(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】離型特性を有するポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20240403BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20240403BHJP
C08L 91/06 20060101ALI20240403BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20240403BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20240403BHJP
C08L 59/04 20060101ALI20240403BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20240403BHJP
C08L 23/06 20060101ALI20240403BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20240403BHJP
C08L 69/00 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K7/14
C08L91/06
C08L67/00
C08L67/02
C08L59/04
C08L23/26
C08L23/06
C08L83/04
C08L69/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564560
(86)(22)【出願日】2022-04-20
(85)【翻訳文提出日】2023-12-19
(86)【国際出願番号】 US2022025509
(87)【国際公開番号】W WO2022226044
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512225379
【氏名又は名称】セラニーズ・インターナショナル・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(72)【発明者】
【氏名】ジア,カマー
(72)【発明者】
【氏名】マルクグラフ,キルステン
(72)【発明者】
【氏名】ツィーラー,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ニコライ,パトリック
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AE03X
4J002BB00Y
4J002BB02Y
4J002BB21Y
4J002CB00W
4J002CF00W
4J002CF00Z
4J002CF06Z
4J002CF07W
4J002CG01Z
4J002CP03Z
4J002DJ047
4J002DL006
4J002FA046
4J002FD016
4J002GB00
(57)【要約】
少なくとも1種の離型剤を含有する、繊維で強化された熱可塑性ポリマー組成物が開示される。離型剤は、極性材料および/または非極性材料を含み得る。一態様において、極性ワックスおよび非極性ワックスの両方が使用される。ポリマー組成物はまた、1種またはそれより多くの摩擦調整剤を含有してもよい。摩擦調整剤は、超高分子量シリコーンを含んでもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリマー;
摩擦調整剤または核剤の少なくとも一方;
任意に、約5重量%~約55重量%の量でポリマー組成物中に存在する強化用繊維;および
少なくとも1種の離型剤
を含むポリマー組成物であって、
該少なくとも1種の離型剤は、酸化ワックスを含む極性離型剤を含む、上記ポリマー組成物。
【請求項2】
前記ポリマー組成物が、第2の離型剤を含む複数の離型剤を含有し、該第2の離型剤は、非極性ポリマーを含み、各離型剤は、約4重量%未満の量でポリマー組成物中に存在し、前記極性離型剤と該第2の離型剤との重量比は、約10:1~約1:10である、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記熱可塑性ポリマーが、ポリエステルポリマーを含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記熱可塑性ポリマーが、ポリブチレンテレフタレートポリマーを含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記熱可塑性ポリマーが、ポリオキシメチレンポリマーを含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記極性離型剤が、変性ポリオレフィンを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記ポリオレフィンが、ポリエチレンを含む、請求項6に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記極性離型剤が、酸化ポリエチレンワックスまたは無水マレイン酸基によって変性させたポリオレフィンポリマーを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
前記非極性ポリマーが、ポリオレフィンポリマーを含む、請求項2に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
前記非極性ポリマーが、ポリエチレンワックスを含む、請求項9に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
前記極性離型剤が、約10KOH/g~約25KOH/gの酸価を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
前記極性離型剤が、約30KOH/g~約75KOH/gの酸価、例えば約40KOH/g~約60KOH/gの酸価を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
前記極性離型剤が、脂肪酸の酸化エステルを含む、請求項1~6、11、または12のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
前記脂肪酸の酸化エステルが、約20個の炭素原子~約40個の炭素原子の炭素鎖の長さを有する少なくとも50重量%の脂肪酸から形成される、請求項13に記載のポリマー組成物。
【請求項15】
前記脂肪酸の酸化エステルが、約40個の炭素原子~約64個の炭素原子の炭素鎖の長さを有する少なくとも25重量%の脂肪酸から形成される、請求項13に記載のポリマー組成物。
【請求項16】
前記極性ポリマーおよび前記非極性ポリマーがそれぞれ、約2重量%未満の量で、例えば約1重量%未満の量で、例えば約0.8重量%未満の量で、例えば約0.5重量%未満の量で、例えば約0.4重量%未満の量でポリマー組成物中に存在し、一般的に、0.01重量%より多くの量でポリマー組成物中に存在する、請求項2に記載のポリマー組成物。
【請求項17】
前記ポリマー組成物が、前記摩擦調整剤を含有し、前記摩擦調整剤が、超高分子量シリコーンを含み、約0.1重量%~約10重量%、例えば約0.5重量%~約3重量%の量で前記ポリマー組成物中に存在する、請求項3に記載のポリマー組成物。
【請求項18】
前記超高分子量シリコーンが、ポリジメチルシロキサンである、請求項17に記載のポリマー組成物。
【請求項19】
前記ポリエステルポリマーが、約50重量%~約90重量%の量で組成物中に存在し、前記ポリマー組成物が、強化用繊維を含有し、前記強化用繊維が、ガラス繊維を含み、約5重量%~約30重量%の量で前記ポリマー組成物中に存在し、前記超高分子量シリコーンが、約0.5重量%~約5重量%の量で前記組成物中に存在する、請求項17に記載のポリマー組成物。
【請求項20】
前記ポリマー組成物に含有される全てのポリマー成分が、21CFR177に列挙される米国食品医薬品局の基準に準拠する、請求項1~19のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項21】
前記ポリマー組成物が、無機核剤をさらに含有する、請求項1~20のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項22】
前記無機核剤が、タルクを含み、該タルクは、約0.01重量%~約1重量%の量で前記ポリマー組成物中に存在する、請求項21に記載のポリマー組成物。
【請求項23】
パーツ放出試験に従って試験した場合、約700N未満の接着力を示す、請求項1~22のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項24】
VDA230-206に従って、ポリカーボネートおよびアクリロニトリルブタジエンスチレンブレンドに対して、8mm/秒の速度で、30Nの負荷で、1,000サイクル後に試験した場合、約0.08未満の動的摩擦係数を示す、請求項1または2に記載のポリマー組成物。
【請求項25】
前記組成物が、前記超高分子量シリコーンのための担体ポリマーをさらに含有し、該担体ポリマーは、ポリカーボネートポリマー、ポリエステルエラストマー、ポリエチレンテレフタレートポリマー、および/またはコポリエステルを含む、請求項17または19に記載のポリマー組成物。
【請求項26】
前記ポリマー組成物が、強化用繊維を含有し、前記強化用繊維が、ガラス繊維を含み、該ガラス繊維は、約5重量%~約50重量%の量で前記ポリマー組成物中に存在する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項27】
請求項1に記載のポリマー組成物から作製された成形物品。
【請求項28】
前記成形物品が、注入器を含み、該注入器は、液体医薬を分配するためのものであり、該注入器は、約0.08mm~約0.25mmの孔サイズを有する針を含み、該注入器は、約3Nより大きい最大の力で医薬の所定用量を分配するばね部材を含む、請求項27に記載の成形物品。
【請求項29】
第2のスライド部材と機能的に関連する第1のスライド部材を含む装置であって、該第1のスライド部材および該第2のスライド部材は、接触した状態を保ち、互いに運動するように構成され、該スライド部材の少なくとも一方は、請求項1~28のいずれか一項に記載のポリマー組成物から作製される成形ポリマー物品を含む、上記装置。
【請求項30】
前記第1のスライド部材および前記第2のスライド部材が両方とも、請求項1~28のいずれか一項に記載のポリマー組成物から作製されている、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
医療用デバイスを含む、請求項29または30に記載の装置。
【請求項32】
前記医療用デバイスが、吸入器、注入デバイス、外科用機器、またはウェアラブルデバイスを含む、請求項31に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[0001]本出願は、2021年4月20日の出願日を有する米国仮特許出願第63/177,210号;2021年6月8日の出願日を有する米国仮特許出願第63/208,250号;および2022年3月14日の出願日を有する米国仮特許出願第63/319,531号に基づき、それらの優先権を主張し、それらは全て参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
[0002]エンジニアリング熱可塑性プラスチックおよびエラストマー材料は、成形されたパーツおよび製品を生産するために、非常に多くの多様な用途でしばしば用いられる。例えば、熱可塑性ポリマーは、あらゆる異なるタイプの成形された製品、例えば射出成形製品、吹込成形製品などを生産するのに使用される。熱可塑性ポリマーは、例えば、化学耐性にして優れた強度特性を付与するために配合することができ、エラストマーを含有する組成物を配合すると、フレキシブルになる。特定の利点のなかでも、多くのポリマーは、それらの熱可塑性の性質のために、溶融加工することができる。加えて、多くのポリマーは、再利用や再加工が可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
[0003]熱可塑性ポリマーから成形されたパーツを生産することにおける1つの目的は、迅速にパーツを成形し、生産性を高めることができる点である。各ポリマー配合物は、例えば、より長いサイクル時間を生じ得る組成物の溶融加工特性に関する固有な一連の問題を呈したり、モールドデポジットの形成を引き起こしたり、および/またはモールドからパーツを取り外す性能に負の影響を与えたりする可能性がある。結果として、理想的には、熱可塑性組成物は、溶融加工条件で安定な溶融物を形成するように配合される。多くの用途において、サイクル時間を短くするために、より速い結晶化速度および/またはより速い溶融-固化速度が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
[0004]上記のことを考慮して、本発明の開示は、特定には、改善された溶融加工特性を有するポリマー組成物を対象とする。代替として、本発明の開示はまた、モールドデポジットを低減するように、および/またはモールドからパーツや物品をはずすのに必要な力を低減するように、ポリマー組成物を配合することも対象とする。一実施態様において、本発明の開示は、上記の特徴の少なくとも1つが改善されており、食品と接触する用途に関して十分安全になるように配合することができる、配合されたポリマー組成物に向けられる。
【0005】
