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特表2024-515651選択マーカーのないプラスミドシステム及びその生産方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】選択マーカーのないプラスミドシステム及びその生産方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20240403BHJP
   C12N 15/70 20060101ALI20240403BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240403BHJP
   C12P 19/34 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/70 Z
C12N1/21
C12P19/34
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563241
(86)(22)【出願日】2021-11-25
(85)【翻訳文提出日】2023-10-16
(86)【国際出願番号】 CN2021133141
(87)【国際公開番号】W WO2022217934
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】202110413747.X
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PLURONIC
(71)【出願人】
【識別番号】519241381
【氏名又は名称】ナンジン、ジェンスクリプト、バイオテック、カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NANJING GENSCRIPT BIOTECH CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】28 Yongxi Road,Jiangning Science Park, Nanjing, Jiangsu 211100 China
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン、チョウ
(72)【発明者】
【氏名】イーファン、リー
(72)【発明者】
【氏名】ルー、チャン
(72)【発明者】
【氏名】ホン、リー
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AF27
4B064CA19
4B064CC24
4B065AA01X
4B065AA26X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA23
4B065CA60
(57)【要約】
本発明は、選択マーカーのないプラスミドを製造するための前駆体プラスミドを提供し、該前駆体プラスミドは、1) 複製開始部位と、2) 選択マーカー遺伝子と、3) 標的遺伝子又は前記標的遺伝子に挿入するためのクローニング部位と、4) 対になった組換え部位とを含む。これらの対になった組換え部位により、前駆体プラスミドは、リコンビナーゼの存在下で、自己組換えを行って、娘プラスミド分子及び環状二本鎖DNA分子を形成することができる。該娘プラスミドは、複製開始部位と、クローニング部位又は標的遺伝子とを含む。該環状二本鎖DNAは、選択マーカー遺伝子を含む。本発明は、前駆体プラスミドを用いて、選択マーカーのないプラスミドを製造する方法をさらに提供した。製造された選択マーカーのないプラスミドは、プラスミドの安全性を向上させるために、DNA送達ベクター又はウイルスパッケージングプラスミドベクターとして、遺伝子及び細胞療法分野に用いられ得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前駆体プラスミドであって、
1) 複製開始部位と、
2) 選択マーカー遺伝子と、
3) 標的遺伝子又は前記標的遺伝子を挿入するためのクローニング部位と、
4) 対になった組換え部位とを含み、ここで、
前記対になった組換え部位により、前記前駆体プラスミドは、リコンビナーゼの存在下で、自己組換えを行って、選択マーカー遺伝子のない娘プラスミド分子及び環状二本鎖DNA分子を形成することができ、
前記娘プラスミドは、前記複製開始部位と前記標的遺伝子とを含むか、又は前記複製開始部位と前記クローニング部位とを含み、そして、
前記環状二本鎖DNAは、前記選択マーカー遺伝子を含む、前駆体プラスミド。
【請求項2】
前記対になった組換え部位の配列は、同一方向である、請求項1に記載の前駆体プラスミド。
【請求項3】
前記複製開始部位は、前記標的遺伝子又は前記クローニング部位に隣接し、前記対になった組換え部位は、それぞれ前記複製開始部位並びに前記標的遺伝子の上流及び下流に隣接し、又は前記対になった組換え部位は、それぞれ前記複製開始部位及び前記クローニング部位の上流及び下流に隣接する、請求項1又は2に記載の前駆体プラスミド。
【請求項4】
前記対になった組換え部位は、同一方向のloxP配列、同一方向のFRT配列及び同一方向のattB/attP配列から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の前駆体プラスミド。
【請求項5】
前記対になった組換え部位は、同一方向のlox71配列及びlox66配列である、請求項4に記載の前駆体プラスミド。
【請求項6】
前記複製開始部位は、pUCの複製開始部位、pMB1及びその誘導体の複製開始部位、ColE1の複製開始部位並びにR6Kγの複製開始部位から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の前駆体プラスミド。
【請求項7】
前記複製開始部位は、SEQ ID NO: 43~46に示すヌクレオチド配列と、SEQ ID NO: 43~46に示すヌクレオチド配列と少なくとも80%の同一性を有し、且つ複製始点となり得るヌクレオチド配列とを含む、請求項6に記載の前駆体プラスミド。
【請求項8】
rop遺伝子配列、エンドヌクレアーゼのコード配列及びプラスミド複製ヘルパータンパク質のコード配列のうちの一つ又は複数をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の前駆体プラスミド。
【請求項9】
前記選択マーカー遺伝子は、抗生物質耐性遺伝子である、請求項1~8のいずれか一項に記載の前駆体プラスミド。
【請求項10】
他のプラスミド骨格配列をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の前駆体プラスミド。
【請求項11】
前記リコンビナーゼのコード遺伝子をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の前駆体プラスミド。
【請求項12】
前記前駆体プラスミドは、適切な条件下で、前記リコンビナーゼを発現することができる、請求項11に記載の前駆体プラスミド。
【請求項13】
前記環状二本鎖DNAは、rop遺伝子配列、他のプラスミド骨格配列及び前記リコンビナーゼのコード遺伝子のうちの一つ又は複数をさらに含む、請求項8~11のいずれか一項に記載の前駆体プラスミド。
【請求項14】
SEQ ID NO: 8、34、39~42又は47に示すヌクレオチド配列、又はSEQ ID NO: 8、34、39~42又は47に示すヌクレオチド配列と少なくとも80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の前駆体プラスミド。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の前駆体プラスミドの、選択マーカー遺伝子のない娘プラスミドの製造における用途。
【請求項16】
選択マーカー遺伝子のない娘プラスミドを製造する方法であって、
1) 請求項1~14のいずれか一項に記載の前駆体プラスミドを、前記リコンビナーゼを発現することができるか又はその発現を補助することができる宿主細胞に導入し、前記選択マーカー遺伝子を発現する宿主細胞をスクリーニングすることと、
2) ステップ1) でスクリーニングされた宿主細胞を培養して、前記リコンビナーゼの前記宿主細胞での発現を可能にし、前記宿主細胞を培養し、前記選択マーカー遺伝子を発現しない宿主細胞をスクリーニングすることと、
3)前記娘プラスミドを得るために、ステップ2) でスクリーニングされた宿主細胞を培養し、プラスミドを抽出することとを含む、方法。
【請求項17】
前記対になった組換え部位は同一方向のloxP配列であり、且つ前記リコンビナーゼはCreリコンビナーゼであり、前記対になった組換え部位は同一方向のFRT配列であり、且つ前記リコンビナーゼはFlpリコンビナーゼであり、又は前記対になった組換え部位は同一方向のattB/attP配列であり、且つ前記リコンビナーゼはPhiC31リコンビナーゼである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記対になった組換え部位は同一方向のlox71配列及びlox66配列であり、且つ前記リコンビナーゼはCreリコンビナーゼである、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記宿主細胞は、そのゲノムに前記リコンビナーゼのコード遺伝子を含み、又は前記宿主細胞は、前記リコンビナーゼのコード遺伝子を含有する発現ベクターを含む、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記前駆体プラスミドは、前記リコンビナーゼのコード遺伝子を含み、且つ前記前駆体プラスミドは、前記宿主細胞で前記リコンビナーゼを発現することができる、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記リコンビナーゼは、前記宿主細胞内で誘導的に発現される、請求項16~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記発現ベクターは、条件的誘導欠失型プラスミド複製エレメントを含む、請求項19又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記宿主細胞は、大腸菌である、請求項16~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
選択マーカー遺伝子のない娘プラスミドを製造するためのセットであって、請求項1~14のいずれか一項に記載の前駆体プラスミドを含む、セット。
【請求項25】
前記リコンビナーゼを発現することができるか又はその発現を補助することができる宿主細胞をさらに含む、請求項24に記載のセット。
【請求項26】
前記対になった組換え部位は同一方向のloxP配列であり、且つ前記リコンビナーゼはCreリコンビナーゼであり、前記対になった組換え部位は同一方向のFRT配列であり、且つ前記リコンビナーゼはFlpリコンビナーゼであり、又は前記対になった組換え部位は同一方向のattB/attP配列であり、前記リコンビナーゼはphiC31リコンビナーゼである、請求項24又は25に記載のセット。
【請求項27】
前記対になった組換え部位は同一方向のlox71配列及びlox66配列であり、且つ前記リコンビナーゼはCreリコンビナーゼである、請求項24~26のいずれか一項に記載のセット。
【請求項28】
前記宿主細胞は、そのゲノムに前記リコンビナーゼのコード遺伝子を含み、又は前記宿主細胞は、前記リコンビナーゼのコード遺伝子を含有する発現ベクターを含む、請求項25~27のいずれか一項に記載のセット。
【請求項29】
前記リコンビナーゼは、前記宿主細胞で誘導的に発現される、請求項25~28のいずれか一項に記載のセット。
【請求項30】
前記発現ベクターは、条件的誘導欠失型プラスミド複製エレメントを含む、請求項28又は29に記載のセット。
【請求項31】
前記宿主細胞は、大腸菌である、請求項25~30のいずれか一項に記載のセット。
【請求項32】
標的遺伝子を前記クローニング部位に挿入することにより、組換えてから形成された前記娘プラスミドは、前記標的遺伝子を含む、請求項24~31のいずれか一項に記載のセット。
【請求項33】
複製開始部位と標的遺伝子とを含む娘プラスミドであって、抗生物質耐性遺伝子を含まない、娘プラスミド。
【請求項34】
前記複製開始部位は、pUCの複製開始部位、pMB1及びその誘導体の複製開始部位、ColE1の複製開始部位並びにR6Kγの複製開始部位から選択される、請求項33に記載の娘プラスミド。
【請求項35】
前記複製開始部位は、SEQ ID NO: 43~46に示すヌクレオチド配列と、SEQ ID NO: 43~46に示すヌクレオチド配列と少なくとも80%の同一性を有し、且つ複製始点となり得るヌクレオチド配列とを含む、請求項33又は34に記載の娘プラスミド。
【請求項36】
前記標的遺伝子は、プロモーター、タンパク質を発現するコード遺伝子及びターミネーターの配列のうちの一つ又は複数を含む、請求項33~35のいずれか一項に記載の娘プラスミド。
【請求項37】
宿主細胞内で複製され得る、請求項33~36のいずれか一項に記載の娘プラスミド。
【請求項38】
スクリーニングストレスのない細胞培養条件下で、前記宿主細胞内で複製することができる、請求項37に記載の娘プラスミド。
【請求項39】
請求項16~23のいずれか一項に記載の方法によって得られた娘プラスミド。
【請求項40】
請求項33~39のいずれか一項に記載の娘プラスミドを含む宿主細胞であって、前記娘プラスミドは、前記宿主細胞内で複製することができる、宿主細胞。
【請求項41】
前記娘プラスミドは、培養、収集及び抽出によって前記宿主細胞から得られる、請求項40に記載の宿主細胞。
【請求項42】
スクリーニングストレスのない細胞培養条件下で、前記娘プラスミドを増幅することができる、請求項40又は41に記載の宿主細胞。
【請求項43】
請求項33~39のいずれか一項に記載の娘プラスミドを含む組成物であって、前記娘プラスミドの含有量は、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%である、組成物。
【請求項44】
前記組成物における娘プラスミドの含有量を測定するための方法は、NGS分析方法又はゲル電気泳動イメージング分析方法である、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
前記NGS分析方法によって測定された前記組成物における娘プラスミドの含有量は、少なくとも90%、95%、96%、97%、98%又は99%である、請求項43又は44に記載の組成物。
【請求項46】
前記ゲル電気泳動イメージング分析方法によって測定された前記組成物における娘プラスミドの含有量は、少なくとも90%、95%、96%、97%、98%又は99%である、請求項43~45のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラスミドに関し、且つマーカーのないプラスミドを製造するための前駆体プラスミドに関する。本発明は、該マーカーのないプラスミドを製造するための方法及び該マーカーのないプラスミドを製造するためのセット(キット)にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
近年来、遺伝子及び細胞療法技術は、ヒト疾患を治療する新たな重要な方法となってきている。安全で効率的なDNA送達ベクターは、将来のヒト疾患の予防及び治療において、遺伝子及び細胞療法がより大きな役割を果たすことを可能にする。過去二十年間、プラスミドベクターに基づく非ウイルス送達システム及びプラスミドに基づくウイルスパッケージング/送達システムは、遺伝子欠損の修復、疾患の治療及び予防などの面で広く注目されてきた。プラスミドの安全性、安定性及び収量の向上、並びに細胞傷害性の低下は、遺伝子及び細胞療法の分野におけるプラスミドの研究の主要な方向となっている。
【0003】
遺伝子療法に使用されるプラスミドDNA分子は、通常、真核転写ユニットと原核複製ユニットとを含むモジュール化構造を有する。DNA複製に必要な配列に加えて、従来のプラスミドは、通常、クローニングプロセスにおける陽性クローンスクリーニング及び遺伝の安定化に有利であることを確保するために、少なくとも一つの抗生物質耐性遺伝子を有する。よく使用される選択マーカーは、アンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコール、ネオマイシン、テトラサイクリンなどを含む[1]。しかし、遺伝子療法に適用される場合、プラスミドDNAが、気道又は消化管の表面に存在する細菌に吸収され、プラスミドに担持される抗生物質耐性遺伝子が患者に抗生物質耐性などの副作用を引き起こす可能性がある。そのため、従来のプラスミドの有害な副作用は、抗生物質耐性遺伝子のないプラスミドの開発を促した。
【0004】
現在広く使用されている、抗生物質耐性遺伝子のないプラスミドは、主に以下のものを含む。1) ミニサークル(環状DNA分子)。ミニサークルは、大腸菌において自己組換えを起こし、標的遺伝子配列のみを含む環状DNA分子、及び複製能力を有する抗生物質耐性遺伝子含有の小さいプラスミドを形成することによって、組換え部位を含有する従来のプラスミドから派生する。ミニサークルは、最も短いプラスミド骨格配列を有するが、複製能力が不足であり、組換え効率及び精製手段に制限されるため、製造プロセスが煩雑であり、収量及び純度が低く、大量生産が困難である[2]。2) RNA-OUT選択技術に基づくプラスミド。このようなプラスミドは、RNA-OUTアンチセンス鎖をコードして宿主菌株のネガティブ選択遺伝子SacBの発現を抑制することによって、ショ糖を含有する培地上で形質転換された陽性クローンを成長させてスクリーニングすることができる[3]。このようなスクリーニングシステムは、生産規模の拡大が容易である。プラスミド骨格は、DNA複製エレメント及びRNA-OUTエレメントを含有し、配列(450-500 bp)がミニサークルよりも複雑である。
【発明の概要】
【0005】
一態様によれば、本発明は、前駆体プラスミドを提供し、該前駆体プラスミドは、
1) 複製開始部位と、
2) 選択マーカー遺伝子と、
3) 標的遺伝子又は前記標的遺伝子を挿入するためのクローニング部位と、
4) 対になった組換え部位とを含み、ここで、
これらの対になった組換え部位により、該前駆体プラスミドは、リコンビナーゼの存在下で、自己組換えを行って、選択マーカー遺伝子のない娘プラスミド分子及び環状二本鎖DNA分子を形成することができ、
該娘プラスミドは、該複製開始部位と該標的遺伝子とを含むか、又は該複製開始部位と該クローニング部位とを含み、且つ該環状二本鎖DNAは、選択マーカー遺伝子を含む。
【0006】
いくつかの実施例において、対になった組換え部位の配列は同一方向である。
【0007】
いくつかの実施例において、複製開始部位は、標的遺伝子又はクローニング部位に隣接し、対になった組換え部位は、それぞれ複製開始部位並びに標的遺伝子の上流及び下流に隣接し、又はこれらの対になった組換え部位は、それぞれ複製開始部位並びにクローニング部位の上流及び下流に隣接する。いくつかの好ましい実施例において、複製開始部位は、標的遺伝子又はクローニング部位に隣接し、対になった組換え部位は、それぞれ該「複製開始部位 - 標的遺伝子」の両端に位置し、又はこれらの対になった組換え部位は、それぞれ該「複製開始部位 - クローニング部位」の両端に位置する。いくつかの他の好ましい実施例において、複製開始部位は、標的遺伝子又はクローニング部位の片端に位置し、対になった組換え部位は、それぞれ該「複製開始部位 - 標的遺伝子」の両端に位置し、又はこれらの対になった組換え部位は、それぞれ該「複製開始部位 - クローニング部位」の両端に位置する。
【0008】
いくつかの実施例において、対になった組換え部位は、同一方向のloxP配列、同一方向のFRT配列又は同一方向のattB/attP配列である。
【0009】
いくつかの実施例において、対になった組換え部位は、同一方向のlox71配列及びlox66配列である。いくつかの実施例において、対になった組換え部位は、同一方向のattB配列及びattP配列である。
