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特表2024-515760CDK阻害剤を調製するためのプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】CDK阻害剤を調製するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C07D 213/74 20060101AFI20240403BHJP
   C07D 231/40 20060101ALI20240403BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20240403BHJP
   C07C 57/58 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
C07D213/74 CSP
C07D231/40
A61P43/00 111
A61K31/5377
C07C57/58
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565473
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 IB2022053851
(87)【国際公開番号】W WO2022229835
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】202141019263
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523039020
【氏名又は名称】オーリジーン オンコロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ポットゥリ, ラムル
(72)【発明者】
【氏名】ヴィジャヤクマール バット, ウダイ
(72)【発明者】
【氏名】シマサンドラ シータッパ, デバラジャ
【テーマコード(参考)】
4C055
4C086
4H006
【Fターム(参考)】
4C055AA01
4C055BA02
4C055BA53
4C055BB10
4C055CA02
4C055CA34
4C055CB10
4C055DA01
4C086AA04
4C086BC73
4C086GA08
4C086GA09
4C086NA03
4C086ZC20
4C086ZC41
4H006AA01
4H006AB84
4H006BJ50
4H006BM30
4H006BM73
4H006BS10
(57)【要約】
本発明は、式(I)
【化1】
の化合物構造を有するCDK7阻害剤の調製に関する。本明細書に記載した発明は、式(I)の化合物を調製する上で有用な中間体、及び、それら中間体の調製の方法にも関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
の化合物を調製する方法であって、式(I’’’):
【化2】
の化合物を、式(KRM-C1)
【化3】
の化合物と反応させることを含み、式中、Xは、Br、ClまたはIであり;Yは、-B(OH)または
【化4】
であり、任意選択的に、1、2、3または4個の、独立して選択したC1-4アルキル置換基で置換しており、式中、添え字nは、1または2である、前記方法。
【請求項2】
前記反応を、パラジウム触媒の存在下で実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記式(I’’’)の化合物を、式(KRM-A1):
【化5】
の化合物を、式(KRM-B):
【化6】
の化合物と反応させて調製する、式中、Xは、Br、ClまたはIである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記式(KRM-A1)の化合物を:
a)式(KRM-A2):
【化7】
の化合物を、(1R,2R)-シクロヘキサン-1,2-ジアミンと反応させて、式:
【化8】
の塩を形成すること;
b)前記塩(5)を再結晶させて、式;
【化9】
の塩(6)を得ること:及び
c)前記式(6)の塩を酸で処理をして、前記式(KRM-A1)の化合物を得ることを含む方法で調製する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記再結晶を、アセトン、アセトニトリル、メタノール、イソプロピルアルコール、酢酸イソプロピル、イソブタノール、1-ペンタノール、1-プロパノール、エタノール、水、またはこれらの混合物において実施する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記酸が、HClである、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
式(I):
【化10】
の化合物を調製する方法であって:
i.式(1)
【化11】
の化合物を、式(2)
【化12】
の化合物と反応させて、式(3)
【化13】
の塩を得ること;
ii.前記式(3)の塩を溶媒Bにおいて再結晶させて、式(4)
【化14】
の塩を得ること;
iii.前記式(4)の塩及び溶媒(C)を含む混合物を、酸で処理して、式(KRM-A):
【化15】
の化合物を生成すること;
iv.前記式(KRM-A)の化合物を、式(KRM-B):
【化16】
の化合物と反応させて、式(I’):
【化17】
の化合物を得ること;及び
v.前記式(I’)の化合物を、式(KRM-C);
【化18】
の化合物と反応させて、前記式(I)の化合物を得ることを含む前記方法。
【請求項8】
前記ステップi)を、アセトン、ジクロロメタン、酢酸n-プロピル、アセトニトリル、メタノール、イソプロピルアルコール、酢酸イソプロピル、イソブタノール、2-ブタノール、1-ブタノール、酢酸n-ブチル、1-ペンタノール、1-プロパノール、クロロホルム、酢酸メチル、酢酸イソブチル、イソブタノール、エタノール、水、または、これらの混合物から選択される溶媒(A)の存在下で実施する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記溶媒(A)が、アセトニトリル、イソプロピルアルコール、酢酸イソプロピル、水、または、これらの混合物である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップi)を、約60℃から約100℃の間の温度で実施する、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記ステップii)が:
a)前記式(3)の化合物及び前記溶媒(B)を含む混合物を提供すること;
b)前記混合物を加熱して、溶液を形成すること;ならびに
c)前記溶液を過飽和にして、それにより、前記式(4)の化合物を溶液内で沈殿させることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記溶媒(B)が、アセトン、アセトニトリル、メタノール、イソプロピルアルコール、酢酸イソプロピル、イソブタノール、1-ペンタノール、1-プロパノール、エタノール、水,または、これらの混合物である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記溶媒(B)が、イソプロピルアルコール、もしく水、またはこれらの任意の混合物である、請求項11から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記溶液を過飽和にする前記ステップが、前記溶液を冷却して周囲温度以下にすることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記溶液を過飽和にする前記ステップが、溶液を約20℃超の温度に維持することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記式(4)の化合物を含む前記混合物から前記式(4)の化合物を濾過することをさらに含む、請求項11から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記ステップ(a)から(c)を、少なくとも3度繰り返す、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
式(4)の化合物及び溶媒(C)を含む前記混合物が、懸濁液である、請求項7から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記ステップiii)が、式(4)の化合物及び溶媒(C)を含む前記混合物を冷却することを含む、請求項7から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記溶媒(C)が、アセトン、ジクロロメタン、酢酸n-プロピル、アセトニトリル、メタノール、酢酸イソプロピル、イソブタノール、2-ブタノール、1-ブタノール、酢酸n-ブチル、1-ペンタノール、1-プロパノール、クロロホルム、酢酸メチル、酢酸イソブチル、イソブタノール、またはエタノールである、請求項18から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記酸は、HClである、請求項7から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記混合物から前記式(KRM-A)の化合物を単離することをさらに含む、請求項7から21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記混合物は、溶液であり、及び、前記式(KRM-A)の化合物を単離することが、前記混合物から前記式(KRM-A)の化合物を濾過することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記式(I’)の化合物を、式(II’):
【化19】
の化合物を脱保護剤と反応させて調製する、請求項7に記載の方法。
【請求項25】
前記脱保護剤が、HClである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記式(II’)の化合物を:
i)前記式(KRM-A)の化合物を、塩化オキサリルと反応させて、式:
【化20】
の化合物を生成すること;及び、
ii)前記式(KRM-D)の化合物を、in situで、前記式(KRM-B)の化合物と反応させることによって調製する、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記ステップii)を、塩基の存在下で実施する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記塩基が、N,N-ジイソプロピルエチルアミンである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ステップv)を、パラジウム触媒の存在下で実施する、請求項7、24から28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記ステップv)を、溶媒の存在下で実施する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記溶媒が、ジオキサンと水との混合物である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
式(III)
【化21】
の化合物であって、式中、Rが、ハロ、メチルスルホニルオキシ、p-トリルスルホニルオキシ、フェニルスルホニルオキシ、またはトリフルオロメチルスルホニルオキシである、前記化合物。
【請求項33】
が、ハロである、請求項32に記載の化合物。
【請求項34】
構造:
【化22】
を有する、請求項32から33のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項35】
式(IV):
【化23】
の化合物であって、式中、Rは、C1-6アルキルであり;Rは、ハロ、メチルスルホニルオキシ、p-トリルスルホニルオキシ、フェニルスルホニルオキシ、またはトリフルオロメチルスルホニルオキシである、前記化合物。
【請求項36】
が、ハロである、請求項35に記載の化合物。
【請求項37】
構造:
【化24】
を有する、請求項35または36のいずれか1項に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年4月27日に出願したインド仮出願第202141019263号の利益を主張し、その全内容を、参照により、本明細書で援用する。
【0002】
本発明は、サイクリン依存性キナーゼ7(CDK7)を阻害し、かつ、それが媒介する疾患または障害の治療を行う上で有用である式(I)の化合物の調製の方法に関する。本発明は、式(I)の化合物の調製において有用な中間体、及び、それらの調製の方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