[0005]本発明の開示は、一般的に、離型パッケージ(mold release package)を含有する熱可塑性ポリマー組成物を対象とする。離型パッケージは、モールドデポジットを低減したり、および/または成形プロセス、例えば射出成形プロセスの後にモールドからパーツまたは物品を取り出すために必要な力の量を低減したりすることができる。また意外なことに、本発明の開示の離型パッケージは、様々な異なるポリマー組成物の溶融加工特性および挙動にプラスの影響を与えることができることも発見された。結果として、一形態において、本発明の開示の離型パッケージは、様々なポリマーと配合される場合、成形サイクル時間を低減するのに使用することができる。
【0006】
[0006]一形態において、ポリマー組成物に含有される成分の全ては、医療用途および/または食品と接触する用途への使用に関して承認されている。例えば、ポリマー組成物に含有される各ポリマー成分は、21CFR177で成文化された米国食品医薬品局(United States Food and Drug Administration)の基準に従って使用に関して承認され得る。例えば、離型パッケージの成分は、成分が食品を取り扱う用途および/または医療用途における使用に関する全ての政府規制を満たすように選択することができる。
【0007】
[0007]ポリマー組成物は、熱可塑性マトリックスポリマーを含有する。熱可塑性ポリマーは、例えば、ポリアミドポリマー、ポリエステルポリマー、ポリエーテルエーテルケトンポリマー、ポリフェニレンスルフィドポリマー、またはポリアセタールポリマーを含んでいてもよい。例えば、熱可塑性ポリマーは、ポリブチレンテレフタレートポリマーまたはポリオキシメチレンポリマーであってもよい。熱可塑性マトリックスポリマーは、一般的に約40重量%より多くの量で、例えば約50重量%より多くの量で、例えば約60重量%より多くの量で、例えば約65重量%より多くの量でポリマー組成物中に存在していてもよい。熱可塑性マトリックスポリマーは、一般的に約99重量%未満の量で、例えば約90重量%未満の量で、例えば約80重量%未満の量でポリマー組成物中に存在する。
【0008】
[0008]ポリマー組成物は、一般的に、核剤(nucleant)、摩擦調整剤、または強化用繊維の少なくとも1つを含有する。強化用繊維を含有する場合、強化用繊維は、例えば、ガラス繊維であってもよい。ポリマー組成物に強化用繊維を取り込むことは、成形プロセス中に問題が生じる可能性がある。繊維で強化された組成物は、例えば、モールドデポジットを生じる傾向を有し、さらにモールドからパーツを取り出すために必要な放出力を増加させる可能性もある。しかしながら、組成物が強化用繊維を含有する場合、上記の負の作用を打ち消す1種またはそれより多くの離型剤が組成物中に存在していてもよい。強化用繊維は、組成物中に含有される場合、一般的に約5重量%より多くの量で、例えば約10重量%より多くの量で、例えば約15重量%より多くの量で組成物中に存在していてもよい。強化用繊維は、一般的に約50重量%未満の量で、例えば約45重量%未満の量で、例えば約35重量%未満の量で存在する。
【0009】
[0009]上述したように、ポリマー組成物は、少なくとも1種の離型剤をさらに含有する。一形態において、例えば、ポリマー組成物は、極性ポリマーを含む単一の離型剤を含有していてもよい。代替として、ポリマー組成物は、第1の離型剤および第2の離型剤を含有していてもよい。第1の離型剤は、極性ポリマーであってもよく、一方で第2の離型剤は、非極性ポリマーであってもよい。第1の離型剤および第2の離型剤は、約10:1~約1:10、例えば約5:1~約1:5、例えば約2:1~約1:2、例えば約1.8:1~約1:1.8の重量比でポリマー組成物中に存在していてもよい。
【0010】
[0010]一実施態様において、ポリマー組成物中に存在する離型剤の全てが、食品を取り扱う用途および/または医療用途に関して承認され得る。第1の離型剤を構成する極性ポリマーは、例えば、ポリオレフィンポリマーであってもよく、例えばポリエチレンポリマーであってもよい。一実施態様において、例えば、極性ポリマーは、酸化ポリエチレンワックスであってもよい。
【0011】
[0011]一方で、第2の離型剤を構成する非極性ポリマーも、ポリオレフィンポリマーであってもよい。例えば、非極性ポリマーは、ポリエチレンワックスであってもよい。
[0012]一形態において、ポリマー組成物は、単一の離型剤だけ、例えば極性離型剤だけを含有するように配合することができる。極性離型剤は、例えば、一般的に約5KOH/gより大きく、例えば約10KOH/gより大きく、例えば約15KOH/gより大きく、一般的に約90KOH/g未満、例えば約70KOH/g未満、例えば約60KOH/g未満の酸価を有していてもよい。極性離型剤の酸価は、例えば、具体的な用途やポリマー組成物に含有される成分に基づいて選択することができる。一実施態様において、例えば、極性離型剤の酸価は、約13KOH/g~約23KOH/gであってもよく、例えば約15KOH/g~約19KOH/gであってもよい。代替として、極性離型剤は、より高い酸価を有していてもよい。例えば、代替の実施態様において、極性離型剤は、約40KOH/g~約60KOH/g、例えば約45KOH/g~約55KOH/gの酸価を有していてもよい。
【0012】
[0013]極性離型剤は、酸化ワックスを含んでいてもよい。例えば、極性離型剤は、酸化ポリエチレンワックスであってもよい。代替として、極性離型剤は、脂肪酸の酸化エステルであってもよい。脂肪酸の酸化エステルは、例えば、米糠などのバイオマスから得てもよい。一形態において、脂肪酸の酸化エステルは、異なる炭素鎖長さを有する異なる脂肪酸のブレンドから得てもよい。一形態において、例えば、脂肪酸の酸化エステルは、約20個の炭素原子~約40個の炭素原子の炭素鎖の長さを有する50重量%より多くの脂肪酸から得てもよい。脂肪酸の酸化エステルはまた、脂肪酸のブレンドから得てもよく、このようなブレンドにおいて、25重量%またはそれより多くの脂肪酸が、約40個の炭素原子~約64個の炭素原子の炭素鎖の長さを有する脂肪酸から誘導される。
【0013】
[0014]ポリマー組成物に含有される各離型剤は、一般的に、約2重量%未満の量で、例えば約1重量%未満の量で、例えば約0.8重量%未満の量で、例えば約0.5重量%未満の量で、例えば約0.4重量%未満の量で組成物中に存在していてもよい。各離型剤は、一般的に、約0.01重量%より多くの量で、例えば約0.08重量%より多くの量でポリマー組成物中に存在する。
【0014】
[0015]1種またはそれより多くの離型剤は、モールドデポジットを最小化するのに役立ち、モールドから成形されたパーツを取り出すのに必要な力も低減することができる。例えば、パーツ放出試験に従って試験した場合、本発明の開示のポリマー組成物は、約700N未満の放出力(ejection force)を示すことができる。
【0015】
[0016]一実施態様において、ポリマー組成物は、任意に、1種またはそれより多くの摩擦調整剤を含有していてもよい。一実施態様において、摩擦調整剤は、超高分子量シリコーンを含んでいてもよい。超高分子量シリコーンは、約100,000mm2/秒より大きい動粘性率を有していてもよい。例えば、超高分子量シリコーンは、約0.1%~約10重量%の量で、例えば約0.5%~約3重量%でポリマー組成物中に存在していてもよい。一実施態様において、超高分子量シリコーンは、ポリジメチルシロキサンを含む。
【0016】
[0017]代替の実施態様において、ポリマー組成物中に含有される摩擦調整剤は、ポリテトラフルオロエチレンポリマーを含んでいてもよい。ポリテトラフルオロエチレンポリマーは、単独で存在していてもよいし、または超高分子量シリコーンと組み合わせて存在していてもよい。
【0017】
[0018]ポリマー組成物は、低い摩擦特性を有するように配合することができる。例えば、ポリマー組成物は、VDA230-206に従って、ポリカーボネート/ABSブレンド(サビック(Sabic)のCYCOLOY C1204H)に対して、8mm/秒の速度で、30Nの負荷で、1,000サイクル後に試験した場合、約0.08未満の動的摩擦係数を呈示することができる。一実施態様において、ポリマー組成物は、上記の材料に対して試験した場合、約0.07未満、例えば約0.05未満の動的摩擦係数を呈示することができる。
【0018】
[0019]超高分子量シリコーンが組成物中に存在する場合、シリコーンは、担体と共に添加されていてもよい。一実施態様において、例えば、超高分子量シリコーンは、シリカにグラフト化されて、組成物に添加されてもよい。代替として、超高分子量シリコーンは、他の成分とブレンドする前に、担体ポリマーと組み合わせてもよい。担体ポリマーは、例えば、ポリカーボネートポリマーまたはポリエステルポリマーを含んでいてもよい。ポリエステルポリマーは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、コポリエステル、および/またはポリエステルエラストマーを含んでいてもよい。
【0019】
[0020]本発明の開示のポリマー組成物はまた、核剤を含有していてもよい。一形態において、核剤は、無機核剤であってもよい。無機核剤は、タルクを含んでいてもよく、約0.01重量%~約1重量%の量でポリマー組成物中に存在していてもよい。
【0020】
[0021]一実施態様において、本発明の開示のポリマー組成物は、医療製品を生産するために配合される。医療製品を生産する場合、ポリマー組成物は、例えば、イソシアナト非含有になるように配合することができる。
【0021】
[0022]一実施態様において、ポリマー組成物は、医療用吸入器、注射デバイス、外科用機器、ウェアラブルなデバイスなどを生産するのに使用することができる。医療製品は、例えば、第2のスライド部材と機能的に関連する第1のスライド部材を含んでいてもよい。第1のスライド部材および第2のスライド部材は、互いに接触した状態を保って動くように配置されていてもよい。スライド部材の少なくとも1つが、本発明の開示のポリマー組成物から作製されてもよい。一実施態様において、例えば、両方のスライド部材が、本発明の開示のポリマー組成物から作製されている。
【0022】
[0023]本発明の開示の他の特徴および形態を以下でより詳細に論じる。
[0024]本発明の開示の詳細で実現可能な開示を、添付の図面への参照を含め明細書の以下の部分でより詳細に明示する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の開示に従って作製された医療用吸入器の斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の開示に従って作製することができる医療用注入器の側面図である。
【
図3】
図3は、パーツ放出試験の実行における使用のための成形された物品の寸法の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[0025]本明細書および図面における参照記号の反復使用は、本発明の同じまたは類似の構造または要素を表すことが意図される。
[0026]本発明の議論は、例示的な実施態様の説明にすぎず、本発明の開示のより広い形態を限定することは意図されないことが当業者によって理解されるものとする。
【0025】
[0027]一般的に、本発明の開示は、優れた強度特性を有するだけでなく改善された離型特性も有する、熱可塑性ポリマー組成物、およびそのような組成物から作製されるポリマー物品を対象とする。本発明の開示に従って配合されるポリマー組成物は、例えば、低減されたモールドデポジットを呈示することができ、および/またはモールドからのパーツの取り出しに必要な放出力を低くすることができる。一実施態様において、本発明の開示の離型パッケージはまた、ポリマー組成物の溶融加工の挙動を劇的に改善することにも使用することができる。例えば、離型パッケージは、溶融加工条件での安定な溶融物の形成を容易にすることができ、結晶化速度および/または溶融-固化速度を増加させることができると考えられる。この方式で、より短いサイクル時間を観察することができ、生産性の増加をもたらす。
【0026】
[0028]本発明の開示の離型パッケージは、少なくとも1種の離型剤を含有し、任意に核剤、例えば無機核剤と組み合わされる。少なくとも1種の離型剤は、極性離型剤であってもよく、例えば酸化ワックスであってもよい。
【0027】
[0029]一実施態様において、ポリマー組成物は、第1の離型剤および第2の離型剤を含む離型パッケージを含有する。一実施態様において、第1の離型剤は、極性ポリマーであり、一方で第2の離型剤は、非極性ポリマーである。第1の離型剤および第2の離型剤の組合せは、射出成形プロセスにおいてモールドデポジットを低減すること、および/または放出力を低くできることという相乗作用を呈示することができる。モールドデポジットを少なくすることは、ツールのクリーニングの必要性を最小化し、低い放出力は、簡単なパーツの取り出しを可能にする。
【0028】
[0030]過去には、モールドデポジットを低減するために、ポリマー組成物に潤滑剤が添加された。例えば、過去に使用されていた1つの特定のタイプの潤滑剤は、モンタン酸のエステルであった。しかしながら、モンタン酸のエステルは、多くの政府機関によれば、食品を取り扱う用途および/または医療用途における使用に関して承認されない。結果として、本発明の開示の一形態は、ポリマー組成物に、食品を取り扱う用途または医療用途に関して承認されるだけでなく、過去に使用されていた潤滑剤と同様の機能も発揮する1種またはそれより多くの離型剤を取り込むことを対象とする。
【0029】
[0031]これに関して、本発明の開示のポリマー組成物は、組成物中に含有されるあらゆる成分が食品を取り扱う用途または医療用途に関する政府規制を満たすように配合することができる。例えば、ポリマー組成物に含有されるあらゆる成分は、米国食品医薬品局の食品接触基準および連邦行政規則集のタイトル21に見出される承認されたものの一覧(2021年3月に存在するものと同等)に従って使用に関して承認され得る。例えば、ポリマー組成物中に含有される各ポリマーは、21CFR177に示される通り、食品を取り扱う用途に関して承認され得る。ポリマー組成物に含有される各成分はまた、21CFR174によって食品を取り扱う用途に関して承認されてもよい。
