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特表2024-515724長期にわたり血小板の生存能力および活性化能力を維持するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】長期にわたり血小板の生存能力および活性化能力を維持するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/49 20060101AFI20240403BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240403BHJP
   C12N 5/078 20100101ALI20240403BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20240403BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 35/19 20150101ALI20240403BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20240403BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALN20240403BHJP
【FI】
G01N33/49 X ZNA
G01N33/53 N
C12N5/078
C07K14/47
C07K7/06
A61K35/19
A61P7/04
C12Q1/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564676
(86)(22)【出願日】2022-03-14
(85)【翻訳文提出日】2023-12-19
(86)【国際出願番号】 US2022020115
(87)【国際公開番号】W WO2022225624
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】63/177,203
(32)【優先日】2021-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523396945
【氏名又は名称】レサム・テクノロジーズ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己
(74)【代理人】
【識別番号】100220098
【弁理士】
【氏名又は名称】宮脇 薫
(72)【発明者】
【氏名】パドマナバン,アナンド
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ,カーティス・ジェラルド
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4B065
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
2G045BB54
2G045CA24
2G045DA37
4B063QA01
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ79
4B063QR48
4B063QR72
4B063QR77
4B063QS36
4B063QX01
4B065AA93X
4B065AC20
4B065BD09
4B065BD12
4B065BD36
4B065BD39
4B065CA44
4B065CA46
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB38
4C087CA04
4C087MA55
4C087NA03
4C087NA14
4C087ZA53
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA14
4H045CA40
4H045EA50
(57)【要約】
本明細書に記載される組成物および方法は、解凍による回収方法と結び付けられた制御された凍結プロセスによって安定化血小板を提供する。安定化血小板は、凍結および解凍後に活性化される能力を維持する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生存能力および活性化能を維持する血小板を凍結保存するための方法であって、
(a)対象から血液または多血小板血漿またはアフェレーシス由来血小板を得;
(b)血液、多血小板血漿またはアフェレーシス血小板から血小板を単離し;
(c)トレハロースを含む懸濁緩衝液中に血小板を懸濁させ;
(d)懸濁した血小板に安定剤を加え;
(e)血小板を約-80℃の温度に冷却し;そして
(f)約-80℃で血小板を保存する;
ことを含む、前記方法。
【請求項2】
該方法が血小板の生存能力および活性化能を2週間以上維持する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
懸濁緩衝液が約50mMのトレハロースを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
安定剤が約4質量%のウシ血清アルブミン(BSA)である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程(c)の血小板を約1×10血小板/μLの最終濃度に懸濁緩衝液で希釈する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
希釈した血小板を、約37℃で約2時間にわたり定期的に撹拌しながらインキュベートする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
血小板の単離が、血液、多血小板血漿またはアフェレーシス血小板を100×gで15分間遠心分離して第1のペレットおよび第1の上清を生成し;その後、第1の上清を1000×gで15分間遠心分離して第2のペレットおよび第2の上清を生成することを含み、第1の上清が血小板に富み、第2の上清が血小板に乏しい、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
第2の上清を収集し、トレハロースを約50mMまで加え、工程(c)の血小板を約1×10血小板/μLの濃度に希釈するために使用する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
血小板の冷却が、温度を毎分約2~20℃の速度で低下させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法によって調製された凍結保存血小板。
【請求項11】
凍結保存し、凍結保存から血小板を回収するための方法であって、
(a)対象から血液、多血小板血漿またはアフェレーシス由来血小板を得;
(b)血液、多血小板血漿またはアフェレーシス血小板から血小板を単離し;
(c)トレハロースを含む緩衝溶液中に血小板を懸濁させ;
(d)懸濁した血小板に安定剤を加え;
(e)血小板を約-80℃の温度に冷却し;
(f)約-80℃で血小板を一定期間保存し;そして
(g)約20~40℃で血小板を解凍する;
ことを含む、前記方法。
【請求項12】
懸濁緩衝液が約50mMのトレハロースを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
安定剤が約4質量%のウシ血清アルブミン(BSA)である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
工程(c)の血小板を約1×10血小板/μLの最終濃度に懸濁緩衝液で希釈する、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
希釈した血小板を、約37℃で約2時間にわたり定期的に撹拌しながらインキュベートする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
さらに、
(h)解凍した血小板を単離する工程;および
(i)単離した解凍血小板を、約1質量%のBSAを含む活性化緩衝液中に懸濁させる工程;
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
解凍した血小板の単離が1000×gで15分間の遠心分離を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
活性化緩衝液が約50mMのトレハロースをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
解凍した血小板の単離が1000×gで5分間の遠心分離を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
工程(h)の後、かつ工程(i)の前に、以下の工程を実施する、請求項16に記載の方法:
(h-1)解凍した血小板を洗浄緩衝液中で洗浄する工程。
【請求項21】
工程(h)における解凍した血小板の単離が、1000×gで15分間にわたり遠心分離し、上清を除去することを含み;そして、工程(h-1)における解凍した血小板の洗浄が、血小板を洗浄緩衝液中に再懸濁させ、1000×gで15分間にわたり遠心分離し、上清を除去することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
洗浄緩衝液が約50mMのトレハロースをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
工程(h)における解凍した血小板の単離が、1000×gで5分間にわたり遠心分離し、上清を除去することを含み;そして、工程(h-1)における解凍した血小板の洗浄が、血小板を洗浄緩衝液中に再懸濁させ、1000×gで5分間にわたり遠心分離し、上清を除去することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
工程(f)の一定期間が1日~約5年である、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
請求項11に記載の方法によって調製された、回収した凍結保存血小板。
【請求項26】
凍結保存後に回収した血小板を活性化するための方法であって、
(a)請求項11に記載の方法による凍結保存後に血小板を回収し;
(b)回収した血小板を血小板第4因子(PF4;配列番号2)で処理し;そして
(c)PF4で処理した血小板を、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)と診断された対象からの血漿、血清または血液試料と一緒にインキュベートする;
ことを含む、前記方法。
【請求項27】
回収した血小板をPF4で処理することが、PF4を血小板に約150μg/mLの濃度で加え、室温で約20分間インキュベートすることを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
血小板の活性化を、PF4で処理した血小板をHIT対象からの血漿、血清または血液試料と一緒にインキュベートした後に放出される血小板顆粒内容物を測定することによって評価する、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
血小板顆粒内容物がトロンボスポンジン-1である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
請求項26に記載の方法によって調製された、活性化された回収した凍結保存血小板。
【請求項31】
凍結保存後に回収した血小板を活性化するための方法であって、
(a)請求項11に記載の方法による凍結保存後に血小板を回収し;そして
(b)回収した血小板をトロンビン受容体活性化ペプチド(TRAP;アミノ酸配列:SFFLRN;配列番号1)で処理する;
ことを含む、前記方法。
【請求項32】
回収した血小板をTRAPで処理することが、TRAPを血小板に約25μg/mLの濃度で加え、室温で約30分間インキュベートすることを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
血小板の活性化を、回収した血小板をTRAPで処理した後に放出される血小板顆粒内容物を測定することによって評価する、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
血小板顆粒内容物がトロンボスポンジン-1である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
請求項31に記載の方法によって調製された、活性化された回収した凍結保存血小板。
【請求項36】
凍結保存後に回収した血小板を活性化するための方法であって、
(a)請求項11に記載の方法による凍結保存後に血小板を回収し;
(b)回収した血小板をヘパリンで処理し;そして
(c)ヘパリンで処理した血小板を、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)と診断された対象からの血漿、血清または血液試料と一緒にインキュベートする;
ことを含む、前記方法。
【請求項37】
回収した血小板をヘパリンで処理することが、ヘパリンを血小板に約0.1~5U/mLの濃度で加え、室温で約20分間インキュベートすることを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
血小板の活性化を、ヘパリンで処理した血小板をHIT対象からの血漿、血清または血液試料と一緒にインキュベートした後に放出される血小板顆粒内容物を測定することによって評価する、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
血小板顆粒内容物がトロンボスポンジン-1である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
請求項36に記載の方法によって調製された、活性化された回収した凍結保存血小板。
【請求項41】
血小板を凍結保存し、凍結保存から血小板を回収するための方法であって、
(a)対象から血液、多血小板血漿またはアフェレーシス由来血小板を得;
(b)血液、多血小板血漿またはアフェレーシス血小板から血小板を単離し;
(c)トレハロースを含む緩衝溶液中に血小板を懸濁させ;
(d)懸濁した血小板に安定剤を加え;
(e)血小板を約-80℃の温度に冷却し;
(f)約-80℃で血小板を一定期間保存し;
(g)約20~40℃で血小板を解凍し;
(h)解凍した血小板を単離し;そして
(i)単離した解凍血小板を、約1質量%のBSAを含む活性化緩衝液中に懸濁させる;
ことを含む、前記方法。
【請求項42】
懸濁緩衝液が約50mMのトレハロースを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
安定剤が約4質量%のウシ血清アルブミン(BSA)である、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
工程(c)の血小板を約1×10血小板/μLの最終濃度に懸濁緩衝液で希釈する、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
希釈した血小板を、約37℃で約2時間にわたり定期的に撹拌しながらインキュベートする、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
解凍した血小板の単離が1000×gで15分間の遠心分離を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
活性化緩衝液が約50mMのトレハロースをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項48】
