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特表2024-515683組織試料の単一細胞及び/又はより小さな細胞群への電気解離
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】組織試料の単一細胞及び/又はより小さな細胞群への電気解離
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/42 20060101AFI20240403BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20240403BHJP
   C12M 3/08 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
C12M1/42
G01N1/28 J
C12M3/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564159
(86)(22)【出願日】2022-04-20
(85)【翻訳文提出日】2023-12-06
(86)【国際出願番号】 US2022025451
(87)【国際公開番号】W WO2022226004
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】63/177,211
(32)【優先日】2021-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512241232
【氏名又は名称】ブラウン ユニバーシティ
【住所又は居所原語表記】350 Eddy Street, Box 1949, Providence, RI 02903 (US)
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】トリパティ アヌバブ
(72)【発明者】
【氏名】ウェルチ イー セレステ
【テーマコード(参考)】
2G052
4B029
【Fターム(参考)】
2G052AA33
2G052AD32
2G052AD52
2G052FB10
2G052GA29
2G052JA07
4B029AA27
4B029BB11
(57)【要約】
要約
組織及び細胞試料を、単一細胞及び/又はより小さな細胞群に電気的に解離させることができる。組織試料は、装置内に1つ以上の電極が常駐する装置(流体を含む場合もある)内に収容することができる。装置は、1つ以上の組織試料を処理するために使用することができる。装置を通して電場を確立することができ、電場下で組織試料を単一細胞及び/又はより小さな細胞群に解離させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
組織又は細胞試料を保持するように構成された装置と、
前記装置と接触する1つ以上の電極とを備え、
前記1つ以上の電極は、前記装置を通して電場を確立して、前記組織又は細胞試料の単一細胞及び/又はより小さな細胞群への電気解離を誘導するように構成されている、ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記装置は、少なくとも1つの流体中に前記組織又は細胞試料を保持するように構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの流体は非イオン性液体を含む、ことを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記非イオン性液体は添加剤を含む、ことを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記装置は、複数の組織及び/又は細胞試料を保持及び処理するように構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記装置は、キュベット、ウェル、チューブ、マイクロ流体チップ、又は別の容器を備える、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
1つ以上の電極が前記装置内に配置される、ことを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記1つ以上の電極は、前記装置の外側に配置される、ことを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記装置を通る電場は、前記装置内の均一電場又は不均一電場として挙動する、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記装置内の前記1つ以上の電極の間の電圧は、前記組織又は細胞試料の電気穿孔閾値未満である、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記電圧は発振電圧である、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記電場は、交流場又は直流場である、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記装置の前記1つ以上の電極は、電力源への接続を介して給電される、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
組織又は細胞試料を保持する装置を通して電場を確立するステップであって、前記電場は、前記装置と接触する1つ以上の電極によって確立されるステップと、
電気解離により、前記前記組織又は細胞試料を単一細胞及び/又はより小さな細胞群に解離させるように誘導するステップと、
を含む方法。
【請求項15】
前記装置は、少なくとも1つの流体中に前記組織又は細胞試料を保持及び処理するように構成されている、ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの流体は非イオン性液体及び/又は添加剤を含む、ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記装置は、複数の組織及び/又は細胞試料を保持及び処理するように構成されている、ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記装置は、キュベット、ウェル、チューブ、マイクロ流体チップ、又は別の容器を備える、ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記1つ以上の電極は、前記装置内又は前記装置の外側に配置される、ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記1つ以上の電極の間の電圧は、前記組織試料の電気穿孔閾値未満である、ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記1つ以上の電極の間に確立される電圧が発振電圧である、ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年4月20日に提出された「組織試料の単一細胞及び/又はより小さな細胞群への電気解離」と題する米国仮出願第63/177,211号の利益を主張し、その全文はあらゆる目的で参照により本願に援用される。
【0002】
本開示は、一般に組織解離に関し、より具体的には、電場の適用による組織試料の単一細胞及び/又はより小さな細胞群への解離に関する。
【背景技術】
【0003】
単一細胞分析(SCA)は、個々の細胞の特性を測定しようとする成長分野である。単一細胞分析は、バックグラウンドノイズを低減しながら細胞データの解像度を向上させる。近年、単一細胞技術が癌やその他の診断用途における優れた分析ツールとして登場している。ただし、複雑な組織を処理して生存可能な単一細胞にすることは技術的に困難である。組織均質化などの既存の組織解離法は、単一細胞分析ではなく、下流のバルクシーケンシングのために作成された。組織からの効率的な単一細胞分析のための適切な試料調製技術が欠如していることは、SCA技術の転換に1つの大きな制限をもたらしている。これにより、すべての細胞を単一試料で一緒に分析するバルク分析アプローチへの依存が永続する。バルクシーケンシングアプローチでは、解像度が低く、希少細胞の型の検出が不十分になる。腫瘍内不均一性は、SCAを使用して個々の細胞を研究することでより適切に解決される。腫瘍内不均一性に関する知識は、治療の指針となり、ドライバー変異を予測し、癌患者の予後を知ることができる。たとえ1個の希少細胞が検出されたとしても、それが生死を分ける可能性がある。従って、より技術的に実現可能で、臨床的に適用可能で、正確な単一細胞分析ワークフローを構築するためには、組織解離技術の進歩が必要である。
【0004】
従来の組織解離技術は時間がかかり、多くの手作業による準備段階が必要となることが多く、標準に達しない結果しか得られない可能性がある。これらの従来の組織解離技術は、多くの場合、温度制御された化学的解離培地及び/又は機械的撹拌(例えば、プレート振盪、遠心分離、ボルテックスなど)を利用する。従来のプロトコルは実行に数時間かかる場合があり、多くの場合、無数の高価な機器が必要になる。特に、観察される非効果的な結果には、非効率的な解離、生存率の低下、細胞型の偏りなどが含まれる。既存の機器では、様々な組織の種類やサイズに適応することが難しい場合があり、多くの場合、別個の試薬やコンポーネントを購入する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
従来の組織解離技術の代替として、電気解離を使用して、液体で満たされたキャビティ内の組織試料に制御された電場を印加することにより、組織試料から単一細胞及び/又はより小さな細胞群を解離させることができる。電気的組織解離は、従来の組織解離技術よりもコンパクトな機器設定を利用しており、この電気処理式はまた、細胞の解離に必要な時間を短縮する。さらに、電気コンポーネントの小型化によりプロセスの多重化が容易に可能になり、下流の単一細胞分析のために複数の組織コアを単一細胞に同時に解離させることが容易になる。
