(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】車両衝突の間にエネルギーを吸収する犠牲複合材部品
(51)【国際特許分類】
F16F 7/12 20060101AFI20240403BHJP
B62D 21/15 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
F16F7/12
B62D21/15 A
B62D21/15 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565259
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(85)【翻訳文提出日】2023-11-30
(86)【国際出願番号】 EP2022061096
(87)【国際公開番号】W WO2022229216
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596090720
【氏名又は名称】ハチンソン
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレンボワ、ガイ
【テーマコード(参考)】
3D203
3J066
【Fターム(参考)】
3D203AA01
3D203CA04
3D203CA32
3D203CA40
3D203CA43
3D203CA63
3D203DB05
3J066AA30
3J066BA03
3J066BB01
3J066BC01
3J066BD07
3J066BF02
3J066BF03
(57)【要約】
本発明は、車両が衝撃物体2と衝突したときに放出されるエネルギーを吸収する犠牲複合材部品1、10、100に関し、前述の部品は、複数のセル3、30、300の組立体からなり、各セルは、前述のセルの第1端6、60、600と第2端7、70、700とを接続する壁5、50、500を有し、前述の部品中への衝撃物体の突入の方向8が前述の第1端から前述の第2端に向かって通っている。本発明の前述の犠牲複合材部品は、各セルの周囲壁が、衝撃物体の突入の方向において、前述のセルの前述の第1端から前述の第2端に向かって減少する厚さeを有することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が衝撃物体(2)と衝突したときに放出されるエネルギーを吸収する犠牲複合材部品(1、10、100)であって、前記部品は、複数のセル(3、30、300)の組立体からなり、各セル(3、30、300)は、前記セル(3、30、300)の第1端(6、60、600)と第2端(7、70、700)とを接続する壁(5、50、500)を有し、前記部品(1、10、100)中への衝撃物体(2)の突入の方向(8)が、前記第1端(6、60、600)から前記第2端(7、70、700)に向かって延び、
各セル(3、30、300)の前記周囲壁(5、50、500)が、前記衝撃物体(2)の突入の方向(8)において、前記セル(3、30、300)の前記第1端(6、60、600)から前記第2端(7、70、700)に向かって減少する厚さ(e)を有していることを特徴とする、犠牲複合材部品(1、10、100)。
【請求項2】
前記犠牲複合材部品を構成する前記セルの各々が内部断面を有し、前記内部断面の表面積が、前記衝撃物体(2)の前記突入の方向(8)において、前記セル(3、30、300)の前記第1端(6、60、600)から前記第2端(7、70、700)に向かって増大していることを特徴とする、請求項1に記載の犠牲複合材部品(1、10、100)。
【請求項3】
前記セル(3)の前記断面が、略円形であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の犠牲複合材部品(1)。
【請求項4】
前記組立体の円形断面の各セル(3)が、パーティションの形態の接続要素(9)によって少なくとも1つの隣接セル(3)に接続されており、前記パーティションの厚さ(e’)が、前記衝撃物体(2)の前記突入の方向(8)において減少していることを特徴とする、請求項3に記載の犠牲複合材部品(1)。
【請求項5】
前記セル(30、300)の前記断面が多角形であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の犠牲複合材部品(10、100)。
