(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】風力発電システムの設置とメンテナンスのための自力昇降式クレーン装置
(51)【国際特許分類】
B66C 23/32 20060101AFI20240403BHJP
F03D 80/50 20160101ALI20240403BHJP
F03D 13/20 20160101ALI20240403BHJP
F03D 13/40 20160101ALI20240403BHJP
【FI】
B66C23/32 F
F03D80/50
F03D13/20
F03D13/40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564238
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(85)【翻訳文提出日】2023-10-19
(86)【国際出願番号】 KR2021018085
(87)【国際公開番号】W WO2022231086
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】10-2021-0053478
(32)【優先日】2021-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518135814
【氏名又は名称】パワー エムエヌシー カンパニー リミテッド
【住所又は居所原語表記】138,Eogok-ro,Yangsan-si,Gyeongsangnam-do,50591,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ジェ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ユン,マン ジュン
【テーマコード(参考)】
3F205
3H178
【Fターム(参考)】
3F205AB01
3F205BA10
3H178AA03
3H178AA22
3H178AA43
3H178BB77
3H178BB79
3H178CC02
3H178CC23
3H178DD12Z
3H178DD67X
(57)【要約】
本発明のクレーン装置は、タワーと、タワーの上端に設けられる風力発電システムの設置とメンテナンスのためのものであり、タワーに取り付けられてタワーに沿って上下を昇降するように設けられる昇降ユニット、および風力発電システムをなす要素を引き揚げるように構成され、昇降ユニットの上部に配置されるクレーンユニットを含んで構成され、昇降ユニットは、タワーを取り囲むように構成され、タワーの任意の位置に固定支持される状態とタワーに対して昇降可能な状態で可変する上部ベースと下部ベース、上下部ベースの間で延びて上下部ベースが互いに上下に離隔した位置で互いを固定させる複数のポスト、タワーを囲むように構成され、タワーの任意の位置に固定支持される状態とタワーに対して昇降可能な状態で可変し、上下部ベースの間でポストに沿って昇降自在に配置される昇降ベース、および昇降ベースと上部ベースまたは下部ベースの間に配置されて長さが可変することで、昇降ベースと上下部ベースとの間の距離を可変させる駆動機構を含んで構成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タワーとタワー上端に設けられる風力発電システムの設置とメンテナンスのためのクレーン装置であって、
タワーに取り付けられてタワーに沿って上下を昇降するように設けられる昇降ユニット、および
風力発電システムを構成する要素を引き揚げるように構成され、昇降ユニットの上部に配置されるクレーンユニット
を含んで構成され、
昇降ユニットは、
タワーを囲むように構成され、タワーの任意の位置に固定支持される状態とタワーに対して昇降可能な状態で可変する上部ベースと下部ベース、
上下部ベースの間で延びて上下部ベースが互いに上下に離隔した位置で互いに固定されるようにする複数のポスト、
タワーを囲むように構成され、タワーの任意の位置に固定支持される状態とタワーに対して昇降可能な状態で可変され、上下部ベースの間でポストに沿って昇降自在に配置される昇降ベース、および
昇降ベースと上部ベースまたは下部ベースとの間に配置されて長さが可変することにより、昇降ベースと上下部ベースとの間の距離を可変させる駆動機構
を含んで構成され、
上部ベースと下部ベースがタワーの任意の位置に固定支持された状態で駆動機構の長さが可変することにより、昇降ベースがタワーに沿って昇降し、昇降ベースがタワーの任意の位置に固定支持された状態で駆動機構の長さが可変することにより、上部ベースと下部ベースとがタワーに沿って昇降し、クレーンユニットは上部ベースに配置されている、クレーン装置。
【請求項2】
上下部ベースおよび昇降ベースは、タワーの延長方向に垂直な平面に延びるフレームを含み、それぞれのフレームの内側にはタワーが貫通するホールが形成され、それぞれのフレームはタワーが貫通するホールが開放されるように分割および結合可能に構成され、
複数のポストはタワーの円周方向に離隔して配置され、昇降ベースが摺動自在に昇降ベースを貫通し、
駆動機構として、昇降ベースのフレームと上部ベースまたは下部ベースのフレームとの間で伸びて伸縮作動する複数の油圧シリンダがタワーの円周方向に沿って離隔して配置されている、請求項1に記載のクレーン装置。
【請求項3】
タワーの表面との間にタワーの直径方向に摩擦力を選択的に印加できるように構成され、摩擦力の印加により上下部ベースおよび昇降ベースがタワーの任意の位置に固定支持されるようにするブレーキ機構が設けられ、
上下部ベースおよび昇降ベースのそれぞれには、複数のブレーキ機構がタワーの円周方向に互いに離隔して配置されている、請求項1に記載のクレーン装置。
【請求項4】
上下部ベースおよび昇降ベースは、タワーの延長方向に垂直な平面に延びるフレームを含み、
ブレーキ機構は、フレームに配置され、油圧シリンダによってタワーの直径方向に摺動するブロック、およびブロックの先端に配置され、タワーの表面と接触して摩擦力を印加する摩擦パッドとを含んで構成される、請求項3に記載のクレーン装置。
【請求項5】
ブレーキ機構の摩擦パッドの直径方向の外側面に沿って延びて配置されることで、摩擦パッドがタワーの直径方向の外側に移動することを防止するワイヤ機構をさらに含む、請求項4に記載のクレーン装置。
【請求項6】
ワイヤ機構は、上下部ベースおよび昇降ベースのフレームにそれぞれ配置される油圧/電動式ウインチ、および一端が摩擦パッドのいずれかに固定され、他端は油圧/電動式ウインチに結合されるワイヤを含む、請求項5に記載のクレーン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電システムの設置とメンテナンスのための自力昇降式クレーン装置に関し、具体的には、陸上に垂直に設置されるタワーと、タワーの上端に設置される風力発電機を含む風力発電システムにおいて、自力でタワーを昇降しながら風力発電システムをなすタワーやタービンなどの物品を引き揚げることにより、風力発電システムを設置またはメンテナンスに使用するクレーン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