【0010】
いくつかの実施例において、前駆体プラスミドは、一対又は複数対の対になった組換え部位を含んでもよい。実施例において、前駆体プラスミドは、一対の対になった組換え部位を含む。別の実施例において、前駆体プラスミドは、少なくとも二対の対になった組換え部位を含む。
【0011】
いくつかの実施例において、複製開始部位は、細菌又はファージの複製開始部位からのものであってもよい。いくつかの特定の実施例において、複製開始部位は、細菌の複製開始部位である。いくつかの好ましい実施例において、複製開始部位は、pUCの複製開始部位、pMB1及びその誘導体の複製開始部位、ColE1の複製開始部位並びにR6Kγの複製開始部位から選択される。いくつかの実施例において、複製開始部位は、SEQ ID NO: 43~46に示すヌクレオチド配列と、SEQ ID NO: 43~46に示すヌクレオチド配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有し、且つ複製始点となり得るヌクレオチド配列とを含む。いくつかの他の実施例において、複製開始部位は、SEQ ID NO: 43、44、45又は46に示すヌクレオチド配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有し、且つ複製始点となり得るヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施例において、複製開始部位は、SEQ ID NO: 43、44、45又は46に示すヌクレオチド配列を含む。特定の実施例において、複製開始部位のヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 43、44、45又は46に示すとおりである。
【0012】
いくつかの実施例において、前駆体プラスミドは、rop(プライマーリプレッサー(repressor of primer))遺伝子配列、エンドヌクレアーゼのコード配列及びプラスミド複製ヘルパータンパク質のコード配列をさらに含む。エンドヌクレアーゼは、I-SceIであってもよい。プラスミド複製ヘルパータンパク質は、πタンパク質であってもよい。いくつかの他の実施例において、環状二本鎖DNAは、rop遺伝子配列、エンドヌクレアーゼのコード配列及びプラスミド複製ヘルパータンパク質のコード配列のうちの一つ又は複数を含む。
【0013】
いくつかの実施例において、前駆体プラスミドは、他のプラスミド骨格配列を含む。いくつかの他の実施例において、環状二本鎖DNAは、他のプラスミド骨格配列を含む。
【0014】
いくつかの実施例において、選択マーカー遺伝子は、抗生物質耐性遺伝子である。いくつかの他の実施例において、選択マーカー遺伝子は、アンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコール、ネオマイシン又はテトラサイクリンに耐性を有する遺伝子から選択される。
【0015】
いくつかの実施例において、前駆体プラスミドは、リコンビナーゼのコード遺伝子をさらに含む。いくつかの他の実施例において、環状二本鎖DNAは、リコンビナーゼのコード遺伝子を含んでもよい。いくつかの実施例において、前駆体プラスミドは、適切な条件下で、リコンビナーゼを発現することができる。適切な条件は、前駆体プラスミドによるリコンビナーゼの発現を可能にする任意の条件であってもよく、例えば、適切な宿主細胞、成長条件、誘導条件などを含んでもよい。リコンビナーゼのコード遺伝子を加えて、前駆体プラスミドは、プロモーター、エンハンサー、ターミネーターなどのような、該リコンビナーゼを発現するのに必要なエレメントをさらに含んでもよい。
【0016】
いくつかの実施例において、前駆体プラスミドは、SEQ ID NO: 8、34、39~42又は47に示すヌクレオチド配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施例において、前駆体プラスミドは、SEQ ID NO: 8、34、39~42又は47に示すヌクレオチド配列を含む。実施例において、前駆体プラスミドのヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 8、34、39~42又は47に示すとおりである。
【0017】
別の態様によれば、本発明は、前述の前駆体プラスミドの、選択マーカー遺伝子のない娘プラスミドの製造における用途を提供した。
【0018】
別の態様によれば、本発明は、選択マーカー遺伝子のない娘プラスミドを製造するための方法を提供し、該方法は、1) 前述の前駆体プラスミドを、リコンビナーゼを発現することができるか又はその発現を補助することができる宿主細胞に導入し、選択マーカー遺伝子を発現する宿主細胞をスクリーニングすることと、2) ステップ1) でスクリーニングされた宿主細胞を培養して、リコンビナーゼの該宿主細胞での発現を可能にし、及び該宿主細胞を培養し、選択マーカー遺伝子を発現しない宿主細胞をスクリーニングすることと、3) 娘プラスミドを得るために、ステップ2) でスクリーニングされた宿主細胞を培養し、プラスミドを抽出することとを含む。
【0019】
いくつかの実施例において、製造方法は、ステップ1) の前に、前述の前駆体プラスミドを取得するか又は製造するステップをさらに含む。
【0020】
いくつかの実施例において、前駆体プラスミドは、複製開始部位と、選択マーカー遺伝子と、標的遺伝子と、対になった組換え部位とを含む。これらの対になった組換え部位により、前駆体プラスミドは、リコンビナーゼの存在下で、自己組換えを行って、娘プラスミド分子及び環状二本鎖DNA分子を形成することができる。娘プラスミドは、複製開始部位と、標的遺伝子とを含む。環状二本鎖DNAは、選択マーカー遺伝子を含む。いくつかの実施例において、娘プラスミドは、抗生物質耐性遺伝子を含まない。
【0021】
いくつかの実施例において、対になった組換え部位の配列は同一方向である。
【0022】
いくつかの実施例において、対になった組換え部位は、同一方向のloxP配列であり、且つリコンビナーゼはCreリコンビナーゼであり、対になった組換え部位は同一方向のFRT配列であり、且つリコンビナーゼはFlpリコンビナーゼであり、又は対になった組換え部位は同一方向のattB/attP配列であり、且つリコンビナーゼはPhiC31リコンビナーゼである。
【0023】
いくつかの実施例において、対になった組換え部位は同一方向のlox71配列及びlox66配列であり、且つリコンビナーゼはCreリコンビナーゼである。いくつかの他の実施例において、対になった組換え部位は同一方向のFRT配列であり、且つリコンビナーゼはFlpリコンビナーゼである。いくつかの実施例において、対になった組換え部位は同一方向のattB/attP配列であり、且つリコンビナーゼはPhiC31リコンビナーゼである。
【0024】
いくつかの実施例において、複製開始部位は、細菌又はファージの複製開始部位からのものである。いくつかの特定の実施例において、複製開始部位は、pUCの複製開始部位、pMB1及びその誘導体の複製開始部位、ColE1の複製開始部位並びにR6Kγの複製開始部位から選択される。いくつかの他の実施例において、複製開始部位は、SEQ ID NO: 43~46に示すヌクレオチド配列と、SEQ ID NO: 43~46に示すヌクレオチド配列と少なくとも80%、85%、90%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有し、且つ複製始点となり得るヌクレオチド配列とを含む。
【0025】
いくつかの実施例において、選択マーカー遺伝子は、抗生物質耐性遺伝子である。いくつかの他の実施例において、選択マーカー遺伝子は、アンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコール、ネオマイシン又はテトラサイクリンに耐性を有する遺伝子から選択される。
【0026】
いくつかの実施例において、前駆体プラスミドは、リコンビナーゼのコード遺伝子を含み、且つ前駆体プラスミドは、宿主細胞で該リコンビナーゼを発現することができる。
【0027】
いくつかの実施例において、前駆体プラスミドは、SEQ ID NO: 8、34、39~42又は47に示すヌクレオチド配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの他の実施例において、前駆体プラスミドは、SEQ ID NO: 8、34、39~42又は47に示すヌクレオチド配列を含む。実施例において、前駆体プラスミドのヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 8、34、39~42又は47に示すとおりである。
【0028】
いくつかの実施例において、宿主細胞は、そのゲノムにリコンビナーゼのコード遺伝子を含み、又は該宿主細胞は、該リコンビナーゼのコード遺伝子を含有する発現ベクターを含む。
【0029】
いくつかの実施例において、リコンビナーゼは、宿主細胞内で誘導的に発現される。いくつかの他の特定の実施例において、宿主細胞は、誘導型プロモーターを含み、且つ該誘導型プロモーターにより、リコンビナーゼは、誘導物の存在下で誘導的に発現され得る。例えば、誘導型プロモーターは、ラクトースプロモーター(ラクトースオペロン)、アラビノースプロモーター(アラビノースオペロン)、温度誘導型プロモーター、金属イオン誘導型プロモーターなどであってもよい。いくつかの他の実施例において、リコンビナーゼ遺伝子は、誘導型プロモーター及びリコンビナーゼコード遺伝子を含有するプラスミドを介して宿主細胞ゲノムに組み込まれる。組み込み方法は、CRISPR/Cas9方法を含むが、それに限らない。
【0030】
いくつかの実施例において、発現ベクターは、条件的誘導欠失型プラスミド複製エレメントを含む。いくつかの特定の実施例において、発現ベクターは、温度感受性レプリコン及び金属イオンレプリコンのような、条件的誘導欠失型レプリコンを含む。誘導条件下で、発現ベクターは、複製機能を失い、宿主細胞内で徐々に失われる。
【0031】
いくつかの実施例において、宿主細胞は、大腸菌である。例えば、宿主細胞は、大腸菌JM108、TOP10、DH5α、GT115、pir1、pir2など、及び関連菌株から派生した他の改変された菌株であってもよい。
【0032】
前述の前駆体プラスミドの全ての定義及び技術的特徴は、いずれも娘プラスミドの製造方法における前駆体プラスミドに適用され、全て本明細書に組み込まれる。詳細な内容は、これ以上説明しない。
【0033】
なお、本発明は、前述の製造方法によって得られた娘プラスミドを含む。
【0034】
別の態様によれば、本発明は、選択マーカー遺伝子のない娘プラスミドを製造するためのセットを提供し、該セットは、前述の前駆体プラスミドを含む。
【0035】
いくつかの実施例において、セットは、リコンビナーゼを発現することができるか又はその発現を補助することができる宿主細胞をさらに含む。宿主細胞は、大腸菌である。例えば、宿主細胞は、大腸菌JM108、TOP10、DH5α、GT115、pir1、pir2など、及び関連菌株から派生した他の改変された菌株であってもよい。
【0036】
いくつかの実施例において、前駆体プラスミドにおいて、対になった組換え部位は、同一方向のloxP配列であり、且つリコンビナーゼはCreリコンビナーゼであり、対になった組換え部位は同一方向のFRT配列であり、且つリコンビナーゼはFlpリコンビナーゼであり、又は対になった組換え部位は同一方向のattB/attP配列であり、且つリコンビナーゼはphiC31リコンビナーゼである。実施例において、対になった組換え部位は同一方向のlox71配列及びlox66配列であり、且つリコンビナーゼはCreリコンビナーゼである。別の実施例において、対になった組換え部位は同一方向のFRT配列であり、且つリコンビナーゼはFlpリコンビナーゼである。
【0037】
いくつかの実施例において、宿主細胞は、そのゲノムにリコンビナーゼのコード遺伝子を含み、又は該宿主細胞は、該リコンビナーゼのコード遺伝子を含有する発現ベクターを含む。
【0038】
いくつかの実施例において、リコンビナーゼは、宿主細胞内で誘導的に発現される。いくつかの他の特定の実施例において、宿主細胞は、誘導型プロモーターを含み、且つ該誘導型プロモーターにより、リコンビナーゼは、誘導物の存在下で誘導的に発現され得る。例えば、誘導型プロモーターは、ラクトースプロモーター(ラクトースオペロン)、アラビノースプロモーター(アラビノースオペロン)、温度誘導型プロモーター、金属イオン誘導型プロモーターなどであってもよい。リコンビナーゼ遺伝子は、誘導型プロモーター及びリコンビナーゼコード遺伝子を含有するプラスミドを介して宿主細胞ゲノムに組み込まれる。組み込み方法は、CRISPR/Cas9方法を含むが、それに限らない。
【0039】
いくつかの実施例において、発現ベクターは、条件的誘導欠失型プラスミド複製エレメントを含む。いくつかの特定の実施例において、発現ベクターは、温度感受性レプリコン及び金属イオンレプリコンのような、条件的誘導欠失型レプリコンを含む。
【0040】
いくつかの実施例において、標的遺伝子をクローニング部位に挿入することにより、組換えてから形成された娘プラスミドは、該標的遺伝子を含む。
【0041】
前述の前駆体プラスミドの全ての定義及び技術的特徴は、いずれも前述のセットにおける前駆体プラスミドに適用され、全て本明細書に組み込まれる。詳細な内容は、これ以上説明しない。
【0042】
さらに別の態様によれば、本発明は、複製開始部位と標的遺伝子とを含む娘プラスミドを提供し、ここで、該娘プラスミドは、抗生物質耐性遺伝子を含まない。いくつかの実施例において、娘プラスミドは、選択マーカー遺伝子を含まない。いくつかの実施例において、娘プラスミドは、実質的に、複製開始部位及び標的遺伝子からなる。
【0043】
いくつかの実施例において、複製開始部位は、細菌又はファージの複製開始部位からのものである。いくつかの他の実施例において、複製開始部位は、pUCの複製開始部位、pMB1及びその誘導体の複製開始部位、ColE1の複製開始部位並びにR6Kγの複製開始部位から選択される。いくつかの他の実施例において、複製開始部位は、SEQ ID NO: 43~46に示すヌクレオチド配列と、SEQ ID NO: 43~46に示すヌクレオチド配列と少なくとも80%、85%、90%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有し、且つ複製始点となり得るヌクレオチド配列とを含む。
【0044】
いくつかの実施例において、標的遺伝子は、プロモーター、発現タンパク質のコード遺伝子及びターミネーターの配列を含む。いくつかの他の実施例において、標的遺伝子は、発現タンパク質のコード遺伝子を含み、且つプロモーター、ターミネーター、エンハンサーなどをさらに含んでもよい。
【0045】
いくつかの実施例において、娘プラスミドは、宿主細胞内で複製することができる。宿主細胞は、大腸菌である。例えば、宿主細胞は、大腸菌JM108、TOP10、DH5α、GT115、pir1、pir2など、及び関連菌株から派生した他の改変された菌株であってもよい。娘プラスミドは、宿主細胞内で発酵し培養され、そしてプラスミド抽出によって得られる。該方法は、生産要求を満たすために、大量生産することができる。
【0046】
さらに別の態様によれば、本発明は、前述の娘プラスミドを含む宿主細胞をさらに提供し、ここで、該娘プラスミドは、該宿主細胞内で複製することができる。いくつかの実施例において、娘プラスミドは、培養、収集及び抽出によって宿主細胞から得られる。
【0047】
前述の娘プラスミドの全ての定義及び技術的特徴は、いずれも宿主細胞における娘プラスミドに適用され、全て本明細書に組み込まれる。詳細な内容は、これ以上説明しない。
【0048】
さらに別の態様によれば、本発明は、前述の娘プラスミドを含む組成物をさらに提供し、ここで、該娘プラスミドの含有量は、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%である。
【0049】
いくつかの実施例において、娘プラスミドの含有量を測定するための方法は、NGS分析方法又はゲル電気泳動イメージング分析方法である。実施例において、該娘プラスミドの含有量は、組成物に対してNGS分析を行うことにより、組成物における娘プラスミドの配列の割合によって確定される。いくつかの実施例において、NGS分析方法によって測定された組成物における娘プラスミドの含有量は、少なくとも80%、85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%である。実施例において、NGS分析方法によって測定された組成物における娘プラスミドの含有量は、少なくとも98%である。別の実施例において、NGS分析方法によって測定された組成物における娘プラスミドの含有量は、少なくとも99%である。いくつかの実施例において、組成物は、NGS分析方法を用い、ここで、耐性遺伝子配列の含有量は、0.1%、0.08%、0.06%、0.04%、0.02%、0.01%又は0.008%より小さい。いくつかの他の実施例において、組成物は、NGS分析方法を用い、ここで、宿主細胞ゲノムの含有量は、10%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%又は1%より小さい。いくつかの他の実施例において、NGS分析方法によって組成物を分析し、ここで、標的娘プラスミドが該組成物の90%超を占め、耐性遺伝子配列の残留が0.02%未満であり、且つ宿主細胞ゲノムの含有量が5%未満である。
【0050】
別の実施例において、該娘プラスミドの含有量は、組成物に対してゲル電気泳動イメージング分析を行うことにより、ゲルイメージングにおけるスーパーコイルモノマー形態の娘プラスミドの該当する位置のバンド輝度によって確定される。いくつかの実施例において、ゲル電気泳動イメージング分析方法によって測定された組成物における娘プラスミドの含有量は、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%である。実施例において、ゲル電気泳動イメージング分析方法によって測定された組成物における娘プラスミドの含有量は、少なくとも90%である。
【0051】
前駆体プラスミドを用いて製造された、選択マーカーのないプラスミドは、DNA送達ベクター又はウイルスパッケージングプラスミドベクターとして、プラスミドの安全性を向上させるために、遺伝子及び細胞療法分野に用いられ得る。ミニサークルに比べて、本発明に係る抗生物質耐性遺伝子のないプラスミドの生産は、以下の利点を有する。1) プラスミド収量が高く、本発明に係る選択マーカーのないプラスミドは、複製エレメントを含み、該複製エレメントは、自律的に複製し増幅することができ、収量が従来のプラスミドの収量に同等であり、2) プラスミド生成物の純度が高く、前駆体プラスミドが宿主細菌中で組換えられ、抗生物質感受性菌株のスクリーニングによって、前駆体プラスミドを含まない菌株が得られ、組換えによって産生された、抗生物質耐性遺伝子を含有する環状DNAが、複製能力を欠いているため、細菌培養中に自然に代謝され、それによって耐性選択マーカーのないプラスミドのみを担持する菌株を得ることができ、且つこれらの菌株で高純度のプラスミドDNAを製造することができ、3) 製造プロセスを容易にスケールアップすることができ、一回の組換えによって製造された、抗生物質耐性遺伝子のないプラスミドを担持する菌株は、組換えによる製造を繰り返すことなく、異なるロットの同じプラスミドの発酵生産に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】前駆体プラスミドの構造概略図であり、ここで、ori:複製開始部位、RS:組換え部位、Redundant backbone include AB gene:抗生物質耐性遺伝子を含む骨格配列、及びTarget Gene:標的遺伝子。
図2】cre断片増幅の電気泳動ゲル図であり、ここで、レーン1はmarkerであり、且つレーン2及びレーン3は、二つの平行なcre遺伝子増幅生成物である。
