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特表2024-515711細胞老化および細胞死を誘導する抗がん組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】細胞老化および細胞死を誘導する抗がん組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/496 20060101AFI20240403BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240403BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240403BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20240403BHJP
【FI】
A61K31/496
A61P35/00
A61P35/02
A23L33/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564576
(86)(22)【出願日】2022-04-14
(85)【翻訳文提出日】2023-10-20
(86)【国際出願番号】 KR2022005410
(87)【国際公開番号】W WO2022225259
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】10-2021-0050983
(32)【優先日】2021-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0069844
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0093288
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0186561
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0033299
(32)【優先日】2022-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519447558
【氏名又は名称】オスティオニューロジェン インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】OSTEONEUROGEN INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ビョンス
(72)【発明者】
【氏名】メン,ムンギ
(72)【発明者】
【氏名】キム,セビョル
(72)【発明者】
【氏名】キム,イッカン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ハンス
【テーマコード(参考)】
4B018
4C086
【Fターム(参考)】
4B018MD08
4B018ME08
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC50
4C086GA02
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、細胞老化および細胞死を誘導する化合物を有効成分として含有する抗がん組成物に関し、本発明化合物は、がん細胞と正常細胞を区別し、がん細胞特異的に細胞老化と細胞死を同時に誘導することができ、がん細胞特異的標的物質を付着する必要がなく、抗がん剤が正常細胞を攻撃して発生する頻繋な副作用を最小化することができ、上記した二重作用に基づいて強力な抗がん効果を発揮することができるという特徴がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される化合物またはその塩を有効成分として含有する腫瘍またはがん疾患の予防または治療用薬学組成物:
[化学式1]
【化1】
上記化学式1中、
は、C1-5のアルキル、C5-6の環状アルキル、OまたはNのうち1つ以上のヘテロ原子を含有するC5-6の環状アルキル、C6-12のアリール、またはOまたはNのうち1つ以上のヘテロ原子を含有するC5-6のヘテロアリールであり、
は、水素、エチル、アセチル、アセトキシ、カルボキシ、ベンゾイルオキシまたは3,4,5-トリヒドロキシベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシである。
【請求項2】
は、メチル、エチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはフェニルであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
は、メチルであり、
は、水素であり、
は、水素、ヒドロキシまたはメトキシであり、
は、ヒドロキシまたはメトキシであり、
は、水素、ヒドロキシまたはメトキシであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記化合物は、下記化学式2~5のうちいずれか1つで表されることを特徴とする請求項1に記載の組成物:
[化学式2]
【化2】
[化学式3]
【化3】
[化学式4]
【化4】
[化学式5]
【化5】
【請求項5】
前記がんは、血液がんまたは固形がんであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記血液がんは、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫または再生不良性貧血であることを特徴とする請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記固形がんは、脳腫瘍、良性星状細胞腫、悪性星状細胞腫、脳下垂体腺腫、髄膜腫、脳リンパ腫、乏突起膠腫、頭蓋咽頭腫、上衣細胞腫、脳幹腫瘍、頭頸部腫瘍、喉頭がん、口腔咽頭がん、鼻腔がん、鼻咽頭がん、唾液腺腫瘍、下咽頭がん、甲状腺がん、口腔がん、胸部腫瘍、小細胞性肺がん、非小細胞性肺がん、胸腺がん、縦隔腫瘍、食道がん、乳がん、男性乳がん、腹部腫瘍、胃がん、肝がん、胆嚢がん、胆道がん、膵臓がん、小腸がん、大腸がん、肛門がん、膀胱がん、腎臓がん、男性生殖器腫瘍、陰茎がん、前立腺がん、女性生殖器腫瘍、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、子宮肉腫、膣がん、女性外部生殖器腫瘍、女性尿道がんまたは皮膚がんであることを特徴とする請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記化合物は、
(i)複製老化(replicative senescence,RS)および/または腫瘍遺伝子誘導老化(oncogene-induced senescence,OIS)の誘導による腫瘍またはがん細胞特異的増殖の抑制;
(ii)腫瘍またはがん細胞NAD/NADH比の逆転;
(iii)腫瘍またはがん細胞ROSの上向き調節;および
(iv)腫瘍またはがん細胞特異的細胞死誘導;で構成される群から選ばれる1つ以上
の作用によって抗腫瘍または抗がん活性を示すことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
下記化学式1で表される化合物またはその塩を有効成分として含有する腫瘍またはがん疾患の予防または改善用医薬部外品組成物:
[化学式1]
【化6】
上記化学式1中、
は、C1-5のアルキル、C5-6の環状アルキル、OまたはNのうち1つ以上のヘテロ原子を含有するC5-6の環状アルキル、C6-12のアリール、またはOまたはNのうち1つ以上のヘテロ原子を含有するC5-6のヘテロアリールであり、
は、水素、エチル、アセチル、アセトキシ、カルボキシ、ベンゾイルオキシまたは3,4,5-トリヒドロキシベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシである。
【請求項10】
は、メチル、エチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはフェニルであることを特徴とする請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
は、メチルであり、
は、水素であり、
は、水素、ヒドロキシまたはメトキシであり、
は、ヒドロキシまたはメトキシであり、
は、水素、ヒドロキシまたはメトキシであることを特徴とする請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記化合物は、下記化学式2~5のうちいずれか1つで表されることを特徴とする請求項9に記載の組成物:
[化学式2]
【化7】
[化学式3]
【化8】
[化学式4]
【化9】
[化学式5]
【化10】
【請求項13】
前記がんは、血液がんまたは固形がんであることを特徴とする請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
前記血液がんは、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫または再生不良性貧血であることを特徴とする請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記固形がんは、脳腫瘍、良性星状細胞腫、悪性星状細胞腫、脳下垂体腺腫、髄膜腫、脳リンパ腫、乏突起膠腫、頭蓋咽頭腫、上衣細胞腫、脳幹腫瘍、頭頸部腫瘍、喉頭がん、口腔咽頭がん、鼻腔がん、鼻咽頭がん、唾液腺腫瘍、下咽頭がん、甲状腺がん、口腔がん、胸部腫瘍、小細胞性肺がん、非小細胞性肺がん、胸腺がん、縦隔腫瘍、食道がん、乳がん、男性乳がん、腹部腫瘍、胃がん、肝がん、胆嚢がん、胆道がん、膵臓がん、小腸がん、大腸がん、肛門がん、膀胱がん、腎臓がん、男性生殖器腫瘍、陰茎がん、前立腺がん、女性生殖器腫瘍、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、子宮肉腫、膣がん、女性外部生殖器腫瘍、女性尿道がんまたは皮膚がんであることを特徴とする請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記化合物は、
(i)複製老化(replicative senescence,RS)および/または腫瘍遺伝子誘導老化(oncogene-induced senescence,OIS)の誘導による腫瘍またはがん細胞特異的増殖の抑制;
(ii)腫瘍またはがん細胞NAD/NADH比の逆転;
(iii)腫瘍またはがん細胞ROSの上向き調節;および
