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特表2024-515764燃料電池システムを動作させる方法、制御装置
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  • 特表-燃料電池システムを動作させる方法、制御装置 図1
  • 特表-燃料電池システムを動作させる方法、制御装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】燃料電池システムを動作させる方法、制御装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20240403BHJP
   H01M 8/04828 20160101ALI20240403BHJP
   H01M 8/0432 20160101ALI20240403BHJP
   H01M 8/04492 20160101ALI20240403BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/04828
H01M8/0432
H01M8/04492
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565501
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(85)【翻訳文提出日】2023-10-25
(86)【国際出願番号】 EP2022058593
(87)【国際公開番号】W WO2022228821
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】102021204210.4
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ファルケナウ,トビアス
(72)【発明者】
【氏名】ボッシュ,ティモ
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AA06
5H127AC07
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA28
5H127BA33
5H127BA58
5H127BA59
5H127DB06
5H127DB07
5H127DB93
5H127DC06
5H127DC87
(57)【要約】
本発明は、燃料電池積層体(1)を備える燃料電池システムを動作させる方法であって、新鮮な水素および再循環水素を含むアノードガスがアノード回路(3)を介して燃料電池積層体(1)のアノード(2)に供給され、アノードガスに含まれる液状水がアノード回路(3)に組み込まれた水分離器(4)を用いて分離され、容器(5)に収集され、かつドレン弁(6)を一時的に開くことによってシステムから除去される方法に関する。本発明によれば、容器(5)が満杯であることを検出するために、燃料電池積層体(1)のアノード(2)の入口領域(7)におけるアノードガスの実際温度が目標温度と比較され、目標温度を下回る場合に容器(5)が満杯であることを推測され、ドレン弁(6)が開かれる。本発明は、さらに、方法もしくは個々の方法ステップを実行するための制御装置に関する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
新鮮な水素および再循環水素を含むアノードガスがアノード回路(3)を介して燃料電池積層体(1)のアノード(2)に供給され、前記アノードガスに含まれる液状水が前記アノード回路(3)に組み込まれた水分離器(4)を用いて分離され、容器(5)に収集され、かつドレン弁(6)を一時的に開くことによってシステムから除去される、前記燃料電池積層体(1)を備える前記燃料電池システムを動作させる方法において、容器(5)が満杯であることを検出するために、前記燃料電池積層体(1)の前記アノード(2)の入口領域(7)における前記アノードガスの実際温度が目標温度と比較され、前記目標温度を下回る場合、容器(5)が満杯であることを推測され、前記ドレン弁(6)が開かれることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記燃料電池積層体(1)の前記アノード(2)の前記入口領域における前記アノードガスの前記実際温度は、温度センサを用いて測定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記目標温度は予め算出され、その際、前記アノードガスの組成が考慮されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記目標温度の算出時に、動作条件が一定の場合にすべての事象は同重体とみなされることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ドレン弁(6)を開く前に妥当性検査が行われ、殊に、前記目標温度を下回ることが前記アノード(2)の前記入口領域(7)における前記アノードガスの温度に影響を及ぼす少なくとも1つの別のファクタ、例えば外部温度に起因するのかどうかが検査されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ドレン弁(6)が閉じた後に妥当性検査が行われ、殊に、前記アノード(2)の前記入口領域(7)における前記アノードガスの前記現在の実際温度が測定され、前記ドレン弁(6)を開く前に前記実際温度と比較されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記実際温度から、前記アノードの前記入口領域における前記アノードガスの相対湿度が推測され、必要に応じて湿度を調節する措置が開始され、例えばアノードガスが加熱され、および/または動作点の変更が行われることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法のステップを実行するように設定された制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システム、特に高分子電解質膜(PEM)燃料電池システムを動作させる方法に関する。さらに、本発明は、方法のステップを実行するように設定された制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