【0006】
システムは、電場の印加により、エクスビボ又はインビトロ組織試料、細胞凝集又は微小組織の単一細胞及び/又はより小さな細胞群への解離を促進することができる。システムは、組織試料(又は複数の組織試料)を保持することができる装置を含む。1つ以上の電極は、装置の少なくとも2つの側面に存在することができ、装置を通してそれらの間に電場を確立することができる。装置を通る電場は、組織試料の単一細胞及び/又はより小さな細胞群への電気解離を引き起こす可能性がある。
【0007】
細胞又は組織試料を単一細胞及び/又はより小さな細胞群に解離させるための方法は、細胞又は組織試料(又は複数の試料)を保持する装置を通して電場を確立するステップと、電気解離により、試料を単一細胞及び/又はより小さな細胞群に解離させるステップと、を含む。電場は、装置の1つ以上の側面にある1つ以上の電極によって確立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示の前述の特徴及び他の特徴は、添付の図面を参照しながら以下の説明を読めば、本開示が関係する当業者には明らかになるであろう。
【0009】
図1】電圧が印加される前の電気的組織解離システムの概略図の上面図である。
図2】電圧を最初に印加したときの電気的組織解離システムの概略図の上面図である。
図3】電場が組織を解離させているときの電気的組織解離システムの概略図の上面図である。
図4】組織が解離されたときの電気的組織解離システムの概略図の上面図である。
図5】組織を電気的に解離させる方法を示すプロセスフロー図である。
図6】組織の電気解離をテストする実験設定の図である。
図7】組織の電気解離をテストする実験設定の図である。
図8】組織の電気解離のために試料を装填して解離させる実験プロセスの図を含む。
図9】同時に視覚的に調べることを可能にするマイクロ流体形式での組織の電気解離のための「キュベットオンチップ(cuvette-on-a-chip)」実験設定の図を含む。
図10】電気解離のための多重装置の図と、多重装置の電気回路図を含む。
図11】COMSOLマルチフィジックスソフトウェアを使用して作成された組織の電気解離プロセスの実験的有限要素モデルを含む。
図12】COMSOLマルチフィジックスソフトウェアを使用して作成された組織の電気解離プロセスの実験的有限要素モデルを含む。
図13】2mmの隙間がある解離中の組織の写真と、電気解離プロセス中の対応する顕微鏡画像を含む。
図14】様々な直流及び発振方形波電圧条件での細胞の回収と解離を調査する組織の電気解離プロセスの実験結果を含む。
図15】様々な直流及び発振方形波電圧条件での細胞の回収と解離を調査する組織の電気解離プロセスの実験結果を含む。
図16】要素Aにおける組織の電気解離プロセス中に膜透過性細胞染色剤で撮影された形態画像を含み、要素Bは、生存率を示すために非特異的染色剤(Hoechst33342)及び死細胞染色剤(DRAQ7)で撮影された画像を含む。
図17】膜の完全性及び真円度、ならびに生存率アッセイの所見を要約した実験結果を含む。
図18】利用した特定の電気的条件が有糸分裂による細胞の進行を妨げていないことを検証するために、電気処理にさらした細胞の細胞周期進行アッセイ画像結果を含む(「腫瘍処理場(Tumor Treating Fields)」を含む他の細胞電気処理の場合と同様である)。
図19】細胞周期進行アッセイのイメージング及び分光光度測定アッセイからの発見を要約した実験結果を含む。
図20】溶液中に含まれていないcfDNA、ならびに処理試料からのRNA含量、品質、及びストレスパターン発現に関する実験結果を示す。
図21】溶液中に含まれていないcfDNA、ならびに処理試料からのRNA含量、品質、及びストレスパターン発現に関する実験結果を示す。
図22A-22B】ヒトの臨床神経膠芽腫試料の電気解離に関する実験結果を含む。
【発明を実施するための形態】
【0010】
I.定義
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0011】
本明細書で使用される場合、「一(a)」、「一(an)」及び「前記(the)」という単数形は、文脈が、そうではないと明確に示さない限り、複数形を含むこともできる。
【0012】
本明細書で使用される場合、「備える(comprises)」及び/又は「備えている(comprising)」という用語は、記載された特徴、ステップ、操作、要素、及び/又はコンポーネントの存在を特定することができるが、1つ以上の他の特徴、ステップ、操作、要素、コンポーネント、及び/又は群の存在又は追加を排除するものではない。
【0013】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、関連するリストされたアイテムの1つ又は複数の任意の及び全ての組み合わせを含むことができる。
【0014】
本明細書で使用される場合、「第1」、「第2」などの用語は、これらの用語で説明される要素を制限するものではない。これらの用語は、ある要素を別の要素と区別するためにのみ使用される。よって、以下で説明する「第1」要素は、本開示の教示から逸脱することなく、「第2」要素と呼ぶこともできる。操作(又は行動/ステップ)の順序は、特に明示されていない限り、請求項又は図に示されている順序に限定されない。
【0015】
本明細書で使用される場合、「組織試料」という用語は、ヒト患者又は動物から採取された任意の細胞又は組織材料(エクスビボ組織)、ならびに任意の形式で培養された任意の細胞又は組織材料(インビトロ組織、スフェロイド、オルガノイド、微小組織、細胞凝集体など)を指すことができる。組織試料は、患者から採取した固形組織生検試料(皮膚、筋肉、骨、臓器、毛髪など)、外科的に切除された試料、又は凍結切片などの試料の一部である場合があるが、これらに限定されない。また、研究室で培養された細胞や組織であってもよい。組織試料の特定の例は組織切片であり、これは特に分析を目的とした組織試料の一部を指すことができる。試料は、患部組織や細胞(例えば、癌組織)又は健康な組織や細胞、自然に存在する組織や細胞、ならびに初代細胞株、不死化細胞株などから構成される凝集体や微小組織などから構成することができる。新鮮な組織と保存された組織の両方を使用できる。
【0016】
本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、組織試料を採取できるあらゆる温血生物を指すことができる。これには、ヒト、ブタ、ラット、マウス、イヌ、猫、ヤギ、羊、馬、サル、類人猿、ウサギ、牛などを含むが、これらに限定されない。
【0017】
本明細書で使用される場合、「組織解離」という用語は、任意の起源、形態、及びサイズの組織又は細胞凝集体試料から細胞を(単一細胞及び/又はより小さな細胞群として)単離する方法を指すことができる。組織解離の従来の方法は、酵素的解離/脱凝集(例えば、切断された組織片を消化するために酵素を使用し、それによって組織から細胞を放出する)、化学的解離(例えば、細胞間結合を破壊するためにカチオンと結合する化学物質を使用する)、及び/又は機械的解離(例えば、プレート振盪、遠心分離、ボルテックスなど)を含むことができる。組織解離は、組織試料に電場を印加することにより達成することもできる(「電気解離」と呼ばれる)。組織解離は、単一細胞の単離を容易にすることができ(そしてこれらの用語は本明細書では互換的に使用することができる)、これは、後の分析のために組織試料から単一細胞又は細胞型を単離するためのプロセスを指す。
【0018】
本明細書で使用される場合、「電場」という用語は、電荷を取り囲み、その場の他の電荷を引き付けるか反発する物理的な場を指すことができる。電場は、空間内の各点に作用する電荷単位当たりの力を関連付けるベクトル場として定義される。力線は、1つ以上の点電荷が存在する場合に、相互作用する電場のベクトルの大きさと方向を表す方法である。印加されるあらゆる形態の電位も、本明細書では、直流電流及び交流電流、異なる波形、パルス、点電荷などを含む「電場」という用語に包含される。
【0019】
本明細書で使用される場合、「装置」という用語は、少なくとも組織試料を保持するように設計したものを指すことができる。装置は、1つ以上の側面を有することができ、一般に円筒形、長方形、三角形などであってもよい。
【0020】
本明細書で使用される場合、「キュベット」という用語は、液体及び/又は組織試料などの試料を保持するように設計された、まっすぐな側面と円形又は長方形の断面を有する小さな容器を指すことができる。キュベットは、組織及び細胞試料を保持するために使用できる特定のタイプの装置である。これらの試料を収容するために他の装置も使用されるが、本明細書では「キュベット」という用語は、装置の組織収容部分を説明するための包括的な用語として使用される。
【0021】
本明細書で使用される場合、「有限要素モデリング」、「有限要素分析」などの用語は、有限要素法として知られる数値数学技術を使用する所与の物理現象(例えば、流体力学、波動伝播、熱分析、応力試験など)のシミュレーションを指すことができる。有限要素モデリングの非限定的な例には、COMSOL Multiphysics、MFEM、GetFEM++、SimScale、Abaqus、及びCosmosWorksが含まれる。
【0022】
本明細書で使用される場合、「電気穿孔」という用語は、細胞膜の透過性を高めて化学物質、薬物、又はDNAを細胞内に導入できるようにするために、細胞に1つ以上の電場を印加するプロセスを指すことができる。電気穿孔は、電気穿孔キュベット内の懸濁細胞に数千ボルト(約8kV/cm)を通過させるように作用する。電気穿孔は、電気解離プロセス中に回避され、観察される解離の背後にある支配的な物理現象ではない。
【0023】
本明細書で使用される場合、「流体」という用語は、固定された形状を持たず、外部圧力に容易に屈する物質を指すことができる。
【0024】
本明細書で使用される場合、「非イオン性液体」という用語は、イオンに解離せず、無視可能な導電性を有するが、電場によって分極することができる分子から構成される液体を指すことができる。非イオン性液体は、流体の一種である。
