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特表2024-515734コンジュゲート、その製造方法、及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】コンジュゲート、その製造方法、及び使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7088 20060101AFI20240403BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20240403BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20240403BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240403BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20240403BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240403BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20240403BHJP
【FI】
A61K31/7088
A61K47/60
A61K47/54
A61K31/713
A61K48/00
A61P13/08
A61P43/00 111
A61K39/395 N
C12N15/11 Z ZNA
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565281
(86)(22)【出願日】2022-04-21
(85)【翻訳文提出日】2023-10-23
(86)【国際出願番号】 CN2022088173
(87)【国際公開番号】W WO2022222993
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】202110442394.6
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509159274
【氏名又は名称】南▲開▼大学
【氏名又は名称原語表記】NANKAI UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】94 Weijin Road, Nankai District, Tianjin 300071 CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】席 真
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 超
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC17
4C076CC41
4C076DD54
4C076EE23
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA13
4C084NA13
4C084ZA81
4C084ZC41
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA13
4C086ZA81
4C086ZC41
(57)【要約】
【要約】
本発明は、バイオ技術分野に関し、コンジュゲート、その製造方法、及び使用を開示する。該コンジュゲートは、アジド修飾された標的リガンドとプロパルギル基修飾された小さな核酸配列とを共有結合したものである。本発明によるコンジュゲートは、薬物標的送達における使用が期待できる。また、本発明は、前記コンジュゲートの製造方法、及びその使用を提供する。該方法は、単純な化学反応のみを伴うものであり、核酸コンジュゲートを柔軟で効率的に合成するという目的を達成でき、他の複数種のリガンドを標的とする核酸コンジュゲートの構築にも適しており、実用性に優れている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アジド修飾された標的リガンドとプロパルギル基修飾された小さな核酸配列とを共有結合したものである、ことを特徴とするコンジュゲート。
【請求項2】
前記アジド修飾された標的リガンド中のアジド基と標的リガンドは、少なくとも1つのポリエチレングリコールの断片を介して共有結合される、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項3】
前記標的リガンドは、少なくとも1種のアミノ酸がグルタミン酸である2つのアミノ酸で形成されるジペプチドであり、好ましくは、前記アミノ酸は、リジンとグルタミン酸、グルタミン酸とグルタミン酸、及びグルタミン酸とグルタミン酸類似体から選択され、前記標的リガンドは、グルタミン酸によって認識され、標的細胞表面で発現される抗原を結合可能であり、前記抗原はPSMAであり、及び/又は、前記標的細胞は、前立腺癌細胞、ニューロン、腎臓癌細胞、及び結腸癌細胞から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のコンジュゲート。
【請求項4】
前記アジド修飾された標的リガンドは
【化1】
(ここで、nは1~100の整数である。)で示される構造を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項5】
前記小さな核酸配列は、STAT3、PHB1、Notch1、PLK1、及びBRD4を標的する小さな核酸から選択される少なくとも1種であり、
及び/又は、前記プロパルギル基修飾は、3'-末端プロパルギル基修飾であり、
及び/又は、前記プロパルギル基修飾された小さな核酸配列は、ホスホロアミダイト法を利用して固相合成技術によりプロパルギル基化合物を小さな核酸配列の3'-末端に修飾したものであり、前記プロパルギル基化合物は少なくとも1つの活性水酸基を含有し、
好ましくは、前記プロパルギル基化合物は、
【化2】
(ここで、「
【化3】
」は、小さな核酸の連結部位を表す。)で示される構造を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項6】
一価銅触媒の存在下で、アジド修飾された標的リガンドとプロパルギル基修飾された小さな核酸配列とを接触させるステップを含む、ことを特徴とするコンジュゲートの製造方法。
【請求項7】
前記アジド修飾された標的リガンドとプロパルギル基修飾された小さな核酸配列とのモル比が、(1.05-10):1、好ましくは(2~4):1であり、及び/又は、
標的リガンドは、少なくとも1種のアミノ酸がグルタミン酸である2つのアミノ酸で形成されるジペプチドであり、好ましくは、前記アミノ酸は、リジンとグルタミン酸、グルタミン酸とグルタミン酸、及びグルタミン酸とグルタミン酸類似体から選択され、及び/又は、
前記アジド修飾された標的リガンドは、
【化4】
(ここで、nは1~100の整数である。)で示される構造を有し、及び/又は、
前記小さな核酸配列は、STAT3、PHB1、Notch1、PLK1、及びBRD4を標的する小さな核酸から選択される少なくとも1種であり、
及び/又は、前記プロパルギル基修飾は、3'-末端プロパルギル基修飾であり、
及び/又は、前記プロパルギル基修飾された小さな核酸配列は、ホスホロアミダイト法を利用して固相合成技術によりプロパルギル基化合物を小さな核酸配列の3'-末端に修飾したものであり、
好ましくは、前記プロパルギル基化合物は、
【化5】
(ここで、「
【化6】
」は、小さな核酸の連結部位を示す。)で示される構造を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記一価銅触媒は、Cu(I)-TBTA、CuBr、及びCuClから選択される少なくとも1種、好ましくはCu(I)-TBTAであり、
及び/又は、小さな核酸配列1molに対して、前記一価銅触媒の使用量は、2~10mol、好ましくは3~6molであり、
及び/又は、前記接触の条件は、温度が35.5~38.5℃、好ましくは36.5~37.5℃であること、時間が1~5h、好ましくは2~4hであることを含む、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記接触は、有機溶媒の存在下で行われ、前記有機溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、及びアセトンから選択される少なくとも1種である、請求項6~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記小さな核酸配列は、センス鎖とアンチセンス鎖を含むsiRNA配列であり、
