(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】子宮内膜過剰増殖性障害および卵巣過剰増殖性障害を検出または処置するための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/573 20060101AFI20240403BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20240403BHJP
C12Q 1/28 20060101ALI20240403BHJP
C07K 16/40 20060101ALI20240403BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240403BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20240403BHJP
C07K 17/00 20060101ALN20240403BHJP
【FI】
G01N33/573 A ZNA
G01N33/543 545A
C12Q1/28
C07K16/40
C12N15/13
C12M1/34 F
C07K17/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565147
(86)(22)【出願日】2022-04-19
(85)【翻訳文提出日】2023-12-11
(86)【国際出願番号】 IB2022053647
(87)【国際公開番号】W WO2022224137
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523397263
【氏名又は名称】テンプル セラピューティクス ビーブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】サイード ガッサン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
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4H045FA71
(57)【要約】
本開示は、侵襲的な腹腔鏡手術を必要としない高感度診断法を提供する。子宮内膜症患者の細胞、組織、および血清において単量体ミエロペルオキシダーゼ(MPO)が見出されることが見出された。この新規のバイオマーカーは、卵巣過剰増殖性障害および子宮内膜過剰増殖性障害を検出するために使用することができる。したがって、本開示の局面は、対象由来の生物学的試料において単量体ミエロペルオキシダーゼ(MPO)を検出する工程を含む対象を評価するための方法に関する。対象由来の生物学的試料において単量体MPOのレベルが評価されたことがある対象に子宮内膜過剰増殖性障害または卵巣過剰増殖性障害のための処置を行う工程を含む、子宮内膜過剰増殖性障害または卵巣過剰増殖性障害を有する対象を処置するための方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象由来の生物学的試料において単量体ミエロペルオキシダーゼ(MPO)を検出する工程を含む、対象を評価するための方法。
【請求項2】
生物学的試料が血清、血漿、または組織試料を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
生物学的試料が血清または血漿試料を含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記対象由来の生物学的試料において鉄レベルを検出する工程をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
前記対象由来の生物学的試料において鉄レベルを検出する工程が、血清鉄検査、遊離鉄検査、総鉄結合能(TIBC)検査、またはフェリチン検査の1つまたは複数を使用することを含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
生物学的試料のサイズ分画を行う工程を含み、サイズ分画が、75 kDaの分子を含みかつ150 kDaまたはそれより大きな分子を含まない生物学的試料の画分を提供する、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
75 kDaの分子を含む画分において単量体MPOを検出する工程を含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
単量体MPOを検出する工程が、単量体MPOに特異的に結合する1つまたは複数の抗体を使用することを含む、請求項1~7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
単量体MPOを検出する工程がELISAアッセイを含む、請求項1~8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
単量体MPOを検出する工程が、抗MPO抗体に対するMPOの結合を可能にする条件下で、生物学的試料または75 kDaの分子を含む画分と抗MPO抗体またはMPO結合分子を接触させることを含む、請求項1~9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
抗MPO抗体または結合分子が固体支持体に連結される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
未結合分子を除去するために固体支持体を洗浄する工程をさらに含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
生物学的試料または前記画分を捕捉抗体または抗原結合分子と接触させる工程を含むまたはさらに含む、請求項1~12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
捕捉抗体または抗原結合分子が第2の抗MPO抗体またはMPO抗原結合断片を含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
捕捉抗体が検出可能な標識に連結される、請求項13または14記載の方法。
【請求項16】
検出可能な標識を定量的または定性的に評価する工程をさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記対象が子宮内膜症および/または卵巣癌の1つまたは複数の症状を有する対象である、請求項1~16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
前記対象が子宮内膜過剰増殖性障害または卵巣過剰増殖性障害と診断されたことがある、請求項1~17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
前記対象が子宮内膜過剰増殖性障害もしくは卵巣過剰増殖性障害に関して処置されたことがある、子宮内膜過剰増殖性障害もしくは卵巣過剰増殖性障害に関して処置される予定である、または子宮内膜過剰増殖性障害もしくは卵巣過剰増殖性障害に関する処置を現在受けている、請求項1~18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
前記対象が女性である、請求項1~19のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
前記対象がホルモン療法中である、請求項1~20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
ホルモン療法が避妊またはホルモン置換療法を含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記女性が思春期、閉経周辺期、または閉経期の女性である、請求項20~22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
生物学的試料において単量体MPOのレベルを定量する工程をさらに含む、請求項1~23のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
単量体MPOのレベルが標準化される、請求項24記載の方法。
【請求項26】
単量体MPOのレベルが対照と比較される、請求項24または25記載の方法。
【請求項27】
単量体MPOのレベルが前記対照より高いと決定される、請求項24~26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
単量体MPOのレベルが前記対照より低いと決定される、請求項24~26のいずれか一項記載の方法。
【請求項29】
前記対照が、子宮内膜症を有する対象由来の生物学的試料における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含む、請求項1~28のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
前記対照が、卵巣癌を有する対象由来の生物学的試料における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含む、請求項1~28のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
前記対照が、子宮内膜過剰増殖性障害も卵巣過剰増殖性障害も有さない対象由来の生物学的試料における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含む、請求項1~28のいずれか一項記載の方法。
【請求項32】
前記対象を診断する工程をさらに含む、請求項1~31のいずれか一項記載の方法。
【請求項33】
前記対象が、決定されたMPOのレベルに基づき卵巣癌を有すると診断される、請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記対象が、決定されたMPOのレベルに基づきステージI、II、III、またはIV卵巣癌を有すると診断される、請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記対象を卵巣癌に関して処置する工程をさらに含む、請求項33または34記載の方法。
【請求項36】
前記対象が、決定されたMPOのレベルに基づき子宮内膜症を有すると診断される、請求項32記載の方法。
【請求項37】
前記対象を子宮内膜症に関して処置する工程をさらに含む、請求項36記載の方法。
【請求項38】
生物学的試料を単量体MPOに結合する抗体と接触させる工程を含む、複合体を生成するための方法。
【請求項39】
生物学的試料が血清、血漿、または組織試料を含む、請求項38記載の方法。
【請求項40】
生物学的試料が血清または血漿試料を含む、請求項39記載の方法。
【請求項41】
生物学的試料がサイズ分画された生物学的試料を含み、サイズ分画された生物学的試料が75 kDaの分子を含みかつ150 kDaまたはそれより大きな分子を含まない、請求項38~40のいずれか一項記載の方法。
【請求項42】
生物学的試料を単量体MPOに結合する抗体と接触させる工程が、ELISAアッセイを行うことを含む、請求項38~41のいずれか一項記載の方法。
【請求項43】
抗MPO抗体に対するMPOの結合を可能にする条件下で、生物学的試料または75 kDaの分子を含む画分と抗MPO抗体またはMPO結合分子を接触させる工程を含む、請求項38~42のいずれか一項記載の方法。
【請求項44】
抗MPO抗体または結合分子が固体支持体に連結される、請求項43記載の方法。
【請求項45】
未結合分子を除去するために固体支持体を洗浄する工程をさらに含む、請求項44記載の方法。
【請求項46】
生物学的試料または前記画分を捕捉抗体または抗原結合分子と接触させる工程を含むまたはさらに含む、請求項38~45のいずれか一項記載の方法。
【請求項47】
捕捉抗体または抗原結合分子が第2の抗MPO抗体またはMPO抗原結合断片を含む、請求項46記載の方法。
【請求項48】
捕捉抗体が検出可能な標識に連結される、請求項46または47記載の方法。
【請求項49】
検出可能な標識を定量的または定性的に評価する工程をさらに含む、請求項48記載の方法。
【請求項50】
生物学的試料が、子宮内膜症および/または卵巣癌の1つまたは複数の症状を有する対象由来である、請求項38~49のいずれか一項記載の方法。
【請求項51】
生物学的試料が、子宮内膜過剰増殖性障害または卵巣過剰増殖性障害と診断されたことがある対象由来である、請求項38~50のいずれか一項記載の方法。
【請求項52】
生物学的試料が、子宮内膜過剰増殖性障害もしくは卵巣過剰増殖性障害に関して処置されたことがある、子宮内膜過剰増殖性障害もしくは卵巣過剰増殖性障害に関して処置される予定である、または子宮内膜過剰増殖性障害もしくは卵巣過剰増殖性障害に関する処置を現在受けている対象由来である、請求項38~51のいずれか一項記載の方法。
【請求項53】
生物学的試料が女性対象由来である、請求項38~52のいずれか一項記載の方法。
【請求項54】
生物学的試料がホルモン療法中の対象由来である、請求項38~53のいずれか一項記載の方法。
【請求項55】
ホルモン療法が避妊またはホルモン置換療法を含む、請求項54記載の方法。
【請求項56】
前記女性が思春期、閉経周辺期、または閉経期の女性である、請求項53~55のいずれか一項記載の方法。
【請求項57】
生物学的試料において単量体MPOのレベルを定量する工程をさらに含む、請求項38~56のいずれか一項記載の方法。
【請求項58】
単量体MPOのレベルが標準化される、請求項57記載の方法。
【請求項59】
単量体MPOのレベルが対照と比較される、請求項57または58記載の方法。
【請求項60】
単量体MPOのレベルが前記対照より高いと決定される、請求項57~59のいずれか一項記載の方法。
【請求項61】
単量体MPOのレベルが前記対照より低いと決定される、請求項57~59のいずれか一項記載の方法。
【請求項62】
前記対照が、子宮内膜症を有する対象由来の生物学的試料における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含む、請求項60または61記載の方法。
【請求項63】
前記対照が、卵巣癌を有する対象由来の生物学的試料における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含む、請求項60または61記載の方法。
【請求項64】
前記対照が、子宮内膜過剰増殖性障害も卵巣過剰増殖性障害も有さない対象由来の生物学的試料における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含む、請求項60または61記載の方法。
【請求項65】
子宮内膜過剰増殖性障害または卵巣過剰増殖性障害を有する対象を処置するための方法であって、該対象由来の生物学的試料において単量体MPOのレベルが評価されたことがある対象に対して、子宮内膜過剰増殖性障害または卵巣過剰増殖性障害に関する処置を行う工程を含む、前記方法。
【請求項66】
生物学的試料が血清、血漿、または組織試料を含む、請求項65記載の方法。
【請求項67】
前記対象が女性である、請求項65または66記載の方法。
【請求項68】
前記対象がホルモン療法中である、請求項65~67のいずれか一項記載の方法。
【請求項69】
ホルモン療法が避妊またはホルモン置換療法を含む、請求項68記載の方法。
【請求項70】
前記女性が思春期、閉経周辺期、または閉経期の女性である、請求項67~69のいずれか一項記載の方法。
【請求項71】
前記対象由来の生物学的試料における単量体MPOのレベルが定量されたことがある、請求項65~70記載の方法。
【請求項72】
単量体MPOのレベルが標準化される、請求項71記載の方法。
【請求項73】
前記対象が、生物学的試料において、対照試料における単量体MPOのレベルよりも高い単量体MPOのレベルを有するまたは有すると決定されたことがある、請求項65~72のいずれか一項記載の方法。
【請求項74】
前記対象が、生物学的試料において、対照試料における単量体MPOのレベルよりも低い単量体MPOのレベルを有するまたは有すると決定されたことがある、請求項65~72のいずれか一項記載の方法。
【請求項75】
前記対象が、生物学的試料において、対照試料における単量体MPOのレベルと有意に相違しない単量体MPOのレベルを有するまたは有すると決定されたことがある、請求項65~72のいずれか一項記載の方法。
【請求項76】
前記対照が、子宮内膜症を有する対象における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含む、請求項65~75のいずれか一項記載の方法。