【0025】
本明細書で使用される場合、「添加剤」という用語は、何か(例えば、流体)を改善又は保存するために少量で何かに添加される物質を指すことができる。
【0026】
本明細書で使用される場合、「多重化(multiplex)」及び「多重化(multiplexing)」という用語は、同じ試料から複数のデータセットを収集するプロセス、及び多数の試料を一度に集合的に処理するプロセスを指すことができる。多重化を使用して、同じ電気的条件又はその他の条件で多数の試料を処理することも、様々な電気的条件又はその他の条件で試料を処理することもできる。
【0027】
II.概要
従来、組織解離技術は、温度制御された化学解離培地、組織の一部を消化するための酵素、及び/又は機械的撹拌(例えば、プレート振盪、遠心分離、ボルテックスなど)を利用することが多かった。これらの技術は、幾つかのかさばる機器(例えば、温度制御されたシェーカーとホットプレート、遠心分離機、ボルテクサーなど)、又は実験室での目的が1つしかなく最適な結果が得られない高価なカスタマイズされた機器(例:GentleMACs組織解離器(GentleMACs tissue dissociator))が必要となる場合がある長くて複雑なプロトコルを含む。さらに、従来の方法による細胞単離の結果は、多くの場合標準以下である。従来の技術による標準以下の結果は、多重化の難しさ、解離にかかる時間、細胞生存率の低下、細胞回収の不良、及び成功した組織解離のレベルの低さの結果である可能性がある。文献では、マイクロ流体装置も組織解離を改善するために使用されているが、既存の製品では使用されていない。これらは、ピラー、シリカナイフ、メッシュなどのマイクロスケールの物体に対してマイクロ流体の流れを組み込んだり、幾何学的に最適化されたマイクロ流体チャネル内で調整された機械的せん断力や流体ジェットを利用したりすることで、細胞凝集体の個々の細胞への破壊を改善することができる。しかしながら、これらの装置は、従来の組織解離方法と同様の問題を有する可能性があり、詰まりが発生しやすいことが多く、圧力駆動の流れが必要で、商業レベルでは利用できない複雑な製造プロセスを利用する。
【0028】
電気解離は、これらの従来の技術の代替手段を提供し、短縮された時間枠でコンパクトな機器を使用して成功した組織解離を提供する。電気解離を使用すると、1つ以上の電極間に電場(従来の電気穿孔の限界を下回る)を確立して、組織試料を単一細胞、より小さな細胞集合体、及び/又は細胞集団に解離できる。組織解離に電界を使用すると、組織解離に必要な時間を大幅に短縮し、解離の実行に必要な機器のサイズとコストを削減し、一度に幾つかの試料の多重化を可能にし、下流の単一細胞分析のための自動組織解離を容易にすることができる。電気解離は、電気浸透、電気泳動、誘電泳動、電気回転、電気配向、及び波動伝播など、電場の印加に応答する細胞内の1つ以上の動電現象を利用する。電気解離により、ハイスループットの方式で一致した結果が得られる組織試料の単一細胞へのハンズフリー処理を可能にする自動化システムを提供する可能性がある。例えば、このような自動化システムは、局所及び単一細胞分析の両方でヒト癌組織から解離した細胞の直接分析を提供することができ、あるいはバルク分析のための組織からの細胞回収を改善する可能性がある。
【0029】
本明細書では、電場を印加して生検組織のコアを細胞懸濁液に解離させる、迅速、低コスト、小型化された組織及び細胞凝集体解離システム及び方法が記載されている。一例では、組織解離のための電気的条件は、1kHzの方形波発振周波数で100V/cmとすることができ、観察可能な細胞死、断片化、細胞周期の破壊、又は著しい転写ストレス応答なしに、1mmの組織生検コアを5分で完全に解離させることができる。別の例では、10V/cm 1kHzの方形波は、観察可能な細胞死、断片化、細胞周期の破壊、又は著しい転写ストレス応答なしに、1分以内に神経膠芽腫スフェロイドを解離させることができた。
【0030】
III.システム
本開示の一態様は、組織試料に電場を印加することにより、組織又は凝集した細胞試料を単一細胞、より小さな細胞凝集体、及び/又は細胞集団に解離させることができるシステム10(図1)を含むことができる。システム10は、多重化された下流の単一細胞分析手順のために解離した細胞の生存率及び完全性を維持することができる。
【0031】
システム10は、装置12の少なくとも2つの側面(又は装置内、装置の近くなど)に、組織試料14と、1つ以上の電極(2つの電極16と18として示しているが、1以上の任意の数の電極を使用できることを理解されたい)とを保持するように構成された装置12(例えば、キュベット)を含む。図1に示すように、電極16、18は装置12の反対側にあるが、電極16、18は、装置12の隣接する側にあっても同じ側にあってもよいし、又は装置12内にあってもよいことを理解すべきである。さらに、システム10の実装では、電極16と18を単一の電極又は3つ以上の電極に置き換えることもできる。説明では一般的に2つの電極を指すが、システム10では1つ以上の電極を使用することも可能であることを理解すべきである。装置12は、組織試料14を流体中に保持するように構成することができる。流体は、例えば、1つ以上の非イオン性液体及び/又は添加剤を含むことができる。装置12は、電極16と電極18との間に組織試料14を保持するように構成することができる。理想的には、組織試料14を電極16と18の各々から等距離又はほぼ等距離に保持することができる。あるいは、組織試料14を各電極16と電極18の間の任意の点に保持してもよい。システム10は、組織試料12と電極16及び18とを装置の少なくとも2つの側面(又はその近く)に保持するように構成された単一の装置12を示しているが、ハイスループット処理のために、各々が装置の1つ以上の側面(又はその近く)に組織試料と電極を保持するように構成された複数の装置をシステムに含めることができることを理解すべきである。システムが複数の装置(それぞれは装置12と同様である)を含む場合、同じ及び/又は異なる検体の複数の組織試料14を同時に処理することができる。この例では、複数の組織試料14のそれぞれについて、電圧、電流、及び/又は周波数を特定することができる。
【0032】
電極16と18は、装置12を介して電場を確立して、組織試料14を単一細胞に電気的に解離させることができる。電極16と18のうちの一方は正極であり、電極16と18のうちの他方は負極であり、電極に電力が供給されるときに電極間に電場を生じることができる。このプロセスは、単一の電極又は複数の電極を使用して実行することもできる。電気的組織解離は、1~15分の時間枠で、例えば、15分未満、10分未満、又は5分以下で発生することができる。しかしながら、場合によっては、電気的組織解離は長期間にわたって発生することができる。電極16と18は、例えば、平板電極、ワイヤ電極、又はスクリーン印刷電極とすることができる。電極16と18は、金属電極(例えば、ステンレス鋼、アルミニウムなど)、又は(電気穿孔限界の下で)必要な電場の生成を容易にすることができる他の任意のタイプの電極であり得る。電極は、平面状にすることも、櫛歯状や鋸歯状などの追加の幾何学的形状を持たせることもできる。
【0033】
一例として、装置12はキュベットであり得る。キュベットは、1つ以上の非イオン性液体及び/又は1つ以上の添加剤を含み得る流体中に組織試料14を保持するように構成することができる。装置はまた、ウェル、ウェルプレート、マイクロ流体チップ、あるいは組織又は細胞試料及び/又は液体を保持し得る他の任意の容器であり得る。一例として、非イオン性流体は、等張スクロース溶液を補充した超純粋なHOであり得る。1つの非限定的な例では、キュベットは、0.2cmのキュベットであり得る。キュベットは、水平に配置されたキュベット、垂直に配置されたキュベット、キュベットオンチップなどであり得る。電極16と18は、キュベット(又は、他の例示的な装置12)の種類に応じて、水平、垂直、又はキュベット(又は、他の例示的な装置12)に対してある角度をなして配置することができる。キュベットオンチップは、顕微鏡での組織試料14の電気解離の監視を可能にするために、電極16と18から直交するキュベットの側面を覆うスライドを含むことができる。キュベットオンチップのトップスライドは、組織試料14をロード及びアンロードするために取り外し可能であり得る。2つの電極が説明されているが、任意の電極形状を有する任意の数の電極(1つ以上)があり得ることを理解されたい。
【0034】
図2のシステム20に示すように、電極16と18は、ワイヤにより電力源20に接続することができる。例えば、電極16と18のワイヤは、装置12及び/又は装置12に取り付けることができる電極16、18にはんだ付けしたり、取り外し可能に取り付けたりすることができ、あるいは、ワイヤは、絶縁ブロックがワイヤを所定の位置に保持するので、装置12及び電極絶縁ブロックに保持されているときに、装置12及び/又は取り付けられた電極に当てることができる。電力源20は、(例えば、定電圧又は定電流を提供する)調整可能な電力供給とすることができる。電力源20には、均一な印加電圧(DC)を維持するための制御電圧関数、又は交流関数(AC)を備えることができる。電圧は発振電圧とすることができる。電力源からの出力は、線形電場、又は振動電場(例えば、方形波関数、など)とすることができる。電力源には、電極16と18に印加される電圧を発振させるための周波数制御機構を装備することができる。方形波以外の波形を使用することもできる。
【0035】
電極16と18によって生成された電場は、図2では、電極16から装置12及び組織試料14を通って電極18に至る様子が示されている。場合によっては、装置12を顕微鏡で観察して、組織試料14が単一の分離された細胞及び/又はより小さな細胞群に解離している様子を観察することができる。組織の電気特性が周囲の流体と類似しており、システム20のスケールが小さいため、電極16と18によって生成される電場は、装置12内で均一な電場として作用することができる。電極16と18の間の電圧は、解離プロセス中に細胞の完全性及び生存率を維持するために、組織試料の電気穿孔閾値未満である。
