(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】エピタコフォレシスにおける体積結合のための装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/447 20060101AFI20240403BHJP
G01N 1/40 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
G01N27/447 315B
G01N27/447 315C
G01N27/447 331D
G01N1/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564037
(86)(22)【出願日】2022-04-20
(85)【翻訳文提出日】2023-10-18
(86)【国際出願番号】 US2022025530
(87)【国際公開番号】W WO2022226056
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196243
【氏名又は名称】運 敬太
(72)【発明者】
【氏名】フォレット,フランティセク
(72)【発明者】
【氏名】ボラコバ,イボナ
(72)【発明者】
【氏名】プリクリル,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ノボトニー,ヤクブ
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA28
2G052AB16
2G052AD06
2G052AD26
2G052AD46
2G052ED01
2G052ED14
2G052GA09
2G052GA22
2G052GA28
2G052GA29
2G052JA09
(57)【要約】
試料の濃縮および/または試料の成分の分離を改善するエピタコフォレシス(ETP)方法および装置。ETP方法および装置は、2次元でのエレクトロマイグレーションを可能にする。試料のエレクトロマイグレーションは、最初に、単一の平面に沿った第1の寸法で発生し得る。次いで、エレクトロマイグレーションは、第1の寸法とは異なり得る第2の寸法で継続し得る。エレクトロマイグレーションが発生する体積は、第1の寸法から第2の寸法に著しく減少し得る。このより小さい寸法は、試料の濃度の増加または試料の成分の分離の改善を可能にし得る。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料から成分を濃縮する方法であって、
第1の電極と第2の電極との間に電圧差を印加すること、ここで、
前記第1の電極が、第1の電解質と前記試料とを含む第1の混合物中に配置され、
前記第2の電極が、第2の電解質中に配置され、
前記第1の電解質が、前記第2の電解質とは異なる、
前記電圧差を使用して、第1のチャネル内の前記成分を第1の方向に流すこと、ここで、
前記第1の方向が、前記第1の電極から離れ、かつ第2のチャネルに向かい、
前記成分が、バンドに集束され、
前記第1の混合物が、前記第1の方向に垂直な第1の厚さを有することを特徴とする、
前記第2のチャネル内で、前記バンド内に集束された前記成分を第2の方向に流すこと、ここで、
前記第2の電解質が、前記第2のチャネル内にあり、
前記第2の方向が、前記第1のチャネルから容器のオリフィスに向かい、
前記第2のチャネルが、環状空間であり、
前記第2のチャネル内の前記成分および前記第2の電解質を含む第2の混合物が、前記第2の方向に垂直な第2の厚さを有することを特徴とし、
前記第1の厚さが、前記第2の厚さよりも大きい、
ならびに、
前記電圧差を印加しながら前記容器内の前記第2の混合物を収集すること、ここで、前記容器内の前記第2の混合物中の前記成分の濃度が前記試料中の前記成分の濃度よりも高い、
を含む、方法。
【請求項2】
前記成分が、第1の成分であり、
前記試料が、第2の成分を含み、
前記バンドが、第1のバンドであり、
前記第2の成分が、前記第1のチャネル内の第2のバンドに集束され、
前記方法が、
前記電圧差を使用して、前記第1のチャネル内の前記第2の成分を流すことと、
前記第2のチャネル内で、前記第2のバンド内に集束された前記第2の成分を前記第2の方向に流すことと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記容器内に前記第2の成分を収集することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の厚さが高さである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記環状空間が、前記容器の外面によって画定される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のチャネルおよび前記第2のチャネルがそれぞれベースによって画定される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の方向が、前記第2の方向と同一直線上にない、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記容器が、円錐形状を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の電解質が、前記第1のチャネル内のゲル内に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記バンドがリング状である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の電極が円形である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のチャネルが、第1の体積によって特徴付けられ、
前記第2のチャネルが、第2の体積によって特徴付けられ、
前記第1の体積が、前記第2の体積よりも少なくとも10倍大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第2のチャネルが、少なくとも2mmの前記第2の方向の長さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記容器内に前記第2の混合物を収集することが、重力に逆らって前記第2の混合物を前記容器内に第3の方向に流すことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記第2のチャネル内で、前記バンド内に集束された前記成分を前記第2の方向に流すことが、前記バンドの半径を減少させ、前記成分を重力方向に流すことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
試料中の成分を濃縮するためのシステムであって、
第1のチャネルおよびキャビティを画定するベースであって、前記キャビティが、前記キャビティの上部における第1の外径が前記キャビティの底部における第2の外径よりも大きい円錐形状を含む、ベースと、
前記第1のチャネル内に配置された第1の電極と、
第2の電極と、
を備え、
前記第1のチャネルが、前記キャビティと流体連通し、
前記第1のチャネルの外径が、前記キャビティの前記上部における前記第1の外径よりも大きく、
前記第2の電極が、前記第1のチャネルおよび前記キャビティが電解質を含む場合、前記第1のチャネルよりも前記キャビティとより密接に電気的に連通するように構成され、
前記第1のチャネルが、第1の体積によって特徴付けられ、
前記キャビティが、容器を受け入れ、前記容器が前記キャビティ内に配置されたときに第2のチャネルを形成するように構成され、
前記第2のチャネルが、環状空間であり、
前記環状空間が、前記容器が前記キャビティ内に配置されたときに、前記ベースの表面および前記容器の表面によって画定され、
前記第2のチャネルが、第2の体積によって特徴付けられ、
前記第1の体積が、前記第2の体積よりも大きい、システム。
【請求項17】
前記ベースの前記表面および前記容器の前記表面が同心である、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記ベースの前記表面が円錐形である、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記キャビティが、前記第1のチャネルを画定する前記ベースの底面の下方にある、請求項16に記載のシステム。
【請求項20】
前記キャビティと前記第2の電極との間に膜をさらに備える、請求項16に記載のシステム。
【請求項21】
リザーバをさらに備え、前記第2の電極が前記リザーバ内に配置される、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記第1の電極および前記第2の電極と電気的に連通する電源をさらに備える、請求項16に記載のシステム。
【請求項23】
前記電源を制御するように構成されたコンピュータをさらに備える、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記容器内の成分を検出するように構成された検出器をさらに備える、請求項16に記載のシステム。
【請求項25】
前記容器をさらに備え、前記容器がピペットチップである、請求項16に記載のシステム。
【請求項26】
前記第1のチャネル内に配置された第1の電解質と、
前記第1のチャネル内のゲル内に配置され、前記キャビティ内に配置された第2の電解質と、
前記ゲルと
をさらに備える、請求項16に記載のシステム。
【請求項27】
前記第1の電極がリング状である、請求項16に記載のシステム。
【請求項28】
前記ベースが、前記キャビティ内に延在する複数の構造を画定し、
前記複数の構造が、第1の構造と、前記第1の構造とは前記キャビティの反対側に第2の構造と、を含み、
前記第1の構造と前記第2の構造との間の距離が、前記容器の直径である、請求項16に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる2021年4月21日に出願された米国仮特許出願第63/177,637号に対する優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、試料分析のための電気泳動の分野に関し、エピタコフォレシスのための装置および方法による、試料の選択的分離、検出、抽出、単離、精製、および/または(予備)濃縮による生物学的試料の分析に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
電気泳動手法は、特定の物質を同定するため、または溶液中の分子のサイズおよび種類を判定するためなどの様々な目的のために、試料を分離および分析するために使用されてきた。例えば、様々な分子生物学用途が、タンパク質または核酸を分離し、分子量を判定し、および/またはさらなる分析のために試料を調製するために電気泳動を使用している。これらのおよび他の用途では、電気泳動は、一般に、電場の影響下での帯電した物質(例えば、分子またはイオン)の移動を伴う。この移動は、他の試料または物質からの試料の分離を容易にすることができる。一旦分離されると、試料は、光学的手法または他の手法を使用して容易に分析され得る。
【0004】
様々な電気泳動に基づく手法は、典型的には、実行される分析の特定の必要性に応じて異なる用途に関連して使用される。例えば、等速電気泳動(「ITP」)は、異なる電気泳動移動度を有する電解質を活用して集束させ、場合によってはイオン分析物を別個の領域(「集束領域」)に分離する濃縮分離技術である。ITPでは、分析物は、高実効移動度先行電解質(「LE」)イオンと低実効移動度後行電解質(「TE」)イオンとの間で同時に集束および分離する。ITPにおける領域境界でのエレクトロマイグレーションと拡散のバランスは、典型的には、鋭い移動境界をもたらす。
【0005】