プロパルギル基修飾されたセンス鎖及びプロパルギル基修飾されたアンチセンス鎖をそれぞれ得るステップ(1)と、
アジド修飾された標的リガンドとプロパルギル基修飾されたセンス鎖又はプロパルギル基修飾されたアンチセンス鎖とを接触させて、1本鎖コンジュゲートを得るステップ(2)と、
1本鎖コンジュゲートと別の鎖とをアニーリングバッファー中、90~100℃の条件下で1~5分間インキュベートし、前記コンジュゲートを得るステップ(3)と、を含み、
好ましくは、前記アニーリングバッファーは、1.5~2.5mMの酢酸マグネシウム溶液から選択される、請求項6~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
PSMAを発現させる組織の異常による関連疾患を治療する薬物の製造における、請求項1~5のいずれか1項に記載のコンジュゲート又は請求項6~10のいずれか1項に記載の方法によって製造されたコンジュゲートの使用であって、
前記疾患は、好ましくは、腺組織、結腸、腎臓、及び神経系で発症し、
前記腺組織は、前立腺、膵臓、乳腺、及び胸腺から選択される1種である、使用。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2021年04月23日に提出された中国特許出願202110442394.6の利益を主張しており、当該出願の内容は、引用により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、バイオ技術分野に関し、具体的には、コンジュゲート、その製造方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0003】
前立腺特異的膜抗原(PSMA)は、葉酸加水分解酵素1(FOLH1)、グルタミン酸カルボキシペプチダーゼII(GCPII)、N-アセチル化-α-連結酸性ジペプチダーゼI(NAALAD1)とも呼ばれ、ペプチダーゼM28ファミリーのM28Bサブファミリーに属する。PSMAは、構造が同型二量体であるII型膜貫通タンパク質であり、1サブユニットあたり2個の亜鉛イオンを結合することができる。PSMAは、葉酸加水分解酵素とN-アセチル化-α-連結酸性ジペプチダーゼ(NAALADase)の活性の両方を持ち、その作用はN-アシルポリγ-グルタミン酸及びその誘導体の加水分解を調節することである。他の組織と比較して、PSMAは神経系、前立腺、膵臓、腎臓や小腸で比較的に高い発現量を示し、大部分の前立腺癌の上皮層及び他の固形腫瘍の新生血管での発現量は正常組織の発現量よりはるかに高い。このような組織特異性により、PSMAは前立腺癌送達の最も好適な標的の1つとなる。
【0004】
PSMAは前立腺癌細胞において高度に濃縮されているため、PSMAを特異的に認識する抗体、アプタマー及び小分子リガンドの研究開発が相次いで行われている。その中で、合成の容易と高いタンパク質結合親和性のため、PSMAの小分子リガンドの研究に注目されている。PSMAの小分子リガンドとして、リジンとグルタミン酸が尿素基を介して結合して形成したジペプチド(KUE)は前立腺癌のイメージングと標的治療に利用されている。また、RNA干渉(RNAi)は、siRNAなどの治療用オリゴヌクレオチドを用いてがんを含む様々な疾患を治療する新しい技術である。米国食品医薬品局(FDA)のPatisiranとGivosiranの承認に励まされ、RNAiは前立腺癌の治療にも注目されている。また、Givosiranの承認により、リガンドとsiRNAとの直接連結により形成されたコンジュゲートは、腫瘍を標的に治療するための簡単で有効な新しいアプローチとなった。しかし、治療用siRNAを前立腺癌の組織/細胞に効果的に送達し、癌の治療を実現することは依然として大きな課題である。そのほか、どのようにGivosiranが採用した固相合成法の限界を突破するか(例えば、柔軟性が比較的に悪く、操作が煩雑で、合成効率が理想的でなく、適用範囲が狭いなど)もRNAi治療法が早急に解決しなければならない肝心な問題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、核酸コンジュゲートの製造の柔軟性が悪く、操作が煩雑で、生産規模が小さいなどの従来技術に存在する技術的課題を解決するために、高標的性と高活性の両方の特徴を兼ね備えるコンジュゲート、及びその製造方法を提供することである。さらに、本発明による方法は、迅速で、効率的で、簡単かつ適用範囲が広いという利点がある。さらに、本発明は、前立腺癌、結腸癌、膵臓癌、乳腺癌、腎臓疾患、及び神経系に関連する疾患のうちのいずれかの疾患を治療する薬物の製造、特に前立腺癌を治療する薬物の製造における、本発明で製造された核酸コンジュゲートの使用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成させるために、本発明の第1態様は、アジド修飾された標的リガンドとプロパルギル基修飾された小さな核酸配列とを共有結合したコンジュゲートを提供する。
本発明の第2態様は、一価銅触媒の存在下で、アジド修飾された標的リガンドとプロパルギル基修飾された小さな核酸配列とを接触させるステップを含む、前述コンジュゲートの製造方法を提供する。
【0007】
本発明の第3態様は、PSMAを発現させる組織の異常による関連疾患を治療する薬物の製造における、前述コンジュゲート又は前述方法によって製造されたコンジュゲートの使用であって、前記疾患は、好ましくは腺組織、結腸、腎臓、及び神経系で発症し、前記腺組織は、前立腺、膵臓、乳腺、及び胸腺から選択される1種である方法を提供する。
【0008】
本発明は、プロパルギル基修飾された(特に3’-末端で修飾された)オリゴ核酸及びアジド修飾された標的リガンドを巧みに設計することによって、本発明の方法(すなわち、合成後修飾戦略(銅触媒クリックケミストリー))を使用して、本発明の核酸コンジュゲートを効率的かつ迅速に構築する。本発明によるコンジュゲート(核酸コンジュゲート)は、細胞イメージング、遺伝子サイレンシング評価、及びアポトーシス実験により、高い特異的認識能力、遺伝子サイレンシング能力、腫瘍細胞発生阻害能力を有することを見出した。本発明によるコンジュゲート(核酸コンジュゲート)の製造方法は、RNAi治療試薬の標的送達及び治療における使用が期待できる。また、本発明による製造方法は、単純な化学反応のみを伴うものであり、核酸コンジュゲートを、柔軟で効率的に合成することができ、他の複数種のリガンドを標的とする核酸コンジュゲートの構築にも適しており、実用性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明におけるKUEを共役した小さな核酸の概略図である。
図2】本発明における3'-末端プロパルギル基修飾されたオリゴ核酸1(ON1)の高速液体クロマトグラフ及び質量スペクトルである。
図3】本発明における3'-末端プロパルギル基修飾されたオリゴ核酸2(ON2)の高速液体クロマトグラフ及び質量スペクトルである。
図4】本発明における3'-末端プロパルギル基修飾されたオリゴ核酸3(ON3)の高速液体クロマトグラフ及び質量スペクトルである。
図5】本発明における各KUE-PEG-siRNAコンジュゲートのポリアクリルアミドゲル電気泳動を表す図である。
図6】本発明における各DUPA-PEG-siRNAコンジュゲートのポリアクリルアミドゲル電気泳動を表す図である。
図7】本発明の実施例1における核酸コンジュゲートKUE-PEG-siRNA質量スペクトルである。
図8】本発明の実施例21における核酸コンジュゲートKUE-PEG-siRNA質量スペクトルである。
図9】本発明の実施例22における核酸コンジュゲートKUE-PEG12-siRNA質量スペクトルである。
図10】本発明の実施例23における核酸コンジュゲートDUPA-PEG-siRNA質量スペクトルである。
図11】本発明の実施例24における核酸コンジュゲートDUPA-PEG-siRNA質量スペクトルである。
図12】本発明の1つの特定実施形態における各核酸コンジュゲートの細胞イメージング画像である。
図13】本発明1つの特定実施形態における各核酸コンジュゲートの細胞内平均蛍光強度の統計グラフである。