解凍した血小板の単離が1000×gで5分間の遠心分離を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項49】
工程(h)の後、かつ工程(i)の前に、以下の工程を実施する、請求項41に記載の方法:
(h-1)解凍した血小板を洗浄緩衝液中で洗浄する工程。
【請求項50】
工程(h)における解凍した血小板の単離が、1000×gで15分間にわたり遠心分離し、上清を除去することを含み;そして、工程(h-1)における解凍した血小板の洗浄が、血小板を洗浄緩衝液中に再懸濁させ、1000×gで15分間にわたり遠心分離し、上清を除去することを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
洗浄緩衝液が約50mMのトレハロースをさらに含む、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
工程(h)における解凍した血小板の単離が、1000×gで5分間にわたり遠心分離し、上清を除去することを含み;そして、工程(h-1)における解凍した血小板の洗浄が、血小板を洗浄緩衝液中に再懸濁させ、1000×gで5分間にわたり遠心分離し、上清を除去することを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
工程(f)の一定期間が1日~約5年である、請求項41に記載の方法。
【請求項54】
請求項41に記載の方法によって調製された、回収した凍結保存血小板。
【請求項55】
凍結保存後に回収した血小板を活性化するための方法であって、
(a)請求項41に記載の方法による凍結保存後に血小板を回収し;
(b)回収した血小板を血小板第4因子(PF4;配列番号2)で処理し;そして
(c)PF4で処理した血小板を、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)と診断された対象からの血漿、血清または血液試料と一緒にインキュベートする;
ことを含む、前記方法。
【請求項56】
回収した血小板をPF4で処理することが、PF4を血小板に約150μg/mLの濃度で加え、室温で約20分間インキュベートすることを含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
血小板の活性化を、PF4で処理した血小板をHIT対象からの血漿、血清または血液試料と一緒にインキュベートした後に放出される血小板顆粒内容物を測定することによって評価する、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
血小板顆粒内容物がトロンボスポンジン-1である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
請求項55に記載の方法によって調製された、活性化された回収した凍結保存血小板。
【請求項60】
凍結保存後に回収した血小板を活性化するための方法であって、
(a)請求項41に記載の方法による凍結保存後に血小板を回収し;そして
(b)回収した血小板をトロンビン受容体活性化ペプチド(TRAP;アミノ酸配列:SFFLRN;配列番号1)で処理する;
ことを含む、前記方法。
【請求項61】
回収した血小板をTRAPで処理することが、TRAPを血小板に約25μg/mLの濃度で加え、室温で約30分間インキュベートすることを含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
血小板の活性化を、回収した血小板をTRAPで処理した後に放出される血小板顆粒内容物を測定することによって評価する、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
血小板顆粒内容物がトロンボスポンジン-1である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
請求項60に記載の方法によって調製された、活性化された回収した凍結保存血小板。
【請求項65】
凍結保存後に回収した血小板を活性化するための方法であって、
(a)請求項41に記載の方法による凍結保存後に血小板を回収し;
(b)回収した血小板をヘパリンで処理し;そして
(c)ヘパリンで処理した血小板を、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)と診断された対象からの血漿、血清または血液試料と一緒にインキュベートする;
ことを含む、前記方法。
【請求項66】
回収した血小板をヘパリンで処理することが、ヘパリンを血小板に約0.1~5U/mLの濃度で加え、室温で約20分間インキュベートすることを含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
血小板の活性化を、ヘパリンで処理した血小板をHIT対象からの血漿、血清または血液試料と一緒にインキュベートした後に放出される血小板顆粒内容物を測定することによって評価する、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
血小板顆粒内容物がトロンボスポンジン-1である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
請求項65に記載の方法によって調製された、活性化された回収した凍結保存血小板。
【請求項70】
以下の方法:
(a)対象から血液、多血小板血漿またはアフェレーシス由来血小板を得;
(b)血液、多血小板血漿またはアフェレーシス血小板から血小板を単離し;
(c)トレハロースを含む緩衝溶液中に血小板を懸濁させ;
(d)懸濁した血小板に安定剤を加え;
(e)血小板を約-80℃の温度に冷却し;
(f)約-80℃で血小板を一定期間保存し;そして
(g)約20~40℃で血小板を解凍する;
によって生成された、回収した凍結保存血小板。
【請求項71】
以下の方法:
(a)対象から血液、多血小板血漿またはアフェレーシス由来血小板を得;
(b)血液、多血小板血漿またはアフェレーシス血小板から血小板を単離し;
(c)トレハロースを含む緩衝溶液中に血小板を懸濁させ;
(d)懸濁した血小板に安定剤を加え;
(e)血小板を約-80℃の温度に冷却し;
(f)約-80℃で血小板を一定期間保存し;
(g)約20~40℃で血小板を解凍し;
(h)解凍した血小板を単離し;
(i)単離した解凍血小板を、約1質量%のBSAを含む活性化緩衝液中に懸濁させ;
(j)回収した血小板をヘパリンまたはPF4で処理し;そして
(k)ヘパリンまたはPF4で処理した血小板を、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)と診断された対象からの血漿、血清または血液試料と一緒にインキュベートする;
によって調製された、活性化された回収した凍結保存血小板。
【請求項72】
以下の方法:
(a)対象から血液、多血小板血漿またはアフェレーシス由来血小板を得;
(b)血液、多血小板血漿またはアフェレーシス血小板から血小板を単離し;
(c)トレハロースを含む緩衝溶液中に血小板を懸濁させ;
(d)懸濁した血小板に安定剤を加え;
(e)血小板を約-80℃の温度に冷却し;
(f)約-80℃で血小板を一定期間保存し;
(g)約20~40℃で血小板を解凍し;
(h)解凍した血小板を単離し;
(i)単離した解凍血小板を、約1質量%のBSAを含む活性化緩衝液中に懸濁させ;そして
(j)回収した血小板をトロンビン受容体活性化ペプチド(TRAP;アミノ酸配列:SFFLRN;配列番号1)で処理する;
によって調製された、活性化された回収した凍結保存血小板。
【請求項73】
血液、血漿または血清中のヘパリン起因性血小板減少症(HIT)抗体を検出するためのキットであって、
(a)凍結保存血小板;
(b)血小板第4因子(PF4;配列番号2)またはヘパリンのうちの1以上;
(c)血小板活性化を検出するための1以上の試薬;
(d)所望により、緩衝液および容器;ならびに
(e)所望により、包装または使用説明書のうちの1以上;
のうちの2以上を含む、前記キット。
【請求項74】
血小板活性化を検出するための1以上の試薬が、トロンボスポンジン-1を検出するための試薬を含む、請求項73に記載のキット。
【請求項75】
キットが、血小板を活性化する病原性HIT抗体に対し陰性を示す1以上の陰性対照試料;および、血小板を活性化する病原性HIT抗体に対し陽性を示す1以上の陽性対照試料をさらに含む、請求項73に記載のキット。
【請求項76】
出血の治療または予防を必要とする対象において出血を治療または予防するための方法であって、
(a)凍結保存血小板を得;
(b)凍結保存血小板を解凍し;
(c)対象を、解凍した凍結保存血小板と接触させる;
ことを含む、前記方法。
【請求項77】
工程(a)~(b)が、
(i)第2の対象から血液、多血小板血漿またはアフェレーシス由来血小板を得;
(ii)血液、多血小板血漿またはアフェレーシス血小板から血小板を単離し;
(iii)トレハロースを含む緩衝溶液中に血小板を懸濁させ;
(iv)トレハロースで処理した血小板を37℃で約2時間インキュベートし;
(v)懸濁した血小板に安定剤を加え;
(vi)血小板を約-80℃の温度に冷却し;
(vii)約-80℃で血小板を一定期間保存し;そして
(viii)約20~40℃で血小板を解凍する;
ことを含む、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
工程(a)~(b)が、
(i)第2の対象から多血小板血漿またはアフェレーシス由来血小板を得;
(ii)多血小板血漿またはアフェレーシス由来血小板にトレハロースを加え;
(iii)トレハロースで処理した血小板を37℃で約2時間インキュベートし;
(iv)血小板を約-80℃の温度に冷却し;
(v)約-80℃で血小板を一定期間保存し;そして
(vi)約20~40℃で血小板を解凍する;
ことを含む、請求項76に記載の方法。
【請求項79】
工程(c)における接触が、解凍した凍結保存血小板を損傷部位に適用するか、または解凍した凍結保存血小板を対象に非経口投与することを含む、請求項76に記載の方法。
【請求項80】
凍結保存血小板の、それを必要とする対象を治療するための試薬、研究ツール、または医薬としての使用。
【請求項81】
解凍した凍結保存血小板の、それを必要とする対象を治療するための試薬、研究ツール、または医薬としての使用。
【請求項82】
活性化された解凍した凍結保存血小板の、それを必要とする対象を治療するための試薬、研究ツール、または医薬としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2021年4月20日に出願された米国仮出願第63/177203号の優先権を主張するものであり、該米国仮出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府資金による研究
本発明は、米国国立衛生研究所の中小企業イノベーション(Small Business Innovation Research)(SBIR)プログラムによって与えられた助成金番号HL147734の下で政府の支援を受けて行われた。米国政府は、本発明において特定の権利を有する。
【0003】
配列表への参照
本出願は37C.F.R. §1.821(c)に従い、コンピュータ読み取りが可能な形式の配列表で出願される。EFSにより提出されたテキストファイル「211509-9003-WO01_sequence_listing_11-MAR-2022_ST25.txt」は2022年3月11日に作成され、2つの配列を含有し、1.13Kバイトのファイルサイズを有し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0004】
技術分野
本明細書に記載される組成物および方法は、解凍による回収方法と結び付けた制御された凍結プロセスによって安定化血小板(stabilized platelet)を提供する。安定化血小板は、凍結および解凍後に活性化される能力を維持する。
【背景技術】
【0005】
血小板は、正常な止血に重要な巨核球の無核断片である。いくつかの病理学的状態において、活性化血小板(activated platelets)が引き起こす/寄与する血栓症は、高レベルの罹患率および死亡率をもたらす可能性がある。逆に、低レベルの血小板は、重篤な出血の素因となり得る。血小板の重要な特徴は、診断の状況で用いられるか治療の状況で用いられるかにかかわらず、その生存能力が限られていることである。生存血小板(viable platelets)は、フローサイトメトリーおよび酵素結合免疫吸着検定法を含むがこれらに限定されない技術によって好都合に測定することができる顆粒成分を放出することができるであろう。典型的には、血小板は室温で保存され、5日以内に古くなる。血小板を4℃で保存すると、生存能力を最長2週間延長することができる。凍結乾燥などの長期血小板保存のための他の方法は、出血患者の治療における潜在的有用性を明示しているが、血小板が、活性化されて顆粒成分を放出するのに十分な生存能力を有さないという事実のため、診断状況におけるそれらの有用性は限定される。
【0006】
凍結保存中に血小板を安定化するための方法であって、臨床的および診断的状況において血小板の生存能力および活性化能(activation potential)が維持される方法が必要とされている。このような安定化血小板は、さまざまな研究目的に有用である。
【発明の概要】
【0007】
本明細書に記載の一態様は、生存能力および活性化能を維持する血小板を凍結保存するための方法であって、(a)対象から血液または多血小板血漿またはアフェレーシス由来血小板を得;(b)血液、多血小板血漿またはアフェレーシス血小板から血小板を単離し;(c)トレハロースを含む懸濁緩衝液中に血小板を懸濁させ;(d)懸濁した血小板に安定剤を加え;(e)血小板を約-80℃の温度に冷却し;そして(f)約-80℃で血小板を保存する;ことを含む方法である。一観点において、本方法は血小板の生存能力および活性化能を2週間以上維持する。他の観点において、懸濁緩衝液は約50mMのトレハロースを含む。他の観点において、安定剤は約4質量%のウシ血清アルブミン(BSA)である。他の観点では、工程(c)の血小板を約1×10血小板/μLの最終濃度に懸濁緩衝液で希釈する。他の観点では、希釈した血小板を、約37℃で約2時間にわたり定期的に撹拌しながらインキュベートする。他の観点において、血小板の単離は、血液、多血小板血漿またはアフェレーシス血小板を100×gで15分間遠心分離して第1のペレットおよび第1の上清を生成し;その後、第1の上清を1000×gで15分間遠心分離して第2のペレットおよび第2の上清を生成することを含み、第1の上清は血小板に富み、第2の上清は血小板に乏しい。他の観点では、第2の上清を収集し、トレハロースを約50mMまで加え、工程(c)の血小板を約1×10血小板/μLの濃度に希釈するために使用する。他の観点において、血小板の冷却は、温度を毎分約2~20℃の速度で低下させることを含む。本明細書に記載の他の態様は、本明細書に記載の方法によって調製された凍結保存血小板である。
【0008】
