(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】サブミクロンポリマー粒子を製造するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20240403BHJP
C08J 3/12 20060101ALI20240403BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
C08L101/00
C08J3/12 Z CER
C08J3/12 CEZ
C08K5/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563953
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(85)【翻訳文提出日】2023-12-13
(86)【国際出願番号】 EP2022058718
(87)【国際公開番号】W WO2022223261
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ブランハム, ケリー ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ハワード, サラ
(72)【発明者】
【氏名】シングレタリー, ナンシー ジェー.
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA43
4F070AA47
4F070AA52
4F070AA58
4F070AB09
4F070AB13
4F070AC50
4F070BA07
4F070BB05
4F070CB02
4F070CB12
4F070DA11
4F070DB10
4F070DC07
4J002AA002
4J002AA011
4J002CC292
4J002CF161
4J002CF181
4J002CH001
4J002CL001
4J002CM041
4J002CN011
4J002CN031
4J002EG076
4J002EN116
4J002ES016
4J002EV256
4J002GT00
(57)【要約】
本開示は、a)少なくとも1種の熱可塑性ポリマーと、b)少なくとも1種の低分子有機塩と、c)少なくとも1種の水溶性又は水分散性ポリマーと、を含む組成物に関し、サブミクロンサイズのポリマー粒子の製造にそれを使用するためのプロセスを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1種の熱可塑性ポリマーと、
b)少なくとも1種の低分子有機塩と、
c)少なくとも1種の水溶性又は水分散性ポリマーと、
を含む組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーは、典型的には、液晶ポリマー(LCP)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリアミド-イミド(PAI)、ポリアリーレンスルフィド(PAS)、ポリアリールエーテルスルホン(PAES)、フッ素ポリマー(FP)及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーは、液晶ポリマー(LCP);ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、典型的にはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)又はポリエーテルケトンケトン(PEKK);ポリアリーレンスルフィド(PAS)、典型的にはポリフェニレンスルフィド(PPS);及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1種の低分子有機塩は、芳香族塩、典型的には、芳香族カルボン酸塩又は芳香族スルホン酸塩である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種の低分子有機塩は、安息香酸塩又はベンゼンスルホン酸塩、典型的には、安息香酸ナトリウム塩又はベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、より典型的には、ベンゼンスルホン酸ナトリウム塩である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種の水溶性又は水分散性ポリマーは、スルホン化芳香族ポリマーの塩、典型的には、芳香族スルホン酸とホルムアルデヒドとの重縮合物の塩、より典型的には、ナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドとの重縮合物の塩である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1種の水溶性又は水分散性ポリマーは、構造:
【化1】
(式中、
Mは、一価の陽イオン、典型的にはアルカリ金属陽イオンであり;
pは、0.5~6の値である)で表される繰り返し単位を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物は、前記組成物の重量に対し、
a)前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーを30~50重量%と、
b)前記少なくとも1種の低分子有機塩を25~35重量%と、
c)前記少なくとも1種の水溶性又は水分散性ポリマーを25~35重量%と、
を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
添加剤又は充填剤を更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1種の水溶性又は水分散性ポリマーとは異なる水溶性又は水分散性ポリマーを更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1種の低分子有機塩及び前記少なくとも1種の水溶性又は水分散性ポリマーの総量は、前記組成物の重量に対し55重量%を超えるか又は55重量%未満である、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーの量は、前記組成物の重量に対し40重量%以下である、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーのメルトフローレートは、400℃、2.16kgで3~36g/minである、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
粒子の平均径が2μm未満、典型的には1μm未満、例えば0.1~1μmである熱可塑性ポリマーを含む粒子を調製するための方法であって:
a)請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物を溶融ブレンドすることと、
b)工程a)で得られた前記溶融ブレンドされた組成物をペレット又はストランドに加工することと、
c)工程b)で得られた前記ペレット又はストランドを冷却することと、
d)工程c)で得られた前記冷却されたペレット又はストランドを、水、典型的には高温の水、より典型的には50~100℃の温度の水と接触させ、それにより、前記熱可塑性ポリマーを含む前記粒子を形成させることと、
を含む、方法。
【請求項15】
前記熱可塑性ポリマーを含む前記粒子を乾燥させること及び/又は篩別することを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記方法は、磨砕工程を含まない、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
調製された前記熱可塑性ポリマーを含む前記粒子のBET表面積は、5~15m
2/g、典型的には、5~8m
2/gである、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
請求項14~17のいずれか一項に記載の方法により調製された粒子の集合体。
【請求項19】
それぞれが少なくとも1種の熱可塑性ポリマーを含む粒子の集合体であって、前記粒子の平均径は、2μm未満、典型的には1μm未満、例えば0.1~1μmであり、BET表面積は、5~15m
2/g、典型的には5~8m
2/gである、粒子の集合体。
【請求項20】
請求項18又は19に記載の粒子の集合体と、少なくとも1種の界面活性剤と、液体媒体と、を含む分散液。
【請求項21】
前記界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、典型的には、ポリ(アルキレンオキシド)を含む非イオン性界面活性剤である、請求項20に記載の分散液。
【請求項22】