陸上に設置される風力発電システムは、地面からタワーを垂直に設置し、タワーの上端には風力タービンが配置されるナセルが設けられ、タービンにはブレードが結合される。
【0003】
効率的な風力発電のためにタワーの高さが増加し、ブレードや風力タービンも大型化しており、風力発電システムを設置するためのクレーン装置も高層化および大型化している。
【0004】
大型クレーンは供給が限定され、適期に風力タワーシステムの建設やメンテナンスに投入されにくい。特に、風力発電システムは山地に設置されることが多いが、高層の大型クレーンを山地へ運搬することが難しく、現場に十分な作業スペースが確保されず、大型クレーンによる作業も容易ではない。
【0005】
このような問題を解決するための方案として、いわゆる自力昇降式クレーン装置が開発されている。
【0006】
自力昇降式クレーン装置は、風力発電システムのタワーに沿って昇降する昇降機構にクレーンを設置し、昇降機構がタワーに沿って上がりながらクレーンが風力発電システムを構成する要素、すなわちタワーユニット、ブレード、ナセルなどを設置位置まで引き揚げたり、解体された要素を下降させたりするものである。
【0007】
このような自力昇降式クレーン装置に関する発明として、国際特許公開公報WO2017055598(文献1)に開示される「風力タービンを設置するためのホイスティングシステム」という名称の発明が提案されている。
【0008】
文献1の発明のホイスティングシステムは、風力発電システムのタワーに昇降のための構造物を設置し、クレーンが設けられた昇降用本体が構造物を用いてタワーを昇降する構成を有している。
【0009】
このような文献1の発明のホイスティングシステムを利用するためには、タワーに昇降用構造物を設置しなければならないため、既に建設されて運用中の風力発電システムのメンテナンスには使用できないという問題がある。
【0010】
自力昇降式クレーン装置の他の例として、中国公開特許公報CN107265373A(文献2)では、「Dedicated tool for wind electricity maintenance crane arm structure」という名称の発明を開示する。
【0011】
文献2の発明に係る装置は、タワーを包みながら互いに垂直方向に離隔した複数のホールディングアームが垂直に延びるシリンダに連結されて構成されるものである。ホールディングアームはシリンダによって昇降し、互いに交互にタワーに取り付けられ、昇降運動に対する支持力を提供する。
【0012】
文献2の発明に係る装置は、風力発電システムのタワーの構造を変更せずに利用できるが、ホールディングアームがタワーを把持する力に依存して昇降作用をし、クレーンが引き揚げ作業をする負荷を支持しなければならないため、ホールディングアームの構造が複雑で昇降作動が複雑であり、多くの時間がかかり、作業現場でホールディングアームを組み立ておよび解体する作業に多くの時間がかかり、ホールディングアームの安全性が問題となる。
【0013】
また、文献1の発明と文献2の発明のクレーン装置は、いずれもタワーを昇降するユニットの一側にクレーンユニットが取り付けられるため、昇降ユニットとクレーンユニットの荷重およびクレーンが引き揚げる物品の荷重が全てタワーの一側に偏重されることで、タワーに相当な偏心荷重をかけるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、風力発電システムをなすタワーを自力で昇降しながらクレーンユニットを搭載し、風力発電システムを構成する要素を引き揚げ、設置と解体およびメンテナンス作業を行うことができるようにするクレーン装置を提供することを目的とする。
【0015】
特に、本発明は、風力発電システムのタワーを昇降する機構が簡単に構成されながらも、安全かつ効率的に昇降可能であり、昇降中と作業中にタワーに安全かつ確実に支持される構成を有するクレーン装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前述した本発明が解決しようとする課題は、タワーとタワーの上端に設けられる風力発電システムの設置とメンテナンスのためのものである本発明に係るクレーン装置によって達成される。
【0017】
本発明のクレーン装置は、
タワーに取り付けられてタワーに沿って上下を昇降するように設けられる昇降ユニット、および
風力発電システムを構成する要素を引き揚げるように構成され、昇降ユニットの上部に配置されるクレーンユニットを含んで構成され、
昇降ユニットは、
タワーを囲むように構成され、タワーの任意の位置に固定支持される状態とタワーに対して昇降可能な状態で可変する上部ベースと下部ベース、上下部ベースの間で延びて上下部ベースが互いに上下に離隔した位置で互いに固定されるようにする複数のポスト、タワーを囲むように構成され、タワーの任意の位置に固定支持される状態とタワーに対して昇降可能な状態で可変され、上下部ベースの間でポストに沿って昇降自在に配置される昇降ベース、および昇降ベースと上部ベースまたは下部ベースとの間に配置されて長さが可変することにより、昇降ベースと上下部ベースとの距離を可変させる駆動機構を含んで構成され、
上部ベースと下部ベースがタワーの任意の位置に固定支持された状態で駆動機構の長さが可変することにより、昇降ベースがタワーに沿って昇降し、昇降ベースがタワーの任意の位置に固定支持された状態で駆動機構の長さが可変することで、上部ベースと下部ベースがタワーに沿って昇降し、クレーンユニットは上部ベースに配置されるものである。
【0018】
このような構成の本発明のクレーン装置は、上下部ベースのうちいずれかと昇降ベースとの間に設けられる駆動機構の伸縮作動に同調して上下部ベースがタワーに固定支持される状態と昇降ベースが固定支持された状態で交互になっていることにより、駆動機構の伸縮作動の変位だけクレーン装置が上昇または下降することになる。
【0019】
上下部ベースとポストからなる構造物は、互いに一体になってタワーを囲んで配置された状態でタワーを昇降するため、タワーに対して偏心荷重を印加せず、安定してタワーに支持された状態を成す。
【0020】
したがって、昇降作動はもちろん、クレーンユニットによる物品の引き揚げ作業でもタワーに加える偏心荷重が最小となり、風力発電システムをなす物品がタワーに対して整列された状態で引き揚げられることができる。
【0021】
本発明のさらなる特徴として、本発明のクレーン装置は、