本明細書に記載の他の態様は、凍結保存し、凍結保存から血小板を回収するための方法であって、(a)対象から血液、多血小板血漿またはアフェレーシス由来血小板を得;(b)血液、多血小板血漿またはアフェレーシス血小板から血小板を単離し;(c)トレハロースを含む緩衝溶液中に血小板を懸濁させ;(d)懸濁した血小板に安定剤を加え;(e)血小板を約-80℃の温度に冷却し;(f)約-80℃で血小板を一定期間保存し;そして(g)約20~40℃で血小板を解凍する;ことを含む方法である。一観点において、懸濁緩衝液は約50mMのトレハロースを含む。他の観点において、安定剤は約4質量%のウシ血清アルブミン(BSA)である。他の観点では、工程(c)の血小板を約1×10血小板/μLの最終濃度に懸濁緩衝液で希釈する。他の観点では、希釈した血小板を、約37℃で約2時間にわたり定期的に撹拌しながらインキュベートする。他の観点において、該方法は、(h)解凍した血小板を単離する工程;および(i)単離した解凍血小板を、約1質量%のBSAを含む活性化緩衝液(activation buffer)中に懸濁させる工程を、さらに含む。他の観点において、解凍した血小板の単離は、1000×gで15分間の遠心分離を含む。他の観点において、活性化緩衝液は約50mMのトレハロースをさらに含む。他の観点において、解凍した血小板の単離は、1000×gで5分間の遠心分離を含む。他の観点では、工程(h)の後、かつ工程(i)の前に、以下の工程を実施する:(h-1)解凍した血小板を洗浄緩衝液中で洗浄する。他の観点において、工程(h)における解凍した血小板の単離は、1000×gで15分間にわたり遠心分離し、上清を除去することを含み;そして、工程(h-1)における解凍した血小板の洗浄は、血小板を洗浄緩衝液中に再懸濁させ、1000×gで15分間にわたり遠心分離し、上清を除去することを含む。他の観点において、洗浄緩衝液は約50mMのトレハロースをさらに含む。他の観点において、工程(h)における解凍した血小板の単離は、1000×gで5分間にわたり遠心分離し、上清を除去することを含み;そして、工程(h-1)における解凍した血小板の洗浄は、血小板を洗浄緩衝液中に再懸濁させ、1000×gで5分間にわたり遠心分離し、上清を除去することを含む。他の観点において、工程(f)の一定期間は1日~約5年である。本明細書に記載の他の態様は、本明細書に記載の方法によって調製された、回収した凍結保存血小板である。
【0009】
本明細書に記載の他の態様は、凍結保存後に回収した血小板を活性化するための方法であって、(a)本明細書に記載の方法による凍結保存後に血小板を回収し;(b)回収した血小板を血小板第4因子(PF4;配列番号2)で処理し;そして(c)PF4で処理した血小板を、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)と診断された対象からの血漿、血清または血液試料と一緒にインキュベートする;ことを含む方法である。一観点において、回収した血小板をPF4で処理することは、PF4を血小板に約150μg/mLの濃度で加え、室温で約20分間インキュベートすることを含む。他の観点では、血小板の活性化を、PF4で処理した血小板をHIT対象からの血漿、血清または血液試料と一緒にインキュベートした後に放出される血小板顆粒内容物を測定することによって評価する。他の観点において、血小板顆粒内容物はトロンボスポンジン-1である。本明細書に記載の他の態様は、本明細書に記載の方法によって調製された、活性化された回収した凍結保存血小板である。
【0010】
本明細書に記載の他の態様は、凍結保存後に回収した血小板を活性化するための方法であって、(a)本明細書に記載の方法による凍結保存後に血小板を回収し;そして(b)回収した血小板をトロンビン受容体活性化ペプチド(TRAP;アミノ酸配列:SFFLRN;配列番号1)で処理する;ことを含む方法である。一観点において、回収した血小板をTRAPで処理することは、TRAPを血小板に約25μg/mLの濃度で加え、室温で約30分間インキュベートすることを含む。他の観点では、血小板の活性化を、回収した血小板をTRAPで処理した後に放出される血小板顆粒内容物を測定することによって評価する。他の観点において、血小板顆粒内容物はトロンボスポンジン-1である。本明細書に記載の他の態様は、本明細書に記載の方法によって調製された、活性化さた回収した凍結保存血小板である。
【0011】
本明細書に記載の他の態様は、凍結保存後に回収した血小板を活性化するための方法であって、(a)本明細書に記載の方法による凍結保存後に血小板を回収し;(b)回収した血小板をヘパリンで処理し;そして(c)ヘパリンで処理した血小板を、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)と診断された対象からの血漿、血清または血液試料と一緒にインキュベートする;ことを含む方法である。一観点において、回収した血小板をヘパリンで処理することは、ヘパリンを血小板に約0.1~5U/mLの濃度で加え、室温で約20分間インキュベートすることを含む。他の観点では、血小板の活性化を、ヘパリンで処理した血小板をHIT対象からの血漿、血清または血液試料と一緒にインキュベートした後に放出される血小板顆粒内容物を測定することによって評価する。他の観点において、血小板顆粒内容物はトロンボスポンジン-1である。本明細書に記載の他の態様は、本明細書に記載の方法によって調製された、活性化された回収した凍結保存血小板である。
【0012】
本明細書に記載の他の態様は、血小板を凍結保存し、凍結保存から血小板を回収するための方法であって、(a)対象から血液、多血小板血漿またはアフェレーシス由来血小板を得;(b)血液、多血小板血漿またはアフェレーシス血小板から血小板を単離し;(c)トレハロースを含む緩衝溶液中に血小板を懸濁させ;(d)懸濁した血小板に安定剤を加え;(e)血小板を約-80℃の温度に冷却し;(f)約-80℃で血小板を一定期間保存し;(g)約20~40℃で血小板を解凍し;(h)解凍した血小板を単離し;そして(i)単離した解凍血小板を、約1質量%のBSAを含む活性化緩衝液中に懸濁させる;ことを含む方法である。一観点において、懸濁緩衝液は約50mMのトレハロースを含む。他の観点において、安定剤は約4質量%のウシ血清アルブミン(BSA)である。他の観点では、工程(c)の血小板を、約1×10血小板/μLの最終濃度に懸濁緩衝液で希釈する。他の観点では、希釈した血小板を、約37℃で約2時間にわたり定期的に撹拌しながらインキュベートする。他の観点において、解凍した血小板の単離は、1000×gで15分間の遠心分離を含む。他の観点において、活性化緩衝液は約50mMのトレハロースをさらに含む。他の観点において、解凍した血小板の単離は、1000×gで5分間の遠心分離を含む。他の観点では、工程(h)の後、かつ工程(i)の前に、以下の工程を実施する:(h-1)解凍した血小板を洗浄緩衝液中で洗浄する。他の観点において、工程(h)における解凍した血小板の単離は、1000×gで15分間にわたり遠心分離し、上清を除去することを含み;そして、工程(h-1)における解凍した血小板の洗浄は、血小板を洗浄緩衝液中に再懸濁させ、1000×gで15分間にわたり遠心分離し、上清を除去することを含む。他の観点において、洗浄緩衝液は約50mMのトレハロースをさらに含む。他の観点において、工程(h)における解凍した血小板の単離は、1000×gで5分間にわたり遠心分離し、上清を除去することを含み;そして、工程(h-1)における解凍した血小板の洗浄は、血小板を洗浄緩衝液中に再懸濁させ、1000×gで5分間にわたり遠心分離し、上清を除去することを含む。他の観点において、工程(f)の一定期間は1日~約5年である。本明細書に記載の他の態様は、本明細書に記載の方法によって調製された、回収した凍結保存血小板である。
【0013】
本明細書に記載の他の態様は、凍結保存後に回収した血小板を活性化するための方法であって、(a)本明細書に記載の方法による凍結保存後に血小板を回収し;(b)回収した血小板を血小板第4因子(PF4;配列番号2)で処理し;そして(c)PF4で処理した血小板を、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)と診断された対象からの血漿、血清または血液試料と一緒にインキュベートする;ことを含む方法である。一観点において、回収した血小板をPF4で処理することは、PF4を血小板に約150μg/mLの濃度で加え、室温で約20分間インキュベートすることを含む。他の観点では、血小板の活性化を、PF4で処理した血小板をHIT対象からの血漿、血清または血液試料と一緒にインキュベートした後に放出される血小板顆粒内容物を測定することによって評価する。他の観点において、血小板顆粒内容物はトロンボスポンジン-1である。本明細書に記載の他の態様は、本明細書に記載の方法によって調製された、活性化された回収した凍結保存血小板である。
【0014】
本明細書に記載の他の態様は、凍結保存後に回収した血小板を活性化するための方法であって、(a)本明細書に記載の方法による凍結保存後に血小板を回収し;そして(b)回収した血小板をトロンビン受容体活性化ペプチド(TRAP;アミノ酸配列:SFFLRN;配列番号1)で処理する;ことを含む方法である。一観点において、回収した血小板をTRAPで処理することは、TRAPを血小板に約25μg/mLの濃度で加え、室温で約30分間インキュベートすることを含む。他の観点では、血小板の活性化を、回収した血小板をTRAPで処理した後に放出される血小板顆粒内容物を測定することによって評価する。他の観点において、血小板顆粒内容物はトロンボスポンジン-1である。本明細書に記載の他の態様は、本明細書に記載の方法によって調製された、活性化された回収した凍結保存血小板である。
【0015】
本明細書に記載の他の態様は、凍結保存後に回収した血小板を活性化するための方法であって、(a)本明細書に記載の方法による凍結保存後に血小板を回収し;(b)回収した血小板をヘパリンで処理し;そして(c)ヘパリンで処理した血小板を、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)と診断された対象からの血漿、血清または血液試料と一緒にインキュベートする;ことを含む方法である。一観点において、回収した血小板をヘパリンで処理することは、ヘパリンを血小板に約0.1~5U/mLの濃度で加え、室温で約20分間インキュベートすることを含む。他の観点では、血小板の活性化を、ヘパリンで処理した血小板をHIT対象からの血漿、血清または血液試料と一緒にインキュベートした後に放出される血小板顆粒内容物を測定することによって評価する。他の観点において、血小板顆粒内容物はトロンボスポンジン-1である。本明細書に記載の他の態様は、本明細書に記載の方法によって調製された、活性化された回収した凍結保存血小板である。
【0016】
本明細書に記載の他の態様は、以下の方法によって生成された、回収した凍結保存血小板である:(a)対象から血液、多血小板血漿またはアフェレーシス由来血小板を得;(b)血液、多血小板血漿またはアフェレーシス血小板から血小板を単離し;(c)トレハロースを含む緩衝溶液中に血小板を懸濁させ;(d)懸濁した血小板に安定剤を加え;(e)血小板を約-80℃の温度に冷却し;(f)約-80℃で血小板を一定期間保存し;そして(g)約20~40℃で血小板を解凍する。
【0017】
本明細書に記載の他の態様は、以下の方法によって調製された、活性化された回収した凍結保存血小板である:(a)対象から血液、多血小板血漿またはアフェレーシス由来血小板を得;(b)血液、多血小板血漿またはアフェレーシス血小板から血小板を単離し;(c)トレハロースを含む緩衝溶液中に血小板を懸濁させ;(d)懸濁した血小板に安定剤を加え;(e)血小板を約-80℃の温度に冷却し;(f)約-80℃で血小板を一定期間保存し;(g)約20~40℃で血小板を解凍し;(h)解凍した血小板を単離し;(i)単離した解凍血小板を、約1質量%のBSAを含む活性化緩衝液中に懸濁させ;(j)回収した血小板をヘパリンまたはPF4で処理し;そして(k)ヘパリンまたはPF4で処理した血小板を、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)と診断された対象からの血漿、血清または血液試料と一緒にインキュベートする。
【0018】
本明細書に記載の他の態様は、以下の方法によって調製された、活性化された回収した凍結保存血小板である:(a)対象から血液、多血小板血漿またはアフェレーシス由来血小板を得;(b)血液、多血小板血漿またはアフェレーシス血小板から血小板を単離し;(c)トレハロースを含む緩衝溶液中に血小板を懸濁させ;(d)懸濁した血小板に安定剤を加え;(e)血小板を約-80℃の温度に冷却し;(f)約-80℃で血小板を一定期間保存し;(g)約20~40℃で血小板を解凍し;(h)解凍した血小板を単離し;(i)単離した解凍血小板を、約1質量%のBSAを含む活性化緩衝液中に懸濁させ;そして(j)回収した血小板をトロンビン受容体活性化ペプチド(TRAP;アミノ酸配列:SFFLRN;配列番号1)で処理する。
【0019】
本明細書に記載の他の態様は、血液、血漿または血清中のヘパリン起因性血小板減少症(HIT)抗体を検出するためのキットであり、該キットは、以下のうちの2以上を含む:(a)凍結保存血小板;(b)血小板第4因子(PF4;配列番号2)またはヘパリンのうちの1以上;(c)血小板活性化を検出するための1以上の試薬;(d)所望により、緩衝液および容器;ならびに(e)所望により、包装または使用説明書のうちの1以上。一観点において、血小板活性化を検出するための1以上の試薬は、トロンボスポンジン-1を検出するための試薬を含む。他の観点において、キットは、血小板を活性化する病原性HIT抗体に対し陰性を示す1以上の陰性対照試料;および血小板を活性化する病原性HIT抗体に対し陽性を示す1以上の陽性対照試料をさらに含む。
【0020】
本明細書に記載の他の態様は、出血の治療または予防を必要とする対象において出血を治療または予防するための方法であって、(a)凍結保存血小板を得;(b)凍結保存血小板を解凍し;(c)対象を、解凍した凍結保存血小板と接触させる;ことを含む方法である。一観点において、工程(a)~(b)は、(i)第2の対象から血液、多血小板血漿またはアフェレーシス由来血小板を得;(ii)血液、多血小板血漿またはアフェレーシス血小板から血小板を単離し;(iii)トレハロースを含む緩衝溶液中に血小板を懸濁させ;(iv)トレハロースで処理した血小板を37℃で約2時間インキュベートし;(v)懸濁した血小板に安定剤を加え;(vi)血小板を約-80℃の温度に冷却し;(vii)約-80℃で血小板を一定期間保存し;そして(viii)約20~40℃で血小板を解凍する;ことを含む。他の観点において、工程(a)~(b)は、(i)第2の対象から多血小板血漿またはアフェレーシス由来血小板を得;(ii)多血小板血漿またはアフェレーシス由来血小板にトレハロースを加え;(iii)トレハロースで処理した血小板を37℃で約2時間インキュベートし;(iv)血小板を約-80℃の温度に冷却し;(v)約-80℃で血小板を一定期間保存し;そして(vi)約20~40℃で血小板を解凍する;ことを含む。他の観点において、工程(c)における接触は、解凍した凍結保存血小板を損傷部位に適用するか、または解凍した凍結保存血小板を対象に非経口投与することを含む。
【0021】
本明細書に記載の他の態様は、凍結保存血小板を、それを必要とする対象を治療するための試薬、研究ツール、または医薬として使用することである。
本明細書に記載の他の態様は、解凍した凍結保存血小板を、それを必要とする対象を治療するための試薬、研究ツール、または医薬として使用することである。
【0022】
本明細書に記載の他の態様は、活性化された解凍した凍結保存血小板を、それを必要とする対象を治療するための試薬、研究ツール、または医薬として使用することである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本明細書に記載の血小板を凍結保存および回収するための代表的なプロセス工程を示す。