サイクリンH、及びRING-フィンガータンパク質MATlと複合体を形成するCDK7は、Tループの活性化において細胞周期CDKをリン酸化して、その活性を促す(Fisher et al.,Cell.,Aug 26;78(4):713-24,1994)。そのため、CDK7を阻害すると、細胞周期の進行を阻害する強力な手段を提供するという提案がされており、これは、少なくとも大抵の細胞型では、細胞周期に関するCDK2、CDK4、及びCDK6の絶対要件を欠くマウスに関する遺伝子ノックアウト研究から得られた説得性のある証拠があることを考えると、特に重要である可能性がある(M alumbres et al.,Nature Cell Biology,11,1275-1276,2009)が、その一方で、別の腫瘍は、いくらかは必要なようだが、その他の中間期CDK(CDK2、CDK4、CDK6)から独立している。最近の遺伝的及び生化学的研究は、細胞周期の進行に関するCDK7の重要性を確認している(Larochelle.et al.,Mol Cell.,Mar 23;25(6):839-50.2007;Ganuza et al.,EM BO J.,May 30;31(11):2498-510,2012)。
【0004】
サイクリン依存性キナーゼ7(CDK7)は、細胞周期CDKを活性化し、及び、一般的な転写第II因子ヒト(TFIIH)のメンバーである。CDK7は、転写、及び、おそらくは、DNA修復にも役割を果たす。三量体Cak複合体CDK7/サイクリンH/MATlは、一般的な転写/DNA修復因子IIHであるTFIIHの要素でもある(Morgan,DO.,Annu.Rev.Cell Dev.Biol.13,261-91,1997)。TFIIHサブユニットとして、CDK7は、RNAポリメラーゼII(pol II)の最大サブユニットのCTD(カルボキシ末端ドメイン)をリン酸化する。哺乳類pol(II)のCTDは、コンセンサス配列YSPTSPSを有する52個のヘプタドリピートからなり、及び、位置2及び5のSer残基のリン酸化状態は、RNAP-IIの活性化において重要であることが示されており、このことは、CTDの機能に重要な役割を果たす可能性が高いことを示している。CDK7は、主に、転写開始の一部として、プロモーターでRNAP-IIのSer-5(PSS)をリン酸化しており(Gomes et al.,Genes Dev.2006 Mar l;20(5):601-12,2006)、CTDヘプタドのSer-2とSer-5の両方をリン酸化するCDK9とは対照的である(Pinhero et al.,Eur.J.Biochem.,271,pp.1004-1014,2004)。
【0005】
CDK7に加えて、その他のCDKが、RNApol(II)CTDをリン酸化及び調節することが報告されている。その他のCDKとして、ポジティブ転写伸長因子(P-TEFb)の活性型を構成するCdk9/サイクリンTlまたはT2(Peterlin and Price,Mol Cell.,Aug 4;23(3):297-305,2006)、ならびに、RNAPII CTDキナーゼの最新メンバーとして、Cdkl2/サイクリンK、及びCdkl3/サイクリンKがある(Bartkowiak et al.,Genes Dev.,Oct 1 5;24(20):2303-16,2010;Blazek et al.,Genes Dev.Oct 15;25(20):2158-72,2011)。
【0006】
RNAP II CTDリン酸化の撹乱は、抗アポトーシスBCL-2ファミリーなど、半減期の短いタンパク質に優先的に作用することが示されている。(Konig et al.,Blood,1,4307-4312,1997;The transcriptional non-selective cyclin-dependent kinase inhibitor flavopiridol induces apoptosis in multiple myeloma cells through transcriptional repression and down-regulation of Mcl-1;(Gojoet al.,Clin.Cancer Res.8,3527-3538,2002)。
【0007】
このことは、CDK7酵素複合体が、細胞内の複数の機能:細胞周期の制御、転写調節、及びDNA修復に関与していることを示唆している。そのような多様な細胞プロセスに関与する1つのキナーゼを突き止めることは驚くべきことであり、その一部は、相互に排他的でさえある。また、CDK7キナーゼ活性の細胞周期依存性の変化を確認するための数々の試みが失敗したままであることも不可解である。その基質であるCDC2の活性とリン酸化状態は、細胞周期の間に変動しており、このことは予想外である。事実、cdk7活性は、Cdc2/サイクリンA及びCdc2/サイクリンB複合体の両方の活性化、ならびに細胞分裂に必要であることが示されている。(Larochelle,S.et al.Genes Dev 12,370-81,1998)。事実、CTDキナーゼを標的とする非選択的pan-CDK阻害剤であるフラボピリドールは、慢性リンパ性白血病(CLL)の治療に有効性を示しているが、毒性プロファイルは不十分である(Lin et al.,J.Clin.Oncol.27,6012-6018,2009;Christian et al.,Clin.Lymphoma Myeloma,9,Suppl.3,S179-S185,2009)。
【0008】
あらゆる目的のために、参照により、本明細書で援用する国際公開WO2016193939は、CDK7阻害剤、及びその調製方法を記載している。現在のところ、CDK7の阻害剤は、がん治療のために開発が行われている。医薬品開発において、通常は、薬力学的、薬物動態学的、及び毒物学的特性に顕著な差異を示す個々の立体異性体を採用することが有利である。
【0009】
したがって、任意の個体に対する適切な薬理学的効果を奏するCDK7阻害分子の特異的立体異性体の調製のための改良された方法が必要である。
【発明の概要】
【0010】
式(I)の化合物は、(S,E)-N-(5-(3-(1-((5-シクロプロピル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イル)フェニル)ピリジン-2-イル)-4-モルホリノブト-2-エンアミドとしても知られている。本開示は、高収率及び高純度で式(I)の化合物のプロセス及び合成を提供する。また、本開示は、式(I)の化合物を調製するプロセスで得られる特定の中間体を開示する。
【0011】
一態様では、本発明は、式(I):
【化1】
の化合物を調製する方法を提供しており、当該方法は、式(I’’’):
【化2】
の化合物を、式(KRM-C1)
【化3】