上下部ベースおよび昇降ベースは、タワーの延在方向に垂直な平面に延びるフレームを含み、それぞれのフレームの内側にはタワーが貫通する孔が形成され、それぞれのフレームはタワーが貫通する孔が開放されるように分割および結合可能に構成され、
複数のポストはタワーの円周方向に離隔して配置され、昇降ベースが摺動自在に昇降ベースを貫通し、
駆動機構として、昇降ベースのフレームと上部ベースまたは下部ベースのフレームとの間に延びて伸縮作動する複数の油圧シリンダがタワーの円周方向に沿って離隔して配置されることで構成することができる。
【0022】
このように、昇降ユニットを構成する上下部ベースと昇降ベースは、分割および結合されるフレームからなるため、分割した状態で運搬して現場でタワーを囲むように組み立てられる。
【0023】
したがって、風力発電システムの現場への運搬が容易であり、タワーに組み立てられた後はタワーを囲む構造を成してタワーに安定して支持され、偏心荷重を加えない。
【0024】
本発明の他のさらなる特徴として、本発明のクレーン装置は、
タワーの表面との間にタワーの直径方向に摩擦力を選択的に印加できるように構成され、摩擦力の印加により上下部ベースおよび昇降ベースがタワーの任意の位置に固定支持されるようにするブレーキ機構が設けられ、上下部ベースおよび昇降ベースのそれぞれには、複数のブレーキ機構がタワーの円周方向に互いに離隔して配置されることができる。
【0025】
このような構成によれば、上下部ベースおよび昇降ベースをタワーの任意の位置に固定支持する動作は、円周方向に互いに 離間して直径方向の摩擦力を印加するブレーキ機構によって行われる。
【0026】
摩擦力が直径方向に直接作用するため、強い摩擦力が印加され、上下部ベースと昇降ベースがタワーに安定して支持されることができ、特に摩擦力が円周方向に分散して作用するため、タワーとクレーン装置に偏心荷重を印加しない。
【0027】
このようなさらなる特徴の実施形態として、
上下部ベースおよび昇降ベースは、タワーの延長方向に垂直な平面に延びるフレームを含み、ブレーキ機構は、フレームに配置され、油圧シリンダによりタワーの直径方向に摺動するブロックおよびブロックの先端に配置されてタワーの表面と接触して摩擦力を印加する摩擦パッドを含んで構成されることができる。
【0028】
また、ブレーキ機構の摩擦パッドの直径方向の外側面に沿って延びて配置されることにより、摩擦パッドがタワーの直径方向の外側面に移動することを防止するワイヤ機構をさらに含んでもよい。
【0029】
油圧シリンダによる押圧力で摩擦パッドをタワー表面に押圧して摩擦力が作用することになるが、油圧系統の異常などにより油圧シリンダによる押圧力が失われた場合でも、ワイヤが、摩擦パッドがタワー表面から離間しないようにするため、油圧シリンダによる押圧力が失われても、クレーン装置が墜落する事故は発生しない。
【0030】
このようなワイヤ機構の実施形態として、ワイヤ機構は、上下部ベースおよび昇降ベースのフレームにそれぞれ配置される電動式ウインチ、および一端が摩擦パッドのいずれかに固定され、他端は電動式ウインチに結合されるワイヤとを含んで構成されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一実施形態によるクレーン装置にナセル引き揚げ用治具が取り付けられた状態を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態によるクレーン装置が風力発電システムのタワーに支持された状態でタワーの上部ユニットを引き揚げる状態を示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態によるクレーン装置において、上部ベースにブレーキ機構が設けられた状態を示す斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態によるクレーン装置において、昇降ユニットがタワーを上昇させる動作を順次示す斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態によるクレーン装置において、昇降ユニットがタワーを上昇させる動作を順次示す斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態によるクレーン装置において、昇降ユニットがタワーを上昇させる動作を順次示す斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態によるクレーン装置におけるクレーンユニットとリフティングユニットとを示す斜視図である。
【
図8】
図7におけるリフティングユニットを拡大した斜視図である。
【
図9】
図7におけるリフティングユニットを拡大した側面図である。
【
図10】本発明の一実施形態によるクレーン装置がタワーユニットを引き揚げる作動を順次示す図である。
【
図11】本発明の一実施形態によるクレーン装置がタワーユニットを引き揚げる作動を順次示す図である。
【
図12】本発明の一実施形態によるクレーン装置がタワーユニットを引き揚げる作動を順次示す図である。
【
図13】本発明の一実施形態によるクレーン装置がブレードを引き揚げる作動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を 参照して本発明を実施するための具体的な内容であって、本発明の一実施形態によるクレーン装置の構成と作動について説明する。
【0033】
図1と
図2を参照して、一実施形態によるクレーン装置の全体的な構成を説明する。
【0034】
クレーン装置は、大きく分けると、風力発電システムのタワー1に取り付けられてタワーに沿って垂直に昇降自在に構成された昇降ユニット10~50、昇降ユニットの上部に配置される2つのクレーンユニット70、クレーンユニットに吊り下げられ、クレーンユニットによって昇降し、風力発電システムの要素が吊り下げられるリフティングユニット80から構成されている。
【0035】
このような構成により、例えば、クレーンユニット70を搭載した状態で昇降ユニット10~50がタワー1に沿って上昇した後に作業位置に到達すると、クレーンユニット70が引き揚げフック(
図7の76)を地面に隣接するように下降させて引き揚げフックにリフティングユニット80を吊り下げた後、地上に置かれたタワーユニット、ナセルまたはブレードなどの風力発電システムの要素をリフティングユニット80に吊り下げる。次いで、クレーンユニット70がリフティングユニット80を引き揚げて、リフティングユニットに吊り下げられた風力発電システムの要素を所定の位置に配置して組み立てる。
【0036】
昇降ユニット10~50の全体的な構成について説明する。
【0037】
昇降ユニットとして、タワー1を囲むように構成され、タワーの任意の位置に固定支持される状態とタワーに対して昇降可能な状態で可変する上部ベース10、昇降ベース30および下部ベース20が設けられている。