図2図2は、凍結保存し、洗浄によって回収した、20人の異なる全血ドナーから得た多血小板血漿ユニットからの20ロットの血小板を示す。血小板を血小板第4因子(PF4)で処理し、3つのHIT(黒丸)および3つの正常血液試料(白丸)に対する反応性について試験した。次いで、活性化反応からの上清を、血小板活性化のマーカーとしてトロンボスポンジン-1(TSP1)濃度についてアッセイした。x軸は20の異なる血小板ロットを示し、y軸は凍結血小板から放出されたTSP1の量をμg/mLで示す。データは、3回の測定の平均である。
図3図3は、凍結保存し、-80℃で1週間以下の保存後(ベースライン、B)、または-80℃で4週間以上の保存後(4W)のいずれかの、洗浄によって回収した7ロットの血小板を示す。洗浄による回収後、血小板をPF4で処理し、3つのHIT(黒丸)および3つの正常血液試料(白丸)に対する反応性について試験した。次いで、活性化反応からの上清を、血小板活性化のマーカーとしてのTSP1濃度についてアッセイした。x軸はベースラインおよび4週間の時間点の両方について垂直線によって分離された7つの異なる血小板ロットを示し、y軸は、凍結血小板から放出されたTSP1の量をμg/mLで示す。データは、3回の測定の平均である。
図4図4は、凍結保存し、-80℃で14週間の保存後の、洗浄によって回収した血小板を示す。回収後、血小板をPF4で処理し、HIT(黒色)または正常血液試料(白色)に対する反応性について試験した。次いで、凍結保存血小板からの上清を、血小板活性化のマーカーとしてのTSP1濃度についてアッセイした。y軸は、凍結血小板から放出されたTSP1の量をμg/mLで示す。データは、3回の測定の平均+平均の1標準偏差である。
図5図5は、凍結保存し、解凍および洗浄(洗浄1回)、解凍および体積低減(体積低減)、または解凍のみ(洗浄なし)によって回収した、単一ドナーからの血小板を示す。次いで、血小板をPF4で処理した。PF4で処理した血小板にHIT(黒色)または正常血液試料(白色)を加えた。血小板上清を、血小板活性化のマーカーとしてのTSP1濃度についてアッセイした。y軸は、凍結血小板から放出されたTSP1の量をμg/mLで示す。示すデータは、3回の測定の平均+平均の1標準偏差である。
図6図6は、凍結保存し、解凍および洗浄(「洗浄1回」)、解凍および体積低減(「体積低減」)、または解凍のみ(「洗浄なし」)によって回収した、単一ドナーからの血小板を示す。回収した血小板にTRAP(黒色)または緩衝液(白色)を加えた。血小板上清を、血小板活性化のマーカーとしてのTSP1濃度についてアッセイした。y軸は、凍結血小板から放出されたTSP1の量をμg/mLで示す。データは、3回の測定の平均+平均の1標準偏差である。
図7図7は、凍結保存し、洗浄によって回収した後、0、0.1、0.3、0.5および1U/mLの濃度の未分画ヘパリンで処理した血小板を示す。次いで、ヘパリンで処理した血小板にHIT(黒色)または正常血液試料(白色)を加え、上清を、血小板活性化の尺度としてTSP1濃度についてアッセイした。x軸はヘパリン濃度を示し、y軸は凍結血小板から放出されたTSP1の量をμg/mLで示す。データは、3回の測定の平均+平均の1標準偏差である。
図8図8は、乏血小板血漿と共に凍結保存し、洗浄によって回収し、PF4で処理した血小板を示す。次いで、PF4で処理した血小板にHIT(黒色)または正常血液試料(白色)を加え、上清を、血小板活性化の尺度としてのTSP1濃度についてアッセイした。y軸は、凍結血小板から放出されたTSP1の量をμg/mLで示す。データは、3回の測定の平均+平均の1標準偏差である。
図9図9は、乏血小板血漿の存在下で凍結保存し、洗浄によって回収した血小板を示す。次いで、TRAP(黒色)または緩衝液(白色)を加え、上清を、血小板活性化の尺度としてのTSP1濃度についてアッセイした。y軸は、凍結血小板から放出されたTSP1の量をμg/mLで示す。データは、3回の測定の平均+平均の1標準偏差である。
図10図10は、凍結させ、洗浄によって回収した後(黒色)、または凍結乾燥し、再構成した後(白色)、PF4で処理した、単一ドナーからの血小板を示す。PF4で処理した血小板にHIT(左)または正常血液試料(右)を加え、上清をTSP1濃度についてアッセイした。y軸は、凍結血小板から放出されたTSP1の量をμg/mLで示す。データは、3回の測定の平均+平均の1標準偏差である。
図11図11は、凍結させ、洗浄によって回収した(黒色)、または凍結乾燥し、再構成した(白色)、単一ドナーからの血小板を示す。血小板にTRAP(左)または緩衝液(右)を加え、上清をTSP1濃度についてアッセイした。y軸は、凍結血小板から放出されたTSP1の量をμg/mLで示す。データは、3回の測定の平均+平均の1標準偏差である。
図12図12は、凍結させ、再懸濁緩衝液中にトレハロースを加えていない15分間の遠心分離(左)、または50mMのトレハロースの存在下での5分間の遠心分離(右)を利用して、洗浄によって回収した血小板を示す。血小板にHIT血清(黒色)または正常血清(白色)を加え、上清をTSP1濃度についてアッセイした。y軸は、凍結血小板から放出されたTSP1の量をμg/mLで示す。データは、3回の測定の平均+平均の1標準偏差である。
図13図13は、アゴニスト作用に拮抗する候補薬物の存在下および非存在下でアゴニストで処理した安定化血小板を示す。このような安定化血小板は、これらの試験において新鮮な血小板の要件に取って代わることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。例えば、本明細書に記載の細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、ならびにタンパク質および核酸の化学およびハイブリダイゼーションに関連して使用される任意の命名法、ならびにそれらの技術は当技術分野で周知であり、一般的に使用されている。矛盾する場合には、定義を含めて、本開示が優先する。代表的な方法および材料を以下に記載するが、本明細書に記載の態様および観点の実施または試験において、本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料を使用することができる。
【0025】
本明細書で使用される場合、「アミノ酸」、「ヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド」、「ベクター」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」という用語は、当業者によって理解されるであろうそれらの共通の意味を有する。本明細書では、標準的な一文字ヌクレオチド(A、C、G、T、U)および標準的な一文字アミノ酸(A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、またはY)を使用する。
【0026】
本明細書で使用される場合、「包含する(include)」、「包含している(including)」、「含有する(contain)」、「含有している(containing)」、「有している(having)」などのような用語は、「含んでいる(comprising)」を意味する。本開示はまた、明確に記載されているか否かにかかわらず、本明細書で提示される態様または要素を「含む」、それら「からなる」およびそれら「から実質的になる」他の態様も企図している。
【0027】
本明細書で使用される場合、本開示の文脈において(特に特許請求の範囲の文脈において)使用される用語「a」、「an」、「the」および同様の用語は、本明細書で別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を包含すると解釈されるべきである。また、特記しない限り、「a」、「an」または「the」は、「1以上」を意味する。
【0028】
本明細書で使用される場合、「または」という用語は、接続語または離接語であることができる。
本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、大きな程度またはかなりの程度ではあるが、完全にではないことを意味する。
【0029】
本明細書で使用される場合、1以上の対象となる値に適用される「約」または「およそ」という用語は、値が、挙げた基準値に類似するか、または当業者によって決定される特定値の場合は許容可能な誤差範囲内にあることをさし、これは、測定システムの限界など、値の測定または決定方法に部分的に依存する。一観点において、用語「約」は、用語「約」によって修飾された値の±10%までの変動内にある整数および分数成分の両方を含む任意の値をさす。あるいは、「約」は、当技術分野の実施に従って、3以上の標準偏差内を意味することができる。あるいは、例えば生物学的システムまたはプロセスに関し、用語「約」は、値の1桁以内、いくつかの態様では5倍以内、いくつかの態様では1.5倍以内を意味することができる。本明細書で使用するとき、記号「」は、「約」または「およそ」を意味する。
【0030】
本明細書に開示されるすべての範囲は、離散値としての両端点、ならびに範囲内で特定されるすべての整数および分数を包含する。例えば、0.1 ~2.0の範囲には、0.1、0.2、0.3、0.4...2.0が含まれる。端点が用語「約」によって修飾されている場合、特定される範囲は、その範囲内、または端点を含む3以上の標準偏差内の任意の値の±10%までの変動によって拡大される。
【0031】
本明細書で使用される場合、「活性成分」または「活性医薬成分」という用語は、有益なことが多い薬理学的効果を提供する、医薬品、活性な成分、化合物、または物質、組成物、またはそれらの混合物をさす。
【0032】
本明細書で使用される場合、「対照」または「基準」という用語は、互換的に使用される。「基準」または「対照」レベルは、測定結果を評価するためのベースラインまたはベンチマークとして使用される所定の値または範囲であることができる。「対照」は、対照実験または対照細胞もさす。
【0033】
本明細書で使用される場合、「有効量」または「治療有効量」という用語は、対象に施用される作用、薬剤、組成物、または細胞(1以上)の実質的に非毒性であるが十分な量であって、経験している疾患または状態、または対象が罹患しやすい疾患または状態の症状の1以上をある程度予防、治療、または改善する量をさす。結果は、疾患の徴候、症状もしくは原因の軽減もしくは緩和、または生物系の任意の他の望ましい変化であることができる。有効量は、各対象でそれぞれ異なる因子、例えば、限定されるものではないが、対象の年齢、サイズ、疾患のタイプまたは程度、疾患の段階、投与経路、使用される補充療法のタイプまたは程度、進行中の疾患経過、および望ましい治療のタイプに基づくことができる。
【0034】
本明細書に記載の組成物は、非経口的に、局所的に、経直腸的に、経鼻的に、口腔内に、経膣的に、または埋め込まれたリザーバーを介して投与することができる。「非経口」または「非経口投与」という用語は、本明細書で使用される場合、静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、くも膜下腔内、肝臓内、病巣内、頭蓋内注射、または全身注入を包含する。いくつかの態様において、本明細書に記載される組成物は、静脈内、動脈内、または注入によって投与される。
【0035】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は動物をさす。典型的には、対象は哺乳類である。対象はまた、霊長類(例えば、ヒト、男性または女性;乳児、青年、または成人)、非ヒト霊長類、ラット、マウス、ウサギ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、魚類、鳥類などをさす。一態様において、対象は霊長類である。一態様において、対象はヒトである。一観点において、対象は、病原性抗体または血小板活性化抗体を有する疑いがある。「血小板活性化抗体を有することが疑われる対象」または「被験対象」は、本明細書で使用される場合、例えば、正常未満の血小板数、血小板数の減少、以前に診断された血餅の拡大もしくは伸長、または身体の他の場所での新たな血餅の発生など、病原性抗体を示す臨床所見を示す対象をさす。病原性抗体を示す症状としては、息切れ、脳卒中、四肢壊疸、皮膚壊死、心筋梗塞、または胸痛が挙げられる。一態様において、血小板活性化抗体はHITを引き起こすことができる抗体である。他の態様において、血小板活性化抗体は、血小板活性化ヘパリン起因性血小板減少症抗体を含む。「正常対象」は、任意の病気(aliment)に罹患していないか、または血小板活性化抗体を有する疑いがない対象さす。
【0036】
本明細書で使用される場合、対象が当該治療から生物学的に、医学的に、または生活の質において利益を得るであろう場合、そのような対象は「治療を必要とする」。治療を必要とする対象は、とりわけ防止的または予防的治療の場合、必ずしも症状を呈さない。
【0037】
本明細書で使用される場合、「阻害する」、「阻害」または「阻害すること」という用語は、所与の生物学的過程、状態、症状、障害もしくは疾患の低減もしくは抑制、または生物学的活性もしくは過程のベースライン活性における有意な低減をさす。
【0038】
本明細書で使用される場合、「治療」または「治療すること」は、障害もしくは疾患を含む生物学的過程の進行を予防、防止、抑制、抑止、逆転、緩和、改善もしくは阻害すること、または疾患を完全に排除することをさす。治療は、短期間または長期間のいずれかの方法で行うことができる。「治療」という用語はまた、疾患で苦しむ前に、疾患または該疾患に関連する症状の重症度を低下させることをさす。疾患、障害またはその症状を「抑止」または「改善」することは、本明細書に記載の細胞、組成物または化合物を、そのような疾患、障害またはその症状の臨床的出現後の対象に投与することを包含する。疾患、障害またはその症状を「予防」または「防止」することは、本明細書に記載の細胞、組成物または化合物を、疾患、障害またはその症状の発症前に対象に投与することを包含する。疾患または障害を「抑制」することは、本明細書に記載の細胞、組成物または化合物を、疾患またはその障害の誘発後であるが、その臨床的出現または症状が現れる前に、対象に投与することを包含する。
【0039】
本明細書で使用される場合、「同定すること」または「診断すること」は、対象を病変または症状を有すると分類すること、病変の重症度(進行度または病期)を決定すること、病変の進行をモニタリングすること、または病変の転帰もしくは回復の見込みを予測することをさす。一態様において、対象は、その血液中に血小板活性化抗体を有すると同定または診断される。一観点において、血小板活性化抗体は、血小板活性化ヘパリン起因性血小板減少症抗体を含む。血小板活性化ヘパリン起因性血小板減少症抗体の同定または検出は、対象がヘパリン起因性血小板減少症(HIT)を有することを示し、またはその診断に用いられる。
【0040】
本明細書で使用される場合、「ヘパリン起因性血小板減少症」または「HIT」は、ヘパリンに対する有害反応、またはヘパリンへの暴露なしで生じる血栓性血小板減少性反応、例えば、自然発症型HITおよび「ワクチン起因性免疫性血栓性血小板減少症」すなわち「VITT」をさし、罹患した対象は血小板活性化抗体を産生する。血小板活性化抗体は、ヘパリンとの複合体の状態にあるか、血小板膜成分との複合体の状態にあるか、または単独の状態にあるPF4、IL-8およびNAP-2などの分子に結合して、生命を脅かし得る血栓形成促進性および血小板減少性状態をもたらす。
【0041】
本明細書中で使用される場合、「ヘパリン起因性」は、ヘパリンへの暴露に起因する抗体、あるいは、HITの指標として、自然発症型HITまたはVITTのようにヘパリンまたは血小板膜成分と複合体化した血液因子を認識する抗体をさす。
【0042】