【0030】
[0032]ポリマー組成物中に含有される各成分はまた、全ての食品接触基準、例えば規制(EC)番号1935/2004、2023/2006、10/2011、推奨基準(Resolution AP)(89)1、ドイツのBfR IX、スペインのReal Decreto 847/2011、およびイタリアのDecreto 21/3/73;および中国の食品接触基準、例えばGB9685-2016を満たしているかまたはそれを超えていてもよい。
【0031】
[0033]熱可塑性ポリマーおよび1種またはそれより多くの離型剤に加えて、本発明の開示のポリマー組成物はまた、任意に、1種またはそれより多くの摩擦調整剤、強化用繊維および/または核剤を含有していてもよい。
【0032】
[0034]本発明の開示の組成物は、低い摩擦特性を必要とする医療用途のために配合することができる。例えば、医療用途で使用される場合、ポリマー組成物は、イソシアネート、エポキシ樹脂、カルボジイミドまたは他の類似の化合物を含有していなくてもよい。特定の用途において、医療用デバイスは、パーツが高い強度の材料から作製されるだけでなく、隣接する表面に対してスライドさせることが意図されているパーツに対して極めて低い摩擦と摩耗の低減も提供できることが求められる。以下でより詳細に説明されるように、本発明の開示に従って作製されたポリマー組成物は、優れた強度特性を有するだけでなく、極めて低い摩擦特性も示す。
【0033】
[0035]2つの対向する表面が互いにスライドする場合、表面は、スティックスリップ現象と称される方式で反応する。スティックスリップ現象は、2つの対向する表面または物品が摩擦力を受けて互いにスライドする方式を指す。静止摩擦は、互いに相対的に動かない2つまたはそれより多くの物体間の摩擦。一方で、運動摩擦は、2つの物体が接触した状態を保ちながら互いに相対的に運動するときに起こる。一つの物体が別の物体に対してスライドするためには、静止摩擦の力に打ち勝つほどの十分な力が一つの物体に作用しなければならない。2つの物体間の運動が起こると、2つの表面間の摩擦が低減されて、運動の速度の突然の増加が起こる可能性がある。言い換えれば、いくつかの用途において、一つの物体が別の物体と相対的に運動すると、運動を継続するのに必要な力はより少なくなる。2つの表面間の摩擦は、運動の継続速度などの多数の要因に応じて、運動中に増加または減少する可能性がある。スティックスリップは、2つの表面間で運動が起こったり、運動条件が変化したりするときに、どのように表面の相互のスティッキングと相互のスライドが交互に生じるかを説明するものである。
【0034】
[0036]相対的に高い摩擦係数を有するポリマー物品は、一方の材料を他方の材料の上でスライドさせるためにより多くの量の力を必要とするだけでなく、摩耗しやすい可能性がある。長期にわたると、材料は、例えば、摩擦の力によって劣化し始める可能性がある。
【0035】
[0037]一形態において、本発明の開示のポリマー組成物は、任意に、低い摩擦特徴を有する成形品を生産するための1種またはそれより多くの摩擦調整剤を含有していてもよい。成形品は、医療用途および/または食品を取り扱う用途における使用に特によく適している。例えば、一実施態様において、本発明の開示は、第2のスライド部材と機能的に関連する第1のスライド部材を含む低い摩擦の組立て品を対象とする。第1のスライド部材および第2のスライド部材はどちらも、本発明の開示に従って配合されるポリマー組成物から作製されていてもよい。互いにに対して、またはポリカーボネート/ABSブレンド(サビックからのCYCOLOY C1204H)に対して試験した場合、組成物は、約0.08未満、例えば約0.07未満、例えば約0.06未満、例えば約0.05未満の動的摩擦係数を示すように配合することができる。組成物または成形されたパーツは、試験番号VDA230-206を有するスティックスリップ試験に従って、互いに対して試験することができる。
【0036】
[0038]上記の方法を使用して試験された試料はまた、すり減った幅である摩耗痕跡の幅を測定するために分析することもできる。本発明の開示に従って、組成物および成形品は、30Nの力および8mm/秒の速度で1,000サイクル後に試験した場合、0.3mm未満、例えば約0.25未満mm、例えばさらには約0.2mm未満の摩耗痕跡の幅を示し得る。
【0037】
[0039]本発明の開示に従って成形品を形成するためのマトリックスポリマーとして使用される熱可塑性ポリマーは、特定の用途および望ましい結果に応じて様々であり得る。本発明の開示に従って使用することができる熱可塑性ポリマーとしては、例えば、ポリアミドポリマー、ポリエステルポリマー、ポリエーテルエーテルケトンポリマー、ポリフェニレンスルフィドポリマー、またはポリアセタールポリマー、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0038】
[0040]特定の実施態様において、熱可塑性ポリマーは、ポリブチレンテレフタレートポリマー単独であってもよいし、またはポリエチレンテレフタレートポリマーと組み合わされていてもよい。代替として、熱可塑性ポリマーは、ポリオキシメチレンコポリマーであってもよい。
【0039】
ポリエステルポリマー
[0041]一実施態様において、ポリマー組成物に含有される熱可塑性マトリックスポリマーは、1種またはそれより多くのポリエステルポリマーを含む。ポリエステルポリマーは、一般的にポリアルキレンテレフタレートポリマーを含む。
【0040】
[0042]本明細書に記載の使用に好適なポリアルキレンテレフタレートポリマーは、2個~約10個の炭素原子を含有する脂肪族もしくは脂環式ジオールまたはそれらの混合物、および芳香族ジカルボン酸から誘導される。
【0041】
[0043]脂環式ジオールおよび芳香族ジカルボン酸から誘導されるポリエステルは、例えば、1,4-シクロヘキサンジメタノールのシスまたはトランス異性体のいずれか(またはそれらの混合物)を芳香族ジカルボン酸と共に縮合することによって調製される。
【0042】
[0044]芳香族ジカルボン酸の例としては、イソフタル酸またはテレフタル酸、1,2-ジ(p-カルボキシフェニル)エタン、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテルなど、およびこれらの混合物が挙げられる。これらの酸は全て、少なくとも1つの芳香族核を含有する。また縮合環も存在していてもよく、例えば、1,4-または1,5-または2,6-ナフタレン-ジカルボン酸に存在していてもよい。一実施態様において、ジカルボン酸は、テレフタル酸、またはテレフタル酸とイソフタル酸との混合物である。
【0043】
[0045]一実施態様において、ポリマー組成物中に存在するポリアルキレンテレフタレートポリマーは、ポリブチレンテレフタレートポリマーを含む。例えば、ポリマー組成物は、ポリブチレンテレフタレートポリマーを、約30重量%より多くの量で、例えば約40重量%より多くの量で、例えば約50重量%より多くの量で、例えば約60重量%より多くの量で、例えば約70重量%より多くの量で含有していてもよい。ポリブチレンテレフタレートポリマーは、一般的に、約90重量%未満の量で、例えば約80重量%未満の量で存在する。
【0044】
[0046]ポリマー組成物は、ポリブチレンテレフタレートポリマーを単独で含有していてもよいし、または他の熱可塑性ポリマーと組み合わされていてもよい。例えば、ポリブチレンテレフタレートポリマーは、他のポリエステルポリマーおよび/またはポリカーボネートポリマーと組み合わされていてもよい。組成物中に存在していてもよい他のポリエステルポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレートポリマーまたはポリエチレンテレフタレートコポリマーが挙げられる。例えば、ポリエチレンテレフタレートコポリマーまたは変性ポリエチレンテレフタレートポリマーは、変性作用を有する酸または変性作用を有するジオールを用いて生産することができる。
【0045】
[0047]用語「変性作用を有する酸」および「変性作用を有するジオール」は、本明細書で使用される場合、それぞれポリエステルの酸およびジオール反復単位の一部を形成することができ、その結晶性が低減するように、またはポリエステルが非晶性になるように、ポリエステルを変性させることができる化合物を定義することを意味する。一実施態様においては、しかしながら、本発明の開示のポリマー組成物中に存在するポリエステルは非変性であり、変性作用を有する酸または変性作用を有するジオールを含有しない。
【0046】
[0048]変性作用を有する酸成分の例としては、これらに限定されないが、イソフタル酸、フタル酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2,6-ナフタリンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、スベリン酸、1,12-ドデカン二酸などが挙げられる。実際には、それらの官能性酸誘導体、例えばジカルボン酸の、ジメチル、ジエチル、またはジプロピルエステルを使用することがしばしば好ましい。また、これらの酸の無水物または酸ハロゲン化物も、実用的であれば、採用することができる。好ましくは、イソフタル酸である。
【0047】
[0049]変性作用を有するジオール成分の例としては、これらに限定されないが、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4-テトラメチル1,3-シクロブタンジオール、Z,8-ビス(ヒドロキシメチルトリシクロ-[5.2.1.0]-デカン(式中、Zは3、4、または5を表す);1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ジフェニルエーテル[ビス-ヒドロキシエチルビスフェノールA]、4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ジフェニルスルフィド[ビス-ヒドロキシエチルビスフェノールS]および鎖中に1つまたはそれより多くの酸素原子を含有するジオール、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどが挙げられる。これらのジオールは、一般的に2~18個の炭素原子を含有し、好ましくは2~8個の炭素原子を含有する。脂環式ジオールは、それらのシスまたはトランス配置で採用されてもよいし、または両方の形態の混合物として採用されてもよい。
【0048】
[0050]ポリブチレンテレフタレートと組み合わされたポリエステルポリマーは、存在する場合、一般的に約5重量%より多くの量で、例えば約10重量%より多くの量で、例えば約12重量%より多くの量でポリマー組成物に添加されていてもよい。ポリエステルポリマーは、一般的に、約40重量%未満の量で、例えば約30重量%未満の量で、例えば約20重量%未満の量で、例えば約15重量%未満の量で存在する。
【0049】
ポリオキシメチレンポリマー
[0051]一実施態様において、熱可塑性マトリックスポリマーは、ポリオキシメチレンポリマーであってもよく、例えばポリオキシメチレンホモポリマーまたはポリオキシメチレンコポリマーであってもよい。一実施態様によれば、ポリオキシメチレンは、少なくとも50mol.%、例えば少なくとも75mol.%、例えば少なくとも90mol.%の-CH2O-反復単位含む、例えば少なくとも97mol.%もの-CH2O-反復単位を含むホモまたはコポリマーである。
【0050】
[0052]一実施態様において、ポリオキシメチレンコポリマーが使用される。コポリマーは、約0.01mol.%~約20mol.%、特定には約0.5mol.%~約10mol.%の反復単位を含有していてもよく、反復単位は鎖中に硫黄原子または酸素原子を有する少なくとも2個の炭素原子を有する飽和またはエチレン性不飽和アルキレン基あるいはシクロアルキレン基を含み、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ハロゲンまたはアルコキシからなる群から選択される1つまたはそれより多くの置換基を含んでいてもよい。一実施態様において、開環反応を介してコポリマーに導入することができる環状エーテルまたはアセタールが使用される。
【0051】
[0053]好ましい環状エーテルまたはアセタールは、以下の式で示されるものである:
【0052】
【0053】
式中、xは0または1であり、R2はC2~C4-アルキレン基であり、C2~C4-アルキレン基は、場合により、C1~C4-アルキル基またはC1~C4-アルコキシ基および/またはハロゲン原子(好ましくは塩素原子)である1つまたはそれより多くの置換基を有する。単なる一例として、環状エーテルとして、エチレンオキシド、プロピレン1,2-オキシド、ブチレン1,2-オキシド、ブチレン1,3-オキシド、1,3-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、および1,3-ジオキセパンを挙げることができ、またコモノマーとして、直鎖状オリゴまたはポリホルマール、例えばポリジオキソランまたはポリジオキセパンを挙げることができる。99.5~95mol.%のトリオキサン、および0.01~5mol.%、例えば0.5~4mol.%の上述したコモノマーのうちの1つで構成されるコポリマーを使用することが特に有利である。一実施態様において、ポリオキシメチレンポリマーは、相対的に低い量のコモノマーを含有する。例えば、コモノマーは、約2mol.%未満、例えば約1.5mol.%未満、例えば約1mol.%未満、例えば約0.8mol.%未満、例えば約0.6mol.%未満の量で存在していてもよい。