【0038】
上部ベース10、下部ベース20および昇降ベース30は、いずれもタワー1が延びる垂直方向に垂直な平面に延びる四角形のフレーム11、21、31で構成され、フレーム11、21、31の内側中心にはタワー1が貫通するホール12、22、32が形成され、フレーム11、21、31がタワー1を囲むようになっている。
【0039】
それぞれのフレーム11、21、31は、タワーが貫通するホール12、22、32が半円状に開放されるように2つの部分に分割および結合されるように構成されており、分割された状態で風力発電システムの設置またはメンテナンス現場に運ばれた後、タワー1を囲む状態で互いに結合される。
【0040】
上部ベース10と下部ベース20は、フレーム11、21の4箇所の角に配置される4つのポスト50によって互いに固定結合されて一体になっている。
【0041】
ポスト50は垂直に設置され、垂直方向に上下部ベースおよび昇降ベースのフレーム11、21、31を貫通して設けられるが、上下部ベースのフレーム11、21とは固定結合されてポスト50によって上下部ベース10、20が一体となる。
【0042】
昇降ベース30は、垂直方向で上下部ベース10、20の間に置かれ、ポスト50が昇降ベースのフレーム31を貫通するが、フレーム31が固定結合されずに昇降ベース30とポスト50が滑り運動をすることになる。
【0043】
昇降ベースのフレーム31の上面と上部ベースのフレーム11の下面との間には、8つの油圧シリンダ40が平面視でポスト50の間に2つずつ配置されている。それぞれの油圧シリンダ40は、一端が昇降ベースのフレーム31の上面に固定され、ピストン先端が上部ベースのフレーム11の下面に結合されている。
【0044】
このような構成により、油圧シリンダ40が伸縮することにより、昇降ベース30は、上下部ベース10、20との距離が可変して相対的に昇降運動をすることになる。
【0045】
上部ベース10、下部ベース20および昇降ベース30には、それぞれタワーの任意の位置に固定支持されるようにするブレーキ機構が設けられている。
【0046】
ブレーキ機構の構成について
図3を参考して説明する。
【0047】
図3では、上部ベースのフレーム11の上板を取り外した状態を図示し、フレーム内部に設けられたブレーキ機構を示す。
【0048】
ブレーキ機構60は、タワーの表面との間に摩擦力を選択的に印加できるように構成され、摩擦力の印加によって上下部ベースおよび昇降ベースがタワーの任意の位置に固定支持されるようにするものである。
【0049】
このようなブレーキ機構は、上下部ベース10、20と昇降ベース30に同じ構成で設けられるため、以下では
図3に示す上部ベースのブレーキ機構について説明する。
【0050】
1つのブレーキ機構は、上部ベースのフレーム11に配置されてタワー1の直径方向に摺動するブロック61、伸縮作動によりブロックを直径方向に加圧および後退させる油圧シリンダ62、ブロックの先端に配置されてタワーの表面と接触して摩擦力を印加する摩擦パッド63からなっている。
【0051】
フレーム11には、ブロック61の摺動作動を案内するように直径方向に線状の溝が形成されており、ここにブロック61が配置されて摺動作動する。
【0052】
油圧シリンダ62は、直径方向にブロック61の外側に配置され、シリンダの一端がフレーム11に結合されており、ピストン先端がブロック61に結合されているため、油圧シリンダ62の伸縮作動により、ブロック61がフレーム11に対して直径方向へと内側に前進するか、外側に後退作動する。
【0053】
摩擦パッド63は、ブロック61の直径方向の先端に結合されており、外側表面がタワー1の表面と接触することになる。
【0054】
風力発電システムにおいて、タワーは、通常、上に向かって先細と形成されており、タワーの表面もそのような傾斜を有している。ブレーキ機構60の摩擦パッド63は、タワーの表面と当接する外側表面がタワー表面の傾斜と同じ傾斜に合わせて傾きを有するように構成されている。
【0055】
風力発電システムごとにタワーの傾斜が変わる場合があり、ブレーキ機構の摩擦パッドはそのような傾斜に合ったものに取り換えて使用することもできる。
【0056】
この実施形態において、以上のような構成のブレーキ機構60は、 上部ベースのフレーム11に6個が設けられており、タワーの円周方向に互いに離隔している。このようなブレーキ機構60の数と配置は調整および変更されることができる。フレーム11の4辺ごとに1つまたは2つずつ設けられてもよく、タワーの円周方向に対して等間隔に設けられてもよい。
【0057】
以上の構成により、ブレーキ機構60の油圧シリンダ62が伸びると、ブロック61がタワーの表面に近づく方向である直径方向の内側に移動して摩擦パッド63をタワーの表面に対して加圧する。これにより、タワーの表面と摩擦パッド63との間に摩擦力が印加され、上部ベース10がタワー1の任意の地点に固定支持されることができる。
【0058】
油圧シリンダ62が収縮すると、ブロック61がタワーの表面から離隔する方向である直径方向の外側に移動して、摩擦パッド63がタワーの表面に離隔する。これにより、上部ベース10がタワー1に対して上昇または下降できる状態となる。
【0059】
一方、タワーを囲む状態で配置される6つの摩擦パッド63の直径方向の外側面、すなわち、タワーの表面と接触する表面の裏面をワイヤ65が囲んでいる。ワイヤは、摩擦パッド63の上側に2列、下側に2列が対になって配置されている。
【0060】
ワイヤ65は、一端が1つの摩擦パッド63に固定され、タワー1の円周方向に延びる状態で配置され、6つの摩擦パッド63の全ての内側面に載置され、他端はフレーム11に設けられた電動式ウインチ66に結合されている。
図3には、電動式ウインチ66のうちから一組のワイヤを巻き取る部分のみが露出した状態で示されている。
【0061】
このような構成により油圧/電動式ウインチ66を可動してワイヤ65を引っ張ると、円周方向に沿って配置されたワイヤ65が直径方向の内側に収縮して摩擦パッド63を直径方向の内側に加圧する状態となる。
【0062】
油圧/電動式ウインチ66の作動を停止すると、ワイヤ65は6つの摩擦パッド63を全て包んだ状態となり、油圧/電動式ウインチ66を逆方向に作動させない限り、この状態を保つことになる。
【0063】
油圧シリンダ62の漏れや故障、油圧供給系統の故障や漏れなどにより、意図せず、油圧シリンダ62が摩擦パッド63に印加する加圧力が減少または消失することがあり得る。
【0064】
しかし、本実施形態では、摩擦パッド63が油圧シリンダ62の加圧力によりタワー1の表面に当接して加圧された状態で、ワイヤ65がウインチ66によって巻かれて摩擦パッド63が直径方向の外側に離脱しないように拘束されるため、油圧シリンダ62の加圧力が消失しても摩擦パッド63がタワーの表面から分離されない。
【0065】