【請求項6】
前記セル(30)の前記断面が正方形又は長方形であることを特徴とする、請求項5に記載の犠牲複合材部品(10)。
【請求項7】
前記セル(300)の前記断面が六角形であることを特徴とする、請求項5に記載の犠牲複合材部品(100)。
【請求項8】
前記衝撃物体(2)の前記突入の方向(8)を考慮して、下部ソール(11)を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一項に記載の犠牲複合材部品(1、10、100)。
【請求項9】
前記衝撃物体(2)の前記突入の方向(8)から見たときに、前記セル(3、30、300)から張り出している接続バー(12)を有することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一項に記載の犠牲複合材部品(1、10、100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が何らかの障害物と衝突するときに放出されるエネルギーを吸収する、犠牲要素とすることを意図された複合材部品に関する。
【背景技術】
【0002】
物体と車両の衝突、又はクラッシュの時に、車両内の人及び/又は物体を保護することを可能にする部品の機能は、保護しようとする人及び/又は物体によって耐えられる動的な影響を制限しながら、保護しようとする領域の外部で、前述の衝突の結果として生ずる損傷を局在化することを可能にする犠牲要素であることを含む。
【0003】
エネルギーを吸収する犠牲複合材部品中へのボディの突入(penetration)は、衝突の結果として生ずる損傷の間に発生する、突入力の下で起こる。
【0004】
変形の間の力の発生の方則は、犠牲複合材部品の重要特性である。
【0005】
実際に、衝突時に前述の部品が崩壊するときに生成される力は、衝突に耐えている人に対する加速度に、又は保護しようと願う物体に対する力に変換される。
【0006】
他方、部品中へのボディの突入深さは、全体的な寸法制約によって常に制限されている。
【0007】
ここで、ηは、クラッシュ制御システムの有効性を示す。この有効性ηは、クラッシュの間に犠牲部品によって吸収されるエネルギーであるEと、理論的犠牲部品によって理想的に吸収され得るエネルギーに対応するEiとの間のパーセント比に対応する。
【0008】
吸収されたエネルギーは、変形の間の作用力の積分そのもの、すなわち作用力-変形曲線の下の表面積である。したがって、クラッシュ制御システムの有効性ηは、実際に吸収されたエネルギーを表わす曲線Eの下の表面積と、理想的に吸収され得るエネルギーEiとの比そのものである。
【0009】
所与の最大力Fmaxi及び最大変形dmaxiに対して、理想的に吸収され得る理論的エネルギーは、Ei=Fmaxi×dmaxiである。
【0010】
現在の従来技術において、円形又は六角形のタイプでもよい、並置されたセルの形態の一定の崩壊断面によって、車両クラッシュの発生の場合にエネルギーを吸収する組立体が知られている。そのような装置は、「圧壊組立体(crush assemblies)」と呼んでもよい。
【0011】
これらの組立体は、金属材料、特に、アルミニウム又は鋼で製作することができる。
【0012】
アルミニウム・セルの組立体は、衝突の場合に電気自動車のバッテリを保護する周囲保護要素を形成することが知られている。
【0013】
このタイプの組立体におけるエネルギー吸収の原理は、それを構成するセルの縦方向の折畳み(folding)である。
【0014】
しかしながら、そのような組立体の短所は、それらが、ストロークが約3分の1低下する、全体寸法で折り畳まれた最終形状に結果としてなることである。
【0015】
これらの組立体の別の短所は、衝撃子と衝撃を受けた構造との間の接触表面の増大のために、円筒形衝撃子に対する力応答が、衝撃の間に急激に増大し、このことが、最終的に非常に低いエネルギー有効性を生じることである。
【0016】
米国特許出願公開第2019/263342号から、ポリマーと強化ファイバとから製作された複数の単位エネルギー吸収要素を組み入れた、コンパートメントを有する、車両用の上述のタイプのエネルギー吸収組立体が知られている。
【0017】