(iv)腫瘍またはがん細胞特異的細胞死誘導;で構成される群から選ばれる1つ以上
の作用によって抗腫瘍または抗がん活性を示すことを特徴とする請求項9に記載の組成物
【請求項17】
下記化学式1で表される化合物またはその塩を有効成分として含有する腫瘍またはがん疾患の予防または改善用食品組成物:
[化学式1]
【化11】
上記化学式1中、
は、C1-5のアルキル、C5-6の環状アルキル、OまたはNのうち1つ以上のヘテロ原子を含有するC5-6の環状アルキル、C6-12のアリール、またはOまたはNのうち1つ以上のヘテロ原子を含有するC5-6のヘテロアリールであり、
は、水素、エチル、アセチル、アセトキシ、カルボキシ、ベンゾイルオキシまたは3,4,5-トリヒドロキシベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシである。
【請求項18】
は、メチル、エチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはフェニルであることを特徴とする請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
は、メチルであり、
は、水素であり、
は、水素、ヒドロキシまたはメトキシであり、
は、ヒドロキシまたはメトキシであり、
は、水素、ヒドロキシまたはメトキシであることを特徴とする請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
前記化合物は、下記化学式2~5のうちいずれか1つで表されることを特徴とする請求項17に記載の組成物:
[化学式2]
【化12】
[化学式3]
【化13】
[化学式4]
【化14】
[化学式5]
【化15】
【請求項21】
前記がんは、血液がんまたは固形がんであることを特徴とする請求項17に記載の組成物。
【請求項22】
前記血液がんは、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫または再生不良性貧血であることを特徴とする請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記固形がんは、脳腫瘍、良性星状細胞腫、悪性星状細胞腫、脳下垂体腺腫、髄膜腫、脳リンパ腫、乏突起膠腫、頭蓋咽頭腫、上衣細胞腫、脳幹腫瘍、頭頸部腫瘍、喉頭がん、口腔咽頭がん、鼻腔がん、鼻咽頭がん、唾液腺腫瘍、下咽頭がん、甲状腺がん、口腔がん、胸部腫瘍、小細胞性肺がん、非小細胞性肺がん、胸腺がん、縦隔腫瘍、食道がん、乳がん、男性乳がん、腹部腫瘍、胃がん、肝がん、胆嚢がん、胆道がん、膵臓がん、小腸がん、大腸がん、肛門がん、膀胱がん、腎臓がん、男性生殖器腫瘍、陰茎がん、前立腺がん、女性生殖器腫瘍、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、子宮肉腫、膣がん、女性外部生殖器腫瘍、女性尿道がんまたは皮膚がんであることを特徴とする請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
前記化合物は、
(i)複製老化(replicative senescence,RS)および/または腫瘍遺伝子誘導老化(oncogene-induced senescence,OIS)の誘導による腫瘍またはがん細胞特異的増殖の抑制;
(ii)腫瘍またはがん細胞NAD/NADH比の逆転;
(iii)腫瘍またはがん細胞ROSの上向き調節;および
(iv)腫瘍またはがん細胞特異的細胞死誘導;で構成される群から選ばれる1つ以上
の作用によって抗腫瘍または抗がん活性を示すことを特徴とする請求項17に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞老化および細胞死を誘導する化合物を有効成分として含有する抗がん組成物に関し、より詳細には、化学式1で表される化合物またはその塩を有効成分として含有し、腫瘍またはがん細胞特異的に細胞老化および細胞死を誘導し、抗腫瘍または抗がん効果を示す抗腫瘍または抗がん組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍(tumor)は、身体組織の自律的な過剰成長によって異常に成長した塊りを意味し、良性腫瘍(benign tumor)と悪性腫瘍(malignant tumor)とに分けられる。良性腫瘍が比較的成長速度が遅く、転移(metastasis;腫瘍が元々発生したところから遠く離れたところに移動)しないのに対し、悪性腫瘍は、周囲組織に浸潤し、迅速に成長し、身体の各部位に拡散または転移し、生命を威嚇する。したがって、悪性腫瘍をがんと同じ意味と考えることができる。
【0003】
身体を構成する最も小さい単位である細胞(cell)は、通常は細胞自体の調節機能によって分裂および成長し、寿命が尽きるか損傷すると、自ら死滅(死んで消滅する)して、全般的な数の均衡を維持する。しかしながら、様々な原因によってこれらの細胞自体の調節機能に問題が生じた場合、通常は死滅すべき異常細胞が過剰増殖し、場合によって周囲組織および臓器に侵入して腫瘤(塊り)を形成し、既存の構造を破壊したり変形させるが、このような状態をがん(cancer)と定義することができる。
【0004】
細胞周期を標的化する小分子は、幹細胞分化の全身的抑制または恒常性免疫の悪化のような好ましくない医学的危険性のため、がんを誘発することができると見なされてきた。しかしながら、フラボンやイソフラボンにおいて主に発見されるクロモンスキャフォールド(chromone-scaffold)のような天然薬物スキャフォールドは、天然物としてほとんど安全であることが立証されたので、医学的用途に開発する利点がある。実際に、クロモンスキャフォールド誘導体の1つであるSB203580は、抗がん活性を有することが報告された(Yan W et al.,Toxicol Lett 2016;259:28-34.DOI:10.1016/j.toxlet.2016.07.591)。
【0005】
フラボンは、ポリフェノールファミリーメンバーであり、植物系でのみ10,000個以上の化合物グループが独占的に発見された。一般的に、これらの植物系化合物(phytochemical)は、植物を放射線損傷から保護する機能を果たす。フラボンは、抗酸化または抗炎症潜在力によって関節炎および喘息のような炎症性疾患を治療するのに長期間使用されてき、クロモン(Chromone、1,4-benzopyrone-4-one)は、フラボンとイソフラボンを構成する中心化学支持体である。
【0006】
本発明者らは、最近Artemisia種からのクロモンスキャフォールド含有化合物であるユーパチリン(eupatilin)と本発明化合物(韓国登録特許第10-1871166号)がアクチン重合体を分解して線維症を抑制し、その結果、上皮間葉転換(EMT)が抑制されることを確認した(Kim H-S et al.,bioRxiv
2020;770404.DOI:10.1101/770404)。
【0007】
これと関連して、本発明者らは、さらなる研究を進めているところ、本発明化合物が様々な攻撃的がん細胞株で複製老化(replicative senescence,RS)および腫瘍遺伝子誘導老化(oncogene-induced senescen
ce,OIS)の強力な誘導剤であり、このような細胞老化機序によってがん細胞の無制限増殖を抑制し、NAD生合成によるNAD/NADH比の逆転およびROSの上向き調節を通じて腫瘍化から脱出を誘導し、その他にも細胞死を誘導する一連の作用を通じてがん治療のための強力な治療剤として機能することができることを確認することによって、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、細胞老化および細胞死を同時に誘導するクロモンスキャフォールド誘導体の抗腫瘍および/または抗がん用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、下記化学式1で表される化合物またはその塩を有効成分として含有する腫瘍またはがん疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する:
【0010】
[化学式1]
【化1】
【0011】
上記化学式1中、
は、C1-5のアルキル、C5-6の環状アルキル、OまたはNのうち1つ以上のヘテロ原子を含有するC5-6の環状アルキル、C6-12のアリール、またはOまたはNのうち1つ以上のヘテロ原子を含有するC5-6のヘテロアリールであり、
は、水素、エチル、アセチル、アセトキシ、カルボキシ、ベンゾイルオキシまたは3,4,5-トリヒドロキシベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシである。
【0012】
本発明は、また、下記化学式1で表される化合物またはその塩を有効成分として含有する腫瘍またはがん疾患の予防または改善用医薬部外品組成物を提供する:
【0013】
[化学式1]
【化2】
【0014】
上記化学式1中、
は、C1-5のアルキル、C5-6の環状アルキル、OまたはNのうち1つ以上のヘテロ原子を含有するC5-6の環状アルキル、C6-12のアリール、またはOまたはNのうち1つ以上のヘテロ原子を含有するC5-6のヘテロアリールであり、
は、水素、エチル、アセチル、アセトキシ、カルボキシ、ベンゾイルオキシまたは3,4,5-トリヒドロキシベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシである。
【0015】
本発明は、また、下記化学式1で表される化合物またはその塩を有効成分として含有する腫瘍またはがん疾患の予防または改善用食品組成物を提供する:
【0016】
[化学式1]
【化3】
【0017】
上記化学式1中、
は、C1-5のアルキル、C5-6の環状アルキル、OまたはNのうち1つ以上のヘテロ原子を含有するC5-6の環状アルキル、C6-12のアリール、またはOまたはNのうち1つ以上のヘテロ原子を含有するC5-6のヘテロアリールであり、
は、水素、エチル、アセチル、アセトキシ、カルボキシ、ベンゾイルオキシまたは3,4,5-トリヒドロキシベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシである。
【0018】
本発明は、また、下記化学式1で表される化合物またはその塩をこれを必要とする個体に投与する段階を含む、腫瘍またはがん疾患の予防または治療方法を提供する:
【0019】
[化学式1]
【化4】
【0020】
上記化学式1中、
は、C1-5のアルキル、C5-6の環状アルキル、OまたはNのうち1つ以上のヘテロ原子を含有するC5-6の環状アルキル、C6-12のアリール、またはOまたはNのうち1つ以上のヘテロ原子を含有するC5-6のヘテロアリールであり、
