(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】C1~C5アルコールをC2~C5オレフィン混合物に触媒転化させるためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
C07C 1/24 20060101AFI20240403BHJP
C07C 11/04 20060101ALI20240403BHJP
C07C 11/06 20060101ALI20240403BHJP
C07C 11/08 20060101ALI20240403BHJP
C07C 11/09 20060101ALI20240403BHJP
C07C 11/10 20060101ALI20240403BHJP
C07B 61/00 20060101ALI20240403BHJP
B01J 29/40 20060101ALI20240403BHJP
B01J 29/46 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
C07C1/24
C07C11/04
C07C11/06
C07C11/08
C07C11/09
C07C11/10
C07B61/00 300
B01J29/40 Z
B01J29/46 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564637
(86)(22)【出願日】2022-04-22
(85)【翻訳文提出日】2023-12-19
(86)【国際出願番号】 US2022026042
(87)【国際公開番号】W WO2022226371
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510153973
【氏名又は名称】ジーヴォ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Gevo, Inc.
【住所又は居所原語表記】345 Inverness Drive South, Building C, Suite 310, Englewood, CO 80112, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン スミス
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA15
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA02A
4G169BA02B
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BC50A
4G169BC51A
4G169BC51B
4G169BC60A
4G169BC68B
4G169BD03B
4G169BD05A
4G169BD07B
4G169CB63
4G169DA06
4G169DA08
4G169ZA11B
4H006AA02
4H006AC13
4H006BA10
4H006BA31
4H006BA34
4H006BA35
4H006BA55
4H006BA60
4H006BA71
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC18
4H006BD33
4H006DA12
4H039CA20
4H039CA21
4H039CA22
4H039CG10
(57)【要約】
1種以上のC1~C5線状または分岐状アルコールを1種以上のC2~C5オレフィンに転化させる方法が提供される。例示的な一実施形態では、方法は、単一床で物理的に混合された少なくとも2つの触媒を使用して単一の反応器内で実施される、C1~C5アルコールをオレフィン混合物(例えば、C2~C5)に直接転化させるための単一段階プロセスであり得る。これらの方法を実施するためのシステムも提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上のC
1~C
5線状または分岐状アルコールを1種以上のC
2~C
5オレフィンに転化させる方法であって、
前記1種以上のC
1~C
5線状または分岐状アルコールを含む入力流を単一床反応器内で少なくとも第1の触媒および第2の触媒と接触させて、前記1種以上のC
2~C
5オレフィンを含む出力流を形成することを含み、前記単一床反応器が、約350℃~約750℃の温度であり、ゲージ圧が、0~約30barであり、重量空間速度(WHSV)が、約0.5~約5.0であり、
前記第1の触媒が、第1の混合物を形成するために、中性またはイオン形態でジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、タングステン(W)、またはケイ素(Si)のうちの1つ以上を含むドープされた、またはドープされていないアルミナ触媒を含み、前記第2の触媒が、ドープされた、またはドープされていないゼオライト触媒を含む、
方法。
【請求項2】
前記単一床反応器が、固定床反応器である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記単一床反応器が、流動床反応器である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記入力流を接触させることが、前記入力流を前記単一床反応器内で第3の触媒と接触させることをさらに含む、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記第3の触媒が、ドープされた、またはドープされていないSiO
2触媒を含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記C
1~C
5線状または分岐状アルコールが、生物ベースであり、発酵プロセスによって生成される、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記C
1~C
5線状または分岐状アルコールが、石油由来ではない、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記1種以上のC
2~C
5オレフィンが、少なくとも80重量%の量で前記出力流中に存在する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記1種以上のC
2~C
5オレフィンが、少なくとも85重量%の量で前記出力流中に存在する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記1種以上のC
2~C
5オレフィンが、少なくとも90重量%の量で前記出力流中に存在する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記1種以上のC
2~C
5オレフィンが、少なくとも95重量%の量で前記出力流中に存在する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記出力流が、約2重量%~約10重量%の量の1種以上の芳香族(C
7+)化合物を含む、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記出力流が、10重量%を上回らない量の1種以上の芳香族(C
7+)化合物を含む、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記方法が、前記出力流から少なくともC
2オレフィンの部分を除去することをさらに含む、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、前記出力流から少なくともC
4オレフィンの部分を除去することをさらに含む、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記方法が、前記出力流から少なくともC
5オレフィンの部分を除去することをさらに含む、請求項1から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記温度が、約550℃~約750℃である、請求項1から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記温度が、約350℃~約550℃である、請求項1から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記WHSVが、約0.5~約1.0である、請求項1から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
前記WHSVが、約2.0~約5.0である、請求項1から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
メタノールを1種以上のC
2~C
5オレフィンに転化させる方法であって、
前記メタノールを含む入力流を単一床反応器内で少なくとも第1の触媒および第2の触媒と接触させて、前記1種以上のC