組立体のこれらの要素の各々は、第1端と第2端の間に延びる細長い円筒形の中空構造によって形成されており、この構造は、断面が円形であり、したがって円錐台形セルの組立体を形成している。
【0018】
この吸収組立体において、組立体の各セルの円筒形の中空構造は、前述の構造の第1端における第1の直径と、その第2端における第2の直径とによって定義可能であり、前述の第2の直径は、前述の第1の直径よりも小さくすることが可能であり、同時に第2端は、車両に対して第1端の外側に配置される。
【0019】
言い換えれば、衝突の場合に、第1端よりも直径の小さいセルの第2端は、セルの第1端が同様に圧壊される前に、圧壊され、その結果として衝撃は、セルの第2端からその第1端に向かって伝播する。
【0020】
ここで、円錐台形セルの壁の厚さは、前述のセルの縦方向軸に沿って可変にすることができることにも留意すべきである。この場合に、セルの第1端のレベルにおいて、前述のセルは、衝突の場合にそのレベルにおいて圧壊が開始される第2端の厚さよりも大きい厚さを有する。また、厚さが可変であり、第1端から第2端に向かって減少する、というこの仮説においては、セルの直径は、セルの第1端から、衝撃が開始される第2端に向かって増大する。
【0021】
しかしながら、そのような解決策には、衝撃ボディとの接触領域のレベル又は、セルの底部(root)のレベルにおいて、セルの壁が破断するリスクがある。さらに、セルの屈曲保持(flexural hold)はさらに改善することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/263342号
【発明の概要】
【0023】
本発明の目的の1つは、現行のデバイスと比較して有効性の向上した、衝撃の間にエネルギーを吸収する犠牲複合材部品を提案することである。
【0024】
したがって、本発明による犠牲複合材部品は、突入移動の限界内で、且つ超えてはならない最大力限界未満で、吸収され得るクラッシュ・エネルギーを大幅に増大させることを可能にする。
【0025】
より詳細には、本発明の目的は、衝突の間に人又は物体に対して、固定された柱(post)又は樹木との最も激しい相互作用の1つが発生する、特に自動車の範囲における衝突又はクラッシュの間に、その挙動の有効性を最適化することのできる犠牲複合材部品の形態の解決策を提案することである。
【0026】
本発明の目的の1つは、この目的が本発明を制限することなく、電気自動車におけるバッテリ・パック内のバッテリの保護のための、そのような部品の製造を可能にすることである。
【0027】
衝撃を受けた構造(自動車)と、(固定されたシャフト、又は固定された柱の形態の)概して円筒形状の衝撃子ボディ(impactor body)との間の相互作用は、次のとおりである。すなわち、2つの要素の間の衝突時の、接触の開始において、前述の円筒形ボディと構造の間の共通表面積は、衝撃子要素が衝撃を受けた構造中に沈み込むにつれて、この共通表面積が次第に増大する前には、非常に限定されている。
【0028】
2つの要素の間のこの特有の相互作用は、突入量の関数として、力発生の法則を生じさせ、この力発生は急激に増大し、結果として、クラッシュ制御システムの非常に低い有効性η、言い換えると、衝撃を受けた構造による非常に少ないエネルギー吸収を生ずる。
【0029】
特にこの有効性を向上させるために、本発明は、犠牲複合材部品中への衝撃子ボディの突入力を制御することを可能にする実施例を提案するものであり、この突入力は、円筒形である、クラッシュ試験に使用される衝撃子の特有の性質にもかかわらず、衝撃の持続時間を通して可能な限り一定でありながら、最大でなくてはならない。
【0030】
この目的のために、本発明は、より詳しくは、車両が衝撃物体と衝突するときに放出されるエネルギーを吸収する犠牲複合材部品に関し、前述の部品は、複数のセルの組立体からなり、各セルは、前述のセルの第1端と第2端を接続する壁を有し、衝撃物体の前述の部品中への突入の方向が、前述の第1端から前述の第2端に向かって延びている。
【0031】
本発明による前述の部品は、各セルの周囲壁が、衝撃物体の突入の方向において、前述のセルの前述の第1端から前述の第2端へと減少する厚さ(e)を有することを特徴とする。
【0032】
特定の実施例によれば、