従来、ITPは、毛細管またはマイクロ流体チャネル設計を特徴とする装置および方法の使用によって行われる。そのような装置および方法は、分析のために少量(μlスケール)の試料しか取り扱うことができず、これは、血液および/または血漿からの核酸の抽出などの生物学的試料の分析を困難にする可能性がある。したがって、大きな体積を有し得る試料を分析するための装置および方法のさらなる開発は、おそらく有益であろう。さらに、試料を小さい体積で濃縮することが有利であり得る。これらのおよび他の改善を提供するエピタコフォレシス(ETP)方法および装置が本明細書に記載されている。
【発明の概要】
【0006】
簡単な概要
本開示は、試料の濃縮および/または試料の成分の分離を改善するエピタコフォレシス(ETP)方法および装置を記載する。ETP方法および装置は、2次元でのエレクトロマイグレーションを可能にする。試料のエレクトロマイグレーションは、最初に、単一の平面に沿った第1の寸法で起こり得る。次いで、エレクトロマイグレーションは、第1の寸法とは異なり得る第2の寸法で継続し得る。エレクトロマイグレーションが発生する体積は、第1の次元から第2の次元に著しく減少し得る。このより小さい寸法は、試料の濃度の増加または試料の成分の分離の改善を可能にし得る。
【0007】
いくつかの実施形態は、試料からの成分を濃縮する方法を含む。システムは、第1の電極と第2の電極との間に電圧差を印加し得る。第1の電極は、第1の電解質と試料とを含む第1の混合物中に配置される。第2の電極は、第2の電解質中に配置されている。第1の電解質は、第2の電解質と不連続である。第1の混合物は、第2の電解質と接触している。システムは、電圧差を使用して、第1のチャネル内の成分を第1の方向に流し得る。第1の方向は、第1の電極から離れ、かつ第2のチャネルに向かう。成分は、バンド内に集束される。第1の混合物は、第1の方向に垂直な第1の厚さを有することを特徴とする。システムは、第2のチャネル内で、バンド内に集束された成分を第2の方向に流し得る。第2の電解質は、第2のチャネル内にある。第2の方向は、第1のチャネルから容器のオリフィスに向かう。第2のチャネルは、環状空間である。第2のチャネル内の成分および第2の電解質を含む第2の混合物は、第2の方向に垂直な第2の厚さを有することを特徴とする。第1の厚さは、第2の厚さよりも大きい。システムは、電圧差を印加しながら容器内の第2の混合物を収集し得る。容器内の第2の混合物中の成分の濃度は、試料中の成分の濃度よりも高い。
【0008】
いくつかの態様において、試料中の成分を濃縮するためのシステムは、第1のチャネルおよびキャビティを画定するベースと、第1のチャネルに配置された第1の電極と、第2の電極とを含む。第1のチャネルは、キャビティと流体連通している。第1のチャネルの外径は、キャビティの上部における第1の外径よりも大きい。キャビティは、キャビティの底部の第2の外径よりも大きい第1の外径を有する円錐形状を有し得る。第2の電極は、第1のチャネルおよびキャビティが電解質を含む場合、第1のチャネルよりもキャビティとより密接に電気的に連通するように構成される。第1のチャネルは、第1の体積によって特徴付けられる。キャビティは、容器を受け入れ、容器がキャビティ内に配置されたときに第2のチャネルを形成するように構成され得る。第2のチャネルは、環状空間であり得る。環状空間は、容器がキャビティ内に配置されたときに、ベースの表面および容器の表面によって画定され得る。第2のチャネルは、第2の体積によって特徴付けられる。第1の体積は、第2の体積よりも大きい。
【0009】
本開示の実施形態の特性および利点の良好な理解は、以下の詳細な説明および添付の図面を参照して得られ得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】エピタコフォレシスを行うための例示的な装置の概略図を提供している。
【
図2A】エピタコフォレシスを行うための例示的な装置の平面図の概略図を提供している。
図2Aにおいて、符号1~7は、以下を指す:1.外側円形電極;2.終端電解質リザーバ;3.任意にゲル内に含まれ、または終端電解質から流体力学的に分離された先行電解質;4.先行電解質電極/収集リザーバ;5.中心電極;6.電源;および7.試料イオンが間に集束された先行電解質と終端電解質との境界;記号rおよびdは、それぞれLE/TE境界によって移動される先行電解質リザーバ半径および距離を表すために使用される。
【
図2B】エピタコフォレシスを行うための例示的な装置の側面図の概略図を提供している。
図2Bにおいて、符号1~8は、以下を指す:1.外側円形電極;2.終端電解質リザーバ;3.任意にゲル内に含まれ、または終端電解質から流体力学的に分離された先行電解質;4.先行電解質電極/収集リザーバ;5.中心電極;6.電源;7.試料イオンが集束された先行電解質と終端電解質との境界;および8.底部支持体;記号rおよびdは、それぞれLE/TE境界によって移動される先行電解質リザーバ半径および距離を表すために使用される。
【
図3】エピタコフォレシスを行うための例示的な装置の概略図を提供している。
【
図4】エピタコフォレシスを行うための例示的な装置の概略図を提供している。
図4において、符号1~10は以下を指す:1.外側円形電極;2.終端電解質リザーバ;3.任意にゲル内に含まれ、または終端電解質から流体力学的に分離された先行電解質;4.先行電解質/収集リザーバへの開口部;5.中心電極;6.電源;7.試料イオンが集束された先行電解質と終端電解質との境界;8.底部支持体;9.先行電解質リザーバへの管接続装置;10.先行電解質リザーバ。
【
図5】先行電解質の充填と終端電解質の充填との間に試料が充填される、エピタコフォレシスを行うための例示的な装置の概略図を提供している。
【
図6】エピタコフォレシスを行うための装置の概略図を提供しており、記載された方程式について言及される。
【
図7】本発明の実施形態にかかる、エピタコフォレシスを使用して試料中の成分を濃縮するためのシステムを示している。
【
図8】本発明の実施形態にかかる、エピタコフォレシスを使用して試料中の成分を濃縮するためのシステムの分解図を示している。
【
図9】本発明の実施形態にかかる、エピタコフォレシスを使用して試料中の成分を濃縮するためのシステムの断面図を示している。
【
図10A】本発明の実施形態にかかるピペットチップを保持するための支持体を示している(底面図)。
【
図10B】本発明の実施形態にかかるピペットチップを保持するための支持体を示している(平面図)。
【
図10C】本発明の実施形態にかかるピペットチップを保持するための支持体を示している(平面図)。
【
図10D】本発明の実施形態にかかるピペットチップを保持するための支持体を示している(平面図)。
【
図10E】本発明の実施形態にかかるピペットチップを保持するための支持体を示している(平面図)。
【
図11】本発明の実施形態にかかる、試料から成分を濃縮するための例示的なプロセスのフローチャートである。
【
図12】本発明の実施形態にかかる測定システムを示している。
【
図13】本発明の実施形態にかかるコンピュータシステムを示している。
【0011】
用語
本明細書で使用される場合、「等速電気泳動」という用語は、一般に、電界を使用して物質間(例えば、荷電粒子と溶液中の他の物質との間)の境界または界面を形成することによる荷電粒子の分離を指す。ITPは、一般に、複数の電解質を使用し、試料イオンの電気泳動移動度は、ITPのための装置に配置された先行電解質(LE)の電気泳動移動度よりも小さく、後行電解質(TE)の電気泳動移動度よりも大きい。先行電解質(LE)は、一般に、比較的高い移動度のイオンを含有し、後行電解質(TE)は、一般に、比較的低い移動度のイオンを含有する。TEおよびLEイオンは、目的の標的分析物イオンよりもそれぞれ低いおよび高い有効移動度を有するように選択される。すなわち、分析物イオンの実効移動度は、TEよりも高く、LEよりも低い。これらの標的分析物は、LEおよびTEイオン(すなわち、共イオン)と同じ電荷の符号を有する。印加された電場は、LEイオンをTEイオンから遠ざけ、TEイオンを後方に引き寄せる。移動界面は、隣接および連続するTE領域とLE領域との間に形成される。これは、(典型的にはLEの低電界からTEの高電界までの)電界勾配の領域を形成する。TE中の分析物イオンは、TEイオンを追い越すが、LEイオンを追い越すことができず、TEとLEとの間の界面に蓄積することができる(「集束」または「集束領域」を形成する)。あるいは、LE中の標的イオンは、LEイオンによって追い越され、界面にも蓄積する。LEおよびTE化学の賢明な選択により、ITPは、かなり一般に適用可能であり、TEおよびLE電解質のいずれかまたは両方に最初に溶解した試料によって達成され得、非常に低い電気伝導率のバックグラウンド電解質を必要としなくてもよい。
【0012】
本明細書で使用される場合、「エピタコフォレシス」という用語は、一般に、本明細書に記載の円形/同心および/または多角形装置の使用などによって、円形または回転楕円形および/または同心装置および/または円形および/または同心電極構成を使用して実行される電気泳動分離の方法を指す。エピタコフォレシス中に使用される円形/同心または別の多角形構成に起因して、従来の等速電気泳動装置とは異なり、断面積は、イオンおよび領域の移動中に変化し、領域移動の速度は、断面積の変化に起因して時間的に一定ではない。したがって、エピタコフォレシス構成は、領域が一定の速度で移動する従来の等速泳動の原理に厳密に従わない。本明細書に示されるこれらの有意差にもかかわらず、エピタコフォレシスは、異なる電気泳動移動度を有し得る材料間(例えば、荷電粒子と溶液中の他の材料との間)の境界または界面を形成するために電界を使用することによって荷電粒子を効率的に分離および集束するために使用され得る。LEおよびTEは、ITPを用いた使用について記載されているように、エピタコフォレシスにも使用され得る。いくつかの実施形態において、エピタコフォレシスは、定電流、定電圧、および/または定電力を使用して行われ得る。いくつかの実施形態において、エピタコフォレシスは、変化する電流、変化する電圧、および/または変化する電力を使用して行われ得る。いくつかの実施形態において、エピタコフォレシスは、本明細書に記載されるようにエピタコフォレシスの基本原理が達成され得るように、その形状が一般に円形または球状として説明され得る装置および/または電極の配置の文脈内で行われ得る。いくつかの実施形態において、エピタコフォレシスは、本明細書に記載されるようにエピタコフォレシスの基本原理が達成され得るように、その形状が一般に多角形として説明され得る装置および/または電極の配置の文脈内で行われ得る。いくつかの実施形態において、エピタコフォレシスは、円形の形状に配置された電極および/または多角形の形状に配置された電極などの電極の任意の非線形の連続的な配置によって行われ得る。
【0013】