これにより、油圧シリンダ62の加圧力が減少または消失しても、意図せずに、上部ベース10が重力によって墜落する事故が防止される。
【0066】
以上、説明したブレーキ機構60とワイヤ65の構成は、下部ベース20および昇降ベース30にも同様に設けられている。
【0067】
タワーに設置するために、クレーン装置は製造現場などでいくつかのモジュールやユニットに分割して輸送され、現場でタワーに組み立てられる。昇降ユニットは、上下部ベース10、20と昇降ベース30をなすフレーム11、21、31が2つに分割された状態で製造されるため、フレームが分割された状態で上下部ベース10、20の半分を組み立て、これにポスト50と油圧シリンダ40およびブレーキ機構60をそれぞれ設置することができる。
【0068】
このように半分が組み立てられた半分の昇降ユニットと2つのクレーンユニットおよびリフティングユニットは、別途の輸送手段に乗せて現場に輸送し、現場では別のクレーンを利用してタワーに組み立てる。
【0069】
図4~
図6を参考して、クレーン装置がタワーに沿って上昇する作動を説明する。
【0070】
これらの図は、本実施形態のクレーン装置を構成する要素を運搬して風力発電システムのタワーの下端に設置した状態から、クレーン装置がタワーに沿って自力で上昇する過程の一部を示す。
【0071】
図4では、クレーン装置を構成する要素を運搬して風力発電システムのタワーの下端に設置した状態を示す。
【0072】
クレーン装置の昇降ユニット10~50がタワーに設けられて固定されており、2つのクレーンユニットは昇降ユニットの上部ベース10上に設けられている。リフティングユニット80は、クレーンユニット70に吊り下げられておらず、クレーン装置が作業位置へ上昇した後、クレーンユニット70に吊り下げられる。
【0073】
図4に示す初期状態では、昇降ベース30と上部ベース10との間の油圧シリンダ40はピストンが収縮しており、昇降ベース30は上下部ベース20の間に置かれた状態にある。
【0074】
この状態で上下部ベース10、20と昇降ベース30は、ブレーキ機構が作動して摩擦パッド63がタワー1の表面に加圧されて摩擦力が印加され、ワイヤ65が電動式ウインチ76によって巻かれて摩擦パッド63に密着した状態である。したがって、上下部ベース10、20と昇降ベース30は、タワー1に固定支持された状態である。
【0075】
続いて、上下部ベース10、20は、ブレーキ機構の油圧シリンダ62が収縮し、摩擦パッド63がタワー1の表面に加える加圧力が消失する。これにより、摩擦パッド63とタワー表面との間の摩擦力が消失し、摩擦パッド63はただタワー表面と対向する状態となる。
【0076】
続いて、上部ベース10と昇降ベース30との間の油圧シリンダ40のピストンが伸びる。昇降ベース30はタワーに固定支持されており、上下部ベース10、20は摩擦パッド63の摩擦力が消失した状態であるため、油圧シリンダ40の伸長により、昇降ベース30を除いて、上下部ベース10、20とクレーンユニット70とを含むクレーン装置がタワーに沿って上昇することになる。
【0077】
このとき、上下部ベース10、20の間を連結して結合するポスト50は、タワーに固定支持された昇降ベースのフレーム31に対して滑り運動することになる。
【0078】
タワー1は上部に向かって直径が減少するため、上下部ベース10、20のブレーキ機構の摩擦パッド63とタワー表面との間の距離が広がることがある。
【0079】
しかし、本実施形態のクレーン装置では、上部ベース10と昇降ベース30との間の油圧シリンダ40の伸長作動に同期化して、上下部ベース10、20のブレーキ機構の油圧シリンダ62が伸びて油圧/電動式ウインチがワイヤ65を引っ張る。
【0080】
これにより、上下部ベース10、20の上昇に伴って摩擦パッド63がタワーの表面と離隔することなく密接した状態を維持しながら上昇し、強風やその他の偶発的な要因によりクレーン装置に外力が加わる場合でも、タワーに固定支持されていない上下部ベース10、20が揺動することが防止される。
【0081】
油圧シリンダ40が設定された長さだけ伸びた後、伸張作動が停止する。
【0082】
このような作動により、昇降ベース30を除いたクレーン装置は、油圧シリンダ40が伸長作動した変位だけタワーに沿って上昇した位置に配置される。
【0083】
【0084】
続いて、上下部ベース10、20のブレーキ機構60が作動し、上下部ベース10、20が上昇した位置でタワーに固定支持される。
【0085】
続いて、昇降ベース30のブレーキ機構の油圧シリンダ62が収縮し、摩擦パッド63とタワー表面との間の摩擦力が消失する。
【0086】
続いて、油圧シリンダ40のピストンが収縮して昇降ベース30と上部ベース10との距離が小さくなり、タワー表面に固定支持されていない昇降ベース30が上昇し、上下部ベース10、20は所定の位置に固定支持されている。
【0087】
昇降ベース30を上昇させる油圧シリンダ40の収縮作動に同期化して昇降ベース30に設けられたブレーキ機構の油圧シリンダ62も伸びて摩擦パッド63を直径が小さくなるタワー表面に当接または隣接した状態を維持させ、ワイヤ65も引っ張られる。
【0088】
油圧シリンダ40が完全に収縮すると、昇降ベース30の上昇動作は中止され、昇降ベース30のブレーキ機構が作動し、昇降ベース30もタワー表面に摩擦力によって固定支持された状態となる。
【0089】
このような状態が
図6に示す状態であり、この状態は
図4に示した初期状態に比べてクレーン装置の高さが上昇し、クレーン装置を構成する要素は初期状態を維持している。
【0090】
この状態でクレーン装置が設定された作業高さに達するまで前述の作動が繰り返される。
【0091】
クレーン装置が作業位置まで上昇すると、上下部ベース10、20と昇降ベース30とがいずれもブレーキ機構によりタワーに固定支持された状態となる。したがって、クレーンユニット70やリフティングユニット80に吊り下げされる物品を引き揚げる作業において安定した支持状態を維持することができる。
【0092】
作業中に油圧系統の漏れや破裂などによってブレーキ機構の油圧シリンダ62が作動せず、摩擦パッド63に加圧力を印加することができない状態となることがあり得る。
【0093】
ブレーキ機構の油圧シリンダ62による加圧力が失われても、摩擦パッド63はこれらを囲むワイヤ65によってタワー表面に加圧された状態を維持するため、昇降ベース30と上下部ベース10、20の摩擦パッド63とタワー表面との間の摩擦力が消失されず、クレーン装置が重力によって地面に墜落することが発生しない。
【0094】
ブレーキ機構の油圧シリンダ62による加圧力が失われた状態で、ワイヤ65の弾性的な伸びや摩擦パッド63の変形によって摩擦パッド63とタワー表面との間の摩擦力がクレーン装置を所定の位置に保持するのに十分でない摩擦力のみ作用するのであれば、クレーン装置は重力によってタワーから下降する可能性がある。