【請求項77】
前記対照が、卵巣癌を有する対象における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含む、請求項65~75のいずれか一項記載の方法。
【請求項78】
前記対照が、子宮内膜過剰増殖性障害も卵巣過剰増殖性障害も有さない対象における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含む、請求項65~75のいずれか一項記載の方法。
【請求項79】
前記対象が鉄レベルについて評価されたことがある、請求項65~78のいずれか一項記載の方法。
【請求項80】
前記対象が、該対象由来の生物学的試料において血清鉄検査、遊離鉄検査、総鉄結合能(TIBC)検査、またはフェリチン検査の1つまたは複数を有することにより鉄レベルについて評価されたことがある、請求項79記載の方法。
【請求項81】
前記対象が異常な鉄レベルを有すると決定されたことがある、請求項79または80記載の方法。
【請求項82】
前記対象が正常よりも低いTIBCまたは正常よりも高いフェリチンを有すると決定されたことがある、請求項81記載の方法。
【請求項83】
前記対象由来の生物学的試料において遊離鉄の量が正常よりも高いと決定された、請求項81記載の方法。
【請求項84】
過剰増殖性障害が子宮内膜症を含む、請求項65~83のいずれか一項記載の方法。
【請求項85】
前記処置がホルモン療法または手術を含む、請求項84記載の方法。
【請求項86】
過剰増殖性障害が卵巣癌を含む、請求項65~82のいずれか一項記載の方法。
【請求項87】
前記癌がステージI、II、III、またはIV卵巣癌を含む、請求項86記載の方法。
【請求項88】
前記処置が手術、放射線照射、化学療法、ホルモン療法、または標的化療法を含む、請求項86または87記載の方法。
【請求項89】
子宮内膜過剰増殖性障害または卵巣過剰増殖性障害を有する対象を診断または予後予測する方法であって、
(a)該対象由来の生物学的試料において単量体MPOを評価する工程;
(b)測定したレベルを対照レベルまたは対照試料と比較する工程;および
(c)測定された単量体MPOのレベルに基づき子宮内膜過剰増殖性障害または卵巣過剰増殖性障害を有する該対象を診断または予後予測する工程
を含む、前記方法。
【請求項90】
生物学的試料が血清、血漿、または組織試料を含む、請求項89記載の方法。
【請求項91】
生物学的試料が血清または血漿試料を含む、請求項90記載の方法。
【請求項92】
前記対象由来の生物学的試料において鉄レベルを評価する工程をさらに含む、請求項89~91のいずれか一項記載の方法。
【請求項93】
前記対象由来の生物学的試料において鉄レベルを検出する工程が、血清鉄検査、遊離鉄検査、総鉄結合能(TIBC)検査、またはフェリチン検査の1つまたは複数を使用することを含む、請求項92記載の方法。
【請求項94】
前記方法が、生物学的試料のサイズ分画を含み、サイズ分画が、75 kDaの分子を含みかつ150 kDaまたはそれより大きな分子を含まない画分または生物学的試料を提供する、請求項89~91のいずれか一項記載の方法。
【請求項95】
75 kDaの分子を含む画分において単量体MPOを評価する工程を含む、請求項94記載の方法。
【請求項96】
単量体MPOを評価する工程が、単量体MPOに特異的に結合する1つまたは複数の抗体を使用することを含む、請求項89~95のいずれか一項記載の方法。
【請求項97】
単量体MPOを評価する工程がELISAアッセイを含む、請求項89~96のいずれか一項記載の方法。
【請求項98】
単量体MPOを評価する工程が、抗MPO抗体に対するMPOの結合を可能にする条件下で、生物学的試料または75 kDaの分子を含む画分と抗MPO抗体またはMPO結合分子を接触させることを含む、請求項89~97のいずれか一項記載の方法。
【請求項99】
抗MPO抗体または結合分子が固体支持体に連結される、請求項98記載の方法。
【請求項100】
未結合分子を除去するために固体支持体を洗浄する工程をさらに含む、請求項99記載の方法。
【請求項101】
生物学的試料または前記画分を捕捉抗体または抗原結合分子と接触させる工程を含むまたはさらに含む、請求項89~100のいずれか一項記載の方法。
【請求項102】
単量体MPOを評価する工程が、生物学的試料において単量体MPOのレベルを定量することを含む、請求項89~101のいずれか一項記載の方法。
【請求項103】
単量体MPOが、
(i)前記対象由来の生物学的試料において検出されない場合;
(ii)子宮内膜過剰増殖性障害も卵巣過剰増殖性障害も有さない対象由来の生物学的試料における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含む対照と有意に相違しない場合;または
(iii)子宮内膜過剰増殖性障害もしくは卵巣過剰増殖性障害を有する対象由来の生物学的試料における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含む対照より少ない場合に、
該対象が子宮内膜過剰増殖性障害も卵巣過剰増殖性障害も有さないと診断される、請求項102記載の方法。
【請求項104】
(A)単量体MPOが、
(i)前記対象由来の生物学的試料において検出されない場合;
(ii)子宮内膜過剰増殖性障害も卵巣過剰増殖性障害も有さない対象由来の生物学的試料における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含む対照と有意に相違しない場合;または
(iii)子宮内膜過剰増殖性障害もしくは卵巣過剰増殖性障害を有する対象由来の生物学的試料における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含む対照より少ない場合;かつ
(B)鉄レベルが正常である場合に、
該対象が子宮内膜過剰増殖性障害も卵巣過剰増殖性障害も有さないと診断される、請求項102記載の方法。
【請求項105】
単量体MPOが、
(i)子宮内膜過剰増殖性障害も卵巣過剰増殖性障害も有さない対象由来の生物学的試料における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含む対照よりも多い場合;
(ii)子宮内膜症を有する対象由来の生物学的試料における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含む対照と有意に相違しない場合;または
(iii)卵巣癌を有する対象由来の生物学的試料における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含む対照より少ない場合に、
該対象が子宮内膜症を有すると診断される、請求項102記載の方法。
【請求項106】
(A)単量体MPOが、
(i)子宮内膜過剰増殖性障害も卵巣過剰増殖性障害も有さない対象由来の生物学的試料における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含む対照よりも多い場合;
(ii)子宮内膜症を有する対象由来の生物学的試料における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含む対照と有意に相違しない場合;または
(iii)卵巣癌を有する対象由来の生物学的試料における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含む対照より少ない場合;かつ
(B)鉄レベルが異常である場合に、
該対象が子宮内膜症を有すると診断される、請求項102記載の方法。
【請求項107】
前記対象由来の生物学的試料においてTIBCが正常よりも低いかつ/またはフェリチンが正常よりも多い、請求項106記載の方法。
【請求項108】
前記対象由来の生物学的試料において遊離鉄の量が正常よりも多い、請求項106または107記載の方法。
【請求項109】
単量体MPOが、
(i)子宮内膜過剰増殖性障害も卵巣過剰増殖性障害も有さない対象由来または子宮内膜症を有する対象由来の生物学的試料における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含む対照よりも多い場合;
(ii)卵巣癌を有する対象由来の生物学的試料における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含む対照と有意に相違しない場合に、
該対象が卵巣癌を有すると診断される、請求項102記載の方法。
【請求項110】
(A)単量体MPOが、
(i)子宮内膜過剰増殖性障害も卵巣過剰増殖性障害も有さない対象由来または子宮内膜症を有する対象由来の生物学的試料における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含む対照よりも多い場合;または
(ii)卵巣癌を有する対象由来の生物学的試料における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含む対照と有意に相違しない場合;かつ
(B)鉄レベルが異常である場合に、
該対象が卵巣癌を有すると診断される、請求項102記載の方法。
【請求項111】
前記対象由来の生物学的試料においてTIBCが正常よりも低いかつ/またはフェリチンが正常よりも多い、請求項110記載の方法。
【請求項112】
前記対象由来の生物学的試料において遊離鉄の量が正常よりも多い、請求項110または111記載の方法。
【請求項113】
前記対象が、測定されたMPOのレベルに基づきステージI、II、III、またはIV卵巣癌を有すると診断される、請求項109~112のいずれか一項記載の方法。
【請求項114】
単量体MPOを評価する工程が、生物学的試料において単量体MPOのレベルを定量的に検出することを含む、請求項113記載の方法。
【請求項115】
前記対象由来の生物学的試料において単量体MPOが検出されない場合に、該対象が子宮内膜過剰増殖性障害も卵巣過剰増殖性障害も有さないと診断される、請求項114記載の方法。
【請求項116】
前記対象由来の生物学的試料において単量体MPOが検出される場合に、該対象が子宮内膜過剰増殖性障害または卵巣過剰増殖性障害を有すると診断される、請求項113記載の方法。
【請求項117】
前記対象が子宮内膜過剰増殖性障害または卵巣過剰増殖性障害の1つまたは複数の症状を有する対象である、請求項89~116のいずれか一項記載の方法。
【請求項118】
前記対象が女性である、請求項89~117のいずれか一項記載の方法。
【請求項119】
前記対象がホルモン療法中である、請求項89~118のいずれか一項記載の方法。
【請求項120】
ホルモン療法が避妊またはホルモン置換療法を含む、請求項119記載の方法。
【請求項121】
前記女性が思春期、閉経周辺期、または閉経期の女性である、請求項118~120のいずれか一項記載の方法。
【請求項122】
単量体MPOのレベルが標準化される、請求項102~121のいずれか一項記載の方法。
【請求項123】
前記対象を子宮内膜症に関して処置する工程をさらに含む、請求項105~107または116~122のいずれか一項記載の方法。
【請求項124】
前記処置がホルモン療法または手術を含む、請求項123記載の方法。
【請求項125】
前記対象を卵巣癌に関して処置する工程をさらに含む、請求項109~122のいずれか一項記載の方法。
【請求項126】
前記処置が手術、放射線照射、化学療法、ホルモン療法、または標的化療法を含む、請求項125記載の方法。
【請求項127】
治療剤を用いて子宮内膜過剰増殖性障害または卵巣過剰増殖性障害に関して処置されている対象をモニタリングするための方法であって、
(a)該対象由来の生物学的試料において単量体MPOを評価する工程;
(b)測定されたレベルを対照レベルまたは対照試料と比較する工程;および
(c)測定された単量体MPOのレベルに基づき治療剤の有効性を決定する工程
を含む、前記方法。
【請求項128】
生物学的試料が血清、血漿、または組織試料を含む、請求項127記載の方法。
【請求項129】
生物学的試料が血清または血漿試料を含む、請求項128記載の方法。
【請求項130】
前記対象由来の生物学的試料において鉄レベルを評価する工程をさらに含む、請求項127~129のいずれか一項記載の方法。
【請求項131】
前記対象由来の生物学的試料において鉄レベルを検出する工程が、血清鉄検査、遊離鉄検査、総鉄結合能(TIBC)検査、またはフェリチン検査の1つまたは複数を使用することを含む、請求項130記載の方法。
【請求項132】
前記方法が、生物学的試料のサイズ分画を含み、サイズ分画が、75 kDaの分子を含みかつ150 kDaまたはそれより大きな分子を含まない画分または生物学的試料を提供する、請求項127~129のいずれか一項記載の方法。
【請求項133】
75 kDaの分子を含む画分において単量体MPOを評価する工程を含む、請求項132記載の方法。
【請求項134】
単量体MPOを評価する工程が、単量体MPOに特異的に結合する1つまたは複数の抗体を使用することを含む、請求項127~133のいずれか一項記載の方法。
【請求項135】
単量体MPOを評価する工程がELISAアッセイを含む、請求項127~134のいずれか一項記載の方法。
【請求項136】
単量体MPOを評価する工程が、抗MPO抗体に対するMPOの結合を可能にする条件下で、生物学的試料または75 kDaの分子を含む画分と抗MPO抗体またはMPO結合分子を接触させることを含む、請求項127~135のいずれか一項記載の方法。
【請求項137】
抗MPO抗体または結合分子が固体支持体に連結される、請求項136記載の方法。
【請求項138】
未結合分子を除去するために固体支持体を洗浄する工程をさらに含む、請求項137記載の方法。
【請求項139】
生物学的試料または前記画分を捕捉抗体または抗原結合分子と接触させる工程を含むまたはさらに含む、請求項127~138のいずれか一項記載の方法。
【請求項140】
単量体MPOを評価する工程が、生物学的試料において単量体MPOのレベルを定量することを含む、請求項127~139のいずれか一項記載の方法。
【請求項141】
単量体MPOが、
(i)前記対象由来の生物学的試料において検出されない場合;
(ii)子宮内膜過剰増殖性障害も卵巣過剰増殖性障害も有さない対象由来の生物学的試料における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含む対照と有意に相違しない場合;
(iii)子宮内膜過剰増殖性障害もしくは卵巣過剰増殖性障害を有する対象由来の生物学的試料における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含む対照より少ない場合;または
(iv)治療剤を用いた前記対象の処置以前の単量体MPOのレベルと比較して減少している場合に、
治療剤が有効であると決定される、請求項140記載の方法。
【請求項142】
単量体MPOが、
(i)前記対象由来の生物学的試料において検出される場合;
(ii)子宮内膜過剰増殖性障害も卵巣過剰増殖性障害も有さない対象由来の生物学的試料における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含む対照と比較して増加している場合;
(iii)子宮内膜過剰増殖性障害もしくは卵巣過剰増殖性障害を有する対象由来の生物学的試料における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含む対照と有意に相違しないもしくはそれより多い場合;または
(iv)治療剤を用いた前記対象の処置以前の単量体MPOのレベルと比較して有意に相違しないもしくは増加している場合に、
治療剤が有効でないと決定される、請求項140記載の方法。
【請求項143】
単量体MPOを評価する工程が、生物学的試料において単量体MPOのレベルを定量的に検出することを含む、請求項127~142のいずれか一項記載の方法。
【請求項144】
前記対象が子宮内膜過剰増殖性障害または卵巣過剰増殖性障害の1つまたは複数の症状を有する対象である、請求項127~143のいずれか一項記載の方法。
【請求項145】
前記対象が子宮内膜過剰増殖性障害または卵巣過剰増殖性障害と診断されたことがある、請求項127~144のいずれか一項記載の方法。
【請求項146】
処置前に入手した前記対象由来の生物学的試料において単量体MPOのレベルを評価する工程をさらに含む、請求項127~145のいずれか一項記載の方法。
【請求項147】
1つまたは複数の処置後に入手した前記対象由来の生物学的試料において単量体MPOのレベルを評価する工程をさらに含む、請求項127~146のいずれか一項記載の方法。