本明細書で使用される場合、「インビトロ診断用途(IVD用途)」、「インビトロ診断方法(IVD方法)」、「インビトロ診断アッセイ」などの用語は、一般に、被験者、任意にヒト被験者の疾患の同定などの診断および/またはモニタリング目的で試料を評価し得る任意の用途および/または方法および/または装置を指す。いくつかの実施形態において、前記試料は、被験者および/または試料からの核酸および/または標的核酸を含んでもよく、任意にさらに、前記核酸は、尿試料に由来する。いくつかの実施形態において、エピタコフォレシス装置は、インビトロ診断装置として使用され得る。いくつかの実施形態において、エピタコフォレシスによって濃縮/富化/単離/精製された標的分析物は、下流のインビトロ診断アッセイにおいて使用され得る。いくつかの実施形態において、インビトロ診断アッセイは、核酸配列決定、例えばDNA配列決定、例えばRNA配列決定を含み得る。いくつかの実施形態において、IVDアッセイは、遺伝子発現プロファイリングを含み得る。いくつかの実施形態において、インビトロ診断方法は、これらに限定されないが、以下のうちのいずれか1つまたは複数であり得る:染色、免疫組織化学的染色、フローサイトメトリ、FACS、蛍光活性化液滴ソーティング、画像分析、ハイブリダイゼーション、DASH、分子ビーコン、プライマー伸長、マイクロアレイ、CISH、FISH、ファイバFISH、定量的FISH、フローFISH、比較ゲノムハイブリダイゼーション、ブロッティング、ウエスタンブロッティング、サザンブロッティング、イースタンブロッティング、ファーウエスタンブロッティング、サウスウエスタンブロッティング、ノースウエスタンブロッティング、およびノーザンブロッティング、酵素アッセイ、ELISA、リガンド結合アッセイ、免疫沈降、ChIP、ChIP-seq、ChIP-ChiP、ラジオイムノアッセイ、蛍光偏光、FRET、表面プラズモン共鳴、フィルタ結合アッセイ、アフィニティクロマトグラフィ、免疫細胞化学、遺伝子発現プロファイリング、DNAプロファイリングPCR、DNAマイクロアレイ、遺伝子発現の連続分析、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応、ディファレンシャルディスプレイPCR、RNA-seq、質量分光分析、DNAメチル化検出、音響エネルギー、リピドミックベースの分析、免疫細胞の定量化、癌関連マーカーの検出、特定の細胞型のアフィニティ精製、DNA配列決定、次世代配列決定、癌関連融合タンパク質の検出、および化学療法抵抗性関連マーカーの検出。
【0014】
本明細書で使用される場合、「先行電解質」および「先行イオン」という用語は、一般に、ITPおよび/またはエピタコフォレシス中に使用される目的の試料イオンおよび/または後行電解質のものと比較して、より高い有効電気泳動移動度を有するイオンを指す。いくつかの実施形態において、アニオン性エピタコフォレシスで使用するための先行電解質は、これらに限定されないが、例えば、ヒスチジン、TRIS、クレアチニンなどの適切な塩基によって所望のpHに緩衝された塩化物、硫酸塩および/またはギ酸塩を含み得る。いくつかの実施形態において、カチオン性エピタコフォレシスで使用するための先行電解質は、これらに限定されないが、酢酸塩またはギ酸塩とともにカリウム、アンモニウムおよび/またはナトリウムを含み得る。いくつかの実施形態において、先行電解質の濃度の上昇は、試料領域の比例的な増加および所与の印加電圧に対する電流(電力)の対応する増加をもたらし得る。典型的な濃度は、一般に、10~100mMの範囲であり得る。しかしながら、より高いまたはより低い濃度が使用されてもよい。
【0015】
本明細書で使用される場合、「後行電解質」、「後行イオン」、「終端電解質」、および「終端イオン」という用語は、一般に、ITPおよび/またはエピタコフォレシス中に使用される目的の試料イオンおよび/または先行電解質の電気泳動移動度と比較して、より低い有効電気泳動移動度を有するイオンを指す。いくつかの実施形態において、カチオン性エピタコフォレシスで使用するための後行電解質は、これらに限定されないが、MES、MOPS、酢酸塩、グルタミン酸塩、ならびに弱酸および低移動度アニオンの他のアニオンを含み得る。いくつかの実施形態において、アニオン性エピタコフォレシスで使用するための後行電解質は、これらに限定されないが、エピタコフォレシス中に任意の弱酸によって形成される移動する境界における反応ヒドロキソニウムイオンを含み得る。
【0016】
本明細書で使用される場合、「集束領域」という用語は、一般に、エピタコフォレシスを実施した結果として濃縮された(「集束された」)成分を含む溶液の体積を指す。成分は、標的分析物、またはETPにおいて印加される電圧によって影響を受けるイオン成分を有する任意の分子を含み得る。集束領域は、装置から収集または除去されてもよく、前記集束領域は、富化および/または濃縮された量の所望の試料、例えば標的分析物、例えば標的核酸を含んでもよい。本明細書に記載のエピタコフォレシス方法では、標的分析物は、一般に、装置の中心、例えば、円形または回転楕円形または他の多角形の装置に集束される。
【0017】
本明細書で使用される場合、「バンド」および「ETPバンド」という用語は、一般に、電気泳動(例えば、等速電気泳動またはエピタコフォレシス)移動中に他のイオン、分析物、または試料とは別個に移動するイオン、分析物、または試料の領域(例えば、集束領域)を指す。エピタコフォレシス装置内の集束領域は、代替的に「ETPバンド」と呼ばれることがある。いくつかの実施形態において、ETPバンドは、1つまたは複数のタイプのイオン、分析物、および/または試料を含み得る。いくつかの例において、ETPバンドは、試料中に存在する他の物質からの分離、例えば細胞残屑からの標的核酸の分離が望ましい単一の種類の分析物を含み得る。いくつかの例において、ETPバンドは、1つを超える標的分析物、例えば配列が非常に類似したポリペプチドまたは核酸配列、例えば対立遺伝子変異体を含み得る。いくつかの例において、ETPバンドは、同様のサイズまたは電気泳動移動度の異なる分析物を含み得る。そのような場合、1つを超える標的分析物は、例えば前記1つを超える分析物の分離を促進する異なる条件下で、更なるETP実行によって分離されてもよく、および/または前記1つを超える分析物は、本明細書に記載されるものなどの分析物の分離のための当該技術分野において公知の他の技術によって分離されてもよい。いくつかの実施形態において、ETPバンドは、収集され、任意に、1つまたは複数のETPベースの単離/精製および収集後に更なる分析に供し得る。いくつかの実施形態において、ETPバンドは、例えばETP実行の一部として、ETPベースの単離/精製および任意に収集を受けているまたは受けた1つまたは複数の標的分析物を含み得る。
【0018】
本明細書で使用される「標的核酸」という用語は、検出、測定、増幅、単離、精製、および/またはさらなるアッセイおよび分析の被験者となる任意の核酸を意味することを意図している。標的核酸は、任意の一本鎖および/または二本鎖核酸を含み得る。標的核酸は、単離された核酸断片として存在することができるか、またはより大きな核酸断片の一部とすることができる。標的核酸は、培養微生物、未培養微生物、複合生物学的混合物、生物学的試料を含む試料、尿試料、組織、血清、古いまたは保存された組織または試料、環境単離株などの本質的に任意の供給源から誘導または単離され得る。さらに、標的核酸は、cDNA、RNA、ゲノムDNA、クローニングされたゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリ、酵素的に断片化されたDNAもしくはRNA、化学的に断片化されたDNAもしくはRNA、物理的に断片化されたDNAもしくはRNAなどを含むか、またはそれらに由来する。いくつかの実施形態において、標的核酸は、全ゲノムを含み得る。いくつかの実施形態において、標的核酸は、試料および/または生物学的試料、例えば尿試料の全核酸含有量を含み得る。標的核酸は、例えば単純なもしくは複雑な混合物を含む、様々な異なる形態または実質的に精製された形態となることができる。例えば、標的核酸は、他の成分を含有する試料の一部とすることができるか、または試料の唯一のもしくは主要な成分とすることができる。また、標的核酸は、既知または未知の配列のいずれかを有することができる。
【0019】
本明細書で使用される「標的微生物」という用語は、血液、血漿、他の体液、生物学的試料などの試料、および/または組織、例えば感染症状または疾患に関連するものに見られる任意の単細胞または多細胞微生物を意味することを意図している。例えば、細菌、古細菌、真核生物、ウイルス、酵母、真菌、原生動物、アメーバおよび/または寄生虫が挙げられる。さらにまた、「微生物」という用語は、一般に、疾患が言及されているかまたは疾患を引き起こす微生物が言及されているかにかかわらず、疾患を引き起こし得る微生物を指す。
【0020】
本明細書で使用される場合、「バイオマーカー」または「目的のバイオマーカー」という用語は、正常もしくは異常な過程、または症状もしくは疾患(癌など)の徴候である組織、血液、血漿、尿、および/または他の体液中に見られる生物学的分子を指す。バイオマーカーが使用されて、身体が疾患または症状の処置にどの程度よく応答するかを確認し得る。癌の文脈において、バイオマーカーは、体内の癌の存在を示す生物学的物質を指す。バイオマーカーは、腫瘍によって分泌される分子、または癌の存在に対する身体の特異的応答であり得る。遺伝子バイオマーカー、エピジェネティックバイオマーカー、プロテオミクスバイオマーカー、グリコームバイオマーカーおよびイメージングバイオマーカーは、癌の診断、予後診断および疫学のために使用され得る。そのようなバイオマーカーは、血液、血清、および/または尿などの非侵襲的に収集された体液でアッセイされ得る。バイオマーカーは、診断薬(例えば、初期癌を同定するため)および/または予後診断薬(例えば、癌がどの程度侵攻性であるかを予測するため、および/または被験者が特定の処置にどのように応答するかおよび/または癌がどの程度再発する可能性があるかを予測するため)として有用であり得る。
【0021】
本明細書で使用される「試料」という用語は、1つまたは複数の標的分析物を含むかまたは含むと推定される検体または培養物(例えば、微生物培養物)を含む。「試料」という用語はまた、生物学的、環境的、および化学的試料、ならびには分析が所望される任意の試料を含むことを意味する。試料は、合成起源の検体を含み得る。試料は、1つまたは複数の微生物が由来し得る任意の供給源からの1つまたは複数の微生物を含み得る。試料としては、これらに限定されないが、全血、皮膚、血清、血漿、臍帯血、絨毛膜絨毛、羊水、脳脊髄液、髄液、洗浄液(例えば、気管支肺胞上皮、胃、腹膜、管、耳、関節鏡視下)、組織試料、生検試料、尿、糞便、痰、唾液、鼻粘液、前立腺液、精液、リンパ液、胆汁、臓器、骨髄、涙液、汗、母乳、母体液、胚細胞、および胎児細胞が挙げられる。
【0022】
本明細書で使用される「標的分析物」という用語は、検出、測定、分離、濃縮、単離、精製、および/または更なるアッセイおよび分析の被験者となる任意の分析物を意味することを意図している。いくつかの実施形態において、前記分析物は、任意のイオン、分子、核酸、バイオマーカー、タンパク質、細胞または細胞集団、例えば所望の細胞などであり得るが、これらに限定されず、さらなるアッセイにおけるその検出、測定、分離、濃縮および/または使用が望ましい。いくつかの実施形態において、標的分析物は、本明細書に記載の試料のいずれか、例えば尿試料に由来し得る。
【0023】
「連通」という用語は、本明細書では、2つ以上の構成要素または要素間の構造的、機能的、機械的、電気的、光学的、熱的、または流体的関係、またはそれらの任意の組み合わせを示すために使用される。したがって、1つの構成要素が第2の構成要素と連通すると言われているという事実は、追加の構成要素が第1の構成要素と第2の構成要素との間に存在し得る、および/または第1の構成要素と第2の構成要素と動作可能に関連付けられもしくは係合され得る可能性を排除することを意図するものではない。
【0024】
本明細書で使用される場合、「被験者」は、処置される哺乳動物の被験者(例えば、ヒト、げっ歯類、非ヒト霊長類、イヌ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ネコなど)および/または試料が得られる被験者を指す。
【0025】