本明細書で使用される場合、「ヘパリン様化合物」は、ポリアニオン、ヘパリン誘導体、化学修飾ヘパリン、ヘパリン様グリコサミノグリカン分子、多数のヘパリンまたはヘパリン様グリコサミノグリカンを含有するプロテオグリカン、低分子量ヘパリン、少なくとも10個の糖単位を含む合成グリコサミノグリカン、または合成ヘパリン様グリコサミノグリカンなど、強い負電荷を有する化合物をさし、これらのいずれもが、直接的に、またはスペーサー/リンカー分子を介してコア分子に連結され得る。
【0043】
「血小板」は、「栓球」としても知られ、本明細書で使用される場合、血液凝固、止血および血栓形成に関与する巨核球の無核断片をさす。ヒト血小板は、血小板アフェレーシス、血小板フェレーシス、ゲル濾過、または分画遠心法を含むさまざまな方法によってルーチン的に単離される。単離された血小板は適切であるが、洗浄された血小板、洗浄されていない血小板、多血小板血漿または精製された血小板を含む他の供給源からの血小板も使用することができる。一態様において、血小板は、冷却、凍結、化学的保存、または凍結乾燥のうちの1以上によって保存のために安定化されている。
【0044】
「血小板活性化」は、本明細書で使用される場合、血小板が、活性化を誘発する「血小板活性化因子」分子、例えば、とりわけ、血小板活性化抗体、トロンビン受容体活性化ペプチド(TRAP、配列番号1)、アデノシン二リン酸(ADP)、アラキドン酸、エピネフリン、コラーゲン、トロンビン、トロンボキサンA2(TxA2)、トロンボキサンA2(TXA2)模倣体U46619、カルシウムイオノフォアA23187、リストセチン、ロドサイチン(rhodocytin)などに遭遇したときの血小板の応答をさす。血小板活性化は、例えば、とりわけ、血小板活性化に関連するマーカーの変化、高密度顆粒およびα顆粒のエキソサイトーシス、膜酵素ホスホリパーゼA2の活性化、形状、凝集(aggregation)、凝集反応(agglutination)の変化、膜電位の変化、インテグリンの立体配座の変化など、血小板にさまざまな変化をもたらす。活性化されると、血小板は、他の代謝産物およびタンパク質の中でも、アデノシン三リン酸(ATP)、アデノシン二リン酸(ADP)、5-ヒドロキシトリプタミン(セロトニン)、トロンボスポンジン-1、フィブリノゲン、CXCL12、トロンボキサン、血小板第4因子を含む顆粒内容物を放出し、これらは、免疫学的アッセイ、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、蛍光顕微鏡法、またはフローサイトメトリーなど、さまざまな方法論を使用することによって評価することができる。活性化により、血小板は、とりわけ、P-セレクチン、CD34、CD41、CD61、ホスファチジルセリンを含むさまざまなマーカーの表面発現における変化を有し、これは、免疫学的アッセイ、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、蛍光顕微鏡法、またはフローサイトメトリーなど、さまざまな方法論を使用することによって評価することができる。
【0045】
本明細書で使用される「有効量」は、望ましい転帰に影響を及ぼすのに十分な化合物の量をさす。一態様において、血小板は、有効量の本明細書に記載の1以上の血小板活性化因子を投与することによって活性化される。
【0046】
血小板活性化レベルは、例えば、正常ドナーの血小板と、血小板活性化抗体またはHIT(例えば、陽性対照試料)を有することが知られている対象からの血液試料、および正常対象の血液試料(例えば、陰性対照試料)との反応において、活性化血小板上に見出されるか、または活性化血小板から放出されるマーカーのレベルを測定するなど、当技術分野で公知の任意の方法を使用して測定することができる。活性化血小板上に見出されるか、または活性化血小板から放出されることが知られている任意のマーカー、例えば、活性化血小板上に見出される1以上のCDマーカー(例えば、CD9、CD31、CD36、CD41、CD42、CD49b、CD61、CD62P、CD63、CD107、それらのアイソフォーム、または血小板の外側に存在する任意のマーカー)、例えば、p-セレクチンとしても知られるマーカーCD62Pを使用して、血小板活性化を測定することができる。さらに、血小板活性化は、免疫グロブリンの結合増加、ホスファチジルセリン発現、血小板凝集、イオン化カルシウムの細胞内レベル、インテグリンの立体配座の変化、血小板顆粒内容物の放出、血小板膜電位または血小板インピーダンスの変化、Fcγ受容体2切断断片のレベル、または血小板の形状変化のいずれかを測定することによって測定することができる。
【0047】
「血小板活性化の増加」は、本明細書で使用される場合、正常対象の血液試料におけるベースライン血小板活性化の増加と有意に異なるか、または本明細書に記載のアッセイを使用して得られた既知の値もしくは過去のデータと比較して有意に異なる、血小板活性化の増加をさす。血小板活性化の増加は、患者が、HITを引き起こす抗体などの血小板活性化抗体を有することを示す。一態様において、血小板活性化の増加は、正常対象の血液試料または本明細書に記載の方法を用いて正常対象について得られた過去のデータにおけるベースライン血小板活性化の量の少なくとも2倍または3倍である。
【0048】
本明細書で使用される「試料」は、対象から得た検体または培養物をさす。生物学的試料は対象から得ることができ、流体、固体、組織、および気体を包含する。一態様において、対象の試料は血液試料である。血液試料には、全血、血漿、血清、多血小板血漿などの血液製剤、またはコーン画分I~IVのうちの1つなどの分画血液成分、または抗体画分が含まれる。
【0049】
本明細書で使用される「使用説明書」は、本明細書に記載の方法を実施するための指示または工程を提供するために使用される、刊行物、図、または任意の他の表現媒体をさす。使用説明書は、印刷された形態で提供することができ、キット材料を含有する容器に添付してもよく、キットと一緒に出荷してもよく、またはインターネットサイトで提供してもよい。
【0050】
本明細書に記載の一態様は、生存能力および活性化能を維持する血小板を凍結保存するための方法であって、(a)対象から血液または多血小板血漿またはアフェレーシス由来血小板を得;(b)血液、多血小板血漿またはアフェレーシス血小板から血小板を単離し;(c)トレハロースを含む懸濁緩衝液中に血小板を懸濁させ;(d)懸濁した血小板に安定剤を加え;(e)血小板を約-80℃の温度に冷却し;そして(f)約-80℃で血小板を保存する;ことを含む方法である。一観点において、本方法は血小板の生存能力および活性化能を2週間以上維持する。他の観点において、懸濁緩衝液は約50mMのトレハロースを含む。他の観点において、安定剤は約4質量%のウシ血清アルブミン(BSA)である。他の観点では、工程(c)の血小板を約1×10血小板/μLの最終濃度に懸濁緩衝液で希釈する。他の観点では、希釈した血小板を、約37℃で約2時間にわたり定期的に撹拌しながらインキュベートする。他の観点において、血小板の単離は、血液、多血小板血漿またはアフェレーシス血小板を100×gで15分間遠心分離して第1のペレットおよび第1の上清を生成し;その後、第1の上清を1000×gで15分間遠心分離して第2のペレットおよび第2の上清を生成することを含み、第1の上清は血小板に富み、第2の上清は血小板に乏しい。他の観点では、第2の上清を収集し、トレハロースを約50mMまで加え、工程(c)の血小板を約1×10血小板/μLの濃度に希釈するために使用する。他の観点において、血小板の冷却は、温度を毎分約2~20℃の速度で低下させることを含む。本明細書に記載の他の態様は、本明細書に記載の方法によって調製された凍結保存血小板である。
【0051】
本明細書に記載の他の態様は、凍結保存し、凍結保存から血小板を回収するための方法であって、(a)対象から血液、多血小板血漿またはアフェレーシス由来血小板を得;(b)血液、多血小板血漿またはアフェレーシス血小板から血小板を単離し;(c)トレハロースを含む緩衝溶液中に血小板を懸濁させ;(d)懸濁した血小板に安定剤を加え;(e)血小板を約-80℃の温度に冷却し;(f)約-80℃で血小板を一定期間保存し;そして(g)約20~40℃で血小板を解凍する;ことを含む方法である。一観点において、懸濁緩衝液は約50mMのトレハロースを含む。他の観点において、安定剤は約4質量%のウシ血清アルブミン(BSA)である。他の観点では、工程(c)の血小板を約1×10血小板/μLの最終濃度に懸濁緩衝液で希釈する。他の観点では、希釈した血小板を、約37℃で約2時間にわたり定期的に撹拌しながらインキュベートする。他の観点において、該方法は、(h)解凍した血小板を単離する工程;および(i)単離した解凍血小板を、約1質量%のBSAを含む活性化緩衝液中に懸濁させる工程を、さらに含む。他の観点において、解凍した血小板の単離は、1000×gで15分間の遠心分離を含む。他の観点において、活性化緩衝液は約50mMのトレハロースをさらに含む。他の観点において、解凍した血小板の単離は、1000×gで5分間の遠心分離を含む。他の観点では、工程(h)の後、かつ工程(i)の前に、以下の工程を実施する:(h-1)解凍した血小板を洗浄緩衝液中で洗浄する。他の観点において、工程(h)における解凍した血小板の単離は、1000×gで15分間にわたり遠心分離し、上清を除去することを含み;そして、工程(h-1)における解凍した血小板の洗浄は、血小板を洗浄緩衝液中に再懸濁させ、1000×gで15分間にわたり遠心分離し、上清を除去することを含む。他の観点において、洗浄緩衝液は約50mMのトレハロースをさらに含む。他の観点において、工程(h)における解凍した血小板の単離は、1000×gで5分間にわたり遠心分離し、上清を除去することを含み;そして、工程(h-1)における解凍した血小板の洗浄は、血小板を洗浄緩衝液中に再懸濁させ、1000×gで5分間にわたり遠心分離し、上清を除去することを含む。他の観点において、工程(f)の一定期間は1日~約5年である。本明細書に記載の他の態様は、本明細書に記載の方法によって調製された、回収した凍結保存血小板である。
【0052】
本明細書に記載の他の態様は、凍結保存後に回収した血小板を活性化するための方法であって、(a)本明細書に記載の方法による凍結保存後に血小板を回収し;(b)回収した血小板を血小板第4因子(PF4;配列番号2)で処理し;そして(c)PF4で処理した血小板を、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)と診断された対象からの血漿、血清または血液試料と一緒にインキュベートする;ことを含む方法である。一観点において、回収した血小板をPF4で処理することは、PF4を血小板に約150μg/mLの濃度で加え、室温で約20分間インキュベートすることを含む。他の観点では、血小板の活性化を、PF4で処理した血小板をHIT対象からの血漿、血清または血液試料と一緒にインキュベートした後に放出される血小板顆粒内容物を測定することによって評価する。他の観点において、血小板顆粒内容物はトロンボスポンジン-1である。本明細書に記載の他の態様は、本明細書に記載の方法によって調製された、活性化された回収した凍結保存血小板である。
【0053】
本明細書に記載の他の態様は、凍結保存後に回収した血小板を活性化するための方法であって、(a)本明細書に記載の方法による凍結保存後に血小板を回収し;そして(b)回収した血小板をトロンビン受容体活性化ペプチド(TRAP;アミノ酸配列:SFFLRN;配列番号1)で処理する;ことを含む方法である。一観点において、回収した血小板をTRAPで処理することは、TRAPを血小板に約25μg/mLの濃度で加え、室温で約30分間インキュベートすることを含む。他の観点では、血小板の活性化を、回収した血小板をTRAPで処理した後に放出される血小板顆粒内容物を測定することによって評価する。他の観点において、血小板顆粒内容物はトロンボスポンジン-1である。本明細書に記載の他の態様は、本明細書に記載の方法によって調製された、活性化さた回収した凍結保存血小板である。
【0054】
本明細書に記載の他の態様は、凍結保存後に回収した血小板を活性化するための方法であって、(a)本明細書に記載の方法による凍結保存後に血小板を回収し;(b)回収した血小板をヘパリンで処理し;そして(c)ヘパリンで処理した血小板を、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)と診断された対象からの血漿、血清または血液試料と一緒にインキュベートする;ことを含む方法である。一観点において、回収した血小板をヘパリンで処理することは、ヘパリンを血小板に約0.1~5U/mLの濃度で加え、室温で約20分間インキュベートすることを含む。他の観点では、血小板の活性化を、ヘパリンで処理した血小板をHIT対象からの血漿、血清または血液試料と一緒にインキュベートした後に放出される血小板顆粒内容物を測定することによって評価する。他の観点において、血小板顆粒内容物はトロンボスポンジン-1である。本明細書に記載の他の態様は、本明細書に記載の方法によって調製された、活性化された回収した凍結保存血小板である。
【0055】
本明細書に記載の他の態様は、血小板を凍結保存し、凍結保存から血小板を回収するための方法であって、(a)対象から血液、多血小板血漿またはアフェレーシス由来血小板を得;(b)血液、多血小板血漿またはアフェレーシス血小板から血小板を単離し;(c)トレハロースを含む緩衝溶液中に血小板を懸濁させ;(d)懸濁した血小板に安定剤を加え;(e)血小板を約-80℃の温度に冷却し;(f)約-80℃で血小板を一定期間保存し;(g)約20~40℃で血小板を解凍し;(h)解凍した血小板を単離し;そして(i)単離した解凍血小板を、約1質量%のBSAを含む活性化緩衝液中に懸濁させる;ことを含む方法である。一観点において、懸濁緩衝液は約50mMのトレハロースを含む。他の観点において、安定剤は約4質量%のウシ血清アルブミン(BSA)である。他の観点では、工程(c)の血小板を、約1×10血小板/μLの最終濃度に懸濁緩衝液で希釈する。他の観点では、希釈した血小板を、約37℃で約2時間にわたり定期的に撹拌しながらインキュベートする。他の観点において、解凍した血小板の単離は、1000×gで15分間の遠心分離を含む。他の観点において、活性化緩衝液は約50mMのトレハロースをさらに含む。他の観点において、解凍した血小板の単離は、1000×gで5分間の遠心分離を含む。他の観点では、工程(h)の後、かつ工程(i)の前に、以下の工程を実施する:(h-1)解凍した血小板を洗浄緩衝液中で洗浄する。他の観点において、工程(h)における解凍した血小板の単離は、1000×gで15分間にわたり遠心分離し、上清を除去することを含み;そして、工程(h-1)における解凍した血小板の洗浄は、血小板を洗浄緩衝液中に再懸濁させ、1000×gで15分間にわたり遠心分離し、上清を除去することを含む。他の観点において、洗浄緩衝液は約50mMのトレハロースをさらに含む。他の観点において、工程(h)における解凍した血小板の単離は、1000×gで5分間にわたり遠心分離し、上清を除去することを含み;そして、工程(h-1)における解凍した血小板の洗浄は、血小板を洗浄緩衝液中に再懸濁させ、1000×gで5分間にわたり遠心分離し、上清を除去することを含む。他の観点において、工程(f)の一定期間は1日~約5年である。本明細書に記載の他の態様は、本明細書に記載の方法によって調製された、回収した凍結保存血小板である。
【0056】