の化合物と反応させることを含み、式中、Xは、Br、ClまたはIであり;Yは、-B(OH)または
【化4】
であり、任意選択的に、1、2、3または4つの、独立して、選択したC1-4アルキル置換基で置換しており、式中、添え字nは、1または2である。
【0012】
別の態様では、本発明は、式(I):
【化5】
の化合物を調製する方法であって、当該方法は:
i.式(1)
【化6】
の化合物を、式(2)
【化7】
の化合物と反応させて、式(3)
【化8】
の塩を得ること;
ii.式(3)の塩を、溶媒Bにおいて再結晶させて、式(4)
【化9】
の化合物を得ること;
iii.式(4)の塩及び溶媒(C)を含む混合物を、酸で処理して、式(KRM-A):
【化10】
の化合物を生成させること;
iv.式(KRM-A)の化合物を、式(KRM-B):
【化11】
の化合物と反応させて、式(I’):
【化12】
の化合物を得ること;及び
v.式(I’)の化合物を、式(KRM-C):
【化13】
の化合物と反応させて、式(I)の化合物を得ることを含む。
【0013】
別の態様では、本発明は、式(III):
【化14】
の化合物を提供しており、式中、Rは、ハロ、メチルスルホニルオキシ、p-トリルスルホニルオキシ、フェニルスルホニルオキシ、または、トリフルオロメチルスルホニルオキシである。
【0014】
別の態様では、本発明は、式(IV):
【化15】
の化合物を提供しており、式中、Rは、C1-6アルキルであり;Rは、ハロ、メチルスルホニルオキシ、p-トリルスルホニルオキシ、フェニルスルホニルオキシ、または、トリフルオロメチルスルホニルオキシである。
【0015】
さらなる態様では、本発明は、式(KRM-A)の化合物の調製の方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書で使用する場合、以下の単語及び語句は、一般的には、それらを使用している文脈が特記した範囲を除いて、以下に記載した意味を有していることを意図している。
【0017】
本明細書で使用する場合、用語「アルキル」は、1から10個の炭素原子の分枝状または直鎖状の炭化水素鎖のことを指しており、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルなどがある。用語「Cn-mアルキル」または(C-C)アルキルとは、nからm個の炭素原子を有するアルキル基のことを指す。C1-6アルキルが、好ましい。
【0018】
本明細書で使用する場合、用語「ハロ」または「ハロゲン」は、単独で、またはその他の用語(複数可)と組み合わせて、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードを意味する。
【0019】
本明細書で使用する場合、数値または数値範囲に関係する用語「約」は、記載された数または数値範囲が、実験変数(または、統計的実験誤差内)の近似値であることを意味しており、したがって、数または数値範囲は、例えば、記載された数または数値範囲の1%から15%の間で変化し得る。
【0020】
当業者であれば、本議論は、例示的な実施形態の説明にすぎず、本発明のさらに広範な態様を限定するものと解釈するべきではない、ことを理解されたい。事実、本発明の範囲または技術思想から逸脱せずとも、本明細書に記載されている化合物、組成物、及び方法に関する様々な改変及び変更を加えることができることは、当業者には自明である。例えば、ある実施形態の一部として例示または記載されている特徴を、別の実施形態に適用して、なおもさらなる実施形態をもたらし得る。したがって、本発明は、そのような改変及び変更、ならびに、それらの均等物を含むことが意図されている。本発明のその他の目的、特徴、及び態様は、以下の詳細な説明に開示されている、またはその開示から自明である。
【0021】
一実施形態では、本発明は、式(I):
【化16】
の化合物を調製する方法を提供しており、当該方法は、式(I’’’):
【化17】
の化合物を、式(KRM-C1)
【化18】
の化合物と反応させることを含み、式中、Xは、Br、ClまたはIであり;Yは、-B(OH)または
【化19】
であり、任意選択的に、1、2、3または4つの、独立して選択したC1-4アルキル置換基で置換しており、式中、添え字nは、1または2である。
【0022】
一実施形態では、式(I’’’)の化合物と、式(KRM-C1)の化合物との反応は、パラジウム触媒の存在下で実施する。
【0023】
一実施形態では、式(I’’’)の化合物を、式(KRM-A1):
【化20】
の化合物を、式(KRM-B):
【化21】
の化合物と反応させて調製し、式中、Xは、Br,ClまたはIである。
【0024】
一実施形態では、式(KRM-A1)の化合物を:
a)式(KRM-A2):
【化22】
の化合物を、(1R,2R)-シクロヘキサン-1,2-ジアミンと反応させて、式(5):
【化23】
を有する塩を形成すること:
b)塩(5)の塩を再結晶させて、式(6):
【化24】
を有する塩(6)を得ること:及び
c)式(6)の塩を酸で処理をして、式(KRM-A1)の化合物を得ること、
を含む方法で調製し、式中、Xは、Br、Cl、またはIである。
【0025】
一実施形態では、再結晶のステップを、アセトン、アセトニトリル、メタノール、イソプロピルアルコール、酢酸イソプロピル、イソブタノール、1-ペンタノール、1-プロパノール、エタノール、水、または、これらの混合物において実施する。
【0026】
一実施形態では、酸は、HClである。一実施形態では、Xは、Brである。
【0027】
一実施形態では、Yは、-B(OH)である。
【0028】
一実施形態では、Yは、
【化25】
であり、任意選択的に、1、2、3または4個の、独立して選択したC1-4アルキル置換基で置換されており、式中、添え字nは、1または2である。一実施形態では、Yは、少なくとも4個のC1-4アルキル置換基で置換された
【化26】
であり、添え字nは1である。
【0029】
一実施形態では、Yは、
【化27】
である。
【0030】
一実施形態では、本発明は、式(I):
【化28】
の化合物を調製する方法を提供しており、当該方法は:
i.式(1)
【化29】
の化合物を、式(2)
【化30】
の化合物と反応させて、式(3)
【化31】
の塩を得ること;
ii.式(3)の塩を溶媒Bにおいて再結晶させて、式(4)
【化32】
の化合物を得ること;
iii.式(4)の化合物及び溶媒(C)を含む混合物を、酸で処理して、式(KRM-A):
【化33】
の化合物を生成させること;
iv.式(KRM-A)の化合物を、式(KRM-B):
【化34】
の化合物と反応させて、式(I’):