【0054】
[0054]重合は、沈殿重合として実行されてもよいし、または溶融中に実行されてもよい。重合の持続時間または分子量調整剤の量などの重合パラメーターの好適な選択により、得られたポリマーの分子量、したがってMVR値を調整することができる。
【0055】
[0055]一実施態様において、ポリマー組成物に使用されるポリオキシメチレンポリマーは、末端位置に、相対的に多くの量の反応性基または官能基を含有していてもよい。反応性基は、例えば、-OHまたは-NH2基を含んでいてもよい。
【0056】
[0056]一実施態様において、ポリオキシメチレンポリマーは、ポリマーの全ての末端部位の少なくとも約50%より多くに、末端ヒドロキシル基、例えばヒドロキシエチレン基および/またはヒドロキシル側基を有していてもよい。例えば、ポリオキシメチレンポリマーは、存在する末端基の総数に基づいて、その末端基の少なくとも約70%、例えば少なくとも約80%、例えば少なくとも約85%に、ヒドロキシル基を有していてもよい。存在する末端基の総数は、全ての側の末端基を含むことが理解されるものとする。
【0057】
[0057]一実施態様において、ポリオキシメチレンポリマーは、少なくとも15mmol/kg、例えば少なくとも18mmol/kg、例えば少なくとも20mmol/kgの末端ヒドロキシル基の含量を有する。一実施態様において、末端ヒドロキシル基の含量は、18~50mmol/kgの範囲である。代替の実施態様において、ポリオキシメチレンポリマーは、20mmol/kg未満、例えば18mmol/kg未満、例えば15mmol/kg未満の量で末端ヒドロキシル基を含有していてもよい。例えば、ポリオキシメチレンポリマーは、約5mmol/kg~約20mmol/kg、例えば約5mmol/kg~約15mmol/kgの量で末端ヒドロキシル基を含有していてもよい。例えば、より低い末端ヒドロキシル基含量を有するが、より高いメルトボリュームフローレートを有するポリオキシメチレンポリマーが使用されてもよい。
【0058】
[0058]末端ヒドロキシル基に加えて、またはその代わりに、ポリオキシメチレンポリマーはまた、これらのポリマーにとって一般的な他の末端基を有していてもよい。これらの例は、アルコキシ基、ギ酸基、酢酸基またはアルデヒド基である。一実施態様によれば、ポリオキシメチレンは、少なくとも50mol%、例えば少なくとも75mol%、例えば少なくとも90mol%の-CH2O-反復単位を含む、例えば少なくとも95mol%もの-CH2O-反復単位を含むホモまたはコポリマーである。
【0059】
[0059]一実施態様において、ポリオキシメチレンポリマーは、カチオン重合プロセス、続いてあらゆる不安定な末端基を除去するための溶液加水分解を使用して生産することができる。カチオン重合中、連鎖停止剤として、グリコール、例えばエチレングリコールまたはメチラールを使用してもよい。触媒として、ヘテロポリ酸、トリフリック酸またはホウ素化合物を使用してもよい。
【0060】
[0060]ポリオキシメチレンポリマーは、あらゆる好適な分子量を有していてもよい。ポリマーの分子量は、例えば、約4,000グラム/モル~約20,000g/molであってもよい。しかしながら、他の実施態様において、分子量は、20,000g/molを十分超えていてもよいく、例えば約20,000g/mol~約100,000g/molであってもよい。
【0061】
[0061]組成物中に存在するポリオキシメチレンポリマーは、ISO1133に従って、190℃および2.16kgで測定される場合、一般的に、約0.1~約80cm3/10分の範囲のメルトフローインデックス(MFI)を有していてもよい。一実施態様において、ポリオキシメチレンポリマーは、約1cm3/10分より大きい、例えば約2cm3/10分より大きい、例えば約5cm3/10分より大きい、例えば約10cm3/10分より大きい、例えば約20cm3/10分より大きい、例えば約30cm3/10分より大きいメルトフローインデックスを有していてもよい。ポリマーは、一部のケースにおいて、約55cm3/10分未満、例えば約45cm3/10分未満、例えば約35cm3/10分未満、例えば約25cm3/10分未満、例えば約15cm3/10分未満、例えば約10cm3/10分未満、例えば約5cm3/10分未満のメルトフローインデックスを有していてもよい。
【0062】
[0062]ポリオキシメチレンポリマーは、少なくとも約40重量%の量で、例えば少なくとも約50重量%の量で、例えば少なくとも約60重量%の量でポリマー組成物中に存在していてもよい。ポリオキシメチレンポリマーは、一般的に、約80重量%未満の量で、例えば約70重量%未満の量で、例えば約60重量%未満の量でポリマー組成物中に存在する。
【0063】
強化用繊維
[0063]ポリマー組成物は、熱可塑性ポリマーマトリックスに加えて、任意に強化用繊維を含有していてもよい。熱可塑性ポリマー、例えばポリエステルおよびポリオキシメチレンポリマーは、強化された組成物から作製されるパーツおよび製品の弾性率および/または引張強度を増加させるために、繊維状フィラーと組み合わされる。しかしながら、これまでに、望ましい特性のバランスを有するポリマーマトリックスに強化用繊維を取り込むことにおいて問題があった。例えば、強化用繊維を含有するポリマー複合材料は、十分な強度特性を有する可能性があるが、隣接する表面にわたって動くと表面摩擦が増加する可能性がある。摩擦の増加は、例えば、長期間の使用後にアブレシブ摩耗を引き起こす可能性がある。これらの問題は、ポリマーマトリックスから作製される第1のパーツが、同じ強化されたポリマーマトリックスから作製される隣接するパーツに対してスライドするかまたはそれを擦るように設計される場合、悪化する可能性がある。
【0064】
[0064]繊維で強化されたポリマーの摩擦係数を減少させるために、熱可塑性ポリマーと強化用繊維とをブレンドするための様々な異なる摩擦調整添加剤が提唱されている。摩擦調整添加剤は、ポリマー組成物がパーツに成形され、パーツが隣接する表面と接触し、それに対してスライドする用途に使用されるときに、摩擦および摩耗特徴の両方を低くすることができる。しかしながら、ポリマー組成物に含有される複数の成分は、成形プロセス中、特に射出成形プロセス中に、問題が生じる可能性がある。例えば、多くの繊維で強化されたポリマー組成物は、定期的なツールのクリーニングを必要とするモールドデポジットを生じる傾向を有する。モールドクリーニングプロセスは、時間がかかるだけでなく、生産プロセスの遅延ももたらす。
【0065】
[0065]モールドデポジットを生じることに加えて、繊維で強化されたポリマー組成物はまた、モールドからパーツを取り出すために相対的に高い放出力も必要とする。パーツを取り出すのに必要なより大きい力は、パーツの不良をもたらす可能性があり、モールドデポジットの蓄積を増加させる可能性がある。
【0066】
[0066]しかしながら、本発明の開示によれば、1種またはそれより多くの離型剤を単独で、または核剤と組み合わせて組成物に取り込むことによって、モールドデポジットを最小化し、モールドからパーツを取り出すのに必要な力を低減させながらも、強化用繊維をポリマー組成物に取り込ませることができる。
【0067】
[0067]有利に使用することができる強化用繊維は、鉱物繊維、例えばガラス繊維、ポリマー繊維、特定には有機高弾性繊維、例えばアラミド繊維、または金属繊維、例えば鋼繊維、または炭素繊維、または天然繊維、再生可能資源からの繊維である。
【0068】
[0068]これらの繊維は、変性または未変性の形態であってもよく、例えば、プラスチックへの接着を改善するために、サイジングが施されていてもよいし、または化学処理されていてもよい。ガラス繊維が特に好ましい。
【0069】
[0069]ガラス繊維は、サイジングが施され、これは、ガラス繊維を保護するため、繊維を滑らかにするためであり、さらには繊維とマトリックス材料との接着を改善するためでもある。サイジングは通常、シラン、フィルム形成剤、潤滑剤、湿潤剤、接着剤、任意に静電防止剤および可塑剤、乳化剤および任意にさらなる添加剤を含む。
【0070】
[0070]シランの具体的な例は、アミノシラン、例えば3-トリメトキシシリルプロピルアミン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシ-シラン、N-(3-トリメトキシシラニルプロピル)エタン-1,2-ジアミン、3-(2-アミノエチル-アミノ)プロピルトリメトキシシラン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,2-エタン-ジアミンである。
【0071】
[0071]フィルム形成剤は、例えばポリビニルアセテート、ポリエステルおよびポリウレタンである。ポリウレタンをベースとしたサイジングを有利に使用することができる。
[0072]強化用繊維が、例えば押出機またはニーダーで、ポリマーマトリックスに配合されてもよい。
【0072】
[0073]一実施態様によれば、本発明の開示の成形組成物は、少なくとも1種の強化用繊維を含み、このような強化用繊維は、鉱物繊維であり、好ましくはガラス繊維、より好ましくはコーティングされたガラス繊維または含浸ガラス繊維である。本発明の開示の成形組成物に好適なガラス繊維が商業的に入手可能であり、例えば、ジョンズ・マンビル(Johns Manville)、サーモフロー(ThermoFlow)(登録商標)チョップドストランド(Chopped Strand)753、OCVチョップドストランド408A、日本電気硝子株式会社(NEG)チョップドストランドT-651がある。
【0073】
[0074]繊維の直径は、使用される特定の繊維や、繊維が細断されているのかまたは連続的な形態であるのかに応じて様々であってもよい。繊維は、例えば、約5μm~約100μm、例えば約5μm~約50μm、例えば約5μm~約15μmの直径を有していてもよい。繊維の長さは、特定の用途に応じて様々であってもよい。例えば、繊維は、約100マイクロメートルより長い、例えば約200マイクロメートルより長い、例えば約300マイクロメートルより長い、例えば約350マイクロメートルより長い長さを有していてもよい。繊維の長さは、一般的に約1,000マイクロメートル未満、例えば約800マイクロメートル未満、例えば約600マイクロメートル未満、例えば約500マイクロメートル未満であってもよい。ポリマー組成物に取り込まれ、物品に成形されたら、繊維の長さは、減少する可能性がある。例えば、最終製品における平均繊維長さは、約100マイクロメートル~約400マイクロメートル、例えば約100マイクロメートル~約300マイクロメートルであってもよい。
【0074】
[0075]一般的に、強化用繊維は、組成物の引張強度を増加させるのに十分な量でポリマー組成物中に存在していてもよい。強化用繊維は、例えば、約5重量%より多くの量で、例えば約10重量%より多くの量で、例えば約15重量%より多くの量で、例えば約20重量%より多くの量で、例えば約25重量%より多くの量で、例えば約30重量%より多くの量でポリマー組成物中に存在していてもよい。強化用繊維は、一般的に、約55重量%未満の量で、例えば約50重量%未満の量で、例えば約45重量%未満の量で、例えば約40重量%未満の量で、例えば約35重量%未満の量で、例えば約30重量%未満の量で存在する。
【0075】
離型剤
[0076]本発明の開示によれば、ポリマー組成物は、1種またはそれより多くの離型剤を含有し、これらは、モールドから、例えば射出成形中のモールドからのパーツの放出力を小さくするのに十分な量で添加される。代替として、1種またはそれより多くの離型剤は、1種またはそれより多くの離型剤を含有しないこと以外は同一な組成物と比較して、モールドデポジットを少なくするのに十分な量で添加されていてもよい。
【0076】
[0077]一形態において、1種またはそれより多くの離型剤は、単独で、または核剤と組み合わせて、ポリマー組成物の溶融加工の挙動または特性を改善することができる。本発明の開示の離型パッケージは、例えば、結晶化速度および溶融-固化速度を増加させることができる。離型パッケージを取り込んでいるポリマー組成物はまた、サイクル時間を著しく改善でき、生産を向上させることができるより安定な溶融物を形成することもできる。
【0077】
[0078]一形態において、ポリマー組成物は、単一の離型剤のみを含有する。離型剤は、例えば、極性離型剤および/または酸化された離型剤であってもよい。極性材料は、例えば、他の成分とよくブレンドされる。本発明の開示における使用のための極性ポリマーは、成形中にそれと他の成分とが相互作用することによって、モールドデポジットを劇的に低減することが見出されている。極性離型剤は、例えば、酸化ワックスであってもよく、例えば酸化ポリオレフィンワックスまたはカルボン酸の酸化エステルであってもよい。酸化ポリオレフィンワックスは、例えば、酸化ポリエチレンワックスであってもよい。
【0078】
[0079]離型剤の極性は、特定の用途および望ましい結果に応じて様々であってもよい。極性は、例えば、離型剤の酸価によって示すことができる。極性離型剤の酸価は、例えば一般的に約10KOH/gより大きくてもよく、例えば約15KOH/gより大きくてもよく、例えば約20KOH/gより大きくてもよく、例えば約25KOH/gより大きくてもよく、例えば約30KOH/gより大きくてもよく、例えば約35KOH/gより大きくてもよく、例えば約40KOH/gより大きくてもよく、例えば約45KOH/gより大きくてもよく、例えば約50KOH/gより大きくてもよい。酸価は、一般的に、約95KOH/g未満であり、例えば約90KOH/g未満、例えば約85KOH/g未満、例えば約80KOH/g未満、例えば約75KOH/g未満、例えば約70KOH/g未満である。
【0079】