前記分散液は、前記分散液の総重量に対し最大40重量%の粒子の前記集合体及び最大10重量%、典型的には最大5重量%の前記界面活性剤を含む、請求項20又は21に記載の分散液。
【請求項23】
分散液を調製するための方法であって、請求項14~17のいずれか一項に従い調製された粒子の集合体又はそれぞれが少なくとも1種の熱可塑性ポリマーを含む粒子の集合体であって、前記粒子は、平均径が、2μm未満、典型的には1μm未満、例えば0.1~1μmであり、BET表面積が、5~15m
2/g、典型的には5~8m
2/gである、粒子の集合体を、少なくとも1種の界面活性剤及び液体媒体と混合することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年4月19日に出願された米国仮特許出願第63/176,527号に基づく優先権を主張するものであり、この出願の全内容を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、a)少なくとも1種の熱可塑性ポリマーと、b)少なくとも1種の低分子有機塩と、c)少なくとも1種の水溶性又は水分散性ポリマーと、を含む組成物の分野に関し、サブミクロンサイズのポリマー粒子の製造にそれを使用するためのプロセスを含む。
【背景技術】
【0003】
様々な用途に用いられるコーティングやワニスは膨大であり且つ多様である。コーティングの用途の一部を挙げると、家屋の内部及び外部塗料、室内調度、高層ビルのガラス及びファサードのコーティング、多くの形態がある輸送用車両及び構造体、例えば、自動車、飛行機、橋梁、路面標示、船舶、宇宙船その他同種のものに加えて、多種多様な産業用及び非産業用メンテナンス塗装などがある。それよりも小さい規模では、コーティングは、調理器具などの台所用器具並びに消費者用及び産業用電子機器などの多くの電子製品並びに生物医学製品に使用されている。コーティング層の厚みは用途に応じて幅広く変化させることができる。例えば、航空母艦の甲板の防滑塗装は数百マイクロメートル程度となり得るが、一方で、マイクロチップ用の絶縁コーティングは1マイクロメートル未満程度のものもある。コーティングはこのような用途において、製品の美しさを引き立たせたり、基材を幅広い範囲の酷使(例えば、引掻きや衝撃による損傷、腐食、長期間にわたる風雨への曝露及び生物付着)から保護したり、製品に特殊な機能(例えば、導電性、絶縁性、撥水性及び熱反射性)を付与するなどの、1つ又は複数の重要な役割を果たす。しかしながら、市場は、性能特性(performance attribute)の改善、その幾つかを挙げると、産業用コーティング及び塗料の耐腐食性及び耐薬品性の向上、調理器具その他の表面用コーティングの耐引掻き性の向上並びにエレクトロニクス用途に用いるための低Dk/Dfコーティングの薄膜化などを強く要求しており、そのようなコーティングを有する製品及び構造体の範囲が広大であることから、性能に関する難題が常に存在する。
【0004】
多くの場合、コーティング又はワニスの性能特性(performance characteristics)は、その中に含まれる1種又は複数種の構成要素の粒子径(particle size)に依存する。例えば、塗料の安定性や耐候性などの一部の特性は、塗料中の顔料の粒子径に依存する。例えば、顔料の粒子径が小さくなると、顔料の表面積が増加し、その結果として、通常は粘度が増大する。粘度が高くなるか又はチキソトロフィー(thixotrophy)が生じると、顔料の移動が抑制され、沈降及び再凝集の両方が防止される。パッケージ(package)の安定性に加えて、硬化した被膜の安定性又は適用及び硬化後のコーティングの性能も顔料の粒子径に影響される可能性がある。コーティングを潤滑剤用途に使用する場合は、増粘剤が使用されることが多い。増粘剤の粒子径が非常に小さければ、所望の潤滑性能を得るために必要な量が少なくなるため、質量効率がより高くなるという利点が得られるであろう。例えば、エレクトロニクス用途に使用される薄膜及びコンフォーマルコーティングは、低誘電率などの特殊な機能を付与する粒子を含むことが多い。多くの場合、コーティングの厚みは、特殊な機能を付与するこの種の粒子によって制限されるので、粒子径が小さいほど、薄い薄膜及び薄いコンフォーマルコーティングを得ることが可能になる。
【0005】
大きさの非常に小さい粒子を製造するための様々な手法が知られており、この種の手法は、より大きな粒子を、例えば磨砕(grind)することによって大きさを小さくしていくトップダウン手法、又は小さい粒子を、例えば乳化重合によって直接化学的に合成するボトムアップ手法である。しかし、非常に細かい粒子、すなわち、数ミクロン程度又はそれを下回る大きさの粒子を製造することに関する難題は変わらず存在する。
【0006】
したがって、新規の改良された組成物及び非常に細かい、典型的には数ミクロン程度又はそれを下回る大きさの粒子を製造するためのプロセスが求められ続けている。本明細書においては、平均径が2μm未満、典型的には1μm未満、例えば0.1~1μmである粒子を製造するために使用される組成物及びプロセスを記載する。
【発明の概要】
【0007】
この目的及び以下の詳細な説明から明らかになる他の目的は、その全体又は一部が、本開示の組成物、方法及び/又はプロセスによって達成される。
【0008】
第1の態様において、本開示は:
a)少なくとも1種の熱可塑性ポリマーと、
b)少なくとも1種の低分子有機塩と、
c)少なくとも1種の水溶性又は水分散性ポリマーと、
を含む組成物に関する。
【0009】
第2の態様において、本開示は、粒子の平均径が2μm未満、典型的には1μm未満、例えば、0.1~1μmである熱可塑性ポリマーを含む粒子を調製するためのプロセスであって:
a)本明細書に記載する組成物を溶融ブレンドすることと、
b)工程a)で得られた溶融ブレンドされた組成物をペレット又はストランドに加工することと、
c)工程b)で得られたペレット又はストランドを冷却することと、
d)工程c)で得られた冷却されたペレット又はストランドを、水、典型的には高温の水、より典型的には50~100℃の温度の水と接触させ、それにより、熱可塑性ポリマーを含む粒子を形成させることと、
を含むプロセスに関する。
【0010】
第3の態様において、本開示は、それぞれが少なくとも1種の熱可塑性ポリマーを含む粒子の集合体であって、粒子の平均径が2μm未満、典型的には1μm未満、例えば0.1~1μmであり、BET表面積が5~15m2/g、典型的には5~8m2/gである、集合体に関する。
【0011】
第4の態様において、本開示は、本明細書に記載する粒子の集合体と、少なくとも1種の界面活性剤と、液体媒体とを含む分散液に関する。
【0012】
第5の態様において、本開示は、分散液を調製するためのプロセスであって、本明細書に記載するプロセスに従い調製される粒子の集合体又はそれぞれが少なくとも1種の熱可塑性ポリマーを含む粒子の集合体であって、粒子の平均径は2μm未満、典型的には1μm未満、例えば0.1~1μmであり、BET表面積は5~15m2/g、典型的には5~8m2/gである、粒子の集合体と、少なくとも1種の界面活性剤と、液体媒体とを混合することを含む、プロセスに関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示に従うPEEKポリマーから作製された本発明の粒子を示すものである。
【
図2】本開示に従うPPSポリマーから作製された本発明の粒子を示すものである。
【
図3】本開示に従うLCPから作製された本発明の粒子を示すものである。
【
図4】本開示に従う分散液の粒子径分布を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書で使用される場合、用語「1つの(a)」、「1つの(an)」又は「その(the)」は、特に明記しない限り、「1つ又は複数」又は「少なくとも1つ」を意味し、互いに交換して使用することができる。
【0015】
本明細書で使用される場合、「A及び/又はB」の形態の句で使用される用語「及び/又は」は、Aのみ、Bのみ又はAとBを一緒に、を意味する。
【0016】
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprises)」には、「から本質的になる(consists essentially of)」及び「からなる(consists of)」が含まれる。用語「含む(comprising)」には、「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」が含まれる。「含む(comprising)」は、「含む(including)」、「含有する(containing)」又は「を特徴とする(characterized by)」と同義であり、包括的又は非制限的であることを意図し、付加的な、列挙されていない構成要素又は工程を排除しない。移行句「から本質的になる(consisting essentially of)」は、指定された材料又は工程の他、記載された組成物、プロセス、方法又は物品の基本的特徴又は機能に本質的に影響を与えないものを含む。移行句「からなる(consisting of)」は、指定されていないあらゆる構成要素、工程又は成分を排除する。