2~C
5オレフィンを含む出力流を形成することを含み、前記単一床反応器が、約350℃~約750℃の温度であり、ゲージ圧が、0~約30barであり、重量空間速度(WHSV)が、約0.5~約5.0であり、
前記第1の触媒が、中性またはイオン形態でジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、タングステン(W)、またはケイ素(Si)のうちの1つ以上を含むドープされた、またはドープされていないアルミナ触媒を含み、前記第2の触媒が、ドープされた、またはドープされていないゼオライト触媒を含む、
方法。
【請求項22】
前記単一床反応器が、単一固定床反応器である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記単一床反応器が、流動床反応器である、請求項21記載の方法。
【請求項24】
前記入力流を接触させることが、前記入力流を前記単一床反応器内で第3の触媒と接触させることをさらに含む、請求項21から23までのいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
前記第3の触媒が、ドープされた、またはドープされていないSiO
2触媒を含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記C
1~C
5線状または分岐状アルコールが、生物ベースであり、発酵プロセスによって生成される、請求項21から25までのいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
前記C
1~C
5線状または分岐状アルコールが、石油由来ではない、請求項21から26までのいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
前記1種以上のC
2~C
5オレフィンが、少なくとも80重量%の量で前記出力流中に存在する、請求項21から27までのいずれか1項記載の方法。
【請求項29】
前記1種以上のC
2~C
5オレフィンが、少なくとも85重量%の量で前記出力流中に存在する、請求項21から27までのいずれか1項記載の方法。
【請求項30】
前記1種以上のC
2~C
5オレフィンが、少なくとも90重量%の量で前記出力流中に存在する、請求項21から27までのいずれか1項記載の方法。
【請求項31】
前記1種以上のC
2~C
5オレフィンが、少なくとも95重量%の量で前記出力流中に存在する、請求項21から27までのいずれか1項記載の方法。
【請求項32】
前記出力流が、約2重量%~約10重量%の量の1種以上の芳香族(C
7+)化合物を含む、請求項21から31までのいずれか1項記載の方法。
【請求項33】
前記出力流が、10重量%を上回らない量の1種以上の芳香族(C
7+)化合物を含む、請求項21から32までのいずれか1項記載の方法。
【請求項34】
前記方法が、前記出力流から少なくともC
2オレフィンの部分を除去することをさらに含む、請求項21から33までのいずれか1項記載の方法。
【請求項35】
前記方法が、前記出力流から少なくともC
4オレフィンの部分を除去することをさらに含む、請求項21から34までのいずれか1項記載の方法。
【請求項36】
前記方法が、前記出力流から少なくともC
5オレフィンの部分を除去することをさらに含む、請求項21から35までのいずれか1項記載の方法。
【請求項37】
前記温度が、約550℃~約750℃である、請求項21から36までのいずれか1項記載の方法。
【請求項38】
前記温度が、約350℃~約550℃である、請求項21から36までのいずれか1項記載の方法。
【請求項39】
前記WHSVが、約0.5~約1.0である、請求項21から38までのいずれか1項記載の方法。
【請求項40】
前記WHSVが、約2.0~約5.0である、請求項21から38までのいずれか1項記載の方法。
【請求項41】
1種以上のC
1~C
5線状または分岐状アルコールを1種以上のC
2~C
5オレフィンに転化させる方法であって、
前記1種以上のC
1~C
5線状または分岐状アルコールを含む入力流を、約350℃~約550℃の温度、0~約30barのゲージ圧、および約1.0~約2.0の重量空間速度(WHSV)で、積層床反応器内で第1の触媒と接触させて、第1の混合物を形成することであって、前記第1の触媒が、中性またはイオン形態でジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、タングステン(W)、またはケイ素(Si)のうちの1つ以上を含むドープされた、またはドープされていないアルミナ触媒を含む、第1の混合物を形成すること、
前記第1の混合物を前記積層床反応器内で少なくとも第2の触媒と接触させて、前記1種以上のC
2~C
5オレフィンを含む出力流を形成することであって、前記第2の触媒が、ドープされた、またはドープされていないゼオライト触媒を含む、出力流を形成すること
を含む、方法。
【請求項42】
前記積層床反応器が、固定床反応器である、請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記積層床反応器が、流動床反応器である、請求項41記載の方法。
【請求項44】
前記第1の混合物を接触させることが、前記第1の混合物を前記積層床反応器内で第3の触媒と接触させることをさらに含む、請求項41から43までのいずれか1項記載の方法。
【請求項45】
前記第3の触媒が、ドープされた、またはドープされていないSiO
2触媒を含む、請求項44記載の方法。
【請求項46】
前記C
1~C
5線状または分岐状アルコールが、生物ベースであり、発酵プロセスによって生成される、請求項41から45までのいずれか1項記載の方法。
【請求項47】
前記C
1~C
5線状または分岐状アルコールが、石油由来ではない、請求項41から46までのいずれか1項記載の方法。
【請求項48】
前記1種以上のC
2~C
5オレフィンが、少なくとも80重量%の量で前記出力流中に存在する、請求項41から47までのいずれか1項記載の方法。
【請求項49】
前記1種以上のC
2~C
5オレフィンが、少なくとも85重量%の量で前記出力流中に存在する、請求項41から47までのいずれか1項記載の方法。
【請求項50】
前記1種以上のC
2~C
5オレフィンが、少なくとも90重量%の量で前記出力流中に存在する、請求項41から47までのいずれか1項記載の方法。
【請求項51】
前記1種以上のC
2~C
5オレフィンが、少なくとも95重量%の量で前記出力流中に存在する、請求項41から47までのいずれか1項記載の方法。
【請求項52】
前記出力流が、約2重量%~約10重量%の量の1種以上の芳香族(C
7+)化合物を含む、請求項41から51までのいずれか1項記載の方法。
【請求項53】
前記出力流が、10重量%を上回らない量の1種以上の芳香族(C
7+)化合物を含む、請求項41から52までのいずれか1項記載の方法。
【請求項54】
前記方法が、前記出力流から少なくともC
2オレフィンの部分を除去することをさらに含む、請求項41から53までのいずれか1項記載の方法。
【請求項55】
前記方法が、前記出力流から少なくともC
4オレフィンの部分を除去することをさらに含む、請求項41から54までのいずれか1項記載の方法。
【請求項56】
前記方法が、前記出力流から少なくともC
5オレフィンの部分を除去することをさらに含む、請求項41から55までのいずれか1項記載の方法。
【請求項57】
前記温度が、約550℃~約750℃である、請求項41から56までのいずれか1項記載の方法。
【請求項58】
前記温度が、約350℃~約550℃である、請求項41から56までのいずれか1項記載の方法。
【請求項59】
前記WHSVが、約0.5~約1.0である、請求項41から58までのいずれか1項記載の方法。
【請求項60】
前記WHSVが、約2.0~約5.0である、請求項41から58までのいずれか1項記載の方法。
【請求項61】
メタノールを1種以上のC
2~C
5オレフィンに転化させる方法であって、
前記メタノールを含む入力流を、約350℃~約550℃の温度、0~約30barのゲージ圧、および約1.0~約2.0の重量空間速度(WHSV)で、積層床反応器内で第1の触媒と接触させて、第1の混合物を形成することであって、前記第1の触媒が、中性またはイオン形態でジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、タングステン(W)、またはケイ素(Si)のうちの1つ以上を含むドープされた、またはドープされていないアルミナ触媒を含む、第1の混合物を形成すること、
前記第1の混合物を前記積層床反応器内で少なくとも第2の触媒と接触させて、前記1種以上のC
2~C
5オレフィンを含む出力流を形成することであって、前記第2の触媒が、ドープされた、またはドープされていないゼオライト触媒を含む、出力流を形成すること
を含む、方法。
【請求項62】