-本発明の犠牲複合材部品を構成するセルの各々は、衝撃物体の突入の方向において、前述のセルの第1端から第2端に向かってその表面積が増大する、内部断面を有する;
-セルの断面は概して円形であり、この場合には、有利には、組立体の円形断面の各セルは、パーティションの形態の接続要素によって、少なくとも1つの隣接するセルに接続されており、その厚さ(e’)は、衝撃物体の突入方向において減少する;
-セルの断面は、多角形、好ましくは正方形若しくは長方形、又は六角形である;
-複合材部品は、衝撃物体の突入の方向を考慮して、下部ソール(lower sole;底部分)、及び/又は衝撃物体の突入の方向にセルを張り出させている接続バーを有する。
【0033】
例示用の、非限定の実例としてのみ与えられる実施例に言及する、以下の説明の過程において、本発明のその他の目的と長所は、明白になるであろう。
【0034】
この説明は、以下の添付の図面を参照すれば、理解が容易になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、概して円筒形の衝撃物体の、本発明による複合材犠牲部品中への突入を模式的に示す断面図であり、前述の部品は、複数のセルを有し、各セルは、壁によって互いに接続された第1端と第2端とを有し、壁の厚さは、前述の部品中への衝撃物体の突入の方向において減少し、この突入の方向は図において矢印によって記号化されている、図である。
【
図2】
図2は、一方で、この図の左に、本発明の犠牲部品を構成することのできる、単位セルの特定の実施例を、模式的に示しており、前述のセルは、実質的に円形の断面と、点線で示された周囲壁とを有し、その厚さは、矢印で記号化された衝撃物体の突入の方向において減少しており、また、他方で、この図の中央に、第2のセルへの接続要素の部分を備える同一のセルを示し、その厚さが衝撃物体の突入の方向において減少するのが示されており、さらに、図の右に、接続要素によって互いに接続された2つのユニット・セルを有するモジュールを示す、斜視図である。
【
図3】
図3は、2つの対称面における断面を使用して、
図2の右に示されたモジュールの概略図であり、前述のモジュールは、接続要素によって互いに接続された2つのセルを有する、図である。
【
図4】
図4h、複合材部品の第1の特定の実施例を模式的に示す斜視図であり、前述の実施例は、第1の変形形態において、細長い梁の形態で配置された、その断面が実質的に円形である、複数の単位セルの連結によって形成され、2つの隣接するセルが、接続要素によって互いに接続されている、図である。
【
図5】
図5Aは、(図の左に)本発明の部品を構成することのできる単位セルの特定の実施例を模式的に示す斜視図であり、前述の単位セルは、直交する方向に配置された接続要素の2つの部分を有し、セルの周囲壁の厚さと、接続要素の厚さとは、衝撃物体の突入の方向において常に減少しており、さらに、図の右に、互いに接続された4つのこれらのユニット・セルで構成されたモジュールを模式的に斜視図で示し、各セルは、直交面に置かれた2つの接続要素によって、それに隣接する2つのセルに接続されている、図である。
【
図6】
図6は、複合材部品の第2の変形形態を模式的に示す斜視図であり、前述の部品は、その長さ及び幅が変化できる長方形のボックスを形成するように配置された、その断面が実質的に丸形の複数のセルの組合せによって形成されている、図である。
【
図7】
図7は、
図4に示されるものと類似の細長い梁の形態の犠牲複合材部品を模式的に示す斜視図であり、前述の部品は、衝撃物体の突入の方向を考慮して、それに付加された下部ソールを備える、図である。
【
図8】
図8は、
図7のそれと類似する犠牲複合材部品を模式的に示す斜視図であり、前述の部品には、実施例の第1の実例による、1つの環が1つのセルから張り出している複数の直線的に隣接する環の形態の、セルから張り出す接続バーが追加的に組み込まれている、図である。
【
図9】
図9は、
図7のそれと類似する犠牲複合材部品を模式的に示す斜視図であり、前述の部品には、実施例の第2の実例による、セルから張り出した、形状が長方形である接続バーも組み込まれている、図である。
【
図10】
