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特表2024-515646MAGEC2免疫原性ペプチド、MAGEC2免疫原性ペプチドを認識する結合性タンパク質、及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】MAGEC2免疫原性ペプチド、MAGEC2免疫原性ペプチドを認識する結合性タンパク質、及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20240403BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20240403BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20240403BHJP
   C07K 14/74 20060101ALI20240403BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240403BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240403BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240403BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240403BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240403BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20240403BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 39/385 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 47/62 20170101ALI20240403BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240403BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240403BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240403BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240403BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20240403BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240403BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20240403BHJP
   C07K 14/82 20060101ALI20240403BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20240403BHJP
   C07K 16/32 20060101ALN20240403BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20240403BHJP
【FI】
C12N15/12
C07K7/06 ZNA
C07K7/08
C07K14/74
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12Q1/04
C07K14/725
A61K39/00 H
A61K39/385
A61K47/62
A61P35/00
A61P43/00 105
A61P37/04
A61P43/00 121
A61K45/00
A61P43/00 107
A61K39/39
A61K39/395 T
A61K35/17
A61K47/68
G01N33/574 A
G01N33/53 Y
C07K14/47
C07K14/82
C12N5/0783
C07K16/32
C12P21/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563176
(86)(22)【出願日】2022-04-14
(85)【翻訳文提出日】2023-11-28
(86)【国際出願番号】 US2022024728
(87)【国際公開番号】W WO2022221479
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】63/174,808
(32)【優先日】2021-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/329,523
(32)【優先日】2022-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523165950
【氏名又は名称】ティースキャン セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TSCAN THERAPEUTICS, INC.
(71)【出願人】
【識別番号】510086752
【氏名又は名称】アカデミッシュ ザイケンホイス ライデン
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】フェレッティ, アンドリュー ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ワン, イーファン
(72)【発明者】
【氏名】マックビース, ギャビン
(72)【発明者】
【氏名】シュー, チーカイ
【テーマコード(参考)】
4B063
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA14
4B063QA18
4B063QQ08
4B063QQ79
4B063QQ96
4B063QR48
4B063QR66
4B063QS05
4B063QS32
4B063QS33
4B063QS36
4B063QS38
4B063QX02
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC03
4B064CC06
4B064CC12
4B064CC24
4B064DA05
4B064DA14
4B065AA91Y
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BA21
4B065BB25
4B065BB37
4B065BC03
4B065BC07
4B065BC11
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C076AA95
4C076CC07
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB021
4C084ZB091
4C084ZB211
4C084ZB221
4C084ZB261
4C084ZC751
4C085AA06
4C085AA14
4C085AA38
4C085BB01
4C085BB12
4C085BB50
4C085CC03
4C085CC21
4C085EE01
4C085EE03
4C085EE06
4C085FF24
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087CA04
4C087CA16
4C087MA02
4C087NA05
4C087NA13
4C087ZB02
4C087ZB09
4C087ZB21
4C087ZB22
4C087ZB26
4C087ZC75
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA15
4H045BA16
4H045BA17
4H045BA18
4H045BA41
4H045BA70
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045DA86
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書に提供されるのは、MAGEC2免疫原性ペプチド、MAGEC2免疫原性ペプチドを認識する結合性タンパク質、及びその使用である。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表1に列挙されるペプチド配列から選択されるペプチドエピトープを含む、免疫原性ペプチド。
【請求項2】
表1に列挙されるペプチド配列から選択されるペプチドエピトープからなる、免疫原性ペプチド。
【請求項3】
前記免疫原性ペプチドがMAGEC2タンパク質に由来し、任意選択的に、前記免疫原性ペプチドの長さが8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25アミノ酸である、請求項1または請求項2に記載の免疫原性ペプチド。
【請求項4】
前記免疫原性ペプチドが、対象においてMAGEC2及び/またはMAGEC2発現細胞に対する免疫応答を誘発することができ、
任意選択的に、前記免疫応答が、
i)T細胞応答及び/またはCD8+T細胞応答である、及び/または
ii)T細胞増殖、サイトカイン放出及び/または細胞傷害的殺滅からなる群から選択される、
請求項1~3のいずれか1項に記載の免疫原性ペプチド。
【請求項5】
少なくとも1種の請求項1~4のいずれか1項に記載の免疫原性ペプチドを含む、免疫原性組成物。
【請求項6】
アジュバントをさらに含む、請求項5に記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
前記免疫原性組成物が、前記対象においてMAGEC2及び/またはMAGEC2発現細胞に対する免疫応答を誘発することができ、
任意選択的に、前記免疫応答が、
i)T細胞応答及び/またはCD8+T細胞応答である、及び/または
ii)T細胞増殖、サイトカイン放出及び/または細胞傷害的殺滅からなる群から選択される、
請求項5または請求項6に記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
表1に列挙されるペプチド配列から選択されるペプチドエピトープ、及びMHC分子を含む、組成物。
【請求項9】
前記MHC分子がMHC多量体であり、任意選択的に、前記MHC多量体が四量体である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記MHC分子がMHCクラスI分子である、請求項8または請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記MHC分子が、
HLA-A02、HLA-A03、HLA-A01、HLA-A11、HLA-A24、及び/またはHLA-B07
からなる群から選択されるHLA血清型であるMHCアルファ鎖を含み、任意選択的に、前記HLAアレルが、
HLA-A0201、HLA-A0202、HLA-A0203、HLA-A0204、HLA-A0205、HLA-A0206、HLA-A0207、HLA-A0210、HLA-A0211、HLA-A0212、HLA-A0213、HLA-A0214、HLA-A0216、HLA-A0217、HLA-A0219、HLA-A0220、HLA-A0222、HLA-A0224、HLA-A0230、HLA-A0242、HLA-A0253、HLA-A0260、HLA-A0274アレル、HLA-A0301、HLA-A0302、HLA-A0305、HLA-A0307、HLA-A0101、HLA-A0102、HLA-A0103、HLA-A0116アレル、HLA-A1101、HLA-A1102、HLA-A1103、HLA-A1104、HLA-A1105、HLA-A1119アレル、HLA-A2402、HLA-A2403、HLA-A2405、HLA-A2407、HLA-A2408、HLA-A2410、HLA-A2414、HLA-A2417、HLA-A2420、HLA-A2422、HLA-A2425、HLA-A2426、HLA-A2458アレル、HLA-B0702、HLA-B0704、HLA-B0705、HLA-B0709、HLA-B0710、HLA-B0715、及びHLA-B0721アレル
からなる群から選択される、請求項9~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
MHC分子との関連において請求項1~4のいずれか1項に記載の免疫原性ペプチドを含む、安定MHC-ペプチド複合体。
【請求項13】
前記MHC分子がMHC多量体であり、任意選択的に、前記MHC多量体が四量体である、請求項12に記載の安定MHC-ペプチド複合体。
【請求項14】
前記MHC分子がMHCクラスI分子である、請求項12または請求項13に記載の安定MHC-ペプチド複合体。
【請求項15】
前記MHC分子が、
HLA-A02、HLA-A03、HLA-A01、HLA-A11、HLA-A24、及び/またはHLA-B07
からなる群から選択されるHLA血清型であるMHCアルファ鎖を含み、任意選択的に、前記HLAアレルが、
HLA-A0201、HLA-A0202、HLA-A0203、HLA-A0204、HLA-A0205、HLA-A0206、HLA-A0207、HLA-A0210、HLA-A0211、HLA-A0212、HLA-A0213、HLA-A0214、HLA-A0216、HLA-A0217、HLA-A0219、HLA-A0220、HLA-A0222、HLA-A0224、HLA-A0230、HLA-A0242、HLA-A0253、HLA-A0260、HLA-A0274アレル、HLA-A0301、HLA-A0302、HLA-A0305、HLA-A0307、HLA-A0101、HLA-A0102、HLA-A0103、HLA-A0116アレル、HLA-A1101、HLA-A1102、HLA-A1103、HLA-A1104、HLA-A1105、HLA-A1119アレル、HLA-A2402、HLA-A2403、HLA-A2405、HLA-A2407、HLA-A2408、HLA-A2410、HLA-A2414、HLA-A2417、HLA-A2420、HLA-A2422、HLA-A2425、HLA-A2426、HLA-A2458アレル、HLA-B0702、HLA-B0704、HLA-B0705、HLA-B0709、HLA-B0710、HLA-B0715、及びHLA-B0721アレル
からなる群から選択される、請求項12~14のいずれか1項に記載の安定MHC-ペプチド複合体。
【請求項16】
前記ペプチドエピトープと前記MHC分子とが共有結合で連結されている、及び/または前記MHC分子の前記アルファ鎖とベータ鎖とが共有結合で連結されている、請求項12~15のいずれか1項に記載の安定MHC-ペプチド複合体。
【請求項17】
前記安定MHC-ペプチド複合体が検出可能標識を含み、任意選択的に、前記検出可能標識が蛍光団である、請求項12~16のいずれか1項に記載の安定MHC-ペプチド複合体。
【請求項18】
請求項12~17のいずれか1項に記載の安定MHC-ペプチド複合体、及びアジュバントを含む、免疫原性組成物。
【請求項19】
請求項1~4のいずれか1項に記載の免疫原性ペプチドをコードする単離核酸、またはその相補体。
【請求項20】
請求項19に記載の単離核酸を含む、ベクター。
【請求項21】
a)請求項19に記載の単離核酸を含む、
b)請求項20に記載のベクターを含む、及び/または
c)1種以上の請求項1~4のいずれか1項に記載の免疫原性ペプチドを産生する、及び/または前記細胞表面に1種以上の請求項12~17のいずれか1項に記載の安定MHC-ペプチド複合体を提示する、
細胞であって、任意選択的に、前記細胞が遺伝子操作されている、前記細胞。
【請求項22】
装置またはキットであって、
a)1種以上の請求項1~4のいずれか1項に記載の免疫原性ペプチド、及び/または
b)1種以上の請求項12~17のいずれか1項に記載の安定MHC-ペプチド複合体
を含み、
任意選択的に、結合性タンパク質に対するa)及び/またはb)の結合を検出する試薬を含み、
任意選択的に、前記結合性タンパク質が、
抗体、抗体の抗原結合性断片、TCR、TCRの抗原結合性断片、一本鎖TCR(scTCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、またはTCRとエフェクタードメインとを含む融合タンパク質
である、
前記装置またはキット。
【請求項23】
安定MHC-ペプチド複合体に結合するT細胞を検出する方法であって、
a)前記T細胞を含むサンプルを請求項12~17のいずれか1項に記載の安定MHC-ペプチド複合体と接触させること;及び
b)前記安定MHC-ペプチド複合体に対するT細胞の結合を検出し、任意選択的にさらに、前記安定MHC-ペプチド複合体に結合する安定MHC-ペプチド特異的T細胞の百分率を決定すること
を含み、
任意選択的に、前記サンプルが末梢血単核細胞(PBMC)を含む、
前記方法。
【請求項24】
前記T細胞がCD8+T細胞である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記検出及び/または決定することが、蛍光活性化細胞選別(FACS)を用いて、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて、放射免疫アッセイ(RIA)を用いて、免疫化学的に、ウェスタンブロットを用いて、または細胞内フローアッセイを用いて行われる、請求項22~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記サンプルが、
1種以上のMAGEC2タンパク質またはその断片と接触している、または接触した疑いがあるT細胞
を含む、請求項22~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
T細胞がMAGEC2に曝露されたかどうかを判定する方法であって、
a)前記T細胞を含む細胞集団を請求項1~4のいずれか1項に記載の免疫原性ペプチドまたは請求項12~17のいずれか1項に記載の安定MHC-ペプチド複合体とインキュベートすること;及び
b)反応性の存在またはレベルを検出すること
を含み、
対照レベルと比較したときの反応性の存在またはより高いレベルは、前記T細胞がMAGEC2に曝露されたことを示し、
任意選択的に、前記T細胞を含む前記細胞集団は対象から得られる、
前記方法。
【請求項28】
MAGEC2発現を特徴とする障害に罹患している対象の臨床転帰を予測する方法であって、
a)前記対象から得られたT細胞と、1種以上の請求項1~4のいずれか1項に記載の免疫原性ペプチドまたは1種以上の請求項12~17のいずれか1項に記載の安定MHC-ペプチド複合体との間での反応性の存在またはレベルを判定すること;及び
b)前記反応性の存在またはレベルを対照からのものと比較すること
を含み、
前記対照は、良好な臨床転帰を有する対象から得られ、
前記対照と比較したときの前記対象サンプルにおける前記反応性の存在またはより高いレベルは、前記対象が良好な臨床転帰を有することを示す、
前記方法。
【請求項29】
MAGEC2発現を特徴とする障害に対する療法の有効性を評価する方法であって、
a)前記療法の少なくとも一部を対象に提供する前に前記対象から得られた第1サンプルにおいて、前記対象から得られたT細胞と、1種以上の請求項1~4のいずれか1項に記載の免疫原性ペプチドまたは1種以上の請求項12~17のいずれか1項に記載の安定MHC-ペプチド複合体との間での反応性の存在またはレベルを判定すること;及び
b)前記1種以上の請求項1~4のいずれか1項に記載の免疫原性ペプチドまたは前記1種以上の請求項12~17のいずれか1項に記載の安定MHC-ペプチド複合体と、前記対象への前記療法の提供の後に前記対象から得られた第2サンプルの中に存在する前記対象から得られたT細胞との間での反応性の存在またはレベルを判定すること
を含み、
前記第1サンプルと比較したときの前記第2サンプルにおける前記反応性の存在またはより高いレベルは、前記対象においてMAGEC2発現を特徴とする前記障害を治療する上で前記療法が有効であることのしるしである、
前記方法。
【請求項30】
前記反応性のレベルが、
a)結合の存在、及び/または
b)T細胞活性化及び/またはエフェクター機能
によって示され、任意選択的に、前記T細胞活性化または前記エフェクター機能がT細胞増殖、殺滅またはサイトカイン放出である、請求項27~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
後続の時点でステップa)及びb)を繰り返すことをさらに含み、
任意選択的に、第1の時点と前記後続の時点との間で前記対象が、MAGEC2発現を特徴とする前記障害を改善するための治療を受けたことがある、
請求項27~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記T細胞結合、活性化及び/またはエフェクター機能が、蛍光活性化細胞選別(FACS)を用いて、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて、放射免疫アッセイ(RIA)を用いて、免疫化学的に、ウェスタンブロットを用いて、または細胞内フローアッセイを用いて検出される、請求項27~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記対照レベルが基準数である、請求項27~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記対照レベルが、MAGEC2発現を特徴とする前記障害を有さない対象のレベルである、請求項27~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
対象におけるMAGEC2発現を特徴とする障害を予防及び/または治療する方法であって、治療的有効量の請求項1~22のいずれか1項に記載の組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項36】
表1に列挙されるペプチド配列から選択されるペプチドエピトープに結合する、ペプチド結合性分子またはその抗原結合性断片を同定する方法であって、
a)細胞の表面上のMHC分子との関連において表1に列挙されるペプチド配列から選択されるペプチドエピトープを提示している前記細胞を提供すること;
b)前記細胞上の前記MHC分子との関連において前記ペプチドエピトープに対する複数種の候補ペプチド結合性分子またはその抗原結合性断片の結合性を決定すること;及び
c)前記MHC分子との関連において前記ペプチドエピトープに結合する1種以上のペプチド結合性分子またはその抗原結合性断片を同定すること
を含む、前記方法。
【請求項37】
前記ステップa)が、
前記細胞の前記表面上の前記MHC分子を、表1に列挙されるペプチド配列から選択されるペプチドエピトープと接触させること
を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記ステップa)が、
前記ペプチドエピトープをコードする異種配列を含むベクターを使用して、表1に列挙されるペプチド配列から選択される前記ペプチドエピトープを前記細胞に発現させること
を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
表1に列挙されるペプチド配列から選択されるペプチドエピトープに結合する、ペプチド結合性分子またはその抗原結合性断片を同定する方法であって、
a)表1に列挙されるペプチド配列から選択されるペプチドエピトープを単独で、あるいはMHC分子との関連において含む、単独の、あるいは安定MHC-ペプチド複合体中に含まれた状態のペプチドエピトープを提供すること;
b)前記ペプチドまたは前記安定MHC-ペプチド複合体に対する複数種の候補ペプチド結合性分子またはその抗原結合性断片の結合性を決定すること;及び
c)前記ペプチドエピトープまたは前記安定MHC-ペプチド複合体に結合する1種以上のペプチド結合性分子またはその抗原結合性断片を同定すること
を含み、
任意選択的に、前記MHCまたは前記MHC-ペプチド複合体が、請求項8~17のいずれか1項に記載されているものである、
前記方法。
【請求項40】
前記複数種の候補ペプチド結合性分子が、
抗体、抗体の抗原結合性断片、TCR、TCRの抗原結合性断片、一本鎖TCR(scTCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、またはTCRとエフェクタードメインとを含む融合タンパク質
を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記複数種の候補ペプチド結合性分子が、少なくとも2、5、10、100、10、10、10、10、10、10、10種またはそれよりも多くの異なる候補ペプチド結合性分子を含む、請求項39または請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記複数種の候補ペプチド結合性分子が、対象もしくは対象の集団からのサンプルから得られた1種以上の候補ペプチド結合性分子を含む;または
前記複数種の候補ペプチド結合性分子が、対象からのサンプルから得られた親足場ペプチド結合性分子における変異を含む1種以上の候補ペプチド結合性分子を含む、
請求項39~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記対象または対象の集団が、
a)MAGEC2発現を特徴とする障害に罹患していない、及び/またはMAGEC2発現を特徴とする障害から回復している、あるいは
b)MAGEC2発現を特徴とする障害に罹患している、
請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記対象または対象の集団は、請求項1~22のいずれか1項に記載の組成物を投与されたことがある、請求項42または請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記対象が、MAGEC2発現を特徴とする障害の動物モデル、及び/または哺乳動物であり、任意選択的に、前記哺乳動物が、ヒト、霊長類または齧歯動物である、請求項42~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記対象が、MAGEC2発現を特徴とする障害の動物モデル、HLA遺伝子導入マウス、及び/またはヒトTCR遺伝子導入マウスである、請求項42~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記サンプルが、末梢血単核細胞(PBMC)、T細胞及び/またはCD8+メモリーT細胞を含む、請求項42~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
請求項39~47のいずれか1項に従って同定された前記ペプチド結合性分子またはその抗原結合性断片であって、任意選択的に、
抗体、抗体の抗原結合性断片、TCR、TCRの抗原結合性断片、一本鎖TCR(scTCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、またはTCRとエフェクタードメインとを含む融合タンパク質
である、前記ペプチド結合性分子またはその抗原結合性断片。
【請求項49】
対象におけるMAGEC2発現を特徴とする障害を治療する方法であって、
i)表1に列挙される配列から選択されるペプチドエピトープに結合する、ii)請求項39~48のいずれか1項に記載の方法に従って同定される、及び/またはiii)MHC分子との関連において表1に列挙される配列から選択されるペプチドエピトープを含む安定MHC-ペプチド複合体に結合する、ペプチド結合性分子またはその抗原結合性断片
を発現する遺伝子操作型T細胞を治療的有効量で前記対象に投与することを含み、任意選択的に、前記ペプチド結合性分子またはその抗原結合性断片が、
抗体、抗体の抗原結合性断片、TCR、TCRの抗原結合性断片、一本鎖TCR(scTCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、またはTCRとエフェクタードメインとを含む融合タンパク質
であり、任意選択的に、前記MHCまたは前記MHC-ペプチド複合体が、請求項8~17のいずれか1項に記載のものである、前記方法。
【請求項50】
前記T細胞が、
a)前記対象、
b)MAGEC2発現を特徴とする前記障害に罹患していないドナー、または
c)MAGEC2発現を特徴とする障害から回復したドナー
から単離される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
対象におけるMAGEC2発現を特徴とする障害を治療する方法であって、
抗原特異的T細胞を前記対象に輸血すること
を含み、前記抗原特異的T細胞が、
a)前記対象からの免疫細胞を請求項1~22のいずれか1項に記載の組成物で刺激すること;及び
b)前記抗原特異的T細胞をin vitroまたはex vivoで増殖させること
によって生成され、任意選択的に、
i)前記免疫細胞を刺激する前に前記対象から前記免疫細胞を単離する、及び/または
ii)前記免疫細胞が、PBMC、T細胞、CD8+T細胞、ナイーブT細胞、中枢メモリーT細胞及び/またはエフェクターメモリーT細胞を含む、
前記方法。
【請求項52】
前記ペプチドエピトープ、前記免疫原性ペプチド、前記安定MHC-ペプチド複合体、前記T細胞受容体及び/または前記免疫細胞の間での少なくとも1種の免疫複合体の形成に適した条件の下で及び時間にわたって薬剤を接触させておく、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記ペプチドエピトープ、前記免疫原性ペプチド、前記安定MHC-ペプチド複合体、及び/または前記T細胞受容体が細胞によって発現され、前記細胞が1つ以上のステップの間に増殖及び/または単離される、請求項51または請求項52に記載の方法。
【請求項54】
MAGEC2発現を特徴とする前記障害ががんまたはその再発であり、任意選択的に、前記がんが、メラノーマ、頭頸部癌、肺癌、子宮頸癌、前立腺癌、多発性骨髄腫、肝細胞癌、浸潤性乳癌及び膀胱尿路上皮癌からなる群から選択される、請求項23~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記対象が、MAGEC2発現を特徴とする障害の動物モデル、及び/または哺乳動物であり、任意選択的に、前記哺乳動物が、ヒト、霊長類または齧歯動物である、請求項23~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
請求項1~4のいずれか1項に記載の免疫原性ペプチド配列を含むポリペプチド、請求項1~4のいずれか1項に記載の免疫原性ペプチド、及び/または請求項12~17のいずれか1項に記載の安定MHC-ペプチド複合体に結合する、結合性タンパク質であって、任意選択的に、
抗体、抗体の抗原結合性断片、TCR、TCRの抗原結合性断片、一本鎖TCR(scTCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、またはTCRとエフェクタードメインとを含む融合タンパク質
である、前記結合性タンパク質。
【請求項57】
a)表2に列挙されるT細胞受容体(TCR)アルファ鎖CDR配列からなる群から選択されるTCRアルファ鎖CDR配列との少なくとも約80%の同一性を有するTCRアルファ鎖CDR配列;及び/または
b)表2に列挙されるTCRベータ鎖CDR配列からなる群から選択されるTCRベータ鎖CDR配列との少なくとも約80%の同一性を有するTCRベータ鎖CDR配列
を含み、
前記結合性タンパク質がMAGEC2免疫原性ペプチド-MHC(pMHC)複合体に結合することができ、
任意選択的に、その結合親和性が約5×10-4M以下のKを有する、
請求項56に記載の結合性タンパク質。
【請求項58】
a)表2に列挙されるTCRアルファ鎖可変(Vα)ドメイン配列からなる群から選択されるTCR Vαドメイン配列との少なくとも約80%の同一性を有するTCR Vαドメイン配列;及び/または
b)表2に列挙されるTCRベータ鎖可変(Vβ)ドメイン配列からなる群から選択されるTCR Vβドメイン配列との少なくとも約80%の同一性を有するTCR Vβドメイン配列
を含み、
前記結合性タンパク質がMAGEC2免疫原性ペプチド-MHC(pMHC)複合体に結合することができ、
任意選択的に、その結合親和性が約5×10-4M以下のKを有する、
請求項56に記載の結合性タンパク質。
【請求項59】
a)表2に列挙されるTCRアルファ鎖配列からなる群から選択されるTCRアルファ鎖配列との少なくとも約80%の同一性を有するTCRアルファ鎖配列;及び/または
b)表2に列挙されるTCRベータ鎖配列からなる群から選択されるTCRベータ鎖配列との少なくとも約80%の同一性を有するTCRベータ鎖配列
を含み、
前記結合性タンパク質がMAGEC2免疫原性ペプチド-MHC(pMHC)複合体に結合することができ、
任意選択的に、その結合親和性が約5×10-4M以下のKを有する、
請求項56に記載の結合性タンパク質。
【請求項60】
a)表2に列挙されるTCRアルファ鎖CDR配列からなる群から選択されるTCRアルファ鎖CDR配列;及び/または
b)表2に列挙されるTCRベータ鎖CDR配列からなる群から選択されるTCRベータ鎖CDR配列
を含み、
前記結合性タンパク質がMAGEC2免疫原性ペプチド-MHC(pMHC)複合体に結合することができ、
任意選択的に、その結合親和性が約5×10-4M以下のKを有する、
請求項56に記載の結合性タンパク質。
【請求項61】
a)表2に列挙されるTCRアルファ鎖可変(Vα)ドメイン配列からなる群から選択されるTCR Vαドメイン配列;及び/または
b)表2に列挙されるTCRベータ鎖可変(Vβ)ドメイン配列からなる群から選択されるTCR Vβドメイン配列
を含み、
前記結合性タンパク質がMAGEC2免疫原性ペプチド-MHC(pMHC)複合体に結合することができ、
任意選択的に、その結合親和性が約5×10-4M以下のKを有する、
請求項56に記載の結合性タンパク質。
【請求項62】
a)表2に列挙されるTCRアルファ鎖配列からなる群から選択されるTCRアルファ鎖配列;及び/または
b)表2に列挙されるTCRベータ鎖配列からなる群から選択されるTCRベータ鎖配列
を含み、
前記結合性タンパク質がMAGEC2免疫原性ペプチド-MHC(pMHC)複合体に結合することができ、
任意選択的に、その結合親和性が約5×10-4M以下のKを有する、
請求項56に記載の結合性タンパク質。
【請求項63】
1)前記TCRアルファ鎖CDR、TCR Vαドメイン、及び/またはTCRアルファ鎖が、表2に列挙されるTRAV、TRAJ及びTRAC遺伝子の群から選択されるTRAV、TRAJ及び/またはTRAC遺伝子あるいはその断片にコードされる、及び/または
2)前記TCRベータ鎖CDR、TCR Vβドメイン、及び/またはTCRベータ鎖が、表2に列挙されるTRBV、TRBJ及びTRBC遺伝子の群から選択されるTRBV、TRBJ及び/またはTRBC遺伝子あるいはその断片にコードされる、及び/または
3)前記結合性タンパク質の各CDRが、表2に列挙される同種の基準CDR配列と比較して最大5個の、アミノ酸置換、挿入、欠失またはそれらの組合せを有する、
請求項56~62のいずれか1項に記載の結合性タンパク質。
【請求項64】
前記結合性タンパク質がキメラ型、ヒト化型またはヒト型である、請求項56~63のいずれか1項に記載の結合性タンパク質。
【請求項65】
前記結合性タンパク質が、
膜貫通ドメイン、及び
細胞内にあるエフェクタードメイン
を有する結合性ドメインを含む、請求項56~64のいずれか1項に記載の結合性タンパク質。
【請求項66】
前記TCRアルファ鎖と前記TCRベータ鎖とが共有結合で連結されており、任意選択的に、前記TCRアルファ鎖と前記TCRベータ鎖とが、リンカーペプチドを介して共有結合で連結されている、請求項56~65のいずれか1項に記載の結合性タンパク質。
【請求項67】
前記TCRアルファ鎖及び/または前記TCRベータ鎖が部分構造に共有結合で連結されており、任意選択的に、共有結合で連結された前記部分構造が親和性タグまたは標識を含む、請求項56~66のいずれか1項に記載の結合性タンパク質。
【請求項68】
前記親和性タグが、CD34濃縮タグ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、カルモジュリン結合性タンパク質(CBP)、プロテインCタグ、Mycタグ、Haloタグ、HAタグ、Flagタグ、Hisタグ、ビオチンタグ及びV5タグからなる群から選択される、及び/または
前記標識が蛍光タンパク質である、
請求項67に記載の結合性タンパク質。
【請求項69】
共有結合で連結された前記部分構造が、炎症性薬剤、サイトカイン、毒素、細胞傷害性分子、放射性同位体、または抗体もしくはその抗原結合性断片からなる群から選択される、請求項56~68のいずれか1項に記載の結合性タンパク質。
【請求項70】
前記結合性タンパク質が、細胞表面上にある前記pMHC複合体に結合する、請求項56~69のいずれか1項に記載の結合性タンパク質。
【請求項71】
前記MHCまたは前記MHC-ペプチド複合体が、請求項8~17のいずれか1項に記載のものである、請求項56~70のいずれか1項に記載の結合性タンパク質。
【請求項72】
前記MAGEC2ペプチド-MHC(pMHC)複合体に対する前記結合性タンパク質の結合が免疫応答を誘発し、任意選択的に、前記免疫応答が、
i)T細胞応答及び/またはCD8+T細胞応答である、及び/または
ii)T細胞増殖、サイトカイン放出及び/または細胞傷害的殺滅からなる群から選択される、
請求項56~71のいずれか1項に記載の結合性タンパク質。
【請求項73】
前記結合性タンパク質が、前記MAGEC2免疫原性ペプチド-MHC(pMHC)複合体に、約1×10-4M以下、約5×10-5M以下、約1×10-5M以下、約5×10-6M以下、約1×10-6M以下、約5×10-7M以下、約1×10-7M以下、約5×10-8M以下、約1×10-8M以下、約5×10-9M以下、約1×10-9M以下、約5×10-10M以下、約1×10-10M以下、約5×10-11M以下、約1×10-11M以下、約5×10-12M以下、または約1×10-12M以下のKで特異的及び/または選択的に結合することができる、請求項56~72のいずれか1項に記載の結合性タンパク質。
【請求項74】
既知のT細胞受容体と比較して前記結合性タンパク質は、前記ペプチド-MHC(pMHC)に対する結合親和性がより高く、任意選択的に、前記結合親和性がより高いことは、少なくとも1.05倍高いことである、請求項56~73のいずれか1項に記載の結合性タンパク質。
【請求項75】
既知のT細胞受容体と比較して前記結合性タンパク質は、MAGEC2のヘテロ接合型発現を有する標的細胞と接触したときにT細胞増殖、サイトカイン放出及び/または細胞傷害的殺滅をより強く誘導し、任意選択的に、前記誘導が少なくとも1.05倍強い、請求項56~74のいずれか1項に記載の結合性タンパク質。
【請求項76】
前記細胞傷害的殺滅が標的がん細胞である、請求項75に記載の結合性タンパク質。
【請求項77】
前記がんが、メラノーマ、頭頸部癌、肺癌、子宮頸癌、前立腺癌、多発性骨髄腫、肝細胞癌、浸潤性乳癌及び膀胱尿路上皮癌からなる群から選択される、請求項76に記載の結合性タンパク質。
【請求項78】
前記結合性タンパク質が、ALKDVEERV/HLA-A02、LLFGLALIEV/HLA-A02、SESIKKKVL/HLA-B44、及びASSTLYLVF/HLA-B57からなる群から選択されるペプチド-MHC(pMHC)複合体に結合しない、請求項56~77のいずれか1項に記載の結合性タンパク質。
【請求項79】
表2に列挙されるTCRアルファ鎖及びベータ鎖配列からなる群から選択される、TCRアルファ鎖及び/またはベータ鎖。
【請求項80】
単離核酸分子であって、
i)ストリンジェントな条件の下で、表2に列挙されるポリペプチド配列からなる群から選択されるポリペプチドをコードする核酸の相補体とハイブリダイズするもの、
ii)表2に列挙されるポリペプチド配列からなる群から選択されるポリペプチドをコードする核酸との少なくとも約80%の相同性を有する配列、及び/または
iii)ii)表2に列挙されるものをコードする核酸との少なくとも約80%の相同性を有する配列
であり、任意選択的に、
1)表2に列挙されるTRAV、TRAJ及びTRAC遺伝子の群から選択されるTRAV、TRAJ及び/またはTRAC遺伝子あるいはその断片、及び/または
2)表2に列挙されるTRBV、TRBJ及びTRBC遺伝子の群から選択されるTRBV、TRBJ及び/またはTRBC遺伝子あるいはその断片
を含む、前記単離核酸分子。
【請求項81】
前記核酸が、宿主細胞における発現のためにコドン最適化されている、請求項80に記載の単離核酸。
【請求項82】
ベクターであって、請求項80または請求項81に記載の単離核酸を含み、任意選択的に、
i)前記ベクターが、クローニングベクター、発現ベクターもしくはウイルスベクターである、及び/または
ii)前記ベクターが、表3に列挙されるベクター配列を含む、
前記ベクター。
【請求項83】
前記ベクターが、CD8α及び/またはCD8βをコードする核酸配列をさらに含む、請求項82に記載のベクター。
【請求項84】
前記CD8αまたはCD8βをコードする核酸配列が、タグをコードする核酸に機能的に連結されている、請求項83に記載のベクター。
【請求項85】
前記タグをコードする核酸は、CD8αまたはCD8βのN末端に前記タグが融合されるような、前記CD8αまたはCD8βをコードする核酸配列の5’上流側にある、請求項83または請求項84の記載のベクター。
【請求項86】
前記タグがCD34濃縮タグである、請求項84または請求項85に記載のベクター。
【請求項87】
請求項80または請求項81に記載の単離核酸、ならびに前記CD8α及び/またはCD8βをコードする核酸配列が、内部リボソーム進入部位と、または自己切断ペプチドをコードする核酸配列と相互連結されている、請求項83~86のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項88】
前記自己切断ペプチドが、P2A、E2A、F2AまたはT2Aである、請求項87に記載のベクター。
【請求項89】
請求項80または請求項81に記載の単離核酸を含む、宿主細胞であって、
請求項82~88のいずれか1項に記載のベクターを含み、及び/または
請求項56~78のいずれか1項に記載の前記結合性タンパク質を発現し、
任意選択的に、前記細胞が遺伝子操作されている、
前記宿主細胞。
【請求項90】
前記宿主細胞が、TCR遺伝子の、HLA遺伝子の、または両者の染色体遺伝子ノックアウトを含む、請求項89に記載の宿主細胞。
【請求項91】
前記宿主細胞が、
α1マクログロブリン遺伝子、α2マクログロブリン遺伝子、α3マクログロブリン遺伝子、β1マイクログロブリン遺伝子、β2マイクログロブリン遺伝子及びそれらの組合せ
から選択されるHLA遺伝子のノックアウトを含む、請求項89または請求項90に記載の宿主細胞。
【請求項92】
前記宿主細胞が、
TCRα可変領域遺伝子、TCRβ可変領域遺伝子、TCR定常領域遺伝子及びそれらの組合せ
から選択されるTCR遺伝子のノックアウトを含む、請求項89~91のいずれか1項に記載の宿主細胞。
【請求項93】
前記宿主細胞がCD8α及び/またはCD8βを発現し、任意選択的に、前記CD8α及び/またはCD8βがCD34濃縮タグに融合されている、請求項89~92のいずれか1項に記載の宿主細胞。
【請求項94】
前記CD34濃縮タグを用いて前記宿主細胞が濃縮される、請求項93に記載の宿主細胞。
【請求項95】
前記宿主細胞が、造血始原細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、臍帯血細胞または免疫細胞である、請求項89~94のいずれか1項に記載の宿主細胞。
【請求項96】
前記免疫細胞が、T細胞、細胞傷害性リンパ球、細胞傷害性リンパ球前駆細胞、細胞傷害性リンパ球始原細胞、細胞傷害性リンパ球幹細胞、CD4T細胞、CD8T細胞、CD4/CD8二重陰性T細胞、ガンマデルタ(γδ)T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、NK-T細胞、樹状細胞またはそれらの組合せである、請求項95に記載の宿主細胞。
【請求項97】
前記T細胞が、ナイーブT細胞、中枢メモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞またはそれらの組合せである、請求項89~96のいずれか1項に記載の宿主細胞。
【請求項98】
前記T細胞が、初代T細胞、またはT細胞株の細胞である、請求項89~97のいずれか1項に記載の宿主細胞。
【請求項99】
前記T細胞は、内因性TCRを発現しない、またはその表面発現がより少ない、請求項89~98のいずれか1項に記載の宿主細胞。
【請求項100】
前記宿主細胞が、MHC分子との関連において、MAGEC2ペプチドエピトープを含むペプチド-MHC(pMHC)複合体を含む標的細胞と接触したときに、サイトカインまたは細胞傷害性分子を産生することができる、請求項89~99のいずれか1項に記載の宿主細胞。
【請求項101】
前記宿主細胞が、in vitro、ex vivoまたはin vivoで前記標的細胞と接触する、請求項100に記載の宿主細胞。
【請求項102】
前記サイトカインが、TNF-α、IL-2及び/またはIFN-γである、請求項100または請求項101に記載の宿主細胞。
【請求項103】
前記細胞傷害性分子がパーフォリン及び/またはグランザイムであり、任意選択的に、前記細胞傷害性分子がグランザイムBである、請求項89~102のいずれか1項に記載の宿主細胞。
【請求項104】
前記宿主細胞が、MAGEC2のヘテロ接合型発現を有する標的細胞と接触したときに、より高いレベルのサイトカインまたは細胞傷害性分子を産生することができる、請求項89~103のいずれか1項に記載の宿主細胞。
【請求項105】
前記宿主細胞が、少なくとも1.05倍高いレベルのサイトカインまたは細胞傷害性分子を産生することができる、請求項104に記載の宿主細胞。
【請求項106】
前記宿主細胞が、MHC分子との関連において、前記MAGEC2ペプチドエピトープを含むペプチド-MHC(pMHC)複合体を含む標的細胞を殺滅することができる、請求項89~103のいずれか1項に記載の宿主細胞。
【請求項107】
前記殺滅が殺滅アッセイによって判定される、請求項106に記載の宿主細胞。
【請求項108】
前記殺滅アッセイにおいて前記宿主細胞と前記標的細胞との比が20:1~1:4である、請求項106または請求項107に記載の宿主細胞。
【請求項109】
前記標的細胞が、1μg/mL~50pg/mLのMAGEC2ペプチドをパルス導入された標的細胞であり、任意選択的に、前記標的細胞が、前記MAGEC2ペプチドに整合したMHCに関して単アレル性の細胞である、請求項106~108のいずれか1項に記載の宿主細胞。
【請求項110】
前記宿主細胞が、MAGEC2のヘテロ接合型発現を有する標的細胞と接触したときに、より多い数の標的細胞を殺滅することができ、任意選択的に、前記細胞殺滅が少なくとも1.05倍高い、請求項106~109のいずれか1項に記載の宿主細胞。
【請求項111】
前記標的細胞が細胞株または初代細胞であり、任意選択的に、前記標的細胞が、HEK293由来細胞株、がん細胞株、初代がん細胞、形質転換細胞株及び不死化細胞株からなる群から選択される、請求項89~110のいずれか1項に記載の宿主細胞。
【請求項112】
前記MAGEC2免疫原性ペプチドが、請求項1~4のいずれか1項に記載のものである、及び/または
前記MHCもしくは前記MHC-ペプチド複合体が、請求項8~17のいずれか1項に記載のものである、
請求項89~111のいずれか1項に記載の宿主細胞。
【請求項113】
前記宿主細胞が、
ALKDVEERV/HLA-A02、LLFGLALIEV/HLA-A02、SESIKKKVL/HLA-B44、及びASSTLYLVF/HLA-B57
からなる群から選択されるペプチド-MHC(pMHC)複合体を含む標的細胞と接触したときに、T細胞増殖、サイトカイン放出または細胞傷害的殺滅を誘導しない、請求項89~112のいずれか1項に記載の宿主細胞。
【請求項114】
前記宿主細胞が、
MAGEC2抗原を発現しない、
請求項56~78のいずれか1項に記載の結合性タンパク質によって認識されない、
血清型HLA-B07のものでない、
HLA-B07アレルを発現しない、
血清型HLA-A24のものでない、及び/または
HLA-A24アレルを発現しない、
請求項89~113のいずれか1項に記載の宿主細胞。
【請求項115】
請求項89~114のいずれか1項に記載の宿主細胞の、集団。
【請求項116】
a)請求項56~77のいずれか1項に記載の結合性タンパク質、
b)請求項80もしくは請求項81に記載の単離核酸、
c)請求項82~88のいずれか1項に記載のベクター、
d)請求項89~114のいずれか1項に記載の宿主細胞、及び/または
e)請求項115に記載の宿主細胞の集団、ならびに
担体
を含む、組成物。
【請求項117】
装置またはキットであって、
a)請求項56~77のいずれか1項に記載の結合性タンパク質、
b)請求項80もしくは請求項81に記載の単離核酸、
c)請求項82~88のいずれか1項に記載のベクター、
d)請求項89~114のいずれか1項に記載の宿主細胞、及び/または
e)請求項115に記載の宿主細胞の集団
を含み、
任意選択的に、pMHC複合体に対するa)、d)及び/またはe)の結合を検出する試薬を含む、
前記装置またはキット。
【請求項118】
請求項56~77のいずれか1項に記載の結合性タンパク質を生産する方法であって、
(i)請求項56~77のいずれか1項に記載の結合性タンパク質をコードする配列を含む核酸によって形質転換された、形質転換済み宿主細胞を、前記結合性タンパク質の発現が可能になるのに適した条件の下で培養するステップ;及び
(ii)前記発現した前記結合性タンパク質を回収するステップ
を含む、前記方法。
【請求項119】
請求項56~77のいずれか1項に記載の結合性タンパク質を発現する宿主細胞を生産する方法であって、
(i)請求項56~77のいずれか1項に記載の結合性タンパク質をコードする配列を含む核酸を、前記宿主細胞に導入するステップ;及び
(ii)前記形質転換済み宿主細胞を、前記結合性タンパク質の発現が可能になるのに適した条件の下で、培養するステップ
を含む、前記方法。
【請求項120】
MAGEC2抗原の、及び/またはMAGEC2を発現している細胞の、存在または非存在を検出する方法であって、
任意選択的に前記細胞が過剰増殖性細胞であり、
前記方法は、
少なくとも1種の請求項56~77のいずれか1項に記載の結合性タンパク質、
少なくとも1種の請求項89~114のいずれか1項に記載の宿主細胞、または
請求項115に記載の宿主細胞の集団
を使用することによってサンプル中の前記MAGEC2抗原の存在または非存在を検出することを含み、
前記MAGEC2抗原の検出は、MAGEC2抗原の、及び/またはMAGEC2を発現している細胞の存在を示す、
前記方法。
【請求項121】
前記少なくとも1種の結合性タンパク質、または前記少なくとも1種の宿主細胞が、MHC分子との関連において前記MAGEC2ペプチドと複合体を形成し、前記複合体が、蛍光活性化細胞選別(FACS)の方式で、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)の方式で、放射免疫アッセイ(RIA)の方式で、免疫化学的に、ウェスタンブロットの方式で、または細胞内フローアッセイの方式で検出される、請求項120に記載の方法。
【請求項122】
対象からサンプルを得ることをさらに含む、請求項120または請求項121に記載の方法。
【請求項123】
対象におけるMAGEC2発現を特徴とする障害のレベルを検出する方法であって、
a)前記対象から得られたサンプルを、少なくとも1種の請求項56~77のいずれか1項に記載の結合性タンパク質、少なくとも1種の請求項89~114のいずれか1項に記載の宿主細胞、または請求項115に記載の宿主細胞の集団と接触させること;及び
b)反応性のレベルを検出すること
を含み、
対照レベルと比較したときの前記反応性の存在またはより高いレベルは、前記対象におけるMAGEC2発現を特徴とする前記障害のレベルを示す、
前記方法。
【請求項124】
前記対照レベルが基準数である、請求項123に記載の方法。
【請求項125】
前記対照レベルが、MAGEC2発現を特徴とする前記障害を有さない対象からのレベルである、請求項123または請求項124に記載の方法。
【請求項126】
対象におけるMAGEC2発現を特徴とする障害の進行を追跡評価する方法であって、
a)対象サンプルにおいて、前記対象から得られたサンプルと、少なくとも1種の請求項56~77のいずれか1項に記載の結合性タンパク質、少なくとも1種の請求項89~114のいずれか1項に記載の宿主細胞、または請求項115に記載の宿主細胞の集団との間での反応性の存在またはレベルを検出すること;
b)後続の時点でステップa)を繰り返すこと;ならびに
c)ステップa)及びb)で検出された、MAGEC2の、またはMAGEC2を発現している関心とする細胞のレベルを比較して、前記対象におけるMAGEC2発現を特徴とする前記障害の前記進行を追跡評価すること
を含み、
ステップb)で検出されたMAGEC2レベルまたはMAGEC2を発現している前記関心とする細胞の、ステップa)と比較したときの非存在または減少は、前記対象におけるMAGEC2発現を特徴とする前記障害の進行の抑制を示し、
ステップb)で検出されたMAGEC2レベルまたはMAGEC2を発現している前記関心とする細胞の、ステップa)と比較したときの存在または増加は、前記対象におけるMAGEC2発現を特徴とする前記障害の進行を示す、
前記方法。
【請求項127】
第1の時点と前記後続の時点との間で前記対象が、MAGEC2発現を特徴とする前記障害を治療するための治療を受けたことがある、請求項126に記載の方法。
【請求項128】
MAGEC2発現を特徴とする障害に罹患している対象の臨床転帰を予測する方法であって、
a)前記対象から得られたサンプルと、少なくとも1種の請求項56~77のいずれか1項に記載の結合性タンパク質、少なくとも1種の請求項89~114のいずれか1項に記載の宿主細胞、または請求項115に記載の宿主細胞の集団との間での反応性の存在またはレベルを判定すること;及び
b)前記反応性の存在またはレベルを対照からのものと比較すること
を含み、
前記対照は、良好な臨床転帰を有する対象から得られ、
前記対照と比較したときの前記対象サンプルにおける前記反応性の非存在または低下したレベルは、前記対象が良好な臨床転帰を有することを示す、
前記方法。
【請求項129】
MAGEC2発現を特徴とする障害に対する療法の有効性を評価する方法であって、
a)MAGEC2発現を特徴とする前記障害に対する前記療法の少なくとも一部を対象に提供する前に前記対象から得られた第1サンプルにおいて、前記対象から得られたサンプルと、少なくとも1種の請求項56~77のいずれか1項に記載の結合性タンパク質、少なくとも1種の請求項89~114のいずれか1項に記載の宿主細胞、または請求項115に記載の宿主細胞の集団との間での反応性の存在またはレベルを判定すること;及び
b)MAGEC2発現を特徴とする前記障害に対する前記療法の提供の後に前記対象から得られた第2サンプルにおいて、前記対象から得られたサンプルと、少なくとも1種の請求項56~77のいずれか1項に記載の結合性タンパク質、少なくとも1種の請求項89~114のいずれか1項に記載の宿主細胞、または請求項115に記載の宿主細胞の集団との間での反応性の存在またはレベルを判定すること
を含み、
前記第1サンプルと比較したときの前記第2サンプルにおける前記反応性の非存在または低下したレベルは、前記対象においてMAGEC2発現を特徴とする前記障害を治療する上で前記療法が有効であることのしるしであり、
前記第1サンプルと比較したときの前記第2サンプルにおける前記反応性の存在または上昇したレベルは、前記対象においてMAGEC2発現を特徴とする前記障害を治療する上で前記療法が有効でないことのしるしである、
前記方法。
【請求項130】
前記反応性のレベルが、
a)結合の存在、及び/または
b)T細胞活性化及び/またはエフェクター機能
によって示され、
任意選択的に、前記T細胞活性化またはエフェクター機能が、T細胞増殖、殺滅またはサイトカイン放出である、
請求項120~129のいずれか1項に記載の方法。
【請求項131】
前記T細胞結合、活性化及び/またはエフェクター機能が、蛍光活性化細胞選別(FACS)を用いて、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて、放射免疫アッセイ(RIA)を用いて、免疫化学的に、ウェスタンブロットを用いて、または細胞内フローアッセイを用いて検出される、請求項120~130のいずれか1項に記載の方法。
【請求項132】
MAGEC2発現を特徴とする障害を予防及び/または治療する方法であって、
MAGEC2を発現している標的細胞を、少なくとも1種の請求項56~77のいずれか1項に記載の結合性タンパク質を発現している細胞を含む治療的有効量の組成物と接触させること
を含み、任意選択的に、前記組成物が対象に投与される、前記方法。
【請求項133】
前記細胞が、同種異系細胞、同系細胞または自家細胞である、請求項49~55及び請求項132のいずれか1項に記載の方法。
【請求項134】
前記細胞が、
請求項89~114のいずれか1項に記載の宿主細胞、または
請求項115に記載の宿主細胞の集団
である、請求項49~55、請求項132及び請求項133のいずれか1項に記載の方法。
【請求項135】
前記標的細胞が、MAGEC2を発現しているがん細胞である、請求項49~55及び請求項132~134のいずれか1項に記載の方法。
【請求項136】
前記組成物が、薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項49~55及び請求項132~135のいずれか1項に記載の方法。
【請求項137】
前記対象において前記組成物が、MAGEC2を発現している前記標的細胞に対する免疫応答を誘導する、請求項49~55及び請求項132~136のいずれか1項に記載の方法。
【請求項138】
前記対象において前記組成物が、MAGEC2を発現している前記標的細胞に対する抗原特異的T細胞免疫応答を誘導する、請求項49~55及び請求項132~137のいずれか1項に記載の方法。
【請求項139】
前記抗原特異的T細胞免疫応答が、CD4ヘルパーTリンパ球(Th)応答及びCD8+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答の少なくとも1つを含む、請求項49~55及び請求項132~138のいずれか1項に記載の方法。
【請求項140】
MAGEC2発現を特徴とする前記障害に対する少なくとも1つの付加的治療を施与することをさらに含み、
任意選択的に、MAGEC2発現を特徴とする前記障害に対する前記少なくとも1つの付加的治療が前記組成物と同時にまたは連続して施与される、
請求項49~55及び請求項132~139のいずれか1項に記載の方法。
【請求項141】
MAGEC2発現を特徴とする前記障害ががんまたはその再発であり、任意選択的に、前記がんが、メラノーマ、頭頸部癌、肺癌、子宮頸癌、前立腺癌、多発性骨髄腫、肝細胞癌、浸潤性乳癌及び膀胱尿路上皮癌からなる群から選択される、請求項132~140のいずれか1項に記載の方法。
【請求項142】
前記対象が、MAGEC2発現を特徴とする障害の動物モデル、及び/または哺乳動物であり、任意選択的に、前記哺乳動物が、ヒト、霊長類または齧歯動物である、請求項132~141のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年4月14日に出願された米国仮出願第63/174,808号、及び2022年4月11日に出願された米国仮出願第63/329,523号の利益を主張するものであり、参照により上記出願の各々の内容の全体を本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
操作型T細胞を使用する養子細胞移入(ACT)は、特定タイプの液性腫瘍の治療において大いなる有効性を実証し、固形腫瘍を治療するのに有望である。T細胞受容体操作型T細胞(TCR-T)はがん細胞に存在する抗原を認識する外来TCRを発現しているT細胞である。TCR-抗原相互作用は、TCR-T細胞にがん細胞を殺滅させる標的指向機構の中核的構成要素である。TCR-T療法の幅広い検査及び採用における難題の1つは、多様な患者及び症状に適用できるTCR-抗原対がないことである。臨床試験においていくつかのTCR及び抗原が探索されたとはいえ、探究されたほとんどの抗原は1種のHLAアレル、すなわちHLA-A02:01に限られ、このことが、療法に対して適格となる患者の数を制限しており、しかもがん細胞がHLA-A02:01アレルを変異させることで潜在的抵抗性を発達させることを可能にしてもいる。
【0003】
加えて、MHCによって提示されるエピトープの予測を通例必要とする新規TCR-抗原対の発見は困難であるため、探究された抗原の数は限られている。他方、そのようなエピトープは、免疫原性でない場合があり、それによって反応性TCRの同定を困難にしており、またはエピトープはがん細胞によるプロセシング及び生理学的提示をされない場合がある。したがって、抗原の発現を特徴とする障害に関係する診断、予後予測、治療、及び薬剤のスクリーニングのための有用な試薬を開発するためには、幅広く適用可能である種々のHLAアレルとの関連においてTCR-抗原対を同定することが当技術分野において大いに必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、MAGEC2発現に関連する障害を有する対象(例えば、メラノーマ、頭頸部癌、肺癌、子宮頸癌、前立腺癌、多発性骨髄腫、肝細胞癌、浸潤性乳癌または膀胱尿路上皮癌に罹患している対象)から同定されたTCRクローン型の抗原を発見するために用いられた不偏的な機能選抜法に基づくMAGEC2免疫原性ペプチド及びそのようなMAGEC2免疫原性ペプチドを認識する結合性タンパク質の発見に、少なくとも部分的に基づいている。同定されたTCRは、種々のHLAアレル(例えば、HLA-B07:02、及びHLA-A24:02)との関連において、MAGEC2免疫原性ペプチド、例えば、表1に列挙されるものを認識した。MAGEC2は、がん及び精巣組織には選択的に発現するが正常な体細胞組織には発現せず、このことによってそれがACTの理想的な標的になることが、本明細書において実証された。MAGEC2結合性タンパク質(例えば、本明細書に記載のTCR)がMAGEC2免疫原性ペプチドに結合する、及びMAGEC2を発現している細胞(例えばがん細胞)を殺滅する免疫応答を誘発する能力は、MAGEC2発現を特徴とする障害のための適切な診断、予後予測、治療、及び薬剤のスクリーニングの方法を含めた多岐にわたる用途におけるそのような結合性タンパク質の有用性を明らかにしている。
【0005】
一態様では、表1に列挙されるペプチド配列から選択されるペプチドエピトープを含む、免疫原性ペプチドが提供される。
【0006】
別の態様では、表1に列挙されるペプチド配列から選択されるペプチドエピトープからなる、免疫原性ペプチドが提供される。
【0007】
本発明に包含される任意の態様に適用され得る及び/または本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わされ得る幾多の実施形態が、さらに提供される。例えば、一実施形態では、免疫原性ペプチドはMAGEC2タンパク質に由来し、任意選択的に、免疫原性ペプチドの長さは8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25アミノ酸である。別の実施形態では、免疫原性ペプチドは、対象においてMAGEC2及び/またはMAGEC2発現細胞に対する免疫応答を誘発することができ、任意選択的に、免疫応答は、i)T細胞応答及び/またはCD8+T細胞応答である、及び/またはii)T細胞増殖、サイトカイン放出及び/または細胞傷害的殺滅からなる群から選択される。
【0008】
さらに別の態様では、少なくとも1種の本明細書に記載の免疫原性ペプチドを含む、免疫原性組成物が提供される。
【0009】
本発明に包含される任意の態様に適用され得る及び/または本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わされ得る幾多の実施形態が、さらに提供される。例えば、一実施形態では、免疫原性組成物は、アジュバントをさらに含む。別の実施形態では、免疫原性組成物は、対象においてMAGEC2及び/またはMAGEC2発現細胞に対する免疫応答を誘発することができ、任意選択的に、免疫応答は、i)T細胞応答及び/またはCD8+T細胞応答である、及び/またはii)T細胞増殖、サイトカイン放出及び/または細胞傷害的殺滅からなる群から選択される。
【0010】
さらに別の態様では、表1に列挙されるペプチド配列から選択されるペプチドエピトープ、及びMHC分子を含む、組成物が提供される。
【0011】
本発明に包含される任意の態様に適用され得る及び/または本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わされ得る幾多の実施形態が、さらに提供される。例えば、一実施形態では、MHC分子はMHC多量体であり、任意選択的に、MHC多量体は四量体である。別の実施形態では、MHC分子はMHCクラスI分子である。さらに別の実施形態では、MHC分子は、HLA-A02、HLA-A03、HLA-A01、HLA-A11、HLA-A24、及び/またはHLA-B07からなる群から選択されるHLA血清型であるMHCアルファ鎖を含み、任意選択的に、HLAアレルは、HLA-A0201、HLA-A0202、HLA-A0203、HLA-A0204、HLA-A0205、HLA-A0206、HLA-A0207、HLA-A0210、HLA-A0211、HLA-A0212、HLA-A0213、HLA-A0214、HLA-A0216、HLA-A0217、HLA-A0219、HLA-A0220、HLA-A0222、HLA-A0224、HLA-A0230、HLA-A0242、HLA-A0253、HLA-A0260、HLA-A0274アレル、HLA-A0301、HLA-A0302、HLA-A0305、HLA-A0307、HLA-A0101、HLA-A0102、HLA-A0103、HLA-A0116アレル、HLA-A1101、HLA-A1102、HLA-A1103、HLA-A1104、HLA-A1105、HLA-A1119アレル、HLA-A2402、HLA-A2403、HLA-A2405、HLA-A2407、HLA-A2408、HLA-A2410、HLA-A2414、HLA-A2417、HLA-A2420、HLA-A2422、HLA-A2425、HLA-A2426、HLA-A2458アレル、HLA-B0702、HLA-B0704、HLA-B0705、HLA-B0709、HLA-B0710、HLA-B0715、及びHLA-B0721アレルからなる群から選択される。
【0012】
別の態様では、MHC分子との関連において本明細書に記載の免疫原性ペプチドを含む、安定MHC-ペプチド複合体が提供される。
【0013】
本発明に包含される任意の態様に適用され得る及び/または本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わされ得る幾多の実施形態が、さらに提供される。例えば、一実施形態では、MHC分子はMHC多量体であり、任意選択的に、MHC多量体は四量体である。別の実施形態では、MHC分子はMHCクラスI分子である。さらに別の実施形態では、MHC分子は、HLA-A02、HLA-A03、HLA-A01、HLA-A11、HLA-A24、及び/またはHLA-B07からなる群から選択されるHLA血清型であるMHCアルファ鎖を含み、任意選択的に、HLAアレルは、HLA-A0201、HLA-A0202、HLA-A0203、HLA-A0204、HLA-A0205、HLA-A0206、HLA-A0207、HLA-A0210、HLA-A0211、HLA-A0212、HLA-A0213、HLA-A0214、HLA-A0216、HLA-A0217、HLA-A0219、HLA-A0220、HLA-A0222、HLA-A0224、HLA-A0230、HLA-A0242、HLA-A0253、HLA-A0260、HLA-A0274アレル、HLA-A0301、HLA-A0302、HLA-A0305、HLA-A0307、HLA-A0101、HLA-A0102、HLA-A0103、HLA-A0116アレル、HLA-A1101、HLA-A1102、HLA-A1103、HLA-A1104、HLA-A1105、HLA-A1119アレル、HLA-A2402、HLA-A2403、HLA-A2405、HLA-A2407、HLA-A2408、HLA-A2410、HLA-A2414、HLA-A2417、HLA-A2420、HLA-A2422、HLA-A2425、HLA-A2426、HLA-A2458アレル、HLA-B0702、HLA-B0704、HLA-B0705、HLA-B0709、HLA-B0710、HLA-B0715、及びHLA-B0721アレルからなる群から選択される。さらに別の実施形態では、ペプチドエピトープとMHC分子とが共有結合で連結されている、及び/またはMHC分子のアルファ鎖とベータ鎖とが共有結合で連結されている。別の実施形態では、安定MHC-ペプチド複合体は検出可能標識を含み、任意選択的に、検出可能標識は蛍光団である。