前記積層床反応器が、固定床反応器である、請求項61記載の方法。
【請求項63】
前記積層床反応器が、流動床反応器である、請求項61記載の方法。
【請求項64】
前記第1の混合物を接触させることが、前記第1の混合物を前記積層床反応器内で第3の触媒と接触させることをさらに含む、請求項61から63までのいずれか1項記載の方法。
【請求項65】
前記第3の触媒が、ドープされた、またはドープされていないSiO
2触媒を含む、請求項64記載の方法。
【請求項66】
前記C
1~C
5線状または分岐状アルコールが、生物ベースであり、発酵プロセスによって生成される、請求項61から65までのいずれか1項記載の方法。
【請求項67】
前記C
1~C
5線状または分岐状アルコールが、石油由来ではない、請求項61から66までのいずれか1項記載の方法。
【請求項68】
前記1種以上のC
2~C
5オレフィンが、少なくとも80重量%の量で前記出力流中に存在する、請求項61から67までのいずれか1項記載の方法。
【請求項69】
前記1種以上のC
2~C
5オレフィンが、少なくとも85重量%の量で前記出力流中に存在する、請求項61から67までのいずれか1項記載の方法。
【請求項70】
前記1種以上のC
2~C
5オレフィンが、少なくとも90重量%の量で前記出力流中に存在する、請求項61から67までのいずれか1項記載の方法。
【請求項71】
前記1種以上のC
2~C
5オレフィンが、少なくとも95重量%の量で前記出力流中に存在する、請求項61から67までのいずれか1項記載の方法。
【請求項72】
前記出力流が、約2重量%~約10重量%の量の1種以上の芳香族(C
7+)化合物を含む、請求項61から71までのいずれか1項記載の方法。
【請求項73】
前記出力流が、10重量%を上回らない量の1種以上の芳香族(C
7+)化合物を含む、請求項61から72までのいずれか1項記載の方法。
【請求項74】
前記方法が、前記出力流から少なくともC
2オレフィンの部分を除去することをさらに含む、請求項61から73までのいずれか1項記載の方法。
【請求項75】
前記方法が、前記出力流から少なくともC
4オレフィンの部分を除去することをさらに含む、請求項61から74までのいずれか1項記載の方法。
【請求項76】
前記方法が、前記出力流から少なくともC
5オレフィンの部分を除去することをさらに含む、請求項61から75までのいずれか1項記載の方法。
【請求項77】
前記温度が、約550℃~約750℃である、請求項61から76までのいずれか1項記載の方法。
【請求項78】
前記温度が、約350℃~約550℃である、請求項61から76までのいずれか1項記載の方法。
【請求項79】
前記WHSVが、約0.5~約1.0である、請求項61から78までのいずれか1項記載の方法。
【請求項80】
前記WHSVが、約2.0~約5.0である、請求項61から78までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年4月23日に出願された「Single Step Conversion of C1-C2 Alcohols to Olefins」という表題の米国仮特許出願第63/179,145号、2021年7月8日に出願された「Single Step Conversion of C1-C2 bio-based or petro-based alcohols and mixtures thereof to C2-C7 olefins」という表題の同第63/219,803号、および2022年3月3日に出願された「C2-C5 Olefin Recycle」という表題の同第63/316,246号に対する優先権を主張し、それらの全体があらゆる目的のために参照により本明細書に援用されるものとする。
【0002】
技術分野
C1~C5アルコールを触媒転化させるためのシステムおよび方法、より具体的には、生物ベースのC1~C5アルコールをオレフィン混合物(C2~C5)に直接転化させる触媒方法が提供される。
【0003】
背景技術
燃料の合成のための石油資源を部分的に置き換えるために、バイオマスの使用に対する需要が高まっている。したがって、燃料のベースストックの合成にバイオエタノールを使用することが非常に興味深い。エタノールを燃料のベースストックに転化させる方法の根幹の反応は、エタノールの脱水と、それに続くエチレンのオリゴマー化である。
【0004】
ほとんどのエタノール脱水方法では、エタノール転化は、ほぼ完了している。高いエタノール転化を維持しながらC2選択率を増加させることは、方法の効率性を得るために、かつ下流の分離/精製の高価なステップを節約するために重要である。脱水は、酸性固体では300℃超の温度で容易に起こることが周知である。反応生成物は、主に水およびエチレンであり、エチレンは、96+%もの高い選択率で得られる。最も一般的に使用される触媒は、高純度のガンマアルミナ、シリカアルミナ、未処理のゼオライト(ZSM-5)、または蒸気処理によって改質されたゼオライトである。さらに、エタノール供給物中に水が存在することも、触媒表面の失活を制限する効果があり得る。
【0005】
米国特許第4,302,357号明細書は、脱水反応によってエタノールからエチレンを生成するための方法に用いられる活性アルミナ触媒に関する。この明細書において、エタノールのLHSVは、0.25~5h-1、好ましくは0.5~3h-1である。これらの例は、370℃および1h-1のLHSVで実施され、エチレン収率は、65~94%である。1979年12月のProcess Economics Reviews PEP 79-3 (SRI international)には、315℃~360℃、1.7bar(絶対圧)、および0.3hのWHSV(エタノール上)の管状固定床におけるシリカ-アルミナ触媒上のエタノール水(95/5重量%)混合物の脱水が記載されている。エタノール転化は99%であり、エチレン選択率は94.95%である。また、これには、399℃、1.7bar(絶対圧)、および0.7h-1のWHSV(エタノール上)の流動床におけるシリカ-アルミナ触媒上のエタノール-水(9575重量%)混合物の脱水も記載されている。エタノール転化は99.6%であり、エチレン選択率は99.3%である。
【0006】
エチレンのオリゴマー化は、一般に2~4MPaの範囲の高い圧力を必要とするが、一般に20℃~200℃の比較的低い温度を必要とする。使用される触媒は、ほとんどの場合、V. Hulea et al., J. Catal., 225 (2004)およびHeveling et al., J. Applied Catalysis A: General 174 (1998)によって記載されているシリカ-アルミナタイプの担体、ゼオライト(ZSM-5)、またはメソポーラス固体(MCM-41)上に堆積された遷移金属である。しかしながら、エチレンの直接オリゴマー化では、比較的少量(報告されている最高レベルは約40%)のC10+またはディーゼル画分が得られる。あるいは、エチレンをC8+オレフィンにするオリゴマー化は、二段階のプロセスを介して達成され得る。第1の段階は、精製エチレン流をブテンにする二量化を包含しており、続いて、ブテンをC8+オレフィンにする第2の段階であるオリゴマー化が行われ、それによって、水素化後に燃料のベースストックが提供される。
【0007】
米国特許第8,552,241号明細書は、300℃~500℃の反応温度でエタノールを酸触媒と接触させることを含む、単一ステップでエタノールをディーゼル燃料ベースストックに転化させる方法に関する。使用される触媒は、C4およびC5オレフィン分画の骨格異性化のためのアルミナベース触媒として販売されている市販のAxens触媒「タイプIS463」と組み合わせたγ-アルミナの50/50混合物である。典型的な単一パス生成物分布は、40~50%の炭化水素画分および5~20%の有機液相収率からなっていた。有機液相は、C6オレフィンが大部分となる約50%のオレフィンからなり、約40%が150℃超の沸点を有し、したがって、ディーゼルプールと適合している。40~50%の炭化水素気相は、エチレンおよびエタン、ならびに痕跡量のC1、C3、C4、およびC5を主に含有する。この場合、有機液相に対する収率は比較的低く、約20%が150℃超の沸点を有する。有機液体および炭化水素画分の残りの80%は、主にエチレンおよびエタン、ならびに痕跡量のC1、C3、C4、C5、およびC6オレフィンである。
【0008】
米国特許第9,840,676号明細書は、三段ステップのプロセスで、エタノールを、フルパフォーマンス(full performance)、または軍用ジェット、またはディーゼル燃料として利用することができる燃料に転化させる方法に関する。しかしながら、この方法は、エチレン形成で始まり、続いて、ヘキセンへの三量化、最後に、ジェットおよびディーゼル画分へのオリゴマー化が行われる。
【0009】
したがって、生物ベースのアルコールをオレフィン混合物に直接転化させる、改善された、効率的でコスト効果の高い触媒方法に対するニーズが依然として存在する。