図10は、概して正方形断面の単位セルを、図の左に、模式的に示す斜視図であり、前述の単位セルは、犠牲複合材部品の第2の特定の実施例を形成するように、他の類似のセルと連結されており、ここにおいて、概して正方形の断面の複数の並置されたセルの連結によって形成された、直線状梁の形態の、その第1の変形形態が、図の右に示されており、その周囲壁厚さは、図の中央に単位セルの断面で示されるように、衝撃物体の突入の方向において減少する、図である。
【
図11】
図11は、本発明の犠牲複合材部品の第2の実施例の第2の変形形態の断面を示す模式図であり、前述の変形形態は、長方形状のボックスを形成するように、その1つが
図10に示されている複数の直線状梁を有し、セルの壁厚は、衝撃物体の突入の方向に明らかに減少している、図である。
【
図12】
図12は、図の左に、概して六角形断面の単位セルを模式的に示す斜視図であり、前述の単位セルは、犠牲複合材部品の第3の特定の実施例を形成するように、他の類似のセルと連結させることが意図されており、ここにおいて、断面が概して六角形の複数の並置セルの連結によって形成された直線状梁の形態の、前述の第3の実施例の第1の変形形態が、図の右に示されており、その周囲壁厚さは、図の中央に単位セルの断面図に示されているように、衝撃物体の突入の方向において減少している、図である。
【
図13】
図13は、本発明の犠牲複合材部品の第3の実施例の第2の変形形態の断面を示す模式図であり、前述の変形形態は、概して長方形状のボックスを形成するように、その一つが
図12に示されている複数の直線状梁を有し、セルの壁厚は、衝撃物体の突入の方向において明らかに減少している、図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
これらの図面を参照すると、本発明は、衝撃物体2は任意の形状のものでよいが、樹木又は柱などの、概して円筒形の形状であり得る、
図1に示されている、衝撃物体2と車両の衝突時において放出されるエネルギーを、最適化された比率で、できるだけ多くを吸収するように、特に意図された犠牲複合材部品1、10、100に関する。
【0037】
その名前が示すように、本発明に準拠する部品1、10、100は、衝撃物体2との衝突を経験する車両の内部に位置する人及び所有物に対して最適の安全を提供する犠牲要素であることが意図されている。
【0038】
より詳細には、前述の犠牲複合材部品1、10、100の機能は、衝撃を受けた車両内の人又は物体が被りやすい、動的な影響を制限しながら、衝突の結果生ずる損傷を、保護される必要のある車両の領域の外部に位置させることを可能にすることである。
【0039】
一般的に、本発明の前述の犠牲複合材部品1、10、100は、縦方向軸4を画定する細長い中空構造からなる、複数のセル3、30、300の組立体で構成され、前述の縦方向軸は、
図3により詳しく表わされている。
【0040】
非常に好ましくは、本発明の前述の部品1、10、100のセル3、30、300は、樹脂内に埋め込まれた強化繊維で構成された複合材料で製作される。
【0041】
複合材料の実現は、本発明による部品の製造において特に関心が高い。そのような複合材セル3、30、30のクラッシュのし方は、圧縮下での複合材料の局所破壊によるものである。このことは、一方で、特に、金属壁の折畳みに使われる曲げ応力よりも大きい、高いレベルの負荷を達成し、他方で、利用可能な突入移動を使い果たすことを可能にする。この点について、突入によって崩壊する材料の体積は、ショックの間に変わる。
【0042】
本発明において、我々は、以下でより詳細に記述されるように、複合材料を使用することの長所を3次元形状と関連づけ、特に円筒形ボディの形態である衝撃ボディ2の突入力を制御することを可能にすることによって、複合材料を使用することの長所を使用することをより詳しく探索する。
【0043】
すなわちセル3、30、300は、その縦方向軸4に直角の方向において可変の断面を有することができ、その実施例の、特に丸形、正方形又は六角形の断面での、いくつかの好ましい実例が、本明細書において以下により詳細に記載される。
【0044】
本発明の犠牲複合材部品1、10、100を得るための組立体を構成するセル3、30、300の各々は、前述のセル3、30、300の第1端6、60、600から、前述の第1端の反対の第2端7、70、700に向かって延びる、周囲壁5、50、500を有する。
【0045】