図14】本発明1つの特定実施形態における各核酸コンジュゲートの細胞インターナリゼーション方式の評価画像である。
図15】本発明1つの特定実施形態における各核酸コンジュゲートの前立腺癌細胞への取り込み効率の評価図である。
図16】本発明1つの特定実施形態における各核酸コンジュゲートのmRNAサイレンシング画像である。
図17】本発明1つの特定実施形態における各核酸コンジュゲートのタンパク質発現阻害画像である。
図18】本発明における各核酸コンジュゲートのアポトーシス促進画像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書で開示される範囲の端点及び任意の値は、正確な範囲又は値に限定されず、これらの範囲又は値に近い値を含むと理解されるべきである。数値範囲の場合、各範囲の端点値の間、各範囲の端点値と個々のポイント値の間、及び個々のポイント値の間は、互いに組み合わされて1つ又は複数の新しい数値範囲を得ることができ、これらの数値範囲は、本明細書で具体的に開示されるものとみなされるべきである。
【0011】
本発明者らは、多くの研究の結果、アジド修飾された標的リガンド(例えば、アジド修飾されたKUEリガンド、アジド修飾されたDUPAリガンドなど)と3’末端のプロパルギル基修飾された小さな核酸(オリゴ核酸)により、抗原(例えば、PSMA)を標的とするsiRNAコンジュゲートを柔軟で効率的に構築できることを見出した。さらに、3'-末端プロパルギル基修飾小さな核酸が熱安定性、全体的なコンホメーション及びRNAi活性を保持できるかどうかを検証するために、3'-末端プロパルギル基修飾小さな核酸の関連する性質、例えば融解温度、コンホメーション及びRNAi活性の評価などの研究を行い、siRNAの3'-末端にプロパルギル基修飾を行ってもRNA本来の性質に影響を及ぼさないだけでなく、siRNAの合成後の修飾特性も強調していることを明らかにした。
【0012】
以上に基づいて、本発明の第1態様は、アジド修飾された標的リガンドとプロパルギル基修飾された小さな核酸配列とを共有結合したコンジュゲートを提供する。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記アジド修飾された標的リガンド中のアジド基と標的リガンドは、少なくとも1つのポリエチレングリコールの断片を介して共有結合されている。ここで、ポリエチレングリコールの断片中のポリエチレングリコールモノマーの数は特に限定されず、例えば、1~100であってもよい。前記ポリエチレングリコールの断片は主として連結の役割を果たす。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記標的リガンドは、少なくとも1種のアミノ酸がグルタミン酸である2つのアミノ酸で形成されるジペプチドであり、好ましくは、前記アミノ酸は、リジンとグルタミン酸、グルタミン酸とグルタミン酸、及びグルタミン酸とグルタミン酸類似体から選択され、前記標的リガンドは、グルタミン酸によって認識され、標的細胞の表面で発現される抗原を結合可能であり、前記抗原はPSMAである。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記標的リガンドの末端にカルボキシ基を含有し、前記標的リガンドはカルボキシ基を介して標的細胞の表面の抗原に連結される。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記標的細胞は、前立腺癌細胞、ニューロン、腎臓癌細胞、及び結腸癌細胞から選択される少なくとも1種であってもよい。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記アジド修飾された標的リガンドは、
【化1】
(ここで、nは1~100の整数である。nは、好ましくは、1~50の整数、より好ましくは、1~20の整数、さらに好ましくは、1~15の整数である。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15であってもよい。)で示される構造を有する。
【0018】
本発明では、前記アジド修飾された標的リガンドは、下記の方法によって製造されてもよい。
【0019】
まず、t-ブチルエステル、ベンジルエステルで保護されたリジンとt-ブチルエステルで保護されたグルタミン酸とをトリホスゲンにより連結してKUEを合成する。次に、エチレングリコールをアクリル化してアジド化し、アジドPEGプロピオン酸を得る。最後に、これらの両方(KUEとアジドPEGプロピオン酸)を縮合反応させて、前記標的リガンドを得る。
【0020】
本発明では、好ましくは、前記アジド修飾された標的リガンド(6a(n=2)、6b(n=5)、6c(n=12))は、下記のステップによって製造されてもよい。
(1)ポリエチレングリコール1a-cを金属ナトリウムと接触させてから、アクリル酸t-ブチルエステルと第1反応を行い、2a-cで示される化合物を得る。
【化2】
(2)トリエチルアミンの存在下で、式2a-cで示される化合物と塩化トシルに第2反応を行い、式3a-cで示される化合物を得る。
【化3】
(3)第3溶媒の存在下で、式3a-cで示される化合物とアジ化ナトリウムに第3反応を行い、式4a-cで示される化合物を得る。
【化4】
(4)HATU(O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩)及びDIPEA(N,N-ジイソプロピルエチルアミン)の存在下で、4a-cで示される化合物とKUEに第4反応を行い、式5a-cで示される化合物を得る。
【化5】
(5)式5a-cで示される化合物とトリフルオロ酢酸に第5反応を行い、式6a-cで示される化合物を得る。
【化6】
【0021】
ステップ(1)では、前記第1反応の反応温度は20~40℃であってもよく、反応時間は5~20時間であってもよい。ポリエチレングリコール(1a-c)1ミリモルに対して、金属ナトリウムの使用量は0.05~2mmolであってもよく、アクリル酸t-ブチルエステルの使用量は0.3~0.8mmolであってもよい。前記第1反応は第1溶媒の存在下で行われ、ポリエチレングリコール1ミリモルに対して、前記第1溶媒の使用量は1~2mLであってもよく、前記第1溶媒はテトラヒドロフランであってもよい。
【0022】
ステップ(2)では、前記第2反応の反応温度は-20℃~10℃であってもよく、反応時間は5~20時間であってもよい。式2a-cで示される化合物1ミリモルに対して、トリエチルアミンの使用量は、0.5~1mLであり、p-トルエンスルホニルクロリドの使用量は、1.2~1.8mmolであってもよい。前記第2反応は、第2溶媒の存在下で行われ、式2a-cで示される化合物1ミリモルに対して、前記第2溶媒の使用量は1~3mLであってもよい。前記第2溶媒はジクロロメタンであってもよい。前記第2反応は、好ましくは、不活性雰囲気で行われ、前記不活性雰囲気はアルゴンガスによって提供されてもよい。
【0023】
ステップ(3)では、前記第3反応の反応温度は、60~90℃であってもよく、反応時間は、5~24時間であってもよい。式3a-cで示される化合物1ミリモルに対して、アジ化ナトリウムの使用量は、1.2~1.8mmolであってもよい。式3a-cで示される化合物1ミリモルに対して、前記第3溶媒の使用量は2~3mLであってもよい。前記第3溶媒はDMF(N,Nジメチルホルムアミド)であってもよい。
【0024】
ステップ(4)では、前記第4反応の反応温度は、20~40℃であってもよく、反応時間は、5~24時間であってもよい。式4a-cで示される化合物1ミリモルに対して、KUEの使用量は、0.9~1.5mmolであってもよい。4a-cで示される化合物とKUEとの第4反応に先立って、まず、トリフルオロ酢酸(4a-cで示される化合物1molに対して、トリフルオロ酢酸の使用量は2~3mLであること)の存在下で、4a-cで示される化合物を脱保護してもよく、ここで、前記脱保護の温度は、20~30℃であってもよく、時間は、10~24hであってもよい。次に、HATUとDIPEAを用いて、4a-cで示される化合物の脱保護生成物を活性化してもよく、ここで、式4a-cで示される化合物1ミリモルに対して、HATU及びDIPEAの使用量は、それぞれ1.2~1.8mmol、及び2~4mmolであってもよい。前記第4反応は、第4溶媒の存在下で行われる。ここで、式4a-cで示される化合物1ミリモルに対して、前記第4溶媒の使用量は0.8~1.5mLであってもよい。前記第4溶媒は、DMF(N,Nジメチルホルムアミド)であってもよい。
