%のナノセルロース含有量を有するナノセルロースを含む少なくとも1つのコーティング層(4、4a、4b)
を含む多層構造を有する包装材料。
【請求項2】
ナノセルロースを含む前記少なくとも1つのコーティングが、水、またはポリヒドロキシアルカノエート、ポリブチレンサクシネートおよびポリアクリル酸ポリマー並びにそれらの混合物から選択されるポリマー、またはハイドロタルサイトおよびモンモリロナイト並びにそれらの混合物から選択されるフィラー、または抗菌もしくは抗真菌特性を有する活性剤をさらに含み、ナノセルロースの含有量が、前記水、ポリマー、フィラーまたは活性剤の含有量と合わせて合計で前記コーティングの最大100重量%である、請求項1に記載の包装材料。
【請求項3】
セルロース材料、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリブチレンサクシネートまたはそれらの共重合体、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)、および脂肪族ポリエステルまたは脂肪族-芳香族ポリエステルなどの生分解性ポリマーを任意選択で含むデンプンベースの材料並びにそれらの混合物から成る群から選択される材料を含む、またはから成る構造基材(2)を含む請求項1または2に記載の包装材料であって、前記基材が任意選択で前記活性剤またはその混合物を含み、ナノセルロース(4、4a、4b)を含む前記コーティング層がコーティングとして前記基材(2)の少なくとも1つの面に適用され、活性剤の放出用の前記層(6)が、使用時に前記包装材料に包装された製品に面するよう意図された前記包装材料の側の前記包装材料の表面層である、材料。
【請求項4】
活性剤の放出用の前記層(6)におよび/または前記基材層(2)に含まれる前記活性剤が、グレープフルーツ種子抽出物、レモンの皮またはリモネン精油、ティーツリー油、桂皮油、タイム油、エタノール粉末およびそれらの混合物から成る群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項5】
前記活性剤が、活性剤の放出用の前記層におよび/または前記基材に、生分解性ポリマー材料の重量を基準として1~60重量%、好ましくは5~40重量%の量で含まれる、請求項4に記載の包装材料。
【請求項6】
活性剤の放出用の前記層(6)が、エタノール粉末と、ポリエチレングリコールまたはシクロデキストリンとグラフトされたキトサン、およびキトサンとポリエチレングリコールの混合物から選択される生分解性ポリマー成分とを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項7】
ナノセルロース(4、4a、4b)を含む前記コーティング層が、エステル化、アミド化、またはエーテル化によってCHOH基において場合によっては修飾されたセルロースナノファイバー(CNF)、ナノ結晶セルロース(CNC)、またはバクテリアナノセルロース(BNC)およびそれらの混合物を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項8】
ナノセルロースを含む前記コーティング層が抗菌剤を含む、請求項7に記載の包装材料。
【請求項9】
包装材料で作られたパッケージのヘッドスペース内の酸素の濃度を低減するように構成される、酸素掃去活性(酸素掃去剤)を有するコーティング層(8)をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項10】
酸素掃去活性を有する前記コーティング層(8)が、鉄または酸化鉄およびシリカを含む生分解性ラッカーから得られることを特徴とする請求項9に記載の包装材料。
【請求項11】
酸素掃去活性を有する前記コーティング層(8)が、有機溶媒または水中に、メソポーラスシリカ、エチレンビニルアルコール(EVOH)、鉄、アスコルビン酸ナトリウム、および任意選択で塩化ナトリウムを含む溶液から得られる、請求項9に記載の包装材料。
【請求項12】
前記酸素掃去層(8)が、前記基材(2)と活性剤の放出用の前記層(6)との間に挿入されている、請求項9~11のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項13】
ワニスまたはポリマーラッカーを使用して得られるバリアコーティング層(10)をさらに含む請求項1~12のいずれか一項に記載の包装材料であって、溶媒中または無溶媒で、フィロケイ酸塩またはハイドロタルサイトのフィラーを、好ましくは前記ラッカーまたはワニスの重量を基準にして3~30重量%の量で含む、材料。
【請求項14】
前記ラッカーまたはワニスが、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリ(ビニルアルコール)(PVOH)、デンプンおよびナノセルロース、並びにそれらの混合物から成る群から選択される生分解性ポリマー成分を含む、請求項13に記載の包装材料。
【請求項15】
活性剤の放出用の前記少なくとも1つの層において、前記生分解性ポリマー材料が、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)(3HB)、ポリ(4-ヒドロキシブチレート)(4HB)、ポリ(3-ヒドロキシバレレート)(3HV)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシバレレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート-cо-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシ-co-4-ヒドロキシブチレート)およびそれらの混合物から成る群から選択されるポリ(ヒドロキシアルカノエート)である、請求項1~14のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項16】