【化35】
の化合物を得ること;及び
v.式(I’)の化合物を、式(KRM-C):
【化36】
の化合物と反応させて、式(I)の化合物を得ることを含む。
【0031】
一実施形態では、本発明は、式(KRM-A)の化合物を調製する方法を提供しており、当該方法は:
A.式(1)の化合物を式(2)の化合物と反応させて、式(3)
【化37】
の塩を得ること;
B.式(3)の塩を溶媒(B)において再結晶を実施して、式(4)
【化38】
の化合物を得ること;及び
C.式(4)の塩と溶媒(C)を含む混合物を酸で処理をして、式(KRM-A)の化合物を生成することを含む。
【0032】
一実施形態では、ステップi)を、アセトン、ジクロロメタン、酢酸n-プロピル、アセトニトリル、メタノール、イソプロピルアルコール、酢酸イソプロピル、イソブタノール、2-ブタノール、1-ブタノール、酢酸n-ブチル、1-ペンタノール、1-プロパノール、クロロホルム、酢酸メチル、酢酸イソブチル、イソブタノール、エタノール、水、または、これらの混合物から選択した溶媒(A)の存在下で実施する。
【0033】
一実施形態では、溶媒(A)は、アセトニトリル、イソプロピルアルコール、酢酸イソプロピル、水、または、これらの混合物である。
【0034】
一実施形態では、ステップi)を、約60℃から約100℃の間の温度で実施する。
【0035】
一実施形態では、ステップi)は、式(1)の化合物を、式(2)の化合物と、アセトニトリル、またはIPAと水との混合物の存在下で反応させこと、反応混合物を、約100℃にまで加熱すること、及び、反応混合物を周囲温度にまで冷却することを含む。一実施形態では、ステップi)は、反応混合物から式(3)の化合物を濾過することをさらに含む。
【0036】
一実施形態では、ステップii)は:
a)式(3)の化合物、及び溶媒(B)を含む混合物を提供すること;
b)混合物を加熱して、溶液を形成すること;及び
c)溶液を過飽和にして、それにより、式(4)の化合物を溶液内で沈殿させることを含む。
【0037】
一実施形態では、溶媒(B)は、アセトン、アセトニトリル、メタノール、イソプロピルアルコール、酢酸イソプロピル、イソブタノール、1-ペンタノール、1-プロパノール、エタノール、水、または、これらの混合物である。一実施形態では、溶媒(B)は、イソプロピルアルコールもしくは水、またはこれらの混合物である。
【0038】
一実施形態では、ステップii)において、反応混合物を還流した。一実施形態では、反応混合物を、約65℃から約100℃の間の温度で還流した。一実施形態では、反応混合物を、約100℃で還流し、次いで、周囲温度にまで冷却した。
【0039】
一実施形態では、溶液を過飽和にするステップが、溶液を冷却して周囲温度以下にすることを含む。
【0040】
一実施形態では、溶液を過飽和にするステップが、溶液を約20℃超の温度に維持することを含む。
【0041】
一実施形態では、ステップii)は、式(4)の化合物を含む混合物から式(4)の化合物を濾過することをさらに含む。
【0042】
一実施形態では、ステップii)のステップa)からc)を、少なくとも3度繰り返す。
【0043】
一実施形態では、ステップiii)での式(4)の化合物及び溶媒(C)を含む混合物は、懸濁液である。
【0044】
一実施形態では、ステップiii)は、式(4)の化合物及び溶媒(C)を含む混合物を冷却することを含む。
【0045】
一実施形態では、溶媒(C)は、アセトン、ジクロロメタン、酢酸n-プロピル、アセトニトリル、メタノール、酢酸イソプロピル、イソブタノール、2-ブタノール、1-ブタノール、酢酸n-ブチル、1-ペンタノール、1-プロパノール、クロロホルム、酢酸メチル、酢酸イソブチル、イソブタノール、またはエタノールである。
【0046】
一実施形態では、酸は、HClである。
【0047】
一実施形態では、ステップi)からiii)に従って(KRM-A)の化合物を調製する方法は、混合物から式(KRM-A)の化合物から単離することをさらに含む。一実施形態では、混合物は、溶液であり、式(KRM-A)の化合物を単離することは、混合物から式(KRM-A)の化合物を濾過することを含む。
【0048】
一実施形態では、式(II’)の化合物を:
i)式(KRM-A)の化合物を、塩化オキサリルと反応させて、式:
【化39】
の化合物を生成すること;
ii)式(KRM-D)の化合物を、in situで、式(KRM-B)の化合物と反応させることによって調製する。
【0049】
一実施形態では、式(II’)の化合物の調製のステップi)において、塩化オキサリルを、0℃で、式(KRM-A)の化合物と、乾燥DCM及びDMF、または、これらの混合物から選択される溶媒とを含む反応混合物に加え;この混合物を、周囲温度になるまで静置する。
【0050】
一実施形態では、式(II’)の化合物の調製のステップi)が、式(KRM-D)の化合物を含む混合物から式(KRM-D)の化合物を単離することをさらに含む。一実施形態では、式(KRM-D)の化合物を、反応混合物を真空下で濃縮して単離する。一実施形態では、反応混合物の濃縮を、約40℃と約45℃との間の温度で実施する。
【0051】
一実施形態では、式(II’)の化合物の調製のステップii)は:ii-a)式(KRM-D)の化合物及びトルエンを含む混合物を提供すること;ii-b)該混合物を、事前に冷却した式(KRM-B)の化合物の溶液及び塩基と反応させて、式(II’)の化合物を得ることを含む。一実施形態では、式(II’)の化合物の調製のステップii)を、塩基の存在下で実施する。一実施形態では、塩基は、N,N-ジイソプロピルエチルアミンである。
【0052】
一実施形態では、式(II’)の化合物を調製する方法は、式(II’)の化合物を含む混合物から式(II’)の化合物を、真空下で、単離することをさらに含む。
【0053】
一実施形態では、式(1)の化合物を、塩基及び溶媒の存在下で、式(X
【化40】
の化合物を、臭化イソプロピル(X)と反応させて調製する。一実施形態では、塩基は、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)であり、溶媒は、THFである。一実施形態では、式(1)の化合物を調製する方法は、式(1)の化合物を含む混合物から式(1)の化合物を単離することをさらに含む。
【0054】
一実施形態では、式(1)の化合物を:式(X):
【化41】
の化合物を、CHCH(Br)CH(X)と、塩基の存在下で反応させて、式(X):
【化42】
の化合物を得ること;及び、(X)の化合物を酸の存在下で反応させ、続けて、還流させることによって調製する。
【0055】