は、水素、エチル、アセチル、アセトキシ、カルボキシ、ベンゾイルオキシまたは3,4,5-トリヒドロキシベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシである。
【0021】
本発明は、また、下記化学式1で表される化合物またはその塩の腫瘍またはがん疾患の予防または治療のための用途を提供する:
【0022】
[化学式1]
【化5】
【0023】
上記化学式1中、
は、C1-5のアルキル、C5-6の環状アルキル、OまたはNのうち1つ以上のヘテロ原子を含有するC5-6の環状アルキル、C6-12のアリール、またはOまたはNのうち1つ以上のヘテロ原子を含有するC5-6のヘテロアリールであり、
は、水素、エチル、アセチル、アセトキシ、カルボキシ、ベンゾイルオキシまたは3,4,5-トリヒドロキシベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシである。
【0024】
本発明は、また、腫瘍またはがん疾患の予防または治療のための薬物の製造のための下記化学式1で表される化合物またはその塩の用途を提供する:
【0025】
[化学式1]
【化6】
【0026】
上記化学式1中、
は、C1-5のアルキル、C5-6の環状アルキル、OまたはNのうち1つ以上のヘテロ原子を含有するC5-6の環状アルキル、C6-12のアリール、またはOまたはNのうち1つ以上のヘテロ原子を含有するC5-6のヘテロアリールであり、
は、水素、エチル、アセチル、アセトキシ、カルボキシ、ベンゾイルオキシまたは3,4,5-トリヒドロキシベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシである。
【0027】
本発明において、Rは、メチル、エチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはフェニルであることを特徴とする。
【0028】
本発明において、
は、メチルであり、
は、水素であり、
は、水素、ヒドロキシまたはメトキシであり、
は、ヒドロキシまたはメトキシであり、
は、水素、ヒドロキシまたはメトキシであることを特徴とする。
【0029】
本発明において、前記化合物は、下記化学式2~5のうちいずれか1つで表されることを特徴とする:
【0030】
[化学式2]
【化7】
【0031】
[化学式3]
【化8】
【0032】
[化学式4]
【化9】
【0033】
[化学式5]
【化10】
【0034】
本発明において、前記がんは、血液がんまたは固形がんであることを特徴とする。
【0035】
本発明において、前記血液がんは、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫または再生不良性貧血であることを特徴とする。
【0036】
本発明において、前記固形がんは、脳腫瘍、良性星状細胞腫、悪性星状細胞腫、脳下垂体腺腫、髄膜腫、脳リンパ腫、乏突起膠腫、頭蓋咽頭腫、上衣細胞腫、脳幹腫瘍、頭頸部腫瘍、喉頭がん、口腔咽頭がん、鼻腔がん、鼻咽頭がん、唾液腺腫瘍、下咽頭がん、甲状腺がん、口腔がん、胸部腫瘍、小細胞性肺がん、非小細胞性肺がん、胸腺がん、縦隔腫瘍、食道がん、乳がん、男性乳がん、腹部腫瘍、胃がん、肝がん、胆嚢がん、胆道がん、膵臓がん、小腸がん、大腸がん、肛門がん、膀胱がん、腎臓がん、男性生殖器腫瘍、陰茎がん、前立腺がん、女性生殖器腫瘍、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、子宮肉腫、膣がん、女性外部生殖器腫瘍、女性尿道がんまたは皮膚がんであることを特徴とする。
【0037】
本発明において、
前記化合物は、
(i)複製老化(replicative senescence,RS)および/または腫瘍遺伝子誘導老化(oncogene-induced senescence,OIS)の誘導による腫瘍またはがん細胞特異的増殖の抑制;
(ii)腫瘍またはがん細胞NAD/NADH比の逆転;
(iii)腫瘍またはがん細胞ROSの上向き調節;および
(iv)腫瘍またはがん細胞特異的細胞死誘導;で構成される群から選ばれる1つ以上
の作用によって抗腫瘍または抗がん活性を示すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0038】
本発明化合物は、がん細胞と正常細胞を区別し、がん細胞特異的に細胞老化と細胞死を同時に誘導することができ、がん細胞特異的標的物質を付着する必要がなく、抗がん剤が正常細胞を攻撃して発生する頻繋な副作用を最小化することができ、上記した二重作用に基づいて強力な抗がん効果を発揮することができるという特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、本発明の一実施例による化学式2化合物(ONG41008)、ユーパチリン(ONG21002)、他のクロモンスキャフォールド含有誘導体の処理によるA549細胞における細胞老化誘導効果を比較した結果である。
図2a図2aは、本発明の一実施例による化学式2化合物(ONG41008)の濃度別処理24時間経過後の(a)p53の発現量および細胞内位置変化をA549細胞で観察した結果である。
図2b図2bは、本発明の一実施例による化学式2化合物(ONG41008)の濃度別処理24時間経過後の(b)p21の発現量および細胞内位置変化をA549細胞で観察した結果である。
図2c図2cは、本発明の一実施例による化学式2化合物(ONG41008)の濃度別処理24時間経過後の(c)p16の発現量および細胞内位置変化をA549細胞で観察した結果である。
図3図3は、本発明の一実施例による化学式2化合物(ONG41008)(10μM)の処理72時間経過後のp16の発現量および細胞内位置変化をA549細胞で観察した結果である。
図4a図4aは、本発明の一実施例による化学式2化合物(ONG41008)の濃度別処理24時間経過後のp21、p16、p53、p-p53の発現量変化をウェスタンブロットで観察した結果である(当該タンパク質バンドの位置は黄色で表示される)。
図4b図4bは、TGFβによりA549細胞増殖を誘導した後、本発明の一実施例による化学式2化合物(ONG41008)の処理による細胞変化を観察した結果である。
図5a図5aは、本発明の一実施例による化学式2化合物(ONG41008)の処理後、時間経過((a)24時間)によるA549細胞の細胞老化と多核化程度を確認した結果である。
図5b図5bは、本発明の一実施例による化学式2化合物(ONG41008)の処理後、時間経過((b)48時間)によるA549細胞の細胞老化と多核化程度を確認した結果である。
図5c図5cは、本発明の一実施例による化学式2化合物(ONG41008)の処理後、時間経過((c)72時間)によるA549細胞の細胞老化と多核化程度を確認した結果である。
図6図6は、本発明の一実施例による化学式2化合物(ONG41008)またはSAHAを濃度別に処理してミトコンドリア膜電位を観察し、細胞増殖抑制効果を確認した結果である。
図7a図7aは、本発明の一実施例による化学式2化合物(ONG41008)がA549細胞の細胞周期に及ぼす影響をウェスタンブロットで確認した結果である。
図7b図7bは、本発明の一実施例による化学式2化合物(ONG41008)を濃度別に処理し、前記化合物がA549細胞の細胞周期に及ぼす影響をPI染色で分析した結果である。
図7c図7cは、本発明の一実施例による化学式2化合物(ONG41008)またはSAHAを濃度別に処理し、A549細胞のNAD/NADH比に及ぼす影響を観察した結果である。
図7d図7dは、本発明の一実施例による化学式2化合物(ONG41008)がA549細胞のROS生成に及ぼす影響を確認した結果である。
図8図8は、本発明の一実施例による化学式2化合物(ONG41008)の処理によるA549細胞の細胞死を確認した結果である。
図9図9は、本発明の一実施例による化学式2化合物(ONG41008)またはパクリタキセルの処理によるH358細胞の細胞増殖抑制効果をCCK-8分析で確認した結果である。
図10図10は、本発明の一実施例による化学式2化合物(ONG41008)の処理によるH358細胞の有糸分裂崩壊を示す電子顕微鏡写真である。
図11図11は、本発明の一実施例による化学式2化合物(ONG41008)の濃度別処理によるH1299細胞の多核化を確認した結果である。
図12図12は、本発明の一実施例による化学式2化合物(ONG41008)またはパクリタキセルの処理によるPANC1細胞の細胞増殖抑制効果をCCK-8分析で確認した結果である。
図13図13は、本発明の一実施例による化学式2化合物(ONG41008)の処理によるPANC1細胞の多核化を確認した結果である。
図14図14は、本発明の一実施例による化学式2化合物(ONG41008)またはSAHAの処理によるMCF7細胞の細胞増殖抑制効果をCCK-8分析で確認した結果である。
図15図15は、本発明の一実施例による化学式2化合物(ONG41008)の処理によるMCF7細胞の多核化を確認した結果である。
図16図16は、本発明の一実施例による化学式2化合物(ONG41008)またはSAHAの処理によるPC3細胞の細胞増殖抑制効果をCCK-8分析で確認した結果である。
図17図17は、本発明の一実施例による化学式2化合物(ONG41008)またはSAHAの処理によるPC3細胞の細胞死をCaspase 3/7分析で確認した結果である。
図18図18は、本発明の一実施例による化学式2化合物(ONG41008)の処理によるPC3細胞の多核化を確認した結果である。
図19図19は、ヒト正常肺線維芽細胞に本発明の一実施例による化学式2化合物(ONG41008)、ニンテダニブまたはSAHAを処理し、細胞増殖抑制効果をCCK-8分析で比較した結果である。
図20図20は、ヒト正常肺線維芽細胞に本発明の一実施例による化学式2化合物(ONG41008)、ニンテダニブまたはSAHAを処理し、細胞死誘導の有無を比較した結果である。
図21図21は、本発明の一実施例による化学式2化合物(ONG41008)とユーパチリン(ONG21002)の抗がん(または抗腫瘍)効果誘導の作用機序を他のクロモンスキャフォールド誘導体と比較して整理した図である。
図22図22は、従来抗がん剤とクロモンスキャフォールド誘導体の併用投与によって誘導される効果を本発明化合物の単独投与によって発揮できることを示す図式である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
別途定義されない限り、本明細書において使用されたすべての技術的および科学的用語は、本発明の属する技術分野における熟練した専門家によって通常的に理解されるものと同じ意味を有する。一般的に、本明細書において使用された命名法は、本技術分野においてよく知られており、通常的に使用されるものである。