-抗菌活性および/または抗真菌活性を有する活性剤を任意選択で含む構造基材(2)、
-前記構造基材(2)の片面または両面に適用されたナノセルロース(4、4a、4b)を含む前記コーティング層、
-前記包装された製品に面するよう意図された前記包装の側に表面層として適用された、または任意選択で前記包装された製品に面しているその側が前記包装内部の前記活性剤の放出を邪魔しないもしくは妨げない追加の層で被覆された、少なくとも1つの活性剤の放出用の層(6)、および
-好ましくは、活性剤の放出用の前記層(6)と前記基材(2)との間、もしくは前記包装された製品に面している側の前記基材(2)に適用される場合、ナノセルロースを含む層(4b)と活性剤の放出用の前記層(6)との間の中間層として適用される、前記パッケージのヘッドスペース内の酸素濃度を低減するための酸素掃去層(8)
を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項17】
前記基材(2)のコーティングとして、または前記ナノセルロースを含む層(4)のコーティングとして、使用時に前記包装材料中に包装された前記製品に対して反対側の前記包装の側に適用される、ガスバリア性を有するコーティング層(10)をさらに含む、請求項16に記載の包装材料。
【請求項18】
外部コーティング層として、銀イオン、銅イオンまたはZnO粒子から選択される抗菌物質を含む保護コーティング(12)をさらに含む、請求項16または17に記載の包装材料。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載の包装材料中に、食品、特にベーカリー製品、チルド製品または菓子製品を含む包装。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性および抗真菌性、特にカビ生育抑制特性を有する食品用包装材料に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、「アクティブ」包装システムに使用するためのフィルムまたはシートの形態の材料であって、その中に包装された食品の表面の微生物の生育を抑制することができる材料に関する。
【背景技術】
【0003】
アクティブ包装システムに関連して、欧州特許出願公開第3569644号明細書には、抗菌物質または防カビ物質(ポリマー中に分散している)を含むポリマー材料のベース層(コア層)、該ベース層の一方の面に適用されたフィロケイ酸塩またはハイドロタルサイトナノフィラーを含むポリマーラッカーまたはワニスによって形成されたコーティング、および該コア層の他方の面に適用された抗菌剤および/または抗真菌剤のアクティブ放出システムを構成するコーティングであって、封入エタノールおよびポリマー成分並びに任意選択で酸素掃去活性を有するコーティング層を含むコーティング、を含む包装材料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3569644号明細書
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、食品が包装材料と密着している場合、および食品とこの材料によって形成された包装材料との間にヘッドスペースがある場合の両方において、食品上の微生物、真菌およびカビの生育を抑制するまたは遅らせることができるアクティブ包装を実現するための改良された包装フィルムまたはシートを提供することである。
【0006】
本発明の別の目的は、前記包装材料から作られた包装のヘッドスペースへの抗菌剤および抗真菌剤の蒸気の持続的かつ制御された放出を実現できる包装シートまたはフィルムを提供することである。
【0007】
本発明のもう一つの目的は、環境持続可能性特性が改善された包装材料を提供することである。
【0008】
上記の目的に鑑みて、本発明の主題は、添付の特許請求の範囲に定義される特性を有する多層シート包装材料である。
【0009】
本発明の別の目的は、上述の包装材料によって作られたまたはこうした材料を含む、食品、特にベーカリー製品、チルド製品または菓子製品を含むパッケージである。
【0010】
本発明による多層シート包装材は、
a)抗菌活性および/または抗真菌活性を有する活性剤の放出用の少なくとも1つの層であって、蒸気または気体の状態で生分解性ポリマー材料中に分散または溶解した前記活性剤を含む層、および
b)少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも80重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%以上最大100重量%のナノセルロース含有量を有するナノセルロースを含む少なくとも1つのコーティング層を含む。
【0011】
前記コーティング層中のナノセルロース含有量が100重量%未満である場合、100重量%に対する残りは、水、高分子材料、好ましくはポリアクリル酸ポリマー、PHAまたはPBS、モンモリロナイト(MMT)またはLDH(ハイドロタルサイト)などのフィラー、および/または抗菌性もしくは抗真菌性を有する活性剤、または本明細書に列挙した成分の1つまたは複数を組み合わせた混合物を含んでもよい。
【0012】
通常は、コーティング層を適用するために使用されるナノセルロースを含む水性溶液を乾燥または部分的に乾燥させた後に生じる水は、コーティング層の重量を基準として1~10重量%の範囲であってよい。
【0013】
上記ポリマー(PHA、PBSまたはポリアクリル酸)は、コーティング層の重量を基準として、0~40重量%、または5~35重量%の範囲であってもよい。
【0014】