本明細書に記載の他の態様は、凍結保存後に回収した血小板を活性化するための方法であって、(a)本明細書に記載の方法による凍結保存後に血小板を回収し;(b)回収した血小板を血小板第4因子(PF4;配列番号2)で処理し;そして(c)PF4で処理した血小板を、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)と診断された対象からの血漿、血清または血液試料と一緒にインキュベートする;ことを含む方法である。一観点において、回収した血小板をPF4で処理することは、PF4を血小板に約150μg/mLの濃度で加え、室温で約20分間インキュベートすることを含む。他の観点では、血小板の活性化を、PF4で処理した血小板をHIT対象からの血漿、血清または血液試料と一緒にインキュベートした後に放出される血小板顆粒内容物を測定することによって評価する。他の観点において、血小板顆粒内容物はトロンボスポンジン-1である。本明細書に記載の他の態様は、本明細書に記載の方法によって調製された、活性化された回収した凍結保存血小板である。
【0057】
本明細書に記載の他の態様は、凍結保存後に回収した血小板を活性化するための方法であって、(a)本明細書に記載の方法による凍結保存後に血小板を回収し;そして(b)回収した血小板をトロンビン受容体活性化ペプチド(TRAP;アミノ酸配列:SFFLRN;配列番号1)で処理する;ことを含む方法である。一観点において、回収した血小板をTRAPで処理することは、TRAPを血小板に約25μg/mLの濃度で加え、室温で約30分間インキュベートすることを含む。他の観点では、血小板の活性化を、回収した血小板をTRAPで処理した後に放出される血小板顆粒内容物を測定することによって評価する。他の観点において、血小板顆粒内容物はトロンボスポンジン-1である。本明細書に記載の他の態様は、本明細書に記載の方法によって調製された、活性化された回収した凍結保存血小板である。
【0058】
本明細書に記載の他の態様は、凍結保存後に回収した血小板を活性化するための方法であって、(a)本明細書に記載の方法による凍結保存後に血小板を回収し;(b)回収した血小板をヘパリンで処理し;そして(c)ヘパリンで処理した血小板を、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)と診断された対象からの血漿、血清または血液試料と一緒にインキュベートする;ことを含む方法である。一観点において、回収した血小板をヘパリンで処理することは、ヘパリンを血小板に約0.1~5U/mLの濃度で加え、室温で約20分間インキュベートすることを含む。他の観点では、血小板の活性化を、ヘパリンで処理した血小板をHIT対象からの血漿、血清または血液試料と一緒にインキュベートした後に放出される血小板顆粒内容物を測定することによって評価する。他の観点において、血小板顆粒内容物はトロンボスポンジン-1である。本明細書に記載の他の態様は、本明細書に記載の方法によって調製された、活性化された回収した凍結保存血小板である。
【0059】
本明細書に記載の他の態様は、以下の方法によって生成された、回収した凍結保存血小板である:(a)対象から血液、多血小板血漿またはアフェレーシス由来血小板を得;(b)血液、多血小板血漿またはアフェレーシス血小板から血小板を単離し;(c)トレハロースを含む緩衝溶液中に血小板を懸濁させ;(d)懸濁した血小板に安定剤を加え;(e)血小板を約-80℃の温度に冷却し;(f)約-80℃で血小板を一定期間保存し;そして(g)約20~40℃で血小板を解凍する。
【0060】
本明細書に記載の他の態様は、以下の方法によって調製された、活性化された回収した凍結保存血小板である:(a)対象から血液、多血小板血漿またはアフェレーシス由来血小板を得;(b)血液、多血小板血漿またはアフェレーシス血小板から血小板を単離し;(c)トレハロースを含む緩衝溶液中に血小板を懸濁させ;(d)懸濁した血小板に安定剤を加え;(e)血小板を約-80℃の温度に冷却し;(f)約-80℃で血小板を一定期間保存し;(g)約20~40℃で血小板を解凍し;(h)解凍した血小板を単離し;(i)単離した解凍血小板を、約1質量%のBSAを含む活性化緩衝液中に懸濁させ;(j)回収した血小板をヘパリンまたはPF4で処理し;そして(k)ヘパリンまたはPF4で処理した血小板を、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)と診断された対象からの血漿、血清または血液試料と一緒にインキュベートする。
【0061】
本明細書に記載の他の態様は、以下の方法によって調製された、活性化された回収した凍結保存血小板である:(a)対象から血液、多血小板血漿またはアフェレーシス由来血小板を得;(b)血液、多血小板血漿またはアフェレーシス血小板から血小板を単離し;(c)トレハロースを含む緩衝溶液中に血小板を懸濁させ;(d)懸濁した血小板に安定剤を加え;(e)血小板を約-80℃の温度に冷却し;(f)約-80℃で血小板を一定期間保存し;(g)約20~40℃で血小板を解凍し;(h)解凍した血小板を単離し;(i)単離した解凍血小板を、約1質量%のBSAを含む活性化緩衝液中に懸濁させ;そして(j)回収した血小板をトロンビン受容体活性化ペプチド(TRAP;アミノ酸配列:SFFLRN;配列番号1)で処理する。
【0062】
本明細書に記載の他の態様は、血液、血漿または血清中のヘパリン起因性血小板減少症(HIT)抗体を検出するためのキットであり、該キットは、以下のうちの2以上を含む:(a)凍結保存血小板;(b)血小板第4因子(PF4;配列番号2)またはヘパリンのうちの1以上;(c)血小板活性化を検出するための1以上の試薬;(d)所望により、緩衝液および容器;ならびに(e)所望により、包装または使用説明書のうちの1以上。一観点において、血小板活性化を検出するための1以上の試薬は、トロンボスポンジン-1を検出するための試薬を含む。他の観点において、キットは、血小板を活性化する病原性HIT抗体に対し陰性を示す1以上の陰性対照試料;および血小板を活性化する病原性HIT抗体に対し陽性を示す1以上の陽性対照試料をさらに含む。
【0063】
本明細書に記載の他の態様は、出血の治療または予防を必要とする対象において出血を治療または予防するための方法であって、(a)凍結保存血小板を得;(b)凍結保存血小板を解凍し;(c)対象を、解凍した凍結保存血小板と接触させる;ことを含む方法である。一観点において、工程(a)~(b)は、(i)第2の対象から血液、多血小板血漿またはアフェレーシス由来血小板を得;(ii)血液、多血小板血漿またはアフェレーシス血小板から血小板を単離し;(iii)トレハロースを含む緩衝溶液中に血小板を懸濁させ;(iv)トレハロースで処理した血小板を37℃で約2時間インキュベートし;(v)懸濁した血小板に安定剤を加え;(vi)血小板を約-80℃の温度に冷却し;(vii)約-80℃で血小板を一定期間保存し;そして(viii)約20~40℃で血小板を解凍する;ことを含む。他の観点において、工程(a)~(b)は、(i)第2の対象から多血小板血漿またはアフェレーシス由来血小板を得;(ii)多血小板血漿またはアフェレーシス由来血小板にトレハロースを加え;(iii)トレハロースで処理した血小板を37℃で約2時間インキュベートし;(iv)血小板を約-80℃の温度に冷却し;(v)約-80℃で血小板を一定期間保存し;そして(vi)約20~40℃で血小板を解凍する;ことを含む。他の観点において、工程(c)における接触は、解凍した凍結保存血小板を損傷部位に適用するか、または解凍した凍結保存血小板を対象に非経口投与することを含む。
【0064】
本明細書に記載の他の態様は、凍結保存血小板を、それを必要とする対象を治療するための試薬、研究ツール、または医薬として使用することである。
本明細書に記載の他の態様は、解凍した凍結保存血小板を、それを必要とする対象を治療するための試薬、研究ツール、または医薬として使用することである。
【0065】
本明細書に記載の他の態様は、活性化された解凍した凍結保存血小板を、それを必要とする対象を治療するための試薬、研究ツール、または医薬として使用することである。
本明細書に記載の組成物、製剤、方法、プロセス、および用途に対する適切な改変および適応は、任意の態様またはその観点の範囲から逸脱することなく行うことができることは当業者には明らかであろう。提供される組成物および方法は代表的なものであり、特定の態様のいずれかの範囲を限定することを意図するものではない。本明細書に開示されるさまざまな態様、観点、および選択肢はすべて、任意の変形または反復において組み合わせることができる。本明細書に記載される組成物、製剤、方法、およびプロセスの範囲は、本明細書に記載される態様、観点、選択肢、実施例、および優先傾向の実際の組み合わせまたは潜在的な組み合わせをすべて包含する。本明細書に記載される代表的な組成物および製剤は、任意の成分を除外することができ、本明細書に開示される任意の成分で置き換えることができ、または本明細書の別の箇所に開示される任意の成分を包含することができる。本明細書に開示される任意の組成物または製剤の任意の成分の質量と、製剤中の任意の他の成分の質量または製剤中の他の成分の全質量との比は、本明細書では、それらが明確に開示されたかのように開示される。参考として援用する特許または刊行物のいずれかにおける任意の用語の意味が、本開示で使用される用語の意味と矛盾する場合、本開示における用語または語句の意味が優先される。さらに、上記解説は、単に代表的な態様を開示し、説明しているに過ぎない。本明細書に引用されるすべての特許および刊行物は、その具体的な教示に関し本明細書で参考として援用される。
【0066】
本明細書に記載する発明のさまざまな態様および観点を、以下の条項によって要約する:
条項1.生存能力および活性化能を維持する血小板を凍結保存するための方法であって、
(a)対象から血液または多血小板血漿またはアフェレーシス由来血小板を得;
(b)血液、多血小板血漿またはアフェレーシス血小板から血小板を単離し;
(c)トレハロースを含む懸濁緩衝液中に血小板を懸濁させ;
(d)懸濁した血小板に安定剤を加え;
(e)血小板を約-80℃の温度に冷却し;そして
(f)約-80℃で血小板を保存する;
ことを含む、前記方法。
条項2.該方法が血小板の生存能力および活性化能を2週間以上維持する、条項1に記載の方法。
条項3.懸濁緩衝液が約50mMのトレハロースを含む、条項1または2に記載の方法。
条項4.安定剤が約4質量%のウシ血清アルブミン(BSA)である、条項1~3のいずれか一項に記載の方法。
条項5.工程(c)の血小板を約1×10血小板/μLの最終濃度に懸濁緩衝液で希釈する、条項1~4のいずれか一項に記載の方法。
条項6.希釈した血小板を、約37℃で約2時間にわたり定期的に撹拌しながらインキュベートする、条項1~5のいずれか一項に記載の方法。
条項7.血小板の単離が、血液、多血小板血漿またはアフェレーシス血小板を100×gで15分間遠心分離して第1のペレットおよび第1の上清を生成し;その後、第1の上清を1000×gで15分間遠心分離して第2のペレットおよび第2の上清を生成することを含み、第1の上清が血小板に富み、第2の上清が血小板に乏しい、条項1~6のいずれか一項に記載の方法。
条項8.第2の上清を収集し、トレハロースを約50mMまで加え、工程(c)の血小板を約1×10血小板/μLの濃度に希釈するために使用する、条項1~7のいずれか一項に記載の方法。
条項9.血小板の冷却が、温度を毎分約2~20℃の速度で低下させることを含む、条項1~8のいずれか一項に記載の方法。
条項10.条項1~9のいずれか一項に記載の方法によって調製された凍結保存血小板。
条項11.凍結保存し、凍結保存から血小板を回収するための方法であって、
(a)対象から血液、多血小板血漿またはアフェレーシス由来血小板を得;
(b)血液、多血小板血漿またはアフェレーシス血小板から血小板を単離し;
(c)トレハロースを含む緩衝溶液中に血小板を懸濁させ;
(d)懸濁した血小板に安定剤を加え;
(e)血小板を約-80℃の温度に冷却し;
(f)約-80℃で血小板を一定期間保存し;そして
(g)約20~40℃で血小板を解凍する;
ことを含む、前記方法。
条項12.懸濁緩衝液が約50mMのトレハロースを含む、条項11に記載の方法。
条項13.安定剤が約4質量%のウシ血清アルブミン(BSA)である、条項11または12に記載の方法。
条項14.工程(c)の血小板を約1×10血小板/μLの最終濃度に懸濁緩衝液で希釈する、条項11~13のいずれか一項に記載の方法。
条項15.希釈した血小板を、約37℃で約2時間にわたり定期的に撹拌しながらインキュベートする、条項11~14のいずれか一項に記載の方法。
条項16.さらに、
(h)解凍した血小板を単離する工程;および
(i)単離した解凍血小板を、約1質量%のBSAを含む活性化緩衝液中に懸濁させる工程;
を含む、条項11~15のいずれか一項に記載の方法。
条項17.解凍した血小板の単離が1000×gで15分間の遠心分離を含む、条項11~16のいずれか一項。
条項18.活性化緩衝液が約50mMのトレハロースをさらに含む、条項11~17のいずれか一項に記載の方法。
条項19.解凍した血小板の単離が1000×gで5分間の遠心分離を含む、条項11~18のいずれか一項に記載の方法。
条項20.工程(h)の後、かつ工程(i)の前に、以下の工程を実施する、条項11~19のいずれか一項に記載の方法:
(h-1)解凍した血小板を洗浄緩衝液中で洗浄する工程。
条項21.工程(h)における解凍した血小板の単離が、1000×gで15分間にわたり遠心分離し、上清を除去することを含み;そして、工程(h-1)における解凍した血小板の洗浄が、血小板を洗浄緩衝液中に再懸濁させ、1000×gで15分間にわたり遠心分離し、上清を除去することを含む、条項20に記載の方法。
条項22.洗浄緩衝液が約50mMのトレハロースをさらに含む、条項11~21のいずれか一項に記載の方法。
条項23.工程(h)における解凍した血小板の単離が、1000×gで5分間にわたり遠心分離し、上清を除去することを含み;そして、工程(h-1)における解凍した血小板の洗浄が、血小板を洗浄緩衝液中に再懸濁させ、1000×gで5分間にわたり遠心分離し、上清を除去することを含む、条項11~22のいずれか一項に記載の方法。
条項24.工程(f)の一定期間が1日~約5年である、条項11~24のいずれか一項に記載の方法。
条項25.条項11~24のいずれか一項に記載の方法によって調製された、回収した凍結保存血小板。
条項26.凍結保存後に回収した血小板を活性化するための方法であって、
(a)条項11~24のいずれか一項に記載の方法による凍結保存後に血小板を回収し;
(b)回収した血小板を血小板第4因子(PF4;配列番号2)で処理し;そして
(c)PF4で処理した血小板を、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)と診断された対象からの血漿、血清または血液試料と一緒にインキュベートする;
ことを含む、前記方法。
条項27.回収した血小板をPF4で処理することが、PF4を血小板に約150μg/mLの濃度で加え、室温で約20分間インキュベートすることを含む、条項26に記載の方法。
条項28.血小板の活性化を、PF4で処理した血小板をHIT対象からの血漿、血清または血液試料と一緒にインキュベートした後に放出される血小板顆粒内容物を測定することによって評価する、条項26または27に記載の方法。
条項29.血小板顆粒内容物がトロンボスポンジン-1である、条項26~28のいずれか一項に記載の方法。
条項30.条項26~29のいずれか一項に記載の方法によって調製された、活性化された回収した凍結保存血小板。
条項31.凍結保存後に回収した血小板を活性化するための方法であって、
(a)条項11~24のいずれか一項に記載の方法による凍結保存後に血小板を回収し;そして
(b)回収した血小板をトロンビン受容体活性化ペプチド(TRAP;アミノ酸配列:SFFLRN;配列番号1)で処理する;
ことを含む、前記方法。
条項32.回収した血小板をTRAPで処理することが、TRAPを血小板に約25μg/mLの濃度で加え、室温で約30分間インキュベートすることを含む、条項31に記載の方法。
条項33.血小板の活性化を、回収した血小板をTRAPで処理した後に放出される血小板顆粒内容物を測定することによって評価する、条項31または32に記載の方法。