【0010】
発明の概要
本主題の態様は、とりわけ、1種以上のC1~C5線状または分岐状アルコールを1種以上のC2~C5オレフィンに転化させるためのシステムおよび方法に関する。
【0011】
例示的な一実施形態では、1種以上のC1~C5線状または分岐状アルコールを1種以上のC2~C5オレフィンに転化させる方法は、1種以上のC1~C5線状または分岐状アルコールを含む入力流を単一床反応器内で少なくとも第1の触媒および第2の触媒と接触させて、出力流を形成することを含む。出力流は、1種以上のC2~C5オレフィンを含む。単一床反応器は、約350℃~約750℃の温度、0~約30barのゲージ圧、および約0.5~約5.0の重量空間速度(WHSV)である。第1の触媒は、第1の混合物を形成するために、中性またはイオン形態でジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、タングステン(W)、またはケイ素(Si)のうちの1つ以上を含むドープされた、またはドープされていないアルミナ触媒であり、第2の触媒は、ドープされた、またはドープされていないゼオライト触媒である。
【0012】
幾つかの実施形態では、単一床反応器は、固定床反応器であり得る。他の実施形態では、単一床反応器は、流動床反応器であり得る。
【0013】
幾つかの実施形態では、入力流を接触させることは、入力流を単一床反応器内で第3の触媒と接触させることをさらに含み得る。第3の触媒は、ドープされた、またはドープされていないSiO2触媒を含み得る。
【0014】
幾つかの実施形態では、C1~C5線状または分岐状アルコールは、生物ベースであり得、発酵プロセスによって生成され得る。幾つかの実施形態では、C1~C5線状または分岐状アルコールは、石油由来でなくてよい。
【0015】
幾つかの実施形態では、1種以上のC2~C5オレフィンは、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、または少なくとも95重量%であり得る量で出力流中に存在し得る。
【0016】
幾つかの実施形態では、出力流は、約2重量%~約10重量%の量の1種以上の芳香族(C7+)化合物を含み得る。幾つかの実施形態では、出力流は、10重量%を上回らない量の1種以上の芳香族(C7+)化合物を含み得る。
【0017】
幾つかの実施形態では、この方法は、出力流から少なくともC2オレフィンの部分を除去することを含み得る。幾つかの実施形態では、この方法は、出力流から少なくともC4オレフィンの部分を除去することを含み得る。幾つかの実施形態では、この方法は、出力流から少なくともC5オレフィンの部分を除去することを含み得る。
【0018】
幾つかの実施形態では、温度は、約550℃~約750℃であり得る。幾つかの実施形態では、温度は、約350℃~約550℃であり得る。
【0019】
幾つかの実施形態では、WHSVは、約0.5~約1.0であり得る。幾つかの実施形態では、WHSVは、約2.0~約5.0であり得る。
【0020】
別の例示的な実施形態では、メタノールを1種以上のC2~C5オレフィンに転化させる方法は、メタノールを含む入力流を単一床反応器内で少なくとも第1の触媒および第2の触媒と接触させて、出力流を形成することを含む。出力流は、1種以上のC2~C5オレフィンを含む。単一床反応器は、約350℃~約750℃の温度、0~約30barのゲージ圧、および約0.5~約5.0の重量空間速度(WHSV)である。第1の触媒は、中性またはイオン形態でジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、タングステン(W)、またはケイ素(Si)のうちの1つ以上を含むドープされた、またはドープされていないアルミナ触媒であり、第2の触媒は、ドープされた、またはドープされていないゼオライト触媒である。
【0021】
幾つかの実施形態では、単一床反応器は、固定床反応器であり得る。他の実施形態では、単一床反応器は、流動床反応器であり得る。
【0022】
幾つかの実施形態では、入力流を接触させることは、入力流を単一床反応器内で第3の触媒と接触させることをさらに含み得る。第3の触媒は、ドープされた、またはドープされていないSiO2触媒を含み得る。
【0023】
幾つかの実施形態では、C1~C5線状または分岐状アルコールは、生物ベースであり得、発酵プロセスによって生成され得る。幾つかの実施形態では、C1~C5線状または分岐状アルコールは、石油由来でなくてよい。
【0024】
幾つかの実施形態では、1種以上のC2~C5オレフィンは、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、または少なくとも95重量%であり得る量で出力流中に存在し得る。
【0025】
幾つかの実施形態では、出力流は、約2重量%~約10重量%の量の1種以上の芳香族(C7+)化合物を含み得る。幾つかの実施形態では、出力流は、10重量%を上回らない量の1種以上の芳香族(C7+)化合物を含み得る。
【0026】
幾つかの実施形態では、この方法は、出力流から少なくともC2オレフィンの部分を除去することを含み得る。幾つかの実施形態では、この方法は、出力流から少なくともC4オレフィンの部分を除去することを含み得る。幾つかの実施形態では、この方法は、出力流から少なくともC5オレフィンの部分を除去することを含み得る。
【0027】
幾つかの実施形態では、温度は、約550℃~約750℃であり得る。幾つかの実施形態では、温度は、約350℃~約550℃であり得る。
【0028】
幾つかの実施形態では、WHSVは、約0.5~約1.0であり得る。幾つかの実施形態では、WHSVは、約2.0~約5.0であり得る。
【0029】
別の例示的な実施形態では、1種以上のC1~C5線状または分岐状アルコールを1種以上のC2~C5オレフィンに転化させる方法は、1種以上のC1~C5線状または分岐状アルコールを含む入力流を、約350℃~約550℃の温度、0~約30barのゲージ圧、および約1.0~約2.0の重量空間速度(WHSV)で、積層床反応器内で第1の触媒と接触させて、第1の混合物を形成することを含む。第1の触媒は、中性またはイオン形態でジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、タングステン(W)、またはケイ素(Si)のうちの1つ以上を含むドープされた、またはドープされていないアルミナ触媒である。この方法は、第1の混合物を積層床反応器内で少なくとも第2の触媒と接触させて、1種以上のC2~C5オレフィンを含む出力流を形成することであって、第2の触媒が、ドープされた、またはドープされていないゼオライト触媒である、出力流を形成することをさらに含む。
【0030】
幾つかの実施形態では、積層床反応器は、固定床反応器であり得る。他の実施形態では、積層床反応器は、流動床反応器であり得る。
【0031】
幾つかの実施形態では、第1の混合物を接触させることは、第1の混合物を積層床反応器内で第3の触媒と接触させることをさらに含み得る。第3の触媒は、ドープされた、またはドープされていないSiO2触媒を含み得る。
【0032】
幾つかの実施形態では、C1~C5線状または分岐状アルコールは、生物ベースであり得、発酵プロセスによって生成され得る。幾つかの実施形態では、C1~C5線状または分岐状アルコールは、石油由来でなくてよい。
【0033】
幾つかの実施形態では、1種以上のC2~C5オレフィンは、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、または少なくとも95重量%であり得る量で出力流中に存在し得る。
【0034】
幾つかの実施形態では、出力流は、約2重量%~約10重量%の量の1種以上の芳香族(C7+)化合物を含み得る。幾つかの実施形態では、出力流は、10重量%を上回らない量の1種以上の芳香族(C7+)化合物を含み得る。
【0035】
幾つかの実施形態では、この方法は、出力流から少なくともC2オレフィンの部分を除去することを含み得る。幾つかの実施形態では、この方法は、出力流から少なくともC4オレフィンの部分を除去することを含み得る。幾つかの実施形態では、この方法は、出力流から少なくともC5オレフィンの部分を除去することを含み得る。
【0036】
幾つかの実施形態では、温度は、約550℃~約750℃であり得る。幾つかの実施形態では、温度は、約350℃~約550℃であり得る。
【0037】
幾つかの実施形態では、WHSVは、約0.5~約1.0であり得る。幾つかの実施形態では、WHSVは、約2.0~約5.0であり得る。
【0038】