[0080]一形態において、極性離型剤の酸価は、約13KOH/g~約23KOH/gであってもよく、例えば約15KOH/g~約19KOH/gであってもよい。代替の実施態様において、極性離型剤の酸価は、約40KOH/g~約65KOH/gであってもよく、例えば約45KOH/g~約55KOH/gであってもよい。
【0080】
[0081]上述したように、一実施態様において、極性離型剤は、カルボン酸の酸化エステルであってもよい。一形態において、カルボン酸の酸化エステルは、米糠などのバイオマス材料から得てもよい。
【0081】
[0082]脂肪酸の酸化エステルを生産するのに使用される異なるカルボン酸は、脂肪酸源および望ましい結果に応じて様々であってもよい。一実施態様において、脂肪酸の酸化エステルは、少なくとも3種の異なる脂肪酸から得てもよく、例えば少なくとも5種の異なる脂肪酸、例えば少なくとも約8種の異なる脂肪酸、一般的に約20種未満の異なる脂肪酸、例えば約15種未満の異なる脂肪酸から得てもよい。酸化エステルを生産するのに使用される脂肪酸は、例えば、様々な異なる鎖長を有していてもよい。例えば、酸化ワックス中に存在する全ての脂肪酸のうち、約20重量%より多く、例えば約30重量%より多く、例えば約40重量%より多く、例えば約50重量%より多く、例えば約60重量%より多くは、約20個の炭素原子~約40個の炭素原子の炭素鎖の長さを有する脂肪酸から得てもよい。酸化ワックスはまた、より長い鎖長の脂肪酸から得てもよい。例えば、酸化ワックスは、約5重量%より多く、例えば約10重量%より多く、例えば約15重量%より多く、例えば約20重量%より多く、例えば約25重量%より多く、例えば約30重量%より多く、例えば約40重量%より多く、例えば約45重量%より多く、例えば約50重量%より多くの、約40個の炭素原子~約64個の炭素原子の炭素鎖の長さを有する脂肪酸から得てもよい。上記のカルボン酸は、脂肪族カルボン酸であってもよい。一形態において、酸化ワックスは、約14個未満の炭素原子、例えば約12個未満の炭素原子、例えば約10個未満の炭素原子、例えば約8個未満の炭素原子の炭素鎖の長さを有する脂肪酸から得られる約5重量%未満のエステルを含有する。
【0082】
[0083]1つの特定の実施態様において、ポリマー組成物は、第1の離型剤および第2の離型剤を含有し、離型剤は両方とも食品を取り扱う用途および/または医療用途に関して十分に安全である。第1の離型剤は、例えば、極性ポリマーであってもよい。
【0083】
[0084]様々な異なる極性材料は、上述される極性ポリマーなどの第1の離型剤として使用される可能性がある。極性ポリマーは、例えば、ポリオレフィンポリマーであってもよい、特定には変性ポリオレフィンポリマーであってもよい。極性ポリオレフィンポリマーは、例えば、ポリエチレンポリマーまたはポリプロピレンポリマー、それに加えてそれらのコポリマーであってもよい。1つの特定の実施態様において、第1の離型剤は、酸化ポリエチレンワックスであってもよい。
【0084】
[0085]他の極性ワックスは、例えばメタロセン触媒を使用して形成された、エチレンおよび/またはプロピレンの極性変性ポリマーであってもよい。その例としては、親水性基、例えば無水マレイン酸基、アクリル酸基、メタクリル酸基、またはポリビニルピロリドン(PVP)基の存在下で変性した、エチレンおよび/またはプロピレンのホモポリマーまたはコポリマーを挙げることができる。その例としては、無水マレイン酸変性ポリプロピレンポリマー(PPMA)、または無水マレイン酸ポリプロピレンおよびエチレンコポリマーが挙げられる。一形態において、極性ワックスは、上述したように米糠から得てもよい。
【0085】
[0086]極性材料に加えて、有効な離型剤はまた、非極性材料、例えば非極性ポリマーも含んでいてもよい。非極性ポリマーは、例えば、成形中に、ポリマー組成物から作製されるポリマー物品の表面に移動することができる。この方式で、本発明の開示による非極性ポリマー材料は、モールドからパーツを放出するために必要な力の量を著しく低減させることができる。本発明の開示に従って使用することができる非極性ポリマーとしては、様々な異なる非極性ポリオレフィンポリマーが挙げられ、例えば、ポリエチレンポリマーおよびポリプロピレンポリマーなどが挙げられる。ポリオレフィンポリマーは、ホモポリマーであってもよいし、またはコポリマーであってもよい。一実施態様において、非極性ポリマーは、ポリエチレンワックスであってもよい。
【0086】
[0087]1つの特定の実施態様において、ポリマー組成物は、非極性ポリマーを含む第2の離型剤と組み合わせされた、極性ポリマーを含む第1の離型剤を含有する。
[0088]各離型剤は、一般的に、約2重量%未満の量で、例えば約1重量%未満の量で、例えば約0.8重量%未満の量で、例えば約0.6重量%未満の量で、例えば約0.4重量%未満の量で、例えば約0.2重量%未満の量でポリマー組成物中に存在していてもよい。1種またはそれより多くの離型剤は、一般的に、約0.01重量%より多くの量でポリマー組成物中に存在する。
【0087】
[0089]ポリマー組成物が、上述したように第2の離型剤と組み合わせされた第1の離型剤を含有する場合、第1の離型剤と第2の離型剤との重量比は、約10:1~約1:10、例えば約5:1~約1:5、例えば約2:1~約1:2であってもよい。
【0088】
摩擦調整剤
[0090]本発明の開示によれば、ポリマー組成物および強化されたポリマー組成物を含むポリマー物品は、少なくとも1種の摩擦調整剤を含んでいてもよい。
【0089】
[0091]一実施態様において、熱可塑性ポリマーを変性させるために、超高分子量シリコーン(UHMW-Si)を使用することができる。一般的に、UHMW-Siは、100,000g/molより大きく、例えば約200,000g/molより大きく、例えば約300,000g/molより大きく、例えば約500,000g/molより大きく、約3,000,000g/mol未満、例えば約2,000,000g/mol未満、例えば約1,000,000g/mol未満、例えば約500,000g/mol未満、例えば約300,000g/mol未満の平均分子量を有していてもよい。一般的に、UHMW-Siは、100,000mm2/秒より大きく、例えば約200,000mm2/秒より大きく、例えば約1,000,000mm2/秒より大きく、例えば約5,000,000mm2/秒より大きく、例えば約10,000,000mm2/秒より大きく、例えば約15,000,000mm2/秒より大きく、約50,000,000mm2/秒未満、例えば約25,000,000mm2/秒未満、例えば約10,000,000mm2/秒未満、例えば約1,000,000mm2/秒未満、例えば約500,000mm2/秒未満、例えば約200,000mm2/秒未満の、DIN51562に従って40℃で測定された動粘性率を有していてもよい。
【0090】
[0092]UHMW-シリコーンは、シロキサン、例えばポリシロキサンまたはポリオルガノシロキサンを含んでいてもよい。一実施態様において、UHMW-Siは、ジメチルシロキサンのようなジアルキルポリシロキサン、フェニルメチルシロキサンのようなアルキルアリールシロキサン、ポリシルセスキオキサン、もしくはジフェニルシロキサンのようなジアリールシロキサン、またはそれらのホモポリマー(例えばポリジメチルシロキサンもしくはポリメチルフェニルシロキサン)、またはそれらのコポリマーを、上記の分子量および/または動粘性率の要件に従って含んでいてもよい。ポリシロキサンまたはポリオルガノシロキサンはまた、分子の終端部または主鎖において、エポキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシ基、アミノ基もしくは置換されたアミノ基、エーテル基、またはメタ(アクリロイル)基などの置換基で変性されていてもよい。上記のUHMW-Si化合物は、単独で、または組み合わせて使用することができる。上記のUHMW-Si化合物はいずれも、上記の分子量および/または動粘性率の要件に従って使用することができる。
【0091】
[0093]UHMW-シリコーンは、マスターバッチとしてポリマー組成物に添加されてもよく、この場合、UHMW-Siは、担体ポリマー中に分散され、その後、マスターバッチは、組成物に添加される。マスターバッチは、約10wt.%~約60wt.%、例えば約35wt.%~約55wt.%、例えば約50wt.%のUHMW-Siを含んでいてもよい。
【0092】
[0094]担体ポリマーは、特定の用途および望ましい結果に応じて様々であってもよい。一実施態様において、例えば、担体ポリマーは、ポリエステルポリマーを含んでいてもよい。ポリエステル担体ポリマーは、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、コポリエステル、および/またはポリエステルエラストマーを含んでいてもよい。ポリエステルエラストマーは、セグメント化熱可塑性コポリエステルなどのコポリエステルを含んでいてもよい。ポリエステルエラストマーは、例えば、マルチブロックコポリマーを含んでいてもよい。
【0093】
[0095]UHMW-シリコーンは、約0.005wt.%より多く、例えば約0.1wt.%より多く、例えば約0.5wt.%より多く、例えば約0.75wt.%より多く、例えば約1wt.%より多く、例えば約2wt.%より多く、例えば約2.5wt.%より多く、一般的に約10wt.%未満、例えば約6wt.%未満、例えば約5wt.%未満、例えば約4wt.%未満、例えば約3.5wt.%未満、例えば約3wt.%未満の量で、ポリマー組成物中に存在していてもよく、重量は、ポリマー組成物の総重量に基づく。
【0094】
[0096]代替の実施態様において、少なくとも1つの摩擦調整添加剤は、フルオロポリマーを含んでいてもよく、例えばポリテトラフルオロエチレン粉末を含んでいてもよい。フルオロポリマーは、1つの用途において、超高分子量シリコーンと組み合わされていてもよい。ポリテトラフルオロエチレン粒子は、例えば、約15マイクロメートル未満、例えば約12マイクロメートル未満、例えば約10マイクロメートル未満、例えば約8マイクロメートル未満の平均粒度を有していてもよい。ポリテトラフルオロエチレン粒子の平均粒度は、一般的に、約0.5マイクロメートルより大きく、例えば約1マイクロメートルより大きく、例えば約2マイクロメートルより大きく、例えば約3マイクロメートルより大きく、例えば約4マイクロメートルより大きく、例えば約5マイクロメートルより大きい。平均粒度は、ISO試験13321に従って測定することができる。
【0095】
[0097]一実施態様において、ポリテトラフルオロエチレン粒子は、相対的に低い分子量を有していてもよい。ポリテトラフルオロエチレンポリマーは、ASTM試験D4895に従って試験した場合、約300g/l~約450g/l、例えば約325g/l~約375g/lの密度を有していてもよい。ポリテトラフルオロエチレン粒子は、試験DIN66132に従って試験した場合、約5m2/g~約15m2/g、例えば約8m2/g~約12m2/gの比表面積を有していてもよい。ポリテトラフルオロエチレンポリマーのメルトフローレートは、ISO試験1133に従って試験した場合、372℃で、10kgの負荷で行われた場合、約3未満g/10分、例えば約2未満g/10分であってもよい。
【0096】
[0098]ポリテトラフルオロエチレン粒子は、約1重量%より多くの量で、例えば約2重量%より多くの量で、例えば約3重量%より多くの量で、例えば約4重量%より多くの量でポリマー組成物中に存在していてもよい。ポリテトラフルオロエチレンポリマーは、一般的に、約20重量%未満の量で、例えば約15重量%未満の量で、例えば約10重量%未満の量で、例えば約8重量%未満の量でポリマー組成物中に存在する。
【0097】
他の添加剤
[0099]本発明の開示のポリマー組成物は、様々な他の添加剤を含有していてもよい。例えば、組成物は、組成物の総重量に基づき、約0.1~2重量%、好ましくは約0.001%~0.5%の濃度で存在する核剤をさらに含んでいてもよい。核剤は、周期表の第IV族からの元素の酸化物であるアニオンを有するアルカリ金属塩;硫酸バリウム;およびタルクからなる群から選択することができる。
【0098】
[00100]ポリマー組成物はまた、少なくとも1種の安定剤を含有していてもよい。安定剤は、抗酸化剤、光安定剤、例えば紫外光安定剤、熱安定剤などを含んでいてもよい。