【0036】
図3及び4は、電力源20によって電力が供給されたときの電極16と18の間の電場の印加による、装置12内の組織試料の分離された細胞32への解離を例示するシステム30及び40を示す。図3のシステム30では、電場により、組織試料14は分離された細胞32に分解され、これらの細胞は装置12内の流体に浮遊する。図4のシステム40では、電極16と18との間の電場がオフになっており、分離された細胞32は、装置12内の流体中に浮遊したままであり得るが、必ずしも電場によって所定の位置に保持される必要はない。これらの解離した細胞は、キュベットの底に沈降することもある。装置12内の分離された細胞(又はより小さな細胞群)32は、顕微鏡を介して及び/又はImageJなどの画像処理ソフトを使用して観察及び定量することができる。装置12内の分離された細胞(又はより小さな細胞群)32は、多重化された単一細胞分析のために装置12から取り出して(例えば、注射器を使用して、マイクロチャネル、又は接続されたチューブを介して)、例えば、腫瘍内不均一性を決定することもできる。1つ以上の分離された細胞32が塊の中に残る事態を防ぐために、システム10、20、30、及び/又は40はまた、装置12に取り付けられ、凝集塊がそこを通って流れるときに凝集塊を単一細胞に分離する細胞分離用に構成された少なくとも1つの蛇行チャネル又は他のマイクロ流体脱凝集チャネル(図示せず)を含んでもよい。別の例では、システム10、20、30、及び/又は40はまた、単一細胞の収集及び/又は分析のために少なくとも1つの入力ウェル(分離後に分離された細胞32をロードすることができる)と少なくとも1つの出力ウェルとの間に取り外し可能に固定された少なくとも1つのマイクロ流体メッシュを備えることができる更なる試料精製機構(図示せず)を含むこともできる。場合によっては、分離された細胞32をマイクロ流体メッシュに流すことにより、単一細胞の精製を向上させることができる(例えば、任意の残った破片、赤血球、及び/又はオフターゲット細胞を排除するため)。別の例では、システム10、20、30、及び/又は40は、下流の分析用の精製された単一細胞浮遊液を調製するための別のタイプの装置上の後処理及び精製機構を含んでもよい。
【0037】
IV.方法
本開示の別の態様は、組織試料を電気的に解離させるための方法50を含むことができる。方法50は、図(1~4)に示すシステム10、20、30、及び40、ならびに記載されているが図示されていない他のシステムを使用して実行することができる。簡単にするために、方法50は逐次的に実行されるものとして示され、説明される。しかしながら、いくつかのステップは異なる順序で、及び/又は本明細書に示され説明される他のステップと同時に行われる可能性があるため、本開示は図示の順序によって限定されないことを理解および認識されたい。さらに、方法50を実装するに図示の態様のすべてが必要なわけではなく、方法50も図示の態様に限定されるものではない。
【0038】
ここで図5を参照すると、図5は、組織又は細胞試料を単一細胞(又はより小さな細胞群)に電気的に解離させる方法50を示す。52では、組織又は細胞試料(場合によっては、流体)が装置(例えば、キュベット、マイクロ流体チップ、ウェル、又は他のフォーマット)に加えられる。組織試料は、例えば、ヒト又は別の哺乳動物からのエクスビボ試料、あるいは培養された初代細胞又は不死化細胞のインビトロ試料とすることができる。組織試料は、装置の中央に、装置の少なくとも2つの反対側から等距離(又はほぼ等距離)で配置することも、キャビティ内の任意の場所に配置することもできる。装置は透明なもの(例えば、透明なプラスチック、ポリマー、ガラス、又は結晶で形成されるもの)とすることができ、組織試料を(場合によっては液体に)保持するように適切に構成することもできる。例えば、装置は0.2cmのキュベットとすることができる。1つ以上の電極は、装置の近くにあるか、又は装置に接触することができる。1つ以上の電極が少なくとも2つの電極である場合、少なくとも2つの電極は、反対側(例えば、左側と右側、上側と下側など)又は隣接する側面を含む、装置の1つ以上の側面に配置することができる。電極は、装置の近く又は隣接して配置することができる。電極は、装置にはんだ付けしたり、装置に取り外し可能に取り付けたり、及び/又は装置の側面に当てて絶縁ホルダーで所定の位置に保持したりすることができるワイヤを介して、電力源に接続することができる。一例では、それぞれが組織試料を保持できる複数の装置を、一度に複数の試料をハイスループットで処理するために単一のシステムに含めることができる。この装置は、上述したように、キュベットオンチップとすることができ、組織試料及び液体の添加後に顕微鏡上に配置することができる。顕微鏡は、電気的組織解離中にキュベット、組織試料、場合によっては、流体をリアルタイムで観察するために使用することができる。装置は、任意の幾何学的形状、構成、又は向きの電極で構成することができる。
【0039】
54では、電場は、装置、細胞又は組織試料、及び場合によっては、装置内で保持されている流体を通して確立することができる。電場は、装置の対向又は隣接する側面を含む1つ以上の側面に配置され、電力源に取り付けられた1つ以上の電極によって確立することができる。電力源は、調整可能な直流電流(DC)電力供給又は交流(AC)電力供給とすることができる。電力源には、均一な印加電圧を維持するための制御電圧関数、又は電極16と18に印加される電圧を発振するための発振周波数関数(例えば、方形波関数など)を備えることができる。電力源は、0~20Vの電圧を有する直流を各電極に供給して、0~100V/cmの電場強度を生成することができる。電極16と18が発振電圧によって電力を供給される場合、低電圧は最大値の逆数又は0Vであり、ピークは最大値であることが可能である。発振周波数は、10Hz~1kHz以上であり得る。システムが複数の装置を含む例では、異なる電圧及び/又は周波数を1つ又は複数の電極の各セットに(例えば、順次、同時になど)印加することができる。
【0040】
電極から放出される電圧は、細胞の完全性及び生存率を維持するように、組織試料の電気穿孔閾値未満で維持されている、組織試料をより小さな凝集体及び単一細胞に解離させることができる任意の電圧、電流、及び/又は電場であり得る。例えば、電圧は、周波数の有無に関わらず、DC電圧又はAC電圧(DC電場又はAC電場を確立するため)とすることができる。一例として、周波数は、1kHzより大きくてもよいが、場合によっては、周波数は、1kHzより小さくてもよい。56では、電場の印加により、電気解離を通じて組織又は細胞試料が単一細胞及び/又はより小さな細胞群に解離することができる。組織又は細胞試料は、1~15分未満の時間間隔で、又は15分を超える時間間隔で解離することができる。例えば、15分未満、10分未満、又は5分以内、又は15分を超える時間である。単一細胞及び/又はより小さな細胞群は、装置内の流体中に浮遊することができ、(例えば、顕微鏡を介して、及び/又は画像処理ソフトウェアを使用して)視覚的に観察及び定量化し、且つ/又は下流の単一細胞及びその他の分析のためにキュベットから(例えば、注射器を使用して、マイクロチャネルを介して、又は接続されたチューブを介して)取り出すことができる。組織試料から解離した単一細胞を分析して、例えば、組織試料の腫瘍内不均一性をテストすることができる。
【0041】
方法50は、単一のキュベットで、マイクロ流体チップ上に、チューブ内に、又は他の形式の中でもとりわけ、組織試料と液体を保持するための複数のウェルで構成され、各ウェルの対向側に配置された電極を備えたウェルプレートを使用して実行することができる。さらに、方法50の1つ以上のステップは、有線接続及び/又は無線接続を介して、少なくとも電力源及び/又は電極に接続されたコントローラによって自動化することができる。コントローラは、命令を実行するためのプロセッサと、命令を格納するための非一時メモリとを備える。
【0042】
試料が単一細胞シーケンシングなどの分析に適しているためには、細胞懸濁液全体が単一細胞で構成されている必要がある。試料内に残っている細胞塊をさらに解離させるために、装置内又は装置外で様々なマイクロ流体やその他の後処理ステップを完了できる。一例では、分離された細胞を含む処理された試料を、装置に取り付けられた少なくとも1つの蛇行チャネル又は他の脱凝集マイクロ流体チャネルを通って流して、塊を分離してさらなる処理及び分析を行うことができる。別の例では、分離された細胞を含む処理された組織試料を、単一細胞の収集及び/又は分析のための少なくとも1つの入力ウェル(分離後に分離された細胞をロードすることができる)と少なくとも1つの出力ウェルとの間に取り外し可能に固定された少なくとも1つのマイクロ流体メッシュを通って流すことができる。場合によっては、分離された細胞をマイクロ流体メッシュに流すことにより、単一細胞の精製を向上させることができる(例えば、任意の残った破片及び細胞凝集体を排除するため)。
【0043】
V.実験
以下の実験は、上記のシステム及び方法の実験設定を使用して組織解離を実証する。これらの実験に基づいて、電場を使用して細胞を組織又は細胞凝集体試料から解離させることができる。
【0044】
方法
電気平行平板電極の設定
テストした電気的設定の一部(図6~8に示す)は、以下のコンポーネントで構成した:2枚の平行プレートを備えたギャップ長0.2cmのプラスチックで包まれた電極セル、2つの微小電極を備えた調整可能な調整可能な電力供給、及びカスタムメイドの絶縁ホルダー。発振電圧の試験には、制御された波動関数発生器を使用した。出力の検証には、マルチメーターとオシロスコープを使用した。電力供給には、電圧制御機能が備えられ、様々な実験中、平行平板電極セルへの均一な印加電圧を維持するために使用した。図6及び7は、短時間経過(<5分)と長時間経過(<30分)の試験でそれぞれ使用した様々な異なる電気装置構成を示す。図8は、電気解離のプロセスの概略図を示す。
【0045】
キュベットオンチップの製造
図9に示すプロトタイプのマイクロ流体チップは、電気的解離の背後にある現象を特徴づけ、解離処理のワークフローを進めることを目的として作成した。このチップにより、解離現象を顕微鏡で観察することができた。