別の例示的な実施形態では、メタノールを1種以上のC2~C5オレフィンに転化させる方法は、メタノールを含む入力流を、約350℃~約550℃の温度、0~約30barのゲージ圧、および約1.0~約2.0の重量空間速度(WHSV)で、積層床反応器内で第1の触媒と接触させて、第1の混合物を形成することを含む。第1の触媒は、中性またはイオン形態でジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、タングステン(W)、またはケイ素(Si)のうちの1つ以上を含むドープされた、またはドープされていないアルミナ触媒を含む。この方法は、第1の混合物を積層床反応器内で少なくとも第2の触媒と接触させて、1種以上のC2~C5オレフィンを含む出力流を形成することであって、第2の触媒が、ドープされた、またはドープされていないゼオライト触媒である、出力流を形成することをさらに含む。
【0039】
幾つかの実施形態では、積層床反応器は、固定床反応器であり得る。他の実施形態では、積層床反応器は、流動床反応器であり得る。
【0040】
幾つかの実施形態では、第1の混合物を接触させることは、第1の混合物を積層床反応器内で第3の触媒と接触させることをさらに含み得る。第3の触媒は、ドープされた、またはドープされていないSiO2触媒を含み得る。
【0041】
幾つかの実施形態では、C1~C5線状または分岐状アルコールは、生物ベースであり得、発酵プロセスによって生成され得る。幾つかの実施形態では、C1~C5線状または分岐状アルコールは、石油由来でなくてよい。
【0042】
幾つかの実施形態では、1種以上のC2~C5オレフィンは、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、または少なくとも95重量%であり得る量で出力流中に存在し得る。
【0043】
幾つかの実施形態では、出力流は、約2重量%~約10重量%の量の1種以上の芳香族(C7+)化合物を含み得る。幾つかの実施形態では、出力流は、10重量%を上回らない量の1種以上の芳香族(C7+)化合物を含み得る。
【0044】
幾つかの実施形態では、この方法は、出力流から少なくともC2オレフィンの部分を除去することを含み得る。幾つかの実施形態では、この方法は、出力流から少なくともC4オレフィンの部分を除去することを含み得る。幾つかの実施形態では、この方法は、出力流から少なくともC5オレフィンの部分を除去することを含み得る。
【0045】
幾つかの実施形態では、温度は、約550℃~約750℃であり得る。幾つかの実施形態では、温度は、約350℃~約550℃であり得る。
【0046】
幾つかの実施形態では、WHSVは、約0.5~約1.0であり得る。幾つかの実施形態では、WHSVは、約2.0~約5.0であり得る。
【0047】
前述の概念と、以下でより詳細に論じられる追加の概念との全ての組み合わせ(そのような概念が相互に矛盾しないことを前提とする)は、本明細書に開示されている発明の主題の一部であると考えられると理解されるべきである。特に、本開示の特許請求された主題の全ての組み合わせは、本明細書に開示されている発明の主題の一部であると考えられる。また、参照により組み込まれる任意の開示にも現れ得る本明細書で明示的に用いられている用語には、本明細書に開示されている特定の概念と最も一致する意味が与えられるべきであることも理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】本主題の実施形態と一致する、C
2、C
4、およびC
5オレフィンの閉ループ再循環を有する単一固定床反応器システムの目的通りのプロピレン構成の例示的な方法概念を示す。
【0049】
詳細な説明
以下の説明では、様々な実施形態の完全な理解を提供するために、特定の具体的な詳細が記載されている。しかしながら、当業者は、本開示がこれらの詳細なしで実践することができると理解するであろう。他の例では、実施形態の説明を不必要に曖昧にすることを避けるために、周知の構造は、詳細に図示または記載されていない。文脈上別段の定めがない限り、以下の明細書および特許請求の範囲全体を通じて、「含む(comprise)」という単語、ならびに「含む(comprises)」および「含む(comprising)」などのその変形形態は、オープンで包括的な意味合いで、すなわち、「~を含むが、これらに限定されることはない」として解釈されるべきである。さらに、本明細書に提供される見出しは、単に便宜上のためであり、特許請求された開示の範囲または意味を解釈するものではない。
【0050】
本明細書全体を通じて、「1つの実施形態」または「一実施形態」についての言及は、実施形態に関連して記載されている特定の特徴、構造、または特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通じて様々な箇所で「1つの実施形態では」または「一実施形態では」という語句が見られるが、必ずしも全てが同じ実施形態を指すわけではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1つ以上の実施形態では、任意の好適な手法で組み合わせることができる。また、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈上明らかに他のことが指示されない限り、複数の参照物を含む。また、文脈上明らかに他のことが指示されない限り、「または」という用語は、一般に、「および/または」を含むその意味合いで用いられることにも留意すべきである。
【0051】
数値の直前にある「約」という単語は、その値のプラスまたはマイナス10%の範囲を意味し、例えば、「約50」は45~55を意味し、「約25,000」は22,500~27,500を意味することなどが言える。さらに、「約(値)未満」または「約(値)超」という表現は、本明細書に提供される「約」という用語の定義を考慮して理解されるべきである。
【0052】
「オキシゲネート」は、それらの化学構造中に酸素を含む化合物を指す。オキシゲネートの例は、水、アルコール、エステル、およびエーテルを含むが、これらに限定されることはない。
【0053】
「WHSV」は、重量空間速度を指し、1時間当たりの触媒の単位重量当たりに流れる供給物の重量として定義される。
【0054】
本明細書で使用される場合、「芳香族」または「芳香族化合物」は、6個以上の炭素からなる環状有機炭素化合物(例えば、ベンゼンなど)を指す。
【0055】
本明細書で使用される場合、「痕跡量」または「痕跡レベル」は、2%未満のレベルを指す。幾つかの実施形態では、痕跡量または痕跡レベルは、約1.5%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.1%未満、約0.1%~約1.8%、または約1%~約1.5%のレベルを指し得る。
【0056】
「単一段階変換」は、単一反応器システム内で起こるプロセスを指す。
【0057】
本明細書に記載されている全ての収率および転化率は、特に明記しない限り、重量ベースである。
【0058】
本明細書に記載されている例および実施形態は、単に例示目的のものであり、それに照らして、様々な修正または変更が、当業者に思い浮かび、本出願の趣旨および範囲ならびに添付の特許請求の範囲に含まれるべきであると理解される。本明細書で引用される全ての刊行物、特許、および特許出願は、それらの全体があらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0059】
その全体が本明細書に援用される国際公開第2021/067294号に既に開示されているように、アルコールは、低レベルの芳香族化合物を有する主にC3~C7オレフィンを含むオレフィン混合物に転化され得る。この方法は、アルコール、例えばエタノールを、燃料の生成のためのベースストックに転化させるための経済的な手法への経路を提供する。さらに、本明細書に記載されている方法は、既に利用可能なアプローチと比較して、オレフィンのより高い収率を伴って、より低い圧力およびより高い温度で実施することができる。この方法は、バイオマス由来の水性バイオアルコール原料を、高収率でC10+炭化水素またはディーゼル画分に容易にオリゴマー化することができる、より高い分子量のオレフィン混合物に単一段階変換することを含み得る。単一段階反応器または二段階反応器の構成は、特定の触媒システムを使用し、それによって、芳香族化合物の生成を最小限に抑え、したがって、中間留分の生成を最大化することが可能になる。国際公開第2021/067294号に記載されている方法は、燃料のベースストックとしてC2~C5アルコールを効率的かつ経済的に転化させる。C2~C5アルコールを所望の燃料生成物前駆体(例えば、C3~C7オレフィン)に高収率で転化させることによって、処理コストが削減される。
【0060】
本明細書に開示されている主題の態様は、とりわけ、二触媒系を使用して、競争力のあるコストで、C2~C5線状または分岐状アルコールを、低レベルの芳香族を有するC2~C7オレフィンに高収率で転化させる方法を提供することによって、これまでのアプローチを改善する。本開示と一致して、バイオベースのC1~C5アルコールを、低レベルの芳香族を有するオレフィン混合物(例えば、C2~C5)に直接転化させる方法は、単一固定床反応器内で実施され得る。C2~C5オレフィンは、高収率の燃料の生成に使用されるベースストックに容易にオリゴマー化することができる。