【0014】
さらに別の態様では、本明細書に記載の安定MHC-ペプチド複合体、及びアジュバントを含む、免疫原性組成物が提供される。
【0015】
さらに別の態様では、本明細書に記載の免疫原性ペプチドをコードする単離核酸、またはその相補体が提供される。
【0016】
別の態様では、本明細書に記載の単離核酸を含む、ベクターが提供される。
【0017】
さらに別の態様では、a)本明細書に記載の単離核酸を含む、b)本明細書に記載のベクターを含む、及び/またはc)1種以上の本明細書に記載の免疫原性ペプチドを産生する、及び/または細胞表面に1種以上の本明細書に記載の安定MHC-ペプチド複合体を提示する、
細胞であって、任意選択的に、細胞が遺伝子操作されている、当該細胞が提供される。
【0018】
さらに別の態様では、装置またはキットであって、a)1種以上の本明細書に記載の免疫原性ペプチド、及び/またはb)1種以上の本明細書に記載の安定MHC-ペプチド複合体を含み、任意選択的に、結合性タンパク質に対するa)及び/またはb)の結合を検出する試薬を含み、任意選択的に、結合性タンパク質が、抗体、抗体の抗原結合性断片、TCR、TCRの抗原結合性断片、一本鎖TCR(scTCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、またはTCRとエフェクタードメインとを含む融合タンパク質である、上記装置またはキットが提供される。
【0019】
別の態様では、安定MHC-ペプチド複合体に結合するT細胞を検出する方法であって、a)T細胞を含むサンプルを本明細書に記載の安定MHC-ペプチド複合体と接触させること;及びb)安定MHC-ペプチド複合体に対するT細胞の結合を検出し、任意選択的にさらに、安定MHC-ペプチド複合体に結合する安定MHC-ペプチド特異的T細胞の百分率を決定することを含み、任意選択的に、サンプルが末梢血単核細胞(PBMC)を含む、当該方法が提供される。
【0020】
本発明に包含される任意の態様に適用され得る及び/または本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わされ得る幾多の実施形態が、さらに提供される。例えば、一実施形態では、T細胞はCD8+T細胞である。別の実施形態では、検出及び/または決定することは、蛍光活性化細胞選別(FACS)を用いて、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて、放射免疫アッセイ(RIA)を用いて、免疫化学的に、ウェスタンブロットを用いて、または細胞内フローアッセイを用いて行われる。さらに別の実施形態では、サンプルは、1種以上のMAGEC2タンパク質またはその断片と接触している、または接触した疑いがあるT細胞を含む。
【0021】
さらに別の態様では、T細胞がMAGEC2に曝露されたかどうかを判定する方法であって、a)T細胞を含む細胞集団を本明細書に記載の免疫原性ペプチドまたは本明細書に記載の安定MHC-ペプチド複合体とインキュベートすること;及びb)反応性の存在またはレベルを検出することを含み、対照レベルと比較したときの反応性の存在またはより高いレベルは、T細胞がMAGEC2に曝露されたことを示し、任意選択的に、T細胞を含む細胞集団は対象から得られる、当該方法が提供される。
【0022】
さらに別の態様では、MAGEC2発現を特徴とする障害に罹患している対象の臨床転帰を予測する方法であって、a)対象から得られたT細胞と、1種以上の本明細書に記載の免疫原性ペプチドまたは1種以上の本明細書に記載の安定MHC-ペプチド複合体との間での反応性の存在またはレベルを判定すること;及びb)反応性の存在またはレベルを対照からのものと比較することを含み、対照は、良好な臨床転帰を有する対象から得られ、対照と比較したときの対象サンプルにおける反応性の存在またはより高いレベルは、対象が良好な臨床転帰を有することを示す、当該方法が提供される。
【0023】
別の態様では、MAGEC2発現を特徴とする障害に対する療法の有効性を評価する方法であって、a)療法の少なくとも一部を対象に提供する前に対象から得られた第1サンプルにおいて、対象から得られたT細胞と、1種以上の本明細書に記載の免疫原性ペプチドまたは1種以上の本明細書に記載の安定MHC-ペプチド複合体との間での反応性の存在またはレベルを判定すること;及びb)1種以上の本明細書に記載の免疫原性ペプチドまたは1種以上の本明細書に記載の安定MHC-ペプチド複合体と、対象への療法の提供の後に対象から得られた第2サンプルの中に存在する対象から得られたT細胞との間での反応性の存在またはレベルを判定することを含み、第1サンプルと比較したときの第2サンプルにおける反応性の存在またはより高いレベルは、対象においてMAGEC2発現を特徴とする障害を治療する上で療法が有効であることのしるしである、当該方法が提供される。
【0024】
本発明に包含される任意の態様に適用され得る及び/または本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わされ得る幾多の実施形態が、さらに提供される。例えば、一実施形態では、反応性のレベルは、a)結合の存在、及び/またはb)T細胞活性化及び/またはエフェクター機能によって示され、任意選択的に、T細胞活性化またはエフェクター機能はT細胞増殖、殺滅またはサイトカイン放出である。別の実施形態では、方法は、後続の時点でステップa)及びb)を繰り返すことをさらに含み、任意選択的に、第1の時点と後続の時点との間で対象は、MAGEC2発現を特徴とする障害を改善するための治療を受けたことがある。さらに別の実施形態では、T細胞結合、活性化及び/またはエフェクター機能は、蛍光活性化細胞選別(FACS)を用いて、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて、放射免疫アッセイ(RIA)を用いて、免疫化学的に、ウェスタンブロットを用いて、または細胞内フローアッセイを用いて検出される。さらに別の実施形態では、対照レベルは基準数である。別の実施形態では、対照レベルは、MAGEC2発現を特徴とする障害を有さない対象のレベルである。
【0025】
さらに別の態様では、対象におけるMAGEC2発現を特徴とする障害を予防及び/または治療する方法であって、治療的有効量の本明細書に記載の組成物を対象に投与することを含む、当該方法。
【0026】
さらに別の態様では、表1に列挙されるペプチド配列から選択されるペプチドエピトープに結合する、ペプチド結合性分子またはその抗原結合性断片を同定する方法であって、a)細胞の表面上のMHC分子との関連において表1に列挙されるペプチド配列から選択されるペプチドエピトープを提示している細胞を提供すること;b)細胞上のMHC分子との関連においてペプチドエピトープに対する複数種の候補ペプチド結合性分子またはその抗原結合性断片の結合性を決定すること;及びc)MHC分子との関連においてペプチドエピトープに結合する1種以上のペプチド結合性分子またはその抗原結合性断片を同定することを含む、当該方法が提供される。
【0027】
本発明に包含される任意の態様に適用され得る及び/または本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わされ得る幾多の実施形態が、さらに提供される。例えば、一実施形態では、ステップa)は、細胞の表面上のMHC分子を、表1に列挙されるペプチド配列から選択されるペプチドエピトープと接触させることを含む。別の実施形態では、ステップa)は、ペプチドエピトープをコードする異種配列を含むベクターを使用して、表1に列挙されるペプチド配列から選択されるペプチドエピトープを細胞に発現させることを含む。
【0028】
別の態様では、表1に列挙されるペプチド配列から選択されるペプチドエピトープに結合する、ペプチド結合性分子またはその抗原結合性断片を同定する方法であって、a)表1に列挙されるペプチド配列から選択されるペプチドエピトープを単独で、あるいはMHC分子との関連において含む、単独の、あるいは安定MHC-ペプチド複合体中に含まれた状態のペプチドエピトープを提供すること;b)ペプチドまたは安定MHC-ペプチド複合体に対する複数種の候補ペプチド結合性分子またはその抗原結合性断片の結合性を決定すること;及びc)ペプチドエピトープまたは安定MHC-ペプチド複合体に結合する1種以上のペプチド結合性分子またはその抗原結合性断片を同定することを含み、任意選択的に、MHCまたはMHC-ペプチド複合体が、本明細書に記載されているものである、当該方法が提供される。
【0029】
本発明に包含される任意の態様に適用され得る及び/または本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わされ得る幾多の実施形態が、さらに提供される。例えば、一実施形態では、複数種の候補ペプチド結合性分子は、抗体、抗体の抗原結合性断片、TCR、TCRの抗原結合性断片、一本鎖TCR(scTCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、またはTCRとエフェクタードメインとを含む融合タンパク質を含む。別の実施形態では、複数種の候補ペプチド結合性分子は、少なくとも2、5、10、100、10、10、10、10、10、10、10種またはそれよりも多くの異なる候補ペプチド結合性分子を含む。さらに別の実施形態では、複数種の候補ペプチド結合性分子は、対象もしくは対象の集団からのサンプルから得られた1種以上の候補ペプチド結合性分子を含む;または複数種の候補ペプチド結合性分子は、対象からのサンプルから得られた親足場ペプチド結合性分子における変異を含む1種以上の候補ペプチド結合性分子を含む。さらに別の実施形態では、対象または対象の集団は、a)MAGEC2発現を特徴とする障害に罹患していない、及び/またはMAGEC2発現を特徴とする障害から回復している、あるいはb)MAGEC2発現を特徴とする障害に罹患している。別の実施形態では、対象または対象の集団は、本明細書に記載の組成物を投与されたことがある。さらに別の実施形態では、対象は、MAGEC2発現を特徴とする障害の動物モデル、及び/または哺乳動物であり、任意選択的に、哺乳動物は、ヒト、霊長類または齧歯動物である。さらに別の実施形態では、対象は、MAGEC2発現を特徴とする障害の動物モデル、HLA遺伝子導入マウス、及び/またはヒトTCR遺伝子導入マウスである。別の実施形態では、サンプルは、末梢血単核細胞(PBMC)、T細胞及び/またはCD8+メモリーT細胞を含む。
【0030】
さらに別の態様では、本明細書に記載の方法に従って同定されたペプチド結合性分子またはその抗原結合性断片であって、任意選択的に、抗体、抗体の抗原結合性断片、TCR、TCRの抗原結合性断片、一本鎖TCR(scTCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、またはTCRとエフェクタードメインとを含む融合タンパク質である、当該ペプチド結合性分子またはその抗原結合性断片が提供される。
【0031】
さらに別の態様では、対象におけるMAGEC2発現を特徴とする障害を治療する方法であって、i)表1に列挙される配列から選択されるペプチドエピトープに結合する、ii)本明細書に記載の方法に従って同定される、及び/またはiii)MHC分子との関連において表1に列挙される配列から選択されるペプチドエピトープを含む安定MHC-ペプチド複合体に結合する、ペプチド結合性分子またはその抗原結合性断片を発現する遺伝子操作型T細胞を治療的有効量で対象に投与することを含み、任意選択的に、ペプチド結合性分子またはその抗原結合性断片が、抗体、抗体の抗原結合性断片、TCR、TCRの抗原結合性断片、一本鎖TCR(scTCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、またはTCRとエフェクタードメインとを含む融合タンパク質であり、任意選択的に、MHCまたはMHC-ペプチド複合体が、本明細書に記載のものである、当該方法が提供される。
【0032】
本発明に包含される任意の態様に適用され得る及び/または本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わされ得る幾多の実施形態が、さらに提供される。例えば、一実施形態では、T細胞は、a)対象、b)MAGEC2発現を特徴とする障害に罹患していないドナー、またはc)MAGEC2発現を特徴とする障害から回復したドナーから単離される。
【0033】
別の態様では、対象におけるMAGEC2発現を特徴とする障害を治療する方法であって、抗原特異的T細胞を対象に輸血することを含み、抗原特異的T細胞が、a)対象からの免疫細胞を本明細書に記載の組成物で刺激すること;及びb)抗原特異的T細胞をin vitroまたはex vivoで増殖させることによって生成され、任意選択的に、i)免疫細胞を刺激する前に対象から免疫細胞を単離する、及び/またはii)免疫細胞が、PBMC、T細胞、CD8+T細胞、ナイーブT細胞、中枢メモリーT細胞及び/またはエフェクターメモリーT細胞を含む、当該方法が提供される。
【0034】
本発明に包含される任意の態様に適用され得る及び/または本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わされ得る幾多の実施形態が、さらに提供される。例えば、一実施形態では、ペプチドエピトープ、免疫原性ペプチド、安定MHC-ペプチド複合体、T細胞受容体及び/または免疫細胞の間での少なくとも1種の免疫複合体の形成に適した条件の下で及び時間にわたって薬剤を接触させておく。別の実施形態では、ペプチドエピトープ、免疫原性ペプチド、安定MHC-ペプチド複合体、及び/またはT細胞受容体は細胞によって発現され、細胞は1つ以上のステップの間に増殖及び/または単離される。さらに別の実施形態では、MAGEC2発現を特徴とする障害はがんまたはその再発であり、任意選択的にがんは、メラノーマ、頭頸部癌、肺癌、子宮頸癌、前立腺癌、多発性骨髄腫、肝細胞癌、浸潤性乳癌及び膀胱尿路上皮癌からなる群から選択される。さらに別の実施形態では、対象は、MAGEC2発現を特徴とする障害の動物モデル、及び/または哺乳動物であり、任意選択的に、哺乳動物は、ヒト、霊長類または齧歯動物である。
【0035】
さらに別の態様では、本明細書に記載の免疫原性ペプチド配列を含むポリペプチド、本明細書に記載の免疫原性ペプチド、及び/または本明細書に記載の安定MHC-ペプチド複合体に結合する、結合性タンパク質であって、任意選択的に、抗体、抗体の抗原結合性断片、TCR、TCRの抗原結合性断片、一本鎖TCR(scTCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、またはTCRとエフェクタードメインとを含む融合タンパク質
である、当該結合性タンパク質が提供される。
【0036】
本発明に包含される任意の態様に適用され得る及び/または本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わされ得る幾多の実施形態が、さらに提供される。例えば、一実施形態では、結合性タンパク質は、a)表2に列挙されるT細胞受容体(TCR)アルファ鎖CDR配列からなる群から選択されるTCRアルファ鎖CDR配列との少なくとも約80%の同一性を有するTCRアルファ鎖CDR配列;及び/またはb)表2に列挙されるTCRベータ鎖CDR配列からなる群から選択されるTCRベータ鎖CDR配列との少なくとも約80%の同一性を有するTCRベータ鎖CDR配列を含み、結合性タンパク質はMAGEC2免疫原性ペプチド-MHC(pMHC)複合体に結合することができ、任意選択的に、その結合親和性は約5×10-4M以下のKを有する。別の実施形態では、結合性タンパク質は、a)表2に列挙されるTCRアルファ鎖可変(Vα)ドメイン配列からなる群から選択されるTCR Vαドメイン配列との少なくとも約80%の同一性を有するTCR Vαドメイン配列;及び/またはb)表2に列挙されるTCRベータ鎖可変(Vβ)ドメイン配列からなる群から選択されるTCR Vβドメイン配列との少なくとも約80%の同一性を有するTCR Vβドメイン配列を含み、結合性タンパク質はMAGEC2免疫原性ペプチド-MHC(pMHC)複合体に結合することができ、任意選択的に、その結合親和性は約5×10-4M以下のKを有する。さらに別の実施形態では、結合性タンパク質は、a)表2に列挙されるTCRアルファ鎖配列からなる群から選択されるTCRアルファ鎖配列との少なくとも約80%の同一性を有するTCRアルファ鎖配列;及び/またはb)表2に列挙されるTCRベータ鎖配列からなる群から選択されるTCRベータ鎖配列との少なくとも約80%の同一性を有するTCRベータ鎖配列を含み、結合性タンパク質はMAGEC2免疫原性ペプチド-MHC(pMHC)複合体に結合することができ、任意選択的に、その結合親和性は約5×10-4M以下のKを有する。さらに別の実施形態では、結合性タンパク質は、a)表2に列挙されるTCRアルファ鎖CDR配列からなる群から選択されるTCRアルファ鎖CDR配列;及び/またはb)表2に列挙されるTCRベータ鎖CDR配列からなる群から選択されるTCRベータ鎖CDR配列を含み、結合性タンパク質はMAGEC2免疫原性ペプチド-MHC(pMHC)複合体に結合することができ、任意選択的に、その結合親和性は約5×10-4M以下のKを有する。さらに別の実施形態では、提供される結合性タンパク質は、a)表2に列挙されるTCRアルファ鎖可変(Vα)ドメイン配列からなる群から選択されるTCR Vαドメイン配列;及び/またはb)表2に列挙されるTCRベータ鎖可変(Vβ)ドメイン配列からなる群から選択されるTCR Vβドメイン配列を含み、結合性タンパク質はMAGEC2免疫原性ペプチド-MHC(pMHC)複合体に結合することができ、任意選択的に、その結合親和性は約5×10-4M以下のKを有する。別の実施形態では、提供される結合性タンパク質は、a)表2に列挙されるTCRアルファ鎖配列からなる群から選択されるTCRアルファ鎖配列;及び/またはb)表2に列挙されるTCRベータ鎖配列からなる群から選択されるTCRベータ鎖配列を含み、結合性タンパク質はMAGEC2免疫原性ペプチド-MHC(pMHC)複合体に結合することができ、任意選択的に、その結合親和性は約5×10-4M以下のKを有する。別の実施形態では、1)TCRアルファ鎖CDR、TCR Vαドメイン、及び/またはTCRアルファ鎖は、表2に列挙されるTRAV、TRAJ及びTRAC遺伝子の群から選択されるTRAV、TRAJ及び/またはTRAC遺伝子あるいはその断片にコードされる、及び/または2)TCRベータ鎖CDR、TCR Vβドメイン、及び/またはTCRベータ鎖は、表2に列挙されるTRBV、TRBJ及びTRBC遺伝子の群から選択されるTRBV、TRBJ及び/またはTRBC遺伝子あるいはその断片にコードされる、及び/または3)結合性タンパク質の各CDRは、表2に列挙される同族基準CDR配列と比較して最大5個の、アミノ酸置換、挿入、欠失またはそれらの組合せを有する。さらに別の実施形態では、結合性タンパク質はキメラ型、ヒト化型またはヒト型である。さらに別の実施形態では、結合性タンパク質は、膜貫通ドメイン、及び細胞内にあるエフェクタードメインを有する結合性ドメインを含む。別の実施形態では、TCRアルファ鎖とTCRベータ鎖とが共有結合で連結されており、任意選択的に、TCRアルファ鎖とTCRベータ鎖とが、リンカーペプチドを介して共有結合で連結されている。さらに別の実施形態では、TCRアルファ鎖及び/またはTCRベータ鎖は部分構造に共有結合で連結されており、任意選択的に、共有結合で連結された部分構造は親和性タグまたは標識を含む。さらに別の実施形態では、親和性タグは、CD34濃縮タグ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、カルモジュリン結合性タンパク質(CBP)、プロテインCタグ、Mycタグ、Haloタグ、HAタグ、Flagタグ、Hisタグ、ビオチンタグ及びV5タグからなる群から選択される、及び/または標識は蛍光タンパク質である。別の実施形態では、共有結合で連結された部分構造は、炎症性薬剤、サイトカイン、毒素、細胞傷害性分子、放射性同位体、または抗体もしくはその抗原結合性断片からなる群から選択される。さらに別の実施形態では、結合性タンパク質は、細胞表面上にあるpMHC複合体に結合する。さらに別の実施形態では、MHCまたはMHC-ペプチド複合体は、本明細書に記載のものである。別の実施形態では、MAGEC2ペプチド-MHC(pMHC)複合体に対する結合性タンパク質の結合は免疫応答を誘発し、任意選択的に、免疫応答は、i)T細胞応答及び/またはCD8+T細胞応答である、及び/またはii)T細胞増殖、サイトカイン放出及び/または細胞傷害的殺滅からなる群から選択される。さらに別の実施形態では、結合性タンパク質は、MAGEC2免疫原性ペプチド-MHC(pMHC)複合体に、約1×10-4M以下、約5×10-5M以下、約1×10-5M以下、約5×10-6M以下、約1×10-6M以下、約5×10-7M以下、約1×10-7M以下、約5×10-8M以下、約1×10-8M以下、約5×10-9M以下、約1×10-9M以下、約5×10-10M以下、約1×10-10M以下、約5×10-11M以下、約1×10-11M以下、約5×10-12M以下、または約1×10-12M以下のKで特異的及び/または選択的に結合することができる。さらに別の実施形態では、既知のT細胞受容体と比較して結合性タンパク質は、ペプチド-MHC(pMHC)に対する結合親和性がより高く、任意選択的に、結合親和性がより高いことは、少なくとも1.05倍高いことである。別の実施形態では、既知のT細胞受容体と比較して結合性タンパク質は、MAGEC2のヘテロ接合型発現を有する標的細胞と接触したときにT細胞増殖、サイトカイン放出及び/または細胞傷害的殺滅をより強く誘導し、任意選択的に、誘導は少なくとも1.05倍強い。本明細書で使用される場合、変化倍率に対する言及は、いくつかの実施形態では、関心とする任意の基準様式との比較、例えば、異なる結合性タンパク質との比較;異なる免疫細胞での、異なるレベルでの、本明細書に記載の他の薬剤との組合せでの、同じ結合性タンパク質の発現のような、異なる文脈の下での同じ結合性タンパク質との比較;及び同様の比較を行ったときのものであり得る。さらに別の実施形態では、細胞傷害的殺滅は標的がん細胞の細胞傷害的殺滅である。さらに別の実施形態ではがんは、メラノーマ、頭頸部癌、肺癌、子宮頸癌、前立腺癌、多発性骨髄腫、肝細胞癌、浸潤性乳癌及び膀胱尿路上皮癌からなる群から選択される。別の実施形態では、結合性タンパク質は、ALKDVEERV/HLA-A02、LLFGLALIEV/HLA-A02、SESIKKKVL/HLA-B44、及びASSTLYLVF/HLA-B57からなる群から選択されるペプチド-MHC(pMHC)複合体に結合しない。
【0037】
さらに別の態様では、表2に列挙されるTCRアルファ鎖及びベータ鎖配列からなる群から選択される、TCRアルファ鎖及び/またはベータ鎖が提供される。
【0038】
別の態様では、単離核酸分子であって、i)ストリンジェントな条件の下で、表2に列挙されるポリペプチド配列からなる群から選択されるポリペプチドをコードする核酸の相補体とハイブリダイズするもの、ii)表2に列挙されるポリペプチド配列からなる群から選択されるポリペプチドをコードする核酸との少なくとも約80%の相同性を有する配列、及び/またはiii)ii)表2に列挙されるものをコードする核酸との少なくとも約80%の相同性を有する配列であり、任意選択的に、1)表2に列挙されるTRAV、TRAJ及びTRAC遺伝子の群から選択されるTRAV、TRAJ及び/またはTRAC遺伝子あるいはその断片、及び/または2)表2に列挙されるTRBV、TRBJ及びTRBC遺伝子の群から選択されるTRBV、TRBJ及び/またはTRBC遺伝子あるいはその断片を含む、当該単離核酸分子が提供される。
【0039】
本発明に包含される任意の態様に適用され得る及び/または本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わされ得る幾多の実施形態が、さらに提供される。例えば、一実施形態では、核酸は、宿主細胞における発現のためにコドン最適化されている。
【0040】
さらに別の態様では、ベクターであって、本明細書に記載の単離核酸を含み、任意選択的に、i)ベクターが、クローニングベクター、発現ベクターもしくはウイルスベクターである、及び/またはii)ベクターが、表3に列挙されるベクター配列を含む、当該ベクターが提供される。
【0041】
本発明に包含される任意の態様に適用され得る及び/または本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わされ得る幾多の実施形態が、さらに提供される。例えば、一実施形態では、ベクターは、CD8α及び/またはCD8βをコードする核酸配列をさらに含む。別の実施形態では、CD8αまたはCD8βをコードする核酸配列は、タグをコードする核酸に機能的に連結されている。さらに別の実施形態では、タグをコードする核酸は、CD8αまたはCD8βのN末端にタグが融合されるような、CD8αまたはCD8βをコードする核酸配列の5’上流側にある。さらに別の実施形態では、タグはCD34濃縮タグである。別の実施形態では、本明細書に記載の単離核酸、ならびにCD8α及び/またはCD8βをコードする核酸配列は、内部リボソーム進入部位と、または自己切断ペプチドをコードする核酸配列と相互連結されている。さらに別の実施形態では、自己切断ペプチドは、P2A、E2A、F2AまたはT2Aである。
【0042】
さらに別の態様では、本明細書に記載の単離核酸を含む、宿主細胞であって、本明細書に記載のベクターを含み、及び/または本明細書に記載の結合性タンパク質を発現し、任意選択的に、細胞が遺伝子操作されている、当該宿主細胞が提供される。
【0043】
本発明に包含される任意の態様に適用され得る及び/または本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わされ得る幾多の実施形態が、さらに提供される。例えば、一実施形態では、宿主細胞は、TCR遺伝子の、HLA遺伝子の、または両者の染色体遺伝子ノックアウトを含む。別の実施形態では、宿主細胞は、α1マクログロブリン遺伝子、α2マクログロブリン遺伝子、α3マクログロブリン遺伝子、β1マイクログロブリン遺伝子、β2マイクログロブリン遺伝子及びそれらの組合せから選択されるHLA遺伝子のノックアウトを含む。さらに別の実施形態では、宿主細胞は、TCRα可変領域遺伝子、TCRβ可変領域遺伝子、TCR定常領域遺伝子及びそれらの組合せから選択されるTCR遺伝子のノックアウトを含む。さらに別の実施形態では、宿主細胞はCD8α及び/またはCD8βを発現し、任意選択的に、CD8α及び/またはCD8βはCD34濃縮タグに融合されている。別の実施形態では、CD34濃縮タグを用いて宿主細胞が濃縮される。さらに別の実施形態では、宿主細胞は、造血始原細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、臍帯血細胞または免疫細胞である。さらに別の実施形態では、免疫細胞は、T細胞、細胞傷害性リンパ球、細胞傷害性リンパ球前駆細胞、細胞傷害性リンパ球始原細胞、細胞傷害性リンパ球幹細胞、CD4T細胞、CD8T細胞、CD4/CD8二重陰性T細胞、ガンマデルタ(γδ)T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、NK-T細胞、樹状細胞またはそれらの組合せである。さらに別の実施形態では、T細胞は、ナイーブT細胞、中枢メモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞またはそれらの組合せである。別の実施形態では、T細胞は、初代T細胞、またはT細胞株の細胞である。さらに別の実施形態では、T細胞は、内因性TCRを発現しない、またはその表面発現がより少ない。さらに別の実施形態では、宿主細胞は、MHC分子との関連において、MAGEC2ペプチドエピトープを含むペプチド-MHC(pMHC)複合体を含む標的細胞と接触したときに、サイトカインまたは細胞傷害性分子を産生することができる。別の実施形態では、宿主細胞は、in vitro、ex vivoまたはin vivoで標的細胞と接触する。さらに別の実施形態では、サイトカインは、TNF-α、IL-2及び/またはIFN-γである。さらに別の実施形態では、細胞傷害性分子はパーフォリン及び/またはグランザイムであり、任意選択的に、細胞傷害性分子はグランザイムBである。別の実施形態では、宿主細胞は、MAGEC2のヘテロ接合型発現を有する標的細胞と接触したときに、より高いレベルのサイトカインまたは細胞傷害性分子を産生することができる。さらに別の実施形態では、宿主細胞は、少なくとも1.05倍高いレベルのサイトカインまたは細胞傷害性分子を産生することができる。さらに別の実施形態では、宿主細胞は、MHC分子との関連において、MAGEC2ペプチドエピトープを含むペプチド-MHC(pMHC)複合体を含む標的細胞を殺滅することができる。別の実施形態では、殺滅は、殺滅アッセイによって判定される。さらに別の実施形態では、殺滅アッセイにおいて宿主細胞と標的細胞との比は20:1~1:4である。さらに別の実施形態では、標的細胞は、1μg/mL~50pg/mLのMAGEC2ペプチドをパルス導入された標的細胞であり、任意選択的に、標的細胞は、MAGEC2ペプチドに整合したMHCに関して単アレル性の細胞である。別の実施形態では、宿主細胞は、MAGEC2のヘテロ接合型発現を有する標的細胞と接触したときに、より多い数の標的細胞を殺滅することができ、任意選択的に、細胞殺滅は少なくとも1.05倍高い。さらに別の実施形態では、標的細胞は細胞株または初代細胞であり、任意選択的に、標的細胞は、HEK293由来細胞株、がん細胞株、初代がん細胞、形質転換細胞株及び不死化細胞株からなる群から選択される。さらに別の実施形態では、MAGEC2免疫原性ペプチドは、本明細書に記載のものである、及び/またはMHCもしくはMHC-ペプチド複合体は、本明細書に記載のものである。別の実施形態では、宿主細胞は、ALKDVEERV/HLA-A02、LLFGLALIEV/HLA-A02、SESIKKKVL/HLA-B44、及びASSTLYLVF/HLA-B57からなる群から選択されるペプチド-MHC(pMHC)複合体を含む標的細胞と接触したときに、T細胞増殖、サイトカイン放出または細胞傷害的殺滅を誘導しない。さらに別の実施形態では、宿主細胞は、MAGEC2抗原を発現しない、本明細書に記載の結合性タンパク質によって認識されない、血清型HLA-B07のものでない、HLA-B07アレルを発現しない、血清型HLA-A24のものでない、及び/またはHLA-A24アレルを発現しない。
【0044】
別の態様では、本明細書に記載の宿主細胞の、集団が提供される。
【0045】
さらに別の態様では、a)本明細書に記載の結合性タンパク質、b)本明細書に記載の単離核酸、c)本明細書に記載のベクター、d)本明細書に記載の宿主細胞、及び/またはe)本明細書に記載の宿主細胞の集団、ならびに担体を含む、組成物が提供される。
【0046】
さらに別の態様では、装置またはキットであって、a)本明細書に記載の結合性タンパク質、b)本明細書に記載の単離核酸、c)本明細書に記載のベクター、d)本明細書に記載の宿主細胞、及び/またはe)本明細書に記載の宿主細胞の集団を含み、任意選択的に、pMHC複合体に対するa)、d)及び/またはe)の結合を検出する試薬を含む、当該装置またはキットが提供される。
【0047】
別の態様では、本明細書に記載の結合性タンパク質を生産する方法であって、(i)本明細書に記載の結合性タンパク質をコードする配列を含む核酸によって形質転換された、形質転換済み宿主細胞を、上記結合性タンパク質の発現が可能になるのに適した条件の下で培養するステップ;及び(ii)発現した結合性タンパク質を回収するステップを含む、当該方法が提供される。
【0048】
さらに別の態様では、本明細書に記載の結合性タンパク質を発現する宿主細胞を生産する方法であって、(i)本明細書に記載の結合性タンパク質をコードする配列を含む核酸を、宿主細胞に導入するステップ;及び(ii)その形質転換済み宿主細胞を、上記結合性タンパク質の発現が可能になるのに適した条件の下で、培養するステップを含む、当該方法が提供される。
【0049】
さらに別の態様では、MAGEC2抗原の、及び/またはMAGEC2を発現している細胞の、存在または非存在を検出する方法であって、任意選択的に細胞が過剰増殖性細胞であり、方法は、少なくとも1種の本明細書に記載の結合性タンパク質、少なくとも1種の本明細書に記載の宿主細胞、または本明細書に記載の宿主細胞の集団を使用することによってサンプル中の上記MAGEC2抗原の存在または非存在を検出することを含み、MAGEC2抗原の検出は、MAGEC2抗原の、及び/またはMAGEC2を発現している細胞の存在を示す、当該方法が提供される。
【0050】
本発明に包含される任意の態様に適用され得る及び/または本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わされ得る幾多の実施形態が、さらに提供される。例えば、一実施形態では、少なくとも1種の結合性タンパク質、または前記少なくとも1種の宿主細胞は、MHC分子との関連においてMAGEC2ペプチドと複合体を形成し、複合体は、蛍光活性化細胞選別(FACS)の方式で、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)の方式で、放射免疫アッセイ(RIA)の方式で、免疫化学的に、ウェスタンブロットの方式で、または細胞内フローアッセイの方式で検出される。別の実施形態では、方法は、対象からサンプルを得ることをさらに含む。
【0051】
別の態様では、対象におけるMAGEC2発現を特徴とする障害のレベルを検出する方法であって、a)対象から得られたサンプルを、少なくとも1種の本明細書に記載の結合性タンパク質、少なくとも1種の本明細書に記載の宿主細胞、または本明細書に記載の宿主細胞の集団と接触させること;及びb)反応性のレベルを検出することを含み、対照レベルと比較したときの反応性の存在またはより高いレベルは、対象におけるMAGEC2発現を特徴とする障害のレベルを示す、当該方法が提供される。
【0052】
本発明に包含される任意の態様に適用され得る及び/または本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わされ得る幾多の実施形態が、さらに提供される。例えば、一実施形態では、対照レベルは基準数である。別の実施形態では、対照レベルは、MAGEC2発現を特徴とする障害を有さない対象からのレベルである。
【0053】
さらに別の態様では、対象におけるMAGEC2発現を特徴とする障害の進行を追跡評価する方法であって、a)対象サンプルにおいて、対象から得られたサンプルと、少なくとも1種の本明細書に記載の結合性タンパク質、少なくとも1種の本明細書に記載の宿主細胞、または本明細書に記載の宿主細胞の集団との間での反応性の存在またはレベルを検出すること;b)後続の時点でステップa)を繰り返すこと;ならびにc)ステップa)及びb)で検出された、MAGEC2の、またはMAGEC2を発現している関心とする細胞のレベルを比較して、対象におけるMAGEC2発現を特徴とする障害の進行を追跡評価することを含み、ステップb)で検出されたMAGEC2レベルまたはMAGEC2を発現している関心とする細胞の、ステップa)と比較したときの非存在または減少は、対象におけるMAGEC2発現を特徴とする障害の進行の抑制を示し、ステップb)で検出されたMAGEC2レベルまたはMAGEC2を発現している関心とする細胞の、ステップa)と比較したときの存在または増加は、対象におけるMAGEC2発現を特徴とする障害の進行を示す、当該方法が提供される。
【0054】
本発明に包含される任意の態様に適用され得る及び/または本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わされ得る幾多の実施形態が、さらに提供される。例えば、一実施形態では、第1の時点と後続の時点との間で対象は、MAGEC2発現を特徴とする障害を治療するための治療を受けたことがある。
【0055】
さらに別の態様では、MAGEC2発現を特徴とする障害に罹患している対象の臨床転帰を予測する方法であって、a)対象から得られたサンプルと、少なくとも1種の本明細書に記載の結合性タンパク質、少なくとも1種の本明細書に記載の宿主細胞、または本明細書に記載の宿主細胞の集団との間での反応性の存在またはレベルを判定すること;及びb)反応性の存在またはレベルを対照からのものと比較することを含み、対照は、良好な臨床転帰を有する対象から得られ、対照と比較したときの対象サンプルにおける反応性の非存在または低下したレベルは、対象が良好な臨床転帰を有することを示す、当該方法が提供される。
【0056】
別の態様では、MAGEC2発現を特徴とする障害に対する療法の有効性を評価する方法であって、a)MAGEC2発現を特徴とする障害に対する療法の少なくとも一部を対象に提供する前に対象から得られた第1サンプルにおいて、対象から得られたサンプルと、少なくとも1種の本明細書に記載の結合性タンパク質、少なくとも1種の本明細書に記載の宿主細胞、または本明細書に記載の宿主細胞の集団との間での反応性の存在またはレベルを判定すること;及びb)MAGEC2発現を特徴とする障害に対する療法の提供の後に対象から得られた第2サンプルにおいて、対象から得られたサンプルと、少なくとも1種の本明細書に記載の結合性タンパク質、少なくとも1種の本明細書に記載の宿主細胞、または本明細書に記載の宿主細胞の集団との間での反応性の存在またはレベルを判定することを含み、第1サンプルと比較したときの第2サンプルにおける反応性の非存在または低下したレベルは、対象においてMAGEC2発現を特徴とする障害を治療する上で療法が有効であることのしるしであり、第1サンプルと比較したときの第2サンプルにおける反応性の存在または上昇したレベルは、対象においてMAGEC2発現を特徴とする障害を治療する上で療法が有効でないことのしるしである、当該方法が提供される。
【0057】
本発明に包含される任意の態様に適用され得る及び/または本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わされ得る幾多の実施形態が、さらに提供される。例えば、一実施形態では、反応性のレベルは、a)結合の存在、及び/またはb)T細胞活性化及び/またはエフェクター機能によって示され、任意選択的に、T細胞活性化またはエフェクター機能は、T細胞増殖、殺滅またはサイトカイン放出である。別の実施形態では、T細胞結合、活性化及び/またはエフェクター機能は、蛍光活性化細胞選別(FACS)を用いて、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて、放射免疫アッセイ(RIA)を用いて、免疫化学的に、ウェスタンブロットを用いて、または細胞内フローアッセイを用いて検出される。
【0058】
さらに別の態様では、MAGEC2発現を特徴とする障害を予防及び/または治療する方法であって、MAGEC2を発現している標的細胞を、少なくとも1種の本明細書に記載の結合性タンパク質を発現している細胞を含む治療的有効量の組成物と接触させることを含み、任意選択的に、組成物が対象に投与される、当該方法が提供される。
【0059】
本発明に包含される任意の態様に適用され得る及び/または本明細書に記載の他の任意の実施形態と組み合わされ得る幾多の実施形態が、さらに提供される。例えば、一実施形態では、細胞は、同種異系細胞、同系細胞または自家細胞である。別の実施形態では、細胞は、本明細書に記載の宿主細胞、または本明細書に記載の宿主細胞の集団である。さらに別の実施形態では、標的細胞は、MAGEC2を発現しているがん細胞である。さらに別の実施形態では、細胞組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む。別の実施形態では、対象において細胞組成物は、MAGEC2を発現している標的細胞に対する免疫応答を誘導する。さらに別の実施形態では、対象において細胞組成物は、MAGEC2を発現している標的細胞に対する抗原特異的T細胞免疫応答を誘導する。さらに別の実施形態では、抗原特異的T細胞免疫応答は、CD4ヘルパーTリンパ球(Th)応答及びCD8+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答の少なくとも1つを含む。別の実施形態では、方法は、MAGEC2発現を特徴とする障害に対する少なくとも1つの付加的治療を施与することをさらに含み、任意選択的に、MAGEC2発現を特徴とする障害に対する少なくとも1つの付加的治療は組成物と同時にまたは連続して施与される。さらに別の実施形態では、MAGEC2発現を特徴とする障害はがんまたはその再発であり、任意選択的にがんは、メラノーマ、頭頸部癌、肺癌、子宮頸癌、前立腺癌、多発性骨髄腫、肝細胞癌、浸潤性乳癌及び膀胱尿路上皮癌からなる群から選択される。さらに別の実施形態では、対象は、MAGEC2発現を特徴とする障害の動物モデル、及び/または哺乳動物であり、任意選択的に、哺乳動物は、ヒト、霊長類または齧歯動物である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1A図1A及び図1Bは、幅広い腫瘍タイプ及び正常組織のパネルにおける(図1A)、ならびに腫瘍タイプの代表的な組にわたって腫瘍関連バイオマーカーMAGEA4及びNY-ESO-1と比較したときの(図1B)、MAGEC2の核酸遺伝子発現を示す。
図1B図1A及び図1Bは、幅広い腫瘍タイプ及び正常組織のパネルにおける(図1A)、ならびに腫瘍タイプの代表的な組にわたって腫瘍関連バイオマーカーMAGEA4及びNY-ESO-1と比較したときの(図1B)、MAGEC2の核酸遺伝子発現を示す。
図2A】MAGEC2抗原性ペプチドの同定を示す。HLA-B07:02との予測される結合性について、MAGEC2からの重複するペプチド配列を見極めた。上位の予測MHC結合性ペプチドを合成し、HLA-B07:02発現HEK293T細胞へのパルス導入のために使用した。活性化マーカーCD137及びCD69を使用して、TCR形質導入T細胞のプールの反応性を測定した。図2Aは、グランザイム活性化蛍光レポーター及び1,670種のがん精巣抗原にわたって60merペプチドの重複ライブラリーを発現しているHLA-B07:02単アレル性HEK293T細胞と共培養されたTCR形質導入T細胞のプールの結果を示す。重複ペプチド配列が同一であり濃縮倍率>4であるタイルは、根底をなす共通遺伝子に対応しているドットで強調表示されている。
図2B】MAGEC2抗原性ペプチドの同定を示す。HLA-B07:02との予測される結合性について、MAGEC2からの重複するペプチド配列を見極めた。上位の予測MHC結合性ペプチドを合成し、HLA-B07:02発現HEK293T細胞へのパルス導入のために使用した。活性化マーカーCD137及びCD69を使用して、TCR形質導入T細胞のプールの反応性を測定した。図2Bは、スクリーニングデータで同定されたMAGEC2ペプチドの代表的な配列を示す。重複配列(実線四角)をHLA-B07:02予測結合性について解析して、配列RAREFMELL(「RAR」ペプチドと呼ぶ、点線四角)を有する上位予測結合剤を同定した。
図2C】MAGEC2抗原性ペプチドの同定を示す。HLA-B07:02との予測される結合性について、MAGEC2からの重複するペプチド配列を見極めた。上位の予測MHC結合性ペプチドを合成し、HLA-B07:02発現HEK293T細胞へのパルス導入のために使用した。活性化マーカーCD137及びCD69を使用して、TCR形質導入T細胞のプールの反応性を測定した。図2Cは、スクリーニングデータで上位2位以内の濃縮された遺伝子について同定されたHLA-B07:02結合性ペプチドに対するTCR形質導入T細胞プールの反応性を示す。
図3】A及びBは、TCR形質導入T細胞のプールからのMAGEC2反応性TCRの同定を示す。標的細胞にMAGEC2からのペプチド(RAR)をパルス導入し、TCR形質導入T細胞のプールと共培養した。選別されたCD137/CD69二重陽性細胞からの外来TCRを配列決定することによって反応性TCRを同定した。Aは、投入物ライブラリー上でのRAR-及びSPQ-パルス導入細胞に対して反応性である選別されたTCRの濃縮倍率の差を示す。Bは、示されたTCRを発現している細胞の、選別された細胞に占める割合を示す(赤紫色:TCR8-3、紫色:TCR4-1、水色:TCR11-2)。
図4A】RARペプチドをパルス導入された細胞をTCR8-3が認識及び殺滅することを示す。図4Aは、RARペプチドの段階希釈液をパルス導入され、かつTCR8-3で形質導入されたT細胞と共培養された、野生型HEK293T細胞の結果を示す。TCRの反応性はIFNγ放出によって測定された。
図4B】RARペプチドをパルス導入された細胞をTCR8-3が認識及び殺滅することを示す。図4Bは、示された濃度のRARペプチドをパルス導入され、かつTCR8-3で形質導入されたT細胞と共培養された、グランザイム活性化蛍光レポーターを発現しているHLA-B07:02単アレル性HEK293T細胞の結果を示す。
図5A】MAGEC2を発現するメラノーマ細胞をTCR8-3が認識することを示す。図5Aは、示されたメラノーマ細胞株におけるMAGEC2タンパク質レベルを例示しているウェスタンブロットを示す。
図5B】MAGEC2を発現するメラノーマ細胞をTCR8-3が認識することを示す。図5Bは、GAPDHに対して相対的なMAGEC2のタンパク質レベルの定量を示す。
図5C】MAGEC2を発現するメラノーマ細胞をTCR8-3が認識することを示す。図5Cは、MAGEC2タンパク質レベルと公開データベース(TRON cell line portal)からのMAGEC2 mRNA発現データとの対応関係を示す。
図5D】MAGEC2を発現するメラノーマ細胞をTCR8-3が認識することを示す。図5Dは、IFNγ放出によって測定された、メラノーマ細胞株に対する8-3TCRの反応性を示す。
図5E】MAGEC2を発現するメラノーマ細胞をTCR8-3が認識することを示す。図5Eは、8-3TCRの反応性がMAGEC2発現に対応していることを示す。
図6】TCR8-3がMAGEC2発現メラノーマ細胞株を殺滅することを示す。示された細胞株をIncucyte(登録商標)NucLight(商標)Redで形質導入し、TCR8-3と共培養したか(赤紫色)、MHC不整合対照TCRと共培養したか(青色)、あるいはT細胞なしで培養した(黄色)。T細胞はアッセイの最初に2:1のE:T比で添加された。赤色蛍光をIncucyte(登録商標)装置で経時的に測定し、時間点0に対して正規化された赤色物体総計数として表示した。
図7A】MAGEC2抗原性ペプチドの同定を示す。HLA-A24:02との予測される結合性について、MAGEC2からの重複ペプチド配列を見極めた。上位の予測MHC結合性ペプチドを合成し、HLA-A24:02発現HEK293T細胞へのパルス導入のために使用した。活性化誘導マーカー(AIM)、CD137及びCD69(すなわち、AIM二重陽性細胞の百分率;アッセイのさらなる詳細については図2を参照)を用いてTCR形質導入T細胞のプールの反応性を測定した。図7Aは、グランザイム活性化蛍光レポーター及び1,670種のがん精巣抗原にわたって60merペプチドの重複ライブラリーを発現しているHLA-A24:02単アレル性HEK293T細胞と共培養されたTCR形質導入T細胞のプールの結果を示す。重複ペプチド配列が同一であり濃縮倍率>4であるタイルは、根底をなす共通遺伝子に対応しているドットで強調表示されている。
図7B】MAGEC2抗原性ペプチドの同定を示す。HLA-A24:02との予測される結合性について、MAGEC2からの重複ペプチド配列を見極めた。上位の予測MHC結合性ペプチドを合成し、HLA-A24:02発現HEK293T細胞へのパルス導入のために使用した。活性化誘導マーカー(AIM)、CD137及びCD69(すなわち、AIM二重陽性細胞の百分率;アッセイのさらなる詳細については図2を参照)を用いてTCR形質導入T細胞のプールの反応性を測定した。図7Bは、スクリーニングデータで同定されたMAGEC2ペプチドの代表的な配列を示す。重複配列をHLA-A24:02予測結合性について解析して、上位予測結合剤配列を同定した。
図7C】MAGEC2抗原性ペプチドの同定を示す。HLA-A24:02との予測される結合性について、MAGEC2からの重複ペプチド配列を見極めた。上位の予測MHC結合性ペプチドを合成し、HLA-A24:02発現HEK293T細胞へのパルス導入のために使用した。活性化誘導マーカー(AIM)、CD137及びCD69(すなわち、AIM二重陽性細胞の百分率;アッセイのさらなる詳細については図2を参照)を用いてTCR形質導入T細胞のプールの反応性を測定した。図7Cは、配列VGPDHFCVF(「VGP」ペプチドと呼ぶ)を有するペプチドを含めたスクリーニングデータで同定されたペプチドについて同定されたHLA-A24:02結合性ペプチドに対するTCR形質導入T細胞プールの反応性を示す(表1Bも参照されたい)。
図8】A~Cは、TCR形質導入T細胞のプールからのMAGEC2反応性TCRの同定を示す。標的細胞にMAGEC2からのペプチド(VGP)をパルス導入し、TCR形質導入T細胞のプールと共培養した。選別されたCD137/CD69二重陽性細胞からの外来TCRを配列決定することによって反応性TCRを同定した。Aは、投入物ライブラリー上でのVGOパルス導入細胞及び非パルス導入細胞に対して反応する選別されたTCRの濃縮倍率の差を示す。Bは、示されたTCRを発現している細胞の、選別された細胞に占める割合を示す。Cは、活性化誘導マーカー(AIM)、CD137及びCD69(すなわち、AIM二重陽性細胞の百分率;アッセイのさらなる詳細については図2を参照)を用いて測定された、TCR4-58形質導入T細胞の反応性を示す。
図9】Aは、VGPペプチドをパルス導入された細胞をTCR4-58が認識及び殺滅することを示す。Aは、VGPペプチドの段階希釈液をパルス導入され、かつTCR4-58で形質導入されたT細胞と共培養された、野生型HEK293T細胞の結果を示す。TCRの反応性はIFP+レポーターに基づく細胞殺滅によって測定された。Bは、TCR4-58 MAGEC2発現細胞株、例えばメラノーマ細胞株の結果を示す。示された細胞株をIncucyte(登録商標)NucLight(商標)Redで形質導入し、TCR4-58(赤紫色)と共培養したか、非形質導入対照T細胞(紫色)と共培養したか、あるいはT細胞なしで培養した(青色)。T細胞はアッセイの最初に4:1のE:T比で添加された。赤色蛍光をIncucyte(登録商標)装置で経時的に測定し、時間点0に対して正規化された赤色物体総計数として表示した。
【0061】
バーヒストグラム、曲線、または凡例と関連付いた他のデータを示している任意の図において、各表示で左から右へと提示されているバー、曲線または他のデータは、そのまま順番に凡例の上から下または左から右へと示された四角に対応している。
【発明を実施するための形態】
【0062】
本発明は、MAGEC2免疫原性ペプチド(例えば、表1に列挙される配列を含むまたはそれからなるもの)の発見、MAGEC2抗原を認識する結合性タンパク質(例えば、表2に列挙される配列を有するもの)、及びその使用に少なくとも部分的に基づいている。最初の関心とするT細胞のプールによって認識される厳密なT細胞標的をマッピングするために体系的な包括的調査を行った。
【0063】
かくして、本発明は、一部において、治療上重要なMAGEC2タンパク質の同定されたエピトープ(免疫優勢ペプチド)、及び関係する組成物(例えば、免疫優勢ペプチド、ワクチン及び類似するもの)、免疫原性ペプチドを単独でまたはMHC分子とともに含む組成物、安定MHC-ペプチド複合体、MAGEC2発現を特徴とする障害を診断する、その予後予測を行う及びそれに対する免疫応答を追跡評価する方法、ならびにMAGEC2発現を特徴とする障害を予防及び/または治療する方法に関する。本発明はまた、一部において、同定された結合性タンパク質(例えばTCR)、結合性タンパク質(例えばTCR)を発現している宿主細胞、結合性タンパク質(例えばTCR)と結合性タンパク質(例えばTCR)を発現している宿主細胞とを含む組成物、MAGEC2を発現している細胞を診断する、その予後予測を行う及びそれに対するT細胞応答を追跡評価する方法、ならびにMAGEC2発現を特徴とする障害を予防及び/または治療する方法にも関する。
【0064】
I.定義
便宜のために、本明細書、実施例及び添付の特許請求の範囲において使用されるある特定の用語を、本明細書にまとめる。
【0065】
冠詞「a」及び「an」を、本冠詞の文法的な目的物の1つまたは2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために、本明細書で使用する。例として、「要素」は、1つの要素または2つ以上の要素を意味する。
【0066】
用語「投与する」は、対象に医薬品または医薬組成物を提供することを意味し、限定はされないが医療専門家による投与及び自己投与を含む。これには、当業者に知られている様々な方法及び送達システムのいずれかを用いて、治療剤を含む組成物を対象に、物理的に導入することが含まれる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される結合性タンパク質のための投与経路としては、例えば注射または輸注による、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、脊髄または他の非経口投与経路が挙げられる。本明細書で使用される用語「非経口投与」は、通常は注射による、経腸及び局所投与以外の投与様式を意味し、これには、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、リンパ管内、病巣内、関節包内、眼窩内、心臓内、皮内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄腔内、硬膜外及び胸骨内への注射及び輸注、ならびにin vivo電気穿孔が含まれるが、これらに限定されない。あるいは、本明細書に記載される結合性タンパク質を、非経口でない経路、例えば、局所、表皮または粘膜投与経路によって、例えば、鼻腔内、経口的、膣、直腸、舌下または局所に投与することがある。また、投与を例えば、1回、複数回、及び/または1つ以上の延長期間にわたって、実施することもある。
【0067】
本明細書で使用される場合、用語「抗原」は、任意の天然免疫原性物質または合成免疫原性物質、例えば、タンパク質、ペプチド、またはハプテンを指す。抗原は、防御的または治療的な免疫応答先となることが望まれるMAGEC2抗原またはその断片であってよい。「エピトープ」とは、天然物質または合成物質によって結合される抗原の一部分である。
【0068】
本明細書で使用される場合、用語「アジュバント」は、抗原の投与の前に、それと一緒に、またはその後に投与されたときに、抗原単独の投与と比較して抗原に対する免疫応答の質及び/または強度を加速させる、延長する及び/または増強する、物質を指す。アジュバントは、ワクチン接種によって誘導される免疫応答の大きさ及び持続時間を増加させることができる。
【0069】
本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、全抗体及び任意の抗原結合性断片(すなわち、「抗原結合性部分」)、またはその一本鎖を含む。「抗体」は、一実施形態では、ジスルフィド結合によって相互に連結された少なくとも2本の重(H)鎖及び2本の軽(L)鎖、またはその抗原結合部位を含む糖タンパク質を指す。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVと略記する)及び重鎖定常領域から構成される。ある特定の天然に存在する抗体では、重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3から構成される。ある特定の天然に存在する抗体では、各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVと略記される)及び軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLで構成される。V及びV領域を、フレームワーク領域(FR)と呼ぶより保存された領域によって相互離隔された相補性決定領域(CDR)と呼ぶ超可変性の領域に、さらに細分することがある。各V及び各Vは、3つのCDR及び4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端まで、以下の順序で並んでいる:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合性ドメインを含む。抗体の定常領域は、宿主組織または因子[例えば、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)、及び古典的補体系の第1成分(C1q)]に対する免疫グロブリンの結合を媒介することがある。
【0070】
用語「抗原提示細胞」または「APC」は、プロフェッショナル抗原提示細胞(例えば、Bリンパ球、単球、樹状細胞、ランゲルハンス細胞)、ならびに他の抗原提示細胞(例えば、ケラチノサイト、内皮細胞、アストロサイト、線維芽細胞、及びオリゴデンドロサイト)を含む。
【0071】
本明細書で使用される場合、結合性タンパク質(例えば、TCR)の「抗原結合性部分」という用語は、抗原(例えば、MAGEC2抗原)に(例えば、特異的に、及び/または選択的に)結合する能力を保持している、TCRの1つ以上の部分を指す。そのような部分は、例えば、約8~約1500アミノ酸の長さ、好適には約8~約745アミノ酸の長さ、好適には約8~約300アミノ酸の長さ、例えば約8~約200アミノ酸の長さ、または約10アミノ酸から約50アミノ酸もしくは100アミノ酸の長さまでである。TCRの抗原結合機能は、完全長TCRの断片によって行われ得ることが示されている。TCRの「抗原結合性部分」という用語に包含される結合部分の例としては、(i)TCRのVα及びVβドメインからなるFv断片、(ii)単離された相補性決定領域(CDR)、または(iii)合成リンカーによって任意選択的に連結され得る2つ以上の単離されたCDRの組合せが挙げられる。さらに、Vα及びVβは別々の遺伝子にコードされているが、組換え方法を用いて、Vα及びVβ領域が対合して一価の分子(一本鎖TCR(scTCR)として知られる)を形成している単一のタンパク質鎖としてVα及びVβが作られることを可能にする合成リンカーによって、Vα及びVβを連結することがある。そのような一本鎖TCRがTCRの「抗原結合性部分」という用語に包含されることも意図される。当業者に知られている従来の技術を用いてこれらのTCR断片を得ることができ、断片は、完全な結合性タンパク質と同じ様式で、有用なものがスクリーニングされる。抗原結合性部分は、組換えDNA技術によって、または完全免疫グロブリンを酵素的にもしくは化学的に切断することによって、生産され得る。
【0072】
用語「相補性決定領域」及び「CDR」は、「超可変領域」または「HVR」と同義であり、ある特定の結合性タンパク質の中の、抗原特異性及び/または結合親和性を付与する不連続なアミノ酸の配列、例えばTCR可変領域を指すことが当技術分野では知られている。TCRにおいては、一般的に、各α鎖可変領域の中の3つのCDR(αCDRl、αCDR2、及びαCDR3)、及び各β鎖可変領域の中の3つのCDR(βCDRl、βCDR2、及びβCDR3)が存在する。CDR3は、プロセシングを受けた抗原を認識することを担う主要なCDRであると考えられている。CDR1及びCDR2は、主に、MHCと相互作用する。
【0073】
用語「体液」は、身体から排泄または分泌される流体、ならびに身体からは通常排泄されない、または分泌されない流体(例えば、羊水、房水、胆汁、血液及び血漿、脳脊髄流体、耳垢(cerumen and earwax)、カウパー液または尿道球腺液、乳糜、糜粥、糞便、スキーン腺液、間質液、細胞内流体、リンパ液、経血、母乳、粘液、胸膜液、膿、唾液、皮脂、精液、血清、汗、滑液、涙、尿、膣液、硝子体液、嘔吐物)を指す。いくつかの実施形態では、体液は免疫細胞を含み、任意選択的に、免疫細胞は、細胞傷害性リンパ球、例えば、細胞傷害性T細胞、及び/またはNK細胞、CD4+T細胞などである。
【0074】
用語「コード領域」は、アミノ酸残基に翻訳されるコドンを含むヌクレオチド配列の領域を指す一方、用語「非コード領域」は、アミノ酸に翻訳されないヌクレオチド配列の領域(例えば、5’及び3’非翻訳領域)を指す。
【0075】
用語「相補的」は、2本の核酸鎖の領域間の、または同じ核酸鎖の2つの領域間の、配列相補性に関する広範な概念を指す。第1の核酸領域のアデニン残基は、第1の領域に対して逆平行である第2の核酸領域の残基との特異的な水素結合(「塩基対合」)を、その残基がチミンまたはウラシルである場合に形成することができることが知られている。同様に、第1の核酸鎖のシトシン残基は、第1の領域に対して逆平行である第2の核酸領域の残基との特異的な水素結合(「塩基対合」)を、その残基がグアニンである場合に形成することができることが知られている。核酸の第1の領域が、同じまたは異なる核酸の第2の領域に対して相補的となるのは、その2つの領域が逆平行に配置していて、第1の領域の少なくとも1つのヌクレオチド残基が第2の領域の残基と塩基対合することができる場合である。いくつかの実施形態では、第1の領域は第1の部分を含み、第2の領域は第2の部分を含み、この条件で第1の部分及び第2の部分が逆平行に配置している場合、第1の部分のヌクレオチド残基の少なくとも約50%、他の実施形態では少なくとも約75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上、または端点を含めてそれらの間にある任意の範囲、例えば少なくとも約80%~100%は、第2の部分のヌクレオチド残基と塩基対合することができる。いくつかの実施形態では、第1の部分のすべてのヌクレオチド残基は、第2の部分内のヌクレオチド残基と塩基対合することができる。
【0076】
本明細書で使用される場合、活性化した免疫細胞に関して、用語「共刺激する」は、共刺激分子が、増殖またはエフェクター機能を誘導する第2の非賦活的な受容体媒介シグナル(「共刺激シグナル」)を提供できることを含む。例えば、共刺激シグナルは、例えばT細胞受容体媒介シグナルを受け取ったT細胞において、サイトカイン分泌をもたらすことがある。細胞受容体媒介シグナルを例えば賦活性受容体を介して受け取った免疫細胞を、本明細書では「活性化免疫細胞」と呼ぶ。
【0077】
「CD3」は、6本の鎖の多タンパク質複合体として、当技術分野で既知である(Abbas and Lichtman,Cellular and Molecular Immunology(9th Edition)(2018)、Janeway et al.(Immunobiology)(9th Edition)(2016)を参照のこと)。哺乳動物では、複合体は、CD3γ鎖、CD3δ鎖、2本のCD3ε鎖、及びCD3ζ鎖のホモ二量体を含む。CD3γ、CD3δ、及びCD3ε鎖は、単一の免疫グロブリンドメインを含む免疫グロブリンスーパーファミリーの、関連する細胞表面タンパク質である。CD3γ、CD3δ、及びCD3ε鎖の膜貫通領域は負に荷電しているが、この特徴により、これらの鎖が、T細胞受容体鎖の正に荷電した領域または残基と会合することが可能になると考えられている。CD3γ、CD3δ、及びCD3ε鎖の細胞内尾部は各々、免疫受容体チロシン依存性活性化モチーフまたはITAM、として知られる単一の保存されたモチーフを含有し、一方、各CD3ζ鎖は3つのITAMを有する。理論に拘束されることを望むものではないが、ITAMは、TCR複合体のシグナル伝達能力にとって重要であると考えられる。本発明に従って使用されるCD3は、ヒト、マウス、ラットまたは他の哺乳動物を含めた様々な動物種に由来し得る。
【0078】
本明細書で使用される場合、「TCR複合体の構成要素」は、TCR鎖(すなわち、TCRα、TCRβ、TCRγまたはTCRδ)、CD3鎖(すなわち、CD3γ、CD3δ、CD3εまたはCD3ζ)、または2本以上のTCR鎖もしくはCD3鎖によって形成される複合体(例えば、TCRαとTCRβとの複合体、TCRγとTCRδとの複合体、CD3εとCD3δとの複合体、CD3γとCD3εとの複合体、またはTCRαとTCRβとCD3γとCD3δと2本のCD3ε鎖とのサブTCR複合体)を指す。
【0079】
「キメラ抗原受容体」または「CAR」という用語は、天然には存在しない様式で、または宿主細胞中に天然には存在しない様式で互いに連結された2つ以上のアミノ酸配列を含有するように操作された融合タンパク質であって、細胞の表面上に存在する場合に受容体として機能することができる、当該融合タンパク質を指す。本発明に包含されるCARは、膜貫通ドメイン及び1つ以上の細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、共刺激ドメイン(複数可)を任意選択的に含むエフェクタードメイン)に連結された、抗原結合性ドメインを含む(つまり、免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様分子、例えば、MAGEC2抗原に特異的なTCR、一本鎖TCR由来結合性タンパク質、抗体に由来するscFv、NK細胞からのキラー免疫受容体に由来するかまたはそれから得られた抗原結合性ドメインなどから得られた、またはそれに由来する)細胞外部分を、含む(例えば、Sadelain et al.(2013)Cancer Discov.3:388を参照、また、Harris and Kranz(2016)Trends Pharmacol.Sci.37:220、Stone et al.(2014)Cancer Immunol.Immunother.63:1163も参照)。
【0080】
本明細書で使用される場合、用語「細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答」は、細胞傷害性T細胞によって誘導される免疫応答を指す。CTL応答は主にCD8T細胞によって媒介される。
【0081】
用語「から本質的になる」は、「含む」と等しくはなく、請求項の指定の材料もしくはステップ、または特許請求される主題の基本的特徴に実質的に影響を及ぼさない材料もしくはステップを指す。例えば、タンパク質のドメイン、領域もしくはモジュール(例えば、結合性ドメイン、ヒンジ領域、リンカーモジュール)、または(1つ以上のドメイン、領域またはモジュールを有し得る)タンパク質が特定のアミノ酸配列「から本質的になる」のは、ドメインの、領域の、モジュールの、またはタンパク質のアミノ酸配列が、組み合わさってドメインの、領域の、モジュールの、またはタンパク質の長さの最大20%(例えば、最大15%、10%、8%、6%、5%、4%、3%、2%または1%で)を占める伸長、欠失、変異またはそれらの組合せ(例えば、アミノ末端もしくはカルボキシ末端にある、またはドメイン間にあるアミノ酸)を含んでおり、ドメイン(複数可)の、領域(複数可)の、モジュール(複数可)の、またはタンパク質の活性(例えば、結合性タンパク質の標的結合親和性)に実質的に影響しない場合である(つまり、活性の低下が50%を超えない、例えば、40%、30%、25%、20%、15%、10%、5%または1%以下)。
【0082】
用語「対象のための好適な治療レジメンを決定すること」は、本発明に係る解析の結果に基づいて、または本質的に基づいて、または少なくとも部分的に基づいて開始、修正及び/または終了される対象のための治療レジメン(すなわち、対象におけるウイルス感染症を予防及び/または治療するために用いられる単一の療法または様々な療法の組合せ)を決定することを意味する、と解釈される。一例は、再発のリスクを減らすことを目的として術後にアジュバント療法を開始することであり、別の例は、特定の化学療法の用量を変更することであろう。決定は、本発明に係る解析の結果に加えて、治療するべき対象の個人的な特徴に基づくことがある。ほとんどの場合、対象に適した治療レジメンの実際の決定は担当医または医師によって行われることになる。
【0083】
本明細書で使用される場合、「造血始原細胞(hematopoietic progenitor cell)」は、造血幹細胞または胎児組織に由来するものであり得、成熟細胞種(例えば、免疫系細胞)にさらに分化することができる、細胞である。例示的な造血始原細胞としては、CD24Lo Lin-CD117表現型を有するもの、または胸腺において見出されるもの(始原胸腺細胞と呼ばれる)が挙げられる。
【0084】
本明細書で使用される「相同」は、同じ核酸鎖の2つの領域間の、または2本の異なった核酸鎖の領域間の、ヌクレオチド配列の類似性を指す。両方の領域のヌクレオチド残基位置が同じヌクレオチド残基によって占められる場合、その領域はその位置で相同である。各領域の少なくとも1つのヌクレオチド残基位置が同じ残基によって占められている場合、第1の領域は第2の領域に対して相同である。2つの領域間の相同性は、同じヌクレオチド残基によって占められている2つの領域のヌクレオチド残基位置の割合として表される。例えば、ヌクレオチド配列5’-ATTGCC-3’を有する領域とヌクレオチド配列5’-TATGGC-3’を有する領域とは、50%の相同性を共有する。いくつかの実施形態では、第1の領域は第1の部分を含み、第2の領域は第2の部分を含み、この条件で、部分の各々の核酸残基位置の少なくとも約50%、他の実施形態では少なくとも約75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上、または端点を含めてそれらの間にある任意の範囲、例えば少なくとも約80%~100%は、同じヌクレオチド残基によって占められる。いくつかの実施形態では、部位の各々のすべてのヌクレオチド残基位置は、同じヌクレオチド残基によって占められる。