【0095】
しかしながら、タワーの表面は傾斜しているため、クレーン装置がわずかに下降すると、摩擦パッド63はタワー表面の直径がより大きい部分に置かれるが、摩擦パッド63の外側面に置かれるワイヤ65によって直径方向に大きな加圧力が作用することになる。
【0096】
これによりクレーン装置は、さらに下降することなく、元の位置に保持されて落下事故が防止され、この状態で油圧系統や油圧シリンダの修理が可能となる。
【0097】
一方、クレーン装置による作業が完了したり、作業上の必要によりクレーン装置がタワーから下降したりする場合には、前述した作動が逆に行われる。
【0098】
図6に示した状態で、昇降ベース30と上部ベース10との間の油圧シリンダ40が伸びると、タワーに固定されていない昇降ベース30が下降してタワーに固定され、
図5に示した状態になる。
【0099】
続いて、昇降ベース30がタワーに固定され、上下部ベース10、20の固定状態が解除された状態で油圧シリンダ40が収縮する。これにより、上下部ベース10、20とこれに搭載されたクレーンユニット70が下降する。
【0100】
このような方式で、クレーン装置は地面に降下して順次分解され、別のクレーンによって輸送車両に載せられる。
【0101】
この実施形態では、油圧シリンダ40が上部ベース10と昇降ベース30との間に設けられるが、逆に下部ベース20と昇降ベース30との間に設けられてもよい。
【0102】
このように構成されるクレーン装置の上昇動作では、上下部ベースがタワーに固定された状態で油圧シリンダが伸びて昇降ベースが上昇し、昇降ベースがタワーに固定された状態で油圧シリンダが収縮して上下部ベースが上昇することになる。
【0103】
下降動作では、昇降ベースがタワーに固定された状態で油圧シリンダが伸びて上下部ベースが下降し、上下部ベースがタワーに固定された状態で油圧シリンダが伸縮して昇降ベースが下降する。
【0104】
また、本実施形態では、油圧シリンダのピストン先端が上部ベースに結合され、シリンダが昇降ベースに結合されるものと構成したが、逆にピストン先端が昇降ベースに結合され、シリンダが上部ベースまたは下部ベースに結合されるものと構成してもよい。このように構成する場合でも動作は同様の方式で行われる。
【0105】
次に、
図7を参考してクレーンユニット70の構成を説明する。
【0106】
ポスト50の上端は上部ベースのフレーム11を貫通して上部に延びており、2つのポスト50の上端の間には補強フレーム51が連結されている。
【0107】
補強フレーム41で互いに連結された2つのポスト50の上端に1つのクレーンユニット70が設けられており、クレーンユニット70はタワーを挟んで並んで配置されて設置されている。
【0108】
それぞれのクレーンユニット70は、一端が1つのポスト50の上端に設けられるヒンジ711に回転自在に結合された第1および第2可動ビーム71、72と、もう1つのポスト50の上端に設けられるヒンジ731に端部が回動自在に結合されている油圧シリンダ73、第2可動ビーム72の先端に設けられるローラ721に巻き取られ、 図示しない電動式ウインチによって巻き取り可動されるワイヤ75およびワイヤに吊り下げられる引き揚げフック76から構成されている。
【0109】
第1可動ビーム71は、ポスト50の上端に設けられたヒンジ711に回転自在に結合されており、第2可動ビーム72は、第1可動ビームと同軸に第1可動ビーム71に挿入されて配置され、油圧によって第1可動ビームから伸びて突出または収縮して第1可動ビーム71内に後退する。これにより、第1および第2可動ビーム71、72は、ヒンジ711を中心に回転しながらヒンジと先端との間の長さが伸縮する。
【0110】
油圧シリンダ73は、シリンダの端部がポスト50の上端に設けられたヒンジ731に結合され、ピストン731の先端が第1可動ビーム71の中間に設けられるヒンジ731に結合されており、油圧シリンダ73の伸縮作動により可動ビーム71、72がヒンジ711を中心に回転することになる。
【0111】
第2可動ビーム72の先端には2つのローラ721が巻き取られている。ローラ721は吊り下げ地点をなすものであり、ワイヤ75がローラ721に巻き取られて通過し、ワイヤの先端には引き揚げフック76が取り付けられている。ワイヤ75の残りの部分は、ローラ721を通過して油圧/電動式ウインチ(図示せず)に巻き取られて引っ張られるか解されることによって、ワイヤ先端に取り付けられた引き揚げフック76が昇降する。
【0112】
引き揚げフック76にはリフティングユニット80が吊り下げられる。
【0113】
リフティングユニット80は風力発電システムの要素を引き揚げるためのユニットであるが、必要に応じて利用することができ、リフティングユニットを用いずにクレーンユニット70の引き揚げフック76に物品を直接吊り下げて引き揚げることができる。
【0114】
クレーンユニット70は2つが並んで設けられているため、2つのクレーンユニットの引き揚げフック76に物品を吊り下げて引き揚げることができ、物品の設置位置や重量によっては1つのクレーンユニット70のみを利用して引き揚げることもできる。
【0115】
リフティングユニット80は、クレーン装置をタワーに設置する際に一緒に設置されず、リフティングユニットを除いた昇降ユニット10~50とクレーンユニット70をタワー1に設置した後、風力発電システムの要素を地上から風力発電システムの設置位置に引き揚げる際に、クレーンユニット70の引き揚げフック76を地面の近くまで下降させて引き揚げフックにリフティングユニット80を吊り下げて用いることができる。
【0116】
図8および
図9を用いてクレーンユニット70に吊り下げられた状態でリフティングユニット80の構成およびリフティングユニット80がクレーンユニット70に吊り下げられる構成を説明する。
【0117】
図8および
図9は、
図7においてリフティングユニット80がクレーンユニット70に吊り下げられた状態を拡大して示したものである。
【0118】
リフティングユニット80は、長く延びる第1ビーム81と、第1ビームの下側に配置され、大体第1ビームに平行に長く延びる第2ビーム82とを含んでいる。
【0119】
第1ビーム81の長手方向の中心から両側に離隔した両端部にはヒンジ811が設けられている。このヒンジ811には、各クレーンユニット70の引き揚げフック76がピン812によって結合されることにより、第1ビーム81が2つのクレーンユニット70によって吊り下げられる。
【0120】
第2ビーム82は断面四角形のチャネルで構成されており、第2ビーム82の長手方向の中心から両側に離隔した両端部にはチャネル内側に水平調整手段として油圧シリンダ83が配置されている。
【0121】
油圧シリンダ83は第2ビーム82に固定結合され、ピストン先端831にはヒンジ832が取り付けられており、ヒンジ832は第1ビーム81の中心から両側に離隔した両端部の位置を貫通するピン833に結合されている。