【請求項148】
前記対象が女性である、請求項127~147のいずれか一項記載の方法。
【請求項149】
前記対象がホルモン療法中である、請求項127~148のいずれか一項記載の方法。
【請求項150】
ホルモン療法が避妊またはホルモン置換療法を含む、請求項149記載の方法。
【請求項151】
前記女性が思春期、閉経周辺期、または閉経期の女性である、請求項148~150のいずれか一項記載の方法。
【請求項152】
単量体MPOのレベルが標準化される、請求項140~151のいずれか一項記載の方法。
【請求項153】
前記処置がホルモン療法、手術、放射線照射、化学療法、または標的化療法を含む、請求項127~152のいずれか一項記載の方法。
【請求項154】
1つまたは複数の抗MPO抗体またはそのMPO結合断片と、試料を分画するサイズ排除カラムとを含むキットであって、分画が75 kDaのサイズを有するポリペプチドと150 kDaのサイズを有するポリペプチドを別の画分に分離する、前記キット。
【請求項155】
1つまたは複数の陰性または陽性対照試料をさらに含む、請求項154記載のキット。
【請求項156】
MPOを検出するためのELISAを含む、請求項154または155記載のキット。
【請求項157】
抗MPO抗体または結合断片が固体支持体に機能的に連結される、請求項154~156のいずれか一項記載のキット。
【請求項158】
少なくとも2つの抗MPO抗体、少なくとも2つの抗MPO抗体結合断片、または1つの抗MPO抗体および1つの抗MPO抗体結合断片を含む、請求項154~157のいずれか一項記載のキット。
【請求項159】
1つまたは複数の抗MPO抗体またはMPO抗体結合断片が検出可能な標識に連結される、請求項154~158のいずれか一項記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年4月19日に出願された米国仮特許出願第63/176,852号および2021年11月9日に出願された米国仮特許出願第63/277,438号の優先権の恩典を主張し、それらの全体を参照により本明細書に組み入れる。
【0002】
I. 発明の分野
本発明は概して、分子生物学および治療的診断の分野に関する。より具体的に、本発明は過剰増殖性障害の予後予測、診断、および処置に関連する方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
II. 背景
過剰増殖性障害、例えば卵巣癌および子宮内膜症は、特に検出および診断が困難である。子宮内膜症は、閉経前女性の6~11%に影響し、痛み、不妊、生活の質の低下および2016年における700億ドル(GlobalData 2018)という膨大な年間ヘルスケア関連費の要因となっている。子宮内膜症の診断有病率は他の慢性疾患よりも低いが、子宮内膜症の経済的負荷は他の慢性疾患、例えば糖尿病、クローン病、および関節リウマチ(RA)に匹敵する。病因は十分に理解されていないが、子宮内膜症は、ホルモン応答性の子宮内膜の子宮外移転により特徴づけられる。卵巣癌の場合、この癌はしばしば、それが骨盤および腹部内に拡散するまで検出されない。
【0004】
現時点で、腹腔鏡手術が、子宮内膜症の決定的な診断を提供する唯一の手段であり、大部分の患者は、症状を緩和するのに効果的な処置様式を見出すことに苦労している。多くの研究が子宮内膜症を診断するためならびに予後および適切な処置を予測するための非侵襲的バイオマーカーを調査しているが、いずれも臨床利用に移行させるのに十分な性能を示していない。子宮内膜症はまた、矯正不可能なリスク因子、例えば家族歴、早い初潮年齢、および少ない経産数(parity)に関連する。高リスク女性における子宮内膜症に関連する症状の早期同定は、疾患の進行にともなう費用を抑制することができ、かつ後期段階の子宮内膜症症例の数を減らすことができる。しかし、子宮内膜症の早期診断は、症状がしばしば非特異的であり、診察ではしばしば限定的な臨床的兆候しかみられず、臨床検査が役に立たず、画像化か限定的な利益しかもたらさないため、困難であり得る。そのため、決定的な診断を行うために腹腔鏡検査が必要とされる。これらの理由から、症状の発症から子宮内膜症の診断までに平均して7~12年の遅れが生じ、これが患者の生活の質に大きく影響する。
【0005】
鍵となる取り組みは、早期段階での正確な診断である。したがって、これらの女性を、彼女らの過剰増殖性障害の適切かつ早期の診断を通じて救済し得る早期非侵襲診断(RNID)が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
要旨
本開示は、侵襲的な腹腔鏡手術を必要としない高感度診断法およびキットを提供することにより上記要望を満たす。子宮内膜症患者の細胞、組織、および血清において単量体ミエロペルオキシダーゼ(MPO)が見出されることが見出された。この新規のバイオマーカーは、卵巣過剰増殖性障害および子宮内膜過剰増殖性障害を検出するために使用することができる。したがって、本開示の局面は、対象由来の生物学的試料において単量体ミエロペルオキシダーゼ(MPO)を検出する工程を含む対象を評価するための方法に関する。対象由来の生物学的試料において単量体MPOのレベルが評価されたことがある対象に対して、子宮内膜過剰増殖性障害または卵巣過剰増殖性障害に関する処置を行う工程を含む、子宮内膜過剰増殖性障害または卵巣過剰増殖性障害を有する対象を処置するための方法も開示される。
【0007】
本開示のさらなる局面は、子宮内膜過剰増殖性障害または卵巣過剰増殖性障害を有する対象を診断する方法であって、(a)対象由来の生物学的試料において単量体MPOを評価する工程;(b)測定されたレベルを対照レベルまたは対照試料と比較する工程;および(c)測定された単量体MPOのレベルに基づき子宮内膜過剰増殖性障害または卵巣過剰増殖性障害を有する対象を診断する工程を含む方法に関する。さらなる局面は、治療剤を用いて子宮内膜過剰増殖性障害または卵巣過剰増殖性障害に関して処置されている対象をモニタリングするための方法であって、(a)対象由来の生物学的試料において単量体MPOを評価する工程;(b)測定されたレベルを対照レベルまたは対照試料と比較する工程;および(c)測定された単量体MPOのレベルに基づき治療剤の有効性を決定する工程を含む方法に関する。さらなる局面は、生物学的試料を単量体MPOに結合する抗体と接触させる工程を含む、複合体を生成するための方法に関する。
【0008】
さらなる局面は、1つまたは複数の抗MPO抗体またはそのMPO結合断片と、試料を分画するサイズ排除カラムとを含むキットであって、分画が75 kDaのサイズを有するポリペプチドと150 kDaのサイズを有するポリペプチドを別の画分に分離するキットに関する。
【0009】
本開示の方法は、子宮内膜過剰増殖性障害もしくは卵巣過剰増殖性障害を有する、子宮内膜過剰増殖性障害もしくは卵巣過剰増殖性障害を有する疑いがある、かつ/または子宮内膜過剰増殖性障害もしくは卵巣過剰増殖性障害の症状を有する対象を予後予測、診断、またはモニタリングすることを含む。対象は、評価された単量体MPOのレベルに基づきステージI、II、III、またはIV癌を有すると診断され得る。
【0010】
過剰増殖性障害という用語は、組織の異常な成長または過剰増殖により特徴づけられる障害を表す。過剰増殖性障害には、過形成、異形成、および前癌病巣が含まれ得る。過剰増殖はさらに、腫瘍により特徴づけられ得る。いくつかの局面において、過剰増殖は良性であり、これはそれが非癌性であることを意味する。いくつかの局面において、過剰増殖は悪性であり、これは癌性の成長を表す。
【0011】
生物学的試料は血清、血漿、または組織試料を含み得る。いくつかの局面において、生物学的試料は血液試料またはその画分である。いくつかの局面において、生物学的試料は本明細書に記載される生物学的試料である。特定の局面において、生物学的試料は血清試料である。いくつかの局面において、生物学的試料は血漿試料である。
【0012】
本開示の局面はまた、対象由来の生物学的試料において鉄レベルを評価することに関する。鉄レベルの評価は、対象に関する診断または予後を提供するために単量体MPOの評価と組み合わされ得る。いくつかの局面において、この方法は、対象由来の生物学的試料において鉄レベルを検出する工程をさらに含む。いくつかの局面において、対象由来の生物学的試料において鉄レベルを検出する工程は、血清鉄検査、遊離鉄検査、総鉄結合能(TIBC)検査、またはフェリチン検査の1つまたは複数を含む。本開示の方法の局面において、対象は、鉄レベルに関して評価されたことがある対象である。いくつかの局面において、対象は、対象由来の生物学的試料において血清鉄検査、遊離鉄検査、総鉄結合能(TIBC)検査、またはフェリチン検査の1つまたは複数を行うことにより鉄レベルに関して評価されたことがある。いくつかの局面において、対象は、異常な鉄レベルを有すると決定されたことがある。いくつかの局面において、対象は、正常より低い上昇したTIBCと決定されたことがある。いくつかの局面において、対象は、上昇したフェリチンを有すると決定されたことがある。いくつかの局面において、対象は、上昇した血清鉄を有すると決定されたことがある。いくつかの局面において、対象は、正常な鉄レベルを有すると決定されたことがある。TIBCの正常範囲は250~450 mcg/dLである。いくつかの局面において、対象は、250 mcg/dL未満のTIBCを有すると決定される。フェリチンの正常範囲は、成人男性の場合20~250 ng/mL、18~39歳の成人女性の場合10~120 ng/mL、40歳以上の女性の場合12~263 ng/mLである。いくつかの局面において、フェリチンは120 ng/mL、250 ng/mL、または263 ng/mLより多いと決定される。いくつかの局面において、対象は、異常なトランスフェリン飽和度を有すると決定される。いくつかの局面において、対象は、上昇したトランスフェリン飽和度を有すると決定される。トランスフェリン飽和度の正常範囲は20~50%である。いくつかの局面において、対象は50%を超えるトランスフェリン飽和度を有すると決定されるまたは生物学的試料は50%を超えるトランスフェリン飽和度を有する。いくつかの局面において、対象は、上昇した血清鉄レベルを有すると決定されたことがある、上昇した血清鉄レベルを有する、または対象由来の生物学的試料は上昇した血清鉄レベルを有する。血清鉄の正常範囲は、60~170マイクログラム・パー・デシリットル(mcg/dL)、または10.74~30.43マイクロモル・パー・リットル(マイクロモル/L)である。いくつかの局面において、対象は170 mcg/dLより高い血清鉄レベルを有すると決定されたことがある、170 mcg/dLより高い血清鉄レベルを有する、または生物学的試料は170 mcg/dLより高い血清鉄レベルを有する。
【0013】
いくつかの局面において、生物学的試料におけるTIBCは、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、もしくは550 mcg/dLより高い、それらより低い、少なくともそれらである、もしくは最大でそれらである、もしくはその間の任意の生じ得る範囲である、対象におけるTIBCはそれらであると決定されたことがある、または対象由来の生物学的試料におけるTIBCはそれらであると決定されたものである。いくつかの局面において、生物学的試料におけるフェリチンは、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、もしくは350ng/mLより多い、それらより少ない、少なくともそれらである、もしくは最大でそれらである、もしくはその間の任意の生じ得る範囲である、対象におけるフェリチンはそれらであると決定されたことがある、または対象由来の生物学的試料におけるフェリチンはそれらであると決定されたものである。いくつかの局面において、生物学的試料におけるトランスフェリン飽和度は、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、もしくは95%より高い、それらより低い、少なくともそれらである、もしくは最大でそれらである(もしくはその間の任意の生じ得る範囲である)、対象におけるトランスフェリン飽和度はそれらであると決定されたことがある、または対象由来の生物学的試料におけるトランスフェリン飽和度はそれらであると決定されたものである。いくつかの局面において、生物学的試料におけるトランスフェリン飽和度は、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、または270マイクログラム・パー・デシリットルより高い、それらより低い、少なくともそれらである、もしくは最大でそれらである、もしくはその間の任意の生じ得る範囲である、対象におけるトランスフェリン飽和度はそれらであると決定されたことがある、または対象由来の生物学的試料におけるトランスフェリン飽和度はそれらであると決定されたものである。いくつかの局面において、生物学的試料における遊離鉄は、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、もしくは550 mcg/dLより多い、それらより少ない、少なくともそれらである、もしくは最大でそれらである、もしくはその間の任意の生じ得る範囲である、対象における遊離鉄はそれらであると決定されたことがある、または対象由来の生物学的試料における遊離鉄はそれらであると決定されたものである。いくつかの局面において、対象由来の生物学的試料における遊離鉄の正常より高いレベルは、100 mcg/dLより高い、110 mcg/dLより高い、120 mcg/dLより高い、130 mcg/dLより高い、140 mcg/dLより高い、150 mcg/dLより高い、またはその間の任意の生じ得る範囲である。
【0014】
本開示の方法は、生物学的試料のサイズ分画を含み得るまたはさらに含み得る。いくつかの局面において、生物学的試料はサイズ分画された試料である。本開示の方法におけるサイズ分画は、75 kDaの分子を含みかつ150 kDaまたはそれより大きな分子を含まない生物学的試料の画分を提供する様式で行われ得る。いくつかの局面において、生物学的試料は、75 kDaの分子を含みかつ150 kDaまたはそれより大きな分子を含まないサイズ分画された試料である。サイズ分画は、試料を10~100 kDa、30~100 kDa、40~100 kDa、50~100 kDa、60~90 kDa、または60~85 kDaのサイズ範囲である分子を含む画分に分離するものであり得る。いくつかの局面において、サイズ分画は、約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、または70 kDaから約80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、または145 kDaの範囲(およびその間のすべての生じ得る範囲)の画分を提供し得る。いくつかの局面において、生物学的試料の画分の平均サイズは、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、5、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、もしくは190 kDa(およびその間のすべての生じ得る範囲)のサイズ、少なくともそれらのサイズ、または最大でそれらのサイズである。いくつかの局面において、画分は、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、5、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、もしくは190 kDa(およびその間で生じ得る任意の範囲)である、少なくともそれらである、または最大でそれらである分子を含まない。いくつかの局面において、この方法は、75 kDaの分子を含む画分において単量体MPOを検出する工程を含む。
【0015】
本開示の局面において、単量体MPOを検出する工程は、単量体MPOの免疫学的検出を含む。いくつかの局面において、単量体MPOを検出するまたは評価する工程は、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)アッセイを含む。Elisaアッセイは、測定されるタンパク質に対する抗体を用いて液体試料中のリガンド(一般にタンパク質)の存在を検出するために固相型の酵素免疫アッセイ(EIA)を使用する。いくつかの局面において、生物学的試料またはその画分由来の抗原が表面に付着される。したがって、抗体、例えば抗MPO抗体がその表面上に適用され得、それによってそれは生物学的試料由来の任意のMPOに結合することができる。この抗体は、検出分子、例えば酵素に連結され得、その後に未結合の抗体が除去され得る。最終工程において、検出分子が定性的または定量的に検出され得る。検出分子が酵素である局面において、検出可能なシグナルを生じる反応、最も一般的には定量的または定性的に測定され得る色変化をもたらすその酵素の基質が添加され得る。