【0017】
別段の規定がない限り、本明細書で使用される技術的な用語及び科学的な用語は全て、本明細書が関係する技術分野の当業者によって一般に理解されている意味と同じ意味を有する。
【0018】
本明細書で使用される場合、別段の指定がない限り、用語「約」又は「およそ」は、当業者によって決定される特定の値についての許容可能な誤差を意味し、これは、その値がどのように測定又は決定されるかに部分的に依存する。特定の実施形態では、用語「約」又は「およそ」は、1、2、3又は4標準偏差内を意味する。特定の実施形態では、用語「約」又は「およそ」は、所与の値又は範囲の50%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%又は0.05%以内を意味する。
【0019】
また、本明細書に記載する任意の数値範囲は、そこに包含されるあらゆる部分的な範囲を含むことを意図していることが理解されよう。例えば、範囲「1~10」は、列挙された最小値である1と、列挙された最大値である10との間の(これらの値を含む)あらゆる部分範囲、すなわち、1以上の最小値及び10以下の最大値を有する範囲を含むことを意図する。開示されている数値範囲は連続しているため、最小値と最大値との間の全ての値が含まれる。特に明記しない限り、本出願で指定する様々な数値範囲は近似値である。
【0020】
本開示全体を通して様々な刊行物を参照により援用することができる。参照により援用されるこのような刊行物における任意の文言の意味が本開示の文言の意味と矛盾する場合、他に指示がない限り、本開示の文言の意味が優先されるものとする。
【0021】
本明細書で使用される用語及び表現「発明」、「本発明(present invention)」、「本発明(instant invention)」並びに類似の用語及び表現は、非限定的であり、本発明の主題をいずれかの単一の実施形態に限定することを意図するものではなく、記載されている可能な全ての実施形態を包含する。
【0022】
濃度、重量比又は量の任意の範囲の指定において、任意の具体的な上限濃度、重量比又は量は、それぞれ任意の具体的な下限濃度、重量比又は量と関連し得ることに留意すべきである。
【0023】
本明細書に記載する組成物及びプロセスにより、ポリマー材料、通常は熱可塑性材料から構成されるサブミクロン粒子を製造することが可能になる。
【0024】
本開示の第1の態様は:
a)少なくとも1種の熱可塑性ポリマーと、
b)少なくとも1種の低分子有機塩と、
c)少なくとも1種の水溶性又は水分散性ポリマーと、
を含む組成物に関する。
【0025】
a)少なくとも1種の熱可塑性ポリマーと、b)少なくとも1種の低分子有機塩と、c)少なくとも1種の水溶性又は水分散性ポリマーと、を含む本組成物は、ポリマー粒子、典型的にはサブミクロンサイズの熱可塑性ポリマー粒子の製造に有用であることが見出された。少なくとも1種の熱可塑性ポリマーである成分a)は、その粒子を作製する材料であり、成分b)及びc)は、「担体相」を構成する。
【0026】
少なくとも1種の熱可塑性ポリマーは、当業者に知られている任意の熱可塑性ポリマーとすることができ、特に限定されない。好適な熱可塑性ポリマーとしては、液晶ポリマー(LCP)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリアミド-イミド(PAI)、ポリアリーレンスルフィド(PAS)、ポリアリールエーテルスルホン(PAES)、フッ素ポリマー(FP)及びこれらの組合せからなる群から選択されるポリマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
一実施形態において、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーは、液晶ポリマー(LCP);ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、典型的にはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)又はポリエーテルケトンケトン(PEKK);ポリアリーレンスルフィド(PAS)、典型的にはポリフェニレンスルフィド(PPS);及びこれらの組合せからなる群から選択される。
【0028】
LCPは、一般に、少なくとも1種のジカルボン酸と少なくとも1種のジオールとの反応生成物であり、したがって、ポリエステルである。幾つかの実施形態において、ポリエステルは、少なくとも1種のジカルボン酸と、少なくとも1種のジオールと、少なくとも1種のヒドロキシカルボン酸との反応生成物から形成される。
【0029】
好適なLCPは、少なくとも一部が芳香族ポリエステルである。幾つかの実施形態において、LCPは、完全な芳香族ポリエステルである。
【0030】
芳香族ジカルボン酸、ジオール及びヒドロキシカルボン酸は、本開示の実施形態に従い液晶ポリエステルを形成するのに適している。好適な液晶ポリマーは、対応する芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール又は芳香族ヒドロキシカルボン酸から誘導される、以下に示す構造単位のうちの1種又は複数種を含む:
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
(式中、Xは、出現毎に、ハロゲン、アルキル又はアリールである)。
【0031】
一実施形態において、液晶ポリマーは:
【化7】
【化8】
からなる群から選択される1種又は複数種の構造単位を含む。
【0032】
幾つかの実施形態において、LCPは、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、3,6-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種のジカルボン酸と、ヒドロキノン、レゾルシノール、4,4’-ビフェノール、3,3’-ビフェノール、2,4’-ビフェノール、2,3’-ビフェノール、3,4’-ビフェノール及びジヒドロキシナフタレンの異性体、例えば、1,4-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン及び2,6-ジヒドロキシナフタレンからなる群から選択される少なくとも1種のジオールと、から形成される。
【0033】
他の実施形態において、LCPは、p-ヒドロキシ安息香酸、m-ヒドロキシ安息香酸、2,6-ヒドロキシナフタル酸、3,6-ヒドロキシナフタル酸、1,6-ヒドロキシナフタル酸及び2,5-ヒドロキシナフタル酸からなる群から選択されるヒドロキシカルボン酸モノマーから形成される。
【0034】
LCPはまた、本明細書において上に記載したものに加えて、又はこれに替えて、非芳香族ジカルボン酸、非芳香族ジオール及び/又は非芳香族ヒドロキシカルボン酸を含むこともできる。例えば、LCPの形成に使用するのに好適なジカルボン酸は、脂環式ジカルボン酸及びその異性体、例えば、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸及び1,4-シクロヘキサンジカルボン酸である。
【0035】
場合によっては、LCPは、アミド官能基を含むことができる。アミンで修飾された及びアミドで修飾されたモノマー、例えば、4-アミノフェノール及び4-アセトアミドフェノールは、LCPの形成に好適に使用される。
【0036】
幾つかの実施形態において、LCPは、テレフタル酸構造単位を最大約50モル%と、イソフタル酸構造単位を最大約30モル%と、ビフェノール構造単位を最大約50モル%と、を含む。
【0037】
他の実施形態において、LCPは、テレフタル酸構造単位を約5モル%~約30モル%と、イソフタル酸構造単位を最大約20モル%と、ビフェノール構造単位を約5モル%~約30モル%と、を含む。
【0038】
幾つかの実施形態において、LCPは、ヒドロキノン構造単位を約5モル%~約40モル%含む。他の実施形態においては、約5モル%~約35モル%の2,6-ナフタレンジカルボン酸構造単位が更に存在する。
【0039】
一実施形態において、LCPは、p-ヒドロキシ安息香酸構造単位を約40モル%~約70モル%更に含む。他の実施形態において、LCPは、2,6-ヒドロキシナフタル酸を約15モル%~約30モル%更に含む。
【0040】