一実施形態では、塩基は、KOHであり、及び、反応を、第4級アンモニウム塩の存在下で実施する。一実施形態では、第4級アンモニウム塩は、臭化テトラブチルアンモニウムである。一実施形態では、酸は硫酸であり、還流を、140℃で、12時間実施する。一実施形態では、式(1)の化合物の調製方法は、式(1)の化合物を含む混合物から式(1)の化合物を単離することをさらに含む。
【0056】
ある実施形態では、式(I’)の化合物を、式(II’):
【化43】
の化合物を脱保護剤と反応させて調製する。
【0057】
一実施形態では、脱保護剤は、HClである。
【0058】
一実施形態では、式(I’)の化合物の調製方法は、式(I’)の化合物を含む混合物から式(I’)の化合物を単離することをさらに含む。
【0059】
式(I)の化合物を調製する一実施形態では、ステップv)を、パラジウム触媒の存在下で実施する。式(I)の化合物を調製する一実施形態では、ステップv)を、溶媒の存在下で実施する。式(I)の化合物を調製する一実施形態では、溶媒は、ジオキサンと水との混合物である。
【0060】
一実施形態では、式(I)の化合物を調製する方法は、式(I)の化合物を含む混合物から式(I)の化合物を単離することを含む。
【0061】
一実施形態では、混合物は、式(I)の化合物の溶液を含む。一実施形態では、この溶液は、溶媒に溶解した式(I)の化合物を含む固形原料を含む。一実施形態では、固形原料には、式(I)の化合物が約70%~約90%含まれる。
【0062】
一実施形態では、混合物から式(I)の化合物を単離するステップは:混合物から得た式(I)の化合物を、濾過、洗浄、及び乾燥させることを含む。一実施形態では、混合物から濾過した式(I)の化合物を、溶媒で洗浄する。
【0063】
一実施形態では、式(I)の化合物を調製する方法は、式(I)の化合物を含む固形原料の精製をさらに含む。
【0064】
一実施形態では、本発明は、式(III):
【化44】
の化合物を提供し、式中、Rは、ハロ、メチルスルホニルオキシ、p-トリルスルホニルオキシ、フェニルスルホニルオキシ、またはトリフルオロメチルスルホニルオキシである。
【0065】
式(III)の化合物の一実施形態では、Rは、ハロである。
【0066】
一実施形態では、式(III)の化合物は:
【化45】
の構造を有する化合物である。
【0067】
一実施形態では、本発明は、式(IV):
【化46】
の化合物を提供し、式中、Rは、C1-6アルキルであり;Rは、ハロ、メチルスルホニルオキシ、p-トリルスルホニルオキシ、フェニルスルホニルオキシ、またはトリフルオロメチルスルホニルオキシである。
【0068】
一実施形態では、本発明は、式(IV):
【化47】
の化合物を提供し、式中、Rは、C1-6アルキルであり;Rは、ハロ、メチルスルホニルオキシ、p-トリルスルホニルオキシ、フェニルスルホニルオキシ、またはトリフルオロメチルスルホニルオキシである。
【0069】
式(IV)の化合物の一実施形態では、Rは、ハロである。
【0070】
一実施形態では、式(IV)の化合物は。構造:
【化48】
を有する化合物である。一実施形態では、式(IV)の化合物は、構造:
【化49】
を有する化合物である。
【0071】
略語
以下の略語を、本明細書で使用する:
ACN - アセトニトリル;IPA - イソプロピルアルコール;HCl - 塩酸;TFA - トリフルオロ酢酸;EtOAc - 酢酸エチル;conc - 濃い;CHCl3 - クロロフォルム;CDCl//クロロホルム-d-重水素化クロロホルム;DMSO-d- 重水素化ジメチルスルホキシド;DCM - ジクロロメタン;DMF - N,N-ジメチルホルムアミド;g - グラム;h - 時間;H - プロトン;J - 結合定数;HPLC - 高速液体クロマトグラフィ;chiral HPLC - キラル高速液体クロマトグラフィ;LDA - リチウムジイソプロピルアミド;M - モル;MHz - メガヘルツ(周波数);MS - 質量分析;mmol - ミリモル;mL - ミリリットル;min - 分;mol - モル;M - 分子イオン;m/z - 質量対電荷比;NaSO - 硫酸ナトリウム;N - 正規性;NMR - 核磁気共鳴;Pd(dppf)Cl.DCM - ジクロロメタンを有する[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)複合体;rt/RT - 22℃から25℃の間の範囲の室温または周囲温度;s - 一重項;d - 二重項、t - 三重項;q - 四重項;m - 多重項;dd - 二重項の二重項;td - 三重項の二重項;qd - 四重項の二重項;ddd - 二重項の二重項の二重項;dt - 二重項の三重項;ddt - 二重項の二重項の三重項;p - ペンテート;TLC - 薄層クロマトグラフィ;THF - テトラヒドロフラン;μ - ミクロン;μL-マイクロリットル、及びδ - デルタ。
【0072】
実験
本発明は、適切な材料を使用して、以下の実施例の手順に従って、式(I)の化合物の調製のための方法を提供する。当業者であれば、以下の分取手順の条件及びプロセスでの公知の変形を、これら化合物を調製するために使用することができることを理解するであろう。さらに、当業者であれば、詳細に記載された手順を利用することによって、本発明の追加の化合物を調製することができる。
【0073】
HPLC:
純度分析は、以下に詳述した方法を使用して、ダイオードアレイ検出器を備えたAgilent HP1100シリーズシステムにおいて、ChemStationソフトウェアvB.04.03を使用して実施した。
【表1】
【0074】
式(I)の化合物の調製において、中間体KRM-Aの任意の特異的立体異性体が、単離プロセスの間に急速なラセミ化を受けたこと、及び、所望のエナンチオマーを高いキラル純度で分離することが困難であることが認められた。
本発明の発明者らは、驚くべきことに、中間体KRM-Aの2つの立体異性体を分離する溶液を発見するに至り、すなわち、式(I)の化合物の特異的な所望の異性体の合成への途を開いた。
【実施例
【0075】
実施例-1:式(I)の化合物の調製
スキーム-1:KRM-Aの調製
【化50】
【0076】
ステップ-1:2-(3-ブロモフェニル)-3-メチルブタン酸(1)の調製