【0016】
いくつかの局面において、ELISAはサンドイッチELISAとしてさらに特徴づけられる。抗MPO抗体は固体支持体、例えばマイクロタイタープレートまたはポリスチレンマイクロタイタープレート上に固定され得る。この抗MPO抗体と生物学的試料または画分中のMPOの間の結合を実現するよう、生物学的試料または画分がこの固体支持体に添加され得る。未結合の分子は固体支持体から洗い流され得る。MPO抗原が固定された後、この抗原と複合体を形成する検出抗体が添加され得る。検出抗体は、検出分子、例えば酵素に共有結合により連結され得る、または検出分子、例えば酵素に連結された二次抗体によりそれ自体が検出され得る。各工程の間に、プレートは典型的に、非特異的に結合した任意のタンパク質または抗体を除去するために穏やかな界面活性剤溶液で洗浄される。最終洗浄工程の後、プレートは、検出分子を定性的または定量的に検出することにより現像される。酵素検出の場合、最終工程は、定性的または定量的に検出され得る視覚的シグナルを生じるよう酵素基質を添加することを含み得る。
【0017】
ELISAは、厳密に免疫アッセイであるものに代えて他の形態のリガンド結合アッセイを用いて行われ得る。ELISAは、特異的に結合する検出試薬と共に固相上に固定され得る任意のライゲート試薬を含むものであり得、適切に定量され得るシグナルを生成するよう検出可能な分子を使用し得る。洗浄の間、リガンドとその特異的結合相手のみが、固相への抗原・抗体相互作用により特異的に結合または「免疫吸着」した状態を維持し、非特異的または未結合の成分は洗い流される。
【0018】
「検出可能な標識、分子、もしくは部分」または「検出分子、標識、もしくは部分」は、言い換え可能に使用され、その使用により抗体が検出される、かつ/または所望の場合はさらに定量化される、それらの特有の機能的特性、および/または化学的特徴により検出され得る化合物および/または要素を表す。検出可能な標識の例には、放射性同位体、蛍光体、半導体ナノ結晶、化学発光体、発色団、酵素、酵素基質、酵素補因子、酵素阻害剤、色素、金属イオン、金属ゾル、リガンド(例えば、ビオチン、ストレプトアビジンまたはハプテン)等が含まれるがこれらに限定されない。標識の具体例は、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)、フルオレセイン、FITC、ローダミン、ダンシル、ウンベリフェロン、ジメチルアクリジニウムエステル(DMAE)、テキサスレッド、ルミノール、NADPHおよびα-またはβ-ガラクトシダーゼであるがこれらに限定されない。抗体コンジュゲートには、主としてインビトロでの使用が意図されているものが含まれ、ここで抗体は二次結合リガンドにかつ/または発色基質と接した際に有色生産物を生成する酵素に連結される。適切な酵素の例には、ウレアーゼ、アルカリホスファターゼ、(セイヨウワサビ)ハイドロジェンペルオキシダーゼ、またはグルコースオキシダーゼが含まれるがこれらに限定されない。好ましい二次結合リガンドは、ビオチンならびに/またはアビジンおよびストレプトアビジン化合物である。そのような標識の使用は、当業者に周知であり、例えば、各々参照により本明細書に組み入れられる米国特許第3,817,837号、同第3,850,752号、同第3,939,350号、同第3,996,345号、同第4,277,437号、同第4,275,149号および同第4,366,241号に記載されている。アジド基を含む分子もまた、低強度の紫外光により生成される反応性ニトレン中間体を通じてタンパク質との共有結合を形成するために使用され得る(Potter & Haley, 1983)。
【0019】
いくつかの局面において、単量体MPOを検出する工程は、抗MPO抗体に対するMPOの結合を可能にする条件下で、生物学的試料または75 kDaの分子を含む画分と抗MPO抗体またはMPO結合分子を接触させることを含む。いくつかの局面において、抗MPO抗体または結合分子は、固体支持体に連結される。適切な固相支持体または担体には、抗原または抗体に結合することができる任意の支持体が含まれる。周知の支持体または担体には、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および変性セルロース、ポリアクリルアミド、斑れい岩、および磁鉄鉱が含まれる。本開示の方法は、未結合の分子を除去するよう固体支持体を洗浄する工程を含み得るまたはさらに含み得る。いくつかの局面において、この方法は、生物学的試料または画分を捕捉抗体または抗原結合分子に接触させる工程を含むまたはさらに含む。いくつかの局面において、捕捉抗体または抗原結合分子は、第2の抗MPO抗体またはMPO抗原結合断片を含む。例示的な抗原結合断片には、例えば、単鎖可変断片(scFv)、F(ab')2、Fab'、Fab、Fv、またはrIgGが含まれる。いくつかの局面において、捕捉抗体は、検出可能な標識に連結される。この方法は、検出可能な標識を定量的または定性的に評価する工程を含み得るまたはさらに含み得る。
【0020】
本開示の局面において、対象または患者はヒト対象またはヒト患者であり得る。いくつかの局面において、対象または患者は非ヒト動物である。いくつかの局面において、非ヒト動物は、コウモリ、サル、ラクダ、ラット、マウス、ウサギ、ヤギ、ニワトリ、トリ、ネコ、イヌである。対象は、高リスク対象としてさらに定義され得る。いくつかの局面において、対象は、子宮内膜症および/または卵巣癌の1つまたは複数の症状を有する対象である。卵巣癌の症状には、腹部の膨満または膨張、食事をしたときにすぐに満腹感を感じること、体重減、骨盤領域の不快感、排便習慣の変化、例えば便秘、および頻繁に排尿を必要とすることが含まれる。対象はまた、子宮内膜過剰増殖性障害または卵巣過剰増殖性障害を有すると診断されたことがある対象であり得る。いくつかの局面において、対象は、子宮内膜過剰増殖性障害または卵巣過剰増殖性障害に関して処置されたことがある。いくつかの局面において、対象は、子宮内膜過剰増殖性障害または卵巣過剰増殖性障害に関して処置される予定である。いくつかの局面において、対象は、子宮内膜過剰増殖性障害または卵巣過剰増殖性障害に関する処置を現在受けている。対象は、ヒト対象としてさらに定義され得る。いくつかの局面において、対象は女性である。いくつかの局面において、対象はホルモン療法中である。ホルモン療法は避妊またはホルモン置換療法を含み得る。いくつかの局面において、女性対象は思春期、閉経周辺期、または閉経期の女性である。いくつかの局面において、対象は、子宮内膜過剰増殖性障害または卵巣過剰増殖性障害の1つまたは複数の症状を有する対象である。
【0021】
この方法は、生物学的試料において単量体MPOのレベルを定量する工程を含み得るまたはさらに含み得る。いくつかの局面において、生物学的試料または画分における単量体MPOのレベルは定量されたことがある。いくつかの局面において、単量体MPOのレベルは標準化される。いくつかの局面において、単量体MPOのレベルは対照と比較される。いくつかの局面において、単量体MPOのレベルは対照より高いと決定される。いくつかの局面において、単量体MPOのレベルは対照より低いと決定される。いくつかの局面において、対象は、生物学的試料において、対照試料における単量体MPOのレベルより高い単量体MPOのレベルを有するまたは有すると決定されたことがある。いくつかの局面において、生物学的試料において、対照試料における単量体MPOのレベルより低い単量体MPOのレベルを有するまたは有すると決定されたことがある。いくつかの局面において、対象は、生物学的試料において、対照試料における単量体MPOと有意に相違しない単量体MPOのレベルを有するまたは有すると決定されたことがある。例えば、単量体MPOのレベルは、対照値ともしくは対照値内で0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、もしくは5標準偏差相違する、少なくともその程度相違する、または最大でその程度相違すると決定され得る。いくつかの局面において、単量体MPOのレベルは、単量体MPOの対照レベルを1、2、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、98、99、もしくは100%(およびその間のすべての生じ得る範囲)上回るもしくは下回る、少なくともその程度上回るもしくは下回る、または最大でその程度上回るまたは下回ると決定され得る。対照は、子宮内膜症を有する対象由来の生物学的試料における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含み得る。いくつかの局面において、対照は、卵巣癌を有する対象由来の生物学的試料における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含み得る。いくつかの局面において、対照は、子宮内膜過剰増殖性障害または卵巣過剰増殖性障害を有する対象由来の生物学的試料における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含み得る。いくつかの局面において、この方法は対象を診断する工程をさらに含む。いくつかの局面において、対象は、決定された単量体MPOのレベルに基づき卵巣癌を有すると診断される。いくつかの局面において、決定された単量体MPOのレベルに基づき、対象はステージI、II、III、もしくはIV卵巣癌を有すると診断されるまたは癌はそれらの卵巣癌を含む。本開示の方法はまた、対象を卵巣癌に関して処置する工程を含み得るまたはさらに含み得る。いくつかの局面において、対象は、決定されたMPOのレベルに基づき子宮内膜症を有すると診断される。本開示の方法は、対象を子宮内膜症に関して処置する工程を含み得るまたはさらに含み得る。
【0022】
いくつかの局面において、単量体MPOが、(i)対象由来の生物学的試料において検出されない場合;(ii)子宮内膜過剰増殖性障害も卵巣過剰増殖性障害も有さない対象由来の生物学的試料における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含む対照と有意に相違しない場合;(iii)子宮内膜過剰増殖性障害もしくは卵巣過剰増殖性障害を有する対象由来の生物学的試料における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含む対照より少ない場合;または(iv)治療剤を用いた対象の処置以前の単量体MPOのレベルと比較して減少している場合に、治療剤は有効であると決定される。いくつかの局面において、単量体MPOが、(i)対象由来の生物学的試料において検出される場合;(ii)子宮内膜過剰増殖性障害も卵巣過剰増殖性障害も有さない対象由来の生物学的試料における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含む対照と比較して増加している場合;(iii)子宮内膜過剰増殖性障害もしくは卵巣過剰増殖性障害を有する対象由来の生物学的試料における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含む対照と有意に相違しないもしくはそれより多い場合;または(iv)治療剤を用いた対象の処置以前の単量体MPOのレベルと比較して有意に相違しないもしくは増加している場合に、治療剤は有効でないと決定される。
【0023】
いくつかの局面において、この方法は、処置前に入手した対象由来の生物学的試料において単量体MPOのレベルを評価する工程をさらに含む。いくつかの局面において、この方法は、1つまたは複数の処置後に入手した対象由来の生物学的試料において単量体MPOのレベルを評価する工程をさらに含む。例えば、この方法は、特定の処置の1用量の特定の処置後、2用量の特定の処置後、3用量の特定の処置後、4用量の特定の処置後、5用量の特定の処置後、および/または6用量の特定の処置後に単量体MPOのレベルを評価する工程を含み得るまたはさらに含み得る。処置の有効性は、評価された単量体MPOのレベルに基づき決定され得る。
【0024】
いくつかの局面において、単量体MPOのレベルは、対象由来の生物学的試料において、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、325、350、375、400、425、450、475、もしくは500 ng/ml、mcg/ml、mg/ml、(もしくはその間の任意の生じ得る範囲)であると決定される、少なくともそれらであると決定される、または最大でそれらであると決定される。いくつかの局面において、対象は、単量体MPOのレベルが、対象由来の生物学的試料において、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、325、350、375、400、425、450、475、もしくは500 ng/ml、mcg/ml、mg/ml、(もしくはその間の任意の生じ得る範囲)であると決定される、少なくともそれらであると決定される、または最大でそれらであると決定される場合に、ステージI癌を有すると診断される。いくつかの局面において、対象は、単量体MPOのレベルが、対象由来の生物学的試料において、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、325、350、375、400、425、450、475、もしくは500 ng/ml、mcg/ml、mg/ml、(もしくはその間の任意の生じ得る範囲)であると決定される、少なくともそれらであると決定される、または最大でそれらであると決定される場合に、ステージII癌を有すると診断される。いくつかの局面において、対象は、単量体MPOのレベルが、対象由来の生物学的試料において、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、325、350、375、400、425、450、475、もしくは500 ng/ml、mcg/ml、mg/ml、(もしくはその間の任意の生じ得る範囲)であると決定される、少なくともそれらであると決定される、または最大でそれらであると決定される場合に、ステージIII癌を有すると診断される。いくつかの局面において、対象は、単量体MPOのレベルが、対象由来の生物学的試料において、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、325、350、375、400、425、450、475、もしくは500 ng/ml、mcg/ml、mg/ml、(もしくはその間の任意の生じ得る範囲)であると決定される、少なくともそれらであると決定される、または最大でそれらであると決定される場合に、ステージIV癌を有すると診断される。本開示の局面において、後期ステージ癌はステージIVおよび/またはステージIIIを含む。本開示の局面において、早期ステージ癌は、ステージIおよび/またはステージIIを含む。
【0025】
対照レベルは、子宮内膜症を有する対象における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含み得る。いくつかの局面において、対照は、卵巣癌を有する対象における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含む。いくつかの局面において、対照は、子宮内膜過剰増殖性障害も卵巣過剰増殖性障害も有さない対象における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含む。いくつかの局面において、過剰増殖性障害は子宮内膜症を含む。いくつかの局面において、過剰増殖性障害は卵巣癌を含む。
【0026】
処置は、子宮内膜症もしくは卵巣癌に関して当技術分野で公知の処置または本明細書に記載される処置であり得る。いくつかの局面において、処置はホルモン療法または手術を含む。本開示の方法において有用な他の処置には、手術、放射線照射、化学療法、ホルモン療法、免疫療法、または標的化療法が含まれる。
【0027】