【0085】
用語「免疫応答」は、T細胞性及び/またはB細胞性免疫応答を含む。例示的な免疫応答としては、T細胞応答、例えば、サイトカイン産生及び細胞傷害性が挙げられる。加えて、免疫応答という用語は、T細胞活性化によって間接的にもたらされる免疫応答、例えば、抗体産生(体液性応答)、及びサイトカイン応答性細胞(例えば、マクロファージ)の活性化が挙げられる。
【0086】
免疫応答または免疫系を刺激する能力が増加することは、T細胞共刺激受容体のアゴニスト活性が高まること、及び/または阻害受容体のアンタゴニスト活性が高まることから生じることがある。免疫応答または免疫系を刺激する能力が増加することは、免疫応答を測定するアッセイ、例えば、サイトカインまたはケモカイン放出、細胞溶解活性(標的細胞について直接的に、またはCD107aもしくはグランザイムを検出することを介して間接的に測定される)及び増殖の変化を測定するアッセイにおけるEC50の増加倍率または活性の最大レベルによって、反映されることがある。免疫応答または免疫系の活性を刺激する能力は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、200%、250%、300%、350%、400%、500%、またはそれを超えて、高まることがある。
【0087】
用語「免疫療法剤」は、宿主の免疫系を刺激して対象におけるウイルス感染に対する免疫応答を生じさせることができる任意の分子、ペプチド、抗体または他の薬剤を含み得る。様々な免疫療法剤が、本明細書に記載される組成物及び方法において有用である。
【0088】
用語「免疫細胞」は、骨髄中の造血幹細胞から発生する免疫系の任意の細胞を指すが、この造血幹細胞は、2つの主要な系統:骨髄性始原細胞(これは、骨髄細胞、例えば、単球、マクロファージ、樹状細胞、巨核球及び顆粒球を生まれさせる)、及びリンパ系始原細胞(これは、リンパ系細胞、例えば、T細胞、B細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞を生まれさせる)を生まれさせるものである。例示的な免疫系細胞としては、CD4T細胞、CD8T細胞、CD4 CD8二重陰性T細胞、gd T細胞、調節性T細胞、ナチュラルキラー細胞、及び樹状細胞が挙げられる。マクロファージ及び樹状細胞は、「抗原提示細胞」または「APC」と呼ばれることがあり、これらは、ペプチドと複合体を形成したAPCの表面上の主要組織適合性複合体(MHC)受容体がT細胞の表面上のTCRと相互作用する場合にT細胞を活性化することができる特殊化した細胞である。
【0089】
「単離されたタンパク質」は、細胞から単離された場合もしくは組換えDNA技術によって生産された場合では、他のタンパク質、細胞物質、分離培地及び培養培地を実質的に含まない、または化学的に合成された場合では、化学的前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まない、タンパク質を指す。「単離された」もしくは「精製された」タンパク質、またはその生物学的に活性な部分は、結合性タンパク質、抗体、ポリペプチド、ペプチドもしくは融合タンパク質の由来源である細胞もしくは組織源からの細胞物質もしくは他の混入タンパク質を実質的に含まないか、または化学的に合成された場合では、化学的前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まない。「細胞物質を実質的に含まない」という言葉は、タンパク質を単離するまたは組換えにより生産する細胞の、細胞構成要素から、タンパク質を分離する、という、バイオマーカーポリペプチドまたはその断片の調製を含む。一実施形態では、「細胞物質を実質的に含まない」という言葉は、(乾燥重量で)約30%未満の非バイオマーカータンパク質(本明細書では「混入タンパク質」とも呼ぶ)、もしくはいくつかの実施形態では約25%、20%、15%、10%、5%、1%、もしくはそれ未満、または端点を含めてそれらの間にある任意の範囲、例えば約1%未満~5%の非バイオマーカータンパク質を有するバイオマーカータンパク質またはその断片の調製を含む。結合性タンパク質、抗体、ポリペプチド、ペプチドもしくは融合タンパク質、またはそれらの断片、例えば、生物学的に活性なそれらの断片が組換えにより生産される場合、それは、培養培地を実質的に含まないものであり得、つまり、培養培地はタンパク質調製物の体積の約20%、15%、10%、5%、1%、もしくはそれ未満、または端点を含めてそれらの間にある任意の範囲、例えば約1%未満~5%を占め得る。
【0090】
本明細書で使用される場合、用語「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子にコードされる抗体のクラス(例えば、IgM、IgG1、IgG2Cなど)を指す。
【0091】
本明細書で使用される場合、用語「K」は、特定の結合性タンパク質-抗原相互作用の解離平衡定数を指すことが意図される。本発明に包含される結合性タンパク質の結合親和性は、標準的な結合性タンパク質-標的結合アッセイ、例えば、競合アッセイ、飽和アッセイ、または標準的なイムノアッセイ、例えばELISAもしくはRIAによって測定または決定され得る。相対的により低いKd値は、相対的により高い結合親和性を示す(例えば、約5×10-4M(500uM)以下のKd値は、1×10-4M(100uM)のKd値を含み、100uMのKdは、500uMのKdと比較して相対的により高い結合親和性を示す)。
【0092】
「キット」は、少なくとも1種の試薬(例えば、本発明に包含されるマーカーの発現を検出するため及び/またはそれに影響を及ぼすためのプローブまたは小分子)を含む任意の製造物(例えば、パッケージ、または容器)である。キットは、本発明に包含される方法を実施するためのユニットとして宣伝、配布または販売され得る。キットは、本発明に包含される方法において有用な組成物を発現させるのに必要な1種以上の試薬を含み得る。いくつかの実施形態では、キットは、参照標準(例えば、細胞増殖、分裂、遊走、生存またはアポトーシスを制御しているシグナル伝達経路に影響を及ぼさない、またはそれを調節しないタンパク質をコードする核酸)をさらに含み得る。当業者は多くのそのような対照タンパク質を想定することができ、これには、例えば、限定はされないが、一般的な分子タグ(例えば、緑色蛍光タンパク質及びベータガラクトシダーゼ)、GeneOntology基準によれば細胞増殖、分裂、遊走、生存もしくはアポトーシスを包含する経路のいずれにも分類されないタンパク質、または遍在性ハウスキーピングタンパク質)が含まれる。キット中の試薬を、個々の容器に入れて、または2種以上の試薬の混合物を単一の容器に入れて、提供することがある。さらに、キット内の組成物の使用について記載する説明資料が含まれることがある。
【0093】
本明細書で使用される場合、用語「連結された」は、2つ以上の分子の会合を指す。その結合は、共有結合によるものであっても非共有結合によるものであってもよい。結合はまた、遺伝学的なもの(すなわち、組換え的に融合したもの)であってもよい。そのような結合は、当技術分野で認識されている多種多様な技術、例えば化学的結合体化及び組換えタンパク質生産を用いて得られ得る。
【0094】
「リンカー」は、いくつかの実施形態では、2つのタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、ドメイン、領域またはモチーフを連結させるアミノ酸配列を指し得、得られるポリペプチドが標的分子に対する特異的な結合親和性を保持するように(例えば、scTCR)、またはシグナル伝達活性を保持するように(例えば、TCR複合体)、2つのサブ結合性ドメインの相互作用に適合するスペーサー機能を提供し得る。いくつかの実施形態では、リンカーは、例えば約2~約35個のアミノ酸、または約4~約20個のアミノ酸、または約8~約15個のアミノ酸、または約15~約25個のアミノ酸から構成される。
【0095】
「MAGEC2」という用語は、がん/精巣抗原10(CT10)、肝細胞癌抗原587(HCA587)及びメラノーマ抗原、ファミリーE、1、がん/精巣特異的(MAGEE1)としても知られる、ヒト染色体Xq26~q27上でクラスター化しているメラノーマ抗原遺伝子ファミリーの特定のメンバーを指す(Gure et al.(2000)Int.J.Cancer 85:726-732、Li et al.(2003)Lab Invest.83:1185-1192、Ma et al.(2004)Int.J.Cancer 109:698-702、Godelaine et al.(2007)Cancer Immunol.Immunother.56:753-759、Reiner et al.(2009)Int.J.Cancer 124:352-357、Doyle et al.(2010)Mol.Cell 39:93-974、von Boehmer et al.(2011)PLoS One 6,e21366、Wen et al.(2011)Cancer Sci.102:1455-1461、de Carvalho et al.(2013)Cancer Immunol.Immunother.62:191-195、Bhatia et al.(2013)J.Invest.Dermatol.133:759-767)、Yang et al.(2014)Breast Cancer Res.Treat.145:23-32、及びKunert et al.(2016)J.Immunol.197:2541-2552)。MAGEC2は、例えばE3:基質複合体においてUb1結合体化酵素(E2)を動員する及び/または安定化させることによって、RING型亜鉛フィンガー含有E3ユビキチン-タンパク質リガーゼのユビキチンリガーゼ活性を増強するものと考えられている。MAGEC2は、in vitroでのTRIM28のユビキチンリガーゼ活性を増強し、Ub1結合体化酵素UBE2Hの存在下でp53/TP53ユビキチン化を刺激してp53/TP53分解を招く。MAGEC2は、精巣を除いて正常組織には発現せず、メラノーマ、頭頸部癌、肺癌、子宮頸癌、前立腺癌、多発性骨髄腫、肝細胞癌、浸潤性乳癌及び膀胱尿路上皮癌などの様々な組織学的タイプの腫瘍に発現する。
【0096】
「MAGEC2」という用語は、その断片、多様体(例えば、アレル性多様体)及び誘導体を含むことが意図される。代表的なヒトMAGEC2 cDNA及びヒトMAGEC2タンパク質配列は、当技術分野でよく知られており、National Center for Biotechnology Information(NCBI)から公的に入手できる(例えば、ncbi.nlm.nih.gov/gene/51438を参照)。例えば、ヒトMAGEC2(NP_057333.1)は、転写物(NM_016249.4)にコードされる。ヒト以外の生物のMAGEC2オーソログの核酸及びポリペプチド配列はよく知られており、例えば、チンパンジーMAGEC2(NM_001302428.1、NP_001289357.1、XM_016942653.1、及びXP_016798142.1)及びアカゲザルMAGEC2(NM_001265825.1、NP_001252754.1、XM_028841693.1、及びXP_028697526.1)が挙げられる。MAGEC2配列の代表的な配列は以下の表3にも提示されている。
【0097】
MAGEC2タンパク質を検出するのに適する抗MAGEC2抗体は当技術分野でよく知られており、例えば、抗体TA315476及びTA342769(OriGene,Rockville,MD)、抗体orb353181及びorb125944(Biorbyt,Cambridge,United Kingdom)、抗体A05335及びAO5335-1(Boster Bio,Pleasanton,CA)、ならびに抗体ABIN2788251及びABIN2706502(Antibodies-online,Limerick,PA)が挙げられる。加えて、MAGEC2発現を検出するための試薬はよく知られている。さらには、様々な会社の商用製品リストの中に、MAGEC2発現を調節するための複数種のsiRNA、shRNA、CRISPR構築物、例えば、オープンリーディングフレーム(ORF)クローンSC07208及びRN211555(OriGene,Rockville,MD)、ならびにCRISPRノックアウトGA109805及びKN403064(OriGene,Rockville,MD)を見つけることができる。当該用語がさらに、MAGEC2分子に関して本明細書に記載される特徴の任意の組合せを指すために使用されることがあることに留意されたい。例えば、配列組成、同一性百分率、配列長、ドメイン構造、機能活性などの任意の組合せを用いて、本発明に包含されるMAGEC2分子が表されることがある。
【0098】
用語「MAGEC2抗原」または「MAGEC2ペプチド抗原」または「MAGEC2含有ペプチド抗原」または「MAGEC2エピトープ」または「MAGEC2ペプチドエピトープ」または「MAGEC2ペプチド」は、MAGEC2の、天然に産生した、または合成によって生産された免疫原性部分を指す。いくつかの実施形態では、MAGEC2抗原タンパク質は、長さが約7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25アミノ酸、または端点を含めてそれらの間にある任意の範囲、例えば8~15アミノ酸にわたり得る。いくつかの実施形態では、MAGEC2抗原タンパク質はMHC(例えばHLA)分子と複合体を形成することができ、その結果、MAGEC2ペプチド:MHC(例えばHLA)複合体を認識する本開示の結合性タンパク質がそのような複合体に(例えば特異的及び/または選択的に)結合することができる。代表的なMAGEC2ペプチド抗原配列を表1に示す。
【0099】
「主要組織適合性複合体」(MHC)という用語は、ペプチド抗原を細胞表面に送達する糖タンパク質を指す。MHCクラスI分子は、膜を貫通するa鎖(3つのaドメインを有する)及び非共有結合的に会合したb2マイクログロブリンを有するヘテロ二量体である。MHCクラスII分子は、2つの膜貫通糖タンパク質、a及びbから構成され、両方とも膜を貫通する。それぞれの鎖には2つのドメインがある。MHCクラスI分子は、細胞質ゾルに由来するペプチドを細胞表面に送達し、その細胞表面で、ペプチド抗原-MHC(pMHC)複合体は、CD8T細胞によって認識される。MHCクラスII分子は、小胞系に由来するペプチドを細胞表面に送達し、その細胞表面で、それらは、CD4T細胞によって認識される。ヒトMHCは、ヒト白血球抗原(HLA)と呼ばれる。
【0100】
用語「予防する」、「予防すること」、「予防」、「予防的処置」などは、疾患、障害または症状を有さないがそれを発症するリスクがある、またはそれを発症しやすい対象において、疾患、障害または症状を発症する可能性を低下させることを指す。
【0101】
用語「予後予測」は、ウイルス感染症の可能性のある経過及び結果、または疾患からの回復の可能性に関する予測を含む。いくつかの実施形態では、統計学的アルゴリズムを使用することで、個体におけるウイルス感染の予後予測を行う。例えば、予後予測は、手術、ウイルス感染症の臨床的なサブタイプの発症、1種以上の臨床的な因子の発生、またはその疾患からの回復であることがある。
【0102】
本明細書で使用される場合、アミノ酸配列間の「同一性パーセント」は、「相同性パーセント」と同義であり、これは、Karlin and Altschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5877によって改変を受けた、Karlin and Altschul(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-2268のアルゴリズムを用いて決定され得る。この記載されたアルゴリズムは、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-410の、NBLAST及びXBLASTプログラムの中に組み込まれている。BLASTヌクレオチド検索を、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12を用いて行い、本明細書に記載されるポリヌクレオチドに相同なヌクレオチド配列を得る。BLASTタンパク質検索を、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて行い、基準ポリペプチドに相同なアミノ酸配列を得る。比較のためのギャップ入りアラインメントを得るためには、Altschul et al.(1997)Nuc.Acids Res.25:3389-3402に記載されているように、Gapped BLASTを利用する。BLAST及びGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLAST及びNBLAST)の既定パラメータを使用してもよい。
【0103】
語句「薬学的に許容される担体」は、身体のある臓器または部分から身体の別の臓器または部分に対象化合物を運搬または輸送することに関与する、薬学的に許容される物質、組成物またはビヒクル、例えば、液状または固形の充填剤、希釈剤、賦形剤または溶媒封入物質を意味する。
【0104】
用語「比」は、2つの数字(例えば、スコア、和など)の間の関係性を指す。比は特定の順序(例えば、a対b、またはa:b)で表されることがあるが、当業者であれば、数字の間の根本的な関係性は、比に基づく傾向の見え方及び相関関係が逆転し得るとはいえども根底にある関係性の重要性を失わずに任意の順序で表され得ることを、認識するであろう。
【0105】
用語「組換え宿主細胞」(または、単に「宿主細胞」)は、細胞中に天然に存在しない核酸を含む細胞、例えば、組換え発現ベクターを導入した細胞を指す。本発明に係る細胞は、特定の対象細胞だけでなくそのような細胞の子孫も包含することを意味することが意図されていることは、理解されるべきである。変異または環境の影響のいずれかによってある特定の改変が後の世代において起こることがあるので、そのような子孫は、実際には、その親細胞と同一ではないかもしれないが、依然として本発明に係る細胞の用語の範囲内に含まれる。
【0106】
用語「がん応答」、「免疫療法に対する応答」、または「T細胞媒介性細胞傷害の調節剤/免疫療法の併用療法に対する応答」は、がん薬剤、例えば、T細胞媒介性細胞傷害の調節剤、及び免疫療法に対する過剰増殖性障害(例えばがん)の任意の応答に関し、好ましくは、ネオアジュバントまたはアジュバント療法を開始した後の腫瘍重量及び/または体積の変化に関する。用語「ネオアジュバント療法」は、一次治療の前に与えられる治療を指す。ネオアジュバント療法の例としては、化学療法、放射線療法、及びホルモン療法を挙げることができる。過剰増殖性障害の応答を、例えば、有効性について、またはネオアジュバントもしくはアジュバントの状況において、評価することがあるが、その場合、CT、PET、マンモグラム、超音波または触診によって測定して、全身性に介入を行った後の腫瘍のサイズを初期のサイズ及び寸法と比較することがある。応答はまた、生検または外科的切除の後の腫瘍のキャリパー測定または病理学的検査によって評価されることもある。応答を、腫瘍体積における百分率変化のような定量的様式で、または「病理学的完全奏功」(pCR)、「臨床的完全寛解」(cCR)、「臨床的部分寛解」(cPR)、「臨床的安定疾患」(cSD)、「臨床的進行疾患」(cPD)、もしくは他の定性的基準のような定性的様式で、記録することがある。過剰増殖性障害応答の評価を、ネオアジュバント療法またはアジュバント療法の開始後早期に、例えば、数時間後、数日後、数週間後、または好ましくは数ヶ月後に、行うことがある。応答評価のための典型的なエンドポイントは、ネオアジュバント化学療法の終了時、あるいは残存腫瘍細胞及び/または腫瘍床を外科的に切除した時である。これは、典型的には、ネオアジュバント療法の開始の3ヶ月後である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療的処置の臨床的な有効性を、臨床的有用率(CBR)を測定することによって、決定することがある。臨床的有用率は、療法終了から少なくとも6ヶ月の時点で、完全寛解(CR)にある患者の百分率、部分寛解(PR)にある患者の数、及び安定疾患(SD)を有する患者の数の合計を決定することによって測定される。この定式を簡潔に表すと、6ヶ月を超えてCBR=CR+PR+SDである。いくつかの実施形態では、特定のがん治療レジメンのCBRは、少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%である、またはそれを超える。がん療法に対する応答を評価するためのさらなる判断基準は、「生存期間」に関するものであり、これには以下のすべてが含まれる:全生存期間としても知られる、死亡までの生存期間(ここで、死亡は、原因に無関係であるか腫瘍に関係するかのどちらかであり得る);「無再発生存期間」(ここで、再発という用語は、局所再発及び遠隔再発の両方を含むものとする);無転移生存期間;無病生存期間(ここで、病という用語は、がん及びそれに関連する疾患を含むものとする)。上記生存期間の長さは、定義された開始点(例えば、診断時または治療開始時)及び終了点(例えば、死亡、再発または転移)を基準として計算され得る。さらに、治療の有効性の判断基準は、化学療法に対する応答、生存の確率、所与の期間内での転移の確率、及び腫瘍再発の確率を含むように拡張されることがある。例えば、適切な閾値を決定するために、特定のがん治療レジメンを対象の集団に施与してその転帰を、任意のがん治療を施与する前に決定されたバイオマーカー測定結果と相関させてもよい。転帰の測定結果は、ネオアジュバント環境で与えられた療法に対する病理学的応答であり得る。あるいは、転帰の測定結果、例えば、全生存期間及び無病生存期間を、バイオマーカー測定値が分かっているがん療法後の対象について、ある期間にわたって追跡評価してもよい。ある特定の実施形態では、投与する用量は、がん治療剤について当技術分野で知られている標準的な用量である。対象を追跡評価する期間は様々であり得る。例えば、対象は、少なくとも2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、45、50、55または60ヶ月間にわたって追跡評価され得る。がん療法の転帰と相関するバイオマーカー測定の閾値は、当技術分野でよく知られている方法、例えば、実施例の節に記載されている方法を用いて決定され得る。
【0107】
示されるように、これらの用語はまた、例えば、再発までの時間(これは、最初の事象としての二次原発がん、もしくは再発の証拠を伴わない死亡によって打ち切られる、最初の再発までの期間である)の増加によって反映されるような、または全生存期間(これは、治療から任意の原因による死亡までの期間である)の増加によって反映されるような、改善された予後を指すこともある。応答すること、または応答があることは、刺激に曝露されたときに、達成される有益なエンドポイントが存在することを意味する。あるいは、刺激への曝露によってネガティブなまたは有害な症候が最小化する、緩和される、または減弱する。腫瘍または対象が好ましい応答を示す可能性を評価することが、腫瘍または対象が好ましい応答を示さない(つまり、応答の欠如を示す、または非応答性である)可能性を評価することと同等であることは、理解されよう。
【0108】
用語「抵抗性」は、がん療法に対するがんサンプルまたは哺乳動物の、後天的なまたは自然の抵抗性(つまり、治療的処置に対して不応答性であること、または治療的処置への応答が減少している、もしくは限定的であること)を指し、例えば、治療的処置への応答が、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%またはそれよりも大きく減少すること、例えば、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍またはそれよりも大きく減少すること、または端点を含めてそれらの間にある任意の範囲で減少することを指す。応答の減少は、抵抗性が獲得される前の同じがんサンプルもしくは哺乳動物と比較することによって、または治療的処置に対して抵抗性を有さないことが知られている種々のがんサンプルもしくは哺乳動物と比較することによって、測定され得る。化学療法に対する典型的な後天的抵抗性は「多剤耐性」と呼ばれる。多剤耐性は、P糖タンパク質によって媒介されることがある、もしくは他の機序によって媒介されることがある、または哺乳動物が多剤耐性微生物もしくは微生物の組合せに感染した場合に生じることがある。治療的処置に対する抵抗性を決定することは、当技術分野において慣行されており、当業者である臨床医の技術の範囲内であり、例えば、本明細書に「感受性化すること(sensitizing)」として記載されるような細胞増殖アッセイ及び細胞死アッセイによって測定することがある。いくつかの実施形態において、用語「抵抗性を逆転させる」とは、一次がん療法(例えば、化学療法または放射線療法)単独では腫瘍体積を非処置の腫瘍の腫瘍体積に比べて統計的有意に減少させることができない状況において一次がん療法(例えば、化学療法または放射線療法)と併せて第2の薬剤を使用することによって、腫瘍体積を非処置の腫瘍の腫瘍体積に比べて統計的有意なレベル(例えば、p<0.05)で有意に減少させることができることを意味する。これは、通常、未処置の腫瘍が対数的に成長している時に行われる腫瘍体積測定に適用される。
【0109】
少なくとも1種のバイオマーカーの、非存在もしくは存在、またはレベルを検出または決定するために使用される用語「サンプル」は、典型的には、脳組織、脳脊髄液、全血、血漿、血清、唾液、尿、糞便(stool)(例えば、糞便(feces))、涙、及び他の任意の身体の流体(例えば、「体液」の定義のもとで上述されるもの)、または組織サンプル(例えば、生検材料)、例えば、皮膚、結腸サンプル、または外科的切除組織である。いくつかの実施形態では、本発明に包含される方法は、サンプル中の少なくとも1種のマーカーの非存在もしくは存在、またはレベルを検出または決定する前に個体からサンプルを得るステップをさらに含む。
【0110】
用語「感受性化する」は、関連するがんをがん療法(例えば、抗免疫チェックポイント、化学療法、及び/または放射線療法)によってより効果的に治療することを可能にする方法でがん細胞または腫瘍細胞を変化させることを意味する。いくつかの実施形態では、正常な細胞は、療法によって正常な細胞が過度に傷つく程には影響を受けない。治療的処置に対する感受性の増加または感受性の減少は、本出願において以下に記載される特定の治療及び方法のための当技術分野で知られている方法に従って測定され、これには、例えば、限定はされないが、細胞増殖アッセイ(Tanigawa et al.(1982)Cancer Res.42:2159-2164)、及び細胞死アッセイ(Weisenthal et al.(1984)Cancer Res.94:161-173、Weisenthal et al.(1985)Cancer Treat Rep.69:615-632、Weisenthal et al.,In:Kaspers G J L,Pieters R,Twentyman P R,Weisenthal L M,Veerman A J P,eds.Drug Resistance in Leukemia and Lymphoma.Langhorne,P A:Harwood Academic Publishers,1993:415-432、Weisenthal(1994)Contrib.Gynecol.Obstet.19:82-90)が含まれる。感受性または抵抗性はまた、動物において、ある期間(例えば、ヒトについては6ヶ月間、マウスについては4~6週間)にわたって腫瘍サイズの減少を測定することによっても測定され得る。組成物または方法が治療的処置への応答を感受性化するのは、そのような組成物または方法の非存在下での治療感受性または抵抗性と比較して治療感受性の増加または抵抗性の減少が、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%になる、またはそれよりも大きくなる、例えば、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍になる、もしくはそれより大きくなる、または端点を含めてそれらの間にある任意の範囲になる場合である。治療的処置に対する感受性または抵抗性の決定は、当技術分野において慣行されており、当業者である臨床医の技術の範囲内である。がん療法の有効性を高めるための、本明細書に記載される任意の方法が、過剰増殖性の細胞またはその他のがん性細胞(例えば、抵抗性細胞)をがん療法に対して感受性化するための方法に等しく適用され得ることは、理解されたい。
【0111】
用語「小分子」は、当技術分野の用語であり、分子量約1000未満の分子、または分子量約500未満の分子を含む。一実施形態では、小分子は、ペプチド結合だけで構成されているわけではない。別の実施形態では、小分子は、オリゴマーではない。活性をスクリーニングすることがある例示的な小分子化合物としては、限定されるものではないが、ペプチド、ペプチドミメティック、核酸、炭水化物、有機小分子(例えば、ポリケチド)(Cane et al.(1998)Science 282:63-68)、及び天然物抽出ライブラリーが挙げられる。別の実施形態では、化合物は、小分子有機非ペプチド化合物である。さらなる実施形態では、小分子は、生合成産物ではない。
【0112】
用語「特異的結合」は、結合性タンパク質が所定の抗原に結合することを指す。典型的には、結合性タンパク質は、結合アッセイ、例えば、関心とする抗原を分析物として使用し、結合性タンパク質をリガンドとして使用するBIAcore(商標)アッセイ装置での表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって測定した場合、およそ約5×10-4M以下、約1×10-4M以下、約5×10-5M以下、約1×10-5M以下、約5×10-6M以下、約1×10-6M以下、約5×10-7M以下、約1×10-7M以下、約5×10-8M以下、約1×10-8M以下、約5×10-9M以下、約1×10-9M以下、約5×10-10M以下、約1×10-10M以下、約5×10-11M以下、約1×10-11M以下、約5×10-12M以下、約1×10-12M以下の、もしくはさらにより小さい、または端点を含めてそれらの間にある任意の範囲の、例えば約1~50マイクロモーラー、1~100マイクロモーラー、0.1~500マイクロモーラーなどの親和性(K)で結合する。いくつかの実施形態では、所定の抗原に対して結合性タンパク質は、所定の抗原以外の、または密接に関連する抗原以外の非特異抗原(例えば、BSA、カゼイン)に対する結合におけるその親和性に比べて少なくとも1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0もしくは10.0倍の、またはそれを上回る親和性で結合する。本明細書では、語句「抗原を認識する結合性タンパク質」及び「抗原に特異的な結合性タンパク質」を、用語「抗原に特異的に結合する結合性タンパク質」と互換的に使用する。選択的な結合は、結合性タンパク質が、ある抗原の結合を別の抗原の結合から区別できること、例えば、特定のファミリーメンバーまたは抗原標的の結合を、関連するファミリーメンバーまたは抗原標的の結合から区別できることを指す相対的な用語である。例えば、実施例の節で提供される解析データは、本明細書に記載される結合性タンパク質がMAGEC2免疫原性エピトープに特異的に結合し、及び/または多くの関連するエピトープ(例えば、MAGEC2免疫原性エピトープ及び密接に関連する配列)に選択的に結合し、それによって、そのような標的とヒトゲノムで利用できる他の大多数の考えられるエピトープとが区別されることを、実証している。
【0113】
用語「対象」は、任意の健常な動物、哺乳動物もしくはヒト、またはMAGEC2発現を特徴とする障害に罹患している任意の動物、哺乳動物もしくはヒトを指す。用語「対象」は「患者」と互換できる。
【0114】
用語「生存期間」は、以下のすべてを含む:全生存期間としても知られる、死亡までの生存期間(ここで、死亡は、原因に無関係であるか腫瘍に関係するかのどちらかであり得る);「無再発生存期間」(ここで、再発という用語は、局所再発及び遠隔再発の両方を含むものとする);無転移生存期間;無病生存期間(ここで、疾患という用語は、がん及びそれに関連する疾患を含むものとする)。上記生存期間の長さは、定義された開始点(例えば、診断時または治療開始時)及び終了点(例えば、死亡、再発または転移)を基準として計算され得る。さらに、治療の有効性の判断基準は、化学療法に対する応答、生存の確率、所与の期間内での転移の確率、及び腫瘍再発の確率を含むように拡張されることがある。
【0115】
用語「相乗効果」は、がん薬剤/療法単独での別個の効果の合計よりも大きい、2種以上の薬剤(例えば、本明細書に記載されるMAGEC2関連薬剤、及びMAGEC2発現を特徴とする障害を治療するための別の療法)の併用効果を指す。
【0116】
本明細書で使用される場合、用語「T細胞媒介性応答」は、T細胞、例えば、エフェクターT細胞(例えば、CD8細胞)及びヘルパーT細胞(例えば、CD4細胞)によって媒介される応答を指す。T細胞媒介性応答としては、例えば、T細胞の細胞傷害及び増殖が挙げられる。
【0117】
「転写されたポリヌクレオチド」または「ヌクレオチド転写物」は、バイオマーカー核酸の転写によって、ならびに、もしあれば、RNA転写物の正常な転写後プロセシング(例えば、スプライシング)によって、及びRNA転写物の逆転写によって作られる成熟mRNAの全部または一部と相補的または相同的であるポリヌクレオチド(例えば、mRNA、hnRNA、cDNA、またはそのようなRNAのもしくはcDNAの類縁体)である。
【0118】
「T細胞」は、胸腺において成熟する、及びT細胞受容体(TCR)を産生する、免疫系細胞である。T細胞は、ナイーブ(抗原に曝露されていない;TCMと比較してCD62L、CCR7、CD28、CD3、CD127及びCD45RAの発現が増加している、ならびにCD45ROの発現が減少している)、メモリーT細胞(T)(抗原経験済み、及び長く生存している)、ならびにエフェクター細胞(抗原経験済み、細胞傷害性)であり得る。Tは、中枢メモリーT細胞(TCM、ナイーブT細胞と比較してCD62L、CCR7、CD28、CD127、CD45RO及びCD95の発現が増加している、ならびにCD54RAの発現が減少している)、ならびにエフェクターメモリーT細胞(TEM、ナイーブT細胞またはTCMと比較してCD62L、CCR7、CD28、CD45RAの発現が減少している、及びCD127の発現が増加している)のサブセットにさらに分けることができる。エフェクターT細胞(T)は、TCMと比較してCD62L、CCR7、CD28の発現が減少している、ならびにグランザイム及びパーフォリンについて陽性である、抗原経験済みのCD8+細胞傷害性Tリンパ球を指す。他の例示的なT細胞としては、調節性T細胞、例えばCD4 CD25(Foxp3)調節性T細胞、及びTreg17細胞、ならびにTr1、Th3、CD8 CD28、及びQa-1拘束性T細胞が挙げられる。
【0119】
従来のT細胞(TconvまたはTeffとしても知られる)は、エフェクター機能(例えば、サイトカイン分泌、細胞傷害活性、抗自己認識など)を有し、1種以上のT細胞受容体が発現することによって、免疫応答を増大させる。TconまたはTeffは、一般に、Tregではない任意のT細胞集団として定義され、例えば、ナイーブT細胞、活性化T細胞、メモリーT細胞、休止Tcon、または例えばTh1系統にもしくはTh2系統に向かって分化したTconが挙げられる。いくつかの実施形態では、Teffは、非Treg T細胞のサブセットである。いくつかの実施形態では、Teffは、CD4+ Teff、またはCD8+ Teff、例えばCD4+ヘルパーTリンパ球(例えば、Th0、Th1、Tfh、またはTh17)、及びCD8+細胞傷害性Tリンパ球である。本出願でさらに記載されるように、細胞傷害性T細胞は、CD8+Tリンパ球である。「ナイーブTcon」は、骨髄で分化し、胸腺における中枢選択の正及び負のプロセスを首尾よく経たが、抗原への曝露による活性化がまだなされていない、CD4T細胞である。ナイーブTconは、一般に、L-セレクチン(CD62L)の表面発現、CD25、CD44またはCD69などの活性化マーカーが存在しないこと、及びCD45ROなどのメモリーマーカーが存在しないことを特徴とする。したがって、ナイーブTconは、静止しており非分裂性であると考えられ、ホメオスタシス生存のためにインターロイキン-7(IL-7)及びインターロイキン-15(IL-15)を必要とする(少なくとも、WO2010/101870を参照)。そのような細胞の存在及び活性は、免疫応答を抑制することとの関連において、望ましくない。Tregとは異なり、Tconは、アネルギー性ではなく、抗原に基づくT細胞受容体活性化に応答して増殖することがある(Lechler et al.(2001)Philos.Trans.R.Soc.Lond.Biol.Sci.356:625-637)。
【0120】
「Tエフェクター」(「Teff」または「T」)細胞は、サイトカインを分泌して他の免疫細胞を活性化する及び他の免疫細胞に指令を送る、細胞溶解活性を有するT細胞(例えば、CD4+及びCD8+T細胞)及びTヘルパー(Th)細胞を指すが、調節性T細胞(Treg細胞)を含まない。
【0121】
「T細胞受容体」または「TCR」は、MHC受容体に結合した抗原ペプチドに(例えば、例えば、特異的に、及び/または選択的に)結合することができる免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバー(可変結合性ドメイン、定常ドメイン、膜貫通領域、及び短い細胞質側尾部を有する;例えば、Janeway et al.(1997)Curr.Biol.Publ.4:33を参照)を指す。TCRは、細胞の表面上に、または可溶形態で見出すことができ、一般的に、アルファ鎖及びベータ鎖(それぞれ、TCRα及びTCRβとしても知られる)を、またはγ鎖及びδ鎖(それぞれ、TCRγ及びTCRδとしても知られる)を有するヘテロ二量体から構成される。免疫グロブリン(例えば、抗体)のように、TCR鎖(例えば、α鎖及びβ鎖)の細胞外部分は、2つの免疫グロブリンドメインを含有する:N-末端にある可変ドメイン(例えば、α鎖可変ドメインまたはVα、及びβ鎖可変ドメインまたはVβ;典型的には、Kabat番号付けに基づいたアミノ酸1~116(Kabat et al.(1991)“Sequences of Proteins of lmmunological Interest,US Dept.Health and Human Services,Public Health Service National Institutes of Health,5th ed.)、ならびにC末端にあり細胞膜に近接している1つの定常ドメイン(例えば、α鎖定常ドメインまたはCα、典型的には、Kabatに基づいたアミノ酸117~ら259、β鎖定常ドメインまたはCβ、典型的には、Kabatに基づいたアミノ酸117~295)。免疫グロブリンとまた同様に、可変ドメインは、フレームワーク領域(「FR」)によって分離された相補性決定領域(「CDR」、超可変領域または「HVR」とも呼ばれる)を含有する(例えば、Fores et al.(1990)Proc.Natl.Acad Sci.US.A.87:9138、Chothia et al.(1988)EMBO J.7:3745、Lefranc et al.(2003)Dev.Comp.Immunol.27:55を参照)。いくつかの実施形態では、TCRは、T細胞(またはTリンパ球)の表面上に見出され、CD3複合体と会合する。本発明に包含されるTCRの供給源は、様々な動物種、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、または他の哺乳動物に由来することがある。
【0122】
用語「T細胞受容体」または「TCR」は、完全なTCR、及びその抗原結合性部分または抗原結合性断片を包含すると理解されるべきである。いくつかの実施形態では、TCRは、完全なまたは完全長のTCR、例えば、αβ型のTCRまたはγδ型のTCRである。いくつかの実施形態では、TCRは、完全長TCRよりも短いが、MHC分子中に結合した特定のペプチド、例えばMHC-ペプチド複合体に結合する、抗原結合性部分である。場合によっては、TCRの抗原結合性部分または断片は、完全長のまたは完全なTCRの構造ドメインの一部分しか含まないが、完全長のTCRが結合するペプチドエピトープ(例えば、MHC-ペプチド複合体)に依然として結合することができる。場合によっては、抗原結合性部分は、特定のMHC-ペプチド複合体への結合のための結合部位を形成するのに十分な、TCRの可変ドメイン、例えば、TCRの可変α鎖及び可変β鎖を含有する。一般的に、TCRの可変鎖は、ペプチド、MHC及び/またはMHC-ペプチド複合体の認識に関与する相補性決定領域(CDR)を含有する。
【0123】
命名法は、国際免疫遺伝学情報システム(IMGT)によって確立されている(Scaviner and Lefranc(2000)Exp.Clin.Immunogenet.17:83-96 and 97-106、Folch and Lefranc(2000)Exp.Clin.Immunogenet,17:107-114、T Cell Receptor Factsbook”,(2001)LeFranc and LeFranc,Academic Press,ISBN 0-12-441352-8も参照されたい)。IMGTは、TCRを記載するために使用される固有の配列を提供し、本出願で記載される配列は、本出願で提供されるそのような固有の配列に基づいて同定され得る。TCR配列は、imgt.orgのIMGTデータベースで公的に入手できる。
【0124】
上記のように、天然のアルファ/ベータヘテロ二量体TCRは、アルファ鎖及びベータ鎖を有する。概して、それぞれの鎖は、可変領域、連結領域及び定常領域を含み、ベータ鎖は通常、可変領域と連結領域との間の短い多様性領域も含むが、この多様性領域は、しばしば、連結領域の一部とみなされる。各可変領域は、フレームワーク配列中に埋め込まれた3つの超可変CDR(相補性決定領域)を含む。CDR3は、抗原認識の主な媒介因子であることがよく知られている。いくつかのタイプのアルファ鎖可変(Vα)領域、及びいくつかのタイプのベータ鎖可変(Vβ)領域があり、これらは、それらのフレームワーク、CDR1及びCDR2配列によって、ならびに部分的に画定されたCDR3配列によって区別される。IMGT命名法においてVαタイプは、固有のTRAV番号によって呼称される。例えば、「TRAV4」は、固有のフレームワーク、ならびにCDR1及びCDR2配列、ならびに様々なTCRにわたって保存されているアミノ酸配列によって部分的に画定されるがTCRごとに異なるアミノ酸配列も含んでいるCDR3を有するTCR Vα領域を定義している。同様に、「TRBV2」は、固有のフレームワーク、ならびにCDR1及びCDR2配列を有するが、部分的に画定されたCDR3配列のみを有する、TCR Vβ領域を定義している。アルファ遺伝子座内、及びベータ遺伝子座内には、それぞれ54種のアルファ可変遺伝子(そのうち44種が機能的である)及び67種のベータ可変遺伝子(そのうち42種が機能的である)が存在することが知られている。
【0125】
同様に、TCRの連結領域は、固有のIMGT TRAJ及びTRBJ命名法によって定義され、定常領域は、IMGT TRAC及びTRBC命名法によって定義される。IMGT命名法においてベータ鎖の多様性領域は、略語TRBDと呼ばれる、記載したように、繋がり合ったTRBD/TRBJ領域は、しばしば、総合して連結領域とみなされる。
【0126】
TCRアルファ及びベータ鎖をコードする遺伝子プールは、異なる染色体上に位置し、別個のV、(D)、J及びC遺伝子セグメントを含み、これらは、T細胞発達中に再構成によってまとめられる。これは、54種のTCRアルファ可変遺伝子と61種のアルファJ遺伝子との間、または67種のベータ可変遺伝子と2種のベータD遺伝子と13種のベータJ遺伝子との間で起こる多数の潜在的な組換え事象のために、T細胞アルファ及びベータ鎖に対して非常に高度な多様性をもたらす。組換えプロセスは厳密ではなく、CDR3領域内にさらなる多様性を導入する。各々のアルファ及びベータ可変遺伝子はまた、IMGT命名法においてそれぞれTRAVxx*01及び*02、またはTRBVx-x*01及び*02と命名されるアレル性多様体を含むこともあり、それゆえに、多様性の量がさらに増加する。同様に、TRBJ配列のいくつかは、2種の既知の多様性を有する。(なお、「*」修飾子がないことは、関連する配列について、1種のアレルのみが知られていることを意味する)。組換え及び胸腺での選択から生じるヒトTCRの天然のレパートリーは、CDR3多様性から決定されるおよそ10種の固有のベータ鎖配列を含むと推定されており(Arstila et al.(1999)Science 286:958-961)、さらに高くなることすらあり得る(Robins et al.(2009)Blood 114:4099-4107)。各ベータ鎖は、少なくとも25種の異なるアルファ鎖と対合すると推定され、それゆえに、更なる多様性が生じる(Arstila et al.(1999)Science 286:958-961)。
【0127】
したがって、用語「TCRアルファ可変ドメイン」は、TRAV及びTRAJ領域が繋がり合ったもの;TRAV領域のみ;またはTRAV及び一部のTRAJ領域を指し、用語TCRアルファ定常ドメインは、細胞外TRAC領域、またはC末端が切り取られたもしくは完全長のTRAC配列を指す。同様に、用語「TCRベータ可変ドメイン」は、TRBV及びTRBD/TRBJ領域が繋がり合ったもの;TRBV及びTRBD領域のみ;TRBV及びTRBJ領域のみ;またはTRBVならびに一部のTRBD及び/もしくはTRBJ領域を指し、用語TCRベータ定常ドメインは、細胞外TRBC領域、またはC末端が切り取られたもしくは完全長のTRBC配列を指す。これらのTCRアルファ可変ドメイン及びTCRベータ可変ドメインの命名法は、ガンマ/デルタTCRについて、それぞれTCRガンマ鎖及びTCRデルタ鎖の可変ドメインに同様に適用される。当業者は、例えば、公的に利用可能なIMGTデータベースを介して、TRAV、TRAJ、TRAC、TRBV、TRBJ及びTRBCの遺伝子配列を得ることができる。
【0128】
用語「TCR複合体」は、CD3とTCRとの会合によって形成される複合体を指す。例えば、TCR複合体は、CD3γ鎖、CD3δ鎖、2本のCD3ε鎖、CD3ζ鎖のホモ二量体、TCRα鎖及びTCRβ鎖から構成されることがある。あるいは、TCR複合体は、CD3γ鎖、CD3δ鎖、2本のCD3ε鎖、CD3ζ鎖のホモ二量体、TCRγ鎖及びTCRδ鎖から構成されることがある。
【0129】
用語「治療効果」は、薬理学的に活性な物質によって引き起こされる、動物、特に哺乳動物、より具体的にはヒトにおける局所的または全身的な効果を指す。それゆえに、その用語は、疾患の診断、治癒、軽減、治療または予防の際に、または動物もしくはヒトにおける望ましい身体的もしくは精神的な発達及び状態を向上させることに使用することを意図した任意の物質を意味する。
【0130】
用語「治療的有効量」及び「有効量」は、任意の治療に適用されることができる合理的な利益/リスク比で動物の中の細胞の少なくともサブ集団において何らかの所望の効果(例えば、所望の局所的または全身的な治療効果)をもたらす物質の量を意味する。いくつかの実施形態では、物質の治療的有効量は、物質の治療指数、溶解性、薬物動態、半減期などに依存する。対象化合物の毒性及び治療的有効性は、例えばLD50及びED50を決定するための、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的方法によって決定され得る。いくつかの実施形態では、大きな治療指数を示す組成物を使用する。いくつかの実施形態では、LD50(致死用量)を、測定することがあり、例えば、薬剤について、薬剤を投与しない場合と比較して少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%、またはそれを超えて、減少することがある。同様に、ED50(すなわち、症候の最大半量の阻害を達成する濃度)を測定することがあり、例えば、薬剤について、薬剤を投与しない場合と比較して少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%、またはそれを超えて、増加することがある。また、同様に、IC50を測定することがあり、例えば、薬剤について、薬剤を投与しない場合と比較して少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%、またはそれを超えて、増加することがある。いくつかの実施形態では、アッセイにおけるT細胞免疫応答は、少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%も、増加することがある。別の実施形態では、ウイルス負荷における少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%もの減少を達成することがある。
【0131】
用語「治療する」は、関心とする症状(例えば、疾患または障害)の、治療的な管理または改善を指す。治療は、限定されるものではないが、薬剤または組成物(例えば、医薬組成物)を対象に投与することを含み得る。治療は、典型的には、対象に有益な様式で疾患(この用語は、任意の疾患、障害、症候群、または療法を正当化するもしくは潜在的に正当化する望ましくない症状を示すために使用される)の経過を変えるために行われる。治療の効果には、疾患または疾患の1つ以上の症候もしくは兆候を逆転させること、それを軽減すること、その重症度を低減すること、その発症を遅延させること、それを治癒させること、その進行を阻害すること、及び/またはその発生もしくは再発の可能性を低減することが含まれ得る。治療の望ましい効果としては、限定されるものではないが、疾患の発症または再発の予防、症候の緩和、疾患の任意の直接的なまたは間接的な病態結果の減少、転移の予防、疾患進行の速度の減少、疾患状態の改善または緩和、及び寛解または予後の改善が挙げられる。治療剤を、疾患を有する、または一般集団のメンバーと比較して疾患を発症するリスクが高い対象に投与することがある。いくつかの実施形態では、治療剤を、疾患を有していたがもはや疾患の証拠を示さない対象に投与することがある。薬剤を、例えば明らかな疾患の再発する可能性を低減するために、投与することがある。治療剤を、予防的に、すなわち、疾患の任意の症候または兆候を発症する前に、投与することがある。「予防的処置」は、例えば、疾患が発生する可能性を減らすために、または疾患が発生した場合の疾患の重症度を減らすために、疾患を発症していないかまたは疾患の証拠を示さない対象に内科的及び/または外科的な治療を提供することを指す。対象は、疾患を発症するリスクがある(例えば、一般集団と比較してリスクが高い)として、または疾患を発症する可能性を増大させるリスク因子を有するとして同定されていることがある。
【0132】
用語「不応答性」は、治療に対するがん細胞の不応性(refractivity)、または刺激(例えば、活性化受容体またはサイトカインを介する刺激)に対する治療用細胞(例えば、免疫細胞)の不応性を含む。不応答性は、例えば、免疫抑制剤への曝露、または高用量の抗原への曝露のために、生じることがある。本明細書で使用される場合、用語「アネルギー」または「寛容性」は、受容体媒介性刺激の活性化に対する不応性を含む。そのような不応性は、概して抗原特異的であり、寛容化抗原への曝露が止んだ後も持続する。例えば、T細胞におけるアネルギーは(不応答性とは対照的に)、サイトカイン(例えば、IL-2)産生の欠如を特徴とする。T細胞アネルギーは、T細胞が抗原に曝露され、かつ第2のシグナル(共刺激シグナル)の非存在下で第1のシグナル(T細胞受容体またはCD3媒介シグナル)を受ける場合に、起こる。これらの条件下では、同じ抗原に細胞が再曝露されると(たとえ共刺激ポリペプチドの存在下で再曝露が起こったとしても)、サイトカインを産生することができず、それゆえ、増殖することができない。しかしながら、アネルギー性T細胞は、サイトカイン(例えば、IL-2)と培養した場合、増殖することがある。例えば、T細胞アネルギーはまた、ELISAによって、または指標細胞株を使用する増殖アッセイによって測定した場合、Tリンパ球によるIL-2産生の欠如によって観察され得る。あるいは、レポーター遺伝子構築物を使用してもよい。例えば、アネルギー性T細胞は、5’ IL-2遺伝子エンハンサーの制御下で異種プロモーターによって、またはエンハンサー内に見出され得るAP1配列の多量体によって誘導されるIL-2遺伝子転写を、開始することができない(Kang et al.(1992)Science 257:1134)。
【0133】
用語「ワクチン」は、関心とする抗原に対する免疫応答を誘発する医薬組成物を指す。ワクチンはまた、対象に防御的免疫性を付与し得る。
【0134】
用語「可変領域」または「可変ドメイン」は、免疫グロブリンスーパーファミリー結合性タンパク質(例えば、TCR)が抗原に結合することに関与する、免疫グロブリンスーパーファミリー結合性タンパク質のドメイン(例えば、TCRα鎖またはβ鎖(または、γδTCRのγ鎖及びδ鎖])を指す。天然TCRのα鎖及びβ鎖の可変ドメイン(それぞれ、Vα及びVβ)は、一般に、類似した構造を有し、各々のドメインは、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)及び3つのCDRを含む。Vαドメインは、2つの別々のDNAセグメント、可変遺伝子セグメント及び連結遺伝子セグメント(V-J)にコードされ;Vβドメインは、3つの別々のDNAセグメント、可変遺伝子セグメント、多様性遺伝子セグメント及び連結遺伝子セグメント(V-D-J)にコードされる。単一のVαまたはVβドメインは、抗原結合特異性を付与するのに十分であり得る。さらに、特定の抗原に結合するTCRを、抗原に結合するTCRに由来するVαまたはVβドメインを使用して単離し、それぞれ、相補的なVαまたはVβドメインのライブラリーをスクリーニングすることがある。
【0135】
用語「ベクター」は、それに連結されている別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。いくつかの実施形態では、ベクターは、エピソーム、すなわち、染色体外での複製が可能な核酸である。いくつかの実施形態では、ベクターは、それに連結されている核酸を、自律的に複製することが、及び/または発現することが、可能なベクターである。ベクターに機能的に連結されている遺伝子の発現を導くことができるベクターを、本明細書では「発現ベクター」と呼ぶ。概して、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、しばしば、「プラスミド」の形態であり、これは一般に、ベクターの形態では染色体に結合しない環状二本鎖DNAループを指す。本明細書では、プラスミドはベクターの最も一般的に使用される形態であるので、「プラスミド」及び「ベクター」を互換的に使用する。しかし、当業者によって理解されるように、本発明は、同等の機能を果たすような、後に当技術分野で既知になる他の形態の発現ベクターを含むことが意図されている。
【0136】
特定のタンパク質のアミノ酸配列と、タンパク質をコードすることができるヌクレオチド配列との間には、遺伝コード(以下に示す)によって規定されるように、既知の明確な対応関係がある。同様に、特定の核酸のヌクレオチド配列と、その核酸にコードされるアミノ酸配列との間には、遺伝コードによって規定されるように、既知の明確な対応関係がある。
【表4】
【0137】
遺伝コードの重要なかつ周知の特徴はその冗長性であり、それによって、タンパク質を作るために使用されるアミノ酸の大部分について、1つよりも多いコードヌクレオチド3つ組が使用され得る(上記に例示される)。したがって、異なる複数のヌクレオチド配列が、所与のアミノ酸配列をコードし得る。そのようなヌクレオチド配列は、すべての生物において同じアミノ酸配列の産生をもたらすので、機能的に等価であるとみなされる(但し、ある特定の生物は、いくつかの配列を他の生物よりも効率的に翻訳することができる)。さらに、時折、プリンまたはピリミジンのメチル化多様体が、所与のヌクレオチド配列中に見出されることがある。そのようなメチル化は、トリヌクレオチドコドンとその対応するアミノ酸との間のコード関係に影響を及ぼすことはない。
【0138】
上記を考慮して、バイオマーカー核酸(またはその任意の一部)をコードするDNAまたはRNAのヌクレオチド配列は、DNAまたはRNAをアミノ酸配列に翻訳するための遺伝コードを使用して、ポリペプチドアミノ酸配列を得るために使用され得る。同様に、ポリペプチドアミノ酸配列については、ポリペプチドをコードし得る対応するヌクレオチド配列を遺伝コードから推測することができる(これは、その冗長性ゆえに、任意の所与のアミノ酸配列について複数の核酸配列を提示するであろう)。したがって、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に関する本明細書における記載及び/または開示には、ヌクレオチド配列にコードされるアミノ酸配列の記載及び/または開示も含まれる、と考えるべきである。同様に、本明細書におけるポリペプチドアミノ酸配列の記載及び/または開示には、アミノ酸配列をコードすることができるすべての考えられるヌクレオチド配列の記載及び/または開示も含まれる、と考えるべきである。
【0139】
II.ペプチド
ある特定の態様では、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のMAGEC2免疫原性ペプチド、それをコードする核酸、及び/またはそれを発現している細胞の投与に関係する、MAGEC2またはMAGEC2を発現している細胞に対する免疫応答の誘導によるMAGEC2発現に関連する障害の治療及び/または予防のための方法及び組成物である。
【0140】
ある特定の実施形態では、MAGEC2免疫原性ペプチドは、表1、例えば表1A及び表1Bに列挙されるペプチド配列から選択されるペプチドエピトープを含む(例えば、それからなる)。本明細書に記載のペプチドエピトープは、特定のHLAアルファ鎖アレルを有する特定のHLA分子などのMHC分子と組み合わされ得る。例えば、表1Aのペプチドは、実施例の節にさらに記載されているとおり、HLA-B0702、HLA-B0704、HLA-B0705、HLA-B0709、HLA-B0710、HLA-B0715及び/またはHLA-B0721アレルによってコードされるような、アルファ鎖がHLA-B07血清型を有しているMHCと会合した状態で、同定された。同様に、表1Bのペプチドは、実施例の節にさらに記載されているとおり、HLA-A2402、HLA-A2403、HLA-A2405、HLA-A2407、HLA-A2408、HLA-A2410、HLA-A2414、HLA-A2417、HLA-A2420、HLA-A2422、HLA-A2425、HLA-A2426、HLA-A2458アレルによってコードされるような、アルファ鎖がHLA-A24血清型を有しているMHCと会合した状態で、同定された。いくつかの実施形態では、MAGEC2免疫原性ペプチドはMHC分子と組み合わされ得、MHC分子は、HLA-A02、HLA-A03、HLA-A01、HLA-A11、HLA-A24、及び/またはHLA-B07からなる群から選択されるHLA血清型であるMHCアルファ鎖を含み、任意選択的に、HLAアレルは、HLA-A0201、HLA-A0202、HLA-A0203、HLA-A0204、HLA-A0205、HLA-A0206、HLA-A0207、HLA-A0210、HLA-A0211、HLA-A0212、HLA-A0213、HLA-A0214、HLA-A0216、HLA-A0217、HLA-A0219、HLA-A0220、HLA-A0222、HLA-A0224、HLA-A0230、HLA-A0242、HLA-A0253、HLA-A0260、HLA-A0274アレル、HLA-A0301、HLA-A0302、HLA-A0305、HLA-A0307、HLA-A0101、HLA-A0102、HLA-A0103、HLA-A0116アレル、HLA-A1101、HLA-A1102、HLA-A1103、HLA-A1104、HLA-A1105、HLA-A1119アレル、HLA-A2402、HLA-A2403、HLA-A2405、HLA-A2407、HLA-A2408、HLA-A2410、HLA-A2414、HLA-A2417、HLA-A2420、HLA-A2422、HLA-A2425、HLA-A2426、HLA-A2458アレル、HLA-B0702、HLA-B0704、HLA-B0705、HLA-B0709、HLA-B0710、HLA-B0715、及びHLA-B0721アレルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、MAGEC2免疫原性ペプチドは、ヒトMAGEC2タンパク質、及び/または表3に示されるMAGEC2タンパク質に由来する。いくつかの実施形態では、1種以上のMAGEC2免疫原性ペプチドを単独で、またはアジュバントと組み合わせて投与する。
【0141】
ある特定の態様では、本明細書に提供されるのは、1種以上の本明細書に記載のMAGEC2免疫原性ペプチド、及びアジュバントを含む、組成物である。
【0142】
【表1】
【0143】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるのは、MAGEC2ポリペプチド、及び/またはMAGEC2ポリペプチドをコードする核酸である。いくつかの実施形態では、MAGEC2ポリペプチドは、MAGEC2特異的免疫応答を誘発するのに十分な長さのアミノ酸配列を含むポリペプチドである。ある特定の実施形態では、MAGEC2ポリペプチドは、アミノ酸配列に対応しないアミノ酸も含む(例えば、MAGEC2アミノ酸配列と、非MAGEC2タンパク質またはポリペプチドに対応するアミノ酸配列とを含む融合タンパク質)。いくつかの実施形態では、MAGEC2ポリペプチドは、MAGEC2タンパク質またはその断片に対応するアミノ酸配列のみを含む。
【0144】
いくつかの実施形態では、MAGEC2ポリペプチドは、表3に示されるようなMAGEC2タンパク質アミノ酸配列の少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44 45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、373個の、もしくはそれよりも多い、または端点を含めてそれらの間にある任意の範囲(例えば、7~25個、8~22個、9~22個など)の連続するアミノ酸を含む、それから本質的になる、またはそれからなるアミノ酸配列を、有する。いくつかの実施形態では、連続するアミノ酸は、表3に示されるMAGEC2のアミノ酸配列と同一である。いくつかの実施形態では、MAGEC2ポリペプチドは、表1、例えば表1A及び表1Bに列挙されるMAGEC2ペプチドエピトープからなる群から選択される1種以上のペプチドエピトープを含む、それから本質的になる、またはそれからなる。
【0145】
当業者にはよく知られているように、かなりの配列類似性を有するポリペプチドは、宿主動物において同一または非常に類似する免疫応答を生じさせることができる。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のMAGEC2免疫原性ペプチドまたはその断片の誘導体、等価体、多様体、断片または変異体も、本明細書に提供される方法及び組成物に適することがある。
【0146】
いくつかの実施形態では、MAGEC2免疫原性ポリペプチドの変化形態または誘導体が本明細書に提供される。改変されたポリペプチドは、例えば保存的置換によって改変されたアミノ酸配列を有し得るが、依然として、非改変タンパク質抗原と反応する免疫応答を誘発し、機能性等価体とみなされる。本明細書で使用される場合、用語「保存的置換」は、アミノ酸残基の、別の生物学的に類似する残基による置換を意味する。タンパク質の機能に実質的に影響を与えることなく、同じ保存的な群の中のアミノ酸同士が典型的に互いの代わりに用いられ得ることは、当技術分野でよく知られている。ある特定の実施形態によれば、MAGEC2免疫原性ペプチドのリガンド結合性ドメインの誘導体、等価体、多様体または変異体は、本明細書に記載のMAGEC2免疫原性ペプチドまたはその断片の配列と少なくとも85%相同なポリペプチドである。いくつかの実施形態では、相同性は、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%である、またはそれを上回る。
【0147】
本発明に包含される免疫原性ペプチドは、MAGEC2タンパク質に由来するペプチドエピトープ、例えば、表1、例えば表1A及び表1Bに列挙されるものを含み得る。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは長さが8、9、10、11、12、13、14または15アミノ酸である。いくつかの実施形態では、ペプチドアミノ酸配列は改変されており、これには、保存的または非保存的変異が含まれ得る。ペプチドは、最大1、2、3、4個の、またはそれよりも多い変異を含み得る。いくつかの実施形態では、ペプチドは、少なくとも1、2、3、4個の、またはそれよりも多い変異を含み得る。
【0148】
いくつかの実施形態では、ペプチドを化学修飾することがある。例えば、ペプチド特性、例えば、検出可能性、安定性、生体内分布、薬物動態、半減期、表面電荷、疎水性、結合体化部位、pH、機能などを改変するようにペプチドを変異させることができる。N-メチル化は、本開示のペプチドに起こり得るメチル化の一例である。いくつかの実施形態では、遊離アミンに対するメチル化、例えば、ホルムアルデヒド及びシアノ水素化ホウ素ナトリウムによる還元的メチル化によって、ペプチドを修飾することがある。
【0149】
化学修飾は、ポリマー、ポリエーテル、ポリエチレングリコール、バイオポリマー、双性イオン性ポリマー、ポリアミノ酸、脂肪酸、デンドリマー、Fc領域、単純飽和炭素鎖、例えばパルミテートもしくはミリストレート、またはアルブミンを含み得る。Fc領域によるペプチドの化学修飾は、融合Fc-ペプチドであり得る。ポリアミノ酸には、例えば、反復する単一アミノ酸を有するポリアミノ酸配列(例えばポリグリシン)、及びパターンに従うものであってもなくてもよい混合ポリアミノ酸配列を有するポリアミノ酸配列、または上記の任意の組合せが含まれ得る。いくつかの実施形態では、本開示に包含されるペプチドは、改変によってペプチドの安定性及び/または半減期が増大するように改変され得る。いくつかの実施形態では、例えばN末端、C末端または内部アミノ酸に対して、疎水性部分構造を結合させることを用いて、本開示に包含されるペプチドの半減期を延ばすことができる。他の実施形態では、ペプチドは翻訳後修飾(例えば、メチル化及び/またはアミド化)を含み得るが、これは、例えば血清半減期に対して、影響を及ぼすことができる。いくつかの実施形態では、(例えば、ミリストイル化及び/またはパルミチル化による)単純な炭素鎖を融合タンパク質またはペプチドに結合体化させることができる。いくつかの実施形態では、単純な炭素鎖は融合タンパク質またはペプチドを、非結合体化材料から簡単に分離できるものにし得る。例えば、融合タンパク質またはペプチドを非結合体化材料から分離するために用いられ得る方法としては、限定はされないが、溶媒抽出及び逆相クロマトグラフィーが挙げられる。親油性部分構造は、血清アルブミンに対する可逆的結合によって半減期を延ばすことができる。結合体化される部分構造は、血清アルブミンに対する可逆的結合によってペプチドの半減期を延ばす親油性部分構造であり得る。いくつかの実施形態では、親油性部分構造は、コレステロール、またはコレステロール誘導体、例えば、コレステン、コレスタン、コレスタジエン及びオキシステロールであり得る。いくつかの実施形態では、ペプチドをミリスチン酸(テトラデカン酸)またはその誘導体に結合体化させることがある。他の実施形態では、ペプチドを半減期改変剤とカップリング(例えば結合体化)させることがある。半減期改変剤の例としては、限定はされないが、ポリマー、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシエチル澱粉、ポリビニルアルコール、水溶性ポリマー、双性イオン性水溶性ポリマー、水溶性ポリ(アミノ酸)、プロリン、アラニン及びセリンの水溶性ポリマー、グリシン、グルタミン酸及びセリンを含有する水溶性ポリマー、Fc領域、脂肪酸、パルミチン酸、またはアルブミンに結合する分子が挙げられる。いくつかの実施形態では、別の分子に対する結合体化または融合を容易にするために、及び結合体化または融合されたそのような分子からのペプチドの切断を容易にするために、スペーサーまたはリンカー、例えば、スペーサーまたはリンカーとしての役割を果たす1、2、3、4個の、またはそれよりも多いアミノ酸残基をペプチドにカップリングさせることがある。いくつかの実施形態では、例えばペプチドの特性を改変できるまたはそれに変化をもたらすことができる、他の部分構造に、融合タンパク質またはペプチドを結合体化させることがある。