【0046】
チップは次のように製造した。アルミニウム電極をキュベットから取り外し、それ自体をイメージングディッシュに入れたカスタムの光学的に透明なガラススライドチップの上に置いた。電圧を伝送するために、電極の側面にワイヤを取り付けた。実験のばらつきを制限するために、元の電極とギャップ長を維持した。キュベットの両端にチューブを備えて、簡単なポンプでより効果的に試料を回収することができる。
【0047】
この後、チップに流体をロードした。組織生検をチップの内部にロードし、電極を介してチップ全体に電場を印加した。解離している組織切片を顕微鏡で画像化することができた。従って、所定の時間経過の終了時に、垂直キュベットから複雑な試料を取り出す代わりに、自動流体ポンプを起動してキュベットから液体と細胞を取り出すことで、細胞を簡単に回収することができる。
【0048】
Arduino発生器と多重化装置
様々な電圧、波形、周波数でプログラム可能な制御された電気出力を可能にするコンパクトで低コストの装置を、Arduino Unoマイクロコントローラを使用して作成及びプログラムした。第2の装置は、個別にプログラム可能な電気的条件で多数の異なる組織切片を同時に処理するために、Arduino Dueマイクロコントローラを使用して作成及びプログラムした。図10の要素Aは、第2の装置の例示的な図を示す。図10の要素Bは、装置の例示的な電気概略図を示す。
【0049】
COMSOLマルチフィジックスモデリング
平行平板電極セル内の電場をより正確に予測的に理解するために、AC/DCモジュールを使用してCOMSOLマルチフィジックスモデリングを実行した。3Dモデルの幾何学的形状は、2つのステンレススチール製の平行平板電極と、超純水で満たされた0.2cmのキャビティと、研究で使用した寸法(1mmの直径、5mmの高さ)の組織シリンダーモデルを使用して設計した。有限分析は、最小要素サイズが0.001cmの自由三角形メッシュを使用してコンポーネントをメッシュ化することによって実行した。グリッド独立性調査により、計算した解がメッシュサイズに依存しないことを確認した。
【0050】
境界条件は、左側の電極の縁を印加電圧として定義し、第2電極を接地として定義することによって設定した。キュベット内の組織シリンダーの導電率は、別の研究で明らかになった健康なブタ肝臓の導電率である0.57S/mに設定した。しかしながら、肝臓組織の導電率研究でも観察されているように、温度変動によって組織の導電率が上昇する可能性がある。あらゆる変動に対応するために、少し高い導電率値を使用した。導電率計を使用して確認したところ、ステンレス電極の導電率は1.45x10^6S/m、超純水の導電率は0.05μS/cmであった。LCRメータを使用してプレート間の静電容量を測定することによって、LCMSグレードのH2O(78.4)の誘電率を決定した。
【0051】
COMSOLの結果により、電場強度が予想どおりであることを確認した。例えば、印加電圧が2Vの場合は10V/cm、印加電圧が20Vの場合は100V/cmなどである。これにより、特定の場内に配置された組織の解離に最適な場の強度についての洞察が得られた。実験的にテストしたすべての電圧はCOMSOLでもテストした。
【0052】
さらに、これらの物理的結果が他の電気的設定にも当てはまるか否かを評価するために、「キュベットオンチップ」設定をCOMSOLでモデル化し、テストした。結果は、含まれるすべての電気的設定にわたって一致していた。図11は、キュベット内の均一な(例えば、線形の)電場の挙動(力線で表される)をモデル化している、水のみを含むキュベットのCOMSOLモデルを示す。図12の要素Aは、3つのシミュレートされた組織層を有する電気モデルを示し、図12の要素Bは、9つのシミュレートされた組織層を有する電気モデルを示す。組織層は、能動的に解離している組織コアをシミュレートするために、導電率が減少し、誘電率が増加する。図12の要素Cは、シミュレートされた組織のないキュベット内の均一な電場線を示し、キャビティを横切る電場の線形性を示している。図12の要素Dは、シミュレートされた組織モデル備えたキュベット内の均一な電場線を示し、電場の直線性がキャビティ内の組織の存在によって妨げられないことを示している。
【0053】
培地テスト
電気実験を行う際には、まず培地テストを行った。最初のテストでは、平行平板電極セルの2枚の金属板の間のギャップを300μLの超純脱イオン水又は培地で満たした。次に、泡立ち、加熱、導電率、pH変動などによる試料の損失などの様々な現象が測定された。このテストは、低導電率(超純水)及び高導電率(DMEM培地)溶液の様々な電場条件における液体試料回収を評価するために、細胞又は組織なしに実行した。
【0054】
次に、血球計数器を使用して事前にカウントされたMDA-MB-231細胞のアリコートを使用して、培地が細胞に及ぼす影響を調べる予備試験を実施した。同じ2つの溶液と、超純水中の細胞への浸透圧ストレスの負担を軽減することを目的とした300mMのスクロース溶液をテストした。細胞を、電場を一切印加せずに3つの条件にさらし、顕微鏡法とImageJ分析による生死染色プロトコルを用いて、5、15、30分の時点で細胞を検査した。生細胞回収をパーセンテージとして評価できるため、様々な培地で細胞の溶解と死がいつ起こり始めるかをより深く理解できるようになる。これらの実験は両方とも、ワークフローの培地成分を最適化するために、電気的組織解離実験の前に実施した。
【0055】
電気解離プロトコル
その後、特に明示されていない限り、300μLの超純ろ過水を使用して、5分未満のテストを実施した。この設計の選択は、上記の実験で決定された、5分未満の試験での無視できる浸透圧ストレスと生存率への影響によって知らされた。直径1mmの組織生検コアは、Robbins Instruments生検ツールを用いて前述のようにウシ肝組織標本から採取した。次に、生検コアは、電極間のキャビティに垂直にロードし、2つの電極から等距離に、ただし接触しないように配置した。
【0056】
5分未満の実験では、電極セルを絶縁ホルダー内に配置し、電極ワイヤを装置の両側に配置してそれぞれの金属板に接触させた(図6)。次に、対象となる特定の電圧に事前設定された電力供給がオンにされた。実際の電圧とアンペア数は、マルチメーターを使用して個別に検証した。電圧は実験内で制御し、10~100V/cmなどの電場強度で表される様々な電圧をテストした。これらの条件を達成するために、2~20Vなどの実際の電圧がプレートに印加した。これらの電場強度及び電圧は、確立された電気穿孔閾値を大幅に下回っている。
【0057】
5分間にわたる様々な時間間隔で、電圧を自動的に停止し、滅菌20ゲージ針を使用して、懸濁液中の解離された細胞の300μLの液体試料全体を装置から取り出した。実験の再現性を検証するために、試験は少なくとも10回繰り返した。
【0058】
30分未満の長時間経過の試験のみのために、代替の設定を開発した(図7)。この設定では、時間をかけて電極を所定の位置に固定するために保持ラックを使用した。ラックを使用して、電極をキュベットの両側の平行プレートに固定した。絶縁を確保するために絶縁テープを使用した。水は、300mMのスクロースで補足した。
【0059】
発振電圧試験については、情報を関数生成電力供給システムにプログラムし、実験は0HzのDC電圧実験と同じ方式で実行したままにした。方形波関数を使用し、波のピークは最大電圧に等しく、谷は同じ大きさの最小電圧に等しくなった。関数発生器の周波数制限に基づいて、下限10Hz、上限1MHzを含む様々な周波数をテストした。
【0060】
すべての処理の直後に、上清を除去できるように細胞をペレット化した。次に、それらを、高浸透圧膨張による細胞溶解を防ぐためにPBS含有溶液に移した。
【0061】
水平配向の装置製造
プロトタイプのマイクロ流体チップ(図9を参照)は、リアルタイムで電気解離の現象を光学的に調べる目的で作成した。このチップにより、垂直方向では困難であった解離現象を顕微鏡で観察することができた(図13、要素Aのサブi~サブiii及びBのサブi~サブiiiを参照)。図13では、要素Aのサブi~サブiiiは、2mmのギャップ内の解離組織の写真を示し、一方、図13では、要素Bのサブi~サブiiiは、リアルタイムで撮影された対応する顕微鏡画像を示す。図13では、要素Aのサブi及び要素Bのサブiは、組織を浸したばかりの状態に対応する解離のベースラインを表す。少数の表面細胞はすぐに洗い流される。図13では、要素Aのサブii及び要素Bのサブiiは、組織の約50%の解離を示し、一方、図13では、要素Aのサブiii及び要素Bのサブiiiは、印加電場を用いた組織の約100%の解離を示す。提示されたすべての定性的結果を、フローサイトメトリーを使用して定量的に検証した。
【0062】
組織及び細胞ソース
ウシ肝臓組織は、以前に報告されたプロトコルを使用した解離特性化試験に利用した。その組織は、地元の肉屋から入手し、後の分析のためにすぐに冷凍保存した。
【0063】
生存率への影響を調べるには生細胞が必要であるため、MDA-MB-231トリプルネガティブ乳癌細胞を使用するために培養した。MDA-MB-231細胞は、L-グルタミン、4.5g/Lのグルコース、ならびに10%ウシ胎児血清(GE Healthcare)及び1%ペニシリン-ストレプトマイシンで補充したピルビン酸ナトリウムを含むCorning DMEMからなる培地中で培養した。部分継代を使用して三次元細胞塊を溶出し、生細胞のみの生存率を調べるために解離ワークフローでテストした。これらの細胞は、エクスビボ組織と比較して複雑さが限られているため、エクスビボ解離効果の評価には使用しなかった。
【0064】
ヒト臨床神経膠芽腫組織は、解離特性化試験でテストした。組織は、腫瘍除去手術の直後に採取し、1mm片に切片化し、その後、処理した。
【0065】