【0041】
生体内で細胞周期は、増殖(proliferation)、分化(differentiation)、細胞死(apoptosis)が調和を保つように精巧に調節される
が、このような精巧な調節機能に障害が発生すると、深刻な病気をもたらすことがあり、特に無限細胞増殖は、がんのような人体に非常に致命的かつ難治性疾患を発病させる。したがって、がんを治療するためには、細胞増殖を抑制する必要があり、細胞増殖抑制機能を示す抗がん剤は、細胞増殖抑制機能とともに、多くの副作用を発生させる。
【0042】
本発明では、クロモンスキャフォールド誘導体の1つである本発明化合物が細胞老化(すなわち、複製老化および発がん遺伝子誘導による老化)によって様々ながん細胞株の無制限増殖状態を解消することができることを確認した。興味深いことに、本発明化合物は、正常細胞ではこのような細胞老化を誘導せず、正常細胞増殖を阻害しないことが確認されたところ、一般抗がん剤のようにがん細胞を標的化する物質を別に付着する必要がないという長所を有していた。また、本発明化合物をマウスまたはラットに経口投与したとき、病理学的異常や毒性が観察されないことがさらに検証されたところ前臨床研究番号:U-18156、投与量1g)、本発明化合物は、副作用なく安全に抗がん効果を発揮することができることが分かった。
【0043】
したがって、本発明は、第1態様において、下記化学式1で表される化合物またはその塩を有効成分として含有する腫瘍またはがん疾患の予防または治療用薬学組成物に関する:
【0044】
[化学式1]
【化11】
【0045】
上記化学式1中、
は、C1-5のアルキル、C5-6の環状アルキル、OまたはNのうち1つ以上のヘテロ原子を含有するC5-6の環状アルキル、C6-12のアリール、またはOまたはNのうち1つ以上のヘテロ原子を含有するC5-6のヘテロアリールであり、
は、水素、エチル、アセチル、アセトキシ、カルボキシ、ベンゾイルオキシまたは3,4,5-トリヒドロキシベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシである。
【0046】
また、本発明は、第2態様において、下記化学式1で表される化合物またはその塩を有効成分として含有する腫瘍またはがん疾患の予防または改善用医薬部外品組成物に関する:
【0047】
[化学式1]
【化12】
【0048】
上記化学式1中、
は、C1-5のアルキル、C5-6の環状アルキル、OまたはNのうち1つ以上のヘテロ原子を含有するC5-6の環状アルキル、C6-12のアリール、またはOまたはNのうち1つ以上のヘテロ原子を含有するC5-6のヘテロアリールであり、
は、水素、エチル、アセチル、アセトキシ、カルボキシ、ベンゾイルオキシまたは3,4,5-トリヒドロキシベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシである。
【0049】
また、本発明は、第3態様において、下記化学式1で表される化合物またはその塩を有効成分として含有する腫瘍またはがん疾患の予防または改善用食品組成物を提供する:
【0050】
[化学式1]
【化13】
【0051】
上記化学式1中、
は、C1-5のアルキル、C5-6の環状アルキル、OまたはNのうち1つ以上のヘテロ原子を含有するC5-6の環状アルキル、C6-12のアリール、またはOまたはNのうち1つ以上のヘテロ原子を含有するC5-6のヘテロアリールであり、
は、水素、エチル、アセチル、アセトキシ、カルボキシ、ベンゾイルオキシまたは3,4,5-トリヒドロキシベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシである。
【0052】
また、本発明は、第4態様において、下記化学式1で表される化合物またはその塩をこれを必要とする個体に投与する段階を含む、腫瘍またはがん疾患の予防または治療方法に関する:
【0053】
[化学式1]
【化14】
【0054】
上記化学式1中、
は、C1-5のアルキル、C5-6の環状アルキル、OまたはNのうち1つ以上のヘテロ原子を含有するC5-6の環状アルキル、C6-12のアリール、またはOまたはNのうち1つ以上のヘテロ原子を含有するC5-6のヘテロアリールであり、
は、水素、エチル、アセチル、アセトキシ、カルボキシ、ベンゾイルオキシまたは3,4,5-トリヒドロキシベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシである。
【0055】
また、本発明は、第5態様において、下記化学式1で表される化合物またはその塩の腫瘍またはがん疾患の予防または治療のための用途に関する:
【0056】
[化学式1]
【化15】
【0057】
上記化学式1中、
は、C1-5のアルキル、C5-6の環状アルキル、OまたはNのうち1つ以上のヘテロ原子を含有するC5-6の環状アルキル、C6-12のアリール、またはOまたはNのうち1つ以上のヘテロ原子を含有するC5-6のヘテロアリールであり、
は、水素、エチル、アセチル、アセトキシ、カルボキシ、ベンゾイルオキシまたは3,4,5-トリヒドロキシベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾ
イルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシである。
【0058】
また、本発明は、第6態様において、腫瘍またはがん疾患の予防または治療のための薬物の製造のための下記化学式1で表される化合物またはその塩の用途に関する:
【0059】
[化学式1]
【化16】
【0060】
上記化学式1中、
は、C1-5のアルキル、C5-6の環状アルキル、OまたはNのうち1つ以上のヘテロ原子を含有するC5-6の環状アルキル、C6-12のアリール、またはOまたはNのうち1つ以上のヘテロ原子を含有するC5-6のヘテロアリールであり、
は、水素、エチル、アセチル、アセトキシ、カルボキシ、ベンゾイルオキシまたは3,4,5-トリヒドロキシベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシである。
【0061】
本発明の前記いずれか1つの態様において、Rは、メチル、エチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはフェニルであることを特徴とする。
【0062】
本発明の前記いずれか1つの態様において、
は、メチルであり、
は、水素であり、
は、水素、ヒドロキシまたはメトキシであり、
は、ヒドロキシまたはメトキシであり、
は、水素、ヒドロキシまたはメトキシであることを特徴とする。
【0063】
本発明の前記いずれか1つの態様において、前記化合物は、下記化学式2~5のうちいずれか1つで表されることを特徴とする:
【0064】
[化学式2]
【化17】
【0065】
[化学式3]
【化18】
【0066】
[化学式4]
【化19】
【0067】
[化学式5]
【化20】
【0068】
本発明の前記いずれか1つの態様において、前記がんは、血液がんまたは固形がんであることを特徴とする。
【0069】
本発明の前記いずれか1つの態様において、前記血液がんは、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫または再生不良性貧血であることを特徴とするが、これらに限定されるものではない。
【0070】
本発明の前記いずれか1つの態様において、前記固形がんは、脳腫瘍、良性星状細胞腫、悪性星状細胞腫、脳下垂体腺腫、髄膜腫、脳リンパ腫、乏突起膠腫、頭蓋咽頭腫、上衣細胞腫、脳幹腫瘍、頭頸部腫瘍、喉頭がん、口腔咽頭がん、鼻腔がん、鼻咽頭がん、唾液腺腫瘍、下咽頭がん、甲状腺がん、口腔がん、胸部腫瘍、小細胞性肺がん、非小細胞性肺がん、胸腺がん、縦隔腫瘍、食道がん、乳がん、男性乳がん、腹部腫瘍、胃がん、肝がん、胆嚢がん、胆道がん、膵臓がん、小腸がん、大腸がん、肛門がん、膀胱がん、腎臓がん
、男性生殖器腫瘍、陰茎がん、前立腺がん、女性生殖器腫瘍、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、子宮肉腫、膣がん、女性外部生殖器腫瘍、女性尿道がんまたは皮膚がんであることを特徴とするが、これらに限定されるものではない。
【0071】
本発明の前記いずれか1つの態様において、
前記化合物は、
(i)複製老化(replicative senescence,RS)および/または腫瘍遺伝子誘導老化(oncogene-induced senescence,OIS)の誘導による腫瘍またはがん細胞特異的増殖の抑制;
(ii)腫瘍またはがん細胞NAD/NADH比の逆転;
(iii)腫瘍またはがん細胞ROSの上向き調節;および
(iv)腫瘍またはがん細胞特異的細胞死誘導;で構成される群から選ばれる1つ以上
の作用によって抗腫瘍または抗がん活性を示すことを特徴とするが、これに限定されるものではない。
【0072】
本発明の組成物は、本発明の化合物またはその塩それ自体、または薬学的、食品学的に許容された担体と混合した組成物であってもよい。
【0073】
本発明の組成物は、全体組成物の重量を基準として本発明の化合物またはその塩を0.0001~100重量%で含有することができる。
【0074】
本発明の組成物は、臨床投与時に経口または非経口で投与が可能であり、非経口投与時に腹腔内注射、直腸内注射、皮下注射、静脈注射、筋肉内注射、子宮内硬膜注射、脳血管内注射または胸部内注射によって投与することができ、一般的な医薬品製剤の形態で使用することができる。
【0075】
本発明の組成物は、単独で、または手術、放射線治療、ホルモン治療、化学治療および生物学的反応調節剤を用いた方法と併用して使用することができる。
【0076】
本発明組成物の一日投与量は、組成物に含有された本発明の化合物またはその塩を基準として体重1kg当たり約0.0001~100mg、または0.001~10mgであってもよく、一日に1回~数回に分けて投与することができるが、投与対象の体重、年齢、性別、健康状態、食事、投与時間、投与方法、排泄率および疾患の重症度などによってその範囲が多様である。
【0077】
臨床投与時に経口または非経口の様々な形態の剤形で製剤化することができ、この際、一般的に使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を用いて調製することができる。
【0078】
本発明の薬学組成物は、本発明の化合物またはその薬学的に許容可能な塩に、さらに、同一または類似の機能を示す有効成分を1種以上含有することができる。
【0079】