幾つかの実施形態において、LCPは、テレフタル酸、イソフタル酸、p-ヒドロキシ安息香酸及びビフェノールからなる芳香族モノマーの混合物を重合させることにより形成される。一実施形態において、LCPは、テレフタル酸、p-ヒドロキシ安息香酸及びビフェノールからなる芳香族モノマーの混合物を重合させることにより形成される。他の実施形態において、LCPは、テレフタル酸、p-ヒドロキシ安息香酸、ビフェノール及びヒドロキノンからなる芳香族モノマーの混合物を重合させることにより形成される。
【0041】
好適なLCPは、当業者に知られている方法に従い合成することができ、又は商業的な供給源から入手することもできる。例えば、好適なLCPとしては、Solvay Specialty Polymers USA,LLCから入手可能なXYDAR(登録商標)SRT-300、SRT-400、SRT-700、SRT-900及びSRT 1000液晶ポリマーが挙げられる。
【0042】
好適なPAEKポリマーは、前記PAEKポリマーの繰り返し単位の50モル%超が、Ar-C(O)-Ar’基(式中、Ar及びAr’は、互いに同一であるか又は異なる芳香族基である)を含む繰り返し単位(R
PAEK)であるものである。繰り返し単位(R
PAEK)は、通常、本明細書において以下に示す式(J-A)~式(J-O):
【化9】
【化10】
【化11】
(式中:
R’はそれぞれ、互いに同一であるか又は異なり、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から選択され;j’は、ゼロであるか又は0~4の整数である)から選択される。
【0043】
繰り返し単位RPAEKにおいて、それぞれのフェニレン部分は、独立に、繰り返し単位内のR’とは異なる他の部分への、1,2-結合、1,4-結合又は1,3-結合を有することができる。典型的には、フェニレン部分は、1,3-又は1,4-結合を有し、より典型的には、これらは1,4-結合を有する。
【0044】
幾つかの実施形態において、j’は、典型的には、出現毎にゼロである、すなわち、フェニレン部分は、ポリマーが主鎖内で結合することを可能にするもの以外の置換基を全く有しない。
【0045】
一実施形態において、繰り返し単位(R
PAEK)は、本明細書において以下に示す式(J’-A)~(J’-O):
【化12】
【化13】
から選択される。
【0046】
一実施形態においては、繰り返し単位の60モル%超、典型的には80モル%超、より典型的には90モル%超が、繰り返し単位RPAEKである。
【0047】
一実施形態においては、PAEKポリマーの実質的に全ての繰り返し単位が繰り返し単位RPAEKであり;鎖欠陥又は非常に少量の他の単位が存在してもよく、これらの後者は、PAEKポリマーの特性を実質的に変化させないようなものであると理解される。
【0048】
PAEKポリマーは、ホモポリマー、ランダム、交互又はブロックコポリマーとすることができる。PAEKポリマーがコポリマーである場合、これは、(i)式(J-A)~(J-O)から選択される少なくとも2種の異なる式の繰り返し単位RPAEKを含むか又は(ii)1種若しくは複数種の式(J-A)~(J-O)の繰り返し単位RPAEK及び繰り返し単位RPAEKとは異なる繰り返し単位R*PAEKを含むことができる。
【0049】
一実施形態において、PAEKポリマーは、ポリエーテルエーテルケトンポリマーPEEK)ポリマーとすることができる。他の実施形態において、PAEKポリマーは、ポリエーテルケトンケトンポリマーPEKKポリマーとすることができる。
【0050】
本発明の目的に関する用語「PEEKポリマー」は、その繰り返し単位の50モル%超が式J’-Aの繰り返し単位RPAEKである任意のポリマーを意味することを意図している。
【0051】
一実施形態においては、PEEKポリマーの繰り返し単位の75モル%超、典型的には85モル%超、より典型的には95モル%超、更に典型的には99モル%超が式J’-Aの繰り返し単位である。他の実施形態においては、PEEKポリマーの全ての繰り返し単位が式J’-Aの繰り返し単位である。
【0052】
本発明の目的に関する用語「PEKKポリマー」は、その繰り返し単位の50モル%超が式J’-Bの繰り返し単位(RPAEK)である任意のポリマーを意味することを意図している。
【0053】
一実施形態においては、PEKKポリマーの繰り返し単位の75モル%超、典型的には85モル%超、より典型的には95モル%超、更に典型的には99モル%超が式J’-Bの繰り返し単位である。一実施形態においては、PEKKポリマーの全ての繰り返し単位が式J’-Bの繰り返し単位である。
【0054】
PAEKポリマーは固有粘度(IV)によって特徴付けることができ、これは公知の方法及び装置を用いて測定することができる。例えば、測定は、No.50 Cannon-Fleske粘度計を使用して実施することができ、測定は溶解から4時間未満の時間内に25℃で実施される。
【0055】
幾つかの実施形態において、95~98%硫酸(d=1.84g/ml)中、PAEKポリマーの濃度を0.1g/100mlとして測定されたPAEKポリマーの固有粘度(IV)は、少なくとも0.50dl/g、典型的には少なくとも0.60dl/g、より典型的には少なくとも0.70dl/gである。
【0056】
幾つかの実施形態において、95~98%硫酸(d=1.84g/ml)中、(PAEK)ポリマーの濃度を0.1g/100mlとして測定されたPAEKポリマーのIVは、1.40dl/g以下、典型的には1.30dl/g以下、より典型的には1.20dl/g以下、最も典型的には1.15dl/g以下である。
【0057】
PAEKポリマーは、PAEKポリマーのブレンドを含んでいてもよい。例えば、PAEKポリマーは、2種以上の異なるPAEKポリマーのブレンド又は同一であるがグレードが異なる2種以上のPAEKポリマーのブレンドを含むことができる。例えば、ブレンドは、それぞれ溶融粘度によって区別することができる2種以上の同一のPAEKポリマーを含むことができる。溶融粘度は、ASTM D3835に準拠し、キャピラリーレオメータを用いて測定される。キャピラリーレオメータとして、Kayeness Galaxy V Rheometer(Model 8052 DM)が例示される。
【0058】
幾つかの実施形態において、ASTM D3835に準拠し、キャピラリーレオメータを用いて、400℃、剪断速度1000s-1で測定されたPAEKポリマーの溶融粘度は、少なくとも0.05kPa・s、典型的には少なくとも0.08kPa・s、より典型的には少なくとも0.1kPa・s、更に典型的には少なくとも0.12kPa・sである。
【0059】
幾つかの実施形態において、ASTM D3835に準拠し、キャピラリーレオメータを用いて、400℃、剪断速度1000s-1で測定されたPAEKポリマーの溶融粘度は、最大1.00kPa・s、典型的には最大0.80kPa・s、より典型的には最大0.70kPa・s、更に典型的には最大0.60kPa・s、最も典型的には最大0.50kPa・sである。
【0060】
本発明組成物中に使用するのに好適なPAEKポリマーは、当業者に知られている任意の方法により調製することも商業的に入手することも可能である。例えば、好適なPAEKポリマーとして、Solvay Specialty Polymers USA,LLCから市販されているKETASPIRE(登録商標)ポリエーテルエーテルケトンが挙げられる。
【0061】
好適なポリアリーレンスルフィド(PAS)は、繰り返し単位の5モル%超が、式:
-Ar-S-
(式中、Ar基は、任意選択的に置換されたフェニレン又はナフチレン基などのアリーレン基を表し、その2つの末端は、それぞれC-S結合を介して2個の硫黄原子に直接結合している(それによりスルフィド基が形成される))で表される繰り返し単位RPASである、ポリマーである。
【0062】
一実施形態において、Arは、出現毎に、任意選択的に置換されたp-フェニレンであり、その場合は、結果として、構造:
【化14】
を有する繰り返し単位となり、又は任意選択的に置換されたm-フェニレンであり、その場合は、結果として、構造:
【化15】
を有する繰り返し単位となる。
【0063】
アリーレン基Arは、これらに限定されるものではないが、ハロゲン原子、C1~C12アルキル、C7~C24アルキルアリール、C7~C24アラルキル、C6~C18アリール、C1~C12アルコキシ基及びC6~C18アリールオキシ基などの1つ又は複数の置換基で置換されていてもよい。一実施形態においては、Arは無置換である。
【0064】
ポリアリーレンスルフィドは、典型的には、繰り返し単位RPASを25モル%超、より典型的には50モル%超、更に典型的には90モル%超含む。一実施形態において、ポリアリーレンスルフィドは、RPAS以外の繰り返し単位を含まない。
【0065】
一実施形態において、ポリアリーレンスルフィドは、ポリフェニレンスルフィドである、すなわち、Arは、pPh基すなわちp-フェニレン基である。