図3】pSC101-araBAD線状ベクター製造の電気泳動ゲル図であり、ここで、レーン1はmarkerであり、且つレーン2~5は、四つの平行な消化生成物である。
図4】pSC101-araBAD-cre(Amp)プラスミドのPCR検証結果の電気泳動ゲル図であり、ここで、レーン1~12は、12個のコロニーからのPCR生成物であり、且つレーン13はmarkerである。
図5】pSC101-araBAD-cre(Amp)プラスミドのサンガー配列決定結果を示した図であり、ここで、上方の各矢印は、一つの配列決定反応によって得られた実際の配列を表し、且つ二つの配列決定反応は、配列決定されるcre遺伝子断片を完全にカバーしている。
図6】pSC101(ts)-araBAD-creプラスミドの断片製造の電気泳動ゲル図であり、ここで、レーン1はmarkerであり、レーン2及びレーン3は、増幅されたpSC101 ori (ts)断片生成物であり、且つレーン4及びレーン5は、pSC101-araBAD-cre(Amp)プラスミド消化生成物である。
図7】pSC101-araBAD-cre(ts)プラスミドのサンガー配列決定結果を示した図である。
図8】JM108遺伝子改変細菌のPCR検証の電気泳動ゲル図であり、ここで、レーン1はmarkerであり、レーン2は野生型JM108菌株のPCR生成物であり、且つレーン3は、araBAD-cre断片がノックインされたコロニーのPCR生成物である。
図9】JM108遺伝子改変細菌のサンガー配列決定結果を示した図である。
図10】FLP断片増幅結果のゲル図であり、ここで、レーン1はmarkerであり、且つレーン2及びレーン3は、FLP遺伝子の増幅生成物である。
図11】製造されたpSC101(ts)-araBAD線状ベクターの電気泳動ゲル図であり、ここで、レーン1はmarkerであり、且つレーン2~5は、pSC101(ts)-araBAD-cre消化生成物(平行)である。
図12】pSC101(ts)-araBAD-flpのサンガー配列決定結果を示した図であり、ここで、上方の各矢印は、一つの配列決定反応によって得られた実際の配列を表し、且つ二つの配列決定反応は、配列決定されるFLP断片を完全にカバーしている。
図13】lox71/lox66組換え部位を含有する前駆体プラスミドベクターの概略図であり、ここで、backbone include pMB1 ori:pMB1複製開始部位を含む骨格配列、MCS:多重クローニング部位、及びRedundant backbone include Kan Gene:カナマイシン耐性遺伝子を含む骨格配列。
図14】pMF9-loxPプラスミド消化検証結果の電気泳動ゲル図であり、ここで、レーン1はmarkerであり、且つレーン2~5はpMF9-loxP消化生成物(平行)である。
図15】製造されたpMF9-loxP線状ベクターの電気泳動ゲル図であり、ここで、レーン1はmarkerであり、且つレーン2及びレーン3はpMF9-loxP消化生成物(平行)である。
図16】pMF9-loxP-5.5 kbのサンガー配列決定結果を示した図であり、ここで、上方の各矢印は、一つの配列決定反応によって得られた実際の配列を表し、且つ九つの配列決定反応は、配列決定される5.5 kb断片を完全にカバーしている。
図17】同一方向の特異的組換え部位loxpを含有するpMF65-loxP前駆体空ベクタープラスミドの構造概略図であり、ここで、pMB1 ori:pMB1複製開始部位、MCS:多重クローニング部位、及びRedundant backbone include Kan Gene:カナマイシン耐性遺伝子を含む骨格配列。
図18】製造されたpUC57(Kan)線状ベクターテンプレートの電気泳動ゲル図であり、ここで、レーン1はmarkerであり、且つレーン2及び3は、pUC57(Kan)プラスミド消化生成物(平行)である。
図19】pMF65-loxp前駆体空ベクタープラスミドの断片製造の電気泳動ゲル図であり、ここで、レーン1はmarkerであり、レーン2及びレーン3は、pMB1レプリコン断片を含有するpUC57 (Kan)の増幅生成物(平行)であり、且つレーン4及びレーン5は、Kan選択マーカー遺伝子及びloxp71/66部位を含有する断片の増幅生成物(平行)である。
図20】pMF65-loxp前駆体空ベクタープラスミドの配列決定結果を示した図であり、ここで、上方の各矢印は、一つの配列決定反応によって得られた実際の配列を表し、且つ六つの配列決定反応は、配列決定されるプラスミド全体を完全にカバーしている。
図21】同一方向の特異的組換え部位loxpを含有するpMF65-loxP-RFP前駆体プラスミドの構造概略図であり、ここで、pMB1 ori:pMB1複製開始部位、RFPカセット:挿入された標的遺伝子、及びRedundant backbone include Kan Gene:カナマイシン耐性遺伝子を含む骨格配列。
図22】pMF65-loxp-RFP前駆体プラスミドの断片製造の電気泳動ゲル図であり、ここで、レーン1はmarkerであり、レーン2及びレーン3はRFP増幅断片であり、且つレーン4及びレーン5はpMF65-loxpベクター断片である。
図23】pMF65-loxp-RFP前駆体プラスミドの配列決定結果を示した図であり、ここで、上方の各矢印は、一つの配列決定反応によって得られた実際の配列を表し、且つ五つの配列決定反応は、配列決定されるプラスミド全体を完全にカバーしている。
図24】同一方向の特異的組換え部位loxpを含有するpMF7-loxP-RFP前駆体プラスミドの構造概略図であり、ここで、pUC ori:pUC複製開始部位、RFPカセット:挿入された標的遺伝子、Redundant backbone include Kan Gene:カナマイシン耐性遺伝子を含む骨格配列、及びrop:rop遺伝子。
図25】同一方向の特異的組換え部位loxpを含有するpMF5-loxP-RFP前駆体プラスミドの構造概略図であり、ここで、R6Kγ ori:R6Kγ複製開始部位、RFPカセット:挿入された標的遺伝子、及びRedundant backbone include Kan Gene:カナマイシン耐性遺伝子を含む骨格配列。
図26】同一方向の特異的組換え部位FRTを含有する前駆体プラスミドの構造概略図であり、ここで、backbone include pMB1 ori:pMB1複製開始部位を含む骨格配列、RFPカセット:標的遺伝子を含有する発現エレメント、及びRedundant backbone include Kan Gene:カナマイシン耐性遺伝子を含む骨格配列。
図27】FRT-RFP断片及びベクター増幅の電気泳動ゲル図であり、ここで、レーン1はmarkerであり、レーン2及びレーン3は、FRT-RFP断片の増幅生成物(平行)であり、且つレーン4及びレーン5は、pMF9-loxP-RFPベクター断片の増幅生成物(平行)である。
図28】pMF9-FRT-RFPのサンガー配列決定結果を示した図であり、ここで、上方の各矢印は、一つの配列決定反応によって得られた実際の配列を表し、且つ四つの配列決定反応は、配列決定される断片を完全にカバーしている。
図29】誘導されたCre-loxP 5.5 kbプラスミド組換えの検証結果の電気泳動ゲル図であり、ここで、レーン1は、組換えされていない前駆体プラスミドであり、レーン2は、組換え1 h後の生成物である:メインバンドは、生成された、耐性遺伝子のないプラスミドであり、且つ前駆体プラスミドに対応するバンドは明らかに弱まっており、レーン4及びレーン5は、レーン1及びレーン2で消化されたプラスミドの線状DNAバンドであり、且つレーン3はmarkerである。
図30】抗生物質プレートのスクリーニングの結果を示した図であり、ここで、左パネルは、抗生物質感受性菌株のスクリーニング結果であり、選択された10個のクローニングのいずれも、抗生物質プレート上にコロニーが生えておらず、右パネルにおける試験管#1~5は、左パネルにおけるコロニー1~5の非抗生物質培地での成長状態を示し、コロニーが正常に成長している(左パネルのプレートにおける白い点は、モノクローニング打点操作によって培地中に生じた穴である)。
図31】抗生物質プレートのスクリーニング後のプラスミド検証の電気泳動ゲル図であり、ここで、左側のレーン#1~5は、図30における試験管#1~5から抽出されたプラスミド生成物(5個の平行なクローニング)であり、中央のレーン6はmarkerであり、且つ右側のレーン#1~5は、左側レーン#1~5におけるプラスミドの消化生成物である。
図32】誘導されたpMF65-loxp-RFPプラスミド組換えの検証結果の電気泳動ゲル図であり、ここで、レーン1はDL3000 Markerであり、レーン2は、組換えされていない前駆体プラスミドであり、且つレーン3は、組換え1 h後の生成物である:メインバンドは、生成された、耐性遺伝子のないプラスミドであり、且つ前駆体プラスミドに対応するバンドは明らかに弱まっている。
図33】抗生物質プレートスクリーニング後のプラスミド検証の電気泳動ゲル図であり、ここで、レーン1はmarkerであり、レーン2は、組換えが誘導されていない前駆体プラスミドの対照であり、且つレーン3は、組換え誘導1 h後に得られた娘プラスミドである。
図34】抗生物質プレートスクリーニング後のプラスミドの配列決定結果を示した図であり、ここで、上方の各矢印は、一つの配列決定反応によって得られた実際の配列を表し、且つ三つの配列決定反応は、配列決定されるプラスミド全体を完全にカバーしており、中空の矢印は、実際の配列が配列決定されたマップ配列、該遺伝子が欠失していることを表す。
図35】誘導されたpMF7-loxp-RFPプラスミド組換えの検証結果の電気泳動ゲル図であり、ここで、レーン1はKb Ladder Markerであり、レーン2は、組換えされていない前駆体プラスミドであり、且つレーン3は、組換え1 h後の生成物である:メインバンドは、生成された、耐性遺伝子のないプラスミドであり、且つ前駆体プラスミドに対応するバンドは明らかに弱まっている。
図36】抗生物質プレートスクリーニング後のプラスミド検証の電気泳動ゲル図であり、ここで、レーン1はmarkerであり、レーン1~7は、精製されたプラスミド生成物(7つの平行なプラスミド生成物)である。
図37】抗生物質プレートスクリーニング後のプラスミドの配列決定結果を示した図であり、ここで、上方の各矢印は、一つの配列決定反応によって得られた実際の配列を表し、且つ三つの配列決定反応は、配列決定されるプラスミド全体を完全にカバーしており、中空の矢印は、実際の配列が配列決定されたマップ配列、該遺伝子が欠失していることを表す。
図38】FLP-FRT組換え後の消化のプラスミド検証結果の電気泳動ゲル図であり、ここで、左側及び右側のレーン1~7はそれぞれ、組換えが誘導されていないこと、組換えを2 h誘導すること、組換えを5 h誘導すること、組換えを8 h誘導すること、2 h誘導し37℃で一晩置くこと、5 h誘導し37℃で一晩置くこと、及び8 h誘導し37℃で一晩置くことを示し、左側のレーン1~7はプラスミド生成物であり、右側のレーン1~7はプラスミド消化生成物であり、且つ中央のレーン8はmarkerである。
図39】非耐性菌株のスクリーニングを示した図であり、ここで、左パネルは、それぞれカナマイシンプレート及びアンピシリンプレートで組換えを2 h、5 h及び8 h誘導した後の10個のコロニーの成長図であり、右パネルは、抗生物質培地のない試験管中で培養された5個のコロニーの、組換えを5 h誘導した後の成長図である。
図40】耐性スクリーニングにより得られた抗生物質感受性菌株からのプラスミドの検証結果の電気泳動ゲル図であり、ここで、異なるレーンは、組換えを2 h、5 h及び8 h誘導する条件下で選択された同一の菌株の平行なクローニングであり、且つレーン1はmarkerである。
図41】誘導されたpMF5-loxp-RFPプラスミド組換えの検証結果の電気泳動ゲル図であり、ここで、レーン1はKb Ladder Markerであり、レーン2は、組換えされていない前駆体プラスミド (1):pSC101(ts)-araBAD-cre及びpMF5-loxp-RFP前駆体プラスミドであり、レーン3は、組換え1 h後の生成物 (2):pSC101(ts)-araBAD-cre、pMF5-loxp-RFP前駆体プラスミド、Kan遺伝子を有する環状二本鎖DNA及びpMF5-loxp-RFPであり、且つpMF5-loxp-RFP前駆体プラスミドに対応するバンドは明らかに弱めっている。
図42】耐性スクリーニングにより得られた抗生物質感受性菌株からのプラスミドの検証結果の電気泳動ゲル図であり、ここで、レーン1~5は、同一の菌株の5つの平行なクローニングであり、且つレーン6はmarkerである。
図43】耐性スクリーニングにより得られた抗生物質感受性菌株から抽出されたプラスミドの配列決定結果を示した図であり、ここで、前駆体プラスミド配列を参照として(プラスミドエレメントが下に黒い線で標識されている)、中実の矢印によりカバーされている上方の領域は、配列決定された実際の配列を表し、結果により、プラスミド生成物から、プラスミド複製エレメント及び標的遺伝子配列のみが検出され、抗生物質耐性遺伝子Kan及び他の冗長ベクター配列が検出されていないことが示唆されており、これは、マーカーのないプラスミド生成物の所望の配列と一致している。
図44】pMF9-5.5 kbプラスミドの消化生成物の検証結果の電気泳動ゲル図であり、ここで、レーン1はpMF9-5.5 kbプラスミド生成物であり、レーン2は、該pMF9-5.5 kbプラスミドの消化生成物であり、且つレーン3はmarkerである。
図45】大量に抽出されたpMF9-5.5 kbプラスミドのサンガー配列決定結果を示した図である。
図46】pMF65-RFPプラスミドの消化生成物の検証結果の電気泳動ゲル図であり、ここで、レーン1はpMF65-RFPプラスミド生成物であり、レーン2は、該pMF65-RFPプラスミドの消化生成物であり、且つレーン3はmarkerである。
図47】大量に抽出されたpMF65-RFPプラスミドのサンガー配列決定結果を示した図である。
図48】pMF7-RFPプラスミドの消化生成物の検証結果の電気泳動ゲル図であり、ここで、レーン1はpMF7-RFPプラスミド生成物であり、レーン2は、該pMF7-RFPプラスミドの消化生成物であり、且つレーン3はmarkerである。
図49】大量に抽出されたpMF7-RFPプラスミドのサンガー配列決定結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての科学と技術用語は、いずれも当業者に一般に理解される意味を有する。本明細書による技術案を容易に理解できる目的のために、以下ではいくつかの技術用語を簡単に説明する。
【0054】
文脈上許容される場合、又は特に定義しない限り、本明細書の「包含する」又は「含む」という用語は、「……からなる」及び/又は「実質的に……からなる」を包含し、且つ該用語の意味は、特許法の規定に準拠する。
【0055】
「プラスミド」又は「プラスミドベクター」は、本明細書において、同義的に使用され、且つ宿主細胞内で自律的複製能力を有するために、複製開始部位(又はDNA複製エレメントと呼ばれる)を有する環状DNA分子を指す。プラスミドは、天然プラスミド又は改変されたプラスミドであってもよい。プラスミドは、該プラスミドを含有する宿主細胞が特定の培養条件下で成長することができる一方、該プラスミドを含有しない宿主細胞が該特定の培養条件下で正常に成長できないように、抗生物質耐性遺伝子のような選択マーカー遺伝子を含んでもよい。例えば、テトラサイクリン耐性遺伝子を有するプラスミドを含有する宿主細胞(例えば、大腸菌)は、テトラサイクリンを含有する培地中で成長することができ、該プラスミドを含有しないか又は失った宿主細胞は、テトラサイクリンを含有する培地中で成長することができないか又は成長が抑制される。そのため、選択マーカー遺伝子の使用により、当業者は、どの宿主細胞が所望のプラスミドを含有するかを理解して、スクリーニングを完了することができる。プラスミド又は改変されたプラスミドは、標的遺伝子の挿入を促進するために、クローニング部位をさらに含んでもよい。標的遺伝子は、クローニング部位を介してプラスミドに挿入された後、該プラスミドとともに複製して、標的遺伝子の増幅を実現することができ、又は発現プラスミドとして構築された場合、該プラスミドは、宿主細胞中で標的遺伝子を発現することに用いられてもよい。クローニング部位は、モノクローニング部位又は多重クローニング部位であってもよい。実験操作を容易にするために、通常、多重クローニング部位が好ましい。本明細書における多重クローニング部位は、限定的エンドヌクレアーゼ又は他のエンドヌクレアーゼ(例えば、ホーミングエンドヌクレアーゼ)により認識される複数の部位を含有するDNAセグメントを指す。例えば、限定的エンドヌクレアーゼは、Ahd I、AclI、HindIII、SspI、MluCI、Tsp509I、PciI、AgeI、BspMI、BfuAI、SexAI、MluI、BceAI、Nde I又はEcoR Iであってもよい。
【0056】
本明細書の「前駆体プラスミド」は、標的プラスミド/娘プラスミド(例えば、選択マーカー遺伝子のないプラスミド)を産生するための親プラスミドを指す。「前駆体プラスミド」は、以下のエレメント:宿主細胞における前駆体プラスミド又は産生された標的プラスミドの数を増加するか又は維持するために、プラスミドの宿主細胞での複製を可能にする複製開始部位と、宿主細胞をスクリーニングするための選択マーカー遺伝子と、標的遺伝子、又は該標的遺伝子を挿入するためのクローニング部位と、該当するリコンビナーゼの存在下で組換えを行って、対になった組換え部位の間の配列を除去するための対になった組換え部位とを含む。選択マーカー遺伝子のないプラスミドを産生するために、通常、対になった組換え部位の間に選択マーカー遺伝子を挿入する(図1を参照されたい)。このように、組換え過程で、前駆体プラスミド分子は二つの環状DNA分子を形成する。一つの環状DNA分子は、複製開始部位と標的遺伝子又はクローニング部位とを含有し、且つ選択マーカー遺伝子を含有しない。これに応じて、もう一つの環状DNA分子は、選択マーカー遺伝子を含有し、且つ複製開始部位及びクローニング部位を含有しない。前者は、本明細書において娘プラスミド又は標的プラスミド、即ち選択マーカー遺伝子を含有しないプラスミドとも呼ばれる。本発明の目的のために、クローニング部位は、クローニング部位自体を包含するか、又は標的遺伝子が既に挿入されているクローニング部位である。代替的に、クローニング部位に標的遺伝子を含まない前駆体プラスミド(又は称「プラットフォームプラスミド」又は「前駆体空ベクタープラスミド」)は、クローニング部位に標的遺伝子を含む前駆体プラスミドの親プラスミドであると考えられ、それらは、いずれも本明細書の「前駆体プラスミド」の意味に含まれる。
【0057】
「娘プラスミド」(本明細書において「ミニプラスミド」、「標的プラスミド」及び「選択マーカーのないプラスミド」とも呼ばれる)は、リコンビナーゼ(例えば、Creリコンビナーゼ)の存在下で、組換え部位(例えば、同一方向のloxP配列)を含有する前駆体プラスミドの組換えにより産生された、複製開始部位及びクローニング部位及び/又は標的遺伝子を含有する配列を指す。本明細書のいくつかの実施例において、娘プラスミドは、複製開始部位とクローニング部位及び/又は標的遺伝子配列とを含むが、選択マーカー遺伝子を含まない。本明細書のいくつかの他の実施例において、娘プラスミドの骨格配列は、標的遺伝子又はクローニング部位を含有しない配列を指し、該配列の配列長さは、1000 bp未満、900 bp未満、800 bp未満、700 bp未満、600 bp未満、500 bp未満、400 bp未満、300 bp未満又は200 bp未満である。いくつかの特定の実施例において、娘プラスミドの骨格配列の長さは、878 bp、864 bp、708 bp、623 bp又は429 bpであってもよい。
【0058】
「娘プラスミド」は、本出願の明細書に記述されている、特許請求される、特定の構造及び特徴を有するプラスミドである。つまり、それは特別なプラスミドであり、そのため、該定義は「前駆体プラスミド」又は「親プラスミド」から独立して存在してもよい。発明者らは、このような特別なプラスミド(即ち娘プラスミド)が本発明以外の方法で得られ、例えば、前駆体プラスミドを使用することなく、他の方式によってこのような特別なプラスミドを製造することを排除していないが、得られたプラスミドが本明細書の「娘プラスミド」の構造及び/又は定義に適合している限り、依然として本出願の保護範囲に含まれる。