【0122】
このような構成により、油圧シリンダ83の伸縮作動により、第1ビーム81がピン833に結合された地点と第2ビーム82との間の距離が調整される。第1ビーム81と第2ビーム82は、長手方向の中心から両側に離隔した端部で油圧シリンダ83にて結合されているため、油圧シリンダ83の伸縮に伴う距離調整に応じて第1ビーム81に対する第2ビーム82の姿勢が調整される。
【0123】
各クレーンユニット70のワイヤ75を巻いたり戻したりする動作やクレーンユニット70の第1および第2可動ビーム71、72を回転させる動作により、リフティングユニット80の第1ビーム81が地面に対して水平になるように調整されることができる。
【0124】
クレーンユニット70は大きな荷重を支持した状態で作動するように構成されるものであり、第1可動ビーム71を回転させる油圧シリンダ73とワイヤ75を巻き取る油圧/電動式ウインチは大きな容量を有するものである。したがって、リフティングユニットの第1ビーム81の微細な水平調整のためにクレーンユニット70の油圧シリンダ73と油圧/電動式ウインチを作動させることは適切ではなく、特に微細な水平調整のための頻繁な作動はこれらの機構に損傷を与えることがあり得る。
【0125】
しかしながら、本実施形態では、第1ビーム81が水平に近い状態になるようにクレーンユニット70に吊り下げた後、リフティングユニットの油圧シリンダ83を用いて第1ビーム81に対する第2ビーム82の姿勢を調整して、第2ビーム82が地面に対して水平になったり、必要な姿勢を有するようにすることができる。
【0126】
第2ビーム82には、第2ビーム上に配置され、第2ビームの長手方向に沿って位置が可変する2つの引き揚げブロック84が設けられている。
【0127】
それぞれの引き揚げブロック84は、第2ビーム82を全体的に取り囲む長方形の断面を有する形態となり、第2ビーム82の長手方向に摺動して移動するように構成されており、側面には風力発電システムを構成する要素を吊り下げた引き揚げ治具(
図5の86)が吊り下げられるスリング85が巻き取られるピン841が突出している。
【0128】
引き揚げブロック84で第2ビーム82の上側に置かれる部分には、引き揚げブロックの長手方向の位置を調整する位置調整機構をなすリードスクリュー85が結合されている。
【0129】
リードスクリュー85は第2ビーム82の長手方向に延び、一端は減速機を備えた駆動モータ86によって回転力を受ける。引き揚げブロック84は、リードスクリュー85の回転によって第2ビーム82での長手方向の位置が調整される。
【0130】
これにより、引き揚げブロック84のピンに巻き取られたスリング85は、引き揚げようとする物品のスリングの巻き取り位置に置かれることができ、物品をスリング85に巻き取った後も引き揚げブロック84の位置を調整して、第2ビーム82の長手方向における物品の位置を調整することができる。
【0131】
以上のような構成を有するクレーン装置により物品を引き揚げる過程を説明する。
【0132】
図10~
図12は、風力発電システムを建設する過程中に、地面にタワーの下部を設置し、設置されたタワーの下部の上にタワーを構成するタワーユニット2を設置する過程を順次示している。
【0133】
タワーユニット2を積載したトレーラ(図示せず)が風力発電システムの建設現場に到着すると、別のクレーン装置(図示せず)がタワーユニット2をトレーラから持ち上げる。
【0134】
この実施形態のクレーン装置は、
図4~
図6を参考して説明した過程を介してタワー1の下部に設けられ、タワー下部の上側に昇降し、昇降ユニットの上部に設けられた2台のクレーンユニット70がタワー1の一側に地面に隣接するように引き揚げフックを下降させる。
【0135】
2つの引き揚げフックにリフティングユニット80を吊り下げ、リフティングユニット80の油圧シリンダ83でリフティングユニット80を水平姿勢に調整する。
【0136】
リフティングユニット80の引き揚げブロックに設けられたスリング85には、タワーユニット2を吊り下げるのに適した治具(
図8の86)が吊り下げられており、タワーユニット2は治具87に固定されてリフティングユニット80に吊り下げられる。
【0137】
【0138】
図11に示すように、本実施形態のクレーン装置において、2台のクレーンユニット70のワイヤ75が互いに同期して巻き取られ、リフティングユニット80とこれに吊り下げられたタワーユニット2とが大体タワー1と平行であり、タワーユニット2の中心線がタワー1の中心線に合わせられた状態で上側に引き揚げられる。
【0139】
2台のクレーンユニット70は、タワー1を囲むように設けられた上部ベース10の上側でタワー1を挟んで並んで配置され、リフティングユニット80は、両端部が2台のクレーンユニット70に吊り下げられるため、リフティングユニット80に吊り下げられるタワーユニット2はタワー1の中心線に合わせられた状態で引き揚げられることができる。
【0140】
タワーユニット2が設けられたタワー1の上側に位置すると、クレーンユニット70の油圧シリンダ73が伸びながら可動ビーム71、72が回動し、
図12に示すように、タワーユニット2は、先に設置されていたタワーと同心になる位置へ移動する。
【0141】
タワーユニット2は、クレーンユニット70の可動ビーム71の作動と、リフティングユニット80での引き揚げブロック84が第2ビーム82に対して移動する作動とによって、タワー1と位置合わせになり、組み立て作業を行うことができる。
【0142】
以上のような作業でタワーユニット2を引き揚げるクレーンユニット70は、タワー1の中心線から両側に互いに離隔して配置されているため、タワー1にかかる荷重の偏心が最小化され、特にタワーユニット2が大体タワー1の上部に位置した状態では、タワーユニット2とタワーに設けられている本実施形態のクレーン装置の重量はタワー1に偏心して作用しない。
【0143】
また、タワーユニット2をタワー1の上端に結合する作業では非常に微細な作動が必要であり、そのような作動は、クレーンユニット70は稼動を最小にし、リフティングユニット80での引き揚げブロック84の移動で行われることができる。
【0144】
次に、
図13を参考して、本実施形態のクレーン装置で風力発電システムにブレード8を結合または解体する作業について説明する。
【0145】
図13に示す作業では、リフティングユニット80を使用せずに2台のクレーンユニット70のみでブレード8をナセル7に設けられたハブ9に設置する。
【0146】
ブレード8は、タービン軸9に結合された端部が2台のクレーンユニット70に吊り下げられた状態で引き揚げられる。
【0147】
ブレード8は、2台のクレーンユニット70のワイヤ75の長さ調節により垂直状態を維持することができ、もちろん、2台のクレーンユニット70の可動ビーム71、72の回動角度と長さを調整して、ブレード8の端部がタービン軸9に組立可能な状態で角度と位置が調節されることができる。