エピタコフォレシス装置、システムまたは機械の文脈内で試料を「検出すること」は、装置全体の1つ、いくつか、または多くの点でその位置を検出することを含み得る。検出は、一般に、所望の装置、システム、または機械の機能、および前記装置、システム、または機械を使用して実行される方法に干渉しない任意の1つまたは複数の手段によって行われ得る。いくつかの実施形態において、検出は、例えば、導電率、抵抗率、電圧、電流などの検出による電気的検出の任意の手段を包含する。さらにまた、いくつかの実施形態において、検出は、電気的検出、熱的検出、光学的検出、分光学的検出、光化学的検出、生化学的検出、免疫化学的検出、および/または化学的検出のうちの任意の1つまたは複数を含み得る。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の標的分析物は、ETPベースの単離/精製および任意に前記1つまたは複数の標的分析物の収集中に検出され得る。さらに、ETP装置およびETPの方法の文脈内での試料検出は、米国特許出願第62/744,984号;米国特許出願公開第2020/0282392号明細書;およびPCT/EP2018/081049号およびPCT/EP2019/077714号にさらに記載されており、これらの全ての内容は、あらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。
【0026】
試料分析装置またはシステムでは、「試料収集体積」という用語は、分析中または分析後に、例えばロボット液体ハンドラによって収集することを意図した試料の体積を指す。エピタコフォレシスを行うための装置、またはそのような装置を含むシステムにおいて、試料収集体積は、エピタコフォレシス中またはエピタコフォレシス後の試料を含む収集を意図した体積である。いくつかの実施形態において、試料収集体積は、本明細書に記載の装置またはシステムの中央ウェルに配置され得る。いくつかの実施形態において、試料収集体積は、所望の試料の収集を可能にする任意の場所に配置され得る。いくつかの実施形態において、試料収集体積は、試料装填領域と先行電解質電極/収集リザーバとの間のどこであってもよい。試料収集体積は、装置またはシステムの任意の適切な領域、容器、ウェル、または空間によって構成され得る。いくつかの実施形態において、試料収集体積は、ウェル、膜、区画、バイアル、ピペットなどによって構成される。
【0027】
本明細書で使用される場合、「ETPベースの単離/精製」という用語は、一般に、ETPを含む装置および方法、例えばETPを行い得る装置、例えばETPを行うことを含む方法を指し、ETPは、1つまたは複数の標的分析物を1つまたは複数の集束領域(例えば、1つまたは複数のETPバンド)に集束させ、それによって初期試料に含まれる他の物質から1つまたは複数の標的分析物を単離/精製する。「単離する」および「精製する」という用語は、互換的に使用されることに留意されたい。さらにまた、ETPベースの単離/精製は、一般に、前記1つまたは複数の標的分析物を含む1つまたは複数の集束領域(1つまたは複数のETPバンド)のその後の収集を可能にする。1つまたは複数のETPベースの単離/精製によってもたらされる1つまたは複数の標的分析物の単離/精製の程度は、他の物質からの1つまたは複数の標的分析物の任意の程度または量であり得る。いくつかの実施形態において、試料からの標的分析物のETPベースの単離/精製は、例えば、1つまたは複数の標的分析物を含むETP単離/精製試料の組成を判定するための分析技術によって測定した場合に、前記標的分析物の1%以下、1%以上、5%以上、10%以上、60%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、以上、65%以上、70%以上、85%以上、90%以上、95%以上、または99%以上の純度をもたらし得る。いくつかの実施形態において、試料からの標的分析物のETPベースの単離/精製は、標的分析物の1%以下、1%以上、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、85%以上、90%以上、95%以上、または99%以上が元の試料から回収されることをもたらし得る。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の標的分析物、例えば1つまたは複数の核酸を単離/精製するために、1つまたは複数のETPベースの単離/精製が行われ得る。例えば、いくつかの例において、1つまたは複数の標的分析物を含む試料に対してETPベースの単離/精製が行われて、1つまたは複数の標的分析物を1つの集束領域(ETPバンド)に集束させ、1つまたは複数の標的分析物を元の試料に含まれる他の物質から実質的に分離し得る。試料は、ETP単離/精製後に収集されてもよく、単離/収集された試料は、さらに別のETPベースの単離/精製を受けてもよい。任意に、第2のETPベースの単離精製は、1つを超える標的分析物の場合に、1つまたは複数の標的分析物のそれぞれを別個の集束領域に単離するような条件からなってもよく、そのそれぞれは、任意に個別に収集され得、それによって、所望であれば、標的分析物を互いに分離する。
【0028】
本明細書で使用される場合、「混合試料」という用語は、一般に、1つを超える供給源からの物質を含む試料を指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「ETP上部マーカー」は、一般に、標的核酸と比較してサイズがより大きいおよび/または長さがより長い化合物または分子を指し、それにより、ETPベースの単離/精製およびその後の標的分析物の収集中、ETP上部マーカーは、標的分析物の収集を停止することができるカットオフ点を示す。例えば、蛍光標識された、またはそうでなければ検出可能に標識されたETP上部マーカーは、ETPベースの単離/精製中に単離/精製および収集される標的DNAよりも大きいようなサイズで生成され得る。ETPの実行全体にわたってマーカーをモニタリングすることにより、ユーザまたは自動化された機械は、マーカーが収集管に落下する前に実行を停止することができ、それにより、マーカーよりも小さいDNAを捕捉することができる一方で、より大きな汚染DNAは、上部マーカーの後ろに配置されるため除外される。さらに、ETP上部マーカー自体は収集されず、したがって、下流アッセイ、例えば1つまたは複数のIVDアッセイに干渉しないため、大量に様々な検出可能な標識とともに使用され得る。いくつかの例において、ETP上部マーカーは、1つまたは複数の標的分析物の単離/精製および収集された試料からのゲノムDNAの排除を助けるため、ETPベースの単離/精製方法において使用され得る。
【発明を実施するための形態】
【0030】
詳細な説明
エピタコフォレシス(ETP)の実施では、試料の濃縮および/または分離は、平面空間内で進行する。濃縮または分離される成分は、1つの平面に沿って移動する。本発明の実施形態は、エピトープ分離に寸法を付加する装置および方法を含む。第1の寸法は、1つの平面に沿ったエレクトロマイグレーションであり、成分のマイグレーションの第1の部分である。ETP集束後、エレクトロマイグレーションは、第1の寸法に対して垂直または実質的に垂直な第2の寸法で継続する。この第2の移動は、第1の寸法の少なくとも10倍の体積の空間で進行する。「体積結合」という用語は、ETPにおけるエレクトロマイグレーションの体積の減少を説明するために使用される。
【0031】
ETP装置および方法の利点は、試料をはるかに低い体積に集束させ、より高い濃度の試料を提供することを含む。さらに、より小さい体積の第2の分離寸法は、光学的および電気化学的検出、液体クロマトグラフ(LC)、キャピラリー電気泳動(CE)、NMR、および質量分析を含む分離を含む他の分析システムへのオンライン接続を可能にし得る。
【0032】
I. エピタコフォレシス
エピタコフォレシスのための装置は、一般に、例えば
図1~
図4に示すように、同心または多角形のディスクアーキテクチャを使用する。これらの物質は、装置動作中に有益な改善された熱伝達特性をもたらすため、ガラスまたはセラミックがシステム(すなわち、同心円または多角形のディスクの物質)の製造に使用され得る。例えば、エピタコフォレシス装置の平坦なチャネルは、狭いチャネルと比較して良好な熱伝達能力を有するため、集束物質の過熱(または沸騰)は一般に防止される。電流/電圧プログラミングは、装置のジュール加熱を調整するのにも適している。プラスチック材料も装置製造に使用され得る。一般に、装置は、所望の試料体積、例えばミリリットルスケールの試料体積、例えば最大15mLを収容するような寸法で製造される。
【0033】
図1~
図3を参照すると、2つの同心ディスクがスペーサによって分離され、それにより、エピタコフォレシス試料処理のための平坦なチャネルを形成する。電流は、複数の高電圧接続部(HV接続部)を介して印加され、接地接続部は、システムの中央(例えば、
図1および
図3を参照)にあってもよい。いくつかの例において、試料は、装置の開口部、例えば上部または側部(例えば、
図3を参照)を通して装置に注入される。電気の印加は、ディスクの中心に移動する同心リングとして試料の標的分析物を集束させ、次いで標的分析物は、装置の底部のシリンジを通して収集され得る(例えば、
図3を参照)。
図2A(平面図)および
図2Bに示すように、装置構成の例は、外側円形電極(1)、終端電解質(2)、および先行電解質(3)を含む。一般に、外側円形電極(1)の直径は、約10~200mmであり、先行電解質の直径は、約10μm~約20mmの厚さ(高さ)の範囲である。先行電解質は、ゲル、粘性添加剤によって安定化され得るか、または例えば膜などによって終端電解質から流体力学的に分離され得る。ゲルまたは流体力学的分離は、装置の動作中に先行電解質と終端電解質との混合を防止する。また、いくつかの装置では、さらに後述するように、電解質の非常に薄い(100μm未満)層を使用することによって混合が防止される。
【0034】
図2A~
図2Bを参照すると、先行電解質の中心には、電極(5)を有する電解質リザーバ(4)がある。電極(1、5)および電解質(2、3)のアセンブリは、平坦な電気絶縁支持体(8)上に配置される。電解質リザーバ(4)は、例えばリザーバから試料をピペットで取り出すなどの分離プロセス後に濃縮試料溶液を除去するために使用される。電解質リザーバ(4)はまた、試料収集リザーバでもある。外側円形電極(1)は、先行電解質(3)および終端電解質(2)が配置されている円形チャネルの端部に配置されてもよい。
【0035】
代替的な構成(
図4を参照)では、中心電極(5)は、管(9)によって濃縮器に接続された先行電解質リザーバ(10)に移動される。管(9)は、半透膜(図示せず)によって一端が直接的に接続されているか、または閉鎖されている。この配置は、使用される膜の特性にしたがって大きな分子の移動を停止することによって収集を容易にする。この配置は、試料の収集を単純化し、例えば、毛細管分析器、クロマトグラフィ、PCR装置、酵素反応器などの他の装置にオンラインで濃縮器を接続する手段を提供する。管(9)がまた使用されて、先行電解質を含有するゲルを含まない構成で先行電解質の向流を供給することもできる。
【0036】
一般に、先行電解質安定化のためのゲルは、例えばアガロース、ポリアクリルアミド、プルランなどの任意の非荷電物質によって形成される。いくつかの装置では、実行される分離の性質に応じて、上面が開いたままにされるか、またはいくつかの装置では上面が閉鎖される。閉鎖している場合、装置を覆うために使用される物質は、好ましくは、エピタコフォレシス装置の動作中の蒸発を防止するために、熱伝導性絶縁物質である。
【0037】
一般に、リング(円形)電極は、最大の耐薬品性および電界均一性を可能にするため、優先的には金メッキまたは白金メッキされたステンレス鋼リングである。あるいは、ステンレス鋼およびグラファイト電極は、いくつかの装置、特に使い捨て装置に使用されてもよい。また、リング(円形)電極は、同様の機能を提供する他の構造、例えばワイヤ電極のアレイによって置換されることができる。さらに、規則的に離間された電極の2次元アレイが、追加的または代替的に、エピタコフォレシス装置に使用されてもよい。円形配向の規則的に離間された電極のアレイもまた、エピタコフォレシス装置に使用され得る。さらにまた、他の電極構成もまた使用されて、所望の試料分離(例えば、集束領域を方向付けるために)に基づいて異なる電界形状をもたらし得る。そのような構成は、電極の多角形構成として説明される。電気的に分離されたセグメントに分割されると、駆動電界の時間依存形状に対して切り替えられた電界が生成される。そのような構成は、いくつかの装置における試料収集を容易にする。