【0059】
本明細書の「組換え部位」は、該当するリコンビナーゼにより特異的認識され得るヌクレオチド配列を指す。前駆体プラスミドが、対になった同一方向の組換え部位を含む場合、該当するリコンビナーゼの作用により、前駆体プラスミド中の組換え部位の間に組換え反応が発生し、娘プラスミド分子及び環状DNA分子を生成させる。前駆体プラスミド中の対になった組換え部位の配列方向は同じである。該当するリコンビナーゼの作用により、二つの組換え部位の間のDNA断片が削除されて、二つのDNA分子が生成される。いくつかの実施例において、組換え部位はloxP配列であり、且つ該当するリコンビナーゼはCreリコンビナーゼである。いくつかの他の実施例において、組換え部位はFRT配列であり、且つ該当するリコンビナーゼはFlpリコンビナーゼである。さらにいくつかの実施例において、組換え部位はattB/attP配列であり、且つリコンビナーゼはPhiC31リコンビナーゼである。前駆体プラスミドに用いられる組換え部位は、組換え時にそれらの間の配列(選択マーカー遺伝子を含む)を前駆体プラスミドから除去し、且つ残りの配列を娘プラスミドに形成すればよいことが、当業者に理解され得る。そのため、これらの組換え部位は、本明細書に言及される特定の配列に限定されないが、それらの変異体又は他の組換え部位であってもよい。例えば、組換え部位loxP突然変異体は、lox75、lox44、lox76、lox43、lox72、lox78、lox65、lox511、lox5171又はlox2272であってもよい。組換え部位FRTは、野生型であってもよいか、又はFRT3、FRT5のような突然変異体であってもよい。本明細書の特定の実施例において、組換え部位loxPは、lox71及びlox66配列であり、且つヌクレオチド配列はSEQ ID NO: 25及び26に示すとおりである。別の特定の実施例において、組換え部位FRTのヌクレオチド配列はSEQ ID NO: 27に示すとおりである。特定の実施例において、組換え部位attB及びattP配列は、それぞれSEQ ID NO: 48及び49に示すとおりである。
【0060】
「リコンビナーゼ」という用語は、遺伝子の位置決め及び組換え過程に関与する酵素である。それは、特定の組換え部位を認識し切断し、組換えに関与する二つの分子を連結する役割を担っている。本明細書において、リコンビナーゼは、Creリコンビナーゼ、Flpリコンビナーゼ又はphiC31リコンビナーゼであってもよい。いくつかの実施例において、リコンビナーゼのコード遺伝子は、SEQ ID NO: 1、24又は50に示すヌクレオチド配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、93%、95%、97%又は99%の同一性を有する配列を含む。例えば、Creリコンビナーゼのコード遺伝子は、SEQ ID NO: 1に示すヌクレオチド配列を含み、Flpリコンビナーゼは、SEQ ID NO: 24に示すヌクレオチド配列を含み、且つphiC31リコンビナーゼは、SEQ ID NO: 50に示すヌクレオチド配列を含む。
【0061】
本明細書に用いられる「選択マーカー」又は「選択マーカー遺伝子」は、プラスミド、ベクター又は細胞における選択マーカー遺伝子セグメントを指す。細胞、特に培養された細菌又は細胞に遺伝子を導入することにより、人工的に選択するための適切な特徴を発現することができる。それは、レポーター遺伝子であり、微生物、分子生物学及び遺伝子工学分野において、外因性DNAの細胞へのトランスフェクト又は形質転換が他の方法で成功したか否かを示すためのものである。選択マーカー遺伝子は、通常、抗生物質耐性遺伝子、又はグルコサミン合成酵素選択マーカー及びマンノースリン酸イソメラーゼ選択マーカーのような、いくつかの栄養要求性選択マーカーであってもよく、又は抗毒性遺伝子又は抗SacB選択マーカーのような陰性選択マーカーであってもよい。本明細書において、選択マーカー遺伝子は、発現カセットであってもよく、且つ選択マーカー遺伝子を発現するための他の配列、例えば、プロモーター、エンハンサー及びターミネーターを含んでもよい。SacB遺伝子は、枯草菌(Bacillus subtilis)レボショ糖をコードする構造遺伝子である。ショ糖の存在下で、グラム陰性菌におけるSacBの発現は有毒である。
【0062】
「スクリーニングストレス」又は「選択ストレス」は、同義的に使用される。本明細書において、それは、培養条件(例えば、培地)において、宿主細胞のような生物に特定の物質又は条件を適用し、これらの特定の物質又は条件に適合する生物を生存させ、適合しない生物を淘汰することを指す。例えば、本明細書において、カナマイシン又はアンピシリンのような抗生物質を宿主細胞の培地中に添加し、且つ該培地は、抗生物質選択ストレスを含有し、該当する抗生物質耐性を有する宿主細胞をスクリーニングすることができる。
【0063】
本明細書の「隣接」は、二つのDNA配列断片が遺伝子複製方向における上流と下流に位置し、且つ両方の間の位置が非常に近いことを指す。例えば、二つの遺伝子断片の位置の間は、100 bp未満、90 bp未満、80 bp未満、70 bp未満、60 bp未満、50 bp未満、40 bp未満、30 bp未満、20 bp未満、10 bp未満、5 bp未満、3 bp又は1 bp未満である。いくつかの実施例において、二つの遺伝子断片は直接連結される。本明細書において、前駆体プラスミドにおいて、複製開始部位と、標的遺伝子又はクローニング部位との複製方向における位置間の距離は、50 bp未満、45 bp未満、40 bp未満、35 bp未満、30 bp未満、25 bp未満、20 bp未満、15 bp未満、10 bp未満、5 bp未満、3 bp又は1 bp未満であってもよい。いくつかの実施例において、複製開始部位は、標的遺伝子又はクローニング部位に直接連結される。いくつかの他の実施例において、複製開始部位と、標的遺伝子又はクローニング部位との複製方向における距離は、30 bp、25 bp、20 bp、15 bp、14 bp、13 bp、12 bp、11 bp、10 bp、9 bp、8 bp、7 bp、6 bp、5 bp、4 bp、3 bp、2 bp又は1 bpである。
【0064】
本明細書において、「対になった組換え部位がそれぞれ複製開始部位及び標的遺伝子の上流及び下流に隣接する」ことは、対になった組換え部位のうちのいずれか一つと、複製部位により近い複製開始部位及び標的遺伝子のうちの一つとの位置間の距離が、100 bp未満、90 bp未満、80 bp未満、70 bp未満、60 bp未満、50 bp未満、40 bp未満、30 bp未満、20 bp未満、10 bp未満、5 bp未満、3 bp又は1 bp未満であり得ることを指す。いくつかの実施例において、対になった組換え部位のうちの一つ又は二つは、複製開始部位及び標的遺伝子に直接連結され、即ち距離が0 bpである。いくつかの他の実施例において、対になった組換え部位のうちのいずれか一つと、複製部位により近い複製開始部位及び標的遺伝子のうちの一つとの位置間の距離は、70 bp、65 bp、60 bp、55 bp、50 bp、45 bp、40 bp、35 bp、30 bp、25 bp、20 bp、15 bp、14 bp、13 bp、12 bp、11 bp、10 bp、9 bp、8 bp、7 bp、6 bp、5 bp、4 bp、3 bp、2 bp又は1 bpであってもよい。いくつかの実施例において、対になった組換え部位のうちのいずれか一つは、複製開始部位及び標的遺伝子に直接連結され、対になった組換え部位のうちのもう一つと、複製開始部位又は標的遺伝子との位置間の距離は、70 bp、65 bp、60 bp、55 bp、50 bp、45 bp、40 bp、35 bp、30 bp、25 bp、20 bp、15 bp、14 bp、13 bp、12 bp、11 bp、10 bp、9 bp、8 bp、7 bp、6 bp、5 bp、4 bp、3 bp、2 bp又は1 bpであってもよい。いくつかの他の実施例において、対になった組換え部位のうちの二つは、いずれも複製開始部位及び標的遺伝子に直接連結される。同様に、「対になった組換え部位がそれぞれ複製開始部位及びクローニング部位の上流及び下流に隣接する」は、複製開始部位がクローニング部位に隣接し、且つ対になった組換え部位のうちのいずれか一つと、複製部位により近い複製開始部位及びクローニング部位のうちの一つとの位置間の距離が、100 bp未満、90 bp未満、80 bp未満、70 bp未満、60 bp未満、50 bp未満、40 bp未満、30 bp未満、20 bp未満、10 bp未満、5 bp未満、3 bp又は1 bp未満であり得ることを指す。いくつかの実施例において、対になった組換え部位のうちの一つ又は二つは、複製開始部位及びクローニング部位に直接連結され、即ち距離が0 bpである。いくつかの他の実施例において、対になった組換え部位のうちのいずれか一つと、複製部位により近い複製開始部位及びクローニング部位のうちの一つとの位置間の距離は、70 bp、65 bp、60 bp、55 bp、50 bp、45 bp、40 bp、35 bp、30 bp、25 bp、20 bp、15 bp、14 bp、13 bp、12 bp、11 bp、10 bp、9 bp、8 bp、7 bp、6 bp、5 bp、4 bp、3 bp、2 bp又は1 bpであってもよい。いくつかの実施例において、対になった組換え部位のうちの一つは、複製開始部位及びクローニング部位に直接連結され、対になった組換え部位のうちのもう一つと、複製開始部位又はクローニング部位との位置間の距離は、70 bp、65 bp、60 bp、55 bp、50 bp、45 bp、40 bp、35 bp、30 bp、25 bp、20 bp、15 bp、14 bp、13 bp、12 bp、11 bp、10 bp、9 bp、8 bp、7 bp、6 bp、5 bp、4 bp、3 bp、2 bp又は1 bpであってもよい。いくつかの他の実施例において、対になった組換え部位のうちの二つは、いずれも複製開始部位及びクローニング部位に直接連結される。好ましくは、記述されている関連プラスミドにおいて、「対になった組換え部位は、それぞれ複製開始部位及び標的遺伝子の上流及び下流に隣接し」、且つ複製開始部位も標的遺伝子に隣接する。
【0065】
本明細書において、「標的遺伝子」は、異なるニーズに応じて異なるヌクレオチド配列を設計することができ、プロモーター、発現タンパク質のコード遺伝子及びターミネーターのような異なるエレメント配列を含んでもよく、エンハンサー及びポリAのような調節エレメントをさらに含んでもよい。標的遺伝子は、タンパク質又はペプチド抗原及びタンパク質又はペプチド治療剤をコードするmRNA遺伝子、RNA治療剤をコードするmRNA、shRNA、RNA又はマイクロRNA、RNAワクチンをコードするmRNA、shRNA、RNA又はマイクロRNAなどをさらに含んでもよい。
【0066】
「宿主細胞」は、本明細書において、その中でプラスミドの維持及び/又は複製が可能な細胞を指し、細菌(大腸菌)、真菌(酵母)、昆虫細胞及び哺乳動物細胞のような原核細胞及び真核細胞を含む。本明細書による、選択マーカー遺伝子を含まないプラスミドの製造方法において、宿主細胞は、その中でのプラスミドの複製のために必要な成分(例えば、様々な酵素及びヌクレオチドモノマー分子)を提供し、組換えに必要なリコンビナーゼをさらに提供した。宿主細胞中でのリコンビナーゼの発現は、好ましくは、制御可能な発現又は誘導型発現である。いくつかの実施例において、リコンビナーゼのコード遺伝子は、宿主細胞のゲノムに組込まれる。いくつかの他の実施例において、リコンビナーゼのコード遺伝子は、別の発現ベクターに挿入され、該発現ベクターは、前駆体プラスミドの前又は前駆体プラスミドの後に、前駆体プラスミドとともに宿主細胞に導入され得る。いくつかの実施例において、リコンビナーゼのコード遺伝子は、前駆体プラスミドに含まれ、宿主細胞に導入された後に該リコンビナーゼを発現することができる。いずれの実施例においても、作業者が組換えの開始時間を制御するために、誘導型プロモーターによりリコンビナーゼ遺伝子を制御することが好ましい。
【0067】
本明細書の「条件的誘導欠失型プラスミド複製エレメント」は、一定の条件(例えば、高温及び誘導物誘導)で、複製エレメントが複製能力を失い、それによりプラスミドが宿主細胞の増幅中に徐々に失われることを指す。温度感受性複製エレメント又は金属イオン誘導型複製エレメント、例えば、pSC101 ori (ts)であってもよい。
【0068】
配列の場合、「同一性」という用語は、二つの配列(例えば、クエリー配列及び参照配列)の間の同一性程度の量を指し、通常、パーセントで表される。通常、二つの配列間の同一性パーセントを計算する前に、先に配列アライメントを行い、ギャップ(あれば)を導入する。あるアライメント位置において、二つの配列における塩基又はアミノ酸が同じである場合、二つの配列は、該位置において同じであるか又はマッチングすると考えられ、二つの配列における塩基又はアミノ酸が異なっている場合、二つの配列は、該位置において同じではないか又はミスマッチングされたと考えられる。いくつかのアルゴリズムにおいて、マッチング位置の数をアライメントウィンドウ内の位置の総数で割ることにより、配列同一性が得られる。いくつかの他のアルゴリズムにおいて、ギャップの数及び/又はギャップの長さも考慮される。本発明の目的のために、デフォルト設定を用いることにより、最適な配列アライメントを得て、二つのヌクレオチド又はアミノ酸配列の間の配列同一性を計算するために、開示されたアライメントソフトウェアBLAST(ncbi.nlm.nih.govで見出され得る)を用いてもよい。
【0069】
本明細書において、「プラスミドコピー数」は、各細胞におけるプラスミドのコピー数を指す。シングルコピーは、細胞にはプラスミドが一つしかないことを指し、マルチコピーは、細胞にはプラスミドが複数あることを指す。プラスミドコピー数の増加は、プラスミドの生産収量を増加させた。本明細書において、娘プラスミドのコピー数は、通常、10~20であり、高コピー数は、500~800、さらにそれ以上に達することができる。
【0070】
「プラスミド骨格配列」は、標的遺伝子配列が宿主細胞中で選択され増幅され得るために、テンプレートとして標的遺伝子をロードする、遺伝子工学プラスミドにおける配列を指す。プラスミド骨格配列は、プラスミド複製功能エレメントと、プラスミド生産性に関連する他の機能エレメントとを含んでもよい。プラスミド骨格配列は、真核、原核又はウイルス由来であってもよく、標的遺伝子を含まない。
【0071】
「クローニング部位」という用語は、一つのポリヌクレオチド(例えば、標的遺伝子のポリヌクレオチド)と別のポリヌクレオチド(例えば、クローニングベクター)との連結に役立つ任意のヌクレオチド又はヌクレオチド配列を指す。通常、クローニング部位は、限定されるエンドヌクレアーゼにより認識される一つ又は複数の部位、例えば、多重クローニング部位を含む。いくつかの実施例において、「クローニング部位」は、多重クローニング部位(「MCS」又は「ポリリンカー(polylinker)」とも呼ばれる)であってもよい。多重クローニング部位は、限定されるエンドヌクレアーゼ又は他のエンドヌクレアーゼ(例えば、ホーミングエンドヌクレアーゼ)により認識される複数の部位を含有するDNAセグメントを指す。
【0072】
ポリAは、ポリアデニル化シグナル又は部位を指す。ポリアデニル化は、RNA分子にポリ(A)テールを付加することを指す。ポリアデニル化シグナルは、RNA切断複合体により認識される配列モチーフを含む。ほとんどのヒトにおけるポリアデニル化シグナルは、AAUAAA配列並びに、その保存配列5’及び3’を含有する。よく使用されるポリAシグナルは、ウサギβグロビン、ウシ成長ホルモン及びSV40早期又はSV40後期ポリAシグナルからものである。
【0073】
pMB1複製開始部位(pMB1 ori)は、pMB1プラスミドに由来する複製開始部位を指すか、又はpMB1プラスミドからの複製開始部位の誘導体であってもよい。pMB1複製開始部位の配列は、SEQ ID NO: 44に示すとおりであってもよく、且つpMB1複製開始部位誘導体の配列は、SEQ ID NO: 43に示すとおりであってもよい。
【0074】
pUC複製開始部位(pUC ori)は、G~A置換を有するpBR322から派生した複製開始部位を指す。それは、rop負の制御因子を欠いており、上昇した温度でコピー数を増加させることができる。その配列は、SE ID NO: 45に示すとおりであってもよい。
【0075】
R6K複製開始部位(R6K ori)は、R6K Repタンパク質により特異的に認識されて、DNA複製を開始させる領域を指す。それは、SEQ ID NO: 46に示すR6Kγ複製開始部位配列を含むが、それに限らず、且つDrocourtらにより米国特許第7244609号に記載されているCpGのないバージョンをさらに含み、参照により本明細書に組込まれる。
【0076】
rop遺伝子配列は、プライマーのリプレッサーである。本明細書において、前駆体プラスミドは、rop遺伝子配列を含んでもよい。リコンビナーゼによる娘プラスミドからのrop配列の除去は、プラスミドコピー数の大幅な増加をもたらす。
【0077】
「トランスフェクト」という用語は、核酸を細胞に送達するための方法を指す。例えば、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、ISCOM、リポソーム、非イオン性界面活性剤ベシクル(niosomes)、ヴィロソーム、Pluronicブロックコポリマー、キトサン、及び他の生分解性ポリマー、粒子、ミクロスフェア、リン酸カルシウムナノ粒子、ナノ粒子、ナノカプセル、ナノスフェア、ポロキサミン(poloxamine)ナノスフェア、エレクトロポレーション、ヌクレオフェクション、圧電浸透、ソノポレーション、イオン導入、超音波、SQZ高速細胞変形媒介性膜破壊、コロナプラズマ、血漿促進送達、組織耐性血漿、レーザーミクロポレーション、衝撃波エネルギー、磁場、非接触式磁場侵入、遺伝子銃、マイクロニードル、ミクロ研磨、流体力学的送達、高圧尾静脈注射などは、当分野に既知のものであり、参照により本明細書に組込まれる。
【0078】
本明細書における「ターミネーター」又は「転写ターミネーター」は、細菌において転写するためのマーカー遺伝子又はオペロン末端のDNA配列を指す。これは、内因性転写ターミネーター又はRho依存性転写ターミネーターであり得る。trpAターミネーターのような内部ターミネーターの場合、転写物にはヘアピン構造が形成され、該ヘアピン構造は、mRNA-DNA-RNAポリメラーゼ三元複合体を破壊した。代替的に、Rho依存性転写ターミネーターは、新生mRNA-DNA-RNAポリメラーゼ三元複合体を破壊するために、Rho因子(RNAヘリカーゼタンパク質複合体)が必要である。真核生物において、ポリAシグナルは、「ターミネーター」ではなく、ポリA部位の内部で切断され、ヌクレアーゼ消化のために、3’UTR RNAには、ブロックされていない5’末端が残されている。ヌクレアーゼは、RNA Pol IIに追いつき、終了をもたらす。RNA Pol II休止部位(真核転写ターミネーター)の形質転換により、ポリA部位の短い領域内で終了を促進することができる。RNA Pol IIの休止により、ポリA切断後に3’UTR mRNAを形質転換するヌクレアーゼは、休止部位においてRNA Pol II追いつく。当分野に既知の真核転写ターミネーターの非限定的リストは、C2x4と、ガストリンターミネーターとを含む。真核転写ターミネーターは、mRNAの適切な3’末端のプロセシングを増強することによってmRNAレベルを向上させることができる。
【0079】