ヒトの臨床神経膠芽腫腫瘍から単離された初代細胞もテストした。細胞を、コーティングされていない60mmのディッシュ内で、ディッシュ当たり1,000,000細胞の初期播種密度で5日間隔で培養した。コーティングされていないディッシュで培養すると、細胞は自然にプライマリーニューロスフェア又は「スフェロイド」を形成する。細胞を、47.74mLの1X Neurobasal A、0.5mLの2mM GlutaMAX-I Supplement、0.5mLの100X Anti-Anti、100μLの20ng/mL bFGFとEGF、1mLのB-27-A、及び50μLのヘパリンからなるプライマリーニューロスフェア完全培地に懸濁した。
【0066】
フローサイトメトリー
ウシ肝臓組織実験では、様々な電気処理にわたって解離した細胞の総数を評価し、これらの結果を対照及び化学的/機械的処理と比較するために、フローサイトメトリーを使用した。フローサイトメトリーにおける細胞計数は、本発明者が開発した前述のサイズゲーティング法を使用して実施した。サイズ制御されたフローサイトメトリービーズと細胞型ビンを使用して細胞サイズを推測するこの方法は、追加のセキュリティ層と組み合わした。赤血球溶解緩衝液であるDNAse Iで解離した細胞を処理し、次いで、細胞の核を非特異的に染色するためにHoechst 33342で染色することにより、試料調製プロトコルに追加のステップを加えた。この方法は、試料中の細胞破片や他の粒子から組織細胞を区別しながら、組織細胞の定量化を可能にした。
【0067】
DNAse I処理
DNAse I溶液は、327μLのヌクレアーゼフリー水を、60μLのDNAse I緩衝液(PerkinElmer)及びグリセロールに保存した3μLのDNAse Iと組み合わせることによって調製した。調製後、原液を4℃の冷蔵庫に保管した。
【0068】
遠心分離機を使用して1,500RPMで細胞懸濁液を遠心沈殿させて、細胞ペレットを形成した。次に、ペレットを乱さないように注意しながら、上清(約300μLの超純水)をピペットで除去した。細胞を20μLのDNAse Iで処理した。DNAse I溶液を細胞上にピペットで移した後、穏やかに撹拌しながら細胞を細胞ペレットから溶液中に再懸濁した。
【0069】
次に、溶液を細胞と一緒に5分間インキュベートし、遠心分離し、ピペットで除去した。DNAse溶液を除去した後、細胞を約248μLのPBSと、推奨される低維持濃度として機能する2μLのDNAse溶液に再懸濁した。チューブを穏やかに撹拌して、細胞を均一に分散させた。
【0070】
フローサイトメトリーのためのHoechst 33342染色剤
Hoechst 33342染色剤は、ThermoFisher Scientificから購入したフローサイトメトリー生/死染色用の既製品である(Hoechst 3342 Ready Flow Reagent、Thermofisher Scientific)。染料を落とす代わりに、ばらつきを減らすために既知の量と濃度の染料をピペッティングすることによって、より定量的なアプローチを採用した。
【0071】
DNAse処理した細胞溶液を、複製物のフローサイトメトリー分析に使用する125μLの2アリコートに分割した。染色剤を各試料チューブ内に推奨濃度で入れた。次に、チューブを染色と共に37℃で30分間培養した。その後、チューブの内容物を96ウェルプレート上にピペットした。プレートに等体積のPBSを約250μLの体積まで充填し、そのうち125μLをフローサイトメーターで分析した。
【0072】
期待される細胞数の数学的モデリング
解離効果は、解離及び細胞取り返しの効果を調べるために技術の組み合わせを採用する、本発明者らが開発し以前に報告した包括的な方法論を使用して定量化した。ウシ肝臓組織標本の表面積と重量に基づく細胞数の推定値を、各試料の解離パーセントの計算に使用される単一の数学モデルに合成する。この作業の前に、理論的予測値と実験的に得られた値を比較した場合、モデルを0.93のピアソンR二乗相関値(Pearson R-squared correlation value)及び0.001未満の両側P値を持つように確立した。
【0073】
顕微鏡検査生存率アッセイ
生存率テストは、生きた、新たに継代したMDA-MB-231トリプルネガティブ乳癌細胞に対して実施した。細胞は、組織切片と同じ電場条件にさらした。細胞の完全性と生存率を評価するために、血球算定法と蛍光顕微鏡検査の両方を使用してそれらを顕微鏡的に調べた。生細胞と死細胞は、以下に説明する画像処理のワークフローを使用して定量化し、一部は他の場所で特徴付けた。
【0074】
生存率アッセイ:DRAQ7&Hoechst 33342染色剤
Olympus FV3000共焦点顕微鏡(Brown University Leduc Bioimages Facility)を使用して、MDA-MB-231細胞の生存率と膜の完全性を評価した。化学的及び機械的制御を、100V/cmのDC電場条件と、同じ電場強度の1kHz発振電圧条件の両方と比較した。
【0075】
Hoechst 33342は、再び非特異的染色剤として使用し、一方、DRAQ7は、「死」染色剤として使用した。アントラサイクリン誘導体であるDRAQ7は、膜の完全性が損なわれた細胞を通って侵入し、DNAに結合する。細胞死を誘導しないが、損なわれた膜の完全性の効果的なマーカーとして機能するため、細胞死のリアルタイムモニタリングに役立てることができる。これらの2つの染料は、蛍光顕微鏡検査の「生/死」分析のために共染色され、10μLの試料は、10X、20X及び100Xの油浸で調査するためにイメージングディッシュ上に置いた。
【0076】
有糸分裂細胞周期アッセイ
有糸分裂細胞と細胞周期進行のアッセイは、確立されたプロトコルを使用して実施した。有糸分裂終了段階での細胞周期の破壊がより高い周波数電場処理(例えば、200kHz)で観察されているため、この効果がここで起こるかどうかを調べることが重要であった。
【0077】
MDA-MB-231の細胞懸濁液は処理しないか、又は100V/cm 1kHzで電気的に処理した。その後、抗リン酸化ヒストンH3(Ser10)抗体AlexaFluor488複合体(Sigma-Aldrich)を使用して、有糸分裂の指標であるリン酸化ヒストンH3を選択的に染色した。推奨される1:50希釈の抗体をPBSで調製し、細胞と37℃で1時間共培養した。次に、10μLの細胞試料を蛍光共焦点顕微鏡で可視化し、分析用に10倍で画像を撮影した。細胞数が一致した試料は、ThermoFisher Nanodrop 3300蛍光分光計を使用して相対蛍光強度についても分析した。
【0078】
画像分析プラットフォーム
画像J-FIJI画像分析ソフトウェアを、共焦点顕微鏡画像からの細胞計数、形態評価、生死画像処理の目的で使用した(National Institutes of Health)。発明者らによる以前の研究で利用したワークフローを、ここでは視覚処理に適用した。
【0079】
この同じ画像分析ワークフローを、単一の蛍光プローブで染色された細胞の画像処理と、2つの異なる蛍光プローブでの画像の両方に使用した。2つの異なるプローブでの画像は、細胞計数ワークフローに進む前に蛍光閾値を設定することにより、異なる蛍光体間を識別する簡単な追加ステップを必要とした。
【0080】
CfDNAアッセイ
DNase Iで処理されていない解離した組織試料中のcfDNAを、未処理対照条件及び様々な電場発振周波数で5、15及び30分の時点で分析し、電気処理中に遺伝的内容物が細胞から放出されるかどうかを評価した。300μLの溶液からすべての細胞を除去し、上清のみを残した。次に、QIAGEN QIAamp Circulating Nucleic Acid Kitを利用して循環核酸を抽出及び調製し、RNase消化を実行してcfDNAのみを精製した。続いて、Nanodrop 1000分光光度計に1μLを滴下し、280nm及び230nmに対する260nmでの吸光度を測定することにより、cfDNAを定量した。
【0081】
RNA分析
500,000個のMDA-MB-231細胞の試料をそれぞれ、無処理からなる対照、最適化された化学的/機械的処理、又は100V/cm 1kHzの最適化された電気処理にさらした。他の試料を、最適化された電気処理にさらした後、培地に添加し、熱制御されたCOインキュベーターにそれぞれ15分間と60分間入れ、「回復期間」の効果を評価した。
【0082】
処理後、細胞を遠心分離によってペレット化し、QIAGEN RNeasy Micro Kitを使用して集団からRNAを抽出した。DNAse I消化とRNAクリーンアップを、QIAGENプロトコルに従い、同じスピンカラムキットを使用して実行した。RNAを、30μLのヌクレアーゼフリー、RNaseフリーの水に溶出した。次に、カラムを追加の30μLの水で洗浄した。
【0083】
次に、Nanodrop 1000分光光度計を使用して、1μLのRNA試料を台座に滴下し、280nm及び230nmに対する260nmでの吸光度を再度測定することにより、総RNAを定量した。次に、総RNA濃度を確認し、RNAナノチップでRNA完全性番号(RIN)を確かめるために、Agilent 2100 BioAnalyzerを利用した。
【0084】
RNaseフリー水を添加するか、又は制御された蒸発遠心分離を利用することにより、試料を同じRNA濃度に調整した。次に、Applied Biosystems High-Capacity cDNA Reverse Transcription Kitを使用して、RNAからcDNAへの逆転写を実行した。qPCRは、MDA-MB-231ストレス応答との関係が確立されている6つのプローブ(SERPINE1、INHBE、FLRT1、HSPA5、ECM2及びPLAT22)に対して実行した。カスタムThermoFisher TaqManプローブを、qPCRでこれらのターゲットを増幅するために作成した。化学的/機械的及び電気的処理群の発現変化を、未処理の対照で確立されたベースラインと比較して調べた。
【0085】
統計分析
すべての研究は、少なくとも5つの生物学的反復と3つの技術的反復を使用して実行した。結果は平均±標準偏差として表される。関連する場合、一元配置分散分析(ANOVA)又は二元配置ANOVAを実行した。分析にはTukeyの事後検定(Tukey’s post-hoc test)及び95%信頼区間を使用した。多重比較分析を使用して、変数間の関係を評価した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。すべての統計テストは、GraphPad Prismソフトウェアを使用して実施した。