【0148】
以上、本発明に係る自力昇降式クレーン装置の構成と作動について説明した。本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、請求範囲に記載した範囲で種々の修正と変形および構成要素の付加が可能であり、そのような多様な修正と変形がなされ、および構成要素が付加されたクレーン装置は本発明の範囲に属する。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タワーとタワー上端に設けられる風力発電システムの設置とメンテナンスのためのクレーン装置であって、
タワーに取り付けられてタワーに沿って上下を昇降するように設けられる昇降ユニット、および
風力発電システムを構成する要素を引き揚げるように構成され、昇降ユニットの上部に配置されるクレーンユニット
を含んで構成され、
昇降ユニットは、
タワーを囲むように構成され、タワーの任意の位置に固定支持される状態とタワーに対して昇降可能な状態で可変する上部ベースと下部ベース、
上下部ベースの間で延びて上下部ベースが互いに上下に離隔した位置で互いに固定されるようにする複数のポスト、
タワーを囲むように構成され、タワーの任意の位置に固定支持される状態とタワーに対して昇降可能な状態で可変され、上下部ベースの間でポストに沿って昇降自在に配置される昇降ベース、および
昇降ベースと上部ベースまたは下部ベースとの間に配置されて長さが可変することにより、昇降ベースと上下部ベースとの間の距離を可変させる駆動機構
を含んで構成され、
複数のポストは、タワーの円周方向に離隔して配置され、昇降ベースが摺動自在となるように昇降ベースを貫通し、
上部ベースと下部ベースがタワーの任意の位置に固定支持された状態で駆動機構の長さが可変することにより、昇降ベースがタワーに沿って昇降し、昇降ベースがタワーの任意の位置に固定支持された状態で駆動機構の長さが可変することにより、上部ベースと下部ベースとがタワーに沿って昇降し、クレーンユニットは上部ベースに配置されている、クレーン装置。
【請求項2】
上下部ベースおよび昇降ベースは、タワーの延長方向に垂直な平面に延びるフレームを含み、それぞれのフレームの内側にはタワーが貫通するホールが形成され、それぞれのフレームはタワーが貫通するホールが開放されるように分割および結合可能に構成され、
駆動機構として、昇降ベースのフレームと上部ベースまたは下部ベースのフレームとの間で伸びて伸縮作動する複数の油圧シリンダがタワーの円周方向に沿って離隔して配置されている、請求項1に記載のクレーン装置。
【請求項3】
タワーの表面との間にタワーの直径方向に摩擦力を選択的に印加できるように構成され、摩擦力の印加により上下部ベースおよび昇降ベースがタワーの任意の位置に固定支持されるようにするブレーキ機構が設けられ、
上下部ベースおよび昇降ベースのそれぞれには、複数のブレーキ機構がタワーの円周方向に互いに離隔して配置されている、請求項1に記載のクレーン装置。
【請求項4】
上下部ベースおよび昇降ベースは、タワーの延長方向に垂直な平面に延びるフレームを含み、
ブレーキ機構は、フレームに配置され、油圧シリンダによってタワーの直径方向に摺動するブロック、およびブロックの先端に配置され、タワーの表面と接触して摩擦力を印加する摩擦パッドとを含んで構成される、請求項3に記載のクレーン装置。
【請求項5】
ブレーキ機構の摩擦パッドの直径方向の外側面に沿って延びて配置されることで、摩擦パッドがタワーの直径方向の外側に移動することを防止するワイヤ機構をさらに含む、請求項4に記載のクレーン装置。
【請求項6】
ワイヤ機構は、上下部ベースおよび昇降ベースのフレームにそれぞれ配置され
る電動式ウインチ、および一端が摩擦パッドのいずれかに固定され、他端
は電動式ウインチに結合されるワイヤを含む、請求項5に記載のクレーン装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0061
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0061】
このような構成により電動式ウインチ66を可動してワイヤ65を引っ張ると、円周方向に沿って配置されたワイヤ65が直径方向の内側に収縮して摩擦パッド63を直径方向の内側に加圧する状態となる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0062
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0062】
電動式ウインチ66の作動を停止すると、ワイヤ65は6つの摩擦パッド63を全て包んだ状態となり、電動式ウインチ66を逆方向に作動させない限り、この状態を保つことになる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0079
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0079】
しかし、本実施形態のクレーン装置では、上部ベース10と昇降ベース30との間の油圧シリンダ40の伸長作動に同期化して、上下部ベース10、20のブレーキ機構の油圧シリンダ62が伸びて電動式ウインチがワイヤ65を引っ張る。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0111
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0111】
第2可動ビーム72の先端には2つのローラ721が巻き取られている。ローラ721は吊り下げ地点をなすものであり、ワイヤ75がローラ721に巻き取られて通過し、ワイヤの先端には引き揚げフック76が取り付けられている。ワイヤ75の残りの部分は、ローラ721を通過して電動式ウインチ(図示せず)に巻き取られて引っ張られるか解されることによって、ワイヤ先端に取り付けられた引き揚げフック76が昇降する。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0124
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0124】
クレーンユニット70は大きな荷重を支持した状態で作動するように構成されるものであり、第1可動ビーム71を回転させる油圧シリンダ73とワイヤ75を巻き取る電動式ウインチは大きな容量を有するものである。したがって、リフティングユニットの第1ビーム81の微細な水平調整のためにクレーンユニット70の油圧シリンダ73と電動式ウインチを作動させることは適切ではなく、特に微細な水平調整のための頻繁な作動はこれらの機構に損傷を与えることがあり得る。
【国際調査報告】