[00101]組成物中に、立体障害性(sterically hindered)フェノール系抗酸化剤が採用されていてもよい。このようなフェノール系抗酸化剤の例としては、例えば、カルシウムビス(エチル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート)(イルガノックス(Irganox)(登録商標)1425);テレフタル酸,1,4-ジチオ-,S,S-ビス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)エステル(シアノックス(Cyanox)(登録商標)1729);トリエチレングリコールビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルヒドロシンナメート);ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート(イルガノックス(Irganox)(登録商標)259);1,2-ビス(3,5,ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナモイル)ヒドラジド(イルガノックス(Irganox)(登録商標)1024);4,4’-ジ-tert-オクチルジフェナミン(ナウガルブ(Naugalube)(登録商標)438R);ホスホン酸,(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-,ジオクタデシルエステル(イルガノックス(Irganox)(登録商標)1093);1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’ヒドロキシベンジル)ベンゼン(イルガノックス(Irganox)(登録商標)1330);2,4-ビス(オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン(イルガノックス(Irganox)(登録商標)565);イソオクチル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(イルガノックス(Irganox)(登録商標)1135);オクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(イルガノックス(Irganox)(登録商標)1076);3,7-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-10H-フェノチアジン(イルガノックス(Irganox)(登録商標)LO3);2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)モノアクリレート(イルガノックス(Irganox)(登録商標)3052);2-tert-ブチル-6-[1-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)エチル]-4-メチルフェニルアクリレート(スミライザー(Sumilizer)(登録商標)TM4039);2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート(スミライザー(Sumilizer)(登録商標)GS);1,3-ジヒドロ-2H-ベンゾイミダゾール(スミライザー(Sumilizer)(登録商標)MB);2-メチル-4,6-ビス[(オクチルチオ)メチル]フェノール(イルガノックス(Irganox)(登録商標)1520);N,N’-トリメチレンビス-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド(イルガノックス(Irganox)(登録商標)1019);4-n-オクタデシルオキシ-2,6-ジフェニルフェノール(イルガノックス(Irganox)(登録商標)1063);2,2’-エチリデンビス[4,6-ジ-tert-ブチルフェノール](イルガノックス(Irganox)(登録商標)129);N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナムアミド)(イルガノックス(Irganox)(登録商標)1098);ジエチル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル(hydroxybenxyl))ホスホネート(イルガノックス(Irganox)(登録商標)1222);4,4’-ジ-tert-オクチルジフェニルアミン(イルガノックス(Irganox)(登録商標)5057);N-フェニル-1-ナフタレンアミン(napthalenamine)(イルガノックス(Irganox)(登録商標)L05);トリス[2-tert-ブチル-4-(3-ter-ブチル-4-ヒドロキシ-6-メチルフェニルチオ)-5-メチルフェニル]亜リン酸(ホスタノックス(Hostanox)(登録商標)OSP1);ジノニルジチオカルバミン酸亜鉛(ホスタノックス(Hostanox)(登録商標)VP-ZNCS1);3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(スミライザー(Sumilizer)(登録商標)AG80);ペンタエリスリチルテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](イルガノックス(Irganox)(登録商標)1010);エチレン-ビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)-プロピオネート(イルガノックス(Irganox)(登録商標)245);3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(ロウイノックスBHT(Lowinox BHT)、ケムチュラ(Chemtura))などが挙げられる。
【0099】
[00102]本発明の組成物における使用のための好適な立体障害性フェノール系抗酸化剤の一部の例は、以下の一般式を有するトリアジン抗酸化剤である:
【0100】
【0101】
式中、Rは、それぞれ独立して、フェノール基であり、該フェノール基は、C1~C5アルキルまたはエステル置換基を介してトリアジン環に結合していてもよい。好ましくは、各Rは、以下の式(I)~(III)のうちの1つである:
【0102】
【0103】
[00103]このようなトリアジンベースの抗酸化剤の商業的に入手可能な例は、アメリカン・サイアナミッド(American Cyanamid)から、シアノックス(Cyanox)(登録商標)1790(この場合、各R基は、式IIIによって表される)という名称で得ることができ、さらに、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)から、イルガノックス(Irganox)(登録商標)3114(この場合、各R基は、式Iによって表される)およびイルガノックス(Irganox)(登録商標)3125(この場合、各R基は、式IIによって表される)という名称で得ることができる。
【0104】
[00104]立体障害性フェノール系抗酸化剤は、安定化されたポリマー組成物全体の約0.01wt.%~約3wt.%を構成していてもよく、一部の実施態様において約0.05wt.%~約1wt.%を構成していてもよく、一部の実施態様において約0.05wt.%~約0.1wt.%を構成していてもよい。一実施態様において、例えば、抗酸化剤は、ペンタエリスリチルテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを含む。
【0105】
[00105]ポリマー組成物の分解を抑制して、その耐久性を延長するために、組成物中に、ヒンダードアミン光安定剤(「HALS」)が採用されていてもよい。好適なHALS化合物は、置換されたピペリジン、例えばアルキル置換されたピペリジル、ピペリジニル、ピペラジノン、アルコキシピペリジニル化合物などから得ることができる。例えば、ヒンダードアミンは、2,2,6,6-テトラアルキルピペリジニルから得ることができる。ヒンダードアミンは、その元となる化合物に関係なく、典型的には、約1,000以上の数平均分子量を有するオリゴマーまたはポリマー性の化合物であり、一部の実施態様において約1000~約20,000、一部の実施態様において約1500~約15,000、一部の実施態様において約2000~約5000の数平均分子量を有するオリゴマーまたはポリマー性の化合物である。このような化合物は、典型的には、ポリマー反復単位1個当たり少なくとも1個の2,2,6,6-テトラアルキルピペリジニル基(例えば、1~4個)を含有する。
【0106】
[00106]理論によって限定されることは意図しないが、高分子量のヒンダードアミンは、比較的熱安定性であり、したがって押出し条件に晒された後でさえも光分解を抑制することができると考えられる。1つの特に好適な高分子量ヒンダードアミンは、以下の一般構造を有する:
【0107】
【0108】
式中、pは4~30であり、一部の実施態様において4~20であり、一部の実施態様において4~10である。このオリゴマー化合物は、クラリアント(Clariant)からホスタビン(Hostavin)(登録商標)N30という名称で商業的に入手可能であり、1200の数平均分子量を有する。
【0109】
[00107]別の好適な高分子量ヒンダードアミンは、以下の構造を有する:
【0110】
【0111】
式中、nは、1~4であり、R30は、独立して水素またはCH3である。このようなオリゴマー化合物は、アデカ・パルマロール社(Adeka Palmarole SAS)(アデカ社(Adeka Corp.)とパルマロールグループ(Palmarole Group)との合弁会社)から、ADK STAB(登録商標)LA-63(R30は、CH3である)およびADK STAB(登録商標)LA-68(R30は、水素である)という名称で商業的に入手可能である。
【0112】
[00108]好適な高分子量ヒンダードアミンの他の例としては、例えば、N-(2-ヒドロキシエチル)-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノールとコハク酸とのオリゴマー(チバ・スペシャルティ・ケミカルズからのチヌビン(Tinuvin)(登録商標)622、MW=4000);シアヌル酸とN,N-ジ(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-ヘキサメチレンジアミンとのオリゴマー;ポリ((6-モルホリン-S-トリアジン-2,4-ジイル)(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-イミノヘキサメチレン-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-イミノ)(サイテック(Cytec)からのシアソルブ(Cyasorb)(登録商標)UV3346、MW=1600);ポリメチルプロピル-3-オキシ-[4(2,2,6,6-テトラメチル)-ピペリジニルシロキサン(グレートレイクスケミカル(Great Lakes Chemical)からのウバシル(Uvasil)(登録商標)299、MW=1100~2500);α-メチルスチレン-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)マレイミドとN-ステアリルマレイミドとのコポリマー;1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸を有する2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジエタノールテトラメチルポリマーなどが挙げられる。さらなる他の好適な高分子量ヒンダードアミンは、Malikらの米国特許第5,679,733号およびSassiらの第6,414,155号に記載されており、これらは、あらゆる目的のために参照によりそれらの全体が本明細書に取り入れられる。
【0113】
[00109]高分子量ヒンダードアミンに加えて、低分子量ヒンダードアミンも組成物中に採用されてもよい。このようなヒンダードアミンは概して、事実上モノマーであり、約1000またはそれ未満の分子量を有し、一部の実施態様において約155~約800、一部の実施態様において約300~約800の分子量を有する。
【0114】
[00110]このような低分子量ヒンダードアミンの具体的な例としては、例えば、ビス-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(チバ・スペシャルティ・ケミカルズからのチヌビン(Tinuvin)(登録商標)770、MW=481);ビス-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)-(3,5-ジtert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ブチル-プロパンジオエート;ビス-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート;8-アセチル-3-ドデシル-7,7,9,9-テトラメチル-1,3,8-トリアザスピロ-(4,5)-デカン-2,4-ジオン,ブタン二酸-ビス-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)エステル;テトラキス-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート;7-オキサ-3,20-ジアザジスピロ(5.1.11.2)ヘネイコサン-20-プロパン酸,2,2,4,4-テトラメチル-21-オキソ,ドデシルエステル;N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-N’-アミノ-オキサミド;o-t-アミル-o-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)-モノペルオキシカーボネート;β-アラニン,N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル),ドデシルエステル;エタンジアミド,N-(1-アセチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル)-N’-ドデシル;3-ドデシル-1-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-ピロリジン-2,5-ジオン;3-ドデシル-1-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)-ピロリジン-2,5-ジオン;3-ドデシル-1-(1-アセチル,2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-ピロリジン-2,5-ジオン(クラリアントからのサンデュバル(Sanduvar)(登録商標)3058、MW=448.7);4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン;1-[2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオニルオキシ)エチル]-4-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシルフェニルプロピオニルオキシ)-2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン;2-メチル-2-(2”,2”,6”,6”-テトラメチル-4”-ピペリジニルアミノ)-N-(2’,2’,6’,6’-テトラ-メチル-4’-ピペリジニル)プロピオニルアミド;1,2-ビス-(3,3,5,5-テトラメチル-2-オキソ-ピペラジニル)エタン;4-オレオイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン;およびそれらの組合せを挙げることができる。他の好適な低分子量ヒンダードアミンは、Malikらの米国特許第5,679,733号に記載されている。