いくつかの局面において、単量体MPOが、(i)対象由来の生物学的試料において検出されない場合;(ii)子宮内膜過剰増殖性障害も卵巣過剰増殖性障害も有さない対象由来の生物学的試料における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含む対照と有意に相違しない場合;または(iii)子宮内膜過剰増殖性障害もしくは卵巣過剰増殖性障害を有する対象由来の生物学的試料における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含む対照より少ない場合、対象は子宮内膜過剰増殖性障害も卵巣過剰増殖性障害も有さないと診断される。いくつかの局面において、単量体MPOが、(i)子宮内膜過剰増殖性障害も卵巣過剰増殖性障害も有さない対象由来の生物学的試料における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含む対照よりも多い場合;(ii)子宮内膜症を有する対象由来の生物学的試料における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含む対照と有意に相違しない場合;または(iii)卵巣癌を有する対象由来の生物学的試料における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含む対照より少ない場合、対象は子宮内膜症を有すると診断される。いくつかの局面において、単量体MPOが、(i)子宮内膜過剰増殖性障害も卵巣過剰増殖性障害も有さない対象由来もしくは子宮内膜症を有する対象由来の生物学的試料における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含む対照よりも多い場合;(ii)卵巣癌を有する対象由来の生物学的試料における単量体MPOのレベルを表す単量体MPOのレベルを含む対照と有意に相違しない場合、対象は卵巣癌を有すると診断される。いくつかの局面において、単量体MPOを評価する工程は、生物学的試料において単量体MPOのレベルを定性的に検出することを含む。いくつかの局面において、対象は、単量体MPOが対象由来の生物学的試料において検出されない場合に、子宮内膜過剰増殖性障害も卵巣過剰増殖性障害も有さないと診断される。いくつかの局面において、対象は、単量体MPOが対象由来の生物学的試料において検出される場合に、子宮内膜過剰増殖性障害または卵巣過剰増殖性障害を有すると診断される。
【0028】
本開示のキットの局面は、1つまたは複数の陰性または陽性対照試料を含み得るまたはさらに含み得る。いくつかの局面において、キットは、MPOを検出するためのELISAを含む。いくつかの局面において、抗MPO抗体または結合断片は、固体支持体に機能的に連結される。いくつかの局面において、キットは、少なくとも2つの抗MPO抗体、少なくとも2つの抗MPO抗体結合断片、または1つの抗MPO抗体および1つの抗MPO抗体結合断片を含む。いくつかの局面において、1つまたは複数の抗MPO抗体またはMPO抗体結合断片は、検出可能な標識に機能的に連結される。
【0029】
本願を通じて、「約」という用語は、細胞および分子生物学の領域におけるその明白かつ一般的な意味にしたがい、ある値がその値を決定するために用いられるデバイスまたは方法に関する標準誤差を含むことを示すために用いられる。
【0030】
「含む」という用語と組み合わせて使用される場合の「a」または「an」という語の使用は、「1つ」を意味し得るが、それは「1つまたは複数」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは2つ以上」の意味も有する。
【0031】
本明細書で使用される場合、「または」および「および/または」という用語は、複数の要素が互いと組み合わされることまたは互いと排他的であることを表すために用いられる。例えば、「x、y、および/またはz」は、「x」のみ、「y」のみ、「z」のみ、「x、y、およびz」、「(xおよびy)またはz」、「xまたは(yおよびz)」、または「xまたはyまたはz」を表し得る。それは、x、y、またはzがある態様または局面から個別に排除され得ることを具体的に想定している。
【0032】
「含む(comprising)」(および含むの任意の形式、例えば「含む(comprise)」および「含む(comprises)」)、「有する(having)」(および有するの任意の形式、例えば「有する(have)」および「有する(has)」)、「含む(including)」(および含むの任意の形式、例えば「含む(includes)」および「含む(include)」)、「により特徴づけられる」(および含むの任意の形態、例えば「として特徴づけられる」)、または「含む(containing)」(および含むの任意の形式、例えば「含む(contains)」および「含む(contain)」)という語は、包括的またはオープンエンドであり、追加の、言及されていない要素または方法の工程を排除しない。
【0033】
組成物およびそれらの使用方法は、本明細書を通して開示される任意の成分または工程「を含み」、「から本質的になり」、または「からなり」得る。「からなる」というフレーズは、言及されていないあらゆる要素、工程、または成分を除外する。「から本質的になる」というフレーズは、記載される主体の範囲を、言及されている物質または工程およびその基本的かつ新規の特徴に実質的に影響しないそれらに制限する。「含む」という用語との関係の下で記載される態様および局面は、「からなる」または「から本質的になる」という用語との関係の下でも実現され得ることが想定される。
【0034】
本発明の1つの態様または局面に関して議論されている任意の限定は本発明の任意の他の態様または局面に適用され得ることが具体的に想定される。さらに、本発明の任意の組成物が本発明の任意の方法において使用され得、本発明の任意の方法が本発明の任意の組成物を製造または利用するために使用され得る。実施例に示されている態様の局面は、異なる実施例における他所でまたは本願、例えば発明の要旨、態様の詳細な説明、特許請求の範囲、および図面の注釈の記載における他所で議論される態様または局面との関係の下で実施され得る態様でもある。
【0035】
治療的、診断的、または生理学的な目的または効果に関連する任意の方法はまた、「使用」という請求項用語で、例えば、記載される治療的、診断的、または生理学的な目的または効果を達成または実現するための本明細書で議論される任意の化合物、組成物、または薬剤「の使用」のように記載され得る。
【0036】
本明細書に記載される任意の方法に基づき、1つまたは複数の配列または組成物の使用が採用され得る。他の態様も本願を通じて議論されている。本開示の1つの局面に関して議論されている任意の態様または局面は、本開示の他の局面および態様にも適用され、およびその逆も同様である。
【0037】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、詳細な説明および具体的実施例は、本発明の具体的態様を示すものであるが、例として提供されるにすぎず、この詳細な説明から、本発明の精神および範囲内の様々な変更および改変が当業者に明らかになるであろうことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
以下の図面は、本明細書の一部をなし、本発明の特定の局面をさらに示すために含まれている。本発明は、本明細書に示される具体的態様の詳細な説明と共にこれらの図面の1つまたは複数を参照することで、より理解され得る。
【0039】
【
図1】子宮内膜症における単量体および二量体形態のMPOを表す画像。単量体および二量体形態のMPOを検出するため、非還元ゲルを用いてウェスタンブロット分析を行った。75 kDaバンドにより示されるように子宮内膜症組織においては単量体形態のMPOのみが検出されている。
【
図2】卵巣癌における単量体および二量体形態のMPOを表す画像。健常ボランティア由来の血清、卵巣癌患者由来の血清、および選択された卵巣癌細胞株において単量体および二量体形態のMPOを検出するため、非還元ゲルを用いてウェスタンブロット分析を行った。75 kDaバンドにより示されるように卵巣癌細胞株においては単量体形態のMPOのみが検出されている。興味深いことに、単量体形態のMPOは卵巣癌患者から入手した血清においても検出されるが、健常血清においては検出されず、健常血清は150 kDaバンドにより示される二量体MPO形態を示すのみである。
【
図3】複数の癌細胞株におけるMPOのリアルタイムRT-PCR分析。MPO mRNAレベルを上皮卵巣癌(SKOV-3、MDAH-2774、OVCAR-3、OV-21、OV-90)、膵臓癌(BXPC-3)、結腸癌(COLO-3)、非ホジキンB細胞リンパ腫(DLCL-2)、膀胱癌(HTB-4)、および子宮内膜癌(CRL-1671)細胞株において決定した。
【
図4】4つの異なる状態[対照=健常対照(n=15)、NC_IGC=非癌性炎症性婦人科疾患(n=14)、ES_EOC=早期ステージ上皮卵巣癌(n=12)、LS_EOC=後期ステージ上皮卵巣癌(n=16)]における二量体/単量体血清MPO濃度を示す箱ひげ図であり、x軸はlog10スケール化されている。
【
図5】NC_IGC=非癌性炎症性婦人科疾患とES_EOC=早期ステージ上皮卵巣癌の間(p=0.050)およびES_EOC=早期ステージ上皮卵巣癌とLS_EOC=後期ステージ上皮卵巣癌の間(p=0.05)で試料を区別する上での血清二量体MPOの予測力84.5%および単量体MPOの予測力100%を比較する受信者操作曲線および曲線下面積(AUC)。
【発明を実施するための形態】
【0040】
発明の詳細な説明
本願において、本発明者らは、卵巣癌細胞が単量体形態のMPOのみを発現し、これがこの疾患の早期ステージと後期ステージの間を区別したことを報告する。総RNAおよびタンパク質を、様々なヒト卵巣癌細胞、様々なステージの卵巣癌患者由来の血清、非癌性炎症性婦人科疾患由来の血清、および健常ボランティアから単離した。すべての試料において、ELISAおよび非還元ウェスタンブロットの組み合わせを用いて単量体および二量体MPOのレベルを決定した。リアルタイムPCRを用いて様々な癌細胞株におけるMPO mRNAレベルを測定した。受信者操作曲線(ROC)を用いて血清二量体および単量体MPOの予測力ならびに試料間の区別を比較した。本発明者らは、単量体MPOが卵巣癌細胞株におけるMPOの優勢形態であることを実証した。興味深いことに、単量体MPOは、様々なステージの卵巣癌患者から入手した血清においても検出されるが、健常個体においては検出されなかった。より重要なことに、単量体MPOは、この疾患の早期ステージと後期ステージの間を区別した。この研究からの新発見は、MPOが、この疾患の早期検出のために決定的に必要とされるバイオマーカーであることを強く示している。
【0041】
II. 過剰増殖性障害の処置
特にバイオマーカー発現または活性レベルを利用する過剰増殖性障害を処置するための方法および組成物が提供され得る。バイオマーカー発現または活性レベルのプロフィールに基づき、異なる患者に対して異なる処置が処方または推奨され得る。いくつかの局面において、過剰増殖性障害は、卵巣癌または卵巣上皮、胚細胞、もしくは間質、ファロピウス上皮、卵巣、子宮頸部、ファロピウス管、もしくは子宮を起源とする癌を含む。いくつかの局面において、過剰増殖性障害は、原発性腹膜癌、ファロピウス管癌、奇形種、未分化胚細胞腫、または卵黄嚢腫である。癌は、癌ステージ、TNMを含み、かつ/または以下に記載される特徴を有するものとさらに特徴づけられる。
【0042】
A. 癌のステージ判定
最も一般的なステージ判定体系は、American Joint Committee on Cancer(AJCC)のTNM(腫瘍/節/転移)体系である。TNM体系は、3つのカテゴリーに基づき番号を割り当てる。「T」は腸壁の侵襲の程度を示し、「N」はリンパ節病変の程度を示し、「M」は転移の程度を示す。癌のより上位のステージは通常、予後によりグループ分けされるTNM値に基づき番号I、II、III、IVで示され、より大きな数字がより進行した癌およびより悪い可能性がある結果を示す。この体系の詳細を以下の表に示す。
【0043】
本明細書に記載される方法において参照される「癌」は、上記ステージまたはTNMカテゴリーのいずれかを含み得るまたは除外し得る。本明細書に記載される方法において参照される「癌」は、上記ステージまたはTNMカテゴリーのいずれかを含み得るまたは除外し得る。例えば、癌は、ステージ0、I、IA、IB、IC、II、IIA、IIB、IIIA1、IIIA2、IIIB、IIIC、IVA、もしくはIVB癌であり得るまたはそれらを除外し得る。患者は、ステージ0、I、IA、IB、IC、II、IIA、IIB、IIIA1、IIIA2、IIIB、IIIC、IVA、もしくはIVB癌を有するかつ/または有すると決定されたことがある患者であり得る。さらに、癌は、ステージN0および/またはM0;T1、N0、および/またはM0;T1、N1、および/またはM0;T2、N0、および/またはM0;T1、N2、および/またはM0;T2、N1、および/またはM0;T3、N0、および/またはM0;T1、N3、および/またはM0;T2、N2、および/またはM0;T3、N1、および/またはM0;T4a、N0、および/またはM0;T2、N3、および/またはM0;T3、N2、および/またはM0;T4a、N1、および/またはM0;T3、N3、および/またはM0;T4a、N2、および/またはM0;T4bおよび/またはN0;N1および/またはM0;T4a、N3、および/またはM0;T4bおよび/またはN2;N3および/またはM0;いずれかのT;いずれかのN、および/またはM1であり得る。
【0044】
B. 処置
本開示の方法は、対象および患者を癌療法で処置することに関する。癌療法は以下に記載される療法であり得、特定のバイオマーカープロフィールを有すると決定された患者に対して行われ得る。例えば、いくつかの局面において、以下に記載される療法は、乏しい予後、好ましくない予後を有する患者に、または高リスクであると決定された患者に対して行われる。いくつかの局面において、以下に記載される療法は、好ましい予後を有すると決定された患者に、または低リスクであると決定された患者に対して行われる。以下に記載される療法の併用も想定されている。
【0045】
癌の処置は、手術、放射線照射、化学療法、ホルモン療法、または標的化療法であり得る。放射線照射は、外照射療法または小線源療法としてさらに特徴づけられ得る。化学療法は、白金化合物および/またはタキサンであり得る。白金化合物にはシスプラチンおよびカルボプラチンが含まれる。タキサンにはパクリタキセルおよびドセタキセルが含まれる。いくつかの局面において、化学療法は化学療法用白金化合物およびタキサンの組み合わせを含む。さらなる化学療法には、アルブミン結合パクリタキセル、アルトレタミン、カペシタビン、シクロホスファミド、エトポシド、ゲムシタビン、イホスファミド、イリノテカン、リポソーム性ドキソルビシン、メルファラン、ペメトレキセド、トポテカン、およびビノレルビンが含まれる。
【0046】
化学療法を行う一般的方法には、ニードルを用いて静脈内に静脈内(IV)チューブを設置すること、またはピルもしくはカプセルに入れて(経口的に)嚥下することが含まれる。化学療法レジメンは通常、設定された期間の間に行われる特定数のサイクルを含む。患者は、一度に1つの薬をまたは同時に異なる薬の組み合わせを与えられ得る。
【0047】
代謝拮抗剤は、それらがDNA生産と、したがって細胞分裂および腫瘍の成長と干渉することから、癌処置において使用され得る。癌細胞は他の細胞よりも多くの回数分裂するので、細胞分裂の阻害は他の細胞よりも腫瘍細胞に害を与える。代謝拮抗剤は、DNAの構造ブロックになる化合物であるプリン(アザチオプリン、メルカプトプリン)またはピリミジンになりすます。それらはこれらの物質が(細胞周期の)S期の間にDNAに組み込まれるのを妨げ、正常な発生および分裂を停止させる。それらはRNA合成にも影響する。しかし、チミジンはDNAで使用され、RNAでは使用されない(代わりにウラシルが使用される)ので、チミジル酸シンターゼを通じたチミジン合成の阻害はRNA合成よりもDNA合成を選択的に阻害する。それらの効率のために、これらの薬は最も広く使用されている細胞増殖抑制剤である。ATC体系において、それらはL01Bに分類される。
【0048】
チミジル酸シンターゼ阻害剤は、酵素チミジル酸シンターゼを阻害し、抗癌化学療法としての能力を有する化学的薬剤である。抗癌化学療法の標的として、チミジル酸シンターゼは、チミジル酸シンターゼ阻害剤、例えばフッ素化ピリミジンであるフルオロウラシル、またはラルチトレキセド(商品名Tomudex)が最も有名である特定の葉酸アナログにより阻害され得る。さらなる薬剤には、ペメトレキセド、ノラトレキセド、ZD9331、およびGS7904Lが含まれる。
【0049】
さらなる局面において、体内でチミジル酸シンターゼ阻害剤に変換され得るプロドラッグ、例えば、多くの癌の処置において使用される経口投与される化学療法剤であるカペシタビン(INN)が用いられ得る。カペシタビンは、体内で酵素的に5-フルオロウラシルに変換されるプロドラッグである。