PEM燃料電池は、アノードとカソードとの間に配置された高分子電解質膜を有する。PEM燃料電池を用いて、アノードに供給される水素と空気の形態でカソードに供給される酸素を電気エネルギー、熱、および水に変換することができる。実用では、生成される電圧を高めるため、複数の燃料電池が「スタック」とも呼ばれる燃料電池積層体に統合される。
【0003】
PEM燃料電池から流れ出すアノードガスは、通常、未使用の水素を含んでいるため、再循環させて、燃料電池積層体のアノードに再び供給される。その場合、再循環は、ジェットポンプを用いて受動的に、および/または再循環ファンを用いて能動的に実現することができる。しかし時間とともに、再循環アノードガスに窒素と水が蓄積され、その際、水は、水蒸気および液状水の形態で存在し得る。液状水は、通常、水分離器を用いて除去される。水分離器は、独立したコンポーネントとしてアノード回路に配置されるか、または再循環ファンに組み込まれることが可能である。水分離器は、通常、分離された液状水が収集される容器を備える。弁、いわゆるドレン弁を開くことによって、容器を空にすることができる。その際、開放時点は容器の充填レベルに依存する。開放時点は、容器が溢れないように選択されなければならない。なぜなら容器が溢れると、液状水が下流に設けられたコンポーネント、例えば下流に設けられた再循環ファンに入る可能性があるからである。
【0004】
燃料電池システムの動作中に生じる水の量は様々な動作パラメータに依存し、大きく変動する可能性がある。さらに、例えば停止した場合などの熱損失が水の凝縮をもたらす可能性があり、それにより液状水の割合が増加する。そのため、通常、液状水を収集するための容器内の充填レベルが充填レベルセンサを用いて監視される。しかし、移動用途では、充填レベルセンサが測定結果に影響を及ぼす可能性のある揺れおよび/または振動にさらされ、それにより充填レベルセンサの使用には問題がつきまとう。さらに、充填レベルセンサの使用はコストを上昇させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、充填レベルセンサを用いずに、分離された水を収集するための容器内の充填レベルの信頼性の高い、かつ同時に安価な監視を可能にする燃料電池システムを動作させる方法を提供するという課題に取り組むものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1の特徴を有する方法が提案される。本発明の有利な発展形態は、従属請求項から読み取ることができる。さらに、方法もしくは個々の方法ステップを実行するための制御装置が提供される。
【0007】
提案される燃料電池積層体を備える燃料電池システムを動作させる方法では、新鮮な水素および再循環水素を含むアノードガスがアノード回路を介して燃料電池積層体のアノードに供給される。アノードガスに含まれる液状水は、アノード回路に組み込まれた水分離器を用いて分離され、容器に収集され、かつドレン弁を一時的に開くことによってシステムから除去される。本発明によれば、容器が満杯であることを検出するために、燃料電池積層体のアノードの入口領域におけるアノードガスの実際温度が目標温度と比較される。目標温度を下回る場合、容器が満杯であることが推測され、ドレン弁が開かれる。
【0008】
方法は以下の仮定を出発点とする、すなわち
アノードから流れ出すアノードガスは、0%から過飽和までの相対湿度(rH)を有し得る。そのため、飽和されたアノードガスの他に液状水も流れ出す可能性がある。液状水は水分離器で分離され、そのために設けられた容器に収集される。水分離器の分離度が最大になると、水分離器の下流のアノードガスの相対湿度は、分離が理想的な場合に0~100%であり得る。分離が理想的でない場合には、液状水の割合がさらに含まれる。
【0009】
新規に計量投入される(eindosiert)水素の相対湿度(rH)は0%である。
【0010】
2つの物質流の状態を知ることで、「てこの法則(Gesetz der abgewandten Hebelarme)」としても知られるコノードルール(Konodenregel)に従い、アノードの入口領域における断熱混合温度を算出することができる。この値は、期待される温度、すなわち目標温度を前もって定める。目標温度を下回る場合、これは容器が満杯であることを推測させる。なぜなら容器が満杯の場合、水分離器の効率が低下し、分離される液状水が少なくなるからである。この液状水は、新規に計量投入される水素と混ざり合い、液状水の再蒸発(Nachverdampfung)が生じる。次に、理想的な動作時に断熱混合温度が混合温度の値より低くなる。次いで、アノードの入口領域における温度の低下から、分離された液状水を収集するための容器が満杯であるか、もしくは最大充填レベルに達したことを推測できる。その場合、ドレン弁を開くことによって、容器を空にすることができる。
【0011】
容器が満杯であることの認識は、本発明による方法によれば、充填レベルセンサを必要とせず、それにより冒頭で述べた欠点が解消される。これに加えて、方法を簡単かつ安価に実現することができる。
【0012】