【0066】
好適なポリアリーレンスルフィドは、当業者に知られている方法に従い製造することも、商業的な供給源から入手することも可能である。例えば、好適なポリアリーレンスルフィドは、Solvay Specialty Polymers USA,LLCからRYTON(登録商標)の商品名で市販されている。
【0067】
少なくとも1種の熱可塑性ポリマーは、純ポリマーとして存在することもできるし、又は1種若しくは複数種の追加の熱可塑性ポリマーとのポリマーブレンドの一部として存在することもできる。
【0068】
成分b)は、低分子有機塩、典型的には芳香族塩である。本明細書において使用される芳香族塩は、芳香族カルボン酸又は芳香族スルホン酸などの芳香族酸と、塩基、典型的にはアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩基との中和生成物である。芳香族塩は、概して、1個、2個又は3個の炭化水素環系を含む芳香族化合物、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、チオフェンその他同種のもの並びにこれらの全ての化合物の置換された誘導体から誘導される。一実施形態において、少なくとも1種の低分子有機塩は、芳香族カルボン酸塩又は芳香族スルホン酸塩である。
【0069】
例示的な芳香族カルボン酸塩としては、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、アミノ安息香酸、メチル安息香酸、ニトロ安息香酸及びこれらの異性体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例示的な芳香族スルホン酸塩としては、ベンゼンスルホン酸、4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸、3-アミノベンゼンスルホン酸、アニリン-2-スルホン酸、スルファニル酸、3-アミノ-4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸、2,4-ジアミノベンゼンスルホン酸、2,5-ジアミノベンゼンスルホン酸及びこれらの異性体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。幾つかの実施形態において、少なくとも1種の低分子有機塩は、安息香酸塩又はベンゼンスルホン酸塩である。
【0070】
低分子有機塩は、概して、アルカリ金属塩、例えば、ナトリウム、リチウム及びカリウム塩;アルカリ土類金属塩、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウム塩;又はアンモニウム塩である。一実施形態において、少なくとも1種の低分子有機塩は、安息香酸ナトリウム塩又はベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、より典型的にはベンゼンスルホン酸ナトリウム塩である。
【0071】
成分c)は、水溶性又は水分散性ポリマーである。当業者に知られている任意の水溶性又は水分散性ポリマーを使用することができる。しかしながら、少なくとも1種の水溶性又は水分散性ポリマーは、典型的には、スルホン化芳香族ポリマーの塩である。
【0072】
一実施形態において、少なくとも1種の水溶性又は水分散性ポリマーは、典型的には、芳香族スルホン酸とホルムアルデヒドとの重縮合物の塩、より典型的には、ナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドとの重縮合物の塩である。
【0073】
一実施形態において、少なくとも1種の水溶性又は水分散性ポリマーは、構造:
【化16】
(式中、
Mは、一価の陽イオン、典型的にはアルカリ金属陽イオンであり;
pは、0.5~6の値である)で表される繰り返し単位R
NSPを含む。
【0074】
一実施形態において、Mは一価であり、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム及び有機アミンから誘導された置換アンモニウムイオン、第四級アンモニウムイオンからなる群から選択される。一実施形態において、Mはアルカリ金属陽イオンであり、典型的には、リチウム、ナトリウム及びカリウムからなる群から選択される。
【0075】
繰り返し単位RNSPにおいて示したように、芳香族環上のメチレン(-CH2-)結合の正確な位置及び向きは分からず、概して複雑且つ様々であると認識されている。一部のホルムアルデヒド結合は、-CH2-型のみでない場合もあり、CH2OCH2やCH2(OCH2)OCH2などの何らかの伸長された単位又はそれ以外の可能性も含まれ得るが、ホルムアルデヒド結合は、本質的に、繰り返し単位RNSPの構造中に表記したメチレン結合からなると考えられることが理解される。
【0076】
pの値は、本明細書においては、ポリマー構造の繰り返し単位当たりのスルホネート基又はスルホン酸基の個数の平均値と定義されるスルホン化度(D.S.)を表し、0.5~6の値とすることができる。市販のスルホン化ポリマーは、典型的には、ホルムアルデヒドをナフタレンスルホン酸と縮合することにより調製されており、したがって、スルホン化度は基本的に1である。しかしながら、本開示の組成物はこの種の市販のポリマーの使用に限定されず、スルホン化度が1以外である類似のホルムアルデヒド/ナフタレン縮合物も含まれる。pが1以外であるこのような実施形態において、繰り返し単位RNSPを含む水溶性又は水分散性ポリマーは、概して、ナフタレンホルムアルデヒド縮合ポリマー前駆体を芳香族スルホン化することにより調製され、ナフタレンホルムアルデヒド縮合ポリマー前駆体は、ほぼ等モル量のホルムアルデヒド及びナフタレンを、不活性溶媒中、硫酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸又は過塩素酸などの酸触媒の存在下に数時間加熱することにより調製される。次いで、無水三酸化硫黄、三酸化硫黄のリン酸トリエチル(TEP)錯体及び塩化スルホン酸などのスルホン化剤を、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン及びクロロホルムなどの好適な溶媒中で使用することにより、所望のスルホン化反応が達成される。
【0077】
組成物中の成分a)、b)及びc)の量は特に限定されない。しかしながら、一実施形態において、組成物は、好適には、組成物の重量に対し:
a)少なくとも1種の熱可塑性ポリマーを30~50重量%と、
b)少なくとも1種の低分子有機塩を25~35重量%と、
c)少なくとも1種の水溶性又は水分散性ポリマーを25~35重量%と、
を含む。
【0078】
一実施形態において、少なくとも1種の低分子有機塩及び少なくとも1種の水溶性又は水分散性ポリマーの総量は、組成物の重量に対し55重量%を超えるか又は55重量%未満である。
【0079】
他の実施形態において、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーの量は、組成物の重量に対し40重量%以下である。
【0080】
幾つかの実施形態において、組成物は、任意選択的に添加剤又は充填剤を更に含むことができる。例示的な添加剤としては、紫外線安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、顔料、加工助剤、潤滑剤、難燃剤並びに/又はカーボンブラック及びカーボンナノフィブリルなどの導電性添加剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例示的な充填剤、例えば、強化充填剤又は鉱物充填剤は、ガラス繊維、炭素繊維、タルク、ウォラストナイト、炭酸カルシウム、マイカその他同種のものからなる群から選択することができる。
【0081】
組成物は、この少なくとも1種の水溶性又は水分散性ポリマーとは異なる水溶性又は水分散性ポリマーを更に含むことができる。一実施形態において、組成物は、ポリエステルポリマーを更に含む。
【0082】
好適なポリエステルポリマーは:
- 少なくとも1種のジカルボン酸成分及び
- 少なくとも1種のジオール成分であって、ジオール成分の少なくとも2モル%が式(I):
H(O-CmH2m)n-OH
(式中、mは、2~4の整数であり、nは、2~10で変化する)のポリ(アルキレングリコール)である、ジオール成分、
に由来する単位を含むポリマーである。
【0083】