【0150】
ペプチドは、いくつかの実施形態では、部分構造に共有結合で連結されていることがある。いくつかの実施形態では、共有結合で連結された部分構造は、親和性タグまたは標識を含む。親和性タグは、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、カルモジュリン結合性タンパク質(CBP)、プロテインCタグ、Mycタグ、Haloタグ、HAタグ、Flag(登録商標)タグ、Hisタグ、ビオチンタグ及びV5タグからなる群から選択され得る。標識は蛍光タンパク質であり得る。いくつかの実施形態では、共有結合で連結された部分構造は、炎症性薬剤、抗炎症性薬剤、サイトカイン、毒素、細胞傷害性分子、放射性同位体、または抗体、例えば一本鎖Fvからなる群から選択される。
【0151】
ペプチドを、撮像、研究、治療薬、セラノスティクス、医薬品、化学療法、キレーション療法、指向的薬物送達及び放射線療法で使用される薬剤に結合体化させることがある。いくつかの実施形態では、ペプチドを、検出可能薬剤、例えば、蛍光団、近赤外色素、造影剤、ナノ粒子、金属含有ナノ粒子、金属キレート、X腺造影剤、PET用薬剤、金属、放射性同位体、色素、放射性核種キレート剤、または撮像に使用され得る別の好適な材料に、結合体化または融合させることがある。いくつかの実施形態では、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個の、またはそれよりも多い検出可能部分構造をペプチドに連結させることがある。放射性同位体の非限定的な例としては、アルファ放射体、ベータ放射体、陽電子放射体及びガンマ放射体が挙げられる。いくつかの実施形態では、金属または放射性同位体は、アクチニウム、アメリシウム、ビスマス、カドミウム、セシウム、コバルト、ユーロピウム、ガドリニウム、イリジウム、鉛、ルテチウム、マンガン、パラジウム、ポロニウム、ラジウム、ルテニウム、サマリウム、ストロンチウム、テクネチウム、タリウム及びイットリウムからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、金属は、アクチニウム、ビスマス、鉛、ラジウム、ストロンチウム、サマリウムまたはイットリウムである。いくつかの実施形態では、放射性同位体は、アクチニウム-225、または鉛-212である。いくつかの実施形態では、近赤外色素は、生体の組織及び流体によって簡単に消光するものではない。いくつかの実施形態では、蛍光団は、650nm~4000nmの波長の電磁放射線を放出する蛍光薬剤であり、そのような放射を用いてそのような薬剤が検出される。結合体化用分子として使用され得る蛍光色素の非限定的な例としては、DyLight(登録商標)-680、DyLight(登録商標)-750、VivoTag(登録商標)-750、DyLight(登録商標)-800、IRDye(登録商標)-800、VivoTag(登録商標)-680、Cy5.5、ZQ800、またはインドシアニングリーン(ICG)が挙げられる。いくつかの実施形態では、近赤外色素は、しばしば、シアニン色素(例えば、Cy7、Cy5.5、及びCy5)を含む。本開示において結合体化用分子として使用するための蛍光色素のさらなる非限定的な例としては、アクラジンオレンジまたはイエロー(acradine orange or yellow)、Alexa Fluors(登録商標)(例えば、Alexa Fluor(登録商標)790、750、700、680、660及び647)及びそれらの任意の誘導体、7-アクチノマイシンD、8-アニリノナフタレン-1-スルホン酸、ATTO色素及びその任意の誘導体、オーラミン-ローダミン染色剤及びその任意の誘導体、ベンスアントロン(bensantrhone)、ビマン、9-10-ビス(フェニルエチニル)アントラセン、5,12-ビス(フェニルエチニル)ナスタセン(5,12-bis(phenylethynyl)naththacene)、ビスベンズイミド、ブレインボウ、カルセイン、カルボディフルオレセイン(carbodyfluorescein)及びその任意の誘導体、1-クロロ-9,10-ビス(フェニルエチニル)アントラセン及びその任意の誘導体、DAPI、DiOC6、DyLight Fluors及びその任意の誘導体、エピコッコノン(epicocconone)、臭化エチジウム、FlAsH-EDT2、Fluo色素及びその任意の誘導体、FluoProbe及びその任意の誘導体、フルオレセイン及びその任意の誘導体、Fura及びその任意の誘導体、GelGreen及びその任意の誘導体、GelRed及びその任意の誘導体、蛍光タンパク質及びその任意の誘導体、mアイソフォームタンパク質及びその任意の誘導体、例えばmCherryなど、ヘタメチン色素(hetamethine dye)及びその任意の誘導体、ヘキスト染色剤、イミノクマリン、インディアンイエロー、indo-1及びその任意の誘導体、ラウルダン、ルシファーイエロー及びその任意の誘導体、ルシフェリン及びその任意の誘導体、ルシフェラーゼ及びその任意の誘導体、メルコシアニン及びその任意の誘導体、ナイル色素及びその任意の誘導体、ペリレン、フロキシン、フィコ色素及びその任意の誘導体、ヨウ化プロピウム、ピラニン、ローダミン及びその任意の誘導体、リボグリーン、RoGFP、ルブレン、スチルベン及びその任意の誘導体、スルホローダミン及びその任意の誘導体、SYBR(商標)及びその任意の誘導体、シナプトフルオリン、テトラフェニルブタジエン、トリス四ナトリウム(tetrasodium tris)、テキサスレッド、チタンイエロー、TSQ、ウンベリフェロン、ビオラントロン、黄色蛍光タンパク質及びYOYO-1が挙げられる。他の好適な蛍光色素としては、限定されるものではないが、フルオレセイン及びフルオレセイン色素(例えば、フルオレセインイソチオシアニンまたはFITC、ナフトフルオレセイン、4’,5’-ジクロロ-2’,7’-ジメトキシフルオレセイン、6-カルボキシフルオレセインまたはFAMなど)、カルボシアニン、メロシアニン、スチリル系色素、オキソノール色素、フィコエリスリン、エリスロシン、エオシン、ローダミン色素(例えば、カルボキシテトラメチルローダミンまたはTAMRA、カルボキシルローダミン6G、カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、リサミンローダミンB、ローダミン6G、ローダミングリーン、ローダミンレッド、テトラメチルローダミン(TMR)など)、クマリン及びクマリン色素(例えば、メトキシクマリン、ジアルキルアミノクマリン、ヒドロキシクマリン、アミノメチルクマリン(AMCA)など)、オレゴングリーン(登録商標)色素(例えば、オレゴングリーン(登録商標)488、オレゴングリーン(登録商標)500、オレゴングリーン(登録商標)514など)、テキサスレッド、テキサスレッド-X、スペクトラムレッド、スペクトラムグリーン、シアニン色素(例えば、CY-3、Cy-5、CY-3.5、CY-5.5など)、ALEXA FLUOR(登録商標)色素(例えば、ALEXA FLUOR(登録商標)350、ALEXA FLUOR(登録商標)488、ALEXA FLUOR(登録商標)532、ALEXA FLUOR(登録商標)546、ALEXA FLUOR(登録商標)568、ALEXA FLUOR(登録商標)594、ALEXA FLUOR(登録商標)633、ALEXA FLUOR(登録商標)660、ALEXA FLUOR(登録商標)680など)、BODIPY(登録商標)色素(例えば、BODIPY(登録商標)FL、BODIPY(登録商標)R6G、BODIPY(登録商標)TMR、BODIPY(登録商標)TR、BODIPY(登録商標)530/550、BODIPY(登録商標)558/568、BODIPY(登録商標)564/570、BODIPY(登録商標)576/589、BODIPY(登録商標)581/591、BODIPY(登録商標)630/650、BODIPY(登録商標)650/665など)、IRD色素(例えば、IRD40、IRD700、IRD800など)などが挙げられる。さらなる好適な検出可能な薬剤は、PCT/US14/56177に記載されている。放射性同位体の非限定的な例としては、アルファ放射体、ベータ放射体、陽電子放射体、及びガンマ放射体が挙げられる。いくつかの実施形態では、金属または放射性同位体は、アクチニウム、アメリシウム、ビスマス、カドミウム、セシウム、コバルト、ユーロピウム、ガドリニウム、イリジウム、鉛、ルテチウム、マンガン、パラジウム、ポロニウム、ラジウム、ルテニウム、サマリウム、ストロンチウム、テクネチウム、タリウム及びイットリウムからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、金属は、アクチニウム、ビスマス、鉛、ラジウム、ストロンチウム、サマリウムまたはイットリウムである。いくつかの実施形態では、放射性同位体は、アクチニウム-225、または鉛-212である。
【0152】
ペプチドを放射線増感剤または光増感剤に結合体化させることがある。放射線増感剤としては、限定されるものではないが、ABT-263、ABT-199、WEHI-539、パクリタキセル、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン、ゲムシタビン、エタニダゾール、ミソニダゾール、チラパザミン、及び核酸塩基誘導体(例えば、ハロゲン化プリンまたはピリミジン、例えば5-フルオロデオキシウリジン)が挙げられる。光増感剤の例としては、限定されるものではないが、照射した場合に熱を生成する蛍光分子またはビーズ、ナノ粒子、ポルフィリン類及びポルフィリン誘導体類(例えば、クロリン類、バクテリオクロリン類、イソバクテリオクロリン類、フタロシアニン類、及びナフタロシアニン類)、メタロポルフィリン類、メタロフタロシアニン類、アンゲリシン類、カルコゲンアピリリウム色素(chalcogenapyrrillium dyes)、クロロフィル類、クマリン類、フラビン類及び関連化合物、例えばアロキサジン及びリボフラビン、フラーレン類、フェオホルビド類、ピロフェオホルビド類、シアニン類(例えば、メロシアニン540)、フェオフィチン類、サフィリン類、テキサフィリン類、プルプリン類、ポルフィセン類、フェノチアジニウム類、メチレンブルー誘導体、ナフタルイミド類、ナイルブルー誘導体、キノン類、ペリレンキノン類(例えば、ヒペリシン類、ヒポクレリン類、及びセルコスポリン類)、ソラレン類、キノン類、レチノイド類、ローダミン類、チオフェン類、ベルジン類、キサンテン色素(例えば、エオシン類、エリスロシン類、ローズベンガル類)、ポルフィリン類の二量体及びオリゴマー体、ならびにプロドラッグ、例えば5-アミノレブリン酸が挙げられる。有利なことに、この手法によって、治療剤(例えば、薬物)及び電磁気的なエネルギー(例えば、放射線または光)の両方を同時に使用して、関心とする細胞(例えば、免疫細胞)を非常に特異的に標的化することが可能になる。いくつかの実施形態では、ペプチドを、例えば、直接的にまたはリンカーを介して、薬剤と融合させる、または共有結合的にもしくは非共有結合的にそれに連結させる。
【0153】
いくつかの実施形態では、結合性タンパク質を化学修飾することがある。例えば、ペプチド特性、例えば、検出可能性、安定性、生体内分布、薬物動態、半減期、表面電荷、疎水性、結合体化部位、pH、機能などを改変するように結合性タンパク質を変異させてもよい。N-メチル化は、本発明に包含される結合性タンパク質に起こり得るメチル化の一例である。いくつかの実施形態では、遊離アミンに対するメチル化、例えば、ホルムアルデヒド及びシアノ水素化ホウ素ナトリウムによる還元的メチル化によって、結合性タンパク質を修飾することがある。
【0154】
化学修飾は、ポリマー、ポリエーテル、ポリエチレングリコール、バイオポリマー、双性イオン性ポリマー、ポリアミノ酸、脂肪酸、デンドリマー、Fc領域、単純飽和炭素鎖、例えばパルミテートもしくはミリストレート、またはアルブミンを含み得る。Fc領域による結合性タンパク質の化学修飾は、融合Fc-ペプチドであり得る。ポリアミノ酸には、例えば、反復する単一アミノ酸を有するポリアミノ酸配列(例えばポリグリシン)、及びパターンに従うものであってもなくてもよい混合ポリアミノ酸配列を有するポリアミノ酸配列、または上記の任意の組合せが含まれ得る。
【0155】
いくつかの実施形態では、本発明に包含される結合性タンパク質を改変することがある。いくつかの実施形態では、改変は、親結合性タンパク質との実質的または有意な配列同一性を有し、親結合性タンパク質の1つ以上の生物物理学的及び/または生物学的な活性を維持する(例えば、pMHC結合特異性を維持する)機能性多様体を生成する。いくつかの実施形態では、変異は、保存的なアミノ酸置換である。
【0156】
いくつかの実施形態では、本発明に包含される結合性タンパク質は、1つ以上の天然アミノ酸の代わりに、合成アミノ酸を含むことがある。そのような合成アミノ酸は、当技術分野において周知であり、例えば、アミノシクロヘキサンカルボン酸、ノルロイシン、a-アミノn-デカン酸、ホモセリン、S-アセチルアミノメチル-システイン、トランス-3-及びトランス-4-ヒドロキシプロリン、4-アミノフェニルアラニン、4-ニトロフェニルアラニン、4-クロロフェニルアラニン、4-カルボキシフェニルアラニン、β-フェニルセリン β-ヒドロキシフェニルアラニン、フェニルグリシン、a-ナフチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シクロヘキシルグリシン、インドリン-2-カルボン酸、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、アミノマロン酸、アミノマロン酸モノアミド、N’-ベンジル-N’-メチル-リジン、Ν’,Ν’-ジベンジル-リジン、6-ヒドロキシリジン、オルニチン、a-アミノシクロペンタンカルボン酸、oc-アミノシクロヘキサンカルボン酸、a-アミノシクロヘプタンカルボン酸、a-(2-アミノ-2-ノルボルナン)-カルボン酸、α,γ-ジアミノ酪酸、β-ジアミノプロピオン酸、ホモフェニルアラニン、及びoc-tert-ブチルグリシンが挙げられる。
【0157】
本発明に包含される結合性タンパク質は、グリコシル化、アミド化、カルボキシル化、リン酸化、エステル化、N-アシル化、環化(例えば、ジスルフィド架橋を介して)、もしくは酸付加塩への変換、及び/または任意選択的に二量体化もしくはポリマー化、もしくは結合体化を受けていることがある。
【0158】
いくつかの実施形態では、例えばN末端、C末端または内部アミノ酸に対して、疎水性部分構造を結合させることを用いて、本発明に包含されるペプチドの半減期を延ばすことがある。他の実施形態では、結合性タンパク質は翻訳後修飾(例えば、メチル化及び/またはアミド化)を含み得るが、これは、例えば血清半減期に対して、影響を及ぼすことができる。いくつかの実施形態では、(例えば、ミリストイル化及び/またはパルミチル化による)単純な炭素鎖を結合性タンパク質に結合体化させることがある。いくつかの実施形態では、単純な炭素鎖は結合性タンパク質を、非結合体化材料から簡単に分離できるものにし得る。例えば、結合性タンパク質を非結合体化材料から分離するために用いられ得る方法としては、限定はされないが、溶媒抽出及び逆相クロマトグラフィーが挙げられる。親油性部分構造は、血清アルブミンに対する可逆的結合によって半減期を延ばすことができる。結合体化される部分構造は、血清アルブミンに対する可逆的結合によってペプチドの半減期を延ばす親油性部分構造であり得る。いくつかの実施形態では、親油性部分構造は、コレステロール、またはコレステロール誘導体、例えば、コレステン、コレスタン、コレスタジエン及びオキシステロールであり得る。いくつかの実施形態では、結合性タンパク質をミリスチン酸(テトラデカン酸)またはその誘導体に結合体化させることがある。他の実施形態では、結合性タンパク質を半減期改変剤とカップリング(例えば結合体化)させることがある。半減期改変剤の例としては、限定はされないが、ポリマー、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシエチル澱粉、ポリビニルアルコール、水溶性ポリマー、双性イオン性水溶性ポリマー、水溶性ポリ(アミノ酸)、プロリン、アラニン及びセリンの水溶性ポリマー、グリシン、グルタミン酸及びセリンを含有する水溶性ポリマー、Fc領域、脂肪酸、パルミチン酸、またはアルブミンに結合する分子が挙げられる。いくつかの実施形態では、別の分子に対する結合体化または融合を容易にするために、及び結合体化または融合されたそのような分子からのペプチドの切断を容易にするために、スペーサーまたはリンカー、例えば、スペーサーまたはリンカーとしての役割を果たす1、2、3、4個の、またはそれよりも多いアミノ酸残基を結合性タンパク質にカップリングさせることがある。いくつかの実施形態では、例えば結合性タンパク質の特性を改変できるまたはそれに変化をもたらすことができる、他の部分構造に、結合性タンパク質を結合体化させることができる。
【0159】
ペプチドなどのタンパク質は、組換え的にまたは合成的に、例えば、固相ペプチド合成または液相ペプチド合成によって、生産され得る。タンパク質合成は、既知の合成方法によって、例えば、フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)化学反応を用いて、またはブチルオキシカルボニル(Boc)化学反応によって、実施され得る。タンパク質断片同士を酵素的または合成的に繋ぎ合わせることができる。
【0160】
本発明に包含される態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載されるタンパク質を生産する方法であって、(i)本明細書に記載される結合性タンパク質をコードする配列を含む核酸によって形質転換された形質転換済み宿主細胞を、上記結合性タンパク質の発現を可能にするのに適した条件下で培養するステップ;及び(ii)発現した結合性タンパク質を回収するステップを含む、当該方法である。
【0161】
組換え的に生産された結合性タンパク質を単離及び精製するために有用な方法は、例えば、結合性タンパク質を培養培地中に分泌する好適な宿主細胞/ベクターシステムから上清を得、次いで市販のフィルターを使用して培地を濃縮することを含み得る。濃縮した後、その濃縮物は、単一の好適な精製マトリックスまたは一連の好適なマトリックス、例えば、親和性マトリックスまたはイオン交換樹脂に塗布され得る。1つ以上の逆相HPLCステップを利用して、組換えポリペプチドをさらに精製することがある。これらの精製方法は、免疫原をその自然環境から単離する場合にも採用され得る。本明細書に記載される結合性タンパク質の1種以上を大規模生産するための方法としてはバッチ細胞培養が挙げられるが、これは、適切な培養条件を維持するようにモニタリング及び制御される。結合性タンパク質の精製は、本明細書に記載され当技術分野で既知である方法に従って実施され得る。
【0162】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のMAGEC2免疫原性ペプチドまたはその断片をコードする核酸、例えば、MAGEC2免疫原性ペプチドをコードするDNA分子である。いくつかの実施形態では、組成物は、本明細書に記載のMAGEC2免疫原性ペプチドまたはその断片をコードするオープンリーディングフレームを含む発現ベクターを、含む。いくつかの実施形態では、核酸は、オープンリーディングフレームの発現のために必要となる調節エレメントを含む。そのようなエレメントには、例えば、プロモーター、開始コドン、終止コドン、及びポリアデニル化シグナルが含まれ得る。加えて、エンハンサーが含まれることがある。これらのエレメントは、MAGEC2免疫原性ポリペプチドまたはその断片をコードする配列に機能的に連結され得る。タンパク質、例えばペプチドを発現させるのに有用となる代表的なベクター、プロモーター、調節エレメントなどについては以下にさらに記載される。
【0163】
III.MHC-ペプチド複合体
ある特定の態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のMAGEC2免疫原性ペプチド、及びMHC分子を含む、組成物である。いくつかの実施形態では、MAGEC2免疫原性ペプチドは、MHC分子と安定した複合体を形成する。
【0164】
MHCタンパク質を、薬剤、例えば、検出部分構造、放射線増感剤、光増感剤などに結合体化させることがある、及び/またはペプチドに関して上述されるように化学修飾することがある。
【0165】
本開示に包含される組成物及び方法において提供及び使用されるMHCタンパク質は、当技術分野で知られている任意の好適なMHC分子であり得る。一般に、それらは、式(α-β-P)を有し、式中、nは、少なくとも2、例えば2~10、例えば4である。αは、クラスIまたはクラスIIMHCタンパク質のα鎖である。βは、本明細書でクラスII MHCタンパク質のβ鎖またはMHCクラスIタンパク質のβマイクログロブリンとして規定されるβ鎖である。Pはペプチド抗原である。
【0166】
いくつかの実施形態では、MHCタンパク質は、MHCクラスI複合体、例えばHLA I複合体である。
【0167】
MHCタンパク質は、任意の哺乳動物または鳥類の属種、例えば、霊長類属種、特にヒト;マウス、ラット及びハムスターを含めた齧歯動物;ウサギ;ウマ;ウシ;イヌ;ネコなどからのものであり得る。例えば、MHCタンパク質は、ヒトHLAタンパク質またはマウスH-2タンパク質に由来し得る。HLAタンパク質としては、クラスIIサブユニットHLA-DPα、HLA-DPβ、HLA-DQα、HLA-DQβ、HLA-DRα、及びHLA-DRβ、ならびにクラスIタンパク質HLA-A、HLA-B、HLA-C、ならびにβ2-マイクログロブリンが挙げられる。H-2タンパク質としては、クラスIサブユニットH-2K、H-2D、H-2L、ならびにクラスIIサブユニットI-Aα、I-Aβ、I-Eα、及びI-Eβ、ならびにβ2-マイクログロブリンが挙げられる。いくつかの代表的なMHCタンパク質の配列は、Kabat et al.Sequences of Proteins of Immunological Interest,NIH Publication No.91-3242,pp724-815の中に見つかり得る。本発明に使用するのに適するMHCタンパク質サブユニットは、通常、膜に結合しているタンパク質の、可溶性形態であるが、これは、当技術分野で知られているとおりに、例えば、膜貫通ドメイン及び細胞質側ドメインの欠失によって、調製されるものである。
【0168】
クラスIタンパク質の場合、可溶性形態は、α1、α2及びα3ドメインを含み得る。可溶性クラスIIサブユニットは、αサブユニットのためのα1及びα2ドメイン、ならびにβサブユニットのためのβ1及びβ2ドメインを含み得る。
【0169】
α及びβサブユニットを別々に生産し、in vitroで会合させて、安定したヘテロ2本鎖複合体を形成させることがあり、または両方のサブユニットを単一の細胞に発現させることがある。MHCサブユニットを生産する方法は当技術分野で既知である。
【0170】
ある特定の実施形態では、MHC-ペプチド複合体は、表1(例えば、表1A及び表1B)から選択されるペプチドエピトープ、及びMHCを含む。いくつかの実施形態では、MHC分子は、HLA-A02、HLA-A03、HLA-A01、HLA-A11、HLA-A24、及び/またはHLA-B07からなる群から選択されるHLA血清型であるMHCアルファ鎖を含み、任意選択的に、HLAアレルは、HLA-A0201、HLA-A0202、HLA-A0203、HLA-A0204、HLA-A0205、HLA-A0206、HLA-A0207、HLA-A0210、HLA-A0211、HLA-A0212、HLA-A0213、HLA-A0214、HLA-A0216、HLA-A0217、HLA-A0219、HLA-A0220、HLA-A0222、HLA-A0224、HLA-A0230、HLA-A0242、HLA-A0253、HLA-A0260、HLA-A0274アレル、HLA-A0301、HLA-A0302、HLA-A0305、HLA-A0307、HLA-A0101、HLA-A0102、HLA-A0103、HLA-A0116アレル、HLA-A1101、HLA-A1102、HLA-A1103、HLA-A1104、HLA-A1105、HLA-A1119アレル、HLA-A2402、HLA-A2403、HLA-A2405、HLA-A2407、HLA-A2408、HLA-A2410、HLA-A2414、HLA-A2417、HLA-A2420、HLA-A2422、HLA-A2425、HLA-A2426、HLA-A2458アレル、HLA-B0702、HLA-B0704、HLA-B0705、HLA-B0709、HLA-B0710、HLA-B0715、及びHLA-B0721アレルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、MHC-ペプチド複合体は、表1Aから選択されるペプチドエピトープと、アルファ鎖がHLA-B07血清型を有しているMHC、例えば、HLA-B0702、HLA-B0704、HLA-B0705、HLA-B0709、HLA-B0710、HLA-B0715及び/またはHLA-B0721アレルによってコードされるMHCとを含む。いくつかの実施形態では、MHC-ペプチド複合体は、表1Bから選択されるペプチドエピトープと、アルファ鎖がHLA-A24血清型を有しているMHC、例えば、HLA-A2402、HLA-A2403、HLA-A2405、HLA-A2407、HLA-A2408、HLA-A2410、HLA-A2414、HLA-A2417、HLA-A2420、HLA-A2422、HLA-A2425、HLA-A2426及び/またはHLA-A2458アレルによってコードされるMHCとを含む。
【0171】
MHC-ペプチド複合体を調製するために、サブユニットを抗原性ペプチドと組み合わせ、in vitroで折りたたませて、鎖内ジスルフィド結合性ドメインとの安定したヘテロ二量体複合体を形成させることがある。ペプチドを、最初の折りたたみ反応に含ませることがあり、または後のステップで空のヘテロ二量体に付加させることがある。本発明に包含される組成物及び方法において、これは、MAGEC2免疫原性ペプチドまたはその断片である。サブユニット及びペプチドの折りたたみ及び会合を可能にする条件は、当技術分野で既知である。一例として、おおよその等モル量の可溶化α及びβサブユニットを尿素の溶液に入れて混合することがある。尿素を含んでいない緩衝溶液による希釈または透析によって、再折りたたみが開始される。ペプチドをpH約5~5.5で約1~3日間にわたって空のクラスIIヘテロ二量体の中に導入し、続いて中和、濃縮及び緩衝液交換を行うことがある。但し、特定の折りたたみ条件が本発明の実践のために必須であるというわけではない。
【0172】
単量体型複合体(α-β-P)(本明細書において、単量体)を、例えばMHC四量体のために、多量体化させることがある。結果として得られる多量体は、長期間にわたって安定している。好ましくは、多量体は、当技術分野で知られているように(例えば、米国特許第5,635,363号に記載されているように)、αまたはβサブユニット上の特定の結合部位を介して単量体を多価実体に結合させることによって、形成され得る。また、単量体形態あるいは多量体形態にあるMHCタンパク質を、ビーズまたは他の任意の支持体に結合体化させることもある。
【0173】
多量体複合体は、免疫染色または他の当技術分野で知られている方法に使用した場合に直接検出できるように標識付けされることがあり、または当業者で知られているように複合体に特異的及び/または選択的に結合する(例えば、MHCタンパク質サブユニットに結合する)二次標識免疫試薬と一緒に使用されることがある。例えば、検出可能標識は、蛍光団、例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン、テキサスレッド、フィコエリスリン(PE)、アロフィコシアニン(APC)、ブリリアントバイオレット(商標)421、ブリリアントUV(商標)395、ブリリアントバイオレット(商標)480、ブリリアントバイオレット(商標)421(BV421)、ブリリアントブルー(商標)515、APC-R700、またはAPC-Fire750であり得る。いくつかの実施形態では、多量体型複合体を、別の部分構造に特異的及び/または選択的に結合することができる部分構造によって標識付けする。例えば、標識は、ビオチン、ストレプトアビジン、オリゴヌクレオチドまたはリガンドであり得る。他の関心とする標識には、蛍光色素、色素、酵素、化学発光物質、粒子、放射性同位体、または他の直接的もしくは間接的に検出できる薬剤が含まれ得る。
【0174】
いくつかの実施形態では、細胞表面上のMHC分子との関連において免疫原性ペプチドを提示している細胞は、細胞内に、組換えまたは異種抗原をコードする核酸を含むベクター(例えば、ウイルスベクター)で細胞をトランスフェクトまたは形質導入することによって、作り出される。いくつかの実施形態では、1種以上のペプチド抗原、例えば、場合によっては、発現する異種タンパク質の1種以上のペプチド抗原が、細胞によって発現され、プロセシングされ、主要組織適合性複合体(MHC)分子との関連において細胞の表面上に提示される条件の下で、ベクターを細胞に導入する。
【0175】
一般に、ベクターに接触させる細胞は、MHCを発現する細胞、すなわち、MHC発現細胞である。細胞は、細胞表面上にMHCを正常に発現するもの、細胞表面上でMHCを発現する及び/またはその発現を上方制御するように誘導されるもの、あるいは細胞表面上にMHC分子を発現するように操作されているものであり得る。いくつかの実施形態では、MHCは、場合によってポリペプチドのペプチド抗原、例えば細胞機構によってプロセシングされたペプチド抗原と複合体化することができる、多形性ペプチド結合部位、または結合溝を含有する。場合によっては、MHC分子は、T細胞上のTCRによって、または他のペプチド結合性分子によって認識されることができる立体配座での抗原の提示のために、細胞表面上に、例えば、ペプチドとの複合体として、つまりMHC-ペプチド複合体として、提示または発現されることがある。
【0176】
いくつかの実施形態では、細胞は有核細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は抗原提示細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、マクロファージ、樹状細胞、B細胞、内皮細胞または線維芽細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、内皮細胞、例えば、内皮細胞株または初代内皮細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、線維芽細胞、例えば、線維芽細胞株または初代線維芽細胞である。
【0177】
いくつかの実施形態では、細胞は、人工抗原提示細胞(aAPC)である。典型的には、aAPCは、天然APCの特徴、例えば、MHC分子の発現、刺激及び共刺激分子(複数可)、Fc受容体、接着分子(複数可)、及び/またはサイトカイン(例えばIL-2)を産生または分泌する能力を含む。通常、aAPCは、上記の1つ以上の発現を欠く細胞株であり、MHC分子、低親和性Fc受容体(CD32)、高親和性Fc受容体(CD64)、共刺激シグナル(例えば、CD7、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、PD-L1、PD-L2、4-1BBL、OX40L、ICOS-L、ICAM、CD30L、CD40、CD70、CD83、HLA-G、MICA、MICB、HVEM、リンホトキシンベータ受容体、ILT3、ILT4、3/TR6、もしくはB7-H3のリガンド;またはCD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、Tollリガンド受容体、もしくはCD83のリガンドに特異的に結合する抗体)のうち1つ以上、細胞接着分子(例えば、ICAM-1、またはLFA-3)、及び/またはサイトカイン(例えば、IL-2、IL-4、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-15、IL-21、インターフェロンアルファ(IFN.alpha.)、インターフェロンベータ(IFN.beta.)、インターフェロンガンマ(IFN.gamma.)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF.alpha.)、腫瘍壊死因子ベータ(TNF.beta.)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、及び顆粒球コロニー刺激因子(GCSF))のうちで欠けているエレメントの1つ以上の導入によって(例えば、トランスフェクションまたは形質導入によって)生成される。場合によっては、aAPCは、通常はMHC分子を発現しないが、MHC分子を発現するように操作されることがあり、または場合によっては、サイトカインによる刺激などによってMHC分子を発現するように、誘導される、もしくは誘導されることがある。場合によっては、aAPCに刺激リガンドを投入することもあり、この刺激リガンドとしては、例えば、抗CD3抗体、抗CD28抗体または抗CD2抗体が挙げられる。aAPCを作り出すための骨格として使用されることがある例示的な細胞株は、K562細胞株、または線維芽細胞株である。様々なaAPCが当技術分野で知られており、例えば、米国特許第8,722,400号、公開出願第US2014/0212446号、Butler and Hirano(2014)Immunol Rev.257:10.1111/imr.12129、Suhoshki et al.(2007)Mol.Ther.15:981-988)を参照されたい。
【0178】
細胞によって発現される特定のMHCまたはアレルを決定または同定することは、十分に当業者の技量の範囲内のことである。いくつかの実施形態では、細胞をベクターと接触させる前に、特定のMHC分子の発現を、例えば特定のMHC分子に対して特異的である抗体を使用することによって、評価または確認することがある。MHC分子に対する抗体は、例えば以下に記載される任意の抗体のように、当技術分野で既知である。
【0179】
いくつかの実施形態では、細胞は、所望のMHC拘束のMHCアレルを発現するように選択され得る。いくつかの実施形態では、細胞、例えば細胞株のMHC型判定については、当技術分野でよく知られている。いくつかの実施形態では、細胞、例えば対象から得られた初代細胞の、MHC型判定は、当技術分野でよく知られている手順を用いて、例えば、分子ハプロタイプアッセイ(BioTest ABC SSPtray,BioTest Diagnostics Corp.,Denville,N.J.、SeCore Kits,Life Technologies,Grand Island,N.Y.)を用いて組織型判定を実施することによって、決定され得る。場合によっては、例えば配列に基づく型判定(SBT)(Adams et al.(2004)J.Transl.Med.,2:30、Smith(2012)Methods Mol Biol.,882:67-86)を用いることによって、HLA遺伝型を判定する細胞の標準的な型判定を実施することは、十分に当業者の技量の範囲内のことである。場合によっては、細胞、例えば線維芽細胞のHLA型判定は既知である。例えば、ヒト胎児肺線維芽細胞株MRC-5は、HLA-A0201、A29、B13、B44 Cw7(C0702)であり、ヒト包皮線維芽細胞株Hs68は、HLA-A1、A29、B8、B44、Cw7、Cw16であり、WI-38細胞株は、A6801、B0801である(Solache et al.(1999)J Immunol,163:5512-5518、Ameres et al.(2013)PloS Pathog.9:e1003383)。ヒトトランスフェクタント線維芽細胞株M1DR1/Ii/DMは、HLA-DR及びHLA-DMを発現する(Karakikes et al.(2012)FASEB J.,26:4886-96)。
【0180】
いくつかの実施形態では、ベクターを接触させるまたは導入する細胞は、MHC分子を発現するように操作またはトランスフェクトされた細胞である。いくつかの実施形態では、細胞株は、親細胞株を遺伝子改変することによって調製され得る。いくつかの実施形態では、細胞は、通常であれば特定のMHC分子が欠損しているが、そのような特定のMHC分子を発現するように操作されている。いくつかの実施形態では、組換えDNA技術を用いて細胞を遺伝子操作する。
【0181】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の安定MHC-ペプチド複合体は、安定MHC-ペプチド複合体に結合するT細胞を検出するために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の安定MHC-ペプチド複合体は、例えば蛍光標識が付けられたMHC-ペプチド複合体に特異的及び/または選択的に結合するT細胞(例えばCD8+T細胞)の量及び/または百分率を検出することによって、対象におけるT細胞応答を追跡評価するために使用される。MHC-ペプチド複合体に特異的なT細胞を検出するためのMHC-ペプチド複合体(例えば、MHC-ペプチド四量体)を生成、標識付け及び使用する方法は、当技術分野でよく知られている。さらなる説明は、例えば、米国特許第7,776,562号、米国特許第8,268,964号及び米国特許公開第2019/0085048号の中に見つけることができる。
【0182】
IV.免疫原性組成物
いくつかの態様において、本明細書に提供されるのは、MAGEC2免疫原性ペプチド及び/またはMAGEC2免疫原性ペプチドをコードする核酸、ならびにアジュバントを含む、医薬組成物(例えば、ワクチン組成物)である。いくつかの態様において、本明細書に提供されるのは、MHC分子との関連においてMAGEC2免疫原性ペプチドを含む安定MHC-ペプチド複合体、及びアジュバントを含む、医薬組成物(例えば、ワクチン組成物)である。いくつかの実施形態では、組成物は、複数(例えば2つ以上)のMAGEC2免疫原性ペプチドまたは核酸の組合せ、及びアジュバントを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、MHC分子との関連においてMAGEC2免疫原性ペプチドを含む複数(例えば2つ以上)の安定MHC-ペプチド複合体の組合せ、及びアジュバントを含む。いくつかの実施形態では、上記組成物はさらに、薬学的に許容される担体を含む。
【0183】
本明細書に開示される医薬組成物は、固体または液体の形態、例えば、以下のために適した形態での投与のために特別に製剤化され得る:(1)経口投与、例えば、ドレンチ剤(水性または非水性の液剤または懸濁剤)、錠剤、例えば、頬側、舌下及び全身吸収を目的としたもの、大丸薬、散剤、顆粒剤、舌に塗布するためのペースト剤;または(2)非経口投与、例えば、皮下、筋肉内、静脈内または硬膜外注射によるもの、例えば、無菌の液剤もしくは懸濁剤、または持続放出性製剤。
【0184】
これらの製剤または組成物を調製する方法としては、本明細書に記載のMAGEC2免疫原性ペプチド及び/または核酸を、アジュバント、担体、及び任意選択的に1つ以上の補助成分と会合させるステップを含む。一般に、製剤は、本明細書に記載の薬剤を、液体担体もしくは微粉砕された固体担体、またはその両方と一様かつ緻密に会合させ、その後、必要に応じて生成物を成型することによって、調製される。
【0185】
非経口投与に適する医薬組成物は、アジュバントと組み合わせた本明細書に記載のMAGEC2免疫原性ペプチド及び/または核酸、ならびに1つ以上の薬学的に許容される無菌等張化水性もしくは非水性溶液、分散体、懸濁液またはエマルジョン、あるいは使用直前に無菌注射溶液または分散体に再構成され得る無菌粉末を含み、これは、糖、アルコール、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、製剤を意図したレシピエントの血液と等張にする溶質、または懸濁化もしくは増粘剤を含有し得る。
【0186】
医薬組成物に採用され得る好適な水性及び非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)及びその好適な混合物、植物油、例えばオリーブ油、ならびに注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用、分散体の場合に必要とされる粒径の維持、及び界面活性剤の使用によって、維持され得る。
【0187】
選択される投与経路にかかわらず、好適な水和形態で使用されることがある本明細書に提供される薬剤、及び/または本明細書に開示される医薬組成物は、当業者に知られている慣例的方法によって、薬学的に許容される剤形に製剤化される。
【0188】
いくつかの実施形態では、記載される医薬組成物は、対象に投与されると、MAGEC2に感染した細胞に対する免疫応答を誘発することができる。そのような医薬組成物は、MAGEC2発現を特徴とする障害の予防的及び/または治療的処置のためのワクチン組成物として有用であり得る。
【0189】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、生理学的に許容されるアジュバントをさらに含む。いくつかの実施形態では、採用されるアジュバントは、医薬組成物の免疫原性の向上をもたらす。そのようなさらなる免疫応答刺激化合物またはアジュバントは、(i)ペプチド及び任意選択の乳化剤を上記に規定される油系アジュバントで再構成した後に本発明に係る医薬組成物と混合され得る、(ii)上記に規定される本発明の再構成組成物の一部となり得る、(iii)再構成されることになるペプチド(複数可)に物理的に連結され得る、または(iv)治療されることになる対象、哺乳動物またはヒトに別個に投与され得る。アジュバントは、抗原の遅延放出をもたらすものであり得(例えば、アジュバントはリポソームであり得る)、またはそれは、それ自体で免疫原性であり、それによって抗原(すなわち、MAGEC2免疫原性ペプチド中に存在する抗原)と相乗的に機能するアジュバントであり得る。例えば、アジュバントは既知のアジュバントであってもよいし、または抗原取り込みを促進する、免疫系細胞を投与部位へ動員する、または応答性リンパ系細胞の免疫賦活を促進する他の物質であってもよい。アジュバントとしては、限定されるものではないが、免疫調節分子(例えば、サイトカイン)、油及び水のエマルジョン、水酸化アルミニウム、グルカン、デキストラン硫酸、酸化鉄、アルギン酸ナトリウム、バクト-アジュバント、合成ポリマー、例えば、ポリアミノ酸、及びアミノ酸のコポリマー、サポニン、パラフィンオイル、ならびにムラミルジペプチドが挙げられる。いくつかの実施形態では、アジュバントは、アジュバント65、α-GalCer、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、リン酸カルシウム、β-グルカンペプチド、CpG DNA、GM-CSF、GPI-0100、IFA、IFN-γ、IL-17、リピドA、リポ多糖、リポバント(Lipovant)、モンタナイド(Montanide)、N-アセチル-ムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン、Pam3CSK4、キルA(quil A)、トレハロースジミコラート、またはザイモサンである。
【0190】
いくつかの実施形態では、アジュバントは、免疫調節分子である。例えば、免疫調節分子は、免疫学的応答を増強するように設計された、組換えタンパク質サイトカイン、ケモカインもしくは免疫刺激剤、またはサイトカイン、ケモカインもしくは免疫刺激剤をコードする核酸であることがある。
【0191】
免疫調節性サイトカインの例としては、インターフェロン(例えば、IFNα、IFNβ及びIFNγ)、インターロイキン(例えば、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-12、IL-17及びIL-20)、腫瘍壊死因子(例えば、TNFα及びTNFβ)、エリスロポエチン(EPO)、FLT-3リガンド、gIp10、TCA-3、MCP-1、MIF、MIP-1.アルファ、MIP-1β、ランテス(Rantes)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、及び顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、ならびに上記のいずれか機能性断片が挙げられる。
【0192】
いくつかの実施形態では、ケモカイン受容体に、つまり、CXC、CC、CまたはCX3Cケモカイン受容体に結合する免疫調節性ケモカインもまた、本明細書に提供される組成物に含まれることがある。ケモカインの例としては、限定されるものではないが、Mip1α、Mip-1β、Mip-3α(Larc)、Mip-3β、ランテス(Rantes)、Hcc-1、Mpif-1、Mpif-2、Mcp-1、Mcp-2、Mcp-3、Mcp-4、Mcp-5、エオタキシン(Eotaxin)、タルク(Tarc)、Elc、I309、IL-8、Gcp-2 Gro-α、Gro-β、Gro-γ、Nap-2、Ena-78、Gcp-2、Ip-10、Mig、I-Tac、Sdf-1、及びBca-1(Blc)、ならびに上記のいずれかの機能性断片が挙げられる。
【0193】
いくつかの実施形態では、組成物は、本明細書に記載のMAGEC2免疫原性ポリペプチドをコードする核酸、例えば、MAGEC2免疫原性ペプチドをコードするDNA分子を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、MAGEC2免疫原性ペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含む発現ベクターを含む。
【0194】
細胞(例えば、宿主細胞、抗原提示細胞(APC)、例えば、樹状細胞、マクロファージなど)によって取り込まれた場合、DNA分子は、染色体外分子として細胞中に存在することがある、及び/または染色体中に組み込まれることがある。DNAを、別々の遺伝物質のままであり得るプラスミドの形態で、細胞の中に導入することがある。あるいは、染色体に組み込まれ得る線状DNAを、細胞の中に導入することがある。任意選択的に、DNAを細胞の中に導入する場合、染色体の中にDNAが組み込まれることを促進する試薬を添加してもよい。
【0195】
V.結合性タンパク質
いくつかの態様では、本明細書に記載のペプチドに結合する結合部分構造、及び/または本明細書に記載の安定MHC-ペプチド複合体が提供される。例えば、ペプチド及び/または安定MHC-ペプチド複合体に特異的及び/または選択的に、例えば約10-4M以下(例えば、約10-4、10-5、10-6、10-7、約10-8、約10-9、約1010、約10-11、約10-12、約10-13、約10-14など)のKで結合する、T細胞受容体(TCR)、抗体及び類似するもののような、結合性タンパク質が提供される。
【0196】
本発明に包含される態様では、本明細書に提供されるのは、MHC分子(例えば、MHCクラスI分子)との関連においてMAGEC2免疫原性ペプチドを含むペプチド-MHC(pMHC)複合体に(例えば、特異的及び/または選択的に)結合する、結合性タンパク質である。いくつかの実施形態では、結合性タンパク質は、約5×10-4M以下、約1×10-4M以下、約5×10-5M以下、約1×10-5M以下、約5×10-6M以下、約1×10-6M以下、約5×10-7M以下、約1×10-7M以下、約5×10-8M以下、約1×10-8M以下、約5×10-9M以下、約1×10-9M以下、約5×10-10M以下、約1×10-10M以下、約5×10-11M以下、約1×10-11M以下、約5×10-12M以下、約1×10-12M以下、または端点を含めてそれらの間にある任意の範囲、例えば、約1~50マイクロモーラー、1~100マイクロモーラー、0.1~500マイクロモーラーなどのKでMAGEC2ペプチド-MHC(pMHC)複合体に(例えば、特異的及び/または選択的に)結合することができる。いくつかの実施形態では、MHC分子は、HLA-A02、HLA-A03、HLA-A01、HLA-A11、HLA-A24、及び/またはHLA-B07からなる群から選択されるHLA血清型であるMHCアルファ鎖を含み、任意選択的に、HLAアレルは、HLA-A0201、HLA-A0202、HLA-A0203、HLA-A0204、HLA-A0205、HLA-A0206、HLA-A0207、HLA-A0210、HLA-A0211、HLA-A0212、HLA-A0213、HLA-A0214、HLA-A0216、HLA-A0217、HLA-A0219、HLA-A0220、HLA-A0222、HLA-A0224、HLA-A0230、HLA-A0242、HLA-A0253、HLA-A0260、HLA-A0274アレル、HLA-A0301、HLA-A0302、HLA-A0305、HLA-A0307、HLA-A0101、HLA-A0102、HLA-A0103、HLA-A0116アレル、HLA-A1101、HLA-A1102、HLA-A1103、HLA-A1104、HLA-A1105、HLA-A1119アレル、HLA-A2402、HLA-A2403、HLA-A2405、HLA-A2407、HLA-A2408、HLA-A2410、HLA-A2414、HLA-A2417、HLA-A2420、HLA-A2422、HLA-A2425、HLA-A2426、HLA-A2458アレル、HLA-B0702、HLA-B0704、HLA-B0705、HLA-B0709、HLA-B0710、HLA-B0715、及びHLA-B0721アレルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、HLA血清型はHLA-B07である、及び/またはHLAアレルは、HLA-B0702、HLA-B0704、HLA-B0705、HLA-B0709、HLA-B0710、HLA-B0715、及びHLA-B0721アレルからなる群から選択される。特定の実施形態では、HLAアレルはHLA-B0702である。いくつかの実施形態では、HLA血清型はHLA-A24である、及び/またはHLAアレルは、HLA-A2402、HLA-A2403、HLA-A2405、HLA-A2407、HLA-A2408、HLA-A2410、HLA-A2414、HLA-A2417、HLA-A2420、HLA-A2422、HLA-A2425、HLA-A2426及びHLA-A2458アレルからなる群から選択される。特定の実施形態では、HLAアレルはHLA-A2402である。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される結合性タンパク質は、遺伝子操作、単離及び/または精製されている。
【0197】
いくつかの実施形態では、既知のT細胞受容体(例えば、van Kunert et al.(2016)J.Immunol.197:2541-2552からのTCR、または本明細書に記載される他のもの)と比較して結合性タンパク質は、より高い結合親和性でMAGEC2ペプチド-MHC(pMHC)に結合する。例えば、既知のT細胞受容体と比較して結合性タンパク質は、少なくとも1.2倍、1.5倍、1.8倍、2.0倍、2.2倍、2.5倍、2.8倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、5.5倍、6倍、6.5倍、7倍、7.5倍、8倍、8.5倍、9倍、9.5倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、1000倍、5000倍、10000倍、50000倍、100000倍、500000倍、1000000倍、もしくはそれ以上高い、または端点を含めてそれらの間にある任意の範囲でより高い、例えば、1.2倍~2倍高い、MAGEC2ペプチド-MHC(pMHC)に対する結合親和性を有し得る。
【0198】
いくつかの実施形態では、既知のT細胞受容体と比較して結合性タンパク質は、MAGEC2の発現が一定以下である標的細胞と接触した場合、より強いT細胞増殖、サイトカイン放出及び/または細胞傷害的殺滅を誘導する(例えば、様々なレベルでMAGEC2を発現している代表的な細胞株については実施例の節を参照)。例えば、本明細書に記載される任意の態様のいくつかの実施形態では、MAGEC2レベルは、100万あたりの転写物(transcript per million)として表されることができ、例えば、転写物100万個あたり約1,000個の転写物(約1,000TPM)、950TPM、900TPM、850TPM、800TPM、750TPM、700TPM、650TPM、600TPM、550TPM、500TPM、450TPM、400TPM、350TPM、300TPM、250TPM、200TPM、150TPM、100TPM、95TPM、90TPM、85TPM、80TPM、75TPM、70TPM、65TPM、60TPM、55TPM、50TPM、45TPM、40TPM、35TPM、34TPM、33TPM、32TPM、31TPM、30TPM、29TPM、28TPM、27TPM、26TPM、25TPM、24TPM、23TPM、22TPM、21TPM、20TPM、19TPM、18TPM、17TPM、16TPM、15TPM、14TPM、13TPM、12TPM、11TPM、10TPM、9TPM、8TPM、7TPM、6TPM、5TPM、4TPM、3TPM、2TPM及び1TPM、もしくはそれ以下、または端点を含めてそれらの間にある任意の範囲、例えば、約1,000TPM以下~約73TPM以下)であり得る。本明細書にさらに記載されるように、TPMは、よく知られている技術、例えばRNA-Seqに従って測定され、遺伝子発現TPMデータは、様々な細胞株、組織型などについて、当技術分野でよく知られている(例えば、ワールドワイドウェブ上でportals.broadinstitute.orgにあるthe Broad Institute Cancer Cell Line Encyclopedia(CCLE)を参照)。いくつかの実施形態では、既知のT細胞受容体と比較して結合性タンパク質は、MAGEC2のヘテロ接合型発現を有する標的細胞と接触した場合、T細胞増殖、サイトカイン放出及び/または細胞傷害的殺滅を少なくとも1.2倍、1.5倍、1.8倍、2.0倍、2.2倍、2.5倍、2.8倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、5.5倍、6倍、6.5倍、7倍、7.5倍、8倍、8.5倍、9倍、9.5倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、1000倍、もしくはそれを超えて、または端点を含めてそれらの間にある任意の範囲で、例えば、1.2倍~2倍増大させる。
【0199】
いくつかの実施形態では、MAGEC2の発現を、RNA-シーケンシング(RNA-seq)を用いて検出する。RNA-seqは、一般に、以下のステップを含む:遺伝物質を含有するサンプルを得るステップ、得られたサンプルから全RNAを単離するステップ、全RNAから増幅済みcDNAライブラリーを調製するステップ、増幅済みcDNAライブラリーを配列決定するステップ、及び増幅済みcDNAを解析及びプロファイリングして様々な転写物の発現レベルを評価するステップ。サンプルは、細胞の集団、組織サンプル、生検サンプル、細胞培養物、または単一の細胞であることがある。当技術分野で知られている任意の方法を用いて生物学的サンプルから全RNAを単離することができる。ある特定の実施形態では、全RNAを血漿から抽出する。血漿RNAの抽出は、Enders et al., “The Concentration of Circulating Corticotropin-Releasing Homer mRNA in Material Plasma Is Inclined in Preclampsia,”Clinrに記載されている。そこに記載されているように、遠心分離ステップ後に回収した血漿を、Trizol LS試薬(Invitrogen)及びクロロホルムと混合する。その混合物を遠心分離し、その水層を新しいチューブに移す。この水層にエタノールを加える。次いで、その混合物を、RNeasyミニカラム(Qiagen)に入れ、製造業者の推奨に従って処理する。
【0200】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるRNA-seqは、全RNAから増幅済みcDNAを調製するステップを含む。例えば、cDNAを調製し、単離したRNAサンプルを希釈せずに無作為に増幅する、または単離したRNAの中に遺伝物質を含む混合物を個々の反応サンプルの中に分散させる。ある特定の実施形態では、サンプル中のトランスクリプトームの3’末端から全体にわたって増幅を無作為に開始させて、mRNA及び非ポリアデニル化転写物の両方を増幅する。このようにして、二本鎖cDNA増幅産物は、次世代シーケンシングプラットフォームのためのシーケンシングライブラリーを生成するために最適化される。本発明に包含される方法によるcDNAの増幅に適したキットとしては、例えば、Ovation(登録商標)RNA-Seqシステムが挙げられる。
【0201】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるRNA-seqは、増幅済みcDNAを配列決定するステップを含む。任意の既知のシーケンシング方法を用いて、増幅済みcDNA混合物を配列決定することができ、例えば、単一分子シーケンシング法が挙げられる。ある特定の実施形態では、増幅済みcDNAを、全トランスクリプトームショットガンシーケンシングによって配列決定する。全トランスクリプトームショットガンシーケンシングは、様々な次世代シーケンシングプラットフォーム、例えば、Illumina(登録商標)Genome Analyzerプラットフォーム、ABI SOLiD(商標)シーケンシングプラットフォーム、またはLife Scienceの454シーケンシングプラットフォームを使用して行われ得る。
【0202】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるRNA-seqは、cDNAに対して、デジタル計数、及び解析を行うことをさらに含む。増幅済みサンプル中の各転写物についての増幅済み配列の数は、配列読取り(増幅済み鎖1本あたり1回の読取り)によって定量することができる。いくつかの実施形態では、100万あたりの転写物(transcript per million(TPM))を用いて特定の転写物の発現レベルを定量する。TPMは、Wagner et al.(2012)Theory in Biosciences 131:281-285に示されるように計算され得、参照によりその内容の全体が本明細書に援用される。
【0203】
ある特定の実施形態では、結合性タンパク質は、特定のHLAアルファ鎖アレルを有する特定のHLA分子などのMHC分子との複合体の状態にあるMAGEC2免疫原性ペプチドを認識する。例えば、表2Aに列挙される結合性タンパク質は、実施例の節にさらに記載されるように、アルファ鎖がHLA-B07血清型を有しているMHC、例えば、HLA-B0702、HLA-B0704、HLA-B0705、HLA-B0709、HLA-B0710、HLA-B0715及び/またはHLA-B0721アレルによってコードされるMHCと会合した状態にあるMAGEC2免疫原性ペプチドの結合剤として同定された。同様に、表2Bに列挙される結合性タンパク質は、実施例の節にさらに記載されるように、アルファ鎖がHLA-A24血清型を有しているMHC、例えば、HLA-A2402、HLA-A2403、HLA-A2405、HLA-A2407、HLA-A2408、HLA-A2410、HLA-A2414、HLA-A2417、HLA-A2420、HLA-A2422、HLA-A2425、HLA-A2426及び/またはHLA-A2458アレルによってコードされるMHCと会合した状態にあるMAGEC2免疫原性ペプチドの結合剤として同定された。いくつかの実施形態では、結合性タンパク質はMAGEC2免疫原性ペプチドとMHC分子との複合体を認識し、MHC分子は、HLA-A02、HLA-A03、HLA-A01、HLA-A11、HLA-A24、及び/またはHLA-B07からなる群から選択されるHLA血清型であるMHCアルファ鎖を含み、任意選択的に、HLAアレルは、HLA-A0201、HLA-A0202、HLA-A0203、HLA-A0204、HLA-A0205、HLA-A0206、HLA-A0207、HLA-A0210、HLA-A0211、HLA-A0212、HLA-A0213、HLA-A0214、HLA-A0216、HLA-A0217、HLA-A0219、HLA-A0220、HLA-A0222、HLA-A0224、HLA-A0230、HLA-A0242、HLA-A0253、HLA-A0260、HLA-A0274アレル、HLA-A0301、HLA-A0302、HLA-A0305、HLA-A0307、HLA-A0101、HLA-A0102、HLA-A0103、HLA-A0116アレル、HLA-A1101、HLA-A1102、HLA-A1103、HLA-A1104、HLA-A1105、HLA-A1119アレル、HLA-A2402、HLA-A2403、HLA-A2405、HLA-A2407、HLA-A2408、HLA-A2410、HLA-A2414、HLA-A2417、HLA-A2420、HLA-A2422、HLA-A2425、HLA-A2426、HLA-A2458アレル、HLA-B0702、HLA-B0704、HLA-B0705、HLA-B0709、HLA-B0710、HLA-B0715、及びHLA-B0721アレルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、MAGEC2免疫原性ペプチドは、ヒトMAGEC2タンパク質、及び/または表3に示されるMAGEC2タンパク質に由来する。いくつかの実施形態では、1種以上のMAGEC2免疫原性ペプチドを単独で、またはアジュバントと組み合わせて投与する。
【0204】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される結合性タンパク質は、以下を含む(例えば、以下を含む、以下から本質的になる、または以下からなる):a)表2に列挙されるTCRアルファ配列からなる群から選択されるTCRアルファ鎖配列との少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の、もしくはそれを上回る同一性を有するTCRアルファ鎖配列;及び/またはb)表2に列挙されるTCRベータ鎖からなる群から選択されるTCRベータ鎖配列との少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の、もしくはそれを上回る同一性を有するTCRベータ鎖配列。
【0205】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される結合性タンパク質は、以下を含む(例えば、以下を含む、以下から本質的になる、または以下からなる):a)表2に列挙されるTCRアルファ鎖配列からなる群から選択されるTCRアルファ鎖配列;及び/またはb)表2に列挙されるTCRベータ鎖配列からなる群から選択されるTCRベータ鎖配列。
【0206】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される結合性タンパク質は、以下を含む(例えば、以下を含む、以下から本質的になる、または以下からなる):a)表2に列挙されるTCRアルファ鎖可変(Vα)ドメイン配列からなる群から選択されるTCR Vαドメイン配列との少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の、もしくはそれを上回るの同一性を有するTCRアルファ鎖可変(Vα)ドメイン配列;及び/またはb)表2に列挙されるTCRベータ鎖可変(Vβ)ドメイン配列からなる群から選択されるTCR Vβドメイン配列との少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の、もしくはそれを上回る同一性を有するTCRベータ鎖可変(Vβ)ドメイン配列。
【0207】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される結合性タンパク質は、以下を含む(例えば、以下を含む、以下から本質的になる、または以下からなる):a)表2に列挙されるTCRアルファ鎖可変(Vα)ドメイン配列からなる群から選択されるTCR Vαドメイン配列;及び/またはb)表2に列挙されるTCRベータ鎖可変(Vβ)ドメイン配列からなる群から選択されるTCR Vβドメイン配列。
【0208】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される結合性タンパク質は、表2に列挙されるTCRアルファ鎖相補性決定領域(CDR)配列からなる群から選択されるTCRアルファ鎖CDR配列との少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の、またはそれを上回る同一性を有する少なくとも1つ(例えば、1つ、2つまたは3つ、例えば、CDR3単独、またはCDR1及びCDR2との組合せ)のTCRアルファ鎖CDR配列を含む(例えば、それを含む、それから本質的になる、またはそれからなる)。CDR3は、プロセシングを受けた抗原を認識することを担う主要なCDRであると考えられており、CDR1及びCDR2は主にMHCと相互作用し、それゆえ、いくつかの実施形態では、表2に列挙されるTCRアルファ鎖由来のCDR3単独及び/またはTCRベータ鎖由来のCDR3単独を含む結合性タンパク質であって、各々のCDR3が、この段落に列挙されるような配列相同性を有する、当該結合性タンパク質が提供される。
【0209】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される結合性タンパク質はまた、表2に列挙されるTCRベータ鎖相補性決定領域(CDR)配列からなる群から選択されるTCRベータ鎖CDR配列との少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の、またはそれを上回る同一性を有する少なくとも1つ(例えば、1つ、2つまたは3つ、例えば、CDR3単独、またはCDR1及びCDR2との組合せ)のTCRベータ鎖CDR配列を含むこともある(例えば、それを含むこともある、それから本質的になることもある、またはそれからなることもある)。上記のように、CDR3は、プロセシングを受けた抗原を認識することを担う主要なCDRであると考えられており、CDR1及びCDR2は主にMHCと相互作用し、それゆえ、いくつかの実施形態では、表2に列挙されるTCRベータ鎖由来のCDR3単独及び/またはTCRアルファ鎖由来のCDR3単独を含む結合性タンパク質であって、各々のCDR3が、この段落に列挙されるような配列相同性を有する、当該結合性タンパク質が提供される。
【0210】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される結合性タンパク質は、表2に列挙されるTCRアルファ鎖の相補性決定領域(CDR)を含む(例えば、少なくとも1つ(例えば、1つ、2つまたは3つ)のそれを含む、それから本質的になる、またはそれからなる)。
【0211】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される結合性タンパク質はまた、表2に列挙されるTCRベータ鎖の相補性決定領域(CDR)を含むこともある(例えば、少なくとも1つ(1つ、2つまたは3つ)のそれを含むこともある、それから本質的になることもある、またはそれからなることもある)。
【0212】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される結合性タンパク質は、表2に列挙されるTCRアルファ鎖定常領域(Cα)配列との少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の、またはそれを上回る同一性を有するTCR Cα配列を含む(例えば、それを含む、それから本質的になる、またはそれからなる)。
【0213】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される結合性タンパク質はまた、表2に列挙されるTCRベータ鎖定常領域(Cβ)配列との少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の、またはそれを上回る同一性を有するTCR Cβ配列を含むこともある(例えば、それを含むこともある、それから本質的になることもある、またはそれからなることもある)。
【0214】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される結合性タンパク質は、表2に列挙される、TCRアルファ鎖定常領域(Cα)配列からなる群から選択されるTCR Cα配列を含む(例えば、それを含む、それから本質的になる、またはそれからなる)。
【0215】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される結合性タンパク質はまた、表2に列挙されるTCRベータ鎖定常領域(Cβ)配列からなる群から選択されるTCR Cβ配列を含むこともある(例えば、それを含むこともある、それから本質的になることもある、またはそれからなることもある)。
【0216】
【表2-1】