好ましくは、燃料電池積層体のアノードの入口領域におけるアノードガスの実際温度は温度センサを用いて測定される。実際温度を測定することによって、信頼できる温度値になる。通常、アノードの入口領域における温度が測定されるので、すでにある温度センサを使用することができ、それにより追加のセンサを設ける必要はない。したがって、方法をさらに簡単に、より安価に実現することができる。
【0013】
さらに好ましくは、目標温度が予め算出され、その際、アノードガスの組成が考慮される。その場合、組成、すなわち新鮮な水素の割合と再循環水素の割合とが既知であることが前提となる。予め算出された目標温度を制御装置に記憶することができ、その場合、方法を実行するときに、制御装置を用いて実際温度と目標温度の比較を行うことができる。
【0014】
殊に、目標温度の算出時に、動作条件が一定の場合にすべての事象が同重体とみなされる。
【0015】
さらに、ドレン弁を開く前に妥当性検査が行われることが提案される。このようにして、容器が満杯でない場合にドレン弁を不必要に開くことを防ぐことができる。妥当性検査では、殊に、目標温度を下回ることがアノードの入口領域におけるアノードガスの温度に影響を及ぼす少なくとも1つの別のファクタ、例えば外部温度に起因するのかどうかが検査される。ドレン弁を最後に開いてからの時間の経過も妥当性検査のために考慮することができる。
【0016】
代替的または補足的に、ドレン弁を閉じた後に妥当性検査を行うことが提案される。閉じた後、容器は空になっているので、実際温度が目標温度にほぼ相当していなければならない。そうでない場合には、これは温度低下が満杯の容器に起因するのではないことのしるしとみなすことができる。妥当性検査を実行するために、殊に、アノードの入口領域におけるアノードガスの現在の実際温度が測定され、ドレン弁が開く前に実際温度と比較される。
【0017】
有利には、実際温度からアノードの入口領域におけるアノードガスの相対湿度が推測される。したがって方法を、湿度を調節するためにも同時利用することができる。その場合、必要に応じて湿度を調節する措置を開始することができる。例えば、アノードガスを加熱することができる。代替的または補足的に、動作点の変更を行うことができる。
【0018】
さらに、本発明による方法のステップを実行するように設定された制御装置が提案される。特に、制御装置を用いて、実際温度と目標温度の比較を行うことができる。このために、好ましくは少なくとも1つの目標温度が制御装置に記憶される。殊に、種々異なるアノードガス組成および/または動作点に対して複数の目標温度が記憶される。容器が満杯であることが認識された場合、制御装置を用いてドレン弁を制御でき、容器を空にするために開くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】水分離器が組み込まれた燃料電池システムのアノード回路の模式図である。
図2】時間に対する温度プロファイルをグラフで示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明とその利点について添付の図面をもとにして詳しく説明する。
【0021】
図1は、燃料電池積層体1を備える燃料電池システムのアノード回路3を示す。アノード回路3を介して、新鮮な水素および再循環水素を含むアノードガスが燃料電池積層体1のアノード2に供給される。アノードガスは、入口領域7を介してアノード2に供給される。出口領域8を介してアノード2から流れ出し、取り出された(abgereichert)アノードガスはアノード回路3を介して再循環される。再循環は、新鮮な水素を作動媒体として利用するジェットポンプ10を用いて引き起こされる。
【0022】
新鮮な水素は、タンク(図示せず)に高圧下で貯蔵され、計量弁9を用いてアノード回路3に計量投入される。アノード回路3に計量投入する前に、圧力および/または温度を適切なレベルにする必要がある。水素を温度調節するために、例えば熱交換器(Waermeuebertrager)11を設けることができる。
【0023】
出口領域8を介して流れ出すアノードガスは、流れ出すアノードガスが水蒸気だけでなく液体の形態の水も含むため、ジェットポンプ10の上流でアノード回路3に組み込まれた水分離器4に供給される。液状水が水分離器4によって分離され、それにより理想的な場合には、再循環されたアノードガスが液状水を含まなくなる。水分離器4を用いて分離された水は、ここでは水分離器4に組み込まれた容器5に収集される。容器5が満杯の場合、容器5に配置されたドレン弁6が開くことができ、容器5を空にすることができる。
【0024】
容器5が満杯であるかどうかを認識するために、本発明によれば、アノード2の入口領域7における実際温度を測定して目標温度と比較することができる。実際温度はシステム動作条件が一定の場合に低下するので、容器5が満杯であることを推測できる。この場合、ドレン弁6が開かれ、容器5が空にされなければならない。その後、実際温度が再び上昇しなければならない。したがって、実際温度を新たに測定することによって、妥当性検査を行うことができる。
【0025】
図2において、時間tに対するアノード2の入口領域7における実際温度Tのプロファイルが例示的に示される。温度の明らかな低下(矢印参照)は、容器5が満杯であることを認識させる。容器が満杯になると水分離器4の効率が低下するので、入口領域7におけるアノードガスの湿度が上昇する。同時に、水分離が理想的な場合、断熱混合温度が混合温度の値より低くなる。
【0026】
さらに、方法をアノードガスの相対湿度に関して入口条件を認識するため、および場合によっては系統的な措置を開始するために使用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 燃料電池積層体
2 アノード
3 アノード回路
4 水分離器
5 容器
6 ドレン弁
7 入口領域
8 出口領域
9 計量弁
10 ジェットポンプ
11 熱交換器
図1
図2
【国際調査報告】