【0061】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載されている方法は、単一床反応器内で実施することができる。他の実施形態では、本明細書に記載されている方法は、単一積層床反応器内で実施することができる。例えば、特定の実施形態では、アルコール、例えば、メタノールまたはエタノールは、反応器の上部区域に第1の触媒を有し、第2の触媒が第1の触媒の下方の反応器区域に位置している単一反応器内で、オレフィン混合物(例えば、C2~C5)に転化させることができる。単一段階のプロセス(例えば、単一床反応器を使用する)または二段階のプロセス(例えば、積層床反応器を使用する)のいずれにおいても、得られるC2~C5オレフィン混合物は、選択されるオリゴマー化触媒に応じて、比較的低い温度および圧力で、ガソリン、ジェット、またはディーゼル燃料分画のいずれかにオリゴマー化するのに適切である。さらに、幾つかの実施形態では、単一床反応器または積層床反応器は、固定床反応器として定義され得るが、他の実施形態では、流動床反応器が使用され得る。
【0062】
C1~C5アルコールの触媒転化のためのシステムおよび方法が提供される。一般に、本開示と一致する触媒方法は、アルコール脱水、続いて、骨格炭素の蓄積、およびその後の「クラッキング」を含み、それによって、低分子量のオレフィン(例えば、C2~C5)が高収率で得られる。この単一段階プロセスでは、触媒混合物によって、エタノールとしてシステムに供給される炭素のモル数とC2~C5オレフィン混合物に組み込まれるシステムから排出される炭素のモル数とによって定義されるような良好な炭素アカウンタビリティ(carbon accountability)を伴う収率で低分子量オレフィンへのアクセスを提供するC2~C5オレフィン混合物を得ることができる。さらに、特定のオレフィン(例えば、C2~C5)の再循環流の使用は、有利には、プロピレン、ブテン、またはそれらの混合物などの所望のオレフィンの目的通りの形成を最大化する能力をもたらす。幾つかの実施形態では、オレフィンの混合物は、選択したオリゴマー化触媒に応じて、比較的低い温度および圧力で、ガソリン、ジェット、またはディーゼル燃料分画のいずれかにオリゴマー化するのに適切である。
【0063】
前述のように、ほとんどのC2~C5アルコールは、脱水触媒の存在下に、300℃~500℃の間で、単一ユニット操作で脱水され、それによって、水と共にC2~C5オレフィンが生成される。水を除去し、C2~C5オレフィンをさらに処理/精製して、化学薬品および/または燃料への転化前に未反応のC2~C5アルコールおよび/または不純物を除去する。エタノール(C2アルコール)と比較して、化学物質および/または燃料に転化させる古典的なアプローチは、i)エチレンへの脱水、ii)エチレン精製、続いて、ブテンへの二量化、iii)プロピレンへのクラッキング、iv)ブテンを不飽和ジェットおよび/もしくはディーゼル燃料前駆体にするオリゴマー化、またはv)エチレンを不飽和ジェットおよび/もしくはディーゼル燃料前駆体にする直接オリゴマー化を達成するための個別のユニット操作を利用する。同様に、C4またはC5アルコールを化学物質および/または燃料に転化させるアプローチは、i)C4もしくはC5オレフィンへの脱水、ii)オキシゲネートおよび/もしくは未反応アルコールを除去するためのオレフィン精製、ならびにiii)不飽和のジェットおよび/もしくはディーゼル燃料前駆体へのオリゴマー化を達成するための個別のユニット操作を利用する。メタノールと比較して、工業プロセスは、主に石炭由来のメタノールを、オレフィン再循環を伴う単一ステップでメソポーラス触媒(例えば、SAPO-34など)を介してオレフィンに転化させる。
【0064】
C1~C5アルコールまたはそれらの混合物を1つの反応器内で同時に脱水、オリゴマー化、およびクラッキングするという概念は、完全な脱水により高い温度(例えば、約300℃~約500℃)が必要とされること、および存在する水の量が多いことを理由に、困難である。C1~C5アルコールの脱水に由来するオレフィンの脱水、オリゴマー化、およびクラッキングを同時に行うことができる単一ユニット操作を実現するためには、用いられる触媒が、多量の水および他のオキシゲネートと共に高温に耐えることができる必要がある。
【0065】
これらの困難に対処し、C1~C5アルコールを、燃料への高収率をもたらす可能な原料に転化させるアプローチを定義するために、C1~C5アルコールを化学原料として使用するために、単一ユニット操作(例えば、単一反応器)を介して容易に分離可能であるか、または高収率で燃料のベースストックに容易にオリゴマー化されるC2~C5オレフィンの混合物に高収率で転化させることができる方法が開発された。本明細書に提示されているように、単一反応器内で多数のユニット操作および化学変換を達成する能力は、固定コストおよび変動コストの削減、資本投資の低下、エネルギーの低下、および生産性の向上を理由に、有利な経済性を実務者に提供する。
【0066】
この目的のために、本開示と一致して、メタノール、および/またはメタノールとC2~C5アルコールとの混合物の転化は、C2~C5オレフィン混合物と同様に、高収率および炭素アカウンタビリティを伴って進行する。例示的な単一反応ステップは、i)脱水、ii)C4+オレフィンへのオリゴマー化、iii)骨格再配列、およびiv)少量のC4+オレフィンおよび芳香族を伴う主にプロピレンへのクラッキングを包含する。したがって、メタノールとエタノールとの気化流を、約300℃~約450℃の間で、第2の触媒部分としてのドープされたゼオライト(ホウ素、リン、またはそれらの組み合わせ)と組み合わされた第1の部分のシリケート化、ジルコネート化、チタネート化、ニオブ、またはフッ素化したγ-アルミナを含有する物理的混合物を含有する単一固定触媒床上に通過させると、販売のために分離するか、または凝縮水の除去後に「そのまま」オリゴマー化して主にジェットおよび/もしくはディーゼル燃料にすることができるC2~C5オレフィン混合物が得られる。単一固定床反応器内でのこの触媒組み合わせによって、i)脱水、ii)C4+オレフィンへのオリゴマー化、iii)骨格再配列、およびiv)クラッキングが達成され、それによって、触媒流通時間(catalyst time on stream)(ToS)が長くなり、水熱安定性が改善され、飽和物および芳香族の量がより少ないオレフィンに対する選択率が改善された。
【0067】
さらに、本システムおよび方法は、C1~C5アルコールを同時に供給しながら、閉ループプロセス構成で、1種以上の特定のオレフィン画分(例えば、C2+C4+C5またはC2+C5など)の再循環を任意選択的に含み得る。これによって、選択したオレフィンの目的通りの収率を最大化することができる。例えば、本明細書で提供される本システムおよび方法を使用したC1~C5アルコールの共供給と組み合わせたC2+C4+C5オレフィン画分の再循環は、予想外なことに、80重量%を上回る目的通りのプロピレン炭素収率をもたらした。C2+C5オレフィン画分の選択的再循環は、80重量%を上回るプロピレンとブテンとを組み合わせた目的通りの炭素収率をもたらす。例8は、本明細書に記載されている特定のオレフィン画分の再循環を使用した場合に達成される予測不可能な収率に関するさらなる詳細を示す。さらに、C4+C5オレフィン画分の再循環は、80重量%を上回るエチレンとプロピレンとを組み合わせた目的通りの炭素収率をもたらし得る。例示的な単一ステップ反応は、i)インサイチュ脱水、ii)C3+オレフィンへのオリゴマー化、iii)骨格再配列、およびiv)少量のC5+オレフィンおよび芳香族の形成を伴うC2~C5オレフィンへのクラッキングを包含し得る。したがって、選択したオレフィン画分を再循環させることによって、化学薬品および/または燃料の生成のための目的通りのオレフィン生成が可能になる。
【0068】
エチレンの転化とは異なり、プロピレンおよびより高い分子量の他のオレフィン(C4+)は、ゼオライト系および非ゼオライト系のタイプの両方の広範囲の触媒上で容易にオリゴマー化することができる。本開示は、単一段階または直列の二段階反応器構成において、C1~C5アルコールを、低レベルの芳香族を有する、主にC2~C5オレフィンを含むオレフィン混合物に転化させる能力を可能にし、C1~C5アルコールを化学物質および/または燃料のベースストックに転化させる経済的な方法に向かう経路を提示する。本発明による方法は、バイオマスから得られる水性C1~C5バイオアルコール原料を、化学構築ブロックとして業界全体で使用される主要な低分子量オレフィンを単離するように分離することができるか、または高収率でC10+炭化水素もしくはディーゼル画分に容易にオリゴマー化することができる、主にC2~C5オレフィン混合物に「単一」段階変換することを含むスキームを実現する。特定の触媒システムを使用した二段階または単一段階構成によって、芳香族化合物の生成を最小限に抑え、したがって、中間留分の生成を最大化することができ、このことは、エタノール精製装置にとっての資産になると同時に、持続的な開発の観点からも利点になる。