【0086】
結果
電場の物理モデリング
この研究では、印加された電場を使用して組織を細胞に解離させる方法を開発した。電気解離のパラメータを実験的に調査する前に、平行平板電極セル内で電場の直線性が維持されるかどうかを評価するために物理モデルを作成した。2~20Vの試験電圧を水のみ、ならびにシミュレートされた組織コアを有する水、及び3~9層のシミュレートされた解離組織を有する水を含むシミュレートキャビティを通して、電極間に印加した(図12、要素A及びB)。電場は、すべてのテストした条件にわたって電極間で線形であり、組織によって偏向せず、キャビティ内にホットスポットを生成しなかった(図12、要素C及びD)。
【0087】
試料回収に対する培地組成の影響
包括的な組織解離研究を実施する前に、試料回収及び泡立ちによる試料損失に対する培地組成の影響を調査した。それぞれの液体試料の相対回収を評価するために、超純水を培地と比較した。この文脈では、低浸透圧強度及び低導電率の溶液として水を使用した。一方、幾つかの添加塩及びイオンを含有する培地は、より高い浸透圧強度及び導電率の溶液を表した。水のデバイ長は培地のデバイ長の約10倍であった。培地の粘度も著しく高かった。300mMスクロースなどの他の緩衝液は、低い導電率を維持しながら溶液を細胞に対して等張にする方法の例である。
【0088】
水試験ではそれほど重要ではないが、100V/cmなどのより高いDC電場強度でも低レベルの泡立ちが発生することが観察され、その結果、78±10%と比較して5分間で36±11%の試料損失が発生した。他の研究は、1~10kHz未満で、低導電率の溶液で電気分解が頻繁に観察されることを示している。これは、発振なしの100V/cm処理での低い試料回収率につながる過度の泡立ちと、1kHzの発振周波数で5分後にわずか8±7%の損失という改善された結果が示された理由を説明するのに役立つ可能性がある。泡立ちはキュベット内に誘発された乱流によって機械的撹拌を引き起こすが、泡立ちが多すぎると試料の損失が発生し、電気分解は細胞の生存率を潜在的に低下させることが示されている。
【0089】
MDA-MB-231細胞を用いた生存率フローサイトメトリー研究では、培地中の塩/イオン含有量が高いと、導電率が上昇し、温度が上昇し(おそらくジュール加熱による)、顕著な泡立ちが生じ、試料回収率が低くなり、細胞死が引き起こされることが判明した。対照的に、純水溶液はこれらの有害な影響をまったく示さなかった。しかしながら、細胞を低張環境に長期間置くと、浸透圧による細胞の破裂が起こることが知られている。それにもかかわらず、実験では、超純水での短い(<5分)の処理時間で細胞の生存率は大幅に低下しないことが示された。さらに、15分を超える長時間経過では、モル浸透圧濃度を維持し、細胞の破裂と生存率の損失を防ぐために300mMスクロースを補充することができる。最終的には、さらなる分析のために細胞試料を迅速に取り出して等張PBS溶液に浸漬する限り、水及びスクロースを補充した水は、組織の解離、液体試料回収率、及び細胞生存率の保存にとってより効果的な候補であることが判明した。
【0090】
組織解離の実験結果
組織解離に対するDC電場の影響
組織の単一細胞への電気解離の効果を、最初の電気的設定でウシ肝臓組織を使用し、5分間の時間経過にわたって10~100V/cmの低レベル電場強度で最初に評価した(図6)。異なる条件での電気解離を包括的に理解するために、様々な測定基準を適用した。まず、フローサイトメトリーによって測定した、単一及び凝集した標的組織細胞の生の数を取得した(図14、要素A)。図14の要素Aでは、様々なDC電場条件、ならびに対照コラゲナーゼ、及び5分の時間経過における機械的撹拌条件によるコラゲナーゼにわたって、フローサイトメトリーを介して、生の細胞数を所定の試料において処理した。90V/cmの試験では、2~5分の時点で組織の解離において有意により効果的であった(p<0.001)。試料純度を、5分間の細胞外マトリックス断片などを含む、懸濁液中の他のすべての粒子に対する組織細胞の数を調べることによって評価した(図14、要素B)。最後に、このデータは、ウシ肝臓組織組成モデルを使用して解離パーセントを決定するために使用した(図14、要素C-5分間の組織の解離パーセント。90V/cmの試験では、組織の解離において有意により効果的であった(p<0.001)。すべての定量的結果はフローサイトメトリーを使用して収集した。試料中の細胞破片は分析から除外した。図14の要素A~Cでは、Tukey事後分析と95%信頼区間を備えた一元配置ANOVAを、要素Aでは時間経過全体にわたって試料に対して実行し、要素B及びCでは5分の時点で試料に対して実行した。N≧10、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。有意でない結果に関する情報はグラフに示していない。色付きのバーと星印は、他のすべての電気的条件と比較した場合の、特定の電気的条件の多数の時点にわたる重要な傾向を表す。100V/cm 1kHzと他のすべての処理の間のすべての有意性は、2~5分で****p<0.001である。
【0091】
最初の短い(<5分)時間経過では、90V/cmの印加電場強度に対して41±3%で最大解離率が得られた。時間の経過とともに多少の変動があったが、より高い印加電界強度試験(例えば、90V/cm)では、2分間という短い持続時間の後でも同様の回収率が得られた。解離は100V/cmの試料で最も効果的であったが、試料は最初の実験設定において非発振電圧で100V/cmの電場強度で泡立つ傾向があり、細胞回収率を有意に減少させた。
【0092】
100V/cm条件での泡立ちによる細胞回収率の低下にもかかわらず、この電場強度は、44±12%の最高試料純度を与えた。試料純度は、細胞凝集体、断片、破片、その他の成分を含む粒子全体に対する単一細胞の比率のメトリックを表す。これは、コラゲナーゼ及び機械的撹拌処理の場合よりも有意に高く、驚くべきことに、おそらく化学的又は機械的損傷から生じるECM断片又は細胞溶解の存在のため、テストしたすべての試料の中で純度が9±3%で最も低かった。
【0093】
処理時間を長くすることで組織コアからの細胞回収率を増加させることができるかどうかを判断するために、解離効果を10~100V/cmの電場強度で、一定の非発振電圧を使用するが、5、15、30分の間隔でより長い(<30分)時間経過にわたって再度調べた。代表的な電場強度10、50、及び100V/cmをこの方法で研究した。さらに、ハンズオフ処理を容易にするために、第2の電気的設定を長時間経過試験に使用した(図7)。
【0094】
これらの一定の非発振電圧での解離結果は、30分間のより長い期間にわたっても非常に穏やかであった(100V/cmのDC処理では30分後に32±12%の解離が観察された)が、気泡形成による細胞回収率の低下が50V/cm及び100V/cmの試験の両方で再び観察された(図15、要素A-30分未満の長時間経過で一定のDC電場で単離された組織細胞の生の数)。これは、一定の電場を用いたより長い処理は、より短い処理と比較して、組織解離を改善するための効率的な処理戦略ではないことを示唆している。
【0095】
組織解離に対する方形波発振の影響
続いて、気泡の発生を抑え、処理速度と回収率を向上させる方法として、発振電圧をテストした。周波数が変化する発振方形波電圧を使用すると、気泡の形成が減少するだけでなく、2分以降のすべての時点で組織解離が大幅に改善されることが判明した。長期の時間経過では、方形波関数発生器を使用しながら、中間の500Hzの発振周波数で100V/cmの電場を印加した場合、5、15及び30分の時点で有意に多くの細胞が回収された(32±12%と比較しておよそ91±9%)(図15の要素Bは、30分未満の長時間経過にわたる、発振電圧あり・なしの場合の解離パーセントを表す。)。したがって、30分経過後に組織の非常に効果的な解離が優れた細胞回収とともに観察された。これらの結果は、発振電圧がさらなる研究の有望な候補である可能性があることを示唆している。
【0096】
発振電圧の細胞解離への影響をより詳細に評価し、時間に関してプロセスを最適化するために、発振周波数の範囲にわたってより短い1~5分の時点でより多くの試験を行った(図15の要素Cは、短い時間経過(<5分)にわたる発振電圧試験における正規化された解離パーセントの比較を表す)。これらの試験では、印加電場は100V/cmで一定に保たれ、一方、発振周波数は変化した。方形波関数のみを使用した。Tukey事後分析と95%信頼区間を備えた二元配置ANOVAを実行した。N≧10、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。色付きのバーと星印は、他のすべての電気的条件と比較した場合の、特定の電気的条件の多数の時点にわたる重要な傾向を表す。特に明示しない限り、100V/cm 0Hz処理と他のすべての処理との間の有意性は、2~5分間で****p<0.0001である。100V/cm 1kHzと他のすべての処理の間のすべての有意性は、2~5分間で****p<0.001である。
【0097】
500Hzは、最初の装置構成(図15、要素BとC)に切り替えたとき、わずか2分後に15分間の試験と同様の結果を示した。特に、非発振電圧試験で見られた100V/cmの結果と一致して、周波数が低いほど最適な結果が得られない傾向があった(図13、要素A)。1kHzの周波数では、5分未満の迅速な時間枠で優れた解離が生成し、3分で95±4%の解離が観察された。
【0098】
100V/cm 1kHzの条件では、ウシ肝臓組織切片は、4分以内に完全に解離して細胞懸濁液となり、これは目視検査ですぐに明らかになった。1kHz処理からの解離細胞懸濁液のフローサイトメトリーの結果は、サイズゲートの結果を調べたときに、優れた細胞回収と、顕著な細胞断片化が観察されなかったこととを示した。
【0099】