【0115】
[00111]ヒンダードアミンは、単独で、または組み合わせて、望ましい特性を達成することができるあらゆる量で採用することができるが、典型的にはポリマー組成物の約0.01wt.%~約4wt.%を構成する。
【0116】
[00112]UV吸収剤、例えばベンゾトリアゾールまたはベンゾフェノンが、紫外光エネルギーを吸収するために、組成物中に採用されてもよい。好適なベンゾトリアゾールとしては、例えば、2-(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、例えば2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール;2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(サイテックからのシアソルブ(Cyasorb)(登録商標)UV5411);2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール;2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール;2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール;2,2’-メチレンビス(4-tert-オクチル-6-ベンゾ-トリアゾリルフェノール);2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステル;2-[2-ヒドロキシ-3-(2-アクリロイルオキシエチル)-5-メチルフェニル]-ベンゾトリアゾール;2-[2-ヒドロキシ-3-(2-メタクリロイルオキシエチル)-5-tert-ブチルフェニル]ベンゾトリアゾール;2-[2-ヒドロキシ-3-(2-メタクリロイルオキシエチル)-5-tert-オクチルフェニル]ベンゾトリアゾール;2-[2-ヒドロキシ-3-(2-メタクリロイルオキシエチル)-5-tert-ブチルフェニル]-5-クロロベンゾトリアゾール;2-[2-ヒドロキシ-5-(2-メタクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール;2-[2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-(2-メタクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール;2-[2-ヒドロキシ-3-tert-アミル-5-(2-メタクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール;2-[2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-(3-メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]-5-クロロベンゾトリアゾール;2-[2-ヒドロキシ-4-(2-メタクリロイルオキシメチル)フェニル]ベンゾトリアゾール;2-[2-ヒドロキシ-4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)フェニル]ベンゾトリアゾール;2-[2-ヒドロキシ-4-(3-メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]ベンゾトリアゾール;およびそれらの組合せを挙げることができる。
【0117】
[00113]例示的なベンゾフェノン光安定剤としては、同様に、2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシベンゾフェノン;2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン;2-(4-ベンゾイル-3-ヒドロキシフェノキシ)エチルアクリレート(サイテックからのシアソルブ(Cyasorb)(登録商標)UV209);2-ヒドロキシ-4-n-オクチルオキシ)ベンゾフェノン(サイテックからのシアソルブ(Cyasorb)(登録商標)531);2,2’-ジヒドロキシ-4-(オクチルオキシ)ベンゾフェノン(サイテックからのシアソルブ(Cyasorb)(登録商標)UV314);ヘキサデシル-3,5-ビス-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート(サイテックからのシアソルブ(Cyasorb)(登録商標)UV2908);2,2’-チオビス(4-tert-オクチルフェノラート)-n-ブチルアミンニッケル(II)(サイテックからのシアソルブ(Cyasorb)(登録商標)UV1084);3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ安息香酸(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)エステル(サイテックからのシアソルブ(Cyasorb)(登録商標)712);4,4’-ジメトキシ-2,2’-ジヒドロキシベンゾフェノン(サイテックからのシアソルブ(Cyasorb)(登録商標)UV12);およびそれらの組合せを挙げることができる。
【0118】
[00114]UV吸収剤は、採用される場合、ポリマー組成物全体の約0.01wt.%~約4wt.%を構成していてもよい。
[00115]一実施態様において、ポリマー組成物は、紫外線耐性および色安定性をもたらす安定剤のブレンドを含有していてもよい。安定剤の組合せは、明るく蛍光性の色を有する製品の生産を可能にすることができる。加えて、明るい色付きの製品は、経時的に著しく退色することなく生産することができる。一実施態様において、例えば、ポリマー組成物は、ベンゾトリアゾール光安定剤およびヒンダードアミン光安定剤の組合せを含有していてもよく、例えばオリゴマーヒンダードアミンを含有していてもよい。
【0119】
[00116]一実施態様において、アミドワックスが、ポリマー組成物中に存在していてもよい。例えば、脂肪酸と、2~18個、特に2~8個の炭素原子を有するモノアミンまたはジアミン(例えば、エチレンジアミン)との反応によって形成されるアミドワックスが採用されてもよい。例えば、エチレンジアミンと脂肪酸のアミド化(amidization)反応によって形成されるエチレンビスアミドワックスが採用されてもよい。脂肪酸は、C12~C30の範囲であってもよく、例えばステアリン酸(C18脂肪酸)から、エチレンビスステアロアミドワックスが形成される。エチレンビスステアロアミドワックスは、ロンザ社(Lonza, Inc.)からアクラワックス(Acrawax)(登録商標)Cという名称で商業的に入手可能であり、これは142℃の個別の溶融温度を有する。他のエチレンビスアミドとしては、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、ミリスチン酸、およびウンデカリン酸から形成されたビスアミドが挙げられる。さらなる他の好適なアミドワックスは、N-(2-ヒドロキシエチル)12-ヒドロキシステアルアミド、およびN,N’-(エチレンビス)12-ヒドロキシステアルアミドである。
【0120】
[00117]上記の成分に加えて、ポリマー組成物は、様々な他の成分を含んでいてもよい。使用することができる着色剤としては、あらゆる望ましい無機顔料、例えば二酸化チタン、ウルトラマリンブルー、コバルトブルー、ならびに他の有機顔料および色素、例えばフタロシアニン、アントラキノンなどが挙げられる。他の着色剤としては、カーボンブラックまたは様々な他のポリマー可溶性色素が挙げられる。着色剤は、一般的に、最大約2重量パーセントの量で組成物中に存在していてもよい。
【0121】
ポリマー物品
[00118]本発明の開示の組成物は、当業界において公知のあらゆる技術を使用して、配合され、ポリマー物品に形成され得る。例えば、それぞれの組成物を徹底的に混合して、実質的に均一なブレンドを形成することができる。ブレンドは、高い温度で、例えばポリマー組成物中に利用されるポリマーの融点より高いが分解温度より低い温度で溶融混練してもよい。代替として、それぞれの組成物は、従来のシングルまたはツインスクリュー押出機で一緒に溶融および混合してもよい。溶融混合は、好ましくは150~300℃の範囲の温度で行われ、例えば200~280℃、例えば220~270℃または240~260℃の範囲の温度で行われる。しかしながら、このような処理は、あらゆるポリマー分解を最小化するために、それぞれ各々の組成物に対して望ましい温度で実行されるべきである。
【0122】
[00119]組成物は、押出しの後、ペレットに形成することができる。ペレットは、当業界において公知の技術、例えば射出成形、熱成形、吹込成形、回転成形などによって、ポリマー物品に成形することができる。本発明の開示によれば、ポリマー物品は、優れた挙動および機械特性を実証することができる。結果として、ポリマー物品は、低い摩耗および優れたグライディング特性が望ましい数々の用途に使用することができる。
【0123】
[00120]ポリマー物品は、別の表面と接触するあらゆる動く物品または成形体を含み、高い摩擦学的要件を必要とする場合がある。例えば、ポリマー物品としては、自動車産業、特にハウジング、ラッチ、例えば回転式のラッチ、窓拭きシステム、ワイパーシステム、滑車、サンルーフシステム、シート調整、レバー、ブッシュ、ギア、ギアボックス、クロー、ピボットハウジング、ワイパーアーム、ブラケットまたはシートレールベアリング、ジッパー、スイッチ、カム、ローラーもしくはローリングガイド、スライド要素もしくはグライド、例えばスライドプレート、コンベヤーベルトパーツ、例えばチェーン要素およびリンク、キャスター、ファスナー、レバー、コンベヤーシステムの摩耗ストリップおよびガードレール、医療用デバイス、例えば医療用吸入器、注射デバイス、外科用機器、ウェアラブルなデバイスなどのための物品が挙げられる。ほぼ無限の様々なポリマー物品が、本発明の開示のポリマー組成物から形成することができる。
【0124】
[00121]一実施態様において、本発明の開示の組成物は、第1のスライド部材および第2のスライド部材を生産するのに使用される。第1および第2のスライド部材は両方とも、本発明の開示による組成物から作製されていてもよい。特定には、第1のスライド部材および第2のスライド部材は、強化された熱可塑性ポリマーを、1種またはそれより多くの離型剤および超高分子量シリコーンと組み合わせて含む組成物から作製されてもよい。成分の相対量は、各組成物で同じであってもよいし、または異なっていてもよい。
【0125】
[00122]第1のスライド部材および第2のスライド部材は、スライド部材が互いに相対的に動くように、装置に含有されていてもよいし、互いに機能的に関連して設置されていてもよい。例えば、一実施態様において、第1のスライド部材は静止していてもよく、同時に、第2のスライド部材は第1のスライド部材を通じて動く。代替として、両方のスライド部材が互いに接触しながら動いてもよい。
【0126】
[00123]一実施態様において、本発明の開示のスライド部材は、医療用デバイスを生産するのに使用することができる。例えば、
図1を参照すると、吸入器20が示される。吸入器20は、マウスピース24に取り付けられたハウジング22を含む。ハウジング22は、吸入させようとする組成物を含有するキャニスターを受けるためのプランジャー26と機能的に連動している。組成物は、スプレーまたは粉末を含んでいてもよい。吸入器20は、第2のスライド部材と機能的に関連する第1のスライド部材を含んでいてもよい。例えば、特定の実施態様において、ハウジング22は、第1のスライド部材を含んでいてもよく、プランジャー26は、第2のスライド部材を含んでいてもよい。代替として、第1のスライド部材は、ハウジング22を含んでいてもよく、第2のスライド部材は、マウスピース24を含んでいてもよい。さらに別の実施態様において、ハウジングに対してスライドする内部スライド部材が、ハウジング22に含有されていてもよい。
【0127】
[00124]使用中、吸入器20は、定量の薬物療法剤、例えば喘息薬物療法剤を患者に投与する。喘息薬物療法剤は、噴射剤中に懸濁または溶解されていてもよいし、または粉末状で含有されていてもよい。患者が薬物療法剤を吸い込むように吸入器を始動させると、バルブが開いて、薬物療法剤がマウスピースから出ることを可能にする。
【0128】
[00125]本発明の開示の別の実施態様において、第1のスライド部材および第2のスライド部材は、
図2で示されるように、医療用注入器30に含有される。医療用注入器30は、プランジャー34と機能的に関連するハウジング32を含む。ハウジング32または第1のスライド部材は、プランジャー34または第2のスライド部材に対してスライドすることができる。医療用注入器30は、ばね仕掛けであってもよい。医療用注入器30は、患者に、典型的には大腿部または臀部に薬物を注射するためのものである。医療用注入器は、無針であってもよいし、または針を含有していてもよい。針を含有する場合、針の先端は、典型的には注射の前にハウジング内に保護される。一方で、無針注入器は、針を使用せずに皮膚を介して薬物療法剤を押し入れる加圧ガスのシリンダーを含有していてもよい。