【0038】
図1~
図4に示されている設計のものなどのエピタコフォレシス装置は、
図5に示されているように、2つの電解質リザーバ配置、先行電解質とそれに続く終端電解質と混合された試料、または先行電解質とそれに続く終端電解質と混合された試料、または3つの電解質リザーバ配置のいずれかで動作され得る。そのような構成では、試料は、任意の導電性溶液と混合され得る。あるいは、試料が適切な終端イオンを含む場合、終端電解質領域は排除されることができる。
図2A~
図2Bを参照すると、終端電解質(2)の領域に試料と適切な終端電解質との混合物を充填し、電源(6)をオンにすると、イオンは、中心電極(5)に向かって移動し始め、先行電解質と終端電解質(7)との間の境界に領域を形成する。泳動中の試料領域の濃度は、一般的な等速電気泳動原理[Foret,F.,Krivankova,L.,Bocek,P.,Capillary Zone Electrophoresis.Electrophoresis Library,(Editor Radola,B.J.)VCH,Verlagsgessellschaft,Weinheim,1993.]にしたがって調整され、その全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。これにより、低濃度の試料イオンは濃縮され、高濃度の試料イオンは希釈される。不連続電解質システムでは、領域の濃度は、先行するものの濃度によって調節される。不連続電解質システムは、異なるゲル構造(またはゲルの存在)、緩衝液のpH値、緩衝液のイオン強度、および/またはイオンを含み得る。したがって、少量の試料成分の領域の濃度は増加するが、高濃度(先行領域よりも高い)のものがある場合には希釈される。試料領域が電解質リザーバ(4)に入ると、分離プロセスが停止され、集束物質が装置の中心に収集される。実際には、泳動領域の最終濃度は、先行イオンの濃度に匹敵する濃度を有する。典型的には、2から1,000またはそれ以上の任意の濃度因子が、エピタコフォレシスを使用して達成される。
【0039】
3つの電解質リザーバ配置では、試料は、先行電解質と終端電解質との間に適用され(例えば、
図5を参照)、そのような配置は、2電解質リザーバ配置と比較して僅かに速い試料濃度および分離をもたらし得る。
【0040】
混合を避けるために、先行電解質および後行電解質は、中性(非荷電)粘性媒体、例えば、アガロースゲル(例えば、任意にゲル内に含まれるか、または終端電解質から流体力学的に分離された先行電解質を表す
図2A~
図2B、(3)を参照)によって安定化され得る。
【0041】
等速電気泳動に使用される全ての一般的な電解質は、先行イオンが目的の試料イオンの有効電気泳動移動度よりも高い有効電気泳動移動度を有する場合、本発明のエピタコフォレシス装置とともに使用され得る。選択された終端イオンについては反対である。
【0042】
装置は、正モード(カチオン種の分離/濃縮)または負モード(アニオン種の分離/濃縮)のいずれかで動作され得る。エピタコフォレシスを使用したアニオン分離のための最も一般的な先行電解質は、例えば、適切な塩基、例えばヒスチジン、TRIS、クレアチニンなどで所望のpHに緩衝された塩化物、硫酸塩、またはギ酸塩を含む。アニオン分離のためのエピタコフォレシスのための先行電解質の濃度は、主要なイオンに対して5mM~1Mの範囲である。その場合、終端イオンは、多くの場合、MES、MOPS、HEPES、TAPS、アセテート、グルタメートおよび弱酸および低移動度アニオンの他のアニオンを含む。正モードでのエピタコフォレシスのための終端電解質の濃度は、以下の範囲である:終端イオンに対して5mM~10M。
【0043】
カチオン分離のために、エピタコフォレシスのための一般的な先行イオンとしては、例えば、カリウム、アンモニウムまたはナトリウムを含み、酢酸塩またはギ酸塩が最も一般的な緩衝対イオンである。そして、反応ヒドロキソニウムイオン移動境界は、任意の弱酸によって形成される万能終端電解質として機能する。
【0044】
正モードおよび負モードの両方において、先行イオンの濃度の増加は、所与の印加電圧に対する電流(電力)の増加を犠牲にして、試料領域の比例的な増加をもたらす。典型的な濃度は、10~100mMの範囲である;しかしながら、より高い濃度も可能である。
【0045】
さらにまた、領域電気泳動分離のみで十分である場合、装置は、ただ1つのバックグラウンド電解質によって動作され得る。
【0046】
電流および/または電圧プログラミングは、試料の移動速度を調整するのに適している。この同心配置では、移動中に断面積が変化し、領域移動の速度は時間的に一定ではないことに留意されたい。したがって、この配置は、領域が一定の速度で移動する等速電気泳動の原理に厳密に従わない。電源(6)の動作モードに応じて、以下の3つの基本的なケースが区別され得る:1.定電流分離;2.定電圧分離;3.定出力分離。
【0047】
以下に説明する式の変数は以下のとおりである:d=移動距離(d<0;r>0);E=電界強度;H=電解質(ゲル)高さ;I=電流;J=電流密度;κ=電解質導電率;r=半径;S=断面積(2つの電解質の間の面積);u=電気泳動移動度;v=速度;X=中心電極からエピタコフォレシス境界までの長さ。
図6は、装置における変数d、r、Xの関係を示している。
【0048】
高電圧電源(HVPS)によって供給される定電流を使用する共通の動作モードでは、移動領域は、電流密度の増加に起因して中心に近付くにつれて加速される。定電流での分離に関して、円形構造を含む装置、例えば1つまたは複数の円形電極を含む装置を使用すると、距離dにおける相対速度は、以下のように開始半径rから距離dにおけるvでのエピタコフォレシス境界速度の導出によって実証されるように、先行電解質の移動度(導電率)にのみ依存する。
一般式:
【数1】
開始から半径rの距離dにおけるエピタコフォレシス境界速度v:
v
(d)=u
LI/2π(r-d)hκ
L=定数/(r-d)
【0049】
ETP装置はまた、定電圧または定電力でも動作され得る。エレクトロマイグレーションの速度はまた、定電圧および定電力で実行される分析中に加速する。
【0050】
II. 体積結合システム
本発明の実施形態は、試料から成分を濃縮するための体積結合を可能にするシステムを含み得る。これらの体積結合システムは、
図1~
図6の装置を、移動のための第2の寸法および試料のさらなる濃縮のための第2の体積を含むように適合させることを含み得る。
【0051】
図7は、エピタコフォレシスを使用して試料中の成分を濃縮するためのシステム700を示している。システム700は、ベース704を含む。ベース704は、
図2A、
図2B、および
図4の電気絶縁支持体8であり得る。ベース704は、円筒形部分を画定し得、その中にマニホールド708がベース704上に配置される。ピペットチップ712は、マニホールド708の中心を通って配置され得る。マニホールド708は、ピペットチップ712を定位置に保持し得る。マニホールド708は任意である。システム700は、電気リード716および720を含み得る。電気リード716および720のうちの一方は、第1の電極(
図7には示されていない)と電気的に連通し得る。第1の電極は、ベース704における円筒部の外縁のリング状電極であり得る。第1の電極は、
図2A、
図2B、および
図4の電極1を含む、本明細書に記載の任意の電極であり得る。電気リード716および720のうちの他方は、第2の電極(
図7には示されていない)と電気的に連通し得る。第2の電極は、ピペットチップ712の下端に電圧を供給し得る。第2の電極は、電極の位置が試料収集点(例えば、ピペットチップが配置される場所)のさらに下流にあり得ることを除いて、
図2A、
図2B、および
図4の電極5と同様であり得る。
【0052】
終端電解質は、マニホールド708の間に、ベース704内の円筒部の外縁に向かって配置され得る。終端電解質は、
図2A、
図2B、および
図4の終端電解質2を含む、本明細書に記載の任意の終端電解質であり得る。先行電解質は、マニホールド708の中心にあり、終端電解質と接触し得る。先行電解質および終端電解質は、マニホールド708の縁部で互いに接触してもしなくてもよい。先行電解質の外縁は、円形または円形であってもよく、終端電解質は、環状部であってもよく、または終端電解質の縁部は、環状部をトレースしてもよい。先行電解質は、
図2A、
図2B、および
図4の先行電解質3を含む、本明細書に記載の任意の先行電解質であってもよい。
【0053】
図8は、システム700を分解図で示している。ピペットチップ712は、
図7では見えない円錐形部分724を有する。円錐形部分724は、ベース704内のキャビティ728内に嵌合する。キャビティ728の形状も円錐形である。キャビティ728は、ピペットチップ712の円錐形部分724よりも僅かに大きくてもよく、その結果、
図7のように、ピペットチップ712がキャビティ728内にあるとき、ベース704とピペットチップ712との間に環状空間が生じる。キャビティ728は、
図2A、
図2B、および
図4の電解質リザーバ4とは異なる。キャビティ728は、ベース704内の電解質のための平面部分の表面の下方に形成される。さらに、
図4の電解質リザーバ4とは異なり、キャビティ728は、ピペットチップ712を受け入れ、試料収集容器への導管として作用する電解質リザーバ4の全体ではなく、円錐形部分724への環状流を生成するように構成される。
【0054】
図9は、システム700と同様のシステム900におけるピペットチップの断面を示している。システム900は、ベース904を含む。マニホールド908は、ベース904によって画定された部分に配置される。ピペットチップ912は、ベース904を通って示されている。ピペットチップ912は、ベース904によって画定されるキャビティ928内に配置される。ピペットチップ912は、マニホールド908では不可能な成分の収集を可能にする。キャビティ928とピペットチップ924との間には、環状空間936が形成される。第1の電極916は、第1のチャネル932内にある。第1のチャネル932は、ベース904およびマニホールド908によって画定される。第2の電極920は、環状空間936と流体連通するリザーバ944内に配置される。リザーバ944内の液体は、膜940によって環状空間936内の液体から分離され得る。膜940は、イオンを通過させることを可能にしてもよいが、試料中の分析物または他の成分を通過させることを可能にしなくてもよい。膜940は、本明細書に記載の任意の膜であり得る。膜940は、1から2mm、2から3mm、3から4mm、4から5mm、5から7mm、7から10mm、または10mmを超える直径を有し得る。
【0055】
第1のチャネル932は、第1の混合物を形成することができる第1の電解質および試料を含み得る。試料の成分は、第2の電解質を含み得るマニホールド908を通過し得る。成分は、マニホールド908および/または第2の電解質を通過する際に集束バンド948を形成し得る。集束バンド948は、半径方向内側に移動し得る。環状空間936は、第2の電解質を含み得る。第1の電極916および第2の電極920に印加される電圧差は、帯電成分を第1のチャネル932から環状空間936へと膜940の上方へと駆動し得る。帯電成分は、ピペットチップ924を介してピペットから吸引することによってピペットチップ924に入り得る。成分は、環状空間936内に集束バンド952を形成し得る。集束バンド952は、システム900の上部から離れ、膜940および/またはピペットチップ924の底部のオリフィスに向かって移動し得る。集束バンド952は、半径方向内側に移動し得る。
【0056】