本発明は、リコンビナーゼ誘導型発現システムを確立するための方法をさらに提供し、該方法は、リコンビナーゼのコード遺伝子を含有する発現ベクターを製造し、宿主細菌を形質転換するための方法と、リコンビナーゼ遺伝子を含有する宿主細胞ゲノムを製造するための方法とを含む。Creリコンビナーゼ誘導型発現ベクターを例として、リコンビナーゼのコード遺伝子を含有する発現ベクターを製造するための方法は、cre遺伝子断片及びpSC101-araBAD線状ベクターを製造することと、cre遺伝子断片及びpSC101-araBAD線状ベクターでpSC101-araBAD-cre(AmpR)プラスミドを組織化し、該プラスミドをコンピテント細胞に形質転換し、培養及び検証を行うことと、正確であると検証されたクローニングを選択し、プラスミド抽出を行うこととを含む。例えば、Creリコンビナーゼ温度感受性誘導型発現ベクターを製造するための方法は、pCP20プラスミドで温度感受性レプリコンpSC101 ori (ts)断片を製造することと、pSC101-araBAD-cre(Amp)プラスミドを消化してaraBAD-cre(Amp)断片を得ることと、pSC101 ori (ts)断片及びaraBAD-cre(Amp)断片を組織化し、組織化された断片をコンピテント細胞に形質転換し、培養及び検証を行うことと、成功したと検証されたクローニングを選択し、プラスミドを抽出して、発現ベクターを得ることとを含む。
【0080】
Creリコンビナーゼを宿主細胞ゲノムに組み込む方法は、cre遺伝子断片及びpSC101-araBAD線状ベクターを製造することと、cre遺伝子断片及びpSC101-araBAD線状ベクターでpSC101-araBAD-cre(Amp)プラスミドを組織化し、該プラスミドをコンピテント細胞に形質転換し、培養及び検証を行うことと、正確であると検証されたクローニングを選択し、プラスミド抽出を行うことと、λRed組換え技術及びCRISPR/Cas9技術を用いて、宿主細胞に対して、Cre特異的リコンビナーゼ誘導型発現システムの無傷ノックインを行い、該宿主細胞を培養してCreリコンビナーゼの誘導可能な発現菌株を得ることとを含む。Flpリコンビナーゼを宿主細胞に組み込む方法は、flp遺伝子断片及びpSC101(ts)-araBAD線状ベクターを製造することと、flp遺伝子断片及びpSC101(ts)-araBADでpSC101(ts)-araBAD-flpプラスミドを組織化し、該プラスミドをコンピテント細胞に形質転換し、培養及び検証を行うことと、正確であると検証されたクローニングを選択し、プラスミド抽出を行うことと、λRed組換え技術及びCRISPR/Cas9技術を用いて、宿主細胞に対して、Cre特異的リコンビナーゼ誘導型発現システムの無傷ノックインを行い、該宿主細胞(例えば、大腸菌)を培養してFlpリコンビナーゼの誘導可能な発現菌株を得ることとを含む。
【0081】
例えば、いくつかの実施例において、まずリコンビナーゼコード遺伝子が組込まれている宿主細胞(例えば、大腸菌)を前駆体プラスミドで形質転換してもよく、前駆体プラスミドを含有する大腸菌を選択マーカーでスクリーニングして培養し、培養物の一部をリコンビナーゼ発現誘導物(培養物の他の部分は後の使用のために保存してもよい)に曝露し、且つリコンビナーゼの発現により、前駆体プラスミドは組換え部位の間に組換えが発生し、選択マーカー遺伝子のない娘プラスミド分子及び選択マーカー遺伝子を含有する環状DNA分子を形成する。宿主細胞を培養し続け、選択マーカーで宿主細胞をスクリーニングする。前駆体プラスミド(組換えしていない)又は環状DNAを含有する宿主細胞は選択マーカー特徴(例えば、抗生物質耐性)を有するが、娘プラスミドのみを含有する宿主細胞は該選択マーカー特徴を有しない(抗生物質耐性を有しない)。該当する抗生物質で成長できない宿主細胞を選択する。選択マーカー特徴を有しない宿主細胞を培養して、選択マーカー遺伝子を含まないプラスミドを得る。
【0082】
発現ベクターを介してリコンビナーゼを宿主細胞に導入する実施例において、該発現ベクターによる最終生成物(即ち選択マーカー遺伝子のプラスミド)への汚染を防止するために、該発現ベクターは、好ましくは、誘導欠失型発現を有し、例えば、誘導欠失型複製エレメントを含み、又はpSC101(ts)プラスミドからの温度感受性複製エレメントを使用する。
【0083】
いくつかの特別な実施例において、本発明による、選択マーカー遺伝子のないプラスミドを製造するための方法は、
(1) 環状DNAに組換えされ得る前駆体プラスミドを構築するステップと、
(2) 大腸菌における部位特異的リコンビナーゼ誘導型発現システムを構築するステップと、
(3) 部位特異的リコンビナーゼ発現菌株において、前駆体プラスミドを形質転換し、陽性クローンをスクリーニングするステップと、
(4) 細胞を培養し、リコンビナーゼの発現を誘導し、前駆体プラスミドを自己組換えさせ、一つの前駆体プラスミド分子は、標的遺伝子及び複製開始部位を含有する、選択マーカーのないミニプラスミド分子、並びにプラスミド骨格配列(例えば、選択マーカー遺伝子)を含有する環状二本鎖DNA分子を形成するステップと、
(5) 分離し精製し、選択マーカー遺伝子のないモノクローニング菌株をスクリーニングするステップと、
(6) 細胞を培養し、プラスミドを抽出するステップとを含む。
【0084】
当業者であれば、本発明の娘プラスミド、即ちマーカーのないプラスミドが最終的に得られる限り、場合によっては、以上に言及されたステップの一つ又は複数を省略するか又はその順序を変更してもよいことを理解するであろう。そのため、いくつかの他の特定の実施例において、本発明による、マーカーのないプラスミドを製造するための方法は、
1) 本発明の前駆体プラスミドを、リコンビナーゼを発現することができるか又はその発現を補助することができる宿主細胞に導入し、選択マーカー遺伝子を発現する宿主細胞をスクリーニングするステップと、
2) ステップ1) でスクリーニングされた宿主細胞を培養して、リコンビナーゼの該宿主細胞での発現を可能にし、及び該宿主細胞を培養し、選択マーカー遺伝子を発現しない宿主細胞をスクリーニングするステップと、
3) 選択マーカー遺伝子のないプラスミドを得るために、ステップ2) でスクリーニングされた宿主細胞を培養し、プラスミドを抽出するステップとを含む。
【0085】
いくつかの実施例において、製造方法は、ステップ1) の前に、本発明の前駆体プラスミドを取得するか又は製造するステップをさらに含む。いくつかの実施例において、ステップ1) 及び2) のスクリーニングは、いずれも選択マーカーに対応するスクリーニングストレスを用いる。いくつかの実施例において、ステップ3) の細胞培養にはスクリーニングストレスがない。
【0086】
リコンビナーゼシステムは、前駆体粒子上に存在するか、宿主細胞中に存在するか、又はその両方であるかにかかわらず、誘導型発現システム又は構成型発現システムであってもよい。
【0087】
本明細書において、「構成型発現」は、遺伝子発現(例えば、リコンビナーゼシステム)が時期、部位、環境に影響されず、且つ時間的及び空間的特異性がないことを指す。誘導型発現に対して、構成型発現は、他の因子の誘導を必要とせず安定的に発現することができるが、誘導型発現は、発現するために他の因子の誘導が必要である。
【0088】
さらに具体的には、本発明による、マーカーのないプラスミドを製造するための方法は、以下のステップを含む。
【0089】
(1) 環状DNAに組換えされ得る前駆体プラスミドを構築する。
【0090】
前駆体プラスミドは、複製開始部位(例えば、DNA複製エレメント)と、選択マーカー遺伝子と、対になった同一方向の特異的組換え部位及び標的遺伝子とを含む。標的遺伝子は、プラスミド骨格と同じタイプである特異的組換え部位を含まない。DNA複製エレメントを加えて、プラスミド骨格配列(例えば、選択マーカー遺伝子)は、一対の特異的組換え部位の内部に位置する。標的遺伝子配列及びDNA複製エレメントを含有する前駆体プラスミドは、部位特異的リコンビナーゼの作用により再構成され、2つの環状二本鎖DNAに分割され得る。ここで、一つは、プラスミド骨格配列(例えば、選択マーカー遺伝子)を含有し、複製能力を有せず、且つ細胞増幅中に徐々に失われる。もう一つは、DNA複製エレメント及び標的遺伝子配列のみを含有するミニプラスミドであり、細胞の増幅過程とともに持続的に増幅することができる。
【0091】
(2) 大腸菌における部位特異的リコンビナーゼ誘導型発現システムを構築する。
【0092】
プラスミドベクターに部位特異的リコンビナーゼ誘導型発現システムを構築し、そしてそれを大腸菌の宿主細胞内に形質転換して発現するか、又は大腸菌の宿主細胞ゲノムに組み込んで発現することができる。発現システムの構成は、誘導型原核転写プロモーター(例えば、araBADプロモーター)と、部位特異的リコンビナーゼ遺伝子と、転写ターミネーターとを含む。部位特異的リコンビナーゼ遺伝子は、a.(1) における、loxP配列(例えば、lox71/lox66)である一対の同一方向の特異的組換え部位に対応する、P1ファージCre-loxP組換えシステムに由来するCreリコンビナーゼと、b. (1) における、FRT配列である一対の同一方向の特異的組換え部位に対応する、ビール酵母(brewer’s yeast)Flp-FRT組換えシステムに由来するFlpリコンビナーゼとを含んでもよい。リコンビナーゼ発現システムがプラスミドベクター上に構築される場合、ベクタープラスミドは、選択マーカーのないプラスミド生成物がリコンビナーゼ発現プラスミド汚染を有しないことを確保するために、条件的誘導欠失型プラスミド複製エレメント、例えば、温度感受性複製エレメントpSC101(ts)プラスミドであってもよい。
【0093】
(3) 部位特異的リコンビナーゼ発現菌株において、前駆体プラスミドを形質転換し、陽性クローンをスクリーニングする。
【0094】
部位特異的リコンビナーゼ誘導型発現システムを担持する大腸菌菌株でコンピテント細胞を製造し、前駆体プラスミドを形質転換し、前駆体プラスミドにおける、選択マーカー遺伝子に対応する選択的培地を用いて、形質転換された陽性クローンをスクリーニングする。リコンビナーゼシステムがプラスミド上に構築される場合、リコンビナーゼ発現プラスミド及び前駆体プラスミドを従来の大腸菌コンピテント細胞に同時形質転換し、二重選択培地を用いて培養することによって、形質転換された陽性クローンをスクリーニングしてもよい。
【0095】
(4) 細胞を培養し、リコンビナーゼの発現を誘導し、前駆体プラスミドを自己組換えさせる。
【0096】
(3) で形質転換された陽性クローンを選択し、選択マーカーに対応する選択的培地において、菌株を一晩培養し濃縮する。選択ストレスのない液体培地で細胞を洗浄し、誘導物を含有する、選択ストレスのない培地を用いて、菌株を再懸濁させ、リコンビナーゼの発現を誘導し、プラスミドが担持する二つの組換え部位の間の組換えを引き起こし、組換え部位の間のプラスミド骨格配列(例えば、選択マーカー遺伝子)を削除して、選択マーカーのないミニプラスミドを形成する。
【0097】
(5) 分離し精製し、選択マーカー遺伝子のないモノクローニング菌株をスクリーニングする。
【0098】
(4) で完全に組換えされた細菌溶液で選択ストレスのないプレート上に線を引いて、単一コロニーを分離する。選択マーカー遺伝子を含有する選択的培養プレート及び選択性のない(例えば、抗生物質がない)培養プレート上に単一コロニーをそれぞれ複製し、一晩培養する。抗生物質のないプレートにおける、該当する抗生物質プレート中で成長できないコロニーを選択して培養し、それにより選択マーカープラスミドのみを含有する菌株を得る。
【0099】
(6) (5) で得られた菌株を、選択性のない(例えば、抗生物質がない)培地中で培養し、プラスミドを抽出して、選択マーカーのないミニプラスミドの最終生成物を得る。
【0100】
抗生物質耐性遺伝子による遺伝子療法の安全上のリスクを回避し、プラスミドの高純度で大量な生産を実現するために、本発明による選択マーカー遺伝子(例えば、抗生物質耐性選択マーカー)がなく、生成物プラスミド骨格が複製開始部位(DNA複製エレメント)のみを含有するミニプラスミド及びその生産方式は、細菌に由来する配列の生成物プラスミドにおける割合を大幅に減少させ、潜在的な安全上のリスクを低下させた。それとともに、プラスミド生成物を含有する陽性菌株に対する分離、精製、培養及び増幅を実現し、選択マーカーのないプラスミドにおける純度が低く、大量生産が困難であるという問題を解決した。
【0101】
本発明の有益な技術的効果は、以下を含むが、それらに限らない。本発明の方法により得られたプラスミドは、抗生物質選択マーカーを持たず、複製開始部位以外の余分な原核DNAエレメントがなく、抗生物質選択マーカーのないプラスミドの生産過程に抗生物質薬物を添加せず、生産を拡大しやすく、大量生産を実現することができる。
【0102】
本発明による選択マーカーのないプラスミドは、プラスミドの安全性及び安定性を向上させるとともに細胞傷害性を低下させるために、DNA送達ベクター又はウイルスパッケージングプラスミドベクターとして、遺伝子及び細胞療法分野に用いられ得る。
【0103】
以下では、例を通じて、図面を参照しながら、本発明の技術的解決手段をさらに詳しく説明する。特に定義しない限り、以下に説明する例の方法及び材料は、いずれも市販品として入手可能な一般的な製品である。当業者であれば理解できるように、以下に説明する方法及び材料は、単に例示的なものであり、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0104】
例1:Creリコンビナーゼ発現システムの確立
【0105】
該例において、大腸菌JM108において、部位特異的リコンビナーゼ誘導型発現システムを構築した。このシステムは、誘導型原核転写プロモーターaraBADプロモーターと、部位特異的リコンビナーゼ遺伝子creと、転写ターミネーターとを含む。以下の二つの方式によって、該システムを構築し、宿主細菌中で発現する。
【0106】
1.1 Cre特異的リコンビナーゼ誘導型発現システムをpSC101(ts)複製システムのベクタープラスミド上に構築して、発現するためにJM108を形質転換した。具体的なステップは以下のとおりである。
【0107】
(1) cre遺伝子断片及びpSC101-araBAD線状ベクターの製造
cre遺伝子断片の製造: プライマーcre-F及びcre-R(プライマー配列がそれぞれSEQ ID NO: 2及びSEQ ID NO: 3に示すとおりである)でcre断片を増幅し、cre断片は、南京金斯瑞生物科技有限公司(Nanjing GenScript Biotechnology Co., Ltd.)により合成された(cre遺伝子配列は、SEQ ID NO: 1に示すとおりである)。増幅システム及びPCRシステムは、表1及び表2に示すとおりである。Phusion(登録商標)HF DNAポリメラーゼは、ニューイングランドバイオテクノロジー社(New England Biotechnology Co., Ltd.)から購入可能であり、製品番号が10058481である。cre遺伝子断片の理論的サイズは1116 bpである。増幅生成物に対してアガロースゲル電気泳動を行い、電気泳動により得られた増幅生成物の断片サイズが正確である(図2に示すとおりである)。ゲルを回収してcre遺伝子断片を得た。
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
【0110】
pSC101-araBAD線状ベクターの製造:pSC101-araBAD線状ベクターは、pKD46プラスミドに由来し、該pKD46プラスミドは、NCBI配列ID:AY048746.1を有する。EcoR IでpKD46プラスミドを消化し、且つ線状ベクターを回収する。消化システムは、表3に示すとおりである。EcoR I限定的エンドヌクレアーゼは、ニューイングランドバイオテクノロジー社から購入可能であり、製品番号が10079659である。消化システムは37℃で45 min反応した。消化生成物をアガロースゲルにかけ、電気泳動を行った。図3に示すように、消化後に二つのバンドがあり、サイズは4820 bp + 1509 bp(それぞれ4820 bp及び1509 bp)であり、理論値(4820 bp及び1509 bp)と一致した。ゲルを切断することによって4820 bpのベクター断片を回収し、それによりpSC101-araBAD線状ベクターを得た。
【0111】
【表3】
【0112】
(2) pSC101-araBAD-cre(Amp)プラスミドの組織化
組織化システムは表4に示すとおりである。Gene builder(商標)クローニングキットは、南京金斯瑞生物科技有限公司から購入可能であり、製品番号がC20012009である。反応液を調合し、50℃で15 min反応させ、生成物をDH10bコンピテントに形質転換し、37℃の培養箱中で培養した。
【0113】
【表4】
【0114】
(3) pSC101-araBAD-cre(Amp)プラスミドの検証
前述のステップからの形質転換プレート上で単一コロニーを選択し、そして48ウェルプレートに転移し、37℃及び220 rpmで一晩培養した。プライマーcre-seq1/cre-seq2(二つのプライマーの配列は、それぞれSEQ ID NO: 4及びSEQ ID NO: 5に示すとおりであり、且つ増幅断片のサイズは1069 bpである)を用いてコロニーPCRを行った。アガロースゲル電気泳動によって生成物を検証した。図4に示すように、コロニー1-12は、コロニーPCR生成物のアガロースゲル電気泳動の結果であり、クローニング#7を除く全ての他のクローニングはバンドを示し、組織化に成功した可能性があることを示している。断片サイズが正確である陽性クローンを選択してプラスミドを抽出し、これらのプラスミドを南京金斯瑞生物科技有限公司に送ってサンガー配列決定を行い、配列決定の結果は正確であった(図5に示すように、試験された配列は、マップ配列(図中の黒い線)と完全に一致し、遺伝子欠失又は突然変異がなく、プラスミド組織化に成功したことを示している)。pSC101-araBAD-cre(Amp)プラスミドの組織化に成功した。
【0115】
(4) 温度感受性プラスミドpSC101(ts)-araBAD-creの構築
温度感受性レプリコンpSC101 ori (ts)断片の製造:テンプレートとしてpCP20プラスミド(NCBI配列ID:MK178598.1)を用い、pSC101 ori (ts)断片(配列がSEQ ID NO: 23に示すとおりである)に対してPCR増幅を行った。増幅プライマーであるpSC101(ts)-F及びpSC101(ts)-Rは、それぞれプライマー配列表におけるSEQ ID NO: 6及びSEQ ID NO: 7に示すとおりである。PCRシステム及び手順は、表5及び表6に示すとおりである。増幅により得られたpSC101 ori (ts)断片生成物をアガロースゲルにかけ、電気泳動を行った。図6におけるレーン2及び3に示すように、断片の正確なサイズは1434 bpである。Phusion(登録商標)HF DNAポリメラーゼは、ニューイングランドバイオテクノロジー社から購入可能であり、製品番号が10058481である。
【0116】
araBAD-cre(Amp)断片の製造:Nco I及びNot Iで、ステップ (3) で製造されたpSC101-araBAD-cre(Amp)プラスミドを処理した。消化システムは表7に示すとおりである。図6におけるレーン4及び5に示すように、消化生成物の正確な断片サイズは4431 bpである。ゲルを切断することによって大きな断片を回収し、それによりaraBAD-cre(Amp)を得た。Nco I及びNot I限定的エンドヌクレアーゼは、いずれもニューイングランドバイオテクノロジー社から購入可能であり、製品番号がそれぞれ10080424及び10046577である。
【0117】
【表5】
【0118】
【表6】
【0119】
【表7】
【0120】
pSC101(ts)-araBAD-cre(Amp)プラスミドを組織化した。表8に示すように、反応システムは、50℃で15 min反応した。組織化の生成物をDH10bコンピテントに形質転換し、30℃の培養箱中で培養した。Gene builder(商標)クローニングキットは、南京金斯瑞生物科技有限公司から購入可能であり、製品番号がC20012009である。
【0121】
【表8】
【0122】