【表2-2】

【表2-3】

【表2-4】

【表2-5】

【表2-6】

【表2-7】

【表2-8】

【表2-9】

【表2-10】

【表2-11】

【表2-12】

【表2-13】

【表3-1】

【表3-2】

【表3-3】
【0217】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される結合性タンパク質は、キメラ型、ヒト化型、ヒト型、霊長類型または齧歯動物型(例えば、ラット型またはマウス型)である定常領域を含む。例えば、ヒト可変領域はマウス定常領域でキメラ化されていることがあり、またはマウス可変領域はヒト定常領域及び/またはヒトフレームワーク領域でヒト化されていることがある。いくつかの実施形態では、機能性を改変するように定常領域を変異させることがある(例えば、天然に存在しないシステイン置換をTCRアルファ及びベータ鎖の中の対向残基位置に導入して、TCRアルファ及びベータ鎖間の親和性を向上させるのに有用なジスルフィド結合をもたらすこと)。同様に、機能性を改変するように(例えば、疎水性アミノ酸による残基の天然に存在しない置換を導入することによって疎水性を向上させるように)定常領域の膜貫通ドメインに変異を作ることがある。いくつかの実施形態では、結合性タンパク質の各CDRは、基準CDR配列と比較して最大5つのアミノ酸置換、挿入、欠失またはそれらの組合せを有する。いくつかの実施形態では、細胞表面発現を増大させる変異を定常領域に作ることがある。
【0218】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される結合性タンパク質は、操作されたタンパク質足場、抗体またはその抗原結合性断片、TCR模倣抗体などであり得る。そのような結合部分は、慣例的な免疫学的方法、例えば、宿主を免疫すること、抗体産生細胞及び/またはその抗体を得ること、ならびにモノクローナル抗体の生産に有用なハイブリドーマを作り出すことを用いて本明細書に記載のペプチド及び/またはMHC-ペプチド複合体に対して設計及び/または作製され得る(例えば、Watt et al.(2006)Nat.Biotechnol.24:177-183、Gebauer and Skerra(2009)Curr.Opin.Chem Biol.13:245-255、Skerra et al.(2008)FEBS J.275:2677-2683、Nygren et al.(2008)FEBS J.275:2668-2676、Dana et al.(2012)Exp.Rev.Mol.Med.14:e6、Sergeva et al.(2011)Blood 117:4262-4272、PCT公開第WO2007/143104号、同第PCT/US86/02269号及び同第WO86/01533号、米国特許第4,816,567、Better et al.(1988)Science 240:1041-1043、Liu et al.(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.84:3439-3443、Liu et al.(1987)J.Immunol.139:3521-3526、Sun et al.(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.84:214-218、Nishimura et al.(1987)Cancer Res.47:999-1005、Wood et al.(1985)Nature 314:446-449、Shaw et al.(1988)J.Natl.Cancer Inst.80:1553-1559)、Morrison,S.L.(1985)Science 229:1202-1207、Oi et al.(1986)Biotechniques 4:214、米国特許第5,225,539号、Jones et al.(1986)Nature 321:552-525、Verhoeyan et al.(1988)Science 239:1534、及びBeidler et al.(1988)J.Immunol.141:4053-4060。所望により、慣例的手順、例えば、プロテインA-セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、親和性クロマトグラフィー、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈降、酸抽出、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、レクチンクロマトグラフィー、及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などを用いて結合部分を単離または精製することがある(例えば、Current Protocols in Immunology,or Current Protocols in Protein Science,John Wiley & Sons,NY,N.Y.)。
【0219】
用語「抗体(antibody)」及び「抗体(antibodies)」は、広義には、天然に存在する形態の抗体(例えば、IgG、IgA、IgM、IgE)、ならびに組換え抗体、例えば、一本鎖抗体、キメラ及びヒト化抗体、及び多重特異性抗体、ならびに上記のすべての断片及び誘導体を包含し、当該断片及び誘導体は、少なくとも抗原性結合部位を有する。抗体誘導体は、抗体に結合体化されたタンパク質または化学部分を含み得る。
【0220】
加えて、イントラボディは、抗体の特徴を有するが、関心とする細胞内標的に結合すべく及び/またはそれを阻害すべく細胞内で発現されることができる、よく知られた抗原結合性分子である(Chen et al.(1994)Human Gene Ther.5:595-601)。細胞内部分に指向するように(例えばそれを阻害するように)抗体を適合させる方法は当技術分野でよく知られており、例えば、一本鎖抗体(scFv)の使用、超安定性のための免疫グロブリンVLドメインの改変、還元性細胞内環境に耐えさせるような抗体の改変、細胞内安定性を向上させる及び/または細胞内局在化を調節する融合タンパク質の作出などが挙げられる。細胞内抗体を、例えば予防目的及び/または治療目的のために(例えば、遺伝子療法として)、多細胞生物の1つ以上の細胞、組織または器官に導入する及び発現させることもできる(少なくとも、PCT公開第WO08/020079号、同第WO94/02610号、同第WO95/22618号及び同第WO03/014960、米国特許第7,004,940、Cattaneo and Biocca(1997)Intracellular Antibodies:Development and Applications(Landes and Springer-Verlag publs.)、Kontermann(2004)Methods 34:163-170、Cohen et al.(1998)Oncogene 17:2445-2456、Auf der Maur et al.(2001)FEBS Lett.508:407-412、Shaki-Loewenstein et al.(2005)J.Immunol.Meth.303:19-39を参照)。
【0221】
本明細書で使用される用語「抗体」はまた、抗体の「抗原結合性部分」(または単に「抗体部分」)も含む。用語「抗原結合性部分」は、本明細書で使用される場合、抗原(例えば、本明細書に記載のペプチド及び/またはMHC-ペプチド複合体)に特異的及び/または選択的に結合する能力を保持している抗体の1つ以上の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片によって行われ得ることが示されている。抗体の「抗原結合性部分」という用語に包含される結合性断片の例としては、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価断片である、Fab断片;(ii)ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片である、F(ab’)断片;(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一のアームのVL及びVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるものである、dAb断片(Ward et al.,(1989)Nature 341:544-546);ならびに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらには、Fv断片の2つのドメインであるVL及びVHは別個の遺伝子にコードされているが、組換え法を用いて、VL及びVH領域が対になって一価ポリペプチドを形成した一本のタンパク質鎖(一本鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Bird et al.(1988)Science 242:423-426、及びHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883、及びOsbourn et al.1998,Nature Biotechnology 16: 778を参照)としてそれらが作られることを可能にする合成リンカーによって、それらを繋ぎ合わせることができる。そのような一本鎖抗体も、抗体の「抗原結合性部分」という用語に包含されることが意図される。完全なIgGポリペプチドまたは他のアイソタイプをコードする発現ベクターを作り出すために、特定のscFvの任意のVH及びVL配列をヒト免疫グロブリン定常領域cDNAまたはゲノム配列に連結させることができる。また、タンパク質化学か組換えDNA技術かのいずれかを用いてFab、Fv、または免疫グロブリンの他の断片を作り出すことにも、VH及びVLを使用することができる。他の形態の一本鎖抗体、例えばダイアボディも包含される。ダイアボディとは、単一ポリペプチド鎖上にVH及びVLドメインが発現しているが、同一鎖上の2つのドメイン間で対形成するには短過ぎるリンカーを用いており、それによってドメインを別の鎖の相補ドメインと対形成するように仕向けて2つの抗原結合性部位を生み出す、二価の二重特異性抗体である(例えば、Holliger et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:6444-6448、Poljak et al.(1994)Structure 2:1121-1123を参照)。
【0222】
さらには、抗体またはその抗原結合性部分は、抗体または抗体部分と1つ以上の他のタンパク質またはペプチドとの共有結合的または非共有結合的な会合によって形成されたより大きな免疫粘着ポリペプチドの一部分であってもよい。そのような免疫粘着ポリペプチドの例としては、ストレプトアビジンコア領域を使用して四量体型scFvポリペプチドを作ること(Kipriyanov et al.(1995)Human Antibodies and Hybridomas 6:93-101)、ならびにシステイン残基、タンパク質サブユニットペプチド及びC末端側ポリヒスチジンタグを使用して二価のビオチン化scFvポリペプチドを作ること(Kipriyanov et al.(1994)Mol.Immunol.31:1047-1058)が挙げられる。抗体部分、例えばFab及びF(ab’)断片は、慣例的な技術、例えばそれぞれ全抗体のパパインまたはペプシン消化を用いて、全抗体から調製され得る。さらには、抗体、抗体部分及び免疫粘着ポリペプチドは、本明細書に記載されているような標準的な組換えDNA技術を用いて得ることができる。
【0223】
抗体は、ポリクローナル型もしくはモノクローナル型、異種、同種異系もしくは同系、またはそれらの改変形態(例えば、ヒト化型、キメラ型など)であり得る。抗体はまた、完全にヒト型であることもある。好ましくは、本発明の抗体は、本明細書に記載のペプチド及び/またはMHC-ペプチド複合体に特異的及び/または選択的に、あるいは実質的に特異的及び/または選択的に結合する。用語「モノクローナル抗体」及び「モノクローナル抗体組成物」は、本明細書で使用される場合、抗原の特定のエピトープとの免疫反応をすることができる抗原結合性部位を1種類のみ含有する抗体ポリペプチドの集団を指す一方、用語「ポリクローナル抗体」及び「ポリクローナル抗体組成物」は、特定の抗原と相互作用することができる抗原結合性部位を複数種類含有する抗体ポリペプチドの集団を指す。モノクローナル抗体組成物は、典型的には、それと免疫反応をする特定の抗原に対する単一の結合親和性を呈する。
【0224】
本明細書に記載される他の結合部分と同様に、抗体は「ヒト化される」こともあるが、これは、ヒト細胞によって作られる抗体とより密接に類似するように改変された可変及び定常領域を有する非ヒト細胞によって作られた抗体を含めることが意図されている。例えば、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列にみられるアミノ酸を組み込むように非ヒト抗体アミノ酸配列を改変することが挙げられる。本発明のヒト化抗体は、ヒト生殖系細胞免疫グロブリン配列にコードされていないアミノ酸残基を、例えばCDRの中に、含むことがある(例えば、in vitro/ex vivoでの無作為的または部位特異的な変異誘発によって、またはin vivoでの体細胞変異によって導入された変異)。用語「ヒト化抗体」はまた、本明細書で使用される場合、別の哺乳動物種の生殖細胞系に由来するCDR配列抗体をヒトフレームワーク配列に接合した抗体も含む。
【0225】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される結合性タンパク質は、T細胞受容体(TCR)、TCRの抗原結合性断片、またはキメラ抗原受容体(CAR)を含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される結合性タンパク質は2本のポリペプチド鎖を含むことがあり、これらは各々、TCRアルファ鎖のCDR3及びTCRベータ鎖のCDR3を含んだ、またはTCRアルファ鎖及びTCRベータ鎖の両方のCDR1、CDR2及びCDR3を含んだ可変領域を含む。いくつかの実施形態では、結合性タンパク質は一本鎖TCR(scTCR)を含み、これは、TCR Vα及びTCR Vβドメインを両方とも含むがTCR定常ドメインを1つだけ(CαまたはCβ)含む。用語「キメラ抗原受容体」(CAR)は、天然には存在しない様式で、または宿主細胞中に天然には存在しない様式で互いに連結された2つ以上の天然に存在するアミノ酸配列を含有するように操作された融合タンパク質であって、細胞の表面上に存在する場合に受容体として機能することができる、当該融合タンパク質を指す。本発明に包含されるCARには、膜貫通ドメイン及び1つ以上の細胞内シグナル伝達ドメイン(任意選択的に、共刺激ドメイン(複数可)を含有する)に連結された、抗原結合性ドメイン(すなわち、免疫グロブリンもしくは免疫グロブリン様分子から、例えば抗体もしくはTCRから、またはNK細胞由来のキラー免疫受容体に由来するかもしくはそれから得られた抗原結合性ドメインから得られた、またはそれに由来する抗原結合性ドメイン)を含む細胞外部分が含まれ得る(例えば、Sadelain et al.(2013)Cancer Discov.3:388、Harris and Kranz(2016)Trends Pharmacol.Sci.37:220、及びStone et al.(2014)Cancer Immunol.Immunother.63:1163を参照)。
【0226】
いくつかの実施形態では、1)TCRアルファ鎖CDR、TCR Vαドメイン及び/またはTCRアルファ鎖は、表2に列挙されるTRAV、TRAJ及びTRAC遺伝子の群から選択されるTRAV、TRAJ及び/またはTRAC遺伝子、もしくはそれらの断片にコードされる、及び/または2)TCRベータ鎖CDR、TCR Vβドメイン及び/またはTCRベータ鎖は、表2に列挙されるTRBV、TRBJ及びTRBC遺伝子の群から選択されるTRBV、TRBJ及び/またはTRBC遺伝子、もしくはそれらの断片にコードされる、及び/または3)結合性タンパク質の各CDRは、表2に列挙される同種の基準CDR配列と比較して最大5個のアミノ酸置換、挿入、欠失もしくはそれらの組合せを有する。
【0227】
いくつかの実施形態では、本出願に開示される結合性タンパク質(例えば、TCR、TCRの抗原結合性断片、またはキメラ抗原受容体(CAR)は、キメラ型(例えば、1つよりも多いドナーまたは種からのアミノ酸残基またはモチーフを含む)、ヒト化型(例えば、ヒトにおける免疫原性のリスクを低減するように改変または置換された非ヒト生物からの残基を含む)、またはヒト型である。
【0228】
操作された結合性タンパク質、例えば、TCR、CAR及びそれらの抗原結合性断片を生産する方法は、当技術分野において周知である(例えば、Bowerman et al.(2009)Mol.Immunol.5:3000、米国特許第6,410,319号、米国特許第7,446,191号、米国特許公開第2010/065818号、米国特許第8,822,647号、PCT公開第WO2014/031687号、米国特許第7,514,537号、及びBrentjens et al.(2007)Clin.Cancer Res.73:5426)。
【0229】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される結合性タンパク質は、細胞表面上に発現するTCRまたはその抗原結合性断片であり、ここで、その細胞表面上に発現するTCRは、内因性TCRと比較して、CD3タンパク質とより効率的に会合することができる。本発明に包含される結合性タンパク質、例えばTCRは、T細胞のような細胞の表面上に発現した場合、内因性の結合性タンパク質、例えば内因性TCRと比較して細胞上での表面発現がより強くなる場合もある。いくつかの実施形態において、本明細書に提供されるのは、CARの結合性ドメインが抗原特異的なTCR結合性ドメインを含んでいる、CARである(例えば、Walseng et al.(2017)Scientific Reports 7:10713を参照)。
【0230】
さらに提供されるのは、出発結合性タンパク質から変化した特性を有し得る改変型結合性タンパク質を遺伝子工学的に作るための出発材料として、本明細書に開示されるVα及び/またはVβ配列の1つ以上を有する結合性タンパク質を使用し、周知の方法に従って調製され得る、改変型結合性タンパク質(例えば、TCR、TCRの抗原結合性断片、またはCAR)である。結合性タンパク質を、片方または両方の可変領域(すなわち、Vα及び/またはVβ)の中、例えば1つ以上のCDR領域の中、及び/または1つ以上のフレームワーク領域の中の1つ以上の残基を改変することによって操作することがある。さらに、またはあるいは、結合性タンパク質を、定常領域(複数可)の中の残基を改変することによって操作することがある。
【0231】
別のタイプの可変領域改変は、Vα及び/またはVβのCDR1、CDR2及び/またはCDR3領域の中のアミノ酸残基を変異させて、それによって、関心とする結合性タンパク質の1つ以上の結合特性(例えば、親和性)を改善することである。部位特異的変異誘発導入、またはPCR媒介変異誘発を実施して変異(複数可)を導入することがあり、タンパク質結合性、または他の関心とする機能的特性に対する影響は、本明細書に記載される及び実施例に提供されるようなin vitro、ex vivoまたはin vivoアッセイにおいて評価され得る。いくつかの実施形態では、(上述のような)保存的改変を導入することがある。変異は、アミノ酸置換、付加または欠失であり得る。いくつかの実施形態では、変異は、置換である。さらに、典型的には、CDR領域内の1、2、3、4または5個以下の残基を改変する。
【0232】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される結合性タンパク質(例えば、TCR、TCRの抗原結合性断片、またはCAR)は、天然に存在するTCRと比較して、1つ以上のアミノ酸置換、欠失、または付加を有することがある。いくつかの実施形態では、結合性タンパク質の各CDRは、表2に列挙される同種の基準CDR配列と比較して最大5個のアミノ酸置換、挿入、欠失またはそれらの組合せを有する。アミノ酸の保存的置換は、周知であり、天然に存在することがあり、または結合性タンパク質を組換えにより生産する場合に導入されることがある。アミノ酸置換、欠失及び付加は、当技術分野で知られている変異誘発法を用いてタンパク質に導入され得る(例えば、Sambrook et al.(2001)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY)。オリゴヌクレオチド-部位特異的(または、セグメント特異的)変異導入手順を採用して所望の置換、欠失または挿入に従って改変された特定のコドンを有する改変型ポリヌクレオチドをもたらすことがある。あるいは、ランダム変異誘発技術または飽和変異誘発技術、例えば、アラニン走査変異導入、エラープローンポリメラーゼ連鎖反応変異誘発、及びオリゴヌクレオチド特異的変異誘発を用いて免疫原ポリペプチド多様体を調製することがある(例えば、上記Sambrook et al.を参照)。
【0233】
当業者に知られている様々な判断基準によって、ペプチド中またはポリペプチド中の特定の位置で置換されるアミノ酸が保存的であるか(または類似しているか)否かが示される。例えば、類似アミノ酸置換または保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が、類似する側鎖を有するアミノ酸残基で置換される、置換である。類似するアミノ酸は、以下のカテゴリーに含まれ得る:塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン);酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸);非荷電の極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、ヒスチジン);非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン);ベータ分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン)。プロリンは、分類がより難しいと考えられるものであるが、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(例えば、ロイシン、バリン、イソロイシン、及びアラニン)と特性が共通する。いくつかの実施形態では、グルタミンでグルタミン酸を置換すること、またはアスパラギンでアスパラギン酸を置換することは、グルタミン及びアスパラギンがそれぞれグルタミン酸及びアスパラギン酸のアミド誘導体である点で、類似の置換と考えることができる。当技術分野で理解されるように、2つのポリペプチド間の「類似性」は、ポリペプチドのアミノ酸配列及びそれに対する保存されたアミノ酸置換体を第2のポリペプチドの配列と比較することによって(例えば、GENEWORKS(商標)、Align、BLASTアルゴリズム、または本明細書に記載される及び当技術分野で実施される他のアルゴリズムを使用して)決定される。
【0234】
いくつかの実施形態では、コードされた結合性タンパク質(例えば、TCR、TCRの抗原結合性断片、またはCAR)は、「シグナルペプチド」(リーダー配列、リーダーペプチド、または輸送ペプチドとしても知られる)を含むことがある。シグナルペプチドは、新たに合成されたポリペプチドを、細胞の内部または外部の適切な位置に指向する。シグナルペプチドは、局在化もしくは分泌の過程で、または局在化もしくは分泌が完了した時点でポリペプチドから除去され得る。シグナルペプチドを有するポリペプチドは、本明細書では「プレタンパク質」と呼ばれ、及びシグナルペプチドが除去されたポリペプチドは、本明細書では「成熟」タンパク質またはポリペプチドと呼ばれる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される結合性タンパク質(例えば、TCR、TCRの抗原結合性断片、またはCAR)は、成熟Vαドメイン、成熟Vβドメイン、またはその両方を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される結合性タンパク質(例えば、TCR、TCRの抗原結合性断片、またはCAR)は、成熟TCR β鎖、成熟TCR α鎖、またはその両方を含む。
【0235】
いくつかの実施形態では、結合性タンパク質は、以下を含む融合タンパク質である:(a)TCRまたはその抗原結合性断片を含む細胞外構成要素;(b)エフェクタードメインまたはその機能性部分を含む細胞内構成要素;及び(c)細胞外構成要素と細胞内構成要素とを連結している膜貫通ドメイン。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、MHC分子(例えば、MHCクラスI分子)との関連においてMAGEC2免疫原性ペプチドを含むペプチド-MHC(pMHC)複合体に、(例えば、特異的及び/または選択的に)結合することができる。
【0236】
本明細書で使用する場合、「エフェクタードメイン」または「免疫エフェクタードメイン」は、適切なシグナルを受け取ったときに、細胞における免疫応答を直接的または間接的に促進することができる融合タンパク質または受容体の、細胞内の部分またはドメインである。いくつかの実施形態では、エフェクタードメインは、結合したとき(例えば、CD3ζ)、または免疫細胞タンパク質もしくはその部分または免疫細胞タンパク質複合体が標的分子に直接的に結合して免疫細胞においてエフェクタードメインからのシグナル伝達を誘発するときに、シグナルを受け取る、免疫細胞タンパク質もしくはその部分または免疫細胞タンパク質複合体に由来する。
【0237】
エフェクタードメインは、それが、1つ以上のシグナル伝達ドメインまたはモチーフ、例えば細胞内チロシン依存性活性化モチーフ(ITAM)、例えば、共刺激分子中にみられるモチーフを含有する場合、細胞応答を直接的に促進し得る。理論に拘束されることを望むものではないが、ITAMは、T細胞受容体による、またはT細胞エフェクタードメインを含む融合タンパク質によるリガンド係合の後のT細胞活性化のために役立つと考えられる。いくつかの実施形態では、細胞内構成要素またはその機能的部位は、ITAMを含む。例示的な免疫エフェクタードメインとしては、限定されるものではないが、CD3ε、CD3δ、CD3ζ、CD25、CD79A、CD79B、CARD11、DAP10、FcRα、FcRβ、FcRγ、Fyn、HVEM、ICOS、Lck、LAG3、LAT、LRP、NKG2D、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、NOTCH4、Wnt、ROR2、Ryk、SLAMF1、Slp76、pTα、TCRα、TCRβ、TRIM、Zap70、PTCH2またはこれらの任意の組合せに由来する免疫エフェクタードメインが挙げられる。いくつかの実施形態では、エフェクタードメインは、リンパ球受容体シグナル伝達ドメイン(例えば、CD3ζ、またはその機能性部分もしくは多様体)を含む。
【0238】
さらなる実施形態では、融合タンパク質の細胞内構成要素は、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、CD2、CD5、ICAM-1(CD54)、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、GITR、CD30、CD40、BAFF-R、HVEM、LIGHT、MKG2C、SLAMF7、NKp80、CD160、B7-H3、CD83と(例えば、特異的及び/または選択的に)結合するリガンド、もしくはそれらの機能性多様体、またはそれらの任意の組合せから選択される共刺激ドメインまたはそれらの機能性部分を含む。いくつかの実施形態では、細胞内構成要素は、CD28共刺激ドメインまたはその機能性部分もしくは多様体(これらは、任意選択的に、天然CD28タンパク質の位置186~187にLL-GG変異を含むことがある(例えば、Nguyen et al.(2003)Blood 702:4320)、4-1BB共刺激ドメインまたはその機能性部分もしくは多様体、あるいはその両方を含む。
【0239】
いくつかの実施形態では、エフェクタードメインは、CD3εエンドドメインもしくはその機能性(例えば、シグナル伝達)部分、またはその機能性多様体を含む。さらなる実施形態では、エフェクタードメインは、CD27エンドドメインもしくはその機能性(例えば、シグナル伝達)部分、またはその機能性多様体を含む。さらなる実施形態では、エフェクタードメインは、CD28エンドドメインもしくはその機能性(例えば、シグナル伝達)部分、またはその機能性多様体を含む。さらなる実施形態では、エフェクタードメインは、4-1BBエンドドメインもしくはその機能性(例えば、シグナル伝達)部分、またはその機能性多様体を含む。さらなる実施形態では、エフェクタードメインは、OX40エンドドメインもしくはその機能性(例えば、シグナル伝達)部分、またはその機能性多様体を含む。さらなる実施形態では、エフェクタードメインは、CD2エンドドメインもしくはその機能性(例えば、シグナル伝達)部分、またはその機能性多様体を含む。さらなる実施形態では、エフェクタードメインは、CD5エンドドメインもしくはその機能性(例えば、シグナル伝達)部分、またはその機能性多様体を含む。さらなる実施形態では、エフェクタードメインは、ICAM-1エンドドメインもしくはその機能性(例えば、シグナル伝達)部分、またはその機能性多様体を含む。さらなる実施形態では、エフェクタードメインは、LFA-1エンドドメインもしくはその機能性(例えば、シグナル伝達)部分、またはその機能性多様体を含む。さらなる実施形態では、エフェクタードメインは、ICOSエンドドメインもしくはその機能性(例えば、シグナル伝達)部分、またはその機能性多様体を含む。
【0240】
本発明に包含される、細胞外構成要素及び細胞内構成要素は、膜貫通ドメインによって連結されている。「膜貫通ドメイン」は、本明細書で使用される場合、細胞膜の中に挿入されることが可能な、または細胞膜を貫通することが可能な、膜貫通タンパク質の一部分である。膜貫通ドメインは、細胞膜中で熱力学的に安定しており一般的に長さが約15アミノ酸から約30アミノ酸までの範囲である三次元構造を有する。膜貫通ドメインの構造は、アルファヘリックス、ベータバレル、ベータシート、ベータヘリックス、またはそれらの任意の組合せを含み得る。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、既知の膜貫通タンパク質(例えば、CD4膜貫通ドメイン、CD8膜貫通ドメイン、CD27膜貫通ドメイン、CD28膜貫通ドメイン、またはそれらの任意の組合せ)を含む、またはそれに由来する。
【0241】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質の細胞外構成要素は、結合性ドメインと膜貫通ドメインとの間に配置されたリンカーをさらに含む。結合性ドメインと膜貫通ドメインとを連結させている融合タンパク質の構成要素に言及するとき、「リンカー」は、本明細書で使用される場合、リンカーによって連結された2つの領域、ドメイン、モチーフ、断片またはモジュールの間での立体配座運動のための柔軟性及び余地を提供できる約2個のアミノ酸~約500個のアミノ酸を有するアミノ酸配列であり得る。例えば、本発明に包含されるリンカーは、融合タンパク質を発現している宿主細胞の表面から離れた位置に結合性ドメインを配置して、宿主細胞と標的細胞との間の適切な接触、抗原結合、及び活性化を可能にすることができる(Patel et al.(1999)Gene Therapy 6:412-419)。選択した標的分子、選択した結合エピトープ、または抗原結合性ドメインの捕捉性(seize)及び親和性に基づいて抗原認識を最大化するようにリンカー長を変化させてもよい(例えば、Guest et al.(2005)Immunother.28:203-11、及びPCT公開第WO2014/031687号参照)。例示的なリンカーとしては、GlySerの1~約10回の繰り返しを有する、グリシン-セリンアミノ酸鎖を有するリンカーが挙げられ、式中、x及びyは、それぞれ独立して、0~10の整数であり、但し、x及びyが両方とも0ではない(例えば、(GlySer)、(GlySer)、GlySer、またはそれらの組合せ、例えば、((GlySer)GlySer))。
【0242】
結合性タンパク質を、薬剤、例えば、検出部分、放射線増感剤、光増感剤などに結合体化させることがある、及び/またはペプチドに関して上述されるように化学修飾することがある。
【0243】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、コードされる結合性タンパク質は、MHC分子(例えば、MHCクラスI分子)との関連においてMAGEC2免疫原性ペプチドを含むペプチド-MHC(pMHC)複合体に結合することができる。
【0244】
結合親和性を評価するための、及び/または結合性分子が特定のリガンド(例えば、ペプチド抗原-MHC複合体)に(例えば、特異的及び/または選択的に)結合するかどうかを判定するための、様々なアッセイが周知である。標的、例えば、標的ポリペプチドのT細胞ペプチドエピトープに対する結合性タンパク質の結合親和性を、例えば当技術分野で周知の任意の複数の結合アッセイを用いることによって、決定することは、当業者のレベルの範囲内である。例えば、いくつかの実施形態では、Biacore(商標)装置を使用して、2タンパク質間の複合体の結合定数を決定することがある。複合体の解離定数(K)は、緩衝液がチップ上を通過するときの時間に関する屈折率の経時変化を計測監視することによって決定され得る。あるタンパク質が別のタンパク質に結合することを測定するための他の好適なアッセイとしては、例えば、イムノアッセイ、例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)及びラジオイムノアッセイ(RIA)、または蛍光、UV吸収、円偏光二色性もしくは核磁気共鳴(NMR)によってタンパク質の分光学的もしくは光学的特性の変化を計測監視することによる結合性の測定が挙げられる。他の例示的なアッセイとしては、限定されるものではないが、ウェスタンブロット、ELISA、分析的超遠心分離、分光法及び表面プラズモン共鳴(Biacore(商標))解析(例えば、Scatchard et al.(1949)Ann.N.Y.Acad.Sci.51:660、Wilson(2002)Science 295:2103、Wolff et al.(1993)Cancer Res.53:2560、ならびに米国特許第5,283,173号及び同第5,468,614号を参照)、フローサイトメトリー、配列決定、及び発現した核酸を検出するための他の方法が挙げられる。1つの例では、標的に対する見かけの親和性は、種々の濃度の四量体に対する結合性を評価することによって、例えば、標識付けした多量体、例えばMHC-抗原四量体等を使用するフローサイトメトリーによって、測定される。1つの代表的な例では、結合性タンパク質の見かけのKを、ある濃度範囲の標識付き四量体の2倍希釈液を使用して測定し、その後、非線形回帰による結合曲線の決定を行うが、見かけのKは、最大半量の結合を生じさせるリガンドの濃度として決定される。
【0245】
VI.核酸及びベクター
本発明に包含される態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のタンパク質、例えばMAGEC2免疫原性ペプチド及びその断片、MHC分子、結合性タンパク質(例えば、TCR、TCRの抗原結合性断片、CARなど)などをコードする核酸分子である。
【0246】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、ストリンジェントな条件の下で、表1~3に列挙されるポリペプチド配列からなる群から選択されるポリペプチドをコードする核酸との少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の、またはそれを上回る同一性を例えば全長にわたって有する配列の相補体にハイブリダイズする。
【0247】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、ストリンジェントな条件の下で、表1~3に列挙されるポリペプチド配列からなる群から選択されるポリペプチドをコードする核酸の相補体にハイブリダイズする。
【0248】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、表1~3に列挙されるポリペプチド配列からなる群から選択されるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む(例えば、それを含む、それから本質的になる、またはそれからなる)。
【0249】
いくつかの実施形態では、核酸配列は、本明細書に記載のMAGEC2免疫原性ペプチドをコードする。
【0250】
いくつかの実施形態では、核酸は、表2に示される少なくとも1つ(例えば、1つ、2つ、または3つ)のTCR α鎖CDRをコードするヌクレオチド配列を含む(例えば、それを含む、それから本質的になる、またはそれからなる)。いくつかの実施形態では、核酸は、表2に示されるTCR Vαドメイン配列との少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の、またはそれを上回る同一性であるアミノ酸配列を有するTCR Vαドメインをコードするヌクレオチド配列を含む(例えば、それを含む、それから本質的になる、またはそれからなる)。いくつかの実施形態では、核酸は、表2に示されるTCR α鎖配列との少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の、またはそれを上回る同一性であるアミノ酸配列を有するTCR α鎖をコードするヌクレオチド配列を含む(例えば、それを含む、それから本質的になる、またはそれからなる)。
【0251】
いくつかの実施形態では、核酸は、表2に示される少なくとも1つ(例えば、1つ、2つ、または3つ)のTCR β鎖CDRをコードするヌクレオチド配列を含む(例えば、それを含む、それから本質的になる、またはそれからなる)。いくつかの実施形態では、核酸は、表2に示されるTCR Vβドメイン配列との少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の、またはそれを上回る同一性であるアミノ酸配列を有するTCR Vβドメインをコードするヌクレオチド配列を含む(例えば、それを含む、それから本質的になる、またはそれからなる)。いくつかの実施形態では、核酸は、表2に示されるTCR β鎖配列との少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の、またはそれを上回る同一性であるアミノ酸配列を有するTCR β鎖をコードするヌクレオチド配列を含む(例えば、それを含む、それから本質的になる、またはそれからなる)。
【0252】
用語「核酸」は、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、及び「核酸分子」を含み、一般に、DNAまたはRNAのポリマーを意味するが、これは、一本鎖または二本鎖、合成されたもの、または天然の供給源から得られたもの(例えば、単離及び/または精製されたもの)であることもあるし、天然の、非天然の、または改変されたヌクレオチドを含有することもあるし、天然の、非天然の、または改変されたヌクレオチド間結合、例えば、ホスホロアミデート結合またはホスホロチオエート結合等を、未改変オリゴヌクレオチドのヌクレオチド間にみられるホスホジエステルの代わりに含有することもある。一実施形態では、核酸は、相補DNA(cDNA)を含む。
【0253】
いくつかの実施形態では、本発明に包含される核酸は、組換え型である。本明細書で使用される場合、用語「組換え」は、(i)生細胞中で複製し得る核酸分子に天然もしくは合成の核酸セグメントを繋げることによって生細胞外で構築された分子、または(ii)上記(i)に記載される分子の複製の結果として得られる分子を指す。本明細書における目的において、複製は、in vitro、ex vivoまたはin vivo複製であり得る。
【0254】
核酸を、当技術分野で知られている手順を用いて、化学合成及び/または酵素的なライゲーション反応に基づいて構築することができる。例えば、上記Green and Sambrook et al.を参照されたい。例えば、天然に存在するヌクレオチドを使用して、またはその分子の生物学的安定性を増加させるようにもしくはハイブリダイゼーション時に形成される二重鎖の物理的安定性を向上させるように設計された様々に改変されたヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート誘導体及びアクリジン置換ヌクレオチド)を使用して、核酸を化学的に合成することがある。核酸を生成するために使用することがある改変型ヌクレオチドの例としては、限定されるものではないが、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ-D-ガラクトシルキューオシン、イノシン、N-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N-置換アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、ベータ-D-マンノシルキューオシン、5’-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、シュードウラシル、キューオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、及び2,6-ジアミノプリンが挙げられる。あるいは、本発明に包含される核酸の1種以上を、Integrated DNA Technologies(Coralville、IA)などの会社から購入することができる。
【0255】
一実施形態では、核酸は、コドン最適化されたヌクレオチド配列を含む。特定の理論または機構に束縛されるものではないが、ヌクレオチド配列のコドン最適化は、mRNA転写物の翻訳効率を向上させると考えられる。ヌクレオチド配列のコドン最適化は、天然のコドンを、同じアミノ酸をコードするが細胞内でより容易に利用できるtRNAによって翻訳されることができてそれゆえに翻訳効率が増加する別のコドンに置換することを含み得る。ヌクレオチド配列の最適化はまた、翻訳を妨害するであろうmRNAの二次構造を減少させてそれゆえに翻訳効率が増加することもある。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるヌクレオチド配列は、宿主細胞(例えば、T細胞などの免疫細胞)における発現のためにコドン最適化がなされる。
【0256】
本発明はまた、本明細書に記載の核酸のいずれかのヌクレオチド配列に相補的であるヌクレオチド配列、またはストリンジェントな条件の下で本明細書に記載の核酸のいずれかのヌクレオチド配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む核酸も提供する。
【0257】
ストリンジェントな条件の下でハイブリダイズするヌクレオチド配列は、高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズすることがある。「高ストリンジェンシー条件」とは、ヌクレオチド配列が標的配列(本明細書に記載される核酸のいずれかのヌクレオチド配列)に対して、非特異的なハイブリダイゼーションの場合に比べてより強い検出可能な量で特異的及び/または選択的にハイブリダイズすることを意味する。高ストリンジェンシー条件としては、厳密な相補配列を有するポリヌクレオチドまたは散在するほんの僅かなミスマッチを含有するポリヌクレオチドを、当該ヌクレオチド配列と一致する僅かな小領域(例えば、3~10塩基)を偶然有するランダム配列と区別するであろう条件が挙げられる。そのような小さな相補領域は14~17塩基以上の完全長相補体よりも容易に融解するので、高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションは、それらを容易に区別できるものにする。比較的高いストリンジェンシーの条件は、例えば、約50~70℃の温度で約0.02~0.1MのNaClまたは同等のものによって提供されるような、低塩の及び/または高温の条件を含むであろう。そのような高ストリンジェンシー条件は、ヌクレオチド配列と鋳型または標的鎖との間のミスマッチを、あったとしてもほとんど許容しないので、本発明のTCRのいずれかの発現を検出することに特に適している。ホルムアミドの添加量を増やすことによって条件がよりストリンジェントになり得ることは、広く認識されている。
【0258】
本発明はまた、本明細書に記載される核酸のいずれかと少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超えて同一であるヌクレオチド配列を含む核酸も提供する。
【0259】
典型的には、上記核酸は、好適なベクター、例えば、プラスミド、コスミド、エピソーム、人工染色体、ファージまたはウイルスベクターの中に含ませることがあるDNAまたはRNA分子である。
【0260】
用語「ベクター」、「クローニングベクター」及び「発現ベクター」は、DNAまたはRNA配列(例えば、外来遺伝子)を宿主細胞の中に導入し、その結果として宿主を形質転換し、導入配列の発現(例えば、転写及び翻訳)を促進することができる、運搬媒体を意味する。したがって、本発明に包含されるさらなる目的は、本発明に包含される核酸を含むベクターに関する。
【0261】
そのようなベクターは、対象に投与されたときに上記のポリペプチドの発現をもたらすためまたは導くための調節エレメント、例えば、プロモーター、エンハンサー、ターミネーターなどを含み得る。動物細胞の発現ベクターに用いられるプロモーター及びエンハンサーの例としては、SV40の初期プロモーター及びエンハンサー(Mizukami T.et al.1987)、モロニーマウス白血病ウイルスのLTRプロモーター及びエンハンサー(Kuwana Y et al.1987)、免疫グロブリンH鎖のプロモーター(Mason J O et al.1985)及びエンハンサー(Gillies S D et al.1983)などが挙げられる。
【0262】
動物細胞のための任意の発現ベクターを使用することができる。好適なベクターの例としては、pAGE107(Miyaji H et al.1990)、pAGE103(Mizukami T et al.1987)、pHSG274(Brady G et al.1984)、pKCR(O’Hare K et al.1981)、pSG1 ベータ d2-4-(Miyaji H et al.1990)などが挙げられる。プラスミドの他の代表的な例としては、複製起点を含む複製プラスミド、または組込み型プラスミド、例えば、pUC、pcDNA、pBRなどが挙げられる。ウイルスベクターの代表的な例としては、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルス及びAAVのベクターが挙げられる。そのような組換えウイルスは、当技術分野で知られている技術によって、例えば、パッケージング細胞をトランスフェクトすることによって、またはヘルパープラスミドもしくはウイルスによる一過的トランスフェクションによって生産され得る。ウイルスパッケージング細胞の典型的な例としては、PA317細胞、PsiCRIP細胞、GPenv-ポジティブ細胞、293細胞などが挙げられる。そのような複製能欠損型の組換えウイルスを生産するための詳細なプロトコルは当技術分野でよく知られており、例えば、PCT公開WO95/14785、PCT公開WO96/22378、米国特許第5,882,877号、米国特許第6,013,516号、米国特許第4,861,719号、米国特許第5,278,056号及びPCT公開WO94/19478の中に見つけることができる。
【0263】
いくつかの実施形態では、組成物は、本明細書に記載の結合性タンパク質もしくはポリペプチド、またはその断片をコードするオープンリーディングフレームを含む、発現ベクターを含む。いくつかの実施形態では、核酸は、オープンリーディングフレームの発現に必要とされる調節エレメントを含む。そのようなエレメントには、例えば、プロモーター、開始コドン、終止コドン、及びポリアデニル化シグナルが含まれ得る。さらには、エンハンサーが含まれ得る。これらのエレメントは、結合性タンパク質、ポリペプチドまたはその断片をコードする配列に機能的に連結され得る。
【0264】
いくつかの実施形態では、ベクターは、CD8α及び/またはCD8βをコードする核酸配列をさらに含む。ある特定の実施形態では、CD8αまたはCD8βをコードする核酸配列は、タグ(例えば、CD34濃縮タグ)をコードする核酸に機能的に連結される。特定の実施形態では、CD8α及び/またはCD8βをコードする核酸配列は、内部リボソーム進入部位、またはP2A、E2A、F2AもしくはT2Aなどの自己切断ペプチドをコードする核酸配列に相互連結される。
【0265】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される発現ベクターは、表1~3に示される核酸のいずれかと少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超えて同一であるヌクレオチド配列を含む。
【0266】
上に記載されるように、プロモーターの代表的な例としては、限定されるものではないが、サルウイルス40(SV40)、マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、例えばHIVの長鎖末端反復配列(LTR)プロモーター、モロニーウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、例えばCMV即時早期プロモーター、エプスタインバーウイルス(EBV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)からのプロモーター、ならびにヒトアクチン、ヒトミオシン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチン及びヒトメタロチオネインなどのヒト遺伝子からのプロモーターが挙げられる。好適なポリアデニル化シグナルの例としては、限定されるものではないが、SV40ポリアデニル化シグナル及びLTRポリアデニル化シグナルが挙げられる。
【0267】
発現に必要な調節エレメントに加えて、他のエレメントを核酸分子の中に含ませることもある。そのような付加的なエレメントとしては、エンハンサーが挙げられる。エンハンサーとしては、本明細書に記載されるプロモーターが挙げられる。いくつかの実施形態では、エンハンサー/プロモーターとしては、例えば、ヒトアクチン、ヒトミオシン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチン、ならびにウイルスエンハンサー、例えば、CMV、RSV及びEBVからのものが挙げられる。
【0268】
いくつかの実施形態では、核酸は、以下にさらに記載される担体または送達ベクターに機能的に組み込まれ得る。有用な送達ベクターとしては、限定されるものではないが、生分解性マイクロカプセル、免疫刺激複合体(ISCOM)またはリポソーム、及び遺伝子操作型の弱毒化された生きた担体、例えばウイルスまたは細菌が挙げられる。
【0269】
いくつかの実施形態では、ベクターは、ウイルスベクター、例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、鶏痘、AVポックス、改変ワクシニアアンカラ(MVA)、及び他の組換えウイルスである。例えば、レンチウイルスベクターを使用してT細胞に感染させることがある。
【0270】
いくつかの実施形態では、組換え発現ベクターは、適切な宿主細胞、例えば、T細胞または抗原提示細胞、すなわちその細胞表面にペプチド/MHC複合体を提示しており(例えば、樹状細胞)CD8を欠く細胞に、ポリヌクレオチドを送達することができる。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、造血始原細胞またはヒト免疫系細胞である。例えば、免疫系細胞は、CD4T細胞、CD8T細胞、CD4/CD8二重陰性T細胞、gd T細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、またはそれらの任意の組合せであり得る。いくつかの実施形態では、T細胞が宿主であり、T細胞は、ナイーブ、中枢メモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、またはそれらの任意の組合せであり得る。したがって、組換え発現ベクターには、リンパ系組織特異的な転写調節エレメント(TRE)、例えば、Bリンパ球に、Tリンパ球にまたは樹状細胞に特異的なTREも含まれ得る。リンパ系組織特異的なTREは、当技術分野において既知である(例えば、Thompson et al.(1992)Mol.Cell.Biol.72:1043、 Todd et al.(1993)J.Exp.Med.777:1663、及びPenix et al.(1993)J.Exp.Med.775:1483を参照)。
【0271】
いくつかの実施形態では、組換え発現ベクターは、TCR α鎖、TCR β鎖及び/またはリンカーペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、組換え発現ベクターは、結合性タンパク質の完全長TCRアルファ及びTCRベータ鎖をそれらの間のリンカーとともにコードするヌクレオチド配列を含み、ベータ鎖をコードするヌクレオチド配列は、アルファ鎖をコードするヌクレオチド配列の5’側に位置する。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列は、完全長TCRアルファ及びTCRベータ鎖を、それらの間に位置するリンカーとともにコードし、TCRベータ鎖をコードするヌクレオチド配列は、TCRアルファ鎖をコードするヌクレオチド配列の3’側に位置する。いくつかの実施形態では、完全長TCRアルファ及び/またはTCRベータ鎖をそれらの断片に置き換える。
【0272】
以下にさらに記載されるように、本発明に包含される別の態様は、本発明による核酸及び/またはベクターによってトランスフェクトされた、感染した、または形質転換された細胞に関する。宿主細胞には、ベクター、または核酸及び/またはタンパク質の組込みを受け入れ得る任意の個々の細胞または細胞培養物、ならびに任意の子孫細胞が含まれ得る。当該用語はまた、遺伝的にまたは表現型的に、同じであるかまたは異なっているかにかかわらず、宿主細胞の子孫も包含する。好適な宿主細胞はベクターによって決まり得、好適な宿主細胞としては、哺乳動物細胞、動物細胞、ヒト細胞、サル細胞、昆虫細胞、酵母細胞、及び細菌細胞を挙げることができる。これらの細胞は、ウイルスベクターの使用、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラン、電気穿孔、マイクロインジェクションまたは他の方法を介した形質転換によってベクターまたは他の物質を取り込むように誘導され得る(例えば、Sambrook el al.(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2d ed.(Cold Spring Harbor Laboratory)を参照)。用語「形質転換」は、宿主細胞への「外来」(すなわち、外因性または細胞外)遺伝子、DNAまたはRNA配列の導入を意味し、その結果、宿主細胞は、導入された遺伝子または配列を発現して所望の物質、典型的には、導入された遺伝子または配列にコードされるタンパク質または酵素を産生することになる。導入されたDNAまたはRNAを受け取り、発現する宿主細胞は、「形質転換され」ている。
【0273】
本発明に包含される核酸は、好適な発現システムにおいて、本発明に包含される組換えポリペプチドを生産するために使用されることがある。用語「発現システム」は、例えばベクターによって運ばれ宿主細胞に導入された外来DNAがコードするタンパク質の発現ための、好適な条件下にある宿主細胞及び適合性ベクターを意味する。
【0274】
よくある発現システムとしては、E.coli宿主細胞及びプラスミドベクター、昆虫宿主細胞及びBaculovirusベクター、ならびに哺乳動物宿主細胞及びベクターが挙げられる。宿主細胞の他の例としては、限定されるものではないが、原核細胞(例えば、細菌)及び真核細胞(例えば、酵母細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞など)が挙げられる。具体的な例としては、E.coli、KluyveromycesまたはSaccharomyces酵母、哺乳動物細胞株(例えば、Vero細胞、CHO細胞、3T3細胞、COS細胞など)、ならびに初代または樹立された哺乳動物細胞培養物(例えば、リンパ芽球、線維芽細胞、胚性細胞、上皮細胞、神経細胞、脂肪細胞などから産生される)が挙げられる。例としてはまた、マウスSP2/0-Ag14細胞(ATCC CRL1581)、マウスP3X63-Ag8.653細胞(ATCC CRL1580)、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(以下、「DHFR遺伝子」という)を欠損しているCHO細胞(Urlaub G et al.(1980))、ラットYB2/3HL.P2.G11.16Ag.20細胞(ATCC CRL 1662、以下、「YB2/0細胞」という)なども挙げられる。いくつかの実施形態では、YB2/0細胞で発現した場合にキメラまたはヒト化結合性タンパク質のADCC活性が増強されるので、このYB2/0細胞を使用する。
【0275】
本発明はまた、結合性タンパク質、ペプチド及びその断片を発現している組換え宿主細胞を生産する方法であって、(i)上記のような組換え核酸またはベクターをコンピテント宿主細胞の中にin vitroまたはex vivoで導入すること、(ii)得られた組換え宿主細胞をin vitroまたはex vivoで培養すること、ならびに(iii)任意選択的に、上記結合性タンパク質、ペプチド及びそれらの断片を発現する細胞を選択することからなるステップを含む、上記方法も包含する。そのような組換え宿主細胞は、本発明に包含される診断方法、予後予測方法及び/または治療方法に使用され得る。
【0276】
別の態様では、上記のとおり、本発明は、選択的ハイブリダイゼーション条件下で本明細書に開示されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする単離核酸を提供する。したがって、この実施形態のポリヌクレオチドは、そのようなポリヌクレオチドを含む核酸を単離、検出及び/または定量するために使用され得る。例えば、本発明に包含されるポリヌクレオチドは、保管ライブラリー中の部分的クローンまたは完全長クローンを同定、単離または増幅するために使用され得る。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、ヒトまたは哺乳動物の核酸ライブラリーから単離された、あるいはそれに由来するcDNAに対して相補的な、ゲノム配列またはcDNA配列である。いくつかの実施形態では、cDNAライブラリーは、少なくとも約75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の、もしくはそれを上回る、または端点を含めてそれらの間にある任意の範囲、例えば少なくとも約80%~100%の、完全長の配列を含む。cDNAライブラリーを正規化して、稀な配列が表されるのを強めることがある。低ストリンジェンシーまたは中ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件は、専らというわけではないが典型的に、相補配列に対する低い配列同一性を有する配列の場合に採用される。中ストリンジェンシーな及び高ストリンジェンシーの条件は、同一性がより高い配列の場合に任意選択的に採用され得る。低ストリンジェンシーの条件は、約70%の配列同一性を有する配列の選択的ハイブリダイゼーションを可能にし、オーソロガス配列またはパラロガス配列を同定するために使用されることがある。任意選択的に、本発明に包含されるポリヌクレオチドは、本明細書に記載されるポリヌクレオチドにコードされる結合性タンパク質の少なくとも一部をコードすることになる。本発明に包含されるポリヌクレオチドは、本発明に包含される結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドに対する選択的ハイブリダイゼーションのために採用され得る核酸配列を包含する(例えば、上記Ausubel、及び上記Colliganを参照)。
【0277】
VII.操作型細胞
本発明に包含される態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のタンパク質、例えば、本明細書に記載されるMAGEC2免疫原性ペプチド、MAGEC2免疫原性ペプチド-MHC(pMHC)複合体、MAGEC2結合性タンパク質(例えば、TCR、TCRの抗原結合性断片、CAR、またはTCRとエフェクタードメインとを含む融合タンパク質)などを発現する宿主細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、本明細書に記載される核酸またはベクターを含む。
【0278】
いくつかの実施形態では、結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、養子移入療法に使用される宿主細胞(例えば、T細胞)を形質転換、トランスフェクトまたは形質導入するために使用される。核酸シーケンシング及び特定のTCRシーケンシングにおける進歩についての記載があり(例えば、Robins et al.(2009)Blood 114:4099、Robins et al.(2010)Sci.Translat.Med.2:47ra64、Robins et al.(2011)J.Imm.Meth.、及びWarren et al.(2011)Genome Res.21:790)、これらは、本発明に包含される実施形態を実施する過程で用いられることがある。同様に、所望の核酸でT細胞をトランスフェクトまたは形質導入する方法は当技術分野でよく知られており(例えば、米国特許出願公開第2004/0087025号)、所望の抗原特異性を有するT細胞を使用する養子移入手順も同様に知られている(例えば、Schmitt et al.(2009)Hum.Gen.20:1240、Dossett et al.(2009)Mol.Ther.77:742、Till et al.(2008)Blood 772:2261、Wang et al.(2007)Hum.Gene Ther.18:112、Kuball et al.(2007)Blood 709:2331、米国特許公開第2011/0243972号、米国公開第2011/0189141号、及びLeen et al.(2007)Ann.Rev.Immunol.25:243)。
【0279】
任意の好適な免疫細胞、例えば、T細胞、NK細胞、またはNK-T細胞は、本発明に包含される異種ポリヌクレオチドを含むように改変され得る。いくつかの実施形態では、細胞は、初代細胞、または細胞株の細胞であり得る。いくつかの実施形態では、改変型免疫細胞は、CD4T細胞、CD8T細胞、またはその両方を含む。本明細書における目的において、T細胞は、任意のT細胞、例えば、培養T細胞、例えば、初代T細胞、もしくは培養T細胞株由来の細胞、例えば、Jurkat、SupT1など、または哺乳動物から得られるT細胞であってよい。哺乳動物から得る場合、T細胞は、多数の供給源、例えば、限定されるものではないが、血液、骨髄、リンパ節、胸腺、または他の組織もしくは流体から得られ得る。また、T細胞を濃縮または精製することもある。いくつかの実施形態では、T細胞は、ヒトT細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞は、ヒトから単離したT細胞である。T細胞は、任意のタイプのT細胞であってよく、任意の発達段階のものであってよく、例えば、限定されるものではないが、細胞傷害性リンパ球、細胞傷害性リンパ球前駆細胞、細胞傷害性リンパ球始原細胞、細胞傷害性リンパ球幹細胞、CD4/CD8二重陽性T細胞、CD4ヘルパーT細胞、例えば、Th1及びTh2細胞、CD4T細胞、CD8T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、メモリーT細胞(例えば、セントラルメモリーT細胞及びエフェクターメモリーT細胞、ナイーブT細胞などが挙げられる。
【0280】
細胞(例えば、T細胞)にトランスフェクトもしくは形質導入するために、または本明細書に記載される方法によって包含されるヌクレオチド配列もしくは組成物を投与するために、任意の適切な方法が用いられ得る。ポリヌクレオチドを宿主細胞に送達するための方法としては、例えば、カチオン性ポリマー、脂質様分子、及びある特定の市販品、例えば、in vivo-jetPEI(登録商標)の使用が挙げられる。他の方法としては、ex vivo形質導入、注入、電気穿孔、DEAE-デキストラン、超音波処理負荷、リポソーム媒介性トランスフェクション、受容体媒介形質導入、微粒子銃、トランスポゾン媒介移入などが挙げられる。宿主細胞をトランスフェクトまたは形質導入するさらなる方法は、本出願においてさらに詳しく記載されるベクターを採用する。
【0281】
本明細書に記載される改変型免疫細胞は、T細胞の結合、活性化または誘導の判定を含めて、また、抗原特異的なT細胞応答の判定も含めて、T細胞活性を評価するための方法論を用いて、機能的特性評価がなされ得る。例としては、T細胞増殖、T細胞サイトカイン放出、抗原特異的T細胞刺激、MHC拘束性T細胞刺激、CTL活性(例えば、予め負荷した標的細胞からの51Cr放出を検出することによる)、T細胞表現型マーカー発現の変化、及びT細胞機能の他の尺度の判定が挙げられる。
【0282】
これら及び同様のアッセイを実施するための手順は、例えば、Lefkovits(Immunology Methods Manual:Hie Comprehensive Sourcebook of Techniques,1998)、及びCurrent Protocols in Immunology,Weir,(1986)Handbook of Experimental Immunology,Blackwell Scientific,Boston,MA、Mishell and Shigii(eds.)(1979)Selected Methods in Cellular Immunology,Freeman Publishing,San Francisco,CA、Green and Reed(1998)Science 281:1309、ならびにその中で引用される参考文献の中に見つかり得る。
【0283】
いくつかの実施形態では、結合性タンパク質、例えば、TCRまたはその抗原結合性部分に対する見かけの親和性は、種々の濃度のMHC多量体に対する結合性を評価することによって測定され得る。「MHC-ペプチド多量体染色」とは、抗原特異的T細胞を検出するために用いられるアッセイを指し、これは、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗原(例えば、MAGEC2免疫原性ペプチド)と同種の(例えば、同一の、または関係する)アミノ酸配列を有する同一のペプチドを各々が含んでいるMHC分子の四量体に注目しており、複合体は、同族抗原を認識する結合性タンパク質、例えば、TCRまたはその抗原結合性部分に結合することができる。各MHC分子はビオチン分子でタグ付けされることがある。ビオチン化MHC/ペプチドは、ストレプトアビジン(これは、蛍光標識されていることがある)の付加によって多量体化(例えば、四量体化)されることがある。
【0284】
多量体は、蛍光標識によってフローサイトメトリーで検出され得る。いくつかの実施形態では、本発明に包含される、親和性が増強した結合性タンパク質、例えば、TCRまたはその抗原結合性部分は、pMHC多量体アッセイを用いて検出または選択される。いくつかの例では、結合性タンパク質、例えばTCRまたはその抗原結合性部分の見かけのKを、ある濃度範囲の標識付き四量体の2倍希釈液を使用して測定し、その後、非線形回帰による結合曲線の決定を行うが、見かけのKは、最大半量の結合を生じさせるリガンドの濃度として決定される。
【0285】
サイトカインのレベルは、本明細書に記載される方法、例えば、ELISA、ELISPOT、細胞内サイトカイン染色及びフローサイトメトリー、ならびにそれらの組合せ(例えば、細胞内サイトカイン染色及びフローサイトメトリー)を用いて決定され得る。
【0286】
免疫応答の抗原特異的な誘発または刺激から生じる免疫細胞増殖及びクローン増殖は、リンパ球、例えば、末梢血細胞またはリンパ節由来の細胞のサンプルの中の循環リンパ球を単離すること、その細胞を抗原で刺激すること、ならびにサイトカイン産生、細胞増殖及び/または細胞生存性を測定することによって、例えば、トリチウム化チミジンの取り込みまたは非放射性アッセイによって、例えば、MTTアッセイなどによって、判定され得る。Th1免疫応答とTh2免疫応答との間のバランスに対する本明細書に記載の免疫原の影響は、例えば、Th1サイトカイン、例えば、IFN-g、IL-12、IL-2及びTNF-b、ならびに2型サイトカイン、例えば、IL-4、IL-5、IL-9、IL-10及びIL-13のレベルを決定することによって調べることができる。
【0287】
本発明に包含される宿主細胞は、本明細書に記載の結合性タンパク質をコードする単一のポリヌクレオチドを含むことがあり、または結合性タンパク質は、1つよりも多いポリヌクレオチドにコードされることがある。言い換えれば、結合性タンパク質の構成要素または部分は、2つ以上のポリヌクレオチドにコードされることがあり、これらのポリヌクレオチドは、単一の核酸分子上に含有されていてもよく、または2つ以上の核酸分子の上に含有されていてもよい。
【0288】
いくつかの実施形態では、本発明に包含される結合性タンパク質の2つ以上の構成要素または部分をコードするポリヌクレオチドは、単一のオープンリーディングフレームの中で機能的に関連付けられた2つ以上のコード配列を含む。有益なことに、そのような配置によって、所望の遺伝子産物の連係の取れた発現、例えば、TCRのアルファ鎖及びベータ鎖の同時発現を可能にすることができ、その結果それらは約1:1の比で産生される。いくつかの実施形態では、本発明に包含される結合性タンパク質の2つ以上の代替遺伝子産物、例えば、TCR(例えば、アルファ鎖及びベータ鎖)またはCARは、別々の分子として発現し、翻訳後に会合する。さらなる実施形態では、本発明に包含される結合性タンパク質の2つ以上の代替遺伝子産物は、切断可能または除去可能なセグメントによって分離された部分を有する単一のペプチドとして発現する。例えば、単一のポリヌクレオチドまたはベクターにコードされる分離可能なポリペプチドを発現させるのに有用な自己切断ペプチドは、当技術分野において既知であり、例えば、ブタテッショウウイルス-1 2 A(P2A)ペプチド、ゾセアアシグナウイルス2A(T2A)ペプチド、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)2A(E2A)ペプチド、及び口蹄疫vims 2A(F2A)ペプチドが挙げられる。
【0289】
いくつかの実施形態では、本発明に包含される結合性タンパク質は、1つ以上の接合アミノ酸を含む。「接合アミノ酸」または「接合アミノ酸残基」とは、ポリペプチドの2つの隣接するモチーフ、領域またはドメインの間、例えば、結合性ドメインと隣接する定常ドメインとの間、またはTCR鎖と隣接する自己切断ペプチドとの間にある1個以上(例えば、2~約10個)のアミノ酸残基を指す。接合アミノ酸は、融合タンパク質をコードする構築物の設計の結果として得られるもの(例えば、融合タンパク質をコードする核酸分子を構築する過程で制限酵素部位の使用の結果として得られるアミノ酸残基)、または例えば本発明に包含されるコードされた結合性タンパク質の1つ以上のドメインに隣接する自己切断ペプチド(例えば、自己切断によって1つ以上の結合アミノ酸をa鎖、TCRβ鎖またはその両方の中に残す、TCRa鎖とTCRβ鎖との間に配置されたP2Aペプチド)の切断の結果として得られるものであり得る。
【0290】