【0050】
癌がリンパ節に侵入している場合、化学療法剤フルオロウラシルまたはカペシタビンの投入が余命を延ばす。この状態に対する化学療法剤には、カペシタビン、フルオロウラシル、イリノテカン、ロイコボリン、オキサリプラチンおよびUFTが含まれ得る。ときどき使用される別のタイプの薬剤は、上皮成長因子受容体阻害剤である。
【0051】
特定の局面において、バイオマーカープロフィールに基づき代替の処置が処方または推奨され得る。胃癌患者に対する伝統的な化学療法に加えて、癌療法には、化合物ベースの処置および放射線ベースの処置の両方を用いる様々な併用療法も含まれる。併用化学療法には、例えば、シスプラチン(CDDP)、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、カンプトテシン、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、ニトロソ尿素、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリコマイシン、マイトマイシン、エトポシド(VP16)、タモキシフェン、ラロキシフェン、エストロゲン受容体結合剤、タキソール、ゲムシタビン、ナベルビン、ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、トランス白金、5-フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチンおよびメトトレキサート、または前記化合物の任意のアナログもしくは誘導体変種が含まれる。
【0052】
化学療法と同様に、癌の一部のステージに対するネオアジュバントおよびアジュバントの設定で放射線療法が使用され得る。
【0053】
標的化療法もまた、本明細書に記載される方法において使用され得る。標的化療法には、血管新生阻害剤、例えばベバシズマブならびに/またはPARP阻害剤、例えばオラパリブ、ルカパリブ、および/もしくはニラパリブが含まれる。NTRK標的化薬、例えばラロトレクチニブおよびエントレクチニブも含まれる。
【0054】
ホルモン療法には、黄体形成ホルモン放出アゴニスト、タモキシフェン、およびアロマターゼ阻害剤が含まれる。
【0055】
癌に抵抗する身体の自然防御を増強するよう設計された免疫療法も使用され得る。免疫療法は通常、癌細胞を標的化し破壊する免疫エフェクター細胞および分子の使用に基づく。免疫エフェクターは、例えば、腫瘍細胞の表面上のいくつかのマーカーに対して特異的な抗体であり得る。抗体が単独で療法のエフェクターとして機能し得るまたはそれは実際に細胞殺傷をもたらす他の細胞を動員し得る。抗体はまた、薬または毒素(化学療法剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素等)にコンジュゲートされ得、標的化因子としてのみ機能し得る。あるいは、エフェクターは、腫瘍細胞標的と直接的または間接的のいずれかで相互作用する表面分子を有するリンパ球であり得る。様々なエフェクター細胞には、細胞傷害性T細胞およびNK細胞が含まれる。
【0056】
通常、腫瘍細胞は、標的化に利用できる、すなわち、大部分の他の細胞には存在しないいくつかのマーカーを有しているはずである。多数の腫瘍マーカーが存在し、これらのいずれかが標的化に適し得る。
【0057】
C. モニタリング
特定の局面において、バイオマーカーベースの方法は、患者が上記のバイオマーカーに基づき再発のリスクが高いまたは乏しい予後を有すると決定される場合に高頻度で、1つまたは複数の他の癌診断またはスクリーニング検査と組み合わされ得る。
【0058】
いくつかの局面において、本開示の方法は、1つまたは複数のモニタリング検査をさらに含む。モニタリングプロトコルには、当技術分野で公知の任意の方法が含まれ得る。特に、モニタリングは、試料を入手し、その試料を診断のために検査することを含む。例えば、モニタリングは、内視鏡検査、生検、腹腔鏡検査、結腸鏡検査、血液検査、遺伝子検査、内視鏡超音波、X線、バリウム注腸X線、胸部x線、バリウム嚥下、CTスキャン、MRI、PETスキャン、またはHER2検査を含み得る。いくつかの局面において、モニタリング検査は、放射線画像化を含む。本開示の方法において有用である放射線画像化の例には、肝臓超音波、コンピュータ断層撮影(CT)腹部スキャン、肝臓磁気共鳴画像化(MRI)、全身CTスキャン、および全身MRIが含まれる。
【0059】
D. ROC分析
統計学において、受信者操作特性(ROC)またはROC曲線は、その判別しきい値を変えたときの二項分類系の性能を表すグラフィカルなプロットである。ROC分析は、バイオマーカー発現のカットオフ値または閾値の設定を決定するために適用され得る。例えば、生物学的試料が特定のカットオフ閾値を上回るがより高いカットオフ閾値を下回るバイオマーカー発現値を有すると決定された患者は、子宮内膜症を有すると決定され得る。生物学的試料が子宮内膜症に関するカットオフ閾値を超過するバイオマーカー発現レベルを有すると決定された患者は、癌を有すると決定され得る。この曲線は、様々な閾値設定で偽陽性率に対して真陽性率をプロットすることによって作成される。(真陽性率はバイオメディカルインフォマティクスにおける感度、または機械学習におけるリコール(recall)としても公知である。偽陽性率は、フォールアウト(fall-out)としても公知であり、1-特異度として算出され得る)。したがってROC曲線は、フォールアウトの関数としての感度である。通常、検出警報および誤警報の両方についての確率分布が分かっている場合、ROC曲線は、y軸における検出確率の累積分布関数(-無限大から+無限大までの確率分布下面積)をx軸における誤警報確率の累積分布関数に対してプロットすることにより作成され得る。
【0060】
ROC分析は、コストコンテキスト(cost context)またはクラス分布から独立して(かつそれらを指定する前に)推定最適モデルを選択し、最適以下モデルを廃棄するツールを提供する。ROC分析は、直接的かつ自然な様式で、診断的意思決定のコスト/ベネフィット分析に関連する。
【0061】
ROC曲線は当初、第二次世界大戦中に、戦場で敵物体を検出するために電気技師およびレーダー技師により開発され、すぐに、刺激の知覚的検出を把握するために心理学に導入された。それ以降、ROC分析は、数十年にわたり、医薬、放射線学、バイオメトリクス、および他の領域で使用されており、機械学習およびデータマイニング研究において使用されることが増えている。
【0062】
ROCは、その基準を変化させつつ行う2つの操作特性(TPRおよびFPR)の比較であることから、相対操作特性曲線としても公知である。ROC分析曲線は、当技術分野で公知であり、Metz CE (1978) Basic principles of ROC analysis. Seminars in Nuclear Medicine 8:283-298;Youden WJ (1950) An index for rating diagnostic tests. Cancer 3:32-35;Zweig MH, Campbell G (1993) Receiver-operating characteristic (ROC) plots: a fundamental evaluation tool in clinical medicine. Clinical Chemistry 39:561-577;およびGreiner M, Pfeiffer D, Smith RD (2000) Principles and practical application of the receiver-operating characteristic analysis for diagnostic tests. Preventive Veterinary Medicine 45:23-41に記載されており、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。ROC分析は、予後および/または診断目的のカットオフ値を生成するために使用され得る。
【0063】
III. タンパク質アッセイ
生物学的試料においてポリペプチドおよびタンパク質の発現レベルを測定してバイオマーカー発現レベルを決定するために様々な技術が利用され得る。そのようなフォーマットの例には、酵素免疫アッセイ(EIA)、放射免疫アッセイ(RIA)、ウェスタンブロット分析および酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)が含まれるがこれらに限定されない。当業者は、公知のタンパク質/抗体検出方法を、バイオマーカーのタンパク質発現レベルの決定における使用に容易に適合させることができる。
【0064】
1つの局面において、抗体、または抗体断片もしくは誘導体は、バイオマーカー発現を検出するために、ウェスタンブロット、ELISA、または免疫蛍光技術等の方法において使用され得る。いくつかの局面において、抗体またはタンパク質のいずれかが固体支持体上に固定される。適切な固相支持体または担体には、抗原または抗体を結合させることができる任意の支持体が含まれる。周知の支持体または担体には、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および変性セルロース、ポリアクリルアミド、斑れい岩、および磁鉄鉱が含まれる。
【0065】
当業者は、抗体または抗原を結合させるための多数の他の適切な担体を知っており、そのような支持体を本開示における使用に適合させることができるであろう。支持体はその後、適切な緩衝液で洗浄された後に、検出可能に標識された抗体で処理され得る。固相支持体はその後、未結合の抗体を除去するために緩衝液で二度目の洗浄をされ得る。その後、固体支持体に結合した標識の量が従来的手段により検出され得る。
【0066】
免疫組織化学方法もまた、バイオマーカーの発現レベルの検出に適する。いくつかの局面において、各マーカーに特異的な、ポリクローナル抗血清およびモノクローナル抗体を含む抗体または抗血清が、発現を検出するために使用され得る。抗体は、例えば放射性標識、経口標識、ハプテン標識、例えばビオチン、または酵素、例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼもしくはアルカリホスファターゼによる抗体自身の直接標識により検出され得る。あるいは、未標識の一次抗体は、その一次抗体に特異的な抗血清、ポリクローナル抗血清またはモノクローナル抗体を含む標識された二次抗体と共に使用される。免疫組織化学プロトコルおよびキットは当技術分野で周知であり、市販されている。
【0067】
特異的なポリクローナルまたはモノクローナルのいずれかの抗体を用いてタンパク質発現の尺度として複合体形成を検出および測定するための免疫学的方法は当技術分野で公知である。そのような技術の例には、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射免疫アッセイ(RIA)、蛍光活性化細胞選別(FACS)および抗体アレイが含まれる。そのような免疫アッセイでは典型的に、タンパク質とその特異的抗体の間の複合体形成の測定を行う。これらのアッセイおよび精製、標識された標準に対するそれらの定量は、当技術分野で周知である。2つの非干渉エピトープに対して反応性の抗体または競合結合アッセイを用いる2サイト、モノクローナル抗体ベースの免疫アッセイが用いられ得る。
【0068】
多数の標識が当技術分野で利用可能であり広く知られている。放射性同位体標識には、例えば、36S、14C、125I、3H、および131Iが含まれる。抗体は、当技術分野で公知の技術を用いて放射性同位体で標識され得る。蛍光標識には、例えば、希土類キレート(ユーロピウムキレート)またはフルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、リサミン、フィコエリスリンおよびテキサスレッド等の標識が含まれ、利用可能である。蛍光標識は、当技術分野で公知の技術を用いて抗体変種にコンジュゲートされ得る。蛍光は、蛍光光度計を用いて定量され得る。様々な酵素・基質標識が利用可能であり、米国特許第4,275,149号、同第4,318,980号はこれらのうちのいくつかのレビューを提供する。酵素は一般に、発色性基質の化学変化を触媒し、これが様々な技術を用いて測定され得る。例えば、酵素は基質の色変化を触媒し得、これが分光光度的に測定され得る。あるいは、酵素は基質の蛍光性または化学発光性を変化させ得る。蛍光の変化を定量する技術は上記されている。化学発光基質は、化学反応により電気的に励起された状態となり、その後に(例えば、化学発光測定装置を用いて)測定することができる光を発し得るまたは蛍光アクセプターにエネルギーを供与する。酵素標識の例には、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ;米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸ジヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、ペルオキシダーゼ、例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRPO)、アルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖質オキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、およびグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)、複素環オキシダーゼ(例えばウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼ)、ラクトペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼ等が含まれる。酵素を抗体にコンジュゲートさせる技術は、Methods in Enzymology (Ed. J. Langone & H. Van Vunakis), Academic press, New York, 73: 147-166 (1981)のO'Sullivan et al., Methods for the Preparation of Enzyme-Antibody Conjugates for Use in Enzyme Immunoassayに記載されている。
【0069】
いくつかの局面において、検出標識は抗体に間接的にコンジュゲートされる。当業者は、これを達成するための様々な技術を知っている。例えば、抗体がビオチンにコンジュゲートされ得、上記の3大カテゴリーの標識のいずれかがアビジンにコンジュゲートされ得る、またはその逆にされ得る。ビオチンはアビジンに選択的に結合し、したがって標識はこの間接的様式で抗体にコンジュゲートされ得る。あるいは、標識と抗体の間接的コンジュゲートを達成するため、抗体は小ハプテン(例えば、ジゴキシン)にコンジュゲートされ、上記の異なるタイプの標識の1つが抗ハプテン抗体(例えば、抗ジゴキシン抗体)にコンジュゲートされる。いくつかの局面において、抗体は標識される必要がなく、その存在は抗体に結合する標識抗体を用いて検出され得る。
【0070】
IV. 試料調製
特定の局面において、方法は対象から試料を入手する工程を含む。本明細書に提供される入手方法には、生検、例えば細針吸引、コアニードル生検、真空支援生検、切除生検、摘除生検、パンチ生検、削除生検、または皮膚生検の方法が含まれ得る。特定の局面において、試料は、先に言及された生検方法のいずれかにより卵巣または子宮内膜組織由来の生検から入手される。他の局面において、試料は、卵巣上皮、ファローピウス上皮、卵巣、子宮頸部、ファロピウス管、または子宮由来の非癌性または癌性組織および非癌性または癌性組織が含まれるがこれらに限定されない本明細書に提供される組織のいずれかから入手される。あるいは、試料は、血液、血清、血漿、汗、毛包、頬組織、涙、生理物、便、または唾が含まれるがこれらに限定されない任意の他の供給源から入手され得る。本方法の特定の局面において、任意の医療専門家、例えば医師、看護師または医療技術者が検査用の生物学的試料を入手し得る。なおさらに、生物学的試料は、医療専門家の支援なしに入手され得る。
【0071】
試料には、組織、細胞、または細胞由来もしくは対象の細胞由来の生物学的物質が含まれ得るがこれらに限定されない。生物学的試料は、細胞または組織の不均質または均質集団であり得る。生物学的試料は、本明細書に記載される分析方法に適した試料を提供し得る当技術分野で公知の任意の方法を用いて入手され得る。試料は、皮膚または子宮頸部のかきとり、頬のふき取り、唾の採集、尿の採集、便の採集、生理物、涙、または精液の採集が含まれるがこれらに限定されない非侵襲的方法により入手され得る。