【0025】
ステップ(5)では、前記第5反応の反応温度は、20~40℃であってもよく、反応時間は、5~24時間であってもよい。式5a-cで示される化合物1ミリモルに対して、トリフルオロ酢酸の使用量は、20~30mLであってもよい。
【0026】
ステップ(1)~(5)の反応の後処理について特に限定はなく、いずれも、カラムクロマトグラフィーにより分離して精製生成物を得てもよい。
【0027】
本発明では、KUEの構造式は下記で示される。
【化7】
【0028】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記小さな核酸配列は、STAT3、PHB1、Notch1、PLK1、及びBRD4を標的とする小さな核酸から選択される少なくとも1種であってもよい。
【0029】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記プロパルギル基修飾は、好ましくは、3'-末端プロパルギル基修飾である。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記プロパルギル基修飾された小さな核酸配列は、ホスホロアミダイト法を利用して固相合成技術によりプロパルギル基化合物を小さな核酸配列の3'-末端に修飾したものであり、前記プロパルギル基化合物は、少なくとも1つの活性水酸基を含有する。前記プロパルギル基修飾は、複数のプロパルギル基修飾(1つ、2つ、3つなど)であってもよい。本発明では、プロパルギル基化合物を小さな核酸配列の3'-末端に修飾する方式について特に限定はなく、この修飾は以下の方式によって行われてもよい。まず、従来技術(Bioorg. Med. Chem.、2013、5583-5588)に基づいて、市販のHoffer's chlorosugarを原料として、4段反応により1-O-プロパルギル基-2-デオキシ-D-フラノースホスホロアミダイトモノマーを合成した後、得たホスホロアミダイトモノマーを固相担体(CPG)に連結してから、自動核酸合成装置によってプロパルギル基モノマーXオリゴヌクレオチドを3'-末端に修飾した。最後に、CPG及び保護基を除去して、3'-末端プロパルギル基修飾された小さな核酸を得る。
【0031】
本発明では、好ましくは、前記プロパルギル基化合物は、
【化8】
(ここで、「
【化9】
」は、小さな核酸の連結部位を示す。)で示される構造を有する。
本発明の第2態様は、一価銅触媒の存在下で、アジド修飾された標的リガンドとプロパルギル基修飾された小さな核酸配列とを接触させるステップを含む前述コンジュゲートの製造方法を提供する。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記アジド修飾された標的リガンドとプロパルギル基修飾された小さな核酸配列とのモル比は、(1.05~10):1、好ましくは、(2~4):1である。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記一価銅触媒は、Cu(I)-TBTA、CuBr、及びCuClから選択される少なくとも1種、好ましくは、Cu(I)-TBTAである。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態によれば、小さな核酸配列1molに対して、前記一価銅触媒の使用量は、2~10mol、好ましくは、3~6molであってもよい。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記接触の条件は、温度が35.5~38.5℃、好ましくは36.5~37.5℃であること、時間が1~5h、好ましくは2~4hであることを含む。
【0036】
本発明では、前記接触において、回転数について特に限定はなく、本発明のニーズを満たせばよく、例えば、回転数は、600~1000r/min、好ましくは700~900r/minであってもよい。
【0037】
本発明では、前記接触は、好ましくは、振とうの条件下で行われ、前記振とうの条件は、0.4~0.6hおきに振とうを1回行うことであってもよい。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記接触は、有機溶媒の存在下で行われ、前記有機溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、メタノール、エタノール、及びアセトンから選択される少なくとも1種である。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記有機溶媒の使用量は、前記小さな核酸配列の濃度を20~200μM、好ましくは80~120μMに維持する。
【0040】
本発明では、前記コンジュゲートとは、1本鎖核酸コンジュゲート又は2本鎖核酸コンジュゲートを指してもよく、前記コンジュゲートが2本鎖核酸コンジュゲートである場合、本分野の通常の方法を参照して、センス鎖核酸とアンチセンス鎖核酸をアニーリングして2本鎖核酸コンジュゲートを形成してもよく、例えば、センス鎖核酸とアンチセンス鎖核酸を等モルで用いて、アニーリングバッファー(マグネシウムイオン含有)中、90~100℃で2本鎖核酸コンジュゲートを形成してもよい。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記小さな核酸配列は、センス鎖とアンチセンス鎖を含むsiRNA配列であり、前記方法は、
プロパルギル基修飾されたセンス鎖及びプロパルギル基修飾されたアンチセンス鎖をそれぞれ得るステップ(1)と、
アジド修飾された標的リガンドとプロパルギル基修飾されたセンス鎖又はプロパルギル基修飾されたアンチセンス鎖とを接触させて、1本鎖コンジュゲートを得るステップ(2)と、
1本鎖コンジュゲートと別の鎖とをアニーリングバッファー中、90~100℃の条件下で1~5分間インキュベートし、前記コンジュゲートを得るステップ(3)と、を含む。
本発明の好ましい実施形態によれば、前記アニーリングバッファーは、1.5~2.5mMの酢酸マグネシウム溶液から選択される。
【0042】
本発明の第3態様は、PSMAを発現させる組織の異常による関連疾患を治療する薬物の製造における、前述コンジュゲート又は前述方法によって製造されたコンジュゲートの使用であって、前記疾患は、好ましくは、腺組織、結腸、腎臓、及び神経系で発症し、前記腺組織は、前立腺、膵臓、乳腺、及び胸腺から選択される1種である使用を提供する。前記疾患は、好ましくは、癌症である。
【0043】
本発明では、「コンジュゲート」とは、「KUE-PEG-siRNAコンジュゲート」又は「DUPA-PEG-siRNAコンジュゲート」である。
【実施例
【0044】
以下、実施例によって本発明について詳細に説明する。
【0045】
以下の実施例では、すべての原料は市販品である。
製造例1
【0046】
本製造例は、アジド修飾されたKUEリガンド6a-cの製造を説明する。
【化10】
(i)ポリエチレングリコール1a-c(100mmol、1eq)を乾燥THF(150mL)に溶解したものに、金属ナトリウム(230mg、10mmol、0.1eq)を加え、ナトリウムが完全に溶解するまで室温で撹拌した。次に、混合液にアクリル酸t-ブチルエステル(6.4g、50mmol、0.5eq)をゆっくりと滴下し、室温で12時間反応させた。反応終了後、1M塩酸水溶液8mLを加えて、反応をクエンチングした。10分間撹拌後、反応液を飽和食塩水200mLに注入し、酢酸エチルで3回抽出し、有機相を収集して、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(PE/EA=10:1~1:1)により分離して精製し、薄黄色のモノ-t-ブチルエステル生成物を得た。
【化11】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 3.77 - 3.70 (m, 4H), 3.69 - 3.59 (m, 6H), 2.78 (s, 1H), 2.54 - 2.49 (m, 2H), 1.45 (s, 9H); 13C-NMR (101 MHz, CDCl3) δ170.92, 80.63, 72.49, 70.33, 70.31, 66.81, 61.70, 36.14, 28.05. HRMS: calculated for C11H22NaO5 [M+Na]+: 257.1365, found 257.1357.