pSC101(ts)-araBAD-creプラスミドに対してPCR検証を行った。前述のステップにおける形質転換プレート中の単一コロニーを選択し、48ウェルプレートに転移し、30℃及び220 rpmで培養した。PCRにより正確に検証された8個のクローニングをランダムに選択し、プラスミドを抽出し、サンガー配列決定を行った(南京金斯瑞生物技術有限公司により提供される)。図7を参照して、配列決定結果によると、試験された配列は、マップ配列(図中の黒い線)と完全に一致し、遺伝子欠失又は突然変異がなく、プラスミド組織化に成功したことを示している。pSC101(ts)-araBAD-creプラスミドの組織化に成功した。
【0123】
1.2 λRed組換え及びCRISPR/Cas9編集によってCreリコンビナーゼの誘導型発現システムをJM108ゲノムに組み込んで発現した。菌株編集及び検証操作3)~5) は、南京金斯瑞生物科技有限公司により完成された(CRISPR製品及びサービス(genscript.com.cn))、具体的なステップは以下のとおりである。
【0124】
1) cyaA及びcyaY遺伝子の間のCRISPR/Cas9特異的標的ポイントを設計し、ここで、gRNAの長さは20 bpであり、具体的なgRNA配列はSEQ ID NO: 9に示すとおりである。
【0125】
2) cyaA及びcyaY遺伝子の間の挿入部位の両側のJM108-araBAD-cre(Amp) L-相同性アーム及びJM108-araBAD-cre(Amp)R-相同性アームを設計し、具体的な相同性アーム配列は、それぞれ配列表に示すSEQ ID NO: 10及びSEQ ID NO: 11のとおりである。
【0126】
3) λRed組換え技術及びCRISPR/Cas9技術を用いて、大腸菌JM108菌株に対して、Cre特異的リコンビナーゼ誘導型発現システム(配列がSEQ ID NO: 22に示すとおりである)の無傷ノックインを行った。
【0127】
4) 編集された菌株に対して、コロニーPCR及びアガロースゲル電気泳動スクリーニング検証を行った(プライマー:C4818FK060-6JJF1及びC4818FK060-6JJR1、配列は、それぞれSEQ ID NO: 14及びSEQ ID NO: 15に示すとおりである)。ノックインに成功したコロニーPCRにより得られたゲル電気泳動バンドの理論的サイズは3000 bpより大きい必要があり、ノックインに成功しなかったバンドの理論的サイズは1297 bpであった。図8に示すように、結果により、ノックインに成功したコロニーPCRゲル電気泳動のバンドサイズが正確であることが示唆されている。
【0128】
5) PCRにより正確に検証されたクローニングに対してサンガー配列決定を行った。図9に示すように、結果により、配列決定結果が正確であり、突然変異がないことが示唆されている。
【0129】
例2:Flpリコンビナーゼ発現システムの確立
【0130】
Flpリコンビナーゼ誘導型発現システムの確立は、例1におけるCreリコンビナーゼ発現システムを参照することができる。Flpリコンビナーゼ誘導型発現システムは、誘導型原核転写プロモーターaraBADプロモーターと、部位特異的リコンビナーゼ遺伝子flpと、転写ターミネーターとを含む。以下の二つの方式によって、該システムを構築し、宿主細菌中で発現する。
【0131】
2.1 Flp特異的リコンビナーゼ誘導型発現システムを、pSC101(ts)温度感受性複製システムのベクタープラスミド上に構築し、それにより発現するためにJM108を形質転換した。具体的な操作は、以下のとおりである。
【0132】
(1) flp遺伝子断片及びpSC101(ts)-araBAD線状ベクターの製造
【0133】
flp遺伝子断片の製造:flp遺伝子(配列がSEQ ID NO: 24に示すとおりである)は、pCP20プラスミドからのものであり、プライマーflp-F及びflp-R(二つのプライマー配列は、それぞれSEQ ID NO: 16及びSEQ ID NO: 17に示すとおりである)を用いて、flp遺伝子を増幅させた。増幅システム及びPCRシステムは、表9及び表10に示すとおりである。図10に示すように、アガロースゲル電気泳動の結果により、断片の正確なサイズが1333 bpであることが示されている。ゲル回収を行った。Phusion(登録商標)HF DNAポリメラーゼは、ニューイングランドバイオテクノロジー社から購入可能であり、製品番号が10058481である。
【0134】
【表9】
【0135】
【表10】
【0136】
pSC101(ts)-araBAD線状ベクターの製造:Nde I及びEcoR I-HF(ニューイングランドバイオテクノロジー社から購入可能であり、製品番号がそれぞれ10064897及び10079659である)でpSC101(ts)-araBAD-creプラスミドを消化して、線状ベクターを製造した。pSC101(ts)-araBAD-creプラスミドのサイズは5876 bpである。アガロースゲル電気泳動によって消化生成物を分析した。図11のゲル図に示すように、消化後に二つのバンドがあり、サイズは、4841 bp+1034 bpであり、理論値と一致していた。消化システムは表11に示すとおりである。消化システムを37℃で60 min処理した。ゲルを切断することによって大きな断片を回収した。
【0137】
【表11】
【0138】
(2) pSC101(ts)-araBAD-flpプラスミドの組織化
【0139】
組織化システムは表12に示すとおりである。組織化システムは、50℃で15 min反応した。組織化が完了した後、組織化の生成物をDH10bコンピテントに形質転換し、30℃の培養箱中で培養した。Gene builder(商標)クローニングキットは、南京金斯瑞生物科技有限公司から購入可能であり、製品番号がC20012009である。
【0140】
【表12】
【0141】
(3) pSC101(ts)-araBAD-flpプラスミドの検証
【0142】
前述のプレートから8個の単一コロニーをランダムに選択し、4 mLのLB液体培地に接種し、30℃及び220 rpmで培養した。プラスミドを抽出しサンガー配列決定を行い、且つ該配列決定は、南京金斯瑞生物科技有限公司により完成された。図12を参照して、配列決定結果によると、試験された配列は、マップ配列(図中の黒い線)と完全に一致し、遺伝子欠失又は突然変異がなく、プラスミド組織化に成功したことを示している。
【0143】
2.2 λRed組換え及びCRISPR/Cas9編集によってFlpリコンビナーゼの誘導型発現システムをJM108ゲノムに組み込んで発現した。具体的なステップは、例1におけるステップ1.2と同じである。
【0144】
例3:lox71/lox66組換え部位を含有する前駆体プラスミドの構築
【0145】
3.1 pMF9-loxp前駆体空ベクタープラスミドの構築
【0146】
pMF9-loxp前駆体空ベクタープラスミドは、DNA複製エレメントpMB1誘導体(784 bp、SEQ ID NO: 43)と、耐性選択マーカー遺伝子KanRと、一対の同一方向の特異的組換え部位lox71/lox66(配列表に示すように、lox71配列はSEQ ID NO: 25に示すとおりであり、lox66配列はSEQ ID NO: 26に示すとおりである)と、多重クローニング部位MCSとを含む。多重クローニング部位及び複製エレメントは、lox71とlox66との間に位置し(図13に示すように)、順序が本例を含むが、これに限らない。プラスミド配列は、SEQ ID NO: 8に示すとおりであり、南京金斯瑞生物科技有限公司により合成された。合成されたpMF9-loxpプラスミドを消化によって検証された。限定的エンドヌクレアーゼは、Hind IIIであり、ニューイングランドバイオテクノロジー社から購入可能であり、製品番号が10055811である。消化システムは表13に示すとおりである。消化システムは37℃で45 min反応した。標的バンドの理論的サイズは、1176 bp + 2015 bpでなければならない。図14に示すように、消化生成物のアガロースゲル電気泳動の結果によると、レーン2~5は、四つの平行な消化生成物であり、バンドサイズが正確であり、得られたプラスミドが正確であることを示している。
【0147】
【表13】
【0148】
3.2.pMF9-loxp線状ベクターの製造
【0149】
BamH I-HF(ニューイングランドバイオテクノロジー社、10081013)でpMF9-loxpプラスミドを消化した。消化システムは表14に示すとおりである。消化システムは37℃で45 min反応した。pMF9-loxpプラスミドのサイズは3191 bpである。図15に示すように、消化生成物のアガロースゲル電気泳動の結果により、レーン2-3が二つの平行な消化生成物であり、消化後のバンドサイズが正確であることが示されている。ゲル回収を行った。
【0150】
【表14】
【0151】
3.3 pMF9-loxp -5.5 kb前駆体プラスミドの組織化
【0152】
loxP部位の間に、長さが5.5 kbであり、loxP部位を含有しない断片(標的遺伝子)を挿入した。相同性アームを有するプライマー対を用いて、増幅し回収した。プライマーの配列は、配列表を参照されたい(配列がそれぞれSEQ ID NO: 12及びSEQ ID NO: 13に示すとおりである)。回収された断片を、例3.2で製造されたpMF9-loxp線状ベクターと組織化した。組織化システムは表15に示すとおりである。組織化は50℃で15 min行われた。組織化システムをJM108に形質転換した。50 μL/100 μLの形質転換生成物を入れ、37℃で一晩培養した。Gene builder(商標)クローニングキットは、南京金斯瑞生物科技有限公司から購入可能であり、製品番号がC20012009である。
【0153】
【表15】
【0154】
3.4 pMF9-loxp -5.5 kbプラスミドの検証
【0155】
組織化されたpMF9-loxp -5.5 kbプラスミドは、形質転換後にプレート上で単一コロニーが生えた。8個のモノクローニングをランダムに選択し、4 mLのLB液体培地に接種し、37℃及び220 rpmで培養した。プラスミドを抽出し、サンガー配列決定を行った。図16に示すように、サンガー配列決定結果は、組織化に成功したことを示している。サンガー配列決定は、南京金斯瑞生物科技有限公司により完成された。
【0156】
例4.lox71/lox66組換え部位及びpMB1最短複製エレメントを含有する前駆体プラスミドの構築
【0157】
4.1 pMF65-loxp前駆体空ベクタープラスミドの構築
【0158】
プラスミド安全性は、遺伝子及び細胞療法に極めて重要である。プラスミド骨格上の配列は、潜在的な免疫原性を有し、有害反応を引き起こす。プラスミド骨格の短縮は、遺伝子及び細胞療法に関連するプラスミドの最適化方向となってきた。本例において設計された前駆体プラスミドベクターは、組換えにより、約0.65KBのpMB1複製エレメント配列のみを含有する娘プラスミドを得ることができ、外因性遺伝子配列の導入を減少させ、潜在的細胞傷害性及び免疫原性を低下させ、安全性及び安定性を向上させた。
【0159】
プラスミドの構築は、DNA複製エレメントpMB1(589 bp、SEQ ID NO: 44)と、耐性選択マーカー遺伝子Kanと、一対の同一方向の特異的組換え部位lox71/lox66と、多重クローニング部位とを含むpUC57(Kan)プラスミド(配列がSEQ ID NO: 29に示すとおりであり、南京金斯瑞生物科技有限公司により合成された)に基づいている。複製エレメント及びクローニング部位は、lox71とlox66との間に位置し(プラスミドは図17に示すとおりである)、順序が本例を含むが、これに限らない。
【0160】
多重クローニング挿入部位における限定的エンドヌクレアーゼsall/BamHIでpUC57(Kan)プラスミドを処理し、且つpUC57(Kan)プラスミドを消化して線状ベクターを形成した。消化システムは表16に示すとおりである。図18を参照して、結果により、pUC57(Kan)プラスミドが2579 bpであり、バンドサイズが正確であることが示されている。ゲルキットに従ってゲルを回収した。pMB1レプリコンを含有するpUC57(Kan)断片、並びにKan選択マーカー及びloxp71/66部位を含有するpUC57(Kan)断片を、それぞれ二つのプライマー対で増幅させた。pMB1レプリコンを含有する断片を増幅するためのプライマーの配列は、SEQ ID NO: 30及びSEQ ID NO: 31に示すとおりである。Kan選択マーカー及びloxp71/66部位を含有する断片を増幅するためのプライマーの配列は、SEQ ID NO: 32及びSEQ ID NO: 33に示すとおりである。PCRシステム及びPCR手順は、表17及び表18に示すとおりである。増幅生成物については、図19に示すように、レーン1及び2における、pMB1レプリコンを含有する断片1のサイズは668 bpであり、レーン3及び4における、Kan耐性選択マーカー及びloxp71/66部位を含有する断片2のサイズは1574 bpである。バンドサイズはいずれも正確である。ゲルキットに従ってゲルを回収した。Primer Star GXL DNAポリメラーゼは、タカラバイオ(北京)有限公司(Takara Biomedical Technology (Beijing) Co., Ltd.)から購入可能であり、製品番号がR050Aである。
【0161】
【表16】
【0162】
【表17】
【0163】
【表18】
【0164】
pMF65-loxpプラスミドを組織化した。システムは表19に示すとおりである。システムは、50℃で15 min反応した。組織化が完了した後、組織化の生成物をJM108コンピテントに形質転換し、37℃で培養した。Gene builder(商標)クローニングキットは、南京金斯瑞生物科技有限公司から購入可能であり、製品番号がC20012009である。
【0165】
【表19】
【0166】
pMF65-loxpプラスミドの検証
【0167】
組織化されたpMF65-loxpプラスミドは、形質転換後にプレート上で単一コロニーが生えた。モノクローニングを選択し、4 mLのLB液体培地に接種し、37℃及び220 rpmで培養した。プラスミドを抽出し、サンガー配列決定を行った。図20に示すように、サンガー配列決定結果により、設定されたプライマー配列決定結果が完全なプラスミド配列をカバーし、突然変異がなく、組織化に成功したことが示されている。サンガー配列決定は、南京金斯瑞生物科技有限公司により完成された。
【0168】
4.2 pMF65-loxp-RFP前駆体プラスミドの構築
【0169】
pMF65-loxp-RFP前駆体プラスミドの構築は、例3におけるpMF9-loxp-5.5 kbの構築を参照されたい。即ちpMF65-loxpプラスミドのMCS位置にrfp赤色素合成遺伝子(配列がSEQ ID NO: 28に示すとおりである)を外因性断片(構造図が図21を参照)として挿入した。
【0170】
PCRによって、pMF65-loxpベクターを増幅し、断片RFPを挿入した。ベクター断片サイズは2182 bpであり、RFP断片サイズは1150 bpである(二つのプライマー対の配列がそれぞれSEQ ID NO: 35、SEQ ID NO: 36、SEQ ID NO: 37及びSEQ ID NO: 38に示すとおりである)。増幅システムは表20に示すとおりである。増幅手順は表21に示すとおりである。図22を参照して、結果により、レーン2及びレーン3がRFP増幅断片であり、レーン4及びレーン5がpMF65-loxpベクター断片であり、そのサイズが正確であることが示されている。ゲルキットに従ってゲルを回収した。Gene builder (商標)クローニングキットを用いて組織化した。
【0171】
【表20】
【0172】
【表21】
【0173】
pMF65-loxp-RFP前駆体プラスミドを組織化した。システムは表22に示すとおりである。システムは、50℃で15 min反応した。組織化が完了した後、組織化の生成物をJM108コンピテントに形質転換し、37℃で培養した。Gene builder(商標)クローニングキットは、南京金斯瑞生物科技有限公司から購入可能であり、製品番号がC20012009である。
【0174】
【表22】
【0175】
pMF65-loxp-RFP前駆体プラスミドの検証
【0176】
組織化されたpMF65-loxp-RFP前駆体プラスミドは、形質転換後にプレート上で単一コロニーが生えた。モノクローニングを選択し、4 mLのLB液体培地に接種し、37℃及び220 rpmで培養した。プラスミドを抽出し、サンガー配列決定を行った。図23に示すように、サンガー配列決定結果により、設定されたプライマー配列決定結果が完全なプラスミド配列をカバーし、突然変異がなく、組織化に成功したことが示されている。サンガー配列決定は、南京金斯瑞生物科技有限公司により完成された。
【0177】
例5.lox71/lox66組換え部位を含有する高コピー前駆体プラスミドの構築
【0178】
5.1 pMF7-loxp-RFPプラスミドの構築
【0179】
本例におけるプラスミドは、高コピーpUCレプリコンを含有し、それにより選択マーカーのないプラスミドの収量及び純度を向上させ、製造フローを簡略化し、生産コストを削減し、大量生産に有利である。
【0180】
プラスミドの構築は、DNA複製エレメントpUC ori(674 bp、SEQ ID NO: 45)と、耐性選択マーカー遺伝子Kanと、Ropタンパク質をコードする遺伝子配列と、一対の同一方向の特異的組換え部位lox71/lox66と、標的遺伝子RFP配列とを含むpUC57(Kan)プラスミド(配列がSEQ ID NO: 29に示すとおりである)に基づいている。複製エレメント及び標的遺伝子は、lox71とlox66との間に位置する(構造が図24に示すとおりである)(プラスミドの全配列が配列表におけるSEQ ID NO: 39に示すとおりである)。プラスミドは、南京金斯瑞生物科技有限公司の遺伝子部門により合成された。rop遺伝子配列は、pBR322複製エレメントからのものであり、複製制御タンパク質であり、pUC複製エレメントプラスミドのコピー数を減少させる。組換え誘導前に、前駆体プラスミドはRopタンパク質を発現し、且つ前駆体プラスミドのコピー数が抑制された。組換え誘導後に、耐性選択マーカーのないプラスミドは、rop遺伝子配列を失い、高コピープラスミドに変換し、組換えされた菌株における耐性選択マーカーのないプラスミドの割合を向上させ、前駆体プラスミドの失いを促進し、耐性選択マーカーのないプラスミドを含有する菌株のスクリーニング効率を向上させることができる。
【0181】
例6.lox71/lox66組換え部位及びR6Kγレプリコンを含有する前駆体プラスミドの構築
【0182】
6.1 pMF5-loxp-RFP前駆体プラスミドの構築
【0183】
本例により、本発明の方法が異なるタイプの複製エレメントの選択マーカーのないプラスミドの製造に適し、該方法が汎用性を有することが示されている。R6Kγ ori(389 bp、SEQ ID NO: 46)は、例3、4及び5におけるpMB1又はpUCとは異なるレプリコンである。R6Kγ配列は、長さがより短く、娘プラスミドの骨格長さをさらに短縮させ、細胞傷害性を低下させることができる。
【0184】
pMF5-loxP-RFP前駆体プラスミドは、DNA複製エレメントR6Kγ oriと、耐性選択マーカー遺伝子Kanと、一対の同一方向の特異的組換え部位lox71/lox66と、配列RFPに挿入される標的遺伝子とを含む。複製エレメント及び挿入遺伝子は、lox71とlox66との間に位置する(構造が図25に示すとおりである)(プラスミドの全配列が配列表におけるSEQ ID NO: 40に示すとおりである)。プラスミドは、南京金斯瑞生物科技有限公司により合成された。
【0185】
例7.同一方向の特異的組換え部位FRTを含有する前駆体プラスミドの構築
【0186】
7.1 FRT-RFP遺伝子断片及びベクターの製造
【0187】