第2の装置での30分間の500Hz処理と第1の装置での5分間の1kHz試験は同様の解離効果を有したが、1kHz試験の所要時間の方が短いため、電場解離法の臨床転換に適している。さらに、これらの結果は、以前に最良の化学的/機械的ハイブリッド条件として特徴づけられた、15分間の1%コラゲナーゼ/ヒアルロニダーゼ及び最適化された機械的プレート振盪試験に匹敵した。
【0100】
細胞生存率と形態に対するテストした電場の影響
電気処理が細胞の生存率と形態に有意な影響を与えるかどうかを評価するために、生きたMDA-MB-231細胞を生検標本と同じ電場にさらし、その後共焦点蛍光顕微鏡で観察した。統計的に有意な形態変化(図16の要素Aのサブi~サブiii、及び図17の要素A)又は生存率の低下(図16の要素Bのサブi~サブiii、及び図17の要素B)は観察されず、低レベル電場処理が細胞に損傷を与える影響がないことを示している。すべての生存率値は≧85%であった。化学的及び機械的対照処理では93±2%の生存率であり、100V、0Hzの処理では85±6%であり、100V、1kHzでは90±8%であった。それらの形態学的真円度パーセンテージは、それぞれ73±4%、80±5%、及び72±10%であり、この細胞型に期待されるものと一致している。しかしながら、化学的及び機械的処理と比較して、5分後の電気処理からは大幅に多くの単一細胞が回収されたことが観察された。化学的-機械的処理では、回収される細胞が少なくなり、より多くの凝集体が残存した。
【0101】
図16では、要素Aは、膜透過性細胞染色剤のHoechst 33342で撮影された形態画像を示す。図17では、要素Bは、Hoechst 33342及び膜不透過性死細胞染色剤のDRAQ7で撮影された生/死画像を示す。図16では、要素Aのサブi及び要素Bのサブiは、5分間の制御化学的及び機械的処理を受けた試料を示す。図16では、要素Aのサブii及び要素Bのサブiiは、5分間の100V/cm 0Hz処理を受けた試料を示す。図16では、要素Aのサブiii及び要素Bのサブiiiは、5分間の100V/cm 1kHz処理を受けた試料を示す。図17では、要素Aは、画像から抽出されたデータ分析を表し、形態を評価するために最良の電気的条件を対照の化学的及び機械的条件と比較した(対照vs. 0Hz条件ではp=0.0755、対照vs.1kHz条件ではp=0.9432)。図17では、要素Bは、同じアプローチを使用して生存率を評価した(対照vs.0Hz条件ではp=0.1547、対照vs.1kHz条件ではp=0.4520)。
【0102】
有糸分裂と細胞周期進行への電場の影響
100V/cm 1kHzの電気処理が有糸分裂時の細胞周期進行を妨げるかどうかを評価するために、有糸分裂中の細胞を示すAlexaFluor488結合抗体を使用して従来のリン酸化ヒストンH3アッセイを実施した。このアッセイは、完全に継代した生きたMDA-MB-231細胞懸濁液を2つの群(未処理の対照と、100V/cm 1kHzで処理した細胞)に分けて使用し、どちらも5分間の試験でテストした。
【0103】
次に、細胞を共焦点蛍光顕微鏡で観察した。ホスホヒストンH3 Ser10 細胞の画像を収集し(図18、要素AとB)、非特異的染色剤を使用して他のすべての段階のすべての細胞の画像と重ね合わせた(図18、要素CとD)。図18の要素AとCは、未処理の対照細胞の代表的な画像である。図18の要素BとDは、最良の電気的条件(100V/cm 1kHz)で処理した細胞の代表的な画像である。画像J処理及びウェルチのT検定による統計分析の後、有糸分裂中の細胞のパーセントに統計的に有意な変化や、細胞周期の進行に対する観察可能な影響は存在しないことが判明した(図19、要素A)。未処理の対照は、有糸分裂中の細胞の25±4%であり、処理した対照は27±5%であった。このテストは、0.5464のp値で有意ではないことが判明した。分光蛍光光度計RFIは一致していた(図19、要素B)。
【0104】
cfDNA放出に対する電場の影響
cfDNA放出を、未処理の対照、ならびに0Hz、100Hz、及び1kHzでの100V/cmの電気処理において、5分、15分、及び30分の時点にわたって調べた。電気処理条件ではcfDNAの濃度が増加しないことが判明した(図20の要素Aは、0Hz、100Hz、及び1kHzで100V/cmによる5、15、及び30分間処理後の、又は処理なしの全組織切片からの溶液中のcfDNAの結果をng/μLで示す。Tukey事後分析と95%信頼区間を備えた二元配置ANOVAを実行した)。この予備データから、細胞が処理中に細胞内内容物を漏らすことはないように見える。これは、この技術をSCSに転換するために必要な条件である。興味深いことに、0Hz及び100Hzの条件で観察されたcfDNA含有量の減少は、これらの電場強度と発振周波数でcfDNAが破壊されていることを示している可能性がある。
【0105】
RNAと発現に対する電場の影響
元の未調整のRNA含有量は、対照と比較した場合、100V/cm 1kHzの電気処理で有意な差がなかった(図20の要素Bは、無処理、コラゲナーゼ及び機械的撹拌処理、又は100V/cm 1kHzの処理にさらした500,000細胞の出発集団からのRNA抽出後のRNA含有量の結果をng/μLで示す。Tukey事後分析と95%信頼区間を備えた一元配置ANOVAを実行した(p=0.0014))。しかしながら、化学的/機械的処理は、他の群と比較してRNA含有量がわずかに低くなった。すべてのRIN値は8以上であり、無傷のRNAと一致した(図20の要素Cは、抽出されたRNA試料のRNA完全性数(RIN)の結果を示す。Tukey事後分析と95%信頼区間を備えた一元配置ANOVAを実行した(p=0.0941))。
【0106】
RT-qPCRの結果は、それぞれ増加及び減少した遊走と浸潤遺伝子SERPINE1とPLATの発現を除けば、化学的/機械的又は電気的に処理した細胞ではストレス応答が観察されないことを示している(図21の要素AとBでは、要素Aは、処理にわたる6つの指標についてのRT-qPCR発現プロファイルの変化を示す。対照発現ベースラインを使用したΔCqを、ベストプラクティスガイドラインに従って表示された各処理群に対して計算した。差次的発現をヒートマップ分析で表し、要素BのMDA-MB-231細胞株のストレス応答シグネチャと比較した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001)。これは、SERPINE1がPLATの主要な阻害剤として機能し、さらに細胞遊走の阻害剤として機能することと一致している。
【0107】
注目すべきことに、両方が細胞接着マーカーであるFLRT1及びECM2は、化学的/機械的処理群及び電気的処理群の両方で下方制御されていたが、電気的処理の場合はより顕著であり、ΔCq値は、それぞれ、FLRT1では-3.62対-4.93、ECM2では-2.84対-7.71であった(図21、要素A)。これは、MDA-MB-231における細胞ストレスの確立された傾向と一致していないが、組織解離を促進する可能性のある潜在的な追加の生物学的メカニズムを示唆している。
【0108】
細胞を好ましい対照条件に戻すことによってこれらの発現傾向を逆転させることができるかどうかを判断するために、15分及び60分の回復期間を調査した。60分以内に、細胞は基本的にベースラインレベルに戻ることができ、細胞が特有の接着特性と遊走特性を回復できることを示唆している。
【0109】
ヒト神経膠芽腫細胞実験
上記の結果の臨床転換を調べるために、ヒト神経膠芽腫細胞を用いて追加の実験的なテストを行った。ヒト臨床神経膠芽腫組織テストの結果を、図22の要素A(電気的凝集体のサイズ)及び要素B(電気的生存率)に示す。電気的凝集体のサイズはすべての細胞分離処理において有意であることが判明した(統計的有意性はAの**と***で示される)。電気的生存率は、新たな発生用の装置を使用して10V/cm、1KHz、5分間の分離で統計的に有意であることが判明した。
【0110】
上記の説明から、当業者であれば、改良、変更、及び修正を理解できるであろう。そのような改良、変更、及び修正は、当業者の技術の範囲内であり、添付の特許請求の範囲によってカバーされることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22A
図22B
【手続補正書】
【提出日】2023-12-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
組織又は細胞試料を保持するように構成された装置と、
前記装置と接触する1つ以上の電極とを備え、
前記1つ以上の電極は、前記装置を通して均一電場を確立して、前記組織又は細胞試料に事前に変更を加えることなく、単一細胞及び/又はより小さな細胞群の生存率を維持しながら、前記組織又は細胞試料の単一細胞及び/又はより小さな細胞群への電気解離を誘導するように構成され、前記均一電場は、電圧、電流、又は周波数の少なくとも1つで均一であることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記装置は、少なくとも1つの流体中に前記組織又は細胞試料を保持するように構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの流体は非イオン性液体を含む、ことを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記非イオン性液体は添加剤を含む、ことを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記装置は、複数の組織及び/又は細胞試料を保持及び処理するように構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記装置は、キュベット、ウェル、チューブ、マイクロ流体チップ、又は別の容器を備える、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記装置内の前記1つ以上の電極の間の電圧は、前記組織又は細胞試料の電気穿孔閾値未満である、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【国際調査報告】