【化12】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 3.79 - 3.59 (m, 22H), 2.91 (s, 1H), 2.53 - 2.48 (m, 2H), 1.45 (s, 9H); 13C-NMR (101 MHz, CDCl3) δ 170.93, 80.51, 72.52, 70.61, 70.59, 70.56, 70.54, 70.48, 70.33, 66.88, 61.72, 36.24, 28.09. HRMS: calculated for C17H34NaO8 [M+Na]+: 389.2151, found 389.2146.
【化13】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 3.76 - 3.54 (m, 49H), 2.77 (s, 2H), 2.53 - 2.48 (m, 2H), 1.45 (d, J = 2.4 Hz, 9H); 13C-NMR (101 MHz, CDCl3) δ 170.94, 80.53, 72.58, 70.61, 70.57, 70.51, 70.37, 70.29, 66.90, 61.71, 36.26, 28.10. HRMS: calculated for C31H62NaO15 [M+Na]+: 697.3986, found 697.3981.
【化14】
(ii)化合物2a-c(12.3mmol、1eq)をジクロロメタン30mLとトリエチルアミン10mLの混合物に溶解し、アルゴンガス雰囲気下、氷浴中で撹拌した。その後、p-トルエンスルホニルクロリド(3.53g、18.5mmol、1.5eq)をバッチ式で加えた。混合物を室温で一晩撹拌し、その後、少量のシリカゲル(100~200メッシュ)10gを加えて乾固まで濃縮し、シリカゲル(300~400メッシュ)でクロマトグラフィー(PE/EA=10:1~1:3)分離を行い、無色油状物として生成物を得た。
【化15】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.79 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.35 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 4.19 - 4.11 (m, 2H), 3.67 (dd, J = 8.0, 4.8 Hz, 4H), 3.55 (q, J = 4.8 Hz, 4H), 2.47 (dd, J = 12.4, 6.0 Hz, 5H), 1.44 (s, 9H); 13C-NMR (101 MHz, CDCl3) δ 170.81, 144.80, 132.99, 129.82, 127.95, 80.50, 70.60, 70.29, 69.26, 68.64, 66.88, 36.21, 28.07, 21.61. HRMS: calculated for C18H28NaO7S [M+Na]+: 411.1453, found 411.1448.
【化16】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.85 - 7.74 (m, 2H), 7.37 - 7.33 (m, 2H), 4.24 - 4.08 (m, 2H), 3.83 - 3.51 (m, 20H), 2.59 - 2.36 (m, 5H), 1.45 (d, J = 5.6 Hz, 9H); 13C-NMR (101 MHz, CDCl3) δ 170.89, 144.78, 133.02, 129.82, 127.98, 80.49, 70.74, 70.58, 70.51, 70.36, 69.24, 68.67, 66.89, 36.27, 28.09, 21.64. HRMS: calculated for C24H40NaO10S [M+Na]+: 543.2240, found 543.2246.
【化17】
1H-NMR (400 MHz, DMSO) δ 7.83 - 7.74 (m, 2H), 7.49 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 4.13 - 4.10 (m, 2H), 3.64 - 3.29 (m, 48H), 2.43 (s, 5H), 1.40 (s, 9H); 13C-NMR (101 MHz, DMSO) δ 170.87, 145.34, 132.88, 130.59, 128.10, 80.15, 70.44, 70.25, 70.17, 70.14, 68.35, 66.69, 36.29, 28.20, 21.55. HRMS: calculated for C38H68NaO17S [M+Na]+: 851.4075, found 851.4071.
【化18】
(iii)化合物3a-c(2mmol、1eq)をジメチルホルムアミド5mLに溶解し、アジ化ナトリウム(195mg、3mmol、1.5eq)を加えた。混合物を80℃の条件で一晩反応させ、その後、シリカゲル(100~200メッシュ)を2g加えて乾固まで濃縮し、シリカゲル(300~400メッシュ)でクロマトグラフィー(PE/EA=20:1~1:2)により分離し、無色油状物として生成物を得た。
【化19】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 3.76 - 3.60 (m, 8H), 3.42 - 3.35 (m, 2H), 2.51 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 1.45 (s, 9H); 13C-NMR (101 MHz, CDCl3) δ 170.84, 80.45, 70.56, 70.38, 70.00, 66.92, 50.64, 36.22, 28.04. HRMS: calculated for C11H21N3NaO4 [M+Na]+: 282.1430, found 282.1426.
【化20】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 3.77 - 3.58 (m, 20H), 3.47 - 3.30 (m, 2H), 2.50 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 1.45 (s, 9H); 13C-NMR (101 MHz, CDCl3) δ 170.92, 80.51, 70.70, 70.67, 70.64, 70.59, 70.50, 70.37, 70.04, 66.90, 50.68, 36.26, 28.09. HRMS: calculated for C17H33N3NaO7 [M+Na]+: 414.2216, found 414.2211.
【化21】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 3.75 - 3.57 (m, 48H), 3.40 (d, J = 4.4 Hz, 2H), 2.53 - 2.48 (m, 2H), 1.45 (d, J = 2.4 Hz, 9H); 13C-NMR (101 MHz, CDCl3) δ 170.91, 80.49, 70.69, 70.66, 70.63, 70.56, 70.49, 70.36, 70.04, 66.88, 50.67, 36.25, 28.09. HRMS: calculated for C31H61N3NaO4 [M+Na]+: 722.4051, found 722.4048.
【化22】
(iv)化合物4a-c(2mmol、1eq)をトリフルオロ酢酸5mLに溶解し、室温で一晩反応させ、その後、濃縮して、残りのトリフルオロ酢酸を除去し、ジクロロメタン及びシリカゲル(100~200メッシュ)2gを加えて乾固まで濃縮し、シリカゲル(300~400メッシュ)でクロマトグラフィー(PE/EA=5:1~1:5)により分離し、無色油状物として生成物を得て、ジメチルホルムアミド2mLに溶解した。HATU(1.15g、3mmol、1.5eq)及びDIPEA(775.5mg、6mmol、3eq)を加えて活性化させた。15min後、KUE(1.17g、2.4mmol、1.2eq)を加えた。混合物を室温で一晩反応させ、その後、シリカゲル(100~200メッシュ)3gを加えて乾固まで濃縮し、シリカゲル(300~400メッシュ)でクロマトグラフィー(PE/EA=10:1~1:5)により分離し、無色油状物として生成物を得た。
【化23】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.87 (s, 1H), 5.64 (dd, J = 20.0, 6.4 Hz, 2H), 4.38 - 4.17 (m, 2H), 3.71 (d, J = 28.0 Hz, 7H), 3.44 (s, 2H), 3.34 - 3.12 (m, 2H), 2.52 (s, 2H), 2.32 (d, J = 5.2 Hz, 2H), 2.06 (d, J = 6.0 Hz, 1H), 1.84 (dd, J = 32.0, 25.2 Hz, 2H), 1.67 - 1.23 (m, 33H); 13C-NMR (101 MHz, CDCl3) δ 172.58, 172.52, 157.40, 82.17, 81.66, 80.67, 70.19, 70.00, 69.76, 67.35, 53.35, 52.99, 50.56, 38.84, 36.42, 32.02, 31.55, 28.63, 28.04, 27.96, 22.23. HRMS: calculated for C31H56N6NaO10 [M+Na]+: 695.3956, found 695.3953.