フィラー(MMTまたはLDH)は、使用時、コーティングの重量を基準として最大10重量%の範囲で存在してもよい。
【0015】
ナノセルロースコーティング層に、任意選択で上記ポリマーおよび/またはフィラーと組み合わせて使用できる活性剤は、0.1~6重量%の範囲であってもよい。
【0016】
一実施形態において、上述の含有量、または上述の好ましいナノセルロース含有量を有するナノセルロースコーティングは、水を1~8重量%含み、100%に対する残りがPHAおよび/またはPBSである。
【0017】
本発明によれば、包装シートは、c)セルロース系材料(例えば紙、セロファン、厚紙、段ボールなど)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)またはそれらの共重合体、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)、および任意選択で脂肪族ポリエステルまたは脂肪族-芳香族ポリエステルなどの生分解性ポリマーを含むデンプンベースの材料、およびそれらの混合物から成る群からから選択される材料を含む、本質的に成る、またはから成る構造基材(すなわち、包装シートとしての使用に適した機械的特性をシートに与える基材)を含む。
【0018】
一実施形態では、上述の活性剤の放出用の少なくとも1つの層は上述の構造基材であり、活性剤(または活性剤の混合物)が上述の生分解性ポリマー材料またはそれらの混合物中に分散または溶解している。
【0019】
上記の実施形態を排除せずまた一方、上記の実施形態と組み合わせて実施できる別の実施形態では、活性剤の放出用の少なくとも1つの層は、上記構造基材とは異なる追加のコーティング層である。
【0020】
ナノセルロースb)を含む層は、基材の片側または両側の面に直接接触して、または、任意選択で直接接触していないので、以下に述べるように、1つまたは複数のさらなるコーティング層を介在させて適用されるコーティング層であり得る。
【0021】
前述の活性剤の放出用の層a)が、包装の構造基材を構成しない付加のコーティングである場合使用時に包装の内側を向いているように意図された側、すなわちパッケージに含まれる製品に面している側に表面コーティング層として適用されるのが好ましい。
【0022】
本発明のシート包装材料の対象のさらなる特徴および利点は、非限定的な例として提供される添付図面を参照してなされる以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
添付の図面において:
図1図1は、実施例1~3で使用した本発明の包装材料の第1実施形態の概略断面図である。
図2図2は代替実施形態の概略図であり、図2は実施例4~5で使用した包装材料の代替実施形態の概略断面図であり、図3は実施例6で使用した包装材料の代替実施形態の概略断面図である。
図3図3は代替実施形態の概略図であり、図2は実施例4~5で使用した包装材料の代替実施形態の概略断面図であり、図3は実施例6で使用した包装材料の代替実施形態の概略断面図である。
図4図4は、比較例7および8で使用した包装材料の構造を示す概略図である。
図5図5は、実施例1~4で使用した層2の概略図である。
図6図6はセルロースの構造を示している。
【0024】
図2図4では、図1に示された層に対応する層が同じ参照番号で示されている。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、食品用包装材料に関し、特にベーカリー製品、チルド製品、場合によっては詰め物をした菓子製品の包装に関して、特に酸化的、微生物学的、および感覚的劣化との関連でその「保存寿命」を延ばすために開発された。
【0026】
本発明の一実施形態は、例えばフローパックタイプ(この点に関しては欧州特許出願公開第0957043号明細書を参照)の、ホット、コールドまたは超音波によるシールバンドを有する単一の密閉シートから得られる、または2枚以上の包装シートを合わせて密閉したものから得られる、密封パッケージを製造するためのフィルムまたはシートの形態の包装材料に関する。
【0027】
また一方、フィルムまたはシートの形態の包装材料は、例えばFFS(形成、充填、密封)容器の製造のために、フィルムまたはシートを熱成形可能な基材に適用することによって、熱成形パッケージまたは容器の製造に適用することもできる。
【0028】
密封領域、すなわちシートまたは包装シートの縁が重ねられて密封される領域において熱シール材、冷シール材または超音波シール材の存在を必要とする上述のタイプの密封パッケージに関して、ここで説明する包装材料の層構造が、パッケージ内の食品に面するもしくは接触しているフィルムまたはシートの領域に当てはまることが理解される。
【0029】
言い換えれば、本明細書で提供される、活性層またはコーティングを含む多層構造を有するフィルムまたはシート包装材料の定義は、その平坦な延長部全体にわたって均質なフィルムまたはシート材料を意味するものではない。従って、本明細書で説明する包装材料の多層構造は、必ずしもパッケージの密封領域に存在する必要はないと理解される。
【0030】
図面に関して、図1は、上記a)、b)およびc)の点で言及され、以下に詳細に説明される層を含む多層フィルムまたはシートの構造を示す。
【0031】
図面において、2は包装材料の機械的性質を決定するシートの構造層を構成する基材を示し;4、4aおよび4bはナノセルロースを含むコーティング層を示し;6は活性物質の放出に適したコーティング層、8は酸素掃去性を有するコーティング層(酸素掃去剤)、12は連続または不連続印刷層、14は外部保護層;比較例の構造(ナノセルロース層を含まない)に関する図4の参照数字10はガスバリア層を示し、これは図1図3の構造において任意選択で存在し得る。
【0032】