本発明の医薬部外品組成物は、ヒトや動物の病気を診断、治療、改善、軽減、処置または予防する目的で使用される物品のうち医薬品より作用が軽微な物品を意味し、例えば、薬事法によれば、医薬部外品とは、医薬品の用途に使用される物品を除いたものであり、ヒトや動物の病気の治療や予防に使用される製品、人体に対する作用が軽微であるか、または直接作用しない製品などが含まれる。
【0080】
本発明の医薬部外品組成物は、ローション、軟膏、ゲル、クリーム、パッチまたは噴霧剤のような経皮投与型剤形であってもよい。各剤形において医薬部外品組成物は、他の成
分をその他医薬部外品の剤形または使用目的などに応じて任意に選定して配合することができる。有効成分の混合量は、使用目的(抑制または緩和)に応じて好適に決定することができる。例えば、増粘剤、安定化剤、溶解化剤、ビタミン、顔料および香料のような通常の補助剤、および担体などを含んでもよい。また、各剤形の医薬部外品組成物において、上記した必須成分以外の他の成分は、剤形または使用目的などに応じて当業者が困難なく適宜選定して配合することができる。
【0081】
本発明の食品組成物は、本発明の化合物またはこれの薬学的に許容可能な塩それ自体、または食品学的に許容された担体と混合した組成物であってもよい。この際、本発明の化合物またはその薬学的に許容可能な塩の含有量は、前記薬学組成物中の含有量および投与量を基準として通常の方法によって適切に調節することができる。
【0082】
本発明食品組成物の最も好ましい実施形態は、健康機能食品組成物であってもよいが、これらに限定されず、他の実施形態として、食肉加工品、魚肉製品、豆腐、ムク、お粥、ラーメンやソバなどの麺類、醤油、味噌、コチュジャン、混合醤などの調味食品、ソース、菓子、発酵乳やチーズなどの乳加工品、キムチや漬物などの漬物食品、果実、野菜、豆乳、発酵飲料などの飲料水の一般的な食品形態も可能である。別の実施形態として、本発明の食品組成物は、食品添加剤であってもよい。
【0083】
なお、食品学的に許容された担体は、前記薬学的に許容された担体も使用することができる。
【0084】
実施例
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は、ただ本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されると解釈されないことは、当業界における通常の知識を有する者にとって自明だろう。
【0085】
実施例1.A549細胞株に対する抗がん効果
1-1.細胞培養および試薬
A549細胞株は、韓国細胞株バンクから購入し、RPMI1640(10%FBS+1%P/S)で培養した。化学的に合成されたONG41008(化学式2)、ONG21001(ユーパチリン)は、Syngene International Ltd.(Bangalore,India)から入手し、DMSOに50mMのストック濃度で溶解し、-20℃で分取量で保管した。濃度に応じたDMSOを対照群に使用した。Hispidulinは、Sigma(SML0582)、Jaceosidinは、Selleckchem(S0931)、Apigeninは、Sigma(10798)から購入した。
【0086】
本発明において一実施例に使用されたONG41008は、下記化学式2の化合物である。
【0087】
[化学式2]
【化21】
【0088】
1-2.本発明化合物によるA549細胞の細胞老化誘導効果
非小細胞性肺がん細胞株であるA549細胞を培地に接種した後、24時間培養し、本発明化学式2化合物(ONG41008)(20μM)の処理の有無による遺伝子発現量の変化を確認し、上向きまたは下向き調節された遺伝子を分析した。
【0089】
このために、培養された細胞を冷たいPBSで2回洗浄し、TaKaRa MiniBEST Universal RNA抽出キット(Takara,Japan)を用いて収穫した。RNAは、製造社のプロトコルに従って同じキットを用いて精製された。RNAは、cDNA合成キット(PCRBio Systems,London,UK)を用いて逆転写された。合成されたcDNAは、StepOne Plus(Applied
Biosystems,Life Technologies)および2x qPCRBio Probe Mix Hi-ROX(PCRBio)で増幅された。ΔΔCt方法を用いてmRNAレベル間の比較を行い、GAPDHを内部対照群に使用した。
【0090】
処理された読み取り値は、基本媒介変数とともにTophatおよびCufflinkを用いてHomo sapiens参照ゲノムにマッピングされた。基本媒介変数を用いてCuffdiffを用いて微分分析を行った。また、CuffdiffのFPKM値を正規化し、RTCC(パッケージタグ数の比較)を用いて定量化して、統計的有意性(例:P値)および差次的発現(例:倍数変更)を決定した。遺伝子発現値は、社内で開発されたRスクリプトを用いて倍数変更値を用いてVolcanoプロットでプロットされた。
【0091】
その結果、本発明化合物の処理の有無によって細胞老化(cellular senescence)に関連した遺伝子の発現様相が顕著に変化することが確認された(データ不図示)。
【0092】
本発明による化合物がクロモンスキャフォールド含有誘導体である点に着目し、細胞老化を誘導する効果が他のクロモンスキャフォールド含有誘導体でも発揮される効果であるかを確認するために、免疫細胞化学(immunocytochemistry)を進めた。
【0093】
A549細胞株に本発明化学式2化合物(ONG41008)、ユーパチリン(ONG21001)または他のクロモンスキャフォールド含有誘導体であるヒスピズリン(Hispidulin)、ジャセオシジン(Jaceosidin)、アピゲニン(Apigenin)をそれぞれ20μMずつ処理して72時間経過後、細胞を4%パラホルムアルデヒドを用いて固定し、0.4%TritonX100で透過化して、1%BSAでブロッキングした。室温で4時間Rhodamine Phalloidin(Thermo
Fisher,Massachusetts,UK)と共にインキュベートした。洗浄後、細胞をAlexa Fluor 488(Abcam,Cambridge,UK)結合二次抗体とともに培養した。EVOS M7000(Invitrogen,CA,USA)を用いて像を分析した。核は、DAPIで対照染色した。
【0094】
その結果、図1のように、本発明化学式2化合物(ONG41008)とユーパチリン(ONG21001)が処理された細胞において特異的に細胞老化の形態学的変化である細胞扁平化(cell flatness)を観察することができた。すなわち、本発明化学式2化合物(ONG41008)とユーパチリン(ONG21001)が処理されたA549細胞において扁平細胞形態が観察されたが、他のクロモンスキャフォールド含有誘導体を処理した実験群では、このような細胞老化の形態学的特徴が観察されないので、細胞老化は、様々なクロモンスキャフォールド含有誘導体のうちでも本発明による化合物特異的効果であることが分かった。
【0095】
1-3.本発明化合物によるA549細胞の複製老化
様々な腫瘍抑制タンパク質が細胞周期進行の中断に関与することが知られている。TP53は、リン酸化され、主にp21またはp16と結合することによって、細胞周期を抑制する。本発明による化合物処理がA549細胞においてTP53-p21-p16を中心とする複製老化を誘導するかを確認するために、免疫細胞化学(immunocytochemistry)を進めた。
【0096】
A549細胞株に本発明化学式2化合物(ONG41008)をそれぞれ1、5、10、20μM処理して24時間または72時間経過後、細胞を4%パラホルムアルデヒドを用いて固定し、0.4%TritonX100で透過化して、1%BSAでブロッキングした。室温で4時間Anti-p53(Cell signaling technology,Beverly,MA)、Anti-p21(Abcam,Cambridge,UK)、Anti-p16-INK4A(Proteintech,IL,USA)と共にインキュベートした。洗浄後、細胞をAlexa Fluor 488(Abcam,Cambridge,UK)結合二次抗体とともに培養した。EVOS M7000(Invitrogen,CA,USA)を用いて像を分析した。核は、DAPIで対照染色した。
【0097】
その結果、図2a~図2cに示されたように、1μM処理時にTP53タンパク質発現量は変わらないが、核局在化が観察され、p21は、上向き調節と共に核局在化された。p16は、本発明化学式2化合物(ONG41008)の濃度に比例して上向き調節され、核と核周辺部に同時に位置した。
【0098】
化合物処理24時間よりも化合物処理72時間に細胞形態がさらに均一になることが確認されたが、これは、多核化したA549細胞が除去されることを反映する。p16の核への最大転位(translocation)は、72時間に完了したと見られ、このようにp16が飽和したA549細胞は細胞死すると予測される(図3)。
【0099】
TP53のリン酸化は、細胞周期停止(arrest)を調節するのに必須なものと知られているところ、phospho-specific TP53抗体を用いてウェスタンブロットを進めた。
【0100】
このために、A549細胞を100mmの細胞培養皿に1x10cells/wellで分注し、一晩中培養した後、様々な濃度の本発明化学式2化合物(ONG41008)で処理した。24時間後、細胞溶解物を14,000xgで10分間遠心分離して浄化し、上澄み液を収集した。タンパク質濃度は、Bradford assay(Thermo Fisher,Massachusetts,USA)で定量した。その後、25μgの細胞タンパク質を10%SDS-PAGEゲルにロードし、ニトロセルロースメンブレンにトランスファーした。5%BSAでブロッキング後、メンブレンをAnti-p53(Cell signaling technology,Beverly,MA)、Anti-phosphor-p53(Cell signaling technology,Beverly,MA)、Anti-p21(Abcam,Cambridge,UK)、Anti-p16-INK4A(Proteintech,IL,USA)、Anti-GAPDH(Abcam,Cambridge,UK)と4℃で一晩中インキュベートした。完全に洗浄した後、メンブレンをHRP結合二次抗体とともにインキュベートした。ECL試薬(Abfrontier,Korea)とUvitec HD9(UVITEC,UK)を用いてタンパク質バンドを可視化した。
【0101】
その結果、本発明化学式2化合物(ONG41008)濃度の増加に比例してTP53
がリン酸化し(図4a)、TP53の総量は同一に維持された。また、p21およびp16がいずれも濃度依存的方式で誘導されて、図2a~図2cの結果と一致した。