本発明に包含される操作型免疫細胞は、例えばMAGEC2発現を特徴とする障害の治療薬として投与され得る。いくつかの状況では、細胞性の免疫療法に関連する活性を低減または停止させることが望ましいことがある。このため、いくつかの実施形態では、本発明に包含される操作型免疫細胞は、所望の場合にそのような細胞の活性を選択的に調節する(例えば、低下させるまたは除去する)ために同種の薬物または他の化合物を使用して標的化されることができる結合性タンパク質及び補助タンパク質、例えば安全スイッチタンパク質をコードする、異種ポリヌクレオチドを含む。これ関して使用される安全スイッチタンパク質としては、例えば、細胞外N末端側リガンド結合性ドメイン及び細胞内受容体チロシンキナーゼ活性を欠くが天然アミノ酸配列、I型膜貫通細胞表面局在化、及び医薬品グレード抗EGFRモノクローナル抗体に対する立体配座的に完全な結合性エピトープを保持している切断型EGF受容体ポリペプチド(huEGFRt)、セツキシマブ(Erbitux)tEGF受容体(tEGFr;Wang et al.(2011)Blood 118:1255-1263)、カスパーゼポリペプチド(例えば、iCasp9;Straathof et al.(2005)Blood 105:4247-4254、Di Stasi et al.(2011)N.Engl.J.Med.365:1673-1683、Zhou and Brenner(2016)Hematol.pii:S0301-472X:30513-30516)、RQR8(Philip et al.(2014)Blood 124:1277-1287)、及びヒトc-mycタンパク質タグ(Kieback et al.(2008)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 105:623-628)が挙げられる。
【0291】
治療用細胞に有用な他の補助的構成要素は、細胞を同定、選別、単離、濃縮または追跡することを可能にするタグまたは選択マーカー(例えば、CD34濃縮タグ)を含む。例えば、所望の特質(例えば、抗原特異的TCR、及び安全スイッチタンパク質)を有するマーカー付き免疫細胞をサンプル中のマーカーなしの細胞から選別し、所望の純度の治療用製品の中への含有のためにより効率的に活性化及び増殖させることができる。
【0292】
本明細書で使用する場合、用語「選択マーカー」は、細胞に同定可能な変化を与えて、選択マーカーを含むポリヌクレオチドで形質導入された免疫細胞の検出及び正の選択を可能にする核酸構築物を含む。例えば、RQRは、CD20の細胞外大ループ及びCD34の2つの最小限の結合部位を含む選択マーカーである。いくつかの実施形態では、RQRをコードするポリヌクレオチドは、CD34の16アミノ酸の最小エピトープをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態、例えば、本明細書の実施例に提供されるある特定の実施形態では、CD34の最小エピトープはCD8ストークドメイン(Q8)のアミノ末端側の位置に組み込まれている。さらなる実施形態では、CD34の最小結合性部位配列を、CD20の標的エピトープと組み合わせて、T細胞のための小型マーカー/自殺遺伝子(RQR8)を形成することがある(Philip et al.2014)。この構築物によって、例えば、磁気ビーズに結合したCD34特異抗体(Miltenyi)を使って、当該構築物を発現している免疫細胞を選択することが可能になり、臨床的に承認済みの医薬品抗体であるリツキシマブを利用して、導入遺伝子を発現している操作型T細胞を選択的に除くことが可能になる(例えば、Philip et al.(2014)Blood 124:1277-1287、米国特許公開第2015-0093401号、及び米国特許公開第2018-0051089号)。
【0293】
さらなる例示的な選択マーカーとしては、T細胞上で通常発現しないいくつかの切断型I型膜貫通タンパク質:切断型低親和性神経増殖因子、切断型CD19、及び切断型CD34が挙げられる(例えば、Di Stasi et al.(2011)N.Engl.J.Med.365:1673-1683、Mavilio et al.(1994)Blood 83:1988-1997、及びFehse et al.(2000)Mol.Ther.7:448-456)。CD19及びCD34の特に魅力的な特徴は、臨床グレードの選別のためにこれらのマーカーを標的とすることができる既成のMiltenyi CliniMACs(商標)選択システムが利用可能であることである。しかしながら、CD19及びCD34は比較的大きな表面タンパク質であり、ベクターのパッケージング能、及び組み込みベクターの転写効率を損なう可能性がある。細胞外、非シグナル伝達ドメインまたは様々なタンパク質(例えば、CD19、CD34、LNGFRなど)を含有する表面マーカーを採用することもある。任意の選択マーカーが採用され得、適正製造規範において許容可能であるはずである。いくつかの実施形態では、選択マーカーは、関心とする遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド(例えば、本発明に包含される結合性タンパク質、例えば、TCRもしくはCAR、またはそれらの抗原結合性断片など)と一緒に発現する。選択マーカーのさらなる例としては、例えば、レポーター、例えば、GFP、EGFP、β-galまたはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)などが挙げられる。いくつかの実施形態では、選択マーカー、例えばCD34などが細胞によって発現され、CD34は、本明細書に記載される方法に使用するための関心とする形質導入された細胞を(例えば、免疫磁気選択によって)選択、濃縮または単離するために用いられ得る。本明細書で使用する場合、CD34マーカーは、抗CD34抗体、または、例えば、CD34に結合するscFv、TCRもしくは他の抗原認識部分と区別される。
【0294】
いくつかの実施形態では、選択マーカーは、RQRポリペプチド、切断型低親和性神経増殖因子(tNGFR)、切断型CD19(tCD19)、切断型CD34(tCD34)、またはそれらの任意の組合せを含む。
【0295】
背景として、CD4T細胞を免疫療法細胞製品に含ませることにより、抗原によって誘導されるIL-2分泌をもたらすことができ、移入された細胞傷害性CD8T細胞の持続性及び機能を増強することができる(例えば、Kennedy et al.(2008)Immunol.Rev.222:129、及びNakanishi et al.Nature(2009)52:510)。いくつかの実施形態では、CD4T細胞におけるクラスI拘束性TCRは、クラスI HLAペプチド複合体に対するTCRの感度を高めるためにCD8共受容体の移入を必要とすることがある。CD4共受容体は、CD8とは構造が異なっており、事実上、CD8共受容体の代わりに用いることができない(例えば、Stone & Kranz(2013)Front.Immunol.4:244、及びCole et al.(2012)Immunology 737:139)。それゆえに、本発明に包含される組成物及び方法に使用するための別の補助的タンパク質は、CD8共受容体またはその構成要素を含む。本発明に包含される結合性タンパク質をコードする異種ポリヌクレオチドを含む操作型免疫細胞は、いくつかの実施形態では、CD8共受容体タンパク質またはそのベータ鎖もしくはアルファ鎖構成要素をコードする異種ポリヌクレオチドをさらに含むことがある。
【0296】
宿主細胞は、結合性タンパク質、安全スイッチタンパク質、選択マーカー及びCD8共受容体タンパク質をコードする単一のポリヌクレオチドを、含有するように効率的に形質導入され得、それを効率的に発現し得る。
【0297】
一実施形態では、本発明に包含される宿主細胞は、改変型T細胞が共刺激分子を発現するような、共刺激分子をコードする核酸をさらに含む。いくつかの実施形態では、共刺激ドメインは、CD3、CD27、CD28、CD83、CD86、CD127、4-1BB、4-1BBL、PD1及びPD1Lから選択される。
【0298】
前述の実施形態のいずれかでは、本明細書に記載の結合性タンパク質を発現する宿主細胞は、汎用免疫細胞であることがある。「汎用免疫細胞」は、PD-l、LAG-3、CTLA4、TIM3、TIGIT、HLA分子、TCR分子またはそれらの任意の組合せから選択されるポリペプチド産物をコードする1つ以上の内因性遺伝子の発現を低減または排除するように改変された免疫細胞を含む。理論に拘束されることを望むものではないが、特定の内因的に発現した免疫細胞タンパク質は、改変型免疫細胞の免疫活性を下方制御することがあり(例えば、PD-l、LAG-3、CTLA4、TIGIT)、または本発明に包含される異種発現した結合性タンパク質の結合活性を妨害することがある(例えば、非MAGEC2抗原に結合して、MHC分子との関連においてMAGEC2免疫原性ペプチドなどのMAGEC2抗原を発現する標的細胞に対する改変型免疫細胞の結合を妨害する、内因性TCR。さらには、ドナー免疫細胞上に発現した内因性タンパク質(例えば、免疫細胞タンパク質、例えば、HLAアレル)が同種異系宿主によって異物として認識されることがあり、これは、同種異系宿主による改変型ドナー免疫細胞の排除または抑制を招くことがある。
【0299】
したがって、そのような内因性遺伝子またはタンパク質の発現または活性を減少させるまたはなくすことにより、自家または同種異系宿主環境における改変型免疫細胞の活性、寛容性または持続性を改善することができ、及び細胞を(例えば、HLAタイプにかかわらず任意のレシピエントに)汎用的に投与することが可能になる。いくつかの実施形態では、本発明に係る細胞は、移植を可能にするように遺伝学的に同一または十分に同一であり免疫学的に適合するという意味において、同系である。いくつかの実施形態では、汎用免疫細胞は、ドナー細胞(例えば、同種異系)または自家細胞である。いくつかの実施形態では、本発明に包含される改変型免疫細胞(例えば、汎用免疫細胞)は、PD-l、LAG-3、CTLA4、TIM3、TIGIT、HLA構成要素(例えば、α1マクログロブリン、α2マクログロブリン、α3マクログロブリン、β1マイクログロブリンまたはβ2マイクログロブリンをコードする遺伝子)、またはTCR構成要素(例えば、TCR可変領域またはTCR定常領域をコードする遺伝子)をコードする遺伝子の1つ以上の染色体遺伝子ノックアウトを含む(例えば、Torikai el al.(2016)Nature Sci.Rep.6:21757、Torikai et al.(2012)Blood 179:5697、及びTorikai et al.(2013)Blood 722:1341を参照されたく、これらはまた、本発明によれば有用である、代表的な例示的な遺伝子編集技術、組成物及び養子細胞療法も提供している)。
【0300】
本明細書で使用する場合、用語「染色体遺伝子ノックアウト」とは、機能的に活性な内因性ポリペプチド産物の宿主細胞による産生を防止する(例えば、減少させる、遅延させる、抑制する、または消失させる)、遺伝子改変、または宿主細胞に導入された阻害剤を指す。染色体遺伝子ノックアウトをもたらす改変としては、例えば、ナンセンス変異(早期終止コドンの形成を含む)、ミスセンス変異、遺伝子欠失及び鎖切断の導入、ならびに宿主細胞における内因的遺伝子発現を阻害する阻害性核酸分子の異種発現を挙げることができる。
【0301】
いくつかの実施形態では、染色体遺伝子ノックアウトまたは遺伝子ノックインは、宿主細胞の染色体編集によって作られ得る。染色体編集は、例えば、エンドヌクレアーゼを用いて行われ得る。本明細書で使用する場合、「エンドヌクレアーゼ」とは、ポリヌクレオチド鎖内のホスホジエステル結合の切断を触媒することができる酵素を指す。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、標的遺伝子を切断し、それによって、標的遺伝子を不活性化または「ノックアウト」することができる。エンドヌクレアーゼは、天然、組換え、遺伝子改変または融合エンドヌクレアーゼであり得る。エンドヌクレアーゼによって生じる核酸鎖切断は一般に、相同組換えまたは非相同末端結合(NHEJ)という別個な機構を介して修復される。相同組換えの過程で、ドナー核酸分子は、ドナーの遺伝子「ノックイン」のため、標的遺伝子「ノックアウト」のため、及び任意選択的に、ドナー遺伝子ノックインまたは標的遺伝子ノックアウト事象を介して標的遺伝子を不活性化するために使用され得る。NHEJは、切断部位でのDNA配列の変化(例えば、少なくとも1つのヌクレオチドの置換、欠失または付加)をしばしば生じさせるエラープローンな修復プロセスである。NHEJは、標的遺伝子を「ノックアウト」するために用いられ得る。エンドヌクレアーゼの例としては、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ、TALE-ヌクレアーゼ、CRISPR-Casヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、megaTALが挙げられる。
【0302】
本明細書で使用する場合、「亜鉛フィンガーヌクレアーゼ」(ZFN)とは、非特異的DNA切断ドメイン、例えばFok1エンドヌクレアーゼに融合した亜鉛フィンガーDNA結合性ドメインを含む融合タンパク質を指す。約30アミノ酸の各亜鉛フィンガーモチーフは約3塩基対のDNAに結合し、ある特定の残基のアミノ酸は三重配列特異性を改変するように変化していることがある(例えば、Desjarlais et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.90:2256-2260、及びWolfe et al.(1999)J.Mol.Biol.255:1917-1934)。複数の亜鉛フィンガーモチーフをタンデムに連結して所望のDNA配列、例えば約9~約18塩基対の範囲の長さを有する領域に対する結合特異性を作り出してもよい。背景として、ZFNは、ゲノム中に部位特異的なDNA二本鎖切断(DSB)の形成を触媒することによってゲノム編集を媒介し、ゲノムと相同な隣接配列を含む導入遺伝子のDSB部位における指向的組込みは、相同組換え修復によって促進される。あるいは、ZFNによって生成されるDSBは、切断部位におけるヌクレオチドの挿入または欠失を生じさせるエラープローンな細胞修復経路である非相同末端結合(NHEJ)による修復を介して、標的遺伝子のノックアウトをもたらし得る。いくつかの実施形態では、遺伝子ノックアウトは、ZFN分子を用いて作られた挿入、欠失、変異またはそれらの組合せを含む。
【0303】
本明細書で使用する場合、「転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ」(TALEN)は、TALE DNA結合性ドメイン及びDNA切断ドメイン、例えば、Fok1エンドヌクレアーゼを含む融合タンパク質を指す。「TALE DNA結合性ドメイン」または「TALE」は、1つ以上のTALE反復ドメイン/単位から構成され、その各々は一般に、多様な12番目及び13番目のアミノ酸を有する高度に保存された33~35アミノ酸配列を有する。TALE反復ドメインは、TALEが標的DNA配列に結合することに関与する。多様なアミノ酸残基は、反復可変二残基(RVD)と呼ばれるが、特異的なヌクレオチド認識と相関する。これらのTALEのDNA認識のための天然(カノニカル)コードは決定がなされており、TALEの位置12及び位置13にあるHD(ヒスチン-アスパラギン酸)配列がシトシン(C)に対するTALEの結合をもたらし、NG(アスパラギン-グリシン)がTヌクレオチドに結合し、NI(アスパラギン-イソロイシン)がAに結合し、NN(アスパラギン-アスパラギン)がGまたはAヌクレオチドに結合し、NG(アスパラギン-グリシン)がTヌクレオチドに結合する、といった具合である。非カノニカル(非定型)RVDも当技術分野でよく知られている(例えば米国特許公開第2011/0301073号、参照によりその非定型RVDのすべてを本出願に援用する)。TALENは、T細胞のゲノム中に部位特異的な二本鎖切断(DSB)を導き入れるために使用され得る。非相同末端結合(NHEJ)は、アニーリングするための配列重複がほとんどまたは全くない二本鎖切断部の両側のDNAをライゲートし、それによって、遺伝子発現をノックアウトするエラーを導入する。あるいは、相同組換え修復は、導入遺伝子中に相同隣接配列が存在するのであれば、導入遺伝子をDSB部位に導入し得る。いくつかの実施形態では、遺伝子ノックアウトは、挿入、欠失、変異またはそれらの組合せを含み、TALEN分子を用いて作られる。
【0304】
本明細書で使用する場合、「規則的な間隔をもってクラスター化された短鎖反復回文配列/Cas」(CRISPR/Cas)ヌクレアーゼシステムとは、CRISPR RNA(crRNA)依存性Casヌクレアーゼを使用して、ゲノム内の標的部位(プロトスペーサーとして知られる)を塩基対合相補性によって認識し、次いで、相補標的配列の3’のすぐ後に短い保存されたプロトスペーサー関連モチーフ(PAM)が続いている場合にDNAを切断する、システムを指す。CRISPR/Casシステムは、Casヌクレアーゼの配列及び構造に基づいて3つのタイプ(すなわち、タイプI、タイプII、及びタイプIII)に分類される。タイプI及びタイプIIIにおいてcrRNA依存的監視複合体は複数のCasサブユニットを必要とする。タイプIIシステムは、最も研究されているものであるが、少なくとも3つの構成要素を含む:RNA依存性Cas9ヌクレアーゼ、crRNA、及びトランス作用性crRNA(tracrRNA)。tracrRNAは、二本鎖形成領域を含む。crRNA及びtracrRNAは二重鎖を形成し、これは、Cas9ヌクレアーゼと相互作用すること、及びcrRNA上のスペーサーとPAMの上流にある標的DNA上のプロトスペーサーとの間でのワトソンクリック塩基対合によって標的DNA上の特定部位へCas9/crRNA:tracrRNA複合体を導くことができる。Cas9ヌクレアーゼは、crRNAスペーサーによって画定される領域内で、二本鎖切断部を切断する。NHEJによる修復の結果、挿入及び/または欠失が生じ、これが標的遺伝子座の発現を妨害する。あるいは、相同隣接配列を有する導入遺伝子が、相同組換え修復を介して、DSBの部位に導入されることがある。crRNA及びtracrRNAを操作して一本鎖ガイドRNA(sgRNAまたはgRNA)にすることがある(例えば、Jinek et al.(2012)Science 337:816-821)。さらに、標的部位と相補的であるガイドRNAの領域を、所望の配列を標的とするように改変またはプログラムすることがある(Xie et al.(2014)PLOS One 9:el00448、米国特許公開第US2014/0068797号、米国特許公開第US2014/0186843号、米国特許第8,697,359号、及びPCT公開第WO2015/071474号)。いくつかの実施形態では、遺伝子ノックアウトは、挿入、欠失、変異、またはそれらの組合せを含み、CRISPR/Casヌクレアーゼシステムを用いて作られる。
【0305】
例示的なgRNA配列、及び免疫細胞タンパク質をコードする内因性遺伝子をノックアウトするためにgRNA配列を使用する例示的な方法としては、Ren et al.(2017)Clin.Cancer Res.23:2255-2266に記載されるものが挙げられるが、これには、代表的な例示的gRNA、CAS9DNA、ベクター及び遺伝子ノックアウト技術が提供されている。
【0306】
本明細書で使用する場合、「メガヌクレアーゼ」は、「ホーミングエンドヌクレアーゼ」とも呼ばれるが、大きな認識部位(約12~約40塩基対の二本鎖DNA配列)を特徴とするエンドデオキシリボヌクレアーゼを指す。メガヌクレアーゼは、配列及び構造モチーフに基づいて5つのファミリーに分けられ得る:LAGLIDADG、GIY-YIG、HNH、His-Cysボックス、及びPD-(D/E)XK。例示的なメガヌクレアーゼとしては、I-Scel、I-Ceul、PI-PspI、RI-Sce、I-ScelV、I-Csml、I-Panl、I-Scell、I-Ppol、I-SceIII、I-Crel、I-Tevl、I-TevII、及びI-TevIIIが挙げられ、それらの認識配列は既知である(例えば、米国特許第5,420,032号及び同第6,833,252号、Belfort et al.(1997)Nucl.Acids Res.25:3379-3388、Dujon et al.(1989)Gene 52:115-118、Perler et al.(1994)Nucl.Acids Res.22:1125-1127、Jasin(1996)Trends Genet.72:224-228、Gimble et al.(1996)J.Mol.Biol.263:163-180、ならびにArgast et al.(1998)J.Mol.Biol.280:345-353)。
【0307】
いくつかの実施形態では、天然に存在するメガヌクレアーゼを使用して、関心とする標的、例えば、免疫チェックポイント、HLA-コード遺伝子またはTCR構成要素コード遺伝子の部位特異的なゲノム改変を促進することがある。
【0308】
他の実施形態では、標的遺伝子に対する新規な結合特異性を有する操作型メガヌクレアーゼを、部位特異的なゲノム改変に使用する(例えば、Porteus et al.(2005)Nat.Biotechnol.23:967-73、Sussman et al.(2004)J.Mol.Biol.342:31-41、Epinat et al.(2003)Nucl.Acids Res.37:2952-2962、Chevalier et al.(2002)Mol.Cell 70:895-905、Ashworth et al.(2006)Nature 441:656-659、Paques et al.(2007)Curr.Gene Ther.7:49-66、ならびに米国特許公開第US2007/0117128号、同第US2006/0206949号、同第US2006/0153826、同第US2006/0078552及び同第US2004/0002092を参照)。さらなる実施形態では、megaTALとして知られる融合タンパク質を作るようにTALENのモジュラーDNA結合性ドメインで改変されたホーミングエンドヌクレアーゼを使用して、染色体遺伝子ノックアウトを生成する。megaTALは、1つ以上の標的遺伝子をノックアウトするためだけでなく、関心とするポリペプチドをコードする外来ドナー鋳型と併用される場合に異種または外来ポリヌクレオチドを導入(ノックイン)するためにも、利用され得る。
【0309】
いくつかの実施形態では、染色体遺伝子ノックアウトは、MAGEC2抗原に(例えば、特異的及び/または選択的に)結合する抗原特異的な受容体をコードする異種ポリヌクレオチドを含む宿主細胞(例えば、免疫細胞)に導入された阻害性核酸分子を含み、当該阻害性核酸分子は標的特異的な阻害剤をコードし、コードされた標的特異的な阻害剤は、宿主免疫細胞における内因性遺伝子(すなわち、PD-1、TIM3、LAG3、CTLA4、TIGIT、HLA構成要素もしくはTCR構成要素、またはそれらの任意の組合せ)の発現を阻害する。
【0310】
染色体遺伝子ノックアウトは、そのノックアウト手順をまたは薬剤を使用した後に宿主免疫細胞のDNA配列決定を行うことによって、直接的に確認され得る。
【0311】
染色体遺伝子ノックアウトはまた、ノックアウト後の遺伝子発現の非存在(例えば、遺伝子にコードされるmRNAまたはポリペプチド産物の非存在)からも推測され得る。
【0312】
いくつかの実施形態では、本発明に包含される宿主細胞は、MHC分子との関連においてMAGEC2免疫原性ペプチドを含むペプチド-MHC(pMHC)複合体を含む標的細胞の50%以上を、特異的及び/または選択的に殺滅することができる。
【0313】
いくつかの実施形態では、改変型免疫細胞は、MHC分子との関連においてMAGEC2免疫原性ペプチドを含むペプチド-MHC(pMHC)複合体を含む標的細胞と接触した場合にサイトカインを産生することができる。
【0314】
いくつかの実施形態では、サイトカインは、IFN-γまたはIL2を含む。いくつかの実施形態では、サイトカインは、TNF-αを含む。
【0315】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、MAGEC2の発現が転写物100万個あたり約1,000個の転写物(約1,000TPM)、950TPM、900TPM、850TPM、800TPM、750TPM、700TPM、650TPM、600TPM、550TPM、500TPM、450TPM、400TPM、350TPM、300TPM、250TPM、200TPM、150TPM、100TPM、95TPM、90TPM、85TPM、80TPM、75TPM、70TPM、65TPM、60TPM、55TPM、50TPM、45TPM、40TPM、35TPM、34TPM、33TPM、32TPM、31TPM、30TPM、29TPM、28TPM、27TPM、26TPM、25TPM、24TPM、23TPM、22TPM、21TPM、20TPM、19TPM、18TPM、17TPM、16TPM、15TPM、14TPM、13TPM、12TPM、11TPM、10TPM、9TPM、8TPM、7TPM、6TPM、5TPM、4TPM、3TPM、2TPM及び1TPM、もしくはそれ未満、または端点を含めてそれらの間にある任意の範囲、例えば、約1,000TPM以下~約35TPM以下)のレベルである標的細胞と接触した場合に、より高いレベルのサイトカインまたは細胞傷害性分子を産生することができる。いくつかの実施形態では、低いMAGEC2発現レベルは「ヘテロ接合型発現」と呼ばれ、これは、約1TPM~約35TPM、または端点を含めてそれらの間にある任意の範囲、例えば1~32TPMを意味する。例えば、宿主細胞は、少なくとも1.2倍、1.5倍、1.8倍、2.0倍、2.2倍、2.5倍、2.8倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、5.5倍、6倍、6.5倍、7倍、7.5倍、8倍、8.5倍、9倍、9.5倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、1000倍高い、もしくはそれを超えてより高い、または端点を含めてそれらの間にある任意の範囲でより高い、例えば1.2倍~2倍高いレベルのサイトカインまたは細胞傷害性分子を産生することができる。
【0316】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、MAGEC2を発現している標的細胞(例えば、MAGEC2を発現している過剰増殖性細胞)を特異的及び/または選択的に殺滅することができる。ある特定の実施形態では、標的細胞は、MHC分子(例えば適合するMHC分子)との関連においてMAGEC2免疫原性ペプチドを発現する。
【0317】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、MAGEC2抗原を発現しない、本明細書に記載の結合性タンパク質によって認識されない、血清型HLA-B07でない、及び/またはHLA-B07アレル、例えば、HLA-B0702、HLA-B0704、HLA-B0705、HLA-B0709、HLA-B0710、HLA-B0715またはHLA-B0721アレルを発現しない。例えば、患者は、MAGEC2陰性であるかまたは本明細書に記載のMAGEC2免疫原性ペプチドを提示するMHCが陰性(例えば、HLA-B07:02陰性及び/またはHLA-A24:02陰性)である健常ドナーからの宿主細胞を受けることがあり、さらに言えば、選択及び/または操作された自家細胞さえ受けることがある。そのドナーから単離された細胞を移植材料の供給源として使用することがある。詳しくは、上記ドナーから単離されたT細胞は、例えば本明細書に記載のMAGEC2結合性タンパク質を発現することによって、MAGEC2を認識するように遺伝子操作され得る。ドナー細胞は、患者に細胞集団を生着させるために使用されることがあり(例えば、免疫系を再構成するために使用される造血幹細胞)、宿主細胞は、非常に特異的な抗腫瘍作用を誘発することを目的として患者の中に輸注されることがある。操作型ドナーT細胞は、患者のMAGEC2陽性を認識及び排除してそれによって、MAGEC2発現を特徴とする障害の再発を防止し、完全な治癒を促進するように、設計され得る。移植される細胞はドナーに由来し、それゆえに、MAGEC2陰性、本明細書に記載のMAGEC2免疫原性ペプチドを提示するMHCについての血清型陰性(例えば、HLA-B07血清型陰性、及び/またはHLA-A24:02血清型陰性)、及び/または本明細書に記載のMAGEC2免疫原性ペプチドを提示するMHCについての陰性(例えば、HLA-B07:02陰性、及び/またはHLA-A24:02陰性)のいずれかであるため、本明細書に記載の操作型細胞は、最小限に抑えられた有害副作用を有し得る。患者に適合するそのような宿主細胞及び治療方法は、以下にさらに記載される治療方法に従って用いられ得る。
【0318】
いくつかの実施形態では、殺滅を殺滅アッセイによって判定する。いくつかの実施形態では、殺滅アッセイは、宿主細胞と標的細胞とを20:1~0.625:1、例えば、15:1~1.25:1、10:1~1.5:1、8:1~3:1、6:1~5:1、20:1~5:1、10:1~2.5:1などの比で共培養することによって行われる。いくつかの実施形態では、標的細胞に1μg/mL~50pg/mLのMAGEC2ペプチド、例えば、1ug/mL~10ng/mL、500ng/mL~0.5ng/mL、10ng/mL~10pg/mL、250ng/mL~1ng/mL、50ng/mL~5ng/mL、20ng/mL~10ng/mLなどのMAGEC2ペプチドをパルス導入する。
【0319】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、MAGEC2のレベルが転写物100万個あたり約1,000個の転写物(約1,000TPM)、950TPM、900TPM、850TPM、800TPM、750TPM、700TPM、650TPM、600TPM、550TPM、500TPM、450TPM、400TPM、350TPM、300TPM、250TPM、200TPM、150TPM、100TPM、95TPM、90TPM、85TPM、80TPM、75TPM、70TPM、65TPM、60TPM、55TPM、50TPM、45TPM、40TPM、35TPM、34TPM、33TPM、32TPM、31TPM、30TPM、29TPM、28TPM、27TPM、26TPM、25TPM、24TPM、23TPM、22TPM、21TPM、20TPM、19TPM、18TPM、17TPM、16TPM、15TPM、14TPM、13TPM、12TPM、11TPM、10TPM、9TPM、8TPM、7TPM、6TPM、5TPM、4TPM、3TPM、2TPM及び1TPM、もしくはそれ未満、または端点を含めてそれらの間にある任意の範囲、例えば、約1,000TPM以下~約73TPM以下)である標的細胞と接触した場合に、より多い数の標的細胞を殺滅することができる。例えば、宿主細胞は、少なくとも1.2倍、1.5倍、1.8倍、2.0倍、2.2倍、2.5倍、2.8倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、5.5倍、6倍、6.5倍、7倍、7.5倍、8倍、8.5倍、9倍、9.5倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、1000倍多い、もしくはそれを超えてより多い、または端点を含めてそれらの間にある任意の範囲でより多い、例えば1.2倍~2倍多い数の標的細胞を殺滅することができ得る。
【0320】
本発明は、さらに、本明細書に記載される少なくとも1つの宿主細胞を含む細胞の集団を提供する。細胞の集団は、記載される組換え発現ベクターのいずれかを含む宿主細胞を含むことに加えて、組換え発現ベクターをいずれも含まない少なくとも1つの他の細胞、例えば宿主細胞(例えば、T細胞)、またはT細胞以外の細胞、例えば、B細胞、マクロファージ、好中球、赤血球、肝細胞、内皮細胞、上皮細胞、筋肉細胞、脳細胞などを含む、不均一集団であってもよい。あるいは、細胞の集団は、組換え発現ベクターを含む(例えば、本質的にそれからなる)宿主細胞を主として含む実質的に均一な集団であってもよい。集団はまた、集団のすべての細胞が組換え発現ベクターを含むといった具合に、集団のすべての細胞が、組換え発現ベクターを含む単一宿主細胞のクローンとなっている、細胞のクローン集団であってもよい。本発明に包含される一実施形態では、細胞の集団は、本明細書に記載される組換え発現ベクターを含む宿主細胞を含むクローン集団である。
【0321】
本発明に包含される一実施形態では、集団中の細胞の数を急速に増大させることがある。T細胞の数の増大は、当技術分野でよく知られている複数の方法のいずれかによって達成され得る(例えば、米国特許第8,034,334号及び同第8,383,099号、米国特許公開第2012/0244133号、Dudley et al.(2003)J.Immunother.26:332-242、ならびにRiddell et al.(1990)J.Immunol.Methods 128:189-201)。例えば、T細胞の数を増大させることは、T細胞をOKT3抗体、IL-2及びフィーダーPBMC(例えば、放射線照射済み同種異系PBMC)と培養することによって行われ得る。
【0322】
VIII.医薬組成物
本発明に包含される別の態様では、本明細書に記載の組成物(例えば、結合性タンパク質、核酸、細胞など)及び薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む医薬組成物が本明細書に提供される。
【0323】
用語「薬学的に許容される」は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激性、アレルギー反応または他の問題もしくは合併症を伴わずに合理的な利益/リスク比に相応してヒト及び動物の組織との接触に使用するのに適した薬剤、材料、組成物及び/または剤形を指す。
【0324】
本発明に包含される薬剤及び他の組成物は、固体または液体の形態、例えば、様々な投与経路に適した形態、例えば、(1)経口投与に適した形態、例えば、ドレンチ剤(水性または非水性の液剤または懸濁剤)、錠剤、大丸薬、散剤、顆粒剤、ペースト剤;(2)例えば無菌液剤もしくは懸濁剤のような、非経口投与、例えば、皮下、筋肉内もしくは静脈内注射による投与に適した形態;(3)例えば皮膚に塗布されるクリーム剤、膏剤もしくはスプレー剤のような、局所投与に適した形態;(4)例えば膣坐剤、クリーム剤もしくは泡剤のような、膣内投与もしくは直腸内投与に適した形態;または(5)例えば化合物を含有する水性エアゾール剤、リポソーム製剤もしくは固体粒子のような、エアゾール剤での投与のために、特別に製剤化され得る。本明細書に記載される薬剤または組成物のための任意の適切な形態因子、例えば、限定されるものではないが、錠剤、カプセル剤、液体シロップ剤、ソフトゲル剤、座剤及び浣腸剤が企図される。
【0325】
本発明に包含される医薬組成物は、別個な剤形、例えば、カプセル剤、予包剤もしくは錠剤、または液剤もしくはエアゾールスプレー剤であって、各々が所定量の活性成分を粉末として、あるいは顆粒中、液体中、または水性もしくは非水性液体で作った懸濁液の中、水中油型エマルジョン中、油中水型液体エマルジョン中、再構成用粉末中、経口摂取用粉末中、ボトル内(例えば、ボトルに入った粉末または液体)、口内溶解性フィルム中、口内錠中、ペースト剤中、チューブ内、ガム剤中及びパック剤中に含有する、当該別個な剤形として提示されることがある。そのような剤形は、薬学の方法のいずれかによって調製され得る。
【0326】
好適な賦形剤としては、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロールまたは類似するもの、及びそれらの組合せが挙げられる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される宿主細胞、結合性タンパク質または融合タンパク質を含む組成物は、好適な注入媒体をさらに含む。好適な注入媒体は任意の等張媒体製剤であってよく、典型的には通常の生理食塩水、Normosol(商標)-R(Abbott)またはPlasma-Lyte(商標)A(Baxter)、5%デキストロース水、乳酸リンゲル液を利用することができる。注入媒体に、ヒト血清アルブミンまたは他のヒト血清成分を補充することがある。有効量の宿主細胞または組成物を含む単位用量もまた企図される。
【0327】
また、本明細書に提供されるのは、有効量の宿主細胞、または宿主細胞を含む有効量の組成物を含む、単位用量である。本明細書に記載されるように、宿主細胞には、免疫細胞、T細胞(CD4T細胞及び/またはCD8+T細胞)、細胞傷害性リンパ球(例えば、細胞傷害性T細胞及び/またはナチュラルキラー(NK)細胞)などが含まれる。例えば、いくつかの実施形態では、単位用量は、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%)、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%または少なくとも約95%の操作型細胞を単独で含んでいるかまたは他の細胞と組み合わせて含んでいる、例えば他の細胞を少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%)、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%もしくは少なくとも約95%含んでいる、組成物を含む。いくつかの実施形態では、望ましくない細胞は、低減された量で存在するかまたは実質的に存在せず、例えば、組成物中の細胞の集団の約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約10%未満、約5%未満または約1%未満である。
【0328】
組成物中または単位用量中の細胞の量は、少なくとも1つの細胞(例えば、少なくとも1つの改変型CD8T細胞、改変型CD4T細胞、及び/またはNK細胞)であり、またはより典型的には、10細胞より多く、例えば、最大10、最大10、最大10細胞、最大10細胞、または1010細胞より多い。いくつかの実施形態では、細胞を、約106~約1010細胞/mの範囲、例えば、約10~約10細胞/mの範囲で投与する。細胞の数は、組成物の意図される最終用途、ならびにその中に含まれる細胞の種類によって決まることになる。例えば、特定の抗原に対して特異的な結合性タンパク質を含有するように改変された細胞は、そのような細胞を少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれよりも多く含有する細胞集団を含むことになる。本明細書に提供される用途において、細胞は概して1リットル以下、500ml以下、250ml以下または100ml以下の体積である。実施形態において、所望の細胞の密度は、典型的には10細胞/mlを上回り、一般的には10細胞/mlを上回り、一般的には10細胞/ml以上である。細胞は、単回の輸注として、またはある範囲の時間にわたる複数回の輸注で、投与され得る。臨床上重要な数の免疫細胞を、累積で10、10、10、10、1010または1011細胞以上になる複数回の輸注に分配することがある。いくつかの実施形態では、操作型免疫細胞の単位用量を、同種異系ドナーからの造血幹細胞と一緒に(例えば、同時に、または同時進行で)共投与することがある。
【0329】
医薬組成物は、治療するべき(または、予防するべき)疾患にまたは症状に適した、医療分野の当業者によって決定される様式で、投与され得る。組成物の適切な用量、ならびにその投与の好適な継続期間及び頻度は、患者の健康状態、患者のサイズ(すなわち、体重(weight)、体重(mass)、または体表面積)、患者の症状のタイプ及び重症度、活性成分の特定の形態、ならびに投与方法などの因子によって決定されることになる。一般的に、適切な用量レジメン及び治療レジメンは、(例えば、より頻繁な完全寛解もしくは部分寛解、またはより長い無病生存期間及び/または全生存期間、または症候重症度の低下などの臨床転帰の改善を含めて本明細書に記載されるような)治療的利益及び/または予防的利益を提供するのに十分な量で組成物(複数可)を提供する。
【0330】
医薬組成物の有効量は、必要とされる投薬量で及び期間にわたって、本明細書に記載される所望の臨床結果または有益な治療をもたらすのに十分な量を指す。有効量は、1回以上の投与で送達され得る。投与が、疾患または疾患状態を有することが既に知られているまたは確認されている対象に対して行われる場合、「治療的有効量」という用語は治療に関して使用されることがあり、他方、「予防的有効量」は、疾患または疾患状態(例えば、再発)を発症しやすいかまたは発症するリスクがある対象に予防過程として有効量を投与することを表すために使用される。
【0331】
本明細書に記載される医薬組成物を、単位用量または複数回用量の容器(例えば、密封アンプルまたはバイアル)に入れて提供することがある。そのような容器を、患者に輸注する時まで製剤の安定性を維持するために凍結させることがある。いくつかの実施形態では、単位用量は、本明細書に記載の宿主細胞を約10細胞/m~約1011細胞/mの用量で含む。本明細書に記載の特定の組成物を様々な治療レジメンで使用するための好適な投薬レジメン及び治療レジメン(例えば、非経口のまたは静脈内の投与または製剤)の開発。
【0332】
対象組成物を非経口的に投与する場合、組成物は、無菌の水性または油性の溶液または懸濁液も含むことがある。非経口的に許容される好適な非毒性希釈剤または溶媒としては、水、リンゲル液、等張塩溶液、水と混合された1,3-ブタンジオール、エタノール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールが挙げられる。水性の溶液または懸濁液は、1種以上の緩衝剤,例えば、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウムまたは酒石酸ナトリウムをさらに含むことがある。当然、任意の投薬単位製剤を調製する際に使用される任意の材料は、薬学的に純粋であるべきであり、採用される量で実質的に非毒性であるべきである。さらには、活性化合物を持続放出性配合物及び製剤の中に組み込むことがある。単位剤形は、本明細書で使用される場合、治療するべき対象のための単位投薬量として適した物理的に別個の単位を指し;各単位は、適切な医薬担体と関連して所望の効果を生じさせるように計算された所定量の操作型免疫細胞または活性化合物を含有し得る。
【0333】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載され、ペプチドに関して代表的に例示がなされた免疫原性組成物について上に記載される医薬組成物は、対象に投与される場合、MAGEC2を発現する関心とする細胞に対する免疫応答を誘発することができる。そのような医薬組成物は、MAGEC2発現を特徴とする障害の予防的及び/または治療的処置のためのワクチンとして有用であり得る。
【0334】
IX.使用及び方法
本明細書に記載の組成物は、様々な診断用途、予後予測用途、及び治療用途に使用され得る。本出願に記載される任意の方法、例えば、診断方法、予後予測方法、治療方法またはそれらの組み合わせにおいて、方法のすべてのステップは、単一の行為者によって、あるいは1人よりも多い行為者によって実施され得る。例えば、治療的処置を提供する行為者が直接的に診断を行うことがある。あるいは、治療剤を提供する者が、診断アッセイを実施することを要請することがある。診断医及び/または治療介入医は、診断アッセイ結果を解釈して治療戦略を決定することがある。同様に、そのような代替プロセスを他のアッセイ、例えば予後予測アッセイに適用することがある。
【0335】
本発明に包含されるいくつかの使用及び方法では、対象または対象サンプルが利用される。いくつかの実施形態では、対象は、動物である。動物は、いずれの性別の動物であってもよく、発生発達の任意の段階にあってもよい。いくつかの実施形態では、動物は、脊椎動物、例えば哺乳動物である。いくつかの実施形態では、対象は、非ヒト哺乳動物である。いくつかの実施形態では、対象は、家庭動物、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジまたはヤギである。いくつかの実施形態では、対象は、伴侶動物、例えば、イヌまたはネコである。いくつかの実施形態では、対象は、家畜動物、例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジまたはヤギである。いくつかの実施形態では、対象は、動物園の動物である。いくつかの実施形態では、対象は、研究用動物、例えば、齧歯動物(例えば、マウスまたはラット)、イヌ、ブタまたは非ヒト霊長類である。いくつかの実施形態では、動物は、遺伝子組換え動物である。いくつかの実施形態では、動物は、遺伝子導入動物(例えば、遺伝子導入マウス及び遺伝子導入ブタ)である。いくつかの実施形態では、対象は、魚類または爬虫類である。
【0336】
いくつかの実施形態では、対象は、齧歯動物、例えば、マウスである。いくつかのそのような実施形態では、マウスは、遺伝子導入マウス、例えば、ヒトMHC(すなわち、HLA)分子、例えばHLA-B72を発現しているマウスである(例えば、Nicholson et al.(2012)Adv.Hematol.2012:404081)。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトTCRを発現している遺伝子導入マウスである、または抗原陰性マウスである(例えば、Li et al.(2010)Nat.Med.16:1029-1034、及びObenaus et al.(2015)Nat.Biotechnol.33:402-407)。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトHLA分子及びヒトTCRを発現している遺伝子導入マウスである。いくつかの実施形態では、例えば対象が遺伝子導入HLAマウスである場合、同定されるTCRは、例えばキメラ型またはヒト化型となるように、改変されている。いくつかの実施形態では、TCR足場を、例えば既知の結合性タンパク質ヒト化方法のように、改変する。
【0337】
いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、MAGEC2の発現を特徴とする障害、例えば、がんの動物モデルである。例えば、動物モデルは、ヒト由来がんに関する同所性異種移植動物モデルであることがある。
【0338】
いくつかの実施形態では、対象は、ヒト、例えば、MAGEC2発現を特徴とする障害を有するヒトである。
【0339】
本出願に記載される方法を用いて、それを必要とする対象を治療することがある。本明細書で使用する場合、「それを必要とする対象」は、MAGEC2の発現を特徴とする障害を有する対象、MAGEC2の発現を特徴とする障害の再発を有する対象、及び/またはMAGEC2の発現を特徴とする障害を起こしやすい対象を含む。
【0340】
本発明に包含される方法のいくつかの実施形態では、対象は、MAGEC2発現を特徴とする障害のための治療、例えば、化学療法、放射線療法、標的療法、及び/または免疫療法を受けたことがない。いくつかの実施形態では、対象は、MAGEC2発現を特徴とする障害のための治療、例えば、化学療法、放射線療法、標的療法、及び/または免疫療法を受けたことがある。
【0341】
いくつかの実施形態では、対象は、がん性組織または前がん性組織を除去するための外科手術を受けたことがある。いくつかの実施形態では、がん性組織は除去されておらず、例えば、がん性組織は、身体の手術不可能な領域に、例えば生命に不可欠な組織に、または外科手技が患者に害を及ぼすかなりのリスクを引き起こすであろう領域に位置していることがある。
【0342】
いくつかの実施形態では、対象またはその細胞は、関連性のある療法に対して抵抗性であり例えば、標準治療療法、免疫チェックポイントイン阻害剤療法などに対して抵抗性である。例えば、本発明に包含される1種以上のバイオマーカーを調節することは、免疫チェックポイント阻害剤療法に対する抵抗性を克服することがある。
【0343】
いくつかの実施形態では、対象は、本出願に記載される組成物及び方法による調節を必要としており、例えば、MAGEC2発現の、望ましくない非存在、存在または異常を有すると同定されている。
【0344】
a.診断方法
本発明に包含される態様において、本明細書に提供されるのは、MAGEC2抗原、MAGEC2抗原-MHC複合体、MAGEC2が発現してる関心とする細胞、及び/またはMAGEC2に曝露された細胞の、存在または非存在を検出するための診断方法であって、本明細書に記載される少なくとも1種の結合性タンパク質または少なくとも1種の宿主細胞を使用することによってサンプル中の上記MAGEC2抗原の存在をまたは非存在を検出することを含む、当該診断方法である。いくつかの実施形態では、方法は、サンプルを(例えば、対象から)得ることをさらに含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1種の結合性タンパク質または少なくとも1種の宿主細胞は、MHC分子との関連においてMAGEC2ペプチドエピトープとの複合体を形成し、複合体は、蛍光活性化細胞選別(FACS)の形態で、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)の形態で、放射免疫アッセイ(RIA)の形態で、免疫化学的に、ウェスタンブロットの形態で、または細胞内フローアッセイの形態で検出される。
【0345】
本発明に包含される態様において、本明細書に提供されるのは、対象におけるMAGEC2のレベル、またはMAGEC2発現を特徴とする障害を検出するための診断方法であって、a)対象から得られたサンプルを少なくとも1つの薬剤(例えば、本明細書に記載されるMAGEC2免疫原性ペプチド、MAGEC2免疫原性ペプチド-MHC複合体(pMHC)、結合性タンパク質、宿主細胞、または宿主細胞の集団)と接触させること;及びb)反応性のレベルを検出することを含み、反応性のレベルが対照レベルに比べてより高いことが、対象におけるMAGEC2発現を特徴とする障害のレベルを示す、当該診断方法である。
【0346】
いくつかの実施形態では、反応性のレベルは、T細胞活性化またはエフェクター機能、例えば、限定されるものではないが、T細胞増殖、殺滅またはサイトカイン放出によって示される。対照レベルは、基準数、またはMAGEC2発現を特徴とする障害に対する曝露を有さない健常対象のレベルであり得る。
【0347】
本明細書に記載される薬剤に対する免疫応答の存在及びレベルを決定するために、生物学的サンプルを対象から得ることがある。本明細書で使用される「生物学的サンプル」は、(血清または血漿を調製する元となる)血液サンプル、生検検体、体液(例えば、血液、単離されたPBMC、単離されたT細胞、肺洗浄液、腹水、粘膜洗浄液、滑液など)、骨髄、リンパ節、組織の外植片、臓器培養物、または対象もしくは生物学的供給源からの任意の他の組織もしくは細胞調製物であり得る。生物学的サンプルを、何らかの医薬組成物を受ける前の対象から得ることもあり、その生物学的サンプルは、ベースラインデータを確立するための対照として有用である。
【0348】
抗原特異的なT細胞応答は、典型的には、本明細書に記載されるT細胞機能パラメータ(例えば、増殖、サイトカイン放出、CTL活性、変化した細胞表面マーカー表現型など)に従って認められたT細胞応答を比較することによって判定され、当該比較は、適切な状況にある同族抗原(例えば、免疫適合性抗原提示細胞によって提示されているときの、T細胞の初回刺激または活性化のために使用された抗原)に曝露されているT細胞と、その代わりとして構造的に別個または無関係な対照抗原に曝露されている同じ供給集団由来のT細胞との間でなされ得る。対照抗原に対する応答と比較して同族抗原に対する応答が、統計的有意性を伴ってより大きいことは、抗原特異性を意味する。
【0349】
免疫応答のレベル、例えば細胞傷害性Tリンパ球(CTL)のレベルは、本明細書に記載されており当技術分野で慣例的に実施されている複数の免疫学的方法のいずれか1つによって決定され得る。例えば、CTL免疫応答のレベルは、例えばT細胞によって発現される、本明細書に記載の結合性タンパク質のいずれか1種の投与の前または後に決定され得る。CTL活性を決定するための細胞傷害アッセイは、当技術分野で慣例的に実施されているいくつかの技術及び方法のいずれか1つを用いて実施され得る(例えば、Henkart el al.,“Cytotoxic T-Lymphocytes”in Fundamental Immunology,Paul(ed.)(2003 Lippincott Williams & Wilkins,Philadelphia,PA),pages 1127-50、及びそこに引用されている参考文献)。
【0350】
本発明は、部分的には、生物学的サンプルが、関心とする成果、例えば、関心とする標的の発現、例えばMAGEC2の発現に関連しているかどうかを正確に分類するための方法、体系及び規則を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、統計学的アルゴリズム及び/または経験的データを用いてサンプル(例えば、対象由来)を、MAGEC2発現を特徴とする障害に対する療法に応答しているまたは応答していないことに関連付いているまたはそのリスクがあるものとして分類するのに有用である。
【0351】
MAGEC2の量または活性を検出するための例示的な方法、したがって、MAGEC2発現を特徴とする障害に対する療法にサンプルが応答する可能性があるかまたは応答する可能性が低いかを分類するのに有用な例示的な方法は、生物学的サンプルを、生物学的サンプル中のMAGEC2の量または活性を検出することができる薬剤、例えば本明細書に記載のMAGEC2免疫原性ペプチドまたは結合剤と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、方法は、生物学的サンプルを例えば試験対象から得ることをさらに含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1種の薬剤を使用するが、2、3、4、5、6、7、8、9、10種のまたはそれよりも多くのそのような薬剤を組み合わせて(例えば、サンドイッチELISAにおいて)または連続して使用してもよい。ある特定の例では、統計学的アルゴリズムは、単一の統計学的学習分類子システムである。例えば、単一の統計学的学習分類子システムは、予測値または確率値、及びバイオマーカーの存在またはレベルに基づいてサンプルを分類するために用いられ得る。単一の統計学的学習分類子システムを用いることで、典型的には、少なくとも約75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の感度、特異性、陽性予測値、陰性予測値及び/または全精度によってサンプルが分類される。
【0352】
他の好適な統計学的アルゴリズムは、当業者によく知られている。例えば、統計学的学習分類子システムとしては、複雑なデータセット(例えば、関心とするマーカーのパネル)に適応すること及びそのようなデータセットに基づいて決定を行うことができる機械学習アルゴリズム技術が挙げられる。いくつかの実施形態では、単一の統計学的学習分類子システム、例えば、分類ツリー(例えば、ランダムフォレスト)を使用する。他の実施形態では、2、3、4、5、6、7、8、9、10種またはそれよりも多くの統計学的学習分類子システムの組合せを、好ましくはタンデムに、使用する。統計学的学習分類子システムの例としては、限定されるものではないが、帰納的学習(例えば、決定/分類ツリー、例えば、ランダムフォレスト、分類及び回帰ツリー(C&RT)、ブーストツリーなど)、確率的で近似的に正しい(Probably Approximately Correct)(PAC)学習、コネクショニスト学習(例えば、ニューラルネットワーク(NN)、人工ニューラルネットワーク(ANN)、ニューロファジーネットワーク(NFN)、ネットワーク構造、パーセプトロン、例えば多層パーセプトロン、多層フィードフォワードネットワーク、ニューラルネットワークの応用、確信ネットワークにおけるベイズ学習など)、強化学習(例えば、既知の環境における受動的学習、例えば、ナイーブ学習、適応型動的学習、及び時間的差分学習、未知の環境における受動的学習、未知の環境における能動的学習、行動価値関数学習、強化学習の応用など)、ならびに遺伝的アルゴリズム及び進化的プログラミングを用いるものが挙げられる。他の統計学的学習分類子システムとしては、サポートベクトルマシン(例えば、カーネル法(Kernel method))、多変量適応的回帰スプライン(MARS)、レーベンバーグ・マーカートアルゴリズム、ガウス・ニュートンアルゴリズム、ガウシアンの混合、勾配降下アルゴリズム、及び学習ベクトル量子化(LVQ)が挙げられる。ある特定の実施形態では、本発明に包含される方法は、サンプル分類結果を臨床医、例えば腫瘍学医に送信することをさらに含む。
【0353】
いくつかの実施形態では、対象を診断した後、その診断に基づいて、治療的有効量の規定された治療を個体に施与する。
【0354】
いくつかの実施形態では、方法は、対照生物学的サンプル(例えば、MAGEC2発現に関連する障害を有しない対象、寛解状態にある対象、障害が療法に対して感受性である対象、障害が進行している対象または他の関心とする対象からの、生物学的サンプル)を得ることをさらに含む。
【0355】
本出願に記載される解析方法のいくつかの実施形態では、(例えば、対象由来のサンプルにおける)MAGEC2の発現を、所定の対照(基準)サンプルと比較する。対象からのサンプルは、典型的には、罹患組織、例えばがん細胞またはがん組織からのものである。対照サンプルは、同じ対象または別の対象からのものであり得る。対照サンプルは、典型的には、正常な非疾患サンプルである。しかしながら、いくつかの実施形態、例えば、病期判定のためまたは治療の有効性を評価するための実施形態では、対照サンプルは、罹患組織からのものであり得る。対照サンプルは、いくつかの異なる対象からのサンプルの組合せであり得る。いくつかの実施形態では、対象からのMAGEC2発現測定結果(複数可)を、所定のレベルと比較する。この所定のレベルは、典型的には、正常サンプルから得られる。本明細書に記載されるように、「所定の」という表現は、単なる例示ではあるが、治療のために選択され得る対象を評価するため、がんに対する応答を評価するため及び/または併用がん療法に対する応答を評価するために用いられ得る。所定のバイオマーカー量及び/または活性の測定結果(複数可)は、MAGEC2発現に関連する障害を有するまたは有さない患者の集団において決定され得る。所定のバイオマーカー量及び/または活性の測定結果(複数可)は、どの患者にも等しく適用可能である単一の数であることがあり、または所定のバイオマーカー量及び/または活性の測定結果(複数可)は、患者の特定の部分集団に応じて変化することがある。対象の年齢、体重、身長及び他の因子は、個体の所定のバイオマーカー量及び/または活性の測定結果(複数可)に影響を与えることがある。さらに、所定のバイオマーカー量及び/または活性を各対象について個々に決定することがある。一実施形態では、本明細書に記載の方法において決定及び/または比較される量は、絶対的測定結果に基づく。
【0356】
別の実施形態では、本出願に記載される方法において決定及び/または比較される量は、相対的測定結果、例えば比率(例えば、治療後と比較したときの治療前のバイオマーカーコピー数、レベル及び/または活性、スパイクされたまたは人為的な対照と比較したときのそのようなバイオマーカー測定結果、ハウスキーピング遺伝子の発現と比較したときのそのようなバイオマーカー測定結果など)に基づく。例えば、相対的解析は、治療後バイオマーカー測定結果と比較したときの治療前バイオマーカー測定結果の比率に基づくことがある。治療前バイオマーカー測定は、療法を開始する前の任意の時間に行われ得る。治療後バイオマーカー測定は、療法を開始した後の任意の時間に行われ得る。いくつかの実施形態では、治療後バイオマーカー測定を、療法の開始の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20週間後またはそれよりも後に、及び継続的な追跡評価のために無期限に向かってよりいっそう後まで、行う。治療は、MAGEC2発現を特徴とする障害を治療するための療法を単独で、または他の薬剤、例えば、化学療法もしくは免疫チェックポイント阻害剤のような抗がん剤と組み合わせて含むことがある。
【0357】
所定のMAGEC2発現は、任意の適切な基準であってよい。例えば、所定のMAGEC2発現を、対象選択物に対する評価がなされようとしている同じ対象または異なる対象から得てもよい。一実施形態では、所定のバイオマーカー量及び/または活性の測定結果(複数可)を同じ患者の以前の評価から得ることがある。そのようにして、患者の選択の進行を経時的に追跡してもよい。さらには、対象がヒトである場合、対照を、別のヒトまたは複数名のヒト、例えば選択されたヒトの群の評価から得ることがある。そのようにして、選択物の評価がなされようとしているヒトの選択の程度を、他の好適なヒト、例えば、関心とするヒトと似通った状況にある他のヒト、例えば、類似するもしくは同じ症状(複数可)に罹患している及び/または同一の民族に属する他のヒトと比較してもよい。
【0358】
本発明に包含されるいくつかの実施形態では、MAGEC2発現の所定のレベルからの変化は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5もしくは5.0倍である、またはそれを上回る、または端点を含めてそれらの間にある任意の範囲である。そのようなカットオフ値を、測定結果が相対的変化に基づく場合、例えば治療後バイオマーカー測定結果と比較したときの治療前バイオマーカー測定結果の比率に基づく場合に等しく適用する。
【0359】
いくつかの実施形態では、MAGEC2発現は、MAGEC2ポリペプチドまたはその抗原を検出または定量すること、例えば本明細書に記載の組成物を使用することによって、検出及び/または定量され得る。ポリペプチドは、当業者によく知られている複数の手段のいずれか、例えば、免疫拡散、免疫電気泳動、放射免疫アッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫蛍光アッセイ、ウェスタンブロッティング、結合剤-リガンドアッセイ、免疫組織化学的技術、凝集、補体アッセイ、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、超拡散クロマトグラフィーなどによって検出及び定量され得る(例えば、Basic and Clinical Immunology,Sites and Terr,eds.,Appleton and Lange,Norwalk,Conn.pp217-262,1991)。
【0360】
b.治療方法
本発明に包含される一態様において、本明細書に提供されるのは、MAGEC2発現を特徴とする障害を予防及び/または治療するための、及び/またはMAGEC2を発現している関心とする細胞、例えば過剰増殖性細胞に対する免疫応答を誘導するための、方法である。いくつかの実施形態では、方法は、治療的有効量の本明細書に記載の組成物、例えば免疫原性組成物、少なくとも1種の結合性タンパク質を発現している細胞などを対象に投与することを含む。本発明に包含される方法はまた、対象における多種多様ながん、例えば本明細書に記載されるがんのがん療法に対する応答性を判定するためにも用いられ得る。
【0361】
いくつかの実施形態では、MAGEC2発現を特徴とする障害は、がんである。用語「がん」または「腫瘍」または「過剰増殖性」は、がんを引き起こす細胞に典型的な特質、例えば、制御されない増殖、死亡率、侵襲のまたは転移の可能性、急速な成長、及びある特定の特徴的な形態学的特徴をもっている細胞存在を指す。いくつかの実施形態では、そのような細胞は、免疫チェックポイントタンパク質、例えば、PD-1、PD-L1、PD-L2及び/またはCTLA-4の発現及び活性に起因してそのような特質を部分的にまたはすべて呈する。
【0362】
がん細胞は、腫瘍の形態にあることが多いが、そのような細胞は、動物の中に単独で存在することがあり、または例えば白血病のような血液癌の場合のように非腫瘍形成性がん細胞であることがある。本明細書で使用される場合、用語「がん」は、前悪性及び悪性がんを含む。がんとしては、限定されるものではないが、様々ながん、癌腫、例えば、膀胱(加速された転移性膀胱癌を含む)、乳房、結腸(大腸癌を含む)、腎臓、肝臓、肺(小細胞及び非小細胞肺癌、ならびに肺腺癌を含む)、卵巣、前立腺、精巣、泌尿生殖器、リンパ系、直腸、喉頭、膵臓(外分泌系膵癌を含む)、食道、胃、胆嚢、子宮頸部、甲状腺及び皮膚(扁平上皮細胞癌を含む)の癌腫;リンパ系統の造血器腫瘍、例えば、白血病、急性リンパ球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、有毛細胞リンパ腫、組織球性リンパ腫及びバーキットリンパ腫;骨髄系統の造血器腫瘍、例えば、急性及び慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、骨髄性白血病及び前骨髄球性白血病;中枢及び末梢神経系の腫瘍、例えば、星細胞腫、神経芽腫、神経膠腫及びシュワン細胞腫;間葉系由来の腫瘍、例えば、線維肉腫、横紋筋肉腫及び骨肉腫;他の腫瘍、例えば、メラノーマ、色素性乾皮症、ケラトアカンソーマ、精上皮腫、甲状腺濾胞癌及び奇形癌;メラノーマ、切除不可能なステージIIIまたはIVの悪性メラノーマ、扁平上皮細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、消化器癌、腎臓癌、卵巣癌、肺癌、大腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、前立腺癌、甲状腺癌、神経芽腫、膵臓癌、多形膠芽腫、子宮頸癌、胃癌(stomach cancer)、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌、頭頸部癌、胃癌(gastric cancer)、胚細胞腫瘍、骨癌、骨腫瘍、成人骨悪性線維性組織球腫、小児骨悪性線維性組織球腫、肉腫、小児肉腫、副鼻腔ナチュラルキラー、新生物、形質細胞新生物;骨髄異形成症候群;神経芽腫;精巣胚細胞腫瘍、眼内メラノーマ、骨髄異形成症候群;骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、滑膜肉腫、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ芽球性白血病(Ph+ ALL)、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、肥満細胞症、及び肥満細胞症に関連する症候、ならびにそれらの任意の転移が挙げられる。加えて、障害としては、色素性蕁麻疹、肥満細胞症、例えば、びまん性皮膚肥満細胞症、ヒトにおける単発性肥満細胞腫、及びイヌ肥満細胞腫、ならびに水疱性、紅皮症型及び毛細血管拡張性肥満細胞症のようないくつかの稀な亜型、肥満細胞症に骨髄増殖性もしくは骨髄異形成症候群、または急性白血病などの関連する血液学的障害を伴ったもの、肥満細胞症に関連する骨髄増殖性障害、肥満細胞性白血病が、他のがんに加えて挙げられる。他のがんもまた障害の範囲に含まれ、限定されるものではないが、以下のものが挙げられる:癌腫、例えば、膀胱の癌腫、尿路上皮癌、乳房、結腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、胃、子宮頸部、甲状腺、精巣の癌腫、特に睾丸精上皮腫、及び皮膚の癌腫;例えば、扁平上皮細胞癌;消化管間質腫瘍(「GIST」);リンパ系等の造血器腫瘍、例えば、白血病、急性リンパ球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、有毛細胞リンパ腫及びバーキットリンパ腫;骨髄系統の造血器腫瘍、例えば、急性及び慢性骨髄性白血病、ならびに前骨髄球性白血病;間葉系由来の腫瘍、例えば、線維肉腫及び横紋筋肉腫;他の腫瘍、例えば、メラノーマ、精上皮腫、奇形癌;神経芽腫及び神経膠腫;中枢及び末梢神経系の腫瘍、例えば、星細胞腫、神経芽腫、神経膠腫及びシュワン細胞腫;間葉系由来の腫瘍、例えば、線維肉腫、横紋筋肉腫及び骨肉腫;ならびに他の腫瘍、例えば、メラノーマ、色素性乾皮症、ケラトアカンソーマ、精上皮腫、甲状腺濾胞癌、奇形癌、化学療法不応性非精上皮腫性胚細胞腫瘍、及びカポジ肉腫、ならびにそれらの任意の転移が挙げられる。本発明に包含される方法に適用できるがんの種類の他の非限定的な例としては、ヒト肉腫及び癌腫、例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、脈管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎芽性癌、ウィルムス腫瘍、骨癌、脳腫瘍、肺癌(肺腺癌を含む)、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経種、貧突起神経膠腫、髄膜腫、メラノーマ、神経芽腫、網膜芽細胞腫;白血病、例えば、急性リンパ球性白血病及び急性骨髄性白血病(骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性及び赤白血病);慢性白血病(慢性骨髄性(顆粒球性)白血病及び慢性リンパ球性白血病);ならびに真性多血症、リンパ腫(ホジキン病及び非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症及び重鎖病が挙げられる。いくつかの実施形態では、がんは、性質が上皮性であり、限定されるものではないが、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、婦人科癌、腎臓癌、喉頭癌、肺癌、口腔癌、頭頸部癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌または皮膚癌を含む。いくつかの実施形態では、上皮癌は、非小細胞肺癌、非乳頭状腎細胞癌、子宮頸癌、卵巣癌(例えば、漿液性卵巣癌)または乳癌である。上皮癌は、漿液性、類内膜性、粘液性、明細胞性、ブレンナー型または未分化型を含むがこれらに限定されない他の様々な観点で特徴付けられ得る。いくつかの実施形態では、がんは、(進行性)非小細胞肺癌、メラノーマ、頭頸部扁平上皮細胞癌、(進行性)尿路上皮膀胱癌、(進行性)腎臓癌(RCC)、高頻度マイクロサテライト不安定性癌、古典的ホジキンリンパ腫、(進行性)胃癌、(進行性)子宮頸癌、原発性縦隔B細胞リンパ腫、(進行性)肝細胞癌、浸潤性乳癌、膀胱尿路上皮癌、及び(進行性)メルケル細胞癌からなる群から選択される。
【0363】
さらに、本明細書に記載される組成物は、所望の活性をさらに調節するために併用療法において投与されることもある。さらなる薬剤としては、限定されるものではないが、化学療法剤、ホルモン、抗血管新生薬、放射性標識化合物、あるいは外科手術、凍結療法及び/または放射線療法に伴うものが挙げられる。前述の治療方法を、他の形態の従来の療法(例えば、当業者によく知られている、がんのための標準治療)と併せて、従来の療法の前または従来の療法の後のいずれかと連続して施与することがある。例えば、これらの調節剤を、治療的有効用量の化学療法剤とともに投与することがある。別の実施形態では、これらの調節剤を化学療法と併せて投与して、化学療法剤の活性及び有効性を増強する。Physicians’ Desk Reference(PDR)は、様々ながんの治療に使用されている化学療法剤の投薬量を開示する。治療的に有効であるこれらの上記化学療法薬の投薬レジメン及び投薬量は、治療する特定のメラノーマ、その疾患の程度、及び当業者である医師に馴染みのある他の要因によって決まるものであり、医師によって決定され得る。
【0364】
本明細書に記載される1つ以上の組成物を使用する療法は、単独で、もしくはがん療法などの他の療法と組み合わせて、MAGEC2発現細胞と接触させるために用いられ得る、及び/または所望の対象、例えば、療法に対する応答者である可能性が示されている対象に施与され得る。別の実施形態では、そのような療法は、(例えば、本明細書に記載される診断方法または予後予測方法に従って評価して)対象が療法に対する応答者でない可能性が示された時点で回避されることがあり、代替治療レジメン、例えば、標的がん療法、及び/または非標的がん療法が推奨及び/または施与されることがある。
【0365】
用語「標的療法」とは、選択された生体分子と選択的に相互作用する薬剤を投与してそれによってがんを治療することを指す。例えば、免疫チェックポイント阻害剤を阻害することに関する標的療法は、本発明に包含される方法と併用する上で有用である。
【0366】
用語「免疫療法(immunotherapy)」または「免疫療法(immunotherapies)」とは、一般に、免疫応答を有益な様式で調節するための任意の方策を指し、疾患に罹患しているかまたはその再発に見舞われるもしくは再発を被るリスクがある対象を、免疫応答を誘導、増強、抑制あるいは改変することを含む方法によって治療すること、ならびにがんなどの疾患と戦うために対象の免疫系の特定の部分を用いる任意の治療を包含する。対象自身の免疫系は、その目的のための1種以上の薬剤の投与を伴ってまたは伴わずに刺激(または抑制)される。免疫応答を誘発または増幅するように設計された免疫療法を、「活性化免疫療法」と呼ぶ。免疫応答を低減または抑制するように設計された免疫療法を、「抑制化免疫療法」と呼ぶ。いくつかの実施形態では、免疫療法は、関心とする細胞、例えばがん細胞に対して特異的である。いくつかの実施形態では、免疫療法は、「非指向的」であり得、これは、免疫系細胞と選択的には相互作用しないが免疫系機能を調節する薬剤を、投与することを指す。非指向的療法の代表的な例としては、限定されるものではないが、化学療法、遺伝子治療、及び放射線療法が挙げられる。