構造基材2は所望の重量を有する紙、セロファン、厚紙、段ボールなどのセルロース系材料によって、またはナノセルロースをベースとする押出層によって、またはポリヒドロキシアルカノエート、ポリブチレンサクシネートもしくはそのコポリマー、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)、ポリ乳酸(PLA)(PLA分解酵素あり/なし)、またはデンプンもしくはデンプンと生分解性ポリマーとのブレンド、および任意選択で以下に記載する抗菌活性および/または抗真菌活性を有する活性剤をベースとする材料によって形成される。
【0033】
ポリブチレンサクシネートのコポリマーとしては、ポリ(1,4-ブチレンサクシネート-co-アジペート)、ポリ(1,4-ブチレンサクシネート-co-1,4-ブチレンアゼレート)、ポリ(1,4-ブチレンサクシネート-co-1,4-ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンサクシネート-co-1,4-ブチレンセバケート-co-1,4-ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンアジペート-co-1,4-ブチレンサクシネート-co-1,4-ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンアゼレート-co-1,4-ブチレンサクシネート-co-1,4-ブチレンテレフタレート)が挙げられる。また、ポリヒドロキシアルカノエート-ポリブチレンサクシネートコポリマーも挙げられる。
【0034】
ポリヒドロキシアルカノエート、ポリブチレンサクシネート、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)、ポリ乳酸(PLA)(PLA分解酵素あり/なし)をベースとする材料またはそれらの混合物の場合、それは単層フィルムまたはより厚い主層と主層の片面または両面にあるより薄い表面層とを含む共押出フィルムであり得、これは付加の機能を実行するのに適しており、例えば、ヒートシール適正または印刷性という特性を有する。
【0035】
基材2はまた包装の適用において外側を向く表面に、高真空金属化もしくは化学もしくは物理蒸着プロセスによって得られる例えばアルミニウム、酸化アルミニウム(AlO)または酸化ケイ素(SiO)の被覆を有する金属化もしくは化学もしくは物理蒸着コーティングを含むことができる。
【0036】
基材については、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)の分解性バイオポリマーの使用が特に好ましい。ポリ(ヒドロキシアルカノエート)(PHA)は生分解性ポリエステルで、グラム陰性菌やグラム陽性菌などの250種類を超える細菌によって自然に生産される。PHAは細胞質で合成され、顆粒の形態で保存される。
【0037】
一般に、本発明で使用されるPHAは、一般式:
【化1】
(式中、Rは水素または最大13個の炭素原子を有する有機ラジカルであり、好ましくはC-Cアルキルであり、
xは1、2または3であり、
nは100~20,000であり、好ましくは200~3,000である)で表すことができる。
【0038】
好ましいのは、ヒドロキシ酸が3~5個の炭素原子を有する短鎖PHA(scl)PHAと、ヒドロキシ酸が6~10個の炭素原子を有する中鎖PHA(mcl)PHAのポリマーおよびコポリマーで、これらは50~170℃、好ましくは100~160℃の融点を有する。本発明の範囲内で使用できるポリ(ヒドロキシアルカノエート)ポリエステルの例としては、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)(3HB)、ポリ(4-ヒドロキシブチレート)(4HB)、ポリ(3-ヒドロキシバレレート)(3HV)が挙げられるが、これらに限定されない。特に好ましいのは、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシバレレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート-co-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシ-co-4-ヒドロキシブチレート)を含む、120~160℃の融点を有するヒドロキシブチレートとヒドロキシバレレートまたはヒドロキシヘキサノエートとのコポリマーである。
【0039】
本発明によれば、従来の熱成形、溶融押出または溶媒鋳造技術によって、場合によっては後述する活性剤やプラスチック材料に従来使用されている添加剤を加えてPHAを加工して、包装フィルムやシートを製造できる。基材は、酸化防止剤(例えば、Irganox(登録商標)、Irgafos(登録商標))、抗核生成剤、プラスチック材料用滑剤を含んでいてもよく、これらは環境分解性であることが好ましい。さらに、本発明の別の態様によれば、PHAを射出成形および/または熱成形技術によって加工して容器を形成することができる。
【0040】
典型的には、基材2は、5μm~80μm、好ましくは30μm~70μmの範囲の厚さを有する多層シートの最も厚い層である。
【0041】
活性剤を放出するための層6は、少なくとも1種の活性剤またはその混合物が分散または溶解した生分解性高分子材料を含むコーティング層である。厚みが薄いことを考慮すると、または活性剤の化学的性質が異なるとことを考慮すると、またはポリマー材料の化学的性質が異なることを考慮すると、それは基材とは異なり得る。
【0042】
用語「生分解性材料」とは本明細書において、細菌、真菌または藻類などの自然界に存在する微生物の作用、および/または加水分解、エステル交換、紫外線もしくは可視光線への曝露(光分解性)、および/または酵素機構、またはそれらの組み合わせなどの自然環境要因の結果として分解可能な材料を意味する。