いくつかの実施形態において、試料中の成分を濃縮するためのシステムは、第1のチャネルおよびキャビティを画定するベースを含み得る。ベースは、ベース704およびベース904を含む、本明細書に記載の任意のベースであり得る。ベースは、単一の材料片から画定され得る。キャビティは、キャビティ728およびキャビティ928を含む、本明細書に記載の任意のキャビティであり得る。
【0057】
第1のチャネルは、第1のチャネル932を含む、本明細書に記載の任意の第1のチャネルを含み得る。第1のチャネルは、円形であり得る。第1のチャネルは、キャビティと流体連通している。例えば、液体中の成分は、液体内で第1のチャネルからキャビティに移動することを可能にし得る。第1のチャネルの外径は、キャビティの上部の第1の外径よりも大きくてもよい。第1のチャネルの外径は、
図7および
図8のベース704に示される円筒状凹部の直径であってもよい。
【0058】
キャビティは、キャビティの底部の第2の外径よりも大きい第1の外径を有する円錐形状を含み得る。円錐形状のより狭い部分は、システムの底部にあり得る。本明細書で使用される場合、「底部」および「上部」は、通常動作中のシステムの向きを指す。円錐形状は、円錐または実質的に円錐に類似した形状を含む。キャビティの側面は、点(すなわち、頂点)まで先細になっていてもよい。実質的に同様の形状は、任意の点における形状の水平断面が、同じ頂点およびキャビティの開口部によって画定される円錐の寸法の5%、10%、または15%以内の最大長さ(例えば、直径)を有する形状を含み得る。円錐は、直円錐であってもよい。いくつかの実施形態において、円錐形状は、頂点を含まなくてもよい。例えば、円錐形状は、円形であり得る底面を含むように切り取られてもよい。例えば、円錐形状は、
図9のキャビティ928と同様の断面を有してもよく、膜940は、円錐形状の一端である。いくつかの実施形態において、ベースの表面は、円錐形であってもよい。キャビティは、5から10mm、10から15mm、15から20mm、20から30mm、30から40mm、40から50mm、または50mmを超える深さを有し得る。
【0059】
いくつかの実施形態において、キャビティは、円錐形部分の上部に円筒形部分を有し得る。このようにして、キャビティは、円錐形および円筒形部分を有する容器(例えば、ピペットチップ)と同様の形状を有し得る。
【0060】
システムは、第1のチャネルに配置された第1の電極をさらに含み得る。第1の電極は、第1の電極916を含む、本明細書に記載の任意の電極であり得る。いくつかの実施形態において、第1の電極は、リング状であり得る。システムは、第2の電極をさらに含み得る。第2の電極は、第2の電極920を含む、本明細書に記載の任意の電極であり得る。第2の電極は、第1のチャネルおよびキャビティが電解質を含む場合、第1のチャネルよりもキャビティとより密接に電気的に連通するように構成される。より密接な電気的連通とは、同じ電圧が印加されると、抵抗がより低いこと、または電流がより高いことを指し得る。キャビティは、第1のチャネルが第2の電極にあるよりも第2の電極に物理的に近くてもよい。第2の電極がキャビティと第1のチャネルとに接触する液体中に配置される場合、第2の電極とキャビティとの間の液体の量は、第1のチャネルと第2の電極との間の液体の量よりも少ない。第2の電極は、リング状であってもよく、板状であってもよく、またはロッド状であってもよい。
【0061】
第1のチャネルは、第1の体積によって特徴付けられる。第1の体積は、第1のチャネルによって収容され得る液体の体積であると考えられ得る。例えば、
図9では、第1のチャネル932の第1の体積は、マニホールド908によって取られる体積を含まなくてもよい。第1の体積は、0.25 ml以下、0.25から0.50ml、0.50から0.75ml、0.75から1.0ml、1.0から2.5ml、2.5から5.0ml、5.0から7.5ml、7.5から10.0ml、10.0から12.5ml、12.5から15.0ml、15.0から30.0ml、30.0mlから50.0ml、50ml超であり得る。
【0062】
キャビティは、容器を受け入れ、容器がキャビティ内に配置されたときに第2のチャネルを形成するように構成される。容器は、ピペットチップ112およびピペットチップ912を含む、本明細書に記載の任意の容器であり得る。いくつかの実施形態において、容器は、トロカールまたはシリンジの針であってもよい。容器は、液体がキャビティから入り得るカニューレを画定し得る。容器は、1μlから500μl(1μlから10μl、10μlから50μl、50μlから100μl、100μlから200μl、200μlから300μl、300μlから400μl、400μlから500μl、または500μl超を含む)の試料収集体積を保持するように構成され得る。容器は、マニホールドによって定位置に保持され得る。いくつかの実施形態において、容器は、ベースに取り付けられた支持体を介して定位置に保持されてもよい。他の実施形態において、ベースの外部の支持体が容器を定位置に保持してもよい。例えば、支持体は、ロボットハンドリングシステムのアームであってもよい。
【0063】
第2のチャネルは、環状空間936を含む環状空間であり得る。環状空間は、容器がキャビティ内に配置されたときに、ベースの表面および容器の表面によって画定され得る。第2のチャネルは、第2の体積によって特徴付けられる。第1の体積は、第2の体積よりも大きい。第1の体積は、第2の体積の5倍から10倍、10倍から20倍、20倍から50倍、50倍から100倍、または100倍超であり得る。いくつかの実施形態において、ベースの表面および容器の表面は同心である。環状空間は、2つの同心面の間の空間であってもよい。
【0064】
いくつかの実施形態において、キャビティは、第1のチャネルを画定するベースの底面の下方にある。例えば、
図8および
図9に示すように、第1のチャネルは、ベースの第1凹部であり、キャビティは、第1の凹部内の第2の凹部であり得る。第1のチャネルを画定するベースの底面は、第2のチャネルを画定するベースの表面に接触または交差してもよい。表面は、円で交差してもよい。
【0065】
いくつかの実施形態において、システムは、キャビティと第2の電極との間に膜を含み得る。膜は、半透膜であり得る。膜は、
図9に示す膜940であり得る。膜は、特定のサイズよりも小さい粒子が通過することを可能にし得る。分析されることが意図される生物学的試料中の成分は、膜を通過しなくてもよい。
【0066】
いくつかの実施形態において、システムは、リザーバを含み得る。第2の電極は、リザーバ内に配置され得る。リザーバは、リザーバ944を含む、本明細書に記載の任意のリザーバであり得る。リザーバは、先行電解質を含む電解質を収容し得る。リザーバは、膜によってキャビティから分離され得る。同じ電解質がリザーバおよびキャビティ内に存在してもよい。リザーバ内に配置された第2の電極からの電界は、リザーバを通ってキャビティに伝播され得る。
【0067】
いくつかの実施形態において、システムは、第1の電極および第2の電極と電気的に連通する電源を含み得る。いくつかの実施形態において、システムは、電源を制御するように構成されたコンピュータを含み得る。電源は、定電圧、定電流、または定電力を供給し得る。
【0068】
いくつかの実施形態において、システムは、本明細書に記載の任意のインビトロ診断アッセイを含むインビトロ診断アッセイ装置を含み得る。アッセイ装置は、試料中の成分を検出するように構成された検出器を含み得る。検出器は、光学検出器、電気化学検出器、または本明細書に記載の任意の検出器を含み得る。
【0069】
いくつかの実施形態において、システムは、容器を含み得る。いくつかの実施形態において、システムは、キャビティ内に配置された容器を含み得る。他の実施形態において、システムは、キャビティ内に配置されていない容器を含んでもよい。
【0070】
いくつかの実施形態において、システムは、第1のチャネルに配置された第1の電解質を含み得る。第1の電解質は、終端電解質であってもよい。システムは、先行電解質であり得る第2の電解質を含み得る。第2の電解質は、第1のチャネル内のゲル内に配置されてもよく、またキャビティ内に配置されてもよい。システムは、ゲルを含み得る。電解質およびゲルは、本明細書に開示されているいずれであってもよい。
【0071】
いくつかの実施形態において、システムは、マニホールドを含み得る。マニホールドは、第2のチャネルへの出口を有する複数のチャネルを画定し得る。マニホールドによって画定された複数のチャネルは、第1のチャネルと第2のチャネルとの間にあり得る。
【0072】
いくつかの実施形態において、ベースは、キャビティ内に延在する複数の構造を画定し得る。複数の構造は、第1の構造と、第1の構造としてキャビティの反対側にある第2の構造とを含み得る。第1の構造と第2の構造との間の距離は、容器の直径であり得る。構造の長さは、第2のチャネル内の第2の厚さであり得る。構造は、キャビティ内で容器を保持または支持し得る。
【0073】
図10Aは、支持体1004を含む4つの支持体を有するベース1000の底面図を示している。支持体は、キャビティ内に延在する複数の構造であり得る。支持体1004は、円形のキャビティからの突出部である。4つの支持体は、等間隔(隣接する支持体間で90度)に配置される。各支持体は、他の支持体と同一であってもよい。支持体は、長方形の形状であってもよい。いくつかの実施形態において、支持体は、三角形、角錐形、台形、または丸みを帯びた形状であってもよい。支持体は、キャビティの直径の2%から5%、5%から10%、10%から15%、15%から20%、20%から25%、25%から33%、または33%から40%の長さを有し得る。キャビティの反対側の支持体と支持体との間の距離は、容器(例えば、ピペットチップ)の外径であり得る。キャビティの上部の支持体は、4から8、8から10、10から16、16から20、20から30、または30から50の数であってもよい。追加の支持体がキャビティ内の異なる深さに存在してもよい。
【0074】
図10B、
図10C、
図10D、および
図10Eは、キャビティの上部にある異なる数の支持体、およびキャビティ内の異なる深さにある支持体の平面図を示している。
図10B、
図10C、
図10D、および
図10Eは、それぞれ、キャビティの上部の下方の各深さにある4つの支持体を示している。各深さの支持体の数は、キャビティの上部の支持体に設けられた任意の数であってもよく、その数は、キャビティの上部の支持体の数と同じであっても異なっていてもよい。支持体は、異なる深さレベルで設けられてもよい。例えば、
図10B、
図10C、
図10D、および
図10Eは、3つの深さレベルにおける支持体を示している。2から5および5から10を含む異なる深さレベルが可能である。隣接する深さレベルは、同じまたは異なる垂直距離によって分離されてもよい。
図10Eは、支持体間のベースの上部の凹部1008を示している。凹部1008は、凹部がない場合よりも多くの液体の流れを可能にするためにキャビティ内へのランプダウンであってもよい。
【0075】
III. 例示的な方法
図11は、エピタコフォレシスにおける体積結合に関連する例示的なプロセス1100のフローチャートである。プロセス1100は、試料から成分を濃縮し得る。プロセス1100は、ETPベースの単離/精製のためのものであり得る。試料は、本明細書に記載の任意の試料であり得る。成分は、標的核酸、標的微生物、バイオマーカー、または標的分析物を含み得る。試料は、複数の成分を含み得る。試料は、被験者由来であり得る。試料は、2つ以上の供給源からの材料を含む混合試料であってもよい。試料は、ETPアッパーマーカーを含み得る。
【0076】
いくつかの実施形態において、
図11の1つまたは複数のプロセスブロックは、エピタコフォレシス装置(例えば、
図9のシステム900)によって実行され得る。いくつかの実施形態において、
図11の1つまたは複数のプロセスブロックは、エピタコフォレシス装置とは別個の、またはエピタコフォレシス装置を含む別の装置または装置のグループによって実行され得る。追加的または代替的に、