pMF9-FRT-RFP前駆体プラスミド(構造が図26に示すとおりである)の構築は、pMF9-loxP-RFPプラスミドに基づいている。pMF9-loxP-RFPプラスミドの構築は、例3におけるpMF9-loxP-5.5 kbの構築方法を参照されたい。即ちpMF9-loxP-RFPのloxP部位の間にrfp赤色素合成遺伝子(配列がSEQ ID NO: 28に示すとおりである)を標的遺伝子として挿入した。FRT配列(FRT配列が配列表におけるSEQ ID NO: 27に示すとおりである)を担持するプライマーを用いて、pMF9-loxP-RFPプラスミドのloxP部位の間の断片を増幅した。具体的なプライマー配列は、配列表を参照されたい(FRT-F1配列がSEQ ID NO: 18に示すとおりであり、且つFRT-R1配列がSEQ ID NO: 19に示すとおりである)。PCRシステム及びPCR手順は、表23及び表24に示すとおりである。増幅生成物に対してゲル電気泳動を行った。図27に示すように、レーン2及びレーン3のサイズは、いずれも2123 bpであり、正確である。ゲルキットに従ってゲルを回収した。
【0188】
pMF9ベクター断片の製造:pMF9-loxP-RFPプラスミドをテンプレートとして、ベクターに対してPCR増幅を行った。プライマーFRT-F2及びFRT-R2は、プライマー配列表を参照されたい(それぞれSEQ ID NO: 20及びSEQ ID NO: 21に示すとおりである)。PCRシステム及びPCR手順は、表16及び表17に示すとおりである。増幅生成物に対してアガロースゲル電気泳動を行った。図27におけるレーン4及び5に示すように、増幅生成物のサイズは2236 bpである。正確なサイズのバンドを切り取り、ゲルキットに従ってゲルを回収した。PCRで使用されるPhusion(登録商標)HF DNAポリメラーゼは、ニューイングランドバイオテクノロジー社から購入可能であり、製品番号が10058481である。
【0189】
【表23】
【0190】
【表24】
【0191】
7.2 pMF9-FRT-RFPプラスミドの組織化。組織化システムは表25に示すとおりである。組織化システムは、50℃で15 min反応した。組織化が完了した後、組織化の生成物をDH10bコンピテントに形質転換し、37℃で培養した。Gene builder(商標)クローニングキットは、南京金斯瑞生物科技有限公司から購入可能であり、製品番号がC20012009である。
【0192】
【表25】
【0193】
7.3 pMF9-FRT-RFPプラスミドの検証
【0194】
形質転換プレートから8個の単一コロニーをランダムに選択し、南京金斯瑞生物科技有限公司に送ってサンガー配列決定を行った。図28を参照して、配列決定結果によると、試験された配列は、マップ配列(図中の黒い線)と一致し、遺伝子欠失又は突然変異がなく、プラスミド組織化に成功したことを示している。
【0195】
例8:pMF9-loxpベクターの単一プラスミド形質転換に基づく組換え誘導、耐性スクリーニング及びプラスミド精製
【0196】
本例は、JM108 araBAD-cre+pMF9-loxp-5.5kbを例として、単一プラスミド形質転換に基づく組換え誘導、耐性スクリーニング及びプラスミド精製の方法を説明したが、Cre-loxP組換えシステムに限らない。具体的な操作は、以下のとおりである。
【0197】
8.1 単一プラスミド形質転換
【0198】
例1における遺伝子改変菌株JM108 araBAD-creを用いてコンピテントを製造し、前駆体プラスミドpMF9-loxp-5.5kbを形質転換し、そしてカナマイシンプレート上に注いだ。具体的な形質転換ステップは以下のとおりである。
【0199】
JM108 araBAD-creコンピテントを氷に置いて自然融解させ、1 μLのプラスミドを氷上のコンピテントに添加し、コンピテントをプラスミドと均一に混合し、混合物を42℃で30 min氷浴し、熱ショックを90 s施し、そして3 min氷浴した。混合物を800 μLの新鮮なLB液体培地に添加し、全温度振盪培養箱において、37℃及び220 rpmで45 minインキュベートした。適量の細菌溶液をLB + Kan + 1%グルコースの固体プレート上に注ぎ、そして37℃の培養箱中で一晩培養した。正常なサイズに成長した単一コロニーを選択して後続の実験を行った。
【0200】
8.2 アラビノースの添加によるCre-loxP組換え誘導
【0201】
JM108 araBAD-cre pMF9-loxp-5.5kb培養システムに一定の量のアラビノースを添加して、Creリコンビナーゼの発現を誘導し、Cre-loxP組換えを実現した。具体的な操作は、以下のとおりである。
【0202】
3~4個のJM108 araBAD-cre pMF9-loxp-5.5 kbコロニーを選択し、4 mLのLB + Kan(カナマイシン、30 μg/mL) + 1%グルコースの液体培地中でインキュベートし、37℃及び220 rpmで一晩培養し、菌株を濃縮した。菌株を収集し、抗生物質のないLBで二回洗浄し、そして誘導液(誘導液:LB + 2%アラビノース)で再懸濁させた。組換え誘導は、37℃及び220 rpmで1 h行われた。5 μLの組換え細菌溶液で抗生物質のないLB固体プレート上に線を引き、37℃の培養箱中で一晩培養し、残りの細菌溶液からプラスミドを抽出し、検証を行った。消化システムは表26に示すとおりである。Ahd I限定的エンドヌクレアーゼは、ニューイングランドバイオテクノロジー社から購入可能であり、製品番号が10079968である。アガロースゲル電気泳動を行った。元のプラスミドを対照とし、電気泳動結果は図29に示すとおりである。
【0203】
結果の表示:前駆体プラスミドpMF9-loxp-5.5 kbのサイズは8720 bpであり、組換え後に生成された耐性環状DNAのサイズは2270 bpであり、生成されたpMF9-5.5 kbプラスミドのサイズは6450 bpである。図29から分かったように、2%のアラビノースを添加して1 h誘導することによりCre-loxPの組換えの実現に成功し、約6.5 kbのマーカーのないプラスミドを得たが、少量の前駆体プラスミドが依然として残されていた。
【0204】
【表26】
【0205】
8.3 マーカーのないプラスミドを得るためのKan耐性スクリーニング及び精製
【0206】
1) 組換えされた細菌溶液で抗生物質のないプレートに線を引いた後、10個の単一コロニーを選択した。図30における左パネルに示すように、LB + Kanプレート上に各コロニーを点在させ、37℃の培養箱中で一晩培養した。なお、図30における右パネルに示すように、各コロニーを抗生物質のないLB液体培地にも接種し、37℃及び220 rpmで培養し、耐性スクリーニングを行った。
【0207】
2) LB + Kanプレート上でコロニーが成長せず、抗生物質のないLB液体培地中で正常に成長するコロニーのうちの5個のコロニーを選択し(図30に示すとおりである)、保存後にプラスミドを抽出しプラスミド検証を行った。
【0208】
3) 抽出されたプラスミドに対して消化検証を行った。消化システムは表26に示すとおりである。アガロースゲル電気泳動を行った。pMF9- 5.5 kbプラスミドは6450 bpである。得られたマーカーのないプラスミド生成物として、正確なプラスミドサイズ及び正確な消化生成物を有するプラスミドを選択した(図31左側のレーン#1及び#4に示すとおりである)。
【0209】
耐性スクリーニングプレート及びプラスミド検証結果により、Kan耐性逆方向スクリーニングによって残りの前駆体プラスミド及び耐性遺伝子を除去し、マーカーのないプラスミドを高効率で得たことが示されている。
【0210】
例9:pMB1複製エレメントのみを含有する最短骨格前駆体プラスミドの単一プラスミド形質転換に基づく組換え誘導、耐性スクリーニング及びプラスミド精製
【0211】
本例は、例4におけるpMF65-loxp-RFP前駆体プラスミドに基づいて、前駆体プラスミドのpMB1複製エレメントを最短に減少させることによる本発明における選択マーカーのないプラスミドの生産の可能性を試験した。具体的な実施形態は例8と同様である。誘導により、前駆体プラスミドの組換えを実現した。図32に示すように、ゲル電気泳動の検出結果により、レーン2が組換え誘導されていない前駆体プラスミド対照であり、サイズが3272 bpであり、レーン3が1 h組換え誘導して得られたMFプラスミドであり、サイズが1743 bpであり、且つバンドサイズがいずれも正確であることが示されている。後続の耐性スクリーニング及び精製によって、サイズが正確である、耐性選択マーカーのないpMF65-RFPプラスミドを得た。図33(3個の平行なプラスミド生成物)に示すように、ゲル電気泳動の結果によると、バンドは、サイズが正確であり、バンドがシンプルであり、半数体バンドである。pMF65-loxp-RFPプラスミドに対して配列決定検証を行った。図34に示すように、検証結果により、組換えに成功したことが示されている。
【0212】
例10:高コピー前駆体プラスミド骨格の単一プラスミド形質転換に基づく組換え誘導、耐性スクリーニング及びプラスミド精製
【0213】
本例は、例5におけるpMF7-loxp-RFP前駆体プラスミドに基づいて、高コピー前駆体プラスミド骨格による本発明における選択マーカーのないプラスミドの生産の可能性を試験した。具体的な実施形態は例8と同様である。誘導により、前駆体プラスミドの組換えを実現した。図35に示すように、ゲル電気泳動の検出結果により、レーン2が誘導組換えされていない前駆体プラスミドであり、サイズが3879 bpであり、レーン3が1 h誘導組換えして生成された、耐性遺伝子のないプラスミドであり、ここで、前駆体プラスミドに対応するバンドが明らかに弱まり、且つサイズが正確であることが示されている。後続の耐性スクリーニング及び精製によって、正確なサイズが1828 bpである、耐性選択マーカーのないpMF7-RFPプラスミドを得た。図36(7個の平行なプラスミド生成物)に示すように、ゲル電気泳動の結果により、サイズが正確であることが示されている。精製されたpMF7-RFPプラスミドに対して配列決定検証を行った。図37に示すように、検証結果により、組換えに成功したことが示されている。
【0214】
例11:デュアルプラスミドシステムに基づく組換え誘導、耐性スクリーニング及びプラスミド精製
【0215】
デュアルプラスミド組換えシステムにおいて、リコンビナーゼ発現システムは、プラスミドベクター上にロードされ、前駆体プラスミドとともに宿主菌株に形質転換された。マルチコピープラスミドは、リコンビナーゼの発現量を向上させ、組換え効率を向上させることができる。デュアルプラスミド組換えシステムは、菌株の改変を必要とせず、一般に商用化された菌株における選択マーカーのないプラスミドの製造に適している。
【0216】
本例は、例2で製造されたpSC101(ts)-araBAD-flp温度感受性プラスミド、及び例7で製造されたpMF9-FRT-RFPを例とし、デュアルプラスミド形質転換に基づく組換え誘導、耐性スクリーニング及びプラスミド精製の方法を説明した。しかし該例は、FLP-FRT組換えシステムに限定されるものではない。具体的な操作は、以下のとおりである。
【0217】
11.1 pSC101(ts)-araBAD-flpプラスミド及びpMF9-FRT-RFPプラスミドの同時形質転換
【0218】
JM108コンピテントを宿主細菌として、1 μLのpSC101(ts)-araBAD-flpプラスミド及び1 μLのpMF9-FRT-RFPプラスミドを形質転換した。形質転換ステップは例8.1と同様である。
【0219】
11.2 アラビノースの添加によるFlp-FRT組換え誘導
【0220】
本例において、JM108 pSC101(ts)-araBAD-flp pMF9-FRT-RFP培養システムにアラビノースを添加することによってFlp酵素の発現を誘導し、Flp-FRT組換えを実現した。対照群の処理は、実験群と同様である。具体的な操作は、以下のとおりである。
【0221】
1) 3~4個のJM108 pSC101(ts)-araBAD-flp pMF9-FRT-RFPコロニーを選択し、LB + Amp(100 μg/mL) + Kan(30 μg/mL) + 1%グルコースの4 mLの液体培地中でインキュベートし、30℃及び220 rpmで一晩培養し、菌株を濃縮した。
【0222】
2) 菌株を収集し、抗生物質のないLBで二回洗浄し、そして誘導液(誘導液:LB + 2%アラビノース)で再懸濁させた。30℃及び220 rpmで組換え誘導を2~8 h行った。
【0223】
3) 組換え時間に達した後、1‰で組換え菌株を4 mL 抗生物質のないLB単管に転移し、37℃でpSC101(ts)-araBAD-flpの失いを誘導し、そして220 rpmで菌株を一晩培養した。
【0224】
4) 一晩培養された3個の試験管からそれぞれ5 μLの細菌溶液を取り、抗生物質のないLB固体プレートに線を引き、37℃の培養箱中で培養し、残りの細菌溶液からプラスミドを抽出し検証を行った。消化システムは表27に示すとおりである。AhdIは、ニューイングランドバイオテクノロジー社から購入可能であり、製品番号が10079968である。アガロースゲル電気泳動を行った(図38に示すとおりである)。前駆体プラスミドpMF9-FRT-RFPのサイズは4309 bpである。マーカーのない組換えプラスミドは2025 bpである。電気泳動結果により、2~8 h誘導した後、明らかなマーカーのないプラスミドバンド(プラスミドレーン2~4、及びプラスミド消化レーン2~4)が現れ、37℃で一晩誘導した後、pSC101(ts)-araBAD-flpプラスミドが明らかに失われた(プラスミドレーン5~7、及びプラスミド消化レーン5~7)ことが示されている。
【0225】
【表27】
【0226】
11.3 マーカーのないプラスミドを得るためのKan及びAmp耐性逆方向スクリーニング及び精製
【0227】
1) 三つの抗生物質のないプレートからそれぞれ10個の単一コロニーを選択した。LB + Ampプレート及びLB + Kanプレートには各コロニーが点在しており、37℃の培養箱中で培養した。なお、各コロニーを抗生物質のないLB液体培地に接種し、37℃及び220 rpmで培養し、耐性スクリーニングを行った。スクリーニング結果によると、組換えされた10%~50%の単一コロニーは、前駆体プラスミド及びKan耐性遺伝子が除去され、37℃で誘導した後にpSC101-araBAD-flp(ts)が全て失われ、耐性のない菌株が得られた(図39に示すとおりであり、5 h群の細菌溶液試料を例とする)。
【0228】
2) LB + Ampプレート及びLB + Kanプレート上で成長せず、抗生物質のないLB液体培地中で成長するコロニーを選択し、保存後にプラスミドを抽出し消化検証を行った。消化システムは表20に示すとおりである。アガロースゲル電気泳動を行った。検証によると、2 h#2、5 h#6及び8 h#7のプラスミド及び消化生成物は、サイズが正確であり、マーカーのないプラスミド生成物である(図40に示すとおりである)。
【0229】
例12:R6Kγレプリコンのデュアルプラスミド形質転換に基づく組換え誘導、耐性スクリーニング及びプラスミド精製
【0230】
本例は、例1(4)で製造されたpSC101(ts)-araBAD-creプラスミド及び例6で製造されたpMF5-loxp-RFP前駆体プラスミドを例とし、デュアルプラスミド形質転換に基づく組換え誘導、耐性スクリーニング及びプラスミド精製の方法を説明した。
【0231】
12.1 pSC101(ts)-araBAD-creプラスミド及びpMF5-loxp-RFP前駆体プラスミドの同時形質転換
【0232】
宿主細菌は、南京金斯瑞生物科技有限公司により提供されたpir2コンピテントを用いた。1 μLのpSC101(ts)-araBAD-cre及び1 μLのpMF5-loxp-RFP前駆体プラスミドに対して形質転換を行った。形質転換ステップは例8.1と同様である。
【0233】
12.2 組換え、スクリーニング及び精製の特定の実施形態は、例8.2及び8.3と同様である。誘導により、前駆体プラスミドの組換えを実現した。図41に示すように、結果によると、レーン2は、組換え誘導されていないプラスミド対照であり、pSC101(ts)-araBAD-cre及びpMF5-loxp-RFP前駆体プラスミドの二つのバンドを含有し、サイズがそれぞれ5867 bp及び3369 bpである。レーン3は、組換え誘導して得られた混合プラスミドのバンドであり、バンドは、上から下へ順にpSC101(ts)-araBAD-cre、pMF5-loxp-RFP前駆体プラスミド、Kan遺伝子を担持する環状二本鎖DNA及びpMF5-loxp-RFPである。バンドサイズはいずれも正確である。後続の耐性スクリーニング及び精製によって、正確なサイズが1533 bpである、耐性選択マーカーのないpMF5-loxp-RFPプラスミドを得た。図42に示すように、結果により、サイズが正確であることが示されている。精製されたpMF5-loxp-RFPプラスミドに対して配列決定検証を行った。図43に示すように、検証結果は、組換えに成功したことを示している。
【0234】
例13:マーカーのないプラスミドの大量抽出
【0235】
本例では、例8、9及び10における、消化が正確であり、プラスミドスーパーコイルバンドが良好であるpMF9-5.5 kb、pMF65-RFP及びpMF7-RFPプラスミドを例とし、上記プラスミドを担持する宿主大腸菌細胞を南京金斯瑞生物科技有限公司に送ってプラスミドの大量製造を行い、https: //www.genscript.com.cn/industrial-grade-plasmid.htmlを参照されたい。
【0236】
QC検出結果:
pMF9-5.5 kbプラスミド:0.5-1.2 mg/L。300 ngのプラスミドに対して消化検証を行った。プラスミドのサイズは6450 bpである。ゲル電気泳動検出結果により、バンドサイズが正確である(図44に示すとおりである)ことが示されている。Tanon GISにより分析すれば、モノマースーパーコイルプラスミドバンドの割合は90%超である。プラスミドに対してサンガー配列決定を行い、配列決定は、南京金斯瑞生物科技有限公司により完成され、配列決定結果により、配列が正確であり、耐性遺伝子配列がない(図45に示すとおりである)ことが示されている。
【0237】
pMF65-RFPプラスミド:0.3-1 mg/L。300 ngのプラスミドに対して消化検証を行った。ゲル電気泳動検出結果により、プラスミドサイズが1743 bpであり、バンドサイズが正確である(図46に示すとおりである)ことが示されている。Tanon GISにより分析すれば、モノマースーパーコイルプラスミドバンドの割合は90%超である。プラスミドに対してサンガー配列決定を行い、配列決定は、南京金斯瑞生物科技有限公司により完成され、配列決定結果により、配列が正確であり、耐性遺伝子配列がない(図47に示すとおりである)ことが示されている。プラスミドに対してNGS分析を行い、標的娘プラスミドの含有量が98%超であり、前駆体プラスミドの含有量は0.02%未満である。
【0238】
pMF7-RFPプラスミド:3.2-4.1 mg/L。300 ngのプラスミドに対して消化検証を行った。ゲル電気泳動検出結果により、プラスミドサイズが1828 bpであり、バンドサイズが正確である(図48に示すとおりである)ことが示されている。Tanon GISにより分析すれば、モノマースーパーコイルプラスミドバンドの割合は90%超である。プラスミドに対してサンガー配列決定を行い、配列決定は、南京金斯瑞生物科技有限公司により完成され、配列決定結果により、配列が正確であり、耐性遺伝子配列がない(図49に示すとおりである)ことが示されている。プラスミドに対してNGS分析を行い、標的娘プラスミドの含有量が98%超であり、前駆体プラスミドの含有量は0.02%未満である。
【0239】
【表28】
【0240】
本発明の実施形態は、上記例に記載のものに限定されない。本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、当業者は、形態及び詳細において本発明に様々な変更及び改良を加えることができ、これらはいずれも本発明の保護範囲に入ると考えられる。
【0241】
本明細書で言及されるいくつかの核酸配列情報は以下のとおりである。
【表29】
【0242】
本明細書で言及されるいくつかのプライマー配列情報は以下のとおりである。
【表30】
引用文献:
[1] Davies, J; Smith, D I (1978). Plasmid-Determined Resistance to Antimicrobial Agents. Annual Review of Microbiology, 32(1), 469-508
[2] Schleef, M. (2013) Minicircle and Miniplasmid DNA Vectors: The Future of Non-Viral and Viral Gene Transfer. Wiley-VCH
[3] Luke, J. et al. (2009) Improved antibiotic-free DNA vaccine vectors utilizing a novel RNA based plasmid selection system. Vaccine 27, 6454-6459
図1
図2
図3
図4
図5
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【配列表】
2024515651000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-10-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前駆体プラスミドであって、
1) 複製開始部位と、
2) 選択マーカー遺伝子と、
3) 標的遺伝子又は前記標的遺伝子を挿入するためのクローニング部位と、
4) 対になった組換え部位とを含み、ここで、
前記対になった組換え部位により、前記前駆体プラスミドは、リコンビナーゼの存在下で、自己組換えを行って、選択マーカー遺伝子のない娘プラスミド分子及び環状二本鎖DNA分子を形成することができ、
前記娘プラスミドは、前記複製開始部位と前記標的遺伝子とを含むか、又は前記複製開始部位と前記クローニング部位とを含み、そして、
前記環状二本鎖DNAは、前記選択マーカー遺伝子を含む、前駆体プラスミド。
【請求項2】
前記対になった組換え部位の配列は、同一方向である、請求項1に記載の前駆体プラスミド。
【請求項3】
前記複製開始部位は、前記標的遺伝子又は前記クローニング部位に隣接し、前記対になった組換え部位は、それぞれ前記複製開始部位並びに前記標的遺伝子の上流及び下流に隣接し、又は前記対になった組換え部位は、それぞれ前記複製開始部位及び前記クローニング部位の上流及び下流に隣接し、前記複製開始部位は、pUCの複製開始部位、pMB1及びその誘導体の複製開始部位、ColE1の複製開始部位並びにR6Kγの複製開始部位から選択される、請求項1又は2に記載の前駆体プラスミド。
【請求項4】
前記対になった組換え部位は、同一方向のloxP配列、同一方向のFRT配列及び同一方向のattB/attP配列から選択され、前記対になった組換え部位は、同一方向のlox71配列及びlox66配列である、請求項1~3のいずれか一項に記載の前駆体プラスミド。
【請求項5】
前記複製開始部位は、SEQ ID NO: 43~46に示すヌクレオチド配列と、SEQ ID NO: 43~46に示すヌクレオチド配列と少なくとも80%の同一性を有し、且つ複製始点となり得るヌクレオチド配列とを含む、請求項に記載の前駆体プラスミド。
【請求項6】
rop遺伝子配列、エンドヌクレアーゼのコード配列及びプラスミド複製ヘルパータンパク質のコード配列のうちの一つ又は複数をさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の前駆体プラスミド。
【請求項7】
前記選択マーカー遺伝子は、抗生物質耐性遺伝子である、請求項1~のいずれか一項に記載の前駆体プラスミド。
【請求項8】
前記リコンビナーゼのコード遺伝子をさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の前駆体プラスミド。
【請求項9】
前記前駆体プラスミドは、適切な条件下で、前記リコンビナーゼを発現することができる、請求項に記載の前駆体プラスミド。
【請求項10】
SEQ ID NO: 8、34、39~42又は47に示すヌクレオチド配列、又はSEQ ID NO: 8、34、39~42又は47に示すヌクレオチド配列と少なくとも80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の前駆体プラスミド。
【請求項11】
選択マーカー遺伝子のない娘プラスミドを製造する方法であって、
1) 請求項1~10のいずれか一項に記載の前駆体プラスミドを、前記リコンビナーゼを発現することができるか又はその発現を補助することができる宿主細胞に導入し、前記選択マーカー遺伝子を発現する宿主細胞をスクリーニングすることと、
2) ステップ1) でスクリーニングされた宿主細胞を培養して、前記リコンビナーゼの前記宿主細胞での発現を可能にし、前記宿主細胞を培養し、前記選択マーカー遺伝子を発現しない宿主細胞をスクリーニングすることと、
3)前記娘プラスミドを得るために、ステップ2) でスクリーニングされた宿主細胞を培養し、プラスミドを抽出することとを含む、方法。
【請求項12】
前記対になった組換え部位は同一方向のloxP配列であり、且つ前記リコンビナーゼはCreリコンビナーゼであり、前記対になった組換え部位は同一方向のFRT配列であり、且つ前記リコンビナーゼはFlpリコンビナーゼであり、又は前記対になった組換え部位は同一方向のattB/attP配列であり、且つ前記リコンビナーゼはPhiC31リコンビナーゼである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記対になった組換え部位は同一方向のlox71配列及びlox66配列であり、且つ前記リコンビナーゼはCreリコンビナーゼである、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記宿主細胞は、そのゲノムに前記リコンビナーゼのコード遺伝子を含み、又は前記宿主細胞は、前記リコンビナーゼのコード遺伝子を含有する発現ベクターを含み、或いは、記前駆体プラスミドは、前記リコンビナーゼのコード遺伝子を含み、且つ前記前駆体プラスミドは、前記宿主細胞で前記リコンビナーゼを発現することができる、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記宿主細胞は、大腸菌である、請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
選択マーカー遺伝子のない娘プラスミドを製造するためのセットであって、請求項1~10のいずれか一項に記載の前駆体プラスミドを含み、前記リコンビナーゼを発現することができるか又はその発現を補助することができる宿主細胞をさらに含む、セット。
【請求項17】
前記対になった組換え部位は同一方向のloxP配列であり、且つ前記リコンビナーゼはCreリコンビナーゼであり、前記対になった組換え部位は同一方向のFRT配列であり、且つ前記リコンビナーゼはFlpリコンビナーゼであり、又は前記対になった組換え部位は同一方向のattB/attP配列であり、前記リコンビナーゼはphiC31リコンビナーゼであり、前記対になった組換え部位は同一方向のlox71配列及びlox66配列であり、且つ前記リコンビナーゼはCreリコンビナーゼである、請求項16に記載のセット。
【請求項18】
前記宿主細胞は、そのゲノムに前記リコンビナーゼのコード遺伝子を含み、又は前記宿主細胞は、前記リコンビナーゼのコード遺伝子を含有する発現ベクターを含む、請求項16又は17に記載のセット。
【請求項19】
前記発現ベクターは、条件的誘導欠失型プラスミド複製エレメントを含む、請求項18に記載のセット。
【請求項20】
前記宿主細胞は、大腸菌である、請求項16~19のいずれか一項に記載のセット。
【請求項21】
複製開始部位と標的遺伝子とを含む娘プラスミドであって、抗生物質耐性遺伝子を含まない、娘プラスミド。
【請求項22】
前記複製開始部位は、pUCの複製開始部位、pMB1及びその誘導体の複製開始部位、ColE1の複製開始部位並びにR6Kγの複製開始部位から選択される、請求項21に記載の娘プラスミド。
【請求項23】
前記複製開始部位は、SEQ ID NO: 43~46に示すヌクレオチド配列と、SEQ ID NO: 43~46に示すヌクレオチド配列と少なくとも80%の同一性を有し、且つ複製始点となり得るヌクレオチド配列とを含む、請求項21又は22に記載の娘プラスミド。
【請求項24】
前記標的遺伝子は、プロモーター、タンパク質を発現するコード遺伝子及びターミネーターの配列のうちの一つ又は複数を含む、請求項21~23のいずれか一項に記載の娘プラスミド。
【請求項25】
宿主細胞内で複製され得る、請求項21~24のいずれか一項に記載の娘プラスミド。
【請求項26】
スクリーニングストレスのない細胞培養条件下で、前記宿主細胞内で複製することができる、請求項25に記載の娘プラスミド。
【請求項27】
請求項11~15のいずれか一項に記載の方法によって得られた娘プラスミド。
【請求項28】
請求項21~27のいずれか一項に記載の娘プラスミドを含む宿主細胞であって、前記娘プラスミドは、前記宿主細胞内で複製することができ、前記娘プラスミドは、培養、収集及び抽出によって前記宿主細胞から得られる、宿主細胞。
【請求項29】
スクリーニングストレスのない細胞培養条件下で、前記娘プラスミドを増幅することができる、請求項28に記載の宿主細胞。
【請求項30】
請求項21~27のいずれか一項に記載の娘プラスミドを含む組成物であって、前記娘プラスミドの含有量は、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%であり、前記組成物における娘プラスミドの含有量を測定するための方法は、NGS分析方法又はゲル電気泳動イメージング分析方法である、組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0102
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0102】
本発明による選択マーカーのないプラスミドは、プラスミドの安全性及び安定性を向上させるとともに細胞傷害性を低下させるために、DNA送達ベクター又はウイルスパッケージングプラスミドベクターとして、遺伝子及び細胞療法分野に用いられ得る。
本発明によれば以下の発明が提供される。
[1]前駆体プラスミドであって、
1) 複製開始部位と、
2) 選択マーカー遺伝子と、
3) 標的遺伝子又は前記標的遺伝子を挿入するためのクローニング部位と、
4) 対になった組換え部位とを含み、ここで、
前記対になった組換え部位により、前記前駆体プラスミドは、リコンビナーゼの存在下で、自己組換えを行って、選択マーカー遺伝子のない娘プラスミド分子及び環状二本鎖DNA分子を形成することができ、
前記娘プラスミドは、前記複製開始部位と前記標的遺伝子とを含むか、又は前記複製開始部位と前記クローニング部位とを含み、そして、
前記環状二本鎖DNAは、前記選択マーカー遺伝子を含む、前駆体プラスミド。
[2]前記対になった組換え部位の配列は、同一方向である、上記[1]に記載の前駆体プラスミド。
[3]前記複製開始部位は、前記標的遺伝子又は前記クローニング部位に隣接し、前記対になった組換え部位は、それぞれ前記複製開始部位並びに前記標的遺伝子の上流及び下流に隣接し、又は前記対になった組換え部位は、それぞれ前記複製開始部位及び前記クローニング部位の上流及び下流に隣接する、上記[1]又は[2]に記載の前駆体プラスミド。
[4]前記対になった組換え部位は、同一方向のloxP配列、同一方向のFRT配列及び同一方向のattB/attP配列から選択される、上記[1]~[3]のいずれかに記載の前駆体プラスミド。
[5]前記対になった組換え部位は、同一方向のlox71配列及びlox66配列である、上記[4]に記載の前駆体プラスミド。
[6]前記複製開始部位は、pUCの複製開始部位、pMB1及びその誘導体の複製開始部位、ColE1の複製開始部位並びにR6Kγの複製開始部位から選択される、上記[1]~[5]のいずれかに記載の前駆体プラスミド。
[7]前記複製開始部位は、SEQ ID NO: 43~46に示すヌクレオチド配列と、SEQ ID NO: 43~46に示すヌクレオチド配列と少なくとも80%の同一性を有し、且つ複製始点となり得るヌクレオチド配列とを含む、上記[6]に記載の前駆体プラスミド。
[8]rop遺伝子配列、エンドヌクレアーゼのコード配列及びプラスミド複製ヘルパータンパク質のコード配列のうちの一つ又は複数をさらに含む、上記[1]~[7]のいずれかに記載の前駆体プラスミド。
[9]前記選択マーカー遺伝子は、抗生物質耐性遺伝子である、上記[1]~[8]のいずれかに記載の前駆体プラスミド。
[10]他のプラスミド骨格配列をさらに含む、上記[1]~[9]のいずれかに記載の前駆体プラスミド。
[11]前記リコンビナーゼのコード遺伝子をさらに含む、上記[1]~[10]のいずれかに記載の前駆体プラスミド。
[12]前記前駆体プラスミドは、適切な条件下で、前記リコンビナーゼを発現することができる、上記[11]に記載の前駆体プラスミド。
[13]前記環状二本鎖DNAは、rop遺伝子配列、他のプラスミド骨格配列及び前記リコンビナーゼのコード遺伝子のうちの一つ又は複数をさらに含む、上記[8]~[11]のいずれかに記載の前駆体プラスミド。
[14]SEQ ID NO: 8、34、39~42又は47に示すヌクレオチド配列、又はSEQ ID NO: 8、34、39~42又は47に示すヌクレオチド配列と少なくとも80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、上記[1]~[13]のいずれかに記載の前駆体プラスミド。
[15]上記[1]~[14]のいずれかに記載の前駆体プラスミドの、選択マーカー遺伝子のない娘プラスミドの製造における用途。
[16]選択マーカー遺伝子のない娘プラスミドを製造する方法であって、
1) 上記[1]~[14]のいずれかに記載の前駆体プラスミドを、前記リコンビナーゼを発現することができるか又はその発現を補助することができる宿主細胞に導入し、前記選択マーカー遺伝子を発現する宿主細胞をスクリーニングすることと、
2) ステップ1) でスクリーニングされた宿主細胞を培養して、前記リコンビナーゼの前記宿主細胞での発現を可能にし、前記宿主細胞を培養し、前記選択マーカー遺伝子を発現しない宿主細胞をスクリーニングすることと、
3)前記娘プラスミドを得るために、ステップ2) でスクリーニングされた宿主細胞を培養し、プラスミドを抽出することとを含む、方法。
[17]前記対になった組換え部位は同一方向のloxP配列であり、且つ前記リコンビナーゼはCreリコンビナーゼであり、前記対になった組換え部位は同一方向のFRT配列であり、且つ前記リコンビナーゼはFlpリコンビナーゼであり、又は前記対になった組換え部位は同一方向のattB/attP配列であり、且つ前記リコンビナーゼはPhiC31リコンビナーゼである、上記[16]に記載の方法。
[18]前記対になった組換え部位は同一方向のlox71配列及びlox66配列であり、且つ前記リコンビナーゼはCreリコンビナーゼである、上記[16]又は[17]に記載の方法。
[19]前記宿主細胞は、そのゲノムに前記リコンビナーゼのコード遺伝子を含み、又は前記宿主細胞は、前記リコンビナーゼのコード遺伝子を含有する発現ベクターを含む、上記[16]~[18]のいずれかに記載の方法。
[20]前記前駆体プラスミドは、前記リコンビナーゼのコード遺伝子を含み、且つ前記前駆体プラスミドは、前記宿主細胞で前記リコンビナーゼを発現することができる、上記[16]~[18]のいずれかに記載の方法。
[21]前記リコンビナーゼは、前記宿主細胞内で誘導的に発現される、上記[16]~[20]のいずれかに記載の方法。
[22]前記発現ベクターは、条件的誘導欠失型プラスミド複製エレメントを含む、上記[19]又は[21]に記載の方法。
[23]前記宿主細胞は、大腸菌である、上記[16]~[22]のいずれかに記載の方法。
[24]選択マーカー遺伝子のない娘プラスミドを製造するためのセットであって、上記[1]~[14]のいずれかに記載の前駆体プラスミドを含む、セット。
[25]前記リコンビナーゼを発現することができるか又はその発現を補助することができる宿主細胞をさらに含む、上記[24]に記載のセット。
[26]前記対になった組換え部位は同一方向のloxP配列であり、且つ前記リコンビナーゼはCreリコンビナーゼであり、前記対になった組換え部位は同一方向のFRT配列であり、且つ前記リコンビナーゼはFlpリコンビナーゼであり、又は前記対になった組換え部位は同一方向のattB/attP配列であり、前記リコンビナーゼはphiC31リコンビナーゼである、上記[24]又は[25]に記載のセット。
[27]前記対になった組換え部位は同一方向のlox71配列及びlox66配列であり、且つ前記リコンビナーゼはCreリコンビナーゼである、上記[24]~[26]のいずれかに記載のセット。
[28]前記宿主細胞は、そのゲノムに前記リコンビナーゼのコード遺伝子を含み、又は前記宿主細胞は、前記リコンビナーゼのコード遺伝子を含有する発現ベクターを含む、上記[25]~[27]のいずれかに記載のセット。
[29]前記リコンビナーゼは、前記宿主細胞で誘導的に発現される、上記[25]~[28]のいずれかに記載のセット。
[30]前記発現ベクターは、条件的誘導欠失型プラスミド複製エレメントを含む、上記[28]又は[29]に記載のセット。
[31]前記宿主細胞は、大腸菌である、上記[25]~[30]のいずれかに記載のセット。
[32]標的遺伝子を前記クローニング部位に挿入することにより、組換えてから形成された前記娘プラスミドは、前記標的遺伝子を含む、上記[24]~[31]のいずれかに記載のセット。
[33]複製開始部位と標的遺伝子とを含む娘プラスミドであって、抗生物質耐性遺伝子を含まない、娘プラスミド。
[34]前記複製開始部位は、pUCの複製開始部位、pMB1及びその誘導体の複製開始部位、ColE1の複製開始部位並びにR6Kγの複製開始部位から選択される、上記[33]に記載の娘プラスミド。
[35]前記複製開始部位は、SEQ ID NO: 43~46に示すヌクレオチド配列と、SEQ ID NO: 43~46に示すヌクレオチド配列と少なくとも80%の同一性を有し、且つ複製始点となり得るヌクレオチド配列とを含む、上記[33]又は[34]に記載の娘プラスミド。
[36]前記標的遺伝子は、プロモーター、タンパク質を発現するコード遺伝子及びターミネーターの配列のうちの一つ又は複数を含む、上記[33]~[35]のいずれかに記載の娘プラスミド。
[37]宿主細胞内で複製され得る、上記[33]~[36]のいずれかに記載の娘プラスミド。
[38]スクリーニングストレスのない細胞培養条件下で、前記宿主細胞内で複製することができる、上記[37]に記載の娘プラスミド。
[39]上記[16]~[23]のいずれかに記載の方法によって得られた娘プラスミド。
[40]上記[33]~[39]のいずれかに記載の娘プラスミドを含む宿主細胞であって、前記娘プラスミドは、前記宿主細胞内で複製することができる、宿主細胞。
[41]前記娘プラスミドは、培養、収集及び抽出によって前記宿主細胞から得られる、上記[40]に記載の宿主細胞。
[42]スクリーニングストレスのない細胞培養条件下で、前記娘プラスミドを増幅することができる、上記[40]又は[41]に記載の宿主細胞。
[43]上記[33]~[39]のいずれかに記載の娘プラスミドを含む組成物であって、前記娘プラスミドの含有量は、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%である、組成物。
[44]前記組成物における娘プラスミドの含有量を測定するための方法は、NGS分析方法又はゲル電気泳動イメージング分析方法である、上記[43]に記載の組成物。
[45]前記NGS分析方法によって測定された前記組成物における娘プラスミドの含有量は、少なくとも90%、95%、96%、97%、98%又は99%である、上記[43]又は[44]に記載の組成物。
[46]前記ゲル電気泳動イメージング分析方法によって測定された前記組成物における娘プラスミドの含有量は、少なくとも90%、95%、96%、97%、98%又は99%である、上記[43]~[45]のいずれかに記載の組成物。
【国際調査報告】