【0043】
層6の生分解性材料は、キトサン、アルギネート、セルロース(ナノセルロースもしくは紙)、デンプンなどの多糖類などの天然ポリマー、または前述の同じポリヒドロキシアルカノエートなどの天然由来のポリマー、または基材について先に言及した同じポリブチレンサクシネートなどの合成ポリマー、および/または脂肪族ポリエステルであり得る。
【0044】
層6および場合によっては基材2も、生分解性高分子材料中に分散または溶解した、抗菌活性および/または抗真菌活性を有する活性剤を含み、付属の図面においてasiで示されている。
【0045】
このような活性剤asiとしては、精油およびその成分、植物抽出物、粉末または封入された形態のエタノールおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
活性剤は、好ましくは以下のものおよびそれらの混合物から選択される:
-グレープフルーツ種子抽出物または柑橘類種子抽出物:グレープフルーツの種子、果肉、白い膜から得られる液体抽出物、または液体抽出物を担体(マルトデキストリン、シリカまたはシクロデキストリンなど、例えばグレープフルーツ60重量%の種子抽出物と40重量%のマルトデキストリン)を混合した粉末形状のもの。フラバノン、ナリンギン、ヘスペリジンを含む天然の抗菌剤として知られており、ナリンギンやヘスペリジンを活性剤として使用することもできる。
-レモンの皮の精油:主にリモネンを含む液体抽出物。
-ティーツリー油(Melaleuca alternifolia oil):ティーツリーから蒸留される精油で、防腐、抗真菌、抗菌、抗ウィルス特性が知られており、主な有効成分はテルピネン-4-オール(約40%)である。
-桂皮油:主成分としてリナロール(約36%)を含むシナモンの葉から得られる液体抽出物である。
-タイム油とその主成分、例えばチモール、p-シメン、エストラゴール、リナロールおよびカルバクロールなど。
-生分解性高分子材料のマトリックス中に分散したエタノール粉末またはエタノールを含む顆粒。好ましくは(マイクロ)カプセルであるこれらの顆粒は、デキストリン、マルトデキストリン、グルコース、デンプン、デンプン加水分解物またはデキストロースなどの有機食用ポリオールから成る有機固体食用担体を含み、5~55重量%、より好ましくは20~45重量%のエタノール含有量を有し;0.01~1.5mm、より好ましくは0.03~0.6mmの範囲の粒径を有する流動性粉末が好ましい。
【0047】
これらの顆粒は、噴霧乾燥、溶融状態での押出し、流動床での噴霧造粒によって得ることができる。
【0048】
流動床での噴霧乾燥および/または噴霧造粒による製造方法は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,454,165号明細書および米国特許第5,961,707号明細書から知られている。
【0049】
米国特許第5,961,707号明細書に記載されている典型的な製造方法は、デキストリンまたはマルトデキストリンの水/アルコール混合物の溶液の流動床での噴霧造粒によって行われる。
【0050】
用語「デキストリン」には、デンプン、ろう状デンプン、変性デンプン、および特に冷水に可溶なデンプン分解物がある。
【0051】
特に好ましいのは、25℃の水中での少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも60重量%の濃度の可溶性デキストリンまたはマルトデキストリンの使用である。
【0052】
造粒プロセス用の溶液は一般に、20~70%、より好ましくは35~55%のデキストリン、10~40重量%、好ましくは20~35重量%の水、および10~40重量%、好ましくは20~35重量%のエタノールを含む。好ましいプロセスでは、溶液は流動床で持続攪拌下で噴霧造粒される。
【0053】
任意選択で、本発明で使用される顆粒は、エタノールの封入を改善し、その放出を遅らせるとともに、粉末に平滑性および耐摩耗性の特性を付与する担体材料でさらに被覆できる。適当なコーティング材料は、デンプン、セルロース、セルロース誘導体、ゼラチン、ラクトース、脂肪などで、コーティング材料の割合(使用する場合)は、コーティングされていない顆粒を基準にして5~約30重量%である。
【0054】
本発明で使用されるエタノール粉末には、α、βおよび/またはγシクロデキストリンなどのシクロデキストリンに封入されたエタノールが挙げられる。
【0055】
一実施形態では、エタノール粉末を生分解性マトリックスとしてナノセルロース中に分散させることができるまたはナノセルロース中に封入できる。
【0056】
一実施形態では、活性剤の放出用の層6は、生分解性マトリックスの重量に基づいて、一般に1~60重量%、好ましくは5~40重量%、または5~50重量%の量の粉末エタノールを含む。
【0057】
一実施形態では、活性剤の放出用の層6は、粉末エタノールと、ポリエチレングリコールまたはシクロデキストリンにグラフトされたキトサン、およびキトサンとポリエチレングリコール(PEG)の混合物から選択されるポリマー成分を含む。
【0058】
PEGまたはシクロデキストリンにグラフトされたキトサンは、文献で公知であり、例えば、Front Chem. 2017, 5:93 (Doi: 10.3389 / F. Chem 2017.00093)に、E.V.R. Campos et al.によって記述された並びにその文献中で引用されたプロセスによって得ることができる。
【0059】
本発明の一態様によれば、放出層6は、例えば40~60重量%の量のポリエチレングリコールまたはシクロデキストリンにグラフトされたキトサン、例えば1~6重量%の量の粉末または封入エタノール、および水を含むヒドロゲルを適用することによって得られる。