図11の1つまたは複数のプロセスブロックは、論理システム1230、プロセッサ1250、メモリ1235、外部メモリ1240、記憶装置1245、および/または処置装置1260などのシステム1200の1つまたは複数の部分によって実行されてもよい。プロセス1100は、以下に記載されるおよび/または本明細書の他の場所に記載される1つまたは複数の他のプロセスに関連する任意の単一の実施形態または実施形態の任意の組み合わせなどの追加の実施形態を含んでもよい。
【0077】
ブロック1110において、プロセス1100は、第1の電極と第2の電極との間に電圧差を印加することを含み得る。第1の電極は、第1の電解質および試料を含む第1の混合物中に配置され得る。いくつかの例において、第1の混合物は、
図9の第1のチャネル932内にあり得る。第2の電極は、第2の電解質内に配置され得る。第2の電解質は、第1のチャネル内のゲル内に配置され得る。ゲルは、マニホールド908内またはマニホールド908の領域内にあってもよい。第1の電極は、第2の電極と異なっていてもよい。第2の電解質は、ゲルに含まれていてもよい。第2の電解質は、第1の電解質から流体力学的に分離されてもよい。第1の電解質と第2の電解質とは、膜によって分離されてもよい。エピタコフォレシス装置は、第1の電極と第2の電極との間に電圧差を印加し得る。
【0078】
第1の電極は、円形であり得る。第1の電極は、リングであってもよく、円形でもあり得るチャネルの縁部に配置されてもよい。例として、第1の電極は、
図9の第1の電極916を含む、本明細書に記載の任意の電極であり得る。第2の電極は、第2の電極920を含む、本明細書に記載の任意の電極であり得る。
【0079】
電圧差は、定電圧であり得る。いくつかの実施形態において、電圧差は、印加される定電流の結果であり得る。いくつかの実施形態において、印加される電圧差は、印加される一定の電力の結果であり得る。電圧は、約1mWから約100Wの範囲の電力で、約10Vから約10kVの範囲であり得る。
【0080】
ブロック1120において、プロセス1100は、電圧差を使用して、第1のチャネル内の成分を第1の方向に流すことを含み得る。第1のチャネルは、第1のチャネル932を含む、本明細書に記載の任意のチャネルであり得る。第1の方向は、第1の電極から離れ、かつ第2のチャネルに向かっていてもよい。成分は、バンド内に集束されてもよい。集束バンドは、標的分析物が第1の電解質または第2の電解質内に濃縮される部分であり得る。特定の集束バンド内の標的分析物は、印加された電界内で同じまたは同様の移動度を有するイオンを含み得る。バンドは、リング状であってもよく、
図1の集束領域などの集束領域と呼ばれることがある。集束は、印加された電圧および電解質から生じ得る。第1の混合物は、第1の方向に垂直な第1の厚さを有することを特徴とする。第1の厚さは、高さであってもよい。例えば、第1の厚さは、第1のチャネル932内の第1の混合物の高さであってもよい。第1の厚さは、
図9に示す集束バンド948の垂直寸法であってもよい。
【0081】
ブロック1130において、プロセス1100は、バンド内に集束された成分を第2のチャネル内で第2の方向に流すことを含み得る。バンドは、第1のチャネルを流れ、第1のチャネルを出て、次いで第2のチャネルに入り得る。第2の電解質は、第2のチャネル内にあり得る。第2の方向は、第1のチャネルから容器のオリフィスまでであってもよい。第2のチャネルは、環状空間であり得る。第2のチャネルは、環状空間936を含む、本明細書に記載の任意の第2のチャネルを含み得る。第2のチャネル内に成分および第2の電解質を含む第2の混合物は、第2の方向に垂直な第2の厚さを有することを特徴とする。第1の厚さは、第2の厚さよりも大きくてもよい。液体の厚さは、液体が第1のチャネルから第2のチャネルに移動するにつれて減少し得る。液体は、成分と、第1または第2の電解質のいずれかとを含み得る。第2の厚さは、高さであってもよい。第2の厚さは、環状空間936に示される集束バンド952の厚さであってもよく、厚さは、環状空間936を画定する壁に垂直であってもよい。第2の混合物中の成分の量は、第1の混合物中の成分の量と同じであってもよい。
【0082】
実施形態において、環状空間は、容器の外面によって画定される。容器は、円錐形状を含み得る。第2のチャネルは、第1の円錐面および第2の円錐面によって画定され得る。第1の円錐面は、容器の外面であってもよい。第2の円錐面は、ベースの表面であってもよい。
【0083】
プロセス1100は、第2のチャネル内で、バンド内に集束された成分を第2の方向に流すことが、バンドの半径を減少させ、成分を重力方向に流すことを含むことを含んでもよい。第2の方向は、重力方向のみでなくてもよい。第2の方向は、第2の方向が下方向(重力方向)の非ゼロベクトルと1つまたは複数の他のベクトルとの和であるように、下方向に角度付けされてもよい。第2の方向は、第1の円錐面または第2の円錐面によって形成される円錐の頂点を直接指し示してもよい。いくつかの実施形態において、第2の方向は、環状空間内に表面を有する円錐を直接指し示してもよい。
【0084】
実施形態において、第1のチャネルおよび第2のチャネルは、それぞれベースによって画定され得る。ベースは、ベース904を含む本明細書に記載の任意のベースであり得る。いくつかの実施形態において、プロセス1100は、第1のチャネルと第2のチャネルとの間の複数のチャネルに成分を流すことを含み得る。複数のチャネルは、マニホールド908を含み得るマニホールドによって画定され得る。
【0085】
実施形態において、第1の方向は、第2の方向と同一直線上になくてもよい。第1の方向は、水平であり、第1のチャネルの外側を形成する円の中心に向かっていてもよい。第2の方向は、円の中心に向かうが、第1のチャネルの底面の下方の位置にあってもよい。
【0086】
第1のチャネルは、第1の体積によって特徴付けられ得る。第1の体積は、第1のチャネル内に配置され得る液体の最大体積として定義されてもよい。第1のチャネルの体積は、第1のチャネルの底面の面積および第1のチャネルの側壁の高さに基づいて決定され得る。第2のチャネルは、第2の体積によって特徴付けられ得る。第2の体積は、環状空間の体積であり得る。第1の体積は、第2の体積の少なくとも10倍大きくてもよい。いくつかの実施形態において、第1の体積は、第2の体積の5倍から10倍、10倍から50倍、50倍から100倍、100倍から150倍、または150倍超であり得る。
【0087】
実施形態において、第2のチャネルは、少なくとも2mmの第2の方向の長さを有し得る。第2の方向の長さは、2から5mm、5から10mm、10から15mm、または15mmよりも大きくてもよい。
【0088】
ブロック1140において、プロセス1100は、電圧差を印加しながら容器内の第2の混合物を収集することを含み得る。容器内で混合物を回収することは、重力に逆らって第2の混合物を容器内に第3の方向に流すことを含み得る。容器内の第2の混合物中の成分の濃度は、2から5倍、5から10倍、10から100倍、100から500倍、500から1,000倍、1,000から2,000倍、または1,000倍超を含む、試料中の成分の濃度より高くてもよい。
【0089】
実施形態において、試料は、試料からの追加の成分を含んでもよく、追加の成分は、追加のバンド内に集束されてもよい。例えば、成分は、第1の成分であり、試料は、第2の成分をさらに含み得る。第2の成分は、第1のチャネル内の第2のバンド内に集束され得る。本方法は、電圧差を使用して、第1のチャネル内の第2の成分を流すことをさらに含み得る。本方法はまた、第2のチャネル内で、第2の方向に第2のバンド内に集束された第2の成分を流すことを含み得る。プロセス1100は、容器内の第2の成分を収集することを含み得る。
【0090】
図11は、プロセス1100の例示的なブロックを示しているが、いくつかの実施形態において、プロセス1100は、
図11に示されたものよりも追加のブロック、より少ないブロック、異なるブロック、または異なる配置のブロックを含み得る。追加的または代替的に、プロセス1100のブロックのうちの2つ以上が並列に実行されてもよい。
【0091】
IV. 例示的なシステム
図12は、本開示の実施形態にかかる測定システム1200を示している。示されるシステムは、アッセイ装置1210内の無細胞DNA分子などの試料1205を含み、試料1205に対してアッセイ1208が実行され得る。例えば、試料1205をアッセイ1208の試薬と接触させて、物理的特性1215の信号を提供することができる。アッセイ装置の例は、アッセイのプローブおよび/またはプライマーを含むフローセル、または液滴が移動するチューブ(液滴はアッセイを含む)とすることができる。アッセイ装置1210は、本明細書に記載の任意のエピタコフォレシス(ETP)装置を含む複数のモジュールを含み得る。ETP装置は、試料1205を濃縮または分離することができ、その濃縮試料は、分析装置内の別のモジュールに送られ得る。他のモジュールは、インビトロ診断アッセイを実行してもよい。
【0092】
試料からの物理的特性1215(例えば、蛍光強度、電圧、または電流)は、検出器1220によって検出される。検出器1220は、データ信号を構成するデータ点を取得するために、間隔(例えば、周期的な間隔)を置いて測定を行うことができる。一実施形態において、アナログ-デジタル変換器は、検出器からのアナログ信号を複数回デジタル形式に変換する。アッセイ装置1210および検出器1220は、アッセイシステム、例えば、本明細書に記載の実施形態にかかる配列決定を実行する配列決定システムを形成することができる。データ信号1225は、検出器1220から論理システム1230に送信される。例として、DNA分子の参照ゲノム内の配列および/または位置を決定するために、データ信号1225が使用され得る。データ信号1225は、同時に行われる様々な測定、例えば、異なる色の蛍光色素、または異なる分子の試料1205に対する異なる電気信号を含むことができ、したがって、データ信号1225は、複数の信号に対応することができる。データ信号1225は、ローカルメモリ1235、外部メモリ1240、または記憶装置1245に記憶され得る。
【0093】
論理システム1230は、コンピュータシステム、ASIC、マイクロプロセッサ、グラフィックス処理装置(GPU)などであってもよく、またはそれらを含んでもよい。また、ディスプレイ(例えば、モニタ、LEDディスプレイなど)およびユーザ入力装置(例えば、マウス、キーボード、ボタンなど)を含んでもよく、またはそれらと結合されてもよい。論理システム1230および他の構成要素は、スタンドアロンまたはネットワーク接続されたコンピュータシステムの一部であってもよく、または検出器1220および/またはアッセイ装置1210を含む装置(例えば、配列決定装置)に直接取り付けられるかまたは組み込まれてもよい。論理システム1230はまた、プロセッサ1250内で実行されるソフトウェアを含み得る。論理システム1230は、本明細書に記載の方法のいずれかを実行するように測定システム1200を制御するための命令を記憶するコンピュータ可読媒体を含み得る。例えば、論理システム1230は、配列決定または他の物理的操作が実行されるように、アッセイ装置1210を含むシステムにコマンドを提供することができる。そのような物理的操作は、例えば試薬が特定の順序で添加および除去されて、特定の順序で実行され得る。そのような物理的操作は、試料を取得してアッセイを実行するために使用され得るように、例えばロボットアームを含むロボットシステムによって実行され得る。さらに、いくつかの実施形態において、ETP装置は、前記装置から集束および/または収集された可能性がある試料の下流分析を行うために任意に使用され得る液体処理ロボットとともに使用され得る。
【0094】