一実施形態において、ジカルボン酸成分は、典型的には、イソフタル酸(IPA)、テレフタル酸(TPA)、ナフタレンジカルボン酸(例えば、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸)、4,4’-ジ安息香酸、2,5-ピリジンジカルボン酸、2,4-ピリジンジカルボン酸、3,5-ピリジンジカルボン酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)プロパン、ビス(4-カルボキシフェニル)メタン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ケトン、4,4’-ビス(4-カルボキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)プロパン、ビス(3-カルボキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ケトン、ビス(3-カルボキシフェノキシ)ベンゼン及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸を含む。
【0084】
一実施形態において、ジオール成分は、ジオール成分の少なくとも2モル%が式(II):
H(O-CH2-CH2)n-OH
(nは2~10で変化する)のポリ(エチレングリコール)となるようなものである。
【0085】
一実施形態において、ジオール成分は、ジオール成分の少なくとも4モル%、少なくとも10モル%、少なくとも20モル%、少なくとも30モル%、少なくとも40モル%又は少なくとも50モル%(ジオール成分の総モル数基準)が、式(I):
H(O-CmH2m)n-OH
(式中、mは、2~4の整数であり、nは、2~10で変化する)のポリ(アルキレングリコール)、
典型的には、式(II):
H(O-CH2-CH2)n-OH
(nは2~10で変化する)のポリ(エチレングリコール)となるようなものである。
【0086】
一実施形態において、ジオール成分は、ジオール成分の少なくとも2モル%、少なくとも4モル%、少なくとも10モル%、少なくとも20モル%、少なくとも30モル%、少なくとも40モル%又は少なくとも50モル%(ジオール成分の総モル数基準)が、式HO-CH2-CH2-O-CH2-CH2-OHのジエチレングリコールとなるようなものである。
【0087】
他の実施形態においては、ジオール成分は、この最少含有率が2モル%であるポリ(アルキレングリコール)とは別に、エチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、プロパン-1,2-ジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、イソソルビド及び2,5-ビスヒドロキシメチルテトラヒドロフランからなる群から選択される少なくとも1種のジオールを含むことができる。
【0088】
他の実施形態において、ポリエステルポリマーのジオール成分は、
- エチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、プロパン-1,2-ジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、イソソルビド及び2,5-ビスヒドロキシメチルテトラヒドロフランからなる群から選択されるジオールと、
- 少なくとも2モル%の、式(I):
H(O-CH2-CH2)n-OH
(nは2~10で変化する)のポリ(エチレングリコール)と、
から本質的になる。
【0089】
他の実施形態において、ポリエステルポリマーのジオール成分は、
- エチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、プロパン-1,2-ジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、イソソルビド及び2,5-ビスヒドロキシメチルテトラヒドロフランからなる群から選択されるジオールと、
- 少なくとも2モル%のジエチレングリコール(ジオール成分の総モル数基準)と、
から本質的になる。
【0090】
一実施形態において、ポリエステルポリマーは、芳香核に結合している少なくとも1つのSO3M基を含む二官能性モノマー由来の繰り返し単位を更に含み、官能基はカルボキシであり、Mは、H又はナトリウム、カリウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、銀、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、銅、パラジウム、鉄及びセシウムからなる群から選択される金属イオン、典型的には、ナトリウム、リチウム及びカリウムからなる群から選択される金属イオンである。そのようなポリエステルは、スルホポリエステル(SPE)と呼ばれることもある。
【0091】
一実施形態において、二官能性スルホモノマーは、例えば、SPE中の総モル数(すなわち、SPEが二酸成分及びジオール成分のみから構成される場合は二酸成分及びジオール成分の総モル数)を基準として、1~40モル%、例えば、5~35モル%又は8~30モル%に含まれるモル比でSPE中に存在することができる。
【0092】
一実施形態において、ポリエステルは:
- 少なくとも1種のジカルボン酸成分、
- 少なくとも1種のジオール成分であって、ジオール成分の少なくとも2モル%が、式(I):
H(O-CmH2m)n-OH
(式中、mは、2~4の整数であり、nは、2~10で変化する)のポリ(アルキレングリコール)である、ジオール成分、
- 芳香核に結合している少なくとも1つのSO3M基を含む少なくとも1種の二官能性モノマーであって、官能基がカルボキシであり、Mが、H又はナトリウム、リチウム及びカリウムからなる群から選択される金属イオンである、二官能性モノマー、
に由来する単位を含む。
【0093】
他の実施形態において、ポリエステルは:
- 少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸成分、
- 少なくとも1種のジオール成分、
- 少なくとも1モル%(ポリエステルポリマー中の単位の総モル数、例えば、ポリエステルが二酸単位及びジオール単位のみから構成される場合は二酸成分及びジオール成分の総モル数基準)の、式(I):
H(O-CmH2m)n-OH
(式中、mは、2~4の整数であり、nは、2~10で変化し、典型的には、mは2であり、nは2である)のポリ(アルキレングリコール)、
- 芳香核に結合している少なくとも1つのSO3M基を含む少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸であって、MがH又はナトリウム、リチウム及びカリウムからなる群から選択される金属イオンである、芳香族ジカルボン酸、
に由来する単位を含む。
【0094】
一実施形態において、ポリエステルは:
- イソフタル酸(IPA)、テレフタル酸(TPA)、ナフタレンジカルボン酸(例えば、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸)、4,4’-ジ安息香酸、2,5-ピリジンジカルボン酸、2,4-ピリジンジカルボン酸、3,5-ピリジンジカルボン酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)プロパン、ビス(4-カルボキシフェニル)メタン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ケトン、4,4’-ビス(4-カルボキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)プロパン、ビス(3-カルボキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ケトン、ビス(3-カルボキシフェノキシ)ベンゼン及びこれらの混合物からなる群から選択される芳香族ジカルボン酸、典型的にはイソフタル酸、
- エチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、プロパン-1,2-ジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール及びこれらの混合物からなる群から選択されるジオール、
- 少なくとも1モル%(ポリエステル中の単位の総モル数、例えば、ポリエステルが二酸単位及びジオール単位のみから構成される場合は二酸成分及びジオール成分の総モル数基準)のジエチレングリコール、
- 芳香核に結合している少なくとも1つのSO3M基を含む芳香族ジカルボン酸(例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸)であって、Mが、H又はナトリウム、リチウム及びカリウムからなる群から選択される金属イオンである、芳香族ジカルボン酸、
に由来する単位を含むか又はこれらから本質的になる。
【0095】