【0060】
別の実施形態では、層6は粉末もしくは封入エタノールと、ポリエチレングリコールとキトサンの混合物を含む。このコーティングは、アセチルアセテート、エチルアセテートまたはイソプロピルアルコールなどの溶媒中に封入されたキトサン、PEG、およびエタノールを含む溶液を適用することによって得られる。水溶液も使用できる。
【0061】
このコーティングはさらに酢酸または塩酸を例えば2重量%、および界面活性剤を最大3重量%含むことができる。好ましい界面活性剤は、ソルビタン1モル当たり300モル未満のエチレンオキシドのモル含有量を有するソルビタンエトキシレートである。
【0062】
例として、以下の印刷可能なコーティング組成物を使用できる:
i)キトサン:25重量%
PEG:25重量%
マルトデキストリンに封入されたエタノール:1重量%
アセチルアセテート溶媒:49重量%
または
ii)キトサン(90%脱アセチル化):15重量%
PEG:30重量%
粉末または封入エタノール:2重量%
溶媒:エチルアセテートまたはイソプロピルアセテートまたは水:53重量%。
【0063】
一般に、PEGとキトサンの合計含有量は40~60重量%で、粉末または封入エタノールの含有量は1~6重量%である。
【0064】
好ましくは、使用される式(C11N)を有するキトサンは、40~350kDaの分子量を有し、異なる脱アセチル化度および粘度を有する。
【0065】
使用するのが好ましいPEGは、65℃より低い融点を有し、50℃における粘度が35mm/s(DIN 51562)より高く、分子量が20000g/molより小さく、好ましくは1000g/mol(DIN 53240)より小さい。
【0066】
活性剤の放出用の層または基材中の活性剤の量は、使用する物質によって大きく異なり得る。一般に、生分解性ポリマー材料の重量を基準として0.1~60重量%、好ましくは5~50重量%の量を使用できる。
【0067】
液体抽出物または精油については、生分解性ポリマーの重量に基づいて0.2重量%~4重量%の量を使用するのが好ましい。
【0068】
活性剤または活性剤の混合物は、周知の化合物の押し出し技術に従って、押出工程で生分解性ポリマー材料に組み込むことができる。
【0069】
活性剤の放出用の層6は、好ましくは、使用時に製品に面している包装シートの側の表面層として適用される。それはまた、基材2のコーティングとして、直接またはナノセルロースを含むコーティング層4(図2および3において4bでも示される)を介在させて、またはナノセルロース4bを含むコーティング層および酸素掃去活性を有するコーティング層8(酸素掃去層)の両方を介在させて適用することもできる(図2および3参照)。先に示したように、層6は好ましくは表面層であるが、包装内部の活性剤の放出を邪魔しないもしくは妨げない追加の層で被覆してもよい。
【0070】
本発明によれば、多層シート包装材料は、ナノセルロースを含むまたはから成る少なくとも1つのコーティング層4、4aまたは4bを含む。用語ナノセルロースには、CHOH基において、例えばエステル化またはアミド化またはエーテル化によって修飾されたナノセルロースが挙げられる。
【0071】
特に、この層について、セルロースナノファイバー(CNF)、ナノ結晶セルロース(CNC)またはバクテリアナノセルロース(BNC)の使用が、前述の通り任意に検討されている。
【0072】
ナノセルロース層4、4aまたは4bは、任意選択で前述のようにasとして活性剤を含むことができる。
【0073】
ナノセルロースコーティングと、揮発性もしくは半揮発性の活性剤を含む、または活性な揮発性蒸気を放出できる活性剤放出層との組み合わせは(それが前述の基材2もしくはコーティング層6またはその両方から成るものであっても)、包装シートの殺菌特性の著しい向上をもたらし、恐らくパッケージのヘッドスペースにおける経時的徐放の結果、その中に包装された製品の保存寿命が延びる。
【0074】
ナノセルロースを含むコーティング層もしくは複数の層はまた、酸素および水蒸気バリア性の両方をシートに付与する。この目的のためには、CHOH基で修飾された(通常、図6に示されるセルロース化学構造におけるC6部位にある)ナノセルロースの使用が好ましい。
【0075】
ナノセルロースを含む、好ましくはCNCをハイドロタルサイトまたはモンモリロナイトと混合したコーティングも使用できる。
【0076】
図1の実施形態では、ナノセルロースを含むコーティング層4は、層6に対して反対側の基板2に直接適用される。
【0077】
図2の実施形態では、2つのナノセルロースコーティング4aおよび4bが基材2に対して両側に設けられている。
【0078】
図2および図3の実施形態では、ナノセルロースコーティング層4bは、基材2と、使用時に包装された製品に面することが意図される基材側の酸素掃去コーティング層8との間に介在させて基材2に直接適用される。
【0079】
ナノセルロースを含む層は、従来のコーティング法、例えば、ヘリカルシリンダー、フレキソ印刷またはグラビア印刷によって適用できる。
【0080】
層4の厚さは、好ましくは0.5~10μmである。
【0081】
任意選択であるが好ましい実施形態によれば、多層シートは、本発明の包装材料で作られたパッケージのヘッドスペース内の酸素濃度を低減するのに適した、酸素掃去活性を有する少なくとも1つのコーティング層8を含む。この層8は、活性剤の放出用の基材2と層6との間の中間層であってもよいが(図1)、図3に示すように、層8を採用する場合、層6とナノセルロース4bを含む層との間に配置することもできる。
【0082】
一実施形態では、酸素掃去コーティング層8は、メソポーラスシリカ、エチレンビニルアルコール(EVOH)、鉄、アスコルビン酸ナトリウムおよび/または塩化ナトリウムを有機溶媒または水中に含む溶液から、溶媒または水を除去して得ることができる。