測定システム1200はまた、被験者に処置を提供することができる処置装置1260を含み得る。処置装置1260は、処置を決定することができ、および/または処置を実行するために使用され得る。そのような処置の例は、手術、放射線療法、化学療法、免疫療法、標的療法、ホルモン療法、および幹細胞移植を含むことができる。論理システム1230は、例えば、本明細書に記載の方法の結果を提供するために、処置装置1260に接続され得る。処置装置は、撮像装置およびユーザ入力(例えば、ロボットシステムに対する制御などの処置を制御するために)などの他の装置からの入力を受信し得る。
【0095】
本明細書で言及されるコンピュータシステムのいずれも、任意の適切な数のサブシステムを利用し得る。そのようなサブシステムの例が、コンピュータシステム1300における
図13に示されている。いくつかの実施形態において、コンピュータシステムは、単一のコンピュータ装置を含み、ここでサブシステムは、コンピュータ装置の構成要素とすることができる。他の実施形態において、コンピュータシステムは、それぞれがサブシステムであり、内部構成要素を備えた複数のコンピュータ装置を含むことができる。コンピュータシステムは、デスクトップおよびラップトップコンピュータ、タブレット、携帯電話、ならびに他のモバイル装置を含むことができる。
【0096】
図13に示されるサブシステムは、システムバス75を介して相互接続される。プリンタ74、キーボード78、記憶装置79、ディスプレイアダプタ82に結合されたモニタ76(例えば、LEDなどのディスプレイスクリーン)などの追加のサブシステムが示されている。I/O制御装置71に結合された外付けおよび入/出力(I/O)装置は、入出力(I/O)ポート77(例えば、USB、Lightning)などの当該技術分野で知られている任意の数の手段によって、コンピュータシステムに接続され得る。例えば、I/Oポート77または外部インターフェース81(例えば、Ethernet、Wi-Fiなど)は、コンピュータシステム1300を、インターネットなどのワイドエリアネットワーク、マウス入力装置、またはスキャナに接続するために使用され得る。システムバス75を介した相互接続は、セントラルプロセッサ73が、サブシステムのそれぞれと通信し、システムメモリ72または記憶装置79(例えば、ハードドライブなどの固定ディスク、または、光ディスク)からの複数の命令の実行、ならびにサブシステム間の情報の交換の制御を可能にする。システムメモリ72および/または記憶装置79は、コンピュータ可読媒体を具体化し得る。別のサブシステムは、カメラ、マイクロフォン、加速度計、その他などのデータ収集装置85である。本明細書で説明したデータの任意のものは、ある構成要素から別の構成要素へ出力され得、ユーザに出力され得る。
【0097】
コンピュータシステムは、例えば、外部インターフェース81により、内部インターフェースにより、または、1つの構成要素から別の構成要素に接続および取り外され得る、リムーバブル記憶装置を介して、ともに接続された、複数の同じ構成要素またはサブシステムを含むことができる。いくつかの実施形態において、コンピュータシステム、サブシステム、または装置は、ネットワークを介して通信することができる。そのような例では、1つのコンピュータは、クライアントと見なすことができ、別のコンピュータは、サーバと見なすことができ、それらのそれぞれは、同じコンピュータシステムの一部とすることができる。クライアントおよびサーバは、それぞれ、複数のシステム、サブシステム、または構成要素を含むことができる。
【0098】
実施形態の態様は、ハードウェア回路(例えば、特定用途向け集積回路またはフィールドプログラマブルゲートアレイ)を用いて、および/またはモジュラーまたは統合された様式の一般にプログラム可能なプロセッサを伴う、コンピュータソフトウェアを用いて、制御ロジックの形態で実装され得る。本明細書で使用される場合、プロセッサは、単一のコアプロセッサ、同じ集積チップ上のマルチコアプロセッサ、または、単一の回路基板、もしくは、ネットワーク化されたもの、ならびに専用のハードウェア上の、複数の処理ユニットを含むことができる。本開示に提供される開示および教示に基づいて、当業者は、ハードウェア、および、ハードウェアならびにソフトウェアの組み合わせを使用する、本発明の実施形態のそれぞれを実装する他の様式および/または方法を知り、理解するであろう。
【0099】
本出願で説明されるソフトウェアの構成要素または関数はいずれも、例えばJava、C、C++、C#、Objective-C、Swiftなどの任意の好適なコンピュータ言語、または例えば、従来のもしくはオブジェクト指向の技術を使用するPerlもしくはPythonなどのスクリプト言語を使用して、プロセッサによって実行されるソフトウェアコードとして実装され得る。ソフトウェアコードは、一連の命令またはコマンドとして、記憶および/または伝送のためにコンピュータ可読媒体上に記憶され得る。好適な非一時的コンピュータ可読媒体は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、ハ-ドドライブもしくはフロッピ-ディスクなどの磁気的媒体、または、コンパクトディスク(CD)もしくはDVD(デジタルバ-サタイルディスク)またはブルーレイディスクなどの光学的媒体、フラッシュメモリなどを含むことができる。コンピュータ可読媒体は、そのような記憶装置または送信装置の任意の組み合わせであり得る。
【0100】
そのようなプログラムはまた、インターネットを含む様々なプロトコルに準拠する有線、光、および/または無線ネットワークを介した送信に適合されたキャリア信号を使用して符号化および送信され得る。そのため、コンピュータ可読媒体は、そのようなプログラムを用いて符号化されたデータ信号を使用して作成され得る。プログラムコードで符号化されたコンピュータ可読媒体は、互換性のある装置と一緒にパッケージ化されるか、または(例えば、インターネットダウンロードを介して)他の装置とは別に提供され得る。任意のそのようなコンピュータ可読媒体は、個々のコンピュータ製品(例えば、ハードドライブ、CD、または完全なコンピュータシステム)上にまたは内部に位置してもよく、また、システムまたはネットワーク内部の異なるコンピュータ製品上にまたは内部に存在してもよい。コンピュータシステムは、本明細書に記載の結果のいずれかをユーザに提供するためのモニタ、プリンタ、または他の適切なディスプレイを含み得る。
【0101】
本明細書に説明される方法のいずれも、ステップを実行するように構成され得る1つまたは複数のプロセッサを含むコンピュータシステムを用いて完全にまたは部分的に実行され得る。したがって、実施形態のそれぞれは、潜在的にステップのそれぞれまたはステップのグループのそれぞれを実行する異なる構成要素を用いて、本明細書に記載される方法のいずれかのステップを実行するように構成されたコンピュータシステムを対象とすることができる。本明細書における方法のステップは、番号付けされたステップとして提示されているが、同時にまたは異なるときに、または、論理的に可能な異なる順序で行われ得る。さらに、これらのステップの一部は、他の方法からの他のステップの一部とともに使用され得る。また、ステップの全てまたは一部は、任意であり得る。さらに、これらの方法のいずれかのステップのいずれかは、これらのステップを実行するためのシステムのモジュ-ル、ユニット、回路、または他の手段を用いて実行され得る。
【0102】
本開示を読めば当業者には明らかなように、本明細書に記載および図示された個々の実施形態のそれぞれは、本開示の範囲または趣旨から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離または組み合わせられ得る個別の構成要素および特徴を有する。
【0103】
本開示の例示的な実施形態の上記の説明は、例示および説明の目的で提示されており、本開示の実施形態を作成および使用する方法の完全な開示および説明を当業者に提供するために記載されている。網羅的であること、または本開示を記載された正確な形態に限定することは意図されておらず、また、それらは、実験が行われた全てのまたは唯一の実験であることを表すことも意図されていない。本開示は、理解を明確にするために例示および例としてある程度詳細に記載されているが、本開示の教示に照らして、添付の特許請求の範囲の趣旨または範囲から逸脱することなく、特定の変更および修正を行い得ることは、当業者には容易に明らかである。
【0104】
したがって、上記は単に本発明の原理を例示するものである。当業者は、本明細書に明示的に記載または示されていないが、本発明の原理を具体化し、その精神および範囲内に含まれる様々な構成を考案することができることが理解されよう。さらにまた、本明細書に列挙された全ての例および条件付き言語は、主に、そのような具体的に列挙された例および条件に限定されない本開示の原理を理解する際に読者を助けることを意図している。さらに、本発明の原理、態様、および実施形態、ならびにその特定の例を列挙する本明細書の全ての記述は、その構造的および機能的均等物の両方を包含することを意図している。さらに、そのような均等物は、現在知られている均等物および将来開発される均等物の両方、すなわち、構造にかかわらず同じ機能を実行する開発された任意の要素を含むことが意図される。したがって、本発明の範囲は、本明細書に示され説明される例示的な実施形態に限定されることを意図しない。むしろ、本発明の範囲および精神は、添付の特許請求の範囲によって具体化される。
【0105】
「a」、「an」、または「the」という記載は、そのようでないと具体的に示されない限り、「1つまたは複数」を意味するように意図される。「または」の使用は、そのようでないと具体的に示されない限り、「排他的論理和」でなく、「包含的論理和」を意味するように意図される。「第1の」構成要素への言及は、第2の構成要素がもたらされることを必ずしも必要としない。さらに、「第1の」または「第2の」構成要素への言及は、明示的に述べられない限り、言及された構成要素を特定の位置に限定しない。「基づいて」という用語は、「少なくとも部分的に基づいて」ということを意味することを意図する。
【0106】
請求項は、任意であり得る任意の要素を除外するように作成され得る。したがって、この言及は、特許請求の範囲の要素の列挙、または「否定的な」限定事項の使用に関連して、「もっぱら」、「のみ」などのような排他的な用語を使用するための先行詞としての役割を果たすことを意図している。
【0107】
値の範囲が提供される場合、各介在値は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、下限の単位の10分の1まで、また具体的に開示された範囲の上限と下限との間であることが理解される。記載された範囲内の任意の記載された値または介在する値と、その記載された範囲内の任意の他の記載された値または介在する値との間のより小さい各範囲は、本開示の実施形態内に包含される。これらのより小さな範囲の上限および下限は、独立して、範囲に含まれるかまたは除外されてもよく、より小さい範囲において、上下限のいずれかが含まれる場合、いずれも含まれない場合、またはいずれも含まれる場合、各範囲はまた、本開示に包含され、記載された範囲内で具体的に除外された上下限のいずれもそれに従う。記載された範囲が限界の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界のいずれかまたは両方を除外した範囲もまた、本開示に含まれる。
【0108】
本明細書で言及される全ての特許、特許出願、刊行物、および説明は、あたかも各個々の刊行物または特許が参照により組み込まれることが具体的且つ個別に示されているかのように、あらゆる目的のためにそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれ、刊行物が引用される関連する方法および/または材料を開示および説明するために参照により本明細書に組み込まれる。いずれも先行技術であると認められるものではない。
【国際調査報告】