【0129】
[00126]本発明の開示のポリマー組成物は、
図2で示されるような注入器を構築することに特によく適しており、このような注入器としては、高粘性の医薬、例えばタンパク質ベースの医薬品を含む生物製剤を分配するためのシリンジおよび自己注入器が挙げられる。医薬品パイプラインにおいて高粘性の医薬がより普及するようになってから、送達デバイスは、高粘度の薬物が従来の自己注入器にもたらす様々な深刻な問題に直面している。注入器は、例えば、患者にとって痛みの増加をもたらす可能性があるより大きい直径の針を必要としないように、より大きい注射力を備えて形成される。これらの力は、動作の前に、通常、圧縮させたばねとして、デバイスに蓄えることができる。
【0130】
[00127]ポリマー組成物は、高圧送達デバイスを生産するのによく適しているだけでなく、機械特性または精度を失うことなく再使用可能であることと、滅菌放射線に曝露させることが可能であることによって持続可能性にも寄与することができる。特定には、本発明の開示に従って作製された成形品は、複数回使用の後でさえも、摩耗およびクリープ耐性である。
【0131】
[00128]クリープまたはコールドフローは、長期間高い応力下に保持した場合、ゆっくり変形する材料の傾向を指す。したがって、クリープは、生物製剤のための注入器を設計する場合に重要な考察事項であり得る。針のサイズを大きくすることなくこれらの粘性配合物を送達するために、これらの注入器は、針を通じて薬物を押し出す力を、典型的に要求される力に比べてより大きくすることを必要とされる。したがって、より大きい力が、動作の前に、通常、圧縮させたばねの形態で、デバイスに蓄えられる必要性がある。これは、デバイスの構成要素がより大きい応力下に置かれることを意味し、それゆえにクリープの影響をうけやすくなり、また、蓄えられた力の一部の損失の影響を受けやすくなり、それらはデバイスの信頼度を落とし得る。本発明の開示に従って作製された成形品は、強化されたクリープ特性を有し、また、物品を上記の用途に良好に適するものとする他の特性を有する。
【0132】
[00129]例えば、優れたクリープ耐性に加えて、本発明の開示のポリマー組成物は、スナップフィット組立て品に好適な伸びの保持、高い強度および剛性、ガンマ滅菌のための優れた適性、高い摩耗耐性、低い離脱力(breakaway force)、送達中の改善された患者快適性のための静かなスライディング、およびスティックスリップの排除、優れた耐薬品性、および滑らかで魅力的な表面仕上げを呈示する。
【0133】
[00130]一形態において、本発明の開示のポリマー組成物は、高粘性の流体、例えば生物製剤を分配するように設計される注入器、特定には自己注入器を生産するのに使用される。生物製剤は、例えば、比較的高い分子量を有していてもよい。生物製剤は、例えば、約50kDaより大きい平均分子量を有していてもよく、例えば約75kDaより大きい、例えば約100kDaより大きい、例えば約125kDaより大きい平均分子量を有していてもよい。上記の生物製剤は、約7cPより大きい粘度を有する流体に含有されていてもよく、例えば約10cPより大きい、例えば約12cPより大きい、例えば約15cPより大きい、例えば約20cPより大きい、例えば約25cPより大きい、例えば約50cPより大きい、例えば約75cPより大きい、例えば約100cPより大きい、例えば約200cPより大きい、例えば約300cPより大きい粘度を有する流体に含有されていてもよい。粘度は、一般的に、約1500未満cPである。
【0134】
[00131]注入器は、約0.25mLより多く、例えば約0.5mLより多く、例えば約0.75mLより多く、一般的に約5未満mL、例えば約4未満mL、例えば約3未満mLの流体の用量を送達するように設計することができる。注入器は、一般的に約0.08mmより大きく、例えば約0.1mmより大きく、例えば約0.12mmより大きく、例えば約0.14mmより大きく、例えば約0.16mmより大きく、一般的に約0.3mm未満、例えば約0.25mm未満、例えば約0.22mm未満、例えば約0.2mm未満の孔サイズを有する針を含んでいてもよい。
【0135】
[00132]注入器は、一般的に約2Nより大きい最大の力で、流体、例えば生物製剤を皮下に注射するように設計することができる。最大の力は、全ての内容物が注入器から押し出される前の最も大きい力である。最大の力は、約3Nより大きくてもよく、例えば約4Nより大きくてもよく、例えば約5Nより大きくてもよく、例えば約6Nより大きくてもよく、例えば約7Nより大きくてもよく、例えば約8Nより大きくてもよく、例えば約10Nより大きくてもよく、例えば約12Nより大きくてもよい。最大の力は、一般的に、約20N未満である。注入器から流体が放出される圧力は、一般的に約100mPaより高くてもよく、例えば約150mPaより高くてもよく、例えば約175mPaより高くてもよく、例えば約200mPaより高くてもよく、例えば約225mPaより高くてもよく、例えば約250mPaより高くてもよく、例えば特定には約275mPaであってもよく、例えば約300mPaより高くてもよく、例えば約325mPaより高くてもよく、一般的に約1,000mPa未満であってもよい。
【0136】
特性
[00133]本発明の開示のポリマー組成物は、優れた機械特性を示すことができる。例えば、ISO試験番号527に従って測定される組成物またはポリマー物品の引張係数は、約7000MPaより大きくてもよく、例えば約7200MPaより大きくてもよく、例えば約7500MPaより大きくてもよく、一般的に約15,000MPa未満であってもよく、例えば約10,000MPa未満であってもよい。
【0137】
[00134]組成物の破断応力は、一般的に約100MPaより大きくてもよく、例えば約110MPaより大きくてもよく、例えば約115MPaより大きくてもよく、例えば約120MPaより大きくてもよく、一般的に約180MPa未満であってもよい。破断ひずみは、一般的に約2.0%より大きくてもよく、例えば約2.3%より大きくてもよく、一般的に約4%未満であってもよい。組成物は、23℃で試験した場合、約6kJ/m2より大きく、例えば約8kJ/m2より大きく、例えば約9kJ/m2より大きく、一般的に約20kJ/m2未満、例えば約15kJ/m2未満のノッチ付きシャルピー衝撃強度を呈示することができる。
【0138】
[00135]本発明の開示のポリマー組成物は、1種またはそれより多くの離型剤の存在のために、「パーツ放出試験(part ejection test)」に従って測定された場合、低いパーツ放出力(part ejection force)を示すことができる。パーツ放出試験中、特定の寸法で成形されたパーツは、例えば射出成形後に、モールドから取り出される。次いで力変換器を使用して、モールドからパーツを取り出すのに必要な力の量を測定する。射出成形分野において周知のあらゆる好適な力変換器を使用することができる。力変換器は、少なくとも0.21ms/4800Hzの分解能で作動し得る。本発明の開示のポリマー組成物は、約700N未満の放出力を示し得る。放出力は、一般的に、約200Nより高い。
図3は、試験に従って成形されるパーツの寸法を例示する。パーツは、39グラムの射出重量(shot weight)を用いて成形される。
【0139】
[00136]本発明の開示は、以下の実施例を参照しながらよりよく理解することができる。
【実施例】
【0140】
[00137]続いて以下に、実施例を例証として示すが、限定することは目的ではない。本発明の利益および利点の一部を示すために、以下の実験を実行した。
【0141】
実施例1
[00138]ガラス繊維および摩擦調整剤を含有する様々なポリマー組成物を配合し、摩擦特徴および物理的特性に関して試験した。組成物のそれぞれは、ポリブチレンテレフタレートポリマー、ポリエチレンテレフタレートポリマー、および22重量%の量のガラス繊維を含有していた。次いで超高分子量シリコーンを、ポリエステルエラストマーと共に組成物に添加した。各組成物は、タルク核剤を含有していた。
【0142】
[00139]4種の異なる組成物を配合した。第1の組成物は、離型剤を含有していなかった。第2の組成物は、非極性離型剤を含有し、第3の組成物は、極性離型剤を含有し、第4の組成物は、非極性離型剤と極性離型剤との組合せを含有していた。
【0143】
[00140]以下の組成物を配合し、試験した:
【0144】
【0145】
[00141]それぞれ各々の組成物の成分を一緒に混ぜて、ZSK 25MC(ヴェルナー&プフライダー(Werner & Pfleiderer)、ドイツ)ツインスクリュー押出機を使用して混合した。混練要素を備えたスクリューの配置を、成分の効果的な徹底的な混合が起こるように選択した。組成物を押し出し、ペレット化した。ペレットを120℃で4時間乾燥させ、次いで射出成形した。
【0146】
[00142]組成物/モールドを、様々な摩擦学的および物理的特性に関して試験した。
[00143]スティックスリップ試験を実行して、動的摩擦係数を決定した。スティックスリップ試験をVDA230-206に従って実行した。ボール-オン-プレート配置を、30Nの負荷、8mm/秒のスライディング速度、および1000サイクルの試験期間で利用した。
【0147】
[00144]本発明の開示に従って配合された組成物を、動的摩擦係数試験のためのプレートに形成した。実験の第1のセットにおいて、ポリカーボネートおよびアクリロニトリルブタジエンスチレンポリマーブレンド(サビックからのCYCOLOY C1204H)から作製されるボールに対して組成物を試験した。以下の結果を得た:
【0148】
【0149】
[00145]また組成物を、物理的特性に関しても試験した。ISO試験527:2012に従って、引張特性を試験した。ISO試験179-1:2010に従って、ノッチ付きシャルピー衝撃強度を試験した。A型ノッチ(0.25mmの基円半径)および1型の試料サイズ(長さ80mm、幅10mm、および厚さ4mm)を使用して、試験を行った。試験を23℃の温度で実行した以下の結果を得た:
【0150】
【0151】
[00146]異なるポリマー組成物も、上述したパーツ放出試験に従ってパーツ放出力に関して試験した。サンプル番号1は、714Nのパーツ放出力を示した。サンプル番号2は、852Nのパーツ放出力を示した。サンプル番号3は、1,087Nのパーツ放出力を示した。サンプル番号4は、679Nのパーツ放出力を示した。異なる配合物もモールドデポジット研究に供した。5,000回の成形体射出(molding shot)の後に、モールドデポジットを観察した。各射出中にディスクを成形した。モールドデポジットの量を観察し、1、2、または3のランク付けシステムに従ってランク付けした。ここで3は最も多くのモールドデポジットを表し、1のランク付けはモールド内部のスクラッチ可能な材料がないかほんのわずかであったことを示す。サンプル番号1は、3のランク付けを示し、サンプル番号2は、2のランク付けを示し、一方でサンプル番号3および4は、1のランク付けのみを示した。
【0152】
[00147]上記のサンプル番号4をさらに、ガンマ線曝露の後に、クリープ性能および安定性に関して試験した。
[00148]クリープを、20MPa、40MPa、および60MPaで、23℃で1000時間にわたり測定した。以下の結果を得た:
【0153】
【0154】
[00149]示した通り、組成物は、20MPaで試験した場合、約5000MPaより大きく、例えば約5200MPaより大きく、例えば約5400MPaより大きく、例えば約5600MPaより大きく、例えば約5800MPaより大きく、約7000MPa未満のクリープ弾性率を示した。示した通り、組成物は、40MPaで試験した場合、約4300MPaより大きく、例えば約4400MPaより大きく、例えば約4500MPaより大きく、例えば約4600MPaより大きく、例えば約4700MPaより大きく、約6500MPa未満のクリープ弾性率を示した。組成物は、60MPaで試験した場合、約3500MPaより大きく、例えば約3700MPaより大きく、例えば約3900MPaより大きく、例えば約4000MPaより大きく、例えば約4100MPaより大きく、約6000MPa未満のクリープ弾性率を示した。
【0155】
[00150]サンプル番号4から作製される試験片を異なるレベルのガンマ線に曝露し、次いで引張特性に関して試験した。以下の結果を得た:
【0156】
【0157】
[00151]示した通り、組成物は、高いレベルのエネルギーへの曝露の後でさえも極めて安定であった。上記で示した通り、引張係数は、150kGyのガンマ線量の後、約5%未満、例えば約3%未満、例えば約2%未満の減少であり、例えばさらには約1%未満の減少であった。
【0158】
実施例2
[00152]様々な異なるポリマー組成物を配合し、物理的特性に関して試験した。以下の組成物を配合し、試験した。
【0159】
【0160】
【0161】
[00153]上記のサンプル番号9および11は、他のサンプルと比較して優れた物理的特性を示す。加えて、これらのサンプルは、モールドサイクル時間を低減する目的で、改善された溶融加工特性を有するポリマー組成物を生産するように配合されている。
【0162】
[00154]本発明へのこれらのおよび他の改変およびバリエーションは、本発明の本質および範囲から逸脱することなく当業者によって実施することができ、このような本質および範囲は、より特定には添付の特許請求の範囲に記載される。加えて、様々な実施態様の態様は、全体または部分的に交換可能であることが理解されるものとする。さらに、当業者は、前述の説明が、単なる一例であり、添付の特許請求の範囲にさらに記載されるような本発明を限定することを意図していないことを理解するであろう。
【符号の説明】
【0163】
20 吸入器
22 ハウジング
24 マウスピース
26 プランジャー
30 医療用注入器
32 ハウジング
34 プランジャー
【国際調査報告】