【0083】
一実施形態では、酸素掃去コーティング層8は、鉄および/またはアスコルビン酸ナトリウムおよび/またはシリカを含むことができ、それらのうちの1つまたは複数を水中、有機溶媒中、または生分解性ラッカー中に適用することによって得ることができる。
【0084】
別の実施形態では、酵素的性質(例えばカタラーゼを含むなど)の酸素掃去コーティングを使用することができる。
【0085】
このコーティング層8は、0.3g/mを超え、一般に10g/m未満のコーティング重量を有し得る。
【0086】
任意選択で、多層シートは、ガスバリア性を有する、好ましくは、23℃および0%相対湿度において0.2mL/(m・day・atm)未満の酸素透過率を有するコーティング層10をさらに含む。包装材料の実用において、このコーティングは、好ましくは、包装の外側に面することを意図されたシート側に適用される。任意選択の層10は、図1図3には示されていないが、図1および図2の構造ではナノセルロースを含む層4もしくは4aのコーティングとして、または図3の構造では基材2のコーティングとして、その中に包装された食品に対して反対側の基材側に適用してもよい。
【0087】
バリアコーティング層10は、溶媒中または無溶媒で、フィロケイ酸塩/モンモリロナイト(ナノクレイ)、グラフェンもしくは酸化グラフェン、人工雲母、またはLDH(例えばハイドロタルサイト)のフィラーを含むワニスまたはポリマーラッカーを、好ましくはラッカーまたはワニスの重量を基準として3~30重量%の量で使用して、使用する場合にはそれに続いて溶媒を除去して得ることができる。1μm未満の長さを有するモンモリロナイトフィラーを使用することが好ましい。このラッカーまたはワニスは、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリ(ビニルアルコール)(PVOH)、デンプンもしくはナノセルロース、またはそれらの混合物などの生分解性ポリマー成分を含むことが好ましい。
【0088】
通常、バリア層10は、0.4g/mを超え5.0g/m未満、より好ましくは2.5g/m未満の重量(乾燥残留物)を有する。
【0089】
コーティングは、フレキソ印刷、グラビア印刷、その他の既知のフィルムコーティング技術などのさまざまな技術によって適用することができる。
【0090】
上記のバリア層10はまた、熱帯条件下(38℃;相対湿度90%)で0.2g/(mday)未満の値の透過率に到達できる適切なレベルの水蒸気バリアを達成できる。
【0091】
外側に向いているシート材料の表面は、好ましくは、銀イオン、銅イオン、ZnO粒子、第4級シロキサンおよび/または正電荷を有する(修飾)ポリ(ビニルアルコール)(すなわち、ポリカチオン性物質)などの抗菌活性物質を任意選択で含むワニスから成る保護コーティング14を有する。
【0092】
参照番号12は、例えば輪転グラビア印刷によって適用された印刷インキ(例えばエチルアセテートベースの印刷インキ)の適用による任意選択の連続または不連続の印刷層を示し、これは外層であってもよいし、保護層14によって覆われていてもよい。
【実施例
【0093】
以下の実施例では、本発明の好ましい実施形態に言及する。
【0094】
比較例は、本発明の技術的効果を強調するために提供されるものである。それらは最先端の技術を説明していると解釈すべきではない。
【0095】
[実施例1]
以下の層で構成される層状構造を有する包装フィルム(図1):
層14:外部コーティングとしてポリウレタンベースのマトリックス99重量%中第4級シロキサン1重量%から成る保護ワニスであり、コーティング重量が2g/mである。
層12:輪転グラビア印刷によって適用された総コーティング重量10g/mのエチルアセテートベースの印刷インキ。
層4:ナノセルロース(セルロースナノ結晶)93重量%と水分7重量%を含むナノセルロース層であり、コーティング重量が1g/mである。
層2:25μmの二軸延伸バイオポリブチレンサクシネート包装フィルムであり、毎分50mでの密封開始温度(SIT)が70℃である。
層8:鉄10重量%、シリカ80重量%およびエチレンビニルアルコール10重量%を含む酸素掃去コーティングであり、コーティング重量が10g/mである。
層6:キトサン48重量%、PEG48重量%、マルトデキストリンに封入されたエタノール2重量%および水2重量%を含む活性剤の放出用コーティングであり、コーティング重量が5g/mである。
【0096】
[実施例2]
実施例1と同じ層状構造および組成を有するが、外部コーティング層14を含まない包装フィルム。
【0097】
[実施例3]
実施例1と同じ層状構造および組成を有する包装フィルムであって、層2が、ポリブチレンサクシネートフィルムにナノセルロース(セルロースナノ結晶)3重量%をよく分散させた金属化二軸延伸バイオポリブチレンサクシネート包装フィルムであるフィルム。
【0098】
[実施例4]
以下の層を含む包装フィルム(図2):
層14:外部コーティングとして、ZnO(酸化亜鉛)粒子3重量%を含む保護ワニスであり、コーティング重量が2g/mである。
層12:実施例1と同じ。
層4a:バリアコーティングはナノセルロース(セルロースナノ結晶)93重量%と水分7重量%で構成され、コーティング重量が1g/mである。
層2:25μmの金属化二軸延伸バイオポリヒドロキシアルカノエート包装フィルムであり、毎分50mでの密封開始温度(SIT)が85℃である。
層4b:ナノセルロース(セルロースナノ結晶)90重量%、グレープフルーツ種子抽出物5重量%、および水5重量%から成る、防カビ物質を含むナノセルロース層コーティングであり、コーティング重量が1g/mである。
層8:鉄10重量%、シリカ80重量%およびエチレンビニルアルコール10重量%を含む酸素掃去コーティングであり、コーティング重量が10g/mである。