【0072】
試料は当技術分野で公知の方法により入手され得る。特定の局面において、試料は生検により入手される。他の局面において、試料はふき取り、内視鏡、かき取り、採血、または当技術分野で公知の任意の他の方法により入手される。いくつかの局面において、試料は、本方法のキットの成分を用いて入手され、保管され、または輸送され得る。いくつかの例において、本明細書に記載される方法による診断のために、複数の試料、例えば複数の血漿または血清試料が入手され得る。他の例において、本方法による診断のために、複数の試料、例えば1つの組織型(例えば卵巣または関連組織)由来の1つまたは複数の試料および別の試料(例えば血清)由来の1つまたは複数の試料が入手され得る。試料は異なる時点で入手され得、異なる方法により保管および/または分析され得る。例えば、試料は、慣用的な染色方法または任意の他の細胞学的分析方法により入手および分析され得る。
【0073】
いくつかの局面において、生物学的試料は、医師、看護師、または他の医療専門家、例えば医療技術者、内視鏡医、細胞学医、採血医、放射線医、もしくは呼吸器科医により入手され得る。医療専門家は、試料に対して行う適切な検査またはアッセイを指示し得る。特定の局面において、分子プロファイリング業者が、どのアッセイまたは検査が最も適切に指示されるかに関して助言し得る。本方法のさらなる局面において、患者または対象は、医療専門家の支援なしに検査のための生物学的試料を入手し得る、例えば全血試料、尿試料、便試料、頬試料、または唾試料を入手し得る。
【0074】
他の例において、試料は、生検、針吸引、血液の抜き取り、内視鏡、または採血が含まれるがこれらに限定されない侵襲的手順により入手される。針吸引法にはさらに、細針吸引、コアニードル生検、真空支援生検、またはラージコア生検が含まれ得る。いくつかの局面において、十分量の生物学的物質を確保するため、複数の試料が本明細書の方法により入手され得る。
【0075】
生物学的試料を入手する一般的な方法はまた当技術分野で公知である。刊行物、例えばその全体が参照により本明細書に組み入れられるRamzy, Ibrahim Clinical Cytopathology and Aspiration Biopsy 2001が、生検の一般的方法および細胞学的方法を記載している。
【0076】
本方法のいくつかの局面において、分子プロファイリング業者は、対象から直接、医療専門家から、第3者から、または分子プロファイリング業者もしくは第3者により提供されるキットから生物学的試料を入手し得る。いくつかの例において、生物学的試料は、対象、医療専門家、または第3者が生物学的試料を獲得し、それを分子プロファイリング業者に送付した後に分子プロファイリング業者によって入手され得る。いくつかの例において、分子プロファイリング業者は、生物学的試料の保管および分子プロファイリング業者へのその輸送に適した容器および賦形剤を提供し得る。
【0077】
本明細書に記載される方法のいくつかの局面において、医療専門家は初期診断にも試料獲得にも関与する必要がない。代わりに個人が医師の処方不要の(OTC)キットの使用を通じて試料を入手し得る。OTCキットは、本明細書に記載されるように試料を入手するための手段、検査のために試料を保管する手段、およびキットの適切な使用のための指示書を含み得る。いくつかの例において、分子プロファイリングサービスは、キットの購入価格に含まれる。他の例において、分子プロファイリングサービスは別途料金請求される。分子プロファイリング業者による使用に適した試料は、検査される個体の組織、細胞、核酸、遺伝子、遺伝子断片、発現産物、遺伝子発現産物、または遺伝子発現産物断片を含む任意の物質であり得る。試料の適切さおよび/または十分さを決定する方法が提供される。
【0078】
いくつかの局面において、対象は、専門家、例えば腫瘍学者、外科医、または内分泌科医に付託され得る。専門家もまた同様に検査のために生物学的試料を入手し得るまたは生物学的試料の提出のために個体を検査センターもしくは実験室に付託し得る。いくつかの例において、医療専門家が生物学的試料の提出のために個体を検査センターもしくは実験室に付託し得る。他の例において、対象が試料を提供し得る。いくつかの例において、分子プロファイリング業者が試料を入手し得る。
【0079】
V. 治療用組成物の投与
本明細書に提供される療法は、治療剤の組み合わせ、例えば第1の癌療法および第2の癌療法の投与を含み得る。療法は、当技術分野で公知の任意の適切な様式で投与され得る。例えば、第1および第2の癌処置は、順次(異なる時点で)または同時に(同じ時点で)投与され得る。いくつかの局面において、第1および第2の癌処置は別の組成物で投与される。いくつかの局面において、第1および第2の癌処置は同じ組成物で投与される。
【0080】
本開示の局面は、組成物および治療用組成物を含む方法に関する。1つの組成物でまたは2つ以上の組成物、例えば2つの組成物、3つの組成物、もしくは4つの組成物で異なる療法が投与され得る。薬剤の様々な組み合わせが用いられ得る。
【0081】
本開示の治療剤は、同じ投与経路によりまたは異なる投与経路により投与され得る。いくつかの局面において、癌療法は、静脈内的に、筋内的に、皮下的に、局所的に、経口的に、経皮的に、腹腔内的に、眼窩内的に、移植により、吸入により、髄腔内的に、脳室内的に、または鼻内的に投与される。いくつかの局面において、抗生物質は、静脈内的に、筋内的に、皮下的に、局所的に、経口的に、経皮的に、腹腔内的に、眼窩内的に、移植により、吸入により、髄腔内的に、脳室内的に、または鼻内的に投与される。適切な投与量は、処置される疾患のタイプ、疾患の重篤度および経過、個体の臨床状態、個体の病歴および処置に対する応答、ならびに担当医の裁量に基づき決定され得る。
【0082】
処置は様々な「単位用量」を含み得る。単位用量は既定量の治療用組成物を含むものと定義される。投与される量ならびに個々の経路および配合は、臨床分野の当業者の決定能力の範囲内である。単位用量は、単回注射で投与される必要がなく、一定時間をかける連続注入を含み得る。いくつかの局面において、単位用量は単回投与可能な用量を含む。
【0083】
治療用組成物の正確な量は、実施者の判断にも依存し、各個体に特有である。用量に影響する因子には、患者の身体的および臨床的状態、投与経路、意図されている処置目標(症状の軽減か治癒か)ならびに個々の治療物質または対象が受け得る他の療法の効能、安定性および毒性が含まれる。
【0084】
VI. 薬学的組成物
特定の局面において、この方法において使用される組成物または薬剤、例えば化学療法剤またはバイオマーカーモジュレーターは、薬学的に許容される担体中に適切に含まれる。担体は非毒性、生体適合性であり、薬剤の生物学的活性に悪影響を及ぼさないよう選択される。薬剤は、本開示のいくつかの局面において、経口、非経口または外科的投与を可能にする固体、半固体、ゲル、液体または気体形態の局所(すなわち、身体の特定場所、例えば骨格筋もしくは他の組織への)送達用または全身送達用の調製物、例えば錠剤、カプセル、粉末、顆粒、軟膏、溶液、デポジトリ(depositories)、吸入剤および注射剤に配合され得る。本開示の特定の局面は、医療デバイス等をコーティングすることによる組成物の局所投与も想定している。
【0085】
注射、注入または灌漑を通じた非経口送達および局所送達に適した担体には、蒸留水、生理学的リン酸緩衝生理食塩水、標準もしくは乳酸リンゲル溶液、デキストロース溶液、ハンクス溶液、またはプロパンジオールが含まれる。加えて、滅菌性の固定油が溶媒または懸濁媒として用いられ得る。この目的で、合成性モノまたはジグリセリドを含む任意の生体適合性油が用いられ得る。加えて、脂肪酸、例えばオレイン酸が、注射剤の調製における用途を見出す。担体および薬剤は、液体、懸濁物、重合可能または非重合可能ゲル、ペーストまたは軟膏剤として調合され得る。
【0086】
担体はまた、薬剤の送達を持続させる(すなわち、延長する、遅らせるもしくは調節する)ためまたは治療剤の送達、取り込み、安定性もしくは薬物動態を向上させるための送達媒体を含み得る。そのような送達媒体には、非限定的な例として、タンパク質、リポソーム、炭水化物、合成有機化合物、無機化合物、ポリマー性またはコポリマー性ヒドロゲルおよびポリマー性ミセルから構成されるマイクロ粒子、マイクロスフィア、ナノスフィアまたはナノ粒子が含まれ得る。
【0087】
特定の局面において、患者または対象に投与される組成物の実際の投与量は、身体的および生理学的因子、例えば体重、状態の重篤度、処置される疾患のタイプ、過去のもしくは同時の治療的介入、患者の突発性症状および投与経路により決定され得る。いずれにせよ、投与を担当する実施者が、組成物中の活性成分の濃度および個々の対象に適した用量を決定するであろう。
【0088】
薬学的組成物の溶液は、界面活性剤、例えばヒドロキシプロピルセルロースと適切に混合された水中で調製され得る。分散物もまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、それらの混合物中で、および油中で調製され得る。通常の保管および使用条件下で、これらの調製物は、微生物の成長を防ぐための保存剤を含む。
【0089】
特定の局面において、薬学的組成物は、液体溶液または懸濁物のいずれかとしての注射可能な組成物の形態で投与されるのが有利であり、また、注射前に適切な固体形態または液体中の溶液もしくは懸濁物が調製され得る。また、これらの調製物は乳化され得る。そのような目的において典型的な組成物は、薬学的に許容される担体を含む。例えば、組成物は、リン酸緩衝生理食塩水1ミリリットルあたり10 mgもしくはそれ未満、25 mg、50 mgまたは最大約100 mgのヒト血清アルブミンを含み得る。他の薬学的に許容される担体には、水性溶液、塩を含む非毒性賦形剤、保存剤、緩衝剤等が含まれる。
【0090】
非水性溶媒の例はプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油および注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性担体には、水、アルコール性/水性溶液、生理食塩水溶液、非経口ビヒクル、例えば塩化ナトリウム、リンガーデキストロース等が含まれる。静脈内ビヒクルには、流体および栄養補充剤が含まれる。保存剤には、抗微生物剤、抗真菌剤、抗酸化剤、キレート剤および不活性ガスが含まれる。薬学的組成物のpHおよび様々な成分の正確な濃度は周知のパラメータにしたがい調節される。
【0091】
さらなる配合物は、経口投与に適する。経口配合物は、典型的な賦形剤、例えば薬品等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等を含む。組成物は、溶液、懸濁物、錠剤、ピル、カプセル、持続放出配合物または粉末の形態をとる。
【0092】
さらなる局面において、薬学的組成物には、古典的な薬学的調製物が含まれ得る。特定の局面にしたがう薬学的組成物の投与は、標的組織がその経路を通じて利用可能である限り、任意の一般的経路を通じて行われ得る。これには、経口、鼻、頬、直腸、膣または局所が含まれ得る。局所投与は、皮膚癌の処置のために、化学療法により誘導される脱毛症または他の皮膚の過剰増殖性障害を防ぐために特に有利であり得る。あるいは、投与は、同所、皮内、皮下、筋内、腹腔内または静脈内注射により行われ得る。そのような組成物は通常、生理学的に許容される担体、緩衝剤または他の賦形剤を含む薬学的に許容される組成物として投与され得る。肺の状態の処置の場合、エアゾール送達が使用され得る。エアゾールの体積は約0.01 mlから0.5 mlの間である。
【0093】
薬学的組成物の有効量は、意図される目標に基づき決定される。「単位用量」または「投与量」という用語は、各単位がその投与、すなわち適切な経路および処置レジメンに関連して議論されている所望の応答を生じるよう計算された既定量の薬学的組成物を含む、対象において使用するのに適した物理的に独立した単位を表す。処置の回数および単位用量の数の両方にしたがう、投与される量は、求められる保護または効果に依存する。
【0094】
薬学的組成物の正確な量はまた、実施者の判断に依存し、各個体に特有である。用量に影響する因子には、患者の身体的および臨床的状態、投与経路、意図されている処置目標(症状の軽減か治癒か)ならびに個々の治療物質の効能、安定性および毒性が含まれる。
【0095】
VII. キット
本発明の特定の局面はまた、本発明の組成物または本発明の方法を実施するための組成物を含むキットに関する。いくつかの局面において、キットは1つまたは複数のバイオマーカーを評価するために使用され得る。特定の局面において、キットは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、100、500、1,000個もしくはそれより多いプローブ、プライマーもしくはプライマーセット、合成分子、抗体、もしくは阻害剤、またはその間で生じ得る任意の値もしくは範囲および組み合わせを含む、少なくともそれらを含むまたは最大でそれらを含む。いくつかの局面において、細胞内でバイオマーカー活性またはレベルを評価するためのキットがある。
【0096】
キットは、個別に包装され得るまたは容器、例えばチューブ、ボトル、バイアル、シリンジ、もしくは他の適切な収容手段に入れられ得る成分を含み得る。
【0097】
個々の成分はまた、濃縮された量でキットに提供され得、いくつかの局面において、他の成分との溶液に入れられる成分は同じ濃度で個別に提供される。成分の濃縮物は、1倍、2倍、5倍、10倍、もしくは20倍以上で提供され得る。
【0098】
予後的または診断的用途で本開示のプローブ、抗体、合成核酸、非合成核酸、および/または阻害剤を使用するためのキットが本開示の一部として含まれる。具体的に想定されるのは、本明細書で特定される任意のバイオマーカーに対応する任意のそのような分子であり、これにはそのようなバイオマーカーに結合する抗体、ならびにバイオマーカーの非コード配列およびバイオマーカーのコード配列を含み得るバイオマーカーの全体または一部分と同一であるまたは相補的である核酸プライマー/プライマーセットおよびプローブが含まれる。
【0099】
特定の局面において、陰性および/または陽性対照核酸、抗体、プローブ、ならびに阻害剤が、いくつかのキットの局面に含まれる。さらに、キットは、1つまたは複数のバイオマーカーのメチル化に関する陰性または陽性対照である試料を含み得る。
【0100】
本明細書に記載される任意の方法または組成物は本明細書に記載される任意の他の方法または組成物に関して実施され得ることおよび異なる局面が組み合わされ得ることが想定されている。出願当初の請求項は、任意の提出された請求項または提出された請求項の組み合わせを多項式に引用する請求項を網羅することが想定されている。
【実施例】
【0101】
VIII. 実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい態様を示すために含まれている。以下の実施例において開示される技術は、本発明の実施にあたって十分に機能することが本発明者により見いだされた技術であり、したがってその実施に関する好ましい様式を構成するとみなされ得ることが当業者に理解されるべきである。しかし、当業者は、本開示に照らして、本発明の精神および範囲から逸脱することなく開示されている具体的実施例において多くの変更がなされ得ることおよびそれでもなお同様または類似の結果が達成され得ることを理解すべきである。
【0102】
実施例1:子宮内膜症および卵巣癌における血清単量体MPO
図1に示されるように、単量体形態のMPOが、子宮内膜症患者から入手した血清において検出されたが、健常血清においては検出されず、健常血清では150 kDaバンドにより示される二量体MPO形態のみが示された。予想された通り、MPOは正常組織において検出されない。
【0103】
図2は、正常マクロファージと比較してすべての卵巣癌細胞において二量体MPOよりも単量体MPOが存在することを示す。
【0104】
実施例2:単量体ミエロペルオキシダーゼ:卵巣癌の早期検出のための潜在的バイオマーカー
A. 導入
卵巣癌は、女性における癌死の主要な原因であり、いまだその根底にある原因は分かっていない[14]。卵巣癌は封入嚢胞の上皮において発生するが、卵巣癌の最も一般的なタイプである高異型度漿液性卵巣癌はファロピウス管から発生すると考えられている[3,16]。非転移性卵巣癌の5年生存率はおよそ90%であり、それは局所疾患で約60%に、転移性疾患で約20%に低下する[9]。高い特異度、特異度、または両方を有する早期ステージスクリーニング法の欠如は、観察されている高い死亡率に大きく寄与している。さらに、早期ステージの卵巣癌は非特異的症状を示し、したがって診断は多くの場合、悪性腫瘍が卵巣外に広がった後に行われている[18]。