【化24】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.05 (s, 1H), 5.78 (dd, J = 16.4, 8.0 Hz, 2H), 4.38 - 4.17 (m, 2H), 3.71 (d, J = 29.2 Hz, 15H), 3.41 (d, J = 4.0 Hz, 1H), 3.26 (dd, J = 23.2, 17.2 Hz, 2H), 3.00 (s, 3H), 2.50 (s, 1H), 2.32 (d, J = 6.4 Hz, 2H), 2.05 (s, 1H), 1.91 - 1.70 (m, 2H), 1.69 - 1.17 (m, 36H); 13C-NMR (101 MHz, CDCl3) δ 172.21, 161.56, 157.58, 157.41, 81.74, 81.19, 80.34, 70.47, 70.45, 70.41, 70.37, 70.35, 70.28, 70.18, 70.01, 69.87, 67.24, 53.35, 52.83, 50.54, 45.11, 39.74, 38.74, 36.60, 32.17, 31.92, 31.47, 29.03, 28.70, 28.20, 27.97, 27.91, 22.55, 22.31. HRMS: calculated for C37H68N6NaO13 [M+Na]+: 827.4742, found 827.4738.
【化25】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.89 (s, 1H), 5.57 (s, 2H), 4.26 (d, J = 20.4 Hz, 2H), 3.67 (s, 45H), 3.41 (s, 2H), 3.21 (d, J = 16.8 Hz, 2H), 2.99 (s, 1H), 2.53 (s, 1H), 2.32 (s, 2H), 2.05 (s, 1H), 1.80 (d, J = 44.4 Hz, 1H), 1.65 - 1.18 (m, 36H); 13C-NMR (101 MHz, CDCl3) δ 172.41, 157.42, 81.87, 81.44, 80.50, 70.37, 70.21, 70.05, 69.99, 69.82, 69.71, 69.62, 69.49, 69.37, 53.47, 53.02, 50.61, 38.87, 31.97, 31.55, 28.20, 28.06, 27.98, 22.31. HRMS: calculated for C51H96N6NaO20 [M+Na]+: 1135.6577, found 1135.6569.
【化26】
(v)化合物5a-c(0.2mmol、1eq)をトリフルオロ酢酸5mLに溶解し、室温で一晩反応させ、その後、濃縮して残りのトリフルオロ酢酸を除去し、ジクロロメタンとシリカゲル(100~200メッシュ)1gを加えて乾固まで濃縮し、シリカゲル(300~400メッシュ)でクロマトグラフィー(DCM/MeOH=10:1~1:2)により分離し、無色油状物として生成物を得た。6a-cで示される化合物について高分解能質量分析により確認した。
6a: 145mg, Yield 96%, HRMS: calcd. for C19H32N6O10 [M-H]-: 503.2102; MALDI-TOF-MS: m/z 503.2105;
6b: 179mg, Yield 94%, HRMS: calcd. for C25H44N6O13 [M-H]-: 635.2888; MALDI-TOF-MS: m/z 635.2892;
6c: 260mg, Yield 92%, HRMS: calcd. for C39H72N6O20 [M-H]-: 943.4723; MALDI-TOF-MS: m/z 943.5601。
製造例2
【0047】
本製造例は、アジド修飾されたDUPAリガンドの製造を説明する。
【化27】
(i)化合物S1(244mg、0.5mmol)及びO-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HATU、228mg、0.6mmol)を一緒にジメチルホルムアミド5mLに加えた。撹拌しながらN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、129mg、1mmol)を加えた後、混合物を室温で15分間撹拌した。直ちに17-アジド-3,6,9,12,15-ペンタオキサヘタデカン-1-アミン(182mg、0.6mmol)を混合物にスプレーし、室温で6時間反応させ続けた。反応終了後、反応混合物を水20mLに注入し、酢酸エチル(50mL×3)で抽出し、有機相を収集して、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧除去し、黄色油状の粗生成物を得た。残留物をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/石油エーテル=1/5)により分離して精製し、黄色油状化合物S2(338mg、収率:87%)を得た。
1H NMR(400 MHz, CDCl3)δ6.93(s, 1H), 5.67(s, 2H), 4.28(d, J = 7.3 Hz, 2H), 3.66-3.50 (m, 20H), 3.48-3.30 (m, 4H), 2.30-1.96(m, 6H), 1.89-1.72(m, 2H), 1.47-1.29(m, 27H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3)δ172.81, 172.56, 172.28, 171.95, 157.49, 81.89, 81.66, 80.44, 70.64, 70.62, 70.55, 70.52, 70.48, 70.43, 70.42, 70.05, 69.98, 69.49, 53.02, 50.63, 39.15, 32.54, 31.63, 29.19, 28.18, 28.05, 27.98. HRMS(ESI): m/z [M+Na]+ calculated for C35H64N6NaO13 +: 799.4424, found 799.4428.
【化28】
(ii)氷浴の条件下で、化合物S2(472mg、0.5mmol)をジクロロメタンとトリフルオロ酢酸の等体積混合溶液(5mL)に溶解し、反応液を室温で6時間反応させた。溶媒を蒸発除去し、得た残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(MeOH/CHCl=1/3)により精製し、油状化合物S3(238mg、98%)を得た。
1H NMR(400 MHz, DMSO-d6)δ12.52(s, 3H), 7.94(d, J = 9.2 Hz, 2H), 6.36(dd, J = 7.9, 5.6 Hz, 2H), 4.16-3.98(m, 2H), 3.63-3.58(m, 2H), 3.57-3.50(m, 14H), 3.42-3.35(m, 5H), 3.18(q, J = 5.9 Hz, 2H), 2.29-2.19(m, 2H), 2.14-2.08(m, 2H), 1.95-1.84(m, 2H), 1.77-1.65(m, 2H); 13C NMR(101 MHz, DMSO)δ174.77, 174.67, 174.27, 171.83, 162.78, 157.73, 70.28, 70.24, 70.16, 70.14, 69.72, 55.40, 52.58, 52.15, 50.43, 38.97, 36.25, 32.00, 31.23, 30.42, 28.71, 28.09. HRMS(ESI): m/z [M-H]-calculated for C23H39N6O13-: 607.2581; found: 607.2578.