【0102】
なお、A549細胞をさらに増殖させるために、TGFβを処理し、A549細胞を刺激し、この際、本発明化学式2化合物(ONG41008)(10μM)の処理の有無による細胞変化を観察した。
【0103】
その結果、本発明化学式2化合物(ONG41008)が処理されたA549細胞の相当部分が6日目から死に始め、15日目に完全な細胞死が誘導されるのに対し、対照群A549は、活気に満ちる状態を維持することが観察された。青色および赤色の円は、それぞれ、対照群A549細胞およびONG41008化合物が処理されたA549細胞を示す。本発明化学式2化合物(ONG41008)10μMに露出したすべての細胞は、72時間細胞死シグナルを受信すると見られた(図4b)。
【0104】
1-4.本発明化合物によるA549細胞の細胞老化媒介細胞死
本発明化合物によってA549細胞が複製老化に迅速に転換し、細胞死が誘導されると予測されるところ、本発明化合物の処理による細胞死を観察した。細胞死の特徴の1つは、多核化(multinuceation,MNC)であり、特にがん細胞の多核化は、発がん遺伝子誘導による老化(Oncogene-Induced Senescence,OIS)により誘発されることが知られている。
【0105】
本発明化学式2化合物(ONG41008)10μMをA549細胞に24時間、48時間または72時間処理して細胞老化を確立し、免疫細胞化学を行って、形態学的変化とともに多核化を観察した。上皮間葉転換(EMT)の正の調節因子であるZEB1が発現対照群に使用された。
【0106】
その結果、本発明化学式2化合物(ONG41008)の処理24時間にA549で細胞扁平化が明確に確認され、多核化も観察され始め、処理48時間後に最も多い数の多核化が観察され、処理72時間には、かえってその数が減少したが、これは、細胞死による結果と予想される(図5a~図5c)。
【0107】
1-5.本発明化合物によるA549細胞の発がん遺伝子誘導による老化
がん細胞を除去する本発明化合物の作用機序(MOA)は、発がん遺伝子誘導による老化によるものと予想される。なお、一般的に、抗がん剤は、細胞周期調節、DNA複製またはクロマチンリモデリングなどを標的とするが、本発明化合物を処理したA549細胞では、DNA複製およびDNA修復に関与するHIST1H4K(H4 Clustered Histone 12)の発現量の変化が観察されたことがある(データ不図示)。これより、可逆的汎ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)抑制剤であるSAHA(suberoylanilide hydroxamic acid)と本発明化合物が細胞周期調節に及ぼす影響を比較した。
【0108】
このために、A549細胞を24時間96個のウェルプレートに分注した後、異なる濃度の本発明化学式2化合物(ONG41008)またはSAHAに露出させた。その後、細胞をTMRE(abcam,ab113852)とともに37℃の暗所で30分間共インキュベートし、製造社のプロトコルに従ってミトコンドリア膜電位を検査した。20μMのFCCP処理された細胞を陽性対照群に使用した。
【0109】
その結果、細胞生存は、SAHA処理後24時間に急激に減少し、72時間に細胞の実質的生存が最大に抑制されることをミトコンドリア膜電位分析で確認した。一方、本発明化学式2化合物(ONG41008)による抑制効果は、48時間に始まって、すべての
細胞が除去されるまで4日まで続いて増加した。これは、発がん遺伝子誘導による老化が本発明化学式2化合物(ONG41008)処理48時間に始まって、72時間まで続くことが確認された免疫細胞化学によるデータとも同じコンテキストであった(図5a~図5c)。SAHAとONG41008化合物のIC50は、約20倍の差を示した(図6)。
【0110】
総合すると、SAHAは、クロマチンリモデリング過程に対する広範囲なHDAC抑制効果によって急速な細胞死を誘導するが、この過程で様々な好ましくない効果を共に誘導するのに対し、本発明化合物は、発がん遺伝子誘導による老化を通じて細胞死を誘導すると解釈され、このような差に起因して本発明の細胞死誘導効果と持続時間に優れていると判断される。
【0111】
1-6.本発明化合物によるA549細胞のG2/M細胞周期停止およびNAD/NADH比の変化
本発明化合物とTP53、p16、p21との関連性は、本発明化合物が細胞周期の制御に重要に機能することを意味する。本発明化合物が細胞周期にどのように作用するかを確認するために、A549細胞に本発明化合物を処理して24時間にウェスタンブロットを行い、それぞれ、24時間と48時間にPI染色を行い、細胞周期分析を進めた。
【0112】
ウェスタンブロットのために、A549細胞を100mmの細胞培養皿に1×10cells/wellで分注し、一晩中培養した後、本発明化学式2化合物(ONG41008)50μMまたはFisetin(Glantham,GL7384-100MG)50μMで処理した。Fisetinは、細胞老化誘導剤であり、G0/G1 phaseの停止(arrest)を誘導する。24時間後、細胞溶解物を14,000×gで10分間遠心分離して浄化し、上澄み液を収集した。タンパク質濃度は、Bradford
assay(Thermo Fisher,Massachusetts,USA)で定量した。その後、25μgの細胞タンパク質を10%SDS-PAGEゲルにロードし、ニトロセルロースメンブレンにトランスファーした。5%BSAでブロッキングした後、メンブレンを4℃で一晩中Anti-CDK2(Cell signaling Technology,MA)、Anti-CDK4(Cell signaling Technology,MA)、Anti-GAPDH(Abcam,Cambridge,UK)抗体とともにインキュベートした。完全に洗浄した後、メンブレンをHRP結合二次抗体とともにインキュベートした。ECL試薬(Abfrontier,Korea)とUvitec HD9(UVITEC,UK)を用いてタンパク質バンドを可視化した。
【0113】
PI染色のために、A549細胞を100mmの細胞培養皿に2×10cells/mlで分注し、24時間後に収穫してPBSで細胞を洗浄した後、本発明化学式2化合物(ONG41008)10μM、20μM、50μMまたは対照群培地をそれぞれ添加した。24時間後、細胞を収穫し、冷却された70%エタノールに固定した後、200μg/mlのRNase(Abcam、139418)を含有するプロピディウムヨウ化物(propidium iodide)で37℃暗室で30分間染色した。細胞周期の各段階は、Accuri C6 Plus(BD Bioscience)を用いて確認した。
【0114】
その結果、本発明化学式2化合物(ONG41008)は、50μMでCDK2とCDK6発現を抑制して、G1-S-G2 phaseの停止(arrest)を誘導することが確認された(図7a、図7b)。したがって、本発明化合物は、腫瘍遺伝子誘導老化(Oncogene-Induced Senescence,OIS)によって有糸分裂崩壊(mitotic collapse)を招き、結果的に、細胞死を誘導すること
が分かった。
【0115】
代謝調節は、細胞周期調節または細胞死を制御する重要な因子と見なされてきた。NAD/NADH比は、解糖過程とTCA周期を含むエネルギー代謝を調節するのに中心的な役割をし、発病または老化のようなミトコンドリア機能に相当な影響を及ぼすことがよく知られている。これより、本発明化合物がA549細胞においてNAD/NADH比に影響を及ぼすかを確認しようとした。
【0116】
このために、製造社のプロトコルに従ってNAD+/NADH Colorimetric Assay Kit(Abcam,ab65348)を用いてA549細胞溶解物からトータルNADを抽出し、定量化した。1x10細胞を400μl NAD/NADH抽出緩衝液に溶解させ、10kDスピンカラム(ab93349)を介してろ過し、純水または1/5希釈して測定した。要約すると、トータルNADの量は、標準曲線(pmol)を反応ウェルに添加されたサンプル体積(μL)で割って、希釈係数を掛けて計算した。
【0117】
その結果、A549細胞が本発明化学式2化合物(ONG41008)で刺激されたとき、NAD生合成が増加し、NAD/NADH比が顕著に増加することが確認された(図7c)。一方、SAHAは、このような効果を全く誘導しなかった。A549細胞自体のNAD/NADH比は、マイナス値を示し、A549細胞は、好気性解糖過程を独占的に用いることができることが分かる。本発明化合物は、NADの細胞内濃度を向上させることができるので、前記経路で速度制限酵素であるNampt(ニコチンアミドホリボシルトランスフェラーゼ)が本発明化合物の主な標的になりうる。
【0118】
本発明化合物は、NAD/NADH比を60~100の範囲で正規化することができ、このように正規化されたNAD/NADH比が、本発明による化合物が処理されたがん細胞でROS生成に影響を及ぼすかを確認した。
【0119】
このために、1x10cells/mlのA549細胞を96ウェルプレートに分注して24時間経過後、細胞に10μMのH2DCFDA(Invitrogen,CA)を処理し、37℃の暗室で1時間インキュベートした。その後、本発明化学式2化合物(ONG41008)または陽性対照群としてROS誘導剤であるTBHP(Abcam,UK)を様々な濃度で24時間処理した。細胞内ROSは、蛍光顕微鏡(Thermo,MA)で検査し、蛍光分光器(Perkin Elmer,MA)で定量化した。
【0120】
その結果、本発明化学式2化合物(ONG41008)を処理する場合、濃度依存的にROSが増加することが示されたが(図7d)、これは、NAD/NADH比が増加してがん細胞のROS生産に影響を及ぼし、発がん遺伝子誘導による老化を起こすと解釈される。
【0121】
なお、比較例から確認できるように、本発明化合物は、がん細胞と正常細胞を区別してがん細胞特異的に作用するが、これは、本発明化合物のクロモンスキャフォールドがNAD、NADH、pHまたはATPを含む細胞内微細環境を構成する一部の構成要素をエネルギーセンサーとして認識するためである。
【0122】
1-7.本発明化合物処理による細胞死の動態解析
本発明化合物の処理後、時間経過によるA549細胞の細胞死を観察するために、TUNEL分析と7AAD分析を進めた。
【0123】
TUNEL分析は、製造社の指針に従ってTUNEL assay kit(Abca