【0105】
卵巣癌細胞は、亢進した酸化ストレス環境により特徴づけられ、これは化学耐性卵巣癌においてさらに増大する[8]。本発明者は、鍵となる酸化酵素であるミエロペルオキシダーゼ(MPO)が卵巣癌細胞および組織により発現されることを最初に報告した[23]。好中球および単球にのみ存在することが知られている豊富なヘムタンパク質であるMPOが免疫監視および宿主防御機構において必須の役割を果たすというこの発見は驚くべきものであった[19]。本発明者は、卵巣癌細胞におけるアポトーシス抑制の鍵となる機構として、MPOと鍵となる酸化促進酵素である誘導性一酸化窒素シンターゼ(iNOS)の間のクロストークを報告した[23]。本発明者の研究室によるさらなる発見は、卵巣癌の早期検出および予後におけるバイオマーカーとしての血清MPOおよび遊離鉄の組み合わせの潜在的利益を強く示した[9]。
【0106】
成熟MPOは約150 kDaの対称性グリコシル化ホモ二量体である。第17染色体上の単一の遺伝子によりコードされるMPO単量体は、ジスルフィド結合により共有結合的に連結された59 kDaの重(α)および13.5 kDaの軽(β)サブユニットから構成される[11]。単量体プロMPOからの成熟グリコシル化ヘム含有二量体MPOの形成は、多数のタンパク質分解反応および翻訳後修飾が関与する複雑なプロセスである[31]。さらに、MPOの発現レベルは、プロモーター領域における対立遺伝子多型に依存する。特に、第463位におけるGからAへの置換(G-463A)は、MPO転写を25分の1に減少させる[22]。実際、このMPOの単一ヌクレオチド多型(SNP)は、乳癌および卵巣癌のリスクを増加させることが報告されている[4,5,32]。酸化物生成酵素である成熟MPOの主な機能は、強力な抗微生物物質である次亜塩素酸(HOCl)の形成を触媒することである。成熟MPOはその後、HOClにより単量体に分解される(MPO-Cl)。単量体MPOは、急性炎症患者の血漿において検出されることが報告された[12]。MPOの構造的および機能的特性に対するMPOの二量体化の影響は十分に理解されていない。
【0107】
この研究において、本発明者は、卵巣癌細胞がMPOの単量体形態のみを発現し、これによりこの疾患の早期と後期のステージが区別されたことを示した。この新発見は、MPOがこの疾患の早期検出に決定的に必要とされるバイオマーカーであることを強く示している。
【0108】
B. 方法
1. 患者集団:
事前調査に参加するよう招待された、Karmanos Cancer Instituteの婦人科腫瘍学部門を受診しているEOCの疑いがある患者から血清(n=15)を収集した。患者らはインフォームドコンセント(Wayne State University Human Subject Committeeプロトコル番号027201MP2E)を行い、処置(化学療法または手術)前に血液試料を提供することに同意した。症例は、早期から後期ステージの診断および様々な組織学を含む。ステージIを、それ以外のステージIIからIV(II~IV)との比較上、早期ステージとする。
【0109】
良性対照:Cooperative Human Tissue Network(CHTN)を通じて良性婦人科状態を有する患者由来の血清(n=14)を取得した。これらには、卵巣嚢腫、腹膜炎(炎症)、または子宮筋腫と診断された女性が含まれる。
【0110】
健常対照血清(n=8)を、現地の地域組織を通じて募集した女性から調達した。これらの女性は、健康であり、癌の病歴を有していなかった。基本情報、例えば年齢、人種、および存在する場合は良性婦人科状態の証拠を、インフォームドコンセント時に得た。このグループの年齢および人種的構成は、卵巣癌および良性状態を有する患者と重複しているが、明確には対応させていない。
【0111】
2. 細胞株および細胞培養物:
ヒト細胞株:MDAH-2774、OvCar-3、OV-21、OV-90、TOV112D(Wayne State University, Detroit, MichiganのGen Sheng Wu氏からの好意の提供)、SKOV-3、A2780、CRL-1671、BXPC-3、COLO-3、DLCL-2、およびHTB-4をAmerican Type Culture Collection(ATCC, Manassas, VA)から入手した。細胞株を、製造元のプロトコルに準拠したそれら各々の培地を含む75cm2細胞培養フラスコ(Corning Incorporated, Corning, NY)中で培養した。培地に、37℃、5% CO2下で10%熱不活性化FBSを含む100 U/mLペニシリンおよび100μg/mLストレプトマイシンを補充する。培養培地を2日ごとに交換した。各実験のために、細胞を60 mm x 15 mm細胞培養皿に、1皿あたりおよそ2X106細胞の細胞密度でプレートし、RNAおよびタンパク質の収集前にさらに24時間培養した。すべての実験を3連で行った。
【0112】
3. ミエロペルオキシダーゼ酵素免疫測定アッセイ:
ELISAを行う前に、二量体MPOの痕跡を取り除くSephacryl S-200 HR上でのゲルろ過によりすべての試料から単量体MPOを精製した。Myeloperoxidase Enzyme Immunometric Assay Kit(Assay Designsカタログ番号900-115)。本発明者は、本発明者の研究室において定着しているアッセイであるAssay Designs' human Myeloperoxidase Enzyme Immunometric Assay (EIA)キットを製造元のプロトコルにしたがい用いた。簡潔に述べると、このキットは標準または試料中のMPOに結合するマイクロタイタープレートに固定されたMPOに対するモノクローナル抗体を使用する。ネイティブMPO標準がこのキットに提供される。MPOに対するウサギポリクローナル抗体を添加してプレート上に捕捉されたMPOに結合させ、その後にこのポリクローナルMPO抗体に結合するセイヨウワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートされたヤギ抗ウサギIgGを添加する。酵素反応を停止させ、生じた色を450 nmで読み取る。標準または試料のいずれにおいても、測定された光学密度はMPOの濃度に正比例する。ヒトMPOの濃度として定義されるアッセイの感度は0.019 ng/mLと決定された。
【0113】
4. MPOに対するリアルタイム逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR):
以前に記載された方法にしたがいフェノールおよびGITC/トリゾールの単相溶液を用いて卵巣癌細胞株から総RNAを単離した[24~27]。RNA試料の定量を、Nanodrop分光光度計(Thermo Fisher Scientific, Waltham, Massachusetts)を用いて行った。
【0114】
相補的DNA(cDNA)の調製を以下のようにして行った:1μgの総RNA、1μgのオリゴ(dT、500μg/ml;Invitrogen, Waltham, MA)および1μlの10 mM dNTPミックス(Invitrogen, Waltham, MA)を含む20μlの反応ボリュームを65℃で5分間加熱し、その後直ちに氷上で冷却した。4μlの5x First Strand Buffer、2μlの0.1M DTT、および1μlのRNaseOut Recombinant Ribonuclease Inhibitor(40ユニット/μl;Invitrogen, Waltham, MA)を含むマスター混合物を添加し、42℃で2分間インキュベートした。1μl(200ユニット)のSuperScript II(Invitrogen, Waltham, MA)を各反応物に添加し、42℃で50分間インキュベートした。最後に、70℃で15分間加熱することにより酵素を不活性化させた。
【0115】
定量RT-PCRを、Express SYBR Green RT-PCRキット(Life Technologies, Grand Island, New York)およびCepheid 1.2f Detection System(Cepheid, Sunnyvale, CA)を用いて行った。25μlの総反応ボリュームには、12.5μlの2x QuantiTect SYBR Green RT-PCRマスターミックス、3μlのcDNAテンプレート、および各遺伝子の一部分を増幅するよう設計された各0.2μMの標的特異的プライマーが含まれた。逆転写されたcDNAのリアルタイムRT-PCR増幅に最適なオリゴヌクレオチドプライマーは、ソフトウェアプログラムOligo 4.0(National Bioscience Inc., Plymouth, MN)を活用して選択した。MPO(NM_000250)に関して利用した配列は以下の通りである:センス(5'-3')
およびアンチセンス(3'-5')
と共に79 bp標準。β-アクチン(NM_001101)に関しては:センス(5'-3')
およびアンチセンス(3'-5')
と共に79 bp標準。PCR反応条件を以下のようにプログラムした:初期サイクルを95℃で60秒間行い、その後に95℃で15秒間の変性、60℃で63秒間(MPOの場合)および58℃で10秒間(β-アクチン)のアニーリングを35サイクル行った。この後に、生産物の合成を完了させるために、72℃で30秒間の最終サイクルを行った。
【0116】
各標的転写物を定量するため、標準プラスミド(Invitrogen, Waltham, MA)の連続希釈物を用いて標準曲線を作成した。PCR後、単一ピークとしてのPCR産物の特異度を検証するために融解曲線分析を行った。すべての実験において、テンプレートを除くすべての反応成分を含む対照が含まれた。その後、mRNAの量をハウスキーピング遺伝子であるβ-アクチンの存在量に対して標準化した。
【0117】
内部標準としてβ-アクチンを使用することの妥当性およびβ-アクチンの量の変化を評価するため、mRNAを外部標準として試験した。その後、mRNAの標準化された値を対照におけるそれらで割り算した。対応のないスチューデントt検定をグループ比較に用いた。
【0118】
5. 受信者操作特性(ROC):
本発明者は、受信者操作特性(ROC)曲線および信頼帯を用いて診断能を推定した[10,21]。ROC曲線は、潜在的カットオフの全範囲における連続的なバイオマーカーの感度および特異度の評価を可能にする。
【0119】
6. ウェスタンブロット:
総タンパク質を、様々なヒト卵巣癌細胞(SKOV-3、A2780、OvCar-3、MDAH-2774、およびTOV112D)、卵巣癌患者由来の血清、ならびに健常ボランティアから単離した。総タンパク質(50 ug)を非還元ウェスタンブロットに供し、MPOを以前に記載されたようにしてモノクローナルMPO抗体(Santa Cruz Biotechnology, Dallas, TX)を用いて検出した[7,15,20,28]。
【0120】
7. 統計分析:
データを、ウィンドウズ版SPSS 19.0(SPSS for Windows, Chicago, IL)を用いて分析した。データを、スチューデントニューマン・コイルス事後比較を用いる一元配置ANOVA(分散分析)を用いて分析した。すべての分析において、p<0.05の有意性値を統計的に有意であるとみなした。
【0121】
C. 結果
この研究において、本発明者は、卵巣癌由来の細胞における単量体形態のMPOのみの存在を示した(
図2)。卵巣癌患者由来の血清には単量体および二量体の両方の形態のMPOが存在し、単量体MPOレベルが顕著に高かった(
図2)。しかし、健常対照の血清においては二量体MPO形態のみが検出された(
図2)。さらに、MPOの発現は卵巣癌細胞に特有であり、様々な他のタイプの癌細胞株では検出されなかった(
図3)。より重要なことに、本発明者は、早期ステージ卵巣癌、健常対照、および炎症性良性婦人科障害、例えば腹膜炎および筋腫の間を区別する血清単量体MPOの能力を示した(
図4、5、p<0.05)。さらに、血清単量体MPOは、早期ステージ卵巣癌を後期ステージ卵巣癌から区別した(
図4、5、p<0.05)。
【0122】
D. 考察
本発明者の研究室は、20年以上にわたり、卵巣癌の病因における酸化ストレスおよび炎症の役割を研究している。実際、本発明者はミエロペルオキシダーゼがすべての卵巣癌細胞株および組織に存在し、正常卵巣組織においては最低限しか検出されないまたは存在が検出されないことを最初に示した[23]。さらに、MPOと、鍵となる酸化促進酵素である誘導性一酸化窒素シンターゼ(iNOS)の間のクロストークは、EOC細胞におけるアポトーシス抑制の重要な機構であることが示された[23]。この機構において、MPOは、カスパーゼ-3のS-ニトロシル化を増加させてその活性を阻害し、それによって卵巣癌の特徴であるアポトーシスを抑制する不安定なニトロソ化種であるニトロソニウムカチオン(NO+)を生成する一電子基質として、iNOSにより生産される一酸化窒素(NO)を利用する[2]。
【0123】
本発明者は以前に、少数の患者において卵巣癌の早期検出および予後におけるバイオマーカーとしての血清MPOおよび遊離鉄の組み合わせの潜在的利益を示した[9]。今日まで、MPOは卵巣癌の早期検出および予後のバイオマーカーとして確証されていない。この研究において、本発明者は、試験したすべての卵巣癌細胞においてMPOがその単量体形態で存在することを示した(
図2)。この現象の理由は不明のままであり、現在調査中である。可能性のある説明は、卵巣癌細胞を特徴づける固有の酸化環境の増進によるものである[13,29]。単量体形態のMPOが卵巣癌患者の血液において検出されるが健常個体においては検出されないという事実が、この疾患のバイオマーカーとしてのその潜在的用途を強く示している。実際、これらの結果は、単量体MPOが健常状態と良性炎症性状態、早期ステージ、および後期ステージ卵巣癌の間を有意に区別することを明確に示した(
図4、5)。
【0124】
米国女性における卵巣癌の低い有病率のために、卵巣癌診断またはスクリーニング検査は、閉経後女性の一般集団において慣用的に使用できるようになる前に99.6%の最低特異度を有さなければならない[6,17]。そのような検査は、卵巣癌スクリーニング検査で擬陽性であった患者に対する手術の合併症に関連し得る潜在的罹患率および死亡率を相殺し得る[6,17]。卵巣癌スクリーニング検査はまた、高い感度および適切な陽性予測値(PPV)を有するべきである[17,18]。一般集団における卵巣癌に関する慣用的なスクリーニングは、伝統的なスクリーニング方法が十分に高感度または特異的でないという理由から推奨されない[1]。したがって、この疾患の診断および処置を改善するための手段として、早期検出のための高感度かつ特異的な方法の開発は優先事項であった。
【0125】
結論として、MPOの供給源を推測し、したがって卵巣癌関連MPOと炎症関連MPOの間を区別する手段として単量体血清MPOレベルを使用するという技術思想は、新規である。卵巣腫瘍の小集団において決定されたこの発見がより大きな集団において確認されれば、価値のあるバイオマーカーが同定されるであろう。この研究からの結果は、MPOがこの疾患の早期検出のために決定的に必要とされるバイオマーカーであることを強く示している。
【0126】
本明細書で開示され特許請求される方法はすべて、本開示に照らして、過度の実験を行うことなく構築および実施することができる。本発明の組成物および方法は好ましい態様の観点で記載されているが、本発明の技術思想、精神および範囲から逸脱することなく本明細書に記載される方法に対しておよび方法の工程においてまたは工程の順序においてバリエーションが適用され得ることが当業者に明らかであろう。より具体的に、同一または同様の結果を達成しつつ、化学的および生理学的の両面で関連する特定の薬剤で本明細書に記載される薬剤を置き換えられ得ることが明らかであろう。当業者に明らかなすべてのそのような同様の置換および改変はすべて、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の精神、範囲および技術思想の範囲内であるとみなされる。
【0127】
参考文献
以下の参考文献および本明細書を通じて引用される参考文献は、それらが本明細書に示されているものを補う例示的な手順または他の詳細を提供する範囲で、個別に参照により本明細書に組み入れられる。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】