条項34.血小板顆粒内容物がトロンボスポンジン-1である、条項31~33のいずれか一項に記載の方法。
条項35.条項31~34のいずれか一項に記載の方法によって調製された、活性化された回収した凍結保存血小板。
条項36.凍結保存後に回収した血小板を活性化するための方法であって、
(a)条項11~24のいずれか一項に記載の方法による凍結保存後に血小板を回収し;
(b)回収した血小板をヘパリンで処理し;そして
(c)ヘパリンで処理した血小板を、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)と診断された対象からの血漿、血清または血液試料と一緒にインキュベートする;
ことを含む、前記方法。
条項37.回収した血小板をヘパリンで処理することが、ヘパリンを血小板に約0.1~5U/mLの濃度で加え、室温で約20分間インキュベートすることを含む、条項36に記載の方法。
条項38.血小板の活性化を、ヘパリンで処理した血小板をHIT対象からの血漿、血清または血液試料と一緒にインキュベートした後に放出される血小板顆粒内容物を測定することによって評価する、条項36または37に記載の方法。
条項39.血小板顆粒内容物がトロンボスポンジン-1である、条項36~38のいずれか一項に記載の方法。
条項40.事項36~39のいずれか一項に記載の方法によって調製された、活性化された回収した凍結保存血小板。
条項41.血小板を凍結保存し、凍結保存から血小板を回収するための方法であって、
(a)対象から血液、多血小板血漿またはアフェレーシス由来血小板を得;
(b)血液、多血小板血漿またはアフェレーシス血小板から血小板を単離し;
(c)トレハロースを含む緩衝溶液中に血小板を懸濁させ;
(d)懸濁した血小板に安定剤を加え;
(e)血小板を約-80℃の温度に冷却し;
(f)約-80℃で血小板を一定期間保存し;
(g)約20~40℃で血小板を解凍し;
(h)解凍した血小板を単離し;そして
(i)単離した解凍血小板を、約1質量%のBSAを含む活性化緩衝液中に懸濁させる;
ことを含む、前記方法。
条項42.懸濁緩衝液が約50mMのトレハロースを含む、条項41に記載の方法。
条項43.安定剤が約4質量%のウシ血清アルブミン(BSA)である、条項41または42に記載の方法。
条項44.工程(c)の血小板を約1×10血小板/μLの最終濃度に懸濁緩衝液で希釈する、条項41~43のいずれか一項に記載の方法。
条項45.希釈した血小板を、約37℃で約2時間にわたり定期的に撹拌しながらインキュベートする、条項41~44のいずれか一項に記載の方法。
条項46.解凍した血小板の単離が1000×gで15分間の遠心分離を含む、条項41~45のいずれか一項に記載の方法。
条項47.活性化緩衝液が約50mMのトレハロースをさらに含む、条項41~46のいずれか一項に記載の方法。
条項48.解凍した血小板の単離が1000×gで5分間の遠心分離を含む、条項41~47のいずれか一項に記載の方法。
条項49.工程(h)の後、かつ工程(i)の前に、以下の工程を実施する、条項41~48のいずれか一項に記載の方法:
(h-1)解凍した血小板を洗浄緩衝液中で洗浄する工程。
条項50.工程(h)における解凍した血小板の単離が、1000×gで15分間にわたり遠心分離し、上清を除去することを含み;そして、工程(h-1)における解凍した血小板の洗浄が、血小板を洗浄緩衝液中に再懸濁させ、1000×gで15分間にわたり遠心分離し、上清を除去することを含む、条項41~49のいずれか一項に記載の方法。
条項51.洗浄緩衝液が約50mMのトレハロースをさらに含む、条項41~50のいずれか一項に記載の方法。
条項52.工程(h)における解凍した血小板の単離が、1000×gで5分間にわたり遠心分離し、上清を除去することを含み;そして、工程(h-1)における解凍した血小板の洗浄が、血小板を洗浄緩衝液中に再懸濁させ、1000×gで5分間にわたり遠心分離し、上清を除去することを含む、条項41~51のいずれか一項に記載の方法。
条項53.工程(f)の一定期間が1日~約5年である、条項41~52のいずれか一項に記載の方法。
条項54.条項41~53のいずれか一項に記載の方法によって調製された、回収した凍結保存血小板。
条項55.凍結保存後に回収した血小板を活性化するための方法であって、
(a)条項41~53のいずれか一項に記載の方法による凍結保存後に血小板を回収し;
(b)回収した血小板を血小板第4因子(PF4;配列番号2)で処理し;そして
(c)PF4で処理した血小板を、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)と診断された対象からの血漿、血清または血液試料と一緒にインキュベートする;
ことを含む、前記方法。
条項56.回収した血小板をPF4で処理することが、PF4を血小板に約150μg/mLの濃度で加え、室温で約20分間インキュベートすることを含む、条項55に記載の方法。
条項57.血小板の活性化を、PF4で処理した血小板をHIT対象からの血漿、血清または血液試料と一緒にインキュベートした後に放出される血小板顆粒内容物を測定することによって評価する、条項55または56に記載の方法。
条項58.血小板顆粒内容物がトロンボスポンジン-1である、条項55~57のいずれか一項に記載の方法。
条項59.条項55~58のいずれか一項に記載の方法によって調製された、活性化された回収した凍結保存血小板。
条項60.凍結保存後に回収した血小板を活性化するための方法であって、
(a)条項41~53のいずれか一項に記載の方法による凍結保存後に血小板を回収し;そして
(b)回収した血小板をトロンビン受容体活性化ペプチド(TRAP;アミノ酸配列:SFFLRN;配列番号1)で処理する;
ことを含む、前記方法。
条項61.回収した血小板をTRAPで処理することが、TRAPを血小板に約25μg/mLの濃度で加え、室温で約30分間インキュベートすることを含む、条項60に記載の方法。
条項62.血小板の活性化を、回収した血小板をTRAPで処理した後に放出される血小板顆粒内容物を測定することによって評価する、条項60または61に記載の方法。
条項63.血小板顆粒内容物がトロンボスポンジン-1である、条項60~62のいずれか一項に記載の方法。
条項64.条項60~62のいずれか一項に記載の方法によって調製された、活性化された回収した凍結保存血小板。
条項65.凍結保存後に回収した血小板を活性化するための方法であって、
(a)条項41~53のいずれか一項に記載の方法による凍結保存後に血小板を回収し;
(b)回収した血小板をヘパリンで処理し;そして
(c)ヘパリンで処理した血小板を、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)と診断された対象からの血漿、血清または血液試料と一緒にインキュベートする;
ことを含む、前記方法。
条項66.回収した血小板をヘパリンで処理することが、ヘパリンを血小板に約0.1~5U/mLの濃度で加え、室温で約20分間インキュベートすることを含む、条項65に記載の方法。
条項67.血小板の活性化を、ヘパリンで処理した血小板をHIT対象からの血漿、血清または血液試料と一緒にインキュベートした後に放出される血小板顆粒内容物を測定することによって評価する、条項65または66に記載の方法。
条項68.血小板顆粒内容物がトロンボスポンジン-1である、条項65~67のいずれか一項に記載の方法。
条項69.条項65~68のいずれか一項に記載の方法によって調製された、活性化された回収した凍結保存血小板。
条項70.以下の方法:
(a)対象から血液、多血小板血漿またはアフェレーシス由来血小板を得;
(b)血液、多血小板血漿またはアフェレーシス血小板から血小板を単離し;
(c)トレハロースを含む緩衝溶液中に血小板を懸濁させ;
(d)懸濁した血小板に安定剤を加え;
(e)血小板を約-80℃の温度に冷却し;
(f)約-80℃で血小板を一定期間保存し;そして
(g)約20~40℃で血小板を解凍する;
によって生成された、回収した凍結保存血小板。
条項71.以下の方法:
(a)対象から血液、多血小板血漿またはアフェレーシス由来血小板を得;
(b)血液、多血小板血漿またはアフェレーシス血小板から血小板を単離し;
(c)トレハロースを含む緩衝溶液中に血小板を懸濁させ;
(d)懸濁した血小板に安定剤を加え;
(e)血小板を約-80℃の温度に冷却し;
(f)約-80℃で血小板を一定期間保存し;
(g)約20~40℃で血小板を解凍し;
(h)解凍した血小板を単離し;
(i)単離した解凍血小板を、約1質量%のBSAを含む活性化緩衝液中に懸濁させ;
(j)回収した血小板をヘパリンまたはPF4で処理し;そして
(k)ヘパリンまたはPF4で処理した血小板を、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)と診断された対象からの血漿、血清または血液試料と一緒にインキュベートする;
によって調製された、活性化された回収した凍結保存血小板。
条項72.以下の方法:
(a)対象から血液、多血小板血漿またはアフェレーシス由来血小板を得;
(b)血液、多血小板血漿またはアフェレーシス血小板から血小板を単離し;
(c)トレハロースを含む緩衝溶液中に血小板を懸濁させ;
(d)懸濁した血小板に安定剤を加え;
(e)血小板を約-80℃の温度に冷却し;
(f)約-80℃で血小板を一定期間保存し;
(g)約20~40℃で血小板を解凍し;
(h)解凍した血小板を単離し;
(i)単離した解凍血小板を、約1質量%のBSAを含む活性化緩衝液中に懸濁させ;そして
(j)回収した血小板をトロンビン受容体活性化ペプチド(TRAP;アミノ酸配列:SFFLRN;配列番号1)で処理する;
によって調製された、活性化された回収した凍結保存血小板。
条項73.血液、血漿または血清中のヘパリン起因性血小板減少症(HIT)抗体を検出するためのキットであって、
(a)凍結保存血小板;
(b)血小板第4因子(PF4;配列番号2)またはヘパリンのうちの1以上;
(c)血小板活性化を検出するための1以上の試薬;
(d)所望により、緩衝液および容器;ならびに
(e)所望により、包装または使用説明書のうちの1以上;
のうちの2以上を含む、前記キット。
条項74.血小板活性化を検出するための1以上の試薬が、トロンボスポンジン-1を検出するための試薬を含む、条項73に記載のキット。
条項75.キットが、血小板を活性化する病原性HIT抗体に対し陰性を示す1以上の陰性対照試料;および、血小板を活性化する病原性HIT抗体に対し陽性を示す1以上の陽性対照試料をさらに含む、条項73または74に記載のキット。
条項76.出血の治療または予防を必要とする対象において出血を治療または予防するための方法であって、
(a)凍結保存血小板を得;
(b)凍結保存血小板を解凍し;
(c)対象を、解凍した凍結保存血小板と接触させる;
ことを含む、前記方法。
条項77.工程(a)~(b)が、
(i)第2の対象から血液、多血小板血漿またはアフェレーシス由来血小板を得;
(ii)血液、多血小板血漿またはアフェレーシス血小板から血小板を単離し;
(iii)トレハロースを含む緩衝溶液中に血小板を懸濁させ;
(iv)トレハロースで処理した血小板を37℃で約2時間インキュベートし;
(v)懸濁した血小板に安定剤を加え;
(vi)血小板を約-80℃の温度に冷却し;
(vii)約-80℃で血小板を一定期間保存し;そして
(viii)約20~40℃で血小板を解凍する;
ことを含む、条項76に記載の方法。
条項78.工程(a)~(b)が、
(i)第2の対象から多血小板血漿またはアフェレーシス由来血小板を得;
(ii)多血小板血漿またはアフェレーシス由来血小板にトレハロースを加え;
(iii)トレハロースで処理した血小板を37℃で約2時間インキュベートし;
(iv)血小板を約-80℃の温度に冷却し;
(v)約-80℃で血小板を一定期間保存し;そして
(vi)約20~40℃で血小板を解凍する;
ことを含む、条項76に記載の方法。
条項79.工程(c)における接触が、解凍した凍結保存血小板を損傷部位に適用するか、または解凍した凍結保存血小板を対象に非経口投与することを含む、条項76~78のいずれか一項に記載の方法。
条項80.凍結保存血小板の、それを必要とする対象を治療するための試薬、研究ツール、または医薬としての使用。
条項81.解凍した凍結保存血小板の、それを必要とする対象を治療するための試薬、研究ツール、または医薬としての使用。
条項82.活性化された解凍した凍結保存血小板の、それを必要とする対象を治療するための試薬、研究ツール、または医薬としての使用。
【実施例
【0067】
実施例1
緩衝液中の血小板の凍結保存
多血小板血漿をクエン酸リン酸デキストロース抗凝固剤(CPD、15.6mM クエン酸、89mM クエン酸ナトリウム二水和物、16mM NaHPO・HO、128mM デキストロース一水和物)中に収集し(45mL)、5mLの酸性クエン酸デキストロース緩衝液(117mM クエン酸ナトリウム、136mM デキストロース、pH5.9;最終希釈1:10)をプロスタグランジン-E1(最終濃度50ng/mL)と共に加えた。組み合わせたものを100×gで15分間遠心分離した。上清(40mL)を収集し、1000×gで15分間遠心分離し、上清を除去し、廃棄した。血小板を凍結保存緩衝液(9.5mM HEPES;100mM NaCl;4.8mM KCl;5.0mM グルコース;12mM NaHCO;50mM トレハロース、pH6.8)に再懸濁させた。血小板を計数し、凍結保存緩衝液で1×10血小板/μLの最終濃度に希釈した。血小板を、30分ごとに反転させつつ37℃で2時間インキュベートした。2時間のインキュベーション後、ウシ血清アルブミン(BSA)を4質量%の最終濃度まで滴下して加えた。1mLのアリコートをクライオバイアルに分注し、4℃/分の速度で-80℃の最終温度に冷却した。長期保存するためにバイアルを-80℃の冷凍庫に移した。図1参照。
【0068】
記載したように、20人の異なる全血ドナーから血小板を得て、緩衝液中で凍結保存した。凍結保存血小板を、使用するまで-80℃で保存し、洗浄により回収した。回収後、血小板を血小板第4因子(PF4)で処理し、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)であることが確認されている患者からの3つの血液試料のうちの1つ、または3つの正常対照血清のうちの1つに加えた。PF4で処理した血小板を患者/正常試料で処理した後、上清を収集し、トロンボスポンジン-1(TSP1)ELISAキットを用いてトロンボスポンジン-1濃度についてアッセイした。図2に示すように、試験した20の異なる血小板ロットのそれぞれで、3つのHIT血清試料と3つの正常血清試験試料は明確に区別された。
【0069】
図2に示す20の異なる凍結保存血小板ロットのうち、7つを-80℃で4週間以上保存した後に試験した。凍結保存血小板を洗浄によって回収し、PF4で処理し、HITまたは正常血液試料によって活性化した。図3に示すように、4週間の保存後に試験した血小板ロットのすべてで、HITと正常被験試料は明確に区別された。
【0070】
図2に示す凍結保存ロットの1つからの血小板を、-80℃で14週間保存した後に試験した。凍結保存血小板を洗浄により回収し、PF4で処理し、HITまたは正常血清試料において活性化した。図4に示すように、14週間の保存後、凍結保存血小板は、活性化される能力を保持している。
【0071】
実施例2
洗浄による凍結保存血小板の回収