m,ab66110)を用いて進めた。A549細胞を100mmの細胞培養皿に2×10cells/mlで分注し、24時間後に収穫し、PBSで洗浄した後、本発明化学式2化合物(ONG41008)10μM、20μM、50μMまたは対照群培地をそれぞれ添加した。24時間後、細胞を収穫し、冷却された70%エタノールに固定し、DNA標識溶液50μL(TdT反応緩衝液10μL、TdT Enzyme 0.75μL、Br-dUTP8μL、ddHO32.5μL)を添加した。37℃で1時間インキュベートした後、細胞を300μLリンス緩衝液で2回洗浄し、抗体溶液(5μLのAnti-BrdU-Red抗体、95μLのリンス緩衝液)を製造し、洗浄した細胞に添加し、室温の暗室で30分間インキュベートした。300μLの7-AAD/RNase溶液を最後に添加した。各試料は、Accuri C6 Plus(BD Bioscience)を用いて分析した。
【0124】
その結果、本発明化学式2化合物(ONG41008)の処理48時間に細胞死が観察され始め、本発明化学式2化合物(ONG41008)の処理72時間には、化合物濃度依存的に細胞死が明確に観察された(図8)。
【0125】
実施例2.H358、H1299細胞に対する抗がん効果
2-1.細胞培養および試薬
非小細胞性肺がん1次細胞であるH358、H1299は、いずれも、韓国細胞株バンクから購入し、RPMI1640(10%FBS+1%P/S)で培養した。化学的に合成されたONG41008は、Syngene International Ltd.(Bangalore,India)から入手し、DMSOに50mMのストック濃度で溶解し、-20℃で分取量で保管した。
【0126】
2-2.本発明化合物によるH358細胞の増殖抑制
本発明化合物によるH358細胞の増殖抑制効果をCCK-8分析で確認し、卵巣がん、乳がん、肺がんまたは胃がんの治療に使用が承認された抗がん治療剤であるパクリタキセルによる効果と比較した。
【0127】
H358細胞を24時間3x10細胞/ウェルになるように96ウェルプレートに分注した。本発明化学式2化合物(ONG41008)またはパクリタキセル(Abcam,ab120143)をそれぞれ0.1、1、10、20、30、50μMで処理して72時間経過後の細胞生存率は、製造社のプロトコルに従ってcell counting
kit-8(Dojindo,CK04)で測定した。また、本発明化学式2化合物(ONG41008)の処理72時間経過した後、H358細胞を光学顕微鏡(EVOS M7000)で観察した。
【0128】
実験結果、本発明化学式2化合物(ONG41008)およびパクリタキセルの両方は、30μM以上の処理で同様のレベルで非小細胞性肺がん細胞の増殖を抑制させ、ただし、パクリタキセルとONG41008のIC50は、約14倍の差を示した(図9)。なお、本発明化学式2化合物(ONG41008)10μMの処理72時間経過後、H358細胞の有糸分裂崩壊が観察された(図10)。
【0129】
2-3.本発明化合物によるH1299細胞の多核化
本発明化学式2化合物(ONG41008)を濃度別に処理し、実施例1と同じ方法で免疫細胞化学を行い、細胞変化を観察した。
【0130】
実験結果、図11のように、本発明化学式2化合物(ONG41008)の処理によって発がん遺伝子誘導による老化の指標である多核化が観察されることを確認した。
【0131】
実施例3.PANC1細胞に対する抗がん効果
3-1.細胞培養および試薬
ヒト膵臓がん細胞株であるPANC1細胞は、韓国細胞株バンクから購入、RPMI1640(10%FBS+1%P/S)で培養した。
【0132】
化学的に合成されたONG41008は、Syngene International Ltd.(Bangalore,India)から入手し、DMSOに50mMのストック濃度で溶解し、-20℃で分取量で保管した。
【0133】
3-2.本発明化合物によるPANC1細胞の増殖抑制
本発明化学式2化合物(ONG41008)によるPANC1細胞の増殖抑制効果をCCK-8分析で確認し、パクリタキセルによる効果と比較した。
【0134】
実験方法は、使用される細胞のみを除いて、実施例2の記載と同一に進めた。
【0135】
実験結果、本発明化学式2化合物(ONG41008)は、パクリタキセルと比較して、10μM以上の濃度でさらに優れた膵臓がん細胞の増殖抑制効果を発揮し、本発明化学式2化合物(ONG41008)のPANC1に対するIC50は、11.8μM、パクリタキセルのPANC1に対するIC50は、84.7μMであることが確認された(図12)。
【0136】
3-3.本発明化合物によるPANC1細胞の多核化
本発明化学式2化合物(ONG41008)を濃度別に処理し、実施例1と同じ方法で免疫細胞化学を行い、細胞変化を観察した。
【0137】
その結果、図13のように、本発明化学式2化合物(ONG41008)の処理によって発がん遺伝子誘導による老化の指標である多核化が観察された。
【0138】
実施例4.MCF7細胞に対する抗がん効果
4-1.細胞培養および試薬
ヒト乳がん細胞株であるMCF7細胞は、韓国細胞株バンクから購入し、RPMI1640(10%FBS+1%P/S)で培養した。
【0139】
化学的に合成されたONG41008は、Syngene International Ltd.(Bangalore,India)から入手し、DMSOに50mMのストック濃度で溶解し、-20℃で分取量で保管した。
【0140】
4-2.本発明化合物によるMCF7細胞の増殖抑制
本発明化学式2化合物(ONG41008)によるMCF7細胞の増殖抑制効果をCCK-8分析で確認し、SAHAによる効果と比較した。
【0141】
実験方法は、使用された細胞と陽性対照群試薬のみを除いて、実施例2の記載と同一に進めた。
【0142】
実験結果、本発明化学式2化合物(ONG41008)は、SAHAと非常に類似の細胞増殖抑制効果を発揮し、本発明化学式2化合物(ONG41008)のMCF7に対するIC50は、15.38μM、SAHAのMCF7に対するIC50は、11.18μMであることが確認された(図14)。
【0143】
4-3.本発明化合物によるMCF7細胞の多核化
本発明化学式2化合物(ONG41008)を濃度別に処理し、実施例1と同じ方法で免疫細胞化学を行い、細胞変化を観察した。
【0144】
実験結果、図15のように、本発明化学式2化合物(ONG41008)の処理によって発がん遺伝子誘導による老化の指標である多核化が観察された。
【0145】
実施例5.PC3細胞に対する抗がん効果
5-1.細胞培養および試薬
ヒト前立腺がん細胞株であるPC3細胞は、韓国細胞株バンクから購入し、RPMI1640(10%FBS+1%P/S)で培養した。
【0146】
化学的に合成されたONG41008は、Syngene International Ltd.(Bangalore,India)から入手し、DMSOに50mMのストック濃度で溶解し、-20℃で分取量で保管した。
【0147】
5-2.本発明化合物によるPC3細胞の増殖抑制
本発明化学式2化合物(ONG41008)によるPC3細胞の増殖抑制効果をCCK-8分析で確認し、SAHAによる効果と比較した。
【0148】
実験方法は、使用された細胞と陽性対照群試薬のみを除いて、実施例2の記載と同一に進めた。
【0149】
実験結果、本発明化学式2化合物(ONG41008)の細胞増殖抑制効果が確認され、具体的には、本発明化学式2化合物(ONG41008)のPC3に対するIC50は、32.05μMと確認され、SAHAのPC3に対するIC50は、3.84μMと確認された(図16)。たとえPC3に対するIC50は、SAHAがさらに低いことが確認されたが、時間が経過するにつれて、本発明化学式2化合物(ONG41008)も、SAHAと類似のレベルでPC3細胞の死を誘導することを確認することができた。
【0150】
5-3.本発明化合物によるPC3細胞の細胞死誘導
本発明化学式2化合物(ONG41008)によるPC3細胞の細胞死誘導効果をCaspase-3/7活性で確認し、SAHAによる効果と比較した。
【0151】
Caspase-3/7活性は、Caspase-3/7 assay kit(Promega,G8091)を用いて測定した。様々な濃度の本発明化学式2化合物(ONG41008)またはSAHAで処理された細胞を収穫し、氷上で溶解させた。その後、BCA(Thermo、23227)でタンパク質を測定し、細胞溶解緩衝液50μL当たりタンパク質50μgに調節した。その後、製造社のプロトコルに従ってCaspase-3/7活性を分析した。
【0152】
実験結果、図17のように、本発明化学式2化合物(ONG41008)およびSAHAの両方は、濃度依存的にPC3細胞死を誘導することが確認された。この場合、本発明化学式2化合物(ONG41008)のEC50は、20.37μM、SAHAのEC50は、13.51μMと確認された。
【0153】
5-4.本発明化合物によるPC3細胞の多核化
本発明化学式2化合物(ONG41008)を濃度別に処理し、実施例1と同じ方法で免疫細胞化学を行い、細胞変化を観察した。
【0154】
その結果、図18のように、本発明化学式2化合物(ONG41008)の処理によっ
て発がん遺伝子誘導による老化の指標である多核化が観察された。
【0155】
比較例.本発明化合物が正常細胞に及ぼす影響
1-1.細胞培養および試薬
ヒト正常肺線維芽細胞(Normal Human Lung Fibroblasts,NHLF)は、Lonza(CC-2512)から購入し、Fibroblast Growth medium(0.1%insulin、0.1%hFGF-B、0.1%GA-1000、2%FBS)で培養した。
【0156】
化学的に合成されたONG41008は、Syngene International Ltd.(Bangalore,India)から入手し、DMSOに50mMのストック濃度で溶解し、-20℃で分取量で保管した。
【0157】
1-2.本発明化合物による細胞増殖抑制の有無の確認
本発明化学式2化合物(ONG41008)により正常細胞であるNHLF細胞の細胞増殖が抑制されるか否かをCCK-8分析で確認した。この場合、SAHAおよび実用化された抗がん剤であるニンテダニブと正常細胞に及ぼす影響を比較した。
【0158】
実験方法は、使用された細胞と陽性対照群試薬のみを除いて、実施例2の記載と同一に進めた。
【0159】
実験結果、図19のように、SAHAおよびニンテダニブの両方は、ヒト正常肺線維芽細胞(normal human lung fibroblastoma,NHLF)に細胞増殖を抑制し、非常に強い毒性を示したが、本発明化学式2化合物(ONG41008)は、細胞増殖を抑制させなかった。
【0160】
1-3.本発明化合物による細胞死の有無確認
本発明化学式2化合物(ONG41008)によりNHLF細胞の細胞死が誘導されるかを確認するために、(i)ミトコンドリア膜電位分析、(ii)Caspase-3活性分析、(iii)LDH細胞毒性分析の3つの分析を進めた。