【0367】
免疫療法のいくつかの形態は、例えばがんワクチン及び/または感受性化済み抗原提示細胞の使用を含み得る指向的療法である。例えば、腫瘍溶解性ウイルスは、がん細胞に感染してがん細胞を溶解する一方で正常な細胞を傷付けずに残すことができ、結果としてがん治療において潜在的に有益なものとなっている、ウイルスである。腫瘍溶解性ウイルスが複製すると、腫瘍細胞の破壊が促進されるとともに、腫瘍部位で用量増幅がもたらされる。それらはまた、抗がん遺伝子のベクターとしても働き、それら遺伝子が腫瘍部位に特異的に送達されることを可能にする。免疫療法は、宿主を短期に保護するための受動免疫性を伴うことがあり、これは、がん抗原または疾患抗原に指向される予め形成された抗体を投与すること(例えば、任意選択的に化学療法剤または毒素に連結された、腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体を投与すること)によって達成される。免疫療法は、がん細胞株の細胞傷害性リンパ球認識エピトープを使用することに焦点を当てることもある。あるいは、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、RNA干渉分子、三重らせんポリヌクレオチドなどを使用して、腫瘍またはがんの開始、進行及び/または病態に関連する生体分子を選択的に調節することがある。同様に、免疫療法は、細胞療法の形態をとることがある。例えば、養子細胞免疫療法は、患者のがんに対する天然の、または遺伝子操作された応答性を有する免疫細胞、例えばT細胞を生成してその後にこれをがん患者に戻すことを用いる免疫療法の一種である。多数の活性化した腫瘍特異T細胞を注射すると、がんの完全で持続的な退縮が誘導され得る。
【0368】
免疫療法は、宿主を短期に保護するための受動免疫性を伴うことがあり、これは、がん抗原または疾患抗原に指向される予め形成された抗体を投与すること(例えば、任意選択的に化学療法剤または毒素に連結された、腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体を投与すること)によって達成される。免疫療法は、がん細胞株の細胞傷害性リンパ球認識エピトープを使用することに焦点を当てることもある。あるいは、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、RNA干渉分子、三重らせんポリヌクレオチドなどを使用して、腫瘍またはがんの開始、進行及び/または病態に関連する生体分子を選択的に調節することがある。
【0369】
いくつかの実施形態では、免疫療法剤は、免疫刺激分子のアゴニスト;免疫抑制分子のアンタゴニスト;ケモカインのアンタゴニスト;T細胞活性化を刺激するサイトカインのアゴニスト;T細胞活性化を阻害するサイトカインに拮抗するもしくはそれを阻害する薬剤;及び/またはB7ファミリーの膜結合性タンパク質に結合する薬剤である。いくつかの実施形態では、免疫療法剤は、免疫抑制分子のアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、免疫療法剤は、サイトカイン、ケモカイン及び成長因子に対する薬剤、例えば、腫瘍関連サイトカイン、ケモカイン、成長因子、及び他の可溶性因子、例えば、IL-10、TGF-β及びVEGFの抑制的作用を中和する中和抗体であることがある。
【0370】
いくつかの実施形態では、免疫療法は、1種以上の免疫チェックポイントの阻害剤を含む。用語「免疫チェックポイント」とは、抗がん免疫応答を調節すること、例えば抗腫瘍免疫応答を下方調節または阻害することによって、免疫応答を微調整する、CD4+及び/またはCD8+T細胞の細胞表面上の分子の群を指す。免疫チェックポイントタンパク質は当技術分野でよく知られており、限定されるものではないが、CTLA-4、PD-1、VISTA、B7-H2、B7-H3、PD-L1、B7-H4、B7-H6、ICOS、HVEM、PD-L2、CD200R、CD160、gp49B、PIR-B、KRLG-1、KIRファミリー受容体、TIM-1、TIM-3、TIM-4、LAG-3(CD223)、IDO、GITR、4-IBB、OX-40、BTLA、SIRPalpha(CD47)、CD48、2B4(CD244)、B7.1、B7.2、ILT-2、ILT-4、TIGIT、HHLA2、ブチロフィリン、及びA2aRが挙げられる(例えば、WO2012/177624を参照)。当該用語は、生物学的活性タンパク質断片、及び完全長の免疫チェックポイントタンパク質をコードする核酸をさらに包含する。
【0371】
いくつかの免疫チェックポイントは、免疫系の機能(例えば、免疫応答)を阻害、下方制御または抑制する分子(例えば、タンパク質)を包含する「免疫抑制性免疫チェックポイント」である。例えば、CD274またはB7-H1としても知られる、PD-L1(プログラム死-リガンド1)は、T細胞の増殖を低減して免疫系を抑制する抑制性シグナルを伝達するタンパク質である。CD152としても知られるCTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)は、免疫応答を下方制御する免疫チェックポイント(「オフ」スイッチ)として働く、抗原提示細胞の表面上のタンパク質受容体である。HAVCR2としても知られるTIM-3(T細胞免疫グロブリン・ムチンドメイン含有3)は、マクロファージ活性化を調節する免疫チェックポイントとして働く細胞表面タンパク質である。VISTA(T細胞活性化のVドメインIg抑制因子)は、T細胞エフェクター機能を阻害する及び末梢性免疫寛容を維持する免疫チェックポイントとして機能する、タイプI膜貫通タンパク質である。LAG-3(リンパ球活性化遺伝子3)は、T細胞の増殖、活性化及び恒常性を負に調節する免疫チェックポイント受容体である。BTLA(B及びTリンパ球減弱化因子)は、腫瘍壊死ファミリー受容体(TNF-R)との相互作用を介してT細胞阻害を呈するタンパク質である。KIR(キラー細胞免疫グロブリン様受容体)は、NK細胞の細胞傷害活性を抑制する、NK細胞上及び少数のT細胞上に発現するタンパク質のファミリーである。いくつかの実施形態では、免疫療法剤は、免疫抑制性酵素に対して特異的である薬剤であり得、例えば、アルギナーゼ(ARG)の活性、ならびにT細胞及びNK細胞を抑制する免疫チェックポイントタンパク質であるインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)の活性を遮断し得る阻害剤であり得るが、これらは、免疫抑制性の腫瘍微小環境においてアミノ酸であるアルギニン及びトリプトファンの異化を変化させるものである。阻害剤には、ARG発現M2マクロファージを標的とするN-ヒドロキシ-L-Arg(NOHA)、ARG及び一酸化窒素合成酵素(NOS)を同時に遮断するニトロアスピリンまたはシルデナフィル(Viagra(登録商標))、ならびにIDO阻害剤、例えば1-メチル-トリプトファンが含まれ得るが、これらに限定されない。当該用語は、生物学的活性タンパク質断片、ならびに完全長の免疫チェックポイントタンパク質及びその生物学的活性タンパク質断片をコードする核酸を、さらに包含する。いくつかの実施形態では、当該用語は、本明細書に提供される相同性についての記載に従う任意の断片をさらに包含する。
【0372】
対照的に、他の免疫チェックポイントは、免疫系の機能(例えば、免疫応答)を活性化させる、刺激するまたは促進する分子(例えば、タンパク質)を包含する「免疫刺激性」である。いくつかの実施形態では、免疫刺激分子は、CD28、CD80(B7.1)、CD86(B7.2)、4-1BB(CD137)、4-1BBL(CD137L)、CD27、CD70、CD40、CD40L、CD122、CD226、CD30、CD30L,OX40、OX40L、HVEM、BTLA、GITR及びそのリガンドGITRL、LIGHT、LTβR、LTαβ、ICOS(CD278)、ICOSL(B7-H2)、ならびにNKG2Dである。CD40(分化抗原群40)は、抗原提示細胞上に見出される、それらの活性化に必要な共刺激タンパク質である。OX40は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー4(TNFRSF4)またはCD134としても知られるが、T細胞死を防ぐことによって、及び続いてサイトカイン産生を増加させることによって、活性化後の免疫応答の維持に関与する。CD137は、活性化T細胞を共刺激して増殖及びT細胞生存を増強する,腫瘍壊死因子受容体(TNF-R)ファミリーのメンバー(mgember)である。CD122は、インターロイキン-2受容体(IL-2)タンパク質のサブユニットであり、これは、未成熟T細胞が調節性、エフェクターまたはメモリーT細胞へと分化することを促進する。CD27は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバーであり、共刺激免疫チェックポイント分子として働く。CD28(分化抗原群28)は、T細胞の活性化及び生存に必要とされる共刺激シグナルを提供する、T細胞上で発現するタンパク質である。GITR(グルココルチコイド誘導TNFR関連タンパク質)は、TNFRSF18及びAITRとしても知られるが、調節性T細胞によって維持される優勢な免疫学的自己寛容において重要な役割を果たすタンパク質である。ICOS(誘導性T細胞共刺激因子)は、CD278としても知られるが、活性化T細胞上に発現し、T細胞シグナル伝達及び免疫応答において役割を果たす、CD28スーパーファミリー共刺激分子である。
【0373】
免疫チェックポイント及びそれらの配列は当技術分野においてよく知られており、代表的な実施形態を以下にさらに記載する。免疫チェックポイントは、一般に、抑制性受容体と天然の結合パートナー(例えば、リガンド)との対に関係する。例えば、PD-1ポリペプチドは、例えば水溶性の単量体形態で存在する場合、抑制性シグナルを免疫細胞に伝達してそれによって免疫細胞エフェクター機能を阻害することができる、または免疫細胞の共刺激を(例えば、競合的阻害によって)促進することができる、抑制性受容体である。好ましいPD-1ファミリーのメンバーは、PD-1と配列同一性を共有しており、1種以上のB7ファミリーメンバー、例えば、B7-1、B7-2、PD-1リガンド、及び/または抗原提示細胞上の他のポリペプチドに結合する。用語「PD-1活性」は、PD-1ポリペプチドが、例えば抗原提示細胞上の天然PD-1リガンドと係合することによって、活性化免疫細胞における抑制性シグナルを調節する能力を含む。免疫細胞における抑制性シグナルの調節は、免疫細胞の増殖の調節、及び/または免疫細胞によるサイトカイン分泌の調節をもたらす。したがって、用語「PD-1活性」は、PD-1ポリペプチドがその天然リガンド(複数可)に結合する能力、免疫細胞抑制性シグナルを調節する能力、及び免疫応答を調節する能力を含む。用語「PD-1リガンド」は、PD-1受容体の結合パートナーを指し、PD-L1(Freeman et al.(2000)J.Exp.Med.192:1027-1034)及びPD-L2(Latchman et al.(2001)Nat.Immunol.2:261)の両方を含む。用語「PD-1リガンド活性」は、PD-1リガンドポリペプチドがその天然の受容体(複数可)(例えば、PD-1またはB7-1)に結合する能力、免疫細胞抑制性シグナルを調節する能力、及び免疫応答を調節する能力を含む。
【0374】
本明細書で使用する場合、用語「免疫チェックポイント療法」とは、免疫抑制性免疫チェックポイントを阻害する薬剤の使用、例えば、それらの核酸及び/またはタンパク質を阻害することを指す。1種以上のそのような免疫チェックポイントの阻害は、抑制性シグナル伝達を遮断あるいは中和して、それによって、がんをより有効に治療するべく免疫応答を上方制御し得る。免疫チェックポイントを阻害するのに有用な例示的な薬剤としては、免疫チェックポイントタンパク質またはその断片に結合し得る及び/またはそれを不活性化させ得るまたは阻害し得る抗体、小分子、ペプチド、ペプチドミメティック、天然リガンド、及び天然リガンドの誘導体;ならびに免疫チェックポイント核酸またはその断片の発現及び/または活性を下方制御し得るRNA干渉、アンチセンス、核酸アプタマーなどが挙げられる。免疫応答を上方制御するための例示的な薬剤としては、タンパク質とその天然の受容体(複数可)との間の相互作用を遮断する、1種以上の免疫チェックポイントタンパク質に対する抗体;1種以上の免疫チェックポイントタンパク質の非活性化形態(例えば、ドミナントネガティブポリペプチド);1種以上の免疫チェックポイントタンパク質とその天然の受容体(複数可)との間の相互作用を遮断する小分子またはペプチド;融合タンパク質(例えば、抗体または免疫グロブリンのFc部分に融合した、免疫チェックポイント抑制タンパク質の細胞外部分)であって、その天然の受容体に結合する、当該融合タンパク質;免疫チェックポイント核酸の転写または翻訳を阻止する核酸分子;ならびに類似するものが挙げられる。そのような薬剤は、1種以上の免疫チェックポイントとその天然の受容体(例えば、抗体)との間の相互作用を直接的に遮断して、抑制性シグナル伝達を阻止し得、免疫応答を上方制御し得る。あるいは、薬剤は、1種以上の免疫チェックポイントタンパク質とその天然の受容体(複数可)との間の相互作用を間接的に遮断して、抑制性シグナル伝達を阻止し得、免疫応答を上方制御し得る。例えば、可溶型の免疫チェックポイントタンパク質リガンド、例えば安定化された細胞外ドメインは、その受容体に結合して、適切なリガンドに結合する受容体の実効濃度を間接的に低下させ得る。一実施形態では、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体及び/または抗PD-L2抗体を単独で、または組み合わせて使用して免疫チェックポイントを阻害する。PD-1経路を遮断するために使用される治療剤としては、アンタゴニスト抗体及び可溶性PD-L1リガンドが挙げられる。PD-1及びPD-L1/2抑制性経路に対するアンタゴニスト薬剤には、PD-1またはPD-L1/2に対するアンタゴニスト抗体(例えば、米国特許第8,008,449号に開示されている17D8、2D3、4H1、5C4(別名ニボルマブまたはBMS-936558)、4A11、7D3及び5F4;AMP-224、ピジリズマブ(CT-011)、ペムブロリズマブ、ならびに米国特許第8,779,105号、同第8,552,154号、同第8,217,149号、同第8,168,757号、同第8,008,449号、同第7,488,802号、同第7,943,743号、同第7,635,757号及び同第6,808,710号に開示される抗体が含まれ得るが、これらに限定されない。同様に、さらなる代表的なチェックポイント阻害剤は、限定されるものではないが、抑制性調節因子CTLA-4(抗細胞傷害性Tリンパ球抗原4 抗細胞傷害性Tリンパ球抗原4)に対する抗体、例えばイピリムマブ、トレメリムマブ(完全ヒト化型)、抗CD28抗体、抗CTLA-4アドネクチン、抗CTLA-4ドメイン抗体、一本鎖抗CTLA-4抗体断片、重鎖抗CTLA-4断片、軽鎖抗CTLA-4断片、ならびに他の抗体、例えば、米国特許第8,748,815号、同第8,529,902号、同第8,318,916号、同第8,017,114号、同第7,744,875号、同第7,605,238号、同第7,465,446号、同第7,109,003号、同第7,132,281号、同第6,984,720号、同第6,682,736号、同第6,207,156号及び同第5,977,318に、及び欧州特許第1212422号、米国特許公開第2002/0039581号及び同第2002/086014号に、及びHurwitz et al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.95:10067-10071に開示されている抗体であり得る。
【0375】
PD-1、PD-L1、PD-L2及びCTLA-4に関して例示される免疫チェックポイント活性、リガンド、遮断などについての代表的な定義は、他の免疫チェックポイント全般に適用される。
【0376】
用語「非標的療法」とは、選択された生体分子と選択的に相互作用をしないがそれでもがんを治療する薬剤を、投与することを指す。非標的療法の代表的な例としては、限定されるものではないが、化学療法、遺伝子治療、及び放射線療法が挙げられる。
【0377】
一実施形態では、化学療法を用いる。化学療法は、化学療法剤を投与することを含む。そのような化学療法剤は、限定されるものではないが、以下の化合物の群の中から選択されるものであり得る:白金化合物、細胞傷害性抗生物質、代謝拮抗剤、抗有糸分裂剤、アルキル化剤、ヒ素化合物、DNAトポイソメラーゼ阻害剤、タキサン類、ヌクレオシド類縁体、植物アルカロイド、及び毒素;ならびにそれらの合成誘導体。例示的な薬剤としては、限定されるものではないが、アルキル化剤:ナイトロジェンマスタード類(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド、トロホスファミド、クロラムブシル、エストラムスチン、及びメルファラン)、ニトロソウレア類(例えば、カルムスチン(BCNU)及びロムスチン(CCNU))、アルキルスルホン酸エステル(例えば、ブスルファン及びトレオスルファン)、トリアゼン類(例えば、ダカルバジン、テモゾロミド)、シスプラチン、トレオスルファン、及びトロホスファミド;植物アルカロイド類:ビンブラスチン、パクリタキセル、ドセタキソール;DNAトポイソメラーゼ阻害剤:テニポシド、クリスナトール、及びマイトマイシン;葉酸拮抗薬:メトトレキサート、ミコフェノール酸、及びヒドロキシウレア;ピリミジン類縁体:5-フルオロウラシル、ドキシフルリジン、及びシトシンアラビノシド;プリン類縁体:メルカプトプリン及びチオグアニン;DNA代謝拮抗薬:2’-デオキシ-5-フルオロウリジン、アフィジコリングリシネート、及びピラゾロイミダゾール;及び抗有糸分裂剤:ハリコンドリン、コルヒチン、ならびにリゾキシンが挙げられる。同様に、さらなる例示的な薬剤としては、白金含有化合物(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン)、ビンカアルカロイド類(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、及びビノレルビン)、タキソイド類(例えば、パクリタキセル、またはパクリタキセル等価体、例えば、ナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル(ABRAXANE)、ドコサヘキサエン酸結合パクリタキセル(DHA-パクリタキセル、タキソプレキシン)、ポリグルタメート酸結合パクリタキセル(PG-パクリタキセル、パクリタキセルポリグルメックス、CT-2103、XYOTAX)、腫瘍活性化プロドラッグ(TAP)ANG1005(パクリタキセル3分子と結合したAngiopep-2)、パクリタキセル-EC-1(erbB2認識ペプチドEC-1に結合したパクリタキセル)、及びグルコース結合体化パクリタキセル、例えば、2’-パクリタキセルメチル2-グルコピラノシルサクシネート;ドセタキセル、タキソール)、エピポドフィリン(例えば、エトポシド、エトポシドホスフェート、テニポシド、トポテカン、9-アミノカンプトテシン、カンプトイリノテカン、イリノテカン、クリスナトール、マイトマイシンC)、代謝拮抗薬、DHFR阻害剤(例えば、メトトレキサート、ジクロロメトトレキサート、トリメトレキサート、エダトレキサート)、IMPデヒドロゲナーゼ阻害剤(例えば、ミコフェノール酸、チアゾフリン、リバビリン、及びEICAR)、リボヌクレオチド還元酵素阻害剤(ribonuclotide reductase inhibitors)(例えば、ヒドロキシウレア、及びデフェロキサミン)、ウラシル類縁体(例えば、5-フルオロウラシル(5-FU)、フロクスウリジン、ドキシフルリジン、ラルチトレキセド、テガフール-ウラシル、カペシタビン)、シトシン類縁体(例えば、シタラビン(ara C)、シトシンアラビノシド、及びフルダラビン)、プリン類縁体(例えば、メルカプトプリン及びチオグアニン)、ビタミンD3類縁体(例えば、EB1089、CB1093、及びKH1060)、イソプレニル化阻害剤(例えば、ロバスタチン)、ドーパミン作動性神経毒(例えば、1-メチル-4-フェニルピリジニウムイオン)、細胞周期阻害剤(例えば、スタウロスポリン)、アクチノマイシン(例えば、アクチノマイシンD、ダクチノマイシン)、ブレオマイシン(例えば、ブレオマイシンA2、ブレオマイシンB2、ペプロマイシン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ペグ化リポソームドキソルビシン、イダルビシン、エピルビシン、ピラルビシン、ゾルビシン、ミトキサントロン)、MDR阻害剤(例えば、ベラパミル)、Ca2+ ATPase阻害剤(例えば、タプシガルギン)、イマチニブ、サリドマイド、レナリドマイド、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、アキシチニブ(AG013736)、ボスチニブ(SKI-606)、セディラニブ(RECENTIN(商標)、AZD2171)、ダサチニブ(SPRYCEL(商標登録)、BMS-354825)、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標))、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標))、イマチニブ(Gleevec(登録商標)、CGP57148B、STI-571)、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、TYVERB(登録商標)、レスタウルチニブ(CEP-701)、ネラチニブ(HKI-272)、ニロチニブ(TASIGNA(登録商標))、セマキサニブ(セマキシニブ、SU5416)、スニチニブ(SUTENT(登録商標)、SU11248)、トセラニブ(PALLADIA(登録商標))、バンデタニブ(ZACTIMA(登録商標)、ZD6474)、バタラニブ(PTK787、PTK/ZK)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標))、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標))、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標))、ラニビズマブ(Lucentis(登録商標))、ニロチニブ(TASIGNA(登録商標))、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標))、エベロリムス(AFINITOR(登録商標))、アレムツズマブ(CAMPATH(登録商標))、ゲムツズマブ オゾガマイシン(MYLOTARG(登録商標))、テムシロリムス(TORISEL(登録商標))、ENMD-2076、PCI-32765、AC220、ドビチニブ乳酸塩(TKI258、CHIR-258)、BIBW 2992(TOVOK(商標))、SGX523、PF-04217903、PF-02341066、PF-299804、BMS-777607、ABT-869、MP470、BIBF1120(VARGATEF(登録商標))、AP24534、JNJ-26483327、MGCD265、DCC-2036、BMS-690154、CEP-11981、チボザニブ(AV-951)、OSI-930、MM-121、XL-184、XL-647、及び/またはXL228)、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ(ベルケイド(VELCADE)(登録商標))、mTOR阻害剤(例えば、ラパマイシン、テムシロリムス(CCI-779)、エベロリムス(RAD-001)、リダホロリムス、AP23573(Ariad)、AZD8055(AstraZeneca)、BEZ235(Novartis)、BGT226(Novartis)、XL765(Sanofi Aventis)、PF-4691502(Pfizer)、GDC0980(Genentech)、SF1126(Semafoe)、及びOSI-027(OSI))、オブリメルセン、ゲムシタビン、カルミノマイシン、ロイコボリン、ペメトレキセド、シクロホスファミド、ダカルバジン、プロカルビジン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、カンパテシン、プリカマイシン、アスパラギナーゼ、アミノプテリン、メトプテリン、ポルフィロマイシン、メルファラン、ロイロシジン、ロイロシン、クロラムブシル、トラベクテジン、プロカルバジン、ディスコデルモライド、カルミノマイシン、アミノプテリン、ならびにヘキサメチルメラミンが挙げられる。1種以上の化学療法剤を含む組成物(例えば、FLAG、CHOP)を使用することもある。FLAGは、フルダラビン、シトシンアラビノシド(Ara-C)及びG-CSFを含む。CHOPは、シクロホスファミド、ビンクリスチン、ドキソルビシン、及びプレドニゾンを含む。別の実施形態では、PARP(例えば、PARP-1及び/またはPARP-2)阻害剤を使用するが、そのような阻害剤は当技術分野でよく知られている(例えば、オラパリブ、ABT-888、BSI-201、BGP-15(N-Gene Research Laboratories,Inc.)、INO-1001(Inotek Pharmaceuticals Inc.)、PJ34(Soriano et al.,2001、Pacher et al.,2002b)、3-アミノベンズアミド(Trevigen)、4-アミノ-1,8-ナフタルイミド、(Trevigen)、6(5H)-フェナントリジノン(Trevigen)、ベンズアミド(米国特許再発行第36,397号);及びNU1025(Bowman et al.))。作用機序は、概して、PARP阻害剤がPARPに結合してその活性を低下させることができることに関係している。PARPは、ベータ-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)からニコチンアミド及びポリ-ADP-リボース(PAR)への変換を触媒する。ポリ(ADP-リボース)及びPARPの両方は、転写、細胞増殖、ゲノム安定性及び発がんの調節に関連付いている(Bouchard et.al.(2003)Exp.Hematol.31:446-454)、Herceg(2001)Mut.Res.477:97-110)。ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ1(PARP1)は、DNA一本鎖切断(SSB)の修復において重要な分子である(de Murcia J.et al.(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.94:7303-7307、Schreiber et al.(2006)Nat.Rev.Mol.Cell Biol.7:517-528、Wang et al.(1997)Genes Dev.11:2347-2358)。PARP1機能の抑制によってSSB修復をノックアウトすると、DNA二本鎖切断(DSB)が誘導され、これは、相同組換えDSB修復に欠陥があるがん細胞においては、合成致死性を引き起こすことがある(Bryant et al.(2005)Nature 434:913-917、Farmer et al.(2005)Nature 434:917-921)。化学療法剤の上記例は、例示的なものであり、限定することを意図するものではない。
【0378】
別の実施形態では、放射線療法を用いる。放射線療法に用いられる放射線は、電離放射線であり得る。放射線療法はまた、ガンマ線、X線、または陽子線であってもよい。放射線療法の例としては、限定されるものではないが、体外照射療法、放射性同位体(I-125、パラジウム、イリジウム)の組織内移植、ストロンチウム-89などの放射性同位体、胸部放射線療法、腹腔内P-32放射線療法、及び/または全腹部及び全骨盤放射線療法が挙げられる。放射線療法の概略については、Hellman,Chapter 16:Principles of Cancer Management:Radiation Therapy,6th edition,2001,DeVita et al.,eds.,J.B.Lippencott Company,Philadelphiaを参照されたい。放射線療法は、体外照射放射線または遠隔療法として施与されることがあり、放射線は、遠隔の発生源から向けられて来る。放射線治療はまた、体内療法または近接照射療法として施与されることもあり、放射線発生源は、がん細胞または腫瘤に近接して、体内に配置される。また、ヘマトポルフィリン及びその誘導体、ベルトポルフィン(Vertoporfin)(BPD-MA)、フタロシアニン、光増感剤Pc4、デメトキシ-ヒポクレリンA;及び2BA-2-DMHAなどの光増感剤の投与を含む光線力学療法の利用も包含される。
【0379】
別の実施形態では、ホルモン療法が用いられる。ホルモン療法的治療は、例えば、ホルモンアゴニスト、ホルモンアンタゴニスト(例えば、フルタミド、ビカルタミド、タモキシフェン、ラロキシフェン、ロイプロリド酢酸塩(LUPRON)、LH-RHアンタゴニスト)、ホルモンの生合成及びプロセシングの阻害剤、ならびにステロイド(例えば、デキサメタゾン、レチノイド、デルトイド、ベタメタゾン、コルチゾール、コルチゾン、プレドニゾン、デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、ミネラルコルチコイド、エストロゲン、テストステロン、プロゲスチン)、ビタミンA誘導体(例えば、全トランス型レチノイン酸(ATRA);ビタミンD3類縁体;抗ゲスターゲン(例えば、ミフェプリストン、オナプリストン)、または抗アンドロゲン(例えば、酢酸シプロテロン)を含み得る。
【0380】
別の実施形態では、体組織を高温(最高106°F)に曝露する処置である温熱処置を用いる。熱は、細胞を傷付けること、または細胞からその生存に必要な物質を奪うことによって、腫瘍を縮小するのに役立ち得る。温熱療法は、体外及び体内加温装置を使用する局所、局部及び全身の温熱処置であり得る。温熱処置は、ほぼ常に、他の形態の療法(例えば、放射線療法、化学療法及び生物学的療法)の有効性を向上させようとしてそれらとともに用いられる。局所温熱処置は、非常に小さな領域、例えば腫瘍に印加される熱を指す。領域は、体外にある装置から腫瘍に狙いを定めた高周波によって体外から加温され得る。体内加温を成し遂げるためには、加温ワイヤ、または温水で満たされた中空チューブ;埋込型マイクロ波アンテナ;及びラジオ波電極を含めたいくつかの種類の無菌プローブの1つが使用され得る。局部温熱処置では、臓器または四肢を加温する。加温すべき領域の上に、磁石、及び高エネルギーを生成する装置が配置される。灌流と呼ばれる別の手法では、患者の血液の一部を取り出し、加温し、その後、体内から加温されるべき領域の中へ圧送(灌流)する。全身加温は、身体の全体にわたって広がった転移がんを処置するために用いられる。それは、温水ブランケット、温ワックス、(電気毛布の中にあるような)誘導コイル、または(大型インキュベータのような)加温チャンバを使用することによって成し遂げられ得る。温熱処置は、放射線副作用または合併症の著しい増加を何ら引き起こさない。但し、皮膚に直接印加される熱は、処置された患者の約半数において、不快感、さらに言えば局所の著しい疼痛を引き起こすことがある。それはまた、水疱を引き起こすこともあるが、これは一般に速やかに治癒するものである。
【0381】
さらに別の実施形態では、光線力学療法(PDT、光照射療法、光線療法または光化学療法とも呼ばれる)をいくつかのタイプのがんの治療のために用いる。それは、単細胞生物を特定のタイプの光に曝露した場合に、光増感剤として知られるある特定の化学物質が単細胞生物を殺滅することがある、という発見に基づいている。PDTは、光増感剤と組み合わせた固定周波数のレーザー光の使用によって、がん細胞を破壊する。PDTでは、光増感剤は血流中に注入され、体全体の細胞によって吸収される。当該薬剤は、正常細胞と比較してより長い時間にわたってがん細胞にとどまる。処置されたがん細胞がレーザー光に曝露されると、光増感剤が光を吸収し、処置されたがん細胞を破壊する活性型の酸素を生成する。光増感剤の大部分が健常な細胞から去ってしまったが、未だがん細胞内には存在している時に、光曝露が起こるよう、光曝露の頃合いを慎重に見計らわねばならない。PDTに用いるレーザー光を光ファイバー(非常に細いガラスストランド)によって指向することがある。光ファイバーをがんの近くに配置して適切な量の光を送達する。光ファイバーを、肺癌の治療のために気管支鏡によって肺内に、または食道癌の治療のために内視鏡によって食道内に、指向することがある。PDTの利点は、それによって引き起こされる健常組織への損傷が最小限に抑えられることである。しかしながら、現在利用されているレーザー光は約3センチメートルよりも長く(1と8分の1インチよりも少し長く)組織を貫通することができないため、PDTは主に、皮膚上もしくは皮膚直下、または体内臓器の内壁上の腫瘍を治療するために用いられる。光線力学療法は、処置後6週間以上にわたって皮膚及び眼を光に対して敏感にする。患者は、直射日光及び室内の明るい光を少なくとも6週間にわたって避けるように助言される。患者が外出しなければならない場合には、サングラスを含めた防護服を着用する必要がある。PDTの他の一時的な副作用は、特定の領域の処置に関係するものであり、これには、咳、嚥下困難、腹痛、及び呼吸時痛または息切れが含まれ得る。1995年12月にU.S.Food and Drug Administration(FDA)は、ポルフィマーナトリウムまたはPhotofrin(登録商標)と呼ばれる光増感剤を、閉塞を引き起こしている食道癌の症候を緩和するため及びレーザー単独では満足に治療されることができない食道癌のために承認した。1998年1月にFDAは、ポルフィマーナトリウムを、肺癌のための通常の治療が適さない患者における早期非小細胞肺癌の治療のために承認した。国立がん研究所及び他の機関は、膀胱、脳、喉頭及び口腔のがんを含めたいくつかのタイプのがんに対する光線力学療法の利用を評価するための臨床試験(研究試験)を支持している。
【0382】
さらに別の実施形態では、レーザー療法を用いて高強度の光を利用して、がん細胞を破壊する。この技術は、とりわけ他の治療ではがんが治癒し得ない場合に、がんの症候、例えば出血または閉塞を緩和するために用いられることが多い。それはまた、腫瘍を縮小または破壊することによってがんを治療するためにも用いられ得る。用語「レーザー」は、放射線の刺激放射による光線増幅を表す。通常の光、例えば電球からの光は、多くの波長を有し、あらゆる方向に広がる。他方、レーザー光は、特定の波長を有し、細い光線に集束されている。このタイプの高強度の光は、大きなエネルギーを内包する。レーザーは非常に強力であり、鉄鋼を切断するためまたはダイヤモンドを成形するために用いられることがある。レーザーはまた、非常に精密な外科手技、例えば、眼内の損傷した網膜の修復、または(外科用メスに代わる)組織の切断のために用いられることもある。いくつかの異なる種類のレーザーが存在しているが、3種類のみが医学において広く用いられている。二酸化炭素(CO)レーザー--このタイプのレーザーは、皮膚の表面から薄い層を、より深い層の貫通を伴わずに、除去することができる。この技術は、皮膚内に深く広がっていない腫瘍の治療、及びある特定の前がん状態において、特に有用である。COレーザーは、従来の外科用メスによる外科手術に代わって皮膚を切断することもできる。レーザーは、このようにして皮膚癌を除去するために用いられる。ネオジムイットリウム-アルミニウム-ガーネット(Nd:YAG)レーザー--このレーザーからの光は、他のタイプのレーザーからの光よりも深く組織を貫通することができ、それは血液を素早く凝固させることができる。それは、光ファイバーによって、身体のより到達しがたい部分へ運ばれることができる。このタイプのレーザーは、時には、咽喉癌を治療するために用いられる。アルゴンレーザー--このレーザーは、組織の表層のみを通過することができ、それゆえ、皮膚学及び眼の外科手術において有用である。それはまた、光線力学療法(PDT)として知られる手順において腫瘍を治療するために感光性色素とともに用いられもする。レーザーは、標準的な外科手術器具に勝るいくつかの利点を有する:レーザーは外科用メスよりも正確である。切開部付近の組織は、周囲の皮膚または他の組織との接触がほとんどないので保護される。レーザーによって生成した熱は外科手術部位を滅菌し、かくして、感染症のリスクが低減される。レーザーの精度がより小さな切開部を可能にするので、必要な手術時間がより少なくなり得る。治癒時間が短縮されることが多い;レーザー熱が血管を封止するので出血、腫脹または瘢痕化が少ない。レーザー外科手術はあまり複雑でないことがある。例えば、光ファイバーによってレーザー光は、大きな切開部を作ることなく身体の一部に指向され得る。外来患者基準でより多くの手順がなされ得る。レーザーは、がんを治療するために2つの方法で使用され得る:腫瘍を熱で縮小もしくは破壊すること、またはがん細胞を破壊する化学物質--光増感剤として知られる--を活性化させること。PDTにおいて、光増感剤はがん細胞内に保持され、光によって刺激されて、がん細胞を殺滅する反応をもたらし得る。CO及びNd:YAGレーザーは、腫瘍を縮小または破壊するために用いられる。それらは、膀胱などの身体のある特定の領域を医師が見ることを可能にするチューブである内視鏡とともに、用いられ得る。いくらかのレーザーからの光は、光ファイバーが取り付けられた柔軟な内視鏡を通って送られ得る。これは、外科手術による以外には到達できなかった身体の一部を医師が見てそこで作業することを可能にし、したがって、非常に精密にレーザー光線の狙いを定めることを可能にする。また、レーザーを低出力顕微鏡とともに用いることもあり、これによって医者は処置部位の明瞭な視野が得られる。他の装置とともに用いればレーザーシステムは直径わずか200ミクロンの切断領域を生成し得る--これは非常に細い糸の幅よりも小さい。レーザーは、多くのタイプのがんを治療するために用いられる。レーザー外科手術は、ある特定のステージの声門(声帯)、子宮頸部、皮膚、肺、膣、外陰及び陰茎癌のための標準的治療である。がんを破壊するためのその利用に加えて、レーザー外科手術はまた、がんによって引き起こされる症候を緩和するのを助けるためにも用いられる(緩和ケア)。例えば、レーザーは、患者の気管(のど笛)を塞いでいる腫瘍を縮小または破壊して呼吸を容易にするために用いられることがある。またそれは、時として、大腸及び肛門癌において緩和のためにも用いられる。レーザー誘導組織内温熱療法(LITT)は、レーザー療法における最近の進展の1つである。LITTは、温熱処理と呼ばれるがん治療と同じ概念を用いており;その熱は、細胞を傷付けること、または細胞からその生存に必要な物質を奪うことによって、腫瘍を縮小するのに役立ち得る。この治療では、レーザーを体内の間質領域(臓器間にある領域)に指向する。レーザー光はその後、腫瘍の温度を上昇させ、これによってがん細胞が傷付く、または破壊される。
【0383】
一態様において、本明細書に提供されるのは、MAGEC2を発現する細胞に対する免疫応答を、対象において誘発する方法である。いくつかの実施形態では、方法は、本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することを含み、医薬組成物は、対象に投与されると、MAGEC2を発現する細胞に対する免疫応答を誘発する。
【0384】
いくつかの実施形態では、免疫応答は細胞媒介免疫応答を含み得る。細胞性免疫応答は、T細胞が関与する応答であり、in vitro、ex vivo、またはin vivoで測定される得る。例えば、一般的な細胞性免疫応答は、医薬組成物の投与後の好適な時間に対象からサンプリングされた細胞(例えば、末梢血リンパ球(PBL))におけるT細胞増殖活性として測定され得る。適切な期間にわたって、例えばPBMCを、刺激剤とともにインキュベーションした後、[H]チミジン取り込みを測定することがある。増殖しているT細胞のサブセットを、フローサイトメトリーを用いて決定することがある。
【0385】
本発明に包含される別の態様では、本明細書に提供される方法は、上記のようにヒト及び非ヒト哺乳動物の両方に投与することを含む。獣医学的用途も企図される。いくつかの実施形態では、対象は、免疫応答が誘発され得る任意の生命体であり得る。
【0386】
いくつかの実施形態では、医薬組成物を、適切な任意の時点で投与することができる。例えば、投与することは、MAGEC2発現を特徴とする障害を有する対象の治療の前または間に実施され得、MAGEC2発現を特徴とする障害を臨床的に検出できなくなった後に継続され得る。投与することはまた、再発の徴候を示している対象において継続されることもある。
【0387】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、治療的にまたは予防的に有効な量で、投与され得る。医薬組成物を対象に投与することは、既知の手順を用いて、ならびに所望の効果をもたらすのに十分な投薬量で及び期間にわたって、行われ得る。
【0388】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、対象に、任意の好適な部位で投与され得る。投与は、当技術分野で一般的に知られている方法を用いて成し遂げられ得る。細胞を含めて薬剤は、直接注射によって、または当技術分野で用いられる任意の他の方法、例えば、限定されるものではないが、血管内、脳内、非経口、腹腔内、静脈内、硬膜外、脊髄腔内、胸骨内、関節内、滑膜内、くも膜下腔内、動脈内、心臓内または筋肉内投与によって、所望の部位に導入され得る。例えば、関心とする対象に、様々な経路によって移植された細胞を生着させることがある。そのような経路としては、限定されるものではないが、静脈内投与、皮下投与、特定の組織への投与(例えば、病巣への移植)、大腿骨骨髄腔内への注射、脾臓内への注射、胎児肝臓の腎被膜下への投与が挙げられる。ある特定の実施形態では、本発明に包含されるがんワクチンを対象に腫瘍内または皮下注射することがある。細胞は、1回の輸注で、または所望の効果を生じさせるのに十分な規定の期間をかけた連続的な輸注によって、投与され得る。移植、生着評価、及び移植された細胞のマーカー表現型解析のための、例示的な方法は、当技術分野でよく知られている(例えば、Pearson et al.(2008)Curr.Protoc.Immunol.81:15.21.1-15.21.21、Ito et al.(2002)Blood 100:3175-3182、Traggiai et al.(2004)Science 304:104-107、Ishikawa et al.Blood(2005)106:1565-1573、Shultz et al.(2005)J.Immunol.174:6477-6489、及びHolyoake et al.(1999)Exp.Hematol.27:1418-1427を参照)。
【0389】
いくつかの実施形態では、用量は、それが免疫応答を誘発するものであろうと、MAGEC2発現を特徴とする障害及び/またはそれに関連する症候の予防的または治療的処置をもたらすものであろうと、所望の応答をもたらすのに有効な量で及び期間にわたって投与され得る。
【0390】
医薬組成物は、他の療法、例えば、対象における免疫応答も誘発する療法の後に、その前に、またはそれと同時進行で、投与され得る。例えば、対象は、他の形態の免疫調節剤によって予めまたは同時に治療されてもよく、そのような他の療法は、本明細書に記載される組成物の免疫原性を妨害しないような方法で提供されることがある。
【0391】
投与は介護者(例えば、医師、獣医師)によって適切に適時選択がなされ得、対象の臨床症状、投与の目的、及び/またはさらに企図もしくは投与されている他の療法によって決まり得る。いくつかの実施形態では、初回用量を投与して、免疫学的及び/または臨床的応答について対象の追跡評価を行うことがある。免疫学的追跡評価の好適な手段は、患者の末梢血リンパ球(PBL)を応答体として、及び本明細書に記載される免疫原性ペプチドまたはペプチド-MHC複合体を刺激剤として使用することを含む。また、免疫学的応答を投与部位での遅延性の炎症反応によって測定することもある。必要に応じて、初回用量に続く1回以上の用量を、所望の効果が得られるまで、典型的には月1回、半月に1回、または週1回、投与することがある。その後、必要に応じて、特に、免疫学的または臨床的な利益が弱まってきていると思われる場合に、さらなる追加免疫用量または維持用量を投与することがある。
【0392】
概して、適切な投薬レジメン及び治療レジメンは、利益を提供するのに十分な量の活性分子または細胞を提供する。そのような応答は、非治療対象と比較したときの治療された対象における改善された臨床転帰(例えば、より頻繁な寛解、完全なもしくは部分的な、またはより長い無病生存期間)を確立することによって、追跡評価され得る。ウイルスタンパク質に対する既存の免疫応答の増大は、一般に、改善された臨床転帰と相関する。そのような免疫応答は一般に、標準的な増殖、細胞傷害またはサイトカインアッセイを用いて評価され得るが、これらは慣例的なものである。
【0393】
予防的使用の場合、用量は、疾患にもしくは障害に関連する疾患の予防、その発症の遅延、またはその重症度の低減のために十分なものであるべきである。本明細書に記載される方法に従って投与される免疫原性組成物の予防的利益は、前臨床(in vitro、ex vivo、及びin vivo動物研究を含む)及び臨床研究を実施すること、ならびにそこから得られたデータを適切な統計学的、生物学的及び臨床的な方法及び技術によって解析することによって、見極められ得、これらはどれも当業者によって容易に実施され得る。
【0394】
本明細書で使用する場合、組成物の投与は、送達の経路または様式にかかわらず、それを対象に送達することを指す。投与は、連続的または断続的に、及び非経口的に行われ得る。投与は、識別された症状、疾患もしくは疾患状態を有すると既に確認済みである対象を治療するために、またはそのような症状、疾患もしくは疾患状態に罹患しやすいもしくはそれの発症リスクがある対象を治療するために行われ得る。補助療法との共投与は、複数種の薬剤を任意の順序及び任意の投薬スケジュールで同時及び/または連続的に送達すること(例えば、操作型免疫細胞と1種以上のサイトカイン;免疫抑制療法、例えば、カルシニューリン阻害剤、コルチコステロイド、微小管阻害剤、低用量のミコフェノール酸プロドラッグまたはそれらの任意の組合せ)を含み得る。
【0395】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される宿主細胞(例えば、操作型免疫細胞)の複数回の用量を対象に投与するが、これらは約2週間~約4週間の投与間隔で投与され得る。
【0396】
本発明に包含される治療方法または予防方法を治療コースの一部または治療レジメンの一部として対象に処方することがあるが、それは、本開示の単位用量、細胞または組成物の投与の前または後に付加的な治療を含むものであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、宿主細胞(例えば、操作型免疫細胞)の単位用量を受けている対象は、造血細胞移植(HCT;例えば、骨髄破壊的HCT及び非骨髄破壊的HCT)を受けているか、または以前に受けたことがある。前述の実施形態のいずれかでは、HCTにおいて使用される造血細胞は、MHC、抗原及び結合性タンパク質から選択されるポリペプチド産物をコードする1つ以上の内在遺伝子の発現を低減させるまたは除去するように(例えば、本明細書に記載される方法による染色体遺伝子ノックアウトによって)改変された「汎用ドナー」細胞であることがある。
【0397】
いくつかの実施形態では、細胞移植を実施するための技術及びレジメンは当技術分野において既知であり、任意の好適なドナー細胞、例えば、臍帯血、骨髄または末梢血に由来する細胞、造血幹細胞、動員された幹細胞、または羊水由来の細胞の移植を含み得る。したがって、いくつかの実施形態では、本発明に包含される宿主細胞(例えば、操作型免疫細胞)を、幹細胞療法と一緒に、またはその直後に投与することがある。
【0398】
本発明に包含される方法は、いくつかの実施形態では、併用療法において、疾患または障害(例えば、MAGEC2発現を特徴とする障害)を治療するための1種以上の付加的な薬剤を投与することを、さらに含むことがある。例えば、いくつかの実施形態では、併用療法は、本発明に包含される宿主細胞または結合性タンパク質を抗ウイルス薬剤と一緒に(同時発生的に、同時に、または連続して)投与することを含む。いくつかの実施形態では、併用療法は、本発明に包含される宿主細胞または結合性タンパク質をロピナビル/リトナビル、クロロキン、リバビリン、ステロイド薬、ヒドロキシクロロキン及び/またはインターフェロンαと一緒に投与することを含む。いくつかの実施形態では、併用療法は、本発明に包含される宿主細胞、組成物、または宿主細胞の単位用量を、二次的な療法、例えば、外科手術、抗体、ワクチンまたはそれらの任意の組合せと一緒に投与することを含む。
【0399】
c.スクリーニング方法
本発明に包含される別の態様は、スクリーニングアッセイを包含する。
【0400】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のMAGEC2免疫原性ペプチドまたはpMHCに結合する薬剤を選択する方法が提供される。例えば、表1に列挙されるペプチド配列から選択されるペプチドエピトープに結合する、ペプチド結合性分子またはその抗原結合性断片を同定する方法であって、a)細胞の表面上のMHC分子との関連において表1に列挙されるペプチド配列から選択されるペプチドエピトープを提示している細胞を提供すること;b)細胞上のMHC分子との関連においてペプチドエピトープに対する複数種の候補ペプチド結合性分子またはその抗原結合性断片の結合性を決定すること;及びc)MHC分子との関連においてペプチドエピトープに結合する1種以上のペプチド結合性分子またはその抗原結合性断片を同定することを含む、当該方法が提供される。
【0401】
いくつかの実施形態では、表1に列挙されるペプチド配列から選択されるペプチドエピトープに結合する、ペプチド結合性分子またはその抗原結合性断片を同定する方法であって、a)表1に列挙されるペプチド配列から選択されるペプチドエピトープを単独で、あるいはMHC分子との関連において含む、単独の、あるいは安定MHC-ペプチド複合体中に含まれた状態のペプチドエピトープを、提供すること;b)ペプチドまたは安定MHC-ペプチド複合体に対する複数種の候補ペプチド結合性分子またはその抗原結合性断片の結合性を決定すること;及びc)ペプチドエピトープまたは安定MHC-ペプチド複合体に結合する1種以上のペプチド結合性分子またはその抗原結合性断片を同定することを含み、任意選択的に、MHCまたはMHC-ペプチド複合体が、本明細書に記載されているものである、当該方法が提供される。
【0402】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるのは、表1から選択されるペプチドエピトープに結合するペプチド結合性分子またはその抗原結合性断片を同定する方法である。
【0403】
いくつかの実施形態では、ペプチド結合性分子(例えば、MHC-ペプチド結合性分子)は、MHC分子(MHC-ペプチド複合体)との関連において例えば細胞の表面上で提示または呈示されたペプチドエピトープに(例えば、特異的及び/または選択的に)結合する能力をもっている分子またはその一部である。例示的なペプチド結合性分子としては、MHC-ペプチド複合体に結合する特異的な能力を呈する、T細胞受容体もしくは抗体、またはその抗原結合性部分、例えばその一本鎖免疫グロブリン可変領域(例えば、scTCR、scFv)が挙げられる。いくつかの実施形態では、ペプチド結合性分子は、TCRまたはその抗原結合性断片である。いくつかの実施形態では、ペプチド結合性分子は、抗体、例えば、TCR様抗体またはその抗原結合性断片である。いくつかの実施形態では、ペプチド結合性分子は、抗体またはその抗原結合性断片を含有する、TCR様CAR、例えば、TCR様抗体、例えば、MHC-ペプチド複合体に結合するように操作されているものである。いくつかの実施形態では、ペプチド結合性分子は天然の供給源に由来し得、またはそれは、部分的にもしくは全体的に合成もしくは組換えによって生成したものであり得る。
【0404】
いくつかの実施形態では、ペプチドエピトープに結合する結合性分子は、1種以上の候補ペプチド結合性分子、例えば、1種以上の候補TCR分子、抗体またはその抗原結合性断片を、MHC-ペプチド複合体と接触させること、及び1種以上の候補結合性分子の各々がMHC-ペプチド複合体に(例えば、特異的及び/または選択的に)結合するかどうかを評価することによって同定され得る。方法は、in vitro、ex vivo、またはin vivoで行われ得る。スクリーニングのための方法は、当技術分野でよく知られており、例えば、米国特許公開第2020/0102553号に記載されている。
【0405】
いくつかの実施形態では、方法は、複数種のまたはライブラリーの結合性分子、例えば、複数種のまたはライブラリーのTCRまたは抗体を、MHC拘束性エピトープと接触させること、及びそのようなエピトープに特異的及び/または選択的に結合する分子を同定または選択することを含む。いくつかの実施形態では、複数種の異なる結合性分子、例えば複数種の異なるTCRまたは複数種の異なる抗体を含有する、ライブラリーまたは集合を、MHC拘束性エピトープに対する結合についてスクリーニングまたは評価することがある。いくつかの実施形態、例えば、MHC拘束性ペプチドに特異的及び/または選択的に結合する結合性タンパク質を選択するための実施形態では、ハイブリドーマ法を採用することがある。
【0406】
いくつかの実施形態では、スクリーニング法であって、複数種の候補結合性分子、例えば候補結合性分子のライブラリーまたは集合をペプチド結合性分子の個々を同時あるいは連続的にペプチド結合性分子と接触させる、当該スクリーニング法を採用することがある。特定のMHC-ペプチド複合体に特異的及び/または選択的に結合するライブラリーメンバーが同定または選択され得る。いくつかの実施形態では、候補結合性分子のライブラリーまたは集合は、少なくとも2、5、10、100、10、10、10、10、10、10、10種またはそれよりも多くの異なるペプチド結合性分子を含有し得る。
【0407】
いくつかの実施形態では、方法は、1種よりも多くのMHCハプロタイプまたは1種よりも多くのMHCアレルに対する結合性を呈するペプチド結合性分子、例えばTCRまたは抗体を同定するために、採用されることがある。いくつかの実施形態では、ペプチド結合性分子、例えばTCRまたは抗体は、複数種のMHCクラスIハプロタイプまたはアレルとの関連において提示されたペプチドエピトープを特異的及び/または選択的に結合する、またはそれを認識する。いくつかの実施形態では、ペプチド結合性分子、例えばTCRまたは抗体は、複数種のMHCクラスIIハプロタイプまたはアレルとの関連において提示されたペプチドエピトープを特異的及び/または選択的に結合する、またはそれを認識する。
【0408】
結合親和性を評価するため及び/または結合性分子が特定のリガンド(例えば、MHC-ペプチド複合体)に特異的及び/または選択的に結合するかどうかを判定するための様々なアッセイが知られている。標的ポリペプチドのT細胞エピトープに対するTCRの結合親和性を、例えば当技術分野でよく知られている複数の結合アッセイのいずれかを用いることによって決定することは、当業者の水準の範囲内である。例えば、いくつかの実施形態では、Biacore(登録商標)装置を使用して2つのタンパク質の間での複合体の結合定数を決定することがある。複合体の解離定数(K)は、緩衝液がチップ上を流れるときの時間に対する屈折率の変化を計測監視することによって決定され得る。あるタンパク質の別のタンパク質に対する結合性を測定するのに適する他のアッセイとしては、例えば、免疫アッセイ、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)及び放射免疫アッセイ(RIA)、または蛍光、UV吸収、円二色性もしくは核磁気共鳴(NMR)によるタンパク質の分光特性または光学特性の変化を計測監視することによる結合性の決定が挙げられる。他の例示的なアッセイとしては、限定されるものではないが、ウェスタンブロット、ELISA、分析的超遠心分離、分光法及び表面プラズモン共鳴(Biacore(登録商標))分析(例えば、Scatchard et al.(1949)Ann.N.Y.Acad.Sci.51:660、Wilson(2002)Science 295:2103、Wolff et al.(1993)Cancer Res.53:2560、ならびに米国特許第5,283,173号、同第5,468,614号、またはその均等物を参照)、フローサイトメトリー、配列決定、及び発現した核酸を検出するための他の方法が挙げられる。1つの例では、TCRに対する見かけの親和性は、種々の濃度の四量体に対する結合性を評価することによって、例えば、標識付けした四量体を使用するフローサイトメトリーによって、測定される。1つの例では、TCRの見かけのKを、ある濃度範囲の標識付き四量体の2倍希釈液を使用して測定し、その後、非線形回帰による結合曲線の決定を行うが、見かけのKは、最大半量の結合を生じさせるリガンドの濃度として決定される。
【0409】
いくつかの実施形態では、方法は、結合性分子であって、複合体中に特定のペプチドが存在している場合にのみ結合し、特定のペプチドが存在しない場合または重複もしくは関係がない別のペプチドが存在している場合には結合しない、当該結合性分子を同定するために用いられることがある。いくつかの実施形態では、結合性分子は、結合したペプチドの非存在下ではMHCに実質的に結合しない、及び/またはMHCの非存在下ではペプチドに実質的に結合しない。いくつかの実施形態では、結合性分子は、少なくとも部分的に特異的である。いくつかの実施形態では、例示的な同定された結合性分子は、特定のペプチドが存在している場合に、及び特定のペプチドに比べて1つまたは2つの置換を有する関連ペプチドが存在する場合にも、MHC-ペプチド複合体に結合し得る。
【0410】
いくつかの実施形態では、同定された抗体、例えばTCR様抗体は、MHC-ペプチド複合体に特異的及び/または選択的に結合する非TCR抗体を含有するキメラ抗原受容体(CAR)を生産または生成するために使用されることがある。
【0411】
いくつかの実施形態では、ペプチド結合性分子、例えば、TCRもしくはTCR様抗体、またはTCR様CARを同定する方法は、ペプチド結合性分子を発現または含有している細胞を操作するために用いられることがある。いくつかの実施形態では、細胞または操作型細胞はT細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞はCD4+またはCD8+T細胞である。いくつかの実施形態では、ペプチド結合性分子は、MHCクラスIペプチド複合体、MHCクラスIIペプチド複合体及び/またはMHC-Eペプチド複合体を認識する。いくつかの実施形態では、MHCクラスIとの関連においてペプチドを特異的及び/または選択的に認識するペプチド結合性分子、例えばTCRまたは抗体またはCARは、CD8+T細胞を操作するために使用されることがある。いくつかの実施形態において、さらに提供されるのは、MHCクラスIとの関連において提示されたペプチドの認識のためのTCR、抗体またはCARを発現または含有している操作型CD8+T細胞の組成物である。そのような実施形態のいずれかでは、細胞は、養子細胞療法の方法において使用され得る。
【0412】
いくつかの実施形態では、対象から単離された、PBMC中、脾臓中または他のリンパ系臓器中に存在する細胞を含めたT細胞からのVα及びVβのレパートリーの増幅によって、TCRライブラリーを生成することがある。場合によっては、腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)からT細胞を増幅することがある。いくつかの実施形態では、TCRライブラリーをCD4+またはCD8+細胞から生成することがある。いくつかの実施形態では、正常な健常対象のT細胞供給源、すなわち正常なTCRライブラリーからTCRを増幅することがある。いくつかの実施形態では、罹患対象のT細胞供給源、すなわち罹患TCRライブラリーからTCRを増幅することがある。いくつかの実施形態では、例えば、ヒトから得られたサンプル、例えばT細胞におけるRT-PCRによって、縮重プライマーを使用してVα及びVPの遺伝子レパートリーを増幅する。いくつかの実施形態では、scTvライブラリーは、増幅された生成物がクローニングされているナイーブVα及びVβライブラリーから組み立てられることがある、またはリンカーによって分離されるように組み立てられることがある。対象及び細胞の供給源によっては、ライブラリーはHLAアレル特異的であり得る。
【0413】
あるいは、いくつかの実施形態では、親TCR分子または足場TCR分子の変異誘発または多様化によってTCRライブラリーを生成することがある。例えば、いくつかの態様では、対象、例えばヒトまたは他の哺乳動物、例えば齧歯動物を、ペプチド、例えば本発明の方法によって同定されたペプチドでワクチン接種することがある。いくつかの実施形態では、サンプル、例えば、血液リンパ球を含有するサンプルを、対象から得ることがある。いくつかの例では、結合性分子、例えばTCRを、サンプルから、例えばサンプル中に含有されるT細胞から増幅することがある。いくつかの実施形態では、抗原特異的T細胞を例えばスクリーニングによって選択してペプチドに対するCTL活性を評価することがある。いくつかの態様では、TCR、例えば、抗原特異的T細胞上に存在するTCRは、例えば抗原に対する結合活性、例えば特定の親和性またはアビディティーによって、選択され得る。いくつかの態様では、TCRは、例えば変異誘発によって、例えばαまたはβ鎖の変異誘発によって、指向的進化に供される。いくつかの態様では、TCRのCDRの中の特定の残基が改変されている。いくつかの実施形態では、選択されたTCRを親和性成熟によって改変することがある。いくつかの態様では、選択されたTCRは、抗原に対する親足場TCRとして使用され得る。
【0414】
いくつかの実施形態では、対象は、ヒト、例えば、MAGEC2発現を特徴とする障害を有するヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、齧歯動物、例えば、マウスである。いくつかのそのような実施形態では、マウスは、遺伝子導入マウス、例えば、ヒトMHC(すなわち、HLA)分子、例えば、HLA-A2を発現しているマウスである(例えば、Nicholson et al.(2012)Adv.Hematol.2012:404081)。
【0415】
いくつかの実施形態では、対象は、ヒトTCRを発現している遺伝子導入マウスである、または抗原陰性マウスである(例えば、Li et al.(2010)Nat.Med.161029-1034、Obenaus et al.(2015)Nat.Biotechnol.33:402-407)。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトHLA分子及びヒトTCRを発現している遺伝子導入マウスである。
【0416】
いくつかの実施形態、例えば、対象が遺伝子導入HLAマウスである実施形態では、同定されたTCRは、例えばキメラ型またはヒト化型となるように、改変される。いくつかの態様では、TCR足場を、例えば既知の抗体ヒト化方法のように、改変する。
【0417】
いくつかの実施形態では、そのような足場分子を使用してTCRのライブラリーを生成する。
【0418】
例えば、いくつかの実施形態では、ライブラリーは、親TCR分子または足場TCR分子と比較して改変または操作されているTCRまたはその抗原結合性部分を含む。いくつかの実施形態では、改変された特性を有する、例えば特定のMHC-ペプチド複合体に対するより高い親和性を有するTCRを生成するために、指向的進化法を用いることがある。いくつかの実施形態では、ディスプレイ手法は、既知の親TCRまたは基準TCRを操作または改変することを伴う。例えば、場合によっては、CDRの1つ以上の残基が変異している変異TCRを生産するための鋳型として野生型TCRを使用することがあり、所望の改変された特性、例えば所望の標的抗原に対するより高い親和性を有する変異体が選択される。いくつかの実施形態では、指向的進化は、酵母ディスプレイ(Holler et al.(2003)Nat.Immunol.4:55-62、Holler et al.(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.97:5387-5392)、ファージディスプレイ(Li et al.(2005)Nat.Biotechnol.23:349-354)またはT細胞ディスプレイ(Chervin et al.(2008)J.Immunol.Methods 339:175-184)を含むがこれらに限定されないディスプレイ法によって成し遂げられる。
【0419】
いくつかの実施形態では、ライブラリーは可溶性であり得る。いくつかの実施形態では、ライブラリーは、TCRがファージもしくは細胞の表面上に呈示されているかまたは粒子もしくは分子、例えば、細胞、リボソームもしくは核酸、例えばRNAもしくはDNAに結合されている、ディスプレイライブラリーである。正常及び疾患TCRライブラリーまたは多様化ライブラリーを含めて、TCRライブラリーは典型的には、任意の形態で、例えば、ヘテロ二量体として、または一本鎖形態として生成され得る。いくつかの実施形態では、TCRの1つ以上のメンバーは二本鎖ヘテロ二量体であり得る。いくつかの実施形態では、Vα及びVβ鎖の対合は、ジスルフィド結合の導入によって促進され得る。いくつかの実施形態では、TCRライブラリーのメンバーは、TCR一本鎖(scTvまたはScTCR)であり得るが、これは、場合によっては、リンカーによって分離されたVα及びVβ鎖を含むものであり得る。さらには、場合によっては、ライブラリーからのTCRのスクリーニング及び選択によって、選択されたメンバーは、任意の形態で、例えば、完全長TCRヘテロ二量体もしくは一本鎖形態で、またはその抗原結合性断片として、生成され得る。
【0420】
MHC分子との関連においてペプチドに結合する分子を同定する他の方法は、米国特許出願第2020/0182884号にも記載されている。
【0421】
より一般的には、本発明は、MAGEC2またはその抗原に結合するまたはその活性を調節する薬剤、例えば試験タンパク質をスクリーニングするための、アッセイを包含する。そのような薬剤としては、限定はされないが、抗体、タンパク質、融合タンパク質、小分子、及び核酸が挙げられる。いくつかの実施形態では、免疫応答を調節する薬剤を同定する方法は、候補薬剤がMAGEC2活性を調節してさらには関心とする免疫応答、例えば、調節されたサイトカインT細胞活性化及び/または活性、がん細胞の免疫チェックポイント療法に対する感受性などを調節する能力を、判定することを伴う。
【0422】
いくつかの実施形態では、アッセイは、無細胞または細胞アッセイであって、標的を試験薬剤と接触させること、ならびに試験薬剤が標的の量及び/または活性を調節する(例えば、上方制御するまたは下方制御する)能力を、例えば以下に記載される直接的または間接的パラメータの測定によって判定することを含む、当該無細胞または細胞アッセイである。
【0423】
いくつかの実施形態では、アッセイは、細胞アッセイ、例えば、(a)関心とする細胞を試験薬剤と接触させること、ならびに試験薬剤が標的の量及び/または活性、例えば結合特性を調節する能力を判定することを含む、細胞アッセイである。ポリペプチドが互いに結合または相互作用する能力を判定することは、例えば、直接的な結合を測定することによって、または免疫細胞の活性化もしくは機能のパラメータを測定することによって、実施され得る。
【0424】
別の実施形態では、アッセイは、細胞アッセイであって、がん細胞などの細胞を免疫細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)及び試験薬剤と接触させること、ならびに試験薬剤が標的の量及び/または活性、及び/または調節された免疫応答を調節する能力を、例えば以下に記載される直接的または間接的パラメータの測定によって判定することを含む、当該細胞アッセイである。
【0425】
上記及び本明細書に記載される方法は、本明細書に記載される1種以上のバイオマーカーの量及び/または活性を調節することが既に知られている1種以上の薬剤を試験するように、及び/または所望の表現型、例えば、調節された免疫応答、免疫チェックポイント遮断に対する感受性などの読み値に対する薬剤の効果を確認するように、調整されることもできる。
【0426】
直接的結合アッセイでは、バイオマーカータンパク質(またはその各々の標的ポリペプチドまたは分子)を放射性同位体または酵素標識とカップリングさせることがあり、その結果、複合体中の標識付きタンパク質または分子を検出することによって結合性が判定され得る。例えば、標的は、125I、35S、14CまたはHで直接的あるいは間接的に標識付けされ得、放射性同位体は放射線放出の直接計数によってまたはシンチレーション計数によって検出され得る。あるいは、標的は、酵素的に、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼまたはルシフェラーゼで標識付けされ得、酵素標識は、適切な基質から生成物への変換の判定によって検出され得る。標的と基質との間の相互作用を判定することも、標準的な結合アッセイまたは酵素的分析アッセイを用いて成し遂げられ得る。上記アッセイ方法の1つ以上の実施形態では、ポリペプチドまたは分子を固定化して片方または両方のタンパク質または分子の非複合体化形態からの複合体の分離を容易にすること、及びアッセイの自動化を検討することが望ましいことがある。
【0427】
標的に対する試験薬剤の結合は、反応物を収容するのに適した任意の容器の中で成し遂げられ得る。そのような容器の非限定的な例としては、マイクロタイタープレート、試験管及びマイクロ遠心分離管が挙げられる。また、本発明に包含される抗体の固定化形態は、多孔質、微多孔質(約1ミクロン未満の平均細孔径を有する)またはマクロ多孔質(約10ミクロンよりも大きい平均細孔径を有する)材料、例えば、膜、セルロース、ニトロセルロースもしくはグラスファイバー;ビーズ、例えば、アガロース製もしくはポリアクリルアミド製もしくはラテックス製のビーズ;または皿、プレートもしくはウェル、例えばポリスチレン製のものの表面といったような固相に結合した抗体も含み得る。
【0428】
例えば、直接的結合アッセイでは、ポリペプチドを放射性同位体または酵素標識と結合させることがあり、その結果、ポリペプチド相互作用及び/または活性、例えば結合事象は、複合体中の標識付きタンパク質を検出することによって判定され得る。例えば、ポリペプチドは、125I、35S、14CまたはHで直接的あるいは間接的に標識付けされ得、放射性同位体は放射線放出の直接計数によってまたはシンチレーション計数によって検出され得る。あるいは、ポリペプチドは、酵素的に、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼまたはルシフェラーゼで標識付けされ得、酵素標識は、適切な基質から生成物への変換の判定によって検出され得る。
【0429】
相互作用物質のいずれかに標識付けすることなく、薬剤が関心とするパラメータを調節する能力を判定することも、本発明の範囲に含まれる。例えば、マイクロフィジオメーターを使用して、ポリペプチドの標識を追跡することなくポリペプチド間の相互作用を検出することができる(McConnell et al.(1992)Science 257:1906-1912)。本明細書で使用される場合、「マイクロフィジオメーター」(例えば、Cytosensor(登録商標))は、細胞がその環境を酸性化する速度を、光アドレス電位差センサ(LAPS)を用いて測定する、分析機器である。この酸性化速度の変化は、化合物と受容体との間の相互作用の指標として用いられ得る。
【0430】