ここで、本発明は、車両中への、したがって犠牲複合材部品1、10、100中への、衝撃物体2の突入の方向8を考慮し、この方向8が、添付の図面の図において、矢印によって記号化されており、この矢印は、前述の部品1、10、100を構成するセル3、30、300の前述の第1端6、60、600から前述の第2端7、70、700に向かって通っていることに留意すべきである。
【0046】
本発明の犠牲複合材部品1、10、100に特有の特徴によれば、その組立体が前述の部品1、10、100を構成することを可能にする、セル3、30、300の各々の周囲壁5、50、500は、突入の方向8に、セル3、30、300の各々の第1端6、60、600から第2端7、70、700に向かって、各セル3、30、300の中空構造の縦方向軸4に沿って減少する、厚さeを有する。
【0047】
厚さeにおけるそのような変化が、添付の図において、いくつかの場合には、セル3、30、300を斜視図で示す図において点線で示されており、厚さeにおけるそのような変化は、
図1、3、11及び13においてより詳しく見ることができる。
【0048】
より詳細には、セル3、30、300の各々の周囲壁5、50、500の第1端6、60、600の第1の厚さe1、及び前述の周囲壁5、50、500の第2端7、70、700の第2の厚さe2を定義することができる。
【0049】
したがって前述の第2の厚さe2は、前述の第1の厚さe1よりも小さく、セル3、30、300の各々の周囲壁5、50、500の厚さeは、有利には、前述のセル3、30、300の縦方向軸4に沿って直線的に変化する。
【0050】
セルの周囲壁の第1の厚さe1及び第2の厚さe2は、e1はe2よりも大きく、添付の図面の
図1及び
図3により詳細に示されている。
【0051】
衝撃物体2の突入の方向8においてその縦方向軸4に沿ってe1からe2まで減少する、セル3、30、300の壁の厚さeの変化のおかげで、応力がかけられる、複合材部品1、10、100の前述のセル3、30、300の交差部、言い換えると、平坦な衝撃子(図示せず)の場合には、物体2と接触するセル壁表面は、突入量と共に低下する。
【0052】
図1に示されるように、そのような犠牲複合材部品1、10、100が円筒形ボディ2によって衝撃を受けるとき、後者の円筒形表面と前述の部品1の間の交差部は、突入量と共に少ししか変わらない接触断面Sを生ずる。このことは、それによって構成されているセル3、30、300の周囲壁の厚さeの低下による、前述の部品1、10、100の断面の低下が、衝撃領域が方向8に沈むときの衝撃領域の増加を補償することによって説明される。
【0053】
図1において、円筒形衝撃物体2が点線で示されており、これに対して、前述の物体2の円筒形表面と複合材部品1のセルの壁との間の交差部が黒の実線で示されている。
【0054】
犠牲部品1、10、100の複合材料が一定の圧縮応力において崩壊するので、復元される力は、接触断面に比例し、したがって、少ししか変わらず、このことは、高い有効性係数ηを有すること、言い換えると、衝突時に放出される、エネルギーの特に高い比率が本発明の部品1、10、100によって吸収されることを可能にする。
【0055】
特に好ましくは、本発明の別の有利な特有性による、セル3、30、300の中空構造の縦方向軸4に沿った、厚さeの変化に加えて、犠牲複合材部品1、10、100を構成するこれらのセル3、30、300の各々は、前述のセル3、30、300の縦方向軸4に直角の方向に、内部断面を有し、内部断面の表面は、前述のセル3、30、300の第1端から前述の第2端に向かって、言い換えると、衝撃物体2の突入の方向8に、増大する。
【0056】
すなわち、
図2から
図9を参照して以下により詳細に記述される実施例の実例において、複合材部品1のセル3が円形断面を有し、前述のセル3の直径は、前述の部品1中への衝撃物体2の突入の方向8に沿って増大する。
【0057】
言い換えると、セル3は、セル3の第1端6に対応する、頭部の直径よりも大きい直径の、セル3の第2端7に対応する、基部、又は底部を備える、概して円錐状にすることができる。
【0058】
このタイプの幾何学形状は、離型するのが非常に容易であり、低コストで、円錐状セル3を備える犠牲複合材ボックス1を製造することを可能にする。
【0059】