2M LDA(698mL、1.38mol)を、-78℃で、2-(3-ブロモフェニル)酢酸(X、150g、0.69mol)を含むTHFの溶液(700mL)に、30分間かけて加えた。反応混合物を、-78℃で、2時間撹拌し、続いて、臭化イソプロピル(X、255g、2.07mol)を、30分間かけて滴下して加えた。反応混合物を、室温で、一晩撹拌した。次いで、反応混合物を、1N HCl(pH 2)で反応を停止し、得られた生成物を、酢酸エチル(500mL×3)に抽出した。合わせた有機層を、水で洗浄し、続けて、ブライン溶液で洗浄した。有機層を、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下で濃縮したところ、粗製化合物が得られ、これを、シリカカラムで、0から10%の酢酸エチル-ヘキサンシステムで溶離して精製したところ、標記化合物を得た(150g、83%収率)、HPLC純度-96%。式(1)の化合物は、CN110590747に記載された手順でも調製することができる。
【0077】
ステップ-2:化合物3の調製
2-(3-ブロモフェニル)-3-メチルブタン酸(1,510g、1.98mol)を、30%のIPAを含む水(10.2L;3.06LのIPA-7.14Lの水)に溶解し、(1R,2R)-シクロヘキサン-1,2-ジアミン(2,113g、0.9mol)を加えた。反応混合物を、沈殿物が認められるまで、室温で、10分間撹拌し、次いで、溶液が澄明になるまで、100℃にまで加熱し、同じ温度で、さらに30分間撹拌をした。8~12時間かけて、反応混合物を徐々に室温にまで下げた。得られた固形物を濾過し、500mLの30%IPA-水混合物で洗浄し、真空下で乾燥したところ、化合物3が得られた(620g、湿潤)。
【0078】
計画(キラル純度に関する):少量(100mg)の化合物3を、DCM(2~3mL)に入れ、澄明な溶液が認められるまで、0℃で、1N HCl(pH 2)を加えた。化合物をDCMに抽出し、NaSO上で乾燥させ、溶媒を蒸発させたところ、標記化合物を、白色の固形物として得た(20mg)。このサンプルに関するキラルHPLCを記録したところ、20.6%の望ましくない異性体が、キラルHPLCで認められた。
【0079】
標記化合物のキラル純度を改善するために、再結晶法を、以下に記載したようにして実施した。
【0080】
ステップ-3:再結晶
化合物3(619.90g)を、30%のIPAを含む水(12.4L)に入れ、次いで、溶液が澄明になるまで混合物を100℃にまで加熱し、同じ温度で、さらに30分間撹拌をした。8~12時間かけて、反応混合物を徐々に室温にまで下げた。得られた固形物を濾過し、500mLの30%IPA-水で洗浄し、真空下で乾燥したところ、所望の化合物を得た(360g、湿潤)。
【0081】
分析に関する(キラル純度に関する)計画:少量(100mg)の上記化合物を、DCM(2~3mL)に入れ、澄明な溶液が認められるまで、0℃で、1N HCl(pH 2)を加え、化合物をDCMに抽出し、NaSO上で乾燥させ、溶媒を蒸発させたところ、標記化合物を、白色の固形物として得た(35mg)。このサンプルに関するキラルHPLCを記録したところ、10.3%の望ましくない異性体が、キラルHPLCで認められた。
【0082】
再結晶法を、上記した手順に従って、30%のIPAを含む水を使用してさらに3度繰り返して、0.27%のその他の異性体を有する98.50% eeを超える純度を得、286gの化合物4を得た。
【0083】
ステップ-4:(S)-2-(3-ブロモフェニル)-3-メチルブタン酸(KRM-A)の調製
化合物4(286g)を、DCM(1.3L)に入れて、澄明な溶液が認められるまで、0℃で、1N HClを加え、化合物を、DCM(500mL×2)に抽出した。有機層を分離し、ブライン溶液(500mL)で洗浄し、NaSO上で乾燥させた。溶媒を反応混合物から蒸発させたところ、標記化合物を白色の固形物として得た(148g、60%収率)。キラルHPLC:98.50%
H NMR (400MHz, DMSO-d): δ 12.5 (s, 1H), 7.50-7.44 (m, 2H), 7.34-7.26 (m, 2H), 3.16 (d, 1H), 2.23-2.11 (m, 1H), 0.98 (d, 3H), 0.63 (d, 3H);キラルHPLC: 98.50% 保持時間: 4.588 分間.
【0084】
スキーム-2:式(I)の化合物の調製
【化51】
【0085】
ステップ-1:(S)-2-(3-ブロモフェニル)-N-(5-シクロプロピル-1H-ピラゾール-3-イル)-3-メチルブタンアミドの合成
ステップ-1a:KRM-Dの調製
撹拌したKRM-Aの溶液(100g、0.388mol)を含む乾燥DCM(600mL、6vol)に対して、触媒量のDMF(10mL)を加え、続いて、塩化オキサリル(45mL、0.525mol)を、0℃で、30分間かけて滴下して加えた。添加を終えた後に、反応混合物を、同じ温度で、15分間撹拌した。反応混合物を、室温にまで上げ、2から4時間撹拌した。反応を終えた後に(反応をTLCでモニタリングし、酸塩化物の形成を、MeOHで反応混合物の一定分量の反応を停止させて確認した)、反応混合物を、40℃~45℃で、真空下で濃縮したところ、粗製の(S)-2-(3-ブロモフェニル)-3-メチルブタノイルクロリド(KRM-D)を得た。粗製のKRM-Dを、トルエン(500mL)に溶解し、及び、次のステップで使用した。
【0086】
ステップ-1b:式(II’)の化合物の調製
(S)-2-(3-ブロモフェニル)-3-メチルブタノイルクロリドを含むトルエンを、事前に冷却(0から5℃)したtert-ブチル3-アミノ-5-シクロプロピル-1H-ピラゾール-1-カルボキシレート(KRM-B、95.5g、0.427mol)の溶液に対して慎重に加え、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(100mL、0.583mol)を含むトルエン(1.2L)を、0℃で、1~2時間かけて加えた。反応混合物を、室温になるまで静置し、一晩撹拌した。次いで、反応混合物を、0~5℃にまで冷却し、氷冷した1.5N HCl(3×500mL)で洗浄した。有機層を、重炭酸ナトリウム溶液(500mL)、ブライン溶液(500mL)で洗浄し、無水NaSO上で乾燥させ、濾過し、45~50℃で、真空下で濃縮したところ、粗製のtert-ブチル(S)-5-(2-(3-ブロモフェニル)-3-メチルブタンアミド)-3-シクロプロピル-1H-ピラゾール-1-カルボキシレート(式(II’)の化合物)を、薄茶色の油として得た(約180g, LCMS: m/z= 461.9 (M+H), HPLC: 80.80%, 保持時間:15.89 分間)。粗生成物を、さらに精製せずに、次のステップで、そのまま利用した。
【0087】
ステップ-1c:式(I’)の化合物の調製