製造例3
【0048】
本製造例は、3'-末端プロパルギル基修飾小さな核酸の合成を説明する。
1-O-プロパルギル基-2-デオキシ-D-フラノース(X、すなわち、プロパルギル基モノマー)は、共通のオーバーハング修飾として、ABI 394 DNA/RNA合成装置(ABI、USA)によって小さな核酸(オリゴ核酸)の3'-末端に連結された(図1参照)。
3'-末端プロパルギル基修飾小さな核酸の合成の具体的なステップは以下の通りである。まず、市販のHoffer's chlorosugarを原料として、1-O-プロパルギル基-2-デオキシ-D-フラノースホスホロアミダイトモノマー(Bioorg. Med. Chem.、2013、5583-5588)を合成した後、得たホスホロアミダイトモノマーを固相担体(CPG)に連結してから、前述自動核酸合成装置によってプロパルギル基モノマーXオリゴヌクレオチドを3'-末端に修飾した。最後に、CPG及び保護基を除去して、各3'-末端プロパルギル基修飾1本鎖小さな核酸を得た。本発明で製造された全てのプロパルギル基修飾された1本鎖核酸について、純度は高速液体クロマトグラフィーにより確認され、構造が質量分析計により確認された(図2~4)。
【表1】
実施例1
【0049】
本実施例は、KUE-PEG-siRNAコンジュゲートの効率的な合成を説明する。
KUE-PEG-siRNAコンジュゲートの合成:
200μL滅菌済遠沈管に、プロパルギル基修飾された小さな核酸配列(ON3)(10nmol)、アジド修飾された標的リガンド6a(30nmol)、Cu(I)-TBTA(50nmol)を順次加えて、RNA最終濃度を100μM程度に維持した。系にDMF(反応液の体積に占める体積の比が25%)を加えた。反応系をボルテックスで軽く混合して均一にした後、金属反応器に入れて、37℃、900r/minの条件で振とう反応を3h行い、15%変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動により反応結果を監視した。最後に、生成物をオリゴ核酸キットで分離して精製し、生成物の純度及び濃度についてNanoDrop 2000ウルトラマイクロ分光光度計(Thermo,USA)により確認し、最終収率は98%であった。
実施例2~12
【0050】
添加される有機溶媒の種類及び/又は使用量を変更した以外、実施例1に従って行った。結果を表2に示す。
【表2】
実施例13~20
【0051】
触媒の種類及び/又は使用量を変更した以外、実施例1に従って行った。実験結果を表3に示す。
【表3】
実施例21
【0052】
6aの代わりに等モル量のアジド修飾された標的リガンド6bを用いた以外、実施例1に従って行った。最終収率は96%であった。
実施例22
【0053】
6aの代わりに等モル量のアジド修飾された標的リガンド6cを用いた以外、実施例1に従って行った。最終収率は95%であった。
実施例23
【0054】
本実施例は、異なる遺伝子を標的とするKUE-PEG-siRNAコンジュゲートの効率的な合成を説明する。
STAT3遺伝子を標的とするRNA(ON3)の代わりに、PHB-1遺伝子を標的とするRNA(ON5)を用いた以外、実施例1に従って行った。最終収率は97%であった。
実施例24
【0055】
本実施例は、DUPA-PEG-siRNAコンジュゲートの効率的な合成を説明する。
6aの代わりに等モル量のアジド修飾されたDUPAリガンドを用いた以外、実施例1に従って行った。最終収率は98%であった。
実施例25
【0056】
実施例1~22で得られた1本鎖コンジュゲートと、Cy5標識相補鎖小さな核酸とを、1:1のモル比で、アニーリングバッファー(2mM酢酸マグネシウムはマグネシウムイオンを含有)中、95℃で3分間インキュベートし、各KUE-PEG-siRNAコンジュゲート及びDUPA-PEG-siRNAコンジュゲートを形成した。
実施例1、実施例21、実施例22、実施例23、及び実施例24で製造された核酸コンジュゲートKUE-PEG-siRNA、核酸コンジュゲートKUE-PEG-siRNA、核酸コンジュゲートKUE-PEG12-siRNA、及びDUPA-PEG-siRNAのポリアクリルアミドゲル電気泳動を表す図は、図5及び図6に示され、質量スペクトルは、それぞれ、図7図8図9図10(実施例23)、及び図11(実施例24)に示される。
試験実施例1
【0057】
KUE-PEG-siRNAコンジュゲートの前立腺癌細胞への取り込みの選択性の評価
細胞イメージング:LNCaP細胞(PSMA陽性、中国科学院から購入)とPC3細胞(PSMA陰性、中国科学院から購入)を選択し、KUE-PEG-siRNAコンジュゲートの細胞取り込みを評価した。Cy5標識KUE-PEG-siRNAコンジュゲート及びsiRNA(50nM)を用いて2種類の前立腺癌細胞と共にインキュベートし、トランスフェクションした6時間後に、細胞を649nm励起光の条件下で蛍光イメージングした(図12A(LNCaP細胞の蛍光イメージング)及び図12B(PC3細胞の蛍光イメージング))。図12Aから、lipofectamine 2000(ブランド:Invitrogen、メーカー:サーモフィッシャー社)の存在下でのみ、両細胞でsiRNA群からの赤色蛍光シグナルが観察され、LNCaP細胞では、KUE-PEG-siRNAコンジュゲート群からの赤色蛍光シグナルが観察された。さらに、図12Bでは、KUE-PEG-siRNAコンジュゲート群からの赤色蛍光シグナルはPC-3細胞ではほとんど観察されなかった。以上の結果から、KUE-PEG-siRNAコンジュゲートは、共役されないsiRNAと異なり、前立腺癌細胞に選択的に取り込まれ、このインターナリゼーションがlipofectamine 2000を介さずに高効率で行われることが示唆された。図12Aの細胞蛍光イメージングについて平均蛍光強度の統計を行い(図13を参照)、図13の統計結果から、LNCaP細胞におけるKUE-PEG-siRNAコンジュゲート群の平均蛍光強度は95%で、lipofectamine 2000を介してトランスフェクションしたsiRNA群の平均蛍光強度は82%であることを発見した。PC-3細胞におけるKUE-PEG-siRNAコンジュゲートの平均蛍光強度は5%未満であった。以上の結果から、siRNAは、トランスフェクション試薬なしでは、どの細胞にもほとんど取り込まれないが、KUE-PEG-siRNAコンジュゲートは、トランスフェクション試薬なしでは、LNCaP細胞に選択的に取り込まれることが示唆された。
細胞のインターナリゼーション方式:PSMA特異性阻害剤(ZJ43、Eur. J. Neurosci.,2004,483-494を参照して調製した)を加えることにより、KUE-PEG-siRNAコンジュゲートがLNCaP細胞に入る経路をさらに確認した。LNCaP細胞をZJ43とともに事前にインキュベートした後、Cy5標識KUE-PEG-siRNAコンジュゲートを加えた。6時間後、LNCaP細胞を640nm励起光の条件下で蛍光イメージングした(図14参照)。図14の結果は、ZJ43の添加によりLNCaP細胞にKUE-PEG-siRNAコンジュゲートからの赤色蛍光シグナルがPSMA特異的阻害剤を添加しない対照群と比較してほとんど観察されないことを示している。このことは、ZJ43の添加がLNCaP細胞によるKUE-PEG-siRNAコンジュゲートの取り込みを、ZJ43を添加していない群に比べて有意に阻害することを示している。
試験実施例2
【0058】
KUE-PEG-siRNAコンジュゲートの前立腺癌細胞への取り込み効率の評価