一実施形態において、ポリエステルは、ポリエステル中の単位の総モル数、例えば、ポリエステルが二酸単位及びジオール単位のみから構成される場合は二酸成分及びジオール成分の総モル数を基準として、少なくとも2モル%、少なくとも4モル%、少なくとも10モル%、少なくとも20モル%、少なくとも30モル%、少なくとも40モル%又は少なくとも50%のジエチレングリコールを含む。
【0096】
好適なポリエステルポリマーは、Eastmanから入手可能なAQ 48 Ultra(ポリエステル-5)などのAQTMポリマーとして入手可能である。
【0097】
少なくとも1種の熱可塑性ポリマーは、メルトフローレートで特徴付けることができる。メルトフローレートは、当業者に知られている任意の方法を使用して測定することができる。本明細書において、メルトフローレートは、ASTM D1238に準拠し、400℃、荷重2.16kgで測定される。一実施形態において、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーは、メルトフローレートが3~36g/minである。
【0098】
本開示の第2の態様は、粒子の平均径が2μm未満、典型的には1μm未満、例えば0.1~1μmである熱可塑性ポリマーを含む粒子を調製するためのプロセスであって:
a)本明細書に記載する組成物を溶融ブレンドすることと、
b)工程a)で得られた溶融ブレンドされた組成物をペレット又はストランドに加工することと、
c)工程b)で得られたペレット又はストランドを冷却することと、
d)工程c)で得られた冷却されたペレット又はストランドを、水、典型的には高温の水、より典型的には50~100℃の温度の水と接触させ、それにより、熱可塑性ポリマーを含む粒子を形成させることと、
を含む、プロセスに関する。
【0099】
本プロセスは、熱可塑性ポリマーと水溶性又は水分散性ポリマーとを溶融ブレンドし、例えば、分離した粒子が生成するのに十分な混合エネルギーを適用することによって、水溶性又は水分散性ポリマーから生成した相中に分散する熱可塑性ポリマーの粒子が生成するようにすることに基づく。次いでこのブレンドを冷却し、水溶性又は水分散性ポリマーを、水に、任意選択的に50~100℃の温度で溶解又は分散させることによって粒子を回収する。
【0100】
本明細書に記載する組成物の溶融ブレンドは、熱可塑性ポリマーを溶融するために必要な温度に適合する、エンドレススクリューミキサー又は撹拌混合機、例えば混錬機などの任意の適切な装置を用いて行うことができる。溶融ブレンド工程は、概して、280℃を超える温度、例えば、290℃超、例えば、300℃超、310℃超の温度で行われる。
【0101】
混合物をペレット又はストランドに加工する工程b)は、当業者に知られている任意の方法及び手段に従い実施することができる。例えば、混合物からペレット又はストランドへの加工は、ダイを通して押出しするプロセスによって行うことができる。したがって、これは、押出ダイを備える押出機を用いて達成することができる。
【0102】
冷却工程である工程c)は、任意の適切な手段により、80℃未満の温度、例えば50℃未満の温度で行われる。特に、空冷又は液体中、例えば水中での急冷を挙げることができる。
【0103】
ペレット又はストランドを水と接触させる工程d)は、当業者に知られている任意の方法及び手段に従い実施することができる。例えば、ペレット又はストランドを、複数の水浴とすることも可能な水中に浸漬することができ、これらは任意選択的に加熱されていてもよい。この工程により、水溶性又は水分散性ポリマーを溶解させて、熱可塑性粒子が回収されるようにすることができる。有利には、水溶性又は水分散性ポリマーの溶解又は分散には酸も塩基も不要である。
【0104】
このプロセスの工程は、回分式で行うことも連続式で行うこともできる。
【0105】
一実施形態において、ペレット又はストランドを冷却する工程及び前記ペレット又はストランドを水と接触させる、例えばペレット又はストランドを水中に浸漬させることによる工程は、同じ設備で同時に実施される。
【0106】
本プロセスは、熱可塑性ポリマーを含む粒子を乾燥させること及び/又は篩別することを更に含むことができる。乾燥工程は、例えば、流動床で行うことができる。
【0107】
本開示から明らかなように、本プロセスは、大きさが非常に小さい、例えば、平均径が2μm未満、典型的には1μm未満、例えば0.1~1μmの粒子を、機械的に磨砕する工程を用いることなく作製することができるという利点を提供する。したがって、一実施形態において、本プロセスは、磨砕工程を含まない。本明細書において、本プロセスに従い製造される粒子径の測定値は走査型電子顕微鏡法(SEM)により得られるものである。概して、得られた粉末を、アルミニウム製スタブに貼り付けたカーボンテープ上に分散させ、次いでスパッタ装置を用いてAuPdでスパッタコートする。SEMを用いて画像を記録し、公知の画像取得ソフトウェアを用いて約20個の粒子の画像について平均径を求めるために画像解析した。
【0108】
本プロセスにより得られる粒子は、有利には高純度であり、典型的には純度が90%を超え、より典型的には純度が95%を超え、更に典型的には純度が98%を超える。一実施形態において、本プロセスにより得られる粒子は純度が99%を超える。純度は熱重量分析(TGA)法を用いて決定することができる。ポリマー出発物質及び単離した各粉末試料のTGAスキャンデータ(TGA scan)を取得し、450℃における出発ポリマーの重量損失に対する粉末の重量損失の比(100%を掛ける)により純度を算出する。
【0109】
本明細書に記載するプロセスにより得られる粒子は、平均径が2μm未満、典型的には1μm未満、例えば0.1~1μmであること以外に、BET表面積で特徴付けることもできる。BET表面積は、当業者によく知られている方法及び装置を用いて測定することができる。本明細書に記載するプロセスにより調製される熱可塑性ポリマーを含む粒子のBET表面積は、5~15m2/g、典型的には5~8m2/gである。
【0110】
本開示の第3の態様は、本明細書に記載するプロセスに従い調製される粒子の集合体に関する。本明細書において上に述べたように、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーを含む粒子は、それぞれ、平均径が2μm未満、典型的には1μm未満、例えば0.1~1μmであり、BET表面積が5~15m2/g、典型的には5~8m2/gである。
【0111】
本開示の第4の態様は、本明細書に記載する粒子の集合体と、少なくとも1種の界面活性剤と、液体媒体とを含む分散液に関する。
【0112】
界面活性剤は、当業者に知られている任意の界面活性剤とすることができ、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、両イオン性界面活性剤及びこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態において、界面活性剤は、非イオン性界面活性剤である。
【0113】
有用な非イオン性界面活性剤の例示的な非限定的な種類としては、ポリ(アルキレンオキシド)を含む化合物、例えば、アルコキシル化アルキルフェノール及びアルコキシル化直鎖又は分岐アルコール;脂肪酸エステル、アミン及びアミド誘導体、アルキルポリグルコシド並びにこれらの組合せが挙げられる。一実施形態において、少なくとも1種の界面活性剤は、ポリ(アルキレンオキシド)を含む非イオン性界面活性剤である。
【0114】
アルコキシル化アルキルフェノールは、概して、ポリエチレン、ポリプロピレン及び/又はポリブチレンオキシドとアルキルフェノールとの縮合物である。この種の化合物としては、約6~約12個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖のいずれかの構成のアルキル基を有するアルキルフェノールと、アルキレンオキシド、典型的にはエチレンオキシド、プロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドとの縮合物が挙げられる。この種の市販の非イオン性界面活性剤としては、SolvayからIGEPAL(登録商標)シリーズとして入手可能なアルキルフェノールエトキシレートが挙げられる。
【0115】
アルコキシル化された直鎖又は分岐アルコールは、脂肪族直鎖又は分岐アルコールと、約1~約25モルのエチレンオキシド、プロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシド、典型的にはエチレンオキシドとの縮合物である。アルコールの脂肪族鎖は、直鎖又は分岐鎖のどちらであってもよく、通常、約8~約22個の炭素原子を含む。この種の市販の非イオン性界面活性剤の例としては、DOWから販売されているTERGITOL(登録商標)15-S-9(C11-C15直鎖2級アルコールと9モルのエチレンオキシドとの縮合物)及びTERGITOL(登録商標)MIN FOAM 1X(C4直鎖1級アルコールとエチレンオキシド及びプロピレンオキシドとの縮合物)が挙げられる。