tert-ブチル(S)-5-(2-(3-ブロモフェニル)-3-メチルブタンアミド)-3-シクロプロピル-1H-ピラゾール-1-カルボキシレート(180g、1.731mol)を含むジオキサン(360mL)の懸濁液に対して、0℃で、2N 含水HCl(360mL)を加えた。反応混合物を、室温で、一晩撹拌した。反応を終えた後に、ジオキサンを濃縮し、反応混合物を水(500mL)で希釈し、固体重炭酸ナトリウムで(pH-8にまで)塩基性化した。得た化合物を、DCM(700mL×3)で抽出した。合わせた有機層を、水(300mL)、ブライン溶液(300mL)で洗浄し、無水NaSO上で乾燥させた。有機層を濃縮して、粗製の(S)-2-(3-ブロモフェニル)-N-(5-シクロプロピル-1H-ピラゾール-3-イル)-3-メチルブタンアミド(式(I’)の化合物)を、半固形物として得た。粗生成物を、トルエン(500mL)に溶解し、溶液を、18時間撹拌した。得た固形物を濾過し、トルエン(100mL)及びn-ヘプタン(200mL)で洗浄した。固形物を、真空下、45~50℃で、6時間、さらに乾燥させたところ、標記化合物を得た(110g、2段階を経た収率:78%)。LCMS: m/z= 362 (M+H), HPLC: 97.66%, 保持時間: 24.10 分間
【0088】
ステップ-2:(S,E)-N-(5-(3-(1-((5-シクロプロピル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イル)フェニル)ピリジン-2-イル)-4-モルホリノブト-2-エナミド(式(I)の化合物)の調製
(S)-2-(3-ブロモフェニル)-N-(5-シクロプロピル-1H-ピラゾール-3-イル)-3-メチルブタンアミド(50g、0.138mol)、及び(E)-4-モルホリノ-N-(5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピリジン-2-イル)ブト-2-エナミド(KRM-C、56.6g、0.151mol、1.1当量)(WO2020202001に記載された手順に従って調製した)を含む1,4-ジオキサン(500mL、10vol)及び水(100mL、2vol)の脱気溶液に対して、三塩基性KPO(73.2g、0.345mol、2.5当量)を、室温で加えた。この反応体を、アルゴンパージ(脱気)しながら、20分間撹拌した。反応混合物に、Pd(dppf)Cl.DCM(3.38g、0.0042mol、及び0.03当量)を加え、反応混合物を、1~2時間かけて90℃にまで加熱した(この反応は、10%メタノールを含むDCMを溶媒システムとして使用するTLCでモニタリングした)。
【0089】
反応を終えた後に、この反応体を、室温にまで冷却し、Celite(登録商標)ベッドに通して濾過した。このベッドを、1,4-ジオキサン(200mL)で洗浄し、濾液を濃縮して粗製化合物を得た。この粗製化合物を、5%メタノールを含むDCM(400mL)に溶解し、水(200mL×2)で洗浄した。水層を分離し、DCM(100mL×2)で抽出した。合わせた有機層を、ブライン溶液で洗浄し、濾過し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。有機層を、真空下で、35~40℃で濃縮したところ、粗製の標記化合物を得た(約80g)。
【0090】
式(I)の粗製化合物(80g)を、700mLの酢酸エチルに溶解した。反応混合物を、15℃にまで冷却し、2N HClを、慎重に加えた(pH 約1まで)。次いで、反応混合物を、室温で、20分間撹拌し、層を分離した。水層(生成物を含む)を酢酸エチル(300mL×3)で洗浄した。この水層を、0℃にまで冷却し、20%含水NaCO溶液を使用して、pHを、約8にまで調整した。この生成物を、10%メタノールを含むDCM(300mL×3)で抽出した。合わせた有機層を、水(300mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過をした。濾液を、活性炭(80gの粗製物投入量に関する16g、20%w/w)で処理をし、次いで、反応混合物を、一晩、室温で撹拌し、Celite(登録商標)ベッドに通して濾過した。このベッドを、5%メタノールを含むDCMで(約20vol、TLCによって生成物の存在が認められなくなるまで)洗浄した。濾液を、真空下で、35℃~40℃で濃縮したところ、式(I)の化合物を得た(70g、HPLC純度:92.70%,保持時間:15.65分間)。
【0091】
改善したキラル純度に関する計画:上記した式(I)の化合物を、酢酸エチル(約30vol、2L)に溶解し、含水クエン酸(2回、400mL×1、及び200mL×1)、含水NaHCO溶液(2%、500mL×1)、及び含水NaCl溶液(10%、500mL×1)で洗浄した。合わせた有機層を、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過した。濾液を、真空下で、35℃~40℃で濃縮したところ、式(I)の化合物を得た(約60g)。
H NMR (400MHz, DMSO-d): δ: 10.79 (s, 1H), 10.46 (s, 1H), 8.61 (d, 1H), 8.28 (d, 1H), 8.07-8.05 (m, 1H), 7.69 (s, 1H), 7.56 (d, 1H), 7.39 (m, 2H), 6.84-6.77 (m, 1H), 6.62 (s, 2H), 6.51 (d, 1H), 6.13 (s, 1H), 3.62-3.59 (m, 4H), 3.35 (d, 1H), 3.15-3.13 (m, 2H), 2.42-2.39 (m, 5H), 1.80-1.77 (m, 1H), 0.98 (d, 3H), 0.88-0.85 (m, 2H), 0.67 (d, 3H), 0.62-0.60 (m, 2H);LCMS: m/z= 529.25-遊離塩基 (M+H), HPLC: 98.98%, 保持時間: 15.40 分間.
【0092】
参照による援用
本明細書に記載したすべての刊行物及び特許は、それぞれの個々の文献または特許が、具体的かつ個別的に参照により援用されるかのように、それらの全内容を参照により援用する。矛盾が生じる事例については、本明細書に記載のあらゆる定義を含む本出願が優先する。
【0093】
均等物
本発明の特定の実施形態を説明してきたが、上記明細書は、例示的なものであって、制限を課すものではない。この明細書及び以下の特許請求の範囲を検討した当業者には、本発明の数多く変形が自明である。本発明の全範囲は、特許請求の範囲、それらの均等の全範囲、及び、明細書、それに、前出の変形を参照して決定されるべきである。
【国際調査報告】