PSMA陽性発現LNCaP細胞(中国科学院から購入)を選択し、KUE-PEG-siRNAコンジュゲートの細胞取り込み効率を評価した。Cy5標識KUE-PEG-siRNAコンジュゲート(50nM)とsiRNA(50nM)をLNCaP細胞と共にインキュベートし、その中で、siRNAをlipofectamine 2000(ブランド:Invitrogen、メーカー:サーモフィッシャー社)と共にトランスフェクションして対照群とした。4時間後、AnnexinV-FITC/PI細胞アポトーシス二重染色キット(ブランド:556547、メーカー:アメリカBD社)の操作に従って細胞を処理した。製造された細胞サンプルについて、FACS CaliburフローサイトメータによりCy5に対応する検出チャネル下で分析した。実験中に順次にブランク対照群、siRNA単独トランスフェクション群、siRNAとlipofectamine 2000共同トランスフェクション群、及び各KUE-PEG-siRNAコンジュゲートトランスフェクション群に対して分析を行い、群ごとに10個の細胞を収集して検出した。すべての実験群の細胞の検出が完了した後、FlowJoソフトウェアを使用して実験結果を解析した(図15)。図15より、リガンドの共役を行っていないsiRNA(siSTAT3)はLNCaP細胞にはほとんど取り込まれていないことがわかり、これは、細胞イメージングの結果と一致している。さらに、LNCaP細胞において、KUE-siRNAコンジュゲート(KUE-PEG-siRNA、KUE-PEG-siRNA、KUE-PEG12-siRNA)は、lipofectamine 2000トランスフェクション群の細胞取り込み効率(74.2%)よりも高い細胞取り込み効率(>99%)を示した。これらの実験結果は、リガンドKUEの結合が特定の前立腺癌細胞(LNCaP細胞)へのsiRNAの送達に不可欠であることを示している。
試験実施例3
【0059】
KUE-PEG-siRNAコンジュゲートのRNAi活性を検証するために、本試験実施例では、STAT3遺伝子を標的とする治療用小さな核酸を使用し、その配列を表4に示す。
【表4】
200μL滅菌済遠沈管にプロパルギル基修飾された小さな核酸配列(ON2)(10nmol)、アジド修飾された標的リガンド(30nmol)、Cu(I)-TBTA(50nmol)を順次加え、RNAの最終濃度を約100μMに維持した。系にDMF(体積は反応液積の25%)を加えた。反応系をボルテックスで軽く混合して均一にした後、金属反応器に入れ、37℃、900r/minの条件下で3h振とうして反応させた。最後に、15%変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動により反応結果を監視し、オリゴ核酸抽出キットにより分離して精製し、1本鎖コンジュゲートを得た。使用した標的リガンドが6aの場合、収率は97.7%であった。標的リガンドが6bである場合、収量は96.2%であった。使用した標的リガンドが6cの場合、収率は95.6%であった。
その後、得られた1本鎖コンジュゲートと相補鎖小さな核酸をモル比1:1でアニーリングバッファー(2mM酢酸マグネシウム)中、95℃で3分間インキュベートし、KUE-PEG-siSTAT3コンジュゲートを形成した。
1)KUE-PEG-siSTAT3コンジュゲートの遺伝子サイレンシング効果評価
標的遺伝子サイレンシング:シグナル伝達と転写活性化因子3(STAT3)を標的とするKUE-PEG-siSTAT3(KUE-PEG-siRNA)コンジュゲート(100nM)をLNCaP細胞と共にインキュベートした。48時間後、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法(RT-PCR)によりmRNAの発現を検出した。図16Aに示すように、すべてのKUE-PEG-siRNAコンジュゲートは、STAT3のmRNA発現を効果的に低下させることができ、ここで、KUE-PEG-siSTAT3は、lipofectamine 2000を介してトランスフェクションされたsiRNAと同等のサイレンシング活性を有する。また、図16Bから、コンジュゲートにおけるPEG長の増加に伴ってmRNA発現量が徐々に低下していることが分かった。以上の結果は、KUE-PEG-siSTAT3コンジュゲートがLNCaP細胞に取り込まれると標的遺伝子の発現を効果的に低下させることを示している。さらに、コンジュゲートKUE-PEG12-siSTAT3は、KUE-PEG-siSTAT3やKUE-PEG-siSTAT3よりも強いmRNAダウンレギュレーション効果を誘導した。
タンパク質発現阻害:mRNAダウンレギュレーション実験のほかに、タンパク質ブロット法(Western Blot)によりコンジュゲートがSTAT3タンパク質の発現に及ぼす影響を調べた(図17A図17Bを参照)。図17Aの結果は、すべてのKUE-PEG-siSTAT3コンジュゲート実験群に対応するバンドの濃さが、共役されないsiSTAT3群に比べて低下していることを示しており、KUE-PEG-siSTAT3コンジュゲートがSTAT3タンパク質の発現を阻害していることを示している。図17Bにおける定量実験の結果、KUE-PEG12-siSTAT3コンジュゲートがSTAT3タンパク質の発現をダウンレギュレーションすることが示された。
2)KUE-PEG-siRNAコンジュゲートの前立腺癌細胞への増殖阻害効果の評価
【0060】
以上の生化学的評価に基づき、KUE-PEG-siSTAT3(KUE-PEG-siRNA)コンジュゲートは前立腺癌細胞LNCaPに特異的に取り込まれ、RNAiメカニズムをトリガーし、STAT3のmRNA及びタンパク質の発現量を著しく低下させることが確認された。フローサイトメータ(メーカー:アメリカBD社、型番:FACS Calibur)を用いて、KUE-PEG-siSTAT3コンジュゲートのLNCaP細胞の成長状況に対する影響を検出した(図18を参照)。図18には、フローサイトメトリーの結果により、STAT3遺伝子を標的とするKUE-PEG-siSTAT3コンジュゲートは、程度が異なるが、すべてLNCaP細胞のアポトーシスを促進でき(25.01%~34.94%)、コンジュゲートKUE-PEG12-siSTAT3(KUE-PEG12-siRNA)は34.94%のLNCaP細胞のアポトーシスを促進できることが明らかになった。
【0061】
以上のことから、本発明により構築されたKUE-PEG-siSTAT3コンジュゲートは、前立腺癌細胞(LNCaP細胞)に選択的に取り込まれ、LNCaP細胞内のRNAi機構をトリガーし、最終的に前立腺癌細胞の増殖を阻害することに成功したことが明らかになった。
【0062】
さらに、本発明のコンジュゲートは、標的遺伝子の発現を低下させる(又は癌細胞の増殖を阻害する)ことに関しては、従来の方法(例えば、リポソーム)による小さな核酸の送達と同等の効果を有することが、更なる研究によって明らかにされた。
【0063】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の技術構想の範囲内では、本発明の技術案について、各技術的特徴を他の適切な方法で組み合わせることを含め、複数の簡単な変形を行うことができ、これらの簡単な変形及び組み合わせは同様に本発明の開示された内容と見なすべきであり、いずれも本発明の特許範囲に属する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【配列表】
2024515734000001.app
【国際調査報告】