【0069】
国際特許出願である国際公開第2010/097175号は、直列した第1の段階の反応器および第2の段階の反応器の両方に市販のZSM-5ゼオライト触媒(Zeolyst CBV-28014)を添加する二段階プロセスを介したアルコールおよびオキシゲネートの直接転化に関する。第1の反応器を460℃の温度にし、第2の反応器の温度を320℃にする。温度が安定した後に、86%のメタノール、9%のイソプロパノール、および5%の水からなる供給を開始する。メタノールの単一パス転化は、典型的には、95%超であり、報告されている最終液体生成物は、n≧5の60~85%のCnオレフィン、n=2~4の15~40重量%の軽質Cnオレフィン、および10%未満の芳香族から主になる。最終液体生成物は、好ましくは、水素化されてガソリン分画を与えるか、または従来の方法に従ってオリゴマー化されて、ガソリン、灯油、およびディーゼルの混合物を生じる。
【0070】
単一固定床反応器の構成では、C1~C5アルコールまたはそれらの混合物の場合のように、C1~C5アルコールを所望の燃料生成物または燃料生成物前駆体(例えば、C2~C5オレフィン)に転化させることによって、処理コストを削減することができる。例示的な一実施形態では、1種以上のC1~C5線状または分岐状アルコールを1種以上のC2~C5オレフィンに転化させる方法が提供される。この方法は、1種以上のC1~C5線状または分岐状アルコールを含む入力流を単一床反応器内で少なくとも第1の触媒および第2の触媒と接触させて、1種以上のC2~C5オレフィンを含む出力流を形成することを含み、単一床反応器は、約350℃~約750℃の温度であり、ゲージ圧は、0~約30barであり、重量空間速度(WHSV)は、約0.5~約5.0である。
【0071】
C2~C5オレフィン形成のための、単一固定床反応器内で物理的に混合された例示的な触媒の組み合わせは、10超のSi/Alを有する、ZSM-5(MFIもしくはBEA骨格)、CHA、FER、FAU、MWW、MOR、EUO、MFS、ZSM-48、MTT、もしくはTONの群の結晶性ケイ酸塩などの一部分(例えば、第1の触媒)がドープされたゼオライト、または10超のSi/Alを有する、ZSM5(MFIもしくはBEA骨格)、CHA、FER、FAU、MWW、MOR、EUO、MFS、ZSM-48、MTT、もしくはTONの群の脱アルミニウム結晶性ケイ酸塩、または10超のSi/Alを有する、ZSM-5(MFIもしくはBEA骨格)、CHA、FER、FAU、MWW、MOR、EUO、MFS、ZSM-48、MTT、もしくはTONの群のリンおよび/もしくはホウ素修飾結晶性ケイ酸塩、またはAELの群のシリコアルミノホスフェートタイプのモレキュラーシーブを含み得る。ドープされたゼオライトと混合するための追加の添加剤は、鉄(Fe)、ストロンチウム(Sr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ランタン(La)、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)、ルテニウム(Ru)、モリブデン(Mo)、イリジウム(Ir)、マグネシウム(Mg)、タングステン(W)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、ロジウム(Rh)、レニウム(Re)、ガリウム(Ga)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、インジウム(In)を含む金属ドーパントでドープされたSiO2担体からなる。触媒混合物の第2の部分(例えば、第2の触媒)は、シリケート化、ジルコネート化、チタネート化、ニオブ、またはフッ素化したγ-アルミナを含み得る。例えば、前述の例示的な触媒の組み合わせは、C1~C5アルコールを効率的に脱水してそれらのそれぞれのオレフィンにするが、その一方で、ドープされたゼオライトは、単一成分のゼオライト触媒または金属酸化物触媒を利用する文献の報告と比較してより少ない量の飽和物および芳香族を伴って、C2~C5オレフィンへのオリゴマー化およびクラッキングをもたらす。
【0072】
以下の代表的な例は、C1~C5アルコールまたはそれらの混合物を、定量的なC1~C5アルコール転化での単一ユニット操作を介して、より少ない量のC5+オレフィンおよび芳香族(BTX)を伴って、85重量%超の炭素収率で主にプロピレンおよびブテンに転化させることに関する。さらに、痕跡量のメタンと共に一酸化炭素または二酸化炭素が検出されないことによってさらに示されるように、所望の炭素アカウンタビリティが達成されている。未反応のオレフィン画分(例えば、C2~C5オレフィン)を分離して再循環させることができ、それによって、高収率での、かつ所望のオレフィンに対する炭素アカウンタビリティでの目的通りの形成がもたらされる。
【0073】
顆粒状の、または押出成形された触媒を、本明細書に記載されている反応に使用することができる。例えば、幾つかの実施形態では、顆粒状の、または押出成形された触媒は、その間の全ての部分範囲を含む、少なくとも約0.05mm超、約0.1mm以上、または約0.05mm~約2.5mmの粒径を有し得る。一実施形態では、顆粒状の、または押出成形された触媒は、約0.4~約2.0mmの粒径を有し得る。
【0074】
本開示には、1種以上のC1~C5線状または分岐状アルコールを1種以上のC2~C5オレフィンに転化させる方法が記載されている。特定の実施形態では、この方法は、1種以上のC1~C5線状または分岐状アルコールを含む入力流を単一床反応器内で少なくとも第1の触媒および第2の触媒と接触させて、1種以上のC2~C5オレフィンを含む出力流を形成することを含み、単一床反応器は、約350℃~約750℃の温度であり、ゲージ圧は、0~約30barであり、重量空間速度(WHSV)は、約0.5~約5.0であり、第1の触媒は、中性またはイオン形態でジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、タングステン(W)、またはケイ素(Si)のうちの1つ以上を含むドープされた、またはドープされていないアルミナ触媒を含み、第2の触媒は、ドープされた、またはドープされていないゼオライト触媒を含む。
【0075】
本開示には、メタノールを1種以上のC2~C5オレフィンに転化させる方法も記載されている。特定の実施形態では、この方法は、メタノールを含む入力流を単一床反応器内で少なくとも第1の触媒および第2の触媒と接触させて、1種以上のC2~C5オレフィンを含む出力流を形成することを含む。単一床反応器は、約350℃~約750℃の温度、0~約30barのゲージ圧、および約0.5~約5.0の重量空間速度(WHSV)で動作し、第1の触媒は、中性またはイオン形態でジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、タングステン(W)、またはケイ素(Si)のうちの1つ以上を含むドープされた、またはドープされていないアルミナ触媒を含む。第2の触媒は、ドープされた、またはドープされていないゼオライト触媒を含む。
【0076】
本開示は、1種以上のC1~C5線状または分岐状アルコールを1種以上のC2~C5オレフィンに転化させる方法も提供する。特定の実施形態では、この方法は、1種以上のC1~C5線状または分岐状アルコールを含む入力流を積層床反応器内で第1の触媒と接触させて、1種以上のC2~C5オレフィンを含む出力流を形成することを含み得る。積層床反応器は、約350℃~約550℃の温度、0~約30barのゲージ圧、および約1.0~約2.0の重量空間速度(WHSV)であり、第1の触媒は、中性またはイオン形態でジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、タングステン(W)、またはケイ素(Si)のうちの1つ以上を含むドープされた、またはドープされていないアルミナ触媒を含む。この方法は、第1の混合物を少なくとも第2の触媒と接触させることをさらに含み、第2の触媒は、ドープされた、またはドープされていないゼオライト触媒を含む。
【0077】
本開示は、メタノールを1種以上のC2~C5オレフィンに転化させる方法も提供する。特定の実施形態では、この方法は、メタノールを含む入力流を積層床反応器内で第1の触媒と接触させて、第1の混合物を形成することを含む。積層床反応器は、約350℃~約550℃の温度、0~約30barのゲージ圧、および約1.0~約2.0の重量空間速度(WHSV)である。第1の触媒は、第1の混合物を形成するために、中性またはイオン形態でジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、タングステン(W)、またはケイ素(Si)のうちの1つ以上を含むドープされた、またはドープされていないアルミナ触媒を含む。次いで、第1の混合物を少なくとも第2の触媒と接触させて、1種以上のC2~C5オレフィンを含む出力流を形成し、第2の触媒は、ドープされた、またはドープされていないゼオライト触媒を含む。