そのような実施例において、セル3、30、300の壁5、50、500の厚さeは、頭部6、60、600から底部7、70、700へと減少し、この厚さeにおける変化は、断面Sが、方向8において、xと表記されることのある突入量と共に減少する。低下した厚さeは、より大きな表面積、特に、より大きい直径によって、底部7、70、700において補償される。結果として、断面慣性は、値xと共に増大し、この特有性は、複合材部品1、10、100に良好な屈曲保持を与えることを可能にする。これは、特に、衝撃の方向が完全に軸方向でないときに、底部領域において、第2端7、70、700のレベルにおける破壊を防止する。
【0060】
次に
図2から
図9を参照すると、本発明による犠牲複合材部品1の第1の特定の実施例が以下に記述され、ここにおいて前述の部品は、複数の単位セル3の連結によって形成され、前述の単位セルの1つが、実質的に円形の断面を有して、
図2の左側に示されており、点線で示された、その周囲壁5は、衝撃物体2の突入の方向8において、e1からe2に(e1>e2)減少する厚さを有する。
【0061】
この実施例において、組立体における円形断面の各セル3は、パーティションの形態の接続要素9を用いて、それに隣接する少なくとも1つの類似のセル3に接続され、それの一部が、
図2の中央に断面で示されており、そのようなパーティション9を用いて互いに接続されて、モジュールを形成している、2つのセル3が、前述の図の右側に示されている。
【0062】
セル3の組立体は、断面が丸形の前述のセルが、互いに直接的に接触していないので、不連続と記述することができる。
【0063】
特に好ましくは、
図3の右側に特に示されるように、2つの隣接するセル3を接続するパーティション9の厚さe’は、前述のセル3の周囲壁5の厚さeと同様に、部品1中への衝撃物体2の突入の方向8において減少している。
【0064】
次に、
図4を参照し、この図は、本発明による複合材部品1の第1の特定の実施例を模式的に斜視図で示し、ここにおいて、前述の実施例は、第1の変形形態において、細長い梁の形態に配置された、断面が実質的に円形である複数の単位セル3の連結によって形成されている。
【0065】
この変形形態において、2つの隣接するセル3は、各セル3の周囲壁5の厚さeと同様に、好ましくは方向8において減少する厚さe’を有するパーティション9で構成された接続要素によって互いに接続されており、同時に、有利には、これらのセル3の直径はこの方向8において増大する。
【0066】
ここで、
図5及び
図6に示された図解によれば、円錐状セル3に対して上述したものと類似する接続モードを、直交方向にすることが可能であり、このことは、必要に応じて異なる長さ及び幅の犠牲複合材部品1を製造することを可能にすることに留意すべきである。
【0067】
例えば、単位セル3は、
図5の左側に示されるように、直交方向に配置された接続要素の2つの部分9、9’を有してもよく、セルの周囲壁の厚さ、及び接続要素の各部分の厚さが、衝撃物体の突入の方向8に常に減少している。
【0068】
次いで、これらの単位セル3の4つの組合せを使用して、
図5の右に示されている、互いに接続されたこれらのセル3の4つで構成された、モジュールを形成することができ、各セル3は、直交面に置かれた2つの接続要素によって、それに隣接する2つのセル3に接続されている。
【0069】
すなわち、本発明の第1の実施例の第2の変形形態において、その長さ及び幅が変化してもよい、
図6に示されるような長方形ボックス又は正方形ボックスを形成するように配置された、断面が実質的に丸形である複数のセル2の組合せによって形成された、複合材部品1を得ることが可能である。
【0070】
そのような変形形態において、セル3の各々は、前述のセルが、それに隣接する2つ、3つ、又は4つのセルに接続されて長方形ボックスを形成することを可能にするように、パーティションの形態の接続要素の少なくとも2つ、又は3つ若しくは4つの部分を有する。
【0071】
有利には、そのような形状は完全に離型可能に維持され、このことは、簡単な型での製造、したがって究極的に、経済的な製造を計画することを可能にする。
【0072】
好ましくは、衝撃物体の突入の方向8を考慮して、前述の部品1の下部において、ソール11を犠牲複合材部品1に付加すること、言い換えると、複合材部品1を構成するセル3の第2端7のレベルに、ソール11を置くことができる。
【0073】