いくつかの実施形態では、試験薬剤(例えば、抗体、融合タンパク質、ペプチド、または小分子)が所与の一組のポリペプチドの間での相互作用を調節する能力を判定することは、ポリペプチドの組の1つ以上のメンバーの活性を判定することによって行われ得る。例えば、タンパク質及び/または1つ以上の結合パートナーの活性は、細胞セカンドメッセンジャー(例えば、細胞内シグナル伝達)の誘導を検出すること、適切な基質の触媒活性/酵素活性を検出すること、レポーター遺伝子(検出マーカー、例えばクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼをコードする核酸に機能的に連結された標的応答性調節エレメントを含む)の誘導を検出すること、またはタンパク質及び/または1つ以上の結合パートナーによって調節される細胞応答を検出することによって、判定され得る。試験薬剤が上記ポリペプチドに結合するまたはそれと相互作用する能力を判定することは、例えば、化合物が免疫細胞の共刺激もしくは抑制を調節する能力を、増殖アッセイで測定することによって、または上記ポリペプチドがその一部を認識する抗体に対して結合する能力を、妨害することによって、成し遂げられ得る。
【0431】
標的の量及び/または活性、例えば1種以上の結合パートナーとの相互作用を調節する薬剤は、in vitroアッセイに当該薬剤を添加した場合に当該薬剤が免疫細胞増殖及び/またはエフェクター機能を阻害できること、あるいはアネルギー、クローン欠失及び/または疲弊を誘導できることによって、同定され得る。例えば、細胞を、活性化受容体を介してシグナル伝達を刺激する薬剤の存在下で培養することがある。薬剤の存在下での細胞増殖またはエフェクター機能(例えば、抗体産生、サイトカイン産生、ファゴサイトーシス)を測るための細胞活性化に関する多くの認められる読取情報が採用され得る。試験薬剤がこの活性化を遮断する能力は、薬剤が測定されようとしている増殖またはエフェクター機能に減弱を起こさせる能力を、当技術分野で知られている技術を用いて測定することによって、容易に測定され得る。
【0432】
例えば、本発明に包含される薬剤を、Freeman et al.(2000)J.Exp.Med.192:1027、及びLatchman et al.(2001)Nat.Immunol.2:261に記載されるようにT細胞アッセイにおいて共刺激を抑制または増強する能力について試験してもよい。CD4+T細胞は、ヒトPBMCから単離され、活性化抗CD3抗体によって刺激され得る。T細胞の増殖はHチミジン取り込みによって測定され得る。アッセイは、アッセイにおけるCD28共刺激を伴ってまたは伴わずに実施され得る。Jurkat T細胞及びPBMC由来のPHA芽球を用いて同様のアッセイを実施してもよい。
【0433】
あるいは、1種以上のバイオマーカーの調節に応答して免疫細胞によって産生されるまたは免疫細胞での産生が増強もしくは阻害されるサイトカインの細胞性産生を調節する能力について、本発明に包含される薬剤を試験してもよい。関心とする免疫細胞によって放出される指標サイトカインは、ELISAによって、またはサイトカインを遮断する抗体が、サイトカインによって誘導される免疫細胞増殖もしくは実施例の節に記載されるような他の細胞種の増殖を阻害できることによって、同定され得る。in vitro免疫細胞共刺激アッセイもまた、1種以上のバイオマーカーの調節によって調節され得るサイトカインを同定するための方法に用いられ得る。例えば、共刺激時に誘導される特定の活性、例えば免疫細胞増殖を既知のサイトカインに対する遮断抗体の添加によって阻害することができない場合、活性は未知のサイトカインの作用から生じている可能性がある。共刺激後、このサイトカインは従来の方法によって培地から精製され得、その活性は、それが免疫細胞増殖を誘導する能力によって測定され得る。寛容性の誘導において役割を果たし得るサイトカインを同定するためには、上記のin vitro T細胞共刺激アッセイが用いられ得る。この場合、T細胞は一次活性化シグナルを与えられ、選択されたサイトカインと接触されるであろうが、共刺激シグナルは与えられないであろう。免疫細胞を洗って一旦置いた後、細胞は一次活性化シグナル及び共刺激シグナルの両方で再攻撃されるであろう。免疫細胞が応答しない(例えば、増殖しない、またはサイトカインを産生しない)場合、それらは寛容化されており、サイトカインが寛容性の誘導を阻止しなかったことになる。他方、免疫細胞が応答する場合、寛容性の誘導がサイトカインによって阻止されたことになる。寛容性の誘導を阻止することができるこれらのサイトカインは、Bリンパ球抗原を遮断する試薬と併せて、移植レシピエントまたは自己免疫疾患を有する対象においてより効率的に寛容性を誘導する手段としてin vivoでの遮断の標的となり得る。
【0434】
いくつかの実施形態では、本発明に包含されるアッセイは、バイオマーカー及び/または1種以上の結合パートナーの間での相互作用を調節する薬剤をスクリーニングするための無細胞アッセイであって、ポリペプチド、及び1種以上の天然の結合パートナー、またはそれらの生物学的活性部分を、試験薬剤と接触させること、ならびに試験化合物がポリペプチドと1種以上の天然の結合パートナーまたはそれらの生物学的活性部分との間での相互作用を調節する能力を判定することを含む、当該無細胞アッセイである。試験化合物の結合は、上記のように、直接的あるいは間接的に判定され得る。一実施形態では、アッセイは、ポリペプチドまたはその生物学的活性部分をその結合パートナーと接触させてアッセイ混合物を形成すること、アッセイ混合物を試験化合物と接触させること、及び試験薬剤がアッセイ混合物中のポリペプチドと相互作用する能力を判定することを含み、ここで、試験薬剤がポリペプチドと相互作用する能力を判定することは、試験薬剤が結合パートナーと比較してポリペプチドまたはその生物学的活性部分に優先的に結合する能力を判定することを含む。
【0435】
いくつかの実施形態では、細胞アッセイまたは無細胞アッセイのいずれにおいても、試験薬剤をさらにアッセイして、ポリペプチドと1種以上の結合パートナーとの間の、他の結合パートナーとの、結合及び/または相互作用の活性に試験薬剤が影響を及ぼすかどうかを判定することがある。他の有用な結合解析方法としては、リアルタイム生体分子相互作用解析(Biomolecular Interaction Analysis(BIA))の利用が挙げられる(Sjolander and Urbaniczky(1991)Anal.Chem.63:2338-2345、及びSzabo et al.(1995)Curr.Opin.Struct.Biol.5:699-705)。本明細書で使用する場合、「BIA」は、どの相互作用物質も標識付けすることなく、生体特異的な相互作用をリアルタイムで研究するための技術である(例えば、Biacore(登録商標))。表面プラズモン共鳴(SPR)の光学現象における変化を、生物学的ポリペプチド間のリアルタイムな反応の指標として用いることがある。関心とするポリペプチドを、Biacore(登録商標)チップ上に固定化し、多数の薬剤(遮断抗体、融合タンパク質、ペプチド、または小分子)を、関心とするポリペプチドへの結合について試験することがある。BIA技術を用いる例は、Fitz et al.(1997)Oncogene 15:613に記載されている。
【0436】
本発明に包含される無細胞アッセイは、可溶型及び/または膜結合型の両方のタンパク質の使用に適している。膜結合型タンパク質を使用する無細胞アッセイでは、膜結合型のタンパク質が溶液中に維持されるように可溶化薬剤を利用することが望ましいことがある。そのような可溶化薬剤の例としては、非イオン性界面活性剤、例えば、n-オクチルグルコシド、n-ドデシルグルコシド、n-ドデシルマルトシド、オクタノイル-N-メチルグルカミド、デカノイル-N-メチルグルカミド、Triton(登録商標)X-100、Triton(登録商標)X-114、Thesit(登録商標)、イソトリデシルポリ(エチレングリコールエーテル)、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホン酸塩(CHAPS)、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸塩(CHAPSO)、またはN-ドデシル=N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホン酸塩が挙げられる。
【0437】
上記のアッセイ方法の1つ以上の実施形態では、いずれかのポリペプチドを固定化してタンパク質の一方または両方について非複合体化形態からの複合体化形態の分離を容易にすること、及びアッセイの自動化を許容することが望ましいことがある。試験化合物のポリペプチドへの結合は、その反応物を収容するのに適した任意の容器中で行うことがある。そのような容器の例としては、マイクロタイタープレート、試験管、及びマイクロ遠心分離管が挙げられる。一実施形態では、タンパク質の一方または両方がマトリクスに結合することを可能にするドメインを加える融合タンパク質が提供されることがある。例えば、グルタチオン-S-トランスフェラーゼをベースとしたポリペプチド融合タンパク質、またはグルタチオン-S-トランスフェラーゼ/標的融合タンパク質を、グルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical, St.Louis,MO)またはグルタチオン誘導体化マイクロタイタープレート上に吸着させることがあり、その後、これらを試験化合物と合わせ、混合物を、複合体形成をもたらす条件(例えば、塩及びpHについて生理学的な条件)の下でインキュベートする。インキュベーションを行った後、ビーズまたはマイクロタイタープレートのウェルを洗浄していかなる未結合成分も除去し、ビーズの場合にはマトリックスに固定化し、複合体の判定を、例えば上記のように、直接的または間接的に行う。あるいは、複合体をマトリックスから解離させ、標準的な技術を用いてポリペプチドの結合または活性のレベルを決定してもよい。
【0438】
本発明はさらに、上記のスクリーニングアッセイによって同定される新規薬剤に関する。したがって、本明細書に記載されるように同定した薬剤を、適切なモデルシステムにおいてさらに使用することは、本発明の範囲内である。例えば、本明細書に記載されるように同定した薬剤をモデルシステムで使用して、そのような薬剤による治療に関する、有効性、毒性または副作用を判定することがある。あるいは、本明細書に記載されるように同定した薬剤をモデル系において使用してそのような薬剤の作用機序を決定することがある。さらに、本発明は、本明細書に記載される治療のための、上記スクリーニングアッセイによって同定した新規薬剤の使用に関する。
【0439】
d.予測医療
本発明はまた、診断アッセイ、予後予測アッセイ、及び臨床試験のモニタリングを予後予測(予測)目的のために用いてそれによって個体を予防的に処置する、予測医療の分野に関する。したがって、本発明に包含される1つの態様は、生物学的サンプル(例えば、血液、血清、細胞、または組織)との関連において、MAGEC2の存在、非存在、量及び/または活性レベル、あるいはMAGEC2に対する反応性を判定(例えば検出)してそれによって、MAGEC2の発現を特徴とする障害に元の状態であろうと再発であろうと罹患している個体に療法が奏効する可能性が高いかどうかを判定するための診断アッセイを、包含する。そのようなアッセイを、予後予測目的または予測目的のために用い、それによって、MAGEC2の発現を特徴とする障害の発症前にまたは再発後に個体を予防的に処置することがある。
【0440】
本明細書に記載される診断方法はさらに、MAGEC2の発現またはMAGEC2の発現の欠損に関連する障害を有する、または発症するリスクがある、対象を同定するために利用され得る。本明細書で使用する場合、用語「異常である」は、正常レベルからのMAGEC2の上方制御または下方制御を含む。異常な発現または活性としては、発現または活性の増加または減少、ならびに正常な発達上の発現様式または発現の細胞内での発現様式に従わない発現または活性が挙げられる。例えば、異常なレベルには、バイオマーカー遺伝子もしくは調節配列における変異、またはその染色体遺伝子の増幅が、関心とするバイオマーカーの上方制御または下方制御を引き起こす場合が含まれることが意図される。本明細書で使用する場合、用語「望ましくない」は、免疫細胞活性などの生物学的応答に関与する望ましくない現象を含む。
【0441】
本明細書に記載されるアッセイ、例えば、先行診断アッセイまたは事後アッセイを利用して、MAGEC2の誤調節に関連する障害を有するまたはその発症のリスクがある対象を同定することがある。したがって、本発明は、異常な、または望ましくないMAGEC2調節に関連する障害を同定する方法であって、試験サンプルが対象から得られ、MAGEC2発現が検出され、MAGEC2発現の存在が、異常な、または望ましくないMAGEC2発現に関連する障害を有するまたはその発症のリスクがある対象の診断となる、当該方法を提供する。本明細書で使用する場合、「試験サンプル」とは、関心とする対象から得られる生物学的サンプルを指す。例えば、試験サンプルは、生体液(例えば、脳脊髄液または血清)、細胞サンプル、または組織、例えば、腫瘍微小環境、腫瘍周囲領域及び/または腫瘍内領域の組織病理学的スライドであることがある。
【0442】
さらに、本明細書に記載される予後予測アッセイは、異常な、または望ましくないMAGEC2発現に関連するそのような障害を治療するために本明細書に記載される薬剤を対象に投与してよいかどうかを判定するために用いられ得る。例えば、そのような方法は、対象が1つの薬剤または薬剤の組合せによって効果的に治療され得るかどうかを判定するために用いられ得る。したがって、本発明は、異常な、または望ましくないMAGEC2発現に関連する障害を治療するために本明細書に記載される1種以上の薬剤で対象が効果的に治療され得るかどうかを判定する方法を提供する。
【0443】
本明細書に記載される方法は、例えば、本明細書に記載される少なくとも1種の抗体試薬を含む予め包装された診断用キットを利用することによって実施され得、このキットは、例えば関心とするバイオマーカーが関与する疾患または疾病の症候または家族歴を呈している患者を診断する臨床環境において便利に使用され得るものである。
【0444】
さらに、関心とするバイオマーカーが発現される任意の細胞種または組織を、本明細書に記載される予後予測アッセイにおいて利用することがある。
【0445】
e.臨床試験中の作用の追跡評価
MAGEC2発現を特徴とする障害の療法(例えば、化合物、薬物、ワクチン、細胞療法など)が免疫応答、例えばT細胞反応性(例えば、結合の存在及び/またはT細胞活性化及び/またはエフェクター機能)に及ぼす影響を追跡評価することは、基礎的な候補MAGEC2抗原結合性分子スクリーニングのみならず臨床試験においても適用され得る。例えば、免疫応答(例えば、T細胞免疫応答)を増大させるための本明細書に記載される免疫原性ペプチド、pMHC、操作型細胞、結合性タンパク質及び関連組成物の、MAGEC2を発現している関心とする細胞、例えば過剰増殖性細胞に対する有効性は、MAGEC2発現を特徴とする障害に罹患した対象の臨床試験において、追跡評価され得る。そのような臨床試験では、結合の存在及び/またはT細胞活性化及び/またはエフェクター機能(例えば、T細胞増殖、殺滅及び/またはサイトカイン放出)を、特定の細胞、組織または系の表現型の「読み値」またはマーカーとして用いることがある。同様に、MAGEC2を発現している関心とする細胞、例えば過剰増殖性細胞に対する免疫応答を増大させるための本明細書に記載の結合性タンパク質(例えば、TCR、TCRの抗原結合性断片、CAR、またはTCRとエフェクタードメインとを含む融合タンパク質)を発現するように操作されたT細胞による養子T細胞療法(adaptive T cell therapy)の有効性は、MAGEC2発現を特徴とする障害を有する対象の臨床試験において追跡評価され得る。そのような臨床試験では、結合の存在及び/またはT細胞活性化及び/またはエフェクター機能(例えば、T細胞増殖、殺滅及び/またはサイトカイン放出)を、特定の細胞、組織または系の表現型の「読み値」またはマーカーとして用いることがある。
【0446】
いくつかの実施形態では、本発明は、療法(例えば、化合物、薬物、ワクチン、細胞療法など)の処置の有効性を追跡評価する方法であって、a)MAGEC2発現を特徴とする障害のための療法の少なくとも一部を対象に提供する前に対象から得られた第1サンプルにおいて、対象から得られたサンプルと1種以上の結合性タンパク質または関連組成物との間の反応性の非存在、存在またはレベルを判定するステップ、及びb)1種以上の結合性タンパク質または関連組成物と、療法の一部の提供の後に対象から得られた第2サンプルの中に存在する、対象から得られたサンプルとの間での反応性の非存在、存在またはレベルを判定するステップを含み、第2サンプルと比較したときの第1サンプルにおける反応性の存在またはより高いレベルは、対象においてMAGEC2発現を特徴とする障害を治療する上で療法が有効であることのしるしであり、第2サンプルと比較したときの第1サンプルにおける反応性の非存在またはより低いレベルは、対象においてMAGEC2発現を特徴とする障害を治療する上で療法が有効でないことのしるしである、当該方法を提供する。
【0447】
いくつかの実施形態では、本発明は、薬剤(例えば、本明細書に記載される抗体、アゴニスト、アンタゴニスト、ペプチドミメティック、ポリペプチド、ペプチド、核酸、小分子、またはスクリーニングアッセイによって同定された他の薬物候補)による対象の治療の有効性を追跡評価する方法であって、(i)薬剤の投与の前に対象から投与前サンプルを得るステップ;(ii)投与前サンプルにおいてMAGEC2発現を検出するステップ;(iii)1つ以上の投与後サンプルを対象から得るステップ;(iv)投与後サンプルにおいてMAGEC2発現を検出するステップ;(v)投与前サンプルにおけるMAGEC2発現を投与後サンプルにおけるMAGEC2発現と比較するステップ;及び(vi)それに応じて対象への薬剤の投与を改変するステップを含む、当該方法を提供する。例えば免疫組織化学(IHC)による、バイオマーカーポリペプチド分析を用いて、療法、例えば免疫療法を受けることになる患者を選択することもある。
【0448】
加えて、本明細書に記載の予後予測方法は、MAGEC2発現に関連する障害を治療するための治療剤を対象に投与してよいかどうかを判定するために用いられることがある。
【0449】
f.臨床的有効性
臨床的有効性を、当技術分野で知られている任意の方法によって、測定することができる。例えば、療法に対する応答は、療法に対する、MAGEC2発現に関連する障害、例えば腫瘍の任意の応答に関し、好ましくは、例えばネオアジュバント化学療法をまたはアジュバント化学療法を開始した後の、がん細胞数、腫瘍質量及び/または腫瘍体積の変化に関する。腫瘍応答性はネオアジュバント化学療法またはアジュバント化学療法において評価され得、この場合、CT、PET、マンモグラム、超音波または触診によって測定したときの全身的な介入の後の腫瘍のサイズが最初のサイズ及び寸法と比較され得、腫瘍の細胞充実性が組織学的に推定され得る、及び治療開始前に採取した腫瘍生検材料の細胞充実性と比較され得る。応答はまたは、生検後または外科的切除後の腫瘍をキャリパーで測定するまたは病理学的検査をすることによっても評価され得る。応答は、定量的な様式、例えば、腫瘍の体積もしくは細胞充実性の変化率で、または半定量的な評定システム、例えば、残存がん量(Symmans et al.(2007)J.Clin.Oncol.25:4414-4422)もしくはMiller-Payneスコア(Ogston et al.(2003)Breast(Edinburgh, Scotland)12:320-327)を「病理学的完全奏効」(pCR)、「臨床的完全寛解」(cCR)、「臨床的部分寛解」(cPR)、「臨床的安定疾患」(cSD)、「臨床的進行性疾患」(cPD)もしくは他の定性的基準のような定性的様式で用いることによって、記録され得る。腫瘍応答の評価は、ネオアジュバント療法またはアジュバント療法の開始後の早期段階で(例えば、数時間後、数日後、数週間後、または好ましくは数ヶ月後に)実施され得る。応答評価のための典型的なエンドポイントは、ネオアジュバント化学療法の終了時、または残存腫瘍細胞及び/または腫瘍床の外科的切除時である。
【0450】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の治療的処置の臨床的有効性は、臨床的有用率(CBR)を測定することによって判定され得る。臨床的有用率は、治療終了から少なくとも6ヶ月の時点で、完全寛解(CR)にある患者の百分率、部分寛解(PR)にある患者の数、及び安定疾患(SD)を有する患者の数の合計を決定することによって測定される。この定式を簡潔に表すと、6ヶ月を超えてCBR=CR+PR+SDである。いくつかの実施形態では、表1に列挙されるバイオマーカーの特定の調節薬による治療レジメンのCBRは、少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%である、またはそれを超える。
【0451】
がん療法に対する応答を評価するためのさらなる判断基準は、「生存期間」に関するものであり、これには以下のすべてが含まれる:全生存期間としても知られる、死亡までの生存期間(ここで、死亡は、原因に無関係であるか腫瘍に関係するかのどちらかであり得る);「無再発生存期間」(ここで、再発という用語は、局所再発及び遠隔再発の両方を含むものとする);無転移生存期間;無病生存期間(ここで、病という用語は、がん及びそれに関連する疾患を含むものとする)。上記生存期間の長さは、定義された開始点(例えば、診断時または治療開始時)及び終了点(例えば、死亡、再発または転移)を基準として計算され得る。さらに、治療の有効性の判断基準は、化学療法に対する応答、生存の確率、所与の期間内での転移の確率、及び腫瘍再発の確率を含むように拡張されることがある。
【0452】
例えば、適切な閾値を決定するために、特定の関心とする薬剤を対象の集団に投与してその転帰を、任意の療法を施与する前に決定されたバイオマーカー測定結果と相関させてもよい。転帰の測定結果は、ネオアジュバント環境で与えられた療法に対する病理学的応答であり得る。あるいは、転帰の測定量、例えば、全生存期間及び無病生存期間を、MAGEC2発現値が分かっている療法後の対象について、ある期間にわたって追跡評価してもよい。ある特定の実施形態では、同じ用量の薬剤を各対象に投与する。対象を追跡評価する期間は様々であり得る。例えば、対象は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、18、20、25、30、35、40、45、50、55、60ヶ月間またはそれよりも長い間にわたって追跡評価され得る。療法の転帰と相関するMAGEC2測定の閾値は、よく知られた方法、例えば、実施例の節に記載されている方法を用いて決定され得る。
【0453】
X.細胞療法
本発明に包含される別の態様では、方法は養子細胞療法を含み、それによって、MHC拘束性エピトープを標的とする提供された分子を発現している遺伝子改変細胞(例えば、結合性タンパク質(例えば、TCRまたはCAR)またはその抗原結合性断片を発現している細胞)を、対象に投与する。そのような投与によって、抗原指向的な様式で免疫細胞の活性化(例えば、T細胞の活性化)が促進され得、その結果、MAGEC2を発現する関心とする細胞、例えば過剰増殖性細胞は破壊の標的となる。
【0454】
したがって、提供される方法及び使用は、養子細胞療法のための方法及び使用を含む。いくつかの実施形態では、方法は、細胞、または細胞を含有する組成物を対象、組織または細胞に、例えば、疾患、症状または障害を有する、そのリスクがある、またはそれを有する疑いがある対象、組織または細胞に投与することを含む。いくつかの実施形態では、治療するべき特定の疾患または症状を有する対象に細胞、集団及び組成物を(例えば、養子細胞療法を介して、例えば養子T細胞療法によって)投与する。いくつかの実施形態では、対象、例えば、疾患または症状を有するまたはそのリスクがある対象に細胞または組成物を投与する。いくつかの実施形態では、方法は、それによって、疾患または症状の1つ以上の症状を治療する、例えば、改善する。
【0455】
養子細胞療法のための細胞を投与するための方法は、既知であり、養子細胞療法のための細胞を投与するための方法を提供する方法及び組成物に関連して用いられ得る(例えば、米国特許出願公開第2003/0170238号、米国特許第4,690,915号、Rosenberg(2011)Nat.Rev.Clin.Oncol.8:577-585、Themeli et al.(2013)Nat.Biotechnol.31:928-933、Tsukahara et al.(2013)Biochem.Biophys.Res.Commun.438:84-89、及びDavila et al.(2013)PLoS ONE 8:e61338))。
【0456】
いくつかの実施形態では、細胞療法(例えば、養子細胞療法、例えば、養子T細胞療法)を自家移植によって実施することがあり、この自家移植では、細胞は、細胞療法を受けようとする対象から、またはそのような対象に由来するサンプルから単離される及び/または別様に調製される。したがって、いくつかの実施形態では、細胞は、治療を必要とする対象(例えば、患者)に由来し、細胞は、単離及び処理の後、同じ対象に投与される。
【0457】
いくつかの実施形態では、細胞療法(例えば、養子細胞療法、例えば、養子T細胞療法)を同種異系移植によって実施することがあり、この同種異系移植では、細胞は、細胞療法を受けようとするまたは最終的に受ける対象以外の対象(例えば、第1の対象)から単離される及び/または別様に調製される。そのような実施形態では、その後に細胞を同じ種の別の対象(例えば、第2の対象)に投与する。いくつかの実施形態では、第1及び第2の対象は、遺伝的に同一である(同系)。いくつかの実施形態では、第1及び第2の対象は、遺伝的に類似している。いくつかの実施形態では、第2の対象は、第1の対象と同じHLAクラスまたはスーパータイプを発現する。
【0458】
いくつかの実施形態では、細胞、細胞集団または組成物が投与される対象は、ヒトなどの霊長類である。いくつかの実施形態では、霊長類は、サルまたは類人猿である。対象は、雄性または雌性であり得、任意の好適な年齢、例えば、乳児期、若年期、青年期、成人期及び高齢期の対象であり得る。いくつかの実施形態では、対象は、齧歯動物などの非霊長類哺乳動物である。いくつかの実施例では、患者または対象は、疾患のための、養子細胞療法のための、及び/またはサイトカイン放出症候群(CRS)などの毒性転帰を評価するための、有効な動物モデルである。
【0459】
結合性分子、例えば、TCR、TCRの抗原結合性断片(例えば、scTCR)、及びTCRを含有するキメラ受容体(例えば、CAR)、ならびに上記を発現している細胞は、任意の好適な手段によって、例えば、注射、例えば、静脈内注射もしくは皮下注射、眼内注射、眼球周囲注射、網膜下注射、硝子体内注射、経中隔注射、強膜下注射、脈絡膜内注射、前房内注射、結膜下注射(subconjectval injection)、結膜下注射(subconjuntival injection)、テノン叢下注射(sub-Tenon’s injection)、球後注射(retrobulbar injection)、球周囲注射(peribulbar injection)、または、後強膜近傍送達(posterior juxtascleral delivery)によって、投与され得る。いくつかの実施形態では、それらは、非経口、肺内、及び鼻腔内への投与、ならびに局所治療のために所望であれば病巣内投与によって、投与される。非経口投与としては、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、または皮下投与が挙げられる。投薬及び投与は、その投与が、短期であるか、または長期にわたるかによって部分的に決まり得る。様々な投薬スケジュールには、様々な時点にわたる単回または複数回投与、ボーラス投与、及びパルス輸注が含まれるが、これらに限定されない。
【0460】
疾患の予防または治療を目的として、結合性分子のまたは細胞の適切な投薬量は、治療するべき疾患の種類、結合性分子の種類、疾患の重症度及び経過、結合性分子を予防目的または治療目的のどちらのために投与するのか、過去の治療、患者の臨床歴及び結合性分子に対する応答、ならびに担当医の裁量によって決まり得る。組成物及び分子、ならびに細胞は、いくつかの実施形態では、一度に、または一連の治療にわたって患者に投与するのが好適である。
【0461】
いくつかの実施形態では、細胞を、対象の体重1キログラムあたり0.1×10、0.2×10、0.3×10、0.4×10、0.5×10、0.6×10、0.7×10、0.8×10、0.9×10、1.0×10、5.0×10、1.0×10、5.0×10、1.0×10、5.0×10個もしくはそれよりも多い、またはそれらの間にある任意の範囲もしくは任意の値の細胞個数で投与することがある。移植する細胞個数を、所与の期間における生着の所望のレベルに基づいて、調整することがある。一般的に、1×10~約1×10細胞/kg体重、約1×10~約1×10細胞/kg体重、または約1×10細胞/kg体重の、もしくはそれよりも多くの細胞を、必要に応じて、移植することがある。いくつかの実施形態では、平均的なサイズのマウスに対して、合計で少なくとも約0.1×10、0.5×10、1.0×10、2.0×10、3.0×10、4.0×10、または5.0×10個の細胞の移植が効果的である。例えば、いくつかの実施形態では、細胞、または細胞のサブタイプの個々の集団を、約100万~約1000億細胞の範囲で、及び/または体重1キログラムあたりの細胞の量で例えば、100万~約500億細胞(例えば、約500万細胞、約2500万細胞、約5億細胞、約10億細胞、約50億細胞、約200億細胞、約300億細胞、約400億細胞、または前述の値のいずれか2つによって画定される範囲)、例えば、約1000万~約1000億細胞(例えば、約2000万細胞、約3000万細胞、約4000万細胞、約6000万細胞、約7000万細胞、約8000万細胞、約9000万細胞、約100億細胞、約250億細胞、約500億細胞、約750億細胞、約900億細胞、または上記値の任意の2つによって画定される範囲)、及び場合によっては約1億細胞~約500億細胞(例えば、約1.2億細胞、約2.5億細胞、約3.5億細胞、約4.5億細胞、約6.5億細胞、約8億細胞、約9億細胞、約30億細胞、約300億細胞、約450億細胞)もしくはこれらの範囲の間にある任意の値、及び/または体重1キログラムあたりで、対象に、投与することがある。投薬量は、疾患もしくは障害、及び/または患者に特有の属性、及び/または他の治療に応じて、変化することがある。
【0462】
移植した細胞の生着は、様々な方法のいずれかによって、例えば、限定されるものではないが、腫瘍体積、サイトカインレベル、投与の時間、移植後の1つ以上の時点で対象から得られた関心とする細胞のフローサイトメトリー分析などによって、評価され得る。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28日間待機する時間ベースの分析は、腫瘍採取のための時間を知らせることがある。任意のそのような測定指標は、抗がん免疫療法に対する応答に変数が及ぼす影響を見極めるために、よく知られているパラメータに従って調整され得る変数である。さらに、移植される細胞は、サイトカイン、細胞外マトリックス、細胞培養支持体などの他の薬剤と共移植されてもよい。
【0463】
細胞はまた、他の抗がん剤の前に、それと同時発生的に、またはその後に、投与され得る。
【0464】
例えば、細胞療法及び幹細胞の養子細胞移入、がんワクチン及び細胞療法などのように、2つ以上の細胞種を組み合わせて投与することがある。例えば、養子細胞免疫療法を、本発明に包含される細胞療法と組み合わせることがある。いくつかの実施形態では、細胞剤を単独で、または付加的な細胞剤、例えば、養子T細胞療法(ACT)のような免疫療法と組み合わせて、使用することがある。例えば、CD19を認識するように遺伝子操作したT細胞は、濾胞性B細胞リンパ腫を治療するために使用される。ACTのための免疫細胞は、樹状細胞、CD8T細胞及びCD4T細胞などのT細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、NK T細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞、メモリーT細胞、調節性T細胞(Treg)、ヘルパーT細胞、サイトカイン誘導キラー(CIK)細胞、及びそれらの任意の組合せであり得る。限定されるものではないが、例えば、放射線照射された、自己のまたは同種異系の腫瘍細胞、腫瘍溶解物またはアポトーシス腫瘍細胞、抗原提示細胞に基づく免疫療法、樹状細胞に基づく免疫療法、養子T細胞移入、養子CAR T細胞療法、自家免疫強化療法(AIET)、がんワクチン及び/または抗原提示細胞などの、養子細胞に基づく免疫療法のモダリティが良く知られている。そのような細胞免疫療法をさらに改変して、1種以上の遺伝子産物を発現させて免疫応答、例えば、GM-CSFのようなサイトカインの発現をさらに調節することがある、及び/または腫瘍関連抗原(TAA)抗原、例えば、Mage-1、gp-100などを発現させることがある。本発明に包含される薬剤、例えば、がん細胞の、本発明に包含される別の薬剤または他の組成物に対する割合は、互いに1:1(例えば、等量の2薬剤、3薬剤、4薬剤など)であり得るが、任意の所望の量に調節され得る(例えば、1:1、1.1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1、1.5:1、2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、4:1、4.5:1、5:1、5.5:1、6:1、6.5:1、7:1、7.5:1、8:1、8.5:1、9:1、9.5:1、10:1、またはより大きい)。
【0465】
いくつかの実施形態では、例えば、対象がヒトである場合、用量は、全部で約1×10未満の、結合性タンパク質(例えば、TCRまたはCAR)発現細胞、T細胞、または末梢血単核細胞(PBMC)、例えば、約1×10~1×10の範囲のそのような細胞、例えば、2×10、5×10、1×10、5×10、もしくは1×10もしくは全部の、または上記値のいずれか2つの間の範囲のそのような細胞を含む。
【0466】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される細胞または関連組成物、例えば、核酸、宿主細胞、医薬製剤を併用治療の一部として、別の治療的介入、例えば、別の抗体または操作型細胞または受容体または薬剤、例えば細胞傷害性薬剤または治療剤に関して例えば同時にまたは任意の順序で逐次的に、投与することがある。
【0467】
いくつかの実施形態では、細胞または関連組成物を、1種以上の付加的治療剤と共に、または別の治療的介入と結合させて、同時にあるいは任意の順序で逐次的に共投与することがある。いくつかの状況では、細胞または関連組成物は、その細胞集団が1種以上の付加的治療剤の効果を増強するように、またはその逆も同様であるように、十分に近い時点で、別の療法と共投与される。いくつかの実施形態では、細胞または関連組成物を、1種以上の付加的治療剤の前に、投与する。いくつかの実施形態では、細胞または関連組成物を、1種以上の付加的治療剤の後に、投与する。
【0468】
いくつかの実施形態では、細胞または関連組成物を対象(例えば、ヒト)に投与した時点で、細胞の生物学的活性または関連組成物の生物学的活性を多くの既知の方法のいずれかによって測定する。評価するパラメータとしては、in vivoでの、例えば撮像による、またはin vitro/ex vivoでの、例えばELISAもしくはフローサイトメトリーによる、操作型T細胞もしくは天然T細胞の、または他の免疫細胞の、抗原に対する特異的な結合が挙げられる。いくつかの実施形態では、細胞が標的細胞を破壊する能力(細胞傷害性)を、当技術分野で知られている任意の好適なアッセイまたは方法を用いて測定することがある(例えば、Kochenderfer et al.(2009)J.Immunother.32: 689-702、及びHerman et al.(2004)J.Immunol.Meth.285:25-40)。いくつかの実施形態では、細胞の生物学的活性を、ある特定のサイトカイン、例えば、CD107a、IFNγ、IL-2及びTNFアルファの発現及び/または分泌をアッセイすることによって測定することもある。いくつかの実施形態では、生物学的活性を、臨床転帰、例えば、ウイルス量(burden)または負荷(load)の低減等を評価することによって、測定する。
【0469】
いくつかの実施形態では、細胞を、それらの治療的有効性または予防的有効性が増大するように、任意の複数の方法で改変する。例えば、集団が発現する結合性タンパク質(例えば、操作型TCR、CAR、またはそれらの抗原結合性断片)を標的指向部分構造に直接的に、あるいはリンカーを介して間接的に結合体化させることがある。標的指向性部分構造への化合物の結合体化の実施については当技術分野でよく知られている(例えば、Wadwa et al.(1995)J.Drug Targeting 3:111、及び米国特許第5,087,616)。
【0470】
免疫細胞、例えば、細胞傷害性リンパ球を、任意の好適な供給源、例えば、末梢血、脾臓、及びリンパ節から得ることがある。免疫細胞は、粗調製物として、または部分的に精製されたもしくは実質的に精製された調製物として使用され得るが、これは、標準的な技術、例えば、限定されるものではないが、抗体を使用する免疫磁気的またはフローサイトメトリー技術を必要とする方法によって得られ得る。
【0471】
ある特定の態様では、本明細書に記載のMAGEC2免疫原性ペプチド、またはそのようなMAGEC2免疫原性ペプチドをコードする核酸は、MAGEC2で初回刺激された抗原提示細胞を及び/またはこれらの抗原提示細胞によって生成されたMAGEC2特異リンパ球を提供するための、組成物及び方法において使用され得る。いくつかの実施形態では、そのような抗原提示細胞及び/またはリンパ球は、MAGEC2発現に関連する障害の治療及び/または予防において使用される。
【0472】
いくつかの態様において、本明細書に提供されるのは、少なくとも1種のMAGEC2免疫原性ポリペプチドが抗原提示細胞によって提示されるのに十分な条件の下で抗原提示細胞を、単独のまたはアジュバントと組み合わせた本明細書に記載のMAGEC2免疫原性ペプチドまたは少なくとも1種のMAGEC2免疫原性ペプチドをコードする核酸とin vitroで接触させることによって、MAGEC2で初回刺激された抗原提示細胞を作る方法である。
【0473】
いくつかの実施形態では、MAGEC2免疫原性ポリペプチド、またはMAGEC2免疫原性ポリペプチドをコードする核酸を、単独で、またはアジュバントと組み合わせて、抗原提示細胞を含む均一な、実質的に均一な、または不均一な組成物と接触させることがある。例えば、組成物は、限定されるものではないが、全血、鮮血またはその画分、例えば、限定されるものではないが、末梢血単核球、全血のバッフィーコート画分、パック詰めされた赤血球、照射済み血液、樹状細胞、単球、マクロファージ、好中球、リンパ球、ナチュラルキラー細胞及びナチュラルキラーT細胞を含み得る。任意選択的に、抗原提示細胞の前駆体を使用する場合、前駆体を抗原提示細胞に分化させるのに十分な好適な培養条件の下で前駆体を培養することがある。いくつかの実施形態では、抗原提示細胞(またはその前駆体)を、単球、マクロファージ、骨髄系統の細胞、B細胞、樹状細胞またはランゲルハンス細胞から選択する。
【0474】
単独で、またはアジュバントと組み合わせて抗原提示細胞との接触状態に置かれることになるMAGEC2免疫原性ポリペプチドまたはMAGEC2免疫原性ポリペプチドをコードする核酸の量は、当業者によって慣例的実験で決定され得る。一般的には、T細胞を調節するためのプロセシングされた形態の抗原を細胞が提示するのに十分な時間にわたって、抗原提示細胞を、単独のまたはアジュバントと組み合わせたMAGEC2免疫原性ポリペプチドまたはMAGEC2免疫原性ポリペプチドをコードする核酸と接触させる。一実施形態では、単独のまたはアジュバントと組み合わせたMAGEC2免疫原性ポリペプチドまたはMAGEC2免疫原性ポリペプチドをコードする核酸の存在下で、抗原提示細胞を、約1週間未満、例示的には約1分間~約48時間、約2分間~約36時間、約3分間~約24時間、約4分間~約12時間、約6分間~約8時間、約8分間~約6時間、約10分間~約5時間、約15分間~約4時間、約20分間~約3時間、約30分間~約2時間、約40分間~約1時間にわたってインキュベートする。抗原提示細胞が抗原をプロセシング及び提示するのに必要な、単独のまたはアジュバントと組み合わせたMAGEC2免疫原性ポリペプチドまたはMAGEC2免疫原性ポリペプチドをコードする核酸の時間及び量は、例えば、接触の後に洗い流し期間、及び読出し系への、例えば抗原反応性T細胞への曝露が続く、パルスチェイス法を用いて、決定され得る。
【0475】
ある特定の実施形態では、抗原を抗原提示細胞の内在プロセシング経路に送達するための任意の好適な方法が用いられ得る。そのような方法としては、限定されるものではないが、pH感受性リポソーム、アジュバントに対する抗原の結合、アポトーシス細胞送達、樹状細胞上への細胞のパルス添加、樹状細胞株のMHCクラスIプロセシング経路への抗原を含む組換えキメラウイルス様粒子(VLP)の送達を伴う方法が挙げられる。
【0476】
一実施形態では、可溶化されたMAGEC2免疫原性ポリペプチドを、抗原提示細胞とインキュベートする。いくつかの実施形態では、MHCクラスI経路への送達のために抗原提示細胞の細胞質ゾル中への抗原の移入を増強すべく、MAGEC2免疫原性ポリペプチドを細胞溶解毒素に結合させることがある。例示的な細胞溶解毒素としては、サポニン化合物、例えば、サポニン含有免疫刺激複合体(ISCOM5)、膜孔形成毒素(例えば、アルファ毒素)、及びグラム陽性細菌の天然の細胞溶解毒素、例えば、リステリオリシンO(LLO)、ストレプトリシンO(SLO)及びパーフリンゴリシンO(PFO)が挙げられる。
【0477】
いくつかの実施形態では、抗原提示細胞、例えば樹状細胞及びマクロファージは、当技術分野で知られている方法に従って単離され得、MAGEC2免疫原性ポリペプチドをコードする核酸を抗原提示細胞に導入するために当技術分野で知られている方法によってポリヌクレオチドでトランスフェクトされ得る。トランスフェクション試薬及び方法は当技術分野において既知であり、市販されている。例えば、MAGEC2免疫原性ポリペプチドをコードするRNAは、好適な培地の中に入った状態で提供され得、抗原提示細胞との接触の前に脂質(例えばカチオン性脂質)と組み合わされ得る。そのような脂質の非限定的な例としては、LIPOFECTIN(商標)及びLIPOFECTAMINE(商標)が挙げられる。結果として得られたポリヌクレオチド-脂質複合体は、その後、抗原提示細胞と接触され得る。あるいは、電気穿孔またはリン酸カルシウムトランスフェクションなどの技術を用いてポリヌクレオチドを抗原提示細胞内に導入してもよい。ポリヌクレオチドを負荷された抗原提示細胞は、その後、in vitro、ex vivo、またはin vivoでTリンパ球(例えば、細胞傷害性Tリンパ球)増殖を刺激するために使用され得る。一実施形態では、ex vivoで増殖させたTリンパ球を、養子免疫療法の方法において対象に投与する。
【0478】
ある特定の態様において、本明細書に提供されるのは、MAGEC2免疫原性エピトープが抗原提示細胞によって提示されるのに十分な条件の下で、単独のまたはアジュバントと組み合わせたMAGEC2免疫原性ポリペプチドまたはMAGEC2免疫原性ポリペプチドをコードする核酸とin vitroで接触した、抗原提示細胞を含む、組成物である。
【0479】
いくつかの態様において、本明細書に提供されるのは、MAGEC2タンパク質に特異的なリンパ球を調製する方法である。方法は、MAGEC2ウイルスに感染した細胞に対する免疫応答を誘発することができるMAGEC2タンパク質特異リンパ球を産生させるのに十分な条件の下で、リンパ球を上記抗原提示細胞と接触させることを含む。したがって、抗原提示細胞は、MAGEC2ウイルスに感染した細胞に対する免疫応答を誘発するためのTリンパ球及びBリンパ球を含めたリンパ球を提供するためにも使用され得る。
【0480】
いくつかの実施形態では、抗原提示細胞によって提示されたMAGEC2免疫原性エピトープに対してTリンパ球を初回刺激するために、一定期間(例えば、少なくとも約24時間)にわたってTリンパ球の調製物を上記抗原提示細胞と接触させる。
【0481】
いくつかの実施形態では、抗原提示細胞の集団を、単独のまたはアジュバントと組み合わせたMAGEC2免疫原性ポリペプチドまたはMAGEC2免疫原性ポリペプチドをコードする核酸と一緒に末梢血Tリンパ球の異種集団と共培養することがある。細胞は、MAGEC2ポリペプチド中に含まれているMAGEC2エピトープが抗原提示細胞によって提示されるのに十分な、及びMAGEC2ウイルスに感染した細胞に応答するTリンパ球の集団を抗原提示細胞が初回刺激するのに十分な、期間にわたって及び条件の下で、共培養され得る。ある特定の実施形態において、本明細書に提供されるのは、MAGEC2ウイルスに感染した細胞に応答するように初回刺激されたTリンパ球及びBリンパ球である。
【0482】
Tリンパ球は、任意の好適な供給源、例えば、末梢血、脾臓及びリンパ節から得られ得る。Tリンパ球は、粗調製物として、または部分的に精製されたもしくは実質的に精製された調製物として使用されることがあるが、これらは、抗体を使用する免疫磁気技術またはフローサイトメトリー技術を伴う方法を含むがこれらに限定されない標準的な技術によって、得られ得る。
【0483】
ある特定の態様において、本明細書に提供されるのは、上記の抗原提示細胞またはリンパ球、ならびに薬学的に許容される担体及び/または希釈剤を含む、組成物(例えば、医薬組成物)である。いくつかの実施形態では、組成物は、上記のようなアジュバントをさらに含む。
【0484】
ある特定の態様では、上にさらに記載されているように、MAGEC2ウイルスに感染した細胞に対する免疫応答を誘発する方法であって、免疫応答を誘発するのに十分な有効量の上記抗原提示細胞またはリンパ球を対象に投与することを含む、当該方法が、本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるのはMAGEC2発現を特徴とする障害を治療または予防する方法であって、有効量の上記抗原提示細胞またはリンパ球を対象に投与することを含む、当該方法である。一実施形態では、抗原提示細胞またはリンパ球を全身に、好ましくは注射によって投与する。あるいは、全身ではなく局所に、例えば組織への直接注射によって、好ましくはデポ製剤または持続放出性製剤として、投与してもよい。
【0485】
ある特定の実施形態では、抗原で初回刺激された本明細書に記載の抗原提示細胞、及びこれらの抗原提示細胞によって生成した抗原特異的Tリンパ球を、MAGEC2発現を特徴とする障害の予防的または治療的処置のための免疫調節組成物の中の活性化合物として使用することがある。いくつかの実施形態では、MAGEC2で初回刺激された本明細書に記載の抗原提示細胞を、対象への養子移入のためのCD8Tリンパ球、CD4Tリンパ球及び/またはBリンパ球を生成するために使用することがある。したがって、例えばMAGEC2特異リンパ球は、MAGEC2発現を特徴とする障害に罹患している対象における治療目的のために養子移入され得る。
【0486】
ある特定の実施形態では、免疫応答を誘発するために、特に、MAGEC2を発現している細胞に対する免疫応答を誘発するために、本明細書に記載の抗原提示細胞及び/またはリンパ球は、それら自体が、または組み合わせて、対象に投与されることがある。いくつかの実施形態では、抗原提示細胞及び/またはリンパ球は、対象に由来し得る(例えば、自家細胞)、またはMHCが対象と一致するもしくは一致しない異なる対象に由来し得る(例えば、同種異系)。
【0487】
抗原提示細胞及びリンパ球の単回または複数回の投与は、介護者(例えば、医師)によって選択された細胞数及び治療で行われ得る。いくつかの実施形態では、抗原提示細胞及び/またはリンパ球は、薬学的に許容される担体の中に含まれた状態で投与される。好適な担体は、細胞を成長させた成長培地、または任意の好適な緩衝培地、例えば、リン酸緩衝生理食塩水であり得る。細胞は、単独で、または他の療法と一緒に補助療法として、投与され得る。
【0488】
本発明に包含される別の態様において、本明細書に提供されるのは、MAGEC2を発現する細胞に対する免疫応答を誘発するための方法であって、免疫応答を誘発するのに十分な有効量で、結合性タンパク質(例えば、操作したTCR、CAR、またはそれらの抗原結合性断片)を発現する本明細書に記載される細胞を、対象に投与することを含む、当該方法である。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるのは、MAGEC2発現を特徴とする障害を治療または予防する方法であって、結合性タンパク質(例えば、操作したTCR、CAR、またはそれらの抗原結合性断片)を発現する本明細書に記載される細胞の有効量を、対象に投与することを含む、当該方法である。一実施形態では、細胞を、例えば、注射等によって、全身的に投与する。あるいは、全身的ではなく局所的に、組織の中への直接的な注射によって、例えばデポ製剤または徐放性製剤として、投与することがある。
【0489】
いくつかの実施形態では、結合性タンパク質(例えば、操作したTCR、CAR、またはそれらの抗原結合性断片)を発現する本明細書に記載される細胞を、MAGEC2発現を特徴とする障害の予防的処置または治療的処置のための免疫調節組成物の中の活性化合物として使用することがある。いくつかの実施形態では、MAGEC2で初回刺激した抗原提示細胞は、結合性タンパク質(例えば、操作型TCR、CAR、またはそれらの抗原結合性断片)を発現している本明細書に記載の細胞を対象に養子移入することにさらに使用するための、リンパ球(例えば、CD8Tリンパ球、CD4Tリンパ球、及び/またはBリンパ球)を生成するために、使用され得る。
【0490】
いくつかの実施形態では、結合性タンパク質(例えば、操作型TCR、CAR、またはそれらの抗原結合性断片)を発現する本明細書に記載される細胞は、単独で、あるいはリンパ球と組み合わせて、免疫応答を誘発するために、特に、MAGEC2を発現している細胞に対する免疫応答を誘発するために対象に投与され得る。
【0491】
上記のように、結合性タンパク質(例えば、操作型TCR、CAR、またはそれらの抗原結合性断片)を発現している本明細書に記載される細胞の単回投与または複数回投与は、単独で、あるいはリンパ球と組み合わせて、医療提供者(例えば、医師)によって選択されることになる細胞数及び治療で実施され得る。同様に、細胞は、単独で、あるいはリンパ球と組み合わせて、薬学的に許容される担体の中に入った状態で投与されることがある。好適な担体は、細胞を成長させた成長培地、またはリン酸緩衝生理食塩水などの任意の好適な緩衝培地であり得る。細胞は、単独で、または他の治療薬と併用した補助療法として、投与され得る。
【0492】
XI.キット及び装置
本発明はまた、キット及び装置も包含する。例えば、キットまたは装置は、結合性タンパク質、結合性タンパク質をコードする配列を含む核酸またはベクター、核酸もしくはベクターを含んでいる及び/または本明細書に記載される結合性タンパク質を発現している宿主細胞、安定MHC-ペプチド複合体、アジュバント、検出試薬、ならびにそれらの組合せを、好適な容器に包装されて、含み得、さらに、そのような試薬を使用するための説明書を含み得る。キットはまた、他の構成要素、例えば、別の容器で包装された投与器具を含むこともある。キットを、本発明に包含される方法を実施するための単位として宣伝、配布または販売することがある。
【0493】
本開示を以下の実施例によってさらに説明するが、これらは限定として解釈されるべきでない。
【実施例
【0494】
実施例1:実施例2のための材料及び方法
a.免疫原性エピトープの同定
(i)TCRプールの発見及び設計
対になったTCRアルファ及びTCRベータ配列を、Chromium(商標)単細胞V(D)J試薬キット(v1)(10X Genomics)についての製造業者の指示に従ってTIL療法産物の単細胞シーケンシング(10X Genomics)によって得た。個々の対になった配列を、マウスTRBC及びTRAC領域を発現している単一の構築物にクローニングして、P2Aによって分離されたヒト-マウスTCRを作出した。TCR構築物をLenti-X(商標)細胞(Takara Bio USA,Mountain View,CA)でパッケージングした。手短に述べると、TCR構築物をパッケージングプラスミド(pREV/pTAT/pVSVG/pGAGPOL)と混合し、製造業者のプロトコールに従ってjetPRIME(登録商標)(Polyplus、Illkirch,France)試薬とインキュベートした。24時間後、培養物をOpti-Pro(商標)SFM培地(LifeTech)で洗浄した。ウイルス上清をトランスフェクションの48時間後に採集し、Vivaspin(登録商標)20遠心濃縮器(Sartorius,Bohemia,NY)を使用して所望の体積になるまで濃縮した(Sartorius,Bohemia,NY)。レンチウイルス力価は、TCR-/-Jurkat細胞株を使用してGFPまたはTCRα/β発現によって決定された。ウイルス力価を定量するために、形質導入の48~72時間後にフローサイトメトリー分析によってGFP発現を評価した。CytoFLEX(商標)フローサイトメータ(Beckman Coulter)を使用してサンプルを分析した。力価は、GFPが発現している細胞の百分率として、式:TU/ml=GFPの%×(形質導入に使用された細胞の数)×(希釈倍率)×1000を用いてTU/mlとして算出された。
【0495】
(ii)T細胞操作
CD8+T細胞(T細胞)は、leukopaksから、Miltenyi MultiMACS(商標)Cell24 Separator(Miltenyi Biotec)及びStraightFrom(登録商標)Leukopak(登録商標)ヒトCD8マイクロビーズキットを製造業者の指示に従って使用して単離された(Miltenyi Biotec、カタログ#130-117-019)。90%を上回る純度を有する単離されたCD8 T細胞をCryoStor(登録商標)CS10(StemCell Technologies、カタログ#07930、Cambridge,MA)の中に10×10細胞/mLで再懸濁させ、後の実験のために-170Cで保存した。
【0496】
まずCD8 T細胞を解凍し、10%の熱不活化ウシ胎仔血清HI-FBS)(ThermoFisher、カタログ#A3840002)、1Xのペニシリン-ストレプトマイシン(ThermoFisher、カタログ#15140122)、50IU/mLの組換えヒトIL-2(Peprotech、カタログ#200-02)、5ng/uLの組換えヒトIL-7(R&D、カタログ#207-IL)、及び5ng/uLの組換えヒトIL-15(R&D、カタログ#247-ILB)が補充されたRPMI-1640培地(ATCC、カタログ#30-2001)の中に再懸濁させ、5%COの下で一晩、37℃で静置した。翌日、細胞をImmunoCult(商標)ヒトCD3/CD28 T細胞活性化因子(StemCell Technologies、カタログ#10971)で16時間にわたって活性化させ、その後、レンチウイルス中に1×10~1×10U/mLでパッケージングされた個々のTCRによって形質導入した。72時間後、残存ウイルスを洗い流し、細胞をプールして、TCRが形質導入されたT細胞のライブラリーを作出した。外因性マウス-ヒトTCRを発現している細胞をビオチン標識抗マウスTCR抗体(BioLegend、カタログ#109204)で標識付けし、抗ビオチン結合体化マイクロビーズ(Miltenyi、カタログ#130-090485)を製造業者の指示に従って使用して単離した。単離された細胞を7日間にわたって増殖させ、CryoStor(登録商標)CS10(StemCell Technologies、カタログ#07930、Cambridge,MA)の中に再懸濁させ、冷凍した。
【0497】
(iii)ペプチドライブラリーの設計
がん精巣抗原(CTA)ペプチドライブラリーを生成するために、1,600種のがん精巣抗原のコード領域にまたがるアミノ酸配列を、20アミノ酸ずつ重複する66merのアミノ酸タイルに分割した。タイルはシリコンチップ(Twist Bioscience)上で合成され、レンチウイルス発現ベクターにクローニングされた。同様に、ヒトゲノムの全タンパク質にまたがるヒトゲノムコード配列にわたって90merのアミノ酸タイルでタイル分けすることによってヒトゲノムペプチドライブラリーを生成した。
【0498】
(iv)ライブラリーのウイルスパッケージング及び力価決定
ペプチドライブラリー発現レポーター細胞を生成するために、まずペプチドライブラリー構築物を、Lenti-X(商標)細胞(Takara Bio USA,Mountain View,CA)を使用してパッケージングした。手短に述べると、Lenti-X(商標)細胞を75%のコンフルエンシーでCellBIND(登録商標)ポリスチレンCellSTACK(登録商標)5層チャンバ(Corning)の中に配置し、jetPRIME(登録商標)トランスフェクション試薬(Polyplus,Illkirch,France)を使用してトランスフェクトした。ペプチドライブラリーをパッケージングプラスミド(pREV/pTAT/pVSVG/pGAGPOL)と混合し、製造業者のプロトコールに従ってjetPRIME(登録商標)試薬とインキュベートした。Opti-Pro(商標)SFM培地(LifeTech)をトランスフェクションの24時間後に添加した。ウイルス上清をトランスフェクションの48時間後に採集し、Vivaflow(登録商標)50カセット(Sartorius,Bohemia,NY)を使用して濃縮した。レンチウイルス力価は、ウイルス上清の段階希釈液を使用してLenti-X(商標)細胞を使用して、ピューロマイシンコロニー形成によって決定された。ウイルス力価を定量するために、形質導入の48時間後にピューロマイシン抵抗性コロニーを選択した。ピューロマイシン抵抗性コロニーを、クリスタルバイオレット染色によって可視化し、計数した。力価は、コロニー形成単位として、式:TU/ml=ピューロマイシン抵抗性コロニー数×希釈倍率×1000を用いてTU/mlとして算出された。
【0499】
グランザイム活性化蛍光レポーターを発現しているMHC-null HEK293T細胞を、HLA-B07:02単アレル性レポーター細胞、HLA-A24:02単アレル性レポーター細胞などのように、本明細書に記載のMAGEC2免疫原性ペプチドを提示するMHCを発現するように操作した。6×10個(CTAライブラリーの場合)または2.4×10個(ゲノム全体にわたるライブラリーの場合)の単アレル性レポーター細胞を、Falcon(登録商標)875cm Rectangular Straight Neck Cell Culture Multi-Flask(Corning)内に播種し、ペプチドライブラリーがパッケージングされたレンチウイルスで、MOIを5として形質導入した。陽性対照として、スパイクしたTCRによって認識されることが分かっている、上記ヒトゲノムライブラリーからの単一の90merのアミノ酸タイルを発現している細胞を、細胞のプールに1:40,000の比で添加した。
【0500】
(v)グランザイムによって殺滅される細胞の共培養及び濃縮
2.5×10個の形質導入済みCD8+T細胞を解凍し、0.1mg/mLの抗CD3(OKT3、eBioscience)及び50U/mLのIL-2(Peprotech)が補充された培地の中に含まれている照射済みPMBCフィーダー細胞によって、1:20のT細胞:PBMC比で再刺激した。7日後、T細胞を、ペプチドライブラリーで形質導入されたレポーター細胞に、1:1のE:T比で添加し、4時間インキュベートした。トリプシン処理によってすべての細胞を回収し、アネキシンV結合体化マイクロビーズ(Miltenyi)で製造業者の指示に従って染色し、autoMACS(登録商標)Pro分離装置(Miltenyi)を使用して分離した。蛍光グランザイムレポーターが陽性である細胞を、MoFlo(登録商標)Astrios(商標)細胞選別装置(Beckman Coulter)を使用して選別し、後の分析のためにDNA/RNA Shield(商標)(Zymo Research)の中に保存した。
【0501】
(vi)次世代シーケンシング(NGS)及びデータ解析
ゲノムDNAを、GeneJET(商標)ゲノムDNA精製キット(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)を使用して抽出し、2回のPCR増幅を用いるNGSシーケンシングのために調合した。手短に述べると、1回目のPCRではペプチドカセットを増幅し、2回目は配列決定用アダプター及びサンプルインデックスを添加し、その後、Illumina NextSeq(商標)装置(Illumina,San Diego,CA)を使用して配列決定した。投入ライブラリー中のペプチド割合に対する、1ペプチドごとのマッピングされた読取結果の割合、及び濃縮倍率を、計算した。8回の技術的反復の幾何平均を計算し、2つよりも多い同一配列における4倍を上回る濃縮を、後の解析に適するとみなした。
【0502】
b.TCRの発見
(i)ペプチド予測及び標的検証
4倍を上回るスコアを有する重複ペプチド配列を用いて、NetMHC4.0(ワールドワイドウェブ上でcbs.dtu.dkにおいて利用可能)によってMHC結合性を予測し、上位に予測されたMHC結合性ペプチドを合成した(Genscript)。単アレル性HEK293Tレポーター細胞に1uMの各ペプチド候補を1時間にわたってパルス導入し、その後、TCR形質導入T細胞のプールと1:1のE:T比で共培養した。24時間後、培養物をV字底96ウェルプレートへ移し、2,000rpmで2分間にわたって遠心分離し、Ella 3rd generation IFNγカートリッジ(ProteinSimple)を製造業者の指示に従って使用して上清をIFNγについて検査した。
【0503】
(ii)対応するTCRの同定
対応するTCRをTCR形質導入T細胞のプールから同定するために、MHC単アレル性HEK293T細胞にペプチドを1時間にわたってパルス導入し、T細胞のプールと1:1のE:T比で16~24時間にわたって共培養した。T細胞を混合し、ピペット操作によって回収し、製造業者の指示に従ってCD137マイクロビーズキット(Miltenyi)で標識付けした。手短に述べると、T細胞をまず、PE標識抗CD137及びAF647標識抗CD69(BioLegend)で染色し、洗浄し、その後、抗PEマイクロビーズで標識付けした。標識付けされた細胞を、autoMACS(登録商標)Pro分離装置(Miltenyi)で濃縮し、グランザイム(granyme)レポーターが陽性である細胞をMoFlo(登録商標)Astrios(商標)細胞選別装置(Beckman Coulter)で選別した。選別された細胞からゲノムDNAを抽出し、TCR発現カセットをPCR増幅して次世代シーケンシング(NGS)の準備をした。
【0504】
c.TCR特性評価
(i)T細胞認識アッセイ
TCRによる同定ペプチドの認識の特徴を明らかにするために、野生型HEK293細胞にペプチドの段階希釈液をパルス導入し、関心とするTCRで形質導入されたT細胞と共培養した。24時間後、培養物をピペット操作によって混合し、2,000rpmで2分間にわたって遠心分離した。上清を回収し、ヒトIFNγ 3rd generation single-plexアッセイ(Protein Simple)を製造業者の指示に従って用いてIFNγ分泌を測定した。あるいは、グランザイム活性化蛍光レポーターを発現している単アレル性HEK293T細胞にペプチドの段階希釈液をパルス導入し、関心とする個々のTCRで形質導入されたT細胞と共培養した。4時間後、培養物をピペット操作によって採集し、レポーターの蛍光を、CytoFLEX(商標)S装置(Beckman Coulter)を使用して検出した。
【0505】
メラノーマ細胞株に対する反応性を検出するために、野生型メラノーマ細胞株を96ウェル平底プレートに6×10細胞で播種し、5%CO中で16時間にわたって37℃で静置した。翌日、T細胞を解凍し、完全RPMI-1640培地で洗浄し、1:1のエフェクター対標的比でウェルに加えた。共培養物を16時間にわたってインキュベートした。その後、細胞をピペット操作によって採集し、V字底96ウェルプレートへ移し、2,000rpmで2分間にわたって遠心分離した。ヒトIFNγ 3rd generation single-plexアッセイ(Protein Simple)を用いるIFNγ測定のために上清を回収した。フローサイトメトリー分析(Cytoflex S(商標)装置、Beckman Coulter)のために、細胞ペレットをFACS用緩衝液(PBS、0.5%のBSA、2mMのEDTA)で洗浄し、PE結合体化抗CD137(Miltenyi)、AF647結合体化抗CD69(Biolegend)及びBV421結合体化抗CD8(BioLegend)を含めた活性化誘導マーカーのために染色した。
【0506】
(ii)がん細胞培養及びIncucyte(登録商標)NucLight(商標)Red形質導入
メラノーマ株はATCC(Manassas、VA)から購入し、HEK293T細胞は、最初はTakara Bio(Shiga,Japan)から提供された。すべての培地に10%のFBS及び1%のペニシリンを補充し、5%CO中、37℃でインキュベートした。A101D、A2058、HT144及びHEK293T細胞を完全DMEM中で維持した。SK-MEL-5については完全EMEM中で培養した一方、HMCBは、10mMのHEPESを含む完全EMEMを必要とした。未形質導入がん細胞をT細胞認識アッセイに備えて維持し、各細胞株の10個の細胞にIncucyte(登録商標)NucLight(商標)Redレンチウイルス試薬(Sartorius,Gottingen,Germany)を導入した。1.5ug/mLのピューロマイシンを使用して陽性標識細胞を72時間かけて選択した。
【0507】
(iii)Incucyte(登録商標)細胞傷害性アッセイ
Incucyte(登録商標)NucLight(商標)分析のために選択されたメラノーマ細胞を96ウェル平底プレート(Corning,Flintshire,UK)の中に10細胞で播種し、但し、HMCB細胞については5×10細胞で播種した。同じ日にT細胞を解凍し、完全RPMI-1640で洗浄し、50U/mLのIL-2(PeproTech)、5ng/mLのIL-7、及び5ng/mLのIL-15(R&D Systems)を含んだ培地の中で一晩静置した。すべての細胞を5%CO中で16時間にわたって37℃で静置した。T細胞の2倍段階希釈を、最高E:Tを4:1とし、最低を1:2としたエフェクター対標的比で行った。2回の技術的反復からの全ウェル1つあたり1枚の画像を72時間の経過時間にわたって2時間ごとに撮影した。撮像には4×の対物レンズを利用し、データはIncucyte(登録商標)Basicソフトウェアを使用して解析した。赤色チャンネル取得時間は400msであり、そのバックグラウンドを、トップハットセグメンテーションを有効にすることによって差し引いた。ソフトウェアが空間的に密接している細胞を1つの物体ではなく複数の物体として認識できるように、エッジ分割を、その設定が存在していない場合に適用した。
【0508】
図7~9に示されるデータは、上に記載されているものと類似する材料、方法及び実験に従って生成された。
【0509】
実施例2:MAGEC2免疫原性エピトープ及びそれに対する結合性タンパク質の同定
メラノーマを有する自家患者を治療するために用いられた養子細胞療法産物から得られたTCRのプールから、MHC分子によって提示される免疫原性ペプチドを認識するTCRを速やかに同定することを可能にする高処理量抗原発見プラットフォームを開発し、認識された免疫原性ペプチドを同定するためにこれを適用した(実施例1参照)。発現ががんのような特定の疾患に関連付いており、精巣以外の組織には通常は発現していない(図1)遺伝子であるMAGEC2の、抗原性ペプチドは、HLA-B07:02によって提示された状態で認識されているものとして同定された(図2A)。検索された配列ライブラリーの重複タイルが共有している共通配列、及び生命情報科学解析によって、免疫原性MAGEC2ペプチド配列の同定が可能になった(図2B;「RAR」と命名される代表的免疫原性ペプチドの検証については図2Cも参照されたい)。その後、RAR代表的免疫原性ペプチドを使用してTCR形質導入T細胞のプールのスクリーニングを行い、TCR8-3などのヒットが同定された(図3のA及びB)。代表的なTCR8-3は、RARペプチド-HLA-B07:02(pMHC)複合体を発現している細胞を殺滅することがペプチドパルス細胞傷害性アッセイにおいて実証された(図4A及び図4B)。代表的なTCR8-3はさらに、MAGEC2を発現するがん細胞、例えば、MAGEC2を様々なレベルで発現しているメラノーマ細胞を殺滅することが実証された(図5A~5E及び図6)。同様の実験を実施して、HLA-A24血清型、例えばHLA-A24:02によって提示されるさらなる免疫原性MAGEC2ペプチド配列、及びそのようなペプチド-HLA複合体を認識するTCRを同定した(図7~9参照)。
【0510】
かくして、MHC分子との関連において生理学的に重要なTCR-抗原対が同定された。
【0511】
参照による取り込み
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許及び特許出願は、あたかも各個の刊行物、特許または特許出願が、参照により援用されることを具体的かつ個別に示されたかのように、参照によりその全体が本明細書に援用される。相反する場合には、本明細書中の任意の定義を含めて本出願が優先される。
【0512】
公開データベース中の登録事項と相関する受託番号を参照する任意のポリヌクレオチド配列及びポリペプチド配列、例えば、ワールドワイドウェブ上でtigr.orgにあるThe Institute for Genomic Research(TIGR)、及び/またはワールドワイドウェブ上でncbi.nlm.nih.govにあるアメリカ国立生物工学情報センター(NCBI)によって維持されている配列もまた、参照によりその全体が援用される。
【0513】
均等物及び範囲
本発明に包含される1つ以上の実施形態の詳細は、上記の本明細書の中で示されている。代表的な、例示的な材料及び方法について説明してきたが、本明細書に記載されているものと類似するまたは等価な任意の材料及び方法を、本発明に包含される実施形態の実施または試験において使用してもよい。本発明に関連する他の特徴、目的及び利点は、本明細書から明らかである。別段の規定がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。相反する場合には、上記に提供される本明細書が優先される。
【0514】
当業者は、慣例的な実験しか用いずに、本明細書に記載される本発明によって包含される特定の実施形態に対する多くの均等物を認識するであろう、またはそれらを確認できるであろう。本発明に包含される範囲は、本明細書に提供されている記載に限定されることを意図しておらず、そのような均等物を添付の特許請求の範囲に包含することを意図している。
【0515】
用語「含む」は非限定型であることが意図されており、追加の要素またはステップの包含を許容するが必要としないことにも、留意されたい。用語「含む」を本明細書で使用する場合、用語「からなる」も包含され、開示される。
【0516】
範囲が与えられている場合、端点が含まれる。さらに、特に示されていない限り、または文脈から及び当業者の理解から特に明白でない限り、範囲として表される値は、本発明に包含される種々の実施形態の中で記された範囲内の任意の特定の値または部分範囲を、別段の指示が文脈から明らかでない限り範囲の下限の単位の10分の1まで想定し得ることを理解されたい。
【0517】
さらに、先行技術の範囲に入っている、本発明に包含される任意の特定の実施形態は、いずれの1つ以上の特許請求の範囲からも明示的に除外され得ることが理解されるべきである。そのような実施形態は、当業者に既知であるとみなされるので、それらは、除外が本明細書において明確に記載されていないとしても、除外され得る。本発明に包含される組成物の任意の特定の実施形態(例えば、任意の抗生物質、治療薬または活性成分;任意の製造方法;任意の使用方法;など)は、先行技術の有無に関係なく、任意の理由で、任意の1つ以上の特許請求の範囲から除外されることがある。
【0518】
使用されている語が限定ではなく説明のための語であること、及び本発明に包含される真の範囲及び趣旨から逸脱することなくそのより広い態様において添付の特許請求の範囲の範囲内で変更が行われ得ることは、理解されたい。
【0519】
本発明は、いくつかの記載された実施形態に関して、ある程度の長さで、及びある程度の具体性をもって記載されているが、任意のそのような具体性もしくは実施形態または任意の特定の実施形態に限定されることは意図しておらず、先行技術を考慮してそのような特許請求の範囲の可能な最も広い解釈を提供するように、及びそれゆえに本発明に包含される意図された範囲を効果的に包含するように、添付の特許請求の範囲を参照して解釈されるべきである。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
【配列表】
2024515646000001.app
【国際調査報告】