【0078】
本主題の幾つかの実施形態では、入力流または第1の混合物を接触させることは、入力流または第1の混合物を第3の触媒と接触させることをさらに含む。第3の触媒は、ドープされた、またはドープされていないSiO2触媒であり得る。反応器は、固定床反応器および/または流動床反応器であり得る。適切なC1~C5線状または分岐状アルコールは、生物ベースであり、かつ発酵プロセスによって生成されたもの、および石油由来ではないものを含む。
【0079】
出力流に関して、C2~C5オレフィンは、出力流の少なくとも80重量%の量で存在し得る。C2~C5オレフィンは、その間の全ての部分範囲を含む、出力流の80重量%~99重量%の量で存在し得る。C2~C5オレフィンは、出力流の少なくとも85重量%の量で存在し得る。C2~C5オレフィンは、出力流の少なくとも90重量%の量で存在し得る。C2~C5オレフィンは、出力流の少なくとも95重量%の量で存在し得る。さらに、出力流に関して、本明細書に開示されている方法は、出力流から少なくともC2オレフィンの部分を除去することをさらに含み得る。この方法は、出力流から少なくともC4オレフィンの部分を除去することを含み得る。この方法は、出力流から少なくともC5オレフィンの部分を除去することを含み得る。
【0080】
反応器に関して、反応器は、その間の全ての部分範囲を含む、約350℃~約550℃の温度で動作させることができる。反応器は、その間の全ての部分範囲を含む、約550℃~約750℃の温度で動作させることができる。反応器は、その間の全ての部分範囲を含む、約0.5~約1.0のWHSVで動作させることができる。反応器は、その間の全ての部分範囲を含む、約2.0~約5.0のWHSVで動作させることができる。反応器は、固定床反応器であり得る。反応器は、流動床反応器であり得る。
【0081】
以下の特定の例は、本発明を説明することが意図されており、添付の特許請求の範囲によって定義されているような本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0082】
前述の詳細な説明は、単に理解を明確にするために与えられており、当業者には修正が明らかであるため、そこから不必要な限定が理解されるべきではない。
【0083】
本発明をその特定の実施形態に関連して説明してきたが、さらなる修正が可能であり、本出願が、一般に本発明の原理に従い、かつ本発明が関連する技術分野で公知であるか、または慣例的実践の範囲内にあるような、ならびに前述のおよび以下で添付の特許請求の範囲にある本質的な特徴に適用され得るような本開示からの逸脱を含む、本発明の任意の変形形態、使用、または適応を網羅することが意図されていると理解されるであろう。
【0084】
実施例
例1:反応器のセットアップ
アルコール(すなわち、C1~C5)をC2~C5オレフィンにする転化は、大気圧で、または中圧(すなわち、0~30bar)下で窒素を共供給しながら、予熱(160℃)して気化させたアルコールを下降流で固定触媒床に流す、特定の触媒を含有する固定床反応器を介して、300℃~500℃で実施した。アルコールの流量は、Teledyne Model 500Dシリンジポンプによって制御し、流量は、目標のオレフィンWHSV(重量空間速度)を得るように調整した。内部反応温度は、Thermo-Scientific社製のLindberg Blue M炉を介して一定に維持した。アルコールの転化率および選択率は、有機物および水分含有量のためのGC、非凝縮炭化水素(すなわち、C2~C5オレフィン)のオンラインGC分析、ならびに内部標準としての窒素に対するCO、CO2、およびCH4の定量のためのオンライン熱伝導率検出器によって、液相反応器流出物を分析することより計算した。したがって、350℃~450℃で単一固定床反応器内の触媒組み合わせ上にC1~C5アルコールの気化流を通過させると、C2~C5オレフィンが高収率で形成される。
【0085】
例2:含浸Zr-γ-アルミナ(公称Zr金属5重量%)触媒の調製
Zr-γ-アルミナ触媒は、記載されているようなインシピエントウェットネス技術によって調製した。前駆体金属塩(Sigma Aldrich):2.64gのオキシ硝酸ジルコニウム(IV)水和物を脱イオン水(14.9mL)に溶解させた。塩の溶解後に、溶液を15gのγ-アルミナ担体に滴加した。得られた混合金属酸化物を手動で混合して、完全な湿潤を確実にし、得られた含浸触媒を160℃で1時間乾燥させ、その後、500℃で4時間焼成した。
【0086】
例3:ホウ素/リン含浸ZSM-5ゼオライト触媒の調製
ホウ素およびリン含浸ゼオライト触媒は、記載されているようなインシピエントウェットネス技術によって調製した。0.78gのリン酸(85%)および0.96gのホウ酸(99+%)を脱イオン水(7.4mL)に溶解させた。加熱および溶解後に、溶液を6gのZSM-5ゼオライト担体(すなわち、ZeolystタイプCBV-5524 H+)に滴加した。得られた含浸触媒を、160℃で1時間乾燥させ、その後、550℃で3~15時間焼成した。
【0087】
例4:単一段階反応器
単一段階反応器の構成:反応条件:反応器内でT=355℃、WHSV=2.5(メタノールベース)、P=0bar;触媒-ドープされたZSM-5ゼオライトと物理的に混合されたジルコネート化(4.0重量%)γ-アルミナ。
【0088】
【0089】
約68%質量収率のエチレン転化
【0090】
例5:単一段階反応器
単一段階反応器の構成:反応条件:反応器内でT=425℃、WHSV=4.5(エタノールベース)、P=0bar;触媒-ドープされたZSM-5ゼオライトおよびNiドープされたSiO2と物理的に混合されたジルコネート化(4.0重量%)γ-アルミナ。
【0091】
【0092】
約62%質量収率のエチレン転化
【0093】
例6:単一段階反応器
単一段階反応器の構成:反応条件:供給物予熱器T=160℃、反応器T=445℃、合計WHSV=3.4(再循環を含む)、P=0~1bar;触媒:ドープされたZSM-5ゼオライトと物理的に混合されたジルコネート化(4.0重量%)γ-アルミナ;供給物組成:含水エタノール(92%)=0.15ml/分、エチレン再循環=70ml/分(0.087g/分);混合ブテン=23ml/分(0.057g/分)、混合ペンテン=0.035ml/分、窒素=10ml/分。
【0094】
【0095】
【0096】
例6からの実験データに基づく、C
2、C
4、およびC
5オレフィンの閉ループ再循環を有する目的通りのプロピレン(81%の収率)構成の方法概念および物質収支を
図1に示す。C
2、C
4、およびC
5オレフィンの再循環によって、目標通りのオレフィン形成が最大化される。
図1は、単一段階反応器システム1000を示す。図に示されるように、含水エタノール(92%)などの入力100を固定床反応器300に供給して、先の表4に与えられている最終出力を有するC
2~C
5オレフィン混合物などの出力200を生成することができる。さらに、再循環流R1、R2、およびR3は、それぞれC
2、C
4、およびC
5オレフィンを再循環させて入力100に戻し、固定床反応器300に供給して戻すことができる。廃水400は、エタノールをエチレンにする脱水を介して固定床反応器300によってインサイチュで生成することもでき、したがって、凝縮し、出力200の一部として除去することができる。
【0097】
例7:C1~C5生物ベースまたは石油ベースのアルコールおよびそれらの混合物の同時の脱水、二量化、骨格再配列、およびC2~C7オレフィンへのクラッキング
この例の目的は、C1~C5生物ベースまたは石油ベースのアルコールを、低レベルの芳香族化合物を有するC2~C7オレフィン混合物にする転化を示すデータを提供することである。反応器のセットアップおよび得られる流出物流、ならびに収量データの詳細を以下に提供する。
【0098】
単一段階反応器の構成:反応条件:反応器内でT=425℃、WHSV=4.5(エタノールベース)、P=0bar;触媒-ドープされたZSM-5ゼオライトおよびNiドープされたSiO2と物理的に混合されたジルコネート化(4.0重量%)γ-アルミナ。
【0099】
【0100】
約62%質量収率のエチレン転化
【0101】
例8:オレフィン画分の再循環を使用して増加したプロピレン収率
本明細書には、本明細書に開示されているようなC2/C3/C4オレフィン画分の再循環を使用して増加した収率を示すデータが提供されている。
【0102】
表6のデータの単一段階反応器の構成:反応条件:供給物予熱器T=160℃、反応器T=445℃、合計WHSV=4.35、P=0~1bar;触媒:ジルコネート化(4.0重量%)γ-アルミナ。
【0103】
【0104】
表7のデータの単一段階反応器の構成:反応条件:供給物予熱器T=160℃、反応器T=445℃、合計WHSV=3.7(再循環を含む)、P=0~1bar;触媒:ジルコネート化(4.0重量%)γ-アルミナ。
【0105】
【国際調査報告】