図7は、そのような長方形形状の下部ソール11を有する、細長い梁の形態の犠牲複合材部品を示す。
【0074】
しかしながら、
図6に示されるような、長方形ボックスの形態の複合材部品1も、有利に、そのような下部ソール11を有することができる。
【0075】
下部ソール11の存在は、それを有する複合材部品1を、インターフェイスさせることを可能にすることができる。
【0076】
好ましくは、本発明の犠牲複合材部品1には、セル3から張り出した(オーバーハングした)接続バー12を組み込んでもよい。
【0077】
そのような要素の存在は、衝撃物体2の非常に少ない突入量に対する衝撃抵抗を有利に増大させることになる。
【0078】
図8に示される実例によれば、そのような接続バー12は、接続バーの1つの環がセル3から張り出している、直線状に並べて配置された複数の環の形態をとってもよく、又は
図9に示されるように、長方形壁の形態をとってもよい。
【0079】
本発明による犠牲複合材部品1、10、100は、特にセル3、30、300の配置、及びその断面に関して、いかなる選択された実施例であろうと、前述の部品1、10、100を構成する前述のセル3、30、300から張り出している、下部ソール11及び/又は接続バー12を有してもよい。
【0080】
複合材部品1、10、100が、セルを接続するために下部ソール11と接続バー12の両方を有する場合には、このように構成された前述の部品1、10、100のかなりの屈曲強化(flexural strengthening)が観察される。
【0081】
図10及び
図11に示されている、本発明による犠牲複合材部品10の第2の特定の実施例は、概して正方形断面を有する、単位セル30を組み立てることによって製造することができる。
【0082】
すなわち、示されているように、セル30の各々は、平行六面体(parallelepipedal)として、同時に、
図10及び
図11の中央部の断面図により詳しく示されているように、衝撃物体2の突入の方向8において周囲壁50の厚さにおける縦方向の低下を提案する内部形状にすることができる。
【0083】
この第2の実施例の第1の変形形態において、
図10の右に示されている、犠牲複合材部品10は、連続的に並置された、正方形断面の複数のセル30の組合せによって形成される、直線状梁の形態をとることができる。
【0084】
図11に示されている、第2の実施例の第2の変形形態において、犠牲複合材部品10は、長方形形状のボックスを形成するように、その1つが
図10に示されている、複数の直線状梁を有し、前述のボックスの長さ及び幅は、可変であり、前述の部品10の使用に従って適合されてもよく、セル30の壁厚は、第1端60から第2端70に向かって減少し、同時に、有利には、セル30の内部断面表面積は、前述の第1端60から前述の第2端70に向かって増大する。
【0085】
ここでも、この実施例においては、形状の離型性は維持される。
【0086】
図12及び
図13に示されている、本発明に準拠する犠牲複合材部品100の第3の特定の実施例は、その断面が六角形である、単位セル300の組合せで製作することができる。
【0087】
すなわち、示されているように、「ハニカム」の形態であり、同時に、
図12及び
図13の中央部の断面図により詳しく示されているように、衝撃物体2の突入の方向8において周囲壁500の厚さにおける縦方向の低減を提案する内部形状を有する、犠牲複合材部品を製造することが可能である。
【0088】
この第3の実施例の第1の変形形態において、
図10の右側に示された、犠牲複合材部品100は、連続的に並置された、断面が六角形の、複数のセル300の組合せによって形成された、直線状梁の形態をとることができる。
【0089】
図13に示されている、この第3の実施例の第2の変形形態において、犠牲複合材部品100は、その長さ及び幅を変化させるとともに、前述の部品100の使用に従って適合させることができる長方形ボックスを形成するように、
図12にその1つが示されている、複数の直線状梁を有する。記載された最初の2つの実施例におけるように、セル300の壁厚は、第1端600から第2端700に向かって減少し、同時に、有利には、セル300の内部六角形断面の表面積は、前述の第1端600から前述の第2端700に向かって増大する。
【国際調査報告】