【0116】
分散液中の粒子及び界面活性剤の量は特に制限されない。しかしながら、一実施形態において、分散液は、分散液の総重量に対し最大40重量%の粒子の集合体及び最大10重量%、典型的には最大5重量%の界面活性剤を含む。
【0117】
分散液の液体媒体は、水を含み、水と混和性のある1種又は複数種の有機溶媒を更に含むことができる。例示的な水混和性有機溶媒としては、例えば、アセトン、アセトニトリル、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-ブトキシエタノール、ジエタノールアミン、ジエチレントリアミン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメトキシエタン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1,4-ジオキサン、エタノール、エチルアミン、エチレングリコール、フルフリルアルコール、グリセロール、メタノール、メチルジエタノールアミン、メチルイソシアニド、N-メチル-2-ピロリドン、1-プロパノール、1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-プロパノール、プロピレングリコール、ピリジン、テトラヒドロフラン(THF)、トリエチレングリコールその他同種のものが挙げられる。一実施形態において、分散液の液体媒体は、水からなるか又は水から本質的になる。
【0118】
本開示の第5の態様は、本明細書に記載する分散液を調製するためのプロセスに関する。分散液を調製するためのプロセスは、本明細書に記載するプロセスに従い調製される粒子の集合体又はそれぞれが少なくとも1種の熱可塑性ポリマーを含む粒子の集合体であって、粒子の平均径が2μm未満、典型的には1μm未満、例えば0.1~1μmであり、BET表面積が5~15m2/g、典型的には5~8m2/gである粒子の集合体を、少なくとも1種の界面活性剤及び液体媒体と混合することを含む。
【0119】
粒子、界面活性剤及び液体媒体の混合は、当業者に知られている任意の方法及び手段を用いて達成することができる。好適な方法においては、界面活性剤及び液体媒体、典型的には水を、オーバーヘッドスターラー及び撹拌翼を備えた容器中で混合する。粉末形態にある粒子の集合体を、液体媒体/界面活性剤混合物に500rpmでゆっくりと加え、添加が完了したら撹拌を800rpmに上昇する。分散液を一定時間混合した後、撹拌容器から取り出し、20,000rpmなどの高速撹拌が可能な1段式(single-stage)分散翼を備えた分散機に流し込み、一定時間分散させる。
【0120】
本開示による組成物、方法及びプロセスを以下に示す非限定的な実施例によって更に例示する。
【実施例】
【0121】
以下に示す実施例に使用される分散性相の構成成分及び粒子相の構成成分をそれぞれ次の表1及び2に示す:
【0122】
【0123】
【0124】
実施例1.熱可塑性サブミクロン粒子の製造
配合:所望の粒子相の構成成分及び分散性相の構成成分の配合物を、この構成成分をCoperion ZSK-26二軸押出機(Coperion GmbH,Stuttgart,Germany)でブレンドすることにより製造した。この押出機は、12のバレル領域及び最大450℃で動作する加熱された出口ダイを有し、可能な処理量は>30kg/時であった。
【0125】
押出機の供給部にK-TronT-35重量式フィーダ(Coperion GmbH,Stuttgart,Germany)を使用して各材料を供給し、構成成分が適切な質量比になるようにした。構成成分を溶融し、均一な溶融組成物が得られるように設計されたスクリューで混合した。出口ダイにおける各配合物の実際の溶融温度を手持ち式の機器で測定した。
【0126】
溶融物の流れをコンベア上で空冷し、Maag Primo 60E造粒機(Maag Automatik GmbH,Stuttgart,Germanyより)に供給して造粒した。脆すぎて造粒できないブレンドの場合は、ストランドをそのままコンベアの終端にあるバケツ又はドラムに回収した。質量生産速度(mass production rate)は1時間あたり17.5kgであった。ペレット又はストランドは次に使用するまでプラスチック製バケツ内に密閉して保管した。PEEK配合物の加工条件を次の表3にまとめ、PPS及びLCP配合物の加工条件を次の表4にまとめる。
【0127】
【0128】
【0129】
粒子の単離及び洗浄:LCP、PPS又はPEEK配合物のそれぞれのストランド又はペレットを高温の水に入れて可溶性成分を溶解させ、粒子又は多孔質固体のいずれかを得た。粒子の試料を濾過によって単離し、水で洗浄することによって、余分な分散性相の材料を除去した。
【0130】
概して言えば、ステンレス鋼製容器内で、スチール製撹拌翼を備えるオーバーヘッドスターラーで混合することにより、上の実施例からのストランドと水との50/50混合物(例えば、ストランド500g対水500g)を生成した。この混合物を、ホットプレートを用いて約500~700rpmで80℃に加熱し、この温度を1~2時間維持した。混合物を、Whatman製GF6ガラス繊維濾紙を載せた直径250mmのブフナー漏斗に注ぎ、約10分間静置した。次いで、備え付けの吸引設備(house vacuum)を使用して液体を完全に除去すると、微細な濾過ケークが残った。濾過ケークを濾紙から剥がし、室温で水中に分散させた後、再び濾過した。洗浄及び濾過工程を粉末が高純度(>98%)になるまで繰り返した。粉末を50℃で真空乾燥させた。
【0131】
幾つかの比較例においては、多孔質固体が得られることが確認された。多孔質固体の更なる特性評価は行わなかった。
【0132】
粒子径の測定値は走査電子顕微鏡法(SEM)によって得た。SEM測定は次に示すように実施した。アルミニウムスタブに貼り付けたカーボンテープ上に粉末を分散させた後、Emitech K575x Turbo Sputter Coater(スパッタコーター)を用いてAuPdでスパッタコートした。Hitachi S-4300冷陰極電界放出型走査電子顕微鏡を使用して画像を記録し、約20個の粒子画像について、JavaベースのImageJ v 1.49b画像解析ソフトウェアを使用して、平均直径を求めるために画像を解析した。PEEK、PPS及びLCPポリマー粒子のSEM画像をそれぞれ
図1~3に示す。
図1~3に示すように、生成した粒子は実質的に不規則な形状を有する。
【0133】
純度の分析は熱重量分析(TGA)法を用いて行った。TA Instruments Thermal Analyzerを用いて、窒素中、20℃/分で、ポリマー出発物質及び単離された各粉末試料のTGAスキャンデータを取得する。純度は、450℃における出発ポリマーの重量損失に対する粉末の重量損失の比により算出する(100%を掛ける)。PEEK、LCP及びPPSポリマーの結果を次の表5にまとめる。
【0134】
【0135】
実施例2.分散液の製造
実施例1に従い製造した試料2及び5の粒子から水性粒子分散液を作製した。
【0136】
オーバーヘッドスターラー及び撹拌翼を備えたステンレス鋼製容器内で、TERGITOL
TM Min Foam 1X Surfactant4%を水に加えることにより、固形分が全体で22%である混合物を作製した。乾燥粉末試料を水/界面活性剤混合物に500rpmでゆっくりと加え、添加が完了したら撹拌速度を800rpmに上昇させた。最終組成物のPEEK粉末は18重量%となった。各試料を1時間撹拌した。次いで試料を撹拌容器から取り出し、1段式分散翼を備えたIKA Magic LAB(登録商標)分散機に20,000rpmで流し込んだ。試料を分散機で、温度を50℃に制御するために循環器/冷却器ループを用いて30分間再循環させた。試料を分散機から取り出し、室温まで放冷した。粒子径分析(PSA)は、Microtrac Sample Delivery Controller(SDC)を備えたMicrotrac S3500を使用して行った。生成した分散液の粒子径分布を
図4に示し、D10、D50及びD90に関する結果を次の表6にまとめる。当業者には理解されるように、D90又はD(v,0.9)は、試料の90%がそれを下回る粒子の大きさである。D50又はD(v,0.5)は、試料の50%がそれよりも小さく、50%がそれよりも大きいミクロン単位の大きさである。同様に、D10又はD(v,0.1)は、試料の10%がそれを下回る粒子の大きさである。
【0137】
本明細書において、粒子径分布は、別段の指定がない限り体積分布を指す。上に記載したように調製した水性分散液の試料をMicrotrac S3500で直接測定した。
【0138】
【国際調査報告】