【0161】
(i)ミトコンドリア膜電位分析は、実施例1に記載の方法と同一に進めた。
【0162】
(ii)Caspase-3活性分析は、Caspase-3 assay kit(abcam,ab37401)を用いて測定した。簡略に記述すると、様々な濃度の本発明化学式2化合物(ONG41008)またはニンテダニブで処理された細胞を収穫し、氷上で溶解させた。その後、BCA(Thermo、23227)でタンパク質を測定し、細胞溶解緩衝液50μL当たりタンパク質50μgに調節した。その後、製造社のプロトコルに従ってCaspase-3活性を分析した。
【0163】
(iii)LDH細胞毒性分析は、LDH分析キット(abcam,ab56393)を用いてLDH放出を検出した。簡略に記述すると、様々な濃度の本発明化学式2化合物(ONG41008)またはニンテダニブまたはSAHAで処理された細胞培養プレートを480×gで10分間遠心分離し、上澄み液(10μL/ウェル)を他の96ウェルプレートで抽出した後、100μLのLDG反応混合物を各ウェルに添加し、室温で30分間インキュベートした。吸光度の値は、マイクロプレートリーダーで450nmで測定された。
【0164】
実験結果、図20のように、MTMP、Caspase3およびLDHで測定したとき、SAHAとニンテダニブは、正常細胞でも強力な細胞死を誘導したが([SAHA]M
TMP:IC5022.36μM、LDH:EC50115.0μM/[ニンテダニブ]MTMP:IC5041.02μM、Caspase3:EC50128.2μM、LDH:EC50218.2μM)、本発明化学式2化合物(ONG41008)は、正常細胞で明確な細胞死を誘導しなかった。
【0165】
なお、さらに進めたCaspase3/7分析でも、本発明化学式2化合物(ONG41008)は、がん細胞株(PC3)とは異なって、caspase3/7活性を誘導しないところ、本発明化学式2化合物(ONG41008)が正常細胞に細胞死を誘導しないことをもう一度確認することができた(データ不図示)。
【0166】
本発明による化合物は、腫瘍細胞またはがん細胞特異的細胞老化(複製老化(replicative senescence,RS)および腫瘍遺伝子誘導老化(oncogene-induced senescence,OIS))の強力な誘導剤であり、無制限増殖ループから細胞老化の方式でこれら細胞を解放させると同時に、がん細胞特異的細胞死を誘導し、卓越した抗腫瘍または抗がん特性を示す。
【0167】
このような特性は、様々なクロモンスキャフォールド誘導体のうちでも本発明化合物だけで発揮される固有な特性といえるが、他のクロモンスキャフォールド誘導体としてC6位置に酸素を有するHistidulin、Jaceocidinは、抗線維化効果を発揮するが、がん細胞特異的細胞老化を誘導したり老化した細胞を除去する効果を全く発揮せず、Apigeninは、抗線維化、がん細胞特異的細胞老化または老化細胞を除去する効果を全部誘導せず、Fisetin、Quercetinは、細胞死を誘導するが、老化細胞を除去または抗線維化効果を誘導しないところ、本発明化合物は、がん細胞特異的細胞老化(Senogenic)とともに、老化細胞を効果的に除去(Senolytic)することができるので、本発明において確認されたような優れた抗腫瘍または抗がん特性を発揮すると解釈される(図21を参照)。
【0168】
最近、抗がん剤の治療効果を強化させるために、DasatinibとQuercetinを併用投与したり、Doxorubicin(Adriamycin(登録商標))とFisetinを併用投与する報告がある。これは、Dasatinib、Doxorubicinのような抗がん剤により誘導されるSenogenic効果とQuercetin、Fisetinのようなクロモンスキャフォールド誘導体により誘導されるSynolytic効果をがん細胞に同時に発揮することによって、抗がんにシナジー効果を発揮するためである。本発明による化合物は、1つの化合物がSenogenicおよびSenolytic効果を同時に発揮するところ、最近活発に研究されている上記のような併用投与制の効果を1つの化合物の単独使用で発揮することができる(図22参照)。
【0169】
以上、本発明内容の特定の部分を詳細に記述したところ、当業界における通常の知識を有する者にとって、このような具体的な記述は、ただ好ましい実施様態であり、これによって本発明の範囲が制限されるものではない点は明白だろう。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とそれらの等価物によって定義されるといえる。
【0170】
CS:クロモンスキャフォールド、Chromone Scaffold
CSD:クロモンスキャフォールド含有誘導体、Chromone Scaffold
Derivatives
NHLF:ヒト正常肺線維芽細胞、Normal Human Lung Fibroblasts
RS:複製老化、Replicative senescence
OIS:発がん遺伝子誘導による老化、Oncogene-Induced Senescence
MNC:多核化、Multinucleation
MTMP:ミトコンドリア膜電位、Mitochondrial Membrane Potential
NAD:ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、Nicotinamide adenine dinucleotide
NAMPT:ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ、Nicotinamide Phosphoribosyltransferase
【産業上の利用可能性】
【0171】
本発明化合物は、がん細胞と正常細胞を区別してがん細胞特異的に細胞老化と細胞死を同時に誘導することができ、がん細胞特異的標的物質を付着する必要がなく、抗がん剤が正常細胞を攻撃して発生する頻繋な副作用を最小化することができ、上記した二重作用に基づいて強力な抗がん効果を発揮することができる。
図1
図2a
図2b
図2c
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
図5c
図6
図7a
図7b
図7c
図7d
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
【手続補正書】
【提出日】2023-10-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される化合物またはその塩を有効成分として含有する腫瘍またはがん疾患の予防治療または改善用組成物:
[化学式1]
【化1】
上記化学式1中、
は、C1-5のアルキル、C5-6の環状アルキル、OまたはNのうち1つ以上のヘテロ原子を含有するC5-6の環状アルキル、C6-12のアリール、またはOまたはNのうち1つ以上のヘテロ原子を含有するC5-6のヘテロアリールであり、
は、水素、エチル、アセチル、アセトキシ、カルボキシ、ベンゾイルオキシまたは3,4,5-トリヒドロキシベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシであり、
は、水素、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、アセトキシ、カルボキシまたはベンゾイルオキシである。
【請求項2】
は、メチル、エチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはフェニルであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
は、メチルであり、
は、水素であり、
は、水素、ヒドロキシまたはメトキシであり、
は、ヒドロキシまたはメトキシであり、
は、水素、ヒドロキシまたはメトキシであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記化合物は、下記化学式2~5のうちいずれか1つで表されることを特徴とする請求項1に記載の組成物:
[化学式2]
【化2】
[化学式3]
【化3】
[化学式4]
【化4】
[化学式5]
【化5】
【請求項5】
前記がんは、血液がんまたは固形がんであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記血液がんは、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫または再生不良性貧血であることを特徴とする請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記固形がんは、脳腫瘍、良性星状細胞腫、悪性星状細胞腫、脳下垂体腺腫、髄膜腫、脳リンパ腫、乏突起膠腫、頭蓋咽頭腫、上衣細胞腫、脳幹腫瘍、頭頸部腫瘍、喉頭がん、口腔咽頭がん、鼻腔がん、鼻咽頭がん、唾液腺腫瘍、下咽頭がん、甲状腺がん、口腔がん
、胸部腫瘍、小細胞性肺がん、非小細胞性肺がん、胸腺がん、縦隔腫瘍、食道がん、乳がん、男性乳がん、腹部腫瘍、胃がん、肝がん、胆嚢がん、胆道がん、膵臓がん、小腸がん、大腸がん、肛門がん、膀胱がん、腎臓がん、男性生殖器腫瘍、陰茎がん、前立腺がん、女性生殖器腫瘍、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、子宮肉腫、膣がん、女性外部生殖器腫瘍、女性尿道がんまたは皮膚がんであることを特徴とする請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記化合物は、
(i)複製老化(replicative senescence,RS)および/または腫瘍遺伝子誘導老化(oncogene-induced senescence,OIS)の誘導による腫瘍またはがん細胞特異的増殖の抑制;
(ii)腫瘍またはがん細胞NAD/NADH比の逆転;
(iii)腫瘍またはがん細胞ROSの上向き調節;および
(iv)腫瘍またはがん細胞特異的細胞死誘導;で構成される群から選ばれる1つ以上
の作用によって抗腫瘍または抗がん活性を示すことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
医薬品である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
医薬部外品である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
食品である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【国際調査報告】