凍結保存した血小板の1mLアリコートを37℃の水浴中で3分間解凍した。次いで、血小板を1000×gで15分間遠心分離し、上清を除去し、廃棄した。血小板を1mLの血小板洗浄緩衝液(108mM NaCl、3.8mM KCl、1.7mM NaHCO、22.9mM クエン酸ナトリウム、27.8mM グルコース、pH6.5)に再懸濁させた。血小板を1000×gで15分間遠心分離し、上清を除去し、廃棄した。血小板を、1%のBSAを含有する175μLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS、137mM NaCl、2.7mM KCl、4.3mM NaHPO、1.47mM KHPO、pH7.4)に再懸濁させた。図1参照。
【0072】
ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)患者からの血液試料を用いた、回収した凍結保存血小板の血小板第4因子(PF4)処理および活性化
PF4(配列番号2)を、回収して洗浄した凍結保存血小板に150μg/mLの濃度で加え、室温で20分間インキュベートした。PF4で処理した血小板の80μLアリコートを20μLのHIT患者血清試料または正常血清試料に加え、室温で30分間インキュベートした。血小板反応混合物を1000×gで15分間遠心分離し、血小板活性化のマーカーとしてのトロンボスポンジン-1(血小板α顆粒成分)濃度を評価するために40μLの上清を収集した。
【0073】
トロンボスポンジン-1の測定
市販のトロンボスポンジン-1(TSP1)ELISAキット(R&D Systems)を用いて、血小板上清中のTSP1を血小板活性化の尺度として定量した。簡潔に言えば、ELISAプレートを、4℃で少なくとも8時間にわたり1μg/mLの抗TSP1捕捉抗体でコーティングした。ELISAプレートを400μLのELISAプレート洗浄緩衝液で3回洗浄し、ELISA試薬希釈液でブロックした。血小板反応からの上清を1:1000または1:2000に希釈した。標準を製造業者の説明書に従って調製し、ELISAプレート上でインキュベートした。ELISAプレートを400μLのELISAプレート洗浄緩衝液で3回洗浄し、100ng/mLのビオチン標識検出抗体と一緒にインキュベートした。ELISAプレートを400μLのELISAプレート洗浄緩衝液で再び3回洗浄し、1:200西洋ワサビペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジンと一緒にインキュベートした。ELISAプレートを400μLのELISAプレート洗浄緩衝液で再び3回洗浄し、テトラメチルベンジジンと一緒にインキュベートした。10分後にHSOで反応を終了させ、450nmでの光学濃度を測定した。TSP1濃度は、標準曲線に対する4パラメーターロジスティック回帰を用いて決定した。
【0074】
体積低減による凍結保存血小板の回収
凍結保存した血小板の1mLアリコートを37℃の水浴中で3分間解凍した。血小板を1000×gで15分間遠心分離し、上清を除去し、廃棄した。血小板を、1質量%のBSAを含有しpH7.4の175μLのPBSに再懸濁させた。
【0075】
解凍による凍保存血小板の回収
凍結保存した血小板の1mLアリコートを37℃の水浴中で3分間解凍した。血小板を、さらに処理することなく使用した。
【0076】
トロンビン受容体活性化ペプチド(TRAP)での回収した凍結保存血小板の活性化
回収した凍結保存血小板の80μLアリコートを、20μLの125μg/mL TRAPペプチド(TRAP最終濃度:25μg/mL;アミノ酸配列:SFFLRN;配列番号1)または1% BSAを含有する20μLのpH7.4のPBS(対照)に加え、室温で30分間インキュベートした。血小板反応混合物を1000×gで15分間遠心分離し、血小板活性化のマーカーとしてのトロンボスポンジン-1濃度を評価するために40μLの上清を収集した。
【0077】
凍結保存血小板の回収方法も検討した。単一ドナーからの血小板を緩衝液中で凍結保存した。凍結保存した血小板を、洗浄するか、体積を低減するか、または解凍により直接使用した。回収後、血小板をPF4で処理し、HITまたは正常血清試料によって活性化した。さらに、回収した血小板を、トロンビン受容体活性化ペプチド(TRAP)、強力な血小板アゴニスト、または対照としての緩衝液で処理した。洗浄した、または体積を低減したヒト試料(図5)およびTRAP(図6)凍結保存血小板は両方とも、解凍しただけの凍結保存血小板よりも高い程度の活性化能を有する。
【0078】
実施例3
ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)患者からの血液試料を用いた、回収した凍結保存血小板のヘパリン処理および活性化
回収した洗浄した凍結保存血小板に、未分画ヘパリンを0.1、0.3、0.5、1単位/mLまたは対照として0U/mLの濃度で加え、混合物を室温で20分間インキュベートした。80μLアリコートのヘパリンで処理した回収した凍結保存血小板を20μLのHIT患者血清試料または正常患者血清試料に加え、室温で30分間インキュベートした。血小板の反応混合物を1000×gで15分間遠心分離し、血小板活性化のマーカーとしてのトロンボスポンジン-1濃度を評価するために40μLの上清を収集した。
【0079】
図7は、ヘパリンで処理した凍結保存血小板を用いてHITと正常血液試料を識別することができ、これによって、HIT試料は血小板を活性化するが、正常試料は活性化しないことを示している。
【0080】
実施例4
乏血小板血漿の存在下での血小板の凍結保存
多血小板血漿(45mL)をクエン酸リン酸デキストロース抗凝固剤(CPD)中に収集し、5mLの酸性クエン酸デキストロース緩衝液をプロスタグランジン-E1(最終濃度50ng/mL)と共に加えた。多血小板血漿混合物を100×gで15分間遠心分離した。上清(40mL)を収集し、1000×gで15分間遠心分離した。上清(乏血小板血漿、PPP)を取り出し、以下に記載するように使用した。血小板を1mLの凍結保存緩衝液(9.5mM HEPES;100mM NaCl;4.8mM KCl;5.0mM グルコース;12mM NaHCO;50mM トレハロース、pH6.8)に再懸濁させた。トレハロース(200μLの1M トレハロース)を4mLのPPPに加えて、50mMのトレハロースを含有するPPPを作製した。血小板を計数し、50mMのトレハロースを含有するPPPで1×10血小板/μLの最終濃度に希釈した。血小板を、30分ごとに反転させつつ37℃で2時間インキュベートした。2時間のインキュベーション後、血小板の1mLアリコートをクライオバイアルに分注し、4℃/分の速度で-80℃の最終温度に冷却した。長期保存するためにバイアルを-80℃の冷凍庫に移した。
【0081】
次いで、PPP中で凍結保存した血小板を洗浄により回収した。回収後、血小板をPF4で処理し、HITまたは正常血清によって活性化した。さらに、回収した血小板を、TRAPまたは対照としての緩衝液で処理した。緩衝液中で凍結保存した血小板と同様に、PPP中で凍結保存した血小板は、HIT抗体(図8)またはTRAP(図9)によって活性化される能力を有する。
【0082】
実施例5
凍結保存血小板の凍結乾燥
血小板を実施例1で上記したように緩衝液中で凍結保存し、大気圧で4時間にわたり-40℃に平衡化した凍結乾燥機にバイアルを移した。-30℃で13時間にわたり真空(100mTorr)をかけた。その後、100mTorrの真空をかけながら、温度を-30℃から+30℃に12時間かけて徐々に上昇させた。その後、バイアルを-80℃の冷凍庫に移した。
【0083】
再構成、PF4処理およびHITおよび正常血液試料での凍結乾燥血小板の処理
1mLアリコートのHOを、それぞれの凍結乾燥血小板アリコートに加えた。再構成された凍結乾燥血小板にPF4を150μg/mLの濃度で加え、室温で20分間インキュベートした。PF4で処理した凍結保存血小板の80μLアリコートを20μLのHITまたは正常血清に加え、室温で30分間インキュベートした。血小板反応混合物を1000×gで15分間遠心分離し、血小板活性化のマーカーとしてトロンボスポンジン-1濃度を評価するために40μLの上清を収集した。
【0084】
再構成およびTRAPでの凍結乾燥血小板の活性化
凍結乾燥血小板を1mLのHOで再構成した。再構成した血小板の80μLアリコートを20μLの125μg/mLのTRAPペプチド(TRAP最終濃度:25μg/mL;アミノ酸配列:SFFLRN;配列番号1)または1質量%のBSAを含有する20μLのpH7.4のPBS(対照)に加え、室温で30分間インキュベートした。血小板反応混合物を1000×gで15分間遠心分離し、血小板活性化のマーカーとしてトロンボスポンジン-1濃度を評価するために40μLの上清を収集した。
【0085】
凍結乾燥は、細胞を凍結保存するために一般的に使用されている別の技術である。単一ドナーからの血小板を緩衝液中で凍結保存し、アリコートのサブセットを凍結乾燥に供した。凍結血小板を洗浄により回収し、凍結乾燥血小板をHOで再構成した。回収後、凍結乾燥血小板または凍結血小板をPF4で処理し、HITまたは正常血清試料により活性化した。さらに、血小板をTRAPまたは対照としての緩衝液で処理した。凍結血小板とは異なり、凍結乾燥血小板は、HIT試料(図10)またはTRAP(図11)によって活性化される能力を有さない。
【0086】
実施例6
ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)患者からの血液試料での、凍結保存血小板の改変された回収、血小板第4因子(PF4)処理および活性化
改変された回収は、(1)異なる遠心分離条件(上記のように5分対15分)、および(2)血小板を凍結するために使用される凍結保存緩衝液のみにおけるトレハロースの使用に対する、再懸濁緩衝液(洗浄緩衝液および活性化緩衝液)におけるトレハロースの使用をさす。
【0087】
血小板を500μLの体積、1×10血小板/μLの濃度で凍結保存し、37℃の水浴で3分間解凍した。血小板を1000×gで5分間遠心分離し、上清を除去し、廃棄した。血小板を、50mMのトレハロースを含有する500μLの血小板洗浄緩衝液を用いて再懸濁させた。血小板を1000×gで5分間遠心分離し、上清を除去し、廃棄した。血小板を、1質量%のBSA、50mMのトレハロース、および150μg/mLのPF4(配列番号2)を含有する80μLのpH7.4のPBSを用いて再懸濁させ、混合物を室温で20分間インキュベートした。HIT患者血清試料または正常患者血清試料の20μLアリコートを加え、混合物を室温でさらに30分間インキュベートした。血小板反応混合物を1000×gで5分間遠心分離し、血小板活性化のマーカーとしてのトロンボスポンジン-1(血小板α顆粒成分)濃度を評価するために40μLの上清を収集した。
【0088】
改変された活性化手順はまた、凍結血小板で得られたシグナル(HIT)対バックグラウンド(正常)比を増強するために使用された。簡単に説明すると、血小板を50mMのトレハロースの存在下で凍結保存し、次いで50mMのトレハロースを含有するRCDで洗浄することによって回収し、1質量%のBSA、50mMのトレハロース、および150μg/mLのPF4(配列番号2)を含有するPBS中に再懸濁させた。さらに、解凍後のすべての遠心分離工程の遠心分離時間を、15分から5分に変更した。図12は、標準的な活性化手順(左)を、この改変された手順(右)と比較している。シグナル対バックグラウンド比は、標準的な手順では4.4倍、改変された手順では7.2倍である。
【0089】
血小板活性化HIT抗体を用いた試料の検出における凍結血小板の有用性を明示することに加えて、図13は、これらの血小板を抗血小板薬発見のために使用することができるモデルを提示する。
【0090】
実施例7
凍結保存血小板の治療的使用
血小板輸血は、外傷、がん、および自己免疫障害を含むがこれらに限定されないさまざまな状態における出血の予防および治療の状況において救命的である。輸血を目的とするドナー血小板は、典型的には室温で保存され、5~7日の貯蔵寿命を有する。4℃では、わずかにより長い期間(2週間)保存することができる。現在の技術に基づく血小板貯蔵寿命へのこの限界は、とりわけ、農村地域、紛争地帯、発展途上国など供給源の乏しい環境、ならびに自然災害および悪天候の後に頻繁に見られるような血液不足の期間における、出血患者、または出血のリスクがある血小板減少症患者の治療において、物流上の課題をもたらす。長い貯蔵寿命(数ヶ月から数年)を有する凍結乾燥血小板が代替物として提案されてきたが、これらの血小板調製物は既に活性化状態にあり、上部に血栓症(thromboses)が形成しうる表面リン脂質を暴露している一方、それらは刺激により脱顆粒しないので、最適に次ぐものである。血小板顆粒は、ADPなど血小板をさらに活性化することができる重要な分子のほか、凝固カスケードを調節する他の成分を含有する。したがって、長い貯蔵寿命を有するだけでなく、新鮮な血小板と同様に、活性化により脱顆粒する能力を有する血小板生成物を開発することが、極めて必要とされている。
【0091】
長い貯蔵寿命を有し、脱顆粒することができ、輸血を目的とする血小板は、本出願に記載の診断用血小板調製物と同様に調製されるが、以下に記載するようないくつかの変更点がある。
【0092】
血小板の供給源および血小板の単離
凍結保存および治療的使用のための血小板の収集および単離方法はいくつかある。血小板はアフェレーシス法によって収集され、または多血小板血漿成分は標準的な全血収集からの遠心分離技術によって生成される。
【0093】
凍結保存用の血小板の調製
トレハロースを血小板生成物に加えて、約50mMの濃度を達成する。これは、いくつかの方法で達成することができる。例えば、血小板は、トレハロースを含有する血液バッグ中に直接収集することができ;これは、アフェレーシス血小板を用いて、または全血ユニットから遠心分離によって単離した多血小板血漿を用いて、行うことができる。トレハロースを血小板に導入する他の方法は、アフェレーシスによって得たか、または全血から多血小板血漿を生成することによって得た単離血小板に濃縮トレハロース溶液を加えることによる。あるいは、収集した血小板を、アフェレーシス血小板または多血小板血漿の血小板の遠心分離によってペレット化し、ペレットを、診断用凍結保存血小板生成物について本明細書に記載した手順と同様に、トレハロース含有緩衝液中に再懸濁させることができる。トレハロースの添加後、血小板を約37℃で約2時間インキュベートする。
【0094】
トレハロースで処理した血小板が多血小板血漿またはアフェレーシス由来血漿(すでにヒトアルブミンを含有する)中に存在する場合、ヒトアルブミンのさらなる添加は必要ない。血小板がペレット化され、乏血小板血漿(すでにヒトアルブミンを含有する)に再懸濁される場合、ヒトアルブミンのさらなる添加は必要ない。血小板ペレットが、トレハロースを含有しアルブミンを含まない緩衝液中に再懸濁される場合、約4~5%の最終濃度のヒトアルブミンを、トレハロースで処理した血小板調製物に加える。
【0095】
凍結保存
本明細書に記載の方法のいずれかによって調製される血小板を、2~20℃/分の速度で徐々に、または制御のない様式で、約-80℃に冷却する。凍結の前に、凍結される血小板の体積、したがって患者に輸血される血小板の体積を低減するために、遠心分離によって血小板を濃縮し、血小板を含まない上清の一部を廃棄することが、必須ではないが、望ましい場合がある。血小板は、バッグまたはチューブで凍結することができる。
【0096】
解凍および治療的使用
凍結保存した血小板を20~40℃で解凍する。これは、凍結される血小板の体積によって5分~1時間かかる可能性がある。解凍した血小板は、出血のリスクが高い血小板減少症患者などにおいては予防的に、または活発に出血している患者においては治療的に、患者に非経口的に直接注入することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
2024515724000001.app
【国際調査報告】