層6:キトサン48重量%、PEG48重量%、マルトデキストリンに封入されたエタノール2重量%および水2重量%を含む活性剤の放出用コーティングであり、コーティング重量が5g/mである。
【0099】
[実施例5]
実施例4と同じ層構造を有する包装フィルムであって、層2も活性物質として5%のグレープフルーツ抽出物を含むフィルム。
【0100】
[実施例6]
以下の層を含む包装フィルム(図3):
層14:外部コーティングとして銀イオン粒子1重量%を含む保護ワニスであり、コーティング重量が2g/mである。
層12:実施例1と同じ。
層2:25μmの金属化二軸延伸バイオポリヒドロキシアルカノエート-ポリブチレンサクシネートコポリマー包装フィルムであり、毎分50mでの密封開始温度(SIT)が80℃である。
層4b:ナノセルロース(セルロースナノ結晶)95重量%、レモンの皮の精油5重量%、および水5重量%から成る、防カビ物質を含むナノセルロース層であり、コーティング重量が1g/mである。
層8:鉄10重量%、シリカ80重量%およびエチレンビニルアルコール10重量%を含む酸素掃去コーティングであり、コーティング重量が10g/mである。
層6:マルトデキストリンに封入されたキトサン48重量%、PEG48重量%、エタノール2重量%および水2重量%を含む活性剤の放出用コーティングであり、コーティング重量が5g/mである。
【0101】
[実施例7](比較例)
以下の層を含む包装フィルム(図4):
層14:実施例1と同じ。
層12:実施例1と同じ。
層10:LDHをベースとするバリアコーティングであり、コーティング重量が1g/mである。
層2:実施例1と同じ。
層8:鉄10重量%、シリカ80重量%およびエチレンビニルアルコール10重量%を含む酸素掃去コーティングであり、コーティング重量が10g/mである。
層6:マルトデキストリンに封入されたキトサン48重量%、PEG48重量%、エタノール2重量%および水2重量%を含む活性剤の放出用コーティングであり、コーティング重量が5g/mである。
【0102】
[実施例8](比較例)
実施例7と同じ層状構造および組成を有する包装フィルムであって、層2が毎分50mでの密封開始温度(SIT)が160℃である25μmの二延伸ポリプロピレン包装フィルムであるフィルム。
【0103】
[実施例9]
実施例1と同じ層状構造を有する包装フィルムであって、層4がナノセルロース60重量%、水分7重量%を含み、100重量%に対する残りがPHAポリマーであるフィルム。
【0104】
[実施例10]
実施例1と同じ層状構造を有する包装フィルムであって、層4がナノセルロース68重量%、水分7重量%を含み、100重量%に対する残りがPBSポリマーであるフィルム。
【0105】
[実施例10-2]
実施例1と同じ層状構造を有する包装フィルムであって、層4がナノセルロース80重量%、水分7重量%を含み、100重量%に対する残りがPHAポリマーであるフィルム。
【0106】
[実施例11](比較例)
実施例1と同じ層状構造を有する包装フィルムであって、層4がナノセルロース5重量%、水分7重量%を含み、100重量%に対する残りがPHAポリマーであるフィルム。
【0107】
[実施例12](比較例)
実施例1と同じ層状構造を有する包装フィルムであって、層4がナノセルロース15重量%、水分7重量%を含み、100重量%に対する残りがPBSポリマーであるフィルム。
【0108】
[実施例13]
実施例4と同じ層状構造を有する包装フィルムであって、層4bがナノセルロース80重量%、グレープフルーツ種子抽出物5重量%、水分7重量%を含み、100重量%に対する残りがPHAポリマーであるフィルム。
【0109】
[実施例14](比較例)
実施例4と同じ層状構造を有する包装フィルムであって、層4bがナノセルロース5重量%、グレープフルーツ種子抽出物5重量%、水分5重量%を含み、100重量%に対する残りがPHAポリマーであるフィルム。
【0110】
[実施例15](比較例)
実施例4と同じ層状構造を有する包装フィルムであって、層4bがナノセルロース10重量%、グレープフルーツ種子抽出物5重量%、水分5重量%を含み、100重量%に対する残りがPBSポリマーであるフィルム。
【0111】
保存
上記実施例の包装フィルムを使用して、寸法155(長さ)×160(幅)mmのフィルムを4つのa縁で密封して作られたフローパックパッケージを準備した:
有効包装容積:240cm
【0112】
すべての実施例において、図5に示すように、層2上には4つの縁2a(幅1~2cm)がコーティングのない領域を密封するために確保されている。
【0113】
フローパック包装において、水分活性(Aw)が0.8を超える重量が25gのパン片(体積180cm)を導入した。
【0114】
ヘッドスペース体積:60cm
【0115】
パッケージの保存寿命を評価するため、それらを相対湿度60%の閉環境下に置き、20℃で12時間、28℃で12時間の温度サイクリングに付した。
【0116】
以下のパラメータを決定した:
水分活性(Aw):物質中の水の蒸気分圧を標準状態の水の蒸気分圧で除したものであり、これは微生物が自由水をどれだけ利用できるかを示す。
【0117】
保存寿命:目に見えるカビの生育がなく、品質の良いパン。
【0118】
得られた結果を表1にまとめた。ここで3つの試料で得られたパラメータの平均値を示す。表は以下のパラメータも示している:
WVTR:水蒸気透過速度[g/(m × 24h 90% RH; 38℃)]
O2TR:酸素透過速度[cm / (m × 24h × atm 0% RH; 23℃)]
表1では、包装寿命試験開始時と終了時のAwも示している。
【0119】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】